生徒が英語をまなばざるを得ない仕掛け作り

生徒を伸ばす指導のヒント
ベネッセコーポレーション
GTEC for STUDENTS 事業推進課
vol.47
【GTEC 通信】
http://www.gtec.for-students.jp/
<指導事例研究>
英語を使えることで広がる世界
英語を使って分かる「文法・構文・語彙」のありがたみ
0:はじめに・・・
日本のような日本語のみで生活が成立する国の中で、生徒
に「英語が使えるようになると世界が広がる」という言葉だ
けでは、なかなかリアリティーを持たせるのは難しいと話を
聞くことがあります。具体的にどのように世界が広がるの
か?という点について、国際協力の仕事に多く携れている独
立行政法人国際協力機構(JICA)の職員の加瀬晴子さん(現
JICA 地球ひろば 市民参加協力促進課 調査役)にインタビ
ューをしました。
加瀬晴子さんが JICA 職員になったきっかけは、海外に行き
たいという気持ちからでした。中学・高校時代に地方の山で
囲まれた地域で過ごし、「あの山の向こうには何があるの
か?」
「山の向こうにいってみたい!」という好奇心からだそ
うです。大学時代に海外に行き、いろんな国を知る中で JICA
の仕事に興味をもたれました。では、実際に何を感じたか?
以下、ご参照頂ければと思います。
1:英語が使えることは、どんなメリットがありま
すか?
加瀬さん:日本語を話す人は約1.3億人ですが、英語を話
す人は世界に約10億人います。英語を話せるだけで、今ま
でと比べものにならない程の友人ができ、行動範囲が広がり、
いろんな国の考え方を吸収できる可能性が広がります。行動
範囲が広がり友人ができるというのは理解できると思います
が、いろんな国の考え方を知ることができるというのは、私
にとっては大きな価値観の転換でした。日本は総じて誉めら
れることは少ないのですが、私がいったフィリピンでは、ほ
んの些細なことでもお互い誉めあっていました。日本はアジ
ア諸国の中ではストイックな気質のある国だと思います。相
当頑張っても、
「もっと頑張れ」って言われますし。もちろん、
このような気質が戦後の日本を復興してきた原動力とも言わ
れています。ただ、自分で自分を誉める機会が多い、他人も
他人を誉める機会が多い国を経験したことで、生き方が楽に
なったように思います。自分の目標を下げるということでは
なく、反省する一方で、自分のこと・他人のことを認めると
いうことができるようになったと思います。多くの人や国の
価値観と接することで、自分を大きく成長できた実感があり
ます。
2:海外で仕事をして日本について感じたことを教
えてください。
加瀬さん:いろんな国に行きましたが、ここでは国際協力
の仕事で関わったフィリピンのゴミ山の話をします。ゴミ山
から運ばれてくるゴミを拾う仕事をしている人たちは、ビ
ン・プラスチックゴミなどの換金できるゴミを拾い集め、生
活の糧を得ています。このような人たちには、まだ 10 歳にも
満たない子どももたくさんいます。彼らは毎日およそ 6000 ト
ンも運ばれてくるゴミから、ビンや鉄などの換金できる物を
探しています。一日中、ゴミをかき集めても、およそ 100 ペ
ソ(220 円程度)ほどしか稼げないのが現状です。また、観
光客相手の仕事で、例えば花を売る場合、大人が販売するよ
り子どもが売った方が、
「子どもが働いているのなら買ってあ
げたい」という気持ちが生まれやすく、売れるようです。フ
ィリピンでは、子どもに労働機会が多く、家計を支えている
ことも多いのです。しかし、私がゴミ山で出会った子ども達
は、悲惨そうな感じはなく、屈託のない素敵な笑顔の持ち主
でした。このような世界があることを知ることも、自分の価
値観の幅が広がったことの一つだと思います。
そのような子ども達に今後何がしたい?と聞くと、多くの
子どもたちは「学校に行きたい」といいます。理由は読み書
きができない、計算間違いが多いためにいい職につけなかっ
たりするからです。つまり、今の暮らしのレベルを変えるに
は、教育を受けた証を示さなければなりません。子どもたち
は、学校にいっていい成績を残せば奨学金ももらえます。ま
た他の理由としては、家計の担い手として毎日働いている子
どもたちにとって、本来の子どもに戻れるひと時ということ
からも学校に行きたいというのかもしれません。子ども達の
多くは、少しでも安定した生活を送ったり、普通に友人と遊
んだりしたいという思いがあります。世界で働いている5歳
∼17歳の人口は2.1億人(ILO調べ)
、学校に行けない
子どもの数は7200万人(ユネスコ調べ)です。日本人は
このような国の人達からみると「夢のような国」だと思いま
す。私は、このような現実を見る中で、日本ができることを
考えたいと思いました。だからと言って、日本人に「ありが
たいと思え」というわけではありません。私が言いたいのは、
英語ができて海外のことを知ることで、自分の価値観が変わ
り、世界に対しての自分の接し方が変わったということです。
●JICA からの案内
【世界への扉を開いてみよう】
JICA の HP 上では世界の今がわかる情報や国際協力に取り組
む人々の活動の様子を知ることができます。
http://www.jica.go.jp/
(フィリピン:バヤタスというゴミ山で働く児童の写真:提
供 JICA)
3:高校時代の英語の学習を振り返って何を思われ
ますか?
加瀬さん:今になって思うと、高校でおこなった英語の勉強
が、仕事で使う英語力の基盤として役立っていると実感して
います。特に文法や構文、語彙をきちんと教えこんでくれた
ことについて、高校の先生に御礼を言いたいぐらいです。た
だ、そう思ったのは、仕事を初めてからで、使うようになっ
て初めて、文法・構文・語彙を覚えていたことに感謝しまし
た。私の時は高校時代に「英語を使う」ということは想定し
にくかったですが、今ならいろんな手段が世の中にあふれて
いるので、
「英語を使う」場面を設定することをお勧めします。
4:英語の勉強ってなかなか続かないって言われま
すけど、お勧めの勉強法はありますか?
加瀬さん:確かに覚えることは多いので、気持ちを持続させ
ることが大事ですね。そのためには、
「とにかく英語を使って
みる」場面が必要だと思います。自分が高校の時にあったら
よかったなと思うものを含め記載しますね。
・
ALT や海外の人とまずは話してみること
(いきなり話すのは大変ですが、あいづちを打つ言葉をま
ず覚えると会話がしやすくなります)
・ 英語を話す前提で短い原稿でもいいから Writing してみ
ること
(ユニセフの HP には自分の意見を投稿するような
ものがあります)
・ 海外に関心を持てる題材を見ること、心を動かされる題
材をよむこと
例:JICA、ユニセフの HP など
・ 英語の検定試験を受けてみること(目標を立てるために
大事だと思います)
5:編集後記
英語を学び、海外にいくことは「自分の世界を広げるこ
と」という加瀬さんのお話が印象的でした。今は、実際に
海外に行かなくとも、世界のことを学べるツールもあるの
で、英語学習や進路選択の動機付けの一つとしてご参考頂
ければ幸です。
(聞き手:グローバル事業推進課 青木忠司)
【自分にできることを考えてみよう】
中学生・高校生にもできる国際協力の第一歩
∼JICA 国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト
JICA では毎年夏休みの時期に、日本全国の中学生・高校生
を対象に、国際協力をテーマにしたエッセイを募集していま
す。上位の受賞者には開発途上国への海外研修旅行が副賞と
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