内国法人代表者の居住者要件の撤廃及び商業登記規則等の一部の改正

I&M ニュースレター 2015 年 3 月
Legal Update
内国法人代表者の居住者要件の撤廃及び商業登記規則等の一部の改正
パラリーガル
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(執筆者) 吉村龍吾/合田久輝/斎藤三義/高賢一/高橋恵子/榊田由香
A.内国法人代表者の居住者要件の撤廃
平成 27 年 3 月 16 日、法務省は、内国法人の代表者のうち少なくとも1名は日本に住所を有しなければならないという居
住者要件の撤廃を発表しました。
1. これまでの実務
「内国株式会社の代表取締役のうち少なくとも 1 名は、日本に住所を有しなければ、設立の登記の申請は受理できない」
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とする民事局の回答 に従い、内国法人の代表者(以下「代表取締役等」といいます。)のうち、少なくとも 1 名は日本居住
者であることが登記実務上の要件となっていました。
2. 旧制度の趣旨と居住者要件撤廃の経緯
会社法上、内国会社の代表取締役等の住所は、登記事項とされていますが、その住所が日本になければならないという
明文の規定は置かれていません。しかし、内国会社は、営業の本拠地たる本店が日本国内にあり、本来、本店において経
常的に業務を行うのが代表取締役等であると考えられていたこと、また、代表取締役等の住所地は民事訴訟法上普通裁
判籍の一つとされ、日本国内の取引相手や消費者等の利益を保護する観点から、代表取締役等は日本国内に住所を有
するということを当然の前提として立法されたものと考えられてきました。
しかし、昨今の企業活動の国際化、交通手段・インターネットの発達した社会状況及びアベノミクスの一環として対日投資
促進の観点から、今回、居住者要件が撤廃されました。また、内国法人の日本における代表者になる予定の外国人が就
労ビザを取得しようとする場合、原則として、就労先である内国法人の登記事項証明書が必要となりますが、日本に住所を
有しない外国人だけで当該内国法人の代表者を構成しようとする場合には、当該内国法人を設立することができなかった
ため、居住者要件の撤廃は、就労ビザの取得の観点からも要請があったところです。
3. 適用範囲
当該代表者の居住者要件の撤廃は、代表者のうち最低1名は日本居住者でなければならないという規定がない法律に
基づき設立される法人に関しては、株式会社と同様の取扱いになります。代表的なものとして、以下の内国法人について、
代表者の全員が外国居住でも登記は受理されることになりました。なお、外国会社の日本における代表者については、会
社法第 817 条第 1 項に、代表者のうち一人以上について居住者要件を課しているため、今回の居住者要件撤廃の適用
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はありません 。
法人の種類
代表者
法人の種類
代表者
株式会社
代表取締役/代表執行役
投資事業有限責任組合
無限責任組合員
特例有限会社
代表取締役
投資法人
執行役員
合同会社、合資会社等の持分
会社
代表社員
(職務執行者)
一般社団法人
一般財団法人
代表理事
特定目的会社
代表取締役
特定非営利活動法人
(NPO 法人)
理事
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昭和 59 年 9 月 26 日民四第 4974 号民事局第四課長回答。また、昭和 60 年 3 月 11 日民四第 1480 号民事局第四課長回答においては、「代表取締役が
日本に住所を有しない内国株式会社の代表取締役の重任又は就任の登記についても、当該会社の代表取締役のうち少なくとも一名が日本に住所を有する
場合でない限り、その登記の申請は受理すべきでない」とされておりました。
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有限責任事業組合についても、有限責任事業組合契約に関する法律第 3 条第 2 項に、組合契約の当事者のうち一人以上は、国内に住所を有することが
定められているため、今回の居住者要件撤廃の適用はありません。
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B.商業登記規則等の一部の改正(役員の登記の添付書面の改正)
平成 27 年 2 月 27 日より、役員の登記(取締役・監査役等の就任、代表取締役等の辞任)の申請をする場合の登記添付
書類の取扱いが変更され、また、商業登記簿欄に役員の婚姻前の氏も記録することができるようになりました。
1. 役員の登記の申請をする場合の登記添付書面の改正
(1)株式会社の設立の登記又は取締役、監査役若しくは執行役(以下「取締役等」といいます。)の就任(重任を除きま
す。)の登記を申請する場合、取締役等の就任承諾書に氏名に加えて住所の記載を要し、更に当該氏名及び住所と同一
の氏名及び住所が記載されている市区町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該取締役等が原本と相違が
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ない旨を記載した謄本を含む。)を添付する必要があります 。但し、登記申請書に当該取締役等の印鑑証明書(市区町村
長が作成したもの)を添付する場合は、不要です。就任承諾書に取締役等の住所の記載がない場合は、株主総会議事録
に記載する方法でも足ります。なお、取締役等の就任の登記に際して、本人確認証明書の添付が要求されますが、住所が
登記されるのは、従来どおり代表取締役等のみです。
■「本人確認証明書」の例
①住民票記載事項証明書(住民票の写し)
④運転免許証等(裏面も含む)の写し
②戸籍の附票
⑤パスポート(住所が記載されているもの)の写し
③住基カード(住所が記載されているもの)の写し
⑥署名証明書(本国官憲が発行し、住所が記載されているもの)
※③乃至⑤はコピーし、本人が「原本と相違がない」旨記載し、記名押印する必要があります。
※外国人の場合は、④乃至⑥で対応することになりますが、一般的には海外の Driver’s License(運転免許証)に現住所の記載が
あるため、本人確認証明書としてもっとも利用しやすいと考えます。
(2)印鑑提出者である代表取締役等の辞任の登記を申請する場合、登記申請書に添付される辞任届は、①辞任した代表
取締役等の個人の実印による押印及びその印鑑証明書(市区町村長が作成したもの)の添付又は②辞任した代表取締役
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等の登記所に届け出た代表印による押印が必要となります 。
なお、代表取締役等の辞任の登記のほか、代表取締役である取締役の辞任及び代表執行役である執行役の辞任の登記
を申請する場合も、同様の取り扱いとなります。
※(1)(2)は、株式会社のほか、一般社団法人、一般財団法人、投資法人又は特定目的会社の役員にも適用されます。
2. 役員欄への婚姻前の氏の記録について
役員(取締役、監査役、執行役、会計参与又は会計監査人をいいます。)又は清算人の就任等の登記を申請する場合、
婚姻により氏を改めた役員又は清算人(その申請により登記簿に氏名が記録される方に限ります。)について、戸籍謄本
(抄本)又は戸籍の記録事項証明書を添付の上、その婚姻前の氏をも記録するよう申し出ることができます。
なお、婚姻前の氏をも記録することを申し出ることができるのは、原則として、設立の登記、役員若しくは清算人の就任によ
る変更登記、又は、役員若しくは清算人の氏の変更の登記の申請の場合に限られますが、平成 27 年 8 月 26 日(水)まで
は、会社の代表取締役等(登記所に印鑑を提出した方)は、現に登記されている役員について、いつでも必要書類を添付
の上、その婚姻前の氏の記録を申し出ることができます。
※株式会社の役員のほか、持分会社の社員、一般社団法人、一般財団法人若しくはその他の法人の役員又は LPS 若し
くは LLP の組合員等にも、適用されます。
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改正後の商業登記規則第 61 条第 5 項
印鑑提出者でない代表取締役の辞任の登記は、従来どおり認印で押印された辞任届でも受理されます。
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