SC手技書V1.2

Ver.1.2
SC Hip System手術手技書発刊にあたり
先人の多くの努力と研究、経験の蓄積により、人工股関節の
長期耐用性が向上してきました。
これからの人工股関節には、
単に長期固定性の確保のみでなく、周囲骨量の維持や、将来
の再置換の容易さなどに加え安定した設置が行えるなどシステム
としての完成度が要求されています。
セメント固定人工股関節の長期
今回開発されたSC stem には、
の経験から生まれた多くのノウハウに基づくコンセプトを盛りこん
で頂きました。
また、
ステムの正確な設置を確保するためのガイド
システムも開発しました。
これにより手術手技が当初やや煩雑に
なると感じられますが、手技に熟達すれば、はるかに精密で安
定した手術が行えることが理解されると確信しています。
「着眼大極、着手小局」
(碁における広い視野と細心の注意)
という言葉があります。人工股関節においても、単に機種の選択
だけでなく注意深く正確な手術手技が成績向上に不可欠です。
この手術手技書には、私の今までの経験から最良と考えて行っ
ている手術の実際を紹介させて頂きました。
この冊子が参考と
なり人工股関節の成績向上に役立てて頂ければ幸いです。
関西医科大学 整形外科
教 授
1
CONTENTS
I SC Hip Systemの概要
1.ステム・デザイン ……………………3∼4
2.製品紹介 ……………………………5∼8
3.専用器具 …………………………9∼12
II 術前計画
…………………………………13
III 症例紹介
…………………………………14
1.皮 切
…………………………………15
IV 手術手技
2.大転子の前方骨切り …………………16
3.頸部前面の剥離 ………………………17
4.骨頭の摘出 ……………………………17
5.ピンレトラクターの設置 ………………18
6.水平開創鉤の設置 ……………………18
7.臼蓋の展開 ……………………………19
8.臼蓋のリーミング
……………………20
9.カップ・サイズの確認 …………………20
10.カップの設置 ……………………21∼22
11.大腿骨髄腔のリーミング ………………23
12.大腿骨髄腔のラスピング………………23
13.ステムトライアルの挿入
……………24
14.髄外ガイドの準備 ………………25∼26
15.骨栓の作製 ……………………………27
16.セメント注入及び圧迫 …………………28
17.大腿骨ステムの挿入……………………29
18.骨頭ボールの嵌合 ……………………30
19.大転子の整復固定 ……………………31
20.閉 創
…………………………………32
V 後療法
…………………………………33
2
I
SC Hip Systemの概要
1.ステム・デザイン
All Polished Design
SC Hip Systemは、
JMMが有する金属の材料技術及び加工技術により生まれた、全く新し
いコンセプトを有する人工股関節です。
JMMは、
SC Hi
p Systemによりセメンテッド・ステムの更なる臨床成績の向上を目指して
います。
Reduction of Stress Shielding
近位からの荷重伝達とセメント内応力
不均一の低減を目的としたCurved
Triple Taperデザインの採用により、
Stress Shieldingの低減が期待で
きます。
3rd Taper
1st Taper
2nd Taper
Averaging of Hoop Stress
スリップした場合にセメント内に発生する
フープストレスのイメージ
Curved Triple Taperデザインの
採用により、Straight Taperデザ
インと比較して、Hoop
一様化が期待できます。
Curved Taper
3
Straight Taper
Stressの
Physiologic Load Transfer
Curved Triple Taperデザインの
採用により、近位内側部から生理的
12
10
な荷重伝達を図ることができます。
8
6
4
2
0
(社内データ)
The Shape of Internal Curve
2種類の内側カーブを有する
ステム・デザイン
● 2種類の内側カーブ
・デザイン
により、標準的な髄腔形態に
加えて、近位内側が急峻な髄
腔形態への適合性向上を図る
ことができます。
●
プロポーショナルなサイズ・バ
リエーションを有しています。
STDタイプ
(標準的な髄腔形態)
CDHタイプ
(内側が急峻な髄腔形態)
The Shape of Transverse Plane
回旋安定性を高めた断面デザイン
回旋安定性試験結果
● ラウンド
・エッジを採用した断面デザインは、
(kN)
12
10
骨頭への荷重
回旋安定性に優れています。
セメントクラック発生
8
回旋安定性におけるステム断面形状の影響を検
討する目的で回旋安定性試験を実施しました。
6
対象製品
4
2
0
その結果、対象製品と比較して、
SCステムでは
SCステム
高い荷重までセメントクラックが発生していな
セメントクラック発生
0
2
4
6
いことから、高い回旋安定性を有していること
8
10 (mm)
クロスヘッド変位
が確認されました。
(社内データ)
4
I
SC Hip Systemの概要
2.製品紹介
SC Stem
■K-MAX SC ステム Polished STD
C
D
E
34
11
15 123
SSCP-STD-2 SC ステム POLISHED STD-2 102
36
12
17 129
SSCP-STD-3 SC ステム POLISHED STD-3 108
38
13
19 135
40
15
21 141
SSCP-STD-5 SC ステム POLISHED STD-5 120
42
16
23 147
SSCP-STD-6 SC ステム POLISHED STD-6 126
44
17
25 153
商品No.
品 名
ステム POLISHED STD-1
SSCP-STD-1 SC
A
B
96
32
F
D
°
130
K-MAX SC HIPシステム
[医療機器承認番号:21600BZZ00345000]
(単位:㎜)
B
50°
SSCP-STD-4 SC ステム POLISHED STD-4 114
C
+3㎜ボール
E
F
A
材質はCo-Cr-Mo合金です。
■K-MAX SC ステム Polished CDH
C
D
E
ステム POLISHED CDH-1 96
SSCP-CDH-1 SC
31
11
12 123
SSCP-CDH-2 SC ステム POLISHED CDH-2 102
32
12
13 129
SSCP-CDH-3 SC ステム POLISHED CDH-3 108
33
13
14 135
34
15
15 141
SSCP-CDH-5 SC ステム POLISHED CDH-5 120
35
16
16 147
SSCP-CDH-6 SC ステム POLISHED CDH-6 126
36
17
17 153
商品No.
品 名
A
材質はCo-Cr-Mo合金です。
5
B
F
D
°
130
K-MAX SC HIPシステム
[医療機器承認番号:21600BZZ00345000]
32
(単位:㎜)
50°
SSCP-CDH-4 SC ステム POLISHED CDH-4 114
B
C
+3㎜ボール
F
A
E
Ball
■910メタルボール(22㎜/26㎜)
骨頭径
商品No.
品 名
22㎜
CMT90922
910
メタルボール
22 : +0
CMT90923
910
メタルボール
22 : +3
CMT90924
910
メタルボール
22 : +6
22 : +0㎜ボール
22 : +3㎜ボール
22 : +6㎜ボール
CMT90932
910
メタルボール
26 : +0
CMT90933
910
メタルボール
26 : +3
CMT90934
910
メタルボール
26 : +6
CMT90935
910
メタルボール
26 : +9
26 : +0㎜ボール
26 : +3㎜ボール
26 : +6㎜ボール
26 : +9㎜ボール
ネック長
材質はCo-Cr-Mo合金です。
骨頭径
商品No.
品 名
26㎜
ネック長
* K-MAX SC ステム POLISHEDはCo-Cr-Mo合金製のため、
アルミナ・ボールとの組み合わ
せは、強度上の問題があり、使用できません。
* K-MAX SC ステム POLISHEDとジルコニア・ボールを組み合わせて使用する場合は、別途
お問い合わせ下さい。
PHYSIO-HIP SYSTEM ボールGA58
[医療機器承認番号:16300BZZ00645000]
6
I
SC Hip Systemの概要
2.製品紹介
Cemented Cup
■K-MAX CLHOカップZ 22mm用(セメントスペーサー無し)
CLHOカップZ ペグナシ
22ー40
22ー42
22ー44
22ー46
22ー48
22ー50
22ー52
22ー54
22ー56*
22ー58*
22ー60*
商品No.
SCLHO646Z
SCLHO648Z
SCLHO650Z
SCLHO652Z
SCLHO654Z
SCLHO656Z
SCLHO658Z
SCLHO660Z
ボール
26㎜
品 名
(内径ー外径:㎜)
CLHOカップZ ペグナシ
R
■K-MAX CLHOカップZ 26mm用(セメントスペーサー無し)
L
22㎜
品 名
(内径ー外径:㎜)
R
材質はExcellink UHMWPEです。
ボール
L
商品No.
SCLHO240Z
SCLHO242Z
SCLHO244Z
SCLHO246Z
SCLHO248Z
SCLHO250Z
SCLHO252Z
SCLHO254Z
SCLHO256Z
SCLHO258Z
SCLHO260Z
26ー46
26ー48
26ー50
26ー52
26ー54
26ー56*
26ー58*
26ー60*
*オプション:在庫については、別途お問い合わせ下さい。
K-MAX CLPEカップ
[医療機器承認番号:21200BZZ00374000]
■K-MAX CLHPカップZ 22mm用(セメントスペーサー無し)
材質はExcellink UHMWPEです。
商品No.
SCLHP240Z
SCLHP242Z
SCLHP244Z
SCLHP246Z
SCLHP248Z
SCLHP250Z
SCLHP252Z
SCLHP254Z
SCLHP256Z
SCLHP258Z
SCLHP260Z
ボール
22㎜
品 名
(内径ー外径:㎜)
CLHPカップZ ペグナシ
■K-MAX CLHPカップZ 26mm用(セメントスペーサー無し)
商品No.
SCLHP646Z
SCLHP648Z
SCLHP650Z
SCLHP652Z
SCLHP654Z
SCLHP656Z
SCLHP658Z
SCLHP660Z
ボール
26㎜
品 名
(内径ー外径:㎜)
CLHPカップZ ペグナシ
*オプション:在庫については、別途お問い合わせ下さい。
K-MAX CLPEカップ
[医療機器承認番号:21200BZZ00374000]
7
22ー40
22ー42
22ー44
22ー46
22ー48
22ー50
22ー52
22ー54
22ー56*
22ー58*
22ー60*
26ー46
26ー48
26ー50
26ー52
26ー54
26ー56*
26ー58*
26ー60*
Cemented Cup
■K-MAX CLHOカップ 22mm用(セメントスペーサー付)
CLHOカップ 26mm用(セメントスペーサー付)
ボール
26㎜
品 名
(内径ー外径:㎜)
CLHOカップ ペグツキ
L
CLHOカップ ペグツキ
22ー40
22ー42
22ー44
22ー46
22ー48
22ー50
22ー52
22ー54
22ー56*
22ー58*
22ー60*
R
商品No.
SCLHO646
SCLHO648
SCLHO650
SCLHO652
SCLHO654
SCLHO656
SCLHO658
SCLHO660
22㎜
品 名
(内径ー外径:㎜)
R
材質はExcellink UHMWPEです。 ■K-MAX
ボール
L
商品No.
SCLHO240
SCLHO242
SCLHO244
SCLHO246
SCLHO248
SCLHO250
SCLHO252
SCLHO254
SCLHO256
SCLHO258
SCLHO260
26ー46
26ー48
26ー50
26ー52
26ー54
26ー56*
26ー58*
26ー60*
*オプション:在庫については、別途お問い合わせ下さい。
K-MAX CLPEカップ
[医療機器承認番号:21200BZZ00374000]
■K-MAX CLHPカップ 22mm用(セメントスペーサー付)
商品No.
SCLHP240
SCLHP242
SCLHP244
SCLHP246
SCLHP248
SCLHP250
SCLHP252
SCLHP254
SCLHP256
SCLHP258
SCLHP260
材質はExcellink UHMWPEです。
ボール
22㎜
品 名
(内径ー外径:㎜)
CLHPカップ ペグツキ
22ー40
22ー42
22ー44
22ー46
22ー48
22ー50
22ー52
22ー54
22ー56*
22ー58*
22ー60*
■K-MAX CLHPカップ 26mm用(セメントスペーサー付)
商品No.
SCLHP646
SCLHP648
SCLHP650
SCLHP652
SCLHP654
SCLHP656
SCLHP658
SCLHP660
ボール
26㎜
品 名
(内径ー外径:㎜)
CLHPカップ ペグツキ
26ー46
26ー48
26ー50
26ー52
26ー54
26ー56*
26ー58*
26ー60*
*オプション:在庫については、別途お問い合わせ下さい。
K-MAX CLPEカップ
[医療機器承認番号:21200BZZ00374000]
8
I
SC Hip Systemの概要
3.専用器具
臼蓋側専用器具
■ 基本トレー(B)
●
1
4
●
3
●
2
●
5
●
6
●
9
●
7
●
10
●
8
●
12
●
11
●
1
●
2
●
3
●
8
●
●
9
●
5
●
10
●
●
14
18
●
9
4
●
●
13
品 名
B-1
カップ押し棒
数量
1
B-2
HDPカップホルダー
1
B-3
フランジ押さえプレート
1
B-4
フランジ切断用ハサミ
1
B-5
カップトライアル 40
1
B-6
カップトライアル 42
1
B-7
カップトライアル 44
1
B-8
カップトライアル 46
1
B-9
カップトライアル 48
1
B-10
カップトライアル 50
1
B-11
カップトライアル 52
1
B-12
カップトライアル 54
1
26mmボール用器具セットも用意されています。
ご必要の際は、別途お問い合わせ下さい。
■ リーマトレー(R)
7
●
No.
11
●
12
●
●
15
19
●
6
●
●
16
20
●
17
21
●
No.
品 名
数量
R-1
カップリーマハンドル
2
R-2
カップリーマ38
1
R-3
カップリーマ39
1
R-4
カップリーマ40
1
R-5
カップリーマ41
1
R-6
カップリーマ42
1
R-7
カップリーマ43
1
R-8
カップリーマ44
1
R-9
カップリーマ45
1
R-10
カップリーマ46
1
R-11
カップリーマ47
1
R-12
カップリーマ48
1
R-13
カップリーマ49
1
R-14
カップリーマ50
1
R-15
カップリーマ51
1
R-16
カップリーマ52
1
R-17
カップリーマ53
1
R-18
カップリーマ54
1
R-19
カップリーマ56
1
R-20
カップリーマ58
1
R-21
カップリーマ60
1
(オプション品:開創用器具*)
5
●
No.
2
●
3
●
1
●
4
●
6
●
7
●
8
●
9
●
10
●
11
●
12
●
13
●
14
●
18
●
●
16
17
●
品 名
数量
1
開創器用フレーム
1
2
ピンレトラクター
2
3
ピンレトラクターハンドル
1
4
幅広ノミ 40
1
5
水平開創鉤
1
6
ボーンインパクションロッド φ6
1
7
ボーンインパクションロッド φ8
1
8
ボーンインパクションロッド φ10
1
9
ガーゼ挿入棒
1
10
フリーラスプ
1
11
アンカーホール用ドリルガイドφ3.2
1
12
アンカーホール用ドリルφ3.2
1
13
アンカーホール用ドリルガイドφ6.0
1
14
アンカーホール用ドリルφ6.0
1
15
短ブレードS
1
16
短ブレードL
1
17
長ブレードS
1
18
長ブレードL
1
19
ホーマン鉤S
1
20
ホーマン鉤L
1
21
臼底レトラクターS30
1
22
臼底レトラクターS35
1
23
臼底レトラクターM35
1
24
大腿骨用レバー
1
15
●
19
20 ●
●
24
●
23 ●
22 ●
21
●
* 開創用器具はオプション品です。
SCステム専用器具セットの中に準備しておりません。
ご必要の際は、別途お問い合わせ下さい。
10
SC Hip Systemの概要
I
3.専用器具
大腿骨側専用器具
■ リーマー トレー(R)
3●
2 ●
4
●
1
●
6 ●
7●
8●
9
●
No.
品 名
R-1
14
●
●
13
10
●
5
●
11
●
12
●
数量
1
R-2
φ8
1
R-3
φ9
1
φ10
1
R-4
R-5
1
大転子
R-6
φ11
1
R-7
φ12
1
R-8
φ13
1
R-9
φ14
1
R-10
1
R-11
箱
1
R-12
骨切
1
R-13
1
R-14
2
■ ブローチ&トライアル トレー(B)
6
●
5
●
4
●
8
●
18
●
17
●
9
●
●
16
●
10
●
2
●
15
●
11
●
1
●
14
●
12
●
3
11
7
●
13
●
19
●
No.
品 名
数量
B-1
ブローチ STD-1
1
20
●
B-2
ブローチ STD-2
1
●
B-3
ブローチ STD-3
1
B-4
ブローチ STD-4
1
B-5
ブローチ STD-5
1
B-6
ブローチ STD-6
1
B-7
ブローチ CDH-1
1
B-8
ブローチ CDH-2
1
B-9
ブローチ CDH-3
1
B-10
ブローチ CDH-4
1
B-11
ブローチ CDH-5
1
B-12
ブローチ CDH-6
1
B-13
ステムトライアル STD-1
1
B-14
ステムトライアル STD-2
1
B-15
ステムトライアル STD-3
1
B-16
ステムトライアル STD-4
1
B-17
ステムトライアル STD-5
1
B-18
ステムトライアル STD-6
1
B-19
ステムトライアル CDH-1
1
B-20
ステムトライアル CDH-2
1
B-21
ステムトライアル CDH-3
1
B-22
ステムトライアル CDH-4
1
B-23
ステムトライアル CDH-5
1
B-24
ステムトライアル CDH-6
1
21
22
●
23
●
●
24
■ 芯出しゲージ トレー(S)
31
●
30
●
29
●
28
●
27
●
26
●
25
●
24
●
23
●
22
●
No.
7
●
14
●
13
●
6
●
12
●
5
●
11
●
4
●
10
●
3
●
9
●
2
●
8
●
1
●
21
●
15 ●
17 ●
19
●
16 18
●
●
20
●
S-1
S-2
S-3
S-4
S-5
S-6
S-7
S-8
S-9
S-10
S-11
S-12
S-13
S-14
S-15
S-16
S-17
S-18
S-19
S-20
S-21
S-22
S-23
S-24
S-25
S-26
S-27
S-28
S-29
S-30
S-31
品 名
ネックトライアル 22+0
ネックトライアル 22+3
ネックトライアル 22+6
ネックトライアル 26+0
ネックトライアル 26+3
ネックトライアル 26+6
ネックトライアル 26+9
ボールトライアル 22+0
ボールトライアル 22+3
ボールトライアル 22+6
ボールトライアル 26+0
ボールトライアル 26+3
ボールトライアル 26+6
ボールトライアル 26+9
着脱式カラー 0
着脱式カラー 2
着脱式カラー 4
着脱式カラー 6
着脱式カラー 8
着脱式カラー 10
ボールインパクター
(SC)
芯出しゲージφ8
芯出しゲージφ9
芯出しゲージφ10
芯出しゲージφ11
芯出しゲージφ12
芯出しゲージφ13
芯出しゲージφ14
芯出しゲージφ15
芯出しゲージφ16
芯出しゲージφ17
数量
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
■ 髄外ガイド トレー(G)
4
●
5
●
8
●
9
●
10
●
13
●
1
●
No.
2
●
11 ●
12
●
7
●
6
●
14
●
15
●
3
●
G-1
G-2
G-3
G-4
G-5
G-6
G-7
G-8
G-9
G-10
G-11
G-12
G-13
G-14
G-15
品 名
数量
骨把持器
固定クランプ
シャフトホルダー
ガイドシャフトR
ガイドシャフトL
ハンドルレバー
ステムホルダー
ボーンインパクションロッドφ6
ボーンインパクションロッドφ8
ボーンインパクションロッドφ10
ネックキャップA
ネックキャップB
ブローチ STD-7
ブローチ CDH-7
ステム押し棒
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
12
II 術前計画
カップ・サイズの決定
K-MAX CLHOカップもしくはK-MAX CLHPカップのテンプレートを利用して、あらかじめ使用するインプラントの
サイズ、及び設置位置を検討します。
・ K-MAX CLHOカップ及びK-MAX CLHPカップには、それぞれ
拡大率110%
22mm内径及び26mm内径の製品が用意されており、外径は
22mm内径においては40∼54mm、26mm内径においては46
φ22 骨頭用
各サイズはドーム外径を示す。
ペグ高さは全サイズ3mm
φ50
φ40
∼54mmの製品が用意されています。
・ カップ・サイズの決定においては、過度の内方設置を避けるため、腸骨
φ46
内板からの厚みを考慮し、
カップの外縁が骨性に被覆されていること
が重要となります。
φ52
φ42
・ 臼蓋外側に骨欠損が生じる場合は、骨移植を考慮することになります
φ48
が、その際、移植骨がカップの頂点を越えて内側に及ばないようにす
ることが重要となります。
φ54
φ44
0
0
5
10
5
(100%)
10
(110%)
K-MAX CLHOカップテンプレート
ステム・サイズの決定
SCステム Polished STDもしくはSCステム Polished CDHのテンプレートを利用して、あらかじめ使用する
インプラントのサイズ、及び設置位置を検討します。
・ SCステム Polished STD及びSCステム Polished CDHには、そ
れぞれ1から4まで、計8サイズが用意されています。
・ ステム・サイズの決定においては、大腿骨髄腔の形態に応じて、標準
的な髄腔形態の症例ではSTDタイプ、近位内側が急峻な症例では
CDHタイプから最適なサイズを選択して下さい。
・ 通常、正常な骨頭中心は大転子の頂点の高さであることから、骨頭中
心と大転子の頂点の高さを合わせてテンプレートを重ね、術前後の
小転子の位置を確認して、脚延長もしくは短縮の程度を確認します。
更に、左右の小転子の位置を確認して、左右の脚長差を確認します。
・設置位置の決定後、大腿骨頸部の骨切り位置を確認します。
SCステム Polished STDテンプレート
13
III 症例紹介
■59歳 女性 左変形性股関節症
約1年前より長距離歩行が困難となり、
日常生活動作においても股関節痛を生
じるようになった。亜脱臼性股関節症
であり、臼蓋縁骨移植を併用して人工
股関節置換術を施行した。
SCステム Polished STD使用例
■68歳 女性 右変形性股関節症
以前より右股関節痛を自覚していたが、
2‐3年前より疼痛増悪し歩行距離が低
下した。片脚起立できず屋内でもT字杖
を使用するようになったため、当科受診
した。
4cmの脚長差を認め、骨頭の著
しい変形を認めた。臼蓋縁骨移植を併
用し、人工股関節置換術を施行した。右
下肢は約3cm脚延長され、歩容歩行障
害とも著しく改善した。
SCステム Polished CDH使用例
14
IV 手術手技
1.皮切
皮切は、大転子を中心とした通常の外側縦切開で約
12cmを標準とする。皮切の前後の位置決めは非常
に重要である。前方寄りになると大腿筋膜の展開時に
後方の筋膜が緊張して大腿骨の後方移動が不十分に
なり、大腿骨側の操作に支障をきたす。一方、後方すぎ
ると近位部において大殿筋線維の一部を横切するか、
筋肉の線維方向、すなわち後方へ展開が偏りすぎるこ
とになる。なお、切開長を短縮する場合は、前下方から
後上方への斜切開とする
(図1)。
大腿筋膜を切開し、initial retractorを設置して創を
開大する。
大腿筋膜張筋
中殿筋
通常、大転子先端はわずかだが二頂性の形状をしてお
り、この二頂性の中央を触診で確認し、この中央を通
るように中殿筋を約2cm、外側広筋を約5cm各々前
後縁のほぼ中央で線維方向に切開する。中殿筋を切
開すると、小殿筋との間に脂肪組織が現れる。小殿筋
の走行を確認するが、
この時点では切開を加えない。
中殿筋については大転子直上部分にのみ電気メスで
縦切開を加えるのみで、近位部は鈍的に、自然に分離
することができる。
15
大殿筋
図1. 皮切位置
2.大転子の前方骨切り
大転子先端の二頂性の中央を起点として、その幅の
ほぼ中央を通るように骨切りラインを設定する。設定
した骨切りラインの延長で外側広筋を縦切開し、骨膜
下に前方を剥離して大腿骨前面を確認し、幅広ノミを
大転子骨切りラインにあて、大腿骨前面の延長線に向
かって骨切りを行う
(図2)。
大転子前方骨片の厚さは1cm程度を目標とすれば、
実際には7∼8mmとなり適度な厚さとなる。骨切りは
最後まで行わずに少し手前でノミをこじることにより、
骨切り面を不整にして段差を作っておいた方が、最後
に骨片を整復固定する時に安定した確実な固定を行
うことができる
(図3)。
図2. 大転子の前方骨切り
骨切り部
図3. 大転子前方の骨切り位置
16
3.頸部前面の剥離
骨切り後は大腿骨頸部からcalcar部を骨に接して剥
離する。中殿筋には切り込むことなく、その下の脂肪
組織、小殿筋を上方に圧排しながら、できるだけ関節
包のみを下からのぞきこむようにしながら縦切開す
る。calcar部分は小転子に向かって剥離し、腸骨大腿
靱帯の付着部を剥がすことにより、指で小転子が確認
できる
(図4)。
坐骨大腿靱帯
腸骨大腿靱帯
恥骨大腿靱帯
骨切り部
図4. 頸部前面の剥離
4.骨頭の摘出
下肢を軽度屈曲、外旋、内転しながら骨頭を外方へ引
き出すことで脱臼させることができる。通常脱臼は容
易であるが、
RAの中心性脱臼等で困難な場合、外旋
強制による骨折を防ぐために、頸部に単鋭鉤をかけて
補助すれば安全である。
頸部の骨切りを術前計画の予定線近くで行い、骨頭を
摘出する。頸部が残りすぎると臼蓋後方の展開が少し
悪くなることがある
(図5)。
図5. 骨頭の摘出
17
5.ピンレトラクターの設置
上前腸骨棘
展開した股臼に、前方の関節包、中殿筋の前半部を前
上方にretractするようにピンレトラクターを打ち込
むが、
この位置が非常に重要である。右股関節の場合
は1時半方向、左股関節の場合は10時半方向で、上
前腸骨棘方向に向けて打ち込む。ピンレトラクターを
やや遠位方向に傾斜させて打ち込むことにより、水平
開創鉤を安定させることができる
(図6)。
図6. ピンレトラクターの設置
6.水平開創鉤の設置
大腿骨の屈曲と回旋を調節して最も展開が良い肢
位を決定する。通常、
20∼30度屈曲軽度外旋位が
良い。ピンレトラクターの基部と大腿骨頸部切断面に
水平開創鉤をかけて、上下よりもむしろ前後に開く
ように開大し、大腿骨を後方に圧排する。開大が不十
分であれば腸腰筋腱の奥の臼蓋下方関節包、高位
亜脱臼であれば恥骨大腿靱帯をそれぞれ切離する。
再度水平開創鉤を開大するが、それでも展開が不十
分であれば一旦水平開創鉤をはずし、臼蓋と頸部後方
との間の関節包、及び坐骨大腿靱帯を切離する。頸部
の短縮や外旋拘縮がない場合、通常この操作は必要
ではない(図7)。
図7. 水平開創鉤の設置
18
7.臼蓋の展開
前方の股臼縁を確認し、骨に接してホーマン鉤を挿入
して、前方の視野を確保する。ホーマン鉤はinitial
retractorに固定し、self-retainingとする。
下方関節包と腸腰筋腱の間の間隙を消息子で確認
し、臼底レトラクターの先端を閉鎖孔に挿入する。臼
底レトラクターにて、下方に軟部組織を圧排すること
により、腸腰筋腱は容易に圧排され、下方の視野が大
きく改善する。その結果、視野の確保のため、新たに軟
部組織の解離を行う必要はなくなる。臼底レトラクタ
ーも同様にself-retainingとする。
残存する下方関節包及び臼底軟部組織を切除し、必
要なら水平開創鉤を再度開大して術野の展開が終了
する
(図8)。
図8. 臼蓋の展開
19
8.臼蓋のリーミング
臼蓋の病態を観察した後、
リーミングを行う。その際、
骨盤の後傾と臼蓋の前開きを意識したオリエンテーシ
ョンを行うことが重要である。前壁が欠損気味の場合、
亜脱臼性股関節症等で臼蓋前方の形成不全が強い場
合、
リーミングの方向は後方よりに行う。高齢者で著し
い骨粗鬆症があり、坐骨や腸骨後方の海綿骨が指で
容易に刺入できるほど脆弱である場合は、摘出した骨
頭より多数の骨片を作成し同部にパッキングする。リ
ーミングは小径リーマより開始し、順次リーマサイズ
を大きくしていく
(図9)。
図9. 臼蓋のリーミング
9.カップ・サイズの確認
カップトライアルにて設置位置を確認し、臼蓋前壁の
被覆が十分であること、後壁や坐骨部分の張り出しが
過剰でないことを確認し、カップ・サイズを決定する。
その際、ステムを挿入したことを想定して股関節伸展
位でネック・カップ・インピンジメントが後方で生じない
かを意識して決定することが重要である
(図10)。
図10. カップ・サイズの確認
20
10.カップの設置
セメントの錨着効果を十分に得るために、セメントの
アンカーホールをアンカーホール用ドリルを用いて数
箇所作成する。
骨硬化部には細いアンカーホール用ドリルでアンカー
ホールを作成する
(図11)。
図11. アンカーホールの作成
カップトライアルにて決定したサイズのフランジトラ
イアルをカップトライアルに装着し、
カップホルダーに
て把持したのち、専用のフランジ切断用ハサミを使用
して、
フランジ部分を形成する。
フランジトライアルを装着したカップトライアルを
臼蓋に挿入してカップ設置位置の最終確認を行う
(図12)。
フランジトライアルをカップホルダーから取り外し、
決定したサイズのカップに重ねてフランジ押さえプレ
ートにて把持した後、専用のフランジ切断用ハサミを
使用してフランジ部分を形成する。
図12. カップ設置位置の確認
21
過酸化水素水、
ガーゼにて十分に止血を行う。その後、
生食にて遊離した海綿骨や凝血槐を十分に洗浄し、除
去する。臼蓋にセメントを挿入し、プレッシャライザー
にてセメントを圧迫した後(図13-1)、
カップホルダー
を用いて、カップを挿入する。カップを挿入する際、
カップ下端のフランジが臼底に接するまでゆっくりと
押し込み、頭側にカップホルダーを持ち上げながら、
カップ押し棒にてカップを挿入することにより、セメン
トを臼蓋内に圧入することができる
(図13-2)。セメン
トが硬化するまでカップ押し棒で圧迫を加え、スパー
テル等でカップからはみ出たセメントを除去し、
カップ
押し棒の先端を90度回転させ、カップを圧迫した状
態で、カップホルダーを抜去する(図13-3)。その
後、セメントの硬化を確認し、カップ押し棒を抜去す
る。
図13-1. セメントの圧迫
図13-2. カップの挿入
CLHOカップ及びCLHPカップ専用器具の詳細
な使用方法については、別途用意されている
「CLHOカップ/CLHPカップ専用器具の使用
方法」を参照して下さい。
図13-3. カップ押し棒による圧迫
22
11.大腿骨髄腔のリーミング
大腿骨を屈曲、外旋して、大腿骨用レバーを用いて
大腿骨頸部骨切り面を露出させる。大転子の頂部から
大腿骨近位骨軸上にかけての海綿骨をフリーラスプ、
リウエル等を使用して取り除き、ストレートリーマーの
挿入口を形成する。小径リーマーよりリーミングを開
始し、髄腔内部の骨に抵抗が感じられるようになるま
でリーミングを繰り返す
(図14)。
注意
ストレートリーマーの3本の目盛り線がステム
サイズ1、
4、
6番に対応します(STDとCDH共
図14. ストレートリーマーによるリーミング
用)。対応するサイズの相当位置がカルカー下
端に一致するまで、ストレートリーマーφ8、
φ9
及びφ10を順に挿入します。更にリーミングが
必要な場合、ストレートリーマーφ11、
φ12、
φ13及びφ14を使用してリーミングを行います。
大腿骨髄腔のリーミング後、大転子リーマーを使用し
て大転子の海綿骨を削ることにより、
ラスピングの際、
ブローチが大 転 子に干 渉することを防ぐことがで
きる(図15)。
12.大腿骨髄腔のラスピング
図15. 大転子リーマーによるリーミング
術前計画にて決定したタイプ(STDタイプもしくは
CDHタイプ)のブローチの1番よりラスピングを開始
する。ブローチをブローチハンドルに取り付け、金属
ハンマーを用いて、予定したサイズまで、順次大きい
サイズのブローチを用いて髄腔の拡大及び形成を
行う
(図16)。
図16. 大腿骨髄腔のラスピング
23
13.ステムトライアルの挿入
ラスピングにより形成された大腿骨髄腔に、必要に
応じて沈み込み防止用の着脱式カラーを装着した
ステムトライアルを挿 入し、ステム・サイズ の 確 認
を行う。そ の 後 、ボー ルトライアルを取り付け、仮
整復を行う。整復位での適合性を確認し、適切なネ
ック長を決定する。
ネック長が不適切であれば、ボールトライアルを取
り替え、再度仮整復を行い、適切なネック長を決定
する(図17-1a)
。
図17-1a. ステムトライアルの挿入
図17-1b. ブローチトライアルの挿入
ブローチトライアルを挿 入し、ネックトライアルを
取り付けて仮整復を行うことにより、適切なネック
長の確認を行うことも可能である(図17-1b)
。
このアプローチでは特に伸展外旋位でのインピン
ジと安定性の確認が重要である(図17-2)。
図17-2. ステムトライアルによる仮整復
セメントマントル及び骨頭中心位置(設計上)
注意
単位:mm
骨頭中心位置が異なる
骨頭中心位置は同一
4(STD)
2(CDH)
0.5
0.5
【同サイズのステムを選択した場合】
3.1(STD)
1.8(CDH)
0.9
【1サイズアンダーのステムを選択した場合】
・ セメントマントルは全周で0.5mmと
・ セメントマントルは、
外側では0.9mmと
なります。
・ ブローチトライアルと同じサイズのス
0.5
0.5
1∼1.5(STD)
1∼1.2(CDH)
0.9
なり、
内側では部位により異なります。
・ ブローチトライアルよりも1サイズアン
テムを大腿骨頸部骨切り位置まで挿
ダーのステムを大腿骨頸部骨切り位置
入し、ネックトライアルと同じネック長
まで挿入し、ネックトライアルと同じ
の骨頭ボールを装着した場合、ネック
トライアルと骨頭ボールの骨頭中心
0.5
0.5
0.9
0.9
ネック長の骨頭ボールを装着した場
合、
STDタイプでは4mm、
CDHタイ
プでは2mm、骨頭中心位置が異なる
位置は同一となります。
ことに注意して、
ネック長を決定して下
さい。
同サイズの場合
1サイズアンダーの場合
24
14.髄外ガイドの準備
骨把持器のハンドル部が外側に位置するように大腿
骨近位部へ固定し
(図18-1)、固定クランプを取り付
ける。固定クランプは左右兼用になっており、患側に対
応したマーキングが確認できるように骨把持器に装着
図18-1.
骨把持器の設置
し、可動性を残して仮固定する。
次に、シャフトホルダーが外側に位置するように固定
クランプへ挿入する
(図18-2)。
患側が右側の場合
患側が左側の場合
注意
骨把持器のハンドルを強く締め過ぎないように
して下さい。強く締め過ぎた場合、大腿骨骨折が
生じる可能性があります。固定性が不十分な場
合には軟部組織を噛み込んでいる可能性があり
ますので確認して下さい。
髄腔に適合するサイズの芯出しゲージを患側に対応
したガイドシャフトに取り付け、芯出しゲージとガイド
図18-2. シャフトホルダーの挿入
シャフトをそれぞれ髄腔とシャフトホルダーへ挿入
する。芯出しゲージとガイドシャフトを挿入すること
により、シャフトホルダーは骨軸と平行状態となる
(図18-3)。
仮固定しておいた固定クランプを完全に固定し、ハン
ドルレバーを用いて増し締めを行う。
その後、芯出しゲージ及びガイドシャフトを抜去する。
注意
・ 固定クランプの可動性が無い場合、
シャフトホ
ルダーと骨軸との角度調整は行われません。
可動性があることを確認してから芯出しゲー
ジ及びガイドシャフトを挿入して下さい。
・ シャフトホルダーと骨軸との角度調整を確実に
行うため、ガイドシャフトはシャフトホルダー
よりガイドシャフトが突出するまで挿入して
下さい。
25
図18-3.
芯出しゲージ及び
ガイドシャフトの挿入
ステムホルダーのハンドルがステムネック側に位置す
るようにステムトライアルを把持し
(図19-1)、ガイド
シャフトを取り付ける
(図19-2)。ガイドシャフトをシャ
フトホルダーへ、ステムトライアルを髄腔へそれぞれ
挿 入し、ステム設 置 位 置 及び前 後 捻 の 確 認を行う
(図19-3)。
ステムトライアル挿入時、骨と干渉する場合はフリー
ラスプによる追加掘削、
リウエル等による切除を行う。
注意
ステムホルダーにてステムトライアルを把持する
際は、ステムホルダー先端がステムトライアル・
ショルダー部に設けられた凹部に確実に挿入され
ていることを確認して下さい。
ステムホルダーの挿入が不完全な場合、ステム
トライアルの脱落、
またはステムトライアルが内
外反した状態で髄腔へ挿入される恐れがありま
す。
図19-1.
ステムトライアルの把持
図19-2.
ガイドシャフトの装着
ステムホルダーの抜去方法
ステムホルダーをステムトライアルから取り外
す際は、ハンドルリリース用のフックを押すこと
により、容易に取り外すことができます。
図19-3. ステムトライアル及び
ガイドシャフトの挿入
26
15.骨栓の作製
大腿骨髄腔遠位部の径よりも半分程度の大きさの骨
片を数個目的の位置に集めてから、先端部が平らな
ボーンインパクションロッドで軽く叩くと互いが絡んで
ある程度の固定がなされる。さらに数個の骨片を挿入
し、先端部が丸いボーンインパクションロッドで叩くと
骨片が周囲に押されてパッキングされる。この操作を
数回繰り返すことにより、徐々に強固な固定性が得ら
れる。芯出しゲージによる槌打を行うことにより最終
位置を調整する。
ステムトライアルを挿入し、骨栓の固定性及び位置の
最終確認を行う
(図20)。
図20. 骨栓の作製
27
16.セメント注入及び圧迫
セメント混合中に髄腔の洗浄とガーゼパッキングを繰
り返し、セメント注入直前まで続けることにより、血液
混入のないドライな母床が確保できる。
セメンティングで最も注意すべきことは、粘性が低い
時期にセメント注入を行ってしまうことである。粘性が
低すぎるとプレッシャーがかからず、早期ルースニン
グの最大の原因となる。バキュームミキシングしたセ
メントがグラブにつかない程度まで粘性が高まった
後、大腿骨髄腔遠位部より逆行性にセメントを注入す
る。セメント注入は、できるだけすみやかに行うことが
重要である
(図21)。
大腿骨髄腔近位部へのセメントの圧入にはプレッシャ
ライザーを使用し、高い注入圧を維持する。その際、
プレッシャライザーによる大腿骨頸部骨切り面のシー
図21. セメントの注入
リングが不十分な場合、十分なプレッシャーがかから
ないため注意が必要である。セメントガンのセメント
残量に注意しながら、適切な粘性になるまで加圧を
継続する
(図22)。
注意
・セメントは大腿骨髄腔の遠位より注入します。
セメントに陰圧がかかり、血液が混入すること
を防止するため、
ノズルの先端をセメントから
持ち上げないようにして下さい。
そのためには、セメントをノズル先端から押し出
しながら、セメントガンを手前に引くことが重要
です。
図22. 近位部へのセメントの圧入
28
17.大腿骨ステムの挿入
ステムホルダーによりステムを把持し
(図23-1)
、
ステム
ホルダーにガイドシャフトを取り付け
(図23-2)
、
ガイド
シャフトをシャフトホルダーへ、
ステムを髄腔へそれぞれ
挿入する。ステムの前後捻を調整しながら、calcar部の
セメントを圧迫し、
ステムホルダーに全体重をかけて最後
まで挿入する。セメントのアンカリングは持続的な高い
圧力により達成されるものであり、
ハンマーによる槌打
はぶれを生じる可能性があるため行わない
(図23-3)
。
以上の手技により、術後のX線でいわゆるWhite Out
の像が得られ、
長期の安定した固定が期待できる。
注意
・ステムホルダーにガイドシャフトを取り付ける際
に、ステムとガイドシャフトが接触しないように
注意して下さい。接触することにより、ステム表
面にキズが生じる恐れがあります。
・ステム挿入時、過度にガイドシャフトのみを挿入
しないで下さい。ステムホルダーがガイドシャフ
トから外れて、ステムの挿入が困難になる恐れ
図23-1. ステムの把持
図23-2. ガイドシャフトの装着
があります。
・ステム挿入時、ステムホルダーをハンマーで
槌打しないで下さい。ステムホルダーがステム
に噛み込み、取り外しが困難になったり、ステム
が内外反した状態で髄腔へ挿入される恐れが
あります。
注意
ステム・テーパー部に装着したネックキャップの
先端がステム挿入深さの目安となります。
ネックキャップの先端が大腿骨頸部骨切り位置
に達するまでステムを挿入して下さい。
図23-3. ステムの挿入
29
18.骨頭ボールの嵌合
ステム・テーパー部にボールトライアルを装着して
仮整復を行い、使用する骨頭ボールのネック長を決定
する
(図24)
。
注意
ステム・テーパー部からのボールトライアル取り
外しが困難な際は、ボールインパクターにて
ボールトライアルを叩き上げることにより、容易
に取り外すことができます。
図24. ボールトライアルによる仮整復
ステム・テーパー部の血液の付着、汚れ等を完全に拭
き取るとともに、糸クズ、骨片等あらゆる異物が付着し
ていないことを確認する。
骨頭ボールをステム・テーパー部に回転させながら
装着し、ボールインパクターを用いて2回以上槌打
する。骨頭ボールが完全に嵌合したことを確認する
(図25)。
注意
骨頭ボールは910ボールを使用して下さい。
P
HSボール及びK‐MAXボールは使用できませ
ん。
図25. 骨頭ボールの嵌合
30
19.大転子の整復固定
股関節を整復し
(図26-1)、下肢を内旋して切離した
大転子前方骨片を骨鉗子にて整復固定する
(図26-2)
。
骨切り時に段差をつけておくと安定した固定性が得ら
れる。
この骨片が術後剥離移動することを防ぐポイントとし
ては2点あり、骨片に付着する軟部組織の伸長性の確
認と固定法である。すなわち、骨片の整復固定時に可
動域を確認し、特に外旋及び内転時、骨片に付着して
いる前方の関節包等の伸長性に余裕があるかどうか
確認して、緊張が強すぎる場合は関節包の完全切除、
小殿筋腱性部分のリリースが必要なことがある。中
殿筋前方線維の伸長性は余裕があり、整復の障害に
図26-1. 股関節の整復
なることは少ない。
次に、骨片と大転子にキルシュナー鋼線を刺入し、非
吸 収 性 縫 合 糸を計 3 本 通して強 固に縫 合 する( 図
26-3)。その際、骨片の中枢へのずれを防ぐため前方
から後方へのキルシュナー鋼線の刺入をやや末梢側
に傾ける。また、貫通孔は大転子先端部に寄り過ぎな
いように骨片の末梢よりで皮質骨の比較的厚い部分
に位置するようにする。その理由は、糸で締結すると
きに、中枢よりでは骨が脆弱で締結糸が骨を食い切る
図26-2. 骨鉗子による整復固定
ことがあるからである。
固定糸は、
ダブルループスライディングノットで緊張を
かけ固定する
(図26-4)。
以上の操作により安定した脱臼を生じない再建を行う
ことができる。
図26-3. 縫合糸による縫合
図26-4. 縫合糸による固定
31
20.閉創
大腿筋膜を非吸収糸で縫合する。その際、介助者は下
肢を少し外転位として、術者が筋膜を縫合しやすいよ
うにする。その後、皮下、皮膚と縫合していく
(図27)。
図27. 閉創
32
V後療法
クリニカルパスにのっとり、術翌日起座、
2日目端座位、
3日目車椅子・
トイレ、
4日目から歩行練習を行う。
3週での退院を標準にしているが、術前の
機能障害などの影響で後療法のプログラムと期間は調整する。一連の後療法において、単に免荷を指導するのみではなく、日常生活での立ち坐りや、
トイレ動作での股関節荷重がいかに大きいかを患者に理解させ、これを減少させるためのきめの細かい指導が重要である。
月日
項目
達成目標
治療・薬剤
(点滴・内服)
・処置
・リハビリ
/
入院 手術前日
/
/
手術前のオリエンテーシ
ョンを受け理解する事が
できる。
リハビリテーション
手術前又は手術後にリハ
ビリの診察があります。
場合により眠剤がある
場合があります。
/
手術当日(手術前)手術当日(手術後) 手術後
1日目
体 位 変 換をし
て床ずれ予防
ができる。
/
手術後
2日目
/
手術後
3日目
リハ ビリに 参
加できる。
/
手術後
/
歩 行 器 で 歩く
ことができる。
1本杖で歩くこ
とができる。
抗生剤
当日は持参薬
を中 止して 下
さい。
手 術 後より抗
生剤が開始に
なります。
リハビリ開始
( )
∼
( )
まで ( ベットサイド
でします)
手術前
手術の準備の
ため内服があ
る場 合 も あり
ます。
( )時
リハビリ
平行棒訓練
リハビリ
歩行器訓練
リハビリ
1本杖
抜糸します。
検 査
活動・安静度
特に制限ありません。
ベット上30度
挙上
介助にて横向
き可です。
90度挙上可
歩行器
車椅子
1本杖
90度
30度
( )時より絶食( )時より絶水
食 事
清 潔
食事再開です。
( )食です。
手術前に入浴があります。
爪切りをして下さい。
抜糸するまで入浴できません。清拭( )、
( )曜日 洗髪( )曜日、足浴( )曜日
手術後尿管カ
テーテルが入
ってきます。
排 泄
ベット 上 排 泄
です。
カテーテルを
ぬきます。
車 椅 子 でトイ
レにいけます。
尿
患者様及び
ご家族への
説明
栄養指導
服薬指導
手術の
準備物品
33
持参された薬を
くすり
確認後内服して
下さい。
主治医より手術の説明が
あります。
看護師より、手術の必要
物品の説明
看護師と一緒
に横 向きにな
ります。
弾性ストッキン
手術後、足にフ
グをはきます。 ット ポ ン プ が
ついてきます。
(肺塞栓予防
です)
フットポンプを
外します。
弾性ストッキン
グを取ります。
チューブ、
ドレ
ーン類を抜き
ます。
自分で洗面、
下膳の練習を
します。
横向きの練習
をします。
立 位をとる練
習をします。
手術前までに準備してください 弾性ストッキング
(看護師が準備します。)
前あきの寝衣 バスタオル3枚 タオル3枚 オムツシート2枚 曲がるストローまたは水のみ T字帯2枚
/
手術後
手術後
片側)18∼21日退院
7日目
14日目
両側)25∼28日退院
退院基準
【参考文献】
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