抑うつ傾向における人間係の有薫の影響について

別 所:抑
うつ 傾 向 にお け る 人 間 関係 の 有 無 の 影響 に つ い て
抑 うつ 傾 向 にお け る人 間 関係 の 有 無 の影 響 につ い て
大学生 を対象 とした実証 的研 究
別
所
崇*
Aboutinfluenceofhavinghumanrelationsornotinthetendencytodepression
:Asubstantialstudyfortheuniversitystudent
TakashiBessho
本 研 究 は 、 大 学 生 の抑 うつ 傾 向 を 、 人 間 関 係 の 有 無 とい う観 点 か ら検 証 しよ う と試 み た もの で あ る。
大 学 生 は 、 今 まで とは 違 っ た 環 境 の 変 化 に 、大 学 生 活 と プ ラ イベ ー トの生 活 両 面 で 対 応 して い か な け れ
ば な らず 、 そ うい っ た 中 で の 人 間 関 係 が 、抑 うつ 感 に 影 響 を及 ぼ して い る ので は な い か とい う こ とが 考
え ら れ た。 そ こで 、 本研 究 で は 、 人 間関 係 の有 無 が 、抑 うつ 感 に影 響 を与 え、 周 囲 に支 え る 人 が い る と、
抑 うつ 傾 向 が低 くな る の で は な い か とい う 、基 本 的 な 仮 説 を た て 、 そ れ を検 証 す る た め に 、 質 問 紙 を作
成 し、大 学 生 を対 象 と して、 抑 うつ 感 を測 定 した。
そ の 結 果 、 大 学 生 の 一 人 暮 ら しが 、抑 うつ 感 に 影 響 を与 え て い るで あ ろ う こ とが 示 唆 され た 。 また 、
い くつ か の 先 行研 究 と同 様 に、 女 子 に抑 うつ 傾 向 の 高 い こ とが 明 らか に な っ た。 しか し、 ク ラブ ・サ ー
ク ル活 動 の 有 無 や ア ルバ イ トの 有 無 と い っ た 、 人 間 関 係 を持 つ 環 境 の 有 無 が 、抑 う つ 感 に 影響 を及 ぼ す
で あ ろ う との仮 説 は検 証 さ れ な か っ た。
一方
、 本研 究 か ら うか が えた 、 大 学 生 の 人 間 関 係 にお け る諸 問題 に 関 し、今 後 大 学 とい う フ ィー ル ド
に お い て も、 教 員 の み な らず 大 学 組 織 全 体 を含 め た 、 コ ミュ ニ テ ィ心 理 学 的 観 点 か ら の 対 策 が 望 ま れ
る。
1.問
題 と 目的
こ こ数 年 、 い わ ゆ る ス チ ュ ー デ ン ト ・ア パ シー と呼 ば れ る無 気 力 状 態 や 無 関 心 、 留 年 や 休 学 ・
退 学 、 不 登 校 や引 きこ も り、 とい っ た大 学 生 活 へ の 不 適 応 を引 き起 こす 学 生 が 大 き な問 題 とな っ
て い る。 大 学 生 、特 に新 入 学 生 に お い て は 、 今 まで とは違 っ た環 境 に置 か れ 、 講 義 の 選 択 、大 学
独 特 の 仕 組 み の 把 握 、課 題 や レポ ー トの提 出 や 学期 末 試験 、単 位 の習 得 状 況 の確 認 な ど とい っ た 、
た くさ ん の立 ち は だ か る壁 に対 応 しな が ら、 一 方 で は プ ラ イ ベ ー トの生 活 を こ な し、 学 校 や社 会
平 成20年9月26日
受 理*奈
良大 学 地域 連携 教 育研 究 セ ン タ ー外 部研 究員
一111一
奈良大学大学院研究年報
第14号(2009年)
の 中 で の 人 間 関 係 の ス キ ル を身 につ け る こ とが 、 必 要 と さ れ る とい う状 況 は 、大 きな 困 難 を伴 う
もの で あ り、 ま さ に生 きて い く力 が 試 され る 時期 とい え よ う。 そ の よ うな 中 で 、学 業 や 人 間 関 係
の 、 ち ょ っ と したつ まず き を契 機 に、 授 業 を休 む よ う に な り、 急 激 に勉 学 へ の意 欲 を喪 失 し、 留
年 や 不 登 校 、 さ ら に は休 学 ・退 学 に至 る学 生 が少 な くない 。 文 部 省(1999)の
「大 学 にお け る学
生 生 活 の 充 実 に関 す る調 査 研 究 協 力 者 会 議 」 に お い て 、香 川 大 学 の小 柳 晴 生 氏 が 報 告 した と こ ろ
に よる と、 大 学 生 の 不 登 校 の タ イ プ に は、 対 人 恐 怖 を伴 う不 登 校 と、 抑 うつ を伴 う不 登 校 の2タ
イ プが あ り、 後 者 は さ らに、 「真 面 目で 、 勤 勉 で 、 あ ら ゆ る こ と を完 全 に こ な そ う と して息 切 れ
す る 」 疲 弊 型 と、 逃 避 型 、 そ して 「大 学 に入 学 した が 、 空 気 が 抜 け た よ う に通 学 の意 欲 が な くな
る」 ア パ シー 型 に分 け られ る と して い る 。
文 部科 学 省(2008)の
学 率 は、 男 子56.5%、
「平 成20年 度 学 校 基 本 調 査 速 報 」 に よ る と、 平 成20年 度 の 大 学 ・短 大 進
女 子54.1%、
合 計55.3%で
過 去 最 高 に な っ た 。 しか し、一 方 で2007年5月
20日 付 け の 読 売 新 聞 に よ る と、 全 国 の 私 立 大 学 で1年
間 に途 中退 学 した 学 生 が 約5万5千
人に
もの ぼ る こ とが 、 日本 私 立 学 校 振 興 ・共 済 事 業 団私 学 経 営 相 談 セ ン ター の 「2005年度 学 校 法 人基
礎 調 査 」 の 結 果 に よ って 明 らか に な っ た と伝 え て い る 。 そ れ に よ る と、 中 退 者 数 は、 全 在 籍 学 生
の約3%に
あ た り、 学 年 別 で は4年 生 が 最 多 で 、 性 別 で は男 子 が70%を
進 路 変 更21%、
経 済 的 困 窮19%に 次 ぎ、就 学 意 欲低 下 が14%と
占 め て い る。 理 由 で は 、
な って い る 。
この就 学 意 欲 低 下 とい う点 に関 して は、 自 らの意 思 で は な く、 周 りに影響 され て 進 学 した、 希
望 の 学 校 ・学 部 で は なか っ た、 大 学 や 人 間 関 係 に な じめ な い 、 な ど様 々 な要 因 が 考 え ら れ る が 、
大 学 生 活 に お け る 精神 的 な疲 労 とい っ た原 因 も、 多 く含 まれ て い る こ とは 、 もち ろ ん で あ ろ う。
この よ うな 、 精 神 的 な 疲 労 を訴 え 、 抑 うつ 感 を感 じる学 生 が増 加 して い る背 景 に は 、15歳 ∼24
歳 の年 齢 層 で 、男 性 で 約50%、
生 労 働 省,2000)と
地(2006)に
女 性 で は60%強 が 、 日常 生 活 に お い て ス トレス を感 じて い る(厚
い った 、 ス トレス社 会 と言 わ れ る 現代 の社 会 状 況 が 考 え られ る。 また 、 苫 米
よる と、 大 学 生 活 で の 学 業 ・進 路 ・人 間 関係 ・生 活 とい っ た部 分 で の不 安 か ら、 精
神 的 な 問 題 に発 展 して い く学 生 が 増 加 して い る と し、 そ れ を苫 米 地 は 、 「悩 め な い こ と」 と 「抑
うつ 感 」 とい うキ ー ワ ー ドで 表 して い る。
本 学 に お い て も、 こ うい っ た精 神 的 な不 安 定 さ を抱 え て い る学 生 の心 の ケ ア を行 うた め に、 学
生 相 談 室 が 設 置 され て お り、奈 良 大 学 学 生 相 談室(2007)に
の 来 室 相 談 利 用 割 合 は1.13%で
よ る と、2007年4月
∼12月 の 、学 生
あ り、 性 別 で は 男 子 が 、 学 年 別 で は3回 生 が 多 くを 占 め て い る。
ま た 、初 回 面接 時 の 主 訴 で は 、心 理 的 症 状 が40.0%と
最 多 で 、 次 い で 対 人 関 係22.5%、
進路学業
20.0%と な っ て い る。 しか しなが ら、 自発 的 な 来 談 者 数 は 、 来 談者 の うち の 半 数 を 占め て は い る
もの の 、 潜 在 的 な ケ ア を要 す る学 生 へ の ア プ ロ ー チ は 、 ま だ ま だ途 上 と言 わ ざ る を得 な い で あ ろ
う。 なお 、 苫 米 地(2006)の
調 査 に よ る と、 あ る 大 学 にお け る学 生 相 談 に来 談 す る学 生 の 、心 理
的 な 訴 え と して 最 多 なの は 抑 うつ 感 で 、 来 談 学 生 の30%に
大 学 生 の抑 うつ 感 に関 して、 上 田(2002)は
見 ら れ てい る。
、 大 学 の 相 談 室 に、 「気 分 が 落 ち込 む」 や 「意 欲
が わ か な い 」 とい って 、 自 ら抑 うつ 感 を訴 え て 来談 す る 学 生 が 増 加 して い る と し、 そ の 原 因 と し
て 、急 速 な ユ ニ バ ー サ ル 化 の 進 む 大 学 にお い て 、多 様 な 学 生 が 在 籍 す る 時代 にな っ た こ と(多 様
化)と
、 学 生 同 士 の 共 同 体 意 識 が 薄 れ 、 直 接 的 な 人 との コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンに 苦 手 意 識 を持 つ 学
一112-一
別 所:抑
うつ傾 向 にお け る人 間 関 係 の 有 無 の影 響 につ い て
生 が多 くな っ た こ と(対 人 関係 の 希 薄 化)の2つ
を挙 げ てい る。 ま た、 高倉 ら(1995)は
、大 学
生 を対 象 と した 調 査 で 、 対 人 関 係 や 住 環 境 な どに お い て 、 生 活 満 足 度 が 高 くな る に したが い 、 抑
うつ度 が 低 くな る こ と を明 らか に して い る 。
日常 生 活 の 中 で 、 気 分 が 落 ち込 ん だ り、 食 欲 が低 下 した り、 疲 れや す くな っ た りと い う、抑 う
つ感 を感 じる こ と は、 よ くあ る こ とで あ る。 坂 本 ら(2005a)は
、 こ う した抑 うつ とい う用 語 は、
次 の3つ の 意 味 で使 わ れ る と して い る。1つ は気 分 と して の 「抑 うつ 気 分」、2つ 目は抑 うつ症 状
の ま と ま り と し て の 「抑 うつ 症 候 群 」、3つ 目が 疾 病 単 位 と して の 「うつ 病 」 で あ る 。 ア メ リカ
精 神 医学 会 のDSM-IV。TRに
よ れ ば 、① ほ とん ど1日 中 抑 うつ気 分 が あ る 。② ほ とん どす べ て の
活 動 の興 味 や喜 び の 著 名 な減 退 の い ず れ か を含 み 、1)抑 うつ 気 分 、2)興 味 や喜 び の 著 名 な減 退 、
3)著
しい 体 重 の 減 少(増
加)、4)不
眠 あ る い は 睡 眠 過 多 、5)精
易 疲 労 性 、 気 力 減 退 、7)無 価 値 感 、罪 責 感 、8)思
慮 、 自殺 企 図 の9つ
考 力 ・集 中力 の減 退 、決 断 困 難 、9)希
の 主 要 な症 状 の う ち、5つ 以 上 が2週
病 エ ピ ソー ド』 の 診 断 基 準 と して い る。 荒 井(2005)に
口 の3%∼8%で
神 運 動 抑 制 あ る い は焦 燥 、6)
死念
間 以 上 存 在 して い る場 合 を、f大 うつ
よ る と、 国 内で の うつ 病 の 有 病 率 は 、 人
、 更 年 期 や 妊 娠 出 産 後 な どの 要 因 も あ り、2:1で
女性 が 多 い と して い る 。 こ
こ に挙 げ られ た 、 うつ 病 の 有 病 率 を考 え る と、 そ れ よ り軽 症 の 「抑 うつ 気 分 」 を感 じる 人 は 、 さ
らに 多 い で あ ろ う こ とが 容易 に想 像 で きる 。
こ うい った 、 うつ 病 や 抑 うつ 度 の 評 価 尺 度 に は 、 医 師 や 臨 床 心 理 士 な どが 、 面 接 中 に ク ラ イ ア
ン トか ら得 た情 報 に基 づ い て評 価 をす る もの と、 被 験 者 自身 が 回答 す る 質 問紙 と に分 け られ る。
前 者 の 代 表 例 と して は 、Hamiltonう
HAM-D)が
つ 病 評 価 尺 度(HamiltonRatingScaleforDepression;
、 最 も使 用 頻 度 の 高 い もの で あ る。 後 者 に つ い て は、Beckに
よ るBDI』(Beck
DepressionInventory一 皿)や 、ZungのSDS(Self-ratingDepressionScale)、Aiktinの
グ尺 度(VisualAnalogueScale)な
視覚 アナロ
どが あ る 。
これ まで 明 らか に され て きた、 抑 うつ の心 理 的要 因 と して、 伊 藤 ら(2005)は
、 完 全 主 義 、執
着 性 格 、非 機 能 的 態 度 、 メ ラ ン コ リ ー親 和 型 性 格 な どの先 行 研 究 を挙 げ てい る。一 方 、近 年 で は、
抑 うつ へ の 様 々 な 分 野 か ら の ア プ ロ ー チ も多 く見 られ 、 坂 本(2005b)は
ら、 自己注 目 と抑 うつ との 関 係 を研 究 して お り、杉 山(2005)は
、社会的認知 の視点 か
、 対 人 関係 ア プ ロー チ の 観 点 か
ら、 「抑 うつ 傾 向 者 の 持 つ対 人 関 係 の特 徴 が 社 会 的 な 相 互 作 用 の 中 で対 人領 域 の ス トレス や サ ポ
ー トに 乏 しい社 会 環 境 を生 み 、 抑 うつ 傾 向が 長 期 化 ・深 刻 化 して い る こ とが 実 証 的 に検 討 さ れ て
い る。」 と し、 被 受 容 感 と被 拒 絶 感 と い っ た 対 人 関 係 の 問 題 が 抑 うつ に与 え る 影 響 に つ い て の 、
実 証 的 な研 究 を行 って い る 。
また 、抑 うつ の 性 差 に関 して は、 菅 原(2005)が
、 母 親 の 抑 うつ を子供 の発 達 に 関 わ る もの と
して 、妊 娠 ・出 産 ・子 育 て とい っ た、 女 性 の ラ イ フサ イ クル の 中 で の 、抑 うつ に つ い て研 究 して
い る 。 先 行 研 究 の 中 で は、 林(1988)が
207名 に 、BDI(BeckDepressionInventory)を
、 大 学 生 男 子108名 、大 学 生 女子 と短期 大 学 生 女 子 、 計
使 用 して、 抑 うつ度 を測 定 した とこ ろ 、 女 子 学
生 の 方 に 、 高 い 抑 うつ 傾 向 が み られ る こ と を示 し、 青 木 ら(1997)は
SDS(Self-ratingDepressionScale)に
、 女 子 大 生411名 に対 し、
よ り、 抑 うつ度 を測 定 した結 果 、抑 うつ 状 態 が や や 高 い
一113一
奈 良大 学 大 学 院研 究 年 報
傾 向 を示 して い る こ と を 明 らか に した。BDI-llを
首 都 圏 の複 数 の 大 学 生579名(男
第14号(2009年)
使 用 し た最 近 の研 究 で は 、 神 田 ら(2006)が
子234名 、 女 子345名)にBDI』
を実 施 した 結 果 、 女 子 の方 が有
意 に平 均 値 が 高 か っ た こ とを報 告 して い る。
前 述 した よ うに 、大 学 生 は今 まで と は違 った 環 境 の変 化 に 、 大 学 で の 生 活 と プ ラ イベ ー トの生
活 両 方 と もに 、 自 ら対 応 して い か な け れ ば な ら ない 年 代 で あ り、 そ の 中 心 は周 囲 との 人 間 関係 で
あ る。 そ うい っ た 人 間 関係 で の 、 トラ ブル や 葛 藤 の 中 で 、次 第 に疲 労 感 を強 め 、 抑 うつ 感 を高 め
て い って い る の で は な い だ ろ うか 。 そ こで 、 本研 究 で は、 人 間 関係 の 多 寡 が 、 抑 うつ に影 響 を与
え、 周 囲 に支 え る 人が い る と、抑 うつ傾 向 が 低 くな る の で は な い か とい う、 基 本 的 な仮 説 の も と
に、 以 下 の2つ
の仮 説 を た て た。
第 一 仮 説:一 人 暮 ら しの 学 生 は、 抑 うつ 傾 向 が 高 い だ ろ う。
第 二 仮 説:ク
ラ ブ ・サ ー ク ル活 動 や 、 ア ル バ イ トとい っ た 中 で 、対 人 関係 が存 在 す る学 生 は、 抑
うつ 傾 向 が 低 い だ ろ う。
した が って 、 本研 究 の 目的 は、 以 下 の 方 法 を用 い て、 上 述 の仮 説 を検 証 す る こ とで あ る 。
皿.方
1.対
象
本 調 査 に 参 加 し た の は 、N大
子=149名
学 で 授 業 を 受 講 し て い る 大 学 生427名(男
〈34.9%〉 、 未 記 入=2名
〈36.1%〉 、26-29歳=1名
2.尺
法
〈0.5%〉 、 年 齢19歳
〈0.2%〉 、30歳 以 上=4名
以 下=267名
子=276名
〈64.6%〉 、 女
〈62.5%〉 、20-25歳=154名
〈0.9%〉 、 不 明=1名
〈0.2%〉)で
ある。
度 の概 要
本研 究 を実 施 す る際 に、 対 象 とな る大 学 生 の抑 うつ 感 を測 る た め 、以 下 の尺 度 を利 用 して 質 問
紙(BDI-llNu版)を
作 成 した。(Figure.1参 照)
質 問 紙 には 、Beck,A.T.ら(1961,1979)に
Inventory-H)を
Beckら(1996)が
よ っ て 作 成 され たBDI-ll(BeckDepression
利 用 した。BDIは 、 抑 うつ状 態 の重 症 度 を測 定 す るた め の 尺 度 で 、 本 研 究 で は、
改 訂 したBDI-Hの
日本 語 版(全21項
筆 者 を含 む臨 床 心 理 学 専 攻 の大 学 院生2名
択 し使 用 した 。 回 答 は、 設 問1∼10は
目)か
ら、 臨 床 心 理 学 が専 門 の教 授 と、
とで 、 使 用 す る項 目に つ い て検 討 を行 い 、12項 目 を選
、 「わ た し は今 ま で の 人 生 で 普 通 の 人 よ り失 敗 が 多 か っ た
と思 う。」(設 問1〈 過 去 の 失 敗 〉)の よ う に 、 各 項 目 を一 文 表 記 の 形 式 に改 め 、 そ れ に対 して 、
「全 くそ う思 わ な い 」 ・ 「そ う思 わ な い 」 ・ 「そ う思 う」 ・ 「全 くそ う思 う」 の4件
も ら い 、 「全 くそ う思 わ な い 」 を0点
、 「全 くそ う思 う」 を3点
法 で答 え て
と して採 点 した。 ま た 、 設 問ll
〈睡 眠 習慣 〉 と設 問12〈 食 欲 の 変 化 〉に つ い て は、 本 来 の7件 法 を、 答 えや す くす る た め5件
一ll4一
法
別所:抑
うつ 傾 向 に お け る 人 間 関係 の 有 無 の 影 響 につ い て
に 変 え て 使 用 し 、 以 下 の よ う に 採 点 し た 。 し た が っ て 、 こ の 質 問 紙(BDI-llNu版)に
おいて
は 、 得 点 が 高 い ほ ど 、 抑 うつ 度 が 高 い と い う こ と を 表 し て い る 。
〈設 問11>
・ 「以 前 と変 わ りは な い」 を0点
・ 「以前 よ り少 し睡 眠 時 間が 長 い(短 い)」 を1点
・ 「以 前 よ りか な り睡 眠 時 間が 長 い(短 い)」 を2点
・ 「ほ とん ど一 日 中寝 て い る と きが あ る」、 「早 く 目覚 め て再 び 眠 れ ない と きが あ る」 を3点
〈設 問12>
・ 「以 前 と変 わ らな い」 を0点
・ 「以 前 よ り少 し食 欲 が 増 え た(落 ち た)」 を1点
・ 「以 前 よ りか な り食 欲 が 増 え た(落 ち た)」 を2点
・ 「ま った く食 欲 が な い」、 「いつ も何 か 食 べ た くて た ま らな い 」 を3点
3.手
続き
上 記 のBDI』Nu版
と、年 齢 ・性 別 ・学 科 ・ク ラ ブや サ ー ク ル活 動 の 有 無 ・ア ル バ イ トの有
無 ・住 まい の 状 況(一
人 暮 ら しか 、 家 族 と同 居 か)な
ど、対 象 の 基 本 情 報 を問 う フ ェ イス シ ー ト
を、 主 に大 学1、2年
生 が 受 講 す る、5つ の 講 義 の 授 業 中 の教 室 で 受 講者 に配 布 し、 回答 を求 め 、
回 答 終 了 後 回収 した 。 検 査 にか か った 所 要 時 間 は、 約10分 で あ っ た。 実 施 時期 は 、2005年11月 か
ら12月 にか け て で あ っ た 。
皿.結
1.信
果
頼性
今 回 使 用 し たBDI-llNu版
の 信 頼 性 係 数 を 算 出 し た と こ ろ 、 α=0.801で
あ り、 信 頼 性 は 証 明
さ れ た。
2.得
点 分 布 お よ び 各 項 目 の 平 均 値 と標 準 偏 差
集 計 し た 回 答 の 得 点 分 布 は 、0点
∼36点(Mean:16.23点
あ っ た 。 次 に 、 各 項 目の 平 均 値(Mean)と
標 準 偏 差(SD)は
一ll5一
、SD:6.15、Median:16.00点)で
、 以 下 の 通 りで あ っ た。
奈良大学大学 院研究年報
Table。1各
股 間 の 平 均 値(Mean)と
設問
3.デ
第14号(2009年)
標 準 偏 差(SD)
Mean
SD
1
1.59
0,855
2
1.21
0,885
3
1.52
0,898
4
1.39
0,894
5
1.31
1,063
6
1.43
0,903
7
1.24
0,929
8
1.34
0,869
9
1.56
0,914
10
1.90
0,905
11
0.95
0,921
12
0.76
0,902
全体
1.36
0,511
ー タ の分 析
まず 、BDI』Nu版
の 設 問 に つ い て 、 因 子 分析 を行 な っ た。 主 成 分 分 析 に よ り因子 を抽 出 し、
バ リマ ッ クス 法 に よる 回転 を実 施 した とこ ろ 、以 下 の4つ
与 率 は 、59.103%で
あ っ た。(Table.2参 照)
Table.2因
設問
子分析結果
成分
Fact1
Fact2
。
.142
Fact3
.721
2
.717
.331
一.032
一,007
7
.633
.309
一,127
.124
3
.567
.392
10
.084
.722
.013
.205
9
.199
.7羽
.176
.110
4
.475
.535
.236
8
.394
.485
.251
.086
.844
.131
.214
。582
.000
.097
.821
.036
.668
一,078
6
.341
11
.176
12
.013
一,026
.362
.221
Fact4
1
5
1)第1因
の 因 子 が 抽 出 さ れ た。4因 子 の 累積 寄
.298
.187
.092
.059
一,150
子 は、 「人 生 の 中 で普 通 の 人 よ り失 敗 が 多 か っ た」 ・ 「物 事 を楽 しめ ない 」 ・ 「他 人
や物 事 に対 す る 関心 が 薄 くな っ た」 ・ 「自分 自身 に対 して 自信 をな く して い る」 とい う項 目か
ら、 『無 気 力 」 と名 付 け た 。
一116-一
別所:抑
2)第2因
うつ傾 向 に お け る 人 間 関係 の 有 無 の 影 響 につ い て
子 は、 「疲 れ や す い」 ・ 「集 中 で きな くな っ た」 ・ 「気 が 滅 入 っ てい る」 ・ 「決 断 す
るの が 難 し くな っ た」 とい う項 目か ら、 『バ ー ンア ウ ト的 状 態 』 と名 付 けた 。
3)第3因
子 は、 「
涙 もろ くな った」 ・ 「落 ち 着 きが な く緊 張 しやす い」 とい う項 目か ら、 『気 分
不 安 定 」 と名付 け た。
4)第4因
子 は。 「睡 眠 の 変化 」 ・ 「食欲 の 変化 」 とい う項 目か ら、 『生活 習慣 の変 化 』 と名 付 け
た。
次 に 、BDI-ll
(Table.3参
Nu版
の 回 答 の 男 女 差 を 見 る た め 、 各 設 問 の 男 女 別 平 均 値 を算 出 し た 。
照)
Table.3各
設問
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
全体
設 問 の 男 女 別 平 均 値(Mean)
性別
N
Mean
女子
148
1.58
男子
274
1.60
女子
148
1.18
男子
274
1.23
女子
148
1.73
男子
273
1.41
女子
148
1.54
男子
273
132
女子
148
1.66
男子
274
1.13
女子
148
1.42
男子
274
1.44
女子
148
1.22
男子
274
1.25
女子
148
136
男子
274
1.33
女子
148
1.66
男子
273
1.52
女子
148
1.99
男子
273
1.86
女子
148
0.99
男子
274
0.93
女子
149
0.91
男子
274
0ゐ9
女子
146
1.44
男子
270
131
有意確率
n.S.
n.S.
.000
.013
.000
n.S.
n.S.
n.S.
n.S.
n.S.
一117一
n.S.
.013
.012
奈 良 大 学 大 学 院研 究 年 報
そ れ に よる と、12項 目中 、8項 目(お よ び全 体)で
第14号(2009年)
女 子 の 平 均 値 の方 が 高 か っ た。 そ こで 、 各
設 問 を検 定 変 数 、性 別 を グ ル ー プ化 変 数 と したt検定 を実 施 した 。(Table.3参 照)
そ の 結 果 、 以 下 の4つ の 設 問 と全体 に お い て 、 有 意 な差 が み られ た。
・設 問3「
わ た しは 自分 自 身 に対 して 自信 を な く して い る
・設 問4「
わ た しは気 が滅 入 っ て い る
・設 問5「
わ た し は 以 前 よ り涙 も ろ く な っ て い る
・設 問12「 食 欲 の 変 化 」(t(421)=2
・全 体(t(414)=2
。」(t(419)=3.572;p<.㎜)
。」(t(419)=2.483;p<。013)
。」(t(420)=5.009;p<.000)
.482;p<.Ol3)
.514;p<.012)
これ ら4つ の 設 問 は、 いず れ も女 子 の方 の平 均 値 が高 い項 目に 属 して お り、 女 子 学 生 の 自信 が
な く、 無 気 力 で 、気 分 も不 安 定 な状 況 とい った 抑 うつ 感 と 、 そ れ に伴 う食 欲 の 変 化 が 明 らか に な
った 。 この よ う に抑 うつ 感 の性 差 に 関 して は 、 全 体 的 に女 子 の 得 点 の 方 が 高 く、 青 年 期 女 子 にお
け る抑 うつ 感 が 、 男 子 よ り高 い とい う、 先 行研 究 と同 様 の 結 果 とな っ た 。
さ らに 、 因 子 分 析 に よっ て抽 出 され た 、 因子 別 の 得 点 の 平 均 値 を 出 し、 フェ イ ス シ ー トに記 入
され た 、 ク ラ ブ ・サ ー ク ル活 動 の有 無 、 ア ルバ イ トの 有 無 、 住 居 形 態(一
人暮 ら しか 、 家族 と同
居 か)と い っ た 、大 学 生 活 と私 生 活 に お け る 、人 間 関係 の 生 じる場 面 との 比 較 検 討 を行 な う た め、
4つ の 因子 を検 定 変 数 、 ク ラ ブ ・サ ー ク ル活 動 の 有 無 、 ア ル バ イ トの有 無 、住 居 形 態 を グ ル ー プ
化 変 数 と した、t検 定 を実 施 した。(Table.4参 照)
そ の結 果 、 住 居 形 態 にお い て の み 、 第1因
子 『無 気 力 』(t(411)=2.201;p<.028)と
子 『生 活 習 慣 の 変 化 』(t(412)=4.082;p<.000)に
、 第4因
お い て 、有 意 な差 が み られ た 。 そ こで 、 一 人 暮
ら しを して い る と 回答 した 学 生208名 を抽 出 し、外 の 世 界 との接 点 で あ る 、 ク ラ ブ ・サ ー クル 活
動 の 有 無 と ア ルバ イ トの 有 無 が 、 抑 うつ 感 に影 響 して い る か を調 べ る た め 、4つ の 因子 を検 定 変
数 、 ク ラ ブ ・サ ー ク ル 活 動 の 有 無 、 ア ル バ イ トの 有 無 を グ ル ー プ化 変 数 と した 、t検 定 を実 施 し
た 。(Table.5参 照)
そ の結 果 、い ず れ の 因 子 に関 して も、有 意 な差 は み られ な か っ た 。 しか し、第1因 子T無 気 力 』
と第4因
子 『生 活 習 慣 の変 化 」 に お い て 、 ク ラ ブ ・サ ー クル 活 動 を して い な い人 の 方 が 、 若 干 平
均 値 が 高 か っ た。
ま た、一 人暮 ら し を して い る学 生 の抑 うつ 感 が 、年 齢 に よっ て影 響 す る か ど うか を調 べ る た め 、
4つ の 因 子 を検 定 変 数 、 年 齢 を グ ル ■
一..プ
化 変 数 と した、t検 定 を行 な っ た 。 な お 、30歳 以 上 の4名
は、 数 が 少 ない ため 検 定 対 象 よ り除 い た。(Table .6参照)
そ の 結 果 、 いず れ の 因子 に 関 して も、有 意 な差 は み られ な か った 。 しか し、第1因 子 『無 気 力 』
に お い て 、20歳 代 の方 に 、第2因 子 『バ ー ンア ウ ト的状 態 」 と第3因 子T気 分 不 安 定 』 にお い て 、
10歳 代 の 方 に、 平 均 値 が 高 い 傾 向 が 示 され た。
以 上 の結 果 か ら、 一 人 暮 ら しを して い る学 生 に つ い て 、 「無 気 力 」 や 、 『生 活 習 慣 の 変 化 」 とい
っ た部 分 で 、抑 うつ 度 が 高 い 傾 向 にあ る こ とが 明 らか に な っ た 。 しか しなが ら、 抑 うつ 傾 向 の高
一ll8一
別所:抑
うつ 傾 向 に お け る 人 間 関 係 の 有 無 の 影 響 につ い て
Table.4因
因子/項 目
Fact1
Fact2
Fact3
Fact4
因子/項 目
子 得 点 ご との 平 均 値 と標 準 偏 蓮
一人暮 らし
家族 と同居
1.46
1.32
(O.62)
(0.65)
1.56
1.54
(0.61)
(O.68)
1.40
1.35
(0.78)
(0.77)
1.00
0.72
(0.74)
(0.68)
ク ラ ブ ・サ ー ク ル を
ク ラ ブ ・サ ー ク ル を
して い る
して い な い
FaCt1
Fact2
Fact3
Fact4
因子/項 目
Factl
Fact2
Fact3
Fact4
*上 段 平 均 値(Mean)、()内
1.35
1.46
(0.59)
(O.71)
1.55
1.54
(0.57)
(0.74)
1.41
1.33
(0.75)
(0.81)
0.89
0.83
(0.68)
(O.77)
アル バ イ トを
ア ル バ イ トを
して い る
して い な い
1.44
1.34
(0.68)
(0.59)
1.58
1.51
(0.66)
(0.63)
1.36
1.39
(0.80)
(0.75)
0.87
O.87
(0.74)
(0.70)
標準偏差 。
一119一
有意確率
.028
n.S.
n.S.
.000
有意確率
n.S.
n.S.
n.S.
n.S.
有意確率
n.S.
n.S.
n.S.
n.S.
奈良大学大学院研 究年報
Table.5-一
第14号(2009年)
人 暮 ら し と ク ラ ブ ・サ ー ク ル や ア ル バ イ トの 有 無 と の 関 係
一一人 暮 ら し で
因子/項 目
ク ラ ブ ・サ ー ク ル を ク ラ ブ ・サ ー ク ル を
して い る
して い な い
1.41
1.54
(0.57)
(O.69)
Fact1
Fact2
Fact3
Fact4
1.57
1.54
(0.53)
(0.73)
1.41
1.38
(0.77)
(0.81)
0.99
1.02
(0.70)
(0.80)
有意確 率
n.S.
n.S.
n.S.
n.S.
一 人 暮 ら しで
因子/項 目
アル バ イ トを
アル バ イ トを
して い る
して い な い
Fact1
Fact2
Fact3
Fact4
*上 段 平 均 値(Mean)、()内
Table.6一
因子/項 目
Fact1
Fact2
Fact3
Fact4
*上 段 平 均 値(Mean)、()内
1.51
1.41
(0.68)
(0.56)
1.31
1.51
(0.62)
(0.60)
1.47
1.34
(0.81)
(0.76)
1.05
0.96
(0.80)
(0.67)
有意確率
n.S.
n.S.
n.S.
n.S.
標準偏差 。
人 暮 ら し の 学 生 と年 齢 と の 関 係
10歳 代
20歳 代
1.45
1.48
(0.62)
(0.64)
1.57
1.55
(0.60)
(0.65)
1.42
1.37
(0.75)
(0.86)
1.00
1.01
(0.75)
(O.73)
標準偏差。
一120一
有意確率
n.S.
n.S.
n.S.
n.S.
別 所:抑
うつ 傾 向 にお け る人 間 関 係 の 有 無 の 影 響 につ い て
い 、一 人暮 ら しの 学 生 が 、 ク ラ ブ ・サ ー ク ル活 動 を した り、 アル バ イ トを した りす る こ とが 、抑
うつ度 に影 響 を与 え た り、 学 年 が変 わ る こ とで 、抑 うつ 度 に影 響 が 出 た りす る こ とは検 証 され な
か っ た 。 また 、 全 体 的 に ク ラ ブ ・サ ー クル 活動 や 、 アル バ イ トの 有 無 に よ る、 有 意 差 も検 証 され
なかった。
よっ て 、本研 究 の 第 一 仮 説 は 、部 分 的 に検 証 され た と言 え よ う。 しか し、第 二 仮 説 につ い て は、
全 く検 証 され な か った6
v.考
察
本研 究 で は、 人 間 関係 の 多 寡 が 、 抑 うつ に影 響 を与 え 、周 囲 に支 え る 人 が い る と、 抑 うつ 傾 向
が 低 くな る の で は な い か とい う、 基 本 的 な仮 説 の も と、 様 々 な検 証 を行 な っ て きた が 、 大 学 生 の
一 人 暮 ら しが 、抑 うつ 感 に影 響 を与 え て い るで あ ろ う こ とが 、示 唆 され た 。 同 様 の 結 果 は、 江 尻
ら(1986)が
、 女 子 大 生 を対 象 と した調 査 の 中 で 、 自宅 か ら離 れ 、 寮 や 一 人 暮 ら しを して い る学
生 の方 が 、抑 うつ 度 が 高 い とい う結 果 を示 して お り、女 子 の 一 人 暮 ら し学 生 の 抑 うつ 傾 向 に、 注
目 してお く必 要 が あ る だ ろ う。一 方 、 ク ラブ ・サ ー ク ル 活 動 の 有 無 、 アル バ イ トの 有 無 とい った 、
人 間 関係 を持 つ 環 境 の 有 無 が 、抑 うつ 度 に 影響 す る との仮 説 は 、 検 証 され なか っ た。 こ れ は、 谷
島(2005)の
研 究 結 果 と も符 合 す る と ころ で 、 谷 島 の研 究 に お い て も、 大 学 生 の 抑 う つ傾 向 と、
「サ ー ク ル 活 動 を して い るか 」、 「ア ルバ イ トを して い るか 」 とい っ た質 問 項 目 との 関 係 は、 調 査
全 体 で は 認 め られ なか っ た。
今 回 の 調 査 結 果 に よ り、 親 元 か ら離 れ 、 生 活 の 全 て を 自分 の 責 任 で して い か な け れ ば な らな い
こ との ス トレス は もち ろ ん の こ と、 大 学 入 学 以 前 の 家 族 との 同居 生 活 か ら、 一 人 で の生 活 に移 行
した こ と に よ る 、 人 間 関係 の 変 化 が 、 学 生 の 抑 うつ 感 に大 きな影 響 を及 ぼ して い る とい え るだ ろ
う。 逆 にい え ば 、家 族 や 友 人 の 存 在 が 、 抑 うつ 度 の 変 化 に大 きな比 重 を 占 め て い る とい え るだ ろ
う。 こ れ に つ い て、 西 河 ら(2005)は
、 「ソー シ ャ ル ・サ ポ ー トは抑 うつ の抑 制 要 因 と考 え られ
るが 、 大 学 とい う新 しい 環 境 に移 っ て、 高 校 まで の 友 人 関 係 が そ れ まで の よ うに使 え な くな る こ
と も、 あ る い は家 族 と離 れ て 一 人 暮 ら しをす る こ と も、 大 学 生 に お け る抑 うつ発 生 に関 与 して い
る だ ろ う。」 と述 べ て い る。
大 学 に 来 て も、授 業 を受 け て 帰 る だ け、 ク ラ ブ ・サ ー ク ル に も加 入 せ ず 、 ア ル バ イ トもせ ず 、
家 に 閉 じこ も りが ち に なれ ば、 当然 心 の健 康 は損 な わ れ る で あ ろ う。 特 に 、青 年 期 の 心 理 的 危 機
で あ る 、 自我 同 一 性 の 問 題 と もか らみ あ い、 親 し く話 せ る仲 間 や 、 先 輩 の い な い 中 で 、 一 人 で 悩
み続 け る学 生 の 、 心 の 居 場 所 を大 学 と して も、 設 け て い くこ とが 、 今 後 は さ ら に必 要 と な っ て い
くで あ ろ う。 筆 者 は 、 現 在 小 ・中 学 生 対 象 の適 応 指 導 教 室 や 、 学 校 内別 室(相
学 校(ク
ラ ス ル ー ム)に 行 きに くい(入
談 室)に お い て 、
りに くい)児 童 ・生 徒 の 、 心 の居 場 所作 りの 最 前 線 で 活
動 を させ て い た だ い て い る。 また 、 高校 生 以上 を対 象 と した 、不 登 校 ・高校 中 退 者 サ ポ ー ト校 で
の勤 務 の経 験 もあ り、 小 学 生 か ら成 人 まで の 、 人 間 関係 に傷 つ い た り、 自分探 しを模 索 して い た
り、 とい った 人 々の 援 助 に携 わ って きた 。 そ うい っ た経 験 か ら考 え てみ て も、 本研 究 か ら うか が
え た 、大 学 生 の 人 間関 係 に お け る諸 問 題 を も とに 、大 学 とい う フ ィ ー ル ドにお い て も、 生 身 の 人
一121一
奈 良 大 学 大 学 院研 究 年 報
第14号(2009年)
間関 係 作 り とい うべ きで あ ろ うか 、 他 者 との相 互 交 流 の場 の確 保 に、 今 後 一 層 力 を入 れ て い くこ
とが 必 要 で は な い だ ろ うか 。 本 学 の 学 生 相 談 室 にお け る 、懇 話 室 設 置 の 試 み は、 そ うい っ た居 場
所 作 りの モ デ ル ケ ー ス と して考 え られ る で あ ろ う。
林(2007)が
「小 学 生 や 中 学 生 が 抱 え て い る課 題 が 、大 学 生 にな っ たか ら とい っ て急 に な くな
る はず は な い。 と くに 大 学 全 入 時 代 とい わ れ る今 日、 小 学 校 や 中 学 校 で 浮 か び上 が っ て きた 課 題
は、 その 後 何 年 か後 に は確 実 に大 学 の 学 生 相 談 にお け る支 援 対 象 と して 課 題 と な る とい え る で あ
ろ う。」 と述 べ て い る よ う に 、教 員 の み な らず 入 学 課 ・学 生 課 ・教 務 課 とい っ た大 学組 織 も含 め 、
大 学 全 体 を視 野 に入 れ た 、 コ ミュ ニ テ ィ心 理 学 的観 点 か らの対 策 が 今 後 望 まれ よ う。
一 方 、 本 研 究 に お い て は 、 仮 説 が 部 分 的 に しか 検 証 され て お らず 、 特 に ク ラ ブ ・サ ー ク ル や ア
ルバ イ トとい っ た 中 で の対 人 関 係 が 、 ソ ー シ ャ ルサ ポ ー トと して 、 学 生 の 心 の 健 康 に寄 与 す る で
あ ろ う こ とは、 想 像 に 難 くな い が 、 質 問 紙 の 回答 か らは 、明 らか に な ら なか っ た。 ま た 、一 人暮
ら しの 学 生 と、 家 族 や友 人 との 関 係 性 や 、 抑 うつ を引 き起 こ す要 因 につ い て も、 検 討 して い く必
要 が あ る だ ろ う。 そ うい った 点 を反 映 させ た、 新 た な質 問 紙 の作 成 が 求 め られ る。 さ らに 、今 回
質 問 紙 調 査 を依 頼 した授 業 は、 一 般 教 養 や 各 学 科 の 基 礎 科 目 とい う、1,2回
か っ た た め 、3,4回
生 対 象 の も のが 多
生 に対 す る調 査 は 、 実 施 で きな か っ た 。 しか し、 上 田(2002)が
「大 学 入
学 後 の 将 来 へ 向 け て の 選択 が 近 づ い て くる時 期 に、 進 路 決 定 の葛 藤 を き っか け に抑 うつ 状 態 に 陥
る場 合 が 見 られ る。」 と指 摘 して い る よ う に、 卒 業 ・進 路 決 定 と い っ た 、 大 学 生 か ら社 会 人 へ の
移 行 過 程 に あ る、3,4回
生 を対 象 と した、 抑 う つ傾 向 の 調 査 も行 な って い く こ とが 必 要 で あ ろ
う。 い ず れ も、 今 後 の課 題 と した い 。
参考文献
AmericanPsychiatricAssociation編
高 橋 三 郎 ・大 野 裕 ・染 矢 俊 彦
訳(2002)「DSM-IV-TR精
神疾患 の
分 類 と診 断 の 手 引 」 医 学 書 院
A.T.B㏄k,RA.St㏄r,G.K.Brown著
小 嶋 雅 代 ・古 川 壽 亮
訳 著(2003)「
日本 版BDI-ll手
引 」 日本 文 化 科
学社
YOMIURIONLINE(2007)読
売 新 聞2007年5月20日
青 木 邦 男 ・松 本 耕 二(1997)女
子 大 生 の抑 うつ状 態 とそ れ に 関 連 す る 要 因
荒 井 稔(2005)う
つ 病 の診 断 と治療
上 田裕 美(2002)抑
学校 保 健 研 究39(3),207-220
順 天 堂 医学51,386-391
伊 藤 拓 ・竹 中晃 二 ・上 里 一 郎(2005)抑
上里一
一郎 監 修(1993)「
付記事
うつ の心 理 的要 因 の 共 通 要 素
教 育 心 理 学 研 究53,162-171
心理 ア セ ス メ ン トハ ン ドブ ッ ク第2版 」 西 村 書 店
うつ 感 を訴 え る大 学 生 「
教 育 と医 学 」50(2),428-433慶
慮 大 学 出 版 会/教 育 と医学 の
会
江 尻 美 穂 子 ・高 橋 昭 子(1986)津
神 田 信 彦 ・林 潔(2006)大
田 塾 大 学 新 入 生 の 抑 うつ 症状 調 査
津 田 塾 大 学 紀 要18,117-142
学 生 の 抑 うつ 傾 向 一 自 己 注 目及 び 時 間 的 展 望 との 関 係 一
(2),113。122
厚 生 労 働 省大 臣 官 房統 計 情 報 部(2002)平
成12年 保 健 福祉 動 向 調 査(心 身 の 健 康)
一122一
応 用 心 理 学 研 究31
別 所:抑
坂 本 真 士(2005a)抑
うつ とは
うつ 傾 向 に お け る 人 間 関係 の有 無 の影 響 に つ い て
坂 本 真 士 ・丹 野 義 彦 ・大 野 裕 編 「抑 うつ の 臨 床 心 理 学 」 第1章
東京大学出
版会
坂 本真 士(2005b)抑
うつ と自 己
坂 本 真 士 ・丹 野 義 彦 ・大 野 裕 編 「
抑 うつ の 臨 床 心 理 学 」 第4章
東 京大
学 出版 会
菅 原 ます み(2005)抑
章
う つ と母 子 ・家 族 関 係
坂 本 真 士 ・丹 野 義 彦 ・大 野 裕 編 「抑 うつ の 臨 床 心 理 学 」 第7
東 京 大 学 出版 会
杉 山崇(2005)抑
うつ と対 人 関 係
坂 本 真 士 ・丹 野 義 彦 ・大 野 裕 編 「
抑 うつ の 臨 床 心 理 学 」 第6章
東 京大
学 出版 会
高 倉 実 ・新 屋 信 雄 ・平 良 一 彦(1995)大
学 生 のQualityoflifeと
精 神 的 健 康 につ い て
学 校 保 健 研 究37,
414-422
谷 島 弘 仁(2005)大
学 生 にお け る 大 学 へ の 適 応 に 関 す る 検 討r人 間 科 学 研 究 」 文 教 大 学 人 間科 学 部27,19-
27
苫 米 地 憲 昭(2006)大
学 生:学 生 相 談 か ら見 た最 近 の事 情
奈 良 大 学 学 生 相 談 室(2007)学
臨 床 心 理 学6(2),168-172
生 相 談 室 の取 り組 み と利 用 状 況(2007年
度)奈
良大 学学生相 談室報告 書
14,35-40
西 河 正 行 ・坂 本 真 士(2005)大
床 心 理 学 」 第11章
林 郷 子(2007)学
林 潔(1988)学
坂 本 真 士 ・丹 野義 彦 ・大 野 裕 編 「
抑 うつ の 臨
東 京 大 学 出版 会
校 教 育 相 談 の観 点 か ら学 生 相 談 を考 え る
生 の 抑 うつ 傾 向 の検 討
文 部 科 学 省(2008)平
文 部 省(1999)大
学 にお け る予 防 の 実践 ・研 究
奈 良大 学 学 生 相 談室 報 告 書14,19。23
カ ウ ンセ リ ング研 究20(2),162-169
成20年 度 学 校 基 本 調 査 速報
学 にお け る学 生 生 活 の 充 実 に関 す る調 査 研 究 協 力者 会議
第3回 議 事 要 旨
謝辞
本 論 文 は 、 筆i者が 大 学 院修 士 課 程1年
の お り、 大 学 院 の 臨床 心 理 学 研 究 法 特 論 の 授 業 の一 環 と して 、 同 じ
授 業 を受 講 して い た 、 岡 島 真 一 氏 と と もに 、 質 問 紙 を作 成 し、調 査 を 行 な っ た際 の 、 デ ー タ を も と に執 筆 し
た もの で あ る。 そ の よ うな 機 会 を い た だ い た 、 授 業 担 当 の 千 原 美 重 子 教 授 と、 調 査 の 実 施 とデ ー タの 入 力 を
分 か ち 合 っ た 、 岡 島氏 に 感 謝 い た し ます 。 また 、 質 問 紙 調 査 の た め に 、 貴 重 な授 業 の 時 間 を割 い て 、 調 査 に
ご協 力 い た だ い た 、 教 養 部 武 久 元 教 授 、 国文 学 科 浅 田教 授 、 史学 科 の 青 木 教 授 は じめ 、 史学 科 所 属 の先 生 方 、
社 会 学 部 の 道 明 元 教 授 に も 、合 わせ て 感 謝 い た し ます 。 な お 、 本 論 文 を ま とめ る にあ た り、 心 理 学 科 のHafsi
Med教 授 に 、 ご指 導 をい た だ き ま した。 こ こ に お礼 を 申 し述 べ させ て い た だ きます 。
一123一
奈良大学大学院研 究年報
第14号(2009年)
(付録)
質問
この質 問票 に は12項
目が あ り ます 。
そ れ ぞ れ の 項 目 をひ とつ ひ とつ 注 意 深 く読 み 、 それ ぞ れ の項 目で 、 今 日を含 む この2週 間 の あ
な た の気 持 ち に 最 も近 い もの をひ とつ 選 び 、 選 ん だ番 号 を○ で 囲 ん で くだ さい 。 も し、 ひ とつ の
項 目で 同 じよ う に当 て は ま る もの が い くつ か あ る場 合 は、 数 字 の 大 きい 方 を○ で 囲 ん で くだ さい。
3
3
2
3
2
3
2
3
2
3
2
3
2
3
2
3
2
3
そ う 思 う
2
・ ・
一
一
一
一
一
〇
一
〇
。
一
一
.
2
.
思う ・⋮
●
11.睡 眠 習慣 に つ い て(こ
一
●
●
1
.
●
一
●
た し は 以 前 よ り疲 れ や す く な っ た 。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
1
・
10.わ
●
一
●
●
1
●
●
〇
●
●
た し は 以 前 よ り集 中 で き な く な っ た 。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
1
O
○
9.わ
一
●
た し は 以 前 よ り決 断 す る の が 難 し く な っ た 。 ・ ・ ・ ・ …
1
●
8.わ
一
●
●
●
1
O
●
●
椰
●
た し は 以 前 よ り他 の 人 や 物 事 に 対 す る 関 心 が 薄 く な っ た 。 ・ ●
1
●
7.わ
一
●
1
■
●
一
●
●
1
■
た し は 普 段 よ り落 ち 着 き が な く 、 緊 張 し や す い 。 ・ ・ …
。
●
6.わ
1
●
思わな い ・・
●
■
●
●
●
〇
●
た し は 以 前 よ り涙 も ろ く な っ て い る 。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
一
●
●
5.わ
〇
■
●
一
●
た しは気 が滅 入 っ て い る。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
〇
●
4.わ
一
●
●
〇
■
●
●
〇
●
●
〇
●
た しは 自分 自 身 に対 して 自信 をな く して い る。 ・ ・ ・ …
一
●
3.わ
〇
●
。
〇
●
〇
●
●
口
■
た し は 以 前 ほ ど物 事 を 楽 し め な い 。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
〇
●
2.わ
一
●
〇
●
一
●
〇
た しは今 ま で の 人生 で普 通 の 人 よ り失敗 が 多 か っ た と思 う。
そう思わな い
1.わ
こ2週 間 の こ とで最 も当 て は ま る番 号 に○ を して くだ さい)。
0:以 前 と変 わ り は ない 。
1:以 前 よ り少 し睡 眠 時 間 が長 い(短 い)。
2:以 前 よ りか な り睡 眠 時 間 が長 い(短 い)。
3:ほ
とん ど一 日中寝 て い る と きが あ る。
4:早
く 目が覚 め て再 び眠 れ な い と きが あ る 。
12.食 欲 の変 化 につ い て(こ
こ2週 間 の こ とで 最 も当 て は ま る番 号 に○ を して くだ さい)。
0:以 前 と変 わ りは な い 。
1:以 前 よ り少 し食 欲 が増 え た(落 ち た)。
2:以 前 よ りか な り食 欲 が増 え た(落 ち た)。
3:ま
っ た く食 欲 が な い。
4:い つ も何 か食 べ た くて た ま らない 。
最 後 に 記 入 もれ が な い か ご確 認 をお 願 い します 。
ご協 力 あ りが と う ご ざい ま した 。
Figure.1BDI』Nu版
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