香港セール、トップロットは草間! - エスト・ウェストオークションズ

2016 年 12 月発行号
December 2016
エスト・ウェスト ニュース
Special feature on auction highlights
快調! 2016 年オータムセール速報
香港セール、トップロットは草間! 8 割落札の好結果
来年で香港進出 10 年目を迎えるエスト・ウェスト。回を重
ねるごとに新たな挑戦をして来た香港セール、今季初の試み
として、近代・戦後・現代美術の下見会を、ギャラリーや展
示スペースなどの店舗が連なり、アートに特化したスペース
「ART ONE」を展示会場とした。
この会場は、アートバーゼル香港をはじめとする多くのアー
トイベントが開かれるコンベンションセンターへ続く導線上
にあり、多くの美術関係者の行き交う様子が見られる好立地。
広く外部に開放された会場の設計は、下見会が行われている
事を知らない方でも目に入りやすく、既存のコレクターだけ
でなく、新規の、アートに興味のあるたくさんの方々が足
を止め、初めて知る作家についてスタッフに質問したり、
興味のある作品について話しあったりと様々な光景が見受
けられた。
オークション初日を飾る近代・戦後・現代美術のセールは、
用意していた席がすべて埋まるほどの活況を呈しており、他
ジャンルに先駆けて通常より長く、前の週から下見会を開催
していた事も功を奏した。
会場では香港をはじめとした世界各地からコレクターが集ま
り、また、日本、中華圏、欧米やインド、中東など世界中の
コレクターやギャラリストが電話ビッドやインターネットを
介したライブ・ビッドを利用してオークションに参加した。
セ ー ル は ク リ ス マ ス の 雰 囲 気 が 漂 う 香 港 に 相 応 し く、
A. ウォーホルのシルクスクリーン作品「サンタクロース」
の落札を皮切りに、オークションは順調な滑り出しとなった。
続いて、下見会場で特別な存在感を放っていた L. フォンタ
ナの作品は、出品された 3 ロット全てが落札。銀箔に切り込
みがされた、フォンタナの代表作である「空間概念」は 76
万 7 千香港ドル( 約 1,112 万円 )となった。フランスの現代
彫刻家セザールの、圧縮されたアルミを使用したオリジナリ
ティあふれる作品も落札。これらはアジアを中心としたさま
ざまなコレクターの手に渡り、欧米作家の世界的評価の確か
さを示した。
続いて日本を代表するコンテンポラリーアーティスト、奈良
美智の登場で会場はさらなる熱を帯びる。国内外のオーク
ションで高額落札を記録している奈良の動向は世界中の関心
を集めており、出品された 3 作品には、いずれも事前から問
い合わせが殺到。奈良の作品にしばしば登場する、特徴のあ
る少女が描かれたこれらの作品の前には常に来場者が立ち止
まり、作品や作家について語り合う場面が下見会の会期中、
非常に多く見られた。
結果として 38 万 9,400 香港ドル( 約 565 万円 )、44 万 8,400
香港ドル( 約 650 万円 )、20 万 600 香港ドル( 約 291 万円 )
と 3 作品ともにハンマーが叩かれた。
* 日本円は 1 香港ドルを 14.5 円とした参考価格
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草間彌生、落札率 100%!6千万円超えの作品も
そして本セールのハイライトである草間彌生の作品群が登場。
コレクターはどのような草間作品が出品されるのか、カタログの到着を待ち望んでいたかのように、オークションの前の段階
で世界中から問い合わせが殺到し、電話ビッドや書面入札が重なった。10 月 28 日の文化勲章受賞に加え、2017 年 2 月からは
過去最大となる草間彌生展「わが永遠の魂」が東京の国立新美術館で開催されることもあり、コレクターからの注目度は群を
抜いていた。
中でもアクリル作品、黄、緑、白の 3 点のサムホールのかぼちゃはそれぞれ 83 万 7,800 香港ドル( 約 1,215 万円 )、64 万 9 千香
港ドル( 約 941 万円 )、59 万香港ドル( 約 856 万円 )と高値での落札が続き、欧米、アジアなど幅広いコレクターの手に渡った。
続く、50 号のアクリル作品「Infinity-Nets」は 2016 年オータムセール香港において最も高額な作品となった。
会場と電話での競り合いは予想を超えた激しさで、行方を見守る参加者にも緊張が走った。何度もパドルが挙げられた末にハ
ンマーが打ち下ろされ、会場のコレクターが落札すると、見守る他の参加者からは大きな拍手が沸いた。落札金額は 421 万 2
千香港ドル( 約 6,107 万円 )に達しており、堂々のトップロットとなった。結果として出品されたアクリル作品、エナメル作品、
立体作品、版画など全 10 作品の全てが落札され、落札率は 100%を記録。草間は間違いなく来年も最注目の作家の一人と言える。
ヨーロッパを中心に国際的にも高く評価されている平賀敬の 2 作品は落札予想価格の上値を越えての落札。その内容が評価さ
れ目の肥えたコレクターに渡った。近年エスト・ウェストで出品されている 1960 年代の作品はいずれも高額で落札されており、
引き続き注目の作家である。
戦後美術がセール牽引、白髪が高額落札
続いて日本戦後美術のムーブメント、
「具体」の中
心作家であり、ここ数年での世界的人気が急速に高
まる白髪一雄の作品が登場。他のアクション・ペイ
ンティングのシリーズとは違った独特な世界観を持
つ密教シリーズの「大黒天」が落札されると、続く青、
白、赤を基調とする力強く且つ素早い筆捌きが印象
的な油彩作品「無題」も中華圏の愛好家によって落
札された。2 点とも欧米を含むコレクターからオー
クション間際まで問い合わせが続き、ともに 188 万
8 千香港ドル( 約 2,738 万円 )と高値で落札されて
いった。その他、元永定正の 4 点の油彩やアクリル
作品や吉原治良、田中敦子の作品も順当に落札され、
具体作家の 11 点は全て落札となった。
中盤に差し掛かったところで、本セールのスター
ロットとなった山田正亮 Work シリーズが登場する。
白髪 一雄「大黒天」
60.5 × 73 cm
現在、初の大回顧展「endless 山田正亮の絵画」が
東京国立近代美術館で開催されている山田。線がそ
のまま面であり、色彩となっていることが特徴的な Work シリーズの、明暗、色彩、テクスチュア、物質感などの違いが楽し
めるストライプの絵画を含む6作品は、回顧展直前の今季とりわけ世界各国のコレクターを魅了した。オークションカタログ
が公開された途端、国内外から熱心な問
い合わせを受け、6 点すべて落札。5 点は
予想価格上値を大幅に超える高値がつき、
今後ますます国際市場における評価の高
まりが期待される。
オノサト・トシノブは幾何学的構成の抽
象絵画の 4 点中の 3 点が順当に落札。また、
自身の美術論集と同じタイトルを持つ作
品、中西夏之の「大括弧」は深く内面化
され、思考された末に表現された作品で
あり、33 万 400 香港ドル( 約 479 万円 )で
落札。中西は今年 10 月、81 歳で亡くなっ
* 日本円は 1 香港ドルを 14.5 円とした参考価格
山田 正亮「Work C.8」 54.3 × 37 cm
中西 夏之「大括弧」 72.1 × 91 cm
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菅 木志雄「景体 -(1)大地によせる」 h34 × w88 × d13 cm
たが、世界のマーケットから注目を集めた「ハイ・レッド・
センター」の一員として日本の戦後美術を切り拓いた偉大な
現代美術家の作品も、順当に落札されて行った。
注目高まる「もの派」
石や木などの自然素材や紙、綿、鉄などのニュートラルな素
材( =もの )をほぼ未加工の状態で、単体あるいは組み合わ
せて提示し、事物の存在や関係、それらが置かれる状況や空
間自体を作品とし、ものの本質を問い続けた「もの派」の作
家たち。その中心メンバーとして、今も精力的に活動を続け
る菅木志雄の立体「景体 (
- 1 )大地によせる」は、今季近代・
戦後・現代美術のカタログの表紙を飾った。
また、下見会会場で一際目を引く 131 × 195 cm のキャンバ
スに金箔の表現が美しい関根伸夫の 2 作品。この前で立ち止
まる人は多く、作品の存在感と迫力に圧倒されつつ、キャプ
ションを覗き込み、作家名や作品の詳細を確かめる姿が多
く見られ、結果、25 万 9,600 香港ドル( 約 376 万円 )と 20 万
600 香港ドル( 約 291 万円 )で中東と中華圏のコレクターに
それぞれ落札され、実力のある作家に一定の国際評価が下さ
れた。
「もの派」は「具体」同様、戦後日本美術の指標ともなるべ
き重要なムーブメントである。今後は更なる再考、再評価が
望まれる。L. ウーファンに続いて競売にかけられた韓国現
代美術を代表する朴栖甫( パク・ソボ )の「エクリチュール
( 描法 )」はコレクターからの関心が高い中、落札された。
今年、韓国単色画が現代美術市場の主役として注目された。
L. ウーファンをはじめ鄭相和( チョン・サンファ )、趙容翊
( チョウ・ヨンイク )、河鍾賢( ハ・ジョンヒョン )、尹亨根( ユ
ン・ヒョングン )など韓国を代表する抽象画の動向は来年も
マーケットの潮流のひとつとして位置づけられるだろう。
千住博、タカノ綾は熱心なコレクターの手に
下見会で最も存在感を示していたのは日本画壇を牽引する
千住博と日本人の若手現代美術家、タカノ綾の大型作品で
あった。千住の代表シリーズ・ウォーターホール( 162 ×
130.5cm )とフォーリングカラー( 117 × 116.8cm )は圧倒的
な迫力を放ち、2 点とも日本のコレクターに落札された。
主に少女をモチーフにし、明るくポップで、日本の漫画や
SF 小説などさまざまな媒体にインスパイアされたタカノ綾
の作風は、独特の色彩と、不思議で可愛らしく、それでいて
タカノ綾「無題」 193.5 × 130.4 cm
センシュアルな雰囲気を持つ。そのペインティングやドロー
イングは熱烈な支持を受けており、国際市場における評価も
高い。出品された大型のペインティング 2 作品が南米のコレ
クターに好まれ、落札されて行った。
新規コレクターも落札、近代巨匠作品
オークションの最後を飾ったのは、20 世紀を代表する巨匠
たちの名品。P. ボナールが最愛の妻を描いた油絵が 165 万 2
千香港ドル( 約 2,395 万円 )となると、続く K. ヴァン・ドン
ゲン、M. ユトリロ、G. ルオー、M. ローランサン、M. シャガー
ルなどエコール・ド・パリを中心とした巨匠作家の作品が会
場を賑わせ、次々と落札されていった。藤田嗣治の「裸婦」
が落札予想価格上値を超えるなど落札率は 100%となりファ
インアートの巨匠作家の根強い人気を証明して、オークショ
ンは幕を閉じた。
世界各国のコレクターから注目を浴びた近代・戦後・現代美
術全 105 ロットは落札率 79.0%、落札総額 3,237 万 6,240 香
港ドル( 約 4 億 6,946 万円 )、と好結果。この結果を引き出
したのはやはり日本の戦後美術であった。特に草間彌生、山
田正亮に対する注目度はより一層増しており、具体の作家達
も一時期の爆発力こそないが好調を維持、加えて「もの派」
の台頭も来年に向け期待ができる。日本の現代作家としては
奈良美智が引き続き注目が向けられる。そして常に安定した
価値を持続し続けているヨーロッパの近代巨匠作家の存在感
は圧倒的。エスト・ウェストは 2017 年 5 月の香港オークショ
ンに向け、バラエティ豊かな愛好家の需要を先取りした作品
集めに努めていきたい。
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中国経済復調に乗り
香港セール好結果
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ジュエリー&ウォッチ
Jewellery & Watch
東京で見えた課題、香港で達成!
2015 年、中国株安の影響を受け、香港のジュエリー市場は
一旦落ち込んだ。中産階級の投資資産は急速に縮小し、宝飾
品に投資することは回避された。贅沢品のバブルが弾け、敏
感な香港ジュエリー市場ではバブル前の値段に落ち着いて
いたが、日本のジュエリー市場は価格変動に時間がかかり、
2016 年春のセールに一部バイヤーが戻ってきた際、日本の
出品作品は彼らにとってまだ価格が高く、結果が出なかった。
しかし、ジュエリー市場は徐々に回復を見せ、今回の香港セー
ルでは、バイヤーたちが再び投資と収集の場に戻ってきた。
香港セールにさきがけ、10 月、2 年ぶりに東京でジュエリー
のオークションを開催した。しかし、アンティークジュエ
リーや珊瑚、真珠など、以前から安定した人気を持つ宝飾品
以外、期待したほどの結果が出せず課題を多く残すところと
なった。その中にあって、5.014ct ダイヤモンドリングは 230
万円、ブルガリ 1.02ct ハートダイヤモンドリングは 103 万 5
千円と、高級ジュエリーは高額で落札されていった。
近年、日本のコレクターが持つ大粒で高品質なルビーやサ
ファイアなどは、中華圏や東南アジアで人気が高い。こういっ
た作品に関しては、日本のコレクターたちは購買側ではなく
供給側に移行している傾向にあり、香港市場の方がより適し
ているように思われる。
熱気あふれる下見会と満席の会場
香港セールの下見会では、香港、中国はもちろん、台湾や東
南アジア諸国と、フランス、イギリスなど欧米の国際色豊か
なお客様にご来場いただき、混雑時には作品を見るのに順
番を待たなければならないほど多くの来場者が詰めかけた。
セール開始 5 分前、既に会場は満席。途中で席が足りなくな
り、椅子を追加するほどであった。
最初のロットから激しい競り合いが起こり、会場はセール開
始直後から盛り上がった。
グリーングロッシュラーガーネットリング
552.820ct ブルートパーズ ルース
予想を超えて好調、
「半貴石」ジュエリー
香港セールでは、翡翠、真珠、ルビー、サファイアなど、ニー
ズが高い定番のジュエリーを揃えつつ、新たな試みとして、
スピネル、ペリドット、ガーネット、トパーズといった半貴
石を出品。半貴石は、硬度 7 以下でダイヤモンドより軟らか
く、手頃な価格の割に美しさは貴石に引けをとらない。
近年、所得を増やしつつある中国若年層の間で、宝飾品の需
要が増加しているが、彼らの購買力にはまだ限界があり、ル
ビーなど高額作品には手が届かない。このような状況を背景
に、高品質な半貴石を選んで出品した結果、予想以上の収穫
があった。
1.780ct レッドスピネルリングは、下値 8 千香港ドルに対し
て 1 万 2,980 香港ドル( 約 19 万円 )で落札。16.60ct ペリドッ
トリングも、下値 1 万 2 千香港ドルに対して 2 万 60 香港ド
ル( 約 29 万円 )という好結果に。13.143ct グリーングロッシュ
ラーガーネットリングは、下値の 2 倍近くまで競り上がり、
2 万 8,320 香港ドル( 約 40 万円 )でコレクターの手に渡った。
また、規格外の大きさで目を惹く 552.820ct ブルートパーズ
ルースは、下値 2 万 5 千香港ドルのところ 3 万 5,400 香港ド
ル( 約 51 万円 )で落札された。
概して、香港市場は作品をよく吟味し厳選する傾向が強いが、
これら高品質の半貴石は厳しい審美眼を持つコレクターにも
響き、いずれも予想を上回る価格で落札された。対して、色
の鮮やかさなどのレベルがそれほど高くない作品は、安価で
あっても大きな関心は寄せられなかった。この傾向は当面続
いていくと思われ、高品質でありながら手の届きやすい半貴
石の活躍が期待される。
不動の人気、翡翠、ルビー&サファイア
香港市場で人気の高い宝飾品は、まず翡翠である。
中華圏の文化では翡翠に特別な意味がある。地域により若干
意味も変わるが、緑の翡翠は、力強い生命力や安穏、豊饒、
平和、純粋無垢などを象徴し、世界に進出する中華系の人々
にとっては単なる装飾品ではなく、身に着けることで同じ
* 日本円は 1 香港ドルを 14.5 円とした参考価格
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高い GIA の産地記載鑑定書がついていたために競
り合われたと思われる。
以上の翡翠、ルビー、サファイアは比較的安定し
た人気があるが、今セールではこれらの石をメイ
ンストーンとする作品がいずれも落札率 8 割を超
えており、改めて市場の回復を実感した( 左下グラ
フ参照 )。
文化圏に属することを確認する機能をも果たすた
め、中華系コレクターの翡翠を見る目はより一層
厳しい。今セールの中でも高品質を誇る翡翠ネッ
クレスは下値 3 倍の 2 万 8,320 香港ドル( 約 41 万
円 )まで上がり落札された。
ルビーとサファイアは、
国や文化に関係なく世界
中 で 人 気 が 高 い。3.04ct
ビルマ産ビジョンブラッ
ド ル ビ ー リ ン グ は、15 万
3,400 香港ドル( 約 222 万円 )
という高額落札となった。この作品には 8 個のダ
イヤモンドがサイドストーンとして付けられてい
るが、出品に際して 8 点全てを鑑定機関に通し、
より詳しい情報をカタログに載せ、価値の高さを
分かりやすく紹介したことが高額落札の一つの理
由となった。
また、香港市場のバイヤーは非加熱の宝石に対し
て非常にこだわりを持っている。12.46ct 非加熱ス
リランカ産カラーチェンジサファイア リングは 16 万 5,200
香港ドル( 約 240 万円 )、非加熱 5.070ct スリランカ産ダー
クブルーサファイアリングは 20 万 600 香港ドル( 約 290 万
円 )で落札された。これらは 2 点とも品質が良く、信用度の
エスト・ウェスト の セールにおける主な貴石の 落 札 率
100
(%)
翡翠
ルビー
50
サファイヤ
全体
0
ホド
ナル 識
知
まめ
2015 秋
2016 春
2016 秋
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セール終盤で注目を集め
たピアジェの宝飾腕時計
は、 予 想 価 格 3 万 5 千
~ 5 万 5 千香港ドルのと
ころ、上値を超える 8 万
8,500 香港ドル( 約 128 万
円 )で落札。この時計に
は、88 粒のルビーと 172
粒のダイヤモンドが装飾
として後から取り付けら
れているが、日本では後
から装飾を施してしまう
と、ブランドの保証がきかなくな
るなどの理由で価値が下がる。しかし香港では宝石自体の価
値が重視され高値になった。5 本の電話ビットと会場のコレ
クターが競争し、会場は大いに沸き立った。
また、デビアスのダイヤモンド アワーグラスも、下値 2 倍
以上の 9 万 4,400 香港ドル( 約 137 万円 )まで競り上がった。
本作品は限定品であるため価値が高く、更に近年、海外でも
高額で取り引きされるなど人気が高い。
今回、ジュエリー全体の落札率は 72%と、及第点と言える
結果となった。これは、宝飾市場の回復途上での結果だろう。
現在、世界の経済状況は不安定な要因が多く、市場の先行き
は見通しにくいが、中国を筆頭とするアジア市場のニーズを
分析しつつ、より迅速に価格設定や品揃えなどの調整を行な
えば、2017 年も好結果を残せるだろう。今後も更なる成功
を目指して、次回セールに向けて全力で臨んでいきたい。
お持ちのジュエリーにはついていますか? 宝石の身分証 " 鑑別書・鑑定書 "
ジュエリーにはよく、鑑別書や鑑定書がついていることがあります
が、それを発行する鑑定機関は様々です。ダイヤモンドの場合、GIA
( Gemological Institute of America )が圧倒的な権威を持っていま
す。GIA は、カット・カラット・透明度・色という判定基準を確立し、
現在その基準は世界中で採用されています。ルビーやサファイヤなど
の色石は GÜBELIN というスイスの機関の信頼が厚く、翡翠は、翡翠
流通率 NO.1 を誇る香港の機関が、他国以上に精密な評価方法を確立
していることで知られます。日本の機関では CGL( 中央宝石研究所 )
が最も有名で、アジア各国でも信用があります。CGL は英語版の鑑定
書も発行しており、下見会では海外の来場者が CGL 鑑定書を熱心に
読む姿を見かけます。作品の価格を左右するほど、鑑別書・鑑定書は
重要なものです。ジュエリーをご出品の際、必要があればエスト・ウェ
ストが鑑定書の取得を代行いたしますので、ご安心ください。
GIA の 鑑定書
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東京セール落札率 77%
ヌーヴォー&デコラ好調
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西洋装飾美術
Western Decorative Arts
また、今回のもう一つの目玉は 30 ロットを超える R. ラリッ
クのコレクション。アンバーガラスの花瓶「セルパン」( 落
札価格 379 万 5 千円 )や、オパルセントが施された花瓶「バ
カント」( 落札価格 322 万円 )など、希少かつ人気のモデル
が一同に会した。結果、今セールの全ラリック作品の落札率
は 88%。下値 30 万円以上の高額作品は全て売り切ることが
できた。また、ラリック作品で一番多くの問い合わせを受け
た香水瓶もほとんどが落札され、なかでも香水瓶「テリーヌ」
は予想価格上値を超えて 40 万 2,500 円まで競り上がった。
アール・ヌーヴォー部門の最後は、エストに久しぶりに登場
した A. ワルターの作品群。どれも国内外のコレクターから
熱い視線を集めたが、特に多くのビッドが集中したのは「蝶
文置時計」。予想価格下値の 2 倍を超える 37 万 9,500 円となっ
た。オークション開始からワルターに至るまで、アール・ヌー
ヴォー部門全体の落札率は 87%と、9 割に迫る高い数値を
マークした。
魅力光る希少作品にビッド集まる
E. ガレ「朝顔文花瓶」h45.0 ×φ 31 cm
ラリックコレクションも順当に落札
E. ガレのリキュールグラスから始まった東京セール。可愛
らしく繊細なガレの小品はコレクターが多く、電話ビッドの
回線が全て埋まってしまうほど。約半数の作品が落札予想価
格上値を超え、白熱した競り合いの内に全て落札された。
その後も、不落札をほとんど出さずにアール・ヌーヴォー作
品の競りが続く。細やかなエナメル彩が特徴的なガレの初期
作品「貝と野花文鉢」は、予想価格 28 ~ 38 万円に対して
46 万円。アール・ヌーヴォーの主要文献にも紹介されてい
るガレの代表的なモデル「コモ湖風景文花瓶」は、予想価格
130 ~ 180 万円に対して 230 万円であった。
オークション前半戦の目玉は、今回のトップロットであるガ
レのミュージアムピース「朝顔文花瓶」( 予想価格 1,000 ~
1,500 万 円 )。 朝 顔 が グ
ラヴュールで丁寧に描出
された迫力ある巨大な花
瓶を目の当たりにして、
多くの下見会来場者が足
を止めて見入っている姿
が印象的であった。残念
ながらオークション当日
は不落札となってしまっ
たものの、アフターセー
ル期間中に問い合わせが
あり、コレクターの手に
渡った。
R. ラリック 花瓶「セルパン」 h24.5 ×φ 25.8 cm
続いて展開したデコラティヴ部門では、F. プライスをはじ
めとする象牙・ブロンズ彫刻や、絵皿・陶板などの陶磁器類、
絵画、家具、ランプ、テーブルウェアなど、様々な作品が並
んだ。総評として、KPM ベルリンやマイセン、ペルシャ絨
毯は、昨年に比べるとかなり苦戦を強いられた。テーブルウェ
ア類もほとんどが順当に落札されたものの、前回に比べると
それほど高値までは競り上がらなかった。
しかしながら、頭や手をコミカルに揺らすマイセンのフィ
ギュア「パゴダ」は予想価格上値を超えて 46 万円という好
結果。蓋裏に至るまで豪華な装飾がなされた「ザクセンとポー
ランド紋章文宝石箱」も 253 万円で落札されるなど、下見会
で人目を惹いた優品にビッドが集まった。
また、J.M. ナティエの追随者によって描かれた油彩画 2 点
セットは、カタログ発行直後から多くのビッダーたちの耳目
を集めた。ヴェルサイユ宮殿に飾られたナティエの対作品を
もとに制作された本作は、2 点ともに揃っており、なおかつ
非常に大型の作品という点において希少性が高い。最終的に
落札予想価格 50 ~ 80 万円を大きく超えて 207 万円となり、
会場は大きな拍手に包まれた。その他、「ガンダーラストッ
コ仏像」も予想価格下値の 3 倍を超える 74 万 7,500 円で落
とされるなど、セール全体の傾向として、市場になかなか登
場しない珍しい作品にコレクターの関心が集中したと言える
だろう。
東京セールのラストを飾った近現代絵画では、藤田嗣治や L.
イカール、J. ローゼンクィストの版画の他、愛國や馬六明と
いった中国の現代作家が登場。落札率は 8 割を超え、前回の
スプリングセールと変わらない堅調さを見せた。
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3 年越し、香港へ挑戦ふたたび
香港市場への展望
ここ数年、西洋装飾美術
は東京でしかセールを
行っていなかったが、今
回は香港にも 46 ロット
を出品。全 26 ロットか
ら成る R. ラリックコレク
ションの他、全 9 ロットの
ペルシャ絨毯コレクショ
ン、マイセンの大型フィ
ギュア、
シンギングバード、
陶板、絵皿など、厳選さ
れた優品が登場した。
落札ロット数のシェア率をビッダーの地域別に分析すると、
東京セールでは落札ロット数の約 8 割が日本人ビッダーで
あった。前回のセールではロットの約半分を中華系ビッダー
が占めていたことを考えると、この変化は看過できない。も
ちろん、中華系ビッダーたちもセールに参加してはいたが、
日本のビッダーたちの方がより強いビッドを入れた結果、多
くのロットを勝ち取ることになった。しかしながら、香港
セールでは落札ロット数の約 6 割が香港ビッダーであり、東
京セールとは対照的に中華系ビッダーの躍進が目立った。昨
今、中国経済の伸び悩みが囁かれてはいるものの、中華系ビッ
ダーたちは 1 から 10 まで全て買うというこれまでの競り方
をいくらか抑えながらも、まだ余力を残しているのではない
かと思われる。
R. ラリック花瓶「オルレアン」 h20.1 ×φ 22.5 cm
下見会で最も多くの注目を集め、来場者を楽しませていたシ
ンギングバードは全て落札。現地香港のラリック・ストアに
宣伝広告を打ったのが奏功したのか、ラリックも落札率は 7
割を超えた。ラリック作品が陳列されたショーケースの前で
は、1 点 1 点作品を手に取って熱心に吟味している来場者も
見られ、香港においてラリックの市場性が十分あることをう
かがわせた。
一番競りが白熱したのは、オパルセントが美しい花瓶「オル
レアン」。会場の香港ビッダーと香港外からの電話ビッドと
の応酬が続いた結果、上値を超えて 4 万 1,300 香港ドル( 約
60 万円 )まで競り上げた。
また、金彩装飾が繊細に
施されたヴィエナスタイ
ル「肖像画ビジュー装飾
絵皿 6 点」は、16 万 5,200
香 港 ド ル( 約 240 万 円 )
で落札。改めて、香港市
場が持つ大きな可能性を
感じさせる結果に。
秋の香港セールにおける
西洋装飾美術全体の落札
率 は 63 % に 留 ま っ た も
ヴィエナスタイル装飾絵皿 φ 24.6 cm
のの、苦闘を余儀なくさ
れたペルシャ絨毯を除い
た場合の落札率は 78.2% となり、3 年の間を空けてふたたび
挑戦した結果、常に堅調を保つ東京セールと同水準の成果を
得られた。
また、香港セールを振り返ると、西洋装飾美術というひとつ
のジャンルの中でも、極端に明暗が分かれる結果となった。
前述の通り、ラリックやシンギングバードなどは多くのビッ
ドが集まったが、ペルシャ絨毯などは今回の香港進出が初め
ての試みだったせいか、期待していたほどの結果を得ること
ができなかった。オークションを成功に導くには、香港市場
の動向をより精査し吟味することが不可欠だろう。
来年、香港進出 10 周年を迎えるエスト・ウェストは、次回
のスプリングセールでも西洋装飾美術作品を香港の地に運
び、市場拡大を狙う挑戦的方針をとる。自分も香港市場で挑
戦してみたいと思われるコレクターの方は、エスト・ウェス
トという選択肢を是非検討されたい。
西 洋 装 飾 美 術 落 札ロット 数 地 域 別 内 訳
その他 7.8%
香港 0.6%
中国 0.6%
その他
6.9%
台湾 9.1%
欧米
9.5%
日本
31.0%
香港 58.6%
日本 81.6%
2016 オータムセール東 京
2016 オータムセール香港
* 日本円は 1 香港ドルを 14.5 円とした参考価格
Special feature on auction highlights
エスト・ウェスト ニュース
愛好家増える日本工芸
復調見えた中国美術
2016 年 12 月発行号
December 2016
東洋美術
Japanese & Chinese Arts
技巧凝らした工芸品が人気、日本美術
東京セールでの日本美術は近代絵画、近代陶芸、古陶磁器、
蒔絵などの工芸作品、香木が出品。落札率 86%と全体的に好
調であった前回の東京セールに比べ、今回は作品・作家によ
り明暗がわかれ、より良い品に注目が集まるセールとなった。
競りは近年高額落札を記録していた伽羅・沈香を中心とした
香木から始まった。今回は今までのような結果は出なかった
が、続く近代陶芸は 77%の落札率と好調、会場や電話ビッ
ドから活発にパドルが挙げられた。
美しい色ガラスに金箔を
あしらった藤田喬平の飾
筥 2 点は下見会でも一際
目を引き、特に赤と白の
色彩が鮮やかな「紅白梅」
は落札予想価格の上値を
超えてコレクターの手に
渡った。北大路魯山人の
「絵瀬戸 籠目文 花生」も
落札予想価格の上値を超
藤田 喬平 手吹飾筥「紅白梅」
えて落札、国内だけでな
く香港からの強い入札もあった。浜田庄司の作品も香港のコ
レクターに落札された。その他、イギリスのルーシー・リー
の 2 作品は共に落札予想価格の上値を超えて落札、島岡達三
の 4 作品も全て落札、備前焼の作家としては大家の金重陶陽
が根強い人気で国内のコレクターに落札された。
北大路魯山人、藤田喬平、金重陶陽、ルーシー・リーと依然
として人気の高い作家にビッドが集中した。また、香港から
の入札は、国内での需要がそのほとんどを占める日本の近代
陶芸作品でも魅力的な作家・作品は世界中に受け入れられる
事を示唆した。古陶磁器は輸出向けに制作された古伊万里の
大皿は不落札であったが江戸期の「古九谷五彩色絵山水図皿」
が電話ビッドとオンラインで入札に参加したコレクターが競
優品にビッドが重なる東洋部門
り合い、目の肥えた日本人コレクターに 230 万円で落札され
た。蒔絵は江戸 - 明治期に制作された良質な春秋御殿蒔絵料
紙箱・硯箱がその高い技術力と価値に反して落札されなかっ
たが、その他の作品は日本人と香港の愛好家が競りに参戦し
て順当に落札されていった。最後に登場した近代絵画は出品
作品の全てが落札。近代陶芸同様に横山大観、福田平八郎、
伊東深水らの巨匠と呼ばれる作家の人気の高さが伺える結果
となった。
今回のセールでは前回に比べ近代絵画・陶芸のビッドがやや
増えた分、香木が不調であった。市場が安定している作家の
作品に比べると香木の市場相場はやや不安定ではあるが、近
年の高額な落札価格に応じて、魅力的なエスティメイトの設
定が叶わなかった事が原因として挙げられる。2013 年 9 月
の東京セールで 100 万から出品された伽羅が 7,130 万円で落
札されてから前回 2016 年 4 月までの東京で行われた計 6 回
のオークションの内 5 回が落札金額のトップを香木が占めて
おり、確かに市場は存在する。バイヤーが魅力的だと感じる
価格設定ができれば、以前のような活発な競りが期待できる
のではないか。
質の良い作品に集まる需要
今回の東京セールの日本美術を概観してみると、実力があり
以前から安定したオークション市場を確保している作家の優
品に人気が集まり、これらを蒐集する日本人コレクターが依
然として多く、存在感を示す結果となった。2017 年もやは
りこれら有名作家の作品が中心になるだろう。また、国際色
の強い浮世絵は昨年に会場を賑わせたジャンルであり、来年
も期待したい。昨年、東京都文京区の永青文庫にて日本初と
なる春画を中心とした展覧会『SHUNGA 春画展』が大反響
を呼び入場者数 20 万人を突破した。同展は今年 2 月から京
都の細見美術館で巡回展が開催され、平日でも入場規制によ
り列が出来るほどであった。春画は国内ではタブーのように
扱われてきたが、日本が世界に誇れる、ユーモアと美が共存
したアートである。2017 年は浮世絵・春画に注目したい。
古九谷五彩色絵山水図皿
2016 年 12 月発行号
December 2016
エスト・ウェスト ニュース
Special feature on auction highlights
コレクター戻る!復調の香港セール
11 月 29 日、オークション 2 日目に行われたオータムセール
香港での中国・日本美術。今回は久々に日本の美術品も出品
となり、あわせて 203 点の作品が競売にかけられた。中国美
術からは隋唐、宋元、明清時代の陶磁器をはじめ、青銅器、
漆器、古玉、古文具、書画が登場、日本美術は銀瓶、鉄瓶、
明治期の金工作品や蒔絵などが揃った。
下見会では春の香港セールよりもロット数が多い事からか、
毎回のように来場される馴染みのお客様だけでなく、新規の
愛好家の姿も多く見られた。中華圏のコレクターにまじり、
東南アジアや欧米のコレクターの姿も見受けられ、国際都市
香港の様相を呈していた。展示室は大勢の来場者が行き来し、
コレクターが列を作る光景もみられた。
オークションは明代と宋代の龍泉窯青磁から始まった。明代の
「龍泉窯刻花卉紋荷葉蓋罐」は、優れた出来栄えと存在感のあ
る大きさで多数の愛好家の目を惹き、日本の個人蒐集家から出
品となった本作品は、中華圏のコレクターに落札された。
清代の陶磁器では「胭
脂紅地軋道粉彩開光花
卉紋碗」と「藍釉象耳
方瓶」が下見会からコ
レクターの関心を集
め、この作品のために
遠方から来場した方な
ど熱心な愛好家も参
加、共に中国圏の愛好
家の手に渡った。
胭脂紅地軋道粉彩開光花卉紋碗
宋と元代を中心とした
古陶磁器では宋代「黑釉白線紋雙系罐」と元代「黑釉褐彩花
卉紋梅瓶」大型の花瓶にビッドが重なり落札予想価格を超え
て落札された。
今回、書画に関しては出品点数が多くなかったためか、数名
の愛好家からは「ロット数をもっと増やしてほしい」と要望
があり、より多くの、より良質な作品を求める愛好家の中国
美術に対する強い関心が示された。その他、前回の香港セー
ルでも人気の高かった硯は落札価格を大幅に超えて落札さ
れ、引き続き好調を維持している。中国美術に対するコレク
ターの反応をみると、以前にも増して、より確かな審美眼で
作品を選定しており、年々その基準も厳しさを増している。
しかし全体的に良質な作品が強く求められており、中国美術
に対する需要はまだまだ強く来年の動向に注目したい。
純銀花菱模様桐花紋茶道具一式
愛好家魅了した日本の銀工芸
続く日本美術は銀瓶と鉄瓶からスタート。依然として中国人
愛好家からの人気は高く、下見会から一つ一つ丹念にコン
ディションを確認する姿が多く、中でも銀瓶は好まれ 8 割以
上が落札された。
下見会で最も存在感を示した一つが明治から大正期に制作さ
れた「純銀花菱模様桐花紋茶道具一式」であった。光を放つ
純銀製の茶道具が煌びやかな蒔絵の台に飾られた作品は驚異
的な美しさで多くの愛好家を魅了した。カタログが公開され
てから問い合わせが多かった注目の本作品は、東南アジアの
愛好家により落札された。続く 7 代平田重光の大型作品「純
銀鳳凰桐花文大盛器」も、その存在感と希少性が認められ落
札されている。
ただその他、象嵌作品や蒔絵などは興味を示されるものの、
落札するまでには至らず課題も残るセールとなった。来年は
日本美術において、東京・香港どちらの市場がより良いのか、
作品により異なる判断が必要であろう。
前述の純銀製の茶道具一式は非常に美しく、平田重光の純銀
製大器は非常に存在感・迫力があった。日本美術の美には、
繊細さと大胆さという相反する魅力があるが、これらのよう
に、繊細な彫りや鍛金技術、一方で大胆で堂々とした意匠と
いった、海外の愛好家の感覚に訴える、わかりやすい特長を
持つ作品が香港市場に受け入れられる傾向が強かった。
また、銀瓶や鉄瓶は茶の文化が中国から日本にもたらされて
いる事もあり日本と中国の共通している道具として中華圏の
愛好家の注目度は高く、今後も期待が持てそうだ。
Special feature on auction highlights
エスト・ウェスト ニュース
2016 年 12 月発行号
December 2016
激動の世界経済と美術市場
2016 年、相次いだ歴史的変革
2016 年は歴史的な変革がいくつも起こった年である。6 月に開催された国民投票でイギリ
スのEU離脱が決まり、為替や株価などの経済活動にも不規則な影響を及ぼした。そして
11 月には泡沫候補と思われていたドナルド・トランプ氏が米大統領選で当選し、国際社会
に衝撃を与えた。トランプ米次期大統領の登場で世界経済と市場は新次元に突入、現在米
国株高を中心とする「トランプ・ラリー」が続いている。今後世界経済と美術市場はどうなっ
ていくのか。
市場の先行きへの不透明感が漂うなか開催された 2016 年下半期の 2 つのセール。東京・香
港合同の高額作品ランキング( 図 1 )を見ると、トップに草間彌生、2・3 位を白髪一雄がマー
クし、4 位から 9 位までフォーヴィスムやエコール・ド・パリなど、ヨーロッパ近代美術の
巨匠作家たちが並ぶ。これは、近年続く欧米やアジア各国から支持を得る日本の戦後美術
に対する興味の存続を示し、また世界的に価値の定まった巨匠作家への信頼感がうかがえ
る。また、
高額ランキングの常連であった中国美術がこのたびトップ 10 から姿を消したのは、
これまで中国美術を積極的に購入していた層が日本の戦後美術や西洋の近代美術に対して
安定感や割安感を感じ、購入対象を移行していることを意味する。もっとも中華系の買い手
が多い中国絵画や宝飾品のセールに関しては、落札率、伸び率共に前回のセールより確実に
上昇しており、中国経済の停滞感はさほど感じられず、むしろ昨年の中国株暴落を境にオー
クションへの参加を控えていた中国人ビッグコレクターが本オークションを機に戻ってく
るなど嬉しい場面も見られた。
今季の香港セールにおける落札ロット数の地域別内訳( 図 2 )をみると、開催地である香港
が過半数となる 53% のシェアを占め、次に日本の 18%、中国の 15%、台湾の 7%と続く。
数字を見る限りでは中国本土の存在感は控えめに感じるであろうが、実際の購入以外にも、
彼らのビッドが高額作品のアンダービッダーとなり、幾多の作品の落札額を押し上げている
こともまた事実である。ヨーロッパ近代美術への強い興味だけでなく、中国美術においても
中国絵画だけでなく銀製品などの実物資産への高い需要もうかがえた。また 3 年ぶりに開
催をした西洋装飾美術のセールでは、香港の落札者が全体の約 6 割を占めるなど市場の確
かな手ごたえを感じた。2008 年の香港進出時から毎回西洋装飾美術のセールを開催し、アー
図1
2 016 オータムセール 香 港 高 額 落 札 トップ 1 0
1
草間 彌生「Infinity-Nets」
421 万 2 千 香港ドル(約 6,107 万円)
-
白髪 一雄「無題」
188 万 8 千 香港ドル(約 2,738 万円)
3
白髪 一雄「大黒天」
188 万 8 千 香港ドル(約 2,738 万円)
4
P. ボナール「赤いブラウスを纏ったマルト・ボナール」
165 万 2 千 香港ドル(約 2,395 万円)
-
M. シャガール「ダフニスとクロエ」挿絵本 2 冊
141 万 6 千 香港ドル(約 2,053 万円)
6
K. ヴァン・ドンゲン「女性の肖像」
141 万 6 千 香港ドル(約 2,053 万円)
7
G. ルオー「キリストと漁夫」
118 万 香港ドル(約 1,711 万円)
-
M. ユトリロ「キオスク」
112 万 1 千 香港ドル(約 1,625 万円)
9
M. シャガール「格子柄ナプキンの上の静物」
112 万 1 千 香港ドル(約 1,625 万円)
10
朴 栖甫「エクリチュール No.891024」
106 万 2 千 香港ドル(約 1,540 万円)
* 日本円は 1 香港ドルを 14.5 円とした参考価格
エスト・ウェスト ニュース
2016 年 12 月発行号
December 2016
落札ロット数 地域別内訳
欧米 2.0%
東南ア 4.3%
その他 1.3%
台湾 1.7%
香港 2.7%
欧米 3.1%
中国 1.4%
その他 0.6%
台湾
6.9%
中国 14.5%
香港 52.6%
日本 18.4%
日本 90.4%
Special feature on auction highlights
ル・ヌーヴォーやアール・デコ、西洋陶磁器などを香
港に紹介してきたエスト・ウェスト。需要の落ち着き
が見え始めた 2013 年頃からより市場規模の大きい日
本にセールを統合させ、機が熟すのを待っていた次第
である。今回、香港セールで紹介したルネ・ラリック
の名品コレクションやシンギングバードなどは、近年
の東京セールで香港を始めとする中華圏からの落札が
多かった作品である。香港市場におけるニーズとシー
ズを分析し、ある程度まとまったコレクションとして
紹介をしたことが好結果につながったといえる。
一方で東京セールにおける落札ロット数の地域別内訳
( 図 3 )をみると、まずは 90%という日本の圧倒的な
シェア率の高さに驚かされる。近年稀にみるこの高い
図 2 オータムセール香港
図 3 オータムセール東京
パーセンテージは、日本の景気回復を背景に躍進する
日本のビッダーの存在と、これまでに半数近くを占めていた中国人ビッダーの後退をあらわす。昨年の株安に端を発した景気
の停滞に加え、国内消費を喚起しようと中国政府が今年 4 月に個人への関税を強化したことなどが響き、
「爆買いバブル」はいっ
たん終焉をむかえたように見える。とはいえ、2016 年の訪日外国人の総数は今年の 10 月に初めて年間 2,000 万人を突破し、そ
の 4 分の 1 以上を占める 550 万人の中国人観光客が日本を訪れている。インバウンド消費の動向がブランド品などの百貨店銘
柄からドラッグストアなどで購入できる安価なものにシフトチェンジが行われているように、美術品などの高額品に対する買
い控え感は否めない。
アートの 2020 年
2020 年のオリンピック・イヤーにむけて、政府は訪日客 4,000 万人を獲
得すべく算段を計っているようだ。オリンピック憲章には、五輪開催地
における文化イベントの開催義務が明文化され、東京オリンピック・パ
ラリンピック競技大会は独自の文化プログラムの開催を予定している。
一方、文化庁は「文化芸術立国の実現」を掲げ「文化プログラム実施に
向けた文化構想」を、そして東京都はポスト・オリンピックを見据えた
文化振興の方向性を示した「東京文化ビジョン」を策定し、2020 年の
オリンピック開催にむけて文化面の取り組みをそれぞれ発表した。文化
庁が取り組むプロジェクト「文化力プロジェクト( 仮称 )」では、20 万
件のイベント、5 万人のアーティスト、5 千人の参加を数値目標に掲げ、
より多くの文化・芸術イベントの開催を目指しているが、重要なのは何
をどのように発信するかということ、つまり日本文化のブランディング
をどうするべきか、ということである。
エスト・ウェストは日本と香港の両市場でオークションを開催している
こともあり、海外のコレクターや美術関係者との結びつきは強く、イノ
ベーターやアーリーアダプターと呼ばれる情報感度の高い層からの問い
合わせや情報に日々さらされている。彼らが日本に今なにを求め、なに
を将来的に期待しているかということの実態を把握することは容易であ
るうえ、国や地方自治体にない柔軟性や機動力がマーケットの強みであ
る。ニーズに見合うものの供給だけでなく、潜在的な欲求を顕在化すべ
く、インバウンド需要にあたらしい商品や商機を提供出来ればと思う。
日本の文化・芸術の土壌は伝統工芸や伝統芸能、浮世絵から現代アート、
そして漫画や音楽、アニメなどのサブカルチャーまで多岐にわたるが、
産官学の連携によりどこまで日本の文化力を世界にアピールできるかが
肝となる。東京オリンピックにむけて世界の目が日本にむけられること
は確実で、それにより美術をとりまく環境はどのように変化していくの
か。日本のオークションハウスとして、市場のため、業界のために貢献
できることは何かを考え、2017 年も様々なプロジェクトを企画・運営
していこうと思う。
ART ONE を ジャック!
エスト・ウェスト の下見会 会場
オータムセール香港の際、近代・戦後・現代美
術 の 作 品 を 展 示 し た の が、 エ ス ト・ ウ ェ ス ト
が新しい香港オフィスを構えるアートスペー
ス "ART ONE"。ガラス張りの近代的なギャラ
リー、人々が行き交うホワイエ、そしてルネッ
サンスハーバービューホテル中2階にいたるま
で、すべてエスト・ウェストの展示会場となり
ました。
エスカレーターにも全面広告が貼られ、来場者
には、エスト・ウェストがフロア全体を貸し切っ
たかのような印象を与えました。この会場は、
アートバーゼル香港をはじめとする多くのアー
トイベントが開かれるコンベンションセンター
へ続く導線上にあり、多くのアート関係者の目
に触れることのできた理想的な立地であった。
Special feature on auction highlights
エスト・ウェスト ニュース
2016 年 12 月発行号
December 2016
2017 スプリングセール東京・香港 開催
東 京オークション:3 月 25 日(土)
香 港 オークション: 5 月 26 日(金)
- 29 日(月)
出品作品募集中
作品 募 集 締 切 東 京: 2 月 1 3 日( 月 ) 香 港 : 4 月 12 日( 水 )
2016 年秋のセールでは、3 年ぶりである香港オークションにおける西洋装飾美術の開催や、オークション会場に隣接す
る ART ONE ギャラリーを展示会場とするなど、新たな試みを行いました。2017 年も、激動が予想される世界経済の
波に乗り、オークションを開催して参ります。
A. ボエッティ「SEGNO E DISEGNO」 刺繍、板に貼られたキャンバス 1978 年 23.4 × 24.2 cm
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近代・戦後・現代美術、アール・ヌーヴォー、アール・デコ、日本美術、中国書画・骨董、東南アジア美術
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エスト・ウェスト オークションズ株式会社
査定無料
0120-70-3722
営 業 時 間 月-金 : 1 0 時 -1 8 時 土:1 0 時- 1 6 時 日 祝 休
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