インターネット利用と依存に関する研究

平成22年度共同研究報告書
インターネット利用と依存に関する研究
共同研究担当
<全
橋元 良明
小室 広佐子
小笠原 盛浩
大野 志郎
天野 美穂子
河井 大介
堀川 裕介
(東京大学大学院情報学環)
(東京国際大学国際関係学部)
(関西大学社会学部)
(東京大学大学院学際情報学府博士課程)
(東京大学大学院学際情報学府博士課程)
(東京大学大学院学際情報学府博士課程)
(東京大学大学院学際情報学府修士課程)
容>
日 本 では 、 ア メ リ カ や 韓 国 ほど ネ ッ ト 中 毒 が 大 き な社 会 的 問 題 と は な っ てお ら ず 、 ネッ
ト 中 毒に 焦 点 を 充 て た 学 術 研究 も さ ほ ど 多 く な い 。し か し 、 ネ ッ ト 利 用 時間 が 長 時 間 に及
び 「 ひき こ も り 」 状 態 に 陥 って い る 青 少 年 が し ば しば マ ス メ デ ィ ア な ど に取 り 上 げ ら れ、
ネ ッ ト依 存 の 脅 威 を 強 調 し た『 脳 内 汚 染』(岡 田 尊 司)、ネッ ト ゲ ー ム 依 存 を問 題 に し た『ネ
ト ゲ 廃人 』(芦崎 治 )な ど の 書籍 が 刊 行 さ れ て い る 。日 本 で は 、他国 に 比 べ携 帯 ネ ッ ト の 利
用 時 間が 長 く 、 今 後 、 携 帯 ネッ ト を 中 心 と し た 長 時間 利 用 者 の 増 加 、 そ れに よ る 家 庭 生活
や 学 業へ の 悪 影 響 が さ ら に 大き な 問 題 と な っ て ゆ く可 能 性 が あ る 。
そ こ で、 実 際 に 、 ネ ッ ト 依 存症 的 傾 向 に あ る 若 年 層 は ど の よ う な ネ ッ ト の使 い 方 を して
い る のか 、 ど の よ う な 心 理 傾向 を も っ て い る の か 、日 常 生 活 や 学 業 ・ 仕 事に ど の よ う な影
響 が 出て い る の か 、 依 存 傾 向を も た ら す 要 因 に は どの よ う な も の が あ る か等 、 実 態 を 明ら
か に し、か つ 学 術的 に 因 果 関 係を 解 明 す る た め、我 々 はい く つ か の 実 証 的 調 査を 実 施 し た 。
本 稿 は 、その 結 果 の 報 告 で ある 。調 査 し た 対 象 は 、一 般中 学 生 、SNS/ ソ ーシ ャ ル・メ デ ィ
ア の ユー ザ ー 、 オ ン ラ イ ン ゲー マ ー で あ る 。
< 調 査の 概 要 >
2010 年 度に 実 施 し た ネ ッ ト依 存 に 関 す る 調 査 は 以下 の 通 り で あ る (一 部 は 2011 年 度に
ま た がる )。
有効数
中学生ネット依存パネル調査
(1 回目/2 回目)
オンラインゲーム依存パネル
調査(1 回目/2 回目)
SNS 依 存 調 査
ソーシャルメディアユーザー
ネット依存調査
調査対象
東 京 都 23 区 内 の 公 立 中 学 生 ( 郵
840 人
送による質問紙調査)
1,163 人
オンラインゲームサイトγユーザ
ー ( PC 調 査 )
56,272 人 SNSα ユ ー ザ ー ( 携 帯 調 査 )
1,438 人
ソ ー シ ャ ル・メ デ ィ ア β ユ ー ザ ー
(携 帯 調 査 )
- 1 -
実施時期
2010/9-11
2011/2-3
依存者率
3.0%
3.7%
2010/9
2011/6
14.5%
12.9%
2010/10
11.0%
2010/10
5.8%
< イ ンタ ー ネ ッ ト 依 存 の 定 義 >
イ ン ター ネ ッ ト 依 存 の 定 義 は Young(1998)1) を も とに 、以 下 の 8 項 目 中 5 項 目 以 上 該
当 す るユ ー ザ ー を 依 存 傾 向 があ る と 判 断 し 依 存 者 と定 義 し た 。
① も と も と 予 定 し て い た よ り 長 時 間 <ネ ッ ト >を 利 用 し て し ま う
② <ネ ッ ト >を 利 用 し て い な い 時 も 、 <ネ ッ ト >の こ と を 考 え て し ま う
③ <ネ ッ ト >を 利 用 し て い な い と 、落 ち 着 か な く な っ た り 、憂 う つ に な っ た り 、落 ち 込 ん だ り 、
いらいらしたりする
④ <ネ ッ ト >の 利 用 時 間 を 減 ら そ う と し て も 、 失 敗 し て し ま う
⑤ ま す ま す 長 時 間 <ネ ッ ト >を 利 用 し て い な い と 満 足 で き な く な っ て い る
⑥ 落 ち 込 ん だ り 不 安 や ス ト レ ス を 感 じ た と き 、 逃 避 や 気 晴 ら し に <ネ ッ ト >を 利 用 し て い る
⑦ <ネ ッ ト >の 利 用 が 原 因 で 家 族 や 友 人 と の 関 係 が 悪 化 し て い る
⑧ <ネ ッ ト >を 利 用 し て い る 時 間 や 熱 中 し て い る 度 合 い に つ い て 、ご ま か し た り ウ ソ を つ い た
ことがある
※<ネ ッ ト>は イ ン タ ー ネ ッ ト依 存 を 測 定 す る 場 合<ネ ッ ト>と し て 表 記 し てい る が 、 調 査に
よ っ て は 必 要 に 応 じ て 置 き 換 え て 使 用 し て い る 。 例 え ば 、 SNSα 依 存 調 査 に お い て は <SNS
α>( 具 体 的 なサ ー ビ ス 名 ) を用 い た 。
本 報 告書 で は 、 調 査 に 協 力 いた だ い た ゲ ー ム サ イ ト運 営 会 社 、 SNS 運 営 会社 、 ソ ー シャ
ル・メ デ ィア 運 営 会 社 に つ いて 、オ ン ラ イ ン ゲ ー ムサ イ ト γ 、SNSα 、ソ ー シ ャル・メ デ ィ
ア β と仮 名 表 記 し て い る 。
< そ の他 、 用 語 の 定 義 ・ 解 説>
イ ン ター ネ ッ ト 利 用 : 特 に 明記 さ れ て い な い 限 り 、パ ソ コ ン や 携 帯 電 話 、ス マ ー ト フォ
ン な ど機 器 を 問 わ ず、ま た 接続 先 の コ ン テ ン ツ も 特に 限 定 し な い( メ ー ル利 用 も 含 む)、イ
ン タ ーネ ッ ト の 利 用 を 指 す 。
パ ネ ル調 査 : 同 一 サ ン プ ル に対 し て 2 回 質 問 紙 調 査を 行 い 、 2 つ の 時 点 での 変 化 を 分析
す る こと に よ り 、より 客 観 的な 変 化 や 因 果 関 係 の 推定 を 行 う 。本報 告 に おい て は 、
「中学生
ネ ッ ト依 存 パ ネ ル 調 査 」 お よび 「 オ ン ラ イ ン ゲ ー ム依 存 パ ネ ル 調 査 」 で パネ ル 調 査 を 行っ
た 。 また 「 SNS 依 存 調 査」、「ソ ー シ ャ ル メ デ ィ ア ユー ザ ー ネ ッ ト 依 存 調 査」 は ネ ッ ト 依存
の 実 態が ど の よ う な も の で ある か を 調 べ る 実 態 調 査と な る 。 本 稿 で は 、 実態 調 査 に つ いて
は 実 態を 報 告 す る の み と し てい る 。
1)
Young の 定 義 は そ も そ も ア ル コ ー ル 依 存 や ギ ャ ン ブ ル 依 存 を も と に 作 成 さ れ て い る 。 ネ ッ ト 依 存 に
つ い て の 定 義 は 多 種 多 様 に 存 在 す る が 、 比 較 的 利 用 頻 度 の 高 い Young の 基 準 を 用 い た 。 本 調 査 に
おける「依存者」は必ずしも、ただちに医学的治療を必要とするというものではない。
- 2 -
1 . 中学 生 ネ ッ ト 依 存 に 関 する パ ネ ル 調 査
1.1
調 査 の 概要
ネ ット の 悪 影 響 に 脆 弱 な 青少 年 に お け る ネ ッ ト 依存 の 実 態 を 確 か め る ため 、東 京 23 区内
の 中 学生 を 対 象 と す る パ ネ ルの 質 問 紙 調 査 を 行 っ た。対 象 は 東 京 23 区 内 の公 立 中 学 校 リス
ト か らラ ン ダ ム に 選 択 し た 11 区・15 校( 生 徒 数 1,361 人 )で あ る 。1 回目 調 査 は 2010 年
9 月 ~11 月 に か けて 行 い 、 配布 し た 15 校 の うち 13 校 から 1048 票 を 回 収し た 。 2 回 目 調
査 は 2011 年 2月 ~ 3 月 に か け1 回 目 調 査 を 満 了 し た 13 校 に実 施 し 、12 校 か ら 959 票 を 回
収 し た。 こ の う ち 1 回 目 ・ 2回 目 両 方 に 回 答 し た 840 人 が分 析 対 象 で あ る 2) 。 サ ン プ ル集
団 840 人 に お け る 男 女 比 は 男子 45.1%(379 人)・ 女 子 54.9% (461 人)、 Young 基 準 によ る
ネ ッ ト依 存 者 は 1 回 目 3.0% (25 人)・ 2 回 目 3.7%(31 人 )で あ っ た 。
1.2
調 査 の 目的
■ 目 的 1 ネ ッ ト の長 時 間 利用 と 依 存 傾 向 の 間 に おけ る 因 果 関 係 の 検 証
ネ ッ トの 長 時 間 利 用 は ネ ッ ト依 存 の 最 も 主 要 な 兆 候だ が 、 そ れ は ネ ッ ト 依存 の 原 因 とも
結 果 とも 言 わ れ 、先 行 研 究 では 影 響 の 方 向 性 が 十 分明 確 に さ れ て い な か った 。本 稿 では「 交
差 遅 れ効 果 モ デ ル 」
( 後 述 )を用 い て 、長 時間 利 用 が依 存 傾 向 を 高 め る の か、逆 に 依 存 傾 向
が 高 まっ た 結 果 と し て 長 時 間利 用 に 至 る の か 検 証 した 。
■ 目 的 2 依 存 傾 向に か か わり の あ る ウ ェ ブ 上 の サー ビ ス ・ コ ン テ ン ツ の特 定
先 行研 究 で は 、 チ ャ ッ ト やオ ン ラ イ ン ゲ ー ム な どウ ェ ブ 上 で の 行 動 や コミ ュ ニ ケ ー ショ
ン が 双方 向 的 ・ 同 期 的 に 進 行す る サ ー ビ ス ・ コ ン テン ツ が ネ ッ ト 依 存 と 深く か か わ っ てい
る と 言わ れ て い る 。 本 稿 で はこ の よ う な 傾 向 が 中 学生 で も 見 ら れ る か 、 各種 サ ー ビ ス ・コ
ン テ ンツ の 利 用 頻 度 と 依 存 得点 を 組 み 合 わ せ た 交 差遅 れ 効 果 モ デ ル に よ って 検 証 す る 。
■ 目 的 3 ネ ッ ト 利用 に よ る依 存 傾 向 へ の 影 響 を 左右 す る 要 因 の 検 証
ネ ット 時 間 や ウ ェ ブ 上 の サー ビ ス・コン テ ン ツ 利 用頻 度 が 依 存 傾 向 に 影 響を 及 ぼ す 場 合、
利 用 者の 属 性 に よ っ て 影 響 の強 さ が 異 な る 可 能 性 が考 え ら れ る 。 本 調 査 では 性 別 と 「 自室
で PC を 利 用 する か 否 か 」 の 二つ に つ い て 、 こ れ を 検証 し た 。
■ 目 的 4 依 存 傾 向が 生 活 行動 ・ 対 面 交 流 ・ 精 神 的健 康 に 及 ぼ す 影 響 の 検証
ネ ット 依 存 は 、 仕 事 ・ 学 業・ 日 常 生 活 な ど の 社 会的 活 動 を 阻 害 し 、 友 人や 家 族 と の 交流
を 減 らし 、 孤 独 感 や 抑 鬱 の 高ま り な ど 精 神 的 健 康 の悪 化 を 招 く と さ れ て きた 。 他 方 で 、対
人 関 係や 精 神 的 健 康 の 悪 化 こそ ネ ッ ト 依 存 の 原 因 とも 指 摘 さ れ て お り 、 やは り い ず れ が原
因 で いず れ が 結 果 な の か 十 分明 ら か に な っ て い る とは 言 え な い 。 本 稿 で は交 差 遅 れ 効 果モ
デ ル を用 い て 、 依 存 傾 向 と それ ら の 弊 害 の 因 果 関 係に つ い て も 検 証 を 行 った 。
2)
対 象 者 か ら は 各 校 の 同 意 を 得 て ク ラ ス 番 号・出 席 番 号 を 調 査 票 に 自 記 し て も ら っ て お り 、そ れ を 基 に
1回目・2回目の回答者を照合した。
- 3 -
< 分 析方 法 >
■ 依 存 得 点 :依 存 傾 向 を 表 す変 数
本 稿で は Young 依 存 尺 度 8項 目 へ の 該 当 数 を 単 純加 算 し た も の を 「 依 存得 点 」 と 呼 び、
便 宜 的に 依 存 傾 向 の 高 さ を 表す 変 数 と し た 。
■ 交 差 遅 れ 効果 モ デ ル : 因 果関 係 を 分 析 す る た め の代 表 的 手 法
変数間の因果関係を分析する上で今日代表的に
用いられるのが「交差遅れ効果モデル」である。
T1 変 数 X
T2 変 数 X
A
こ れ は二 つ の 変 数 を 異 な る 時点(T1 と T2)で 組 み
合わせることで、変数間に有意な関連があった場
合、単なる相関でなく片方から他方への因果的な
影 響 とし て 捉 え る こ と が で きる 分 析 手 法 で あ る 。
T1 依 存 得 点
B
T2 依 存 得 点
図 1.1 交 差 遅 れ 効 果 モ デ ル 概 念 図
本 稿 で は T2 時点 の 依 存 得 点 と変 数 X( ネ ッ ト 利 用 時間 や サ ー ビ ス・コ ン テン ツ 利 用 頻度
な ど )そ れ ぞ れ を 目 的 変 数 とす る 重 回 帰 分 析 で 図 1.1 に お け る パ ス A と Bの 値 を 求 め 、A
か B 片方 の み 有 意 な 場 合 は 一方 向 的 な 、両 方 有 意 な 場合 は 双 方 向 的 な 影 響 があ る と み な す。
分 析 対象 は PC ネ ット 時 間 の場 合 「 PC ネ ッ ト 継 続 利用 者 (N=485)」、 携 帯 ネッ ト 時 間 の 場 合
「 携 帯ネ ッ ト 継 続 利 用 者(N=542)」 とす る 。
1.3
調 査 の 結果
目 的 1( ネ ッ ト の 長時 間 利 用と 依 存 傾 向 の 間 に お ける 因 果 関 係 の 検 証 ) の結 果
■ PC で は 、 長 時 間 の ネ ッ ト利 用 が 依 存 傾 向 を 高 める と と も に 、 依 存 傾 向が 高 い ほ ど ネッ
ト 利 用が 長 時 間 化 す る 、 双 方向 的 な 影 響 関 係
■ 携 帯 で は、ネ ッ ト 時 間 が 長く て も 依 存 傾 向 は 高 まら ず 、依 存 傾向 が 高 くて も 長 時 間 利 用
に は 結び つ か な い
PC ネッ ト 時 間 と 依 存 得 点 を組 み 合 わ せ た 分 析 3) で は 、「PC ネ ッ ト を 長 時 間利 用 す る ほ ど
依 存 得点 が 高 ま る 」影 響 と「 依 存 得 点 が 高い ほ ど PC ネ ッ トを 長 時 間 利 用 する 」影 響 の 双方
が 見 られ た 。 こ れ に 対 し 、 携帯 ネ ッ ト 時 間 と 依 存 得点 の 間 に は い ず れ の 方向 へ の 影 響 も見
ら れ なか っ た 。( 次 ペ ー ジ の 図 1.2)
3)
本 分 析 で は 、 図 示 し た 変 数 の ほ か に 「 性 別 」「 他 方 で の ネ ッ ト 利 用 」「 自 室 で の PC 利 用 有 無 」 を 統 制
変 数 と し て 投 入 し た ( い ず れ も 二 値 の カ テ ゴ リ ー 変 数 )。「 性 別 」 は 男 子 1,女 子 0。「 他 方 で の ネ ッ ト 利
用 」 と は 、 PC・ 携 帯 そ れ ぞ れ の 分 析 の 際 、 重 複 利 用 し て い る 他 方 の ネ ッ ト 利 用 の 影 響 を 統 制 す る た め に
入 れ た 変 数 で 、 PC ネ ッ ト 利 用 者 の 分 析 で は 「 1 回 目 の 携 帯 ネ ッ ト 利 用 の 有 無 」、 携 帯 ネ ッ ト 利 用 者 の 分
析 で は 「 1 回 目 の PC ネ ッ ト 利 用 の 有 無 」 を 表 す ( 利 用 1,非 利 用 0)。「 自 室 で の PC 利 用 有 無 」 は PC ネ
ッ ト 利 用 者 の 分 析 に お い て の み 投 入 し た ( 自 室 で 利 用 1,自 室 で 非 利 用 0)。 こ れ ら の 変 数 に 関 す る 分 析
結果は目的3の結果紹介で改めて言及する。
- 4 -
T1 PC
ネット時間
.49 ***
T2 PC
ネット時間
T1 携 帯
ネット時間
.10 *
.01 ns
.18 ***
.08 ns
T1
依存得点
.53 ***
T2
依存得点
T1
依存得点
.45 ***
T2 携 帯
ネット時間
T2
依存得点
.53 ***
図 1.2 ネ ット 時 間 と 依 存 得 点の 関 連 ( 左 : PC ネ ッ ト時 間 、 右 : 携 帯 ネ ッ ト時 間 )
※ 数 値 は 重 回 帰 分 析 の 標 準 化 回 帰 係 数 : *** p<.001, * p<.05, ns 有 意 性 な し 。
目 的 2(依 存傾 向 に か か わ り のあ る ウ ェ ブ 上 の サ ー ビス ・ コ ン テ ン ツ の 特 定 )の 結 果
■ PC で の 「SNS・ 掲 示 板 ・ ツイ ッ タ ー 」 利 用 は 依 存傾 向 を 高 め る 影 響
■ 依 存 傾 向 が高 い ほ ど 、「 オ ン ラ イ ン ゲ ー ム 」 を 除 くす べ て の サ ー ビ ス ・ コン テ ン ツ の 利
用 頻 度が 高 ま る 影 響
表 1.1 PC の ウ ェ ブ サ ー ビ ス ・ コ ン テ ン ツ
利用頻度と依存得点の関連
「 目 的 1」の 結 果 か ら、中 学 生 で はも っ
ぱ ら PC で の ネ ッ ト利 用 が 依存 傾 向 と 結 び
T1
サービス利用
つ い てい る こ と が 明 ら か と なっ た 。そ こ で
T2
サービス利用
A
次 に 、 PC ネ ッ ト 利 用 の 中 で も ど の よ う な
サ ー ビス・コ ン テ ンツ と 依 存の 関 わ り が 深
T1
依存得点
い の か、5 つ の サ ービ ス・コ ン テ ン ツ 利 用
頻度と依存得点との関連を交差遅れ効果
4)
モ デ ルに よ り 検 証 し た 。
の利用頻度が多いほど依存得点が高まる影
響 が ある こ と が 明 ら か と な った ( 表 1.1 の
パ ス A)。ま た依 存 得 点 が 高 いほ ど「 オ ン ラ
インゲーム」を除くすべてのサービス・コ
ンテンツでの利用頻度が高まる影響(表
4)
パス
サービス利用
そ の 結 果 、「 SNS・ 掲 示 板 ・ ツ イ ッ タ ー 」
1.1 の パ ス B)が 見 ら れ た 。
B
T2
依存得点
A
B
チ ャ ッ ト・メ ッ セ ン ジ ャ ー 等
.06
ns
.10
*
SNS・ 掲 示 板 ・ ツ イ ッ タ ー
.11
*
.12
**
ブ ロ グ ・ HP・ ニ ュ ー ス
.04
ns
.11
*
動画サイト
.08
ns
.19
***
- .01
ns
.03
ns
オンラインゲーム
※ 分 析 対 象 : PC ネ ッ ト 継 続 利 用 者 (N=485)
※ 数 値 は 重 回 帰 分 析 の 標 準 化 回 帰 係 数 : ***
p<.001, ** p<.01, * p<.05, ns 有 意 性 な し 。
※ 本 分 析 で も「 性 別 」
「他方でのネット利用」
「自室
で の PC 利 用 有 無 」 を 統 制 変 数 と し て 投 入 し た 。
中 学 生 調 査 で は PC ネ ッ ト 上 の サ ー ビ ス ・ コ ン テ ン ツ 利 用 頻 度 に つ い て 「 ほ ぼ 毎 日 」「 週 に 数 回 」「 月
に 数 回 」「 月 1 回 以 下 」「 利 用 し て い な い 」 の 五 件 式 で 17 項 目 に わ た り 質 問 し て い る ( 元 の 変 数 に つ い
て は 橋 元 良 明 編 (2011)「 ネ ッ ト 依 存 の 現 状 ― 2010 年 調 査 」報 告 書 を 参 照 の こ と )。本 稿 で は「 チ ャ ッ ト ・
メ ッ セ ン ジ ャ ー・ス カ イ プ( コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン サ ー ビ ス の う ち 同 期 性・双 方 向 性 の 高 い も の )」
「 SNS・
掲 示 板・ツ イ ッ タ ー( コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン サ ー ビ ス の う ち 同 期 性・双 方 向 性 の や や 低 い も の )」
「 ブログ・
ホ ー ム ペ ー ジ ・ ニ ュ ー ス サ イ ト ( 情 報 閲 覧 が 中 心 と な る も の )」「 動 画 サ イ ト 」「 オ ン ラ イ ン ゲ ー ム 」 の
5 つ に ま と め 、「 ほ ぼ 毎 日 」 = 5 か ら 「 利 用 し て い な い 」 = 1 と な る よ う な 合 成 変 数 を 作 成 し た 。 合 成
の際には下位項目の評定値のうちの最大値を合成変数の値とした。
- 5 -
目 的 3(ネ ット 利 用 に よ る 依 存 傾 向 へ の 影 響 を 左 右 する 要 因 の 検 証)の 結 果
■ 中 学 生 で は女 子 ほ ど 依 存 傾向 が 高 い
表 1.2 は 、
「目 的 1 」で 示 し た PC ネッ ト 時 間 か ら 依存 得 点 へ の 影 響 と、
「 目 的 2」で 示 し
た「SNS・掲示 板・ツ イ ッ タ ー 」利 用 頻 度 か ら 依 存 得点 へ の 影 響 そ れ ぞ れ につ い て の 重 回帰
分 析 結果 を 、 投 入 し た す べ ての 変 数 に つ い て 記 載 した も の で あ る 。 こ れ を見 る と 3 つ の統
制 変 数(「 性 別」
「 他方 の ネ ット 利 用 有 無」
「 自 室 で の PC 利 用有 無 」)の う ち「 性 別 」の みが
依 存 得点 に 影 響 を 及 ぼ し て いる こ と が 分 か る( 表 1.2 の 二 重 線 枠 内)。マ イ ナス の 係 数 は「 女
子 ほ ど依 存 得 点 が 高 い 」こ とを 表 し て い る 。PC ネッ ト に 関 し て は、親 な どの 目 が 行 き 届 き
に く い自 室 で の 利 用 が 依 存 傾向 を 高 め る こ と が 考 えら れ た が、
「 自 室 で の 利用 の 有 無 」から
依 存 得点 へ の 影 響 は 見 ら れ なか っ た 。
表 1.2 PC ネ ット 利 用 者 に お ける 、 依 存 得 点 へ の 影 響要 因
目的変数
T2 依 存 得 点
説明変数
- .14 ***0
- .13 **0
T1 携 帯 ネ ッ ト 利 用 有 無
.05 ns
.03 ns
自 室 で の PC 利 用 有 無
.00 ns
.02 ns
0.53 ***
0.56 ***
T1 PC ネ ッ ト 時 間
.10 *0
―
T1 SNS 等 利 用 頻 度
―
.11 *0
0.37 ***
0.34 ***
性 別 (男 子 1,女 子 0)
T1 依 存 得 点
調整済R2
※ 分 析 対 象 は PC ネ ッ ト 継 続 利 用 者 (N=485)。数 値 は 重 回 帰 分 析 の 標 準 化 回 帰 係 数:*** p<.001, ** p<.01,
* p<.05, ns 有 意 性 な し 。「 性 別 」 で 負 の 係 数 の 場 合 、 女 子 ほ ど 依 存 得 点 が 高 い こ と を 表 す 。
■ PC ネ ッ ト 時 間 や「SNS・掲 示板・ツ イ ッ タ ー 」利 用頻 度 か ら 依 存 傾 向 への 影 響 が 、性 別
に よ って 異 な る こ と は な い
表 1.2 と 「 目 的 1」「 目 的 2」 の 結 果 を 併 せ て 考 える と 、 PC ネ ッ ト 時 間 や SNS 等 利 用頻
度 か ら依 存 傾 向 へ の 影 響 は 、男 女に よ っ て そ の 強 さが 違 う 可 能 性 が 考 え られ る 5) 。そ こ で 、
性 別×PC ネッ ト 時 間 お よ び 性別 ×SNS 等 利用 頻 度 の交 互 作 用 が あ る か 重 回帰 分 析 に よ り 確
認 を 行っ た 。
そ の 結果 、 説 明 変 数 そ れ ぞ れの 主 効 果 ( 単 独 の 効 果) は 有 意 で あ っ た が 、二 変 数 に よる
交 互 作用 効 果 は 見 ら れ な か った( 次 ペ ー ジの 表 1.3)。し た が っ て「PC ネッ ト の 長 時 間 利用
( な いし は SNS 等 の 高 頻 度 利用 ) に お い て 、 女 子 (も し く は 男 子 ) ほ ど 依存 傾 向 の 高 まり
が 顕 著で あ る 」 と い っ た 複 合的 な 関 連 は な い と 考 えら れ る 。
5)
このような、説明変数同士の目的変数に対する複合的関係を統計用語で「交互作用」と呼ぶ。
- 6 -
表 1.3 性 別 と PC ネッ ト 利 用量 が T2 依 存 得 点 に 及 ぼす 主 効 果 と 交 互 作 用 効果
目的変数
T2 依 存 得 点
説明変数
T1 依 存 得 点
.53
性 別 (男 子 1,女 子 0)
- .14
T1 PC ネ ッ ト 時 間
.11
性 別 ×T1PC ネ ッ ト 時 間 ( 交 互 作 用 項 )
- .01
***
**
.56
***
**
- .14
*
―
ns
―
T1 SNS 等 利 用 頻 度
―
.14
**
性 別 ×T1SNS 等 利 用 頻 度 ( 交 互 作 用 項 )
―
- .04
ns
調 整 済 R2
.37
***
.41
※ 分 析 対 象:PC ネ ッ ト 継 続 利 用 者 (N=485)。数 値 は 重 回 帰 分 析 の 標 準 化 回 帰 係 数
* p<.05, ns 有 意 性 な し 。
***
*** p<.001, ** p<.01,
目 的 4( 依 存 傾 向 が生 活 行 動・ 対 面 交 流 ・ 精 神 的 健康 に 及 ぼ す 影 響 の 検 証 ) の 結 果
■ 依 存 傾 向 が高 い ほ ど 、 睡 眠時 間 が 短 く な る
勉 強時 間・睡 眠 時間 と 依 存得 点 の 関 連 を 検 証 し たと こ ろ 、
「 依 存 得 点 が 高い ほ ど 睡 眠 時 間
が 短 くな る 」 影 響 が 確 認 さ れた 。 勉 強 時 間 に 関 し ては 依 存 に よ る 影 響 は 見ら れ な か っ た。
T1
勉強時間
.49 ***
T2
勉強時間
T1
睡眠時間
.06 ns
- .02 ns
- .06 ns
- .11 **
T1
依存得点
.57 ***
T2
依存得点
T1
依存得点
.40 ***
.55 ***
T2
睡眠時間
T2
依存得点
図 1.3 生 活時 間 と 依 存 得 点 の関 連 ( 左 : 勉 強 時 間 、右 : 睡 眠 時 間 )
※ 分 析 対 象 : 双 方 と も ( PC・ 携 帯 双 方 含 む ) ネ ッ ト 継 続 利 用 者 (N=685)。
※ 数 値 は 重 回 帰 分 析 の 標 準 化 回 帰 係 数 : *** p<.001, ** p<.01, ns 有 意 性 な し 。
■ 依 存 傾 向 が高 い ほ ど 親 と の会 話 時 間 が 短 く な る
■ 友 人 と の 関係 へ の 満 足 度 が低 い ほ ど 依 存 傾 向 が 高ま る
友 人・親 と の 対面 交 流 時 間・頻 度 お よ び関 係 満 足 度 と依 存 得 点 の 関 連 を 検 証し た と こ ろ 、
依 存 によ る 影 響 (次 ペ ー ジ 表 1.4 の パ ス B)と し て は 「依 存 得 点 が 高 い ほ ど 親と の 会 話 時 間
が 短 くな る 」 影 響 の み が 見 られ た 。 他 方 、 依 存 の 背景 (表 1.4 の パ ス A)と し て 「 友人 関 係
へ の 満足 度 が 低 い ほ ど 依 存 得点 が 高 ま る 」 影 響 も 見ら れ た 。
- 7 -
表 1.4 対 人関 係 指 標 と 依 存 得点 の 関 連
パス
対人関係指標
A
T1
対人関係指標
B
T2
対人関係指標
A
友人との会話時間
.01
ns
- .03
ns
親との会話時間
.06
ns
- .08
*
友人と遊ぶ頻度
- .06
ns
- .01
ns
友人関係への満足度
- .09
**
- .04
ns
親子関係への満足度
- .05
ns
- .01
ns
T1
依存得点
B
T2
依存得点
※ 分 析 対 象 :( PC・ 携 帯 双 方 含 む ) ネ ッ ト 継 続 利 用 者 (N=685)。
※ 数 値 は 重 回 帰 分 析 の 標 準 化 回 帰 係 数 : ** p<.01, * p<.05, ns 有 意 性 な し 。
■ 孤 独 感 や 抑鬱 が 高 い ほ ど 依存 傾 向 が 高 ま る 影 響
■ 同 時 に 、 依存 傾 向 が 高 い ほど 孤 独 感 や 抑 鬱 が 高 まる 影 響 も
精 神 的健 康 の 指 標 と し て 孤 独感 、抑 鬱 と 依 存 得 点 の関 連 を 検 証 し た と こ ろ、
「 孤 独感・抑
鬱 が 高い ほ ど 依 存 得 点 が 高 まる 」 と 同 時 に 「 依 存 得点 が 高 い ほ ど 孤 独 感 ・抑 鬱 が 高 ま る」
と い う双 方 向 的 な 影 響 が 見 られ た 。
T1
孤独感
.49 ***
T2
孤独感
T1
抑鬱
.07 *
.11 ***
.15 ***
.19 ***
T1
依存得点
.55 ***
T2
依存得点
T1
依存得点
.48 ***
.54 ***
T2
抑鬱
T2
依存得点
図 1.4 心 理傾 向 と 依 存 得 点 の関 連 ( 左 : 孤 独 感 、 右: 抑 鬱 )
※ 分 析 対 象 : 双 方 と も ( PC・ 携 帯 双 方 含 む ) ネ ッ ト 継 続 利 用 者 (N=685)。
※ 数 値 は 重 回 帰 分 析 の 標 準 化 回 帰 係 数 : *** p<.001, * p<.05, ns 有 意 性 な し 。
1.4
まとめ
目 的 1 ネ ット の 長 時 間 利 用 と 依 存 傾 向 の 間 に お け る因 果 関 係 の 検 証
■ PC で は 、 長 時 間 の ネ ッ ト利 用 が 依 存 傾 向 を 高 める と と も に 、 依 存 傾 向が 高 い ほ ど ネッ
ト 利 用が 長 時 間 化 す る 、 双 方向 的 な 影 響 関 係 が あ る。
■ 携 帯 で は、ネ ッ ト 時 間 が 長く て も 依 存 傾 向 は 高 まら ず 、依 存 傾向 が 高 くて も 長 時 間 利 用
に は 結び つ か な い 。
目 的 2 依 存傾 向 に か か わ り のあ る ウ ェ ブ 上 の サ ー ビス ・ コ ン テ ン ツ の 特 定
■ PC で の 「SNS・ 掲 示 板 ・ ツイ ッ タ ー 」 利 用 は 依 存傾 向 を 高 め る 影 響 が ある 。
■ 依 存 傾 向 が高 い ほ ど 、「 オ ン ラ イ ンゲ ー ム 」 を 除 くす べ て の サ ー ビ ス ・ コン テ ン ツ の 利
用 頻 度が 高 ま る 影 響 が 見 ら れた 。
- 8 -
目 的 3 ネ ット 利 用 に よ る 依 存傾 向 へ の 影 響 を 左 右 する 要 因 の 検 証
■ 中 学 生 で は女 子 ほ ど 依 存 傾向 が 高 い が 、 PC ネッ ト 時 間 や「SNS・掲 示 板・ツ イ ッ タ ー」
利 用 頻度 か ら 依 存 傾 向 へ の 影響 が 、 性 別 に よ っ て 異な る こ と は な い 。
目 的 4 依 存傾 向 が 生 活 行 動 ・対 面 交 流 ・ 精 神 的 健 康に 及 ぼ す 影 響 の 検 証
■ 依 存 傾 向 が高 い ほ ど 、睡眠 時 間 が 短 く なり 、親と の 会 話 時 間 が短 く な り、孤 独 感 や 抑鬱
が 高 まる 影 響 が 見 ら れ た 。
■ 反 面 、友人 と の 関 係 に 満 足し て い な か っ た り 、孤 独 感 や 抑 鬱 が高 い ほ ど依 存 傾 向 が 高 ま
る 影 響も 見 ら れ た 。
< 中 学生 調 査 か ら の 示 唆 >
(1 ) ネ ッ ト 利用 と ネ ッ ト 依 存の 関 わ り
PC ネ ッ トの 長 時 間 利 用 が ネッ ト 依 存 傾 向 を 高 め る原 因 に な っ て お り 、 中で も SNS・ 掲示
板 ・ ツイ ッ タ ー 等 の 高 頻 度 利用 が ネ ッ ト 依 存 に 結 びつ き や す い こ と が 明 らか と な っ た 。こ
の こ とか ら は 一 定 の コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン を 伴 う サ ービ ス ・ コ ン テ ン ツ が 依存 の 原 因 に なっ
て い るこ と が 示 唆 さ れ る が 、チ ャ ッ ト 等 の 利 用 や 携帯 電 話 で の ネ ッ ト 利 用が ネ ッ ト 依 存傾
向 に 影響 を 与 え て い な い こ とか ら 見 る と 、 中 学 生 調査 だ け で は 「 コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン 目的
の 利 用が ネ ッ ト 依 存 の 主 要 な原 因 」 と ま で は 断 定 でき な い 。
も っ とも「 目 的 2 」で は 、ネッ ト 依 存 傾 向 が 高 い ほど 様 々 な PC ネ ッ ト 上 のサ ー ビ ス・コ
ン テ ンツ 利 用 頻 度 が 高 ま る こと が 示 さ れ た 。 利 用 頻度 が 高 ま れ ば 多 く の 場合 ネ ッ ト 時 間も
伸 び るた め 、 そ の こ と に よ って さ ら に ネ ッ ト 依 存 傾向 が 高 ま る と い う 悪 循環 が 生 ま れ る可
能 性 は考 え ら れ る 。こ う し た悪 循 環 が 起 こ ら な い よう 、PC ネ ッ ト 利 用 の 長時 間 化・高 頻度
化 と いっ た ネ ッ ト 依 存 の 兆 候を な る べ く 早 い う ち に捉 え て 対 処 す る こ と が望 ま れ る 。
(2 ) 生 活 行 動・ 対 人 関 係 ・ 精神 的 健 康 と ネ ッ ト 依 存の 関 わ り
ネ ット 依 存 傾 向 が 高 ま る こと に よ っ て 、 睡 眠 時 間が 短 く な る ・ 親 子 の 会話 時 間 が 短 くな
る ・ 孤独 感 や 抑 鬱 が 高 ま る とい っ た ネ ガ テ ィ ブ な 影響 が 起 こ る こ と が 明 らか と な り 、 ネッ
ト 依 存に 対 処 す る 必 要 性 の ある こ と が 改 め て 示 さ れた 。
他 方 で、 友 人 と の 関 係 に 満 足し て い な い 人 や 孤 独 感・ 抑 鬱 の 高 い 人 に お いて ネ ッ ト 依存
傾 向 が高 ま る こ と も 明 ら か とな っ た 。 ネ ッ ト 依 存 の防 止 に は 、 ネ ッ ト 利 用そ の も の の 抑制
だ け では な く 、 対 人 関 係 の 不全 や 孤 独 感 ・ 抑 鬱 と いっ た 精 神 的 落 ち 込 み への 対 処 も 必 要で
あ る こと が 示 唆 さ れ る 。
※ 中 学生 調 査 の よ り 詳 細 な 結果 に つ い て は 下 記 を 参照
・ 橋 元 良 明 編 (2011) 「 ネ ッ ト 依 存 の 現 状 ― 2010 年 調 査 」 総 務 省 ・ 安 心 ネ ッ ト づ く り 促 進 協 議 会 共 同 研 究 報 告 書 .
・ 堀 川 裕 介 、 橋 元 良 明 、 小 室 広 佐 子 、 小 笠 原 盛 浩 、 大 野 志 郎 、 天 野 美 穂 子 、 河 井 大 介 ( 2012)「 中 学 生 パ ネ ル 調 査
に 基 づ く ネ ッ ト 依 存 の 因 果 的 分 析 」 ,『 東 京 大 学 大 学 院 情 報 学 環 情 報 学 研 究 調 査 研 究 編 』 ,28,161-201.
- 9 -
2 . オン ラ イ ン ゲ ー ム 利 用 者の オ ン ラ イ ン ゲ ー ム 依存 に 関 す る パ ネ ル 調 査
2.1
調 査 の 概要
日 本国 内 の 大 手 オ ン ラ イ ンゲ ー ム サ イ ト γ の 登 録会 員 の う ち 、 パ ソ コ ン版 の 利 用 者 全数
を 対 象に オ ン ラ イ ン ア ン ケ ート 調 査 を 行 っ た 。 こ の際 、 同 一 回 答 者 に 二 度の ア ン ケ ー トを
行 い 依存 の 影 響 を 確 認 す る 「パ ネ ル 調 査 」 の 手 法 をと り 、 オ ン ラ イ ン ゲ ーム 依 存 と そ の影
響 の 因果 関 係 を 分 析 し た 。
1 回目 調 査 は 2010 年 9 月 10 日(金 )から 同 年 9 月 17 日(金 )にか け て 行 い、有 効 票数 5861
票 を 回収 し た 。 2 回 目 調 査 は 2011 年 7 月 8 日 (金 )から 同 年 7 月 14 日 (金 )にか け 1 回 目 調
査 の 回答 者 に 対 し て 実 施 し 、有 効 票 数 1163 票 を 回 収し た 。
2 回 目 調 査 に お ける 男 女 比は 男 性 52.1%(606 人)・女 性 47.9%(557 人)、Young 基 準 によ
る ネ ット 依 存 者 は 1 回 目 が 14.5%(850 人 )、 2 回 目 が 12.9% (150 人 )で あ っ た 。
2.2 調査 の 目 的
■目的 1
オ ン ラ イン ゲ ー ムの 長 時 間 利 用 と 依 存 傾向 の 因 果 関 係 の 検 証
オ ンラ イ ン ゲ ー ム の 利 用 時間 が 増 え る こ と で 依 存傾 向 が 増 す の か 、 依 存に な る こ と で利
用 時 間が 増 え る の か 、 因 果 関係 を 検 証 す る 。
■目的 2
オ ン ラ イン ゲ ー ム依 存 と 勉 強 時 間 ・ 睡 眠時 間 の 因 果 関 係 の 検 証
オ ン ライ ン ゲ ー ム 依 存 が 学 生の 勉 強 時 間 ・ 睡 眠 時 間を 減 少 さ せ る 原 因 に なっ て い る か、
因 果 関係 を 検 証 す る 。
■目的 3
オ ン ラ イン ゲ ー ム依 存 と 親 と の 会 話 時 間・ 友 人 と の 接 触 時 間 の因 果 関 係 の 検 証
オ ンラ イ ン ゲ ー ム 依 存 が 親と の 会 話 時 間 や 友 人 との 接 触 時 間 を 減 ら す 原因 と な っ て いる
か 、 因果 関 係 を 検 証 す る 。
■目的 4
オ ン ラ イン ゲ ー ム依 存 と 抑 う つ 傾 向 の 因果 関 係 の 検 証
オ ンラ イ ン ゲ ー ム 依 存 が 原因 で 抑 う つ 傾 向 を 増 すの か 、 抑 う つ が 原 因 でオ ン ラ イ ン ゲー
ム 依 存に な る の か 、 因 果 関 係を 検 証 す る 。
- 10 -
< 分 析方 法 >
オ ンラ イ ン ゲ ー ム 依 存 者 と非 依 存 者 を 比 較 し 、 その 影 響 に つ い て 因 果 の方 向 性 を 検 証す
る た め、
「 交差 遅 れ 効 果 モ デ ル」を 用 い て 共分 散 構 造分 析 を 行 っ た 。
「 交 差 遅れ 効 果 モ デ ル」
は 変 数間 の 因 果 関 係 を 分 析 する 手 法 で あ り 、 異 な る時 点 に お け る 影 響 の 強さ
( 右 図の 交 差 す る A と B の 矢印 ) を 比 較 し 、 ど ち らか 片 方 の み が 統 計 的 に有 意 で あ っ た場
合 は 一方 向 の 影 響 、 両 方 が 有意 で あ っ た 場 合 は
双 方 向の 影 響 が あ る と み な すも の で あ る 。
T2 依 存 得 点
T1 依 存 得 点
A
な お 、以 降 の モ デ ル 図 に お いて は T1 間 の 相 関
1
B
と 誤 差間 の 相 関 を 省 略 し 、 T1・ T2 間 の 標 準 化
T1 変 数 X
回 帰 係数 の み を 表 記 す る 。
T2 変 数 X
図 2.1 交 差 遅 れ 効 果 モデ ル
2.3
e
e
2
調 査 の 結果
目 的 1( オ ン ラ イ ンゲ ー ム の長 時 間 利 用 と 依 存 傾 向の 因 果 関 係 の 検 証 ) の結 果
■
オ ン ラ イ ン ゲ ー ム の 利 用 時 間 が 長 い ほ ど 依 存 に な り や す い (男 性 の み )こ と が 検 証
さ れ た。
■
依存が原因でオンラインゲームの利用時間が長くなるという関係は見られなかっ
た。
男 性の 場 合 、 オ ン ラ イ ン ゲー ム の 利 用 時 間 が 長 いほ ど 依 存 に な り や す い と い う 因 果 関係
が 見 られ た 。逆 に、依 存 度 が 高い ほ ど 利 用 時 間 が 長 くな る と い う 関 係 は 見 られ な か っ た( 図
2.2 左 )。一 方 、女 性 は オ ン ライ ン ゲ ー ム 依 存 と オ ンラ イ ン ゲ ー ム 利 用 時 間と の 間 に 関 係性
は 見 られ な か っ た ( 図 2.2 右 )。
T1
依存得点
.61 ***
T1
依存得点
T2
依存得点
T2
依存得点
.02 ns
.03 ns
-.01 ns
.10 **
T1
利用時間
.69 ***
.53 ***
T1
利用時間
T2
利用時間
.58 ***
T2
利用時間
図 2.2 オ ンラ イ ン ゲ ー ム 依 存得 点 と オ ン ラ イ ン ゲ ーム 利 用 時 間 ( 左 : 男 性、 右 : 女 性 )
※ 分 析 対 象 : 左 図 は 男 性 (N=583)、 右 図 は 女 性 (N=533)。
※ 数 値 は 標 準 化 回 帰 係 数 : *** p<.001, ** p<.01, * p<.05, ns 有 意 差 な し
- 11 -
目 的 2( オ ン ラ イ ンゲ ー ム 依存 と 勉 強 時 間 ・ 睡 眠 時間 の 因 果 関 係 の 検 証 )の 結 果
■
オ ン ライ ン ゲ ー ム 依 存 が 原 因で 勉 強 時 間 が 減 少 す るこ と が 検 証 さ れ た 。
■
オンラインゲーム依存が睡眠時間を減少させるという関係は見られなかった。
学 生 の勉 強 時 間 と 睡 眠 時 間 につ い て 、 オ ン ラ イ ン ゲー ム 依 存 が 原 因 で 勉 強時 間 が 削 ら れる
と い う因 果 関 係 が 見 ら れ た( 図 2.3 左)。一 方 、オン ラ イ ン ゲ ー ム依 存 と 睡眠 時 間 と の 間 に
関 係 性は 見 ら れ な か っ た ( 図 2.3 右 )。
T1
依存得点
.62 ***
T2
依存得点
T1
依存得点
T2
依存得点
.02 ns
-.14 *
-.01 ns
T1
勉強時間
.62 ***
-.04 ns
.29 ***
T2
勉強時間
T1
睡眠時間
図 2.3 学 生の 生 活 時 間 と 依 存得 点 ( 左 : 勉 強 時 間
.61 ***
T2
睡眠時間
右:睡眠時間)
※ 分 析 対 象 : 左 図 は 学 生 限 定 (N=210)、 右 図 も 学 生 限 定 (N=207)。 欠 損 値 処 理 の 関 係 で 数 値 が 異 な る 。
※ 数 値 は 標 準 化 回 帰 係 数 : *** p<.001, ** p<.01, * p<.05, ns 有 意 差 な し
目 的 3( オ ン ラ イ ンゲ ー ム 依存 と 親 と の 会 話 時 間・友 人 と の 接 触 時 間 の 因果 関 係 の 検 証)
の結果
■
オ ン ライ ン ゲ ー ム 依 存 が 原 因で 親 と の 会 話 時 間 が 減少 す る こ と が 検 証 さ れた 。
■
親 と の会 話 時 間 が 少 な い こ とは オ ン ラ イ ン ゲ ー ム 依存 の 原 因 に な る 。
■
オ ン ライ ン ゲ ー ム 依 存 が 原 因で 友 人 と 会 う 時 間 が 減少 す る こ と が 検 証 さ れた 。
親 との 会 話 時 間 に つ い て 、オ ン ラ イ ン ゲ ー ム 依 存が 原 因 で 会 話 時 間 が 削ら れ る と い う因
果 関 係と 、会 話 時間 が 少 な いほ ど 依 存 度 が 高 ま る とい う 双 方 の 因 果 関 係 が見 ら れ た( 図 2.4
左)。友 人 と会 う 時 間 に つ い ては 、オ ン ラ イン ゲ ー ム依 存 が 原 因 で 友 人 と 会う 時 間 が 削 ら れ
る と いう 因 果 関 係 が 見 ら れ た( 図 2.4 右)。
T1
依存得点
.64 ***
T2
依存得点
T1
依存得点
-.16 ***
T2
依存得点
-.15 ***
-.06 **
T1
親との会話
.65 ***
-.04 ns
.35 ***
T2
親との会話
T1 友 人 と
会う時間
.26 ***
図 2.4 人 間関 係 と 依 存 得 点 (左 : 親 と の 会 話 時 間 、右 : 友 人 と 会 う 時 間 )
※ 分 析 対 象 : 双 方 と も 欠 損 値 処 理 後 の 回 答 者 全 体 (N=1151)。
※ 数 値 は 標 準 化 回 帰 係 数 : *** p<.001, ** p<.01, * p<.05, ns 有 意 差 な し
- 12 -
T2 友 人 と
会う時間
目 的 4( オ ン ラ イ ンゲ ー ム 依存 と 抑 う つ 傾 向 の 因 果関 係 の 検 証 ) の 結 果
■
オンラインゲーム利用時間が原因で抑うつ傾向が高ま るという関係は見られなか
った。
■
オ ン ライ ン ゲ ー ム 依 存 が 原 因で 抑 う つ 傾 向 が 高 ま るこ と が 検 証 さ れ た 。
■
抑 う つ傾 向 が 高 い こ と が オ ンラ イ ン ゲ ー ム 依 存 の 原因 に な る こ と が 検 証 され た 。
抑 うつ と オ ン ラ イ ン ゲ ー ム利 用 時 間 ・ 依 存 度 と の関 係 を 見 る と 、 オ ン ライ ン ゲ ー ム 利用
時 間 と抑 う つ 傾 向 の 間 に 有 意な 関 係 性 は 見 ら れ な かっ た( 図 2.5 左 )。一方 オ ン ラ イ ン ゲー
ム 依 存度 と 抑 う つ 傾 向 の 間 には 、 オ ン ラ イ ン ゲ ー ム依 存 は 抑 う つ 傾 向 を 高め 、 抑 う つ 傾向
に あ る者 は オ ン ラ イ ン ゲ ー ム依 存 に な り や す い と いう 双 方 向 的 な 関 連 が 見ら れ た ( 図 2.5
右)。
T1
利用時間
.56 ***
T2
利用時間
T1
依存得点
.02 ns
.09 ***
.01 ns
.06 *
T1
抑うつ
.64 ***
T2
抑うつ
T1
抑うつ
.64 ***
.60 ***
T2
依存得点
T2
抑うつ
図 2.5 抑 うつ と オ ン ラ イ ン ゲー ム 利 用 時 間 ・ 依 存 得点 ( 左 : 利 用 時 間 、 右: 依 存 得 点 )
※ 分 析 対 象 : 左 図 : 回 答 者 全 体 (N=1121)、 右 図 : 回 答 者 全 体 (N=1151)。 そ れ ぞ れ 欠 損 値 処 理 を 行 っ た 。
※ 数 値 は 標 準 化 回 帰 係 数 : *** p<.001, ** p<.01, * p<.05, ns 有 意 差 な し
2.4
まとめ
(1 ) オ ン ラ イン ゲ ー ム 依 存 の原 因
本 調査 の 結 果 、 オ ン ラ イ ンゲ ー ム 利 用 時 間 、 親 との 会 話 時 間 、 抑 う つ 傾向 が オ ン ライ
ン ゲ ーム 依 存 を 導 く 要 因 と なる こ と が 示 唆 さ れ た 。た だ し 、 利 用 時 間 が 依存 の 要 因 とし
て 見 られ た の は 男 性 の み で あっ た 。 こ の 男 女 差 に は多 く の 要 因 が 関 連 し てい る と 思 われ
る が 、男 女 間 に 大 き な 差 が 見ら れ た 「 親 と の 会 話 時間 」 を 基 準 に 群 分 け する と 、 1 時点
目 で の親 と の 会 話 時 間 が 15 分 未 満 の群( 男 性 224 人・女 性 130 人 )で は利 用 時 間 が 依存
の 原 因と な り 、15 分 以 上 の 群(男 性 382 人・女 性 427 人 )で は利 用 時 間 は 依 存の 原 因 に な
っ て いな か っ た (図 2.6)。 こ れ は 親 子 の会 話 が 多 く 行わ れ て い る 場 合 、 オ ンラ イ ン ゲ ー
ム を 長時 間 利 用 し て も 依 存 の原 因 に な り に く い 可 能性 を 示 唆 し て い る 。
- 13 -
T1
依存得点
.68 ***
T1
依存得点
T2
依存得点
T2
依存得点
.04 ns
-.01 ns
.04 ns
.08 *
T1
利用時間
.63 ***
.58 ***
T1
利用時間
T2
利用時間
.56 ***
T2
利用時間
図 2.6 オ ンラ イ ン ゲ ー ム 依 存得 点 と オ ン ラ イ ン ゲ ーム 利 用 時 間
( 左 :親 と の 会 話 時 間 が 15 分 未 満 、右 : 親 と の 会 話時 間 が 15 分 以 上 )
※ 分 析 対 象 :左 図 は親 との会 話 時 間 が 15 分 未 満 の群 (N=354)、右 図 は 15 分 以 上 の群 (N=809)。
※ 数 値 は 標 準 化 回 帰 係 数 : *** p<.001, ** p<.01, * p<.05, ns 有 意 差 な し
(2 ) オ ン ラ イン ゲ ー ム 依 存 の影 響
オ ン ライ ン ゲ ー ム 依 存 は 抑 うつ 傾 向 を 高 め 、 友 人 と会 う 時 間 ・ 親 と の 会 話時 間 ・ 学 生の
勉 強 時間 を 減 少 さ せ る 原 因 とな る こ と が 分 か っ た 。ま た 、 オ ン ラ イ ン ゲ ーム の 長 時 間利
用 と 抑う つ 傾 向 の 間 に は 有 意な 因 果 関 係 は 見 ら れ ず、 抑 う つ の 原 因 に な るの は オ ン ライ
ン ゲ ーム の 長 時 間 利 用 で は なく オ ン ラ イ ン ゲ ー ム への 依 存 傾 向 で あ る こ とが 示 さ れ た。
( 3 )オ ン ラ イ ン ゲ ー ム 依 存へ の 対 処 に 関 し て
本 調査 の 結 果 、 抑 う つ 傾 向が 強 い こ と 、 親 と の 会話 時 間 が 少 な い こ と 、オ ン ラ イ ンゲ
ー ム 利用 時 間 が 長 い こ と が オン ラ イ ン ゲ ー ム 依 存 に結 び つ く 要 因 と な る こと が 検 証 され
た 。 これ ら の 要 因 を 絶 つ こ とで 、 オ ン ラ イ ン ゲ ー ム依 存 へ の リ ス ク は 減 少す る だ ろ う。
す な わち 、 抑 う つ 傾 向 が 高 い場 合 に は 意 識 的 に オ ンラ イ ン ゲ ー ム の 利 用 を控 え る ( ある
い は 抑う つ の 原 因 と な っ て いる 問 題 を 解 決 す る ) こと 、 家 族 間 で の コ ミ ュニ ケ ー シ ョン
を 十 分に 行 う こ と 、 オ ン ラ イン ゲ ー ム 利 用 時 間 が 長く な り 過 ぎ な い よ う に注 意 す る こと
が 、 オン ラ イ ン ゲ ー ム 依 存 の予 防 ・ 回 復 に 対 し て 有効 で あ る と 考 え ら れ る。
ただし、解 釈 の際 には本 研 究 のいずれの結 果 も一 部 のオンラインゲームユーザーをサンプルとし
ている点に注 意 する必 要 がある。特にパソコンでオンラインゲームを行 う利 用 者が 90%以 上 と多 く、
本 研 究のみを根 拠に一 般 化できるものではない。
- 14 -
3 .SNS 依 存 の 実 態 と SNS 利 用 に つい て の 主 観 的 評 価( SNSα依 存 調 査 )
3.1
SNSα 依 存 調 査 の 概 要
依 存 グル ー プ で は、
「 先 入 観 や印 象 論 で SNS 依 存 の 議論 を す る の で は な く、SNS の 利用
実態を学術的な方法で適切に把握し、正確な認識に基づいてネット依存を含む議論を行
う こ と 」を目 的 に 、SNS 依 存 につ い て 調 査 も 行 っ て きた 。そ こ で 本 章 で は 、SNS 依 存 の 実
態 と 主観 的 評 価 に つ い て 明 らか に す る こ と を 目 的 とす る 。
以 上 の目 的 を 明 ら か に す る ため に 、日 本 で 最 大 級 の SNS「 S N S α」( 登 録 ユー ザ ー 数
は 2010 年 10 月 時 点 で 約 2,000 万 ) の ユ ー ザ ー に 対し て 携 帯 電 話 を 用 い たイ ン タ ー ネ ッ
ト 調 査を 行 っ た 。 調 査 は SNSα 運 営 会社 の 協 力 の もと 、 携 帯 版 S N S α にロ グ イ ン し た
全ユーザーからランダムに調査協力依頼のリンクを表示し、調査時点での月間ログイン
ユ ー ザー 1,464 万 人 の う ち 71,926 人 か ら 回 答 が あっ た 。 そ の う ち 有 効 回答 は 56,272 人
で あ った 。 平 均 年 齢は 25.8 歳 、 男 女 比は 男 性 が 31.4% 、 女 性が 68.6% で あっ た 。 質 問
項 目 は 、 メ デ ィ ア 利 用 状 況 、 S N S α 利 用 状 況 ( PC、 携 帯 別 )、 <S N S α >依 存 度 な ど
15 問 に 加 え フェ イ ス シ ー ト 9 問 で 構成 さ れ て い る 。調 査 実 施 期 間 は 、 2010 年 10 月 4 日
( 月 )16 時か ら 10 月 7 日( 木 ) 16 時 ま で の 3 日間 公 開 、 実 施 した 。
3.2
調 査 の 目的
■目的 1
SNSα 利 用 者 に お ける 依 存 的 利 用 者 の 割 合
SNSα 利 用 者 の う ち の 依 存 的 な 利 用 を し て い る ユ ー ザ ー の 割 合 と 基 本 的 な 属 性 項 目 と
の 関 係を 分 析 す る こ と に よ り、 SNSαに 対 す る 依 存 の実 態 を 示 す 。
■目的 2
SNSα 依 存 者 の SNSα の 利 用 に よる 負 担 感
SNSα 依 存 者 が SNSα の 利 用 に よ っ て 感 じ て い る 負 担 を 分 析 こ と に よ り 、 SNSα 依 存 に
対 す る負 の 側 面 を 示 す 。
■目的 3
SNSα 依 存 者 の SNSα の 利 用 に よる 時 間 的犠 牲 感
SNSα 依 存 者 が SNSα の 利 用 に よ っ て 犠 牲 に し て い る と 感 じ て い る 時 間 を 分 析 す る こ
と に より 、 SNSα 依 存 と 時 間 的犠 牲 の 関 係 を 示 す 。
■目的 4
SNSα 依 存 者 は SNSα の 利 用 に よる 主 観 的評 価
SNSα 依 存 者 が SNSα の 利 用 に よ る 主 観 的 評 価 を 分 析 す る こ と に よ り 、 SNSα 依 存 者 が
SNS の 利 用 に つ い てど の よ うに 感 じ て い る か を 示 す。
- 15 -
3.3
調 査 の 結果
目 的 1(SNSα 利 用者 に お ける 依 存 的 利 用 者 の 割 合 ) の 結 果
ま ず 、SNS 依 存 者 の 基 本 属 性に つ い て 確 認 を 行 っ た 。そ の 結 果 、SNSα 依 存者 は 利 用 者
の 約 11% 存 在 し 、 性 別 で は 男 性 ( 8.3% ) よ り 女 性 ( 12.3% ) が 、 年 齢 別 で は よ り 若 い
年 齢 層に お い て 依 存 者 の 割 合が 高 い 傾 向 が 見 ら れ た。
20%
18%
16%
男性
全体
N=56,272
14.3%
14%
12%
女性
16.9%
12.4%
12.3%
11.2%
9.8%
7.7%
8.6%
10%
8.7%
9.5%
8.2%
8%
6.7%
11.0%
8.1%
6.3%
6%
4%
2%
0%
19歳以下
図 3.1
20歳~
29歳以下
30歳~
39歳以下
40歳以上
全体
年 齢 層 別 ・性 別 の SNSα 依 存 者 の割 合
※ 男 性 と 女 性 の 依 存 者 の 割 合 の 差 は 、 χ 二 乗 検 定 の 結 果 、 ***: p<.001、 **: p<.01 で 有 意 。
※ 男 女 を 合 わ せ た 全 体 の 年 齢 層 間 の 差 は 、 F 検 定 の 結 果 、 F=65.2、 p<.001 で 有 意 。
※ 下 部 の a,b,c は 、 同 記 号 間 で Tukey の 多 重 範 囲 検 定 に よ り 、 男 女 を 合 わ せ た 全 体 で 年 齢 層 間 に
p<0.05 の 有 意 差 が な い こ と を 示 す 。
目 的 2( SNSα 依 存 者 の SNSα の 利 用 によ る 負 担 感 ) の結 果
次 に 、SNS 依 存者 と 非 依 存 者で 、 SNS 利 用 に よ る 負担 感 を 比 較 し た 結 果 、 SNSα 依存 者
は SNS 上 の 人 間関 係 に 負 担 を感 じ る 割 合 が 高 く 、 非依 存 者 は 負 担 に 感 じ るこ と は な い 割
合 が 高い 。
0%
25%
24.9%
26.4%
SNS上の友人へのコメント ***
足あとをチェック ***
14.8%
25.6%
11.2%
25.5%
9.9%
日記を書き続けること ***
負担を感じることはない ***
図 3.2
依存者
24.4%
16.9%
荒らしや勧誘対応 ***
キャラクター作り ***
75%
52.1%
SNS上の人間関係 ***
実際の友人にSNSの内容に触れてよいか ***
50%
非依存者
20.2%
7.4%
16.9%
10.4%
22.1%
48.5%
SNS 依存 者 ・ 非 依 存 者別 の SNS 利 用 に よ る 負担 感
- 16 -
※ 依 存 者 と 非 依 存 者 の 差 は 、 χ 自 乗 検 定 の 結 果 、 ***: p<.001 で 有 意 。
目 的 3(SNSα 依 存者 の SNSα の 利 用 に よる 時 間 的犠 牲 感 ) の 結 果
SNS 依 存 者 が 、SNS 利 用 の た めに ど の よ う な 時 間 を 犠牲 に し て い る と 感 じ てい る の か とい
う こ とを 確 認 し た 結 果 、SNSα 依 存 者 の 65.1% が「 睡眠 時 間 」を 、40.1% が「 勉 強 の時 間」
を 、32.7% が 「 趣 味 に 使 う 時間 」 を 犠 牲 に し て い ると 感 じ て い る 。
0%
25%
50%
65.1%
睡眠時間***
28.7%
勉強の時間***
14.2%
趣味に使う時間***
40.1%
32.7%
11.9%
家族と話す時間***
24.3%
5.6%
21.4%
6.0%
11.0%
2.3%
9.0%
1.7%
8.4%
1.1%
6.5%
0.9%
4.4%
0.7%
18.2%
運動する時間***
仕事の時間***
食事の時間***
友人と会う時間***
知人と会う時間***
恋人と会う時間***
依存者
非依存者
ない***
図 3.3
75%
59.7%
SNS 依存 者 ・ 非 依 存 者別 の SNS 利 用 の た め に犠 牲 に し て い る と 感 じて い る 時 間
※ そ れ ぞ れ と 依 存 ・ 非 依 存 で χ 自 乗 検 定 を 行 っ た 結 果 、 全 て 0.1% 水 準 で 有 意 。
目 的 4(SNSα 依 存者 は SNSα の 利 用 に よる 主 観 的評 価 ) の 結 果
SNS 依 存 者 が 、SNS の 利 用 によ っ て ど の よ う に 主 観的 に 感 じ て い る か を 確認 し た 結 果、
SNSα 依 存 者 は 、 SNSα の 利 用 に よ っ て 「 生 活 が 夜 型 に な っ た 」、「 視 力 が 低 下 し た 」、「 眠
れ な くな っ た 」と い っ た ネ ガテ ィ ブ な 主 観 的 評 価 だけ で な く 、
「 毎 日 が 楽 しく な っ た 」と
い っ たポ ジ テ ィ ブ な 主 観 的 評価 も 下 し て い る 。
0%
25%
50%
75%
100%
79.9%
毎日が楽しくなった***
64.3%
62.1%
生活が夜型になった***
28.0%
51.9%
視力が低下した***
26.6%
49.9%
眠れなくなった***
情緒不安定になった***
ひきこもりになった***
健康が悪化した***
ポ ジ ティ ブ
38.1%
25.0%
人にやさしくなった***
ネ ガ ティ ブ
17.8%
37.9%
依存者
9.6%
非依存者
28.1%
6.7%
27.3%
6.9%
- 17 -
図 3.4
SNSα 依 存 者 ・ 非 依 存者 別 の SNSα利 用 に つい て の 主 観 的 評 価 の 割合
※
3.4
依 存 者 と 非 依 存 者 の 差 は 、 χ 自 乗 検 定 の 結 果 、 ***: p<.001 で 有 意 。
まとめ
目的 1
SNSα 利 用 者 に お け る依 存 的 利 用 者 の 割 合
■ SNSα 依 存 者 は利 用 者 の 約 11% 。
■ 依 存 者は 性 別 で は 男 性 ( 8.3% ) よ り女 性 ( 12.3% )の 割 合 が 高 い 。
■ 依 存 者は 年 齢 別 で は よ り 若 い年 齢 層 に お い て 依 存 者の 割 合 が 高 い 。
目的 2
SNSα 依 存 者 の SNSα の 利 用 によ る 負 担 感
■ SNSα 依 存 者 は SNS 上 の 人 間 関係 に 負 担 を 感 じ る 割 合が 高 い 。
■ SNSα 非 依 存 者は 負 担 に 感 じ るこ と は な い 割 合 が 高 い。
目的 3
SNSα 依 存 者 の SNSα の 利 用 によ る 時 間 的 犠 牲感
■SNSα 依 存 者 の 65.1% が「睡 眠 時 間 」を 、40.1% が「 勉 強の 時 間 」を 、32.7% が「 趣
味 に 使う 時 間 」 を 犠 牲 に し てい る と 感 じ て い る 。
目的 4
SNSα 依 存 者 は SNSα の 利 用 によ る 主 観 的 評 価
■SNSα 依 存 者 は、 SNSα の 利用 に よ っ て 、 ネ ガ テ ィブ な 主 観 的 評 価 だ け でな く ポ ジ ティ
ブ な 主観 的 評 価 も 下 し て い る。
- 18 -
4. ソー シ ャ ル ・ メ デ ィ ア βユ ー ザ ー に み る 携 帯 ネッ ト 依 存 の 実 態
4.1
ソ ー シ ャル ・ メ デ ィ ア βユ ー ザ ー 対 象 の 携 帯 ネッ ト 依 存 調 査 の 概 要
SNS ユ ー ザ ー の ネ ット 利 用・ネ ッ ト 依 存 に 関 す る 実態 調 査 の 一 環 と し て 、ソ ー シ ャ ル ・
メディアβユーザーの携帯インターネット)等の利用実態・携帯ネット依存状況を明ら
か に する こ と を 目 的 と し た 調査 を 実 施 し た 。
調 査 対象 の ソ ー シ ャ ル・メ ディ ア β(2010 年 9 月時 点 の 会 員 数 は 2000 万人 以 上 )は 、
ソーシャルゲームやコミュニティ機能(日記、サークル等)等の多彩な機能を携帯電話
及 び PC で 利 用 可 能 で あ る (但 し 一 部 機 能 は 携 帯 電話 の み )。 本 調 査 で は 、運 営 会 社 の 協
力 の もと 、 ソ ー シ ャ ル ・ メ ディ ア β 会 員 の ア ク テ ィブ ユ ー ザ ー ( 直 近 1 ヶ 月 に 1 度以 上
ロ グ イン し た ユ ー ザ ー ) の 中か ら ラ ン ダ ム サ ン プ リン グ し た 携 帯 電 話 用 5 万 ユ ー ザー に
対 し て質 問 紙 調 査( イ ン タ ー ネッ ト 利 用)を 行 っ た。調 査 実 施 期間 は 2010 年 9 月 26 日(日 )
か ら 10 月 6 日(水)の 約 10 日 間 、有効 回 収 数 は 1,438 票( 男 性 =52.8% 、女 性 =47.2% )
である。調査項目は、ネット利用状況、ソーシャル・メディアβ利用状況、携帯ネット
依 存 状況 、 健 康 ・ 心 的 状 況 等 の 28 問と 、 フ ェ イ ス シー ト 項 目 10 問 で 構 成 され て い る 。
4.2
調 査 の 目的
■目的 1
ソ ー シ ャ ル・メ デ ィ ア β ユ ーザ ー の 携 帯ネ ッ ト 依 存 者 の 、ネ ッ ト 利 用 に 関
す る 特徴
■目的 2
ソーシャル・メディアβユーザーの携帯ネット依存者の携帯ネット利用に
よ る 変化 の 主 観 的 評 価
■目的 3
ソーシャル・メディアβユーザーの携帯ネット依存者の、生活時間への影
響 に 関す る 主 観 的 評 価
4.3
調 査 の 結果
目 的 1( ソ ー シ ャ ル ・ メ デ ィ ア β ユ ー ザ ー の 携 帯 ネ ッ ト 依 存 者 の 、 ネ ッ ト 利 用 に 関 す
る 特 徴) の 結 果
ま ず 、回 答 者 全 体 の 5.8% ( 83 人 ) が携 帯 ネ ッ ト 依存 者 に 分 類 さ れ 、 男 性( 3.2%、24
人 ) よ り 女 性 ( 8.7% 、 59 人 ) に 依 存 者 の 割 合 が 高 い 傾 向 が 見 ら れ た 。 依 存 者 の 携 帯 ネ
ッ ト の月 利 用 回 数 は 非 依 存 者よ り も 多 く 、 携 帯 ネ ット 「 ほ ぼ 毎 日 」 利 用 者の 1 日 利用 時
間 に おい て も 依 存 者 が 非 依 存者 よ り 長 時 間 利 用 す る傾 向 が 顕 著 に 見 ら れ た。
表 4.1
携 帯 ネ ッ ト依 存 者 ・非 依 存 者 別 ネ ッ ト 利 用状 況
月当たりのネット利用回数
携帯電話 N=1438 (*)
PC N=1438 (n.s.)
依存者
26.3回
13.8回
非依存者
23.4回
11.7回
全体
23.6回
11.8回
- 19 -
1日当たりのネット利用時間 携帯電話 N=1069 (***)
PC N=476 (n.s.)
141.5分
126.7分
100分
108.6分
102.8分
109.9分
※t 検定結果
***: p<0.001、 *: p<0.05、 n.s.: 有 意 差 な し
目 的 2( ソ ー シ ャ ル ・ メ デ ィ ア β ユ ー ザ ー の 携 帯 ネ ッ ト 依 存 者 の 携 帯 ネ ッ ト 利 用 に よ る
変 化 の主 観 的 評 価 ) の 結 果
依 存 者 は 、 特 に ネ ッ ト 上 で の 友 達 ・ 知 り 合 い の 数 (69.9%)、 人 と の 交 流 (62.7%)、 ネ ッ
ト 上 での コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン能 力 (47.0%)を 利 用 前 より「 増 え た 」と 認 識 して お り 、こ れ
は 非 依存 者 の 回 答 の 約 2 倍 の 数 値 と なっ て い た 。 また 、 現 実 で の コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン 能
力(26.5%)、人 へ の信 頼 感(30.1%)、自 信(15.7%)に つ い て の 依存 者 の 認 識 は「 減 った 」が
「 増 えた 」 を 上 回 る 傾 向 に あり 、 そ れ ぞ れ 非 依 存 者 の 3 倍 以 上 の 数 値 と なっ て い た 。
減った
増えた
※ 正 確 確 率 検 定 結 果 ( 減 っ た / 増 え た ) ***: p<0.001、 **: p<0.01、 *: p<0.05、 n.s.: 有 意 差 な し
図 4.1
携 帯 ネ ッ ト依 存 者 ・非 依 存 者 別 携 帯 ネ ッ トの 利 用 に よ る 変 化 の 主観 的 評 価
- 20 -
目 的 3(ソ ー シ ャ ル・メ デ ィア β ユ ー ザ ー の 携 帯 ネッ ト 依 存 者 の 、生 活 時間 へ の 影 響 に関
す る 主観 的 評 価 ) の 結 果
携 帯ネ ッ ト 依 存 者 は 、 携 帯ネ ッ ト 利 用 の た め に 、 睡 眠 ( 90.4%)、 趣 味 (54.2%)、 家 族と
話 す (51.8%)、 勉 強(49.4%)のた め の 時 間 を 削 っ た と認 識 し て い る 。
※正確確率検定結果
図 4.2
4.3
***: p<0.001
携 帯 ネ ッ ト依 存 者 ・非 依 存 者 別 携 帯 ネ ッ ト利 用 に よ り 削 っ た と 感じ て い る 時 間
まとめ
目 的 1 ソ ーシ ャ ル ・ メ デ ィ アβ ユ ー ザ ー の 携 帯 ネ ット 依 存 者 の ネ ッ ト 利 用の 特 徴
■
ソーシャル・メディアβユーザー携帯ネット依存者は非依存者と比べて携帯ネットの
月 利 用回 数 が 多 い 。
■
携帯ネット「ほぼ毎日」利用者において、携帯ネット依存者は非依存者と比べて 1
日 の 利用 時 間 が 長 い 。
目 的 2 ソ ー シャ ル ・ メ デ ィ アβ ユ ー ザ ー の 携 帯 ネ ット 依 存 者 の 携 帯 ネ ッ ト利 用 に よ る 変
化 の 主観 的 評 価
■
依存 者 は 、ネ ッ ト 上 で の友 達・知 り 合 い の 数 、人 と の 交 流 、ネ ッ ト 上で の コ ミ ュ ニ ケ
ー シ ョン 能 力 に つ い て 利 用 前よ り 「 増 え た 」 と 認 識し て い る 者 が 多 い 。
■
依存 者 は 、現 実 で の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 、人 へ の 信 頼 感、自 信 につ い て 利 用 前 よ
り 「 減っ た 」 と 認 識 し て い る者 が 多 い 。
目 的 3 ソ ー シャ ル ・ メ デ ィ アβ ユ ー ザ ー の 携 帯 ネ ット 依 存 者 の 、 生 活 時 間へ の 影 響 に 関
す る 主観 的 評 価
- 21 -
■ 携帯ネット依存者は、携帯ネットの利用のために、睡眠、趣味、家族と話す、勉強
の た めの 時 間 を 削 っ た と 認 識し て い る 者 が 多 い 。
< 本 研究 の 示 唆 >
1 . 中学 生 の パ ネ ル 調 査 か らは 、 目 的 1 に 関 す る 検証 で 明 ら か に し た よ うに 、 P C の ネッ
ト 利 用時 間 と 依 存 傾 向 は 双 方向 的 な 影 響 関 係 に あ る。 一 方 で 、 携 帯 の ネ ット 利 用 に つい
て は 、ネ ッ ト 利 用 時 間 と 依 存傾 向 は 有 意 な 関 係 が 見ら れ な か っ た 。
P C を通 し た ネ ッ ト 利 用 の 場合 、目 的 2 の検 証 で 明ら か に し た よ う に 、と く に「 S NS ,
掲 示 板、 ツ イ ッ タ ー 」 の よ う な 非 同 期 的 な コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン サ ー ビ ス が長 時 間 利 用に
つ な がり や す い 。 ネ ッ ト 依 存を 回 避 す る た め に は 、と く に P C に よ る S NS の 利 用 時間
を 一 定の 範 囲 内 に 抑 制 す る 習慣 を 児 童 に 身 に つ け させ る 必 要 が あ ろ う 。
ま た、 依 存 傾 向 の 強 い 児 童は 、 動 画 サ イ ト の 利 用頻 度 が 高 ま る と い う 結果 も 示 さ れ てお
り 、 長時 間 の 動 画 サ イ ト の 利用 に は 依 存 の 兆 候 を 疑う 必 要 が あ る 。
2 . ネッ ト 利 用 そ の も の が 、他 の 生 活 時 間 の 侵 蝕 につ な が る が 、 依 存 的 傾向 が 強 け れ ば、
と く に睡 眠 時 間 に し わ 寄 せ が及 び や す い 。 ま た 、 友人 と の 関 係 で 満 足 度 が低 い ほ ど 依存
傾 向 が高 ま り 、 依 存 傾 向 が 高い 児 童 は 親 と の 会 話 時間 が 減 少 す る 傾 向 が 見ら れ た 。
ネ ット 依 存 の 傾 向 は 勉 強 時間 を 減 少 さ せ る わ け では な い が 、 睡 眠 時 間 は減 少 す る 傾 向が
見 ら れた 。 身 体 的 健 康 の た めに も 、 ネ ッ ト 利 用 に は節 度 が 必 要 で あ る 。 また 、 ネ ッ ト依
存 の 背景 に は 、 友 人 関 係 や 親と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン が 関 係 す る 。 家 庭 内外 に お け る良
好 な 人間 関 係 が ネ ッ ト 依 存 の回 避 に つ な が る 。
3 . 孤独 感 、 抑 う つ は ネ ッ ト依 存 と 相 互 的 影 響 関 係に あ る 。 ネ ッ ト へ の 依存 的 傾 向 は 、児
童 の 心理 的 状 況 、 抑 う つ と も関 わ り が あ る こ と を 踏ま え 、 単 に ネ ッ ト 利 用の 削 減 を 強い
る だ けで な く 、 精 神 的 健 康 状況 へ の 配 慮 も 必 要 で あろ う 。
4 . オン ラ イ ン ゲ ー ム の パ ネル 調 査 か ら は 、 抑 鬱 傾向 や 親 と の 会 話 時 間 が少 な い こ と がオ
ン ラ イン ゲ ー ム 依 存 に 結 び つく 可 能 性 が あ る こ と が示 さ れ た 。 オ ン ラ イ ンゲ ー ム 依 存の
疑 い があ る 場 合 、 背 後 に 抑 うつ 傾 向 を 高 め る 要 因 を抱 え て い な い か 気 を 配る と 共 に 、家
族 内 のコ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を良 好 に す る 努 力 も 必 要で あ ろ う 。
5 . SN S ユ ー ザ ー 調 査 、 ソー シ ャ ル メ デ ィ ア ユ ーザ ー 調 査 か ら 、 女 性 の方 が 依 存 傾 向が
強 い こと 、 依 存 者 の 主 観 的 評価 で は 睡 眠 時 間 な ど 他 の 生 活 時 間 が 減 少 し てい る と 感 じて
い る こと 、 S N S 上 の 人 間 関係 に も 悩 み が 多 い こ とが 明 ら か に な っ た 。 一方 で S N S等
- 22 -
の 利 用に よ っ て 、 主 観 的 に では あ る が ポ ジ テ ィ ブ な影 響 を 受 け て い る と 感じ る 人 の 割合
が 高 いこ と も 明 ら か に な っ た。 し か し 、 S N S の 利用 に あ た っ て は 、 と くに 依 存 者 の割
合 が 高い 結 果 と な っ た 女 性 にお い て 過 度 の 利 用 を 避け る べ く 注 意 し 、 他 の生 活 時 間 を圧
迫 し ない 程 度 の 利 用 時 間 に 抑え る こ と が 重 要 で あ ろう 。
- 23 -