GLOBAL CORPORATE FINANCE FEBRUARY 15, 2011 RATING METHODOLOGY 世界の通信業界 Global Telecommunications Industry 要約 目次: 要約 1 格付対象について 2 4 格付手法について その他の格付上の考慮事項 19 結論:格付マッピング表による 20 格付結果の概要 付録 A:格付手法のマッピング表に 基づく格付の例 21 付録 B:観察結果とアウトライヤー 23 付録 C:通信業界の概観 25 付録 D:今後 10 年の格付に関する 主要論点 26 コンタクト: 東京 03.5408.4100 本格付手法は、世界の通信事業者の信用リスク評価に対するムーディーズのアプローチを説 明するものである。本稿は、通信業界における企業の信用プロファイルを評価する際に使用 できる参照ツールを提供し、企業、投資家、他の市場参加者が、主要な定性・定量リスク要因 がどのように格付結果に影響する可能性があるかを理解するための一助となることを目的とし ている。本格付手法は、ムーディーズの格付に反映されるすべての要因を網羅したものでは ないが、本稿の利用者が通信セクターの格付にとって通常最も重要とされる定性的な考慮事 項や財務比率を理解することができるように解説している。 本格付手法は、2007 年 12 月発行の Global Telecommunications Industry(ムーディーズ・ジャ パン版「世界の通信業界」2010 年 9 月)を改訂するものである。この改訂版格付手法は、旧 格付手法に含まれる基本的な原則を反映しながら、通信業界の主要な信用ファンダメンタル ズをより適切に織り込めるよう精緻化されている。 本格付手法は、詳細な格付マッピング表と、格付要因に基づく各社のマッピングの例を掲載 している。格付マッピング表の目的は、通信セクターにおける信用プロファイルの推定に用い ることのできる参照ツールを提供することである。格付マッピング表は、通信事業者に格付を 付与する際に通常、最も高い重要性を持つ要因についての指針を要約したものであるが、格 付上の全ての考慮事項が含まれているわけではない。各要因のウェイトは、格付の決定にお ける各要因の重要性を近似的に表したものであるが、実際の重要性は大きく異なることがある。 また、マッピング例では過去データを用いているが、実際の格付は将来の予想を織り込んで いる。したがって、大半のケースでは、マッピング表による格付と実際の格付は一致しないこと が予想される。 This Moody’s Japan rating methodology is based on Moody’s Investors Service’s rating methodology titled “Global Telecommunications Industry, (December 28, 2010).” The rating approach described in the Moody’s Investors Service report was adopted by Moody’s Japan on February 15, 2011. ムーディーズ・ジャパン株式会社 GLOBAL CORPORATE FINANCE マッピング表には、通信セクターの格付を評価する上で重要な次の 5 つの主要要因が含まれる。 1. 規模、ビジネスモデル、競争環境、技術面での地位 2. 事業環境 3. 財務方針 4. 業績 5. 財務力 これらの要因は、それぞれいくつかのサブ要因または指標を含んでいる。それらの詳細については後述する。 特定のマッピング要因における発行体のスコアが、最終的な格付に一致しない場合が多いため、「アウトライ ヤー」(特定のサブ要因について、マッピング表による格付が実際の格付から大幅に乖離する発行体)に関 する議論を付録に掲載する。 本格付手法は、ムーディーズのアナリストが通信事業者を格付する際に考慮する全ての要因を網羅すること を意図したものではない。通信セクターの格付分析では、全業界に共通する要因(所有構造、経営陣、流動 性、企業組織の法的構造、コーポレートガバナンスなど)と、企業固有の重要な要因を考慮する。格付には、 マッピング表に透明性の高い形式で提示できない定性的な考慮事項と要因も織り込まれている。格付マッピ ング表は、複雑化すればマッピングの結果が実際の格付により近いものとなる一方で、単純化すれば通信業 界の格付で通常最も重要とされる要因をわかりやすく示すことができるという両面性を勘案したものである。 本レポートの主な内容は次の通りである。 » 格付対象の概観 » 格付手法の概要 » 格付の質を左右する主要格付要因についての説明 » 格付手法の前提と限界についてのコメント(格付マッピング表に含まれない格付上の考慮事項について の検討を含む) 付録には、格付マッピング表を格付対象に適用した例をまとめた表(付録 A)、マッピング表による格付が実 際の格付と大幅に異なる一部の発行体についての説明(付録 B)、業界の概観(付録 C)、中期的に通信セク ターにとって重要性を持つ主な格付上の論点(付録 D)を掲載する。 格付対象について 世界の通信サービス業界には多様な企業が集まっており、事業の沿革、製品とサービス、顧客とサービスエリ アなどの点でそれぞれ大きく異なる。投資適格等級の高位にある企業は、独占事業者を前身とする事業分散 度の高い大規模事業者、あるいは豊富な資金源を持つ移動体通信専業の大手事業者に該当することが多 い。投機的等級の発行体は一般的に、小規模で業界に参入してから間もないため、サービスの分散度が低く 財務レバレッジが高い。 ムーディーズは世界の通信事業者 128 社に格付を付与しており、格付対象債務総額は 2009 年度末時点で 1.2 兆ドルに上る。ムーディーズの格付対象は 49 カ国に所在し、自国通貨建て格付は Caa2 から Aa1 の範囲 にまたがる。地域別内訳は、米州 48%、欧州 22%、アジア太平洋 23%、中東・アフリカ 7%である。ムーディー ズの格付対象通信事業者の 45%が投資適格等級である。格付の見通しは、約 68%が安定的、10%がポジテ ィブまたは引き上げ方向で見直し中、24%がネガティブまたは引き下げ方向で見直し中である。図表 1 に示 す通り、投資適格等級は Baa1 に、投機的等級は B2 に集中している。 2 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 図表 1:世界の通信業界のサンプル企業 社名 長期債務 格付* 短期債務 格付 見通し 所在地 債務総額 (百万ドル) 1 Alaska Communications Systems Holdings, Inc. B1 SGL-3 安定的 米国 604 2 America Movil S.A.B. de C.V. A2 - 安定的 メキシコ 32,356 3 AT&T Inc. A2 P-1 ネガティブ 米国 88,608 4 Axtel, S.A.B. de C.V. B2 - ネガティブ メキシコ 1,043 5 BCE Inc./Bell Canada Baa1 - 安定的 カナダ 15,942 6 Broadview Networks Holdings, Inc. B3 - ネガティブ 米国 735 7 China Mobile Limited Aa3 - ポジティブ 中国 11,413 8 Deutsche Telekom AG** Baa2 P-2 安定的 ドイツ 93,814 9 Digicel Group Limited B2 - 安定的 ジャマイカ 4,409 10 France Telecom** Baa1 P-2 安定的 フランス 36,510 11 Hellenic Telecommunications Organization S.A. Baa2 P-2 安定的 ギリシャ 8,734 12 Indosat Tbk. (P.T.) Ba1 - ネガティブ インドネシア 3,671 13 日本電信電話株式会社 Aa1 P-1 ネガティブ 日本 81,638 14 Philippine Long Distance Telephone Company Baa2 - 安定的 フィリピン 2,593 15 Rogers Communications Inc. Baa2 - 安定的 カナダ 10,509 16 Singapore Telecommunications Limited** A2 - 安定的 シンガポール 6,962 17 Skype Global S.a.r.l. B1 - 安定的 ルクセンブルグ 18 Telefonica S.A. Baa1 P-2 ポジティブ スペイン 85,578 19 Tele Norte Leste Participacoes S.A Baa3 - 安定的 ブラジル 25,368 20 Telkom SA Limited** Baa2 - ネガティブ 南アフリカ 1,894 21 Telstra Corporation Limited A2 P-1 ネガティブ オーストラリア 17,300 22 True Move Company Ltd B2 - ネガティブ タイ 13,099 23 Versatel AG B2 - 安定的 ドイツ 1,566 24 Vodafone Group Plc Baa1 P-2 安定的 英国 79,764 25 Windstream Corporation Ba2 SGL-1 安定的 米国 7,111 764 $602,860 合計 * 格付は、コーポレート・ファミリー・レーティング、シニア無担保債務格付、該当する場合はベースライン信用リスク評価を示す。 ** 図表 1 には一部の政府系発行体について、ベースライン信用リスク評価に相当する格付を掲載しているが、実際の格付はそれよりも 高い。Singapore Telecommunications の場合、ベースライン信用リスク評価のレンジ 5-7 の中間値を使用した。これは、A2 に相当 する。これに該当する政府系発行体とその格付は次の通りである:Deutsche Telkom AG [Baa1]、France Telecom [A3]、Singapore Telecommunications Limited [Aa2]、Telkom SA Limited [Baa1]。 3 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 格付手法について 本稿では、通信事業者の格付手法を 6 つのセクションに分けて説明するが、要約すると次のようになる。 1. 主要格付要因の特定 本格付手法のマッピング表では、次の 5 つの主要格付要因に注目しており、各主要要因はさらに 11 のサブ 要因に分解される。 図表 2:世界の通信業界 要因 要因のウェイト 規模、ビジネスモデル、競争環境、 技術面での地位 事業環境 27% 16% サブ要因 サブ要因のウェイト 規模 12% ビジネスモデル、競争環境、技術面での 地位 15% 規制環境・政治的枠組み 8% 市場シェア 8% 財務方針 5% 財務方針 5% 業績 5% EBITDA マージン 5% 財務力 47% レバレッジとキャッシュフロー: 有利子負債/EBITDA 9% FCF/有利子負債 7% RCF/有利子負債 10% カバレッジ: (FFO+支払い利息)/総支払利息 13% 8% (EBITDA-設備投資) / 総支払利息 合計 100% 合計 100% 2. 主要格付要因の測定または推定 各要因を構成するサブ要因をどのように算出し、ウェイト付けするかを次に説明する。また、各要因を用いる 根拠と、それを格付プロセスに適用する方法も説明する。サブ要因のパフォーマンスを評価するために用い る情報は、企業の財務諸表から入手するか、それを用いて算出している。また、他の観察結果から導出したり、 ムーディーズのアナリストが推定する場合もある。 ムーディーズの格付は将来を見通したもので、将来の財務・事業パフォーマンスに対するムーディーズの予 想を織り込む。ムーディーズは格付のプロセスで、過去の財務実績と予想の双方を用いる。過去の実績をみ ることで、企業のパフォーマンスのパターンおよびトレンドを把握し、他社と比較することができる。格付のプロ セスには過去の実績と予想の双方が織り込まれるが、本稿では過去データのみを用いて格付手法の適用例 を示す。具体的には、特に明記のない限り、米国証券取引委員会に財務諸表を提出する企業については、 直近の四半期末(大半が 2010 年 9 月 30 日)の報告財務諸表を用いてマッピングを行う。米国証券取引委 員会に財務諸表を提出しない企業および米国外の企業については、直近の会計期間(大半が 2009 年 12 月 31 日)の監査済み財務諸表を用いる。定量的な信用指標にはいずれも、ムーディーズが事業再編費用、 4 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 減損、オフバランス項目、売掛債権証券化プログラム、未積立年金債務、オペレーティングリースなどに関し、 損益計算書、キャッシュフロー計算書、貸借対照表に対して行う標準的調整が織り込まれる。マッピングの例 で用いられる定量指標には、他の分析上の調整も織り込まれている場合がある。 ムーディーズが最もよく用いる比率の定義については、Moody's Basic Definitions for Credit Statistics, User's Guide, June 2007 を参照されたい。この文書は www.moodys.com に掲載されている。ムーディーズの標準的 調整手法については、Moody's Approach to Global Standard Adjustments in the Analysis of Financial Statements for Non-Financial Corporations - Part I (US and Canadian GAAP Issuers),September 2010(ムーディ ーズ・ジャパン版「事業企業の財務諸表分析におけるムーディーズの標準的調整アプローチ第一部:米国・カ ナダの企業会計基準を採用する発行体の国際比較のための標準的調整」2010 年 9 月)、Moody's Approach to Global Standard Adjustments in the Analysis of Financial Statements for Non-Financial Corporations - Part II (Issuers reporting under IFRS), September 2010(ムーディーズ・ジャパン版「事業企業の財務諸表分析における ムーディーズの標準的調整アプローチ第二部:国際財務報告基準(IFRS)を採用する発行体の国際比較のた めの標準的調整」2010 年 9 月)、および Moody's Approach to Global Standard Adjustments in the Analysis of Financial Statements for Non-Financial Corporations - Part III (Issuers reporting under Japanese GAAP),September 2010(ムーディーズ・ジャパン版「事業企業の財務諸表分析におけるムーディーズの標準 的調整アプローチ第三部:日本の企業会計基準を採用する発行体の国際比較のための標準的調整」2010 年 9 月)を参照されたい。これらの文書は www.moodys.co.jp に掲載されている。 3. 格付カテゴリーへのマッピング 各サブ要因のスコアを推定または算出した後、11 のサブ要因のスコアをムーディーズの文字格付カテゴリー (Aaa、Aa、A、Baa、Ba、B、Caa)にマッピングする。 4. マッピング表への発行体のマッピングと「アウトライヤー」の検討 このセクション(付録 A)では、各格付要因および各サブ要因について、各社がどのようにマッピングされるか を示す表を提示する。サブ要因の格付の加重平均が、各要因におけるマッピング表に基づく格付となる。特 定のサブ要因におけるマッピングの結果が、実際の格付より文字格付で 2 ノッチ以上高く、あるいは低くなる 企業を取り上げ、ポジティブまたはネガティブなアウトライヤーとなった一般的な理由について述べる。 5. 前提と限界、およびマッピング表に含まれない格付上の考慮事項 このセクションでは、実際の格付に対するマッピング表を用いた格付の限界、マッピング表に含まれないが格 付を決定する上で重要となり得る他の要因、および格付手法全体にかかわる限界と主要な前提について述 べる。 6. マッピング表に基づく総合的な格付の決定 マッピング表に基づく総合的な格付を決定するために、11 のサブ要因に基づく格付を下のスケールにしたが って数値に変換する。 Aaa Aa A Baa Ba B Caa 1 3 6 9 12 15 18 各サブ要因の数値スコアに当該サブ要因のウェイトを乗じ、それらを合計して総合的な加重要因スコアを算 出する。次に、この総合スコアを下の表に従って文字数字格付に再変換する。 5 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 図表 3:マッピング表に基づく格付 マッピング表に基づく格付 総合加重スコア Aaa x < 1.5 Aa1 1.5 ≤ x < 2.5 Aa2 2.5 ≤ x < 3.5 Aa3 3.5 ≤ x < 4.5 A1 4.5 ≤ x < 5.5 A2 5.5 ≤ x < 6.5 A3 6.5 ≤ x < 7.5 Baa1 7.5 ≤ x < 8.5 Baa2 8.5 ≤ x < 9.5 Baa3 9.5 ≤ x < 10.5 Ba1 10.5 ≤ x < 11.5 Ba2 11.5 ≤ x < 12.5 Ba3 12.5 ≤ x < 13.5 B1 13.5 ≤ x < 14.5 B2 14.5 ≤ x < 15.5 B3 15.5 ≤ x < 16.5 Caa1 16.5 ≤ x < 17.5 Caa2 17.5 ≤ x < 18.5 Caa3 x≥ 18.5 たとえば、総合加重スコアが 11.7 の発行体の場合、マッピング表に基づく格付は Ba2 となる。5 つの主要格 付要因についての説明の中で、マッピング表に基づく格付を導出する際にも、同様の手順を用いた。 主要格付要因 ムーディーズによる通信事業者の分析は、次の主要 5 要因に焦点を絞っている。 6 FEBRUARY 15, 2011 » 規模、ビジネスモデル、競争環境、技術面での地位 » 事業環境 » 財務方針 » 業績 » 財務力 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 要因 1:規模、ビジネスモデル、競争環境、技術面での地位 この要因を重視する根拠 企業の規模、ビジネスモデル、競争力、技術力は、企業を特徴づける主要な要因であり、格付における重要 な分析項目である。また、通信業界では、事業を行う市場規模からみた企業の規模と信用力との相関性が高 い。具体的には、規模の大きい企業ほど事業の分散度も高いため、収益の変動性が低減され、必要な場合 は一部の事業を売却することにより資金の創出が可能であるなど、財務の柔軟性を有すると考えられる。また、 規模の大きい企業は、豊富な資金源と規模の経済の恩恵を受ける。 規模 大規模な通信事業者は、通常、地理的分散度と事業の分散度も高く、それによって特定の地域または事業 の低迷から影響を受けるリスクが低減される。また、規模の大きさは一時的な事業の混乱、買収、または投資 判断の誤りを吸収する能力を強化する。また、ネットワーク機器や携帯端末のサプライヤーに対する影響力も 大きくなる。規模が大きければ資本市場からの調達も容易になり、財務の柔軟性が向上する。最後に、規模 の大きさは、複数の製品をバンドルして提供する能力も強化する。様々なサービスをまとめて提供することは、 競争優位に立つためにますます重要となっており、そのような能力を有する事業者は市場のリーダーシップを 握ることができ、顧客獲得が容易になる。 ビジネスモデル、競争環境、技術面での地位 営業キャッシュフローを生成、維持する通信事業者の能力と、営業キャッシュフローの安定性は、その大部分 がビジネスモデルによって決定される。 分散にはいくつかの異なる側面がある。すなわち、提供できるサービスの種類、顧客セグメント、地理的な事 業範囲などの分散であり、これらは全て、特定のサービスあるいは市場の需要や価格の変動からの影響を緩 和する。 国際的な事業分散は、高格付の国で主導的地位にあるサービスプロバイダーを投資先とする場合を除き、通 常は格付に強力なプラス要因とはならない。新興市場への多額の投資によって分散を図る場合(特に負債調 達を行う場合)、高い成長性が見込める一方で、高いリスクも伴うため、格付にマイナスの影響を与える可能 性がある。 ムーディーズの格付は、通信事業者が技術進歩の影響をどの程度受けるかと、いかに技術進歩に対応して 自社を優位な地位につけられるかを織り込む。世界の通信業界は、規制緩和、技術の進歩、資金力を背景と して、過去 10 年で大きく進化した。規制緩和と技術の進歩は、多数の競合相手が既存事業者の資産価値を 脅かし、導入が進む新技術に向けた新たな価値を創造しようとする環境を生み出した。急速な技術の変化は、 通信事業者の設備投資予算を継続的に圧迫するとムーディーズはみている。これは、資産の価値低下や陳 腐化のリスクが高まり、投資判断の誤りを招く可能性があることを意味する。新技術を採用するコストは、必要 な資金額という意味でも、失敗のリスクという意味でも、莫大なものになり得る。あるいは、既存業者が競争によ る地位低下に直面する前に、新技術を迅速に採用できなければ、事業面でコストが発生する可能性もある。 競争環境は信用力を左右する主要要因である。企業が直面する競争の激しさは価格決定力および営業費 用、ひいては営業利益率の質と水準に直接的な影響を与えるからである。また、サービスのラインアップの差 別化またはコスト削減の手段として、新しいテクノロジーに投資する際の投資規模とペースを左右するとみら れる。 評価方法 規模:過去 12 ヵ月の報告ベースの営業収益(ドル建て)。小規模な市場を主要市場とする大規模事業者は、 営業収益を指標とした場合、その強みが過小評価される可能性がある。グローバルな基準からみた GDP が 比較的小さい市場で主導的地位を維持する、規制緩和以前から事業に携わる既存事業者の場合、特にその 傾向が強い。そのような場合、営業収益に基づくマッピング結果を、報告ベースの営業収益に基づく評価か ら 1-2 格付カテゴリー引き上げることがある。 ビジネスモデル、競争環境、技術面での地位:通信事業者のビジネスモデルを評価する主要指標は、サービ ス地域の広さ(海外、国内、地域)および収益構成(移動体通信と固定通信、音声、データと動画(該当する 場合)、事業用と家庭用)である。 7 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 競争環境の評価には、市場構造、顧客数、営業収益のトレンドが織り込まれる。また、競争の激しさや収益源 の性質も評価に織り込まれる。 技術面での地位の評価は、事業者の既存ネットワークアーキテクチャの耐用年限におけるサービス能力と拡 張性の評価を出発点とする。通信業界は極めて資本集約的で、急速な技術革新に直面する業界であるため、 企業の投資戦略は今後の展望を左右する重要な要因である。実施中のインフラ整備計画に関連するリスクを 評価するために、ムーディーズは事業者が採用している技術を検討する。具体的には、実証済みの技術かど うか、市場に浸透するまでの時間、必要とされる投資規模、予想される技術の寿命を考慮する。 評価基準に関する留意点 ムーディーズは、固定通信事業または移動体通信事業いずれかの単一事業に依存するビジネスモデルより も、多角化されたビジネスモデルの方が安定性が高いとみている。急速な技術の変化が続く中では、強力な 固定通信事業と移動体通信事業の双方を有する事業者が、そのような変化に合わせて事業を進化させる上 で有利だからである。事業の多角化が進んだ事業者は、様々な新サービスを採用するための安定したプラッ トフォームを有する。新しい技術に戦略的に投資し、新しい技術の市場への浸透度に応じて投資を増額する ことにより、成功機会を拡大することができる。 競争環境の厳しさの水準(低い、中位、高い)を分析するにあたり、ムーディーズは営業収益のトレンド、事業 者の数、需要の増加に対する契約者数の変化の割合、移動体通信事業者の場合は契約者総増加数、解約 率、ARPU(一契約者当り月間平均収入)のトレンド等に着目する。 マッピング表では、このサブ要因について最も高い格付(Aaa および Aa)を得られるのは、それぞれの地域 で支配的地位にある音声・データ通信サービス提供者であり、法人契約者の比率が高く、移動体通信にお いて強固な市場地位を有する事業者に限られる。格付が A のビジネスモデルとしては、確立された強固な 地位を持つ移動体通信専業の事業者、または多角化されたビジネスモデルを持ち、移動体通信で高い市 場地位にあるが主導的とはいえない事業者が典型的な例であろう。格付が Baa のビジネスモデルとしては、 中程度の競争に直面する既存の固定回線事業者、または、競争の激しい市場で多角化された事業を展開 する事業者が挙げられる。ビジネスモデルで Ba と評価される事業者は、業界セクターを問わず競争圧力に 晒されており、既存事業者の場合は事業面で困難に陥っている事業者である。新規参入者および CLEC (既存地域通信事業者)のような競合事業者の事業リスクのスコアは、ネットワークへの投資の範囲に応じて、 B または Caa となる。 8 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 要因 1:規模、ビジネスモデル、競争環境、技術面での地位(27%) サブ要因 規模(1) ウェイト Aaa Aa A Baa Ba B 12% ≥$80B $30B-$80B $10B-$30B $5B-$10B $2B-$5B $0.5B-$2.0B 主導的地位にあり、 地理的分散度が高 く、広範な顧客基盤 に全ての通信サービ スを提供する既存国 内事業者で、営業収 益の 75%超を移動 体通信、データ、動 画サービスが占め、 且つ、固定通信およ び移動体通信事業 が直面する競争の激 しさの水準が低い。 国内営業基盤以外 の地域への事業拡 大に成功。いずれの 市場、国、地域も売 上高に占める割合が 40%未満。技術リスク が非常に低い。 広範な顧客基盤に全 ての通信サービスを提 供する既存国内事業 者で、営業収益の 5075%を移動体通信、デ ータ、動画サービスが 占め、且つ、固定通信 および移動体通信事 業が直面する競争が 限定的。国内営業基盤 以外の地域への事業 拡大に成功。1 つの市 場、国、地域が売上高 の 40-50%を占める。技 術リスクが低い。 広範な顧客基盤に全 ての通信サービスを 提供する既存国内事 業者で、営業収益の 25-50%を移動体通 信、データ、動画サ ービスが占め、且つ、 固定通信および移動 体通信事業の競争が 激化している。国内 市場以外にある程度 事業を拡張している。 1 つの市場、国、地 域が売上高の 5060%を占める。技術リ スクが低‐中位。 かなり広範な顧客基盤 に全ての通信サービス を提供する国内事業者 で、移動体通信、デー タ、動画サービスが営 業収益に占める割合が 25%未満、且つ、相当 厳しい競争に直面。1 つの市場、国、地域が 売上高の 60-80%を占 める。中位の技術リス ク。 限られた顧客基盤に全 ての通信サービスを提 供する地域事業者で、 移動体通信、データ、 動画サービスが営業収 益に占める割合が 25%未満、且つ、競争 が激化している。1 つ の市場、国、地域が売 上高の 80-90%を占め る。技術リスクが中‐高 位。 限られた顧客基盤に全 ての通信サービスを提 供する地域事業者で、 移動体通信、データ、 動画サービスが営業収 益に占める割合が 25%未満、且つ、競争 が激化している。1 つ の市場、国、地域が売 上高の 90%超を占め る。技術リスクが中‐高 位。 Caa <$.5B 多角化された事業者 ビジネスモデ ル、競争環 境、技術面で の地位 9 15% FEBRUARY 15, 2011 または、 広範な顧客基盤に全 ての通信サービスを 提供する地域事業者 で、営業収益の 5075%を移動体通信、 データ、動画サービ スが占める。固定通 信および移動体通信 事業が中位の競争に 直面。国内市場以外 にある程度事業を拡 張している。1 つの市 場、国、地域が売上 高の 50-60%を占め る。技術リスクが低‐ 中位。 既存業者のネットワ ークへのアクセスに 大きく依存、または補 助金への依存度が高 い事業者。技術リスク が高い。 または、 かなり広範な顧客基盤 に全ての通信サービス を提供する地域事業者 で、移動体通信、デー タ、動画サービスが営 業収益に占める割合が 25%未満、^且つ競争 が激化している。1 つ の市場、国、地域が売 上高の 60-80%を占め る。中位の技術リスク。 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 要因 1:規模、ビジネスモデル、競争環境、技術面での地位(27%) サブ要因 Aaa ウェイト Aa A Baa Ba B Caa 海外営業網の拡大に 成功、安定した事業 を手掛ける多国籍事 業者。安定した事業 を手掛ける確立され た国内または多地域 事業者。成長性が高 く競争が限定的な発 展途上国市場の新興 事業者。1 つの市 場、国、地域が売上 高に占める割合が 50%未満。低‐中位の 技術リスク。 競争が存在する新興 市場で事業を拡大する 多国籍事業者。1 つの 市場、国、地域が売上 高に占める割合が 70%未満。中位の技術 リスク。 安定した事業を手掛け る国内事業者、また は、安定した事業を手 掛け、ローミングまたは 補助金への依存度が 低い確立された地位の 地域事業者。成長性が 高く中位の競争がある 発展途上国市場の新 興事業者。1 つの市 場、国、地域が売上高 に占める割合が 85% 未満。補助金への依存 度が中位。中‐高位の 技術リスク。 業績が業界平均を下 回る国内事業者、また は、業績が業界平均を 下回る、確立された地 位の地域事業者。 MVNO(仮想移動体 通信事業者)、また は、周波数帯を持た ない関連会社。 なし 中位の競争に直面す る既存事業者。中位の 技術リスク。 競争激化に直面する 既存事業者、または、 大規模なエンドツーエ ンド・ネットワーク・イン フラを有する既存設備 に依存しない事業者。 既存事業者のネットワ ークへのアクセスに依 存、または補助金への 依存度が中位の事業 者。中‐高位の技術リス ク。 移動体通信事業者 ビジネスモデ ル、競争環 境、技術面で の地位 15% なし なし 新興地域事業者、また は、業績が悪化してい る確立された地位の地 域事業者。1 つの市 場、国、地域が売上高 に占める割合が 90% 未満。補助金への依存 度が高い。高い技術リ スク。 固定回線専業事業者 ビジネスモデ ル、競争環 境、技術面で の地位 15% なし なし 業績が急速に悪化して いる既存事業者(年間 10%の減収)、または、 大規模なコアネットワー ク・インフラを有する既 存設備に依存しない事 業者。既存事業者のネ ットワークへのアクセス に大きく依存、または サービス補助金への依 存度が高い。技術リス クが高い。 ネットワークの末端の 相当部分を他社に依 存し、競合する新規 参入事業者、また は、再販業者。 (1) 特定の状況では、営業収益の規模が通信事業者の主要市場における重要なプレーヤーとしての地位を適切に表さないことがある。特に、グローバル基準でみた GDP が比較的小さい市場で主導的地位を維持する、規制緩和以前 から独占的な市場地位を有している既存事業者がこの例に相当する。このような場合、この要因に基づくマッピング結果を、報告ベースの営業収益に基づく評価から 1-2 格付カテゴリー引き上げることがある。 10 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 要因 2:事業環境 この要因を重視する根拠 事業環境は企業の業績、ひいては信用の質に圧力を加える外的要因である。通信事業者の場合、事業環境 には規制環境・政治的枠組みや市場シェアといういくつかの異なる側面がある。 要因 1 におけるマッピング結果の表と、アウトライヤーに関する議論を付録に掲載する。 規制環境・政治的枠組み 規制が格付に影響を与える主な理由は、事業者が投資回収を進める能力の予測可能性が、規制によって助 長、または制約されるためである。その影響はまず、競争環境への影響として表れる。特に、新たに事業権や ライセンスが付与される可能性と、規制の枠組みの中で、新規参入の通信事業者が新しいネットワークの構 築、他の事業者のネットワークの利用、既存事業者のネットワークとの相互接続、適正な接続料を得られるか どうかという点に着目する。 政府による認可を受けた(政府保有の場合もある)独占事業者から、競争力のある企業へと変化することは、 100%政府が保有していた既存事業者が引き続き直面する大きな課題である。民営化が進む地域の政府は、 市場競争の促進と、元独占事業者の雇用と価格水準の維持とのバランスをとるため、困難な政策判断を行っ ている。 評価方法 規制環境・政治的枠組み:このサブ要因を評価する上で有用な指標として、ムーディーズは次の 4 つの側面 から規制環境を分析する。(i) 投資回収率の確保への支援、(ii) 予測可能性、(iii) 新規免許取得の容易性な どの規制上の参入障壁、(iv) 規制対象事業からの収益や、補助金への依存度。 また、規制環境が業界の統合にどう影響するか、規制は既存事業者と参入事業者のどちらに有利であるか、 という点も検討する。大半のケースでムーディーズは、政府の規制対象事業からの収益への高い依存度をマ イナス要因と評価している。規制環境の予測可能性は、特定の規制市場の全事業者にとって重要な問題で ある。 規制措置の影響を推定する上で課題となるのが、具体的な政策を理解するだけでなく、規制環境の変更が 個々の発行体にどのように影響するかを評価することである。事業者によって事業の沿革や市場地位が異な るため、同じ規制制度の下で事業を行う事業者でも、規制・政治の枠組みのスコアが異なる場合がある。例え ば、米国の固定通信既存事業者は一般にこのサブ要因において投資適格等級となるが、新規参入事業者 はその多くが事業計画の実行のために規制上の緩和措置を受ける必要性があるため、Ba 以下となる。 11 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 要因 2:事業環境(16%) 12 サブ要因 ウェイト 規制環境・政治的枠組 み 8% FEBRUARY 15, 2011 Aaa 規制の枠組みが 完全に整備さ れ、極めて高い 予測可能性と安 定性を示す長期 にわたる実績が あり、既存通信 事業者の投資回 収率確保を強力 に支え、変更さ れる可能性が低 い。規制は高格 付の政府、また は、国内全域で 通信事業者に対 する絶対的な権 限を持つ強力で 独立した規制当 局が行う。新規 事業免許を付与 する可能性は低 い。 Aa 規制の枠組みが完 全に整備され、予 測可能性と安定性 が非常に高く、既 存通信事業者の投 資回収率確保を強 力に支える。規制 は政府、政府機 関、地方自治体、 国内全域で大半の 通信事業者に対す る権限を持つ独立 した規制当局が行 う。新規事業免許 を付与する可能性 は低い。 A 規制の枠組みが完 全に整備され、近 年は予測可能性と 安定性が非常に高 く、既存通信事業 者の投資回収率確 保に対し、概して 支援的である。規 制は政府、政府機 関、地方自治体、 国内全域で大半の 通信事業者に対す る権限を持つ独立 した規制当局が行 う。限定的に新規 事業免許を付与す る可能性がある。 行政面の変更によ って見通しが変化 する可能性があ る。 Baa Ba B Caa 規制の枠組みが、 a) 十分に整備され ているが、その適 用において一貫性 あるいは予測可能 性に欠けることを 示す実例がある、 あるいは、枠組み が設置されたばか りで検証されてい ないが、十分に整 備され確立された 先例に基づいてい る、または、 b) 同 じ法管轄地域の他 のセクターにおい て独立性と透明性 を持つ規制が行わ れてきた実績があ る。規制環境は時 として厳しく、政 治的圧力を受け る。 規制の枠組みは整 備されているが、 その適用において 一貫性あるいは予 測可能性が大きく 不足している。規 制環境が常に問題 を含んでおり、政 治的圧力を受け る。規制当局が事 業者に不利あるい は支援的でない判 断を行った実績が ある、または、規 制当局が政治的あ るいは法的措置に よる圧力を受けた り弱体化されたり してきた、あるい はそうなる可能性 がある。 規制の枠組みの整 備が遅れており、 不透明で、大幅な 変更が実施されて いる、あるいは、 予測不可能である か、通信事業者に とって不利益とな ってきた実績があ る。規制当局には 一貫した実績がな い、あるいは支援 的でなく不確実性 があり、予測可能 性が極めて低い。 国有化または事業 や市場において政 府が大規模な介入 を行うリスクが高 い。 規制当局が設備保 有事業者の増加や 設備を保有しない 事業者による競争 を促進。新規事業 免許を付与する可 能性がある。規制 当局が規制の枠組 みの変更を検討 中。 規制当局が設備を 保有しない事業者 による競争を促 進。規制当局は新 規参入者に支援 的。発行体に不利 となる規制上の変 更が行われる可能 性がある。 規制当局が設備を 保有しない事業者 による競争を強力 に促進。規制当局 は新規参入者に支 援的。 国有化のリスクが ある。 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 市場シェア この要因を重視する根拠 市場セグメントにおける通信事業者の相対的な地位は、事業上の地位の維持可能性と、業界の変化の性質 および速度をコントロールできるかどうかを示す指標であるため、格付にとって重要な意味を持つ。また、どの 程度強固な市場地位を有するかによって、顧客の認知度、現在の能力を活用して営業収益を拡大・維持す る力、多額の投資を行わずに改革を行う柔軟性、規制当局および政治家への影響力が左右される。 既存事業者は、依然として事業上大きな優位性を持っている。競争が急速に激化している中でも、通信市場 のシェア獲得競争に勝つためには、堅固なネットワークを構築し、投資がリターンを生むまで営業経費をカバ ーするための多額の資金力が必要とされる。サービスの質とサービスエリアにおいて高いブランド力を有する 既存事業者は、その市場地位によって、新規参入者がタイムリーに事業を構築する能力を阻害することが可 能である。また、既存事業者はコールセンター、販売店等を通した高い営業能力を有する。 評価方法 市場シェア 高い市場シェアを有する事業者(通常、主要市場で 1-2 位)は、強い価格決定力を持つことができ、コストとマ ージンの面でも優位に立てる。この評価には、市場シェアが伸びているか、横ばいか、低下しているかというト レンドが織り込まれる。通信事業者は、自社の事業ラインに合わせて市場の定義を狭めることにより、市場で 主導的な地位にあると主張することがある。小規模の事業者はニッチ市場で強固な地位を有することが多い。 しかし、より広義に市場を定義した方が適切な場合、ムーディーズは事業者の市場地位を「主導的」とはみな さないことがある。 13 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 要因 2:事業環境(16%) (続き) サブ要因 市場シェア ウェイト Aaa 8% 複数のサービスカ テゴリーで明らか に主導的な市場地 位にある。 Aa 集中度の高いサー ビスカテゴリーで 明らかに主導的な 市場地位にある。 A 集中度が中位のサ ービスカテゴリー で明らかに主導的 市場地位にある。 Baa 細分化されたサー ビスカテゴリーで 明らかに主導的市 場地位にある。 Ba 細分化されたサー ビスカテゴリーで 大手事業者の一角 を占める。 B Caa 細分化されたサー ビスカテゴリーで 競争力を有する。 競争力が弱く、市 場上位の事業者と の差が大きい。実 績が限定的な新規 参入事業者がこれ に該当する可能性 がある。 14 FEBRUARY 15, 2011 または または または または または または 独占型事業者で ある。 複数のサービスカ テゴリーで大手事 業者の一角を占め る。 集中度の高いサー ビスカテゴリーで 大手事業者の一角 を占める。 集中度が中位のサ ービスカテゴリー で大手事業者の一 角を占める 集中度が中位のサ ービスカテゴリー で高い競争力を維 持すると予想され る。 集中度が中位のサ ービスカテゴリー で高い競争力を維 持すると予想され る。 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 要因 2 のマッピング結果の表とアウトライヤーに関する議論を付録に掲載する。 要因 3:財務方針 この要因を重視する根拠 経営陣の財務リスクに対する許容度は、負債水準と信用力に直接影響を与えるため、重要な格付の決定要 因である。特に投資適格等級の通信事業者発行体では、信用力は経営陣の裁量によって決定される部分が 大きい。 通信事業者の財務方針は、経営陣の将来の財務リスクに対する選好度と、資本構造の方向性を予想する上 での指針となる。ここで重視されるのが、レバレッジ、カバレッジ、収益率の目標、流動性管理である。さらに、 配当および自社株買い方針がこの要因では重要な役割を果たす。重要な論点となるのは、この分野に関す る事業者のコミットメント、コミットメントを変更した実績、目標がどの程度現実的かである。 評価方法 ムーディーズは、発行体が目標とする資本構造を、当該発行体がその目標のために過去に行った取り組み に照らして検討し、目標の維持に対するコミットメントおよび経営陣が自社の信用プロファイルに組み入れる 事業および財務の柔軟性の度合いを評価する。その際に、景気サイクル、技術サイクル、需給サイクル、信用 サイクルの様々な局面における経営陣の実績や、その他の業界に関連する問題に注目する。また、経営陣 が流動性の逼迫、訴訟、競争圧力、規制圧力、労働争議などの重大なイベントにどのように対処するかにも 目を向ける。 経営陣の M&A に対する姿勢も評価の対象とするが、その際に、取引のタイプ(コア事業か新規事業か)およ び経営陣が選択する可能性が最も高い資金調達方法に焦点を絞る。買収の頻度と規模、および過去の資金 調達方法を分析する。事業者の M&A の実績は、ムーディーズが経営陣のリスク選好度を決定する上での基 礎となり、さらに重要な点として、買収事業の統合と強化の実績を判断する上での材料となる。負債調達によ る買収または信用力に影響を与える買収が行われた実績があれば、リスク選好度は高いと評価される。 最後に、経営陣がこれまでどのように株主と債券保有者の利益のバランスをとってきたかを検討する。債券保 有者の利益を犠牲にして株主へのリターンを重視してきた実績は、ムーディーズの見方ではネガティブに評 価される可能性がある。 15 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 要因 3:財務方針(5%) サブ 要因 財務 方針 ウェ イト 5% Aaa Aa A Baa Ba B Caa 極めて強 固な信用 指標を維 持すると予 想される。 財務方針 は極めて 保守的で、 財務構造 を変えるよ うなイベント は発生しな いとみられ る。 強固で安 定的な信 用指標を 維持すると 予想され る。財務構 造を変える ようなイベ ントは発生 しないとみ られる。キ ャッシュフ ロー成長と 資産売却 から得た資 金を債権 者にも等し く還元。 株主と債権 者の利益 のバランス をとる財務 方針を維持 すると予想 され、投資 適格等級 高位の格 付維持に 対する公的 コミットメント に大きな変 化がないと みられる。 自社株買 いと買収が 指標に与え る影響は軽 微。 株主と債権 者の利益 のバランス をとる財務 方針を維持 すると予想 されるが、 買収を受け た格付変 更の可能 性がある。 投資適格 等級に相 応する指標 の維持に 対する公的 コミットメン ト。 負債調達に よる買収お よび/または 株主への利 益還元の実 績がある。 買収を受け て格下げさ れた実績が ある。株主 の利益を明 らかに優先 する。大規 模な負債調 達による買 収と株主へ の利益還 元。 債券保有 者に対す る財務クッ ションをあ まり残さな い財務方 針。株主 への利益 還元を重 視。 対応不可能 な債務負担。 債務リストラ の可能性。 要因 3 のマッピング結果の表とアウトライヤーに関する議論を付録に掲載する。 要因 4:業績 この要因を重視する根拠 営業利益率の水準と安定性は、債券保有者にとってのリスクを評価する上で重要な検討項目である。通信セ クターの事業モデルは多岐にわたるため(総合通信、固定通信、移動体通信、地域、国内全域、後払い、先 払い、等々)、利益率の比較は簡単ではない。この要因のスコアを検討する際に、ムーディーズは EBITDA マージンのトレンドと絶対的な水準に着目する。事業トレンドの先行指標である EBITDA マージンのトレンド は、収益の方向性(安定的、改善傾向、悪化傾向)を示すものと考えられる。 評価方法 EBITDA/営業収益(過去 12 ヵ月) 評価基準に関する留意点 EBITDA マージンは、全てのサービスの利益率を総合したものであり、収益を拡大し、顧客を維持し、コストを 管理し、ネットワークの事業効率を高める経営陣の手腕が反映されている。 要因 4:業績(5%) サブ要因 ウェイト Aaa Aa A Baa Ba B Caa EBITDA マージン 5% ≥50% 45%-50% 40%-45% 30%-40% 25%-30% 20%-25% <20% 要因 4 のマッピング結果の表とアウトライヤーに関する議論を付録に掲載する。 16 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 要因 5:財務力 この要因を重視する根拠 ムーディーズの分析プロセスの主要部分を構成するのが、通信事業者の財務力の分析である。基本的に、事 業者のキャッシュ生成能力、債務履行能力、十分なリターンを生成し、資本市場からの継続的な調達を確保 する能力を分析する。 レバレッジとキャッシュフロー バランスシートの強固さは、将来のキャッシュフローに対しどれだけの借入を行っているかを測定するものであ り、重要なリスクの指標である。強固なバランスシートは、競争上の地位を維持し、将来にわたって事業を成長 させる事業者の能力を強化する。財務力は他のリスクを緩和し、競争に必要な事業の柔軟性を向上させる。 投資適格等級の格付を維持する上で、有利子負債/EBITDA でみたレバレッジを比較的低く維持することが 重要である。これによって、債務を返済しながら、成長機会の獲得に必要な投資資金を継続的に調達し、株 主に十分なリターンを提供する能力が向上するためである。逆に、高いレバレッジは、サービスのラインアップ を改善する戦略に必要な資金を調達する能力と、事業買収や事業成長と事業価値の強化に向けた他の戦 略を追求する能力を制約する。 再投資と債務の返済を行うためのキャッシュフローを生成する能力は、事業者のリスク評価を支える基礎であ る。ムーディーズはリテインドキャッシュフローとフリーキャッシュフローの観点からキャッシュフローを分析する。 これら 2 つの指標はいずれも企業のキャッシュフロー生成を測定するものだが、投資家に提供する視点は異 なる。リテインドキャッシュフローは、利用可能なキャッシュフローの配分を自己裁量で行える幅が大きい投資 適格等級の発行体を評価する上で特に有用な指針となる一方、フリーキャッシュフローは事業リスク、レバレ ッジ、資金需要の組み合わせによって企業の存続が左右される投機的等級の発行体を評価する上で重要な 指標である。 カバレッジ インタレストカバレッジは借入資本のコストをカバーする能力を示す基本的な指標であり、特に金利上昇局面 で投機的等級の発行体を評価する上で有用である。 評価方法 レバレッジとキャッシュフロー(過去 12 ヵ月ベース) 1. 有利子負債/ EBITDA 2. フリーキャッシュフロー(FCF) / 有利子負債 3. リテインドキャッシュフロー(RCF) / 有利子負債 カバレッジ(過去 12 ヵ月ベース) 1. (営業活動による資金(FFO)+総支払利息) / 総支払利息 2. (EBITDA - 設備投資) / 総支払利息 評価基準に関する留意点 レバレッジとキャッシュフロー 1. 有利子負債/EBITDA は、営業キャッシュフローまたは事業投資コスト(減価償却費)・支払利息・税金控 除前利益と比較した負債水準を示す一般的な指標である。EBITDA は米国 GAAP または他の一部の地 域における会計原則に準拠するものではないが、通信業界に投資する債券保有者の間では広く使われ ている。この指標は FCF/有利子負債より変動性が低く、債務発行体の業績およびレバレッジのトレンドを 見極める上で信頼できる指標である。 2. フリーキャッシュフロー(FCF)/有利子負債は、設備投資や配当など全てのコミットメントを控除した後の債 務返済能力を示す指標である。 3. リテインドキャッシュフロー(RCF)/有利子負債は、運転資本と事業への再投資調整前・配当控除後の営 業活動による資金から債務を返済する事業者の能力を示す指標である。配当支払い後の利用可能なキ ャッシュフローに着目するのは、大半の企業は減配または無配を回避しようとするとみられるからである。 17 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE カバレッジ 1. (営業活動による資金(FFO)+総支払利息)/総支払利息は、配当・運転資本増減・設備投資控除前の営 業キャッシュフローから利息費用を支払う能力を示す指標である。 2. (EBITDA-設備投資)/総支払利息は、コア事業に必要な再投資を行った後の利息費用支払能力を示す 指標である。これは、利息の支払を継続しつつ営業キャッシュフローを維持する必要性を表している。通 信業界では、新規および既存の技術への多額の投資が必要なため、この比率が重要となる。 負債水準‐ネット vs. グロス マッピング例ではグロスベースの有利子負債を使用しているが、純有利子負債の方が発行体の財務力をより 適切に示す指標と考えられることもある。たとえば、満期債務償還のために事前に資金調達を行ったり、事業 を強化する目的でバランスシート上に多額の現金を留保しているケースがこれにあてはまる。特定の投資目 的ではなく、財務クッションとして多額の現金残高を維持してきた長い実績を持つ企業もある。企業は次のよう な理由で多額の現金を留保することがある。 1. 自国の債務市場の流動性が比較的低いため、より保守的な流動性管理を行っている。 2. 税務上の理由:債務と特定の地域に保持し、現金は他の地域に保持する方が有利な場合がある。 3. 設備投資額の前倒し調達:グロスベースの有利子負債が実際に必要なタイミングより前に増加している。 要因 5:財務力(47%) サブ要因 ウェイト Aaa Aa A Baa Ba B Caa レバレッジとキャッシュフロー 有利子負債/EBITDA 9% <0.5x 0.5x-1.0x 1.0x-2.0x 2.0x-2.75x 2.75x-3.75x 3.75x-6.0x >6.0x FCF/有利子負債 7% ≥25% 15%-25% 10%-15% 8%-10% 6%-8% 4%-6% <4% RCF/有利子負債 10% ≥60% 45%-60% 35%-45% 25%-35% 20%-25% 10%-20% <10% (FFO+支払利息)/総支払利息 13% ≥12x 9x-12x 7x-9x 5x-7x 3x-5x 2x-3x <2x (EBITDA-設備投資) /総支払利息 8% ≥8.0x 6.5x-8.0x 5.0x-6.5x 3.5x-5.0x 2.0x-3.5x 1.0x-2.0x <1x カバレッジ 要因 5 のマッピング結果の表とアウトライヤーに関する議論を付録に掲載する。 前提と限界、格付マッピング表に反映されない格付上の検討事項 格付手法のマッピング表は、単純化すれば透明性が高まる一方で、複雑化すれば格付マッピングの結果が 実際の格付に近づくという両面性を勘案したものである。マッピング表に含まれる 5 つの格付要因は、通信事 業者の格付にとって重要な全ての考慮事項を網羅したものではない。 マッピング表の指標の選択において、業界を問わず全ての企業に共通する要因(経営陣の質と経験、コーポ レートガバナンス、財務情報と情報開示の質など)は除外した。これらの要因の評価は極めて主観的なものと なり得る上、長期的に変化する。そのため、マッピング表でランク付けすると、様々な業界セクターで格付され る他の発行体に対して、特定の発行体の相対的な位置付けが精密になりすぎるおそれがある。 格付には、定量化が難しい、あるいは一部のケースでのみ信用力の差を識別する上で重要な意味をもつ要 因が織り込まれることがある。そのような要因には、訴訟、流動性、テクノロジー、風評リスク、消費者と企業の 支出パターンの変化、競合相手の戦略、マクロ経済のトレンドなどがある。これらは重要な考慮事項であるが、 マッピング表を過度に複雑化したり、透明性を大きく低下させたりせずに、マッピング表で正確に表すことは 不可能である。 実際の格付では、特定の要因に、マッピング表に示したウェイトとは大きく異なるウェイトを付加することがある。 格付上の考慮事項としてのウェイトの調整は、あえてマッピング表に反映させていない要因にも適用される場 合がある。たとえば、流動性は格付に重要な考慮事項となることが多いが、類似した信用プロファイルを持つ 2 つの発行体を区別する上で大きく影響しない場合もある。デフォルトリスクを高めるほど極端に低い流動性 18 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE は、格付に大きな影響を与える。しかし、同一の信用プロファイルを有する 2 社があり、唯一の相違点が、一 方の流動性が良好、他方の流動性が極めて良好ということであれば、両社は同じ格付を付与される可能性が ある。これは、格付の推定にマッピング表を用いることの限界を示す一例である。 ムーディーズの格付は、将来のパフォーマンスについての予想を織り込むが、マッピングの説明に用いられる 財務情報は主に過去のものである。公表できない機密情報に基づいて、予想を立てる場合もある。あるいは、 過去のパフォーマンス、業界のトレンド、将来の需給および価格の予想レンジ、競合相手の動向や他の要因 に基づいて、将来の業績を予想する場合もある。いずれにせよ、将来の予想は、多大な誤差が生じるリスクを 伴う。ムーディーズの予想を不正確にすると考えられるものとして、マクロ経済環境、全般的な金融市場の状 況、業界の競争、新技術、規制上の措置、法的措置、訴訟、M&A や自社株買いに対する経営陣の姿勢な どの予想外の変化があげられる。 その他の格付上の考慮事項 ムーディーズは本稿で述べた要因に加え、他の要因も考慮するが、多くの場合、ここに提示する枠組みを理 解することによって、このセクターの企業の信用力に対するムーディーズの見方をほぼ把握することができる であろう。ムーディーズが考慮する追加的な要因は、過去のパフォーマンスのトレンドから外れるような事業・ 財務パフォーマンスの見通し、経営陣の質、コーポレートガバナンス、財務管理、流動性管理、イベントリスク、 季節性などである。これらの要因の分析が格付プロセスにおいて不可欠であることに変わりはない。 経営陣の質 経営陣の質は、企業の信用力を支える重要な要因である。ムーディーズは通常、経営陣の事業戦略、方針、 哲学を評価する一環として、シニアエグゼクティブと面談する。 一貫性のある経営が確立され、維持されていれば、将来、ストレスに晒された場合の経営陣の行動が予測で き、経営陣が現在の事業哲学から偏向する傾向があるかどうかを示す指標となる。 コーポレートガバナンス コーポレートガバナンスの評価では、監査委員会の財務監視能力、役員報酬制度によるインセンティブ、関 連会社取引、独立監査人との関係、所有関係などに注目する。 財務管理 ムーディーズは、監査済み財務諸表の正確性を信頼して格付の付与とモニタリングを行う。財務諸表の正確 性を担保するためには、企業が業務手続きの集中化や経営トップの適切な方針などを含む強力な内部統制 を行い、一貫した会計方針と手順を維持しなくてはならない。 全般的な財務報告プロセスの弱さや、財務諸表の修正再表示や米国証券取引委員会(SEC)または他の規制 当局への提出遅延は、内部統制の機能停止の可能性を示すと考えられる。 流動性管理 流動性が特に重要となるのは、事業や財務の柔軟性の低い発行体が多い投機的等級である。ムーディーズ はキャッシュの源泉と使途の両面から、短期的にどの程度の流動性が必要となるかを予想する。その際に、 銀行コベナンツや、コベナンツ遵守のためのクッションをモニタリングし、業界の状況が若干悪化した場合や、 ある発行体の業績が悪化した場合に、コベナンツの救助が必要となるかどうかを評価する。 イベントリスク ムーディーズは、予想外のイベントにより、発行体のファンダメンタルな信用力が突然、急激に悪化する可能 性があることも認識している。典型的なイベントリスクには、M&A、資本再編、訴訟、大規模な自社株買いなど がある。 19 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 結論:格付マッピング表による格付結果の概要 格付マッピング表による格付は、米国証券取引委員会に財務諸表を提出している公開企業については、 2010 年 9 月 30 日に最も近い四半期末までの 12 ヵ月の財務データ、非公開企業および米国外の企業につ いては、2009 年 12 月 31 日までの 12 ヵ月の財務データに基づいている。マッピング例に用いた 25 社のマッ ピング表に基づく格付と実際の格付との対応結果は次の通りである(詳細については付録を参照されたい)。 » 4 社の格付が実際の格付と一致した。 » 15 社については、マッピング表に基づく格付と実際の格付が、文字数字カテゴリーで 1 ノッチ乖離した。 » 5 社については、マッピング表に基づく格付と実際の格付が、文字数字カテゴリーで 2 ノッチ乖離した。 » 1 社については、マッピング表に基づく格付と実際の格付が、文字数字カテゴリーで 3 ノッチ乖離した。 全体的にみると、マッピング表に基づく格付が実際の格付を下回った企業は 13 社、上回った企業は 8 社で ある。これは、本格付手法が適用される企業のビジネスモデルの多様性、マッピング表に反映されない格付 上の考慮事項、実際の格付は将来のパフォーマンスの予想を織り込むのに対し、マッピング表では過去の財 務指標を用いることによるものと考えられる。将来のパフォーマンスは、競争激化と株主アクティビズムからマ イナスの影響を受ける可能性がある。一部の企業の格付は、フリーキャッシュフローが株主への利益還元や 事業買収のために使われるとの予想から制約を受けている。 20 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 付録 A:格付手法のマッピング表に基づく格付の例 社名 21 ムーディ ーズに よる 格付** マッピン グ表に 基づく 格付 規模 (営業収益、 10 億ドル) ビジネスモデ ル、競争環境、 技術面での 地位 規制環境・ 政治的 枠組み Ba3 Caa Baa Baa 市場シェア 財務 方針 EBITDA マージン 有利子 負債 /EBITDA FCF/ 有利子 負債 RCF/ 有利子 負債 (FFO + 支払 利息)/総支払 利息 (EBITDA 設備投資)/ 総支払利息 Baa B Baa B Caa B B B 1 Alaska Communications Systems Holdings, Inc. B1 2 America Movil S.A.B. de C.V. A2 A1 Aa A Baa Aa Baa A Baa Aa A Aa Aa 3 AT&T Inc. A2 A2 Aaa Aa Baa A A Baa A Ba Baa A Baa 4 Axtel, S.A.B. de C.V. B2 Ba3 B Ba Baa Caa Baa Baa Ba Caa Baa Ba Caa 5 BCE Inc./Bell Canada Baa1 A3 A A A A Baa A Baa A Ba Baa A 6 Broadview Networks Holdings, Inc. B3 Caa1 Caa B B Caa B B Caa Caa Caa Caa Caa 7 China Mobile Limited Aa3 Aa2 Aa A Baa Aa A Aaa Aaa Aaa Aaa Aaa Aaa 8 Deutsche Telekom AG Baa2 Baa1 Aaa Aa A A Baa Baa Ba Caa B Baa Ba 9 Digicel Group Limited B2 Ba3 B Baa B Aa B A B B Caa B B 10 France Telecom Baa1 A2 Aa Aa Aa Aa A Baa Baa A Ba Baa Baa 11 Hellenic Telecom. Organization S.A. Baa2 Baa2 Baa Aa A Aa Baa Baa Ba Caa B Ba Baa 12 Indosat Tbk. (P.T.) Ba1 Ba2 B Ba Baa Ba Ba Aaa Ba Caa Ba Ba B 13 Nippon Telegraph and Telephone Corporation Aa1 Aa2 Aaa Aa Aa Aa A Baa A A Aa Aaa Aaa 14 Philippine Long Distance Telephone Company Baa2 A2 Ba A Baa Aa A Aaa A Ba Baa Aa Aaa 15 Rogers Communications Inc. Baa2 A3 A A A A Baa A Baa A Baa Baa Baa 16 Singapore Telecommunications Ltd A2 A1 A Aa A A A Baa A Baa A Aaa Aaa 17 Skype Global S.a.r.l. B1 B3 B Caa B Caa B B B Caa Caa Caa Ba 18 Telefonica S.A. Baa1 A3 Aa Aa A A A A Baa B Ba Baa Baa 19 Tele Norte Leste Participacoes S.A Baa2 Baa3 A Baa Baa A Baa A Ba Caa Baa Baa B 20 Telkom SA Limited Baa2 Baa3 Ba Baa Baa Aaa Ba Baa A Aa Caa Caa Baa 21 Telstra Corporation Limited A2 A3 A Aa Baa Aa Baa Aa A Caa Ba A A 22 True Move Company Ltd B2 B1 B Ba Ba Ba B Ba B Caa B B B 23 Versatel AG B2 B1 B B A Caa Baa Baa B Caa B Ba B 24 Vodafone Group Plc Baa1 Baa1 Aa A A A Baa A Baa Caa B A A 25 Windstream Corporation Ba2 Ba2 Ba Ba Baa Baa Ba Aaa B B Caa Ba Ba FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE ** 付録 A の注記:2010 年 12 月時点。一部の政府系発行体については、付録 A はベースライン信用リスク評 価に相当する格付(ベースライン信用リスク評価がレンジで表わされる場合はその中間値に相当する格付)を 表示している。これに該当する発行体とその格付は、Deutsche Telkom AG [Baa1]、France Telecom [A3]、 Singapore Telecommunications Limited [Aa2]、Telkom SA Limited [Baa1]である。 22 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 付録 B:観察結果とアウトライヤー ムーディーズは、特定のサブ要因における格付が、実際の格付を文字格付で 2 カテゴリー以上上回る、ある いは下回る企業を、ポジティブ「アウトライヤー」またはネガティブ「アウトライヤー」と定義している(例:実際の 格付は B であるが、特定のサブ要因で Baa カテゴリーに格付される企業は、当該サブ要因におけるポジティ ブ・アウトライヤーである)。 前掲のマッピング表は、相対的に格付の高い通信事業者が、財務力のサブ要因に関してネガティブ・アウトラ イヤーになる傾向があることを示している。これが、規模とビジネスモデル、競争環境、技術面での地位のサ ブ要因に関して、実際の格付に対するポジティブ・アウトライヤーとなることで相殺される場合もある。つまり、 大規模で分散性の高い高格付の大手通信事業者は、株主への利益還元を改善するために高いレバレッジ を用いることが多い。財務力のサブ要因である FCF/有利子負債比率と RCF/有利子負債比率についても、ネ ガティブアウトライヤーの数が多くなる傾向があるこれは、配当性向が高い傾向にある通信事業者が多く、そ のためにフリーキャッシュフローが圧迫されるからである。また、他業種に比べ設備投資水準が高いことも、フ リーキャッシュフローを圧迫している。 要因 1 の規模、ビジネスモデル、競争環境、技術面での地位においてアウトライヤーとなった事業者の全て が、ポジティブ・アウトライヤーであり(要因に基づく格付が実際の格付を上回る)、8 社の内、6 社が投資適格 等級である。アウトライヤーとなった事業者は、この要因ではスコアが高いが、それを相対的に低い他の要因 のスコア(特に財務力)が相殺している。 要因 2 の事業環境に関してアウトライヤーとなった事業者は、1 社を除いて全てポジティブ・アウトライヤーで ある。France Telecom (FT)と Alaska Communications は 2 つのサブ要因のいずれにおいてもポジティブ・アウト ライヤーである。FT が十分かつ予測可能な投資収益を確保することを可能にするという意味で、フランスの規 制環境は格付を支える要因であるとムーディーズはみている。Alaska Communications の B1 の CFR は、バラ ンスのとれた規制環境が維持されつつも、一方で同社が非常に高い配当性向を維持する意向であることを主 に反映している。また、FT と Alaska Communications はいずれも、サブ要因の市場シェアにおいてポジティ ブ・アウトライヤーである。既存事業者は強力な市場地位を維持しているため、ポジティブ・アウトライヤーとな ることが多い。サブ要因の規制環境・政治の枠組みで唯一ネガティブ・アウトライヤーとなったのは China Mobile である。中国では通信事業の規制と統合に関する方針がまだ発展途上にあり、政治的動機が背景に あるとみられるからである。たとえば、3G ライセンスを割り当てた際には、China Mobile には国際標準ではなく、 中国独自の標準である TD-SCDMA のライセンスが発給されたのに対し、比較的規模の小さい競合相手の 2 社には国際標準のライセンスが発給された。とはいえ、最近の携帯電話番号ポータビリティー(MNP)の試験 運用によって、市場首位の China Mobile への乗り換えが促進された模様である。 要因 3 の財務方針では、マッピングによる格付と実際の格付がよく一致しており、2 社のみがポジティブ・アウ トライヤーとなった。Axtel と Versatel は保守的な財務方針をとっている。規模の小ささ、限定的な市場シェア、 比較的細分化されているが統合が進む市場で競争していることが、現在の強固な財務方針を相殺している。 要因 4 の業績におけるアウトライヤーは、2 社を除く全てがポジティブ・アウトライヤーである。米国の地方固 定回線事業者(Windstream、Alaska Communications)は、コアの既存事業で高い収益率を確保しているため、 この要因のポジティブ・アウトライヤーである。実際の格付がマッピング結果より低いのは、株主への配当を高 めにする傾向と負債調達による買収を通した成長を志向する傾向を反映している。NTT は海外他社との比 較でみた EBITDA マージンが低いため、この要因のネガティブ・アウトライヤーである。しかし、NTT の EBITDA マージンは日本の通信業界では最も高い水準にある。非常に保守的な財務方針と、全体的に強固 な信用プロファイルを要因として、同社は実際には Aa1 に格付されており、要因 4 のスコアを大幅に上回って いる。他のほとんどの要因において高いスコアを付与されていることが、この要因のスコアの低さを相殺してい る。 要因 5 の財務力は、サブ要因のアウトライヤー数が最多で、ネガティブ・アウトライヤーの比重が高い(ネガテ ィブ・アウトライヤー16 社に対し、ポジティブ・アウトライヤーは 4 社)。アウトライヤーの 80%(16 社)が、サブ要 因の FCF/有利子負債と RCF/有利子負債のアウトライヤーであり、ネガティブ・アウトライヤーがポジティブ・ア ウトライヤーを 7:1 の比率で上回っている。先進国市場で長期にわたり強固な事業基盤を確立している事業 者は、ネットワーク(無線および固定回線)の最新化に多額の投資を行っており、一般に配当額も大きいため、 これがフリーキャッシュフローとリテインドキャッシュフローの指標を低下させている。 23 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 全体的にみて、マッピング表による格付が実際の格付を上回る事業者(13 社)の方が、下回る事業者(8 社) より多い。この結果は、マッピング表の財務要因のスコアは過去データに基づいているため、競争激化と株主 アクティビズムの強まりという業界全体のトレンドが織り込まれていないことを反映している。ムーディーズの格 付は将来を見通したもので、将来の財務・事業パフォーマンスに対するムーディーズの予想を織り込んでいる。 フリーキャッシュフローが株主への利益還元または買収に用いられるとの予想が、多数の事業者の格付を制 約している。 マッピング表に基づく総合的な格付が、実際の格付と顕著に乖離しているのが PLDT で、実際の格付はマッ ピングによる格付を 3 ノッチ下回る。これは、同社が実質的に全収益をフィリピン(格付 Ba3/安定的)で生成し ているため新興市場リスクが懸念されること、ならびに、非中核事業への投資に関連する株主の戦略に対す る懸念によって説明される。 24 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 付録 C:通信業界の概観 業界の概観 通信業界は、政府認可(政府保有の場合もある)の独占企業を起源としている。現在、規制緩和と支配的な 通信事業者の民営化という世界的な流れに加え、移動体通信技術の普及と IP(インターネット・プロトコル)通 信の世界的な導入を受けた熾烈な競争と細分化の進行によって、一世紀以上にわたり極めて安定していた 通信業界に急速な変化が起きている。 通信業界は極めて資本集約的な業界である。サービスの維持と、需要が減少しつつある既存のサービスにか わる新しいサービスの導入のため、ネットワークインフラに巨額の投資が行われる。これは、世界の通信業界 の全セクターに共通する特徴として、今後も変わることはないとみられる。サービス内容拡充のため、通信ネッ トワークの利用が拡大しているにもかかわらず、先進国市場では通信事業者の増収率が GDP 成長率とほぼ 同水準にとどまるとみられる一方、新興市場ではサービス水準向上のための投資拡大が足枷となるため、世 界の通信業界のフリーキャッシュフローの成長が制約されるとみられる。また、技術革新の速さは一般に、資 産のライフサイクルの短命化をもたらす。競争激化も相まって、業界の投資回収の確実性はこれまでと比べ低 下している。従って、業界全体の格上げはないとみられる。 通信業界のプレーヤーは、強力な既存業者から新規参入事業者まで多岐にわたるが、本格付手法で取り上 げる要因は、業界全体に影響を与えるものであり、格付に最も重要な要因であるとムーディーズは考えている。 25 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 付録 D:今後 10 年の格付に関する主要論点 競争は激化の一途 インターネット・プロトコル規格は、既存事業者に新サービスと新機能を投入する大きな機会を提供する一方、 技術進化が新たな競合相手を生み、既存事業者のようなレガシーコスト構造を持たない(多くの場合、サービ スを提供する義務を負わない)既存の競合相手を勢いづけるものでもある。このような顧客獲得競争が価格の 柔軟性を制約すると予想され、製品開発費とマーケティング費の増加と相俟って利益率を圧迫する可能性が ある。 競合相手の増加を促し、WiMAX や LTE などの潜在的な競合技術導入の基礎となる、新たな周波数帯の割 り当てが、移動体通信事業者に打撃を与えている。業界全体の成長率が鈍化し、新規ライセンスが競売にか けられ、事業者が 4G テクノロジー移行のための次段階の設備投資に備える中、これからの 10 年も激しい競 争が継続するとムーディーズは予想している。 規制環境は引き続き重要な論点 通信業界は、サービスの重要性、高いサービス水準に対する需要、インフラ関連の多額の設備投資を要因と して、今後も政府の規制と監督を受ける度合いが高いとみられる。規制には様々な形式があり、サービス料金 の設定や承認、競争環境を取り巻く参入障壁についての判断、サービス領域についての規定、相互接続とア ンバンドリングの義務化、通信網の中立性原則の設定、様々な法律の施行などが含まれる。信用評価の観点 からみて、通信事業者が事業を行う枠組みを形作る規制当局の能力は、最終的には事業者の投資収益力を 左右するため、信用力に多大な影響を与える。外資による投資の制限は、国内事業者を大規模で資金力の ある多国籍通信事業者の参入から保護するとみられるが、経済のグローバリゼーションと急速な技術進化を 背景として、規制当局は通信事業に対するこれまでの規制の枠組みを見直している。 資本集約度の高さは変わらず 通信事業は今後も資本集約度の高い業界であり続けるだろう。事業者は、動画を中心とするデータアプリケ ーションの利用拡大を背景として、個人顧客から法人顧客にわたる帯域幅需要の急速な拡大に対応するた め、ネットワークを継続的に最新化しているからである。固定回線ネットワークでも無線ネットワークでも動画の 利用が普及しているため、どちらのネットワークでも回線容量が不足する状態が続くだろう。 そのため、通信事業者はラストマイル、バックホール、配信機能のための設備投資を拡大する必要があるだろ う。固定通信事業者は、エンドユーザーまでのラストマイルの銅線での接続を改良するか、あるいは光ファイ バー回線を敷設するかを選択できる。 銅線設備の改良は通常、比較的コストが安く、短期間で行えるが、光ファイバー・ネットワークの敷設は将来 への布石とみなされ、一旦敷設してしまえば、運用と維持は銅回線よりも大幅に安い。データや動画アプリケ ーションの利用が無線ネットワークに移行しているため、移動体通信業者も固定回線業者と同様、通信量の 大幅な増加に直面している。移動体通信セクターの場合、設備投資は通常、ライセンスの取得、先進国市場 でのネットワーク強化、新興市場でのネットワーク拡張に振り向けられる。 周波数帯取得のための支出は、通常の設備投資と区別するべきだとムーディーズは考えている。周波数帯 取得のための支出は概して巨額に上り、頻度は低く、企業の長期的な事業戦略に直接結びついている。競 売によるライセンスの直接取得、あるいは既にライセンスを保有している企業の買収によるライセンス取得のた めに、現金支出が発生する可能性がある。このような支出を評価する際に、ムーディーズはレバレッジへの影 響、買収の戦略上の合理性、将来大規模な支出が発生する可能性を中心に分析する。 ムーディーズは Moody's Basic Definitions for Credit Statistics, User's Guide において、設備投資の定義を、キ ャッシュフロー計算書の投資活動によるキャッシュフローに記載された有形固定資産および無形資産への総 支出としている。周波数帯への支出を投資活動によるキャッシュフローのどの項目に分類するかは、企業によ って慣行に違いがある。例えば、「有形固定資産・無形資産の取得」に分類する企業もあれば「事業買収・投 資」に分類する企業もある。あるいは、独立した項目として記載する企業もある。この種の支出を特定するため に十分な情報が入手できる場合、ムーディーズはそれらを「他の投資活動によるキャッシュフロー」に再分類 する。このように分類することで、帯域ライセンスへの支出はキャッシュフロー計算書の投資活動によるキャッ シュフローのセクションに計上されるが、設備投資からは除外される。 26 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE 活発な M&A が続く見込み ムーディーズは次に挙げる理由から、通信セクターでは引き続き活発な M&A が行われるとみている。買収 はスケールメリットと新しい市場(地域あるいはサービス分野)への事業拡大という恩恵をもたらすため、より多 くの企業が内部成長・発展を買収によって補完しようとする。通信業界は固定費が高いという特性を持つため、 買収する側の事業者は買収によって大きなシナジー効果を実現する機会を得られる。一方で、10 年単位の 投資サイクルの一巡と新たな競争相手の台頭を背景に、業界にはまだ統合の余地が残されている。M&A に よって収入が分散化され、利益率が向上する可能性はあるが、負債調達による買収は、格付への下方圧力 につながる可能性のある重要な信用リスクである。 株主からの圧力が高まる可能性 有力な通信事業者は、契約者数の減少と増収を達成する必要性という課題に直面しながらも、高水準のキャ ッシュフローを生成する能力がある。利用可能な現金を高い割合で株主に配分するよう求める株主アクティビ ズムは、競争激化と高い資本集約度という事業環境においては、信用プロファイルを悪化させる可能性があ る。株主重視の利益配分は、財務の柔軟性を制約するような方法での配当、資本再編、自社株買いなどによ り行われる。 27 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界 GLOBAL CORPORATE FINANCE ムーディーズ・ジャパン株式会社 〒105-6220 東京都港区愛宕 2 丁目 5-1 愛宕グリーンヒルズ MORI タワー 20F Report Number: JP002138 (Japanese) 129659 (English) 著者 臼井規 Dennis Saputo Mark Stodden シニア・エディター 河合 久美子 プロダクション・アソシエイト 渡邉 エリ Copyright 2011 Moody's Investors Service, Inc.及び/又は同社のライセンサー及び関連会社(以下「MOODY'S」と総称します。)All rights reserved. 信用格付は、事業体、与信契約、債務又は債務類似証券の将来の相対的信用リスクについての、ムーディーズ・ジャパン株式会社(以 下「MJKK」といいます。)の現時点の意見です。MJKK は、信用リスクを、事業体が契約上・財務上の義務を期日に履行できないリスク及 びデフォルト事由が発生した場合に見込まれるあらゆる種類の財産的損失と定義しています。信用格付は、流動性リスク、市場価値リ スク、価格変動性リスク及びその他のリスクについて言及するものではありません。信用格付は、現在又は過去の事実を示すものでは ありません。信用格付は、投資又は財務に関する助言を構成するものではなく、特定の証券の購入、売却、又は保有を推奨するもので はありません。信用格付は、特定の投資家にとっての投資の適切性について論評するものではありません。MJKK は、投資家が、購 入、保有、又は売却を検討する各証券について投資家自身で研究・評価するという期待及び理解の下で、信用格付を発行します。 ここに記載する情報はすべて、著作権法を含む法律により保護されており、いかなる者も、いかなる形式、方法、手段によっても、これ らの情報(全部か一部かを問いません。)を、MOODY'S の事前の書面による同意なく、複製その他の方法により再製、リパッケージ、転 送、譲渡、頒布、配布、転売することはできず、また、これらの目的で再使用するために保管することはできません。ここに記載する情 報は、すべて MOODY'S が正確かつ信頼しうると考える情報源から入手したものです。しかし、人的及び機械的誤りが存在する可能 性、並びにその他の事情により、MOODY'S はこれらの情報をいかなる種類の保証もつけることなく「現状有姿」で提供しています。 MOODY'S は、信用格付を付与する際に用いる情報が十分な品質を有し、またその情報源が MOODY'S にとって信頼できると考えられ るものであること(独立した第三者がこの情報源に該当する場合もある。)を確保するため、全ての必要な措置を講じています。しかし、 MOODY'S は監査を行う者ではなく、格付の過程で受領した情報の正確性及び有効性について常に独自の検証を行うことはできませ ん。MOODY'S はいかなる状況においても、またいかなる者又は法人に対しても、以下の(a)及び(b)について一切責任を負いません。 (a) これらの情報の入手、収集、編纂、分析、解釈、伝達、公表又は配布に関する誤り(過失によるか、その他の原因によるかを問いま せん。)又はその他の状況若しくは偶発事象(MOODY'S、あるいはその取締役、役職員、従業員あるいは代理人の支配力が及ぶか及 ばないかを問いません。)に(全部、一部を問わず)起因し、由来し、若しくは関係する損失又は損害。 (b) MOODY'S が事前に当該損害の可能性について助言を受けていた場合においても、これらの情報の使用により又は使用が不可能 であることにより発生する、あらゆる種類の直接的、間接的、特別、二次的、補償的、又は付随的損害(逸失利益を含みますがこれに 限定されるものではありません。)。 ここに記載される情報の一部を構成する格付、財務報告分析、予測、及びその他の見解(もしあれば)は、MOODY'S の意見の表明で あり、またそのようなものとしてのみ解釈されるべきであり、これによって事実を表明し、又は証券の購入、売却若しくは保有を推奨する ものではありません。ここに記載する情報の各利用者は、購入、保有又は売却を検討する各証券について、自ら研究・評価しなければ なりません。MOODY'S は、いかなる形式又は方法によっても、これらの格付若しくはその他の意見又は情報の正確性、適時性、完全 性、商品性及び特定の目的への適合性について、(明示的、黙示的を問わず)いかなる保証も行っていません。 MJKK は、ムーディーズ・グループ・ジャパン合同会社の完全子会社であり、同社は、Moody's Corporation (以下「MCO」といいます。)の 完全子会社である Moody's Overseas Holdings Inc.の完全子会社です。 MJKK は日本の金融商品取引法の下で金融庁に登録された信用 格付業者であり、登録番号は金融庁長官(格付)第 2 号です。 MJKK は、MJKK が格付を行っている債券(社債、地方債、債券、手形、CP を含みます。)及び優先株式の発行者の大部分が、MJKK が行 う評価・格付サービスに対して、MJKK による格付の付与に先立ち、20 万円から約 3 億 5,000 万円の手数料を MJKK に支払うことに同 意していることを、ここに開示します。また、MCO 及び MJKK は、MJKK の格付及び格付過程の独立性を確保するための方針と手続きを 整備しています。MCO の取締役と格付対象会社との間の何らかの利害関係の存在、及び MJKK から格付を付与され、かつ MCO の株 式の 5%以上を保有していることを SEC に公式に報告している会社間の何らかの利害関係の存在に関する情報は、MOODY'S のウェブ サイト www.moodys.com 上に"Shareholder Relations-Corporate Governance-Director and Shareholder Affiliation Policy"という表題で毎年、掲載 されます。 本書のオーストラリアでの公開は、オーストラリア金融サービス認可番号 336969 を有する MOODY'S の関連会社である Moody's Investors Service Pty Limited ABN 61 003 399 657 によって行われます。本文書は(2001 年会社法 761G 条の定める意味における)「ホール セール顧客」のみへの提供を意図したものです。オーストラリア国内から本文書に継続的にアクセスした場合、MOODY'S に対して、「ホ ールセール顧客」であるか又は「ホールセール顧客」の代表者として本文書にアクセスしていること、及び、貴殿又は貴殿が代表する法 人が、直接又は間接に、本書又はその内容を(2001 年会社法 761G 条の定める意味における)「リテール顧客」に配布しないことを表明 したことになります。 本信用格付は、発行者の信用力又は債務についての意見であり、発行者のエクイティ証券又はリテール投資家が取得可能なその他 の形式の証券について意見を述べるものではありません。リテール投資家が、本信用格付に基づいて投資判断をするのは危険です。 もし、疑問がある場合には、フィナンシャル・アドバイザーその他の専門家に相談することを推奨します。 28 FEBRUARY 15, 2011 格付手法:世界の通信業界
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