建築用仕上塗材ハンドブック

建築用仕上塗材ハンドブック
2007年版
編集 日本建築仕上材工業会
ii
建築用仕上塗材ハンドブック
(2007 年版)の刊行に際して
日本建築仕上材工業会
会長 常山 洋
日本建築仕上材工業会では、1973 年(昭和 48 年)に建築吹付材ガイドブックを発刊以来、
建築用仕上塗材を主体として、日進月歩の材料・工法を紹介し、その普及と業界の認識を高
めるため、以下のとおりA 4 版のガイドブックを 9 版、A 5 版のハンドブックを 2 版刊行して
まいりました。
ガイドブックおよびハンドブックの変遷
ガイドブック(A 4 版)
ハンドブック(A 5 版)
建築吹付材ガイドブック
(1973 年)
建築吹付ハンドブック(1977 年)
建築吹付材ガイドブック
(1975 年)
建築吹付ハンドブック(1980 年)
建築用吹付材ガイドブック (1978 年)
建築用仕上塗材ガイドブック(1983 年)
建築用仕上塗材ガイドブック(1986 年)
建築用仕上塗材ガイドブック(1990 年)
建築仕上材ガイドブック
(1995 年)
建築仕上材ガイドブック
(1998 年)
建築仕上材ガイドブック
(2006 年)
特に、近年におきましては、塗材の多様化や種類の増加に伴い、仕上塗材、下地材、左官
材、補修材などの材料・施工に係る内容の充実に加え、建築ストックの増加に伴う補修・改
修工法や関連法規・規格・基準類などについても、詳細な技術情報を提供すべく、定期的な
ガイドブックの発刊に努めてまいりました。
しかし、一方では活字ばなれの風潮や建築現場への携帯性などの観点から、ガイドブック
よりもコンパクトで、ポイントを図、表、写真で分かりやすくまとめたハンドブック発行の
ニーズも高まってまいりました。
そこで、日本建築仕上材工業会では、2004 年(平成 16 年)9 月から約 2 箇年半に亘り、技
術委員会の下に作業部会を設けて、原案の作成を行ってまいりましたが、今般建築用仕上塗
材を対象として、
「建築用仕上塗材ハンドブック 2007 年版」を発刊するに至りました。
つきましては、本ハンドブックがガイドブックと共に、業界関係者はもとより官、学、産各
界の皆様方にお役に立つことを願っております。
最後に、本ハンドブックの製作にご協力いただいた方々ならびに印刷にご協力いただいた
1 工文社に心から御礼申し上げます。
2007 年(平成 19 年)9 月
iii
建築用仕上塗材のテクスチャー
1.JIS A6909 薄付け仕上塗材
(1)砂壁状
外装薄塗材 E(Si)
可とう形外装薄付塗材 E
骨材
主材
下 地
(砂壁状)
(2)さざ波状
防水形外装薄塗材 E
主材
下塗り
下 地
(さざ波状)
2.JIS A6909 厚付け仕上塗材
(1)
凹凸状吹き放し
外装厚塗材 E
主材
骨材
下塗り
下 地
(凹凸状吹き放し)
(2)
ヘッドカット
外装厚塗材 E
骨材
主材
下塗り
下 地
(ヘッドカット)
iv
3.JIS A6909 複層仕上塗材
(1)凹凸状吹き放し
複層塗材 E(Si,RE,RS,CE)
上塗り
主材
下塗り
下 地
(凹凸状吹き放し)
(2)ヘッドカット 複層塗材 E(Si,RE,RS,CE)
上塗り
主材
下塗り
下 地
(ヘッドカット)
4.その他の仕上塗材
月面状
平滑状
石材調
こて仕上げ
v
建築用仕上塗材ハンドブック目次
1章 建築用仕上塗材の概要
1.1 建築用仕上塗材 ……………………………………………………………………………
1
1.2 主な用語 ……………………………………………………………………………………
4
1.3 建築用下地調整塗材 ………………………………………………………………………
5
1.4 建築用仕上塗材の変遷 ……………………………………………………………………
5
1.5 建築用仕上塗材の選び方 …………………………………………………………………
6
2章 下地及び下地の管理
2.1 下地の種類(成分と特徴)………………………………………………………………… 11
2.2 下地の管理(水分、pH、下地調整) ……………………………………………………… 15
2.3 下地の状態 ………………………………………………………………………………… 18
2.4 各種下地の調整法 ………………………………………………………………………… 18
2.4.1 コンクリート、プレキャストコンクリートなどの下地調整
2.4.2 ALCパネルの下地調整
…………………… 18
…………………………………………………………… 19
2.4.3 せっこうボード、スレート、合板の下地調整
…………………………………… 19
2.4.4 木毛セメント板及び木片セメント板の下地調整 ………………………………… 20
2.4.5 けい酸カルシウム板の下地調整 …………………………………………………… 20
2.5 コンクリート下地の補修例 ……………………………………………………………… 20
2.6 下地調整に用いられる材料 ……………………………………………………………… 21
3章 施工方法と管理
3.1 吹付け工法 ………………………………………………………………………………… 23
3.1.1 吹付け機器
…………………………………………………………………………… 23
3.1.2 吹付け塗り操作 ……………………………………………………………………… 25
3.2 ローラー塗り工法 ………………………………………………………………………… 27
3.2.1 ローラーの種類 ……………………………………………………………………… 27
3.2.2 ローラー塗り操作 …………………………………………………………………… 28
3.3 こて塗り工法 ……………………………………………………………………………… 28
3.4 その他の用具 ……………………………………………………………………………… 28
3.5 施工及び施工管理 ………………………………………………………………………… 29
3.5.1 施工 …………………………………………………………………………………… 29
3.5.2 施工管理
……………………………………………………………………………… 30
4章 塗替え改修
4.1 仕上塗材に発生する劣化現象 …………………………………………………………… 33
4.2 劣化現象の処理方法 ……………………………………………………………………… 37
vi
4.3 各種塗替え工法 …………………………………………………………………………… 38
4.3.1 既存仕上塗材層の処理方法
4.3.2 塗替え仕上塗材の選定
………………………………………………………… 38
……………………………………………………………… 40
4.3.3 塗替え仕上げの工程 ………………………………………………………………… 42
5章 クレームになる欠陥とその対策
5.1 用語の解説 ………………………………………………………………………………… 48
5.2 材料に発生する欠陥と対策 ……………………………………………………………… 50
5.3 下地の状態により発生する欠陥と対策 ………………………………………………… 52
5.4 塗装作業中に発生する欠陥と対策 ……………………………………………………… 53
5.5 塗装作業後に発生する欠陥と対策 ……………………………………………………… 56
5.6 経時で発生する欠陥と対策 ……………………………………………………………… 58
5.7 外的要因により発生する欠陥と対策 …………………………………………………… 60
6章 関連法規
6.1 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)…………………………… 63
6.2 労働安全衛生法(労安法、安衛法)……………………………………………………… 65
6.3 有機溶剤中毒予防規則(有機則)………………………………………………………… 67
6.4 特定化学物質等障害予防規則(特化則)………………………………………………… 68
6.5 石綿障害予防規則(石綿則)……………………………………………………………… 69
6.6 消防法 ……………………………………………………………………………………… 70
6.7 毒物及び劇物取締法(毒劇法)…………………………………………………………… 72
6.8 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)………………………………………… 74
6.9 建築基準法 ………………………………………………………………………………… 76
6.10 水質汚濁防止法 …………………………………………………………………………… 79
6.11 下水道法 …………………………………………………………………………………… 80
6.12 大気汚染防止法(大防法)………………………………………………………………… 81
6.13 製造物責任法(PL 法) …………………………………………………………………… 86
6.14 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律
(PRTR 法、化学物質管理促進法)……………………………………………………… 87
6.15 住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)……………………………………… 93
付 録
付録 1 施工仕様例 ……………………………………………………………………………… 96
付録 2 建物の部位と名称 ……………………………………………………………………… 99
付録 3 足場の種類 ……………………………………………………………………………
100
付録 4 塗装種別の略号 ………………………………………………………………………
102
付録 5 仕上塗材の防火性能 …………………………………………………………………
104
vii
1章 建築用仕上塗材の概要
1章 建築用仕上塗材の概要
1.1 建築用仕上塗材
建築用仕上塗材(以下、仕上塗材という。
)は、建物の内・外壁及び天井の表面に、美装又
は下地の保護を目的に吹付け、ローラー塗り、こて塗りで凹凸模様やゆず肌模様などに仕上
げられる材料である。
仕上塗材は、セメント、合成樹脂などの結合材、顔料、骨材を主原料としている。その施
工仕様は、下塗り・主材塗り・上塗りの工程が基本となっている。
仕上塗材と一般塗料との大きな相違は、一般塗料の膜厚が数 10μm であるのに対して、仕
上塗材は膜厚が数 mm ∼ 10mm 程度になり、造形的な模様を持っていることである。
また、工事仕様書における区分の相違を表 1.1に示す。なお、仕上塗材の工事仕様書例を巻
末の付録 1 に示す。
仕上塗材は、JIS A 6909 建築用仕上塗材で規格化されており、表 1.2 に示す種類が規定され
ている。
表1.1 仕上塗材と塗料の公共工事仕様書における区分
公共工事の仕様書
建築工事標準仕様書(※1)
建築用仕上塗材
JASS23 吹付け工事
JASS15 左官工事
左官工事
公共建築工事標準仕様書(※2)
(仕上塗材仕上げ)
公共建築改修工事標準仕様書
(※3)
公共住宅建設工事共通仕様書
(※4)
塗料
JASS18 塗装工事
塗装工事
外壁改修工事
塗装改修工事
左官工事
塗装工事
(※1)6日本建築学会
(※2)6公共建築協会(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
(※3) 7建築保全センター
(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)
(※4)公共住宅事業者等連絡協議会編集(国土交通省住宅局住宅総合整備
課監修)
1
2
又は主材だけ
③4∼10a程度
内装厚塗材G
内装厚塗材Si
内装厚塗材E
内装合成樹脂エマルション系厚付け仕上塗材
平たん状
スタッコ状
掻き落とし状
①内装用
②下塗材+主材
内装せっこう系厚付け仕上塗材
内装厚塗材L
内装けい酸質系厚付け仕上塗材
内装消石灰・
ドロマイトプラスター系厚付け
仕上塗材
仕上
樹脂スタッコ,
アクリルスタッコ
シリカスタッコ
けい藻土塗材
けい藻土塗材
セメントスタッコ
樹脂スタッコ,
アクリルスタッコ
③4∼10a程度
外装厚塗材E
内装厚塗材C
外装合成樹脂エマルション系厚付け仕上塗材
内装セメント系厚付け仕上塗材
セメントスタッコ
シリカスタッコ
スタッコ状
②下塗材+主材
外装厚塗材Si
外装けい酸質系厚付け仕上塗材
京壁,
じゅらく
京壁状,
繊維壁状 繊維壁,
①外装用
じゅらく
内装薄塗材W
状,
さざ波状
砂壁状,
ゆず肌状 シリカリシン
砂壁状,
ゆず肌
又は主材だけ
③3a程度以下
けい藻土塗材
肌状,
さざ波状
②下塗材+主材
平たん状,
ゆず
溶液リシン
セメントリシン
外装厚塗材C
内装薄塗材E
内装薄塗材Si
内装薄塗材L
砂壁状
砂壁状
単層弾性
外装セメント系厚付け仕上塗材
塗材(2)
厚付け
外装薄塗材S
内装薄塗材C
波状,
凹凸状
弾性リシン
樹脂リシン,
アクリルリシン,
陶石リシン
シリカリシン
内装水溶性樹脂系薄付け仕上塗材(1)
仕上塗材
内装合成樹脂エマルション系薄付け
内装けい酸質系薄付け仕上塗材
仕上塗材
内装消石灰・
ドロマイトプラスター系薄付け
外装合成樹脂溶液系薄付け仕上塗材
内装セメント系薄付け仕上塗材
仕上
①内装用
ゆず肌状,
さざ
③3a程度以下
仕上塗材
防水形外装薄塗材E
又は主材だけ
薄塗材E
薄付け仕上塗材
防水形外装合成樹脂エマルション系薄付け
状
②塗材+主材
可とう形外装
可とう形外装合成樹脂エマルション系
塗材(2)
薄付け
砂壁状
砂壁状,
ゆず肌
①主として外装用
外装薄塗材E
外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材
ゆず肌状
可とう形外装薄塗材Si
砂壁状
参考
主たる仕上げの 通称(例)
形状
可とう形外装けい酸質系薄付け仕上塗材
③塗り厚
①用途 ②層構成
外装薄塗材Si
呼び名
外装けい酸質系薄付け仕上塗材
種類
表1.2 建築用仕上塗材の種類及び呼び名(JIS A 6909-2003より)
1章 建築用仕上塗材の概要
吹付用軽量骨材仕上塗材
3
可とう形ポリマーセメント系改修用仕上塗材
エマルション系改修用仕上塗材
可とう形反応硬化形合成樹脂
改修用仕上塗材
可とう形合成樹脂エマルション系
可とう形改修塗材CE
可とう形改修塗材RE
可とう形改修塗材E
複層塗材RS
防水形複層塗材RS
合成樹脂溶液系複層仕上塗材
防水形複層塗材RE
複層塗材RE
防水形合成樹脂溶液系複層仕上塗材(4)
複層仕上塗材(4)
防水形反応硬化形合成樹脂エマルション系
複層仕上塗材
防水形複層塗材E
平たん状
平たん状
凹凸状
ゆず肌状
平たん状
①外装用
②主材+上塗材
③0.5∼1a程度
凹凸状
+上塗材
③3∼5a程度
月面状
②下塗材+主材
①内装及び外装用 ゆず肌状
③3∼5a程度
②下塗材+主材
砂壁状
セメント系吹付タイル
(2)内装薄付け仕上塗材及び内装厚付け仕上塗材で吸放湿性の特性を付加したものについては、
調湿形と表記する。
エポキシタイル
水系エポキシタイル
ダンセイタイル
(複層弾性)
アクリルタイル
シリカタイル
(可とう形,
微弾性,
柔軟形)
セメント系吹付タイル
(3)複層仕上塗材及び可とう形改修用仕上塗材で、
耐候性を区分する場合は、
耐候形1種、
耐候形2種、
耐候形3種とする。
(4)防水形複層塗材で耐疲労性の特性を付加したものについては、
耐疲労形と表示する。
通称(例)
パーライト吹付,
ひる石吹付
形状
③塗り厚
①主として天井用
参考
主たる仕上げの ①用途 ②層構成
注 (1)内装水溶性樹脂系薄付け仕上塗材には、
耐湿性、
耐アルカリ性、
かび抵抗性の特性を付加したものがある。
塗材(3)
仕上
改修用
可とう形
複層仕上塗材(4)
塗材(3)
反応硬化形合成樹脂エマルション系
防水形合成樹脂エマルション系
仕上
複層塗材Si
けい酸質系複層仕上塗材
複層塗材E
防水形複層塗材CE
防水形ポリマーセメント系複層仕上塗材(4)
合成樹脂エマルション系複層仕上塗材
可とう形複層塗材CE
可とう形ポリマーセメント系複層仕上塗材
複層
複層塗材CE
こて塗用軽量塗材
吹付用軽量塗材
呼び名
ポリマーセメント系複層仕上塗材
仕上塗材 こて塗用軽量骨材仕上塗材
軽量骨材
種類
表1.2 建築用仕上塗材の種類及び呼び名(つづき)
1章 建築用仕上塗材の概要
1章 建築用仕上塗材の概要
1.2 主な用語
(1)JASS23 を参考とした用語の意味
・下 地:仕上塗材が塗り付けられる面
・下地調整:下地をモルタル塗りで平滑にするなど、仕上塗材仕上げに適するように行う
処理
・調 合:仕上塗材が塗り付けられる状態において構成されている各材料の割合又は仕
上塗材を塗り付けられる状態に調整すること
・塗 付 け: 仕上塗材の無定形の材料を吹付け機、こて又はローラーブラシによって施工
する操作の総称
・吹 付 け:仕上塗材を吹付け機を用いて施工する操作
・ローラー塗り:仕上塗材をローラーブラシを用いて施工する操作
・基層塗り:仕上塗りにおいて、主材の模様を形成しないように均一、かつ、平たんに塗り
付ける操作
・増 塗 り:基層塗り前に、出隅、入隅などの基層塗層の塗厚が小さくなると予想される部
分に、主材を塗り付け、塗厚を確保する操作
・模様塗り:基層塗りの上の模様付けを主な目的とする主材上層部の塗り付け操作
・凸部処理:主材、模様塗りなどによって形成される比較的大型の凹凸模様の凸部の頂部を
こて、ローラー又はサンダーによって平たんにする模様付け操作
・仕上塗材: JIS A 6909(建築用仕上塗材)に規定する既調合の薄付け仕上塗材、複層仕上
塗材、厚付け仕上塗材、軽量骨材仕上塗材及び可とう形改修用仕上塗材の総称
・可使時間:セメント系や反応硬化形の仕上塗材で、水又は硬化剤を加えた後、塗り付けに
適する状態を持続している時間
・所 要 量:被仕上塗材仕上面の単位面積に対する仕上塗材(希釈する前)の使用質量
・工程内間隔時間:塗付けの同一工程内で同一材料を塗り重ねる場合の間隔時間
・工程間間隔時間:塗付けの一工程から次の工程に移るまでの間隔時間
・最終養生時間:最終工程が終了した後に実用に供することができるまでの時間
(2)JIS A 6909 を参考とした用語の意味
・下 塗 材:主として下地に対する主材の吸い込み調整及び付着性を高める目的で使用する
もの。シーラー、プライマーとも称され、下地の多孔性による主材の過度の吸
い込みや、
下地のアルカリ性などによる悪影響が上層の塗膜に及ぶのを防止し、
更に主材と下地との付着力を高めることなどを主な目的として使用される。
・主 材:主として仕上がり面に立体的又は平たんな模様を形成する目的で使用するも
の。なお、主材には基剤及び硬化剤、又は粉体及び混和液を混合して使用する
ものがある。主に仕上がり面に砂壁状、ゆず肌状、スタッコ状、凹凸状などの
立体的な模様を形成する目的で使用されるものである。仕上塗材の種類や目的
によって比較的平たんに仕上げられる場合もある。なお、粉体と混和液を調合
して使用する材料については、一般的にその粉体を主材と称している例もある
が、JIS A 6909 ではそのセットを主材としている。
・上 塗 材:仕上げ面の着色、光沢の付与、耐候性の向上、吸水防止などの目的で使用する
もの。なお、上塗材には基剤及び硬化剤を混合して使用するものがある。
4
1章 建築用仕上塗材の概要
上塗材としては、水系、弱溶剤系、溶剤系などがあり、主材の上に仕上げ面の
着色、光沢の付与、耐候性の付与、吸水防止などの目的で使用されている。上
塗仕上げとして、つやあり、つやけし、メタリックなどがある。
1.3 建築用下地調整塗材
建築用下地調整塗材とは、内外装仕上げ工事の下地調整のために使用する材料で,JIS A
6916 に建築用下地調整塗材として規格化されている。建築用下地調整塗材は、セメント系下
地調整塗材、合成樹脂エマルション系下地調整塗材及びセメント系下地調整厚塗材に大別さ
れる。
表1.3 建築用下地調整塗材の種類及び呼び名(JIS A 6916-2000より)
参 考
呼び名
種 類
膜厚
(a)
主な適用下地
主な適用仕上材
内装薄塗材E
セメント系下地
1種
下地調整
0.5∼1 ALCパネル
塗材C-1
程度 コンクリート
調整塗材(1)
外装薄塗材E
複層塗材E
塗料
2種
下地調整
1∼3
塗材C-2
程度
コンクリート
すべての仕上塗材
塗料
施工方法
吹付け
こて塗り
はけ塗り
こて塗り
内装薄塗材E
合成樹脂エマルション系
下地調整
下地調整塗材(2)
塗材E
0.5∼1 ALCパネル
程度 コンクリート
外装薄塗材E
吹付け
複層塗材E
ローラー塗り
塗料
内装薄塗材E
1種
セメント系下地
下地調整
3∼10 ALCパネル
外装薄塗材E
こて塗り
塗材CM-1
程度 コンクリート
複層塗材E
吹付け
塗料
調整厚塗材(1)
2種
下地調整
3∼10
塗材CM-2
程度
すべての仕上塗材
コンクリート
塗料
陶磁器質タイル
こて塗り
吹付け
注 (1)結合材としてセメント及びセメント混和用ポリマーディスパージョン 又は再乳化形粉末樹脂を
混合したものを使用したもの。
(2)結合材として合成樹脂エマルションを使用したもの。
1.4 建築用仕上塗材の変遷
仕上塗材の歴史は、昭和の初めに左官材料の既調合品としてドイツから輸入された“リシ
ン”という名前の材料で、
“かき落としリシン”の仕上げであった。戦後、セメントリシン、
セメントスタッコ、セメント系吹付けタイルなどのセメント系材料が多く使用された。その
後、合成樹脂エマルション系の材料が開発され、テクスチャーも更に多様化した。複層塗材
5
1章 建築用仕上塗材の概要
Eが開発されてからは、建築外装での仕上塗材の使用量が一層多くなった。中性化などによ
るコンクリート劣化が社会問題となった頃は、躯体の亀裂追従性が仕上塗材に要求され、弾
性仕上塗材(現在:防水形の仕上塗材)が多く利用された。
最近では、新築需要が激減し、塗り替えがほとんどの需要を占めるようになる中で、微弾
性フィラーに上塗りをする改修工法が主流となってきた。このような背景で 2003 年の JIS A
6909 の改正では、これらの材料が可とう形改修用仕上塗材として規格化された。
また、シックハウス症候群が大きな社会問題となり、主な原因物質であるホルムアルデヒ
ドが 2003 年 7 月施行の改正建築基準法で規制された。JIS A 6909 の中でも内装に使用する仕
上塗材には、ホルムアルデヒドの発生原因と考えられる原料を使用しないことと規定してい
る。
また、環境対応が求められている中で、仕上塗材の上塗材は溶剤系から水系へ転換が進み、
日本建築仕上材工業会の生産統計によると2003年から水系上塗材の生産量が溶剤系上塗材を
上回っている。
表 1.4 に建築用仕上塗材の変遷を示す。
1.5 建築用仕上塗材の選び方
仕上塗材は、要求事項に基づいてその特性から選択される。表1.5に要求される性能を考慮
した建築用仕上塗材の選び方の概要を示す。
6
■スキン類
表1.4 建築用仕上塗材の変遷
■樹脂リシン
1965年
1970年
S40年
S45年
■セメントスタッコ
■セメント系吹付けタイル
(複層塗材C)
■シリカ系仕上塗材
(複層塗材Si)
1975年 1980年
S50年 S55年
7
項目
1960年
年代 S35年
建築関係
内装用仕上塗材
上塗材
下地調整・
改修用関係
1965年
S40年
1970年
S45年
■下地調整塗材E
1975年 1980年
S50年 S55年
●各種厚付デザインローラー工法
●中性化リフレッシュ工法
■じゅらく仕上げ
■アクリル樹脂エナメル ■アクリルウレタン樹脂エナメル
■下地調整塗材C-1
■マスチック塗材A,
B,
C
■複層塗材RS
■複層塗材E
■複層塗材RE
■防水形外装薄塗材E
有機質系仕上塗材
■弾性仕上塗材
(単層弾性)
(防水形複層塗材E,
RE,
RS)
(可とう形外装薄塗材E)
■合成樹脂エマルション ■合成樹脂エマルション ■つや有り合成樹脂エマルションペイント
ペイント
模様塗料
無機質系仕上塗材
年代 1960年
項目
S35年
■セメントリシン
1章 建築用仕上塗材の概要
8
1990年
H2年
1990年
H2年
●アスベスト問題
●アルカリ骨材反応問題深刻化
■FC関係
■ふっ素樹脂エナメル
■アクリルシリコン樹脂エナメル
■微弾性フィラー
■結露防止塗材
■クロス用塗料
項目
1985年
年代 S60年
建築関係
下地調整・
改修用関係
上塗材
内装用仕上塗材
有機質系仕上塗材
■透湿性仕上塗材
年代 1985年
項目
S60年
無機質系仕上塗材
■可とう形改修塗材E,
RE,
CE
■けい藻土塗材
■調湿形内装仕上塗材
■各種こて塗り仕上塗材
2000年 2005年
H12年 H17年
★住宅の品質確保の促進に関する法律(品確法)
1995年
2000年 2005年
H7年
H12年 H17年
★大気汚染防止法改正
★グリーン購入法 (揮発性有機化合物排出規制)
●アスベスト問題
★PRTR法(環境汚染物質排出移動登録)
●建築基準法の大幅改正
★2003年7月 改正建築基準法 施行
(ホルムアルデヒド関係)
●製造物責任(PL)法の施行
●水系上塗材の生産数量が溶剤系と逆転
■弱溶剤形エナメル
1995年
H7年
表1.4 建築用仕上塗材の変遷(つづき)
1章 建築用仕上塗材の概要
要求性能
グレード
仕上げの種類
9
―
防水性
B
C
C
C
外装薄塗材S仕上げ
複層塗材E仕上げ
複層塗材CE仕上げ
複層塗材S
i仕上げ
B
可とう形外装薄塗材E仕上げ
汎用
A
外装薄塗材E仕上げ
汎用
C
C
防水形外装薄塗材E仕上げ
防水形複層塗材E仕上げ
汎用
高耐候性
耐候形1種防水形
RE仕上げ
超高級
F
高 度 防水性
複層塗材
RS仕上げ
美装性
RE仕上げ
高耐候性 超高級 耐候形1種複層塗材
F
RS仕上げ
耐候性
耐候形2種防水形
E仕上げ
高級
E
防水性
複層塗材
RE仕上げ
E仕上げ
耐候性 高級
耐候形2種複層塗材
E
RE仕上げ
耐候性
耐候形3種防水形
E仕上げ
中級
D
防水性
複層塗材
CE仕上げ
E仕上げ
耐候性 中級
耐候形3種複層塗材
D
外部
CE仕上げ
耐候性
外装厚塗材C仕上げ
D
中級
特殊模様
外装厚塗材E仕上げ
D
美装性
高級
可とう形複層塗材CE仕上げ
D∼E
環境
Ⅱ
Ⅱ
Ⅱ
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅱ
―
―
―
―
―
―
―
―
―
Ⅱ
―
Ⅲ
―
―
―
Ⅳ
Ⅲ
Ⅲ
―
Ⅳ
―
―
Ⅴ
Ⅲ
―
Ⅴ
ホルムア
防火
コスト 耐久 材料 ルデヒド
発散建
指数 性能 等認 築 材 料
定番
指数
の規制
号
対象
代表的な使用例
きびしい環境下において、長期耐久性、防水性など
が要求される外壁等、
主に凹凸模様・ゆず肌模様
きびしい環境下において、
長期耐久性などが要求さ
れる外壁等、
主に凹凸模様・ゆず肌模様
防水性や耐久性が要求される外壁等、比較的塗替えで
の適用が多い、主として凹凸模様・ゆず肌模様仕上げ
一般的な環境下で、
長期耐久性が要求される外壁等、
主として凹凸模様・ゆず肌模様仕上げ
防水性や耐久性が要求される外壁等、比較的塗替えで
の適用が多い、主として凹凸模様・ゆず肌模様仕上げ
一般的な環境下で、
長期耐久性が要求される外壁等、
主として凹凸模様・ゆず肌模様仕上げ
スタッコ状模様による豪華な仕上り感が要求される
外壁・柱等
比較的簡易な防水性が要求される外壁等、
塗替え
での適用
主として凹凸模様・ゆず肌模様の仕上げ
防水性が要求される外壁等、
比較的塗替えでの適
用が多い、
主として凹凸模様・ゆず肌模様仕上げ
外壁や軒裏等の一般的な砂壁状(リシン)仕上げ
軽量モルタル仕上げ外壁等の砂壁状(リシン)仕上
げ
砂壁状仕上げで低温時の乾燥性が要求される場
合等
外壁等の一般的な凹凸模様・ゆず肌模様の仕上げ
外壁等の一般的な凹凸模様・ゆず肌模様の仕上げ
外壁等の一般的な凹凸模様・ゆず肌模様の仕上げ
表1.5 建築用仕上塗材の選び方(参考:JASS 23)
1章 建築用仕上塗材の概要
10
D
B
B
調湿形内装厚塗材C仕上げ
調湿形内装薄塗材E仕上げ
調湿形内装薄塗材W仕上げ
汎用
B
C
C
A∼B
A∼B
複層塗材CE仕上げ
複層塗材Si仕上げ
内装薄塗材E仕上げ
内装薄塗材W仕上げ
吹付け用軽量塗材仕上げ
C∼D
内装厚塗材C仕上げ
仕上げの種類
高級
汎用
高級
グレード
●
●
●
―
―
●
―
―
―
●
―
―
●
―
―
●
●
●
●
●
●
―
―
―
―
―
―
豪華なスタッコ状模様が要求される内壁等、淡色仕
上げ
内装制限を受ける避難通路・内壁等の凹凸模様・
ゆず肌模様の仕上げ
内壁等の一般的な砂壁状仕上げ
内壁等の一般的な砂壁状・京壁状じゅらく仕上げ
天井・内壁上部の一般的な砂壁状仕上げ
防火材料認定番号 無機質系:NM−8571、QM−9811、RM−9366
有機質系:NM−8572、QM−9812、RM−9361
豪華なスタッコ状模様が要求される内壁等、淡色仕
上げ
内壁等の一般的な砂壁状仕上げ
内壁等の一般的な砂壁状・京壁状じゅらく仕上げ
代表的な使用例
[注]
コスト指数
:A(安価)
F
(高価)
耐久性能指数 :Ⅰ
(劣る) (優れている)
Ⅴ
ホルムアルデヒド発散建築材料:建築基準法施行令第20条の5及び同条に基づく平成14年12月26日国土交通省告示第1113号、
に規定されている
第1種ホルムアルデヒド発散建築材料
建築基準法施行令第20条の5及び同条に基づく平成14年12月26日国土交通省告示第1113号に規定されている第1種ホルムアルデヒド発散建築材料
(ただし,施工時に塗布され,
かつユリア樹脂,
メラミン樹脂,
フェノール樹脂,
レゾルシノール樹脂又はホルムアルデヒド系防腐剤を使用したものに限る) 防火性
吸放湿性
防火性
要求性能
内部 美装性
環境
ホルムア
防火
コスト 耐久 材料 ルデヒド
発散建
指数 性能 等認 築 材 料
定番
指数
の規制
号 対象
表1.5 建築用仕上塗材の選び方(つづき)
1章 建築用仕上塗材の概要
2章 下地及び下地の管理
2 章 下地及び下地の管理
2.1 下地の種類(成分と特徴)
仕上塗材仕上げに適用する主な下地の成分と特徴を表2.1に、また仕上塗材仕上げと下地と
の適用性を表 2.2 に示す。
表2.1 主な下地の成分と特徴(参考:JASS 23)
下 地
主成分
セメント
コンクリート
砂
砂利
プレキャスト
コンクリート部材
(PCa)
特 徴
乾 燥 :遅く、
厚さと構造に支配される。
アルカリ性:強く、
中和に長時間要する。内部からの水分はアルカリ性を
呈する。
表面状態 :粗く、
吸込みが大きい。
セメント
乾 燥 :遅く、
厚さと構造に支配される。
砂
アルカリ性:強く、
中和に長時間要する。内部からの水分はアルカリ性を
砂利
呈する。
(軽量骨材) 表面状態 :吸込みが大きい。
塗 厚 :10∼25a
セメントモルタル
セメント
乾 燥 :表面乾燥は速いが、
内部含水率は構造体の作用を受ける。
砂
アルカリ性:コンクリートより強く、
内部からの水分はアルカリ性を呈する。
セメント
乾 燥 :吸水現象が大きいため注意を要する。
けい砂
アルカリ性:ほとんどアルカリ性を示さない。
石灰
表面状態 :粗く、
粉化性があり、
吸込みが大きい。表面強度が低く損傷を
表面状態 :粗面・平滑・ひび割れなどがあり、
吸込み程度が異なる。
ALCパネル
発泡剤
コンクリート
ブロック
受けやすい。
セメント
アルカリ性:アルカリ性を呈する。
砂
表面状態 :極めて粗く部分的な吸込みむらを生ずる。ブロック自体の乾
砂利
燥収縮によって目地切れなどのひび割れを生じやすい。
セメント
アルカリ性:ほぼ中性。
けい酸
けい砂
表面状態 :もろく、
粉化性であり、
吸込みが非常に大きい。
カルシウム板
石灰
消石灰
せっこうボード
半水せっこう 表面状態 :吸込みが非常に大きい。水のかかる場所、
湿気の多い場所
(プラスターボード) ボード用原紙
ガラス繊維補強
セメント板
(GRC板)
に用いることはできない。
セメント
アルカリ性:極めて高く、
中和が非常に遅い。
骨材
表面状態 :平滑又は凹凸造形。ごく小さな気泡穴がある。
耐アルカリ性
ガラス繊維
11
2章 下地及び下地の管理
表2.1 主な下地の成分と特徴(つづき)
下 地
主成分
押出成形
セメント
アルカリ性: 極めて高く、
中和が非常に遅い。
セメント板
けい砂
表面状態 : 平滑又は凹凸造形。表面は滑らかで緻密。
(ECP)
無機質繊維
スレート
セメント
(フレキシブル板) 無機質繊維
木片セメント板 セメント
特 徴
アルカリ性: 極めて高く、
中和が非常に遅い。
表面状態 : 吸込みむらが大きい。
アルカリ性:アルカリ性を呈する。
表面状態 : 極めて粗く、
部分的な吸込みむらが生ずる。暗色の樹脂が
木毛セメント板
木片・木毛
窯業系
セメント
サイディング
けい砂
表面状態 : 吸込みむらが生ずる。
木材
表面状態 : 厚さによっては反りが生じやすく、
あくがしみ出る場合がある。
合板
接着剤
消石灰
しっくい
しみ出る。
アルカリ性:アルカリ性を呈する。
塗 厚 : 12∼18a
砂
乾 燥 : 非常に遅い。
すさ・のり
アルカリ性: 非常に強く、
中性化に長時間要する。ひび割れが多い。
混合せっこう
半水せっこう 塗 厚 : 12∼18a
消石灰・砂
乾 燥 : 速いが下地の影響を受けやすい。
プラスター
ドロマイト
ドロマイト
プラスター 乾 燥 : 非常に遅い。
消石灰・すさ アルカリ性: 高く、
中性化に長時間要する。
プラスター
アルカリ性:ボード用は中性、
混合せっこうは弱アルカリ性。
プラスター 表面状態 :ひび割れは少ない。
ドロマイト
塗 厚 : 12∼18a
砂
表面状態 :ひび割れが多い。粗密でむらが多く、
吸込みむらが激しい。
12
2章 下地及び下地の管理
表2.2 仕上塗材仕上げに適用する下地(参考:JASS 23)
適用下地
仕上塗材
仕上げの種類
外装薄塗材E
仕上げ
内装薄塗材E
仕上げ
可とう形外装
薄塗材E仕上げ
外装薄塗材S
仕上げ
内装薄塗材W
仕上げ
防水形外装
薄塗材E仕上げ
外装厚塗材C
仕上げ
内装厚塗材C
仕上げ
外装厚塗材E
仕上げ
複層塗材CE
仕上げ
可とう形複層
塗材CE仕上げ
複層塗材Si
仕上げ
複層塗材E
仕上げ
コプセ
ンレメ
クキン
リャト
ースモ
トトル
コタ
ンル
ク
リ
ー
ト
部
材
○
●
施工法
A
L
C
パ
ネ
ル
コ
ン
ク
リ
ー
ト
ブ
ロ
ッ
ク
け
い
酸
カ
ル
シ
ウ
ム
板
せ
っ
こ
う
ボ
ー
ド
ガ
ラ
ス
繊
維
補
強
セ
メ
ン
ト
板
押
出
成
形
セ
メ
ン
ト
板
○
○
●
●
○
○
●
●
●
●
●
●
吹
付
け
ロ
ー
ラ
ー
塗
り
○
−
−
○
仕上げ面の状態
主
た
る
仕
上
げ
の
形
状
砂壁状、
ゆず肌状
着色骨材砂壁状 ゆず肌状、
さざ波状
砂壁状、
ゆず肌状、
○
−
−
○
○
−
砂壁状
−
○
ゆず肌状、
さざ波状
砂壁状
着色骨材砂壁状 ゆず肌状、
さざ波状
○
○
○
−
−
○
○
○
○
○
−
−
○
○
○
−
●
●
●
●
●
●
●
○
−
○
−
凹凸状
−
○
ゆず肌状、
さざ波状
砂壁状、
ゆず肌状、
京壁状じゅらく
○
○
○
−
−
○
○
○
×
○
×
×
×
×
○
−
●
×
●
×
×
×
×
○
−
○
○
○
−
−
○
○
○
−
○
○
○
×
×
○
○
○
−
凹凸状
−
○
ゆず肌状
○
○
○
×
×
○
○
○
−
凹凸状
−
○
ゆず肌状
○
○
○
×
●
○
○
○
−
凹凸状
−
○
ゆず肌状
○
○
○
×
●
○
○
○
−
凹凸状
−
○
ゆず肌状
スタッコ状
13
スタッコ状
2章 下地及び下地の管理
表2.2 仕上塗材仕上げに適用する下地(つづき)
適用下地
仕上塗材
仕上げの種類
複層塗材RE
仕上げ
複層塗材RS
仕上げ
防水形複層
塗材CE仕上げ
防水形複層
塗材E仕上げ
防水形複層
塗材RE仕上げ
防水形複層
塗材RS仕上げ
軽量骨材仕上
塗材仕上げ
コプセ
ンレメ
クキン
リャト
ースモ
トトル
コタ
ンル
ク
リ
ー
ト
部
材
○
○
施工法
A
L
C
パ
ネ
ル
コ
ン
ク
リ
ー
ト
ブ
ロ
ッ
ク
け
い
酸
カ
ル
シ
ウ
ム
板
せ
っ
こ
う
ボ
ー
ド
ガ
ラ
ス
繊
維
補
強
セ
メ
ン
ト
板
押
出
成
形
セ
メ
ン
ト
板
×
○
×
×
○
○
×
○
×
×
○
○
○
○
○
×
×
○
○
○
○
○
×
×
○
○
○
○
○
×
×
○
○
○
○
○
×
×
○
○
●
●
●
−
●
●
●
(注) ○ : 適用できる下地
× : 適用できない下地
*1 :こて塗り
● : 内装に限って適用できる下地
― : 一般に適用しない下地
14
仕上げ面の状態
吹
付
け
ロ
ー
ラ
ー
塗
り
○
−
凹凸状
−
○
ゆず肌状
○
−
凹凸状
−
○
ゆず肌状
○
−
凹凸状
−
○
ゆず肌状、
さざ波状
○
−
凹凸状
−
○
ゆず肌状、
さざ波状
○
−
凹凸状
−
○
ゆず肌状、
さざ波状
○
−
凹凸状
−
○
ゆず肌状、
さざ波状
○
−
砂壁状
−
○*1
主
た
る
仕
上
げ
の
形
状
平たん状
2章 下地及び下地の管理
2.2 下地の管理(水分、pH、下地調整)
下地の管理については JASS 23 で以下のように解説されている。
(1)水分
仕上塗材仕上げの下地は、乾燥していることが必要で、乾燥が不十分な場合には、塗膜の
付着性低下、塗膜表面へのエフロレッセンスの発生、塗膜のひび割れ・ふくれ・はがれなど
の原因となることがある。
乾燥の遅い下地としては現場打ちコンクリート、プレキャストコンクリート部材などがあ
るが、コンクリート打放し後の含水率の低下は材齢に大きく関係し、打込み後、何日たてば
仕上げ施工可能な乾燥状態になるかは種々の条件によって異なるため一概に断定できない。
一般的には、コンクリートの含水率 10% 以下が良好とされている。施工適正と判断される材
齢の目安を参考までに表 2.3、図 2.1 ∼ 2.3 に示す。
なお、含水率は下地に含まれる水分の質量百分率で表されるが、現場での管理にあたって
は非破壊で検査できる表面水分計が用いられている。表面水分計での測定値と含水率との関
係は機種によっても異なるため、事前に測定値と含水率との関係を示したようなデータに
よって確認しておく。
表2.3 現場打ちコンクリート下地への施工適正材齢(JASS 23より)
打設後の放置期間
地域分類
夏季2週間
冬季3週間
一般地帯
4月∼10月
11月∼3月
−
寒冷地帯
5月∼9月
−
10月∼4月
冬季4週間
(注) 寒冷地帯とは、
北海道・東北・上信越・北陸地域
一般地帯とは、
寒冷地を除く地域[BE,1972.3].
30
質量含水率(%)
10
9
8
Ⅰ
・
Ⅱ
15
15
20
20
鉄板製箱
Ⅲ
Ⅰ
7
Ⅱ
6
Ⅲ
5
4
3
7
21
コンクリートの材齢(日)
図2.1 コンクリートの材齢と質量含水率の関係例(JASS 23より)
15
2章 下地及び下地の管理
15
含水率(%)
軽量コンクリート
普通コンクリート
10
セメントモルタル
(15a)
5
0
20℃
湿度60%
0
5
10
15
20
25
30
コンクリートの材齢(日)
図2.2 コンクリートの材齢と含水率の関係例(JASS 23より)
(高周波水分計による測定)
質量含水率(%)
15
10
5
0
5
10
15
20
25
30
モルタルの材齢(日)
図2.3 モルタルの材齢と質量含水率の関係例(JASS 23より)
16
2章 下地及び下地の管理
(2)アルカリ性
セメント系材料を用いた下地では、アルカリ性が強いと塗膜の変色や塗材の変質の原因と
なることがあるので、下地のpHも管理する必要がある。コンクリートは打込み直後において
は pH = 12.5 程度であるが、アルカリ性は表面から徐々に失われていく。しかしながら、そ
の消失の速度は一般に遅いため、下地の含水率と併せて放置期間に配慮を要する。参考とし
て、下地の材齢と pH との関係を図 2.4 に、また、コンクリートの表面からの深さと pH との
関係を図2.5に示す。一般的に下地のアルカリ度はpH=10以下が仕上塗材仕上げにおいては
良好とされている。
pH
フレキシブル板
セメントモルタル
現場打ち軽量気泡コンクリート
12
11
10
9
8
0
10
20
30
40
50
60
材 齢(日)
図2.4 下地の材齢とpHの関係例∼白山・近藤の実験より作成∼
(JASS 23より)
pH
12
11
10
9
0.5 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
表面からの深さ
図2.5 コンクリートの表面からの深さとpHの関係例(JASS 23より)
17
2章 下地及び下地の管理
2.3 下地の状態
仕上塗材仕上げを行う下地の状態を表 2.4 に示す。
表2.4 下地の状態
チェック項目
下地の状態
防水処理及び補修がしてあり、仕上塗材の仕上げに支障のないように下地調
割れ・破損・浮き
整されていること。
仕上塗材の種類、厚さ、仕上がりの程度などにより、許容できる範囲に処理され
不陸・目違い
ていること。
下地は清浄な面とし、
じんあい、油脂、
さび、並びにモルタル又はコンクリートのこ
不純物の付着
ぼれなどが付着していないこと。
下地の強度
十分な付着性を得るために、
仕上塗材以上の強度と剛性を有していること。
下地の乾燥・pH・水分
取付け金物の防せい
仕上塗材の種類に応じ、
適応できる条件(適正水分・アルカリ度)
に管理されて
いること。
(注)通常pH10以下など
木ねじ・
くぎ類は亜鉛めっきなどで防せい処理がしてあること。
2.4 各種下地の調整法
2.4.1 コンクリート、プレキャストコンクリートなどの下地調整
①コンクリートの打継ぎなどでは不陸・ 段差が生じる場合がある。この場合、JASS 15 によ
り下地が均一に仕上がっているか確認することが必要である。セメントモルタル塗りの表
面状態には金ごて、木ごて及びはけ引きの3種類があるが、標準的な仕上塗材とセメント
モルタル表面仕上げとの組み合わせは仕上塗材の仕上厚、仕上がり状態並びに付着性など
から表 2.5 のようになっている。
表2.5 セメントモルタル下地表面の仕上げの標準(JASS 23より)
はけ引き 金ごて
木ごて
仕上げ
仕上げ
仕上げ
×
○
○
×
○
×
外装合成樹脂溶液系薄付け仕上塗材(外装薄塗材S)仕上げ
×
○
○
内装水溶性樹脂系薄付け仕上塗材(内装薄塗材W)仕上げ
×
○
○
×
○
×
セメント系厚付け仕上塗材(厚塗材C)仕上げ
○
×
○
外装合成樹脂エマルション系厚付け仕上塗材(外装厚塗材E)仕上げ
○
○
○
下地表面
仕上塗材仕上げの種類
薄付け仕上塗材仕上げ
合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材(薄塗材E)仕上げ
可とう形外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材
(可とう形外装薄塗材E)仕上げ
防水形外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材
(防水形外装薄塗材E)仕上げ
厚付け仕上塗材仕上げ
18
2章 下地及び下地の管理
表2.5 セメントモルタル下地表面の仕上げの標準(JASS 23より)
(つづき)
はけ引き 金ごて
木ごて
仕上げ
仕上げ
仕上げ
○
○
○
×
○
×
けい酸質系複層仕上塗材(複層塗材Si)仕上げ
○
○
○
合成樹脂エマルション系複層仕上塗材(複層塗材E)仕上げ
○
○
○
×
○
×
×
○
×
×
○
×
×
○
×
×
○
×
×
○
×
○
○
○
下地表面
仕上塗材仕上げの種類
複層仕上塗材仕上げ
ポリマーセメント系複層仕上塗材(複層塗材CE)仕上げ
可とう形ポリマーセメント系複層仕上塗材
(可とう形複層仕上塗材CE)仕上げ
反応硬化形合成樹脂エマルション系複層仕上塗材
(複層塗材RE)仕上げ
合成樹脂溶液系複層仕上塗材(複層塗材RS)仕上げ
防水形複層仕上塗材仕上げ
防水形ポリマーセメント系複層仕上塗材(防水形複層塗材CE)仕上げ
防水形合成樹脂エマルション系複層仕上塗材
(防水形複層塗材E)仕上げ
防水形反応硬化形合成樹脂エマルション系複層仕上塗材
(防水形複層塗材RE)仕上げ
防水形合成樹脂溶液系複層仕上塗材(防水形複層塗材RS)仕上げ
軽量骨材仕上塗材仕上げ
(注)○ : 適用できる下地表面の仕上げ
× : 一般に適しない下地表面の仕上げ
②コンクリート、プレキャストコンクリート部材の下地調整は、小さなひび割れ・気泡穴・
表面凹凸・木繊維の付着・露出鉄筋・目違い欠陥部などの項目を対象に、セメント系下地
調整塗材などで調整処理する。
2.4.2 ALC パネルの下地調整
①ALCパネル面は仕上塗材の種類や、要求される仕上精度に適した条件にセメント系下地調
整塗材や合成樹脂エマルション系下地調整塗材などで下地調整する。
②ALCパネル面をセメント系下地調整塗材で下地調整する場合、セメントの水和反応に必要
な水分が、急激に下地に吸収されて強度の小さい下地調整となり、仕上塗材の凝集による
はく離などが生じることがある。必ず下地調整時に合成樹脂エマルションシーラー又は吸
水調整材を塗付しておく。
2.4.3 せっこうボード、スレート、合板の下地調整
①せっこうボードの湿潤、乾燥に伴う長さ変化は比較的小さく、したがって目地は突付けと
することが多い。この場合の目違い、くぎ穴などは合成樹脂エマルションパテを用いて地
付けし、硬化後サンドペーパーなどで平滑にしておく。
19
2章 下地及び下地の管理
②屋内の壁・天井などで、目地を設けず、スレートの目地を突付けとして仕上塗材仕上げと
することがある。この場合、ボードの厚さの違いなどにより、目違いを生ずることがある
ので、合成樹脂エマルションパテを用いて地付けをする。
③合板下地で目地を突付けとする場合、
合成繊維のメッシュ寒冷紗などを合板の継手に張り、
合成樹脂エマルションパテで地付けし、ひび割れが仕上面に生じないようにする。
2.4.4 木毛セメント板及び木片セメント板の下地調整
木毛セメント板・木片セメント板を平滑にして、仕上塗材仕上げをする場合は、JASS 15に
より平たんにモルタル塗りされているか確認する。
2.4.5 けい酸カルシウム板の下地調整
けい酸カルシウム板は吸込みが大きく、表面が比較的ぜい弱で粉状である。したがって付
着強度の大きい仕上塗材仕上げでは2液エポキシ樹脂系などの合成樹脂溶剤系シーラーを塗
り付け浸透させ、表面を補強することが必要である。そのためシーラーは仕上塗材に適した
ものを、仕上塗材製造業者の仕様によって処理する。最近では水系のシーラーも実用化され
ている。
2.5 コンクリート下地の補修例
ここではコンクリート下地の補修について、留意点及び補修例を示す。内容の一部は吹付
け工事の範囲ではない工程も含まれているが重要なポイントである。
吹付け工事に入る前には以下の補修が完了していることを確認することが重要である。ち
なみに JASS 23 では以下のような点に留意し処理が完了しているものを下地としている。
①仕上塗材仕上げに支障となる鉄筋、セパレータ、番線、木片などを入念に取り除くことが
必要である。
木片などを取り除いた穴、セパレータの木コン穴なども清掃後、ポリマーセメントモル
タルなどで補修され、許容できる範囲で平滑に処理されていなければならない。参考とし
て木コン穴の処理例を図 2.6 に示す。
セパレータ木コン穴
ポリマーセメント
モルタルを押込む
木製ジグ
コンクリート
図2.6 セパレータの穴の処理例(JASS 23より)
②型わく取外し後、豆板、コールドジョイントなどの欠陥箇所及び打継部の目地まわりにつ
いて、次のような方法でそれぞれ適切な措置を講じる。
20
2章 下地及び下地の管理
(イ)豆板の補修
コンクリート表面を全面点検し、豆板の発生した箇所、砂利・砂の結合の緩んだ箇所につ
いては、はつり取ってポリマーセメントモルタルを入念に充てんする。
(ロ)開口部下部空どうの補修
開口部下部の空どうになっている欠陥箇所はよく清掃し、内外に型わくをあて、コンク
リートを充てんする。型わく取外し後は、打継面にポリマーセメントモルタルなどを用いて
平たんに下地調整する。
(ハ)打継部・コールドジョイントの補修
外壁などに生じたコールドジョイントは、コンクリートの乾燥収縮が進行してひび割れと
なり、漏水の原因となりやすい。グラインダーなどでUカットし、仕上げに支障のないシー
リング材を充てんしてからポリマーセメントモルタルで塗り埋め、乾燥後サンダーなどで平
たんにしておく。
(図 2.7 参照)
3∼5
10
10∼15
プライマー塗付け
シーリング材充填
ポリマーセメントモルタル
図2.7 コンクリートひび割れの補修要領(JASS 23より)
(ニ)乾燥収縮などによるひび割れの処置
開口部まわり、隅角部及びスパンの中央、そのほかにすでに乾燥収縮などにより生じたひ
び割れは、通常 2 ∼ 3 年程度にわたって進行し漏水の原因となるので、グラインダーなどで
U カットし、仕上げに支障のないシーリング材を充てんしてからポリマーセメントモルタル
で塗り埋め、硬化後サンダーなどで平たんにする。
2.6 下地調整に用いられる材料
下地調整として主に以下のものが使用される。
・ 合成樹脂エマルションシーラー(吸水調整材を含む)
・合成樹脂溶剤系シーラー(1 液、2 液)
・ 合成樹脂エマルションパテ(合成樹脂エマルションパテは屋内で水のかからない箇所で
使用する。)
・建築用下地調整塗材*
* JIS A 6916(建築用下地調整塗材)の種類で C-1、C-2、E に分類されるものを使用する。
CM-1、CM-2 に分類されているものは膜厚が厚く、JASS 15 左官工事で使用される。
下地・仕上塗材の種類と下地調整材との適合表を表 2.7 に示す。
21
22
○ ○ ○
● ● ●
○ ○ ○
○
● ● ●
○ ○ ○
○ ○
●
○ ○ ○
○ ○
○ ○ ○
○ ○ ○
○ ○ ○
○ ○
○
○ ○ ○
○ ○ ○
○ ○
○
● ● ●
C- C- E
1 2
下地調整
塗材
コ
ン
ク
リ
ー
ト
○:適用可 ●:内装に限り適用可
Em系:エマルション系
仕上塗材仕上げの種類
外装薄塗材E仕上げ
内装薄塗材E仕上げ
可とう形外装薄塗材E仕上げ
外装薄塗材S仕上げ
内装薄塗材W仕上げ
防水形外装薄塗材E仕上げ
外装厚塗材C仕上げ
内装厚塗材C仕上げ
外装厚塗材E仕上げ
複層塗材CE仕上げ
可とう形複層塗材CE仕上げ
複層塗材Si仕上げ
複層塗材E仕上げ
複層塗材RE仕上げ
複層塗材RS仕上げ
防水形複層塗材CE仕上げ
防水形複層塗材E仕上げ
防水形複層塗材RE仕上げ
防水形複層塗材RS仕上げ
軽量骨材仕上塗材仕上げ
下
地
調
整
材
下地の種類
セ
メ
ン
ト
モ
ル
タ
ル
Em 1液形 2液形
系 溶液系 溶液系
○
○
○
●
○
○
○
○
○
●
○
○
○
○
●
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
●
●
●
シーラー
部
材
プコ
レン
キク
ャリ
スー
トト
●
●
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
●
○
○
○
○
●
○
○ ○ ○
○ ○ ○
○ ○
○
● ● ●
●
○
○
●
○
C1
○
●
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
Em
系
○
●
○
E
○
○
○
○
○
○
C2
○
●
○
○
● ●
○ ○
C1
○
●
○
C2
○
●
○
○
●
○
○
●
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
●
●
○
○
○
○
○
○
●
○
○
●
○
E
下地調整 シーラー 下地調整
塗材
塗材
A
L
C
パ
ネ
ル
せ
っ
こ
う
ボ
ー
ド
ガ ラ ス 繊
維セ
補メ
ン
強ト
押 出 成セ
形メ
ン
ト
板
●
●
●
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
●
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
●
Em 1液形 2液形
系 溶液系 溶液系
○
○
●
●
●
○
○
○
○
●
●
●
○
○
シーラー シーラー シーラー シーラー
け い
酸カ
ル
シ
ウ
ム
板
Em 1液形 2液形 Em
系 溶液系 溶液系 系
○
○
○
●
●
○
○
○
○
○
●
●
○
○
○
○
●
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
●
●
●
シーラー
コ ン
ク リ ーブ
トロ
ッ
ク
表2.7 下地・仕上塗材の種類と下地調整材との適合表(JASS 23より)
2章 下地及び下地の管理
3章 施工方法と管理
3章 施工方法と管理
建築用仕上塗材(以下、仕上塗材と言う)は、吹付け工法、ローラー塗り工法、こて塗り
工法などにより仕上げられる。施工にあたっては、これらの工法で使用する機器、工具、動
力等について十分な知識と操作・修理能力を持つと同時に、使用する仕上塗材に最も適した
機器を選定することが重要である。
3.1 吹付け工法
3.1.1 吹付け機器
吹付け機器は簡単に言うと、エアコンプレッサー(以下コンプレッサー)と吹付け機を組
み合わせたものである。仕上塗材の供給方式、カップの取り付け位置、圧送方式、吹付け機
の形状などから、図 3.1 に示すように大略分類でき、次のような特徴がある。また、代表的な
吹付け機器には、写真 3.1 に示すようなものがある。
(1)供給方式による分類
仕上塗材の供給方式によりカップ式と圧送式に分類できる。前者は容量が 1 リットル程度
のカップに仕上塗材を入れ、それをエアの噴出力で吹き出すもので、材料供給は断続的で吹
付け能力は低い。後者は、カップに比べ容量の大きいタンクもしくは圧送機に仕上塗材を供
給し、それに圧力をかけるかもしくは押し出すことにより吹付けるもので(ノズル部でさら
にエアを噴出させて吹付けるものもある)
、材料供給は連続的で吹付け能力は高い。
(供給方式)
カップ式
(取付け位置) (吹付け機の形状)
(仕上塗材)
重力式
リシンガン・
・
・
・
・
・
・ 薄付け仕上塗材
ジュラクガン・
・
・
・
・ 薄付け仕上塗材
スタッコガン・
・
・
・
・ 厚付け仕上塗材
タイルガン・
・
・
・
・
・
・ 複層仕上塗材
吸い上げ式
ゾラコートガン・
・
・ シーラー、
上塗材
(圧送方式)
圧送式 エアレス式 ・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・ シーラー、
上塗材
エアレスポンプ式
スネーク式
ピストン式 スクイズ式
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・ 建築用仕上塗材
タンク加圧式
図3.1
23
3章 施工方法と管理
(2)カップの取り付け位置による分類
カップ式のスプレーガンには、
カップの取付け位置により写真3.1に示すように重力式と吸
い上げ式とに分けられる。重力式は、ノズル部の上にカップが取り付けられ、仕上塗材は主
として重力によって落ちてくる方式である。吸い上げ式はノズル部の下にカップが取り付け
られ、仕上塗材はエアの噴出に伴い吸い上げられる方式である。
(3)仕上塗材の圧送方式による分類
仕上塗材の圧送方式によりエアレス式、エアレスポンプ式、スネーク式、ピストン式、ス
クイズ式、タンク加圧式などに分けられる。エアレス式はタンクより仕上塗材を吸い上げて
その高圧力で、仕上塗材を噴出させて吹き付けるものである。エアレスポンプ式は、スプレー
ガンの部分で更に圧搾空気が加わり吹き付けるものである。スネーク式、ピストン式及びス
クイズ式は仕上塗材をスネークポンプなどで圧送し、スプレーガンの部分で圧縮空気ととも
に吹き付けるものである。
(重力式) (吸い上げ式)
リシンガン
ジュラクガン
スタッコガン
タイルガン
エアレス式
ゾラコートガン
エアレスポンプ式
スネーク式
発動式コンプレッサー
写真 3.1 代表的な吹付け機器
24
3章 施工方法と管理
3.1.2 吹付け塗り操作
吹付けは、仕様に基づいて行うが 2 回吹きを原則としている。1 回目を下吹き、2 回目を上
吹き、又は仕上吹きと言う。
(1)吹付けの基本
吹付けの基本要領について図 3.2、図 3.3、図 3.4 に示す。
パターンの幅
距離50b
視線
50b
正しい運び方
○
×
悪い運び方
角度
図 3.2 視線及び吹付け距離
図 3.3 コーナー部の吹付け方法
図 3.4 ガンの正しい運び方
(2)吹付けパターン
適正な吹付けパターンの例を図 3.5. に示す。
①適正なパターン
左・扇形 右・丸形
②故障のあるときのパターン
一方の側の穴
がつまったとき
ノズルがつまっ ノズルの口径が 空気圧が高 空気圧が低
たとき
摩滅したとき
すぎるとき
すぎるとき
図 3.5
(3)スプレーガンの運行
スプレーガンの運行と施工の要領を図 3.6、図 3.7 に示す。
25
3章 施工方法と管理
①スプレーガンの運行
左
右
吹
き
②折り返し
上
下
吹
き
下吹き
(………)
は上下に 折り返し点で鋭角度(×)
にならないよう
上吹き
(‐
‐
‐)
は左右に スプレーガンを操作(○)
(吹き重ね防止)
図 3.6
③吹きむら、
色むら防止
30b
・上吹きは、
足場横布の30cm位上でとどめ、
下段から仕上げる。
・作業の見切りは、
縦樋や目地、
庇などで区切るように心がける。
図 3.7
(4)圧送機器の点検
作業に支障のないように日頃、次の点について注意する。
① 動力源の確認。
② 機器の損傷はないか? ③ オイルの交換及び補充。
④ 圧力ゲージは正確か?セットは適切か? ⑤ 圧送部品の消耗度は?
⑥ 機器に適した材料か? ⑦ 材料の粘度、骨材は適しているか? ⑧ 作業完了後の洗浄は十分か?
⑨ エア、材料の吐出口は変形していないか?つまっていないか?
⑩ ジョイント部分のもれ、キズはないか?
⑪ ジョイントは摩耗していないか?
26
3章 施工方法と管理
3.2 ローラー塗り工法
ローラー塗り工法は、ローラーブラシに材料を含ませて、施工面に転がして付着させる工
法である。特長としては、次のことがあげられる。
① 養生が比較的少なく簡便である。
② 吹付け作業より飛散が少なく、作業環境を汚さない。
③ 作業が簡便なのでメンテナンスに最適である。
施工にあたって、材料を希釈し、ローラーブラシになじませる。一度にたっぷりつけず徐々
に含ませながら容器の中に入れた網で何回も回転させて、十分に含ませる。次にベニヤ板な
どに試し塗りを行い、材料粘度を調整する。
3.2.1 ローラーの種類
ローラーブラシは、ハンドルとローラーカバー(中毛ローラー、砂骨ローラー、くばりロー
ラー等)で構成される。
(一部の製品には、一体となっているものもある。
)写真 3.2 ∼写真
3.13 にハンドルとローラーカバーの種類、容器、網などを示す。
写真 3.3 レギュラータイプ
写真 3.4 ワンタッチタイプ
写真 3.2 ハンドル
写真 3.5 中毛ローラー
写真 3.6 砂骨ローラー
写真 3.7 コーナー
ローラー
写真 3.8 レギュラー
写真 3.9 ミドル
写真 3.10 スモール
写真 3.11 くばりローラー
写真 3.12 パターンローラーと仕上がり
27
写真 3.13 容器と網
3章 施工方法と管理
3.2.2 ローラー塗り操作
一度被塗面に置いたローラーブラシは、ローラーカバーに含まれる材料が全部塗り終わる
まで被塗面から離さないようにする。仕上り模様は、連続回転操作によってのみ均一に作ら
れるのであって、操作中に被塗面からローラーブラシを離すとその部分はローラーマークが
出て不均一な仕上りになるので注意する。ローラーブラシの動かし方は、図 3.8 、図 3.9 のよ
うにし、最後に縦又は横にローラー目をそろえる。
ローラーの正しい握り方
薬指と小指で
固定する
最初のローラーの動かし方
2回目のローラーの動き
図 3.8
図 3.9
3.3 こて塗り工法
建築仕上げにおけるこて塗り工法の主な特長を次の①∼④に、また、主なこての写真を写
真 3.14 及び写真 3.15 に示す。
①一度に厚く塗れ、しかも作業が簡単でかつ速い。例えば 5a、10a になると吹付けガンや
圧送ローラーより左官仕事の方が速くなることが多い。
②養生、コンプレッサーなどが不要で、特に小面積などの場合に容易に作業ができる。
③コンクリート面など凹みや目違いがある時、下地の凹凸に関係なく平たん面を作ることが
できる。
④彫刻、成型的な仕上げも出来る。
写真 3.14 中塗りこて
写真 3.15 角こて
3.4 その他の用具
(1)ハンドミキサー(写真 3.16)
材料混練容器の中に直接差し込んで、材料を攪拌する機械である。回転シャフトの先にプ
ロペラをつけ、シャフトの回転によりプロペラが材料を攪拌する仕掛けで、シャフトを回転
28
3章 施工方法と管理
させるためのモーターが組み込んである。
(2)ミキサー(写真 3.17)
材料攪拌タンクに動力を組み合わせたもので、構造は比較的簡単である。動力は、1∼2PS、
ホッパー容量 60 ∼ 100r、1回混練り量 40 ∼ 70r 位の性能があれば良い。野丁場など多く
の材料を施工する現場では省力化、能率化にかかせない。選択にあたっては、広範囲の各種
材料に適用できるかどうか、材料の硬練りが出来るかどうか、よくチェックすることが大切
である。
写真 3.16 ハンドミキサー
写真 3.17 ミキサー
(3)材料混練容器
ペール缶、バケツなど鉄製又はプラスチック製で円筒型の容器が好ましい。
(4)養生用具(マスカー、シート、テープ)、皮スキ、スクレパー等
写真 3.18 ∼写真 3.23 にその他の用具を示す。
写真 3.20 皮スキ
写真 3.18 マスカー
写真 3.19 シート
写真 3.21 紙テープ
写真 3.22 布テープ
写真 3.23 スクレパー
3.5 施工及び施工管理
3.5.1 施工
仕上塗材は、建築現場で吹付け、ローラー塗り、あるいはコテ塗りによって施工され、最
終的にその機能を発揮するものである。したがって、施工及び施工管理が、製品の品質管理
29
3章 施工方法と管理
と同様に重要となる。
一般に施工は、その製品の製造業者が指定する方法により、工事仕様書や施工要領書に基
づいて行われる。しかし現場の作業環境や作業条件はきわめて複雑多岐にわたるので、実際
の施工に当たっては、適切な下地処理、足場の良否、塗付け機器、混合機器なども十分に考
慮しなければならない。
① 施工の基本は、深い知識、優れた技能、施工者の心構えなどであるが、ポイントをまとめ
ると以下のようになる。
・重点となる目的は何であるか十分認識する。
・施工現場の環境・条件を正確に把握する。
・対象となる下地に関する正しい知識を持ち、施工する材料の品質・
性能を十分理解し、適切な材料の選択をする。
・常に最良の仕上げを心がける。
② 施工に際して、施工者は、塗装仕様、テクスチャー、下地条件、足場、施工機器などにつ
いて施工要領書を作成、工事管理者は、これに基づき施工計画書を作成し、関連工事との
調整を図る。
③ 施工者は施工計画書に従い作業をすすめ、工期を遵守しなければならない。
3.5.2 施工管理
仕上塗材の施工管理を a 現場管理、s 材料管理、d 足場管理、f 養生管理に大別した場
合の要点を以下に示す。また、表 3.1 に施工管理要領チェックリストを示す。
(1)現場管理
① 調合場所及び作業場所は、常によく整理整頓を行う。
② 作業用足場は、労働安全衛生規則に準拠したものでなければならない。
③ 塗付け面と足場との間隔は、仕上塗材の種類・模様などを考慮し、塗付け作業に支障のな
い距離を保つため、あらかじめ工事管理者と施工業者が打ち合わせを行う。
④ 危険防止のため、塗付け作業による仕上塗材の飛散もしくは溶剤の蒸発により人体に有害
な影響がある場合には、労働安全衛生規則に準拠した適切なマスク及び必要に応じてメガ
ネを着用し、作業をしなければならない。
(2)材料管理
① 材料の発注に当たっては、施工面積、下地の種類や面の精度を考慮し、綿密にその使用量
を計算した上で、貯蔵安定性の許す範囲で一括発注をする。また、追加工事の場合は前回
発注の材料見本、塗り見本を添付するか、もしくはロット番号を確認し、製造業者が単に
指示番号やマンセル番号によってのみ調色することのないように留意する。
② 貯蔵安定性の確認は、通常6ヶ月を一区切りとして材質確認を行う。その材料の保管は、袋
入りのセメント系材料などの無機系材料は、吸湿性があるので、風雨にさらされない場所
で、水分を遮断するように厚いパネルなどを敷いた上に置く。缶入りの水系材料の保管場
所は、保温処置のできる場所、特に冬期気温が 5℃以下にならないところを選ぶ。溶剤形
の材料は、火気に注意するよう「危険物」であることを明示して、引火のおそれがないと
ころに保管する。
30
3章 施工方法と管理
③ 使用時混合形の材料は、現場において十分に攪拌し、均一化した状態で使用する。攪拌が
不十分な場合は付着低下、飛び散り、砂落ち、硬化不良、色むらなどの原因となる。
④ 下塗材、主材、上塗材は、異なった製造業者のものを用いたり、混合したりすると異常な
凝固、付着低下、剥離などに結びつくので絶対に避ける。同一製造業者品で統一する。
(3)足場管理
① 作業足場と壁面との間隔; 吹付け工法…30 ∼ 50b
ローラー塗り工法…40 ∼ 50b
② 天井と足場床面との間隔; 吹付け工法…1.3 ∼ 1.9 m
ローラー塗り工法…1.9 ∼ 2.2 m
③ 足場架設が影響するむらの発生;
横布線の上、下から交差して横に二重吹きをした結果、仕上塗材の重なりからくる色むら
を生じる場合がある。また逆に塗付け作業の盲点となり横布線を中心とした塗り不足で色む
らを生じる場合もある。防止策としては、材料が下地面に対して直角に吹き付けられるよう
に、スプレーガンのノズルをやや上向きに保ち、絶対に吹下げはしないこと。むしろ可能な
範囲で吹上げて仕上げるように心がけると、比較的横布むらが目立たない均一なテクス
チャーが得られる。
④ つなぎ跡の補修;
タッチアップ性の良い仕上塗材、補修し易いテクスチャーを選択するよう考慮する。
(4)養生管理
① 塗付け作業前に材料の飛散、直射日光を避けるため、シート掛け養生を行う。
② 工事中は、他の部材及び仕上げ面を汚損しないよう適切な養生を行う。
③ 夏季に屋外で施工する場合は、急激な乾燥を防止するため、シート、ポリエチレンフィル
ムなどで覆う。
④ 風などにより粉塵があがり、仕上げ面に付着するおそれがある場合は、防風養生を行う。
⑤ セメント系仕上塗材などは、早期乾燥を防止するためにシート養生及び散水養生を行う。
⑥ 養生紙やマスキングテープなどの取り外しは、塗付け塗膜の硬化の程度や塗膜厚などを考
慮して行う。
⑦ 養生の注意点
2日以上放置
施工後は、養生テープを2日以上放
置すると素地に糊が残るので十分
注意する。
31
樋、
アルミサッシなどはセメントのアル
カリにより変色し易いので注意する。
3章 施工方法と管理
シート養生をしていても強風のときな
どは吹きこぼれに十分に注意する。
天井、壁仕上げを行う時、周りを汚
染しないよう天井から行い、すてテ
ープ貼りの養生が大切。
表 3.1 施工管理要領チェックリスト
工程・項目
チェックポイント
施工計画
①面積、
施工部位、
意匠、
工期、
作業管理など確認。
①下地の含水率10%以下、
pH10以下であること。
下地調査
②白華、
レイタンス、
ほこりなどを確認。
③既存塗膜の確認。
下地調整の調査
①下地処理工法、
下地調整の確認。
工法の選定
①居住者、
周辺への影響を確認。
①使用材料の確認。
材料の選定
②数量の確認。
③施工範囲の確認。
足場
下地処理
仕上塗材の調合
①足場作業の基準に従い、
壁と足場の間隔が設置されているか確認。
①下地処理状態の確認(下地に汚れ、
付着物が著しくなく、
仕上りを妨げ
る突起物、
段差、
不陸、
巣穴がないこと)。
①メーカーの仕様書で材料の調合割合を確認。
①下塗りは、
塗り残しのないように指示。
②塗り重ね時間の指示。
③材料粘度の調整を一定に指示。
④吹き付けの角度を一定に指示。
仕上塗材の施工
⑤吹き重ねかすれのないように指示。
⑥均一に施工しているか確認。
⑦施工後、
タレ、
泡、
ちぢみ、
塗り残しのないことを目視で確認。
⑧気温5℃以上で施工されているか確認。
⑨材料の可使時間が守られて使用されているか確認。
二次仕上げ(ローラー押さえ)①パターンずれのないように確認。
ダメ直し
①足場つなぎの変更を指示。
②元パターンと変わらない最小範囲を確認。
①乾燥硬化が正常に進行するように換気に配慮する。
養生
②半硬化の時取ると取りやすい。放置が長いとテープが残ったり仕上材を
傷めないと取れない。
検査
①塗り見本と比較してテクスチャー、
色彩、
光沢等に差異がないことを確認。
(建築改修工事監理指針参考)
32
4章 塗替え改修
4 章 塗替え改修
仕上塗材を施工する目的は、下地、構造体の保護と美観にある。一般に仕上塗材は紫外線、
水、汚染物質等により表面から劣化していく。劣化した場合は、建物の耐久性確保、美観の
保持のため、修繕・改修に努めるべきである。修繕・改修は、既存の塗膜層の劣化状況の調
査、診断により、劣化の程度に基づいて、修繕・改修措置の検討を行う必要がある。なお、本
章では、仕上塗材層の劣化状況の調査・診断及び修繕・改修措置について述べる。
4.1 仕上塗材に発生する劣化現象
仕上塗材に発生する劣化現象としては①汚れ、②変退色、③光沢低下、④白亜化、⑤摩耗、
⑥ふくれ、⑦ひび割れ、⑧はがれ、⑨浮き、⑩エフロレッセンス、⑪藻・かびの発生等があ
る。劣化現象の種類と調査方法を以下に示す。
① 汚れ
塵あい、鉄さび、手あか、油脂などの付着、菌類藻類の繁殖により通常の洗浄方法では除
去できない状態。
〈調査方法〉目視診断
写真 4.1 汚れ
② 変退色
紫外線、風雨、熱などにより仕上塗材表面が劣化し色の色相、彩度、明度が変化する現象。
〈調査方法〉目視診断、色見本、カラーチャート
③ 光沢低下
仕上塗材表面の光沢が低下する現象。主に上塗材の劣化。
〈調査方法〉目視診断
④ 白亜化
チョーキングともいう。紫外線、風雨、熱などにより樹脂分が劣化し塗膜中の粉状物が離
脱しやすくなり表面が粉末状になる現象。
〈調査方法〉指触診断(塗膜表面を触り粉状物の付着で診断)
払拭診断(塗膜表面にセロテープを接着させて引きはがし黒色の紙などに貼
り付け粉状物の付着状態をみる。調査結果を保存する場合に有効)
33
4章 塗替え改修
〈指触診断〉
〈払拭診断〉
劣化がない状態
劣化が進んでいる
状態
著しく劣化が進んで
いる状態
写真4.2 白亜化(チョーキング)
(外装仕上げの耐久性向上技術、
技報堂出版1より)
⑤ 磨耗
風雨、砂塵など物理的作用により塗膜厚が減少して行く現象。
〈調査方法〉目視診断
写真 4.3 磨耗
34
4章 塗替え改修
⑥ ふくれ
塗膜が気体、液体、その他異物などを含んで盛り上がる現象。
上塗材のふくれや主材のふくれがある。
〈調査方法〉目視診断
写真 4.4 ふくれ
⑦ ひび割れ
塗膜に裂け目ができる現象。上塗材の割れは浅割れ(checking)、主材の割れは深割れ
(cracking)に区分される。
下地モルタルや躯体コンクリートの割れに起因する場合もある。
〈調査方法〉目視診断(クラックスケール、クラック針ゲージペン等)
写真 4.5 浅割れ
写真 4.6 深割れ
写真 4.7 クラックスケール
写真 4.8 クラック針ゲージペン
35
4章 塗替え改修
⑧ はがれ
塗膜が付着力を失って被塗物から離れる現象。
〈調査方法〉目視診断
写真 4.9 はがれ
⑨ 浮き
塗膜が剥離して浮き上がった状態。通常、裂け目や切れ目がなく、内部に気体又は液体(水
分)を含んでいる。
〈調査方法〉目視判断(打診棒、テストハンマー)
写真 4.10 打診棒
⑩ エフロレッセンス
塗膜表面へアルカリ分が析出し白色粉状物を生ずる現象。
セメントモルタル、コンクリート中の石灰などが水に溶けて表面にしみ出し、空気中の炭
酸ガスと化合してできたもの。
〈調査方法〉目視診断
写真 4.11 エフロレッセンス
36
4章 塗替え改修
⑪ 藻・かびの発生
塗膜表面に黒色、緑色の点状、糸状に発生した藻類やかびによる汚染
〈調査方法〉目視診断
写真 4.12 藻の発生
4.2 劣化現象の処理方法
ほとんどの塗替え改修工事は健全な既存塗膜を残してその上から新たな仕上塗材を塗布し
ている。既存塗膜の劣化状況を把握し、適切な処理を実施することが重要である。処理方法
には清掃、除去、下地調整(固定)に分けられる。
① 清掃
既存仕上塗材層の表面についた付着物を清掃し、下地として問題のない状態にする。各種
清掃処理方法を表 4.1 に示す。
表4.1 各種清掃処理方法
表面付着物
清掃処理方法
塵埃
ブラシを用いた水洗い又は水圧3∼15MPaの水洗
藻・黴・苔
ワイヤブラシ等で掻き落とし、
アルコール拭き又は、
塩素系漂白剤で殺菌処理する。
油脂類
白亜化・
エフロレッセンス
鉄錆
中性洗剤で洗浄後、
水洗いするかシンナー拭きする。著しい場合は、
ワイヤブラシ掛け
又は、
サンダー掛けで除去する。
ワイヤブラシ等で掻き落とした後、
水洗い又は高圧水洗浄する。
ワイヤブラシ、
電動サンダーを用いて除去する。シュウ酸などの弱酸を用い、
鉄錆を除去
し、
直ちに水洗いして薬剤を取り除く。
② 除去
既存仕上塗材層の内部まで劣化している場合は機械的(物理的)除去や溶解、膨潤などの
化学的除去によりぜい弱部分を除去する。内容を表 4.2 に示す。
表4.2 各種除去方法
機械的除去 手工具、
電動工具、
高圧水(15∼70 MPa)、
超高圧水(100∼200MPa)、
サンドブラスト
化学的除去 シンナー拭き、
剥離剤、
スチームクリーナー、
燃焼
37
4章 塗替え改修
③ 下地調整(固定)
下地に欠損やひび割れ等がある場合は下地調整塗材を用い補修し、平滑に処理する。また、
ぜい弱層はシーラー処理で固定する。
4.3 各種塗替え工法
4.3.1 既存仕上塗材層の処理方法
既存仕上塗材層の処理方法は劣化現象に応じて異なるので劣化現象を十分確認して選定す
る必要がある。
汚れ、白亜化など既存仕上塗材層表面の劣化現象がある場合の処理方法の例を図 4.1 に示
す。
仕上塗材層表面
汚れ
塵
あ
い
手
あ
か
・
油
脂
光
沢
度
低
下
変退色
鉄
か
アルカリ
塩の折出
さ
び
白
エ
フ
ロ
レ
セ
ン
ス
摩
亜
化
耗
び
有
無
仕上塗材表面
の処理・清掃
下地調整
のレベル
水 洗( 高 圧 水
洗を含む)
下地調整
方法
仕上塗材表面の処理・清掃
水
洗
ラッカーシンナ
ー、中 性 洗 剤
等による洗 浄
および水洗また
は手工具、
電動
工 具による処
理および水洗
無処理
手工具、
電動工
具による
除去およ
び水洗
NO
塩素系漂白剤 水
等による洗 浄
および 水 洗ま
たは 手 工 具 、
電 動 工 具によ
る除 去 および
水洗
洗
下地処理
下地処理方法
YES
シーラー処理
下地調整塗材
選択された仕上塗材塗り
図4.1 既存仕上塗材層のみの劣化に対する処理方法
(外壁改修工事の基本的な考え方(湿式編)、
6日本建築学会より引用)
38
4章 塗替え改修
ひび割れ、ふくれ、はがれなど既存仕上塗材層内部に及ぶ劣化現象がある場合の処理方法
の例を図 4.2 に示す。
劣化部の部分除去や劣化部が広範囲に及ぶ場合の全面除去処理などがある。
仕上塗材層内部
単層
ふくれ・
はがれ
複層
割れ
主 材のふく
れ・はがれ
主材の割れ
トップコート トップコート
のふくれ・は の割れ
がれ
劣化塗材の
除 去( 塗 材
の部分除
去)
塗材の全面
除去
劣化塗材の
除 去( 塗 材
の部分除
去)
塗材の全面
除去
劣化塗材の
除去(塗材の
部分除去)
下地調整
レベル
手工具、
電動工具
に よる 除
去 及び 水
洗
手工具、電動
工具、
ブラスト、
はく離剤等に
よる除去及び
水洗
手工具、
電動工具
に よる 除
去 及び 水
洗
手工具、電動
工具、
ブラスト、
はく離剤等に
よる除去及び
水洗
手工具、電動
工具による除
去及び水洗
下地調整
方法
下地調整塗
材の適用
YES
下地調整塗材処理
NO
NO
シーラー
の適用
YES
シーラー処理
選択された仕上塗材塗り
図4.2 既存仕上塗材層の劣化に対する処理方法
(外壁改修工事の基本的な考え方(湿式編)、
6日本建築学会より引用)
39
4章 塗替え改修
4.3.2 塗替え仕上塗材の選定
塗替え改修工事を計画するときの塗替え仕上塗材については意匠変更の有無、性能、経済
性などを踏まえて選定する必要がある。
塗替え改修工事における塗替え仕上塗材の選定手順を図4.3に、
代表的な既存仕上塗材の種
類による塗替え可能な仕上塗材の適合表を表 4.3 に示す。また、1 章(表 1.5 建築用仕上塗
材の選び方)も参照願いたい。
既存仕上
美観保持
意匠変更
NO
形状を活かす
YES
テクスチャー
既存塗膜状態
健全な場合
・塗料
・上塗材
・RP
・リシンベース
割れがある場合
可とう形
改修塗材
ゆず肌状
凹凸状
砂壁状
スタッコ
単層弾性
仕上塗材
複層塗材
薄塗材
厚塗材
防水性
防水形
複層塗材
図4.3 塗替え仕上塗材の選定手順
40
可とう性
可とう形
薄塗材
4章 塗替え改修
表4.3 代表的な既存仕上塗材の種類と仕上塗材の適合表
薄塗材
仕上塗材
薄
塗
材
S
i
︵
シ
リ
カ
リ
シ
ン
︶
既存仕上塗材
の種類
セメントリシン
アクリルリシン
薄
塗
材
E
︵
ア
ク
リ
ル
リ
シ
ン
︶
可
と
う
形
薄
塗
材
E
︵
弾
性
リ
シ
ン
︶
複層塗材
防
水
形
薄
塗
材
E
︵
単
層
弾
性
︶
複
層
塗
材
C
・
C
E
︵
セ
メ
ン
ト
タ
イ
ル
︶
複
層
塗
材
S
i
︵
シ
リ
カ
タ
イ
ル
︶
複
層
塗
材
E
︵
ア
ク
リ
ル
タ
イ
ル
︶
複
層
塗
材
R
E
︵
水
系
エ
ポ
キ
シ
タ
イ
ル
︶
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○
単層弾性仕上塗材
○
アクリルタイル
○
弾性アクリルタイル
○
アクリルスタッコ
○
○
○
複
層
塗
材
R
S
︵
エ
ポ
キ
シ
タ
イ
ル
︶
可
と
う
形
複
層
塗
材
C
E
防
水
形
複
層
塗
材
C
E
厚塗材 可とう形改修塗材
防
水
形
複
層
塗
材
E
︵
弾
性
タ
イ
ル
︶
防
水
形
複
層
塗
材
R
E
防
水
形
複
層
塗
材
R
S
○ ○ ○
厚
塗
材
E
︵
ア
ク
リ
ル
ス
タ
ッ
コ
︶
可
と
う
形
改
修
塗
材
C
E
可
と
う
形
改
修
塗
材
E
可
と
う
形
改
修
塗
材
R
E
○ ○ ○ ○
○ ○
○ ○
○ ○ ○
○ ○ ○
○ ○ ○
41
厚
塗
材
S
i
︵
シ
リ
カ
ス
タ
ッ
コ
︶
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○
○:適
空欄:不適又は通常使用しない
厚
塗
材
C
・
C
E
︵
セ
メ
ン
ト
ス
タ
ッ
コ
︶
○ ○
○ ○
4章 塗替え改修
4.3.3 塗替え仕上げの工程
主な既存仕上げで見られる代表的な劣化現象についての処理方法と仕上塗材の工程を図4.4
から図 4.6 に示す。
① 既存仕上げ:アクリルリシン
汚れ
はがれ
洗浄
(水洗、
シンナー拭き等)
はがれ箇所の部分除去又
は全面除去(高圧水、
ケレ
ン等)
模様あわせ(部分除去の場合)
下地処理の適用
NO
YES
無処理
シーラー又は下地調整塗材処理
仕上塗材選定
選定条件
既存塗膜が健
全
コスト重視
仕上塗材
工 程
上塗りのみ
既 存 塗 膜に 割
れがある
可とう形改修仕
上塗材
意匠変更
(躯体保護)
単層弾性
仕上塗材
下塗り
意匠変更
厚塗材
(スタッコ)
下塗り
主材塗り
上塗り
上塗り
上塗り
図4.4 アクリルリシンの塗替え仕上げの工程例
42
4章 塗替え改修
② 既存仕上げ:単層弾性仕上塗材(ゆず肌模様)
汚れ
ふくれ
洗浄
(水洗、
シンナー拭き等)
ふくれ箇所の部分除去又
は全面除去(高圧水、
ケレ
ン等)
模様あわせ(部分除去の場合)
下地処理の適用
NO
YES
無処理
シーラー又は下地調整塗材処理
仕上塗材選定
選定条件
仕上塗材
工 程
既存塗膜が健
全
コスト重視
既 存 塗 膜に 割
れがある
上塗りのみ
可とう形改修仕
上塗材
意匠変更(躯体保護)
単層弾性仕上
塗材(凹凸状仕
上げ)
下塗り
防水形複層仕
上塗材( 弾性タ
イル)
下塗り
主材塗り
上塗り
上塗り
上塗り
図4.5 単層弾性仕上塗材の塗替え仕上げの工程例
43
4章 塗替え改修
③ 既存仕上げ:アクリルタイル
チョーキング
主材のひび割れ
洗浄
(水洗、
シンナー拭き等)
ひび割れ箇所の部分除去
又は全面除去(高圧水、
ケ
レン等)
模様あわせ(部分除去の場合)
下地処理の適用
NO
YES
無処理
シーラー又は下地調整塗材処理
仕上塗材選定
選定条件
仕上塗材
工 程
既存塗膜が健
全
コスト重視
既 存 塗 膜に 割
れがある
上塗りのみ
可とう形改修仕
上塗材
意匠変更
(躯体保護)
防水性付与
単層弾性仕上
塗材(ゆず肌状
仕上げ)
下塗り
防水形複層仕
上塗材( 弾性タ
イル)
下塗り
主材塗り
上塗り
上塗り
上塗り
図4.6 アクリルタイルの塗替え仕上げの工程例
44
4章 塗替え改修
参照
目地の防水材料としてシーリング材は重要な役割をはたしている。
シーリング材と仕上塗材の組合わせによっては、はがれ、割れ、汚れなどの不具合が生ず
ることがあるので注意が必要である。
国土交通省大臣官房官庁営繕部監修、7 建築保全センター発行の「建築改修工事監理指針
(上巻)、平成 16 年版」による既存シーリング材と仕上塗材の適合表を表 4.4 に示す。
表4.4 既存シーリング材と仕上塗材の適合表(目安)
薄塗材
仕上塗材
薄
塗
材
S
i
薄
塗
材
E
薄
塗
材
S
可
と
う
形
薄
塗
材
S
i
複層塗材
可
と
う
形
薄
塗
材
E
防
水
形
薄
塗
材
E
複
層
塗
材
C
・
C
E
複
層
塗
材
S
i
複
層
塗
材
E
複
層
塗
材
R
E
複
層
塗
材
R
S
可
と
う
形
複
層
塗
材
C
E
防
水
形
複
層
塗
材
C
E
厚塗材 可とう形改修塗材
防
水
形
複
層
塗
材
E
防
水
形
複
層
塗
材
R
E
防
水
形
複
層
塗
材
R
S
厚
塗
材
C
・
C
E
厚
塗
材
S
i
厚
塗
材
E
可
と
う
形
C
E
可
と
う
形
E
可
と
う
形
R
E
既存シーリング
の種類
ポリサルファイド系2成分形
○
○ ○ ○
△ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △
△
△ △ △
△
△ △ △
ポリウレタン系1成分形
△ △ ○ ○ ○
変性シリコーン系1成分形
変性シリコーン系2成分形
ポリサルファイド系1成分形
ポリウレタン系2成分形
アクリルウレタン系2成分形
○ ○ ○ △
○ ○ ○
△ △ △ △ △ △ △ △ △
△ △ △
△ △ △
△
△ △ △ △
○
○ ○ ○ ○ △
△ △ ○ ○ △ △ △ △ ○ △ △ ○ ○ ○ ○ △ △ △ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○:適合 △:条件により適合 空欄:不適合
45
△ △
○ ○
○ ○
○ ○
5章 クレームになる欠陥とその対策
5章 クレームになる欠陥とその対策
建築塗装では、被塗物及び仕上塗材の種類が多種多様で、複雑な工程の仕様もあり、更に
気象や周囲の環境の影響を受けることから、材料・塗装・塗膜の欠陥に起因するクレームが
多く発生する。発生する欠陥を材料、下地、塗装作業中、塗装作業後、経時及び外的要因の
6 項目別に図 5.1 に示す。クレームは、各欠陥の複合的な絡みにより発生するため、原因の解
明及び対策は、総合的な検討を必要とする。現実に発生しやすい欠陥についての原因及び対
策について以下に述べる。
下地(素材)
材料
粘度変化
固化
顔料の沈降
既存塗膜の
リフティング
つやの不良
皮ばり
凍結
腐敗
色違い
塗装作業中
はけ目
はがれ
流れ(だれ)
はじき
はじき
エフロレッセンス
だま
(固まり)
ひび割れ
色の分離
色むら
糸ひき
ふくれ
ガンはだ
模様のくずれ
白化(ブラッシング)
発泡(あわ)
変色・変質
ドライアウト
ピンホール
乾燥不良
ドライアウト
リフティング
色むら
ガンはだ
クレーム
にじみ
はがれ
色分れ
つや不良
メタリックむら
色・つやむら
足場むら
白化
材料の欠陥
乾燥不良
硬化不良 チョーキング
吹きむら
熱ふくれ
透け
ひび割れ
パターン違い
カビ・藻
乾燥ひび割れ
乾燥不良
つやびけ
流れ・はけ目
ふくれ
白化・ふくれ
浮き
メタリックむら
汚れ
ガンはだ
模様のくずれ
発泡(あわ)
ピンホール
変色・退色
チョーキング
汚れ・カビ・藻
ピンホール
塗装作業後
乾燥ひび割れ
ひび割れ
ドライアウト
変色
退色
熱ふくれ
外的要因
経時
図5.1 クレームになる材料・塗装・塗膜の欠陥
47
5章 クレームになる欠陥とその対策
5.1 用語の解説
主な欠陥内容と現象についての用語解説を表 5.1 に示す。
表5.1 用語の解説
欠陥内容
現象(定義)
貯蔵・保管中に粘度が変化する現象。粘度の上昇が著しい場合、
ゲル化(ゼリー状に
粘度変化
なること)することがある。
また、
逆に粘度が減少する場合もある。
顔料の沈降
皮ばり
【補足-1】参照
分散した顔料、
骨材などが容器の底にたまること。
容器中で塗材の表面が乾燥し皮が張る現象。水系の高顔料濃度・高粘度塗材は外
気の温度差などにより、
塗材の表面に皮が張る。
だま
混合状態が不十分で生じた顔料や骨材の集まり
(固まり)、皮ばりが材料中に沈んで
・固まり
できた
‘固まり’
をいう。
凍結(水系塗材) 水系塗材が氷点下において凍る現象。
腐敗(水系塗材) 水系塗材にバクテリアやカビが育成し、
悪臭、
粘度変化、
ガスなどを発生する。
色の分離
混合されている色が貯蔵・保管中に個々の色に分れる現象。
色違い
製造・調色ロットなどの違いにより色味が異なること。
はけ目
流展性の悪い上塗材などを塗った場合、はけの跡が凹凸の線状に残ること。
流れ(だれ)
垂直面に施工した塗材が乾燥までに部分的に流れて厚さに不均一を生じる現象。複
・たれ
・たるみ
はじき
ガンはだ
糸ひき
にじみむら
白化
層仕上塗材の上塗材には半円状、
つらら状、
波紋状などの模様となって現れる。
‘たれ’
、
‘たるみ’
ともいう。
塗膜に生じる
‘へこみ’
のうち、
素地まで達しているものをいう。
被塗面に油やシリコーンなどが付着しているときに起こりやすい。
吹付け塗装時、
塗材の粘度や吹付け圧が高いため、
塗膜の肌が荒れる現象。吸込み
が著しい場合にも生じる。
塗材が糸状になって被塗面に付く現象。
下塗りした部分又は下塗りから上塗りした塗材に色がしみ出して、
所定の色に仕上が
らずに
‘むら’
になること。
複層仕上塗材の溶剤形上塗材の乾燥過程で起こる塗膜の白化現象。 ・ブラッシング
霧がかかった様に白くなり、
つやがなくなる。ブラッシング、
かぶりともいう。耐水白化(塗
・かぶり
膜中に水が介在して生じる白化)
とは区別する。
発泡(あわ)
塗材に混入した気泡が塗装時に抜けきれず泡となって残る現象。塗膜表面にできた
気泡。小さなふくれ、
へこみ、
穴となって残る場合もあり、複層仕上塗材の上塗材に生じる。
ピンホール
塗膜に生じる針でつついた程度のごく小さな穴が開く現象。
ドライアウト
セメント系塗材を施工後、
急速な水分揮発又は吸込みによるセメントの硬化不良。
(セメント系)
造膜不良
・低温割れ
色むら
硬化不良
寒冷期におけるエマルション系塗材を最低造膜温度以下で施工した場合の割れ(低
温割れ:コールドクラックともいう)。
上塗材などを塗装したとき、
その表面に色の異なる部分ができる現象。塗材の欠陥、
塗
装の欠陥、
塗膜成分の分解、
変質などで起こる。
反応硬化形塗材の造膜不良。
48
5章 クレームになる欠陥とその対策
表5.1 用語の解説(つづき)
欠陥内容
足場むら
現象(定義)
足場のかげの塗りにくい部分の主材の模様むら、
その上塗材の重ね塗りによる
‘つや
むら’
‘
、色むら’
を生じる現象。
乾燥ひび割れ
乾燥時の収縮によって発生する割れ。
複層仕上塗材などの溶剤形上塗材を2回以上塗り重ねる時、
下層の上塗材が上層の
リフティング
上塗材の溶剤によって侵され軟化し、
しわになること。
・ちぢみ
エマルション系のような非反応硬化形主材の上に反応硬化形(2液形)溶剤系上塗材
・しわ
を塗り付ける場合や、
塗替え工事で耐溶剤の弱い既存塗膜の上に強い溶剤を含有す
る塗材を塗り付けした場合に発生しやすい。
エフロレッセンス
セメント系塗材の表面に析出した白粉状の結晶。白華ともいう。 ・白華
4章 写真4.11参照
にじみ
下に塗装された塗膜中の顔料の色が、
上に塗られた塗材の溶剤で抽出されることによ
・ブリード
って浮き出てくる現象。
色分れ
つやむら
つやびけ
塗膜形成の過程で顔料が凝集や浮きなどによって不均一となり、
目で見て色むらになる
現象。
光沢塗面に部分的な光沢不足が発生したり、
つや消し又は半つやの塗面に部分的な
つやが現れたりする現象。
光沢度が小さくなること
(光沢低下)。塗装後、
短時間のうちにつやを失う現象。ブラッ
シング
(かぶり)、
耐水白化などによる。
透け
(透けむら)
下地や下塗材が透けて見え、
その透け方が不均一でむらになる現象。
メタリックむら
メタリック色の金属顔料が
‘むら’
や
‘まだら’
に仕上った状態。
吹きむら
剥離・はがれ 模様の密度、
大きさ、
形状が一様でなく、
不均一に見える現象。
模様むら、
模様くずれ、
塗継ぎむらなどによる。
塗膜が付着力を失ってはがれること。
・チッピング
①りん片状に細かく砕けたはがれは、
チッピング
(Chipping)、
フレーキング
(Flaking)
と
・フレーキング
いう。
・スケーリング
②大きめのはがれは、
スケーリング
(Scaling)
という。
・ピーリング
③連続した大はがれは、
ピーリング
(Peeling)
という。
変色
退色
元の色と異なった色に変化すること。色相、
彩度、
明度のいずれかの1つ又は2つ以上
が変化する。
塗膜が紫外線、
水、
熱などにより色があせる現象。主として彩度が小さくなり、
場合によ
っては明度が大きくなる。
白亜化
太陽光線により塗膜の表面が次第に粉状になり消耗してゆく現象。 ・チョーキング
4章 写真4.2参照
ふくれ
塗膜が下から押し上げられて部分的に凸部状になる現象。内部は、塗膜を浸透した
水や被塗物との界面で発生したガスなどである。
4章 写真4.4参照
49
5章 クレームになる欠陥とその対策
表5.1 用語の解説(つづき)
欠陥内容
現象(定義)
外壁素材や仕上塗材中には、
徐々に水分が蓄えられる。この水分が急激な温度上昇
熱ふくれ
・蜂の巣状ふくれ
【補足-3】参照
により、水蒸気となり、軟化した塗膜を押し上げてふくれを発生させる。単層弾性の場
合は、比較的大きな
‘ふくれ’
で、
カッターで切ると内部は蜂の巣状になっている。防水
形複層仕上塗材のアクリル系上塗材の場合は、
微小な
‘ふくれ’
が上塗材の中に無数
に発生する。
浮き
塗膜が剥離して浮き上がった状態。通常、
裂け目や切れ目がなく、
内部に気体又は水
分を含んでいる。
塗膜に裂け目や割れ目が生じた状態で、
ひび割れ、
亀裂、
クラックともいう。
ひび割れ
・チェッキング
・クラッキング
①複層仕上塗材などの上塗材表面部分だけに起こる細かい割れは、
浅われ(Checking)
という。4章 写真4.5参照
②上塗材を貫通し、
その下の塗膜又は下地まで達する割れは、
深われ(Cracking)
という。
4章 写真4.6参照
カビ・藻
塗膜の表面に点状・糸状・面上に発生した黒色、
緑色などのカビ、
藻類による汚染。
4章 写真4.12参照
5.2 材料に発生する欠陥と対策
材料の使用時、保管時に発生する欠陥について表5.2 に示す。また、水系塗材と溶剤系塗材
との大きな違いを表5.3 に示す。水系塗材の材料に発生する欠陥は、保管状態に左右され易い
ので、特に保管には注意が必要である。
表5.2 材料に発生する欠陥と対策
欠陥内容
原因
対策
①高温での貯蔵。
(直射日光下での貯蔵)
①40℃以上の貯蔵および直射日光下で
の貯蔵を避ける。 ②長期間保管。
粘度変化
③開放容器による保存。 ②使用期限内の材料を使用する。 ④異種塗料の混合、
異種溶剤の使用。
③密閉した容器で保存する。 ⑤反応硬化形塗料での可使時間超過。
④材料製造業者の仕様を守る。 ⑤可使時間以内に使用する。
①塗材の分散・混合不足。 顔料の沈降
皮ばり
【補足-1】参照
①使用の際、底部まで十分に撹拌する。
②長期間保管。
②使用期限内の材料を使用する。 ③うすめ液(溶剤又は水)
による過希釈。
③溶剤又は水を多量に加えない。
①長期間保管。 ①40℃以上の貯蔵は避け、使用期限内
②開放容器による保存。 ③直射日光下で貯蔵。
(高粘度タイプの
塗材)
の材料を使用する。 ②開缶後は、
密閉した容器で保存する。
③直射日光下での貯蔵を避ける。
50
5章 クレームになる欠陥とその対策
表5.2 材料に発生する欠陥と対策(つづき)
欠陥内容
だま
・固まり
凍結
(水系塗材)
①顔料の沈降の項参照。 ②皮ばりの項参照。
骨材の分離・沈降。 ②皮ばりの塗材中への沈降。
①水系仕上塗材の0℃以下での長期貯
(水系塗材)
腐敗
対策
原因
①高顔料濃度の塗材における顔料及び
①凍結する雰囲気で保管しない。
蔵。
①開放容器による保存。
①開缶後は、
密閉した容器で保存する。
②腐敗した水での希釈。 ②汲み置き
(雑菌入り)
した水で希釈し
ない。 ③長期貯蔵品の使用。
③長期の貯蔵は避け、在庫管理に注意
する。
色の分離
色違い
①使用顔料の分散状態の差。 ①使用の際、
十分に撹拌する。 ②希釈した上塗材の保管。
②同上。
①製造ロット間の色の差。 ①塗装面、
目地、塗継ぎ箇所などで区分
けし使用する。著しく異なる場合はメー
②高温貯蔵等による変質。
カーに返品する。 ②保管に注意する。
表5.3 水系塗材と溶剤系塗材の組成と欠陥内容の違い
項 目
合成樹脂エマルション
水系塗材
溶剤系塗材
配合
−
−
配合
配合
−
配合
−
水溶性増粘剤
配合
−
防腐剤
配合
−
又は水溶性樹脂
合成樹脂溶液
組
成 凍結防止剤
成膜(造膜)助剤
粘度変化、
固化
顔料の沈降
欠
陥 皮ばり
内 だま
(固まり)
容
凍結
腐敗
備 考
水系塗材と溶剤系塗材の大きな違いは、
溶媒
の違いである。水系塗材には、凍結防止剤、
成膜助剤、水溶性増粘剤、防腐剤などが添
加されている。
起こりやすい 起こりやすい 水系塗材は保管時に欠陥を生じやすいので
起こりやすい 保管状態に十分注意する必要がある。
起こりやすい
起こりやすい
−
起こりやすい
−
起こりやすい
−
51
5章 クレームになる欠陥とその対策
【補足-1】
厳禁
直射日光下での貯蔵
冷却(放射冷却)
太陽光の熱エネルギー
水分蒸発
JIS A 6909
複層塗材E
塗材表面から水が蒸発
皮(皮ばり)
皮ばり
発生
昼間は容器が温め
られ 、飽 和 水 蒸 気
JIS A 6909
複層塗材E
圧に達するまで塗
材表面から水が蒸
発(気化)する。夜
間は冷 却され 、缶
内壁面で結露(液
化)
した水は缶 壁 水の蒸発/結露の繰返しにより塗材の
側から塗材にもどる。 表面が乾燥する。⇒皮
図5.2 皮ばり
(直射日光下における皮ばり発生現象)
5.3 下地の状態により発生する欠陥と対策
下地に関するクレームについては、後述する塗装作業中、塗装作業後、経時で発生する欠
陥とも共通するので、その中で確認することを薦める。表 5.4に下地の状態により発生する欠
陥と対策について示す。下地調整を十分行なうことにより、
多くのクレームを防止することが
できる。
表5.4 下地の状態により発生する欠陥と対策
欠陥内容
エフロレッセンス、
ひび割れ、
はがれ
パターンむら
新
(吹きむら)
設 はじき、
はがれ、
ふくれ、
ちぢみ
ひび割れ、
はがれ
原因(下地の状態)
対 策
防水処理及び補修を行い、仕上塗材の仕上げに
割れ・破損・浮き
支障がないように下地調整する。
仕上塗材の種類、厚さ、仕上りの程度などにより許
不陸*1・目違い*2
容できる範囲に処理する。
下地は清浄な面とする
(塵埃、油脂、
さび及びモル
不純物の付着
タル、
コンクリ−トのこぼれなどの付着を除去する)。
下地の強度
十分な付着性が得られる下地にする。
52
5章 クレームになる欠陥とその対策
表5.4 下地の状態により発生する欠陥と対策(つづき)
原因(下地の状態)
欠陥内容
ふくれ、
はがれ、
色むら、
下地の乾燥
変色、
変質、
乾燥不良、
(水分・pH)
エフロレッセンス
新
はがれ、
ふくれ、
設 さび汁
対 策
仕上塗材の種類に応じ、
適用できる条件
(適正水分、
アルカリ度)
に管理する。 コンクリート⇒表面含水率:10%以下、
pH:10以下
木ねじ、
くぎ類はさび止め塗料などで防錆処理を行
取り付け金物の防錆
なう。
つやの不良、
色むら、
ガン肌、
ピンホール、
下地の吸込み
下地調整塗材及び下塗材などで吸込みを押さえる。
ドライアウト
エフロレッセンス、
ひび割れ、
はがれ
防水処理及び補修を行い、仕上塗材の仕上げに
割れ・破損・浮き
支障がないように下地調整を行なう。
パターンむら
補修個所 仕上塗材の種類、厚さ、仕上りの程度などにより許
(吹きむら)
パターンむら
容できる範囲に処理する。
はじき、
はがれ、
ふくれ、
ちぢみ
下地は清浄な面とする。
(塵埃、油脂、
さびの付着
不純物の付着
塗
はがれ、
替 ひび割れ、
既存塗膜の付着強度
・
リ
フテ
ィ
ン
グ
改
修 ふくれ、
はがれ、
変色、
下地の乾燥(水分)
変質、
発泡、
乾燥不良
ふくれ、
はがれ、
さび汁
などを除去する)
十分な付着性を得るために、
既存塗膜の種類及
び付着状態に応じた仕様を選定する。
仕上塗材の種類に応じた下地調整を行なう。
⇒表面含水率:10%以下
木ねじ、
くぎ類は、
さび止め塗料などで防錆処理を
取り付け金物の防錆
行なう。
つやの不良、
色むら、
ガン肌、
ピンホール、
下地の吸込み
下塗材及び下地調整塗材で吸込みを押さえる。
ドライアウト
*1 不陸:素地が平坦でないこと *2 目違い:段差があること
(建築の俗語)
5.4 塗装作業中に発生する欠陥と対策
表 5.5に塗装作業中に発生する欠陥について示す。塗装作業中における欠陥は、後述の塗装
作業後におけるクレームと共通する内容もある。また、外的要因の影響を受けやすいので注
意が必要である。
表5.5 塗装作業中に発生する欠陥と対策
欠陥内容
はけ目
対策
原因
①塗料の流動性不足。
①希釈を適切にする。
②塗付が不均一。
②十分均一になるように塗り広げる。
③乾燥が速い場合。
③乾燥に応じた希釈で施工する。
53
5章 クレームになる欠陥とその対策
表5.5 塗装作業中に発生する欠陥と対策(つづき)
欠陥内容
対策
原因
①厚塗りしない。 ①過度な厚塗り。
流れ(だれ) ②過希釈。
②希釈を適切にする。
・たれ
③下地に全く吸込みがない場合。 ③希釈を控え、
はけの運行回数を多くする。
・たるみ
④水系塗材の高湿条件下での塗装。
④水系塗材の場合、湿度85%以上での
①下地に水又は油の付着。
①十分な下地調整を行なう。 ②スプレーエア中の水又は油の混入。
②エアーストレナーの交換又は取り付け
塗装を避ける。
はじき
③はけに油又は水の付着。 ④下塗りが平滑で硬い場合(喰いつき
を行なう。 ③はけを洗浄する。 ④サンディング*1を行なう又は塗料を変える。
がない)。
①塗材の粘度が高い、
うすめ液の蒸発
①流動性がなくなる条件を避ける。 が速い、
あるいは湿度が高く風が強い、 ②吹付け圧を適正圧に調整する。
ガンはだ
下塗材の吸込みが著しく、粘性を失う
場合。 ②吹付け圧が低い場合。
①吹付け塗装時、
溶剤の蒸発が速い場
糸ひき
合。
(スプレーガン口において溶剤が蒸
①蒸発の遅い溶剤を用い、低圧で口径
の大きいガンで吹付けする。
発し、
塗材が糸状になる)
①湿度が高い時、塗膜からの急激な溶
①湿度が高いときの塗装は避ける。 白化
剤の蒸発。
(塗膜が冷えて水蒸気が
②低揮発性溶剤(リターダー)
を用いる。
・ブラッシング
凝縮し、
白化現象を起す) ・かぶり
②高揮発性溶剤を多量に含む速乾形
ピンホール
①下地に存在する気泡孔(穴)。
①十分な下地調整を行なう。
①複層仕上塗材の高粘度での塗装。 ①塗材の粘度を適正にする。 発泡(あわ)
②溶剤形上塗材の乾燥が速い場合。
②適切な溶剤形上塗材用溶剤を使用
ローラー塗装の
③複層仕上塗材など上塗材のローラー
上塗材の塗装。
場合
運行回数が多い場合。
する。 ③ローラー運行回数を必要以上に多くし
ない。
発泡(あわ)
①下地の細かい凹凸。 ①十分な下地調整を行なう。 スプレー塗装の
②高粘度での吹付け。 ②上塗材の粘度を適正にする。 場合 ③高温時又は塗装直後の高温化。
③適切な溶剤形上塗材用うすめ液を使
①下地の著しい吸込み。 ①シーラー処理し、
下地の吸い込みを止
【補足-2】参照
ドライアウト
(セメント系塗材)
用する。
②夏期の直射日光下、強風下、冬期の
める。下地に散水する。 異常低湿度下での塗装。 ②乾燥が著しく速い条件下での施工は
③塗材の混合不足。
控える。 ③混合時に塗材を水と十分なじませる。
54
5章 クレームになる欠陥とその対策
表5.5 塗装作業中に発生する欠陥と対策(つづき)
欠陥内容
原因
対策
①下地の養生不足および吸込みむら。
①下地を十分養生させる。下地の吸込
②塗材の撹拌不足。 ③塗材ロット間の色の差。 色むら
④複層仕上塗材などの溶剤形上塗材
みが均一になるようシーラー又は下塗
材の所定量を均一に塗る。 ②塗装時に十分撹拌する。 ③見切り*2でロットを変更する。 のうすめ液が不適当。
④溶剤形上塗材のうすめ液は所定品を
使用し、
所定の希釈を行なう。
①既存塗膜が溶剤系1液形塗料の上に
溶剤系2液形反応硬化形塗料の2回
重ね塗り。
リフティング
①適切な上塗材を用いる。 ②上塗材を弱溶剤系や水系への変更
を協議する。 ②下塗層の耐溶剤不足による密着不足。
③可とう形改修塗材の薄塗りに、
溶剤形
2液形反応硬化形塗料の2回重ね塗り。
③可とう形改修塗材を厚塗りし、溶剤の
浸透を防止する。適切な上塗材を用
いる。
*1 サンディング:サンドペーパーなどで研磨すること *2 見切り
:塗分け線のこと。
【補足-2】
細孔に浸透した溶剤が蒸発
急激な温度上昇
溶剤蒸気(ふくれ)
太陽光の熱エネルギー
塗膜
溶剤
蒸気
未乾燥の塗膜が
溶剤の蒸発(体
積膨張)によりシ
ャボン玉のように
膨れる
ふくれの発生
躯体
細孔(塗装により溶剤が浸透)
図5.3 熱ふくれ(溶剤ふくれの発生現象)
55
5章 クレームになる欠陥とその対策
5.5 塗装作業後に発生する欠陥と対策
表 5.6に示すとおり、各要因の複合的な絡みによりクレームが発生するため、その事例数は
多い。
表5.6 塗装作業後に発生する欠陥と対策
欠陥内容
にじみ
・ブリード
色分れ
原因
対策
①下地に水系塗材を塗装(水可溶分の
①溶剤系のシーラー等適切な下塗りを
にじみ)。 用いる。 ②異色の仕上塗材の塗装。 ②にじみ易い色どうしの重ね塗りは避ける。
③塗装間隔が不十分。 ③適切な塗装間隔を取る。 ④上塗材の溶剤溶解力が大きい場合。
④上塗材(又はうすめ液)
を変更する。
①混合不十分。 ①十分に混合する。 ②うすめ液による過希釈。 ②だれを生じると色別れが生じるので注
③顔料粒子の分散性が異なる2色の混合。
意する。 ③はけ目が多いと色別れが目立ちやす
いので注意する。
つやの不良
つやむら
①下地の著しい吸込み。 ①下塗材で吸込みを止める。 ②下塗材等の面の粗さ。 ②上塗材を重ね塗りする。 ③うすめ液が不適当で過希釈。 ③適切なうすめ液を使用する。 ④薄塗りの場合。 ④適度の厚さに塗るか重ね塗りする。
⑤白化の発生。
⑤表5.5「白化」の項参照。
①下地の吸込みむら。 ①下地の吸込みが均一になるようシーラ
②塗膜厚さの不均一等。 ー又は下塗材の所定量を均一に塗る。
②所定量を均一に塗る。 ③塗り回数不足。
③所定の塗り回数をまもる。
透け
・透けむら
①薄塗材や上塗材の塗付量不足。 ①所定の塗り回数で所定量を均一に塗る。
②著しい膜厚の不均一。
②同上。
①蒸発速度の速い溶剤など不適当なう
①所定のうすめ液を使用する。 すめ液の使用。 ②塗膜厚さの不均一。 メタリックむら
③適正吹付け圧とその維持が不完全。
②所定の塗回数で所定量を均一に塗
装する。 ③コンプレッサーの空気圧、空気量及び
ガン機の調整を行い、
同じ条件で塗装
④ローラー塗装。
する。 ④吹付けにより塗装する。
①下地の養生不足及び吸込みむら。
②上塗材の品質(分散不良など)。 ③複層塗材などの溶剤形上塗材のうす
色むら
め液が不適当。 ④複層塗材などの上塗材のタレ部、はけ
部、
ローラー耳部などにおける膜厚不
①下地を十分養生させる。また、下地の
吸込みが均一になるようシーラー又は
下塗材の所定量を均一に塗る。 ②上塗材を取り替える。 ③溶剤形上塗材のうすめ液は所定品を
使用し、
所定の希釈を行なう。 ④複層仕上塗材などの上塗材は、
むら
均一。
切りにより均一に塗る。
56
5章 クレームになる欠陥とその対策
表5.6 塗装作業後に発生する欠陥と対策(つづき)
欠陥内容
対策
原因
①低温多湿条件(水系塗材)。
乾燥不良
②通風が悪く、
溶剤の蒸発が遅い場合。
①極端な低温時及び高湿度時の塗装
は避ける。 ②通風、換気をよくする。 ③下地に水や油の付着。
③清浄な下地に調整する。
反応硬化形材料
の硬化不良
①基材と硬化剤の混合ミス。 ①硬化剤混合比の厳守と十分な混合。
②冬期*1における著しい低気温。 ②著しい低気温下での施工は避けるか、
③夏季形材料の冬期における施工。
採暖処置をとる。 ③夏季形、冬季*2 形のある場合は使い
分けをする。
①足場の裏、影部などの施工のしにくい
足場むら
箇所における吹き継ぎ又は塗り継ぎ部
①吹付けは、
吹付け角度・距離を一定に
保つようにし、
均一に塗り付ける。
のむら又は模様むら。
①薄塗材の骨材の大きさ、
量の間違い。
パターン違い
②施工道具の間違い(金ごてと木ごて、
ガン口径の違いなど)。 ①仕様に基づいて、事前に試し塗りし、
仕上りを確認する。 ②同上。 ③塗付量、
希釈のばらつき。
③同上。
①塗膜表面へのアルカリ分の溶出(セメ
①低温・高湿時には施工を行なわない。
ント系材料が十分に硬化乾燥する前
エフロレッセンス
に降雨に当たったり、結露環境になっ
たりした場合に塗膜表面に炭酸カルシ
ウムが生成する)。
白化
(耐水白化)
あわ
(発泡) 【補足-2】参照
発泡(ふくれ)
①乾燥初期の結露又は降雨。 ②水洗に洗浄剤を使用した場合の水洗
不足。
・造膜不良
・低温割れ
施工を中止する。 ②水洗により洗浄剤を洗い流す。
①下地に存在する気泡孔(穴)。 ①十分な下地調整を行なう。 ②高粘度での吹付け塗装。 ②塗材の粘度を適正にする。 ③急激な気温上昇(炎天下)
による浸透
③適切な溶剤形上塗材用うすめ液を使
した溶剤の蒸発。 用する。 ④下地の含有水分。
④下地の乾燥を十分に行なう。
①下地の巣穴からのエアーの押し出し
(断
①ポリマーセメント系下地調整材により
熱性下地に多い)。 ②こて塗り仕上げの場合の押さえ
(刷り
込み)不足。
ひび割れ
①降雨・結露・降雪が予想される場合は
巣穴を埋める。 ②こて塗りの場合、
パターン付け前に良く
しごく。
①寒冷期における最低造膜温度以下で
の施工。 ②冬期の低温と風。
57
①5℃以下の塗装は避ける。 ②採暖や養生シートなど行い施工する。
5章 クレームになる欠陥とその対策
表5.6 塗装作業後に発生する欠陥と対策(つづき)
欠陥内容
乾燥ひび割れ
対策
原因
①過度な厚付け。 ①一度に厚く付けない。 ②冬期の低温と風。 ②塗装可能な状態まで施工しない。 ③過希釈。 ③適正希釈率を守る。 ④高湿度条件での長期暴露
(水系塗材)
。
④通風、換気をよくする。
*1 冬期:冬の時期・期間 *2 冬季:冬の季節・シーズン
5.6 経時で発生する欠陥と対策
経時で発生する欠陥と対策について表5.7に示す。塗膜欠陥は、下地の調整不足、適用仕様
の間違い及び外的要因(使用環境条件)により発生するものが多い。この中で、変色及び退
色、つやびけ並びに白亜化(チョーキング)は、特別な異常現象を除いて通常的な劣化現象
であり、耐久設計指針に基づく仕様選択の問題として、欠陥現象とは区別して考える必要が
ある。
表5.7 経時で発生する欠陥と対策
欠陥内容
剥離・はがれ
・チッピング
・フレーキング
・スケーリング
・ピーリング
原因
対策
①下地の養生不足(表面含水率、
pH)。
①表面含水率;10%以下、pH;10以下ま
②既存の塗膜が十分に密着していない
で養生期間を設ける。 上に塗装。 ②既存塗膜のはがれやすいものを剥離
③白亜化の上に塗装。 してから塗装する。 ④被塗面の調整が不備で、油や汚れの
③白亜化層を除去して施工する。 付着。 ④十分な下地調整を行なう。 ⑤下塗材/主材、
主材/上塗材の不適
⑤適切な塗装仕様で行なう。
合(層間付着性)。
変色および退色*1
①下地の養生不足(水分、
pH)。 ①下地の養生を十分に行なう。 ②塗材に耐薬品性の劣る樹脂や顔料
②使用塗材、
塗装仕様の選択に配慮す
の使用。 ③硫化水素等による黒変。 ④薄め色、淡彩色(淡彩色は変退色が
・チョーキング
択する。 ④耐久性の良い塗材を選択する。
目立つ)。
白亜化*1
る。 ③用途に応じた適性に優れた塗材を選
①粉化(熱、
紫外線、風雨等で塗膜が劣
化し、
塗膜表面から粉化する)。 ①耐白亜化性の良い塗材を選択する。
②同上。
②顔料/樹脂の組成比の影響。
①蓄熱性の高い素材に、
防水形複層仕
①建物の構造、
材質及び空調に配慮し、
上塗材の上塗材が熱可塑性でかつ
素地調整、
前処理を十分行い、
塗色は
濃彩色で塗装。 ・蜂の巣状ふくれ ②既存の塗膜が熱可塑性で、
厚膜及び
【補足-3】参照
劣化が著しい場合に、①項の上塗材
②下塗材に2液エポキシ系シーラーを使
熱ふくれ
濃彩を避ける。 用し、
上塗材は2液ウレタン上塗材を使
用するなど塗装仕様の選択に配慮する。
を塗装。
58
5章 クレームになる欠陥とその対策
表5.7 経時で発生する欠陥と対策(つづき)
欠陥内容
対策
原因
①使用塗材、
塗装仕様の選択に配慮す
①塗膜の付着力低下。 浮き
②塗膜裏面への漏水など、
水・水分の影
ふくれ
①凍結、
融解、
乾湿繰返しなど過酷な環
ひび割れ
境条件。 ・チェッキング
②防水形仕上塗材のように伸長性に優
③主材と上塗材の伸び挙動のバランス。
③塗材、
塗装仕様の選択に配慮する。
①シーリング材又は可塑剤を含む塗膜
①可塑剤がブリードするシリコーン系シ
で被覆された鋼板などからのブリード。
汚れ
①塗材、
塗装仕様の選択に配慮する。
れた塗材で施工する。 ②下地の割れ、
振動などの外的要因。
・クラッキング
る。 ②漏水対策、
下地調整を十分に行なう。
響。
ーリング材などの上には塗装しない。ノ
②模様、
仕上塗材の種類。 ンブリードタイプのシーリング材を使用
③建物の構造(雨筋汚れ)。
する又はバリアプライマー*2を使用する。
②汚れにくい模様、塗材の選択に配慮
する。
③②項の選択及び建物の構造を変更
する
(水切りの設置など)。
カビ・藻
①使用環境条件(高湿度、
温度など)。
①環境条件に注意
(湿度条件の緩和など)
。
②仕上塗材の組成面の影響。
②防カビ剤、防藻剤入りの塗材、塗装仕
様の選択に配慮する。 *1 変色及び退色、
白亜化:耐久設計指針に基づく仕様選択の問題とする。
*2 バリアプライマー:シーリング材の可塑剤ブリード押さえ用プライマー
【補足-3】
水分の移動
太陽光の熱エネルギー
水分
塗膜
躯
体
水蒸気(ふくれ)
躯
体
太陽光からの
ふくれの発生
熱エネルギー蓄積
急激な温度上昇
塗膜隙間への
水分の浸透→残存
塗膜の軟化と
急激な水の蒸発(体積膨張)
図5.4 熱ふくれ(蓄熱水蒸気ふくれ発生現象)
59
5章 クレームになる欠陥とその対策
5.7 外的要因により発生する欠陥と対策
外的要因に起因する塗膜欠陥は、施工管理を十分行なうことで、かなり防止することがで
きる。表 5.8 にその例を示す。
表5.8 外的要因による塗膜欠陥と対策(施工管理)
外的要因(区分)
発生する欠陥内容
溶剤系塗材
水系塗材
低温 ①凍結→固化
①粘度変化、
固化 材
料 温度・熱 高温 ②皮ばり、
だま 対 策
①項は表5.1参照
①粘度変化、
固化
①、
②、
③項は表5.1参照
③腐敗(菌の進入)
①乾燥不良、硬化不
低温
温度・熱
良 ①乾燥不良、硬化不
良
①はけ目 高温 ②ドライアウト ③発泡(あわ) ①、
②、
③、
④項は表5.4参照
④がん肌
日陰面にする、塗装時間帯を変
更する。
③ピンホール
塗
装 湿度
中
↓
塗
装
後 風
低湿
高湿
①はけ目、
ドライアウト
②硬化不良
(湿気硬化塗材)
①乾燥不良、
流れ(だ
②ブラッシング
①ひび割れ、
ドライア ③がん肌
強風
結露
凍結
乾燥
初期
①、
②項は表5.4、
5.5参照 ①、
②、
③項は表5.5、
5.6参照 ない。
②項は表5.6参照 ふくれ、
色むら、 ①、
①流れ、
白化、
ふくれ、 ①白化、
気象状況を考慮し、
施工する。
光沢むら
色むら、
光沢むら 乾燥 ①ひび割れ、
はがれ
初期
光(紫外線)
②項は塗装間隔を長くする。
風速5m/秒以上では吹付けし
ウト ②エフロレッセンス
乾燥 ①白化、エフロレッセ ①白化
初期
ンス
水(降雨)
①項は表5.4参照
湿度80%以上での塗装を避ける。
れ)
②模様のくずれ・むら
降雨
①、
②項は表5.4参照
②ひび割れ
①項は表5.6参照
塗装を早めに終了させる。
①項は表5.6参照 気象状況を考慮し施工する。
①白亜化、
変色・退色
①白亜化、
変色・退色
①通常的な劣化現象であり、欠
ひび割れ、
はがれ
ひび割れ、
はがれ
陥現象とは区別して考える必要
施 熱
工
後 風(塵埃)
経 熱
外壁
時
凍結・
①ひび割れ、
はがれ
降雪
がある。耐久設計指針に基づく
仕様選択の問題である。
①熱ふくれ
①ひび割れ、
はがれ
①項は表5.7参照
①凍害を考慮した仕様を適用す
る。 60
5章 クレームになる欠陥とその対策
表5.8 外的要因による塗膜欠陥と対策(つづき)
外的要因(区分)
漏水
発生する欠陥内容
溶剤系塗材
水系塗材
対 策
はがれ、
浮き ①素地、躯体裏面や側面、屋上
①ふくれ、
はがれ、
浮き ①ふくれ、
からの雨水の浸入を防ぐ。
はがれ
①ひび割れ(造膜時) ②ひび割れ、
振動 ②ひび割れ、
はがれ
①塗装時振動を解除する。 ②欠陥現象とは区別して考える
必要がある。
空調
建築物
施
工
後 構造
経
時 部位
条件
①カビ、
藻
①カビ、
藻 ①、
②項は表5.7参照
②発泡
①透湿性の良い薄塗材を使用
①ひび割れ、
はがれ
する。塗替えの場合も同様で、既
軒天
存塗膜が膨潤又はリフティングを
起しやすいので、厚塗材の使用
は避ける。
(軟化)
①乾燥不良、色むら、 ②もどり
密閉
①項は5.4、5.5、5.6参照 強制換気 つやむら、
流れ
(だれ)
②スプレー塗装は避ける。 ②われ
強制換気
外壁
①汚れ(シーリング材
①汚れ(シーリング材
部の汚れ、
雨すじ汚
部の汚れ、
雨すじ汚
れ)
②カビ、
藻
れ) ②カビ、
藻
61
①、
②項は表5.7参照
6章 関連法規
6章 関連法規
仕上塗材に関係する法律は、多岐にわたり、これらの法律知識をもつことで安全衛生、防
災、公害等の災害や事故を未然に防ぐことができる。表 6.1 に関係する法律・規制と係わりの
ある項目の一覧を示す。
表6.1
法律・規則
生産
使用
1
化審法
◎
◎
貯蔵
廃棄
販売
◎
2
労働安全衛生法・労働安全衛生規則
◎
◎
◎
3
有機溶剤中毒予防規則
◎
◎
4
特定化学物質等障害予防規則
◎
5
石綿障害予防規則
◎
◎
6
消防法
◎
◎
7
毒物及び劇物取締法
◎
8
廃棄物の処理及び清掃に関する法律
◎
9
建築基準法
10
水質汚濁防止法
◎
11
下水道法
◎
12
大気汚染防止法
◎
13
製造物責任法(PL法)
◎
14
化学物質管理法(PRTR法)
◎
15
品確法
◎
16
鉛中毒予防規則
17
酸素欠乏症等予防規則
18
作業環境測定法
◎
19
悪臭防止法
◎
20
グリーン購入法
輸送
環境
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
6.1 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
目的:難分解性の性状を有し、かつ、人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生
育に支障を及ぼすおそれがある化学物質による環境汚染を防止するため、新規の化学物質が
製造・輸入される前に、その物質の性状(分解性・蓄積性・人への毒性・生態毒性など)等
について審査する制度を設けるとともに、その有する性状等に応じ、化学物質の製造、輸入、
使用等について必要な規制を行うことを目的としている。
(1)第一種特定化学物質
難分解性(自然的作用による化学変化を生じにくい)及び高蓄積性(生物の体内に蓄積さ
れやすい)の性状を有し、かつ人又は高次捕食動物への長期毒性(継続的に摂取される場合
63
6章 関連法規
には、人の健康又は高次補食動物の生息又は生育に支障を及ぼすおそれ)を有する化学物質。
PCB、DDT 等が指定されている。
尚、現在指定されているものはすべて人への長期毒性の観点から指定されたものである。
【規制内容】
製造及び輸入の許可制(事実上禁止)
、特定の用途以外での使用の禁止、政令で指定した
製品の輸入禁止、必要な場合の事業者に対する回収命令等
(2)第二種特定化学物質
難分解性の性状を有し、人又は生活環境動植物への長期毒性を有し、相当広範な地域の環
境において相当程度残留し、又は近くその状況に至ることが確実であると見込まれることに
より、人の健康又は生活環境動植物の生息若しくは生育に係るリスクがあると認められる化
学物質トリクロロエチレン等が指定されている。
尚、現在指定されているものはすべて人の健康へのリスクの観点から指定されたものであ
る。
【規制内容】
製造・輸入予定数量及び実績の届出義務、必要に応じて製造・輸入予定数量の変更命令、
取扱いに係る技術上の指針の策定・勧告、表示の義務、取扱いに関する指導・助言等
(3)第一種監視化学物質
難分解性及び高蓄積性の性状を有する既存化学物質で、第一種特定化学物質に該当するか
どうか明らかでないもの。
※ 既存化学物質:昭和 48 年に化審法が公布された際に、現に業として製造又は輸入され
ていた化学物質。約 2 万種、5 万物質が「既存化学物質名簿」に収載されている。
【規制内容】
製造・輸入実績数量の届出の義務、合計 1t 以上の化学物質については物質名と製造・輸
入実績数量を国が公表、取扱いに関する指導・助言。当該化学物質により環境の汚染が生
じるおそれがあると見込まれる場合には、有害性調査の指示。
(4) 第二種監視化学物質 (旧化審法における「指定化学物質」
)
高蓄積性ではないが、難分解性で、人への長期毒性の疑いを有する化学物質クロロホルム
等が指定されている。
【規制内容】
製造・輸入実績数量の届出の義務、合計 100t 以上の化学物質については物質名と製造・
輸入実績数量を国が公表、取扱いに関する指導・助言。当該化学物質により環境が汚染さ
れ、人の健康へのリスクがあると見込まれる場合には、有害性調査の指示。
(5)第三種監視化学物質
高蓄積性ではないが、難分解性であり、生態毒性(動植物の生息又は生育に支障を及ぼす
おそれ)を有する化学物質。
【規制内容】
製造・輸入実績数量の届出の義務、合計 100t 以上の化学物質については物質名と製造・
輸入実績数量を国が公表、取扱いに関する指導・助言。当該化学物質により環境が汚染さ
れ、生活環境動植物の生息又は生育に係るリスクがあると見込まれる場合には、有害性調
査の指示。
64
6章 関連法規
6.2 労働安全衛生法(労安法、労衛法)
目的:労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明
確化、自主的活動の措置等総合的な対策を推進することにより、職場の労働者の安全と健康
の確保と快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。表6.2に労働安全衛生法の概要
を示す。
表6.2
安全衛生管理体制 ・総括安全衛生管理者
:安全/衛生管理者の指揮及び活動の統括管理
(*安全衛生委員会 ・安全管理者(有資格者):安全に係わる技術的事項管理
の設 置 *管 理 者 ・衛生管理者(有資格者):衛生に係わる技術的事項管理
の選任報告)
・産業医(医師)
:従業員の健康管理等
・作業主任者(有資格者):当該作業に従事する作業者の指揮等
・危険防止措置:機械、
器具、
その他の設備(機械)等
爆発/発火/引火性の物質等
電気、
熱、
その他のエネルギー
ガス、
蒸気、
粉塵、
酸欠空気、
病原体等
事 業 者の講ずべき ・健康障害防止措置:原材料、
放射線、
高低温、
超音波、
騒音、
振動、
異常気圧等
措置等
計器監視、
精密工作等の作業
排気、
廃液または残滓物
・作業場等:作業者の安全、
健康、
風紀、
生命の保持のための必要な措置
・労働災害防止のための必要な措置
注意点
・黄燐マッチ
・ベンジジン及びその塩
・4-アミノジフェニル及びその塩
製造等
禁止物質
・アモサイト
(石綿の一種)
・クロシドライト
(〃)
・4-ニトロジフェニル及びその塩
・ビス
(クロロメチル)エーテル
有 害 物 質に関する
・β−ナフチルアミン及びその塩
規制
・ベンゼン含有ゴム
(特化則第1類物質と同一)
・ジクロロベンジジン及びその塩
・β−ナフチルアミン及びその塩
製造
・塩素化ビフェニル
o−トリジン及びその塩
許可物質 ・
・ジアニシジン及びその塩
・ベリリウム及びその化合物
・ベンゾトリクロリド
65
製造許可物質
↓
労働大臣許可
6章 関連法規
表6.2(つづき)
注意点
・クロロホルム ・石綿 ・ベンゼン
・キシレン ・アセトン ・
IPA
・ブタノール類 ・酢酸エチル
有 害 物 質に関する 名称等
・
n-ヘキサン ・ホルムアルデヒド
規制
表示物質
・
トルエン ・セロソルブ類 ・メタノール ・スチレン ・MEK
容器等への表示義務
・名称 ・成分
・人体への作用
・貯蔵または取扱い上の注意
・アクリルアミド 等
・化学物質の有害性の調査(元素、
天然産出化学物質等)
:
等
①新規化学物質の製造、
輸入時→ 調査結果届出
②がん原生物質等の製造、
輸入または使用→ 調査結果報告の指示
・文書(MSDS)
の交付等:
①危険有害性化学物質の譲渡に際し情報提供(相手事業者に交付)
②MSDS対象化学物質631物質施行令で指定
③当該物質1%を越えて含有する製剤等は通知義務
・周知方法
①各作業場の見易い場所への掲示、
備付け ②書面の労働者への交付
③磁気ディスク等への記録、
且つ、
その内容を確認出来る機器の設置
※労働安全衛生法の一部が改正され、化学物質管理に関するラベル表示及び安全データシー
トが国連GHS「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム」に準拠したものになり、
2006 年 12 月に施行された。
以下に表示の例を示す。
絵表示の例
GHSによる急性毒性の分類・表示
危険有害性 大
危険有害性 小
区分1、2
区分3
区分4
区分5
危険
飲み込むと
生命に危険
危険
飲み込むと中毒
危険
飲み込むと
有害
危険
飲み込むと
有害のおそれ
● 区分1と区分2については、危険有害性の程度は異なるがシンボルマーク等は同じものとなる。
● 区分5に含まれる化学品にはシンボルマークは用いられない。
● 5つの区分への分類は経口等による急性毒性に基づいて行われる。例えば、経口暴露の場合、投与され
た生物の半数が死亡すると推定される量であるLD50の値によって分類される。(例:LD50≦5M/O(体重)は
区分1、5<LD50≦50M/Oは区分2、50<LD50≦300M/Oは区分3、300<LD50≦2000M/Oは区分4、
2000<LD50≦5000M/Oは区分5)
66
6章 関連法規
6.3 有機溶剤中毒予防規則(有機則)
有機溶剤とは、有機溶剤又は有機溶剤含有物(有機溶剤と有機溶剤以外の物で、有機溶剤
を当該混合物の重量の 5%を超えて含有するもの)をいう。第一種有機溶剤等、第二種有機
溶剤等、第三種有機溶剤等に区分される。表 6.3 に有機溶剤中毒予防規則の内容を示す。
表6.3
第一種有機溶剤等
注意点
・ガソリン
*有機溶剤
・四塩化炭素
・コールタールナフサ
・密閉/局所排気/全体排
・1,2-ジクロルエタン
・石油エーテル
有機溶剤 ・1,2-ジクロルエチレン
中毒予防 ・1,1,2,2-テトラクロルエタン
規則
第三種有機溶剤等
・クロロホルム
・
トリクロルエチレン
気装置
・石油ナフサ
・有機溶剤作業主任者
・石油ベンジン
・作業環境測定
・テレピン油
ミネラルスピリット
(有機則) ・二流化炭素(5wt%>含有) ・
第二種有機溶剤等
・アセトン ・キシレン ・クレゾール ・DMF ・THF
(第一/二種有機溶剤等)
・貯蔵、
空容器の処理
・計画の届出
(設備の設置、
移転、
変更)
・塩化メチレン ・
IPA ・
トルエン ・ブタノール
・スチレン ・BC、
MC ・MEK ・
n−ヘキサン
・酢酸ブチル ・メタノール 等
【規則の内容】
第 1 種∼第 3 種共通事項
(1)有機溶剤作業主任者(指定教育機関の講習を終了した者)を選任し(有機則 19 条)
、作
業主任者の職務及び氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する。
(2) 有機溶剤の取扱上の注意や人体に及ぼす影響等を作業場の見やすい場所に掲示する。
(有機則 24 条)
(3) 有機溶剤の区分に応じて、第 1 種有機溶剤等=赤、第 2 種有機溶剤等=黄、第 3 種有機
溶剤等(青)で見やすい場所に色表示する。
(有機則 25 条)
(4) 有機溶剤を屋内に貯蔵するときは、一定の容器を用いるとともに、関係者以外の立入
防止装置及び有機溶剤の蒸気を屋外に排出する設備を設ける。(有機則 35 条)
(5)有機溶剤等を入れてあった空容器は、密閉するか屋外の一定の場所に集積する。
(有機
則 36 条)
第 1 種及び第 2 種の有機溶剤の場合
(1) 有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置を
設ける。(有機則 5 条)
(2)資格ある作業環境測定士又は作業環境測定機関により、作業場の気中濃度を6ヶ月以内
ごとに 1 回測定する。(有機則 28 条)
(3)有機溶剤業務に常時従事させる従業員に対し、雇用の際や有機溶剤業務への配置換替
えの際、及びその後 6ヶ月以内ごとに 1 回、定期に医師による有機溶剤健康診断を行う。
(有機則 29 条 2 項)
指定の有機溶剤については、尿中の代謝物、貧血、肝機能、眼底等の特別検診を行う。
(有機則 29 条 3 項)
67
6章 関連法規
また、有機溶剤健康診断を行った時は、有機溶剤等健康診断を作成し、5 年間保存する
とともに、有機溶剤健康診断個人票を作成し、5 年間保存するとともに、有機溶剤等健
康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出する。
(有機則 30 条、30 条の 2)
(4) 第 1 種及び第 2 種有機溶剤については必ず「名称」
「成分」
「含有量」
「注意事項」等の
表示がされているので、それらに留意する。
(安衛法 57 条)
6.4 特定化学物質等障害予防規則(特化則)
目的:特定化学物質等障害予防規則は労働者の癌、皮膚炎、神経障害等を予防することを目
的としている。
特定化学物質は、特に有害度が大きく作用者に健康障害を起こす物質の毒性に応じて区分
し、定めている。表 6.4 に区分を示す。
表6.4
(7種、
製造許認可品)
*特定化学物質
(1)ジクロルベンジジン及びその塩 (2)アルファ-ナフチルアミン及びその塩
第1類
物質
・発 散 源の 密 閉
(3)塩素化ビフェニル(別名PCB) (4)オルト-トリジン及びその塩 (5)ジアニ
化/局所排気
シジン及びその塩 (6)ベリリウム及びその化合物 (7)ベンゾトリクロリド
装置
(8)1∼6までに掲げる物をその重量の1%を超えて含有し、
又は7に掲げるも ・用後処理
のをその重量の0.5%を超えて含有する製剤その他の物(合金にあっては、 除塵
ベリリウムをその重量の3%を超えて含有するものに限る)
(36種、
慢性健康障害発生防止品)
排ガス
廃液
(1)アクリルアミド (2)アクリロニトリル (3)アルキル水銀化合物(アルキル基 残滓物
がメチル基又はエチル基である物に限る) (4)エチレンイミン (5)エチレン ・漏洩防止
オキシド (6)塩化ビニル (7)塩素 (8)オーラミン (9)オルト-フタロジニトリ ・管理
ル (10)カドミウム及びその化合物 (11)クロム酸及びその塩 (12)クロロ 点検
メチルメチルエーテル (13)五酸化バナジウム (14)コールタール (15)三 測定
酸化砒素 (16)シアン化カリウム (17)シアン化水素 (18)シアン化ナトリウ 記録
第2類
物質
ム (19) 3・3’-ジクロロ-4・4’-ジアミノジフェニルメタン (20)臭化メチル (21)重クロム酸及びその塩 (22)水銀及びその無機化合物(硫化水銀を
除く) (23)トリレンジイソシアネート (24)ニッケルカルボニル (25)ニトログリ
コール (26)パラ-ジメチルアミノアゾベンゼン (27)パラ-ニトロクロルベンゼン
(28)弗化水素 (29)ベータ-プロピオラクトン (30)ベンゼン (31)ペンタクロ
ルフェノール(別名PCP)及びそのナトリウム塩 (32)マゼンタ (33)マンガン
及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除く) (34)沃化メチル (35)硫化
水素 (36)硫酸ジメチル (37)(1)から(36)までに掲げる物を含有する製剤
その他の物で、
厚生労働省令で定めるもの
(9種、
急性中毒防止品)
第3類
物質
(1)アンモニア (2)一酸化炭素 (3)塩化水素 (4)硝酸 (5)二酸化硫黄
(6)フェノール (7)ホスゲン (8)ホルムアルデヒド (9)硫酸 (10)(1)から
(9)までに掲げる物を含有する製剤その他の物で、
厚生労働省令で定める
もの
68
6章 関連法規
【四アルキル鉛等業務】−労働安全衛生法施行令別表第 5 −
(1)四アルキル鉛(4 メチル鉛、4 エチル鉛、1 メチル・3 エチル鉛、2 メチル・2 エチル鉛及
び 3 メチル・1 エチル鉛並びにこれらを含有するアンチノック剤をいう。以下同じ。)を
製造する業務(四アルキル鉛が生成する工程以後の工程に係るものに限る。)
(2) 四アルキル鉛をガソリンに混入する業務
(四アルキル鉛をストレージタンクに注入する
業務を含む。)
(3) 前 2 号に掲げる業務に用いる機械又は装置の修理、改造、分解、解体、破壊又は移動を
行う業務(次号に掲げる業務に該当するものを除く。
)
(4) 四アルキル鉛及び加鉛ガソリン(四アルキル鉛を含有するガソリンをいう。
)
(以下「四
アルキル鉛等」という。)によりその内部が汚染されており、又は汚染されているおそれ
のあるタンクその他の設備の内部における業務
(5) 四アルキル鉛等を含有する残さい物(廃液を含む。以下同じ。)を取り扱う業務
(6) 四アルキル鉛が入っているドラムかんその他の容器を取り扱う業務
(7) 四アルキル鉛を用いて研究を行う業務
(8) 四アルキル鉛等により汚染されており、
又は汚染されているおそれのある物又は場所の
汚染を除去する業務(第 2 号又は第 4 号に掲げる業務に該当するものを除く。)
6.5 石綿障害予防規則(石綿則)
石綿については、2004 年 10 月 1 日にクリソタイル(白石綿)等の石綿を含有する石綿セメン
ト円筒等の製品の製造等が禁止されたことにより、
国内の石綿使用量の大部分が削除された。
これにより、青石綿・茶石綿・白石綿が原則として、製造禁止となった。しかし、石綿含有
建築材料を使用している建物を解体/改修する場合は、労働安全衛生法下の特化則の適用を
受けるので、注意が必要となる。なお、石綿含有建築材料のうち、吹付け石綿の解体/改修
作業については、特化則以外に大気汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第 6
章 参照)の適用を受ける。
更にアスベスト(石綿)障害予防規則が 2005 年 7 月 1 日より施行された。石綿の発癌性に
関する規制を行っていた、特化則から独立させ発展させた、石綿含有建材による今後の石綿
飛散の防止を目的とした規則である。この規則では、建築物所有者や管理者にも、石綿に対
する一定の責務があることを明確にしている。
【制定の趣旨】
石綿は、1970 年代から 1990 年代にかけて大量に輸入され、その多くは、これまで建材とし
て建築物に使用されたが、今後この時期に建築された建築物等の老朽化による解体等の作業
が増加するに伴い解体工事従事労働者の石綿による健康障害の発生が懸念されている。この
ため、今後の石綿ばく露防止対策等は、事業者が講ずべき措置の内容が特化則に定める他の
化学物質に係るものとは大きく異なることとなることから、新たに建築物等の解体等の作業
における石綿ばく露防止対策等の充実を図った単独の規則を制定し、石綿による健康障害の
予防対策の一層の推進を図ることになった。
【建築物所有者や管理者の一定の責務】
使用中の建築物で石綿飛散の可能性がある場合、建築物の所有者は貸与者に対し石綿処理
などの措置を講じなければならない。(石綿則第 10 条)
建築物の解体工事を行なう際、工事の発注者は工事請負人に対して、建築物の石綿使用状
69
6章 関連法規
況を通知するよう努めなければならない。
(石綿則第 8 条)
解体工事の注文者は、労働安全衛生法や作業員の健康障害防止に関する命令の遵守を妨げ
ない範囲で、解体事業者と工期や経費など契約条件を交わすことが必要である。
(規則第 9 条)
6.6 消防法
目的:火災の予防、警戒、鎮圧により、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとと
もに火災、地震等の災害に因る被害を軽減し、安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に
資することを目的とする。表 6.5 に消防法の危険物に係わる内容について示す。
表6.5
又は取扱う場合
法規制適用 ・消防法に規定する危険物を指定数量以上貯蔵、
条件
・消防法に規定する危険物を運搬する場合(量に関係ない)
取扱い所等の設置又は変更時に市町村等の許可が必要
許可及び届 ・貯蔵所、
出事項
・
「消防活動阻害物質」を一定数量以上貯蔵、取扱う場合には、予め所轄消防機関への
届出が必要
取扱いは危険物施設以外の場所で行うことはできない
貯 蔵 、取 扱 ・危険物の貯蔵、
いと施設
・貯蔵所、
取扱い所等の作業は危険物取扱者が自ら行うか、
立会いが必要
危険物取扱 甲種:すべての種類の危険物を取扱うことができる。
者
乙種:当該種類に係わる危険物を取扱うことができる。
丙種:ガソリン、
灯油、
軽油、
第三・第四石油類及び動植物油類。
・危険物すべての容器、
積載方法及び運搬方法は技術上の基準に従う
運搬
・移送時には該当する危険物取扱者を乗車させる
・指定数量の1/10以上は混載禁止
70
6章 関連法規
表6.5(つづき)
種別
1類
性 質
一種酸化性固体
指定数量
50o
二種酸化性固体
300o
三種酸化性固体
1000o
種別
性 質
特殊引火物
指定数量
50r
一石(非水溶性液体)
200r
一石(水溶性液体)
400r
消防法
硫化燐・赤燐・硫黄
100o
アルコール類
に よる
鉄粉
500o
二石(非水溶性液体)
1000r
一種可燃性固体
100o
二石(水溶性液体)
2000r
の分類
二種可燃性固体
500o
三石(非水溶性液体)
2000r
と指定
引火性固体
危険物
2類
3類
4類
1000o
400r
三石(水溶性液体)
4000r
K、
Na、
R-Al、
R-Li
10o
第四石油類
6000r
黄燐
20o
動植物油類
1000r
一種自然発火/禁水物
10o
一種自己反応性物質
10o
二種自然発火/禁水物
50o
二種自己反応性物質
100o
三種自然発火/禁水物
300o
酸化性液体
300o
5類
6類
*指定数量:危険度の判断基準相対的危険性を表す
*第4類 引火性液体の区分
一石;引火点21℃未満
二石;引火点21℃∼70℃未満
三石;引火点70℃∼200℃未満
四石;引火点200℃以上 種 類
数 量 *危険物の規則に関する政令
綿花類
木毛及びかんな屑
ぼろ及び紙屑・糸類・藁類
指定可燃物
可燃性固体類
石炭・木炭類
200o
400o
1000o
3000o
10000o
可燃性液体類
2k
木材加工品及び木屑
10k
合成樹脂類(発泡させたもの)
(その他のもの)
20k
3000o
圧縮アセチレンガス
消防活動阻
害物質
40o *一定数量以上集積されている場合に火
無水硫酸
200o
災が発生すると消火活動が著しく困難とな
液化石油ガス
300o
る。
生石灰(CaO80%以上含有)
500o *火災危険性を有する。
30o *消防長等に届出
HCN、
NaCN、
Hg、
Se、
As、
HF
モノフルオール酢酸
NH3、
HCl、
H2SO4、
Br2、
I2、
etc. 200o
71
6章 関連法規
6.7 毒物及び劇物取締法(毒劇法)
目的:毒物及び劇物に関し、保健衛生上の見地から必要な取締りを行うことを目的とする。
【毒物及び劇物の表示】
(1)容器及び被包に表示義務のある事項
①「医薬用外毒物」
(赤地に白色文字)
、
「医薬用外劇物」
(白地に赤色文字)の文字を表示
②毒物又は劇物の名称
③毒物又は劇物の成分及びその含量
④厚生労働省令で定める毒物又は劇物については、それぞれ厚生労働省令で定めるその解
毒剤の名称
⑤毒物又は劇物の取扱い及び使用上特に必要と認めて、厚生労働省令で定める事項
(2)貯蔵・陳列場所の表示
毒物劇物営業者及び特定毒物研究者に限らず、毒物劇物を業務上取扱う者は、毒物又は劇
物を貯蔵し、又は陳列する場所に「医薬用外」の文字及び毒物については「毒物」、劇物につ
いては「劇物」の文字を表示しなければならない。
【購入の際の手続】
毒物劇物を購入する場合、次の事項を記載し捺印した書面(譲受証という)が必要である。
①毒物又は劇物の名称及び数量
②販売又は授与の年月日
③譲受人の氏名、職業及び住所(法人の場合、その名称及び主たる事務所の所在地)
ただし、次に記載する人は毒物劇物の購入は出来ない。
① 18 歳に満たない人
②精神病者又は麻薬、大麻、あへん若しくは覚醒剤の中毒患者
③使用目的が適法でない場合(例えば、化学兵器の製造に用いられる場合、悪用されるお
それのある場合、薬事法の範疇に入る場合、等)
【保管について】
(1)毒物劇物は盗難紛失を防ぐために必要な措置をとらなければならない。
①鍵のかかる場所に保管する
②薬品の管理簿を作成し使用量、残量が把握できる体制作りをする
(2)毒物劇物の保管場所は飛散、漏れ、浸みだし等を防ぐ構造設備が必要である。
【製造、輸入、販売について】
毒物劇物を販売、授与の目的で製造、輸入するには、登録を受けた者でなければなりませ
ん。また販売も登録を受けた者でないと行えません。
毒物劇物の小分け作業も販売、授与の目的であれば製造業の登録が必要である。
特定毒物の製造・輸入は、許可を受けた毒物劇物製造業者、輸入業者又は都道府県知事の
許可を受けた特定毒物研究者でないと行うことができない。
また、毒物劇物営業者は、毒物劇物を販売又は授与する際に、譲受人に対して MSDS を提
供しなければならない。
【事故の際の処置】
毒物劇物営業者及び特定毒物研究者は、取り扱いに係わる毒物劇物が飛散し、漏れ、流れ
出、又は地下にしみ込んだ場合、不特定又は多数の者に保健衛生上の危害が生ずるおそれの
ある時は、直ちに保健所、警察署又は消防署などに届けるとともに、保健衛生上の危害防止
72
6章 関連法規
のため応急措置を講じなければならない。また毒物劇物などの盗難又は紛失の場合は、直ち
に警察署に届けなければならない。表 6.6 に毒物及び劇物法の概要を示す。
表6.6
・毒物及び劇物の製造又は輸入業は、
厚生労働大臣にその品目
(品目毎)
その他を登録
登録
・販売業者は、
知事に一般販売業、
農業用品販売業、
特定品目販売業(品目毎)
その他を
登録
・毒劇物は登録を受けた者以外は、
製造、
輸入、
販売を行ってはならない
禁止
・シンナー等幻覚、
麻酔作用又は引火性、
爆発性のある毒物及び劇物を所持してはならな
許可
・特定毒物研究者は、
知事の許可を受けなければならない
い
取り扱う毒物及び劇物の品目、
事業所の所在地
業務上届出 ・氏名及び住所、
・省令で定める事項を業務開始30日以内に知事に届出する
者の届出
営業所又は店舗毎に専任し知事に届出する
毒物劇物取 ・毒物または劇物を直接扱う製造所、
扱責任者の
専任
(適 用)
①毒物及び劇物の製造業
②毒物及び劇物の輸入業
③毒物及び劇物の販売業
④特定毒物研究者及び使用者
⑤麻酔性等及び引火性等の毒物及び劇物
⑥業務上取扱者
(判定基準)
法規制適用 ・急性毒性;経口
・毒 物;LD50≦30m/o
条件
・劇 物;LD50>30m/o
(用 語)
・毒物劇物営業者; 毒劇物の製造業者、
輸入業者又は販売業者をいう
・業務上取扱者 ; 毒劇物を製造等で原材料として使用するなど業務上取り扱う者で、
届出業者と非届出業者に分類される
・届出業者 ; 電気メッキ業、
金属熱処理業でシアン化ナトリウム及び無機シアン化
合物を扱う者
大型自動車(最大積載量 5t以上)
に固定された容器を用いる又
は1000r以上の容器を積載して行う毒物及び劇物運送業で法令
に定めるものを扱う者
73
6章 関連法規
表6.6(つづき)
(非届出業者)
・盗難防止の措置 ・製造所外への漏洩防止措置 ・容器に「医薬用外」、
毒物は赤字に白で「毒物」、
劇物は白地に赤で「劇物」の文字で表示 ・貯蔵場所に「医
業務上取扱
者
薬用外」
「毒物」
「劇物」の表示
(届出業者)上記規制以外に、
・毒物劇物取扱責任者専任義務 ・保健衛生上の危害が
生じる恐れのある時は、
廃棄物の回収等の命令がある
・貯蔵に関する構造、
設備等の基準(鍵設置、
タンク・バルブ・配管・ポンプ等の点検、
名称・
毒物劇物の
流れ表示等)
交代要員、
標識基準、
保護具、
応急処置等)
製造及び販 ・運搬方法(5t以上の運搬、
売業者
・情報提供(MSDSの交付義務)
・毒劇物の譲渡書類には押印が必要(一定の事項を記録に残すこと)
6.8 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃律)
目的:この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再
生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆
衛生の向上を図ることを目的とする。
この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、
廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性
物質及びこれによって汚染された物を除く。
)をいう。表 6.7 及び 6.8 にその種類を示す。
表6.7 産業廃棄物の種類
具体例
種 類
1.燃え殻
焼却炉の残灰、
炉清掃排出物、
石炭がら、
その他の残渣
工場排水など処理後に残る泥状のもの、
各種製造業の製造工程で出る泥状のもの、活
2.汚泥
性汚泥法による余剰汚泥、
パルプ廃液汚泥、
動植物性原料使用工程の廃水処理汚泥、
生コン残残渣
油分5%以上含むものは廃油との混合物となる。
3.廃油
鉱物性、
動物性、
潤滑油、
絶縁油、
洗浄用油、
切削油、
溶剤、
タールピッチ
4.廃酸
廃硫酸、
廃塩酸、
核種の有機廃酸類、
全ての酸性廃液
5.廃アルカリ
廃ソーダ液、
金属セッケン液、
全てのアルカリ性廃液
6.廃プラスチッ
合成樹脂くず、
合成繊維くず、
合成ゴムくず、
廃タイヤなど固形状及び液状のすべての合
ク
成高分子化合物
紙、
板紙くず、
障子紙、
壁紙
7.紙くず
建設業に係る新築、
改築、
除去に伴って生じたものに限る。パルプ、
紙又は紙加工品の
製造業、
新聞業、
出版業、
製本業、
及び印刷加工業に係わる物並びにPCBが塗布され、
又は染み込んだ物に限る。
おがくず、
バーク類
8.木くず
建設業に係る新築、改築、除去に伴って生じたものに限る。木材又は木製品の製造業
パルプ製造業及び輸入木材の卸売業に係わるもの並びにPCBが染み込んだ物に限る。
74
6章 関連法規
表6.7 産業廃棄物の種類(つづき)
具体例
種 類
木綿くず、
羊毛くずなど天然繊維くず、
畳、
カーテンなど
9.繊維くず
建設業に係る新築、
改築、
除去に伴って生じたものに限る。繊維工業(衣服その他の繊
維製品製造業は除く)
に係わるもの及びPCBが染み込んだ物に限る。
あめかす、
のりかす、
醸造かす、
醗酵かす、
魚および獣のあらなど
10動植物性
食品製造業、
医薬品製造業又は香料製造業において原料として使用した動物又は植
物に係る固形の不要物
法に定める畜場及び食鳥処理場における処理時に排出される固形状の不要物
11.動物系固形
不要物
12.ゴムくず
13.金属くず
14.ガラスくず
15.鉱さい
16.がれき類
天然ゴムくずのみ
鉄鋼または非鉄金属の研磨くず、
切削くず
ガラスくず、
コンクリートくず(工作物の新築、
改築、
除去に伴って生じたものを除く)耐火レ
ンガくず、
陶磁器くずなど
高炉、
転炉、
電気炉などの残渣、
キューポラのノロ、
ボタ、
不良鉱石、
不良石炭粉灰かす、
鋳物砂など
工作物の新築、
改築、
除去に伴って生ずるコンクリート破片、
その他これに類する不要物
など
馬、
豚、
めん洋、
山羊、
にわとりなどの糞尿
17.動物の糞尿 牛、
馬、
豚、
めん洋、
山羊、
にわとりなどの死体(畜産業に係るものに限る)
18.動物の死体 牛、
大気汚染防止法第2条2項に規定するばい煙発生施設。ダイオキシン類対策特別措置
19.ばい塵
法第2条2項に規定する特定施設又は1∼18に掲げる産業廃棄物の焼却施設において
発生するばいじんであって集塵施設によって集められたもの
20.輸入廃棄物 輸入された廃棄物のうち1∼19を除く
21. 1∼20に掲げる産業廃棄物を処分するために処理したものであってこれらの産業廃棄物に該当しない
もの
(コンクリート固形物など)
表6.8 特別管理産業廃棄物の種類
産業廃棄物のうち、
爆発性、
毒性、
感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生じさせるお
それがある性状を有するものは特別産業廃棄物として区分されている。
内 容
種 別
引火性廃油
産業廃棄物である揮発油等、
灯油類、
軽油類
腐食性廃酸
水素イオン濃度指数(pH)が2.0以下の廃酸
腐食性廃アルカリ
水素イオン濃度指数(pH)が12.5以上のもの
感染性産業廃棄物
医療機関から排出される血液、
使用済み注射針などの感染性病原体を含むまたそ
のおそれがある産業廃棄物
75
6章 関連法規
表6.8 特別管理産業廃棄物の種類(つづき)
内 容
種 別
廃ポリ塩化ビフ 廃ポリ塩化ビフェニル及びポリ塩化ビフェニルを含む廃油
ェニル等
ポリ塩化ビフェ ポリ塩化ビフェニルが塗布、
又は染み込んだあるいは付着した又は封入された紙屑、
ニル汚染物
木屑、
繊維屑、
廃プラスチック、
金属屑、
陶磁器屑
廃ポリ塩化ビフェニル及びポリ塩化ビフェニル汚染物を処分するために処理したもの
で以下の基準に満たないもの
特
ポリ塩化ビフェニル0.5m/o以下
別 ポリ塩化ビフェ ①廃油、
有 ニル処理物
②廃酸、
廃アルカリ、
ポリ塩化ビフェニル0.03m/r以下
害
③廃プラスチック、
金属屑、
陶磁器屑ポリ塩化ビフェニル付着又は封入なし
産
業
④上記以外ポリ塩化ビフェニル0.03m/検液r以下
廃
建築物から除去した飛散性の吹き付け石綿・石綿含有保温材及び石綿建材除去
棄
物 廃石綿等
事業で使用した用具類など
(廃プラスチックシート、
防塵マスク、
作業衣等)大気汚染
防止法の特定粉塵発生施設で集塵装置で集められた飛散性の石綿など
下水道法に基づく指定汚泥
特定の施設から排出される環境省令で定める基準に適合しない鉱滓、
ばい塵、
燃え殻、
その他
廃油、汚泥、廃酸、廃アルカリ、汚泥又はその処理物。ダイオキシン類特別措置法で
定める廃棄物焼却炉から排出されるダイオキシン類含有量基準に適合しないばい塵、
燃え殻、
廃油、
汚泥又はその処理物
6.9 建築基準法
(1)ホルムアルデヒドの発散速度と指定建築材料との係わり
指定建築材料
ホルムアルデヒド
の発散速度
大臣認定を受けた
名称
対応する規格
規制対象外
F☆☆☆☆
建築材料
内装仕上げの制限
JIS,JASの
0.005m/gh以下
施行令第20条の5
非ホルムアルデヒド系 第4項の認定
制限なし
接着剤
0.005m/gh超
第3種ホルムアルデ JIS,JASのF☆☆☆
0.02m/gh超
第2種ホルムアルデ JIS,JASのF☆☆
第1種ホルムアルデ JIS,JASの旧E2,Fc2
ヒド発散建築材料
居室での
施行令第20条の5 使用面積制限
第2項の認定
0.12m/gh以下 ヒド発散建築材料
0.12m/gh超
施行令第20条の5
第3項の認定
0.02m/gh以下 ヒド発散建築材料
相当又は、
無等級
※ ホルムアルデヒドの発散速度の測定条件:温度28℃、
相対湿度50%
建物の部分に使用して5年経過したものについては、
制限なし。
76
居室での使用禁止
6章 関連法規
(2)
ホルムアルデヒドに関する施行令および告示の概要と仕上塗材の係り
区分
(施行令)
ホルムアルデヒドの
仕上塗材の種類
発散速度
(施行令)
ホルムアルデヒドの 居室への制限
(施行令)
放散等級表示
内装薄塗材E
内装厚塗材E
軽量塗材
第1種ホルムアル
複層塗材E
デヒドの発 散 等 0.12m/gh超
防水形複層塗材E
級材料
※ユリア樹脂、
メラミン樹脂、
―
使用禁止
―
―
使用面積制限
―
―
使用面積制限
フェノール樹脂、
レゾルシノー
ル樹脂またはホルムアルデヒド
系防腐剤を使用したものに限
る
(告示)
第2種ホルムアル
デヒドの発 散 等
級材料
第3種ホルムアル
デヒドの発 散 等
級材料
0.02m/gh超
0.12m/gh以下
0.005m/gh超
0.02m/gh以下
内装薄塗材E
F☆☆☆☆
内装厚塗材E
①JIS A 6909によ
軽量塗材
る表示
複層塗材E
②日本 建 築 仕 上
防水形複層塗材E
材工業会による自
※ユリア樹脂、
メラミン樹脂、 主表示
フェノール樹脂、
レゾルシノー ③指定性能評価
なし
0.005m/gh以下
ル樹脂またはホルムアルデヒド 機 関の評 価に基 制限なし
系防腐剤を使用していないも づく表示
の
上記5種類以外の内装用の
仕上塗材 注1)
第1種に該当する仕上塗材で F☆☆☆☆
規制対象外とみなす旨の国 国 土 交 通 大 臣の
土交通大臣の認定を受けた 認定による表示
もの
(施行令第20条の5)
注1)建築基準法では、
F☆☆☆☆マークが表示されていなくても制限なく居室に適用可。
77
6章 関連法規
(3)JIS A 6909-2003におけるホルムアルデヒド関連の規定
品 質
内装用の仕上塗材には、
ユリア樹脂、
メラミン樹脂、
フェノール樹脂、
レゾルシノール樹脂又はホル
ムアルデヒド系防腐剤のいずれも使用してはならない。
内装用の仕上塗材には、
ユリア樹脂、
メラミン樹脂、
フェノール樹脂、
レゾルシノール樹脂又はホル
ホルムアルデヒド放散等級による区分の
表 示 ムアルデヒド系防腐剤のいずれも使用していないものは、
記号(F☆☆☆☆)
を表示する。
(4)表示マークの例
日本建築仕上塗材工業会
7桁の算用数字
登録番号
F☆☆☆☆
放散等級区分表示
問い合わせ先
http//www.nsk-web.org/
(5)第2種・第3種ホルムアルデヒド発散建築材料の使用面積制限
第2種ホルムアルデヒド発散建築材料及び第3種ホルムアルデヒド発散建築材料については、
次の式
を満たすように、
居室の内装仕上げの使用面積を制限する。
N2S2+N3S3≦A
S2:第2種ホルムアルデヒド発散建築材料の使用面積
S3:第3種ホルムアルデヒド発散建築材料の使用面積
A:居室の床面積
居室の種類
住宅等の居室※1
住宅等の居室
以外の居室
換気
N2
N3
0.7回/h以上(※2)
1.2
0.2
その他(0.5回/h以上0.7回/h未満)
(※2)
2.8
0.5
0.7回/h以上(※2)
0.88
0.15
0.5回/h以上0.7回/h未満(※2)
1.4
0.25
その他(0.3回/h以上0.5回/h未満)
(※2)
3.0
0.50
※1 住宅等の居室とは、
住宅の居室、
下宿の宿泊室、
寄宿舎の寝室、
家具その他これに類する物品
の販売業を営む店舗の売場を言う。
※2 換気について、
表に示す換気回数の機械換気設備を設けた場合と同等以上の換気が確保さ
れているものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は、
国土交通大臣の認定を
受けたものを含む。
78
6章 関連法規
6.10 水質汚濁防止法
目的:①事業場等から公共水域に排出される水及び地下浸透水を規制すると共に、生活排水
対策の実施等により、公共用水域及び地下水の汚濁防止を図り、国民の健康保護並びに生活
環境の保全を図る。②事業場等から排出される汚水等で、人の健康に係わる被害が生じた時
に、事業者の損害賠償の責任について定めることにより被害者の保護を図る。表6.9に水質汚
濁防止法の概要と有害物質の排水基準を示す。
表6.9
・以下に該当する事業所等はこの法律の適用を受ける
a.
特定施設を設置する事業場(特定事業場)
から
①公共用水域に排出される水(排出水)
②地下に浸透する汚水等を含む水(特定地下浸透水)
b.
有害物質使用特定施設からの特定地下浸透水
c.
貯油施設等を設置する事業場から事故により排出される油
法規制適用
条件
・公共用水域:公共下水道等を除く河川、湖沼、港湾、沿岸海域等とこれに接続する公
共荒溝渠、
灌漑用水路等
・特定施設 :有害物質を含み、
又は生活環境に係わる被害を生じるおそれのある汚水
や廃液を排出する施設で政令に定めるもの
・貯油施設 :油を貯蔵する貯油施設と油を含む水を処理する油水分離施設
・油類 :原油、
重油、
潤滑油、
軽油、
灯油、
揮発油、
動植物油
・総量規制地域:東京湾、
伊勢湾、
瀬戸内海(瀬戸内法による)
事前届出
・特定施設の設置、
構造の変更時はあらかじめ都道府県知事に届出が必要
(届出受理後、
60日以内の設置等禁止)
・排出水を排出、又は特定地下浸透水を浸透させる者は汚染状態を測定し、結果を記
排出水等の
測定義務
録しなければならない。
(3年間保存、
頻度は都道府県の指導事項)
・総量規制基準適用事業所は、汚濁負荷量(o/日−COD)
を測定し、測定手法を知
事に届出する。
・対象;製造業、
電気供給業、
ガス供給業、
熱供給業で、
汚水等排出施設の設置工場(そ
特 定 工 場にお
れ以外は、
排出水量が1千k/日以上)
都道府県知事へ届出
ける公 害 防 止 ・公害防止管理者等の選任と届出;特定工場は次の者を選任し、
組織の整備に
なければならない(常時使用従業員が20人以下は不要)
関する法律
①公害防止統括者
排水量1万k/日以上)
(組織整備法) ②公害防止主任管理者(排ガス4万k/h、
③公害防止管理者
79
6章 関連法規
表6.9(つづき)
・有害物質を含む水の排水基準(排水基準を定める総理府令)
;
[m/r]
物質名
物質名
物質名
アルキル水銀
N・D
シアン
1
1,1,2-トリCエタン
0.06
PCB
0.003
有機燐
1
ベンゼン
0.1
総水銀
0.005
テトラCエチレン
0.1
ジクロロメタン
0.2
排
1,1-ジCエチレン
0.3
トリ Cエチレン
0.1
水 カドミニウム
基 砒素
チオベンカルブ
0.02
四塩化炭素
0.1
準
cis-1,2-ジCエチレン
0.02
1,3-ジCプロペン
0.1
国 鉛
の 六価クロム
1,1,1-トリCエタン
0.03
シマジ
ン
0.5
一
律
0.04
1,2-ジCエタ
ン
0.06
基 チラウム
;
[m/r]
準 ・生活環境項目の排水基準(排水基準を定める総理府令)
0.2
0.2
0.4
3
全クロム
2
n−Hex
30(動植物油脂)
窒素
120(日間平均60)
銅
3
マンガン
10
COD
160(日間平均120)
亜鉛
5
鉄
10
BOD
160(日間平均120)
フッ素
15
SS
200(日間平均150)
16(日間平均8)
大腸菌
3000(ケ/f;日間平均)
pH
5.8∼8.6
フェノール 5
n−Hex
5(鉱物類) 燐
6.11 下水道法
目的:この法律は、流域別下水道整備総合計画の策定に関する事項並びに公共下水道、流域
下水道及び都市下水路の設置、その他の管理の基準等を定めて、下水道の整備を図り、もっ
て都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、あわせて公共用水域の水質の保全に資す
ることを目的とする。(法第 1 条)
【下水道の係る行為の制限】
(1)特定事業場からの下水の排除の制限
特定施設(水質汚濁防止法第 2 条第 2 項に規定する特定地域とほぼ同じ)を設置する工場
又は事業場(これらを「特定事業場」という。)から下水を排除して公共下水道又は流域下水
道を利用するものは、政令(施行令第 9 条の 3)に定める場合を除き、その水質が政令(施行
令第 9 条の 4)の基準に適合しない水を、公共下水道等へ排出してはならない(法第 12 条の
2)
。したがって、特定事業地内で一定の水準まで自己処理をしなければならない。
(2)特定施設の設置等の届出
公共下水道又は流域下水道を使用する特定施設を設置しようとするときは、特定施設の構
造、排出される下水の量、水質等を水道管理者に届け出なければならない。(法第 12 の 3)
(3)下水道管理者以外の者の行う工事等の承認
下水道(公共下水道、流域下水道、都市下水路)の管理者以外の者は、下水道管理者の承
認を受けて、下水道の施設に関する工事又は施設(終末処理場を含む)の維持を行うことが
できる(法第 16 条、第 25 条の 10、第 31 条)
。宅地開発に伴って開発者が下水道を整備する
場合には、これに該当する。
80
6章 関連法規
(4)既存の下水道施設に関連する工事等についての制限(許可)
次に揚げるような行為をしようとする者は、条例で定めるところにより、下水道(公共下水道、
都市下水路)の管理者の許可を受けなければならない。
(法第 24 条、第 29 条、第 25 条の 10)
①排出施設に固着、突出、横断、縦断して、工作物等を設置すること
②排水施設(開渠)の地下に工作物等を設置すること
6.12 大気汚染防止法(大防法)
目的:わが国では、大気環境を保全するため、昭和 43 年に「大気汚染防止法」が制定された。
この法律は、大気汚染に関して、国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全すること
を目的としている。
【制度の概要】
人の健康を保護し生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として、
「環境基
準」が環境基本法において設定されており(資料 1 参照)
、この環境基準を達成することを目
標に、大気汚染防止法に基づいて規制を実施している。大気汚染防止法では、固定発生源(工
場や事業場)から排出される大気汚染物質について、物質の種類ごと、排出施設の種類・規
模ごとに排出基準等が定められており、大気汚染物質の排出者はこの基準を守らなければな
らない(表 1)
。
【ばい煙の排出規制】
「ばい煙」とは、物の燃焼等に伴い発生する硫黄酸化物、ばいじん(いわゆるスス)、有害物
質(1. カドミウム及びその化合物、2. 塩素及び塩化水素、3. 弗素、弗化水素及び弗化珪素、4.
鉛及びその化合物、5. 窒素酸化物)をいう。大気汚染防止法では、33 の項目に分けて、一定
規模以上の施設が「ばい煙発生施設」として定められている。
ばい煙の排出基準は、大別すると次のとおりである。
● 一般排出基準
● 特別排出基準
● 上乗せ排出基準
● 総量規制基準
ばい煙発生施設ごとに国が定める基準
大気汚染の深刻な地域において、
新設されるばい煙発生施設に適用されるより厳
しい基準(硫黄酸化物、
ばいじん)
一般排出基準、
特別排出基準では大気汚染防止が不十分な地域において、
都道
府県が条例によって定めるより厳しい基準(ばいじん、
有害物質)
上記に挙げる施設ごとの基準のみによっては環境基準の確保が困難な地域にお
いて、
大規模工場に適用される工場ごとの基準(硫黄酸化物及び窒素酸化物)
これら排出基準には、量規制、濃度規制及び総量規制の方法がある。
<通常の排出規制>
<総量規制>
81
総量規制は、
工
場 単 位で排出
量を制 限 する
んだね。
6章 関連法規
(1)排出制限、改善命令・使用停止命令
大気汚染防止法は、ばい煙排出者に対し、排出基準に適合しないばい煙の排出を禁止し、
故意、過失を問わず違反者に対して刑罰を科することとしている。
また、都道府県知事は、排出基準違反のばい煙を継続して排出するおそれがある施設に対
し、ばい煙の処理方法等の改善や一時使用停止を命令することができる。
(2)設置・変更の届出、計画変更命令
必要な措置を事前に講じさせるために、
ばい煙発生施設を新たに設置又は構造等 の変更を
しようとする者は、あらかじめ(60 日前まで)、管轄都道府県知事に所定 の事項を届け出な
ければならない。都道府県知事は、その内容を審査し、当該施設 が排出基準に適合しないと
認めるときは、その届出を受理した日から60日以内に限り、計画の変更又は廃止を命ずるこ
とができる。
(3)測定義務、立入検査
ばい煙排出者は、施設から排出されるばい煙量又はばい煙濃度を測定し、その結果を記録
しておかなければならない。また、都道府県職員は、ばい煙排出者が排出基準を守っている
かチェックするため、工場・事業場に立ち入ることや必要な事項の報告を求めることができ
る。
(4)事故時の措置
「特定物質」とは、物の合成、分解その他の化学的処理に伴い発生する物質のうち、人の健
康又は生活環境に係る被害が生ずるおそれがある物質で、次の 28 物質が定められている。
(1)アンモニア、
(2)弗化水素、
(3)シアン化水素、
(4)一酸化炭素、
(5)ホルムアルデヒド、
(6)メタノール、
(7)硫化水素、
(8)燐化水素、
(9)塩化水素、
(10)二酸化窒素、
(11)アクロ
レイン、(12)二酸化いおう、(13)塩素、
(14)二硫化炭素、(15)ベンゼン、(16)ピリジン、
(17)フェノール、
(18)硫酸
(三酸化硫黄を含む。
)
、
(19)弗化珪素、
(20)ホスゲン、
(21)二
酸化セレン、
(22)クロルスルホン酸、(23)黄燐、
(24)三塩化燐、
(25)臭素、
(26)ニッケル
カルボニル、(27)五塩化燐、
(28)メルカプタン
故障、破損その他の事故が起こり、ばい煙又は特定物質が多量に排出されたとき、排出者
は直ちに応急の措置を講じ、復旧に努めるとともに事故の状況を都道府県知事に通報しなけ
ればならない。都道府県知事は、事故により周辺の区域における人の健康に影響があると認
めるときは、排出者に対して、必要な措置をとるようを命ずることができる。
(5)緊急時の措置
大気汚染が深刻な状態(政令で定めるレベル)になったときは、都道府県知事は、一般に
その事態を周知させるとともに、ばい煙排出者に対して、排出量の削減を要請することと
なっている。
【揮発性有機化合物の排出抑制】
「揮発性有機化合物」とは大気中に排出され、又は飛散した時に気体である有機化合物(浮
遊粒子状物質及びオキシダントの生成の原因とならない物質として政令で定める物質を除く)
をいう。大気汚染防止法では、9 の項目に分けて、一定規模以上の施設が「揮発性有機化合
物排出施設」として定められている。
揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制に関する施策は、揮発性有機化合物の排出の規制
82
6章 関連法規
と事業者が自主的に行う揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制のための取組とを適切に組
み合わせて効果的に実施することとされている(平成 18 年 4 月 1 日施行)。
(1)基準遵守義務、改善命令・使用停止命令
揮発性有機化合物排出者は、排出基準を遵守する義務がある(既存施設は平成 22 年 3 月 31
日まで適用猶予)
。
また、これに違反するものに対し、都道府県知事は、揮発性有機化合物の処理の方法の改
善等や使用の一時停止を命ずることができる。
(2)設置・変更の届出、計画変更命令
必要な措置を事前に講じさせるために、揮発性有機化合物排出施設を新たに設置又は構造
等の変更をしようとする者は、あらかじめ(60 日前まで)、管轄都道府県知事に所定の事項
を届け出なければならない。都道府県知事は、その内容を審査し、当該施設が排出基準に適
合しないと認めるときは、その届出を受理した日から60 日以内に限り、計画の変更又は廃止
を命ずることができる。
(3)測定義務、立入検査
揮発性有機化合物排出者は、施設から排出される揮発性有機化合物濃度を測定し、その結
果を記録しておかなければならない。また、都道府県職員は、揮発性有機化合物排出者が排
出基準を守っているかチェックするため、工場・事業場に立ち入ることや必要な事項の報告
を求めることができる。
(4)緊急時の措置
大気汚染が深刻な状態(政令で定めるレベル)になったときは、都道府県知事は、一般に
その事態を周知させるとともに、揮発性有機化合物排出者に対して、排出濃度の減少等を要
請することとなっている。
【粉じんの排出規制】
「粉じん」とは、物の破砕やたい積等により飛散する物質をいう。このうち、大気汚染防止
法では、人の健康に被害を生じるおそれのある物質を「特定粉じん」(現在アスベストが指
定)
、それ以外の粉じんを「一般粉じん」として定めている。
●一般粉じんに係る規制
破砕機や堆積場等の粉じん発生施設の種類ごとに定められた構造・使用・
管理に関する基準
●特定粉じん
(アスベスト)
に係る規制
○発生施設
○排出作業
工場・事業場の敷地境界線における大気中濃度の基準(1リットルにつきア
スベスト繊維10本)
吹付け石綿等が使用されている建築物を解体・改造・補修する作業におけ
る集じん等の作業基準
(1)基準遵守、基準適合命令・使用停止命令
粉じんの排出者は、法律に定められた基準を遵守する義務があり、これらを違反する者に
対し、都道府県知事は、基準の適合や一時使用停止を命ずることができる。
(2)届出、計画変更命令
一般粉じん発生施設、特定粉じん発生施設を新たに設置又は構造等の変更をしよ うとする
者もしくは特定粉じん排出等作業を行おうとする者は、事前に(特定粉じん 発生施設;60 日
前、特定粉じん排出作業;14 日前)
、管轄都道府県知事に所定の事項 を届け出なければなら
83
6章 関連法規
ない。また、特定粉じん規制については、都道府県知事は届 出内容を審査し、当該施設が排
出基準に適合しないと認めるときは、計画の変更等を命ずることができる。
(3)測定義務、立入検査
特定粉じん発生施設を設置している者は、工場等の敷地境界線におけるアスベスト濃度を
測定し、その結果を記録しておかなければならない。また、都道府県職員は、粉じんの排出
者が基準を守っているかチェックするため、工場・事業場に立ち入ることや必要な事項の報
告を求めることができる。
【有害大気汚染物質の対策と推進】
「有害大気汚染物質」とは、低濃度であっても長期的な摂取により健康影響が生ずるおそれ
のある物質のことをいい、該当する可能性のある物質として 234 種類、そのうち特に優先的
に対策に取り組むべき物質(優先取組物質)として次の 22 種類がリストアップされている。
(1)アクリロニトリル *1、
(2)アセトアルデヒド *1、
(3)塩化ビニルモノマー
*1、(4)クロロホルム *1、
(5)クロロメチルメチルエーテル、(6)酸化エチレ
ン、
(7)1,2 −ジクロロエタン *1、
(8)ジクロロメタン *1、
(9)水銀及びその
化合物、
(10)タルク(アスベスト様繊維を含むもの)
、
(11)ダイオキシン類 *2、
(12)テトラクロロエチレン *1、
(13)トリクロロエチレン *1、
(14)ニッケル化
合物 *1、
(15)ヒ素及びその化合物、
(16)1,3 −ブタジエン *1、
(17)ベリリウ
ム及びその化合物、
(18)ベンゼン *1、
(19)ベンゾ[a]ピレン、
(20)ホルムア
ルデヒド *1、(21)マンガン及びその化合物、(22)六価クロム化合物
*1:事業者は、自主管理計画を作成し排出抑制に取り組む
*2:ダイオキシン類はダイオキシン類対策特別措置法に基づき対応している
また、大気汚染防止法では、有害大気汚染物質対策の実施に当たり、各主体の責務を定め
ている。
①国の施策:科学的知見の充実、健康リスク評価の公表等
②地方公共団体の施策:汚染状況の把握、情報の提供等
③事業者の責務:排出状況の把握、排出抑制等
④国民の努力:排出抑制等
有害大気汚染物質については、十分な科学的知見が整っているわけではないが、未然防止
の観点から、早急に排出抑制を行わなければならない物質(指定物質)として、1) ベンゼン、
2) トリクロロエチレン、3) テトラクロロエチレン、が指定され、それぞれ排出抑制基準が定
められている。表 6.10 に大気汚染防止法の概要について示す。
84
6章 関連法規
表6.10
・対象;
製造業、電気供給業、
ガス供給業、熱供給業で、煤煙発生設備の設置工場(有害
特 定 工 場にお
物質以外は、
排出ガス量が1万k/h以上)、
特定又は一般粉塵発生施設を設置し
ける公 害 防 止
ている工場
組織の整備に ・公害防止管理者等の選任と届出;
特定工場は次の者を選任し、
都道府県知事へ届け出なければならない(常時使用
関する法律
(組織整備法)
従業員が20人以下は不要)
①公害防止統括者
②公害防止主任管理者(排ガス4万k/h、
排水量1万k/日以上)
③公害防止管理者
(1)煤煙発生施設
・煤煙:①SOX ②燃焼や電気の使用に伴い発生する煤塵 ③燃焼、合成等の処
理に伴い発生する有害物質(カドミニウム、
塩素、
フッ化水素、
鉛、
NOX)
・煤煙発生施設:事業所等に設置、
煤煙を排出し、
大気汚染の原因となるもの
(ボイラー、
乾燥炉、
廃棄物焼却炉等)
(2)特定粉塵発生施設
法規制
(3)一般粉塵発生施設
適用条件
(4)特定物質発生施設
・有害大気汚染物質;ベンゼン、
トリクロロエチレン、
テトラクロロエチレン
(指定物質)
(5)指定物質排出施設
・乾燥施設、
蒸留施設、
混合施設、
洗浄施設、
ドライクリーニング機
(6)特定工事
・特定粉塵排出等作業で、
政令で定めた特定粉塵が使用されている建築物を解体、
改造、
修理する工事
(7)
自動車排出ガス
煤煙量等の
測定義務
・煤煙発生施設に係わる煤煙量または煤煙濃度及び事業場等敷地境界線における特
定粉塵の濃度を測定し、
記録しなければならない。
(3年間保存)
・工業界別に、
3指定物質を含めて13物質に対するガイドラインを設定
指定物質排出
等の抑制
①テトラクロロエチレン ②トリクロロエチレン ③ベンゼン ④アセトアルデヒド
⑤アクリロニトリル ⑥塩化ビニルモノマー ⑦トリクロロメタン ⑧1,2-ジクロロエタン ⑨塩化メチレン ⑩1,3-ブタジエン ⑪ホルムアルデヒド ⑫二硫化三二ニッケル ⑬硫酸ニッケル
・煤煙の排出基準は、
SOX、
NOX、
煤塵、
有害物質毎に異なる方式で設定
排出基準の
a.
全国的に、
新設、
既設を問わず全ての地域に適用される一般排出基準
遵守
b.
特定の地域に限り、
且つ、
新設施設に限り適用される特別排出基準
(都道府県条例、
規制対象外物質の基準等の上乗せ及び横だし規制)
85
6章 関連法規
6.13 製造物責任法(PL 法)
目的:製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係わる被害が生じた場合における製造
業者等の損害賠償責任について定めることにより、被害者の保護を図り、国民の安定向上及
び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。表 6.11 に PL 法の概要について示す。
表6.11
・製造物:製造または加工された動産をいう。
・欠 陥:製造物の特性、
その通常予見される使用形態、
その製造業者等が製造物を
引き渡した時期その他の当該製造物に係わる事情を考慮して、
製造物が通常
有すべき安全性を欠いていることをいう。
・製造業者:
①製造物を業として製造、
加工又は輸入した者
規制適用条件
②自ら製造物の製造業者として、
当該製造物に氏名、商号、商標並びにその他の表
示をした者または当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示を
した者
③製造物の製造、
加工、
輸入又は販売に係わる形態その他の事情からみて、
当該製
造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者
・除外対象製造物
(例)未加工農林畜産水産物、
無形エネルギー、
不動産(不動産に付加した動産を除
外するものではない)
・製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっ
ては、
当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったことを証明した時。
免責事項
・製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、
その欠陥が
専ら他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、
かつ、
その欠陥が生じたことについて過失がないことを証明した時。
・製造業者等は、
その製造、
加工及び輸入した製造物又は氏名等の表示をした製造物
無過失責任
であって、
その引き渡したものの欠陥により他人の生命、
身体又は財産を侵害した時は、
これにより生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、
その損害が当該私蔵物について
のみ生じた時は、
この限りではない。
・損害賠償の請求権は、
被害者又はその法定代理人が損害、
賠償義務者を知った時か
ら三年間行わない時は、
時効により消滅する。その製造業者等が当該製造物を引き渡
期限の制限
した時から十年を経過した時も、
同様とする。
・十年の期間は、
身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又
は一定の潜伏期間の経過後に症状が現れる損害については、
その損害が生じた時か
ら起算する。
86
6章 関連法規
表6.11(つづき)
①塗料自体の欠陥
想 定される問
題点と事例(製
造業者に責任
が 係わる主な
事例)
②容器の長期貯蔵による
「下げ具」落下による事故(容器欠陥は別)
③研究開発用サンプル
④不動産に塗装した塗料・塗膜(塗料自体が人の健康に影響した場合)
⑤品質保証期限を過ぎた製品
⑥塗装者の作業環境不備による有機溶剤中毒
⑦警告や危険性(誤用、
誤飲、
異物接触等)
の表示漏れ、
MSDSの不備
⑧剥離した塗膜によるペット類への損害(塗装業者の責任もある)
6.14 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律
(PRTR *法、化学物質管理促進法)
目的:特定の化学物質の環境への排出量の把握に関する措置及び事業者による特定化学物質
の性状及び取扱に関する情報の提供に関する措置等を講ずることにより、事業者による化学
物質の自主的な管理の改善を促進し環境の保全上の支障を未然に防止することを目的とする。
PRTR 法とは、有害性のある多種多様な化学物質が、どのような発生源から、どれくらい
環境中に排出されたか、あるいは廃棄物に含まれて事業所の外に運び出されたかというデー
タを把握し、集計し、公表する仕組みである。
対象としてリストアップされた化学物質を製造したり使用したりしている事業者は、環境
中に排出した量と、
廃棄物として処理するために事業所の外へ移動させた量とを自ら把握し、
行政機関に年に 1 回届け出る。
行政機関は、そのデータを整理し集計し、また、家庭や農地、自動車などから排出されて
いる対象化学物質の量を推計して、2 つのデータを併せて公表する。
PRTR 法によって、毎年どんな化学物質が、どの発生源から、どれだけ排出されているか
を知ることができるようになる。
諸外国でも導入が進んでおり、日本では 1999(平成 11)年、
「特定化学物質の環境への排
出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」により制度化された。
<対象事業者>
PRTR 法の対象となる化学物質を製造したり、原材料として使用しているなど、対象化学
物質を取り扱う事業者や、環境へ排出することが見込まれる事業者のうち、一定の業種や要
件に該当するものが対象となり、
対象化学物質の環境への排出量 と廃棄物に含まれて事業所
の外に移動する量との届出が義務付けられる。業種や要件(対象化学物質の取扱量 や常用雇
用者数など)は、対象化学物質と同様、政令で指定されている。表 6.12 に PRTR 法の概要に
ついて示す。
* PRTR; Pollution Release and Transfer Resister
87
6章 関連法規
表6.12
(PRTR法対象条件; 第一種指定化学物質等取扱事業者)
①製造業
②常用雇用者数21名以上
③下記の何れかに該当するもの
・第一種指定化学物質を年間1t以上製造又は使用する者、
物質を含有する製品
を年間1t以上使用する者
・特定第一種指定化学物質を年間0.5t以上取扱う事業者
・業者指定;金属鉱業又は原油及び天然ガス鉱業、
下水道業廃棄物処分業、
ダイ
法規制適用
条件
オキシン類対策法の特定施設設置者
④製品質量に対する第一種指定化学物質の割合は1%以上のものに適用
⑤対製品質量の特定第一種指定化学物質割合が0.1%以上のものに適用
⑥PRTR及びMSDSが適用されない要件としての4製品類;
・取扱い過程で固体以外の状態になく、
且つ粉末、
粒状にならない製品
・密封状態で使用する製品(冷媒、
絶縁材 等)
・一般消費材(殺虫剤、
防虫剤 等) ・再生される資源
⑦MSDS対象条件(指定化学物質等取扱事業者)
・第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質等取扱事業者
(製品質量に対する第二種指定化学物質量の割合が1%以上のもの)
・化学物質;元素及び化合物(放射性元素を除く)
・第一種指定化学物質;人や生態系(オゾン層破壊性を含む)への有害性があり、
環境
中に広く存在する
(暴露性)
と認められる物質(354物質)
例)
a.
揮発性炭化水素:ベンゼン、
トルエン、
キシレン等
b.
有機塩素系化合物:ダイオキシン類、
トリクロロエチレン等
c.
農薬:臭化メチル、
フェニトロチン、
クロルピリホス等
d.
金属化合物:鉛及びその化合物、
カドミニウム及びその化合物、
有機スズ化合物
等
e.
オゾン層破壊物質:フッ素系化合物(CFC、
HCFC等)
用語の定義
f.
その他:石綿等
・第二種指定化学物質;第一種指定化学物質と同様の有害性があるが、
暴露性はそれ
より低いと見込まれる物質(81物質)
・PRTR届出対象業種(23業種)
;金属鉱業、
原油及び天然ガス鉱業、
製造業、
電気業、
ガス業、
鉄道業、
下水道業、
熱供給業、
倉庫業(農作物又はタンクによる気体、
液体の貯
蔵に限る)、石油卸業、鉄スクラップ卸売業(自動車エアコン関係)、燃料小売業、計量
証明業、
自動車整備業、
機械修理業、
商品検査業、
洗濯業、
写真業、
一般廃棄物処理
業(ごみ処分業)、
産業廃棄物処分業、
自動車卸売業(エアコン関係)、
高等教育機関、
自然科学研究所
・物質量;銅、
鉛、
ニッケル、
砒素等の金属、
又はシアン、
フッ素、
硼素化合物として指定さ
れたものは、
金属、
シアン等の質量として計算する
88
6章 関連法規
表6.12(つづき)
・指定化学物質等取扱事業者は、
第一種及び第二種指定化学物質が人の健康を損な
事業者の責務
う恐れがあることを認識し、
かつ、
化学物質管理指針に留意して、
指定化学物質の製造、
使用その他の取扱い等に係わる管理を行うと共に、
管理の状況に対し国民の理解を深
めるよう努めなければならない。
・第一種指定化学物質等取扱事業者は、
事業活動に伴う第一種指定化学物質の排出
量及び移動量を把握しなければならない。
①排出量の算出方法
a.
物質収支を用いる方法
{取扱量合計}
−
{移動量(製品としての搬出量+廃棄物含有量)}
b.
排出係数を用いる方法
{製造量、
使用量等の取扱量}
×
{排出係数あるいは排出原単位}
c.
実測値を用いる方法
排出量の把握 排出物に含まれる量や濃度の測定に基づき産出
d.
物性値を用いる方法
及び届出
蒸気圧、溶解度等の物理化学的性状に関する数値と排ガス量又は排水量とを
用いる
e.
その他の方法
経験式、
経験値等の利用ができると認められる場合
②移動量の算出方法
排出量と同様な方法で算出する。
・毎年度、前年度の排出量及び移動量を事業所毎に、結果を主務大臣並びに都道府
県知事を経由して国(事業所管大臣)
に届け出する。把握開始は2001年4月1日、
届出
は毎年度6月30日まで。
(方法は施行規則に規定)
・環境省大臣及び経済通産大臣は、
届出事項を業種別、
地域別等に集計し、
結果を主
届出事項の
務大臣及び都道府県知事に通知すると共に公表する。
集計
・環境省大臣及び経済通産大臣は、
家庭、
農地、
自動車等の分散発生源からの排出量
開示請求
・何人も国の公表後はファイル記載事項の開示請求を行うことができる。
を推計して集計し、
公表する。
(非点源推計)
・指定化学物質等取扱事業者は、指定化学物質を他の事業者に譲渡、又は提供する
時は、
その時までに、
相手に対し物質の性状及び取扱いに関する情報(MSDS)
を相手
方が承諾した方法で提供しなければならない。
MSDSの提供
・PRTRに含めなければならない情報
!第一種 又は第二種指定化学物質の名称
"令記載 における該当する号の番号
#第一種指定 、
特定第一種指定、
第二種指定の別
罰則
・PRTR届出をせず、
又は虚偽の届出、
経済産業大臣によるMSDSに関する聴取に対し
報告をしない、
又は虚偽の報告をしたものは20万円以下の過料
89
6章 関連法規
表6.12(つづき)
・指定化学物質等の製造、
使用その他の取扱いに係わる設備の改善、
その他の指定化
学物質等の管理の方法に関する事項
①化学物質の管理の体系化 ②情報の収集、
整理等
化学物質管理
方針
・指定化学物質等の製造の過程における回収、
再利用、
その他の指定化学物質等の使
用の合理化に関する事項
①化学物質の管理の体系化、
情報の収集、
整理等
②化学物質の使用の合理化対策
・第一種指定化学物質の排出状況に関する国民の理解の増進に関する事項
・指定化学物質等の性状及び取扱いに関する情報の活用に関する事項
MSDS 製品安全データシートの例
製品安全データシート
[ 混合物用(塗料用)]
製品コード:
製品名:
製品の特定 種 類:
主な用途:
会社名
○○○○○株式会社
住 所
〒
製造者情報 担当部門
電話番号
緊急連絡先
技術部
担当者
03−
FAX番号
03−
管理部門に同じ
作成・改定
2006年 1月1日
物理化学的 引火性液体:区分1∼4
危険性
健康に対す 急性毒性
経口:区分1∼5
る有害性
経皮:区分1∼5
吸入(気体)
:区分1∼5
吸入(蒸気)
:区分1∼5
危険有害性
【GHS分類】
吸入(粉塵、
ミスト)
:区分1∼5
皮膚腐食性/刺激性:区分1∼3
眼に対する重篤な損傷/眼刺激性:区分1∼2
呼吸器感作性:区分1
皮膚感作性:区分1
生殖細胞変異原性:区分1A、
1B、
2
発がん性:区分1A、
1B、
2
生殖毒性:
:区分1A、
1B、
2
吸引性呼吸器有害性:区分1∼2
90
技術課長
6章 関連法規
健康に対す 特定標的臓器
/全身毒性
危険有害性 る有害性
【GHS分類】 環境に対す 水性環境有害
性
る有害性
単回暴露:区分1∼3
反復暴露:区分1∼2
急性:区分1∼3
慢性:区分1∼4
成分及び含有量(危険有害性物質を対象)
成 分 名
Cas No.
エチレングリコール
107-21-1
2.2.4-トリメチル1.3-ペンタンジオール
含有量
備 考
43.
PRTR法1種
25265-77-4
物質の特定 モノイソブチレート
二酸化チタン
13463-67-7
カーボンブラック
(白)
13303-86-4
0∼10%
(黒)
酸化第二鉄
1309-37-1
0∼10%
(赤錆)
水和酸化第二鉄
51274-00-1
0∼10%
(オーカー)
目に入った
☆直ちに大量の清浄な流水で15分以上洗う。
まぶたの裏まで完全に洗うこと。
場合
☆異常のある場合は医師の診断を受けること。
皮膚に付着 ☆付着物を布にて素早く拭き取る。
した場合
☆大量の水及び石鹸又は皮膚用の洗剤を使用し、
十分に洗い落とす。溶剤、
シンナーは使用しないこと。
☆外観に変化が見られたり、
痛みがある場合には、
医師の診断を受ける。
応急処置
火災時の
処置
吸入した
☆蒸気、
ガス等を吸い込んで気分が悪くなった場合には、
空気の清浄な場所
場合
で安静にし、
医師の診断を受ける。
飲み込んだ
☆誤ってのみ込んだ場合には、
安静にして直ちに医師の診断を受ける。
場合
☆嘔吐物は飲み込ませないこと。
使用可能
水[○],
炭酸ガス
[○],
泡[○],
粉末[○]
消化剤
乾燥砂[○],
その他[
消化方法:このもの自体には可燃性なし。
]
☆人及び環境保護への対応
・作業の際には適切な保護具(手袋、
保護マスク、
エプロン、
ゴーグル)
などを着用する。
・河川への排出等により環境への影響を起こさないように注意する。
・周辺を立入禁止にして、
関係者以外を近づけないようにして二次災害を防止する。
漏出時の
処置
☆飛散物の処理
・流出物は、
密閉できる容器に回収し、
安全な場所に移動する。
・付着物、
廃棄物などは関係法規に基づいて処置する。
・乾燥前の飛散物は、
水に濡らしたウエスなどで拭き取る。乾燥後は、
熱いお湯か市販のア
ルコール水溶液を染み込ませたウエスなどで拭き取る。
・乾燥砂、
土、
その他の不燃性のものに吸収させて回収する。大量の流出には、
盛り土で囲
って流出を防止する。
取 扱 、保 管 取扱い上の注意:換気の良い場所で取扱う。
上の注意
保管上の注意:日光の直射を避ける。冬期は凍結しないように保管する。
91
6章 関連法規
設備対策:特になし。
暴露防止
処置
呼吸系の保護
保
目の保護
護
具 皮膚の保護
☆ミストなどの吸入を防げるマスクを着用する。
☆保護メガネを着用する。
☆有機溶剤又は化学薬品が浸透しない材質の手袋を着用する。
その他の保護具 ☆特になし
状 態:液体[○],気体[ ],固体・半固形[ ],粉末状[ ],ペースト状[ ]
製品の物理
化学的性質
色 : 臭 気:
沸 点: 蒸気圧:
比 重: pH値:
その他:水に可溶
製品特性 引火点: 発火点:
爆発限界:
(下限) (上限)
反応性
危険性情報 安定性
条件(温度、
光等)
接触により危険性のある物質:情報なし。
燃焼などによる有害性ガス発生:このものは燃えないが塗膜等が燃えた場合、
COなど。
その他の反応性情報:普通の条件での反応性はない。
その他の危険性情報:特になし。
組成物質有害性及び暴露濃度基準
物質名
管理
ACGIH
濃度
(TLV)
二酸化チタン
10m/k
エチレングリコール
IARC その他の有害性
3
LD50(経口) rat 4,700m/o
100m/k
LC50(経皮)rb 9,530m/o
有害性情報 2.2.4トリメチル1.3ペンタジオール
LD50(経口)rat 3,200m/o
モノイソブチレート
カーボンブラック
酸化第二鉄
3.5m/k
2B
5m/k
3
LD50(経口)>rat15,400m/o
LC50(経皮)>rb 3,000m/o
組成物質に関するその他の有害性情報:特に情報なし。
製品に関する有害性情報:製品としての安全性試験は行っていない。
環境影響
☆容器、
機器などの洗浄水をそのまま排水溝に流さないこと。
情報
☆廃塗料、容器等の廃棄物は、許可を受けた産業廃棄物処理業者と委託契約して処理
廃棄上の
注意
を委託する。
☆容器、
機器装置等を洗浄した排水等は、
地面や排水溝へそのまま流さないこと。
☆排水処理、焼却等により発生した廃棄物についても、廃棄物の処理及び清掃に関する
法律及び関係する法律に従って処理を行うか、
処理を委託すること。
92
6章 関連法規
共 通:取扱い及び保管上の注意の項の記載に従う。
輸送上の
注意
陸上輸送:法規に該当しない。
海上輸送:船舶安全法に該当しない。
航空輸送:航空法に該当しない。
国連番号:なし。
☆法規に該当しない。
主な適用
(高圧ガス保安法、
消防法、
毒物及び毒劇物取締法、
化学物質の審査及び製造等の規制
に関する法律、
労働安全衛生法、
特定化学物質等障害予防規則、
有機溶剤中毒予防
法令
規則、
鉛中毒予防規則、
化学物質管理促進法、
廃棄物の処理及び清掃に関する法律等)
主な引用文献
その他
☆日本塗料工業会編集「原材料物質データベース」
☆日本塗料工業会編集「製品安全データシートガイドブック」
☆化学工業日報社「化学物質管理促進法PRTR・MSDS対象物質全データ」
[注意] 記載事項は通常的な取り扱いを対象としたもので、
特殊な取り扱いの場合には、
この点の配慮
をお願いします。
6.15 住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)
目的:
「優良住宅を安心して取得できること」を目的として施工された法律である。
概要
2000年4月施行、
大別すると①瑕疵保証制度、
②住宅性能保証制度、
③紛争処理の3項目から
なる。
①瑕疵保証制度:新築住宅に対して最低10年の瑕疵担保期間が義務づけられる。対象となる
のは、
基本構造部分で基礎・柱・床・屋根等が該当する。構造体力上主要な部分や雨水の浸
入を防止する部分に瑕疵があった場合は、
修理請求、
賠償請求ができる。ただし、
瑕疵が発見
されてから1年以内に瑕疵であることの証明が必要である。
②住宅性能保証制度:2000年秋から建設大臣が定めた住宅性能表示基準が創設されこれに
基づき第三者機関が住宅性能評価書を交付する。評価書を添付して契約を交わした場合は、
その記載内容が契約内容となる。
③紛争処理:性能表示を受けたにも係わらずトラブルが発生した場合、
裁判外の処理体制で第
三者機関の弁護士、
建築士などが紛争処理にあたる。
93
付 録
付 録
付録1 施工仕様例 ……………………………………………………
96
付録2 建物の部位と名称
99
……………………………………………
付録3 足場の種類 …………………………………………………… 100
付録4 塗装種別の略号
……………………………………………… 102
付録5 仕上塗材の防火性能
………………………………………… 104
95
付 録
付録1 施工仕様例
付表1.1 外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材(外装薄塗材E:リシン)仕上げ
工 程
材 料
外装薄塗材E
(砂壁状)
1 主材塗り
調 合
(質量比)
所要量
(o/g)
100
1∼2
2
製造業者の
水
塗回数
間隔時間(h)
工程内
2以上
工程間 最終養生
−
16以上
−
指定による
付表1.2 防水形外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材(防水形外装薄塗材E:単層弾性)仕上げ
材 料
工 程
防水形外装
1 下塗り
薄塗材E下塗材
4
指定による
薄塗材E主材
−
3以上
−
1
−
3以上
−
1∼2
5以上
16以上
−
1
−
−
−
0.7∼1.5
−
指定による
薄塗材E主材
1
−
製造業者の
水
0.2∼0.7 0.6∼1.2
100
(ゆず肌状) (凹凸状)
(さざ波状)
製造業者の
水
凸部処理※2
(5)
100
間隔時間(h)
工程内 工程間 最終養生
0.5∼1.0
指定による
薄塗材E主材
塗り
100
塗回数
−
製造業者の
防水形外装
模様
0.1∼0.3
または水
防水形外装
主
材
塗
り
100
製造業者の
水
基層
3
塗り
所要量
(o/g)
専用うすめ液
防水形外装
2 増塗り※1
調 合
(質量比)
指定による
−
(こてまたはローラーで押さえる)
−
※1 増塗りは、
建物の出隅、
入隅、
目地及び開口部周りなどへ主材塗りの前に行う。
※2 工程5は、
凸部処理仕上げの場合のみ行う。
96
(凸部処
理の場
合は1以 24以上
内に行
う)
付 録
付表1.3 外装合成樹脂エマルション系厚付け仕上塗材(外装厚塗材E:スタッコ)仕上げ(上塗材なし)
工 程
材 料
外装厚塗材E
1 下塗り
下塗材
水
外装厚塗材E
基層
2 塗り
主
材
塗
り
模様
3
塗り
凸部処理※1
(4)
主材
水
外装厚塗材E
主材
水
調 合
(質量比)
所要量
(o/g)
100
0.1∼0.3
製造業者の
1
−
3以上
−
1
−
3以上
−
1
−
−
−
1.5∼2.5
製造業者の
−
指定による
100
間隔時間(h)
工程間 最終養生
工程内
−
指定による
100
塗回数
1.5∼3.5
製造業者の
−
指定による
(こてまたはローラーで押さえる)
(凸部処
理の場
合は0 . 5 24以上
以内に
行う)
※1 工程4は、
凸部処理仕上げの場合のみ行う。
付表1.4 合成樹脂エマルション系複層仕上塗材(複層塗材E:アクリルタイル)仕上げ
工 程
材 料
複層塗材E
1 下塗り
下塗材
2
塗り
主
材
塗
り
模様
3
塗り
凸部処理※1
(4)
100
0.1∼0.3
製造業者の
または水
指定による
主材
水
複層塗材E
主材
水
100
上塗材
または水
指定による
3以上
−
1
−
16以上
−
−
24以上
1
−
−
−
24以上
(凸部処
理の場
合は0 . 5
以内に
行う)
2
3以上
−
−
指定による
製造業者の
−
0.8∼1.3
製造業者の
専用うすめ液
1
−
指定による
100
間隔時間(h)
工程内 工程間 最終養生
0.7∼1.2
製造業者の
100
塗回数
−
(こてまたはローラーで押さえる)
複層塗材E
5 上塗り
所要量
(o/g)
専用うすめ液
複層塗材E
基層
調 合
(質量比)
0.25∼0.35
−
※1 工程4は、
凸部処理仕上げの場合のみ行う。
97
付 録
付表1.5 防水形合成樹脂エマルション系複層仕上塗材(防水形複層塗材E:弾性タイル)仕上げ
工 程
材 料
防水形複層塗
1 下塗り
材E下塗材
主
材
塗
り
4
塗り
模様
塗り
指定による
塗材E主材
塗材E主材
100
塗材E主材
100
−
1
−
3以上
−
2
16以上
16以上
−
24以上
(凸部処
理の場
合は1以
内に行
う)
−
−
48以上
−
(ゆず肌状) (凹凸状)
(さざ波状)
指定による
100
専用うすめ液
製造業者の
または水
指定による
1
−
−
−
2
3以上
−
−
(こてまたはローラーで押さえる)
塗材E上塗材
3以上
0.6∼1.2 0.7∼1.3
製造業者の
水
−
1.7以上
指定による
防水形複層
1
−
製造業者の
水
間隔時間(h)
工程内 工程間 最終養生
0.6∼1.2
指定による
防水形複層
6 上塗り
100
塗回数
−
製造業者の
凸部処理※2
(5)
0.1∼0.3
または水
防水形複層
基層
100
製造業者の
水
3
所要量
(o/g)
専用うすめ液
防水形複層
2 増塗り※1
調 合
(質量比)
0.25∼0.35
−
※1 基層塗り前に、
出隅、
入り隅などの基層塗層の膜厚が薄くなると予想される部分に主材を塗り付け、
塗り
厚を確保する操作。
※2 主材模様塗りなどによって形成される比較的大型の凹凸模様の凸部の頂点をこて、
ローラーまたはサンダ
ーによって平たんにする模様付け操作。
98
付 録
付録2 建物の部位と名称
⑤窓まわり ⑮といおよび取付金物
⑯パラペット
②塔屋壁
③斜壁
⑥ひさし鼻先
⑦ひさし裏
①一般外壁
④廊下壁
⑭水平目地
⑬垂直目地
⑰軒鼻先
⑱軒裏
⑲換気扇まわり
⑳バルコニー内壁
21手すり
22手すり壁
23手すり上端
24バルコニー鼻先
25バルコニー軒裏
⑧段裏
26開口部
⑫はり形
⑨階段手すり
⑦ひさし裏
⑩手すり脚部
27出入口
⑪柱形
外装仕上げの耐久性向上技術(技報堂出版1)
より
パラペット笠木
防水押え又は
仕上げモルタル
防水層
パラペット
均しモルタル
ルーフドレン
パラペット外部
軒裏
天井
尾垂れ
タテ樋
天井廻縁
庇
外壁 (マド)庇屋根
庇鼻
庇下面
額縁
コーキング
(マド廻り)
マ
ド
マド水切
手スリ笠木
手スリ子
ベ
ラ
ン
ベランダ ダ
鼻立上り
外壁
巾木
1階床
手スリ柱
下枠
外部
巾木
地盤
外壁補修マニュアル
(1テツアドー出版)
より
99
付 録
付録3 足場の種類
足場は施工業者が設置する場合と、建築元請会社側で用意する場合がある。最近では施工
業者に最も適した設置と安全確認のため施工業者側で組み立てるケースが多くなってきてい
るが建築物の巨大化、高層化、建築基準法、労働安全衛生法などの規制等により、ゼネラル
コンストラクター(ゼネコン)である元請け会社に依存する方が圧倒的に多い。足場の種類
は、用途別及び構造別に分類すると付表 3.1 のようになる。
付表3.1 足場の用途別・構造別分類
構造別
用途別
外壁工事用
支柱足場
本足場
一側足場
枠組足場
ブラケット
くさび
一側足場
吊り足場
棚足場
単管足場
高所作業車
張り出し足場
ゴンドラ
移動式足場
足場
一側足場
高所作業車
枠組足場
内壁工事用
その他
移動式昇降
緊結式足場 くさび緊結式
単管足場
機械足場
移動式足場
くさび
移動式室内
緊結式足場
足場
単管足場
躯体工事用
枠組足場
ブラケット
吊り枠足場
くさび
一側足場
吊り棚足場
高所作業車
緊結式足場 くさび緊結式
単管足場
一側足場
足場の例を付図 3.1 ∼ 3.5 に示す。
重ね部分の長さ
20b以上
足場板
積載荷重表示
突出部の長さ
10b以上∼L/18以下
ゴムバンド又は
番線で結束
脚立
開止め金具を確実に作動させる
付図 3.1 架台足場
100
付 録
階段開口部
中桟
専用手すり枠 手すり
手すり柱
階段用中桟
階段用手すり
床付き布枠
建枠
交差筋かい
前
踏
み
︵
躯
体
︶
側
後
踏
み
︵
外
部
︶
側
敷板
ジャッキ型ベース金具
根がらみ
階段
付図 3.2 枠組足場
ブーム
付図 3.3 移動式足場
付図 3.4 機械式伸縮足場(高所作業車)
付図 3.5 ゴンドラ
国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「建築工事監理指針 平成16年版(上巻)」
より
101
付 録
付録 4 塗装種別の略号
適 用
種 別
日本 日本建築学 日本建築
国土
郵政
文部
UR
工業規格 会JASS-18 家協会
交通省
事業庁 科学省 都市機構
JIS K (2006) (2006) (19年版)(13年版)
(16年版)
(16年版)
合成樹脂調合ペイント塗り
5516
SOP
SOP
SOP
SOP
SOP
S.O.P
アルミニウムペイント塗り
5492
AIP
aIP
---
ALP
---
---
フタル酸樹脂エナメル塗り
5572
FE
FE
FE
---
FE
---
塩化ビニル樹脂エナメル塗り
5582
VE
VE
---
VE
---
---
アクリル樹脂エナメル塗り
5654
AE
AE
AE
AE
AE
---
---
2-XE
2-XE
---
---
---
---
5664
---
2T-XE
---
---
---
---
2-UE
2-UE
2-UE
2-UE
2-UE
---
---
LS2-UE
---
---
---
---
---
---
2-ASE
2-ASE
2-ASE
---
2-ASE
---
2-FUE
2-FUE
2-FUE
2-FUE
2-FUE
-----
2液形エポキシ樹脂
エナメル塗り
2液形タールエポキシ樹脂
エナメル塗り
2液形ポリウレタン
5656
エナメル塗り
5657
弱溶剤系2液形ポリウレタン
エナメル塗り
アクリルシリコン樹脂
エナメル塗り
常温乾燥形ふっ素樹脂
5658
エナメル塗り
5659
多彩模様塗料塗り
5667
EP-M
EP-M
---
EP-M
EP-M
アクリル樹脂ワニス塗り
5653
AC
AC
---
---
---
---
---
2-UC
UC
UC
---
UC
U.C
---
2-ASC
---
---
---
---
---
---
2-FUC
2-FUC
---
---
---
---
5670
NADE
NAD
NAD
---
---
---
合成樹脂エマルション
5663 1種
EP
AEP
EP
EP
EP
E.P-I
ペイント塗り
5663 2種
EP
---
---
---
---
E.P-II
5660
EP-G
EP-G
EP-G
EP-G
EP-G
G.P
---
UEP
---
---
---
---
---
5668
EP-T
---
EP-T
---
EP-T
---
5562
FC
---
---
---
---
---
2液形ポリウレタンワニス塗り
アクリルシリコン樹脂
ワニス塗り
常温乾燥形ふっ素樹脂
ワニス塗り
アクリル樹脂系非水分散形
塗料塗り
つや有合成樹脂
エマルションペイント塗り
ポリウレタンエマルション
ペイント塗り
合成樹脂エマルション模様
塗料塗り
フタル酸樹脂ワニス塗り
102
付 録
適 用
種 別
1液形油変性ウレタン樹脂
ワニス塗り
日本 日本建築学 日本建築
国土
郵政
文部
UR
工業規格 会JASS-18 家協会
交通省 事業庁 科学省 都市機構
JIS K (2006) (2006) (19年版)(13年版)
(16年版)
(16年版)
---
1-UC
UC
UC
---
UC
U.C
C.L
クリヤラッカー塗り
5531
LC
---
CL
CL
CL
オイルステイン塗り
---
OS
---
OS
OS
OS
O.S
オイルステインワニス塗り
5562
---
---
---
---
---
O.S.C
ラッカーエナメル塗り
5531
LE
---
---
---
---
---
木材保護塗料塗り
---
WP
---
---
---
---
---
抗菌性塗料塗り
---
---
---
---
---
ABP
---
注1)塗料種別名称:JASS18の名称に準じた。なお抗菌性塗料塗りは文部科学省「特記基準」。
注2)郵政事業庁は、
平成16年度以降、
国交省の「公共建築工事標準仕様書」に統一。
注3)UR都市機構の仕様書は「公共住宅建設工事共通仕様書(平成16年版)」である。
103
付 録
付録5 仕上塗材の防火性能
付表5.1 防火材料に要求される性能と材料の例
材料区分
材料の例
国土交通大臣が定めたもの 国土交通大臣の認定を受けたもの
通常の火災による火熱が加 (平成12年告示第1400号) 塗料
れんが、
瓦、
陶磁 仕上塗材
えられた場合に、加熱開始 コンクリート、
要求性能
後20分間
①燃焼しないものであること
不燃材料
器質タイル、石綿スレート、繊 壁紙
維強化セメント板、
鉄網、
アル グラスウール保温板
金属板、
ガラス、
モル 塩ビ鋼板
②防火上有害な変形、
溶融、ミニウム、
しっくい、
石、
ロックウール、 塗装ステンレス鋼板
き裂その他の損傷を生じな タル、
グラスウール板、せっこうボー せっこうプラスター塗ラスボード
いものであること
ボード用 仕上用せっこうプラスター塗
③避難上有害な煙又はガス ド(厚さ12a 以上、
ガラ せっこうボード
を発生しないものであること 原紙の厚さ0.6a以下)、
(屋外では要求されない)
ス繊維混入セメント板(厚さ スラグせっこう板
3a 以上)、繊維混入ケイ酸 軽量セメントモルタルなど
カルシウム板(厚さ5a以上)
通常の火災による火熱が加 (平成12年告示第1401号) 塗料
せっこうボード
(厚 仕上塗材
えられた場合に、加熱開始 不燃材料、
さ9a 以上、
ボード用原紙の 壁紙
後10分間
①燃焼しないものであること
厚さ0.6a以下)、
木毛セメン 化粧グラスウール保温板
硬質 塩ビ鋼板
②防火上有害な変形、
溶融、ト板(厚さ15a以上)、
準不燃材料
木片セ
メ
ン
ト
板
(厚さ
9
a以上、
き裂その他の損傷を生じな
せっこうボード
かさ比重0.9以上)、
木片セメ パルプセメント板
いものであること
③避難上有害な煙又はガス ント板(厚さ30a 以上、かさ 木毛セメント板
を発生しないものであること 比重0.5以上)、パルプセメン 木片セメント板
(屋外では要求されない) ト板(厚さ6a以上)
金属サイディングなど
通常の火災による火熱が加 (平成12年告示第1402号) 塗料
難燃合板(厚さ 仕上塗材
えられた場合に、加熱開始 準不燃材料、
5.5a以上)
、
せっこうボード
(厚 壁紙
後5分間
ボード用原紙の 塩ビ鋼板
①燃焼しないものであること さ7a 以上、
難燃材料
②防火上有害な変形、
溶融、 厚さ0.5a以下)
き裂その他の損傷を生じな
いものであること
③避難上有害な煙又はガス
を発生しないものであること
(屋外では要求されない)
104
難燃処理合板など
品目名
下地
認定条件
組成
105
NM-8574 不燃材料
不燃材料で
あること
準不燃材料
であること
難燃材料で
あること
不燃材料で
あること
準不燃材料
であること
不燃材料で
あること
準不燃材料
であること
難燃材料で
あること
複 合 型 化 粧 用 仕 上 難燃材料で
材塗り/難燃材料
あること
繊維壁材塗り/不燃
材料
繊維壁材塗り/準不
QM-9814 準不燃材料
燃材料
繊維壁材塗り/難燃
RM-9363 難燃材料
材料
RM-9362 難燃材料
NM-8572 不燃材料
有機質砂壁状塗料
塗り/不燃材料
有機質砂壁状塗料
QM-9812 準不燃材料
塗り/準不燃材料
有機質砂壁状塗料
RM-9361 難燃材料
塗り/難燃材料
複合型化粧用仕上
NM-8573 不燃材料
材塗り/不燃材料
複合型化粧用仕上
QM-9813 準不燃材料
材塗り/準不燃材料
NM-8571 不燃材料
無機質砂壁状吹付材の表面に合成樹
脂系の塗料で仕上げを行うもので、
これ
に用いる塗料は固形換算量で90g/gを
超えないこと。仕上材の厚さが3mm以
下の場合は、
下地処理材に含まれる合
成樹脂エマルションの使用量は、固形
換算量で50g/gを超えないこと。
JIS A 6909「建築用仕上塗材」の内装
水溶性樹脂系薄付け仕上塗材に規定
する品質を有するもので、有機質の固
形換算量が質量250g/g以下で、
かつ
プラスチック、
ゴム質の材料のそれぞれ
又はその和が50g/gを超えないこと。
旧認定番号
薄塗材W
複層塗材CE
複層塗材Si
厚塗材C (上塗材を用いるもの)
厚塗材Si (上塗材を用いるもの)
基材同等
第0008号
基材同等
第0005号
基材同等
第0004号
薄塗材C
薄塗材Si
薄塗材L
基材同等
厚塗材C (上塗材を用いないもの)
第0003号
厚塗材Si (上塗材を用いないもの)
厚塗材L
厚塗材G
軽量骨材仕上塗材 (無機質系)
該当する仕上塗材の種類
合成樹脂エマルション、顔料、無機質
骨材(軽量骨材を含む)
を主成分とし、薄塗材E
これに含まれる有機質の固形換算量 薄塗材S
が質量比で15%以下で、
かつ170g/g 軽量骨材仕上塗材 (有機質系)
を超えないこと。
無 機 質 砂 壁 状 吹 付 不燃材料で
セメント、
無機質骨材および無機質粘結
材塗り/不燃材料
あること
材からなり、
これに有機質接着剤を混
入するときは、
固形換算量で質量比5%
無 機 質 砂 壁 状 吹 付 準不燃材料
QM-9811 準不燃材料
以下であること。仕上材の厚さが3a以
材塗り/準不燃材料 であること
下の場合は下地処理材に含まれる合
成樹脂エマルションの使用量は固形換
無 機 質 砂 壁 状 吹 付 難燃材料で
RM-9366 難燃材料
算量で50g/gを超えないこと。
材塗り/難燃材料
あること
認定番号 区分
付表5.2 仕上塗材の防火認定概要表
付 録
106
孔等を生じない
模型箱試験
模型箱試験
(10分)
孔等を生じない
模型箱試験
模型箱試験
(5分)
不燃材料(20分)
・140kWを超える発熱速度が10秒を超えて継続しない
屋内の場合と同じ
孔等を生じない
・総発熱量が40MJ(火源の総発熱量10MJを含む)
を超えない ・試験体裏面に達するき裂、貫通
・試験体裏面に達するき裂、貫通
・総発熱量が8MJ/gを超えない
・200kW/gを超える発熱速度が10秒を超えて継続しない
発熱性試験(コーンカロリメータ)
難燃材料
孔等を生じない
発熱性試験(コーンカロリメータ)
・140kWを超える発熱速度が10秒を超えて継続しない
・総発熱量が50MJ(火源の総発熱量20MJを含む)
を超えない ・試験体裏面に達するき裂、貫通
・試験体裏面に達するき裂、貫通
・総発熱量が8MJ/gを超えない
発熱性試験(コーンカロリメータ)
・200kW/gを超える発熱速度が10秒を超えて継続しない
孔等を生じない
発熱性試験(コーンカロリメータ)
・200kW/gを超える発熱速度が10秒を超えて継続しない
準不燃材料
発熱性試験(コーンカロリメータ)
・試験体裏面に達するき裂、貫通
発熱性試験(コーンカロリメータ)
(20分)
試験不要
と
験不要)
性能が要求されない(試
時間が6.8分以上
・マウスの平均行動停止
ガス有害性試験
時間が6.8分以上
・マウスの平均行動停止
ガス有害性試験
時間が6.8分以上
・マウスの平均行動停止
ガス有害性試験
と
要求性能
防火上有害な変形、溶融、
き裂そ 避難上有害な煙又はガス
の他の損傷を生じないものであるこ を発生しないものであるこ
・総発熱量が8MJ/gを超えない
・重量減少率が30%以下
不燃材料
・炉内温度の上昇値が20K以下
不燃性試験(基材試験)
(加熱等級) 燃焼しないものであること
材料区分
屋外 準不燃材料(10分) 屋内の場合と同じ
難燃材料(5分 )
屋内
部位
付表5.3 防火材料に要求される性能と試験方法および判定基準
付 録
付 録
付表5.4 ガス有害性試験が適用されない化粧材料
基材に施す化粧の有機化合物量(接着剤を含む)
表 面 化 粧のない 木質系表面化粧が施されている基材(せっこ
化粧材料の
基材の防火
防火性能等級
性能等級
不燃材料
不燃材料
200g/g以下
準不燃材料
難燃材料
基材に施す場合
うボード等)に施す場合
不燃材料
200g/g以下
準不燃材料
100g/g以下
400g/g以下(基材の木質系表面化粧の有
不燃材料
200g/g以下
機化合物量を含む)
準不燃材料
100g/g以下
難燃材料
100g/g以下
(旧基材同等第0004号の場合)
(旧基材同等第0003号の場合)
国土交通大臣認定
国土交通大臣認定
認定番号
区分
認定番号
区分
NM−8571
不燃材料
NM−8572
不燃材料
QM−9811
準不燃材料
QM−9812
準不燃材料
難燃材料
RM−9361
有機質砂壁状塗料塗り
難燃材料
RM−9366
無機質砂壁状吹付材塗り
NPO法人湿式仕上技術センター
NPO法人湿式仕上技術センター
製造者名
製造者名
(旧基材同等第0005号の場合)
(旧基材同等第0008号の場合)
国土交通大臣認定
国土交通大臣認定
認定番号
区分
認定番号
区分
NM−8573
不燃材料
NM−8574
不燃材料
QM−9813
準不燃材料
QM−9814
準不燃材料
難燃材料
RM−9362
複合型化粧用仕上材塗り
難燃材料
RM−9363
繊維壁材塗り
NPO法人湿式仕上技術センター
NPO法人湿式仕上技術センター
製造者名
製造者名
付図5.1 防火材料の包装・容器等への表示例
107
108
耐火(通)G1007
耐火(通)G2007
耐火(通)G3007
耐火(通)W2004
FP060BM-9373
FP120BM-9377
FP180BM-9381
FP060NP-9391
耐火(通)G2006
耐火(通)G3006
FP120BM-9360
FP180BM-9361
耐火(通)G3004
耐火(通)G1006
FP180BM-9379
FP060BM-9359
耐火(通)G1004
耐火(通)G2004
FP060BM-9371
耐火(通)G3003
FP180BM-9378
FP120BM-9375
耐火(通)G1003
耐火(通)G2003
FP060BM-9370
耐火(通)C3007
FP180CN-9433
FP120BM-9374
耐火(通)C1007
耐火(通)C2007
FP060CN-9425
耐火(通)C3006
FP180CN-9413
FP120CN-9429
耐火(通)C1006
耐火(通)C2006
FP060CN-9411
耐火(通)C3004
FP180CN-9431
FP120CN-9412
耐火(通)C1004
耐火(通)C2004
FP060CN-9423
FP120CN-9427
耐火(通)C2003
耐火(通)C3003
FP120CN-9426
FP180CN-9430
耐火(通)C1003
両面軽量セメントモルタル被覆軽量鉄骨中空間仕切壁
鉄骨はり
プレキャストコンクリート板/軽量セメントモルタル合成被覆/
ALCパネル/軽量セメントモルタル合成被覆/鉄骨はり
軽量セメントモルタル被覆中空鉄骨はり
軽量セメントモルタル被覆鉄骨はり
プレキャストコンクリート板/軽量セメントモルタル合成被覆/鉄骨柱
ALCパネル/軽量セメントモルタル合成被覆/鉄骨柱
軽量セメントモルタル被覆中空鉄骨柱
軽量セメントモルタル被覆鉄骨柱
旧認定・指定番号 品目名
FP060CN-9422
新認定番号
間仕切壁
はり
はり
はり
はり
柱
柱
柱
柱
部 位
付表5.5 防火材料認定一覧表(NPO法人湿式仕上技術センター)
区 分
耐火1時間
耐火3時間
耐火2時間
耐火1時間
耐火3時間
耐火2時間
耐火1時間
耐火3時間
耐火2時間
耐火1時間
耐火3時間
耐火2時間
耐火1時間
耐火3時間
耐火2時間
耐火1時間
耐火3時間
耐火2時間
耐火1時間
耐火3時間
耐火2時間
耐火1時間
耐火3時間
耐火2時間
耐火1時間
―
―
―
―
―
―
―
―
―
備 考
付 録
109
粉じん固化剤を用いた封じ込め工法を施す耐火構造
準耐火(通)Wb2007
準耐火(通)Wb2012
QF060BE-9214
準耐火(通)Wb1023 両面軽量セメントモルタル塗り/木造・鉄骨造外壁
QF045BE-9211
QF060BE-9213
準耐火(通)Wb1014 両面軽量セメントモルタル塗り合板張/木造・鉄骨造外壁
QF045BE-9210
準耐火(通)Wb2006
準耐火(通)Wb1013 両面軽量セメントモルタル塗り/木造・鉄骨造外壁
QF045BE-9209
QF060BE-9212
準耐火(通)C2007 軽量セメントモルタル被覆/木造・鉄骨造柱
QF060CN-9023
木造・鉄骨造外壁
両面軽量セメントモルタル塗り/グラスウール充填/
木造・鉄骨造外壁
両面軽量セメントモルタル塗り/グラスウール充填/
鉄骨造外壁
両面軽量セメントモルタル塗り合板張/グラスウール充填/木造・
準耐火(通)C1015 軽量セメントモルタル塗り合板被覆/木造・鉄骨造柱
準耐火(通)C2006 軽量セメントモルタル塗り合板被覆/木造・鉄骨造柱
QF045CN-9021
QF060CN-9022
準耐火(通)C1014 軽量セメントモルタル被覆/木造・鉄骨造柱
―
粉じん固化剤を用いた封じ込め工法を施す耐火構造
QF045CN-9020
FP030RF-9321
粉じん固化剤を用いた封じ込め工法を施す耐火構造
粉じん固化剤を用いた封じ込め工法を施す耐火構造
粉じん固化剤を用いた封じ込め工法を施す耐火構造
―
粉じん固化剤を用いた封じ込め工法を施す耐火構造
粉じん固化剤を用いた封じ込め工法を施す耐火構造
―
FP060FL-9121
FP120FL-9122
―
―
FP030NE-9295
FP060NE-9296
―
―
FP120BM-9383
FP180BM-9384
粉じん固化剤を用いた封じ込め工法を施す耐火構造
粉じん固化剤を用いた封じ込め工法を施す耐火構造
―
―
FP180CN-9436
FP060BM-9382
粉じん固化剤を用いた封じ込め工法を施す耐火構造
―
FP120CN-9435
粉じん固化剤を用いた封じ込め工法を施す耐火構造
―
旧認定・指定番号 品目名
FP060CN-9434
新認定番号
外壁
外壁
外壁
外壁
外壁
外壁
柱
柱
柱
柱
屋根
床
床
外壁
外壁
はり
はり
はり
柱
柱
柱
部 位
付表5.5 防火材料認定一覧表(NPO法人湿式仕上技術センター)
(つづき)
区 分
ノンラス工法
ラス工法
ラス工法
ノンラス法
ノンラス工法
ラス工法
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
備 考
ラス工法
ノンラス工法
準耐火1時間 ラス工法・通気工法
準耐火1時間
準耐火1時間
準耐火45分 ラス工法・通気工法
準耐火45分
準耐火45分
準耐火1時間
準耐火1時間
準耐火45分
準耐火45分
耐火30分
耐火2時間
耐火1時間
耐火1時間
耐火30分
耐火3時間
耐火2時間
耐火1時間
耐火3時間
耐火2時間
耐火1時間
付 録
防火第1393号
不燃第1040号
PC030BE-9192
NM-8570
110
有機質砂壁状塗料塗り/不燃材料
複合型化粧用仕上材塗り/不燃材料
繊維壁材塗り/不燃材料
粉じん固化剤
―
―
NM-8575
QM-9815
粉じん固化剤
繊維壁材塗り/難燃材料
RM-9363
基材同等第0008号 繊維壁材塗り/準不燃材料
NM-8574
QM-9814
複合型化粧用仕上材塗り/難燃材料
RM-9362
基材同等第0005号 複合型化粧用仕上材塗り/準不燃材料
NM-8573
QM-9813
有機質砂壁状塗料塗り/難燃材料
RM-9361
基材同等第0004号 有機質砂壁状塗料塗り/準不燃材料
NM-8572
QM-9812
無機質砂壁状吹付材塗り/難燃材料
RM-9366
QM-9811
無機質砂壁状吹付材塗り/不燃材料
軽量セメントモルタル
軽量セメントモルタル塗り/木造・不燃下地外壁
軽量セメントモルタル塗り合板張/木造・不燃下地外壁
軽量セメントモルタル塗り/木造・不燃下地外壁
基材同等第0003号 無機質砂壁状吹付材塗り/準不燃材料
防火第1181号
PC030BE-9191
NM-8571
防火第1180号
準耐火(通)Re2009 軽量セメントモルタル塗り/木造・鉄骨造軒裏
QF060RS-9110
PC030BE-9190
準耐火(通)Re2008 軽量セメントモルタル塗り/木造・鉄骨造軒裏
準耐火(通)Re2007 軽量セメントモルタル塗り合板張/木造・鉄骨造軒裏
QF060RS-9108
QF060RS-9109
準耐火(通)Re1013 軽量セメントモルタル塗り合板張/木造・鉄骨造軒裏
準耐火(通)Re1014 軽量セメントモルタル塗り/木造・鉄骨造軒裏
QF045RS-9106
QF045RS-9107
QF045RS-9105
品目名
旧認定・指定番号
準耐火(通)Re1012 軽量セメントモルタル塗り/木造・鉄骨造軒裏
新認定番号
―
―
―
―
―
―
―
外壁
外壁
外壁
軒裏
軒裏
軒裏
軒裏
軒裏
軒裏
部 位
付表5.5 防火材料認定一覧表(NPO法人湿式仕上技術センター)
(つづき)
区 分
備 考
ノンラス工法
ラス工法
ラス工法
ノンラス工法
準不燃材料
不燃材料
難燃材料
準不燃材料
不燃材料
難燃材料
準不燃材料
不燃材料
難燃材料
準不燃材料
不燃材料
難燃材料
準不燃材料
不燃材料
不燃材料
防火構造
防火構造
防火構造
―
―
―
―
―
―
―
ラス工法・通気工法
ノンラス工法
ラス工法
準耐火1時間 ラス工法・通気工法
準耐火1時間
準耐火1時間
準耐火45分 ラス工法・通気工法
準耐火45分
準耐火45分
付 録
付 録
111
建築用仕上塗材ハンドブック
2007年版
編集・発行
日本建築仕上材工業会
〒101-0024 東京都千代田区神田和泉町1-7-1 扇ビル
TEL03
(3861)
3844 FAX03
(3851)
0706
h
t
tp
://www.
nsk-web.
o
rg/
大阪 TEL 06
(6373)
0228 名古屋 TEL052
(300)
2222
<建築用仕上塗材ハンドブック2007年版編集委員>
河辺寿正(委員長/スズカファイン1) 福岡高征(神東塗料1)
澤田憲正(関西ペイント販売1)
梅津晃庸(1トウペ)
高橋良和(菊水化学工業1)
曽我元昭(元日本ペイント販売1)
沖野喜佳(恒和化学工業1)
森脇貴志(日本化成1)
井上照郷(日本建築仕上材工業会)
平成19年9月1日 第1刷発行
編 集
制作協力
日本建築仕上材工業会 編集委員会
1工文社
非売品
不許複製・禁無断転載
112