INFORMATION

世界の本屋さん
vol.33
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ルクセンブルク
エルンスター書店
を巻くように螺旋階段がある。柱には各
階売場案内が書かれていた。その表示は
、 、 、 、 と な っ て い た。 各
階にレファレンス機能があり、従業員が
待機していた。 の子どもの本売場が印
象的であった。絵本とおもちゃ、滑り台
が融合し、やさしいこども広場が演出さ
れていた。
各階から上下の階が見える開放的な売
場風景は、吹き抜け様式だけに許された
ことである。売場構成は 階は文学、文
藝とバーゲン売場であった。 こどもの
本、 芸術、音楽 、 は考える本を中
心に重厚な雰囲気の売場であった。内容
は人間科学、コンピュータ、言語、文化、
心理、詩、社会科学であった。売場隅に
エレベータがあり、昇降に便利であった。
ノセ事務所
能勢
仁
ルクセンブルクは南北八十二キロメー
ト ル、 東 西 五 十 七 キ ロ メ ー ト ル の 国 で、
神 奈 川 県 と 同 じ 位 で あ る。 人 口 は 四
十八万人。ドイツ・ベルギー・フランス
に囲まれ、首都ルクセンブルクからパリ
までは車で三時間位で行ける。税率が低
い国で、数多くの国外企業の誘致に成功
し て お り、 世 界 最 高 水 準 の 経 済 体 質 で、
国民総所得は世界第四位である。言語は
仏、独、ルクセンブルク語の三つが公用
語であるが、法令は仏語である。市内の
書店ではフランス書専門店が多かった。
エルンスター書店は五層の市内一番の
総合書店であった。地下二階、地上三階
で約二〇〇坪位の書店である。この書店
の特色は全館吹き抜けということであ
る。店の中央に真四角で、真っ赤な五十
センチ角の太い柱が立っている。その柱
(表紙題字・陳舜臣)
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9月
秋 の 長 雨 が や っ と あ が り、 久 し
世界の本屋さん
﹁書標﹂歳時記
月
著書を語る
○ ﹁著書を語る﹂
1
書標・書評
﹃天皇制の隠語﹄ほか
田口
久美子
2
い て 納 戸 を 片 づ け た。 古 い 家 に 古
特集
〝ひとり出版社〟を興す
ぶ り に 青 空 が の ぞ い た 日、 思 い つ
い 人 間 が 永 く 住 ん で い る と、 い つ
会
科
科
学
コ ン ピ ュ ー
学
学
医
タ
書
ひとりの時間、つながるかつながらないか
今月のおすすめ
然
20
18
てゆく。︱︱派手になった着物、帯、
社
自
22
いただきものの茶器、花瓶、タオル、
手 拭 い ⋮⋮ 隅 の 茶 箱 に は 干 し た ぜ
ん ま い、 ひ じ き と 一 緒 に 糒 の 缶 が
入 っ て い る。 ︱︱ 手 製 の 非 常 食 糧
23
本屋うらばなし
﹁○○書店員の会﹂
※表示価格はすべて税抜き価格です。
インフォメーション
読者から
人 文 科 学
文 学 ・ 文 芸
術
文 庫 ・ 新 書
芸
用
書
実
地 図 ・ 旅 行 書
童
書
語 学 ・ 辞 典
児
語学書の棚より①
25
28
⋮⋮残りご飯を焼いたものである。
沢村貞子著
﹃わたしの献立日記﹄︵中公文庫︶より
17
の 間 に か、 い ろ ん な も の が た ま っ
4
10
19
16
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26
23
14
24
31
−1−
9 33
6
509
著書を語る
﹁著書を語る﹂
○
︱︱
ジ ュ ン ク 堂 池 袋 店 に 勤 務 し て 十 五 年 以 上 が 経 つ、 本
書 が 四 冊 目 の﹁ 書 店 ま わ り の 本 ﹂ に な る。 書 き 終 わ っ
て い つ も 味 わ う の は、 自 分 が 携 わ っ て い る 職 業 の﹁ 言
葉 と い う 道 具 ﹂ を 媒 介 に 表 現 で き る 幸 せ で あ る。 だ が
反 面、 出 版・ 書 店 業 界 の 大 き な 変 化 が ボ デ ィ ブ ロ ー と
な っ て 私 に 響 く。 単 純 に お 金 の 話 に し て も、 一 九 九 六
年の出版物売上高約二兆七千億円から二〇一三年の約
一 兆 六 千 億 円 へ と 下 降 す る 一 方 で あ る。 あ あ 失 わ れ た
一 兆 円、 ユ ニ ク ロ の 年 間 売 上 と ほ ぼ 同 額、 時 代 を 表 し
ているといえば、哀しいかな、その通り。
このボディブローは、次の世代の書店員たちへの﹁悔
恨 ﹂ と な っ て 私 を 責 め る。 私 が こ の 書 店 業 界 に 入 っ た
七〇年代は、日本の産業全体が上向きであったこともむ
ろん反映してはいるのだが、出版・書店界全体が熱気に
あふれていた。
﹁書棚をキチンとつくり維持すれば、評
価してくれるお客さんが必ずいる、売上も上がる﹂と私
たちが信じられた時代であったのだ。
二十一世紀に入り、アマゾン上陸とほぼ同時期に︵な
んという時期の一致 ! ︶、売上下降が止まらない書店業
田口
久美子
界 は 変 わ り 始 め た。 削 減 さ れ る 一 方 の 人 員 体 制︵ 社 員
一 人 当 た り に 何 人 の ア ル バ イ ト を つ け る か、 を 経 営 側
は探り始める︶、延びる営業時間、そして棚づくりとい
え ば、 イ ン タ ー ネ ッ ト 導 入 に よ る 検 索 機 能 充 実 で、 よ
り 探 し や す い 品 揃 え か ら な る 棚 構 成 へ と 向 か う。 多 く
の 要 因 が か ら ま っ て い る、 だ が 誰 で も が 分 か る、 ず ば
り﹁ イ ン タ ー ネ ッ ト ﹂ で あ ろ う。 世 の 中 は﹁ 本 ﹂ と い
う形の情報ツールを﹁遅い﹂とみなしている。本のスピー
ド が イ ン タ ー ネ ッ ト に か な う は ず が な い。 そ し て そ の
イ ン タ ー ネ ッ ト は、 ア マ ゾ ン に よ る 販 売 ル ー ト の 君 臨
と電子書籍の台頭をもたらした。
書店もまた日本の小売産業のワンピースでしかない。
他の業界と同様に時代の波をかぶっているのだ。
す で に﹁ 世 間 の 定 年 ﹂ と い う 歳 を 過 ぎ て、 指 で 数 え
る ほ ど の 書 店 人 生 し か 残 さ れ て い な い 私 に は、 私 を 生
か し て く れ た﹁ 書 店 業 界 ﹂ の 現 状 を 書 き し る す 義 務 が
あ る の で は な い か、 と 勝 手 で は あ る が 考 え た。 私 が 次
世代に引き継げなかった﹁書店の熱気﹂への悔恨を胸に、
主にジュンク堂に勤務する書店員たちをはじめとして、
−2−
509
丸 善 丸 の 内 本 店、 リ ブ ロ 池 袋 店 の 社 員、 そ し て 時 代 の
先 端 と い わ れ る﹁ 電 子 書 籍 ﹂ に つ い て は 日 本 出 版 イ ン
フラセンターの専務理事にインタビューをした。
こ こ ま で お 読 み の 読 者 は、 本 書 が 先 を 悲 観 し て い る
書店員の暗い話であろう、と推測されるかもしれない、
だ が そ れ は 違 う。 な ん と 彼 ら は 現 状 を 認 め た う え で、
先 行 き の 不 安 を 語 り な が ら も、 書 店 の 仕 事 は 楽 し い、
と 語 っ て く れ た の だ。 た と え ば ジ ュ ン ク 堂 池 袋 店 の 社
員 は、 十 一 時 ま で の 営 業 で 身 体 的 に も こ た え る、 と 言
い な が ら も、 こ ん な ふ う に 棚 を つ く っ た ら、 お 客 さ ん
が こ う 反 応 し て く れ た、 と か、 こ ん な イ ベ ン ト を 企 画
し た ら 反 応 が 面 白 い ほ ど あ っ た、 と か、 こ う い う 意 図
でこんな棚をつくろうと思うのだけれど、どうだろう、
な ど と、 楽 し そ う に 話 す。 リ ブ ロ 池 袋 店 の 児 童 書 の 担
当 者 は﹁ 児 童 書 は 絶 対 電 子 書 籍 に は 負 け ま せ ん、 な ぜ
な ら ー﹂ と き っ ぱ り と 断 言 す る。 震 災 で 被 災 し た 仙 台
ロ フ ト 店 の 社 員 は、 お 客 さ ん が 駆 け 付 け て く れ て 自 分
の こ と の よ う に 心 配 し て く れ た、 と 語 る。 私 は 彼 女 た
ちの、複雑ではあるが時折見せる笑顔に、﹁本を売るこ
と の 誇 り ﹂ を み た。 本 書 を 記 し て、 そ の 誇 り を 皆 さ ん
に届けられたことに喜びをかみしめている。
最 後 に、 大 型 書 店 を 対 象 に 取 材 し た の は、 気 心 が 知
れ て イ ン タ ビ ュ ー し や す い、 と い う 安 易 な 思 い が あ っ
た こ と は 認 め る が﹁ 大 型 書 店 に 陳 列 さ れ て い る さ ま ざ
ま な ジ ャ ン ル の 本 が、 日 本 文 化 の 多 様 性 の 一 端 を 表 し
て い る ﹂ と 信 じ て い る か ら だ。 本 書 で 取 り 上 げ た ジ ャ
ン ル は、 ジ ュ ン ク 堂 取 扱 い 書 目 の お お よ そ 半 分 で し か
ない。
そ し て も う 一 つ 最 後 に、 日 本 で は 今 や 五 冊 に 一 冊 の
書 籍 が ア マ ゾ ン で 販 売 さ れ て い る。 フ ラ ン ス で は 全 国
に 散 ら ば る 書 店 が﹁ 文 化 の 多 様 性 を 保 つ 場 ﹂ で あ る と
い う 考 え の も と に、 与 野 党 こ ぞ っ て 書 店 擁 護 の た め に
﹁反アマゾン法﹂を成立させたという。さらに未払いの
税 金︵ 消 費 税 等 ︶ を 徴 収 す る 方 針 に ア マ ゾ ン は 従 わ ざ
る を 得 な い、 と い う 記 事 も︵ 業 界 誌 で は あ る が ︶ 確 認
した。常にアメリカの顔色を気にしている、極東日本、
日 本 の 出 版・ 書 店 界 は こ れ か ら ど う 変 わ っ て い く の だ
ろ う か?
両 国 と も、 イ ン タ ー ネ ッ ト、 ア マ ゾ ン が 台
風の目であることは間違いないのだが。
『書店不屈宣言
わたしたちはへこたれない』
筑摩書房・1,500 円(税別)
−3−
後発資本主義である明治維新以降の日本の
性格をめぐり、
共産党系﹁講座派﹂理論家と、
そこから分岐した﹁労農派﹂理論家たちの
悪と罪の在り処を追求し続けてきた著者
装丁が目にとまる。
のだと言う。稲川方人や安里ミゲルら詩人
の問題点は、あくまで﹁天皇制﹂にあった
並んでいるように見えて、どこかで繋がっ
バラエティ豊かな作品がそれぞれ独立して
い前衛的なもの、ユーモア溢れるものまで、
官能的なものから﹁人﹂が一切登場しな
が、七年にわたって書きためた短編集。
の 名 が あ げ ら れ る の は、
﹁天皇﹂の名の下
あ い だ で 交 わ さ れ た﹁ 日 本 資 本 主 義 論 争 ﹂
絓
航思社・三五〇〇円︵税別︶
秀実著
前著﹃反原発の思想史﹄における、反資
﹃天皇制の隠語﹄
本主義としての世界同時的な反原発の理論
に進められた言文一致=俗語革命を経て誕
ガー︶られるようにして書かれたものだと
﹁ 福 島 ﹂ に 接 し、﹁ 急 き ︲ 立 て ﹂︵ ハ イ デ ッ
以降の言
加担した田山花袋の﹃蒲団﹄に対する中村
に見出したからである。市民社会の擬制に
生した市民社会への、抵抗の可能性をそこ
に描かれている。決して後味の良い作品ば
も な く、 そ こ に 生 き た ひ と り の 人 間 が 緻 密
をテーマにしつつも、政治論を語るわけで
表 題 作﹃ A ﹄、 そ し て﹃ B ﹄ で は、 戦 争
ているような、物語の調和がある。
および
言 う。 そ し て、﹁ 在 野 ﹂ の 人 々 と の か か わ
光夫の﹁怒り﹂を、稲川が3・
は、あとがきにあるように、3・
りが、思考を規定する﹁急き︲立て﹂への
立てて個々にあげつらわずとも、市民社会
ことから書かれた。そのような危機は取り
﹁天皇﹂を呼び寄せてしまっているという
政治に抗う政治性を提示できず、無防備に
による﹁新しい社会運動﹂が、ネオリベの
﹃ 天 皇 制 の 隠 語 ﹄ は、 狭 義 で の﹁ 在 野 ﹂
抵抗を可能にした。
のだということを痛感させられる。 ︵涼︶
大してゆく﹁暴力﹂への抵抗を可能にする
続 こ そ、
﹁ 天 皇 ﹂ の 名 の 下 に、 ま す ま す 拡
る﹁ 彼 方 へ の サ ボ タ ー ジ ュ﹂
︵稲川︶の継
れた﹁怒り﹂に満ちており、その噴出によ
自体もまた高度な技術︵知識︶に裏打ちさ
にも見出すのだが、そのように評する本書
人間の同意﹄二〇一三年︶だと評する文章
説に対して、﹁批評の文体さえ無惨﹂
︵
﹃詩と、
ない。奇妙な設定でありながら、そこに生々
いる危うい感情であるような気がしてなら
は、我々誰しもが心のどこかに住まわせて
から見ると滑稽で時に不気味な行動や執着
てしまうのだ。
つい次の世界へのページを恐る恐るめくっ
見出せそうな気がして、怖いもの見たさに
かりではないが、暗さの中に何かの本質を
中村文則著
長編では﹁死﹂や﹁不条理﹂といったテー
しては大変嬉しい。
少し垣間見ることができたようで、読者と
説的な作品となっており、著者の頭の中を
は、作家としての覚悟や苦悩を描いた私小
最 後 に 掲 載 さ れ て い る﹃ 二 年 前 の こ と ﹄
しい現実を感じるのである。
この作品の登場人物たちにみられる、傍
の内部における愚劣や、現政権や民間の右
れゆえ本書の主題は、主に小林秀雄や中村
光夫、柄谷行人らの文学史観を参照した現
代資本主義批判の提示、および﹁日本資本
﹁ 一 度 の 過 ち も せ ず に、 君 は 人 生 を 終 え
河出書房新社・一四〇〇円︵税別︶
題化が必要となったのは、今日の政治性と
帯に書かれた問いかけと、白地の繊細な
られると思う?﹂
主義論争﹂の問い直しである。それらの問
﹃A﹄
翼化を見れば容易にわかることである。そ
11
課 題 を 共 有 し て い る か ら に 他 な ら な い。
一 九 二 〇 年 代 後 期 か ら 三 〇 年 代 に か け て、
−4−
11
の物事の受け止め方の違いが、自分の寿命
陣営は、自由を否定し全体主義へと至る﹁科
上記のテーマ、すなわち﹁同じものごとで
だが、ウエーバーやハイエクら自由主義
学 主 義 ﹂﹁ 計 画 主 義 ﹂ と し て、 両 者 を 一 括
も人によって受け止め方が違うのは何故な
マの印象が強い著者によって浮き彫りにさ
れた、十三の﹁生﹂の物語。
りにしてしまう。それは、経済学にとって、
のか﹂ということについて、長年研究して
本書で著者は、物事に対して楽観的な人
心理学者で、神経科学者でもある著者は、
﹃A ﹄というタイトルに込められた意味
そ し て 人 類 に と っ て 大 き な 不 幸 で あ っ た。
きた。そして、その結果をまとめたのが本
にまで影響を与えるのだとしたら⋮⋮。
を知るためにも、是非、あとがきまで読ん
その結果、資源消費の不可逆性を無視して
﹃経済的思考の転回﹄
︵Y︶
膨 張 し 続 け、﹁ 永 久 機 関 ﹂ た る こ と を 自 ら
書である。
で欲しい。
の宿命とする資本主義が、ソ連を中心とし
いま人類は、世界の全てを数値化し、コ
験 を 何 度 も し て お り、 逆 に 悲 観 的 な 人 は、
ことに、楽観的な人は幸運に見舞われる経
まで変わってくると述べている。驚くべき
と悲観的な人では、身に降りかかる出来事
ンピュータの計算能力を利用して、人の生
別離や失業など、ネガティブな経験を数多
た社会主義陣営の崩壊を受けて暴走を加速
られることは、甚だ自明に思えるが、近現
命も自然災害も国家破綻さえも証券化しな
桑田
以文社・三〇〇〇円︵税別︶
学著
︿ 人 間 の 経 済 ﹀ が、 多 様 な 生 物 種 を 含 む
代の経済学は、むしろその現実を脇に置い
が ら、 た だ 利 益 の 増 大 だ け を 眼 前 に 置 き、
させたからである。
て、 効 率・ 競 争・ 成 長 を 志 向 す る︿ 市 場 ﹀
くしていることが分かったのである。
自然界の健全な循環と再生産によって支え
というロジックと共に発展した。
破滅への道を突き進んでいる。
始めた時代にあって、経済学は力学を範と
べ く、 忘 れ ら れ た 経 済 思 想 を 掘 り 起 こ そ う
閉塞状況にある現代世界に光明を見出す
そしてそれにどう反応するかによって、実
そ う、 あ な た が も の ご と を ど う 見 る か、
そして、自然科学こそ学問の王道とされ
し、現実世界の質的な部分を捨象する数学
その強さのバランスによって物事を楽観的
ブレイン︶は、
すべての人間に備わっており、
楽観︵サニーブレイン︶と悲観︵レイニー
である、と思ったあなた、悲しむことはない。
か、それとも楽観的だろうか。自分は悲観的
あなたは悲観的な考え方の持ち主だろう
際に起きることが変化するのである。
とする著者の企図に共感する。
エレーヌ・フォックス著
﹃ 脳科学は人格を変えられるか?﹄
︵フ︶
的方法論を採用したのである。
実は同じ時期、ゲデス、ソディ、ノイラー
トらは、熱力学の第二法則=エントロピー
増 大 則 を 重 視 す る、 も う ひ と つ の 経 済 学、
﹁ も の ご と に は 良 い も 悪 い も な い。 そ れ
に捉えるか悲観的に捉えるかを決める。そ
文藝春秋・一六〇〇円︵税別︶
彼らによる経済学は、我々を生かす源泉
を決めるのは当人の考え方ひとつだ﹂ウィ
更には経済政策を模索していた。
は 貨 幣 で は な く、 太 陽 エ ネ ル ギ ー の 恩 恵 を
して、これらは脳の中でも最も可塑性が高
い︵つまり変化しやすい︶部分なのである。
リ ア ム・ シ ェ イ ク ス ピ ア の﹃ ハ ム レ ッ ト ﹄
脳科学は人格を変えられるのである。 ︵田︶
受けた草木の葉であると、主張する。それ
この言葉が現実の人生にもそっくりその
に出てくる台詞である。
ままあてはまるのだとしたら、そして、そ
は、出来事の不可逆性を無視する一般均衡
理論を到達点とする力学系の﹁近代経済学﹂
とは、完全に別物だった。
−5−
電話を引いて、机と鉛筆があれば始めら
か ら 珍 し い こ と で は あ り ま せ ん で し た。
ひとりで出版社を興す、というのは昔
書院﹂の舞台裏﹄にまとめられ、現在ま
の 裏 だ よ り ﹂ は、﹃ ひ と り 出 版 社﹁ 岩 田
刊行のたびに綴るコラム﹁新刊ニュース
行なっています。代表の岩田博氏が新刊
民俗学関係の専門書を中心に出版活動を
お よ び 使 用 書 体 リ ス ト 付 き。 第 十 回 竹
れる、とさえ言われてきたのです。時が
尾 賞 デ ザ イ ン 書 籍 部 門・ 審 査 員 特 別 賞
でに三冊が既刊です。
とり出版社〟はスタートし、彼らが精魂
& 第 四 十 八 回 造 本 装 幀 コ ン ク ー ル・ 日
本印刷産業連合会会長賞W受賞 ! ︾
移 り、 電 話 が ス マ ー ト フ ォ ン に な っ て、
を傾けて作り上げた本が、私たちのもと
烏有書林は二〇〇八年十二月に設立さ
机の上にはパソコンが置かれる現在に
今月はそんな、ひとりで始めてひとり
に届けられるのです。
烏有となる著作を掬い上げる文芸・人文
﹃高岡重蔵活版習作集﹄
で続けている出版社の本を特集します。
書出版社﹂との文言が掲げられています。
︵烏有書林・高岡重蔵著・税別三八〇〇円︶
﹃巫 女 シ
・ ャーマンと神道文化
日中の
比較と地域民俗誌の視角から﹄
代 表 は 上 田 宙 氏。 既 刊 は 文 芸 書 が 六 点、
なっても、新たな版元が次々と生まれて
︵岩田書院・高見寛孝著・税別三〇〇〇円︶
タイポグラフィーに関する書籍が四点
います。必要なのはたくさんの社員でも
︽佐 々 木 宏 幹 の シ ャ ー マ ニ ズ ム 論 を 取 り
の、計十点。
高 岡 重 蔵 の 活 版 印 刷 作 品 集。 作 品 解 説
込 み、 柳 田 國 男 か ら 桜 井 徳 太 郎 に 至 る
﹃食べること考えること﹄
︽優 れ た 欧 文 組 版 で 知 ら れ る 嘉 瑞 工 房・
巫 女 研 究 の 学 統 を 継 承。 一 章 は シ ャ ー
潤沢な資金でもなく、本を出したいとい
マ ニ ズ ム と 神 道 と の 関 係。 二 ∼ 四 章 は
︵共和国・藤原辰史著・税別二四〇〇円︶
う思い。そんな個人の強い気持ちから〝ひ
中 国 の 民 俗 文 化 と の 比 較。 五 章 は 宗 教
︽ナ チ ス・ ド イ ツ、 あ る い は 明 治 時 代 の
発とTPP で揺れる日本の食の未来
貧 民 窟 で 食 べ ら れ て い た も の は? 原
れました。公式サイトには﹁ともすれば
者と彼らを取り巻く依頼者としての地
岩田書院は一九九三年六月創立、歴史・
域住民との相互関係。︾
−6−
カー+A・クマールによるコミック﹃総
時発売しました。次の刊行予定は、J ・
と都甲幸治﹃狂喜の読み屋﹄の二点を同
平尾直氏が今年四月に創業。六月に本書
共和国は、元水声社の編集者である下
うながす多彩なテクストの集成。︾
活文化をめぐってわたしたちに共考を
む ぎ だ し、 エ ネ ル ギ ー、 生 命 倫 理、 生
は? 歴 史 の 細 部 か ら 新 し い 物 語 を つ
ア文学専門の出版社。一九八八年に島田
群像社は、一九八〇年に発足したロシ
と桜の国を結ぶ言葉の架け橋。︾
語 で つ づ っ た エ ッ セ イ。 ひ ま わ り の 国
人々の思い出と故郷の街の魅力を日本
学 で 学 ん だ 女 性 が い ま、 忘 れ ら れ な い
刻 ま れ た 子 供 時 代 を す ご し、 日 本 の 大
ルノブィリ原発事故の記憶が深く心に
︽ウクライナの首都キエフに生まれ、チェ
オリガ・ホメンコ著・税別一二〇〇円︶
排 外 主 義 が 跋 扈 す る 現 在、 こ れ ま で の
か く も 資 本 主 義 に 屈 し て し ま う の か。
ト ⋮⋮。 さ ま ざ ま な﹁ 運 動 ﹂ は、 な ぜ
﹁ 新 し い 社 会 運 動 ﹂、 文 学、 映 画、 ア ー
︽﹁天皇制﹂の問題、公共性/市民社会論、
︵航思社・絓秀実著・税別三五〇〇円︶
﹃天皇制の隠語﹄
く出版社を興した変わり種の人物です。
野直人氏は、出版関係での勤務経験がな
当する子会社に入社したという代表の荻
大工をやりたくて放送局の美術部門を担
航思社は大村智氏が創業し、二〇一二
のあらたな座標軸を描く。︾
統はヒップスター﹄とのことです。
パ ヴ ロ ワ﹃ ふ た つ の 生 ﹄、 ブ ー ニ ン﹃ 村
年に出版活動を開始。市田良彦﹃存在論
思 想・ 言 説 を 根 底 か ら 洗 い 直 し、 闘 争
/ ス ホ ド ー ル ﹄、 ポ チ ョ ム キ ン﹃ 私 ﹄ な
進矢氏が代表取締役に就任し、現在はひ
︽職場の先輩がタヌキになる、ダイオウイ
ども最近の新刊です。
と り 出 版 社 と な っ て 十 四 年 目 と の こ と。
カが襲ってくる、冷蔵庫に中国をしまう、
﹃ カイヨワ幻想物語集 ポンス・ピラトほか﹄
著・税別一七〇〇円︶
父親がキリンになる、人々が南米からス
的 政 治 ﹄、 松 田 政 男﹃ 風 景 の 死 滅
増補
新版﹄、J・ランシエール﹃アルチュセー
﹃ カ ス テ ラ ﹄︵ ク レ イ ン・パ ク・ミ ン ギ ュ
ワンボートで空を飛んで韓国に来る、あ
︵景 文 館 書 店・ ロ ジ ェ・ カ イ ヨ ワ 著・ 税
政治経済関連など、幅広い分野の本を刊
は、一九九七年以来文芸・教育・絵本・
吉祥寺に本社を置く図書出版クレイン
ピラト﹂のほか、﹁ノア﹂、﹁怪しげな記
ち ら を 選 ぶ の か? 表 題 作﹁ ポ ン ス・
安 定 か? ロ ー マ の 役 人、 ピ ラ ト は ど
エ ル サ レ ム の 民 衆。 正 義 か? 政 治 的
︽無 実 の イ エ ス を 十 字 架 に か け よ と 騒 ぐ
言と許されぬ恋。今初めてそのすべてが
やかな表舞台の裏に秘められた、父の遺
︽鮮烈なデビューから名曲誕生にいたる華
︵小径社・丸山圭子著・税別一六八〇円︶
﹃どうぞこのまま﹄
に刊行しています。
ル の 教 え ﹄、 S・ ジ ジ ェ ク﹃ 2 0 1 1
る男がハルク・ホーガンにヘッドロック
行しています。特に日韓関係に関する﹃金
憶﹂、﹁宿なしの話﹂の短篇三作を収録。︾
語られた ! 日々の音楽活動や交友関
危うく夢見た一年﹄などの人文書を中心
鶴泳作品集︵全二巻︶﹄、朴裕河﹃ナショ
景文館書店は、二〇一二年十二月に﹃吉
別一二〇〇円︶
ナ ル・ ア イ デ ン テ ィ テ ィ と ジ ェ ン ダ ー﹄
田知子選集I﹄を処女出版。大学卒業後、
をかけられる︱︱。奇想の短篇集。
︾
などが目を引きます。
﹃ウクライナから愛をこめて﹄︵群像社・
−7−
した。
色の一冊を取り上げさせていただきま
文学史に関わるもの。本フェアでは、異
五点で、本書以外はすべて日本史/日本
行なっていた稲葉義之氏が代表。既刊は
書店で学習書・検定教科書の編集などを
二〇一〇年十月設立の小径社は、桐原
性差別事件資料集成﹄、﹃日本消費者問題
害対策・環境保全委員会資料﹄、﹃日本女
連 の 学 術 出 版 社。﹃ 日 本 弁 護 士 連 合 会 公
題・社会問題の資料集、考古・歴史学関
二〇〇四年創立のすいれん舎は環境問
で歴史的、文化的に紐解いた傑作。
︾
から現代のアダルト産業における緊縛ま
はじめ、結び縛ることの持つ奥深い意味
いる日本の緊縛文化についてその起源を
けている。近年西洋世界で人気を博して
︽緊縛が西洋でアートとして高い評価を受
全甲社は、代表の高橋洋子氏の祖父で
朝刊﹄を掲載。︾
災 区 域 図 ﹄ と﹃ 東 京 日 日 新 聞 九 月 二 日
写真にコメントを付記し、﹃東京市大震
む 四 十 ペ ー ジ で 構 成。 復 刻 に あ た り、
タイトルがついた二十五枚の写真を含
︽関 東 大 震 災 の 写 真 を 復 刻。 そ れ ぞ れ に
﹃復刻写真集
大正大震災号﹄
︵全甲社・高橋五山編・税別一七〇〇円︶
注釈史の世界﹄など。
の 理 論 と 実 践 ﹄、 日 向 一 雅 編﹃ 源 氏 物 語
仏教思想﹄、小川哲哉﹃主体的な︿学び﹀
係、震災への思いなど。その他、十二編
﹃定本 想像の共同体 ナショナリズムの
起源と流行﹄︵書籍工房早山・ベネディ
基礎資料集成﹄などが大きな仕事として
﹃中世絵画のマトリックスⅡ﹄
挙げられます。
の作品の復刻を中心に手がける版元で
教育紙芝居の生みの親である高橋五山氏
のポエムや数多くの写真を掲載。
︾
クト・アンダーソン著・税別二〇〇〇円︶
に 書 き 下 し 新 稿﹁ 旅 と 交 通 ﹂ を 加 え た
︽ナ シ ョ ナ リ ズ ム 研 究 の 新 古 典。 増 補 版
十九編による論文集。カラー口絵、﹁Ⅰ
い調査研究に基づく新知見を結集した
︽﹁大画面説話画の総合研究﹂の成果、広
︵土曜社・meme 著・税別一八七〇円︶
﹃3着の日記meme が旅したRIGA﹄
刻版です。
社と同名。本書は、児童誌の増刊号とし
す。社名も、五山氏が経営していた出版
︵青
舎・ 佐 野 み ど り・ 加 須 屋 誠・ 藤 原
決 定 版。 近 年 文 学・ 言 語 研 究 に 重 要 な
二〇〇六年四月にスタートを切った書
ならず文学研究においても必読の書。︾
大画面説話画の構造と様態﹂、﹁Ⅱ儀礼・
︽三 着 の 白 い ド レ ス が ラ ト ビ ア 共 和 国 の
て一九二三年十月に発刊されたものの復
籍工房早山の早山隆邦氏は、日本に初め
図像・思想﹂、﹁Ⅲメディアの交差、イメー
重雄編・税別六八〇〇円︶
て 紹 介 さ れ た﹃ 想 像 の 共 同 体 ﹄︵ リ ブ ロ
ジの輻輳﹂、﹁Ⅳ原基と編成﹂。︾
示 唆 を 含 む 研 究 と し て、 社 会 科 学 の み
ポート・一九八七年︶の担当編集者であ
﹃緊縛の文化史﹄︵すいれん舎・マスター
た人物です。
の書籍は、小林真由美編﹃日本霊異記の
している版元です。二〇一四年刊行の他
年から日本文学・教育学の専門書を出版
青 舎の代表は大貫祥子氏。二〇〇七
こ の ド レ ス を と り ま く 旅 の 記 録 を、 絵
着のダイアリードレス﹂ができあがる。
イングが描き足され、街を記憶する﹁三
日記を記し、出会った人々の手でドロー
首 都 リ ガ へ 旅 立 つ。 滞 在 中、 ド レ ス に
り、その再刊﹃増補
想像の共同体﹄︵N
TT出版、一九九七年︶の編集も手がけ
〝K〟著・税別二八〇〇円︶
−8−
︽い ま な お 多 く の 作 家 た ち に 影 響 を 与 え
︵夏葉社・小島信夫著・税別二二〇〇円︶
﹃ラヴ・レター﹄
ト﹄など、十五冊の既刊書籍があります。
ミル・マヤコフスキー﹄、﹃背骨のフルー
叢書﹃ズボンをはいた雲﹄、﹃悲劇ヴラジー
伝﹄、﹃獄中記﹄の復刻、マヤコフスキー
に創業。大杉栄の﹃日本脱出記﹄、﹃自叙
土曜社は、豊田剛氏が二〇一〇年十月
と写真でつづる。︾
と刊行しており、海外文学ファンの熱い
ウラジーミル・ナボコフなどの本を次々
ペ レ ッ ク、 ウ ィ リ ア ム・ フ ォ ー ク ナ ー、
ヌ、ヴァージニア・ウルフ、ジョルジュ・
田健一氏です。最近はジュール・ヴェル
文遊社は一九七二年の創業、代表は山
森望による全作品解説を収録。︾
表 順 に 集 成。 初 単 行 本 化 作 品 三 篇、 大
鈴 木 い づ み の 全S F 作 品 二 十 九 篇 を 発
遺 作 と な っ た﹁ ぜ っ た い 退 屈 ﹂ ま で、
いまを生き抜くための方法を学ぶ。︾
らしてきたか? このまちの経験から、
まちで、ひとは、いかに稼ぎ、いかに暮
変わりつづけ、いくつもの姿をもつこの
祉のまち、観光のまち⋮⋮。さまざまに
︽日雇い労働者のまち、単身者のまち、福
達也・平川隆啓編著・税別二四〇〇円︶
︵洛 北 出 版・ 原 口 剛・ 稲 田 七 海・ 白 波 瀬
﹃釜ヶ崎のススメ﹄
スの肖像﹄など。
た ち ﹄、 ミ シ ェ ル・ ヴ ィ ノ ッ ク﹃ フ ラ ン
京都に所在する松籟社で人文書の編集
注目を集めています。
を数多く手がけた竹中尚史氏が二〇〇四
﹃
年に創業したのが洛北出版。処女出版は
る、唯一無二の、文学世界。最晩年の単
憎 む の で も な く、 許 す の で も な く
ユ
ダヤ人一斉検挙の夜﹄︵吉田書店・ボリ
行本未収録の短篇九作を収録。表題作
﹁ラ
ヴ・レター﹂は、妻から夫への手紙。巻
アルフォンソ・リンギス﹃汝の敵を愛せ﹄
は寺尾隆吉編著﹃抵抗と亡命のスペイン
ス・シリュルニク著・税別二三〇〇円︶
向 け た 大 人 に 叩 き 起 こ さ れ、 連 行 さ れ
語作家たち﹄です。
末解説 堀江敏幸﹁あなた、今までどこ
る ⋮⋮。 戦 後 も 孤 児 院 を 転 々 と し、 貧
詰まった本たちを、ぜひとも手にとって
で、十年間で既刊書は二十一点。最新刊
林曉、伊藤整、小島信夫、庄野潤三の文
困 生 活 を 乗 り 越 え て、 医 師 に な る。
で、 六 歳 だ っ た 著 者 は、 自 分 に 銃 口 を
芸 書 の ほ か、 話 題 を 呼 ん だ﹃ 本 屋 図 鑑 ﹄
四十年間語ることができなかった自ら
︽ナ チ ス ド イ ツ に よ る ユ ダ ヤ 人 一 斉 検 挙
や八十四人のエッセイからなる﹃冬の本﹄
ご覧ください !
島田潤一郎氏が二〇〇九年に設立。上
なども刊行。創業前から現在までを綴っ
の壮絶な過去を綴った一冊。︾
にいたの︱︱﹃ラヴ・レター﹄によせて﹂
。
︾
た島田氏の著書﹃あしたから出版社﹄
︵晶
二〇一一年四月に吉田真也氏が設立し
な新刊には、佐道明広﹃沖縄現代政治史﹄、
在までに二十二点を発刊しています。主
た出版社。政治・歴史関連を中心に、現
九月十日∼十月九日までフェア展開中です。
レ ベ ー タ 前 と 福 岡 店 三 階 人 文 フ ロ ア に て、
す ﹂ で ご 紹 介 し た 書 籍 は、 池 袋 本 店 一 階 エ
*愛書家の楽園・特集﹁〝ひとり出版社〟を興
︵作品社
青木︶
さあ皆さん、出版者たちの熱い思いの
文社︶も好評です。
﹃契約
鈴木いづみSF全集﹄
︵文遊社・鈴木いづみ著・税別三九〇〇円︶
嶋中博章﹃太陽王時代のメモワール作者
初期の傑作短編﹁悪意がいっぱい﹂から、
︽彗 星 の ご と く 煌 め い た 作 家 の 光 跡 !
−9−
な い か。﹂ と い う フ ェ ア を、 九 月 十 日 ま
﹁ ひ と り の 時 間、 つ な が る か つ な が ら
りを求めますか?﹂
いたい。あなたはひとりの時間、つなが
で池袋本店一階で開催中である。当特集
では、このフェアで選書された本を紹介
したいと思う。
このフェアを企画した担当者は、フェ
ア台に次の文章を掲示している。
﹁ S N S︵ Social Networking Service
の略。インターネット上の交流を通じて、
﹃ウェブ社会のゆくえ﹄
して、
SNS社会に対する問題提起の本と
ス。フェイスブック、ツイッター、LI
︵N H K ブ ッ ク ス・ 鈴 木 謙 介 著・ 税 別
社会的ネットワークを構築するサービ
することにより、
SNSとの付き合い方、
N E な ど が 有 名。︶ が 人 々 の 生 活 に 浸 透
のイメージを与えます。しかし人が生き
しさと一緒にされがちで、人にマイナス
で は? 〝 孤 独 〟 で あ る こ と は 不 安 や 寂
独〟とうまく向き合えなくなっているの
ことにより、人は自分自身が抱える〝孤
て い ま す。 む や み や た ら と〝 つ な が る 〟
ないだろう。東日本大震災の時、ソーシャ
を売り渡している﹂ことも忘れてはなら
ディアを利用できる代わりに、個人情報
う に な っ た 反 面、﹁ タ ダ で ソ ー シ ャ ル メ
簡単に最新の情報を得ることができるよ
アは加速度的に普及し、私達はいつでも
た。経済的背景もあり、ソーシャルメディ
触っている風景がもはや当たり前になっ
駅でも電車内でもスマートフォンを
る上で〝孤独〟は誰もが経験することで
ルメディアを持たないお年寄りが、誰に
一〇〇〇円︶
もあります。本来〝人はひとりであるこ
も情報を貰えなかったために、来るはず
他人とのコミュニケーションの方法、ひ
と〟を経験するからこそ、人間としての
とりの時間の過ごし方などが変化してき
成長を感じ、豊かな思考を獲得すると思
− 10 −
『ウェブ社会のゆくえ』
の無いタクシーを延々と待ち続ける光景
﹃つながりを煽られる子どもたち﹄
関わっていけばよいのか﹂について心理
るのか、そしてその他者とはどうやって
学的アプローチから解明した本。
︵岩 波 ブ ッ ク レ ッ ト・ 土 井 隆 義 著・ 税 別
LINE疲れ、快楽でなく不安からの
六二〇円︶
があった。いくら情報を得ても、それを
どのように社会に還元するかを考えない
のいじめ、親友を作りづらいイツメン︵い
スマホ依存、友だち関係を維持するため
と、我々は未来への責任を果たすことは
出来ないと、警鐘を鳴らす。
子 ど も た ち が﹁ つ な が り 過 剰 症 候 群 ﹂
つも一緒のメンバー︶同士のしがらみ。
に陥る社会背景と心理メカニズムを探
ネットと上手に距離を置き、平穏に暮
り、SNSと子どもに起こっている問題
らすためにはどういう方法があるのだ
ろう。
﹃友だち幻想﹄
︵ち く ま プ リ マ ー 新 書・ 菅 野 仁 著・ 税 別
﹃なぜ人は他者が気になるのか?﹄
問題に行き着く。
と 他 者 ﹂﹁ 自 分 と 他 人 ﹂ と い う 根 源 的 な
と つ な が る ﹂ と は 何 か。 そ れ は、﹁ 自 己
め の ツ ー ル ﹂ で あ る。 そ も そ も、﹁ 他 者
SNSは、新しい﹁他者とつながるた
かったな﹄という思いを込めて、人とつ
よ っ て、﹃ こ の 人 と 付 き 合 え て 本 当 に よ
いながらも理解を深めていくことに
少々苦労して人とゴツゴツぶつかりあ
現 す る こ と の 恐 れ を 多 少 乗 り 越 え て、
と は、﹁ 他 者 へ の 恐 れ の 感 覚 や 自 分 を 表
も あ る だ ろ う。﹁ 人 と 人 と の つ な が り ﹂
き、悩み、時に負担に感じてしまうこと
友 だ ち は 大 切 だ が、 そ の 関 係 に 傷 つ
七四〇円︶
につながらない﹁インターネット安息日﹂
︵金子書房・永房典之著・税別二三〇〇円︶
ながることができるようになると思う
いう事情も透けて見える。
として、仲間はずれになりたくない、と
学生がSNSでの交流に依存する理由
点が分かりやすく網羅されている。
﹃つながらない生活﹄
ズ著・税別一七〇〇円︶
︵プ レ ジ デ ン ト 社・ ウ ィ リ ア ム・ パ ワ ー
つながりに満ちた生活の中で、ネット
との付き合い方に悩み、やがて週末の二
という習慣を取り入れた筆者の体験は参
世間体、罪悪感、モラル、嫉妬、恋愛、
日間は家族でモデムの電源を切りネット
考になるだろう。
友人関係、インターネット、面接。現代
のです。﹂
﹁ な ぜ 他 者、 ま た は 特 定 の 他 者 が 気 に な
− 11 −
『なぜ人は他者が
気になるのか?』
社 会 に お け る 様 々 な 人 間 関 係 に お い て、
『つながらない生活』
とができれば、それが個人の強さにつな
ら、公的な﹁社会﹂へと視野を広げるこ
に注目し、私的な空間である﹁世間﹂か
そして、ためになる本。
室。﹂ の 文 庫 化 で、 読 み や す く 面 白 く、
新聞﹂の人気コラム﹁おとなの小論文教
がり、世間体を意識し過ぎない楽な生き
方につながるのではないかと提唱する。
﹃﹁関係の空気﹂﹁場の空気﹂﹄
︵講 談 社 現 代 新 書・ 冷 泉 彰 彦 著・ 税 別
身近な社会だけではなく、日本社会に
七四〇円︶
の主役になってしまっている。この日本
の 大 小 に 関 係 な く、﹁ 空 気 ﹂ が 意 思 決 定
その時、人は﹁自己と他者﹂の問題につ
切実な問題は、﹁恋愛について﹂であろう。
多くの若者にとって、最も普遍的かつ
おいても、問題は﹁何となく﹂解決に向
僕たちの日本社会において、自己と他
社会における﹁空気﹂問題は、実は日本
いて向き合わざるを得ない。
者について考えるとすれば、日本独特の
﹃世間とは何か﹄
語という言語に原因があるのではない
かっていく。日本社会においては、問題
︵講 談 社 現 代 新 書・ 阿 部 謹 也 著・ 税 別
か、という論考。
言葉である﹁世間﹂﹁空気﹂というキーワー
八〇〇円︶
﹃人とつながる表現教室。﹄
ドが重要になるらしい。
﹁ 世 間 ﹂ と い う 言 葉 は、 あ く ま で 自 分
︵河 出 文 庫 ・ 山 田 ズ ー ニ ー 著 ・ 税 別
人とつながるために、自分をどう表現
五六〇円︶
と関わりを持つ人々と世界に限られる狭
﹁ 社 会 ﹂ と 等 値 で き な い。 世 間 は、 自 己
し た ら 良 い か。 自 分 の 言 い た い こ と を、
想いを言葉にして外に出し、心で通じ合
︵紀伊国屋書店・エーリッヒ・フロム著・
﹃愛するということ︽新訳版︾﹄
人に伝えてわかってもらうことの難し
う、自分にうそをつかないで人とつなが
﹃﹁空気﹂と﹁世間﹂﹄
八〇〇円︶
る、 勇 気 の レ ッ ス ン。﹁ ほ ぼ 日 刊 イ ト イ
さ。自分の感じたこと、心の底にあった
﹁空気を読め﹂という、﹁空気﹂とは何
税別一二六二円︶
か。日本独特の言葉である﹁空気﹂﹁世間﹂
︵講 談 社 現 代 新 書・ 鴻 上 尚 史 著・ 税 別
視点が希薄である。
を中心に構成されているもので、他者の
い範囲を表す日本独特の言葉︵概念︶で、
『人とつながる
表現教室。』
『愛するということ』
− 12 −
『友だち幻想』
理論を理解し、習練が必要である。
して、その恩恵を受けるためには、愛の
福に生きるための最高の技術である。そ
愛こそが、人間が現代社会で、より幸
であり、三十年来のロングセラーになっ
﹃﹁甘え﹂の構造
増補版﹄
︵弘文堂・土居健郎著・税別一三〇〇円︶
本が、
え﹂を主題にして日本社会を問い直した
甘えられる相手が必要である。この﹁甘
間 に は、 親 子・ 夫 婦 関 係 な ど 安 心 し て
人間は、ひとりでは生きられない。人
本を紹介して終わりたい。
脱﹁SNS依存﹂という意味で、究極の
があることも忘れてはならない。
子どもでは、その影響の受け方にも大差
らば、人は大いなる﹁孤独﹂を感じるこ
別上巻九〇〇円、下巻九六〇円︶
︵ 岩 波 文 庫・ ダ ニ エ ル・ デ フ ォ ー 著・ 税
﹃ロビンソン・クルーソー︵上︶︵下︶﹄
最後に、﹁孤独﹂というキーワードと、
加えて、大人と、まだ成長過程である
きであろう。
両面について、今後も注意深く見守るべ
とになる。
ている。
恋愛において、特に失恋を経験したな
﹃愛の試み﹄
︵新潮文庫・福永武彦著・税別三六二円︶
﹁ 人 間 は 常 に 孤 独 で あ る。 そ れ は 人 間
ご存知のとおり、絶海の無人島に漂着
したロビンソン・クルーソーが、毎日毎
日の苦闘の末、再び故国に帰って行った
物語。
﹃モンテ・クリスト伯︵一︶∼︵七︶﹄
巌窟王。復讐心は孤独を克服し、岩を
税別七六〇円︶
︵岩波文庫・アレクサンドル・デュマ著・
者 と つ な が る た め の ツ ー ル ︶﹂ と﹁ 人 と
るためのツールであることは間違いな
SNSは、非常に便利な他者とつなが
ここまで経験すれば、おそらくもう怖い
自 ら の 道 を 切 り 開 く 物 語 で あ る。 人 間、
独な状態を積極的に克服し、自らの力で
いずれの本も、絶望に立ち向かい、孤
も砕く。
い。しかし、その普及があまりにも急速
︵池袋店
中村︶
ものは在るまい。
で広げて本を紹介してきた。
きく捉え、日本社会から恋愛、孤独にま
人とのつながり﹂について、テーマを大
これまで、﹁SNS︵という新しい﹁他
『「甘え」の構造』
であるがために、その可能性と危険性の
− 13 −
の弱さでも何でもない、謂わば生きるこ
と の 本 質 的 な 地 盤 で あ る。﹂ そ し て、 恋
愛 と い う も の は、﹁ 常 に 孤 独 と 相 対 的 な
もの、人間の根源的なもの﹂であるが、﹁人
が一生に於て唯一人の人をしか愛し得な
いと考えるということは、やや文学的に
すぎる﹂という。
『愛の試み』
社 会 科 学
政治学大図鑑
ポール・ケリー他著
今年二月の﹃経
済学大図鑑﹄︵三省堂・税別四〇〇〇円︶
に続き、アメリカの出版社のシリーズも
のの翻訳書である。古代から現代に至る
政治思想について思想家、政治家の言葉
を中心に取り上げ、時系列で並べ、ビジュ
ア ル 的 で あ る。 そ の た め、 見 て 楽 し く、
コンパクトにまとめてあるという感覚を
与えてくれる本である。翻訳書であるた
心構えまでを披露しているが、気楽に自
始まり、入門書の選び方、計画の立て方、
に紹介した本である。テーマの選び方に
後に自己破産した者から、浮浪児の過去
バブルを経験して華やかな生活を送った
を 元 に、 上 野 に い た 浮 浪 児 の 跡 を 追 う。
回、著者は残された資料と当事者の証言
いったが、彼らはどこへ行ったのか。今
を家族に隠し続けている者、家族に暴力
分 の ペ ー ス で 進 め る こ と を 勧 め て い る。
を振るって縁を切られ、生活保護を受け
激動の時代であるがゆえに、独学で学び
続け、考え続け、さらに深く学ぶために、
ている者までの様々な人生が明らかにな
一五〇〇円︵税別︶
ちの生涯から巡る、貴重な一冊である。
る。戦後から六十九年後までの浮浪児た
学びの成果として中学生にもわかりやす
一三〇〇円︵税別︶
く書くことを推奨している。
草思社
新潮社
みんなが幸せになるための
公務員の働き方
著 者 は 行 政 学 や 地 方 自 治 論 の 専 門 家。
嶋田暁文著
近年の自治体へのアンケートで、仕事に
め、日本人の取り上げられ方に偏りがあ
やりがいを持てないでいる職員が全体の
三分の一も存在することが明らかになっ
るものの、西洋政治思想とはこういうも
浮浪児1945︲
た。これからの公務員の働き方はどうあ
日々の飢えを凌いでいた。戦後復興と共
草 拾 い や 靴 磨 き、 あ る い は 売 春 を し て
には多くの浮浪児たちがいた。彼らは煙
一九四五年の終戦直後、東京の上野駅
た言葉が随所に配されていて、全体的に
い声や、多方面のジャンルから引用され
を提言してくれている。地域での生々し
るような仕事をするために、様々な方策
住民を幸せにし、自分自身をも幸せにす
るべきかについて論じた内容。本書では、
戦争が生んだ子供たち
のかと思わせてくれる。入学祝などのプ
四二〇〇円︵税別︶
レゼントという選択肢もありえそうだ。
三省堂
柳川範之著
父親の転勤の関係で海外
暮らしが長く、独学で勉強し、大検、通
に 街 は 浄 化 さ れ、 浮 浪 児 の 姿 も 消 え て
石井光太著
信制大学を経て東大教授にまでなった著
東大教授が教える独学勉強法
者が、それまで培った勉強法を一般向け
− 14 −
社会科学
クオリティの高さを感じさせられた。
スラム法で許される行為や食べ物︶対応
京都を代表的な例としてハラール︵イ
の現状を解説した本書は、外食や観光に
で、その対応に苦慮しているのが実際だ。
の持つ機能から読み解き、ディズニーラ
携わる方々にとって必読の一冊。京都は
方で息苦しい閉塞感も感じないだろうか。
ンド化する社会ではいかなる希望を持ち
観 光 客 の み な ら ず、 ビ ジ ネ ス 客 も 多 く、
著者はこの構造を主にアトラクション
得るかを論じている。現代社会をディズ
留学生もやはり多い。国内でも先駆けて
一七〇〇円︵税別︶
ニーランドにトレースした、若き著者に
ハラール対策を進めている京都モデル
学芸出版社
イケダハヤト著
プロブロガーの著者
が、世代論に挑んだ。世代によって、努
よる気鋭のメディア論。
新世代努力論
力という行為に対する価値観が違うらし
未来企業
実業之日本社
一五〇〇円︵税別︶
は、今後の日本全体の指標となっている。
慶應義塾大学出版会
二五〇〇円︵税別︶
い。かつては肯定的に受け入れられてい
たはずだが、いつの間にか若い世代ほど
醒めた感覚で捉えている。なぜそうなの
か。現代の閉塞した状況を、ネットや若
テクノロジーの進歩やグローバル化
リンダ・グラットン著
し た 社 会 で の 新 し い 働 き 方 を 示 し、
二〇一三年のビジネス書大賞に輝いた
別二〇〇〇円︶のグラットン教授の新作。
﹃ワーク・シフト﹄︵プレジデント社・税
グローバル化が進む中での企業の問題と
を突破した。特に東南アジアから急増中
昨年、訪日外国人の数が一〇〇〇万人
り良くする存在であって欲しい、という
を自覚し、その影響力をもって世界をよ
く人々は、企業が社会の一員であること
を入れて解説する。未来を担う企業で働
それに対する解決への取り組みを、実例
に満たすことができる。著者は、この社会
で、中東方面とあわせて、イスラム教徒
− 15 −
者の事情に詳しい著者ならではの視点で
解説した一冊。このどんよりした空気は
一一〇〇円︵税別︶
まさに今の日本を象徴している。
朝日新聞出版
ディズニーランド化する社会で
希望はいかに語りうるか
ハラールマーケット最前線
全体を﹁ディズニーランド化﹂と呼ぶ。そ
の訪日が目立って増えている。礼拝や食
佐々木良昭著
こにはお伽話から現れたようなシンデレ
長谷川一著
現代、私たちの暮らしは
多くのモノに溢れ、あらゆる欲望を過剰
ラ城や、物語の世界観を楽しめるアトラ
企業へのメッセージでもある。
二〇〇〇円︵税別︶
プレジデント社
文化の面で独特な風習があるイスラム教
についての認識が日本ではまだ不十分
クションがあり、まさに子どもから大人
まで夢中になれる場所である。しかし、一
社会科学
コンピュータ
すごい Erlang
ゆかいに学ぼう !
著
Fred Hebert
山口能迪訳
は、 並 行・ 分 散 処 理 を 得 意 と
Erlang
する関数型プログラミング言語。原書は
Erlang User of the Year
公式コミュニティで推薦書とし
Erlang
て紹介され、著者はこの書籍の出版によ
り二〇一二年の
に 選 ば れ た。 Erlang
入門者は言語を一
から学ぶことができ、並行・分散に興味
の あ る 方 は そ の 設 計 思 想 に 触 れ ら れ る。
三八〇〇円︵税別︶
親しみやすい文体なので、読みやすい。
オーム社
新装版 リファクタリング
著
Martin Fowler
児玉公信・友野晶夫・
SF映画で学ぶ
インタフェースデザイン
世界を描いているSF映画を題材に、そ
本書は技術的にはるかに進んだ未来の
こに登場するインタフェースデザインか
・ Christopher Noessel
著
Nathan Shedroff
安藤幸央監訳
を改善すること。バグを加えずにコード
ら新たなデザインのインスピレーション
平澤
章・梅澤真史共訳
リファクタリングはソフトウェアの外
を整理するための、系統だった効果的手
を得ようというもの。約一〇〇年間分の
部の振る舞いを保ったまま、内部の構造
法を説明している。ピアソン桐原が発行
SF映画を調査・分析し、現代のデザイ
三二〇〇円︵税別︶
玉川
憲・片山暁雄・今井雄太著
Amazon Web Services
基礎からのネットワーク&
サーバー構築
丸善出版
いる。SF映画ファンにも。
ンに活かせるポイントを丁寧に考察して
していた名著の復刊だが、訳文の見直し
四二〇〇円︵税別︶
が 行 わ れ Java
のバージョンアップに対
応した付録も掲載。
オーム社
エンジニアのための
フィードバック制御入門
著
Philipp K. Janert
野原
勉監訳
星
義克・米元謙介訳
産業界では常識だった﹁フィードバッ
ク制御﹂という概念を、ソフトウェアエ
にした書籍。様々な機器を購入する必要
を 用 い て、 イ
Amazon Web Services
ンフラ技術を習得することをコンセプト
が な い の で、 個 人 で も 気 軽 に イ ン タ ー
ンジニア向けに解説した制御工学の入門
ススタディを集めた。エンタープライズ
ネットやサーバを構築してみることがで
書。実用に重きを置き、より具体的なケー
システムに関わるソフトウェア技術者に
二七〇〇円︵税別︶
おすすめの一冊。
日経BP社
きる。 TCP/IP
の仕組みなど、基礎から
やさしく解説している。
オライリー・ジャパン
三二〇〇円︵税別︶
− 16 −
コンピュータ
自 然 科 学
サル化する人間社会
難解なテーマも、平易な文章で分かり
山極寿一著
﹃バカの壁﹄︵新潮新書・税別六八〇円︶
ノコハムシは、名称もルックスも個性的
一四〇〇円︵税別︶
すぎる。
代順に紹介した一冊。
激動の昭和を生き抜いた昭和の家を年
泰岳・大井隆弘・飯田 彩・和田隆介著
昭和住宅
文一総合出版
の養老孟司氏のように、人文学系でない
理系畑の専門家からの特殊な視点や提言
は、混迷する現代社会へのユニークかつ
貴重な批評たり得ている。
集英社インターナショナル
一一〇〇円︵税別︶
物 の 葉 を 食 べ て 生 活 し て い る 虫 で あ る。
尾園
暁著
ハムシは、漢字で葉虫と書き、主に植
子である。これが昭和ど真ん中っ子だっ
一九八二年生まれだからぎりぎり昭和っ
ち 二 人 は 一 九 八 四 年 生 ま れ、 一 人 は
く﹁ジブリ映画に見る昭和の家﹂として、
前半、戦前の住宅の冒頭はわかりやす
世界では四万種、日本では約六六〇種が
たら、長谷川町子を例にとっているとこ
ハムシハンドブック
が、現代の社会や家族の問題をサル学の
知られているが、体長が一センチ未満の
ろだろう。こうして見ると戦前の住宅こ
やすくガイドする、集英社﹁知のトレッ
立場から鋭く提起する。
ものがほとんどのため、あまりなじみ深
決定している。大学の運営や改革もゴリ
今年十月からは京都大学次期総長就任が
隅に忍ばせておけば、野原や畑でハムシ
げている。この小さな図鑑をバックの片
本州で身近に見られる種を中心に取り上
本書では、日本に分布するもののうち、
が出てきて、これで現在に繋がるんだな
狭小住宅が出てきて、デザイナーハウス
後半、戦後の住宅では団地が出てきて
そ、美しきニッポンなんだなあ、と思う。
平成っ子でもとっつきやすい。著者のう
著者の山極寿一氏は、今西錦司氏↓伊
い虫とはいえない。
キング叢書﹂の一冊。
谷純一郎氏という、日本が誇る人類学・
ラから学びたいと述べた会見は話題を呼
家を建てる予定のある方、昭和、いい
が出来て、その時代の生活風景がわかる。
− 17 −
本書ではゴリラ研究の世界的な権威
霊 長 類 学 者 の 系 譜 に 連 な る 気 鋭 の 学 者。
んだ。
虫の糞に擬態していると言われるムシ
写真は多く、細部までじっくり見る事
あ、と感慨深い。
クソハムシや、対馬に分布するツシマヘ
ろう。
に出会ったときにきっと役に立つことだ
サ ル 社 会 は 優 劣 を 重 視 し、 ゴ リ ラ 社
会は勝ち負けを気にしない。今の社会は
サル化しているので、競い合いのないゴ
一六〇〇円︵税別︶
エクスナレッジ
ですよ。
リラ型社会を目指せばどうかというの
背負い隠れ蓑として利用するミドリカメ
リビロトゲハムシ、幼虫が脱皮殻や糞を
とつ。
が、 題 名 に も つ な が る 本 書 の 趣 旨 の ひ
自然科学
学会発表するためのテーマ選び・抄録の
楠井
隆著
近年、救急医療は崩壊の危機に瀕して
をかく﹂ことだという。人に正しく伝わ
解析するなど、全ての過程で﹁自分で汗
とは、自分でデータを集め自分でデータ
書き方、論文作成・スライドの作り方な
いる。診療時間外のニーズが増加してい
り理解される質の高い発表をするために
7つの原則から読む
救急CTの解き方
るにも関わらず、人手や予算の確保が難
今日からすぐに実践できる。外科医だけ
二〇〇〇円︵税別︶
法 ] が 考 案 さ れ た。 さ ら に 内 容 を
loop
再検討し、挿入理論を追求して、確かな
三部では主な受診動機ごとに解説し、第
重大な結果を招く疾患について説明。第
ト七項目を列挙し、第二部では見逃すと
事者に向けて書いた基礎から学べる医療
なったマネジメント初心者である医療従
して活躍する著者が、昇進し、管理職と
籍し、現在は医療経営コンサルタントと
裴
英洙著
実際に勤務医として十年近く病院に在
医療職が部下を持ったら読む本
へるす出版
どの考え方を十二カ条で解説。大事なこ
しいことが要因ではないだろうか。この
書
為、診療時間外は他の診療科の医師が交
でなくすべての医療従事者に役立つ。
学
替でカバーしているが、画像診断に不慣
医
[ Non-loop
法]の挿入理論とテクニック
軽部友明著
れな医師にとって救急時の診断は負荷が
カール先生の
大腸内視鏡挿入術
二〇一一年四月、著者自身がブログ﹁大
大きい。本書は、救急で多用されるCT
に関して見落しや誤診を防ぐ視点から書
腸内視鏡道﹂を開設。様々な先生達と挿
技術書としてまとめられている。
四部はクイズ形式で示唆に富む症例を示
経営入門書。病院・診療所で起こるたく
入 法 に つ い て 議 論 し 尽 し た 結 果、[ Non-
ループを作らず、腸管をたわませずに
している。救急や時間外診療を担当する
さんの悩み、具体例を登場人物と共に解
かれている。第一部で救急特有のポイン
法]の極
Non-loop
意をナレーション入りの動画で紹介。紙
医師、更には放射線技師などの医療従事
決していく小説風になっており、非常に
ス コ ー プ を 進 め る[
面 で 挿 入 理 論 を 説 明 し、 D V D で は ス
者の方々にも手にとって頂きたい一冊。
日経BP社
二四〇〇円︵税別︶
する〝入り口〟としても最適。
も触れられていて、難しい経営書に挑戦
SWOT分析など、本格的な経営理論に
わかりやすい。ドラッカーの経営哲学や
コープ操作と内視鏡映像を見ながら挿入
月 刊 誌﹁ 消 化 器 外 科 ﹂ 連 載 の 書 籍 化。
海道利実著
外科医の外科医による外科医以外
にもためになる学会発表 カ条
文光堂
七〇〇〇円︵税別︶
ポイントが丁寧に解説されている。また、
典型例や挿入困難例など合わせて二十症
例以上の動画も収録していて、初学者や
内視鏡専門医が効率よく学ぶ為の一冊と
なっている。
日本医事新報社 七八〇〇円︵税別︶
12
− 18 −
医学書
円 ︶ に 続 く﹃ 帝 国 の 構 造 ﹄。 今 回 は、 一
﹃哲学の起源﹄︵岩波書店・税別二一〇〇
界史の構造﹄︵岩波書店・税別三五〇〇円︶
柄 谷 行 人 が 構 想 す る 未 来 を 語 る、﹃ 世
水爆実験の象徴としてのゴジラ。大海嘯
もの、汝の名は﹂という文章を書かせた。
ジ ラ は ま た 現 れ、﹁ 海 の 彼 方 よ り 訪 れ し
起こったとき、茫然とする彼のうちにゴ
したことがあった。そして東北大震災が
赤坂憲雄著
民俗学者である赤坂憲雄
はなぜか、ゴジラについての論考を発表
ゴジラとナウシカ
般には否定的に見られている旧帝国の構
の象徴としての赤い目をした王蟲の群
帝国の構造
造がはらむ可能性について、様々な点か
れ。災厄と犠牲。ハリウッド版ゴジラを
ダニエル・タメット著
柄谷行人著
ら考察されている。世界共和国への道は
人 文 科 学
世 界 中 で 話 題 に な っ た﹃ ぼ く に は 数
どこにあるのか、柄谷の思想を知るため
ぼくと数字のふしぎな世界
字 が 風 景 に 見 え る ﹄︵ 講 談 社 文 庫・ 税 別
イースト・プレス 一五〇〇円︵税別︶
七三〇円︶の著者によるエッセイ集で
彼はどう見たのか。
二二〇〇円︵税別︶
の必読の一冊。
青土社
− 19 −
ある。
エッセイではあるが、そこはサヴァン
症候群で共感覚の著者のこと、ありとあ
タブレット時代の教育
タブレットは紙に勝てるのか
学校教育において、パソコンは紙の教
日亜対訳
材を凌ぐほどではないが、タブレットな
らゆる場面で数字があらわれてくる。日
中田
考監修
我々日本人の多くにとって馴染みの薄
らどうか。この問いをもとに、教育工学
赤堀侃司著
い、近寄り難いとも言える程の高貴さを
が専門の著者は、情報化によって変化を
クルアーン
放つイスラム教の聖典であるクルアーン
余 儀 な く さ れ て い る 学 校 現 場 の 有 様 を、
常の風景の中に、これほどたくさんの数
数字の持つ魅力に気付かせてくれる一冊。
︵コーラン︶。日本では大川周明、井筒俊
いち早く、実践・実証的に調べて分析し
が存在しているとは。驚かされると共に、
二〇〇〇円︵税別︶
彦らによって翻訳されてきたが、日亜対
ている。メディア活用には光と影がある。
講談社
訳のものは今回が初めてである。美しい
いかに影に怯えず、逃げずに有効利用す
一六五〇円︵税別︶
アラビア語と共に読めるクルアーン、普
ジャムハウス
段 イ ス ラ ム 教 と は 関 わ り が な い 方 こ そ、
四八〇〇円︵税別︶
るかを考えるための参考書。
作品社
新しい世界への扉を開いてみませんか。
人文科学
ねじまき片想い
柚木麻子著
で、彼の一人息子秋司の後見人となった、
女形の市川萩太郎。彼には秋司と同学年
七才にして天才的な踊りの才能のある
の息子、俊介がいた。
萩太郎は二人に﹁鏡獅子﹂の胡蝶を踊
文学・文芸
柚木麻子初のミステリ。軽いタッチの
らせようと決心するも、天才・秋司に悲
秋司に対して、俊介は、ご褒美がもらえ
ミ ス テ リ な の で、 ミ ス テ リ は 読 ま な い、
主人公の古風でガーリーながら、芯の
劇が襲う⋮⋮。父親、後見人、役者とし
るから仕方なく練習をする程度。
強い宝子という女性にも感情移入しやす
て、秋司と俊介を比べてしまう心の葛藤
という方でも大丈夫。これは片想い小説
天 野 純 希 の﹃ 覇 道 の 槍 ﹄︵ 角 川 春 樹 事
脇 役 の 諸 々 に も 蔓 延 し て い る 片 想 い が、
く、 こ の 宝 子 の 恋 の 行 方 も 気 に な る し、
なのだ。
務所・税別一六〇〇円︶を読んで、割と
がなまなましく、読み手にジリジリとし
弾正星
重要な役割を担う登場人物の若者が、松
こっちはどうなるの?あっちはこうなる
た焦燥感を抱かせる。
花村萬月著
永久秀となるのかぁ、続きが読みたいな
の か ! と、 と て も 楽 し く 読 め る 一 冊 で
一四〇〇円︵税別︶
あなどと思っていたら、花村萬月が描い
小学館
ある。
住めない子どもたちが一つ屋根の下で暮
有川
浩著
児童養護施設﹁あしたの
家﹂では、さまざまな事情で親と一緒に
明日の子供たち
ンストリームに足跡を残した名だたる武
らしている。やる気は人一倍、でも少し
一三〇〇円︵税別︶
将たちに一目置かれ、あるいは恐怖され
だけ空回り気味な新任職員・三田村慎平
東京創元社
てくれた ! そして、おっそろしい男に
なっていた
ながら、フィクサーであった弾正。それ
と、指導職員の和泉和恵。彼ら職員は理
てはいたが、これほどにまで歴史のメイ
だけでもぞくぞくするのだが、弾正最期
歌舞伎役者、中村竜胆が病死したこと
幻冬舎
読みしてください。
一六〇〇円︵税別︶
いいえ、大間違い。ぜひ手にとって一気
い、毎日奮闘する。可哀想な泣ける話?
想と現実の中で、子どもたちのことを想
一七〇〇円︵税別︶
胡蝶殺し
恐ろしいけど惚れてし
のか日本には
堪能して頂きたい !
小学館
近藤史恵著
のシーンは凄まじい⋮⋮こんな男が居た
松永弾正久秀。名前だけは聞いて知っ
!
!
まう、という典型的なダークヒーローを
!?
− 20 −
文学 ・ 文芸
文庫・新書
本屋さんのアンソロジー
大崎梢リクエスト
坂木司リクエスト﹃和菓子のアンソロ
ジ ー﹄、 近 藤 史 恵 リ ク エ ス ト﹃ ペ ッ ト の
アンソロジー﹄に続く第三弾。
本屋で働いている身としては、﹁本屋﹂
しくは結構大ごとな謎やドラマは、登場
古典を読んでみましょう
﹁読んでみましょう﹂と、あの橋本治さ
橋本
治著
んに言われたら﹁はい、そうしましょう﹂
人物たちの何かを確実に、しかも良い方
笑って泣いて、読み終わったら﹁また
とつい言ってしまうのだが、さていざ古
へ変えていく。
典を読んでみるとなると、何が書いてあ
橋 本 さ ん は そ ん な こ と は お 見 通 し で、
るのかさっぱりわからないのである。
本屋へ行こう ! ﹂と思って頂けると嬉
六六〇円︵税別︶
しい、素敵な十軒のお店の物語。
光文社文庫
そのうえでなぜさっぱりわからないのか、
読むためにはどうすればよいのか、読ん
時の罠
でどうなるのか、そもそも﹁古典﹂とは
なんなのか、ということを、具体的な例
辻村深月・万城目学・
作家四名による﹁時﹂をテーマにした
湊かなえ・米澤穂信著
新刊書店をテーマにしたアンソロジーと
ん が 見 込 ん だ 作 家 さ ん た ち に 依 頼 し た、
店事件メモ﹂シリーズの著者、大崎梢さ
えていった思い出たちを、けして変わら
も、多々ある。思い込みや想像で姿をか
ともあれば、逆にこじらせてしまうこと
イムカプセル。時間が解決してくれるこ
配置換えになった神様、ふたご山、タ
うだ。
におなじみのあの話とは大いに異なるそ
のである。そして本来の物語は、私たち
﹁浦島太郎﹂。これだって立派な古典な
色は⋮⋮﹂の歌は、何を言っているのか。
らべ﹄は名文なのか。小野小町の﹁花の
− 21 −
とタイトルに入っていると、どうしても
な れ ば、﹁ こ れ は お も し ろ い に 違 い な
ずにそこにあるものが鮮明に蘇らせ、本
を持っている。それを知らないですませ
があり、それぞれが豊かな日本語の表現
さ ま ざ ま な 時 代 に さ ま ざ ま な﹁ 古 典 ﹂
例 え ば﹃ た け く ら べ ﹄。 な ぜ﹃ た け く
い ! ﹂と読む前からわかろうというも
来 の 姿 ま で 明 ら か に し て い く。 知 ら な
を用いながら、丁寧に説明してくれる。
の。︵ も ち ろ ん 大 崎 さ ん の 作 品 も 入 っ て
アンソロジー。
いる︶そして期待は裏切られることはな
かったことで救われたひとと、知ったこ
気になるものである。それが﹁成風堂書
いのだ。
るのはもったいない、とこの本は教えて
とでようやく解放されるひとがいる。
好きな作家だからと手をのばすもよ
ひとくちに本屋といってもその種類は
し、これから知っていくために手をのば
ちくまプリマー新書 八六〇円︵税別︶
さまざま。駅ビルにある店、街の小さな
店、全国チェーンの一支店、空港にある
四六〇円︵税別︶
くれる。
文春文庫
すもよし、それぞれの時の罠が心地よい。
も違う。そこで起きるちょっとした、も
店⋮⋮それぞれ立地や規模、店の雰囲気
文庫・新書
盆おどる本
増山たづ子
すべて写真になる日まで
霊をお迎えし、夜明けと共にあの世へ送
という一節である。夕闇と共に祖霊や精
方まで、ひと晩中、踊り続けられていた
のは古来、盆踊りは夜が更けてから明け
ションにまでも解説を加えた一冊。凄い
え、盆踊り独特のビートや盆踊りファッ
日本に伝わる盆踊りの由来や種類に加
ていったという。この写真集には文中で
け、部屋は膨大な数のアルバムで埋まっ
彼女は村の風景と村民達の姿を撮り続
ん﹂と呼ばれるようになる女性である。
た。増山たづ子。後に﹁カメラばあちゃ
た一人の女性が、村の写真を撮りはじめ
がったダム計画。村に住む六十歳を超え
岐 阜 県 徳 山 村 に 一 九 五 七 年、 持 ち 上
小原真史・野部博子編
セルフポートレイト写真で知られる美
り返す、というバックグラウンドがあっ
も指摘されているように、まるで記念写
盆踊りをはじめよう !
術家の森村泰昌が、三十三人の質問に答
真かのような、様々な村民たちの頭から
盆踊ろう会著
え た 問 答 集。 質 問 を 投 げ か け る 人 物 は、
てのことであるが、現代でも、長野県の
足元までをおさめた写真が収録されてい
術
小学生から編集者、精神科医など様々だ
﹁新野の盆踊り﹂などは三日間徹夜で
る。彼らのほとんどはまっすぐ前を向い
芸
が、圧巻なのは荒木経惟︵写真家︶の回。
という土地の持つ伝統とユーフォリック
︵ ! ︶踊りあかすとの記述があり、日本
森村泰昌著
美術、応答せよ !
色 気? ど ん な﹁ 気 ﹂ 持 か、 き か せ て ﹂
て カ メ ラ を 見 据 え て い る。 そ の 様 子 は、
源の光の強さに舌を巻いているようにも
心なしかふわふわし、荒木経惟という光
れは⋮⋮。他の項に比べ森村氏の回答が
たりきかせて下さいと書かれている︶こ
ンスは死者だけでなく生者さえも迎え入
ある。朝が来るまで終わることのないダ
氏は七連泊の盆踊りハシゴの経験者でも
ん 中 に 旅 の 外 来 者 が 入 り こ め る。﹂ 柳 田
なものでありながら、盆踊りは、その真
を 主 宰 す る 柳 田 尚 也 氏 は 言 う。﹁ 歴 史 的
転がるツバキの花は村人と同じように正
る。﹂ と 増 山 は 言 う。 土 地 に こ ろ こ ろ と
好きです。落ちても上を向いて笑ってい
を 彩 る。﹁ イ ラ は 一 重 の ツ バ キ の 花 が 大
書籍の終盤は、村の様々な花が写真集
るようにも見える。
在﹂したことを、誰かに示そうとしてい
自己がその場所においてはっきりと﹁存
さに驚嘆させられる。
何 し ろ 質 問 が﹁ 正 気? 狂 気? 本 気?
なのである。
︵荒木氏直筆の何か凄い文章
見えるのは気のせいか。荒木氏の問いの
面から捉えられ、明るい光の中にその姿
盆踊り総合情報サイト﹁盆踊りの世界﹂
四つの気こそ、
﹁愛=芸術﹂とは何かとい
れ、複数の人間が連続して繰り返すコー
がバーンと掲載され、ちょっと、そのあ
う問いに対する、荒木氏自身の答えでは
IZU PHOTO MUSEUM 三三〇〇円︵税別︶
をはっきりと残している。
ル& レ ス ポ ン ス の 文 化 で も あ っ た の だ。
一六〇〇円︵税別︶
必読の一冊である。
青幻舎
ないかと森村氏は煌めくような文章で解
一八〇〇円︵税別︶
く。読み終えるのが惜しくなる様な一冊。
筑摩書房
− 22 −
芸術
実
用
書
地図・旅行書
なんにもない部屋のもの選び
白菊
糸物語
宮のすぐ近くにある、日本でも数少ない
大阪・梅田から電車で一駅、大阪天満
ておりや﹁糸物語﹂制作室編
夏 の 風 物 詩 と し て 夜 空 を 飾 る 花 火 は、
手織り用品の専門店﹁ておりや﹂さんの、
︲ Shiragiku
︲
山崎まゆみ著
人々の気分を高揚させ、楽しませてくれ
糸 を 紡 ぎ、 織 り、 編 む 人 々 に 愛 さ れ て、
糸にこだわり、﹁かせ﹂にこだわって、
という。その大花火大会で決まって一番
手仕事の魅力を伝えてくれる。
創業四十周年記念として出版された本。
手を務めるのは、白一色の大玉だ。どこ
究家、ニット作家、ファイバーアーティ
る晴れやかなものである。しかし長岡の
昨年の片付け本のベストセラー﹃わた
か雪原を彷彿とさせる、白銀の玉名は﹁白
ス ト な ど、 さ ま ざ ま な 人 た ち の 作 品 が
花火はそれだけでなく、何故か涙を誘う
しのウチには、なんにもない。﹄︵エンター
菊 ﹂。 一 九 九 〇 年 シ ベ リ ア に お い て 最 初
ゆるりまい著
ブ レ イ ン・ 税 別 一 〇 〇 〇 円 ︶ の 頃 か ら、
に手向けられた、慰霊の香華である。
に気に入ったものでも、共に住む家族に
できることではない。たとえ自分が本当
にする﹂︱︱シンプルだが決して簡単に
玉に込められた関係者たちの真の思いを
てしまう花火の理由を紐解いていく。尺
嘉瀬誠次らとの対話から、見る者が涙し
著者は白菊を生み出した伝説の花火師・
るつる・もこもこなど手触りが伝わって
する。複雑に絡み合った糸の質感や、つ
品が紹介されていて、その芸術性に感動
多く、その手法を組み合わせたような作
織物や編み物といっても、その種類は数
オールカラーで収録されている。一口に
本書には、テキスタイル作家や織物研
著 者 ゆ る り さ ん の 主 張 は 一 貫 し て い る。
受け入れられなければ意味がない。結果
知った時、我々がこの一瞬の芸術を見つ
火打ち上げが決定された。戦没者の鎮魂
更に本書の刊行後、真珠湾での長岡花
真をながめているだけで楽しい。
− 23 −
﹁持ち物はすべてお気に入りのものだけ
的にゆるりさんのもの選びは、誰もが好
める目もまた変わることであろう。
シックなものと、それをも超えて自分だ
きて、手仕事が得意でない人でもただ写
きになるような、使い心地抜群の、ベー
けの宝物になるようなもの、この二種類
二五〇〇円︵税別︶
本 店・ 渋 谷 店・ 京 都 店・ 梅 田 店・ 難 波 店・
*取 扱 店 舗 は、 札 幌 店・ 松 戸 伊 勢 丹 店・ 池 袋
ておりや
度はアメリカの地でも献花されるのだろ
と平和を祈って二国で咲いた白菊が、今
うか。来年の終戦記念日にも純白の大輪
ハルカス店です。
西 宮 店・ 神 戸 住 吉 店・ 三 宮 店・ 近 鉄 あ べ の
シンプルライフの裏側にどうしようも
一五〇〇円︵税別︶
なく存在する物欲との付き合い方を教え
小学館
が花開くことを、願わずにはいられない。
KADOKAWA
一二〇〇円︵税別︶
てくれる一冊。
に大別されるようだ。
実用書/地図・旅行書
語学・辞典
Liberal Arts
対話文から覚える英単語集
きたい。
ばなあ、と考えている方はご一読いただ
て考察し、お互いの翻訳の流儀を語るか
とになる。その上で日本語と英語につい
ある時は二人が近づき、またある時は
らこそ本書は面白い。
遠ざかる。こうして思索が深まっていく
一五〇〇円︵税別︶
のを見れば、きちんと訳すというのは外
創拓社出版
英語と日本語行ったり来たり
︵ 教
Liberal Arts
= 養課程︶のタイト
ルが示すように、幅広い分野の話題を取
が不朽の名作を翻訳していく。二人の対
こういった条件のもと片岡、鴻巣両者
文は対談当日まで見ることは出来ない。
訳を参照してはならない。おたがいの訳
ズがシチュエーション別に掲載されてい
おすすめ。簡単なあいづちと会話フレー
い文法がたくさんの本は苦手という人に
一七〇〇円︵税別︶
国語の勉強に有効な方法なのだろう。
翻訳問答
片岡義男・鴻巣友季子著
り上げて、それらについて英語で語り合
談は面白いのだが、これをやっていた当
るため、文法が分からなくてもイタリア
左右社
うための基礎知識を身につけるための
人 た ち は、 楽 し く も あ る だ ろ う が 大 変
語でちょっとしたコミュニケーションが
翻訳問答のルール。二人には訳す範囲
﹄
The Universe of English
や﹃ 東 京 大 学 教 養 英 語 読 本 ﹄︵ い ず れ も
だっただろうと思う。訳文を用意してく
取れる。オールカラーで美しいイタリア
秋葉利治著
東京大学出版会刊︶のような英語ではな
る以上、読解力、表現力が相手に露見す
ラン、メンデルの法則などなど。ただし、
まり、産業革命、阪神の三者連続ホーム
取り上げられた話題は、雇用情勢に始
をどのように訳せるのかということを述
ある。単に原書を読んできて、その英文
カ ポ ー テ ィ の﹃ 冷 血 ﹄︶ と い う と こ ろ に
れぞれがきちんと翻訳してきた︵例外が
しかし本書の面白さは、課題箇所をそ
言語・テーマを探して読んでみてはいか
他言語も多数出版されている。気になる
語﹄や﹃ビールを楽しむドイツ語﹄など
イタリア語でしゃべりたくても、難し
岩田デノーラ砂和子著
おしゃべりのイタリア語
く、基本は日本語での対話文であり、そ
るからだ。
前掲書のような大学の教養課程で用いら
べているのではない。きちんと日本語に
のコピーしか与えない。対談当日まで既
こでキーとなる部分を英語で表現すると
れているテキストのような学術性より
がだろうか。
本。 本 文 は﹃
どうなるのかを見開きで示している。
も、会話のちょっとした話題作りを意識
翻訳することで、どのくらいの深度でそ
の写真が満載、イタリア人の生活を垣間
した内容になっている。大半の中高生な
の本を読めたかということを披露するこ
三修社
一五〇〇円︵税別︶
シリーズに﹃お菓子屋さんでフランス
見ることができるのも魅力だ。
ら知っているようなことを英語で話せれ
− 24 −
語学・辞典
あげます
ハングリーゴーストと
ぼくらの夏
父の仕事でシンガポールへ引っ越した
長江優子著
辺 に て ﹂、 亡 く な っ た 幽 霊 た ち が 夜 な 夜
な 訪 れ て く る﹁ 墓 守 の 夜 ﹂、 戦 争 中 に 残
された家族の心情を描いた﹁屋根裏の音﹂
や﹁女たちの時間﹂など九編が収録され
一六〇〇円︵税別︶
す。それ以来、植物園の熱帯雨林エリア
ある植物園へ行ってみようと連れ出しま
書
ています。
赤ちゃんが生まれて、ぼくをふりむい
で時間を過ごすようになった朝芽は、過
行 を 行 っ て か ら 約 半 世 紀 が 経 ち ま し た。
童
朝芽は、なかなか現地の暮らしになじむ
徳間書店
て く れ な く な っ た 大 人 た ち。 ぼ く は 赤
去の戦争をしていた頃に生きていたイギ
児
ことができません。学校から帰ると家に
ちゃんをだれかにあげる作戦を立てま
リス人の植物学者と話をし、探し物を頼
現在、人類はどこまで宇宙の謎を解明し
閉じこもる息子を心配した母は、近くに
すが、うまくいきません。そのうち、とっ
ているのでしょう。本書はそんな疑問に
浜田桂子作
て も か わ い い と 思 う よ う に な っ た ぼ く。
まれるという不思議な体験をします。同
答えてくれる一冊です。今年五月に地球
新しい宇宙のひみつ
Q &A
お兄ちゃんになった心理が伝わる絵本
級生二人の協力で探し物調査を開始した
への帰還を果たした若田光一さんの宇宙
ユーリ・ガガーリンが初の有人宇宙飛
状など、最新の宇宙科学について、J A
式で解説します。何十年越しの計画を実
XA名誉教授・的川泰宣さんがQ &A形
− 25 −
的川泰宣著
です。
朝芽は、シンガポールという国が内包し
一三〇〇円︵税別︶
続けている過去からの思いを受け取るこ
ポプラ社
での活動や、火星への有人飛行計画の現
一三〇〇円︵税別︶
ウェストール短編集
講談社
とになります。
へいわって
すてきだね
安里有生詩
長谷川義史画
世代です。世代や国境を越えて手を取り
現するのは、今の子どもたちやその次の
合い、発展し続ける宇宙開発のこれから
真夜中の電話
ロバート・ウェストール作
六歳の男の子が﹁へいわってなにかな﹂
と考えます。その言葉のひとつひとつが
に期待が膨らみます。
一三〇〇円︵税別︶
﹃弟の戦争﹄︵徳間書店︶など傑作の多
朝日新聞出版
原田
勝訳
の海で一人の不思議な少女と出会う﹁浜
いイギリス児童文学作家の短編集。真夏
せまります。つづくなら平和がいい。こ
一四〇〇円︵税別︶
の言葉が全てを表しています。
ブロンズ新社
児童書
語学書の棚より
一応、英文科出身なので英語には抵抗な
かったのですが、社会に出てから約十年が
経過し、その間ほとんど英語を使わずにい
たら、初歩の英会話すら覚束なくなって参
ことができたら幸いです。
ん。たくさんある英語本選びの一助となる
日を始めていました。
この単語集のフレーズを音読することで一
次に取り組んだのが英文法。以前から気
になっていた赤い表紙のロングセラー本を
読んでみると、その面白さにぐいぐい引き
込まれました。
﹃一億人の英文法﹄︵東進ブッ
何度も店頭で補充してきた超定番商品で
クス・税別一八〇〇円︶です。
す。実際に読むと﹁売れる理由﹂が骨身に
るこの番組ですら少し難しく感じる今日こ
を 視 聴 し て い る の で す が、﹁ 基 礎 ﹂ を 冠 す
ために、NHK﹁おとなの基礎英語﹂など
ベストセラーを試してみたいと思い、この
てくるのもアリだと思いましたが、最近の
使った単語集を押し入れから引っぱり出し
き れ い さ っ ぱ り 忘 れ て し ま い ま し た。 昔
ば私が学生時代に一番理解に苦しんだのが
ているのが面白さの一番の理由です。例え
んな気持ちで使っているのか簡潔に説明し
と感じたのは初めてです。ネイティブがど
い。そして面白い。文法書を読んで面白い
しみて分かりました。とにかく分かりやす
の頃。さすがにこれはマズいと思い始めま
本 を チ ョ イ ス し て み ま し た。﹃ 毎 日 の 英 単
学 生 時 代 あ ん な に 必 死 で 覚 え た 英 単 語。
した。学び直しの必要性を感じ、また同時
語﹄︵朝日新聞出版・税別一三〇〇円︶。
はみたものの自分には合わなかったり、通
観であり個人的な意見です。実際に読んで
に選びました。記した感想はあくまでも主
挫折することなく通読できそうな本を中心
り ま し た。 単 純 に 興 味 を そ そ ら れ た 本 や、
や、大量の英語本を自店で選び購入してお
いついたまさにその日。仕事が終わるや否
を 切 っ て 試 し て み ま し た ∼﹂。 フ ェ ア を 思
びました。題して﹁英語本実践報告∼身銭
活かせないかという姑息な考えも心に浮か
た時間は約十六時間。私は朝起きたらまず
最後まで頑張れると思います。一周に要し
ク進み、単語集で挫折した人でもこれなら
りました。作りが非常にシンプルでサクサ
期待感が学習を続けるモチベーションとな
さらに上のステップに挑戦できる、という
ます。この本で培った単語力を土台にして
ほぼ九割をマスターできる﹂と謳われてい
二千単語で﹁英語ネイティブの日常会話の
英 単 語 ﹂ を 集 め た 単 語 集。 収 録 さ れ た 約
データベースをもとに厳選した﹁使える
いました。
が、休日丸一日を使って一気読みしてしま
ず納得の連続で七百頁近くの分厚い本です
表現しているということです。これに限ら
実とかけ離れた仮定法の距離感を過去形で
やく納得することができました。つまり現
理由を﹁距離の意識﹂と説明していてよう
構文丸暗記していました。この本ではその
で き ず、﹁ そ う い う も の だ ﹂ と 割 り 切 っ て
れ、文法書も読みましたがいまひとつ納得
になるのか? 色々な場面で理由を説明さ
仮定法。なぜ仮定法になると動詞が過去形
に自分の学習体験をそのまま店頭フェアに
りました。雀の涙ほどの英語力を維持する
『毎日の英単語』
読出来なかったりした本は載せていませ
− 26 −
❶
英 作 文 ト レ ー ニ ン グ ﹄︵ ベ レ 出 版・ 税 別
ニ ン グ に 挑 戦。﹃ ど ん ど ん 話 す た め の 瞬 間
今度は会話文を組み立てていくトレー
してしまいました。
読み出すと止まらなくなり休日に一気読み
ラ ー の 一 冊 で ず っ と 気 に な っ て い ま し た。
と発見の連続です。この本も当店ロングセ
かりました。文字で読めば容易に意味の取
ほぼ全ての要素を苦手としていることが分
た。一周に要した時間は約九時間。文法項
憂を繰り返しながら読み進めていきまし
ス ニ ン グ は ダ メ で す。 不 安 ま み れ で 手 に
are you〟? を〝 How old are you〟? と聴
き 違 え、 唐 突 に 自 分 の 年 齢 を 言 う ほ ど リ
最も苦手なリスニング。余談ながら〝
レ ー ズ が 定 着 し て き た の で、 今 度 は 私 が
スピーキング練習をしてそれなりにフ
で マ ス タ ー ! 長 文 リ ス ニ ン グ ﹄﹃ 決 定 版
で モ ノ に す る 方 法 ﹄﹃ 徹 底 シ ャ ド ウ イ ン グ
ぜ っ た い 音 読 挑 戦 編 ﹄﹃ 英 語 を 暗 記 し な い
あります。書名だけ列挙すると、﹃英会話・
ちましたが、全て読み終えたとき、確実に
です。すぐには聴き取ることができず苛立
ついて聞こえ、違う単語と捉えてしまうの
のが、﹁つながる音﹂。前と後ろの単語がくっ
ことができました。特に聴き取れなかった
くれることで前向きにトレーニングに励む
い。愕然としながらも原因を明らかにして
れる単語が音になるとまったく聞こえな
実際に診断テストを解いてみると、私は
としています。
一八〇〇円︶中学レベルの簡単な英文を瞬
時 に 作 っ て い く。 た だ そ れ だ け を ひ た す ら
繰 り 返 し て い く 本 で す。﹁ 簡 単 な ﹂ と 書 い
てしまいましたが、侮ることはできません。
意 外 と 出 て こ な い も の な の で す。﹁ 主 語 が
これで述語がこれで﹂とあれこれ頭で考え
ているうちになんだかよく分からない変な
文章を作ってしまうこともしばしば︵汗︶。
目別になっているので、学習した文法事項
取 っ た 一 冊 が、﹃ 英 語 リ ス ニ ン グ の お 医 者
英 語 シ ャ ド ー イ ン グ ﹄﹃ 英 会 話 な る ほ ど フ
が、他にも身銭を切って試した本が何冊か
スペースの都合で紹介できませんでした
自分の耳が変化しているのを感じました。
を実際に運用できるようになっているのか
さん 改訂新版﹄︵ジャパンタイムズ・税別
クイズにチャレンジするかのように一喜一
話すことに少し自信がついたので、今度
一六〇〇円︶。
How
は よ り 実 践 的 な 本 に 挑 戦。﹃ 絵 で 見 て パ ッ
確認するのにも役立ちました。
と言う英会話トレーニング基礎編﹄︵学研・
を瞬時に話していく本です。実際にその現
﹁一人称視点﹂で描かれた絵を見て英文
が苦手とする要素を明らかにします。そし
しています。最初に診断テストを行い自分
本ではリスニングを阻む要素を八つに分類
由を明確に解き明かしてくれました。この
す。是非店頭でご覧ください !
予定です。どれもお薦めしたい本ばかりで
所にまとめて九月中旬からフェア展開する
秋田店ではそんな﹁身銭英語本﹂を一カ
レーズ100﹄﹃翻訳問答﹄などです。
場に自分が立ち会っている気分を味わえる
て そ の 分 野 を 重 点 的 に 鍛 え て い き、﹁ 聴 け
自分が英語を聴き取ることができない理
ので臨場感抜群でした。日常生活で遭遇し
る、聞こえる﹂耳を作っていくことを目的
税別一六〇〇円︶。
そうなシチュエーションが多いので﹁こん
︵秋田店・語学書担当︶
なときに、英語でこう言えばいいのか ! ﹂
− 27 −
『英語リスニングの
お医者さん 』
歳の女子高生球児﹄を読んで
匂坂
裕一郎
り 青 春 の 日 を 燃 や し 続 け る 上 中 別 府 さ ん の 姿 勢、 生 き
共 に 成 長 し て い く 姿 に 感 動 を 覚 え ま す。 生 き て い る 限
自 分 の 可 能 性 を 信 じ、 人 生 の 道 を 切 り 拓 い て 仲 間 と
子高生球児﹄
︵上中別府チエ著・主婦の友社・二〇一三年︶
方 に ふ れ て い く 中 で、 目 標 を 持 っ て 頑 張 ろ う と い う 気
﹃
歳の女
で す。 定 時 制 高 校 や 夜 間 中 学 校 の ド キ ュ メ ン ト や エ ピ
最近読んだ本のなかで印象深かったのは、﹃
ソードの本はこれまでに何冊か読んだことはあります
持ちになりました。
*﹃ 歳の女子高生球児﹄
︵主婦の友社・上中別府チエ著・
税別一三〇〇円︶
︵三十一歳・小学校教員︶
が、 勉 学 だ け で な く 野 球 と い う ス ポ ー ツ に も 身 を 投 じ
て取組む姿勢に圧倒されました。
本 書 は 新 聞 の 書 評 で 知 っ た わ け で す が、 生 き 方 に つ
いて考えさせられます。上中別府チエさんは、﹁生涯現
役 ﹂ と い う 言 葉 で 自 分 の 人 生 を 表 現 さ れ、 今 も 新 し い
こ と に チ ャ レ ン ジ し て い く 姿 勢 を 貫 い て い ま す。 戦 争
体験をはじめさまざまな事情で学ぶ機会を奪われた上
中 別 府 さ ん は、 七 十 代 後 半 か ら 夜 間 中 学、 そ し て 定 時
制 高 校 に 進 学。 自 分 の 孫 に あ た る よ う な 若 者 た ち と 一
緒 に 机 を 並 べ 学 ん だ り、 野 球 部 に 所 属 し て 監 督 や チ ー
ムメイトを支えたりしました。
83
− 28 −
83
83
らしい。﹁震災のあと、買取がドバッと増えたが、その
関
博之
町 の 古 本 屋 の 主 人 が 書 い た 本 だ が、 古 本 に 限 ら ず 読
動 き が 一 段 落 す る と 本 を 買 う 人 が 増 え た ﹂ と い う。 世
﹃西荻窪の古本屋さん
音羽館の日々と仕事﹄
書 が 趣 味 の 人 に は た い へ ん 面 白 く 読 め る 本 だ と 思 う。
﹁ 音 和 館 ﹂ と い う 店 名 は 古 本 屋 ら し く な く、 店 内 に は
の中の動きや景気に連動している商売なのである。
いつも著者が好きなクラシックの曲が流れているとい
話し言葉で商売の苦労や楽しさを友人に語るようにあ
﹁月二〇〇万円を割っていますね﹂という。サラリーマ
う︵本書にも十七のアルバムが紹介されている︶。本書
け す け に 書 い て い る か ら だ。 た と え ば こ の 店 の 月 商 は
ンだって友人に俺の月収はこれだよって言わないもの
んではないかと思った。
の 読 後 感 も す が す が し く、 ユ ニ ー ク で 面 白 い 古 本 屋 さ
商 店 に と っ て 売 り 上 げ 以 上 に 大 事 な の が 仕 入 れ。 そ
*﹃西 荻 窪 の 古 本 屋 さ ん 音 羽 館 の 日 々 と 仕 事 ﹄︵ 本 の
雑誌社・広瀬洋一著・税別一五〇〇円︶
︵七十八歳・無職︶
である。
の 苦 労 も い ろ い ろ な エ ピ ソ ー ド を 交 え て 語 る。 客 が 店
に 持 ち 込 む 買 取 は 問 題 が 少 な い が、 自 宅 へ 行 っ て 買 取
する場合には﹁蔵書を見るのは、売る人やその家の歴史﹂
ま で 見 る こ と に な る。 本 人 で な く 亡 く な っ た 人 の 蔵 書
を 遺 族 が 整 理 す る 場 合 な ど、 さ ま ざ ま な ド ラ マ が 紹 介
さ れ て い る。 古 書 組 合 で の 入 札 制 に よ る 売 買 に つ い て
も、 わ れ わ れ 部 外 者 に は 分 か ら な い こ と が い ろ い ろ 語
られて興味深かった。
古 本 屋 っ て 商 店 街 の 中 で は 地 味 な 存 在 で、 古 本 好 き
の客だけが出入する店だと思っていたがそうでもない
− 29 −
豊田
千重
本 書 は 全 十 章 の う ち 九 章 を 英 領 植 民 地 時 代 か ら﹁ 民
﹃物語
ビルマの歴史﹄
一 九 八 九 年 九 月 六 日、 前 年 民 主 化 運 動 を 封 じ こ め て
政 移 管 ﹂ ま で の 近・ 現 代 史 に 当 て て い る。 軍 事 政 権 存
*﹃物 語 ビ ル マ の 歴 史 ﹄︵ 中 公 新 書・ 根 元 敬 著・ 税 別
一〇〇〇円︶
︵六十三歳・会社員︶
続の不可解さ、その自らの解散、括弧つきの﹁変化﹂な
ど、 分 か り に く い ビ ル マ 現 代 史 を 理 解 す る た め の、 本
成立した軍事政権は、突如国名を
ミ「ャ
書は唯一ではないが最良の参考書である。
」から
ンマー 」に変更した。﹁ビルマ﹂は口語、﹁ミャンマー﹂
は文語で同じ意味である。﹁ミャンマー﹂はビルマ民族
ビ「ルマ
のみならず周辺のカレンやシャンなどの小数民族を含
むと軍事政権は強弁するが、事実に反する。
そして二〇一一年三月の軍事政権自らの解散による
ティセイン政権によるアウンサンスーチーの自宅軟禁
﹁民政移管﹂を契機に、ビルマの状況は大きく変わった。
解 除 に よ り、 欧 米・ 日 本 な ど の 経 済 制 裁 措 置 が 緩 和 さ
れ た。 外 資 の ビ ル マ 市 場 へ の 参 入 が 本 格 化 し た。 新 聞
然 し、 こ の よ う な﹁ 変 化 ﹂ は 軍 人 達 に 囲 ま れ た﹁ 小
の経済欄にミャンマーの文字を見ない日はないほどだ。
さ な 土 俵 ﹂ の 中 で 展 開 さ れ る だ け で、 民 主 化 の﹁ 本 格
的 な 一 歩 ﹂ を 踏 み 出 し た も の で は な い と 著 者 は い う。
今後の判断基準として軍の特権をなくす方向で憲法改
正 が 進 め ば、 そ の 段 階 で﹁ 変 化 ﹂ の カ ギ 括 弧 が と れ る
とも。
− 30 −
II N
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A TT II O
ON
N
旭 川 店
池袋本店
☎(0166)26 1120
大阪本店
☎(03)5956 6111
三宮駅前店
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☎(078)
252 0777
〔営業時間〕10時∼ 19時半 〔営業時間〕月 ∼ 土 10時 〔営業時間〕10時∼ 21時 〔営業時間〕10時∼ 21時
∼ 23時、日祝
10時∼ 22時
MARUZEN &ジュンク堂書店
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〔営業時間〕10時∼ 21時
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☎(099)
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〔営業時間〕10時∼ 21時
〔営業時間〕10時∼ 20時
〔営業時間〕10時∼ 21時
〔営業時間〕10時∼ 22時
営業時間は変更する場合がございます。ご了承ください。
定休日については、お手数をおかけしますが弊社 HP または直接各店までお問い合わせ下さい。
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那 覇 店
本にまつわるエッセイ、など本に関するもの。最近読んでおも
☆読者の皆様の投稿を募集しています。最近読まれた本の感想文、
しろかった本、感動した本、考えさせられた本を教えて下さい。
四〇〇字∼六〇〇字程度で、おすすめの本のタイトル、出版社、
掲載分には二千円の図書カードを差し上げます。なお、原稿はお
http://www.junkudo.co.jp/
QR コード
︵司︶
店をどうぞよろしくお願い
台 T R 店、 丸 善 仙 台 ア エ ル
今 後 と も、 仙 台 本 店、 仙
とうございました。
ご愛顧いただき誠にありが
十 年 以 上 の 長 き に わ た り、
フト店を閉店いたしました。
先 月 末 を も っ て、 仙 台 ロ
PC ・スマートフォンから
い つ も﹁ 書 標 ﹂ を ご 愛 読 い た だ き ま し て
ありがとうございます。本誌定期購読料は
以下の通りです。
定期購読料
年間一二三〇円︵送料込︶
現金書留もしくは八十二円切手十五枚で
お申し込み先
│
ジュンク堂書店ジュンク特急便係
東京都豊島区南池袋二 一五 五
五九五六 六一〇〇
五九五六 六一二〇
〇三
│
編集後記
│
住所、氏名、年齢、職業を明記の上、お送り下さい。
〒
│
〇三
FAX TEL
返しいたしませんのでご了承下さい。
│
ジュンク堂書店﹁書標﹂編集室係
東京都豊島区南池袋二 一五 五
│
│
│
いたします。
− 32 −
☆尚、本誌掲載と同時に、ホームページにも掲載させていただきます。
〒
1710022
ᛩ
Ⓜ
൐
㓸
1710022
﹁○○書店員の会﹂
ました。それが﹁吉っ読﹂です。
﹁吉祥寺と本を結ぶ書店員の会﹂になり
ワイワイお酒を飲みながら熱く語り合う
を結ぶ書店員の会は、吉祥寺に限ったも
す。そんな﹁吉っ読﹂のような、街と本
らったりと、自然と交流は生まれてきま
た﹃ブックトラック﹄という無料冊子を
に盛り上がり、近日しばらく休刊してい
た。今年八月の﹁吉っ読﹂定例会は大い
書店吉祥寺店も今年から参加いたしまし
勉強会もあります。
また﹁本真会﹂という関西書店関係者の
大阪は﹁大阪書店員懇親会︵OSK︶﹂
名古屋は﹁名古屋書店員懇親会︵NSK︶﹂
千葉は﹁酒飲み書店員の会﹂
仙台には﹁仙台書店員連合会︵SBI︶﹂
のではありません。
復活する運びとなりました。ジュンク堂
二〇一〇年にオープンしたジュンク堂
この会は、二〇〇七年に生まれました。
書店吉祥寺店も少し書かせていただきま
﹁ 吉 っ 読 ﹂ と い う 会 が、 吉 祥 寺 に は 存
﹁ こ れ だ け 書 店 が あ る の だ か ら、 み ん
在します。
なで一緒に何かやりたいね∼﹂
以上は私の知る範囲ですが、日本全国
﹁○○書店員の会﹂の企画を目にするこ
には他にも﹁○○書店員の会﹂がきっと
吉祥寺は駅の周辺だけで、ジュンク堂
とがあったなら、少し立ち止まって覗い
す。店頭で配布いたしますので、ぜひ吉
書店吉祥寺店も含め新刊書店が七店、専
て み て く だ さ い。﹁ 街 と 本 ﹂ と の 出 会 い
そんな何気ない書店員と出版社の方と
いなや、共鳴する吉祥寺の書店員・吉祥
門書店と古書店が十店︵私の知る範囲で
が、新たな読書の一歩になるかもしれま
多く存在しているはずです。
寺に縁のある出版社の方々が続々と集ま
は︶軒を連ねています。本屋の激戦区で
祥寺にお越しの際には手にとって読んで
り、現在会員は約二十名。全員が毎回欠
すが、働いている店員同士の仲が悪いわ
せん。
みてください。
かさず参加している訳ではないのです
けではないんです。お互いの店を訪れて
の 会 話 か ら 始 ま り、 発 足 当 時 は 三 店 舗、
が、二ヶ月に一度の定例会に集まったみ
仲 良 く な っ た り、 人 づ て で 紹 介 し て も
会員は十名程度の会でしたが、始まるや
んなで情報交換、合同フェア、無料冊子
一〇〇一
五二一二
│
│
653- 6500013 0021
︵雄︶
も し 何 処 か の 書 店 で、 何 処 か の 街 で、
の企画等、それぞれアイデアを持ち寄り
TEL TEL
二〇一四年九月五日発行
﹁書
﹂ 第 号
ほんのしるべ
頒価五十円︵本体四十六円︶
標
編集・発行人
工
藤
恭
孝
神戸市中央区三宮町一の六の十八
︵〇七八︶三九二
発 行 所
㈱ジュンク堂書店 〒
印 刷 所
︵〇七八︶五七五
㈱七
旺
社
〒 神戸市長田区一番町二丁目一
430