癒しとビジネス

5グループグループプロジェクト
癒しとビジネス
上田裕子
日高宏一
安井友紀
小山美咲
西川麻衣子
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目次
第1章 まえがき
(日高 宏一)
3
第2章 人は何に癒されるのか
(上田 裕子)
4
第3章 人・生き物に癒される
(西川 麻衣子)
7
第4章 自然に癒される
(安井 友紀)
12
第5章 芸術に癒される
(日高 宏一)
16
第6章 物に癒される
(小山 美咲)
20
第7章 あとがき
(上田 裕子)
25
(安井 友紀)
27
参考文献
2
第1章 まえがき
担当:日高 宏一
「癒し」という言葉はみなさんご存知だと思う。「癒す」というのは、病気・飢え・苦しみ・悩みなどを治す、
という意味で、現代社会では特にストレスに対する言葉として使われている。最近「癒し」をよく耳にする
のは、おそらくストレス社会と言われるほど現在の社会がストレスの溜まりやすい世界になっているから
だと思われる。このような状況で「癒し」の分野が注目され始めたのは自然の成り行きであり、注目されて
いるからこそビジネスとしても目を向けたい分野だと思う。そこで私たちは「癒しとビジネス」というテーマ
で、この「癒し」の世界がどのようにしてビジネスと繋がっているのか、また今後どのようにして広げること
が出来るかを探ってみることにした。
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第2章 人は何に癒されるのか
担当:上田 裕子
近頃、雑貨屋やデパートの一角で「癒し系グッズ」というコーナーを見かけることが多くなった。そういっ
た場所では、例えば、アロマセットがおいてあったり、なにか精神的に訴えてきそうなポストカードがおい
てあったりする。以前からもこういったグッズはいく場所にいけば買うことはできた。それが今では店頭に
どんと構えられたり、大々的にコーナーを用意して並べられたりしている。特定の地域で起こった現象で
はない。ある程度流通が盛んな地域に行けば、どこでも見られる現象である。また、「癒し」や「ヒーリン
グ」という言葉そのものも、あちこちで聞かれるようになった。雑誌やテレビで特集が組まれ、セミナーや
シンポジウムなども開かれている。そして「癒し系」という言葉まで生み出された。1999年の新語・流行
語大賞のトップテンにもランクインしている。
経済効果やマーケットを思うとき、これらの現象はもはや素通りできることではない。いわゆる、「流行
(はやり)」である。流行とは、消費者のニーズの表れである。流行る店の種類や、店頭に並べられる商
品が変わってくということは、人々のニーズが変わっていっていることを意味している。
戦後からここ数年まで、ニーズは急速に変化していった。具体的に、どんなものが流行ったのか。「日
本市場における流行現象」をここに挙げてみた。
50年代:スクーター、トランジスタラジオ、ナイロンストッキング、三種の神器
※三種の神器:白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫
70年代:カラオケ、ボウリング、コカコーラ、ウォークマン、インベーダーゲーム
90年代:ポケモン、団子3兄弟、桃の天然水、ナタデココ、タマゴッチ、プリクラ
50年代、時代は朝鮮戦争のころである。この頃日本は神武景気といわれる日本はじまって以来の好
景気の中にあった。家庭電化製品が急速に普及したのもこの時代である。戦後から急激に経済が成長
したことで、最低限の衣食住が整い、もう1歩向上した生活に憧れるようになってきた雰囲気が感じられ
る。70年代の大きな出来事といえばオイルショックがあげられるだろう。この年、物価が異常に高騰し、
経済成長がマイナスになった。この頃の消費者は、日常的必需品が満たされ、例えば高級な指輪や乗
用車、ピアノといった生活水準を引き上げるものに興味をもつようになった感がある。ゲームやカラオケ
は、もはや趣味の域である。90年代、バブルがはじまり崩壊していった。消費活動が大変活発で、ブー
ムもたくさんうまれた。流行した商品の中にもはや生活必需品はなにひとつ含まれていない。
こういった流行の移り変わりをみるだけでも、人々の生活行動が発展してきたことがよく伝わってくる。
戦後、生活の維持、充実を目指した暮らしから、快適さの追求や価値の実現、つまり、楽しさや面白さを
志向する暮らしにかわっていったのだ。人々は暮らしの中に娯楽や趣味を重視し始めているのだ。
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現代の市場に精神的満足を与える商品が登場し急成長していった理由は、経済が成長し、人々の
欲求レベルが高度になったことにほかならない。人々がそれらの商品を買うとき、それは楽しさを感じた
かったり疲れた気分を癒してほしかったりする時なのである。では具体的に、どういった市場なのだろう
か。最近の社会現象から色々と感じることができる。例えば、最近では芸能人に癒し系といわれる存在
が生まれた。「乙葉」、「優香」、「井川遥」などがそう呼ばれている。また、音楽界では、「ENYA」や「feel」、
「image」といった癒し系音楽が大変流行した。かの「たれパンダ」が巻き起こした社会現象は、癒しビジ
ネスが表舞台に立った第一歩にちがいない。
こういった「癒し」ビジネスを理解するためには、まず、人々が実際どういった時に癒されるのかを知る
ことから始めなくてはならない。そこで、私たちの普段の生活から無造作に癒される瞬間を探ってみるこ
とにした。そして、精神的満足は、五感を通して得られると考え、まずは見たり聞いたりして癒されるとい
うように分類してみた。更にそれらを、「人や生き物に癒される」、「自然に癒される」、「芸術に癒される」、
「物に癒される」の4つの切り口を用意して分類してみた。
「見て癒される」より
・
「生き物」 −動物園・水族館、赤ちゃん、好きな人や芸能人のポスターなど、小動物、ペット
・
「自然」 −紅葉、桜、海辺、オーロラ、雪景色、夕焼け、花、夜景、星空、観葉植物
・
「芸術」 −古代の建築物、絵画・写真、演劇、落語、能・歌舞伎・狂言、工芸品・彫刻、ドラマ・映画、
本(を読んで)、服を着て(それを見て)
・
「物」−アロマキャンドルやランプ(サービスではカラーセラピーに)、癒し系キャラクター(トロ・ももち
ゃん・おちゃ犬など)、ぬいぐるみ、ネイルアート、料理の盛り付けや色合い
「聞いて癒される」より
・
「生き物」−話し声(テレビ・ラジオ・公園ほか)、会話
・
「自然」−自然の音(川のせせらぎ・鳥のさえずり・海のさざなみ・葉のかすれあう音など)
・
「芸術」−音楽全般
「あじわって感じる癒し」より
・
「物」−ハーブティー、ラーメン食べ歩き、サプリメント・栄養ドリンク
「匂いで癒される」より
・
「物」−アロマオイル、食べ物のかおり(焼き鳥や焼肉など)、お風呂の入浴剤
「そのほか体感して」より
・
「生き物」−エステ・マッサージ・整体、生き物を育てる(ペット・植物など)、旅行先で人と交わる、共
通の趣味をもつ人との交流・会話、宗教
・
「自然」−ダイビング(魚をみたり水とふれあって)、風景や大自然を味わう旅行、温泉
5
・
「芸術」−宗教
・
「物」−テーマパークにいく、枕(リラックスピロー)、マイナスイオン
私たちが、「こころの癒しがほしい」と思った時、具体的には何をするだろうか?まず、「その手段は何
がよいか」と考えるのではないだろうか。「何もしないで目さえつぶれば、癒しが得られる」という人はほと
んどいない。私たちのほとんどは、「癒し」ということを願った時には、何らかの手段、人物などを利用して、
それらを媒介に「癒された」という状態になろうとするのである。だからこそ、世間には今、「癒しのため
の」と銘打ったものが、氾濫しているのである。
第3章からは、上に挙げた例をもとに、そこから生まれた「癒しのためのもの」、つまり癒しビジネスを見
出し、その中でも特に目立って広がった市場に関してより具体的に探っていく。そして、癒しとビジネス
の関連性や現状、これからの姿について考えていく。
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第3章 人・生き物に癒される
担当:西川 麻衣子
本章では、癒しにまつわるビジネスの中で、特に人・生き物という観点から調査することで、癒しビジネ
スの仕組を分析し、問題点や今後の展開を考察する。まず、人・生き物に関係している「癒しの実例と商
品・サービス」を整理した。その整理の視点は、「見て癒される」と「体感して癒される」の2点である。その
結果を以下に紹介する。
1. 「癒し」の実例と商品・サービス
「見て癒される」より
・ 「動物園・水族館」 −入場し、動物等の観覧をする。その生き物に関する音声説明機を聞く。販売
されている餌での餌付けをする。ガイドブック、出版物(園内新聞等)やグッズの購入をする。サマ
ースクール(子供を対象に数日間動物等の世話や観察をする企画)に参加する。サファリパークで
のバス運行ガイドツアーに参加する。
・ 「赤ちゃん」 −赤ちゃんとのお出かけガイドを読んで、観光する。ベビーグッズ、出版物等を購入
する。
・ 「好きな人や芸能人のポスターなど」 −コンサート、イベント、ツアー等の企画に参加する。(芸能
人を見に行く、有名人と出かける等。)写真集、CD、ポスター、カレンダー等関連グッズの収集をす
る。ファンクラブに加入して好きなことに入り込む。友達や家族、恋人と過ごすためのガイドブック
(レストランやレジャースポット等の紹介)を使っての観光をする。
・ 「小動物」−チワワやうさぎ等の小動物を起用したCM、キャラクターの閲覧。グッズの購入。小動物
ブリーター(コンピュータ上で好きな小動物を育てるゲーム)での娯楽。
・ 「ペット」−ペットグッズや雑誌を購入する。ペットと泊まれる宿泊施設でペットと一緒に旅行へ行く。
ペットと入れるレストランの利用で外食をペットと食べにいく。ペットサロンを利用し、ペットをおしゃ
れにしてあげる。ペットのお墓を創設し、今までの哀悼の意を注ぐ。ドッグパーク(犬専用公園)の利
用で友達などの輪を広める。
「体感して癒される」より
・ 「エステ・マッサージ・整体」 −エステ、美容室、ネイルサロン、コスメティックサロンの利用で自分を
磨く。(メンズエステも含む。)ホームエステ器具の利用で自分を磨く。整体、マッサージ(全身)、リ
フレクソロジー(足裏)の利用で疲れを癒す。
・ 「生き物を育てる:ペット・植物など」 −バーチャル、サイバーペットを育てる娯楽。盆栽を集める。
園芸、家庭菜園をする。
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・ 「旅行先で人と交わる」 −キャンプ地、バーベキュー地等での見ずしらずの人たちとの交流。海外
でのホームステイ、農家へのファームステイ等での交流。
・ 「共通の趣味をもつ人との交流・会話・宗教」 -交流会やクラブ、サークルへの参加をして趣味に
没頭する。オンラインチャットでの会話。ホームページへの書き込みをして参加したという感を得る。
宗教団体への加入で好きな思考に入り込む。
2. 「癒し」とその市場
上記では、網羅的に人・生き物に関係している「癒しの実例と商品・サービス」を整理した。ここでは、
上にあげたなかでも特に二つの事例(ペット業界、エステ・マッサージ業界)に注目して、詳細を分析し
ていく。
Ⅰ ペット業界
a.)
現在販売されている商品やサービス
● サービス面(ソフト)
(ア) ペットと泊まれるホテル(ペットは千円前後の宿泊料。周りに自然が沢山あることが多
い。
(イ) ペットと楽しめるカフェ(テラス席指定やリード着用等の指定のあるところもあるが、犬
たちが大好きなお客さん同士で賑わえる。)
(ウ) ドッグパーク(ドッグサークルを作り、この場所を基点に犬の躾や健康、人と犬の付き
合い方を共に考える。もっと愛犬に運動させたい、とかリードをつけずに訓練したい、
と言う方のための犬公園。犬と暮らす上での情報交換や犬を介して友達を作る、犬
にも友達を作れる会。会費を年単位で取る。)
● 商品面(ハード)
(エ) 花台つき犬小屋(煙突部分が花台として使える。デッキを+aすることも可能。飼い主
が花で癒されることもでき、一石二鳥。¥5000くらい)
(オ) ペットブラシ(オゾンを含む空気がでてくるブラシでペットの毛をコ―ミング。においが
とれ、マイナスイオンもでるのでリラックス度は満点。¥6000くらい)
(カ) ペット版もぐらたたき(主に猫用。飼い主が空気圧でねずみを穴から出し入れして遊
ぶ。飼い主と一緒に遊べるので猫も飼い主も満足できる。¥3000くらい)
(キ) ペットとの共生住宅(ペットと共存できる家。運動スペース等がある。)
b.)
癒しのしくみと商品化
ホテルやカフェで、愛するペットといつでもどこでも過ごせる場所を提供する。そうすることで、飼い
主のたっての一緒につれていきたいという希望が実現する。愛犬たちの散歩がてらお茶したいマダムた
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ちには絶大の支持である。また、旅行の際に運ぶキャリーケース等のグッズも年々種類が増え、人間の
洋服にあったようなおしゃれなものがたくさんでてきている。そうしたグッズを集めることでペットに愛情を
注ぎ満足感を得る。大体それらは、ちょっとリッチでおしゃれな奥様方のニーズにあわせたものが多いよ
うに思われる。
問題は、ホテル(旅行)にしても、カフェにしてもペットの躾が最低限きちんとなされているかである。こ
ういう場では、お金を払っているとはいえ、自分たちだけの空間をもつわけではない。他人や他のペット
と接触する機会は必ずあるはずだ。糞や鳴き声等により、楽しい空間が不快な環境にならないようにし
なければならない。そのために、飼い主のモラルも問われるが、店側もきちんと躾のできているペットか
どうか見極める必要がある。
また、最近流行のドッグサークルとは、ワンちゃんの大好きな人たちで集って交流を持つものである。
ある程度の広さの土地を使い、躾教室や楽しい交流を行ったりする。一般の公園を使っている会はリー
ズナブルな値段(年¥2000ほど)である。しかし、それ専用の公園(ドッグパーク)を使っている会は、か
なり高値(月¥5000ほど)になっている。それでも愛犬に立派に育ってほしいという飼い主にとっては
少々高くても我慢できるのだろう。こうした新手の商売はすでに欧米では当たり前になっている。
c.)
ペット業界の今後
今後のペット業界は、もっともっとペットが人間の受けているサービスに程近いサービスを受けさせて
あげることが可能になってくると思う。例えば、もうすでに一部では始まっているのだが、ペットサロンでは、
美容のための顔の泥パック、爪のマニキュア等。人間はよかれと思ってやってあげても、当事者にとって
はどうかということである。野生を失いすぎた動物はただの 生き物 になりかねない。人間は、かわいい
動物たちだからこそ、その身になって、より合ったサービスを探していく必要がある。
Ⅱ エステ・マッサージ業界
a.)
現在行われているサービス
●サービス面(ソフト)
(ク) 美容室でのドリンク、肩や頭のマッサージサービス。(長い間かかるカラーやパーマ
等の待ち時間にドリンクをだしたり、マッサージをする。一定の金額以上のメニューを
されたお客様にはハンドマッサージも提供。自分に最大2〜3人の美容師さんたちが
付き、気分は女王様。)
(ケ) 美容室でのネイルサロン併設。(上記のような長時間の待ち時間に、ネイルを整えた
り、カラーリングしたい人は、併設されたネイルサロンへそのままの姿で行くことがで
きる。頭も爪もきれいになれて、満足できる。)
(コ) 百貨店やメーカー小売店での無料コスメサービス。(特定のメーカーのコスメティック
用品売り場)で、無料でプロのメークアップアーティストにお化粧をしてもらえる。最近
は若い男性のアーティストが増え、女性の支持を集めている。また、同時にそのメー
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カーの製品がどのようなものかも知ることができる。)
(サ) マッサージ店での、ドリンクやアロマテラピー、心理カウンセリングのサービス。(ただ、
マッサージをうけるだけでなく、さまざまなサブサービスもつき、よりリラックスできる。)
b.)
癒しのしくみと商品化
美容室のあらゆるサービスは、お客様の「こうだったらいいな。」「こうしたいな。」というニーズによく即
されている。いまや、雑誌や新聞のサービスは当たり前になっているが、これもお客様の立場にたなって
考え出された結果であろう。自分につきっきりの美容師さん達がいて、すべてをまかせっきりにするのは
とても気持ちのいいものである。
コスメのサービスに対してもそうだ。普段毎日、自分で本や何かを参考にしながらお化粧するより、プ
ロのメークアップアーティストにアドバイスを受けながら、全てお化粧してもらう方がきっといいであろう。
男性のメークアップアーティストも最近は数多く存在し、テレビや雑誌でよく紹介されている。メイクをして
もらうことで、少し女優気分を味わわせてくれる。
しかし、これらに対しても問題点はある。それは、あらゆる年代に対応しているかということである。最
新設備の整った美容室。ネイルのカラーリングも、自動で頭髪洗浄もできるかもしれない。しかし60代く
らいのおばさま方はそれを好むだろうか?世間には「若者」向けの美容室が目立つ傾向にある。もっと
幼児から年配の方々まで、幅広く一般受けするような美容室ももっと作っていけばいいと思う。
コスメサービスにしても、百貨店でのコーナーにもっと年配の方々が入りやすいような、もっと落ち着い
た感じ空間を設けたらいいと思う。現在の状況は、ほとんどの百貨店で、年配の方々はあまり入りやすく
ないような雰囲気のようにみえる。女性はほとんどが、いつまでたっても美しくありたいという希望をもって
いる。そのニーズを見逃してはならない。
c.)
エステ・マッサージ業界の今後
今後のエステ・マッサージ業界は、人々のより熱心な美容意欲や、健康意欲を背景に、ますます必要
とされてくるだろう。そのニーズの深まりにいかに対応していくかが、生き残りの手段でもあると思う。今は
少しお高い感じのするこの業界だが、これからはもっと皆が行きたいときにいけるような手軽さもあれば、
よりよいと思う。
3. ニーズの埋もれと業界の可能性
今回、「人・生き物に癒される」について調べてみて、これからのこの癒し業界はまだまだ発展する余
地があると思った。ペット業界においては、今回調べてみてドッグパークというものの存在を始めて知り、
驚いた。犬がすごく注目を集められているのはわかったのだが、ほかのペット、猫や鳥、爬虫類等につ
いてのサービスについてはあまり情報はえられなかった。もちろん、それぞれの動物の性質を考慮しな
ければならないが、犬以外のペットを持つ飼い主のためのニーズも多いと思う。例えば、猫は性格上散
歩が難しい。ペットとして飼うなら、普段は家にとじこもりきりになっている家猫が多いだろう。なので、飼
い主と愛猫が一定の屋外スペースで遊べる場所もできたらいいと思う。
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マッサージやエステ業界においては、今日だいぶ身近な存在になりつつあり、店舗数もかなりの勢い
で増えている。しかし、まだまだ価格の面で、マッサージはほとんど10分1000円単位であり、エステも
かなりの高価格である。かなり財布に余裕のあるときでないと難しいような設定だ。学生でもマッサージ
に行きたい、エステに行ってきれいにしてもらいたいという願いは多いと思う。そのために、マッサージ店
では時間単位の値段は安く設定し、ほかの飲み物代等で稼ぐ。または、エステにおいてもいえることだ
が、時間単位の価格制ではなく足裏、腕など細かく部位制にしたりしてもっと皆が行きやすいような環境
にすればいいと思う。
これらはほんの一部だが、本当にまだまだこの癒し業界は始まったばかりで発展の余地がコスト面で
もサービス面でもあると思った。私はこれからこれが、どのような動きをみせるのか注目したいと思う。
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第4章 自然に癒される
担当:安井 友紀
私たち現代人は毎日多忙でなんとなくカラダに疲れを感じ、疲労からくるストレス、カラダはもちろん肌
や眼、それに心にも負担がかかっているものである。そんな中、私達が「心の癒しがほしい」と思ったき、
のんびりとした時間や空間を求めて旅にでたりするものである。旅に行くと、普段、ビルやコンクリートに
囲まれている生活から開放され、大自然の風景などを見るとのんびりとした気持ちになる。そのような旅
に注目し、自然のもつ癒し効果と自然を取り扱った旅行ビジネスについて調べてみる。
1.
自然の癒しの効果
息詰まったとき、からだの調子が悪い時、自然の中に出て気分が良くなった体験があるはずです。
人間の DNA には生命が誕生した時から現在までの情報がすべて入っているというが、その自然界で過
ごした時代の記憶がよみがえるのではないだろうか。35 億年前に生命が誕生してから現在までの間で、
コンクリートに囲まれた近代化した時代を送るようになったのはここ数百年でしかない。それ以外はずっ
と土や木が近くにあって、いつでもきれいな空気を吸うことができ、きれいな水を飲むことができ、新鮮で
安全な食物を口にすることができたのです。人間も他の動植物と同様に自然の中の一部であったので
す。それが近代化に伴って、自然の中にあって不自然な存在となってしまったのです。だから時々は、
本来の自然の中に身を置いて、自然の一部と同化し、自然のエネルギーをいただくと元気になるので
す。(心の癒しの森より抜粋)例えば、家のなかに植物がひとつあるだけで部屋の雰囲気は変わってくる
と思う。何か心からすーっとした気持ちになる。実際に私の家にも玄関やリビング、ダイニングなどさまざ
まところに植物が置いてある。毎日、生活している空間に観葉植物やお花があることにより、普段は感じ
ていないけれど、なにげない「心のゆとり」が生まれているのではないかと思う。
この「心のゆとり」こそが、「癒しの効果」ではないのだろうか。
2.
癒しの旅行の現実
現代は今、癒しを求めている時代である。そのような時代の中で、私たちはどこへ行き、何を感じれば
癒されるのかなど、癒しを求めた旅行の現状を調べていく。
a.)
癒しの実例と商品
「見て癒される」より
・
「花見、紅葉、夜景など美しい景色」−「春らんまん・みちのく桜めぐりと八甲田・雪の回廊の旅」、
「京都の紅葉絶景ツアー」、「異国情緒あふれるエキゾチックな街 長崎夜景!」など
「聞いて癒される」より
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・
「鳥のさえずり、海のさざなみなど自然の音」−「世界遺産 白神山地で森の生き物を体感ツア
ー
「心身から癒される」より
・
「自然の風景や大自然を味わう旅行や温泉」−「絶景!富士・箱根展望ツアー」、「紀州・白浜
温泉の陣」、「温泉の香り漂う九州の軽井沢」
「体験して癒される」より
・
b.)
「ダイビング(魚を見たり水とふれあって)」
サービス面
日本や世界中には数え切れないほど数多くの旅行のツアーがある。季節によっても変化するし、例え
ば京都という場所ひとつに限定してもその種類はほんとうにさまざまである。そのようなツアーを旅行ビジ
ネスとして確立していくには、消費者に対するサービスを充実させ実際に足を運んでもらうことである。
以下にサービスの例をあげてみる。
・
室内温泉プール無料
・
お部屋の冷蔵庫半額!!
・
カラオケルーム半額!!
・
夕日又は朝日の見える部屋指定可能
・
誕生日、還暦、結婚記念日の前後 1 週間に記念品付き
・
産地特産品を無料サービス
など。
以上のようにサービスひとつにとってもさまざまなものがある。例えば、夕日又は朝日の見える部屋指
定ができるとする。それだけでも私たちはその商品に魅力を感じているのである。私たちはわざわざ遠く
までいって毎日暮らしている家と同じような部屋に泊まりたいわけではない。高いコストがかかっても、日
常から離れた場所へ行き、自然を感じ、いつもとは違った空間の中で過ごす価値はあると思っているの
である。そのような、コストにかえられない消費者の満足感を与えるサービスの充実を図っていくことが大
切だと思う。
3.
旅の癒し効果
(心理面では〜心理的質問紙の分析より)
・日常生活上での悩みの軽減
・腹立たしさ、いらいら、怒りの低減
・生活をいきいきさせ、生活や人生を幸福だ、満足だと感じさせる効果
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(生理面では〜血液検査、採尿、唾液検査の分析より)
・身体の活動性の低下(リラックス)
・ストレスの低下
(脳波面では〜脳波測定の分析より)
・脳の活動量の低下(休息効果)
・リラックス
(効果の持続性)
・心理面、整理面の検査では、いずれも旅行終了後2日後、5日後で効果が持続。
『旅と健康』モニターツアー の調査による
このような調査結果からみても分かるように旅には実際に癒し効果があり、効果は旅行後も存続
しているので私たちが旅行から帰ってきても。何か心からすっきりとした気持ちになって又明日から
がんばろう!という気持ちになっているのである。
4.
旅行業ビジネスの市場の変遷と今後
まず、旅行業は大きく「手配旅行」と「主催旅行」のふたつに分けられる。手配旅行とは職場旅行や
修学旅行などの交通手段や宿の手配を行う業務であり、主催旅行はツアーなどの企画をこちらから消
費者に誘いかけるものである。現在の市況では、手配旅行の多くが低迷している。その理由は少子化に
よる修学旅行の低減や、消費者はニーズにあった商品を自ら選択している為、押し付けの企画が嫌わ
れる傾向が強まっているからである。主催旅行も今までは海外旅行などの情報は旅行代理店のカウンタ
ーに行かなければ得られなかったがインターネットなどの普及によりわざわざ窓口に出向く必要のなくな
った現在ではパンフレットの印刷費用もペイしにくくなっている。そのため旅行会社は全般的に新聞広
告等の媒体展開に移行しつつある。
そのような市場の中で私たちは旅行に行くときには必ずと言ってもいいほど旅行代理店や駅の中に置
いてある旅行のパンフレットをみている。その中で注目したのは、「カップルにうれしいお宿」」「女性にう
れしい美肌温泉」「シルバーにやさしいお宿」「ファミリー旅行に最適!」などターゲットを絞った広告が
多くみられる。実際に、私たちが数あるツアーの中からひとつに決めるときもそのような広告に魅せられ
て選んでいる。例えば、カップルをターゲットにしたツアーの場合、①貸切風呂無料利用 OK!②男性・
女性共デザイン浴衣無料貸し出し! などカップルにはうれしい特典がついてくる。又、「65歳以上の
方同伴の場合10%割引!」など年齢層を絞って顧客を集めているツアーも多くある。
現在の旅行業界では同業他社から法人顧客を奪うことは困難であることに加えて、手配旅行が衰退し
てきている現状をみるとターゲットを個人に移行していくのは自然の流れと考えられる。主催旅行参加者
の平均年齢は65歳前後であり、20 歳から 65 歳までの年齢層では旅行のパンフレットや雑誌を見ても明
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らかであるように、すべての商品のターゲットを女性に絞っている、という現状から法人と有職男性に関
しては現時点では市場になりにくい。以上のことから、今後の事業の方向性としては、特に高齢者及び
女性層のセグメントの徹底を図っていくことである。
旅行業界は交通機関や観光施設のセットの組み合わせる要素が強いので、元来他との差別化がしに
くい業種である。加えて新たな観光資源を開発したり、ブームを作る働きかけを行う力がない。結果とし
て各社似通った商品になっている。ちょっとした差別化で成功してもすぐに他者に追いつかれてしまう
のだ。今後の展開としては、癒しブームと自然環境をどう結び付けていくかがポイントになってくると思
う。
5.
おわりに
癒しがブームになっている中で、人々は物質的に満たされた今、精神的充足を満たそうとしているの
である。精神的充足を満たされれば人々は幸福になれるのではないかと思う。しかし、癒しグッズでは癒
されないほど人々の心は渇きは深刻になっている。今回、自然による癒しの効果を調べてみて、その効
果は絶大なものであり、私たちが切実に願っているものは、「もの」ではなく、目まぐるしく動き続ける慌し
い毎日から離れられる、ホットひと息つける「時間」や「空間」であるのではないかということが分かった。
その「時間」や「空間」を提供する旅行ビジネスも数多く存在する。これからも人々は癒しを求めてさまざ
まな所へでかけ、そのひとときに癒され、また忙しい生活に戻っていくという繰り返しなのである。
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第5章 芸術に癒される
担当:日高 宏一
本章では、人々を癒す芸術関連の商品やサービスを取り上げ、癒しの仕組みや効果を調べ、ビジネ
スとして今後どのようにして発展できるかを探ってみる。まず現在どのような芸術関連の商品・サービスが
癒しの効果を発揮しているのかを紹介する。
1. 「癒し」の実例と商品・サービス
「見て癒される」より
・
「建築物」 −古代に立てられた宮殿や遺跡を巡るツアーなど
・
「絵画・写真」 −画家の書いた風景画や写真の展示会
・
「演劇」 −劇団などの演劇
・
「落語」 −オチのある話で笑いを取る一人漫才
・
「能・歌舞伎・狂言」 −日本古来の舞台劇
・
「工芸品・彫刻」 −土や木などで作る芸術作品、展示会
・
「ドラマ・映画」 −スクリーンやテレビを通す映像作品
・
「本」 −小説や漫画など
・
「服」 −ファッションコーディネーターやアパレル事業など
・
「奇術」 −マジックショーなど
「聞いて癒される」より
・
「音楽」 −癒し系ミュージシャンや彼らを売り出す音楽会社
「体験して癒される」より
・
「宗教」 −教会、聖書販売やゴスペルなど
2. 「癒し」とその市場
ここでは、上記で取り上げた中から「音楽」についてさらに掘り下げ、考察する。
Ⅰ 音楽業界
a.)
現在販売されている商品やサービス
● サービス面(ソフト)
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(ア) 音楽療法(音楽を通して病気や悩みを解決する)
(イ) 音楽番組(テレビやラジオを通じて視聴者に音楽を提供する)
(ウ) カラオケ(友達、家族らと部屋を借りて歌う)
● 商品面(ハード)
(エ) 楽器・楽譜制作(音を奏でる人のための道具を提供する)
(オ) CD・DVD レンタルや販売(楽曲 CD・DVD のレンタル・販売サービス)
音楽関係での商品・サービスをあげてみると、大きく二つに分ける事が出来る。ひとつは音楽を「生み
出す」側の楽器や楽譜、もうひとつは生まれた音楽を「伝える」側の CD 販売・レンタルやテレビ・ラジオ
の音楽番組、コンサートなど様々である。音楽業界といえば古くは前者を指していた。よりよい音のバイ
オリンやピアノなどが職人の手によって生み出され、それらを用いて音楽家たちがメロディを奏でた。ベ
ートーベンやモーツァルトが生きた時代に音楽市場は音楽家と職人が大半を占めていた。
しかし、近年の技術革新で後者の市場も大きく発展してきた。音楽市場がさらに大きくなった、というよ
りも音楽市場が二分化されたといったほうが的確かもしれない。なぜなら音楽を「生み出す」側と「伝え
る」側は性質が異なるからだ。だからこそヤマハとソニー・ミュージックエンターテイメントは比較できない
のだ。「伝える」側の市場が大きくなったからといって「生み出す」側が小さくなったかといえばそうではな
く、むしろ新たな音楽ジャンルの発展や機械の発達、さらにはミュージシャンの知恵で様々な楽器が生
み出されている。そして「伝える」側もインターネットライヴなど新たな分野に音楽市場を試そうとしている。
この二つは互いが協力し合うようにして音楽という市場を巨大化させ、もはや音楽を人々の生活から離
れられないものとしている。
b.)
癒しの仕組み
音楽を聴いて、楽しい気持ちになったり、スッキリした経験はだれにでもあることだろう。音楽には不思
議な力が秘められている。音楽療法(ミュージック・ヒーリング)とは、この力を最大限に利用して心や身
体を健康にすることである。もちろん、音楽を聴くだけでなく、楽器を演奏したり歌をうたうことも、これに
含まれる。医療としての音楽療法も最近、さまざまな医療現場で取り入れられてきており、今後注目すべ
き治療法のひとつである。
音楽が癒しに使われた歴史は古く、およそ 3000 年前に羊飼いの若者ダビデがユダヤ王サウルのうつ
病をハープの調べで治したといわれている。かのジョージ・ワシントン米大統領が音楽療法に非常に興
味を持ち、軍隊などにも使われだし、現在では医療において補助的療法だと認められてきている。
ではなぜ音楽によって癒されるのだろう。音楽を聴くと心が安らぐことが多々ある。大きくなったり小さく
なったり、強くなったり弱くなったりする、連続的だが一定ではない揺れのことを「ゆらぎ」というが、じつは、
この「ゆらぎ」にこころが安らぐ秘密があるのだ。 ゆらぎに含まれる波動を f(周波数)という記号で表すと、
人の生体リズムや自然界には、1/f というゆらぎがあるという。例えば人の心臓の鼓動には 1/f ゆらぎがあ
り、川のせせらぎや虫の声などにも 1/f ゆらぎがある。そのお互いの振動が共鳴すると、美しいと感じ、和
17
ませてくれるのだ。
ゆらぎには大きく分けて 3 種類の性質がある。波動はそれぞれパワー(強度)を持っており、そのパワ
ーとゆらぎの f(周波数)との関係をグラフにしてみると、次ページのグラフのようになる。
グラフが水平になる 1/f0 は周波数によらない一定のパワーを持つもの、45 度の傾きを示す 1/f1、さら
に鋭角的な角度を示す 1/f2 がある。1/f0 は、刺激性の強い音のもの。例えば、地震や山崩れ、激しい音
楽など。また、非常に規則的でゆっくりしすぎている音が 1/f2。時計の秒針や機械的な電子音などがこ
れにあたる。あまりに激しい音楽は脳が疲れてしまうし、あまりに単調なら、眠たくなってしまう。つまり、こ
ころや身体にとって、ちょうどいいのは、その中間である 1/f1 ゆらぎになるというわけだ。例をあげるとクラ
シック音楽や川のせせらぎのほかに、般若心経やヒトラーの演説にもこの 1/f1 のゆらぎがある。また、癒
しに大きなかかわりをもつα波とは、心身ともに安らいでいる時に出る脳波のことである。α波ストレス・ク
リニック・シリーズという音楽 CD などは、このα波を引き出しやすいというわけだ。
c.)
商品化
以上のような音楽の癒しの効果を用いた商品やサービスは、現在でも多くある。一般的に知られてい
るのがヒーリング音楽で、2000 年度洋楽アルバム最高のセールスを記録した「feel」によって 癒し系音
楽 のブームが開かれた。また胎教や老人痴呆症にも効果があるとされ、老人ホームでも音楽療法が使
われている。さらに癒す対象を人から外せば、お酒にも効果があるといわれている。ワインやお酒などに
音楽を聴かせた(実際に曲を聴かせたのではなく、音楽を振動エネルギーと考えてその振動を与えた)
ところ、非常に熟成されたまろやかなアルコールができたそうだ。同じように乳牛に音楽を聞かせたとこ
ろ、乳がよく出るようになったそうだ。そして競走馬総合研究所常磐支所の療養馬を対象に調査したとこ
ろ、クラシック、イージーリスニング、ニューミュージック、およびメディケーションミュージックなどを聞かせ
ると、馬の心拍数が減少し、血圧が低下して落ち着きが見られたそうだ。このように癒しの分野は人以外
にも適用できることが分かってきている。
この音楽療法を専門に扱い、音楽を必要としている人全てを対象にしているのが音楽療法士である。
すでに東京国際音楽療法士専門学校や長野医療衛生専門学校の学科にもなっているが、身分法がま
だ確立されていない現状なので、まだまだ生まれたての専門職業だ。音楽療法はヒーリングミュージック
を聴くことだと思っておられる方は、心療内科領域の、比較的難しくない段階の方なはず。厳しい自律
訓練を受けた音楽セラピストが本領を発揮するのは、とても重い事実を抱えている人たちである。例えば
心や精神が疲れてしまい、人とのコミュニケーションを拒まなければならなくなった人たちに、もう一度心
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を開いてみようと思ってもらえるように音楽で語りかけたり、体が不自由になって日が浅く、今までのよう
に思うように体が動かせないで戸惑っている方に、少しでも不自由しないで身体を動かせるようにと、音
楽を使ってお手伝いをしたり、といったことだ。
d.)
音楽療法の今後
音楽療法士は安定した職業ではない。理由はシンプルで、ひとつは国家資格になっていないから、
もうひとつは、施設にこれだけの専門家を配置しなければならないと、国が決まりを定めた文章のなかに、
音楽セラピストが含まれていないので、その実績が顕著で、正当に評価したい場合であっても、お給料
の出しどころがないからである。これは日本の行く末にもかかわってくるのではないかなと思うこともある、
今後の課題だ。既存の、また将来の音楽療法士らが研究成果を発表し、音楽療法の必要性や地位を
確立し、国家に認められる必要がある。
ただこの問題はそこまで難しいものではないかもしれない。ストレス社会と呼ばれるほど我々の周りに
はストレスがひしめく時代である。今の癒しのブームは、このストレス社会が生み出したといっても過言で
はない。ストレスが原因で病に苦しむ人がこれからドンドン増えてくるはずで、とりわけ歴史と実績を持つ
音楽療法を専門的に扱う彼らが認められる日は近いかもしれない。
現在インターネットの普及で主に MIDI を使った楽曲紹介が盛んになっている。しかし、2001 年 7 月より
JASRAC(日本音楽著作権協会)により、著作権のある楽曲の使用に関しては使用料を払わなくてはな
らなくなった。著作権のかかる曲は、作者の没後 50 年が経過していない曲であり、この規定はオンライ
ン上で音楽を提供しているサイトに多大な影響を与えた。しかし、音楽療法で使う音楽はクラシックや自
然界の音など、著作権のない音楽ばかり。つまり、オンラインで音楽療法を行う場合、他の音楽サイトよ
りもコスト面で非常に有利なのだ。このアドバンテージを利用して、オンラインでの音楽療法が今後発展
するかと思われる。そこには音楽療法士がいて、好きな時間にインターネット電話などで診てもらうことが
でき、自分にあった音楽をメールで提供してくれたり、あるいは一緒に歌ったり・・・。先ほども述べたよう
に音楽療法士は不安定な職業である。しかし、インターネットという技術を最大限に利用してコストを削
減し、患者を集めることができれば先は明るいはずだ。
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第6章 物に癒される
担当:小山 美咲
私達はたくさんの物に囲まれて生活をしているが、その中でどういった物に癒しを感じるのか。第6章
では、物が中心の「癒し」を売りにしたビジネスが、現在どう展開しているか調べていく。1では商品やサ
ービスの実例をあげている。
1. 「癒し」の実例と商品・サービス
「見て癒される」より
・
「アロマキャンドルやランプ」 ―癒し系雑貨、アロマテラピー関連グッズ、カラーセラピー
・
「癒しキャラクター」 ―キャラクターグッズ、ゲーム、お菓子のおまけ
・
「ぬいぐるみ」 ―キャラクター、パウダービーズクッション
・
「ネイルアート」 ―人工爪(柄入りのものもある)、アートしやすいマニキュア、手軽なシールタイ
プのアート
・
「料理の盛り付けや色合い」 ―食欲を誘う盛り付け、フードセラピー
「聞いて癒される」より
・
「話し声や会話」 ―テレビ番組、ラジオ、CM(アイフルなど)、携帯電話用の着信メロディや着
信ボイス
「味わって感じる癒し」より
・
「ハーブティー」 ―植物療法、お茶、料理用
・
「サプリメント」 ―栄養補助用、ダイエット用、アミノ酸を使った飲料(アミノサプリなど)
・
「栄養ドリンク」 ―リゲイン(サラリーマンのための癒し系飲料)
「匂いで癒される」より
・
「アロマオイル」 ―アロマテラピー関連グッズ
・
「食べ物の香り」 ―シュークリームなどの店頭販売
・
「お風呂の入浴剤」 ―温泉を思わせるツムラ「日本の名湯」、果実の香りのするもの、花びらが
散ったような紙の入浴剤
「体感して感じる癒し」より
・
「エステにいく」 ―フェイシャルマッサージ等、
・
「テーマパークにいく」 ―温泉、クアハウス、スパワールド、自然体験(アイス作り、そばうち、乗
馬、乳絞り)、ワンちゃんのテーマパーク、ディズニーランド
20
・
「枕」 ―テンピュール安眠枕、ひのきチップ枕、目覚まし時計付き、ヒプノセラピー、「マイナス
イオン」 ―マイナスイオンドライヤー、リラクゼーショングッズ、マイナスイオン発生器
2.
「癒し」とその市場
Ⅰ ヒーリング・リラクゼーション業界
a.)
現在販売されている商品やサービス
● サービス面(ソフト)
(ア)
テラピストによるアロマテラピー(アロマの香りとヒーリングミュージックの流れる中、患者の置か
れている環境、体調、心理状態など様々な角度から施術法、ブレンドオイル等を決めていく。テクニック
や料金はテラピストによって違いはあるが、約¥5000〜)
(イ)
オーラ・ソーマカラーセラピー(イギリスで生み出されたカラーセラピー。専門店で相談員と会話
をしながら、天然のハーブから抽出された98本の二層に分かれた色のガラス瓶(バランスボトル)を四本
選んで、その色から、本当の気持ち、性格深層心理、潜在能力、問題点など説明を受ける。)
(ウ)
リフレクソロジー、マッサージ(ストレスで疲れた体と心に深いリラックスを与える。足裏のものが
多い。人間が素手でタッチすることにより、深いリラクゼーションが得られ、ある意味タッチセラピーも含ま
れる。約¥3000〜)
●
(エ)
商品面(ハード)
エッセンシャルオイル(精油)(芳香のある樹木や草、花、果実などから抽出した濃縮された揮
発性の液体。ラベンダー、ペパーミント、ローズマリー等。容量は10ミリリットルで、単価は¥800〜4000
程度。)
(オ)
アロマポット(キャンドルタイプ)(セパレートタイプでオイル部とキャンドル部分は分かれている。
¥300〜3000 程度。)
(カ)
アロマキャンドル(リーフ系、ポプリ系、フルーツ系などがあり、3〜45 時間持続可能。¥500〜
3000)
(キ)
アロマライト(¥1500〜5000)
(ク)
カラーストーン、バランスボトルなど。
(ケ)
入浴剤(液体、固体、粉状、紙状と種類・形・香りは様々。¥100〜)
b.)
癒しのしくみと商品化
テラピストによるアロマテラピーやカラーセラピーは、アロマの香りやヒーリング音楽が流れる整った環
境で行われ、カウンセリングの後にその時の自分の状況にあうオイルや施術法を選んでくれるため、顧
客の満足度は高いと思われる。また、普段と違う環境での施術は癒し効果も高い。時間をかけて一人一
人様々な状況のお客さんに接して癒しを提供し満足させなければならず、多くの数をこなすことは難し
21
いため、利益をあげるにはどうしても価格設定が高めになる。また、サロンでのテラピーに感心を持つの
は主に女性で、なお、余裕のある OL やリッチなマダムの利用が多いようだ。アロマテラピーやカラーセ
ラピーは世間的にはまだまだ理解度が低いし、いくら興味がある人でも「気軽に入りづらい」「値段が気
になる」などの理由で、客層がなかなか広がらないのも問題であるといえる。最近は神戸サウナ&スパの
中にあるような、クイックマッサージのお店を良く見かける。ここは、気軽に入れる感覚で客層を問わない。
時間は10分から選べて、値段もリーズナブル。仕事帰りのサラリーマンが疲れを癒しに来たり、ちょっと
した空き時間に立ち寄れるので、客のニーズにうまく対応できていると思う。
エッセンシャルオイルやアロマキャンドルは、東急ハンズやロフト、雑貨屋などで手に入る。わざわざ
サロンに行かなくても個人で気軽にアロマテラピーを楽しめるし、自宅で自分の好きな時に癒しを得られ
る。贈り物にも最適である。価格も、雑貨と考えたらそんなに高くはないし安くしたからといって、爆発的
に売れるわけでもないので妥当な値段と言えるのではないか。価格よりも質を良くする事のほうが、この
商品には大事な気がする。
次に入浴剤についてだが、温泉に行ったような気分になれる「日本の名湯」シリーズや、花びらが散
ったようになるタイプ、手軽に泡風呂が楽しめるものなどがあり種類は豊富だ。入浴というのは誰でもす
る事なので一番取り入れやすい「ヒーリング」なのではないか。一日の疲れを体と心両方で癒せる効果
がある。価格も手頃なので、その日の気分によって使い分けられる。利益をあげるために共通して言え
る事は、消費者リサーチを細かく行っていくことと新しい発想が大事だろう。
c.)
ヒーリング・リラクゼーション業界の今後
アロマテラピーやカラーセラピーは年々人々の生活に浸透してきている。日本ではエッセンシャルオ
イルは、今のところ薬事法などの規制により雑貨という扱いになっており、趣味として楽しむ人が多い。し
かし英国においては、家庭内での予防医学としての使用はもちろんのことで、医師も積極的に取り入れ
ているそうだ。日本においても、様々な場面で境界線を作らず急成長しているし、今後は医療としてもっ
と発展する可能性もあるように思う。最近は、私達が日常よく利用する物や雑貨などにアロマが積極的
に取り入れられているので、アロマテラピーが人々にとってぐっと身近に感じられるようになり、とてもいい
傾向だと思う。ただ、誤った考え、方法が広まってしまうことは心配だ。最近ではアロマテラピストやカラ
ーセラピストになるための検定や資格についてよく耳にするし、きちんとした知識を持ったセラピストがど
んどん育っていけば良いなと思う。
Ⅱ キャラクター業界
a.)
現在販売されている商品やサービス
●
サービス面(ソフト)
(コ)
i モード、ezweb 向けの着信メロディサイトの「お茶犬」コーナー(癒しをコンセプトに
したキャラ「お茶犬」の鳴き声の着信ボイス、待受画像、着信メロディなどを提供。月額90
円(3曲)と300円(12曲)の2コースから選択)
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● 商品面(ハード)
(サ)
お茶犬(鼻先を押すと舌をペロペロするなどかわいいアクションをするぬいぐるみ。
鳴き声や、舌を出す音など全8種類の音が鳴り、お茶の香り付き。電池なし¥2980 ¥3
340)
(シ)
デラックスお茶犬ほ〜んわり(話し掛けるとかわいく返事をしてくれ、抱きかかえて遊
んであげるとワンワン鳴いたりする。頭や背中をなでると喜んで目をぱちぱちさせたり耳を
ぱたぱたさせ、放っておくと寝てしまう本物のペットのようなぬいぐるみ。電池なし¥4980
¥5340)
(ス)
12星座占いスクリーンセ−バー(選択した一星座について、365日毎日午前0時
を境に当日の占い結果が、スクリーンセ−バー上に表示される。お茶犬は6種類、占いの
種類は5種類ある。¥980)
(セ)
たれぱんだひんやりまくら(中に保冷剤を入れるタイプ。夏の暑い日向けの商品。
¥1500)
(ソ)
たれぱんだふうりん(¥1000)
(タ)
たれぱんだビアグラス・枝豆セット(¥980・¥1200)
(チ)
たれぱんだお風呂でぷかぷか(お風呂に浮かばせるタイプのもので、中にトルマリ
ンが使われておりマイナスイオンによる癒し効果がある。¥980)
(ツ)
名産品(各地方の名産品に関連したたれぱんだのグッズ。ぬいぐるみやマスコット、
ストラップなど。)
b.)
癒しの仕組みと商品化
人の話し声やペットの鳴き声などは人の心を癒す効果があるので、このような着信ボイスやメロディの
サービスは今もたくさんあるしこれからも出るだろう。ほとんどの人が持っている携帯からアクセスでき、料
金も手頃、何より気軽に楽しめる。占いスクリーンセ−バーは、仕事の合間や家に帰ってメールチェック
の合間などに、ちょこっとのぞいてほっとできるし、占いが好きな女性達にはたまらない商品だろう。たれ
ぱんだビアグラスは、完全に大人向けの商品だ。客層を広げるためには、どの年齢層の人達がどのよう
な商品を求めているか、大人からも支持されるような商品を出せるように、細かく調査を行うことが必要だ
と思う。
「たれぱんだお風呂でぷかぷか」という商品は、マイナスイオンによる癒しとたれぱんだによる癒しの、二
重の効果があり、さらにお風呂の中はリラックスしやすい環境にある。たれぱんだなどの代表的な癒しキ
ャラクターグッズはかなりたくさんでており、普通ではそれほど珍しくなくなってきている。そこで、このよう
な癒しキャラクターと癒し効果のあるものを組み合わせた商品が最近よく見られる。癒しグッズに特に関
心のない消費者でも、たれぱんだが好きなら買ってみようかなという気持ちも出てくるし、お互いに付加
価値が生まれる。
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c.)
キャラクター業界の今後
癒し系キャラクターは、様々な方面からたくさん生まれている。コカ・コーラの「ク−」やドラマから「ゴー
ヤ−まん」NHK の「どーもくん」など、商品活動を行ううえでキャラクターは今や欠かすことのできない存
在だ。そのようなキャラクターと、現代のトレンドキーワードでもある「癒し」がくっつけば、もっと広く様々な
ビジネスが展開できるだろう。現在もたくさんの新しい癒し系キャラクターが生まれてきているし、まだま
だこの業界は可能性をひめているなと思う。ただ、あからさまに癒し効果を狙いすぎたものや、ウケなか
ったものは短命に終わるだろう。何に癒されるかはその人の好みや時と場合によって違うので、難しいと
いえば難しい業界だ。
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第7章 あとがき
担当:上田 裕子
1. 癒しという言葉
今では「癒し」という言葉はすんなり受け入れられ、用いられているが、元々は日常会話に名詞として
は存在しなかった言葉だと言われている。病気や苦しみを治す行為を行うことをさす動詞「癒す」の形で
は存在していたが、名詞として使われることはなかった。それが1980年代終わりごろから、主に宗教の
世界で精神的・肉体的な痛みや病苦からの開放のことを「癒し」と名詞で表現するようになったようだ。さ
らに1990年代後半になると、具体的な苦痛のみではなく 私自身 が癒されること、つまり、私の実存
(魂)の救済、 こころ の救済、精神的により高次であることを目指すこと、全体性の回復が言われるよう
になった。我々が使っている「癒し」は英語のヒーリング(healing)の訳語として人々に定着しているもの
であるが、そこに英語の訳語に相当する意味内容はほとんどなく、故に「癒し」は現代日本が生み出した
独自の概念だといえる。
2. 「癒し」産業
缶コーヒー業界でプレミアム商品がブームになったのは、95 年から飯島直子を起用してCM展開を行
ってきたジョージアが火付け役である。飯島直子が「ジョージアでひと休み」と声をかけ 「男のやすらぎ」
を訴求した一連のシリーズは、CMの連続的な大ヒットにともなって、プレミアム商品への応募も 95 年の
「やすらぎパーカー」が 3400 万通 、96 年の「がんばってコート」にいたっては 4400 万通の応募があり、
記録的な大ブームを巻き起こした。ペットブームも顕著である。マンションの分譲でも、ペットOKの物件
は即完売するようだ。
ここまで「癒し」が一つのブームとして確立したのは、このブームに乗った「癒し産業」と密接に結びつい
ているからである。経済が大成長を遂げ、物が溢れるようになった今の時代、今までどおりの商品で今ま
でどおりのビジネスを展開して成功できることは稀有である。「さらにもうひとつ」、「おまけ」、「付加価値」、
これで購買を決定する、そんな消費者に、精神的欲求を満足させる「癒し産業」はもはや不可欠であ
る。
3. 「癒し」ビジネスの今後
戦後、日本は科学技術の著しい発展を遂げて、欲しいものがなんでも手に入るくらい、物質的に豊か
な国になった。しかし、ストレスや心の病、環境問題など、逆に新たな問題も生み出してきた。忙しく働き
慌しく生活する中で、傷ついたり悩んだりしている。そしてそれを忘れさせてくれる、落ち着いた、静寂な
時間を現代人は求めている。そのひとときに癒されることを喜び、また忙しい生活に戻っていくという繰り
返しなのだ。ゆとりを失いスピートに任せた現代、癒されるひと時もそれにあわせ、どんどん細分化され、
とうとうコンビニエンスストアに並ぶペットボトルについた癒し系グッズで物が売れるようになってしまった。
それほどまで癒しを求めている現代の人々の姿を見ていると、「癒し」を「豊かさからうまれたビジネス」と
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いうと滑稽な気さえしてくる。物と心が満たされることが豊かであるというのであれば、この現代の現象は、
人々の心の貧しさを象徴しているのではないだろうか。貧しさからニーズは生まれ、社会がそれをビジネ
スにしていく。ある意味、今も人々は貧しいのである。そして、それに気づかず豊かであると信じて日々
生活していることは、物がなくて貧しい人々よりももっと哀れで悲しい気もしてくる。今回、「癒し」をテーマ
にそのビジネスの姿を探ってみたが、その背景にはいつも精神的に満たされない現代の人々があった。
今後、人々が精神的に満たされた状況が訪れない限り、精神的な貧しさ以上に物に飢えることがない限
り、「癒し」ビジネスはなくならないしもっと発達していくのだとおもう。
26
参考文献
‹
上田 裕子
2002 年講義 「消費者行動論」 配布資料 (甲南大学経営学部 根元則明)
「広辞苑 第二版補訂版」 岩波書店
「癒しの日本文化史」 藤原成一 法藏館 1997年
‹
小山 美咲
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(http://plaza17.mbn.or.jp/˜skyheartclub/)
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(http://www2d.biglobe.ne.jp/˜mik-lion/spark.html)
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‹
西川麻衣子
JAZA 動物電子図鑑
天王寺動物園
(http://jdbsys.jazgaor.jp/encyclopedia.html)
(http://www.tennojizoo.com/plan̲top.html)
小動物ブリーター
(http://kurage.press.ne.jp/cgi/slmp106/slm.cgi?mode=guide)
ウィングの旅行絵日記
(http://www.linkclub.or.jp/˜eagle/)
Nissen On-line カタログショッピング
(http://www.nissen.co.jp/c̲item/2003spr/sho̲index/f̲gp̲02.htm)
健康塾のホームページ
ドッグパーク
(http://www.age.ne.jp/x/kenko-jk/)
(http://member.nifty.ne.jp/kabco/DOGPARK1.HTM)
ディノス
(http://www.dinos.co.jp/webapp/commerce/command/ExecMacro/shoptop.d2w/report)
‹
日高 宏一
楽天市場
(http://www.rakuten.co.jp/riv/)
音楽療法のホームページ
Lycos
(http://homepage1.nifty.com/mtyumie/)
(http://health.lycos.co.jp/library/3000/w3000566.html)
poron♪
(http://poron.milkcafe.to/)
JASRAC
(http://www.jasrac.or.jp/park/index.html)
角川新国語辞典(角川書店発刊)
27
‹
安井 友紀
京都のお花見スポット
互換から癒される
(http://kyoto.omise.to/hanami/hanami.html)
(http://plaza.rakuten.co.jp/brilliant29/014005)
心の癒しの森
(http://www.biwa.ne.jp/˜syuichi/heart-links.html)
旅の癒し効果
(http://www.jata-net.or.jp/osusume/mametisiki/010709jissyo.htm)
心の癒し
自然の癒し
日本旅行
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(http://www.ne.jp/asahi/iyashi/5/nature.htm)
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観光ビジネスはどこへいく
(http://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/soukou/ppg/ppg6/ppg6-07.htm)
28