石英(水晶) A2-08036 木村 徹也 ・石英(水晶)とは 石英(クォーツ)は二酸化ケイ素 (SiO2) が結晶してできた鉱物である。六角柱状のきれいな自形結 晶をなすことが多く、その中でも結晶形が明瞭なものを水晶と呼ぶ。多くは無色透明で非常に透明 度が高く、古来は水の結晶と考えられていた。1 気圧、573℃で低温型石英から高温型石英に転移 する。低温型石英は三方晶系で、高温型石英は六方晶系である。高温型石英は六角柱面を持た ない。さらに高温では、鱗珪石に相転移する。 「三方晶系」 「六方晶系」 また、日本の国石に指定されている。これは日本が良質な水晶を多く産出していた為である。4 月 の誕生石でもある。石言葉は「完璧・冷静沈着・神秘的」。石英は、装飾品(宝石)として用いられた り、占いの道具としても利用される。電子工学にも利用されており、オートクレーブを使った水熱合 成法によって製造される人工水晶が用いられることがある。工業的に利用される石英ガラスは、通 常、天然に産出される珪砂、珪石などを溶融した後冷却し、ガラス化させたものである。 ・特徴 石英の非常に細かい結晶が緻密に固まっているものを玉髄といい、不純物によっていろいろな色と なり、紅玉髄、緑玉髄、瑪瑙、碧玉などと呼んで飾り石とする。 また、水晶に不純物が混じり色のついたものを色つき水晶という。インクルージョン(内包物または 包有物)を含んだり、結晶の形が変わって見えるものを変わり水晶という。色つき水晶は準貴石とし て扱われ、変わり水晶はコレクターに人気がある。 水晶自体、代表的な圧電体であり、圧力が加わると電気が発生する。このために初期のレコードプ レーヤーのピックアップに使用されたり、今日では水晶発振器として最も活用され、水晶発振器を 利用した時計も多い。 ・色つき水晶 水晶に不純物が混じり色のついたもの。発色原因は主に不純物の混入と放射線による結晶格子欠 陥によるもので、主要構成元素によるものではない。 紫水晶(アメシスト) 紫色の発色はケイ素を置換した微量の鉄イオンによる色中心が原因と考えられている。最 近の研究ではアルミニウムも関係しているとの説がある。加熱するとレモン色や黄色に変わ りやすい。紫外線に曝露すると退色する。 緑水晶 微細な角閃石等が水晶中に含まれ、全体が緑色を呈色して見える水晶。 黄水晶(シトリン) 黄色の発色は紫水晶と同じように鉄イオンによる色中心が原因で、黄水晶と紫水晶の色の 違いは色中心のエネルギー準位が違うと考えられている。天然の黄水晶の産出は少なく、 市場に出回っている黄水晶のほとんどは紫水晶を熱処理して黄色にしたものである。マディ ラシトリンと称される深いオレンジの色相を彩るシトリンは、さらに希産。 紅水晶(ローズクォーツ) ローズクォーツのピンク色は光に敏感で退色しやすい。この色は、不純物として混入してい る微量のチタン、鉄、マンガンに由来するとされる。近年の X 線元素分析では、この色は光 学顕微鏡で観察可能なレベルのデュモルチエライトの繊維によるという結果も出ている。 また呈色はリン酸塩やアルミニウムによると考える意見もある。 煙水晶(スモーキークォーツ) 色彩に発色する原因ははっきりとは分かっていないものの、ケイ素を置換した微量のアルミ ニウムイオンが特に多量の放射線を受けると色中心となり、光を吸収するため灰色に見える ためであるとされている。受けた放射線の量が多いほど色が濃くなる。放射線照射をして色 を付ける場合が多い。 黒水晶(モーリオンまたはモリオン) 色の濃い煙水晶との区別は、結晶構造が破壊されたもの、表面に透明感のないものなどと 言われることもあるが、黒水晶と色が濃くなった煙水晶を区別する明確な定義は存在しない。 アメシストに放射線照射をして色を付ける場合が多い。 レモン水晶 硫黄により黄色に色づいた水晶。結晶の間に硫黄が入ったため黄色に色づいて見える。 ・変わり水晶 インクルージョン(内包物または包有物)を含んだり、結晶の形が変わって見えるもの水晶の抱有物 によるものと、形態によるものがある。 抱有物によるもの 針入り水晶(ルチルクォーツ) 水晶の結晶中に金紅石(ルチル)の針状結晶がインクルージョンとしてあるもの。とても細い 金色の針が入り込んだように見える。 ススキ入り水晶 水晶の結晶中に電気石などの柱状の鉱物がインクルージョンとしてあるもの。細い苦土電気 石が入り込むとほのかに緑色にみえ、まさにススキのように見える。 草入り水晶 水晶の結晶中に緑泥石などの不定形な(あるいは草のように見える)鉱物がインクルージョ ンとしてあるもの。インクルージョンの形によって苔のように見えたり、毬藻のように見えたり する。 水入り水晶 水晶の結晶中に空洞があり、それが液体で満たされているもの。閉じ込められた液体は、水 晶の成長当時の環境を保存していると考えられる。空洞中に液体と共に気泡が入っている 場合がある。 形態によるもの 山入り水晶 一度結晶成長が止まり、再度結晶成長をしたもの。中の結晶と外側の結晶の間に不純物が 入り込むと結晶の境界が目で確認できる。このため、中に含まれる結晶の頭部が山のように 見える。ファントムクォーツ(幽霊水晶)とも呼ばれる。また、通常の山入り水晶の内包物は白 色だが、緑色の場合もあり、こちらはグリーンファントムと呼ばれる。 松茸水晶 成因は山入り水晶とほぼ同じだが、先に晶出した水晶の先端に外側の結晶が大きく成長し、 まるでキノコのような形になった水晶。 日本式双晶 日本式双晶は 2 個の結晶がξ面((1122) 面)を双晶面として 84°33′の角度で接合した、 多くハート形の双晶。双晶としては他にブラジル式、ドフィーネ式、エステレル式等各種が 存在する。 両錐水晶 結晶の両端の錐面ともに母岩に接さずに成長し、結晶成長が阻害されず模式の結晶形態 に近い形態を表したもの。成因としては生育途中に母岩から脱落しそのまま成長した、等が 考えられている。 ・まとめ 石英(水晶)は古くは占いの道具などとして使用され、現在では水晶発振器や光ファイバー、石英ガ ラスなどとして、電子工学や工業など様々な分野で利用されている。 また、近年ではパワーストーンとして注目されており、鉱物に興味のない人でもその知名度は高くな っている。これらのことから石英(水晶)は我々の生活からは切っても切り離せない鉱物であり、古く から人類の近くにある最も身近な鉱物と言えるだろう。
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