4 月号(第 14 号)2001.4 東京大学 分子細胞生物学研究所 広報誌 IMCB University of Tokyo IMCB Institute of Molecular and Cellular Biosciences University Tokyo The of University of Tokyo 目 次 研究分野紹介(バイオリソーシス研究分野)…………………………… 1 分生研改組の概要(高橋忠世)…………………………………………… 4 着任のご挨拶(長澤和夫)………………………………………………… 6 「第16回バイオテクノロジー懇談会」開催される(山口千秋)…… 6 退官のご挨拶(平田愛子、古瀬久幹)…………………………………… 7 ドクターへの道(船越陽子)……………………………………………… 8 海外ウォッチング(小野弥子)…………………………………………… 9 留学生手記(Armin Rump) …………………………………………… 10 OB の手記 (小笠原亜子佳) …………………………………………… 11 所内レクリェーション報告1…………………………………………… 11 研究室名物行事(石原理加)…………………………………………… 12 防災訓練が実施される…………………………………………………… 13 所内レクリェーション報告2…………………………………………… 13 平成12年(2000年)各研究分野業績発行物一覧……………… 14 おめでとう!博士・修士課程修了……………………………………… 21 2000年分生研セミナー一覧………………………………………… 23 2000年分生研コロキウム一覧……………………………………… 25 知ってネット……………………………………………………………… 26 Tea Time - 編集後記(前田達哉、松尾美鶴)………………………… 26 研究紹介(木下大成、山田(川合)真紀)…………………………… 27 研究最前線(活性分子創生研究分野、細胞機能研究分野)………… 28 研究分野紹介 バイオリソーシス研究分野(旧微生物微細藻類研究分野) 本研究分野では、広い範囲の微生物、特に細菌、酵母、 構 成 員 糸状菌類及び微細藻類について種々の観点から特徴づけを 助教授 横田 明 行い、それらの類縁や系統進化を明らかにし、それによっ 助手 西田洋巳 専門技官 三浦義治 技官 磯部美由紀 技官 小野寺弥生 て体系化される微生物系統分類学の研究を行っています。 そのために、系統分類学的に十分研究されていない微生物 を自然界から取得し、それらの属性を形態学(微細形態を 含む)、化学分類学、分子進化学などの手法により多面的 に解析を行っています。最近では特に、遺伝子を用いた分 子系統学の研究に力を注ぎ、微生物の特定の遺伝子塩基配 列を解読し、コンピューターを用いて比較系統解析を行い、 微生物進化についての研究も行っています。 研究テーマ 1.グラム陰性細菌の系統分類 博士課程大学院生 (農学生命科学研究科) 修士課程大学院生 1名 (農学生命科学研究科) 大学院研究生 2名 (農学生命科学研究科) 受託研究員 2.グラム陽性細菌の系統分類 3.シアノバクテリアの系統分類 4.担子菌酵母の分類とその系統進化 5.植物寄生菌類とその宿主間における遺伝子の水平移動 遺伝子資源として注目される様々な微生物を相手に、可 能なあらゆる解析手法を駆使して、微生物の多様性を明ら かにしたいと考えています。現在、そのための同定、分類 5名 写真 1 研究室メンバーの写真 2名 2 およびその方法論、系統進化といった基礎的側面にスポッ トライトを当て、ダイナミックに研究を展開しています。 細菌と菌類の系統分類学並びに微生物系統分類学の確立に 寄与することを目的として、分子系統進化学を軸にして以 下の 7 つの研究を展開している。 図1 海洋細菌分離株の系統解析 1.グラム陰性細菌の系統分類 海洋性 Agrobacterium 属菌種について分類学的検討を加 図2 シアノバクテリアの系統解析 えて 3 新属 Stappia, Ruegeria, Ahrensia 属を提唱した。海洋 サビキン類は、宿主植物と共進化をとげたものと推定さ 生物より分離したグラム陰性海洋性細菌について系統分類 れ、シダ植物に寄生する属が現存するサビキンの中で最も を進めているが、これまでにいくつかの新規分類群の菌種 原始的であると考えられてきた。核 SSU rDNA 塩基配列に を見い出している(図 1)。 基づくシダ植物寄生性サビキンの系統学的位置を解析し た。系統樹によると、サビキン類は単系統であり、サビキ 2.グラム陽性細菌の系統分類に関する研究 ン類系統に属する他の腐生性の酵母と系統群を形成した。 産業上有用な菌種が多いが分類学的に未解決な菌株が数 シダ寄生サビキンの 2 属はサビキン類系統樹の初期に分岐 多く存在するグラム陽性細菌群について形態、生理・生化 した位置を占めてはおらず、単系統を形成しないことによ 学、化学分類、系統分類にわたる多相的解析を行ってきた。 り、これら 2 属は原始的ではないと考えられる。寄生菌類 熱帯雨林土壌より分離した細菌のも含め、これまでに多く の系統進化と宿主植物の系統進化は一致しなかった。系統 の分離株、保存株について分類学的検討を加えてきた結果、 樹は菌類とその宿主植物との類縁性を反映していない。す いくつかの新規分類群の菌種を見い出している。 なわち、寄生菌類とその宿主植物は独立に進化してきたと 考えられる。 3.シアノバクテリア(ラン藻類)の系統分類 また、タイ国より分離したサビ菌類酵母について多相分 シアノバクテリアは自然界における窒素循環に深く関わ 類学的解析を行ったところ、Rhodotorula 属の新菌種と結 り、また Spirulina 属は食品や飼料への利用が注目されてい 論した。これら分離株株はテレオモルフ時代を有すること る。シアノバクテリアの中、ユレモ目、クロオコックス目 が示唆されたので、さらに有性時代の有無を確認している。 およびプレウロカプサ目菌種を中心に形態、16 SrRNA 遺伝子および GroEL 遺伝子の塩基配列に基づく系統分類学 的解析を行い、本グループの菌種は系統的に混在しており、 分類学的な再編が必要であることを明らかにした(図 2)。 5.植物寄生菌類とその宿主間における遺伝子の水平移動 高等菌類の系統進化を考察する上で鍵を握るタフリナ目 菌類を中心に 18S rRNA 遺伝子塩基配列を決定し、高等菌 類の系統解析を行った。その結果、子嚢菌類が、子嚢菌酵 4.担子菌酵母の分類とその系統進化 担子菌系酵母を含む担子菌類は 3 大系統群(クロボキン、 母と糸状子嚢菌類(両者は姉妹関係にある)に進化上分岐 する以前に Taphrina、Protomyces、Saitoella、 サビキン、菌じんの 3 系統群)に分かれ、それらは菌糸隔 Schizosaccharomyces、Pneumocystis はそれらの共通祖先 壁孔の微細構造や菌体糖組成(特にキシロースの有無)に から分岐したことを見出し、これら5属を含む新主要系統 よる群別と高い相関性が見いだされた。特異な胞子果と 群に対して古生子嚢菌類('Archiascomycetes') の名称を提 Rhodotorula 様コロニーを形成する Graphiola 属はクロボキ 唱した。また、キク科植物 に寄生する Protomyces inouyei ン系統群に位置することを明らかにした。 の 18S rRNA 遺伝子中にグル−プIイントロンが 2 つ別々の 3 位置に存在することを発見した。さらにその中の一つが宿 Strains, 2nd Edition, December 1998" 665 pp. (第2版)に 主植物とその寄生菌類の間の進化の過程で、同イントロン 記載し、公開している。本カタログに収載されている株の が水平移動したことを提示した。この研究は同イントロン 内訳は、 の異種生物間における水平移動を具体的に示唆した最初の 細菌 研究である。また、別種 P. lactucaedebilis にも同イントロ ンを発見した。 IAM カルチャーコレクションについて 当研究室は、IAM カルチャーコレクションを維持管理し 155属 398種 1291株 糸状菌 95属 395種 1154株 酵母 40属 159種 415株 微細藻類 73属 235種 421株 363属 1187種 3281株 計 である。さらに 2000 年には、新たに 310 株(細菌 80 株、 ており、微生物多様性研究における基盤としています。 糸 状 菌 類 23 株 、 微 細 藻 類 20 株 ) を Microbiology and IAM カルチャーコレクションは 1953 年の発足以来、文部省 Culture Collection 11 (2000) に掲載、公開した。近年、地球 特別事業(系統保存事業)として微生物学研究推進のため 環境の破壊にともない、生物の多様性と保全への取組が各 の支援事業として機能している。本事業は、分類学的位置 分野で進められている。IAM でも微生物の種多様性の研究 の確実な微生物株・微細藻株をその情報とともに広く国内 が新しい研究課題であり、このような見地から積極的に新 外の研究者に提供し、研究・教育及び産業・福祉の進展に たな株を分離、同定、保存すること、また微生物の分類、 寄与することを目的としている。また、一方で財団法人応 同定や開発研究のために確実な株を提供することに努めて 用微生物学研究奨励会の援助も仰いでいる。微生物学・微 いる。 生物工業の進展とともに広く非病原微生物を対象とする微 生物全般をカバーする総合コレクションとしての性格を有 研究室のセミナーとして週 1 回、研究成果報告と雑誌紹 している。現在は、歴史的なコレクションを含め、原核微 介でそれぞれ担当者が発表する。春には飛鳥山に花見を兼 生物、真核微生物の主要分類群を中心にして、微生物・微 ねた新人歓迎会、夏には東大三崎臨海実験センターへの野 細藻類合わせて約 3,500 株を保有している。微細藻類株の 外採集・セミナー旅行、春秋のソフトボール大会への参加 コレクションは国内には国立環境研究所と当 IAM コレクシ (後の打ちあげが狙い目の気有り)、秋には分類研究会参加 ョンの 2 カ所にしか無く、大変貴重な存在である。緑藻類 での旅行など、研究活動以外にもろもろの活動もしており (Chlorella、Chlamydomonas 両属など)が 60 %、ラン藻類 ます。カルチャーコレクション以外の当研究室が誇るもう (シアノバクテリア)、紅藻類、ミドリムシ類も保有してい 一つのコレクション「名酒コレクション」を囲んで皆で楽 る。年間の分譲数は約 1,200 ー 1,600 株の菌株を分譲してい しむのは年に“ん十回”にのぼるほどです。 る。保有株の内、3,281 株をカタログ " IAM Catalogue of 写真2 IAM カルチャーコレクション 4 分生研改組の概要 前事務長 高 橋 忠 世 第3のミレニアムの初年度である平成 13 年度に、分子細胞生物学研究所(以下「分生研」という。)は、従来の細胞・機 能高分子総合センタ−を中心に組織の改組を行った。分生研の名称は変更せず、平成 15 年 3 月まで存続予定であった同セン タ−は、細胞機能情報研究センタ−として新設され、10 年の施設時限としてスタ−トした。 分生研は、その前進である応用微生物研究所が偶然にもワトソンとクリックによりDNAの立体構造が解明された 1953 年 度(昭和 28 年度)に創設された。 分生研は、応用微生物研究所から分生研に名称を変更した平成 5 年度の改組を経て 2 度目の改組となる。構成部門等は、3 大部門 1 センタ−で従来と同じである。 研究組織は表 1、研究分野の新旧対応関係は表 2 のとおりである。 ◎研究内容 生命の情報、制御、機能、創生をキ−ワ−ドとし、微生物から高等動植物及びヒトに至る膨大なゲノム情報を活用して、 蛋白質の機能の解明や、医薬品開発に役立つ有用遺伝子の探索による医療への貢献、生活環境の改善、食料の安定供給につ ながる個々の細胞のシステムとしての生命体の研究を推進する。 ○分子情報・制御大部門 ゲノム情報を制御する細胞間及び細胞内情報伝達機能を解明する。ゲノム情報の制御機構を明らかにし、様々な疾病の治 療法や物質生産法の開発を可能にする。 ○分子機能・形成大部門 細胞から個体に至る生命体形成メカニズムを解明し、その制御法を開発する。細胞から個体を形成するメカニズムの理解 と発生工学、再生医学、植物工学への応用を可能とする。 ○分子構造・創生大部門 分子と生体の相互作用を利用して生命を理解し、制御する。生体の生理機能が解明され、難病の克服につなげる。 ○細胞機能情報研究センタ− 大量の遺伝情報、蛋白質の立体構造情報を有効活用し、医薬品の開発への橋渡しを行う。 今回の改組により細胞機能情報研究センタ−に教授 2 名、客員教授 1 名が増員となり、教官定員は教授 18 名、客員教授 2 名、助教授 17 名、助手 19 名の計 56 名となった。 脳細胞の機能と能機能の改善、人工血液、がんの有効治療、昆虫等を用いた生物形成のメカニズム、イネを代表とする植 物生理機能の研究等社会的要請が多い研究を指向している。生命科学総合研究棟(Ⅰ、Ⅱ期)の建設も着手され、将来幅広 い分野で社会に貢献できる可能性を内在している。 5 表1 研究組織図 研究大部門 (改組後の研究分野) (改組前の研究分野) 分子情報・制御 分子遺伝 染色体動態 核内情報 分子情報 情報伝達 分子制御(客員) (分子遺伝・育種) (生物物理) (分子系統) (分子情報) (細胞工学) (細胞活性評価)(客員) 分子機能・形成 細胞機能 細胞増殖 形態形成 細胞形成 機能形成 (細胞機能) (分子生物活性) (染色体分子構造解析) (細胞構造) (細胞合成・人口細胞) 分子構造・創生 発生分化構造 生体超高分子 生体有機化学 活性分子創生 (分子発生分化) (生体超高分子) (生体有機化学) (生理活性物質) 細胞機能情報 研究センター 創生 高次機能 高次構造 バイオリソーシス プロテオーム(客員) (新設) (動植物培養細胞) (蛋白質解析) (微生物微細藻類) (新設) 教授会 所 長 附属施設 表2 研究分野の新旧対応関係 (改組前) (3大部門1センター) (改組後) (3大部門1センター) 【研究大部門等】 【研究大部門等】 細胞生物大部門 細胞構造 細胞機能 分子発生分化 細胞工学 細胞合成・人工細胞 細胞活性評価(客員) ¡ ¡ ¡ ¡ ¡ ¡ 分子情報・制御大部門 ¡分子遺伝 ¡染色体動態 ¡核内情報 ¡分子情報 ¡情報伝達 ¡分子制御(客員) 分子生物大部門 分子遺伝・育種 分子系統 染色体分子構造解析 生体超高分子 分子情報 ¡ ¡ ¡ ¡ ¡ 分子機能・形成大部門 ¡細胞機能 ¡細胞増殖 ¡形態形成 ¡細胞形成 ¡機能形成 生体化学大部門 生体有機化学 生物物理 生理活性物質 分子生物活性 ¡ ¡ ¡ ¡ 分子構造・創生 ¡発生分化構造 ¡生体超高分子 ¡生体有機化学 ¡活性分子創生 附属細胞・機能高分子総合センター 微生物微細藻類 ¡ 動植物培養細胞 ¡ 蛋白質解析 ¡ 細胞機能情報研究センター ¡創生(新設) ¡高次機能 ¡高次構造 ¡バイオリソーシス プロテオーム(客員)(新設) 6 着任のご挨拶 生体有機化学研究分野 長澤 和夫 新しい世紀の幕開けと同時に 1 月より生体有機化学分野でお世話になっております。身に余る光栄 と深く感謝致しますと共に、未熟ではありますが全力をつくして職務を全うする所存でございます。 どうぞよろしくお願い申し上げます。 私は前職の理化学研究所で、天然から得られる生理活性物質の合成を研究対象として行って参り ました。合成においては、複雑な構造を持つ天然物を数十工程をかけ構築する「全合成」が研究主 題でありますが、その際既知反応の組み合わせだけで行うのではなく、より簡便に効率よく合成す るための「合成手法の開発」も重要なテーマとなります。開発されたいくつかの手法は実際に工業 的製法や医薬品合成の際に用いられ貢献しております。今後はこれを機に有機合成化学的手法を基 盤とし、生命機能に密接に関わる小分子化合物の創製とそれをプローブとした生命現象の解明等の研究課題を中心に取り組 んでいきたいと考えております。 理化学研究所から東大のキャンパスに足を踏み入れた時に、忘れかけていた若い学生の方々の熱気や活力を強く感じたの が非常に印象的でした。自然科学の本質は好奇心から始ると思いますが、学生の方々が自ら得た自由な着想を実際に具現化 でき、大いに羽ばたくことができるようお手伝いできればと考えております。どうかよろしくご指導御鞭撻賜りますようお 願い申し上げます。 「第 16 回 バイオテクノロジー懇談会」開催される (財)応用微生物学研究奨励会 山口 千秋 去る 2 月 21 日(水)東京大学山上会館大会議室で「第 16 回バイテクノロジー懇談会」が開催されました。昭和 57 年に 「第 1 回企画連絡会」の名の元に発足したこの会は、(財)応用微生物学研究奨励会にご援助下さる 13 社の企業の研究開発担 当の方々と分生研メンバーとの情報交換・交流を目的として開催されます。一時中断していましたが、今まさに産学連携の 推進を図るべく 1999 年に再開されました。しかし年々企業の方々のご参加が少なく、その目的が十分に果たされているとは 言えないのが現状です。今後企画および案内方法等、再検討の必要があると思います。 会の運営進行は企業 2 社、分生研幹事 1 名で行っておりますが、今回は幹事役をキリンビール㈱、分生研からは奨励会庶 務担当の常務理事である高橋秀夫教授が担当いたしました。また会社の若い方と分生研の先生方がお顔見知りになっていた だくことを願って、例年企業の方に受付を依頼しています。今回はキリンビール㈱研究開発本部の紅一点である北原公美子 様にお手伝い頂きました。 当日は 60 名の参加があり、午後 3 時 30 分より講演会を下記のプログラムで開催し 1) 「モデル生物の形態形成メカニズム−発生工学の基礎研 究を目指して」 東大分生研 多羽田 哲也教授 2) 「ゲノム創薬の新潮流」 東大分生研 古谷 利夫客員教授 また講演会終了後、地下食堂「御殿」での懇親会は、キリ ンビール㈱研究開発本部の曾根秀隆氏の進行で行われました。 鶴尾隆所長のご挨拶に始まり、乾杯の御発声は富山から駆け 付けて下さった名誉教授の柳田友道先生にお願い致しました。 皆様ゆっくりとご歓談頂き、8 時過ぎ散会いたしました。 7 退官のご挨拶 充実した研究生活 電子顕微鏡室 平田 愛子 「3 年間は絶対に辞めないで下さいよ。3 年以内に辞められると、教えるだけで終ってしまいます。 仕事が出来るようになるのは 3 年後位からだから」応用微生物研究所、第 1 研究部の北原教授はこう 言われました。大学 4 年生の夏、まだ、公務員試験の合格発表前でした。あの時から 3 年どころか、 その 10 倍以上の 38 年も勤務してしまいました。 はじめに所属した第 1 研究部では、全く未熟な私に「大学院の講議で興味のあるものは聞いてもい いよ」と言って下さり、おかげで、いくつもの大学院の講議を聞かせてもらいました。また、研究室のゼミはもちろんのこ と、大学院生との輪読や自主セミナーに参加するなど、勉強する機会を与えて下さいました。 入所当時の第 1 研究部では、助教授はカナダ留学中で、筆頭助手は私の入所 3 ヶ月後にドイツへ留学、教授もその冬に持 病で入院ということで、研究室は 20 代の助手と高校を出たばかりの技術員、それと私という状況になってしまいました。研 究室の会計、薬品や器具の発注、購入、納品された薬品や器具の整理というような仕事が廻ってきました。就職したばかり で何も分からなかったのですが、事務の方々から本当に細かく丁寧に教えて頂き、複雑な事務の流れを学ぶことが出来まし た。 約 10 年間生化学的な研究をしたのち、約 3 年間アメリカに行きました。帰国した時に、「電子顕微鏡室の管理をやってく れないか」と言われました。技術をもった人に対する評価が大変高いアメリカで電子顕微鏡の技術を学んだこともあり、引 き受けることにしました。この時から約 25 年間、電子顕微鏡室の保守、管理をいたしました。酵母細胞の微細構造解析とい う自分の研究テーマを持ちながら、依頼されたサンプルを観察するという電子顕微鏡室の運営形態でした。近年、酵母が研 究対象として使用されることが増すにつれて、東大の他学部をはじめ、他大学、他研究所、外国などからも共同研究の依頼 があり、大変充実した研究生活を送ることが出来ました。 研究上のご指導を頂いた先生方、若さとエネルギーを頂いた多くの院生、そしていつも悩みを聞き、励まして下さった所 内の同僚、職員の方々、本当にありがとうございました。 研究生活を振り返って 細胞工学研究分野 古瀬 久幹 微生物の培養液は一般に、流動の剪断速度に依存して粘性が変化する非ニュートン流動特性を示 す。私は、未解決であった非ニュートン流動の機構を明らかにすることを目的とした。 液体の流動はその粘度に相関する。希薄濃度の溶液、微粒子分散液のニュートン粘度に関しては、 良く知られたアインシュタインの粘度理論がある。当初、無謀にもこの理論を発展させる方向に進 んだ。しかし、実現は容易ではなく、結果を求められる研究生活で焦りばかりの日々を過ごすこと になった。当時体調は良くなく、精神的にも疲労困憊の状態だったと思う。試行錯誤する内に、分散粒子部分の過剰に計算 された散逸エネルギーを考慮して新しい粘度式を導出でき、パン酵母の濃厚分散液にかなり良く適合することが分かった。 更にこの理論の範疇で、濃厚微粒子分散液で屡々観察される、剪断速度増大に連れ粘度が増大するダイラタント流動を説明 可能であることが判明した。 しかし、上述の微粒子分散液は、実際の培養液のモデルには程遠いものである。一般に、培養液は微生物と、微生物が生 成する多糖類等との混合物で、往々にしてゲルを形成する。また、粘度が剪断速度増大に連れ低下する擬塑性流動を示す。 従って、上記の理論の延長線上で培養液の流動現象を扱うことは困難と思われる。非ニュートン粘度は顕著に高分子濃度に 依存することから、高分子間の相互作用に依ってもたらされると考えられる。高分子間の接触により生じた力が、その接触 を通じて液体を伝達することを仮定して解析を行った。導かれた粘度式は、流動に際して顕著な構造変化を伴わない多糖類 溶液に対して適用が確かめられた。 以上の解析結果は、一般の微粒子分散液、高分子溶液に適用可能である。 顧みて、流動の基本的な問題に対するブレイクスルーを二度も経験できたことは、当初は予想もしなかったことです。研 究生活を通じて異質な私を甘受し、いろいろお世話を下さった研究室各位、並びに研究所の皆様には心より感謝申し上げま す。 8 ドクターへの道 染色体分子構造解析研究分野 (現形態形成研究分野) 理学系研究科 生物化学専攻 博士課程平成 13 年 3 月修了 船越 陽子 審査も終わり、この博士課程も(願わくば!)終末に近づきつつあるこの日に、な ぜ私がこの「ドクターへの道」を書かなければならないのか疑問に思いつつコンピュ ーターに向かっています。ということで、この原稿のタイトルは、「ドクターへの道」 改め「ドクターからの道」にしたいと思います(冗談です)。博士の学位は、博士課程 のゴールかもしれませんが、本当のゴールではないのですから。 私が「研究職」につきたいと憧れたのは高校 1 年の時。テレビや雑誌で細胞の構造 を示したきれいなイラストや CG を見たときでした。自分の体の中に、小さな宇宙が あるような気がして興奮した・・・・・といえば聞こえはいいですが、半分以上「白 衣を着て試験管を振る」というスタイルが格好良かっただけかもしれないのですが。 そんな(不純な)夢を抱いて早 10 年以上経ったわけですが、この卒業研究をした大 学 4 年から、大学院生活、事情により結局 3 つの研究室、二つの研究分野に関わることになってしまい、自分の思い描いてきた「博士 課程」とは全く異なる「ドクターへの道」でした。恐らく、このような大学院生活を送ってきた私に、これを読んでいらっしゃるみな さんに共感していただけるようなことは書けないのではないかと思うのですが、とにかくこの研究者の卵としてスタートした時期から 心に残っている言葉、あるいは自分が考えてきたことについて綴ってみたいと思います。 1.貯金を作る もちろん、大学院生の間に、すばらしい研究をなさっている方も沢山いらっしゃると思います。ですけれど、やはり大学院生。ある 意味、まだ素人なのです。研究を始めてもエタ沈やライゲーションからうまくいかなかったり、論文を読んでいても自分の知識とうま くかみ合わない。そんなフラストレーションはしょっちゅうありました。(私だけでしょうか?)そのような時には、前に人に言われ た、「大学院生の時には貯金を作りなさい」を思い出しています。失敗しようが、混乱しようが、すべて起こるネガティブな事象は 「貯金」されてゆきます。 (と信じます。 ) 2.プロになれ これも昔、とある方からいただいた年賀状に書いてあって心に残った言葉です。当時私は分野を変える決心をしたところでしたが、 変えたのなら変えたでそこで迷わずにプロフェッショナルになるまでやりなさい、ということです。この言葉に類することとして、 「自分の研究は、世界で自分が一番になりなさい」というのがあります。たとえ一塊の大学院生だとしても、自分のしている研究では、 自分のやっている実験結果は世界の最先端な訳ですから、自信を持って行うべきなのです。そして、ただ自信たっぷりにしているので はなく、それを裏付けるプロ意識を持っていることが大事ですね。 3.転んでも(?)ただでは起きない これは、1 とも同じことなのかもしれませんが。このことはいつも自分に言い聞かせていることなのです。 私は修士から博士課程に移るときにかなり大幅に分野を変えました。変えたことによって、前の分野での知り合い、評価、すべて置 いてきてしまいました。(お互いにほとんど交流がない分野でしたので)今の分野でゼロからスタートしたとき、その時点では博士課 程に進学できたものの、知識も技術もまだまだでした。ですが、そのようなネガティブな経験も、使いようによってはポジティブなも のになりうるのです。去年の年末に、就職先を探してアメリカまで出かけていったのですが、その時に CV を見た先生方から、「君は 別の分野にもいたから、broad knowledge and interest があるんだね」と言われ、興味を持ってもらうことができました。(実際に自分 がそのような人間かどうかはわかりませんが)自分が別の分野で過ごしてきた卒研、修士の時代は無駄にはなっていなかったわけです。 つまり、もし、自分に何か不利なことがあったとしても、それを否定してはだめ、むしろそれを利用してやったほうがいいのです。 このことは研究職に就く方だけではなく、大学院を出ても全然関係ない職種に就かれる方にも当てはまると思います。大学院時代は 無駄になったのではなく、大学院生活を送ってこなかった人とはまた違う体験をしたのですから。 4.なんでもあり、人生万事塞翁が馬 昔、研究分野を変更するに当たって、とある先生に相談したことがありました。そのとき「(事情が事情なのでしょうがないが)な るべくならあまり分野を変えずにいなさい。いろいろな分野で知識を得るよりは、なるべくならある分野での知識を深く掘り下げて違 う分野の人と共同研究をする方がまだいい」と言われました。それも確かにある研究生活の送り方だと思います。ですが、自分の興味 に応じて分野を変えてゆく研究生活、というのも「あり」だと思います。分野を変える変えないに関わらず、大学院生活の送り方は人 それぞれだと思います。そして、自分の選択によっては、進学先、就職先、これからいろいろと悩むこと、苦しむこととたくさんある と思いますが、ある時にはそれが喜びに変わることもあるのですから。 以上、簡単ですが、博士課程を終わるに当たって、自分を支えてきた言葉をみなさまにこうやってお送りする事でここに筆を置きた いと思います。 9 海外ウォッチング アメリカ合衆国 アリゾナ大学 小野弥子 私は、昨年の四月より、アリゾナ大学の Carol Gregorio 研究室で、ポスドク生活を送っています。が、より正確に は、Carol による“CELL BIOLOGIST になるための特訓講 座(入門編)”で、パシパシ鍛えられている、という状況 です。自称 TOUGH BOSS Carol は数年前に独立したばかり で、人員は、ポスドク三人、大学院生二人、テクニシャン 一人です。共通の主題は「筋細胞の構造構築について、そ の分子機構を明らかにする」ことで、各自が、自分が着目 するサルコメアのタンパク質に適した実験系を立ち上げつ つあります。私は、マウス ES 細胞で、心筋細胞への分化時 の表現型・外来遺伝子の発現を解析する系を確立しようと す。もう少し肩の力を抜いて、「はい、パチリ」「バンザー しているところです。 イ」となりたいものです。私は、ネイティブが論文用の話 同じ階には、他に四つ、同程度の 規模の研究室があります。それぞれ、カエルやニワトリを し言葉と書き言葉をどのように使い分けているのか、とか、 用いて、心臓組織の分化・発生を研究しており、心筋の構 彼らがどういう文章構成・理論展開を好むのか、などに、 造を研究している Carol の部屋と合わせて、(基礎の)心臓 興味があったのですが、とにかく、大学院生の話し言葉は 研究グループとなっています。隣の建物は、心臓外科関係 面白いです。リゾチームを貸してあげたら It's fantastic! 、 の研究センターで、付近一帯の合い言葉は、 HEART です。 食後の歯磨きをしていたら You are awesome! 、呼びかけは Carol 自身は、アクチンフィラメントの長さ決定に関わる Hey, looser、相づちのほとんどは Cool! 。うへっと凝視し 分子間相互作用を、初代培養の系を用いて研究してきまし てしまう言い回しには事欠きません。実験している手元か た。「写真や絵画が大好きだから、この系・手法も大好 ら目を離して、ふと周囲を観察してみると、異文化という き!」というだけあって、「投稿雑誌のカバーを、論文の よりも、ほとんど異星人に見えて、それが、同じような現 目玉写真で飾る」というのも、彼女の研究推進意欲の一つ 象に興味を持ち、同様の仕組みの器具を使って実験し、同 です。そのため、研究室の人々に要求されるのが、細胞を じ雑誌に論文を載せたりしているとは不思議なものだと思 美しく・正しく染色し、得たい情報、伝えたい現象を的確 ったりします。アリゾナ、というと砂漠が広がるイメージ に伝える“冴えた”ショットを得る、という技術です。こ ですが、本当に平坦で、遮るものがないので、日の出も、 れは、細胞をうまく培養するところから始まり、最終的に 日の入りも、一瞬という感じです。そういう情景を見なが どの細胞のどの部分を撮るか、ということになります。得 ら、「一期一会だなー」としみじみする日本風(と、私が られた画像にある表現型を見出し、説明する、という作業 思っている)の感性も忘れないように、でも、Wow, look で、私はいつも壁を感じます。良い時には、 Wow, baby! at that! という Carol 風の歓声も、修得せねば、と思うので と Carol が叫ぶので、すごーく良く分かります。が、微妙 す。 な形態の変化とか、確信はあるのだけど、第一印象でなん Yasuko Ono, Ph.D. となく、としか説明できないときなど、自分の目の素人さ Department of Cell Biology and Anatomy (日本語でも説明できない)と、単語が出てこない、とで、 The University of Arizona 二重にため息です。彼女は、私に良く、Trust me, I will die LSN #412, 1501 N Campbell Ave. if I cannot distinguish an artifact.(と、私の耳には聞こえる) Tucson, AZ 85724, USA と言うのです。私は、彼女が今まで会った素人の中で、一 Fax : 1-520-626-2097 番納得しにくい気難しい人。普通は、パチリ、と綺麗な写 Tel : 1-520-626-5209 真が撮れると、その時点で自分は「最善を尽くした」と納 [email protected] 得できるのであれば、その結果を「信じる」のだそうです。 私は、今でも、あまりに美しい写真だと、なんだか畏敬の 念を感じて、どうしてそうなったのか考え込んでしまいま 10 留学生手記 機能形成研究分野 Armin Rump Bunseiken is a great place to do research because of the high standards of intelligence and diligence of its members. The institute not only has made history in Japanese science but is continuing to publish excellent papers and to attract gifted young scientists. Yet, while Japanese tend to stress such positive points to foster harmony, as a German, I tend to focus on the weak points that could be improved. Cultures are different in this point, and I will be misunderstood. Be it. Japan may be described as a conservative culture as it stresses SAFETY over OPPORTUNITY. People often shy away from doing new things as they are unsure how it will turn out, and they are afraid of making mistakes. English speaking is the obvious example. Inside Japan, Todai is the most conservative place I know. Once, I asked a student for the way to an institute library. In Japanese. The student took on a bewildered look, mumbled some unclear formulas of keigo, turned pale, and, convinced that I draw a knife and slaughter him, disappeared hastily in a nearby door. In the cafeteria, I think it is impolite to sit down at someone's table without a greeting. But when I say 'konnichiwa', I often get a look and mumble that remind me of that poor fellow. More often, there is no response at all. In Israel, where I did my Master's research (and likewise in Germany and in the US) I often had very interesting conversations over lunch with people from other fields: Physicists working on particle accelerators, mathematicians advising internet business on encryption. Such interdisciplinary contacts broaden the horizon and give new ideas. occasionally activated over a few intimate glasses of beer. Since I am not a part of this network, it feels exclusive and at times offensive to me. I wish people were more open in general and more controlled after a beer. Another manifestation of channels and procedures which, in my eyes, hinder efficiency, is the amazing administrative overhead and the obsession to control and regulate the flow of money at the 100 yen level and below. Unfortunately, I have no space here to tell you the stories of the water hose and the skateboard. I appreciate the effort to make people talk to each-other which is being made by this newspaper, symposia, parties and sports events. My proposal is to set aside a 'communication room' in Bunseiken equipped with the daily newspapers, tea, coffee, a microwave oven, and an atmosphere pleasant enough (light, plants, colors) to tempt people to stop in for lunch or in between. Here, I find it striking that people, even though they do not communicate beyond their immediate surroundings, are very well informed. Although people working in neighboring laboratories hardly greet eachother, there must be some efficient communication channels which are Seriously, I think that a culture of open communication is a key advantage that Europe and the US have over Japan. Add on top of it an ageing society and paralyzed politics - but no, let's look in our own backyard, perhaps we can find a few small things we can do to make the atmosphere at Bunseiken more pleasant and open. 分生研のメンバーは高いレベルの知性と勤勉さとを備えており、ここは研究 ての交際のおかげで、視野が広がり、新しいアイデアを得ることができます。 をするには素晴らしい場所です。この研究所はこれまで日本の科学に一つの 歴史を創り出してきたばかりでなく、今も素晴らしい論文を次々と発表し、 一方、ここ分生研では、誰もが自分のごくそばにいる人としかコミュニケー 才能に溢れた若い科学者たちを惹きつけ続けています。 トしないにも関わらず、何でもよく知っているのには驚かされます。近くの 研究室で働いている人たち同士も、普段はほとんど挨拶もしないけれども、 しかし、日本人ならばこのような肯定的な点を強調して和を大事にしようと きっと効率の良い何らかのコミュニケーション手段があって、それはたまに するのでしょうが、ドイツ人である私は、改善できるはずの欠点に目が行っ グラス何杯かのビールで活性化されるものなのでしょう。私はそのネットワ てしまいます。この点で二つの文化は異なっていますし、私の意見は煙たが ークに属していないので疎外感を感じるし、不快な思いをすることもまれで られることでしょう。それならそれで仕方ありません。 はありません。私の希望は、誰もが普段からもっとオープンで、ビールを飲 んだ後にはもっときちんとすることです。 日本では「機会」よりも「安全」を強調することから、保守性を文化の特徴 もう一つ、私には非効率としか見えない不可思議な手続きがあります。それ としていると言うことができると思います。誰もが、結果がどうなるかわか は、驚くほどの管理事務と、研究費の収支を 100 円以下のレベルまで把握し らないからと新しいことをすることにしり込みしがちで、失敗を犯すことを ようとする強迫観念です。ここで水道ホースとスケートボードにまつわるあ 恐れています。英語での会話はその顕著な例です。 の逸話を披露するスペースが無いのは何とも残念なことです。 日本の中でも、東大は私が知っているうちで最も保守的な場所です。ある時、 私は、この分生研ニュースや、分生研シンポジウム、パーティ、スポーツ大 私は一人の学生に研究所図書室への道を尋ねたことがありました。それも日 会などを通じて、皆がお互いに話せるようにしようとする取り組みをとても 本語で。その学生は当惑した表情をして、何か敬語らしい言葉をもごもご呟 善いことだと思います。さらに、皆が昼食や仕事の合間に立ち寄れるように、 いて蒼くなり、私がナイフを取り出して彼を惨殺しようとしていると思い込 新聞・お茶・コーヒー・電子レンジと快適な雰囲気(照明、植物、配色)と んだのでしょう、そのまま慌てて近くのドアへと消えてしまいました。 を備えた「コミュニケーションルーム」を分生研に設けることにしたらどう でしょうか。 私は、食堂で挨拶なしに誰かのテーブルに着くことは無作法だと思っていま す。しかし私が「コンニチハ」と言っても、たいていの場合、こちらを一瞥 真面目な話、オープンなコミュニケーションという文化は、欧米が日本に優 して何かもごもご言うだけです、あの気の毒な学生のように。それどころか、 る強みです。さらに、日本の年老いた社会構成と麻痺した政治機構とが物事 無視されてしまう方が多いくらいです。私が修士課程の研究をやったイスラ を一層悪くしています。でも、まずはもっと身近なところから考えていきま エルでは(そしてドイツでもアメリカでも)、よく昼食を食べながら他の分 しょう。分生研の雰囲気をもっと快適でオープンなものにするために、私達 野の人達ととても面白い会話をしたものです。その面々は、素粒子加速器に でもできる小さな取り組みがきっと見つかるはずです。 ついて研究している物理学者達や、インターネットビジネスで暗号化につい ての顧問をしている数学者達といった具合です。このような専門分野を越え (訳 前田達哉・小野弥子) 11 OB の手記 日本化薬株式会社 医薬事業部 小笠原 亜子佳 東京の北のはずれ、隅田川と荒川が平行している見晴らし の良いところですごして 2 年になる。この原稿を書いている 2 月は雁が飛びかい、都鳥が川面に浮いているのを見ることが 出来る。春には小型の猛禽類やツバメが見られる。もっとも、 烏は年中目の前を(私の居室は地上7階)忙しく行ったり来 たりしている。 私は日本化薬株式会社という化学会社に現 在勤務している。この会社、もとは火薬の製造会社だったの が、ニトログリセリンの医薬転用を始め、製薬業も営むよう になった。現在の事業内容は火薬製造からエアバックの起爆 装置、樹脂、触媒、医薬品、その他と幅広い。 私は医薬事業本部の評価グループに所属し、制癌剤候補物 質の薬効評価を日々行なっている。内容は in vitro から in vivo までと幅広い。グループではこの他にも製品の販促のためのデータを取ったり、申請のための実験などを行なっている。制 癌剤候補物質は社内から上がるものも有れば他社・大学などから評価を依頼されるものもある。どういった作用を持つか全 くわからないものから、ある程度、作用が明らかとなっているものまで様々だが、私たちグループのメンバーがまず念頭に おくことは、「いいところをみつけよう」ということである。制癌作用だけ見るのではなく、その化合物がどのような特徴 を持つのかを見極めるのである。 また、私達は物を受け取って評価するだけではなく、自らテーマを立ち上げ、新分野にも挑戦している。いろいろな研究 の進展を自分なりに統合して新しい切り口を見つけなければいけない。大変に忙しい部署である。 私個人として感じるのは、自分の仕事がどれだけ社会に貢献できるかということを念頭におきつつ仕事に取り組んでいか ないと基礎実験ばかりで終わってしまうということである。薬を上市することが最終目標であるから、基礎研究の側からだ け病気を捉えず、社会の側から社会が最も欲している病気の治療法・治療薬といった物を見つけていきたいと思っている。 自分の仕事に対して必要なものは計り知れなく、右往左往しているが、余りあせらず、着実にやっていきたいと思ってい る。 所内レクリェーション報告1 <ボウリング> 平成13年2月27日、本年度も例年どおり後楽園ボウリングセンターにて分生研ボウリング大会が行われた。参加者数 は29名と盛況だった。結果は以下のとおり。 ○男性部門 1位:辻 保彦(染色体分子構造解析) 2位:秦 勝志(生体超高分子) 3位:江指永二(細胞合成・人工細胞) ○女性部門 1位:松尾美鶴(事務部) 2位:冨田啓子(生体超高分子) 3位:加藤みのり(分子情報) ○ブービー 小島伸彦(細胞合成・人工細胞) <バドミントン> 平成13年3月2日、御殿下記念館ジムナジウムにて分生 研バドミントン大会が行われた。今回は経験者の参加が多く レベルの高い大会となったが、1回戦の負け組を集めて行わ れる裏トーナメントもあり、参加者は楽しく汗をながした。 結果は以下のとおり。平成12年度の分生研レクリェーショ ンはこのバドミントンを最後に無事終了した。 優勝:芳賀・坂本 ペア(分子生物活性) 準優勝:野中・荘 ペア(細胞合成・人工細胞) 3位:中山・峯畑 ペア(細胞合成・人工細胞) 裏トーナメント優勝:明賀・槌田ペア(生物物理) 12 研究室名物行事 細胞形成研究分野 石原理加 新人歓迎会、春遠足、忘年会、スキー旅行、花見会など 1 年間のうちには幾つか研究室行事があるが、我が研究室 でのメインは、やはり秋の 1 泊旅行だろうか。毎年、修士 課程 1 年生が幹事をやることになっており、「腕のみせどこ ろ」いや「正念場」である。行く場所から始まって、日程、 観光場所等を考えたり、夜の宴会のお世話まで、とにかく やることがいっぱいである。しかも先生方や先輩のまとま りのないバラバラの希望をすべて聞き入れるわけにもいか ず、頭を悩ませるところである。 昨年の秋は熱海へ出かけた。東海道線の快速アクティー に乗って 1 時間 40 分、あっという間に到着。昼食を摂って、 お決まりのコース「お宮の松」を見学後、自由行動。夜は大 写真 1 右が筆者。左は技官の横田直子さん。 広間で大宴会である(写真2。でも、宴会はここだけでは終 わらないのです)。部屋に戻ってからは幾つかのグループに分かれ、カードゲームで遊ぶ者、語り合う者、朝まで飲み明か す者等々、なが∼い夜が始まる。教官の先生方の知られざる一面を見たり、学生同士でも知らない面を発見できる貴重な 「ひととき」であると思っている。(当然次の日は、二日酔 い者続出という結果が待っているわけである が・・・・・。)二日目は美術館見学、そして今年から始 まった NHK 大河ドラマにも出てくる伊豆山神社の見学。 この境内で、源頼朝と北条政子が愛を語らい結ばれ、この 神の力により鎌倉に幕府を開いたという。ご興味のある方 は、お出かけされてみては? 写真3は境内にあるふたり が腰掛けたと言い伝えられている石。 そんなこんなで二日間の研究室旅行が終わる。帰りの電 車内ではひたすら眠る、ただ眠る、ぐっすり眠る。 ZZzzzz.....。 写真 2 宿の宴会場にて。 先生にお説教されてしまったA幹事君、まとまりのない ラボのメンバーに怒っていたB幹事君、幹事の仕事のせい で(?)なかなか食事の出来なかったC幹事君の辛い二日 間も無事終了である。 写真 3 源頼朝と北条政子が腰掛けたと言い伝えられている石。座っているの は教授の徳田 元先生とハリウッド女優を目指す D2 の池上文緒さん。 13 防災訓練が実施される 去る 2 月 6 日(火)9 : 40 より、分生研東側階段付近からの出火を想定し、出火場所の確認、所内通報・放送、消防署通報、 避難誘導という一連の訓練が本郷消防署根津出張所指導のもとに実施された。例年、午後に実施されていた訓練が午前中の 早い時間帯に実施されたにもかかわらず、60 余名が参加し防災への関心の高さがうかがわれるものであった。 分生研での訓練の後、農学部 3 号館前に移動し、RI事故を想定した避難誘導、けが人の搬送、救急活動、屋上からの救 出訓練等、農学部及び本郷管内消防署の合同訓練を見学した。 早朝から消防関係車両が構内に配置され、本番さながらの緊張感の中で実施された訓練は、感動を覚えるものがあった。 引き続き、本郷消防署員の指導による農学部と分生研の参加者合同の屋内消火栓及び消火器の取扱い訓練が行なわれ、器 具に触れることが初めてという参加者も多かったが積極的に操作に取り組むなど実効が見られた。 災害はいつくるか分か らないが「未然に防ぐこと」、「起こってしまった災害は最小限に」を目標に今後も防災の意識を常に備えていきたいもので ある。 所内レクリェーション報告 2 <ソフトボール> 本年度の分生研ソフトボール大会では、生体超高分子研究分野 vs 分子系統という昨年を同カードの決勝戦となった。結果 は分子系統研究分野が昨年の雪辱を果たして優勝した。結果は以下のとおり。 優勝:分子系統研究分野 準優勝:生体超高分子研究分野 3位:分子発生分化研究分野及び分子遺伝・育種研究分野 <卓球> 本年度の分生研卓球大会は昨年までと違い、ダブルスで総 当たり戦という形で行われた。昨年までののシングルス、ト ーナメント方式とは違った面白さがあると好評だった。結果 は以下のとおり。 優勝:黄(細胞機能)・朝倉(細胞工学)ペア 準優勝:劉(細胞機能)・増山(細胞工学)ペア 3位:石(微生物微細藻類)・小野口(事務部)ペア 写真:ソフトボール大会で優勝した分子系統研究分野 14 平成 12 年(2000 年)各研究分野業績発行物一覧 細胞構造研究分野(現細胞形成研究分野) 「原著論文」 A new ABC transporter mediating the detachment of lipid-modified proteins from membranes. T. Yakushi, K. Masuda, S. Narita, S. Matsuyama, and H. Tokuda : Nature Cell Biology, 2, 212-218, 2000 Two SecG molecules present in a single protein translocation machinery are functional even after crosslinking. S. Nagamori, K. Nishiyama, and H. Tokuda : J. Biochemistry, 128, 129-137, 2000 Role of the non-essential region encompassing the N-terminal two transmembrane stretches of Escherichia coli SecE. K. Nishiyama, H. Suzuki, and H. Tokuda : Biosci. Biotechnol . Biochem., 64, 2121-2127, 2000 tion - fate of the middle cell layer in leaf sheath development of rice. C. Matsukura, M. Kawai, K. Toyofuku, R. A. Barrero, H. Uchimiya and J. Yamaguchi : Ann. Bot., 85, 19-27,2000 Ion beam as a noble tool to induce apoptosis-like cell death in roots of maize (Zea mays L.) . M. Kawai, Y. Kobayashi, A. Hirata, Y. Oono, H. Watanabe and H. Uchimiya : Plant Biotech., 17, 305-308, 2000 「総説」 CDK-related protein kinases in plants. J. Joub ès, C. Chevalier, D. Dudits, E. Heberle-Bors, D. Inzè, M. Umeda and J.-P. Renaudin : Plant Mol. Biol., 43, 607-621, 2000 Cyclin-dependent protein kinases and their regulators in plants. M. Umeda : Plant Biotech., 17, 177-186, 2000 「総説」 グラム陰性細菌におけるリポ蛋白質の生合成機構 −リポ蛋白 質の選別と外膜局在化機構を中心に−. 薬師寿治、松山伸一、徳田 元:日本細菌学雑誌, 55, 517-526, 2000 大腸菌における分泌タンパク質の膜透過分子機構 −膜透過を 駆動する SecA-SecG の構造変化−. 西山賢一:生化学, 72, 1383-1397, 2000 細胞機能研究分野 「原著論文」 A cyclin-dependent kinase-activating kinase regulates differentiation of root initial cells in Arabidopsis. M. Umeda, C. Umeda-Hara and H. Uchimiya : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 13396-13400, 2000 Activation of CDK-activating kinase is dependent on interaction with H-type cyclins in plants. M. Yamaguchi, M. Umeda, T. Fabian, M. Sauter, R. P. Bhalerao, J. Schrader, G. Sandberg and H. Uchimiya : Plant J., 24, 11-20, 2000 Functional identification of an Arabidopsis Snf4 ortholog by screening for heterologous multicopy suppressors of snf4 deficiency in yeast. T. Kleinow, R. Bhalerao, F. Breuer, M. Umeda, K. Salchert and C. Koncz : Plant J., 23, 115-122, 2000 Modes of interaction between the Arabidopsis Rab protein, Ara4, and its putative regulator molecules revealed by a yeast expression system. T. Ueda, N. Matsuda, H. Uchimiya and A. Nakano : Plant J., 21, 341-349, 2000 Nucleoside diphosphate kinase required for coleoptile elongation in rice. L. Pan, M. Kawai, A. Yano and H. Uchimiya : Plant Physiol., 122, 447-452, 2000 The cell cycle genes cycA1;1 and cdc2Os-3 are coordinately regulated by gibberellin in planta. T. Fabian, R. Lorbiecke, M. Umeda and M. Sauter : Planta, 211, 376-383, 2000 植物の細胞分裂とホルモン応答. 梅田正明:植物の化学調節, 35, 35-42, 2000 「出版本」 サイクリン依存性キナーゼによる細胞周期の制御と分裂組織の 維持機構.梅田正明:「細胞工学別冊 植物細胞工学シリーズ 13 ・植物細胞の分裂−分裂装置とその制御機構」 (町田泰則、福 田裕穂監修), pp. 37-48, 秀潤社, 2000 通気組織形成と細胞死.内宮博文、川合真紀:「細胞工学別冊 植物細胞工学シリーズ 12 ・新版 植物の形を決める分子機構」 (岡田清孝、町田泰則、松岡信監修), pp.239-242, 秀潤社, 2000 分子発生分化研究分野(現発生分化構造研究分野) 「原著論文」 Regulation of interaction of the acetyltransferase region of p300 and the DNA-binding domain of Sp1 on and through DNA binding. T.Suzuki, A.Kimura, R.Nagai & M.Horikoshi : Genes Cells, 5, 2942, 2000 A human homologue of yeast anti-silencing factor has histone chaperone activity. T.Munakata, N.Adachi, N.Yokoyama, T.Kuzuhara & M.Horikoshi : Genes Cells, 5, 221-233, 2000 Functional interaction of general transcription initiation factor TFIIE with general chromatin factor SPT16/CDC68. S.-W.Kang, T.Kuzuhara & M.Horikoshi : Genes Cells, 5, 251-263, 2000 Involvement of the TIP60 histone acetylase complex in DNA repair and apoptosis. T.Ikura, V.V.Ogryzko, M.Grigoriev, R.Groisman, J. Wang, M.Horikoshi, R.Scully, J.Qin & Y.Nakatani : Cell, 102, 463-473, 2000 Purification, crystallization and preliminary X-ray crystallographic analysis of human CCG1-interacting factor B. B.Padmanabhan, T.Kuzuhara, H.Mizuno & M.Horikoshi : Acta Cryst. D56,1479-1481, 2000 「出版本」 Heteroblasty in Arabidopsis thaliana (L.) Heynh. H. Tsukaya, K. Shoda, G. T. Kim and H. Uchimiya : Planta 210, 536-542, 2000 Coleoptile senescence of rice (Oryza sativa L.). M.Kawai and H.Uchimiya : Ann. Bot., 86, 405-414, 2000 Transverse vein differentiation associated with gas space forma- クロマチン構造から裸の DNA への変換機構.堀越 正美:「心 臓」, pp.112-129, 2000 創薬と転写.佐々木貴代、堀越 正美:「蛋白質核酸酵素4月 号増刊 最先端創薬」, pp.833-844, 共立出版, 2000 ヒストンアセチル化酵素とヒストン脱アセチル化酵素を介した 15 クロマチン機能活性制御機構.堀越 正美:「蛋白質核酸酵素 6月号増刊 転写因子の機能」, pp.1446-1464, 共立出版, 2000 細胞工学研究分野(現情報伝達研究分野) is important for transcription under high-salt conditions and sigma activities in vivo. M. Ohnuma, N. Fujita, A. Ishihama, K. Tanaka & H. Takahashi : J. Bacteriol. 182, 4628-4631, 2000 「原著論文」 Regulation of intracellular dynamics of Smad4 by its leucine-rich nuclear export signal. M. Watanabe, N. Masuyama, M. Fukuda and E. Nishida : EMBO Reports .,1,176-182,2000 The TGF-β family member derriere is involved in regulation of the establishment of left-right asymmetry . H. Hanafusa, N. Masuyama, M. Kusakabe, H. Shibuya and E. Nishida : EMBO Reports .,1, 32-39, 2000 Fluid viscosity of Aureobasidium pullulans cultures obtained at two different initial pH values. K. Toda, Y. Gotoh, T. Asakura, I. Yabe and H. Furuse : J. Biosci., Bioeng., 89, 258-261, 2000 「総説」 細胞死の分子メカニズム −多様性への理解−. 後藤 由季子、高橋 良輔: Molecular Medicine, 37, pp384-390, 2000 微生物の巨大化細胞化による新しい実験システムの開発. 矢部 勇:化学と生物, 38, pp10-12, 2000 生存シグナルとアポトーシスシグナルのクロストーク. 鶴田 文憲、増山 典久、後藤 由季子:実験医学, 18, pp13841390, 2000 PI3K-Akt 経路のシグナル伝達. 浦 誠司、後藤 由季子:現代科学, 増刊 37, pp95-103, 2000 Chloroplast targeting, distribution and transcriptional fluctuation of AtMinD1, a eubacteria-type factor critical for chloroplast division. K. Kanamaru, M. Fujiwara, M. Kim, A. Nagashima, E. Nakazato, K. Tanaka and H. Takahashi : Plant Cell Physiol., 41, 1119-1128, 2000 Three new nuclear genes, sigD, sigE and sigF, encoding putative plastid RNA polymerase sigma factors in Arabidopsis thaliana. M. Fujiwara, A. Nagashima, K. Kanamaru, K. Tanaka and H. Takahashi : FEBS Lett., 481, 47-52, 2000 Chloroplast development in Arabidopsis thaliana requires the nuclear encoded transcription factor Sigma B. Y. Shirano, H. Shimada, K. Kanamaru, M. Fujiwara, K. Tanaka, H. Takahashi, K. Unno, S. Sato, S. Tabata, H.Hayashi, C. Miyake, A. Yokota and D. Shibata : FEBS lett., 485, 178-182, 2000 SdiA, an Escherichia coli homolog of quorum-sensing regulators, controls the expression of virulence factors in Enterohemorrhagic Escherichia coli O157 :H7. K. Kanamaru, K. Kanamaru, I. Tatsuno, T. Tobe and C. Sasakawa : Mol. Microbiol., 38, 805-816, 2000 Regulation of virulence factors of Enterohemorrhagic Escherichia coli O157 :H7 by self-produced extracellular factors. K. Kanamaru, K. Kanamaru, I. Tatsuno, T. Tobe and C. Sasakawa : Biosci. Biotech. Biochem., 64, 2508-2511, 2000 「出版本」 サバイバルシグナルとアポトーシス −生のシグナル: Akt を 中心に−. 森 靖 典 、 後 藤 由 季 子 : Apoptosis Watch for Cancer Chemotherapy , 3, pp14-15, 2000 Isolation and characterization of pentachloronitrobenzene (PCNB) degrading bacterium, Pseudomonas aeruginosa strain I-41. K. Tamura, Y. Hasegawa, T. Kudo and I. Yamaguchi : Microbial diversity and genetics of biodegradation (K. Horikoshi et al. ed.), p113-121, Japan Scientific Societies Press, 2000 細胞合成・人工細胞研究分野(現機能形成研究分野) 「原著論文」 Retroviral gene transfer of signaling molecules into murine fetal hepatocytes defines distinct roles for the STAT3 and Ras pathways during hepatic development Y.Ito, T.Matsui, A.Kamiya, T.Kinoshita and A.Miyajima : Hepatology, 32, 1357-1369, 2000 Cell Density-Dependent Regulation of Hepatic Development by a gp130-Independent Pathway. N. Kojima, T.Kinoshita, A.Kamiya, K.Nakamura, T.Nakashima, T.Taga and A.Miyajima : Biochem. Biophys. Res. Commun., 277, 152-158, 2000 The AML1 transcription factor functions to develop and maintain hematogenic precursor cells in the embryonic aorta-gonadmesonephros region. Y.Mukouyama, N.Chiba, T.Hara, H.Okada, Y.Ito, R.Kanamaru, A.Miyajima, M.Satake, T.Watanabe : Dev Biol., 220, 27-36, 2000 「総説」 Role of Oncostatin M in hematopoiesis and liver development. A.Miyajima, T.Kinoshita, M.Tanaka, A.Kamiya, Y. Mukouyama, T.Hara : Cytokine Growth Factor Rev., 11, 177-83, 2000 肝発生の分子機構. 木下大成,宮島 篤:実験医学増刊 "サイトカインの新たな機能 と生命現象" (宮島 篤 編) Vol.18, No. 15, 94-101, 羊土社, 2000 分子遺伝・育種研究分野(現分子遺伝研究分野) 「原著論文」 A carboxy-terminal 16-amino-acid region of s38 of Escherichia coli 「学会賞」 日本農薬学会奨励賞、田村勝徳「農薬の微生物代謝とその分解 酵素の進化的解析」 分子系統研究分野(現核内情報研究分野) 「原著論文」 Skin abnormalities generated by temporally-controlled RXR α mutations in adult mouse epidermis. M.Li, A.K.Indra, X.Warot, J.Brocard, N.Messaddeq, S.Kato, D.Metzger and P. Chambon : Nature, 407, 633-636, 2000 Androgen-insensitivity syndrome as a possible coactivator disease. M.Adachi, R.Takayanagi, A.Tomura, K.Imasaki, S.Kato, K.Goto, T.Yanase, S.Ikuyama and H. Nawata : N. Engl. J. Med., 343, 856862, 2000 Ligand-type specific interactions of peroxisome proliferator-activated receptor gamma with transcriptional coactivators. Y.Kodera, K.Takeyama, A.Murayama, M.Suzawa, Y.Masuhiro and S. Kato : J. Biol. Chem., 275, 33201-33204, 2000 Defective terminal differentiation and hypoplasia of the epidermis in mice lacking the Fgf 10 gene. K.Suzuki, K.Yamanishi, O.Mori, M.Kamikawa, B.Andersen,S. Kato, T.Toyoda and G. Yamada : FEBS Lett., 481, 53-56, 2000 FGF10 acts as a major ligand for FGF receptor 2 IIIb in mouse multi-organ development. H.Ohuchi, Y.Hori, M.Yamasaki, H.Harada, K.Sekine, S.Kato and N. Itoh : Biochem. Biophys. Res. Commun., 277, 643-649, 2000 16 Cyclin E as a coactivator of the androgen receptor. A.Yamamoto, Y.Hashimoto, K.Kohri, E.Ogata, S.Kato, K.Ikeda and M. Nakanishi : J. Cell Biol., 150, 873-879, 2000 A nuclear matrix-associated factor, SAF-B, interacts with specific isoforms of AUF1/hnRNP D. Y.Arao, R.Kuriyama, F.Kayama and S. Kato : Arch. Biochem. Biophys., 380, 228-236, 2000 Molecular mechanism of a cross-talk between oestrogen and growth factor signalling pathways. S.Kato, Y.Masuhiro, M,Watanabe, Y.Kobayashi, K,Takeyama, H.Endoh and J. Yanagisawa : Genes to Cells, 5, 593-601, 2000 The functin of vitamin D receptor in vitamin D action. S.Kato : J. Biochem., 127, 717-722, 2000 「総説」 パターン形成におけるモルフォゲンの制御機構.多羽田哲也: 蛋白質 核酸 酵素, 45, 1612-1619,2000 ショウジョウバエの発生における BMP の役割.常泉和秀、多羽 田哲也: Molecular Medicine, 37, 670-678, 2000 ショウジョウバエはねパターンはどのように形成されるか.多 羽田哲也:化学と生物, 38, 3-5, 2000 「出版本」 パターン形成.多羽田哲也:「ゲノムからの情報発現」 (半田宏、石井俊輔、山本雅之、藤井義明 共編)pp.157-167 シュプリンガー・フェアラーク東京, 2000 生体超高分子研究分野 Molecular analysis of external genitalia formation : the role of fibroblast growth factor (Fgf ) genes during genital tubercle formation. R.Haraguchi, K.Suzuki, R.Murakami, M.Sakai, M.Kamikawa, M.Kengaku, K.Sekine, H.Kawano, S.Kato, N.Ueno, and G. Yamada : Development, 127, 2471-2479, 2000 p300 Mediates functional synergism between AF-1 and AF-2 of estrogen receptor α and β by interacting directly with the N-terminal A/B domains. Y.Kobayashi, T.Kitamoto, Y.Masuhiro, M.Watanabe, T.Kase, D.Metzger, J.Yanagisawa and S. Kato : J. 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Y.Masuoka, K.Shin-ya, Y.-B.Kim, M.Yoshida, K.Nagai, K.Suzuki, Y.Hayakawa and H.Seto : J. Antibiotics, 53, 788-792, 2000 Analysis of novel metastasis-associated gene TI-227. T.Ishiguro, H.Nagawa, M.Naito and T.Tsuruo : Jpn. J. Cancer Res., 91,390-394,2000 Diheteropeptin, a novel substance with TGF-b-like activity, produced by a fungus, Diheterospora chlamydosporia. II. Physicochemical properties and structure elucidation. Y.Masuoka, K.Shin-ya, K.Furihata, H.Matsumoto, Y.Takebayashi, K.Nagai, K.Suzuki, Y.Hayakawa and H.Seto : J. Antibiotics, 53, 793798, 2000 Rasfonin, a new apoptosis inducer in ras-dependent cells from Talaromyces sp. T.Tomikawa, K.Shin-ya, K.Furihata, T.Kinoshita, A.Miyajima, H.Seto and Y.Hayakawa : J. Antibiotics, 53, 848-850, 2000 Analysis of the expression of CLA1, a gene that encodes for the 1deoxyxylulose 5-phosphate synthase of the 2-C-methyl-D-erythritol-4-phosphate pathway in Arabidopsis. Estevez J.M., A.Cantero, C.Romero, H.Kawaide, L.F.Jimenez, T.Kuzuyama, H.Seto, Y.Kamiya and P.Leon : Plant Physiol., 124, 95-104, 2000 見逃されていたイソプレノイド生合成経路−非メバロン酸経路 とその特異的 阻害剤−. 葛山智久、瀬戸治男 : 日本油化学会誌, 49, 119-125, 2000 抗酸化物質は神経系を保護する−カテキンによるβ−アミロイ ドペプチド毒 性の抑制−. 新家一男、早川洋一、瀬戸治男 : 化学と生物, 38, 212-214, 2000 「出版本」 Screening for low molecular weight substances of microbial origin acting on the inositol 1,4,5-trisphosphate receptor. K.Shin-ya and H.Seto: 「Real -time analysis of biomolecular interations」(N.Nagata and H.Handa Ed.) pp180-187, Springer, 2000 Retinoblastoma susceptibility protein, Rb, possesses multiple BRCT-Ws, BRCA1 carboxyl-terminus-related W regions with DNA break-binding activity. K,Yamane, E.Katayama, K.Sugasawa and T.Tsuruo : Oncogene,19, 1982-1991, 2000. Proteasome inhibition circumvents solid tumor resistance to topoisomerase II-directed drugs. Y.Ogiso, A.Tomida, S.Lei, S.Omura and T.Tsuruo : Cancer Res., 60, 2429-2434, 2000 Glyoxalase I is involved in resistance of human leukemia cells to antitumor agent-induced apoptosis. H.Sakamoto, T.Mashima, A.Kizaki, S.Dan, Y.Hashimoto, M.Naito and T.Tsuruo: Blood ,95, 3214-3218, 2000 Involvement of 14-3-3 proteins in nuclear localization of telomerase. H.Seimiya, H.Sawada, Y.Muramatsu, M.Shimizu, K.Ohko, K.Yamane and T.Tsuruo : EMBO J., 19, 2652-2661, 2000 Identification and characterization of a deletion mutant of DNA topoisomerase I mRNA in a camptothecin-resistant subline of human colon carcinoma. K.Yamane, Y.Sugimoto, S.Tsukahara, T.Oh-hara, T.Andoh and T.Tsuruo : Jpn. J. Cancer Res., 91, 551-559, 2000 Multidrug resistance reversal activity of taxoids from Taxus cuspidanta in KB-C2 and 2780AD cells. J.Kobayashi, H.Shigemori, H.Hosoyama, Z.-S.Chen, S.-i.Akiyama, M.Naito and T.Tsuruo : Jpn. J. Cancer Res.,91, 638-642, 2000. Induction of apoptosis in mouse brain capillary endothelial cells by cyclosporin A and tacrolimus. S.Kochi, H.Takanaga, H.Matsuo, H.Ohtani, M.Naito, T.Tsuruo and Y.Sawada : Life Sciences, 66, 2255-2260, 2000 Effect of bioflavonoids on vincristine transport across blood-brain barrier. 20 Y.Mitusnaga, H.Takanaga, H.Matsuo, M.Naito, T.Tsuruo, H.Ohtani and Y.Sawada : Eur. J. Pharm., 395, 193-201, 2000 I. Indexing of diffraction patterns. C. Toyoshima : Ultramicroscopy, 84, 1-14, 2000 Prevention of phosphatidylinositol 3'-kinase-akt survival signaling pathway during topotecan-induced apoptosis. A.Nakashio, N.Fujita, S.Rokudai, S.Sato and T.Tsuruo : Cancer Res., 60, 53035309, 2000 Structure determination of tubular crystals of membrane proteins. II. Averaging of tubular crystals of different helical classes. K. Yonekura and C. Toyoshima : Ultramicroscopy, 84, 15-28, 2000 Bcl-2 and Bcl-XL mediate tumor cell resistance to chemotherapy. N.Fujita and T.Tsuruo : In vivo veritas : Drug Resistance Updates, 7, 149-154, 2000 Modulation of art kinase activity by binding to Hsp90. S.Sato, N.Fujita and T.Tsuruo : Proc. Natl. Acad. Sci., 97, 1083210837, 2000 Overexpression of the Csk gene suppresses tumor metastasis in vivo. T.Nakagawa, S.Tanaka, H.Suzuki, H.Takayanagi, T.Miyazaki, K.Nakamura and T.Tsuruo : Int. J. Cancer 88, 384-391, 2000 微生物微細藻類研究分野(現バイオリソーシス研究分野) 「原著論文」 Gordonan, an acidic polysaccharide with cell aggregation-inducing activity in insect BM-N4 cells, produced by Gordonia sp. T. Kondo, D.Yamamoto, A.Yokota, A.Suzuki, H.Nagasawa and S.Sakuda : Biosci. Biotechnol. Biochem., 64, 2388-2394, 2000 Structure determination of tubular crystals of membrane proteins. III. Solvent flattening. K. Yonekura and C. Toyoshima : Ultramicroscopy, 84, 29-45, 2000 Soluble P-type ATPase from an archaeon, Methanococcus jannaschii. H. Ogawa, T. Haga, C. Toyoshima : FEBS letters, 471, 99-102, 2000 Detailed characterization of the cooperative mechanism of Ca2+ binding and catalytic activation in the Ca 2+ transport (SERCA) ATPase. A. Zhang, D. Lewis, C. Strock, G. Inesi, M. Nakasako, H. Nomura, C. Toyoshima : Biochemistry, 39, 8758-8767, 2000 Structural comparison of dimeric Eg5, Neurospora kinesin (Nkin) and Ncd head-Nkin neck chimera with conventional kinesin. K. Hirose, U. Henningsen, M. Schliwa, C. Toyoshima, T. Shimizu, M. Alonso, R.A.Cross and L.A. Amos : EMBO Journal, 19, 53085314, 2000 「総説」 Symbiobacterium thermophilum gen. nov., sp. nov., a symbiotic thermophile that depends on co-culture with a Bacillus strain for growth. M.Ohno, H.Shiratori, M.J.Park, Y.Saitoh, Y.Kumon, N.Yamashita, A.Hirata, H.Nishida, K.Ueda and T. Beppu : Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 50, 1829-1832, 2000 What is characteristic of fungal lysine synthesis through the αaminoadipate pathway? H.Nishida and M.Nishiyama : J. Mol. Evol., 51, 299-302, 2000 A deeply branched novel phylotype found in Japanese paddy soils. H.Kim, D.Honda, S.Hanada, N.Kanamori, S.Shibata, T.Miyaki, K.Nakamura and H.Oyaizu : Microbiology, 146, 2309-2315, 2000 Molecular phylogeny of parasitic zygomycota (Dimargaritales, Zoopagales) based on nuclear small subunit ribosomal DNA sequences. Y.Tanabe, K.O'Donnell, M.Saikawa and J.Sugiyama : Mol. Phylogenetic Evol., 16, 253-262, 2000 Group I intron located in PR protein homologue gene in Youngia japonica. H.Nishida, A.Ogura, A.Yokota, I.Yamaguchi and J. Sugiyama : Biosci.Biotechnol.Biochem., 64, 606-609, 2000 カルシウムポンプの構造決定. 江橋節郎、豊島 近: パリティ ー, 15, 122-124, 2000 . 筋小胞体カルシウムポンプの結晶構造解析. 中迫雅由、野村博美、 小川治夫、豊島 近:日本結晶学会誌, 42, 478-485, 2000 カルシウムポンプの結晶構造. 豊島 近: 細胞工学 , 19, 15171519, 2000 膜タンパク質を見る. 豊島 近:バイオサイエンスとインダスト リー, 58, 9-10, 2000 「出版本」 The Ca2+ pump of sarco-and endoplasmic reticulum membranes. G. Inesi, C. Toyoshima: “Calcium Homeostasis (Topics in Biological Inorganic Chemistry Vol. 3)”, (eds. E. Carafoli and J. Krebs), pp. 143-154, Springer-Verlag, Berlin, 2000 Three-dimensional structural study of Ca2+-ATPase from sarcoplasmic reticulum. C. Toyoshima, M. Nakasako, H. Nomura: “Na/K-ATPase and Related ATPases”, (eds. K. Taniguchi and S. Kaya), pp. 193-196, Elsevier, 2000 電子顕微鏡室 「原著論文」 「出版本」 ゲノムのGC含量の推定 横田 明:基礎生化学実験法 第4巻核酸・遺伝子実験I基礎 編(日本生化学会編), pp. 128-132, 東京化学同人, 2000 Sfb2p, a yeast protein related to Sec24p, can function as a constituent of COPII coats required for vesicle budding from the endoplasmic reticulum. H. Higashio, Y. Kimata, T. Kiriyama, A. Hirata and K. Kohno : J. B. C., 275, 17900-17908, 2000 蛋白質解析研究分野(現生体超高分子研究分野) 「原著論文」 Crystal structure of the calcium pump of sarcoplasmic reticulum at 2.6 Å resolution. C. Toyoshima, M. Nakasako, H. Nomura and H. Ogawa : Nature, 405, 647-655, 2000 Distinct topologies of mono-and decavanadate binding and photooxidative cleavage in the sarcoplasmic reticulum ATPase. S. Hua, G. Inesi and C. Toyoshima : J. Biol. Chem., 275, 3054630550, 2000 Structure determination of tubular crystals of membrane proteins. Symbiobacterium thermophilum gen. nov., sp. nov., a symbiotic thermophile that depends on co-culture with a Bacillus strain for growth. M. Ohno, H. Shiratori, M-J. Park, Y. Saitoh, Y. Kumon, N. Yamashita, A. Hirata, H. Nishida, K. Ueda and T. Beppu : Internat. J. System. Evolution. Microbiol., 50, 1829-1832, 2000 Ion beam as a noble tool to induce Apoptosis-like cell death in roots of Maize (Zea mays L.). M. Kawai, Y. Kobayashi, A. Hirata, Y. Oono, H. Watanabe and H. Uchimiya : Plant Biotech., 17, 305-308, 2000 21 おめでとう!大学院博士・修士課程修了 平成 13 年 3 月をもって大学院博士課程および修士課程を修了される方々と論文タイトルは、以下の通りです(かっこ内は 所属大学院研究科、研究分野)。長い間の研究活動の結実、おめでとうございます。分生研での研究生活を糧として、さら に各界でご活躍されることを期待しています。 〈博士課程〉 永森 收志(農学生命科学、細胞構造) 「シロイヌナズナ・イネに存在する Mu 様トランスポゾン に関する研究」 「蛋白質膜透過装置における SecG の構造解析」 韓 昌均(農学生命科学、生物物理) 桝田 和宏(農学生命科学、細胞構造) 「リポ蛋白質の膜からの遊離を触媒する ABC トランスポー ター」 「Identification and characterization of transposable elements from bacteria and rice(バクテリアとイネに存在 する転移性遺伝因子の同定と機能の解析)」 山口 雅利(理学系 、細胞機能) 志賀 康幸(農学生命科学、生物物理) 「イネ CDK 活性化キナーゼの機能解析」 「挿入因子 IS1 の転移中間体としての環状 IS1 分子と宿主 因子 H-NS の役割」 中山 恒(理学系、細胞合成・人工細胞) 「オンコスタチン M により誘導される遺伝子の同定とそれ らの造血系における機能解析」 高木 基樹(農学生命科学、生理活性物質) 「非メバロン酸経路に関する研究」 小口 慶子(農学生命科学、分子遺伝・育種) 升岡 優太(農学生命科学科、生理活性物質) 「高等植物におけるテロメラーゼの解析」 「微生物が生産する転写活性化物質に関する研究」 佐藤 隆史(農学生命科学、分子系統) 尹 志洙(薬学系、分子生物活性) 「男性ホルモン受容体の生体内高次機能に関する研究」 「DNA topoisomerase IIa の分解制御ドメインの解析」 山本 紋子(農学生命科学、分子系統) 小玉 信之(薬学系、分子生物活性) 「男性ホルモン受容体転写共役因子の分子遺伝学的研究」 「抗がん剤ストレスによる Gadd45 分子の蛋白安定化とそ の分子機構の解析」 船越 陽子(理学系、染色体) 「ショウジョウバエ翅パターン形成における新規遺伝子 master of thickveins の機能解析」 鈴木 裕之(薬学系、分子生物活性) 「低酸素誘導アポトーシスにおける HIF-1 複合体の機能」 秦 勝志(農学生命科学、生体超高分子) Wellyzar Sjamsuridzal(農学生命科学、微生物微細藻類) 「胃特異的に発現するカルパインの解析」 「Polyphasic taxonomic study of yeast-producing badisiomycetes (酵母世代を有する担子菌類の多相分類学的研究) 」 二井 勇人(農学生命科学、生体超高分子) 「酵母カルパイン様プロテアーゼ及びカルシニューリンを 介したストレス応答シグナル伝達経路の解析」 〈修士課程〉 明石 政嗣(農学生命科学、細胞構造) 「細胞質領域に正電荷を導入した SecG 変異体の機能解析」 川崎 善博(農学生命科学、分子情報) 「癌抑制遺伝子産物 APC による G 蛋白質の制御」 寺田 真喜子(農学生命科学、細胞構造) 「大腸菌リポ蛋白質の膜特異的局在化に関与する選別シグ 小山 亮(農学生命科学、分子情報) ナルの解析」 「癌抑制遺伝子産物APCによるユビキチンシステムの制御」 中沢 明彦 松井 貴輝(農学生命科学、分子情報) 「肝細胞の成熟にともなう細胞間接着の制御機構」 明賀 史純(農学生命科学、生物物理) (農学生命科学、細胞構造) 「大腸菌リポ蛋白質の局在化に関与する ABC トランスポ ーターの構成因子 LolC、LolE の膜内配向性」 石和 俊(理学系、分子発生分化) 22 「多細胞生物で唯一多様化したヒストンシャペロン CIA フ 「hDLG タンパク質のドメイン構造と機能」 ァミリーの発生・分化における解析」 関谷 高史(農学生命科学、分子情報) 宗政 歓子(理学系、分子発生分化) 「β− catenin 結合因子 ICAT の癌細胞増殖抑制作用の解析」 「クロマチン転写反応における因子間相互作用に基づく機 能解析」 田辺 雅茂(理学系、分子情報) 「癌抑制遺伝子産物 APC の核内における機能」 大石 康二(工学系、細胞工学) 「神経幹細胞の生存機構の解析」 西田 歩(理学系、分子情報) 「Armadillo と直接相互作用する新規遺伝子産物 D6 の解析」 小川原 陽子(工学系、細胞工学) 「Akt による p53 依存的アポトーシスの制御機構の解析」 どど 孝介(薬学系、生体有機化学) 「dysidiolide を基盤とした新規 cdc25A 阻害剤の合成研究」 森 靖典(新領域創成科学、細胞工学) 「キナーゼによるアポトーシス制御メカニズムに関する研究」 浦崎 明宏(農学生命科学、生物物理) 「藍藻 Synechocystis sp. PCC6803 の転移性遺伝因子の大腸 長沢 桐奈(農学生命科学、分子遺伝・育種) 菌中での転移」 「原始紅藻における葉緑体遺伝子の転写解析」 奥山 洋平(農学生命科学、生物物理) 安立 雄悟(農学生命科学、分子遺伝・育種) 「シロイヌナズナにおける2本鎖 DNA 切断の修復に関与 「ペチュニアにおける異種植物由来の class C ホメオティ ック遺伝子の働き」 する遺伝子のクローニングと解析」 崔 先柱(農学生命科学、生物物理) 清水 弘幸(農学生命科学、分子遺伝・育種) 「大腸菌における遺伝的多様性」 「大腸菌増殖定常期における遺伝子発現に関する研究」 竹内 聡士(農学生命科学科、生理活性物質) 池田 達哉(農学生命科学、分子系統) 「放線菌のイソプレノイド生合成に関する研究」 「女性ホルモンレセプターα(hERα)AF−1特異的 に作用する転写共役因子複合体の検索」 村上 亮(農学生命科学科、生理活性物質) 「Ras 依存性細胞に対して選択的アポトーシスを誘導する 新道 真代(農学生命科学、分子系統) 新規物質 Ammocidin に関する研究」 「高次生命現象におけるビタミンDレセプターと転写共役 因子との相互作用の解明」 佐藤 沙織(薬学系、分子生物活性) 「Hso90 との結合による Akt/PKB の活性制御機構」 渡辺 資之(農学生命科学、分子系統) 「男性ホルモンレセプターの特異的リガンド応答の分子機 構の解析」 水島 春日(薬学系、分子生物活性) 「P 糖タンパク質発現細胞の Fas、TNFa 誘導 apoptosis 耐 性に関する研究」 角田 猛(理学系、染色体) 「ショウジョウバエ翅の形態形成に関わる新規遺伝子の強 制発現スクリーニングおよびその解析」 椿 雄一郎(理学系、蛋白質解析) 「MgF-筋小胞体カルシウム ATPase 複合体の結晶化および 電子顕微鏡による結晶解析」 後藤 貴康(農学生命科学、生体超高分子) 「癌抑制遺伝子 PTEN の出芽酵母での相同遺伝子 TEP1 の 機能解析」 久保 友照(農学生命科学、生体超高分子) 「ストレス応答性 MAP キナーゼカスケードの制御因子の 同定と機能解析」 小川 文昭(農学生命科学、分子情報) 23 2000 年分生研セミナー一覧 2000.1.12 (2000.1 ∼ 2000.12) (染色体分子構造研究分野) 春日 孝夫 先生 「ショウジョウバエのパターン形成メカニズム」 (ロッシュモレキュラーシステムズ客員研究員) 2000.3.6 「菌類の種概念と分子進化」 田中 智之 先生 2000.1.20 (Research Institute of Molecular Pathology, Vienna,Austria) Prof. Jean-Marc Egly 「姉妹染色分体の複製、接着、分配」 (Institute Genetique et de Biologie Moleculaire et Cellulaire) 「TFIIH between transcription and DNA repair. Explanation 2000.3.7 of some of the phenotypes of xeroderma pigmentosum Prof.Daniel Metzger patients.」 (Director of Research IGBMC/CNRS/INSERM University 「Louis Pasteur College de France)Conditional somatic 2000.1.24 mutagenesis in the mouse: analysis of RXRs function in the 山本 雅之 教授 epidermis」 (筑波大学基礎医学系先端学際領域研究センター) 2000.3.8 「転写因子と異物代謝・化学発癌」 林 茂生 教授 2000.2.9 (国立遺伝学研究所) Dr.Chang − deok Han 「肢のパターン形成におけるシグナル伝達と核内因子」 (Kyungsang National University) 2000.3.8 「Gene Trapping for Rice Functional Genomics」 安藤 剛 博士 2000.2.14 (Associate Professor, Oregon Health Science University Professor Evert P. Bakker School of Medicine) (Department of Microbiology University of Osnabruck 「Mechanism of chronic nephrotoxicity induced by cal- Osnabruck, Germany) cineurin inhibitors: role of TGF-β and apoptosis」 + 「A broad family of K transpoters derived from a simple K + channel」 2000.3.9 Dr.Thomas Curran 2000.2.14 森口 徹生 博士 (京都大学理学部) (St.Jude Children's Research Hospital, Memphis) 「The role of the Reelin pathway in the control of brain development」 「JNK/SAPK 及び p38MAP キナーゼ活性化経路の解析」 2000.3.9 2000.2.16 Dr. Pascal Therond (Universite de Nice) Dr. Charles Sherr (St. Jude Children's Research Hospital, Memphis) 「Cancer Cell Cycles」 「Branching points and redundancy in Hedgehog signaling during embryogenesis」 2000.3.13 Prof.Heide S.Cross 2000.2.28 多羽田 哲也 助教授 (Associate Professor Dept. Pathophysiology Institut fur allgemeine und experimentelle,Pathologie der Universitat Wien) 24 「Regulation of vitamin D receptor and of 1, 25dihydroxyc- ァミリーについて」 holecalciferol synthesis during colorectal tumor progres- 2000.5.30 sion.」 四方 哲也 先生 (大阪大学大学院工学研究科) 2000.3.14 「創ってわかる生物学」 Dr. Alessandro Alessandrini (Massachusetts Generel Hospital) 「The Joy of MEKs : From transformation to stroke」 2000.6.2 緒方 一博 客員教授 (横浜市立大学医学部構造生物学研究室) 2000.3.21 「造血系転写因子による DNA 認識と転写調節の分子機構」 Dr. Haian Fu (Emory University) 「Regulation of Cell Survival Signaling by 14-3-3 Proteins」 2000.6.7 高島 明彦 博士 (理化学研究所脳科学研究センターアルツハイマー病研究 2000.4.10 Dr. Arnold J. Berk チーム・チームリーダー) 「アルツハイマー病における神経細胞死機序」 (University of California, Los Angeles) 「A Multiprotein Mediator Complex is Required for the Stimulation of Transcription by Activators in Human Cells」 2000.6.19 深水 昭吉 教授 (筑波大学先端学際領域研究センター) 2000.5.12 高辻 博志 博士 「妊娠高血症の発症と転写制御:ホルモン産生系から攻め るギャップと発想の転換」 (農水省農業生物資源研究所) 「植物の形態形成および花粉の発達におけるジンクフィン ガー転写因子の役割」 2000.6.27 Prof.Jan - Åke Gustafsson (Karolinska Institute,Sweden) 2000.5.15 今井 眞一郎 先生 「Estrogen receptors alpha and betathe yin-yang of estrogen signalling」 (マサチューセッツ工科大学生物学部) 「”エネルギーセンサー”Sir 2の機能と老化メカニズム− ゲノム制御とエネルギー代謝の接点−」 2000.6.30 白髭 克彦 先生 2000.5.17 (奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科) Prof.Anthony W.Norman 「出芽酵母第六染色体の複製開始制御機構」 (Distinguished Professor Biochemistry and Biomedical Sciences 2000.7.3 Vitamin D Research Laboratory University of California- 大久保 公策 先生 Riverside) (大阪大学細胞生体工学センター) 「1,25-Dihydroxyvitamin D3, a steroid hormone which pro- 「ポストゲノムの構築的生命研究に向けて」 duces biological responses through two receptors which require different shapes of the hormone ligand」 2000.7.10 Dr.Alexander R.van der Krol 2000.5.25 八木 健 博士 (Wageningen University) 「1. Applications of the luciferase reporter system for in vivo (岡崎共同研究機構生理学研究所) measurements of gene expression. 「脳の構築・機能に関わる遺伝情報の探索− Fyn と CNR フ 2. Dissectimg the signals leading to tuber initiation and 25 growth in potato by in planta gene expression analysis.」 cule, BAD」 2000.7.24 2000.11.22 山本 雅 先生 尹 鳳植 博士 (東京大学医科学研究所) (韓国生命工学研究所、専任研究員) 「がん抑制遺伝子産物 Tob の作用機構とリン酸化による制 「微生物の生産する peptaibol 抗生物質」 御」 2000.12.11 2000.10.23 Dr.Jacques Samarut (Laboratoire de Biologie Moléculaire et Cellulaire Ecole 中山 潤一 博士 (Cold Spring Harbor Laboratory, NY. U.S.A.) 「Epigenetic Gene silencing in Fission Yeast」 Normale Supérieure de Lyon France) 「Role of various isoforms of the thyroid hormone nuclear 2000.12.18 receptors in the development of the mouse」 玉井 馨子 博士 (Division of Neuroscience, Children's Hospital/Harvard 2000.11.10 Ben-Zion Shilo 教授 Medical School) 「Wnt 情報伝達系の新規構成因子 LRP6」 (Weizmann Institute,Israel) 「Patterning the dorso-ventral axis of the Drosophila embryo」 2000.11.13 原田 久士 博士 (Departmennto of Cancer Immunology & AIDS Dana-Farber Cancer Institute) 「The regulation of cell death through a pro-apoptotic mole- コロキウム一覧 2000.1.20 演者:古谷利夫客員教授(細胞活性評価(客員))「ゲノム創 薬のニュートレンド」 演者:徳田 元教授(細胞構造)「蛋白質の膜透過と選別 的膜局在化の機構」 (2000.1 ∼ 2000.12) ゼ」 2000.10.19 演者:横田 明(微生物微細藻類)「表現・遺伝両形質の 統合的解析による細菌の系統分類」 演者:掘越 正美(分子発生分化)「クロマチン構造変換 機構」 2000.4.20 演者:宮島 篤(細胞合成・人工細胞)「造血幹細胞の発 生と肝臓の分化」 演者:田中 寛(分子遺伝・育種)「シグマ・ゲノム・多 様性」 2000.7.13 演者:早川 洋一(生理活性物質)「微生物代謝の可能性 を探る」 演者:梅田 正明(細胞機能)「植物の CDK 活性化キナー 26 教官公募(2001.3.29 現在) 掲示板 〈知ってネット〉 詳細は分生研研究助成掛へお問い合わせください。 TEL03-5841-7803/E-mail:[email protected] 最新の情報は、ホームページで公開しております。 http://imcbns.iam.u-tokyo.ac.jp/office/keijiban.html 職員の異動について 1月1日付けで生体有機化学研究分野助教授として長澤 京都大学再生医化学研究所教授1名 (生体システム医工学研究部門) 和夫氏が採用されました。 2001.4.30 締切 北海道大学教授1名 (大学院薬学研究科衛生化学関連分野) 2001.4.27 締切 研究助成等公募(2001.3.29 現在) 詳細は分生研研究助成掛へお問い合わせください。 TEL03-5841-7803/E-mail:[email protected] 福島県立医科大学教授1名 (微生物学講座) 2001.4.20 締切 最新の情報は、ホームページで公開しております。 http://imcbns.iam.u-tokyo.ac.jp/office/keijiban.html 2001 年度昭和シェル石油環境研究助成金募集について (財団法人昭和シェル石油環境研究助成財団) 募集先 2001.5.31 締切 「保険医療分野における基礎研究推進事業」平成 13 年度 研究プロジェクトの募集 (医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構) 募集先 2001.4.10 締切 Tea Time−編集後記 すべり込みセーフといった感じでヒトゲノム配列の概要 特に北九州、博多あたりは日本海気候なので冬の空は毎日 が 20 世紀の内に決定されてしまいました。ひとりひとりの どんよりと曇り、冷たい雨、もしくは雪が降り寒いのです。 個性なるものも、そのうちには SNPs に代表されるような 関東のような抜けるような青い空はのぞめません。何事も ゲノムの多型で説明できるようになるのでしょう。話は代 先入観だけで物事を判断するとたいへん寒い思いをするこ わりますが、分生研のある弥生キャンパスには大きな椎の とがあります。 木があります。これが初夏になると花を一杯に咲かせて、 (研究助成掛 松尾美鶴) ちょっとどうかと思うような匂いを辺りにまき散らすよう になります。中には胸が悪くなる方もあるそうなのですが、 実は私にはその匂いがよく分からないんです。きっとアミ ン系の匂いの受容体の遺伝子に SNP が入ってるんだろうな あ、なんて最近は想像しています。 分生研ニュース第14号 (生体超高分子研究分野 前田達哉) 2001年4月1日号 発行 東京大学分子細胞生物学研究所 あっという間に1年間が過ぎてしまい、もう新人とは言 編集 分生研ニュース編集委員会(松山伸一、松尾美鶴、前田達哉、大坪 久子、野村博美、梅田千景、小野口幸雄) えなくなってしまいました。どうにかここまでたどり着い お問い合わせ先 編集委員長 松山伸一 た、という感じがします。ところで私の実家は北九州にあ 電話 03-5841-7831 るのですが、東京の人からはよく「九州は南国だから、冬 電子メール [email protected] 分生研 URL http//www.iam.u-tokyo.ac.jp は暖かくていいですよね」と言われます。大間違いです。 27 研究紹介 肝発生と肝造血の分子機構 高等植物における細胞死制御機構 機能形成研究分野 木下 大成 細胞機能研究分野 山田(川合)真紀 私達の研究室ではほ乳動物の肝臓に着目し, 植物においてプログラム細胞死は、形態形 肝発生と肝造血の分子機構の解明を目指し 成、環境応答、病原菌への抵抗性反応等に た研究を行っています.肝発生の過程はい 不可欠な基本的生命現象の一つである。近 くつかの分化段階に分けることができ,各 年、動物の Bax 遺伝子が植物細胞にアポト 段階ごとに異なる制御機構が関与していま ーシス様細胞死を誘導する事が報告され、 す(図).この中で最も劇的な変化を伴うの 生物種を超えた共通の細胞死機構が存在す が誕生前後にみられる成熟過程で,子供は るものと考えられている。一方、動物のア 母体に頼っていた代謝機能を独立して行うようになるとともに, ポトーシスのカスケードを担う Bcl-2 ファミリーや、カスパーゼ 造血の役割を骨髄や脾臓に移します.私達はこの過程を in vitro で の相同遺伝子はこれまで植物からは単離されていない。私は、 再現するために,胎生肝の初代培養系を確立しました.そしてこ 植物の細胞死の制御機構の解明を目的として、AtBI-1 の系にオンコスタチン M(OSM)というサイトカインを添加する (Arabidopsis Bax inhibitor-1)遺伝子の機能解析を中心に研究を と,種々の成熟肝の形質を誘導すると同時に肝造血の停止を引き 進めている。Bax は酵母や植物にも細胞死を引き起こすが、こ 起こすことを見いだしました.さらにそこに細胞外マトリクスの の現象を利用してシロイヌナズナの細胞死抑制遺伝子のスクリ 成分を添加すると最終分化が誘導されることがわかり,さまざま ーニングを行った結果単離されたのが本遺伝子である。動物の な細胞外シグナルが肝発生を促進することが明らかになりまし BI-1 遺伝子はアポトーシス抑制能を有しており、AtBI-1 も植物 た.この培養系はレトロウイルスによる遺伝子導入が可能で,肝 の細胞死現象の制御因子として機能する可能性が高い。また、 発生機構を分子生物学的に解析することが可能です.また,初代 植物における細胞死誘導系の開発や細胞死抑制遺伝子を導入し 培養系であるためノックアウトマウス由来の細胞を培養すること た形質転換植物の解析を進めており、これらを通して植物独自 ができ,致死性で解析不能だった遺伝子についても詳細に調べる の細胞死カスケードの分子機構に迫っていきたいと考えている。 ことができます.実際,私達は C/EBPa や K-Ras 遺伝子のノック アウトマウスを用いた解析を行い,これら分子が OSM のシグナ Kawai, M. and Uchimiya, H.(2000) Ann. Bot. 86: 405-414. ルに関与していることを見いだしています.さらに最近,成熟肝 Kawai, M. et al., (2000) Plant Biotech. 17: 305-308. 細胞や肝芽細胞の培養系を確立して,肝発生の全過程を in vitro で Kawai, M. et al., (1999) FEBS Lett. 464: 143-147. 観察することができるようになりました.今後,これらの技術を 活用することで,肝芽細胞から成熟肝細胞に到る分化・成熟過程 の機構の全貌が明らかにされることを期待しています. 図)植物で見られる細胞死の一例 植物では様々なアポトーシス様の形態変化を伴う細胞死現象が 報告されている。それらは形態形成時に見られるものから、環 境ストレスによって誘引されるものまで多岐に渡っている。 28 研究 究最 最前 前線 線 研 新しいタイプの isopentenyl diphosphate isomerase の発見 CDK 活性化キナーゼによる始原細胞の 分化制御 金田一秀、葛山智久、高木基樹、早川洋一、瀬戸治男 梅田正明、梅田(原)千景、内宮博文 (活性分子創生研究分野) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 932-937 (2001) (細胞機能研究分野) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 13396-13400 (2000) isopentenyl diphosphate (IPP) isomerase は、steroid、carotenoid、 ubiquinone 等の isoprenoid の生合成に必須な酵素の一つであり、 植物は胚発生後に主な器官を形成する。例えば、シロイヌナズ ナの根端分裂組織では静止中心(4細胞から成る)の回りに各 IPP と、その isomer である dimethylallyl diphosphate (DMAPP) との相互変換を触媒する。この酵素をコードする遺伝子 idi は、 細胞層をつくる始原細胞が並んでおり、これらの始原細胞が分 裂し特異的な分化を遂げることによって根の形態を形成する。 ヒトを含む多くの真核生物からはクローニングされていたが、 したがって、細胞の分裂と分化が外的あるいは内的要因に応答 多くの原核生物では、その homolog は見つかっていなかった。 我々は、放線菌 Streptomyces sp. CL190 株由来の isoprenoid 生合 して協調的に制御されないと、器官形成にも重大な影響を与え る。我々はシロイヌナズナの CDK 活性化キナーゼ(CAK)をコー 成のための mevalonate pathway 遺伝子クラスター中に存在する 機能未知遺伝子 orfD の機能解析を行っていた。相同検索からは、 ドする cak1At 遺伝子をセンスおよびアンチセンス方向で発現す この orfD 産物が、ゲノム配列が解明された全ての古細菌や黄色 構に関して新たな知見を得た。CAK は殆どすべての CDK をリン ブドウ球菌 Staphylococcus aureus を含むいくつかの真正細菌に 存在することは判明したが、その機能に関する情報は得られな 酸化し活性化するキナーゼであるが、グルココルチコイド (DEX)による転写誘導系を使った実験ではセンス・アンチセン かった。そこで、大腸菌で大量発現させた orfD の組み換えタン パクの触媒する酵素反応を精査したところ、このタンパクは、 ス植物とも CDK 活性が DEX 処理後2時間以内に減少した。そ こで cyclin-GUS 融合タンパク質の発現を指標にして細胞分裂を flavin mononucleotide (FMN)を含む flavoprotein であり、FMN と モニターしたところ、根端分裂組織の細胞分裂は 72 時間後に停 NADPH 存在下でのみ IPP isomerase 活性を示すことが判明した。 この orfD 産物は、ヒトを含む真核生物由来の既知の IPP iso- 止し、根の伸長が止まることが明らかになった(図 A-D)。この 際、維管束の分化が細胞分裂の停止以前から見られたことから merase のアミノ酸配列とは全く相同性を示さない。一方、真核 生物由来の IPP isomerase は、FMN や NADPH を要求しない。 (図 C, D)コルメラと皮層の始原細胞に注目して分化状態を観察 したところ、これらの始原細胞は DEX 処理後 14 ∼ 24 時間以内 これらのことから、orfD 産物は、真核生物の IPP isomerase とア ミノ酸配列も反応機構も異なる全く新しいタイプの IPP iso- に分化することが明らかになった。これらの結果は分化が細胞 分裂とは独立に進行したことを意味している。したがって、根 merase であることが明らかとなった。我々は、IPP isomerase の 端分裂組織では静止中心から隣り合った始原細胞に何らかのシ これらの酵素学的性質の差に基づき、FMN/NADPH 依存型の IPP isomerase を type 2、それ以外の IPP isomerase を type 1 と分 グナルが伝達され、この作用により始原細胞の CAK(または CDK)活性が制御されその未分化状態が維持される、と考えら 類することを提唱した。S. aureus の生育に IPP isomerase が必須 であること、及び S. aureus の IPP isomerase がヒトの IPP iso- れる(下図)。 merase とタイプが異なることから、S. aureus の IPP isomerase は S. aureus 特異的かつ副作用の少ない抗菌剤創製のための新し い分子標的であると考え、現在、阻害剤のスクリーニングを展 開している。 なお、本研究内容は、平成13年2月7日の日経産業新聞で 紹介された。 (T.K) るトランスジェニッック植物を作成し、根端分裂組織の維持機
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