ステージで 使える味方の 1台を探せ! プロ/アマチュアを問わず、ライブはミュージシャンにとって重要な活動の場 です。そのライブでの演奏に適した音色・機能を搭載したのがいわゆる“ス テージ・キーボード”と呼ばれるモデル。最近では、注目すべき新しいラインナ ップが続々と発表されています。Part2では、 そんなステージ・キーボードをミュ ージシャンたちに試奏してもらいながら、 じっくりとレビューしていきます。 KORG SV-1 MOOG Little Phatty Stage II ROLAND AX-Synth ROLAND V-Piano YAMAHA CP300 YAMAHA S70XS 009 ステージ・キーボードの1人目の試奏者は、池田貴史。 さまざまなバンド、ライブ活動を続ける彼に“即戦力” となる1台との出会い方について語ってもらった。 試奏者 Profile 池田貴史 1974年生まれ。1997年、SUPER BUTTER DOGのキーボーディストとしてメ ジャー・デビュー、ファンキーなグルーブ感あふれるプレイで注目を集める。2004 年には中村一義とともに100sとして活動をスタート。さまざまなアーティストに楽 曲を提供、最近では椎名林檎のニュー・アルバム『三文ゴシップ』にアレンジ、演奏 ステージで使える味方の 台を探せ! 1 で参加している。2007年には自身のソロ・ユニット“レキシ”としてデビュー。最新 作は、2009年7月にリリースされた100sの3rd『世界フラワーロード』。 Takashi Ikeda New Release 『世界フラワーロード』 エイベックス VFCV-00042 楽器を選ぶときは少し背伸びをした方がいいと思います ●普段池田さんは、ステージでどんなキーボードを 買うのをやめたけど、次に店の前を通ったらまだ よ。そして、ライブでは上に乗ったりして(笑)。 使っているんですか? あったから、とか。そういう出会いも結構重要だ それでも“乗ってごめんな” って言って、愛でて ●ピアノやエレピ音色にはヤマハP-200、オル と思いますよ。 “何か”が自分の中に沸くかです あげればいいんです。親には“モノの上には乗 ガンがコルグCX-3ですね。それからローランド よね。製品が自分に向かって“買え” って言って るな!”って何回か言われましたけどね(笑)。だ αJuno-1、コルグMicrokorg、音源としてイーミ るって思うときがありますよね。それは鍵盤に限 から、縁と愛があればいいですね。気を付けるこ ューProteus2000を使っています。あとはたま らないことですが、 そういう流れは大事ですよ。 とはない。思っていたものとは違ったっていいわ にサンプラーを使うくらいですね。 ●今持っている機材は、どんな部分にピンときた けですよ。それで違う世界が開けることもあるか ●そのセットにどうやって行き着いたんですか? んですか? もしれないですから。 ●単純に使う音色ありきで決めていったら、こう ●P-200はローディの方に薦めていただきました いうふうになった感じです。ピアノ、エレピ、オル (笑)。でもそれも、 “あなたが言うなら” って決め ガン、シンセの音色を出すためのキーボードは たんです。 何か考えたっていう。それにクラビが必要だった ●それも縁ですよね。 ので、音源を追加したんです。その中で、自分 ●縁です。あとは、身の丈よりもちょっと上のレ の使いやすいものを選んだ感じですね。例えば ベルのものを買った方がいいと思うんですよ 僕は、もともとバンドを始めたくらいからオルガ ね。背伸びはした方がいい。そうすることによっ ンを使っていたんです。だからオルガンはマスト て、自分もうまくなろうとか、使いこなしてやろう だったので、P-200は大きさもあるので、上にも とか、前向きな気持ちになってくるから。弾く側 う1台乗せやすかった、 とか。 が楽器に育てられるということも結構あると思う ●ステージ・キーボードの選び方のポイントを教え んですよ。その楽器に対しては、最初は誰でも ていただけませんか? 初心者ですよね。だけど弾いて馴染んでいくに ●やっぱり優先順位を決めることですよね。見 つれて、それでしか生まれないものも出てくるん た目、機能、値段、いろいろポイントはあると思い だと思います。だから、半分くらいは楽器を擬人 ます。頻繁に持ち運ぶのならコンパクトさ、とか。 化して扱う方がいいというか、ペットとまで考える ピアノ・タッチにはこだわりたい人も多いですよ とちょっと違いますけど、 “相棒を見つける”くら ね。そういった優先順位を箇条書きにして、それ いのイメージで買った方がいいんですよね。 に見合ったものを選ぶっていうのが一番いいと ●池田さんもそうなんですか? 思います。とは言え、 “ 縁 ”というのもある。1回 ●買うときは“一世一代”の気持ちで買います 010 KEYBOARD BUYERS GUIDE 2010 ステージ・キーボード選びのポイント 池田貴史 優先順位を決める 自分のこだわりたいポイントを、重要な順 番にまず箇条書きにする。それと実際の製 品を照らし合わせて選ぶといいのでは? 縁 見ただけでビビッとくる場合もあるし、最 初はいまひとつでも触ってみたらガツンと くる場合もある。そういう縁も大事です。 ワンランク上を選ぶ 楽器が違うと、弾く曲や作る曲も変わってき ます。だからちょっと背伸びしたものを手に 入れれば、自分もレベルアップできるはず。 もう1人の試奏者は、クレイジーケンバンド、小野瀬雅 生ショウなどで縦横無尽なプレイを見せる高橋利光。 自分に合ったキーボード選び方を教えていただく。 試奏者 Profile 高橋利光 1965年生まれ。大学時代よりキーボーディストのキャリアを開始。その後、アレン ジャー/スタジオ・ミュージシャンなどの活動を経て、2000年より小野瀬雅生ショ ウに参加。また、2001年にはインスト・バンドKBBに、2002年にはクレイジーケ ンバンドに加入、レコーディング、ライブで活躍を続ける。2009年8月リリースの クレイジーケンバンド最新作『ガール!ガール!ガール!』では、ピアノ、エレピ、オル ガンを中心とした“高橋節”と言える多彩なプレイを見せている。 New Release Toshimitsu Takahashi 『ガール! ガール! ガール!』 ユニバーサル UMCK-9293 楽器は触れるものなので感触を確かめることが大事です ●高橋さんのライブでのキーボード・セッティング りませんし。だからピアニスト、オルガニスト、シ ろん選択肢はすごく増えているんですが、感触 を教えてください。 ンセシスト、という楽器そのものを弾く人であれ を確かめることはすごく大事。鍵盤タッチは当然 ●ヤマハCP300、 コルグBX-3、 Triton Extreme、 ばいい。でも少ない編成であれば、キーボーデ のこと、例えばホイールの位置とか、ツマミの並 Mono/Poly、アープAxxeという感じですね。ま ィストはやることが増える場合が多いですよね。 びなどがしっくりくるかどうかで、演奏感もずいぶ ん変わってくる。なので、楽器屋で実際に手に ずピアノとオルガンは絶対必要なので、CP300 そうすると多彩な音色を扱わなきゃいけなったり とBX-3はマストでした。その上で飛び道具的な するので、操作性がいい楽器じゃないと苦しい 触れてみるべきでしょうね。そうやって自分にピン シンセが欲しくなったので、 Mono/Polyを使うこ かもしれません。 とくるものを探すというのがいいんじゃないかな。 とにして。ただ、それだとストリングスなどの現実 ●では、どういうところにこだわって楽器を選ぶと やっぱり楽器というのは触れるものですからね。 音系音色が出せないので、PCMシンセのTriton よいでしょうか? Extremeもセットに入れたんですよ。Axxeは趣 ●当たり前ですが、 まずサウンド、見た目、機能。 味っぽいところもあるんですが( 笑 ) 、Mono/ それからトランスポートでしょうか。サウンドにつ Polyにはメモリーがないので、もう1つアナログ・ いては、 “自分の気持ちに馴染むかどうか”です シンセが欲しくなったんです。このセッティングに よね。ピアノなどは特にそうですが、出した瞬間 たどり着くまでは、 かなり思考錯誤しましたね。 に“ああ、これ楽しいな”となれるのがやはり重 ● 高橋さんが“ステージ・キーボード”に求めるも 要です。もちろん見た目は大事ですね。自分が のというと? その楽器を“かわいい”と思えないと。重い思 ●即時性ですかね。ピアノを弾く場合はこれ、 いをして運ぶ気にならないですよ(笑)。そこは オルガンは弾く場合はこれ、といったような。今 相性っていうか、ハマる楽器はのちのち煮詰め のシンセは高機能なので1台ですべてをまかな ていけるんじゃないでしょうか。買うときにひっか うことはできるんですが、演奏以外のことに気を かりがあったりすると、音までもイマイチに思え とらわれるのが煩わしくて。それだったら、単一 てきたりとか、いろいろ考え出して泥沼に入って 機能のものがいい、ということになって、現在の いくので。あと、最近の製品は持ち運ぶことを セットになっているんですよね。ただ、バンドの 前提に作っているものも多いですが、機動性も 形態や音楽性にもよります。クレイジーケンバン ポイントでしょうね。 ドの場合は、さまざまな楽器のプレイヤーがいる ●これから楽器を買うという人にアドバイスをお ので、キーボーディストに求められることが限定 願いします。 的なんです。ブラスを出せって言われることはあ ●ネットで楽器も買える時代になったので、もち ステージ・キーボード選びのポイント 高橋利光 サウンドは直感で 音を出した瞬間に “ああ、いいな” とならない と、その後なかなか弾き込んでいきたいとは 思わないもの。 そういう意味では直感ですね。 好きだと思える見た目 ステージに置いたときいいと思えるかどうか は大事。キーボードは重いので、見た目が気 に入らないと運ぶ気力が萎えますから (笑) 。 機動性の良さ アマチュアの場合、機材を運ぶのは大変で すから、機動性の良さはぜひ考慮したいとこ ろ。最近は軽量モデルも増えていますよね。 011
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