低油価のGCCを中心とする 産油国経済への影響 福田安志 日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所 上席主任調査研究員 内容 • 油価の下落と財政への打撃 • 財政面での対応 • 経済への影響、経済状態の悪化 • 為替の安定、インフレ • 今後の見通し 内容 • 油価の下落と財政への打撃 • 財政面での対応 • 経済への影響、経済状態の悪化 • 為替の安定、インフレ • 今後の見通し 3,600億ドル 国家歳入に占める石油収入の割合(IMF) 2011-14年平均 *政府の歳出が経済のエンジンとなっている。 国名 カタル サウジアラビア オマーン バハレーン クウェート (アラブ首長国連邦) 割合 90.7 90.3 88.7 87.2 83.6 (69.9) 出所:IMF Working Paper, 2016 Aug. 内容 • 油価の下落と財政への打撃 • 財政面での対応 • 経済への影響、経済状態の悪化 • 為替の安定、インフレ • 今後の見通し 石油収入の大幅減少への対応(1) -低油価への対策・・原油の減産は?- • サウジ・・減産政策は放棄、市場にゆだねる (サウジは数十万b/d増産へ) OPECは協調減産は実施せず • 湾岸諸国 油価上昇への打つ手は無い 石油収入減少への対応へ ?? スイングプロデューサー 対米関係 対米関係 石油収入の大幅減少への対応(2) -基本的な対策・・資金調達と歳出抑制- • 歳入の急減に合わせた歳出の急減はできない 高い水準の歳出を続ける・・赤字財政へ • 資金調達・・歳入減少の穴埋め策(国により異なる) 財政上の貯金・資産の取り崩し 外国証券、現金預金 政府系ファンド 国債の発行 金融機関からの借入れ • 歳出の抑制 開発計画の見直し 不急な歳出の抑制、経費削減 財政の推移 (単位:億米ドル) 2013年 2014年 2015年 2016年 歳入(予算) (決算) 2,211 3,013 2,280 2,789 1,907 1,621 1,370 歳出(予算) (決算) 2,187 2,466 2,280 2,933 2,293 2,600 2,240 歳入(予算) 635 704 401 338 歳出(予算) 737 814 636 623 サウジアラビア クウェート 出所:サウジ財務省・クウェート財務省資料 石油収入の大幅減少への対応(3) -次の対応・・財政の改革・・2015年後半以降- • 歳出減へ(国により異なる) 補助金の削減 各種補助金の削減 ガソリン、電気、水料金の値上げ 経費削減 政府機関で各種手当の削減など • 歳入増へ VAT導入の流れ・・GCC諸国で、2018年から? 課徴金・増税の動き・・タバコ、遊休不動産など 政府の手数料の引上げ 民営化の推進へ 内容 • 油価の下落と財政への打撃 • 財政面での対応 • 経済への影響、経済状態の悪化 • 為替の安定とインフレ • 今後の経済の見通し 経済への影響、経済の悪化へ • 経済は悪化したが急激ではない 歳出を高い水準に維持したため • 経済は石油収入減の後を追い悪化へ マクロ・・少しずつ悪化 ミクロ・・企業収益の悪化 (ただし、実際の状況は国によって異なる) • 悪化の要因 開発経費の抑制、歳出の抑制 可処分所得の減少、心理的影響 経済成長率・・マクロ 2013年 2014年 2015年 2016年 サウジアラビア 2.7 3.6 3.5 1.2 アラブ首長国連邦 4.7 3.1 4.0 2.3 バハレーン 5.4 4.5 3.2 2.2 出所:IMF・2016年7月リポート 企業業績の悪化、その背景 • 全般的 経済の悪化、市場環境の悪化、人件費・操業コストの増加 • 銀行 不良債権の増加、引当金積増し 利子・手数料収入の減少、BIS規制の負担 • 石油化学産業、資源関連産業 資源価格、製品価格の下落で打撃 • 建設業・開発業 財政引締めで建設需要の落込み • 消費関連産業 可処分所得の減少で消費に悪影響 経済の現状 • 国ごとに異なる経済の状況・対応力 カタル、アラブ首長国連邦 クウェート サウジアラビア バハレーン、オマーン • 経済は悪化したが落ち着いている ・・過去の低油価の不況期と比べると 80年代後半-90年代、リーマンショック 財政上の蓄積が大きい 銀行業界の備えが進んだ 非石油部門が拡大している 資本の還流の構造 国庫 外貨準備 (米財務省証券) 兵器の輸入 消費財・資 本財の輸入 財政支出 件経 費常 な経 ど費 ― ラ開 建発 設経 な費 ど イ ン フ ― オイルマネー 石油の販売・ 輸出代金 石油収入 人 国内経済(商業など 消費経済が中心) 大量の外国人労働力 育たない製造業 小さな生産部門 お金の流れ 高 い 給 与 外国人労働力の 本国送金 サウジ=400億ドル 作成:福田安志 内容 • 油価の下落と財政への打撃 • 財政面での対応 • 経済への影響、経済状態の悪化 • 為替の安定、インフレ • 今後の見通し 為替の安定・・特にサウジのドルペッグ • 外貨準備と為替問題・・サウジが重要 GCC諸国の為替と外貨準備の状況 サウジの不安定化・・他のGCC諸国に波及 GCC諸国間の経済交流、経済統合に悪影響 • サウジ中央銀行(SAMA) 中央銀行+政府資産の運用機関の側面を持つ • SAMAの外貨準備の減少・・為替(ドルペッグ)に懸念 2014年8月・・7,460億ドル 2016年7月・・5,635億ドル(-1,825億ドル) • 当面はドルペッグが崩れることはない サウジ当局もドルペッグの維持を繰り返し表明 今後の見通し • 油価の動向に左右される部分が大きい 財政の改革を続け、油価の上昇を待つ • 油価低迷が続く場合・・もう一段の対策の可能性 資金調達・・資産の取り崩し、国債、ローン 歳入増加・・増税など 歳出削減・・さらなる開発見直しなど • 改革で新しい経済を模索、開発を進める都市も サウジのビジョン2030、国家変革計画(NTP)2020 経済を多角化・発展させ、石油依存を弱める ドバイ・・2020年・万国博覧会開催 ドーハ・・ 2022年・ワールドカップ開催 資本の還流の構造 国庫 外貨準備 (米財務省証券) 兵器の輸入 消費財・資 本財の輸入 財政支出 件経 費常 な経 ど費 ― ラ開 建発 設経 な費 ど イ ン フ ― オイルマネー 石油の販売・ 輸出代金 石油収入 人 国内経済(商業など 消費経済が中心) 大量の外国人労働力 育たない製造業 小さな生産部門 お金の流れ 高 い 給 与 外国人労働力の 本国送金 サウジ=400億ドル 作成:福田安志 レンティア国家・分配国家 国王 石油収入 石油収入 大きな経済的恩恵 高い経済的 満足感 少 な い 税 負 担 補 助 金 ば ら 撒 き イ ン フ ラ の 整 備 強い統治機構 政治の 安定 消費中心の国内経済 行 政 機 構 軍 ・ 治 安 機 関 国家機構への 参加意識 弱い対政府対抗勢力 育たない製造業-小さな生産部門 大量の外国人労働力 強い国民統制力 少ない自国民労働者 学生、市民 作成:福田安志 低油価のGCCを中心とする 産油国経済への影響 福田安志 日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所 上席主任調査研究員
© Copyright 2024 Paperzz