【熱物性値の簡易測定法の開発】 熱物性測定というのは、縁の下の力持ち的存在で地味な分野ですが、熱設計をする場 合には熱物性値が必ず必要となり、これがわからないとどうしようもありません。ごく 一般的な物質については、比較的熱物性値がわかっていますが、特殊な材料や自分で新 材料を開発する場合には、自分自身で測定せざるを得ません。しかし熱物性測定には専 門性を要する技術が必要であり、市販の測定装置を購入する場合でも、例えばレーザー フラッシュ法による測定装置は精度良く短時間のうちに測定できますが、価格が1千万 円近くもします。したがって一般の技術者が熱物性測定をするのはなかなか困難なのが 実情です。ところが数年前に大手民間企業から、新しい蓄熱材を開発しているので(開 発した物質の熱物性値をすぐに測定し、材料の改良にフィードバックさせる必要があ る)私にその熱物性値の測定を依頼されました。自分自身それまで熱物性測定に関して は初心者だったのですが、これをきっかけに初心者でも安い費用で簡単に測定できる熱 物性測定法の開発に着手しました。 開発のポイントはいくつかありますが、特に重要なのが試料の表面温度測定です。測 定原理としては、試料の一方の面を加熱し、その背後の表面温度を精度良く測定して、 理論解析結果との比較より熱物性値を算出します。したがって表面温度を精度良く測定 できるかどうかが大きなポイントとなります。市販の高価な装置では、これに赤外線検 知器を使用しており、これが非常に高価なために測定装置の価格を押し上げる大きな原 因となっています。私が開発した方法では、安く簡単に測定できるように熱電対を使用 します。しかし単に熱電対を表面に押し当てただけでは表面温度を正確に測定すること はできないので、独自の工夫を凝らしていますが、これによりガラスなどのセラミック ス試料は、10%程度の精度であれば簡単に熱物性値を測定することができます。装置 もごく簡単で製作費用も数万円程度ですみます。本測定法については、すでに国内の学 会はもとより国際会議でも発表し、関係者からも大きな興味を寄せられています。現在 さらに研究を進め、本測定法の最適測定条件について検討を行っています。
© Copyright 2026 Paperzz