身体マッピング能力の起源を探る

身体マッピング能力の起源を探る
明和政子
(京都大学大学院教育学研究科)
連絡先:
〒606-8501
京都市左京区吉田本町
京都大学大学院教育学研究科
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要旨
知覚的に捉えた他者の身体運動と自分の身体運動のイメージを適切に対応
づける能力、
「身体マッピング」は、他者の行為の認識、共感、さらには言
語に代表されるシンボル使用など、ヒト特有の認知機能の基盤とみなされ
る。驚くべきことに、ヒトは生まれつき、自分の目では確認できない他者
の表情を模倣できるといわれ、ヒトの生得的有能性を示す証拠として位置
づけられている。しかし、新生児の身体マッピングを可能にする神経学的
メカニズムや、その発達のプロセスについては、いまだ実証的な解明がな
されていない。本稿では、
「比較認知発達科学」アプローチにより、ヒトの
身体マッピングの起源を、個体発生的、進化史的観点から探る試みを紹介
する。ヒト胎児の自己身体についての知覚能力や、ヒト以外の霊長類にお
ける新生児期の模倣能力の検討など、これまで筆者らが明らかにしてきた
成果を中心に、ヒトの身体マッピングの起源にまつわる諸問題を再考する。
最後に、今後の課題を具体的に提示する。
1.「新生児模倣」という現象
ヒトは、他の動物に比べてひじょうに未熟な状態で生まれてくる。Portmannの有名
な「生理的早産説」では、
「ヒトは、高等哺乳類の発達の原則でいえば、母親の胎内で
過ごすべき時期を一年も短縮して生まれてしまう。ヒトの出生の状態は、他の動物で
いえば未成熟、早産だ」と表現されている[1]。たしかに、ヒトの乳児は他の哺乳類と
は違って、自力で母親の身体にしがみついていられない。母親の手助けなしには、お
っぱいを飲むことも、身に迫る危険から逃れることもできない。
そのため、ヒトの乳児が生存をかけて最優先にすべきこと、それは外界刺激の中か
ら自分の世話をしてくれるはずの他者を見抜くことである。生後できるだけ早く、他
者をそれ以外のモノと区別して注意を向けることにエネルギーを注がねばならない。
実際、最近の発達研究は、ヒトは誕生時から他者の顔や視線方向など、「ヒトらしい」
特徴を持つ刺激(実際のヒトでなくてもよい)に敏感であることを明らかにしている
(たとえば文献[2][3][4])。
ただ知覚するだけにとどまらない。ヒトは生まれながらに他者の関心を引きつける
術、他者に鏡のように応答する能力を持つという。1977 年、Meltzoff and Mooreは、
ヒトの乳児の驚異的な能力を「サイエンス」誌上で発表し、話題をよんだ[5](図1)。
ヒトは生まれつき、自分の目では確認することのできない身体部位を使った行為、た
とえば舌を突き出したり、口を開閉させたりといった行為を模倣できるというのだ。
生まれたばかりの乳児は、鏡を見た経験もないはずだし、自分の顔のどの部位をどう
動かせば目の前の表情が作りだせるのか、自分で確認することもできない。それなの
に、なぜ乳児は他者の表情を鏡に映し出すように模倣できるのだろうか。彼らは、次
のように説明した。他者の身体運動イメージと自分の身体運動イメージとを鏡のよう
に対応づけるメカニズム、「アクティヴ・インターモダル・マッピング(Active
Intermodal Mapping; AIM)」が、ヒトには生まれつき備わっている[5][6]。それまでの模
倣能力の捉え方は、Piagetによる認知発達理論、
「誕生時は自己と他者が未分化な状態
であり、感覚運動的経験の蓄積によって児はしだいに模倣を学習する」という考え方
が主流だったから、Meltzoff and Mooreによる説はコペルニクス的転回とよべるものだ
った。
その後 30 余年が経過し、知覚的に捉えた他者の身体運動と自分の身体運動イメージ
とを適切に対応づける能力、
「身体マッピング」は、他者の行為の認識、共感、さらに
は言語といったヒトの高次認知機能の基盤であると重視されるようになった(たとえ
ば文献[7][8][9])。こうした見方が優勢になるにつれ、身体マッピング能力がヒトに生ま
れつき備わっているのは、ヒトの「有能性」の証拠であるという認識が定着していっ
た。しかしその反面、Meltzoff and Mooreの説では解釈しきれない事実が次々と発見さ
れてきた。また、Meltzoff and Mooreの実験を追試しても肯定的な結果が出なかったと
いう報告も少なくない。ヒトの身体マッピング能力の個体発生的起源についての議論
は止むことなく、多くの研究者の関心がこのテーマに向けられ続けている。
身体マッピング能力の起源についての論点を整理してみると、以下の2点に集約す
ることができる(ただし、これらはそれぞれ独立した問題ではなく、双方が深く関連
している)。
【問題1】 新生児期にみられる模倣は、本当に「模倣」なのか(WHAT)?
新生児模倣の消失の可能性を含めた、新生児模倣の発達的変化に関するもの。
【問題2】 新生児期の模倣は、いかに起こりうるのか(HOW)?
生得的な身体マッピング能力を可能にするメカニズム、およびその脳神経科学的な
裏づけ(身体マッピングの脳内局在)に関するもの。
本稿では、ヒトの身体マッピングにまつわるこれらの問題に迫ることを目的とした。
まず前半では、それぞれの問題が生起してきた研究背景を説明し、問題の所在を明ら
かにする。後半では、
「発達」と「進化」という2つの観点から、これらの問題の解明
に向けた試みをについて議論する、最後に、今後の展望を示したい。
2.身体マッピングの起源を探る
2.1. 【問題1】 :新生児模倣は模倣の起源か?
Meltzoff and Mooreによる研究以降、現在に至るまで多くの研究者がさまざまな文化
圏の新生児で追試をおこなってきた。その流れの中で、注目すべき発見があった。新
生児期の模倣の発達のプロセスを追うと、模倣反応は生後2ヶ月目にいったん影を潜
めることがわかったのだ(たとえば、文献[10][11])。新生児期の代表的な模倣、舌出し
模倣は、生後1年目くらいに再び遊びの文脈でみられるようになるが、なぜ新生児期
の模倣が生後2ヶ月目にいったん消えねばならないのか、その理由が見当たらない。
だから、新生児期の模倣は模倣とはいえない、という考え方である。
また、新生児期の模倣は、舌出しという一種類の表情でしか起こらないという報告
も数多い。この点を重視する研究者は、この時期の模倣を、反射や「生得的解発機構
(Innate Releasing Mechanism)」、あるいは、刺激によって覚醒レベルが高まったとき
に出現しやすい新生児期特有の反応だと解釈するのが妥当だと主張する[12][13]。
さらには、新生児期の模倣についての報告は、せいぜい2、3種類の表情に限られ
ていることから、このレベルの模倣であれば、身体マッピング能力が備わっていなく
ても実現可能だとする説がここ数年注目を集めている。Baron-Cohenは、新生児期に
は、ある特定の感覚様相、たとえば視覚から運動へと細かく特化した皮質上の神経経
路にもとづいた知覚はなされておらず、皮質下の未分化なシステムで「共感覚的」に
知覚すると説明する[14]。いぼいぼのついたおしゃぶりを、目隠しをした状態でヒトの
乳児にしゃぶらせた後、いぼいぼのついているおしゃぶりとついていないおしゃぶり
を彼らに見せると、いぼいぼのついたおしゃぶりのほうを長く注視する[15]。これは、
視覚と触覚といった区別を明確にはせず、刺激の特性全体をまるごと知覚している証
拠とされる。こうした新生児期特有の未分化な知覚スタイルが、新生児期の模倣らし
き現象を引き起こすという。
未分化な知覚スタイルでなぜ模倣が可能となるのか、もう少し具体的に説明したい。
未分化な知覚は、大脳皮質上に感覚様相ごとの神経経路が発達するまでの期間、つま
り生後6∼8週齢以前にみられ、おもに皮質下のシステム(上丘[colliculus]や視床
枕[pulvinar]とよばれる部位)によって処理される[14][16]。このシステムのもと、ヒ
トの新生児は感覚様相を超えたかたちで外界刺激を知覚するが、その際いくつかの次
元にもとづいて情報処理がおこなわれるという。たとえば、刺激の「エネルギー」か
らは刺激の強さやスピードを、刺激の「テクスチャ」からは時間や空間周波数を、刺
激の「リズム」からは長周期的なテクスチャを、そして、刺激の「方向(フロー)」か
らは自分の身体からみた刺激の位置や移動方向を知覚する。他者の舌が突き出たり、
唇が大きく外向きに開いたりといった、口唇部の動きをヒトの新生児が見たとしよう。
彼らは、動く唇や舌の動きに含まれる位置や移動方向、強さ、スピードなどを、さま
ざまな次元で感じ取る。さらに、いぼいぼおしゃぶり実験が示すように、知覚した情
報を共感覚的に結びつく自分の身体運動へと反射的に出力することで、
「模倣らしくみ
える」反応がおこるのだという[14][17]。
それに対し、Meltzoff and Mooreは、新生児期の模倣は模倣でないとする主張に真っ
向から反論する。条件を整えてやりさえすれば、模倣は消えずに生起し続けるとする
データを示し、生後2ヶ月頃に消えるといわれる新生児期の模倣は、じつは消えるわ
けではなく、消えるように「見える」だけだと主張した[18]。
はたして、Meltzoff and Moore が主張するように、新生児期の模倣は後の模倣と発達
的に連続したものなのだろうか。いまだ、この謎に対する明確な答えはでていない。
2..2. 【問題②】:新生児期の身体マッピング能力のメカニズム―「AIM」か?「ミラーニューロ
ン」か?
次に、
【問題②】について考えてみよう。ヒトには生まれつき身体マッピング能力が
備わっているとしたら、それはどのようなメカニズムによって実現するのだろうか。
生得説、学習経験説など、これまでいくつかの説が提唱されているが[19]、ここでは新
生児期の身体マッピング能力についての代表的な2例を取り上げる。ひとつめは、新
生児模倣という現象をはじめて実証的に示したMeltzoff and Moore 本人による「アク
ティブ・インターモダル・マッピング(AIM)」仮説、もうひとつは、脳科学分野にお
ける近年最大の発見ともいわれる「ミラーニューロン(mirror neurons)」による説明
である。
まず、AIMによる説明である。図2をみていただきたい。ヒトの乳児は、自分の目で
みた他者の身体運動パターンと自分で産出する身体運動パターンとを、同一のコード
により表象化する[5][6]。つまり、視覚情報と、運動(自己受容感覚的)情報とが、ひと
つの超感覚的(supramodal)な枠組みで統合される。重要な点が2つある。ひとつめ
は、この超感覚的な情報処理は、特定の感覚様相(視覚、聴覚、触覚、運動など)に
制約されていない点である。Chen et al. (2004) は、生後 7 日以内のヒトの新生児が他
者の声(聴覚刺激)と一致した形に口を動かすことを発見している[20]。この時期の新
生児はまだ音声を模倣することはできないが、/a/ を聞くと/a/ を発するかのように口
を開け、 /m/ を聞くと口をすぼめるという。もうひとつは、AIMは単に入力した知覚
情報を運動出力へ自動的、反射的に送り込む装置なのでなはく、自己の身体表象とい
ったん照らし合わせ、それにもとづいて運動パターンの出力をおこなうとする点にあ
る(自己身体表象は、身体マッピングのメカニズムを探るためのキーワードとなるの
で、後でもう一度議論する)。Meltzoff and Mooreによれば、ヒトはAIMを生得的に持
つため、誕生時から他者の表情を模倣できるのだという。
続いて、「ミラーニューロン」説についてみていこう。ミラーニューロンの発見は、
AIMの存在を裏づけるものと思われた。ミラーニューロンが最初に発見されたのはマ
カクザルである。サルのミラーニューロンは、頭頂連合野と運動野を繋ぐ位置にある
腹側運動前野(F5)を中心とした周辺で確認されており[21][22]、その後、fMRIなどの非
侵襲的脳イメージング研究を中心に、ヒトでもそれに相当する脳部位(ヒトの言語野
であるBroca野)が見つかっている[23]。このニューロンの面白さは、その名のとおり、
自分の行為と他者の行為が鏡に映したような関係として表現される点にある。ミラー
ニューロンは、他者の行為を観察したときとそれと同じ行為を自分でおこなったとき
の両方で活動する。たとえば、手や口による行為(物を机に置く、つまむ、口にくわ
える、など)を見たときと、それと同じ行為をおこなったときに、同一のニューロン
が活動する。これは、行為の知覚と運動の産出には、同じ脳神経回路が使われている
ことを示唆する。
「観察(知覚入力)した行為=実行(運動出力)できる行為」という
ことであれば、新生児が他者の表情を鏡反射的に模倣できたとしても不思議ではない。
実際、Ferrari らは生後3日以内のサルが表情模倣する能力をもつと報告し、それを
ミラーニューロンの生得性を示す根拠として位置づけている[24](ただし、大人のサル
は他者の行為を自発的に模倣しない)。もし、生まれつきミラーニューロンが機能する
としたら、これは新生児にとって非常に便利なツールだろう。なぜなら、ミラーニュ
ーロンの活動は、自己の運動を制御する際に直面する多自由度の問題を自動的に解消
してくれるため、自らの経験に拠って運動情報を構造化、記憶する必要がなくなる。
また、記憶した自己運動情報を、類似する他者の運動情報から想起させ、自己運動と
して実行するといった、一連の面倒なプロセスも省略できる。
それぞれの説を概観してきた。どちらの考え方においても、①見ることと実行する
ことの間の共通性が強調されている、②新生児期の身体マッピングを、後の認知機能
の発達、たとえば他者の行為の認識、共感、言語獲得の基盤となるシステムとみなす
点が一致しているが、両者には決定的に異なる点がある。それは、この時期の視覚―
運動マッピングのプロセスにおける自己と他者の区別に絡む問題である。自他の区別
は、新生児期の身体マッピングを成立させる前提条件なのだろうか。あるいは、自他
の区別は、
「観察した行為=実行できる行為」の自動的な情報処理のプロセスにおいて
生じてくるのだろうか。
この点について、Meltzoff は「Like-Me framework」という独自の考え方を提唱して
いる。誤解を恐れずに表現するならば、ヒトには誕生時には「自己(表象化された自
己身体)」を持ち、その枠組みを基準に他者の行為を知覚し、自己身体運動にマッピン
グするという考え方である。これが「私のように(Like-me)」他者の行為を捉える、
という名の由来だ。
その証拠として、Meltzoffは以下の 3 点をあげている[25]。
① 記憶表象にもとづいて模倣する
Meltzoff and Mooreは 1977 年の研究で、乳児に舌出しや口の開閉などの表情を提示
する間、おしゃぶりをくわえさせた。モデル提示中に、乳児が反射的に模倣すること
を制限するためである。にもかかわらず、モデル提示後(実験者は平静な顔に戻って
いる)におしゃぶりをはずすと、乳児は前に提示された表情を「記憶にもとづいて」
模倣したという。さらに 24 時間前に提示した表情ですら、新生児は模倣できたという
[26]
。これは、新生児期の模倣が単に反射的なものではなく、記憶貯蔵された知覚情報
にもとづいたものである証拠といえる。
② 乳児は、模倣を自己修正する
「舌を(正面でなく)横方向に向かって突き出す」という、これまでにない行為を
乳児に見せる。すると、乳児はそれに対応させるかのように、少しずつ舌を出す方向
を修正し始める。ベースとなる自己身体表象を、他者の行為と比較して修正している
証拠である。また、この修正は、モデルが目の前で同期的にフィードバックした状況
で起こったわけではない点も重要である[6][26]。
③ 乳児は、模倣「される」ことを認識する
乳児は自分の目では確認できない表情を模倣する他者に、強い関心を示しはじめる。
表象化された自己に他者の行為を意識的に照らし合わせている証拠と考えられる。
多くの行動データで肉づけしながら展開されるMeltzoffの主張には説得力がある。し
かし、ヒトは誕生時にはどこまで、そしてどうやって自己身体の表象を構造化するの
かといった、もっとも重要な点が示されていない。また、誕生時に、表象化した自己
と他者の行為についての情報をそれぞれ独立に貯蔵、処理しているという説を裏づけ
る実証的根拠もいまだ十分示されていない[27]。他方、ミラーニューロン説にも多くの
疑問がある。ミラーニューロンが誕生時に機能するとしたら、膨大な数の行為のうち、
ミラーリングに関連する行為としてどのようなレパートリーが予め埋め込まれている
のだろうか。また、生まれつきのミラーニューロンは、生後の経験とともに変化する
のだろうか[28]。この点について、Rezzoratti らはミラーニューロンの機能レベルを
Low-level resonanceとHigh-level resonanceにわけ、前者は新生児期レベルの共鳴的、
自動的な身体マッピング能力に関与、後者はより高次な身体マッピング、たとえば単
なる
サルまね
ではなく、他者の行為の意図を理解したトップダウン的(目的志向
的)認知機能にもとづく模倣に関与する、という説を提唱した[29]。しかし、Low-level
からHigh-levelな機能を発現させる要因や、High-level resonanceが、自他の区別が不
可欠な高次の模倣やコミュニケーションと結びつくプロセスについての実証的な根拠
は示されていない(成体レベルのミラーニューロンと自他の区別についての議論は文
献[30]を参照]。
まとめてみよう。身体マッピングを支えるメカニズム解明の鍵は、以下の3点にあ
ると考えられる。①生まれつきの身体マッピングは、自己身体の表象を基盤とするの
か、②自己身体の表象を基盤とした身体マッピングは、いつ、どのようなプロセスを
経て機能し始めるのか(あるいは遺伝的に発現が規定されているのか)
、③新生児期の
身体マッピング能力は、発達とともにどのように質的な変化を遂げるのか(あるいは
成人レベルのそれと基本的には変わらず、直接的に結びつくものなのか)。
3.「発達」と「進化」から探る
本稿の前半では、ヒトの身体マッピング能力の生得性、発達的変化の可能性、およ
びそのメカニズムについて俯瞰した。ここからは、
「比較認知発達科学」によるアプロ
ーチから、これらの問題を再考してみたい。
比較認知発達科学とは、「進化」と「発達」、2つのものさしによってヒトの認知機
能を多面的に捉えようとする方法論である。ヒトの形態的な特徴と同様、目には見え
ない心のはたらきも進化的淘汰の産物である。進化のものさしは、ヒトの認知の独自
性(what)とその進化史的背景(why)を、ヒトや他の動物の認知機能を比較して明
らかにする方法を指す。さらに、発達のものさしも並行して使う点が、本アプローチ
の特徴だ。認知機能は、それぞれの種固有の環境、個体の属する社会や文化に適応す
べく変化する。環境による影響を成人ほどはまだ受けていない乳児、とくに生後まも
ない乳児を調べれば、ヒトが生まれつきもつ認知特性はどのようなものか、それらが
生後の経験といつ(when)、どのように(how)絡み合って変化するのかを具体的に
知ることができる[31]。
3.1 身体マッピングの進化史的起源
比較認知発達科学による最近の成果は、新生児期の身体マッピングの謎を解くヒン
トを与えてくれる。これまでの研究で、サルは模倣しないこと(ヒトが集中的に訓練
すれば、サルも数種の行為は模倣できたという報告がある
[32]
)、ヒトにもっとも近縁
なチンパンジーにとってすら、身体マッピングがかなり苦手であることがわかってき
た。チンパンジーの場合、物を操作する行為であれば物の定位方向や機能などを手が
かりに模倣できることもあるが、物を操作しない(身体の動きだけからなる)行為に
ついては、模倣がきわめて困難である[33][34]。
これらの結果は、ヒトの身体マッピングは、ヒトの祖先がチンパンジーの祖先と分
岐した後のどこかの時点で独自に獲得した能力である可能性を示している。もし、身
体マッピングがヒト特有の能力であり、かつ、新生児期の模倣能力が後の模倣へと直
接つながるものであれば、ヒトだけに新生児期の模倣能力が認められる可能性が高い。
そこで筆者らは、Meltzoff and Mooreの実験手続きを用いてチンパンジー(Pan
troglodytes)、テナガザル(Hylobates agilis)、ニホンザル(Macaca fuscata)、リスザ
ル(Saimiri sciureus)の新生児を対象とした比較実験をおこなった[35][36]。
生後できるだけ早い時期に、ヒトがモデルとなって舌出しや口の開閉などの表情を
彼らに見せた。その結果、図3に示すような模倣の証拠が、チンパンジーの新生児で
みられた。しかし、その他の霊長類では、模倣の証拠は認められなかった。新生児期
の身体マッピング能力は、ヒトとチンパンジー間で共有されたものであることがわか
った。ところが最近、イタリアのミラーニューロンの研究チームが生後3日未満のカ
ニクイザル(Macaca mulatta)が表情を模倣する能力をもつことを示した[24]。ヒト以
外の霊長類の新生児を対象とした研究はここで紹介した以外にはほとんどなく、新生
児期の身体マッピングの進化的起源について断定的なことはいえないが、ヒトに特有
のものではないことは確かだろう。
もうひとつ重要な知見が、チンパンジーとサルの新生児模倣の研究から得られてい
る。生後9週齢を過ぎると、チンパンジーの模倣反応は見られなくなった。また、サ
ルの模倣反応も生後 7 日齢には消えた。おおよその目安でいうと、チンパンジーはヒ
トの 1.2−1.5 倍、サルはヒトの4倍程度の発達速度で成長する[37][38]といわれているか
ら、ヒトの新生児模倣が生後2ヶ月頃にいったん消えるとする結果と一致している。
筆者らは、新生児模倣の消失後も数年にわたりチンパンジー乳児の模倣能力を調べた
が、ヒトの幼児に匹敵するほどの模倣能力を彼らが発達させることはなかった[39]。
新生児期の身体マッピングはヒト以外の霊長類にも共有されているが、その後より
複雑な身体マッピング能力を発達させるのはヒトだけらしい。なぜ、チンパンジーや
サルが誕生時にみせる身体マッピング能力は、いったん消えた後、ヒトのように高次
なレベルへと発展しないのだろうか。そもそも両者は連続した関係にはない性質のも
のだろうか。あるいは、
(ミラーニューロンが確認されている)サルの新生児模倣レベ
ルの身体マッピング能力も、ヒトの環境に晒されることで、ヒトと同様高次なレベル
へと発達するのだろうか[19]。この点を明らかにすることが、
【問題①】
【問題②】の解
明につながるだろう。
3.2. 身体マッピングの個体発生的起源
新生児の自己身体の知覚
2.2 では【問題②】、生得的な身体マッピング能力のメカニズムに関する論争を紹介
した。新生児期の身体マッピングは、自己身体の表象を基盤とするかどうかが主な論
点だった。新生児は、身体表象、つまり自己身体についての視覚情報と触運動情報と
の関係を貯蔵記憶しているのだろうか。
生まれたばかりのヒトを丹念に観察してみると、自分の身体イメージをすでに持っ
ているかのようなふるまいがみられる。大半の動きは、身体をコントロールできずで
たらめにもがいているように見えるのだが、時折自分の手を口唇部にすっと運び、と
きには手指を握りこぶし状にして口内に入れる(図4)。自分の手をどう動かせば口に
辿り着くかがわかっているような無駄のない動きだ。Butterworthらは、生まれて数時
間のヒトの新生児の手の運動軌跡を詳細に分析した[40]。その結果、赤ちゃんは手をで
たらめに動かしているわけではなく、口唇部までの最短ルートを辿ることが多いこと、
さらに、手が口唇部に触れる直前には、手の到着を予期するかのように口を開ける(予
期的口開け)ことがわかった。
Rochatらによる研究も、この見方を支持している[41]。彼らは、生後 24 時間未満の
ヒトの「ルーティング反応」に着目し、自分の身体とそれ以外の刺激とを区別できる
か調べた。ルーティング反応とは、乳児の口唇部の口角に触れると、乳首を探るかの
ようにそちらの方向に口をゆがませて開ける反射で、新生児期だけにみられる。この
反応の出現頻度を、乳児自身の手指で口角に触れさせた場合と、他者の手指で触れた
場合とで比較した。すると、乳児は他者の指で口角に触れられた場合には、自分の手
指による場合の3倍も多くルーティング反応を示した。
これらは、自己受容感覚にもとづく自己が誕生時にはすでに形成されていることを
示唆する。ヒトは胎内環境における感覚運動経験を通じて、自己身体がその他の刺激
とは異なる性質をもつことを学習し始めている。そして、自己身体による行為が外界
にどのような効力をもたらすのか(行為の結果)を知覚していると考えられる。
Butterworthらは新生児で確認された予期的口開けを、ヒトの意図性(intentionality)の
始まりと位置づけた[40]。また、Neisserは、この時期に成立する自己を「エコロジカル・
セルフ(ecological self)」とよんでいる[42][43]
胎児の自己身体の知覚
4次元立体超音波画像診断装置(4次元エコー)とよばれる医療機器を用いると、
胎児の身体運動が立体的かつほぼリアルタイムで観察できる。筆者らは4次元エコー
を使って、ヒトの胎児の自発運動を観察した。胎児は、妊娠 20 週前には自分の手を口
唇部に近づける行動をみせる。22 週を過ぎるあたりには、自分の手指をうまく口の中
に運び入れる。手をでたらめに動かしているうちに偶然口の中に入ったというよりも、
かなりスムーズな軌跡を描いて手を口周辺に運ぶ。この時期には、自分の手と口唇部
との位置関係を理解し、自己受容感覚にもとづく自己を形成している可能性がある。
それを裏づけるものとして、筆者らは2つの興味深い事実を発見した[44]。ひとつめ
は、ヒトの胎児は自分の手が口唇部に接触する少し前から、それまで閉じていた口を
大きく開け始める点である。それも手が口唇部以外の部位、たとえば耳やおでこに向
かって動かされたときには、こうした前もっての口開けはみられない。自分の手が口
唇部に近づきつつあること、口と手がまもなく接触するであろうことを、胎児は「予
期」しているかのように見える(図5)。ふたつめは、いったんおしゃぶりが始まると、
胎児は口から手指が離れてしまっても何度も繰り返し手指を口唇部へ運ぶ点である。
研究に参加いただいた 70 名あまりのうち、半数以上の胎児でこうした繰り返しが確認
された(31 週の胎児にいたっては、連続して6回も手を口唇部に運び続けた!)
。も
し、手指が口の中に偶然入っただけならば、このような手の動きが何度も繰り返され
ることはない。胎内での感覚運動経験が、生後の認知機能の基盤となっていることは
間違いないだろう。
胎児期の身体マッピング?
さらに筆者らは、新生児期の身体マッピング能力に関連すると思われる興味深いデ
ータをヒトの胎児で得ることができた。2.2 で紹介した Chen らの研究を思い出しても
らいたい。生後 7 日以内のヒトの新生児が他者の発声(聴覚刺激)と一致した口の動
きをするというものだった。この聴覚−運動系の身体マッピングの萌芽らしきものが、
ヒトの胎児でもみられたのだ。
ヒトは胎児期終盤には、母親の声を他の見知らぬ女性の声と区別する学習、記憶能
力をもつ。この時期の胎児がすでに外界の聴覚刺激を弁別学習できるだけの中枢神経
系(脳幹部より上位の、海馬を中心とした大脳辺縁系)を発達させていることは、諸
隈らの詳細なデータによって裏づけられている[45]。胎児が母親の声を記憶する可能性
については、これまでも新生児を対象とした研究によって示唆されてきた。たとえば、
DeCasper and Fiferは、生後 1 日目の新生児に母親の声と見知らぬ女性の声を聞かせ
た。すると新生児は母親声に対して心拍数や吸てつの頻度を低下させるなど、母親声
に注意を向ける反応を示した[46]。そこで、Kisilevskyらは、心拍数の変化を指標として、
胎児の反応を直接調べた[47]。母親の声と見知らぬ女性の声をテープに録音し、母親の
腹部周辺に設置したスピーカーを通じて両者の声を胎児に聴かせた。母親が直接話し
かける場合と他者が話しかける場合とでは胎児への音刺激の伝わり方が異なるので、
両者の声の提示条件を統一するため、録音した音声刺激とした。もし、胎児が母親の
声に含まれる何らかの特徴(リズムやパターンなど)を記憶しているなら、見知らぬ
女性の声を聴いた場合とでは反応に違いが見られる(心拍数に変化がみられる)と予
想された。その結果、妊娠 38 週の胎児は、母親の声を聞き始めると心拍数を変化させ
た。見知らぬ女性の声では、そうした反応はみられなかった。Kisilevslyらは、心拍の
ほかに全身の動きも指標としていたが、これについては変化は見られなかった。
Kisilevsky らの実験手続きを用いて、筆者らは、妊娠 23−33 週齢の胎児 24 名の行
動を4Dエコーで観察した[48]。提示した聴覚刺激は、①母親の声、②見知らぬ女性の
声、③機械音(2種類)とした。最初の2分間は無音状態での観察(ベースライン1
期)、続く2分間スピーカーを通じて聴覚刺激を胎児に提示し(刺激提示期)、最後に
再び2分間無音状態で観察をおこなった(ベースライン2期)。その結果、ヒトの胎児
は母親の声に対し、他の条件とは異なる反応をみせた。胎児は母親の声を聞いたとき
だけ、その声に応答するかのように口を開閉させる頻度を高めたのだ(図6)。Kisilevsly
らが示したように、母親の声を聞かせても胎児の全身の動きに変化は見られない。胎
児は、口唇部という限られた身体部位のみを活性化させることがわかった。
現時点では、これが新生児期の身体マッピングに直接関連するかどうかはわからな
い。新生児期の聴覚―運動の身体マッピングのように、異なる聴覚刺激それぞれに対
応した運動出力が確認できたわけではないからだ。しかし、ここでの結果は、
【問題①】
【問題②】を考える上で重要な示唆を与えてくれる。
ひとつめは、胎内での経験は、AIM やミラーニューロン説ではどう位置づけられる
のか、という問題である。ヒトの胎児には、自己受容感覚にもとづく自己がある。な
じみのある刺激とそうでない刺激とを区別する情報処理能力が、すでに胎内で認めら
れる。つまり、AIM やミラーニューロンシステムは、誕生前から機能している可能性
がある。だとすると、それは、受胎後のどの時点で機能し始めるのだろうか。また、
そのプロセスに身体と環境との相互作用(経験)の影響は見られるのだろうか。たと
えば、AIM では自己身体表象が他者の行為に対するマッピングの基盤をなすといわれ
るが、なじみのある入力刺激とそうでない刺激(入力頻度の異なる刺激間)では、自
己身体表象と照らし合わせるプロセスに違いが生じる可能性がある。なじみのある刺
激(母親の声など)はそうでない刺激に比べ、自己身体表象と比較する経験が必然的
に多くなるだろう。そうした知覚経験の差は、身体マッピングの難易度に反映される
と予測できる。しかし、このような経験要因を考慮した AIM の検討は、これまでほと
んどおこなわれていない。
もうひとつは、胎児期から新生児における口唇部運動の発達と身体マッピング能力
との関連である。口唇部は、新生児にとって、生後直後から栄養を摂取するための重
要な器官だ。予期的口開けで見られたように、胎児は、口唇部の動きを自らコントロ
ールする力をもつ。他の身体部位に比べて口唇部運動が早期から発達するという事実
は、適応的意義という点において理解できる。しかし、この時期のヒトにとって、口
唇部は自己身体や他の外界刺激を探索する重要な役割も担っている。ヒトの胎児に自
己身体の表象が認められるとすれば、おそらく、その表象化は口唇部を中心として進
むと予測できる[31]。新生児期に確認されている身体マッピング能力の事例のほとんど
が「口唇部に関連する表情」であるという事実は、このあたりとまったく無関係では
ないはずだ。
4.まとめと今後の課題
新生児期の身体マッピング能力についての議論は、さまざまな分野の研究者を巻き
込みながら展開し続けている。それは同時に、冒頭に掲げた問題解決の糸口をいっそ
う見えにくくする状況へ陥らせているようにも思える。この状況を打破するためは、
以下の3点が重要だと筆者は考えている。
①「誕生時に確認=生得的」を暗黙の前提とする見方の脱却
乳児にとって誕生の前後は、生理学的な点では大きな変化の起こる瞬間ではある。
しかし、胎児期から新生児期にかけての心の発達を誕生の前後で区切ってみる必然性
はどこにもない。本稿の後半でみてきたように、胎内での身体を介した環境との相互
作用、感覚運動経験(学習)は、新生児期の認知機能の基盤となることは間違いない。
こうした知見が蓄積されつつある今、生得的ということばのもつ意味を再検討すべき
時期にきているといえる。
② 誕生時の身体マッピング能力を、成体レベルのマッピング能力の初期形態とみなし、
両者を直接的に結びつける妥当性の検討
あまり議論されてはいないが、モデル化されている AIM やミラーニューロンシステ
ムが、経験にともない多様に変化する可能性は否定できない。自己や他者はそれぞれ
異なる主体として発達的に変化する。それにより、自他の行為の身体マッピングシス
テムも変化するはずである。出生以前から成人レベルにいたるまでの身体マッピング
能力の個体発生的プロセスを、よりダイナミックな視点で捉えなおすことが重要だろ
う。
③ 科学的エビデンスにもとづく議論
身体マッピングの起源にまつわる論争が抱える最大の問題は、十分な証拠も示され
ないまま、研究者それぞれの仮説が一人歩きしている現状にあると思われる。実証的
データで足場を踏み固めつつ、それぞれの説の矛盾を客観的に検証しあう研究姿勢が
求められる。
では、この問題を乗り越えるには、具体的にどうすればよいのか。心のはたらきを
探る方法はさまざまあるし、それをどう定義するかによって、導き出される答えは何
通りにもなる。このあたりが、実体として捉えにくい認知機能を理解する上でのやっ
かいなところである。だからこそ、多様な研究分野からの知見を活用、検証しあい、
相互に整合性のある結論を導き出していく努力をしなければならない。
たとえば、私の専門分野からは、早産児を対象とした身体マッピング能力の比較認
知発達科学的検討を提案したい。早産児は、本来はいまだ胎内で過ごすべき時期から
子宮外の刺激の影響を強く受けて発達する存在だ。もし、新生児期の身体マッピング
能力は受胎後 40 週(満期産時)にオンのスイッチが入るものだとしたら、その発現は
出生後しばらく待つことになる。あるいは、出生後すぐに認められれば、満期産の新
生児の身体マッピング能力との間に、出生後の外界刺激の経験量の違いが反映される
かもしれない(早産児の顔図版に対する反応を受胎後 40 週に調べた研究については、
文献[49]を参照]。さらには、ヒト以外の霊長類の胎児や早産児(生物学的母親による養
育vs.ヒトによる養育)を対象とした研究も、身体マッピング能力における遺伝と環境
要因の相対的関係を探る上で貴重なデータを提供してくれるだろう。実際、筆者らは、
チンパンジーの胎児の感覚運動学習に関するデータの蓄積を現在進めているところだ
[31][50][51]
。
そのほか、構成論的手法にもとづく認知発達ロボティクスのアプローチからの知見
も重要だ(詳細については文献[52])。たとえば、寒川・國吉は、脊髄神経系を持った胎
児モデルを作って子宮環境で動かし、感覚運動経験をさせた。すると、自律的に胎児
の運動情報が体系化され、それにともない認知機能が(皮質が)発達した[53]。ヒトの
認知発達システムの解明に大きく寄与する成果である。また、脳科学分野からの知見
の蓄積も、今後期待されている。新生児期の身体マッピングについてまず検証すべき
点は、それが皮質下の活性化によっておこる(反射あるいは共感覚レベルの)のか、
あるいはミラーニューロンシステムの活動など、皮質上の機能が関与する現象なのか
を明らかにすることである(開, 私信)。従来、非侵襲的手法による新生児の脳機能測
定にはさまざまな制約があったが(装置使用時の頭部固定の難しさ、実験時の覚醒状
態の維持など)、多チャンネルNIRS(near-infrared spectroscopy; 近赤外分光法)など
の技術開発により、新生児の情報処理過程についての研究が現在飛躍的に進展してい
る(たとえば、文献[54−56])。身体マッピング能力の起源とその発達のプロセスを探る
研究は、まもなく新たな局面を迎えるに違いない。
謝辞
本稿をまとめるにあたり、胎児期の認知発達研究の共同研究者である滋賀県立大の竹
下秀子先生、チンパンジーの認知発達研究の共同研究者である京都大学霊長類研究所
の松沢哲郎先生、友永雅己先生、京都大学野生動物研究センターの田中正之先生、林
原類人猿研究センターの平田聡先生に感謝いたします。また、日頃より活発な議論の
場を共有いただいている京都大学大学院文学研究科の藤田和生先生、板倉昭二先生、
東京大学大学院情報学環の開一夫先生にも感謝いたします。本稿で紹介した研究は、
文部科学省科学研究費補助金(#12002009・#16002001[代表:松沢哲郎]、#
20220004[代表:藤田和生]、#13610086[代表:友永雅己]、#16203034・#20330154
[代者:竹下秀子]、#16683003・# 19680013[代表:明和政子])の助成を受けて
おこなわれました。
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図1 ヒトの新生児の表情模倣(文献[5]より)
Visual Perception of Target
Adult Facial Acts
Supramodal Representation
of Acts
Equivalence
Detector
Proprioceptive
Information
Infant Motor Acts
図2 Meltzoff and Moore によるアクティブ・インターモデル・マッピ
ング(AIM)仮説(文献[6]より)
舌突き出し
口の開閉
唇突き出し
5
反応の平均頻度
4
3
2
1
0
舌突き出し
口の開閉
唇突き出し
モデルが見せた表情
図3 チンパンジーの乳児の模倣反応(生後1∼8週齢)。モデルが見
せた3つの表情に対して、それぞれに一致した表情を示した。生後9
週以降、この模倣反応は見られなくなった(文献[57]より一部改変)。
図4 生後5分のヒトの新生児の予期的口開け。手指が口唇に接触
する前に口を開け始めている(左)(文献[31]より)。
図5 ヒトの胎児の予期的口開け(妊娠 24 週齢, 文献[44]より)
機械音(平均)
2.5
見知らぬ女性
母親
口開けの頻度
2
*
1.5
1
0.5
0
ベース1
刺激呈示
ベース2
図6 ヒトの胎児は、母親の声を聞くと口唇部の活動を高める。見知
らぬ女性の声を聞いた場合や機械音では、活動に有意な変化はみ
られない。
図7 母親の声を聞くと、ヒトの胎児は口を開ける(妊娠 25 週齢)