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Science 2014 年 1 月 24 日号ハイライト
オポチュニティの新たな成果はキュリオシティの成果を補足する
シャコのように色を識別するものはいない
古くからあるイヌの癌から得られた最初のイヌ宿主のヒント
免疫細胞はビタミンがなくても宿主を守る
あの新品の遺伝子はどこで手に入るのか
オポチュニティの新たな成果はキュリオシティの成果を補足する
New Opportunity Results Complement Curiosity’s 米航空宇宙局(NASA)の火星探査車オポ
チュニティは、2004 年(探査車キュリオシティが着陸する 8 年以上前)に火星に着陸した。
今回、このミッションで得られた新たなデータから、エンデバー・クレーターを形成した古
代の衝突の前後に、クレーター周縁部の岩石が水に撹拌されたことが明らかになった。ただ
し、エンデバー・クレーター形成前にこの地域に押し寄せた水はほぼ中性(わずかに酸性)
であり、衝突後にその場に流れた水よりも微生物の生存に適していただろうと、今週オポチ
ュニティの新たな発見を報告した Raymond Arvidson らは述べている。彼らの発見は、この
探査車の火星着陸(1 月 25 日)10 周年と重なるとともに、火星の居住性評価を目的とした
探査車キュリオシティによる相次ぐ研究成果に付け加えられることになる。
Arvidson らの説明によると、マーズ・リコネッサンス・オービターのデータによって、鉄お
よびアルミニウムを豊富に含む粘土鉱物の存在が示されたため、探査車オポチュニティは
37 億年以上前に形成されたエンデバー・クレーターの周縁部へ向かうことになったという。
その場所でオポチュニティはマティアビッチ層(粘土鉱物が豊富で粒子の細かい層状の岩
石)のサンプルを採取した。Arvidson らは鉱物が豊富なこの岩石中の小球や鉱脈、断口を分
析し、マティアビッチ層はオポチュニティがこれまで出会ったなかでは最古の火星岩石(か
つ水の活動を示す最古の事例)であると判断した。マティアビッチ層の最上部の若い岩石は、
最も丈夫な極限環境微生物でさえ生存が難しかったであろう超高塩分かつ強酸性の水の痕跡
を含むのに対して、こうした古い岩石は生命体や前生物化学により適した穏やかな状況に伴
うものである。総合すれば、この結果は、エンデバー・クレーターの形成前後に、火星のこ
の地域に pH 値の異なる水が流れたことを示唆しているといえる。本誌特集への導入として、
John Grotzinger がこの新たな発見と最近のキュリオシティの成果をまとめ、火星の居住性に
ついて詳細に概説している。
Article #20: "Ancient Aqueous Environments at Endeavor Crater, Mars," by R.E. Arvidson; J.G.
Catalano; V.K. Fox; E.A. Guinness; B.L. Jolliff at Washington University in Saint Louis in St. Louis,
MO. For a complete list of authors, please see the manuscript.
Article #7: "Exploring Martian Habitability," by J.P. Grotzinger at California Institute of Technology
in Pasadena, CA.
シャコのように色を識別するものはいない
Nothing Sees Color Like the Mantis Shrimp
太陽の下であらゆる色の情報をエンコードするために必要な光受容体は 4~7 であるのに、
なぜシャコの目には 12 種類の光受容体があるのか。Hanne Thoen らによる新しい研究により
この疑問が解決した。つまりシャコは、これまでに実証されていなかった独自の色覚系に依
存しているのである。Thoen らは、餌報酬と様々な色を組み合わせ、シャコは不可解な数の
光受容体を持つにもかかわらず、似通った色を簡単には識別できないことを発見した。この
ことの説明として Thoen らは、シャコはそれぞれ感度の異なる 12 の光受容体で物体を調べ
ることにより、複雑な神経処理の必要性を回避していると述べている。彼らによると、比較
のために脳に信号を送る 3 種類の光受容体を持つヒトの目とは異なり、シャコの目は瞬時で
1 つの色として認識するパターンを作っているという。その結果、シャコは色を識別する能
力の一部を失った。たとえばこの甲殻類は、淡いオレンジ色と濃い黄色を区別することがで
きない。しかし、脳で可視スペクトル領域の波長を比較しなくても瞬時に原色を認識するこ
とはできる。この巧妙な技のおかげでシャコはエネルギーを多少節約することができ、生息
地であるサンゴ礁という極めて闘争的で色彩に富んだ世界での生存を助けられていると考え
られると Thoen は述べている。関係する Perspective では Michael Land と Daniel Osorio が今
まで知られていなかったこの色覚系について詳しく説明している。
Article #12: "Color Vision in Mantis Shrimp," by H.H. Thoen; M.J. How; J. Marshall at University of
Queensland in Brisbane, QLD, Australia; T.-H. Chiou at National Cheng Kung University in Tainan
City, Taiwan.
Article #5: "Extraordinary Color Vision," by M.F. Land; D. Osorio at University of Sussex in
Brighton, UK.
古くからあるイヌの癌から得られた最初のイヌ宿主のヒント
Ancient Dog Cancer Hints at First Canine Host
数千年前の 1 匹のイヌに由来し、現在も飼い犬のあいだで拡散し続けている伝染性の腫瘍に
ついて、研究者らは初めて全ゲノム配列決定を行った。この研究により、この腫瘍の最初の
イヌ宿主の特徴が、現在のアラスカン・マラミュートに類似している可能性が明らかにされ
た。イヌの可移植性性器腫瘍(CTVT)は、伝染性の腫瘍として知られる 2 つのうちの 1 つ
である。飼い犬の個体群において、通常は交尾時に伝播する生きた癌細胞によって広がる。
CTVT は 1 匹のイヌに由来するゲノム配列を有しているが、現在は多くのイヌの種において
独自の配列を持った寄生生物として存在している。しかし腫瘍の DNA コード内には、最初
期の宿主ゲノムが依然として生存している。CTVT の最初の宿主となったイヌの特徴を推測
するために、Elizabeth Murchison らは現在の 2 匹のイヌ、オーストラリアのディンゴとブラ
ジル産のアメリカン・コッカー・スパニエルに由来する CTVT のゲノムの配列決定を行った。
興味深いことに、この 2 つの腫瘍は約 200 万個の体細胞変異を共通して有しており、これは
ヒトの腫瘍に認められる体細胞変異の百倍以上の数であった。しかし決定的に重要なのは、
CTVT は安定しており、千年にわたって飼い犬に伝播し続けてきたことである。Murchsion
らは、DNA 変異を調べることで、CTVT がイヌで発生したのはいつなのかという、議論に
なってきた問題を明らかにしようとした。その結果、11,000 年以上前(イヌが家畜化される
ようになった時点)に、近交系集団で CTVT が発生したことが推測された。世界でもっとも
古くから知られた癌細胞株の起源、歴史そして進化を明らかにした Murchison らの研究は、
哺乳類の体細胞ゲノムが新たな生態的ニッチ(この場合はイヌ宿主)に適応し、持続する能
力を有することを示すものである。関連する Perspective では、さらなる洞察を提供している。
Article #19: "Transmissable Dog Cancer Genome Reveals the Origin and History of an Ancient Cell
Lineage," by E.P. Murchison; D.C. Wedge; L.B. Alexandrov; B. Fu; I. Martincorena; Z. Ning; J.M.C.
Tubio; E.I. Werner; P.J. Campbell; F. Yang; M.R. Stratton at Wellcome Trust Sanger Institute in
Hinxton, UK; E.P. Murchison at University of Cambridge in Cambridge, UK; J. Allen; E.M. Donelan
at Animal Management in Rural and Remote Indigenous Communities (AMRRIC) in Nightcliff, NT,
Australia; A. Barboza De Nardi at São Paulo State University (UNESP) in São Paulo, Brazil; G.
Marino at University of Messina in Messina, Italy; A. Fassati; R.A. Weiss at University College
London in London, UK; A. Burt at Imperial College London in Ascot, UK.
Article #3: "Hiding in Plain View—An Ancient Dog in the Modern World," by H.G. Parker; E.A.
Ostrander at National Human Genome Research Institute, National Institutes of Health in Bethesda,
MD.
免疫細胞はビタミンがなくても宿主を守る
Even Without Their Vitamins, Immune Cells Protect a Host
栄養不足は免疫系を攻撃し、その能力と効果を低下させるが、今回、新しい研究で、世界で
最もよくみられる栄養不足の 1 つであるビタミン A 欠乏が、重要な免疫細胞の濃度を上昇さ
せることが示された。栄養不足がよくみられる世界の地域では、寄生虫感染も広まっている。
このため、粘膜表面のバリア免疫(自然リンパ球(ILC))が一端を担う免疫戦略)が必要
になる。ILC は、ビタミン A に由来する合図、特にレチノイン酸(RA)というビタミン A
の代謝物に反応すると考えられている。レチノイン酸が特定の ILC の増殖にどのように影響
を与えるのかをさらに理解するため、S.P. Spencer らは、ビタミン A 欠損マウス(RA シグナ
ル伝達がないマウス)における ILC のサブ集団の挙動を検討した。その結果、これらのマウ
スの特定の(細菌に対する免疫に重要な)ILC 集団が大きく減少し、一方で別のタイプの
ILC、特に ILC2 の数が増加していることが明らかになった(ILC2 には RA 受容体がなく、
ビタミン A がなくても増殖できることも示された。ILC2 は寄生虫感染を予防するのにも重
要である)。Spencer らの結果は、体がどのようにして異なるタイプの免疫に切り替えを行
い、重要な栄養源がない場合でも宿主が生きられるようにするのかを明らかにしている。ビ
タミン A 欠損は免疫系の働きを歪めることから、ビタミン A 不足が問題となっている地域
での寄生虫感染を予防していると言える。
Article #18: "Adaptation of Innate Lymphoid Cells to a Micronutrient Deficiency Promotes Type 2
Barrier Immunity," by S.P. Spencer; C. Wilhelm; J.A. Hall; N. Bouladoux; A. Boyd; T.B. Nutman;
T.R. Ramalingam; T.A. Wynn; Y. Belkaid at National Institute of Allergy and Infectious Disease,
NIH in Bethesda, MD; S.P. Spencer; Q. Yang; A. Bhandoola at Perelman School of Medicine,
University of Pennsylvania in Philadelphia, PA; J.A. Hall at New York University School of Medicine
in New York, NY; J.F. Urban Jr. at U.S. Department of Agriculture in Beltsville, MD; J. Wang at
University of California, Berkeley in Berkeley, CA.
あの新品の遺伝子はどこで手に入るのか
Where’d You Get That Brand New Gene?
非コード DNA 配列は時に独特の新しい(de novo)遺伝子を生み出し、この遺伝子は種の形
成を助けるような特有の役割を有する。しかしこれまで、このプロセスがどのように働くの
かについて研究者らはほとんど理解していなかった。Li Zhao らは、一般的なミバエである
キイロショウジョウバエについて、これまで特徴が明らかにされていない系統の精巣のトラ
ンスクリプトーム(雄生殖腺の全 RNA 分子のセット)を、キイロショウジョウバエの他の
系統について公開されているデータと比較した。その結果、近交系系統において、106 の所
定遺伝子、および 146 の多型 de novo 遺伝子が特定された。これらの遺伝子は、他の系統で
は非遺伝子性、または非機能性であるが、キイロショウジョウバエのトランスクリプトーム
の対応する領域における遺伝物質の内容との類似性が認められた。これらの候補 de novo 遺
伝子をさらに分析したところ、これらの形成はおそらく、自然選択圧によって促進される、
発現されない祖先のオープンリーディングフレームを介してでなされることが示された。し
たがって、自然に蛋白質を合成するような、このような過去の非コード DNA 配列の進化と
選択は、遺伝的新規性の重要な発生源である可能性がある。Zhao らはこれらの結果に基づ
いて、種の間におけるこうした de novo 遺伝子の構成についてある程度の知識を持たなけれ
ば、科学者はある生体の生物学における重要な特質を識別することさえできないであろう、
と示唆している。
Article #25: "Origin and Spread of de Novo Genes in Drosophila melanogaster Populations," by L.
Zhao; P. Saelao; D.J. Begun at University of California, Davis in Davis, CA; C.D. Jones at University
of North Carolina, Chapel Hill in Chapel Hill, NC.