第3章 海外における林野火災事例調査 3.1 海 外 事 例 調 査 3.1.1 調 査 概 要 (1)調 査 目 的 海 外 (オ ー ス ト ラ リ ア )に お け る 林 野 火 災 (ブ ッ シ ュ フ ァ イ ア ー )の 実 態 や 予 防・防 災 対 策 、 関 係 機 関 等 の 連 携 な ど に 関 し て 、現 地 調 査 を 行 い 、我 が 国 の 林 野 火 災 対 応 の あ り 方 の 検 討 に役立てる。 (2)調 査 年 月 日 及 び 調 査 員 〇 平 成 18 年 12 月 4 日 (月 )か ら 8 日 (金 ): 5 日 間 〇 総 務 省 消 防 庁 2 名 (特 殊 災 害 室 長 山 﨑一 樹 、 総 務 事 務 官 萩 原 正 之 ) (3)調 査 地 及 び 調 査 機 関 ア .キ ャ ン ベ ラ (A C T : Australian Capital Territory) ① C S I R O 林 野 火 災 研 究 チ ー ム (Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization, Bushfire Behavior and Management Team) ② A C T 政 府 消 防 隊 (F B:Fire Brigades)及 び A C T 地 方 部 消 防 本 部 (R F S:Rural Fire Service) ※ 上 記 機 関 の 他 、 2003 年 キ ャ ン ベ ラ 林 野 火 災 跡 地 の 記 念 施 設 を 視 察 し た 。 イ .シ ド ニ ー (N S W 州 : New South Wales) ① N S W 州 政 府 地 方 部 消 防 本 部 (R F S ) ② N S W 州 政 府 消 防 隊 (F B ) ウ .メ ル ボ ル ン (V I C 州 : Victoria 州 ) ① 全 国 航 空 消 防 セ ン タ ー (N A F C : National Aerial Firefighting Centre) ② 林 野 火 災 共 同 研 究 セ ン タ ー (Bushfire CRC [Cooperative Research Centre]) ③ V I C 州 緊 急 サ ー ビ ス 省 (Emergency Management Office) ※調査を予定した下記機関は、VIC州において大規模林野火災が発生し全州的な 緊急体制となったため、訪問キャンセルとなった。 〇 V I C 州 地 方 部 消 防 本 部 (C F A ) 〇 自 治 体 消 防 管 理 計 画 事 務 局 (Integrated Municipal Fire Management Planning) - 41 - 3.1.2 オ ー ス ト ラ リ ア (A C T ・N S W 州 ・V I C 州 )に お け る 消 防 防 災 体 制 (1)消 防 防 災 体 制 の 概 要 オ ー ス ト ラ リ ア は 連 邦 国 家 で あ る が 、連 邦 で は 限 ら れ た 行 政 し か 担 当 せ ず 、消 防 防 災 行 政 に つ い て は 、連 邦 政 府 と 州 政 府 の 権 限 配 分 上 、州 政 府 の 責 務 と さ れ て い る 。し た が っ て 、 消 防 機 関 は 州 政 府 の 組 織 と し て 位 置 づ け ら れ て い る 。ま た 、基 本 的 に は 、都 市 部 に お け る 消 防 防 災 体 制 に つ い て は 常 備 消 防 が 管 轄 し 、地 方 部 に つ い て は ボ ラ ン テ ィ ア 消 防 が 管 轄 し て い る が 、近 年 都 市 部 に お い て は 、ボ ラ ン テ ィ ア に よ る 自 主 防 災 組 織( C F U:Community Fire Units) の 設 置 が 進 ん で い る 。 管 轄 ACT NSW州 VIC州 都 市 部 ( Urban area) 常備消防 Fire Brigades Fire Brigades Fire Brigades 地 方 部 (Rural area) ボラン ティア消防 Rural Fire Service Rural Fire Service Country Fire Authority (2)N S W 州 に お け る 消 防 防 災 体 制 の 概 要 ア .消 防 の 役 割 分 担 ① 都 市 部 (urban area) 州 内 の 主 要 な 都 市 (シ ド ニ ー 、ニ ュ ー キ ャ ッ ス ル 、ウ ロ ン ゴ ン な ど )に つ い て は 、Fire Brigades Act, 1989 に よ り 、 法 的 に 位 置 づ け ら れ て い る 常 備 消 防 で あ る F B (Fire Brigades)が 管 轄 し て い る 。 ② 地 方 部 (rural area) 州 内 に お け る 主 要 な 都 市 以 外 の 約 1,200 の 町 に つ い て は 、Rural Fires Act, 1997 に よ り 、 法 的 に 位 置 づ け ら れ た ボ ラ ン テ ィ ア 消 防 の R F S (Rural Fire Services)が 管 轄 している。 ③ 国 立 公 園 (National forests and parks) 国 立 公 園 内 に お け る 林 野 火 災 に つ い て は 、第 1 義 的 に N P W S( National Parks and Wildfire Service)の 消 防 ス タ ッ フ (約 1,500 人 )が 担 当 し て い る 。 イ .防 災 体 制 の 所 管 ①所管 緊 急 時 サ ー ビ ス 省 大 臣 (Minister for Emergency Service)の 下 、常 備 消 防 、ボ ラ ン テ ィ ア 消 防 、 救 助 (S E S ※ )な ど の 緊 急 サ ー ビ ス 機 関 を 所 管 し て い る 。 ※ S E S (救 助 専 門 ボ ラ ン テ ィ ア 組 織 )と は 、 暴 風 雨 、 洪 水 に よ る 家 屋 倒 壊 か ら の 救 助、行方不明者の捜索活動などを行うボランティア組織 - 42 - ②所管法 Rural Fires Act, 1997 Fire Brigades Act, 1989 State Emergency Act, 1989 State Emergency and Rescue Management Act, 1989 〈参考〉NSW州における緊急時対応体制 緊急時サービス省 RFS FB ( Fire Brigades) (Rural Fire Services) SES (State Emergency Service) (3)N S W 州 都 市 部 に お け る 消 防 体 制 (F B ) ア .組 織 ①組織図 緊急時 サービス省 大臣 長 官 副長官 企画部 ②本 総務・ 能力 人事部 開発部 リスク マネジ メント部 州運用部 北面部長 部:シドニー市内に設置 ③後方支援センター:シドニー市郊外のグリーンエーカーに設置 ④ 消 防 署 数 (2004/ 2005): 338 消 防 署 (都 市 部 に 配 備 ) - 43 - 西面部長 南面部長 ⑤ 職 員 状 況 (2004/ 2005) 大都市における消防署は、全て常勤職員を配置しているが、大都市以外の町に関し ては、常勤職員とパート職員を混成し、消防署に配置している。 〇常勤職員 3,250 人 〇 パ ー ト 職 員 (時 間 給 ) 3,198 人 〇 C F U ※ (自 主 防 災 組 織 ) 5,500 人 ※ C F U (Community Fire Units) 1994 年 の 大 規 模 林 野 火 災 を 教 訓 と し て 、自 宅 周 辺 の 小 規 模 火 災 の 消 火 、火 災 鎮 圧 後 の残火処理や瓦礫等の撤収作業などを行うために結成された、地域住民による自主 防災組織である。 CFUの設置にあたっては、FB管轄地域内において火災リスクの高い地域を特定 (I- Zone)し た 上 で 、 各 ス ト リ ー ト 単 位 に よ り 設 置 (ユ ニ ッ ト )さ れ て い る 。 構 成 人 数 は 1 ユ ニ ッ ト 最 大 15 人 を 基 本 的 な 構 成 単 位 と し て い る 。 現 在 シ ド ニ ー 市 内 で 330 ユ ニ ッ ト 、5,500 人 の ボ ラ ン テ ィ ア を 配 備 し 、今 後 さ ら に 、 220 ユ ニ ッ ト 、 3,500 人 の ボ ラ ン テ ィ ア を 追 加 す る 予 定 で あ る 。 写真:CFUが使用する資機材一式(各ユニットに配置) イ .管 轄 FBは、シドニー、ニューキャッスル、ウロンゴンなど主要な都市圏における消防業 務 を 管 轄 し て お り 、州 人 口 (約 700 万 人 )の 約 9 割 を カ バ ー し て い る 。ま た 、危 険 物 災 害 (化 学 工 場 、 タ ン ク ロ ー リ ー 事 故 、 鉄 道 事 故 等 )に 関 し て は 、 州 政 府 全 体 を 管 轄 し て い る 。 ウ .財 政 ① 2005 年 / 2006 年 の 予 算 総 額 は 、5 億 2 千 3 百 万 A U S ド ル で あ る 。ま た 、大 規 模 林 野 火 災 が 発 生 し た 場 合 に は 、 追 加 的 に 州 政 府 の 財 務 省 か ら 、 200 万 A U S ド ル ま で 災 害対策経費が支給される。 ②財政負担 州 消 防 隊 法 (Fire Brigades Act)に よ り 、 負 担 割 合 (損 保 会 社 73.7%、 自 治 体 12.3%、 - 44 - 州 政 府 : 14.0%)が 定 め ら れ て お り 、 予 算 総 額 に 応 じ て 、 損 保 会 社 、 自 治 体 、 州 政 府 に 配分される。損保会社が、7割強を負担しているのは、かつて損保会社が消防隊を保 有し、消防活動にあたったという歴史的経緯による。 また、損保会社は、火災保険に負担分を付加した形で、財源を徴収しているので、 実質的に消防目的税の形となっている。火災保険は任意保険のため、火災保険未加入 者との不公平感があるとの指摘が強い。 エ .担 当 業 務 ①一般火災における消火作業、救助作業 ②危険物対策 ③林野火災における支援及び予防活動 ④火災原因調査 ⑤火災予防、防火査察 ⑥防火教育 〇 救 急 業 務 以 外 は 、 日 本 の 消 防 と ほ ぼ 同 様 の 業 務 を 担 当 し て い る (救 急 業 務 は 別 組 織 が パ ラ メ デ ィ ッ ク と し て 実 施 )。 〇 ア メ リ カ に お け る 9 ・ 11 以 降 、 テ ロ 対 策 を 含 む 危 機 管 理 の 実 働 部 隊 ( H A Z M A T : Hazard Material)と し て の 責 務 が 付 与 さ れ る こ と に な っ た 。 〇 ま た 、 都 市 部 に お け る 専 門 的 な 捜 索 活 動 は 、 F B が 専 門 組 織 を 設 置 し (U S R T : Urban Search and Rescue Unit)、 主 導 的 に 実 施 す る よ う に な っ た 。 〇CFUの設置など、防災教育に業務の重きを置いている。 NBC災害対応資機材車 大規模建築物倒壊時の資機材運搬車 - 45 - (4)N S W 州 地 方 部 に お け る 消 防 体 制 (R F S ) ア .組 織 ①歴史的経緯 〇 1900 年 頃 、 非 公 認 で は あ る が 自 主 的 消 防 団 が 結 成 さ れ る 。 〇 1949 年 Bush Fires Act が 制 定 さ れ 、 ボ ラ ン テ ィ ア 消 防 団 が 組 織 さ れ る 。 〇 1990 年 に は 、Department of Bush Fire Services, Minister of Emergency Service・ Bushfire Service に 改 編 さ れ る 。 〇 1997 年 Rural Fires Act が 制 定 さ れ 、 Rural Fire Service に 改 編 (RFS) される。 ② 組織図 緊急時サー ビス省大臣 長 総務部 ③本 戦略 開発部 官 指令・地域 管理部 活動 支援部 リスク 管理部 事業 開発部 部 : 2005 年 シ ド ニ ー 近 郊 ホ ー ム ブ ッ シ ュ ・ベ イ に 新 設 さ れ る 。 ④ 組 織 数 : 約 2,000 ⑤ 消 防 署 数 : 約 2,400 署 ⑥職員状況 実働の消火活動を担当する職員は、全て無償のボランティア職員である。ボランテ ィアには、サラリーマン、自営業、教師、主婦、定年退職者など、様々な職種の人が 参 加 し て お り 、 女 性 ボ ラ ン テ ィ ア の 占 め る 割 合 は 20%で あ る 。 そ の 他 、 ボ ラ ン テ ィ ア 職員の教育訓練、本部機能や管理機能などを担当する有償のスタッフ職員が配置され ている。 〇有償のスタッフ職員 〇無償のボランティア職員 680 人 65,000 人 イ .管 轄 都 市 圏 以 外 の 地 方 部 に お け る 約 1,200 の 小 さ な 町 村 に 関 す る 消 防 業 務 を 管 轄 し て お り 、 州 面 積 (80 万 K ㎡ )の 約 9 割 を カ バ ー し て い る 。 消 防 団 の 所 管 単 位 と し て 、 原 則 自 治 体 の 境 界 線 に 基 づ き 分 割 し て お り 、 現 在 、 142 地 区 に 分 割 さ れ て い る 。 - 46 - ウ .財 政 ① 中 核 的 (コ ア )予 算 N S W R F S の 予 算 総 額 (2005 年 / 2006 年 )は 、 約 1 億 4 千 万 A U S ド ル で あ る 。 予算は、緊急時のために使われるわけではなく、航空機の使用経費やボランティアの ための装備、訓練、資機材などに当てられている。 ②緊急事態時の経費 緊 急 事 態 が 発 令 さ れ た 場 合 に は 、 連 邦 政 府 か ら 別 途 経 費 が 支 給 さ れ る (そ の 経 費 の 50%が 空 中 消 火 に 使 用 さ れ る )。2003 年 に お け る 経 費 支 出 額 は 1 億 A U S ド ル で あ る 。 ③財政負担 財 政 負 担 は 、 根 拠 法 で あ る Rural Fires Act に よ り 損 保 会 社 、 自 治 体 、 州 政 府 の 負 担 割 合 が 定 め ら れ て い る (F B と 同 様 の 負 担 割 合 )。 エ .担 当 業 務 ①林野火災と草地火災の消火作業 ②住宅等建造物火災の消火作業 ③自動車事故における防火作業 ④コミュニティ教育プログラムの実施 ⑤その他緊急時の対応 (5)首 都 特 別 区 政 府 (A C T )に お け る 消 防 防 災 体 制 ア .都 市 部 に お け る 消 防 体 制 (F B ) ①管轄 首 都 キ ャ ン ベ ラ を 中 心 と し た 都 市 部 に 関 し て は 、 常 備 消 防 (ACT Fire Brigade)が 管 轄している。都市部と地方部の境界付近で林野火災が発生しやすい地域に関して、 Bushfire Abatement Zone に 指 定 し 、 F B と R F S の 共 同 管 理 下 に お い て 、 緊 密 な連携を取りながら活動を行っている。 ②FBの歴史的経緯 1913 年 に 設 立 、1957 年 Fire Brigade Act に よ り 法 的 に 位 置 づ け ら れ 、1974 年 Fire Brigade Administration Act に よ っ て 組 織 的 に 独 立 し た 。 ま た 、 2003 年 キ ャ ン ベ ラ 林 野 大 火 を 契 機 と し て 、 2004 年 Emergencies Act ※ が 制 定 さ れ 、 司 法 省 ( Department of Justice Community Safety)傘 下 の 緊 急 サ ー ビ ス コ ミ ッ シ ョ ナ ー の 下 に 消 防 、救 急 、 救 助 (SES)、 警 察 な ど の 緊 急 サ ー ビ ス 機 関 が 所 属 す る よ う な 組 織 再 編 が 行 わ れ た 。 特 に A C T は 、 州 で は な く 、 テ リ ト リ ー (準 州 )と い う 小 さ な 行 政 単位であることから、協力体制への移行が比較的容易であった。 - 47 - ※ 所 管 法 (関 連 3 法 の 統 合 ) Emergencies Act, 2004 Emergency Management Act, 1999 Bushfire Act, 1936 Fire Brigade Act, 1974 ③FBの組織体制 〇 消 防 署 数:市 内 に 9 箇 所 設 置 さ れ て お り 、出 動 要 請 か ら 8 分 以 内 に 、90%現 着 で き る体制を整えている。 〇 職 員 数 : 常 勤 職 員 の 定 数 は 337 人 (現 員 326 人 )、 事 務 職 員 30 人 C F U (自 主 防 災 組 織 )は 、 キ ャ ン ベ ラ 市 内 に 28 ユ ニ ッ ト 設 置 さ れ て お り 、 ボ ラ ン テ ィ ア 職 員 700 人 に よ っ て 構 成 さ れ て い る 。 〇 F B の 業 務:建 物 火 災 の 消 火 作 業 、林 野 火 災 の 消 火 作 業 、道 路 及 び ビ ル 事 故 、都 市 部の救助活動など イ .そ の 他 地 域 (都 市 部 以 外 )に お け る 消 防 体 制 (R F S ) ①管轄 ボ ラ ン テ ィ ア 消 防 (ACT Rural Fire Service)が 管 轄 し て い る 。 ②職員状況 職 員 数 : ボ ラ ン テ ィ ア 職 員 415 人 RFSは、給与が支払われているスタッフ職員と実働部隊を担当する無償のボラン ティア職員により構成されている。 ③業務内容 RFSの主な業務としては、山林、野原におけるブッシュファイアーの消火作業で あるが、近年、林野火災防止のための管理計画を策定する業務が新たに加わってきて いる。 (6)V I C (ビ ク ト リ ア )州 に お け る 消 防 防 災 体 制 ア .消 防 の 役 割 分 担 ① メ ル ボ ル ン 都 市 圏 (Metropolitan Melbourne) メ ル ボ ル ン 都 市 圏 の う ち 、 メ ル ボ ル ン 市 周 辺 に つ い て は 、 Metropolitan Fire Brigades Act, 1958 に よ っ て 位 置 づ け ら れ た 常 備 消 防 の M F B (Metropolitan Fire and Emergency Services Board)が 管 轄 し て い る 。 〇中央、北部、南部、西部の4地域に分割 〇47消防署 〇 常 勤 職 員 約 1,600 人 - 48 - ② そ の 他 地 方 部 (Regional Victoria) メ ル ボ ル ン 市 周 辺 以 外 の 全 州 を Country Fire Authority Act, 1958 に よ り 位 置 づ け ら れ た ボ ラ ン テ ィ ア 消 防 の C F A (Country Fire Authority)が 管 轄 し て い る 。メ ト ロ ポ リ タ ン 都 市 圏 の う ち 約 60%に つ い て も C F A が 管 轄 し て お り 、最 近 で は 、こ れ ら の 地 域 に お け る 消 防 体 制 の 整 備 が 課 題 と な っ て い る (地 方 部 と 都 市 圏 内 と の 状 況 の 違 い )。 〇 ボ ラ ン テ ィ ア 消 防 職 員 約 58,000 人 、 1228 消 防 団 〇 管 理 ス タ ッ フ 職 員 約 1,100 人 〇 メ ト ロ ポ リ タ ン 都 市 圏 内 は 常 勤 職 員 400 人 で 対 応 ③ 州 立 公 園 (state forests and parks) D S E (Department of Sustainable Environment)が 管 轄 し て い る 。 イ .防 災 体 制 の 所 管 Emergency Managements Act, 1986( 緊 急 時 管 理 法 ) に 基 づ き 、 O E S C (Office of Emergency Services Commissioner)が 、緊 急 活 動 全 て を 管 轄 し て お り 、林 野 火 災 に 関 し て は 、 M F B 、 C F A 、 Forest Fire Service の 活 動 を 調 整 し て い る 。 ま た 、 緊 急 時 に お け る 全 体 プ ラ ン (Emergency Management M annual Victoria)を 作 成 し て い る 3.1.3 オ ー ス ト ラ リ ア に お け る 気 候 及 び 植 生 並 び に 林 野 火 災 の 状 況 (1)気 候 及 び 植 生 ア .気 候 オーストラリアは、大陸北部の熱帯性から大陸南部の温帯性まで広範な気候帯を有し て い る 。 平 地 が 多 く 、 平 均 海 抜 高 は 300m で 、 内 陸 部 の 多 く は 砂 漠 と な っ て い る 。 北 部 の 熱 帯 地 方 に お い て は 、 雨 期 と 乾 期 が あ り 、 夏 の 11 月 か ら 4 月 の 時 期 に 集 中 的 に 雨 が 降 る 。南 部 の 温 帯 地 方 で は 、春 夏 秋 冬 の 四 季 の 変 化 が 、日 本 と は 反 対 の 時 期 に み ら れ る 。 また、南部地方は、世界的な高気圧帯に沿っており、南インド洋で発生した高気圧帯 が東進し、大陸の主風となる。夏期に、この高気圧が林野火災の発生危険度を高くする 要因となる。 イ .植 生 オーストラリアの自然植生の多くは、火災が日常的に起きる環境に適応があり、火災 は自然生態系の一部になっている。すなわち、多くの植物が、その世代交代を火災に依 存しており、火災によって種子の発芽が助けられている傾向があるということである。 その植生の発熱速度は、非常に高く、ユーカリの成木及び再生低木、湿地のコバノブ ラッシ、バンクシアその他のヒース、外来種の松は、いずれも揮発性物質を排出する。 これらの木々は、大小さまざまな火の粉を生み出すため、火災前線から遙かに離れた場 所にスポット的な火災を引き起こすこともある。 - 49 - また、樹齢を増したユーカリの木は、火に対する耐性があることから、可燃材処理の ための火入れが可能であり、下草のみを燃焼させることができる。 (2)オ ー ス ト ラ リ ア に お け る 林 野 火 災 の 発 生 状 況 オ ー ス ト ラ リ ア に お け る 林 野 火 災 は 、冬 の 時 期 に 大 陸 北 部 の 都 市 ダ ー ウ ィ ン 周 辺 を 起 点 に 発 生 し 、春 か ら 夏 に か け て 大 陸 南 部 へ と 移 っ て い く 傾 向 が あ る 。こ れ は 、北 部 に お い て は、夏期の雨期の時期に集中的に雨が降り、南部では季節風による湿った海風によって、 冬期に雨をもたらすことが密接に影響しているからである。 例 年 10 月 頃 に は 、北 部 準 州 や ク イ ー ズ ラ ン ド 州 で 林 野 火 災 が 増 加 し 、夏 季 を 迎 え る 11 月 後 半 頃 に 南 西 部 ・南 東 部 に お い て 火 災 シ ー ズ ン を 迎 え 、 特 に 12 月 か ら 2 月 ま で の 夏 期 に火災が頻発する。 ①NSW州RFS管轄における林野火災発生状況 1995/ 1997/ 1999/ 2001/ 2003/ 1996 1998 2000 2002 2004 事態発令件数 800 250 454 459 115 延 焼 面 積 (ha) 800,000 500,000 754,000 1,465,000 75,700 76 60 109 121 130 林野火災緊急 航空機の火災 出動件数 ② N S W F B 管 轄 に お け る 林 野 火 災 発 生 状 況 (2004/ 2005) 〇全火災通報件数 〇建物火災通報件数 〇林野火災通報件数 33,222 件 (前 年 比 2.1%増 ) 7,611 件 (前 年 比 1.5%増 ) 10,965 件 (前 年 比 2%増 ) ③ A C T R F S 管 轄 に お け る 林 野 火 災 発 生 状 況 (2004/ 2005) 〇林野火災発生件数 156 件 〇最大焼損面積 110ha (全 て 他 は 、 5ha 以 下 ) (3)オ ー ス ト ラ リ ア に お け る 林 野 火 災 の 特 色 オ ー ス ト ラ リ ア に お い て は 、林 野 火 災 、草 地 火 災 の こ と を ブ ッ シ ュ フ ァ イ ア ー と い う 用 語で表現する。燃えるものは、天然林、植林地、草地、藪など様々なものを含んでいる。 オ ー ス ト ラ リ ア に お け る 林 野 火 災 の 多 発 地 域 と し て は 、大 陸 北 部 と 大 陸 の 南 東 部・南 西 部 地 域 で あ る 。大 陸 の 北 部 地 域 で 発 生 す る 火 災 は 草 地 火 災 が 多 い が 、人 口 が 希 薄 な た め 、被 害も少なく危険性はあまり高くないのが特徴である。 一 方 、大 陸 の 南 東 部 及 び 南 西 部 地 域 で 発 生 す る 火 災 は 、エ ル ニ ー ニ ョ 現 象 に 関 連 す る 強 - 50 - い 乾 燥 が 、可 燃 材 を 増 加 さ せ 、強 風 が 重 な る こ と で 大 火 へ と 発 展 さ せ る 可 能 性 が あ る 。最 近では、住宅が複雑な地形の所まで進出し、森林地帯周辺の人口も増えてきているため、 人的、物的被害が発生するケースも増えてきている。 さ ら に 、南 東 部 で 発 生 す る 大 火 災 の 要 因 と し て は 、夏 に タ ス マ ン 海 で 発 達 し た 高 気 圧 と 大 オ ー ス ト ラ リ ア 湾 の 低 気 圧 が 同 時 発 生 し 、等 圧 間 隔 が 狭 く な り 北 北 西 の 風 が 強 く な る こ と が 要 因 と な る 。こ の 風 は 、高 温 の 内 陸 地 帯 を 通 過 す る こ と で 、水 分 を 失 っ て 熱 を 吸 収 し た熱風となり、長期の乾燥と相まって南東部に大火をもたらすことになる。 林 野 火 災 の 主 な 発 生 原 因 で あ る が 、落 雷 な ど の 自 然 現 象 や 牧 場 主 に よ る 火 入 れ の 拡 大 な どによって発生する他、近年は放火による火災も増加してきている。 ①草地火災 草 原 な ど で 発 生 す る 草 地 火 災 は 、燃 焼 形 態 と し て は 地 表 火 で 速 度 が 早 く (20km/ 時 ) 1 日 に 約 10 万 ha 程 度 焼 損 す る 。 ②林地火災 山岳地帯で発生する林地火災は、焼損形態も多様で、気象条件により地表樹幹火、 樹 冠 火 と 変 化 す る 。 速 度 は 比 較 的 遅 い も の の (10~ 12km/ 時 )火 力 は 非 常 に 強 い (5 万 ~ 10 万 kW/ m ) の が 特 徴 で あ る 。 ま た 、 Spotting(飛 び 火 )に よ る 新 た な 火 災 が 発 生 する危険性も高い。 <写真:CSIRO提供> 草地火災(グラスファイヤー) 林地火災(フォレストファイヤー) 3.1.4 オ ー ス ト ラ リ ア に お け る 林 野 火 災 へ の 対 応 (1)2003 年 1 月 キ ャ ン ベ ラ 林 野 大 火 に つ い て ア .火 災 発 生 前 の 気 象 状 況 火 災 が 発 生 す る 前 年 (2002 年 )は 、大 干 ば つ の 影 響 に よ り 、2002 年 3 月 か ら 12 月 ま で は、気温が高く、降水量が少なかったため、土壌の水分量は著しく低下していた。火災 発生前においても、キャンベラは厳しい日照りが続き、ほとんど雨が降っておらず、異 - 51 - 常 な 気 象 条 件 下 (気 温 約 40℃ 、相 対 湿 度 6%)に あ り 、燃 え 種 と な る 草 木 の 含 水 率 は 2%で あった。 イ .火 災 発 生 状 況 2003 年 1 月 8 日 、 15 時 30 分 か ら 16 時 の 間 に 落 雷 が 発 生 し 、 多 数 の 林 野 火 災 が 発 生 した。ACT周辺では、ACT管内で3件、NSW州内で3件の火災が発生した。キャ ンベラを襲った火災は、ACTとの境界線から約8㎞北西のブラインダベラ国立公園内 (N S W 州 )に お い て 発 生 し て い る 。 そ の 後 、 1 月 11 日 に は 、 こ の 火 災 は 焼 損 面 積 1,100ha ま で 延 焼 拡 大 し 、 さ ら に 、 1 月 16 日 に は 、 気 象 条 件 が 悪 化 し て 、 多 数 の 飛 び 火 が 発 生 、 急 速 に 拡 大 し た 。 ま た 1 月 17 日 に は 、 消 防 隊 に よ り 設 定 さ れ た 火 災 防 ぎ ょ ラ イ ン が 突 破 さ れ 、 1 月 18 日 の 早 朝 に は 、 A C T 市 街 地 ま で 10 ㎞ ま で 接 近 し た 。 さ ら に 、 1 月 18 日 の 正 午 過 ぎ か ら 、 な お 一 層 事 態 は 悪 化 し 、 A C T 周 辺 に 迫 っ た 複 数 の 火 災 は 合 流 し て 一 気 に 拡 大 、 市 街 地 の 郊 外 ま で (国 会 議 事 堂 か ら 5 ㎞ 付 近 ま で )急 接 近 し た 。つ い に 、18 日 14 時 25 分 主 務 大 臣 は 、キ ャ ン ベ ラ 市 内 に 緊 急 事 態 を 宣 言 し た 。 こ の 火 災 は 、市 街 地 の 西 方 に 広 が る 松 林 、草 原 、放 牧 場 を 燃 焼 さ せ 、15 時 以 降 キ ャ ン ベ ラ 市 郊 外 の 住 宅 地 (ダ フ ィ 地 区 周 辺 )に 到 達 、 住 宅 が 次 々 と 焼 失 し た 。 17 時 以 降 に な る と 、 よ う や く 風 も 弱 ま り 、 火 勢 も 徐 々 に 衰 え た が 、 都 市 機 能 は 、 そ の 後 20 日 ま で 麻 痺 することになった。 2003 年林野火災キャンベラ林野火災跡地 火災前、この周辺一帯は植林の松林であった ウ .被 害 概 要 〇 焼 損 面 積 : 60,000ha 〇 建 物 崩 壊 : 500 棟 以 上 - 52 - 火災により焼損した天文台 〇 住 民 避 難 : A C T に お い て 2,500 人 以 上 〇 人 的 被 害 : 死 者 4 人 (地 域 住 民 ) 火傷等による応急手当を受けた人数 300 人 エ .キ ャ ン ベ ラ 林 野 大 火 に お け る 課 題 ①防災面 〇大災害時における統一的な指揮命令体制が不備であった。 〇 関 係 機 関 の 連 携 が 不 十 分 で あ っ た (緊 急 サ ー ビ ス 省 、 消 防 、 警 察 、 軍 隊 )。 〇州を超える大災害への対応の連携体制が不十分であった。 ②予防面 〇林野火災のリスク管理が不十分であった。 〇住民への防災教育、情報提供体制が不十分であった。 (2)連 邦 政 府 等 に お け る 林 野 火 災 へ の 対 応 の 検 討 ア .連 邦 政 府 に お け る 検 討 ①背景 オーストラリアにおける防災対策については、連邦政府と州政府の権限配分上、州 政 府 の 権 限 と さ れ て い る が 、2003 年 1 月 に 発 生 し た キ ャ ン ベ ラ 林 野 大 火 に よ っ て 、首 都に危機が迫るという緊急事態に陥ったこと、関係機関間や州政府間の連携などが課 題になったことから、連邦政府において、消防体制及び緊急時体制の見直しに関する 検討の必要性が生じた。 ② 2003 年 3 月 首 相 府 に 調 査 委 員 会 設 置 ③ 2004 年 4 月 連 邦 政 府 調 査 委 員 会 報 告 こ の 報 告 で は 、 林 野 火 災 対 策 に リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト 手 法 を 導 入 (PPRR※ か ら 5 Rs ※ へ )す る こ と や 関 係 機 関 の 連 携 体 制 及 び 調 査 研 究 、訓 練 体 制 の 強 化 な ど に 関 す る 提 言 が示されている。 ※ P P R R:Prevention(予 防 )、Preparedness(準 備 )、Response(対 応 )、Recovery( 復 旧 )か ら 構 成 さ れ る 。 ※ 5 R s:Research、Information、Analysis(研 究 、情 報 、分 析 )、Risk Modification(危 険 回 避 )、 Preparedness(準 備 )、 Response(対 応 )、 Recovery (復 旧 )か ら 構 成 さ れ 、 リスクマネジメント論的な方法で、林野火災対策を推進する。 イ .そ の 他 の 機 関 に お け る 検 討 ① 2003 年 8 月 マ ク ロ ー ド 報 告 書 (A C T 政 府 内 閣 府 調 査 委 員 会 ) キャンベラ大火鎮圧後、マクロード氏はACT政府の依頼を受けて、防災機関の緊 急時の活動状況について調査し、報告書をACT政府に提出した。主な提言内容とし ては、以下のとおりである。 - 53 - 〇立法的措置の必要性から関係諸法の一元化 〇統一的な緊急時体制の必要性 〇住民自身による予防防災責務の自覚 ② 2003 年 10 月 連 邦 議 会 特 別 委 員 会 報 告 大 火 に よ っ て 荒 廃 し た 広 大 な 敷 地 の 調 査 結 果 、多 数 の 関 係 者 (消 火 活 動 を 実 施 し た 職 員 、ボ ラ ン テ ィ ア 職 員 、利 害 関 係 者 、科 学 者 、損 害 を 被 っ た 者 な ど )を 対 象 と し た ヒ ア リング調査結果の内容を反映させ、慎重な審議に基づき提言を行った。主な提言内容 は以下のとおりである。 〇森林火災対策に役立つ土地管理要素 〇 可 燃 材 量 (雑 草 な ど )の 減 少 と 林 野 管 理 〇 2003 年 大 火 へ の 対 応 の 遅 れ と 備 え 〇消火活動における関係機関間の調整と管理 〇林野火災における連邦政府の役割など ③ 2005 年 11 月 オ ー ス ト ラ リ ア 消 防 機 関 協 議 会 (A F A C )報 告 (3)A C T 政 府 に お け る 林 野 火 災 へ の 対 応 の 検 討 ア .2004 年 7 月 : 緊 急 事 態 法 制 定 (Emergencies Act, 2004) 2003 年 の キ ャ ン ベ ラ 林 野 大 火 を 契 機 と し て 、2004 年 Emergencies Act※ が 制 定 さ れ 、 司 法 省 ( Department of Justice Community Safety)傘 下 の 緊 急 サ ー ビ ス コ ミ ッ シ ョ ナ ー の 下 に 消 防 、救 急 、救 助 (SES)、警 察 な ど の 緊 急 サ ー ビ ス 機 関 が 所 属 す る よ う な 組織再編が行われた。 ①緊急時関連法の統合 ② 緊 急 時 サ ー ビ ス 庁 (Emergency Services Authority: ESA)の 設 置 〇ACT救急サービス 〇 A C T 消 防 局 (Fire Brigade) 〇 A C T 地 方 部 消 防 サ ー ビ ス (Rural Fire Service) 〇 A C T 救 助 サ ー ビ ス (S E S ) ③ 住 民 へ の 情 報 提 供 体 制 の 整 備 (キ ャ ン ベ ラ ・コ ネ ク ト の 設 置 ) ④林野火災管理戦略計画の策定 ⑤ 自 主 防 災 組 織 (Community Fire Units)の 結 成 イ .2005 年 1 月 林 野 火 災 管 理 戦 略 計 画 の 策 定 林野火災管理戦略計画の概要は以下のとおりである。 ① A C T 及 び 周 辺 地 域 に お け る 林 野 火 災 へ の 対 処 方 針 (10 年 計 画 ) ② 従 前 の 「 林 野 管 理 」 か ら 、「 林 野 火 災 管 理 」 に よ る 緊 急 時 対 応 に 重 点 が 置 か れ る よ う になった。 - 54 - ③ P P R R の 基 本 原 則 に 基 づ き 、関 係 者 ・関 係 機 関 の P(予 防 )、P(準 備 )、R(対 応 )、R(復 旧 )を 明 確 化 し 、防 災 ア セ ス メ ン ト に よ る リ ス ク 管 理 、予 防 対 策 に よ る 林 野 火 災 発 生 減 少、住民参加と関係機関の連携に重点が置かれた。 ④ 林 野 火 災 危 険 区 域 (Bushfire Abatement Zone:BAZ)、資 産 保 全 区 域 (Asset Protection Zone: APZ)の 設 定 ⑤ 林 野 火 災 運 用 計 画 (Bushfire Operational Plans: BOPs )の 策 定 リスクマネジメント手法を導入したことが特色である。 (4)共 同 研 究 体 制 の 整 備 : Bushfire CRC の 設 立 ア .設 立 経 緯 2001 年 12 月 か ら 2002 年 1 月 に か け て 大 規 模 な 林 野 火 災 が 発 生 し 、 シ ド ニ ー の 中 心 部 か ら 15 ㎞ ま で 接 近 し 、 煙 が 市 内 に 流 れ 込 ん だ た め 、 シ ド ニ ー 市 民 の 生 活 に も 大 き な 影響があった。 従来、林野火災のリスクの高さに対応した国を挙げての研究プログラム体制が十分で な か っ た た め 、林 野 火 災 の リ ス ク 管 理 を 目 的 と し た 森 林 火 災 共 同 研 究 セ ン タ ー( Bushfire CRC) が 、 2003 年 1 億 1 千 4 百 万 A U S ド ル の 予 算 (内 連 邦 政 府 は 2 千 5 百 万 A U S ド ル を 出 資 )に よ り 7 ヶ 年 計 画 を も っ て 設 立 さ れ た 。 イ .研 究 協 力 機 関 研 究 機 関 グ ル ー プ (大 学 、 C S I R O な ど )及 び エ ン ド ユ ー ザ ー 団 体 (関 係 業 界 、 消 防 関 係 機 関 )が 参 加 、 事 務 局 は メ ル ボ ル ン に 設 置 さ れ て い る 。 ウ .C R C の 研 究 内 容 ①プログラムA:防災、予防、抑制 林野火災の理解とその管理能力を高め、消防職員及び地域社会へのリスクを低減す るための研究を実施し、技術を開発する。 ②プログラムB:国土における火災の制御及び林野火災の管理 効率的で、安全で、生態的にも健全な土地利用計画及び火の利用に関する管理計画 を開発する。 ③プログラムC:自立的地域社会 林野火災のリスク管理に関する地域自立性を増すために、オーストラリア国内の研 究を調整する。 ④プログラムD:市民と財産の保護 住宅被害及び居住者の負傷を減少させ、消防職員の安全性と福祉を向上し、ボラン ティア供給に努める機関を支援するための技術及び情報を開発する。 ⑤プログラムE:教育と訓練の成果 技術を持った修了者及び研究者、適切な訓練コース、有効な公開情報及び資料を提 - 55 - 供することによって、オーストラリアが国際的な森林火災研究の最前線であり続ける ようにする。 エ .主 な リ サ ー チ 内 容 ①効果的な消火活動やヘリコプターの活用方法 ②野焼き、可燃材、煙の動向に関すること ③林野火災による大気、環境、動植物への影響 ④コミュニティに関する教育 ⑤消防隊の安全、資機材及び防護服の改良など (5)V I C 州 に お け る 林 野 火 災 へ の 対 応 の 検 討 ア .過 去 の 検 討 経 緯 ① 2002 年 か ら 2003 年 に か け て 、 大 規 模 林 野 火 災 が 発 生 し 、 火 災 対 応 が 十 分 に で き な か っ た こ と か ら 、消 防 体 制 及 び 緊 急 時 体 制 を 全 州 的 に 見 直 す こ と に な っ た 。2003 年 5 月には、消防体制について州政府監査委員による関係機関間の連携に関する改善勧告 が示される。 ② 2003 年 10 月 Bushfire Inquiry Expert Panel 報 告 書 (VBI) 主な提言内容は以下のとおりである。 〇コミュニティによる林野火災への対応能力の強化とその支援 〇公有地と私有地の境界線上での林野火災への対応能力の強化 〇林野火災の予防計画、リスク管理など関係機関間の連携強化 ( seamless organisational approach) 〇自治体における火災管理計画の策定義務付け ③ 2004~ 05 年 Inter-Departmental Committee 報 告 (OESC) 主な提言内容は以下のとおりである。 〇持続可能な消火能力の育成 〇火災予防計画の統合 〇リスクマネジメントの改善 〇 コ ミ ュ ニ テ ィ に お け る 覚 知 ・対 応 能 力 の 向 上 〇緊急時対応、復旧対応における関係機関間の調整能力の向上 イ .I M F M P (Integrated Municipal Fire Management Planning)提 言 I M F M P は 、 従 前 、 各 地 域 、 各 関 係 機 関 間 (※ 1 )で 統 一 が 取 れ て い な か っ た 火 災 対 策 に つ い て 、2006 年 4 月 、全 州 的 に 統 一 さ れ た リ ス ク 管 理 の 手 法 で 整 合 性 が 取 れ る よ う 制度改正すべきであるとの提言がなされたことを受けて、緊急時サービス省が所管して いるプログラムである。市町村レベルのみならず、広域レベル、州レベルにおいて火災 管 理 計 画 が 統 一 的 に 策 定 さ れ る よ う 、 体 制 (※ 2 )の 整 備 が 現 在 進 め ら れ て い る 。 - 56 - ま た 、 市 町 村 に 緊 急 時 連 絡 セ ン タ ー の 設 置 を 義 務 づ け る (州 警 察 所 管 )と と も に 地 域 レ ベ ル の 自 主 防 災 組 織 (Community Fireguard)が 設 置 さ れ た 。 ※ 1 関 係 機 関 : 消 防 (CFA、MFB)、警 察 、環 境 省 、イ ン フ ラ 整 備 省 、自 治 体 代 表 、州 緊 急 サ ー ビ ス 省 (OESC)、 州 緊 急 サ ー ビ ス 局 (SES)な ど → 州 火 災 管 理 計 画 委 員 会 (S F M P C ) 〇広域レベル → 広 域 火 災 管 理 計 画 戦 略 委 員 会 (R S F M P C ) 〇自治体レベル → 自 治 体 火 災 管 理 計 画 委 員 会 (M F M P C ) ※2 〇州レベル 【参考】オーストラリアにおける林野火災関連機関 ① C S I R O ( Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization : 連邦科学産業研究機構) 1926 年 に 設 立 さ れ た 連 邦 政 府 の 研 究 組 織 で あ り 、省 庁 と は 独 立 し た エ ー ジ ェ ン シ ー 組織である。財源としては、連邦政府からの出資の他、外部資金として関係機関や民 間団体と提携し、共同支援の形で支援を受けている。 C S I R O の 主 な 研 究 分 野 は 、 農 業 分 野 、 エ ネ ル ギ ー と 環 境 分 野 、 情 報 ・製 造 ・鉱 物 分 野 の 3 分 野 に 大 き く 分 類 さ れ 、 現 在 22 の 研 究 部 門 が あ る 。 世 界 80 ヶ 国 と 提 携 し 、 700 の リ サ ー チ プ ロ ジ ェ ク ト が 行 わ れ て い る 。こ の う ち 森 林 部 門 は 、農 業 分 野 に 属 し 、 林野火災の研究を担当している。 研 究 機 関 に お い て も 、最 近 成 果 主 義 の 影 響 を 受 け 、実 績 評 価 を 求 め ら れ る こ と か ら 、 優 先 度 の 高 い 研 究 に 財 源 が 割 り 当 て ら れ る 傾 向 が あ る 。林 野 火 災 部 門 の 研 究 も 、1990 年代から気候等の変化の影響を受け、住宅への被害や環境への影響など大きな問題と なったことから、重要なテーマとして優先度の高い部門として取り上げられている。 ② E n s i s (林 野 火 災 研 究 グ ル ー プ ) オーストラリアの研究組織CSIROは、南半球で一番大きな研究組織であるが、 より競争力を高め効率的な林野火災の研究を行うため、南半球で2番目に大きな研究 組 織 で あ る ニ ュ ー ジ ラ ン ド の Scion(旧 Forest Research)と 提 携 し 、共 同 研 究 す る 体 制 を 2003 年 に 整 備 し た 。 Ensisは、林野火災を抑え、人命、財産を守るための科学技術を促進すること を目的に、林野火災業務に携わったオーストラリアとニュージランドのスタッフによ る共同チームで構成され、多数の専門家による協力のもと、様々な林野火災に関する 研究が行われている。主な研究内容としては以下のとおりである。 〇消火活動に関する技術の査定、助言、訓練 〇火災原因調査 〇 燃 料 (可 燃 材 )管 理 手 段 の 開 発 (燃 料 の 蓄 積 、 危 険 度 の 把 握 及 び 予 想 ) 〇 燃 焼 (可 燃 材 )の 蓄 積 状 況 や 飛 び 火 発 生 な ど の モ デ リ ン グ - 57 - 〇効果的な消火方法 〇消防活動上における安全確保の研究 ③ A F A C (the Australasian Fire Authorities Council: オ ー ス ト ラ リ ア 消 防 機 関 評 議 会) オーストラリアでは、消防行政を州政府が担当していることから、全国レベルの連 絡 及 び 調 整 を す る 機 関 が 求 め ら れ 、 1993 年 に the Australian Fire Authorities Council が 設 立 さ れ た 。 現 在 、香 港 、シ ン ガ ポ ー ル 、パ プ ア ・ニ ュ ー ギ ニ ア な ど オ ー ス ト ラ リ ア 以 外 の 消 防 機 関 も 準 会 員 と し て 加 盟 し て お り 、1996 年 に 名 称 も 、the Australasian Fire Authorities Council(A F A C )に 改 称 さ れ て い る 。 A F A C に お い て は 、消 防 、緊 急 業 務 の 管 理 機 関 間 の 相 互 協 力 や 専 門 的 知 識 の 共 有 、 情報交換、政府および業界等への意見の申し立てなどを行っている。主な業務内容は 以下のとおりである。 〇自治体における火災予防と教育の促進 〇消防と緊急業務機関の活動上の実行力と責任の向上 〇消防戦術や訓練施策、教育内容の調整 〇知識の獲得、共有並びに課題に対する討論や議論の促進 〇共通関連分野での開発や研究の促進 〇国際フォーラムの開催など 3.1.5 N S W 州 に お け る 林 野 火 災 対 応 (都 市 部 ・地 方 部 ) (1)防 災 体 制 ア .林 野 火 災 の 消 火 戦 術 (航 空 機 に よ る 消 火 活 動 ) ①所管 R F S 本 部 「指 令 ・地 域 管 理 部 : 戦 略 開 発 ・航 空 指 令 課 」に お い て 、 州 内 の 航 空 機 の 出 動、配置、活動を一元的に管理している。 - 58 - 災害発生時における情報収集並びに 連絡調整ルーム 航空機のオペレーションルーム ②航空機の保有形態 R F S は 、林 野 火 災 発 生 時 に 航 空 機 を 使 用 で き る よ う 、航 空 機 使 用 事 業 会 社 (20~ 30 社 )と リ ー ス 契 約 を 結 ん で お り 、100 機 を 超 え る 航 空 機 を 確 保 し て い る 。オ ー ス ト ラ リ アでは、消防以外にも農業等での航空機に対する需要が高く、民間企業が多数存在し ているため、リース契約が可能となっている。その他、林野火災専用機として、大型 ヘリコプターをアメリカから3、4機借用している。 ③ 航 空 機 (固 定 翼 ・回 転 翼 )の 活 用 形 態 航空機には、固定翼と回転翼の種類があるが、オーストラリアの場合、主に下記の ような形態で各々活用している。 〇固定翼 → 遠隔地における森林地帯の火災に有効 草原火災時の消火作業に有効 高度からの出火場所捜索用 〇回転翼 → 住宅に隣接している森林地帯の火災に有効 林野火災時の消火作業に有効 ④航空機の利用方法 林野火災に関する航空機の主な利用方法は以下のとおりである。 〇空中消火活動 〇監視、情報収集 〇遠隔地への消火隊員の移送 〇計画的な火入れに使用 〇赤外線カメラなどを使用してのマッピング 〇林野火災発生危険地域の調査 - 59 - ※ N A F C ( National Aerial Firefighting Centre : 全 国 航 空 消 防 セ ン タ ー ) ①設立経緯 消防防災業務は、州政府の管轄であることから、従前は航空消防についても、州政 府が管轄し運用を行っていた。しかし、近年航空消防の有効性が認識されるにつれ、 コスト負担や全国的な航空機の確保などが課題となり、全州的に効率的な運用が求め られてきたことから、連邦政府においても航空消防の運用に関与する余地が生じてき た 。こ の よ う な 経 緯 を 踏 ま え 、2003 年 7 月 連 邦 政 府 が 経 費 の 一 部 を 負 担 す る 形 で 、州 政府の共同組織として、NAFCがメルボルンに設立された。 ②NAFCの主な役割 〇消防用航空機の共同運航 〇全国的な航空消防の調整 〇全国的な技術、研修の共通化 〇州政府からの航空消防事務の受託 (2)大 規 模 林 野 火 災 時 の 対 応 (関 係 機 関 間 の 連 携 体 制 ) ア .緊 急 事 態 対 応 体 制 (DIS プ ラ ン 、 サ ブ プ ラ ン ) ① DIS プ ラ ン DIS プ ラ ン (Disaster Plan)と は 、 緊 急 事 態 ※ が 発 生 し た 時 、 関 係 機 関 の 調 整 さ れ た 対応を保証するため、予め各関係機関の責任と役割を明確にし、緊急事態への準備、 対応、復旧活動に関する取り決めについて定めた防災計画である。 ※ 緊 急 事 態 と は 、 「財 産 の 損 失 や 被 害 、 動 物 や 人 々 の 健 康 、 安 全 を 脅 か し 、 危 険 に さ ら す 現 実 の 切 迫 し た 事 案 」の こ と を 指 し 、 具 体 的 な 事 例 と し て は 、 火 災 、 洪 水 、 暴 風 雨、地震、爆発、テロ活動、戦時の活動などが該当する。 ②サブプラン 特殊な個別の緊急事態に対応するため、各々の緊急事態が持つ特徴に合わせ、より 詳細に策定された計画のことである。そのサブプランの1つとして、林野火災サブプ ランも策定されている。サブプランの中では、大規模林野火災時における関係機関の 果 た す べ き 役 割 と 調 整 事 項 、連 絡 職 員 の 提 供 (情 報 伝 達 、各 機 関 へ の 指 示 ・要 請 、助 言 ) などが定められている。 ③相互応援のための覚書 オーストラリアの連邦制においては、消防防災は州政府の所管であることから、州 政府間の相互応援協定は定められていなかったが、最近、他州との消防機関の間で、 大 規 模 林 野 火 災 発 生 時 に お け る 相 互 支 援 の た め の 覚 書 (M O U )を 締 結 し て い る 事 例 が 出てきている。 - 60 - 【参考】林野火災時における軍隊の役割 軍隊の支援活動は、州政府から連邦政府に対して要請され、連邦政府首相の指示に よ り 行 わ れ る 。林 野 火 災 に 関 し て 、軍 隊 の ヘ リ コ プ タ ー ・航 空 機 及 び 部 隊 は 、ロ ジ ス テ ィックスの支援のみ従事しており、消火活動に直接携わることはない。 イ .I C S (Incidental Command System)の 導 入 ①ICSの契機 林野火災が多発する米カリフォルニアにおいて、連邦、州、自治体、消防機関の間 で 、災 害 時 の 対 応 を 策 定 す る な か 構 築 さ れ た シ ス テ ム で あ り 、1970 年 代 半 ば か ら 発 展 し、広く全米に普及している。 ②ICSの考え方 ど の よ う な 種 類 ・規 模 の 災 害 が 発 生 し た 場 合 に で も 、様 々 な 組 織 が 整 合 性 を 持 っ て 行 動できるよう、あらかじめ災害対応手順や指揮命令系統、使用する用語を統一し、各 関係機関の役割を明確にしておく考え方である。具体的に災害が発生した場合には、 その災害事案に関して管理調整を行う事故管理チームが現地指揮本部とは別個に構築 され、現場の指揮本部を指揮監督する。 また、事故管理チームは、役割分担制を取っており、コントローラ1人とオペレー シ ョ ン 、プ ラ ン 、ロ ジ ス テ ィ ッ ク と い う 役 割 に 対 応 し た 担 当 者 ※ に よ っ て 構 成 さ れ る 。 事 故 管 理 チ ー ム は 、現 時 点 の 災 害 対 応 の み な ら ず 、半 日 後 、24 時 間 後 の 包 括 的 な 活 動 計画を作成し、現場活動部隊へと指示を行うことになる。 ※ 各役割の担当人数に関しては、災害規模に応じて柔軟に増減させることができる。 小規模な災害の場合、1人が兼任することも可能である。 【事故管理チーム】 Incident Controller(1 人 ) Planning Operation Logistic ③オーストラリアの林野火災におけるICSの活用 1980 年 代 、オ ー ス ト ラ リ ア 消 防 機 関 協 議 会 (A F A C )に お い て 、ア メ リ カ の I C S を 参 考 に A I I M S (Austrarian Inter― service Incident Management System)が 開 発 さ れ た 。こ の A I I M S は 、各 州 の 林 野 火 災 緊 急 時 計 画 に お い て 、導 入 さ れ て い る 。 - 61 - 【NSW州の例】 ICSは、災害発生時における指揮命令系統を維持するため、関係機関に対して、 共 通 の 言 語 と 手 続 き を 用 い る こ と で 、操 作 管 理 す る シ ス テ ム と N S W 州 の D I S プ ラ ン の 中 で 定 義 さ れ て い る 。ま た 、林 野 火 災 サ ブ プ ラ ン の 中 で 、効 果 的 な 命 令 や 統 制 を 保証するため、ICSを活用することが定められている。 ウ .住 民 へ の 情 報 提 供 ・伝 達 体 制 ①平常時における体制 気 象 庁 は 林 野 火 災 危 険 度 指 数 (F F D I : Forest Fire Danger Index) が 高 い と き 、 火 災 注 意 報 を 発 表 す る と と と も に 、自 治 体 や テ レ ビ・ラ ジ オ な ど の メ デ ィ ア を 使 用 し 、 住民へと注意を促している。ただし、オーストラリアでは、テレビ局による災害情報 の伝達に関して、少ないのが特徴である。 〇火災危険期間 概 ね 10 月 1 日 か ら 3 月 31 日 ま で の 期 間 (期 間 は 州 に よ っ て 異 な る )、戸 外 で の 火 気 使用には、RFSの許可が必要となる。 〇 火 気 使 用 禁 止 宣 言 (Total Fire Ban) 気象庁が発表するFFDIに基づき、一定以上の数値が示された時は、RFS長 官は火気使用禁止宣言を発令する。 【NSW州の例】 F F D I 50 以 上 → Total Fire Ban 35~ 50 → 警告 ②緊急時における体制 〇 緊 急 事 態 警 告 合 図 (Emergency Warning Signal)の 発 令 緊 急 事 態 時 (深 刻 な 雷 雨 や 洪 水 、 地 震 、台 風 、 津 波 、林 野 火 災 な ど )に お い て 、 住 民 の生命や財産を守るため、即時の活動を起こす必要がある時、州政府はDISプ ランやサブプランに基づき、住民に対して緊急事態警告を発表する。公式の緊急 アナウンスは、自治体、テレビやラジオなどのメディアを通じて、住民へと伝達 される。 〇林野火災時の避難体制 オーストラリアにおける林野火災時の避難体制としては、住民は家にとどまるこ とが原則とされている。行政に避難命令権はなく、避難勧告にとどまり、基本的 に 強 制 力 は な い 。 Stay or Go の 最 終 的 な 判 断 者 は 、 住 民 自 身 で あ る 。 - 62 - (3) 予 防 体 制 ア .林 野 火 災 危 険 度 指 数 (F F D I : Forest Fire Danger Index) ①FFDIの概要 林 野 火 災 危 険 度 指 数 ( F F D I ) は 、 1950 年 代 に A.McArthur に よ っ て 開 発 さ れ 、1970 年 代 C I S R O が測定方法を定めている。 F F D I は 、 火 災 危 険 要 素 (降 水 量 、 乾 燥 度 、 気 温 、 湿 度 、 風 速 等 )に 基 づ き 、 計 算 尺 に よ っ て 0 か ら 100 までの指数で示され、数値の高さに応じて火災発生の 危険度も高くなることを表している。 計算尺には、草地火災用と林野火災用の2種類があ り、現在林野火災用について、CISROで改良が進 め ら れ て い る 。2007 年 中 に は 、改 良 版 が 完 成 す る 予 定 である。FFDIは気象庁が毎日測定し、各地域の危 火災危険度計算尺 険度指数を発表している。 消防機関においては、発表された危険度指数に対応して、一定以上の数値が示され た と き 、 屋 外 の 火 気 使 用 の 禁 止 宣 言 (Total Fire Ban)を 行 っ て い る 。 ② 地 域 住 民 へ の 周 知 ・伝 達 方 法 F F D I は 、 火 災 危 険 評 価 (F D R )と し て 、 5 段 階 表 示 (低 い ・中 庸 ・高 い ・非 常 に 高 い ・極 度 )※ の 危 険 レ ベ ル に 分 類 さ れ 、気 象 庁 に よ っ て 毎 日 発 表 さ れ る 。地 域 住 民 に は 、 テレビやラジオを通じて報じられている。また、住民が見て分かるよう各地域に掲示 板 が 設 置 さ れ て お り 、 危 険 レ ベ ル が 表 示 (消 防 機 関 が 毎 日 操 作 )さ れ る 。 【参考:NSW州の例】 〇州内を21地域に分割 〇毎日地域ごとに危険度を発表 ※FDR 5段階表示 ( )内 は 指 数 値 極度 : (50~ 100) 非 常 に 高 い : (20~ 50) 高い :( 7.5~ 20) 中庸 : (2.5~ 7.5) 低い : (0~ 2.5) 火災危険度掲示板 - 63 - イ .林 野 火 災 リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト 計 画 ①リスクマネジメントの必要性 自然災害や重大事故などの人為的災害によって、引き起こされる被害には、多大な 社会的損失をもたらすものがあり、時には、地域社会の存続そのものを脅かすような 事態に進展することも珍しくなくなってきている。このような状況下において、地域 社 会 に お け る リ ス ク の 特 定 及 び 分 析 ・評 価 、リ ス ク へ の 適 切 な 対 応 、災 害 発 生 時 に お け る関係機関の連携など予め確認しておくことにより、社会的損失をできる限り、発生 させないような行動をとることが求められてきている。 そのような要請から、地域社会の諸事情やリスク要因に精通している地域住民の参 加 の も と 、関 係 者 間 の 対 話 を 通 じ て リ ス ク を 発 見 し 、適 切 な 分 析 ・評 価 を 行 い 、管 理 す る と と も に 、万 が 一 地 域 社 会 が 緊 急 事 態 に 陥 っ た と し て も 、関 係 機 関 の 機 能 を 維 持 し 、 迅速に復旧できるような緊急時対策及び復旧対策を計画し、実行していくことが必要 である。 オーストラリアにおいては、大規模林野火災の教訓を生かし、林野火災対策として も、このような住民参加型のリスクマネジメントの導入が図られている。 ②計画策定の仕組み 各 地 域 の 林 野 火 災 管 理 委 員 会 (B F M C ※ 1 )は 、 構 成 さ れ て い る 各 地 域 の た め に 、 林 野 火 災 管 理 計 画 ( 林 野 火 災 運 用 計 画 ・森 林 火 災 リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト 計 画 )の 素 案 を 作 成 し 、 州 政 府 の 林 野 火 災 調 整 委 員 会 (B F C C ※ 2 )に 提 出 し 、 承 認 を 得 な け れ ば な ら ない。また、BFMCによる計画素案は、一般に公示して、利害関係者である地域住 民等の意見を求める機会を設けなければならない。その後当該計画については、BF MCにおいて利害関係者からの提案を考慮しつつ再検討を行い、必要があれば、変更 及び修正を行ったうえで、BFCCの承認を受けた後、決定される。 ※ 1 林 野 火 災 管 理 委 員 会 (B F M C : Bush Fire Management Committee) 構 成 員:森 林 管 理 機 関 及 び 消 防 機 関 (F B 又 は R F S )の 代 表 者 、ボ ラ ン テ ィ ア 消 防 職員、地域住民や先住民の代表者などから構成される。 ※ 2 林 野 火 災 調 整 委 員 会 (B F C C : Bush Fire Coordinating Committee) 構成員:RFS長官、消防職員、森林委員会職員、国立公園局職員、警察職員、 自然保護委員会及び農場協会関係者などから構成される。 ③計画策定時の住民参加 林 野 火 災 管 理 計 画 (林 野 火 災 運 用 計 画 ・ 林 野 火 災 リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト 計 画 ) の 素 案 策 定 に あ た っ て は 、 地 域 の 諸 事 情 (風 土 、 気 候 、 文 化 施 設 な ど )や 危 険 要 因 に 精 通 し て い る地域住民とBFMCが対話を行いつつ、住民からの意見を徴収する形で行われるこ とから、より実効的な計画を策定することができる。また、BFMCにより作成され - 64 - た 計 画 素 案 に つ い て は 、一 般 に 公 示 さ れ 、利 害 関 係 者 で あ る 地 域 住 民 は 素 案 に 対 し て 、 意見を提案することもできる。 ④計画策定時の消防機関の支援 計画策定にあたっては、消防機関の代表者もBFMCの構成員に選ばれており、地 域 事 情 の 把 握 、リ ス ク 要 因 の 特 定 ・評 価 を 行 う 際 に は 、現 地 調 査 並 び に 地 域 住 民 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン な ど を 通 じ 、専 門 的 な 立 場 か ら 発 言 や 助 言 な ど を 行 っ て い る 。ま た 、 決定された計画は、全て消防機関に対して提出されており、その計画に基づいて、火 災予防対策並びに林野火災発生時の消防活動を考える上においても活用されている。 3.1.6 調 査 結 果 の ま と め 【ボランティア意識が高い】 オ ー ス ト ア リ ア に お い て 林 野 火 災 (ブ ッ シ ュ フ ァ イ ヤ ー )は 代 表 的 な 大 規 模 自 然 災 害であるが、ボランティアや地域住民の果たす役割が非常に大きいことが特徴であ る。特に、地域住民の自主防災意識、ボランティアへの参加意識は非常に高く、自 ら の 生 命 ・財 産 、 自 ら の 地 域 の 安 全 は 自 ら 守 る と い う 考 え が 、 自 然 な 形 で 実 践 さ れ て お り 、 消 防 機 関 の 地 域 住 民 に 対 す る 消 防 ・防 災 に 係 る 教 育 ・啓 発 機 能 に つ い て も 充 実している。この点、日本の防災体制における地域住民のあり方として、大いに参 考とすべき内容があると考えられる。 【消防防災体制のあり方の変化】 また、オーストラリアにおいては、防災及び消防、災害対応の責任は州政府に専 管 し て い る こ と が 日 本 と の 違 い で あ る が (州 政 府 ご と に 消 防 体 制 も 若 干 異 な る )、 最 近、大規模な林野火災の発生を契機として、連邦政府、市町村、地域住民など、こ れまでとは異なる主体の関与の必要性が高まってきている点は注目される。従来、 ほとんどど行われてこなかった州政府間の相互応援も、最近では消防機関レベルで の実務的な応援態勢が構築されつつある。 【防災面でのICSの活用】 林野火災の防災面としては、ICSの考え方が導入されており、大規模林野火災 時における関係機関の指揮命令系統がマニュアル化されている。複数の防災関係機 関の連携という観点から、ICSの考え方は日本でも参考になると考えられる。 しかし、ICSの考え方は、林野火災のような単一の大規模災害対応という観点 においては機能を果たしているが、同時発生的な複合型の災害が発生した場合、有 効に機能することが出来るかという点は、今後の課題として残されているものと考 えられる。 - 65 - 有効な消火手段である航空機の運用形態については、州政府が主体のため、一元 的 ・効 率 的 な 運 用 、調 整 が 行 わ れ て い る が 、コ ス ト 面 の 課 題 が あ る こ と か ら 、最 近 、 連邦政府が財源面や共同運航面で関与するよ うになってきており、その点において は参考になる。 【予防面でのリスクマネジメントと危険度指数化】 林野火災の予防面としては、林野火災発生危険度の指数化による警戒態勢、住宅 の開発管理や住民参加によるリスクマネジメントによって担保されていることが 参考になる。 日本でも気象庁の火災気象通報は存在するが、指数化されてい ないこと や住民に 火気使用制限の負担を伴うことなどもあり、消防機関や市町村は火災警報の発令を あまり行わないのが実態であることから、専門機関である気象庁において今後、林 野火災発生危険度指数のような分かりやすい 指数化の内容を参考に、火災気象通報 基 準 の あ り 方 を 検 討 す る と と も に 、 そ れ を 受 け た 市 町 村 ・消 防 側 で も 火 災 警 報 発 令 の判断基準を検討していく必要があると考えられる。 また、日本では地域単位での林野火災のリスク管理が行われていないことから、 住民参加型で関係機関による林野火災リスク管理計画を作成することは有効と考 えられる。このように、今後、日本においても、林野火災発生危険度の指数化やリ スクマネジメントの考え方を検討していくこ とは、有効な予防対策を構築していく 上で、非常に有意義であると考えられる。 参考文献 【邦文】 海 外 消 防 情 報 セ ン タ ー 「 オ ー ス ト ラ リ ア の 消 防 事 情 」 (2004 年 3 月 ) 林 野 弘 済 会 「 林 野 火 災 手 引 書 」 (2006 年 ) (財 )自 治 体 国 際 化 協 会 シ ド ニ ー 事 務 所「 オ ー ス ト ラ リ ア に お け る 航 空 機 を 活 用 し た へ き 地 サ ー ビ ス 」 (2004 年 10 月 ) ブ ラ イ ア ン ・ア ッ シ ュ 、 河 野 守 「 オ ー ス ト ラ リ ア の 森 林 火 災 」 (火 災 264 号 、 2003 年 ) 山 谷 成 夫 「 オ ー ス ト ラ リ ア に お け る 林 野 火 災 の 実 態 と 対 策 」 (林 業 技 術 512 号 、 1984 年 11 月 号 ) J・コ ー ル マ ン 、 A・サ リ バ ン 「 オ ー ス ト ラ リ ア の ブ ッ シ ュ フ ァ イ ア ー 」 (山 林 、 1996 年 4 月号) 山 下 邦 博 「 諸 外 国 に お け る 森 林 火 災 に 対 す る 空 中 消 火 (カ ナ ダ 及 び オ ー ス ト ラ リ ア の 事 例 )」 (消 防 研 究 大 65 号 、 1999 年 ) 山 下 邦 博 「 2003 年 ・豪 州 の 山 火 事 (上 )(中 )(下 )」 (月 刊 消 防 、 2004 年 3 月 号 、 5 月 号 、 9 月 号) - 66 - 山 下 邦 博 「 火 災 接 近 時 の 緊 急 避 難 (オ ー ス ト ラ リ ア の 事 例 )」 (月 刊 消 防 、 2005 年 5 月 号 ) 山 崎 一 樹 「 オ ー ス ト ラ リ ア の 林 野 火 災 対 策 調 査 」 (季 刊 消 防 防 災 20 号 、 2007 年 4 月 ) 【英文】 Parliament of the Commonwealth of Australia A Nation Charred: Report on the inquiry into bushfires, House of Representatives, Select Committee into the recent Australian bushfires, October 2003 Report of the National Inquiry on Bushfire Mitigation and Management, Council of Australian Governments, April 2004 ACT Government: Australia Capital Territory Inquiry into the Operational Response to the January 2003 Bushfires in the ACT, McLeod Inquiry, Chief Minister ’s Department, August 2003 ACT Bushfire Recovery Taskforce Final Report, 2003 Emergencies and the National Capital: A residents guide, 2006 Strategic Bushfire management Plan for the ACT, version 1, ACT Emergency Services Authority, January 2005 NSW State: State of New South Wales A Guide to the Rural Fires Act, 1997, NSW Rural Fire Service, March 2005 BUSHFIRE bulletin, the Journal of the NSW Rural Fire Service NSW RFS Volunteer Survey 2005, NSW Rural Fire Service Aviation, NSW Rural Fire Service Bushfire Management, NSW Rural Fire Service Making our community safer, NSW Fire Brigades New South Wales State Bushfire Plan, A Sub Plan of the State Disaster Plan, NWS Bushfire Coordinating Committee, 2002 Bushfire Risk Management Plan Guidelines for Bush Fire Management Committees, NWS Bushfire Coordinating Committee Bushfire Risk Management Planning Package, Facilitator ’s Guidelines, NWS Bushfire Coordinating Committee Performance Audit Report, Rural Fire Service: The Coordination of Bushfire Fighting Activities, The Audit Office of New South Wales, 1998 Memorandum of Understanding between Country Fire Authority, Victoria and New South Wales Rural Fire Service, April 2005 - 67 - VIC State: State of Victoria Effectiveness of Aircraft Operations, Fire Management, Department of Sustainability and Environment Report of the Inquiry into the 2002-2003 Victorian Bushfires, Victorian Bushfires Inquiry expert panel, Department of Premier and Cabinet, October 2003 Beyond the Fire Inquiry Process: Continuous Improvement Emergency Management, the Office of the Emergency Services Commissioner, 2004-2005 Municipal Fire Prevention: Best Practice Review Discussion Paper, September 2002 Living in the Bush: bushfire survival plan workbook, Country Fire Authority Integrated Municipal Fire Management Planning Project, Information Paper: Good Practices in Planning, June 2005 Integrated Municipal Fire Management Planning Project, Draft Position Paper, April 2006 CSIRO: Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation Bushfire Behavior and Management, Strategic Plan: July 2001 – June 2006 The Dead-Man Zone- a neglect area of firefighter safety, CSIRO Forestry and Forest Products, 2001 The Impact of Fuel Management on Fire Behavior in Eucalypt Forest, CSIRO Forestry and Forest Products, 2004 Bushfire CRC: Bushfire Cooperative Research Centre Bushfire CRC Research Programs, 2005 Program A: Safe Prevention, Preparation and Suppression Program B: Management of Fire in the Landscape Program C: Community Self-Sufficiency for Fire Safety Program D: Protection of People and Property Melbourne Wild Fire Meeting, June 2005 AFAC: Australian Fire Authorities Council Position Paper on Bushfire and Community Safety, November 2005 Guidance for People in Vehicles during Bushfires Christopher Lucas, Fire Climates of Australia: Past, Present and Future, Bushfire CRC/Bureau of Meteorology Research Centre The Australasian Inter-service Incident Management System, A management System for any Emergency, Third Edition, 2005 - 68 - Fire Australia (Autumn 2006) Air Attack; Fighting Fires from Above, The National Aerial Firefighting Centre AIIMS; More Than an Incident Management System Stay and Defend or Go Early (Winter 2006) Smoke Management Sprinkler Protection Bureau of Meteorology Bushfire Weather, 2003 Fifth NRIFD Symposium, 2005, JAPAN Modelling applications of the Australian Forest Fire Danger Index (FFDI), G.J.Cary, the Australian National University, Proceedings of Fifth NRIFD Symposium, 2005 Recent Developments in Forest Fire Management in Australia, D.A.R. Sutherland, NSW Rural Fire Service, Proceedings of Fifth NRIFD Symposium, 2005 - 69 - 3.2 文献・資料調査 3.2.1 調 査 概 要 3.1 で 述 べ た 現 地 視 察 調 査 の 補 足 と し て 、海 外 に お け る 林 野 火 災 対 応 や 林 野 火 災 事 例 を 報 告 し た 文 献 ・資 料 を 収 集 し 、 関 係 機 関 の 連 携 ・連 絡 体 制 、 住 民 に 対 す る 広 報 ・避 難 等 の 安 全対策等の視点で整理する。 収 集 ・整 理 に あ た っ て は 、 消 防 大 学 校 消 防 研 究 セ ン タ ー の 刊 行 物 や 報 告 書 、 論 文 や 報 告 を 掲 載 す る 学 会 誌 や 雑 誌 等 の 国 内 で 刊 行 さ れ た 文 献 ・資 料 を 主 対 象 と す る が 、2003 年 に 発 生 し た オ ー ス ト ラ リ ア ・キ ャ ン ベ ラ と ア メ リ カ ・カ リ フ ォ ル ニ ア で の 事 例 に つ い て は 、一 部 海 外 発 行 文 献 も 対 象 と し た 。 図 3.2.1 に 参 照 し た 文 献 ・資 料 を 記 し 、 本 資 料 で 言 及 す る も のには資料番号を付す。 国内発行文献・資料 【文献 【文献 【文献 【文献 1】 山 下 邦 博 : カ ナ ダ の 森 林 火 災 ,火 災 235 号 ( 1998.8) 2】 新 井 場 公 徳 : 米 国 に お け る 林 野 火 災 対 策 の 現 状 ,火 災 264 号 ( 2003.6) 3】 河 野 守 : オ ー ス ト ラ リ ア の 森 林 火 災 ,火 災 264 号 ( 2003.6) 4】 山 下 邦 博 : ヨ ー ロ ッ パ 南 部 地 域 に お け る 火 災 対 策 の 現 状 ,火 災 264 号 ( 2003.6) 【 文 献 5】 山 下 邦 博 : 地 中 海 沿 岸 諸 国 の 林 野 火 災 ( 上 ) - ス ペ イ ン の 防 火 事 情 - 月 刊 消 防 ( 2002.9) 【 文 献 6】 山 下 邦 博 : 地 中 海 沿 岸 諸 国 の 林 野 火 災 ( 中 ) - イ タ リ ア の 防 火 事 情 - 月 刊 消 防 ( 2002.11) 【 文 献 7】 山 下 邦 博 : 地 中 海 沿 岸 諸 国 の 林 野 火 災 ( 下 ) - フ ラ ン ス の 防 火 事 情 - 月 刊 消 防 ( 2003.1) 【 文 献 10】佐 藤 晃 由 ,吉 野 薫 ,篠 原 雅 彦: 「 2003 年 カ リ フ ォ ル ニ ア 州 南 部 林 野 火 災 調 査 概 要 」 ( 2004.9 消 防 研 究 所 報 告 ) 第 5 回 消 防 研 究 所 シ ン ポ ジ ウ ム 報 告 書 【 文 献 12】森 田 武:米 国 南 カ リ フ ォ ル ニ ア 大 規 模 森 林 火 災 レ ポ ー ト ,近 代 消 防( 2004.2) 海 外 発 行 文 献 ・資 料 【 文 献 8】 Fire prevention and preparedness( 2003.5) 【 文 献 9】 Follow-up of selected performance audits tabled in 2002 and 2003( 2005.10) ※ と も に オ ー ス ト ラ リ ア・ビ ク ト リ ア 州 の Auditor General( 会 計 検 査 院 長 官 )に よ る 評 価 ・ 検査レポート 【 文 献 11】 National Response Plan( 2004.12) ※ 米 国 国 家 安 全 保 障 省 ( DHS) 発 行 の 連 邦 政 府 の 緊 急 事 態 管 理 計 画 図 3.2.1 調 査 対 象 と し た 海 外 の 林 野 火 災 に 関 す る 文 献 ・資 料 - 70 - 図 3.2.1 に 挙 げ た 文 献 ・資 料 の 内 容 を 調 査 し 、次 の 要 領 で 整 理 を 行 う 。ま ず 、「火 災 」(日 本 火 災 学 会 )が 1998 年 及 び 2003 年 に 紹 介 し た カ ナ ダ 、ア メ リ カ 、オ ー ス ト ラ リ ア 及 び ヨ ー ロ ッ パ 南 部 地 域 (主 に ポ ル ト ガ ル )の 林 野 火 災 対 応 に 関 す る 報 告 、 さ ら に 「月 刊 消 防 」(東 京 法 令 出 版 )が 2002 年 か ら 2003 年 に か け て 紹 介 し た ス ペ イ ン 、イ タ リ ア 、フ ラ ン ス の 火 災 対 策 に 関 す る 報 告 に 基 づ き 、諸 外 国 の 事 情 を 概 要 的 に 整 理 す る 。基 本 的 に 海 外 機 関 の 名 称 は 英 名 で 表 記 し 、そ の 略 称 及 び 和 名 を 併 記 す る 。和 名 と 英 名 の 略 称 の み を 表 記 す る 場 合 は、和名に英名略称を添える形で表記する。 次 に 、近 年 の 有 名 な 事 例 に 着 目 し 、キ ャ ン ベ ラ 森 林 火 災 (オ ー ス ト ラ リ ア ・2003 年 )及 び カ リ フ ォ ル ニ ア 州 南 部 林 野 火 災 (ア メ リ カ 合 衆 国・2004 年 )に か か わ る 調 査 レ ポ ー ト か ら 、 ① 関 係 機 関 の 連 携・連 絡 体 制 、② 住 民 に 対 す る 広 報・避 難 等 の 安 全 対 策 に 関 す る 記 述 を 抽 出する。 3.2.2 諸 外 国 に お け る 林 野 火 災 対 応 (1)カ ナ ダ (文 献 1 ) ア .応 急 対 策 の 基 本 的 な 考 え 方 〇森林火災に対して、人命、財産、あるいは価値ある資源を脅かす場合においてはじ めて火災拡大を阻止する行動がなされる。森林火災政策は、森林火災の消火に要する 費用と火災で生じる種々の損失を考慮して決定しており、火災は自然を管理する上で 一定の役割を果たしているという考え方に基づいている。 〇連邦所有の森林火災の管理責任は連邦政府に、それ以外の地域では各州にある。 イ .関 係 機 関 の 連 携 ・連 絡 体 制 〇 連 邦 及 び 州 政 府 は 合 計 す る と 14 の 機 関 と な り 、個 々 の 火 災 対 策 を 有 し 、森 林 タ イ プ 、 森林火災のリスク、火災対応が異なる。 〇森林管理は、政府機関、政府との契約者、個人企業などにより行われている。 〇森林火災の消火活動と監視活動という二つの対応の仕方。 〇 1982 年 に 州 政 府 の 管 理 す る エ ア タ ン カ ー を 効 率 よ く 利 用 で き る よ う 、 Interagency Forest Fire Center(州 政 府 間 森 林 火 災 研 究 セ ン タ ー )が 設 立 さ れ た 。 〇 1995 年 の 火 災 シ ー ズ ン で は 、 登 録 さ れ て い る 全 て の 隊 員 、 ポ ン プ 、 航 空 機 、 資 材 は 多くの火災現場に動員され、搬送された。 〇森林火災の危険性は監視されているし、火災の強さは全国レベルで予測することが できるようになった。このようなシステムにより資源を再配置し、火災発見の飛行ル ートを決定し、資源を効率的に割り当てることができる。 〇 Canadian Forest Service(カ ナ ダ 森 林 局 )が 創 設 し た 火 災 研 究 ネ ッ ト ワ ー ク が 、 科 学 的 ・技 術 的 な 研 究 テ ー マ の 1 つ と し て 、森 林 管 理 法 を 向 上 さ せ る た め の 意 思 決 定 支 援 シ ス テ ム (火 災 管 理 シ ス テ ム )を 発 展 さ せ て い る 。 - 71 - (2)ア メ リ カ 合 衆 国 (文 献 2 ) ア .応 急 対 策 の 基 本 的 な 考 え 方 〇 林 野 火 災 を (災 害 と い う よ り は な く む し ろ )自 然 現 象 の 一 部 と し て 位 置 づ け る 考 え 方 が 存 在 す る 。 こ の よ う な 背 景 の も と 、 計 画 火 災 (prescribed fire) 1 が 行 わ れ る こ と が あ る。 〇林野火災に対応する主体と建物火災に対応する主体は別個のものであり、林野火災 専門の消防力が存在する。 〇 林 野 火 災 へ の 対 応 は 第 一 義 的 に は 土 地 所 有 者 (国 、 州 、 個 人 )の 責 任 で あ る 。 イ .関 係 機 関 の 連 携 ・連 絡 体 制 〇 Department of Agriculture/Forest Service(USDA/FS: 農 務 省 林 野 局 )が 、 最 大 の 林 野 火 災 対 応 力 を 保 有 し て い る 。 ま た 、 一 部 の 州 政 府 は 対 応 部 局 を 有 し 、 California Department of Forestry and Fire Protection(CDF)な ど は 強 力 な 消 防 力 を 誇 っ て い る 。 その他、消火用航空機を所有する会社があり、消火作業を受託することもある。 〇 カ リ フ ォ ル ニ ア 州 で は 、農 務 省 森 林 局 が 主 に 国 有 林 が 占 め る 州 面 積 の 約 3 分 の 1 の 、 CDF が 同 じ く 州 面 積 の 約 3 分 の 1 の 消 防 の 責 を 負 っ て い る 。 2 〇 カ リ フ ォ ル ニ ア 州 の CDF は 、地 上 消 火 部 隊 、航 空 部 隊 、救 急 、危 険 物 事 故 、爆 発 物 処 理 、 都 市 捜 索 救 助 な ど の 部 隊 を 有 し て お り 、 常 勤 の 火 災 専 門 職 3,800 人 、 季 節 雇 用 1,400 人 の 他 、 ボ ラ ン テ ィ ア や 囚 人 な ど が 働 く こ と も あ る 。 〇 USDA/FS、CDF と も 、危 機 対 応 機 関 と し て の 基 本 的 仕 組 み と し て 、物 資 調 達 や 技 術 開発において自律的・自己完結的な仕組みを構築している。 (3)オ ー ス ト ラ リ ア (文 献 3 ) ア .応 急 対 策 の 基 本 的 な 考 え 方 〇応急対策検討の前提として、立地場所の適切な評価に基づく建物の立地計画、燃え 種の管理といった予防的方策が必要である。 〇森林火災を消火するための能動的防火システムに関する情報は非常に少ないため、 消火は消防活動に依存することになる。消防活動用に水源を確保しておくことにより、 森林火災が発生しても建物や人が助かる可能性を高めることができる。 イ .関 係 機 関 の 連 携 ・連 絡 体 制 「 3.2.3(1)キ ャ ン ベ ラ の 森 林 火 災 」で 具 体 的 に 記 す 。 1 可燃物蓄積量の低減や植生遷移の促進などの目的で、人為的に火災を発生させたり、自 然に発生した火災の延焼を一定の管理下で見守ったりすること。イエローストーン国立公 園 周 辺 を 広 域 に 焼 損 し た 多 発 林 野 火 災 (1988 年 )時 に 、 こ の 考 え 方 が 議 論 に な っ た 。 2 残 り の 約 3 分 の 1 は 居 住 域 で あ り 、市 な ど 自 治 体 が 消 防 を 担 当 し て い る 。な お 、CDF の 管轄は林野にとどまらず、自治体との契約によっては都市部の消防機能を受託することも ある。 - 72 - ウ .住 民 に 対 す る 広 報 ・避 難 等 の 安 全 対 策 〇避難行動には、早期避難、遅延避難、無避難の3つの行動類型がある。最終的にい ずれの行動類型を取るのかは、複雑な意思決定のプロセスを経て決められる。居住者 は十分な情報を収集して、適切な避難経路を決定する必要がある。 (4)ポ ル ト ガ ル (文 献 4 ) 文献4では、ポルトガルにおける林野火災対策に焦点をあてながらヨーロッパ南部地 域における林野火災対策について紹介している。 ア .応 急 対 策 の 基 本 的 な 考 え 方 〇ヨーロッパではそれぞれの国の実情に即して火災対策が実施されてきたが、欧州統 合が深化・拡大するにつれて欧州共通の林野火災対策が検討される方向にある。 イ .関 係 機 関 の 連 携 ・連 絡 体 制 〇 林 野 火 災 を 含 む 自 然 災 害 か ら 市 民 生 活 を 守 る 活 動 は 、国 レ ベ ル の 民 間 安 全 局 (SNPC)、 県 レ ベ ル の 市 民 安 全 局 (SRPC)、 市 レ ベ ル の 市 民 安 全 局 (SMPC)が 分 担 し て 実 施 す る 。 市の下部行政単位として区が設けられている。 〇大規模の災害が発生すると、首相が市民生活を守る全責任を負う。内務大臣に委ね られることもある。県レベルでは知事が本部長となる市民安全局が応急対策を決定す る。知事は、軍、警察、内務省、森林局、消防機関などの支援を受けて任務を遂行す る。 〇市民安全局は、緊急オペレーション・センターを設置し、民間安全局と連携をとり ながら応急対策を推進する。十分な災害対応ができない県は、要請に応じて国から支 援を受ける。 〇 応 急 活 動 に は 消 防 署 、 消 防 団 、 衛 生 局 、 市 民 安 全 局 、 NGO、 森 林 局 、 天 然 資 源 保 護 局、自衛消防団など多くの機関や団体が加わる。 〇 1991 年 か ら ヨ ー ロ ッ パ 南 部 の 国 々 の 間 で 林 野 火 災 の 消 火 に 関 し て 相 互 応 援 協 定 が 締 結 さ れ 、支 援 活 動 が 開 始 さ れ た 。支 援 内 容 は 航 空 機 を 利 用 し た 消 火 活 動 が 中 心 で あ り 、 既に多数の航空隊派遣実績がある。 ウ .住 民 に 対 す る 広 報 ・避 難 等 の 安 全 対 策 〇 農 業 省 は 林 野 火 災 の 予 防 と 早 期 発 見 の た め に 、 全 国 に 238 基 の 監 視 タ ワ ー を 設 置 し て火災シーズン中、監視を続けている。森林局はビデオカメラを設置して、自動的に 火災を発見できるシステムの実用化を進めている。 〇 1999 年 以 降 、 個 人 の 森 林 所 有 者 も 森 林 の 管 理 計 画 を 策 定 す る こ と に な っ た 。 更 に 、 同年から森林の所有者で構成される森林組合が、火災警備隊を作って火災の発見、調 査、立ち木の管理、消防活動を行うようになった。 - 73 - (5)ス ペ イ ン (文 献 5 ) ア .応 急 対 策 の 基 本 的 な 考 え 方 〇スペイン政府は被害の軽減を図るため、諸外国の林野火災の実情を調査して火災対 策の強化を推進してきた。 〇 国 の 農 業 省 自 然 保 護 研 究 所 (ICONA)は カ ナ ダ や ア メ リ カ 合 衆 国 の 林 野 火 災 対 策 技 術 を調査し、カナダから消防飛行艇、アメリカから火災シミュレーション技術といった 先進技術の導入を図ってきた。 イ .関 係 機 関 の 連 携 ・連 絡 体 制 〇憲法で複数又は単一の自治体が一つの自治州を形成することが認められており、自 治州ごとに防火対策の強化を図っている。 〇 カ タ ル ー ニ ア 自 治 州 は 先 進 的 な 林 野 火 災 対 策 を 進 め て お り 、 1994 年 の 火 災 の 後 、 自 治 州 の 民 間 防 衛 局 が 森 林 計 画 「INFOCAT」を 作 成 し て 消 防 体 制 を 整 備 し 、 消 防 車 両 や 航空機の利用計画を明確にしている。 〇また、カタルーニア自治州地域では私有林が多いことから、個々の森林所有者にも 防火計画を作らせている。 〇 国 有 林 は 、 ICONA が 管 理 を 担 当 し て い る 。 〇林野火災が発生した場合、火災初期の段階の消火作業は自治州あるいは市の消防機 関が行う。火災が拡大した場合には環境省の国立森林火災オペレーションセンターに 支援を要請できる。 〇このセンターは、要請に応じて消防飛行艇や消防隊を派遣する。各自治州で発生す る初期段階の火災に対しても航空機を派遣することがある。 ウ .住 民 に 対 す る 広 報 ・避 難 等 の 安 全 対 策 〇 ス ペ イ ン で は 林 野 火 災 に よ る 人 的 な 被 害 が 大 き く 、1986 年 か ら 2000 年 ま で の 15 年 間 で 124 名 が 犠 牲 に な っ て い る 。 そ の う ち 31 人 (全 体 の 25% )が 住 民 、 7 人 (6% )が ボ ラ ン テ ィ ア 、 86 人 (69% )が 消 防 隊 員 で あ る 。 (6)イ タ リ ア (文 献 6 ) ア .応 急 対 策 の 基 本 的 な 考 え 方 〇イタリアは、地震・洪水・噴火など自然災害がヨーロッパ諸国で一番多く、政府は 被害の軽減を図るために、国、州、県、市町村、住民が連携して災害に対処できる体 制を作りあげた。 イ .関 係 機 関 の 連 携 ・連 絡 体 制 〇国の機関として、首相府の災害対策庁が国の災害対策全体の計画作成と調整を行い、 陸軍、空軍、森林警察の航空隊の派遣についても調整を行う。 - 74 - 〇 さ ら に 、 (国 家 )森 林 警 察 に 森 林 消 火 隊 (AIB)を 設 置 し て 消 火 体 制 を 強 化 し て い る と と も に 、 地 域 の ボ ラ ン テ ィ ア 組 織 (ボ ラ ン テ ィ ア AIB)の 育 成 を 通 じ て 安 全 か つ 効 果 的 な 火災防ぎょ活動の標準化が図られている。 〇地方制度は州、県、市の三層制になっている。 〇 通 常 、 林 野 火 災 を 発 見 し た 住 民 は 、 カ ラ ビ ニ エ リ (軍 事 警 察 が 一 般 の 警 察 活 動 を 行 う も の )、地 方 自 治 体 あ る い は 森 林 警 察 に 通 報 さ れ る 。通 報 を 受 け た 森 林 警 察 は 技 術 者 を 派遣して現有消防力により火災の鎮圧ができるかを判断する。 〇 鎮 圧 が 可 能 と 判 断 す れ ば 、州 の オ ペ レ ー シ ョ ン セ ン タ ー (COR)ま た は 県 の オ ペ レ ー シ ョ ン セ ン タ ー (COP)が ボ ラ ン テ ィ ア 組 織 と 協 力 し て 火 災 の 鎮 圧 を 図 る 。 〇一方、火災の鎮圧が困難と判断すれば、災害対策庁内に設置されて首相が本部長を 兼 務 す る 中 央 統 合 オ ペ レ ー シ ョ ン セ ン タ ー (COAU)に 支 援 を 要 請 す る 。 COAU の 実 動 部隊は、森林警察、空軍、海軍、消防機関の混成チームであり、それぞれが航空隊を 持 ち 、 COAU の 専 門 委 員 会 の 検 討 を 経 て 必 要 な 航 空 隊 が 派 遣 さ れ る 。 〇大規模の林野火災が発生すると森林警察、消防機関、陸軍、空軍、科学技術機関、 赤十字、医療機関、ボランティア組織、山岳警備隊が出動する。消防機関は内務省に 所属する国家機関で、災害・消防・救急業務を担当する。 (7)フ ラ ン ス (文 献 7 ) ア .応 急 対 策 の 基 本 的 な 考 え 方 〇 フ ラ ン ス 政 府 は 1960 年 代 の 初 め か ら 、カ ナ ダ の 消 防 飛 行 艇 や 火 災 危 険 度 予 測 手 法 を 導入して、林野火災対策を強化してきた。 〇 欧 州 地 域 情 報 工 学 会 が 、 フ ラ ン ス の 防 火 体 制 を 図 3.2.2 の 通 り 整 理 し て い る 。 イ .関 係 機 関 の 連 携 ・ 連 絡 体 制 〇災害対策は、内務省、環境省、農業・食糧・漁業省、国防省など多くの機関に関係 するが、林野火災については内務省、農業・食糧・漁業省、環境省の所管である。 〇 内 務 省 の 市 民 防 衛 ・ 市 民 安 全 局 (DDSC)が 自 然 災 害 や 事 故 か ら 国 民 、 財 産 、 環 境 を 保 護する責務を負い、林野火災については、警戒、商家、救急、救助など応急対策を担 当する。 〇 防 災 に 対 す る 国 の 役 割 は 、立 法 、監 視 (気 象 、洪 水 な ど )、危 険 度 予 測 、自 然 災 害 防 止 計 画 (PPR)の ガ イ ド ラ イ ン の 作 成 な ど で あ る 。 〇 ま た 、 州 ・県 の 役 割 は 、 国 と 市 町 村 の 橋 渡 し 、 災 害 時 の 指 揮 (軍 隊 の 発 動 権 限 を 含 む ) で、市町村の役割は土地利用計画の策定、建築許可の行使、避難命令などである。 〇 県 レ ベ ル で は 消 防 機 関 (SDIS)及 び 消 防 ・ 緊 急 オ ペ レ ー シ ョ ン セ ン タ ー (CODIS)が 出 動して被害軽減に向けた活動を行う。 〇 市 町 村 レ ベ ル で は 市 長 が 緊 急 セ ン タ ー (CS)を 設 置 す る 。 - 75 - 〇 災 害 の 規 模 が 県 あ る い は 市 町 村 の 防 災 力 を 超 え る 場 合 に は CODIS を 通 し て 消 防 航 空 隊 や 内 務 省 に 所 属 す る 特 別 防 災 部 隊 (人 員 約 1500 名 )の 派 遣 要 請 を 行 う 。 〇大都市には常設の消防隊、人口の少ない市町村にはボランティアによる消防団があ る 。 消 防 隊 因 数 は 全 国 で 約 24 万 人 で あ り 、 そ の 内 訳 は 常 設 の 消 防 職 員 3 万 人 、 ボ ラ ン テ ィ ア 隊 員 21 万 人 で あ る 。 ウ .住 民 に 対 す る 広 報 ・避 難 等 の 安 全 対 策 〇 事 前 計 画 に 沿 っ て 州 間 市 民 防 衛 ・ 市 民 安 全 調 整 セ ン タ ー (CIRCOSC)が 火 災 危 険 性 に ついて予知した結果を住民に知らせ、被害の軽減に向けた活動を行う。 代表機関 ・ 代表者 火災危険性予知 緊急対応機関 警戒 内務省市民防衛・市民安全局 国 州 航空隊 要請 作戦支援センター 調整 調整 調整 警 戒 要 求 オペレーション (COAD) 要 請 警戒 意思決定 州 知 事 要請 要請 州間調整センター (CIRCOSC) 調整 監視/観測所 火災発見 要 請 対応手段 要 請 警戒 知 事 県 消防隊 ボランティア 組織 防災資源 警 戒 警戒 要 請 緊急調整センター (CODIS) 消防隊 調整 (SDIS) 県間調整局(SIDPC) 市 長 市長村 警 戒 調整 地域防 災資源 消火活動 国 民(住民、旅行者、農林業関係者) 森 林 図 3.2.2 フ ラ ン ス の 防 火 体 制 (欧 州 地 域 情 報 工 学 会 に よ る ) 3.2.3 林 野 火 災 事 例 (1)キ ャ ン ベ ラ の 森 林 火 災 オ ー ス ト ラ リ ア の ビ ク ト リ ア 州 3 で は 、火 災 の 約 4 ヶ 月 後 の 2003 年 5 月 に 、林 野 火 災 対 策 に 関 す る 監 査 レ ポ ー ト (文 献 8 )が と り ま と め ら れ た 。 さ ら に 、 2005 年 10 月 に は 、 そ の 後 の 施 策 展 開 に 対 す る フ ォ ロ ー ア ッ プ レ ポ ー ト (文 献 9 )も 公 開 さ れ て い る 。 以 下 、 これらが示すビクトリア州の取組事例から、①関係機関の連携・連絡体制、②住民に対 する広報・避難等の安全対策に関する記述を抽出する。なお、②については、前出の文 献3が示す概要からも、関連する記述を抽出する。 キ ャ ン ベ ラ を 含 む Australian Capital Territory は 、 ビ ク ト リ ア 州 と ニ ュ ー サ ウ ス ウ ェ ー ル ズ 州 の 境 界 線 か ら わ ず か 100km 程 度 に 位 置 し て い る 。 3 - 76 - ア .関 連 機 関 の 連 携 ・連 絡 体 制 ビクトリア州の取り組みに関する事項 〇 火 災 安 全 戦 略 4 を 定 め 、州 政 府 機 関 で あ る Country Fire Authority(CFA)、Department of Sustainability and Environment(DSE)が 、 州 内 の 地 方 政 府 と 密 接 に 連 携 し て 、 公 有地と私有地の双方における火災の予防ならびに応急対応の統合的な取り組みを進 め る よ う 勧 告 さ れ て い る 。 CFA と DES は こ れ に 対 し て 同 意 を 表 明 し て い る (文 献 9 )。 〇 火 災 安 全 戦 略 の 策 定 は Office of the Emergency Services Commissioner(OESC)が 主 導 し 、 CFA 及 び DSE が 支 援 す る (文 献 9 )。 〇 実 際 の 消 防 活 動 で は 、 消 防 力 を 保 有 す る CFA と DES が 中 核 と な る 。 CFA は メ ル ボ ル ン 市 街 地 以 外 の 私 有 林 に お け る 火 災 の 予 防 と 応 急 対 応 を 担 い 、DSE は 州 内 の 公 有 林 770 万 ヘ ク タ ー ル (77,000km 2 )に お け る 火 災 の 予 防 と 消 火 を 担 当 す る (文 献 8 )。 〇 CFA・DSE 間 で は 2003 年 以 前 か ら オ ペ レ ー シ ョ ン 上 の 連 携 戦 略 の 充 実 を 図 っ て お り 、 消火活動における役割分担を明確にする管理統制システムを活用している。また、こ れ は 複 数 の 州 や 他 国 の 消 防 隊 が 加 勢 す る ケ ー ス で の 活 用 も 想 定 さ れ て い る (文 献 8 )。 イ .住 民 に 対 す る 広 報 ・避 難 等 の 安 全 対 策 ビクトリア州の取り組みに関する事項 〇 2003 年 時 点 で は 、 避 難 行 動 に 対 す る 誤 解 、 住 民 が 必 要 と す る 情 報 、 効 果 的 な 情 報 提 供 手 段 の 把 握 に 継 続 し て 取 り 組 む こ と が 求 め ら れ て い る (文 献 8 )。 場所が特定されていない取り組みに関する事項 〇 2003 年 1 月 8 日 の 火 災 発 生 か ら 、地 域 に 対 す る 火 災 状 況 に 関 す る 情 報 提 供 は 、テ レ ビ、ラジオ、新聞、インターネットなど様々なメディアを通じて十分に伝えられてい た (文 献 3 )。 〇 10 日 後 の 1 月 18 日 の 午 後 、主 務 大 臣 が 緊 急 事 態 を 宣 言 し た 後 は 、ラ ジ オ が 火 災 状 況 や避難が必要な地域に関する最新情報を効果的に伝達できた一方、状況が刻々と変化 した影響で他のメディアは有効に働かなかった。火災危険が高まり、状況が刻々と変 化 す る 中 で 最 も 機 能 し た メ デ ィ ア が ラ ジ オ で あ っ た (文 献 3 )。 〇 避 難 勧 告 の 際 は 、 警 察 に よ る ス ピ ー カ ー を 用 い た 呼 び か け も 行 わ れ た (文 献 3 )。 (2)カ リ フ ォ ル ニ ア 州 南 部 の 林 野 火 災 カ リ フ ォ ル ニ ア 州 は 、 2003 年 10 月 21 日 か ら 11 月 2 日 に か け て 、 南 部 地 域 で 非 常 に 大 規 模 な 林 野 火 災 に 見 舞 わ れ た 。 発 生 し た 火 災 は 下 表 の 6 件 を 含 め た 約 14 件 に わ た り 、 各 火 災 の 合 計 焼 失 面 積 は 30 万 ヘ ク タ ー ル を 超 え た (文 献 10)。 アメリカ合衆国では、発生地点を所轄する地方政府が国内災害への第一義的な対応責 任 を 持 つ 。各 地 の 州 政 府 や 地 方 政 府 は そ れ ぞ れ の 応 急 対 応 方 針 を 備 え 、連 邦 政 府 は 必 要 に 4 Fire Safety Victoria strategy - 77 - 応 じ て 関 与 、支 援 す る こ と に な っ て い る 。以 下 、カ リ フ ォ ル ニ ア 州 南 部 林 野 火 災 に 関 す る 日 本 国 内 の レ ポ ー ト 等 を 参 考 に 、① 関 係 機 関 の 連 携・連 絡 体 制 、② 住 民 に 対 す る 広 報・避 難等の安全対策に関する記述を抽出する。 番号 火災の名称 火災発生日 焼失面積 ( ha) ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ Grand Prix Piru Old Simi Cedar Paradise 10 10 10 10 10 10 28,000 25,600 36,500 43,300 112,000 22,700 月 月 月 月 月 月 21 23 25 25 25 26 日 日 日 日 日 日 ア .関 連 機 関 の 連 携 ・連 絡 体 制 〇州内の防災機関同士の応急対応組織を標準化し、それぞれの機関が災害時には協力 し て 業 務 を 遂 行 す る 制 度 と し て SEMS 5 が 制 定 さ れ て い る 。こ の 制 度 に よ り 、遂 行 業 務 の優先順位や機関相互の協力体制等をあらかじめ明確にしておくとともに、災害対応 に 要 す る コ ス ト の 削 減 、 防 災 資 機 材 の 効 率 的 運 用 が 図 ら れ て い る (文 献 10)。 〇 具 体 的 な 組 織 整 備 と し て は 、 毎 年 多 発 す る 林 野 火 災 に 対 応 す る た め 、 California Department of Forestry and Fire Protection(CDF)を 組 織 し て い る 。ま た 、Governor ’s office of Emergency Services(OES)が 所 有 す る 消 防 車 両 が 州 内 の 消 防 本 部 に 配 置 さ れ 、 各 消 防 本 部 に よ っ て 運 用 さ れ て い る 。( 文 献 10) 〇 州 機 関 は 、 州 内 の County(郡 )及 び 主 な City(市 )が 組 織 す る 消 防 本 部 、 国 有 林 等 を 管 轄 す る 連 邦 政 府 機 関 で あ る Department of Agriculture/Fire Service(USDA/FS:農 務 省 林 野 局 )と 連 携 す る 体 制 に あ る (文 献 10)。 〇 州 及 び 各 地 方 自 治 体 (郡 ・市 等 )は 被 災 者 支 援 の た め の 相 互 支 援 制 度 を 結 び 、OES が 中 心に運用している。この制度は階層的に組まれており、例えば、必要物資の調達にお い て 、ま ず 近 隣 市 町 村 間 で 調 整 し 、手 配 が 不 可 能 な 場 合 は 郡 、州 の 出 先 機 関 、州 政 府 、 連 邦 政 府 等 の 上 級 機 関 に 順 次 要 請 を 上 げ て い く も の で あ る (文 献 10)。 〇 州 内 の 災 害 に 対 す る 連 邦 政 府 の 関 与 又 は 支 援 の 方 法 は 、 2004 年 12 月 に 制 定 さ れ た 国 家 対 応 計 画 (NRP 6 )に 規 定 さ れ て い る 。 NRP は 、 大 統 領 が 国 家 レ ベ ル で の 対 応 の 必 要 性 を 認 め る 災 害 7 に 対 す る 、 主 に 連 邦 政 府 対 応 を 定 め る も の で あ る (文 献 11)。 〇 NRP で は 連 邦 政 府 諸 機 関 が 連 携 し て 提 供 す べ き 機 能 と し て 、 15 種 類 の Emergency Support Function を 定 め て い る 。 ESF#4 が 消 防 機 能 に 該 当 し 、 林 野 、 農 村 地 域 、 都 市域の国有地での火災の発見及び鎮火、州政府や地方政府等の消火活動に対する人 的 ・ 設 備 的 支 援 を 行 う (文 献 11)。 5 6 7 Standardized Emergency Management System National Response Plan( 2003 年 当 時 は Federal Response Plan で あ っ た 。) Incident of National Significance - 78 - 〇 ESF#4 で は 、 USDA/FS が コ ー デ ィ ネ ー タ (ESF Coordinator)と し て 、 日 常 の 予 防 、 直前の準備、応急対応、復旧対応、その後の被害緩和を通して連邦政府対応の全体調 整 を 担 う と と も に 、 主 管 省 庁 (primary agency)と し て 、 担 当 機 能 に 係 る 被 災 州 支 援 活 動の全体統制、被災地の活動拠点及びフィールドの実働部隊への人員派遣、 Department of Commerce(DOC:商 務 省 )等 の 支 援 省 庁 (support agency)に 対 す る 必 要 支援の連絡と要請、役割分担管理と支援省庁及び州機関との活動調整、民間部門機関 と の 連 携 を 通 じ た 資 源 有 効 活 用 度 の 最 大 化 等 を 行 う (文 献 11)。 イ .住 民 に 対 す る 広 報 ・避 難 等 の 安 全 対 策 住民等の被害 〇 約 4,100 棟 の 住 宅 及 び 商 業 ビ ル 等 の 焼 失 (2003 年 11 月 15 日 時 点 、 文 献 12)。 〇 消 防 士 1 名 を 含 む 24 人 が 犠 牲 に な っ た 。死 亡 原 因 例 と し て 、サ ン デ ィ エ ゴ 郡 で 避 難 中 の 自 動 車 内 で 2 人 、そ の 他 の 状 況 で 14 人 が 死 亡 し た ほ か 、ロ サ ン ゼ ル ス 東 約 80km の サ ン バ ナ デ ィ ー ノ で は 、火 勢 が 郊 外 住 宅 地 を 襲 い 民 家 300 戸 が 焼 失 し た 際 に 、逃 げ 遅 れ た 2 人 が 死 亡 し た (文 献 12)。 - 79 - - 80 -
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