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農業用水路の寒冷地における補修工法の開発

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農業用水路の寒冷地における補修工法の開発
「クイックパネル工法」について
○(株)栗本鐵工所 北海道支店
長谷川一仁
農業用水路クイックパネル工法研究会
(独)土木研究所 寒地土木研究所 水利基盤チーム
野宮壽行
佐藤 智
1.はじめに
道営事業等で造成された基幹的な農業用用排水路は長年の供用による経過から,凍害に
よる躯体の劣化や洗掘等による局部的な摩耗によって,水路機能が低下している事例が多
い。そこで,深刻な機能の低下が発生する前に適切な予防保全対策を実施し,施設の長寿
命化を図ることが重要となっている。
従来本州等では農業開水路等の補強、補修工事にFRPM板を型枠としてスムースモル
タルを注入するFRPM板ライニング工法を行っており、二十数年にわたり百数十件以上
の実績を有するが、北海道の積雪寒冷地においては実績が少なく、施工時及び供用後に凍
結等に起因する問題が生じることも予想される。
今回,劣化したコンクリート表面に断熱性能を有する緩衝材とFRPM板を貼り付ける
工法を考案し、平成 18 年度冬期から剣淵町に位置する剣和幹線用水路の一部を試験施工区
間として、(独)土木研究所 寒地土木研究所と(株)栗本鐵工所との産官共同研究によって開
発にあたった。本報告では共同研究で得られた結果を述べるとともに、農業用水路クイッ
クパネル工法研究会で施工した事例をとりあげる。
2.開発期間
平成 18 年 4 月 1 日~平成 22 年 3 月 31 日
3.FRPM板ライニング工法(従来工法)の寒地における問題点
本州等で実施しているFRPM板ライニング工法は、既設水路の内面に、FRPM板を
所定の隙間を開けてアンカーで固定し、その隙間に無収縮モルタルを充填する工法である。
この工法の特長は、軽量で取り扱いが容易で、既設水路を取り壊さないので、産業廃棄物
が発生しないことと、仕上がり内面が平滑であるため、断面が縮小しても所定の流量を確
保できるなどが挙げられる。
しかし寒冷地においてモルタルを打
設する工法は、既設水路の背面からの進
入水が、板又はモルタルと既設水路との
間に蓄積し、その水が凍結融解を繰り返
すと、裏込材は破損してしまい、所定の
性能を満足できない為、北海道内での適
用は困難である。
図1.FRPM 板ライニング工法(従来工法)の概要
4.開発の評価項目
当開発では、裏込材の代替品として緩衝材を使用することを採用した。緩衝材を使用す
ることで上記問題点を解消するだけでなく、断熱効果が上がり、凍上力についても抑制す
る効果が得られることも想定される。そこで当開発の評価項目としては、以下の3項目に
ついて実施するものとする。
①冬季施工方法の確立
②緩衝材の選定評価
③施工材料の凍結融解抵抗性(寒地土木研究所による)
表1.開発の評価項目
5.冬季施工方法の確立
てしおがわ土地改良区のご協力を頂き、当工法が寒冷地における施工の検証を行うた
めに試験施工を実施した。
5.1 試験施工場所について
試験施工場所は、上川郡剣淵町にある剣和幹線用水路(築約 40 年)である。
図2.試験施工場所
写真1.試験施工予定箇所(9 月)
写真2.施工時の風景(11 月)
5.2
施工断面について
施工期間
:平成 18 年 11 月 20 日~平成 18 年 11 月 25 日
施工延長
:約9m(1 スパン)
水路の形状:現場打ちコンクリート製フリューム
図3.既設水路の形状と施工断面図
5.3
施工フローについて
施工フローは以下の通りとする。
準備工
FRPM 板取付工
水替工
目地材シーリング工
水路洗浄工 (清掃 )
上部仕上げ工
温度センサーの設置
小口仕上げ工
緩衝材設置工
撤去・後片付け
図4.施工フロー
5.4
使用材料について
試験施工に使用した材料は、表2のとおりである。
材料名称
材質又は形状
強化プラスチック複合板
板厚:10mm
(FRPM板)
材質:FRPM
質量:20kg/m 2
備考:耐用年数約 50 年(耐候性試験等による)
金属拡張式アンカー
材質:SUS304 相当
(オールアンカーSCタイプ)
寸法:M8×90L
(パッキンt2)
ナット:M8 用特殊ナット
目地材(プライマー含)
材質:1成分湿気硬化型ウレタン系
(Sikaflex-PRO 2UV)
材質:耐用年数約 30 年(耐候性試験等による)
緩衝材(t10)
①エチレンプロピレンゴム
※右記 3 種類を試験品とした
②ポリエチレン
(選択理由は後述)。
③ポリスチレンフォーム
表2.使用材料
5.5
施工状況について
5.5.1 緩衝材への温度センサーの設置状況
側壁両面の緩衝材の水路躯体コンクリート側とFRPM板側に温度センサーを2箇
所ずつ(計4箇所)設置した。
写真3.温度センサー設置状況
5.5.2
FRPM板設置状況
FRPM板設置は,側面→ハンチ面→底面の順番で固定した。
写真4.
FRPM 板設置、加工状況
5.5.3 目地材シーリング工の施工状況と施工完了後の状況
目地材シーリング工は,板の継目部及びハンチ板と底(側)板の隙間に実施するものと
した。
写真5.目地材シーリング塗布状況
写真6.施工完了後の状況(施工後約1年経過)
今回、施工日数は 7 日間で、特に問題なく完了することができた。
6.緩衝材の選定評価
6.1 緩衝材の材質比較
当工法で使用する緩衝材を選定するために、発泡ゴム系及び発泡プラスチック系から
選定し、比較表を作成した。選定する上で特に重要視したのは、耐寒性、耐水性、耐久
性及びコストの項目であり、今回ゴム系ではエチレンプロピレンゴム、プラスチック系
では、ビーズ法ポリスチレンフォーム,ポリエチレンの3種類を試験品として選定した。
発泡ゴム系
発泡プラスチック系
ゴムスポンジ
低密度ゴム ビーズ法 硬質
種類
ポリエチレ
エチレンプ
クロロプレン
ポリスチレ
ン
ウレタンゴム 天然ゴム
ウレタン
ロピレン ブチルゴム シリコンゴム
ゴム
ンフォーム
ゴム
耐候性
△~×
△
○
○
○
△
◎
△
○
△~×
○
○
○
○
△
耐水性
○
○
○
耐アルカリ性
○
○
○
○
△
○
○
○
○
○
△
○
◎
-
耐寒性(-30℃) △
○
○
○
クッション性
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
△
水を通さない △~×
○
○
○
○
○
-
○
○
○
○
○
耐久性
○
○
○
-
100
160
400
2400
80
コスト
140
45
80
総合評価
×
△
△
△
△
△
○
○
○
表3.緩衝材比較表
6.2 緩衝材の圧縮性能
6.1 で 選定した緩衝材の圧縮性能を確認するために緩衝材を圧縮試験機により圧縮 さ
せた時の圧縮性能及び試験前と試験後の復元性の確認を行った。
( 単 位 mm)
測定値
発生たわみ量
(実験値)
プロピレンゴム
E4388
0.85
0.45
ポリスチレンフォーム 50倍発泡
15倍発泡
0.50
ポリエチレン
30倍発泡
1.55
材質
緩衝材の厚さ
試験前
試験後
9.9
10.2
10.1
10.1
9.4
6.5
9.4
8.1
表4.緩衝材の圧縮試験結果
発生たわみ量は、2m の高さの水重が載荷した時の測定値である。試験後の緩衝材の
厚さは、緩衝材を 9mm 圧縮させた直後の測定値である。以上から、圧縮性能に優れてい
るのは、エチレンプロピレンゴムと 15 倍発泡のポリエチレンであることが確認出来た。
6.3 緩衝材の試験施工後の追跡調査(平成 18 年 11 月~平成 20 年 11 月)
南壁側の任意の板を取り外して緩衝材の状態を確認した。
目視では、大きな変化は確認されなかったが、ポリスチレンフォームは水分量を大きく
含んでいるため、耐久性はあまり高くないように思われる。
ポリスチレンフォーム
エチレンプロピレンゴム
ポリエチレン
写真7.緩衝材の取り外し状況
以上の様に、緩衝材の水分吸い込み量、たわみ量、圧縮性能を確認した結果、当工法
で使用する緩衝材としては、エチレンプロピレンゴムと 15 倍発泡のポリエチレンが適
していると考えられ、コスト面から15倍発泡のポリエチレンを採用する事とした。
7.施工材料の凍結融解抵抗性
寒地土木研究所による上記試験施工場所における追跡調査により、当工法によって被覆
された水路躯体コンクリートは殆ど凍結融解が発生しない事が確認されている。
図5.「寒冷地におけるコンクリート開水路の劣化と補修技術」資料より抜粋
(平成 23 年 9 月 14 日
技術講習会
(社) 北海道土地改良設計技術協会
平成 23 年度第 2 回
「寒冷地におけるコンクリート開水路の劣化と補修技術」 (独)土木研
究所 寒地土木研究所講演資料より)
8.試験施工事例
当 工 法 は 施 工 ス ピ ー ド が 速 い と こ ろ か ら 、 「 ク イ ッ ク パ ネ ル 工 法 ( 商 標 登 録 No. 第
5221725 号 )」と名付け、また寒地土木研究所との共同特許登録を完了し(特許 No.特許第
4576636 号)、現在、農業用水路クイックパネル工法研究会を立ち上げ、広報活動なら び
に、各地試験施工への参加を行っている。
施工事業主
施工場所 施工年月 水路の形状 水路の大きさ(幅×高) 延長(m)
北海土地改良区
美唄
2007年10月
開水路
1800mm×1500mm
11
北海土地改良区
岩見沢 2008年11月
開水路
2800mm×1100mm
9
農業用水路クイックパネル研究会
北海道土木測量設計協会
名寄
2009年4月
開水路
1300mm ×950mm
8
てしおがわ土地改良区
北海土地改良区
岩見沢 2010年4月
L型水路
3200mm×1300mm
2
農業用水路クイックパネル研究会
表5.試験施工実績表
通水時の剣淵
岩見沢での施工完了状況
通水時の美唄
岩見沢のL型水路
名寄での施工完了状況
写真8.試験施工写真
9.ストックマネジメント高度化事業に採用された事例
・施工事業主
:
国土交通省
北海道開発局
帯広開発建設部様
・施工場所
:
陸別町
・施工年月
:
2010 年 2 月
・水路形状
:
積みブロック排水路
・施工の目的
:
積みブロックに見られる前傾の要因として背面土の凍上によるもの
H=2700×40m、100 ㎡
と判断され、冷気の侵入を防止する工法で、断熱効果を兼ねた補修
や補強が可能な工法として、本工法が採用された。
項 目
板寸法(最大)
厚さ
写真9.積みブロック排水路施工完了状況
10.まとめと今後にむけて
今回の研究結果から、以下の内容を確認することができた。
・緩衝材は、耐水性、耐久性、施工性及びコストから、発泡ポリエチレンが優れているこ
とを確認することができた。
・北海道内で試験施工を4例実施したが、寒冷地でも特に問題なく施工できることが確認
できた。
・試験施工後、4シーズンについて追跡調査を実施したが、試験施工箇所及び緩衝材は特
に大きな変化は確認されなかったので、機能的にも特に問題ないことを確認することが
できた。
今 後 は 当 工 法 の 実 績 を 増 や し て い く こ と ( 本 年 は 共 和 町 と 増 毛 町 内 の 水 路 で 採 用 )、 並
びに長期的性能について試験施工箇所の追跡調査を継続的に実施していくことが必要であ
ると考える。
尚、当工法の施工単価は、概算直工費約 13 千円/㎡~(水路洗浄工・緩衝材設置工・
FRPM 板設置工・目地材シーリング工を含む、但し断面形状によって変動)となっている。
11.参考文献
・鹿山排水路における施設機能診断について(北海道開発局 帯広開発建設部、北海道開
発局 第52回北海道開発技術研究発表会
発表論文)
・寒冷地における用水路の劣化と保全(寒地土木研究所、北海道開発局 第53回北海道
開発技術研究発表会 発表論文)
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