医療事故情報収集等事業 第35回 報 告 書 ( 平 成25年7月 ∼9月 ) 平成25 年 1 2 月 2 5 日 公益財団法人日 本医療機能評価機構 医療事故防止事業部 本事業の内容(報告書類、事例)は、以下のホームページから閲覧・検索していただけます。 (公財)日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業トップページ:http://www.med-safe.jp/ ○ 報告書類・年報:http://www.med-safe.jp/contents/report/index.html ○ 医 療 安 全 情 報 :http://www.med-safe.jp/contents/info/index.html ○ 公開データ検索:http://www.med-safe.jp/mpsearch/SearchReport.action 目次 はじめに …………………………………………………………………………………… 1 第35回報告書の公表にあたって ……………………………………………………… 3 医療事故情報収集等事業について ……………………………………………………… 5 I 医療事故情報収集等事業の概要……………………………… 45 1 医療事故情報、ヒヤリ・ハット事例収集の経緯 ……………………… 45 2 医療事故情報収集・分析・提供事業の概要 …………………………… 47 【1】事業の目的 ……………………………………………………………………………47 【2】医療事故情報の収集 …………………………………………………………………47 【3】医療事故情報の分析・公表 …………………………………………………………48 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の概要 …………………… 49 【1】事業の目的 ……………………………………………………………………………49 【2】ヒヤリ・ハット事例情報の収集 ……………………………………………………49 【3】ヒヤリ・ハット事例情報の分析・提供 ……………………………………………51 Ⅱ 報告の現況 …………………………………………………… 52 1 医療事故情報収集等事業 ………………………………………………… 52 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 …………………………………… 53 【1】登録医療機関 …………………………………………………………………………53 【2】報告件数 ………………………………………………………………………………55 【3】報告義務対象医療機関からの報告の内容 …………………………………………59 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 …………………………… 78 【1】登録医療機関 …………………………………………………………………………78 【2】全医療機関の発生件数情報報告 ……………………………………………………80 【3】事例情報参加登録申請医療機関の報告件数 ………………………………………85 【4】事例情報参加登録申請医療機関からの報告の内容 ………………………………89 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 ………………………… 106 1 概況 ………………………………………………………………………… 106 【1】分析対象とするテーマの選定状況 ……………………………………………… 106 【2】分析対象とする情報 ……………………………………………………………… 107 【3】分析体制 …………………………………………………………………………… 107 【4】追加調査 …………………………………………………………………………… 107 2 個別のテーマの検討状況 ………………………………………………… 108 【1】血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連 した医療事故 ……………………………………………………………………… 108 【2】医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 …………………………………… 140 3 再発・類似事例の発生状況 ……………………………………………… 201 【1】概況 ………………………………………………………………………………… 201 【2】「湯たんぽ使用時の熱傷」(医療安全情報 No. 17)について ……………… 204 【3】 共有すべき医療事故情報「熱傷に関する事例(療養上の世話以外)」 (第9回報告書)について ……………………………………………………… 212 参考 医療安全情報の提供 …………………………………… 229 【1】事業の目的 ………………………………………………………………………… 229 【2】主な対象医療機関 ………………………………………………………………… 229 【3】提供の方法 ………………………………………………………………………… 229 【4】医療安全情報 ……………………………………………………………………… 230 はじめに 公益財団法人日本医療機能評価機構 理事長 井原 哲夫 本財団は公益財団法人として、国民の医療に対する信頼の確保および医療の質の向上を図ることを 目的として、病院機能評価事業や医療事故情報収集等事業など様々な事業を運営し、医療の質をでき るだけ高く保ち、安心・安全な医療を提供するために、それらの事業に継続して取り組んでおります。 医療事故情報収集等事業では、収集した医療事故等の情報やその集計、分析結果を定期的な報告書 や年報として取りまとめるとともに、医療安全情報を作成し、毎月1回程度公表を行うことで、医療 従事者、国民、行政機関等広く社会に対して情報提供を行っております。その上で、医療安全情報に ついては医療安全の直接の担い手である医療機関により確実に情報提供が行えるよう、希望する病院 にファックスで直接提供する事業を行っております。医療安全情報は平成23年2月から全国の約6 割の病院に提供するまで拡大しています。 本事業は開始後9年が経過しました。この間、医療安全の推進のため、平素より本事業において医 療事故情報やヒヤリ・ハット事例等の情報の提供にご協力いただいております医療機関の皆様や、関 係者の皆様に深く感謝申し上げます。 本事業における報告書の公表は今回が35回目になります。今回は平成25年7月から9月までに ご報告いただいた医療事故情報とヒヤリ・ハット事例の報告をとりまとめたものです。また、本報告 書に掲載しております医療安全情報はこれまで85回の情報提供を行ってきたもののうち、平成25年 7月から9月に提供した No. 80から No. 82を掲載しております。 これまでに公表した報告書に対しては、医療事故の件数や内容に関するお問い合わせや報道など多 くの反響があり、医療安全の推進や医療事故防止に関する社会的関心が依然として高いことを実感し ております。 今後とも、本事業や病院機能評価事業などの様々な事業を通じて、国民の医療に対する信頼の確保 と、日本の医療の質の向上に尽力して参りたいと考えておりますので、ご理解とご協力を賜りますよ う宜しくお願い申し上げます。 -1- -2- 第35回報告書の公表にあたって 公益財団法人日本医療機能評価機構 特命理事 野本 亀久雄 本事業の運営にご理解、ご協力いただき感謝申し上げます。本事業は開始後9年が経過しました。 この間、本事業に対する医療機関の皆様の反応には大きな変化があったと考えています。事業開始当初 には、報告した事例をどのように活用されるのかわからない、という不安を感じておられた医療機関が 多かったように記憶しています。しかし最近では、収集した情報をもっと使いやすい形で提供して欲し いといったご要望が増えてきており、これは事業開始当初とは異なる大きな変化であるととらえていま す。その結果、皆様ご存じのとおり、報告書や年報は次第に内容の濃いものになるとともに、医療安全 情報の提供を行い、さらに後述するWebを活用した情報提供も開始しております。それらの情報を基 盤に、参加して下さっている医療機関の方々に有用な情報としてお返しすることによって、経験したこ とのないタイプの医療事故の実態も理解することが可能となり、具体性をもった医療事故防止が可能と なるようです。 本事業は、多くの医療機関のご協力を得て、医療事故情報やヒヤリ・ハット事例を幅広く収集する ことが基盤となっております。本事業にご参加いただいている医療機関の皆様には、我が国で初めての 試みとして開始された本事業の円滑な運営に関し、ご支援、ご協力いただいておりますことに心より感 謝申し上げます。また、一層充実した情報を全国の医療機関や広く国民に還元できるよう、引き続き、 報告範囲に該当する医療事故情報やヒヤリ・ハット事例が発生した場合は、適切にご報告いただきます よう宜しくお願い申し上げます。 さて、今回は平成25年7月から9月までにご報告いただいた医療事故情報と、ヒヤリ・ハット事例 のご報告をとりまとめた第35回報告書を公表いたします。今回の個別のテーマとしては、 「血液浄化療 法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した医療事故」を取り上げました。本報 告書においては、7月22日から9月16日までの報告システム停止期間の影響により、報告事例の件数 が少なく、対象期間内に収集した事例情報から事例を分析する作業を行うことができなかったため設定 しておりません。そこで当事業部で運営している薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の成果を引用し、 「医療機関と薬局の連携に関連した医療事故」について分析を行いました。さらに、本報告書が対象とす る平成25年7月から9月に提供した、医療安全情報の No. 80から No. 82も掲載しております。 これらの内容を含め、本事業の現況について、第19回報告書から担当部長による解説の頁を、私か らのご挨拶の頁に引き続いて設けております。その頁をお読みいただくことにより、本事業を支えておら れる参加医療機関の皆様に、本事業の最新の状況をお知らせできるものと考えております。そのような 本報告書の内容を、医療機関において、管理者、医療安全の担当者、医薬品の安全使用のための責任者、 医療機器の安全使用のための責任者及びその他の職員の皆様の間で情報共有していただくことにより、 医療安全推進にお役立て下されば大変幸いに存じます。 国民の医療に対する信頼を回復し、その信頼を保っていくためには、医療の安全性を向上させる取り 組みを永く続けていくことが必要であると考えておりますので、私共の事業を通じて、個々の医療事故 防止を超えて、医療に関わる人々の誇りとなるような旗印を作りたいと念願しています。そのために、 9年以上の実績を持つ本事業は、報告を定着させていく時期から、報告された情報を活用していく時期 に移行していかねばならないと考えております。 今後とも本事業の運営主体として、我が国の医療事故防止、医療安全の推進に資するよう、報告書の 内容充実と、層有効な情報提供に取り組んでまいりますので、皆様のご理解とご協力を心よりお願い申 し上げます。 -3- -4- 医療事故情報収集等事業について ∼第35回報告書の内容を中心に∼ 公益財団法人日本医療機能評価機構 執行理事 兼 医療事故防止事業部長 後 信 1 はじめに 平素より、本事業の運営にご理解、ご協力いただき、深く感謝申し上げます。また、7月に発生い たしました、本事業のサーバに対する不正アクセスにより、約2ヶ月間ホームページの運用を停止し たために、皆様にご迷惑やご心配をおかけしましたことをあらためてお詫び申し上げます。そのため に、本報告書が対象としている7∼9月の報告件数が減少しており、集計表等にも影響を与えており ます。しかし、システム復旧以降は順調に報告がなされており、現在では、むしろ通年で昨年を上回 る報告件数が見込める状況にまで回復致していることもあわせてご報告いたします。このことは、事 業に参加していただいている皆様の、医療事故情報やヒヤリ・ハット事例報告に対する変わらぬ意識 の高さを示すものであるとともに、我が国に報告制度が定着していることのあらわれであると考え、 心より感謝しております。 さて今回は、平成25年7月から9月までにご報告いただいた医療事故情報とヒヤリ・ハット事例 のご報告をとりまとめた第35回報告書を公表いたします。報告書の内容を十分ご参照いただき、安 全管理を担当とする方を中心に、それぞれの医療機関の実情に即した有用な部分を院内で周知してい ただければ幸いに存じます。 また、医療を受ける立場でこの報告書や本事業のホームページをご覧の皆様におかれましては、医 療事故やそれに至る前に防止できたヒヤリ・ハット事例の種類や内容、医療機関や医療界が再発防止 に向けて取り組んでいる姿を、ご理解いただければ幸いに存じます。 さらにこのたびの公表にあたり、医療事故情報収集等事業やそれに関連する事業の現況について、 以下にご紹介させていただきます。 2 第35回報告書について 1)図表∼参加登録申請医療機関数の内訳∼ 第22回報告書から、参加登録申請医療機関数の内訳を示す図表を追加しております(52頁)。 医療事故情報を報告している医療機関数、ヒヤリ・ハット事例を報告している医療機関数、重複 を除いた事業参加医療機関数などをお示ししています。本事業に参加している医療機関数は、34 回報告書に記した数より少し増えて平成25年9月30日現在で1,358医療機関となりました。 また、この図表の内容は、本事業の参加状況を示す基本的な内容であることから、ホームページの 「参加登録医療機関一覧」において随時情報を更新してお示ししています(http://www.med-safe. jp/contents/register/index.html) 。 -5- 2)報告件数など この報告書が対象としている7月から9月の間に、503件の医療事故情報をご報告いただきま した。内訳は、報告義務対象医療機関から468件、参加登録申請医療機関、つまり任意で参加し ていただいている医療機関から35件のご報告をいただきました。前年同期には、814件の報告 をいただきましたので311件少なくなりました。この大幅な減少の原因は、7月下旬から9月中 旬までの長期にわたるシステム停止によるものです。同時にシステムが停止していた期間の事例は、 システム再稼動後に、順調に報告されており、時期四半期(10∼12月)は相当な増加となる見 込みであるとともに、通年では昨年の過去最高の件数であった2,882件をさらに今年も更新す る見込みです。したがって、本稿執筆時点の状況から判断すると、従来どおり、報告件数の増加の 傾向が続いているものと考えています。また、引き続き医療事故を報告することが次第に定着して きているために、事業開始以降最近まで医療事故の報告件数が増加し続けてきたものと考えていま す。このたびのシステム停止の影響が最小限にとどまり、現在では再び多くの報告をいただいてい ることからも、報告が定着してきているものと考えています。そのように、十分報告がなされるよ うになった段階で、特定の種類の医療事故がいくつも減少して行くことが観察されると望ましいと 考えておりますとともに、そのためにも有用な事例の報告、分析、情報提供という改善サイクルを 回し続けることが重要です。医療を取り巻く環境が厳しくなっているという指摘が多くなされる中 で、医療事故やヒヤリ・ハット事例の報告をいただいている医療機関の皆様のご協力に心より感謝 申し上げますとともに、今後とも、本報告書中の、「Ⅰ−2 医療事故情報収集・分析・提供事業 の概要【2】医療事故情報の収集」に掲載している報告範囲(47∼48頁)を今一度ご確認いた だき、該当事例を、我が国の医療安全の推進のためにご報告していただければ幸いに存じます。 全ての事業参加医療機関にとって 、 報告範囲に該当する事例が発生したことを把握すること、そ の事実を重要な情報を漏らさず整理すること、これを報告できる形にまとめること、報告すること、 これらのことを行い、質の高い報告を継続的に行うことは、決して容易なことではないと考えてお りますが、本事業に参加することで、先述したような、事実を把握する能力や報告する能力が高ま ることや、医療機関というひとつの組織体として医療安全を重視した運営方針を決断したり職員に 説明したりするための有用な資料とすることができること、などが期待できます。このことは、医 療機関の医療安全推進だけでなく、我が国の医療安全の底上げを図ることになるものと考えられま すので、何卒宜しくお願いいたします。 3)任意参加医療機関からの報告件数∼任意参加医療機関からの報告を期待しています∼ 任意参加の医療機関から報告される医療事故の件数については、報告義務が課せられている医療 機関のそれに比べ随分少ない現状が事業開始後長く続いたあと、平成22年は521件と、それま での約3倍程度に増加しました。しかし、平成23年は316件、平成24年は347件にとどま りました。4∼6月期の報告件数が87件で、本報告書が対象としている7∼9月期は、システム 停止の影響が大きく、35件です。任意参加の医療機関数は685施設に増加しており、そのこと は院内だけでなく全国の医療安全を推進する本事業へのご協力の意思のあらわれと考えられ大変あ りがたく思っております。そして、 「参加」していただく段階の次は、 「報告」の段階です。昨年の 報告件数をみると、私どもの取り組みを含め、この「報告」の段階の取り組みがいまだに不十分で あると考えられます。 -6- 任意で参加されている医療機関からの報告件数が、報告義務が課せられている医療機関からのそ れよりも随分少ないことは、報告に対する意識の違いを示しているとも考えられ、本事業の運営会 議でも指摘されているところです。また、私が依頼講演に対応するたびに、出席者の皆様に、この 点についてご説明とご協力を依頼しています。同時に、報告件数の増加は、医療機関や医療界の中に、 医療事故情報を外部報告することについて十分な動機が成熟してこそ、件数だけでなく質の高い内 容の報告がなされるという考え方も併わせてご説明しています。つまり、報告件数が少ないことを 問題視するあまり、国がいたずらに報告義務を拡大したり、罰則を課したりする方法で達成される ものではないと考えています。 医療事故報告件数は、医療界が医療安全に積極的に取り組んでいる姿勢が評価されるひとつの目 安になると思われます。その件数に、報告義務が課せられている医療機関と任意で参加されている 医療機関の間に大きな差があることは、必ずしも日常の診療現場の医療安全の努力の実態を反映し ていないのではないかと考えられます。そこで、任意で参加されている医療機関の皆様におかれま しては、報告範囲に該当する事例の適切なご報告に引き続きご協力いただきますように、宜しくお 願いいたします。 表1 医療事故の報告件数 年 17年 18年 19年 20年 21年 22年 23年 24年 25年 (1 ∼ 9 月) 報告件数 1,909 参加形態 報告義務 任意参加 1,114 1,296 1,266 1,440 1,895 2,182 2,483 2,535 医療機関数 272 273 273 272 273 272 273 273 274 報告件数 151 155 179 123 169 521 316 347 192 医療機関数 283 300 285 272 427 578 609 653 685 4)報告の現況 「Ⅱ 報告の現況」に示している多くの図表の数値には、毎回大きな変化は見られない傾向にあ ります。本事業は、変化がある場合もない場合も、医療事故やヒヤリ・ハットの現状を社会に継続 的に示し、医療の透明性を高めることに寄与していくことも本事業の役割と考えており、継続して 図表を掲載し、結果をお示ししています。 また、 「事故調査委員会設置の有無」 「当事者の直前1週間の勤務時間」 「発生場所」 「事故調査委 員会設置の有無」 「事故の概要×事故の程度」など、報告書に掲載していない図表が、ホームページ (http://www.med-safe.jp/contents/report/html/StatisticsMenu.html)に掲載されていますので、ご 参照ください。 -7- 図1 集計表のページ 「報告書・年報」のページの 「集計表(Web 掲載分) 」をクリック 四半期毎の表(2013年分) 四半期毎の表(2012年分) 年報の表(2012年分) 5)個別のテーマ(108∼200頁) 今回の個別テーマとしては、 「血液浄化療法(血液透析、血液濾過、血漿交換等)の医療機器に関連し た医療事故」 「医療機関と薬局の連携に関連した医療事故」を取り上げました。通常であれば、この他に 7月から9月に報告された重要な事例をテーマとして設定し、同種事例を過去に遡って、つまり、後方 視的に分析したテーマを設定していますが、今回は7月から9月にシステムが停止していたために、事 例数が少なかったことと、サーバを稼動させて通常のように事例を分析する作業を行うことができなかっ たため設定しておりません。そこでこの機会を利用して、従来から課題であった「医療機関と薬局の連 携に関連した医療事故」を取り上げることとしました。本事業部では、 医療事故情報収集等事業のほかに、 薬局で発生・発見したヒヤリ・ハット事例を収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を実 施しています。その中で、収集された事例や分析結果をみますと、患者にとっては処方から調剤、投薬 という一連の過程にあって、組織の違い、処方せんの作成に関する問題、コミュニケーションの問題、 医薬品の名称類似の問題など、様々な要因によってエラーが発生しており、これらの内容や改善策に関し、 医療機関と薬局との共通理解が形成されることが大変重要であると考えてきました。今年度の後半には、 医療機関と薬局とが参加できる研修会でこの課題を取り上げることも予定していますので、その際の資 料とする意味も込めてこのテーマを取り上げたものです。 -8- 表2 分析テーマ一覧 ①前方視的分析を行うテーマ (テーマを設定後、事例を1年間報告していただき分析するテーマ) ・血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した医療事故 ②後方視的分析を行うテーマ (1∼3月に報告された事例の中からテーマを設定し、同種事例を過去に遡って活用し分析するテーマ) ・なし(7∼9月のシステム停止の影響による) ③その他のテーマ ・医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 テーマ分析の概要を次に紹介します。 ①血液浄化療法(血液透析、血液濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した医療事故 (108∼139頁) 本テーマは、33回報告書から4回にわたり取り上げているテーマであり、今回が3回目になりま す。血液浄化療法は、血液を体外で循環させ、血液中の病因や関連した物質について、半透膜を介し て濾過したり、あるいは材料表面へ吸着したりすることによって除去をする治療法であり、血液濾過 や血漿交換があります。血液浄化療法の対象疾患は、急性腎不全、慢性腎不全はもとより除去対象と なる物質の種類の増加と選択可能な除去手段が増加したことにより、腎以外の臓器不全や多臓器不全、 薬物中毒、さらに自己免疫疾患と多岐にわたっています。そのため、関わる医療者も専門医や透析室 スタッフのみならず、専門以外の内科医や入院病棟スタッフなど多様になっています。 そのような状況にあって、血液浄化療法の実施にあたっては、使用する血液回路、ダイアライザな どの血液浄化器、透析液供給装置などの装置に関する医療事故やヒヤリ・ハット事例が報告されてい ます。関係団体の調査によると、平成23年末の慢性透析患者数は約30万人であり、患者数の推移 が増加傾向にあることから、血液浄化療法を受ける患者数も増加していることが推測できます。この ように対象患者数の増加が予想されることや、血液浄化法により治療を受ける患者の疾患や病態その もののリスクが高いことから、今後も血液浄化法に関する医療事故が増加しうると考えられ、テーマ として取り上げました。 血液浄化療法(血液透析、血液濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した医療事故の内容としては、 「バスキュラーアクセス」 「血液回路」 「血液浄化器等(ダイアライザやフィルタ等) 」 「装置」の事例 が報告されていますが、これらのうち今回は報告件数が最も多かった「血液回路」と「血液浄化器等 (ダイアライザ、フィルタ等) 」に関する事例をテーマとして取り上げました。まず、 「血液回路」の事 例の内容をみると、 「接続部の緩み・はずれ」 「意図しない回路の閉鎖及び開放」 「血液回路からの血液 の漏れ及び空気の混入」などの事例がありました。具体的に回路の例を図示したり、その中の接続部 を示したりしてわかりやすく解説しています。また、 「接続部の緩み・はずれ」を防止するために、現 在では、 ルアーロック式製品が製造・販売されています。 「接続部の緩み・はずれ」の事例の多くはルアー ロック式製品でしたので、ルアーロック式製品が普及しているものと考えられると同時に、ルアーロッ ク式製品の使用方法が 「接続部の緩み・はずれ」 の発生要因となっていることが考えられました。そこで、 ルアーロック式製品による接続のイメージを実際の製品を用いてカラー写真で示しています(122 ∼123頁) 。ルアーロック式製品の構造には、ロックするコネクターが動くものと動かないものとが あり、 それによって接続の操作が異なります。また、 接続時の動きはスリップイン(はめこみ)とルアー -9- ロック(ねじ込み)に分かれます。細かいことですが、 これらを理解していないことが「接続部の緩み・ はずれ」の発生要因となっています。次に、 「血液浄化器等(ダイアライザ、フィルタ等) 」に関する 事例をみると、背景・要因としては、不慣れな医療者による装着や、ダイアライザの種類を同定しに くい管理方法、などが挙げられました。事例の中には、夜間に臨床工学技士が不在の状況で回路交換 の準備を行った際に、持続血液濾過器を装着すべきところ膜型血漿分離器を装着して血圧の低下をき たし、翌日に死亡した事例も報告されました。そこで、改善策としては、夜間の臨床工学技士不在を 解消することなどが報告されています。 血液浄化法装置の回路の組み立てにエラーが生じると、回路の緩みやはずれ、血液の漏出、意図し ない生命に危険を及ぼす可能性があることから、報告された事例の背景・要因や改善を、日々の診療 や看護、血液浄化装置の取り扱いなどの参考にしていただければ幸いです。 図2 ルアーロック式コネクターの接続方法(ロックするコネクターが動くもの) <正しい手順> 1. スリップイン(はめ込み)する 2. ルアーロック(ねじ込み)する <誤った手順> 1. スリップイン(はめ込み)しないで 2. ルアーロック(ねじ込み)する ②医療機関と薬局との連携に関連した医療事故(140∼200頁) 医療機関と薬局との分業が進み、外来患者に交付する処方せんの多くや、退院する患者の処方せん は、薬局で調剤され、薬が交付されています。そして処方される医薬品には、ハイリスク薬なども含 まれることから、医療機関における処方せんの作成及び、薬局における処方せんの監査などの調剤時 の確認や適切な疑義照会が適切になされることが、医薬品による医療事故の防止のために重要と考え られます。患者にとってはこれらの処方から投薬までの過程は一連の流れですが、実際には、医療機 関と薬局との間で、人や組織が異なることにより、エラーを発見できなかったり、エラーを発見する - 10 - ための情報が不足していたりした事例が報告されています。本事業の第25∼28回報告書では、分 析テーマとして「薬剤の施設間等情報伝達に関する医療事故」を取り上げました。そして、医療機関 −薬局間だけでなく、他施設−当該施設間、部門・部署間、診療科間、診療科−部署間などの、施設 や部署・部門、診療科の間でやり取りされる医薬品に関する情報が、様々な媒体により伝達され、そ れが①伝達されなかった事例、②誤った情報が伝達された事例、③情報伝達が途絶した事例、④伝達 された情報が誤解された事例が報告されていることを示しました。その中で、医療機関−薬局間の事 例は2件あり、それらの内容は、 「処方せんの製剤量と有効成分量とを誤解した事例」 「薬局の誤調剤 の事例」でした。情報伝達の媒体はいずれも処方せんであり、処方せんの内容が薬局において誤解さ れた事例でした。 そこで本報告書では、引き続き報告されている医療機関と薬局との連携に関する医療事故情報を分 析することとしました。医療事故事例には、 「医療機関で正しい処方せんが作成されたが薬局で調剤の 誤りがあった事例」と「医療機関で誤った処方せんが作成されそれに基づき薬局で調剤された事例」 とがありました。特に後者の事例における、意図した処方と誤った処方の組み合わせをみると、医療 事故に至っていることからも、その大半はハイリスク薬の組み合わせの事例でした。また処方せんが 誤っていたけれども疑義照会がなされなかった事例が29事例中20例と大半を占めていましたので、 疑義照会がなされなかった事例で報告された改善策には、医療機関と薬局との連携の強化や連携のた めのシステム作りを挙げるものがありました。このことから、医療機関が薬局の業務について一層理 解を深めることが重要と考えられました。 そこで次に、本報告書を参照される医療機関などの皆様に、薬局の業務や機能についてご説明し、 薬剤の医療事故防止のために薬局に必要な情報や疑義照会への対応の重要性を理解していただくため に、薬局における処方せん受付から調剤、交付及び会計までの業務の流れや、疑義照会がなされる業 務段階を図示して解説しました。また、処方せんや患者インタビューなどを通じて薬局が入手し、薬 局において記録、保管されている患者情報などについても、医療機関が薬局の業務をあまり理解して いない中で、薬局には多くの患者情報が記録、保管されていることを示すために、健康保険法に基づ く保険医療療養担当規則に定められている処方せんの様式に記載されている患者情報や、調剤業務の ひとつである、患者に対するインタビューで聴取するアレルギー歴や副作用歴、併用薬剤などの情報、 薬剤服用歴(薬歴)に記載されている事項などを具体的に示しました。 さらに、医療機関と薬局との連携を深めるために、現在では医療機関向けには十分な情報発信がで きていない、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「報告の現況」の「疑義照会」部分や、テー マ分析の中の「疑義照会に関するヒヤリ・ハット事例」 「お薬手法及び薬剤情報提供書に関するヒヤリ・ ハット事例」の分析結果に学ぶことが有用であると考えられることから、 「疑義照会に関するヒヤリ・ ハット事例」のうち「用法変更」 「用量変更」の事例の分析を、直近の分析結果である、平成24年年 報から改変して掲載しました。 「報告の現況」の「疑義照会」部分の集計結果である「疑義があると判 断した理由」からは、薬局が処方せんのエラーを発見する際は、処方せんのみで発見できる事例は少 なく、薬歴やインタビューの内容を活用してエラーを発見していることが分かります。また、疑義照 会の結果、 「薬剤変更」や「薬剤削除」となる事例が多いことも示しました。 また、 参考として、 平成23年年報から「薬剤削除」の事例の分析を、 平成22年年報から「分量変更」 の事例の分析を、平成21年年報から「薬剤変更」の事例の分析を、それぞれ改編して掲載しました。 それらの事例の内容や分析結果をみると、医療機関が薬局に提供すべき具体的な情報や疑義照会の意 義がよく分かり、双方の連携の重要性を改めて示す内容になっているものと考えられました。 - 11 - 本事業では、今年度、医療機関と薬局とが出席し、薬剤に関する医療事故防止のために、医療機関 と薬局との重要性を理解していただくための研修会を開催することを予定しています。医療機関にお かれては、このような事例や分析結果を参考にしていただき、日常診療における処方や監査の体制、 疑義照会への対応に役立てていただければ幸いです。 図3 薬局における調剤業務 ᖱႎ㓸 䋨䉟䊮䉺䊎䊠䊷䋩 ಣᣇ䈞䉖 ක≮ᯏ㑐 ⮎ዪ ಣᣇ ᖚ⠪䊶ኅᣖ ⺞ ⇼⟵ᾖળ ౝ䈭䈬 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(第11回報告書) (212∼228頁) です。概要を次に示します。 ①「湯たんぽ使用時の熱傷」 (医療安全情報 No. 17) (204∼211頁) 医療安全情報 No. 17(平成20年4月提供)では、療養上の世話において湯たんぽを使用した際に、 患者の身体に湯たんぽが接触し熱傷をきたした「湯たんぽ使用時の熱傷」を取り上げました(医療安全 情報掲載件数6件 集計期間:平成18年1月∼平成20年2月) 。その中で、事例が発生した医療機 関の取り組みとして、 「湯たんぽを使用する際は、身体から離して置く。 」ことなどを紹介しています。 さらに第23回報告書においても、分析対象期間内に類似事例が報告されたことを受け、 「再発・類似 事例の発生状況」 (第23回報告書:122∼124頁 平成22年年報:345∼347頁)の項目に おいて事例の概要、背景要因などを取りまとめました。その後も、毎年1∼3件の報告がなされていま すので、このたび、本報告書分析対象期間(平成25年7月∼9月)においても類似の事例が 1 件報告 されたことを受け、再び取り上げたものです。 取り上げた5事例について、熱傷が発生した直前の患者の状態を分析したところ、患者の意識ははっ きりしていますが、外部の刺激を皮膚、粘膜などの組織にある受容器の興奮により感じる体性感覚が低 下していた状態である「下肢障害」や「上肢障害」の項目や、患者が傾眠、混迷、昏睡など意識レベル が低下していた状態である「意識障害」の項目が多く選択されていました。また、5事例すべてにおい て「意識障害」または「下肢障害」が選択されていました。このように、意識障害や体性感覚の低下し ている患者は特に熱傷の危険性を考慮し、適用や使用方法、観察時間などを検討して患者に使用するこ との重要性が示唆されました。 熱傷を生じた主な背景・要因をみると、湯たんぽを患者に使用した医療者が、身体に直接湯たんぽ を接触させた事例や、直接接触する可能性ができる状態であった事例がありました。それらは、短時間 なので安全と判断して湯たんぽを患者に接触させて使用したり、医療者が湯たんぽをセッティングした 際には、患者に触れていなかったけれども、その後患者が体を動かして湯たんぽに足を接触させて使用 したことが推測される事例でした(14頁、表3) 。医療安全情報 No. 17の医療機関の取り組みに挙 げられているように「湯たんぽを使用する際には、患者から離して置く」ように使用することが重要と 考えられました。 また、熱傷の事例の中には、低温熱傷の事例が含まれていました。熱傷は熱源の温度が深く関わり ますが、たとえ低温であっても、熱源である湯たんぽとの接触が長くなると患者の接触部位の知覚の低 下が起こり低温熱傷を起こす可能性があります。そこで、低温熱傷について、独立行政法人製品評価技 術基盤機構から平成21年11月に公表された「低温やけど」の事故防止の注意喚起の内容を紹介しま した。 今回の事例の分析においても、医療安全情報 No. 17(平成20年4月提供)で紹介した、事例が発 生した医療機関の取り組みである、 「湯たんぽを使用する際は、身体から離して置く。 」ことなどの対策 を周知することが重要であると考えられました。医療機関におかれましては、本分析や、これまでに提 供した医療安全情報などを参考にしていただき、湯たんぽによる熱傷の防止に努めて頂ければ幸いです。 - 13 - 表3 湯たんぽによる熱傷の事例の背景・要因や接触の状態 主な背景・要因 事例1 湯たんぽと患者の接触の状態 ・患者は湯たんぽを麻痺側の冷感が強いため、足を 乗せることがあった。 接触できる状態であった ・麻痺側であり、疼痛の訴えはなかった。 事例2 事例3 ・看護師は、湯たんぽはバスタオルで二重に巻き、 バスタオルで二重に巻いて接触させた 寝衣の上から直接右背部に当てるようにした。 ・看護師は湯たんぽを足元にセットする際に、腹臥 位の状態である患者の足の上に一旦置いた。 直接の接触があった ・湯たんぽは患者の足元から離して置いた。 事例4 ・湯をいれた氷嚢は患者の足元から離して置いた。 離して置かれていた 事例5 ・患者の家族が湯たんぽを足元に置いて帰り、医療 不明 者は湯たんぽの使用を知らなかった。 ②共有すべき医療事故情報「熱傷に関する事例(療養上の世話以外)」(第9回報告書) (212∼228頁) 「熱傷に関する事例(療養上の世話以外) 」は、第9回報告書対象分析期間(平成19年1月∼3 月)において、療養上の世話以外の熱傷に関連した事例が報告され、 「共有すべき医療事故情報」とし て取り上げました。なお、本報告書では「熱傷に関する事例(療養上の世話以外) 」を、患者の治療・ 処置の過程において発生する熱傷とし、療養生活において発生する清拭や飲食などの場面における熱 傷と区別しています。本事業では、これまでに、熱傷に関する事例(療養上の世話以外)に関連した 事例の中から、一層注意喚起をするために、医療安全情報「電気メスによる薬剤の引火」 (No. 34) 、 「MRI検査時の高周波電流のループによる熱傷」 (No. 56) 、 「電気メスペンシルの誤った取り扱いに よる熱傷」 (No. 59) 、 「手術中の光源コードの先端による熱傷」 (No. 70)を作成し情報を提供して きました。このたび、 本報告書分析対象期間(平成25年7月∼9月)においても、 熱傷に関する事例(療 養上の世話以外)に関連した類似の事例が6件報告されたため、本報告書で取り上げたものです。 熱傷に関する事例には様々なものがあることから、平成22年から本報告書分析対象期間に報告さ れた事例は67件あり、熱傷に関連した医療機器や薬剤等および、発生場所と事例の内容を概観しま した。事故の発生場所をみると、 「手術室」が多くを占め、 「電気メスペンシルの誤った取り扱いによ る熱傷」 「電気メスによる薬剤の引火」 「手術中の光源コードの先端による熱傷」 「ドリル使用時の熱傷」 「バイポーラ使用時の熱傷」 「レーザー使用時の熱傷」 「対極板や電極に関連した熱傷」 「薬剤による熱傷」 などがありました。具体的には次の事例などがありました。 ・電気メスで凝固止血を行っていたところ、吸引管が口唇上下に接触して熱傷を生じた。 ・ウエルパス、ハイポアルコール、酸素使用時の電気メス使用を契機として発火した。 ・内視鏡手術時に光源コードのライトを点灯した状態でシーツの上に置いたため、接触部が溶け、 高温によって皮膚に熱傷を生じた。 - 14 - ・抜歯の際、使用したマイクロドリルが過度に加熱した。 ・バイポーラーの柄が非絶縁性であり、患者の口角に接触した。 ・気管内腫瘍にYAGレーザー焼灼術を施行中、急に発火した。 ・砕石位の手術の際、対極板(金属、アース)を左臀部に貼付した際、すき間が生じた。 ・生理食塩水と取り違え液状フェノールの染みたガーゼで創部を拭いた。 さらに事例のうち、熱傷の原因が発火であることが明記されている事例が9件あり、それらは、電 気メスによる薬剤の引火、レーザー使用時の発火、石油ベンジン使用時の発火、バイポーラーの使用 時に発火、酸素投与中の鍼灸時の発火の事例でした。具体的には次の通りです。 ・ウエルパス、ハイポアルコール、酸素使用及び電気メス使用による発火した。 ・エタノール及び電気メス使用による発火した。 ・電気メスで切開する際、消毒液に含有されるアルコールに着火した。 ・ステリクロンRエタノール液0. 5(0. 5%クロルヘキシジン入り、アルコール83%入り)に て皮膚を消毒後、閉創しようとしたが、一部出血があっため、電気メスを使用した際に、創の上 においたガーゼに引火した。 ・パワースターバイポーラシザースを収納しているビニル製収納袋から発火した。 ・気管内腫瘍をYAGレーザー焼灼術を施行中、急に発火した。 ・純酸素で換気を行っているタイミングで気管内レーザー焼却を始め、気管内で発火した。 ・創部に貼用していたテープをはがした後、石油ベンジンを浸したガーゼでテープ糊を除去してい た際、突然、そのガーゼが発火した。 ・酸素カヌラを額にずらし鍼灸治療をしていた際に、髪に引火した。 このように、手術室などで、様々な医療機器や医療材料とそれらの使用に関して熱傷が生じており、 それらの中には発火が原因となった事例もありました。目的とした医療が実施されて治療の効果が現 れる一方で、思いがけず熱傷が生じることとなり、その治療が必要となる事態を防ぐために、これら の事例や分析は、医療現場にとって重要な内容であると考えられます。さらに、発火を原因とする事 例は、施設の火災にもつながりかねないものと考えられます。したがって、医療機関におかれましては、 本分析や、これまでに提供した医療安全情報などを参考にしていただき、手術室などにおける熱傷や 発火の事例の防止に努めていただければ幸いです。 - 15 - 表4 熱傷に関連した医療機器や薬剤等 温熱熱傷 機器 49 医療機器 電気メス 18 光源(キセノン光源、腹腔鏡の光源、シュトルツ光源、 5 光源付きレトラクタ、光源コード) 医療機器以外 薬剤 ドリル(マイクロドリル(歯科) 、TPSドリル(歯科)、手術用ドリル) 3 歯科用機器(超音波スケーラ、切削器具用ハンドピース) 2 バイポーラー 3 超音波式ギプスカッタ 2 高周波手術装置 レーザー 2 パルスオキシメータのセンサ 1 アキュラス(眼科用手術装置) 1 ハイパーサーミア治療装置 1 ライトガイド 1 赤外線照射(歯科) 1 人工呼吸回路の熱線 1 パラフィン浴装置 1 鍼灸治療の針 1 その他(滅菌された開胸器が熱かった) 1 ドライヤー(合成皮膚表面接着剤の乾燥に使用) 1 手術創部洗浄液・還流液(高温) 3 石油ベンジン(静電気による発火) 1 電撃傷 機器 14 医療機器 MRI 5 焼灼穿刺針 4 電極パッド 3 除細動器 1 対極板 1 化学熱傷 3 薬剤 フェノール 1 水酸化カリウム 1 水酸化ナトリウム溶液 1 放射線熱傷 機器 1 医療機器 UVB照射用装置 1 合 計 - 16 - 67 3 ホームページの改修と検索機能の向上 1)事例検索に要する時間の短縮 本事業のホームページの「公開データ検索」のボタンをクリックすると、図4の画面が現れます。 このページ上で、医療事故情報やヒヤリ・ハット事例を閲覧することができます。また、図の下方 にボタンがあり、選択した事例を「XML」 「PDF」 「CSV」の3つのファイル形式でダウンロー ドすることが可能です。このような事例を参考に、安全な診療、看護、調剤などのマニュアルの整 備や医薬品の表示の改善、医療安全分野の医学的、工学的な研究が行われています。また、医療事 故が発生した場合に、類似事例を閲覧することで、患者の病状の推移や治療方法などの点で参考に なります。 以上の機能は、本事業に参加しておられる医療機関や研究者の皆様、またその他多くの皆様より、 報告書に掲載される事例が多くなり内容も豊富になっているため、Webを活用した事例の閲覧や 検索ができるシステムの開発を望む声を多くいただいてきたことに対応したものです。そしてこの 検索ページでは、本稿執筆時点で医療事故情報約9,900件とヒヤリ・ハット事例約24,000 件が検索できます。しかし、データベースを構築している機器の性能のために、検索速度が遅いと いうご意見をいただいていました。そのため、平成24年度のシステム改修として、新しい機器を 導入しましたので、今年度はこれまでとは比較にならないくらいの速度で検索が終了するようにな りました。 ご報告いただいた情報をこのような形で公表し、それが適切に活用されることによって医療提供 の仕組みやモノの改善が進み、その成果が実感されることによりさらに報告が定着する、といった 医療安全の好循環が生じ、医療界だけでなく我が国の社会において重要な機能として定着していく ことを願っております。 - 17 - 図4 医療事故、ヒヤリ・ハット事例を閲覧できるページ キーワードの入力 事例概要の選択 ファイル形式毎のダウンロードボタン 2)ホームページの機能追加 本事業のホームページに、①「分析テーマ」と②「再発・類似事例の発生状況」のボタンを追加 しました(図5)。 - 18 - 図5 本事業のホームページ ①「分析テーマ」のボタン ②「再生・類似事例の発生状況」のボタン 図5の①のボタンをクリックすると、第1∼35回報告書で取り上げた分析テーマについて、テー マのタイトルと該当するページのPDFファイルを閲覧することができます。 図6 分析テーマのページ テーマ部分のPDFファイル 第34回報告書 分析テーマ 第33回報告書 分析テーマ 事業開始後、第1∼35回報告書に掲載したテーマの一覧を次に示します。 - 19 - 表5 第1∼35回報告書で取り上げた分析テーマ一覧 第35回 147 血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した医療事故 146 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 145 血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した医療事故 第34回 144 血液凝固阻止剤、抗血小板剤投与下(開始、継続、中止、再開等)での観血的医療行為に 関連した医療事故 143 リツキシマブ製剤投与後のB型肝炎再活性化に関連した事例 2013 年 142 胸腔穿刺や胸腔ドレーン挿入時に左右を取り違えた事例 141 血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した医療事故 第33回 140 血液凝固阻止剤、抗血小板剤投与下(開始、継続、中止、再開等)での観血的医療行為に 関連した医療事故 139 アドレナリンの希釈の呼称に関連した事例 138 MRI検査に関連した医療事故 第32回 137 血液凝固阻止剤、抗血小板剤投与下(開始、継続、中止、再開等)での観血的医療行為に 関連した医療事故 136 脳脊髄液ドレナージ回路を一時的に閉鎖(クランプ)したが、適切に開放されなかった事例 135 院内において加工し使用した医療材料や医療機器に関連した医療事故 134 MRI検査に関連した医療事故 第31回 133 血液凝固阻止剤、抗血小板剤投与下(開始、継続、中止、再開等)での観血的医療行為に 関連した医療事故 132 膀胱留置カテーテル挿入の際、尿流出を確認せずにバルーンを膨らませ尿道損傷を起こした事例 131 採血時、他の患者の採血管を使用した事例 2012 年 130 MRI検査に関連した医療事故 129 自己管理薬に関連した医療事故 第30回 128 患者持参薬が院内不採用であることに気付かず、薬剤の頭3文字検索で表示された他の薬剤を 処方した事例 127 組み立て方を誤った手動式肺人工蘇生器を使用した事例 126 東日本大震災による影響を一因とした事例 125 MRI検査に関連した医療事故 第29回 124 自己管理薬に関連した医療事故 123 医薬品添付文書上【禁忌】の疾患や症状の患者へ薬剤を投与した事例 122 臨床化学検査機器の設定間違いに関連した事例 121 薬剤の施設間等情報伝達に関連した医療事故 第28回 120 自己管理薬に関連した医療事故 119 術後患者の硬膜外腔に持続注入すべき薬剤を静脈に注入した事例 118 研修医が単独でインスリンの単位を誤って調製し患者に投与した事例 117 薬剤の施設間等情報伝達に関連した医療事故 第27回 116 自己管理薬に関連した医療事故 115 NICUにおける薬剤の希釈に関連した事例 114 抗リウマチ目的の methotrexate 製剤を誤って連日投与した事例 2011 年 113 薬剤の施設間等情報伝達に関連した医療事故 第26回 112 食事に関連した医療事故 111 画像診断報告書の内容が伝達されなかった事例 110 薬剤処方時の検索結果としての画面表示に起因した医療事故 109 薬剤の施設間等情報伝達に関連した医療事故 第25回 108 食事に関連した医療事故 107 医療用照明器の光源により発生した熱傷に関連した医療事故 106 集中治療室(ICU)の入室時の薬剤の指示に誤りがあった事例 - 20 - 105 病理に関連した医療事故 第24回 104 食事に関連した医療事故 103 散剤の薬剤量間違い 102 気管内吸引時使用した気管支吸引用カテーテルに関連した医療事故 101 病理に関連した医療事故 100 食事に関連した医療事故 第23回 2010 年 第22回 第21回 第20回 第19回 2009 年 第18回 第17回 99 薬剤内服の際、誤ってPTP包装を飲んだ事例 98 予防接種ワクチンの管理に関する医療事故 97 透析患者に禁忌の経口血糖降下薬を処方した事例 96 病理に関連した医療事故 95 MRIの高周波電流ループによる熱傷 94 救急カートに準備された薬剤の取り間違い 93 持参薬の同系統代替薬を処方した際の医療事故 92 経過表画面の薬剤量を見間違え、ヘパリンを過量投与した医療事故 91 病理に関連した医療事故 90 放射線検査に関連した医療事故 89 皮下用ポート及びカテーテルの断裂に関連した医療事故 88 注射器に分割した輸血に関連した医療事故 87 化学療法に関連した医療事故 86 その他の薬剤に関連した医療事故 85 人工呼吸器に関連した医療事故 84 電気メス等に関連した医療事故 83 B型肝炎母子感染防止対策の実施忘れ(HBワクチン接種等) 82 凝固機能の管理にワーファリンカリウムを使用していた患者の梗塞及び出血 81 薬剤に関連した医療事故 80 人工呼吸器に関連した医療事故 79 ベッドなど病室の設備に関連した医療事故 78 放射線検査に関連した医療事故 77 生殖補助医療に関連した医療事故 76 妊娠判定が関与した医療事故 75 化学療法に関連した医療事故 74 その他の薬剤に関連した医療事故 73 人工呼吸器に関連した医療事故 72 電気メスなどに関連した医療事故 71 手術・処置部位の間違いに関連した医療事故 70 貯血式自己血輸血に関連した医療事故 69 全身麻酔におけるレミフェンタニル使用に関連した医療事故 68 薬剤に関連した医療事故 67 医療機器の使用に関連した医療事故 66 ベッドなど病室の設備に関連した医療事故 65 患者取り違えに関連した医療事故 - 21 - 第16回 第15回 2008 年 第14回 第13回 第12回 第11回 2007 年 第10回 第9回 第8回 第7回 2006 年 第6回 第5回 64 薬剤に関連した医療事故 63 医療機器の使用に関連した医療事故 62 輸血療法に関連した医療事故 61 ベッドなど病室の設備に関連した医療事故 60 薬剤に関連した医療事故 59 医療機器の使用に関連した医療事故 58 リハビリテーションに関連した医療事故 57 輸血療法に関連した医療事故 56 手術における異物残存 55 薬剤に関連した医療事故 54 医療機器の使用に関連した医療事故 53 リハビリテーションに関連した医療事故 52 輸血療法に関連した医療事故 51 薬剤に関連した医療事故 50 医療機器の使用に関連した医療事故 49 小児患者の療養生活に関連した医療事故 48 リハビリテーションに関連した医療事故 47 輸血療法に関連した医療事故 46 薬剤に関連した医療事故 45 医療機器の使用に関連した医療事故 44 小児患者の療養生活に関連した医療事故 43 リハビリテーションに関連した医療事故 42 薬剤に関連した医療事故 41 医療機器の使用に関連した医療事故 40 医療処置に関連した医療事故 39 小児患者の療養生活に関連した医療事故 38 薬剤に関連した医療事故 37 医療機器の使用に関連した医療事故 36 医療処置に関連した医療事故 35 小児患者の療養生活に関連した医療事故 34 薬剤に関連した医療事故 33 医療機器の使用に関連した医療事故 32 医療処置に関連した医療事故 31 検査に関連した医療事故 30 薬剤に関連した医療事故 29 医療機器の使用に関連した医療事故 28 医療処置に関連した医療事故 27 検査に関連した医療事故 26 薬剤に関連した医療事故 25 医療機器の使用に関連した医療事故 24 医療処置に関連した医療事故 23 患者取り違え、手術・処置部位の間違いに関連した医療事故 22 検査に関連した医療事故 21 薬剤に関連した医療事故 20 医療機器の使用に関連した医療事故 19 医療処置に関連した医療事故 18 患者取り違え、手術・処置部位の間違いに関連した医療事故 17 薬剤に関連した医療事故 16 医療機器の使用に関連した医療事故 15 医療処置に関連した医療事故 14 患者取り違え、手術・処置部位の間違いに関連した医療事故 - 22 - 第4回 2005 年 第3回 第2回 第1回 13 手術における異物残存 12 薬剤に関連した医療事故 11 医療機器の使用に関連した医療事故 10 医療処置に関連した医療事故 9 手術における異物残存 8 薬剤に関連した医療事故 7 医療機器の使用に関連した医療事故 6 医療処置に関連した医療事故 5 手術における異物残存 4 薬剤に関連した医療事故 3 医療機器の使用に関連した医療事故 2 手術等における異物残存 1 医療機器の使用に関する事故 次に図5の②のボタンをクリックすると、第18∼35回報告書で取り上げた、 「再発・類似事 例の発生状況」のテーマについて、テーマのタイトルと該当するページのPDFファイルを閲覧 することができます。 図7 再発・類似事例の発生状況のページ 該当ページのPDFファイル 第34回報告書 再発・類似事例の発生状況 第33回報告書 再発・類似事例の発生状況 第18回報告書から開始した「再発・類似事例の発生状況」で掲載した内容を次に示します。 - 23 - 表6 第18∼35回報告書で取り上げた「再発・類似事例の発生状況」一覧 第35回 62 共有すべき医療事故情報「熱傷に関する事例(療養上の世話以外) 」 (第11回報告書)について 61 「湯たんぽ使用時の熱傷」(医療安全情報 No. 17)について 60 「誤った患者への輸血」(医療安全情報 No. 10)について 第34回 2013 年 59 共有すべき医療事故情報「ベッドからベッドへの患者移動に関連した医療事故」 (第13回報告書)について 58 「製剤の総量と有効成分の量の間違い」(医療安全情報 No. 9)について 第33回 57 「MRI検査室への磁性体(金属製品など)の持ち込み」(医療安全情報 No. 10)について 56 第32回 共有すべき医療事故情報「ベッドのサイドレールや手すりに関連した医療事故」 (第13回報告書)について 55 「清拭用タオルによる熱傷」(医療安全情報 No. 46)について 54 「併用禁忌の薬剤の投与」(医療安全情報 No. 61)について 53 「グリセリン浣腸実施に伴う直腸穿孔」(医療安全情報 No. 3)について 第31回 52 「輸液ポンプ等の流量の確認忘れ」(医療安全情報 No. 13)について 51 2012 年 第30回 共有すべき医療事故情報「ベッドからベッドへの患者移動に関連した医療事故」 (第13回報告書)について 50 「ガベキサートメシル酸塩使用時の血管外漏出」 (医療安全情報 No. 33)について 49 「抜歯部位の取り違え」(医療安全情報 No.47)について 48 「薬剤の取り違え」(医療安全情報 No. 4)について 第29回 47 「未滅菌の医療材料の使用」(医療安全情報 No. 19)について 46 「皮下用ポート及びカテーテルの断裂」(医療安全情報 No. 58)について 45 「入浴介助時の熱傷」(医療安全情報 No. 5)について 第28回 44 「『スタンバイ』にした人工呼吸器の開始忘れ」(医療安全情報 No. 37)について 43 「PTPシートの誤飲」(医療安全情報 No. 57)について 42 「電気メスによる薬剤の引火」(医療安全情報 No. 34)について 第27回 41 共有すべき医療事故情報「施設管理の事例」(第11回報告書)について 40 共有すべき医療事故情報「眼内レンズに関連した事例」 (第15回報告書)について 39 「製剤の総量と有効成分の量の間違い」(医療安全情報 No. 9)について 2011 年 第26回 38 「MRI検査室への磁性体(金属製品など)の持ち込み」(医療安全情報 No. 10)について 37 共有すべき医療事故情報「ベッドのサイドレールや手すりに関連した事例」 (第13回報告書)について 36 「薬剤の取り違え」(医療安全情報 No. 4)について 第25回 35 「誤った患者への輸血」(医療安全情報 No. 11)について 34 「ガベキサートメシル酸塩使用時の血管外漏出」 (医療安全情報 No. 33)について 33 「清拭用タオルによる熱傷」(医療安全情報 No. 46)について 32 「インスリン含量の誤認」(医療安全情報 No. 1)について 第24回 31 「人工呼吸器の回路接続間違い」(医療安全情報 No. 24)について 30 共有すべき医療事故情報「眼内レンズに関連した事例」 (第15回報告書)について 29 「MRI検査室への磁性体(金属製品など)の持ち込み」(医療安全情報 No. 10)について 28 「湯たんぽ使用時の熱傷」(医療安全情報 No. 17)について 第23回 27 26 共有すべき医療事故情報「ベッドからベッドへの患者移動に関連した医療事故」 (第13回報告書)について 共有すべき医療事故情報「ガーゼが体内に残存した事例」(第14回報告書)について 25 「ウォータートラップの不完全な接続」(医療安全情報 No. 32)について 24 「未滅菌の医療材料の使用」(医療安全情報 No. 19)について 2010 年 第22回 23 「アレルギーの既往がわかっている薬剤の投与」 (医療安全情報 No. 30)について 22 共有すべき医療事故情報「酸素ボンベ残量の管理に関連した事例」 (第17回報告書)について 21 共有すべき医療事故情報「口頭での情報伝達の間違いが生じた事例」 (第13回報告書)について 20 「抗リウマチ剤(メトトレキサート)の過剰投与に伴う骨髄抑制」 (医療安全情報 No. 2)について 19 「薬剤の取り違え」(医療安全情報 No. 4)について 第21回 18 「手術部位の左右間違い」(医療安全情報 No. 8)について 17 共有すべき医療事故情報「歯科診療の際の部位間違いに関連した事例」(第15回報告書) について 16 共有すべき医療事故情報「施設管理」(第11回報告書)について - 24 - 15 「製剤の総量と有効成分の量の間違い」(医療安全情報 No. 9)について 14 「処方入力の際の単位間違い」(医療安全情報 No. 23)について 第20回 13 「ガベキサートメシル酸塩使用時の血管外漏出」 (医療安全情報 No. 33)について 12 共有すべき医療事故情報「電話による情報伝達間違い」 (第10回報告書)について 11 共有すべき医療事故情報「セントラルモニター受信患者違い」(第16回報告書)について 10 「グリセリン浣腸実施に伴う直腸穿孔」(医療安全情報 No. 3)について 9 「間違ったカテーテル・ドレーンへの接続」(医療安全情報 No. 14)について 2009 年 第19回 8 「注射器に準備された薬剤の取り違え」(医療安全情報 No. 15)について 7 「処方表記の解釈の違いによる薬剤量間違い」(医療安全情報 No. 18)について 6 共有すべき医療事故情報「セントラルモニター受信患者違い」(第16回報告書)について 5 「MRI検査室への磁性体(金属製品など)の持ち込み」(医療安全情報 No. 10)について 4 「誤った患者への輸血」(医療安全情報 No. 11)について 第18回 3 「伝達されなかった指示変更」(医療安全情報 No. 20)について 2 「口頭指示による薬剤量間違い」(医療安全情報 No. 27)について 1 共有すべき医療事故情報「禁忌食品の配膳間違い」(第15回報告書)について また、ホームページの「報告書・年報」のボタンを押すと、図8の画面が開きます。従来、この 画面の上方に、報告書類・年報の「本文検索」及び「集計表の検索」と、「集計表のWeb掲載分」 の閲覧ができるリンクを設定していましたが、これらをボタンのデザインに変更し、さらに「分析 テーマ」と「再発・類似事例の発生状況」のボタンも併せて設置しました。 図8 報告書・年報のページに新設したボタン ① ② ④ ③ ⑤ 1. 検索 ①本文検索 ②集計表検索 2. 閲覧 ③集計表(Web 掲載分、報告書非掲載分を含む) ④分析テーマ ⑤再発・類似事例の発生状況 - 25 - 4 医療事故情報収集等事業平成23年年報(英語版)の公表と Canadian Patient Safety Institute(cpsi-icsp)のプロジェクト「Global Patient Safety Alerts」を通じた情報発信 医療事故情報収集等事業では、平成17年年報より英訳版を作成し、ホームページを通じて公表し たり、海外からの訪問者の方々に差し上げたりして、事業の内容や成果の周知に活用してきました。 本年3月28日に、平成23年年報の英訳版である、 「Project to Collect Medical Near-Miss/Adverse Event Information 2011 Annual Report」を公表いたしました。この内容は、ホームページで閲覧、 ダウンロードできるとともに検索のページ(報告書類・年報検索 Full Text Search:http://www. med-safe.jp/reportsearch/SearchReportInit)より、英語による検索が可能です。 そ の よ う な 情 報 発 信 を 続 け て お り ま し た と こ ろ、 平 成 2 2 年 9 月 に 台 湾 の Taiwan Joint Commission よ り「2010 International Patient Safety Reporting System Conference(2010 病 人 安 全 通報國際研討會 ) in Taiwan」に、また、平成23年11月には中華人民共和国衛生部より「2011 China-ASEAN Forum on Reform and Administration of Public Hospitals」にご招待を受け、本事業や 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業、産科医療補償制度について講演させていただきました。ま た、平成23年6月5日には、東京大学と King s College London(英国)の医療安全及び医療サー ビスの質に関する研究センター(Patient Safety and Service Quality Research Centre, PSSQ, King s College London)が共同し東京大学で開催された、日本と英国の医療安全推進活動の状況に関する ワークショップ(東京大学医学部附属病院・22世紀医療センター主催、東京大学大学院医療安全 管理学講座共催)である「国際会議報告∼医療安全推進日英共同ワークショップ∼ Anglo-Japanese collaboration for Improving Patient safety」や、平成24年9月12日に、東京大学政策ビジョン研 究センターの主催により開催された国際シンポジウム「立場や価値観の違いを超えて 患者の安全の ための合意形成を考える」でも講演させていただきました。それらの機会に、各国の特に先進的で指 導的な医療機関や大都市の医療機関では、同じような取り組みを行っていることや、相互に参考とす べき情報が多いことが改めてよく分かりました。 そこで現在では、本事業の年報の英訳版だけでなく、医療安全情報の英語版も作成して、それらを 海外に向けて情報提供しています。本年3月には、新たに医療安全情報 No. 60∼71の英語版を公 表しました。それらは、本事業のホームページの英語のページ(http://www.med-safe.jp/contents/ english/index.html)に掲載しておりますので、機会がありましたらご活用いただければ幸いに存じま す。No. 72以降の医療安全情報も英訳作業が終了次第公表の予定です。 また、平成22年11月に、カナダの Canadian Patient Safety Institute (cpsi-icsp) がWHOと行う 共同プロジェクトである「Global Patient Safety Alerts」において、本事業の成果物を世界的に共有す ることのご依頼をいただいたことから、そのプロジェクトを通じた情報発信も続けています。同プロ ジェクト「Global Patient Safety Alerts」のホームページの協力団体には、本財団の名称を掲載してい ただいており、同時に、医療安全情報英語版へのリンクを作成していただいています。さらに最近では、 同ページに付された、アラートのキーワード入力による検索機能や、分野別のアラートの閲覧機能に よっても本財団の医療安全情報が検索、閲覧可能になりました(図9,10)。これにより、本事業の 英語のホームページの他に、 「Global Patient Safety Alerts」のページの協力団体のページや検索機能 を通じて、医療安全情報英語版の内容が世界から閲覧されることとなっています。 - 26 - 図9 Canadian Patient Safety Institute(cpsi-icsp)のホームページ 医療安全情報 (英語版)の 国際的な共有 協力国リスト 協力国 Japan,Australia, Canada,Denmark, Hong Kong, England and Wales, European Union, United States - 27 - 図10 Global Patient Safety Alerts の検索のページ (キーワードによる検索) 「MRI」と入力 JCQHCの 医療安全情報 No. 10 「MRI検査室への磁性体 (金属製品など)の持ち込み」 - 28 - (領域別による検索) 「Patient identification」を選択 JCQHCの医療安全情報 No. 25 「診察時の患者取り違え」 - 29 - 図11 新たに医療安全情報 No. 60- 71(英語版)を掲載した本事業のページ - 30 - 図12 世界のアラートを検索できるアプリ(Global Patient Safety Alerts)の画面 及び医療安全情報(英語版) (トップ画面) (組織名によるアラート検索) (国名によるアラート検索) (キーワードによるアラート検索①、 例:MRI) - 31 - (キーワードによるアラート検索②、 「MRI」を検索語とした検索結果) (医療安全情報 No. 10「MRI検査室への 磁性体(金属製品など)の持ち込み」の タイトルなど) (医療安全情報 No. 10「MRI検査室への 磁性体(金属製品など)の持ち込み」の 作成国、組織、URLなど) (医療安全情報 No. 10「MRI検査室への 磁性体(金属製品など)の持ち込み」英語版、 1ページ目) - 32 - 5 The International Society for Quality in Health Care(ISQua)30th International Conference 出席報告 平成25年10月14∼16日に、英国エジンバラで開催された、ISQua第30回国際会議に 出 席 し ま し た。 医 療 事 故 情 報 収 集 等 事 業 に つ い て は、 1 0 月 1 5 日 に「Health Information Technology」のセッションで、15分の講演を行いました。セッション終了後には、英国スコットラ ンド、シンガポール、ハンガリー、ブラジルの各国からの参加者から、同様な報告制度を実施するこ とに高い関心を持っておられ、熱心なご質問を受けました。 図13 国際会議プログラム 図14 本事業について発表したセッション 特に、英国スコットランドの医療安全関の組織である Healthcare Improvement Scotland(http:// www.healthcareimprovementscotland.org/welcome_to_healthcare_improvem.aspx) の 参 加 者 か ら は、国際会議終了後、本事業の講演スライドについて、スライドの提供と NHS Scotland の教育関連 ホームページへの掲載依頼がありました。そこで現在では同ホームページからスライドを閲覧するこ とが出来ます。 - 33 - 図15 NHS Scotland のホームページ スライド(抜粋) その他、産科医療補償制度はポスター発表や、本財団や運営する事業に関連して、講演2件、ポスター 1件の発表を行いました。 また、2016年の同会議は、本財団が中心となって東京で開催することが決定していることか ら、それに向けて我が国の医療の質・安全の改善の取り組みをアピールするために、ブースを出展し、 本財団の運営する病院機能評価事業、認定病院患者安全推進事業、医療事故情報収集等事業、薬局 ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業、産科医療補償制度、EBM医療情報事業(Minds)につい て紹介しました。 イ ス ク ヮ ISQuaとは ○ISQua(The International Society for Quality in Health Care)は、医療の質の向上に関わ る国際団体で1985年に設立され、現在の本部はダブリン(アイルランド)。 ○ISQuaは、約70カ国の組織会員、個人会員とアイルランド政府から資金を得て運営され ている。本財団は組織会員として登録するとともに、個人会員として、本財団役員が参加して いる。 ○ ISQuaは、主に以下の事業を行っている。 ・病院等の第三者評価に関する国際認証 ( IAP:International Accreditation Programme) ・学会誌 International Journal for Quality in Health Care の出版 ・医療の質向上に関する教育・啓発事業 (ISQua Education) ・国際学術会議 International Conference の開催 ○ISQuaでは上記の国際学術会議を毎年開催しており、本年10月に英国エジンバラで開催 された第30回国際学術会議では、次のテーマについて講演や演題発表等が行われた。本財団 からも4名が5件の発表を行った。 ①ガバナンス、リーダーシップ、医療政策 ②患者安全 ③地域の健康改善 - 34 - ④患者・家族の参加、協働 ⑤認定と外部評価 ⑥安全と質に関する教育 ⑦途上国における質と安全の改善 ⑧ヘルスインフォメーション・テクノロジー ⑨パフォーマンスとアウトカム ○今後の開催地(予定) ・2014年:ブラジル(リオデジャネイロ) ・2015年:カタール ・2016年:東京 本事業に関連し、地域∼全国レベルの有害事象報告の仕組みや収集した情報の活用に関する演題は 多くありませんでしたが、そのうち主なものを次に紹介します。 Would mandatory reporting and statutory privilege have made a difference? Clifford Hughes; ISQua ○かつて米国議会において、医療事故における死亡事例が問題視され、懲罰によって医療安全を 達成しようとする考え方があった。しかし、「結果が重大である」「ルールを逸脱した」「リス クの大きすぎる行為を実施した」ことを持って懲罰を与えて医療安全を達成しようとしても成 功しない。そこで現在では、 ・失敗に対してオープンな姿勢で臨むこと ・学習こそが強調されるべきであること などの考え方が採られている。 ○ NSW(New South Wales 州)では、毎年の入院が150万人、600万人/日であり、この ほかに180万人の非入院救急患者がおり、さらに多くの患者が地域で治療されている。平均 在院日数(Average Length of Stay:ALOS)は3. 2日。 ○毎年、14万件のインシデントと1万5000件の苦情が報告されている。これらのうち 600件は Serious と分類(SAC1; Severity Assessment Code1)されている。SAC1 の事例 の中には、450件の患者の死亡事例がある。 ○ The Collaborating Hospitals' Audit of Surgical Mortality (CHASM) は、NSW 州の協力医療機関、 医師の間で行っている手術の実施を問わず入院中の死亡のピア・レビューシステムである。そ の成果として、 ・Program report:専門診療領域別、診療地域別の外科死亡事例の統計をフィードバックする。 ・Individual Surgeon's Report:外科医個人別のデータを、専門医、参加している全ての外科医の データと比較可能な形で本人にフィードバックする。 ・Case Book:誤嚥性肺炎、静脈血栓症の予防などのテーマに関する報告書 を外科医に還元している。 - 35 - (Program report) (Individual Surgeon's Report) - 36 - (Case Book) ○麻酔の領域では、1960年代から同様なレポートを公表してきた。そして、得られた教訓と しては、次の通り。 ・死亡事例のレビューの仕組みを創設するためにはリーダーシップが重要。 ・正しく構成された仕組みの中で行うピア・レビューは有効な方法。 ・内部や外部と有効なコミュニケーションを図ることは死亡事例のピア・レビューに有用。 ・死亡事例のレビューは意思決定者に知恵を与える。 ・死亡事例のレビューは、教育的であるべきであって、懲罰的であるべきではない。 ・死亡事例のレビューの結果は、公開され、医療者、医療政策遂行者、一般市民、利害関係者 の間で共有されるべき。 ○得られたデータは、「コミュニケーションエラーによる術前診断の確認遅れや確認不足」など 13の Performance indicator の評価にも使用されている。 ○その結果、深部静脈血栓症予防の実践や、待期手術が予定通り実施される、といった改善が進 んでいる。また、後方視的にみてリスクの高すぎる患者に対する手術の実施など、手術適応の 決定に問題があった事例が多いことがわかってきた。 ○従って、次のことが有用である。 ・医療者と協力してインシデントレポートを分析すること。 ・重大なインシデントのレポートを分析するにあたり、RCA(Root Cause Analysis)などの 体系化された方法論を用い、どの場所、分野でどのような変化を起こすか決定する。 ・仕組みを提供し、社会に還元する。 - 37 - ○RCAを用いた分析の結果では、システムの因子としては、治療計画の問題。コミュニケーション の問題、治療方針やガイドラインの問題などが見出された。また、繰り返し発生している要因 として、病状悪化の把握不足、敗血症の患者の診断と管理、医薬品に関する事項、急性腹症の 患者の認識と管理、転倒後の管理、急性冠症候群の診断と治療などが見出された。 ○これらの事項に基づいて、強力なレベルの推奨事項を作成するように地域のスタッフを教育し ている。 ○医療において我々は、安全の推進は、単に報告してもらう以上に困難で扱いにくい課題である ことを、痛みを伴いながらゆっくりと学んできた。課題やリスクを報告してもらうことこそが 出発点である。したがって、NSWの全てのスタッフには、実際に発生したインシデントや有 害となる可能性があったインシデントを、州規模のインシデント報告・管理制度において報告 することが求められている。 Building a national approach to learning from adverse events through reporting and review. N. Feilden, M. Aggleton, J. Long, l. Hamilton; UK ○ Healthcare Improvement Scotland は Public Services Reform(Scotland)Act 2010に基づ く組織であり、スコットランドの医療の質の向上を目的としている。2012年には、NHS Ayrshire & Arran(スコットランドの Ayrshire & Arran 地域のNHSの病院群 *)において、重 大なインシデント、有害事象、事例を活用した学習などの仕組みを調査した。調査報告書は、 スコットランドの14あるNHSの事務局に提供され、現在ではそれぞれの地域で有害事象が 有効に活用される確実な仕組みを構築するために活用されている。 ※スコットランド政府のNHS NHS Ayrshire and Arran, NHS Borders, NHS Dumfries and Galloway, NHS Fife, NHS Forth Valley, NHS Grampian, NHS Greater Glasgow and Clyde, NHS Highland, NHS Lanarkshire, NHS Lothian, NHS Orkney, NHS Shetland, NHS Tayside, NHS Western Isles ※NHS Ayrshire & Arran に属する病院 Ailsa Hospital, Arran War Memorial Hospital, Ayrshire Central Hospital, Biggart Hospital, East Ayrshire Hospital, Girvan Community Hospital, Kirklandside Hospital, Lady Margaret Hospital, University Hospital Ayr, University Hospital Crosshouse ○NHS Ayrshire & Arran の調査報告書で示した6つの推奨項目は次の通り。地域のNHS board について、これらの項目を測定した。 ・利害関係者との協働 ・スタッフの教育 ・役割と責任の明確化 - 38 - ・情報管理 ・リスクに応じた透明化された意思決定 ・時宜を得たマネジメント、学習、情報周知と実践 ○ 訪問前分析(Pre-visit analysis)は、次の事項について実施した。 ・有害事象のマネジメントの方針と手続き ・ガバナンスと報告制度の調整 ・NHS Ayrshire & Arran の調査報告書を受けた、現在及び将来計画の評価 ・ 直近18ヶ月間に発生した重大な有害事象の規則のリスト及び具体的な有害事象の詳細な 分析結果 ○訪問調査(Review visit)は、スコットランド全土から専門家を招集し、医療機関を訪問した。 訪問時は、マネジメントの立場の幹部から医療現場で働いているスタッフまで接触し、有害事 象の活用状況を調査した。 ○その結果、スコットランド全土のNHSの医療機関において、有害事象のマネジメントのため の方針や手続きは存在しているが、方法論はそれぞれ異なっており、協働して学習する体系的 な方法は NHS Scotland には存在していなかった。 ○先述した6つの推奨項目に関する教訓は次の通り。 ・ 事例から有用なフィードバックを受けている事例では、有害事象のマネジメントに医療現場 のスタッフが関与していることが多い。 ・ 組織横断的に有害事象のレビューの能力を有する訓練されたスタッフを保有しておくことに より能力が維持され、最新の訓練を受けたスタッフの確保につながる。 ・ 有害事象のマネジメントに強い責任感をもつ幹部を見出すことにより、その人が改善のため の行動の全体像や実施主体を提示することが出来る。 ・ 有害事象から導かれる推奨事項や行動を、明確な仕組みに基づく恒常的な報告・モニター制度 により把握することで、組織横断的に時宜を得た学習成果の実践、共有、適用に活用できる。 Patient Safety Tools(双方向性のワークショップ) Facilitators: Allen Kachalia; US, David Bates; ISQua, Eyal Zimmlichman; US, Malcolm Daniel; SC ワークショップにおける、ファシリテーターの講演内容は次の通り。 (1) Improving Patient Safety: Essential Processess and Skills Allen Kachalia; US, David Bates; ISQua, Eyal Zimmlichman; US, Malcolm Daniel; SC ○医療安全が重要なのは、先進国でも有害事象の発生率は10%に上ることから、健康被害の主 要な原因ではなくても、不必要なコストの発生原因となっている。 ○ 主要な健康被害の原因は次のとおり。 - 39 - ・医薬品の有害事象 ・手術の事象 ・治療に関連した感染症 ・転倒 ・褥創 ・医療機器関連の事象 ・血液製剤関連の事象 ・危険な注射手技 ○強く勧められる取り組みは次のとおり。 ・術中、術後の事象を減少させるための術前のチェックリスト ・CLABSI(catheter-related bloodstream infections) を 減 少 さ せ る た め の Bundle※ や チ ェッ ク リストの導入。 ※疾患の予防などに有効なことが知られている単一の手技を複数集めたグループ。より有効性を増すために採用され る。例えば CLABSI の予防のための Bundle としては、手指消毒、カテーテル挿入時の感染予防、クロルヘキシジン による皮膚消毒、大腿静脈以外の適切な穿刺部位の選択、日々のケアにおけるラインの必要性の確認と不要なライン の抜去、などが挙げられている。 ・尿道カテーテルの使用を減らすための介入 ・ 人工呼吸器関連の肺炎や合併症を減少させるための介入(ベッド頭部(HOB)の挙上、 鎮静の休止、口腔ケア、吸引など) ・手指消毒 ・省略しない用語リスト ・褥創予防のための介入 ・医療関連感染症の予防(マスク、手袋、ガウンなど) ・中心静脈ライン確保時の超音波装置の活用 ・深部静脈血栓症予防のための改善 ○ 対策が奨められるその他の重要な領域 ・転倒予防 ・薬剤師の活用 ・生命維持療法に対する患者の希望の文書化 ・よりよいインフォームド・コンセント ・チームによる訓練 ・服用中の医薬品のリスト化 ・CT/ fluoroscopy 撮影時の被曝量の減少 ・手術のアウトカム指標の活用 ・Rapid Response System ・有害事象の検出システム ・Computerized physician order entry(CPOE)の活用 ・シミュレーションの活用 - 40 - ○ 医療安全の達成に必要な事項∼信頼性の高いシステムを作ることのほかにすべきこと∼ ・システムの改善(実施や計画におけるエラーの排除など) ・ 安全文化の醸成(バランスの取れた説明能力、確実なレポートシステム、透明性、改善活動 に職員が従事することなど) ・ 多職種者からなるチームにおけるパフォーマンスの恒常的な改善(変化をもたらすための職員 の採用、恒常的なデザインの変更、多職種によるアプローチなど) ・リーダーシップ(文化の醸成、資源の供給、組織の優先事項の設定、障害の克服など) (2)Responding to Adverse Events Allen Kachalia; US ○ 医療事故事例として、 「救急外来を初日、2日目、3日目の3回受診し敗血症と診断された 患者の血液培養の結果が2日目には判明していたが医療機関ではその結果が誰にも通知されて おらず、気づかなかった。その後血液培養の結果に従って抗生剤が投与され、患者の入院期間 は延長したものの、家族は究明してもらったことに感謝している事例」を提示。 ○最近の医療安全の考え方に照らせば、エラーは複雑な発生要因により生じるので、複数のミス やエラー回避の機会がありうることや、われわれはこの種のミスを繰り返すものと考えられる。 また、よりよいシステムがあればこの種のエラーを防ぐことができたはずである。しかし、事 例が発生した直後にそのように対応するか、また事例から何を学ぶかは難しい。 ○本事例の患者には、検査結果の把握が遅れたことを告げるべきであるか。また、そうすること の利益は何だろうか。 ○1)短期的な課題と、2)長期的な課題とを認識して対処する必要がある。 ・ 1)短期的には、①治療を継続する、②事実を告げ、謝罪し、原因を調査して明らかにする、 ③文書化とコミュニケーション、④安全管理部門への報告、⑤支援的な資源を投入する、こ とが必要である。 ・ 2)長期的には、①RCAを実施し調査する、②家族とのコミュニケーションと情報の公表、 ③医療機関は Just Culture Approach(リスクのレベル、システム設計などに焦点をあて 学習と説明のバランスを図る取り組み) を採ること、④外部への必要な報告を行うこと、 ⑤システムの見直しを行うことが必要である。 ○ Root Cause Analysis(RCA) ・職種・部門横断的に行う。 ・通常、組織における医療の質や安全に関する部署のスタッフが中心になって行う。 ・事例に関与した医師に対するインタビュー。 ・背景・要因を明らかにするために、医師や専門家と協働で行う。 ・事実に関する情報収集、実現可能な正しい結論を導くこと、結論を実行することなどが課題。 ○情報公開 ・ 医療過誤に関する関心の高まりは、倫理的及び透明性の確保の観点から、一層の情報公開を 求める結果となっている。透明性は、患者−医師間の信頼関係の構築や医療安全文化の醸成 のために必要とされる。 - 41 - ・ 情報公開は、期待しているほど頻繁にはなされていない。その原因としては、過誤を認める ことは困難であり法的リスクを伴うことや、情報公開のやり方がその後経過に影響しうるた めである。 ○ Just Culture とは No Blame を意味しない。 ・かつては医療事故の説明責任を個人に負わせていた。 ・ Just Culture の考え方では、①個人は自らコントロールできないシステムの問題には説明 責任を負わない、②能力のある医療者でも不健全な規範を作りうる(業務の省略、通常守る べきルールの違反)ことを認める、③無謀な行動や意図的な不適切行動は許容しない。 ○対処法 ・ ヒューマンエラーには「励まし」の考え方で対応する。選択肢の改善、 工程の改善、手技の改善、 教育の提供、デザインの改善、環境の改善を行う。 ・ 危険な行動には、 「指導」を行う。危険な行動を取ることのインセンティブを排除する、健 全な行動を取ることのインセンティブを付与する、状況に応じた程度の注意喚起を行う。 ・実質的で正当化できないリスクを意図的に無謀な行動には「懲罰」の考えで対応する。 ○以上のように、有害事象発生時には、短期的、長期的いずれの観点からも行うべきことが多く ある。 こ の よ うに 本 財 団 や 当 事 業 部 は、 国 際 的 な 情 報 発 信 を 一 層 積 極 的 に 行 い、2016 年 に は ISQua国際会議を東京で開催し、さらに本財団で運営している本事業や病院機能評価事業、産科医 療補償制度など、医療安全に関する様々な事業に関する情報を発信して行くこととしています。 6 依頼講演への対応 医療機関、薬局や、関係団体などのご依頼に対応して、本事業の現況や報告書、年報、医療安全情 報などの成果物の内容をご説明する講演を、毎年20回程度行っています。ご説明させていただいて いる内容は表7の通りです。本事業にご参加いただいている医療機関の皆様の中で、ご希望がござい ましたらできるだけ対応させていただきますので、ご連絡いただければ幸いに存じます。 - 42 - 表7 講演内容 1 医療事故情報収集等事業について ・事業の趣旨、概要 ・報告書の内容(集計結果、テーマ分析の内容) ・医療安全情報 ・ホームページの活用方法 ・原因分析の意義、方法 ・海外への情報発信 2 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 ・事業の趣旨、概要 ・集計報告、平成21∼24 年年報の内容(集計結果、テーマ分析の内容) ・薬局ヒヤリ・ハット分析表の活用 ・共有すべき事例の活用方法 ・ホームページの活用 3 産科医療補償制度について ・制度の趣旨、概要 ・審査の現況 ・原因分析の現況 ・原因分析の考え方 ・再発防止の現況 4 その他 ・医療事故情報収集等事業、産科医療補償制度、その他の類似制度の特徴や今後の発展について ・ISQua第30回国際会議において発表された、海外の有害事象報告制度などについて 7 厚生労働省社会保障審議会医療部会における医療事故に係る調査の仕組み等に関する 議論について 平成23年8月より、厚生労働省において「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に 関する検討会」が開催されました。その検討課題の一つである医療事故の原因究明及び再発防止の仕 組み等のあり方について幅広く検討を行うために、平成24年2月より「医療事故に係る調査の仕組 み等のあり方に関する検討部会」が13回開催され、丁寧な議論が行われてきました。 平成25年5月29日に開催された第13回検討部会では、医療事故調査の目的、調査対象、調査 の流れ、院内調査のあり方、第三者機関のあり方、などについて具体的な議論がなされました。そして、 それらをまとめた「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」が公表されています。 その後、11月5日には、社会保障審議会医療保険部会において、次期医療法改正に関する事項の ひとつとして、この取りまとめに基づき、以下のことが説明され、了承されました。 ・ 医療事故の調査及び医療機関への支援を行うことにより医療の安全の確保に資することを目 的とし、業務を適切かつ確実に行うことができると認められる民間の法人を、指定その他の 方法により医療法上に位置づけること ・ 医療事故調査・支援センター(仮称)は、その業務の一部を都道府県医師会、医療関係団体、 大学病院、学術団体等の外部の医療の専門家に委託することができること ・医療機関は、医療事故調査・支援センター(仮称)の調査に協力すべきものとすること ・ 医療機関の協力が得られず調査ができない状況が生じた場合は、医療事故調査・支援センター (仮称)は、その旨を医療機関名とともに公表すること - 43 - 今後は、本事業及び(一社)日本医療安全調査機構で実施されている診療行為に関連した死亡の調 査分析モデル事業でこれまでに得られた知見を踏まえつつ、別途、実務的な検討の場を設け、院内事 故調査の手順については、第三者機関への届け出を含め、厚生労働省においてガイドラインを策定す ることとされています。 我が国の医療安全を確保するためのよりよい仕組みの創設において、本事業としても役割を果たし て行きたいと考えています。 8 おわりに 事業に参加しておられる医療機関の皆様におかれましては、引き続き本事業において医療事故情報 やヒヤリ・ハット事例をご報告いただきますよう宜しくお願い申し上げます。また、これまで以上に 報告しやすい環境を整備することにより、報告の負担のために従来本事業への参加を躊躇しておられ た医療機関の皆様の新規のご参加も期待しております。今後とも本事業が我が国の医療事故防止、医 療安全の推進に資するよう、報告書や年報の内容充実と、一層有効な情報提供に取り組んでまいりま すので、皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。 - 44 - Ⅰ 医療事故情報収集等事業の概要 本事業では、医療事故情報やヒヤリ・ハット事例の収集を基盤として、日々進歩する医療における 安全文化の醸成を図るよう取り組んでいる。 本事業は、医療事故情報収集・分析・提供事業とヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の2つ の事業より構成されており、以下にそれぞれの事業における情報収集の概要を述べる。 1 医療事故情報、ヒヤリ・ハット事例収集の経緯 ヒヤリ・ハット事例収集の経緯 厚生労働省では、平成13年10月から、ヒヤリ・ハット事例を収集・分析し、その改善方策等医 療安全に資する情報を提供する「医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集事業) 」 を開始した。事業開始当初、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(現(独)医薬品医療機器総 合機構)が参加医療機関からヒヤリ・ハット事例を収集したのち厚生労働省へ報告し、厚生労働省の 研究班が集計・分析を行う枠組みとなっていた。この枠組みに従って第1回から第10回までのヒヤ リ・ハット事例収集が行われ、厚生労働省より集計結果の概要を公表する等、収集したヒヤリ・ハッ ト事例に基づく情報提供が行われた。(注1) 平成16年度からは、本財団が医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(現(独)医薬品医療機 器総合機構)よりヒヤリ・ハット事例の収集事業を引き継ぎ、第11回以降のヒヤリ・ハット事例収 集を行ってきた。集計結果や分析は、本財団のホームページにおいて公表している。(注2) 医療事故情報収集の経緯 平成14年4月、厚生労働省が設置した医療安全対策検討会議が「医療安全推進総合対策」(注3)を 取りまとめ公表した。同報告書は、平成13年10月から既に開始された医療安全対策ネットワーク 整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集事業)に関し、「事例分析的な内容については、今後より多くの 施設から、より的確な分析・検討結果と改善方策の分析・検討結果を収集する体制を検討する必要が ある。」と述べるとともに、医療事故事例に関してもその収集・分析による活用や強制的な調査・報 告の制度化を求める意見を紹介しつつ、医療事故の報告に伴う法的な問題も含めてさらに検討する必 要があると述べた。 (注1)厚生労働省ホームページ「医療安全対策について」(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen)参照。 (注2)公益財団法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業」ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。 (注3)医療安全推進総合対策」では、『医療機関における安全対策』、『医薬品・医療用具等にかかわる安全向上』、『医療安全に関する教育研修』、 『医療安全を推進するための環境整備等』を取り組むべき課題として提言がなされた。 厚生労働省ホームページ(医療安全対策のページにおける「報告書等」のページ)(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/ houkoku/index.html)参照。 - 45 - I Ⅰ 医療事故情報収集等事業の概要 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) その後、厚生労働省が平成16年9月21日付で医療法施行規則の一部を改正する省令(注1)を公布 し、特定機能病院などに対して医療事故の報告を義務付けた。本財団は、同年10月1日付厚生労 働省告示第三百七十二号を受け(同年9月30日登録)、当該省令に定める事故等分析事業を行う登 録分析機関となった。さらに平成21年に事業開始5年が経過したことから、本財団は同年9月14 日に医療法施行規則第十二条の五に基づき事故等分析事業を行う登録分析機関として登録更新を行っ た。 また、平成20年より医療機関の報告の負担を軽減し、これまで以上に報告しやすい環境を整備 するとともに、医療安全推進に必要な情報の収集は引き続き行っていく観点から、本事業の運営委 員会(注2)や総合評価部会(注3)において報告体制の見直しが検討された。その内容を具体化し、平成 22年より、新しい医療事故情報やヒヤリ・ハット事例の収集およびインターネット等を活用した 情報提供を開始した。 本財団における事業の経緯 平成16年7月1日、本財団内に医療事故防止センター(現 医療事故防止事業部)を付設し、平 成16年10月7日、法令に基づく医療事故情報の収集を開始した。当事業部では、ヒヤリ・ハット 事例、医療事故情報を併せて総合的に分析し、医療事故防止事業の運営委員会の方針に基づいて、専 門家より構成される総合評価部会による取りまとめを経て報告書を作成している。また、平成18年 度より特に周知すべき事例を医療安全情報として作成し、提供を開始した。 本財団は、報告書や医療安全情報を、本事業に参加している医療機関、関係団体、行政機関などに 送付するとともに、本財団のホームページ(注4)へ掲載することなどにより広く社会に公表している。 (注1)厚生労働省令第133号。 (注2)医療全般、安全対策などの有識者や一般有識者などで構成され、当事業部の活動方針の検討及び活動内容の評価などを行っている。 (注3)各分野からの専門家などで構成され、報告書を総合的に評価・検討している。また、分析手法や方法などに関する技術的支援も行っている。 (注4)公益財団法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業」ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。 - 46 - 2 医療事故情報収集・分析・提供事業の概要 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 2 医療事故情報収集・分析・提供事業の概要 I 【1】事業の目的 報告義務対象医療機関並びに医療事故情報収集・分析・提供事業に参加を希望する参加登録申請医 療機関から報告された医療事故情報などを、収集、分析し提供することにより、広く医療機関が医療 安全対策に有用な情報を共有するとともに、国民に対して情報を提供することを通じて、医療安全対 策の一層の推進を図ることを目的とする。 【2】医療事故情報の収集 (1)対象医療機関 対象医療機関は、次に掲げる報告義務対象医療機関と医療事故情報収集・分析・提供事業に参加を 希望する参加登録申請医療機関である。 i)報告義務対象医療機関(注1) ① 国立高度専門医療研究センター及び国立ハンセン病療養所 ② 独立行政法人国立病院機構の開設する病院 ③ 学校教育法に基づく大学の附属施設である病院(病院分院を除く) ④ 特定機能病院 ii)参加登録申請医療機関(注2) 報告義務対象医療機関以外の医療機関であって、医療事故情報収集・分析・提供事業に参加を希望 する医療機関は、必要事項の登録を経て参加することができる。 (2)医療事故事例として報告していただく情報 報告の対象となる医療事故情報は次の通りである。 ① 誤った医療または管理を行ったことが明らかであり、その行った医療又は管理に起因して、患 者が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期しなかった、若しくは予期して いたものを上回る処置その他の治療を要した事例。 ② 誤った医療または管理を行ったことは明らかでないが、行った医療又は管理に起因して、患者 が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期しなかった、若しくは予期してい たものを上回る処置その他の治療を要した事例(行った医療又は管理に起因すると疑われるも のを含み、当該事例の発生を予期しなかったものに限る)。 (注1)国立高度専門医療研究センター、国立ハンセン病療養所、 独立行政法人国立病院機構の開設する病院、学校教育法(昭和22年法律第26号) に基づく大学の附属施設である病院(病院分院を除く)、特定機能病院に対して、厚生労働省は平成16年9月21日付で医療法施行規則 の一部を改正する省令(平成16年 厚生労働省令第133号)を公布し、医療事故事例の報告を義務付けた。 「報告義務対象医療機関一覧」 は公益財団法人日本医療機能評価機構 「医療事故情報収集等事業」 ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。 (注2) 「参加登録申請医療機関一覧」 は公益財団法人日本医療機能評価機構 「医療事故情報収集等事業」 ホームページ (http://www.med-safe.jp/)参照。 - 47 - Ⅰ 医療事故情報収集等事業の概要 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) ③ ①及び②に掲げるもののほか、医療機関内における事故の発生の予防及び再発の防止に資する 事例。 また、以下の項目を医療事故情報収集等事業要綱 第十四条の2(注1)に基づき、特に報告を求める 事例と定め、報告を求めている。 特に報告を求める事例 ① 汚染された薬剤・材料・生体由来材料等の使用による事故 ② 院内感染による死亡や障害 ③ 患者の自殺又は自殺企図 ④ 入院患者の失踪 ⑤ 患者の熱傷 ⑥ 患者の感電 ⑦ 医療施設内の火災による患者の死亡や障害 ⑧ 間違った保護者の許への新生児の引渡し (3)報告方法及び報告期日 事故報告はインターネット回線(SSL暗号化通信方式)を通じ、Web上の専用報告画面を用い て行う。報告方法は、Web上の報告画面に直接入力し報告する方法と、指定フォーマットを作成し Webにより報告する方法とがある。また、報告は当該事故が発生した日若しくは事故の発生を認識 した日から原則として二週間以内に行わなければならない。 (4)報告形式 報告形式は、コード選択形式と記述形式である(注2)。コード選択形式は、チェックボックスやプル ダウンリストから該当コードを選択して回答する方法である。記述形式は、記述欄に文字入力する方 法である。 【3】医療事故情報の分析・公表 (1)結果の集計 公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部において行った。 (2)集計・分析結果の公表 本報告書及び公益財団法人日本医療機能評価機構ホームページ(注3)を通じて、関係者や国民に情 報提供している。 (注1)医療事故情報収集等事業要綱 第十四条の2 本事業部は、前項の各号に規定する事故の範囲に該当する事例に関する情報を適切に収集 するために、必要な報告項目を定めることができる。 (注2) 「医療事故・ヒヤリ・ハット事例収集システム操作手引き書」に掲載している「医療事故情報報告入力項目(P19 ∼ 36)」を参照(公益 財団法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業」ホームページ(http://www.med-safe.jp/)に掲載) 。 (注3)公益財団法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業」ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。 - 48 - 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の概要 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の概要 I 【1】事業の目的 参加登録医療機関から報告されたヒヤリ ・ ハット情報を収集、分析し提供することにより、広く医 療機関が医療安全対策に有用な情報を共有するとともに、国民に対して情報を提供することを通じて、 医療安全対策の一層の推進を図ることを目的とする。 【2】ヒヤリ・ハット事例情報の収集 (1)対象医療機関 対象医療機関は、医療事故情報収集等事業に参加している医療機関のうち、ヒヤリ・ハット事例収集・ 分析・提供事業に参加を希望する医療機関である。 (2)ヒヤリ・ハット事例として報告していただく情報 i)ヒヤリ・ハットの定義 ① 医療に誤りがあったが、患者に実施される前に発見された事例。 ② 誤った医療が実施されたが、患者への影響が認められなかった事例または軽微な処置・治療を 要した事例。ただし、軽微な処置・治療とは、消毒、湿布、鎮痛剤投与等とする。 ③ 誤った医療が実施されたが、患者への影響が不明な事例。 ii) 「発生件数情報」と「事例情報」を収集する医療機関 ヒヤリ・ハット事例には「発生件数情報」と「事例情報」の2種類の情報がある。以下にそれらの 情報の内容及びそれらの情報を収集する医療機関の相違について述べる。 ① 発生件数情報 発生件数情報はヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する全ての医療機関(注) から、ヒヤリ・ハットの定義に該当する事例の発生件数を収集する。 発生件数情報は、ヒヤリ・ハット事例を「薬剤」 「輸血」「治療・処置」「医療機器等」「ドレーン・ チューブ」「検査」「療養上の世話」「その他」といった事例の概要で分類する。同時に、まず、誤っ た医療行為の実施の有無を分け、さらに誤った医療行為の実施がなかった場合、もしその医療行為 が実施されていたら、患者にどのような影響を及ぼしたか、といった影響度で分類し(発生件数情 報入力画面参照)、それぞれの分類に該当する件数を報告する。 発生件数情報の報告期間は、各四半期(1∼3、4∼6、7∼9、10∼12月)の翌月初めか ら末としている。 (注)「ヒヤリ・ハット事例収集事業参加登録医療機関」は公益財団法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業」ホームページ(http:// www.med-safe.jp/)参照。 - 49 - Ⅰ 医療事故情報収集等事業の概要 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 【発生件数情報入力画面】 誤った医療の実施の有無 実施なし 影響度 項 目 当該事例の内容が仮に実施された場合 実施あり 合 計 死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が必要 な状 況に至ったと が 必 要 であると もしくは処置・治療が不要 考えられる 考えられる と考えられる (1)薬剤 件 件 件 件 件 (2)輸血 件 件 件 件 件 (3)治療・処置 件 件 件 件 件 (4)医療機器等 件 件 件 件 件 (5)ドレーン・チューブ 件 件 件 件 件 (6)検査 件 件 件 件 件 (7)療養上の世話 件 件 件 件 件 (8)その他 件 件 件 件 件 件 件 件 件 件 【1】薬剤の名称や形状に関連する事例 件 件 件 件 件 【2】薬剤に由来する事例 件 件 件 件 件 【3】医療機器等に由来する事例 件 件 件 件 件 【4】今期のテーマ 件 件 件 件 件 合 計 再 掲 注)「今期のテーマ」とは、収集期間ごとに定められたテーマに該当する事例のことです。 ② 事例情報 事例情報はヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する医療機関のうち、事例情 報報告を希望した医療機関(注)から次のⅰ∼ⅴに該当する事例の情報(発生件数情報入力画面実線 囲み部分参照)を収集する。 ⅰ 当該事例の内容が仮に実施された場合、死亡もしくは重篤な状況に至ったと考えられる事例 ⅱ 薬剤の名称や形状に関連する事例 ⅲ 薬剤に由来する事例 ⅳ 医療機器等に由来する事例 ⅴ 収集期間ごとに定められたテーマに該当する事例 事例情報では、ヒヤリ・ハット事例の「発生年月及び発生時間帯」 「医療の実施の有無」 「事例の 治療の程度及び影響度」 「発生場所」 「患者の数、患者の年齢及び性別」「事例の概要、事例の内容、 発生場面、発生要因」等、24項目の情報の報告を行う。 事例情報の報告期限は、事例が発生した日もしくは事例の発生を認識した日から1ヶ月としてい る。 (注)「ヒヤリ・ハット事例収集事業参加登録医療機関」は公益財団法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業」ホームページ(http:// www.med-safe.jp/)参照。 - 50 - 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の概要 (3)報告方法 インターネット回線(SSL暗号化通信方式)を通じ、Web上の専用報告画面を用いて報告を行う。 I (4)報告形式 報告形式は、コード選択形式と記述形式である(注1)。コード選択形式は、チェックボックスやプル ダウンリストから該当コードを選択して回答する方法である。記述形式は、記述欄に文字入力する方 法である。 【3】ヒヤリ・ハット事例情報の分析・提供 (1)結果の集計 公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部において行った。 (2)結果の提供 本報告書及び公益財団法人日本医療機能評価機構ホームページ(注2)を通じて、関係者や国民に情 報提供している。 (注1) 「医療事故・ヒヤリ・ハット事例収集システム操作手引き書」に掲載している「ヒヤリ・ハット事例報告入力項目(P42 ∼ 59)」を参照 (公益財団法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業」ホームページ(http://www.med-safe.jp/)に掲載) 。 (注2)公益財団法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業」ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。 - 51 - Ⅱ 報告の現況 1 医療事故情報収集等事業 医療事故情報収集等事業は、医療事故情報収集・分析・提供事業とヒヤリ・ハット事例収集・分析・ 提供事業の2つの事業により構成されている。 平成25年9月30日現在、それぞれの事業に参加している医療機関は以下の通りである。 (注) 図表Ⅱ - 1- 1 (QI-01) 参加登録申請医療機関の登録状況 ヒヤリ・ハット事業 登録状況 参加する 参加しない 義務 発生件数と 事例情報 参加する 125 参加する 319 合計 発生件数のみ 80 444 任意 医療事故事業 参加しない 69 277 197 274 238 169 166 233 610 510 合計 959 685 399 238 1,358 1,120 各事業の報告の現況を、2 医療事故情報収集・分析・提供事業、3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・ 提供事業に示す。 (注)各図表番号に併記される( )内の番号はWeb上に掲載している同図表の番号を示す。 - 52 - 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集・分析・提供事業は、報告義務対象医療機関と医療事故情報収集・分析・提供事 業に参加を希望する参加登録申請医療機関を対象としている。本報告書の集計は、報告義務対象医療 機関より報告された内容を中心に行った。事故の概要や事故の程度等の集計結果は、平成25年7月 から9月までの集計値と平成25年の累計値とを並列して掲載した。 Ⅱ 【1】登録医療機関 (1)報告義務対象医療機関数及び参加登録申請医療機関数 平成25年9月30日現在、医療事故情報収集・分析・提供事業に参加している医療機関数は以下 の通りである。なお、医療機関数の増減の理由には、新規の開設や閉院、統廃合の他に、開設者区分 の変更も含まれる。 図表Ⅱ - 2- 1 (QA-01) 報告義務対象医療機関数及び参加登録申請医療機関数 開設者 国立大学法人等 独立行政法人国立病院機構 国立高度専門医療研究センター 国 国立ハンセン病療養所 独立行政法人労働者健康福祉機構 その他の国の機関 都道府県 市町村 自治体 公立大学法人 地方独立行政法人 日本赤十字社 恩賜財団済生会 北海道社会事業協会 厚生農業協同組合連合会 国民健康保険団体連合会 自治体以外の公的 全国社会保険協会連合会 医療機関の開設者 厚生年金事業振興団 船員保険会 健康保険組合及びその連合会 共済組合及びその連合会 国民健康保険組合 学校法人 医療法人 公益法人 法人 会社 その他の法人 個 人 合 計 報告義務対象 医療機関 参加登録申請 医療機関 45 143 8 13 0 0 2 0 9 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 52 0 1 0 0 0 274 1 0 0 0 26 0 18 72 1 18 56 18 1 17 1 37 2 1 1 9 0 11 278 42 12 27 36 685 ※参加登録申請医療機関とは、報告義務対象医療機関以外に任意で当事業に参加している医療機関である。 - 53 - Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) (2)参加登録申請医療機関における登録件数の推移 平成25年7月1日から同年9月30日までの参加登録申請医療機関における登録医療機関数の 推移は以下の通りである。なお、本報告書の集計期間には、7月22日から9月16日までの本事業 の報告システム停止期間が含まれているため、その影響により通常の四半期の登録件数よりも少なく なっている。 図表Ⅱ - 2- 2 (QA-02) 参加登録申請医療機関の登録件数 2013 年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 参加登録申請 医療機関数 7 7 4 5 3 3 0 0 5 − − − 登録取下げ 医療機関数 0 0 0 2 0 0 0 0 0 − − − 660 667 671 674 677 680 680 680 685 − − − 累 計 - 54 - 10 月 11 月 12 月 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 【2】報告件数 (1)月別報告件数 平成25年7月1日から同年9月30日までの報告義務対象医療機関及び参加登録申請医療機関の 月別報告件数は以下の通りである。なお、本報告書の集計期間には、7月22日から9月16日まで の本事業の報告システム停止期間が含まれているため、その影響により通常の四半期の報告件数より も少なくなっている。 図表Ⅱ - 2- 3 (QA-03) 報告義務対象医療機関及び参加登録申請医療機関の月別報告件数 Ⅱ 2013 年 報告義務対象 医療機関報告数 参加登録申請 医療機関報告数 報告義務対象 医療機関数 参加登録申請 医療機関数 10 月 11 月 12 月 合計 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 266 203 311 216 200 245 141 0 327 − − − 1,909 38 4 28 42 24 21 26 0 9 − − − 192 273 273 273 275 275 273 274 274 274 − − − − 660 667 671 674 677 680 680 680 685 − − − − (2)医療事故事例の報告状況 ① 報告義務対象医療機関の報告状況 報告義務対象医療機関の平成25年7月1日から同年9月30日までの報告医療機関数及び報告 件数を図表Ⅱ - 2- 4に、事業開始からの報告件数を開設者別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 5に、 病床規模別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 6に、地域別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 7に示す。 また、同期間内における報告医療機関数を報告件数別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 8に示す。なお、 報告義務対象医療機関は事業開始後に特定機能病院の認定や医療機関の廃止等の変更が行われている ため、他の図表と数値が一致しないところがある。平成25年9月30日現在、報告義務対象医療機 関は274施設、病床数合計は141,179床である。本報告書の集計期間には、7月22日から 9月16日までの本事業の報告システム停止期間が含まれているため、その影響により通常の四半期 の報告医療機関数及び報告件数よりも少なくなっている。 図表Ⅱ - 2- 4 (QA-04) 開設者別報告義務対象医療機関の報告医療機関数及び報告件数 開設者 国立大学法人等 国 独立行政法人国立病院機構 国立高度専門医療研究センター 国立ハンセン病療養所 報告医療機関数 医療機関数 ※ 2013 年 9月 30 日現在 2013 年 7月∼9月 報告件数 2013 年 1月∼9月(累計) 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月(累計) 自治体 45 28 45 125 521 143 65 117 146 721 8 3 4 15 53 13 4 7 6 17 12 7 9 56 156 52 24 26 120 437 都道府県 市町村 公立大学法人 地方独立行政法人 法人 学校法人 公益法人 合 計 1 0 1 0 4 274 131 209 468 1,909 - 55 - Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 2- 5 (QA-05) 報告義務対象医療機関の報告件数 報告件数 開設者 国 2004 年 10 月∼ 2013 年9月 国立大学法人等 3,463 独立行政法人国立病院機構 7,059 国立高度専門医療研究センター 708 国立ハンセン病療養所 167 都道府県 自治体 市町村 892 公立大学法人 地方独立行政法人 法人 学校法人 4,041 公益法人 13 合 計 16,343 図表Ⅱ - 2- 6 (QA-06) 病床規模別報告義務対象医療機関の報告医療機関数及び報告件数 病床数 医療機関数 ※ 2013 年 9月 30 日現在 報告医療機関数 2013 年 7月∼9月 報告件数 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 0 ∼ 19 床 0 0 0 0 0 20 ∼ 49 床 14 1 1 3 3 50 ∼ 99 床 5 0 2 0 2 100 ∼ 149 床 7 1 4 1 11 150 ∼ 199 床 7 2 4 2 18 200 ∼ 249 床 16 6 11 7 45 250 ∼ 299 床 16 9 12 20 69 300 ∼ 349 床 28 9 22 11 81 350 ∼ 399 床 14 7 14 14 87 400 ∼ 449 床 28 17 22 49 164 450 ∼ 499 床 18 10 16 30 138 500 ∼ 549 床 11 3 8 6 34 550 ∼ 599 床 9 4 8 12 39 600 ∼ 649 床 27 16 23 76 284 650 ∼ 699 床 7 3 6 29 107 700 ∼ 749 床 11 8 10 20 80 750 ∼ 799 床 2 0 0 0 0 800 ∼ 849 床 12 7 11 54 191 850 ∼ 899 床 4 2 2 14 101 900 ∼ 999 床 9 5 8 14 54 29 21 25 106 401 274 131 209 468 1,909 1000 床以上 合 計 - 56 - 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 2- 7 (QA-07) 地域別報告義務対象医療機関の報告医療機関数及び報告件数 地域 医療機関数 ※ 2013 年 9月 30 日現在 報告医療機関数 2013 年 7月∼9月 報告件数 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 北海道 10 2 7 2 21 東北 25 9 18 10 100 関東甲信越 85 35 59 133 579 東海北陸 38 21 31 97 333 近畿 35 16 28 48 208 中国四国 35 26 34 108 403 九州沖縄 合 計 46 22 32 70 265 274 131 209 468 1,909 図表Ⅱ - 2- 8 (QA-08) 報告件数別報告義務対象医療機関数 報告医療機関数 報告件数 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月(累計) 0 143 67 1 42 21 2 32 20 3 20 24 4 7 28 5 10 18 6 6 11 7 2 12 8 2 10 9 1 10 10 3 6 11 ∼ 20 3 24 21 ∼ 30 2 16 31 ∼ 40 1 2 41 ∼ 50 0 2 51 ∼ 100 0 2 101 ∼ 150 0 1 151 ∼ 200 0 0 200 以上 合 計 0 0 274 274 - 57 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) ② 参加登録申請医療機関の報告状況 参加登録申請医療機関の平成25年7月1日から同年9月30日までの報告医療機関数及び報告件 数を図表Ⅱ - 2- 9に、事業開始からの報告件数を開設者別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 10に示す。 なお、本報告書の集計期間には、7月22日から9月16日までの本事業の報告システム停止期間 が含まれているため、その影響により通常の四半期の報告医療機関数及び報告件数よりも少なくなっ ている。 図表Ⅱ - 2- 9 (QA-09) 参加登録申請医療機関の報告医療機関数及び報告件数 開設者 国 報告医療機関数 医療機関数 ※ 2013 年 9月 30 日現在 2013 年 7月∼9月 報告件数 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 27 2 4 5 17 自治体 109 4 22 4 33 公的医療機関 143 7 17 8 47 法 人 370 8 29 18 92 個 人 36 0 2 0 3 合 計 685 21 74 35 192 図表Ⅱ - 2- 10 (QA-10) 参加登録申請医療機関の報告件数 開設者 国 自治体 公的医療機関 報告件数 2004 年 10 月∼ 2013 年9月 26 462 640 法 人 1,035 個 人 6 合 計 2,169 - 58 - 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 【3】報告義務対象医療機関からの報告の内容 平成25年7月1日から同年9月30日までの報告義務対象医療機関からの医療事故報告の内容は 以下の通りである。本報告書の集計期間には、7月22日から9月16日までの本事業の報告システ ム停止期間が含まれているため、その影響により通常の四半期の件数よりも少なくなっている。 なお、各表は、医療事故情報報告入力項目注)を集計したものである。 図表Ⅱ - 2- 11 (QA-28-A) 当事者職種 当事者職種 件数 医師 271 歯科医師 看護師 10 294 准看護師 2 薬剤師 3 臨床工学技士 1 助産師 0 看護助手 6 診療放射線技師 8 臨床検査技師 10 管理栄養士 0 栄養士 0 調理師・調理従事者 1 理学療法士(PT) 5 作業療法士(OT) 0 言語聴覚士(ST) 0 衛生検査技師 0 歯科衛生士 0 歯科技工士 0 その他 8 合計 Ⅱ 619 ※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。 (注) 「医療事故・ヒヤリ・ハット事例収集システム操作手引書」に掲載している「医療事故情報報告入力項目(P19 ∼ 36) 」を参照(公益財団 法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業」ホームページ(http://www.med-safe.jp/)に掲載) 。 - 59 - Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 2- 12 (QA-29-A) 当事者職種経験 当事者職種経験 医師 歯科医師 看護師 准看護師 薬剤師 臨床工学 技士 助産師 看護助手 診療放射線 臨床検査 技師 技師 0年 7 0 21 0 1 0 0 1 0 0 1年 4 1 28 0 1 0 0 0 0 5 2年 18 1 22 0 0 0 0 1 0 0 3年 15 2 19 0 0 0 0 1 3 0 4年 11 1 14 0 0 0 0 1 0 0 5年 13 0 23 0 0 0 0 1 0 0 6年 15 0 21 0 1 0 0 0 0 0 7年 14 1 13 0 0 0 0 0 0 0 8年 12 0 6 0 0 0 0 0 0 1 9年 10 0 7 0 0 0 0 0 0 0 10 年 15 0 11 0 0 0 0 0 1 0 11 年 12 0 7 0 0 0 0 0 0 0 12 年 17 0 3 0 0 0 0 0 1 0 13 年 9 1 10 0 0 0 0 0 0 0 14 年 12 1 6 0 0 0 0 0 0 0 15 年 10 0 10 0 0 0 0 0 0 0 16 年 10 0 6 0 0 1 0 0 0 0 17 年 15 1 6 0 0 0 0 0 1 0 18 年 7 0 5 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 19 年 4 0 2 0 0 0 20 年 8 0 5 1 0 0 0 0 0 0 21 年 1 0 4 0 0 0 0 0 1 1 22 年 9 0 1 0 0 0 0 1 0 0 23 年 4 0 1 0 0 0 0 0 0 0 24 年 5 0 6 0 0 0 0 0 0 1 25 年 5 0 6 0 0 0 0 0 0 0 26 年 3 0 4 0 0 0 0 0 0 1 27 年 2 0 7 0 0 0 0 0 0 0 28 年 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 29 年 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 30 年 0 1 3 0 0 31 年 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 32 年 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 33 年 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 34 年 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 35 年 3 0 3 0 0 0 0 0 0 0 36 年 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 37 年 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 38 年 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 39 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 40 年超 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 合 計 271 10 294 2 3 1 0 6 8 10 ※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。 - 60 - 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 管理栄養士 栄養士 調理師・ 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 衛生検査 歯科衛生士 歯科技工士 調理従事者 (PT) (OT) (ST) 技師 その他 合計 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 31 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 39 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 43 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 41 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 28 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 37 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 39 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 30 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 19 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 18 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 29 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 19 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 21 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 20 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 20 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 20 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 17 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 24 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 13 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 14 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 7 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 11 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 12 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 11 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 9 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 1 5 0 0 0 0 0 8 619 - 61 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 2- 13 (QA-30-A) 当事者部署配属期間 当事者部署配属期間 医師 歯科医師 看護師 准看護師 薬剤師 臨床工学 技士 助産師 看護助手 診療放射線 臨床検査 技師 技師 0年 60 1 63 0 1 0 0 2 1 2 1年 44 1 66 0 2 0 0 1 0 4 2年 29 0 41 1 0 0 0 1 1 1 3年 19 3 32 0 0 0 0 0 1 0 4年 23 0 15 0 0 0 0 0 1 0 5年 24 1 26 1 0 0 0 2 1 0 6年 12 0 24 0 0 1 0 0 0 0 7年 8 2 8 0 0 0 0 0 0 0 8年 6 0 2 0 0 0 0 0 0 0 9年 7 0 3 0 0 0 0 0 0 0 10 年 6 0 6 0 0 0 0 0 0 0 11 年 1 1 2 0 0 0 0 0 0 1 12 年 8 0 1 0 0 0 0 0 1 0 13 年 3 0 0 0 0 0 0 0 0 1 14 年 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 15 年 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 16 年 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 17 年 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 18 年 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 19 年 1 0 1 0 0 0 20 年 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 21 年 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 22 年 2 0 1 0 0 0 0 0 0 0 23 年 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 24 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 25 年 1 0 2 0 0 0 0 0 0 0 26 年 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 27 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 28 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 29 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 30 年 0 1 0 0 0 31 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 32 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 33 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 34 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 35 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 36 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 37 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 38 年 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 39 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 40 年超 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 合 計 271 10 294 2 3 1 0 6 8 10 ※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。 - 62 - 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 管理栄養士 栄養士 調理師・ 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 衛生検査 歯科衛生士 歯科技工士 調理従事者 (PT) (OT) (ST) 技師 その他 合計 0 0 0 2 0 0 0 0 0 1 133 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 118 0 0 0 2 0 0 0 0 0 1 77 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 57 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 40 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 56 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 37 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 19 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 10 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 13 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 10 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 6 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 5 0 0 0 0 0 8 619 - 63 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 2- 14 (QA-35-A) 事故の概要 事故の概要 2013 年7月∼9月 件数 % 2013 年1月∼9月(累計) 件数 % 薬剤 32 6.8 149 7.8 輸血 2 0.4 6 0.3 治療・処置 127 27.1 511 26.8 医療機器等 6 1.3 40 2.1 30 6.4 129 6.8 ドレーン・チューブ 検査 療養上の世話 その他 合 計 29 6.2 102 5.3 188 40.2 714 37.4 54 11.5 258 13.5 468 100.0 1,909 100.0 ※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。 図表Ⅱ - 2- 15 (QA-37-A) 事故の程度 事故の程度 死亡 2013 年7月∼9月 件数 % 29 6.2 2013 年1月∼9月(累計) 件数 142 % 7.4 障害残存の可能性がある(高い) 51 10.9 180 9.4 障害残存の可能性がある(低い) 118 25.2 522 27.3 障害残存の可能性なし 142 30.3 537 28.1 障害なし 118 25.2 466 24.4 不明 合 計 10 2.1 62 3.2 468 100.0 1,909 100.0 ※事故の発生及び事故の過失の有無と「事故の程度」とは必ずしも因果関係が認められるものではない。 ※ 「不明」には、報告期日(2週間以内)までに患者の転帰が確定していないもの、 特に報告を求める事例で患者に影響がなかった事例も含まれる。 ※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。 - 64 - 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 2- 16 (QA-40-A) 関連診療科 関連診療科 2013 年7月∼9月 件数 2013 年1月∼9月(累計) % 件数 % 内科 46 7.6 173 7.3 麻酔科 24 4.0 74 3.1 循環器内科 26 4.3 135 5.7 神経科 20 3.3 55 2.3 呼吸器内科 34 5.6 82 3.4 消化器科 41 6.8 143 6.0 血液内科 15 2.5 55 2.3 循環器外科 5 0.8 16 0.7 アレルギー科 1 0.2 5 0.2 1 0.2 22 0.9 小児科 リウマチ科 33 5.4 146 6.1 外科 39 6.4 182 7.6 整形外科 79 13.0 310 13.0 形成外科 8 1.3 23 1.0 美容外科 0 0.0 0 0.0 32 5.3 100 4.2 脳神経外科 5 0.8 47 2.0 11 1.8 74 3.1 小児外科 1 0.2 15 0.6 ペインクリニック 1 0.2 1 0.0 呼吸器外科 心臓血管外科 皮膚科 11 1.8 41 1.7 泌尿器科 20 3.3 73 3.1 0 0.0 0 0.0 性病科 肛門科 0 0.0 0 0.0 12 2.0 32 1.3 産科 4 0.7 10 0.4 婦人科 5 0.8 28 1.2 産婦人科 眼科 13 2.1 39 1.6 耳鼻咽喉科 14 2.3 66 2.8 1 0.2 2 0.1 心療内科 29 4.8 125 5.2 リハビリテーション科 精神科 2 0.3 9 0.4 放射線科 8 1.3 36 1.5 歯科 7 1.2 14 0.6 矯正歯科 0 0.0 1 0.0 小児歯科 0 0.0 0 0.0 歯科口腔外科 8 1.3 33 1.4 不明 0 0.0 2 0.1 その他 合 計 50 8.3 217 9.1 606 100.0 2,386 100.0 ※「関連診療科」は複数回答が可能である。 ※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。 - 65 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 2- 17 (QA-41-A) 発生要因 発生要因 当事者の行動に関わる要因 確認を怠った 観察を怠った 報告が遅れた(怠った) 記録などに不備があった 連携ができていなかった 患者への説明が不十分であった(怠った) 判断を誤った ヒューマンファクター 知識が不足していた 技術・手技が未熟だった 勤務状況が繁忙だった 通常とは異なる身体的条件下にあった 通常とは異なる心理的条件下にあった その他 環境・設備機器 コンピュータシステム 医薬品 医療機器 施設・設備 諸物品 患者側 その他 その他 教育・訓練 仕組み ルールの不備 その他 合 計 2013 年7月∼9月 2013 年1月∼9月(累計) 件数 % 件数 % 595 159 118 19 13 77 70 139 241 65 66 46 8 14 42 203 6 5 18 20 15 118 21 214 70 14 43 87 1,253 47.4 12.7 9.4 1.5 1.0 6.1 5.6 11.1 19.3 5.2 5.3 3.7 0.6 1.1 3.4 16.2 0.5 0.4 1.4 1.6 1.2 9.4 1.7 17.0 5.6 1.1 3.4 6.9 100.0 2,419 646 516 62 59 293 270 573 945 265 240 189 36 58 157 939 34 41 79 99 60 545 81 912 359 84 158 311 5,215 46.4 12.4 9.9 1.2 1.1 5.6 5.2 11.0 18.1 5.1 4.6 3.6 0.7 1.1 3.0 18.2 0.7 0.8 1.5 1.9 1.2 10.5 1.6 17.5 6.9 1.6 3.0 6.0 100.0 ※「発生要因」は複数回答が可能である。 ※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。 図表Ⅱ - 2- 18 (QA-42-A) 特に報告を求める事例 特に報告を求める事例 汚染された薬剤・材料・生体由来材料等の使用 による事故 院内感染による死亡や障害 患者の自殺又は自殺企図 2013 年7月∼9月 件数 1 % 0.2 2013 年1月∼9月(累計) 件数 7 % 0.4 0 0.0 1 0.1 13 2.8 44 2.3 入院患者の失踪 1 0.2 9 0.5 患者の熱傷 5 1.1 15 0.8 患者の感電 0 0.0 0 0.0 医療施設内の火災による患者の死亡や障害 0 0.0 2 0.1 間違った保護者の許への新生児の引渡し 本事例は選択肢には該当しない 合 計 0 0.0 0 0.0 448 95.7 1,831 95.9 468 100.0 1,909 100.0 ※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。 - 66 - 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 2- 19 (QA-64-A) 発生場面 × 事故の程度 障害残存の 障害残存の 可能性がある 可能性がある (高い) (低い) 死亡 発生場面×事故の程度 障害残存の 可能性なし 障害なし 不明 合計 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) 薬剤に関する項目 手書きによる処方箋の作成 オーダリングによる処方箋の作成 口頭による処方指示 手書きによる処方の変更 オーダリングによる処方の変更 口頭による処方の変更 その他の処方に関する場面 内服薬調剤 注射薬調剤 血液製剤調剤 外用薬調剤 その他の調剤に関する場面 内服薬製剤管理 注射薬製剤管理 血液製剤管理 外用薬製剤管理 その他の製剤管理に関する場面 与薬準備 皮下・筋肉注射 静脈注射 動脈注射 末梢静脈点滴 中心静脈注射 内服 外用 坐剤 吸入 点鼻・点耳・点眼 その他与薬に関する場面 輸血に関する項目 手書きによる処方箋の作成 オーダリングによる処方箋の作成 口頭による処方指示 手書きによる処方の変更 オーダリングによる処方の変更 口頭による処方の変更 その他の処方に関する場面 準備 実施 その他の輸血検査に関する場面 準備 実施 その他の放射線照射に関する場面 製剤の交付 その他の輸血準備に関する場面 実施 その他の輸血実施に関する場面 治療・処置に関する項目 手書きによる指示の作成 オーダリングによる指示の作成 口頭による指示 手書きによる指示の変更 オーダリングによる指示の変更 口頭による指示の変更 その他の指示に関する場面 管理 その他の管理に関する場面 準備 その他の準備に関する場面 実施 その他の治療・処置に関する場面 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 2 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 4 0 3 2 3 1 0 0 0 3 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 1 0 2 0 2 0 0 0 0 0 0 5 0 0 2 0 1 3 2 0 0 0 1 1 0 0 0 1 3 11 0 3 3 7 0 0 1 0 4 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 3 0 0 1 3 0 0 0 0 1 0 10 1 0 0 0 0 4 2 0 0 0 0 1 0 0 0 3 7 19 0 0 4 7 4 0 0 0 3 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 1 0 1 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 0 0 5 1 0 0 0 0 0 0 0 11 0 0 0 37 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 17 0 0 0 0 0 0 0 3 8 1 0 1 54 2 0 0 1 0 0 0 10 0 0 0 1 24 0 1 0 3 0 0 0 22 9 0 0 1 109 3 0 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 23 0 0 0 0 0 0 0 3 7 0 1 0 119 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 1 0 28 2 0 1 2 0 0 0 1 6 0 1 1 82 6 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 0 0 10 0 - 67 - 32 0 4 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 3 9 0 4 3 5 0 0 0 0 1 2 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 127 0 0 1 0 0 0 12 8 1 1 1 100 3 149 0 17 1 0 3 0 1 9 4 0 0 0 1 3 0 0 1 4 11 40 0 9 10 18 5 0 1 0 11 6 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 3 1 511 1 1 5 0 0 0 30 42 2 2 3 411 14 Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 障害残存の 障害残存の 可能性がある 可能性がある (高い) (低い) 死亡 発生場面×事故の程度 障害残存の 可能性なし 障害なし 不明 合計 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) 医療機器等・医療材料の使用・管理に関する項目 手書きによる指示の作成 オーダリングによる指示の作成 口頭による指示 手書きによる指示の変更 オーダリングによる指示の変更 口頭による指示の変更 その他の指示に関する場面 管理 準備 使用中 ドレーン・チューブ類の使用・管理に関する項目 手書きによる指示の作成 オーダリングによる指示の作成 口頭による指示 手書きによる指示の変更 オーダリングによる指示の変更 口頭による指示の変更 その他の指示に関する場面 管理 準備 使用中 検査に関する項目 手書きによる指示の作成 オーダリングによる指示の作成 口頭による指示 手書きによる指示の変更 オーダリングによる指示の変更 口頭による指示の変更 その他の指示に関する場面 管理 準備 実施中 療養上の世話に関する項目 手書きによる計画又は指示の作成 オーダリングによる計画又は指示の作成 口頭による計画又は指示 手書きによる計画又は指示の変更 オーダリングによる計画又は指示の変更 口頭による計画又は指示の変更 その他の計画又は指示に関する場面 管理 準備 実施中 その他 合 計 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 1 2 1 9 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 15 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 1 1 6 0 0 0 0 0 0 1 1 0 6 0 0 0 0 0 0 3 4 0 15 0 0 0 0 0 0 0 3 0 7 0 0 0 0 0 0 0 8 2 28 0 0 0 0 0 0 0 4 0 6 0 0 0 0 0 0 0 8 1 45 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 1 0 1 5 0 0 0 0 0 0 0 1 0 3 0 0 0 0 1 0 0 1 1 11 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 2 3 2 5 0 0 1 0 0 0 0 2 0 7 0 0 1 0 0 0 1 4 1 22 0 1 0 0 0 0 0 0 0 10 0 2 0 0 0 0 0 0 2 29 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 6 0 0 0 0 0 0 0 6 0 2 7 29 0 0 0 0 0 0 0 20 0 14 43 142 0 0 0 1 0 0 2 6 0 7 6 51 0 0 0 1 0 0 4 26 0 25 22 180 3 1 0 0 0 0 3 19 1 30 11 118 5 3 1 0 0 0 12 112 2 117 61 522 0 0 0 0 0 0 2 32 0 36 14 142 0 2 0 0 0 0 5 100 3 114 53 537 0 0 0 0 0 0 0 18 2 15 15 118 1 0 0 0 0 0 0 64 4 55 72 466 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 1 10 0 0 1 0 0 0 0 8 0 15 7 62 6 40 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 3 1 3 5 32 30 129 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 3 8 24 0 4 21 98 29 102 0 0 1 2 1 1 0 0 0 1 0 0 0 4 3 9 0 7 24 78 242 972 3 6 1 5 0 2 1 1 0 0 0 0 7 21 82 330 3 9 91 340 54 258 468 1,909 ※事故の発生及び事故の過失の有無と「事故の程度」とは必ずしも因果関係が認められるものではない。 ※ 「不明」には、報告期日(2週間以内)までに患者の転帰が確定していないもの、 特に報告を求める事例で患者に影響がなかった事例も含まれる。 - 68 - 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 2- 20 (QA-65-A) 事故の内容 × 事故の程度 障害残存の 障害残存の 可能性がある 可能性がある (高い) (低い) 死亡 事故の内容×事故の程度 障害残存の 可能性なし 障害なし 不明 合計 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) 薬剤に関する項目 処方忘れ 処方遅延 処方量間違い 重複処方 禁忌薬剤の処方 対象患者処方間違い 処方薬剤間違い 処方単位間違い 投与方法処方間違い その他の処方に関する内容 調剤忘れ 処方箋・注射箋鑑査間違い 秤量間違い調剤 数量間違い 分包間違い 規格間違い調剤 単位間違い調剤 薬剤取り違え調剤 説明文書の取り違え 交付患者間違い 薬剤・製剤の取り違え交付 期限切れ製剤の交付 その他の調剤に関する内容 薬袋・ボトルの記載間違い 異物混入 細菌汚染 期限切れ製剤 その他の製剤管理に関する内容 過剰与薬準備 過少与薬準備 与薬時間・日付間違い 重複与薬 禁忌薬剤の与薬 投与速度速すぎ 投与速度遅すぎ 患者間違い 薬剤間違い 単位間違い 投与方法間違い 無投薬 混合間違い その他の与薬準備に関する内容 過剰投与 過少投与 投与時間・日付間違い 重複投与 禁忌薬剤の投与 投与速度速すぎ 投与速度遅すぎ 患者間違い 薬剤間違い 単位間違い 投与方法間違い 無投薬 その他の与薬に関する内容 32 149 0 0 0 0 1 1 0 1 0 0 0 0 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 3 6 0 4 0 0 3 11 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 1 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 0 0 1 2 0 0 0 0 0 1 0 0 1 1 0 0 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 0 2 0 1 0 0 1 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 2 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 2 0 1 0 0 0 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 1 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 1 4 1 6 2 10 0 0 5 21 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 2 0 0 0 0 0 2 0 1 0 2 0 0 0 5 0 0 0 0 0 1 0 1 1 4 0 0 1 6 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 3 6 1 1 4 9 0 0 0 1 0 0 0 1 1 7 0 0 1 9 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 3 0 1 0 0 1 4 0 0 0 0 0 1 0 1 0 1 0 0 0 3 0 1 2 4 1 5 4 16 2 10 1 3 10 39 - 69 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 障害残存の 障害残存の 可能性がある 可能性がある (高い) (低い) 死亡 事故の内容×事故の程度 障害残存の 可能性なし 障害なし 不明 合計 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) 輸血に関する項目 指示出し忘れ 指示遅延 指示量間違い 重複指示 禁忌薬剤の指示 対象患者指示間違い 指示薬剤間違い 指示単位間違い 投与方法指示間違い その他の指示出しに関する内容 未実施 検体取り違え 判定間違い 結果記入・入力間違い その他の輸血検査に関する内容 未実施 過剰照射 過少照射 患者間違い 製剤間違い その他の放射線照射に関する内容 薬袋・ボトルの記載間違い 異物混入 細菌汚染 期限切れ製剤 その他の輸血管理に関する内容 過剰与薬準備 過少与薬準備 与薬時間・日付間違い 重複与薬 禁忌薬剤の与薬 投与速度速すぎ 投与速度遅すぎ 患者間違い 薬剤間違い 単位間違い 投与方法間違い 無投薬 その他の輸血準備に関する内容 過剰投与 過少投与 投与時間・日付間違い 重複投与 禁忌薬剤の投与 投与速度速すぎ 投与速度遅すぎ 患者間違い 薬剤間違い 単位間違い 投与方法間違い 無投薬 その他の輸血実施に関する内容 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 - 70 - 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 2 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 障害残存の 障害残存の 可能性がある 可能性がある (高い) (低い) 死亡 事故の内容×事故の程度 障害残存の 可能性なし 障害なし 不明 合計 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) 治療・処置に関する項目 指示出し忘れ 指示遅延 対象患者指示間違い 治療・処置指示間違い 日程間違い 時間間違い その他の治療・処置の指示に関する内容 治療・処置の管理 その他の治療・処置の管理に関する内容 医療材料取り違え 患者体位の誤り 消毒・清潔操作の誤り その他の治療・処置の準備に関する内容 患者間違い 部位取違え 方法(手技)の誤り 未実施・忘れ 中止・延期 日程・時間の誤り 順番の誤り 不必要行為の実施 誤嚥 誤飲 異物の体内残存 診察・治療・処置等その他の取違え その他の治療・処置の実施に関する内容 医療機器等・医療材料の使用・管理に関する項目 指示出し忘れ 指示遅延 対象患者指示間違い 使用方法指示間違い その他の医療機器等・医療材料の 使用に関する内容 保守・点検不良 保守・点検忘れ 使用中の点検・管理ミス 破損 その他の医療機器等・医療材料の 管理に関する内容 組み立て 設定条件間違い 設定忘れ 電源入れ忘れ 警報設定忘れ 警報設定範囲間違い 便宜上の警報解除後の再設定忘れ 消毒・清潔操作の誤り 使用前の点検・管理ミス 破損 その他の医療機器等・医療材料の 準備に関する内容 医療機器等・医療材料の不適切使用 誤作動 故障 破損 その他の医療機器等・医療材料の 使用に関する内容 0 0 0 0 127 0 2 0 0 0 0 1 6 0 0 1 0 0 0 5 21 2 0 0 0 1 1 0 9 1 77 6 0 0 0 0 511 0 3 0 3 0 0 4 40 5 0 2 0 3 2 17 81 3 1 0 0 5 3 1 48 4 286 40 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 2 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 2 0 1 0 0 1 2 1 1 0 0 0 0 2 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 5 3 1 3 1 3 1 10 0 0 4 19 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0 0 0 0 0 0 1 14 0 0 0 0 0 0 0 3 1 0 0 0 0 1 0 0 0 31 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 1 0 0 0 0 14 0 0 0 0 0 0 0 8 2 0 0 0 1 0 1 8 0 0 0 0 1 0 0 1 0 47 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 3 8 0 0 0 0 0 0 0 2 1 19 0 3 0 0 0 0 1 8 0 0 1 0 0 0 5 32 1 1 0 0 2 1 0 16 1 76 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0 0 0 0 0 3 0 18 0 0 0 1 0 0 0 3 2 0 0 0 2 2 5 21 0 0 0 0 0 0 0 17 2 75 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 2 7 0 0 0 0 0 1 0 4 0 17 0 0 0 2 0 0 1 6 1 0 0 0 0 0 6 15 0 0 0 0 2 1 1 12 1 52 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 1 0 0 0 0 2 1 0 0 0 0 0 0 2 0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 2 2 0 4 - 71 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 障害残存の 障害残存の 可能性がある 可能性がある (高い) (低い) 死亡 事故の内容×事故の程度 障害残存の 可能性なし 障害なし 不明 合計 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) ドレーン・チューブ類の使用・管理に関する項目 指示出し忘れ 指示遅延 対象患者指示間違い 使用方法指示間違い その他のドレーン・チューブ類の 使用・管理の指示に関する内容 点検忘れ 点検不良 使用中の点検・管理ミス 破損 その他のドレーン・チューブ類の 管理に関する内容 組み立て 設定条件間違い 設定忘れ 消毒・清潔操作の誤り 使用前の点検・管理ミス その他のドレーン・チューブ類の 準備に関する内容 点滴漏れ 自己抜去 自然抜去 接続はずれ 未接続 閉塞 切断・破損 接続間違い 三方活栓操作間違い ルートクランプエラー 空気混入 誤作動 故障 ドレーン・チューブ類の不適切使用 その他のドレーン・チューブ類の 使用に関する内容 検査に関する項目 指示出し忘れ 指示遅延 対象患者指示間違い 指示検査の間違い その他の検査の指示に関する内容 分析機器・器具管理 試薬管理 データ紛失 計算・入力・暗記 その他の検査の管理に関する内容 患者取違え 検体取違え 検体紛失 検査機器・器具の準備 検体破損 その他の検査の準備に関する内容 患者取違え 検体取違え 試薬の間違い 検体紛失 検査の手技・判定技術の間違い 検体採取時のミス 検体破損 検体のコンタミネーション データ取違え 結果報告 その他の検査の実施に関する内容 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 30 0 0 0 0 129 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 1 1 0 0 2 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 1 0 0 4 2 0 0 0 0 0 2 1 4 1 2 0 0 2 8 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 0 0 2 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 1 2 0 1 0 0 4 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 2 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 1 3 3 3 0 2 4 0 0 0 0 1 0 0 1 0 1 0 0 1 2 0 0 0 0 0 0 0 3 8 7 1 0 3 9 1 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 1 1 2 2 0 3 6 0 0 0 0 1 0 0 6 15 11 5 0 8 19 2 0 2 0 1 0 0 0 1 0 0 5 12 2 15 2 13 0 1 9 42 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 3 0 0 4 0 0 0 0 0 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 2 0 0 1 0 1 0 0 0 0 1 5 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 1 5 1 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 3 0 0 1 0 2 18 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 7 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 7 1 0 1 1 1 0 0 0 3 16 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 2 0 0 0 0 1 3 29 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1 1 3 0 0 0 0 2 17 102 2 0 0 0 2 0 0 0 0 5 0 0 1 0 0 8 7 4 1 1 11 1 0 1 0 7 51 - 72 - 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 障害残存の 障害残存の 可能性がある 可能性がある (高い) (低い) 死亡 事故の内容×事故の程度 障害残存の 可能性なし 障害なし 不明 合計 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) (累計) 療養上の世話に関する項目 計画忘れ又は指示出し忘れ 計画又は指示の遅延 計画又は指示の対象患者間違い 計画又は指示内容間違い その他の療養上の世話の計画又は指 示に関する内容 拘束・抑制 給食の内容の間違い 安静指示 禁食指示 外出・外泊許可 異物混入 転倒 転落 衝突 誤嚥 誤飲 誤配膳 遅延 実施忘れ 搬送先間違い 患者間違い 延食忘れ 中止の忘れ 自己管理薬飲み忘れ・注射忘れ 自己管理薬注入忘れ 自己管理薬取違え摂取 不必要行為の実施 その他の療養上の世話の管理・準備・ 実施に関する内容 その他 合 計 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 242 0 0 0 0 972 1 1 0 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 1 0 1 1 4 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 4 1 0 9 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 10 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 2 0 0 0 30 2 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 33 6 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 0 1 1 151 16 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 2 1 0 0 0 0 0 34 8 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 1 0 0 0 118 18 1 2 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 17 1 0 2 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 3 0 55 7 1 4 8 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 15 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 2 0 1 0 95 15 0 4 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 1 5 0 6 1 373 44 3 20 11 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 2 7 18 5 18 13 70 27 80 12 44 1 7 65 237 7 29 43 142 6 51 22 180 11 118 61 522 14 142 53 537 15 118 72 466 1 10 7 62 54 258 468 1,909 ※事故の発生及び事故の過失の有無と「事故の程度」とは必ずしも因果関係が認められるものではない。 ※ 「不明」には、報告期日(2週間以内)までに患者の転帰が確定していないもの、 特に報告を求める事例で患者に影響がなかった事例も含まれる。 - 73 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 2- 21 (QA-68-A) 関連診療科 × 事故の概要 薬剤 関連診療科×事故の概要 2013 年 7月∼9月 輸血 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 治療・処置 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 医療機器等 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 内科 7 20 0 0 4 17 0 3 麻酔科 5 8 1 2 13 45 1 4 循環器内科 2 11 0 0 12 52 1 5 神経科 1 4 0 0 2 4 0 1 呼吸器内科 1 5 0 0 2 9 1 2 消化器科 2 10 0 0 19 55 0 3 血液内科 1 6 0 0 3 6 0 0 循環器外科 0 0 0 0 3 9 0 0 アレルギー科 0 0 0 0 0 1 0 0 リウマチ科 0 3 0 0 0 1 0 0 小児科 5 20 0 1 3 16 1 1 外科 2 10 1 1 12 70 0 2 整形外科 0 10 0 1 10 58 0 4 形成外科 1 1 0 0 1 12 1 1 美容外科 0 0 0 0 0 0 0 0 脳神経外科 3 6 0 0 6 26 1 1 呼吸器外科 0 4 0 0 1 22 0 2 心臓血管外科 1 5 0 1 6 38 2 6 小児外科 0 0 0 0 0 6 0 1 ペインクリニック 0 0 0 0 0 0 0 0 皮膚科 1 2 0 0 0 5 0 1 泌尿器科 3 7 0 0 11 38 0 3 性病科 0 0 0 0 0 0 0 0 肛門科 0 0 0 0 0 0 0 0 産婦人科 1 1 0 0 8 19 0 1 産科 0 0 1 1 1 2 0 1 婦人科 0 2 0 1 3 11 0 0 眼科 1 2 0 0 4 9 0 2 耳鼻咽喉科 0 2 0 0 5 22 0 2 心療内科 0 0 0 0 0 1 0 0 精神科 1 6 0 0 2 3 0 0 リハビリテーション科 0 1 0 0 0 1 0 0 放射線科 0 2 0 0 3 12 0 1 歯科 0 0 0 0 6 12 0 0 矯正歯科 0 0 0 0 0 0 0 0 小児歯科 0 0 0 0 0 0 0 0 歯科口腔外科 0 1 0 0 7 22 0 0 不明 0 0 0 0 0 0 0 0 その他 1 20 0 0 10 50 0 3 39 169 3 8 157 654 8 50 合 計 ※「関連診療科」は複数回答が可能である。 - 74 - 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) ドレーン・チューブ 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 検査 2013 年 7月∼9月 療養上の世話 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 その他 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 合 計 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 0 8 3 9 27 86 5 30 46 173 2 8 1 1 0 2 1 4 24 74 1 5 2 14 6 38 2 10 26 135 0 4 0 1 13 33 4 8 20 55 0 5 4 8 18 44 8 9 34 82 2 5 6 16 11 42 1 12 41 143 1 3 2 8 5 19 3 13 15 55 0 2 1 2 0 2 1 1 5 16 0 0 1 1 0 2 0 1 1 5 0 0 0 0 1 9 0 9 1 22 4 13 0 4 17 77 3 14 33 146 5 14 3 11 12 49 4 25 39 182 3 10 0 7 59 187 7 33 79 310 1 1 0 0 4 6 0 2 8 23 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 9 1 4 14 39 4 15 32 100 0 5 1 2 1 5 2 7 5 47 1 6 1 2 0 9 0 7 11 74 0 1 0 1 1 4 0 2 1 15 0 0 0 0 1 1 0 0 1 1 1 2 2 6 6 18 1 7 11 41 1 4 1 3 3 13 1 5 20 73 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1 1 6 0 3 12 32 1 1 0 1 1 1 0 3 4 10 1 4 0 0 1 2 0 8 5 28 0 0 1 3 6 16 1 7 13 39 1 4 0 4 7 20 1 12 14 66 1 1 0 0 0 0 0 0 1 2 0 1 0 2 22 90 4 23 29 125 0 0 0 0 2 5 0 2 2 9 1 3 2 10 0 2 2 6 8 36 0 0 0 0 0 1 1 1 7 14 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 7 0 3 8 33 0 0 0 0 0 0 0 2 0 2 6 33 8 12 19 69 6 30 50 217 37 153 41 133 259 905 62 314 606 2,386 - 75 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 2- 22 (QA-71-A) 発生要因 × 事故の概要 薬剤 発生要因×事故の概要 2013 年 7月∼9月 輸血 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 治療・処置 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 医療機器等 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 当事者の行動に関わる要因 確認を怠った 24 106 1 5 39 155 4 22 観察を怠った 5 16 0 1 19 95 1 13 報告が遅れた(怠った) 3 6 1 1 2 11 0 1 記録などに不備があった 1 5 0 0 1 16 0 2 連携ができていなかった 8 29 1 2 14 69 2 14 患者への説明が不十分で あった(怠った) 3 12 0 0 9 35 0 2 判断を誤った 9 31 1 2 31 167 1 10 知識が不足していた 9 39 1 3 12 40 2 8 技術・手技が未熟だった 1 9 0 0 30 96 1 5 勤務状況が繁忙だった 7 25 0 1 9 33 1 9 1 3 0 0 5 17 0 3 3 12 0 1 5 14 0 2 0 5 0 1 15 40 1 5 コンピュータシステム 3 16 0 1 2 5 0 0 医薬品 4 22 0 0 0 4 0 0 医療機器 1 4 0 0 3 23 5 19 施設・設備 0 3 0 1 2 10 1 2 諸物品 0 1 0 0 1 8 0 4 患者側 0 5 0 0 10 95 1 3 その他 1 5 0 0 6 26 1 4 10 30 0 2 7 51 1 9 仕組み 1 13 0 1 1 19 1 6 ルールの不備 1 15 2 3 5 37 2 4 その他 4 18 0 0 40 131 1 2 99 430 7 25 268 1,197 26 149 ヒューマンファクター 通常とは異なる身体的条 件下にあった 通常とは異なる心理的条 件下にあった その他 環境・設備機器 その他 教育・訓練 合計 ※「発生要因」は複数回答が可能である。 - 76 - 2 医療事故情報収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) , ドレーン・チューブ 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 検査 2013 年 7月∼9月 療養上の世話 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 その他 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 合 計 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 595 2,419 17 56 14 46 50 181 10 75 159 646 10 37 3 10 71 292 9 52 118 516 0 4 0 1 10 24 3 14 19 62 0 2 0 5 7 21 4 8 13 59 3 21 5 13 32 105 12 40 77 293 3 8 3 8 48 182 4 23 70 270 7 42 9 32 70 239 11 50 139 573 241 945 2 25 4 8 29 112 6 30 65 265 7 22 3 20 22 72 2 16 66 240 2 11 1 7 20 80 6 23 46 189 0 0 0 2 0 4 2 7 8 36 1 6 0 4 4 15 1 4 14 58 2 10 2 10 15 50 7 36 42 157 203 939 0 0 1 8 0 0 0 4 6 34 0 2 1 2 0 4 0 7 5 41 5 11 1 5 3 10 0 7 18 79 0 4 0 4 14 55 3 20 20 99 3 10 1 4 7 20 3 13 15 60 5 16 1 9 85 351 16 66 118 545 0 5 0 3 8 21 5 17 21 81 214 912 5 31 2 18 37 169 8 49 70 359 1 5 4 12 2 9 4 19 14 84 4 14 5 16 21 56 3 13 43 158 3 18 6 16 15 53 18 73 87 311 80 360 66 263 570 2,125 137 666 1,253 5,215 - 77 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業で収集する情報には発生件数情報と事例情報がある。発 生件数情報の収集はヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する全ての医療機関から 収集を行う。事例情報の収集は、ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する医療機関の うち、報告を希望した医療機関から収集を行う。この報告書においては、平成25年7月1日から 同年9月30日までのヒヤリ・ハット事例収集事業の発生件数情報と事例情報の集計結果を掲載して いる。 【1】登録医療機関 (1)参加登録申請医療機関数 平成25年9月30日現在、ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加している医療機関数 は以下の通りである。なお、医療機関数の増減の理由には、新規の開設や閉院、統廃合の他に、開設 者区分の変更も含まれる。 図表Ⅱ - 3- 1 (QH-01) 参加登録申請医療機関数 開設者 国立大学法人等 独立行政法人国立病院機構 国立高度専門医療研究センター 国 国立ハンセン病療養所 独立行政法人労働者健康福祉機構 その他の国の機関 都道府県 市町村 自治体 公立大学法人 地方独立行政法人 日本赤十字社 恩賜財団済生会 北海道社会事業協会 厚生農業協同組合連合会 国民健康保険団体連合会 自治体以外の公的 全国社会保険協会連合会 医療機関の開設者 厚生年金事業振興団 船員保険会 健康保険組合及びその連合会 共済組合及びその連合会 国民健康保険組合 学校法人 医療法人 法人 公益法人 会社 その他の法人 個 人 合 計 - 78 - 事例情報報告参加 登録申請医療機関 19 71 3 4 20 0 16 68 4 8 46 10 0 7 0 25 1 0 0 12 1 31 189 24 3 17 31 610 参加登録申請 医療機関 30 118 4 11 28 0 27 122 8 23 80 20 0 18 2 44 1 0 1 20 1 45 370 52 12 37 46 1,120 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) (2)参加登録申請医療機関における登録件数の推移 参加登録申請医療機関における登録医療機関数の推移は以下の通りである。なお、本報告書の集計 期間には、7月22日から9月16日までの本事業の報告システム停止期間が含まれているため、そ の影響により通常の四半期の登録申請医療機関数よりも少なくなっている。 図表Ⅱ - 3- 2 (QH-02) 参加登録申請医療機関の登録件数 2013 年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 事例情報参加 登録申請医療 機関数 2 5 3 6 0 1 0 0 1 − − − 登録取下げ 医療機関数 0 0 0 3 1 0 0 0 1 − − − 599 604 607 610 609 610 610 610 610 − − − 参加登録申請 医療機関数 累 計 7 5 4 11 1 3 0 0 2 − − − 登録取下げ 医療機関数 0 1 0 3 1 0 0 0 0 − − − 1,099 1,103 1,107 1,115 1,115 1,118 1,118 1,118 1,120 − − − 累 計 - 79 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 【2】全医療機関の発生件数情報報告 (1)全医療機関の発生件数情報報告 平成25年7月1日から同年9月30日までの発生件数情報報告は以下の通りである。 図表Ⅱ - 3- 3 (QNR-01) 全医療機関発生件数情報報告 誤った医療の実施の有無 実施なし 影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合) 項 目 死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が 実施あり な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・ 考えられる 考えられる 治療が不要と考えら れる 合計 (1)薬剤 110 829 17,474 38,789 57,202 (2)輸血 32 43 318 548 941 (3)治療・処置 56 281 2,254 6,692 9,283 (4)医療機器等 36 129 1,895 3,110 5,170 (5)ドレーン・チューブ 29 226 4,720 20,715 25,690 (6)検査 38 311 4,863 9,452 14,664 (7)療養上の世話 36 437 12,213 27,138 39,824 (8)その他 76 317 8,478 10,461 19,332 413 2,573 【1】薬剤の名称や形状に関連する事例 37 139 837 3,125 4,138 【2】薬剤に由来する事例 71 466 5,983 14,325 20,845 【3】医療機器等に由来する事例 40 84 713 1,817 2,654 1 23 232 1,082 1,338 合 計 52,215 116,905 172,106 再 掲 【4】今期のテーマ 報告医療機関数 病床数合計 - 80 - 451 183,855 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) (2)発生件数情報の報告状況 ① 発生件数情報の報告状況 全医療機関の平成25年7月1日から同年9月30日までの病床規模別発生件数情報報告を 図表Ⅱ - 3- 4∼図表Ⅱ - 3- 10に示す。 図表Ⅱ - 3- 4 (QNR-02) 病床規模別発生件数情報報告(病床数が0∼99床の医療機関) 誤った医療の実施の有無 Ⅱ 実施なし 影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合) 項 目 死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が 実施あり な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・ 考えられる 考えられる 治療が不要と考えら れる (1)薬剤 0 3 (2)輸血 0 2 3 0 5 (3)治療・処置 0 3 96 78 177 (4)医療機器等 0 0 44 24 68 (5)ドレーン・チューブ 0 0 45 71 116 (6)検査 0 2 109 89 200 (7)療養上の世話 1 1 142 156 300 (8)その他 0 9 336 91 436 1 20 1,079 730 1,830 【1】薬剤の名称や形状に関連する事例 0 0 4 14 18 【2】薬剤に由来する事例 0 1 101 51 153 【3】医療機器等に由来する事例 0 0 19 11 30 【4】今期のテーマ 1 0 22 50 73 合 計 304 221 合計 528 再 掲 報告医療機関数 病床数合計 - 81 - 28 1,372 Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 3- 5 (QNR-03) 病床規模別発生件数情報報告(病床数が100∼199床の医療機関) 誤った医療の実施の有無 実施なし 影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合) 項 目 (1)薬剤 (2)輸血 (3)治療・処置 (4)医療機器等 (5)ドレーン・チューブ (6)検査 (7)療養上の世話 (8)その他 合 計 死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が 実施あり な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・ 考えられる 考えられる 治療が不要と考えら れる 合計 4 0 1 1 0 0 0 1 7 61 0 4 3 8 37 22 16 151 1,208 13 189 119 240 362 970 743 3,844 1,435 17 263 103 609 369 1,142 865 4,803 2,708 30 457 226 857 768 2,134 1,625 8,805 1 3 1 0 7 44 2 7 34 382 44 17 12 212 32 7 54 641 79 31 再 掲 【1】薬剤の名称や形状に関連する事例 【2】薬剤に由来する事例 【3】医療機器等に由来する事例 【4】今期のテーマ 65 10,131 報告医療機関数 病床数合計 図表Ⅱ - 3- 6 (QNR-04) 病床規模別発生件数情報報告(病床数が200∼299床の医療機関) 誤った医療の実施の有無 実施なし 影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合) 項 目 (1)薬剤 (2)輸血 (3)治療・処置 (4)医療機器等 (5)ドレーン・チューブ (6)検査 (7)療養上の世話 (8)その他 合 計 死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が 実施あり な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・ 考えられる 考えられる 治療が不要と考えら れる 合計 7 0 4 5 0 2 3 11 32 55 2 18 16 24 17 70 30 232 1,390 19 151 121 312 327 1,128 626 4,074 2,223 25 434 222 1,176 724 2,280 802 7,886 3,675 46 607 364 1,512 1,070 3,481 1,469 12,224 1 6 5 0 3 20 10 5 18 384 53 10 83 975 162 33 105 1,385 230 48 再 掲 【1】薬剤の名称や形状に関連する事例 【2】薬剤に由来する事例 【3】医療機器等に由来する事例 【4】今期のテーマ 報告医療機関数 病床数合計 - 82 - 62 15,204 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 3- 7 (QNR-05) 病床規模別発生件数情報報告(病床数が300∼399床の医療機関) 誤った医療の実施の有無 実施なし 影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合) 項 目 (1)薬剤 (2)輸血 (3)治療・処置 (4)医療機器等 (5)ドレーン・チューブ (6)検査 (7)療養上の世話 (8)その他 合 計 死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が 実施あり な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・ 考えられる 考えられる 治療が不要と考えら れる 合計 7 2 5 6 4 6 7 14 51 90 5 42 18 24 23 107 39 348 1,910 54 280 292 526 596 1,418 1,019 6,095 5,350 66 987 471 2,636 1,305 4,797 1,592 17,204 7,357 127 1,314 787 3,190 1,930 6,329 2,664 23,698 2 5 3 0 23 43 9 5 118 366 52 31 422 1,956 228 146 565 2,370 292 182 再 掲 【1】薬剤の名称や形状に関連する事例 【2】薬剤に由来する事例 【3】医療機器等に由来する事例 【4】今期のテーマ 90 30,132 報告医療機関数 病床数合計 図表Ⅱ - 3- 8 (QNR-06) 病床規模別発生件数情報報告(病床数が400∼499床の医療機関) 誤った医療の実施の有無 実施なし 影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合) 項 目 (1)薬剤 (2)輸血 (3)治療・処置 (4)医療機器等 (5)ドレーン・チューブ (6)検査 (7)療養上の世話 (8)その他 合 計 死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が 実施あり な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・ 考えられる 考えられる 治療が不要と考えら れる 合計 9 3 2 1 5 4 5 9 38 97 5 31 19 30 28 42 23 275 3,263 35 328 345 686 640 2,294 2,198 9,789 5,684 57 891 483 3,366 1,297 4,930 1,743 18,451 9,053 100 1,252 848 4,087 1,969 7,271 3,973 28,553 0 4 1 0 3 46 13 0 72 965 170 26 225 1,421 389 64 300 2,436 573 90 再 掲 【1】薬剤の名称や形状に関連する事例 【2】薬剤に由来する事例 【3】医療機器等に由来する事例 【4】今期のテーマ 報告医療機関数 病床数合計 - 83 - 72 31,539 Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 3- 9 (QNR-07) 病床規模別発生件数情報報告(病床数が500∼599床の医療機関) 誤った医療の実施の有無 実施なし 影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合) 項 目 (1)薬剤 (2)輸血 (3)治療・処置 (4)医療機器等 (5)ドレーン・チューブ (6)検査 (7)療養上の世話 (8)その他 合 計 死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が 実施あり な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・ 考えられる 考えられる 治療が不要と考えら れる 合計 39 5 16 9 5 7 9 9 99 115 6 36 29 37 26 75 74 398 2,374 38 203 169 736 548 1,227 955 6,250 5,500 74 903 419 2,776 1,211 3,385 1,113 15,381 8,028 123 1,158 626 3,554 1,792 4,696 2,151 22,128 22 28 12 0 41 58 14 3 186 1,546 98 36 505 2,020 241 81 754 3,652 365 120 再 掲 【1】薬剤の名称や形状に関連する事例 【2】薬剤に由来する事例 【3】医療機器等に由来する事例 【4】今期のテーマ 43 23,228 報告医療機関数 病床数合計 図表Ⅱ - 3- 10 (QNR-08) 病床規模別発生件数情報報告(病床数が600床以上の医療機関) 誤った医療の実施の有無 実施なし 影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合) 項 目 (1)薬剤 (2)輸血 (3)治療・処置 (4)医療機器等 (5)ドレーン・チューブ (6)検査 (7)療養上の世話 (8)その他 合 計 死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が 実施あり な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・ 考えられる 考えられる 治療が不要と考えら れる 合計 44 22 28 14 15 19 11 32 185 408 23 147 44 103 178 120 126 1,149 7,025 156 1,007 805 2,175 2,281 5,034 2,601 21,084 18,376 309 3,136 1,388 10,081 4,457 10,448 4,255 52,450 25,853 510 4,318 2,251 12,374 6,935 15,613 7,014 74,868 11 25 18 0 62 254 36 3 405 2,239 277 90 1,864 7,690 754 701 2,342 10,208 1,085 794 再 掲 【1】薬剤の名称や形状に関連する事例 【2】薬剤に由来する事例 【3】医療機器等に由来する事例 【4】今期のテーマ 報告医療機関数 病床数合計 - 84 - 91 72,249 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 【3】事例情報参加登録申請医療機関の報告件数 (1)事例情報参加登録申請医療機関の月別報告件数 平成25年7月1日から同年9月30日までの事例情報参加登録申請医療機関の月別報告件数は以 下の通りである。なお、本報告書の集計期間には、7月22日から9月16日までの本事業の報告シ ステム停止期間が含まれているため、その影響により通常の四半期の報告件数よりも少なくなってい る。 Ⅱ 図表Ⅱ - 3- 11 (QH-03) 事例情報参加登録申請医療機関の月別報告件数 1月 事例情報参加 登録申請医療 機関報告数 事例情報参加 登録申請医療 機関数 2月 3月 4月 5月 2013 年 6月 7月 4,013 2,008 1,986 3,775 1,386 1,820 2,224 599 604 607 610 609 610 - 85 - 610 8月 9月 10月 11月 12月 合計 0 4,045 − − − 21,257 610 610 − − − − Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) (2)事例情報参加登録申請医療機関の報告状況 事例情報参加登録申請医療機関の平成25年7月1日から同年9月30日までの報告医療機関数及 び報告件数を図表Ⅱ - 3- 12に、病床規模別に集計したものを図表Ⅱ - 3- 13に、地域別に集計し たものを図表Ⅱ - 3- 14に示す。また、同期間内における報告医療機関数を報告件数別に集計した ものを図表Ⅱ - 3- 15に示す。平成25年9月30日現在、事例情報参加登録申請医療機関の数は 610施設、病床数合計は202, 895床である。なお、本報告書の集計期間には、7月22日から 9月16日までの本事業の報告システム停止期間が含まれているため、その影響により通常の四半期 の参加登録申請医療機関数及び報告件数よりも少なくなっている。 図表Ⅱ - 3- 12 (QH-04) 開設者別事例情報参加登録申請医療機関数及び報告件数 報告医療機関数 医療機関数 開設者 国 ※ 2013 年 9月 30 日現在 報告件数 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) 国立大学法人等 19 6 9 17 50 独立行政法人国立病院機構 71 3 7 60 161 3 1 1 250 1,477 国立高度専門医療研究センター 国立ハンセン病療養所 独立行政法人労働者健康福祉機構 その他の国の機関 自治体 4 0 0 0 0 20 1 4 2 247 0 0 0 0 0 96 12 25 3,046 9,050 都道府県 市町村 公立大学法人 地方独立行政法人 自治体以外の公的医療機関の開設者 日本赤十字社 46 5 11 193 1,611 恩賜財団済生会 10 1 3 38 344 0 0 0 0 0 北海道社会事業協会 厚生農業協同組合連合会 7 0 0 0 0 国民健康保険団体連合会 0 0 0 0 0 全国社会保険協会連合会 25 1 5 104 1,813 1 0 0 0 0 厚生年金事業振興団 船員保険会 0 0 0 0 0 健康保険組合及びその連合会 0 0 0 0 0 12 1 2 16 20 1 0 1 0 1 共済組合及びその連合会 国民健康保険組合 法人 学校法人 31 6 12 1,450 2,317 医療法人 189 10 21 662 2,681 公益法人 24 2 4 4 182 会社 3 0 0 0 0 17 3 4 427 1,299 個 人 31 0 1 0 4 合 計 610 52 110 6,269 21,257 その他の法人 - 86 - 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 3- 13 (QH-05) 病床規模別事例情報参加登録申請医療機関数及び報告件数 病床数 医療機関数 ※ 2013 年 9月 30 日現在 報告医療機関数 2013 年 7月∼9月 報告件数 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 0 ∼ 19 床 49 2 2 4 23 20 ∼ 49 床 19 0 1 0 4 50 ∼ 99 床 37 0 5 0 125 100 ∼ 149 床 43 1 4 3 61 150 ∼ 199 床 69 7 8 325 1,121 200 ∼ 249 床 39 1 3 15 217 250 ∼ 299 床 37 2 7 71 483 300 ∼ 349 床 69 6 12 569 2,579 350 ∼ 399 床 34 2 6 17 453 400 ∼ 449 床 58 3 9 121 1,348 450 ∼ 499 床 27 2 7 3 173 500 ∼ 549 床 27 5 7 707 1,895 550 ∼ 599 床 18 0 3 0 43 600 ∼ 649 床 19 4 8 689 2,607 650 ∼ 699 床 15 1 7 1 872 700 ∼ 749 床 12 2 2 7 28 750 ∼ 799 床 3 2 2 21 53 800 ∼ 849 床 8 5 6 2,413 7,239 850 ∼ 899 床 4 0 0 0 0 900 ∼ 999 床 10 5 5 13 32 1000 床以上 13 2 6 1,290 1,901 610 52 110 6,269 21,257 合計 図表Ⅱ - 3- 14 (QH-06) 地域別事例情報参加登録申請医療機関数及び報告件数 地域 医療機関数 ※ 2013 年 9月 30 日現在 報告医療機関数 2013 年 7月∼9月 報告件数 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 北海道 52 4 8 13 161 東北 60 4 10 75 660 関東甲信越 154 18 33 2,659 7,210 東海北陸 105 7 22 2,010 7,109 近畿 87 9 16 1,252 5,057 中国四国 76 5 11 138 671 九州沖縄 76 5 10 122 389 610 52 110 6,269 21,257 合計 - 87 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 3- 15 (QH-07) 報告件数別事例情報参加登録申請医療機関数 報告医療機関数 報告件数 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月(累計) 0 558 500 1 13 23 2 6 9 3 4 5 4 0 9 5 1 4 6 3 4 7 0 0 8 0 3 9 1 0 10 0 0 11 ∼ 20 5 13 21 ∼ 30 2 3 31 ∼ 40 1 3 41 ∼ 50 1 1 51 ∼ 100 3 6 101 ∼ 150 3 5 151 ∼ 200 1 2 200 以上 合計 8 20 610 610 - 88 - 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 【4】事例情報参加登録申請医療機関からの報告の内容 平成25年7月1日から同年9月30日までの事例情報参加登録申請医療機関からのヒヤリ・ ハット事例情報報告の内容は以下の通りである。 なお、各表はヒヤリ・ハット事例「事例情報」報告入力項目(注)を集計したものである。本報告書 の集計期間には、7月22日から9月16日までの本事業の報告システム停止期間が含まれてい るため、その影響により通常の四半期の報告件数よりも少なくなっている。 Ⅱ 図表Ⅱ - 3- 16 (QH-28) 当事者職種 当事者職種 件数 医師 401 歯科医師 6 看護師 5,872 准看護師 48 薬剤師 518 臨床工学技士 34 助産師 182 看護助手 21 診療放射線技師 72 臨床検査技師 64 管理栄養士 3 栄養士 12 調理師・調理従事者 12 理学療法士(PT) 41 作業療法士(OT) 7 言語聴覚士(ST) 6 衛生検査技師 0 歯科衛生士 4 歯科技工士 0 その他 258 合 計 7,561 ※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。 (件) 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 その他 歯科技工士 歯科衛生士 衛生検査技師 言語聴覚士︵ST︶ 作業療法士︵OT︶ 理学療法士︵PT︶ 調理師 調・理従事者 栄養士 管理栄養士 臨床検査技師 診療放射線技師 看護助手 助産師 臨床工学技士 薬剤師 准看護師 看護師 歯科医師 医師 0 (注)「医療事故・ヒヤリ・ハット事例収集システム操作手引書」に掲載している「ヒヤリ・ハット事例報告入力項目(P42 ∼ 59)」を参照 (公益財団法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業」ホームページ(http://www.med-safe.jp/)に掲載) 。 - 89 - Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 3- 17 (QH-29) 当事者職種経験 歯科医師 看護師 准看護師 薬剤師 臨床工学 技士 助産師 看護助手 診療放射線 臨床検査 技師 技師 当事者職種経験 医師 0年 101 0 1,020 4 112 2 26 4 14 7 1年 17 0 929 2 37 1 26 2 5 3 2年 20 2 657 1 30 5 15 2 4 1 3年 38 0 553 2 39 4 20 2 4 2 4年 20 2 345 1 29 0 25 2 4 1 5年 17 0 328 2 32 2 17 2 2 8 6年 14 0 242 1 23 1 4 2 4 0 7年 13 0 220 1 13 3 5 0 3 3 8年 14 0 178 1 20 0 2 0 1 2 9年 10 0 177 0 24 4 5 1 0 3 10 年 21 0 148 0 18 2 2 0 2 3 11 年 16 0 121 1 3 1 8 0 0 1 12 年 4 0 111 4 5 1 2 1 0 2 13 年 11 0 63 0 8 0 2 0 1 2 14 年 7 1 71 0 5 2 6 0 1 2 15 年 18 0 100 3 3 1 3 0 1 2 16 年 7 0 63 0 3 0 0 0 0 0 17 年 9 0 64 2 3 1 0 0 1 2 18 年 8 0 60 2 7 0 3 0 0 0 19 年 7 1 32 0 11 1 0 0 2 3 20 年 3 0 55 0 17 3 0 2 4 4 21 年 1 0 34 1 7 0 1 1 3 2 22 年 5 0 20 0 1 0 2 0 2 2 23 年 1 0 22 1 4 0 1 0 1 0 24 年 3 0 41 1 10 0 0 0 2 0 25 年 5 0 45 1 5 0 5 0 2 1 26 年 2 0 11 0 4 0 0 0 0 0 27 年 5 0 23 0 6 0 0 0 5 0 28 年 0 0 15 0 4 0 0 0 1 1 29 年 1 0 10 0 1 0 0 0 2 2 30 年 1 0 33 2 9 0 1 0 0 1 31 年 0 0 8 1 1 0 0 0 0 1 32 年 0 0 15 1 5 0 1 0 0 0 33 年 0 0 16 0 14 0 0 0 0 0 34 年 0 0 12 3 2 0 0 0 0 1 35 年 1 0 11 4 1 0 0 0 0 2 36 年 0 0 7 0 1 0 0 0 0 0 37 年 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 38 年 0 0 5 5 0 0 0 0 0 0 39 年 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 40 年超 1 0 4 1 1 0 0 0 0 0 合 計 401 6 5,872 48 518 34 182 21 72 64 ※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。 - 90 - 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 管理栄養士 栄養士 調理師・ 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 衛生検査 歯科衛生士 歯科技工士 調理従事者 (PT) (OT) (ST) 技師 その他 合 計 0 3 1 3 0 1 0 0 0 225 1,523 0 0 2 10 4 1 0 0 0 2 1,041 2 0 1 6 0 0 0 0 0 5 751 0 1 1 0 0 0 0 2 0 3 671 0 3 0 2 1 0 0 0 0 5 440 0 2 3 4 0 1 0 0 0 4 424 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 294 0 0 0 6 0 2 0 0 0 2 271 0 0 0 2 0 0 0 0 0 1 221 0 0 0 0 0 1 0 1 0 2 228 0 0 0 1 1 0 0 0 0 4 202 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 153 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 131 0 2 0 0 1 0 0 0 0 1 91 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 97 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 132 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 73 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 83 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 80 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 57 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 90 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 52 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 32 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 30 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 57 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 64 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 17 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 39 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 22 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 17 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 47 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 12 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 22 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 30 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 18 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 20 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 10 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 7 3 12 12 41 7 6 0 4 0 258 7,561 - 91 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 3- 18 (QH-30) 当事者部署配属期間 歯科医師 看護師 准看護師 薬剤師 臨床工学 技士 助産師 看護助手 診療放射線 臨床検査 技師 技師 当事者部署配属期間 医師 0年 160 1 1,580 5 143 3 37 4 18 18 1年 61 0 1,302 8 59 5 35 4 6 7 2年 23 2 918 7 51 5 20 3 8 2 3年 29 1 707 2 50 5 23 3 6 6 4年 21 0 444 4 32 2 26 2 2 2 5年 23 0 350 1 32 1 15 1 2 4 6年 8 0 152 8 13 2 3 1 2 2 7年 15 1 120 1 5 3 4 0 1 0 8年 19 0 91 2 14 0 1 1 3 1 9年 1 0 76 0 13 2 3 1 0 2 10 年 14 0 37 3 5 0 3 0 3 3 11 年 4 0 20 0 3 0 4 0 2 1 12 年 3 0 15 1 1 4 1 1 0 1 13 年 1 1 16 0 9 0 3 0 0 3 14 年 1 0 6 0 1 0 0 0 0 0 15 年 6 0 8 0 1 2 0 0 1 2 16 年 1 0 2 1 0 0 1 0 0 0 17 年 1 0 4 0 0 0 1 0 1 2 18 年 1 0 8 0 5 0 1 0 0 0 19 年 1 0 4 0 10 0 0 0 3 0 20 年 1 0 2 0 9 0 0 0 4 3 21 年 0 0 3 0 12 0 0 0 2 0 22 年 2 0 0 0 1 0 0 0 0 1 23 年 1 0 1 0 4 0 0 0 0 0 24 年 0 0 0 0 12 0 0 0 2 0 25 年 1 0 3 1 2 0 1 0 1 0 26 年 2 0 0 0 3 0 0 0 0 0 27 年 1 0 0 0 3 0 0 0 4 0 28 年 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 29 年 0 0 1 1 1 0 0 0 0 0 30 年 0 0 1 1 2 0 0 0 0 1 31 年 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 32 年 0 0 0 0 5 0 0 0 0 0 33 年 0 0 0 0 14 0 0 0 0 0 34 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 35 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 36 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 37 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 38 年 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 39 年 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 40 年超 0 0 1 1 1 0 0 0 0 0 合 計 401 6 5,872 48 518 34 182 21 72 64 ※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。 - 92 - 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 管理栄養士 栄養士 調理師・ 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 衛生検査 歯科衛生士 歯科技工士 調理従事者 (PT) (OT) (ST) 技師 その他 合 計 0 7 2 17 2 1 0 2 0 226 2,226 0 0 4 5 2 2 0 0 0 8 1,508 1 3 1 1 1 0 0 0 0 5 1,051 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 834 0 0 0 4 1 0 0 0 0 4 544 0 1 1 2 0 2 0 0 0 3 438 0 0 0 3 1 1 0 0 0 1 197 0 0 0 3 0 0 0 1 0 1 155 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 134 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 100 1 0 0 1 0 0 0 0 0 4 74 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 34 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 28 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 34 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 9 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 21 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 11 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 15 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 18 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 21 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 17 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 15 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 9 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 14 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 3 12 12 41 7 6 0 4 0 258 7,561 - 93 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 3- 19 (QH-31) 事例の概要 事例の概要 薬剤 2013 年7月∼9月 2013 年1月∼9月(累計) 件数 % 件数 % 3,221 51.4 9,227 43.4 輸血 39 0.6 131 0.6 治療・処置 205 3.3 730 3.4 医療機器等 187 3.0 579 2.7 ドレーン・チューブ 715 11.4 2,973 14.0 検査 357 5.7 1,459 6.9 療養上の世話 790 12.6 3,580 16.8 その他 合 計 755 12.0 2,578 12.1 6,269 100.0 21,257 100.0 ※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。 図表Ⅱ - 3- 20 (QH-33) 影響度 影響度 死亡もしくは重篤な状況に 至ったと考えられる 濃厚な処置・治療が必要 であると考えられる 軽 微 な 処 置・ 治 療 が 必 要 もしくは処置・治療が不要 と考えられる 合 計 2013 年7月∼9月 件数 2013 年1月∼9月(累計) % 件数 % 33 1.1 103 1.0 100 3.3 336 3.4 2,892 95.6 9,399 95.5 3,025 100.0 9,838 100.0 ※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。 - 94 - 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 3- 21 (QH-36) 発生要因 2013 年7月∼9月 発生要因 件数 % 9,610 4,267 1,481 239 185 1,231 790 1,417 5,088 857 690 1,804 100 749 888 1,383 192 240 116 118 114 376 227 2,653 617 129 260 1,647 18,734 当事者の行動に関わる要因 確認を怠った 観察を怠った 報告が遅れた(怠った) 記録などに不備があった 連携ができていなかった 患者への説明が不十分であった(怠った) 判断を誤った ヒューマンファクター 知識が不足していた 技術・手技が未熟だった 勤務状況が繁忙だった 通常とは異なる身体的条件下にあった 通常とは異なる心理的条件下にあった その他 環境・設備機器 コンピュータシステム 医薬品 医療機器 施設・設備 諸物品 患者側 その他 その他 教育・訓練 仕組み ルールの不備 その他 合 計 51.2 22.7 7.9 1.3 1.0 6.6 4.2 7.5 27.1 4.6 3.7 9.6 0.5 4.0 4.7 7.3 1.0 1.3 0.6 0.6 0.6 2.0 1.2 14.2 3.3 0.7 1.4 8.8 100.0 2013 年1月∼9月(累計) 件数 % 31,600 13,765 5,070 660 578 4,006 2,712 4,809 13,949 2,162 1,570 5,258 288 2,173 2,498 4,785 622 874 416 354 327 1,532 660 7,495 1,962 376 758 4,399 57,829 54.6 23.8 8.8 1.1 1.0 6.9 4.7 8.3 24.1 3.7 2.7 9.1 0.5 3.8 4.3 8.2 1.1 1.5 0.7 0.6 0.6 2.6 1.1 12.9 3.4 0.6 1.3 7.6 100.0 ※「発生要因」は複数回答が可能である。 ※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。 表Ⅱ - 3- 22 (QH-61) 事例の概要×影響度 事例の概要×影響度 軽微な処置・治療が必要 死亡もしくは重篤な状況 濃厚な処置・治療が必要 も し く は 処 置・ 治 療 が に至ったと考えられる であると考えられる 不要と考えられる 合 計 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 (累計) 7月∼9月 (累計) 7月∼9月 (累計) 7月∼9月 (累計) 薬剤 4 23 46 134 1,332 3,695 1,382 輸血 5 8 0 8 18 56 23 72 治療・処置 2 6 3 20 114 329 119 355 医療機器等 4 10 11 26 86 219 101 255 ドレーン・チューブ 9 16 15 50 348 1,198 372 1,264 検査 1 15 6 23 254 904 261 942 療養上の世話 2 14 13 54 467 2,048 482 2,116 その他 6 11 6 21 273 950 285 982 33 103 100 336 2,892 9,399 3,025 9,838 合 計 - 95 - 3,852 Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 3- 23 (QH-64) 発生場面×影響度 発生場面×影響度 薬剤に関する項目 手書きによる処方箋の作成 オーダリングによる処方箋の作成 口頭による処方指示 手書きによる処方の変更 オーダリングによる処方の変更 口頭による処方の変更 その他の処方に関する場面 内服薬調剤 注射薬調剤 血液製剤調剤 外用薬調剤 その他の調剤に関する場面 内服薬製剤管理 注射薬製剤管理 血液製剤管理 外用薬製剤管理 その他の製剤管理に関する場面 与薬準備 皮下・筋肉注射 静脈注射 動脈注射 末梢静脈点滴 中心静脈注射 内服 外用 坐剤 吸入 点鼻・点耳・点眼 その他与薬に関する場面 輸血に関する項目 手書きによる処方箋の作成 オーダリングによる処方箋の作成 口頭による処方指示 手書きによる処方の変更 オーダリングによる処方の変更 口頭による処方の変更 その他の処方に関する場面 準備 実施 その他の輸血検査に関する場面 準備 実施 その他の放射線照射に関する場面 製剤の交付 その他の輸血準備に関する場面 実施 その他の輸血実施に関する場面 治療・処置に関する項目 手書きによる指示の作成 オーダリングによる指示の作成 口頭による指示 手書きによる指示の変更 オーダリングによる指示の変更 口頭による指示の変更 その他の指示に関する場面 管理 その他の管理に関する場面 準備 その他の準備に関する場面 実施 その他の治療・処置に関する場面 死亡もしくは重篤な状況に 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要 もし くは 処 置・ 治 療 が 至ったと考えられる であると考えられる 不要と考えられる 合 計 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) 1,382 3,852 0 0 0 0 1 10 1 10 0 0 2 12 32 93 34 105 0 0 0 0 0 2 0 2 0 0 0 0 1 6 1 6 0 0 0 0 12 26 12 26 0 0 0 0 0 7 0 7 0 2 4 7 60 100 64 109 3 8 0 6 125 264 128 278 0 3 7 13 61 171 68 187 0 0 1 2 2 5 3 7 0 0 0 0 9 24 9 24 1 2 0 2 4 28 5 32 0 0 1 1 8 18 9 19 0 0 1 4 13 24 14 28 0 0 0 0 1 4 1 4 0 0 0 0 2 4 2 4 0 0 0 0 5 17 5 17 0 2 8 25 153 460 161 487 0 0 1 5 52 170 53 175 0 0 1 11 63 223 64 234 0 0 0 1 1 7 1 8 0 1 10 21 163 415 173 437 0 0 0 4 35 105 35 109 0 4 10 16 456 1,288 466 1,308 0 0 0 1 33 76 33 77 0 0 0 0 7 19 7 19 0 0 0 0 8 22 8 22 0 0 0 0 9 26 9 26 0 1 0 3 16 81 16 85 23 72 0 0 0 0 0 0 0 0 4 5 0 0 0 0 4 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 2 0 1 0 1 0 1 0 3 0 0 0 1 0 2 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 1 2 4 2 5 0 1 0 1 2 13 2 15 1 1 0 3 9 19 10 23 0 0 0 0 5 15 5 15 119 355 0 1 0 1 0 4 0 6 0 0 0 1 1 7 1 8 0 0 0 0 0 4 0 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 3 14 44 14 48 1 2 1 2 8 21 10 25 0 0 0 1 12 17 12 18 0 1 2 3 19 41 21 45 0 0 0 0 5 17 5 17 1 1 0 7 46 142 47 150 0 0 0 2 9 31 9 33 - 96 - 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 発生場面×影響度 医療機器等・医療材料の使用・管理に関する項目 手書きによる指示の作成 オーダリングによる指示の作成 口頭による指示 手書きによる指示の変更 オーダリングによる指示の変更 口頭による指示の変更 その他の指示に関する場面 管理 準備 使用中 ドレーン・チューブ類の使用・管理に関する項目 手書きによる指示の作成 オーダリングによる指示の作成 口頭による指示 手書きによる指示の変更 オーダリングによる指示の変更 口頭による指示の変更 その他の指示に関する場面 管理 準備 使用中 検査に関する項目 手書きによる指示の作成 オーダリングによる指示の作成 口頭による指示 手書きによる指示の変更 オーダリングによる指示の変更 口頭による指示の変更 その他の指示に関する場面 管理 準備 実施中 療養上の世話に関する項目 手書きによる計画又は指示の作成 オーダリングによる計画又は指示の作成 口頭による計画又は指示 手書きによる計画又は指示の変更 オーダリングによる計画又は指示の変更 口頭による計画又は指示の変更 その他の計画又は指示に関する場面 管理 準備 実施中 その他 合計 死亡もしくは重篤な状況に 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要 もし くは 処 置・ 治 療 が 至ったと考えられる であると考えられる 不要と考えられる 合 計 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) 101 255 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 1 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 2 0 0 0 0 1 1 1 1 0 0 0 0 5 25 5 25 2 4 5 10 20 55 27 69 1 1 2 5 14 42 17 48 1 5 4 10 45 93 50 108 372 1,264 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 4 8 18 73 254 82 276 2 4 1 4 48 180 51 188 0 0 0 0 2 6 2 6 6 8 6 28 225 758 237 794 261 942 0 0 0 0 0 3 0 3 0 0 0 2 2 19 2 21 0 0 0 0 0 4 0 4 0 0 0 0 1 1 1 1 0 0 0 0 2 4 2 4 0 0 0 0 0 1 0 1 0 2 0 9 63 165 63 176 0 0 2 2 26 78 28 80 0 5 1 4 43 172 44 181 1 8 3 6 117 457 121 471 767 3,098 0 0 0 0 0 11 0 11 0 0 0 0 3 6 3 6 0 0 0 0 3 9 3 9 0 0 0 0 0 2 0 2 0 0 0 0 2 7 2 7 0 0 0 0 1 3 1 3 0 2 1 9 123 439 124 450 1 5 1 6 94 485 96 496 0 0 0 3 13 86 13 89 1 7 11 36 228 1,000 240 1,043 6 11 6 21 273 950 285 982 33 103 100 336 2,892 9,399 3,025 9,838 - 97 - Ⅱ Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 3- 24 (QH-65) 事例の内容 × 影響度 事例の内容×影響度 死亡もしくは重篤な状況に 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要 もし くは 処 置・ 治 療 が 至ったと考えられる であると考えられる 不要と考えられる 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) 薬剤に関する項目 処方忘れ 処方遅延 処方量間違い 重複処方 禁忌薬剤の処方 対象患者処方間違い 処方薬剤間違い 処方単位間違い 投与方法処方間違い その他の処方に関する内容 調剤忘れ 処方箋・注射箋鑑査間違い 秤量間違い調剤 数量間違い 分包間違い 規格間違い調剤 単位間違い調剤 薬剤取り違え調剤 説明文書の取り違え 交付患者間違い 薬剤・製剤の取り違え交付 期限切れ製剤の交付 その他の調剤に関する内容 薬袋・ボトルの記載間違い 異物混入 細菌汚染 期限切れ製剤 その他の製剤管理に関する内容 過剰与薬準備 過少与薬準備 与薬時間・日付間違い 重複与薬 禁忌薬剤の与薬 投与速度速すぎ 投与速度遅すぎ 患者間違い 薬剤間違い 単位間違い 投与方法間違い 無投薬 混合間違い その他の与薬準備に関する内容 過剰投与 過少投与 投与時間・日付間違い 重複投与 禁忌薬剤の投与 投与速度速すぎ 投与速度遅すぎ 患者間違い 薬剤間違い 単位間違い 投与方法間違い 無投薬 その他の与薬に関する内容 合 計 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 2 0 4 1 1 0 1 0 1 0 0 2 1 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 1 0 1 0 0 0 0 0 1 18 0 0 0 0 0 3 1 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 0 0 1 2 2 1 1 4 0 2 0 0 0 0 0 1 0 - 98 - 4 0 4 3 1 0 2 0 4 19 1 3 1 1 1 3 1 4 0 1 2 0 1 1 0 0 0 2 3 0 0 0 0 0 0 2 7 2 0 5 4 5 10 3 2 5 3 4 1 0 1 1 4 7 6 90 1 14 2 5 2 9 3 2 210 13 10 4 30 9 32 3 55 0 5 4 1 16 2 0 0 0 19 11 7 10 6 0 0 1 4 17 3 5 16 10 59 84 59 69 15 10 48 11 14 22 5 11 229 65 240 5 36 10 8 11 20 10 13 258 31 30 10 72 19 72 7 120 0 9 14 1 76 7 0 0 0 57 32 29 42 12 1 5 1 16 41 18 9 71 22 198 281 193 217 59 21 144 42 62 65 16 46 683 233 1,382 3,852 91 1 15 2 5 2 9 3 3 228 13 11 4 31 10 35 4 56 0 6 5 1 16 2 0 0 0 19 11 7 10 6 0 0 1 4 22 3 5 16 11 61 86 60 70 19 10 50 11 14 22 5 11 230 65 245 5 40 15 9 11 22 10 17 277 32 35 11 77 21 76 8 125 0 11 16 1 79 9 0 0 0 59 36 30 42 12 1 5 1 18 48 20 9 76 26 203 291 197 219 64 24 148 43 62 66 17 50 690 243 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 事例の内容×影響度 死亡もしくは重篤な状況に 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要 もし くは 処 置・ 治 療 が 至ったと考えられる であると考えられる 不要と考えられる 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) 輸血に関する項目 指示出し忘れ 指示遅延 指示量間違い 重複指示 禁忌薬剤の指示 対象患者指示間違い 指示薬剤間違い 指示単位間違い 投与方法指示間違い その他の指示出しに関する内容 未実施 検体取り違え 判定間違い 結果記入・入力間違い その他の輸血検査に関する内容 未実施 過剰照射 過少照射 患者間違い 製剤間違い その他の放射線照射に関する内容 薬袋・ボトルの記載間違い 異物混入 細菌汚染 期限切れ製剤 その他の輸血管理に関する内容 過剰与薬準備 過少与薬準備 与薬時間・日付間違い 重複与薬 禁忌薬剤の与薬 投与速度速すぎ 投与速度遅すぎ 患者間違い 薬剤間違い 単位間違い 投与方法間違い 無投薬 その他の輸血準備に関する内容 過剰投与 過少投与 投与時間・日付間違い 重複投与 禁忌薬剤の投与 投与速度速すぎ 投与速度遅すぎ 患者間違い 薬剤間違い 単位間違い 投与方法間違い 無投薬 その他の輸血実施に関する内容 合 計 1 0 0 0 0 1 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 3 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 - 99 - 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 2 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 1 9 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 1 6 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 3 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 0 12 0 1 0 0 0 1 2 1 0 0 1 1 21 23 72 1 0 0 0 0 1 0 0 0 4 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 2 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 1 9 1 0 0 0 0 1 0 0 0 4 0 2 2 1 6 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 4 0 0 1 0 0 0 0 0 2 0 1 0 14 0 1 0 0 0 1 2 1 0 0 1 1 24 Ⅱ Ⅱ 報告の現況 事例の内容×影響度 治療・処置に関する項目 指示出し忘れ 指示遅延 対象患者指示間違い 治療・処置指示間違い 日程間違い 時間間違い その他の治療・処置の指示に関する内容 治療・処置の管理 その他の治療・処置の管理に関する内容 医療材料取り違え 患者体位の誤り 消毒・清潔操作の誤り その他の治療・処置の準備に関する内容 患者間違い 部位取違え 方法(手技)の誤り 未実施・忘れ 中止・延期 日程・時間の誤り 順番の誤り 不必要行為の実施 誤嚥 誤飲 異物の体内残存 診察・治療・処置等その他の取違え その他の治療・処置の実施に関する内容 医療機器等・医療材料の使用・管理に関する項目 指示出し忘れ 指示遅延 対象患者指示間違い 使用方法指示間違い 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 死亡もしくは重篤な状況に 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要 もし くは 処 置・ 治 療 が 至ったと考えられる であると考えられる 不要と考えられる 合 計 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) 119 355 0 0 0 0 1 4 1 4 0 0 0 0 0 1 0 1 0 1 0 0 0 1 0 2 0 1 1 2 0 3 1 6 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 2 10 3 12 0 0 0 0 3 15 3 15 1 1 0 2 17 23 18 26 0 0 0 0 0 2 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 4 4 4 0 1 1 2 21 49 22 52 0 0 0 1 2 6 2 7 0 0 0 0 0 6 0 6 0 0 0 3 5 17 5 20 0 1 0 1 11 33 11 35 0 0 0 2 2 7 2 9 0 0 0 0 0 9 0 9 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 4 2 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 1 2 1 2 0 0 0 0 0 3 0 3 1 1 0 5 43 128 44 134 101 255 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 2 2 3 0 0 0 0 0 2 0 2 その他の医療機器等・医療材料の 使用に関する内容 0 0 1 1 7 17 8 18 保守・点検不良 保守・点検忘れ 使用中の点検・管理ミス 破損 0 0 2 0 0 0 3 0 2 0 2 0 3 0 5 1 2 2 11 2 7 5 30 4 4 2 15 2 10 5 38 5 その他の医療機器等・医療材料の 管理に関する内容 0 1 0 0 6 16 6 17 組み立て 設定条件間違い 設定忘れ 電源入れ忘れ 警報設定忘れ 警報設定範囲間違い 便宜上の警報解除後の再設定忘れ 消毒・清潔操作の誤り 使用前の点検・管理ミス 破損 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 0 0 1 2 0 2 0 2 2 0 0 0 0 6 0 4 7 6 3 0 0 0 0 13 2 4 0 2 2 0 0 0 0 6 0 6 9 6 3 0 0 0 1 15 2 その他の医療機器等・医療材料の 準備に関する内容 0 0 1 1 3 9 4 10 医療機器等・医療材料の不適切使用 誤作動 故障 破損 0 0 0 0 1 1 0 0 3 0 0 0 4 0 1 1 7 3 3 9 21 5 10 17 10 3 3 9 26 6 11 18 その他の医療機器等・医療材料の 使用に関する内容 1 3 1 2 17 39 19 44 - 100 - 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 事例の内容×影響度 死亡もしくは重篤な状況に 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要 もし くは 処 置・ 治 療 が 至ったと考えられる であると考えられる 不要と考えられる 合 計 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) ドレーン・チューブ類の使用・管理に関する項目 372 1,264 指示出し忘れ 0 0 0 0 0 0 0 0 指示遅延 0 0 0 0 0 0 0 0 対象患者指示間違い 0 0 0 0 0 0 0 0 使用方法指示間違い 0 2 0 0 0 1 0 3 その他のドレーン・チューブ類の 使用・管理の指示に関する内容 1 1 0 0 5 7 6 8 点検忘れ 点検不良 使用中の点検・管理ミス 破損 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 1 2 0 13 3 4 3 45 11 2 0 13 4 4 3 46 12 その他のドレーン・チューブ類の 管理に関する内容 0 2 1 5 36 128 37 135 組み立て 設定条件間違い 設定忘れ 消毒・清潔操作の誤り 使用前の点検・管理ミス 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 その他のドレーン・チューブ類の 準備に関する内容 0 0 0 0 5 8 5 8 点滴漏れ 自己抜去 自然抜去 接続はずれ 未接続 閉塞 切断・破損 接続間違い 三方活栓操作間違い ルートクランプエラー 空気混入 誤作動 故障 ドレーン・チューブ類の不適切使用 0 3 1 2 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 3 1 3 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 8 1 0 0 0 0 0 0 3 1 0 0 0 5 24 5 0 0 2 2 0 0 4 1 0 0 0 14 184 22 12 2 7 14 5 3 1 1 0 0 2 41 647 73 56 7 36 47 9 11 5 1 0 1 7 14 195 24 14 2 7 15 5 4 4 2 0 0 2 46 674 79 59 7 38 50 9 12 9 2 0 1 7 その他のドレーン・チューブ類の 使用に関する内容 0 2 0 0 17 48 17 50 8 5 10 11 47 4 1 0 8 74 16 4 6 11 4 120 41 20 4 16 24 47 4 0 9 35 375 261 5 1 2 2 14 1 1 0 2 36 3 0 1 2 0 36 4 5 3 7 4 10 1 0 2 11 108 942 8 5 10 11 53 4 1 0 8 77 17 4 6 12 4 127 43 20 4 17 24 50 4 0 13 40 380 検査に関する項目 指示出し忘れ 指示遅延 対象患者指示間違い 指示検査の間違い その他の検査の指示に関する内容 分析機器・器具管理 試薬管理 データ紛失 計算・入力・暗記 その他の検査の管理に関する内容 患者取違え 検体取違え 検体紛失 検査機器・器具の準備 検体破損 その他の検査の準備に関する内容 患者取違え 検体取違え 試薬の間違い 検体紛失 検査の手技・判定技術の間違い 検体採取時のミス 検体破損 検体のコンタミネーション データ取違え 結果報告 その他の検査の実施に関する内容 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 2 0 0 0 0 0 0 0 2 3 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 1 - 101 - 0 0 0 0 4 0 0 0 0 3 1 0 0 1 0 2 0 0 0 1 0 3 0 0 2 2 4 5 1 2 2 14 1 1 0 2 34 3 0 1 1 0 36 4 5 3 6 4 10 1 0 1 10 107 Ⅱ Ⅱ 報告の現況 事例の内容×影響度 療養上の世話に関する項目 計画忘れ又は指示出し忘れ 計画又は指示の遅延 計画又は指示の対象患者間違い 計画又は指示内容間違い 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 死亡もしくは重篤な状況に 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要 もし くは 処 置・ 治 療 が 至ったと考えられる であると考えられる 不要と考えられる 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 2013 年 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 1月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 7月∼9月 (累計) (累計) (累計) (累計) 767 3,098 0 0 0 0 4 4 4 4 0 0 1 1 0 1 1 2 0 0 0 0 1 1 1 1 0 0 0 0 2 3 2 3 その他の療養上の世話の計画又は 指示に関する内容 0 0 0 1 12 拘束・抑制 0 0 0 0 給食の内容の間違い 0 0 0 1 安静指示 禁食指示 外出・外泊許可 異物混入 転倒 転落 衝突 誤嚥 誤飲 誤配膳 遅延 実施忘れ 搬送先間違い 患者間違い 延食忘れ 中止の忘れ 自己管理薬飲み忘れ・注射忘れ 自己管理薬注入忘れ 自己管理薬取違え摂取 不必要行為の実施 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 1 0 3 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 7 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 その他の療養上の世話の管理・準備・ 実施に関する内容 0 4 6 33 11 103 その他 合計 合 計 29 12 0 4 0 4 3 37 3 38 0 0 0 0 32 5 1 1 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 4 4 4 2 264 71 7 0 1 6 0 9 0 6 0 0 1 0 5 3 21 17 31 13 1,183 356 18 0 2 31 1 38 0 14 7 4 11 0 6 15 4 4 4 2 272 71 7 1 1 7 0 9 0 6 0 0 1 0 5 3 21 17 31 13 1,219 362 19 4 3 33 1 39 0 14 7 4 11 0 6 15 4 10 58 201 62 215 6 100 21 336 273 2,892 950 9,399 285 3,025 982 9,838 - 102 - 30 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) Ⅱ - 103 - Ⅱ 報告の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) 図表Ⅱ - 3- 25 (QH-67) 発生要因×事例の概要 薬剤 輸血 治療・処置 2013 年 1月∼9月 (累計) 医療機器等 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 確認を怠った 2,669 7,788 25 97 131 444 135 423 観察を怠った 539 1,357 3 15 33 119 52 144 報告が遅れた(怠った) 150 325 3 8 6 33 6 17 記録などに不備があった 129 365 1 3 8 33 4 9 連携ができていなかった 611 1,886 15 36 62 188 24 72 患者への説明が不十分で あった(怠った) 282 714 1 4 7 27 3 13 判断を誤った 496 1,384 6 20 38 149 26 83 知識が不足していた 616 1,310 10 25 24 104 31 96 技術・手技が未熟だった 506 940 3 9 27 92 37 78 1,049 2,700 14 40 25 96 34 111 発生要因×事例の概要 2013 年 7月∼9月 2013 年 7月∼9月 2013 年 7月∼9月 当事者の行動に関わる要因 ヒューマンファクター 勤務状況が繁忙だった 通常とは異なる身体的 条件下にあった 通常とは異なる心理的 条件下にあった 60 151 1 2 3 8 3 9 396 1,116 8 24 19 61 20 57 その他 560 1,306 6 12 18 78 26 85 コンピュータシステム 111 334 5 6 4 15 5 17 医薬品 218 768 1 4 2 17 0 2 医療機器 17 63 1 3 7 35 49 164 施設・設備 29 84 0 2 2 3 7 20 諸物品 23 63 0 0 4 12 7 26 患者側 111 297 0 3 4 25 1 6 その他 108 305 2 7 2 8 14 29 381 1,082 5 16 15 69 32 85 82 220 3 5 5 17 5 21 ルールの不備 186 471 1 4 11 44 10 37 その他 742 1,434 13 27 28 113 33 83 10,071 26,463 127 372 485 1,790 564 1,687 環境・設備機器 その他 教育・訓練 仕組み 合計 ※「発生要因」は複数回答が可能である。 - 104 - 3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年7月∼9月) ドレーン・チューブ 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 検査 2013 年 7月∼9月 療養上の世話 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) その他 2013 年 7月∼9月 合計 2013 年 1月∼9月 (累計) 2013 年 7月∼9月 2013 年 1月∼9月 (累計) 9,610 31,600 318 1,247 263 1,080 289 1,225 437 1,461 4,267 13,765 361 1,464 27 97 316 1,387 150 487 1,481 5,070 12 41 18 74 12 60 32 102 239 660 1 12 10 44 13 32 19 80 185 578 125 468 103 319 150 551 141 486 1,231 4,006 110 446 23 79 266 1,109 98 320 790 2,712 296 1,169 63 193 352 1,384 140 427 1,417 4,809 5,088 13,949 47 170 44 172 38 137 47 148 857 2,162 51 177 16 86 24 100 26 88 690 1,570 185 689 103 296 225 777 169 549 1,804 5,258 9 29 5 26 13 43 6 20 100 288 73 241 63 170 58 177 112 327 749 2,173 88 300 35 145 79 305 76 267 888 2,498 1,383 4,785 3 14 25 93 7 31 32 112 192 622 4 31 0 6 11 31 4 15 240 874 12 58 6 26 9 19 15 48 116 416 24 60 1 8 47 152 8 25 118 354 20 64 3 13 42 117 15 32 114 327 94 355 13 35 142 742 11 69 376 1,532 16 48 12 36 37 115 36 112 227 660 2,653 7,495 43 162 24 133 61 243 56 172 617 1,962 8 20 15 41 4 26 7 26 129 376 10 38 16 65 7 52 19 47 260 758 117 435 50 174 121 416 543 1,717 1,647 4,399 2,027 7,738 938 3,411 2,323 9,231 2,199 7,137 18,734 57,829 - 105 - Ⅱ Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 1 概況 【1】分析対象とするテーマの選定状況 本事業においては、収集された情報を元に、医療事故防止に資する情報提供を行う為に、分析作業 を行っている。分析にあたっては、分析対象とするテーマを設定し、そのテーマに関連する事例をま とめて分析、検討を行っている。テーマの選定にあたっては、①一般性・普遍性、②発生頻度、③患 者への影響度、④防止可能性、⑤教訓性といった観点から、専門家の意見を踏まえ選定している。 なお、分析を行う際に、医療事故情報とヒヤリ・ハット事例を総合的に検討するため、ヒヤリ・ハッ ト事例収集・分析・提供事業における事例情報のテーマは、分析対象とするテーマから選択すること としている。また、報告書にて分析結果を公表するテーマは該当する報告書対象期間内のヒヤリ・ハッ ト事例収集・分析・提供事業における事例情報で、網羅的な情報収集を行ったテーマとする。 但し、本報告書対象期間内に収集した事例情報のうち、同期間内のヒヤリ・ハット事例収集・分析・ 提供事業における事例情報のテーマとなっていないものについても、上記の5つの観点から分析を実 施し、情報提供を行うことが望ましいと判断した内容については、分析対象とするテーマとして選定 し分析・情報提供を実施することとしている。 本報告書においては、7月22日から9月16日までの報告システム停止期間の影響により、事例の 報告件数が少なく対象期間内に収集した事例情報から事例を分析する作業を行なうことができなかっ たため、今回は個別のテーマを設定していない。そこで、当事業部で運営している薬局ヒヤリ・ハット 事例収集・分析事業の成果を引用し、「医療機関と薬局の連携に関連した医療事故」について分析を 行った。 なお、このテーマについては、平成26年2月13日に開催予定のシンポジウム「医療機関と薬局 の連携による医療安全」で検討される予定である。 本報告書において公表される分析テーマについて図表Ⅲ - 1- 1に示す。 図表Ⅲ - 1- 1 本報告書に掲載した分析テーマ 医療事故情報とヒヤリ・ハット 事例を総合的に検討したテーマ ○血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器 に関連した医療事故 医療機関と薬局の連携について 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 の成果を検討したテーマ ○医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 - 106 - 1 概況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 【2】分析対象とする情報 本事業で収集した本報告書対象期間内の医療事故情報及びヒヤリ・ハット事例のうち、対象とする テーマに関連する情報を有している事例情報を抽出し、分析対象とした。 その後、分析の必要性に応じて、本報告書対象期間外の過去の事例についても、抽出期間を設定し た上で、同様の抽出を行い、分析対象とした。 【3】分析体制 医療安全に関わる医療専門職、安全管理の専門家などで構成される専門分析班において月1回程度 の頻度で事例情報を参照し、本事業で収集された事例情報の全体の概要の把握を行っている。その上 で、新たな分析テーマに関する意見交換や、すでに分析対象となっているテーマについての分析の方 向性の検討、助言などを行っている。 その上で、事例の集積の程度や専門性に応じて設置が必要と判断されたテーマについては、テーマ Ⅲ 別専門分析班を設置し、分析を行っている。テーマ別専門分析班の開催頻度は報告書での公表のタイ ミングや事例の集積の程度に応じて全体で月1∼2回程度としている。 また、テーマによってはテーマ別専門分析班を設置せず、専門分析班の助言を得ながら当事業部の 客員研究員や事務局員が分析を行っている。 最終的に専門分析班、テーマ別専門分析班の意見を踏まえ、当事業部で分析結果をとりまとめ、総 合評価部会の審議を経て分析結果の公表を行っている。 概況 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 【4】追加調査 専門分析班において、医療機関から報告された事例の記述内容を分析するうえで、さらに詳細な事 実関係を把握する必要があると判断される事例に関しては、医療機関へ文書などによる問い合わせや、 現地確認調査を行っている。追加調査の内容は、医療安全対策を検討するために活用している。医療 機関への現地確認調査は、平成25年7月1日から同年9月30日までに2件実施した。 - 107 - Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 2 個別のテーマの検討状況 【1】血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に 関連した医療事故 血液浄化療法は、血液を体外で循環させ、血液中の病因や関連した物質について、半透膜を介し て拡散、濾過、あるいは材料表面へ吸着することによって除去する治療法である。血液浄化療法の 種類には一般的に、腎不全患者に対し尿毒症物質と水分を除去し、必要な場合は電解質を補正する 血液透析や血液透析濾過のほかに、神経疾患や自己免疫疾患などにおいて、病因に関連した物質を 含んだ血漿ごと(あるいは分画だけ)廃棄し、血漿と同量の新鮮凍結血漿やアルブミン液などの置換液 を補充する血漿交換がある。 我が国で行われている主な血液浄化療法の種類を図表Ⅲ - 2- 1に示す。 主な血液浄化療法の原理は、次のとおりである。 1) 血液透析は、半透膜を用いて濃度が異なる水溶液の間で生じる拡散現象を利用して老廃物等を 除去する方法である。低分子物質の除去性能に優れている。 2) 血液濾過は、限外濾過圧を用いて濾過器から血液中の水分である濾液を除去する方法である。 除去した濾液の代わりに体液と類似した成分からなる補充液を血液内に注入する。中∼大分子 物質の除去性能に優れている。 図表Ⅲ - 2- 1 主な血液浄化療法の種類 種類 血液透析 略語(英語表記) HD(hemodialysis) 限外濾過 ECUM(extracorporeal ultrafiltration method) 血液濾過 HF(hemofiltration) 血液濾過 血液透析濾過 HDF(hemodiafiltration) 持続的血液透析 CHD(continuous hemodialysis) 持続的血液濾過 CHF(continuous hemofiltration) 持続的血液透析濾過 CHDF(continuous hemodiafiltration) 血液吸着 血漿交換 血漿吸着 血液吸着 HA(hemoadsorption) 直接血液吸着 DHP(direct hemoadsorption) 単純血漿交換 PE(plasma exchange)・PP(plasma pheresis) 二重濾過血漿交換 DFPP(double filtration plasma pheresis) 血漿吸着 PA(plasma adsorption) - 108 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 血液浄化療法の対象疾患は、急性腎不全、慢性腎不全はもとより除去対象となる物質の種類の増 加と選択可能な除去手段が増加したことにより、腎臓以外の臓器不全や多臓器不全、薬物中毒、さ らに自己免疫疾患と多岐にわたる。そのため関わる医療者も専門医や透析室スタッフのみならず、 専門以外の内科医や入院病棟スタッフなど多様である。 また、血液浄化療法の多くは、血液の浄化のみでなく、細胞外液や細胞内液にある老廃物を血液 に移動させて体液全体を浄化するため、老廃物が血液に移動するまでに時間を要す。その中で、透 析量、除水量の水分管理が必要であり、ひとりの担当医師だけではなく、医療者のチームで対応す ることが一般的である。 日本透析医学会の「図説わが国の慢性透析療法の現況」1)によると平成24年末の慢性透析患者 数は約31万人であり、患者数が増加傾向にあることから、血液浄化療法を受ける患者数が増加し ていることが推測できる。このように患者数が増加している血液浄化療法は、使用する血液回路、 ダイアライザなどの血液浄化器、透析用監視装置などの装置に関する医療事故やヒヤリ・ハット事 例は発生しうる点に留意が必要である。 Ⅲ 血液浄化療法の医療事故に関する全国規模の調査としては、平成12年度厚生科学特別研究事業 の「透析医療事故の実態調査と事故対策マニュアルの策定に関する研究」2)があり、同報告書では、 平成12年に発生した透析医療事故は21, 457件であり、100万透析あたり1,760回の発 生頻度であったとしている。調査の中でもっとも多かったのは抜針による出血などの事故であり、 2番目が穿刺針と回路接続部の離断、3番目が除水ミスであった。その後、平成14−16年度厚 生労働科学特別研究事業「血液透析施設におけるC型肝炎感染事故(含:透析事故)防止体制の確 は患者の自己抜針を含めた穿刺針の抜針の事故であった。 さらに本事業の医療事故報告においても、血液浄化療法中に血液回路のカテーテルが外れて失血 した事例や、持続的血液透析濾過の際に誤って血漿交換用の血液浄化器を使用した事例などの報告 があり、今回テーマとして血液浄化療法を取り上げ、ヒヤリ・ハット事例や医療事故の分析を共有 することは有用であると考えた。 そこで本事業では、血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)が血液回路や装置を 介した血液体外循環をする仕組みであることに着目し、血液浄化療法の医療機器に関連した医療事 故やヒヤリ・ハットを個別テーマとして取り上げ、事例を継続的に収集し、分析を進めている。 (1)血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した 医療事故の現状 平成25年1月から12月まで、ヒヤリ・ハット事例のテーマとして「血液浄化療法(血液透析、 血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した事例」を取り上げ、事例収集を行っている。 本報告書では、本報告書の分析対象期間(平成25年7月1日∼平成25年9月30日に報告 された3件の血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等) (以下血液浄化療法とする)の 医療機器に関連した医療事故事例を加えた97件について、特に血液回路および血液浄化器等に関す る事例を取り上げて分析を行った。 - 109 - 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 立に関する研究」において、透析医療事故の重篤な事故についての調査を行い、最も多い医療事故 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ①血液浄化療法の医療機器に関連した医療事故の分類 本報告書の分析で対象とする血液浄化療法を血液透析、血液濾過、血液透析濾過、持続的血液透析、 持続的血液濾過、持続的血液透析濾過、血漿交換・血液吸着・血漿吸着としている。本事業を開始 した平成16年10月から平成25年9月30日の間に報告された97件を図表Ⅲ - 2- 2に示す。 一般的に選択される血液透析が72件と最も多く、次に、多臓器不全や重症患者の血液浄化の際に、 全身状態改善や体液の恒常性の保持等の観点から緩徐な血液浄化療法として選択される持続的血液 透析濾過が17件と多かった。 図表Ⅲ - 2- 2 血液浄化療法に関連した医療事故の種類 種類 件数 血液透析 72 血液濾過 0 血液透析濾過 1 持続的血液透析 1 持続的血液濾過 0 持続的血液透析濾過 17 血漿交換 血液吸着 血漿吸着 6 合計 97 ②発生状況 血液浄化療法は、 透析用監視装置などを使用し、 血液をバスキュラーアクセスから体外へ流出(脱血) し、血液回路、血液浄化器等を経て体内に流入(返血)する仕組みであり、血液回路の接続部の緩 みや閉鎖、装置の設定間違いなどの医療事故を引き起こす可能性がある。 本分析では報告された事例を体外循環の流れから「バスキュラーアクセス」 「血液回路」「血液浄 化器等」「装置」に分類し、さらに「バスキュラーアクセス」は「穿刺時」「治療中」「抜去・抜針時」 として、事故の内容とともに図表Ⅲ - 2- 3に分類した。発生段階は、「バスキュラーアクセス」が 65件と最も多く、そのうち「部位間違い」が19件、 「意図しない抜針」が15件、 「損傷・出血」、 「外套・ガイドワイヤーの残存」がそれぞれ9件と多かった。 「血液回路」は13件であり、 「接続 部の緩み・はずれ」が5件、 「意図しない回路の閉鎖及び開放」 、「血液回路からの血液漏れ及び空 気の混入」がそれぞれ4件であった。ダイアライザやフィルタなどの「血液浄化器等」は3件であり、 そのうち「誤った血液浄化器等の使用」が2件、 「機器の不具合」が1件であった。 「装置」は16件 であり、そのうち「設定及び操作の誤り」が11件と多く、「装置の不具合」が3件であった。 - 110 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 3 血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した 医療事故の発生状況 発生段階 事例の内容 血液透析 血液濾過 持続的 血漿交換 血液透析 持続的 持続的 血液透析 血液吸着 濾過 血液透析 血液濾過 濾過 血漿吸着 計 部位間違い 17 0 0 0 0 1 1 19 損傷・出血 6 0 0 0 0 2 1 9 外套・ガイドワイヤーの残存 8 0 0 0 0 0 1 9 その他 1 0 0 0 0 0 1 2 14 0 1 0 0 0 0 15 バスキュラーアクセスと回 路の接続はずれ 4 0 0 0 0 0 0 4 その他 0 0 0 0 0 0 0 0 カテーテル破損 6 0 0 0 0 0 0 6 その他 1 0 0 0 0 0 0 1 57 0 1 0 0 3 4 65 接続部の緩み・はずれ 4 0 0 0 0 1 0 5 誤った血液回路の使用 0 0 0 0 0 0 0 0 意図しない回路の閉鎖及び開放 2 0 0 0 0 0 2 4 血液回路の不具合 0 0 0 0 0 0 0 0 血液回路からの血液漏れ及 び空気の混入 3 0 0 0 0 1 0 4 その他 0 0 0 0 0 0 0 0 小計 9 0 0 0 0 2 2 13 接続部の緩み・漏れ 0 0 0 0 0 0 0 0 誤った血液浄化器等の使用 0 0 0 0 0 2 0 2 血液浄化器等の血液漏れ 0 0 0 0 0 0 0 0 機器の不具合 1 0 0 0 0 0 0 1 その他 0 0 0 0 0 0 0 0 小計 1 0 0 0 0 2 0 3 設定及び操作の誤り 4 0 0 0 0 7 0 11 誤った管理・使用 0 0 0 1 0 0 0 1 保守・点検 0 0 0 0 0 0 0 0 装置の不具合 1 0 0 0 0 2 0 3 その他 0 0 0 0 0 1 0 1 小計 5 0 0 1 0 10 0 16 合計 72 0 1 1 0 17 6 97 穿刺時 バスキュラー アクセス 意図しない抜針 治療中 抜去・抜針時 小計 血液回路 ※ 装置 ※装置は透析装置・血液透析濾過装置・血漿分画装置・吸着装置などを示す (2)「血液回路」「血液浄化器」に関する医療事故の概要 本分析では、血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した医療事 故事例のうち、「血液回路」「血液浄化器」に関する事例を取り上げて分析した。 血液浄化療法における血液回路はバスキュラーアクセスと血液浄化器を接続し、脱血する側の動脈 - 111 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 血液浄化器等 (ダイアライザ・ フィルタ等) Ⅲ Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 回路と返血する側の静脈回路との間で体外循環を構成する回路である。血液浄化器には主に血液透析、 血液濾過、血液濾過透析など膜分離技術を利用した浄化器(ダイアライザ)を使用する場合と、血液 吸着など吸着物質(活性炭)で充填した吸着筒を使用する場合がある。 一般的な血液浄化療法の血液回路、血液浄化器の構成の一例を図表Ⅲ - 2- 4に示す。 図表Ⅲ - 2- 4 血液浄化療法の血液回路および血液浄化器の構成の一例 トランスデューサ 保護フィルタ トランスデューサ 保護フィルタ 抗凝固薬用 シリンジ 血液 浄化器 【動脈用血液回路】 脱血 【静脈用血液回路】 返血 (患者側) (患者側) 厚生労働省通知平成21年9月24日医政総発 0924 第1号<参考>をもとに本事業部で作成 (3)「血液回路」に関する医療事故の分析 血液回路に関連する医療事故については、血液浄化療法の医療事故に関する全国規模の調査報告が なされた平成12年度厚生科学特別研究事業の「透析医療事故の実態調査と事故対策マニュアルの策 定に関する研究」2)において、平成12年に発生した透析医療事故のうち重篤な事故と報告された 372件では、透析回路接続部の離断が60件(16.1%) 、回路内あるいは体内空気混入が39件 (10.5%)と報告されており、血液回路に関する事例が多い。 本事業に平成16年10月から平成25年9月30日の間に報告された血液浄化療法(血液透析、 血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した医療事故事例のうち、「血液回路」に関する事例 は13件、報告全件数の7.5%であり、先述した調査より少なかった。 - 112 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ①発生状況 平成16年10月から平成25年9月30日の間に報告された血液浄化療法(血液透析、血液透 析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した医療事故事例の「血液回路」に関する事例のうち、 「接 続部の緩み・はずれ」は5件、「意図しない回路の閉鎖及び開放」は4件、「血液回路からの血液漏 れ及び空気の混入」は4件であった。なお、図表Ⅲ - 2- 3においてバスキュラーアクセスに分類 した「バスキュラーアクセスと血液回路の接続はずれ」4件をここでは接続部の緩み・はずれに加 え計9件とした(図表Ⅲ - 2- 5) 。 図表Ⅲ - 2- 5 血液回路に関する医療事故の内容(図表Ⅲ - 2- 3抜粋) 発生段階 血液回路 事例の内容 接続部の緩み・はずれ 9※ 誤った血液回路の使用 0 意図しない回路の閉鎖及び開放 4 血液回路の不具合 0 血液回路からの血液漏れ及び空気の混入 4 その他 0 小計 17 ※「バスキュラーアクセスと血液回路の接続はずれ」(図表Ⅲ - 2- 3)4件を含む ②接続部の緩み・はずれ 血液回路の接続部の緩み・はずれについて、平成21年に厚生労働省は、摩擦による嵌合によっ て接続する「ルアースリップ式」の輸液ルートの使用の際、血液浄化療法において血液回路の接 続部位が外れ、血液が漏出するなどの事故事例の発生を受け、医療機関において血液回路等の接 続部位に摩擦にねじ止めを加えた「ルアーロック式」の製品を採用することを周知するために、 平成21年9月24日付医政発 0924 第1号・薬食安発 0924 第1号厚生労働省医政局総務課長・ 医薬食品局安全対策課長通知「血液浄化療法における血液回路の接続部位のルアーロック化につ いて(周知依頼)」3)を発出した。 ルアーロック式の製品となった血液回路の接続部は、①動 / 静脈アクセス部、②血液浄化器・ 血液透析器との血液側の接続部、③抗凝固薬注入ライン、④トランスデューサ保護フィルタとの 接続部、⑤液面調整ラインの5箇所である(図表Ⅲ - 2- 6) 。 - 113 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 ⅰ 「接続部の緩み・はずれ」について Ⅲ Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 6 血液浄化療法における血液回路および血液浄化器の主な接続部 抗凝固薬注入ライン トランスデューサ 保護フィルタ 圧力モニターライン トランスデューサ 保護フィルタ 液面調整ライン 抗凝固薬用 シリンジ 血液 浄化器 血液浄化器接続部 【動脈用血液回路】 脱血 (患者側) 【静脈用血液回路】 返血 動/静脈アクセス部 (患者側) 厚生労働省通知平成21年9月24日医政総発 0924 第1号 < 参考 > をもとに本事業部で作成 また、平成23年2月(独)医薬品医療機器総合機構はPMDA医療安全情報 No. 22「血液浄化 用回路の取り扱い時の注意について」4)を公表し、血液回路の接続部はすべてルアーロック式の製品 を使用するよう注意喚起を行なった。 - 114 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) <PMDA医療安全情報 No. 22 血液浄化用回路の取り扱い時の注意について> Ⅲ 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 - 115 - Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ⅱ 「接続部の緩み・はずれ」の分類 本事業に報告された接続部の緩み・はずれの事例9件のルアーロック式製品の使用及び緩み・ はずれが生じた部位を図表Ⅲ - 2- 7に示す。ルアーロックなしの1事例は、本来はルアーロッ ク式の製品を使用するところ、間違えてルアーロックなしの製品を使用した事例であった。医療 機関においては、行政機関や医療機器業界の注意喚起や取り組みを受け、血液浄化療法の血液回 路にルアーロック式の製品を使用することが、一般的に行なわれていると考えられる。 図表Ⅲ - 2- 7 接続部の緩み・はずれの部位 ルアーロックあり ルアーロックなし 不明 バスキュラーアクセス ー 血液回路 3 0 1 穿刺針の延長チューブ − 血液回路 2 0 0 血液回路 − 薬液注入ライン 0 1 1 三方活栓 − 三方活栓 1 0 0 6 1 2 合計 ⅲ 「接続部の緩み・はずれ」の具体事例の紹介 接続部の緩み・はずれの主な概要を図表Ⅲ - 2- 8に示す。さらに、それらの事例の中から主な ものについて、テーマ別専門分析班及び総合評価部会で議論された内容を続いて示す。数字は図表 Ⅲ - 2- 8の事例番号を示す。 図表Ⅲ - 2- 8 「接続部の緩み・はずれ」の主な事例の概要 No. 1 事故の 程度 事故の内容 背景・要因 穿刺針に透析用回路セット、ルアーロック をしっかり接続し絆創膏固定した。上肢 シーネ固定をした。定時観察した後の約 15分後、患者の意識レベルが下がって 障害なし おり、接続部等を確認したところ、ルアー ロックが緩み出血していた。 改善策 透析のマニュアルはあり知識は ・新 人 指 導 時 の 安 全 確 認 得られていたが、指導者の観察 チ ェ ッ ク リ ス ト を 作 成 す 視点が決められておらず、指導 る。 者の力量に任せられていた。機 ・チェックリストにもとづ 械 等 お よ び バ イ タ ル サ イ ン の いた安全確認をする。 チェックはしたが刺入部、接続 部各種のチェックが確実でな かった。透析看護師の新人受け 入れの機会が少なかった。 - 116 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) No. 死亡 事故の内容 背景・要因 定期透析日に通常通りの条件にて、担当 看護師Aが回路を接続し透析を9時42 分に開始した。透析前はいつもと状態に 変化はなかった。(体重プラス0.8Kg 入室UFR250開始時、BP130− 140/70−80mmHg)事故発生 当時の職員配置状況は、看護師5名、臨 床工学技士1名、看護補助者1名に対し て、患者は24名(入院8名、外来16名) であり、通常の人員より看護師は1名多 い配置状況であった。9時57分透析装 置の静脈圧下限警報アラームが鳴ったこ とから、リーダー看護師Bが確認に行っ た。静脈圧が陰圧になっていたことから、 まず脱血不良がないことを確認、その後 カテーテル挿入部を確認するため布団を 首元までめくり、透析カテーテル接続部 を保護したガーゼに異常がないことを確 認したうえで透析を再開した。その直後 静脈圧が60台まで上昇したのを確認し た。普段から日により静脈圧変動が大き く、患者はカテーテル使用の透析である こと、またQB100であることから、 静脈圧60台は妥当であると判断しその 場を離れた。その際、アラームの経過に ついて担当看護師Aに状況報告はしてい なかった。10時07分担当看護師Aが、 隣のベッドの透析装置のアラームが鳴っ たことを確認に行った際、事故当該患者 の顔面が蒼白になっているのに気がつい た。透析装置を確認すると静脈圧が陰性 に傾いていたが、アラームは作動してい なかった。布団をめくって回路を確認し たところ、カテーテルと透析ルートの接 続部が外れ、多量の出血をしていること を発見した。 改善策 事故原因の主因は、透析中に透 ・カテーテルとの接続のロッ 析カテーテルの接続部が外れて クを確実に行う。スタッフ しまったことである。これに関 にロックがきつすぎて外れ しては接続部のロック(ルアー ないことよりロックがゆる ロック)が十分でなかったと推 くて外れてしまうことのほ 測される。そのため患者の体動 うが危険性が高いという認 等で接続部に力がかかった際に 識を周知徹底させる。更に 接続が外れてしまったと考えら 手順やマニュアルに具体的 れる。また、回路の接続が外れ たにもかかわらず、透析装置の にロックのかけ方を記載し アラームが作動せず、回路が停 実施する。 止しなかったことも原因として ・透析装置のアラームが鳴っ 挙げられる。透析カテーテルの た際の対応について、特に 接続部のロックが不十分であっ ルートの目視確認について た要因として、過去にカテーテ 手順やマニュアルに具体的 ルとの接続ロック部分が外れな に記載し実施する。またカ くなってしまった事があり、 「き テーテルを用いて透析を行 つく回さないようにしてくださ う場合のラインの固定方法 い。 」と医師に口頭で指示され についても再検討し、同様 たことがあげられる。確かに接 に手順やマニュアルに具体 続部が外れなくなるとカテーテ ルを入れ替える必要があり、患 的に記載し実施する。 者に負担をかける面はある。し ・透析再開後のアラームの設 かし、接続部が外れてしまうこ 定に関しての仕組を周知徹 とと、外れなくなってしまうこ 底させる。再開1分後の静 とでは、起こった場合の生命に 脈圧を確認する。あるいは 対する危険性は、外れてしまう 基準点(中点)が異常なく 方が高いのは明らかである。 「き 設定されていることを確認 つく回さないように」という指 する手順を明確にし、手順 示が文章化されたものではなく、 やマニュアルに具体的に記 また患者に使用されていた透析 載し実施する。 カテーテルの接続ロック部分が ・新しく導入された透析装置 外れなくなってもカテーテル自 体を入れ替える必要がなく、回 や医療材料品の取り扱いに 路の部分だけ交換可能なもので ついては医師、臨床工学技 あったことが周知されていれば、 士、看護職員等の複数の職 このような誤った認識がスタッ 種で認識を共有し、定期的 フ の 間 に 共 有 さ れ る こと は な な勉強会を開催する。 かったと考えられる。透析装置 のアラームが作動しなかったこ とに関しては、装置の限界もあ るが、それに加えてスタッフに アラームの設定に対する知識が 不足していたことも関与してい ると思われる。アラームの設定 の基準点は透析再開後1分の静 脈圧となる。したがって再開後 1分の段階ですでに静脈圧が異 常値を示していれば、回路の接 続が外れて静脈圧が陰圧になっ てもアラームは作動しない。し たがって透析再開後1分は監視 しアラームの基準点が問題のな い値であることを確認する必要 があるが、設定に対する知識が 不足し、基準点の確認がされて いなかった。そのためにカテー テル接続部が外れてもアラーム が作動しなかったと考えられる。 - 117 - Ⅲ 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 2 事故の 程度 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 No. 3 4 事故の 程度 死亡 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 事故の内容 背景・要因 改善策 AAA術後で人工血管感染症に対する再 手術後、腎不全で透析中の患者。活動性 は低下し、自力での体位変換は不可の状 態であった。鼠径部に留置した透析用カ テーテルより抗凝固薬を投与中、15時 にルート交換を施行(この時、気づかず にロックなしのエクステンションチュー ブを使用していた) 。16時にオムツ交 換と体位変換を実施した。体位変換前は ルートのトラブルはなかった。体位変換 通常、カテーテル接続にはロッ ・輸液ラインにはロックつき ク つ き の エ ク ス テ ン シ ョ ン エクステンションチューブ チューブを使用するが、ロック を使用する。 なしのエクステンションチュー ・処置後のルートトラブルの ブが同じ棚に収納されており、 有無について、指差し確認 取り違え易い状況であった。処 を徹底する。 置後のルートトラブルの有無の ・ロックなしエクステンショ 確認の未徹底であった。勤務引 ンチューブの収納場所を変 継ぎ時にルート確認の手順が守 更する。 れていなかった。透析用カテー 後にルート接続部の確認はしていない。 テルからの大量出血は直接死因 17時に次の勤務者に引継ぎをしたが、 ではないが、状態が悪化する原 交代時にルートのトラブルの有無の確認 因の可能性があった。 はしていない。50分後、作業療法士が 床上リハビリのため布団をめくると大量 に出血していたため看護師に連絡した。 看護師が確認すると、カテーテルダブル ルーメンの片方の接続部が外れていた。 血圧低下はなかったが、Hbが低下して いたため輸血を実施した。 指導の臨床工学技士が穿刺後、当事者が 透析を開始するために穿刺針と繋がった 延長チューブにロック式透析回路チュー ブを接続し、目視によるロック部からの 出血や回路外れがないか確認した。患者 のバイタルと静脈圧を見ながら徐々に血 流をあげ200mL/minで透析を開 始した。開始後、穿刺針が抜けないため に回路を腕に固定している途中で、ロッ クされた接続部に触れたとき、接続が緩 障害なし かったため、返血側穿刺針の延長チュー ブと透析回路チューブのロック式穿刺部 が外れて出血が起こった。回路外れによ る静脈圧低下アラームが鳴り、透析機械 は停止した。すぐに指導の臨床工学技士 が接続が外れた穿刺針延長チューブと返 血側回路を接続し、再び透析を開始した。 滅菌シートに直径10cm程度の出血に おさえることができた。その後透析中は 患者の意識レベル、バイタルともに安定 しており3時間半の透析を行った。 穿刺針の延長チューブと透析回 ・透 析 開 始 前 の 回 路 接 続 の 路チューブのロックが不充分で 際、延長チューブと透析回 あったのに、開始する際、静脈 路チューブをしっかり差し 圧を見て血流量を上げていく中 込みロックをする。 で 接 続 部 を 目 視 だ け の 確 認 で ・ロックをするときにはしっ 開始し、接続部ロックを直接触 かりチューブの接続が緩く れることでの接続不良の確認を ないか、簡単に外れないか 怠った。透析回路の構造の知識 を確認する。 不足による思いこみがあった。 ・透析開始後、静脈圧の急激 な上昇や低下がないか確認 し、看護師と穿刺針と透析 回路を患者の腕に固定する 際、再びロックがされてい るか、接続不良による血液 の漏れや回路外れがないか 確認をする。 - 118 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) No. 5 事故の 程度 事故の内容 背景・要因 改善策 腎 不 全 に 対 し、 右 頚 部 に 挿 入 さ れ た CHDF送血側のルートの接続 ・複数の三方活栓が必要な場 カテーテルから24時間継続して持続透 (三方活栓)はずれにより多量 合、単包ではなく三連式の 析(CHDF)を実施していた。20: 出血した。通常CHDFルート 資材を使用する。 35患者本人よりナースコールがあっ は単独で使用するが、当該患者 ・原則CHDFのルートには た。看護師が訪床すると多量に出血し は末梢ルートの確保ができず、 三方活栓を使用しない。 ており、患者は意識レベルJCS100 CHDFの送血ルートに三方活 ・事例のように他のルート確 まで低下していた。CHDF回路送血 栓をつけ、輸液を行っていた。 保が不可能であり、CHDF ルートに接続されていた三方活栓と三 三連式三方活栓も採用されてい のルートに三方活栓をつけ 方活栓の間の接続が外れており、ただ たが、単包の三方活栓を 3 つ接 ざるを得ない場合は、腎臓 ちに送血ルートを接続し、ステーショ 続して使用していた。三方活栓 内 科 上 級 医 師 を 含 め た 医 ン 内 の 担 当 医 へ 報 告 し 5 % ア ル ブ ミ が何らかの要因で緩んだ。直接 療チームで対応を個別に検 障害残存 ナ ー を 急 速 投 与 し た。 2 0: 4 5 血 の要因ではないが使用されてい 討し、患者・医療チームで の可能性 圧 4 5 / 3 3 m m H g ま で 低 下 あ り。 た三方活栓を事故後破棄してし リスクを共有し治療にあた なし CHDF中断し、RCC2単位を投与し まい、三方活栓が原因(ひび割 る。 た。21:12血圧104/ 57まで上 れなど)か否かは判断できない。・医療安全管理室より、上記 昇した。意識レベルJCS1まで回復し、 をマニュアルに明文化する CHDFをその後、再開した。出血量は ことを指示した。 約470g、Hb10.0mg/dL(前 ・医療機器・器材に関与する 回Hb10.8mg/dL)。多量の輸液 事故発生時は、何が原因で と低左心機能のため、うっ血性心不全を あったか検証するため、現 発症し、呼吸状態の悪化を認めBIPA 物を保存することを医療 Pによる呼吸管理を行った。翌日には酸 安全管理室より周知した 素化良好となりBIPAPを終了した。 (ニュースレター発行)。 その後は問題なく経過した。 ○ルアーロック(ねじ込み)の接続の際に、スリップイン(はめ込み)が十分にできていなかった 可能性がある。 ○当該看護師は18年職種経験があるが、当該者部署配置期間は1ヶ月であり、ルアーロック操作 に慣れていなかった可能性がある。 ○新人(新任者)に対するルアーロック式の血液回路の指導の際には、①スリップインしたうえで、 ②ルアーロックする、と丁寧に手順を教えることは重要である。 ○スリップインができていなければ、ルアーロックができないといった「フールプルーフ:利用者 が誤った操作ができない設計」に則した製品の開発も望まれる。 No. 2 長期留置カテーテルと透析ルートが外れ多量の出血があった事例 ○カテーテルとルートの接続の目視での確認でできることは、①刺入部の状態、②接続部の緩み と血液漏れの有無、③テープの固定の浮き上がり、であろう。 ○事例は認知症の90歳代の患者であり、血液回路の接続の緩みに患者の体動が要因として重 なったのであろう。 ○長期留置カテーテルの使用について、チェックリストを作成して使用している施設もある。 ○静脈圧はカテーテル内の状態を見ていく大切な目安になる。設置時の静脈圧や静脈圧の推移を 見ていくことは、血液回路の接続の状態観察に有用である。しかしながら、穿刺針ごと抜けて しまった場合、針の抵抗圧はそのままかかっており、患者の静脈圧(10―30mmHg程度) しか変化しないため、注意が必要である。 - 119 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 No. 1 治療中、穿刺針と血液回路セットのルアーロックが外れた事例(第33回報告書再掲) Ⅲ Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ○静脈圧に問題がある場合、まず動脈側の回路を確認し、次に静脈側も確認する。両側を必ず確 認する手順を日常化しておくとよい。 ○患者の静脈圧が妥当であるかどうか検討することは重要である。長期留置カテーテルは先端が 詰まりやすくなる場合があり、個人の経時的な静脈圧の記録を見ていく必要がある。 ○血液漏れセンサーは1回当たり100円程度とコストがかかるが、リスクのある患者への導入 を検討するとよい。 ○ ルアーロックが外れなくなることはある。ルアーロックが外れても、出血しないクローズドジョ イントシステムを使用することも一案である。 ○長期留置カテーテルと直接カテーテルにつなぐのではなく、コネクターにつなぐことも一案で ある。 No. 3 透析のカテーテルに誤ってロックなしのエクステンションチューブを使用し、輸液ライン が外れた事例 ○透析のカテーテルは血液のフォローが大きいので接続が外れた際、患者へ与える出血の影響が 大きいため、輸液ラインもルアーロック式の回路を使用するのがよい。透析のルートに輸液を つなぐことを全面的に禁止している施設もある。 ○透析のカテーテルは利便性があることから、輸液ラインとして使用されることもあるがCV ラインに比べカテーテルの口径が大きく血液のフォローが大きい。輸液ラインの接続が外れた 場合、多量の出血を起こす危険性が高いことを念頭において使用を検討する必要がある。 ○輸液ラインのエクステンションチューブをロックなしで使用しないようにすることを検討する とよい。 No. 4 穿刺針とつながった延長チューブに血液回路を接続したが、接続部が緩んで出血が起 こった事例 ○血液透析の開始前の血液回路チェックは重要である。血液回路を構成しているチューブ類であ れば、準備する人、透析を始める人によるダブルチェックが可能である。しかし事例のように 穿刺針側の接続状態については、刺入時のチェックのみとなる。 ○ルアーロックはロック(ねじる)に重きを置くのではなく、 ①スリップインしたうえで、 (スリッ プイン)②ルアーロックすることが大切である。ロックは外れないための対策なので、まず抜 けないことが重要である。 No. 5 穿刺針CHDF回路の送血側につけられた三方活栓が外れ、多量に出血した事例 ○カテーテルと血液回路の間ではなく、血液回路の薬液注入ラインを使用することを考えるとよ い。必ず静脈側のエアートラップチャンバより上流に設置していれば、圧センサーが起動する。 今回の事例の部位では回路のモニタから無監視状態となっており危険が大きい。 ○またCHDF中にカテーテルと血液回路の間に三方活栓を接続すると回路内にエアが入る可能 性もある。 ○事例のようにどうしても血液回路を輸液ラインとして使用せざるを得ない患者の場合は、事前 に透析担当の臨床工学技士やスタッフと相談するとよい。 - 120 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ⅳ 「接続部の緩み・はずれ」の背景・要因 報告された事例の接続部の緩み・はずれの主な背景についてⅢ - 2- 9に整理した。事例の多 くが血液回路の接続時の問題ではなく、時間の経過による接続部の緩みや、はずれの事例であ ると推測される。長時間にわたる血液浄化療法中に、布団や衣類の重みなどの外部の力や、患者 の体動などの要因で接続部の緩みが生じることがある。穿刺針の刺入部や血液回路の接続部を 目視で確認をするとともに、固定テープの浮き上がりの有無などの観察を継続的に行なう必要が ある。 図表Ⅲ - 2- 9 接続部の緩み・はずれの背景要因 ルアーロックあり 6件 ○ロックが不十分であった ・過去に接続部が外れなくなったことがあり、「きつく回さないでくれ」と言われていた ○接続部の確認が不十分であった ・接続部を目視しただけの確認であり、直接触れて確認しなかった Ⅲ ・接続部の確認のチェックが確実でなかった ・血液回路のチェックの際、緩みを確認していなかった ・接続部が衣類の中にあり、確認し難かった ・患者に掛け物がかけてあり、確認し難かった ・接続部を確認するルールがなかった ○接続が不十分な上に患者の体動による外力が重なった ルアーロックなし 1件 ○ルアーロックありの製品を使用するところ、同じ棚に収納されていた ・ルアーロックなしの製品と取り違え使用した ※ルアーロックについて不明の事例が2件ある。 ※1つの事例の中に複数の背景要因がある。 ⅴ ルアーロック式の製品の使用の一例 本事業に報告された接続部の緩み・はずれの事例9件のうち、6件はルアーロック式の製品を 使用していた。接続部の緩み・はずれの背景要因(既出、図表Ⅲ - 2- 9)にあげられているよう にこれらの事例では「ロックが不十分であった」可能性がある。また、 (3)②ⅲ No. 1「治療中、 穿刺針と血液回路セットのルアーロックが外れた事例」 (前掲119頁)で記載したように、 ルアー ロック(ねじ込み)の接続の際に、スリップイン(はめ込み)が十分にできていなかった可能性 がある。ルアーロック方式の製品には、ロックするコネクターが①動くものと②動かないものと があり、接続の手順が異なる。 一般的なルアーロック方式の製品の接続のイメージを図表Ⅲ - 2- 10に示す。院内教育の場 で参考にしていただきたい。 - 121 - 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 ○患者の体位を変えたことにより透析による内部の高圧循環に加え、外部のねじりの圧力が働き 接続部が緩んだ可能性がある 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 10 ルアーロック方式の製品による接続のイメージ 1)ルアーロック方式の製品にはロックするコネクターが①動くものと②動かないものがある ①ロックするコネクターが動くもの ロックするコネクターが動く ②ロックするコネクターが動かないもの ロックするコネクターが動かない 2)接続をする場合 ①ロックするコネクターが動くもの <正しい手順> 1. スリップイン(はめ込み)する 2. ルアーロック(ねじ込み)する <誤った手順> 1. スリップイン(はめ込み)しないで - 122 - 2. ルアーロック(ねじ込み)する 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ②ロックするコネクターが動かないもの <正しい手順> スリップインしながらルアーロックする ③「意図しない回路の閉鎖及び開放」 意図しない回路の閉鎖及び開放には、血液浄化療法中、薬剤の交換などのため血液回路を一旦 閉鎖(クランプ)し、処置後に再び開放するといった処置を行なった後、開放あるいは閉鎖を忘 Ⅲ れた事例と、血液回路のラインが折れ曲がった事例の報告があった。 ⅰ 「意図しない回路の閉鎖及び開放」の分類 本事業に報告された意図しない回路の閉鎖及び開放の事例4件のうち、閉鎖に関するものが2件、 開放に関するものが2件あった。医療者が回路を閉鎖または開放しなければならなかったところ しなかった事例が3件あり、血液回路の折れ曲がりによる閉鎖の事例が1件あった。 血液回路の閉鎖 2件 血液透析 ○血液回路の折れ曲がりが生じた 血漿交換 ○返漿用のアルブミナー交換後もラインを鉗子で止めたままにした 血液回路の開放 2件 血液透析 ○プライミング後、クランプすべきところをせず透析を開始した LDL吸着 ○プライミングと回収時にのみ開放するラインのクランプが、吸着開始時に開放されていた ⅱ「意図しない回路の閉鎖及び開放」の具体事例の紹介 意図しない回路の閉鎖及び開放の主な概要を図表Ⅲ - 2- 12に示す。それらの事例の中から 主なものについて、テーマ別専門分析班及び総合評価部会で議論された内容を以下に示す。数字 は図表Ⅲ - 2- 12の事例番号を示す。 - 123 - 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 図表Ⅲ - 2- 11 「意図しない回路の閉鎖及び開放」の種類と内容 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 12 「意図しない回路の閉鎖及び開放」の主な事例の概要 事故の 程度 No. 事故の内容 背景・要因 改善策 閉鎖 1 障害なし 透析による溶血、回路の閉鎖が起き やすい病態にあり、透析機器、回路 をたびたび交換している際に回路に 問題が生じたと考えられる。 プライミング(透析装置の準備)・ポンプ装着部の構造上、トラ をアラームが鳴ることがなく終 ブルはあり得る事を認識し、準 了したため、問題はないと思い 備の再確認をするよう周知す 込んだ。このため、折れ曲がり る。 には気づかなかった。血液浄化 ・医療機器メーカーへ安全シス 装置の回路の一部に折れ曲がり テムについて、検討するように があっても、アラームが鳴らな 依頼した。 い機器であった。 開放 2 朝9時 45 分、LDL吸着治療を開 吸着治療に関連した事故は発生 ・治療箋に特殊治療の場合は熟練 始 し た。 約 1 時 間 半 経 過 し た 時 点 し た こ と が 無 い た め、 通 常 透 者によるチェックと、第三者によ で、 担 当 の 臨 床 工 学 技 士 が 還 流 液 析 の よ う な 第 三 者 に よ る 準 備 る段階的チェック(準備・器械・ (生食3リットル)の量が異様に減っ チェック、機器チェックなど段 時間毎)欄を作成し確認する。 ている事に気づいた。患者は胸部か 階 的 な チ ェ ッ ク は シ ス テ ム に ・特殊治療や新規導入の治療・ ら腹部にかけての息苦しさを訴えて なっていなかった。結果、液切 機器の場合は、臨床工学技士全 いた。担当の臨床工学技士は応援の れ警報が鳴るまで事故発見が遅 員が勉強する機会を作る。その 臨床工学技士を2名呼び、原因を探 れてしまった。特殊治療に関し 中で担当となった臨床工学技士 しているとプライミングと回収時し て臨床工学技士間で勉強・訓練 へ訓練と理解度評価(数値評価・ か開けることの無いラインのクラン するというシステムが無い為、 口述評価)を行い、合格基準に プが開いているのに気がついた。こ 臨床工学技士のクランプエラー 到達してから患者への治療を実 の時点で既に3リットルの還流液は (開けておくものという思い込 行するというシステムを導入す 患者の体内に注入されてしまってい み)が発生した。間違いを是正 る。熟練者の指導のもと実行さ た。また、ポンプを停止した事によ するシステムがなかった。特殊 せ、一人で実施可能かどうかの り血液が生理食塩液パックに逆流し 治療に対して教育・訓練・評価 最終評価をする。 てきた。看護主任が異変に気づき、 のシステムが無い為、理解度を ・報告・連絡・相談について優 上 司 へ 直 ぐ に 連 絡 す る よ う 助 言 し 十分把握できていない状況で治 先順位を決めておく。よくあり た。また同時に医師に報告した。 療を任せた。また異常発生時の がちな「 相 談しやすい人 」= 対応についても知識が不足して 「年齢が近い人」 「経験年数が いる状況であった。結果、初期 近 い人( 例えば 新 人と新 人 ) 」 障害残存 の対応にあたった3名の臨床工 という感 情と、異 常 時 の 報 告 の可能性 学技士は事故の重大性を理解し 系 統 が 異 な る こ と を 教 育 し、 なし ておらず、適切な対応(課長、 フローチャート等で誰が見ても 医師への連絡)をしなかった。 分かるよう明確にする。 いつ、どんな時に、誰に、報告・ ・治 療 は 医 師 の 指 示 の も と 実 連絡・相談するのかについて教 施している。指示から逸脱し 育が不十分であるため、この特 た現状が発生した場合は、ま 殊治療を十分理解している人へ ず医師の判断を仰ぐことが重 相談せず「相談しやすい人」に 要である。医師と臨床工学技 相談している。その結果、対応 士、看護師が患者の状態と事 の遅れにつながった。事故後の 故の状況とを確認し、早急に 対応について、事故発生の事実 と患者へのダメージを判断する 上で、短時間で体内へ3.6リッ トル注入されたことによる影響 を医師の意見を聞く前に、治療 を続けている。結果、事故発生 から中止まで40分経過し、患 者への影響を拡大させる危険性 を増大させた。 - 124 - 安全な方法をとることを最優 先とする。日機装の取り扱い 説明書の中に生食のラインの クランプについての注意は プライミング終了時、治療開始 時、回収時の手順に記載あり。 ただし、このクランプを閉め忘 れると何が起こるかについては 記載がないため、改善を要求し ている。 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) No. 1 血液回路の折れ曲がりによる回路の閉鎖が生じた事例 ○プライミングが終了すればまず、正常に終了したかを確認する必要がある。血液回路チェッ クの習慣をつけ、回路交換後は非日常的なことが起こりうるということを念頭において チェックをする。 ○鉗子を使用した場合、回路が折れ曲がることは起こりえる。そのような場合、静脈圧が低 下し発見することが可能である。 ○治療開始時、患者から脱血―返血されるまで一循環するまでは、起こりうる問題をチェック できる機会なので、血液回路の状態を観察するとよい。 No. 2 L D L吸着の際、プライミングと回収時にしか開けることのないラインのクランプ が開いていた事例 ○L D L吸着療法は、経験がないとわかり難いであろう。そのため、事例は当事者が機器に 慣れていなかった可能性がある。マニュアルを作成し、事例を共有することは有用である。 Ⅲ ○特殊治療については、研修で到達度の段階をつけて専属スタッフを育成している施設もある。 ⅲ 「意図しない回路の閉鎖及び開放」の背景・要因 報告された事例の意図しない回路の閉鎖及び開放の主な背景についてⅢ - 2- 13に整理した。 医療者が閉鎖や開放をすべきところをしなかった事例では、血液回路を使用した処置の後、正し い状態で回路が設定されているか確認することの重要性が示唆された。処置の後の確認は、次の 没しないための工夫の検討が必要である。 「医療者に閉鎖や開放についての思い込みがあった」事例は、経験の少ないLDL吸着療法で あった。医療機関においては、実際に経験をすることが少ない血液浄化療法については、擬似透 析などの勉強会で教育されることがある。実施時に生じる疑問を速やかに経験のある医療者に相 談できるネットワークを組織内で構築しておくことが重要である。 図表Ⅲ - 2- 13 「意図しない回路の閉鎖及び開放」の主な背景・要因 医療者が閉鎖や開放をしなければならなかったところ、しなかった 2件 ○プライミング後の確認不足があった ○血漿バッグ交換後の確認不足があった 医療者に閉鎖や開放についての思い込みがあった 1件 ○特殊治療に関して臨床工学技士間で勉強・訓練するというシステムが無い為、臨床工学技士が開放する もの、と思い込んだ 血液回路の折れ曲がりに気が付かなった 1件 ○血液回路の一部に折れ曲がりがあってもアラームが鳴らない機器であったことから、 アラームが鳴ることがなくプライミングが終了したため、問題はないと思い込んだ - 125 - 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 作業の始まりの確認でもあることを認識したうえで、指差しや声だしなど、確認行為が作業に埋 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ④「血液回路からの血液漏れ及び空気の混入」 血液回路からの血液漏れ及び空気の混入には、接続部の緩みや製品の不具合などの背景・要因が 考えられるが、報告された4事例の記載内容からは背景・要因を推測することが困難であった。し かし血液浄化療法による治療を実施している医療機関においても血液回路からの血液漏れ及び空気 の混入は発生する可能性はあり、発見の契機や事例の概要を紹介することは有用であると考えられ ることから次に紹介する。 ⅰ 「血液回路からの血液漏れ及び空気の混入」の発見の契機 報告された4事例とも気泡や空気の混入であった。血液回路からの空気・気泡の混入の発見の 契機を図表Ⅲ - 2- 14に示す。 チャンバーやエアトラップ、気泡アラームにより検知されていた。 図表Ⅲ - 2- 14 「血液回路からの血液漏れ及び空気の混入」の発見の契機 空気・気泡の混入 4件 ○返血操作を行う際で動脈チャンバーの液面が1/5まで低下していた ○返血操作の際に気泡検知の警報音がなり、エアトラップ内にエアが充満していることに気づいた ○透析中に気泡混入アラームが鳴り、確認すると回路に気泡が混入した ○CHDFの回路の動脈側のチャンバーの液面が上昇した ⅱ 「血液回路からの血液漏れ及び空気の混入」の具体事例の紹介 血液回路からの血液漏れ及び空気の混入の主な概要を図表Ⅲ - 2- 15に示す。それらの事例の 中から主なものについて、テーマ別専門分析班及び総合評価部会で議論された内容を続いて示す。 数字は図表Ⅲ - 2- 15の事例番号を示す。 図表Ⅲ - 2- 15 「血液回路からの血液漏れ及び空気の混入」の主な事例の概要 事故の 程度 No. 事故の内容 背景・要因 改善策 閉鎖 1 血液透析治療終了時、看護師が返血操作に入 ろうとした時点で血液回路内の空気混入に気 づいた。動脈チャンバーが1/5まで低下し ていた。回路と穿刺針がすでに離脱されてお り返血操作ミスか、回路側からの混入かの判 断はできなかった。動脈チャンバー液面を生 理食塩水で上昇させ、通常の回収操作で問題 障害なし なく返血した。空気塞栓等の症状はなかった。 - 126 - 動脈側における液面低下よ ・回路の接続、液面の低下、 り回路、穿刺針等の接続部 空気の混入に関してより注 からの空気混入が疑われた 意深く確認する。 が空気混入部は同定はでき なかった。しかし、文献に当 該患者が使用している薬剤 を確認した。また、現在の透 析コンソールがマイクロエア バブルを検出できないことが 緊急停止がかからないことに つながった。現在使用中の機 器(NCU−5 二プロ社製) の気泡検出能は0.05mL と低い。 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) No. 2 事故の 程度 不明 事故の内容 背景・要因 返血操作をしている時に気泡検知の警報音が なり、エアートラップ内にエアーが充満して いることに気づいたがエアートラップ内に補 液を満たし返血操作を続行してまもなく患者 から「エアーが体に入ったから止めて」と訴 えがあったので、ポンプを止めて抜針し終了 した。 改善策 患者が下肢の痙攣を訴えて ・返血技術を再教育する。 いたので早めの返血となり、・透析療法の基本知識を再指 慌 て て 返 血 操 作 を 進 め た。 導する。 操作中に気泡検知の警報が ・事故分析手法で分析し職員 鳴り、エアートラップを確 全員で共有する。 認して補液を満たしたが透 析回路のエアーを確認して いなかった。警報が鳴った 時、臨床工学技士や先輩看 護師に報告しなかった。 No. 1 返血操作の際、血液回路内に空気が混入した事例 ○事例では、返血時に空気混入に気づいているが、それまでにマイクロバブルが貯まってい た可能性がある。 ○マイクロバブルが原因としても基本的にダイアライザで吸着して患者には入らない。 Ⅲ ○返血操作の手技は各医療機関で違いがあり一概には言えないが、補液ラインに空気が残っ ていると操作の際に液面が下がる可能性がある。 ○静脈側のラインに緩みがあった可能性がある。 No. 2 返血操作時、気泡探知の警報が鳴った際、エアトラップのエアの充満には対応した が血液回路のエアに気づかず続行した事例 もできていなかった。先輩看護師や透析室スタッフによる支援体制が具体的でわかりやす いと相談しやすいのではないか。 ○事例のエアの混入機序は明確ではないが、返血時に生理的食塩水による置換ではなく、現 在ではあまり行われていないエアによる置換、いわゆるエア返血を行った可能性もあり、 対応するスタッフの技術や知識が十分でなかった可能性がある。 ⑤改善策のまとめ ⅰ 「接続部の緩み・はずれ」の事例に報告された改善策 1)適切な製品の使用 ○患者カテーテルと透析回路との接続部のコネクターが適切なものであるか確認する。 ○輸液ラインにはロックつきエクステンションチューブを使用する。 ○ロックなしエクステンションチューブの収納場所を変更する。 ○透析回路のヘパリン注入ラインをロック式の物に変更してロック付きのシリンジに変更する。 2)接続・固定方法 ○カテーテルとの接続のロックを確実に行う。 ○接続部の補強として外部からテープで固定するなどを検討する。 ○透析開始前の回路接続の際、延長チューブと透析回路チューブをしっかり差し込みロックを する。 - 127 - 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 ○経験の浅い職種経験 6 ヶ月の看護師が一人で返血操作をしており、警報が鳴った際の報告 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ○ロックをする時はチューブの接続が緩くないか簡単にはずれないかを確認する。 3)接続部の確認及び観察の方法の工夫 ○穿刺針と回路の接続を医師・臨床工学技士で行う。その後、看護師が穿刺針の固定を行ない 接続部の緩みがないか再確認を行う。 ○処置後のルートトラブルの有無について、指差し確認の徹底。 ○患者の穿刺部は、掛物で覆わないようにし、穿刺後30分と、1時間ごとのバイタルサイン 測定時に穿刺部の観察を行う。 ○穿刺針と透析回路を患者の腕に固定する際、再びロックがされているか、接続不良による 血液の漏れや回路外れがないか確認をする。 ○体位変換の際には接続部に問題がないことをその都度確認する。 ○プライミングや回路の接続を誰が行ったかを明確にできるチェックリストを作成する。 ○回路とカテーテルを緩みなく接続する。チェック時は目視のみでなく手で触り緩みがないこ とを確認する。タイミングは接続時、 接続直後、30分以内の3回、全て人を変えて確認する。 4)静脈圧の観察 ○透析開始後、静脈圧の急激な上昇や低下がないかを確認する。 ○透析再開後のアラームの設定に関する仕組を周知徹底させる。再開1分後の静脈圧を確認 する、あるいは基準点(中点)が異常なく設定されていることを確認する手順を明確にする。 5)マニュアルの整備 ○手順やマニュアルに具体的にロックのかけ方を記載し実施する。 ○透析装置のアラームが鳴った際の対応、特にルートの目視確認について手順やマニュアル に具体的に記載し実施する。 ○カテーテルを用いて透析を行う場合のラインの固定方法についても再検討し、同様に手順 やマニュアルに具体的に記載し実施する。 6)スタッフ間の連携 ○新しく導入された透析装置や医療材料品の取り扱いについては医師、臨床工学技士、看護 職員等の複数の職種で認識を共有し、定期的な勉強会を開催する。 7)教育 ○新人指導時の安全確認チェックリストの作成。チェックリストにもとづいた安全確認。 ○新しく導入された透析装置や医療材料品の取り扱いについては医師、臨床工学技士、看護 職員等の複数の職種で認識を共有し、定期的な勉強会を開催する。 ○スタッフにロックがきつすぎてはずれないことよりロックが緩くてはずれてしまうことの ほうが危険性は高いという認識を周知徹底させる。 - 128 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ⅱ 「意図しない回路の閉鎖及び開放」の事例で報告された改善策 1)事象の早期発見 ○プライミング終了後の確認チェックリストを作成する。 ○生理食塩液等のバッグ交換後、回路の再確認(声だし、指さし)を徹底する。 ○生理食塩液等のバッグ交換後に臨床工学技士と看護師によるダブルチェックを実施する。 2)事象発生時の適切な対応 ○ポンプ装着部の構造上、トラブルはあり得る事を認識し、準備の再確認をするよう周知する。 ○報告・連絡・相談について優先順位を決めておく。よくありがちな「相談しやすい人」=「年 齢が近い人」「経験年数が近い人(例えば新人が新人に相談する等)」という感情と、異常時 の報告系統が異なることを教育し、フローチャート等で誰が見ても分かるよう明確にする。 ○医師と臨床工学技士、看護師が患者の状態と事故の状況とを確認し、早急に安全な方法を とることを最優先とする。 Ⅲ 3)製品の関係する企業との情報共有 ○医療機器メーカーへ安全システムについて、検討するように依頼した。 4)その他 ○特殊治療の場合は熟練者によるチェックと、第三者による段階的チェック(準備・器械・時 ○特殊治療や新規導入の治療・機器の場合は、臨床工学技士全員が勉強する機会を作る。そ の中で担当となった臨床工学技士へ訓練と理解度評価(数値評価・口述評価)を行い、合 格基準に到達してから患者への治療を実行するというシステムを導入する。 ⅲ 「血液回路からの血液漏れ及び空気の混入」の事例に報告された改善策 1)空気の混入を起こさない手技 ○返血技術の再教育。 ○透析療法の基本知識の再指導。 2)事象の早期発見と対応 ○回路の接続、液面の低下、空気の混入に関してより注意深く確認する。 ○機器の操作の習熟とアラームの意味を理解し、原因を確認してから対処にあたる。 ○院内のCHDFワーキンググループの報告書を再度熟読するよう指示し、トラブルシュー ティングへの対応ができる知識の習得と技術の向上に努める。 3)事例の共有 ○事故分析手法で分析し職員全員で共有する。 - 129 - 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 間毎)欄を作成し確認する。 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) (4)「血液浄化器等」に関する医療事故の分析 血液浄化器等は主に血液透析、血液濾過、血液濾過透析など膜分離技術を利用した浄化器(ダイア ライザ )を使用する場合と、血液吸着など吸着物質(活性炭)で充填した吸着筒(フィルタ)を使用 する場合がある。血液浄化器等の使用にあたっては、 包装の破損や汚損がないこと、 外形の変形や亀裂、 キャップの脱落などが、気泡の混入や血液の溶血の原因となることがあり、異常に注意する必要がある。 ダイアライザの種類の選択にあたっては、患者の病態や心血管合併症の有無、体重、年齢などと、ダ イアライザの膜素材 , 膜面積 , 生体適合性などを勘案する。 ①発生状況 平成16年10月から平成25年9月30日の間に報告された血液浄化療法(血液透析、血液透 析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連した医療事故事例のうち、「血液浄化器」に関する事例は 3件であった。 ②「血液浄化器等」に関する医療事故の具体事例の紹介 血液浄化器等の事例の概要を図表Ⅲ - 2-16に示す。さらにそれらの事例の中から主なものについて、 テーマ別専門分析班及び総合評価部会で議論された内容を続いて示す。数字は図表Ⅲ - 2- 16の事 例番号を示す。 図表Ⅲ - 2- 16 「血液浄化器等」の主な事例の概要 No. 事故の 程度 事故の内容 背景・要因 改善策 機器の不具合 1 穿刺直後よりQB不良あり、看護師が針先を 調節し、QB200のところ150で再開し たが漏血警報が発生した。同警報 3 回目の際 当事者が対応者として呼ばれる。確認したと ころ、ダイアライザ内静脈側に目視で血液を 確認した。至急新規のダイアライザをプライ 障害残存 ミング後交換しHD再開、医師に報告した(特 の可能性 に指示なし) 。しかし12:00に37.8℃ 、医師に報告し血ガス がある まで熱発、悪寒(+) (低い) 測定(K=2.6)。13:00に38.2℃ まで上昇、別の医師に報告、各種検査採血の 指示があり、結果ロセフィンを点滴した。 - 130 - 透析開始時よりリークしたこ ・リーク時の対応についてマ とから、ダイアライザそのも ニュアルを周知するよう、 のに欠陥があったものと思わ 臨床工学技士間のカンファ れる。発見後の対応として、 レンスで報告をした。 マニュアルでは「リーク時も ・医師への報告方法について しくはリークの可能性がある もポイントを明確に報告す 場合は、血液の溶血の可能 るよう指導した。 性があるため返血せず、血 液ごと、回路、ダイアライザ を一式交換すること。 」となっ ていたが、透析液を流さない ようにし、返血後、ダイアラ イザのみを交換していた。ま た、溶血確認検査も行うよう になっているが、実施されて いなかった。 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) No. 事故の 程度 事故の内容 背景・要因 改善策 誤った血液浄化器等の使用 2 不明 医師2名が回路交換を行い、 ・臨床工学技士の増員(夜 看 護 師 が 物 品 を 準 備 し た。 間などの臨床工学技士不在 準備した際に、誤った器具 を解消)をする。 が取り揃えられた。看護師 ・部署での物品管理の変更 は普段これらの準備を担当 (間違えがおこらないように しておらず、医師が準備を 1種類の器具を定数管理) することになっていた。医 する。 師Bは、医師Aが物品を準 備したものだと思い、医師 Aは、看護師Cが物品を準 備したことは知っていたが、 医師Bが確認するだろうと 思っていた。そのため、医 師は、看護師が準備をした 物品が正しいものであると 思 い こ ん だ。 看 護 師 C は、 物品棚に血液濾過器以外の ものが入っているという認 識はなかった。透析器具の 取扱は、臨床工学技士が対 応 す る こ と も 多 か っ た が、 このときは夜間であり、医 師が交換した。確認不足だ けではなく、背景要因が複 数あると考えた。当該病棟 には、透析関連物品が棟内 の 物 品 棚 に 置 か れ て い た。 当初は血液濾過器のみが定 数配置されていたが、膜型 血漿分離器を使用すること があったため、どちらも定 数 配 置 す る こ と に な っ た。 また、直方体の箱を管理す る際に、奥行きが長くなる よう配置していたが、視覚 に入る面には用途を示す文 言や製品名は記載されてい なかった。 急性心筋梗塞にて入院中の患者。うっ血性 C H D F 用 の 膜 の 確 認 が ・CHDFの膜と血漿交換用 心不全の改善認めず、CHDFにて除水中 不十分であった。 の膜の保管場所を明らかに であった。CHDFに誤って血漿交換用の膜 異なるところにした。 を装着したため、血圧の低下が認められカテ コールアミンを増量した。同日朝、臨床工学 技士によって透析膜の違いを指摘された。朝 の採血にてTP3.6、Alb1.4、PT% 31、ATスリー16が認められ、アルブミ ン製剤、ATスリー製剤、新鮮凍結血漿の補 充を行った。 - 131 - Ⅲ 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 3 死亡 19時30分頃に透析回路の圧が上昇し、医 師Aは医師Bに伝えたところ、医師Bは回路 の交換が必要であると答えたため、応援を要 請した。医師Aは看護師Cに回路交換が必要 になったため、医師Bに依頼したことを伝え た。看護師Cは、持続血液濾過器ではなく、 プラズマフロー(膜型血漿分離器)とともに、 その他必要な物品をそろえた。その後、医師 Aと医師Bが透析回路の交換を行った。その 際、医師Bはいつも見ている子供のカラムと 違って大きいと言ったが、成人サイズだから 小児サイズとは違うのだと思った。患者は約 2時間後に血圧が低下した。血液透析濾過器 の排液の色調がオレンジから茶色に変わり、 アルブミンの急激な低下があった。昇圧剤、 輸液により血圧は安定したが翌日に意識を失 い、その後死亡した。その後確認したところ、 持続血液透析濾過の際にエクセルフロー(持 続血液濾過器)を取り付けるべきところを 誤ってプラズマフローを取り付けていたこと が判明した。 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) No. 1 血液透析開始時のダイアライザがリークを生じた事例 ○ダイアライザのリークはあまり経験することではないが、発生したときを想定した訓練は 必要である。 ○実際に治療中にダイアライザを交換することは一般的に行われている。ダイアライザを交 換する際は、ダイアライザのみではなく血液回路を含めた交換としたうえで準備をし、プ ランニングを行う。血液回路ごとダイアライザを交換し準備、プライミングを行う。 ○避難訓練と同様、定期的に擬似透析で訓練するというのも一案である。 No. 2 持続血液濾過器を使用するところ、誤って膜型血漿分離器を使用した事例 ○夜間の不慣れな処置、物品の管理など複数の要因が事例の背景にあることが伺われる。 ○スペースの有効活用としてのモノの整理ではなく、安全を考えたモノの管理の視点が重要 であり、持続血液濾過器と膜型血漿分離器を別々の場所に置く、製品名が必ず視覚に入る ような配置にする、などの対策も考えられる。 No. 3 CHDFに誤って血漿交換用の膜を装着した事例 ○保管場所や置く場所の管理が重要である。間違いやすい場所や行動の導線が同じになる場 所に置くことは根本的に避ける。 ○医療施設側では、取り違えをしない管理の工夫をするとともに、企業側では製品の外装の 見え方の工夫など横断的な取り組みが望まれる。 ③「血液浄化器等」に関する医療事故の背景・要因 報告された「血液浄化器」に関する医療事故3件の主な背景について図表Ⅲ - 2- 17に整理した。 No. 1のように、製品の不具合が疑われるときは直ちに決められた手順で、安全に製品を交換した うえで、その製品の製造企業に原因の調査を依頼することで、製品そのものの改善や使用方法の改 善に必要な情報を得られる可能性がある。また当該事例の医療機関ではこのような不測の事態が生 じた場合のマニュアルが整備されていたが、マニュアルを生かせず、本来血液回路とダイアライザ を交換するところ、ダイアライザのみを交換している。医療機関において、擬似透析を用いて手順 や手技を訓練することも有用である。 No. 2、3の、誤った血液浄化器の使用については、夜間や救急など血液浄化器についての知識 が十分でない医療者が使用する場面での間違いであり、取り扱いに精通した医療者の関与が望まれ るとともに、医療機関において製品を管理する際に、治療により異なるダイアライザの保管場所を 別にするなど、取り違えを起こさないための管理の検討が重要である。また持続血液濾過器と膜型 血漿分離は取り扱いに慣れていない医療者からは外観が類似しているように見えると指摘があるこ とから、製造企業においても、取り違えをおこしにくい分かりやすい表示や、外装の工夫などが望 まれる。 - 132 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 17 「血液浄化器等」に関する医療事故の主な背景・要因 機器の不具合 1件 ○透析開始時よりリークしたことから、ダイアライザそのものに欠陥があった可能性がある 誤った血液浄化器の使用(持続血液濾過器ではなく、膜型血漿分離器を装着した) 2件 ○不慣れな医療者による装着 ・日頃準備をしない看護師が持続血液濾過器の準備をした ・夜間のため日頃装着をしない医師が持続血液濾過器の装着をした ○ダイアライザの種類を同定しにくい管理方法 ・病棟の物品棚には血液濾過器と膜型血漿分離器の両方が定数配置されていた ・箱の視覚に入る面に、用途を示す文言や製品名が記載されていなかった ※ひとつの事例で複数の背景・要因がある場合がある。 ④改善策のまとめ Ⅲ 1)機器の不具合について ○リーク時の対応についてマニュアルを周知するよう、臨床工学技士間のカンファレンスで報 告をした。医師への報告方法についてもポイントを明確に報告するよう指導した。 2)誤った血液浄化器の使用について ○臨床工学技士を増員(夜間などの臨床工学技士不在を解消)する。 ○部署での物品管理を変更(間違えがおこらないように1種類の器具を定数管理)する。 (5) 血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連したヒヤリ・ ハット事例の現状 前回の報告書が対象とした73件に、平成25年7月1日から9月30日の間に報告された血液浄化療 法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)に関連したヒヤリ・ハット事例14件を加えた87件を 医療事故と同様に分析、集計した(図表Ⅲ - 2- 18) 。 医療事故と同様に血液透析が59件と最も多く、持続的血液透析濾過が17 件であった。 図表Ⅲ - 2- 18 血液浄化療法に関連したヒヤリ・ハット事例の種類 種類 件数 血液透析 59 血液濾過 0 血液透析濾過 0 持続的血液透析 0 持続的血液濾過 0 持続的血液透析濾過 17 血漿交換 血液吸着 0 血漿吸着 不明 11 合計 87 - 133 - 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 ○CHDFの膜と血漿交換用の膜の保管場所を明らかに異なる場所にした。 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ①血液浄化療法(血液透析、血液透析濾過、血漿交換等)の医療機器に関連したヒヤリ・ハット事例 の発生状況 報告された事例を、医療事故と同様に体外循環の流れから「バスキュラーアクセス」「血液回路」 「血液浄化器等」「装置」に分類し、さらに「バスキュラーアクセス」は「穿刺時」「治療中」「抜去・ 抜針時」として、事故の内容とともに図表Ⅲ - 2- 19に分類した。 図表Ⅲ - 2- 19 血液浄化療法(血液透析、血液濾過、血漿交換等)の医療機器に関連したヒヤリ・ ハットの発生状況 発生段階 事例の内容 穿刺時 バスキュラー アクセス 治療中 血液透析 血液濾過 持続的 血漿交換 血液透析 持続的 持続的 血液透析 血液吸着 濾過 血液透析 血液濾過 濾過 血漿吸着 不明 計 部位間違い 0 0 0 0 0 0 0 0 0 損傷・出血 0 0 0 0 0 0 0 0 0 外套・ガイドワイヤー の残存 0 0 0 0 0 0 0 0 0 その他 0 0 0 0 0 0 0 0 0 意図しない抜針 6 0 0 0 0 0 0 1 7 バスキュラーアクセス と回路の接続はずれ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 その他 0 0 0 0 0 0 0 0 0 カテーテル破損 0 0 0 0 0 0 0 0 0 その他 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0 0 0 0 0 0 1 7 抜去・抜針時 小計 血液回路 接続部の緩み・はずれ 2 0 0 0 2 0 0 0 4 誤った血液回路の使用 4 0 0 0 1 0 0 0 5 意図しない回路の閉 鎖及び開放 4 0 0 0 2 0 0 0 6 血液回路の不具合 0 0 0 0 0 0 0 0 0 血液回路からの血液 漏れ及び空気の混入 1 0 0 0 3 0 0 2 6 その他 0 0 0 0 0 0 0 0 0 11 0 0 0 8 0 0 2 21 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 3 3 0 0 0 0 0 0 0 3 機器の不具合 0 0 0 0 0 0 0 0 0 その他 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0 0 0 0 0 0 0 6 27 0 0 0 5 0 0 4 36 誤った管理・使用 3 0 0 0 3 0 0 0 6 保守・点検 2 0 0 0 0 0 0 3 5 装置の不具合 2 0 0 0 1 0 0 1 4 その他 2 0 0 0 0 0 0 0 2 36 0 0 0 9 0 0 8 53 59 0 0 0 17 0 0 11 87 小計 接続部の緩み・漏れ 誤った血液浄化器等 の使用 血液浄化器等の血液 漏れ 血液浄化器等 (ダイアライザ・ フィルタ等) 小計 設定及び操作の誤り ※ 装置 小計 合計 ※装置は透析装置・血液透析濾過装置・血漿分画装置・吸着装置などを示す - 134 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ②「血液回路」に関するヒヤリ・ハット事例の内容 平成25年1月1日から平成25年9月30日に間に報告された血液浄化療法に関連したヒヤリ・ ハット事例のうち「血液回路」に関する事例は21件であった(図表Ⅲ - 2- 20) 。ヒヤリ・ハット 事例の「血液回路」に関する事例のうち、「接続部の緩み・はずれ」は4件、「誤った血液回路の使 用」は5件、 「意図しない回路の閉鎖及び開放」は6件、 「血液回路からの血液漏れ及び空気の混入」 は6件であった。 本報告書では医療事故では報告がなかった「誤った血液回路の使用」に着目した。 図表Ⅲ - 2- 20 血液回路のヒヤリ・ハット事例の分類(図表Ⅲ - 2- 19抜粋) 発生段階 血液回路 事例の内容 件数 接続部の緩み・はずれ 4 誤った血液回路の使用 5 意図しない回路の閉鎖及び開放 6 血液回路の不具合 0 血液回路からの血液漏れ及び空気の混入 6 その他 0 小計 21 ⅰ 「誤った血液回路の使用」の事例 「誤った血液回路の使用」の事例について誤りが生じた段階、誤りの内容、誤りに気付いた場面 取り違えが3件であった。また、誤りに気付いた場面では、透析器のチェックやラインの確認の場 面が2件であった。具体的なヒヤリ・ハット事例の概要を図表Ⅲ - 2- 22に示す。No. 1、2、4、5 は患者への実施の有無は「あり」であるが、事例の内容から、患者への影響が軽微であったため ヒヤリ・ハットで止まったと推測できた。 図表Ⅲ - 2- 21 「誤った血液回路の使用」のヒヤリ・ハット事例の内容 段階 誤りの内容 誤りに気付いた場面 件数 準備時 血液回路のガスバージ(ガス除去)がなさ れていなかった 準備終了後、透析器をチェックした際 1 開始時 血液回路の動脈ラインと静脈ラインを取り 違えた 不明 3 終了時 脱血ルートと生理食塩水を接続するとこ ろ、静脈圧モニタラインに接続した ラインの確認を行った際 1 - 135 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 を図表Ⅲ - 2- 21に整理した。誤りの内容では、開始時の動脈ラインと静脈ラインの血液回路の Ⅲ Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 22 「誤った血液回路の使用」のヒヤリ・ハット事例の概要 No. 1 2 3 4 5 実施の 有無 あり 事故の内容 背景・要因 改善策 透析準備終了後、コンソールにて確認後、穿 刺開始したがコンソール上患者接続できず、 ガスバージされていないことに気づく。再循 環後、ガスバージ試行し再開始した。 チェックシートは確認済の ・チェックシートに沿い再確 サインがあり、穿刺時の再 認の充実。 確認時コンソールにてガス ・コンソールにて指差し確認 バージ終了確認見落とした。 の徹底。 透析開始時動脈ラインと静脈ラインを間違え て逆に接続した。開始後 1 時間 40 分後に他 の看護師が間違いを発見した。医師に確認し 1 時間透析を延長することになった。 穿刺者は患者との会話で注 ・リーダーの役割を明確に 意が散漫になっていた。介 し、状況判断が速やかに行 助者は穿刺部位の確認まで えるようにした。 行わなかった。透析開始後 ・介助者の観察項目を記録 にダブルチェックを行って 用紙に追加し、誰もが同じ いるが、急変した患者の対 視点の観察を行えるように 応に追われダブルチェック 改定した。 が遅くなった。穿刺針の色 ・記録用紙にダブルチェッ が動脈用、静脈用とも同じ ク時間、担当者サイン欄を 色であるため区別しにくい。 設け、責任の所在を明らか にした。 あり なし 9:45 に透析開始。終了の返血時にAVが 不明 逆に接続されていることに気付いた。医師に 報告し血液検査を行った。その検査結果で は、通常の血液検査とあまり変わらなかった ので、そのまま終了となった。開始から終了 までのチェック時にも気付かなかった。 あり 緊 急 オ ン コ ー ル で C H D F を 準 備 し 開 始 急な処置の依頼で慌ててお ・吸着は頻回に行う処置で 10分後、エンドトキシン吸着の指示あり。 り思い込んだ。 はないため、準備時の確認 CHDF中断し吸着のための準備を行い、開 の徹底と定期的な手技の確 始した。血流方向が示されていたが反対方向 認を行う。 に血液回路を装着していたが気づかなかっ た。翌日の他の臨床工学技士が誤接続を発見 した。吸着はすでに終了していた。 あり 透析終了のため患者へ返血をしようとしてい る際、脱血ルートと生理食塩液ルートをつな ぐはずが間違えて静脈圧モニターラインを外 してつないでしまった。生食が出てこなかっ たため、ラインを確認すると間違えて接続し ていることに気づいた。回路が不潔になって しまったため、いつもは300mL返血するが 患者へ謝罪し返血を全くせず終了した。終了 時の血圧は120台。気分不快はなかったが、 座位になった際、気分不快があり収縮期血圧 98mmHgであった。状況を主治医へ報告、 生食250mL補液指示をもらうが針は抜針 してしまっていたため再度患者へ謝罪し翼状 針で補液をした。病棟へ状況を説明し、状態 観察を依頼した。300mLの血液を破棄す ることになり、気分不快、貧血になる可能性 が高いため、注意が必要だった。 - 136 - ・回路を接続する際に、穿刺 者は「静脈回路お願いしま す」、介助者は「はい、静 脈回路です」と声を掛け 合って接続するように取り 決めた。 いつも同じようにしている ・集中して業務を行うため 手順のため、自分の緊張感 の対策を検討する。 がかけていた。また、午後 透析との切り替え時間帯の ため 1 人での終了が当たり 前となっており、マンパワー が不足していた。 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ③「血液浄化器等」に関するヒヤリ・ハット事例の内容 平成25年1月1日から平成25年9月30日の間に報告された血液浄化療法に関連したヒヤリ・ ハット事例のうち「血液浄化器等」に関する事例は6件であった (図表Ⅲ - 2- 23) 。具体的なヒヤリ・ ハット事例の概要を図表Ⅲ - 2- 24に示す。 図表Ⅲ - 2- 23 血液浄化器等のヒヤリ・ハット事例の分類(図表Ⅲ - 2- 17抜粋) 発生段階 事例の内容 血液浄化器等 (ダイアライザ・フィルタ等) 件数 接続部の緩み・漏れ 0 誤った血液浄化器等の使用 3 血液浄化器等の血液漏れ 3 機器の不具合 0 その他 0 小計 6 Ⅲ 図表Ⅲ - 2- 24 血液浄化器等のヒヤリ・ハット事例の具体例の紹介 No. 実施の 有無 事故の内容 背景・要因 改善策 誤った血液浄化器等の使用 1 あり 2 ダイアライザの取り違え (PES11Eαの指示を あり A P S 0 8 U A 使 用 ) 3 あり 準備・プライミング・タイムアウ ・準備・プライミング・タイムア ト の ト リ プ ル チ ェ ッ ク に よ る 確 ウトのトリプルチェックに加え 認を行っていたが十分に機能しな て、準備後に他のスタッフによる かった。 確認作業をマニュアル化する。 透析開始時の確認が不十分であっ ・準備、プライミング、タイムア た。 ウトのトリプルチェックを行っ ていたが、不十分であったため、 準備後に他のスタッフによる確 認作業をマニュアル化する。 透析準備のプライミング時、ダイ 外観の類似があった。確認不足が ・確認を徹底する(ダブルチェッ アライザが患者のものと違ってい あった。思い込みがあった。 ク)。 た。 血液浄化器等の血液漏れ 4 5 なし なし 透析開始13分後、漏血警報あり。 透析液ラインに漏血がみられたた め、マニュアルに従いダイアライ ザ、回路一式交換。医師指示にて 抗生剤投与。 メーカー調査。ダイアライザ移送 ・凍結する場所には保管しない。 時、院内保管時での凍結が原因。 ・中間業者・移送時の凍結防止を 院内では0度以下になる場所では 依頼。 保管していないため、移送時また は、中間業者での凍結の可能性が 考えられる。 開 始 前 の 準 備 工 程 に 入 って おら ず、そのまま開始操作に入ったた めに血液流量を上げることにより、 H12(積層型ダイアライザ)シ リーズの透析膜に圧がかかり、膜 リークに至った。 透析開始時、準備工程になってい ・開始前の指示票チェック時に本 な か っ た こ と に 気 付 か ず、 プ ラ 来防げるインシデントだったが、 イミング液破棄途中に準備完了状 チェックが疎かになったため起き 態 に な る が、 透 析 液 圧 の 上 昇 あ た。 り。採液スイッチで一端、透析液 ・開始前チェックを確実に施行し 圧下がるが、ダイアライザのリー ていく。 クみられダイアライザ交換とな る( ダ イ ア ラ イ ザ: A N 6 9 − 4000)。 - 137 - 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 血液浄化装置のダイアライザの取 り違え(PES11Eαの指 示を APS08UA使用)た状態で透 析を開始した。 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 No. 6 実施の 有無 あり 事故の内容 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 背景・要因 透析開始直後、漏血(PN100使 メーカー対応中である。 用)でコンソールのアラームが鳴っ た。透析液排液ラインが赤くなっ ており、漏血を目視にて確認。A 側を返血し、回路内残血液は破棄。 医師の指示にて抗生剤投与、生化・ 血算の採血を実施。新たな血液回 路・PN100をプライミングし透 析を再開した。再開後漏血なく透 析実施できた。患者の症状はなし。 代 理 店 に 連 絡 し 漏 血 し た ロット Noを回収、違うロットNoを納 品してもらった。 改善策 ・メーカー対応中。 ・違うメーカーへダイアライザを 変更する。 「誤った血液浄化器等の使用」は3件であり、そのうち、患者に使用するダイアライザの規格の 取り違えであることが報告されている事例は2件(No. 1、 2)あり、No. 3についても記載内容から、 ダイアライザの規格を間違えたことが推測される。医療事故報告では、持続血液濾過と膜型血漿分 離という異なる血液浄化法で用いる血液浄化器の取り違えが報告されているが、ヒヤリ・ハット事 例では同じ血液浄化法で用いられる血液浄化器について膜面積や限外濾過率の「血液浄化器等の血 液漏れ」の事例3件は、院内でのダイアライザの保管方法や使用方法が適切でなかった事例が2体 (No. 4、5)と、詳細が不明のためメーカーへ対応を依頼した事例が1体(No. 6)あった。 (6)まとめ 血液浄化療法の医療機器に関連した医療事故やヒヤリ・ハット事例のうち、血液回路及び血液浄化 器等に関する事例を分析した。血液回路に関する事例は、 「接続部の緩み・はずれ」 「意図しない回路 の閉鎖及び開放」「血液回路からの血液漏れ及び空気の混入」について、具体事例を紹介し、事例の 背景要因、血液漏れ等の発見の契機、報告された改善策を整理して示した。血液浄化器等に関する事 例は、「誤った血液浄化器の使用」 「機器の不具合」について、事例の背景要因、報告された改善策を 整理して示した。 また、一般的なルアーロック式の製品の接続に関し、スリップインやルアーロックの具体的なイメージ を写真とともに掲載したので、院内教育の場などで活用していただきたい。 今後も継続して事例の収集を続け、専門分析班において、具体的ないくつかの分類の事例に焦点を あてた分析を行っていくこととしている。 - 138 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) (7)参考文献 1. 日本透析医学会. 「図説わが国の慢性透析療法の現況」2012年末の慢性透析患者に関 す る 基 礎 集 計(Online) .available from < http://docs.jsdt.or.jp/overview/index.html > (last accessed 2013-10-17) 2. 厚生科学特別研究.透析医療事故の実態調査と事故対策マニュアルの策定に関する研究.平成 12年度. 3. 厚生労働省.血液浄化療法における血液回路の接続部位のルアーロック化について(周知依頼). 平成21年9月24日付医政発 0924 第1号・薬食安発 0924 第1号厚生労働省医政局総務課長・ 医薬食品局安全対策課長通知. 4. 医薬品医療機器総合機構 . PMDA医療安全情報 No. 22(2011年2月)「血液浄化用回路 の取扱い時の注意について」 .available from < http://www.info.pmda.go.jp/anzen_pmda/file/ iryo_anzen22.pdf >(last accessed 2013-10-17) Ⅲ 血液浄化療法︵血液透析、血液透析濾過、血漿交換等︶の 医療機器に関連した医療事故 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 - 139 - Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 【2】医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 医療機関と薬局との分業が進み、外来患者に交付する処方せんの多くや、退院する患者の処方せん は、薬局で調剤され、薬が交付されている。そして処方される医薬品には、ハイリスク薬が含まれる ことから、医療機関における処方せんの作成及び、薬局における処方せんの監査などの調剤時の確認 や適切な疑義照会が適切になされることが、医薬品による医療事故の防止のために重要である。この ように医薬品に関する情報伝達は、医療安全を推進する上での重要なテーマであり、現在では国内外 でそのように理解されている。 本事業の第25∼28回報告書では、分析テーマとして「薬剤の施設間等情報伝達に関連し た医療事故」を取り上げた。そして、医療機関−薬局間だけでなく、他施設−当該施設間、部 門・ 部 署 間、 診 療 科 間、 診 療 科 − 部 署 間 な ど の、 施 設 や 部 署・ 部 門、 診 療 科 の 間 で や り 取 り さ れ る 医 薬 品 に 関 す る 情 報 が、 様 々 な 媒 体 に よ り 伝 達 さ れ、 そ れ が ① 伝 達 さ れ な か っ た 事 例、 ②誤った情報が伝達された事例、③情報伝達が途絶した事例、④伝達された情報が誤解された事例が 報告されていることを示した。その中で、医療機関−薬局間の事例は2件あり、 「処方せんの製剤量 と有効成分量とを誤解した事例」「薬局の誤調剤の事例」であった。情報伝達の媒体はいずれも処方 せんであり、処方せんの内容が薬局において誤解された事例であった。このように本事業では、医療 機関から報告された事例に基づき、医療機関−薬局間の情報伝達に関する医療事故について分析した。 一方、本財団では、平成21年度より薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業において薬局で発生 する、または発見されるヒヤリ・ハット事例の収集を行っていることから、医療機関で医療事故やヒ ヤリ・ハットとして認識される事例を、薬局の視点から、薬局における調剤や適切な疑義照会の実施 などの観点から分析している。 薬局の薬剤師は、調剤、交付にあたり、薬歴の確認や患者インタビュー等により得られる、基礎疾患、 併用薬の有無、体重等の患者の背景・要因を考慮した上で処方内容を監査する。処方内容に疑問があ る場合は、医師に疑義照会し疑問を解消してから適切に調剤、交付を行う。疑義照会については、薬 剤師法第24条において、 「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付 した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによっ て調剤してはならない」と規定されている。 このような一連の流れが機能しなかったことにより薬剤の医療事故が発生していることが本事業に 報告されており、同時に薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業においても、適切に疑義照会される ことなく、誤った医薬品が交付された事例が継続的に報告されている。そのような事例の中から医療 事故に至る事例が発生することを防ぐために、医師が処方を間違えたり処方せんの入力や記載を間違 えたりした場合でも、薬剤師が適切に処方せん監査を行い、処方内容に疑義がある場合には医師に照 会を行って誤りを正すことにより医療事故を防ぎ、医師が意図した処方通りに患者が薬剤を服用する ことができる仕組みを確立し、機能させることが重要である。そのために薬剤師は、①薬剤の最新の 情報を収集し、知識を増やす、②初来局時だけでなく、定期的に患者から、体重や併用薬(お薬手帳 の確認) 、体調変化、禁煙や車の運転等の環境変化、アレルギー等の情報を収集し、薬歴の情報を更 新する、③医療機関との連携を深め、仕組みを整えておく等が重要である。また、これらのことには、 医療機関から必要かつ十分な情報が、処方せんや患者を通じて薬局に提供されることが重要であり、 そのために、医療機関と薬局との連携が重要となる。 - 140 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 先述したように、患者は適切な投薬を受けて疾患を治療するために、医療機関と薬局の両方を利用 しており、これは処方から投薬までの一連の過程である。しかし、本事業の分析テーマ「薬剤の施設 間等情報伝達に関連した医療事故」で分析したように、医療機関と薬局とは、組織が異なり人も異な るために、必ずしも一連の過程を形成できていないために、誤った投薬がなされ、医療事故を生じて いる場合がある。 医療事故防止事業部では、医療事故情報収集等事業と薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業を運 営していることから、患者にとって処方から投薬までの一連の過程を確実なものにするために、医療 機関と薬局の双方の視点から見た、発生している事象、背景・要因、改善策などを示すことが出来る と考えている。そこで本テーマを取り上げ、医療機関と薬局との双方の視点から、医薬品に関する医 療事故を分析、考察することとした。そして、まず、医療機関から報告された事例を集計、分析し、 それに関連する薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の成果を引用し、処方から投薬までの流れに おけるエラーを総合的に分析した。 Ⅲ (1)医療機関と薬局の連携に関連した医療事故の現状 ①発生状況 本報告書では、本事業において報告の受付を開始した平成16年10月から平成25年6月30 日の間に報告された医療事故事例の中から、医療機関と薬局の連携に関連した医療事故37件につ いて分析を行った。 薬剤に関連する情報伝達は、医療機関の内外で様々な主体間を通じて行われており、図表Ⅲ - 2- 25 に示した。図中に、医療機関と薬局との関係の部分を点線で囲み示した。 図表Ⅲ - 2- 25 施設間等における医薬品の情報伝達の流れ ᒰᣉ⸳ ᒰ⸻≮⑼ ઁᣉ⸳ 䋨∛㒮䇮 ⸻≮ᚲ䋩 ᄖ᧪ ⮎ዪ ઁ⸻≮⑼ ∛ ઁ⸻≮ㇱ㐷 䊶ㇱ⟑ 䋨ᚻⴚቶ䊶 ᬌᩏቶ╬䋩 - 141 - ⮎ㇱ 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 ②薬剤の施設間等情報伝達に関連した医療事故の内容や施設等 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ③医療機関と薬局の連携に関連した医療事故事例の紹介 報告された事例は「正しい処方せんが作成された事例」と「誤った処方せんが作成された事例」 に大別できる。さらに、それらを薬局で生じたエラーごとに、 薬剤取り違え、処方量間違いなどの「事 例の内容」に分類し、さらに事故の程度などの情報を加えて、それぞれについて主な報告事例の概 要を図表Ⅲ - 2- 26に示した。 図表Ⅲ - 2- 26 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故事例の概要 No. 事故の内容 背景・要因 改善策 正しい処方せんが作成された事例 1 慢性心房細動の治療のため抗凝固療法中であった。 ワーファリン錠1mg1錠、ワーファリン錠0.5 mg1.5錠 トータル1.75mgを35日分外来 で院外処方とした。約1ヵ月後、通常外来受診時、 採血の結果PT−INRは10以上測定不能という 結果であった。原因検索、内服薬コントロールのた め緊急入院となる。入院後、院外処方された薬剤を 持参してもらったところ、ワーファリン 1mg2 錠調剤されており、トータル 2.75mg処方され 内服していた。院外薬局では一包化されていたため 患者は気付けなかった。 院外薬局の薬剤師は、1mg ・ワーファリンは一包化せず 錠1錠を2錠と思い込んでい に、処方せんに「ワーファリ た。8種類の薬剤を処方され ンは1包化なし」と入力し、 ており、朝、昼、夕と内服す シート調剤とする。 る薬剤が異なるため一包化と ・地域薬局への情報提供を行 していた。処方された内服薬 い、 再 々 度 の 錠 数 の 確 認、 をその都度確認にて内服する 1包化においてはバラ包装 という習慣がなかった。 を使用せずPTPを使用す ることとした(市薬剤師会か らの報告)。 ・会員薬局の調剤過誤報告を 一元管理するシステムは構 築されていないが、内容・結 果により防止策の指示や会 員の研修、注意喚起を文章で 行うことがある。 ・当院と市薬剤師会との連携 については今後検討したい 。 当 院 で 処 方 し た 硫 酸 ア ト ロ ピ ン 末 の 院 外 薬 局 で 院外薬局薬剤師によると硫酸 ・院外薬局からの「調剤過誤 の 調 剤 間 違 い の た め、 患 者 は 硫 酸 ア ト ロ ピ ン 末 アトロピン末は、初めて取り 報 告 書 」 の 記 載 事 項 よ り、 を 1 0 0 0 倍 量 服 用 し、 意 識 障 害 に な り、 救 急 寄せる薬であったとのこと。 初めて取り寄せる薬につい 搬送の後、入院となった。当日、事務所で服薬後 ては、含有量を確かめて発 気分が悪くなり119番通報、救急隊到着時、混 注し、調剤時には含有量の 乱状態のため当院へ搬送となった。症状から、薬 確認を徹底する。 物 中 毒 や 脳 疾 患 を 疑 い 入 院 と し た。 入 院 3 日 後 2 に 意 識 が 改 善 し、 発 症 当 時 の 状 況 を 聴 取 す る と、 定 期 薬 を 服 用 後 調 子 が 悪 く な っ た こ と、 服 用 し た 薬 は 以 前 か ら 服 用 し て い た が、 今 回 は 1 週間前に処方されたものを飲み始めたところで あったことが判明した。処方は、当院呼吸器内科 医師が行った。硫酸アトロピン末(1mg/g) 1.5mg(成分量)のところ硫酸アトロピン原末 (g/g)を1.5gで調剤していた。 - 142 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) No. 3 事故の内容 背景・要因 ・院外薬局のシステム確認。 ・患者本人が盲目であること への周囲の配慮。 誤った処方せんが作成された事例 当院受診され、ノルバスク10mgの処方を希望さ れた。海外の紹介状を担当医が読み、ノルバスク 10mgを処方するためにオーダリング画面を開い た。「ノルバ」と入力したところ、ノルバスクに続 いてノルバデックスが表示された。10mgを処方 しようとして、10とあったノルバデックスを選択 し処方した。院外薬局で 3 ヶ月分の処方がされ内服 された。内服薬が終了し、次の処方を出してもらう ため他院へ行ったところ発覚した。約2週間後に電 話で問い合わせの連絡があった。 1 オーダリングシステムの不備 ・オーダリングシステム画面 がある。処方を担当医が出力 で、抗がん剤等に関しては した後、担当医がその内容を ア ラ ー ト を 設 定 す る な ど、 十分に確認を行っていない。 注 意 喚 起 で き る よ う な ア また、処方した内容について ラートの導入を検討する。 患者にわかりやすく処方内容 ・内 服 処 方 オ ー ダ リ ン グ 画 や内服方法、副作用等の説明 面において、全薬品黒表示 を行っていない。院外薬局で していたものから、抗がん おかしいと思ったとのことで 剤や糖尿病治療薬等ハイリ あったが、病院側へ問い合わ スク薬品は青表示、麻薬に せていない。患者は処方され 関しては赤表示するようア た薬の説明書で、ノルバデッ ラート機能として追加し注 クスについての説明を受けて 意喚起できるようにした。 いる(悪い細胞を増えすぎる ・類似薬品に関しては、さら のを抑える薬です)が、誤り なる注意喚起を関係職員全 に気づいていない。 員に行う。 ・処方せんを出した後、患者 への薬剤の説明を徹底する (薬品名、用法、副作用等)。 ・レセプト上で病名と薬品名 とのチェック体制を強化す る。 ・医師と薬剤師との連絡体制 の強化を行う。 - 143 - Ⅲ 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 8年前に視力障害が出現し、他院眼科を受診した。 規格の表示の類似。 糖尿病性網膜症による硝子体混濁、網膜剥離が疑わ れ、当院眼科を紹介受診。その際、血糖コントロー ル不良を指摘され、当院内科を受診し、HbA1c 17%、尿蛋白3+、Cre1.1mg/dLのた め、内科に入院した。インスリン治療を導入し、血 糖コントロールは良好となり退院した。以後、内科 の外来で経過観察されていたが、下腿浮腫が出現し、 腎機能障害も進行(Ccr20mL/min)した ため内科外来を受診し経過観察されていた。糖尿病 性網膜症に対する手術のため当院眼科に入院し、当 科兼科となり、Ccr10.1mL/minであっ たため、腹膜透析カテーテル留置術を施行した。A PDを開始、その後退院した。以後、入退院を繰り 返しながら腹膜透析を行い、内科外来に通院してい た。昼前にいつも通りインスリン6単位打ったとこ ろ、意識障害が出現した。仕事から帰った家族が患 者の倒れているところを発見し、夕方救急車で当院 救急外来に搬送された。低血糖(47mg/dL) による意識障害と低体温があり、ブドウ糖点滴を開 始し、経過観察のため入院した。翌朝まで低血糖は 遷延し、ブドウ糖点滴を要した。翌朝食事がとれる 状態になり、インスリンを再開したが、患者が使用 しているインスリンがノボラピッド30ミックスで あることにスタッフが気づいた。患者はノボラピッ ド300を継続して使用していたが、院外薬局で剤 形を誤ってノボラピッド30ミックスが患者に渡さ れ、1週間前からノボラピッド30ミックスを使用 していた。患者は盲目であり、気が付かなかった。 主治医から薬局への連絡を行い、事後の対応を促し た。患者は当分の間、腹膜透析ができず、血液透析 を行った。 改善策 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 No. 2 3 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 事故の内容 背景・要因 改善策 胃薬を処方したつもりがロイケリン(血液内科で使 用する抗がん剤)が処方されていた。前回の診察か ら 2 カ月後の受診患者の血液検査データに異常(白 血球半減・軽度肝機能異常・PSAの不自然な低下) があり、担当医が原因追及したところ、前回の処方 に間違って抗がん剤が処方されていることに気付い た。前月まで前担当医が処方していたデカドロン 錠とガスターD錠10mg 2 錠 分 2(朝・夕)食 後 をDo処方した。日数が 55 日だったため56日 に変更した。その科では処方することのない抗がん 剤(ロイケリン散 100mg/g 100mg 分 2(朝・夕)食後)が処方されていた。診療科の責 任医師と共に患者・家族に間違った処方があったこ とを謝罪した。血液検査の結果について説明し、ロ イケリンの服用を中止することを説明した。今後の 易感染状況を懸念して、入院の上状況観察させてい ただきたいとお願いし、2 週間ほど入院していただ いた。血液データは元に近い状況に戻ったが、下痢 症状で腎機能の低下があり、点滴治療にて数日で改 善し退院となった。 医師が処方入力時、Do処方 ・医 師 は、 処 方 入 力 し た 後、 だったので入力後の画面やプ 画面及び処方せんを目で見 リントした処方せんを確認し て、指差し、声だし確認する。 ていなかった。薬剤検索シス ・薬剤検索をかな文字 3 文字 テムの甘さがあった。これま で検索のシステムに変更し で 1 文字での検査ができるシ た。 ステムになっていた。今回、 何故、ロイケリンが処方入力 されることになったのか原因 を薬剤部・電子カルテシステ ムの関係者に調査依頼した結 果、ロイケリンは「6- MP」 で検索ができる。医師が日数 を 56 日に変更した際に、カー ソルが何らかの理由で薬剤名 を入力する欄に移動し、気付 かないで「6」を入力した結 果、「 6- M P」 が ヒ ッ ト し、 これにも気付かず、入力確認 されて処方された可能性があ ることがわかった。調剤薬局 での疑義照会によるリスク チェックがかからない。調剤 薬局では提出された処方せん に基づいて調剤をする。個人 情報の観点から、患者が伝え ない限り、病名や他にかかっ ている診療科等を知り得てい ない。明らかにおかしな薬剤 や量については疑義照会の対 象となるが、今回の場合は患 者が何の薬剤かと質問してい るが、その対象にならなかっ た。また、当院では血液内科 でこの薬剤が処方されるの で、調剤薬局の薬剤師は調剤 することに疑問をもたなかっ た可能性もある。 咳嗽のため予約外で受診した患者に、コデインリン 酸塩散を1日3回内服1日60mgのつもりで「コ デインリン酸塩散10%(100 mg/g)0.6g 咳の出る時15回分6時間あけて、1 日 3 回まで」 と1回量を60mgで初回処方した(正しくは1回 量0.2g)。夜間、外来主治医が過量投与に気付き、 翌朝に連絡した。患者は帰宅後 2 回内服し、早朝か ら嘔吐が見られていた。外来を受診してもらい、経 過観察のため入院となった。 オーダ画面は1回量の入力で ・処方時に内容をオーダ画面 あ っ た が、 単 純 に 1 日 量 を で確認後登録する。 1回量と思い込み、間違えた。 ・初回処方で内容に不安があ 1回量と1日量の確認作業が る場合は、DIによる確認 不十分であった。また、院外 後オーダする。 処方であったが、薬剤師によ ・過量処方に対して警告が出 る疑義照会はなかった。 るようシステムの検討をす る。 ・院内処方では、薬剤師によ る疑義照会があるので、照 会がある場合は、医師はオー ダ内容を確認する。 - 144 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) No. 事故の内容 背景・要因 改善策 5 A病院で脳動脈瘤(前脈絡叢動脈)に対するクリッ 散薬の指示の際の成分量、実 ・今回の事例を情報として職 ピング術を受け翌朝に左片麻痺出現しリハビリ目的 重量表示の統一がされていな 員に広報し、他院からの紹 にB病院転院、以後通院加療していた、B病院か い。 介状の薬剤処方にはこのよ らC病院へ紹介、C病院から当院糖尿病内科へ紹 うな例があることの注意喚 介があり、来院した。所見はADLは左麻痺軽度残 起を行う。 存、杖使用にて散歩練習している、外来へは家人と ・注 意 す べ き 薬 剤 を リ ス ト ともに車いすで来院、両上肢挙上保持可能。かかり アップし職員に広報する。 つけ医希望され、C 病院からの情報提供には内服薬 セレニカ R 1. 25g分2朝夕、その他の薬剤処方が 記載されていた。医師は同内容、同量のつもりで当 院のオーダ画面よりセレニカ R 顆粒400mg/g 1250mg 分2 朝・夕食後 14 日分と入力し、 院外処方せんを発行した。その結果、調剤薬局では バルプロ酸として 1250mg=セレニカR顆粒 3.125g を秤量・調剤した。その結果、診療情 報提供書に記載されたバルプロ酸(500mg)の 2.5倍量が投与された。息子より電話連絡があり、 セレニカ R の副作用で嘔吐、ふらつき、歩行困難が 出現していたとのこと。処方歴・カルテ内容より紹 介状の処方量の2.5倍服用されていたことが考え られた。後日、再度説明することとした。 - 145 - Ⅲ 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 4 ロイケリン10mg(成分量)(製剤量100mg) 成分量で処方するところ、製 ・成分量、製剤量入力の統一 投与予定であった。院外処方する際、成分量入力す 剤量で処方した。医師、薬剤 を図る。 る画面で、製剤量である100mgと入力したため、 師 の 監 査 が 機 能 し な か っ た ・院内の薬剤に関する医療安 6 週間、10倍投与された(10%ロイケリン散 (監査は処方せんを作成した 全検討委員会で事例を共有 1g1× と処方された)。外来受診時に3系統の血 医師が行うことになっている した。薬剤部、システム部 球減少と炎症反応の上昇を認めた。好中球減少症発 が、医師の監査が見過ごされ、 から「院外処方せんの入力 熱と考え、入院加療を開始した。 院外薬局の薬剤師の処方監査 に関する注意」を配信予定。 もなされなかったと推測され ・処方作成画面の注意文章を る)。 変更した。変更前→散剤の 力価入力はできないので注 意してください。 変更後→ 散剤の成分量から製剤量へ の自動換算はなされません ので注意してください(成 分量表示、製剤量表示の確 認をして下さい)。 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 No. 6 7 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 事故の内容 背景・要因 改善策 定期外来受診の際に小児科外来において、メソトレ キセートを3日分(週1日のみ内服を3週分)処方 するところ、21日分(連日内服)処方した。院外 薬局から医師に対して疑義照会はなかった。患児は 処方せん通りに内服を続け、10日間連日で内服し た。受診から 2 週間経った頃から口内炎が出現した。 主治医は患児の母から口内炎が出現していることを 電話で相談を受け、メソトレキセートを中止するよ うに指示した。同日夕方に主治医が処方したメソト レキセートが連日投与されていることに気付き、す ぐに母親に電話した。その後、患児は発熱と口内炎 が悪化し当科に受診し入院となった。入院時の血液 検査にて白血球減少、血小板減少、CRP高値を認 めた。骨髄抑制と重症感染症と考え直ちに治療を開 始した。入院翌日、内服状況を確認したところ、処 方された翌日から10日間連日内服し、以後は毎週 月曜日に内服していたことが判明した。すぐに採血 を行いメソトレキセートの血中濃度を測定したとこ ろ0.04であったため、骨髄抑制はメソトレキセー トの過量投与によるものと考え、メソトレキセート の排泄を促進するため大量輸液とロイコボリン投与 を行った。その後、患児は回復し退院した。 これまで通常2週間分(週1 ・薬品名をリウマトレックス 日内服のため2日分)処方を カプセルに変更。 行っていたものを今回は3週 ・リウマトレックスカプセル 間分(週1日内服のため3日 処方時に「リウマトレック 分)の処方に変更した。電子 スカプセル2mg連日投与 カルテ上で前回の処方を参考 禁止。週5∼6日の休薬期 にして処方する際、投薬期間 間が必要です」という警告 を21日分に一括指定したた メッセージが表示されるよ め他に処方されている内服薬 うにした。 と同じ日数の21日分がメソ ・服用する曜日を入力(曜日 ト レ キ セ ー ト に も 適 用 さ れ することで、日数が多くなっ た。メソトレキセートは 3 日 た場合にも、連日投与を防 分と変更すべきであったが、 止することができる)。 21日分としたままこれを正 しく変更せずに処方した。通 常 2 週 間 分 の 処 方:( 粉 砕 ) メソトレキセート錠2. 5mg 6mg 分2(朝、夕)食 後2日分→今回の 3 週間分処 方:(粉砕)メソトレキセー ト錠2.5mg 6mg 分 2( 朝, 夕 ) 食 後 2 1 日 分。「週に1回月曜日のみ内 服」という形での処方を行っ ていなかった。「休薬期間が 必要です」という警告が出な い設定であるメソトレキセー トを処方していた。メソトレ キセートを21日連日で内服 するという明らかに過量と思 われる処方せんであるにもか かわらず院外薬局から処方医 に対して疑義照会がなされな かった。普段内服薬を管理し ている母親の体調が悪かった ため、不慣れな父親が内服を させていた。 マ イ ス タ ン 細 粒 1 % 3.0 m g を 2.5 m g ( 0.25g ) へ手書きで処方変更後、医事課で入力 する際、2.5gと入力してしまい、そのまま処方 した。調剤した薬剤師は患者の年齢から少し量が多 いとは思ったが、許容範囲量と判断し調剤した。調 剤薬局の事務職員は、説明用紙の作成履歴から前回 の処方内容と同じと思い、そのまま患者への説明用 紙をプリントアウトした(前回処方せんは2.5m gと手書き、今回の処方せんは2.5gと印字され ていた)。患者家族には、薬剤師から説明用紙と薬 を渡したが、説明用紙の内容は確認しなかった。2 週間後、医師は処方時にその入力誤りに気付かず同 じ内容の処方せんを出した。その際、院外調剤薬局 の薬剤師が容量の誤りに気付き、当院の薬剤科に疑 義照会があった。すぐに主治医が患者家族に電話を し謝罪した。すでに10日間服用していたが、痰が 少し多くなった程度で、他の症状はなかった。 処方せんは力価で記載されて ・入力単位を把握して、力価 いたが、パソコンに入力する 計算することを徹底し、入 ときはグラム単位で入力しな 力後のダブルチェックを実 くて は い け な い た め、2.5 施する。 mgを2.5gと入力してし ・医師においては、印字され まった。薬剤は、院外調剤薬 た処方内容に誤りがないか 局で処方された。 確認を徹底する。 - 146 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) No. 事故の内容 背景・要因 当該患者において、プレドニ ・化学療法において、ステロ ゾロン内服が初めてであった イドを含め、新規薬剤開始 ため、体表面積当たりの用量 時に内服用量を決める場合 の計算を何回もしているうち は、他の小児血液医師とダ に、gをmgに変更すること ブルチェックを行う。当日 を怠った。処方内容の疑義照 ダブルチェックが困難な場 会は、処方医に確認、不在時 合は、事前に下書き保存と は当直医など他の医師に確認 して後日ダブルチェックを することになっていた。 行う。 ・処方内容の疑義照会に限ら ず、処方に関する事は、全 て 基 本 的 に 処 方 医 が 対 応、 処方医が不在の場合は同じ 科の医師が対応する。 ・処方に関する事は、看護師 が判断し、返答をしないと、 対応を変更した。 - 147 - Ⅲ 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 医師Aはプレドニゾロン27mg(分2)7日間を 処方しようとしたところ、単位をg→mgに変更せ ず、27g(分2)7日間として処方してしまった。 有効成分としては、プレドニゾロン27mgのとこ ろ、1%であったため、27g=有効成分270mg (通常量の10倍の量)となっていた。実際には持ち かえったプレドニゾロン1回分の約半量(約5倍 量)を内服したと考えられた。処方時、体表面積あ たりの薬用量を計算し、何回か計算の値を確認し ているうちに、単位をgからmgに変更するのを 怠ったため、10倍量の処方となった。調剤薬局か ら当院へプレドニゾロンの処方量について確認の 連絡があり、外来看護師が応対した。 「プレドニン の量の確認をお願いします。」という内容であった ため処方量があっているかの問い合わせでなく、 FAXの処方せんが読みづらいという意味だと思 い、電子カルテを読み上げた。 (以前に別のケース で読みづらいという問い合わせがあったため同じよ うに対応された。 )調剤薬局の担当薬剤師は、処方 医師の名前が女性で、電話で対応した看護師が女性 であったので、電話対応者を処方医師と思い、おか 8 しいと思ったが、電話で読み上げられたとおりの指 示に従い処方したとのことであった。夜分から患児 は自宅にて内服を開始したが、量が多く味も苦く、 半分も飲めなかった。次の日朝、患児が全部飲めな いため、母親が困り錠剤へ変更希望しようと外来受 付へ受診希望の電話をされた。それとは別に、同日 朝、ほぼ同じ頃に調剤薬局から再度、この日は当院 薬剤部へ、やはり処方量がおかしいのではないかと 問い合わせがあった。医師A外勤のため、当院薬剤 部から医師Bへ問い合わせされた。医師Bにてカル テを確認し、量が多いので来院して頂くよう母親へ 伝えられた。来院時は医師Bより外来で謝罪され、 正しい量で錠剤にて処方された。同時に、5倍量内 服したとして、翌日から通常量の内服再開を指示さ れた。上記につき医師Bより外勤先の医師Aへ連絡 があり、その後医師Aからも母親へ電話にて謝罪し、 体調変化がないか確認した。その後2回電話にて医 師Aから連絡をとり、その時点においては有害事象 など出現が無い事を確認したため、予定通り内服を 再開して頂くこととした。以降内服は順調にできた。 改善策 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 No. 9 10 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 事故の内容 背景・要因 持参薬(プロノン)が院内薬局に採用されておらず、 代替薬を処方することになった。当院薬剤師が持参 薬の鑑別報告書を作成した。医師は、鑑別報告書の 同系統(Naチャンネル遮断薬ⅠC群)サンリズム (タツピルジン)と記載されていたので、タツピル ジンカプセル50mg 3カプセル 朝・昼・夕で 7日分処方した。透析患者に腎排泄の抗不整脈薬を 投与、かつ通常量投与した(プロノンは肝代謝の薬、 タツピルジンは腎排泄、腎機能低下の患者には投与 量の調節が必要な薬であった)。これにより、薬剤 が体内に過量となって薬剤性の不整脈が誘発され、 緊急に血液透析が施行された。 薬効の面から処方を行い、患 ・持参薬が院内になく代替薬 者背景から十分に検討がされ を処方する場合、薬効面の なかった。医薬品鑑別依頼せ みならず、患者背景からも んの「同系統」の認識のずれ 十分に検討する必要がある があった。退院後、透析目的 (医師・薬剤師)。 で他院を受診。その際内服薬 ・医薬品鑑依頼書に、患者情 が終了するので出してもらう 報 と し て 肝 機 能、 腎 機 能、 よう頼んだ。看護師は薬が変 嚥下、義歯のチェックとコ 更されていることに気付いた メントを入れるようにした。 が、入院中の変更でありこの ・薬剤師が処方全体を通して ま ま で 良 い と 思 っ て し ま っ 疑義が生じたときは、電子 た。透析日が連休中であった カルテで患者背景など確認 ため、主治医ではなく応援の を行う。 医師が、退院時処方と同じに ・同系統とはどういうことを 処方した。処方した医師も、 意味するか、共通の認識を 言われるまま処方せんを書い 持つ。 た。調剤薬局では、おかしい と思いながら、病院での処方 変更であったこと、7日と短 期間であったこと、などから 疑義照会をしなかった。この 間内服されていた。意識障害 で救急搬送され、過量投薬で あることがわかった。 顎関節強直症で筋突起切除・左下顎第三大臼歯抜歯 確認不足。 行い、外来通院中の患者。左臼歯部・左顔面痛あり 咬合調整・鎮痛剤処方していたが、各種鎮痛剤効果 ないためカロナール処方(筋痛に対して)。初診時 よりアセトアミノフェンに対してアレルギーがある ことを申告していたが、これに関して見落とし、処 方・内服開始(湿疹あり2日間で中止)してしまった。 ・処方時に再確認。 診察の際、心不全原因の徐脈 ・ワーファリン処方時は必ず に気をとられジゴキシンを中 1Rpの単独処方を行う。 止としたが、誤って同じRp ・処 方 後 の 確 認 を 必 ず 実 施 にあるワーファリンまで削除 ( プ リ ン ト し た 処 方 せ ん や になったことに気付かなかっ 画面)。 た。(「Rp毎削除」を選択し ・院外薬局へ情報公開を行い、 た)処方後の確認(プリント 再発防止策、薬剤師教育を アウトした後や記録画面)を 依頼する。 していない。院外薬局では「心 拍数の低下があると言われ中 止となった」と患者が話して おり、薬剤師の疑義照会はな かった。元々4.5mg服用 している患者であるが、急に 中止になることはあり得ず、 「 4.5 m g 」 の 重 要 性 理 解 ができていなかった。患者も 「ワーファリンも飲まなくて いい」と思っていた。 院外処方せんRp1のワーファリンとジゴキシンのう ち、ジゴキシンを中止としたが誤ってワーファリン まで削除し処方した。 (電子カルテ「行削除」を選 択した)そのため数日間ワーファリンは服用してい なかった。その後、21時すぎ、突然言葉が出ない、 右上肢麻痺、唾液が垂れるなどの症状が出現し救急 外来受診。左前頭葉に新鮮脳梗塞あり、入院加療と なった。ラジカット・アクチバシンを開始した。 11 改善策 - 148 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) No. 12 事故の内容 背景・要因 エルプラット投与後、患者にゼローダ錠300 1回6錠 朝 昼 夕14日分の退院処方があった。病 棟薬剤師が休みのため看護師が退院薬について説明 した。その際、ゼローダについては14日間飲んだ ら終了であることを念を押して伝えた。退院後、患 者は退院時に処方された「ゼローダ」を自宅で14日 間飲み続けていた。その後 7 日間の休薬期間に入る ことを忘れ、薬が足りなくなると思い、14日分が なくなる前に予約外で外来受診し、問診票に「薬の 不足」と記入し追加処方を希望した。看護師は外科 一般外来(振り分け外来)にカルテを並べた。外来 では主治医以外の外科一般外来の医師が診察し「薬 が不足している。 」との患者の訴えにより、1週間 分の追加処方がされた。患者は院外処方せんを持っ て院外薬局に行った。患者がゼローダを内服してか ら18日目に、主治医がカルテチェックをしている 際、追加処方されていることに気づき、患者に内服 中止の電話をした。患者はその3日後に外来受診を し、採血の結果白血球・好中球低下、凝固系の延長、 高ビリルビン血症、口内炎やふらつきなどを認め、 緊急入院となった。その後状態は安定した。 改善策 ④医療機関で正しい処方せんが作成されたが薬局で調剤の誤りがあった事例 正しい処方せんが作成されたが、薬局における調剤のエラーによって誤った投薬がなされた結果、 医療事故として報告された事例について、図表Ⅲ - 2- 27に調剤のエラーの内容を示した。 「薬剤 取り違え」 「秤量間違え」などの事例があった。薬局では、誤った投薬の後で患者の病状や体調が 悪化し、医療機関を受診し治療を受けた情報を入手することは必ずしも容易ではないと考えられる ことから、これらの情報は薬局にとっても有用と考えられる。また、これらの事例は医療機関から の報告であるので、薬局で生じたエラーの種類の情報は記載されているが、それ以上に背景・要因 などの情報までは記載されていない。したがってこれらのエラーを防ぐためには、本財団が運営し ている、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の分析結果を周知し活用することが重要である。 - 149 - Ⅲ 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 患者への退院指導は病棟薬剤 ・患 者 に 服 薬 指 導 を す る 際 師が内服確認表を用いて行っ は、薬剤の写真入り服薬ス ていたが、今回の事例では病 ケジュール表などを用いて 棟薬剤師が不在であり、代理 わかりやすくする。 の薬剤師に対応を依頼してい ・できるだけ家族も一緒に指 たが、病棟看護師が説明した。 導する。 病棟看護師は、薬剤師が内服 ・外来受診時患者が記入する 確認表を作成していることを 問診票は受診目的が詳細に 知らなかった。抗がん剤を追 記載できるものに変更する。 加処方した外科一般外来の医 ・看護師がどの医師に依頼す 師は、プロトコールを確認せ るか判断ができるように問 ず に ゼ ロ ー ダ を 追 加 処 方 し 診票に主治医を記載する。 た。ゼローダの内服にはA法 ・外来での抗がん剤処方は原 とB法があり、3 週間続けて 則主治医か化学療法を行っ 内服する方法もあるため、追 ているチームのスタッフが 加処方された際に院外薬局に 行う。主治医あるいはチー おいて処方内容が間違ってい ム以外の医師の外来で抗が るかどうかの判断をすること ん剤の処方を依頼された場 は、プロトコールとの照合が 合は、その医師は必ず主治 出来ないので難しい。主治医 医に確認するか、看護師に は前回の外来で、製薬会社が カルテを戻して再度外来の 作成した抗がん剤の服薬期間 振り分けをしてもらう。 が記載された冊子を患者に渡 ・処 方 の 際 に 服 薬 期 間 等 フ し、服薬期間を記載するよう リーコメントを簡単にいれ 説明していたが、記載が面倒 られる仕組みを作る。 になってしまい途中でやめて ・病棟薬剤師は退院服薬指導 しまった。患者が休薬するこ 時には内服薬確認表を使用 とを忘れていたことに、医療 して患者や家族に指導する。 者が気付くことができなかっ 不在の時は代理薬剤師また た。 は、看護師に依頼する。 ・院内において、休薬期間の 設けられている薬品に関し ては、処方せんの薬品名の 前に【休】を表示させ、調 剤時、休薬期間を確認する。 ・院外薬局においては、抗が ん剤は休薬期間をしっかり 確認するように薬剤部より 指示した。 ・医師に対して、処方オーダ 時に投与期間をコメント入 力することを徹底した。 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 27 調剤のエラーの内容 内容 件数 数量間違い 1 薬剤取り違え 2 規格・間違い 1 秤量間違い 2 その他 2 合計 8 ⑤医療機関で誤った処方せんが作成されそれに基づき薬局で調剤された事例 ⅰ 誤った処方に関する医薬品 医療機関で誤った処方せんが作成された医療事故事例について、誤って処方された医薬品を図 表Ⅲ - 2- 28に示す。29事例中、20事例がハイリスク薬に関する事例であった。また、そ のうち18事例は意図した処方、誤った処方のいずれもがハイリスク薬のパターンであった。ハ イリスク薬はその性質から、医療事故につながりやすいと考えられることから、これらの事例を 防止することを一層検討し、適切な再発防止策を実施しなければならない。 図表Ⅲ - 2- 28 誤って処方された医薬品 内容 薬剤取り 違え 意図した処方 ハイリスク薬の 組み合わせ 誤った処方 サイトテック錠 エストラサイトカプセル ノルバスク錠10mg ノルバデックス錠10mg ワーファリン1.2mg ワルファリンK細粒0.2% 1.2g ガスターD錠 10mg 2錠 分2 ● ロイケリン散 100mg/g 100mg 分2 (ロイケリン散 のみ) チウラジール錠(50mg)1日1錠 チラージンS錠1日1錠 テグレトール細粒0.09g テグレトール細粒0.9g ● (ノルバデックス のみ) ● ● コデインリン酸塩散10%(100mg/g) コデインリン酸塩散10%(100mg/g) 60mg 0.6g ボナロン錠35mg 1錠/日 1回 起床時 ボナロン錠35mg 1 錠/日 1 日/週 14日分(ボナロン錠35mg 1錠/日 2 週間分 1日/週 起床時 14週分を意図) 数量 間違い イスコチン200mg イスコチン2g ロイケリン散10mg(製剤量100mg) ロイケリン散100mg ● ワーファリン0.6mg/日 ワーファリン錠6mg/日 ● イソニアジド末 0.3g分1 イソニアジド末 3.0g分1 セレニカR顆粒 1.25g分2 セレニカR顆粒 400mg/g 1250mg 分2(バルプロ酸として1250mg=セレ ニカR顆粒3.125g) ● デパス錠(0.5mg)1錠分1 デパス細粒1% 1g分1 ● ワーファリン錠(1mg)2錠、ワーファリン錠 ワーファリン錠(1mg)2錠、ワーファリン錠 規格・ (0.5mg)1錠 (5mg)1錠 剤形間違い ワーファリン錠1mg 3錠分1 ワーファリン錠5mg 3錠分1 - 150 - ● ● 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 内容 意図した処方 誤った処方 リウマトレックスカプセル 8mg/週 リウマトレックスカプセル 8mg/日 ● リウマトレックスカプセル週に1回3日分 リウマトレックスカプセル 連日投与 ● リ ウ マ ト レ ッ ク ス カ プ セ ル 2 m g 分 2 リウマトレックスカプセル2mg 分2(朝、 用法・ (朝、夕)食後 2日分 夕)食後 7日分 用量間違い メソトレキセート錠を3日分(週1日のみ内服 メソトレキセート錠(連日投与) を3週分) 単位 間違い 禁忌薬剤 の処方 中止指示 間違い メトソレキセート錠 4錠分2(週1回) メトソレキセート錠 4錠分2(連日投与) リン酸コデイン散1% 60mg リン酸コデイン散1% 60g ● ● ● マイスタン細粒1% 2.5mg(0.25g) マイスタン細粒1% 2. 5g ● プレドニゾロン27mg(分2)7日間 プレドニゾロン27g(分 2)7日間 ● プロノン錠(肝代謝) タツピルジンカプセル(腎代謝) ● カロナール カロナール(アセトアミノフェンに対する アレルギー) Rp1のワーファリンとジゴキシンのうち、 両方中止した ジゴキシンを中止 休薬・ ゼローダ14日間内服後、休薬 中止薬の継続 長期処方 ハイリスク薬の 組み合わせ フロモックス 14日以降休薬せず ● ● 1年7ヶ月間の長期投与 ⅱ 疑義照会の有無 医療機関で誤った処方せんが作成され、薬局における処方せん監査などが有効に機能すること (図表Ⅲ - 2- 29) 。「(疑義照会)なし」の事例が殆どを占めた。一方、 「(疑義照会)あり」の 事例であっても、処方の誤りが正されることなく、誤った投薬がなされていた事例があった。こ れらの事例の背景・要因を分析することは医療機関で発生したエラーを薬局において発見し、医 療事故を防ぐために有用な事例と考えられる。 図表Ⅲ - 2- 29 疑義照会の有無 件数 あり 3 なし 20 不明 6 合計 29 次に「(疑義照会)あり」の3事例を供覧するとともに、事例1∼3における、薬局による 疑義照会に対する医療機関の対応を検討する(図表Ⅲ - 2- 30) 。 - 151 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 なく誤った投薬がなされて、医療事故として報告された事例について、疑義照会の有無を示した 疑義照会 Ⅲ Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 30 「(疑義照会)あり」事例の概要 No. 事故の内容 背景・要因 改善策 1 リン酸コデイン散1%60mg を処方しようとして60 リン酸コデイン散の有効成分 ・製剤は g 表示であることを g 処方し患者が 1 回分内服し体調不良を訴え、2泊3日 60mgと意図して処方しよ 医局会で再通知する。 の入院をした。 うとし、初期設定が「g」で ・処方時は慎重にし、確認し あることに気付かず、製剤量 てから確定する。疑義照会 60gを処方した。製剤の初 があったときは真摯に受け 期設定画面が「g」表示であ 止め、処方内容を再確認す ることは知っていた。医師は る。 外来診療で処方時、投与量に 注意が行き単位を確認しな かった。処方オーダリング画 面の製剤設定は「g」で表示 されていた。しかし「mg」 も選択できた。医師は院外薬 局から疑義照会時、数字のみ 確認し処方せんを確認しな かった。 2 医師Aはプレドニゾロン27mg(分2)7日間を処 方しようとしたところ、単位をgからmgに変更せず、 27g(分2)7日間として処方した。有効成分として は、プレドニン27mgのところ、1%であったため、 27g=有効成分270mg(通常量の10倍の量)と なっていた。実際には持ち帰ったプレドニン1回分の約 半量(約5倍量)を内服したと考えられた。処方時、体 表面積あたりの薬用量を計算し、何回か計算の値を確認 しているうちに、単位をgからmgに変更するのを怠っ たため、10倍量の処方となった。調剤薬局から当院へ プレドニンの処方量について確認の連絡があり、外来看 護師が応対した。「プレドニンの量の確認をおねがいし ます。 」という内容であったため処方量があっているか の問い合わせでなく、FAXの処方せんが読みづらいと いう意味だと思い、電子カルテを読み上げた。 (以前に 別のケースにて読みづらいという問い合わせがあった ため同じように対応された。)調剤薬局の担当薬剤師は、 処方医師の名前が女性で、電話で対応した看護師が女性 であったので、電話対応者を処方医師と思い、おかしい と思ったが、電話で読み上げられたとおりの指示に従い 処方したとのことであった。夜分から患児は自宅にて内 服を開始したが、量が多く味も苦く、半分も飲めなかっ た。次の日朝、患児が薬を1回量飲めないため、母親が 困り錠剤へ変更希望しようと外来受付へ受診希望の電 話をされた。それとは別に、同日朝、ほぼ同じ頃に調剤 薬局から再度、この日は当院薬剤部へ、やはり処方量が おかしいのではないかと問い合わせがあった。医師A外 勤のため、当院薬剤部から医師Bへ問い合わせされた。 医師Bにてカルテを確認し、量が多いので来院して頂く よう母親へ伝えられた。来院時は医師Bより外来で謝罪 され、正しい量で錠剤にて処方された。同時に、5倍量 内服したとして、翌日から通常量の内服再開を指示され た。上記につき医師Bより外勤先の医師Aへ連絡があ り、その後医師Aからも母親へ電話にて謝罪し、体調変 化がないか確認した。その後2回電話にて医師Aから連 絡をとり、その時点においては有害事象など出現が無い 事を確認したため、予定通り内服を再開して頂くことと した。以降内服は順調にできた。 本患者において、プレドニン ・化学療法において、ステロ 内服が初めてであったため、 イドを含め、新規薬剤開始 体表面積当たりの用量の計算 時に内服用量を決める場合 を何回もしているうちに、g は、他の小児血液医師とダ をmgに変更することを怠っ ブルチェックを行う。当日 た。処方内容の疑義照会は、 ダブルチェックが困難な場 処方医に確認、不在時は当直 合は、事前に下書き保存と 医など他の医師に確認するこ して後日ダブルチェックを とになっていた。 行う。 ・処方内容の疑義照会に限ら ず、処方に関する事は、全 て基本的に処方医が対応、 処方医が不在の場合は同じ 科の医師が対応する。 ・処方に関する事は、看護師 が判断し、返答をしないと、 対応を変更した。 - 152 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) No. 事故の内容 背景・要因 3 医師は、14週分(14錠)を意図して「ボナロン錠 35mg 1錠/1日1回起床時 14日分」と処方し た。院外薬局は、 「2週間分2錠」の調剤でよいか、 「14 週間分14錠」の調剤でよいか病院に疑義照会を行っ た。病院の担当者より、 「1週間に1回1錠 起床時 2日分」と回答があったため、ボナロン35mg 2錠 を2週間分として調剤した。そのため、2ヶ月以上内服 をされず、治療されない期間が生じた。 改善策 処方日数が14日分と7の倍 ・院外薬局に情報提供した。 数であったため、2週間分な のか14週間分なのかがわか りにくい状態であった。ボナ ロン錠には毎日服用する5m g錠もあるため、それとの誤 認の可能性も院外薬局は考慮 したことが予想される。疑義 照 会 時 の 対 応 に つ い て、 当 院内においての実態は不明で あった。患者はボナロン錠が 初回服用であった。院外薬局 では、次回の受診日について 確認していなかった。 Ⅲ 事例1 【疑義が生じた理由】(薬局の薬剤師) 事例1では、リン酸コデイン散1%60mgが処方されていたために薬剤師が過量投与に気付 いたと考えられる。 【疑義照会の内容の理解】(医療機関) 「医師は院外薬局から疑義照会時、数字のみ確認し処方せんを確認しなかった。 」とあることか なかったことが考えられる。 【疑義照会への対応】(医療機関) 医師は院外薬局から疑義照会時、数字のみ確認し処方せんを確認しなかった。 事例2 【疑義が生じた理由】(薬局の薬剤師) 医師がプレドニゾロン27mg(分2)7日間を処方しようとしたところ、 単位を「g」から「mg」 に変更せず、27g(分2)7日間として処方した。有効成分量としては、プレドニゾロン27 mgを意図していたところ、実際には、有効成分量は270mgであり、通常量の10倍の過量 処方となっていた。このことに薬剤師が気付いたため疑義照会を行った。 【疑義照会の内容の理解】(医療機関) 疑義照会の際の話法は「プレドニンの量の確認をおねがいします。」であった。そこで、医療 機関では、この内容を「処方量があっているかの問い合わせでなく、FAXの処方せんが読みづ らいという意味」と考えて電子カルテを読み上げた。この対応の背景には以前に別のケースで、 FAXされた処方せんが読みづらいという問い合わせがあったことが挙げられている。 薬局の担当薬剤師は、処方医の名前が女性であり、電話で対応した病院職員も、実際は女性看 護師であったため、電話の相手を処方した女性医師と思い込み、おかしいと思ったが、電話で読 み上げられたとおりの指示に従い調剤した。 - 153 - 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 ら、分量や用量の確認ではなく、単なる数字の確認として理解し、疑義照会の内容を理解してい 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 【疑義照会への対応】(医療機関) 「プレドニンの量の確認をおねがいします。」という内容であったため処方量があっているかの 問い合わせでなく、FAXの処方せんが読みづらいという意味だと思い、電子カルテを読み上げ た。このように、本事例の主な発生要因として、疑義照会時の話法が不十分であったので、薬剤 師の疑義の内容が医療機関に伝わっていない点が指摘できる。話法については、この事例では、 例えば「プレドニゾロン散1%の 1 日量が27gとの記載ですが、プレドニゾロンとして270 mgとなります。添付文書上の用法・用量は、プレドニゾロンとして 1 日5∼60mg ですので、 量が多いと思います。ご確認をお願いします。」という話し方で照会すれば、疑義の内容を正し く伝えることが出来たと考えられる。また、医療機関も、疑義照会の内容を十分理解した上で返 答したとは言いがたい。しかも、その不十分な確認の背景・要因としては、以前に別のケースで FAXされた処方せんが読みづらいという問い合わせがあったことがある。本事例から教訓を得 るためには、前もってFAXにより処方せんを送付したあとの処方量に関する疑義照会には、① FAXの文字が読みづらいことによる量や単位についての疑義と、②量や単位が誤っていると考 えられることについての疑義とがあることを念頭においておくことが重要である。FAXの文字 が読みづらいことによる疑義照会については、薬局からハイリスク薬であるワーファリンに関し、 ヒヤリ・ハット事例が報告されている(【参考】参照)。 また、薬局の薬剤師は、電話の相手の声から女性であることが分かったことをもって、処方し た女性医師であると思い込んでいる。相手の確認は基本的な事項である。 【参考】 (事例の内容) 調剤済み処方せんチェック時に調剤過誤がわかった。ワーファリン錠1mg1.7錠/分1が 正しいところ、1錠/分1で調剤したことが判明した。患者宅へ確認したところ、やはりワーファ リン錠1mg1錠で渡してあった。病院へ連絡し医師の指示を受け、不足分の0.7錠を患者に 渡した。近日中に検査を行う予定である。 (背景・要因) 今回、ファックス受信で処方内容が届き、先に調剤したが、医師の字が読みづらく1.7錠の「7」 が「T」に見えたため、1錠と勘違いをしてしまった。 (改善策) ファックス受信の場合、患者が持参した処方せん原本もしっかり確認する。用法、用量の確認 をしっかり行う。 (薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成22年年報、132頁より) - 154 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 事例3 【疑義が生じた理由】(薬局の薬剤師) 「ボナロン錠35mg 1錠/1日 1 回起床時 14日分」の処方に関し、薬局ではボナロン錠 の用法は「週1回内服」であることが分かっているので、 処方せんの「14日分」を「2週間(の 中で内服する2回分、つまり2日分の量)」と考えた場合、「2週間分2錠」の調剤となる。一方 で、 「14日分」を「1錠/1日の14日分なので14錠(毎週1回であることから14週間分)」 と考えた場合には「14週間分14錠」となる。このように、処方せんの表記から異なる2つの 解釈がありうるため、その意味を明確にするために疑義照会を行った。 また、処方日数は「14日分」と記載されており、これは7の倍数である。同時に、ボナロン 錠は週1回内服する薬剤なので、週単位つまり7日単位で処方量を決めることができる医薬品で ある。そのため、 「14日分」という記載の意味が、 「7日単位を2回」つまり「2 週間分」なのか、 それとも「14回内服する量」つまり「14週間分(の量) 」なのか、分かりにくかった。 Ⅲ また、ボナロン錠には毎日服用する5mg 錠もあるため、薬局では、それと53mg 錠とを取 り違えた可能性も考慮したこともあり、疑義が生じたことが推測される。 【疑義照会内容の理解】(医療機関) それらの疑義を解消するための照会に対して、医療機関は「1週間に1回1錠 起床時 2日 分」と返答しているので、処方意図とは異なる返答をしていると考えられる。この際、薬局から、 「2日分ということは、週1回の内服なので2週間分の処方となる」ことを確認したか不明である。 【疑義照会への対応】(医療機関) 薬局からの疑義照会に対して、医療機関は「1週間に1回1錠 起床時 2日分」と返答して いるので、処方の意図とは異なる返答をしていると考えられる。 また、 「疑義照会時の対応について、当院内においての実態は不明であった。」「患者はボナロ ン錠が初回服用であった。」とされているので、疑義照会に対応する体制が十分でなかったこと も推測される。 また、 「院外薬局では、次回の受診日について確認していなかった。 」とあるように、次回受診 日を知ることが出来れば、処方された用量が過小であることに気付き、エラーを正す契機となっ たことが考えられる。 これらの事例が発生した医療機関から報告された改善策を整理して次に示す。 ア)処方に関するもの ○院内のシステムでは、製剤は「g」表示であることを医局会で再通知する。 ○化学療法において、ステロイドを含め、新規薬剤開始時に内服用量を決める場合は、他の小 児血液医師とダブルチェックを行う。当日ダブルチェックが困難な場合は、事前に下書き保 存として後日ダブルチェックを行う。 ○処方内容の疑義照会に限らず、処方に関する事は、全て基本的に処方医が対応し、処方医が 不在の場合は同じ科の医師が対応する。 - 155 - 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 またこの返答をみると、薬局において生じた疑義の内容を理解していたとは考え難い。 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ○処方に関する対応は、看護師のみで判断、返答をしないことにした。 イ)薬局との連携に関するもの ○処方時は慎重にし、確認してから確定する。疑義照会があったときは真摯に受け止め、処方 内容を再確認する。 ○院外薬局に情報提供した。 ア)処方に関するものをみると、技術的な内容や組織的な内容が含まれているが、イ)薬局との 連携に関するものは、具体的な連携に踏み込む内容ではなかった。事例1∼3を除く「(疑義照会) なし」「不明」の26事例中にも、 「地域の調剤薬局に情報提供した」とする事例が少数見られたが、 それ以上の具体的な内容はなかった。 このように、医療機関と薬局との連携を促進し、双方が連携関係の中で医療事故防止に取り組む ことや、そのために、薬局における調剤業務の内容について、医療機関が一層理解を深めることが 重要であると考えられた。 また、先述した「③正しい処方せんが作成されたが薬局で調剤の誤りがあった事例」の改善策に も、薬局との連携に関する次のような改善策が報告されている。 【③正しい処方せんが作成されたが薬局で調剤の誤りがあった事例の改善策】 ○地域薬局へ発生した事例の情報提供を行う。 ○市薬剤師会からの報告 ・会員薬局の調剤過誤報告を一元管理するシステムは構築されていない が、内容・結果により防止策の指示や会員の研修、注意喚起を文書で行うことがある。 ○当院と市薬剤師会との連携については今後検討したい 。 ○院外薬局のシステム確認。 さらに、医療機関と薬局との連携の存在が推測できる次の改善策もあった。このような取り組 みが強化されることが望まれる。 【改善策】 ○院外薬局からの「調剤過誤報告書」の記載事項より:初めて取り寄せる薬については、含有量 を確かめて発注し、調剤時には含有量の確認を徹底する。 ○院外薬局 1) 用法ごとに調剤する形式をマニュアル化させて、スムーズに調剤できるようにする。散剤 の監査時に、処方せんより計算した全量を元に総量監査を行うことが望ましい。 2)患者と薬を確認し、疑問があれば、最初から見直す。 - 156 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) (2)薬局における調剤業務と薬局ヒヤリ・ハット事例 「(1)医療機関と薬局の連携に関連した医療事故の現状」で述べたように、医療機関と薬局の連 携を促進すること、また、そのために、医療機関が薬局の調剤業務について一層理解を深めることは 重要である。本事業は、医療機関の医療事故防止を目的としていることから、本稿では、特に薬局の 調剤業務について理解の促進に有用な情報を、薬局ヒヤリ・ハット事例収集事業の成果などを引用し ながら述べることとする。 ①薬局における調剤業務 医療機関で医師が処方せんを発行したのち、患者が薬局において投薬を受けるまでの調剤業務 の流れを図表Ⅲ - 2- 31に示す。この中で、四角で囲んだ①処方せん、②患者からの情報収集、 ③薬剤服用歴として、患者の疾患や病状に関する情報が薬局に把握、記録されている点は重要であ る。それらの情報が、正確な処方監査や安全な調剤を実現するために活用されている。 Ⅲ 図表Ⅲ - 2- 31 薬局における調剤業務 ᖱႎ㓸 䋨䉟䊮䉺䊎䊠䊷䋩 ಣᣇ䈞䉖 ක≮ᯏ㑐 ⮎ዪ ᖚ⠪䊶ኅᣖ ಣᣇ ⺞ ౝ䈭䈬 ⇼⟵ᾖળ ᛩ⮎ 㽳ᖚ⠪䈎䉌䈱ᖱႎ㓸䋨䉟䊮䉺䊎䊠䊷䋩䈭䈬 㽴⮎↪ᱧ䋨⮎ᱧ䋩 䈱⏕䇮䈍⮎ᚻᏭ䈱⏕ 䋨ᔅⷐᤨ䋩⇼⟵ᾖળ 㽵ಣᣇ⋙ᩏ 㽶↪䈜䉎ක⮎ຠ䈱⺑䇮ᖱႎឭଏ䋨ᓟ⊒ක⮎ຠ䈮㑐䈜䉎ౝኈ䉕䉃䋩 㽷⺞ౝኈ䈱⏕ 㽸⺞⸳⸘䊶⺞ 㽹⺞䈚䈢ක⮎ຠ䈱⺑ 㽺ක⮎ຠ䈱ઃ䇮↪ᣇᴺ䈱⏕䇮䈍⮎ᚻᏭ䈱䋨䉲䊷䊦䈱䋩ઃ 㽻ળ⸘ ②処方せんに記載されている内容 医療機関から薬局に提供される医薬品に関する情報として、まず、処方せんに記載された内容が ある。保険診療で作成、交付される処方せんの記載内容は、健康保険法に基づく保険医療療養担当 規則第23条によってその様式が定められている。他の法律に基づく医療保険や公費負担医療もこ の様式に準拠している。その内容は次の通り。 - 157 - 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 㽲ಣᣇ䈞䉖ฃઃ 䋨䌆䌁䌘䈏వⴕ䈚䈩ㅍઃ䈘䉏䉎䈖䈫䈅䉍䋩 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ア)医療保険等に関する情報 公費負担者番号、公費負担医療の受給者番号、保険者番号、被保険者証・被保険手帳の記号・番号 イ)患者の同定に関する情報 氏名、生年月日、区分(被保険・被扶養者) ウ)保険医療機関に関する情報 保険医療機関の所在地及び名称、電話番号、保険医氏名 エ)処方せんに関する情報 交付年月日、処方せんの試用期間 オ)処方内容に関する情報 医薬品ごとに、 「処方」欄中の「変更不可」欄に「 」または「×」を記載するとともに、 「保険医署名」欄に署名又は記名・押印すること。 カ)調剤に関する情報 調剤済年月日、保険薬局の所在地及び名称、保険薬剤師氏名 また、処方せんに記載すべき事項については、医師法施行規則第21条および歯科医師法施行 規則第20条において規定されている。その内容は次の通り。 患者の氏名、年齢、薬名、分量、用法、用量、発行年月日、使用期間、病院若しくは診療所の名称 及び所在地又は医師の住所、処方医の記名押印又は署名 以上の情報が処方せんとして薬局に提供される。処方せんには病名は記載されていないことから、 薬局では、上記の情報、特に薬名、分量、用法、用量の情報や、患者に対するインタビューなどか ら病名や病状を推測しつつ、適切な調剤に努めている。したがって、医療機関は提供しうる範囲内で、 安全な調剤を行うために有用な患者の疾患や病状に関する情報が不足することがないように、薬局 に対し直接または患者や家族を介して間接的に情報提供することが医療事故防止のために重要と考 えられる。 ③薬局における患者情報の収集と記録 ⅰ 患者からの情報収集(インタビュー)から得られる情報 薬局における調剤業務(既出、図表Ⅲ - 2- 31)の「②患者からの情報収集(インタビュー) など」では、次のような患者の基本的な情報を収集する。 アレルギー(医薬品、食品など) 、副作用歴、既往歴、職業、生活の特性、積極的に摂取してい る食品や嗜好品、他の診療科の受診、併用薬剤(処方薬、一般用医薬品、民間薬など) 、妊娠・ 授乳状況、患者特性(医薬品の知識、認識力など)など。 - 158 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ⅱ 薬剤服用歴(薬歴)に記録される情報 薬剤服用歴(薬歴)は 薬剤師が処方を監査し、医薬品を調剤した内容や、提供した薬剤情報の 内容を記載したものである。次回の処方の際に、処方の正確性や副作用を把握することにも用いら れる。処方せんには病名は記載されていないが、薬局では薬剤服用歴(薬歴)は図表Ⅲ - 2- 32 に示す通り、患者に関する多くの情報が記録されている。 図表Ⅲ - 2- 32 調剤報酬 ( 薬剤服用歴管理指導料 ) 算定上の薬剤服用歴(薬歴)への記載事項 1. 氏名・生年月日・性別・被保険者証の記号番号・住所・必要に応じて緊急時の連絡先等の患者についての記録 2. 処方した保険医療機関名及び保険医氏名・処方日・処方内容等の処方についての記録 3. 調剤日・処方内容に関する照会の要点等の調剤についての記録 4. 患者の体質・アレルギー歴・副作用歴等の患者についての情報の記録 5. 患者又はその家族等からの相談事項の要点 Ⅲ 6. 服薬状況 7. 残薬の状況の確認 8. 患者の服薬中の体調の変化 9. 併用薬等(一般用医薬品、医薬部外品及びいわゆる健康食品を含む。)の情報 10. 合併症を含む既往歴に関する情報 11. 他科受診の有無 12. 副作用が疑われる症状の有無 13. 飲食物(現に患者が服用している薬剤との相互作用が認められているものに限る。)の摂取状況等 14. 後発医薬品の使用に関する患者の意向 16. 服薬指導の要点 17. 指導した保険薬剤師の氏名 ⅲ お薬手帳に記録される情報 平成12年4月の診療報酬改訂において、薬局にて薬剤の名称や副作用等の情報をいわゆる 「お薬手帳」に記載することによる情報提供が「薬剤情報提供料」として調剤報酬において評価 されることとなった。この評価を重要な契機として、情報の内容を「お薬手帳」に記載して活用 することが推進されており、それらは現在では、患者、薬局、医療機関の三者の間で情報連携す るための重要な役割を担っている。お薬手帳は調剤に必要な患者の情報や医薬品の情報を一元管 理して、安全な投薬などの医薬品の適性使用を図るために、主として患者自身が管理するもので ある。お薬手帳の有用性の例として、特に平成23年3月に発生した東日本大震災において、津 波により医療機関や薬局そのものや診療録や薬歴が喪失していたり、医薬品の支援がなされたが 種類や規格が頻繁に変わる状況があったり、避難所移動が頻繁に行われたりする状況の中で、お 薬手帳を保有していた患者については、記載内容を確認することや、名称の異なる同効薬の投薬 情報を追加して記載することにより、円滑な処方内容の確認や継続処方、適切な新規処方が可能 であったことが報告されている。 お薬手帳には、次のような情報が記録されている。 - 159 - 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 15. 手帳による情報提供の状況 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ア)患者を同定するための情報 住所、氏名、生年月日、連絡先など イ)患者の状況や状態を把握するための患者背景に関する情報 職業、性格、体質、嗜好、生活環境、現病名、既往歴、受診行動など ウ)医薬品に関する情報 医療用医薬品情報(成分、添加物、含有物、物理化学特性) 次に、これらの情報を活用して、処方せんの作成時に発生したエラーを発見し、誤った投薬や医 療事故を防ぐために、具体的なヒヤリ・ハット事例に基づいて、誤った処方がなされた医薬品やそ の処方内容、誤りに気付いた理由などを、本財団が運営している、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・ 分析事業の仕組みや成果を用いて示す。 ④薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業∼薬局で発生・発見されるヒヤリ・ハット事例の 収集・分析∼ 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業では、薬局で発生・発見するヒヤリ・ハット事例を収集し、 分析して、集計報告、年報、事例データベースなどの情報を還元している(図表Ⅲ - 2- 33) 。 既出、「図表Ⅲ - 2- 31 薬局における調剤業務」に示した調剤の各段階で、様々なエラーが生じ ていることから、同事業では、図表Ⅲ - 2- 34に示す報告項目を設定して事例を収集している。 図表Ⅲ - 2- 33 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の概要 DRUGSTORE 事故の発生予防 再発防止 目的 (責任を追及しない) 薬 局 公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部 任意参加 ヒヤリ・ハット事例 運営委員会 国 民 薬局で、 Web報告 総合評価部会 発生した事例 ①選択項目 (調剤・医療安全 の専門家) 発見した事例 ②記述項目 薬局 事務局 関係学会・ 事例の内容 背景・要因 改善策 事例の概要 団体 集計報告年報 共有すべき事例 調剤 疑義照会 薬局ヒヤリ・ハット 分析表 事例 デ タ ス データベース 行政機関 など 特定保険医療材料 医薬品の販売 - 160 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 34 薬局ヒヤリ・ハット事例報告項目 監査 Ⅲ 監査 - 161 - 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) これらの項目で収集される事例の中に、処方せんや、薬剤服用歴、お薬手帳、患者から収集した情 報などの情報を活用して薬歴の情報を活用して、エラーを発見した事例が含まれている。そこで次に、 同事業の成果物の中から、それらの事例について分析した結果を示す。 ⑤医療機関と薬局との連携に関する事例 「(1)医療機関と薬局の連携に関連した医療事故の現状 ②医療機関と薬局の連携に関連した 医療事故事例の紹介」で示したように、医療機関で発生したハイリスク薬などの医薬品を内容とす る処方せんのエラーを薬局で発見することにより、医療事故防止に努めることは重要である。その ようなヒヤリ・ハット事例は、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業では、 「図表Ⅲ - 2- 34 薬局ヒヤリ・ハット事例報告項目」 のうちの「疑義照会」が選択されて報告される。そこで、 「疑義照会」 の事例を分析することで、疑義照会の事例の内容や処方されている医薬品、薬局が処方せんのエラー を発見する契機となった情報などを理解することができ、これは、処方せんのエラーが発生した医 療機関にとっても有用な情報である。 また、お薬手帳や薬剤情報提供書は患者、薬局、医療機関の三者の間で情報連携するための重要 な役割を担っていることから、お薬手帳などの活用に関する疑義照会のヒヤリ・ハット事例も医療 機関にとって有用と考えられる。 (3)疑義照会に関する薬局ヒヤリ・ハット事例 薬剤師は、患者から処方せんを応需した際、処方内容を監査し、処方内容に疑問がある場合は、医 師に疑義照会し疑問を解消してから適切に調剤、交付を行う。具体的な疑義内容として、用法用量、 併用薬、副作用歴、禁忌投与、重複投与などが挙げられる。 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業では、疑義照会の事例についても報告の対象としており、 薬局でエラーを発見し、疑義照会により処方内容を修正することの重要性を情報発信してきた。薬局 で発見された疑義照会の事例、及び疑義照会はしていないが処方内容を確認した事例を集計、分析す ることは、薬局においても有用であるとともに、処方せんを作成している医療機関においても有用な 情報を提供することが出来ると考えられる。 疑義照会の結果、変更となった内容は、 「図表Ⅲ - 2- 34 薬局ヒヤリ・ハット事例報告項目」の 通り、 「薬剤変更」 「用法変更」 「用量変更」 「分量変更」 「薬剤削除」 「その他」のいずれかが選択される。 このうち平成21年年報から平成23年年報では、 「薬剤変更」 「分量変更」 「薬剤削除」について集計、 分析し、平成24年年報では、 「用法変更」 「用量変更」について分析、集計を行った。本稿はそれら の内容を改編したものである。 - 162 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 1)疑義照会の事例に関する分析(薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成24年年報より) ①報告件数 平成24年1月1日から同年12月31日までに報告されたヒヤリ・ハット事例のうち、 事例の概要について「疑義照会」が選択されていた事例は、730件あり、ヒヤリ・ハット事例 の10.2%を占めた。図表Ⅲ - 2- 35に事例の概要と報告件数を示す。 図表Ⅲ - 2- 35 事例の概要と報告件数 事例の概要 調剤 特定保険医療材料 9 0.1% 疑義照会 730 10.2% 件数 6,424 疑義照会 730 特定保険医療材料 医薬品の販売 合 計 医薬品の販売 3 0.0% 9 3 Ⅲ 7,166 調剤 6,424 89.6% 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 - 163 - Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ②疑義があると判断した理由 薬剤師が処方に関して疑義を抱く過程では、処方せんを見て記載の誤りに気付く場合や、前回 の処方記録と照合して誤りに気付く場合、薬剤服用歴(薬歴)の情報や、患者へのインタビュー の中で得られた情報により処方せんの誤りに気付く場合などがある。そこで、疑義照会に関する 事例について、疑義があると判断した理由および変更内容について分析した(図表Ⅲ - 2- 36) 。 図表Ⅲ - 2- 36 疑義があると判断した理由および変更内容 仮に変更前の処方の通りに 服用した場合の影響 件数 患者に健康被害があったと推測 される 457 患者に健康被害が生じなかった が、医師の意図した薬効が得られ なかったと推測される 273 合 計 730 疑義があると判断した理由 件数 当該処方せんのみで判断 198 当該処方せんと薬局で管理して いる情報で判断 381 上記以外で判断 151 合 計 変更内容 上記以外で判断 151 20.7% その他 33 4.5% 件数 259 用法変更 67 用量変更 33 分量変更 102 薬剤削除 236 薬剤削除 236 32.3% 分量変更 102 14.0% 33 合 計 当該処方せん のみで判断 198 27.1% 当該処方せんと薬局で 管理している情報で判断 381 52.2% 730 薬剤変更 その他 患者に健康被害が 生じなかったが、 医師の意図した薬効 が得られなかった と推測される 273 患者に健康被害が 37.4% あったと推測される 457 62.7% 薬剤変更 259 35.5% 用法変更 67 9.2% 730 用量変更 33 4.5% - 164 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 疑義照会に関する事例のうち、「疑義があると判断した理由」として、「当該処方せんと薬局で管 理している情報で判断」を選択した事例が52.2%(381/730件)、「上記以外で判断」を 選択した事例が20.7%(151/730件)あり、合計で72.9%(532/730件)であっ た。このように、ヒヤリ・ハット事例の相当の割合が、処方せん以外の情報も活用してエラーを発 見したものであった。 ③疑義照会による処方変更内容など ⅰ疑義照会の「変更内容」と「疑義があると判断した理由」 疑義照会の結果、エラーが発見され、修正された場合は、エラーの種類によって、薬剤が削 除、変更されたり、処方の用法や用量が変更されたりすることとなる。このように様々な種類 や性質の変更が生じうる。それらのエラーの種類に応じて、発生状況を詳細に分析することに は意義があると考えられることから、疑義照会による変更内容と疑義があると判断した理由別 に、集計し分析した(図表Ⅲ - 2- 37) 。 Ⅲ 図表Ⅲ - 2- 37 「変更内容」と「疑義があると判断した理由」別に見た報告件数 薬剤変更 用法変更 用量変更 分量変更 薬剤削除 その他 当該処方せんのみ で判断 63 (24.3%) 43 (64.2%) 16 (48.5%) 39 (38.2%) 28 (11.9%) 9 (27.3%) 当該処方せんと 薬局で管理して いる情報で判断 148 (57.1%) 15 (22.4%) 7 (21.2%) 52 (51.0%) 142 (60.2%) 17 (51.5%) 上記以外で判断 48 (18.5%) 9 (13.4%) 10 (30.3%) 11 (10.8%) 66 (28.0%) 7 (21.2%) 合計 259 (100.0%) 67 (100.0%) 33 (100.0%) 102 (100.0%) 236 33 (100.0%) (100.0%) 疑義照会の結果行われた変更内容の結果を集計すると、 「薬剤変更」を選択した事例が 35.5%(259/730件)と最も多く、次いで「薬剤削除」を選択した事例が32.3% (236/730件)であった。その他に「分量変更」が14.0%(102/730件) 、「用 法変更」が9.2%(67/730件)、などがあった(既出、図表Ⅲ - 2- 36円グラフ) 。 疑義があると判断した理由は、 「変更内容」毎に異なっていたことから、次にその詳細を ア)∼オ)に示す。 ア)「薬剤変更」の事例 「当該処方せんと薬局で管理している情報で判断」、次いで「当該処方せんのみで判断」が 多く、疑義照会の事例全体の内訳と同じ傾向であった。 イ)「用法変更」の事例 「当該処方せんのみで判断」が多く、疑義照会の事例全体の内訳と比較して多かった。 ウ)「用量変更」の事例 「当該処方せんのみで判断」が多く、疑義照会の事例全体の内訳と比較して多かった。 - 165 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 変更内容/疑義があると 判断した理由 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) エ)「分量変更」の事例 「当該処方せんと薬局で管理している情報で判断」、次いで「当該処方せんのみで判断」が 多く、疑義照会の事例全体の内訳と同じ傾向であった。 オ)「薬剤削除」の事例 「当該処方せんと薬局で管理している情報で判断」が多く、他の「変更内容」の「当該 処方せんと薬局で管理している情報で判断」の割合と比較しても最も多かった。また、疑義 照会の事例全体の内訳と比較して多かった。 ④疑義照会の結果「用法変更」となった事例に関する分析 ⅰ 用法変更の事例の報告件数 疑義照会の「変更内容」と「疑義があると判断した理由」 (既出、図表Ⅲ - 2- 37)に示し たように、用法変更の事例は67件であり、疑義照会の事例中の9.2% であった。 ⅱ 用法変更の事例で報告されたハイリスク医薬品の薬効及び疑義があると判断した理由 疑義照会により用法が変更される事例では、誤った用法で医師が処方した事例や、薬局で新 たに判明した事実が疑義照会によって医師に伝えられることによって用法を変更する根拠が得 られた事例がある。このような事例の中で処方されている医薬品の薬効や、疑義を抱いた理由 となった情報を分析するために、疑義の対象となった医薬品の販売名を入力する項目である「医 薬品に関する項目」の販売名からその薬効を調べて集計、分析した(図表Ⅲ - 2- 38)。なお「薬 効等」は、医薬品に対応する「個別医薬品コード」の先頭2桁、3桁、4桁の医薬品分類を示す。 ハイリスク薬の選択は、 「ハイリスク薬に関するヒヤリ・ハット」 (薬局ヒヤリ・ハット事例収集・ 分析事業平成24年年報158∼159頁)の考え方に従った。 - 166 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 38 用法変更事例におけるハイリスク医薬品の名称・薬効等及び疑義があると判断 した理由(①:作用部位、成分 ②:主たる薬効 ③:薬効) 疑義があると判断した理由 当該処方せんと薬局 当処方せん 上記以外で で管理している情報 のみで判断 判断 で判断 医薬品の名称及び薬効等 ①中枢神経系用薬 合計 3 ②抗てんかん剤 3 ③その他の抗てんかん剤 2 リボトリール錠0.5mg 0 1 0 1 ラミクタール錠25mg 0 1 0 1 ②精神神経用剤 1 ③その他の精神神経用剤 1 デパス錠0.5mg 0 1 0 ①循環器官用薬 1 Ⅲ 1 ②不整脈用剤 1 ③β−遮断剤 1 アルマール錠5※ 0 0 1 1 5 ②糖尿病用剤 5 ③スルフォニル尿素系製剤 1 アマリール1mg錠 1 0 0 ③その他の糖尿病用剤 1 4 ベイスン錠0.2 1 0 0 1 ベイスン錠0.3 1 0 0 1 グルファスト錠10mg 1 0 0 1 エクア錠50mg 1 0 0 1 ①腫瘍用薬 2 ②代謝拮抗剤 2 ③その他の代謝拮抗剤 2 ユーエフティ配合カプセルT100 0 1 0 1 ティーエスワン配合カプセルT20 0 1 0 1 5 5 1 11 合計 ※2012年6月22日よりアロチール塩酸塩錠に名称が変更された。 ⅲ 薬効別に見た疑義照会の変更内容が「用法変更」である事例 ハイリスク薬は「抗てんかん剤」「精神神経用剤」「不整脈用剤」「糖尿病用剤」「代謝拮抗剤」の 領域について報告された。ハイリスク薬全体の「疑義があると判断した理由」は、 「当該処方せん のみで判断」「当該処方せんと薬局で管理している情報で判断」がそれぞれ5件と多かった。 - 167 - 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 ①その他の代謝性医薬品 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ⅳ 用法変更の事例で疑義があると判断する契機となった情報 用法変更の事例のうち、「当該処方せんと薬局で管理している情報で判断」と「上記以外で判断」 を選択した事例には、薬剤服用歴(薬歴)や前回処方歴の活用や、患者へのインタビューから得ら れた情報の活用等、処方せん以外の何らかの情報が契機となって疑義照会が行われた内容が報告さ れている。そこで、 「疑義があると判断した理由」の項目で「当該処方せんと薬局で管理している 情報で判断」または「上記以外で判断」が選択されていた24件について、事例報告項目のテキス ト情報である「事例の内容」「背景・要因」「改善策」の記述から、疑義があると判断する契機となっ た情報がわかるものを検索したところ23件あった。その内容を整理して図表Ⅲ - 2- 39に示す。 図表Ⅲ - 2- 39 疑義があると判断する契機となった情報 疑義があると判断する契機となった情報 件数 通常とは異なる用法などを含む処方内容 9 患者が理解している用法と処方内容の相違 4 併用薬 4 薬局で管理している情報と処方内容との相違 3 患者の疾患 2 コンプライアンス 1 処方内容 1 副作用歴 1 合計注) 25 注)「通常とは異なる用法などを含む処方内容」と「患者の疾患」の両方に該当す る事例をいずれにも計上しているため、合計(25件)は事例の件数(23件) と異なる。 用法変更の事例で疑義があると判断する契機となった情報のうち、服用時点 ・ 回数が添付文書上 の用法と異なる、薬物動態から判断し服用時点変更を提案した事例など「通常とは異なる用法など を含む処方内容」が9件と最も多かった。次いで「患者が理解している用法と処方内容の相違」 「併 用薬」がそれぞれ4件、「薬局で管理している情報と処方内容との相違」が3件などであった。 疑義があると判断する契機となった情報が記載されていた主な事例の内容や疑義があると判断し た理由を併せて図表Ⅲ - 2- 40に示す。 - 168 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 40 疑義照会の結果「用法変更」となった主な事例 疑義があると判断した理由 販売名 事例の内容 等 ○通常とは異なる用法などを含む処方内容 【事例1】 当該処方せんと薬局で管理し アーチスト錠2.5mg ている情報で判断 (事例の内容) ア ー チ ス ト 錠 2.5 m g 2 T 分 1 朝 食 後 で 処 方。 患 者 か ら は、 D r よ り 分 1 朝 で 服 用 す る よ う に と 訴 え が あ っ た が、 添 付 文 書 上 2.5 m g 錠 は 慢 性 心 不 全 の 適 応 し か な く そ の 場 合 1 日 2 回 な の で 疑 義 照 会。 2T 1日1回朝食後→1日2回朝夕食後へ変更。 (背景・要因) 記載無し (改善策) 患者からの訴えがあっても、添付文書と異なる 用法の場合は疑義照会する。 Ⅲ ○患者が理解している用法と処方内容の相違 【事例2】 上記以外で判断 (事例の内容) ラシックス40mg 2T 2×朝昼食後→ 1T 1×朝食後へ 減量する予定が用法が 2×朝昼食後のままであった。患者へ確認した ら昼の薬をやめるという話だったので用法違い に気がついた。 (背景・要因) 病院クラークが錠数を変更したのみで用法変更 をしていなかった。 (改善策) 記載なし クラリス錠200 (事例の内容) 薬局で併用薬の確認をしたところ、クラビット 500を服用中であることが判明。しかし、医 師にはそれを伝えていなかった。同種の薬剤が 処方されていたので疑義照会をした。 (背景・要因) 患者が併用薬を医師に知らせていなかった。 (改善策) 薬局では併用薬の確認を徹底。患者にはお手帳 活用の促進に努める。 ○併用薬 【事例3】 上記以外で判断 - 169 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 ラシックス錠40mg Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 疑義があると判断した理由 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 販売名 事例の内容 等 ○薬局の情報と処方内容との相違 【事例4】 当該処方せんと薬局で管理し ラミクタール錠25mg ている情報で判断 (ハイリスク薬) (事例の内容) ラミクタール錠25mg3錠 1日1回夕食後 で処方、前回2錠1日2回朝夕食後だったため、 医師へ確認した。その結果、ラミクタール錠 1日2回 朝食後1錠夕食後2錠へ用法変更さ れた。 (背景・要因) 記載無し (改善策) 記載無し ○患者の疾患 【事例5】 上記以外で判断 サアミオン錠5mg (事例の内容) パナルジン、サアミオン錠5mgが脳梗塞後か ら処方されている患者だった。今回の処方で パナルジンのみ14日分少なく処方されていた ため患者に確認すると、全身麻酔で開腹手術を 予定しているため、術前14日前から中止する ことが分かった。サアミオン錠5mgも弱いな がら出血傾向を増強するため処方医師へ確認し たところ、術前3日前から中止となった。 (背景・要因) 記載なし (改善策) 薬局内でも術前の中止薬の意識が統一されてい なかったため、表を配布して知識の統一を図る。 ○処方内容 【事例6】 当該処方せんと薬局で管理し ティーエスワン配合カプ (事例の内容) ている情報で判断 セルT20 ティーエスワンの用法について処方のコメント として『本日夕方より』となっていたが薬歴を 確認すると通常4週服用2週休薬のところまだ 1週間しかたっていないことに気づいた。本人 に聞くがやはり休薬は1週間であることを確認 したため処方医に問い合わせをした。処方医は、 もう1週間休薬して○月△日の夕方より服用す るようにとの回答があった。本人にも伝えたこ とで事なきを得た。 (背景・要因) 医師が繁忙時であること。また、本人にもスケ ジュールの意識が薄かったことが考えられた。 (改善策) 薬歴によりスケジュールの管理することの必要 性を改めて再確認し、本人にもスケジュールに 対して強い関心を持って服用するよう指導した。 - 170 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 疑義があると判断した理由 販売名 事例の内容 等 ○副作用歴 【事例7】 上記以外で判断 マグミット錠250mg (事例の内容) マグミット錠250mg分3で処方されていた が、下痢が続いていたことが判明し、同薬1錠 頓用に変更を提案した。 (背景・要因) 記載無し (改善策) 記載無し ※ 「上記以外で判断」の「上記」とは、疑義照会の事例の報告項目の選択肢のうちの「当該処方せんのみで判断」と「当該処方せんと薬局で 管理している情報で判断」を示す。 ⑤疑義照会の結果「用量変更」となった事例に関する分析 ⅰ 用量変更の事例の報告件数 Ⅲ 「変更内容」と「疑義があると判断した理由」 (既出、図表Ⅲ - 2- 37)に示したように、 用量変更の事例は33件であり、疑義照会の事例中の4.5% であった。 ⅱ 用量変更の事例で報告されたハイリスク医薬品の薬効及び疑義があると判断した理由 疑義照会により用量が変更される事例では、投与制限のある医薬品を医師が誤って処方した 用量を変更する根拠が得られた事例がある。このような事例の中で処方されている医薬品の薬 効の傾向や、疑義を抱いた理由となった情報を分析するために、疑義の対象となった医薬品の 販売名を入力する項目である「医薬品に関する項目」の販売名からその薬効を調べて集計、分 析した。なお「薬効等」は、医薬品に対応する「個別医薬品コード」の先頭2桁、3桁、4桁 の医薬品分類を図表Ⅲ - 2- 41に示す。 - 171 - 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 事例や、薬局で新たに判明した事実が疑義照会によって医師に伝えられることによって初めて 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 41 用量変更事例におけるハイリスク医薬品の名称・薬効等及び疑義があると 判断した理由(①:作用部位、成分 ②:主たる薬効 ③:薬効) 疑義があると判断した理由 当該処方 当該処方せんと薬局 上記以外で せんのみで で管理している情報 判断 判断 で判断 医薬品の名称及び薬効等 ①中枢神経系用薬 合計 3 ②精神神経用剤 3 ③その他の精神神経用剤 3 リーゼ錠5mg 2 0 0 2 エチカーム錠0.5mg 0 0 1 1 ①ホルモン剤(抗ホルモン剤を含む。) 1 ②副腎ホルモン剤 1 ③プレドニゾロン系製剤 1 プレドニゾロン錠1mg(旭化成) 0 1 0 ①血液・体液用薬 1 2 ②血液凝固阻止剤 2 ③ジクマロール系製剤 2 ワーファリン錠1mg 0 0 2 ①その他の代謝性医薬品 2 1 ②他に分類されない代謝性医薬品 1 ③他に分類されないその他の代謝性医薬品 リウマトレックスカプセル2mg 1 0 0 1 ①腫瘍用薬 1 1 ②代謝拮抗剤 1 ③その他の代謝拮抗剤 1 ユーエフティ配合カプセルT100 合計 1 0 0 1 3 1 4 8 ア)薬効等別に見た疑義照会の変更内容が「用量変更」である事例 ハイリスク薬の事例が報告された薬効は、「精神神経用剤」 「副腎ホルモン剤」 「血液凝固阻止剤」 「他に分類されない代謝性医薬品」 「代謝拮抗剤」であった。「疑義があると判断した理由」としては、 「当該処方せんのみで判断」「上記以外で判断」がそれぞれ3件と多かった。 イ)用量変更となった主な医薬品の販売名 疑義照会の用量変更に関する事例において、処方された医薬品の販売名のうち、 「リーゼ錠5mg」 「ワーファリン錠1mg」がそれぞれ2件報告されており、 「リーゼ錠5mg」についてはそれぞれ 2件とも長期投与制限による用量変更であった。 - 172 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ⅲ 用量変更の事例で疑義があると判断する契機となった情報 用量変更の事例のうち、「当該処方せんと薬局で管理している情報で判断」と「上記以外で判断」 を選択した事例には、薬剤服用歴(薬歴)や前回処方歴の活用や、患者へのインタビューから得ら れた情報の活用等、処方せん以外の何らかの情報が契機となって疑義照会が行われた内容が報告さ れている。そこで、 「疑義があると判断した理由」の項目で「当該処方せんと薬局で管理している 情報で判断」または「上記以外で判断」が選択されていた17件について、事例報告項目のテキス ト情報である「事例の内容」「背景・要因」「改善策」の記述から、疑義があると判断する契機となっ た情報がわかるものを検索したところ16件あった。その内容を整理して図表Ⅲ - 2- 42に示す。 図表Ⅲ - 2- 42 疑義があると判断する契機となった情報 疑義があると判断する契機となった情報 件数 受診状況 3 残薬 3 処方日数制限 3 通常とは異なる用量などを含む処方内容 2 お薬手帳の内容と処方内容との相違 2 同時処方薬の処方日数 2 患者との会話 1 16 注)「同時処方薬の処方日数」と「通常とは異なる用量などを含む処方内容」の両方 に該当する事例をいずれにも計上しているため、合計(16件)は事例の件数 (16件)と異なる。 用量変更の事例で疑義があると判断する契機となった情報のうち、 「受診状況」 「残薬」 「処方日 数制限」がそれぞれ3件で多かった。次いで「通常とは異なる用量などを含む処方内容」「お薬手 帳の内容と処方内容との相違」「同時処方薬の処方日数」がそれぞれ2件などであった。 疑義があると判断する契機となった情報が記載されていた主な事例の内容や疑義があると判断し た理由を併せて図表Ⅲ - 2- 43に示す。 - 173 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 合計注) Ⅲ Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 43 疑義照会の結果「用量変更」となった主な事例 疑義があると判断した理由 販売名 事例の内容 等 ○受診状況 【事例1】 当該処方せんと薬局で管理し アムロジピン錠5mg ている情報で判断 「サワイ」 (事例の内容) 初めて血圧の薬が14日分出て、お薬手帳を確 認したところ、初めに医師と薬剤師に伝えた薬 は1年以上前の薬で、現在は他病院にて血圧の 薬が出ていた。しかし、家には無いとのことだっ た。次回他病院にかかる予定までの5日処方に 変更をお願いした。 (背景・要因) 本人への聞き取りに対して反応がほとんど無く、 家族も薬が出ていることを知らなかった。 (改善策) 本人だけでなく、家族にも服用している薬が分 かるように、お薬手帳は持っていただくように する。 ○残薬 【事例2】 上記以外で判断 エチカーム錠0.5mg (ハイリスク薬) (事例の内容) 14日分の処方があったが、本人申し出により、 残薬があることが発覚。8日分の処方へ変更と なった。 (背景・要因) 記載無し (改善策) 記載無し ○処方日数制限 【事例3】 当該処方せんと薬局で管理し マイスリー錠10mg , ている情報で判断 ロヒプノール錠2 - 174 - (事例の内容) マイスリー10mg1T ロヒプノール2mg 1T 1日1回寝る前35日分の処方。向精神 薬30日投与日数制限あり。疑義照会後、30 日分+頓服不眠時5回分へ変更となった。 (背景・要因) 処方医の認識不足によるもの。(投与日数制限の 設けてある薬) (改善策) 処方医へ投与日数制限の設けてある医薬品リス トを提供する。薬局内にも掲示しておく。 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 疑義があると判断した理由 販売名 事例の内容 等 ○お薬手帳と処方内容との相違 【事例4】 上記以外で判断 ラ シ ッ ク ス 錠 2 0 m g , (事例の内容) ワ ー フ ァ リ ン 錠 1 m g 大学病院から紹介状を持参して転院された患者 ( ハ イ リ ス ク 薬 ), が、かかりつけ医からの処方せんをだされた。 ア ム ロ ジ ピ ン 錠 5 m g 患者の話と処方内容が異なっていたので、処方 医に疑義照会したところ、ラシックスは中止さ 「明治」 れた薬とのことであった。そのあと、さらに疑 義が残ったが、紹介状のとおりの内容というこ とで、お薬手帳との比較を行ったところ、大学 病院の退院時の処方でワーファリン錠1mgと アムロジピン錠5mgの用量が異なっていた。 (背景・要因) かかりつけ医から、直接大学病院の医師に確認 してもらったところ、紹介状の記載ミスである ことが分かった。 (改善策) 他の病院からの転院時には、紹介状だけでなく、 お薬手帳も持参されることが重要だと考える。 紹介状の記載ミスもこの方法で、確認できる場 合が多く、重大な症状の変化を防ぐことができ ると思われる。 ○患者との会話 【事例5】 トラムセット配合錠 (事例の内容) トラムセット配合錠を2錠/日から4錠/日に 増量後、嘔吐があったため患者自己判断により 中止していたが、その旨を処方医に伝えられて おらず、今回も4錠/日での処方となっており、 吐き気止めなどの追加も無かった。嘔吐があっ た旨を薬局から直接処方医に電話にて伝えたと ころ、2錠/日の処方に変更となった。 (背景・要因) 記載無し (改善策) 記載無し ※ 「上記以外で判断」の「上記」とは、疑義照会の事例の報告項目の選択肢のうちの「当該処方せんのみで判断」と「当該処方せんと 薬局で管理している情報で判断」を示す。 - 175 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 上記以外で判断 Ⅲ Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 【参考】疑義照会の結果「薬剤削除」「分量変更」「薬剤変更」となった事例に関する分析 (薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成21∼23年年報を改編) 先述したように、疑義照会の結果行われた変更内容の結果を集計すると、平成24年年報で は、「薬剤変更」を選択した事例が35.5%と最も多く、次いで「薬剤削除」を選択した事例が 32.3%であった。その他に「分量変更」が14.0%、 「用法変更」が9.2%などがあった。 これらのうち、平成24年年報で取り上げたのは「用法変更」と「用量変更」である。割合が多かっ た「薬剤変更」「薬剤削除」「分量変更」は平成21∼23年年報で取り上げている。 そこで参考情報として、平成21∼23年年報より、疑義照会の結果行われた変更内容で多かっ た「薬剤変更」「薬剤削除」「分量変更」について、年報の内容を改編し示す。 (1) 疑義照会の結果「薬剤削除」となった事例(薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成23年年報より) ①薬剤削除の事例で報告されたハイリスク医薬品の薬効等及び、疑義があると判断した 理由 薬剤削除の事例で報告されたハイリスク医薬品の薬効等及び疑義があると判断した理由は 次の通り。 図表1 薬剤削除の事例におけるハイリスク医薬品の薬効等及び疑義があると判断した理由 (①:作用部位、成分 ②:主たる薬効 ③:薬効) 疑義があると判断した理由 薬効等 当該処方せんと 当該処方せん 薬局で管理して のみで判断 いる情報で判断 上記以外で 判断 ①中枢神経系用薬 合計 2 ②抗てんかん剤 1 ③その他の抗てんかん剤 0 0 1 1 0 1 0 1 ②精神神経用剤 1 ③その他の精神神経用剤 ①血液・体液用薬 1 ②血液凝固阻止剤 1 ③ジクマロール系製剤 0 1 0 1 ①その他代謝性医薬品 5 ②糖尿病用剤 4 ③スルフォニル尿素系製剤 1 2 0 ③その他の糖尿病用剤 0 1 0 ②他に分類されない代謝性医薬品 3 1 1 ③他に分類されないその他の代謝性医薬品 0 1 0 ①腫瘍用薬 1 3 ②代謝拮抗剤 1 ③その他の代謝拮抗剤 0 1 0 ②その他の腫瘍用薬 1 2 ③その他の抗悪性腫瘍用剤 合計 - 176 - 0 2 0 2 1 9 1 11 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 「糖尿病用剤」を含む「その他代謝性医薬品」は5件、「腫瘍用薬」は3件であった。それらの 事例の「疑義があると判断した理由」は、「当該処方せんと薬局で管理している情報で判断」し たとするものが9件であり大半を占めた。 ② 薬剤削除となった主な医薬品の分析 ⅰ 薬剤削除となった主な医薬品の販売名 疑義照会の薬剤削除に関する事例において、処方された医薬品の販売名のうち、多く報 告された販売名を図表2集計した。 図表2 薬剤削除となった主な医薬品の販売名(報告回数上位10品目) 販売名 件数 7 ガスモチン散1% 5 ムコスタ錠100mg 5 ガスターD錠20mg 3 ジルテックドライシロップ1.25% 3 セルベックスカプセル50mg 3 フロモックス錠100mg 3 メチコバール錠500μg 3 レバミピド錠100mg「EMEC」 3 ロキソニン錠60mg 3 報告回数上位10品目までの販売名を見ると、 「ポドニンS配合顆粒」が7件と最も多 く、次いで「ガスモチン散1%」 「ムコスタ錠100mg」がそれぞれ5件であった。それ らを含め、薬剤削除となった主な医薬品の販売名(既出、図表2)に示した医薬品はい ずれもハイリスク薬ではなかった。また、 「ポドニンS配合顆粒」 「ムコスタ錠100mg」 「ガスターD錠20mg」「セルベックスカプセル50mg」「レバミピド錠100mg 「EMEC」 」は、薬剤削除となった医薬品の薬効のうち最も多かった「その他の消化性潰 瘍用剤」に該当し、これらが10品目中5品目を占めた。 ③ 「薬剤削除」の疑義があると判断する契機となった情報 「薬剤削除」の事例のうち、 「当該処方せんと薬局で管理している情報で判断」と「上記 以外で判断」を選択した事例には、薬歴や前回処方歴の活用や、患者へのインタビューから 得られた情報の活用等、処方せん以外の何らかの情報が契機となって疑義照会が行われた内 容が報告されている。そこで、「疑義があると判断した理由」の項目で「当該処方せんと薬 局で管理している情報で判断」または「上記以外で判断」が選択されていた117件につい て、事例報告項目のテキスト情報である「事例の内容」「背景・要因」「改善策」の記述から、 - 177 - Ⅲ 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 ポドニンS配合顆粒 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 疑義があると判断する契機となった情報がわかるものを検索したところ114事例あった。 その内容を整理して図表3に示す。 図表3 疑義があると判断する契機となった情報 疑義があると判断する契機となった情報 件数 併用薬 80 患者の疾患や併用薬から推測される疾患 9 残薬 9 副作用歴 6 服用再開、または服用中止 4 服用期間 3 処方内容 3 アレルギー 1 処方された医薬品の特徴 1 116注) 計 注) 「併用薬」と「患者の疾患や併用薬から推測される疾患」、「残薬の有無」と 「副作用」の両方に該当する事例をいずれにも計上しているため、合計(116件) は事例の件数(114件)と異なる。 疑義があると判断する契機となった情報のうち、併用薬の確認による情報によって疑義照会 にいたった事例の報告件数が80件と最も多く大半を占めた。その他には、 「患者の疾患や併 用薬から推測した疾患」「残薬」「副作用歴」などがあった。 疑義があると判断する契機となった情報が記載されていた主な事例の内容や疑義があると 判断した理由を併せて図表4に示す。 図表4 疑義があると判断する契機となった情報が記載されていた主な事例 疑義があると判断した理由 販 売 名(薬効) 事例の内容 等 併用薬 【事例1】 上記以外で判断 ナトリックス錠1 (その他の血圧降下剤) - 178 - (事例の内容) 当該患者に「ナトリックス錠1、1日1錠」 が処方されていた。患者との会話の中で、当 該患者は別の医療機関からナトリックス錠1 mgを処方され服用していることが分かった ため、医師に疑義照会したところ、ナトリッ クス錠1は薬剤削除となった。 (背景・要因) 患者は医師に併用薬について伝えておらず、 薬局に来てそのことを思い出した。 (改善策) お薬手帳を持参することを患者に勧める。 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 疑義があると判断した理由 販 売 名(薬効) 事例の内容 等 患者の疾患や併用薬から推測される疾患 【事例2】 当該処方せんと薬局で管理し ブスコパン錠10mg ている情報で判断 (アトロピン系製剤) (事例の内容) ブスコパン錠10mgが処方され、投薬時に 患者本人から、「自分は緑内障だけど、使っ て大丈夫か?」との指摘を受けた。病院に疑 義照会したところ、処方削除になった。 (背景・要因) 薬歴の表紙にも緑内障と記載があったにも関 わらず、監査時に見落とした。監査者は、 「ブ スコパン=緑内障禁忌」の知識が不足してい た。 (改善策) 疾病禁忌の薬を見直す。 残薬 Ⅲ 【事例3】 上記以外で判断 ビオフェルミン錠剤 (活性生菌製剤) 副作用歴 【事例4】 当該処方せんと薬局で管理し ツ ロ ブ テ ロ ー ル テ ー プ (事例の内容) 約3年半前、ホクナリンテープ2mgの処方 ている情報で判断 2mg「HMT」 (その他の気管支拡張剤) で、腕のしびれ、震えがあり、中止になった と薬歴に記載があった。今回、ツロブテロー ルテープ2mg「HMT」が処方されたため 疑義照会を行ったところ、中止となった。 (背景・要因) 副作用歴は薬歴の表紙に記載し、調剤前に確 認を行っていた。 (改善策) 記載なし - 179 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 (事例の内容) いつもの薬をもらいに来局した患者の処方 に「ビオフェルミン錠剤、3錠/分3毎食 後、14日分」があった。患者インタビュー 中、ビオフェルミン錠剤の飲み残しが多量に あることが患者の申し出で判明した。14日 分以上あるとのことだったため、医師に処方 削除を疑義照会で提案したところ、薬剤削除 になった。 (背景・要因) 患者の服薬コンプライアンスが非常に悪かっ た。残薬が多量にあった。 (改善策) 患者の服薬コンプライアンスを常に確認し、 残薬があれば処方の削除も視野に入れ、医療 費の削減を実践する。 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 疑義があると判断した理由 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 販 売 名(薬効) 事例の内容 等 服用期間 【事例5】 当該処方せんと薬局で管理し ティーエスワン配合顆粒 (事例の内容) ティーエスワン配合顆粒T25をすでに4週 ている情報で判断 T25 間服用しており、さらに2週間分が処方され (その他の代謝拮抗剤) ていた。患者に確認したところ、4週間服用 (ハイリスク薬) し、2週間休薬と回答があった。よって医師 へ疑義照会したところ、ティーエスワン配合 顆粒T25は処方削除となった。 (背景・要因) 薬歴の確認と患者との会話で判明した。 (改善策) 抗がん剤の服薬スケジュールをしっかり確認 する。 処方内容 【事例6】 当該処方せんと薬局で管理し アリミデックス錠1mg (事例の内容) ている情報で判断 (その他の抗悪性腫瘍用剤) 在宅で、乳癌の患者だった。前頭骨転移もあ り、ユーエフティ、アリミデックス錠1mg (ハイリスク薬) が数年継続して処方されていた。検査は病院 の外科で定期的に行われており、転移増大の ためユーエフティを中止し、タスオミン錠に 変更するという紹介状が、往診中の診療所に 届いた。往診医師は指示通りユーエフティの みを中止し、タスオミン錠、アリミデックス 錠1mgの処方せんを発行した。当薬局で、 タスオミン錠、アリミデックス錠1mgの併 用について疑問を持ったため、往診医師から 外科の医師に直接問い合わせをお願いした。 結果として、アリミデックス錠1mgは薬剤 削除となった。 (背景・要因) タスオミン錠の服用開始の時点でアリミデッ クス錠1mgも中止だったが、紹介状の記載 不備のためか、往診医師も気づかずにそのま ま処方したと思われる。 (改善策) 記載なし。 - 180 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 疑義があると判断した理由 販 売 名(薬効) 事例の内容 等 服用再開、または服用中止 【事例7】 当該処方せんと薬局で管理し アクトス錠15 ている情報で判断 (その他の糖尿病用剤) (ハイリスク薬) (事例の内容) アクトス錠15は2か月前に最後の処方があ り、その後血糖値が落ち着いたので処方され ていなかった。今回処方があり、医療機関に 疑義照会を行ったところ、カルテを処方せん に写す段階ではアクトス錠15は投薬となっ ていた。再度医師に確認したところ、アクト ス錠15は削除であることが判明した。 (背景・要因) カルテが複雑な場合、他にも同様な入力間違 いがあった。単に入力作業を行う職業が医療 事務ではないことを教育していなかった。医 療機関内での連携に問題があった。 (改善策) 医療事務の教育を行う。 Ⅲ 【事例8】 上記以外で判断 - 181 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 クレストール錠2.5mg (事例の内容) (その他の高脂血症用剤) 免疫内科にかかっている患者の処方せんに 「クレストール錠2.5mg1錠/分1朝食 後、28日分」の処方が含まれていた。患者 インタビュー中に患者より「血液検査をして、 医師からコレステロールの薬は中止しましょ うと言われた。でもクレストール錠2.5m gが処方されているのはなぜですか。」との 申し出があった。医師に疑義照会したところ、 クレストール錠2.5mgは中止となった。 薬剤を削除し忘れたとの回答であった。 (背景・要因) 医師が中止する処方薬を処方せんに書いてし まった。 (改善策) 患者インタビューの徹底を行う。 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 疑義があると判断した理由 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 販 売 名(薬効) 事例の内容 等 処方された医薬品の特徴 【事例9】 上記以外で判断 ラミシール錠125mg (その他の化学療法剤) (事例の内容) 糖尿病内科の医師からの処方せんで、70歳 代男性に「ラミシール錠125mg、77日 分」が処方された。ラミシール錠125mg は、重篤な肝障害がある患者には投与開始 2ヵ月間は月1回の肝機能検査を行うことと されており、また本剤の投与は皮膚真菌症の 治療に十分な経験を持つ医師の下で、本剤の 投与が適切と判断される患者についてのみ投 与することとされていた。加えて医師からは 爪白癬についての説明がなかったため、疑義 照会をして確認したところ、皮膚科を受診す るということでラミシール錠125mgは削 除となった。 (背景・要因) 医師がラミシール錠125mgについて、十分 な認識がなかった。 (改善策) 記載なし ※ 「上記以外で判断」の「上記」とは、疑義照会の事例の報告項目の選択肢のうちの「当該処方せんのみで判断」と「当該処方せんと 薬局で管理している情報で判断」を示す。 (2) 疑義照会の結果「分量変更」となった事例(薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事 業平成22年年報より) ① 薬剤変更となった事例におけるハイリスク薬の薬効及び疑義があると判断した理由 報告項目の中で、「医薬品に関する項目」に記述された医薬品のうちハイリスク薬につい てその薬効を調べ、「薬効等」を縦軸、「疑義があると判断した理由」を横軸として集計した (図表5)。 - 182 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表5 分量変更となった事例におけるハイリスク薬の薬効等及び疑義があると判断した理由 (①:作用部位、成分 ②:主たる薬効 ③:薬効) 疑義があると判断した理由 薬効等 当該処方せんと 当該処方せん 薬局で管理して のみで判断 いる情報で判断 上記以外で 判断 ①中枢神経系用薬 合計 2 ②精神神経用剤 2 ③その他の精神神経用剤 0 1 1 ①呼吸器官用薬 2 2 ②気管支拡張剤 2 ③キサンチン系製剤 0 2 0 ①その他の代謝性医薬品 2 6 ②糖尿病用剤 5 ③スルフォニル尿素系製剤 1 2 0 3 ③ビグアナイド系製剤 1 0 0 1 ③その他の糖尿病用剤 0 1 0 1 ②他に分類されない代謝性医薬品 1 ③他に分類されないその他の代謝性医薬品 1 0 0 ①ホルモン剤(抗ホルモン剤を含む。) 1 1 ②その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む) 1 0 0 ①血液・体液用薬 1 3 ②血液凝固阻止剤 3 ③ジクマロール系製剤 0 1 2 ①腫瘍用薬 3 2 ②代謝拮抗剤 2 ③その他の代謝拮抗剤 合計 0 2 0 2 4 9 3 16 「分量変更」の事例のうち、 「当該処方せんと薬局で管理している情報で判断」した事例には、 「糖尿病用剤」などが多く、 「上記以外で判断」した事例については、 「血液凝固阻止剤」が多かっ た。いずれもハイリスク薬であった。 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業では、毎月1回程度具体事例に専門家による事例 のポイントを付した「共有すべき事例」を参加薬局に送付するとともに、ホームページに掲 載している。その中に、ワーファリン1mg錠に関して、疑義照会を行い分量変更が行われ た事例が公表されているので、次に紹介する(図表6)。 - 183 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 ③すい臓ホルモン剤 1 Ⅲ Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表6 共有すべき事例(疑義照会の「分量変更」) 事例の内容等 (事例の内容) ワーファリン錠1mgの投与量について、1日目のみ8mg、2日目以降は2mg投与との医師の意図で あったことが、疑義照会後に判明した。疑義照会前の処方では、2日目以降も8mg投与で継続すること となっていた。 (背景・要因) 電子カルテの入力ミス。 (薬局が考えた改善策) 疑義照会により訂正。 (その他の情報) 特記事項なし 事例のポイント ●電子カルテの入力ミスが原因であるが、分量を疑義照会した結果、過量投与を未然に防いだ事例である。 ワーファリンは、 「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアルで、 「特に安全管理が必要な 医薬品」に挙げられている医薬品であり、過量投与にならないよう、処方せんの内容に疑問を感じた場 合には、即座に処方医に確認することが、同様な事例の事故防止に繋がる事を銘記すべきである。 (3) 疑義照会の結果「薬剤変更」となった事例に関する分析(薬局ヒヤリ・ハット事例収集・ 分析事業平成21年年報を改編) ① 疑義照会による変更内容 疑義照会に関する事例のうち、 「医薬品に関する項目」で報告された販売名から、変更の 内容別に集計を行った(図表7)。具体的には、処方された医薬品と変更になった医薬品が 規格・剤形の変更に関するものを「異なる規格・剤形に変更」 、異なる販売名に変更(規格・ 剤形の変更を除く)に関するものを「異なる販売名に変更」とした。 図表7 疑義照会による変更内容 変更の内容 件数 異なる規格・剤形に変更 12 異なる販売名に変更 24 合計 36 処方された医薬品と変更になった医薬品が「異なる規格・剤形に変更」であったものは 12件、「異なる販売名に変更」(規格・剤形の変更を除く)であったものは24件であった。 ② 疑義があると判断した理由 次に、変更の内容別に「疑義があると判断した理由」を図表8に集計した。 - 184 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表8 疑義照会による疑義があると判断した理由 変更の内容 当該処方せんと 薬局で管理して いる情報で判断 当該処方せん のみで判断 上記以外で判断 件数 異なる規格・剤形に変更 7 5 0 12 異なる販売名に変更 6 9 9 24 13 14 9 36 合計 薬局から報告された「薬剤変更」に関するヒヤリ・ハット事例のうち、「異なる規格・剤 形に変更」に関するものでは、当該処方せん以外の情報を併用して判断しているものが12 件中5件(41.7%)であった。また、「異なる販売名に変更」に関するものでは、当該処 方せん以外の情報を併用して判断しているものが24件中9件(37.5%)であった。 Ⅲ ③ 異なる販売名に変更された医薬品の組み合わせにおける薬効の異同 「異なる販売名に変更」に分類された24件について、薬効が類似するものと薬効が異なるも のを分けて集計を行った(図表9) 。ただし、薬効が類似するものとは、YJコードの先頭4桁 以上が一致するものとした。 薬効の類似 件数 薬効が類似するもの 9 薬効が異なるもの 15 合計 24 異なる販売名に変更された事例のうち、 「薬効が類似するもの」に変更されたものは9件、 「薬効が異なるもの」に変更されたものは15件であった。特に薬効が異なる医薬品に変更 された15件について、疑義があると判断した理由、販売名(薬効)および具体的な事例の 内容を図表10に示す。 - 185 - 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 図表9 薬効の異同 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表10 薬効が異なる医薬品に変更された主な事例 疑義があると判断した 理由 販 売 名(薬効) 事例の内容 重複した処方 当該処方せんのみで判断 ○処方された医薬品 セイブル錠25mg (その他の糖尿病用剤) ○変更になった医薬品 メルビン錠250mg (ビグアナイド系製剤) ボグリボースODフィルム0.2「QQ」服 用中にセイブル錠25mgが追加された。 どちらもαグルコシダーゼ阻害で作用が重 複する薬剤であった。医師に確認したとこ ろボグリボースを処方していたことを忘れ ていたとのこと。セイブル錠からメルビン 錠に変更になった。 当 該 処 方 せ ん と 薬 局 で ○処方された医薬品 管理している情報で判断 カルナクリン錠50 (循環ホルモン剤) ○変更になった医薬品 メリスロン錠 (その他の鎮暈剤) 新規の患者であり、併用薬にカリクレイン があった。 同種同効果のカルナクリン錠50が処方さ れていたので疑義照会をしたところ、カル ナクリン錠50が削除になり、メリスロン錠 が追加となった。 上記以外で判断 ○処方された医薬品 セフカペンピボキシル塩酸塩 錠100mg「サワイ」 (セ フェム系抗生物質製剤) ○変更になった医薬品 レボフロキサシン錠 100 mg「YD」 (ピリドンカルボン酸系製剤) 投薬中に、セフカペンピボキシル塩酸塩処 方のところ、他の医療機関から先発医薬品 のフロモックス錠が処方されているという ことがわかった。処方医に疑義照会したと ころ、セフカペンピボキシル塩酸塩がレボ フロキサシン錠「YD」に薬剤変更となった。 服用中だったフロモックス錠は中止するよ う処方医から指示があった。 当 該 処 方 せ ん と 薬 局 で ○処方された医薬品 管理している情報で判断 メイアクトMS錠100mg (セフェム系抗生物質製剤) ○変更になった医薬品 クラビット錠 (ピリドンカルボン酸系製剤) 膀胱炎再発で診察、処方せんが発行された。 以前に診察の際、メイアクトMS錠が処方 され、薬疹がありクラビット錠へ変更した 経緯があった。薬疹歴を見落としてメイア クトMS錠が再度、処方された為、疑義照 会を行い、クラビット錠に変更となった。 副作用 上記以外で判断 他施設でがん治療中の患者に、エトドラク ○処方された医薬品 エトドラク錠200「KN」 錠200「KN」が処方された。当該患者 (その他の解熱鎮痛消炎剤) が持参した薬情より、ティーエスワンカプ セル25、ロイコン錠10mg、アズノー ○変更になった医薬品 ルうがい液4%、モーラステープ20mg ボルタレンゲル1% (その他の鎮痛、鎮痒、収斂、 の処方を確認し、白血球減少症への懸念を 処方医に疑義照会した。エトドラク錠の処 消炎剤) 方は中止となり、ボルタレンゲルへ薬剤変 更となった。 入力間違い 当該処方せんのみで判断 ○処方された医薬品 メバン錠5 (その他の高脂血症用剤) ○変更になった医薬品 バナン錠100mg (セフェム系抗生物質製剤) - 186 - 処方せんを受け付けた段階で、風邪の処方 内容の中に高脂血症用薬が書かれていたの で、医薬品名がメバン錠であり、力価の記 載もなく、ひょっとしたらバナン錠ではな いかと思い、疑義照会してみたところ、抗 生物質であるバナン錠の間違いであった。 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 疑義があると判断した 理由 販 売 名(薬効) 事例の内容 当 該 処 方 せ ん と 薬 局 で ○処方された医薬品 管理している情報で判断 ユリーフ錠4mg (その他の泌尿生殖器官及び 肛門用薬) ○変更になった医薬品 ユリノーム錠50mg (その他の痛風治療剤) 処方せんにユリーフ錠(4)処方あり。患者 さんが女性のため、適応外なので念のために 医師に確認すると処方はユリノーム錠(50) だった。医師はカルテにユリノーム錠 (50) と記載をしていたが、処方入力時に間違っ たものと思われる。 上記以外で判断 本人が来局した。処方せんはアスパラCA錠 で記載してあった。 (初処方)投薬時、追加 となる薬についてどのように聞いているか 患者確認したところ「カルシウム剤が追加 になるとは聞いていない」とのことで疑義 照会をした。疑義照会にてアスパラCA錠 でなく、アスパラカリウム錠であったこと が判明した。 ○処方された医薬品 アスパラ−CA錠200 (有機酸カルシウム製剤) ○変更になった医薬品 アスパラカリウム錠300mg (その他の無機質製剤) 適応がない薬剤を処方 当該処方せんのみで判断 ○処方された医薬品 ケナコルト−AG軟膏 (抗生物質及び副腎皮質ホル モン混合製剤) ○変更になった医薬品 ケナログ口腔用軟膏0.1% (他に分類されない消化器官 用薬) 皮膚科からケナコルトAG軟膏(口腔に使 用)として処方された。添付文書、メーカー に確認し、口腔は適応外であるため疑義照 会。ケナログ口腔用軟膏に変更となった。 Ⅲ 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 - 187 - Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) (4)お薬手帳及び薬剤情報提供書に関する薬局ヒヤリ・ハット事例 誤った医薬品を投薬し、患者や家族もそのことに気付かないまま内服する事例や、正しい医薬品を 投薬し、患者が内服していても、異なる医療機関を受診した際に同効薬の重複処方や併用禁忌薬の処 方などがなされた事例が報告されている。このような事象が医療事故につながることを防止するため に、医療機関が処方し、薬局で調剤した薬を確認して正確に記録に残すことや、患者が在宅で療養す る際や他の医療機関の受診する際に、患者・家族や療養を支える周囲の人々が、内服薬の名称や外観、 薬効などの情報を理解していることや、そのための環境を整備することが、医療安全を推進するため に重要である。 平成12年4月の診療報酬改訂において、薬局にて薬剤の名称や副作用等の情報をいわゆる「お薬 手帳」に記載することによる情報提供が「薬剤情報提供料」として調剤報酬において評価されること となった。この評価を重要な契機として、情報の内容を「お薬手帳」に記載して活用することが推進 されており、それらは現在では、患者、薬局、医療機関の三者の間で情報連携するための重要な役割 を担っている。お薬手帳は「調剤指針(日本薬剤師会編) 」においても、調剤に必要な患者の情報や 医薬品の情報を一元管理して、安全な投薬などの医薬品の適性使用を図る手段として説明されている。 そのひとつの例として、特に平成23年3月に発生した東日本大震災において、津波により医療機関 や薬局そのものや診療録や薬歴が喪失していたり、医薬品の支援がなされたが種類や規格が頻繁に変 わる状況があったり、避難所移動が頻繁に行われたりする状況の中で、お薬手帳を保有していた患者 については、記載内容を確認することや、名称の異なる同効薬の投薬情報を追加して記載することに より、円滑な処方内容の確認や継続処方、適切な新規処方が可能であったことが報告されている。 本稿は、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成24年年報の分析テーマである、 「お薬手 帳及び薬剤情報提供書に関する薬局ヒヤリ・ハット事例」の内容を改変したものである。 ①報告件数 報告された事例の中からお薬手帳及び薬剤情報提供書に関する事例を抽出するため、平成24年 1 月1日から同年12月31日に報告された薬局ヒヤリ・ハット事例(7, 166件)のうち「事例の 内容」 「背景・要因」に「お薬手帳」 「薬剤情報提供書」 「薬情」のいずれかの語を含む事例を抽出し、 その中から「お薬手帳や薬剤情報提供書の確認不足に起因した調剤の薬局ヒヤリ・ハット事例」や「お 薬手帳や薬剤情報提供書を活用して疑義照会が行われた事例」を抽出した。また、 調剤の事例のうち、 事例の内容が「その他(説明文書の作成間違い) 」である事例も、お薬手帳や薬剤情報提供書に関す る事例として抽出した。以上を合わせると、221件であった(図表Ⅲ - 2- 44) 。これをお薬手帳 及び薬剤情報提供書に関する薬局ヒヤリ・ハットに関する事例とした。 図表Ⅲ - 2- 44 報告件数 事例の内容 件数 221件 (3.1%) お薬手帳及び薬剤情報提供書に関する事例 薬局ヒヤリ・ハット事例 7,166件(100.0%) - 188 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ②お薬手帳及び薬剤情報提供書に関する事例の概要 お薬手帳及び薬剤情報提供書に関する事例221件を「事例の概要」 「事例の内容又は変更内容」 別に図表Ⅲ - 2- 45に集計した。 「事例の概要」は、 「調剤」が90件、 「疑義照会」が130件選択されていた。また、 「医薬品の販 売」が1件あり、 「特定保険用医療材料」が選択された事例はなかった。 図表Ⅲ - 2- 45 お薬手帳及び薬剤情報提供書に関する事例の報告内訳 事例の概要 事例の内容又は変更内容 合計(件) 薬局ヒヤリ・ハット事例(件) 0 273 処方せん監査間違い 6 235 秤量間違い 0 51 数量間違い 5 1,827 分包間違い 1 192 規格・剤形間違い 1 948 薬剤取違え 2 1,005 説明文書の取違え 2 9 分包紙の情報間違い 0 38 薬袋の記載間違い 12 265 その他 ( 調剤) 51 1,414 充填間違い 0 23 異物混入 0 2 期限切れ 0 12 その他 ( 管理) 0 3 患者間違い 9 34 説明間違い 1 17 交付忘れ 0 62 その他 ( 交付) 0 14 90 6,424 薬剤変更 20 259 用法変更 2 67 用量変更 3 33 分量変更 5 102 薬剤削除 98 236 2 33 130 730 医薬品の販売 1 3 特定保険医療材料 0 9 221 7,166 調 剤 小 計 疑義照会 その他 小 計 合 計(件) - 189 - Ⅲ 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 調剤忘れ Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 「調剤」の事例の内訳としての「事例の内容」は、 「その他(調剤) 」が51件と特に多かった。 次いで「薬袋の記載間違い」が12件、 「患者間違い」が9件、 「処方せん監査間違い」が6件、 「数 量間違い」が5件などであった。薬局ヒヤリ・ハット事例との比較では、 「数量間違い」 「薬剤取り違 え」 「規格・剤形間違い」といった薬局ヒヤリ・ハット全体に占める割合の多い事例の内容は少なく、 「その他(調剤) 」 「薬袋の記載間違い」 「患者間違い」の割合が多かった。 「疑義照会」の事例の変更内容の内訳では、 「薬剤削除」が98件と最も多く、次いで「薬剤変更」 が20件で、 これらで大半を占めた。薬局ヒヤリ・ハット事例との比較では、 「薬剤削除」の割合が多く、 その他の変更内容の割合は少なかった。 ③お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例の分析 ⅰ お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例の内容等 ア) お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例の内容と疑義があると判断した理由 お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例について、 「変更内容」と「疑義があ ると判断した理由」を図表Ⅲ - 2- 46に集計した。 図表Ⅲ - 2- 46 お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例の「変更内容」と 「疑義があると判断した理由」 変更内容/疑義があると 判断した理由 当該処方せん のみで判断 当該処方せんと 薬局で管理して いる情報で判断 上記以外で判断 合計(件) 薬剤変更 0 14 6 20 用法変更 0 1 1 2 用量変更 0 1 2 3 分量変更 0 2 3 5 薬剤削除 1 52 45 98 その他 0 2 0 2 1 72 57 130 合計(件) ※「当該処方せんと薬局で管理している情報で判断」の「薬局で管理している情報」とは、薬局が保有する当該患者の情報(薬剤服用歴) を意味する。「上記以外で判断」とは、患者またはその家族などから得られた情報等(お薬手帳を含む)で判断したことを意味する。 お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例の変更内容としては、「薬剤削除」が 98件で特に多く、次いで「薬剤変更」が20件などであった。疑義があると判断した理由 としては、 「当該処方せんと薬局で管理している情報で判断」が最も多く72件(55.4%) であり、次いで「上記以外で判断」が57件(43.8%)であった。また、お薬手帳や薬剤 情報提供書を活用することで疑義が生じた事例がほとんどであることから、「当該処方せんの みで判断」は1件のみと大変少なかった。 疑義照会に関する薬局ヒヤリ・ハット事例の「当該処方せんと薬局で管理している情報で 判断」は52.2%、「上記以外で判断」は20.7%であったことと比較すると、お薬手帳及 び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例では「当該処方せんと薬局で管理している情報で 判断」は同程度、「上記以外で判断」の割合は多かった。 - 190 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) イ)お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例の変更内容と患者に生じえた健康被害 の可能性との関係 お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例の「変更内容」と「仮に変更前の処 方通りに服用した場合の影響」を整理して図表Ⅲ - 2- 47に示す。 図表Ⅲ - 2- 47 お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例の「変更内容」と 「仮に変更前の処方通りに服用した場合の影響」との関係 変更内容/仮に変更前の 処方通りに服用した場合の影響 患者に健康被害が あったと推測される 患者に健康被害が生じなかっ たが、医師の意図した薬効が 得られなかったと推測される 合計(件) 薬剤変更 15 5 20 用法変更 0 2 2 用量変更 2 1 3 分量変更 4 1 5 薬剤削除 63 35 98 2 0 2 86 44 130 その他 合計(件) たと推測される」が86件(66.2%) 、「患者に健康被害が生じなかったが、医師の意図し た薬効が得られなかったと推測される」が44件(33.8%)であった。疑義照会に関する ヒヤリ・ハット事例では、それぞれ62.6%、37.4%であったことから、お薬手帳及び 薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例における患者の健康への影響度の内訳は、ヒヤリ・ ハット事例のそれと比較してやや影響度が高かった。 ウ)お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例のハイリスク薬 お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例のハイリスク薬を集計した結果を図 表Ⅲ - 2- 48に示す。 - 191 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 仮に変更前の処方通りに服用した場合の患者の健康への影響度は、 「患者に健康被害があっ Ⅲ Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 2- 48 疑義照会に関する事例のハイリスク薬 変更内容 薬剤変更 用法変更 処方された医薬品 主たる薬効 変更になった医薬品 主たる薬効 エクセグラン錠100m 抗てんかん剤 エクセラーゼ配合 健胃消化剤 カプセル注1) テオドール錠200mg 気管支拡張剤 テ オ ド ー ル 錠 100 気管支拡張剤 mg ヒダントールF配合錠 抗てんかん剤 ヒダントールD配合錠 デパス錠0.5mg 精神神経用剤 アマリール1mg錠 糖尿病用剤 テノーミン錠25 不整脈用剤 セレスタミン配合錠 副腎ホルモン剤 プラデスミン配合錠 副腎ホルモン剤 ワーファリン錠1mg 血液凝固阻止剤 抗てんかん剤 分量変更 薬剤削除 用量変更 プレドニゾロン錠6mg プレドニゾロン錠6mg 副腎皮質ホルモン剤 副腎ホルモン剤 その他注2) 「トーワ」 「トーワ」 注1)「エクセラーゼ配合カプセル」はハイリスク薬には該当しないが参考のために掲載。 注2)「その他」の事例は薬効重複医薬品が他科から処方されているため疑義照会を行なったところ、他科の医薬品が中止になった事例である。 ハイリスク薬であるエクセグランの処方に対して疑義照会がなされ、ハイリスク薬ではな いエクセラーゼに薬剤変更となった事例では、前回処方やお薬手帳の内容の確認などにより 疑義が生じ、薬剤変更となった。背景・要因は記載がなかったが、名称の類似性により処方 間違いを生じた可能性がある。 エ)お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例の医薬品のブランド名 疑義照会の薬剤削除に関する事例で、処方が削除された医薬品のブランド名を集計すると、 「ガスター」と「ムコダイン」が7件、 「メチコバール」が5件、 「ガスポート」が2件であり、 そのほかのブランド名は1件ずつであった。図表Ⅲ - 2- 49に集計した結果を示した。 図表Ⅲ - 2- 49 お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例で処方された医薬品 のブランド名(複数報告されたもの) 医薬品名(ブランド名) 件数 ガスター 7 ムコダイン 7 メチコバール 5 アレロック 2 ガスポート 2 - 192 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) オ)お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例の紹介 お薬手帳及び薬剤情報提供書の疑義照会に関する事例の内容等を、変更内容、処方された 医薬品と併せて図表Ⅲ - 2- 49に紹介する。 図表Ⅲ - 2- 49 疑義照会に関する事例の変更内容別事例の内容等 販売名 事例の内容 等 薬剤削除 【事例1】 処方された(削除された)医薬品 バクトラミン配合錠 (事例の内容) 前回の薬歴に、 「バクトラミンで薬疹の可能性」と記載があり、 医師の服薬中止指示もお薬手帳にて確認していた。しかし今 回、バクトラミン配合錠が処方されていたため疑義照会した ところ、薬剤削除となった。 (背景・要因) 電子薬歴を使用しているが、コメント欄に目立つように「バ クトラミンで薬疹」と記載してあったので気付けた。 (改善策) 今後も大事な情報はコメント欄に入力をするよう、スタッフ で徹底する。 【事例2】 処方された(削除された)医薬品 アレロック顆粒0. 5% 【事例3】 処方された(削除された)医薬品 ガスターD錠10mg (事例の内容) 外科を受診した際にガスターD錠10mgが処方された。服 薬指導の際に、 「胃酸を抑える薬ならすでに飲んでいる。」と の申し出があった。お薬手帳を確認したところ、パリエット 錠10mgを服用中であることが判明した。疑義照会を行っ たところガスターD錠10mgが削除となった。 (背景・要因) 外科に受診した際に併用薬を伝えていなかった。 (改善策) お薬手帳を持参している場合は、重複などしていないか注意 する。 - 193 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 (事例の内容) 患者が耳鼻咽喉科を受診した際、アレロック顆粒0.5%が処 方された。当該患者は別の医療機関の皮膚科から、ケトテン DS0.1%が処方されている事をお薬手帳で確認したため、 疑義照会したところ、アレロック顆粒0.5%が処方削除と なった。 (背景・要因) 患者は医院ではお薬手帳を提出していなかった事により、医 師は重複に気付かなかった。又、その他の方法でも併用薬を 伝えていなかったのではないかと考えられる。 (改善策) 患者に、お薬手帳は医院でも提出して頂き、有効活用してい くために、声かけを行っていく。 Ⅲ Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 販売名 事例の内容 等 【事例4】 処方された(削除された)医薬品 ムコダイン錠500mg (事例の内容) 患者が耳鼻咽喉科を受診した際、ムコダイン錠500mgが 処方された。当該患者は別の医療機関の内科から、同薬が処 方されている事をお薬手帳で確認したため、疑義照会したと ころ、ムコダイン錠500mgが処方削除となった。 (背景・要因) 患者は医院ではお薬手帳を提出していなかった事により、医 師は重複に気付かなかった。又、その他の方法でも併用薬を 伝えていなかったのではないかと考えられる。 (改善策) 患者に、お薬手帳は医院でも提出して頂き、有効活用してい くために、声かけを行っていく。 薬剤変更 【事例5】 処方された医薬品 ニフラン点眼液0.1% 変更になった医薬品 ノスラン点眼液2% (事例の内容) 他院でもらっていた目薬を出してもらったと患者の家族が言 うので、お薬手帳を見たらインタール点眼のGEが出ていた。 処方せんはニフランになっているので、念のため患者に目の 炎症があるかと尋ねたが、特にそんな症状は無いと言われる。 薬効が全然違うので病院に患者家族のお話を伝え、インター ルと同じ成分のものの方がいいのではと伝えたところ当薬局 にあるノスランに変更となった。 (背景・要因) 患者の家族が「先生がお薬手帳を見て、本で調べていた」と 話していたので、もしかしたらニフランとノスランを勘違い して処方した可能性もあり。 (改善策) 処方医にノスランとニフランの違いをフィードバックする。 【事例6】 処方された医薬品 メジコン錠15mg 変更になった医薬品 フスタゾール糖衣錠10mg (事例の内容) 風邪を引いて臨時受診した患者にメジコンが処方された。他 院にてイスコチン原末を服用中であった(お薬手帳情報) 。調 剤後、電子薬歴に併用薬を入力し併用確認を行ったところ、 メジコンとイスコチンが併用禁忌であることが見つかった。 メジコンの添付文書にはMAO阻害薬が併用禁忌であること が記載されていたが、イスコチンがMAO阻害作用を有する ことを知らなかった。(イスコチンの添付文書にはメジコンと の併用について記載がなかったが、一部薬剤についてMAO 阻害作用による併用注意があることが記載されていた。) (背景・要因) MAO阻害薬はエフピー(セレギニン)以外に使用されてい ないと思い込みがあった。イスコチンは抗結核薬で、人体に 対する作用を持っていないと思い込んでしまった。 (改善策) 副次的効果を有する薬剤について情報の整理を行う。 - 194 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 販売名 事例の内容 等 【事例7】 処方された医薬品 テオドール錠200mg 変更になった医薬品 テオドール錠100mg (事例の内容) 入院中テオドール(100)2T / 日で服用していたが、今 回テオドール(200)2T / 日と処方。薬局でお薬手帳を 確認したところ、退院時にテオドール(100)が処方され ていたため、疑義照会で、テオドール(100)の変更となる。 (背景・要因) 退院処方では、テオドール(100)が処方されていたが、 紹介状には、テオドール(200)と記載されていた。紹介 状が間違いだった。 (改善策) 記載なし 【事例8】 処方された医薬品 アリセプト錠3mg 変更になった医薬品 アリセプト錠10mg (事例の内容) 薬歴より別医療機関(内科)にてアリセプト錠 5 mg / 日を 服用中であったが、心療内科受診時にアリセプト錠 3 mgが 処方された。医師に併用薬詳細を伝えていないとの事で、処 方医に情報提供した所、アリセプト10mg錠に変更になり、 5mg錠の残薬は中止するよう家族に伝えて欲しいとの依頼 あり。 (背景・要因) 患者家族がお薬手帳を示していなかった。 (改善策) 受診時には必ず各医療機関でお薬手帳を示すよう指導した。 【事例9】 処方された医薬品 ビオフェルミン錠剤 (事例の内容) 軟便等の症状により内科を受診し処方せんを持って来局した。 処方内容はビオフェルミン錠剤6錠分3毎食後7日分であっ た。処方せん受付時にお預かりしたお薬手帳を確認したとこ ろ他院よりビオフェルミン錠剤3錠分3毎食後が処方中で あった。患者に確認したところ他院のビオフェルミン錠剤は 現在も継続服用中であるとのことだった。ビアフェルミン錠 剤が重複処方されているため処方医に疑義照会した。その結 果、今回処方をビオフェルミン錠剤3錠分3毎食後7日分に 1日量を減量し、他院処方分と併せて6錠分3で服用する内 容に変更となった。 (背景・要因) 当該患者が内科を受診した際にお薬手帳を提示したにも関わ らず、処方医が他院からビオフェルミン錠剤が処方されてい ることを見落とした。 (改善策) お薬手帳の配布を積極的に行う。患者に対して受診時はお薬 手帳で飲み合わせの確認を医師に必ずしてもらうようにお願 いすることを説明する。医師に対してもお薬手帳の有用性や 記載事項などの説明を行い、確認漏れのないように注視する ようお願いする。 - 195 - 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 分量変更 Ⅲ Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 販売名 事例の内容 等 【事例10】 処方された医薬品 アマリール1mg錠 (事例の内容) かかりつけ医でもらっていた薬を都合により近医で処方して もらったところ、用量に誤りがあった。 処方医は、お薬手帳 により、処方内容を確認していたが、前回内容のシールが前々 回内容のシールの下に隠れていたので、誤って前々回の内容 を処方してしまった。 前回よりアマリール錠1mg1.5錠 が1錠に減量されていが気付かず、1.5錠のまま処方した。 薬局にて薬剤師がお薬手帳の前回処方と錠数が違う事に気付 き疑義照会の結果、1錠に変更となった。 (背景・要因) 患者が、薬局で交付されたシールをお薬手帳に貼付するとき に、前の回のシールの下に潜り込ませて貼付していた。 (改善策) 患者に、お薬手帳を毎回必ず持参するように指導し、薬局で もシールの貼付が適切に行われているかを確認する。 カ)疑義を生じた理由 疑義照会に関する事例130例のうち、疑義を生じる契機となった情報及び疑義を生じた 理由を図表Ⅲ - 2- 51に示す。多くの事例において疑義を生じた理由が記載されており、そ の大半は、お薬手帳を確認することによって処方の重複や誤った医薬品の処方がなされてい ることに気づいた事例であった。またそのほかの理由としては、薬歴や患者から収集した情 報などにより、疑義が生じた事例であった。 また、背景・要因として、 「患者の受診時に患者本人や家族がお薬手帳を医師に提示しなかっ た」という内容が記載された事例が多かった。これは、お薬手帳の作成は進んでいるが、患 者による医療機関への提示がなされていないことにより、十分活用されていないことを示唆 している。また、件数は少ないが「患者が受診時にお薬手帳を提示したが医師が見なかった。」 ことを背景・要因としてあげた事例もあり、医師もお薬手帳を十分活用していない可能性が あることが示唆された。 図表Ⅲ - 2- 51 疑義を生じる契機となった情報及び疑義を生じた理由 1.お薬手帳や薬剤情報提供書の内容 2.薬歴・前回処方歴 3.患者から収集した情報 ①患者からの情報提供 ②患者に対するインタビュー ③服薬指導 4.その他(薬局で実施したPT - INRの検査値) - 196 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ④お薬手帳及び薬剤情報提供書に関連した医療事故事例 医療事故収集等事業に報告されたお薬手帳及び薬剤情報提供書に関連した医療事故事例を図表 Ⅲ - 2- 52に示す。特に、入院時の持参薬の確認の際に、医療機関においてもお薬手帳を活用す るルールがあることがわかるが、そのルール通りに確認していない、患者がお薬手帳を持参してい ない、などの理由でハイリスク薬が過量投与される結果となっている。今後、医療機関と薬局の間 でお薬手帳をより効果的に活用することの重要性が理解できる。 図表Ⅲ - 2- 52 お薬手帳及び薬剤情報提供書に関連した医療事故事例 お薬手帳の処方の表記と医療機関における処方表記のルールが異なっていたために 抗てんかん薬が過量投与された事例 No. 事故の内容 背景・要因 既往歴にてんかんがあり、他院で処方さ れた内服薬で加療中の患者。大動脈弁閉 鎖不全症の手術目的にて外科病棟に入院 した。 入院時持参したお薬手帳をもとに担当 医が抗てんかん薬を処方した。その際、 お薬手帳には倍散量で記載されていた が、当院は成分量表示のため、成分量と して再処方する際に倍散と成分量を間 違え処方した。結果、セレニカR顆粒 2.5倍量、テグレトール細粒2倍量が 障害残存 処方され患者が服用継続した。 の可能性 退院後、ふらつきが継続するため、家族 なし が当院処方薬を院外薬局に確認を依頼し 過剰処方であることが発覚した。 お薬手帳の表示内容:セレニカR顆粒 40%1回0.333g カルバマゼピ ン 細 粒「 ア メ ル 」 (テグレトール細粒 50%)1回0.4g 90日1日3回 毎食後にお飲み下さい。 担当医師が処方した内容:セレニカ R 顆 粒40%1000mgテグレトール細粒 50%1200mg 3×朝昼夕食後 6 日分。 改善策 持参薬又は入院前の薬剤を継続 ・入院時の持参薬及び入院 服用する場合は処方内容を薬剤 前に服用していた薬剤につ 師が確認するというルールで いて必ず薬剤師も確認す あったが、お薬手帳の内容をカ る。 ルテにスキャンせず、家族に返 ・薬剤成分含有量の表示方 却したため、薬剤師が情報を取 法についてのインシデント 得することが出来なかった。結 事例を至急回報で配信し共 果、医師の誤処方を修正できな 有する。 かった。 ・医薬品の処方に関する研 医師の倍散表示と成分表示に対 修会を開催する。 する知識不足。 薬剤処方量が上限値であったが 処方範囲内の為、アラームにか からず薬剤師の疑義照会が機能 しなかった。 - 197 - Ⅲ 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 1 事故の 程度 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 持参薬確認の際にお薬手帳と紹介状で確認するルールであったが、患者がお薬手帳を持参しなかったことなどから 確認が不十分となり、利尿剤の投与量が少なくなり息切れを生じ治療を要した事例 No. 2 事故の 程度 事故の内容 背景・要因 改善策 白内障手術のため入院し、入院時に持参 「持参薬確認の際は、お薬手帳、 ・入院時のしおりにお薬手 薬を7種類持参した。自宅では、患者本 紹介状で内服状況を確認する」 帳を持参するように記載す 人が内服自己管理をしていた。患者は入 というルールがあったが持参薬 る。 院時、お薬手帳、内服説明書を持参しな の確認をルール通りにしなかっ ・患者全員にお薬手帳、説 かった。利尿剤(ラシックス錠20mg) た。患者がお薬手帳を持参しな 明のシールを発行する。 を朝1/2錠内服していると患者から かった。 持参薬を確認したの ・持参薬の確認はルール通 説明された。看護師は「持込薬確認表」 は新人看護師であり、持参薬袋 りお薬手帳もしくは内服説 にラシックス朝1/2と用法、容量を に ラ シ ッ ク ス 1 / 2 錠 と 1 錠 明書で確認する。 記載し医師が内服継続の指示を出した。 が混在していたが確認するとい ・当院処方薬はオーダリン 4日後の朝、深夜看護師が患者の息切れ う行動に移せなかった。患者の グ 画 面 で 処 方 歴 を 確 認 す 等の症状が悪化しているため、内服薬を 自宅での内服説明を信用してし る。 オーダリング画面で処方歴を確認したと まった。患者は自宅でも用量を ・医師も処方歴の確認を行っ ころ、ラシックスの量が処方歴と異なる 間違って内服していた。医師は た上で、 内服の指示を出す。 障害残存 ことに気が付いた。 オーダリング画面で処方歴を確 ・自己管理の判断基準チェッ の可能性 患者は当院の消化器科通院中であり、消 認せず、看護師が記入した「持 クシートを作成し院内標準 がある 化器科主治医よりラシックスは朝1錠昼 込薬確認表」に沿って指示を出 化とする。 (低い) 1/2錠の指示を出していたと指摘され した。 ・新人オリエンテーション た。その日の昼に消化器医師の診察を受 に持参薬のシミュレーショ け、利尿剤入りの点滴と酸素投与、バル ンを盛り込む。 ンカテーテル挿入し安静加療となった。 ・医薬品情報システムが導 入され持参薬の検索ができ るようになった。今後は入 院時に持参薬を一元的に把 握し重複投与や相互作用、 禁忌薬の有無などが正確に 管理できる、持参薬管理室 の設置を行い人員の配置が 確保できた時点でルールを 改訂する予定である。 - 198 - 2 個別のテーマの検討状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 入院時に持参薬管理票を作成する際にお薬手帳との照らし合わせをしなかったことなどから 薬剤の過量投与がなされた事例 No. 3 事故の 程度 事故の内容 背景・要因 医師が持参薬管理票に記載され ・持参薬管理票を確認する た製剤量(アルダクトンA細粒 医師は、再度、お薬手帳や 10%0.125g分1)を成 診療情報提供書との照らし 分量と誤解して処方した。 製剤 合わせを行う。 量と成分量の記載について、特 ・持参薬管理票の用量記載 に取り決めはない。通常、処方 は、オーダリングシステム オーダが成分量表記となってい と同じ単位に合わせる。 るため、持参薬管理票に薬剤師 ・処方監査者と病棟担当者 は成分量で記載していた。(薬 の連携を強化する。 剤によっては製剤量表記となっ ・薬剤師は疑義照会時、疑 て い る も の も あ る )。 持 参 薬 問があれば病棟担当薬剤師 管理票の確認を行う際に再度、 と情報交換を行う。 お薬手帳との照らし合わせ ( 成 分量と製剤量の取り違えである こと ) を行っていなかった。内 服を処方時に投与量を薬剤部か ら確認された際、持参薬管理票 でのみ確認を行った。 入院患者の持参薬の確認の際、患者がお薬手帳を持参せず、また前医からの情報提供にも 時間を要する中でメソトレキセートが過量投与となり休薬期間がないことで誤りに気付いた事例 No. 4 事故の 程度 事故の内容 背景・要因 患者は精神症状の加療目的で、当科紹介 入院。慢性関節リウマチのため他院に てメソトレキセート2.5mgが処方さ れていた。薬剤師による入院時の持参薬 チェックでは患者面談ができないなかで のチェックであった。入院時、診療情報 提供書やお薬手帳の持参がなかったた め、前医に連絡、週一回の勤務医であ 障害残存 り、診療情報提供書が遅れた。 患者に 「朝1錠服用して の可能性 内服法を確認すると、 がある いる」とのことであったので、入院後、 (低い) 2.5mg連日投与がなされた。メソト レキセートは、患者の持参薬を継続投与 とした。後日FAXで診療情報提供書が 送られてきたが、処方歴についてよく確 認しなかった。入院13日目、看護師が 休薬期間のないことに疑問をもち、医師 に確認、処方間違いが判明。12日間に 渡って17.5mg / 週のメソトレキセー ト過量投与を行っていた。 改善策 薬剤師は患者面談なく薬剤数の ・リスクマネージャー会議 みのチェックであったことを病 で 事 例 報 告 を し、 М Т X 棟へインフォメーションする必 製剤など休薬が必要な薬剤 要性があった。後日他院より送 に 関 す る 情 報 共 有 を 行 っ 付された診療情報提供書の確認 た(処方時に内容確認のア を怠った。 ラート機能を検討する) 関節リウマチ治療に用いるメト ・精神科として、他科処方 ト レ キ サ ー ト( М X Т ) 製 剤 薬を処方する際の確認のガ の基本的知識が欠けていた。指 イドラインを策定した。 導医は研修医処方のチェックと ・メ ト ト レ キ サ ー ト 確認サインをしたが、処方内容 (МXТ)製剤の処方につ の確認不足があった。通常は、 いては必ず薬歴を確認する 専 門 科 外 の 薬 剤 を 処 方 す る 場 ことを徹底する(関節リウ 合、当院では処方医に疑義照会 マチに対して承認されてい し、専門科のコンサルテーショ るメトトレキサート2mg ンを行っている。 での処方変更を推奨する) - 199 - Ⅲ 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 医療機関と薬局の連携に関連した医療事故 肝細胞癌に対するカテーテル治療のた め、入院。入院時に行われる薬剤師に よる持参薬管理票に記載する際、本来 ならアルダクトン A 細粒10%12.5 mg分1と成分量を記載するところを、 実際にはアルダクトン A 細粒10% 0.1 2 5 g 分 1 と 製 剤 量 を 記 載 し た。これがスピロノラクトンの処方量 12.5mgを0.125と、本来処方さ れている量の10倍となっていた。持参 薬は他院で12.5mgと処方されてい た。主治医は持参薬管理票を確認時に 障害なし お薬手帳との照らし合わせを行わなかっ た。もう一人の主治医が持参薬管理票を 元に、入院中の内服をタから処方した ( 通 常投与量50 ∼ 100mg の薬剤 ) 。 患 者 は 1 2.5 m g の 処 方 に 対 し て 125mg処方したため、処方時に薬剤 部から確認の電話があったが、持参薬管 理票と一致していたため問題ないと判断 し、そのまま処方した。翌日朝から10 倍量の投薬がされていたが、気づかず、 退院時にも同量の処方を持ち帰った。退 院から数時間後に薬剤師からの指摘で判 明した。 改善策 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) (5)まとめ 医療機関において処方せんが作成され、薬局において調剤投薬される過程は一連の流れである。し たがって、処方せん作成時に生じたエラーはその後の過程で発見されることが医療事故防止のために 重要であるが、人や組織が異なることにより、エラーを発見できなかったり、エラーを発見するため の情報が不足していたりしている。 そこで、医療機関と薬局との連携に関する医療事故を分析することにより。改めて連携の重要性を 示すとともに、普段、医療機関では、必ずしも正確に認識されていない、薬局の調剤業務や薬局にお いて入手され、記録、保管されている情報などについて、解説した。また、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・ 分析事業の成果を用いて、疑義照会の事例において誤って処方された医薬品や薬効、疑義を生じた理 由を示し、医療機関から薬局に直接的、または患者や家族を通じて間接的に伝達されるべき情報を示 した。 また、お薬手帳や薬剤情報提供書は、患者、医療機関、薬局の三者が情報連携するための重要な役 割を担っていることから、それらについても、薬局ヒヤリ・ハット事例の分析結果を示した。 薬剤に関する医療事故を防止するために、医療事故情報収集等事業と薬局ヒヤリ・ハット事例収集・ 分析事業の成果を活用し、医療機関と薬局の相互理解のもと、連携を促進することが重要である。 (6)参考文献 1. 公 益 財 団 法 人 日 本 医 療 機 能 評 価 機 構 薬 局 ヒ ヤ リ・ ハ ッ ト 事 例 収 集・ 分 析 事 業. ホ ー ム ペ ー ジ.available from < http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/index.html > (last accessed2013-12-09) 2. 公益財団法人日本医療機能評価機構 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業.平成21年年報. 2010-10-05 (online),available from < http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/year_ report_2009.pdf >(last accessed2013-12-09) 3. 公益財団法人日本医療機能評価機構 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業.平成22年年報. 2011-8-30 (online),available from < http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/year_ report_2010.pdf > (last accessed2013-12-09) 4. 公益財団法人日本医療機能評価機構 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業.平成23年年報. 2012-10-24 (online),available from < http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/year_ report_2011.pdf > (last accessed2013-12-09) 5. 公益財団法人日本医療機能評価機構 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業.平成24年年報. 2013-11-28 (online),available from < http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/year_ report_2012.pdf > (last accessed2013-12-09) 6. 公益財団法人日本医療機能評価機構 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業.共有すべき事例. 2009-12(online),available from < http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/contents/sharing_ case/2009/12.html > (last accessed2013-12-09) 7.社団法人日本薬剤師会編 . 第十三改訂 調剤指針 . 薬事日報社 . 2011 - 200 - 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 3 再発・類似事例の発生状況 本事業では、医療事故情報及びヒヤリ・ハット事例を収集し、個別のテーマに関する医療事故情報 とヒヤリ・ハット事例を併せて総合的に検討・分析を行い、更に、個別のテーマの他に「共有すべき 医療事故情報」や「医療安全情報」により、広く共有すべき医療事故情報等を取り上げ公表してきた。 ここでは、これまで個別のテーマや「共有すべき医療事故情報」、「医療安全情報」として取り上げ た再発・類似事例の発生状況について取りまとめた。 【1】 概況 これまでに提供した「医療安全情報」について、本報告書分析対象期間(平成25年7月∼9月) に類似事例の内容は18であり事例数は30件であった。このうち、類似事例が複数報告されたも のは、「注射器に準備された薬剤の取り違え」 、「抜歯部位の取り違え」 、「PTPシートの誤飲および PTPシートの誤飲(第2報) 」、「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」がそれぞれ3件、 「小児への Ⅲ 薬剤10倍量間違い」、「病理診断時の検体取り違え」、「皮下用ポート及びカテーテルの断裂」、「アレ ルギーのある食物の提供」がそれぞれ2件であった。 また、 「共有すべき医療事故情報」について本報告書分析対象期間に類似事例が報告された共有す べき医療事故情報の内容は19であり、事例数は56件であった。このうち、類似事例が複数報告さ れたものは、 「施設管理の事例」の事例が7件、 「熱傷に関する事例(療養上の世話以外) 」、「病理検 体に関連した事例」がそれぞれ6件、「体内にガーゼが残存した事例」が5件、「ベッドからベッドへ 位間違いに関連した事例」がそれぞれ4件、「『療養上の世話』において熱傷をきたした事例」、「ベッ ドなど患者の療養生活で使用されている用具に関連した事例」がそれぞれ3件、「小児の輸液の血管 外漏出」 、「注射器に準備された薬剤の取り違えの事例(名前の記載あり) 」、「小児への薬剤倍量間違 いの事例」、「食物アレルギーに関連した事例」がそれぞれ2件であった。 個別テーマについて本報告書分析対象期間に類似事例が報告されたテーマは、7テーマであり、事 例数は7件であった。このうち類似事例が複数報告されたものはなかった。 「医療安全情報」 、「共有すべき医療事故情報」及び「個別のテーマの検討状況」に取り上げた類似 事例の報告件数を図表Ⅲ - 3- 1に示す。 本報告書分析対象期間において発生した類似事例のうち、医療安全情報として取り上げた、「湯た んぽ使用時の熱傷」、「熱傷に関する事例(療養上の世話以外)」について事例の詳細を紹介する。 - 201 - 概況 の患者移動に関連した事例」、「ベッドのサイドレールや手すりに関連した事例」、「歯科診療の際の部 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 3- 1 平成25年7月から9月に報告された再発・類似 内容 件数 出典 小児の輸液の血管外漏出 1 医療安全情報 No.7(平成 19 年 6 月) 製剤の総量と有効成分の量の間違い 1 医療安全情報 No.9(平成 19 年 8 月) MRI 検査室への磁性体(金属製品など)の持ち込み 1 医療安全情報 No.10(平成 19 年 9 月) 注射器に準備された薬剤の取り違え 3 医療安全情報 No.15(平成 20 年 2 月) 湯たんぽ使用時の熱傷 1 医療安全情報 No.17(平成 20 年 4 月) 未滅菌の医療材料の使用 1 医療安全情報 No.19(平成 20 年 6 月) 化学療法の治療計画の処方間違い 1 医療安全情報 No.22(平成 20 年 9 月) 処方入力の際の単位間違い 1 医療安全情報 No.23(平成 20 年 10 月) 小児への薬剤 10 倍量間違い 2 医療安全情報 No.29(平成 21 年 4 月) 電気メスによる薬剤の引火 1 医療安全情報 No.34(平成 21 年 9 月) 抜歯部位の取り違え 3 医療安全情報 No.47(平成 22 年 10 月) 病理診断時の検体取り違え 2 医療安全情報 No.53(平成 23 年 4 月) PTPシートの誤飲 PTPシートの誤飲(第 2 報) 3 医療安全情報 No.57(平成 23 年 8 月) 医療安全情報 No.82(平成 25 年 9 月) 皮下用ポート及びカテーテルの断裂 2 医療安全情報 No.58(平成 23 年 9 月) アレルギーのある食物の提供 2 医療安全情報 No.69(平成 24 年 8 月) 病理診断報告書の確認忘れ 1 医療安全情報 No.71(平成 24 年 10 月) 輸液ポンプ等の流量と予定量の入力間違い 1 医療安全情報 No.75(平成 25 年 2 月) 膀胱留置カテーテルによる尿道損傷 3 医療安全情報 No.80(平成 25 年 7 月) 3 共有すべき医療事故情報(第 5 回報告書) 小児の輸液の血管外漏出 2 共有すべき医療事故情報(第 8 回報告書) 熱傷に関する事例(療養上の世話以外) 6 共有すべき医療事故情報(第 9 回報告書) 注射器に準備された薬剤の取り違えの事例(名前の記載あり) 2 共有すべき医療事故情報(第 10 回報告書) 小児への薬剤倍量間違いの事例 2 共有すべき医療事故情報(第 10 回報告書) 化学療法において腫瘍用薬を非投与日に投与した事例 1 共有すべき医療事故情報(第 11 回報告書) 未滅菌の医療材料・器材を使用した事例 1 共有すべき医療事故情報(第 11 回報告書) 三方活栓の閉塞や接続ハズレなどの使用に関する事例 1 共有すべき医療事故情報(第 11 回報告書) ベッドなど患者の療養生活で使用されている用具に関連した事例 3 共有すべき医療事故情報(第 11 回報告書) 施設管理の事例 7 共有すべき医療事故情報(第 11 回報告書) アレルギーの既往がわかっている薬剤を投与した事例 1 共有すべき医療事故情報(第 12 回報告書) 口頭で行った患者氏名の確認が不十分であったため、患者を 取り違えた事例 1 共有すべき医療事故情報(第 13 回報告書) ベッドからベッドへの患者移動に関連した事例 4 共有すべき医療事故情報(第 13 回報告書) ベッドのサイドレールや手すりに関連した事例 4 共有すべき医療事故情報(第 13 回報告書) 「療養上の世話」において熱傷をきたした事例 - 202 - 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 内容 件数 出典 体内にガーゼが残存した事例 5 共有すべき医療事故情報(第 14 回報告書) 病理検体に関連した事例 6 共有すべき医療事故情報(第 15 回報告書) 歯科診療の際の部位間違いに関連した事例 4 共有すべき医療事故情報(第 15 回報告書) 食物アレルギーに関連した事例 2 共有すべき医療事故情報(第 15 回報告書) アルチバ(レミフェンタニル)に関連した事例 1 共有すべき医療事故情報(第 17 回報告書) 貯血式自己血輸血に関連した事例 1 個別のテーマの検討状況(第 18 回報告書) 凝固機能の管理にワーファリンカリウムを使用していた患者の 梗塞及び出血の事例 1 個別のテーマの検討状況(第 20 回報告書) 散剤の薬剤量間違い 1 個別のテーマの検討状況(第 24 回報告書) 医薬品添付文書上【禁忌】の疾患や症状の患者へ薬剤を投与し た事例 1 個別のテーマの検討状況(第 29 回報告書) 臨床化学検査機器の設定間違いに関連した事例 1 個別のテーマの検討状況(第 29 回報告書) 脳脊髄液ドレナージ回路を一時的に閉鎖(クランプ)したが、 適切に開放されなかった事例 1 個別のテーマの検討状況(第 32 回報告書) アドレナリンの希釈の呼称に関連した事例 1 個別のテーマの検討状況(第 33 回報告書) ※共有すべき医療事故情報や、個別テーマの検討状況に計上された事例は、医療安全情報と重複している場合がある。 Ⅲ 概況 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 - 203 - Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 【2】「湯たんぽ使用時の熱傷」(医療安全情報 No. 17)について (1)発生状況 医療安全情報 No. 17(平成20年4月提供)では、療養上の世話において湯たんぽを使用した際に、 患者の身体に湯たんぽが接触し熱傷をきたした「湯たんぽ使用時の熱傷」を取り上げた(医療安全情 報掲載件数6件 集計期間:平成18年1月∼平成20年2月)。さらに第23回報告書においても、 分析対象機関内に類似事例が報告されたことを受け、「再発・類似事例の発生状況」(第23回報告書: 122∼124頁、平成22年年報:345∼347頁)の項目において事例の概要、背景要因など を取りまとめた。 このたび、本報告書分析対象期間(平成25年7月∼9月)においても類似の事例が 1 件報告され たため、再び取り上げた。 これまで報告された「湯たんぽ使用時の熱傷」の件数の推移を図表Ⅲ - 3- 2に示す。 図表Ⅲ - 3- 2「湯たんぽ使用時の熱傷」の報告件数 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 1∼3月 (件) 4∼6月 (件) 7∼9月 (件) 10∼12月 (件) 合計 (件) 0 1 2 0 0 0 0 0 1 0 2 0 0 1 1 1 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 0 1 2 0 0 0 1 − 0 0 3 3 2 1 2 1 1 3 図表Ⅲ - 3- 3 医療安全情報 No. 17 「湯たんぽ使用時の熱傷」 - 204 - 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) (2)事例概要 第23回報告書(平成22年10月)以降の平成22年10月から本報告書対象期間までに報告さ れた事例5件の概要を以下に示す。 事例1 【内容】 患者は、四肢冷感の訴えが強く、湯たんぽを2つ使用し、布団を2枚使用して温罨法を行って いた。 清拭・更衣を看護師2名で行った際に、右踝に4cm大の水疱が2つ形成されているのを発見 した。麻痺側であり患者の疼痛の訴えはなかった。 【背景・要因】 ・患者は右側麻痺があり、右上下肢は動かないが左手を使用して体を動かすことは可能であった。 ・患者は麻痺側の冷感が強いため、湯たんぽに足を乗せている時があり、それによる低温火傷の Ⅲ 可能性が高い。 事例2 【内容】 患者は、体温33.4℃であり、体幹・四肢の冷感あったため低体温改善のために電気毛布を 開始した。温枕はバスタオルで二重に巻き、寝衣の上から直接右背部に当てるようにした。温枕 の湯の温度については湯温計で計測せず、湯沸かし器から、お湯の出始めに手で触れて温度を確 認し、温枕にお湯をためた。湯沸かし器の湯温設定は90度となっていた。 約1時間半後、体温は36.0℃に上昇したため、温枕を除去する際に皮膚を確認すると右背部 に発赤と皮膚剥離を発見した。温枕の湯の温度を測定すると49度だった。 【背景・要因】 ・温枕を直接身体に当てて使用した。 ・当事者は温枕を使用する時に、熱傷の危険性と結びつけて考えられていなかった。 ・当事者は患者に温枕を使用するのは初めてであったが、他の看護師に確認せずに1人で温罨法 を実施した。 ・当該患者へ温枕を使用する適応があるか考えられていない。 ・医療安全管理マニュアルの湯の温度の設定、湯の温度の確認方法に不備があった。 事例3 【内容】 おむつ交換時、左大腿部後面に水疱(2×4cm)と水疱が破れて表皮剥離している状態 (4×25cm程)を発見。衣類やシーツに浸出液の付着があった。 - 205 - ︶について ・病棟に湯温計がなく、温枕に溜めたお湯の温度測定をしなかった。 ﹁湯たんぽ使用時の熱傷﹂︵医療安全情報№ 使用していた。電気毛布の温まりが悪いため、新しい毛布に交換した際に、同時に温枕の使用を 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 17 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 【背景・要因】 ・患者は人工呼吸器装着中(9∼16時は離脱)で、24時間SpO 2 モニタリングを実施して いたが、全身状態は安定していた。 ・患者の足先の保温のため温枕を使用する事があった。体温調節が上手くできず、手足の冷えが 強い時は日常的に使用していた。 ・温枕の使用に関して記録はしていないため、何時、誰が使用したかの確認が出来ない。 ・温枕は足先から離しているため、直接患者に触れることは考えにくい(発見時には足から離れ た位置にあり、冷たかった)。 ・温枕を足下にセットする際に、腹臥位の状態である患者の足の上に一旦置いてしまったことに よる熱傷が考えられる。 ・傷が熱傷様であるので入浴時に高温部分に触れたのではないかとの疑問が出されたが、全介助 であり可能性は否定された。 事例4 【内容】 患者は、脳梗塞の後遺症で意識障害があり意志の疎通が図れず、老人ホームに入所していたが 発熱・呼吸困難で当院に搬送された。下肢のみ不随意運動と思われる動きあるが危険行動はなく 身体抑制はしていなかった。 7時、四肢の冷感あり、掛物で保温していたが、下肢の冷感のみ持続する為、氷嚢に水道より お湯を入れ(約60度)カバーはせず、患者の足に直接触れないよう10cm以上離して、足元 近くに置いた。 9時、湯を入れた氷嚢の位置を確認したが、足元にあり、患者には触れていなかった。 10時、全身清拭の際に、右下腿(4.5×4.5cm)と左母趾に皮膚の損傷を認めた。Ⅲ度 の低温熱傷と診断された。 【背景・要因】 ・当事者は意識障害のある患者に対する湯たんぽ等の温罨法は原則禁止であるが、患者から離し て配置すれば大丈夫だと思った。 ・患者は高齢者であり、低栄養状態で皮膚組織が脆弱であった。 ・患者の下肢の動きにより温罨法の位置がずれる可能性があることを考慮し配置していたが十分 ではなかった。 ・温罨法に冷罨法専用氷嚢を使用した。 ・冷罨法と温罨法の両方使用できる類似のバッグもあり、冷罨法専用だと思っていなかった。 事例5 【内容】 患者は前夜から両下肢の動きが悪く自力でベッドに上がれなくなり、入院当日朝は下肢が全く 動かず、知覚麻痺あり、救急で来院し緊急入院となった。その午後の東日本大震災によりMRI - 206 - 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 検査が中止となり、その後も計画停電のため放射線治療機器の使用ができず、放射線治療がいつ できるかわからない状況になった。 入院10日目、家族が湯たんぽを持参し、夕方患者の足もとにおいて帰っていた(医療者への 相談や連絡はなかった)。 翌朝、患者から「今見たら、こんな感じになってしまった。 」と左足底近くに低温やけどと思わ れる水庖 ( 3×4cm )、発赤(5×8.5cm ) と右足の第1・2趾の小さな発赤が確認された。 【背景・要因】 ・患者は、電動ベッドでギャッジアップし、体圧分散はある程度できていたため、看護師による 体位変換を、布団をしっかりと剥いでまでは実施していなかった。 ・家族や患者から湯たんぽの使用について相談もなく、 情報がなかったので観察をしていなかった。 ・家族の行動を予測できず、知覚麻痺と湯たんぽ挿入による熱傷について全く説明ができていな かった。 ・家族は、計画停電等による電力消費軽減のために湯たんぽを持参した可能性がある。 (3)事例の分析 第23回報告書以降の平成22年10月から本報告書対象期間までに報告された事例5件について 分析した。なお、氷嚢に湯を入れ湯たんぽとして使用した事例4についても本分析では「湯たんぽ使 用時」の事例とした。 患者の疾患、患者の年齢および直前の患者の状態を整理し、図表Ⅲ - 3- 4に示す。 湯たんぽによる熱傷を負った患者の年齢は様々であったことから湯たんぽの使用については小児 から高齢者までどの年代においても同様な熱傷の危険性があると考えられる。 直前の患者の状態では、患者の意識ははっきりしているが、皮膚や粘膜などの組織にある受容器 の興奮により、外部の刺激を感じる体性感覚が低下していた状態である「下肢障害」や「上肢障害」 の項目は3事例で選択されており、患者が傾眠、混迷、昏睡など意識レベルが低下していた状態で ある、 「意識障害」の項目も3事例で選択されていた。また、5事例すべてにおいて「意識障害」ま を考慮し適応や使用方法、観察時間などを検討し患者に使用することの重要性が示唆された。 - 207 - ︶について たは「下肢障害」が選択されていた。意識障害や体性感覚の低下している患者は特に熱傷の危険性 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 ﹁湯たんぽ使用時の熱傷﹂︵医療安全情報№ ①直前の患者の状態 Ⅲ 17 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 3- 4 疾患及び直前の患者の状態 患者の疾患 年齢 事例1 脳塞栓症・右側麻痺・喉頭癌 事例2 新生児仮死後遺症 4歳 意識障害 事例3 重症新生児仮死・脳性麻痺 ・低酸素性虚血性脳症 9歳 意識障害・歩行障害・床上安静 その他(人工呼吸器装着中) 事例4 敗血症・呼吸不全 事例5 乳がん胸椎転移による下肢麻痺 (知覚麻痺を伴う) 60歳代 直前の患者の状態 上肢障害・下肢障害 90歳代 意識障害・上肢障害 下肢障害・床上安静 50歳代 下肢障害 ②事故の程度 報 告 さ れ た 事 例 の 事 故 の 程 度( 図 表 Ⅲ - 3- 5)で は、 「 障 害 残 存 の 可 能 性 が あ る( 低 い ) 」 「障害残存の可能性なし」がそれぞれ2件ずつであり、ほとんどの事例では患者への影響の程度は 小さかった。 図表Ⅲ - 3- 5 事故の程度 事故の程度 件数 障害残存の可能性がある(高い) 1 障害残存の可能性がある(低い) 2 障害残存の可能性なし 2 合 計 5 ※報告があった事故の程度の区分を掲載した。 ③熱傷の状態 事例の記述内容から患者の熱傷の状態は、Ⅱ度の熱傷が4件、Ⅲ度の熱傷が 1 件、であり、すべ ての事例で何らかの治療や処置が必要であった(図表Ⅲ - 3- 6) 。前述した事故の程度(図表Ⅲ - 3 - 5)では、結果的に患者へ障害が残存する可能性は低い結果であったが、水泡や皮膚の損傷などⅡ 度以上の熱傷は患者に二次感染を引き起こす危険性もあり、湯たんぽによる熱傷は、患者が重篤な 症状を引き起こす要因となりうることを十分に認識する必要がある。 図表Ⅲ - 3- 6 熱傷の状態 熱傷 Ⅱ度 Ⅲ度 症状 事例 右踝に4cm大の水疱が2つ形成されていた 事例1 右背部に発赤と皮膚剥離があった 事例2 左大腿部後面に水疱(2×4cm)と水疱が破れて表皮剥離(4× 25cm)があった 事例3 足底に低温熱傷と思われる水庖 ( 3×4cm )、発赤(5× 8.5cm ) と右足の 第1・2趾の小さな発赤があった 事例5 右下腿(4.5×4.5cm)と左母指に皮膚の傷があった (Ⅲ度の低温熱傷と記載あり) - 208 - 事例4 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ④熱傷を生じた主な背景・要因 熱傷を生じた主な背景・要因をみると、湯たんぽを患者に使用した医療者が、身体に直接湯たん ぽを接触させた事例が2件(事例2、 3)あり、 また直接接触する可能性があった事例が1件(事例1) であった(図表Ⅲ - 3- 7) 。それらは短時間なので安全と判断して湯たんぽを患者に接触させて使用 したり、医療者が湯たんぽをセッティングした際には、患者に触れていなかったが、その後患者が 体を動かして湯たんぽに足を接触させて、使用したことが推測される事例であった。このことから 医療安全情報 No. 17の医療機関の取り組みに挙げられているように「湯たんぽを使用する際には、 患者から離して置く」ようにすることが熱傷防止のために重要と考えられる。また、患者が体動して 湯たんぽに接触する可能性がある場合の使用について、電気毛布などにより代替することも十分に 検討する必要がある。湯たんぽは寝具を暖めるために使用し、短時間で使用を終えるという方法も ある。 図表Ⅲ - 3- 7 熱傷を生じた主な背景・要因 主な背景・要因 事例1 湯たんぽと患者の接触の状態 ・患者は湯たんぽを麻痺側の冷感が強いため、足を 乗せることがあった。 接触できる状態であった ・麻痺側であり、疼痛の訴えはなかった。 事例2 ・看護師は湯たんぽを足元にセットする際に、腹臥 位の状態である患者の足の上に一旦置いた。 直接の接触があった ・湯たんぽは患者の足元から離して置いた。 事例4 ・湯をいれた氷嚢は患者の足元から離して置いた。 離して置かれていた 事例5 ・患者の家族が湯たんぽを足元に置いて帰り、医療 不明 者は湯たんぽの使用を知らなかった。 (4)低温熱傷について 熱傷の発生には熱源の温度が深く関わる。たとえ低温であっても、熱源である湯たんぽとの接触が 短時間の接触では熱傷を生じることはないと考えられる低温の湯たんぽであっても、長時間患者 の皮膚と接触し続けることで局所循環を妨げた結果、熱傷を生じることがある。報告事例において も低温熱傷の可能性について言及された事例が3件(事例1、4、5)であった。そのため、低温 熱傷については今後も繰り返し医療機関の中でも周知することが必要であると考えられる。これに 関し独立行政法人製品評価技術基盤機構が平成21年11月に公表した「 『低温やけど』の事故防 止について」1) の注意喚起されており、低温熱傷の特徴が分かりやすく説明されているため次に 紹介する。 - 209 - ︶について 長くなると患者の接触部位に低温熱傷を起こす可能性がある。 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 ﹁湯たんぽ使用時の熱傷﹂︵医療安全情報№ 事例3 ・看護師は、湯たんぽはバスタオルで二重に巻き、 バスタオルで二重に巻いて接触させた 寝衣の上から直接右背部に当てるようにした。 Ⅲ 17 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) <「低温やけど」の事故防止について(注意喚起)>より抜粋 3.低温やけどの特徴について やけどは、火、熱湯、油などの高温のものが皮膚にあたっておこります。比較的低い温度 (44℃ ∼50℃)のものでも長時間にわたって皮膚の同じ個所にふれていると人間の筋肉などが、壊死 するために「低温やけど」をおこします。一般的には44℃と温かいと感じる程度の温度でも 3∼4時間触れていると「低温やけど」になります。46℃では30分∼1時間、50℃では 2∼3分で「低温やけど」をおこすことがあります。 一般のやけどは、皮膚の表層のみでおこります。「低温やけど」は、健康な人でも自覚 症状を伴わないで発症する場合があります。その症状は、 皮膚の深部におよんで赤くはれたり、 水ぶくれができたり、皮下組織が壊れたりし、重傷事故に至ることがあります。 「低温やけど」は、比較的温度が低くて長時間にわたって直接皮膚に触れる、ゆたんぽ、電気 あんか、電気毛布、カイロ(使いすて式)などでおこりやすく、血流を圧迫する使い方や知覚障 害、糖尿病などの神経障害のほか、体が不自由あるいは泥酔など熟睡中の状態にあるときに受傷 しやすいといわれています。 (5)事例が発生した医療機関の改善策について 事例が発生した医療機関の改善策として、以下が報告されている。 1)患者の状態に応じた温罨法の選択 ・電気毛布を試用の結果、効果的であったため、電気毛布に変更した。 ・湯たんぽによる熱傷の可能性が高いため、湯たんぽの使用はやめる。 2)湯たんぽの適切な使用 ・湯たんぽはぬるめの物を使用する。清拭時に皮膚観察していく。 ・冷罨法用の氷嚢は温罨法に使用しない。 3)湯たんぽ使用時の観察 ・患者が湯たんぽに足を乗せていないか観察する。 ・麻痺側などをこまめに観察し、異常の早期発見に努める。 4)医療者への教育 ・正しい温罨法の手技を教育する。 5)環境整備 ・麻痺のある患者の体位交換時は、麻痺部周辺の整理整頓に努め危険物を除去する。 6)患者・家族への教育 ・家族とのコミュニケーションを良くし患者に関する情報を得る。また、家族が実施したことは教 えてもらえるようにする。 ・家族の面会時に湯たんぽなどを持ち込むことについて再度説明する。 - 210 - 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) (6)まとめ 平成20年4月に医療安全情報 No. 17「湯たんぽ使用時の熱傷」を提供した。事例が発生した医 療機関の取り組みとして、湯たんぽを使用する際は、熱傷・低温熱傷の危険性があることを認識する、 湯たんぽを使用する際は、身体から離して置く、湯たんぽなど(温罨法)に関するルールを院内で統 一することを紹介した。 本報告書分析対象機関においても類似事例が報告され、事例が発生した直前の患者の状態や主な背 景について分析した。事例には意識障害や体性感覚の低下している患者に、直接湯たんぽを皮膚に接 触したり、患者が接触できる位置に置いておくなどの背景があり、医療安全情報 No. 17の医療機関 の取り組みにあげられているように「湯たんぽを使用する際には、患者から離して置く」ように使用 することの重要性が示唆された。 また、低温熱傷の事例が複数件報告されたことから、低温の湯たんぽであっても長時間接触するこ とにより低温熱傷を生じる可能性があることを特に取り上げて解説した。 今後も引き続き注意喚起するとともに、類似事例発生の動向に注目していく。 Ⅲ (7)参考文献 1. 独 立 行 政 法 人 製 品 評 価 技 術 基 盤 機 構「 低 温 や け ど 」 の 事 故 防 止 に つ い て( 注 意 喚 起 ). (Online),available from http://www.nite.go.jp/jiko/press/prs091126.html (last accessed 2013-11-11) ﹁湯たんぽ使用時の熱傷﹂︵医療安全情報№ 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 ︶について 17 - 211 - Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 【3】 共有すべき医療事故情報「熱傷に関する事例(療養上の世話以外)」 (第9回報告書)について (1)発生状況 第9回報告書対象分析期間(平成19年1月∼3月)において、療養上の世話以外の熱傷に関連し た事例が報告され、「共有すべき医療事故情報」として取り上げた。 本報告書では「熱傷に関する事例(療養上の世話以外) 」を、患者の治療・処置の過程において発 生する熱傷とし、療養生活において発生する清拭や飲食の際に生じる熱傷と区別した。 本事業では、これまで熱傷に関する事例(療養上の世話以外)に関連した事例の中から、一層注意 喚起をするために、医療安全情報「電気メスによる薬剤の引火」 (No. 34)、「MRI検査時の高周波 電流のループによる熱傷」(No. 56)、 「電気メスペンシルの誤った取り扱いによる熱傷」(No. 59)、 「手術中の光源コードの先端による熱傷」(No. 70)を作成し情報を提供した。 このたび、本報告書分析対象期間(平成25年7月∼9月)において、熱傷に関する事例(療養上 の世話以外)に関連した類似の事例が6件報告されたため、本報告書で取り上げた。 これまで報告された「熱傷に関する事例(療養上の世話以外)」の件数の推移を図表Ⅲ - 3- 8に示す。 なお、本報告書で「熱傷に関する事例(療養上の世話以外) 」を分析するにあたり、あらためて 事例内容を検索したところ、 報告件数のカウントに誤りがあったため、 本報告書図表Ⅲ - 3- 8で訂正した。 図表Ⅲ - 3- 8 「熱傷に関する事例(療養上の世話以外)」の報告件数 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 1∼3月 (件) 4∼6月 (件) 7∼9月 (件) 10∼12月 (件) 合計 (件) 2 4 1 3 5 6 5 5 3 2 4 2 6 3 6 6 6 5 3 5 2 1 2 2 5 3 6 2 3 7 2 6 6 3 3 3 − 2 10 20 7 16 16 17 19 17 14 (2)事例概要 本報告書分析対象期間に報告された事例6件の概要を以下に示す。 事例1 【内容】 白内障手術中、水晶体核片が手術器械内に詰まり、発熱し角膜に熱傷を生じた。事象発生後の 症状として角膜浮腫と視力低下(ほとんど何も見えない状態)があり、外来通院にてステロイド 点滴で経過観察した。患者・家族へ「水を流しながら白内障を削り取る器械に水晶体の破片が詰まっ て水が流れにくくなり、機器の温度が上昇して眼内の温度も上昇した。角膜が熱傷を起こした状 態で、炎症を抑える薬を使って経過をみる。このような現象が起こりうることは理解しているが、 実際に経験するのは初めてである。 」と説明した。 - 212 - 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 【背景・要因】 手術中起こりえる稀だが重篤な合併症 事例2 【内容】 全身麻酔下左下肢矯正骨切り術を施行した後病棟に帰室した直後、病棟処置室にて下肢ギプス の側面に割を入れた(骨切り術後であり、今後予測される下肢の腫脹に対する予防的処置にて)。 超音波式ギプスカッタを使用したが、その際、左外踝に熱傷を与えた。1週間後ギプスシャーレ を作成した際に熱傷に気が付いた。当初、2∼3cmの水泡であったが、1か月後7mmの瘢痕 となり機能的には問題ない状態となった。 【背景・要因】 ギプスの厚みに差があり部分的に切りにくい箇所があった。ギプスを切る際に患者から、熱く Ⅲ 感じるとの訴えがあったが、正常でも多少熱く感じることがある事や、患者が若年であり、術直 後であり、過敏な訴えの可能性も否定できなかった。 事例3 【内容】 程度噴霧し、おしぼりでふき取った後、医師が5プッシュ程度しおしぼりでふき取る)手術が進み、 術前処置から約5時間後に胸腔内洗浄のために温生食で洗浄を実施し閉胸した。続いて鎖骨部の 閉創のため温生食にて洗浄を実施、洗浄時には首元の覆布がはがれかけており、洗浄水は頭側(麻 酔科医側)に垂れ込んでいた。 洗浄終了後、機械出し看護師は温生食が空になったピッチャーを患者から一番遠い器械台の左 隅に置き、外回り看護師に「ハイポエタノールをください」と依頼した。 外回り看護師が置かれ たピッチャーが空になっているのを確認し、フリー看護師にハイポエタノールを入れるように指 示した。フリー看護師はハイポエタノールを保温庫から取り出し、呼称確認の後に300mL程 度ピッチャーに注いだ。この、ハイポエタノールを準備している作業と並行しながら、洗浄中に 血管からの出血を確認したため術野では執刀医が電気メスで止血作業をしたところ、その最中に 執刀医の左前腕部に熱を感じ、プラスチックが燃えたような臭いがした。手をどけて確認したと ころ青白い炎が出ていたのを確認し、手でたたいて消火した。 消火後手袋を交換している中、まだ焦げ臭いとの発言があり、患者の頭部を見ると患者の頭側 の覆布がオレンジ色の炎で燃えていた。覆布を剥がし、総員で消火作業を実施し麻酔科医に酸素 を止めるように執刀医より指示された。 消火後、挿管チューブが溶けているのを確認し、再挿管施行、CVの入れ変えを実施した。発 火により、患者は顔面から頸部にかけて2∼3度の熱傷を負い、冷却と軟膏処置を実施、手術室 を変えて再度処置が継続された。 - 213 - 共有すべき医療事故情報﹁熱傷に関する事例︵療養上の世話以外︶﹂ ︵第 回報告書︶について 術前の処置として、ウエルパスを用い、胸部の脱脂のため清拭を実施した。(看護師は3プッシュ 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 9 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 【背景・要因】 アルコール含有製剤を使用して術前処置が実施されていた。揮発したアルコールが術野に停滞 し電気メスの火花で着火した可能性を否定できない。また、麻酔器を使用した全身麻酔の回路か ら酸素が流出し、着火部位付近に停滞したことで周囲の酸素濃度が上昇した可能性も排除できな いが、いずれも推論である。 その後、事故調査委員会で分かった背景要因は、事故時に使用していた覆布は、ウッドパルプ とポリエステルの混合素材で、300℃くらいの熱で引火する可能性がある。覆布メーカーが把 握している過去の発火事例では、手術開始時にアルコール系の薬剤で消毒し、覆布を掛け、その 後に気化したものが電気メスで発火した事例が報告されている。 電気メスで止血する際に覆布に 火花が飛んで燃えるという事例も報告されている。このようにアルコールが関与していたり、高 濃度酸素が加わってくると燃える事例があった。火災が起こる場合には、必ず発火源、着火する 素材、助長する環境が必要である。 青い炎は、炎の温度が高い状態である。 <燃焼実験の結果> 事故当時、患者の頭の下にはブルーパッド(平型のオムツのようなシート)が敷かれていた。 閉創時の洗浄水が垂れ込み濡れている状態であった。洗浄に使用した液体がハイポエタノールで あった可能性も考え、防火管理者同席のもとで燃焼実験を行った。また、術前処置で使用したウ エルパスにもアルコールが含有されているため、ハイポエタノールとウエルパスの2剤について の燃焼実験を実施した。 1)ブルーパッドにウエルパス単体を浸して着火したところ、 火元を近づけると容易に着火した。 ブルーパッドが焦げていくのが目視できるが、火炎はほとんど見えない状況であった。 2)ブルーパッドにウエルパスと生理食塩液を浸して着火したところ、火元を近づけると容易 に着火した。生理食塩液を浸したブルーパッドは、燃焼してもパットの表層に変化(焦げ跡 や変色など)が見られなかった。火炎はほとんど見えない状況であり、上に手をかざすと熱 を感じ燃焼していることが確認できた。 3)ブルーパッドにハイポエタノール単体を浸して着火したところ、火元を近づけると容易に 着火した。着火した時よりオレンジ色の炎が目視できた。 4)ブルーパッドにハイポエタノールと生食を浸して着火したところ、火元を近づけても着火 することは無く、燃えなかった。 事例4 【内容】 当院で乳腺腫瘍切除術を予定された患者が、他院にてキシロカインショックの既往があるため、 当該診療科を受診され、アレルギーの可能性がある複数の薬物に対する検査を行うこととなった。 他院でショック症状を起こした際に、ハイドロコートンが使用されていたので、入院当日15時 にパッチテストチャンバーを用いたハイドロコートンの成分パッチテストを背部10箇所に施行 した。 貼付1時間後に患者が1つのパッチを貼付している部位の灼熱感と疼痛を訴え、病棟主治医が 当該のパッチを剥がした。貼付部位は発赤のみであったために経過観察とした。しかし、5時間 - 214 - 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 後に再度病棟主治医が観察すると水疱とびらんを形成していた。皮膚アレルギーよりも化学熱傷 を疑い、ハイドロコートンの成分を確認したところ、成分の一つが水酸化ナトリウムであり、水 酸化ナトリウム溶液をパッチテストに用いていたことが判明した。 【背景・要因】 薬剤の成分をアレルギーテストに用いる場合は、まず主治医が当該薬剤の製造会社に成分の提 供を依頼する。製造会社から提供された成分は主治医の指示により、非医療職の職員が固形物は ワセリンに混合し、液状物質は溶液とし、濃度調整する。今回は40%水酸化ナトリウム溶液を 作成した。看護師が半固形状物質はパッチテストのチャンバー内に満たし、液状物質はろ紙に湿 らせるなどしてチャンバーを用意し、病棟主治医が患者の背部を観察した後に適切な部位に看護 師が貼付している。 検査に関わった2人の医師が成分試薬を確認する手順が無く、水酸化ナトリウム溶液を染みこ ませたパッチを調査する認識が無かった。また、試薬を調整する職員や貼付する看護師は水酸化 ナトリウムが化学熱傷をきたすものであるという認識が無かった。また、製造会社に依頼してい Ⅲ た成分が入院当日に届いたため、試料作成から貼付までの時間が無く、確認が不十分であった可 能性がある。 事例5 【内容】 右側から右頚部に向けて赤外線灯を置き、患者と機器の間隔を30cmあけて照射を開始した。 患者は、照射開始後眠ってしまい、赤外線灯に本来の位置より接近したため、右頚部にピンポン 球大、右肩に直径4cmの水疱を形成する2度の熱傷を負った。皮膚科で軟膏処置を継続しており、 頚部は壊死組織が多いということで熱傷後28日目にデブリードメントの処置が行われた。 【背景・要因】 赤外線照射時患者は座位で行うが椅子は折り畳み式のパイプいすを使用していたため、患者が 眠ってしまったりして動いたときは容易に体位が変わり赤外線灯との距離が保てない状態であっ た。赤外線灯が歯科診療台の近くに設置されているため、プライバシー保護の目的でカーテンを 取り付けているので、眠ってしまった患者を発見することができなかった。患者の照射を始めた ことを医師が外来看護師に伝えていなかったため、看護師が様子を見に来なかった。 事例6 【内容】 脳腫瘍、水頭症にて人工呼吸器での管理が必要であり、JCS200で日常生活は全て介助が必 要な患者である。体位を整えるためにベッドサイドへ行くと、右上腕外側に1× 2cmの発赤と 6×6mmの水疱があるのを見つけた。熱感もあり、直ぐに冷罨法を実施、その後熱感は消失す るが、発赤と水疱が残存した。 - 215 - 共有すべき医療事故情報﹁熱傷に関する事例︵療養上の世話以外︶﹂ ︵第 回報告書︶について 患者は、開口訓練のため歯科外来で赤外線照射を行った。当事者はパイプいすに座った患者の 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 9 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 【背景・要因】 人工呼吸器の回路が接触していた。回路には加温の為電熱線が入っているため、回路そのもの が保温されていた。常に回路が患者の身体には直接、接触しないようタオルをはさんでいた。約 1 時間毎に訪室し体位変換などのケアを行っていた。時間ははっきりしないがタオルと回路の位 置がずれ、直接接触し回路の重みも加わり発赤などの症状が出現した。患者は浮腫が全身にみと められ、患者の皮膚が脆弱であり、十分な注意と観察ができていなかった。 (3)事例が発生した医療機関の改善策について 事例が発生した医療機関の改善策を以下に示す。 1)適切な機器や薬剤の使用 ○医療機器の使用の際、熱傷の可能性を再度確認する。 ○熱傷の可能性を再度確認し、超音波式ギプスカッタの刃を深く入れすぎないようにする。 ○医師が製造会社にパッチテスト用の薬剤の成分の提供を依頼する際に、皮膚刺激物は省くように 製造会社に依頼する。 ○医師は成分試薬到着時に皮膚刺激物が含まれていないか確認する。 ○パッチテストチャンバーを患者に貼付する際、医師と看護師で貼付可能な試料であることを再確 認する。 ○ウエルパスなどのアルコール含有製剤の術前消毒を原則禁止とし、術後のイソジン消毒の清拭に 使用するハイポエタノールは、術後にドレープを全て除去した状態で使用する。 ○機器(人工呼吸器)が直接身体に触れないように、ベッド柵の間に通すなどの位置を変更したり、 接触しやすい回路にはタオルを巻く。 2)早期発見及び対応 ○必要に応じて、赤外線照射の手法・術者の交替を考慮する。 ○赤外線照射中は、患者の了解を得て看護師から患者が見えるようにカーテンを開けておく。 ○処置中、頻回に患者の状態を観察する(照射器具と照射野の距離、照射部位の皮膚の状態)。 3)その他 ○ Surgical Fire 対策プロジェクトチームを設立して対策を検討する。 (4)これまで報告された「熱傷に関する事例(療養上の世話以外)」の事例について 熱傷は、1)火焔や蒸気など熱による「温熱熱傷(低温熱傷を含む) 」、2)電流への抵抗によって 生じる熱による組織の破壊する「電撃傷」 、3)酸・アルカリなど化学薬品により人体の体表の細胞 が損傷を受け、熱傷と同じ状態になる「化学熱傷」 、4)高線量の放射線により人体の体表の細胞が 損傷を受け、熱傷と同じ状態になる「放射線熱傷」に分類できる。 本報告書では、平成22年から本報告書分析対象期間(平成25年7月∼9月)において報告された 67件の事例の発生状況について図表Ⅲ - 3- 9に整理した。 - 216 - 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 3- 9 熱傷の種類 熱傷の種類 件数 温熱熱傷 49 電撃傷 14 化学熱傷 3 放射線熱傷 1 合 計 67 ①事例に関連した医療機器や薬剤等について 熱傷の種類と事例に関連した医療機器や薬剤について図表Ⅲ - 3- 10に示す。 温熱熱傷では、電気メスに関する事例が18件と最も多く、次に光源が5件であり、電撃傷では MRIが5件、焼灼穿刺針が4件であった。また薬剤による化学熱傷は4件の報告があった。その他、 機器以外に洗浄液・還流液が高温だったことによる温熱熱傷などが報告されている。 Ⅲ 本事業ではこれまで、電気メスによる熱傷については、医療安全情報 No. 34「電気メスによ る薬剤の引火」1)、医療安全情報 No. 59「電気メスペンシルの誤った取り扱いによる熱傷」2) を提供しているので参考にしていただきたい。 また、光源による熱傷は、医療安全情報 No. 70「手術中の光源コードの先端による熱傷」3) の類似事例であり、 MRIによる熱傷は、 No. 56「MRI検査時の高周波電流のループによる熱傷」4) の類似事例であった。 なくない。したがって、過去に公表した医療安全情報も医療機関で通常の情報提供や研修の機会な どにご活用いただきたい。 - 217 - 共有すべき医療事故情報﹁熱傷に関する事例︵療養上の世話以外︶﹂ ︵第 回報告書︶について このように医療安全情報には現在も発生している医療事故に関し、すでに注意喚起したものが少 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 9 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 3- 10 熱傷に関連した医療機器や薬剤等 温熱熱傷 機器 49 医療機器 電気メス 18 光源(キセノン光源、腹腔鏡の光源、シュトルツ光源、 5 光源付きレトラクタ、光源コード) 医療機器以外 薬剤 ドリル(マイクロドリル(歯科)、TPSドリル(歯科)、手術用ドリル) 3 歯科用機器(超音波スケーラ、切削器具用ハンドピース) 2 バイポーラー 3 超音波式ギプスカッタ 2 高周波手術装置 レーザー 2 パルスオキシメータのセンサ 1 アキュラス(眼科用手術装置) 1 ハイパーサーミア治療装置 1 ライトガイド 1 赤外線照射(歯科) 1 人工呼吸回路の熱線 1 パラフィン浴装置 1 鍼灸治療の針 1 その他(滅菌された開胸器が熱かった) 1 ドライヤー(合成皮膚表面接着剤の乾燥に使用) 1 手術創部洗浄液・還流液(高温) 3 石油ベンジン(静電気による発火) 1 電撃傷 機器 14 医療機器 MRI 5 焼灼穿刺針 4 電極パッド 3 除細動器 1 対極板 1 化学熱傷 3 薬剤 フェノール 1 水酸化カリウム 1 水酸化ナトリウム溶液 1 放射線熱傷 機器 1 医療機器 UVB照射用装置 1 合 計 - 218 - 67 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) <参考 医療安全情報 No. 34 電気メスによる薬剤の引火> Ⅲ 共有すべき医療事故情報﹁熱傷に関する事例︵療養上の世話以外︶﹂ ︵第 回報告書︶について <参考 医療安全情報 No. 59 電気メスペンシルの誤った取り扱いによる熱傷> 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 9 - 219 - Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) <参考 医療安全情報 No. 70 手術中の光源コードの先端による熱傷> <参考 医療安全情報 No. 56 MRI検査時の高周波電流のループによる熱傷> - 220 - 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) ②事例の発生場所と事故の概要について 事例の発生場所について、図表Ⅲ - 3- 11に示す。熱傷の発生場所は手術室が44 件と最も多く、 放射線撮影室、検査室、病棟処置室が各4件であった。療養上の世話以外の熱傷の多くが手術室で 発生していることが示唆された。 図表Ⅲ - 3- 11 発生場所 発生場所 手術室 件数 44 放射線撮影室 4 検査室 4 病棟処置室 4 病室 3 外来処置室 3 機能訓練室 2 カテーテル検査室 1 放射線治療室 1 外来診察室 1 合 計 Ⅲ 67 ※その他の項目で選択されていた血管造影室の事例を「検査室」に、 MRI撮影室の事例を「放射線撮影室」に各1件ずつ追加した 明記されている事例が9件あり、表中のゴシック太字で事故内容を記載した。 発火することは火災の原因となりうることから、これらの事例を分析することは重要と考えられ る事例をみると、電気メスによる薬剤の引火が4件、レーザー使用時の発火が2件、石油ベンジン 使用時の発火が1件、バイポーラの使用時に発火が1件、酸素投与中の鍼灸時の発火が1件であっ た。レーザー使用時の発火については、事例の内容から2件とも気管内レーザー焼灼を施行中の発 火であり、同時に高濃度酸素投与下で人工呼吸を行っていたことが伺われる。高濃度酸素投与下で 気管内レーザーを使用することは発火の危険性があることが示唆された。また、病棟処置室で発生 した、石油ベンジンを使用した際の発火事例は、静電気が誘因となった可能性が記載されていた。 医療機関において、石油ベンジンは絆創膏を剥がす際の溶剤など様々な目的で使用されているが、 その成分は軽質のガソリン留分であり、引火しやすい性質を持っている。このことに留意したうえ で使用することが重要である。 - 221 - 共有すべき医療事故情報﹁熱傷に関する事例︵療養上の世話以外︶﹂ ︵第 回報告書︶について 次に事例の内容を図表Ⅲ - 3- 12に整理した。事故の内容に、熱傷の原因が発火であることが 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 9 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 図表Ⅲ - 3- 12 発生場面と事例の内容 発生場面 事故の内容 【電気メスペンシルの誤った取り扱いによる熱傷】 ○電気メスの使用時以外にスイッチが入った ・体表に放置してあった電気メスペンシルの手元スイッチ部に手が当たり、通電した ・患者の右大腿上にあった電気メスに手が当たり通電した ・電気メスの手元スイッチ部が開創器にぶつかり通電した ・電気メスの使用時、ハンドスイッチを入れると同時にそれまで使用していたレーザーの フットスイッチも押した ・電気メスの誤操作・誤って電気メスのスイッチを押した ・手術で使用した電気メスが患者の体幹と腕の間に入り込みスイッチが入った ・電気メスの使用後、ハンドピースが創部付近に置かれていた。医師が肘を上に乗せた瞬間、 通電した ○電気メスが非絶縁体へ接触したことにより通電(他の医療機器との接触など)した ・電気メスで凝固止血を行っていたところ、吸引管が右口唇上下に接触した ・ コッヘルで電気メスのコードとリネンを固定したため、絶縁されているペンシルコードが、 金属である鉗子とコードの内部に挟まれている状態になっており、鉗子に伝わった電気が、 鉗子を通して患者に流れた ・電気メスが開創器の一部が当たっていた ・手術使用の器材を患者の身体の上で管理し、電気メスで熱傷を生じた ・ 皮質骨をアルゴンビームコアギュレーター(ABC 電気メス)で焼灼した際に、患者の 身体上で行なったため、骨を包んでいたガーゼが皮膚に接触して通電した 手術室 ・電気メスの使用時、モスキートペアンの持ち手が皮膚に接触し、熱傷を生じた ○その他 ・電気メスで止血した部位の熱傷を生じた 【電気メスによる薬剤の引火】 ・ウエルパス、ハイポアルコール、酸素使用時の電気メス使用を契機として発火した ・エタノール及び電気メス使用により発火した ・電気メスで切開する際、消毒液に含有されるアルコールに着火した ・ ステリクロンRエタノール液 0.5(0.5%クロルヘキシジン入り、アルコール 83%入り)に て皮膚を消毒後、閉創しようとしたが、一部出血があっため、電気メスを使用した際に、 創の上においたガーゼに引火した 【手術中の光源コードの先端による熱傷】 ・キセノン光源の照射による熱傷を生じた ・腹腔鏡の光源による熱傷を生じた ・ 内視鏡手術時に、光源コードのライトを点灯した状態でシーツの上に置いたため、接触部 分が溶け、高温により熱傷を生じた ・光源を患者覆布の上に置き腹部に熱傷を生じた ・手術中、光源つきレトラクターの光源のスイッチを切るのを忘れた 【ドリル使用時の熱傷】 ・抜歯の際、使用したマイクロドリルが過度に加熱した ・ドリルが過度に発熱した ・ドリルの把持部が発熱し,その把持部が上唇皮膚に接触した - 222 - 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 発生場面 事故の内容 【バイポーラの使用時の熱傷】 ・パワースターバイポーラシザースを収納しているビニル製収納袋から発火した ・バイポーラの柄が非絶縁性であり、患者の口角に接触した(2件) 【レーザー使用時の熱傷】 ・気管内腫瘍に対しYAGレーザー焼灼術を施行中、急に発火した ・純酸素で換気を行っているタイミングで気管内レーザー焼却を始め、気管内で発火した 【対極板や電極に関連した熱傷】 ・砕石位の手術の際、対極板(金属、アース)を左臀部に貼付した際、すき間が生じた ・電気けいれん療法を行った際に刺激電極パッドを貼付した近位部(前額部)に熱傷を生じた ・麻痺回復までの筋萎縮防止のために低周波刺激による筋刺激の電極パットに熱傷を生じた ・ 筋電図・誘発筋電位検査装置E - ARBを用いた際、脳波計の皿電極を額部と右耳介裏の 部分に貼付したところ、電極部位に一致して黒紫色の皮膚変化があった 手術室 【薬剤による熱傷】 Ⅲ ・生理食塩水と取り違え液状フェノールの染みたガーゼで創部を拭いた ・膝内側半月板損傷手術の際、還流液の局所の還流が悪く、温度が上昇した ・別の目的で準備されていた約75℃の温水を創部洗浄液として使用した ・胸腔鏡のレンズ曇り止めのための温生食(推定約50度)を胸腔内洗浄に使用した 【その他】 ・約10時間に及ぶ手術終了後、SpO 2 センサー装着部の発赤、炎症があった ・ ライトガイドケーブルをはずし器械類を片付ける際に、患者の皮膚に、熱くなった口金部 が接触した ・白内障手術中、水晶体核片が手術器械内に詰まり、発熱し角膜に熱傷を生じた ・高圧蒸気滅菌が行われた直後の開胸器により熱傷を生じた ・ 子宮筋腫核出術の閉創後、ダーマボンドの乾燥のために手術室常備のヘアドライヤーで創 部から1mほどの距離から使用し、熱傷を生じた 放射線撮影室 ・MRIの高周波ループによる熱傷を生じた(4件) 検査室 ・ 経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)の焼灼を行っていたところ、ニードル刺入部周囲の皮膚に 熱傷を生じた(3件) ・MRIの高周波ループによる熱傷を生じた(1件) ・ギプスカットの際の熱傷を生じた(2件) 病棟処置室 ・ラジオ焼灼による腸管熱傷を生じた ・ 創部に貼用していたテープをはがした後、石油ベンジンを浸したガーゼでテープ糊を除去し ていた際、そのガーゼが発火した ・酸素カヌラを額にずらし鍼灸治療をしていた際に、髪に引火した 病室 ・40%水酸化ナトリウム溶液をパッチテストに使用した ・加温の為回路に電熱線が入っている人工呼吸器の回路が患者に接触していた - 223 - 共有すべき医療事故情報﹁熱傷に関する事例︵療養上の世話以外︶﹂ ︵第 回報告書︶について ・切削器具用ハンドピースが患者の頬にあたった 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 9 Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 発生場面 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 事故の内容 ・開口訓練のための赤外線照射の場面での熱傷を生じた 外来処置室 ・ Narrow Band UVB 装置での照射の指示であったが、UVB照射用装置を使用して設定し 照射したため過量照射となった 【薬剤による熱傷】 ・ 膀胱内に50%DMSО(ジメチルスルホキシド)を注入するところDMS О +K О H (水酸化カリウム)を注入したため化学熱傷を起こした 機能訓練室 カテーテル 検査室 ・パラフィン浴の際、患者の指が浴槽の金属部分に触れた ・低周波刺激による筋刺激の際、心電図モニタ用の小型の電極パッドを使用した ・ 電極カテーテルからのペーシングを入れてもらう指示が除細動器と間違えて除細 動ボタンを押した。 放射線治療室 ・温熱化学療法の際に仙骨部に熱傷を生じた 外来診察室 ・超音波スケーラー使用時、口唇に熱傷を生じた ※事例内容が不明なものについては掲載せず (5)電気メス使用の熱傷に関連した注意喚起 平成22年2月(独)医薬品医療機器総合機構はPMDA医療安全情報 No. 14「電気メスの取扱 い時の注意について(その1) 」5)では、気管チューブ挿管下での電気メス使用時の注意点について、 PMDA医療安全情報 No. 15「電気メスの取扱い時の注意について(その2) 」6)では、アルコー ル含有消毒剤使用時の注意点について、PMDA医療安全情報 No. 16「電気メスの取扱い時の注意 について(その3) 」7)では、バイポーラ電気メスやモノポーラ電気メスの使用時の注意点について、 それぞれ注意喚起を行なった。 - 224 - 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) <PMDA医療安全情報 No. 14 電気メスの取扱い時の注意について(その1)> Ⅲ 共有すべき医療事故情報﹁熱傷に関する事例︵療養上の世話以外︶﹂ ︵第 回報告書︶について 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 9 - 225 - Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) <PMDA医療安全情報 No. 15 電気メスの取扱い時の注意について(その2)> - 226 - 3 再発・類似事例の発生状況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) <PMDA医療安全情報 No. 16 電気メスの取扱い時の注意について(その3)> Ⅲ 共有すべき医療事故情報﹁熱傷に関する事例︵療養上の世話以外︶﹂ ︵第 回報告書︶について 1 2-〔1〕 2-〔2〕 3-〔1〕 3-〔2〕 3-〔3〕 9 - 227 - Ⅲ 医療事故情報等分析作業の現況 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) (6)まとめ 本報告書では、熱傷に関する事例(療養上の世話以外)に関連した事例について、本報告書分析 対象期間(平成25年7月∼9月)に報告された6事例を紹介するとともに、平成22年から本報告 書分析対象期間に報告された事例67件について、関連した医療機器や薬剤等および、発生場所と事 例の内容を概観した。事例の発生場所は手術室が多かった。さらに、熱傷の原因が発火であることが 明記されている事例は9件であり、電気メスによる薬剤の引火が4件、レーザー使用時の発火が2件、 石油ベンジン使用時の発火が1件、バイポーラの使用時の発火が1件、酸素投与中の鍼灸時の発火が 1件、であった。 今後それぞれの詳細な内容について分析し、報告書に掲載する予定である。 (7)参考文献 1. 公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業 . 医療安全情報 No. 34「電気メス に よ る 薬 剤 の 引 火 」.2009-9.(Online),available from < http://www.med-safe.jp/pdf/medsafe_34.pdf >( last accessed 2013-11-29) 2. 公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業 . 医療安全情報 No. 59「電気メス ペンシルの誤った取り扱いによる熱傷」.2011-10.(Online),available from < http://www. med-safe.jp/pdf/med-safe_59.pdf >( last accessed 2013-11-29) 3. 公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業 . 医療安全情報 No. 70「手術中 の光源コードの先端による熱傷」.2012-9.(Online),available from < http://www.med-safe. jp/pdf/med-safe_70.pdf >( last accessed 2013-11-29) 4. 公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業 . 医療安全情報 No. 56「MRI 検査時の高周波電流ループによる熱傷」.2011-7.(Online),available from < http://www. med-safe.jp/pdf/med-safe_56.pdf >( last accessed 2013-11-29) 5. 医薬品医療機器総合機構 . PMDA医療安全情報 No. 14(2010年2月) 「電気メスの取扱 い時の注意について(その1)」.available from < http://www.info.pmda.go.jp/anzen_pmda/ file/iryo_anzen14.pdf >(last accessed 2013-11-14) 6. 医薬品医療機器総合機構 . PMDA医療安全情報 No. 15(2010年3月) 「電気メスの取扱 い時の注意について(その2)」.available from < http://www.info.pmda.go.jp/anzen_pmda/ file/iryo_anzen15.pdf >(last accessed 2013-11-14) 「電気メスの取扱 7. 医薬品医療機器総合機構 . PMDA医療安全情報 No. 16(2010年4月) い時の注意について(その3) 」.available from < http://www.info.pmda.go.jp/anzen_pmda/ file/iryo_anzen16.pdf >(last accessed 2013-11-14) - 228 - 参考 医療安全情報の提供 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 参考 医療安全情報の提供 平成18年12月より医療事故情報収集等事業において報告書、年報を作成・公表する情報提供に 加え、その内容の一部を事業に参加している医療機関などに対してファックスなどにより情報提供する こととした。本報告書には、平成25年7月∼9月分の医療安全情報 No. 80∼ No. 82を掲載する。 【1】事業の目的 医療事故情報収集等事業で収集した情報に基づき、特に周知すべき情報を提供し、医療事故の発生 予防、再発防止を促進することを目的とする。 【2】主な対象医療機関 ① 医療事故情報収集・分析・提供事業報告義務対象医療機関及び参加登録申請医療機関 ② ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業参加登録医療機関 ③ 情報提供を希望した病院 なお、これまで情報提供の希望を3回募り、平成23年11月にも医療安全情報の提供を受けてい ない病院に対し、情報提供の希望を募り、医療安全情報 No. 63より、約5,300医療機関へ情報 提供を行っている。 【3】提供の方法 主にファックスにより情報提供している。 (注)公益財団法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業」ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。 - 229 - 参考 なお、公益財団法人日本医療機能評価機構のホームページ(注)にも掲載し、広く社会に公表している。 参考 医療安全情報の提供 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 【4】医療安全情報 No. 80 医療事故情報収集等事業 医療安全情報 No.80 2013年7月 公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 医療 安全情報 No.80 2013年7月 膀胱留置カテーテルによる 尿道損傷 膀胱留置カテーテルを留置した際、尿道を損傷した事例が15件報告されています (集計期間:2010年1月1日∼2013年5月31日、第31回報告書「個別のテーマ の検討状況」 (P126) に一部を掲載)。 膀胱留置カテーテルを留置する際、尿の流出を 確認せずバルーンを拡張したことにより、尿道 を損傷した事例が報告されています。 膀胱留置カテーテル留置時の手順 事例のイメージ 尿流出なし 尿流出あり 膀胱 - 230 - 膀胱 参考 医療安全情報の提供 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 医療事故情報収集等事業 医療事故情報収集等事業 医療 No.80 2013年7月 安全情報 膀胱留置カテーテルによる尿道損傷 事例 看護師は、全身麻酔中の患者に12Frの膀胱留置カテーテルを挿入した。 膀胱留置カテーテルの留置手順は、尿の流出を確認した後にバルーンに 蒸留水を注入することになっていたが、麻酔科医師は尿の流出を確認しない まま注入した。テープ固定をする際、尿道口から出血を認めたため、泌尿器科 医師に診察を依頼し、前立腺部尿道の損傷と診断された。止血のため、 18Fr の膀胱留置カテーテルを挿入し、予定していた手術を施行した。 事例が発生した医療機関の取り組み ・膀胱留置カテーテルの留置は、 十分な長さの挿入を 行い、 尿の流出を確認した後にバルーンに蒸留水を 尿の流出を確認 ・尿の流出がない場合は時間を置き、 した後、バルーンを拡張する。 ※この医療安全情報は、 医療事故情報収集等事業(厚生労働省補助事業) において収集された事例をもとに、 当事業の 一環として総合評価部会の専門家の意見に基づき、医療事故の発生予防、再発防止のために作成されたものです。 当事業の趣旨等の詳細については、 当機構ホームページに掲載されている報告書および年報をご覧ください。 http://www.med-safe.jp/ ※この情報の作成にあたり、 作成時における正確性については万全を期しておりますが、 その内容を将来にわたり保証 するものではありません。 ※この情報は、 医療従事者の裁量を制限したり、 医療従事者に義務や責任を課したりするものではありません。 公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部 〒101-0061 東京都千代田区三崎町1-4-17 東洋ビル 電話:03-5217-0252 (直通) FAX:03-5217-0253 (直通) http://www.jcqhc.or.jp/ - 231 - 参考 注入する。 参考 医療安全情報の提供 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 医療安全情報 No. 81 医療事故情報収集等事業 医療安全情報 No.81 2013年8月 公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 医療 安全情報 No.81 2013年8月 ベッド操作時のサイドレール等の すき間への挟み込み ベッドのサイドレール等のすき間に関連した事例が12件報告されています。 そのうち、 ベッドの操作によりサイドレール等のすき間に患者の身体の一部を挟み込む事例 が5件報告されています (集計期間: 2010年1月1日∼2013年6月30日、第13回 報告書「共有すべき医療事故情報」 (P142) 、第33回報告書「再発・類似事例の検討 状況」 (P166) に一部を掲載) 。 ベッドの操作により、ベッドのサイドレール等の すき間に患者の身体の一部を挟み込む事例が 報告されています。 事例のイメージ 挟み込んだ部位 件数 上肢 3 首 1 下肢 1 ◆ベッドのサイドレール等に関連した事例には、 この他、 サイドレールとサイドレールの間に身体の一部 を挟み込んだ事例や、 サイドレールのすき間から患者が転落した事例などが報告されています。 - 232 - 参考 医療安全情報の提供 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 医療事故情報収集等事業 医療事故情報収集等事業 医療 No.81 2013年8月 安全情報 ベッド操作時のサイドレール等のすき間への挟み込み 事例 看護師は、 左肘に創部のある患者を座位にするためにベッドの操作を始めた。 その際、患者の上肢の位置を確認しなかった。看護師がベッドを20∼30度 上げたところ、患者が「痛い」 と訴えた。確認すると、患者の左肘がベッド柵と マットの間に挟まっており、 左肘に貼付している被覆材の内部に血液が滲んで いた。筋層に達する外傷を認め、医師が縫合した。 厚生労働省及び経済産業省より、 「医療・介護ベッド用サイドレール等のすき間 に頭や首、手足などを挟む事故等の未然防止のための安全点検について」※ が発出されています。 ○医政総発0606第5号 老振発0606第1号 障企自発0606第1号 老老発0606第1号 障障発0606第1号 24製安第13号 老高発0606号第1号 平成24年6月6日付 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/120606-1.pdf ※この通知には、 「別添1 医療・介護ベッド安全点検チェック表」が添付されています。 ・ベッドを操作する際は、サイドレールのすき間や 患者の身体の位置を確認してから行う。 ※この医療安全情報は、 医療事故情報収集等事業(厚生労働省補助事業) において収集された事例をもとに、 当事業の 一環として総合評価部会の専門家の意見に基づき、医療事故の発生予防、再発防止のために作成されたものです。 当事業の趣旨等の詳細については、 当機構ホームページに掲載されている報告書および年報をご覧ください。 http://www.med-safe.jp/ ※この情報の作成にあたり、 作成時における正確性については万全を期しておりますが、 その内容を将来にわたり保証 するものではありません。 ※この情報は、 医療従事者の裁量を制限したり、 医療従事者に義務や責任を課したりするものではありません。 公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部 〒101-0061 東京都千代田区三崎町1-4-17 東洋ビル 電話:03-5217-0252 (直通) FAX:03-5217-0253 (直通) http://www.jcqhc.or.jp/ - 233 - 参考 事例が発生した医療機関の取り組み 参考 医療安全情報の提供 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 医療安全情報 No. 82 医療事故情報収集等事業 医療安全情報 No.82 2013年9月 公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 医療 安全情報 No.82 2013年9月 PTPシートの誤飲 (第2報) 医療安全情報No. 57 (2011年8月) 「PTPシートの誤飲」で、4年半の間に14件の 事例が報告されていることを情報提供いたしました。その後、 2年間で類似の事例が 26件報告されていますので、再度、情報提供いたします。 (集計期間:2011年 7月1日∼2013年6月30日、第23回報告書「個別のテーマの検討状況」 (P100) に一部を掲載) 。 薬剤を内服する際に、PTPシートから出す ことなく服用した事例が報告されています。 その多くは、医療者側がPTPシートを1錠に 切り離して患者に渡した事例です。 状況 切り離した者 医療者 患者 1錠ごとに切り離した PTPシートを 自己管理薬の PTPシートを 件数 1回分渡した 12 薬杯などに入れて 1回分渡した 7 自己管理薬として 全て渡した 2 1錠ごとに切り離した 21 5 ◆PTP (Pr essTh r oughPackage) シートとは、 薬剤をプラスチックやアルミ等で貼り合わせて 包装したものです。 ◆医療安全情報No. 57 「PTPシートの誤飲」 に事例イメージのイラストを掲載していますので、 あわせてご参照ください。 - 234 - 参考 医療安全情報の提供 医療事故情報収集等事業 第 35 回報告書(平成 25 年 7 月∼ 9 月) 医療事故情報収集等事業 医療事故情報収集等事業 医療 No.82 2013年9月 安全情報 PTPシートの誤飲 (第2報) 事 例1 病棟では、 看護師が与薬する際、 PTPシートから薬剤を取り出して患者に渡すことになっていた。 夕食後、 看護師は患者にワーファリンのPTPシートを1錠に切り離し、 1回分をそのまま渡した。 30分後に ナースコールがあり、患者から「PTPシートごと飲み込んだかもしれない。」と言われた。内視鏡にて 胃内にPTPシートを確認し、摘出した。 事 例2 患者は内服薬を自己管理しており、 PTPシートを1錠ごとに切り離していた。朝食後の薬を服用する際、 散剤の袋の中に3種類の薬剤をPTPシートのまま入れて内服した。 2種類は自力で吐き出したが、 1種類 は吐き出せずに喉に引っかかっているような症状があった。その後、内視鏡を行ったが胃内の食物残渣 で視界が悪く除去できず、消化器症状に注意し、排出を待つことにした。翌日、排便の際にPTPシート を排泄した。 公益財団法人 日本看護協会は、 「PTPシートの誤飲防止対策について」 (2013年2月20日) を公表しています。 http://www.nurse.or.jp/nursing/practice/anzen/anzenjoho.html 事例が発生した医療機関の取り組み ・患者に1回分の薬剤を渡す際は、 PTPシートから薬剤を取り出して渡す。 ・患者に、内服の際はPTPシートを切り離さず、シートから薬剤を取り 出して内服することを説明する。 ・一錠ずつ切り離したPTPシートは、誤飲の危険があることを患者さんに 伝えてください。 ※この医療安全情報は、 医療事故情報収集等事業(厚生労働省補助事業) において収集された事例をもとに、 当事業の 一環として総合評価部会の専門家の意見に基づき、医療事故の発生予防、再発防止のために作成されたものです。 当事業の趣旨等の詳細については、 当機構ホームページに掲載されている報告書および年報をご覧ください。 http://www.med-safe.jp/ ※この情報の作成にあたり、 作成時における正確性については万全を期しておりますが、 その内容を将来にわたり保証 するものではありません。 ※この情報は、 医療従事者の裁量を制限したり、 医療従事者に義務や責任を課したりするものではありません。 公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部 〒101-0061 東京都千代田区三崎町1-4-17 東洋ビル 電話:03-5217-0252 (直通) FAX:03-5217-0253 (直通) http://www.jcqhc.or.jp/ - 235 - 参考 総合評価部会の意見 公益財団法人日本医療機能評価機構(以下「本財団」という)は、本報告書に掲載する内容について、善良なる市民および医療の質に関わ る仕事に携わる者として、誠意と良識を持って、可能なかぎり正確な情報に基づき情報提供を行います。また、本報告書に掲載する内容につ いては、作成時点の情報に基づいており、その内容を将来にわたり保証するものではありません。 したがって、これらの情報は、情報を利用される方々が、個々の責任に基づき、自由な意思・判断・選択により利用されるべきものであり ます。 そのため、本財団は、利用者が本報告書の内容を用いて行う一切の行為について何ら責任を負うものではないと同時に、医療従事者の裁量 を制限したり、医療従事者に義務や責任を課したりするものでもありません。
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