地球音楽の喜びをあなたへ

地球音楽の喜びをあなたへ
TheJoyo
fGlobalMusic
-未来の地球市民となる子どもたちのための多文化音楽教育一
降矢美禰子著
地球音楽の喜びをあなたへ
The Joy of Global Music
―未来の地球市民となる子どもたちのための多文化音楽教育―
― Creating Citizens of the Earth through Multicultural Music Education ―
降矢 美彌子 著
多文化音楽学習 DVD 教材添付
Multicultural Music Education DVD included
現代図書
凡例
1.表記について
1) 見出し・本文とも原則として現代仮名づかい、常用漢字を用いる。た
だし、固有名詞、用語、引用文などはこの限りではない。
2) 外国語は、なるべく原語に近い発音のカタカナで表記し、2 単語以上
で成り立つ用語は、単語ごとにナカグロ「・」を入れ、必要がある場
合は、( )内に原語を記す。なお、原語の発音と違っていても、
日本での読み方が一般化している場合は、そちらを用いる。
3) 外国語の氏名は、カタカナで表記し、姓名の間にナカグロ「・」を挿
入した。また( )内に現地で用いられる字綴りを表記した。なお、
初出の際、姓名を表記し、以降は、姓のみを表記する。
4) 研究者、演奏者等の氏名には、敬称をつけない。
5) 引用・参考文献については、著者名、出版年、論文名、著書名、出版
地、出版社、ページ数の順で表記した。暦年は、西暦で統一した。
6) 欧米の著書名、雑誌、CD、CD-ROM、DVD のタイトルは、イタリッ
ク表記とする。
7) ハンガリーでは、名前を姓名の順で表記するので、本著でもハンガリー
人については姓名の順で表記する。 2.記号について
「 」 論文名、引用文、引用句、項目名、曲名、演目名、授業提案の創作名、
修士論文題目の引用句など。
『 』 日本語の著書名、雑誌名、曲集名、引用文の引用句、CD、LP、
CD-ROM、DVD、LD、ビデオのタイトルなど。
( ) 引用・参考文献および主な引用のページ数、外国語および外国
人名の原語表記。多文化音楽学習 DVD の解説文の現地の読み方
にあたる漢字、曲名の説明、バリ語の発音等。
[ ] 多文化音楽学習 DVD の解説文の名前や地名の読み仮名。
3.写真について
写真提供者名は「授業提案のための資料・音源」に記した。名前のな
いものは、私の撮影である。
コダーイ・ゾルターン
謝辞
国際コダーイ協会の 1986 年度の奨学金により、ハンガ
リーで勉学する機会を得ました。ハンガリーの音楽教育は、
学問、芸術、教育が有機的に関連する人間教育です。ハン
ガリーでの学びは、その後の私の歩みの原点となりました。
ここに感謝を捧げます。
はじめに
―私たちを取りまく状況と多文化音楽教育―
地球環境や子どもをめぐる状況は、音楽教育とは一見関係ないように
見受けられますが、音楽教育を考える基盤として重要な要素です。
今日、地球は様々な難題を抱えています。CO2 排出量の増加、自然災害、
癌や HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、SARS(重症急性呼吸器症候群)な
どの各種疾病、人口爆発と食糧危機や資源エネルギーの枯喝など、生命
をおびやかす環境問題は深刻です。さらには 20 世紀後半から続く戦争や
テロ、核の脅威が、世界を憎悪と恐怖に陥れています。 この状況の中で、人々は政治的・経済的な理由で否応なく国の枠組み
を越えて流動し、世界の国々では多民族化に拍車がかかっています。日
本も例外ではありません。世界的な勢いでグローバル化が進むなか、多
民族国家では異民族間で摩擦が生じています。異文化の受容、とりわけ
社会の少数派の人々、マイノリティの文化受容は、多民族国家の急務と
なっています。
さて、本著のテーマである多文化音楽教育は、多民族国家アメリカで、
1960 年代の公民権運動をきっかけに生まれた多文化教育から発展しまし
た。多文化教育は一言で言えば、マイノリティの文化理解を通して多民
族共生を実現するための教育です。従って、多文化音楽教育も同じ理念
を踏まえた音楽教育ということができます。
今日の国際社会は、コンピューターなど情報機器の驚異的な発展によ
る IT 社会です。音楽情報は複製メディアによって簡単に入手でき、人々
は、グローバル化した音楽文化を享受しています。音楽界全体をみわた
すと、20 世紀後半以来の多様な音楽状況を引継ぎ、古今東西のあらゆる
時代、地域、様式の音楽が存在します(船山 1982:1714)。人々は、多
岐にわたる地球音楽 1)に囲まれていますが、一人ひとりの選択肢をみると、
1)水野信男(2007)から引用し、地球上のあらゆる地域、あらゆる民族によって奏で
られ、聞かれている音楽文化を表す用語として概念規定した。「用語の解説」p.84 参
照のこと。
i
むしろ単一化の傾向が否めません。
一方、日本の子どもをめぐる状況は、世界的な状況と歩調をあわせる
かのように悪化の一途をたどり 2)、私たちは日々胸を痛めています。
音楽教育は、以上述べた地球環境や音楽情報の変化と日本の子どもを
めぐる厳しい状況とに、どのように応えて行けばよいのでしょうか。私は、
音楽教育はこれらの課題に応えるものでありたいと思います。
音楽的な側面としては、マジョリティの文化が地球を覆い尽くすので
はなく、マイノリティの文化の独自性も保たれる必要があると思います。
その結果世界の音楽文化の多様性が保たれることが音楽教育の重要な課
題だと考えます。多様性の保持こそが、今日の地球市民である人類が求
める本当の豊かさの根源でしょう。音楽のグローバル化が進み、音楽の
選択肢がかえって狭まる現在、多様な地球音楽に気づくことのない子ど
もや若者にも、この豊かさを知って欲しいと願います。地球音楽の豊か
さに触れた上で、個人の好みを大切にして欲しいのです。
この願いにもとづき、子どもや若者のために多文化音楽教育が必要だ
と思います。多文化音楽教育では、音楽だけでなく、社会的・文化的な
背景や暮らしなどを学ぶことを大切にする姿勢が必要です。その根底に
は、個々の音楽文化を継承発展させて来た人々を敬い、それぞれの文化
の音楽観や伝承法を尊重することが求められます。何よりも、人々の生
活における音楽文化の意味や、各音楽文化の担い手の心情を理解し共感
することが大切です。このような姿勢をもって音楽文化を学ぶことによっ
て、子どもや若者の心に、古くからの暮らしに立脚した人間性が蘇るか
もしれません。ひいては、豊かさを育んだ地球環境そのものに思いを馳
せるようになるのではないでしょうか。
多文化音楽教育では、表現教育に重点をおく従来の音楽教育の指導法
とは異なります。表現と鑑賞活動を通して音楽構造や社会的・文化的背
景を理解させ、創作活動も有機的に関連させた指導が必要です。本著で
2)不登校や学級・授業崩壊、教師や児童の暴力行為、いじめや自殺、精神障害、家庭
内暴力、犯罪行為の増加、親による虐待、モンスター・ペアレンツ、教師の不祥事
などの問題。2007 年度 1 年間で学校を 30 日以上欠席した小中学生不登校児童・生徒
数 129, 254 人(文部科学省の学校基本調査速報 2008. 8. 7)。
ii
はじめに
は、日本の多文化音楽教育の新たな観点をもつ指導法を、添付した多文
化音楽学習 DVD 教材 3)
(以下、タイトルを除いて DVD 教材と略記します)
を活用した授業設計 4)を示して、具体的に提案したいと思います。
この指導法の第一のポイントは、自文化のアイデンティティを育む視
点です。従来、日本の音楽教育では、教科内容が西洋音楽に偏ってきた
ために 5)、自文化のアイデンティティを育む視点が欠けていました。自文
化のアイデンティティを認識せずに、どうして他の文化が理解できるで
しょう。また、自分を認められない子どもたちが増えている今日、アイ
デンティティの確立に関わって、学習者 6)にセルフ・エスティーム 7)
(安
藤 2007:8-15)を促すことにも配慮せねばなりません。心理学や教育学
が提起するとおり、自己の尊厳を認められなければ、自身のアイデンティ
ティも確立できないからです。
第二のポイントは、異文化受容に関わって、音楽を社会的・文化的な
脈絡の中で捉え、機器による第二次口頭性 8)も含めて伝承者からの学び
を重視する視点です。
第三のポイントは、DVD 教材を使った授業であっても、五感を活用し
た直接体験を重視する視点です。インターネットや携帯電話といったバー
チャルな世界に生きることの多くなった今日の子どもや若者 9)には、直
3)2000 年∼ 2003 年、科学研究費補助金基盤研究(C)(1)『国際化時代の教員養成に
おける多文化音楽教育の CD-ROM 教材開発』(研究課題番号 12680241)で開発制作
したものを、本著のために内容を改訂し 1 枚の DVD に収録した。
4)学習要求と目的を分析し、その要求に適合する伝達システムを開発する全過程を表す。
5)音楽取調掛の伊澤修二は、日本の音楽教育について 3 つの意見からなる上申書を提
出し、日本の音楽教育は、和洋折衷の理念で行われることとなったが、異文化の和
洋折衷の理念は、実現不可能で、結果的に西洋音楽的な内容と理念で行われてきた
(山住 1967)。特に、専門教育において、その傾向が強かった。戦後の音楽科教育
では、特に昭和 33・34 年度の学習指導要領では、日本の伝統音楽の内容が抜本的
に強化され、その後、平成 10 年度の改訂で中学校では和楽器の学習が必修扱いにな
るなど、自国の音楽文化への視点が強化されたが(文部省 1958、1998)、現状では、
音楽文化のアイデンティティを育むところまでには至っていない。
6)児童・生徒・学生のすべての学習対象者を表す用語として用いる。
7)self-esteem 自己尊重、自己尊厳と訳される。
8)「用語の解説」p. 83 参照のこと。
9)加藤千洋「携帯を置き街にでよう」
『高校生喜多方サミット新聞』
(朝日新聞 2008. 7. 5)
加藤は、喜多方高等学校で、詩人寺山修司の著書『書を捨てよ町に出よう』を引用して、
「携帯、パソコンを置いて街に出よう」
、
「五感を総動員して知らなかったことを吸収し
よう」と高校生に語った。バーチャル(virtual)とは、
「実態を伴わない」の意。
iii
接的な体験を切り口として理解や共感を育むことが必要です。五感を研
ぎ澄ます体験は、音楽教育のみならず、地球の未来を担う子どもたちに
切実に求められていると思います。
本著は 1)多文化音楽教育の理念と指導法の概念規定、2)新たな観点
をもつ多文化音楽教育の指導法に関する具体的な提言、3)DVD 教材を
用いた 5 つの授業設計と、7 つの授業提案を骨子として構成しました。
DVD 教材では、市販教材でほとんど扱われない日本とアジアの民俗音
楽を取り上げました。それらを用いて具体的な指導法について述べます。
多文化音楽教育は、地球上のすべての音楽を対象としています。したがっ
て、本著で提起する理念や指導法は地球音楽の全てに共通するものであ
ると考えます。授業提案では、宗教的な音楽やポップス、現代邦楽 10)、
21 世紀の現代音楽にも扉を開くことに努めました。
急速な格差社会化の中で、子どもや若者のみならず、社会的な弱者が
苦しんでいます。日本の多文化音楽教育が、学習者のセルフ・エスティー
ムやアイデンティティの確立を促し、異文化全般の受容能力を高める起
爆剤となることを願います。そして、多文化音楽教育によって、地球上
にともに生きる他者への眼差しや社会的な弱者への眼差しを育み、地球
家族との共生の心を育むことを願うのです。私は、未来の地球市民とな
る子どもたちのために、音楽教育がこのような役割を担うことに貢献し
たいと思います。
10)邦楽という用語は、西洋音楽と対比した用語であるが、便宜上用いた。
iv
目 次
はじめに ―私たちを取りまく状況と多文化音楽教育― ......................... i
第 1 章 アメリカの多文化音楽教育 .................................................................................1
1-1 多文化教育と多文化音楽教育 .....................................................................................1
1-2 アメリカの多文化音楽教育の先駆者...........................................................................3
1-3 メアリー・ゲッツの仕事......................................................................................................5
第 2 章 日本の多文化音楽教育 .............................................................................................9
2-1 日本の状況にもとづく多文化音楽教育の理念 .....................................................9
2-2 日本における多文化音楽教育の理念と指導法の定義 .................................. 11
第 3 章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の指導法 .................................... 15
3-1 視聴覚教材について ............................................................................................................. 15
3-2 指導法について ........................................................................................................................ 16
3-3 教師の取り組みについて................................................................................................... 19
3-4 授業設計について ................................................................................................................... 21
第 4 章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計 .............................. 25
4-1 多文化音楽学習DVD教材について........................................................................ 25
4-2 多文化音楽学習DVD教材を用いた授業設計 .................................................. 30
4-2-1 アイヌ民族の音楽文化による授業設計 ...............................................................................31
4-2-2 椎葉の音楽文化による授業設計 ................................................................................................34
4-2-3 竹富島の音楽文化による授業設計 ..........................................................................................38
4-2-4 バリ島の音楽文化による授業設計 ..........................................................................................42
4-2-5 五箇山の音楽文化による授業設計 ..........................................................................................47
第 5 章 多文化音楽教育の授業提案 .............................................................................. 51
5-1 わらべうたから地域の民俗芸能へ ........................................................................... 52
5-2 地域の音楽の学習から始める文化の総合学習 ................................................ 56
5-3 祈りのひびき ―声明からグレゴリオ聖歌、クルアーンまで―............... 58
v
5-4 ア・カペラ合唱の響きへの誘い ―純正調の響き― .................................. 61
5-5 魂の叫び ―ハモネプからゴスペル・ソングへ―............................................. 65
5-6 日本の音楽伝統から新しい日本の唄へ
―新内節の岡本文弥と、邦楽におけるクロスオーヴァーの先駆者、
平井澄子の世界― ..................................................................................................................... 68
5-7 現代音楽への誘い
―ハンガリーの作曲家クルターグ・ジェルジュの音と沈黙の世界― ......... 72
第 6 章 おわりに .............................................................................................................................. 77
引用・参考文献.......................................................................................................................................... 79
附録1.用語の解説 ............................................................................................................................... 83
附録2.授業提案のための資料・音源.................................................................................... 85
附録3.添付の多文化音楽学習 DVD 教材について .................................................... 90
附録4.多文化音楽学習 DVD 教材の内容サイト・マップ .................................... 92
日本語サイト・マップ
アイヌ民族の音楽文化学習 ..................................................................................................................92
椎葉の音楽文化学習 ..................................................................................................................................93
竹富島の音楽文化学習 .............................................................................................................................94
バリ島の音楽文化学習 .............................................................................................................................95
English site map
An Introduction to Music and Culture of the Ainu People .......................................96
An Introduction to Music and Culture of the Shiiba People .....................................97
An Introduction to Music and Culture of the Taketomijima People ..................98
An Introduction to Music and Culture of the Bali People ..........................................99
あとがき ....................................................................................................................................................... 101
索 引 ........................................................................................................................................................... 103
vi
第
1章
アメリカの多文化音楽教育
1-1 多文化教育と多文化音楽教育 多文化教育は、多民族国家アメリカで、1960 年代の公民権運動をきっ
かけにして発展しました。多文化教育では、ジェームズ・A. バンクス
(James A. Banks)とカール・A. グラント(Carl A. Grant)の研究が重
要です。バンクスは、多文化教育について、「カリキュラムや教育機関を
改革することにより、男女両性および多様な社会階級、人種、エスニッ
ク集団の学習者が、平等の教育機会を経験できるようにすることを主要
な目標とする教育改革運動」(バンクス 1999:198)と定義しました。グ
ラントは「自由、正義、平等、公正、そして合衆国憲法と独立宣言書
に記された人間の尊厳に関連する哲学に基づいた概念」(Grant 1997:
171-172)と定義しました。
バンクスは、
「多文化教育の第一目標(もっとも幅広い意味で)は、
『自
由への教育』である」としました。そして、その意味を「第一に、学習
者達が民主的で自由な社会に参加する知識、態度、スキルを育み、第二
に、他の文化や集団に参加するために、エスニックや文化の境界線を越
えることのできる自由、能力、スキルを拡大することである」と説明し
ています(バンクス 1999:157)。バンクスの多文化教育のキーワードは、
1)多様性(多様な声、多様な視座)、2)教師を変える、教師が変わる、3)
違いを活力に(バンクス 1999:159-175)の 3 点です。これらのキーワー
ドは、多文化教育を具現していると言えましょう。日本では、小林哲也
と江渕一公が多文化教育の比較研究を行い、「多文化教育は、異なった民
族あるいは文化の間の一国内での共存・共生をめざす教育の一形態」と
定義しました(小林;江渕 1993:ⅱ - ⅲ)。
それまでの音楽教育では、文化理解の視点は明確ではありませんでし
1
た。しかし、
1984 年アメリカのウエスリアン大学で開かれたウエスリアン・
シンポジウム(The Wesleyan Symposium1))
(McAllester 1985)で、12
名の民族音楽学者 2)が、音楽理解は音楽と人々の暮らしとの関連性から深
めることができると提言したことで転期がおとずれます。シンポジウム以
降、全米音楽教育者会議(Music Educators National Conference)の多文
化音楽教育の資料集などに、ダンス、美術、言語、人々の暮らしの情報な
ど、音楽の周辺にある様々な領域を取り入れた指導事例が紹介されるよう
になりました(磯田 2003:68)
。彼らの提言は、音楽教育と民族音楽学の
協同という視点からみて、今日なお意義深いものといえます。
以下に、このシンポジウムの参加者の中から、ジョン・ブラッキング
(John Blacking)、バーバラ・シュミット=レンガー(Barbara SchmidtWrenger)、ブルーノ・ネトル(Bruno Nettl)の 3 人の音楽学者の提言を
紹介しましょう。
ブラッキングは、音楽の理解に最も良い方法は、音楽を聴き続け、パ
フォーマンスし続けることだとして、南アフリカのヴェンダ(Venda)族
の教育システムを通して、以下の 2 点を提言しました(Blacking 1985:
43-52)。
(1)民族音楽の音楽と舞踊、パフォーマンスを通して社会や文化を理解す
ること。
(2)民族音楽の学習を通して社会や文化を理解するためには、授業実践の
中に、個々の民族が音楽を伝達するのと同じ過程やパフォーマンスを
取り入れる必要があること。
シュミット=レンガーは、中央アフリカのチョクウェ(Tshokwe)族が、
1)ウエスリアン大学(Wesleyan University)、全米音楽教育者会議(MENC と略称
される)の学際委員会(Interdisciplinary Committee)などの支援により、ウエス
リアン大学で開催された(1984. 8. 6-16)。全米音楽教育者会議は 1907 年に設立さ
れた。1998 年に全米音楽教育者会議(Music Educators National Conference)か
ら全米音楽教育者協会(The National Association for Music Educators)に名称を
変更、アメリカ最大の音楽教育研究組織。
2)12 人 の 民 族 音 楽 学 者 は 以 下 の 通 り で あ る。David P. McAllester, Joann W.
Keali'inohomoku、Robert Garfias、Adrienne L. Kaeppler, John Blacking, Gerald
T. Johnson, Bruno Nettl, Barbara Schmidt-Wrenger, Charles Keil, Carol E.
Robertson, Timothy Rice, Edward O'Connor.
2
第1章 アメリカの多文化音楽教育
輪になって踊ったり歌ったりするパフォーマンスの中で無意識に音楽を
学ぶと同時に、より人間的な態度をもって人間生活を創造することも学
べると報告しています(Schmidt-Wrenger 1985:77-86)。 ネトルは、アメリカのモンタナ州とイランという 2 つの対照的な文化
をとりあげ、その音楽における学習と指導について考察した結果、いく
つかの社会では、音楽は文化を教える手段とみなし、音楽が実際にその
ような機能をもつと述べています(Nettl 1985:69)。
1-2 アメリカの多文化音楽教育の先駆者
アメリカの民族音楽学者で音楽教育家のテレス・M. ヴォルク(Terese M.
Volk)、デイヴィッド・J. エリオット(David J. Elliott)、パトリシア・S. キャ
ンベル(Patricia Shehan Campbell) は、アメリカの多文化音楽教育の研
究にとって重要です。
ヴォルクは、音楽の解釈は、音楽それ自体の要素によるものとし、多
文化音楽の学習は、学習者の音楽の世界の基礎を広げ、彼らが新しい音
楽の世界に向かうとき、より開放され寛容になることを可能にすると述
べています。彼は、多文化音楽教育の理念によって、どんな音楽を扱う
場合にも、音楽教育の本質的な活動、つまり聴き、表現し、創るという
課題が存在すると指摘しました(Volk 1998:6)。
ヴォルクは著書の中で、多文化音楽教育の理念のガイドとして、エリ
オットの多文化音楽教育のカリキュラム・モデル(Multicultural music
education:curriculum models)
(Volk 1998:14)を示しています。エリオッ
トの多文化音楽教育のカリキュラム・モデルのフローチャートには、バ
ロックから現代音楽に至る西洋音楽から、電子音楽、コンピューター音楽、
ポピュラー音楽、諸民族の音楽など幅広い多様な音楽が扱われています。
彼は、また、パフォーマンスを中心とするカリキュラムについて論じて
います(Elliott 1989:11-18)。
キャンベルは、アメリカの多文化音楽教育の研究者・実践家 3)として、
3) 2002 年度の MENC シニア・リサーチャー賞(Senior Researcher Award)を受賞。
3
多くの多文化音楽教育の著書 4)を著し、国際会議などで数多くの講演を
行って、世界の音楽教育に影響を与えています。キャンベルの業績は、
フィールド・ワークによって得た伝承者の演奏と背景などについての知
見を幼児教育から教員養成に至る音楽教育に反映させた点にあります。
日本にも何度も来日して影響を与えています。キャンベルの多文化音楽
教育について、少し詳しく述べます。
キャンベルは、磯田三津子の研究によると(磯田 2003)、多文化音楽
教育の目的を、民族の多様性の尊重と文化の相互理解の 2 つの概念に
分けて考えています。具体的には、ワールド・ミュージック教育(World
music education)とマルチ・エスニック音楽教育(Multiethnic music
e d u c a t i o n)です。ワールド・ミュージック教育の目的は、音楽分析、
演奏の能力の育成、地域や時代ごとの音楽の特徴を理解することにあ
ります。キャンベルの多文化音楽教育は、音楽を取り巻く国家の歴史
や人々の暮らしを理解することを目的として文化理解のための視点が
加えられています。
キャンベルは、グローバル・ミュージック・シリーズ(Global Music
Series )全 17 冊 5)の『グローバルに音楽を教えよう(Teaching music
globally )』(Campbell 2004) の中で、「口承と聴覚テクニック(Oral/
Aural techniques )(Campbell 2004:10)」と題して、口承と記譜に
ついて、口承によるものであれ、記譜によるものであれ、音楽教育の
中では、聴覚手段が歌や楽器による音楽の核心の発見の中心に位置す
るものだと述べています。そして、記譜は、聴くことの体験を効果的
4)多文化音楽学習のためのシリーズは、以下の内容である。伝承者による録音が収録
されている。
Patricia Shehan Campbell Collection; From Bankok & Beyond (Thai Children's
Songs, Games and Customs), From Rice Paddies and Temple Yards (Traditional
Music of Vietnam.), The Lion's Roar (Chinese Luoguo Ensembles), Roots &
Branches (A Legacy of Multicultural Music for Children), Silent Temples, Songful
Hearts (Traditional Music of Cambodia), Traditional Songs of Singing Cultures (A
World Sampler).
5)Global Music Series (Music in East Africa, Music in Central Java, Teaching Music
Globally, Carnival Music in Trinidad, Music in Bali, Music in Ireland, Music in the
Middle East, Music in Brazil, Music in America, Music in Bulgaria, Music in North
India, Mariachi Music in America, Music in West Africa, Music in South India,
Music in Japan, Thinking Musically, Music in China).
4
第1章 アメリカの多文化音楽教育
に高め、図柄による地図として音楽のメロディーやリズムの構成要素
の理解を助けるものだとしています。キャンベルは前掲書(C a m p b e l l
2004)で、教材である非西洋音楽を五線譜に表しています。
一方、同シリーズの『音楽的に考えよう(Thinking musically )』
(Wade
2004)の著者ボニー・C. ウェイド(Bonnie C. Wade)は、CD を添付し、
教材を五線譜には表していません。以上のことから、アメリカの多文
化音楽教育における口承による音楽の五線譜使用についての考え方は、
必ずしも統一的ではないと言えましょう。
本来は口頭伝承による音楽も研究のために採譜して五線譜に書き表さ
れますが、私は、口頭伝承による音楽のそのような楽譜を教育の目的で
は使用してはならないと考えます。音楽は、それぞれ固有の語法を持っ
ていて、形が一見似ているように見えても、それぞれの音楽は、構造、
要素、内容、考え方、意味など異なっているからです。1-3 で先行研究
として分析の対象とするメアリー・ゲッツ(Mary Goetze)6)も、口頭
伝承による多文化音楽の指導に五線譜化した楽譜を用いず、伝承者か
らの直接的な学びや伝統的な音楽観、伝承法を重視する立場をとって
います。
1-3 メアリー・ゲッツの仕事
メアリー・ゲッツは、長年、アメリカの児童合唱の指導的な役割を担
い、数多くの合唱曲を編曲しています。その後、インディアナ大学の教
授として多文化合唱団インターナショナル・ヴォーカル・アンサンブル
(International Vocal Ensemble 以下 IVE と略記します)を設立 7)し、
留学生の多い大学の利点を生かして、諸民族の多文化合唱を留学生か
6)元インディアナ大学教授。多文化音楽教育の先進的な研究者で、ジェイ・ファーン
とともにデジタル教材 Global Voices in Song の制作を行った。
7)ゲッツによって 1995 年に設立されたインディアナ大学の学生をメンバーとする混
声合唱団。非西洋音楽をレパートリーとする。CD One World 、Many Voices One
Choir、Many Songs Volume Ⅰ・Ⅱ をリリース。Volume Ⅰ には、私との共同研究
の成果として福島県いわき地方の「じゃんがら念仏踊り」が、Volume Ⅱ には、ア
イヌ民族の「バッタキ・リムセ」、「ウタリオプンパレワ」、富山県五箇山民謡「こき
りこ」が収録されている。
5
ら直接学ぶという方法で実現しました。I V E の最初の C D には、21 民
族の合唱が収められています 8)。
ゲッツとジェイ・ファーン(Jay Fern)9)は、1999 年にインディアナ
大学の補助金を得て、口頭伝承で伝えられた合唱を、伝承者から直接に
学ぶという理念に基づいて、CD-ROM 教材を開発しました。コンピュー
ターとプロジェクターを活用するこの CD-ROM は、音楽教育における
世界最初のデジタル教材で、Global Voices in Song シリーズ(以下 GVIS
と略記します)として出版されました。2002 年にさらに利便性に優れた
DVD のシリーズとして改訂リリースされました 10)。GVIS には、伝承者
の演奏モデルと演奏に必要な情報、そして背景である文化の情報が収録
されています。学習者は五線譜に置き換えることなく、第二次口頭性に
よって、伝承者のモデルを見ながら学びます。デジタル教材であるため、
必要な情報を必要な時、瞬時に相互に関連させながら学習者に繰り返し
提供することができるという利点があります(Goetze;Fern 1999)。
ゲッツと私は、1996 年から約 8 年間多文化音楽教育の指導法と教材開
発の共同研究を行いました 11)。本著に添付した DVD 教材は、この共同
8)CD Volume 1: Latin America; United States; Jamaica; Indonesia; Aotearoa; New
Zealand; Japan; Latvia; South Africa; Ghana; Zimbabwe. CD Volume 2: China; Japan;
Brazil; Venezuela; Azerbaijan; India; Yiddish Songs; Yugoslavia; Karelia; Zaire;
South Africa; Zimbabwe.
9)ゲッツとともに Global Voices in Song 制作を行った。制作当時、インディアナ
大学/パーデュー大学インディアナポリス校 IUPUI(Indiana University-Purdue
University Indianapolis)助教授。
10)GVIS は、当初、映像が小さくその精度も低いという限界をもっていたが、2005 年、
24 曲を収めた 6 巻からなる利便性に優れた Global Voices DVD シリーズとして、改
訂リリースされた。
Global Voices Series, Grade 1-6, Grade 6 に五箇山民謡「こきりこ」
が収録されている。Kokiriko: Traditional Dance and Song from Gokayama, Japan .
11) 国際音楽教育協会(International Society for Music Education)第 22 回大会(1996.
7)の際、アムステルダムにおいて、ゲッツは私の主宰する福島コダーイ合唱団
の「じゃんがら念仏踊り」のワークショップに強い印象を受け、帰国後、その時の
ビデオ記録をもとに IVE の演奏会で演奏した。「こきりこ」は 2005 年に改訂された
GVIS 第 6 巻に収録。Kokiriko: Traditional Dance and Song from Gokayama, Japan.
2004 年には IVE の主催で、福島コダーイ合唱団の演奏会をインディアナ大学で行い、
福島コダーイ合唱団と IVE は、互いのレパートリーを事前にデジタル教材で学習し、
コンサート前日にゲッツと私の指導によって合同練習し、数曲をジョイントで歌っ
た。福島コダーイ合唱団は、1987 年創立、多文化合唱(グレゴリオ聖歌から西洋現
代曲、日本民謡、民俗芸能、アジアの民俗芸能など)をレパートリーとする教員合
唱団。8 回の海外公演、7 枚の CD をリリース。
6
第1章 アメリカの多文化音楽教育
研究を踏まえて、ゲッツの GVIS の制作意図を踏襲し、さらに内容を深
化させたものです。参考までに、ゲッツの GVIS 制作意図を解説書から
書き出します。
(1)口頭伝承で伝えられる西洋芸術音楽以外の音楽の学習に必要とされる
資料を提供し、音楽の再創造を助ける。
(2)音楽を学習する際、音楽家が歌を創造させ、継承してきた精神を感じ
ることができるために、それらの歌を人々がいつどこでどのように歌
うのかを理解できるように制作した。
(3)学習者が歌唱のスタイルや音色、発音、言葉の意味を理解し歌うこと
ができるように、音楽の様式および文化に関する情報を、映像、音響、
文章で収録した。 (4)可能な範囲で、その地域の文化の中で伝承され、継承されてきた方法
で歌を学習するために、伝承者や研究者による、文化、歴史、地理学、
歌が上演される状況に関する情報を提供した。
(5)音楽の学習は、常に見たり聴いたりできる音響か映像、生きたモデル
を伴って行われる必要があるという理念に基づいた。
(6)芸術家、伝承者、演奏提供者と一緒に学べない場合に、使用されるこ
とを意図した。
これまでは、異文化学習では伝承者を招聘できない場合、異文化と学
習者の間に楽譜と教師が入り、学習者は五線譜を用いて、伝承者ではな
い教師をモデルとして学習していました。ゲッツの教材の特徴は、スク
リーン上の映像であっても、五線譜を用いずに、伝承者と対話しながら
学ぶような疑似体験によって学習することができるという点にあります。
この点でこれまで行われがちであった 3 つの異文化学習の問題点、1)西
洋音楽ではない音楽を西洋音楽の手法で学習する、2)伝承者の演奏を見
ることなく学習する、3)音楽と文化背景を関連させること無く学習する
という問題点を解決するものと言えましょう。
7
第
2章
日本の多文化音楽教育
2-1 日本の状況にもとづく多文化音楽教育の理念
日本は、多様な民族が構成するアメリカのような多民族国家ではなく、
単一民族国家であるという認識が一般的です。しかしあらためて日本の
成り立ちを考えると、アメリカとは別の意味で文化的な多層性を帯びて
おり、多文化音楽教育の必要性が内在すると考えられます。次にその具
体的な状況をあげてみましょう。
(1)民族的なマイノリティ(アイヌ民族、在日朝鮮人など)が、政治的な
圧力や同化政策によって、差別と不平等に甘んじながら生活してきた。
(2)階級的な差別が存在していた。
(3)
「中央」と「その他の周辺地域」の間に文化的な格差が存在していた 1)
(国井 2001:2)。
(4)民俗芸能の中にも、ジェンダー 2)の差別が続いてきた。
(5)明治の学校教育開始以来、洋楽偏重の音楽教育が行われてきた。
このように諸側面で、権威とその対極にあるマイノリティやその文
化が存在していたことがわかります。さらに近年では、東南アジアや
南米等の労働者(ニューカマー)が、都会、農村、漁村の別なく急増し、
日本の産業を支える存在になっています。これにともない諸民族の文
化が流入しています。日本の学校教育は、増え続ける外国人労働者の
1)文化的な差別感は、地域の方言を恥じるなどの傾向があり、日常生活の中にも現われ
ている。ジャーナリストの国井耀毅は、
「この国の情報風土は、いつの時代にも都の
ある『中央』へとなびく傾きを帯びており、地方の独自な生活文化や風俗習慣や独特
の風物などを根底に据えて見つめていく姿勢は容易に成熟しない。
」と述べ、
文化の「中
央」志向を指摘している。
2)社会的、文化的に形成される男女の差異。
9
子どもたちをどうするのかという問題に直面しています 3)。また、社会
の急速な高齢化、少子化、加えて障害者、日雇い派遣労働者、ネットカフェ
難民 4)など社会的な弱者への格差の広がりが大きな問題になっています
5)
。このような状況から見ても、人権教育の視点をもつ多文化教育から発
した多文化音楽教育が日本でも必要とされているのです。
さて、日本の音楽科の教科内容を規定する学習指導要領には、多文化
音楽教育の用語はありません。しかし、マイノリティの音楽を扱う記述
や背景に関わる記述も見られ、多文化音楽教育的な視点も読み取ること
ができます 6)。昭和 22 年度と 26 年度の試案に始まり、平成 20 年 3 月の
第八次改訂にいたる学習指導要領の歩みをたどると、第七次平成 10 年度
の改訂が重要です。なぜならば、同改訂の中学校編は「曲種に応じた発
声により、言葉の表現に気をつけて歌うこと」(中学校第 1 学年)「曲種
に応じた発声により、美しい言葉の表現を工夫して歌うこと」(中学校第
2 学年及び第 3 学年の表現の内容)(文部科学省 2007:60、62)を提示し、
各民族の音楽の本来的な歌い方を尊重する視点が打ち出されたからです。
これは、多文化音楽の指導の根幹に関わる改訂といえます。歌唱の基本
となる発声法の選択は歌唱表現の根幹をなしますが、戦後一貫して頭声
的な発声が重んじられてきたのです。
第八次平成 20 年度改訂の学習指導要領(文部科学省 2008a)では、伝
3)外国にルーツをもち日本語指導が必要な子どもを抱える学校が全国に広がっている。
文部科学省調査では、2006 年公立の小学校―高等学校で 22,413 人(朝日新聞 2008. 6.
29)
。
4)いわゆるホームレスの一種で、定住する住居がなく寝泊りする場としてインター
ネット・カフェを利用する人々を指した造語。
5)例 え ば、 自 殺 者 が 10 年 連 続(1998-2007 年 )3 万 人 を 超 し た。2007 年 の 自 殺 者
33,093 人で高齢者や 30 代は過去最多となっている(警視庁 2008. 6)。
6)「音楽を、それが生まれた環境や背景を想像したり、理解したりしながら、人間と音
楽のかかわりをとらえて聴くことのできる能力を育てることをねらいとしている。
音楽は、それを作り出した人や社会、生まれる状況や時代背景などと密接に結び付
いている。(中略)すなわち、その時代や地域での生活や習慣、制度や伝統などの
文化や歴史があってこそ、それぞれに多様な音楽が成立しているのである。(中略)
指導に当たっては、生徒自身の表現ともかかわらせたり、また、社会科の地理的分
野・歴史的分野などとの関連も図ることで、背景となる文化・歴史からの理解を深め、
生活の様子がうかがえるような教材や資料の活用をしたりするなどの工夫も大切で
ある」(第2章目標及び内容(2)第 1 学年の鑑賞の内容)。(文部省 1999b:57)
10
第2章 日本の多文化音楽教育
統音楽や郷土の音楽が従来より重視され 7)、中学校学習指導要領解説 音
楽編(文部科学省 2008b)では、多文化音楽教育の1つの視点である文
化理解の側面が強められた記述になっています 8)。
ここで、似ていると思われがちな、多文化音楽教育と国際理解教育の
違いにも触れておきましょう。国際理解教育は、ユネスコの「国際理解、
国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由について
の教育に関する勧告」(1974 年 第 18 回ユネスコ総会)を理念的基盤と
しています。そこでは、国際理解教育は、
「国家という現実に立脚しつつ、
世界の平和と人類の福祉を増進するという課題に直接貢献しようとする
教育」
(権藤 1990: 222)と定義されています。前提となる枠組みを「国家」
としています。
国際理解教育は、音楽を生み伝え発展させてきた人々の心情の理解と
共感、あるいは民族の共生を目標としていません。この意味で、国際理
解教育と多文化音楽教育との間には、理念や目的に明らかな違いがあり
ます。国際理解教育は、平成 10 年度改訂の学習指導要領からは、新設
された「総合的な学習の時間」のねらいとして記されています(文部省
1998:3)9)。
2-2 日本における多文化音楽教育の理念と指導法の定義
「はじめに」で述べたように、日本の音楽教育は明治以来、西洋音楽な
7)「(4)イ 歌唱教材には、次の観点から取り上げたものを含めること。(イ)民謡、
長唄などの我が国の伝統的な歌唱のうち、地域や学校、生徒の実態を考慮して、伝
統的な声の特徴を感じ取れるもの」(中学校第 1 学年、第 2 学年及び第 3 学年 A
表現)。「(1)ウ 我が国や郷土の伝統音楽及びアジア地域の諸民族の音楽の特徴か
ら音楽の多様性を感じ取り、鑑賞すること。」(中学校第 1 学年 B 鑑賞)。「(1)ウ
我が国や郷土の伝統音楽及び諸外国の様々な音楽の特徴から音楽の多様性を理解
して、鑑賞すること。」(中学校第 2 学年及び第 3 学年 B 鑑賞)(以上文部科学省
2008a:75-77)
8)「我が国や諸外国の様々な音楽は、それぞれが生み出され、はぐくまれてきた背景と
切り離すことはできない。例えば音の出し方も、それをはぐくんできた人々の感性
や価値観と結び付いていると考えられる。音楽がどのような風土や文化・歴史など
を背景としているかといった視点をもつことが、曲のとらえ方や表現を深めること
につながっていく。」(文部科学省 2008b:15)
9)美術科では、国際理解は「文化遺産を尊重するとともに、美術を通した国際理解を
深めること」と記されている(文部省 1998:68)が、音楽科には記載がない。
11
いし西洋音楽的な音楽や考え方を中心に据えてきました。その結果、日
本人の多くが、自文化のアイデンティティを意識せずに音楽生活を送る
ばかりでなく、日本の伝統音楽に対して理解や親近感をもてなくなって
しまいました。
また、教え方や伝承法には、音楽のジャンルにかかわらず、各音楽文
化のエッセンスが込められているので重要です。しかし現実には西洋音
楽以外の音楽を五線譜化するなど、洋楽の手法による教育が優勢で、伝
承者から伝統的な方法で直接に学ぶことは、ほとんど行われませんでし
た。
このように偏った状況から脱却をはかる必要があるでしょう。民族的・
文化的格差ゆえにこれまで学校教育が対象としなかったマイノリティの
文化やその音楽文化に、私たちはぜひとも目をむけるべきだと思います。
子どもたちが日本国内のマイノリティの音楽文化に目覚めれば、これを
介した異文化体験の中で母文化との違いに気づき、文化的アイデンティ
ティを確立するきっかけとなることが期待できます。そのことが、異文
化受容の基盤ともなり、将来、地球市民として世界の人々と共生してい
く心を育むことにつながるのではないかと思うのです。以上の前提にた
ち、日本の多文化音楽教育の理念と指導法を次のとおり規定します。
多文化音楽教育の理念:学習者の文化的なアイデンティティの確立を目
指しながら、多様な地球音楽を差別感なく受容する力を育成する。
多文化音楽教育の指導法:音楽を社会的・文化的な脈絡の中でとらえ、
伝承者と文化本来の伝承法を尊重し、表現と鑑賞、構造や背景などの
知的理解と創作的な活動を有機的に関連させて授業を組織し、音楽文
化を育んだ人々の心情の理解を目指す。
日本におけるマイノリティの音楽文化は、グローバル化や伝承者の激
減によって消滅しつつあります。また、伝承が継続していても、商業化
や均一化の波をかぶって変容しています。多文化音楽教育を通じて、学
び学ばれる者同士が物理的な距離を越えて交流し、励ましあってマイノ
リティの音楽文化を活性化することができれば、閉塞化をたどる地域が
12
第2章 日本の多文化音楽教育
どんなに明るくなるでしょう。そのことがひいてはマイノリティの音楽
文化消滅をくい止めること(降矢 2007:11)10)につながるかもしれません。
この体験を通して、子どもたちはやがて世界のマイノリティの音楽文化
へと心を開いてゆくのではないでしょうか。このことが多文化音楽教育
の目的の1つと考えることもできるのではないでしょうか。
10)「多文化音楽教育シンポジウム 2007 in 東京」(2008. 3)における徳丸吉彦による基
調講演。(降矢 2007:11-18)
13
第
3章
新たな観点をもつ多文化音楽教育の指導法
3-1 視聴覚教材について
市販の視聴覚教材は、2 つの目的で制作されています。1つは鑑賞用
もう1つは演奏法の習得用です。鑑賞用視聴覚教材(ビデオ、LD、CD、
DVD など)には、一流の演奏家による質の高い演奏が、高い技術で収録
されています。これらは、近年の AV 機器の発達によって、高音質、高
画質での再生が可能です。平成 10 年度の学習指導要領の改訂によって日
本の伝統楽器の学習が必修となり(文部省 1998:63、文部科学省 2007:
64)、伝統楽器や諸民族の楽器の演奏法習得のための教材の出版が飛躍的
に増加しています。それらの多くは教師の独習用ですが、授業にも活用
することができます。しかし、市販の視聴覚教材には、多文化音楽教育
の視点、つまり、音楽を社会的・文化的な関わりの中で扱う視点がなく、
多くの場合、音楽の背景となる情報が入っていません。
一方、世界では、音楽科の鑑賞と表現の活動を音楽活動の両側面とし
て統一的に捉える実践が行われています(Forrai; Igó 1983)。表現活動
のためには、学習者のモチヴェーションの喚起や演奏のモデルとして鑑
賞が必要であり、鑑賞活動のためには、手がかりとしての表現活動が必
要であって、両活動は、音楽活動の両輪であると考えられます。そして、
このような学習を成立させるためにも、背景となる文化や人々の暮らし
などの情報が必要です。表現、鑑賞、背景などの理解の活動に、さらに
応用性をもつ創作的な活動を加えると、学習者は、対象となる音楽文化
に対して、より積極的で具体的な手がかりを得ることができます。私は、
多文化音楽教育では、以上にあげた表現・鑑賞・知的理解・創作の 4 つ
の活動を有機的な関連をもって扱うことが大切だと考えます。
上記を踏まえて、新たな観点をもつ視聴覚教材には、1)鑑賞と演奏法
15
の学習に使用できる音楽情報(表現と鑑賞のための情報)、2)背景とし
ての文化や人々の暮らしなどの情報(背景の知的理解のための情報)が
含まれることが必要だと考えます。そして、これらの音楽活動を関連さ
せて効率的に授業を行うために、瞬時に情報を切り替えることのできる
デジタル教材の利便性が求められると言えましょう。 視聴覚教材は、コンピューターや CD-ROM や DVD の出現によって、
このような視点をもつ教材開発の可能性が飛躍的に高まりました。多く
の情報を収録できる DVD に、表現と鑑賞、背景となる文化・暮らしなど
の情報を映像や音響、写真や解説によって収録し、コンピューターとプ
ロジェクターを用いて大型スクリーン上で活用することによって、表現、
鑑賞、知的理解の 3 つの活動を関連させた多様な指導が可能になります。
表現と鑑賞の両活動に資する情報、背景となる文化や暮らしなどの情
報、実技学習のための伝承者による学習マニュアルを収録した DVD に
よって、教師は、4つ目の創作の活動も関連させながら、必要な情報を
必要な時、必要な回数、瞬時に学習者に提供して指導することができる
ようになったのです。
複製メディアによる IT 情報化時代には、情報機器を活用した多様な
指導法と新たな観点をもつ教材の開発が求められているのです。しかし、
どのように優れた視聴覚教材であっても、万能ではありません。伝承者
からの直接的な学びこそが最も重要であることを強調したいと思います。
3-2 指導法について
日本では一般的に、国内にアメリカのような民族的な問題が存在して
いるという認識は薄いのですが、すでに述べたように、多文化音楽教育
が必要な状況になっています。しかし日本と欧米の多民族国家では、社
会的・文化的な基盤が異なっています。社会背景の違いを考慮し、日本
の状況に適した指導法を工夫しなければなりません。
多文化音楽教育の教材は、学習者と教師のいずれにとっても異文化で
ある場合が多いと言えましょう。最初に、異文化という用語について概
念規定をしておきましょう。私は、生まれ育つ中で身につけた文化を母
16
第3章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の指導法
文化と呼びたいと思います。一般に人は1つの母文化を背負って成長し
ています。異文化とは、母文化として身につけていない、成長の過程で
身につけた文化と概念規定します。
では、異文化を理解するとはどういうことを意味するのでしょうか。
地球のグローバル化とともに、民族、国、社会に固有のものとして固定
的にとらえられてきた文化の空間的境界が流動的なものとなっています。
人々の背負う文化も流動しています。諸民族の文化は互いに影響を受け
て変容し、異文化接触によって新たな文化が生まれており(中村 1985:
61-68)、固定的な捉え方はできません。私は、このことを踏まえながら、
文化も個人も、その根底には変容しない部分が残ると考えます。
異文化の理解は難しく、母文化を共有しない人間同士の異文化理解は、
達成不可能であるとの報告もあります。異文化理解への試みは重層的で
深化するものと言えましょう。異文化理解を目指す過程そのものが異文
化理解と言うこともできます。異文化の理解を踏まえた多文化音楽教育
は、ショーウインドーに商品を並べるように、カタログ化してあらゆる
音楽を子どもたちの前に並べるということではありません 1)
(降矢 2007:
18、23-26)。
異文化音楽の指導には、音楽をそれが育まれた社会的・文化的な脈絡
の中で取り扱い、人々の暮らしの中で育まれた音楽の意味を理解しよう
とする観点が重要です。音楽科の場合、他教科授業のように、言葉や画像・
映像で説明するやり方に加えて、
「第 1 章 アメリカの多文化音楽教育」で
明らかにしたように、パフォーマンス、つまり表現の体験を通して初め
て理解へと進む観点が求められます。異文化音楽の背景やその音楽を育
んだ人々の生活や心情、音楽の構造や、作曲家についてなどの知的な理
解をベースにした、学習者の主体的な体験が何よりの手がかりとなるの
です。
導入としての教師の実技や話、現地の自然や生活、衣食住にかかわる
映像、何よりも現地の生産物などに触れる体験が学習者のモチヴェーショ
ンとなります。創造的な音楽活動は、異文化音楽の学習の導入としても
1)p. 13 注 10 の基調講演と、同シンポジウムのラウンドテーブル(降矢 2007:11-31)
。
17
有効ですが、学習から得た学びをもとに新たな音楽を創るという発展的
な活動としても重要です。しかし、文化を継承することなく、「自由な発
想」2) で創作することは危険であることを忘れてはなりません。文化は、
歴史的に継承と発展を繰り返しています。教育の目的もその上にありま
す。
新たな観点をもつ多文化音楽教育の指導法は、以下のようにまとめる
ことができます。
(1)学習者が、音楽文化の育まれた土地の生産物にふれる体験を、音楽学習の
導入とする。
(例:楽器、衣服、民具、美術品、装飾品、食べ物など)
(2)教師が学習対象の音楽文化の第二次継承者 3)として、実技の表現や語
りによって、学習者の異文化学習への興味や意欲を喚起する。
(3)表現の体験を手がかりとして、表現と鑑賞と知的理解(音楽の構造、
背景としての環境、暮らし、歴史、宗教など)、創作活動などを有機
的に関連させて授業を組織する。
(4)音楽文化を社会的・文化的な脈絡の中でとらえ、本来の伝承の方法を
尊重し、本来の唱法や楽器を用いて、第二次口頭性による映像であっ
ても伝承者からできるだけ直接的に学ぶ場を設定する。口頭伝承に
よって伝承された音楽文化は、口頭伝承で伝える。
全ての音楽は、それを母文化とする伝承者から直接に学ぶことが最も
有効です。伝承者による直接的な口頭性による学習が不可能で、映像に
よる第二次口頭性から学ぶ場合であっても、伝承者から学ぶように感じ
ることができる疑似体験の場を設定しましょう。教師は、自身の実演や
語りで学習者のモチヴェーションを喚起した上で、伝承者とのよきパイ
プ役を務めることが大切です。伝承者は、学習者の実態を把握していま
せんから、教師が伝承者から学習者に相応しい形でそのエッセンスを引
2)平成 10 年度の学習指導要領に書かれた用語。
「自由な発想でつくって表現する活動」
(文部省 1998)。
3)母文化ではない文化を伝承者の心をもって継承する人を表す造語。「用語の解説」p.
85 参照のこと。
18
第3章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の指導法
き出すことが必要です。また、一般的に行われがちですが、五線譜など
の西洋音楽の手法を用いて西洋音楽以外の音楽文化を教えてはなりませ
ん 4)。それぞれの音楽は、構造、要素、内容、考え方、意味などにおいて
異なっているからです。
3-3 教師の取り組みについて
多文化音楽教育において、伝承者からの直接的な学習が可能な場合も、
視聴覚教材を用いて第二次口頭性による学習を行う場合も、教師にはこ
れまでにない新たな観点をもつ取り組みが求められます。その理由は、
扱う教材が教師にとってもこれまで触れたことのない異文化音楽である
場合が多く、表現活動にしても、鑑賞活動にしても、社会的・文化的な
脈絡と関連付けた指導法が求められ、新たに教材研究を行う必要がある
からです。一般的に教師には、職場異動がありますから、配属された地
域の音楽文化の教材研究は、その度ごとに行う必要があります。
授業において教師自身に共感のない教材を教えることは不可能です。
新たな教材研究の第一歩は、フィールド・ワークを行って伝承者から学び、
対象とする音楽文化についての知識と、育んだ人々の心情に理解と共感
を持つことです。教師は、音楽文化の直接的な伝承者にはなれませんが、
地域や地域の人々の生活における音楽文化の意味や、伝承方法などを学
び 5)、文化の第二次継承者となることができます。教師は、対象とする音
楽文化に対する温かい眼差しや共感と一定程度の実技のできる第二次継
承者になることが求められるのです。フィールド・ワークは、文化の第
二次継承者への最短距離なのです。
異文化音楽の学習の際、伝承者を招聘できる場合の教師の役割は、学
習者のモチヴェーションの喚起、伝承者とのパイプ役と伝承者からの学
びの深化にあります。教師は、伝承者任せにすることなく、伝承者と事
4)『中学音楽 1 音楽のおくりもの』(三善 2006)では、日本の伝統音楽は、すべて五
線譜で記されている。
5)民族音楽学者の柘植元一はフィールド・ワークの重要性について述べている(柘植
1998:43)
19
前に TT(Team Teaching)6)の方法と授業目的についての充分な話し合
いを行い、伝承者の指導を生かすための周到な準備をする必要がありま
す。伝承者は、生活の中で長い歳月をかけ、口頭伝承によって音楽文化
を伝承しています。しかし伝承者にとって、音楽文化はあまりに身近で
あるために、その特徴や意味、伝承法などについて意識化されていない
場合が多いのです。また、学習者の実態については予備知識がありません。
教師の役割は重要です。
そこで教師は、伝承者に対する敬意の念を前提にして、伝承者から音
楽文化や伝承法の特徴について、充分に引き出すことに配慮し、文化の
第二次継承者として、伝承者と学習者との適切なパイプ役を務める必要
があるのです。このような準備を行わない場合の伝承者の招聘は、学習
者に感動と影響は与えますが、異文化音楽の学習の目的としての文化背
景や人々の心情などの理解へと子どもたちを導くことはできません。
教師は、伝承者を招聘できる場合も、招聘できない場合も、学習者自
身が気づくことのできない異文化音楽の特質や技術的な課題などについ
て注意を喚起し、その本質的な学びを保障することが重要です。添付の
DVD 教材などの視聴覚教材を用いた第二次口頭性による学習の場合は、
教師の役割はさらに重要となります。第二次口頭性による学習の場合、
教師は、創意工夫によって、口頭性に劣らない質の学習にするため映像
の有効な活用の工夫が求められます。この場合教師は、伝承者のようで
あることとその音楽文化の第二次継承者であることの 2 役を務めること
が求められます。
異文化の学習の導入には、五感を働かせる直接的な体験が特に有効で
す。視聴覚教材による学習では、口頭伝承による学習者の実感を伴う直
接的な体験が欠けてしまいます。徳丸吉彦は、口頭伝承について、口と
耳だけでなく、触覚や臭覚や味覚も考慮に入れなければならないとして
います(徳丸 1996:94-95)。このような意味で、導入として学習対象と
する音楽文化の育まれた土地の生産物を食べたり飲んだり、触れたり、
着たりと直接触れる体験の重要度が増すのです。
6)教授組織改善の1つの方式である。
20
第3章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の指導法
新たな観点をもつ教師の取り組みは、以下の 3 点にまとめられます。
(1)フィールド・ワークを行い、伝承者から、民俗や音楽文化について学び、
できるだけ伝承者から実技の学習を行い、学習者に伝える内容を吟味
すること。
(2)学習目的と指導法、伝承者との TT のあり方(第二次口頭性による場
合も)を探究すること。
(3)導入として、音楽以外の生産物にふれる直接体験や、教師の第二次継
承者としての実技や語りによって学習者への興味・関心・意欲を喚起
し、伝承者からの学びを深化すること。
3-4 授業設計について
授業設計のための新たな観点は、学習者自身の音楽や音楽体験から出
発し、異文化の学習を経て再び学習者自身を見つめ直すという、自己確
認の側面です。上記の観点に立って、できるだけ伝承者による直接的な
学習の成立と自己確認を経た学習者の文化的アイデンティティの確立と
いう2つの目的を考えたいと思います。これは、視聴覚教材による第二
次口頭性による学習であっても同様です。多文化音楽教育は、地元地域
の音楽文化があれば、そこから始めるのが最も有効です。地元地域の音
楽文化を扱う有効性は、以下の4点にまとめられます。
(1)伝承者が身近にいて、教師の事前学習も、学習者の学習も直接的に伝
承者から学習できる。
(2)学習者の文化的アイデンティティの確立に有効である。
(3)音楽文化の背景としての地域の特性や民俗を伝承者から直接学ぶこと
ができる。
(4)文化の中央集権化が進み、国内の音楽文化の多様性が失われつつある
現状を、食い止めることができる可能性がある。
一部の巨大化した新しい民俗芸能 7)を除いて、今日では、学習者も教
7)ヨサコイソーランや故郷創作太鼓など。
21
師も、地元地域に伝承される音楽文化に気づかなくなっています。「地元
地域の音楽文化から始める」という発想は、グローバル化した文化にさ
らされている子どもたちの現状には、そぐわないかもしれません。大都
市には民謡、民俗芸能など母文化となる文化の伝承が途切れているとこ
ろもあります。また、地域にそれらが伝承されていないところも増え、
伝承されていても子どもや学校とは関わりのない場合が多いからです。
しかし、このような理由で、地元地域の音楽文化を扱わない場合にも、
多文化音楽教育は学習者自身の音楽文化の世界から出発し、異文化音楽
の学習を経て、再び学習者に戻る形で授業設計をするという観点をもつ
べきでしょう。異文化理解や多文化音楽教育の目的の1つは、学習を通
して自己の文化的なアイデンティティをみつめることにあるからです。
地域に民謡や民俗芸能などが伝承されていない場合は、学習者の音楽体
験を観察し、ある程度類似性をもつ他地域の民俗音楽、あるいは、全国
の民俗音楽の中で、学習者の現状に即した教材を選ぶとよいでしょう。
また、保護者や祖父母の世代の地域の方から、子ども時代に遊んだわら
べうたを学ぶフィールド・ワークを行うことも有効です。
多文化音楽教育の授業設計の観点は、以下の4点にまとめられます。
(1)学習者自身の音楽の世界から(できれば地元地域の文化から)異文化
音楽の学習を始めること。
(2)学習対象の異文化音楽の背景に対して、五感による直接的な体験をさ
せること。
(3)学習者のもつ音楽文化と学習対象の異文化音楽の共通性と異文化性に
気づくこと。
(4)これらの学習成果を踏まえて、再び学習者のもつ音楽文化(地元地域
の音楽文化)に立ちかえり、学習を通して自己の文化的なアイデンティ
ティをみつめること。
以上に述べた多文化音楽教育の新たな観点をもつ視聴覚教材、指導法
の具体化、教師の取り組み、授業設計による異文化音楽の学習は、学習
者と教師の両者に変容をもたらし、身近にある異文化を受容する力を育
むでしょう。そして、国内にあるマイノリティの人々やその文化の存在
22
第3章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の指導法
や無意識的な「中央」と「その他の周辺地域」の文化という文化格差や
差別に気づくきっかけを得るのではないでしょうか。それは、世界に生
きるマイノリティの人々の存在や無意識的な文化の差別に気づくことに
もつながり、国内外にある多様な音楽文化を差別感なく受容する力を育
むことになるでしょう。この意味で、日本における多文化音楽教育も、
人間教育としての多文化教育の本来的な理念を踏まえることになるので
す。
23
第
4章
新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計
添付した DVD 教材を用いた授業設計を提案します。これらの授業は、
すでに様々な形で実践され、異文化受容について学習者と教師の双方に
一定の変容をもたらしました 1)。まず、DVD 教材について制作意図、教
材選択理由、意義、内容、使用法、教師の準備、使用上の留意点につい
て説明します。
4-1 多文化音楽学習DVD教材について
DVD 教材は、アイヌ民族の音楽文化
学習、椎葉の音楽文化学習、竹富島の
音楽文化学習、バリ島の音楽文化学習
の 4 種です。他に五箇山民謡
「こきりこ」
の DVD をゲッツとファーンと共同制
作しました。これは、ゲッツの GVIS
のシリーズに収められています 2)。
制作意図は、以下の 10 点です。
白老ポロトコタンのカムイノミの儀式
(1)音楽文化の表現・鑑賞の学習を、背景である諸要素(自然、生活、生
活習慣、宗教など)と切り離すことなく、総合的に扱えるように構成
する。
(2)民俗音楽は多くの場合、音楽と踊り(あるいは所作)は切り離せない
1)2004 年度から 2006 年度にわたり、小学校、中学校、高等学校、教員養成大学、特
別支援学校の教師十数名と提起した多文化音楽教育の理念と指導法に基づき、開発
した DVD 教材を用い、授業方法と DVD 教材の有効性について検証し、2004 年度、
2005 年度、2006 年度の日本音楽教育学会の全国大会において共同企画として発表し
た。また、福島、京都、東京で多文化音楽教育シンポジウムを開催して、その研究
成果を発表した。
2)前掲書 p. 6 注 10。
25
形で存在しているので、音楽と踊りの両方を切り離すことなく学べる
ように構成する。
(3)音楽文化本来の伝承方法を尊重し、本来的な唱法や楽器を用い、伝承
者を見ながら直接的に学ぶように構成する。
(4)学習の活動を通して、最終的には個々の音楽を育み、継承発展させて
きた人々の心の理解と共感を目指すことのできるような情報を収録す
る。
(5)表現の体験は、文化理解への最も大きな手がかりなので、音楽表現の
背景となる文化的な情報を有機的に関連させて扱うことができるよう
に構成する。
(6)表現の体験のために、伝承者による実技学習マニュアルを収録する。
(7)子どもに焦点をあて、子どもの芸能や学習場面を収録する。
(8)人々の心の理解と共感を目指すことができるように、芸能の中にある
祈り、地域の伝統的な手作業や食べ物の情報を収録する。
(9)演奏者や資料提供は、それぞれの文化の演奏、研究を代表する担い手
とする。
(10)フィールド・ワークを行うことのできない教師に対して、学習に充
分な情報を網羅する。
この DVD 教材では、おそらく多
くの教師や学習者が体験したことが
ないと思われる異文化の中から、異
文化受容の教材として学習効果が期
待できる音楽文化を取り上げまし
た。これらは子どもの音楽体験を豊
かにし、地球音楽の受容の窓口を拡
げる可能性を秘めています。具体的
竹富島の種子取祭 庭の芸能「ジッチュ」
な選択理由と、その対象は以下のとおりです。
(1)義務教育の中で扱われてこなかった国内のマイノリティの音楽文化;
ⅰ 北海道アイヌ民族の音楽文化 ⅱ 沖縄県八重山郡竹富島の音楽文化
26
第4章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計
(2)義務教育の中で扱われてこなかった異文化性の強い国内の音楽文化;
宮崎県椎葉の音楽文化
(3)音楽に現われる二元論 3)を体験することのできる音楽文化;バリ島の
音楽文化
(4)合掌造りの家などの文化背景と日本音楽の歌、踊り、楽器の 3 つを総
合的に学習できる教材;五箇山民謡「こきりこ」
DVD 教材を用いた実技体験を通して、以下の学習を行うことができま
す。
1) 北海道アイヌ民族の音楽文化
⑴ 「ウポポ」(歌)のもつカノンの様式。
⑵ 「リムセ」4)
(踊り)のもつリズム感。
⑶ 「ムックリ」
(楽器)のもつ倍音の響きと世界の口琴文化への広がり。
音楽を創る体験。
⑷ アイヌ民族の儀式、カムイノミやイチャルパなど文化背景の学習。
⑸ アイヌ語やアイヌ民族の食べ物や衣服など暮らしの学習。
2) 沖縄県八重山郡竹富島の音楽文化
⑴ 琉球音階による竹富島のわらべうたと民謡。
⑵ 種子取祭の芸能とユークイなどの芸能を支える行事。
⑶ 神司による民間宗教、亀甲墓などに象徴される竹富島の祈りと暮
らし。
⑷ 伝統文化としての八重山のミンサー織りと子どものミンサー織り
の学習。
⑸ 伝承者からの「ジッチュ」の踊りと三線の学習。
3) 宮崎県椎葉の音楽文化
⑴ 椎葉の子守唄や民謡。
⑵ 椎葉夜神楽の準備や演目、神楽の伝承方法。
3)宗教で、世界を光と闇、善と悪など、相対立する2つの原理の闘争として説明する
立場。
4)リムセと呼ばれるアイヌ民族の古式舞踊は、1984 年に国の重要無形民俗文化財に指
定され、2009 年 9 月にはユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に記載
されることが決まった。
27
⑶ 椎葉の暮らし、焼畑農業、椎葉蜂蜜、
手揉み茶作りなど。
⑷ 食生活と椎葉のことば。
⑸ 伝承者からの「大神神楽」の笛と踊り
の学習、御幣作りの学習。
4) バリ島の音楽文化 ⑴ 音楽文化に反映される二元論の考え
方。音楽に反映される二元論(ゴン・
ク ビ ャ ー ル 5) の 2 台 で 1 組 の 楽 器 か
ら発するうなりや「つがいリズム」6)、
ケチャ
7)
のパターンの合唱)。
し
め ひき き じん
嶽之枝尾神楽の「注縄引鬼神」
⑵ 指揮者のいないアンサンブルによるコミュニケーション力の育成。
様々なしかけによる指揮者のいないケチャやガムランのアンサン
ブルによるコミュニケーション力の育成。
⑶ 芸能と祈りの関係。
西洋クラシック音楽の自己
表現という音楽のあり方と
異なる、バリ・ヒンドゥー教 8)
の神々への捧げものという
芸能のあり方。
⑷ 音楽と舞踊の結びつきと異
文化性。
学校教育で教材として用い
バリ島のケチャ
5)以前からあったガムラン音楽を基に、1930 年頃から新しい楽器類を加えて開発され
たもので、ウガル、プマデ、カンティル、ゴン(日本では、ゴングと呼称されるこ
とが多い)、レヨン、クンダン、スリンなどの楽器で構成される。クビャールとは、
「マッチの炎のように燃え上がる」の意味で、大編成の楽器群によって華やかで迫力
のあるこの演奏形態は、近年最も一般化している。
6)バリ島ではコテカンと呼ばれる。入れ子になったリズム。インターロッキングとも
呼ばれる。
7)アルファベット表記(Kecsak)からケチャ、あるいは、ケチャックなど書かれる場
合もあるが、バリ島では、チャと呼ばれている。本著では、一般性をとって、ケチャ
と表記した。また、モンキーダンスなどと解説されることがあるが誤りである。
8)多神教。バリ島に伝来して土着の民間信仰と結びついたバリ島独自のあり方をもつ
ヒンドゥー教。
28
第4章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計
られる西洋音楽では体験しにくい音楽と舞踊の直接的な結びつき
や、初心者が学習を始める最初の瞬間から技術的な習熟度に関わ
らず体験することができる異文化性 9)。
5) 五箇山民謡「こきりこ」
⑴ 五箇山のわらべうたと民謡。
⑵ 合掌造りの知恵と紙 漉きなどの暮
らし。
⑶ 伝承者による五箇山民謡「こきり
こ」10) による歌、踊り、楽器の学
習 11)。
⑷ 伝承者によるわらべうたの学習。
DVD 教材は、創意工夫によって、以下
のように授業、ワークショップ、個人学習
など、幅広い目的に使用できます。
⑴ 教師の文化学習や実技学習。
⑵ 学習者の文化学習や実技学習。
五箇山民謡「こきりこ」の
ささら踊り
⑶ 表現の活動を手がかりにした多文化音楽教育。
⑷ 学習者のコンピューターを活用した調べ学習。
DVD 教材は第二次口頭性による学習のためのものなので、授業で活用す
る場合は以下の 4 点に留意して、学習者の直接的な体験を大切にしましょ
う。
⑴ 口頭伝承によって、五線譜やメモなどに置き換えることなく模倣
する。
⑵ 現地の本物の生産物を入手し、学習者が現地のものを食べたり、
9)バリ島の音楽文化以外にも、雅楽など優れた異文化性を学ぶことのできるアンサン
ブルはあるが、それらは、個別の演奏法の習得に時間がかかり、学校教育の場で、
短時間で異文化受容を意図するのに困難が大きい。
10)前掲書 p.6 注 10、または『DVD でまなぶ・おぼえる 富山県五箇山 こきりこ』
(2005
越中五箇山筑子唄保存会)に収められている。
11)民衆の楽器、こきりこ、太鼓、篠笛、ささら、棒ざさらなどが用いられる。
29
手でさわったり、音を出したりという五感による直接体験を重視
する。
⑶ 音楽と踊りや実技学習と文化理解を切り離すことなく、有機的に
関連づけて扱う。
⑷ 学習者が直接に現地の伝承者から学ぶような気持ちになることが
できる場面設定をする。
DVD 教材による第二次口頭性で授業を行った場合、その後、何らかの
形で学習者が現地の伝承者から直接に学ぶ場や、本物の演奏にふれる場
を作ることを心がけましょう。異文化音楽学習は実技の体験を手がかり
として、伝承者の生演奏の深い鑑賞を行うことで達成されるのです。
4-2 多文化音楽学習DVD教材を用いた授業設計
学習者にはすでに学校教育や社会環境の中で、西洋的な音楽性が身に
ついています。異文化音楽の指導にあたって、学習者の異文化性に対す
る拒否感を予測して、抵抗感を少なくするために西洋音楽的な手法を用
いて導入する傾向も見られます 12)。
音楽文化は、それぞれ独自性と共通する側面の両方をもっています。
私は、教師が十分な準備を行って、馴染みのない異文化性を薄めるので
はなく、出会いの瞬間から、異文化性に出会わせる工夫をし、異文化の
特徴や独自性と共通性を十分に体験させることが大切だと考えます。そ
のためにも、教師は授業の導入や経過の中で、第二次継承者として学習
者の意欲を十分に喚起したいものです。
日本の伝統音楽や諸民族の音楽を扱う場合に、代用品として西洋楽器
を用いたり、五線譜を用いて指導するという方法をとると、学習者は西
洋の音楽観でその他の音楽文化を考えたり感じたりすることになり、異
文化体験とはなりません。
12)皆川厚一は、LD『必携・新しい“世界の音楽”学習への手引き アジアの音楽と
文化』(山口他 1998)において、ケチャの指導にあたって、バリ人に立たせてパター
ンを手拍子させ、高校生にウッドブロックなどの西洋楽器を用いて指導している。
30
第4章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計
以下の 5 つの授業設計は、小学生から大学生、一般まで幅広い年齢層
の学習者を対象にしています。そのために、高度な内容にまで発展させ
ています。内容や時数は、学習対象者に合わせて、組み替えてください。
時数としてはおよそ、7-8 時間を考えています。
4-2-1 アイヌ民族の音楽文化による授業設計
1)他教科との連携
音楽科に加えて、以下のトピックを扱うことで、他教科と連携した授
業を行ったり、総合的な学習の時間の中で活用したり、ワークショップ
を行うことができます。
⑴ 国語科
アイヌ語、ユーカラ
⑵ 社会科
歴史、北海道旧土人保護法、同化政策と差別、アイヌ
新法、儀式、縄文文化 13)
⑶ 家庭科
伝統的な食べ物、衣服、刺繍、住居
⑷ 図画工作科 文様、民具、木彫(未収録)
⑸ 体育科
リムセ(古式舞踊)
⑹ 道徳
環境との調和、差別
⑺ 環境教育
自然観
⑻ 総合的な学習としてそれらの複合学習
2)教材性と授業のねらい
本土の音楽文化と異なる日本の先住民族であるアイヌ民族 14) の音楽
文化の受容とそこから諸民族の音楽への広がりをねらいとします。アイ
ヌ民族の文化に触れたことのない人にとっては、ウポポ、リムセ、ムッ
クリ、アイヌ語といずれをとっても馴染みがありません。しかし、伝統
的な座り歌ウポポは、西洋のカノンへ、ムックリは、サハなど世界の各
13)アイヌ民族は、縄文人の系譜を継いでいるとされる。
14)アイヌ民族が日本の先住民族であることを認める「アイヌ民族を先住民族とするこ
とを求める国会決議」が決議されたのは、2008 年 6 月 6 日である。1997 年まで、旧
土人法(北海道旧土人保護法 明治 32 年に制定)と呼ばれる法律があり、アイヌ民
族は、明治時代からその言語や慣習などを禁じられた。
31
地に伝わる口琴文化の世界への広が
りをもっています。アイヌ語は、弾
圧によって一時期伝承が途絶えまし
たが 15)、日本語にない美しさを持っ
て い ま す。 ア イ ヌ 語 で「 言 葉 」 は
「イタク」(そこに存在する魂)、「会
話」は「ウコイタク」(互いにそこ
に存在する魂を揺り動かす)(岡田
2008)ということなどを伝えたいも
ムックリを吹く子どもたち
福島県会津若松市立日新小学校
のです。
もう1つのねらいは、アイヌ民族が受けてきたマイノリティとしての
差別と不平等への歴史的な事実に気づくことにあります。アイヌ民族は、
アメリカやカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど他の地域の
先住民族と同じように、侵略と差別と自文化抑圧の歴史をもち、この歴
史を音楽学習の背景として学ぶことは、他の被抑圧の歴史から生まれた
音楽文化 16)の理解のための土壌となり得るでしょう。
授業には、匂いをかいだり食べたり、触ったり着たりすることができる
ように、以下のような現地の生産物などを用意し、直接体験の場を設ける
と理解が促されます。
⑴北海道の自然、刺繍を施した衣装や家、舟などの写真、⑵ムックリ、
⑶刺繍を施したマタンプシ、小物など、⑷ソトバ、行者ニンニクなど伝
統的な食べ物、⑸木彫 17)。
3)DVD 教材を用いた授業モデル
以下のような学習過程による授業モデルを組み立てることができます。
15)現在は、財団法人 アイヌ文化振興・研究推進機構の監修のもとに、STV ラジオ
が制作するアイヌ語講座などが行われ、『アイヌ語文法の基礎』(佐藤知巳:2008:
大学書林)も出版され、一般化の広がりが見られる。
16)20 世紀に生まれたジャズは、グローバル化したロックやポピュラー音楽の手法の
原点となるが、アフリカ系アメリカ人の奴隷制度の差別と抑圧を経て生まれたアフ
リカとアメリカのクレオール音楽ということができる。
17)社団法人 北海道ウタリ協会(http://www.ainu-assn.or.jp/)や釧路・根室・阿寒
湖のアイヌコタンなどで入手できる。
32
第4章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計
添付の DVD 教材を用いなくても様々な映像 18)等を用いて、この授業モ
デルを応用して多様な授業を組み立てることができます。
⑴ 導入:アイヌ民族の音楽文化のもつ異文化性との出会い
ⅰ ウポポ(座り歌)
(「サーオイ」や「イカムッカーサンケー」など)
を教師の音頭を追いかけながら歌わせる。
ⅱ これまで歌った西洋のカノンを歌わせ、西洋のカノンとウポポ
を歌ったときとの気持ちの違いを話し合わせ、その理由につい
て考えさせる。アイヌ民族の歌と西洋のカノンの共通性と相違
性に気づかせる。
ⅲ ウポポの映像を見て、一緒にウポポを歌う。衣装に注目させる。
⑵ 展開:
第一段階:異文化性の学習 1 アイヌ民族の文化と歴史との出会い
ⅰ アイヌ民族の衣服や刺繍、文様の意味を学ばせ、本土の刺繍や
西洋の刺繍などとの違いや共通性について話し合わせる。
ⅱ 映像からアイヌ語の片言を話させる。北海道や東北に残るアイ
ヌ語の地名について調べ、アイヌ民族が北海道の先住民族であ
ることに気づかせる。
ⅲ アイヌ民族の歴史と差別の学習を行う。
ⅳ アイヌ民話を読み、口頭伝承とユーカラについて学び、アイヌ
民族の人たちの考え方 19)について話し合わせる。世界の口頭伝
承や口頭文芸 20)についても知らせる。
ⅴ DVD 教材からカムイノミやイヨマンテなどの儀式の映像を見せる。
ⅵ 体験したアイヌ民族の文化についての感想を話し合わせる。
第二段階:異文化性の学習 2 ムックリから世界の口琴文化へ ⅰ ムックリは多文化音楽学習の教材として、幅広い可能性を持っ
18)財団法人 アイヌ文化振興・研究推進機構(http://www.frpac.or.jp/)では、多く
の映像資料の貸し出し等を行っている。
19)神々への祈りの心や自然の恵みに感謝し、環境と調和しながら自然を活用する考え
方。
20)神話や叙事詩、伝説、民俗語彙など口頭で伝承されるもの。アメリカの先住民族の
神話やフィンランドのカレワラのように多数存在している。
33
ている 21)。教師がムックリを吹き、小さなムックリから多様な
音が生まれ、自分で音楽を創っていくことを聴き取らせる。
ⅱ DVD 教材を使って、ムックリのもち方、弁の振わせ方(手首の
ノックの仕方)、鳴らし方(舌などの使い方)の基本を教える。ムッ
クリを鳴らす練習をさせる。
ⅲ DVD 教材から、弟子シギ子 22)のムックリの演奏を鑑賞させる。
ⅳ 視聴覚教材 23)を用いて、フィリピンやベトナムの竹の口琴を聴
かせる。感想を話し合わせ、次に鋼鉄製のサハやハンガリーな
どの口琴を聴かせる。
ⅴ アイヌ民族のムックリがアジアや世界の口琴文化への広がりを
もっていることに気づかせ、感想を話し合わせる。
ⅵ アイヌ民族の他にも、世界には、差別されてきた先住民族がい
ることを学ばせる。
⑶ まとめ:リムセを全員で踊る
ⅰ 教師の踊りからリムセ「ウタリオプンパレワ(さあ、立ち上がっ
て踊ろう)」を学ばせ、リズムの違いを丁寧に伝えた後、映像か
ら踊り方を学ばせる。
ⅱ 教師を交えて全員で歌い踊る。
4-2-2 椎葉の音楽文化による授業設計
1)他教科との連携
音楽科に加えて、以下のトピックを扱って、他教科と連携した授業を
行ったり、総合的な学習の時間の中で活用したり、ワークショップを行
うことができます。
⑴ 国語科
昔話、椎葉のことば
21)楽譜に記録される音楽ではなく、1. 自由にメロディーを作って吹く楽器である。2.
倍音を聞くことから、ホーミーなどの倍音唱法への広がりの可能性がある。3. アジ
アに広がる竹の口琴文化への広がりをもつ。4. 生涯にわたって身近において楽しむ
ことのできる楽器としての可能性がある。
22)阿寒湖アイヌコタン在住、ムックリの名手。阿寒湖口琴協会代表。世界口琴大会に
3 回出場した。著書に『私のコタン』(弟子 2001)がある。
23)日本口琴協会(http://www.koukin.jp/)が『サハ民族の口琴 ホムスの演奏技法(video
color 50min 1993/99)』を制作販売している。
34
第4章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計
⑵ 社会科
焼畑農業、林業
⑶ 家庭科
椎葉の手揉み茶、伝統的な食べ物、手まり作り
⑷ 図画工作科 注縄、御神屋、外神屋の飾り物
⑸ 体育科
神楽舞の舞
⑹ 道徳
狩猟生活と山の神信仰
⑺ 環境教育
照葉樹林と自然
⑻ 総合的な学習としてそれらの複合学習
2)教材性と授業のねらい
椎葉の音楽文化、焼畑農業 24)や蜂の子や鹿肉などを食す食文化、狩猟
生活と山の神信仰などは、日本人にとって古くからあった生活慣習と言
えますが、他の地域の子どもにとっては馴染みがありません。神楽は、
日本全国で行われている民俗芸能ですが、椎葉村では、20 を超える地域
で夜神楽と呼ばれる神楽が伝承されています。神楽の中では、村人が囃
し立てる独特のセリ歌も歌われ、演じ手と観衆が一体となって夜を徹し
て演じ楽しまれていて、神楽の古い形に触れることができます。椎葉には、
神楽の他にも豊富な民俗芸能や民謡が伝承されています。また、椎葉の
音楽文化は、日本の他の地域やアジアの諸民族の食生活や音楽文化への
広がりをもっています。授業のねらいは、辺境の地にあって豊かな椎葉
の音楽文化をその背景とともに知ることを通して、アジアの諸民族の音
楽へと拡がる共通性に気づかせることにあります。
授業には、匂いをかいだり食べたり、触ったり着たりすることができ
るように、以下のような現地の生産物などを用意し、直接体験の場を設
けると理解が促されます。
⑴椎葉の山々、焼畑、神楽の写真、⑵神楽太鼓や篠笛、⑶椎葉茶や稗
や粟、⑷日本蜂の蜜、⑸神楽の御幣など 25)。
24)学校行事その他で臨時的に取り組まれることがあるが、現在は、一般的には行われ
ていない。
25)椎葉民俗芸能博物館(http://www.shiiba − soed.jp/)、椎葉村商工会(http://
www.miya-shoko.or.jp/siiba/)などで入手できる。
35
3)DVD 教材を用いた授業モデル
以下のような学習過程による授業モデルを組み立てることができます 26)。
⑴ 導入:椎葉の自然や焼畑などの暮らし、神楽との出会い
ⅰ 嶽之枝尾神楽の演目の1つ「注縄引鬼神」を一部鑑賞させる。
ⅱ 自由な感想から、椎葉の自然や暮らし、この神楽の演目がどのよう
なものであるかを想像させ話し合わせる。
ⅲ 手に入れば、椎葉茶や蜂蜜を食す体験をさせる。
ⅳ 椎葉の自然や地理など映像
や写真によって学習させる。
ⅴ 焼畑農業の映像を見せ、日
本各地やアジアにも広がる
焼畑農業について学習させ
る。自然の活用と自然破壊
について話し合わせる。
ⅵ 稗や粟を実際に見せ、椎葉
の食文化・蜂の子や蜂蜜採
椎葉の神楽太鼓を叩く子どもたち
福島県伊達郡川俣町立福沢小学校
りの学習をさせる。
ⅶ 椎葉の自然、焼畑、神楽、食文化について感想を話し合わせる。
⑵ 展開:
第一段階:神楽太鼓と神楽舞の基礎の体験
ⅰ 映像から注縄の大祭の赤、緑、白の華やかな注縄立を見せる。
ⅱ 教師が、神楽太鼓の基礎を打って聴かせる。
ⅲ 神楽の準備の映像から、祝子 27)が太鼓や舞の練習をしている様
子を見せる。
ⅳ 大祭の注縄や祝子の太鼓や舞の練習をしている様子を見た感想
を話し合わせる。
第二段階:神楽太鼓の基礎学習
ⅰ 教師が唱歌を唱えて基本パターン 1、基本パターン 2 を、膝を打っ
26)福島県二本松市立二本松北小学校の山﨑純子が、福島県伊達郡川俣町立福沢小学校
で、椎葉の音楽文化を学ぶ実践を行った(降矢 2007:160-161)。
27)椎葉の夜神楽の舞手の呼称。
36
第4章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計
て示し、学習者に唱歌を唱わせ膝を打たせる。
ⅱ 映像から伝承者中瀬竹利の太鼓の基本パターン 1、基本パターン
2 を、叩き方を見ながら学ばせる。
ⅲ 神楽の演目のうち、「願成就(大神)神楽」の一部を見せて、太
鼓のパターンを聴き取らせる。
ⅳ 映像に合わせて唱歌を唱え、膝を打たせる。
第三段階:神楽舞の基礎学習と神楽を盛り上げるセリ歌
ⅰ 教師が神楽太鼓の唱歌を唱えながら、舞の基礎の動きを教える。
ⅱ 神楽の準備の映像から、祝子の太鼓の練習をしている様子の映
像を見せる。
ⅲ 映像から鈴おろしと神楽舞の足運びを見せて、伝承者から舞の
初歩的な足運びを学ぶ体験をさせる。
ⅳ 再び「願成就(大神)神楽」の一部を見せて、舞の足運びを確
認させる。
ⅴ 神楽舞について、実際に試してみた感想を話し合わせる。
ⅵ 教師がセリ歌の説明をし、映像から神楽セリ歌の映像を見せる。
ⅶ 映像から、地域の人々全員で準備する様子を見せる。
ⅷ 全員で準備し、セリ歌を歌って見物人も参加する椎葉の神楽と
神楽を支える人々の心や神楽の伝承の方法についての感想を話
し合わせる。
第四段階:嶽之枝尾神楽の鑑賞とアジアへの拡がり
ⅰ 神楽の演目のうち、映像から「子ども神楽」を見せ、セリ歌や
演者と聴衆が一体になって盛り上がる様を鑑賞させる。最初に
見せた「注 縄引鬼 神」や嶽之枝尾神楽の代表的な演目である
「星指」なども一部鑑賞させる。時間があれば、椎葉の子守唄を
聴かせる。
ⅱ アジアの各地で行われている焼畑農業や仮面を付けた舞踊など
を見せ、日本の文化のアジアへのつながりについて語る。
ⅲ 椎葉の神楽、アジアの芸能、地元地域の芸能について学んだ感
想を話し合わせる。
⑶ まとめ:神楽太鼓を打って、舞の基礎を踏む
37
神楽太鼓に合わせて、全員で舞の基礎を合わせる。
4-2-3 竹富島の音楽文化による授業設計
1)他教科との連携
音楽科に加えて、以下のトピックを扱うことで、他教科と連携した授
業を行ったり、総合的な学習の時間の中で活用したり、ワークショップ
を行うことができます。
⑴ 国語科
昔話 ⑵ 社会科
人頭税 28)や方言札 29)などの歴史、重要伝統的建造物
群保存地区の町並み保存
⑶ 家庭科
伝統的な食べ物、八重山ミンサー織り 30)などの織物
⑷ 図画工作科 シーサー 31)
⑸ 体育科
種子取祭(たねとりさい)の芸能、わらべうた(動き
を伴う表現)
⑹ 道徳
⑺ 環境教育
「安里屋ユンタ」32)とクヤマの物語
珊瑚礁、竹富島の動植物、自然保護
⑻ 総合的な学習としてそれらの複合学習
2)教材性と授業のねらい
竹富島の音楽文化は、本土とは異なる沖縄の民間宗教である神に仕え
る神司とその祈り、そして島民全員が参加する約 300 年の歴史をもつ種
子取祭に象徴されると言えましょう。琉球弧 33)のわらべうたや民謡の多
28)担税能力の差に関係なく、各個人に対して一律に同額を課する租税で、竹富島では、
1637 年(寛永 14 年)から 1903 年まで、15 歳から 50 歳までの男女は役人や身障者
以外すべて貢租の負担者となった。
29)学校で方言を使うと、見せしめに方言札を首から吊り下げさせられるなど、徹底し
て方言を排除する教育が行われていた。明治時代に取り入れられ、昭和 40 年ごろま
で続いた。
30)綿糸を藍で染めて織った細帯で、5つの絣柄と4つの絣柄を特徴とする。
31)シーサーは中国から伝わった魔よけの獅子で、広く沖縄一帯の家屋の屋根に飾られ
ている。
32)沖縄県八重山諸島に伝承される歌謡。多くは長編の叙事詩で、労働の際に男女掛け
合いで歌われる。
33)日本列島西南端の九州島から南約 1,260km の洋上に分布する 199 余の島々で、地
38
第4章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計
くは、琉球音階 34)でできていますから、南へと広がるフィリピン、イン
ドネシアなどアジアの音楽文化へのつながりを感じることができます。
ユークイ 35)の銅鑼は、中国やフィリピンなどの銅鑼の音楽と共通性が感
じられます。神司は、朝鮮半島のムーダン(巫女 36))とも共通点をもっ
ています。竹富島の音楽文化の学習では、本土の音楽文化との異文化性
と共通性に気づくこと、アジアの文化へのつながりを学習させることが
ねらいとなります。
授業には、匂いをかいだり食べたり、触ったり着たりすることができ
るように、以下のような現地の生産物などを用意し、直接体験の場を設
けると理解が促されます。
⑴亜熱帯の植物、珊 瑚礁の美しい海岸、掃き清められた珊瑚礁によ
る白砂の道などの大きな写真、⑵珊瑚礁の白砂、⑶サンピン茶や黒 糖、
インスタントのソーキそば、アンダギー、もずく、シークアンサー、ゴー
ヤなどの食べ物、⑷三 線、⑸くば笠、八重山ミンサー織りの民芸品な
ど 37)。
3)DVD 教材を用いた授業モデル
以下のような学習過程による授業モデルを組み立てることができます。
添付の DVD 教材以外の様々な映像 38)等を用いて、この授業モデルを応
用して授業やワークショップを組み立てることができます。
⑴ 導入:竹富島のわらべうた遊びと背景の学習
ⅰ 教師の歌と遊びで竹富島のわらべうた「牛ぬぱん ソレソレ」
を覚えさせる。
ⅱ DVD 教材から竹富島のわらべうた「牛ぬぱん ソレソレ」を見
理学上で「南西諸島」、「琉球列島」などと総称される。
34)移動ドでは、ドミファソシドの音階。バリ島のペログ音階に通じる。
35)種子取祭で行われる、豊作を祈る行事で、
「世乞い」。道歌、庭歌(巻き歌・シキドー
ヨー)、座敷歌(稲が種子アヨー・根うりユンタ)があり、「巻き歌」は、神司を先
頭にしたユークイ人と迎える主人側の応答の歌となっている。
36)朝鮮半島の伝統的な女性のシャーマン。
37)各地で開催される沖縄物産展や沖縄の食品等を扱った店、竹富島民芸館などで入手
可能である。
38)豊富な資料や特産物を全国竹富島文化協会(http://www.napcoti.com/)、喜宝院・
蒐 集館(http://www2.tontonme.ne.jp/users/kihouin/)を通して得ることができる。
39
て遊ばせる。本土の「ずいずいずっ
ころばし」を遊ばせ、比較させる。
ⅲ 映像の「牛ぬぱん ソレソレ」の遊
ばれる竹富島の赤瓦の屋根、珊瑚の
塀、珊瑚の白砂の道に注目させる。
ⅳ 竹富島の食べ物を食べさせたり、八
重山のミンサー織り 39) を見せたり
する。
ⅴ ⅰ−ⅳの活動から自由な感想を話し
合わせる。
ⅵ DVD 教材から、竹富島の自然や町
並み保存などについて学ばせる。
ⅶ DVD 教材から竹富小学校の子ども
たちの地域学習八重山のミンサー織
りを見せて、竹富島の織物について
沖縄の三線の授業風景
宮城県白石女子高等学校
調べ学習をさせる。
⑵ 展開:
第一段階:竹富島のわらべうたと民謡 40)
ⅰ DVD 教材から上勢頭同子 41)のわらべうた「ふーゆべまー」、
「ピ
ビジャー」を見せて模倣して学ばせる。
ⅱ 可能であれば、三 線に触れ、沖縄の音階や音色を感じさせる。
ⅲ DVD 教材から「安里屋ユンタ」の話を聞かせ、共通語歌詞の「安
里屋ユンタ」を歌った後、竹富島の言葉による歌詞を言わせる。
ⅳ DVD 教材から「安里屋ユンタ」を鑑賞させる。
第二段階:文化背景の学習 1 竹富島の祈りと種子取祭の学習
ⅰ 竹富島のお墓と本土のお墓の違いを話し合わせる。神司とその
39)八重山で作られている八重山上布と八重山ミンサー織りは、国の伝統工芸品に指定
されている。織物の中に 5 つと 4 つの四角模様が織り込まれ、何時の世までもと女
性がその思いを織り込んだと言われる。
40)わらべうたの曲名の表記は、LP『竹富島のわらべうた』(高江洲 1979)による。
41)上勢頭亨の長女、竹富島のわらべうたや民謡を亨から受け継いだ。CD『竹富島の
わらべうた』(高江洲 2002)リリース。添付の DVD 教材で歌唱している。
40
第4章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計
祈りについて学ばせ、DVD 教材から神司の祈りを見せる。
ⅱ DVD 教材から、種子取祭の朝と夜のユークイの映像を見せて、
神司の役割を実感させる。種子取祭の話と準備や食べ物につい
て学ばせる。
ⅲ 種子取祭の食べ物、蛸とにんにくの酢漬けを作っておいて食べ
させる。
ⅳ DVD 教材から種子取祭の神司の踊り「スーブドゥイ」を見せる。
第三段階 : 竹富島の芸能に現われた伝統と現代
ⅰ 全島民をあげて継承している種子取祭と人々の関わり、神への
捧げものとして執り行われる芸能について、DVD 教材から学ば
せる。
ⅱ 種子取祭の庭の芸能から、「ジッチュ」、「ウディボウ」、奉納芸
能から「ミルク」を見せて感想を話し合わせる。
ⅲ ビギン 42)の CD を聴き、人口 300 人余りの島で、ビギンの 1000
人のコンサートが実現した話をして、島の伝統と現代について
話し合わせる。
ⅳ 可能なら、発展として、DVD 教材から神への捧げものとして踊
られるバリ島のバリ舞踊を鑑賞させ、種子取祭の芸能との違い
や共通点などについて、どのように感じたか話し合わせる。
第四段階:文化背景の学習 2 沖縄の歴史と現状
ⅰ 人頭税や方言札、第二次世界大戦時の沖縄戦、アメリカ占領や
米軍基地の話をして、沖縄の歴史と現在について話し合わせる。
ⅱ 方言札の意味と文化を失うことについて、自分の地域の言葉や
地域の文化について話し合わせる。
ⅲ 可能なら、アイヌ民族やアメリカの先住民の同じような歴史や
文化を失った歴史についても学ばせる。
⑶ まとめ:民謡から竹富島の明るいたくましさを感じとって歌う
DVD 教材から上勢頭同子の「くばぬ葉ユンタ」を鑑賞させ、竹
42)沖縄県石垣島出身のグループ。沖縄にこだわった歌作りを行い、2000 年竹富島で
ライブを行った。
41
富島の人々の明るさ、たくましさを感じとらせ、口三味線(テン
ツテン テンツ テンツ テンツ テンツ テン)を一緒に歌う。
4-2-4 バリ島の音楽文化による授業設計
1)他教科との連携
音楽科に加えて、以下のトピックを扱うことで、他教科と連携した授
業を行ったり、総合的な学習の時間の中で活用したり、ワークショップ
を行うことができます。
⑴ 国語科
インドの叙事詩ラーマーヤナ 43) の物語、インドネ
シア語
⑵ 社会科
熱帯性気候や珊瑚礁の海に囲まれた風土、火山、祭
り仲間組織、米の多毛作、儀式
⑶ 家庭科
市場、料理、お供えづくり、台所、服装
⑷ 図画工作科
バリ舞踊の衣装、ワヤン人形の造形、仮面
⑸ 体育科
バリ舞踊の踊り方の基礎
⑹ 道徳
二元論における善悪の考え方、魔女ランダ
⑺ 環境教育
珊瑚礁の保護
⑻ 総合的な学習としてそれらの複合学習
2)教材性と授業のねらい
ケチャやガムランは、自立した心をもって友達とコミュニケーション
する力、自分が声や音を出しながら他の声や音を聴く力をもつことが前
提となります。これらの力は、どの音楽文化でも必要ですが、ことにケチャ
やガムランの場合は、音楽の成立自体に不可欠な前提であるため、常日
頃の音楽活動の中でこれらの力を育成する必要があります。これらの力
は、学習の前提であると同時に学習目的でもあるのです。
授業のねらいとしては、バリ島の音楽文化がもつ、以下の 5 点の異文
化性を体験することがあげられます。
43)ヒンドゥー文化圏に伝来する古代インドの二大叙事詩のひとつで、紀元前 2 世紀頃
に成立したといわれる。バリ島へはヒンドゥー文化と共に伝来し定着した。古代英
雄コーサラ国の王子ラーマが略奪された妃シーターを奪回するというあらすじ。
42
第4章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計
⑴ 音楽に現われた二元論の考え方(コテカンの奏法)。
⑵ 西洋の拍子とは異なる時の周期 44)。
⑶ 様々な仕掛けによる指揮者のいないアンサンブル。
⑷ 神への捧げものとしての芸
能のありかた。
⑸ 芸能によるトランス状態 45)。
授業には、匂いをかいだり食べた
り、触ったり、着たりすることがで
きるように、以下のような現地の生
産物などを用意し 46)、直接体験の
場を設けると理解が促されます。
⑴文化を育んだ亜熱帯の気候、珊
瑚礁の美しい海岸など、風土を理
ケチャの授業風景
福島大学教育学部附属中学校
解するための優れた写真や映像、⑵ガムランの楽器や口琴、アンクルン
など諸楽器、⑶お香やバリ島の食べ物、⑷お供えとしての南の花々、⑸
カインやクバヤ、ケチャの衣装など、⑹ケチャ全編の映像資料。
3)DVD 教材を用いた授業モデル
以下のような学習過程による授業モデルを組み立てることができます。
この授業モデルを応用して授業やワークショップを組み立てることもで
きます 47)。
バリ島の芸能を学ぶキーワードは、自立とコミュニケーション力、互
いを聴く力です。本著では、ガムランは、教育の現場で入手することが
44)西洋の拍子と異なる時間の枠組みでゴン類が担当する。西洋の拍子とは違って重心
の移動を伴わず、1 拍が同時に最終拍であるという独特の拍感をもつ。8 拍周期や
16 拍周期が多いとされる。バリ島では、ゴング(gong)の発音 ng を表に出して発
音せず、ゴンのように発音するので、現地の言葉に近い表記を用いた。
45)芸能体験の中で、一種催眠状態のような、意識が通常とは異なった状態になること。
バリの芸能では、演者が、このような飛んだ状態になっていくことが多い。
46)簡易楽器や御香、バリ・コーヒー、お菓子などの食べ物、装飾品などは楽器店や輸
入雑貨店などで入手が可能である。
47)宮城県七ヶ宿町立七ヶ宿中学校の橋本牧が、宮城教育大学附属中学校で、ガムラン
を教材にして実践を行った(橋本 1999-2000)。(「授業提案のための資料・音源」 p.85)。
43
困難だと思いますので、ケチャ
を 教 材 に 扱 い ま す。 ケ チ ャ は、
口ガムランとも呼ばれ基本的な
音楽構造にガムランと共通性が
多いのです。
ケチャは、学習者にとっては、
チャッという叫び声を出すこと
自体に抵抗感が大きい場合もあ
りますが、抵抗感を恐れて手拍
子などで導入しないようにしま
ガムランの授業風景
宮城教育大学附属中学校
しょう。子どもたちは必ず受容しますので、常日頃から異文化に対する
抵抗感を払拭する試みも必要です。教師の第二次継承者としての声の出
し方や演じ方、トランス状態など教師自らが殻を破って取り組むことが
求められます。
バリ島の音楽文化の異文化性の学習を目的とするケチャでは、パター
ンの合唱に終わらせないという視点が重要です。チャッという合唱は、
ケチャの一要素であって、その上にラーマーヤナ物語を語りや舞踊によっ
て神への捧げ物として演じられます。ケチャの全編を体験することは困
難ですし、必要ではありませんが、ケチャを構成するチャッという合唱
以外の様々な要素を体験できるように、DVD 教材には、そのためのモデ
ルを収録しました。動作をつけて、入場や祈りを含めた上演スタイルを
とって演じて欲しいと思います。その際、衣装や花などを身につけるこ
とは、学習者にとって学習へのモチヴェーションとして大変有効です。
また、ケチャの学習では、ケチャを支える諸要素、自然、生活、生活
習慣、宗教などと切り離すことなく、総合的に学ぶ必要があります。そ
して、西洋の拍子とは異なる時の周期という概念を絶えず感じることが
大切です。なお、この授業設計の全ての段階を踏まえる必要はありません。
⑴ 導入:日本とは異なる熱帯の島、バリ島への導入
ⅰ バリ島のお香をたき、ゆったりと気持ちと身体をリラックスさ
せる。寝転んだり、ヨーガなどを試みたりするのもよい。
ⅱ 導入として、DVD 教材からバリ島の自然や芸能の映像を見せる。
44
第4章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計
ⅲ 気候風土、芸能の違いについて、自由に感想を話し合わせる。
ⅳ 二人一組になり、背中を合わせて胡坐をかいて、教師の第二次
継承者としての 8 拍周期の身体のゆれを模倣させながら、チャッ
ツ チャッツ チャッツ チャッツとお腹から声を出させる。
コミュニケーション体験 1。
ⅴ 映像からケチャを少し見せる。
ⅵ 特徴的なこと、気づいたこと、この芸能が何を目的にしている
かを考えさせる。
⑵ 展開:
第一段階:異文化性の学習 1 神への捧げものとしての芸能・入れ子
のリズムの創造学習
ⅰ DVD 教材の上演のモデルを見せて、最初の祈りの場面を模倣さ
せる。
ⅱ 学習者の日常にある祈りについて話し合わせ、芸能における祈
りの意味について考えさせる。
ⅲ ケチャの入れ子のリズム(コテカン 48))を体験するために、二
人一組になって、入れ子のリズムを作って合わせる創造的な音
楽学習を行う。コミュニケーション体験 2。
ⅳ コテカンのリズムがバリ人の二元論の考え方から来ていること
を話し、DVD 教材から魔女ランダとお葬式の映像を見せ、芸能
や儀式に現われた人々の考え方について話し合わせる。
第二段階:異文化性の学習 2 ケチャの伝承法に則ったパターンの学
習
ⅰ バリ島の伝承法を学ぶために DVD 教材から、子どものガムラン
と舞踊のレッスンの映像を見せる。
ⅱ 五線譜を用いない口から口、身体から身体へという伝承方法に
ついて話し合わせる。
ⅲ 映像から伝承者を見せてケチャのパターンの学習を行う。パター
ンの学習は、必ず時の周期を唱え、聴きながら行う。時の周期の
48)バリ島の音楽に特徴的な入れ子のリズム。インターロッキング奏法。
45
説明を行って、もとになっているガムラン楽器の時の周期を聴か
せる。コミュニケーション体験 3。
ⅳ 一度に全部のパターンを学習させるのではなく、学習者の能力
に応じて負担にならないようにパターン練習し、よく聴き合い、
コミュニケーションしながら時の周期を聴いて合わせていく。
パターンの学習は、西洋式にまとまったグループに分けて、1
つのグループに1つのパターンという形で練習をさせない。パ
ターンは、1つ1つ個別に行わず、時の周期を聴きながら、加
算式に合わせていく 49)。コミュニケーション体験 4。
ⅴ パターンの学習は、できればトランス状態の擬似を体験できる
ところまで、熟達させる。コミュニケーション体験 5。
ⅵ 暮らしの中にある考え方が、ケチャのパターンの入れ子のリズ
ムに反映されていることについて話し合わせる。
第三段階:異文化性の学習 3
生活における祈りの意味とケチャの成
立、芸能の現代化についての学習
ⅰ DVD 教材から、お供え作りなど生活の中の祈りの映像を見て、
もう一度祈りについて考え、芸能を捧げるという意味を考えさ
せる。
ⅱ 可能なら、DVD 教材から椎葉の神楽や竹富島の種子取祭の芸能
を見て、日本の芸能も神に捧げる芸能であることを学ばせ、バ
リ島の芸能との類似点について気づかせる。
ⅲ 可能なら、DVD 教材などによって竹富島の琉球音階による民謡
を聴かせ、バリ島の音階と沖縄の音階との共通性に気づかせる。
ⅳ DVD 教材からバリ舞踊を見て、バリ島の伝統的呪術の中に、舞
踊が取り入れられてケチャが成立したことを学ばせる。ケチャ
成立の助言者ウォルター・シュピース(Walter Spies)50)の仕事や、
バリ・ルネサンス、伝統の現代化についても学ばせる。ケチャ
49)ケチャのこの指導法は、グヌン・ジャティ歌舞団が 1997 年に宮城教育大学で行っ
たワークショップにおける指導法である。
50)ドイツ人の画家、音楽家で映像作家でもあった。1930 年代に伝統的な呪術サンヒャ
ンに、古代インドの叙事詩ラーマーヤナ物語と女性の舞踊を組み合わせてケチャを
創ることを助言した。
46
第4章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計
以外の芸能、ガムランと舞踊を鑑賞させる。
⑶ まとめ:ケチャの上演の体験
耳に紅白の花をつけ、入場、祈り、ケチャの合唱など DVD 教
材の上演見本のように、できれば衣装を着けて演ずる。ケチャの
衣装である腰巻の白と黒の格子柄は、白は正義、黒は邪悪という
バリ人の二元論の考え方を象徴していることを説明する。
4-2-5 五箇山の音楽文化による授業設計
1)他教科との連携
音楽科に加えて、以下のトピックを扱うことで他教科との連携した授
業を行ったり、総合的な学習の時間の中で活用したり、ワークショップ
を行うことができます。
⑴ 国語科
昔話
⑵ 社会科
歴史、五箇山の自然、合掌造りの家、民俗と暮らし
⑶ 家庭科
伝統的な食べ物、衣服
⑷ 図画工作科
合掌造りの建築様式、和紙づくり
⑸ 体育科
しで踊り、ささら踊り、手踊り
⑹ 道徳
環境との調和 ⑺ 環境教育
自然と厳しい自然に調和して生きる暮らしの知恵
⑻ 総合的な学習としてそれらの複合学習 2)教材性と授業のねらい
五箇山民謡「こきりこ」51)は、1つの教材で、日本民謡の歌い方、日
本の踊りの踊り方、日本の庶民の楽器であるこきりこ 52)、太鼓、篠笛な
どの演奏法を容易く学習できます。授業のねらいは、日本の伝統音楽の
学習の基礎となる「こきりこ」の歌、踊り、楽器演奏の 3 種を総合的に
体験することにあります。また、五箇山は、かつて雪の時期には集落ご
との行き来さえままならず、唯一の娯楽が民謡でした。雪国の生活の知
51)富山県五箇山民謡「こきりこ」は、前掲書 p. 6 注 10 に収められている。
52)打楽器。7 寸 5 分(約 23cm)に切った 2 本の竹を打ち鳴らす楽器で、合掌造りの
屋根に使われた竹が囲炉裏の煙で燻された煤竹から作られている。
47
恵の結晶である合掌造りの家など背景の学びも豊富です。
五箇山では特製の篠笛が用いられていますが、塩ビ管によって容易く
手作りし、使用させることが可能です 53)。日本の民俗芸能は、各地で伝
承が困難になっていますが、伝承が困難なものが篠笛だと言われていま
す。「こきりこ」の学習の中で篠笛を学習することは、その後、学習者が
各地の民俗芸能の伝承に貢献する可能性を保障することにもつながりま
しょう。
授業には、匂いをかいだり食べ
たり、触ったり着たりすることが
できるように、以下のような現地
の生産物などを用意し、直接体験
の場を設けると理解が促されま
す。
⑴五箇山の自然・文化を伝える
大 き な 写 真、 民 話 の 本、 民 話 の
CD やビデオなど、⑵楽器類(こ
塩ビ管の篠笛を吹く子どもたち
福島県伊達郡川俣町立福沢小学校
きりこ、篠笛、太鼓、ささら、棒ざさら)、⑶「こきりこ」の装束、⑷五
箇山の和紙、民具・民芸品、⑸五箇山豆腐、漬物などの食べ物 54)。
3)DVD 教材 55)を用いた授業モデル
以下の学習過程による授業モデルを組み立てることができます 56)。
53)DVD 教材の補作として、塩化ビニル樹脂を主原料とした『塩ビ管による篠笛づくり』
のビデオを制作した。塩ビ管による篠笛は、安価で容易く製作でき、日本の楽器の
学習に有効である(降矢他 2008)。
54)越中五箇山筑子唄保存会五箇山商工会(http://www.shokoren-toyama.or.jp/
~gokayama/top.htm)などを通じて入手が可能である。
55)前掲書 p.6 注 10 に収められている。「こきりこ」については、日本語版の DVD
を制作していないので、英語版を使用されたい。英語版は、ネットで購入できる。
英語版の使用に困難がある場合は、『DVD でまなぶ・おぼえる 富山県五箇山 こきりこ』(2005 越中五箇山筑子唄保存会)を使用することもできる。英語版は、
Kokiriko: Traditional Dance and Song from Gokayama, Japan と題し、View Song,
Learn Song, Learn Dance, About Song の項目で、伝承者から「こきりこ」を学べる
ように構成されている。About Song の項目には、「こきりこ」の背景として、山崎
シイの歌や、「こきりこ祭り」、「子どもこきりこ」も収められている。
56)宮城県七ヶ宿町立七ヶ宿中学校の橋本牧が、宮城教育大学附属中学校で、五箇山民
48
第4章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計
⑴ 導入:文化学習 1 五箇山の暮らし、合掌造りの家、「こきりこ」
の学習
ⅰ 教師の語りと「こきりこ」の歌唱で、学習者を「こきりこ」の
里へ誘う。
ⅱ 合掌造りの家並みなどの写真などを見せる。
ⅲ 写真を見た印象から、「こきりこ」の里の暮らし、合掌造りの家
について、自由に想像させ話し合いをさせる。
ⅳ 現地の生産物が入手できれば食べてみるなど、直接的な体験を
させる。
ⅴ 楽器のこきりこを見せ、こきりこを叩かせる。こきりこが合掌
造りの天井で燻された煤 竹であることを説明し、合掌造りの家
の暮らしについてもう一度話し合いをさせる。
⑵ 展開:
第一段階:民謡の歌い方と日本の楽器の演奏法の学習 ⅰ 教師の歌に合わせて、こきりこを叩きながら「こきりこ」を歌
わせる。
ⅱ 踊りや楽器伴奏のついた「こきりこ」の演奏を鑑賞する。感想
の話し合いをさせる。
ⅲ 岩崎喜平 57)の「こきりこ」の歌い方について話し合わせ、民謡
の歌い方について考え合わせる。これまで歌ってきた頭声的な
声の出し方との違いについて考えさせる。
ⅳ 自然な日本語による民謡の歌い方を習得させる。気持ちよいこ
とを感じさせる。
ⅴ 伝承者の演奏を見せて、太鼓、ささら、こきりこ、棒ざさらの
演奏の仕方を学ばせる(できれば篠笛も。篠笛については、教
師の個別の授業が必要である)。
ⅵ 歌と伴奏を合わせて演奏体験をさせる。
謡「こきりこ」を教材にして、塩ビ管で篠笛を作り、歌、踊り、日本の楽器による
実践を行った(橋本 2000-2001)。(「授業提案のための資料・音源」 p. 85)。
57)越中五箇山筑子唄保存会「こきりこ」の歌い手。無理の無い自然な発声による歌い
方で知られる。
49
第二段階:文化学習 2 「こきりこ」の歴史と現代、そして地元地域へ
の眼差しへ
ⅰ 「こきりこ祭り」と「こどもこきりこ」について話し、現代に生
きる「こきりこ」についての話し合いをさせる。
ⅱ 「こきりこ」の歴史とその伝承が途絶えていたこと、その後、山
崎シイ 58)の歌がきっかけで復興したことを語り、可能ならシイ
の録音を聴かせる。
ⅲ 自分たちの地元地域にも、民謡や民俗芸能はないか、伝承が途
絶えていないか、考えさせる。
ⅳ 地域の文化の伝承について「こきりこ」から学んだことについ
て話し合いをさせる。
第三段階:「こきりこ」の踊りの学習
ⅰ 教師が第二次継承者として踊ってみせ、手踊りの学習の導入を
行う。
ⅱ 伝承者の踊りを見ることから、手踊りを学ばせる。
(ささら踊りは、手踊りと基本的な動作に共通性があるので、可
能であれば、意欲的な学習者には、ささら踊りにも取り組ませる)
ⅲ 歌、楽器伴奏、踊りを教師とともに歌い踊る。
⑶まとめ:表現の体験を手がかりにして文化学習、人々の心の理解へ
ⅰ 五箇山のお手玉などのわらべうたを見せて、お手玉遊びを試み、
昔の子どもたちの生活や遊びを想像させる。時間が許せば、お
手玉作りをさせる。
ⅱ 厳しい自然の中で、人々にとって民謡が大きな楽しみであった
ことについて話し合いをさせる。
ⅲ 最後に歌、楽器伴奏、踊りを合わせて、五箇山の「こきりこ祭
り」 59)の総踊りのように教師もともに全員で楽しむ。
58)五箇山民謡「こきりこ」は、昭和 20 年代には伝承が途絶えていた。73 歳の時に、
9 歳の時覚えたという「こきりこ」を歌ってきかせ、それが、
「こきりこ」復活のきっ
かけとなった。
59)毎年 9 月中旬に富山県南砺市上梨のこきりこ会館で行われる祭り。「こきりこ」や
「といちんさ」、
「麦屋節」などの民謡やこどもによる「こどもこきりこ」が演奏され、
最後に、伝承者と参会者全員で「こきりこ」の総踊りを行って盛り上がる。
50
第
5章
多文化音楽教育の授業提案
「第4章 新たな観点をもつ多文化音楽教育の授業設計」では、DVD
教材を用いた 5 つの授業について述べました。次にさらに幅広い音楽文
化を扱った 7 つの授業を紹介します。教材の選択には、私の限られた実
践体験に基づいているために偏りがあります。また、対象とする異文化
音楽や指導法、アプローチなどに馴染みがなく、取り組みにくい感じが
するかもしれません。しかし、地球音楽の様々な世界や指導法にチャレ
ンジしていただきたいと考え、提案することにしました。これらは、授
業だけでなくワークショップや生涯学習にも応用できます。学習対象年
齢は小学生から一般まで幅広く設定していますので、学年や対象者の実
態に応じて組み替えてください。授業時数は、およそ 6-7 時間と考えます。
7 つの音楽文化は、以下の理由で取り上げました。
1)自文化のアイデンティティを育むために:
⑴ 平成 10 年度の学習指導要領の改訂に伴い、日本の伝統楽器を扱う
こととなったが、現在、学校教育の場では、筝や太鼓が主に取り
上げられていて、わらべうたや民俗芸能は系統的に取り上げられ
ていない。(提案 1 ・ 2)
2)音楽体験の本質化のために:
⑴ 地球音楽にとって基底的な概念である祈りと切り離した形で音楽
が教えられている。(提案 3)
⑵ 学校教育の中の合唱は、ピアノ伴奏のついた作品がほとんどで、
合唱音楽 1)の基本であるア・カペラ合唱を体験することがない。
(提
1)合唱を「ちがう声がいっしょに歌う」という概念で捉えれば、諸民族は驚くほど多
様な合唱を行っているが(徳丸他 2007:90-94)、本著では、学校音楽教育の枠で行
う西洋音楽における合唱を扱う。
51
案 4 ・ 5)
⑶ 大衆音楽は本来的な形で教えられることが少ない。(提案 5)
3)音楽体験の幅を広げるために:
⑴ 宮城道雄 2)以降の邦楽の現代化の先駆者の仕事が知られていない。
(提案 6)
⑵ 現代音楽に触れることがない。(提案 7)
5-1 わらべうたから地域の民俗芸能へ
今日、中学校では学習指導要領によって、日本の音楽を教えていますが、
その量は少なく系統性がありません 3)。
わらべうたは、かつて子どもたちの成長にとって母乳のような役割を
もって、祖母や母から、あるいは、子どもから子どもへと、直接的なコミュ
ニケーションによって歌い継がれていました。しかし、今日では、わら
べうたを支えた子どもの生活の基盤が変容し失われています。小泉文夫
は、わらべうたには最も基本的な日本音楽の特徴が、舞台で演奏されて
いる芸術音楽や民謡よりもよりはっきり捉えられると指摘しています(小
泉 1986:9、 130-154)4)。日本のわらべうたの種類の豊富さは特筆すべき
ものがあります(小泉 1969:283-284)。わらべうたには、お手玉などの
ように、遊具も手作りするものもあり、子どもの様々なスキルも養いま
した。
2)箏曲演奏家・作曲家(1894-1956)。7 歳ごろ失明。尺八家吉田晴風らとともに新日本
音楽運動を起こし、邦楽界の改新に努力した。西洋楽器との合奏などを試み、邦楽
器の改良や発明にも尽くした。主な作品に「水の変態」、
「春の海」、
「越天楽変奏曲」
などがある。
3)指導書の内容例。1 学年(日本の伝統音楽の魅力 2 ∼ 4 時間)内容:雅楽「越天楽」、
(くらしの中の音楽① 2 ∼ 4 時間)内容:日本の民謡と芸能、「こきりこ節」(教育
出版編集局 2006a:10-11、132-133)、2・3 学年上(日本の伝統音楽の魅力 2 ∼ 4
時間)内容:箏曲「六段の調」、「さくらさくら」(教育出版編集局 2006b:10-11、
130-135)。2・3 学年下(日本の舞台芸術 3 ∼ 5 時間)内容:歌舞伎「勧進帳」、歌
舞伎入門(教育出版編集局 2006c:10-11、132-137)。
4)小泉は、「わらべうたと民族性」と題して、民族性とは何か、わらべうたと民族性、
わらべうたの音階、言葉の配列法、リズムの解放点、積み重ねの技法と繰り返しの
技法、民族性のエネルギー、わらべうたは時代を反映する、子どもから学ぶものの
9 細目にわたって、詳述している。
52
第5章 多文化音楽教育の授業提案
小泉の調査によれば、一見わらべうたで遊んでいないように見える大
都会でも子どもたちはわらべうたを作りかえながら遊んでいると報告さ
れています(小泉 1986:10)。しかし、時代を経て、子どもたちは今では
主に機器によるゲームで遊んでいます。子どもたちのコミュニケーショ
ン力の不足が指摘される中で必要なことは、共に活動し人間的な関わり
を体験することでしょう。わらべうた遊びの重要性は増していると言え
ましょう。
民俗芸能も世代から世代へと伝統的な伝承方法で受け継がれてきまし
た。民俗芸能や祭りは、元来、子孫繁栄を願う性の解放という要素を根底
にもっていましたし 5)、若者のエネルギーを爆発させるハレの要素をもつ
ものですが、今日では、保存という意味合いも強くなっています。また、
民俗芸能や祭りには、若者が芸能のみならず地域のしきたりや慣行から当
日の運営にいたる全ての伝統を受け継いで執り行い、地域の結びつきを強
める役割を担うという若者を育てる機能がありました。民俗芸能には、日
本の暮らしの基盤であった米作り 6)などの文化の原点に気づくきっかけと
なる教材性も含んでいます。
「わらべうたから地域の民俗芸能へ」7)という題材は、地域の中で五感
を働かせてフィールド・ワークを体験させることができるという点でも、
有効な教材と言うことができます。一般的にはわらべうただけ、或いは、
民俗芸能だけを単独に扱う場合が多いのですが、地域的にも内容的にも直
接関連性をもたなくても、この両方を一度に扱っていただきたいと思いま
す。また、フィールド・ワークでは、地域に伝承されている昔話なども聞
けるとよいでしょう。
5)福島県いわき地方に伝承される約 400 年の歴史をもつとされる「じゃんがら念仏踊
り」は、今日では新盆の供養の伝統行事として知られるが、男女の出逢いの場とし
て隆盛を極め、明治初期には磐前県が風紀の乱れなどから「禁止令」を発した。「ウ
ニャゴ」(Unyago)はアフリカ大陸東岸、インド洋上の島ザンジバル(Zanzibar)
の初潮を迎えた少女に対して行う女性だけの儀礼。婚礼の日のために性教育の意味
をもつ。長老のニャカンガが太鼓を叩き、歌い取り仕切る。
6)各地に伝わる民俗芸能には、豊作祈願、収穫感謝など稲作に関わるものが多い。
7)京都教育大学附属桃山小学校の藤田加代が、京都のわらべうたから六斎念仏を教材
にして実践を行っている(藤田 2004)。(「授業提案のための資料・音源」 p. 85)。
53
1)題名
わらべうたから地域の民俗芸能へ
2)教材の意義
わらべうたや民俗芸能の教材化には、以下のような意義があります。
⑴ 自文化のアイデンティティに気づくことができるでしょう。
これらの音楽には、日本の伝統音楽の音階 8)、リズム、メロディー
などの諸要素が含まれ、日本語の抑揚とメロディーが一体をなし
ています。
⑵ 歌い遊びながら、コミュニケーションを体験できるでしょう。
⑶ フィールド・ワーク等を行って、唱歌 9)などによる口頭伝承によっ
て、人と人のつながりの中から学びを体験できるでしょう。
3)対象
小学生から大学生、一般 10)まで。
4)教師の準備
教師は、教材の学習として、事前にフィールド・ワークを行い、その
魅力を第二次継承者として学習者に伝えられるよう努める。五感で体感
できる現地の生産物、遊具などを揃える。教師は、授業のコーディネー
ターとして、地域の伝承者をゲスト・ティーチャーとして招聘し、授業
の趣旨や内容、学習者に伝えたいことなどをお互い理解し合えるよう努
め、十分な協力関係を作る。
5)学習者のフィールド・ワークについて
⑴ 学校を飛び出して、地域の伝承者を訪ね、資料館に行って調べたり
することにより、自発的に創意工夫する学びを促すことができる。
⑵ 地域の伝承者からの聞き取りは、地域の方への敬いの眼差しや本
物から学ぶ姿勢を育むことができる。
8)これまで学習した西洋の 7 音音階(長調短調、旋法)ではない、小泉によるところ
の 4 種のテトラコルドによる 5 音階(律音階、民謡音階、都節音階、琉球音階)(小
泉 1969:361-366)。
9)日本の伝統楽器、笛・琴などで奏される譜を口で歌うこと。メロディーやリズム、
奏法、音色までも表すとされる。
10)生涯学習の講座などの参加者を意味する。
54
第5章 多文化音楽教育の授業提案
6)授業の実際
⑴ 実践のねらい
わらべうたや民俗芸能を伝承者から(第二次口頭性も含めて)
人から人へのコミュニケーションによって学び、実際に遊んだり
演奏したりして楽しむ。また、それを育んだ文化的背景や人々の
心について考える。
⑵ 指導計画 11)
ⅰ わらべうたを歌い遊び、学習者から知っているわらべうたを出
させる。
ⅱ 家の人や、近所の方にわらべうたを習ってくるようにという
フィールド・ワークの宿題を出し、学校外の人から直接に学ん
だことについて話し合わせ、互いに覚えたわらべうたを教えあっ
て遊ばせる。
ⅲ これまでの遊びをもとに、
「私たちのわらべうた」作りをさせる。
ⅳ 地域の民俗芸能の映像を見せて、感想を話し合い、特徴につい
て考え合い、映像から特徴的なフレーズなどを学ばせる。
ⅴ 伝承者を招いて本物の音楽を聴かせ、生活や芸能の背景などの
お話を聞かせ、実技を学ばせる。可能なら昔話も話してもらう。
ⅵ わらべうたや民俗芸能の小発表会をし、学んだことを振り返り、
成果を共有する。
7)予測される授業実践後の学習者の変容の可能性
⑴ フィールド・ワークは、人から人への学びと地域そのものへの眼
差しをもつようになるでしょう。
⑵ 伝承者からの学びの体験は、自文化のアイデンティティに気づく
きっかけを得るでしょう。
⑶ わらべうた遊びの楽しさは、コミュニケーション力を培うでしょ
う。
⑷ わらべうた遊びを作る体験は、地域の音楽伝統への気づきとその
発展への意識をもつでしょう。
11)授業提案の内容は、ワークショップなどを含み、授業とは限らないため、指導計画
とした。
55
5-2 地域の音楽の学習から始める文化の総合学習
「地域の音楽の学習から始める文化の総合学習 12)」という題材は、「5-1
わらべうたから地域の民俗芸能へ」と直接的に関連した教材です。地
域の民俗を学ぶ総合学習としての側面をより大きく発展させたものです。
1)題名 地域に学ぶ総合学習
2)教材の意義
⑴ 「5-1 わらべうたから地域の民俗芸能へ」の内容を、さらに地域
文化、独特な保存食などの食生活や手仕事や民具、衣服、結婚式
やお葬式などの儀式や地域の慣習を学ぶ総合的な地域学習へと発
展させ、暮らしに根ざした芸能の意味を深く探ることができます。
子守歌や民謡も学ぶとよいでしょう。
⑵ 他地域の生活や芸能と関連付け、文化の多様性と自文化との共通
性を認識させる。そのことが、自文化へのアイデンティティを育
み、やがては世界の諸民族の文化に目を向けていく基盤となるで
しょう。
3)対象
小学校中学年から大学生、一般まで。
4)教師の準備
教師は、教材の学習として、事前にフィールド・ワークを行い、その
魅力を第二次継承者として学習者に伝えられるよう努める。五感で体感
できる現地の生産物、遊具などを揃える。コーディネーターとして、ゲ
スト・ティーチャーと授業の趣旨や内容、伝えたいことなどをお互い理
解し合えるよう努め、十分な協力関係を作る。扱う他地域の音楽文化に
ついても第二次継承者となるよう努める。
12)福島県二本松市立二本松北小学校の山﨑純子が、福島県伊達郡川俣町立福沢小学校
で、福沢地区と椎葉の文化を関連させた実践を行った(降矢 2007:160-161)。
56
第5章 多文化音楽教育の授業提案
5)授業の実際
⑴ 実践のねらい
地域に伝承されている音楽文化の背景である民俗について学習
者自身で調べ、保護者や祖父母など招いた伝承者の話を聞き、音
楽は人々の生活の中で伝承されてきたことに気づく。また、地域
の歴史や民俗と音楽文化との関連や伝承してきた人々の思いへの
理解を深める。同時に、他地域の音楽文化を学ぶことによって、
自文化の特徴に気づく。
⑵ 指導計画
ⅰ 地域に伝わる音楽を地域の伝承者から学ぶことによって、地域
の人々の思いを知り地域の音楽や文化への思いを深める。また、
日本の他の地域の音楽文化へと関心を拡げ、共通性と異なる点
を探求し、その理由を考えあう。(音楽科)
ⅱ 地域に伝わる保存食や郷土食、手仕事について取材・体験し、
地域に生きる人々の知恵や思い、自然との関わりについての理
解を深め、今日のコンビニエンス・ストアなどに依存した食生
活について考える。(総合的な学習)
ⅲ 自文化と他地域の民俗芸能や文化背景、衣食住について共通点
と違いについて考えあう。
6)予想される授業実践後の学習者の変容の可能性
⑴ 音楽の時間の伝承者からの学びと、総合的な学習の時間における
地域の民俗の学びによって、音楽文化に背景があり、背景を学ぶ
ことの重要さを知るでしょう。
⑵ 他の地域の伝統文化や民俗と関連させて比較しながら学ぶことに
より、地域の文化の独自性と他文化との共通性に気づくでしょう。
⑶ 今日のコンビニエンス・ストアなどに依存した生活を見直し、伝
統文化のよさを引き継ぎたいという願いをもつでしょう。
⑷ 地域の学びは、日本、さらには近隣の民族の音楽文化への興味や
関心へと広がっていくでしょう。
5-1、5-2 では、教師自身の学校教育におけるこれまでの指導方法や学習
57
のさせ方への振り返りをもたらすでしょう。これまでは、とかく五線譜
による西洋式の指導法をとりがちでした。人から人へとコミュニケーショ
ンの中で学ぶ体験は、そのものが異文化体験で、学習者にとって貴重な
体験となります。このような地域の中での学びは、具体的な人との関わ
りの中で「教えてもらって嬉しかった」、
「自分もこの人のようになりたい」
等という個々の実感を伴う学びであり、今後もっと活用すべき教育方法
だと思います。
5-3 祈りのひびき ―声明からグレゴリオ聖歌、クルアーン まで―
この教材は、宗教教育のためのものではありません。音楽文化はその
発祥から祈りに結びついていて、祈りの心は、芸術音楽の基底的なもの
であるところから、音楽と切り離すことなく学ぶ必要があると考えます。
宗教の違いによる深刻な対立の時代にあって、音楽体験を通して、地球
上にある様々な祈り、信仰、宗教の違いと共通性を学ぶことは、意義の
あることでしょう。憲法に保障された信教の自由の問題がありますので、
指導にあたって慎重な配慮が求められます。一神教の信仰をもつ学習者
には特に慎重な対応が求められます。
1)題名
祈りのひびき ―声明 13)からグレゴリオ聖歌 14)、クルアーン 15)まで 16)―
13)仏教の経文を朗唱する声楽の総称で、インドに起こり、中国を経て日本に伝来した。
法要儀式に応じて種々の別を生じ、また宗派によってその歌唱法が相違するが、天
台声明と真言声明とがその母体となっている。
14)ローマ・カトリック教会の正統的典礼に用いる、男声の斉唱による単旋律無伴奏聖
歌。ローマ教皇グレゴリウス一世(540 頃 -604 年)により収集、編纂された。
15)イスラム教の聖典。ムハンマド(マホメット)が天使ガブリエルを通して受けたと
されるアッラーの啓示を集録したもの。アラビア語で書かれ、信徒の信条・倫理的
規範・法的規範などを特異な散文詩体で述べる。114 章からなり、ムハンマド没後
に結集された。古くは、コーランと呼称されていたが、近年は、現地発音に近いク
ルアーンと書かれるようになってきている。
16)仏教やキリスト教であっても、チベット仏教のラマ教の重低音を用いた声明や、ロ
シア正教の聖歌など大きな違いのある音楽へと発展させることもできる。
58
第5章 多文化音楽教育の授業提案
2)教材の意義 ⑴ 祈りは民衆の生活の基盤にある。諸民族の音楽の基盤には様々な
祈りがあり、民族は異なっても、人間にとっての共通の基盤とな
る心情の1つであることを学ぶことができるでしょう。
⑵ 仏教伝来以来、お経は、日本人の生活習慣の深いところに浸透し
ています。声明は、日本の伝統音楽に多くの影響を与えました。
そこを出発点にして現代の日本人の生活から喪失している祈りの
心に気づき、祈りと音楽について考え、民間信仰についても発展
させることができるでしょう。
⑶ 声明の実技の体験を切り口にして、ヨーロッパの音楽の源泉とい
われるグレゴリオ聖歌やイスラム教のクルアーンへも扉を開くこ
とができるでしょう。
⑷ 日本の現代音楽で本格的に取り上げられている声明の実技の体験
を切り口にして、現代音楽への扉を開くことができるでしょう。
3)対象
中学生から大学生、一般まで。
4)教師の準備
⑴ 教材の学習
経本の読みや意味を調べ、声明について知識を得る一方、日本
にある民間信仰についても読経や声明との違いを知る。お寺へ
フィールド・ワークして勤行を聞き、実際にお経や声明の唱え方
を学ぶ。一方、キリスト教のグレゴリオ聖歌についても学び、断
片であっても歌えるようにする。イスラム教のクルアーンについ
ても基礎的な知識を得る。
⑵ 声明には、仏教各宗派の様々な声明があるので、実技の体験は、
学習者の現状に即した体験しやすい、無理の無い声明を選択する。
⑶ 準備物等(すべて宗派を問わない)
お寺や民間信仰の祈りの場、教会のミサなどの写真やビデオ、
読経の教本や鳴り物、装束やお線香など。観賞用 CD やビデオ(声
明と民間信仰のシャーマニズム、お寺、教会、グレゴリオ聖歌、
クルアーンなど)。
59
5)授業の実際
⑴ 実践のねらい
声明の実技体験を手がかりにして、音楽のもつ祈りの側面を理
解し、諸民族の音楽の中にある、多様な祈りの形や音楽を理解する。
この体験の中で、人類が共通してもつ祈りの心を理解し、世界の
諸民族の音楽に現われた祈りの共通性と独自性に気づく。
⑵ 指導計画 ⅰ 除夜の鐘、初詣や神社にお参りに行ったり、葬儀の際などに聞
いたお経や、願をかけたり、祈ったりした体験を出し合わせる。
ⅱ 民間信仰の祈り 17)のビデオを見せる。何故、人々は古くから今
日まで、このように祈ったのか語り合い、祈りの捧げ方の多様
性を学ばせる。
ⅲ グループに分かれて、創造的音楽学習で自分たちの「心の経文」
を作り、唱えて発表させる。
ⅳ ビデオから声明を鑑賞させる。特徴や感じたこと、気づいたこ
とを話し合わせる。声明が日本の現代作品に取り入れられてい
ることを話し、柴田南雄や吉川和夫などの声明を素材にした現
代作品 18)を、できれば映像で一部鑑賞させる。
ⅴ 西洋の教会について、知っていることを出させる。教会の様子
のビデオを見せる。グレゴリオ聖歌の短いフレーズを歌ってみ
る。グレゴリオ聖歌やカトリック教会のミサなどのビデオを見
せる。気づいたこと、特徴を話し合わせる。また、イスラム教
のクルアーンの映像を短時間でも見せる。
ⅵ 諸民族の様々な祈りと祈りの捧げ方の違いと共通点について、
感じたことをまとめる。
6)予測される授業実践後の学習者の変容の可能性
⑴ 人間にとって根源的な意味をもつ祈りの心と、祈りが地球の多く
の民族のもつ音楽の共通項の1つであることを知るでしょう。
17)青森県の恐山のイタコ、沖縄本島のユタや竹富島の神司など。
18)柴田南雄『人間と死』(全音楽譜出版社)、吉川和夫『論議ビヂテリアン大祭:声明
と狂言の語りによる』(春秋社)。
60
第5章 多文化音楽教育の授業提案
⑵ 普遍的な祈りの心は宗教に発展し、宗教や宗派は独自性をもつこ
とを理解することにより、異文化理解を深めるでしょう。
⑶ 経文など祈りの言葉の朗読は、その民族の音楽の源泉であること
を知るでしょう。
⑷ 声明を扱った日本人の現代作品を鑑賞することによって、祈りの
音楽の普遍的な意味について考えるでしょう。
5-4 ア・カペラ合唱の響きへの誘い ―純正調の響き―
日本の学校教育では、合唱が盛んに取り入れられています。しかし、
その多くは、校内合唱コンクールであったり、部活動による外部の合唱
コンクール出場のためのものである場合が多いのです。歌われる題材の
多くは、近年作曲された日本人の作品で、ピアノ伴奏がつき、頭声発声
で歌われています。地球音楽の中の重要な部分を占める合唱では楽器の
伴奏がついたり、頭声発声で歌われたりするものの方が少ないのです。
西洋のア・カペラ合唱は、合唱音楽の重要な一部です。ここでは、ハンガ
リーのコダーイ・ゾルターン(Kodály Zoltán)19)の理念によるハンガリー
の指導法によって 20) 西洋のア・カペラ合唱を取り上げます。コダーイ
は、一般教育における読譜指導を重視し、その際、移動ド唱法を用いる
19)コダーイ・ゾルターン(Kodály Zoltán: 1882-1967)。ハンガリーの作曲家、民族音
楽学者、教育家。バルトーク・ベーラ (Bartók Béla) とともに、20 世紀初頭から自
国の民謡を数多く収集し、それらを分析研究し共同研究を行って、ハンガリーの子
どもたちをハンガリーの文化の栄養で育てたいと願い、義務教育の音楽教育の改革
に取り組んだ。コダーイは、「音楽をすべての人へ」(Zene mindenkié)と願い、ハ
ンガリーの子どもたちの一般教育における読譜の教育を重視し、多くの教材や合唱
曲を作曲し、音楽教育に献身した。
20)ハンガリーでは、その後、セーニ・エルジェーベト(Szőnyi Erzsébet)、バールド
シュ・ラヨシュ(Bárdos Lajos)、フォライ・カタリン(Forrai Katarin)、ヴィカール・
ラースロー(Vikár László)などの作曲家、音楽学者、音楽教育家が、協働してコダー
イの仕事を継承発展させている。歌うことを重視したコダーイの理念によって、ハ
ンガリーではア・カペラ合唱が盛んである。ハンガリーでは、一般教育においてもピ
アノ教育など専門教育においても、その始まりから自国のわらべうたや民謡、そし
てハンガリーの作曲家による現代音楽を扱う。その指導法は、民謡を頭声発声で歌
う、五線譜に置き換えるなどの批判もあびながら、効果をあげている。ハンガリー
では、人々が集まるところに民謡があり、授業では現代音楽が扱われ、音楽会では
聴衆が現代曲を楽しんでいる。
61
ことを提唱しました。日本では、唱法について歴史的に論争が繰り返さ
れ、未だ統一的な見解がありませんが 21)、本著では、移動ド唱法を用い
ます。コダーイの理念は、その後、方法は異なっても、タピオラ合唱団
を創設したフィンランドのエリッキ・ポヒョラ(Erkki Pohjola)22)など
にも影響を与え、多文化音楽への発展をもって、カナダ、オーストラリア、
スロヴェニア、アルゼンチンなどの多文化合唱団 23)へと発展しています。
これらの合唱団は、頭声発声や民族発声 24) を自由に歌い分けています。
可能であれば、諸民族の合唱にも目配りをして 25)、地球音楽の合唱の世
界の魅力に気づいて欲しいと思います。
1)題名 ア・カペラ合唱の響き ―純正調の響き―
2)教材の意義
⑴ ピアノ伴奏のないア・カペラ合唱によって、音楽体験の基本である、
聴き合って音を合わせたり、カノン 26)で追いかけたりする体験が
できます。
21)唱法と戦後の「唱法」論争史・研究史主要文献については、『よい音楽家とは―読
譜指導の理論と実践』(東川;海老沢 1996)を参照のこと。
22)1960 年代に「タピオラ合唱団(Tapioran Chouro)」を創設。合唱団は合唱と合奏
の両方に取り組み、民謡発声によるフィンランド民謡とクラシック、現代音楽をレ
パートリーとする。合奏も民族楽器のアンサンブルとオーケストラの両方に取り組
み、民族舞踊も踊るこれまでにない合唱団のスタイルは、世界の合唱界に大きな影
響を与えた。著書に、松原千振訳『世界をつなぐ歌の橋―タピオラ合唱団の音楽教育』
(音楽之友社)がある。
23)カナダのニューファウンドランド・シンフォニー・ユース・クワイア(Newfoundland
Symphony Youth Choir)
:常任指揮者 スーザン・ナイト(Susan Knight)、スロヴェ
ニアのカルミナ・スロヴェニカ(Carmina Slovenica)
:常任指揮者 カルミナ・シーレッ
ク(Karmina Šilec)、アルゼンチンのアルス・ノーヴァ合唱団(Ars Nova Coro de
niños y jovenes)
:常任指揮者 アナ・ベアトリス・フェルナンデス・デ・ブリオネス
(Ana
Beatríz Fernández de Briones)などが、多様な発声を用いて多文化合唱を実現して
いる。
24)地声とも言われ、裏声に対して主に胸部に響かせる、民族にとって自然な発声法で
出す声。
25)アマゾン奥地のスヤ族のおのおのが異なる歌をあわせて歌う行為や、アフリカのピ
グミー族の合唱、チベットの仏教の声明、台湾の高砂族の合唱などのように、非常
に多様である。
26)一声部の旋律を、他の音部がそのまま模倣しながら追いかけていく、対位法的な楽
曲形式、または楽曲。学校教育では輪唱と呼ぶ。
62
第5章 多文化音楽教育の授業提案
⑵ 倍音を聴くことにより、純正調の長三和音を響かせる体験をする
ことができます。
⑶ ⑴と⑵の体験は、音楽による自立と協調、つまりコミュニケーショ
ンの体験となるでしょう。
⑷ ルネサンス期のア・カペラ合唱や民族合唱の響きを聴いたり、僅
かでも歌ったりする体験は、合唱音楽や声の出し方の多様性への
気づきを促すでしょう。
3)対象
小学校高学年から大学生、一般まで。
4)教師の準備
⑴ ア・カペラ合唱指導の基礎を身につける。
ⅰ ピアノを用いず、正しい音程で歌う力、二声、三声を聴き分け
られる力、純正調の長三和音のハーモニーを作る力。
ⅱ コダーイによるア・カペラ合唱の教材を収集し、指導法を学ぶ
こと 27)。
⑵ 民族発声による歌い方を模倣によって獲得する。
⑶ 西洋のア・カペラ合唱や民族合唱の映像や音源を集める。
5)授業の実際
⑴ 実践のねらい
声によるコミュニケーションの原点であるア・カペラ合唱の純
正調のハーモニーの美しさや、頭声発声ではない民族合唱の多様
な声の表現を体験する。ハンガリーのハンドサインや文字符 28)な
どのツールによって読譜を学ぶ。
27)コダーイは、多くの二声合唱のための教材を作曲しているが、本著の授業提案に使
用可能な教材としては、
『黒鍵による 24 の小さなカノン』、
『333 のソルフェージュ』、
『おっかんよ』、本間雅夫『二声のわらべうた・民謡曲集』、『日本の響き1』(以上全
音楽譜出版社)などがある。指導法としては、『コダーイ・システムとは何か―ハン
ガリー音楽教育の理論と実践』、
『カルドシュ・パール 合唱の育成・合唱の響き』(以
上全音楽譜出版社)、『合唱指導の出発点 小・中学校におけるポリフォニー、ハー
モニー、形式の指導』( 音楽之友社 ) がある。「授業提案のための資料・音源」pp.
86-87 を参照のこと。
28)ハンドサイン:イギリスのトニック・ソルファから発展させた手の形による階名。
ハンガリーはもとより、今日では多くの国で用いられている。文字符:階名を文字
で表す。ドレミファソラティは、do re mi fa sol la ti、またはその頭文字で示される。
63
⑵ 指導計画
ⅰ 日本のわらべうたを、互いをよく聴きながら、二声や三声のカ
ノンで歌わせる。できたら、それらを 5 度の並行カノンで歌わ
せる 29)。ハンドサインによって、完全 8 度(d と d' のオクター
ブ)をよく聴きながら合わせ、完全 8 度から倍音の完全 5 度(s)
を聴き取らせ、5 度(s)を加えて歌わせる。さらに長 3 度(m)
を聴き取らせ、3 度(m)を加えて、純正な長三和音(dms)を
よく聴きながら歌わせる。基音は、学習者の出しやすい音とする。
ⅱ わらべうたやコダーイの『333 のソルフェージュ』の d と r だけ
でできている曲などを扱って、同度や完全 5 度のカノンにしたり、
長三和音の連続和音で歌ったりさせる(毎時間短い時間繰り返
して積み重ねる)。
ⅲ コダーイのやさしい二声合唱曲集『ビチニア・フンガリカ』や
本間雅夫の『二声のわらべうた 民謡集』などの中から、二声
合唱曲をよく聴きあって歌わせる。
ⅳ 可能ならジョスカン・デ・プレやパレストリーナなどの易しい
二声のア・カペラ合唱やバルトークの『児童と女声のための合
唱曲集』から第 8 曲「行かないで!」30) を歌わせる。合唱の黄
金期の作品と現代的な作品の両方に触れる体験は重要である(無
理な場合は、ア・カペラ合唱は省略する)。
ⅴ ブ ル ガ リ ア の 女 声 合 唱「 真 実 の 愛 」(M a l k a m o m a d v o r i
mete
マルカ モマ ドヴォリ メテ)や「トドラは夢見る」
(Polegnala e Todora ポレグナラ エ トドラ)31)などの民
族発声をよく聴きながら歌わせる。
ⅵ なるべく映像によって、ルネサンス期のア・カペラ合唱とブル
ガリア、スロヴェニア、アルゼンチンなどの民族発声による合
29)1 拍遅れ、2 拍遅れの完全 1 度のカノン、また、完全 5 度のカノンなど様々な方法
が可能である。
30)
『バルトーク 児童と女声のための合唱曲集 [ 新訂版 ]』(全音楽譜出版社)の「行
かないで!」は、リディア旋法でカノンの様式で作曲されている。なお、この曲集
には、モデルとなる演奏 CD と歌詞朗読のための CD がリリースされている。注文
フォーム http://www.interq.or.jp/www1/posta/fkc/roudokuyoyaku.htm
31)
『ブルガリアン・ポリフォニーⅠ,Ⅱ』(「授業提案のための資料・音源」 p. 87)
64
第5章 多文化音楽教育の授業提案
唱を鑑賞させ、自分たちの合唱体験を踏まえて感想を話し合わ
せる。
6)予想される授業実践後の学習者の変容の可能性
⑴ わらべうたによるカノンを歌って、互いを聴きあって歌い合わせ
る楽しさに気づくでしょう。
⑵ 一般的に行われているピアノ伴奏付のホモフォニー 32)による合唱
とは違う対位法的な合唱を知るでしょう。
⑶ 根音から倍音を聴きあって、純正調による長三和音を歌えるよう
になり、合唱における聴きあうことの大切さと聴きあって創るハー
モニーの美しさを知るでしょう。
⑷ 西洋のルネサンス期のア・カペラ合唱と民族発声によるア・カペ
ラ合唱を鑑賞することによって、世界の合唱や声に対する価値観
の多様さに気づくでしょう。
5-5 魂の叫び ―ハモネプからゴスペル・ソングへ―
ハモネプは、民放テレビ局で放映された J-POP のア・カペラ合唱様式
です。ハモネプは、ア・カペラ男声コーラス・グループ、ゴスペラーズ
の歌唱形態を簡易化した誰でも取り組めるア・カペラ・アンサンブルで、
一時期、テレビ番組でブームとなりました。ハモネプの特徴は、音楽の
授業や読譜などに苦手意識をもつ学習者に、学校教育の合唱指導とは無
縁のところから、読譜を行わずに、聴きあって合わせ、ハモる楽しさです。
ゴスペラーズの歌い方は、その名前にも表れているように、出発は、ア
メリカのゴスペル・ソングにありました。
ゴスペル・ソングは、宗教音楽です。アメリカのバプティスト教会の
ミサで歌われている賛美歌です。ドラムス、エレキ・ギター、ハモンド・
オルガンなどのリズム・セクションの強烈なリズムにのせて、神への愛
や信頼、祈りや切望を熱唱するのです 33)。ミサの最中にトランス状態に
32)ある一声部が主旋律を受け持ち、他声部はそれを和声的に伴奏する音楽形態または
音楽様式を指す。
33)ゴスペル・ソングの歴史、宗教性、アフリカ系アメリカ人特有の発声などについては、
学校教育ではほとんど扱われていない。
65
陥る人もいるほど強い表現をもっています。
「魂の叫び −ハモネプからゴスペル・ソングへ」34) ではハモネプを切
り口にして、ゴスペル・ソングへと取り組むことが可能です。ゴスペル・
ソングを通して、アフリカ系アメリカ人の奴隷制を経た抑圧の歴史やア
フリカ系アメリカ人の魂の叫びの歌を実感させることができるでしょう。
1)題名
ハモネプからゴスペル・ソングへ
2)教材の意義
⑴ ハモネプは、学校教育における合唱のピアノ伴奏つきの大人数と
いう形態と異なる、日ごろ耳にしている J-POP の声の出し方や楽
譜を用いず耳で覚えるという方法で合唱体験をする方法です。ハ
モネプの形で、互いを聴きあってハモる体験は、一人ひとりが生
きる新鮮な合唱体験となり、新たな音楽の喜びに出会うことがで
きるでしょう。
⑵ よく聴きあって正しい音程をキープすることで初めて美しいハー
モニーを作ることができることを実感すると同時に、互いを聴き
あって仲間とハモるハモネプの体験を通して、互いを尊重し、共
存するための努力や思いやりを体感し、社会人となって生きるセ
ルフ・エスティームを育むでしょう。
⑶ ポップスとは異なるゴスペル・ソング、アフリカ系アメリカ人の
魂の歌に出会うでしょう。
3)教師の準備
⑴ 「5-4 ア・カペラ合唱の響き」の「4)教師の準備」の項目の「⑴ ア・
カペラ合唱指導の基礎を身につける」を身につける。
⑵ ハモネプの基礎である、T-D-T、T-S-D-T35)の進行を指導できるよ
うにする。
⑶ ハモネプ教材となるポップスをその発声で歌えるようにする。
34)千葉県立佐倉西高等学校の竜田晴美がハモネプを教材にして実践を行った(竜田
2006)。(「授業提案のための資料・音源」 p. 85)。
35)西洋音楽の終止形(カデンツ)、T-D は、主和音 - 属和音の進行、T-S-D-T は主和
音 - 下属和音 - 属和音 - 主和音の進行を表す。
66
第5章 多文化音楽教育の授業提案
⑷ アフリカ系アメリカ人の抑圧の歴史やゴスペル・ソングの映像や
資料を入手する。特にゴスペル・ソングの祈りに満ちた力強い歌声、
発声に気づかせ、その発声で歌えて、指導できるようにする。
⑸ 各グループの練習時に、声が混ざることなく、十分に聴きあうこ
とのできる環境を準備する。
4)対象
小学校高学年から大学生、一般まで。
5)授業の実際
⑴ 実践のねらい
聴きあってハーモニーを創る楽しさや、音楽による人間的なコ
ミュニケーションの喜びを体験する。その体験の上に、抑圧され
てきたアフリカ系アメリカ人の魂の叫びでもあるゴスペル・ソン
グを聴き、声による表現の深さや多様さに気づく。
⑵ 指導計画 ⅰ 導入として、ア・カペラ合唱としてハモることを学ばせるために、
低音から三和音を作る練習を行う。可能なら、低音をよく聴かせ、
8 度や 5 度の倍音の響きを聴こえるようにしたり、ハモネプの基
礎である、T-D-T、T-S-D-T の進行を体験させたりする。
ⅱ グループに分かれて、ハモネプを体験させる。
ⅲ アメリカの教会におけるゴスペル・ミサの映像を見せて、アフ
リカ系アメリカ人の歴史や音楽について学ばせる。
ⅳ ハモネプは、楽譜を用いないで、各グループに聴唱法で低音、
中音、メロディーを歌わせる。
ⅴ ハモネプの小発表会をし、学んだことを振り返り、成果を共有
する。
6)予測される授業実践後の学習者の変容の可能性
⑴ カラオケやピアノ伴奏付の合唱に慣れた学習者が、ハモネプを歌
うことによって、互いに聴きあってア・カペラのハーモニー創り
をする魅力を発見するでしょう。
⑵ 美しいハーモニーを響かせるためには、正しい音程を聴き取り、
それに合わせる音によるコミュニケーションが前提となることを
67
知るでしょう。
⑶ 肉声でのハーモニー創りの体験は、人間らしいコミュニケーショ
ンと機器に頼らない手づくりの音楽世界への扉をあけるでしょう。
⑷ 合唱が単なる娯楽ではなく、抑圧されたアフリカ系アメリカ人の
魂の叫びであることやその背景にある歴史を知ることによって、
音楽の世界への理解が深まるでしょう。
5-6 日本の音楽伝統から新しい日本の唄へ
―新内節の岡本文弥と、邦楽におけるクロスオーヴァーの
先駆者、平井澄子の世界―
新内節 36)の岡本文弥 37)
(以下文弥と表記します)は、伝統的な新内節
を吉原や金沢の遊郭で流す体験を経て、樋口一葉
原作による「十三夜」など約 300 曲の新作新内を
作曲し、新内節の現代化を進め、若い世代に積極
的な扉を開きました。文弥の新作の手法は、古曲
の伝統的な節を応用するというもので、近代的な
作曲という概念とは異なります。
平井澄子 38) は、幼少時から山田流の筝曲の名
手であった母親の美奈勢から山田流の筝曲を学
びました。美奈勢は、山田流の門下にありながら、
若き日に宮城道雄の筝を聴いて感動し、彼の元で
岡本文弥
36)吉原など郭の街頭を流す新内節は、その情緒纏綿たる語り口、遊女の心情をきめこ
まかに描いた曲の内容から、江戸情緒を代表する庶民的な音楽として知られる。「蘭
蝶」や「明烏夢泡雪」は代表的な作品である。
37)新内節の流派の1つ岡本派は江戸時代後期に始まり、岡本文弥(1895-1996、本名
井上猛一)が流れを引き継いだ。文弥は明治 28 年東京谷中の生まれ。若い時から
お座敷や流しで新内節の演奏を続け、大正 12 年に中絶していた岡本派を再興、精力
的な演奏活動を通して新内節の発展に貢献した。著書に『縁でこそあれ』
(同成社)、
『百歳現役』(海竜社)などがある。
38)平井澄子(1913. 1. 1-2002. 6. 6)は、平井美奈勢と宮城道雄に師事。「切支丹道成寺」
作曲で芸術祭賞、宮城賞受賞。CBC「愛の世界」で芸術祭奨励賞、CBC「旅人帰らず」
と「邦楽リサイタル」で芸術祭奨励賞受賞。モービル音楽賞受賞。東京藝術大学邦
楽科廃止反村運動に参加した。東京藝術大学非常勤講師(1979-1980 年)、東京学芸
大学非常勤講師(1964-1985 年)。
68
第5章 多文化音楽教育の授業提案
筝を学び、山田流を破門されました。これは、家元制度が絶対的であっ
た当時にあって、大変革命的なことでした。平井は、美奈勢と宮城に
筝を学び、少女時代から作曲活動を始め、天才
少女として新聞等をにぎわしました。
平井は、その後、東京音楽学校(現東京藝術大学)
邦楽科(宝生流能楽)を卒業し、宝生流初の女性
能楽師となりました。そして当時の優れた音楽学
者等からの理論的な支援を受けて、地歌、新内節、
河東節、木遣りなど、自身の中で邦楽のクロスオー
ヴァーを行って(平井 2008:13-108)39)、伝統に
根ざした珠玉の作品を作曲しました。文弥と平井
は、「旅人かえらず」を共同作曲し、芸術祭の奨
平井澄子
励賞を受賞しました 40)。
学習者は、それぞれが好む J-POP や TV から流れるアナウンサーや芸
人の発音を聞いており、学校音楽教育ではいわゆる西洋発声で歌う指導
を受けていて、日頃は、日本語の発音について深く考えることがありま
せん。西洋の発声で歌われる日本語のわかりにくさは数多く指摘される
ところですが、文弥や平井の日本語の発音の美しさは特筆に値します 41)。
今日、歌謡曲やポップスの一部では、日本語はわかりやすい発声と発音
で歌われていますが、文弥や平井の日本語の発音の美しさや大衆芸能に
現れる日本語の発音の多様性に気づいて欲しいと願います。鑑賞は、必
ずしも全曲を通す必要はありません。
1)題名
新内節の岡本文弥と邦楽のクロスオーヴァーの先駆者平井澄子の世界
2)教材の意義
39)邦楽リサイタル「平井澄子邦楽実験室」第 1 回(1954 年)から第 5 回(1963 年)
において、日本歌曲、蒙古民謡、印度の唄、邦楽の様々なジャンル、自身の作品に
よる意欲的な試みを行った(平井 2008:13-105)。
40)1962 年芸術祭奨励賞(音楽部門)連篇歌曲「旅人かえらず」。
41)
『日本歌曲に於ける歌唱法の実践的研究:伝統音楽との接点・その考察と実践論』
(青
山 1987)、『声でたのしむ美しい日本の詩 和歌・俳句篇』(「授業提案のための資料・
音源」 p. 89)。
69
⑴ 学校音楽教育では、筝、歌舞伎、雅楽など限られた日本の音楽を扱っ
ています。文弥のわかりやすい創作新内や平井の車人形への浄瑠
璃を通して、邦楽の多様な世界に近づくでしょう。
⑵ 多様な邦楽のジャンルや宮城道雄以降の日本の伝統音楽の現代化
の仕事は、学校の音楽教育で扱われていません。文弥と平井の創
作の方法は異なりますが、多くの新しい聴衆を得た新しい日本の
語り物と歌の世界への出会いとなるでしょう。
3)教師の準備
⑴ 文弥と平井の世界を知るために、書物、映像、CD 等の音源 42)を
入手する。
⑵ CD などの音源から文弥の新内節「蘭蝶」の一節と創作曲「ぶんや
ありらん」、平井作曲「北原白秋の詩による小品集」と『連篇歌曲
愛の世界』43)より作品を選び、繰り返し聴いて模倣して歌える
ようにする。
4)対象
中学生から大学生、一般まで。
5)授業の実際
⑴ 実践のねらい
文弥と平井の話し言葉を聴き、日本語の美しさを再発見するとと
もに、邦楽と呼ばれる日本の伝統音楽の多様さや、その現代化の
仕事に触れて、伝統が継承発展することを体感する。
⑵ 指導計画
ⅰ 「美しい日本の詩」44)から平井の朗読とラジオやテレビのアナウン
サーの朗読を聞かせて、発音の違いについて、話し合わせる。文
弥の演奏による古曲「蘭蝶」、小沢昭一の「日本の放浪芸」45)から、
42)岡本文弥 CD『新内ぶし 特集第 1 巻 -6 巻』、平井澄子『平井澄子の知恵袋』、CD『切
支丹道成寺・愛の世界』、『平井澄子 うたとかたり』、『平井澄子の世界 雪 残月』
(以上「授業提案のための資料・音源」 pp. 88-89)。
43)平井澄子『連篇歌曲 愛の世界』
(全音楽譜出版社)
(「授業提案のための資料・音源」
p. 88)
44)大岡信;谷川俊太郎(編)『声で楽しむ美しい日本の詩 和歌・俳句篇』『美しい日
本の詩』(「授業提案のための資料・音源」 p. 89)
45)1971 年日本レコード大賞企画賞受賞(「授業提案のための資料・音源」 p. 89)。
70
第5章 多文化音楽教育の授業提案
日本の多彩な話芸を聞かせ、日本語の発音について話し合い、音
源をよく聴いて真似をさせる。
ⅱ 文弥の演奏による「蘭蝶」、平井の歌唱「佐倉義民伝 甚兵衛渡し
場の段」、『連篇歌曲 愛の世界』から「愛するとは」、地歌「雪」
などを少しずつ聴かせ、西洋のオペラの男声と女声のアリアを各
1 曲選んで聴き比べ、日本と西洋の声の出し方の違いや美しさの
感じ方の違いについて、話し合わせる。
ⅲ 演歌(森進一 46)など)、学習者の好きな J-POP、平井の「佐倉義
民伝 甚兵衛渡し場の段」、アメリカのミサで歌われているゴスペ
ル・ソングを少しずつ聴かせ、声の出し方を模倣しながら、その
違いについて、話し合わせる。
ⅳ 平井の作品を歌わせる。
ⅴ 文弥と平井の「旅人かえらず」、平井の歌唱「佐倉義民伝 甚兵衛
渡し場の段」、『連篇歌曲 愛の世界』から「愛するとは」、「切支
丹道場成寺」を鑑賞させる。
ⅵ 文弥や平井の作品を歌い、日本語の美しさや発音の多様性につい
て話し合わせる。
6)予測される授業実践後の学習者の変容の可能性
⑴ 日本語の発音の多様性に気づくでしょう。
⑵ 日本の伝統音楽の多様性に気づくでしょう。
⑶ 文弥や平井などの伝統音楽の近代化の仕事や新たな作品の魅力に
気づくでしょう。
⑷ 日本の伝統音楽や日本語のもつ魅力にも気づき、学習者の世代が
その発展を担うことに気づくでしょう。
46)文弥は、演歌の歌い方に通じると森の演歌を愛好した。
71
5-7 現代音楽への誘い ―ハンガリーの作曲家クルターグ・ジェル
ジュの音と沈黙の世界―
地球音楽には、新しく生まれている現代音楽 47)も重要な一部をなして
います。日本では、学校教育でも専門教育でも、現代音楽は一般に難解
とされてほとんど扱われず、ごく一部の人たちの音楽として存在してい
ることは残念なことです。
クルターグ・ジェルジュ(Kurtág György)48)は、現代を代表するハ
ンガリーの作曲家です。あらゆる芸術において、人々は、その時生み出
されている作品を享受しています。美術においては、今やパブロ・ピカ
ソ(Pablo Picasso)やアンリ・マチス(Henri Matisse)などの展覧会は、
多くの一般観衆が足を運びます。音楽においては、音楽科の教科書にも、
ピアノなどの教材などにも、現代音楽は登場しません。
ハンガリーの作曲家クルターグのピアノ作品集『遊び―ピアノのため
に』の第 1 巻は、様々なクラスターなど図形楽譜で作曲されていて、初
心者がピアノに触れた瞬間から音楽創造に向かえるという特徴がありま
す(阿部 2006:48-49)。それらの作品は、音と沈黙で構成されていて、
日本の俳句の世界にも通じるものがあります。
47)大衆音楽では、歌謡曲、ポップス、ロックなどの音楽は、常にその時に生まれてい
る「現代曲」が歌われている。芸術音楽のカテゴリーでは、広義には第一次大戦以
後に生まれた芸術音楽をさし、狭義には第二次大戦以後作曲された新しい傾向の芸
術音楽をさす。
48)クルターグ・ジェルジュ(Kurtág György: 1926-)。ルゴシュ(現ルーマニア領)
生まれのハンガリーの作曲家。リスト音楽院卒。1957 年から 1958 年まで、オリヴィ
エ・メシアン(Olivier Messiaen)のもとで学ぶ。エルネスト・フォン・ジーメンズ・
シュティフトウング財団の賞(1998 年、ミュンヘン)、ジョン・ケージ賞(2000 年、
ニューヨーク)、レオーネ・ゾーイング音楽賞(2003 年、コペンハーゲン)、ルイスヴェ
レ・グラウウェマイヤ大学による作曲賞(2006 年、アメリカ)など多くの音楽賞を
受賞し、21 世紀前半の最も活躍する作曲家として、ヨーロッパやアメリカの各地で
演奏会が重ねられている。「カフカの断章」が、音楽之友社のレコード・アカデミー
賞 2006 を現代曲部門で受賞した。
主な作品として、「カフカの断章」Op. 24(1985-1986)、「...クワジ・ウナ・ファ
ンタジア...」Op. 27(1987-1988)、
「Op. 27 No. 2」(1989-1990)、
「言葉とはなに?」
Op. 31b(1991)「墓石―クラウディオ・アッバードとベルリン・フィルハーモニー
のために」(1994)、『遊び―ピアノのために』1 巻 -7 巻(1973-)「コンチェルタンテ
裕美と賢へ」(2003)などがある。
72
第5章 多文化音楽教育の授業提案
クルターグの『遊び―ピアノのために』の第 1 巻より、1 番「無窮動」
と 3 番「花、人間」を弾き、クルターグの世界を体験した後、20 世紀の
フランスを代表する劇作家サミュエル・べケット(Samuel Beckett)49)
の詩による「言葉とはなに?」50) の開始部分を歌ってみてから鑑賞し、
モニョーク・イルディコー(Monyók Ildikó)51)の語りの発声の魅力を通
して、現代音楽の世界に心を向けていきます。その後、日本を代表する
作曲家武満徹 52)の「ノヴェンバー・ステップス」を鑑賞させます。鑑賞は、
必ずしも、全曲を通す必要はありません。
1)題名 ハンガリーの作曲家クルターグ・ジェルジュの音と沈黙の世界
2)教材の意義
⑴ クルターグや武満の音楽を、実技体験を通
して理解しようとするアプローチは、その
現代的な手法が現代に生きる人間にとって
必然であり、触れてみると面白いという興
味や関心を呼び覚ますでしょう。
⑵ クルターグと武満の作品を関連させて、表
現と鑑賞を結びつけ、実際に弾いたり、模
倣したりする実技体験を通して、現代音楽
への扉を開くことができるでしょう。
クルターグ・ジェルジュ
3)対象
小学校高学年から大学生、一般まで。
49)アイルランド出身(1906-1986)。20 世紀のフランスを代表する劇作家で、小説家、詩人。
1969 年にノーベル文学賞を受賞した。
50)クラウディオ・アッバード(Claudio Abbado)指揮により 1990 年ウィーンで初演。
語りと楽器群による編成。
51)ハンガリーの歌い手。初演から「言葉とはなに?」のソリストを務める。独特の音
色の迫力は圧倒的である。CD Portrait Konzert Salzburg (
. 「授業提案のための資料・
音源」 p. 89)。
52)作曲家(1930-1996)。武満の作品は、日本の伝統を重視しつつも、かつて例のない
独創的なもので、詩情と緻密さが共存する独自の音響世界を創出した。映画音楽、
現代音楽祭の運営にも活躍した。主な作品に「地平線のドーリア」「ノヴェンバー・
ステップス」他、多くの映画音楽や著作などがある。
73
4)教師の準備
クルターグについて、作品やインターネットなどから知識を得る。ピ
アノ経験のない人も弾ける作品である『遊び―ピアノのために』53) 第 1
巻から、グリッサンドやクラスターで図形楽譜を用いて作曲されている
ピアノ曲 1 番「無窮動」と、3 番「花、人間」の演奏法や楽譜の読み方を
学び、弾いてみる。
5)授業の実際 ⑴ 実践のねらい
ピアノという馴染み深い楽器を、クルターグの『遊び―ピアノ
のために』を用いて、グリッサンドや手のひら弾きなどのクラス
ターで自由に弾く体験から、これまで知らなかったピアノがもつ
音響の可能性や現代音楽の面白さを発見する。武満の「ノヴェン
バー・ステップス」を日本の楽器の模倣を手ががりとして、クル
ターグと対比させながら聴くことによって、現代音楽の多様さや、
日本の音楽伝統に気づく。
⑵ 指導計画
ⅰ 『遊び―ピアノのために』第 1 巻から、グリッサンドやクラスター
で図形楽譜を用いて作曲されているピアノ曲 1 番「無窮動」と、
3 番「花、人間」の演奏法や楽譜の読み方を教え、弾いて聴かせ、
感想を話し合わせる。
ⅱ 映像を用いて、クルターグの演奏を聴かせる。
ⅲ 「言葉とはなに?」の開始のフレーズ、mi is a szó(ハンガリー
語、訳;言葉とはなに?)を、ハンガリー語を教えて歌って
みる。モニョークが、交通事故で一度言葉を失い、クルター
グが、彼女にインスピレーションを得て作曲したことを語る。
モニョークの演奏の開始の部分を聴かせる。
53)『遊び―ピアノのために』(Játékok zongorára)は、クルターグが 1973 年から作曲
を続けているピアノのための小品集で、子どもが「ピアノを始めるその瞬間から、
自由にピアノの上を飛びまわれたら」という願いのもとに書き始められた。音と沈
黙が凝縮された独特の手法による、子どもから専門家までを対象にした、メッセー
ジ溢れるクルターグの世界が広がる小品集である。ハンガリーでは、初歩の導入時
から教材として扱われている。Editio Musica Budapest(日本語版全音楽譜出版社)。
74
第5章 多文化音楽教育の授業提案
ⅳ 人間と言葉について話し合わせ、「言葉とはなに?」を鑑賞させ
る。現代音楽の手法や音の意味について考えさせる。
ⅴ 武満の「ノヴェンバー・ステップス」作曲の経緯や、日本と西
洋のオーケストラの特徴に焦点を当てて作曲技法について話す。
映像を見て尺八や琵琶の音や弾く動作を真似させる。その後、
少しずつ区切って説明しながら聴かせる。最後に「ノヴェンバー・
ステップス」を鑑賞させる。
ⅵ クルターグと武満の共通点と相違点、ヨーロッパとアジアの音
楽性の違いについて話し合う。20 世紀の現代音楽に大きな影響
を与えたジョン・ケージ(John Cage)54)と彼の「4 分 33 秒」に
ついて話し、ピカソなどの現代絵画も鑑賞させながら、現代の
芸術への扉を拓く。
6)予測される授業実践後の学習者の変容の可能性
⑴ 『遊び―ピアノのために』第 1 巻から、図形楽譜による1番「無窮動」
と、3 番「花、人間」を弾く体験は、これまでのピアノという既
成概念を、その音響や弾き手の自由さなどで壊す体験となるでしょ
う。
⑵ 「言葉とはなに?」の開始のフレーズを歌って鑑賞する体験は、現
代音楽が難解な音楽ではなく、メッセージをもって創られている
ことを理解するでしょう。
⑶ 武満の「ノヴェンバー・ステップス」をクルターグとの比較にお
いて聴く体験は、日本の音楽の伝統と発展について新たな視点を
もって考えるきっかけを与えるでしょう。
54)ジョン・ケージ(John Cage: 1912-1992)。アメリカの作曲家。「偶然性の音楽」ある
いは「無音の音楽」などを提示し、現代音楽界にケージ・ショックと呼ばれる大き
な波紋を起こした。「4 分 33 秒」は、音が奏されない音楽で、演奏者は 4 分 33 秒の間、
音を発しない。
75
第
6章
おわりに
グローバル化によって、地球は今日、マジョリティの文化に覆い尽く
されようとしています。私は、音楽のグローバル化が進み、むしろ限ら
れた音楽文化を享受している子どもや若者に、多様な地球音楽に気づき、
それらを育んだ人々の心情への共感をもって、広くその豊かさを知り、
享受して欲しいと思うのです。その上で、愛好する音楽を選んで欲しい
のです。この願いをもって、日本における多文化音楽教育の実現のため
に本著を著しました。
多文化音楽教育は、多民族共生を願う多文化教育から発した理念です。
新しい学習指導要領では、多文化音楽教育的な理念が、より強く反映さ
れていますが、文化理解を通した多民族共生という多文化教育がもつ本
来的な視点は見受けられません。日本では、格差社会化が急速に進んで
います。多文化音楽教育も、今こそこの多文化教育の理念に立ち返る必
要があるのではないでしょうか。
DVD 教材を用いた 5 つの授業設計と 7 つの授業提案は、様々な教育の
場で取り組まれた実践をもとにしています。これらの授業では、馴染み
のない異文化音楽が、新たな観点をもった指導法で提示されているため、
理解しにくい側面があるかもしれません。しかし、私達は、豊かな地球
音楽の世界に囲まれています。地球は、情報レベルでは本当に狭くなり
ました。まずは、大人がこの豊かさに気づき、新たな指導法を工夫して、
子どもや若者に地球音楽の素晴らしさを味わってもらいたいと思います。
提案した理念を踏まえてこれらのアイディアを活用して創意に満ちた実
践を行っていただきたいと思います。
添付の DVD 教材には、アイヌ民族、椎葉、竹富島、バリ島の 4 つの文
化の、音楽と文化、背景、伝承者による学習マニュアルを、日本語と英
語の 2 つの言語で収録しました。日本の学校は、すでに様々な国から来
77
た子どもたちがともに学ぶ学校へと変わってきています。子どもたちは
英語圏とは限りませんが、そのような現状にも一定程度対応したいと、2
つの言語で制作しました。DVD 教材は、Windows XP、Vista でご覧い
ただけます 1)。教材の全体像を把握して活用していただくために DVD 教
材のサイト・マップを巻末に載せました。本著のサイズとの関係で、文
字サイズが小さく読みづらいものとなったことをお詫びします。
「はじめに」で述べましたとおり、地球はこのままでは滅亡しかねない
危機に瀕しています。子どもや若者が豊かな地球音楽と出会い、それを
心の糧としてこの厳しい現状に立ち向かい、人生を豊かに生きて欲しい
と願っています。多文化音楽教育が、子どもや若者がマイノリティや弱
者の心に近づき、多民族の共生や平和を実現したいと願うことに幾ばく
かでも貢献できれば、そして、本著と添付の DVD 教材がその糸口になれ
ば、これにまさる喜びはありません。
1)Windows Media Player をインストールすれば、Macintosh でも DVD 教材を見るこ
とができる。しかし、Macintosh では動画が正常に再生されない場合があるため、
Windows での操作をお薦めしたい(「添付の多文化音楽学習 DVD 教材について」
pp.90-91)。
78
引用 ・ 参考文献
青山恵子
1987 『日本歌曲に於ける歌唱法の実践的研究:伝統音楽との接点・その考察
と実践論』,東京藝術大学博士論文.
阿部千春
2006 『ピアノ指導法の研究―初歩の段階から「現代音楽」を扱うハンガリー
のピアノ教育から学ぶ―』,宮城教育大学大学院修士論文. 安藤茂樹
2007 『「セルフ・エスティーム」をはぐくむ授業作り∼自己肯定から自尊感情
への挑戦∼』,東京:明治図書.
磯田三津子
2003 『アメリカ合衆国における多文化音楽教育の成立と実践的展開』,東京学
芸大学博士論文.
江渕一公
1991 「マイノリティ(minority)」西村俊一他(編),松崎巌(監修)『国際教
育事典』,東京:アルク:653-654.
岡田京子
2008 「『音の言葉』について」『クリティーク 80』No. 30:10-13.
教育出版編集局(編)
2006a 『中学音楽 音楽のおくりもの 1 教師用指導書 解説編 資料 CDROM 付』,東京:教育出版.
2006b『中学音楽 音楽のおくりもの 2・3 上 教師用指導書 解説編 資料
CD-ROM 付』,東京:教育出版.
2006c 『中学音楽 音楽のおくりもの 2・3 下 教師用指導書 解説編 資料
CD-ROM 付』,東京:教育出版.
国井耀毅
2001 「その時代の写真 記憶の中から蘇生した庶民群像」本間久善(編)『本
間久善写真集 ― 時代の肖像 東北 1952-1972』, 東 京: 毎 日 新 聞 社:
2-42.
小泉文夫
1986 『子どもの遊びとうた』,東京:草心社:9, 10, 130-153.
小泉文夫(編) 1969 『わらべうたの研究(楽譜編・研究編)』,東京:わらべうたの研究刊行会.
小林哲也;江渕一公
1993 『多文化教育の比較研究』,福岡:九州大学出版会. 権藤与志夫
1990 「国際理解と教育」細谷俊夫他(編)
『新教育学大事典』,東京:第一法規社:
222-224.
79
坂本義和;中村研一
2005 「国際政治」 用語事典編集部(編)『知恵蔵 2005』,東京:朝日新聞社:
137-153.
高江洲義寛(監修) 1979 LP『竹富島のわらべうた』,沖縄:沖縄伝統芸能資料館.
2002 CD『竹富島のわらべうた』,沖縄:喜宝院.
柘植元一
1998 『世界音楽への招待―民族音楽学入門』,東京:音楽之友社.
弟子シギ子
2001 『わたしのコタン』,北海道:弟子シギ子.
東川清一;海老沢敏(編・著)
1996 『よい音楽家とは 読譜指導の理論と実践』,東京:音楽之友社.
徳丸吉彦
1996 『民族音楽学理論』,東京:放送大学教育振興会.
徳丸吉彦;高橋悠冶;北中正和;渡辺裕一(編)
2007 『事典 世界音楽の本』,東京:岩波書店.
中川弘一郎(編・訳)
1997 『コダーイ・ゾルターンの教育思想と実践 生きた音楽の共有をめざし
て』,東京:全音楽譜出版社.
中村とうよう
1985 『大衆音楽の真実』,東京:ミュージック・マガジン.
バンクス,A.ジェームズ
1999 『入門 多文化教育―新しい時代の学校づくり』,平沢安政(訳),東京:
明石書店.
平井澄子の会
2008 『七回忌 平井澄子のあゆみ―リサイタル プログラムと「ふき」便り』,
東京:平井澄子の会 (非売品).
船山隆
1982 「20 世紀音楽」下中邦彦(編)『音楽大事典』第 4 巻,東京:平凡社:
1714-1716.
降矢美彌子
1990-1993 「日本伝統音楽の近代化・現代化に関わる一考察―平井澄子の実
践から― (1) ∼ (4)」『福島大学教育学部論集 教育・心理部門』,(48):
1-8,(49):27-35,(51):9-22,(53):11-30.
1993-1995 「新内節岡本文弥の仕事にみる日本伝統音楽現代化の方法の足跡Ⅰ
∼Ⅲ」『福島大学教育学部論集 教育・心理部門』(54):1-18, (55):1-18, (57):
1-18.
1996 Kurtág György“Játékok zongorára (Games)-A Proposal for Changing
Japanese Piano Teaching”『宮城教育大学紀要 第 1 分冊人文科学・社
会科学』(31):41-64.
2004 『国際化時代の教員養成における多文化音楽教育の CD-ROM 教材開発』
80
引用・参考文献
(平成 12 年度∼ 15 年度科学研究費補助金基盤研究 (C) (1) 研究課題番号
12680241 研究成果報告書),研究代表者 降矢美彌子.
2005a (訳 : Hayashi Y. ; Ishioka S. ; Clausen B. )“Tee und Trommel: Beispiel
Japan: Von der Notwendigkeit einer multikulturellen Musikpädagogik”
.
Musik & Bildung(Praxis Musikunerricht)Juli - September 2005.
55-59.
2005b『多文化音楽教育の指導法の研究―デジタル教材の開発とその実践的検
証―』,東京藝術大学博士論文.
2007 『子どもの心の教育をめざす多文化音楽教育の研究∼インターネットに
よる国際理解教育ネットワークの活用∼』(平成 16 年∼ 18 年度科学研
究費補助金基盤研究 (C) (1) 研究課題番号 16530562 研究成果報告書),研
究代表者 降矢美彌子.
降矢美彌子;安孫子啓;橋本牧;山﨑純子
2008 「音楽教育における楽器作りの意義」『宮城教育大学研究紀要』(42):
89-100.
水野信男
2007 『地球音楽出会い旅』,東京:誠光堂書籍.
三善晃(監修)
2006 『中学音楽 1 音楽のおくりもの』,東京:教育出版.
メリアム,アラン P. 1980 『音楽人類学』,藤井知昭;鈴木道子(訳),東京:音楽之友社.
文部科学省
2007 『中学校学習指導要領』
(平成 10 年 12 月)
(平成 19 年 3 月改訂版),東京:
国立印刷局.
2008a 『中学校学習指導要領』(平成 20 年 3 月),京都:東山書房.
2008b『中学校学習指導要領解説 音楽編』
(平成 20 年 9 月),東京:教育芸術社.
文部省
1958 『中学校学習指導要領』(昭和 33 年),東京:大蔵省印刷局.
1998 『中学校学習指導要領(平成 10 年 12 月)』(3 刷),東京:大蔵省印刷局.
1999a 『小学校学習指導要領解説 音楽編』(第 4 版),東京:教育芸術社.
1999b『中学校学習指導要領(平成 10 年 12 月)解説―音楽編―』
(第 2 版),東京:
教育芸術社.
山口修;加藤富美子;川口明子(監修) 高橋光則(構成・演出)
1998 LD『必携・新しい“世界の音楽”学習への手引き アジアの音楽と文化』,
東京:ビクターエンタテインメント KCLK-1.
山住正巳
1967 『唱歌教育成立の過程』,東京:東京大学出版会.
BANKS, James A. ; McGee Banks, Cherry A.
1989 Multicultural education issues and perspectives (3rd ed. 1997). Boston;
London; Toronto; Sydney; Singapore: Allyn and Bacon.
81
BLACKING,John
1985 “Versus gradus novos ad Parnassum musicum: exemplum Africanum”
.
McAllester et alii 1985: 43-52.
CAMPBELL,Patricia Shehan
2004 Teaching music globally: experiencing music, expressing culture . New
York; Oxford: Oxford University Press.
ELLIOTT,David J.
1989 “Key concepts in multicultural music education”.International Journal
of Music Education 13 (Summer 1989): 11-18.
FORRAI,Katarin; IGÓ, Lenke
1983 Kodály Zoltán Zene Mindenkié. Budapest: Pannónia Filmstúdió;
Kultura Budapest.
GOETZE,Mary; FERN,Jay
1999 Global voices in song ― international multicultural experience ― volume 1 ― . New Palestine, Indiana: Mj & Associates.
GRANT,Carl A.
1997 “Multicultural education”.Dictionary of Multicultural Education.
Grant, Carl A. ; Ladson-Billings, Gloria eds: Phoenix, Arizona: Oryx
Press: 171-172.
McALLESTER,David P. et alii
1985 Becoming human through music: the Wesleyan Symposium on the
perspectives of social anthropology in the teaching and learning
of music, August 6-10, 1984 . Wesleyan University, Middletown,
Connecticut; [sponsored by the Graduate Liberal Studies Program,
Wesleyan University and Music Educators National Conference].
Reston, Virginia: Music Educators National Conference.
NETTL,Bruno
1985 “Montana and Iran: Leaning and teaching in the conception of music in
two contrasting cultures”.McAllester et alii 1985: 69-76.
SCHMIDT-WRENGER,Barbara
1985 “Tshiyanda na ululi ― boundaries of independence, life, music, and
education in Tshokwe Society, Angola, Zaire”. McAllester et alii 1985:
77-86.
VOLK,Terese M.
1998 Music, education, and multiculturalism: foundations and principles. New
York; Oxford: Oxford University Press.
WADE,Bonnie C.
2004 Thinking musically: experiencing music, expressing culture. New York;
Oxford: Oxford University Press.
82
附録1.用語の解説
本著に用いられている、以下の用語について概念を規定する。
1) 先行研究によって概念規定を行った用語
⑴ 口頭性と口頭伝承、第二次口頭性
徳丸(1996: 94-95)にもとづき、以下のとおり定義する。
口頭性:音楽伝承の保存における、広義の記録の一特性。文字
や楽譜など視覚的な記号に変換する書記性に対して、
同じ時空に存在する生きた人間どうしが、「口」を中
心として、その他の感官も相補的に用いる状況。
口頭伝承:音楽や言語を個人から個人へ、あるいは集団から集
団へと世代や地域を超えて伝達するのに、直接に口や
手や耳を使う方法。
第二次口頭性:口頭性を伝える諸技術(電話・テレビ・ラジオ
の通信技術、レコード、テープレコーダー、CD、映画、
ビデオ、DVD など)が発明され拡大した口頭性に依
存して、空間と時間を越えて、離れた人間に働きかけ
ることを指す。私の多文化音楽学習 DVD は、第二次
口頭性によって、伝承者から学習することを意図する。
⑵ 多文化教育
バンクス(1999: 198)の定義に従い、以下の概念として用いる。
カリキュラムや教育機関を改革することにより、男女両性およ
び多様な社会階級、人種、エスニック集団の学習者が、平等の
教育機会を経験できるようにすることを主要な目標とする教育
改革運動。
⑶ マイノリティ
江渕(1991: 653-654)の定義に従い、以下の概念として用いる。
「社会的少数者」を意味する。広義には、1つの政治体制の中で、
人間としての基本的権利を抑圧または剥奪され、あるいは各種
の資源・利益・権力への接近の機会を制限され、不利な立場に
83
おかれている人など。少数民族、障害者、老人、婦人等、しば
しば、
「社会的弱者」と呼ばれる多様な人間の範疇が含まれるが、
狭義には、その社会の中で独自の言語・文化を保持する少数民
族(ethnic minority)を指すことが多い。多文化音楽教育におい
ては、近代世界の中で差別や抑圧を被り続けてきたマイノリティ
のアイデンティティ(identity)やエスニシティ (ethnicity) の理
解と共感も目的と考えている。対極にマジョリティの存在があ
る。
⑷ グローバル化
坂本;中村(2005: 137-153)の定義に従い、以下の概念として用
いる。
これまで存在した国家、地域など縦割りの境界を超え、地球が
1つの単位になる変動の趨勢や過程。1970 年代から広く使われ
るようになった。90 年代には、経済のグローバル化が強調された。
グローバル化は、資本の支配の貫徹であり、貧富の差を拡大し、
地球環境と地域の固有文化を破壊するといった反グローバリズ
ムの主張も増している。
2) 私が概念規定を行った用語
⑴ 異文化音楽と異文化性
異文化音楽とは、生活様式や宗教などが(自分の生活圏と)異
なる、母文化ではない音楽文化。異文化性とは、学習者にとって、
異文化音楽を特徴付ける特質。
⑵ 多文化音楽
異文化音楽の集合。
⑶ 多文化合唱
曲種に応じて多文化音楽を歌う合唱。
⑷ 地球音楽
水野(2007)の著書から用語を引用し、以下の概念として用い
る。今日地球上のあらゆる地域、あらゆる民族によって奏でら
れ、聞かれている音楽文化。一方、音楽の享受のされ方を限定し、
84
附 録
「生まれた地域を越えて、世界のさまざまな地域で聴かれ、また、
演奏されている」(徳丸他 2007:7)音楽を「世界音楽」と概念
付けている研究もある。
⑸ 母文化
母語(幼児期に母親などから自然な状態で習得する言語)(第一
言語)に準じて、幼児期に生育環境の中で自然な状態で身につ
ける文化(第一文化)の造語。
⑹ 文化の第二次継承者
多文化音楽教育において、私は、文化本来の音楽観や伝承法を
尊重する。教師は、音楽文化の直接的伝承者にはなれないが、
フィールド・ワークや伝承者からの学習によって、対象文化に
ついて伝承者に近い理解と心情を持つことが必要であると考え
る。それを文化の第二次継承者という造語で表記する。
附録2.授業提案のための資料・音源
1)実践論文
竜田晴美
2006 「ハモネプで輝く高校生達」『音楽教育実践ジャーナル』vol. 3
no. 2(通巻 6 号):43-52.
橋本牧
1999-2000 「ガムランを楽しもう」『教育音楽』中学高校版 43(12):
94-95,44(1):96-97, 45(2):96-97, 46(3):106-107.
2000-2001 「 日 本 の 音 楽 を 楽 し も う 」『 教 育 音 楽 』 中 学 高 校 版 44(12):92-93, 45(1):94-95, 45(2):100-101, 45(3):102-103.
藤田加代 2004 「民俗芸能の教材としての可能性を考える―京都中堂寺六斎念
仏を例として」『音楽教育実践ジャーナル』vol. 2 no. 1(通巻
3 号):34-46.
85
2)授業提案のための主な音源と書籍
5-3
声明
2004
DVD『高野山の心 声明の調べ 1200 年の時を超え』,東京:
ワック,WAC-D523.
グレゴリオ聖歌
2001
CD『世界宗教音楽ライブラリ -1 グレゴリオ聖歌 / サン・ピエー
ル・ソーレム修道院』,東京:キングレコード,KICC-5701.
クルアーン
2000
CD『偉大なるクルアーン イスラムの栄光』,東京:ビクター
エンタテインメント,VICG-60312.
2005
DVD『イスラーム祈りの声:コーラン朗誦と神秘主義の旋回
舞踊』,東京:キングレコード,KIBM-1038.
5-4
ヘルボイ・コチャール,イルディコー 2002 『合唱指導の出発点 小・中学校におけるポリフォニー,ハー
モニー,形式の指導』,知念直美;後藤田純生(監修),山岸
徹(訳),東京:音楽之友社.
大島正泰
『黒鍵による 24 の小さなカノン コダーイ・ゾルターン』,東京:
全音楽譜出版社(出版年不掲載).
カルドシュ,パール
1994 『合唱の育成・合唱の響き』,羽仁協子(監修),菅原恵利(訳),
東京:全音楽出版社.
コダーイ芸術教育研究所(編)
1976 『おっかんよ わらべうた二声・三声歌唱集』,東京:全音楽
譜出版社.
中川弘一郎;降矢美彌子
1992 『333 のソルフェージュ』,東京:全音楽譜出版社.
フォライ,カタリン;セーニ,エルジェーベト
1975 『コダーイ・システムとは何か―ハンガリー音楽教育の理論と
86
附 録
実践』,羽仁協子;谷本一之;中川弘一郎(共訳),東京:全
音楽譜出版社.
サボー,ミクローシュ(校訂)
2007 『バルトーク 児童と女声のための合唱曲集[新訂版]』,降矢
美彌子(訳),東京:全音楽譜出版社.
本間雅夫
1987 『二声のわらべうた・民謡曲集』,東京:全音楽譜出版社.
2003 『日本の響き1』,東京:全音楽譜出版社.
フィリップ・クーテフ・ブルガリア国立合唱団
2000
CD『ブルガリアン・ポリフォニー[Ⅰ]』,東京 : ビクターエ
ンタテインメント,VICG-60301.
2000
CD『ブルガリアン・ポリフォニー[Ⅱ]』,東京 : ビクターエ
ンタテインメント,VICG-60302.
Ars Nova Coro de niños y jovenes
2004
CD Pachamama . Argentina.
2006
DVD Coro de niños y jovenes Ars Nova. Directora: Ana
Beatríz Fernández de Briones.
http://www.coroarsnova.com.ar/home_eng.php3
Carmina Slovenica
2002
CD Citira-Slovenian Choral Opus Ⅱ . Slovenia: Carmina
Slovenica.
2005
CD CM1 . Slovenia: Carmina Slovenica.
2008
DVD Scivias.
http://www.zbor-carmina-slovenica.si/
Newfoundland and Labrador Youth in Chorus.
2000
CD Reaching from the Rock .
2004
CD Quest .
http://www.shallaway.ca/
Tapiolan Kuoron
2006
DVD The Secrets of the Tapiola Sound .
87
Tapiola Choir; Kari Ala-Pöllänen;Mari Grönholm; Tapiola
Choir
http://www.tapiolankuoro.com/
5-5
2004
CD『エッセンシャル・マヘリア・ジャクソン』,東京:Sony
Music Direct,MHCP-229.
2006
CD『ニューポート 1958+2』,東京:ソニー・ミュージックジャ
パンインターナショナル,SICP-1028.
2006
DVD『ゴスペル・ムーヴィー・コレクション DVD-BOX』,東
京:紀伊國屋書店,KKDS-355 2 枚組.
5-6
岡本文弥
1967 『遊里新内考』,東京:同成社.
1968
CD 新内『蘭蝶(らんちょう)』(本名題「若木仇名草(わかき
のあだなぐさ)」),東京:日本コロムビア,CLS-5084.
1978 『芸流し人生流し』,東京:中公文庫.
1980 『ぶんやぞうし』,東京:新日本出版社.
1992
CD『岡本文弥 新内ぶし特集』第 1 巻―第 6 巻,東京:テイ
チクエンタテイメント,TECY-30025-30038.
1994 『百歳現役』,東京:海竜社.
2001 『芸渡世』,東京:三月書房.
森 まゆみ
1998 『長生きも芸のうち―岡本文弥百歳』,東京:筑摩書房.
平井澄子
1991
CD『平井澄子 切支丹道成寺・愛の世界』,東京:日本コロ
ムビア,COCF-7720.
1994
CD『平井澄子の世界 雪 残月』,東京:日本コロムビア,
COCF-11838.
1998 『連篇歌曲 愛の世界』,東京:全音楽譜出版社.
2000 『平井澄子の知恵袋』,東京:邦楽ジャーナル社.
2000
88
CD『平井澄子 うたとかたり』,東京:テイチクエンタテイ
附 録
メント,XL-70144-6 2 枚組.
大岡信;谷川俊太郎(編)
1990
岩波 CD ブックス『声でたのしむ美しい日本の詩 和歌・俳
句篇』(朗読:平井澄子,松本幸四郎),東京:岩波書店.
小沢昭一
1999
CD『日本の放浪芸』,東京:ビクターエンタテインメント,
VICG-60231 ∼ 7.
5-7
KURTÁG, György
1979
Játékok Ⅰ zongorára . Budapest: Editio Musica Budapest.
1990
Samuel Beckett: What is the Word. Budapest: Editio Musica
Budapest.
1993
CD クルターグ・ジェルジュ 『遊び―ピアノのために』,
ECP-92002/4,ばるん舎.
1998
CD Kurtág Játékok. München: ECM Records: ECM 1619.
1998
CD Portrait Konzert Salzburg. Wien: Col Legno: WWE31870.
KELE, Judit
2008
DVD György Kurtág The Matchstick Man; Peter Eötvös
The Seventh Door . n. p. : Ideale Audience.
武満徹
1991(推定)VHS ビデオ『武満徹作品集』東京:カジマビジョン《非売品》.
http://www.youtube.com/watch?v=9CeDYLRK0ik&feature=
related.
2009
TAKEMITSU NOVEMBER STEPS.New York:Edition
Peters.
3)写真提供
4-1 多文化音楽学習 DVD 教材について
白老ポロトコタンのカムイノミの儀式(社団法人白老観光協会).
五箇山民謡「こきりこ」ささら踊り(越中五箇山筑子唄保存会).
バリ島「ケチャ」(イ・ワヤン・スマダ).
89
4-2 多文化音楽学習 DVD 教材を用いた授業設計
提供者と学校名(実践当時)
大木恵美(福島大学附属中学校),橋本牧(宮城教育大学附属中学校),
目黒恵子(宮城県白石女子高等学校),目黒稚子(福島県会津若松市
立日新小学校),山﨑純子(福島県伊達郡川俣町立福沢小学校).
5
多文化音楽教育の授業提案
提供者と写真名,撮影者名
岡本宮之助(岡本文弥),小黒勇(平井澄子),国際コダーイ協会(コダー
イ・ゾルターン),イシュトヴァーン・フスティ撮影,ヴァルネル・ジェ
ルジュ(クルターグ・ジェルジュ).
DVD レーベル
橘 浩昭.
附録3.添付の多文化音楽学習DVD教材について
1)推奨動作環境
本 DVD 教材は、家庭用の DVD 機器では再生できません。コン
ピューターでご覧ください。コンピューターの推奨動作環境は以
下の通りです。
OS:Windows XP,Windows Vista
ブラウザ;Internet Explorer 7 以上
メモリ:256MB 以上
CPU:1.06 GHz 以上
その他必要なものとして、DVD ドライブと、Windows Media
Player。
Macintosh でも、Windows Media Player をインストールすれば
DVD 教材を見ることができます。しかし、動画が正常に見られな
い場合がありますので、Windows での操作をお薦めします。
90
附 録
2)DVD の操作について
⑴ 自動再生について
本 DVD 教材は、DVD ドライブにディスクを挿入すると、自
動再生される仕組みになっています。もし自動的に開かなかっ
た場合は、DVD 内のファイルを表示し、
「index.html」というファ
イルをダブル・クリックして開いてください。
⑵ 動画の再生について
動画が挿入されているページを開くと、アクティブ・コンテ
ンツに関する警告が表示されることがあります。このとき、ア
クティブ・コンテンツの実行を許可してください。コンピュー
ターに問題を引き起こすことはありません。
91
附録4.多文化音楽学習DVD教材の内容サイト・マップ
アイヌ民族の音楽文化学習
アイヌ民族の音楽文化学習
○アイヌ民族の音楽文化学習について ○アイヌ民族の音楽文化学習へようこそ ●アイヌ民族の音楽文化学習解説
●アイヌ民族の音楽文化学習
◇音楽
◆ウポポ(座り歌)
□イカムッカーサンケー
□サァーオイ
□イタサンカタ
◆リムセ(踊り)
□ウタリオプンパレワ
□バッタキ・ウポポ・リムセ
□フックン・チュイ
□サロルン・リムセ
◆ムックリ
□ムックリ
■ムックリの演奏
■ムックリについて
■ムックリの作り方
▽1. 材料と道具
▽2. 竹の表面を整える
▽3. 弁の部分を削る
▽4. 形を整える
▽5. ムックリにひもを通す
▽6. 弁の根元にひもを通す
▽7. ひもに竹片を結ぶ
□ムックリの学習
■ムックリの持ち方
■弁を振動させる
■構え方
■音を口に共鳴させる
◆オンノッカ(子守唄)
◆トンコリ
◆儀礼
◆まりも祭
□準備
■トノト
■イナウ
□芸能
■サロルン・リムセ(鶴の舞)
■ク・リムセ(弓の舞)
■子どものリムセ
□儀式
■マリモ
■タイマツ行進
■イチャルパ
▽阿寒湖アイヌコタンでのイチャルパ
▽家族のイチャルパ
■カムイノミ
92
◇文化
◆歴史と自然
□歴史
□自然
■自然観
◆暮らし
□衣服
■種類
■アイヌ文様
■イラクサによる糸つくり
□民具
■シントコ
■トマ
■民具
□食文化
■保存食
▽ユックカム
▽トウレプ
▽ハマナスの実
▽キキンニ
▽トゥワ
▽ペッカウンペ
▽プクサ
■儀式のおそなえ
▽イモチョケップ
▽ラタシケップ
▽イナキビごはん
▽プクサごはん
▽シラリ
▽シト
■アイヌ料理
▽ユックセット
▽チェップセット
▽ポッチェイモ
▽メフン
▽コンブシト
▽アマム
◆アイヌ民族のことば
□あいさつ
■朝のあいさつ
■昼のあいさつ
■夜のあいさつ
■ありがとう
■さようなら
■神様ありがとうございます
■エカシにとって大切なことば
□数のかぞえ方
附 録
椎葉の音楽文化学習
椎葉の音楽文化学習
○椎葉の音楽文化学習について
○椎葉の音楽文化学習へようこそ
●椎葉の音楽文化学習解説
●椎葉の音楽文化学習
◇音楽
◆嶽之枝尾神楽[たけのえだおかぐら]
□準備
■舞道具作り
▽バチ作り
▽御幣[ごへぇ]切り
▽舞道具作り
▽舞道具
▽舞幣[まいべぇ]
■神楽面
■屋内の準備
▽雲(龍図)
▽長提灯[ながとうろう]の飾り
▽彫物[えりもの]
▽内御神屋[うちこうや]の設営
▽注縄[しめ]
■高天原[たかまがはら]と神饌[しんせん]
▽高天原
▽神饌1
▽神饌2
■練習
▽舞
▼練習風景1
▼練習風景2
▽太鼓
▼練習風景1
▼練習風景2
■屋外の準備
▽外神屋[そとこうや]作り1
▽外神屋[そとこうや]作り2
▽外神屋[そとこうや]の高天原
▽青竹切り
▽屋根の注縄[しめ]
▽注縄[しめ]作り1
▽注縄[しめ]作り2
▽注縄[しめ]の上部
▽雌縄[めづな]
□神楽の演目
■注縄立[しめたて]
■宿借[やどかり]
■注縄引鬼神[しめひききじん]
■子ども神楽
▽神粹[かんしん/かんずい]と村人
▼神粹1
▼子ども神楽に盛り上がる村人
▼神粹2
▽内鬼神
■願成就神楽[がんじょうぜかぐら]
■星指[ほしさし]
■芝入[しばいれ]
■綱切[つなきり]
▽打ち取られた大蛇の首
■神送り
□神楽セリ歌
■神楽を盛り上げるセリ歌
■椎葉浪子によるセリ歌
□篠笛
■篠笛の図面
□太鼓
◇文化
◆椎葉村[しいばそん]
□鶴富屋敷[つるとみやしき]
◆自然と暮らし
□自然と暮らし1
■粟[あわ]
■上椎葉ダム
■蜂蜜とり
▽昼食
▽蜂の巣
▽蜂蜜とり
▽焼き豆腐
▽ウト
■蜂の子とり
▽蜂の子とり
■狩猟生活と山の神信仰
■モグラ打ち
■注連縄[しめなわ]
■椎葉の釜炒茶
▽茶摘み
▽茶
▽釜炒り
▽手揉み
■椎葉の食べ物
▽ワクドウ汁
▼ワクドウ汁1
▼ワクドウ汁2
▼ワクドウ汁3
▽菜豆腐
▼菜豆腐1
▼菜豆腐2
▽ソマゲェ
▼ソマゲェ1
▼ソマゲェ2
▼ソマゲェ3
▽ハンパクメシ
▽椎葉のごちそう
▽煮染め
■筍
□自然と暮らし2
■手まり作り
■焼畑
□自然と暮らし3
■椎葉の言葉
□椎葉神楽[しいばかぐら]
■栂尾[つがお]神楽のうば面
■栂尾神楽のかんずい
■栂尾神楽の火の神神楽
■栂尾神楽の鬼神[きじん]
■奥村[おくむら]神楽のゴツ天
■奥村神楽の伊勢の神楽
■不土野[ふどの]神楽の芝引面
■不土野神楽の火の神参り神楽
■尾手納[おてのう]神楽のもり
■尾手納神楽のもりの使い
■大河内[おおかわち]神楽の鬼神[きじん]
■大河内神楽の猪舞[ししまい]
◇学習マニュアル -竹の枝尾地区◆「大神神楽」の学習 -嶽之枝尾神楽□前奏
■太鼓
■篠笛
□太鼓
■構え方・打ち方
■基本パターン
▽基本パターン1
▽基本パターン2
▽基本パターン3
■流れ
□篠笛
■嶽之枝尾神楽の篠笛
▽基本メロディー1
▽基本メロディー2
▽基本メロディー3
▽基本メロディー4
□舞
■神楽舞の足運び
▽全身
▽足運び
▽足運びーゆっくりー
▽鈴おろしとへんべ
■1人の動き
■2人の動き
◆民謡 -駄賃つけ節(竹の枝尾地区)◆御幣[ごへぇ]の作り方
-嶽之枝尾神楽の上ノ御幣□紙をおる
□紙を切る
□紙を御幣の形におる
□組み立てる
◆不土野[ふどの]の無常念仏
□不土野の無常念仏
◆臼太鼓[うすだいこ]
□栂尾[つがお]の臼太鼓
□大河内[おおかわち]の臼太鼓
□大藪[おおやぶ]の臼太鼓
□十根川[とねがわ]の臼太鼓
◆椎葉の民謡と子守唄
□茶摘み唄
□駄賃つけ節
□春節
□正調稗[ひえ]つき節
□椎葉の子守唄
■椎葉の子守唄-ねんねこねんねこねんねこや-
■椎葉の子守唄-なけべすこべす-
□山唄
93
竹富島の音楽文化学習
竹富島の音楽文化学習
○竹富島の音楽文化学習について
○竹富島の音楽文化学習へようこそ
●竹富島の音楽文化学習解説
●竹富島の音楽文化学習
◇音楽
◆タナドゥイ(種子取祭)
□タナドゥイの概略
□ブドゥイ(踊り)の準備
■ブドゥイ(踊り)の練習風景
■奉納芸能の前夜の練習
■奉納芸能の舞台裏での準備
□芸能の種類
■舞台の芸能
▽カンツカサ(神司)スーブドゥイ
▽ミルク(弥勒)
▽ナカラダー(仲良田)
▽カザグ(鍛冶工)
■庭の芸能
▽マミドー
▽ジッチュ
▽真栄[まさかい]
▽ンーマヌーシャ(馬乗者)
▽ボウ(棒術)
▽ウディボウ(腕棒)
□ユークイ(世乞い)
■夜のユークイ
■朝のユークイ
◆竹富島の民謡
□民謡の種類
■アヨー
■ジラバ
■ユンタ
□安里屋[あさとぅや]ユンタ
■クヤマの生家
◆上勢頭亨と竹富島のわらべうた・民謡
□上勢頭亨と喜宝院・蒐集館
■喜宝院・蒐集館[きほういん・しゅうしゅうかん]
■上勢頭亨[うえせど とおる]
□わらべうた
■雨々[あみあみ]ふぁ-ふぁ-
■ガラシぬぱん
■ふーゆべまー
■くばぬ葉ユンタ
■ピーヤ−シー(草笛あそび)
■ピビジャー
■牛ぬまーれ
■牛ぬぱんソレソレ
94
◇文化
◆竹富島
□竹富島の花
□白い珊瑚の道と 珊瑚の石垣
□街並み
□シーサー
◆竹富島の祈り
□カンツカサ(神司)
■タナドゥイ(種子取祭)でのカンツカサ
■床屋の開店の繁盛の祈祷
▽線香を並べる
▽線香に火をつける
▽米を供える
□ウタキ(御嶽)
■竹富島のウタキ
■竹富島のウタキ
■竹富島のウタキ
□竹富島のお墓
◆竹富島の織物
□子ども達のミンサー織学習
□ミンサー織りの帯
□バシャシン(芭蕉布の着物)
□機織りをする内盛スミさん
◇学習マニュアル
―タナドゥイ(種子取祭)庭の芸能 ジッチュ―
◆音楽
□踊り
□音楽
□歌
■1番
■2番
■3番
■4番
□サンシン(三線)
■サンシン(三線)の各部分の名称とチミ(爪/撥)
■クンクンシー(工工四)
■チブドゥクル(勘所)
▽指の位置
◆踊り方
□基本姿勢と一連の動き
□踊り方のポイント
■ポイントその1―手の動き―
■ポイントその2―踊りの手―
□音楽付き
■正面から
■横から
附 録
バリ島の音楽文化学習
バリ島の音楽文化学習
○バリ島の音楽文化学習について ○バリ島の音楽文化学習へようこそ ●バリ島の音楽文化学習解説 ●バリ島の音楽文化学習 ◇ 音楽
◆ガムラン
◆舞踊
◆ケチャ
□ガムランについて
□バリ舞踊について
□ケチャについて
□ガムラン・ゴン・クビャール
□バリ舞踊の種類
■ケチャについて
■ガムラン・ゴン・クビャールについて
■バリス
▽ケチャ1
■楽器の種類
■トペン
▽ケチャ2
▽メタロフォン
■オレッグ・タムリリンガン
▽ケチャ3
▼ジェゴガンとジュブラッグ
■ペンデット
▽ケチャ4
▼ウガル
■パニュンブラマ
▽ケチャ5
▼プマデ
■レゴン・クラトン
■ケチャの仕組み
▼カンティル
■ジャンゲール
■ケチャの衣装
▽ゴン・チャイム
■バロン・ダンス
■ケチャの演奏
▼レヨン
□踊り方の基礎
▽1. 入場
▼トロンポン
■アグム
▽2. 祈り
▽太鼓
▽左アグム
▽3. ケチャパターン合唱
クンダン・ワドンとクンダン・ラナン
▽右アグム
▽4. 戦い
▽胡弓 ルバブ
■ジュリリン(指)
□ケチャの学習
▽ゴン
■ウクル(手)
■教育実践用モデル
▼ゴン・ワドンとゴン・ラナン
■首の動き
▽イ・ワヤン・スウェチャ
▼カジャル
▽その1
による上演モデル
▽シンバル チェンチェン
▽その2
▽グヌン・ジャティ歌舞団
▽笛 スリン
■スレデッ(目)
による上演モデル
■楽器づくりと調律
■ングサッ(肩)
■ケチャのパターン学習
▽楽器づくり
■ミラス(足)
▽時の周期
▽ガムランの調律
■基礎練習
▼パターン1
■入魂式
□衣装・メイクアップ等について
▼パターン2
▽入魂式の様子1
■衣装
▽各パターン
▽入魂式の様子2
▽衣装づくり1
▼ケチャのパートのパターン
▽入魂式の様子3
▽衣装づくり2
△パターン1
▽入魂式の様子4
▽衣装づくり3
△パターン2
□ガムランの種類
■髪型
△パターン3
■グンデル・ワヤン
■メイクアップ
△パターン4
▽ワヤン・クリッ(影絵芝居)
▽顔(正面)
△パターン5
▼ワヤン1
▽スバン(耳飾り)
△パターン6
▼ワヤン2
▽横顔
△パターン7
▼ワヤン3
■ボコール
▼メロディパートのパターン
▼ワヤン4
▽ボコール
▽パターンのセッション
■アンクルン
▽持ち方
▽バリエーション
■ガムラン・ゴン・クビャール
■仮面と仮面づくり
▽パターン表
■ジェゴグとティンクリック
▽仮面1
■練習方法の例
■ガムラン・ゴン・ルア
▽仮面2
□パニュンブラマ
▽仮面3
■全体の演奏
▽仮面4
■楽器別
▽仮面5
▽クンダンとゴン
▽仮面6
▼クンダン・ワドンと
▽仮面7
クンダン・ラナン
▽仮面8
▼クンダン・ワドン
▽仮面9
▼クンダン・ラナン
▽仮面づくり1
▽ウガルとカジャル
▽仮面づくり2
▽カンティルとプマデ
▽仮面づくり3
▼ポロス
□「パニュンブラマ」の上演
▼サンシ
(踊りとガムラン・ゴン・クビャール)
▼ポロスとサンシ
▼コテカン部分
▽ジュブラッグとジェゴガン
▽レヨン
▽チェンチェン
◇文化
◆バリ島
□バリの稲作
■農家
■棚田1
■棚田2
■田んぼ
□バリの花々
□アグン山
□バリの海
□バリの海中
◆宗教
□バリ・ヒンドゥー教
□ブサキ寺院
■ブサキ寺院1
■ブサキ寺院2
■ブサキ寺院3
■ブサキ寺院4
□僧侶の祈り
□人々の祈り
■祈り1
■祈り2
□お供え作り
■お供えもの
■お供えもの
■お供え運び
■お供え運び
■お供え運び
□バリの方位観と宗教
◆人々の考え方と暮らし
□二元論の考え方
□日々の暮らし
□市場
■店さき
■並び
■売り場
□ニワトリ
◆子どもと子どもの芸能
□子ども
■散歩
■親子
■兄弟
■少女
■遊び
■お出かけ
■学校
□子どものガムラン
■レッスンの様子
■全体の練習
□バリ舞踊の学習
◆こよみ
□ニュピとオゴオゴ
□ガルンガンとクニンガン
■クニンガン1
■クニンガン2
■クニンガン3
◆儀式
□葬式
□結婚式
■トペン
■祭壇
■ガムラン
■ウェディングパーティー
◆バリ・アートフェスティバル
□トペン
□わらべうたによるパフォーマンス
□子どもの舞踊
□ガムラン
□ワヤン
◆インドネシア国立芸術大学博物館
□博物館1
□博物館2
□博物館3
□博物館4
□博物館5
□博物館6
95
An
Culture
of of
thethe
AinuAinu
People
An Introduction
IntroductiontotoMusic
Musicandand
Culture
People
○Production Data
○An Introduction to Music and Culture of the Ainu People
●Explanations of the“An Introduction to Music and Culture of the Ainu People”
●An Introduction to Music and Culture of the Ainu People
◇Music
◆Upopo (festival songs)
□Ikamukka san ke
□Sa-oi
□Itasankata
◆Rimse(dance)
□Utari-opunparewa
□Battaki Upopo Rimse
□Hukkun cuy
□Sarorun rimse
◆Mukkuri
□Mukkuri
■Performance of the Mukkuri
■About the instrument
■How to make a Mukkuri
▽1. Materials and tools
▽2. Smooth the surface of bamboo plate
▽3. Shave
▽4. Shape the plate
▽5. Tie a string
▽6. Tie another string
▽7. Tie a small stick
□How to play
■How to hold Mukkuri
■How to vibrate the reed
■How to hold
■The sound resonates in the mouth
◆On-nokka (lullaby)
◆Tonkori
◆Rituals
◆Marimo Festival (aegagropila festival)
□Preparation
■Tonoto
■Inau
□Dance
■Sarorun・Chikapu・Rimse(Dance of crane)
■Ku・Rimse(Dance of bow)
■Children's Rimse
□Rituals
■Marimo
■Marching with torches
■Icharupa
▽Icharupa at Akan Lake Ainu Kotan
▽Icharupa of a family
■Kamuy-nomi
96
◇Culture
◆History and Nature
□History
□Nature
■Concept toward Nature
◆Living
□Clothes
■Kinds
■Patterns of Ainu
■Nettle
□Articles for everyday use
■Shintoko
■Toma
■Crafts
□Gastronomic culture
■Preserved food
▽Yukkukamu
▽Tourepu
▽Rugosa Rose's hips
▽Kikinni
▽Tuwa
▽Pekkaunnpe
▽Pukusa
■Ritual offerings
▽Imochokeppu
▽Ratashikeppu
▽Inakibi gohan(Rice)
▽Pukusa gohan(Rice)
▽Shirari
▽Shito
■Ainu's food
▽Yukku set
▽Cheppu set
▽Pocche imo(Potato)
▽Mehun
▽Konbu shito
▽Amamu
◆Ainu language
□Greetings
■Morning greetings
■Noon greetings
■Evening greetings
■Thank you
■Good bye
■Thank you, gods
■Important word for Ekashi(Chief)
□How to count numbers
附 録
An Introduction
Introduction to
to Music
Music and
and Culture
Culture of the Shiiba People
An
○Production Data
○An Introduction to Music and Culture of the Shiiba People
●Explanation of the“An Introduction to Music and Culture of the Shiiba People”
●An Introduction to Music and Culture of the Shiiba People
◇Music
◆Takenoedao Kagura
□Preparation
■Making tools for the dance
▽Making Bachi
▽Cutting Gohee
▽Making tools for the dance
▽Tools for the dance
▽Maibee
■Mask of Kagura
■Inside preparations
▽Kumo (Picture of Doragons)
▽Lantern Decorations
▽Erimono
▽Setting Uchikouya
▽Shime
■Takamagahara and Sinsen
▽Takamagahara
▽Shinsen 1
▽Shinsen 2
■Practice
▽Dance
▼Practice 1
▼Practice 2
▽Drums
▼Practice 1
▼Practice 2
■Outside preparation
▽Making Sotokouya 1
▽Making Sotokouya 2
▽Takamagahara in Sotokouya
▽Cutting green bamboo
▽Shime on the roof
▽Making Shime 1
▽Making Shime 2
▽Upper side of Shime
▽Mezuna
□Kagura Performance
■Shimetate
■Yadokari
■Shimehiki Kijin
■Chidren's Kagura
▽Kanzui
▼Kanzui 1
▼Kanzui 2
▼Villagers
▽Uchikijin
■Ganjouze Kagura
■Hoshi sashi
■Shibaire Kagura
■Tsunakiri
▽A head of big snake
■Kami okuri (sending off the Gods)
□Kagura Seri Uta (song)
■Seri uta (singing) brightens
the performance
■Sung by Namiko Shiiba
□Shinobue(Transverse flute)
■Picture of Shinobue
□Drums
◇Culture
◆The Village of Shiiba
□Tsurutomi-yashiki
◆Nature and day to day life
□Nature and day to day life 1
■Millet
■Kamishiiba dam
■Collecting honey
▽Lunch
▽Honeycomb
▽Collecting honey
▽Broiled tofu
▽Uto
■Picking larvae of a bee
▽Picking larvae of a bee
■Hunting life and belief
in the god of the mountain
■Mogura Uchi
■Shimenawa
■Shiiba’s Roasted Tea
▽Tea picking
▽Tea
▽Roasting
▽Kneading
■Shiiba’s food
▽Wakudou soup
▼Wakudou soup 1
▼Wakudou soup 2
▼Wakudou soup 3
▽Nadoufu
▼Nadoufu 1
▼Nadoufu 2
▽Somagee
▼Somagee 1
▼Somagee 2
▼Somagee 3
▽Hanpaku Meshi
▽Shiiba's dinner
▽Nishime
■Bamboo shoot
□Nature and day to day life 2
■Making ball
■Swidden
□Nature and day to day life 3
■Language of Shiiba
□Shiiba Kagura
■Ubamen of Tsugao Kagura
■Kanzui of Tsugao Kagura
■Hinokami Kagura of Tsugao Kagura
■Kijin of Tsugao Kagura
■Gotsuten of Okumura Kagura
■Ise no Kagura of Okumura Kagura
■Shibahikimen of Fudono Kagura
■Hinokamimairi Kagura of Hudono Kagura
■Mori of Otenou Kagura
■Mori no tsukai of Otenou Kagura
■Kijin of Ohkawachi Kagura
■Shishimai of Ohkawachi Kagura
◇Study manual -Takenoedao district-
◆Daijin Kagura -Takenoedao district□Nekitate (prelude)
■Drum
■Transverse flute
□Drum
■How to strike it
■Basic pattern
▽Pattern 1
▽Pattern 2
▽Pattern 3
■Music flow
□Transverse Flute
■Transverse flute
▽Melody 1
▽Melody 2
▽Melody 3
▽Melody 4
□Dance
■Movement of foot
▽Whole body
▽Movement of foot
▽Movement of foot -Slowly-
▽Suzu oroshi and Henbe (steps)
■Movement of one person
■Movement of two people
◆Folk song -Dachintsuke bushi(Takenoedao district)◆How to make‘GOHEE’for Takenoedao Kagura
□Folding papers
□Cutting Papers
□Making Gohee
□Assembling the Gohee
◆Mujo Nenbutsu of Fudono
□Mujo Nenbutsu
◆Usudaiko
□Usudaiko of Tsugao
□Usudaiko of Ohkawachi
□Usudaiko of Ohkawachi
□Usudaiko of Tonegawa
◆Folk songs and Lullabies in Shiiba
□Tea picking song
□Dachintsuke bushi
□Spring Verse
□A Japanese Millet Pounding Song
□Lullaby in Shiiba
■Nennekonennekonennekoya
■Nakebesukobesu
□The Mountain Song
97
An
An Introduction
Introduction to
to Music
Musicand
andCulture
Cultureofofthe
theTaketomijima
TaketomijimaPeople
People
○Production Data
○An Introduction to Music and Culture of the Taketomijima People
●Explanation of “An Introduction to Music and Culture of the Taketomijima People”
●An Introduction to Music and Culture of the Taketomijima People
◇Music
◆Tanadui
□Outline of Tanadui □Preparation for Budui (dance)
■Practice of dance
■Practice of the previous night
■Preparation on backstage
□Kinds of Art Performances
■Performances on the stage
▽Miruku
▽Subudui by Kantsukasa (priest)
▽Kazagu (Blacksmith)
▽Nakarada
■Performances at a garden
▽Jicchu
▽Mamido
▽Masakai
▽Bou
▽Nmanusha
▽Udibou
□Yukui
■Yukui at night
■Yukui in the morning
◆Folk songs of Taketomijima
□Kinds of Folk songs
■Yunta
■Jiraba
■Ayo
□Asatoya Yunta
■The house where Kuyama was born
◆Uesedo Toru and Folk songs &
children’s songs of Taketomijima
□Uesedo Toru and Kihouin Shushu kan
■Uesedo Toru
■The Kihouin Shushukan museum
□Children’s songs
■Amiami Fafa
■Fuyubema
■Pibija
■Kubanuha Yunta
■Piyashi
■Ushi Nupan Soresore
■Garashi Nupan
■Ushi Numare
98
◇Culture
◆Taketomijima
□Flower in Taketomijima
□Shisa
□A view of the town
□White coral road and coral stone wall
◆Prayer of Taketomijima
□Kantsukasa
■Kantsukasa in Tanadui
■Prayer of opening barber
▽Displaying incense sticks
▽Igniting incense sticks
▽Offering rice
□Utaki
■Utaki in Taketomijima
■Utaki in Taketomijima
■Utaki in Taketomijima
□Graves on Taketomijima
◆Fabric of Taketomijima
□A belt of Minsa
□Bashashin(A kimono made by Bashouhu)
□Children’s leaning how to weave Minsa
□Sumi Uchimori who weave
◇Study manual
-Tanadui Garden Performance Jichu◆Music
□Budui(Dance)
□Music
□Songs
■1st verse
■2nd verse
■3rd verse
■4th verse
□Sanshin
■The name of Sanshin parts and Chimi
■Kun kun shi
■Chibu dukuru (Sanshin fingering)
▽Finger position
◆How to dance
□Basic position and movements
□Dancing point
■point 1
■point 2
□With music
■from front angle
■from the side angle
附 録
AnAnIntroduction
Music
Culture
of Bali
Bali People
People
Introduction to
to the
Music
and and
Culture
of the
○Production Data
○An Introduction to the Music and Culture of Bali
●Explanation of the“An Introduction to the Music and Culture of Bali”
●An Introduction to the Music and Culture of Bali
◇ Music
◆Gamelan
◆Dance
◆Kecak
□About gamelan
□Balinese Dance
□About Kecak
□Gamelan Gong Kebyar
□Kind of Dance
■About Kecak
■Gamelan Gong Kebyar
■Baris
▽Kecak 1
■Instruments
■Topeng
▽Kecak 2
▽Metalofone
■Oleg tambulilingan
▽Kecak 3
▼Jegogan and Jublag
■Pendet
▽Kecak 4
▼Ugal
■Panyembrama
▽Kecak 5
▼Pemade
■Legong keraton
■How Kecak works
▼Kantilan
■Janger
■Costume of Kecak
▽Gong Chime
■Barong Dance
■Kecak performance
▼Reyong
□Basic Dance
▽1. Entrance
▼Terompong
■Agem
▽2. Prayer
▽Drums Kendang wadon and
▽Left Agem
▽3. Pattern chorus of kecak
Kendang lanang
▽Right agem
▽4. Battle
▽Fiddle Rebab
■Julilin (fingers)
□Learning about Kecak
▽Gong
■Ukel (hand)
■Education Model
▼Gong Wadon and Gong Ranang
■Motion of a neck
▽Model Performance by I Wayan Suweca
▼Kajar
▽Motion of a neck 1
▽Model Performance by Gunung Jati
▽Cymbal Cengceng
▽Motion of a neck 2
■Learning Kecak patterns
▽Recorder Suling
■Sledeh (eyes)
▽Time cycle
■Making instruments and tuning
■Ngsah (shoulder)
▼Pattern 1
▽Making instruments
■Miras (legs / feet)
▼Pattern 2
▽Tuning gamelan
■Basic practice
▽Each pattern
■Ceremony for inspiring soul
□Costume and Makeup
▼Part pattern
▽Ceremony for inspiring soul 1
■Costume
△Pattern 1
▽Ceremony for inspiring soul 2
▽Making costume 1
△Pattern 2
▽Ceremony for inspiring soul 3
▽Making costume 2
△Pattern 3
▽Ceremony for inspiring soul 4
▽Making costume 3
△Pattern 4
□Type of gamelan
■Hair Style
△Pattern 5
■Gender Wayang
■Makeup
△Pattern 6
▽Wayang Kulit(shadow play)
▽Face(The front)
△Pattern 7
▼Wayang 1
▽Subeng(earrings)
▼Melody pattern
▼Wayang 2
▽Profile
▽Patterns session
▼Wayang 3
■Bokor
▽Variations
▼Wayang 4
▽Bokor
▽Patterns list
■Angklung
▽How to hold
■Practice examples
■Gamelan Gong Kebyar
■Masks
■Jegog and Tingklik
▽Masks 1
■Gamelan Gong Lua
▽Masks 2
□Panyembrama
▽Masks 3
■All
▽Masks 4
■Each Instrument
▽Masks 5
▽Kendang and Gong
▽Masks 6
▼Kendang wadon and
▽Masks 7
Kendang lanang
▽Masks 8
▼Kendang wadon
▽Masks 9
▼Kendang lanang
▽Making masks 1
▽Ugal and Kajar
▽Making masks 2
▽Kantilan and Pemade
▽Making masks 3
▼Polos
□Panyembrama(Dance and Gamelan Gong Kebyar)
▼sangsih
▼Polos and sangsih
▼Kotekan
▽Jegogan and Jublag
▽Reyong
▽Cengceng
◇Culture
◆Bali
□Rice farming in Bali
■Farmer
■Mountain paddy fields 1
■Mountain paddy fields 2
■Paddy fields
□Flowers in Bali
□Mt. Agung
□Sea in Bali
□Inside of Sea
◆Religion
□Balinese Hinduism
□Besakih temple
■Besakih temple 1
■Besakih temple 2
■Besakih temple 3
■Besakih temple 4
□Invocation by priests
□Invocations by the people
■Invocations 1
■Invocations 2
□Making offerings
■Offerings
■Carrying offerings
■Carrying offerings
■Carrying offerings
■Offerings
□Balinese view of bearing and religion
◆Balinese way of thinking and life
□Dualism
□Daily life
□Market
■Store front
■Goods
■A counter
□Cocks
◆Children and Entertainment
□Children
■A Walk
■Mother and a child
■A brother and sisters
■A girl
■Play
■Go out
■School
□Children and gamelan
■Lesson
■Practice
□Bali Dance Practice
◆Calendar Time (New Year and Bon Period)
□Nyepi and Ogoh-ogoh
□Galungan and Kuningan
■Kuningan 1
■Kuningan 2
■Kuningan 3
◆Ceremony
□Funeral Service
□Wedding Ceremony
■Topeng
■Alter
■Gamelan
■Wedding party
◆Bali Art Festival
□Topeng
□Paformance by children's song
□Children's dance
□Gamelan
□Wayang
◆Sekolah Tinggi Seni Indonesia Museum
□Museum 1
□Museum 2
□Museum 3
□Museum 4
□Museum 5
□Museum 6
99
あとがき
本著は、拙稿『多文化音楽教育の指導法の研究―デジタル教材の開
発とその実践的検証―』 1) をもとに、第三部を割愛し、あらたに授業
提案を増補して文体などを書き改めました。拙稿の指導教官であった
山本文茂氏に感謝申し上げます。
本著は、多くの方々に支えられて完成を見ました。ここにお名前を
挙げて、お礼申し上げます(敬称略)。
多文化音楽教育の理念や指導法と D V D 教材の有効性は、2004 年度
から 3 年間、多文化音楽教育研究会に参加した小学校から大学までの
先生方との共同研究を通してその有効性が検証されました。授業設計
や授業提案は、福島コダーイ合唱団や多文化音楽教育研究会との共同
研究がベースになっています。多文化合唱の演奏に取り組んでくださっ
た福島コダーイ合唱団と多文化音楽教育研究会 2) の皆さまにお礼申し
上げます。
DVD 教材は、以下にあげた皆さまの取材協力を得ました。
阿寒湖アイヌコタン:弟子シギ子、西田香代子、椎葉村:椎葉一、浪子、
中瀬守、ケサヨ、竹富島:上勢頭同子、上勢頭次子、バリ島;グヌン・
ジャティ歌舞団、プリンティング・マス歌舞団、イ・マデ・スィディア、
イ・マデ・ジェラダ、イ・ワヤン・スウェチャ、守屋圭子。
本著に至る道のりには、先輩諸氏からの学びがあります。
井上頼豊、ウグリン・ガーボル、大橋力、岡本文弥、清瀬保二、クルター
グ・ジェルジュ、小泉文夫、セーニ・エルジェーベト、徳丸吉彦、中村
とうよう、成田絵智子、林光、平井澄子、フォライ・カタリン、ホルヴァー
ト・アニコー、メアリー・ゲッツ、モハーイネー・カタニチ・マーリア。
本著の完成に関わって、D V D 教材の改訂・レーベル作成:阿部千春、
サイト・マップ作成:渡辺真純、校正は、上記 2 氏に加えて岩淵摂子、
1)博士論文 東京藝術大学 論博(学術)音第 7 号(2005. 10)。
2)2005 年度 小学校(安齋るみ子、藤田加代、松原美保、目黒稚子、山﨑純子、吉田
操)、中学校(大木恵美、橋本牧)、高等学校(竜田晴美、目黒恵子)、大学(奥忍、
澁谷由美、降矢美彌子)。2006 年度 小学校(安齋るみ子、手代木明子、藤田加代、
目黒稚子、山﨑純子)、中学校(大木恵美、橋本牧、水池純子)、高等学校(竜田晴美、
目黒恵子)、養護学校(山田千夏)、大学(奥忍、降矢美彌子)。2007 年度 小学校(藤
田加代、松原美保、目黒稚子、山﨑純子)、中学校(大木恵美、橋本牧)、高等学校(竜
田晴美、目黒恵子)、特別支援学校(山田千夏)、大学(奥忍、降矢美彌子)。
101
橘浩昭、表紙助言:奥忍。
先生方や子どもや学生たち、仲間に支えられて、力いっぱい演奏と研
究と音楽教育に取り組んで来られたことに、深い感謝と感慨がありま
す。
本著は、独立行政法人日本学術振興会平成 20 年度科学研究費補助金
(研究成果公開促進費 学術図書 課題番号 205181)の助成を得て刊
行します。出版にあたって、現代図書の野下弘子さん、三谷千雅さん
にお世話になりました。お礼申し上げます。
2009 年 10 月
降矢美彌子
102
索 引
【あ行】
カルミナ・スロヴェニカ .............................62 注
IT 情報化時代 ............................................................ 16 「願成就(大神)神楽」........................................ 37
アイデンティティ ............................iii, 12, 21, 22 神司 ............................................................................ 38, 41
アイヌ民族 ...................................................31, 32, 33 吉川和夫 ......................................................................... 60
ア・カペラ合唱................................................. 62, 63 キャンベル,パトリシア S..................... 3, 4, 5
「安里屋ユンタ」......................................................... 38 「切支丹道成寺」......................................................... 71
『遊び―ピアノのために』........................... 72, 74 「くばぬ葉ユンタ」................................................... 41
アルス・ノーヴァ合唱団 .............................62 注 グラント,カール A.............................................. 1
アンクルン ................................................................... 43 クルアーン ........................................................... 58, 59
異文化性 ................................................................. 30, 84 クルターグ,ジェルジュ ........................... 72, 73
異文化理解 ................................................................... 17 グレゴリオ聖歌 ................................................. 58, 59
異文化音楽 ........................................................... 17, 84 グローバル化 .................................................. i, 77, 84
イヨマンテ ................................................................... 33 グローバル・ミュージック・シリーズ...... 4
岩崎喜平 ......................................................................... 49 ケージ,ジョン ......................................................... 75
インターナショナル・ヴォーカル・アンサ ゲスト・ティーチャー ........................................ 54
ンブル(IVE).......................................................... 5 ケチャ ......................................................28, 42, 44, 46
ウェイド,ボニー C. .............................................. 5 ゲッツ,メアリー .................................................5, 6
ウエスリアン・シンポジウム ........................... 2 現代音楽 ......................................................................... 72
上勢頭同子 ................................................................... 40 小泉文夫 ......................................................................... 52
ヴェンダ族 ...................................................................... 2 口琴 .................................................................................... 34
ヴォルク,テレス M.............................................. 3 口頭伝承 ................................................................. 20, 83
ウディボウ ................................................................... 41 口頭文芸 ......................................................................... 33
牛ぬぱん ソレソレ .............................................. 39 公民権運動 ..................................................................i, 1
ウポポ .............................................................................. 31 五箇山 .............................................................................. 47
ウニャゴ ...................................................................53 注 こきりこ ................................................................. 47, 50
江渕一公 ............................................................................ 1 国際音楽教育協会 ............................................... 6 注
エリオット,デイヴィッド J. .......................... 3 国際理解教育 .............................................................. 11
岡本文弥 .........................................................68, 69, 70 ゴスペル・ソング ........................................... 65, 66
小沢昭一 ......................................................................... 70 コダーイ,ゾルターン ........................................ 61
音階(日本の伝統音楽)...................................... 54 コテカン ......................................................................... 45
「言葉とはなに?」........................................... 73, 74
【か行】
小林哲也 ............................................................................ 1
学習指導要領 ...................................................... 10, 11
神楽 ....................................................................35, 36, 37 【さ行】
合掌造り ................................................................. 47, 48 在日朝鮮人 ...................................................................... 9
カムイノミ ................................................................... 27 「佐倉義民伝 甚兵衛渡し場の段」............. 71
ガムラン ................................................................. 28, 42 三線 .................................................................................... 40
カノン ..............................................................33, 62, 64 椎葉 .................................................................................... 35
103
J-POP ................................................................................ 65
ジェンダー ...................................................................... 9
視聴覚教材 ........................................................... 15, 16
「ジッチュ」................................................................... 41
篠笛 .................................................................................... 48
柴田南雄 ......................................................................... 60
自文化 ....................................................................... iii, 56
シャーマニズム......................................................... 59
シュピース,ウォルター ................................... 46
シュミット=レンガー,バーバラ ................ 2
唱歌 .................................................................................... 54
声明 ....................................................................58, 59, 60
人頭税 .............................................................................. 38
新内節 .............................................................................. 68
図形楽譜 ......................................................................... 72
煤竹 .................................................................................... 49
「スーブドゥイ」......................................................... 41
セリ歌 ...................................................................... 35, 37
セルフ・エスティーム ..........................................iii
全米音楽教育者会議(MENC)........................ 2
全米音楽教育者協会 ................................................. 2
【な行】
二元論 ......................................................27, 28, 45, 47
「日本の放浪芸」......................................................... 70
ニューカマー ................................................................. 9
ニューファウンドランド・シンフォニー・
ユース・クワイア ........................................62 注
ネトル,ブルーノ .................................................2, 3
「ノヴェンバー・ステップス」................ 74, 75
【は行】
ハモネプ ................................................................. 65, 66
バリ島 ..............................................................28, 42, 43
バリ・ヒンドゥー教 .............................................. 28
バルトーク,ベーラ ........................................61 注
バンクス,ジェームズ A.................................... 1
平井澄子 ................................................................. 68, 69
ファーン,ジェイ ...................................................... 6
フィールド・ワーク ............................... 19, 53-55
福島コダーイ合唱団 .......................................... 6 注
ブラッキング,ジョン ........................................... 2
文化理解 ..................................................i, 1, 4, 11, 77
べケット,サミュエル ........................................ 73
【た行】
方言札 .............................................................................. 38
第二次継承者 ...................................................... 18, 85 母文化 ..............................................................16, 17, 85
第二次口頭性 ....................................................... iii, 83
竹富島 ..............................................................38, 39, 40 【ま行】
嶽之枝尾神楽 ...................................................... 36, 37 マイノリティ ................................ 9, 12, 26, 32, 83
武満徹 .............................................................................. 73 マジョリティ .............................................................. 84
種子取祭 ................................................................. 40, 41 マルチ・エスニック音楽教育 ........................... 4
タピオラ合唱団......................................................... 62 「ミルク」......................................................................... 41
多文化音楽教育....................................i, ii, 3, 4, 10, 民俗音楽 ......................................................................... 25
11, 12, 15, 18, 22, 77
民族音楽学 ...................................................................... 2
多文化教育 ..........................................................i, 1, 83 民俗芸能 ......................................................................... 53
地球音楽 ..................................................................... i, 84 民謡 ............................................................................ 47, 49
チョクウェ族 ................................................................. 2 ムックリ .........................................................31, 33, 34
TT ...................................................................................... 20 モニョーク,イルディコー...................... 73, 74
DVD 教材 .................................................iii, 6, 25, 26,
27, 29, 30, 32, 36, 39, 43, 77, 78
【や行】
時の周期 ......................................................................... 43 八重山ミンサー織り .............................................. 38
徳丸吉彦 ......................................................... 13 注 , 20 焼畑農業 ......................................................................... 35
トランス状態 .............................................................. 43 ユーカラ ......................................................................... 33
104
索 引
ユネスコ ......................................................................... 11
「4 分 33 秒」.................................................................. 75
【ら行】
ラマ教 ........................................................................58 注
ラーマーヤナ ...................................................... 42, 44
「蘭蝶」.............................................................................. 70
リムセ .............................................................................. 27
琉球音階 .......................................................... 39, 54 注
『連篇歌曲 愛の世界』................................ 70, 71
ロシア正教 .............................................................58 注
【わ行】
わらべうた ........................................................... 52, 53
ワールド・ミュージック教育 ........................... 4
105
著者紹介
■ 降矢 美彌子(ふりや
みやこ)
東京都に生まれる.
1965 年 武蔵野音楽大学音楽学部器楽科(ピアノ専攻)卒業.
1987 年 国際コダーイ協会の奨学生としてハンガリーに留学,以後毎年ハンガリー
で研鑽を重ねる.
宮城教育大学名誉教授 博士(学術).
専 門
多文化音楽教育,ハンガリーのピアノ教育・音楽教育,合唱指揮,クルター
グ・ジェルジュのピアノ作品研究.
〈主な論文,訳書,CD 制作〉
論 文 『多文化音楽教育の指導法の研究―デジタル教材の開発とその実践的検
証―』東京藝術大学博士論文(2005 年).
訳 書 『テーケ新ピアノの学校1 ピアノとの出逢い&音楽の知恵袋』
・
『テーケ新
ピアノの学校 2 ピアノは友だち&連弾のよろこび』・『テーケ新ピアノの
学校 別巻 ピアノとの出逢い 指導の手引き』全音楽譜出版社(1998 年),
『バルトーク・ベーラ 児童と女声のための合唱曲集 新訂版』全音楽譜出
版社(2007 年).
CD 制作 クルターグ・ジョルジュ『遊び― ピアノのために』ECD-92002/4 ばるん
舎(1993 年),『ルタの木は高い』(『合唱名曲コレクション 51』)東芝 EMI
TOCF-56002(1998 年),『Many Nations-Many Voices ― 合唱で結ぶ西洋
と日本― 』FKC-2000(2000 年),『バルトーク作曲 児童と女声のため
の合唱曲集』FKC-2001(2001 年),『多文化音楽学習のための CD-ROM・
DVD』(2004 平成 12 年度∼ 15 年度科学研究費補助金基盤研究).
地球音楽の喜びをあなたへ
―未来の地球市民となる子どもたちのための多文化音楽教育―
2009 年2月 28 日 第 1 刷発行
著 者 降矢 美彌子
発行者 池上 淳
発行所 〒 229-0013 神奈川県相模原市東大沼 2-21-4
株式会社 現
代図書
TEL 042-765-6462(代)
振替口座 00200-4-5262
URL http://www.gendaitosho.co.jp
FAX 042-701-8612
ISBN 978-4-86299-008-2
E-mail [email protected]
(株)日本著作出版権管理システム委託出版物
・ 本書(含 DVD)の無断複写は、著作権法上での例外を除き禁じられています。
・ 複写される場合はそのつど事前に㈱日本著作出版権管理システム
(電話:03-3817-5670 FAX:03-3815-8199)の許諾を得てください。
印刷・製本 モリモト印刷株式会社 ©Miyako Furiya, 2009
落丁・乱丁本はお取り替えいたします。
Printed in Japan
ISBN978-4-86299-008-2
C3073 ¥2381E
978
4862990082
定価 (
本体 2,
3
8
1円+税)
1923073023815