18-9 根治切除不能な頭頸部がんに対する S-1+CDDP を 同時併用する化学放射線療法の第 II 相試験 主任研究者 東京医療センター 藤 井 正 人 研究成果の要旨 進行頭頸部癌に対する化学放射線療法は標準的な治療法として確立しつつある。本研究では化 学放射線療法がもっとも重要な位置を占める、根治切除不能な頭頸部癌に対するレジメンを開発する ことが目的である。頭頸部癌に対する Key Drug である CDDP と、S-1 を放射線療法に併用するレジメ ンを開発し JCOG でプロトコールを作成した。まず国立がんセンターにおいて本レジメンに関する用量 設定を目的とした第Ⅰ相試験を行い、S-1+CDDP と放射線療法が安全に施行できるように準備してい る。同時に、本プロトコールを支援するさまざまな研究を行ってきた。まず、本プロトコールの比較試験 でコントロールとなる CDDP 単独と放射線治療併用の安全性、施行可能性試験、S-1 と CDDP の併用 試験、さらに強力なレジメンであるドセタキセルと CDDP、S-1 の併用第Ⅰ相試験、を施行した。いずれ も、安全性と施行可能性が確認された。放射線療法では進行癌に対する多分割照射法の検討を行っ た結果、特に加速多分割照射が進行癌に有用であった。化学療法や放射線療法の効果を規定する 腫瘍の感受性に関して各種バイオマーカーや組織培養法で検討した。本プロトコールはわが国で初 の頭頸部進行癌に対する本格的な臨床試験として施行され、化学放射線療法がわが国での標準的治 療として評価されるきっかけとしての重要性があると考えられる。 研究者名および所属施設 研究者名 所属施設および職名 分担研究課題 藤井正人 東京医療センター 部長 進行頭頸部癌に対する化学放射線療法の研究 田原 信 国立がんセンター東病院 医員 頭頸部癌に対する化学放射線療法 *1小川徹也 愛知がんセンター 医長 進行頭頸部癌に対する手術と化学放射線療法の適応に関 *2長谷川泰久 愛知がんセンター 部長 する研究 秋元哲夫 *3群馬大学医学部 講師 進行頭頸部癌に対する至適放射線療法の確立 *4東京女子医科大学 助教授 小野澤裕輔 静岡がんセンター 切除不能頭頸部癌の治療開発 藤井博文 自治医科大学 助教授 頭頸部癌に対する化学療法の研究 上田 勉 呉医療センター 医長 頭頸部進行癌に対する化学放射線療法の有効性適応に関 する検討 *1:平成18年4月1日~平成19年3月31日 *2:平成19年4月1日~平成20年3月31日 *3:平成18年4月1日~平成18年6月30日 *4:平成18年7月1日~平成19年3月31日 -1- 18-9 根治切除不能な頭頸部がんに対する S-1+CDDP を同時併用する化学放射線療法の第 II 相試験 染、および Grade3 の口内炎、食道炎を除く)、5)有害事象に 研究報告 よるプロトコール治療の中止、6)治療に関連する可能性が 1研究目的 否定できない全ての死亡。以上の条件で22 例が登録された 本研究では化学放射線療法がもっとも重要な位置を占める、 が、一例が病状の悪化による PS 低下にてプロトコール治療 根治切除不能な頭頸部癌に対するレジメンを開発すること が行われなかった。プロトコール治療が施行された 21 例の が目的である。頭頸部癌に対する key drug である CDDP と 毒性は、Grade 3 以上の主な血液毒性として白血球減少 38%、 S-1 を放射線治療と併用するレジメンについて JCOG でプロ 好中球減少 38%、貧血 24%、血小板減少 14%が認められ、 トコールを作成する。さらに、頭頸部癌に対する化学放射線 Grade 3 以上の非血液毒性として粘膜炎 69%、粘膜炎に伴う 療法を標準化するために至適化学療法を設定するための比 感染 44%、嚥下困難 75%などが認められた。用量レベル 1 較第Ⅲ相試験の準備を行うためさまざま併用化学療法の臨 (S-1 40mg/m2/day)、レベル 2 (S-1 60mg/m2/day)の最初 床試験と放射線治療の方法の検討を行うことを目的とする。 の段階において DLT は認められなかったが、レベル 3 (S-1 80mg/m2/day)にて 6 名中 2 例にいずれも 4 日間以上連続 2 研究方法 する発熱性好中球減少の DLT が認められた。このため、増 頭頸部癌に対する Key Drug である CDDP と、S-1 を放射線 量計画に従い用量レベル 2 にて 9 名追加したところ、Grade 療法に併用するレジメンを開発し JCOG でプロトコールを作 3 の下痢と 4 日間以上連続する発熱性好中球減少の DLT 成する。まず国立がんセンターにおいて本レジメンに関する がそれぞれ 3 名認められた。後者のうち一例は、登録時には 用量設定を目的とした第Ⅰ相試験を行い、S-1+CDDP と放 適格規準を満たしていたが、治療後 G-CSF を投与継続にも 射線療法が安全に施行できるレジメンを検討する。同時に、 かかわらず顆粒球系のみが 4 週間以上にわたって回復せず、 本プロトコールを支援するさまざまな研究を行う。まず、本プ 敗血症も併発し、骨髄生検から骨髄異形性症候群(MDS)と ロトコールの比較試験でコントロールとなる CDDP 単独と放 診断された。用量レベル 2 における DLT の発現は 12 名中 4 射線治療併用の安全性、施行可能性試験、S-1 と CDDP の 名となったことから、用量レベル 2 (S-1 60mg/m2/day)が推 併用試験、さらに強力なレジメンであるドセタキセルと CDDP、 奨用量と考えられた。化学放射線療法までの治療完遂率は、 S-1 の併用第Ⅰ相試験を施行する。放射線療法では進行癌 95% (20/21)であり、追加化学療法 2 コースまでの完遂率は、 に対する多分割照射法と加速多分割照射の検討を行う。手 76% (16/21)であった。総合効果(Overall Response)は、CR 術に関しては、化学放射線療法に対する救済手術について 割合 86%( 18/21)であった。さらに PR 3 例中 2 例は、原発 その適応を検討する。そして、化学療法や放射線療法の効 巣 CR、頸部リンパ節転移 PR と判定されたが、頸部リンパ節 果を規定する腫瘍の感受性に関して各種バイオマーカーや 郭清術にていずれも pathological CR であった。以上から用 組織培養法で検討する。 量レベル 2 では十分認容性が高く、また従来の成績を越え る高い抗腫瘍効果が示され、臨床的有用性を強く示唆する 結果であった。 3 研究成果 1)根治切除不能局所進行頭頸部癌に対する S-1+CDDP+RT の第Ⅰ相試験 2)根治切除不能頭頚部がんに対するシスプラチン単剤と 国立がんセンター東病院において、根治切除不能局所進行 放射線同時併用療法の実現可能性試験 頭頸部扁平上皮癌に対して S-1 と CDDP の両薬剤を用いた 静岡がんセンターを中心とした多施設共同で、根治切除不 化学放射線療法の第 I 相試験について検討した。治療スケ 能頭頚部がんに対するシスプラチン単剤と放射線同時併用 ジュールは、本試験と同様で、CDDP の1コース中の総投与 療法について欧米で行われている用量について我が国で 2 2 量 80 mg/m に固定したまま、S-1 の投与量を 40mg/m /day 2 2 実現可能かを検証した。現在、海外では局所進行頭頚部腫 から増減幅を 20mg/m として承認用量の 80mg/m /day まで 瘍に対する放射線化学療法に関連する phase III は 4 本が進 増量計画に従い投与量レベルを上げ、推奨用量を検討した。 行中であるが、そのうち 3 本の control arm が CDDP+RT で DLT は以下のように定義し、た。1)4 日間以上連続する発熱 あ る 。 日 本 人 に お け る CDDP + RT で の CDDP 単 剤 3 性好中球減少(好中球 1000/mm 未満かつ 38.5 度以上)、 3 100mg/m2、3 週1回投与の安全性を確認することにより、国 2)Grade 4 の血小板減少(10,000/mm 以下)、3)Grade 4 の 内でも海外での標準治療を用いることが可能となるため、本 嘔吐、4)上記以外の Grade 3 以上の非血液毒性(ただし、 試験の意義は非常に大きいと考える。対象は根治切除不能 Grade3 の食欲不振、悪心、嘔吐、口内炎に伴う Grade3 の感 な中咽頭、下咽頭、喉頭癌を対象とした。予定症例数は 20 -2- 18-9 根治切除不能な頭頸部がんに対する S-1+CDDP を同時併用する化学放射線療法の第 II 相試験 例とした。 プライマリーエンドポイントは治療完遂率で定義 加速過分割照射および加速過分割照射例の5年原病生存 は全適格例のうち放射線治療 70Gy 完遂かつ CDDP を放射 率は 26%、44%および 42%と加速過分割および多分割照射 線治療終了 2 週間後までに 3 回投与できた症例の割合とし 例で有意に良好であるとの結果を得た。これらの結果よ て期待完遂率を諸家の報告で 70%前後が治療完遂割合な り、局所進行下咽頭癌に対して通常分割照射に比較して ので 70%とした。閾値完遂割合は 50%とした。2007 年 2 月 多分割照射、特に加速過分割照射で成績が良好であり、 で予定症例数の登録が終了し、現在経過観察期間に入っ 放射線治療の dose intensity が治療成績に影響すると考 ている。今後解析発表の予定である。これは本研究班の主 えている。 題である根治切除不能な頭頚部がんに対する S1+CDDP を 藤井博文は、頭頸部癌に対して加速多分割照射を用いて 同時併用する化学療法の第Ⅱ相試験のデータをみるときに 治療を行なった場合の、有効性と安全性を 有用であると考えられる。データを集積中でほとんどの症例 retrospective に解析した。 【方法】解析対象は 1985~ で治療を完遂でており、本邦でも海外と同等の臨床試験、グ 2002 年に根治的多分割照射を実施した喉頭、上・中・下 ローバル試験等へ展開したいところである。 咽頭癌とした。部位と進行度により照射野を設定し、3-5 時間の間隔で 2 回/日で行った。放射線治療は、1992 年 2 3)Docetaxel+CDDP+5FU 併用化学療法第Ⅰ相試験 月までは 60Co‐γ線、それ以降は 3MVX または 4MVX で行 進行・再発頭頸部癌に対する Docetaxel + CDDP+ S-1 併 った。照射野は部位によって左右対向二門照射、重複照 用療法の MTD と推奨用量を決定することを目的として国 射野法、ハーフビーム法、前方一門照射などを駆使して 立がんセンター東病院で第Ⅰ相試験を行った。適格例と 行った。 【結果】359 例が解析対象となり、169 例に同時 しては1)組織学的に頭頸部癌と診断、2)再発・遠隔 化学療法が併用され CDDP、 5-FU、 TXT が使用されていた。 転移・頭蓋内浸潤・鎖骨上リンパ節転移にて根治的照射 放射線治療は 1 回線量中央値 1.5 Gy (1.3~1.6 Gy)、総 が困難と判断された、3)前治療なし、4)20-75 歳, 5) 線量中央値 62Gy (44~70 Gy) 、総治療期間中央値 29 日 PS 0-1、6) 臓器機能が保たれている、7)書面での (21~54 日)であった。全体の経過観察期間は 58.2 ヵ月 informed consent が得られているとした。治療スケジュ (1.5~247.4 ヶ月) 、生存例経過観察期間中央値 75 ヶ月 ー ル は 、 docetaxel (50-60mg/m2, day1), Cisplatin (5.9~247.4 ヵ月)であった。生存率・局所制御率、無 (70mg/m2, day1), S-1 (40-80mg/m2, day1-14)を4週毎 病生存期間などを、放射線治療開始日を起算として に、下記のレベル1から増量計画に従ってレベルを上げ Kaplan-Meier 法を用いて算出した。有害事象の評価は当 ていく方法で行った。その結果、22 名が登録され、77 時の記録から、NCI-CTCAE v.3.0 で再評価した。 cycle 投与され、median 3 cycle (1-6), 7 日以上の cycle delay は、1 例のみ、dose reduction を必要としたのが 4 5)頭頸部癌放射線治療の予後ならびに効果予測のバイ 例であった。治療中止の理由は病状悪化(6 名)、毒性(1 オマーカーの検討 名)、患者拒否(2 名)、6コース完遂(3 名)、5)induction 秋元は、腫瘍の転移能に関与する因子の一つである細胞 chemotherapy 3 コース完遂(10 名)であった。レベル4に 接着因子の発現の多寡と放射線治療成績の相関について て一例の DLT(grade3 infection)が認められるのみで、 検討し、現在までに以下の結果を得ている。 MTD に達しなかったために現在プロトコールを改訂して、 扁平上皮癌で高発現している細胞接着因子E-カドヘリ docetaxel の増量、4週→3週毎への変更にて推奨用量 ン(以下CAD)とDysadherin(以下DAD)とは逆相関し高 を検討している。効果は induction chemotherapy を行っ 発現が好転移性または浸潤性に関与しているDADの発現 た 11 名において CR63.6%と良好な結果が得られた。 について放射線治療を施行した頭頸部癌48例で検討し Median follow-up 12.6 ヶ月において一年 PFS 55.4%, 一 た。CADとDADの発現は、腫瘍組織での陽性範囲を以下の 年 OS 77.6%と非常に良好な成績を示した。 ように分類して陽性の程度を客観的に評価した。Grade 0: 陽性範囲が腫瘍の10%以下、grade 1:10〜50%、grade 4)進行頭頸部癌に対する至適放射線治療の確立 2:50%以上。CADとDADの発現はそれぞれ個別のgradeおよ 咽頭癌における加速過分割照射の有効性を、1987 年から びDADの発現gradeからCADの発現gradeを引いた値(好転 2004 年までに秋元が所属する群馬大学および東京女子 移性または浸潤能)との相関について評価した。その結 医科大学で根治照射が行われた III・IV 期 77 例を対象と 果、 放射線治療の局所効果はDADの発現の高い症例で有意 して検討した。その結果、通常分割照射例、多分割照射+ に不良で、またDADの発現gradeからCADの発現gradeを引 -3- 18-9 根治切除不能な頭頸部がんに対する S-1+CDDP を同時併用する化学放射線療法の第 II 相試験 いた値とリンパ節または遠隔再発の有無に有意な相関が 法を用いた抗癌剤感受性試験は消化器癌を対象にし 認められた(DADの発現gradeからCADの発現gradeを引い た報告が多い。消化器癌では CDDP と 5-FU の至適薬剤 た値が-1または0の症例に比較し、 1または2の症例でリン 濃度として、それぞれ 20μg/m、300μg/ml が用いら パ節または遠隔再発が有意に多い) 。この結果からCADと れている。われわれの頭頸部癌に対する検討では CDDP DADの発現は放射線治療の局所効果、 治療後のリンパ節ま 濃度が 20μg/ml、5-FU 濃度が 120μg/ml で、I.I.が たは遠隔再発の予測に有用であることが示唆された。 50%の条件で、判定を行うのが至適と考えられた。こ れに関する頭頸部癌の報告は極めて少ないが、Singh 6)頭頸部扁平上皮癌における抗癌剤感受性の予測の ら(Head Neck,2002)は CDDP 濃度を 15μg/ml とした 研究 研究成果を報告している。今回の検討で、HDRA 法によ 長谷川は抗癌剤の感受性予測に関して研究を行った。 る in vitro 感受性試験が頭頸部癌に対する抗癌剤治 頭頸部癌、特に咽喉頭癌における機能温存治療の開発 療の効果判定の予測に有用であることが示された。 は重要な課題である。プラチナ系と 5-フルオロウラシ ル(FU)系抗癌剤による併用化学療法は喉頭温存にお 7)進行頭頸部癌に対する手術と化学放射線療法の適応 いて有用性があることが示された。一方、これまでの に関する研究 頭頸部癌に対する化学療法は原発部位、TNM の進行度 進行頭頸部癌に対する手術と化学放射線療法の適応につ や病理組織学的分類などの臨床的因子により適応さ いて検討した。小川は愛知がんセンター中央病院で化学 れてきた。一方、この臨床的因子による画一的な化学 放射線療法で局所がCR となった中下咽頭の進行癌症例 療法において、無効な症例は重篤な有害事象をその代 において化学放射線療法のみの群と頸部郭清術併用群と 償として払い、手術療法の機会を喪失することもあっ の予後を比較し、計画的頸部郭清術の有用性について検 た。腫瘍には薬物感受性に対して個性があり、それは 討した。 1995 年1月から2006 年5 月までに頸部リンパ節 遺伝子により規定されている。そこで、個々の腫瘍の が N2a 以 上 の 症 例 で 局 所 が 化 学 放 射 線 療 法 に よ り 治療はこの個性をターゲットにして行う必要がある。 CR(Complete Response) となった中下咽頭扁平上皮癌 こうした背景の中で、われわれは in vitro 感受性試 100 例を対象とした。このうち化学放射線療法のみで治 験による抗癌剤の選択の研究を行ってきた。MTT アッ 療した群(以下CRT群)は60 例、頸部郭清を併用した群 セイにて評価する HDRA(histoculture drug response (以下PND群)は40 例であった。年齢は平均でCRT 群が assay)法を用いた。切除標本に対して三次元的構造を 60 才、PND 群が57 才であり,平均観察期間はCRT 群で 保持したまま組織培養を行うことがこの方法の特徴 41.1ヵ月、PND 群で35.1 ヵ月であった。原発部位は中咽 である。これは腫瘍の遺伝子異常を直接検討する手法 頭が67 例、下咽頭が33 例であった。治療方法は主とし とは異なり、腫瘍の遺伝子異常の累積や細胞間微小環 てCDDP, 5FU併用化学療法と放射線治療を用いた。CRT 群 境の複合的要因の結果である感受性を総合的に判定 の平均照射量は67.1Gy、 PND 群では66.2Gy であった。 PND することができる。【方法】シスプラチン(CDDP)なら 群40 例のうち導入化学療法後に頸部郭清を行ったもの びに 5-FU を含有した培養液にて標本の培養を行い、 が20 例, 化学放射線療法終了後に頸部郭清を施行したも MTT アッセイにより腫瘍発育阻止率(I.I.)を算出し のが20 例であった。 結果は全体の5 年租生存率はCRT 群 て in vitro 抗癌剤感受性を判定した。 【対象】頭頸部 で77.7% ,PND 群で80.5% でありPND 群の方がよい結果 扁平上皮癌 49 検体にて、CDDP が 4 - 100 µg/ml、5-FU 。5 年 であったが有意差は認められなかった(p=0.889) が 60 - 1500 µg/ml で至適薬剤濃度の検討を行った。 無病生存率はCRT 群で54.3 %,PND 群で75.4 %であり 【結果】CDDP では濃度が 20μg/ml、I.I.が 50%の条件 PND 群の方がよい結果であったが有意差は認められなか で、 有効率は 61.2%であり、 5-FU では濃度が 120μg/ml、 。5 年頸部制御率はCRT 群で72.5 %, った(p=0.262) I.I.が 50%の条件で、有効率は 38.5%であり、それぞ PND 群で91.5 %であり頸部制御に関してはPND 群の方 れ感受性の判定に適切な薬剤濃度とカットオフ値と 。次に が有意差をもって良好な結果であった(p=0.049) 考えられた。18 例の CDDP/5-FU 併用療法例にて導入化 PND 群の中で頸部郭清術を行ったタイミング別による3 学療法後の治療効果を、HDRA 法にて CDDP に対する有 年租生存率について検討した。導入化学療法後に頸部郭 効性を予測したところ、有意な相関(p = 0.0474)と 清術を施行した群では79.2 %, 化学放射線療法終了後に 77.8%の正診率が得られた。【考察】これまでの HDRA 頸部郭清術を施行した群では83.1 %であり両群におい -4- 18-9 根治切除不能な頭頸部がんに対する S-1+CDDP を同時併用する化学放射線療法の第 II 相試験 て生存率に差はなかった(p=0.844) (図4) 。PND 群にお ける頸部リンパ節の病理組織学的治療効果について検討 し た と こ ろ 、 全 体 で は 40 例 中 9 例 ( 22.5% ) に pathologicalCR を認めた。 化学放射線療法終了後に頸部 郭 清 術 を 施 行 し た 群 の pathological CR 率 は 40 % (8/20 )であったが、導入化学療法後に頸部郭清を行っ た群におけるpathological CR 率は5 %(1/20)であっ た。再発率においてはCRT 群における全体の再発率は 31.6 %、PND 群では22.5 %であった。頸部のみに再発 した割合は CRT 群で10.0%、PND 群で2.5 %であった。 局所, 頸部再発における救済率はCRT 群では14 例に局所, 頸部再発を認め,14 例中10 例に救済手術を行い9 例が 現在無病生存しており救済率は64.3 %であった。 PND 群 では4 例に局所, 頸部再発を認め2 例に救済手術を行い2 例とも無病生存しており救済率は50 %であった。 術後合 併症に関してはPND 群における術後合併症は40 例中10 例、25 %に何らかの合併症を認めた。内訳として喉頭浮 腫が3 例あり、2 例に気管切開を施行した。その他,リ ンパ漏、嚥下障害, 舌下神経損傷, 創部感染がみられた。 以上から1) 頸部制御においてPND群がCRT群に比べて有意 に良好であった。 2) 租生存率、 無病生存率においてもPND 群がCRT群に比べて予後良好であったが, 有意差はなかっ た。特に粗生存率において差はみられなかったが,これ はCRT群における局所, 頸部再発に対する救済率が良好で あったことが一因として考えられた。 3) 一般的に根治治 療後の再発に対する救済手術は困難な場合が多いことを 考慮すると,現状ではN2-3の中下咽頭癌症例における計 画的頸部郭清術は有用であると思われた。 4) 化学放射線 療法のみの症例でも.ある程度良好な治療成績が得られ ており、今後の課題として計画的頸部郭清術が真に必要 な症例を見極めることが重要であると思われた。 4 倫理面への配慮 本研究に関係するすべての研究者はヘルシンキ宣言に 従って実施し各プロトコールは各施設の倫理委員会 の承認を得ている。患者には各施設の倫理審査委員会の 承認が得られた説明文書に基づき口頭で十分な説明を行 った上でインフォームドコンセントを取得し翌日以降に 同意を得てプロトコール治療を行っている。 -5-
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