「ネット社会における著作権制度」(白鴎大学 杉山 務)

FTN 知財研究会
ネット社会における
著作権制度
平成24年5月25日
杉山 務
初音ミク&鏡音リン
動画投稿サイト
初音ミク
鏡音リン
htt //j
http://jp.youtube.com/watch?v=lG_kz6Sp500
t b
/ t h? =lG k 6S 500
足尾銅山
『廃虚の写真は模倣』
写真家作品集差し止め提訴
朽ち果てた建物や鉄道廃線など「廃虚」をテーマにした作品で知られる
写真家の丸田祥三さん(44)が九日、「作品をまねされ、著作権を侵害
された」として 写真家の小林伸一郎さん(52)を相手に 写真集の販
された」として、写真家の小林伸一郎さん(52)を相手に、写真集の販
売差し止めや約六百万円の損害賠償などを求める訴えを東京地裁に起こ
した。 小林さんの代理人弁護士は「他人の写真を模倣して写真を創作し
たことはなく 著作権侵害と主張されるのは極めて遺憾だ 裁判の場でき
たことはなく、著作権侵害と主張されるのは極めて遺憾だ。裁判の場でき
ちんと反論していきたい」とのコメントを出した。 訴状によると、丸田
さんは一九九二年以降、廃虚や廃線の写真を個展や写真集で発表。九四年
に日本写真協会新人賞を受賞し、廃虚写真の先駆け的存在とされる。足尾
虚
銅山付近の建物(栃木県)、旧丸山変電所(群馬県)、大仁金山付近の
建物(静岡県)など丸田さんの作品五点について、同じ被写体で似た構
図の写真が、九八年から昨年にかけて出版された小林さんの写真集に掲載
されたと主張。「長い時間をかけて文献などを調べて被写体を探し出し
、現地に何度も足を運んで構図や撮影時期を選んでおり、高い創造性が
ある」としている。 提訴後に会見した丸田さんは「昨年八月に質問書
を出したが、小林さんは何の説明責任も果たしてこなかった。類似点があ
まりにも多く 自分の方がまねをしたと思われ 不愉快だ」と訴えた
まりにも多く、自分の方がまねをしたと思われ、不愉快だ」と訴えた。
2009年1月10日 東京新聞朝刊
知財高裁230510
1 翻案権侵害を中心とする著作権侵害の有無について
2 名誉毀損の成否について
3 法的保護に値する利益侵害について
両者の撮影方向は左方向からか(原告写真1),右方向からか(被告写真1
両者の撮影方向は左方向からか(原告写真1)
右方向からか(被告写真1
)で異なり,撮影時期が異なることから,写し込まれている対象も植物があ
ったりなかったりで相違しているし,そもそも,撮影対象自体に本質的特徴
があるということはできないことにかんがみると 被告写真1をもって原告写
があるということはできないことにかんがみると,被告写真1をもって原告写
真1の翻案であると認めることはできない。
廃墟写真を作品として取り上げることは写真家としての構想で
あり,控訴人がその先駆者であるか否かは別としても,廃墟が
既存の建築物である以上,撮影することが自由な廃墟を撮影
する写真に対する法的保護は,著作権及び著作者人格権を超
えて認めることは原則としてできないというべきである。
知的創作物についての権利
・著作権(著作権法) (創作と同時に自動的に権利が発生)
著作権は 「音楽や小説 絵画などの著作物に関し 著作者等の権利
著作権は、「音楽や小説、絵画などの著作物に関し、著作者等の権利
の保護を図り、もって文化の発展に寄与すること」を目的とする
絵画
彫刻
音楽
小説
著作権法で保護の対象となる著作物であるための要件
(すべての著作物が著作権の対象になるわけではない)
(1) 「思想又は感情」を表現したものであること
→ 単なるデータが除かれる
(2)思想又は感情を「表現したもの」であること
→ アイデア等が除かれる
(3)思想又は感情を「創作的」に表現したものであること
→ 他人の作品の単なる模倣が除かれる
(4) 「文芸、学術、美術又は音楽の範囲」に属するものであること
→ 工業製品等が除かれる
ホームページと著作権
著作権
Q)ホ ムペ ジは著作権で保護されるか?
Q)ホームページは著作権で保護されるか?
その表現に創作性があれば、ホームページは著
作物として保護される
ホームページは、著作権法上の著作物の定義
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、
学術 美術
学術、美術又は音楽の範囲に属するもの
音楽 範
属するも 」(2条1項1号)
に該当すると解釈される
インターネット普及と著作権
誰もが著作者
著作者・利用者となりうる状況
利用者となりうる状況
二次創作の活発化
技術の発展による可能性の拡大と著作権法による制約
「プロ仕様
プ 仕様」の著作権法の限界
一般ユーザに
ルール
般ユ ザにル
ルを浸透の仕組みの必要性
通信回線容量の拡大による利用許諾契約の複雑化
著作権法以外の法分野との領域の重複
ホ ムペ ジからリンク
ホームページからリンク
Q)無断でリンクを張ることは著作権法上、問題ないか?
問題ないという解釈が一般的
・情報を複製したり送信したりするわけではないので著作権の侵害にはならないと
情報を複製したり送信したりするわけではな ので著作権の侵害にはならな と
の解釈が一般的
・ただし、リンク先のホームページの作者であるかのような誤解を生じるような形態
(フレーム機能
フレ ム機能)だと、法的紛争が生じ得るので留意が必要
)だと 法的紛争が生じ得るので留意が必要
・「リンクを張る際には当方に申し出て下さい」、「リンクを張るには当方の許諾が必
要です」などの文言は法律的には根拠がないが、配慮するのがマナー
・ネット記事にリンクを貼る場合、“記事の見出し”を表示することは著作権侵害にな
るか?
(参考)
・日本弁護士連合会は、同会のウェブサイトにリンクを張る際に実名や電話番号などを要求し
ていた許可条件を修正し、リンクを原則自由とする方針を明らかにした(2002年6月)
ネット記事 の無断リンク
ネット記事への無断リンク
Q)ネット記事にリンクする際に、記事の「見出し」を表示することは著作
権侵害か? (ネット記事の「見出し」に著作権はあるか?)
読売新聞社(原告) VS デジタルアライアンス(被告
)
Click
原告 読売新聞社の主張
①著作権侵害
見出しとして盛り込む事項の選択、展開の仕方、
見
り込 事項 選択、展開 仕方、
表現の方法等に、原告の編集方針・見解が端的に
現れており、他社と異なる創作性のあるものである
ヨミウリ・オンライン
[ホ ムレスがアベ クと口論?銃撃で重傷]
[ホームレスがアベックと口論?銃撃で重傷]
朝日コム
[路上生活者の男性、2人組男女に撃たれ重傷 東京・
品川]
口論という些細なきっかけにより銃撃と
いう極めて重大な犯罪が行われたこと
を表現
↓
原告の編集方針に基づき読者に最も
伝えたい部分を創作 表現
伝えたい部分を創作・表現
↓
記事の見出しは著作物
ネット記事への無断リンク
ネット記事
の無断リンク
ネット記事の見出しに著作権を認めず
H16.3.24 東京地裁判決
①著作権侵害について
見出しは、記事中の事実を抜き出し、ありふれた表現で修飾した短い記述に過
ぎず 創作性は認められない
ぎず、創作性は認められない。
②不法行為について
原告自身がインターネット上で無償で公開した情報であり、著作権法等によっ
て原告に排他的な権利が認められない以上、第三者がこれらを利用することは、
特段の事情のない限り本来自由である。
プロバイダと著作権
Q)ユーザが第三者の著作権を侵害するデータ、画像を
掲載した場合 そのプロバイダ は責任をとらされるか?
掲載した場合、そのプロバイダーは責任をとらされるか?
第三者の著作権を侵害していることを知っていたとき、又
は、知ることができたと認めるにたりる相当の理由があるとき、
放置しておく(削除しないでおく)と責任を問われる
海賊版ソフトの販売の手口の巧妙化
海賊版であると知れば
海賊版
あると知れば
プロバイダーは削除
“おまけ”が何であるか知りようも
ないのでプロバイダーは
プ
削除に躊躇
??掲示板
??掲示板
・ソフト売ります
・パソコン売ります(おまけ付き)
情報技術の進展と著作権法
①ディジタル化の進展 → 著作物の高品質な複製・再生・加工・
活用が可能に
②ネットワーク化の進展 → ネットワークを介して、誰もが簡単に
著作物を公衆に発信可能、ネットワークを介した著作物の取り引き・流通
が急速に拡大
著作物の利用機会と権利侵害の恐れが拡大
情報化社会における著作権の保護強化へ向けて、
著作権法を改正へ
ファイル交換と著作権(取り締まりの強化)
サーバを介さない「Gnutella」「WinMx」「Winny」の台頭
サ
バを介さない「Gnutella」「WinMx」「Winny」の台頭
オンライン・ストレージ型の台頭
G t ll 型
Gnutella型
・RIAA(全米レコード協会)、ACCS(社団法人コンピュータソ
RIAA(全米レコ ド協会)、ACCS(社団法人コンピュ タソ
フトウエア著作権協会)は、ファイル交換の状況を定期的に
チェックし、警告メールの送付で対抗
・悪質な事例は逮捕へ
オンライン ストレ ジ型
オンライン・ストレージ型
サービス事業者のサーバ
○○○は有
りますか?
○○○は有
りますか?
有ります
米国
・2003年 4月 3日 米国レコード協会(RIAA)が、プリンストン大等に在席する米学生4人を音楽ファイル交換
による著作権侵害で提訴 → 学生側がそれぞれ1万2000~1万7000ドルを支払うという条件でRIAAと和解
・2003年 4月25日 ロサンゼルス連邦地裁はサーバを介さないファイル交換サービス側勝訴(全米レコード協
会側の敗訴)の判決。ファイル交換ソフトには合法・非合法の使い方があり、ソフトを提供したStreamcast等に著作
権侵害の責任を負う義務はないと判示(ビデオデッキを販売する会社と同様)。著作権侵害は個人ユーザの責任
→ RIAA、追求の対象をサイト運営者・ソフト開発者から個人ユーザへ変更
・2003年 6月5日 ISPの「Verizon」に対し、大量のファイルを違法交換していると思われるユーザーの氏名を
RIAAに開示するよう命じる判決 → 個人ユーザの追求が容易に
・2003年 9月5日 RIAAは、ファイル交換により「著しい」著作権侵害を行っていたとされる個人ユーザ261人
を相手取り、訴訟に踏み切る
ファイル交換と著作権(取り締まりの強化)
日本
・2001年11月28日
2001年11月28日 京都府警は「WinMX」でビジネスソフトを配信していた学生2人を、著作権(公衆
京都府警は「Wi MX でビジネスソフトを配信していた学生2人を 著作権(公衆
送信権)侵害で世界初の刑事摘発 → 罰金40万円(2002年3月)
・2003年 4月10日 京都府警は音楽ファイル等をオンライン・ストレージに公開していた少年を著作権
(公衆送信権等)侵害で逮捕、オンライン・ストレージ・サービスでは初の刑事摘発
・2003年 4月23日 京都府警は「WinMX」等で入手したビジネスソフト等をCD-Rに複製して
YAHOO!オークションで販売していた男性を著作権侵害で逮捕
・2003年11月27日 京都府警は「Winny」で、ゲームソフト、映画等を配信していた2人を、著作権(公
衆送信権)侵害で逮捕 → 被害額13億8千万円? → 懲役1年、執行猶予3年(2004年3月)
・2004年 5月10日 京都府警 「Winny」開発の東大助手を著作権法違反幇助の容疑で逮捕
・京都府警 「Winny」の開発自体が問題ではなく、著作権を違反する意図があったことが問題
・ACCS 侵害行為を予見した上で開発すれば、開発者にも一定の責任が生じる
・支援団体&弁護団 幇助の概念が広すぎ誰でも逮捕の対象になる 技術者の研究活動が萎縮
Winnyとは
‹ 元東京大学助手金子勇氏が開発し
た無償のファイル共有ソフト
‹ 中央サーバが不要なP2Pネットワー
クを構築し、ユーザー間でファイルをやり
取りする
‹ 送受信されるファイルは暗号化され
ている
‹ ファイルの暗号化と独特なダウンロ
暗
特なダウ
ードの仕組みにより、匿名性が高い
‹ Antinnyと呼ばれるウイルスが原因
で情報漏洩発生
‹ AntinnyはHDD上の任意のファイル
を勝手にアップフォルダにコピ 、知らな
を勝手にアップフォルダにコピー、知らな
いうちに他のWinnyユーザーがダウンロ
ード可能な状態にする
‹漏洩したファイルの完全削除は難しい
○○○は有
りますか?
有ります
○○○は有
りますか?
Winny事件
z京都地裁は2006年12月13日有罪判決、罰金150万円
z判決はWinny自体は価値中立的なもので有用
zそのような技術の提供が犯罪行為となりかねないような幇助犯の無制限な成立
範囲拡大は妥当でない
z金子氏は著作権侵害の違法コピーをインターネット上に蔓延させようと積極的に
企図していたわけではないが、広く著作権の侵害行為が行われていることを認識
し、受け入れていた
zよ て 幇助の故意がある
zよって、幇助の故意がある
金子被告は判決を不服とし、大阪高裁に即日控訴
¾ 検察側も判決を不服として控訴(懲役1年求刑)
検
も
控
役
¾
無罪確定でWinny作者の金子氏がコメント
インターネットの問題解決に尽くしたい」
ファイル共有ソフト「Winny」の作者金子勇氏が著作権法違反幇助の罪に
イ 共有
「
作者金 勇氏が著作権法違 幇助 罪
問われていた裁判で、最高裁判所は12月19日付けで上告を棄却した。こ
れにより、2009年10月に大阪高等裁判所で下された、無罪の二審判決が
確定した。
これを受け、金子氏は2011年12月20日、同氏が社外取締役を務める
Skeedを通じ以下の メントを発表した。
Skeedを通じ以下のコメントを発表した。
「私は、今回の事件で開発を躊躇する多くの技術者の為に訴訟活動をし
てきました。今回の決定で、私の開発態度が正しく認められたことをありが
たく思っております 今も インターネットを巡る問題は沢山あります
たく思っております。今も、インタ
ネットを巡る問題は沢山あります。私は、
私は
これらの問題の解決のために、微力ながら最大の努力をしていきたいと思
います。
また Winnyを悪用することのないよう さらには よりよい
また、Winnyを悪用することのないよう、さらには、よりよい
IT社会が実現できるよう、改めて、多くの方々にこの場を借り
てお願いする次第です。
無許可ダウンロードに罰則、民自公が調整
民主、自民、公明3党は、著作権者の許可なしに映像や音楽をダウンロード
する行為に罰則を科す方向で調整に入 た
する行為に罰則を科す方向で調整に入った。
政府が3月に国会に提出した著作権法改正案には盛り込まれていない規
定だが、自公両党が罰則を求めた。3党の調整がまとまれば、同改正案は
議
議員立法による修正の上、今国会で成立する見通しだ。
修
成
修正案では、違反者に対する罰則について、「2年以下の懲役または20
罰 」
、規 強
声
、
0万円以下の罰金」とした。ただ、規制強化に反対する声に配慮し、被害者
の告訴がないと起訴できない親告罪とする。成立すれば、10月1日に施行
される予定だ。
現行の著作権法では、著作権者の許可がないインタ ネット上 の配信
現行の著作権法では、著作権者の許可がないインターネット上への配信
は処罰対象となっているが、ダウンロードについては刑事罰がなく、音楽業
界などが罰則を設けるよう求めていた。
((2012年4月14日13時50分
0 年 月 日 3時50分 読売新聞)
ダウンロード【download】 インターネットなどで、通信回線を介してまとまったデータ
(ファイル)をホストコンピューターから受信すること。
※ ネットサーフィンや検索だけでも該当する可能性あり そして、ダウンロードしたことを確認
するために個人のパソコンの利用状況を監視することが前提となる
ま と め
著作権制度は、他の知的財産制度と異なり、
一個人が権利侵害の加害者となったり、被害者
となったりすることがあり、刑事罰も課されるので
、インターネットに親しみ、音楽を楽しむなど、情
インタ ネ トに親しみ 音楽を楽しむなど 情
報を扱う場合には、最低限の知識が必要とされ
ています。
ご清聴 ありがとうございました。
杉 山
務