研 究 紀 要 第24号 校 訓 強 く 正 し く 明 る く 平成25年2月 広島県立広島中央特別支援学校 は じ め に 教育基本法の改正を踏まえた学習指導要領が特別支援学校においては,幼稚部, 小学部,中学部で完全実施され,高等部においても高等学校学習指導要領の実施ス ケジュールに準拠して実施されます。この特別支援学校新学習指導要領では,主な 改善事項の中に「一人一人に応じた指導の充実」や「自立と社会参加に向けた職業 教育の充実」が挙げられています。本県における唯一の視覚障害教育の特別支援学 校である本校は,これらの改善事項を踏まえ一層の専門性の継承を発展させていき たいと考えています。 そこで,本年度の研究テーマは,幼稚部・小学部・中学部・高等部普通科・寄宿 舎では「個別の指導計画の有効活用~つながりをもった実践のために~」,高等部 保健理療科・専攻科は「職業自立を目指した指導の実践~個のニーズに応じた支援 のあり方~」を研究主題として取組を進めてまいりました。特に「つながり」をキ ーワードに学部間や教科間の連携を意識した取組を重視しました。 研究にあたっては本年度も筑波大学や広島大学,県教育委員会を中心に多くの先 生方から御指導・御助言をいただきました。今後も,これらの貴重な御指導・御助 言を生かしながら本校の教育活動をさらに充実発展させてまいりたいと考えていま す。 この研究紀要を通して,本校の取組の一端を御覧いただき,忌憚のない御意見・ 御助言をいただければ幸いです。 平成25年2月 校長 片嶋 学 目 次 はじめに 第1章 研究グループ活動報告 Ⅰ 単一障害教育研究グループ 1 幼・小学部 :意欲を引き出す授業づくり ・・・ 2 中学部 1 :視覚障害を考慮した生活スキルの向上のために ~総合的な学習の時間の実践を通して~part2 ・・・ 5 3 Ⅱ 高等部普通科:コミュニケーション能力を育てるために ・・・15 重複障害教育研究グループ 1 幼・小学部 :やりとりを大切にした授業づくりの工夫 ・・・19 2 中学部 :日常生活の指導におけるTTの工夫 ・・・23 3 高等部普通科:つながりをもった実践のために ~教材・教具の工夫を通して~ Ⅲ ・・・27 理療科教育研究グループ 中途視覚障害者に対する点字指導 Ⅳ ~中途視覚障害者に有効な触図の作成と活用法について~ ・・・30 中途視覚障害者に対する歩行指導 ・・・32 臨床実習における新経穴への取り組み ・・・35 寄宿舎教育研究グループ 個別の指導計画の有効活用~つながりをもった実践のために~ Ⅴ ・・・37 教科教育研究グループ 1 国 語 :つながりをもった実践のために~ノート指導の実践~ ・・・41 2 算数・数学:数量概念を身に付けさせるアプローチの模索 ~学部間連携を通して~ ・・・51 3 社 会 :社会的経験の拡大~外部資源の有効活用~ 4 理 科 :効果的な観察・実験を行うための学習指導の在り方 ~発達段階に応じた教材の扱いについて~ ・・・54 ・・・58 5 外 国 語 :視覚障害生徒の英和辞典の活用に関する実践的研究・・64 6 音 :歌唱,合唱の指導法 7 図工・美術:図画工作・美術における鑑賞の指導について 楽 ・・・68 ・・・73 8 保健体育 :授業における体力を高めるための工夫 9 家 :視覚障害幼児児童生徒が主体的に関われる実習教材の研究 庭 ・・・78 ・・・82 10 情 報 :授業における情報機器の継続的活用実践について ~タブレット端末を活用して~ 第2章 Ⅰ 実践研究 中途視覚障害者に対する歩行指導 久山恵美子 第3章 ・・・86 細川義之 相川貴裕 ・・・92 自作の教材・教具開発の取り組み Ⅰ 自作の教材・教具一覧 Ⅱ 教材・教具カード ・・・99 ・・・101 第1章 研究グループ活動報告 Ⅰ Ⅱ 単一障害教育研究グループ 1 幼・小学部 2 中学部 3 高等部普通科 重複障害教育研究グループ 1 幼・小学部 2 中学部 3 高等部普通科 Ⅲ 理療科教育研究グループ Ⅳ 寄宿舎教育研究グループ Ⅴ 教科教育研究グループ 1 国語 2 算数・数学 3 社会 4 理科 5 外国語 6 音楽 7 図工・美術 8 保健体育 9 家庭 10 情報 Ⅰ 単一障害教育研究グループ 1 幼・小学部 研究グループテーマ:意欲を引き出す授業づくり 1 目的 幼児児童の実態を正しく把握し,それに合った指導目標,指導方法, 指導内容を評価も含めて計画的に実施することが,本校研究テーマの実 現に向けた取組である。この取組を具現化するとともに,幼小学部のめ ざす幼児児童像「自信や意欲をもち,みずからの目標に向かって挑戦す る 幼 児 児 童 」の 育 成 へ つ な げ て い く た め ,本 研 究 グ ル ー プ は , 「意欲を引 き出す授業づくり」を研究テーマに設定する。 本年度は,まず「意欲を引き出す授業づくり」に関わる指導上の観点 と内容を文献と体育の実践を通して整理することを目的とする。 2 方法 体育は単元によって単一児童全員で学習する指導形態をとっている。 そのため,体育を担当する本グループメンバーの多くがテーマを意識し た上での授業づくりができる。そこで,この体育での取組を基に「意欲 を引き出す授業づくり」について考え,他の教科への般化を図るものと する。 具体的方法を次に示す。 ○授業づくりの共通事項を確認する。 ○文献研究を行う。 ○授業研究を通して「意欲を引き出す授業づくり」に関わる指導上の 観点と内容を出し合う。 ○校内研究授業を実施する。 ○「意欲を引き出す授業づくり」に関わる指導上の観点と内容を整理 する。 こうして,整理したことを基に公開授業研究会において体育の授業を 行い,本年度の取組の成果と課題を整理する。 1 3 内容 (1)授業づくりの共通事項の確認 どんな授業にしたいの その活動は計画的なも 学年間・教科間での か のとなっているか 共通意識 活動内容が絞れてお 単なる活動で終わらせ それぞれの時間で何を り,子どもに学習課題 ることなく,その活動 身に付けさせたいのか がはっきりと伝わる授 で身に付けたものが, を明確にした,評価規 業 次につながる指導計画 準の設定 (2)文献研究 学習指導要領を基に「体つくり運動」について研修した。指導時の留 意点として単調な動きの反復に終わらないように,ねらいを明確にして 指導するとともに,楽しく授業を展開することが必要であることが示さ れている。このことから,教材・教具の必要性について確認した。 また,視覚情報が得られないことから生じる模倣の困難性,走る,跳 ぶなどの急速な移動を伴う運動への恐怖心,さらに運動経験の不足等が 運 動 ス キ ル の 習 得 に 影 響 を 及 ぼ す( 五 十 嵐 2006)と い っ た 視 覚 障 害 者 の 運動面における特性についても確認した。 加 え て , 意 欲 的 な 取 組 を 引 き 出 す に は ,「 面 白 い か ら 」「 や り が い が あ る か ら 」「 大 事 だ か ら 」「 や る べ き だ か ら 」 の 基 本 4 タ イ プ の 気 持 ち の あ り方があり,こうした気持ちを引き出すだけではなく,育てる視点での 実 践 が 必 要 で あ る ( 梶 田 2012) こ と を 確 認 し た 。 (3)授業研究 体育担当で週 1 回ミーティングを行い,授業の項目ごとの振り返りを 基に次の授業の計画を見直した。ミーティングで整理した内容を基に, 本研究グループで報告を行い協議を進めた。この際,幼児児童に考える 場を設定することや主体的に活動できる場を設定することが「意欲を引 き出す授業づくり」と関わることを確認した。 (4)校内研究授業の実施 文献研究で整理したことや話し合いの中で整理したことを基に,校内 研究授業を実施した。 2学期:幼稚部4,5歳児 あそび 授業者 T1 中山絹子,T2 指導助言者 広島県立教育センター 指導主事 田中由紀子 2 「ボールを使った運動あそび」 平岡千加子 特別支援教育・教育相談部 研究協議では,幼児の「意欲を引き出す授業づくり」ができていたと 評価された。どのような指導・支援が意欲を引き出す要因となっていた か,本研究授業から整理された考えを次に示す。 ○子どもの考えを取り入れ,めあてを立てる。 ○ 子 ど も の 実 態 に 合 わ せ 活 動 の 目 的 を 達 成 す る 教 材・教 具 を 準 備 す る 。 ○「自分でしている」意識を意図的に仕組む。 ○子どもの表現に対してタイミングよく共感する。 ○子どもに状況説明をする。 ○動作を言葉に直して伝える。可能であれば自分で言葉に直させる。 ○定位の力をつける。 ○TTの場合,T1とT2等の役割を意識し合う。 併せて,田中指導主事から指導助言いただいた内容を次に示す。 ○全力を出し切る運動の経験を学校で補う。 ○ 幼 児 は 遊 び を 中 心 に 60 分 以 上 楽 し く 体 を 動 か す 。 ○幼稚部と小学部でつながりのある運動を構築する。 ○自立活動を意識した指導を通して,正確な諸動作を指導する。 4 成果と課題 本研究を通して, 「 意 欲 を 引 き 出 す 授 業 づ く り 」に 関 わ る 指 導 上 の 観 点 と内容を次のように整理することができた。 (1)めあての共有化 ○子どもが見通しをもって,何をすればよいかが分かっているか。 (2)教師の評価的活動の意識化 ○教材研究が十分なされ,子どもの実態と単元・題材の学習課題に応 じ指導計画がなされているか。 ○タイミングよく,子どもを前向きで肯定的な評価をしているか。 ○子どもの知的好奇心を揺さぶる,中心的な発問があるか。 ○説明は端的で分かりやすいか。 ○指示は適切で子どもに理解されているか。 (3)主体的な活動の場の設定 ○教師と子どもに自然な笑顔が見られる両者の良好な関係があるか。 ○ 子 ど も が ,自 ら 活 動 し よ う と す る 雰 囲 気 が 作 ら れ て い る か(「 感 じ て 」 「 動 い て 」「 考 え て 」「 表 現 す る 」)。 ○子どもどうしの関わりが意図的に設定されているか。 ○子どもにめあての達成を振り返る場を設定しているか。 (4)実態を踏まえた教材・教具の準備 ○子どもの実態と単元・題材の学習課題に即した教材・教具が用意さ れているか。 3 以上のことを基に公開研究授業を実施するとともに,他教科への般化 を図りながら来年度以降,この実践を引き継ぎ,授業研究に取り組むも のとする。 3学期:小学部1,3,5,6年 体育科 遊び名人になろう(体つくり運動領域) 授業者 T1 樋口正美,T2 石橋聡子,T3 牧尾望美 指導助言者 広島大学大学院教育学研究科 准教授 氏間和仁 広島県教育委員会スポーツ振興課 指導主事 松下 篤 <主要参考文献> 五 十 嵐 信 敬( 編 著 )1993 年 視覚障害幼児の発達と指導 コレール社 五 十 嵐 信 敬 ( 編 著 ) 2006 年 目 の 不 自 由 な 子 の 運 動 あ そ び 100 選 コレール社 梶 田 叡 一( 編 )2012 年 やる気>を育てる 教 育 フ ォ ー ラ ム 50< や る 気 > を 引 き 出 す・< 株式会社金子書房 豊 岡 市 教 育 委 員 会 ( 平 成 24 年 ) 導の手引き 豊岡市教育委員会 文 部 科 学 省( 平 成 20 年 ) 兵庫県豊岡市運動遊び事業指 こども育成課 小学校学習指導要領解説体育編 株式会社 東洋館出版社 文 部 科 学 省( 平 成 20 年 ) 多 様 な 動 き を つ く る 運 動( 遊 び ) 文部科 学省 文 部 科 学 省( 平 成 24 年 ) 幼稚園教育要領解説 株式会社フレーベル 館 学 校 体 育 研 究 同 志 会( 編 )2011 年 動遊びの進め方 みんなが輝く体育① 創文企画 4 幼児期 運 2 中学部 研究グループテーマ:視覚障害を考慮した生活スキルの向上のために ~ 総 合 的 な 学 習 の 時 間 の 実 践 を 通 し て ~ part2 1 目的 視覚に障害のある生徒が生きていく上で特に必要と思われる,自立し た 生 活 を 送 る 力(「 食 」に 関 す る 知 識 ・ 技 能 )を 育 成 す る た め の 実 践 を 検 証する。 2 方法 昨年度の実践では,日常生活を送る力や他人と人間関係をつくる力の 基 本 と な る ,情 報 収 集 能 力 ,歩 行 能 力( 移 動 能 力 ),コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能力を総合的に育成する集団のつながりに重点をおいた実践を行った。 今 年 度 は ,個 人 の 生 活 ス キ ル の 向 上 と し て , 「 食 」に つ い て 実 践 を 行 っ た。 「 食 」は ,生 き る 力 の 基 盤 と な る テ ー マ の 一 つ で あ る 。次 の 手 順 で 実 践し,検証した。 (1)実態把握とチェックシート(生徒自身による自己の課題把握) ↓ (2)栄養士による講話とそのまとめ(課題に基づいた講話) ↓ (3)調理計画・調理実習とそのまとめ(個々の目標を達成する設定) ↓ ( 4 )学 習 の ま と め と 振 り 返 り( 知 識・実 践 力 か ら 事 例 を 取 り 上 げ 検 証 ) 3 内容 (1)実態把握とチェックシート 生徒たちは,自分の健康の保持増進のために,食物を摂取する意欲や 基本的な技能をどれだけ身に付けているのだろうか。また,そのことを 意識して日常生活を送っているのだろうか。さらに,朝食のとり方はど うあるべきか,間食や夜食はどのようにとればよいか,市販の食品を上 手く利用できているか等の,食についての問題とどう向き合っているの か。それらを考えるきっかけとして,次のチェックリストを作成・実施 し,自分の実態を把握することから始めた。 食に関するチェックリスト 1 その1 朝食は毎日食べる。 ア はい イ 食べる日の方が多い ウ 飲み物だけ飲む 5 食 生 活 等 に 関 す る 25 項 目 エ 2 3 4 5 6 7 いいえ 朝食を食べるときは残さず食べる。 ア はい イ 少しだけ食べる ウ 食べない日の方が多い 朝食を食べない時の理由は ア 早く起きられない イ 食欲がない ウ 太りたくない エ その他 食事は規則正しくとっている。 ア はい イ どちらともいえない ウ いいえ 食事はとりすぎないようにしている。 ア はい イ どちらともいえない ウ いいえ 間食はとりすぎないようにしている。 ア はい イ どちらともいえない ウ いいえ 間食はスナック菓子や甘いお菓子を食べ過ぎないように,内容を 考えている。 8 9 10 ア はい イ どちらともいえない ウ いいえ 夕 食 は 就 寝 1 時 間 30 分 前 ま で に 食 べ 終 わ っ て い る 。 ア はい イ どちらともいえない ウ いいえ 夜食を食べないようにしている。 ア はい イ 時々食べる ウ 毎日食べる のどがかわいたら清涼飲料水でなく,水やお茶を飲むようにして いる。 6 11 12 13 14 15 16 17 18 19 ア はい イ どちらともいえない ウ いいえ 揚げ物や油っこいものはひかえめにしている。 ア はい イ どちらともいえない ウ いいえ インスタント食品を食べ過ぎないようにしている。 ア はい イ どちらともいえない ウ いいえ よくかんで食べるようにしている。 ア はい イ どちらともいえない ウ いいえ 肉や魚はかたよりなく食べている。 ア ほぼ同じくらい食べている イ 魚よりも肉の方が多い ウ 肉ばかり食べる 大豆製品(豆腐,煮豆等)を食べている。 ア 1日1回は食べている イ 週に2~3回は食べている ウ ほとんど食べない 煮物や野菜料理を食べている。 ア 1日1回以上は食べている イ 週に2~3回は食べている ウ あまり食べない 果物を食べている。 ア 1日1回は食べている イ 週2~3回は食べている ウ ほとんど食べない 毎日ほぼ同量の食事をとっている。 ア はい イ メニューによってちがう ウ 日によってちがう 味付けは薄い方が好き。 ア どちらかといえば好き 7 20 21 22 23 24 25 イ どちらともいえない ウ 濃い味付けの方が好き 外遊びや運動(体育以外)をしている。 ア はい イ ときどきする ウ ほとんどしない 自分の体重・身長を知っている。 ア はい イ いいえ おもに体の組織をつくる食品(1群・2群)を知っている。 ア はい イ いいえ おもに体の調子を整える食品(3群・4群)を知っている。 ア はい イ いいえ おもにエネルギーとなる食品を知っている。 ア はい イ いいえ 1日,あるいは1食にとることが望ましいエネルギー量がどれく らいか知っている。 ア はい イ いいえ 食に関するチェックリスト ※ その2 調 理 技 能 等 に 関 す る 50 項 目 各 項 目 の チ ェ ッ ク 欄 に ,○・△・×印 を つ け る よ う な 表 を 作 成 し た 。 1 市販のおむすび,サンドイッチ,菓子パンなどの袋を開けて食べ ることができる。 2 お店でおむすび,サンドイッチ,菓子パンなどを買って食べるこ とができる。 3 缶入りの飲料を自分で開けて飲むことができる。 4 牛乳やジュース,お茶などを容器からついで飲むことができる。 5 電子レンジで食品を温めることができる。 6 電気ポットや電磁調理器でお湯を沸かすことができる。 7 コンロでお湯を沸かすことができる。 8 カップや容器にお湯を注ぐことができる。 9 一人でカップラーメン(カップ焼きそば・カップスープ等)を作 8 ることができる。 10 お茶やコーヒーを入れることができる。 11 しゃもじでごはんをよそうことができる。 12 おたまで汁物をよそうことができる。 13 必要に応じて調味料をかけることができる。 14 トースターでパンを焼くことができる。 15 焼いたパンにマーガリンやジャムをぬることができる。 16 卵を割ることができる。 17 ゆで卵を作ることができる。 18 ゆで卵のからをむくことができる。 19 缶切り不要の缶詰を開けることができる。 20 缶切りを使うことができる。 21 食品を保存するためにサランラップを使用することができる。 22 計量カップで米の分量を量ることができる。 23 米を研ぐことができる。 24 研いだ米に適量の水を入れることができる。 25 電気炊飯器を使用してご飯を炊くことができる。 26 計量スプーンを用いて分量を量ることができる。 27 計量ばかりを用いて分量を量ることができる。 28 おむすびを作ることができる(サランラップや茶碗等を使っても よ い )。 29 包丁の安全な持ち方,置き方を理解している。 30 包丁を使って食材をいくらか切ることができる。 31 包丁を使って食材を様々な方法で切ることができる。 32 包丁で果物の皮をむくことができる。 33 皮むき器を使ってジャガイモの皮をむくことができる。 34 献立にあった食器を選ぶことができる。 35 お膳にバランスよく食器を並べることができる。 36 適切にテーブルセッティングができる。 37 主食・主菜・副菜をそろえ,栄養のバランスを考えて献立を立て ることができる。 38 みそ汁の作り方を説明できる。 39 カレーライスの作り方を説明できる。 40 一人で作れる料理がある(あると答えた人は,料理名をいくつか 書 こ う 。 ま た , 何 品 作 れ る か 書 こ う )。 41 料理テキストを見ながら調理することができる。 42 使い終わった食器や調理器具を洗剤できれいに洗うことができる。 9 43 洗剤の種類について理解している。 44 洗った食器や調理器具をふいて納めることができる。 45 常温で保存するもの,冷蔵庫で保存するもの,冷凍庫で保存する ものの区別がだいたい分かる。 46 冷蔵庫のどこにどんな食材を保存するか知っている。 47 野菜や果物のだいたいの値段を言える。 48 肉の部位と,それに合った調理法を二つ以上知っている。 49 卵1個の重さはだいたいどのくらいか知っている。 50 朝食を作ろうと思います。食パンの他に,栄養バランスを考える とどんなものを追加するといいか,書きましょう。 チェックリストの結果,生徒の実態は次のとおりであった。 ○朝食を含め,概ね3食を規則正しく摂取している。 ○全般的に,揚げ物を好む傾向にある。 ○濃い味付けを好むのは,女子生徒に多い。 ○ジュースの飲み過ぎはよくないからと,スポーツ飲料水を飲むよう にしている生徒がいる。 ○自分の体重や身長を知らない男子生徒がいる。 ○どんな食品がどんな働きをするか知らないのは,女子生徒に多い。 ○男女とも,一日に必要な基礎代謝量を知らない(食べ過ぎないよう に気を付けて食べ残す場合,残した食品の中に体に必要な栄養素が 含 ま れ て い る と い う こ と が あ る )。 ○夜食や間食の量や内容を配慮して摂取していない。 ○食品の保存方法を知らない生徒がいる。 (2)栄養士による講話とそのまとめ 食について考える学習の第二時として,専門的な立場から本校の栄養 士に「食」に関する情報提供をしてもらった。 事前にチェックシートの結果を見てもらい,その内容を踏まえて講話 してもらった。 日 時 … 6 月 21 日 ( 木 ) 5 時 間 目 場 所 … 社会科教室 情報提供者 テーマ … 四田有紀(本校栄養士) …「食」について考える ~栄養バランスやカロリー計算など健康な食生活をおくるための基 礎知識~」 講話の主な内容は次のとおりである。 10 ○一日に必要な基礎代謝量(中学生男女別の運動量の多い人・普通・ 少ない人と成人男女別の違い,食品に表示されているカロリー等) ○間食と夜食(プラス面とマイナス面,摂取上の配慮事項等) ○水分補給の仕方(スポーツ飲料に頼る落とし穴,ノンカロリーやノ ンシュガーの表示による落とし穴等) ○栄養バランスと生活習慣病(バランスと量の大切さ,旬のものを取 り入れる工夫,生活習慣病の具体等) 次の時間に,講話を聞いて分ったことを振り返り,KJ法によるまと めを行った。 生 徒 た ち か ら 出 て き た 意 見 ・ 感 想 は 次 の と お り で あ る ( 抜 粋 )。 ( a )生 活 習 慣 病 に つ い て ○(食品を)買うときにカロリーを見ないといけないということが分 かった。 ○ ポ テ チ 60g で 予 想 以 上 の カ ロ リ ー が あ っ た 。 ○基礎代謝は,年齢や男女,運動をしているか,していないかで違う ということが分かった。 ○ 女 性 は ,14 歳 か ら 大 人 に な る に つ れ て 必 要 な カ ロ リ ー 量 が 減 っ て い くこと。 ○塩分・糖分を余り取りすぎると生活習慣病になりやすいんだなあと 思った。 (b)夜食のとり方 ○おやつを食べる時間を決めること。 ○夜食は温かいものを飲むほうがよいということが分かった。 (c)バランスの取れた食事の取り方 ○偏った食事ではなく,バランスのよい食事をしなくてはいけないと 分かった。 ○必要なカロリーをオーバーすると体に付く。 (d)炭酸飲料について ○清涼飲料水は砂糖だらけ。 ○ノンカロリーはカロリーが 全くないと思っていたが, 本当はカロリーが少しはあ るのだなあと思った。 (e)知りたいこと ○いろいろな食品のカロリー が知りたい。 (写真1)KJ法によるまとめ 11 (f)その他 ○シナモンが木の皮に砂糖を混ぜたものであることを理解した。 (3)調理計画と調理実習及びそのまとめ 前時までの学習を生かしたり,他者の意見を聞いたり,また自己の食 生活を振り返ったりしながら班で協力して献立を考え,調理実習の計画 を立てていった。 献立は主菜,副菜,汁物,その他(デザート)を考え,そこから調理 手順や役割分担を決めていった。またその調理に必要な材料と分量など の買い物計画を立てたり,必要な調理器具なども実際に調理室に見に行 くなどして学習を進めていった。 Aグループの献立 Bグループの献立 主食・主菜:チャーハン 主食:ご飯 副菜:ギョーザ 主菜:とんかつ 汁物:中華スープ(市販の 副菜:野菜サラダ もの) 汁物:味噌汁(市販のもの) その他:アップルパイ そ の 他:プ リ ン( 市 販 の も の ) (写真2) (写真3) 学 習 の 内 容( K J 法 に よ る ま と め )を 文 化 祭 で 展 示 発 表 す る と と も に , 振 り 返 り の 学 習 を 行 っ た 。生 徒 の 意 見・感 想 は 次 の と お り で あ る( 抜 粋 )。 (a)目標・計画 ○目標を達成できた。 ○班で協力できた。 ○計画どおりできた。 (b)安全・工夫 ○包丁の持ち方が最 初はいけなかった のだが,途中で教 えてもらいその後 はマナーを守るこ とができた。 (写真4)KJ法によるまとめ 12 ○トマトの切り方にとまどった。 ○キャベツをどのくらいの量で切ればいいのか分からなかった。 ○チャーハンをつぐ時,手にこぼれて熱かった。 ○インスタントの味噌汁を作ったときに,具と味噌を入れるのがうま くできたと思う。 (c)味付け ○ぎょうざの具の量が少なかった。 ○自分たちで作ったものを実際にみんなと一緒に食べるとさらに美味 しいと感じた。 (4)学習のまとめと振り返り 本年度の「食」についての学習を振り返るまとめの時間を設けた。あ わせて1年間の総合的な学習の時間を通して生徒たちにどのような力が 育ったのかを検証した。 (a)知識・態度に対する評価 食に関する内容で相談したいという事例を用意し,みんなで解決法を 考える「こんなときどうする」という活動を行った。応用編の活動であ る。 活動 「こんなときどうする」 ( 事 例 1 )「 中 学 生 の 男 の 子 で す 。 ご 飯 が 嫌 い で , 毎 朝 , ご 飯 を 食 べ ず に ,お 菓 子 ば か り を 食 べ て い る ん だ け ど ,ど う す れ ば い い ? 」 ( 事 例 2 )「 一 人 暮 ら し の 女 の 子 で す 。 お 肉 が 大 好 き 。 月 曜 日 か ら 木 曜日まで,お肉料理ばかり作って食事しました。週末のメニュ ーはどうすればいいかな?」 生徒たちは2グループに分かれて話し合いを行い,二つの事例に対す る 解 決 策 を 考 え て 発 表 し た 。生 徒 の 回 答 は ,事 例 1 に つ い て は , 「お菓子 を 置 い て お か な い よ う に す れ ば よ い 。」「 お 茶 漬 け な ど で , ご 飯 に 味 付 け を す る と よ い 。」 「 ご 飯 に こ だ わ ら ず に コ ー ン フ レ ー ク な ど に し た ら 。」な どという解決策が挙げられた。 ま た ,事 例 2 に つ い て は , 「 豚 汁 な ど ,野 菜 の 多 い 肉 料 理 に し て み て は ど う か 。」 「 魚 料 理 を ,缶 詰 で 代 用 し て み て は ど う か 。」な ど と い う 解 決 策 が挙げられた。 いずれの事例問題についても,生徒たちは,これまで学んだことをふ まえて様々なアイディアを出し合うことができた。生徒たちの「食」に ついての知識や態度が高まっていることが伺えた。 なお,授業の最後に,あらかじめ本校の栄養士から示された事例ごと のアドバイスを授業担当者が提示し,まとめの補足とした。 13 (b)自己評価・相互評価 最後のステップとして,ワークシートを使って,生徒の学びの成果と した。この活動は,学習の成果に対する自己評価とともに,対話を取り 入れた相互評価を行う活動でもある。 「食について考えよう」 1 振り返りワークシート み な さ ん が ,「 食 」 に つ い て 学 ん で き た 中 で , 自 分 が チ ャ レ ン ジ してできたことや,これからチャレンジしてみようと思っているこ とを書いてください。 2 「食」について学んだことで,これからみんなで実際に取り組ん でいきたいことを書いてください。 自分が新たにできるようになったことや高まったこと,これからさら に 取 り 組 ん で み た い こ と を ,全 員 の 前 で 発 表 し た 。 「包丁を安全に使うこ と が で き た 。」「 調 理 実 習 で 作 っ た 献 立 を 自 宅 で も 挑 戦 し た 。」「 揚 げ 物 が で き る よ う に な っ た 。」 「 粉 末 ス ー プ を 自 分 で 作 れ る よ う に な っ た 。」な ど が挙げられた。生徒自身の「自己評価」を,みんなの前で発表し,意見 交換することにより,それぞれの成果を全員で共有することができた。 最後に,みんなでこれから取り組んでいきたいことをグループに分か れ て 話 し 合 っ た 。 生 徒 た ち が ま と め た 「 み ん な の 目 標 」 は ,「 安 全 第 一 」 で「 生 徒 満 足 」の 得 ら れ る よ う な「 調 理 実 習( 鍋 料 理 ・ お 菓 子 作 り )」が したいというものであった。 4 成果と課題 今年度の活動をとおして,個々の生徒はそれぞれの状況に応じ,程度 の 差 は あ る も の の「 食 」に 関 し て ,知 識・技 能・意 欲・態 度 が 向 上 し た 。 チェックリストや講話から,自分の課題やカロリー・生活習慣病につ いて知り,まとめの時間には,知識を生かして問題を解決できるように なった。 (4)にあるように,生徒から意欲的な感想が出された。個人の取り 組 ん で い き た い 内 容 の 中 で ,「 始 め か ら 最 後 ま で 自 分 で 調 理 し た い 。」 と い う こ と や ,「 家 に あ る も の の 中 か ら 調 理 を し た い 。」 と い う , 将 来 身 に 付けたい事柄も出てきた。 課題としては,身に付けた知識を実践する場の提供が必要であると考 え る 。生 徒 の 意 欲 を 体 験 に 変 え る た め に , 「個の目標の達成に向けた指導」 を家庭,寄宿舎,また他教科・領域を通して連携し,行っていく必要が あると考える。 14 3 高等部普通科 研究グループテーマ:コミュニケーション能力を育てるために 1 目的 近年,本校高等部普通科単一障害生徒の進路先としては,大学進学ま たは本校理療科への進学及び就労である。これらの進路を考えた時,多 くの生徒にコミュニケーション能力(自分の気持ちを筋道立てて人に伝 える)が不足していることが指摘されている。そのため,昨年度は,作 文(論文)指導に取り組んだ。この結果,作文(論文)に関して,高等 部普通科の教職員が共通理解の基に取り組み,生徒に対して一貫した方 法で指導することで,普通科3年生の生徒は希望の進路に進学すること ができた。 作文(論文)においては,ある程度の成果はみられたが,それが話し 言 葉 に も 般 化 さ れ て い る と は 言 い 難 い 。そ の た め , 「 話 す 」こ と に 焦 点 を 当てることとした。まずは,在籍の生徒がコミュニケーション能力にお いてどのような実態でどのような課題をもっているかを明らかにするた め, 「単一弱視生徒に対する自立活動の実態把握のためのチェックリスト ( 試 案 )」 ( 三 浦 直 宏 作 成 )を 基 に し た ケ ー ス 会 議 を 実 施 し た 。そ の 結 果 , 次の課題を有する生徒が多いことが分かった。 ○相手の気持ちを捉えにくい。 ○援助依頼をしない。 また,ケース会議の中で,HR等の話し合いで積極的に意見を言う ことが少ないことも課題として挙がった。 ケース会議で挙がった課題の原因として次のことを考えた。 ○生徒会活動等について,教職員や理療科の生徒といった大人主導で 進めることが多く,学齢の生徒のみで主体的に物事を進めた経験が 不足しているのではないか。 ○ 単 一 障 害 生 徒 が 各 学 年 1 名 で あ り ,一 人 で 授 業 を 受 け る こ と が 多 く , 援助依頼が必要なほど困った経験がないのではないか。 生徒の将来を考えると,相手の気持ちを捉える力,困った時,人に 頼む力が必要である。そのため,今年度は,コミュニケーション能力 の中で「話す力」を育てることを目的とした。 2 方法 研究仮説として次のことを考えた。生徒自身が自分のコミュニケーシ ョン上の課題に気付き,その課題解決に取り組むことで,コミュニケー ション能力を高めることができるのではないか。 15 この仮説の基,次の方法で研究を進めることとした。 ○生徒のみで話し合う機会を設定する。 ○生徒自身による話し合いの振り返りを実施する。 3 内容 (1)生徒による話し合い 生徒による話し合いは2回設定した。1回目の内容は,生徒にとって 身近な話題である「給食のベスト10づくり」にした。これは,生徒3 人のみの話し合いの機会は初めてであることから,生徒が自分の意見を 言いやすいと思われる内容にしたためである。生徒には,話し合いの内 容 の み を 提 示 し た 。話 し 合 い で は ,生 徒 は 積 極 的 に 意 見 を 言 っ て い た が , 思いつきで話し合いを進めており,結果が客観性,根拠がないものにな っていた。そして,その客観性がないことに気付く生徒はいなかった。 2回目は,1回目の話し合いを深めた内容である「客観性のある給食 の ベ ス ト 1 0 づ く り 」に 取 り 組 ん だ 。ま ず , 「前回の給食ベスト10には, 客観性があるか」との教員からの投げかけから進めた。そして,話し合 い に 教 職 員 が 同 席 し ,生 徒 た ち が よ り 深 く 考 え ら れ る よ う 示 唆 を 与 え た 。 この話し合いでは,生徒は,客観性という言葉の意味を調べる活動から 始めた。1回目の話し合いとは違い,生徒の意見は少なかったが,しっ かりと考え,アンケートを取るという結論に達した。 (2)生徒自身による話し合いの振り返り 生徒自身に自分のコミュニケーション能力の課題に気付かせるため, 実態把握で実施した「チェックリスト」の項目に従い,自分たちの話し 合いを振り返らせることにした。振り返りの観点と1回目の結果は,次 のとおりである。 ○自分の話し方 3人とも,問題はないと答えた。 ○会話の自然さ 3人とも,問題はないと答えた。 ○相手の気持ちに立つ 「まあまあできたと思います。私が自分の考えを言ってみたとき, B さ ん が『 あ あ ,わ か る わ か る 。』と 言 っ て く れ て ,B さ ん は ち ゃ ん と 相 手 の こ と を 考 え な が ら 話 が で き て い る な と 感 心 し ま し た 。」「 自 分 の ことで精一杯で,あまり考える余裕はなかったかもしれません。あい づ ち を 打 っ た り , う な ず い た り , 共 感 は で き た と 思 い ま す 。」「 自 分 と しては最低限のマナーは,失礼がないようには,できていたように思 う 。」 16 ○援助依頼 援 助 依 頼 に つ い て は ,「( 話 し 合 い が ) 硬 直 状 態 に な っ た 時 に , 打 開 策 を 他 の 二 人 に 求 め た 。」 「 メ モ を す る と き ,少 し 早 か っ た の で『 待 っ て 。』 と 言 い ま し た 。」 ま た ,生 徒 た ち は , 「 生 徒 だ け の 話 し 合 い が 最 近 少 な く ,こ う い う 生 徒 だ け の 話 し 合 い で 何 か を 決 め ら れ る の は よ か っ た 。」「 友 だ ち の 考 え て い る こ と や 気 持 ち な ど が よ く わ か っ た 。」「 こ れ か ら は 人 と 意 見 を 出 し 合 っ た り し て 協 議 す る こ と が 増 え る の で か ん ば り た い 。」と いう意見があった。 2回目の話し合い後も,同じ観点で振り返りを実施した。結果は 次のとおりである。 ○自分の話し方 3人とも,問題はないと答えた。 ○会話の自然さ 3人もと,問題はないと答えた。 ○相手の気持ちに立つ 3人とも相手の話を最後まで聞いて自分の考えを話すことはでき ていないと答えた。 ○援助依頼 1 年 生 は「 上 級 生 に 助 け て も ら っ た 。」と 答 え ,2 ,3 年 生 は「 で き た 。」 と 答 え た 。 ま た ,感 想 は 次 の よ う だ っ た 。 「今回は最初に客観的な立場に立っ た話し合いをするように言われて,とても難しかったと思います。 客観的という言葉を辞書で引いて,どうしたら給食ランキングが普 遍 的 で 万 人 の 理 解 が 得 ら れ る も の に な る か を 考 え ま し た 。そ の 結 果 , 『3人の話し合いだけじゃできそうにないのでアンケートを実施す る 』 と い う 提 案 が 出 て き ま し た 。」「 最 初 は あ ま り 意 見 が 出 な か っ た が,途中からアンケートをつくるという方向で目的をもったいい話 し 合 い が で き た と 思 う 。」 (3)考察 1回目の話し合いは,浅い話し合いになっていたため,当初のチェッ ク リ ス ト で 生 徒 の 課 題 と し て 挙 が っ て い た「 相 手 の 気 持 ち を 捉 え に く い 」 「援助依頼をしない」に関しては,その状況ははっきりとは見られなか った。このため,生徒自身も自分の課題に気付かなかったと思われる。 2 回 目 の 話 し 合 い で は ,1 回 目 の 話 し 合 い を 深 め る 内 容 で あ っ た た め , 1回目よりも生徒自身が考えて発言する姿が見られた。そのことで,生 徒自身の振り返りにより,相手の話を最後まで聞いて自分の考えを話す 17 ことはできていないと生徒自身が自覚することができた。また,客観的 と聞き,2,3年生は意味を辞書で調べていた。これは,日頃から知ら ない言葉は調べさせていた指導が生きていると思われる。この点を1年 生も「上級生に助けてもらった」と感じたようだ。 今回は,2回目の話し合いまでの取組結果の報告である。この後,3 回目の話し合いとして,生徒自身に話し合いに臨む前に自分の目標を決 めさせ,その目標を達成できるよう取り組ませることにしている。現時 点では,取組途中のため,研究の目的である,コミュニケーション能力 を高めるまでは臨めていない。ただ,生徒自身が自分のコミュニケーシ ョン能力の課題を理解したと感じている。今後,引き続き,話し合いの 機会をもち,生徒が自分の課題を解決するよう取組を進めていきたい。 4 成果と課題 この話し合いの後,生徒3人で話をする場面が多く見られるようにな った。これは,話し合いの機会を設けたことで,生徒同士が打ち解ける き っ か け に な っ た た め だ と 思 わ れ る 。ま た ,課 外 で の 話 し 合 い だ っ た が , 3 人 と も「( こ の よ う な 話 し 合 い を )ま た ,し た い 。」と 答 え た 。生 徒 は , 今のところ受身の状態であり,自分たちから「話し合いの継続」を言い 出す様子は見られない。ただ,この取組をとおして,教職員が同じ目的 で生徒に接することができた。1,2年生の2人は,来年度の生徒会の 役員に立候補している。生徒会活動や高等部の活動の中で,生徒自身が 自主的に動ける機会を増やしていきたい。 また,普段の様子から生徒同士での話し合いは難しいと思われたが, 3人とも自分の意見を述べることができていた。ただ,相手の話を聞い て自分の意見を述べるなど,話し合いのマナーについては身に付いたと はいえない。引き続き取り組むことで,本来の研究の目的を達成させた い。 18 Ⅱ 重複障害教育研究グループ 1 幼・小学部 研究グループテーマ:やりとりを大切にした授業づくりの工夫 1 目的 幼小学部の学部目標は, 「 自 信 や 意 欲 を も ち ,み ず か ら の 目 標 に 向 か っ て挑戦する幼児児童」としている。重複障害学級に在籍する子どもたち にとって,見えにくさ,それに加えて知的面や手足が思ったように動か ない等の難しさから,自信をもちにくいところがある。自信をもって活 動するための基盤として,自分の気持ちを相手に伝え,受け入れられ, やりとりができる安心感が,がんばってみようという意欲を育てると考 える。 昨年度の取組から,伝えようとする子どもからの表現を受け止めて返 すコミュニケーションを大切に子どもと関わっていくことを継続課題と してきた。今年度はコミュニケーションを大切にした取組をより深め, 「やりとり」を大切にすることを重点課題とした。個別の指導計画を用 いてそれぞれの子どもに合った方法でやりとりをすることで,子どもた ちが自信をもって主体的に活動できる授業づくりを目的とし,取り組ん でいく。 2 方法 1学期はアセスメントに取り組み,各自が把握した子どもたちの実態 をケース会議で報告し合って共通意識をもった。2学期から,個別の指 導 計 画 の「 生 活 全 般 」の 中 に , 「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 」の 項 目 を 立 て ,ア セスメントに基づくコミュニケーションの課題を明確化し,授業づくり に活用した。アセスメントから見えてきた,子どもたちの見え方や好き なこと,表現の仕方等を授業でどう生かしたらよりよい「やりとり」に なるのか,授業を行う中で見えてきた疑問についてグループ内で協議し 合い,さらに課題意識をもって取り組んでいるところである。 3 内容 岩 根 ( 2005), 齊 藤 ( 2008) は ,「 重 度 ・ 重 複 障 害 の あ る 子 ど も た ち に 関わる教師が,現時点で子どもたちがもっているコミュニケーションの 初歩的な力に気づき,その力を子ども自身が最大限活用できる教育環境 を整え,生活や学習活動の中で子どもとの「今,ここ」のコミュニケー ションを積み重ねることが目指すコミュニケーションの支援であると考 える」と述べている。その視点を示したモデルでは,重度重複障害者の 19 子どもとのコミュニケーションの三つの条件として,コミュニケーショ ンの関わり手(パートナー)である大人が, (1)その子どものことをよく知り, (2)関わり手として子どものコミュニケーションを取り持つ重要な役 割を果たし, (3)コミュニケーションが成立しやすい環境の文脈を整えること が 挙 げ ら れ て い る ( 1997 Siegel-Causey&Bashinski)。 これらのことから,本研究グループでは,まずアセスメントを行い, 見え方,好きなこと,表現手段等,児童の日々の様子から実態把握を行 った。次に把握した実態を基に,ケース会議を行った。その中で,それ ぞれの子どもにとっての「今,ここ」のコミュニケーションを積み重ね るためには何が大切なのか意見を交した。話し合う中で見えてきた子ど もたちのコミュニケーションの課題について,2学期の個別の指導計画 に 項 目 を 立 て る こ と で ,グ ル ー プ の メ ン バ ー 全 員 で 取 り 組 む こ と と し た 。 昨年から幼小学部重複グループで大切にしているコミュニケーション支 援 の 12 の ポ イ ン ト ( 昨 年 度 紀 要 参 照 ) を 取 り 組 む 上 で 参 考 に し た 。 4 成果と課題 本校の子どもたちは,視覚による情報が得られにくいため,見えやす い,触りやすい,聞きやすい環境を作って,情報を受け入れる基盤を作 ることが大切になる。アセスメントをとおして,どのような条件で見え るのか,見るためにはどのような環境の配慮が必要なのか,試行錯誤し ながら取り組んできた。同時にどんな具体物や音を使えば伝わるのか, 子どもの実態に合ったものを探していった。見えにくい,見えないが故 に,次に何を行うのかがわからず不安で,活動や相手に集中できなかっ た子どもたちが,環境を整えることで,見通しがもてるようになり,安 心感をもって活動できるようになった。 安心できる環境を整え,その上で,大切にしたのがコミュニケーショ ンである。子どもの行動や発声に対して,即時に,また丁寧にフィード バックを行うことで,子どもと教師の間にやりとりが生まれた。子ども の表現を受け止めて返し,それを受けた子どもがまた表現し,さらにそ れを受け止めて返すやりとりを重ねる中で,子どもから自主的,自発的 な活動が見られるようになった。その,自分でがんばろうとする子ども たちの発言や伸ばす手に,自信や意欲をもつことができた子どもたちの 姿を見ることができ,改めてやりとりの大切さを知った。 今年度は,アセスメントから見えてきた子どもたちの課題や,悩み, 子どもの姿について,本研究グループ内で共有化できたことに大きな意 味 が あ っ た 。全 員 で 同 じ 課 題 意 識 を も ち ,い ろ い ろ な 視 点 で 見 る こ と で , 20 教材の提示の仕方一つをとっても,一人では気付かなかったことが見え てきた。しかし来年度,本研究グループのメンバーは大きく変わると思 われる。現在の取組を,メンバーが変わっても,誰がどの子どもを担当 しても,共通した意識をもって続けていけるように,より密な情報交換 をしていきたい。 <実践事例> 事例1 幼稚部3歳児 教諭 上山 知子 目標:シンボルを用いた意思表示ができるようにする。 指 導 を 行 っ て い く 上 で ,「 自 発 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 行 動 が 少 な い こ と 」「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 手 段 と し て ,“ は い ”“ う ん ” 等 の 音 声 言 語 に 確 実 性 が な い こ と 」が 本 児 の 課 題 だ と 考 え た 。記 録 の 分 析 か ら ,本 児 は ,音 声 言 語 は あ る も の の ,そ れ が 他 者 へ の 表 出 で は な く 独 り 言 に 近 い ものが多いこと, “はい” “ う ん ”と い う 言 葉 が 必 ず し も 思 い と 一 致 し て い な い こ と が 分 か っ た 。そ の 為 ,シ ン ボ ル を 用 い る と い う 目 標 を 修 正 し , 自 発 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 行 動 を 増 や す こ と ,音 声 表 出 以 外 の 手 段 も 使いながら他者に理解できるコミュニケーション方法の獲得を目指す こ と を 目 標 と し た 。 特 に 「 要 求 」「 拒 否 」 が 相 手 に 分 か る よ う に 伝 え る こ と を 重 点 目 標 と し ,自 発 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 行 動 が 出 や す い「 お やつ」 「 給 食 」の 場 面 を 練 習 の 場 と し た 。指 導 の 結 果 , “ 食 べ た い ”の 表 現 と し て 「 い く 」 の 音 声 言 語 が 定 着 し た こ と ,“ 食 べ た く な い ” の 表 現 と し て ,首 ふ り ,の け ぞ り 等 の ジ ェ ス チ ャ ー に 確 実 性 が 出 て き た 。本 児 が「 自 己 決 定・ 自 己 選 択 」で き る 力 を 育 む た め に ,今 後 も 引 き 続 き 取 り 組んでいきたい。 事例2 小学部5年 教諭 信藤 貴美枝 目標:相手の意図を受け止めようとすることができる。 言 葉 で の や り と り を 大 切 に し て 取 り 組 ん で き た 本 児 は ,発 語 も 明 瞭 に な り ,言 葉 で の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 楽 し む こ と が で き る よ う に な っ て き て い る 。し か し ,心 に 浮 か ん だ 思 い を 次 か ら 次 へ と 一 方 的 に 言 っ て し ま い ,返 答 が な い と 不 安 に な る こ と が あ る 。特 に 課 題 の 途 中 で 次 の 課 題 の こ と が 気 に な り ,「 次 は ? 」 を 連 発 し て 活 動 に 集 中 で き な い こ と が あ る 。そ こ で 今 日 す る 活 動 の 流 れ を 写 真 カ ー ド で 最 初 に 示 し ,課 題 が 終 わ る ご と に カ ー ド を 箱 に 入 れ る こ と が で き る ボ ー ド を 用 意 し た 。写 真 を 使 っ た の は 本 児 に「 し っ か り 見 る 」と い う 課 題 を 同 時 に ね ら う た め で あ る 。 こ の ボ ー ド で 確 認 す る こ と で 「 次 は ? 」 と い う 発 言 は な く な り ,「 次 は 21 ○ ○ だ ね 」と 言 い な が ら 次 の 課 題 に 移 る こ と が で き る よ う に な っ た 。自 分 で 分 か っ て 次 に 進 む こ と が で き ,見 通 し が も て た こ と で 安 心 感 と 集 中 力がつき,すべてのカードがなくなった時の達成感も 感じられた。児童の発言にすべて答えるのではなく, 必要最低限の言葉かけでこちらの意図をくみ取るとい うコミュニケーションの力も少しずつ付いてきている。 事例3 小学部3年 助教諭 中村 浩乃 目 標 :「 は い 」「 い い え 」 や 「 や り た い 」「 や り た く な い 」 な ど , 自 分 の 思いを発声によって伝えることができるようにする。 児 童 は 表 情 が 豊 か で ,周 囲 の 人 に 自 分 か ら 手 を 差 し 伸 べ る な ど 積 極 的 な 行 動 が 見 ら れ る よ う に な っ て き た 。教 師 の 言 葉 か け を 理 解 し て い る 様 子 も 見 ら れ る の で ,言 葉 か け に 対 し て 発 声 で の 意 思 表 示 を 引 き 出 す 取 組 を 行 っ た 。個 別 学 習 の 絵 本 の 時 間 で は ,2 冊 の 題 名 と 出 だ し の 言 葉 を そ れ ぞ れ 読 ん で か ら ,ど ち ら の 絵 本 が よ い か そ の つ ど 問 い か け た 。最 初 は 笑 っ た り ,手 で 本 や 机 を た た い た り し て い た が ,発 声 で 返 事 を し た 時 に 「 ~ の 絵 本 が 読 み た い ん だ ね 。」 と 発 声 に 対 し て 意 味 付 け ( フ ィ ー ド バ ッ ク )を し て か ら 読 ん だ 。こ の こ と を 繰 り 返 し た 結 果 ,読 み た い 絵 本 の 選 択 が で き る よ う に な っ て き た 。発 声 に 対 す る 意 味 付 け( フ ィ ー ド バ ッ ク )が ,教 員 の 思 い 込 み に な ら な い よ う も う 一 度 問 う と ,同 じ 絵 本 で 発 声 を す る の で ,自 分 の 意 思 で 選 択 し ,声 を 発 し て い る と 考 え ら れ る 。今 後 も ,日 常 生 活 や 授 業 の 中 で ,自 己 選 択 の 場 を 設 定 し ,児 童 の 思 い を 引 き出す取組をしていきたい。 <主要参考文献> 齊藤由美子 中澤惠江 2009 「重複障害児のアセスメント研究-視 覚を通した環境の把握とコミュニケーションに関する初期的な力を評価 す る ツ ー ル の 改 良 」平 成 20 年 度 専 門 研 究 A 成 果 報 告 書 立特別支援教育総合研究所 22 独立行政法人国 2 中学部 研究グループテーマ:日常生活の指導におけるTTの工夫 1 目的 生徒の卒業後の生活を見据え,中学部段階としては「個別指導でなけ れば学習できない」という状況に陥らないように授業形態を工夫するこ とが継続課題であった。そこで今年度は,より少ない支援で生徒が主体 的・意欲的に学習や生活ができるための指導のあり方を研究することと した。 2 方法 より少ない支援を実現するには,TT(ティームティーチング)のあ りかたを含め,教室環境や指導内容を見直す必要がある。そこで今年度 は「日常生活の指導」の授業改善を行い,校内授業研究を行うことで研 究の目的を達成することとした。 3 内容 「 日 常 生 活 の 指 導 」は 毎 日 1 校 時 目 に「 朝 の 会 」 「着替え等」 「各自の課 題」を年間を通して,重複障害教育課程の学級に在籍する生徒5人全員 で行っている。昨年度はマンツーマンの指導体制をとっていたが,今年 度は上記の目標を達成するため,指導者を4人とし,また,教室環境や 朝の会の内容の見直しを行った。 (1)教室環境の見直し (ア)昨年度までは教室内に中学部全生徒の机と椅子がロの字に並べら れ , そ の 一 角 を 使 用 し て い た が ,「 正 面 」 を 意 識 す る こ と , 黒 板 を 学 習 に 生 か す こ と ,全 盲 生 徒 に と っ て の 移 動 の 効 率 性 を 考 え て 机 の 配 置 を 変 更した。 <昨年度> 出入口 T 黒板 T T 生 徒 棚・着 替 え ス ペ ー ス T S S * Tは教員, S Sは生徒。 S S S 昨年度の生徒は6 T 生徒棚 出入口 人。 T 生徒棚・着替えスペース 23 <今年度> 出入口 生 徒 棚・着 替 え ス ペ ー ス 出入口 T 黒板 T D E C 司会 T A B T 生徒棚 生徒棚・着替えスペース (イ)司会の生徒が「正面」に出ることで,どの生徒にとっても「誰が 司 会 を し て い る の か 」「 ど の 教 員 が メ イ ン テ ィ ー チ ャ ー (T 1 )な の か 」 を理解できるようにした。 (ウ)黒板に日付や当番の氏名など必要な情報を見えやすい大きさの文 字で常時提示しておくことで,文字に興味をもち始めた弱視生徒が常 時確認できるようにした。 (2)朝の会の内容の見直し 昨年度 今年度 今年度の係 ○各担任と準備 生 徒 ○あいさつ 1 あいさつ 日めくりカレン ○健康観察 2 健康観察 ダー ○日にち 3 日にち 日付 C ○天気 4 天気 天気 A ○給食の献立 5 時間割 時間割 D ○先生からの連絡 6 先生からの連絡 給食 E ○生徒の話 7 給食の献立 8 先生の話 9 生徒の話 B ( ア )昨 年 度 は 席 順 で 輪 番 で 行 っ て い た「 当 番 」 ( 司 会 )を ,今 年 度 は 生 徒 が 5 人 で あ る た め ,見 通 し が 持 ち や す い よ う に ,生 徒 ・ 教 師( T 1 ) ともに曜日担当制にした。 (イ)各生徒が朝の会で行う係をスムーズにやり遂げ,成功体験を積み 重ねるために,朝の会の前に各担任がマンツーマンで各生徒の準備を 支援する。 (ウ)昨年度は「生徒の話」を希望制で行っており,生徒が話す内容を 考えずに競って挙手したり,話す内容が常同的であったりしたため, 24 今年度は曜日当番だけが話をして,事前に話す内容を担任と打ち合わ せすることにした。 (エ) 「 生 徒 の 話 」の 内 容 を 充 実 さ せ る た め の モ デ ル と し て ,T 1 が 行 う 「先生の話」を新たに設けた。その際,生徒に「聞く力」をつけるた め,T1は質問しやすい話を行い,T2~T4は適宜質問のモデルを 示し,生徒が「質問」の意味を理解できるようにした。 (オ) 「 先 生 の 話 」で は 生 徒 の 直 接 体 験 を 広 げ る た め に ,可 能 な 時 に は 身 近な植物など実際に見たり触ったりできるものをT1が用意し,それ を話題にする。 (3)朝の会以降の指導体制 生 徒 (お茶・着替え・課題) T1 A (着替え・課題) T4 (ト イ レ ・ 着 替 え ) (*1) B (課 題 ) T4(*2) C ( お 茶 )( * 3 ) D (ト イ レ ・ 課 題 ) T2 ( 着 替 え 場 所 へ の 移 動 )T 3 ( * 4 ) (着替え)T2 (お 茶 ) ( * 3 ) E (トイレ・課題) (*1)ほぼ自立しているが,身なりを整えるには確認が必要なことが ある。 (*2)プリント学習で自分で準備から片づけまでを行えるように教材 や環境を工夫し,徐々に支援を減らすことをめざす。 (*3)お茶は,生徒机の横にかごを取り付けることで,準備・片付け の支援を減らす。 (*4)T2がいる着替え場所までの移動を,方向取りをきちんと行っ てできるように指導する。T3の支援を徐々に減らすことをめざす。 4 成果と課題 これらの授業改善を通して,各生徒に次のような変化が見られた。 (1)曜日を意識し,当番の順番の見通しをもち,自覚をもって取り組 むようになった。 (2)朝の会の項目に番号をつけたことで,順番を覚えて見通しがもて るようになった。 (3)生徒の話を当番制にすることで,朝の会の終わりの見通しがもて るようになり,心理的に安定してきた。 25 T3 ( 4 )常 同 的 で あ っ た「 生 徒 の 話 」に 変 化 が 現 れ ,最 近 経 験 し た こ と や , 週末の予定等を話題にできるようになった。 ( 5 )「 質 問 」 の 意 味 が 理 解 で き は じ め ,「 ど こ で 」「 だ れ と 」「 な に を 」 などの単語を使った質問をしようとするようになった。 (6)お茶の準備や片づけを生徒自身で行えるようになった。 (7)黒板の日付やカレンダーに常時触れることにより,カレンダーの 仕 組 み を 理 解 し 始 め た 。自 信 を も っ て 日 付 を 発 表 で き る こ と が 増 え た 。 ( 8 )年 度 当 初 は 係 の 仕 事 に 取 り 組 む こ と が 難 し か っ た が ,自 覚 を も っ て 取り組めるようになった。 (9)自分で課題を準備し,片づけをすることが定着してきた。 ( 10) 視 覚 を 使 っ て 棚 や 着 替 え ス ペ ー ス ま で 自 力 で 移 動 す る こ と が で き るようになってきた。 「日常生活の指導」においては,マンツーマンの指導体制をとらない こ と で ,教 員 間 の 連 携 の 必 要 性 が よ り 高 ま り ,た び た び 意 見 交 換 を す る こ とで,共通認識を深めることができた。その例の一つとして,全盲生徒 への移動方法の指導(方向取りをするなど)を指導者側が意識して取り 組めるようになったことが挙げられる。この例のように,重複障害生徒 の指導においても,視覚障害生徒がめざすべき日常生活動作がどのよう なものであるかを指導者側が理解しておく必要がある。また,授業研究 の協議会においては, 「 分 か っ て 動 け る 授 業 づ く り 」に つ い て 学 部 内 で 研 修 で き た 。こ の 中 で ,生 徒 が「 主 体 的 に 学 習 が で き る 」と は , 「人に頼ら ない」のではなく「自らが人的支援を適切に求め,活用することができ る」ことをめざすものであることを確認した。これらのことを踏まえ, 今後は他の学習場面においても教員間の連携を密にして,生徒の将来を 見据えた「主体的・意欲的に学習や生活ができるための指導」を実践し ていきたい。 26 3 高等部普通科 研究グループテーマ:つながりをもった実践のために ~教材・教具の工夫を通して~ 1 目的 昨 年 度 , 主 体 性 を も た せ る た め に 工 夫 を し て い る 点 を ,「 指 導 の 方 針 」 「 環 境 作 り 」「 教 材 の 工 夫 」 の 三 つ の 視 点 に 分 け て 意 見 交 換 を 行 い ,「 視 覚障害生徒にとって必要な配慮と,主体性を引き出す指導の関係を改め て確認することができた。共通的に指導工夫できるものと,生徒の実態 に 応 じ て 変 え て い く 必 要 が あ る も の も 確 認 で き た 。」な ど の 成 果 を 挙 げ る ことができた。継続課題としては「教材の工夫についての交流も行った が,具体性に欠けているのでさらに話を深めて,今後の開発に努力して い き た い 。」「 視 覚 障 害 の 視 点 を 常 に 念 頭 に 置 い て 指 導 す る こ と を 今 後 も 継 続 し て い き た い 。」「 個 々 の 生 徒 の 将 来 を イ メ ー ジ し た 指 導 内 容 や 指 導 方 法 に つ い て 研 究 す る 必 要 が あ る 。」 の 3 点 が あ げ ら れ た 。 継続課題であるこの3点と今年度の本校の研究テーマである「個別の 指導計画の有効活用~つながりをもった実践のために~」から,研究グ ループテーマを「つながりをもった実践のために~教材・教具の工夫を 通して~」とし,目的を「教材・教具の工夫を通して,重複障害生徒に 主 体 性 を も た せ る た め の 指 導 の 在 り 方 に つ い て 研 究 す る 。」 と し た 。 2 方法 (1)教材・教具の実践交流を行う。 ( 2 )「 教 材 ・ 教 具 の 工 夫 を 通 し て , 生 徒 が ど の よ う に 変 容 し た か 。」 を テーマに意見交換を行う。 3 内容 授業で活用している教材や開発した教具を持ち寄り,実践交流を実施 した。 ま た ,「 教 材 ・ 教 具 の 工 夫 を 通 し て , 生 徒 が ど の よ う に 変 容 し た か 。」 をテーマにして意見交換を行った。 「 農 作 業 で は 教 材・教 具 を 工 夫 す る こ とによって,安定した姿勢で活動がスムーズにでき,自分でできること が増えた。このことによって生徒は自信がもて,意欲的に活動に参加す るようになり,さらなる主体的な活動が引き出されているのではない か 。」 な ど の 意 見 が 出 さ れ た 。 27 実践事例1 仕分けの練習をする 教具である。作業学習 で野菜を人数分に分け て袋詰めの作業を実施 している。また卒業後 の生活でも食料や材料 を取り皿に分けたり,物を袋に詰めたりする機会も多くあると考え, 仕分けの学習をしていくことにした。活動に際しては物を入れる器が 動かないように仕切りをつけて固定できるようにした。また最初は1 個ずつから初め,徐々に数を増やすようにしたり,時間を計測したり して活動への意欲がもてるようにした。 実践事例2 お 金 の 種 類 を 見 分 け ,シ ー ト の 枠 の 中 に 硬 貨 を 置 く 教 具 で あ る 。自 立 活 動 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョンで自動販売機での買い物学習を取り入れ た 活 動 を し て い る 。ま た 就 業 体 験 実 習 の 時 に も 自 動 販 売 機 で 購 入 す る 活 動 を 実 施 し た 。ま た 個 別の指導計画の中に目と手の協応をさせて操 作 す る 活 動 を 入 れ て い る 。お 金 の 学 習 は 保 護 者 の願いでもあり,卒業後の生活や他の授業とのつながりを考え取り入れ た。活動に際しては,最初は6種類の硬貨の中から自動販売機での活用 頻度が高い百円,五十円,十円硬貨を取り上げ,まず三つの硬貨が見分 けられるように取り組み,徐々に増やすようにした。 実践事例3 フロアバレーにおいて,いろいろな実態にあ る生徒が,より安全に,一緒にゲームを行うた めに製作したボールである。ボールの表面を低 反発クッションで被うことで,ボールが当たっ た際の衝撃を和らげることができた。さらに, クッションで被ったことでボールの総重量が重 くなるとともに,転がる時の抵抗が増加し,打 球後のボールスピードが遅くなった。ボール内の鈴の音が聞こえにく くなったというデメッリットもあるが,スピードボールや空中を飛ぶ ボールが減少し,安全面が向上した。 28 実践事例4 農作業 におけ る野菜 の袋詰 めを行 いやす いよう にするために考えた教具である。ビニール袋をセットする,洗濯バサ ミで留めるという工程が増えるが,そのこと自体も生徒自身ができる 活動になる場合も多い。袋を一定の高さに固定したことにより,野菜 を ス ム ー ズ に 入 れ る こ と が で き ,両 手 が 使 え る こ と で ,野 菜 や 袋 の 位 置 の把握が容易になった。 4 成果と課題 成果 (1)作業に応じた姿勢や態度が身に付き,手指の巧緻性を高めること ができた。 ( 2 )こ の こ と に よ っ て 生 徒 が 自 信 を も つ こ と が で き ,主 体 的 な 活 動 を 引き出すことができた。 課題 学習指導要領が改訂され障害の重度・重複化,多様化に対応し,一 人一人に応じた指導を一層充実させることがポイントとして述べられ ている。一人一人の核となる課題は何かを見極め,学習内容や体験を 精選し取り組んでいくことがより求められている。 29 Ⅲ 理療科教育研究グループ 研究グループテーマ:職業自立をめざした指導の実践 ~個のニーズに応じた支援のあり方~ 理 療 科 で は ,平 成 22 年 度 よ り「 職 業 自 立 を め ざ し た 指 導 の 実 践 ~ 個 の ニーズに応じた支援のあり方~」をテーマに,増加傾向にある中途視覚 障 害 生 徒 の 学 校 生 活 の 支 援 を 目 的 と し て ,一 つ は 学 習 指 導 の 観 点 か ら「 点 字指導」について,二つ目に自立した屋内移動の観点から「歩行指導」 の研究をすすめてきた。また,昨年度からは教科的側面から新経穴を取 り上げ, 「 臨 床 実 習 に お け る 新 経 穴 へ の 取 組 」に つ い て 研 究 を 行 っ て い る 。 グループ1 中途視覚障害者に対する点字指導 ~中途視覚障害者に有効な触図の作成と活用法について~ 1 目的 理療科の科目,特に基礎科目である解剖学や生理学は,言葉による解 説だけでイメージすることは難しく,模型や図を参考にしながら理解を 深めていく必要がある。立体的なものは模型を用いるのが最も分かりや すいが,高価なものであったり持ち運ぶのに不便であったりするため, 図を用いて理解を促すことも多い。また,概念的内容を図案化すること で理解が容易になることもある。しかしながら,触図となると出回って いるものは案外少なく,まして複雑でなく簡潔で理解しやすいものとな るとほとんど流通していないといってもよい。この研究班では昨年度, 中途視覚障害者に対して点字の触読指導を行うための資料を作成するこ とに取り組んだ。その研究で得た知識を活かし,今年度は中途視覚障害 者でも理解が容易な触図を作成し,共有できるデータとして残すことを 目的に研究を行った。 2 方法 (1)先行研究の検索:インターネット,書籍等を調べ,参考となる資 料を集める。 (2)作成する触図の精選:具体的にどのような触図があれば授業に有 用かを検討し候補を挙げる。 (3)作成した触図の検討:作成した触図を視覚障害のある教職員(主 に全盲)が実際に触って改善すべき点について意見交換を行い,改善 30 を加える。 (4)授業での使用:実際に授業内で生徒に触らせ,授業者や生徒の感 想を聞き取り,参考にする。 3 内容 触図を作成するにあたり,まずは参考となる先行研究の資料を収集す ることから始めた。主にインターネットを活用し資料を検索したが,数 点見つかったのみで,内容も触図の作成に直接活かせるとは言えないも のであった。 次に,どのような触図が授業で必要になるかを話し合い,作成する触 図の候補を挙げた。中でも,模型が少なく分岐が理解しにくい血管系の 触図が多く候補に挙がった。 こ の 結 果 を 踏 ま え 約 20 点 の 触 図 を 作 成 し ,さ ら に そ の 図 を 教 職 員( 主 に全盲)が実際に触り,改善点について意見交換を行った。意見として 挙がってきた主なものは,次のとおりである。 ○触察に慣れていない者は面よりも線の方が捉えやすい傾向にあるの で,線を多く使用する1枚の図にあまり多くの情報は入れない, ○臓器は実際の形状に近い形で表現しがちであるが血管やリンパ管の 走行図においてはあえて形にこだわらなくともよい, ○点や線を使って塗りつぶす場合は隙間を十分に取らないと黒く塗り つぶしたものと区別が難しい等である。 点や線の隙間については,日本の点字における点同士の距離が 2.3mm 程 度 で あ る こ と か ら , そ れ 以 上 に 空 け な い と 隙 間 と し て 認 識 できないと考えられる。 最終的に完成した触図は,授業で実際に用いて授業者や生徒の感想を 聞き,改善点や使用法を考える必要がある。現段階において,触図の完 成度については概ね好評である。また使用法については,点字の触読に も共通することであるが用紙の左右が体の左右と平行になるよう配置し 肘を台に付かないようにすることで,両手の動きに制限が加わらず直線 と曲線の混同が起きない。また,触るときに図がずれないように金属板 にマグネットで固定すると,ポイントとなる部分に小さなマグネットを 付けることができ,説明が容易になるというメリットがある。 4 成果と課題 今 回 の 研 究 に よ り ,23 点 の 触 図 を 作 成 す る こ と が で き た 。こ の デ ー タ を共有することで,授業や自宅での学習に活用できる。さらに金属板を 用いると図を固定すると共に,マグネットによるポイントの指示もでき るので,授業での応用方法が拡がると考えられる。 課題として,タイトルや部分ごとの名称は墨字を表記しているが,点 31 字 の 表 記 に つ い て は 書 き 込 む 部 分 の 確 保 ,表 記 の 方 法( 後 で 貼 り 付 け る , 直接書き込む,図の一部として点を配置する)等の問題がある。加えて 点 字 が 読 め な い 者 に 対 し て の 工 夫( タ ッ チ メ モ を 使 う 等 )も 必 要 と な る 。 今後も授業を通して,より理解しやすい触図の作成に取り組んでいきた い。 【作成した触図一覧】 ワ ル ダ イ エ ル の 咽 頭 輪 , 胆 道 系 , 呼 吸 器 と 消 化 器 の 位 置 関 係 ( 頭 頸 部 ), ネ フ ロ ン ,女 性 生 殖 器 ,泌 尿 器( 正 面 ,横 ),心 周 期 ,心 臓 に 出 入 り す る 血 管 ,大 動 脈 弓 の 分 岐 ,腹 大 動 脈 の 分 岐 ,大 脳 動 脈 輪 ,門 脈 ,上 大 静 脈 , 下大静脈,胎児循環,リンパ本幹,シナプス,視神経,眼球の層構造, 眼 球 の 内 部 構 造 , 平 衡 聴 覚 器( 外 耳 ・ 中 耳 ・ 内 耳 ), 平 衡 聴 覚 器 ( 中 耳 ・ 内耳) グループ2 中途視覚障害者に対する歩行指導 歩行グループでは,昨年度より2グループに分かれ,研究を行ってい る。 グループAは,昨年度作成した指導マニュアルと教室のナンバリング に つ い て 研 究 を 行 っ た 。( 第 二 章 参 照 ) グ ル ー プ B は ,歩 行 指 導 に 関 す る 文 献 研 究 を 行 っ た 。 (以下に研究内容 を 示 す 。) 1 目的 現在理療科を設置している特別支援学校の現状としては,屋内歩行の 指導を必要とする中途視覚障害者の入学が増えてきている。そこで,本 研究では,多くの理療科教職員が歩行指導に対して関心をもてるように すること,また,その際に必要な資料を自由に閲覧できるようにするこ とを目的に取り組んできた。 1年目の研究では,理療科教職員全体が中途視覚障害者の歩行指導の 必要性を認識することができた。2年目の取組として,歩行について必 要な資料を理療科教職員全員が共通に閲覧できるようにした。しかし, 外 国 の 文 献 は 確 認 で き た も の の ,整 理 で き な か っ た こ と が 課 題 で あ っ た 。 そこで,今年度は理療科教職員がアクセス可能な文献について,どの文 献 の ど こ を 見 る と 必 要 な 情 報 を 得 る こ と が で き る か と い う「 文 献 リ ス ト 」 を作成することとした。また,視覚障害者の移動手段として最も安全で ある,手引き歩行についての資料も作成することとした。 32 2 方法 理療科教職員がアクセス可能なインターネット(サピエを含む)や所 持している論文や書籍を整理する。また,手引き歩行について資料を作 成する。 3 内容 (1)文献リスト 校内歩行に関係があると思われるものについて,文献リストを作成 した。 (ア)書籍 ジル・サルデーニャ,スーザン・シェリー,アラン・リチャード・ ル ッ ツ ェ ン ,ス コ ッ ト ・ M.ス テ イ ド ル (2009) 盲・視 覚 障 害 百 科 事 典 中 田 英 雄 監 訳 : 視 覚 障 害 に 関 す る 500 項 目 が ア ル フ ァ ベ ッ ト 順 に 配 列 し て あ り ,索 引 で は 50 音 で 検 索 可 能 ,た だ し ,項 目 は ア メ リ カ に 限 ら れており,カナダ,イギリス,オーストラリア等の英語圏の国につい ての記述はない。 大川原潔・木塚泰弘・笹野信治・佐藤恒・芝田裕一・瀬尾政雄・千 田 耕 基 ・ 原 田 政 美 ・ 牟 田 口 辰 巳 ・ 山 梨 正 雄 (1985) p91-p110 「歩行指導の手引」 文部科学省:歩行地図(校内歩行地図を含む)主に児童が 対象) 社 会 福 祉 法 人 日 本 盲 人 福 祉 委 員 会 (2008) 年 版 p1 -p11 日 本 の 視 覚 障 害 者 2008 社会福祉法人日本盲人福祉委員会:視覚障害者・視覚 障害児の現状~実態調査から~,福祉・学校・年金における視覚障害 の定義,視覚障害者の原因疾患・年齢別構成 芝 田 裕 一 (2003) 視覚障害者のリハビリテーションと生活訓練第2 版 p123-p127: 歩 行 能 力 , p143-p158: 手 引 き , p159-p162: 補 助 具 を 使 用 し な い 歩 行 ( 屋 内 歩 行 ), p225-p226: フ ァ ミ リ ア リ ゼ ー シ ョ ン , p306-p313: 地 図 に 関 す る 留 意 点 , p373-p377: 視 覚 障 害 児 の 歩 行 訓 練 と盲学校における歩行訓練の留意点 日本ライトハウス 芝 田 裕 一 (2010)「 視 覚 障 害 児 ・ 者 の 歩 行 指 導 - 特 別 支 援 教 育 か ら リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン ま で - 」 p80-p87 : 補 助 具 を 使 用 し な い 歩 行 技 術 , p205-p211: 室 内 フ ァ ミ リ ア リ ゼ ー シ ョ ン 北大路書房 高 橋 広 編 (2006) ロ ー ビ ジ ョ ン ケ ア の 実 際 視 覚 障 害 者 の Q O L 向 上 の た め に( 第 2 版 )p156-p160:ロ ー ビ ジ ョ ン 者 の 歩 行 訓 練 の 実 際 医 学書院 外 国 の 文 献 に つ い て は , Bruce B. Blasch, William R. Wiener, Richard L. Welsh 著 , Foundations of Orientation and Mobility, Amer Foundation for the Blind; second edition, (1997) 33 (イ)論文 安 部 信 行 ・ 橋 本 典 久 (2006) 査(建築計画) 視覚障害者の歩行事故に関する基礎調 日 本 建 築 学 会 技 術 報 告 集 ( 23) p325-p4329 出 口 可 奈 子 ・ 知 花 弘 吉 ・ 荒 木 兵 一 郎 ・ 亀 谷 義 浩 (2003) びスケッチマップから見た経路探索特性 歩行軌跡及 日本建築学会大会学術講演 梗 概 集 p837-p838 保 科 靖 宏 ・ 瀧 本 和 男 ・ 芝 田 裕 一 (2009) 視覚障害リハビリテーショ ン( 69)千 葉 県 立 千 葉 盲 学 校 に お け る 歩 行 指 導 の 取 り 組 み 屋 内 歩 行 の 取 り 組 み と 自 立 活 動 の 授 業 の 組 み 立 て 方 の 実 践 か ら p5 -p12 伊 藤 大 悟 ・ 牧 野 秀 夫 ・ 西 森 健 太 郎 ・ 小 林 真 (2010) 会総合大会講演論文集 電子情報通信学 蛍光灯通信と自律航法による屋内歩行者位置 推 定 手 法 p634 柾 谷 秀 喜 ・ 安 部 信 行 ・ 橋 本 典 久 (2004) 学 術 講 演 梗 概 集 .E-1 視覚 障害者の歩行事故に関する全国調査(その1) : 調査概要及び屋内歩 行 事 故 の 調 査 結 果 p869-p870 清 家 聡 ・ 太 田 篤 史 ・ 田 村 明 弘 (1996) 概 集 .F-1 日本建築学会大会学術講演梗 視 覚 障 害 者 の 経 路 認 知 構 造 に 関 す る 研 究 p487-p488 和 田 崇 雅 ・ 高 取 祐 介 ・ 八 嶋 弘 幸 (2008) ITS 108( 42) 2次元コー ド と 携 帯 端 末 を 用 い た 屋 内 歩 行 者 ナ ビ ゲ ー シ ョ ン シ ス テ ム の 提 案( ITS 通 信 ,一 般 ) 電 子 情 報 通 信 学 会 技 術 研 究 報 告 p33-p37 (2)手引き歩行の資料について 「ガイドヘルパー研修テキスト視覚障害者編,ガイドヘルパー技術 研 究 会 」,「 視 覚 障 害 者 の 手 引 き , 日 本 ラ イ ト ハ ウ ス 」 を 基 に 文 書 を 作 成し,理療科のサーバーで共有できるようにした。 4 成果と課題 この3年間の研究により理療科教職員全体が中途視覚障害者の歩行に ついて関心をもつことができた。また,歩行についての資料を充実させ ることができ,理療科教職員が中途視覚障害者の歩行指導に際し,アク セスできるようにした。 し か し , Foundations of Orientation and Mobility と い う 有 名 な 書 籍があったが,高額であるため購入は難しく,また,この書籍は,広島 大学・日本ライトハウスに所蔵されてあったが,借りて読むには英語の 文献のため時間の制約もあって困難であった。 34 グループ3 臨床実習における新経穴への取組 1 目的 鍼灸臨床を行う上で,経穴に関する知識は,必要不可欠である。経穴 の 部 位 に つ い て は , 平 成 21 年 に 標 準 化 が な さ れ , 平 成 24 年 2 月 の 国 家 試験より新経穴による出題がなされている。こういった状況の中で,臨 床実習においても,新経穴に基づく指導が必要になっている。 前年度,本研究班は,新経穴に対応すべく,臨床実習でよく使う経穴 を 抽 出 し ,そ の う ち 部 位 が 変 わ っ た も の 20 穴 を ま と め 経 穴 ハ ン ド ブ ッ ク を作成した。 本 年 度 は , 新 経 穴 の 周 知 徹 底 を 図 る た め 361 穴 に つ い て 経 穴 図 譜 を 作 成するとともに主治症も含めた経穴データベースの構築に取り組む。 2 方法 経 穴 図 譜 を 作 成 し ,iPad な ど で 閲 覧 で き る よ う に す る 。主 治 症 も 含 め た経穴データベースを構築する。 3 内容 文献1をもとに経穴の部位とイラストが入ったスライドをパワーポイ ン ト で 作 成 す る 。作 成 し た も の は P D F フ ァ イ ル に 変 換 し て iPad な ど で 閲覧できるようにする。 文献1~6をもとに,経穴の部位,取り方,解剖,主治症,臨床応用 な ど を 抽 出 し , FileMaker で デ ー タ ベ ー ス 化 す る 。 今 年 度 は , 部 位 , 取 り方,解剖を中心にデータベース化し,主治症等については,次年度の 課 題 と す る 。 デ ー タ ベ ー ス 化 し た も の は iPad で 閲 覧 で き る よ う に す る 。 4 成果と課題 デジタルデータで経穴図譜を作成することにより,新経穴の部位等に ついて理療科教職員で情報を共有化することができた(パワーポイント フ ァ イ ル は , PC-Talker で 読 み 上 げ 可 能 で あ る )。 このことにより,教員が経穴に対する共通認識をもつことにより,臨 床実習等を通して,生徒に一貫した指導を行うことができる。主治症な どを含めた経穴データベースの作成は次年度以降の課題である。 【参考文献】 ( 1 ) WHO 西 太 平 洋 地 域 事 務 局 著 / 第 二 次 日 本 経 穴 委 員 会 監 訳 (2009) WHO/WPRO 標 準 経 穴 部 位 日本語公式版 医道の日本社 ( 2 )日 本 理 療 科 教 員 連 盟・東 洋 療 法 学 校 協 会 (2009) 道の日本社 35 経絡経穴概論 医 ( 3 ) 篠 原 昭 二 (2009) 臨床経穴ポケットガイド 医歯薬出版 ( 4 ) 代 田 文 誌 (1988) 鍼灸治療基礎学 医道の日本社 ( 5 ) 本 間 祥 白 (1989) 鍼灸実用経穴学 医道の日本社 ( 6 ) 深 谷 伊 三 郎 (2001) 図解深谷灸法 36 緑書房 Ⅳ 寄宿舎教育研究グループ 研究グループテーマ:個別の指導計画の有効活用 ~つながりをもった実践のために~ 1 目的 児童生徒にとって寄宿舎生活が自立と社会参加に向けて自らの課題解 決や生活上の困難を改善・克服していくことのできる場となるよう,適 切な指導・支援の在り方を深める。また,個別の指導計画を活用するこ とによって,実態を把握し,職員間の共通認識をもった上で,指導して いく。 2 方法 寄宿舎の個別の指導計画の作成にあたり,生活の中での寄宿舎生一人 一人の課題について指導目標を決め,それについて具体的な指導方法を 考えて取り組む。職員の勤務体制は宿直勤務を含む交替制のため担任の みが指導にあたることができない。そのため,ケース会議を開くことに よって職員間の共通理解を図り,全員参加の支援体制づくりを行う。ま た,さまざまな視点からの意見を出しあうことにより指導の充実につな げていく。 保護者,学級担任との連携を丁寧に行い,個別の指導計画が保護者の 理解と協力を得るものとなっているか確認し,寄宿舎の取組が家庭や社 会で生かせるようにしていく。 〈寄宿舎児童生徒の状況〉 高等部 小学部 3 中学部 計 普通科 理療科 女 2 2 4 2 10 男 2 2 1 11 16 計 4 4 5 13 26 内容 個別の指導計画を基に,ケース会議を行った。 (1)ねらい ○個別の指導計画を活用し,寄宿舎児童生徒の実態把握や生活指導に ついて共通認識をもつ。 37 ○重点目標,指導内容の報告・検討を行う。 ○ 個 々 の ニ ー ズ に 応 じ た 支 援 の 充 実 を 図 る と と も に ,指 導 体 制 の 工 夫 につなげていく。 (2)活動内容 1学期は,個別の指導計画(本人・保護者の要望,実態把握に基づい て設定された年間目標及び学期の重点目標)に基づいた指導内容の報 告・検討を行った。具体的には,各担任が記入した個別の指導計画を基 に,新入舎生から順にケース会議を行い,職員間の共通認識を図った。 2学期は,卒業学年の生徒を主に1学期の評価,2学期の重点目標,指 導内容の報告・検討を行うとともに,進路の実現に向けた取組について 話し合った。3学期は1学期同様に報告・検討を行った。 また,ケース会議だけでなく必要に応じて話し合いを設定し,寄宿舎 生の健康状態の把握や,新たな課題について意見交換を行うことで,指 導方法の見直しをすることができた。 主な生活指導の取組を項目別にあげる。 (ア)コミュニケーション能力の向上に向けての取組 ○話し合い等の司会を児童生徒がすることで,会議の運営の仕方を学 ぶ機会や,年上の寄宿舎生との話し合いを通じて,自分の意見を発 表する経験をもたせた。 ○社会生活を送るために必要な挨拶や言葉遣いを,個々の実態に合わ せ て 指 導 す る と と も に ,集 団 生 活 の 中 で 周 り や 相 手 の 気 持 ち を 考 え , 自覚をもった言動を促した。 ○自ら援助依頼ができるための指導をした。 ○ 連 絡 帳 に 頼 ら ず ,“ 自 分 で 聞 い て 伝 え る ” 力 を 付 け る 指 導 を し た 。 ○ 相 手 に 伝 わ る 話 し 方( 声 の 大 き さ ,し ゃ べ り 方 等 )に 関 す る 指 導 を し た 。ま た ,発 語 が 難 し い 生 徒 に つ い て ,発 語 以 外 の 方 法 で 意 思 を 伝える指導をした。 (イ)生活経験の幅を広げる取組 ○楽しくできる知育ゲームを随時提供した。 ○マナーを学習するために,具体物の付いた音の出る絵本などを利用 し指導した。 ○公共の場でのマナーに関する指導をした。 ○複数の仲間と積極的に屋外で体を動かすよう促した。 ○小遣いの使い方や,日用品の管理・購入や郵便局窓口の利用が一人 でできるように指導した。 ○視覚障害者情報センターの利用を促した。 ○点字に関する指導をした。 38 ○時間管理の指導をした。 ○生活場面(調理実習・洗濯・学習面)での個々の課題に応じた方法 や道具の提示をした。 ○効率的な掃除の仕方について指導した。 ○舎友会活動や校外活動・共同掃除など,皆で協力して行う作業を通 して,集団生活における役割と責任について学ぶ機会をもたせた。 ○食事作りを身近に感じられるよう,簡単なおやつ作りや,一人でも できる夕食作りを計画し実施した。 ○食事の時間を通して,食べ方の指導や自分にあった量を配膳するよ うに指導した。 (ウ)健康の保持増進,衛生面の管理 ○健康の保持増進に努めた。 ○体力増進のために積極的に運動をするよう指導した。 ○身だしなみ(服装やハンカチ,ティッシュの携帯)に関する指導を した。 ○清掃や整理整頓に対する意識の向上を促した。 ○入浴時の体の洗い方,トイレの適切な利用方法,衣類の管理方法等 について話し,衛生的な生活ができるよう促した。 ○体調や気候に応じ,衣類を調節するよう指導した。また,場に応じ た服装ができるよう指導した。 ○薬の服用の必要性を伝え,自己管理に向け指導をした。 (エ)進路実現に向けた取組 ○自習時間の過ごし方に関する指導をした。 ○学習習慣を定着させるために,学習環境を整える取組をした。 ○新入生に対して,学級担任と連携しながら学習習慣が身に付くよう 指導した。 ○個々の実態に応じた調理実習を行った。 ○社会人としての適切な言葉遣いや使用する語彙の意味を教えるなど 心がけた。 4 成果と課題 個別の指導計画を基にケース会議を開くことで,寄宿舎児童生徒一人 一人の課題や目標について,寄宿舎全職員の共通理解を図ることができ た。課題についてさまざまな視点から検討することができ,適切な指導 の充実へとつながっていった。 成 果 と し て は ,3( 2 ) ( ア )の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 向 上 に つ い ては,ほとんどの児童生徒に課題があったため,それを職員が意識し, 担当の児童生徒以外でも場面に応じた指導を行うことができた。また, 39 多くの視点で児童生徒を見るため,新たな課題に気付くことができ,担 当職員と連携しながら充実した指導を行うことができた。職員が一貫し た方針で児童生徒に関わるようになったため,児童生徒も担任以外の職 員に親しみを持って話しかけてくることが増えた。また,児童生徒同士 が関わる機会を増やすために,舎友会活動などを意識的に設定した。そ のことで異年齢の児童生徒同士の関わりが増え,コミュニケーション能 力が向上した。 3( 2 ) ( ウ )の 健 康 の 保 持 増 進 と 衛 生 面 に つ い て は ,手 洗 い う が い の 励 行 と ,体 力 を つ け る た め に 運 動 す る こ と を 重 点 に お い て 指 導 を 行 っ た 。 特にグランドソフトを積極的にするように声かけをするようにした。す ると,寄宿舎生同士で声を掛け合ってなかよく運動するようになり,健 康面だけでなく,人間関係の絆も深まっていった。 今後もケース会議を深め,職員が全寄宿舎生について知り,共に考え ることで適切な指導につなげることを課題としていきたい。 保護者・学級担任との連携を,引き続き丁寧に行っていき,積極的に 話し合いの場をもち続けていきたい。 40 Ⅴ 教科教育研究グループ 1 国 語 研究グループテーマ:つながりをもった実践のために ~ノート指導の実践~ 1 取り組むべき内容 項 目 各 学 部 に お け る「 国 語 」の 目 標 お よ び 内 容 ・ 配慮事項 点字の特徴と読書 弱視児の読書 盲児の漢字理解 視覚障害児と読書環境 点字指導の技術 弱視児の文字指導技術 音声言語の効果的使用技術 事物・事象の具体的理解のための指導技術 情景の具体的理解のための指導技術 生活経験拡大のための配慮 ワ ー ド プ ロ セ ッ サ ー( パ ソ コ ン )の 指 導 技 術 2 H20 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実施年度 H21 H22 H23 H24 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 目的 視覚障害教育を行う学校として,学部を越えて共通認識をもち,つな がりをもった系統的な指導を行い,力を伸ばしていくことを目的に,本 テ ー マ に 取 り 組 ん で い る 。 平 成 22 年 度 に 「 話 す ・ 聞 く 」「 書 く 」「 読 む 」 力 を そ れ ぞ れ 観 点 に し た 「 チ ェ ッ ク リ ス ト 『 つ け た い 力 』」( 資 料 3 ) を 作 成 し た 。平 成 23 年 度 は ,チ ェ ッ ク リ ス ト を 活 用 し た 実 践 と し て ,メ ン バ ー 全 員 の 共 通 課 題 で あ る 「 ノ ー ト 指 導 」 を 取 り 上 げ ,「 ノ ー ト の 目 的 」 ( 資 料 1 )や「 活 用 の 仕 方 ,方 針 」 ( 資 料 2 )を ま と め た 。ノ ー ト の 必 要 性・重要性を児童生徒が実感できれば習慣化していくと考え,活用する 機会を授業で設けるようにした結果, 「 ノ ー ト を 書 く 」こ と は ほ ぼ 定 着 し た 。し か し , 「 ノ ー ト を 使 う 」こ と は ま だ で き て い な い 実 態 が 明 ら か に な った。学年が上がり学習内容が発展していくと情報量も増えてくるので 予習や復習,つまり自学自習の力が必要となる。復習をするためにノー トを振り返っても,いつ,何をしたのかが読み取れず,結局役に立たな 2 算数・数学 研究グループテーマ:数量概念を身に付けさせるアプローチの模索 ~学部間連携を通して~ 1 取り組むべき内容 項 実施年度 目 H 20 数量概念を身に付けるアプローチについて 各学部における「算数・数学」の目標 および内容・配慮事項 算数・数学教育のための教材・教具 盲児の算数技術 視覚障害児の図形の理解 筆算・そろばんの指導技術 図形概念の指導技術 作図指導の技術 グラフ指導の技術 測定に関する指導技術 2 目的 H 21 ○ H 22 H 23 H 24 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2+3のような簡単な数の計算は具体物で教えることは可能であるが, 200+ 300 の よ う に 数 が 大 き く な る と 抽 象 化 し て 教 え ざ る を 得 な い 。し か し,抽象化して教えると,その計算が「計算という操作」としてのみの 捉えにとどまり,他に応用できない児童生徒が多数出てくる。例えば, 60÷3 が 計 算 で き て も ,60 分 で 3 分 の 曲 は 何 曲 歌 え る か ? に は ,答 え る こ と が で き な い 。ま た ,100÷25= 4 と い う 計 算 を 筆 算 で 答 え る こ と が で き て も , 25 を 4 つ 集 め れ ば 何 に な る か と い う 質 問 に は 答 え ら れ な い 。 計算を「計算という操作」とのみ捉えてしまう原因は様々なものが考 えられるが,その一つとして,数量そのものに慣れていない(理解でき ていない)という実態が挙げられる。 このような実態は,視覚障害のある児童生徒によく見られ,本校にお いても年度を問わず重要な課題の一つである。こうした実態を受けて, 今年度も昨年度に引き続き,数量概念を身に付けさせるアプローチを研 究することにした。 3 方法 学部間における情報交換及び授業実践の報告を行った。 ○数量概念を理解していない児童生徒の実態把握について ○具体的な指導場面と指導方法について 51 4 内容 数量概念の獲得においては,具体物の操作から始まって徐々に抽象化 させていく必要があるが,とかく「計算としての操作」のみに陥りがち である。体験的な活動を通して児童生徒に数量概念を身に付けさせるア プローチ(数量概念の取組)を各部で実践し,それを研究グループ活動 の場に持ち寄り話し合い,さらに実践に生かしていくというスタイルで の取組を行ってきた。 5 成果と課題 まず各部での取組の一例と,その成果と課題について紹介し,最後に 今年度のまとめとする。 【小学部】 低学年の段階で数唱はできても具体物と結び付けて理解していなけれ ば,その数字はただの意味をもたない記号のようなものである。そこで 次のような取組を行った。 ○仲間集め ○1対1のマッチング ○カードに書かれている数だけ同じもの(仲間)を集める。 大きさ比べ,順番並べなどのカードゲーム。 これら,ゲーム的な要素を取り入れた小学部での取組は,数を数える 経験を通して具体物と数字のマッチングを図りつつ,数量概念形成を促 すという意味でとても有効であった。 角 度 等 の 量 的 な 認 識 に お い て も ,予 測 も し な い 答 え を す る こ と が あ る 。 数字を聞いてその数字から連想し,小さい数なら少しだけ,大きい数な ら大きく開くといった予想をして答えるのであるが,これも数字からイ メージされる感覚的なものである。このような場合には,感覚的な予想 のあとに実際の角の大きさの確かめを行い,角度における数量概念の形 成を図る必要がある。 【中学部】 根号を含む数が初めて教科書に出てくるのは,中学部3年の1学期で あ る 。こ の 時 期 に は 三 平 方 の 定 理 は ま だ 出 て こ な い の で ,数 直 線 上 に や を 作 図 す る こ と は で き な い 。そ こ で 身 近 な と こ ろ で の イ メ ー ジ をもたせるため,普段私たちがよく使っているコピー用紙を利用するこ とが多い。コピー用紙はどの大きさであっても,長短二つの辺からなる 長方形で,長い辺の部分で2つに折れば,大きさが半分の相似なコピー 用紙ができる。よって,大きさが半分になったコピー用紙の短い辺と長 い 辺 の 長 さ の 比 を 1: x と お く と ,1: 52 x = x :2 という等式が出て くる。これにより, x2 = 2 となり, x= つまり,すべてのコピー 用紙の短い辺と長い辺の長さの比は 1: となっているのである。 生徒は短い辺を2枚並べたものと長い辺を比べることによって, が 1.5 よ り 少 し 短 い 長 さ で あ る こ と を 確 認 し な が ら , 教 科 書 に も あ る よ う に = 1.4142… と い う 量 と し て の 無 理 数 を 概 念 化 す る こ と が で き た よ うである。コピー用紙は の数量のイメージをつくらせるのに適した 身近な教材である。ただ,点字用紙は短い辺と長い辺の長さの比がコピ ー用紙とは異なるサイズとなっているので,全盲生徒には厚紙で作った コピー用紙の縮小版を用意して同じ題材を扱った。 【高等部】 私たちは買い物に行って野菜を選ぶとき,手に取りその重さを比べて から買い求めることを日常的に行っている。これはその野菜を手にした ときのずっしりとした重さの感覚で野菜の鮮度を確かめる生活の知恵で ある。普通科重複学級では,作業学習(農作業)などの授業場面や買い 物学習などの生活場面に活用できることを目標に,こうした重さの感覚 を身に付けさせるアプローチとして,自作の両皿天秤(机の上で操作が でき,左右の手それぞれで同時に上皿に触れて重さの違いを確かめられ る サ イ ズ の 物 を 作 製 。 上 皿 に は 直 径 15cm の 青 と 白 の 水 受 け を 使 用 。) を 利用した取組を行った。はかりで実際に測った重さで個々の物を比べて 確かめる方法もあるのだが,二つの物をそれぞれ手にしたときの重さの 感覚をその場で確かめるためにこの両皿天秤を利用したところ,弱視生 徒には上皿の色や位置の確認により,全盲生徒には上皿に触れて位置を 確かめることにより,その重さの違いがはっきりと伝わり,自分の推測 が正しいかどうかの判断を自分で検証し確認できるという点でとても有 効であった。感覚的な予想と実際の確かめを結び付けて考えられる取組 を通して,重さにおける数量概念の形成をさらに促していきたい。 これら各学部の取組の一例にも見られるように,算数・数学では様々 な 数 量 概 念 の 獲 得 が 重 要 な 課 題 と な っ て い る 。冒 頭 に も 述 べ た が , 「計算 と し て の 操 作 」の み で と ど ま っ て い て は そ こ か ら 脱 す る こ と は で き な い 。 生活場面で必要な計算にいかに結び付けられるか,言い換えると「生活 に生かせる計算力」をいかに付けていくのかが求められている。そのた めには,体験的な活動を通して児童生徒に数量概念を身に付けさせるア プローチを,学部間での連携(つながり)を図りながら今後も継続して 取り組んでいくことが必要である。 53 3 社 会 研究グループテーマ:社 会 的 経 験 の 拡 大 ~ 外 部 資 源 の 有 効 活 用 ~ 1 取り組むべき内容 項 実施年度 H 22 H 23 H 24 目 各 学 部 に お け る 「 生 活 」「 社 会 」「 地 理 歴 史 」「 公 民」の目標および内容・配慮事項 社会的経験の拡大 社会的事象への興味の喚起 視覚障害の程度に応じた視聴覚機器の使用技術 フィールドワークの指導技術 地図指導の技術 グラフ・表の読み取りの指導技術 教材・教具の活用 2 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 目的 近年,中学部・高等部に在籍する生徒の実態として次の点が挙げられ る。 (1)ニュースなどの時事問題に興味・関心が薄い。 (2)社会事象に関する語句・用語を正しく理解していない。 (3)地図を読み取るのに時間がかかる。 (4)自分の考えを文章にすることが苦手である。 この原因として,社会的経験が乏しいこと,社会的事象に自ら関心を 寄せ,探求していく力が弱いことが考えられる。そこで,昨年,一昨年 と外部資源を活用し,社会的経験を拡大させる取組を実施した。このこ とにより,生徒の社会的経験を拡大させ,学習内容への興味・関心を引 き出し,具体的に理解させることができている。 社 会 科 ,地 理 歴 史 ・ 公 民 科 の 学 習 指 導 要 領 で は , 「 思 考 力・判 断 力・表 現 力 」を 育 む た め の 言 語 活 動 の 充 実 を 重 視 し , 「子どもの問題解決の活動 を中軸とする学習形態」を求めるとともに,生徒たちの社会参画を促す ような「持続可能な社会づくり」に関わる学習内容が導入されている。 本校の社会科の基本方針では,資料活用能力の育成,表現活用の充実 を挙げている。 本校の生徒たちの課題を解決し, 「 思 考 力 ・ 判 断 力 ・ 表 現 力 」を 育 む た めに,外部資源を活用し,具体的事物を伴った指導を行う授業改善を試 みた。 54 3 方法 (1)触察・音源教材の活用 (2)外部資源の活用 (3)参加型教材の開発・活用 (4)地域教材の開発 4 内容 (1)触察・音源教材の活用 中 学 部 社 会 科 で は ,次 の よ う な 触 察・音 源 教 材 を 活 用 し た 。地 理 で は , ユ ー ロ な ど 外 国 通 貨( 実 物 ),外 国 の 手 工 芸 品 や 民 族 楽 器 ,イ ス ラ ム の ア ザーンの音声の入った時計などである。歴史では,古代の石器や農具・ 古 代 の 衣 服 ( レ プ リ カ ), た た ら 遺 跡 の 鉄 滓 ( 実 物 ), 金 印 や 富 本 銭 な ど のレプリカ,読経のCD,火縄銃(実物)などである。公民では,被爆 瓦 や 被 爆 に よ り 溶 け た ガ ラ ス 瓶( 実 物 ),緊 急 支 援 物 資( イ ン デ ィ カ 米 な どの食料)の見本,ユニセフのトラックの模型などである。これらの活 用によって学習内容への興味付けを喚起させるとともに,さまざまな社 会事象に具体的なイメージをもたせることができた。 高等部では建造物の模型やペーパークラフト,胡椒やシナモンなどの 香辛料, 「 イ ェ ニ チ ェ リ の 行 進 曲 」や「 マ タ イ 受 難 曲 」な ど の 音 楽 を 活 用 した。触察音源教材を活用することにより,次の効果が得られた。例え ばモスクのドームやミナレットなどの建造物の特徴について,他の学習 場面でモスクが出てきた時も「ドームとミナレットのある建物ですね」 と受け答えるなどの知識の定着である。 (2)外部資源の活用 中学部3年生(下学年課程)の政治についての単元では,次の外部資 源を活用した。教科書では東京都が例として取り上げられているが,生 徒の実家のある市の広報誌を活用することで,政治が自分の生活と直結 している事を感じる手立てとなった。選挙については,広島市の選挙管 理委員会編集のリーフレットを活用した。また,日本国憲法についての 単元では,法務省作成の人権に関するビデオとパンフレット,全国人権 作文コンクール入賞作品集,広島市作成の人権パンフレット,広島市こ ども平和への誓い,戦争絵本,バリアフリー便利帳(東京都交通局)等 を活用することで,内容を深めることができ,自分の考えをまとめるこ とにつなげることに役立った。 中学部では今年度初めての試みとして,単一障害生徒を対象とした教 育課程の全生徒に夏季登校日の中で,社会科の特設授業を行なった。講 師は,財団法人広島市未来都市文化財団文化財課より指導主事と学芸員 55 の二人を招聘した。 「 古 代 体 験 を し よ う 」と い う 内 容 で ,広 島 市 の 遺 跡 か ら出土した土器や焼き物を触り,大陸との交流が昔から行なわれていた ことを実感したり,弓矢体験をしたりする中で古代の人々の生死に関わ る狩猟生活に思いを馳せることができた。 中学部と高等部では,それぞれ公民を学習している生徒に広 島地方裁判所への裁判傍聴を実施した。司法の現場を通して現 代 社 会 の 一 端 を 知 る こ と が で き た 体 験 と な っ た 。また夏休みの課 題 と し て 出 し た 作 品 を 推 敲 し ,「 JICA 国 際 協 力 中 学 生 ・ 高 校 生 エ ッ セ イ コ ン テ ス ト 2012 に 応 募 し た こ と に よ っ て ,生 徒 に 社 会 的 事 象 に つ い て 関 心をもたせ,自分の考えをまとめさせるのによい機会となった。 (3)参加型教材の開発・活用 中学部では,朝日中学生ウィークリーの中から,毎週その一部を抜粋 し て ,生 徒 に 配 付 し 時 事 問 題 へ の 関 心 を 高 め さ せ る よ う に し た 。そ し て , 次 の こ と に 取 り 組 ん だ 。 公 民 で は , JICA の 冊 子 「 学 校 に 行 き た い 」 を 活 用 し て 世 界 の 子 ど も た ち の 現 状 を 学 ぶ 学 習 を 行 う と と も に ,「 JICA 国 際 協力エッセイコンテスト」にも応募(希望者のみとして,2名が参加し た ) し た 。 ま た , グ ロ ー バ ル な つ な が り を 体 験 す る NGO 作 成 の 教 材 「 世 界 一 大 き な 授 業 」( DVD, ワ ー ク シ ー ト )や 「 STAND UP」 の 学 習 を 取 り 入 れ た 。さ ら に ,経 済 の 教 材 と し て「 株 式 会 社 を つ く ろ う 」 (証券知識普及プ ロジェクト)を扱い,企業の役割と社会的貢献について考えた。歴史で は,短歌で学習内容を振り返る「歴史を学んで和歌をつくろう」を扱っ た 。ま た ,調 べ 学 習 の 方 法 を 教 示 し た 上 で ,夏 季 休 業 中 の 課 題 と し て「 歴 史新聞・地理新聞」作りを課して,調べ学習を行わせた。提出された作 品 は 校 内 に 展 示 し た ( 中 学 部 1 年 , 2 年 )。 (4)地域教材の開発 教員研修として,夏季休業中にグループ研究日を活用し,財団法人広 島市未来都市文化財団文化財課を訪れた。広島市の発掘調査で発掘され た 土 器・ガ ラ ス 玉・剣 な ど 貴 重 な 遺 物 を 見 学 す る 機 会 を 得 る こ と が で き , 地域教材の知識を深めることができた。 また,昨年度独自研修した学校近辺の中小田古墳群についての資料作 りでは今年度は,財団法人広島市未来都市文化財団文化財課主催の遺跡 ハイキングに参加し,フィールドワークした。実際に多くの古墳を見学 し,太田川の川筋が現在と異なることや海が戸坂の近くまで入り組んで いたことを想像しながら,古代人の暮らしに思いを馳せる研修をした。 しかし,古墳のある場所が急傾斜の山中にあり,現在本校に在籍してい る生徒が実際に歩き,体験することは困難と思われた。来年度は東区戸 坂長尾台にある長尾第1号古墳について,上記財団の協力を得て研修を 56 深め,生徒と体験ができるか見極めていきたい。 5 成果と課題 本年度の個別の指導計画を踏まえた生徒一人一人の課題に即した授業 改善の取組により,次のような成果があった。 中学部においては,朝日中学生ウィークリーの配付等でアップトゥデ ートな話題を生徒に提供し,社会事象への少しずつ興味・関心をもたせ ることができた。様々な触察・音源教材を活用することは,生徒たちが 社会的事象に自ら関心を向ける動機付けにつながり, 「 歴 史 新 聞・地 理 新 聞 」 づ く り や 「 JICA 国 際 協 力 エ ッ セ イ コ ン テ ス ト 」 の 作 品 制 作 は , 自 分 の理解したことや考えたことを表現する力の向上につなげることができ た。 高等部では触察・音源教材を活用することで,資料を活用する力を伸 ばすとともに生徒が具体的なイメージをもつことができ知識の定着につ なげることができた。また,作品の応募や校外学習など外部資源を活用 することで,生徒が現代社会の様々な問題に目を向け,関心をもった問 題について考察する機会をつくることができた。 今後もよりわかる授業づくりをめざすとともに,小学部・中学部・高 等部間の連携を図り,発達段階に応じて校外学習や特設授業の取組を積 み上げていきたい。加えて各学部で使用できる校内の触察・音源教材の リストを作るなどの方策も検討していきたい。 57 4 理 科 研 究 グ ル ー プ テ ー マ:効 果 的 な 観 察・実 験 を 行 う た め の 学 習 指 導 の 在 り 方 ~発達段階に応じた教材の扱いについて~ 1 取り組むべき内容 項 実施年度 目 H21 H22 各学部における「理科」の目標および内容・配慮事項 視覚障害者用理科機器の入手法と使用法 ○ 視覚を使わない実験・観察の方法 ○ ○ 事故防止の手段 H23 H24 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 視覚障害の程度に応じた指導内容修正のための技術 ○ ○ ○ ○ 視覚障害者用理科機器の使い方の指導技術 ○ ○ ○ ○ 実験器具の自作,改良の技術 ○ ○ ○ ○ 実験材料の改善,工夫の技術 ○ ○ ○ ○ 点字理科記号の指導技術 実験・観察なしの指導技術 2 ○ 目的 理科研究グループでは以前より,身近な自然の教材化と,視覚障害教育 に効果的な自作教材の積み上げを推し進めているところである。 本年度も引き続き,実験・観察前の推測や,安全面での心理的な支え, そして結果として得られる驚きや感動など,児童生徒がより実験・観察を 好きになるための指導工夫について研修を深めた。 また,それぞれの学部や発達段階に応じて,目標や教材の扱い方等を整 理し,つながりを意識した指導の在り方を研究した。 3 方法 身近な自然の教材化として,外部講師を招聘し,学校近辺のフィールド ワークを行う。又,既存の教材の活用について研修する。そして,発達段 階 に 応 じ た 教 材 の 扱 い に つ い て 整 理 す る 。( サ テ ラ イ ト 研 修 ) 発達段階の違いや,視覚障害の実態の違う子どもに,どう指導するかを 研修し,ワークショップにて実践する(本校サマースクール,科学へジャ ン プ )。 58 4 内容 (1 )サ テ ラ イ ト 研 修 ( 県 立 教 育 セ ン タ ー ) の 活 用 ( ア )目 的 地 域 の 自 然 に つ い て ,外 部 講 師 を 招 聘 し ,現 地 に 赴 い て 観 察 実 習 す る こ と に よ り ,地 域 の 自 然 に つ い て 知 る と と も に , 児童生徒の実態に合った教材化と効果的な指導法につい て研修する。 (イ)日 時 平 成 24 年 8 月 10 日 ( 金 ) 9:00~ (ウ)場 所 広島市南区元宇品周辺の海岸 (エ)講 師 広島県立教育センター (オ)参加者 指導主事 宮崎 善郎 教育研究グループ(理科)の教職員及び希望する教職員 計 10 名 (カ)内 容 広島市南区元宇品の島の南側から西側には,海岸線に沿った遊歩道があ り,その山側には自然の状態の露頭がそのまま残されている。このあたり は,瀬戸内海国立公園の一部で開発も制限され,風化や浸食に伴う自然の 変化も保たれており,狭い範囲内で,多くの地質現象を観察できる場所と なっている。この地域の地質は,中粒から粗粒の花崗岩からなっており, 広島地域の代表的な地質を観察できる場所でもある。遊歩道の海岸側は砂 浜や磯もあり,生物分野の観察が可能である。 今年度は,地域にあるこれらの自然を教材化するためのノウハウを得る ため,宇品地域の自然の教材化に詳しい講師を招聘して,現地にて観察実 習を行った。 〈観察の指導の基本〉 自然そのものを実感させることを根底に捉えて,個々の実態に応じた発 問をし,自然や時間のスケールの大きさを意識させながら,自ら考えるこ とができるようにすることが,指導の基本として挙げられた。 発問の例としては,次のようなものが示された。 (a)砂浜について ○川と海の砂や石はどのように違うか。 ○砂浜の色と砂粒にはどのような関係があるのか。 ○海側と山側の砂はどのように違うか。 ○砂浜の内部はどのようになっているか。砂浜の形成過程と地層のでき 方に気付く。 (b)露頭について ○露頭について観察し,気付いたことを出し合う。 ○露頭の岩石と風化によってできた砂はどのように違うか。 ○ 花 崗 岩 中 に 岩 脈 が み ら れ る 場 所 が あ っ た が ,ど の よ う に し て で き た か 。 59 ○花崗岩中の岩脈は,そのまわりの花崗岩とどのように違うか。 (c)断層について ○断層を観察し,どちらの岩盤がどう動いたか。大地が動いたことを感 じる。 ( 2 )「 サ マ ー ス ク ー ル ( ア )目 的 色水で遊ぼう~ムラサキキャベツ~」 ○ ム ラ サ キ キ ャ ベ ツ の 色 の 変 化 を 楽 し む 。未 知 の も の に 対 して探究しようとする。 ○視覚障害を有する児童生徒が協力し同じ目標に向かって 活動を成し遂げる。 (イ)日 時 平 成 24 年 8 月 1 日 ( 水 ) 10:15~ 11:45 (ウ)場 所 化学教室 (エ)指導者 石田芳生 ( オ )参 加 者 視 覚 障 害 児 童 生 徒( 教 育 相 談 ,弱 視 学 級 等 に 通 う 児 童 生 徒 ) 三浦憲一 塚本理恵 小学生4名,中学生2名 濱中昌子 計6名 (カ)シラバス <準備物> ムラサキキャベツ,バット,ビニール袋,食塩(フィルムケースに入れ て お く ),漏 斗 ,500m l ビ ー カ ー ,ふ き ん ,プ ラ ス チ ッ ク ケ ー ス ,個 配 用 200m l ビ ー カ ー , 試 験 管 , 試 験 管 立 て , 100m l ビ ー カ ー , ス ポ イ ト , 弱 酸性水溶液スポイトA(酢酸水溶液),弱アルカリ性溶液スポイトB(石 けん水),強酸性溶液スポイトC(濃い塩酸),強アルカリ性水溶液スポ イトD(濃い水酸化ナトリウム水溶液),注入用カップ,レモン,洗剤, キンカン,ストロー,炭酸水,振り返り用紙 <注意すること> ○ムラサキキャベツを使ったあとは手を洗う。危険な水溶液の使用につ いて注意をする。特に,酸,アルカリの水溶液を使うときには十分安 全に留意する。(指導者が支援する) ○T1の指示は確実に対象児童生徒へ伝わる環境を心がける。 ○配慮を必要とする児童生徒の指導と支援に留意する。 ○班内で協力させ合う。 <内容> (a)注意事項を知る 説明をよく聞く,斑で協力する,手を洗う。 (b)ムラサキキャベツを観察する 見る,さわる,においをかぐ。 (c)ムラサキキャベツの色素を抽出する 班で協力して,ムラサキキャベツをちぎり,塩でもみ,液を絞る。 60 (d)ムラサキキャベツの色水を変化させる 酸性,アルカリ性の4種類の水溶液に対しての色水の変化を調べる。 (e)身近なものに対しての色水の変化を調べる 身の回りの水溶液(レモンの汁,洗剤,キンカン,炭酸水等)に対して のムラサキキャベツの色水の変化を予想し,実験をして調べる。 (f)まとめをする わかったことや感想,疑問点を書いてまとめる。 (キ)サマースクールでの課題 ○弱視児童生徒にとって「見て」変化の過程がわかりやすい内容であっ た。 ○家に帰ってからでも再現しやすい教材であった。 ○危険なものに対しての指示を的確に行えていたので,児童生徒が注意 深く安全に行動できていた。 ○器具の使い方や操作について時間をかけてじっくり行わせることがで きた。 ○じっくり時間をかけて,色水を観察させることができたらよかった。 ○実験操作に時間差ができるとき,児童生徒の実態に応じてどう指導工 夫していくか。 ( 3 )「 科 学 へ ジ ャ ン プ in 岡 山 」 で の 実 践 サマースクールで行った内容を,今年度岡山県立盲学校で行われた,科 学 へ ジ ャ ン プ in 岡 山 で 行 っ た 。 サマースクールでの成果と課題を整理し,次のように改善点を出し,実 践を行った。 ○最初から最後まで一連の実験を一人で行う。 ○「 色 水 を 作 る 」 「 色 水 の 変 化 を 観 察 す る 」と い う 二 つ の 柱 を 立 て て じ っ くり行う。 ○強度弱視の生徒,色の認知が可能な生徒の保有視力を最大限に使用で きるように色水を見るときには,中の液がこぼれないようにゴム栓を 装着してかざして見られるようにする。 ○ 色 を 確 認 し や す い よ う に ,3 種 類 程 度 の 濃 度 調 製 を し た 色 水 を 用 意 し , 生徒自身に選択させる。 <結果> 「 色 水 を 作 る 」作 業 も 生 徒 に と っ て は ,初 め て の 体 験 だ っ た の で ,時 間 を か け て 行 う こ と で , 生 徒 の 積 極 性 が 見 ら れ た 。「 色 水 を 作 る 」 と い う 一 つの活動だけでも十分な教材であったと感じた。 色 水 を 調 製 す る こ と に よ っ て , 生 徒 自 身 が 「 見 や す い 」「 見 え に く い 」 という発言がみられ,自分の見え方も他者に発信できた。 61 強度弱視の生徒,色の認知が可能な生徒にとって「見て」変化の過程が わかりやすい内容であった。 5 成果と課題 サテライト研修では,露頭や断層を目の前に,大地が動いたときの力を 感じることができ,自然そのものを実感することの大切さを味わうことが できた。その中で観察や調査の方法を聞きながら指導のポイントを確認す ることで,自然の事象を教材化することのイメージを構築することができ た。視覚障害のある教員も参加し,障害のある児童生徒への対応について も,具体的に考えることができた。 今 後 ,小 学 校 理 科「 流 水 の は た ら き 」 「地層のつくり」 「 火 山 」,中 学 校 理 科「 大 地 の 変 化 」,高 等 学 校 の 科 学 と 人 間 生 活 で は「 身 近 な 自 然 景 観 と 自 然 災害」等の単元において,今回の構築できたイメージをもって,学年の実 態に応じた教材の準備と活用を図っていきたい。 次にこの研修を基とした発達段階に応じた教材の扱いについて表に示す。 発達段階に応じた学習内容 小学部6年「大地のつく りと変化」 中学部1年「大地の成り 立ちと変 化」 単元の目標 土地やその中に含まれ る物を観察し,土地のつ くりや土地のでき方を調 べ,土地のつくりと変化 についての見方や考え方 をもつことができる。 単元の目標 大地の活動の様子や身近 な岩石,地層,地形など の観察を通して,地表に 見られる様々な事物・現 象を大地の変化と関連付 けて理解させ,大地の変 化についての認識を深め る。 活動・実験 太田川・宇品海岸等の 屋外における観察におい て, ○花崗岩(広島の地域で 多くみられる岩石)を観 察・触察し,構成鉱物と 組織の特徴を調べる。 ○断層を観察し,断層の ずれから大地の動きを考 察する。 ○花崗岩に見られる構造 (3種類)を観察・触察 しその成因をマグマの上 活動・実験 ○中庭の掘り起こし。 ○土の粒をふるいにかけ て分別。 ○層づくり。 ○牛乳パックに土と水を 混ぜで,土のたまり方を 知る実験。 ○炭酸ジュースを振って ふたを開け“噴火”のイ メージを知る実験。 ○火山噴火をイメージす る実験(PVA選択糊, 焼石こう,重曹,バーミ 62 高等部1年(単一2類型, 保健理療科) 「科学と人間生 活 第6章身近な自然景観 と自然災害」 単元の目標 身近な自然景観の成り立 ちと自然災害について,太 陽放射エネルギーによる作 用や地球内部のエネルギー による変動と関連付けて理 解する。 活動・実験 地域の自然である太田川 や宇品海岸に関係する現象 で,教科書に取り上げられ ている事柄は,風化作用, 侵食作用,運搬作用,堆積 作用,三角州,海食崖,海 食台,断層などである。 これらの学習に当たり, サテライト研修で得た知識 や撮影した写真,採取した 砂や岩石などを活用し,身 近に起きている自然現象で あることを実感させる。 キ ュ ラ イ ト )。 昇課程や冷え方をイメー ○観察標本等 ジする。 地層標本,火山灰,化 石,泥 岩,砂 岩,礫 岩 , 流紋岩,安山岩, 玄武岩 また,色水の実験については,サマースクールで行った実験の反省・課 題 を 基 に 改 善 し ,科 学 へ ジ ャ ン プ で ワ ー ク シ ョ ッ プ を 行 っ た 。小 学 部 で は , 溶液をビーカーに入れたり,スポイトを使って液体を移したりといった操 作性の向上や実験の楽しさを目標にした。中学部では,いろいろな試薬を 使ってみるとどんな結果になるだろうという探求心を育てることを目標に した。高等部では酸やアルカリの分類や特徴の理解といった一般化する力 をつけることを目標にした。それぞれに応じた目標の発達段階に応じた実 験・観察となった。 また,観察しやすいように,試験管にゴムのふたをする,色の濃淡をつ けるなど児童生徒の視覚障害の実態に合わせた内容に改善できた。このよ うな取組を今後も続け研究を進めていきたい。 63 5 外国語 研究グループテーマ:視覚障害生徒の英和辞典の活用に関する 実践的研究 1 取り組むべき内容 項 実施年度 H 22 H 23 H 24 目 各学部における「英語」の目標および内容・ 配慮事項 英語点字の理解 アルファベット・キーボードの打ち方 辞書の活用法 Grade Ⅰ の 点 字 の 指 導 技 術 Grade Ⅱ の 点 字 の 指 導 技 術 点字発音記号の理解 口頭英語の指導技術 2 ○ ○ ○ ○ 目的 現在,外国語教育は小学部・中学部・高等部と連続性をもって展開さ れている。また,社会に出た後も国際社会との接点も増え,生涯学習と して学び続ける機会も多い。このような状況で外国語を生涯継続して自 力で学習する力を付けるには,どのような手立てが有効であろうか。 教科教育研究グループが立ち上がってから,外国語科では,教科書の 絵 や 図 , All English の 実 践 の 可 能 性 , そ れ に 関 連 す る Classroom Engl ish に つ い て 研 究 を 行 っ て き た 。 昨年度から,外国語学習に必要不可欠で,かつ視覚障害生徒に困難が 予想される辞書の活用について取り組んでいる。昨年度は,学習の困難 性と有効な配慮事項を明らかにする基礎資料を収集するため,教職員に よる実験を行った。本年度は,昨年度の結果を踏まえ,生徒を対象に実 験と調査を行い,より具体的な課題を明らかにする。 3 方法 高等部の弱視生徒に,単語を紙版英和辞典及び電子英和辞典で検索さ せ,その速さを測定すると共に,生徒から感想を聞き取る。 また,高等部の盲生徒に,点字辞書及びパソコン辞書を用いて,単語 を検索させ,その速さを測定するとともに,生徒から感想を聞き取る。 64 4 内容 (1)実験 弱視生徒に行う実験,盲生徒に行う実験は,いずれも各試行ごとに, 文字数3,4,5,6,7の5語を1セットとし,語を提示されてから 辞書で見付けるまでの時間を計測するとともに,事前・事後の感想を記 録する。(昨年度の教職員による実験と同じ方法である。) 使用辞書 ○紙版辞書 小学館プログレッシブ英和辞典第2版 ○電子辞書 CASIO EX- WORD DATA Plus4 ジ ー ニ ア ス 英 和 辞 典 G 4 ○点字辞書 旺文社英和辞典 ○パソコン辞書 MyDic (2)生徒の実態 ○生徒A 遠距離 視力 高等部普通科3年生 右 左 両 30c m 指 数 弁 0.04 0.035 30cm 指 数 弁 0.04 0.04 近距 離視 力 最大 □右 視標 0.3 利き目 視距離 2cm 視認力 ■左 ■ 遠 用 レ ン ズ (ス ペ ク ウ ェ ル 倍 率 ×10)可 視 視 標 ( 0.7) ■ 近 用 レ ン ズ (ピ ー ク プ ラ ル ー ペ 倍 率 ×10)可 視 視 標 ( 0.8) ※今回の実験では,紙版をひくときのみ近用レンズを使用した。 文章読み(日本語)の速度 ○生徒B 視力 高等部普通科2年生 0 点字文章(日本語)読速度 ○生徒C 遠距離 視力 384 拍 / 分 375 マ ス / 分 高等部普通科1年生 右 左 両 30c m 手 動 弁 30c m 手 動 弁 30c m 手 動 弁 近距 離視 力 30c m 手 動 弁 30c m 手 動 弁 30c m 手 動 弁 最大 ■右 視標 0.1 利き目 視距離 視認力 □左 点 字 文 章 ( 日 本 語 ) 読 速 度 251 マ ス / 分 65 2cm (3)実験の結果 (ア)平均速度 ○生徒A 辞書 平均速度 紙版辞書 1 分 39 秒 24 電子辞書 20 秒 52 ○生徒B・生徒C 辞書 生徒B 生徒C 2名平均 点字辞書 46 秒 99 4 分 11 秒 33 2 分 29 秒 16 フルキー 入力 11 秒 68 23 秒 75 17 秒 72 点字入力 12 秒 91 - 12 秒 91 パソコン 辞書 (イ)生徒の感想 ○生徒A 紙版に慣れていないせいか,探しにくかったです。文字をじっと見 ていくのがしんどいです。電子辞書はいつも使っていますが,だいた いこんな感じです。 ○生徒B 点字版を思ったより速く引くことができました。何冊目にその単語 があるか予測をつけて,左上の見出しを見ながらスムーズにできまし た。パソコン版は難しくないが,点字入力をすると,略字をそのまま 打ってしまうことがある。フルキー入力も慣れればスムーズにできる と思う。 ○生徒C 家 で は パ ソ コ ン 版 ( My Dic) で 調 べ て い る の で , 紙 版 に 慣 れ て い ま せん。記号が読めないところがあって難しかったです。パソコン版 ( My Dic) は 本 当 に 楽 で す ね 。 (4)考察 弱 視 生 徒 A に つ い て は , 紙 版 は 電 子 版 の 約 4.8 倍 の 時 間 が か か り , 本人も使いにくさを訴えているため,明らかに電子辞書の方が使いや すい。昨年度の晴眼教職員のデータと比較すると,紙版は約6倍,電 子版は約8倍の時間がかかっている。 66 盲生徒BとCにおいては,個人差が大きいが,両名の平均値で,点 字 版 は パ ソ コ ン 版 の 約 8.4 倍 の 時 間 が か か り , 感 想 を 見 て も , パ ソ コ ン版の方が使いやすいことがわかる。 点 字 版 に つ い て は , 昨 年 度 の 盲 の 教 職 員 と 比 較 す る と 生 徒 B は 0.8 倍 と 教 職 員 よ り 速 く , 生 徒 C は 教 職 員 の 4.4 倍 の 時 間 が か か っ て い る 。 ま た , 晴 眼 の 教 職 員 の 紙 版 辞 書 と 比 較 す る と , 生 徒 B は 2.9 倍 , 生 徒 C は 15.3 倍 の 時 間 が か か っ て い る 。 電子辞書については,生徒Bが点字入力,生徒Cがフルキー入力を 常用しているので,それらについて考察する。昨年度の盲の教職員と 比 較 す る と , 生 徒 B は 1.5 倍 , 生 徒 C は 2.8 倍 , 晴 眼 の 教 職 員 の 電 子 辞 書 と 比 較 す る と , 生 徒 B は 5.2 倍 , 生 徒 C は 9.5 倍 の 時 間 が か か っ ている。 実験の結果から,盲生徒・弱視生徒ともに,電子辞書は紙版辞書よ りもはるかに使いやすいことと,いずれの場合も晴眼者の辞書使用と 比較すると,かなり時間がかかることがわかる。 5 成果と課題 今回の実験によって,視覚障害生徒の辞書使用に関する具体的なデー タが収集できた。感想を見ると,本人達はさほど不便を感じていないよ うだが,使用速度を上げる指導が必要であることがわかった。昨年度の 実験結果から,視力低下そのものがスピードの低下を引き起こしている わけではないことがわかっているので,指導によりスピードが向上する と考えられる。 具体的には,第1に,使用場面を観察し,どの作業に時間がかかって いるのかを把握し,集中的に指導する方法が考えられる。 第2に,辞書の使用場面を増やし,こまめに使わせるのが最も効果的 であると思われる。しかし,特に盲生徒の場合,携帯できる辞書がない ため,辞書は予習が中心となり,授業中に使用させると教室移動などで 授業の流れが切れてしまうのが課題である。 第3に,第2の課題とも関連するが,携帯電話や,近年開発されたタ ブレット端末やスマートホンなどの電子情報機器の中に,辞書機能を有 するものがある。これらが拡大文字や音声で使用できるかどうか,でき るとすればどのように使用できるかなどを調査研究することもできる。 ただし,携帯端末の持ち込みなど生徒指導との関連も考慮する必要があ る。 67 6 音 楽 研究グループテーマ:歌唱,合唱の指導法 1 取り組むべき内容 項 実施年度 H 22 H 23 H 24 目 各学部における「音楽」の目標および内容・ 配慮事項 点字楽譜の理解 楽器類の扱い方 合唱・合奏 邦楽の理解 点字楽譜の指導技術 楽器の指導技術 合唱・合奏の指導技術 2 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 目的 音楽の授業で取り扱う内容のうち,歌唱についてはどの学部・学年で も行われているものであり,一人で歌ったり,友だちと歌ったりするこ とが好き,また周りで歌っている声を聴いて楽しむといった児童生徒は 多い。昨年度から歌唱,合唱の指導法について取り組んできたが,学部 間の共通の悩みとして発声指導が挙げられた。今年度はこれまでの活動 を通じて我々が学んだことを授業で実践するとともに,新たに出てきた 課題や疑問点について整理し,今後の指導に繋がるような取組とした。 3 方法 (1)課題曲を一曲決めて指導法について研修する。 (2)各学部の実践交流を行い,課題を共有化するなかで,継続した取 組が必要なことについての確認や,指導法についてのアイデアを出し 合う。 (3)全盲の児童生徒の歌唱指導で教師が意識しておきたいことを,本 校理療科教員から体験談をもとに意見を聞く。 4 内容 (1) 課題曲について 東日本大震災復興支援ソング「花は咲く」を混声三部合唱とし,指導 者である私たちが正しい姿勢や無理のない発声で歌えているか,フレー ズの歌い方はどうあるべきか等,互いに意見交換しながら取り組んだ。 68 昨年度,外部講師(東京演劇集団「風」のスタッフ)より指導いただい た,歌唱時の正しい姿勢,呼吸法,表現の仕方等を再確認しながら研修 を深めた。また毎年行っている「サマーコンサート」にて発表した。 (2)各学部の実践 (ア)幼稚部 幼稚部では朝の会で「おはようの歌」を毎日歌ったり,季節毎の歌を 決めて歌ったりしている。集団遊びの活動の始まりに歌う歌も決めてい る。1年を通してよく歌う歌は覚えて歌っている幼児が多い。幼児は集 団で歌うと,がなるようにして歌う場合がある。そういう時期の幼児に は, 「 や さ し い 声 で 歌 お う 」と 手 本 を 示 し て い る と ,音 程 の あ る 心 地 よ い 歌声で歌えるようになってきた。家では歌えるのに,学校では歌えない 幼 児 が い る 。「 歌 わ な い 」 と 決 め て い る の で ,「 今 日 は は じ め の 声 だ け 出 し て み よ う 。」と 言 う と ,フ レ ー ズ の は じ め の 音 だ け を 出 し て 歌 う こ と が できた。幼児にとっては歌も遊びなのだろう。歌詞を歌うことができな い幼児も,声を出して,合いの手を入れたり,言葉の最後の音を発声し たりするなど,歌をそれぞれの方法で楽しむことができた。 (イ)小学部 今年度小学部では,第5・6学年の単一障害児童の音楽の授業の始め に ,毎 時 間 発 声 練 習 に 取 り 組 ん で い る 。歌 う 姿 勢 を 一 緒 に 確 認 し な が ら , 声 の 響 く つ ぼ に 声 を 集 め て 響 か せ る こ と を い つ も 意 識 し て「 き れ い な 声 」 で歌うことを目指してきた。その成果は確実に現れている。また,昨年 度から取り組んでいる合唱にも少しずつ慣れてきた様子が伺えたので, 今年度は合唱した時の声のバランスを考えるようにさせた。 「人のパート の声を聴きながら歌う」ことと「美しい響きを感じたら手を挙げる」こ とを意識させながら合唱練習を繰り返すうちに,最初は自分のパートを ただ大きな声で歌うことが多かったが, 「いつもより小さな声で歌ったら き れ い な 響 き の 所 が わ か り ま し た 。」と い う よ う な 児 童 の 声 を 聞 く こ と が できるようになった。 (ウ)中学部 今年度,中学部重複障害学級では生徒5人で授業をしており,全員音 楽が好きである。 授 業 の は じ め に は ,曲 に 合 わ せ て ウ オ ー ミ ン グ ア ッ プ を し て い る 。 「体 が ほ ぐ れ る と き れ い な 声 で 歌 え る 。」と い う 言 葉 か け を し ,ウ オ ー ミ ン グ アップを行うことでリラックスするということもねらいとしている。歌 声については,歌い方が苦しそうであったりした時などに,教師が模範 演奏をして一緒に歌ったりして「きれいな声」を意識させるようにして いる。 69 新しい合唱曲に入るときは,まず自分の歌うパートを決め,それぞれ のパートのメロディを聴き,その後範唱CDに合わせて歌うようにし, それを毎時間繰り返す。その際,教師が必ず生徒のそばにつき,ピアノ ではなくCDに合わせて一緒に歌う。生徒は歌をよく聴いており,歌詞 とメロディをすぐに覚える。しかし歌えていない部分があれば,その部 分の練習を重点的にするようにしている。 「 繰 り 返 し 歌 い 続 け る 」と い う ことが指導のポイントであり,結果として自分のパートが歌えるように なり,ハーモニーも楽しむことができるのである。 重複障害学級の生徒の共通点として,一人だと大きな声で正確に歌う ことができるし,特に友だちや教師の前で発表するときは,素晴らしい 歌声で発表することができるが,合唱になると,友だちや教師が歌う声 を聴いてしまうため,合唱が成立しないということがある。そこで教師 は「歌って」と言葉をかけるが,生徒はそのとき合唱に参加していない のではなく,ハーモニーや歌を聴くことに集中しているのである。そし て授業が終わり,一人になると,大きな声で自分のパートのメロディを 歌いながら教室に戻って行くという姿がしばしば見られる。歌を楽しん でいるからこれでよしとするのか,合唱ができる(歌い合わせる)工夫 をもっとするべきなのかが課題である。 (エ)高等部普通科 現在,単一障害学級の生徒は歌うことが好きで,音域も広く音程やリ ズムの把握など基本的な技術はもっている。しかし,最初に気になった のが,歌唱時の姿勢であった。より美しい声で歌うためには正しい姿勢 が必要となる。無理な姿勢での歌唱を解決するために,体幹をしっかり 保つこと,下半身の安定と上半身の脱力が身に付くことを定着させたい と考えた。授業始まりのウオーミングアップメニューでは「曲に合わせ て ス ト レ ッ チ 」「 表 情 筋 を フ ル に 動 か し て フ ェ イ ス ト レ ー ニ ン グ 」「 呼 吸 法を意識した発声練習」を欠かさず行うこととした。 指導にあたっては,視覚障害をもつ生徒の場合,言われていることを 生徒がイメージし,実際に身体や声で表現するためには具体的な言葉で 伝える必要があった。注意すべき点についていつも同じ言葉かけになっ てしまうため,よりイメージをもたせやすくするために,歌唱や合唱指 導に関しての資料として,どのようなものが有効に活用できるか検討し た 。「 イ ラ ス ト で 見 る 合 唱 指 導 法 」( 教 育 出 版 ) は 姿 勢 , 呼 吸 , 共 鳴 , 発 音など発声指導におけるいくつかの領域毎に示されており,また各項目 において声の出し方や歌うための身体作りについて,イメージしやすい キーワードが紹介してあった。例えば呼吸法では「花の香りをかぐよう な気持ち」 「 息 の 使 い 方 は お 小 遣 い と 同 じ 。上 手 に 少 し ず つ 」な ど で あ る 。 70 弱視の生徒であれば,小学部や中学部の生徒にも理解できるような図解 も掲載されており,指導する立場からも参考になった。授業の中では約 1 0 分 程 度 の 取 組 で は あ る が ,「 継 続 は 力 な り 」 で , 姿 勢 に つ い て は 歌 い 始める前に気持ちと身体を自分で整えることができるようになった。 重複障害学級では毎学期に一曲,合唱曲に取り組んでいる。普通科で も市販の,あるいは自主制作CDを活用して練習している。生徒はメロ デ ィ や 歌 詞 を 覚 え る の が 早 く ,あ る 程 度 ま と ま っ て は く る が , 「もっと素 敵に仕上げよう」と,自分たちの歌を録音して聴き,客観的に振り返る ことにしている。 「 ○ ○ さ ん の 声 が よ く 聴 こ え た 。」 「歌詞の○○のところ は 女 性 パ ー ト が 小 さ か っ た 。」 「 曲 の 出 だ し が 揃 っ て い た 。」な ど ,実 際 に 歌っているときにはあまり意識しなかった部分を確認することができ, 次の練習のポイントにつなげることができた。何より,音楽で歌った曲 を,自分の声や友だちの声で聴いて楽しむこともでき,昨年度に続き, 今年度末には一年間の思い出曲集としてCDを作る予定である。 (3)本校理療科教員との意見交流 学部で実践交流をするうちに,全盲の児童生徒の指導においてどのよ うな工夫が必要か,ということが課題として挙がった。そこで本校理療 科教員に,自分が受けてきた音楽の授業を振り返っての体験談を聞き, 意 見 交 流 し た 。歌 唱 指 導 に お い て は ま ず は 聴 く 活 動 を 大 事 に し ,音 源( 範 唱CDなど)を活用して正しいメロディーを覚えていくことや,合唱で あれば音の重なりや響きを感じて心地良さが実感できる体験をすること も大切という話があった。また,壁に沿って立ったり頭の上に本をのせ るなどして,実際にやってみながら正しい姿勢を覚えていくこと,口形 を身に付ける方法の一つとしてスプーンを使った練習などのアドバイス を受けた。将来社会人として必要なこととして,相手に聞こえる声(お 腹のそこから出す声)を出すためには,喉が開いていないと声が出にく いことから,歌唱に限らず発声の必要性についても再確認する機会とな った。 また歌唱・合唱指導に限らず,音楽の授業や成人してからの音楽の楽 しみ方や,日本や世界で活躍する視覚障害者の音楽および演奏を学校で も積極的に紹介してほしい等の話を聞くことができた。 5 成果と課題 音楽を指導する者にとって,歌うことが好き,また音楽が好きな生徒 が多いというのは大変嬉しいことであり,やりがいも感じている。活動 を通して,あらためて各学部の児童生徒の様子を知ることができ,継続 した発声練習の必要性や範唱CDの効果的な使い方など,共通した取組 を確認できた。反対に重複障害生徒の歌い合わせる難しさについては, 71 これもまた各学部で同じ課題であった。例え声を出さなくても生徒の楽 しみ方はそれぞれであり,そのような部分は大事にしながらも,教師や 友だちと一緒に歌う喜びも体験してほしい。 最後に,歌唱・合唱に限らず,音楽の表現方法またジャンルは非常に 幅広い。学校教育の場において,いろいろな音楽を知ったり習ったりし た こ と が こ れ か ら の 日 常 生 活 を 豊 か に し ,生 涯 の 楽 し み と な っ て ほ し い 。 音 楽 の 入 り 口 と し て 様 々 な 曲 を 提 示 で き る よ う ,今 後 も 研 修 に 努 め た い 。 72 7 図工・美術 研究グループテーマ:図画工作・美術における鑑賞の指導について 1 取り組むべき内容 項 実施年度 H22 H23 H24 目 各 学 部 に お け る 「 図 画 工 作 」「 美 術 」 の 目 標 お よび内容・配慮事項 視覚障害の程度に応じた造形活動 視覚障害の程度に応じた鑑賞法 視 覚 障 害 児 に 適 し た 材 料・道 具 の 知 識 と 入 手 法 盲児に対する凸絵の指導技術 粘土・焼きものの指導技術 色彩指導の対応法 触覚による美術作品鑑賞法の指導技術 2 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 目的 昨年度,このグループでは「造形活動への興味を引き出す個に応じた 工夫」として,それぞれの学部で一つの教材を取り上げて造形教育にお ける工夫を紹介し,内容などを検討した。どの学部でも視覚障害児童生 徒 が 感 覚 を 通 し て 形 態 を 認 識 し ,そ れ を 表 現 す る た め の 教 材 選 び や 手 立 てなどが工夫され,児童生徒の主体的な活動が引き出された様子も報告 されている。 昨 年 度 は 教 材 を 絞 り こ む こ と な く ,様 々 な 造 形 活 動 の 工 夫 を 報 告 し た が,今年度は鑑賞にテーマを絞り,各学部の鑑賞の授業実践を報告し, 視覚障害者の美術鑑賞の共通点や発達段階における違いを比較すること で , 「 図 画 工 作 」・「 美 術 」 に お け る 鑑 賞 の 指 導 に つ い て 方 法 や 内 容 に つ いて整理することを目的とする。 3 方法 幼稚部は日常的な場面を利用した鑑賞,小学部は梅の実収穫行事の際 の県立美術館での作品の鑑賞,中学部は泉美術館での鑑賞,高等部は授 業の中での鑑賞の実践を報告し,それぞれ成果と課題を出し合うことで 各学部の美術鑑賞について考察する。また,今回は教員研修として本校 の全盲教員の美術館などでの鑑賞の様子を聞くことで,視覚障害者の美 術鑑賞についての私たちのイメージを確認する。 73 4 内容 (1)幼稚部 幼 稚 部 で は , 週 に 1 ~ 2 回 程 度 ,「 今 日 の 食 べ 物 の お 客 さ ん 」 と 称 し て,給食に出てくる季節のものを観察する時間を設けている。 「五感を使って観察する力を付ける」という点が,将来,美術作品を 鑑賞する力につながると考える。 活動では,実物を見たり,触ったり,においをかいだり,重さを確か めたりしながら観察し,それをちぎったり,切ったり,食べたりしてい る 。「 う わ ー , 重 た い ! 」「 ぬ る ぬ る し と る ! 」 等 幼 児 か ら の 気 付 き も 少 し ず つ 増 え て き た 。「 こ れ , 目 は あ る ? 」「 種 は ? 」 等 , 前 回 観 察 し た も のと比較しながら,観察することもでき始めている。最初は,触ること に苦手意識をもっていた幼児も,活動を繰り返すことによって,自ら手 を 伸 ば し 触 る こ と が で き る よ う に な っ た 。 ま た , 給 食 の 時 間 に ,「 こ れ は 今 日 見 た ( 触 っ た ) ○ ○ じ ゃ ね ~ 。」 と 確 認 す る と , 食 べ る こ と に 意 欲をもてる幼児もいた。 (2)小学部 年一回招待される梅の実収穫行事の際の,県立美術館での作品の触察 が美術作品鑑賞の唯一の機会であるが,時間も限られており,十分な鑑 賞とはなっていない。普段の図画工作の時間には,自分の作品について 発表し,友だちの作品に関心をもつことを鑑賞の一端としている。しか し,友だちの発表から作品を言葉どおりに受けとって「上手」と感想を 述べたり, 「 ○ ○ み た い 」と 何 か に と ら え た り す る 見 方 が 多 く ,多 様 な 観 点で見ることができていないのが現状であった。 そこで,5・6年単一学級において,鑑賞の単元を設定し,作品の触 察 を 通 し て ,「 手 ざ わ り ・ 色 ・ 重 さ ・ 形 ・ 音 」 と い う 五 つ の 観 点 に 気 付 くことができた。さらに,身近な素材が様々なものに変化した作品の鑑 賞 を 通 し て ,新 し い 鑑 賞 の 観 点 と し て「 作 り 方 」を 見 る こ と が 加 わ っ た 。 その後,同じ素材を使った作品作りでは,これまでになかった表現技法 が見られ,作り方を考えることが児童の作品作りの幅を広げることにつ ながったことがわかった。視覚障害のある児童にとって難しい鑑賞であ るが,工夫をして行うことで表現の幅を広げる可能性があることを示し た実践であった。 (3)中学部 中学部では今年度,泉美術館から見学の招待を受け,また事前学習と して彫刻作品を貸していただけることになったため,これらを題材に鑑 賞学習を行った。 事前学習は単一学級の美術の授業で行い,目標は「作品に対する自分 74 の 見 方 , 感 じ 方 を 深 め よ う 」 と し た 。 作 品 は 楠 直 明 氏 の 「言 葉 の 夜 」と い う 高 さ 29c m の 大 理 石 彫 刻 で あ る 。主 体 的 に 作 品 と か か わ り ,自 分 な り の感想をもって欲しいという目的で,まずは一人ずつ順番に作品に向き 合 い ,1 分 を め や す に 見 た り 触 っ た り し て 自 分 の 感 想 を 書 く よ う に し た 。 そ の 後 ,5 分 間 生 徒 だ け で 話 し 合 い ,共 感 し た り 自 分 と は 違 う 感 じ 方 や , なるほどと思った感じ方などを書くようにした。この時点で生徒の感想 は,手触りや形の表面的な印象が中心であり,イメージについても「ケ ーキみたい」 「 地 蔵 み た い 」と い っ た ,具 体 物 の 例 え に と ど ま っ て い た が , 生徒の「何をイメージしているかわからない」という発言を取り上げ, 話し合いを進めたところ,より深まった作品の見方をする生徒もいた。 また,レンズでよく見るように促すことで細部の表現に気づいた生徒が 全盲の生徒にそれを伝えると,その言葉を元に全盲生徒自身が新たな自 分のイメージをもつということもあった。中には,作品の印象から浮か んだ物語の冒頭部分を発言する生徒もいて,その生徒に影響されて何人 かの生徒が自分で短い物語を考えた。作品名はあえて最後に伝えたが, 作品名を伝えることで,それまで自分なりのイメージをもちにくかった 生徒も,イメージを広げることができた様子だった。 美 術 館 へ の 校 外 学 習 で は ,佐 藤 忠 良 氏 の ブ ロ ン ズ 作 品 を 中 心 に 10 作 品 ほどを鑑賞した。触察を含む鑑賞であることから,1グループの生徒の 人数を3名にして5グループに分かれ,それぞれ学芸員や広島市立大学 芸術学部で学ぶ作家の方についていただいて説明を受けながら順番に作 品を鑑賞した。また作家の方からは,作品の制作方法についても,実物 の 粘 土 を 触 ら せ て も ら っ た り し て 説 明 を 受 け た 。事 後 の 感 想 文 で は ,「作 品 は 見 れ ば 見 る ほ ど お も し ろ い こ と に 気 付 く と 思 っ た 。 」と い う よ う に , 鑑賞のおもしろさに気付いた生徒がいたり, 「佐藤忠良さんは身近な人の 作 品 が 多 い の で , 思 い 出 や 何 か を 残 す よ う に し た の で は な い か と 思 う 。」 というように,作家の意図にも思いをはせることができた生徒がいた。 (4)高等部 高等部の生徒は美術の授業で美術館などに行き,直接作品に触れて鑑 賞 す る 機 会 を も て て い な い 。 そ れ を 補 う た め に ,美 術 の 授 業 の 中 で 作 品 を 鑑 賞 す る 時 間 を と っ た り ,教 科 書 な ど を 利 用 し た 鑑 賞 学 習 を 行 っ た り してきた。また,作った作品を自分たちで廊下に展示するなど,学校内 にも様々な作品があることをみんなで意識できるようにしてきた。 高等部保健理療科1年生の生徒1名は工芸の授業を受けている。この 生 徒 は 過 去 に 視 経 験 が あ り ,生 活 経 験 も 豊 富 で ,工 芸 に つ い て も そ の 内 容 を う ま く 理 解 す る こ と が で き る 。陶 芸 で は ,簡 単 な 陶 芸 の 歴 史 と 制 作 方 法 を学び,実際に何種類かの技法で生活雑器の制作を行っている。やきも 75 のの種類を学習するときには,土器・陶器・磁器・炻器をそれぞれ準備 し,本物に触りながら各々の特徴を説明した。やきものの手触りの違い に自分の体験や知識と重ねることでやきものについて考えることができ たようだ。この生徒は工芸の授業で作った物を家庭で使用するなど,生 活を豊かにすることにもつながっている。 5 成果と課題 (1)幼稚部 活動を通して,大きさ,重さ,感触,におい等,様々な感覚を使い, ものを観察することを楽しむことができるようになってきた。感覚をフ ル活用して,ものごとを観察していく力は,視覚障害児にとってあらゆ る活動の基盤となる力である。今後も引き続き行っていきたい。 課題として,観察の様子をビデオに撮り,振り返った際に,教師から の言葉かけが多すぎることが反省として挙げられた。子どもたちが真剣 に観察している際に,教師からの言葉かけが多いとノイズになってしま う 。ど ん な 点 に 気 付 い て ほ し い の か ,ど の よ う な 観 察 を し て ほ し い の か , 事前に教師が目的意識をもち,言葉かけも精選していく必要があると考 える。 (2)小学部 前述したとおり,鑑賞をすることは,児童の発想になかった表現方法 に触れる機会となり,作品作りの幅を広げる可能性があることがわかっ た 。一 方 で ,実 物 に 触 れ る こ と に よ っ て 作 品 を 知 る 本 校 の 児 童 に と っ て , 美術書等を通して多様な作品を知ることは難しく,美術館で作品に触れ る機会を得ることもごくまれであり,鑑賞の機会をどのようにしてもつ かが課題である。 (3)中学部 生徒たちはこれまで鑑賞の学習をした経験がそう多くはないと思われ る。そのため,事前学習の授業では「発展を促す発問」をいくつか用意 していた。授業では当初は想定どおり,表面的な感想が多かった。しか し, 「 み ん な で 話 し 合 う 」と い う 活 動 の 中 で ,生 徒 の 中 か ら 自 然 な 流 れ で 鑑賞の視点を発展させる発言があったことが授業者としては嬉しかった。 中には授業者の想定を上回る感想もあった。今回は美術館の好意でこの ような鑑賞学習を行うことができた。生徒の感想にも「美術館はだいた い『作品に触れないでください』と言われて,とてもひまなところだと 思 っ て い た け ど 今 回 は 触 る こ と が で き て よ か っ た 。」と い う も の が あ っ た 。 視覚障害者の美術鑑賞として,触ることができる機会が増えることを望 む一方で,絵画など,触る以外の方法で行う鑑賞についても研究する必 要があるのではと思う。また,美術科で行う鑑賞の対象は,美術館の作 76 品だけに限らず幅広くとらえることができるため,今後はそのような視 点での授業にも取り組んでいきたい。 (4)高等部 工芸の授業を受けている生徒のように,立体作品に実際に触れながら 言葉による説明を聞くことが鑑賞の手助けとなり,学習の効果も上がっ て く る 。こ の よ う に ,高 等 部 の 生 徒 も ,美 術 作 品 に 直 接 触 れ ,美 術 に 対 す る理解を深めていくことが必要である。しかし,絵画などの美術作品は 視覚に訴えるものが多く,現状では美術館で直接触れることができない ものがほとんどである。そのため,絵画作品から受ける感動を少しでも 視覚障害生徒が共有していくためには,教師は,様々な造形活動が体験 できる場を設定し,あわせて,事前に作品についてその表現や方法,背 景や美術史を学習する機会を計画的に設定する必要がある。また,美術 作品から受けた感動を伝えるために,その感動を表現する言葉を磨くこ とが必要であることが分かりこの視点での授業改善をしていきたい。 6 教職員研修 鑑賞についての教職員研修として,日ごろから美術館などで美術鑑賞 を 楽 し ん で い る 本 校 の A 教 諭 を 講 師 に 招 き ,座 談 会 を 行 っ た 。A 教 諭 は 視 経験のない全盲者であるが,社会人になってから友人の影響で美術鑑賞 を楽しむようになり,主にその友人と美術館などに出かけている。鑑賞 方法は作品に対する友人の感じ方を聞き,説明文を読んでもらうことも ある。また,友人が何を見ているか知るために,友人の頭に手をあてそ の視線を実感している。絵などの形としてのイメージにはそれほど興味 は な い が ,興 味 を も っ た 作 家 に つ い て は 鑑 賞 後 自 分 で 調 べ る こ と が あ る 。 音声ガイドではその絵の前にいる必要がないと感じるため,あまり利用 せず,あくまでも同行者の生の声を聞くことに意義があるとのことだっ た。また,神社仏閣の鑑賞では,全体がイメージできるような説明や仏 像のポーズを実際にしてもらったり,建物を触ったり白杖でたどること で空間の広さがイメージできるとのことだった。国立民族学博物館には 全盲の学芸員がいて,見えない人だけのためではなく見える人のために も触ることに重点を置いた展示がしてあり,その展示物を鑑賞した時に は,新たな発見があってよかったとのことである。 視覚障害者の美術鑑賞の方法の一つとして,同行する晴眼者とともに 作 品 を は さ ん で 会 話 を す る と い う 活 動 が 行 わ れ て い る が ,そ の よ う な 視 点をもった鑑賞学習を授業でも取り入れて行く必要があるのではないか。 ま た ,国 立 民 族 学 博 物 館 の よ う に ,展 示 物 に 触 れ る 機 会 が あ っ た と き に , より効果的に触り,感じ取ることができる力を授業の中で付けていくこ とも必要である。 77 8 保健体育 研究グループテーマ:授業における体力を高めるための工夫 1 取り組むべき内容 項 実施年度 H 22 H 23 H 24 目 幼児期における体育指導の内容と方法 各 標 衛 基 盲 視 危 視 体 各 2 学 お 生 本 人 覚 険 覚 育 種 部 よ の 的 用 障 防 管 教 盲 に び 習 運 ス 害 止 理 具 人 お け る 「 体 育 」「 保 健 体 育 」 の 目 内容・配慮事項 慣 動技能 ポーツ の程度に応じた体育指導の技術 の技術 の知識と実際的対応法 の自作技術 競技の指導技術 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 目的 昨年度は,本校中学部から高等部に進学した生徒に関わり,持 久走における誘導方法の工夫が必要という課題が出てきたため, この課題をテーマにして研究を行った。一昨年度「体育の授業で 行 う 準 備 運 動 の 工 夫 」 を テ ー マ に 研 究 を 行 い ,「 運 動 を 一 つ ず つ 指 導 す る 中 で , 体 の 平 衡 感 覚 ・リ ズ ム 感 ・柔 軟 性 ・巧 緻 性 な ど さ ま ざ ま な 体 の バ ラ ン ス が 取 れ て い な い こ と が 分 か り ,個 々 に 応 じ た 細かな指導が必要である」という課題が残っていた。 そのため,今年度は『体力』といわれるカテゴリーの中でも, 特 に 平 衡 感 覚 ・リ ズ ム 感 ・柔 軟 性 ・巧 緻 性 な ど の 要 素 を ど の よ う に 高 め て い く か , と い う 点 に お い て ,「 授 業 に お け る 体 力 を 高 め る ための工夫」というテーマで行うことにした。 3 方法 こ の よ う な 課 題 を 克 服 す る た め ,体 育 及 び 体 育 科 の 教 師 が リ ー ダ ー を 務 め る 自 立 活 動 等 に お い て ,次 の よ う な 目 的 を も っ た 取 組 を工夫した。 ○姿勢に注意を払う。 ○ 日 常 生 活 に な い 姿 勢 や そ の 姿 勢 の 保 持 ,身 体 の 動 か し 方 に つ い て取り組む。 78 ○身体を動かすことにおいて,足首・膝・腰など細かい部分の 動かし方を意識する。 4 内容 (1) 準備運動におけるランニング・ウォーキング時の取組 (中学部・高等部) ○姿勢(背筋を伸ばすこと・視線を下げないこと・腕や足の振 り方)を意識して行う。 ○後ろ向き歩き,横向きサイドステップ・クロスステップ, ランジウォークなどを取り入れる。 ( 2 ) 準 備 運 動 (「 G O W E S T 」) の 実 施 時 に , よ り 細 か い 目 標設定(高等部) ○身体を伸ばす時にはつま先立ちで行う。 ○上腕三頭筋のストレッチにおいては顔を正面に向けて行な う。 ○ 体 側 の ス ト レ ッ チ に お い て は 腕 を し っ か り と 伸 ば し ,「 ま 横 」 を意識させる。 ○ 身 体 を ひ ね る 運 動 に お い て 腕 の 高さ(腕が肩よりも低くなら ないように)を意識させ,静止させる。 ○ 膝 を 上 げ て 反 対 の 肘 を つ け る 運 動において,なるべく上半身 を 前 に 傾 け な い よ う に し て 膝 を 上 げ,肘をつけた上体で静止 を意識させる。 ○膝の屈伸において,足の裏を床につけたまま行う。 ○ ア キ レ ス 腱 を 伸 ば す 運 動 に お い て,つま先がしっかり前を向 いた状態でかかとをつけるようにさせる。 (3)補強運動として,コアトレーニングを実施 (中学部単一・高等部重複) ※コアトレーニングとはコア=体幹(より具体的にいえば,背 骨や骨盤の向き,角度に影響を与える筋肉)のトレーニン グ 及 び そ の 前 段 階 と し て ,体 の 動 か し 方 を 修 正 す る ト レ ー ニングをさす。 ○ も も 上 げ ク ラ ン チ : 仰 向 け で 足 を 上 げ ( 膝 を 90 度 に 曲 げ る ) 頭を上げておへそを見る。 ○背筋伸ばし:仰向けで対角の手と足をしっかりと伸ばす。 ○半身クランチ:横向きに寝て下側の手は横に伸ばし,足を上 げる。 ○バックダイアゴナル:四つ這いの姿勢から片手片足を上げる。 ○ バ ッ ク ブ リ ッ ジ : 仰 向 け の 姿 勢 か ら 膝 を 立 て ,お 尻 を 上 げ る 。 79 ○Vバランス:V字の姿勢をキープする。 ○股関節伸展回旋:かかとを支点としてつま先をスライドさせ る。 ○股関節屈曲回旋:つま先を支点としてかかとをスライドさせ る。 ○コアウォーク:つま先をつけたままで足踏みをする。 ○ヒールスライド:長座姿勢で片足の膝を立て,もう片方の足 と 伸 ば す -膝 を 立 て る , を 交 互 に 行 う 。 ○腰椎回旋:長座姿勢で両足の膝を立て,左右に倒す。 (4)バランスボールを使った運動の取組 (中学部重複・高等部自立活動―運動リズムグループ) ○ボールの上に座る。 ○バウンズする。 ○バランスボールエクササイズ(音楽に合わせたさまざまな姿 勢や動きの組み合わせ)を行う。 (5)器械運動の単元における取組(中学部・高等部) ○ 四 つ 這 い の 姿 勢 が で き な か っ た 生徒に対して,円柱型のマッ トを利用して姿勢のイメージを持たせた。 ○ストレッチの姿勢を正しく行うよう促した。 ○筋力や調整力が必要な姿勢や動きを多く取り入れた。 Vバランス,背倒立,四つ這いからの手・足上げバランス, 腕立てで支持した状態での体の回転,スーパーマン(うつぶ せの上体からの手・足上げ)片足でのバランスなど。 5 成果と課題 ト レ ー ニ ン グ は ,ど れ だ け 正 確 な 姿 勢 で 行 え る か に よ っ て そ の 効果が大きく違ってくる。 体 育 の 授 業 の ウ ォ ー ミ ン グ ア ッ プ や 準 備 体 操 に お い て は ,授 業 者(リーダー)が細かい部分に繰り返し注意を促すことで,TT の 教 師 も 意 識 し て 指 導 す る よ う に な り ,生 徒 も 自 分 で 気 を 付 け て やろうとする態度が見られるようになった。 その結果 ○歩く姿勢や椅子に座ったときの姿勢がよくなったという報 告が複数ある。 ○ 四 つ 這 い の 姿 勢 が で き な か っ た 生徒が,自分の力で四つ這い の姿勢が取れるようになった。 ○複雑な足の運びができるようになった生徒がいた。 ○運動時において体の使い方が力強くなった生徒は多い。 ○ 筋 力 や 調 整 力 が 高 ま り ,バ ラ ン ス ボ ー ル に 座 る こ と が で き る 80 ようになった生徒,ボールの上でさまざまな姿勢が取れるよ うになった生徒がいた。 ○ボディーイメージが高められ,言葉による指示のみでも正確 な姿勢や動きができるようになった。 このように準備運動や補強運動での取組によって,平衡感覚・ リ ズ ム 感 ・柔 軟 性 ・巧 緻 性 な ど の 体 力 的 要 素 に つ い て , 多 く の 生 徒 に 伸 長 が 認 め ら れ た 。取 組 前 後 で の 客 観 性 の あ る 数 値 的 な デ ー タ はないが,ある程度の成果はあったように思う。 今後の課題として,継続的な取組ができるよう,幼小学部・中 学部・高等部の連携を取っていくこと,TTの教師が意識を高め られるような手立てを考えていくことなどが挙げられる。 81 9 家 庭 研 究 グ ル ー プ テ ー マ:視 覚 障 害 幼 児 児 童 生 徒 が 主 体 的 に 関 わ れ る 実 習 教 材の研究 1 取り組むべき内容 実 施 年 度 H 22 H 23 H 24 項 目 家 庭 生 活 に 主 体 的 に 関 わ ろ う と す る 意 欲・関 心の育成 各 学 部 に お け る 「 家 庭 」「 技 術 ・ 家 庭 」 の 目 標および内容・配慮事項 自立的家事動作の習得 家庭機器の機能・構造の理解 盲人用生活用具等の使用法 生活品の購入法 整理整頓の習慣化 日常生活動作の指導技術 視覚障害の程度に応じた家事動作修正のた めの指導技術 盲人用生活用具の指導技術 家庭機器の改良技術 2 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 目的 これまでの研究グループ活動では,学部を越えて連携を図り,被服及 び調理の実技指導や調理分野における実習教材の系統性について検討し てきた。研究の結果,熱源の使用の実技指導など課題として残っている 部分もあるが,今年度は,家庭科研究グループに所属する教師が大きく 入れ替わったため,まずは校内での取組の状況を理解することを目的と して研究を行った。 家庭科の実習では,手指を使うことが必須である。視覚障害児童生徒 が自分で行ってみよういう意欲をもち,主体的に手指を使って操作でき る実習教材にはどのような物があるのか。家庭科研究グループの教師だ けで実際に調理を行い,その成果について評価することで,視覚障害児 童生徒の指導について理解を深めようとした。 3 方法 調理実習で取り上げられている題材の中から,調理過程で児童生徒の 主体的に手指を使って操作できる実習教材例を選び,実際に調理を行い, 改善点を考察した。 82 4 内容 (1)実習教材の選定 家庭科研究グループの教師がかかわっている授業で取り上げている実 習教材の中から,児童生徒が手指をしっかり使って取り組めている教材 を出し合った。その結果,小学部重複障害2の生活単元学習「マフィン を 作 ろ う 」の 単 元 か ら「 豆 腐 マ フ ィ ン 」,高 等 部 の 家 庭 科 保 育 分 野「 お や つ作り」で取り上げている「卵ボーロ」を検討する題材として選んだ。 (2)調理実習 実際に授業で用いている調理器具を用いて,教師役と児童生徒役に分 かれて研究グループの教師が実習を行った。 (3)評価 それぞれの教材について,①食材に関心がもてるか,②主体的な活動 場面が設定できているか,③手指の操作性を引き出す活動になっている か,④道具の使用が指導できるか,⑤安全・衛生への配慮が指導できる か,⑥調理への意欲が高まるかの6項目で評価した。 (ア)豆腐マフィン (作り方) 豆腐に,ホットケーキミックス・砂糖・牛乳・卵・溶かしマーガリン を順に加え,直接手で混ぜて,生地を作る。混ぜるときの容器として, 3cmほどの高さの丸形トレイを使用した。 項目 ①食材に関心がもてるか。 ②主体的な活動場面が設定 できるか。 ③手指の操作性を引き出す 活動になっているか。 ④道具の使用が指導できる か。 ⑤ 安 全・衛 生 へ の 配 慮 が 指 導 はできるか。 評価 ○一つ一つの食材を確かめさせているのはよい。 ○豆腐以外にバナナ,かぼちゃなど加える食材を変 化させ,いろいろな感触を体験することができる。 ○手首を曲げると手の平で混ぜられないので,容器 のふちが低いものを選んでいるのはよい。容器の高 さに対する材料の分量は検討が要る。 ○冷たい物を触ることに抵抗のある児童に対して, 豆腐を温めているのは,操作しようとする気持ちを 持続するためにはよい。 ○粉,砂糖は,振りかけるより中央にまとめて入れ て,児童に手で探索させる方が感触を自分で感じら れるのではないか。 ○中,高等部の場合,一人で作れる,簡単おやつと して教材化できる。泡だて器・ゴムべら・計量器な どの使用も取り入れられる。 ○丸型トレイでは周囲が汚れすぎる。一度に入れる 分量を少なくすることも考えられる。 ○感触を楽しむことができているが,感触遊びから 調理へと児童の意識を転換させることも必要であ ⑥調理への意欲が高まるか。 る。全校の生活単元学習における調理の段階的な指 導を検討する必要がある。 83 (イ)卵ボーロ (作り方) 卵 黄・砂 糖・片 栗 粉・牛 乳 な ど の 材 料 を ゴ ム べ ら や 泡 立 て 器 で 混 ぜ る 。 さらに,直接手でこねて生地を紐状にのばした後,包丁で細かく切り分 け,一つ一つを手で丸めて,オーブンで焼く。 項目 評価 ○卵ボーロは何からできてあの味・あの口どけなの か年齢を問わず興味がもて,教材化できる。成人の ①食材に関心がもてるか。 家庭科では,興味の持ち方に個人差があり,意欲が もてない場合もあるので,考慮する必要がある。 ○様々な操作が含まれているので,児童生徒の実態 ②主体的な活動場面が設定 に応じた部分で,目標設定して取り組むことができ できるか。 る。 ○様々な操作が含まれているので,児童生徒の実態 ③手指の操作性を引き出す に応じた部分で,目標設定して取り組むことができ 活動になっているか。 る。 ○計量器の使用について,粉末状の物は平たい計量 ④道具の使用が指導できる スプーン,液体はひしゃく型計量スプーン,音声秤 の使用をそれぞれ指導できる場面がある。児童生徒 か。 の実態に応じた指導が取り入れられる。 ○粉の飛び散りが視覚障害児童生徒にはわかりにく ⑤ 安 全・衛 生 へ の 配 慮 や 指 導 いので,気付けるように適切な声かけや援助が必要 はできるか。 である。 ○一人で作れたという自信にはつながる。菓子でな く日常食の調理まで意欲をつなげようとするとこの ⑥調理への意欲が高まるか。 教材だけでは難しい。意欲付けの導入的な扱いがよ いと考えられる。 5 成果と課題 今回の研究を通して,豆腐マフィン・卵ボーロは,いずれも直接手で 触 っ て 食 材 の 特 徴 を 理 解 し ,さ ら に 感 触 や 形 態 の 変 化 を 実 感 す る こ と で , 活動に対する興味関心が喚起できる,また,障害の状況や生活年齢に応 じて道具の使用などの課題設定が可能であることから,自分で行ってみ よういう意欲へのつながりが期待できる題材であると評価した。研究の 中では取り上げなかったが,中学部の家庭科でも,汁物の調理にだんご 汁 を 実 施 し て い る こ と も 含 め ,こ ね る・ち ぎ る・丸 め る な ど の 手 指 の 操 作 は調理の基礎であると確認することもできた。 今 後 の 課 題 と し て ,児 童 生 徒 の 実 態 に 応 じ て ,段 階 的 に ど の よ う な 実 習 内容を計画するかが挙げられる。単一障害教育課程の中学部と高等部の 内 容 に つ い て は 平 成 22 年 度 の 研 究 で 一 度 整 理 し て い る が ,生 徒 実 態 に 応 じ た 見 直 し も 必 要 で あ ろ う 。 ま た ,重 複 障 害 教 育 課 程 に お い て は ,障 害 の 状 況 に 応 じ て ,感 触 遊 び か ら 調 理 へ と 意 識 を 転 換 す る よ う な ,小 学 部 か ら 高等部までの段階的指導計画が必要であると考えられる。 84 教科研究グループ活動を通して, 「他学部でどのような調理を行ってい るか,また,児童生徒の実態に応じてどのような工夫がされているかを 知り合う機会となり,有意義であった。改めて小学部から高等部までの つ な が り の あ る 授 業 が 大 切 で あ る と 感 じ た 。」等 の 感 想 が 出 さ れ た 。具 体 物を実際に操作する体験は,教師各自が行っている日々の調理実習の課 題に気づける機会にもなった。この経験を,児童生徒が手指をしっかり 使い,食材の感触を確認するための方法を吟味した調理実習に生かして いきたい。 85 10 情 報 研 究 グ ル ー プ テ ー マ:授 業 に お け る 情 報 機 器 の 継 続 的 活 用 実 践 に つ い て ~タブレット端末を活用して~ 1 取り組むべき内容 項 目 各 学 部 における「ICT教 育 」の目 標 および内 容 ・配 慮 事 項 校 内 におけるタブレット端 末 (iPad2)の導 入 ・初 期 設 定 視 覚 障 害 の程 度 に応 じた使 用 方 法 (タブレット端 末 ) 一 人 一 人 に適 したタブレット端 末 の使 用 方 法 の研 究 学 部 間 の連 携 ・継 続 指 導 について スクリーンリーダーの技 術 指 導 校 内 セキュリティポリシー策 定 ・情 報 モラルの普 及 研 修 2 実施予定年度 H24 H25 H26 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 目的 今 年 度 か ら タ ブ レ ッ ト 端 末 (以 下 端 末 と 省 略 )8 台 が 導 入 さ れ , よ り 身 近なICT機器としての活用が期待されている。教育情報部とも連携し ながら,端末の導入・初期設定を行い,さまざまな使用方法を普及,実 践することとした。 導入にあたり,端末を幼児児童生徒(以下対象者とする)に興味をも って触らせること,指導者が使用に慣れて,さまざまな見えにくさを持 つ対象者にとって適切な使用方法について研究することを目的とした。 3 方法 各 学 部 か ら iPad を 使 用 し た 事 例 を 集 め て ,ど の よ う な 活 用 方 法 が あ る か検討した。 4 内容 ( 1 ) 校 内 に お け る 端 末 ( iPad2) の 導 入 ・ 初 期 設 定 広島県教育委員会情報セキュリティポリシー及び教育情報部作成の 「 iPad 取 扱 要 領 」 に 基 づ き , 初 期 設 定 を 行 っ た 。 内 容 は 次 の と お り で ある。 ○端末のパスコードの設定。 ○親機で使用するメールアドレスの設定。 ○ 親 機 で の iTunes イ ン ス ト ー ル 設 定 。 ○アップルIDの作成と端末の同期設定。 端末8台については,幼小学部2台,中学部1台,普通科2台,理 療科3台を割り当て,各端末に責任者を決定した。責任者のPCを親 機として,端末の管理,アプリケーション(以下アプリと省略)のイ 86 ンストールと同期を行い,使用方法を決定した。また,使用に当たっ て は ,iPad 貸 出 記 録 簿 に 記 入 し ,最 大 一 日 を 単 位 と し て 貸 出・返 却 を 行 い ,ア プ リ の 購 入・ダ ウ ン ロ ー ド・イ ン ス ト ー ル に つ い て は ,iTunes Store 利 用 記 録 簿 に 記 載 し , 管 理 職 に よ る 決 裁 が 必 要 で あ る こ と と し た。 (2)実践事例 ( ア ) 幼 稚 部 - 「 iPad で み よ う , 探 し て み よ う 」 動物園に行く校外学習の事前学習として,期待をもって取り組めるよ うに,いろいろな見方のできる動物を表示して学習した。クイズ形式 で,動物を選ぶ,見る活動を楽しく進めることができた。 (イ)小学部-「見て!さわって!」 注視させる方法として,端末のふちに沿ってコントラスがはっきりし たカバーを付けて興味をもたせ,対象者が手を伸ばして触ると,対象者 が好きな水の音がするアプリを使用した。 ( ウ ) 中 学 部 - 「 iPad の 基 本 的 な 操 作 を 覚 え よ う ! 」( 資 料 1 ) 写真を使用して端末で表示させ,対象者自らが見えやすい方法を見つ ける学習を行い,その後,数学の練習問題を使って拡大・縮小・移動な どの操作を行いながら,教科学習に使用した。 (エ)普通科- ( a )「 物 語 を iPad・ 電 子 黒 板 で 見 て 理 解 し よ う ! 」 物語の学習の動機付けとして,イラストや写真を取り込み,端末でス ライドショー形式を使い活用した。見えにくさの違いから,端末使用す る対象者,端末から電子黒板へ情報を転送して使用する対象者と分けて 学習した。 (b) 「 観 察 や 実 験 を 通 し て 身 近 な プ ラ ス チ ッ ク の 違 い を 知 る 。」 (資料2) プラスチックの燃え方について実験した。その様子を端末のカメラで 撮影し,実験後その映像を対象者に見せて,見えにくさを解消した。 (オ)理療科-(資料3) ( a )「 生 理 学 図 譜 」 を 作 成 し て 教 材 と し て 提 示 し た 。 ( b )「 は り の 刺 入 を 確 認 し よ う 」 iPad で は り の 刺 入 を 撮 影 し , 生 徒 が 運針について検討した。 消 化 器 系 の 解 剖・生 理 に つ い て ,リ ア リ テ ィ の あ る 図 譜 を 作 成 し ,iPad で 提 示 す る こ と で ,生 徒 の 理 解 を 助 け る こ と が で き た 。iPad を 利 用 す る こ と で ,各 自 の 視 力 状 況 に 合 わ せ て 図 を 拡 大 縮 小 し て 見 る こ と が で き た 。 各学部とも独自の工夫やアプリを使用しながら,端末を教材の提示装 置として使用した。また,簡易的なビデオカメラとしても利用できる点 から,見せたい動きを撮影し,見させる方法にも取り組んでいる。対象 87 者に意欲的に授業に参加させる方法として,触りたいという気持ちを起 こさせ,積極的に学習に参加させる道具として活用している。授業の最 初 に 端 末 の 基 本 的 な 操 作 方 法 を 取 り 入 れ て い る 。フ リ ッ ク ,ピ ン チ イ ン , ピンチアウトなど聞きなれない言葉であるが,指導者も一緒に学ぶ姿勢 で取り組んだ。様々な見えにくさを手助けする方法として,画面のコン トラスト調整や白黒反転,フォントの拡大縮小なども準備して取り組ん だ。 5 成果と課題 成果としては,各学部とも対象者の興味関心の高さから,操作方法は 短時間で身に付けることができている。そして,対象者の見え方や触り 方に対して,端末を使用することで効果的(安全・便利)に見ることが できている。 「弱視レンズを使用するときより短時間で容易に見えることから,今 まで見えにくかった物像を理解することができ,イメージもしやすいた め学習の理解が深まると考えられる。視覚障害者への有効な教材になる と 考 え ら れ る 。」( 中 学 部 ) 「火に恐怖心がある生徒だったため,実験では火から離れての観察と な っ た 。iPad を 使 用 す る こ と で 実 験 の 様 子 を 間 近 で 見 る こ と が で き , (燃 える様子)をはっきり言うことができた。また,何回も再生して燃える 様 子 を よ く 見 て い た 。」( 普 通 科 ) 「 iPad を 使 う こ と に よ り ,各 自 が 自 分 の 見 た い 大 き さ に 図 を 拡 大 縮 小 することができ,全体と局所を行き来しながら図を確認し,図を把握す ることができた。本学級は弱視のみであるが,全盲の生徒がいる学級で あ っ て も ,弱 視 の 生 徒 に は 図 を 説 明 し た あ と ,各 自 ,iPad を 見 な が ら 模 型を観察させ,各自が主体的に学習するのを促すとともに,それによっ て,浮いた時間を全盲の生徒の模型観察の指導に割くことができ大変, 効 率 的 で あ る 。」 (理 療 科 ) 課題としては,近づき過ぎて顔や手が不用意に画面に当たって,せっ かく上手に見ることができていても,リセットされたり,画面が動いて しまうこと,音が消えてしまうことがある。対処法としては,使用方法 を対象者にレクチャーすること,対象者が使いやすいように固定する道 具などが考えられる。 また,一度に多くの対象者に使用させる場合,各学部配当台数では不 足する点も指摘されている。学部間で連携を取りながら,調整・運用が 必要である。端末は携帯できてネットワークにつながることに意義があ る と い う 点 か ら ,Wi-Fi( ワ イ フ ァ イ )を 導 入 し て ,野 外 に 持 ち 出 し 活 動 の場を広げることで,もっと有効的な使い方ができると考えられる。来 88 年度はその使用方法も研究して行きたい。 資料1(中学部実践) 自立活動 題 材 : iPad の 基 本 的 な 操 作 を 覚 え よ う ~タップ,ダブルタップ,フリック,ピンチができるようにする~ 1 ねらい ○ 生 徒 は iPad 操 作 が 初 め て な の で , 基 本 的 な 操 作 を 覚 え る こ と を 行 う 。基 本 操 作 で あ る タ ッ プ ,フ リ ッ ク ,ピ ン チ が で き る よ う に す る 。 ○ iPad の 操 作 を 身 に 付 け る こ と で ,自 ら 進 ん で 見 え に く い も の を 見 よ うとする。 2 工夫 フリック,ピンチイン,ピンチアウトの練習では,生徒が興味をもっ て 練 習 で き る よ う に ,生 徒 が 興 味・関 心 に 応 じ て 写 真 を 選 び iPad に 転 送 して,写真の拡大,縮小,移動を行い,練習を行わせるようにした。 数 学 の 問 題 集 を PDF フ ァ イ ル に 変 換 し て ,iPad で 表 示 で き る よ う に し , iPad で 拡 大 , 縮 小 , 移 動 を 行 い 問 題 を 解 か せ る よ う に し た 。 3 成果・改善点(気づき) 生徒は基本的な操作については提示した写真に興味をもち,生徒自ら 拡大や移動を行い,細かなところまで見ることができていた。生徒は普 段の手指の巧緻性が良いとは言えないが,興味関心をもつことにより, 主体的に操作を行い,技能を短時間で習得することができた。 iPad を 活 用 す る こ と で 今 ま で 小 さ く て 見 え に く か っ た も の ,遠 く て 見 えにくかったものが,弱視レンズを使用するときより短時間で容易に見 えることから,今まで見えにくかった物象を理解することができ,イメ ー ジ も し や す い た め 学 習 の 理 解 度 が 高 ま る と 考 え る 。こ の こ と か ら iPad がこれからの視覚障害者への有効な教材になると考えられる。 現段階は,画像を拡大したときに,画像がぼやけ繊細に見えないとき も あ る の で , iPad 画 面 の 解 像 度 等 の 機 能 の 進 歩 が 望 ま れ る 。 iPad を 手 で 持 ち ,物 象 を 見 る と ぶ れ て 見 え に く い こ と も あ る の で ,固 定する道具を用意する必要がある。 89 資料2(高等部普通科実践)理科(科学と人間生活) 単元名:プラスチックの分類とその他の高分子化合物 ~観察や実験を通して身近なプラスチックの違いを知る~ 1 ねらい 理科(科学と人間生活)の授業で,プラスチックの性質の違いを調べ る 実 験・観 察 を 行 っ た 。3 種 類 の プ ラ ス チ ッ ク を そ れ ぞ れ 水 に 浮 か べ る , 加熱する,火で燃やす実験を行い,その様子を観察する内容であった。 すすを出しながら燃えていることや,燃えてはいるがすぐに消えるこ と ,溶 け な が ら 燃 え て い る こ と な ど ,詳 し く 観 察 が で き る よ う iPad を 使 用 し た 。ま た ,火 へ の 恐 怖 心 か ら し っ か り と 観 察 す る こ と が 難 し い 場 合 , 実験後の補助教材として使用できると考えた。 2 工夫 ○実験を行うことでイメージしやすいので,実際に実験を行った後に 補助的な教材として使用した。 ○ 生 徒 の 見 え 方 を 事 前 に 確 認 し ,部 屋 を 暗 く し て 映 像 を 見 る よ う に し , 何回かくり返しながら再生することや説明を少し加えることでより 映像を分かりやすくした。必要に応じて映像を拡大することもあっ た。 ○映像を事前に撮るときに,背景の色は黒くし,火の燃える様子がわ かるようにした。 3 成果・改善点(気づき) 火に恐怖心がある生徒だったため,実験では火から離れての観察とな っ て し ま っ た 。iPad を 使 用 す る こ と で 実 験 の 様 子 を 間 近 で 見 る こ と が で き,溶けながらよく燃えていることや燃えにくいこと,黒っぽくなって いることなどはっきりと言うことができた。また,何回も再生して燃え る様子をよく見ていた。 映像を近づいて見るので,画面に顔があたって映像が止まってしまう 事があった。注意事項としてそのことを伝えることが必要である。 90 資料3(理療科実践)人体の構造と機能(生理学) 単元:消化器系 1 ねらい 消 化 器 系 の 解 剖 ・ 生 理 に つ い て ,図 譜 を 作 成 し ,iPad で 提 示 す る こ と で,生徒の理解を助ける。生理学で使用する図譜については,電子板書 システムを利用して提示してきたが,このシステムでは,生徒個々の視 力 状 況 に 合 わ せ て ,図 を 提 示 す る こ と が で き な い 。iPad を 利 用 す る こ と で,各自の視力状況に合わせて図を拡大縮小して見ることができる。 2 工夫 図譜で使用する図については,広く解剖学書,生理学書を調べ,リア リティのあるもの,比較的理解しやすいものを収集し採用した。 図の枚数が多いため図の提示は,まず電子板書システムで図を示して か ら iPad で 確 認 す る よ う 指 導 し た 。 図で注目する事項については,口頭で説明しながら確認させた。 3 成果・改善点(気づき) iPad を 使 う こ と に よ り ,各 自 が 自 分 の 見 た い 大 き さ に 図 を 拡 大 縮 小 す ることができ,全体と局所を行き来しながら図を確認し,発色も鮮明で あ る こ と か ら ,生 徒 に 見 せ た い 図 や 絵 を 容 易 に 把 握 さ せ る こ と が で き た 。 生 徒 に は 図 を 説 明 し た あ と ,各 自 iPad を 見 な が ら 模 型 を 観 察 さ せ ,主 体的に学習することを促すことができ大変効果的であった。 理 療 科 で の 使 用 は ,大 量 の 写 真 を 事 前 に 準 備 し ,iPad と 管 理 用 P C を 同期しておく必要から,準備に十分な時間が必要である。また,生徒が 1学級3人以上であることから,他学部とも連携し,調整・運用が必要 である。 91 Ⅰ 中途視覚障害者に対する歩行指導 第2章 実践研究 中途視覚障害者に対する歩行指導 1 主幹実習教諭 久山恵美子 教 諭 細川 義之 教 諭 相川 貴裕 はじめに 理療科では,中途視覚障害者の入学者が増え,入学後の校内移動に困 難 を き た し ,手 引 き 歩 行 に 依 存 す る 者 ,10 分 間 の 休 憩 時 間 内 に 教 室 移 動 が で き な い 者 も 少 な く な い 。そ こ で , 「 生 徒 が 安 全 で ,自 立 し た 学 校 生 活 を送るためにも,中途視覚障害者に対する歩行指導の充実を図る必要が あ る 。」 と 考 え , 平 成 22 年 度 よ り , こ れ ま で の 一 部 の 教 職 員 が 中 心 と な った歩行指導体勢を見直した。さらに理療科の教職員全員が共通認識の もと,生徒の歩行指導に取り組むことができる「歩行指導マニュアルの 作成」を目標に,特に中途視覚障害者に対する教室内移動・屋内歩行を テーマに研究を進めてきた。 初年度は,歩行指導に関する他校の取組調査や文献研究,本校の校舎 模 型 や 校 内 触 地 図 を 作 成 し ,生 徒・教 職 員 で 検 証 し , 「触図教材作成上の 留意点」をまとめた。また,全盲教職員とアイマスク装着(中途視覚障 害者を想定)での歩行を画像と聞き取りにより比較し,整理した。その 他,校内の危険箇所の確認や,その対策についても検討を行った。 昨年度(二年目)の取組は,初年度作成した校舎模型や触地図を活用 して,実際に新入生に対して歩行指導を行い,その流れを整理し,目標 であった「校内における中途視覚障害者の歩行指導マニュアル」を作成 した。 そして今年度(三年目)を研究最終年度とし,次の方法で研究を進め た。 2 方 法 (1)これまでの研究成果である「校内における中途視覚障害者の歩行 指 導 マ ニ ュ ア ル 」を 映 像 化 し ,継 承 資 料 と す る 。 【 表 1・ 写 真 1 ~ 3 参照】 ( 2 )各 教 室 の ナ ン バ リ ン グ・シ ス テ ム( 番 号 等 に よ る 区 分 )を 提 案 し , 校 内 で 活 用 で き る よ う に す る 。( 4 3 研究内容に記す) 研究計画 ( 1 )「 校 内 に お け る 中 途 視 覚 障 害 者 の 歩 行 指 導 マ ニ ュ ア ル 」 平 成 24 年 4 月 ~ 8 月 実態把握表の作成,資料原稿作成 92 9 月 ~ 10 月 10 月 ~ 12 月 ビデオ撮影 DVDの編集作業,資料(DVD・冊子)の 完成 (2)各教室のナンバリング・システム 平 成 24 年 4 月 ~ 7 月 7月~8月 ナンバリングの原案作成 歩行訓練士との連携 9 月 ~ 10 月 校 内 各 部 署 と の 連 携 , ナ ン バ リ ン グ の 表 示 作 業 11 月 ~ 12 月 4 理療科生徒・教職員で検証,意見集約 研究内容(教室のナンバリングについて) 現在,本校では教室にナンバリングはなく,すべて「○○教室」と表 示してある。しかし,ホームルーム教室は毎年のように配置が変わる。 そのため生徒はその都度,メンタルマップを修正しなければならない。 そこで,校内の教室に一定の法則をもったナンバリングを行い,問題の 解決を試みた。 本校の校舎配置は,南北に走る中央廊下を中心に,東西に3棟の校舎 が建っている。各校舎の中央には東西に走る廊下があり,教室を北側と 南 側 に 分 け て い る 。【 図 1 参 照 】 そ こ で 百 の 桁 に 校 舎 の 階 数( 1 ~ 3 ),十 の 桁 に 各 校 舎 の 北 ま た は 南 側 を 記 す 数 字( 1 ~ 6 ),一 の 桁 に 中 央 廊 下 を 基 準 に し た 教 室 の 数( 1 ~ 9 ) という様にナンバーを打ち,理療科に提案した。 例1:指圧教室(315)=3階 北校舎の北側 中央廊下から西に5 つめの教室 例2:中3B教室(248)=2階 東校舎の南側 中央廊下から東に 8つめの教室 例3:小5・6A教室(165)=1階 南校舎の南側 中央廊下から 西に5つめの教室 し か し ,「 伝 い 歩 き の 場 合 は ,教 室 よ り も 扉 の 数 に ナ ン バ リ ン グ を 行 っ た 方 が よ い 。」や「 全 て の ナ ン バ ー は 憶 え ら れ な い 。ナ ン バ リ ン グ 自 体 必 要 な い 。」な ど の 意 見 が 出 さ れ た 。こ の 意 見 を 参 考 に ,再 度 文 献 研 究 や 校 内 の 歩 行 訓 練 士 3 名 と 連 携 し た 結 果 ,「 目 標 が 教 室 や 部 屋 で あ る な ら ば , そ れ を 意 識 さ せ る ナ ン バ ー の 方 が よ い 。」と い う 意 見 に ま と ま り ,次 の よ うに整理し直した。 変 更 点:ナ ン バ ー の 打 ち 方 を , 「 校 舎 名 階 数 校 舎 の 北 側 を N・南 側 を S 教室の数」と整理した。 例1:指圧教室(315) → 北3N5 例2:中3B教室(248) → 東2S8 93 例3:小5・6A教室(165) → 南1S5 ナンバリングの使い方は,現在の「○○教室」とナンバリング表示を 併用し,生徒の実態に応じて,使いやすい方法で指導を進めるものであ ることを説明した。 ナンバリングの表示【写真4参照】は,理療科を中心に行う予定であ っ た が ,「 活 用 し た い の で 他 の 学 部 に も 表 示 し て 欲 し い 。」 と 話 が あ り , 関係部署と連携を取り,校内全教室に表示することにした。 次に表示の文字サイズや場所について検討を行った。 現 在 の 教 室 表 示 は , 教 室 出 入 り 口 上 部 ( 床 上 205c m ) に 「 ○ ○ 教 室 」 と い う 縦 8 c m ×横 23c m の 表 示 板 が 取 り 付 け て あ る 。そ の た め 弱 視 者 には表示が確認しづらい。そのためナンバリングの表示をMSゴシック 太 字 137 ポ イ ン ト で 作 成 し ,縦 8 c m ×横 21.5c m の ラ ミ ネ ー ト 加 工 を 行 い , 教 室 の 扉 中 央 ( 床 上 108c m ) に 点 字 と と も に 貼 り 付 け た 。 表示完了後,校内の教職員に文章で周知した。理療科生徒には各クラ ス に 墨 字 と 点 字・デ イ ジ ー 資 料 を 配 付 す る と と も に 説 明 を 加 え た 。ま た , 校舎の掲示板に校舎図とナンバリングの表を掲示した。 5 考 察 11 月 に ナ ン バ リ ン グ に つ い て 理 療 科 生 徒 を 対 象 に ア ン ケ ー ト を 行 っ た 。 【表2参照】 アンケートより,ほとんどの生徒が知らない教室へ行く場合,人に聞 いて移動していた。その場合の説明は「校舎名・階数・校舎廊下の北又 は南側・中央廊下からの教室数」と,今回のナンバリングの規則性に一 致 し て い る 。 し か し ,「 ナ ン バ リ ン グ を 使 っ て 移 動 し た こ と が あ る か 。」 の 質 問 に 対 し て は , 大 半 の 生 徒 が 「 機 会 が な か っ た 。」 と 回 答 し た 。 こ れは,取組が年度半ばとなり活用期間が短かったことが考えられる。表 示については,文字の大きさ・場所ともにほぼ良いと回答している。そ の 他 , 教 室 移 動 に 困 っ た 経 験 を 訪 ね る と ,「 今 の 視 力 で は 教 室 上 部 の 表 示が見えず,自力で教室移動するのは困難であった。このナンバリング 制 度 が 普 及 す れ ば , 人 の 手 助 け な く 移 動 で き る と 思 う 。」「 今 回 配 付 さ れ た資料で,校内の教室配置が理解できた。入学時に資料をもらうと移動 に 役 立 つ と 思 う 。」 と い う 肯 定 的 な 意 見 以 外 に ,「 南 階 段 が 暗 く 危 険 で あ る 。」「 伝 い 歩 き の 際 , 廊 下 交 差 部 分 の フ ッ ト サ イ ン が 足 が か り と し て 役 に た た な い 。」 や 「 校 舎 の 案 内 図 が ど こ に も な い 。」 な ど , 校 内 環 境 に つ いての課題も示された。 今 後 は ,ナ ン バ リ ン グ に つ い て , 「 研 修・ 研 究 報 告 会 」や 年 間 資 料 等 で 教職員に周知するとともに,入学者オリエンテーションや学校行事,生 徒の歩行指導にも積極的に活用しながら普及して行きたい。また,校舎 94 案内図など校内環境の課題についても,関係部署と連携し可能な範囲で 改善に努めたい。 6 まとめ 本研究にあたり文献研究等を行ったが「 ,中途視覚障害者に対する歩行 指導」について詳しく書かれたものは非常に少なかった。そこで当事者 である理療科の教職員や生徒の立場から歩行指導について研究を進めて きた。 研究1年目,必要最小限の教室移動しか知らない生徒の「この廊下の 先 に は 何 が あ る ん で す か 。ど こ に 行 く ん で す か 。」の 言 葉 に 刺 激 さ れ ,校 舎模型や触図を作成し,これらを活用してメンタルマップを広げること が で き た 。複 数 の 生 徒 が「 あ の と き 模 型 や 触 図 を 見 せ て も ら い ま し た ね 。」 と長く記憶に残っていた。このことからも,視経験のある生徒に模型や 触図を活用して指導を行うことが効果的であることが分かった。 研究2年目,新入生の実践事例をとおして,目標であった「校内にお ける中途視覚障害者に対する歩行指導マニュアル」を作成した。しかし 作成したマニュアルはあくまでも基本型であり,対象生徒の要望や能力 によって指導法も指導期間も変化するものであることを十分理解してお かなければならない。 研究3年目,マニュアルに実態把握表を新たに加え,生徒の目標や実 態を明らかにし,指導経過を記録していくことで,誰が指導に当たって も一貫性をもった指導ができると思われる。 教室のナンバリングについての研究は,検証期間が短かったため歩行 指導にどれだけ活用できるか不明瞭であった。今後は教職員へのアンケ ートを実施するなどして経過観察を行う必要がある。 今回の歩行指導研究を,生徒の安全な歩行,充実した学校生活の一助 にしていきたい。 95 【表1】校内における「中途視覚障害者の歩行指導マニュアル」より(抜粋) 実 態 把 握 表 1 理療科 氏名: □ 読 年齢: 歳 視覚情報 眼疾患名 右: 左: 遠距離視力 右: ( ) 左: ( ) 近距離視力 右: ( ) ( ) 視 右: 野 利 き 目 左: □ 書 き □ スピード ② 普通文字: ポイント □ 白黒反転 ③ レ ン ズ: □ 近距離用 □ 遠距離用 □ 倍率( ④ 音声機器: □ パソコン □ テープ □プレクストーク 5 倍) 精神面 □ 障害の受容 □ コンプレックス □ 将来不安 □ 恐怖心 左: □ 羞明 □ 斜視 ) □ 複視 □ 眼振 6 歩行訓練の経験:□ なし □ あり( □ 目の動き(目標物を目で追える) ① 防御姿勢 年前 訓練士名: ) …□ できる □ できない( ) □ 距離感がわかる ② 方向の取り方 …□ できる □ できない( ) 病歴について ③ 手引きでの歩行…□ できる □ できない( ) ① 発症時期: ④ 伝い歩き …□ できる □ できない( ) ② 進行の有無: ⑤ 白杖歩行 …□ できる □ できない( ) 6 9 ③ 治療内容: 4 み □ 普通点字 □ 右 ・ □ 左 □ 色覚異常( 3 字: □ L点字 年 性別: □ 夜盲 学習環境 ① 点 基本情報 学年:高等部 2 4 7 家庭環境 8 課題 9 目標設定 その他の身体情報(触覚・聴覚・平衡感覚・位置覚・運動覚を含む) 学習環境 ① 点 字: □ L点字 □ 読 み □ 普通点字 □ 書 き □ スピード ショート: ② 普通文字: ポイント ③ レ ン ズ: □ 近距離用 □ 遠距離用 □ 倍率( ④ 音声機器: □ パソコン □ テープ □プレクストーク ロング: □ 白黒反転 倍) 10 経過記録 【表2】ナンバリングについてのアンケート アンケート 4 教室のナンバリングの仕方について,どう思いますか。 現在, 「校舎名,階数,各校舎廊下の北側(N)または南側(S) ,中央廊下 教室のナンバリングについて,アンケートに御協力ください。 からの教室数」の順にナンバリングを行っています。 学年( )年 在学年数( )年 視力(右: 氏名(※ 左: ア わかりやすい イ わかりにくい ) 具体にはどの部分がわかりにくいですか。また,どのように改善したら良 ) いと思いますか。 1 ( 知らない教室へどのようにして行きますか。 ア 扉の上の教室表示を見ながら行く。 イ 人に連れて行ってもらう。 ウ 人に行き方を聞いて行く。 5 教室のナンバー表示について,どう思いますか。 ア 文字の大きさ ・よい その際,どのような説明を受けますか。 エ 7 9 2 ( ) その他( ) 教室に番号(ナンバリング)がついたのを知っていますか。 ・はい ) イ ・小さい ・その他( ) 表示場所(墨字・点字) ・よい 6 ・大きすぎる ・低い ・その他( ) 教室のナンバリングは,今後,知らない教室へ行くときに利用できると思い ますか。 ・いいえ ・はい 3 ・いいえ 教室のナンバリングを利用して,知らない教室へ行ったことがありま 理由をお聞かせください。 すか。 ア ( はい 利用したのは,どのようなときでしたか。 ( イ 利用する機会がなかった。 ウ いいえ ) 利用しなかった理由は何ですか。 ( ) 7 教室移動で困った経験があればお聞かせください。 ) 【写真1~3】歩行指導マニュアルより ↑ 北校舎 東 廊 下 東校舎 廊 下 中 央 廊 下 廊 廊 写真1 下 下 写真2 8 9 南校舎 食 堂 【図1】校舎配置図 写真3 写真4 ナンバリング表示 2階 体育館 1階 格技場 第3章 Ⅰ 自作の教材・教具一覧 Ⅱ 教材・教具カード 自作の教材・教具 開発の取組 Ⅰ 1 自作の教材・教具一覧 教科等(6点) 項目 作品名 製作教職員氏名 国語 漢詩パズル 高等部普通科教諭 増田 知美 理科 めだか模型 小学部指導教諭 三浦 憲一 英語 だんご2兄弟 高等部普通科教諭 中川 紀美子 保健体育 痛くないくん 高等部普通科重複研究グループ 保健指導 立体歯列模型 全教科 2 iPad 操作用インターフェース 自立活動等(10 点) 作品名 養護教諭 澄川 みどり 養護教諭 新見 京子 中学部教諭 中須賀 裕幸 製作教職員氏名 幼稚部教諭 上山 知子 ポトポトポットン 幼稚部教諭 中村 久美子 小学部教諭 見田 純子 幼稚部教諭 上山 知子 幼稚部教諭 中村 久美子 小学部教諭 見田 純子 幼稚部教諭 上山 知子 幼稚部教諭 中山 絹子 幼稚部教諭 中村 久美子 おしっこ大成功!お知らせセンサー 小学部教諭 宇髙 有理子 カチカチちょっきん! 小学部教諭 宇髙 有理子 幼稚部教諭 中山 絹子 小学部教諭 平岡 千加子 お金の種類わけシート 高等部教諭 中本 和幸 仕分けケース 高等部教諭 中本 和幸 ふくろづめくん 高等部普通科重複研究グループ 着衣枠セット PART1, PART2 光のトンネル 鈴ネット 99 3 理療(4点) 作品名 アクチン・ミオシン滑走模型 製作教職員氏名 高等部理療科教諭 寺口 さやか 頭痛くん 高等部理療科教諭 寺口 さやか 高等部理療科教諭 細川 義之 各教室のナンバリング 高等部理療科主幹実習教諭 久山 恵美子 高等部理療科教諭 寺口 さやか,森 解剖・生理簡略触図 清水 大隆 和行,平元 一夫 高等部理療科実習教諭 後藤 100 崇志 Ⅱ 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 教材・教具カード 漢詩パズル 国語科(国語総合・古典) 増田知美 高等部普通科 目 的 漢文の構成の理解 対 象 高等部普通科 単一障害 弱視生徒 指導の ステップ ○漢詩の導入時に用いる。 ○教科書,またはノート等に書き写した漢詩を見ながら,漢字カードを並べさ せ,漢詩を完成させる。 ○実態によっては何も見ずに完成できるまで繰り返させる。 ○ゲーム形式で,時間を計ったり競争をさせたりする。 効 果 ○パズルを行うことで,抵抗感なく漢詩の学習に取り組ませることができた。 ○返り点の意味や対句等に気付く生徒もいるなど,漢詩の構成について自然に 理解させることができた。 課 題 ○弱視生徒には利用できるが,今後盲生徒に用いるための工夫が必要である。 材 料 画用紙,マグネットシート,板,スチール板,黒シート 参考資料 所 在 『漢詩・漢文なるほどエピソード&ゲーム集』 資料室 101 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 めだか模型 理科 三浦憲一 小学部 目 的 めだかの雌雄の特徴を知る 対 象 小学部5年児童 指導の ステップ 弱視児童の場合 ○めだかを飼育する。 ○拡大読書器等を使用し,めだかの体の様子について見える範囲で整理する。 ○めだかに雌雄がいることを知る。 ○模型を比較し,ひれの特徴を知る。 盲児童の場合 ○模型を比較し,ひれの特徴を知る。 効 果 ○見たり,触ったりすることはできなかったが,めだかは雌雄でひれに違いが あることが分った。 課 題 ○めだかの原型を元に,背びれ,しりびれの特徴を引き出せていないため, 「は らびれにも違いがある。 」という児童の意見が出された。 材 料 石膏ねんど,アクリル絵の具 参考資料 所 在 東京書籍新しい理科5年 直観教室 102 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 だんご2兄弟 外国語(英語) 中川紀美子 高等部普通科 目 的 完了時制の概念の理解 対 象 単一障害 盲弱共通 中学部3年から高等部3年 指導の ステップ ○完了時制の形を口頭とプリントで説明する。 ○本教材の形状を触察させて「以前の事象がある時点に影響する」という概念 を体感させる。 ※本教材は, 「継続」を示す「ソーセージ君」と, 「経験・完了・結果・大過去」 を示す「だんご2兄弟」の2点から成る。 ○起点となる時を,ノートの継ぎ目などで示し,その上で本教材をスライドさ せて,現在完了・過去完了・未来完了の概念を体感させる。 ○具体的な英文と対応させながら,英文のどの箇所が本教材のどの部分(すな わち,どの時点)を示しているのか答えさせる。 効 果 ○使用した生徒全員が「口で説明されるより,はるかにわかりやすかった。 」と 感想を述べる。 ○生徒自身に教材を操作させることにより,授業者も生徒の理解度がよく把握 できる。 課 題 ○油粘土で作ったため,使用中に手が汚れたり,形が崩れて何度も整形した。 紙粘土か発泡スチロールなど素材を工夫すればよかった。 ○下に敷く台紙は,あり合わせのノートを使用したが,立体コピーなどで時の 流れがわかるグリッドなどを作ると良いかも知れない。 材 料 粘土,棒針編み用の編み棒 参考資料 所 在 なし(自作プリントを改良した) 資料室 103 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 目 的 対 象 指導の ステップ 痛くないくん 保健体育 普通科重複研究グループ 高等部普通科 いろいろな実態にある生徒が,よ り安全に,一緒にゲームを行うた め。 弱視生徒,盲生徒 ○集団でフロアバレーをする際に使用する。 効 果 ボールの表面を低反発クッションで被うことで,ボールが当たった際の衝撃 を和らげることができた。さらに,クッションで被ったことでボールの総重量 が重くなるとともに,転がる時の抵抗が増加し,打球後のボールスピードが遅 くなった。これらの結果,スピードボールや空中を飛ぶボールが減少し,安全 面が向上した。 課 題 ○ボール内の鈴の音が聞こえにくくなった。 材 料 鈴入りバレーボール,低反発クッション,蛍光色布ガムテープ 参考資料 所 在 なし 体育準備室 104 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 目 的 対 象 指導の ステップ 効 果 課 題 材 料 参考資料 所 在 立体歯列模型 保健指導(歯科保健教室) 澄川みどり,新見京子 養護教諭 歯列の理解及びみがき残し部分 の触察による確認。 幼稚部幼児,小学部児童 ○学校歯科医,歯科衛生士がプラークテスターを使用した「染め出し検査」を 行い,個別にみがき残し部分を確認後,立体歯列模型にみがき残し部分を赤 ペンもしくは赤いシールで示す。 ○幼児児童に立体歯列模型を触らせ,みがき残し部分を確認させる。 ○弱視生徒は,鏡でみがき残し部分を確認する。 ○学校歯科医,歯科衛生士から結果に基づいてみがき方についての個別指導を 本人, (出席されている場合は)保護者が受け,歯みがきの練習をする。指導の 内容は,コメントシートに記載する。 ○指導後,本教材とコメントシートを各自持ち帰る。 ○歯列図を立体模型にしたことは,口腔内を触る,又は鏡で見るだけでは分か りにくい,奥歯や歯間,歯の裏側,歯と歯肉の間のみがき残し部分を確認す るのに効果的だった。 ○立体的な教材にすることで,幼児児童が興味関心をもって触察していた。 ○平面の歯列図よりも,口腔内を立体的に捉えられる点で効果的だった。 ○コメントシートと合わせて家庭に持ち帰らせることで,保護者に対してみが き残し部分に留意した個別の歯みがき方法や注意点等を啓発することができ た。 ○幼児や小学部低学年の児童は,口腔内を立体的に捉えることが難しいようだっ た。対象の幼児児童の理解度に応じて,平面の歯列図と立体歯列模型を使い分 ける必要がある。 ○幼児児童の理解を深めるために,本教材を使った事前指導を行うとより効果的 であったと考えられる。 ○立体歯列模型を使ったことにより,学校歯科医,歯科衛生士から,模型が立 体になっているため,みがき残し部分を赤ペンで示しにくかったという意見 が出された。 立体コピー用紙,シール,赤ペン なし 保健室 105 作品名 iPad 操作用インターフェース 教科等 全教科・領域 制作教職員 中須賀裕幸 氏名等 所 属 中学部 目 的 iPad のソフトを障害者用のス イッチで操作できるようにする。 対 象 肢体不自由や手指の機能障害の ある児童生徒など 指導の ステップ ①使用する児童生徒にフィットするスイッチを用意する(ビッグマック ス イッチ,棒スイッチ,PPS スイッチなど) 。 ②iPad を用意し,教育目的に沿い且つワンクリックで使えるソフトを準備す る。 ③この機器を,iPad 及び障害者用スイッチに接続する。また接続したスイッ チを生徒の状態にあわせてフィッティングする。 ④指導者が実際に操作してみせることにより操作法を理解させ,児童生徒に 使用させる。 効 果 この機器は,iPad と障害者用スイッチをつなぐインターフェースである。 手指の機能障害をもつなどにより画面上で直接に操作することが難しい児 童生徒に活用できる。 課 題 ○活用できるものがワンクリックで操作できるソフトに限られること。 材 料 キーボードの十字キーの基盤,カメラコネクションキット,DC ジャック,電 線,電池等 参考資料 所 在 なし 社会科準備室 106 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 目 的 対 象 指導の ステップ 効 果 課 題 材 料 参考資料 所 在 ポトポトポットン 自立活動,遊び 他 見田純子,中村久美子 上山知子 幼小学部 手指の探索機能・操作機能を高め るため。 幼児,児童,生徒 〔平面探索〕 ①身体に近い部分から探索することを促す。 ②遠いところにもビー玉を設置し,探索することを促す。 ③両手を使って探索することを促す。 〔順番に落とす〕 ①左→右,上→下等,順番に落とすことができるように,ビー玉を設置する。 ②徐々に距離を伸ばしていくことで,探索できる範囲が広くなるようにする。 ○適度な抵抗感と,ビー玉が落ちるポトンという音を楽しみながら行うことが できた。 ○因果関係が分かりやすいため,知的障害を併せ有する幼児児童生徒でも,達 成感を得ながら取り組むことができた。 ○机上の広い面を探索する力を付けることができると考える。 ○ビー玉の大きさに若干のばらつきがあるため,落ちやすかったり落ちにくか ったりする。裏面から支えるPPシートを貼り付ける等の工夫が必要である。 ○上面を付け替えることで,難易度を変えることができれば,探索力が初期の 段階の幼児児童生徒でも使うことができる。 (作成検討中) ○台と玉の色とのコントラストを工夫すると,見ることを促すことができる。 シナベニヤ,釘,MDFカット材,ビー玉 筑波大学 准教授 佐島毅先生「玉落とし教材」設計図 幼小学部教育相談室 107 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 目 的 対 象 指導の ステップ 着衣枠セット PART1 自立活動,遊び 他 見田純子,中村久美子, 上山知子 幼小学部 ○衣服の着脱をスムーズに行える ようになるため。 ○手指の巧緻性を高めるため。 幼児,児童,生徒 ①マジックテープ訓練器 ○教師と一緒にマジックテープをはいだりつけたりする。 ○一人でマジックテープをはいだりつけたりする。 ②スナップ訓練器 ○教師と一緒にスナップを外したりはめたりする。 ○一人でスナップを外したりはめたりする。 ③ファスナー訓練器 ○教師と一緒にファスナーを上げたり下げたりする。 ○一人でファスナーを上げたり下げたりする。 効 果 ○衣服の着脱の際に困難となるマジックテープ,スナップ,ファスナーを, そのことに特化して練習することができる。 ○平面に固定されているため,衣服に付いているものを練習するよりも簡単で ある。 課 題 ○バリエーションを増やせると良いと考える。 材 料 シナベニヤ,黒い布,木枠,ファスナー,スナップ,マジックテープ 参考資料 所 在 モンテッソーリ教具「着衣枠」 幼小学部教育相談室 108 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 目 的 対 象 指導の ステップ 効 果 着衣枠セット PART2 自立活動,遊び 他 見田純子,中村久美子, 上山知子 幼小学部 ○衣服の着脱をスムーズに行える ようになるため。 ○手指の巧緻性を高めるため。 幼児,児童,生徒 ①ボタン訓練器(横穴) (縦穴) ○教師と一緒にボタンを外したりかけたりする。 ○一人でボタンを外したりかけたりする。 ②ひも訓練器 ○教師と一緒にひも結びをする。 ○一人でひも結びの練習をする。 ○衣服の着脱の際に困難となるボタン,ひも結びを,そのことに特化して練習 することができる。 ○平面に固定されている為,衣服についているものを練習するよりも簡単であ る。 ○ボタン訓練器は,木枠から外して,実際に着たような状態で練習することが できる。 課 題 ○バリエーションを増やせると良いと考える。 材 料 シナベニヤ,黒い布,木枠,ボタン,ひも 参考資料 所 在 モンテッソーリ教具「着衣枠」 幼小学部教育相談室 109 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 目 的 対 象 指導の ステップ 効 果 光のトンネル 自由遊び,休憩時間 上山知子,中山絹子, 中村久美子 幼稚部 ○イルミネーションライトを使っ た光遊び。 ○暗室での光遊び。 ○トンネル遊び。 光遊びをするのであれば,光覚以 上の幼児児童。トンネル遊びであれ ば,視力は問わない。 ○トンネル内にイルミネーションライトを設置し,光らせたものを見ながらト ンネル遊びをすることができる。 ○出入口の布を下ろすと,暗室になる。好きな光るおもちゃをトンネル内に 持って入って光遊びをすることができる。 ○よつばいで進みながら,トンネルをくぐることができる。 ○トンネルの中で動ける子は,動いて,見て,触ってという活動を,繰り返し 楽しむことができた。 ○ダンボールのトンネルは安定しており,方向性がわかりやすいので,スムー ズにくぐることができた。 ○狭いトンネルを行き来する中で,子ども同士のコミュニケーションが生まれ ていた。 課 題 ○保管場所が決まっていない。 ○大人が一緒に入ることが難しいため,一人で入ることができない幼児児童の 活動が制限されてしまう。 材 料 ダンボール(大)3個,布(出入口カーテン用,入口目印用) ,黒い模造紙 参考資料 所 在 なし 幼稚部3・4歳児教室 110 作品名 おしっこ 大成功!お知らせ センサー 日常生活の指導等 教科等 制作教職員 宇高有理子 氏名等 所 属 小学部 便座で排尿できたとき児童に成 目 的 功をフィードバックできるように する。 対 象 指導の ステップ 効 果 便座での排尿を練習中の幼児児童。 ①「おしっこに行きます」という言葉と,センサーが反応したときの音が聞こ えるスイッチを押し,トイレに行くことを意識付ける。 ②ポータブルトイレにセンサーを設置し,児童と一緒に座る。 ③トイレのテーマソングを歌いながら,児童の体の一部に水をかかるようにし ながら,センサーに水をかける。 ④センサーが反応した音を聞き,おしっこをすると音が鳴ることを意識付けて いく。 ○センサーを取り入れる前は,便座に座っている間,本児は早くマットに降 りたい様子で身体を動かし,姿勢が安定しにくかった。トイレで排尿できれ ば楽しい,気持ち良い,トイレで排尿したいという気持ちをもってほしい(便 座に座る意味をもたせたい)と考えていた。 ○本児は水や流水音が好きなので,水がかかることや流水の音が聞こえるこ とがうれしいようで,よく笑う。楽しみながら便座に座ることができるよう になり,音がしなくても便座に座るだけで笑うようになった。トイレという 場が楽しいものになったので,今後は便座に座ったまま排尿し,その経験を 重ねて定着するよう,取組を続けていきたい。 課 題 ○一度水がかかって反応すると,すぐには2度目の音が鳴らないこと。 材 料 銅板,雨樋,ミュージックカード,導線,両面テープ,接着剤,はんだ, ジャック,プリンカップ 参考資料 所 在 「あれば便利なツール MELODY TOILET」 小学部1・2・3年B組教室 111 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 目 的 対 象 カチカチちょっきん! 自立活動 宇高有理子 小学部 図工等で,はさみで切る練習をす ることができる まひ等があり,手指が動かしにくい 幼児児童 指導の ステップ ① 児童の手が動かしやすい位置と角度を決めて机にガムテープで貼り付け固 定する。 ② カスタネットバサミの音を鳴らして興味をひく。 ③ 児童が伸ばした手を一緒に持ち,親指を上にしてはさみを持てるようにす る。 ④ 細長い紙を刃の間に挟んでおき,1回の「ちょっきん」の動作で切れるよ うにする。 ⑤ はさみの持ち方に慣れてきたら,連続の「ちょきちょき」の動作で切れる 活動に移行する。 効 果 ○カチカチという音が楽しいので,児童が興味をもって,自分から手を伸ばす ことができた。 ○机に固定することで,手指の動きのみに集中して意識することができた。 課 題 ○高さや角度がその場では変えて調節できないこと。 材 料 カスタネットばさみ,木材,ホットボンド,ガムテープ,釘 参考資料 所 在 なし 小学部1・2・3年B組教室 112 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 目 的 対 象 指導の ステップ 鈴ネット 遊び又は自立活動(幼稚部) 中山絹子,平岡千加子 幼小学部 ボールを投げたり,蹴ったり,転 がしたりするなどの意欲を高める。 幼児児童生徒 ① 壁にフックを付けて吊るしたり,ゴールなどに立て掛けておく。 ② 吊るしたり,立て掛けておいた鈴ネットの方向に向かって,ボールを 投げたり,転がしたり,蹴ったりする。 効 果 ボールを投げたり,蹴ったり,転がしたりすると,ネットが揺れて鈴の音が する。そのことによって,ボールが的に当たったことがフィードバックされ, ボールを操作する意欲が高まる。的の範囲が広いので,ボール操作に不慣れな 幼児児童生徒の意欲付けに有効である。 課 題 ボールが当たると,ネットが連動して揺れる。ネットにくくりつけてあるた くさんの鈴が揺れて音がするので,的に当てたいという意欲付けにはなるが, ボールがどこに当たったかを定位することができない。 材 料 ネット(約 1.8m×約3m) ,鈴(700 個位) ,タコ糸 参考資料 所 在 なし 体育館 器具庫 113 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 目 的 対 象 お金の種類わけシート 自立活動(手指・視知覚学習) 中本和幸 高等部普通科 硬貨の種類を見分ける力をつけ, 将来の買い物等に生かすため。 普通科弱視生徒 指導の ステップ 手指・視知覚の自立活動で取り組んでいるが,その力を自動販売機での買 い物学習等につなげていく。また個別の指導計画の中に目と手の協応をさ せて操作する活動を入れている。最初は6種類の硬貨の中から自動販売機 での活用頻度が高い百円,五十円,十円硬貨を取り上げ,まず3つの硬貨 が見分けられるように取り組み,徐々に増やすようにした。 効 果 硬貨の大きさにくりぬいた型を作りその中に入れることで,見ることだけ で判断しにくい場合に大きさでも確認できるようにした。枠に色を付ける ことで探しやすくなった。自分で見たところに入れるという目と手の協応 動作の力も高まった。 課 題 ○販売機の硬貨を入れる向きで練習できるような教材も作りたい。 材 料 ペーパーボード,セロテープ 参考資料 所 在 なし 普通科3年C組教室 114 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 仕分けケース 日常生活の指導 中本和幸 高等部普通科 目 的 仕分けと袋詰めの練習をするため。 対 象 普通科弱視,盲生徒 指導の ステップ 作業学習で収穫した野菜等を人数分に分け袋詰めをしている。分ける際に 使用する。慣れてきたら仕切る数を増やす。玉を一つずつケースに入れる ことから始め,三つずつ入れる段階ができたら袋詰めまで行うようにした。 効 果 作業しやすいように固定できるようにしたため,物を入れる器が動かない ようにした。固定し,見えやすいように明るい色のテープを貼ったので入 れ物の区切りがわかりやすくなり作業がスムーズになった。 作業に応じた姿勢や態度が身に付き手指の巧緻性を高めることができた。 生徒が自信をもつことができ,主体的な活動を引き出すことができた。 課 題 ○特になし。 材 料 アルミケース,色ビニールテープ,仕切り板, 木の玉,トレイ 参考資料 所 在 なし 高等部3年C組教室 115 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 ふくろづめくん 作業学習(農作業) 普通科重複研究グループ 高等部普通科 目 的 一人で袋詰めをするため。 対 象 普通科弱視,盲生徒 指導の ステップ ○作業学習(農作業)で収穫した野菜等を仕分け,袋に入れ、袋詰めをする。 ○ビニール袋をセットする際には洗濯ばさみで留める工程もある。 効 果 袋を一定の高さに固定したことにより,野菜をスムーズに入れることがで きた。両手が使えることで,野菜や袋の位置の把握が容易になった。固定す るので探しやすく作業しやすくなった。 作業に応じた姿勢や態度が身に付き手指の巧緻性を高めることができた。 このことによって生徒が自信をもつことができ,主体的な活動を引き出すこと ができた。 課 題 ○特になし。 材 料 針金,板,洗濯ばさみ,テーピングテープ 参考資料 所 在 なし 高等部特別教室1 116 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 目 的 対 象 指導の ステップ アクチン・ミオシン滑走模型 人体の構造と機能 寺口さやか 高等部理療科 アクチンとミオシンの滑走の仕 組みを知る。 理療科生徒 ○教科書の平面図でまず各部位の名称と特徴を理解させてから,本模型を利用 する。 効 果 ○アクチンとミオシンの立体構造がイメージできる。 課 題 もっとスムーズに動くと良い。次に作る機会があれば,中心軸でミオシンの 中心棒とZ帯中心を貫き,軸に沿ってスライドできるものを作る。 材 料 円柱加工材,竹籤,ベニア板,ペットボトル 参考資料 所 在 筋収縮の分子機構と運動系再構成(山形大学工学応用生命システム工学科,羽 鳥晋由) 解剖室 117 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 頭痛くん 生活と疾病(臨床医学総論) 目 的 頭痛の発生機序を説明する。 対 象 理療科生徒 指導の ステップ 寺口さやか 高等部理療科 頭部の構造(血管・神経の走行など)を復習した上で,頭痛の種類と特徴を 説明していく。特に片頭痛,群発頭痛が血管との関連が深く,拍動性の痛みで あることを本模型で感じさせる。血管に見立てたペンシルバルーンにスポイド を接続し,空気を拍動性に送り込んで生徒に触らせる。また,血管の周囲に三 叉神経に見立てた針金を巻いて,血管が拡張すると神経を圧迫する様子も観察 させる。 効 果 ○血管性頭痛を中心に,特徴的な症状をイメージしやすくなる。 課 題 ○温罨法によって血管が拡張する様子は説明できないので, 今後研究していく。 材 料 半球型スチロール(直径18cm) ,ゴムシート,ペンシルバルーン,球形スポ ンジブロック,針金,フェルト 参考資料 所 在 教科書 解剖室 118 作品名 各教室のナンバリング 教科等 制作教職員 細川義之,久山恵美子 氏名等 所 属 高等部理療科 目 的 中途視覚障害者の歩行指導 対 象 理療科生徒(弱視・全盲) 指導の ステップ 生徒の実態に応じて,現在の教室名表示とともに,ナンバリングを活用し て,生徒のメンタルマップを広げ,校内移動の一助とする。 効 果 ○文字も大きく,表示場所も低くなったため確認しやすい。 課 題 ○活用期間が短く,教職員や生徒に対し周知不足を感じる。 材 料 ラミネートフィルムA4(216×303mm) タックテープ(9mm) 参考資料 所 在 なし 全校 119 作品名 教科等 制作教職員 氏名等 所 属 目 的 解剖・生理簡略触図 人体の構造と機能 寺口さやか,森大隆,清水和行, 平元一夫,後藤崇志, 高等部理療科 人体の構造と機能に関わる図を簡略化して触 図化し,基本的概念を定着させる。 対 象 理療科生徒 指導の ステップ 卓上に置けるマグネットボードの上に触図を置き,棒状磁石で固定する。 主要な箇所に触り分けのできる小型磁石(アヒル型・円錐型など)を置き, 「アヒルの部分は○○」等と説明していく。弱視の生徒には主要な箇所の名称 が入った墨字のプリントを渡す。 効 果 ○弱視と全盲の生徒に対して,全盲の教員が同時進行で図を用いた授業ができ る。 ○触図の上で複数の手が重ならず,触知に集中できる。 課 題 指導者が全盲の場合は,触図の部位が何を示しているかを取り違える場合が あるので,弱視の生徒に墨字の資料を確認させる必要がある。全盲の生徒のみ のクラスでは授業中の確認が困難なので,授業前にしっかり確認しておく必要 がある。 全盲生徒が渡した資料を整理できるよう,ファイルに入れてタグを付けさせ るなど工夫と,整理できているかの確認が必要となる。 材 料 カプセルシート(ZY-TEX2 swell paper KGS株式会社) 参考資料 所 在 教科書 生理室 120 本校のマスコットキャラクター「てんぴつ三兄弟」 つよしくん,ただしくん,あかりちゃん です。 三人は,本校の校訓 「強く」「正しく」「明るく」を 表現しています。 研 究 紀 要 第24号 平成25年2月8日発行 広島県立広島中央特別支援学校 〒732-0009 広島市東区戸坂千足二丁目1番4号 ℡.082-229-4134 研 究 紀 要 第 二 十 四 号 平成二十五年二月 広島県立広島中央特別支援学校
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