ソーシャルゲーム依存の説明と対策 2013 年 1月 31 日 阪南大学 経営情報学部 経営情報学科 5109196 西 大輝 1 目次 第1章 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 第2章 ソーシャルゲームについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 第1節 ソーシャルゲームの歴史・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 第2節 ソーシャルゲームの種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 第1項 怪盗ロワイヤル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 第2項 なめこ栽培キット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 第3節 ソーシャルゲームとオンラインゲームの違い・・・・・・・・・・・・・・7 第1項 企業の運営方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 第2項 ユーザーの種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 第3項 ソーシャルゲームと SNS の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 第3章 コンプガチャ問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 第1節 コンプガチャとは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 第1項 アイドルマスターシンデレラガールズ・・・・・・・・・・・・・・・・10 第2節 コンプガチャの違法性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 第3節 コンプガチャの実際の被害、状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 第4節 コンプガチャなしのソーシャルゲームの収益性・・・・・・・・・・・・・12 第4章 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 第1節 プレイ時間制限システム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 第2節 ゲーム内デメリットシステム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 第3節 保護者通知システム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 第5章 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 2 第1章 はじめに 近年、インターネットの普及により情報化社会が進んでいる。情報化により携帯電話世 帯普及率は1世帯2人以上で約 94.5%である[1]。それに伴いスマートフォンが普及して おり、手軽にプレイでき、少し暇なときにすぐできるソーシャルゲームをプレイする人口 が増加している。電車などで周りを見渡すとスマートフォンでソーシャルゲームをしてい る人が多く、テレビ CM でもソーシャルゲームの CM を放送しており、ソーシャルゲームの 人気は高い。しかしソーシャルゲームは依存性が高い。ソーシャルゲーム運営会社は、利 用者に長い間プレイしてもらうことでビジネスの成長になるので、ソーシャルゲーム運営 会社が利用者の行動を分析することでゲームの中毒性が増し、その結果、人が娯楽に割く 時間を増加させたとするならば、有限な資源である時間を浪費することになる。パチンコ に朝から夜まで入り浸り、まっとうな社会生活を営めなくなるのと同じである。ソーシャ ルゲームに依存してしまい社会生活に支障が出る場合があり、その社会に影響を与えるソ ーシャルゲームの依存の原因を、ソーシャルゲームの仕組みを明らかにし、対策を考察す ることが本論文の目的である。 本論文では第2章でソーシャルゲームの歴史、種類を述べる。第3章で実際のソーシャ ルゲームの仕組みや通信システムなどの紹介し、第4章では実際のソーシャルゲームの考 察を書く。第5章では本論文のまとめを述べる。 3 第2章 第1節 ソーシャルゲームについて ソーシャルゲームの歴史 ソーシャルゲームは SNS 上で提供されるオンラインゲームやブラウザゲームのことであ る。SNS 上にウェブブラウザ上で動作する API などの動作環境が提供され、これを基盤とし て制作されたアプリケーションソフトを、ソーシャルアプリケーションと総称する。一般 的なソーシャルゲームはソフトウェアを必要とせず、ウェブブラウザと SNS のアカウント で利用可能である。ウェブブラウザと SNS でのコミュニケーション機能が組み合わされて ソーシャルゲームが成り立っている。ソーシャルゲームは短時間で気楽に遊べる物が中心 となり、ケータイ電話などで遊べることを対象にしている。基本的には無料でプレイでき、 課金システムはアイテム課金を取っている場合が多い。 2007 年に Facebook がアプリケーションを開発するための API を公開し、それを使ったゲ ームが多数出てきた。2008 年頃からソーシャルゲーム業界が急激に発展し、多くのサービ スやゲームが開発されてきた。日本ではグリーが最初にソーシャルゲームを提供し人気が 出た。それからはミクシィやモバゲータウンなどの人気ソーシャルゲームが提供を開始し た。こういったソーシャルゲームの人気によって、今までソーシャルゲームを開発してい なかった企業も開発に力を入れ、ポータルサイトでのソーシャルゲームも多く開発されて いった。 第2節 ソーシャルゲームの種類 ソーシャルゲームはさまざまな種類があり、数多くのゲームが提供されている。ソーシ ャルゲームの大多数は無料でプレイすることができ、ある程度は簡単にクリアできる点が 幅広く支持されている。しかし簡単にクリアできるだけではやりこみ要素が無い。やりこ み要素とは普通にゲームをプレイしてクリアするだけではなく、ある分野を徹底的に極め ることができる要素のことであり、やりこみ要素があることにより、ゲームをより楽しむ ことができる。近年のソーシャルゲームは簡単にはクリアできず、時間や労力が必要にな ってくるが、課金アイテムを購入することにより労力を省いてクリアすることも可能であ る。ソーシャルゲームの種類として代表例をいくつか挙げて説明する。 第1項 怪盗ロワイヤル 株式会社 DeNA が提供している怪盗ロワイヤル(図1参照) http://mbga.jp/pc/html/sg_kt/ 4 図1 怪盗ロワイヤルゲーム画像 このゲームは 2009 年から株式会社 DeNA(以下 DeNA とする)が運営・提供をしている。 2009 年の提供後すぐに爆発的な人気作となり、提供後から現在まで登録ユーザー数は 1000 万人以上とかなりの人気がある。DeNA が怪盗ロワイヤルを開発するにあたって、ターゲッ トをこだわってゲームをするゲーマーではなく、簡単にできるよう一般ユーザーをメイン に開発を進める。内容も複雑なものではなく、簡単にプレイできるようにされている。さ らに提供後、テレビ CM や雑誌など、メディアでの宣伝効果により、利用者数が増加し、株 式会社 DeNA の収益の連結売上高は前年同期比 24%増の 116 億 5500 万円、営業利益3件は 32%増の 52 億 2400 万円、経常利益3件は 31%増の 52 億 7600 万円、純利益3件は 34%増 の 29 億 8500 万円と前年度と比べると格段に上がっている[2]。ゲーム内容は協力・対戦 がメインとなり、大勢のプレイヤー同士でのプレイとなるゲームである。このゲームはプ レイヤー自身が怪盗になり、お宝となるアイテムを敵キャラクターやほかのプレイヤーか ら奪ってミッションをクリアしていくゲームである。アイテムを駆使し対戦に勝利したり、 負けたりと他のプレイヤーとの対戦では見知らぬ相手との戦略的駆け引きがあったり、頭 を使ったゲームでもある。しかし、見知らぬ相手との対戦ということでソーシャルゲーム 未経験の人にとっては不安になる場合もある。今までのソーシャルゲームでは、プレイヤ ー1人でプレイするゲームがほとんどであったが、最近は他のプレイヤーといっしょにす るゲームが増えており、ソーシャルゲームの規模が非常に大きくなっている。 5 第2項 なめこ栽培キット 株式会社ビーワークスが開発、サクセスが提供のおさわり探偵 なめこ栽培キット(図 2参照) http://beeworksgames.com/~osawaritantei/saibai/index.html 図2 なめこ栽培キットゲーム画像 このゲームは 2011 年から株式会社ビーワークスが開発し、株式会社サクセスにより提供 されている。ニンテンドーDS 用ゲームソフト「おさわり探偵 小沢里奈」のスピンオフとし て開発されたゲームであり、事件を解いていく主人公の探偵の助手として登場した「なめ こ」を栽培・育成・収穫するゲームとなっている。ナメコを栽培するといった異色のゲー ムが話題となり、それが累計ダウンロード数 200 万以上になり、簡単にできながらやりこ み要素があるといった点で 10 代・20 代学生や 20 代・30 代 OL に絶大な人気がある。女性 からの支持を受けているゲームである。さらに日本だけでなく、アジア各国にも人気があ る。ゲーム自体は完全無料であり、ソーシャルゲームをプレイし興味を持つことで、ニン テンドーDS 用ゲームソフト「おさわり探偵 小沢里奈」の販売やグッズ販売により収益を得 ている。ゲーム内容は、ナメコを育成して図鑑を完成させたり、レアナメコを育成したり するゲームである。ナメコを育てることによって愛着がわき、しっかり育てたい気持ちに なるといったことが人気の理由である。しっかり育てないと枯れてしまい、レアなナメコ に育てることができなくなってしまう。シンプルさと不思議さが売りのゲームである。 第3節 ソーシャルゲームとオンラインゲームの違い ソーシャルゲームとオンラインゲームはどちらもネット環境がある状態でプレイでき、 複数のプレイヤーが同じ環境でプレイする点が同じである。ソーシャルゲームの発達によ 6 り SNS での人と人とのつながりの促進にもなっているが、違いはいくつかある。本節では その違いについて述べる。 第1項 企業の運営方法の種類 オンラインゲームの運営方法として、基本プレイ無料でアイテム課金を行うモデルがあ る。このモデルはゲームを普通にプレイするだけでは料金はかからない。だが、それだけ では企業はオンラインゲームを運営することができない。そのために、料金を支払うこと でめずらしいアイテムを手に入れ、簡単にゲームを進めることができるアイテム課金制度 がある。このモデルのオンラインゲームではアイテムを購入してもらい収益を得て、企業 はオンラインゲームを運営している。 次に、月額課金制度モデルである。このモデルでは、企業の運営サイトからゲームソフ トとなるクライアントプログラムをダウンロードして、ゲームをプレイするために月額で 一定の料金を支払わなければならない。この月額料金により企業は収益を得ている。近年 ではこのモデルは少なくなっている。他にパッケージ販売モデルがある。パッケージ販売 とは、実際にお金を支払い、ゲームソフトを購入しパソコン内にインストールすることで ゲームをプレイできることであり、これだけでは家庭用のゲーム機などと同じであるが、 月額課金をすることによりオンラインでのゲームをプレイできる。このモデルのオンライ ンゲームは基本的に家庭用ゲーム機向けのオンラインゲームや海外で開発されたオンライ ンゲームが多い。 ソーシャルゲームの運営方法は、ほとんどの企業が基本プレイ無料モデルである。その 中でも基本プレイ無料でアイテム課金制度モデルが 80%を超えている。ソーシャルゲーム をプレイするにあたって簡単にできるものがいいという点で、お金をかけたくないという ユーザーが大半であり基本プレイ無料で運営しているものが多い。この運営方式でもアイ テム課金をするユーザーが 20%ほどだが収益を得て運営している。残りの 80%のユーザー も課金をする可能性があるといった位置づけであり、ゲーム内で課金へと誘導するような 導線がたくさんある。他にも月額課金制度モデルが少しある。 第2項 ユーザーの種類 7 図3 オンラインゲームの男女別割合 図5 ソーシャルゲームの男女別割合 図4 図6 オンラインゲームの年齢別割合 ソーシャルゲームの年齢別割合 ソーシャルゲームとオンラインゲームのユーザーはそれぞれ異なっておりプレイする時 間や時間帯、男女別や年齢もさまざまである。オンラインゲームをプレイする男女別割合 は、男性が 80%、女性が 20%で年齢別では、20 代が 50%、30 代以上が 30%、10 代が 20% の順にユーザーが多い[3](図3、4参照) 。プレイする時間帯は夜から深夜の時間帯にか けてプレイしている傾向である。オンラインゲームは家でやることが多く、男性のユーザ ーがほとんどであり、課金制度を経済的に使える 20 代、30 代が多い傾向である。ソーシャ ルゲームをプレイする男女別割合は男性が 60%、女性が 40%であり、年齢別では 20 代が 40%、30 代以上が 40%、10 代が 20%である[3](図5、6参照) 。プレイする時間帯は夜 から深夜にかけてプレイするが、朝の時間帯や昼の時間帯のプレイするユーザーが多い。 ソーシャルゲームは家でもプレイするユーザーがいるが、朝の通勤や通学、昼休みにプレ イするユーザーも多い。さらにオンラインゲームに比べると女性の割合が増えている。こ れは、ソーシャルゲームは簡単にプレイすることができ、SNS を利用している女性が多いか らである。 第3項 ソーシャルゲームと SNS の関係 8 ソーシャルゲームは SNS 上で提供されている場合が多く、SNS アカウントを持っていれば 利用できることが多い。SNS を利用していて、ソーシャルゲームも利用している割合は約 47.0%である。SNS 利用者が他の SNS 利用者に対してソーシャルゲームをプレイするのを勧 め、いっしょにプレイしている場合が多い。他の利用者に対して自分が遊んでいるソーシ ャルゲームに登録するよう招待のお知らせを出したことがある人の割合は 48.6%であり、 反対に招待のお知らせをもらったことがある人の割合は 83.8%である。さらに年齢別では、 招待のお知らせをもらったことがあるでは、20 代では 52.8%、30 代では 44.4%と若い年 代で招待を送ったりしている割合が多い[4]。このようにソーシャルゲームは1人でも遊 べるが仲間と遊ぶといったことが多い。SNS での日記機能やランキング機能を使って交流が できる点があり、SNS とソーシャルゲーム利用に大きく関係している。さらに SNS 利用者は 実際の交友関係を築いている場合が多く、ソーシャルゲームをプレイし、会話の話題とし ている場合も多い。ソーシャルゲームを利用してコミュニティを広げることができる点が SNS 上で提供している理由の1つである。 9 第3章 コンプガチャ問題 第1節 コンプガチャとは コンプガチャとはソーシャルゲームの商法の1つである。基本プレイ無料でアイテム課 金制度を利用する商法である。コンプガチャは、ガチャガチャをあしらった課金システム である。ガチャの基本システムは課金をするごとにガチャガチャを回してアイテムを入手 できるシステムである。コンプガチャはガチャを何回もやって特定のアイテムをひと通り 揃えることで特別な物を貰える方式である。基本的にアイテムを揃えた後に貰える特別な 物を集めるのが目的である。コンプガチャの具体的なシステムを実際のゲームを紹介して 説明する。 第1項 アイドルマスター シンデレラガールズ DeNA が運営・提供のアイドルマスター シンデレラガールズ(図7参照) http://www.bandainamcogames.co.jp/cs/list/idolmaster/social_m/ 図7 アイドルマスター シンデレラガールズゲーム画像 このゲームは 2011 年から DeNA が運営・提供している。運営システムは基本プレイ無料 でアイテム課金制度モデルを採用している。ゲームシステムは、アイドルが描かれている カードを集め、コンプリート、育成、他のユーザーとの交流などをしていく。そのカード を集めるためにガチャを回さなければ入手できない。カードをコンプリートすると、新し い種類のカードを集めることができるようになり、新たにガチャを回すことができる。ガ チャには無料のガチャと有料のガチャがある。無料のガチャはゲーム内でもらえるポイン 10 図8 コンプガチャのシステム トで回すことができる。ポイントは毎日ゲームをプレイすることやカードを集めることに よって手に入れることができる。無料のガチャではレアカードが出る確率が低く、カード をコンプリートすることができない。レアカードとは出る確率の低いカードのことであり、 希少価値がついているカードのことである。無料のガチャを回しても手に入れることがで きないので、コンプリートを目指すユーザーは、有料のガチャを回すために課金を行う。 有料のガチャを回すことにより、レアカードを手に入れることができる。しかし、レアカ ードでもさらに出る確率の低いカードがあり、有料のガチャを回しても手に入らないこと がある。そのために有料のガチャを何度も回し、手に入れようとするユーザーが多い(図 8参照) 。 第2節 コンプガチャの違法性 コンプガチャのシステムが景品表示法にあたるとして、消費者庁がコンプガチャを違法 と判断した。ガチャの確率明示がされていないのが問題である。ガチャは毎回アイテムを 引くことができ、一定の確率でレアカードを手に入れることができる。しかし、その確率 がどれくらいかは公開されていない。ソーシャルゲームではユーザー毎や時間毎、ユーザ ーの状況に応じて確率を変更することができる。これに対して、確率の明示や変更を行な っていない事を公開する必要がある。これが景品表示法にあたる。景品表示法とは、不当 に顧客を誘引することを禁止したもので、「不当な表示の禁止」と「過大な景品類の提供の 禁止」である。誇大広告や取引に対して抽選などで何十倍もの金額の景品を付けることは この法律で規制されている。消費者を保護すると共に、過剰な競争を防止する狙いがある。 コンプガチャは絵合わせが該当するとされた。絵合わせとは「二以上の種類の文字、絵、 符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用い た懸賞による景品類の提供はしてはならない。」(S52.3.1 公取告示3号)とある。コンプガ チャが消費者庁によって違法と判断されたため、ソーシャルゲーム運営各社はコンプガチ ャを廃止した。 第3節 コンプガチャの実際の被害や状況 11 コンプガチャによる被害や状況はいくつかの種類がある。たとえば、コンプガチャを回 すために何度も課金し、多額の料金を請求されることがある。この被害に遭っているのは 子供に多い。子供が親の知らないところでケータイを使ってソーシャルゲームをプレイす る。そのときにコンプガチャをするために課金をし、ガチャを回す。その後の料金の請求 で多額の請求を受けることがある。このような被害の多くは、子供が基本プレイ無料であ ることは知っていたが、課金制度のことは知らずにコンプガチャを回していた。他にも、 親に見つからないように課金をしていたなどがある。コンプガチャの被害は子供だけでな く、大人にも多く見受けられる。コンプガチャを回して多額の料金を使っており、あとも う少しでコンプリートできるところまできていると、さらに課金をしてしまう。多額の料 金を使っているので後に引けない状態に陥るからである。コンプリートしたいという射幸 心をあおる結果となり、多額の課金を行ってしまう。射幸心とは、幸運を得たいという心 理状態では在るが、多くの場合においては「幸運によって他人よりも幸せに恵まれたい」 と思い期待することである[5]。実際の被害として、高校生の息子を持つ母親がクレジッ トカードの限度額いっぱいで使えないとカード会社から連絡を受けた。不審に思い、息子 に問いただすと、勝手にクレジットカードを使用して、2か月間で約 400 万という多額の 課金を行っていた[6]。こういった被害が子供から大人まで幅広い年齢層で多くあり、コ ンプガチャが違法と判断された要因だとされる。 現在のソーシャルゲームではコンプガチャを回し続けることにより、やめられなくなり ゲーム依存や課金依存に陥っている状況がある。コンプガチャだけでなく、ゲーム自体に 依存症になりうる要素が強い。ソーシャルゲームでの依存症になる要素として、ソーシャ ルゲームのリアルタイム性、達成感がある。ソーシャルゲームにおけるリアルタイム性と は、実際の時間に合わせたイベントが開催されること、期間限定でのイベントが開催され たりすることである。実際の時間に合わせたイベントがあると、ソーシャルゲームを優先 に考えてしまい、実際の生活をおろそかにしてしまうこともある。最悪の場合、社会人と しての生活ができなくなってしまい、ソーシャルゲームへの依存症になってしまう。ソー シャルゲームの達成感は、カードを集めコンプリートした時の達成感を味わい、ほかのユ ーザーに称賛されることを楽しみとし、そのためにゲームをやり続けてしまうことがある。 実際の被害として、中学生の子供がソーシャルゲームをプレイするのに夢中になり、昼夜 逆転の生活となり、学校で寝てしまい勉強に支障が出てしまうこと、学校を休んでしまい 不登校になってしまうといったことがある[7]。このような被害がソーシャルゲームによ る洗脳という問題があり、インターネットやオンラインゲームが悪影響と言われている [8]。 第4節 コンプガチャなしのソーシャルゲームの収益 12 図9 シンデレラガールズ CD 画像 コンプガチャを消費者庁から違法と判断され、各企業はコンプガチャを廃止した。しか し、アイテム課金は問題ではないのでアイテム課金を収益としてソーシャルゲームの運営 をしている。コンプガチャが廃止されたが、ガチャとしてのシステムは問題ないとされて いるため、アイテム課金をすることによりゲームを有利にプレイできるシステムは残って いる。ガチャの確立を明示したうえで、ガチャをまとめて行うことができるガチャを出し たり、ゲーム内でのイベントの開催頻度を多くしたり、各企業ソーシャルゲームをプレイ させようという動きが見られた。他にもアイテム課金以外での収益獲得に乗り出した企業 が多くあり。ソーシャルゲーム関連の商品を発売した。実際の商品を紹介する。日本コロ ムビアから発売されたアイドルマスターシンデレラガールズのキャラクターソングを収録 した CD である(図9参照) 。この CD はアイドルマスターシンデレラガールズのユーザー数 が 100 万人を超えたことから発売された。ゲーム同様に爆発的人気があり、オリコンラン 図 10 株式会社 DeNA の第2四半期売上収益・営業利率 出所 http://gamebiz.jp/?p=81539 DeNA 第 2 四半期は 41%増収・30%営業増益を達成 13 キングにも多数登場した[9]。さらに、こういった商品にはゲーム内で使用できるアイテ ムコードを付属している場合が多く、そのアイテムを手に入れようとして多数の商品を購 入するユーザーも現れた。各企業は、課金をさせるためにゲーム内でさらに射幸心をあお るシステムにしている。コンプガチャ廃止後の各企業の売上は、ほとんど減少しておらず、 特に DeNA は四半期ベースでの売上収益 503 億円(前四半期比6%増)とし、前四半期から 増収増益となっており、コンプガチャ廃止の影響はほとんど無かった[10](図 10 参照) 。 14 第4章 考察 ソーシャルゲームをプレイすることにより、さまざまな理由からゲーム依存や課金によ る多額の料金を支払う可能性がある。ゲーム依存や多額の課金に陥ると一般的な社会生活 を送ることができなくなる可能性がある。こういったゲーム依存を未然に防ぎ、軽減する 方法を3つ提案する。 第1節 プレイ時間制限システム ソーシャルゲーム自体にプレイ時間制限システムを導入する。内容としては実際の時間 を制限すること、ユーザーの心理に訴えかけることの2点である。システムは、1日にプ レイできる時間を一定の時間に制限し、それ以上のプレイをできなくする。また、一定の 時間ゲームをプレイするとゲームがプレイできなくなり、一定の時間を空けなければ次に ゲームをプレイすることができない。また、ゲーム内のキャラクラーが警告してくれる機 能もある。一定以上のゲームをすると、ゲーム画面が変わりゲーム内のキャラクターに警 告される(図 11 参照) 。ゲーム内のキャラクターに警告されることによりその時点でやめ るきっかけができる。さらに子供がソーシャルゲームをやり続けないように、タイマー設 定もできる。親が一定の時間の間だけゲームがプレイできるようにしたり、夜や深夜帯の 時間ではゲームを起動できなくするなどの時間設定を行い、設定時間が過ぎるとゲームが 終了したり起動時間の制限を設ける。このシステムを使うことにより、ゲームをやり続け ることができなくなり、一般的な社会生活に支障を来すことはない。 時間経過 図 11 ゲーム内でのキャラクターによる警告 15 第2節 ゲーム内デメリットシステム ゲーム内デメリットシステムは、ゲームを一定以上の時間プレイしているとゲーム内の キャラクターがゲームをプレイすることをやめさせる警告をしてくれる。そのキャラクタ ーの警告を無視してゲームをプレイし続けると、ゲーム内でのデメリットが発生するシス テムである。デメリットはゲーム内で、手に入れたカードが何枚か無くなるや、キャラク ターのレベルが下がってしまうなどである。これは、本来ゲームをプレイする目的である カード集めやレベル上げなどとは反対のデメリット機能を導入することで、キャラクター の警告を聞き、ゲームをプレイすることをやめさせるといった効果がある。カードを集め たいや、レベルを上げたいなどの欲望を満たすために、警告に従うようにするという心理 状態に働きかける。 また、課金制度を使おうとしたときに、クレジットカードの番号や暗証番号を入力する 画面の前にキャラクターが出てきて本当に課金をしてもいいのかと警告する。警告される ことにより、本当に課金をしてもいいのかという気持ちになり、課金をすることに抵抗が 出る(図 12 参照) 。さらに課金金額に上限を設定しておくことで、これ以上課金してはい けないと警告させる。そして、その警告を受けずに課金をしてしまうと、アイテムがなく なるなどのデメリットを付与する。これにより上限を超えての課金を抑制することができ る。他には、課金金額を一定の金額までの定額制に設定しておくことで、多額の請求を受 けることもない。子供が勝手に親のクレジットカードを使っての支払いや、多額の料金を 課金をする 図 12 ゲーム内でのキャラクターによる課金警告 16 使うなどの被害を防ぐことができる。このシステムを使うことで、ソーシャルゲームをや り続けることや多額の料金を支払うことを防ぐことができ、実際の生活に支障を来すこと がなくなり、ゲーム依存が軽減できる。 第3節 保護者通知システム 保護者通知システムは、子供がゲームをプレイし続けるのを防ぐシステムである。上記 で提案した2つのシステムを使い、警告を無視し続けると保護者にメールで通知するシス テムである。これは Android アプリで作成し、ユーザーのスマートフォンに常時起動して おく。常時起動により、上記で提案した2つの警告システムによる情報を監視する。監視 した警告システムの情報により、ユーザーが警告を無視しゲームをプレイし続けることに よって保護者通知システムが反応する。保護者通知システムからの保護者向けへメールを 送るためメールサーバへメール配信を依頼する。メールサーバから登録しておいた保護者 の携帯へ子供が警告を聞いていない趣旨のメールが送られる。そして保護者がメールを受 信する。これにより保護者からゲームをプレイしているユーザーに対してゲームをやめさ せる連絡をし、直接ゲームをやめさせることができる。子供が親の目から離れていてもこ のシステムを使うことで、子供がゲームをプレイしているのかを監視することができゲー ム依存を軽減させることができる。 スマートフォン 各 SNS ゲームサーバ 通 信 監視 監視 メールサーバ 保護者のケータイ アプリ アプリ 図 13 保護者通知システム 17 第5章 まとめ 昨今、携帯電話普及に伴いスマートフォンが急激に普及している。スマートフォンの普 及によりネット社会である SNS が展開されており、その SNS 上で提供されているソーシャ ルゲームは、暇つぶしにプレイすることに長けている。だが、長時間ゲームをプレイする といったことにより依存症の可能性が伴っている。提案する時間制限システムやデメリッ トシステムは、ゲーム依存を未然に防ぎ、軽減させることができる。このシステムはソー シャルゲーム上で警告を受けるシステムである。 今後の課題は、どれだけゲームをプレイしたか、どれだけの料金を課金したかなどの記 録を残しておき、ゲームをする度、課金をする度に表示させるようにし、ユーザーに心理 的にゲームや課金を控えるようにさせる。この機能でゲーム依存や多額の課金をさらに減 少させ、ソーシャルゲームによる依存症を減らすことができる。私の提案するシステムを 導入することにより、社会からソーシャルゲームを抑制することが可能と考える。 18 参考文献 [1]http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/6350.html [2]http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1002/01/news085.html [3]http://www.gamebusiness.jp/article.php?id=7031 [4]http://release.center.jp/2010/01/2101.html [5]http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%84%E5%B9%B8%E5%BF%83 [6]http://www.nikkei.com/article/DGXNASFE0601I_X00C12A6WZ8000/ [7]http://angels-eyes.com/image/yomiuri_paper.jpg [8]青山侑子,五十嵐哲也:Problematic Internet Use (PIU)とオンラインゲームのユーザ ーに与えるネガティブな社会的・心理的影響:展望と課題,愛知教育大学保健環境センター 紀要,Vol.10,2011 年. [9]http://www.excite.co.jp/News/reviewapp/20120423/E1335108638711.html [10]http://gamebiz.jp/?p=81539 19 謝辞 卒業論文作成にあたりいろいろ教えてくれたゼミ生と臼杵君に感謝します。 卒業論文作成の際、見回りに来ても何も見なかったことにしてくださった大学院生の方々 に感謝します。 卒業論文の作成にあたり丁寧なアドバイスや厳しい意見など、たくさんのご指導を頂いた 花川典子教授に感謝します。ありがとうございました。 20
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