ものづくり プライド 冊子版PDF

中小企業支援施策を活用した
成果事例集
新連携
認定事業者
サポイン
採択事業者
経営革新計画
認定事業者
平成28年3月
経済産業省 中小企業庁
もの づくり・商業・サ ービス
補助金採択事業 者
4つの施策について
新連携とは
サポイン事業とは
2社以上の異なる分野の中小企業者が連携し、
そ れ ぞ れ が 持 つ 技 術・ノウハウ等 の「 強 み 」を
有効に組み合わせ、新商品、新サービスの開発等
を行うことをいいます。中小企業が行う新連携の
事業計画を認定し、様々な支援を行っています。
経 済 産 業 大 臣 の 認 定を受 けた 計 画を行う中 小
新連携支 援ポータルサイト
中小ものづくり高度化法ポータルサイト
http://www.chusho.meti.go.jp/
keiei/shinpou/index.html
http://www.chusho.meti.go.jp/
keiei/sapoin/portal/
経 営 革新計画とは
ものづくり・商業・サービス補助金とは
新 商 品、サービスの 開 発、販 路 開 拓 等 の 取 組 に
国内外のニーズに対応したサービスやものづくり
よって経 営 の 向 上 を 図ることを い います。中 小
の新事業を創出するため、革新的なサービス開発・
企 業 の 経 営 革 新 計 画 を 承 認し、様々な 支 援 を
試作品開発・生産プロセスの改善を行う中小企業・
行っています。
小規模事業者の設備投資等を支援します。
企 業 が 産 学 官と連 携して行うもの づくり技 術 の
高度化を支援します。
経営革新 支 援ポータルサイト
ものづくり・商業・サービス補助金の詳細
http://www.chusho.meti.go.jp/
keiei/kakushin/
https://www.mirasapo.jp/
subsidy/22968.html
Contents
北海道
中国
株式会社ADM
3
新連携
株式会社ビック・ツール
23
サポイン
株式会社ニッコー
4
サポイン
株式会社山本金属製作所
24
経営革新
フィールド・クラブ株式会社
5
経営革新
久米桜麦酒株式会社
25
もの補助
旭中芯株式会社
6
もの補助
株式会社ヤナギヤ
26
新連携
東北
四国
株式会社ベスト
7
もの補助
竹中金網株式会社
27
サポイン
ヤマセ電気株式会社
8
経営革新
株式会社ちよだ製作所
28
経営革新
有限会社高倉工芸
9
経営革新
株式会社 mimoto
29
もの補助
株式会社高橋工業
10
もの補助
株式会社フラスコ
30
計測検査株式会社
31
新連携
関東甲信越
九州
株式会社きものブレイン
11
新連携
サポイン
株式会社向洋技研
12
サポイン
森鉄工株式会社
32
経営革新
株式会社サンクゼール
13
経営革新
有限会社藤井ピアノサービス
33
もの補助
栄商金属株式会社
14
もの補助
株式会社教育情報サービス
34
株式会社マリンコムズ琉球
35
新連携
中部
沖縄
株式会社ベルグリーンワイズ
15
新連携
サポイン
有限会社アートスクリュー
16
経営革新
有限会社ウイリー
36
経営革新
中日本氷糖株式会社
17
経営革新
株式会社ライト工務店
37
もの補助
NIT株式会社
18
もの補助
有限会社高江木工
38
株式会社日本コムダック
19
サポイン
株式会社平安製作所
20
経営革新
三恵ハイプレシジョン株式会社
21
もの補助
阪和電子工業株式会社
22
新連携
近畿
新連携
業態/仮設上屋・付属品の製造・加工・販売
株式会社 ADM
代表者:代表取締役社長 仁村優治 本社所在地:北海道伊達市北稀府町99番地の5
URL:http://www.hokkaido-adm.com/
厳しい気象条件の地での通年施工を実現する簡易設置型上屋「パネルシステム」や、解体作業などを行う大型建
築物をすっぽり囲む「ハイパートラスビームシステム」などを製造する独自開発企業。人の役に立ちたいという想い
のもと、一人で乗れる車椅子 も開発し、特許を持つ。
事業名:高張力鋼による独自のトラス構造で広い空間を確保した
仮設上屋の事業化
同社は大型仮設事業のパイオニア。
これまでのパネルを使う簡易設置型上屋に加え、
高張力鋼を使用した独自のトラス構造による中間支柱のない大空間の上屋「ハイ
パートラスビームシステム」を製造・事業化した。
これにより、間口80mくらいまでの
空間を囲い密閉できるので、焼却炉といった大きな建物の解体時に周辺への粉塵
飛散を防ぐことができ、騒音・振動も軽減。中間支柱がいらないことで、大型重機の
作業スペースも確保できた。さらに、地組み後に架設することで高所作業を減らすと
ともに、建築基準法に準じた構造計算を行い、
より安全性を高めることにも注力した。
取り組みのきっかけ
取り組みの成果
同社代表の仁村氏は、かつ
て土 木 工 事を手 掛 けてお
り、決められた工 期を守る
ため雪 が 降る悪 天 候 の 時
も作業を続けなければなら
な いことが た び た び あっ
た。そこで、北 海 道 の 冬 の
厳しい気象条件下でも無理なくスムーズに工事ができる
屋根 を考案。仮設養生としての簡易設置型上屋「パネル
システム」の開発につながった。その後、都市部の大型建
築物を解体する際にも使える大きな上屋があったらいい
のに というお客様の声に遭遇。その希望に何とか応えた
いという想いで取り組み、
「ハイパートラスビーム 1800型」
の開発に成功した。
ハイパートラスビームシス
テムは、一般市場には出て
いない、軽くて超高強度の
材 料を使 用したことで、従
来では考えられなかったほ
ど大きなものを覆えるよう
になった。実際に大型建築
物の解体に採用されたお客様は、周囲の環境に粉塵が飛
散しない点を高く評価。きれいな空気を汚すことなく、
どん
な季節や天候のもとでも効率的に解体が進むと好評を博
している。また、ハイパートラスビームシステムを設置する
人や、建物の解体作業を行う人の安全性が高まることへ
の注目も大きい。
これらを背景に、仮設上屋の製造は毎年
大幅に増加しているという。
連携体制
今後の展望
日建片桐リース株式会社(北海道札幌市)
今後は、北海道はもちろん
のこと、日本全国、さらには
海外にも展開していきたい
とのこと。ハ イパ ートラス
ビームシステムがさらに安
全で安心して使え、解体現
場にはあって当たり前とい
うほど一般的になるのが夢という。ただ、高張力鋼が今は
まだ仮設にしか使えない材料なのでコストが高いのが
ネック。一般に広く使えるような認可が下りれば、
よりロー
コストでの製造と提供が可能になる。
また、分野がまったく
異なるが、すでに世界で特許を取っている 一人で乗れる
車椅子 の事業化も夢。常にお客様のためになることをす
るのが最重要ととらえている。
仮設資材、物流機器、福祉・介護用品の総合レンタル・プ
ロデュース企業。
(株)ADMが製造した「ハイパートラス
ビームシステム」の現場への輸送から設置作業までを実
施。安全、確実、
スピーディな作業で信頼されている。
ファクト株式会社(北海道小
市)
鍛圧機械、工作機械、一般産業機械、溶接機械など、さま
ざまな機械の修理・メンテナンスを行う技術企業。
(株)
ADMが日頃使用する機械全般のメンテナンスを責任を
持って実施している。
3
業態/食品・水産・食肉・農産・各加工機械の企画開発、製造販売
株式会社ニッコー
代表者:代表取締役 佐藤 厚 本社所在地:北海道釧路市鶴野110-1
URL:http://www.k-nikko.com/
1977年創業以来、一貫して食に関わる加工機械の製造に努め、現在では水産・食肉・農産・食品の各分野におい
て国内外で高い評価を得ている。地域に貢献するだけでなく、全国、海外に通じる技術を釧路から発信するための
多彩なビジョンの実現に取り組んでいる。
事業名:データトラッキング制御による漁獲物高鮮度保持用
オンサイト型海水製氷機の開発
「獲れたての鮮度そのままで魚を流通できたら」そんな漁業関係者の願いがついに
結実した。同社が開発した連続式シルクアイスシステム「海氷」は、本来困難とされて
いた海水を利用した短時間での製氷を、独自のデータトラッキング制御ソフトを組み
込むことで実現。小型化により漁船への搭載を可能としたことで事前の氷の搭載を
不要にしたほか、シルクアイスによる急速冷却によって商品価値を向上させブランド
化に貢献。導入は道内のみならず全国にも拡がり、順調に実績を伸ばしている。
取り組みのきっかけ
支援活用
同社は一貫して食の産業に
関わる加工機械の開発・製
造を手 掛 けてきた 食 品 機
械メーカー。漁業が先細り
になっていくことで漁業経
営が行き詰まり、ひいては
町の元気が失われていくの
ではという危機感を抱いていた。そんな現状を変革するた
めには量にこだわるのではなく、品質の良いものを釧路、
そして北海道から発信していきたいという思いがあった。
付加価値を付けるためのキーワードは「鮮度」。漁業関係
者から鮮度向上の強い要望が寄せられていたことも後押
しとなり、サポイン制度を活用したシルクアイス製氷機の
開発に着手することとなった。
開発テーマはあってもなか
なか資金が伴わないことが
多い中、行政からは支援制
度活用の薦めがあった。札
幌 の 支 援 センター にも相
談、ニッチな分野での補助
金の重要性、さらに釧路か
ら全国に鮮度の良い魚を提供していきたいという熱い思
いを伝えた。コーディネーターより紹介された産業技術総
合研究所には学術的な分野を担ってもらうなど、理想的な
役割分担の中で、精力的な研究開発に取り組むことがで
きた。
アイデアを実現するための補助金制度が大きな原動
力となり、それを成功させ地域貢献につなげたいという思
いをつなげることができた。
取り組みの成果
今後の展望
2013年10月の製品化後、
北 海 道を中 心に全 国の漁
協等に導入が進み、2014
年度の売上げ実績は約1.1
億円、翌年2015年度の売
上げ見込みも約3億円と順
調に販売を伸ばしている。
国内にとどまらず、マグロ漁が盛んな温暖な国々などから
の問い合わせも増えている。海水を利用した本システム
は、通常一昼夜かかる製氷を3∼4分で可能とし、
しかも網
あげした魚をシャーベット状のシルクアイスで瞬時に活き
締め状態にできるという画期的なもの。漁業の現場からも
驚きの声があがる中、困難な開発をやり遂げた達成感と
喜びを社員で共有することができた。
今後は漁船用だけでなく、
陸上設置型やレストラン向
けなど新たなユーザー開拓
に努め、さらなる市場拡大
を図っていく。地 域に役 立
つ技術、そして全国や海外
にも通じる技 術を、この釧
路からどんどん発信していくことが社をあげて取り組む
テーマ。その実践によって、町の観光面での活性化にも繋
がればという考えだ。かつて日本一の漁港を誇り、海の恵
みとともに生きてきたこの地に住んでいる感覚、それはイ
コール「鮮度」
という言葉に凝縮されるとか。新しい価値が
加わった鮮度を意味する「新・鮮度」が、
これからも大切に
していきたいキーワードだ。
4
業態/屋外広告物や内外装等の企画・設計・施工、店舗の
デザイン・設計・施工
フィールド・クラブ株式会社
代表者:代表取締役 見上眞司 本社所在地:北海道北広島市大曲工業団地4-1-2
URL:http://www.fieldclub.co.jp/
屋外広告、店舗などの企画・デザインから設計、施工、管理までをトータルに行う。また、ウレタンフォームへの
特殊コーティング技術を活用した商品化を推進。北海道、東京、大阪の3拠点をベースとして、全国に販路を
広げつつある。
事業名:ウレタンフォームへの特殊コーティング技術を活用した
商品の開発・市場化事業
昭和63年の創業以来、看板製作をはじめとする屋外広告物を手掛けてきた同社は、
柔らかい素材のものを というお客様の声を受けて「ウレタンフォーム」に着目。
ポリウレタン、
メチルエチルケトン、イソプロビンアルコールから構成され、かつ25℃
の特殊粘土を持つウレタンフォーム用塗料を、
ウレタン素材にコーティングする技術
を開発し、特許を取得した。本事業では、その特殊コーティング技術を活用し、ウレ
タン本来の優れた加工性に加え、耐久性・防水性・抗菌性・難燃性を備えた新たな
ウレタン製品を開発する。
5
取り組みのきっかけ
取り組みの成果
同社は、長年、北海道内に
お いて飲 食 店 や 観 光 地 、
テー マ パ ークなどの 看 板
製 作を主 体 に事 業を行っ
てきた 。しかし、冬 季 期 間
の受注減による売上・雇用
の不安定さという大きな課
題があり、企業成長を阻害してきた。一方、サインや造形
物をデザイン・製作するという日常業務においては常に
新しいアイデアが求められており、企画から設計、施工ま
でをトータルに手掛ける同社では、新規の素材開拓も継
続的に実施。ウレタンフォームをコーティングする点に新
たな価値と可能性を見出し、製品化を図ることで事業の
安定化を目指した。
ウレタンフォームは、削るだ
けでどのようなデザインに
も対応可能なため、製品化
しやすいのが特徴。その表
面に塗膜を施すことでシー
ムレスな防水層が生まれ、
耐久性・抗菌性も得られる
ことから、椅子をはじめとする家具や戸外でも使える遊具
などに対する需要が高まってきている。また、軽くて柔らか
いウレタンフォームの安全性に注目し、高齢者や子供が利
用主体の施設の内装や用具などへの応用も推進。商品を
通して社会に貢献していくという視点のもと、北海道、東
京、大阪の3拠点をベースに製品化が急展開している。
支援活用・販路開拓
今後の展望
同社では、経営革新計画の
承認と審査の通過により、
補助金や低利融資といった
資金的なメリットを享受す
るとともに、連携企業とのビ
ジ ネ ス 協 調 を 強 化し た 。
(株)北海道イノアックが事
業に最適なウレタン素材の開発を行い、
(株)sixinch.ジャ
パンが市場調査・マーケティング戦略立案・販路店網の構
築を推進。さらに、テコデザイン(有)がデザイン事務所経
由での販路開拓を進めていく。
これらの協調体制により、
販路を日本全国から海外にまで広げていくことを目指すと
いう。
本事業は製造工程が少な
いため短 納 期 が 可 能であ
るものの、ウレタンフォーム
の 3 D カットも特 殊 コ ー
ティングの吹付も人間の手
で行ってきた。
この製作スタ
イルでは、技術の標準化が
難しく、製品品質を高く均一に保つことは厳しいといわざ
るを得ない。今後は、
この高い技術を必要とする作業を順
次機械化。最高品質の製品を安定・大量提供できる体制
を整えていく。また、看板業界という枠組みにとらわれず、
企画から製造までの一貫体制を維持していくことを重視。
お客様が困った時にまっ先に同社を想起してくれる企業
でありたいという。
業態/パルプ・紙・紙加工品製造業
旭中芯株式会社
代表者:代表取締役 米野公敏 本社所在地:北海道旭川市永山北1条10丁目1-41
紙の芯材(ペーパーコア)を扱っている企業は全国に数社といわれ、北海道内では同社が唯一の製造メーカー。
今回の事業では独自開発の「バイアスエコパネル」を活用したボックス型家具の製造ライン化により、量産化と
新たな市場開拓に向け競争力の強化が図られた。
事業名:環境に配慮したボックス型家具製造ラインの機械化による
量産化 良い製品を安く!
従来より家具用として販売されているカラーボックスは、大半が合板を使用している
ため重く、使用後に処分しずらいという難点があった。そこで同社では、独自開発
した紙の芯材「バイアスコアー」を構造体として加工した「バイアスエコパネル」を
活用することで、軽量かつ強度に優れた100%リサイクル可能なボックス型家具の
製造を実現。機械化による量産化でコストカットを図り、生産時間も短縮。自在な
組み合わせができ、価格面にも配慮した同製品により新たな市場進出を進めている。
取り組みのきっかけ
支援活用
独自開発した紙の芯材「バ
イアスコアー」の製造・販売
を行っていた同 社。これを
活用した「バイアスエコパ
ネル」は、独自の構造体とし
て加工したパネルで、木材
使用に比べ資源消費の削
減、焼却による容易なリサイクル、さらには反りにくい強度
や大幅な軽量化も実現したものだった。一方これまでの
ボックス型家具製作は、組み立て部分を人の手に頼ってい
たため人件費分のコストがかかっていた。そこで同社で
は、素材のメリットを活かして開発されたボックス型家具
のコストダウンを実現するため、機械化による量産化へ着
手することとなった。
製造工程の前半部分は、地
元機械メーカーとの連携に
より特 注 機 械 で の オ ート
メーション化が図られてい
た。ただ後半の組み立て部
分は職人の手作業に頼って
いたため製 造 時 間 が 増 大
化し量産化へのネックとなっていた。その点を解消するた
め、紙独自の加工用特殊機械を地元機械メーカーとの連
携で開発、購入。組み立て部分のオートメーション化を図
ることができた。
これによりコストダウンを進めることが可
能となり、価格的にも市場に受け入れられるボックス型家
具の量産化を推進できることとなった。
取り組みの成果
今後の展望
「バイアスエコパネル」を活
用して開発されたボックス
型家具は、木材を一切使わ
ず100%紙でできたものと
して、そのままリサイクル処
理が可能なものとなった。
今 回の組み立て部 分の
オートメーション化によって、
これまで工程ごとに分かれて
いた製造過程をライン化する目途がつき、
コスト面の改善
やより良い製品づくりに取り組める環境も整った。ボックス
型家具やパネルは、軽さや処理のし易さからユーザーか
らの反応も良く、道外の大手ホームセンターや大手コンビ
ニチェーン店からも新規開発の問い合わせが寄せられて
いる。
紙を使用することで多くの
メリットをもたらす「バイア
スコアー」
「バイアスエコパ
ネル」は、様々な社 会 生 活
シーンの中において活用可
能な、大きな可能性をもっ
た製品。同社では、紙の軽
さを活かした、ねじれない、安定した各種製品を提供して
いくとともに、今後も研究開発を進めながら、製品をより
いっそう知ってもらうための宣伝も強化していきたいとい
う。
これまで人の目に触れてこなかったペーパーコア(紙
芯)
という素材を表舞台に引き上げ、エコや災害の分野も
視野に入れながら、将来を見据えたものづくり企業として
飛躍を期している。
6
業態/食事宅配、給食受託および高齢者ソフト食の事業展開
株式会社ベスト
代表者:代表取締役 斎藤秀紀 本社所在地:山形県鶴岡市布目字宮田163-1
URL:http://best-ryoushoku.jp
昭和60年に山形県鶴岡市で設立。
「健康は食にあり」を基本理念に、健康をテーマとした食事宅配事業と給食受託
事業を展開。単にアウトソーシングとしての事業ではなく、食と健康の関わり方や食のクオリティを追求している。
事業名:高齢者及び咀嚼・嚥下力の低下した方向けの新ソフト介護食
の量産化・市場化のサービス事業展開
見て食欲をそそり、食べておいしさを感じること。
(株)ベストは、食べることの喜びを
生涯にわたり実感できる食のクオリティ・ライフを目指した新ソフト介護食の商品化
に成功した。素材を嚥下食用に再加工する技術や素材そのものから型取りした型枠
を採用し、再成形するノウハウなど、見た目や食材としての再現性において、既存
競合商品とは一線を画する商品となっている。さらに、当商品は、献立によって加工
(焼きもの風・煮 物 風など)や味つけにも対 応。同 社と連 携 企 業のマッチングに
よって、魅力的な介護食が誕生したケースである。
取り組みのきっかけ
7
連携体制
同社は、30数年にわたって
高 齢 者に対する給 食 事 業
を展開していた。その中で、
嚥下障害の方や咀嚼困難
者の方に対する 形のない
食事 、いわゆるペースト食
やきざみ食等に対する介護
食に疑問を抱いていた。従来の介護食は、元の形が失わ
れているため、何を食べているかもわからない。
これでは、
食事ではなく単なる栄養摂取のためだけのものであり、食
べる楽しみがない。そこで同社は、歯茎や舌でも噛み潰す
ことができる「再成形ソフト食」
(以下、ソフト食と称する)
の開発に取り組み、健康の源となる食の新たな分野への
挑戦をはじめた。
(株)ベストが、ソフト食で
最もこだわったのが、素材
の再 現。そのために、素 材
そのものの型をとって再現
することを目指した。
しかし、型の製作はコストが高く、商
品化にはほど遠いものとなっていた。そんな時、同じ鶴岡
市にシリコーンの成型加工を行う
(株)シリカ高研との出
会いがあり、
コストと再現性をクリアできる可能性が高まっ
た。共同開発での試行錯誤の末、本物そっくりの魚の切身
の再現に成功。
この連携により、見た目、味わい、食べやす
さを備えたソフト食の開発が一気に進むことになった。
取り組みの成果
今後の展望
魚 の 切 身の 成 型に成 功し
た(株)ベストは、さらに、食
べられるインキを使った皮
のプリントによって、再現性
の質を高めた。これを受け
て、平 成 2 3 年に「まろやか
食 専 科 」として 商 品 化 を
行った。
「見た目や味もよく、高齢者に多い誤嚥を防げる」
と高い評価を得ることとなった。現在は、魚介類、肉類、蒲
鉾と全13種類をラインアップ。さらに、限定商品として「お
せち料理」も再現し、販売している。噛むことや飲み込むこ
とが困難になっている高齢者向けの介護食として、食べる
楽しみを損なわず、安心して食べられると注目が高まって
いる。
ソフト食「まろやか食専科」
は、日本全国からの引き合
いがあり、全国展開を考え
ている。そのひとつの戦略
として、地産地消型、地域資
源活用型のビジネスモデル
の構築を志向している。全
国各地の高齢者施設や病院向けの加工食品を取り扱う企
業と一緒に行うビジネス展開である。ビジネスモデル化が
実現すれば、生産設備の増設や配送という課題も解決で
き、全国の高齢者へ食べる喜びと安心を届けることが可能
となる。同社は、地域活性化と高齢化社会への問題を解決
する
「食からの試み」にチャレンジしていく考えである。
株式会社シリカ高研
(山形県鶴岡市)
業態/電子部品製造
ヤマセ電気株式会社
代表者:代表取締役社長 菱沼 厚 本社所在地:宮 城 県 加 美 郡 色 麻 町 四伽 字はぬ木 町 1 5 4 -1
URL:http:/ / www.y a ma s e-net.co .j p/
開発・設計から金型、部品製造、完成品までの一貫生産を確立する、電子部品・機械器具の製造メーカー。4 社
6 工場でヤマセグループを結成。それぞれのコア技術を活かして、自動車関連部品を中心とする高品質・低コスト
な委託生産を行っている。
事業名:レーザを活用した異種材料複合化技術の開発
自動車には、オーディオ、
ナビゲーションシステム、ETCシステムなどさまざまな搭載品
があり、その数が増えつづけている。車載用複合部品の筐体等の結合には、
これまで
ネジや接着剤といった材料が使用されており、価格低減と工程数の削減が課題と
なっていた。その課題解決のために開発したのが、
レーザを活用した異種材料複合
化技術。
これは、金属表面にレーザ光を照射することで生成した起伏の激しい面に、
溶融させた異種材料を充填・固化させて強固に一体化するもの。
これにより、自動車
の「軽量化」
「小型化」
「部品点数削減」
「工程削減」が同時に進むこととなった。
取り組みのきっかけ
取り組みの成果
同社では以前からさまざま
な 接 合 技 術を研 究してい
た。そんな今から10年ほど
前に、二つ折り携帯電話の
金 属 筐 体モデルの 製 作を
請け負い、そのモデルに顧
客 のロゴを表 示 する手 法
として、同社が保有するレーザマーカーの使用を試みた。
その際、設定条件を誤り非常に汚い処理面となってしま
う。
しかし、失敗に終わった処理面を拡大して観察した際
に、それが実は 引っ掛かり の大きい面でもあるというこ
とに気付き、
この 引っ掛かり を利用することで材料同士
を強く結合できるのではないかと考えたことから研究が
スタートした。
レーザ処理した面への樹脂
の充填方法を最適化するこ
とで、部品材料の大幅な軽
量化を実現。金属で構成さ
れている部品を、金属と樹
脂 の 複 合 部 品 に置き換え
た場合、金属単体での構成
重量に対し
「重量比30%低減」を達成した。
また、
レーザ照
射による処理パターンやレーザ機器、光学系、処理プログ
ラムなどの最適化を実施したことで、
レーザ処理時間を従
来の60%以下に低減。低コストでの生産と提供が可能に
なった。
これらにより、軽量化やコスト削減に注力する車載
メーカーなどからの引き合いが相次いでいる。
支援活用・販路開拓
今後の展望
同 社 が サポインに 採 択さ
れる前の研 究 開 発は、1日
の 生 産 が 終わった製 造 現
場 の 機 械を使って行 わ れ
てい た た め 進 が 良くな
かった。
しかし、今回サポイ
ンに採択され、国費が出た
ことで、研究開発用の機械の導入が実現。いつでも自由
に使えるようになったことで、事業化に向けた研究が大き
く前進することとなった。今後は、成果物である車載用複
合部品のモデルを活用し、自動車メーカーや車 載部品
メーカーへの技術提案を進めていく。また、販路拡大に
向け、他の製品分野に対しても多角的な技術展開を図っ
ていくという。
同社では、金属と樹脂の接
合技術に加え、新たに採択
され た サ ポ インに お いて
は、非常に軽量で強度の高
いCFRP(炭素繊維強化プ
ラスチック)
と金属を一体化
させる技術の研究を行って
いる。今後は、これまで培ってきたこれらの技術を結集し
て、自動車のさまざまな部分の部品材料を生産・提供して
いきたいという。
また、接合技術は、最終的な形が決まって
いるわけではない 要素技術 であるため、活用の場は至
る所に存在する。将来的には、同社の中核製品である自動
車関連部品に止まらず、多彩な分野で貢献していきたいと
している。
8
業態/ほうき・ブラシ製造業
有限会社高倉工芸
代表者:代表取締役 高倉清勝 本社所在地:岩手県九戸郡九戸村大字戸田第9地割115番地
URL:http://nanbuhouki.jp/
1967年創業。南部箒の素材となるホウキモロコシの無農薬栽培から製造、販売まで一貫生産体制を構築。九戸
地方に伝わる箒作りの技術をもとに、高倉工芸独自の改良と新たな技術を加えた製品群は60種以上にのぼる。
事業名:フリーズドライ製法による完全オーガニック素材箒の開発と
新規顧客の獲得
岩手県九戸地方の工芸品である「南部箒(なんぶほうき)」。現在、100%手作りで
生産している日本で唯一の会社が、
(有)高倉工芸である。箒の素材となるホウキ
モロコシの無農薬栽培から製造、販売まで一貫生産体制を構築している同社では、
ホウキモロコシの青々とした色と香りを残した「フリーズドライ製法」による新製品の
開発に成功。10年、20年と使える南部箒の新たな付加価値を創造し、顧客層の拡大
を狙う。
9
取り組みのきっかけ
革新の経緯
かつては農 業 者 が 副 収 入
を得るために作っていた南
部箒。もとは農家だった高
倉 工 芸も、1 9 8 0 年 代 半ば
から水田の減反を機にホウ
キモロコシの 栽 培 を 始 め
た。1992年からは本格的に
南部箒の製造販売を開始。携帯できる小型タイプや、パソ
コンのキーボードに使えるミニ箒など、伝統の技を守りな
がら時代のニーズに応えた商品を展開して人気を博した。
しかし近年は景気低迷の影響を受け、完成までに数年を
かける高級品の需要は減少。その対応策を探っていた際
に、九戸村商工会から補助金の活用による経営革新の提
案があった。
支援を受けて取り組んだこ
とは、新たな付加価値の創
出である。もともと自社で無
農薬栽培した素材を使うと
いう強みをもっていた高倉
工芸。同社ではこのホウキ
モロコシの新鮮さに着目し
た。通常、ホウキモロコシは天日乾燥してから製造に回され
る。乾燥したホウキモロコシは緑色が薄くなり、香りもほと
んど残っていない。そこで収穫したての色と香りを残した製
品にするため、岩手大学に技術協力を求め、
フリーズドライ
が有効な方法であるという結論に達した。サンプルを製造
したところ、社長自身の想像も超える素晴らしい出来栄えと
なった。
取り組みの成果
今後の展望
従来品ではホウキモロコシ
をまとめる編み糸に化学繊
維を使用していたが、これ
も無化学繊維とし、布も藍
染などにこだわることで、ア
レルギーなど過敏症の人や
環境へのやさしさにこだわ
る人にもアピールできる「完全オーガニック素材箒」が完
成。青々としたホウキモロコシの色と心地よい香りを残し
た完全オーガニック素材箒は、国内はもとより海外にもア
ピールできる同社の自信作となった。同時に、同社の販売
拡大への意欲を大いに高めることにもつながった。
南 部 箒 は 、穂 先 に 独 特 の
「ちぢれ」がある。
これは「や
ませ」と呼ばれる東北地方
の冷たい風によって育まれ
る も の で 、この ちぢ れ が
カーペットなどの塵も取り
込める特長につながってい
る。人の技と自然の力が生み出した逸品、南部箒の魅力を
より広く発信すべく販売方法も見直し、現在は全国の百貨
店などの催事で対面販売を積極的に展開。今後はネット
販売の強化、ギャラリーへの出展も視野に入れ、2016年
にはフランスで開催されるジャパンエキスポに出展。海外
展開への大きな第一歩を踏み出す予定となっている。
業態/造船技術と建築を融合する建築構造物・金属意匠工事、水門施設工事、
船舶建造・艤装修繕工事、
プラント金物・製缶・配管工事、一般建築・土木一式工事
株式会社高橋工業
代表者:代表取締役 髙橋和志 本社所在地:宮城県気仙沼市波路上内沼38番地4
URL:https://takahashikogyo.com/
1985年、造船業を主体とした(有)高橋工業を設立。その後陸上への進出を図る中、造船の特殊技術を活かした
建築物や独創性に満ちたアート系の作品等を多数製作。今回実現したアルミ小形漁船の開発は、廃船処理問題へ
の抜本的な改善策として各方面からの期待も高まっている。
事業名:海面養殖漁業向けのアルミ小型漁船の実用化開発
先の震災で被災し、ゼロからスタートしたものづくり企業が、廃船処理問題を解決
する新たな漁船のカタチを開発、販売へ!これまでの小型漁船はFRP(ガラス繊維
強化プラスチック)船が主流だったが、素材の特性上焼却処理が難しく、廃船コスト
も高額で漁業者の負担が大きかった。そこで99%リサイクルされるというアルミニ
ウムを利用した、環境にやさしい小型漁船の製造に挑戦。その試作船の開発に成功
し、今後は安全性や機能性をより高めながら本格稼働に向け事業を推進していく。
取り組みのきっかけ
支援活用
鉄 板を自在 に曲 げる行 鉄
の技法、流線形を用いた設
計、さらにそれを組み立て
る溶接と3つの特殊な技術
を駆使してものづくりに邁
進してき た 同 社 。震 災 に
よって被災した漁船が放置
され、
さらに国からの支援で配布された小型漁船のほとん
どがFRP
船だったことで、今後廃船処理問題が大きくク
ローズアップされることが予想できた。そこで環境への負
担軽減、
リサイクル性という観点から再利用が可能なアル
ミニウムを使用し、海面養殖業者(ワカメ、かき、ホタテ等)
のオーダーによるアルミ小型漁船の開発・販売を目指すこ
ととなった。
製造業ということで、アルミ
漁船を造るための溶接機と
いった機械工具類はあった
が、ニーズを反映し現状に
より即したモデル船を緻密
に設計する必要があった。
そこで補助金を活用するこ
とで、バージョンアップした設計用コンピューターシステム
一式を海外から輸入し、導入できた。
これにより、波や気候
の条件、さらに漁業者のニ−ズを的確に入力しながらシ
ミュレーションを行い、最適な船型等をまとめるため工程
の短縮にもつながった。震災で経済的な余力がない中、支
援によってこうした設備を導入できたことは大きな意義が
あったという。
取り組みの成果
今後の展望
補助金を活用した最新コン
ピューターシステムの導入
も後押しとなり、設計・開発
に成功。まずは試作船の製
造を実現できた。今後は海
上での 試 運 転を重 ねなが
ら各種の研究を継続し、よ
り安全性、作業の快適性を高めていく予定。アルミニウム
は耐久性、強度、
リサイクル性に優れた特性をもち、使い
手のニーズに合った最適な船型と機能性を実現できる素
材。廃船時のスクラップも容易で再利用も可能なことから、
資産価値を高めるものとして期待も高まっている。さらに
同社では、地域を担う建造技術者の育成を目指した事業
としても位置付けている。
まずは漁 船の廃 船 処 理 問
題をいかに解決していくか
に力を注いでいくことが当
面の目標。さらに今回の開
発にとどまらず、昨 年 商 標
登録された特殊鋼材を使っ
た製品や造船の特殊技術
を活かしたデザイン系の造形作品づくり等を基軸として、
より付加価値の高いものづくりを実現していくことを目指
している。震災前から参加していた台湾での商談会をはじ
め将来的には台湾、ロンドン、ニューヨークへの3支店開設
という大きなビジョンも掲げている。震災から再び立ち上
がった同社が、ものづくり企業として新たな航路を切り拓
こうとしている。
10
業態/きもの総合加工事業、きもの販売事業、テキスタイル事業
株式会社きものブレイン
代表者:代表取締役 岡元松男 本社所在地:新潟県十日町市本町6丁目1
URL:http://www.kimono-brain.com/
1976年に創業し、呉服販売業を開始。1988年に(株)きものブレイン設立。反物から仕立てまでの全加工、汚れを
防ぐ撥水加工、着用後のメンテナンスまで「着物の一生」に関わるあらゆる加工を担い、
「お客様の幸せ」
と
「きもの
の幸せ」の実現を目指す。
事業名:イオン共有結合を用いたあらゆる繊維への撥水加工
「ドリームケア」の事業化
全国第2位のきものの産地である十日町市。
しかし、国内では長らくきもの市場の
縮小が続いている。
この状況を打破すべく、きものの丸洗いやしみ抜き等のアフター
ケアを提供してきた(株)きものブレインでは、地元企業との連携により、汚れが付き
にくく、家で簡単に水洗いできる撥水加工「ドリームケア」を開発。
ウール、
シルク素材
を中心に他素材にも展開し、きものを気軽に楽しむライフスタイルの拡大を目指す。
11
取り組みのきっかけ
連携体制
消費者にもっと気軽にきも
の を 楽しんで い た だ きた
い。そんな思いから、きもの
のアフターケアなど常に新
しいことに取り組んできた
同社。長年の課題となって
いたことは、
「 汗」だった。き
ものについた汗はドライクリーニングで落とすことができ
ない。
しかし、水に弱い絹のきものを「洗う」
ことも不可能
だった。そのため、同社ではしみ抜きなどのアフターケアを
提供していたが、もっと気軽に「家で水洗い」できる加工の
開発に取り組んだ。そこには、きもの産業の縮小により衰
退している地域を活性化したいという思いもあった。
魚沼整染株式会社(新潟県十日町市)
(株)きものブレインでは、新技術についてすでに基礎とな
るノウハウを持っていた。
しかし、事業化に向けては膨大な
試 験を重ねる必 要 があり、そのために必 要な設 備はな
かったため、事業のパートナーであった染色のプロ、魚沼
整染(株)に連携を依頼。ポイントは、生地の繊維に直接反
応して薬剤を結合させる「前処理加工」
という新技術だっ
た。およそ1200種はあるという撥水剤の内、何種類かを工
場に持ち込み、加工時の温度を1℃ずつ変化させて結合
のタイミングを図るなど、緻密な調整による実験を重ねて
いった。
取り組みの成果
今後の展望
約3年にわたって試験を行
い、ついに「ドリームケア加
工」が誕生した。
「ノンホル
マリン・ノン樹脂加工・ノン
有機溶剤」の3つを同時に
実現した薬剤を利用し、健
康と環境の両方に配慮。撥
水・撥油機能、形状安定機能、優れた速乾性、帯電防止機
能、
しかもあらゆる素材に加工可能という画期的な技術
は、きもの業界のみならずアパレル業界からも注目を集
め、メーカーに採用されるなど用途が広がっている。開発
には長期間を費やしたが、結果的に乗り越えられたのは連
携企業との厚い信頼感があったからであり、補助金の活用
も大きな支えとなった。
ドリームケア加工は絹だけ
でなく、水に弱いカシミアな
どあらゆる素材に適用でき
る。様々な素材の可能性を
引き出す技術として繊維業
界での普及を目指し、今後
はアパレル消費が伸びてい
る海外市場への展開も視野に入れている。
また、同社では
技術者がきもののしみ抜きなどをする作業を観光客が見
学できる
「産業観光工場」の建設に着手している。
ここから
きものの魅力を発信することで交流人口を増やし、地域活
性化に結び付けていくことが狙いだ。きもののトータルケ
ア事業にとどまらない同社の提案は、次世代におけるきも
のの可能性を広げ続けている。
業態/産業用溶接機・機械の設計、製造、販売
株式会社向洋技研
代表者:代表取締役 甲斐美利 本社所在地:神奈川県相模原市中央区田名4020-4
URL:http://koyogiken.co.jp/
テーブルスポット溶接機および関連商品の設計・製造を行う専門メーカー。2012年10月に販売を開始した「高速
溶接技術搭載のテーブルスポット溶接機(MYSPOT)」が、世界の精密板金業界の生産現場を変える画期的な商品
として注目を集めている。
事業名:スポット溶接における高速溶接技術の開発
作業性、品質性、仕上がり性のすべてを画期的に改善した高速溶接技術を全社一丸
となって開発した。
これまでのスポット溶接では、大勢による不安定な作業が強い
られるため不良品が出やすい上、スポット打痕や焼け焦げなどの後処理に多くの時
間が費やされてきた。向洋技研では、誰でも一人でラクに作業ができるテーブルを
設けたスポット溶接機を開発した後、サポインの認定を受け、打痕や焼け焦げを
なくす未知の技術に取り組む。その結果、溶接時間0.01秒の高速溶接技術の開発に
成功。後処理がいらない革新的なスポット溶接を実現した。
取り組みのきっかけ
取り組みの成果
同社代表の甲斐氏は機械
設計事務所として独立した
が、商 品 化まですることで
世 界 に 打って出 た いと考
え、設計製造の道に入る。そ
の後、完成させた「テーブル
スポット溶接機」
で売り上げ
を伸ばしていた折、
リーマンショックが起こり一気に低迷し
たのをきっかけとしてサポインに挑戦。
アルミ、高張力鋼板
といった難溶接材の溶接技術や、後処理のいらない仕上
がりの良さを実現するための研究をスタートした。通常の
業務を終えた後に全社員が取り組んだ研究開発は、神奈
川県産業技術センターなどと連携しながら、3年半がかり
のものとなった。
本来は自動車メーカーのボ
ディ製作用に使われる従来
のトランス電源では瞬間的
な溶接ができないため、ま
ずは自前のトランス電源の
開発から着手。2年間の試
行錯誤の末に、電流の立ち
上がりが従来の1/15となる高精度な10kHzトランス電源
が完成した。そこから溶接自体の実験を1年半かけて行
い、
トータル3年半で目標としていた高速溶接技術を実現。
これにより、お客様の悩みとなっていたスポット打痕、焼
け、
しわ、
うねりが極めて小さく、後処理がいらない画期的
なスポット溶接が可能となった。
支援活用・販路開拓
今後の展望
中 小 零 細 企 業 が 成 長して
いく上では、人材、資金、技
術などさまざまな「壁」を感
じることが多い。それを乗り
越えるには、一時的な補助
ではない、ある程度長いス
パンでのサポートが必要。
この意味で、3年間の研究開発サポートが得られるサポイ
ンは非常に魅力的であり、向洋技研にとっては10年以上に
も感じる支援であった。2012年10月、高速溶接技術を組
み込んだテーブルスポット溶接機の1号機を発表し、展示
会に出展したところ大反響を獲得。そこから1年で約100台
もの販売実績をつくることができた。
向洋技研は30名足らずの
会 社 で あるにもか か わら
ず、自ら製品を作り、自らカ
タログやホームページを作
成し、自らの 力で 販 売して
いる。そんな大 企 業と同じ
ようなことができるのは、イ
ンターネットの活用に負うところが大きい。実際、同社の
ホームページを見たスウェーデンの会社が商談に訪れた
ほか、アメリカ、
ヨーロッパをはじめ海外の10社以上から
引き合いが来ている。今後とも国内外の展示会に積極的
に出ていき、高速技術を搭載したテーブルスポット溶接機
の価値を世界中に伝えていくことが目標。
12
業態/ジャム・ワイン、その他食品の製造販売、
ワイナリー・レストラン・売店等の直営及びフランチャイズ展開
株式会社サンクゼール
代表者:代表取締役社長 久世良三 本社所在地:長野県上水内郡飯綱町芋川1260
URL:http://www.stcousair.co.jp/
ジャムづくりを手掛けた斑尾高原農場を始まりに、1982年、株式会社サンクゼールを設立。洋のグロサリーを製造
販売するほかレストラン、直営店を多数展開。経営革新により新たなブランド「久世福商店」の拡充と物流拠点の
整備を実現し、海外進出を図るべく挑戦を続けている。
事業名:和のグロサリー市場参入と新規グロサリーブランド開発及び
フランチャイズ制導入等による経営効率化
以前は直営店舗を主体としてジャムやワインなど洋のグロサリーを製造販売してきた
同社。そんな中、全国各地に埋もれている優れた和の食文化に着目し、販路をもて
ない生産者の悩みに応えるべく和のグロサリー市場に参入。セレクトショップ「久世
福商店」を立ち上げた他、直営店舗投資や管理負担増といった経営課題を、フラン
チャイズ制を採用することにより解決。さらに倉庫業務を新工場で内製化することで
きめ細かな商品管理と配送を実現するなど海外販路拡大に向けての成長戦略が
着々と実践されている。
13
取り組みのきっかけ
支援活用
「カントリーカンフォート」を
ブランドコンセプトに、全国
4 5 余の直 営 店による洋の
グロサリー事業を展開して
きた同社。海外進出を目指
し、数年前よりシンガポール
等での 商 品 販 売を試 みて
いた。
ところがサンクゼールがフランスのブランドと誤認さ
れ、日本しかも長野のブランドであるという訴求が難しい
ということが分かってきた。逆に現地のお客様から和の商
品を求められる声もあった。そこでマーケティングの方向
性を改めて見つめ直し、
「久世福商店」を核として日本の和
食文化の発掘と開発、さらに物流拠点づくりにも取り組む
こととなった。
商品開発、製造、販売の強
化を目指す中、まず新たな
工場製造ラインを確保すべ
く信濃町に工場を取得して
リニューアルを図り、
リパッ
ク設備を導入。また増大が
予想される物流に対応する
ため、アウトソーシングに頼ってきた倉庫業務を同工場で
内製化。
これによってきめ細かな商品管理と配送を実現、
必要なものを必要な時に調達できるというジャストインタ
イムの供給体制が確立できた。今回の経営革新にとって、
生産と販売をつなぐこの物流拠点が重要な役割を果たす
こととなり、サンクゼールのイノベーションを起こす中心的
な機能を担っている。
取り組みの成果
今後の展望
これまで洋をテーマとして
きたサンクゼールというブ
ランドから脱却した、もうひ
とつのブランドの確立を実
現することができた。わず
か3年あまりで全国に30店
舗が新設され 、いっそうの
販路拡大に大きくつながった。
また各地から発掘した生産
者同士が融合することでさらに新しい商品開発に結び付
くといった新たなムーブメントも起き、当初期待していた
以上の成果と新たな発見に行きつくことができた。売上げ
規模も大きく伸びる中、地元素材を活用した地域貢献や
雇用の受け皿としての役割も果たしながらさらなる飛躍を
目指している。
和のグロサリー市場の開拓
を図り、和と洋を融 合させ
た新たなブランドのシンボ
ルである「久 世 福 商 店」の
展 開によって、まずは国 内
基盤の充実を目指す。そこ
から目標としてきたシンガ
ポールをはじめとした海外販路の開拓を目指していく方
針。今後のマーケティングリサーチを踏まえ、米国サンフラ
ンシスコでの調査研究も進めているという。アジアでの
パートナー探しを積極的に進め、
さらには米国への店舗進
出を視野に入れながら、世界に誇れる 信州の美しい田
舎 を本拠地として、世界中の人々に楽しんでもらえるホス
ピタリティーを広めていく。
業態/電気機械器具製造業
栄商金属株式会社
代表者:代表取締役 佐山行宏 本社所在地:東京都大田区下丸子2-1-3
URL:http://www.eisyo.co.jp
1962年に創業、電子機器の成長スピードが著しい中で柔軟な対応力により着実な成長を遂げ、ものづくりノウ
ハウとコーディネート力を強みとしながら、環境に対応したマシンを開発・提供。品質・環境保証はもちろん、常に
新分野の技術開発に挑んでいる。
事業名:新たな体圧分散機能を導入した褥瘡対策マットレスの開発
今、全国には約170万人の入院患者がいるといわれ、そのうち1 2割が褥瘡(じょく
そう)
といわれる床ずれを発症しているという。床ずれ対策のために看護師が数時間
おきに体位変換を行うなど、医療現場での負担にもなっているこの現状を変えるの
が、栄商金属(株)と国立長寿医療研究センターの開発による「超低圧体圧分散
マットレス」である。患者の症状を軽減することはもちろん、医療現場の省力化にも
貢献する製品として注目を集めている。
取り組みのきっかけ
名 古 屋にある国 立 長 寿 医
療研究センターでは、地元
企 業とともに 床 ず れ 対 策
マットレスの研究を進めて
いた。各患者の体型や状況
に応じ、手動で空気圧力調
整を行えるマットレスの採
用を試みたが、そのコントロールは医療スタッフの経験値
によるところが大きく、普及には結びついていなかった。そ
こでチームが着目したのが、ものづくりの町・大田区で50
年以上の実績を積み上げてきた栄商金属(株)のマシン
(キリトリ)である。同社が過去に手掛けた、カリスマ美容
師のハンドテクニックを記憶・出力できるマシンの技術が、
開発現場に新たな扉を開いた。
ものづくりの経緯
国 立 長 寿 医 療 研 究 セン
ターには、絶妙なエアマット
の圧 力 調 整で床ずれの治
療ができる医療チームのノ
ウハウがあり、学会で高い
評 価 を 受 けて い た 。そ の
「感触」を工学博士が数値
化し、栄商金属(株)の「ハンドテクニックを再現できる技
術」
と合わせることで、開発は大きく動き出すことに。個人
の体型の違いからくる圧力バランスを最適に分散する
「エ
アセル」
というマット心臓部の試作、サンプル個体数の向
上など、量産化に向けた様々な実験には資金の課題も生
じたが、助成金の活用により無事に開発を完了することが
できた。
取り組みの成果
今後の展望
技術的な数値をクリアする
だけでなく、機械的な見た
目をできる限り改 善し、心
安 らぐ デ ザ イン に もこだ
わった。完成したマットレス
は、すでに病院での導入が
始まっている。充分に体圧
分散された自然な寝心地は、床ずれ減少に結びついただ
けでなく、思わぬ成果も生み出した。それは患者の睡眠環
境改善である。床ずれの痛みが原因で寝つきが悪く、 徊
していた患者が深く眠れるようになり、目を覚まさなくなっ
たという。体力回復にもつながるこの成果は、医療ともの
づくりの思いをひとつに重ねて歩んできた開発チームを大
いに沸かせた。
今 後 は医 療 機 器メーカー
や販売会社をパートナーに
加えて販 売 網 の 増 強を図
り、全国の病院への普及を
目指す。また、アスリートに
質の良い睡眠を提供するこ
とで体力回復へと結びつけ
る専用ツールとして、あるいは一般向けの健康マットレス
など、新たな市場も視野に入れている。
「ものづくりの会社
をやっているものの夢といえば、
この世にスターとなるよう
なものを送り出すこと」
という佐山代表。
「あのマットはうち
が携わったものだと、全国に胸を張れるものに育てていき
たい」
と、ものづくりの誇りをかけた社会変革にさらなる意
欲を燃やしている。
14
業態/青果物・食品鮮度保持各種資材製造・販売
株式会社ベルグリーンワイズ
代表者:代表取締役 野嵜 健 本社所在地:愛知県名古屋市中区新栄2-42-28
URL:http://bellegreenwise.co.jp/
主に青果物のパッケージを企画・提案・販売する包装資材メーカー。生産地から小売店に至る一連の流通現場の
ニーズに応え、鮮度保持機能を高めた自社オリジナル商品の開発や、環境にやさしいパッケージ商品の開発、包装
作業の省力化提案などを行っている。
事業名:水分子活性等を利用して青果物の鮮度を保持する
包装フィルムの製造・販売事業
野 菜 や 果 物 などの 鮮 度 保 持 に 抜 群 の 効 果を発 揮 するとして、全 国 の 生 産 者 、
小売店から注目を集めている包装フィルム。それが「オーラパック」である。特殊な
熱 や光を転 写して加 工した包 装フィルムにより、青 果 物 の 蒸 散 や呼 吸といった
生 理 活 動をコントロー ル。消 費 者 へより新 鮮 な 状 態で 届 けられるだけで なく、
小売店の返品ロスや廃棄ロスを削減することにより、環境にも貢献できる。現在、
グローバルな展開も視野に入れながら活用シーンを広げている。
15
取り組みのきっかけ
連携体制
1977年より包装資材分野
へ進出、40年近くにわたり
鮮 度 保 持 効 果を有する機
能性フィルムのニーズに応
えてきた(株)ベルグリーン
ワイズ。さらなる高 機 能を
求めて技術を模索していた
ところ、以前より技術顧問として契約している(有)テクノ
ワールドから新機能フィルムの提案を受けた。従来の包装
資材にはない斬新な機能に着目し、パッケージの印刷加
工を担う
(株)ヒダパックも含めた3社体制で開発に乗り出
す。葉ものや根菜といった青果物の種類や、季節による効
果のバラつきなど、様々な課題をクリアするための研究が
スタートした。
株式会社ヒダパック
(岐阜県下呂市)
(株)ベルグリーンワイズの関連会社であり、多彩なパッ
ケージフィルムの印刷加工、成形を担う。優れた技術とノ
ウハウ、品質管理により実績を重ね、オーラパックでは独自
の加工技術により大きく貢献した。
有限会社テクノワールド(兵庫県西宮市)
技術面におけるパートナー企業として長年の信頼関係を
築き、オーラパックの技術を提案、製造指導を行った。パッ
ケージ資材の技術に特化した企業であり、常に新たな技
術を追求し続けている。
取り組みの成果
今後の展望
2007年に「蒸散抑制効果」
「呼吸生理コントロール効
果」
「防曇(ぼうどん)効果」
を備えたオーラパックを開
発 、翌 年よりテストマーケ
ティング による 販 売 を 開
始。さらに研究開発を進め
る過程において、支援事業によりオーラパックの処理装
置や分析装置を購入した。それまで片道2時間ほどの距
離にある企業に依頼していた処理が社内で可能となった
ことで、研究速度が大幅にアップ。情報共有などの連携も
よりスムーズに。現在はそのままレンジ調理できる新製
品も開発、包装資材卸業者やJA、一般消費者等にも販路
を広げている。
個食化などによるカット野
菜の増加といったライフス
タイルの変化や、 など青
果 物以外への用 途も後 押
しし、
これまで無包装であっ
た商品でも採用が拡大して
いるオーラパック。さらに今
後は、TPPの影響で日本の青果物が海外へと輸出される
時代。日本のみならず、国際的な課題である食品の廃棄ロ
スを軽減させる製品として、ますますニーズが高まる可能
性が高い。
「単なるビニール袋ではない、様々な機能がつ
まった包装資材の奥の深さ」で、
より多くの市場にメリット
をもたらすグローバルなステージをつくりたいと同社は意
気込んでいる。
業態/金属製品製造
有限会社アートスクリュー
代表者:代表取締役 松林 興 本社所在地:愛知県名古屋市北区生駒町3-67-1
URL:http://www.artscrew.co.jp/
平成15年、緩み止めのボルト開発に特化した新会社として名古屋を拠点に歴史をスタートさせた。新開発のボルト
「モーションタイト」が各方面から高い評価を獲得。平成27年には第40回発明大賞「発明功労賞」を受賞するなど
金属製品製造の雄として脚光を集めている。
事業名:高信頼性と緩み防止機能を併せもつ新形状ボルトの開発
市場に流通している従来の緩み止め製品は、一長一短があり使用場所も限定されて
いた。そのような中、あらゆる分野で使用でき、
また低コストかつ標準のボルトと同じ
作業性で使用できる今までの常識を打ち破った全く新しい規格のねじ「モーション
タイト」を同社が開発した。普通に締め付けるだけで緩みを抑え、安定した軸力で
疲労強度も向上。すでに各方面での導入も進み、製造販売の委託や海外での現地
生産も増やすなど国内外においていっそうの製造販売ルート拡大を図っている。
取り組みのきっかけ
支援活用
これまで様々な緩み防止技
術が提案されてきたが、多
くのものがおねじとめねじ
を相 互 干 渉させる摩 擦 抵
抗型のボルトやナットがほ
とんどだった。
これらの製品
は作業性やコスト面などで
課題があり、
またナットが使用できない場所でも緩み止め
の効力が発揮できるよう、ボルト単体で緩み防止力が得ら
れる製品が求められていた。さらには軸力のバラツキがな
い安定した軸力をもつことも必要だった。そこで高い緩み
防止力だけでなく、優れた疲労特性をもち、バラツキのな
い安定した軸力が得られる高性能ボルトの開発を目指す
こととなった。
ねじ専 門 の 加 工 業 からス
タートし、平成15年に緩み
止めのボルト開発を行う現
在の会社を立ち上げ、研究
をサポートする名古屋市工
業研究所とともにサポイン
に応募。その補助金を活用
することで、200以上の金型を作るなど精力的な研究開発
に邁進することができた。不断の努力が実り、
「緩む、折れ
る」
という従来のボルトの2大弱点を一気に解決する
「緩み
にくく、折れにくい」
という画期的な製品の実現にこぎつけ
ることができた。製品化後は目標としていた2輪の耐久テ
ストにも合格し、高強度を要する自動車ボルトの開発も新
たにスタートしている。
取り組みの成果
今後の展望
この「モーションタイト」の
新規開発によって、高い緩
み防止力(NAS式振動試験
で17分間3万回転緩まず)、
優れた疲労特性(標準品の
1.2∼1.4倍)、安定した軸
力(バラツキ範 囲、標 準 品
の2/1程度)など従来の製品にはない大きな成果を得るこ
とができた。転造で量産するため、低コスト、高精度化も実
現した。疲労強度の向上によって、ボルトの重量減少効果
による燃費向上やダウンサイジングによるコンパクト設計、
さらには製品そのものの小型化や省エネへの貢献など今
後の効果拡大も期待されている。
平成25年9月から販売をス
タートさせ、大手企業の採
用も実現。建築関連、鉄道
駅構内、工場の生産設備な
どでの使用がすでに始まっ
ている。国内での営業活動
はもちろんのこと、海外への
積極的な展開を行うとともに、製造販売の委託先も同時
に開拓していく。ねじは汎用性が高い部品であるため、国
内だけでなく海外市場もターゲットであり、
この好機を活
かすべく幅広い販売活動を行っていく。
「安全を世界へ届
ける」
という理念のもと、2輪4輪はもとより、将来的には飛
行機、そしてロケットなどの航空宇宙分野への進出を期し
て夢は膨らんでいる。
16
業態/氷砂糖・液糖・ガムシロップなどの製造・販売
中日本氷糖株式会社
代表者:代表取締役社長 福井直也 本社所在地:愛知県名古屋市中川区玉川町1丁目1番地
URL:http://www.nakahyo.co.jp
中日本氷糖株式会社は、創業120年以上の歴史を持ち、5割以上のシェアを持つ氷砂糖メーカーのトップ企業で
ある。氷砂糖を柱に特殊糖に特化する中部地区の老舗企業として、経営改革を続け、市場牽引までも考えた戦略的
経営を推進している。
事業名:コスト競争力強化を目的とした最新鋭ラインの導入
創業120年の歴史を持ち、馬印ブランドの氷砂糖として、市場の約55%とトップ
シェアを持つ中日本氷糖(株)。時代の流れとともに、同業者は他に6社が残るのみ
となっている。同社は氷砂糖中心の特殊糖に特化し、他社に先駆け製造ラインの
機械化にも着手。1994年(平成6年)に、日本で唯一となる氷砂糖「ロック」の製造
ラインの完全自動化を行った。
そして、新たな挑戦として経営革新を推進。
トップ企業
として甘えることなく、市場拡大を目指し、生産拠点の刷新を行うことで、成長戦略
実現への挑戦をはじめた。
17
取り組みのきっかけ
支援活用
同社の工場は、名古屋と岐
阜(南濃町)の2拠点で稼
働していた。名古屋では氷
砂糖「クリスタル」を生産し、
南濃では氷砂糖「ロック」な
どを製造。名古屋工場が築
50年以上経過し、老朽化が
進んでいたことから、改修工事を考えることになった。
しか
し、2拠点あった工場を集約する方が、人や原料・資材な
ど無駄のない導線を意識した製造ラインの効率化が可能
で、
ランニングコスト削減にもなる。その決断が、短期的で
はなく長期的な視点で作業環境を整備する良い転機とな
り、現在の南濃工場1拠点での生産体制の基礎となって
いる。
南濃工場の改築・増設工事
を決めたものの、その資金
調達をどうするか。取引先
の金融機関に相談したとこ
ろ、中小企業庁の「経営革
新制度」について話があっ
た。通常の条件よりも優遇
された融資が受けられることから、早速「経営革新計画」の
申請に取り組むことになった。問題は、お得意先に商品の
納入をストップせずに、名古屋工場からの移設工事を完了
させること。資金調達の心配が軽減されるこの制度の利用
は、生産拠点移設の課題解決に注力できる支えの一つと
なった。
取り組みの成果
今後の展望
工場の集約は予測通りコス
トダウンに効果を発揮した。
氷 砂 糖の原 料を溶 かす工
程の集約など、2工場で重
複する業務の統合による結
果である。また、人の動き・
物の動きなど、運搬の流れ
に無駄がない導線を意識し、工場に自動ラック倉庫を併
設したことで、作業効率を高め生産性の向上にもつながっ
た。工場の移設をきっかけに新しい設備の導入も進み、従
業員全員が改善意識を高く持つようになる波及効果も
あった。
このように、無駄のない生産体制を確立するという
取組は、業種を問わず、幅広い事業者に展開できる一つの
事例となるものである。
新 工 場には工 場 見 学 がで
きるスペースを設けた。小
学 校の夏 休みの自由研 究
などで多くの子供たちを迎
え、氷砂糖について学ぶ機
会を提供している。同社は
業界トップシェアを獲得して
いるが、シェア獲得よりも将来を考えた市場拡大を重視し
ている。氷砂糖の利用方法やおいしさを知ってもらうPR
をすることで普及・啓蒙となり、将来へと続いていく。また、
同社の長い歴史の中で育まれた「お客さま、従業員、地域
社会、株主にとっていい会社であり続ける」
ことを実践し続
けるためにも、今回の経営革新制度の活用は有意義なも
のとなっている。
業態/装置開発、製品開発と新たな仕組みの創造
N I T 株式会社
代表者:代表取締役 伊藤台藏 本社所在地:三重県四日市市三ツ谷町14- 20(伊藤工機株式会社内)
四日市ものづくり中小企業4社、安曇野ものづくり中小企業1社、及び個人3名により、2012年に設立。出資企業の
持つ技術・知識・ノウハウを融合し、装置開発を通して、
「人」
「地域」
「社会」を豊かにする仕組みを追求している。
事業名:海氷ナノアイス製氷機の開発
全国的に、漁業就業者の高齢化と減少が進んでいる現在。三重県も例外ではなく、
豊かな海産物に恵まれながら、将来的な展望が描けずに衰退が進む漁村も少なく
ない。ものづくりを通じた地域社会への貢献を目指して設立されたNIT(株)では、
0.01mmオーダーという超微細な海水氷を製造できる装置を開発し、量産化に乗り
出している。鮮魚の流通に革命を起こし、三重県のみならず全国に向けた漁業の
新たな可能性を追求する。
取り組みのきっかけ
ものづくりの経緯
四日市では製造業のみなら
ず 異 業 種 も含 め た ネット
ワークが長年にわたって確
立されており、意見交換が
なされていた。そこで話題
に 出 た の が 、米 国 の ベン
チャー企業が着手しながら
心臓部の開発で相談を受けていた「ナノアイス(後にリキッ
ドアイスと改称)製氷機」
である。一般に漁業分野での魚の
鮮度保持には砕氷が利用されるが、超微細な氷であれば
魚体を傷つけずに品質劣化を防げる。地域活性化のブラ
ンディングにつながると考え、さっそく試作品を製造。量産
化の可能性が見えたところで地元企業を中心とした5社と
個人でNIT(株)を設立し、開発へと乗り出した。
導 入コストが 低 い 砕 氷で
も 、漁 業 者 は 年 に 3 0 0 ∼
4 0 0 万円を投 資している。
NIT(株)ではこのコスト内
を目指し、市場に受け入れ
られる製品を目指した。中
小 規 模の漁 業 者でも購 入
できる価格でなければ、地域活性化には結びつかないた
めである。メーカーの利益を超えたビジョンは、困難を極
める開発現場において大きな原動力となった。また、試作
開発と設備投資での補助金の活用も、中小企業が中心と
なって設立したばかりの同社の経営安定につながり、取り
組みを支えることに役立った。
取り組みの成果
今後の展望
早 朝 から深 夜に及ぶ開 発
の結果、最後の課題をクリ
アしたのは若い技術者だっ
た。世代を超えたチームは、
ついにリキッドアイス製氷
機の検証を終え、県内の水
産加工会社で実用化のた
めの検証実験を進めることに。ある飲食店は、
この水産加
工会社からリキッドアイスで輸送された魚を仕入れること
により、それまで鮮度が劣るために焼き魚など加熱調理で
出していた約3割の魚も刺身で提供できるようになり、売り
上げ増に結び付いた。現在、漁業関係、飲食店など幅広い
事業に貢献できるツールとして、地域から全国へと営業活
動を広げ、導入を拡大している。
魚の鮮度保持を目的とした
リキッドアイス製氷機だが、
思わぬ 副 産 物も生 み 出し
た。大学との共同研究によ
り、
リキッドアイスで長期間
劣化することなく保存でき
ることで 魚 が 熟 成し、旨み
が増すことが明らかになったのである。プレミアムな商品
開発に結びつく付加価値として、今後の展開に大きな期待
が寄せられている。
また、漁業関係だけでなく医療関係、
ス
ポーツ業界まで、幅広い業種からの問い合わせも相次い
でいる。開発者の想像を超えた活路を見出しているリキッ
ドアイス製氷機は、今後も地域活性化への熱い思いを原
点とした新展開を図っていく。
18
業態/建設コンサルタント、
メカトロニクス、
SES(ソーシャルエナジーシステム)事業
株式会社日本コムダック
代表者:代表取締役 毛利隆一 本社所在地:大阪府大阪市淀川区宮原4-1-46
URL:http://comdac.co.jp/
建設コンサルタント、メカトロニクス、SES(ソーシャルエナジーシステム)の3事業を柱に、豊富な知識と経験を
持ったエンジニアが活躍。設立は2000年と歴史は比較的浅いながらも業界をリードするプロ集団として社会の
ニーズに応える技術サービスの提供を追求している。
事業名:永久磁石等を用いた簡潔着脱可能な太陽光発電モジュール
施工総合マネジメントの事業化
従来ボルトによって鉄製架台に取り付けられていた太陽光モジュールを、新たに開発
した永久磁石等を用いた軽量金具やφ48.6の鋼管架台に取り付ける金具「カンロク」を
考案。作業が簡易化したのは「カンロク」の機能性、傾斜地の設置は鋼管架台システム
を考案したこと、さらに鋼管架台システムを考案したことで、傾斜地といった難設置場所
にも設置が可能になり、簡潔着脱を可能としたことでメンテナンスも容易にした。あわせ
て工期短縮、低コスト化にも貢献することとなった。同社がもつ開発ノウハウと連携企業
(株式会社栄住産業)の施工ノウハウの融合が効果的に活かされた開発となった。
19
取り組みのきっかけ
連携体制
同 社 は 建 設コンサ ルタン
ト、メカトロ ニクス 、S E S
(ソーシャルエナジーシステ
ム)といった事業分野にお
いて、豊富な知識と経験を
持ったエンジニアを有し、
業界をリードするプロ集団
として技術サービスを追求してきた。そのような中、近年設
置が進む太陽光モジュールを既存の金具で鉄製架台に取
り付ける従来の工法は、既存金具の機能による作業性の
悪化や経済性が課題となっており、折しも連携企業からマ
グネットを利用した取付金具開発の相談を受けた。そこで
補助制度を活用しながら新たな鋼管架台やモジュール固
定金具の試作、開発に取り組むこととなった。
株式会社栄住産業(福岡県福岡市)
株式会社栄住産業は1975年の創業以来、日本住宅における
屋根の金属防水や屋上緑化、太陽光発電の施工を専門分野
としてきた企業。今回の開発にあたっては、同社がもつ太陽
光発電モジュールの施工ノウハウ、およびマグネットを使用
した取付金具のアイデアが重要なベースとなった。コア企業
である日本コムダックの建設・施工、金物に関する検証ノウ
ハウと、同社のもつ太陽光モジュールの施工ノウハウの理想
的な融合によってなし得た製品開発となった。
取り組みの成果
今後の展望
軽量金具「カンロク」の開発
は、太陽光モジュールの設
置工事に大きなメリットを
生み出し、本製品を量産化
することでこれまでに約3万
個を販売、工事を含めた売
上実績は20億円以上を計
上することができた。また新連携の認定を受けたことに
よって企業としての信頼度も向上し、補助金を活用した展
示会などでは大手企業からの引き合いも増えたという。汎
用性が高い製品であることから他の業種、分野への展開
も推進していく予定。
また新連携による知識や技術の共有
が、互いの企業力を高め合うことにもつながるという貴重
な副産物も得ることができた。
今 後も永 久 磁 石 だけでは
なく、他の素材を活用した
新たな製品開発や販路開
拓にも積極的に取り組んで
いく。たとえば補 助 金を活
用したものでは、太陽光モ
ジュール設置の際に地中に
打ち込む特殊な杭の開発も現在進行形で進められてお
り、
まもなく量産化できるところまで来ているという。社員ひ
とりひとりの技術、知識を高め、常に時代とともに進化を目
指していくことが同社の理念。その英知とパワーをひとつ
に結集して、日々移り変わる社会のニーズに技術力と熱意
で応えていく企業を目指している。
業態/自動車部品を主とした板金プレス・溶接・組立・塗装などの加工
株式会社平安製作所
代表者:代表取締役社長 高橋鉄次 本社所在地:滋賀県高島市マキノ町中庄464
URL:http://www.heian-mfg.co.jp/
1939年の創業以来、
プレス加工と溶接加工技術に特化して技術力を高めてきた。総合塑性加工・複合技術を標榜
する技術開発型の企業として、平成27年度には「ものづくり日本大賞」優秀賞を受賞するなど日本でしかできない
新しいものづくりへの挑戦を続けている。
事業名:精密せん断加工技術(平安式トリプルユニット工法)
アイドリングストップ機能搭載の自動車が急速に普及する中、エンジン再始動時の
ギアの騒音が問題視され、部品のコスト低減も課題となっていた。同社ではその
ニーズに応えるべく、培われた技術と独創的なアイデアにより、切削加工ではなく、
世界で初めてプレス加工のみで部品を製造する「平安式トリプルユニット工法」の
開発に成功。
この工法により製造された「ドライブプレート」はとりわけ吸音効果に
優れ、あわせて大幅な軽量化、低コスト化を実現する革新的な製造技術を確立した。
取り組みのきっかけ
支援活用
1939年にものづくりの歴史
をスタートさせた同 社 が、
一貫して取り組んできたの
は製造業の中の金属加工。
他ではできない 技 術 開 発
型の企業であることを常に
念頭におきながら歩みを続
けてきた。そのような創造性を重視した企業風土のもと、
自動車の進化に伴う部品の騒音低減や低コスト化といっ
た顧客のニーズにいち早く着目。資金面でのハードルをサ
ポイン事業制度を活用することで乗り越え、脈々と積み上
げられてきた技術と現場の旺盛なチャレンジ精神によっ
て、世界に例のない、きわめて精密な金属プレス加工技術
への取り組みがはじまった。
サポイン事業として取り組
んだ 今 回 の 技 術 開 発にあ
たって、同社では主に溶接
機などをはじめとした特殊
な機 械の導 入に支 援を活
用。
これらによって開発され
た新しい技術によって、さら
に次の新たな部品開発につながるという好循環が生まれ
ている。たとえば主製品の「ドライブプレート」以外でも、切
削や溶接、鋳造で生産していた従来のミッション部品を軽
量化するため、主にプレス機だけで作る技術を相次いで
開発。車体をできるだけ軽くすることで燃費向上を目指す
自動車メーカーからも注目を集めている。
取り組みの成果
今後の展望
「平安式トリプルユニット工
法 」の 開 発 により、自動 車
メーカーの課題であったギ
ア部 品の低 騒 音や大 幅な
軽量化、低コスト化に貢献。
一 部 の自動 車メーカー 向
けの量産にもつながってい
る。アイドリングストップ運動のいっそうの推進も期待でき
る。またこの技術から派生したミッション部品を軽量化す
る技術によって自動車メーカーからの注目も大きくなって
いる。平成27年度には、
「ものづくり日本大賞」
( 経済産業
省など主催)の優秀賞を受賞。すでに行っている海外展開
とあわせ、
「開発力と発想力」が強みという同社の存在感
はいっそう増している。
技術開発型の企業としてさ
らなる発展を目指すのはも
ちろん、とくに20代から30
代の若手社員が、技術開発
とともに経営に携わる意欲
を育むことにも力を注いで
いくという。
また海外へ出る
より国内で技術を磨き、新興国以上のコスト削減を実現さ
せたいという同社では、インドネシアの自動車部品メー
カーとの技術供与や人材育成での業務提携を実現してい
る。
これからも他社に先駆けて技術を開発し、その技術を
海外へ向けてセールスする方針。今後は、電気自動車の部
品など新たな分野への挑戦も視野に入れながらその士気
はますます高まっている。
20
業態/微細・難削材の切削加工、揺動型遠心バレル研磨機製造・販売
三恵ハイプレシジョン株式会社
代表者:代表取締役社長 落合良寛 本社所在地:大阪府大阪市平野区瓜破南2-3-4
URL:http://www.sankei-pr.co.jp/
最新設備と熟練の技術力を基に、
「難削材」や「微細部品」の切削加工を高精度に行う、超精密加工分野のリー
ディングカンパニー。遠心バレル研磨機をはじめとする自社開発製品の製造・販売にも注力しており、昨今は
遠心攪拌機の事業化も推進している。
事業名:タンク容量の大きい遠心バレル研磨機の開発、
揺動式遠心攪拌機の開発事業化
部品の加工メーカーである同社が初めて「遠心バレル研磨機」を製造したのは、
平成15年のこと。遠心バレル研磨機は、研磨剤と部品を一緒に容器の中に入れ回転
させることにより、部品の角を丸めたり表面を光らせることができる機械。同社は、
平成22年度、そのタンク容量が大きいものについて経営革新計画の承認を受けた。
その後、遠心バレル研磨機の技術を応用して取り組んだのが、2種類以上の粉を
均質に混ぜることができる
「揺動式遠心攪拌機」。
この開発と事業化で、平成27年度
に再び経営革新計画の承認を受けることとなった。
21
取り組みのきっかけ
取り組みの成果
同 社のバレル研 磨 機に強
い関心を持つお客様から、
この機 械を研 磨ではなく、
粉を混ぜるために使いたい
旨の問い合わせを受ける。
そのお客様は、何度もテス
ト混合に来社された末に同
機を気に入り、購入希望を伝えられた。そこで、同社では、
ご希望のバレル研磨機をそのまま販売するのではなく、そ
のお客様向けに特別に「紛体混合機」を一台作り上げた。
これを機に、紛体混合機の事業化と新たな市場開拓に向
け、再び経営革新計画の申請を実施。その承認を受け、商
品化への道筋をつけることに至った。
研磨剤と部品をすり合わせ
る遠心バレル研磨機は、電
子部品、医療機器部品など
のバリ取りや、ジュエリーを
磨いて光らせたり、歯科技
工士などが入れ歯を磨くこ
とにも使 用されるなど、高
い需要を誇っている。また、市場ニーズに応え、超精密・微
細部品用の揺動式遠心バレル研磨機の製品化も実現し
た。一方で、遠心バレル研磨機の取り組み成果を生かした
揺動式遠心攪拌機についても、より高度な製品開発と事
業化を推進。製品の性能と価値を高め続けることで、市場
の大きな広がりが期待されている。
支援活用
今後の展望
2017年に創業50周年を迎
える同社は、先代が機械設
計のエンジニアだったこと
もあり、当初、産業機械や自
動 化 機 械 などの 装 置メー
カーであった。その後、現代
表に代わってから部品の加
工メーカーへとシフトしたものの、いま再び自社製品の製
造・販売をも手掛けることになる。その製品開発に当たり
必要となる資金をいかに調達するかは、同社にとって最大
の課題であった。そこで、経営革新計画が承認されること
で得られるさまざまな支援内容に着目。計画が承認され、
審査を通った後に、政府金融機関から有利な融資を受け
ることができた。
同社は、これからも自社製
品 の 開 発 に積 極 的 に取り
組んでいき、事業比率を高
めていきたいとしている。当
初 の目 標 は 総 売り上 げ の
3 0 % 程 度で、最 終 的 には
5 0 %を目指していく。この
自社製品への注力は、企業のお客様からの図面に従って
部品を作る場合と異なり、開発・製造のイニシアチブを常
に自社で持つことができることに魅力を感じているためで
ある。
しかし、
これは一方で、自らが市場競争を戦っていか
なければならないことを意味する。同社では、あえてその
戦いに挑み打ち勝っていくことで収益を上げ、
より多く社員
に分配していきたいとしている。
業態/各種半導体評価用測定機器及び検査機器の開発製造・販売、
エレクトロニクス制御機器の開発及びOEM製作
阪和電子工業株式会社
代表者:代表取締役 長谷部 巧 本社所在地:和歌山県和歌山市大垣内689-3
URL:http://www.hanwa-ei.co.jp/
半導体の製造工程における解析装置や各種試験器の開発・製造・販売を手掛ける。新技術を駆使して開発された
静電破壊自動測定器・解析装置は国内市場に確固たる地位を築き、国内シェア70%を誇るなど、独自の製品で
半導体の信頼性向上に大きく貢献している。
事業名:静電気可視化装置の開発
肉眼では見えない静電気を可視化する装置を開発した阪和電子工業(株)。
これまで
静電気の発生を確認できる表面電位計は存在していたが、それを色表示で判定で
きるようにした装置は業界初である。気軽に携帯できる軽量コンパクト設計、本体へ
のデータ保存やPCとの連動などの機能も搭載。長年、静電気をキーワードに進めて
きた開発研究により誕生した画期的な装置は、静電気によるトラブルが課題となって
いた様々な業界に変革をもたらすとして大きな期待が寄せられている。
取り組みのきっかけ
ものづくりの経緯
静電気トラブルは電子部品
をはじめとする様々な製造
現場で発生し、対策が講じ
られている。
しかし、その効
果を確認する方法は存在し
なかった。30年以上前から
半導体の測定・検査機器の
開発に取り組んできた同社でも静電気は当初から課題で
あり、顧客からの相談も多かった。
「やっかいな静電気が、
SFのようにゴーグルで見えたら面白い」。近畿大学や和歌
山県工業技術センターとの共同研究の場で研究員がつぶ
やいた言葉が発想の原点に。検査、計測、測定などで信頼
性に貢献してきた技術を活かし、静電気可視化装置の開
発に踏み切った。
ゴーグルの形状は難しくと
も、まずは「かざして見るタ
イプ」なら実 現 可 能という
方 向 性 がまとまり、1 号 機
が試作された。国内の展示
会に出展したところ大きな
反響があり、確かな手ごた
えとともに2号機を製作。もっとも困難を極めたのは小型
化、そして電池式のコードレスの実現だったが、粘り強く
改良を重ねた。その後も展示会での市場調査により、液
晶画面の追加、SDカードやUSBデータ転送機能、スイッ
チの位置変更、持ちやすいように素材を金属から樹脂に
変更、商品デザインを向上させるなどの改良テーマを発
見していった。
取り組みの成果
今後の展望
現時点での最新モデルは3
号機である。ニーズに応え
続けた結果、顧客からも大
いに好評を博し、さらに反
響が広がっている。量産体
制 の 確 立に向けては支 援
を活用することにより、原材
料費、機械装置費、人件費、外注加工費などの負担を軽減
することができた。かつてのリーマンショックにより製造業
界は大打撃を受けているが、同社も例外ではない。その経
験から新技術への挑戦は必須という意識をより強くしては
いたものの、
リスクがあることも否めない。
リスクをできる
限り抑えられる今回の支援が、新たな一歩への力強い後
押しとなった。
量産を行い、販売を推進す
る段 階となった 静 電 気 可
視 化 装 置 。同 社 は 本 装 置
により
「静電気が見える」
と
いうひとつ のソリューショ
ンを提 案したが、
「静 電 気
対策」を次のステップとし、
異業種とのコラボレーションも視野に入れている。販売
体制も将来的にはネット通販等の利用、静電気除去装置
メーカーとのタイアップなどさらなる拡販に努めるとい
う。フィルム業 界、紙 業 界、塗 装 業 界、ガラス業 界 など、
220億円規模と推測される静電気対策市場へ向け、研究
者の「面白い」を原 点とした揺るぎないものづくり精 神
で、さらなる躍進を目指す。
22
業態/自動車整備用機器・産業用機器の製造販売
株式会社ビック・ツール
代表者:代表取締役社長 新井高一 本社所在地:鳥取県西伯郡日吉津村日吉津38
URL:http://www.bictool.com/
(株)ビック・ツールは、米子市にて車体修理工具メーカーとして1980年に創業。独創的な商品開発力と技術に
よって、
ドリル研磨機や自動車整備用機器、塗装機器、さまざまな商品を生み出している。現在も、年間15品目を
目標に開発に取り組んでいる商品開発型の企業である。
事業名:高速加工と長寿命化を実現したドリルの事業化
ステンレスなどの難削材を高速で加工でき、
しかも、耐久性も高いという、いままで
にない画期的なドリルが誕生した。
ドリル研磨機械を製作してきた経験と知識、
ノウハウを結集して開発されたのが「月光ドリル(GEKKOU DRILL)」
である。独自技術
(特許取得)に裏付けされた製品として事業化を推進している。
この新型ドリルは、
PCT(国際特許出願)を申請済みであり、今後、世界のドリル生産国を対象に特許
を取 得する予 定。国 内だけにとどまらず、順 次 海 外への事 業 化を積 極 的に展 開
している。
23
取り組みのきっかけ
連携体制
同社は、1980年創業以来、
独自技術による自社製品開
発 型 企 業として 歩 んで い
る。そのため、顧客から「こ
んなことに困っている」
「こ
の作業をなんとかしたい」
と相 談 や 要 望 が 寄 せられ
る。いつしか「ビック・ツールなら、問題解決の製品を開発
してくれる」
と評判になっていった。同社も顧客の声を吸い
上げ、
フィードバックするという、開発システムを構築した。
その中で誕生したのが「月光ドリル」である。いままでのド
リルでは難しいかったステンレスの切削を容易にする。技
術とプライドをかけた難題への挑戦として取り組みがはじ
まった。
有限会社友喜製作所(鳥取県鳥取市)
「月光ドリル」製造のための加工機に対する開発支援およ
び加工機の高精度部品の製作を行った。精密機械部品の
製造会社として、
(株)ビック・ツールとは、長年の協力関係
から、
さまざまな製品を開発している。
株式会社呉英製作所(広島県東広島市)
切断砥石、研削砥石のメーカーであり、
ドリル製造に欠くこ
とのできない存在である。30年来、
(株)ビック・ツールの独
自技術を支え、今回の「月光ドリル」
も同社の研削砥石なし
では誕生しなかったと言っても過言ではない。
取り組みの成果
今後の展望
難削材であるステンレスの
穴あけが容易にできる。こ
の事実は、業界では信じら
れないものであった。展示
会などで実演を見た人には
衝撃だった。
「月光ドリル」
発売から3年経ったいま、
問い合わせは増え、いままでには取引が考えられないよう
な企業との取引がはじまっている。国内にとどまらず、海外
からオファーも激増。開発費や国内外の展示会への出展
費用、国内外での特許取得申請費用など、今回の支援事
業がなければ、
ここまでの発展は考えられなかった。ビジ
ネスチャンスが格段に広がっていることを実感できるほど
の成果となっている。
「月光ドリル」は、
ステンレス
の穴あけに威力を発揮する
ことから、作業時間の短縮
だけではなく、作業員のスト
レス軽減に役立ち、仕事に
楽しさや気持ちよさをもた
らす効 果 があるという。耐
久性の高さからコスト削減も実現する。
この高速加工と耐
久性の高さに注目したのが医療業界である。切削抵抗を
大幅に低減したことで発熱を抑えることも医療機器に最適
という判断から大学医学部から共同開発などの話しが舞
い込んでいる。
『鳥取県から全国へ、世界へ』を合言葉にビ
ジネス展開を行っている(株)ビック・ツールの可能性は、
ますます広がっている。
業態/切削加工、分析・評価機器、評価試験サービス
株式会社山本金属製作所
代表者:代表取締役社長 山本憲吾 本社所在地:大阪府大阪市平野区背戸口2丁目4番7号
URL:http://www.yama-kin.co.jp/
創立以来、
「精密加工技術」
と
「計測評価技術」をコア技術として事業展開。加工の「見える化」に力を入れながら、
次代のモノづくりの価値創出にチャレンジしている。特に、板厚内部の残留応力を高精度に計測できる日本初の
システムは、新たな事業展開の可能性が大きく広がっている。
事業名:高精度板厚内部残留応力計測システムの開発
構造物などに使われる材料が作られる過程や加工する過程で熱処理や溶接などを
行うと、金属が引っ張られる力や戻ろうとする力が生まれ、完成後に「残留応力」
と
して残ってしまう。そんな残留応力が常にかかっている状況下では、経年劣化や
変形、腐食などにより、構造物に問題が起こりやすくなったり、寿命が短くなったり
する。そんな人の目で見ることのできない残留応力を厚板内部までより正確に測れ
る計測システムを日本で初めて開発。日本企業がこれまで悩まされてきた計測コスト
や時間の問題を解消し、社会の安全と製造業の発展に貢献しうるものとなった。
取り組みのきっかけ
取り組みの成果
これまで日本国内には、構
造 物 などの 表 面 の 残 留 応
力を測る手 法はあっても、
30mmを超える板厚内部の
残 留 応 力を測 定できる技
術 が なかった。そのため、
国 内 企 業 がその測 定を必
要とする場合は、世界で唯一測定サービスを行っていた英
国の1社に部材のサンプルを送付。常に高いコストと長い
時間を費やして測定するほかなかった。そこで、精密加工
技術と計測評価技術を持つ同社と岡山県産業振興財団
などによる産学官連携グループが、発電プラント部材など
の耐久性を計測する新たなシステムの開発に着手。平成
27年度の実用化を目指すこととなった。
当初は、板厚内部の残留応
力計測に不可欠な小径深
穴 加 工 に苦 戦を強 いられ
たものの、同社が長く培っ
てきた 金属を削る・穴を開
ける・磨く 技 術と、素 材を
計測評価するノウハウを結
集。ついに、100mm以上の厚板内部まで計測できる残留
応力計測システムの開発に成功した。さらに、複雑な形状
の試験体測定をも可能にしたほか、機械制御で測定位置
決定を行うことで、±1μmの精度での制御を実現。平成
27年4月に事業化をスタートし、同年夏ごろから、エネル
ギープラントメーカーや鉄鋼メーカーをはじめとする多様
な産業分野で成果が表れはじめた。
支援活用
今後の展望
同 社 社 長である山 本 憲 吾
氏が残留応力の計測に取
り組み始めてから7年の月
日が 経つ。これが 示すよう
に、非常に専門性の高いこ
の分 野では長 期の研 究 期
間を要する。そのため、最長
3年の研究期間が与えられ、研究開発規模に応じた資金を
受け取ることができるサポインには他にはない魅力を感じ
た。
また、資金面だけではなく、公の所でさまざまなパート
ナーと共同開発ができるのも価値あるポイント。同社が
培ってきた精密加工の技術と計測評価技術を生かした今
後の事業展開を図る上で、サポインは大きなステップに
なった。
同 社は大 阪 市に本 社を構
えているが、素材・製造基盤
技 術のための研 究 開 発セ
ンターを岡山県岡山市に設
置。現地は、岡山県工業技
術センターと岡山県産業振
興 財 団に隣 接しており、こ
れら公的機関と連携しながら研究開発を進めることができ
るのは、自社単独ですべての経営資源を確保するのが難
しい中小企業にとって大きなメリットがある。今後は、内部
残留応力計測技術をはじめとする基盤技術をいかに高度
に進化させながら、次世代につなげていけるかがテーマ。
そんな技能や技術の「見える化」をキーワードに、日本の産
業に貢献していくという。
24
業態/ビールの醸造・販売、
レストラン経営
久米桜麦酒株式会社
代表者:代表取締役社長 田村源太郎 本社所在地:鳥取県西伯郡伯耆町丸山1740-30
URL:http://g-beer.jp/
銘酒「八郷」で地域に根差していた日本酒メーカー久米桜酒造と地元企業によって平成9年に設立され、
「大山
Gビール」で地ビールづくりに参入。現在は久米桜酒造との事業一体化によって、地ビールと日本酒が一緒に
楽しめる
「大山ブルワリー」構想を推進中。
事業名:地ビールと地酒が一緒に楽しめるアミューズメント
「くめざくら大山ブルワリー」構想
自社ブランド地ビールの認知度不足や直営レストランの来場者減少、出資母体で
ある久米桜酒造(日本酒製造・販売)
との連携の弱さ。それらの課題を克服すべく
打ち出したのが地ビールと日本酒が一緒に楽しめるアミューズメント化構想。久米桜
酒造との事業の一体化によって、統一されたイメージ宣伝、新商品開発、さらに
新酒時期のイベント開催など魅力あふれる大山を舞台に観光機能を強化。全国の
注目を集めることで認知度も向上し、来場者増や出荷量の激増など着々と成果を
あげている。
25
取り組みのきっかけ
支援活用
1997年に地ビールのオリ
ジナルブランドである
「大山
Gビール」の醸造所と直営
レストラン「ガンバリウス」
の事業をスタートさせた同
社。一 方、同じ場 所で日本
酒醸造・販売を手がける久
米桜酒造との事業的な連携はなく、大都市の地ビールパ
ブやイベント会場で人気の地ビールと地元に愛される日
本酒は別々のブランドとしてのイメージしかもたれていな
かった。そこでそれぞれのファンを結びつけ、認知度や誘
客効果の向上を図るための施策として両事業の一体化に
よる酒のアミューズメント化構想を発案、経営革新計画の
策定に取り組むこととなった。
計画推進の具体的な事業
メニューとしては、まずブラ
ンドの一体感を伝えるため
のホームページのリニュー
アルやネットショップの 整
備、統一したイメージ戦略
による各種宣伝物の作成に
着手。大山Gビール、日本酒、直営レストラン「ガンバリウ
ス」の3つを結びつけ、さらに観光地として大山の魅力も付
加しながら展開していった。新商品として、地元の方と協力
して栽培・収穫した「山田錦」を使った「八郷」、地元産の大
麦を使った「大山ゴールド」
といった地ビールも開発。各地
のイベントでは大山産原料へのこだわりをアピールしなが
ら地ビールの魅力を精力的に周知した。
取り組みの成果
今後の展望
事業を推進していく中で全
国的に認知度も高まり、レ
ストランやブルワリーへの
来場者数の増加や大幅な
出荷量の伸びを実現。その
ため醸造用設備も増設する
など、経営革新は当初の目
標を上回る成果をあげた。
また都市圏のイベントやビアパ
ブで飲んでいた方が現地で味わいたいということで大山
に来訪したり、大山そのものに魅力を感じてもらったりと地
域の観光活性化にも貢献。2011年にイギリスで開催され
たワールド・ビア・アワードでは、自社の「ヴァイツェン」が
世界一の称号を獲得するなど、輝かしい栄誉もその歩み
に花を添えている。
これまで地ビールの高付加
価 値 化、販 売 増 加、さらに
は大 山 の 活 性 化をテーマ
に、醸造工場の拡充や新た
な販 売 戦 略 の 展 開 などに
よって、大山ブルワリーファ
ンを広げるべく取り組みを
続けてきた。
とはいえ大量生産で大量に売るという発想で
はなく、大山だから作れるもの、お客様が求めているもの、
また作り手として伝えたいものを作るというビジョンをひと
つひとつカタチにしていくのが基本的な方針という。
これ
からも大いなる自然に育まれた大山の地と、ものづくりか
ら生まれる物語性を大切にしながら着実にファンの拡大を
目指していく。
業態/食品加工機械、化学工業製品加工機械、医薬品加工機械の設計・製造・販売・
メンテナンス、原料処理、成形、加熱、冷却・冷凍、整列供給等
株式会社ヤナギヤ
代表者:代表取締役 柳屋芳雄 本社所在地:山口県宇部市善和189-18
URL:http://www.ube-yanagiya.co.jp/
1916年創業、かまぼこ製造業を始める。手仕事だった原料作りの機械化を皮切りに、かまぼこ、豆腐、海苔、和菓子
など伝統食品の加工機械を製作。現在は食品のみならず化学、医薬などあらゆる分野の加工機械の設計・製造・
販売を手掛けている。
事業名:イミテーション食品のリアル化ニーズに対応可能な
製造装置の開発
今や世界各国で生産されているカニのイミテーション食品、いわゆる
「カニかま」は、
日本国内の水産練り製品メーカーによって考案された。その量産対応の製造設備を
開発したのが、
( 株)ヤナギヤである。イミテーション食品の製造設備開発の実績を
もとに同社が新たに手掛けたのは、魚肉すり身で成形された「エビ」。
よりリアルに、
かつ衛生的に生産する装置の研究開発により、高齢化やヘルシー志向が進む市場
のニーズに応える。
取り組みのきっかけ
ものづくりの経緯
高齢化社会となった現在、
咀嚼、嚥下しやすい食品の
ニーズ が 高まっている。メ
ディケアフーズ、ヘルスケア
フーズと呼ばれるこれらの
食品はその多くが流動食状
だったが、近年は食欲の増
進につながるリアルな形状に成形した食品の人気が高
い。一方、イミテーション食品業界は、エビやカニ爪の形状
を模して金型成形された食品が東南アジアなどで生産さ
れているが、多くは韓国製機械で製造され、完成度や衛生
面で改善すべき点が多かった。
このような背景から、同社
では2013年度にエビのイミテーション食品製造設備の開
発に着手した。
既存機械の食品型への原
料充填は、閉じた型の注入
口からノズルで原料を注入
する方式だった。この方式
では起 伏に富んだ 形 状 の
充填が難しく、凹凸の少な
い 形 状 に 限 定 されてしま
う。
( 株)ヤナギヤでは山口県産業技術センターの協力の
もと、顧客の求める食品サンプルをX線CTで読み取り、高
精度な金型の製作を行った。
リアルで凹凸の多い金型へ
の充填を可能にするため、原料は開いた状態の型に面で
塗り込む方式を採用。着色は、原料注入前に色原料をイン
クジェット噴射で金型に吹き付けておくことでリアルな着
色の実現に取り組んだ。
取り組みの成果
今後の展望
検 証 実 験 装 置と食 品 金 型
を製作し、研究開発を重ね
た結果、従来機器では不可
能だったメイド・イン・ジャ
パン品質のエビのイミテー
ション食品が誕生した。支
援活用による事業実施後も
検証実験装置による継続研究を進め、エビ、カニ爪イミ
テーションなど海外水産練製品ユーザーへの販促活動を
開始。検証実験装置もさらなる改良に取り組み、エビ以外
の多様な形状の製品への対応や、多色などよりデザイン
性の高い他着色への対応も追求。海外食品関連展示会へ
の出展も果たすなどの成果を上げることができた。
日本で は 高 価 なカニの 代
用品としてのカニかまぼこ
が受け入れられているが、
エビは比 較 的 安 価な食 材
というイメ ー ジ が 強 い た
め、同社では日本でのイミ
テーションの普及は難しい
と考えている。
しかし東南アジアなど本物のカニが安価に
入手できる地域でもカニかまぼこの需要は高く、エビのイ
ミテーション食品も、代用品というよりは独立した食品とし
てすでに人気が高い。
このような海外市場で、
よりリアルな
エビのイミテーション食品が評価されることにより、日本に
逆上陸する可能性もあるとみて、生産設備の普及に今後
も力を注いでいく。
26
業態/工業用金網製造・販売
竹中金網株式会社
代表者:代表取締役 竹中健造 本社所在地:愛媛県今治市大西町九王甲281番地
URL:http://www.takenaka-kanaami.co.jp
建造物、石油化学プラント・機械保護用、食品製造向けなど、さまざまな場面で利用される高精度な工業用金網を
製造・販売する専門メーカー。金網製造メーカーとしては国内で唯一、
クリンプ(波付け)加工機用の金型を製作
できる設備とノウハウを社内に有する。
事業名:難削材(高付加価値素材)を使用した高精度金網製造
加工技術の試作開発
軽量性・強度性・耐熱性などに優れた高付加価値金属素材の大半が、難削材といわ
れる削りにくく加工しにくいものである。そんな加工が難しい難削材を使った金網
製作にチャレンジした。具体的には、
まず、難削材それぞれの特性に合わせ織り方を
変えることで加工が可能になることを、幾多の実証試験により確認。そこで得られた
データを基に、自社で金型製作を行った後、NC装置付きクリンプ(波付け)加工機で
の試作加工を実施した。試作加工では自社金型の耐久性も評価。従来金型で出現
していた大きな摩耗が見られず、課題をクリアすることができた。
27
取り組みのきっかけ
取り組みの成果
同社が製造する金網はさま
ざまな産業の多様な環境で
利用されることから、高付加
価値の難削材を使った金網
のニーズが増えてきていた。
しかし、当初、難削材の加工
方法については手探りの状
況であり、旧来のクリンプ加工機では金型の激しい摩耗や高
い不良品率など、乗り越えなければならない課題が数多く
あった。そこで、作業員の経験と勘が頼りの金網製造用クリン
プ加工機をNC位置決め装置の付いたものに入れ替えるとと
もに、難削材による金網製造条件に適した金型開発に取り
組むことで、製品化を実現したいと考えた。
設定数値データの蓄積がで
きるNC装置付きクリンプ加
工機の導入により、難削材の
種類ごとに必要となる設定
変更の時間を大幅に短縮。
また、難削材ごとの最適設定
データの蓄 積は、作 業 進 行
上不可欠だった熟練作業者を不要とし、機械のオペレーショ
ンスキルさえあれば誰でも加工作業に携われることを可能と
した。さらに、自社開発金型を使用することで、すべての難削
材と織り方において、
クリンプ金網目開き精度が53∼93%も
向上。高付加価値な難削材による高精度な金網製品を安定
的に製造することが可能となった。
支援活用
今後の展望
平成21年度に初めてものづ
くり補 助 金の採 択を受けた
後、平成24年度に難削材の
加工技術を開発するにあた
り2回目の補助金を受け、NC
装置付きクリンプ加工機等
の設備を導入した。さらに、
それらを集約する事業向けに、平成25年度、3回目のものづ
くり補助金を受けることになった。補助金は、お金のメリット
以上に、それを通じて出会えた人にこそ価値があるという。現
実に、第一回の補助金の際に大手繊維メーカーの人と出会
い、そこから愛媛大学の先生やさまざまな企業・団体の人を
紹介いただいた。
「人」が、同社の未来にもつながる最大の
財産になっている。
同社は、近年、展示会等に積
極 的に出 展することで製品
アピールに注力してきた。今
後も、引き続きアピールして
いきながら、顧客ニーズの収
集と分 析を行い、同 社 製 品
の改善や新技術の研究に邁
進。また、新素材を使用した環境負荷の少ない高性能金網
や、高度な機能性や特殊な形状を持つ高付加価値製品の開
発にも、取引先や研究開発機関などと連携して取り組んでい
く。同社は、
これまでにないものに常にチャレンジしていくこと
で、さまざまな人々とのつながりを生み、深め、会社全体のレ
ベル向上を図っていくという。
業態/産業用機械・プラントの設計、製作、設置
株式会社ちよだ製作所
代表者:代表取締役社長 池津英二 本社所在地:香川県高松市香南町西庄941-5
URL:http://www.chiyoda-mfg.jp/
小型バッテリーカー(オートキャリー)のリースおよび販売のほか、空気圧送式急結剤添加装置、土木用特殊機材、
一般産業機械などの設計・製造・設置までを一貫して行う技術者集団。食品廃棄物を原料としたメタン発酵発電
プラントで環境事業に本格参入し、各方面から注目を集める。
事業名:食品廃棄物を原料としたメタン発酵発電プラントの事業化
食品工場や食品廃棄物の中間処理業者向けの、
メタン発酵を利用した発電プラント
を事業化した。プラントでは、まず、食品廃棄物をメタン発酵することによりバイオ
ガスを生成。
このバイオガスをマイクロコージェネレーションシステムの燃料にする
ことで発電を行い、電気と温水を生み出す。その電気は電力会社に売電し、温水は
メタン発酵槽の保温など場内で利用することとした。また、バイオガスを回収した後
の残渣(消化液)は、自然浄化法を利用した高濃度排水処理装置により排水もしくは
肥料化。ゼロエミッションシステムとしてパッケージ販売を行う。
取り組みのきっかけ
取り組みの成果
同社があるのは「うどん県」
として知られる香川県。うど
んは、その製 造 過 程で材 料
の5%程度の食品廃棄物が
発生しており、その量は年間
で数千トンにもなるといわれ
ている。同社では平成16年
から産業廃棄物処理用のメタン発酵プラントを有していたこ
とから、それを使ってうどん製造過程の食品廃棄物を発酵
し、生成されるバイオガスにより発電することで、完全循環型
のシステムを目指したいと考えた。
また、平成24年当時は、電
力の買い取り制度(FIT)の施行時期とも重なっており、うど
ん発電 として効果的にPRすることができた。
エポックメイキングな うどん
発 電 ということで、当 初 か
ら、日本全国より多くの見学
者を迎え入 れることになっ
た。それをきっかけとして、多
方面からメタン発酵発電プ
ラントに関する問 い 合わせ
が急増している。その結果、農林水産省の補助金を利用する
岡山県の企業にプラントの設置を行ったほか、奈良県の企
業からも日量5トンクラスのプラントを受注。現在、そのメタン
発酵装置の設計を進めている。
また、社員40人足らずの同社
だけでは営業が行き渡らないため、大手商社に受注活動を
サポートしてもらうことにより成果を上げている。 支援活用・販路開拓
今後の展望
経営革新計画の承認制度に
ついては、
「 かがわ産業支援
財団」からチャレンジの誘い
を受ける。 社員の士気を高
めるためにも という想いで
申請書作成を同社内だけで
行ったが、それにより事業化
に関するコスト面の見直しを図ることができた。
この経営革
新計画をきっかけとして、さまざまな補助金の承認を得るこ
とができ、次なる研究や商品開発の推進が可能になった。同
社は、お客様が必要とする施設をいかにお客様の予算内で
実現するかに重きを置いているため、個々に大きな利益は望
めないが、お客様に喜んでいただくことによるユーザー拡大
を図っている。
開発当初はどこに話を持ち
込んでも一様に無関心だっ
たメタン発 酵 発 電プラント
だが、昨今は、環境面・エネ
ルギー面に対する社会の要
求 の 高まりにより大きな 注
目を集めるようになった。日
本で年間1,300万トンも埋め立てもしくは焼却されている
生ごみがエネルギー化するとしたら、その価値は計り知れ
ないほど大きい。同社のプラントは、大手企業が手掛けな
い日量3トンから10トンまでの規模のものに特化しており、
今後は、消化液の真水化をはじめとしたさらなる技術革新
を図るとともに、この 分 野・領 域で のリーディングカンパ
ニーを目指すという。
28
業態/包装資材卸業、
ウェットタオル製造業
株式会社 mimoto
代表者:代表取締役 味本 隆 本社所在地:高知県高知市長浜5984-2
URL:http://www.package-mimoto.co.jp/
オリジナルの紙バッグやポリバッグを製造する包装資材卸業、および新開発の「VB」水溶液を使用した抗菌・
抗ウィルス対 策ウエットタオル製 造 業を展 開。外 食 産 業を中 心として、グローバルなニーズも視 野に入れた
「オンリーワン商品」を提案し続けている。
事業名:VB綿ウェットタオルの開発
消費者の衛生意識の高まりとともに、アルコール入りウェットティッシュなどの除菌
アイテムが広く浸透している。
しかしノロウィルスをはじめとする、アルコールでは
除菌できないウィルスも多い。除菌ウェットタオルで外食産業などのニーズに応えて
きた株式会社mimotoは、ナノテクノロジーを基盤とする薬液を使用したノロウィル
ス対策商品を開発。一般的な不織布ではなく綿100%というこれまでの高級路線に
さらなる高付加価値を得て、販路の拡大を目指している。
29
取り組みのきっかけ
革新の経緯
飲 食 店における食 中 毒 の
原因は、そのほとんどが従
業員ではなくすでに感染し
ていた来店客によるものと
いわれる。そのための対策
として同社の除菌ウェットタ
オルはすでに評価されてい
たが、より万 全を期す商 品としてノロウィルス対 策への
ニーズがあった。
ウェットタオルに適した薬液を求め、同社
のパートナー企業であるVBジャパンテクノロジーが東京
工業大学、慶応大学医学部発のベンチャーとの共同研究
に着手。抗ウィルス活性(ノロウィルスやインフルエンザ
ウィルス含む)薬液の開発に成功した。
新 開 発 さ れ た 薬 液「 V B
(ウィルスブロック)」の水溶
液を使 用し、2 0 1 3 年 に綿
ウェットタオル製造販売を
開始。幅広い業界から大き
な反響があり、大手チェー
ン飲 食 店 等 からの 大 口 受
注の打診も入った。さらに取引先等を通じ、海外企業の紹
介も得ることができた。急増したニーズに応えるべく生産
人員を増加させ、長時間体制での稼働に踏み切ったが、当
時の生産ラインでは生産量が追い付かず、現場も限界に。
そこで補助金による設備投資を行い、増産に耐えうる生産
体制を構築することとなった。
取り組みの成果
今後の展望
VB水溶液を使用したウェッ
トタオル専用のラインを増
設することで、生産効率が
大幅にアップ。現場が「うれ
しい悲鳴」
というほど急増し
た生産量に応えるとともに、
反 響の大きい新 商 品の生
産という誇りは現場の士気も高めた。パート従業員から正
社員への採 用 が 増えるなど、雇 用 体 制の充 実にもつな
がっている。商品の活用シーンをさらに広げるため、パッ
ケージや色、香りを変えることでシリーズ化を図り、バラエ
ティも豊かに。そのための試作品製作、展示会への出展に
も補助金を活用し、着実に成果を上げることができた。
綿100%のVBシリーズは、
一般的な不織布とは異なる
非日常的なプレミアム感を
訴 求ポイントとし、高 級 路
線 を 打ち 出 すブライダ ル
シーンや航空会社などに採
用されてきた。現在は綿タ
オルならではの心 地よい使 用 感を強みに、新たなアプ
ローチを展開。防災の備蓄用品としての活用を提案し、公
共施設などで採用が始まっている。さらに「ニッポンのおし
ぼり文化」を発信する商品として、インバウンド消費を見据
えた外国人向けアイテムも発売するなど柔軟な発想でオン
リーワン商品を追求。海外市場も視野に入れたブランディ
ングを推し進める。
業態/精密機械部品製造、省力機械設計・組立、治工具設計・製作
株式会社フラスコ
代表者:代表取締役 藤原弘一 本社所在地:愛媛県西条市飯岡字岸之上3743番2
URL:http://s-frasco.com/
一般産業用機械部品をはじめ、半導体製造装置部品・真空関連部品の製作、省力化自動機の設計・製作・組立を
行う。JIS規格外を含む約200種の素材の調達・切削が可能。最新鋭の設備と創業40年の確かな職人技の強みを
生かし、難削加工を中心に多様な製品を提供している。
事業名:難削材を精密加工製品に適用するための
新規研削加工技術の開発
ステンレス等の金属やプラスチック等の樹脂、木材やゴムまで200種以上の素材
加工を手掛けてきた(株)
フラスコ。半導体製造装置・真空関連機器の部品のほか、
あらゆるメーカーや大学などの試作品市場を対象に、1個からでも製造する精密
加工品を提供している。近年の強みは、チタンやタングステンなど
「難削材(なんさく
ざい)」の加工。高度な技術を要することからハイリスクでもあるこの分野の先駆者と
して、
さらなる新展開を狙う。
取り組みのきっかけ
ものづくりの経緯
極端に硬すぎて、加工の途
中で割れてしまう。逆に柔ら
かすぎるため、
ドリルで穴
を空けても切粉がまとわり
つ いて排 出 され にくい な
ど、技術の確立が難しい難
削材加工。この分野に敢え
て挑み、絶大な信頼を築いてきたのが同社である。厳しい
要求にも応えてきたが、30年以上経過した従来装置での
加工は職人の経験によるところが大きく、難削材ゆえに生
じる加工の仕損じのコストや短納期対応力などの課題も
浮き彫りとなっていた。装置の更新を検討していたタイミ
ングで補助金を知ったことが、新たな技術開発取り組みへ
の足掛かりとなった。
将来を見据えてより幅広い
難削材に対応するべく、平
面 研 削 盤 、ワイ ヤ ー カッ
ター、円筒研磨機など最新
鋭の装置を導入。装置の選
定や導入計画は、社長、製
造課長、研削オペレーター
など複数人によるチーム体制で進めていった。日頃から展
示会やメーカー視察の機会を積極的に設け、社員の知見
を高めていることも導入計画策定の大きな支えとなった。
新設備では、代表的な難削材であるタングステンとモリブ
デンを対象に様々な条件で評価を重ね、データを取得。高
精度な仕上がりを確認しながら、3年間にわたる取り組み
を実施した。
取り組みの成果
今後の展望
本事業により、難削材の加
工精度を大幅に向上するこ
とができ、信頼性もアップ。
加工の仕損じが低下したこ
と、切削時に発生する熱で
生じていた工具の摩耗など
が減少したことで、コストの
問題も改善した。総加工コストは、目標値を上回る1/2以
上の削減という期待以上の成果に。
また、加工時間は従来
の1/2程度に短縮され、短納期への対応力も強化。地元企
業が中心だった顧客層が東京、大阪へと拡大した。
このよ
うな成果を受けてスタッフを増強したため、製造現場はよ
りいっそう活気づいている。
宇 宙 航 空、ハイブリッド自
動車、燃料電池からIT機器
に至るまで、
より軽量、高強
度、高耐熱性を求めて拡大
する難削材のニーズ。今後
も同社では、多種多様な素
材の加 工へどこよりも早く
着手していくという。
「スピーディに手掛けることで、経験と
データを多く蓄積できる。失敗もメリットになる」
との言葉
通り、
リスクを恐れない姿勢に揺るぎはない。すでに支社
を置いているインドを拠点とした海外展開も視野に入れ、
「挑戦するのは当たり前。カタチになるまであきらめない」
という信条を掲げた誇り高い日本の技術の発信を目指す。
30
業態/非破壊検査による構造物、化学プラントなどの工場の検査と
メンテナンス事業を展開
計測検査株式会社
代表者:代表取締役 坂本敏弘 本社所在地:福岡県北九州市八幡西区陣原1丁目8-3
URL:http://www.keisokukensa.co.jp/
計測検査(株)は、1974年の創業以来、非破壊検査技術により、化学プラントの保守検査を主な業務として、各種
構造物の診断を行っている。さらに、交通規制のいらない走行型トンネル点検システムを開発し、インフラ検査に
貢献している。
事業名:作業効率を飛躍的に向上させる診断技法「MIMM(ミーム)」
による維持管理業務の事業化
計測検査(株)は、他社に先駆けてトンネルなどのコンクリート構造物の劣化診断の
作業効率を飛躍的に向上させた移動式計測システムの開発に成功。他社との連携
を活用することで、次々と課題を解決し、事業化に推進している。第一弾の移動式の
画像記録装置「マルチ・アイ・システム」から、最新の「MIMM」へとステップアップを
遂げている非破壊診断システムは、国内の1万本以上といわれるトンネルの老朽化
対応に、大きな期待が寄せられている。1社では成し遂げられない開発と商品化も、
連携事業の相乗効果によって、現実のものとなっていく事例として紹介する。
取り組みのきっかけ
31
連携体制
三菱電機
(東京都千代田区)
1974年創業の計測検査
(株)は、非破壊検査技術を
駆使して化学プラントの保
守点検をはじめ、各種コンク
リート構造物の診断を行っ
ていた。そして、平成11年の
新幹線のトンネルで起きた
コンクリートの落下事故を契機に、効率的な診断方法の開
発に着手した。当時のトンネル内部の検査は、熟練した技術
者が行う目視や打音による検査と、
レーダーを照射する非
破壊検査に限られており、1kmを確認するのに1週間程度
かかり、
コストも高いものであった。そこで、同社では、効率
的な検査診断が可能となるトラックに高精度のレーザーと
ビデオカメラを搭載した検査システムの開発に着手した。
第一弾の新連携は、有限会
社ジーテック
(新潟県)であっ
た。ビデオカメラでトンネル
の壁面を撮影し、診断する方
法を考案したが、結果を見せ
るソフトがなかった。
この問題解決したのがジーテックのデー
タマネジメントシステムであった。法定速度の40∼50km/hの
走行での検査も可能となり、交通止めや交通規制なしでの検
査を実現した。第二弾が、三菱電機との共同開発で誕生し
た、MIMM(ミーム)。計測検査(株)が開発した技術と三菱電
機のレーザー光の両システムの計測結果を合わせることによ
り、さらに精度の高い判断が容易にてきるようになった。
取り組みの成果
今後の展望
同社では、すでに時速80km
走行で測定可能なシステム
の開発に成功している。さ
らに、点検のスピードアップ
やコストダウンを図れる段
階まできているという。ま
た、
トンネル1kmのデータ
なら24時間以内に提供できる画像処理技術の開発も進め
ている。今後、MIMMか道路や鉄道のトンネル点検になく
てはならないシステムとして注目が高まっている。その結
果、高速道路管理会社や地方自治体などから、受注が増え
ている。さらに、鉄道会社からもトンネルの診断依頼が相
次ぐようになった。
MIMMに対しては、海外か
らの問い合わせが増えてい
る。
どこの国においてもイン
フラの 老 朽 化 対 策 は急 務
の 問 題となっている。そこ
で、迅速に正確に、コスト面
も含め、容易に診断できる
システムとして、近い将来、海外への提供も視野に入れて
いる。また、橋梁などの診断として昨年新設した開発室が
取り組んでいるのが、
ドローンを活用した診断システムで
ある。人や自動車での診断が難しい場所での導入を視野
に開発をはじめている。
このように診断の可能性を広げる
べく、さまざまな検査・診断を想定した開発を推進していく
考えである。
業態/液圧プレス製造・販売
森鉄工株式会社
代表者:代表取締役社長 森 孝一 本社所在地:佐賀県鹿島市大字井手2078
URL:http://www.moriiron.com/
ファインブランキングプレス、多軸油圧サーボプレス、油圧式(ストレートサイドフレーム)熱間冷間鍛造・深絞り・樹脂
成型プレス、研磨スラッジ脱液固化機をはじめとする、各種液圧プレスおよび鍛圧機械の設計・製造メーカー。2012
年、2014年、
日本塑性加工学会賞受賞、2014年、経済産業省より、
グローバルニッチトップ企業100選に選定された。
事業名:多軸精密制御による次世代型プレス機及び金型の研究開発
昨今、部品生産のグローバル化に伴い、多品種少量生産が求められるようになって
きている。そのため、同社では、従来、大型トランスファープレスで成形していた製品
に比べ、縦方向へ逐次成形することによるコスト面や省スペース性、柔軟対応性など
において有利な小型プレス機の必要性を実感。多様な加工が可能な多軸精密制御
による次世代型プレス機と、それに対応する新規金型の開発に着手し、10,000kN6
軸油圧サーボ制御プレス機をトライアルプレスとして本社内に設置することとした。
取り組みのきっかけ
取り組みの成果
かつて、生産性の良い大型ト
ランスファープレスを使用し、
大量生産をされていたが、近
年のグローバル化で生産拠
点の分散化に伴い多品種少
量生産が主流となってきた。
今さら、多額の費用をかけて
単体生産用の大型プレスを設備することはコストが合わない。
そこで、同社では、中間在庫をなくし、後工程も含め他の加工と
一体化生産の要求を受け、順送やトランスファー加工の各工程
の合計加工圧力が必要な大型プレスに比べ、縦方向へ逐次成
形することによる荷重分散で、必要な加工圧力が小さくなり、
プ
レス自体のサイズも大幅に小さくすることのできる、ワンショッ
ト成形の多軸サーボプレスの開発に取り組むことにした。
多軸プレスによる縦順送金
型としたことで、金 型 の 工
程数を削減。ワンショット成
形により製品のステージを
移 動させずに済むことで、
製 品 精 度 が 大 幅に向 上し
た。さらに、金 型 の 保 有 面
積を1/5∼1/10に、プレス能力を1/5∼1/8に、設備費を
1/15∼1/20にまで削減することが可能となった。
このほ
か、中心穴部のボスだし、中間部の増肉、ツブシ外周部の
ギヤ精密せん断などを特徴とする、多軸プレスに適合する
成形部品の開発にも成功。加えて、10,000kN多軸精密制
御プレス機による構成部材の剛性向上も実現した。
支援活用・反響
今後の展望
今回のサポインのプロジェ
クトは、自動 車 産 業のプレ
ス工程による多軸精密制御
を駆使した次世代型プレス
機であることをイメージして
チャレンジを行った。その取
り組みが実を結んだのは、
財団法人佐賀県地域産業支援センター、株式会社秦野精
密、佐賀大学、佐賀県工業技術センターをはじめとする多
くの方々からの協力・支援があったからこそのものといえ
る。事業化を実現したことで、同社には、
「多軸成形試験に
借用したい」
「試験が成功したら最適の生産用プレス設備
を発注したい」等の声が多数寄せられている。
同社は、現在、自動車の駆
動系部品向けを中心とした
プレス製造・販売を行って
いるが、今後は自動車の足
回り系統向けなどにも事業
を展 開していく予 定 。さら
に、金 属 加 工 に止まらず、
CFRP(炭素繊維強化プラスチック)部材や粉末分野への
進出も計画している。
また、地域への貢献と日本の「モノづ
くり」を考えた活動も重視。その一環として、佐賀県の支援
のもと、小中学生向けの体験学習プログラムを企画・検討
するなど、地元の子供たちに「モノづくり」を身近に感じて
もらえるような取り組みを計画している。
32
業態/ピアノ調律・修理・製造・販売
有限会社藤井ピアノサービス
代表者:代表取締役社長 藤井幸光 本社所在地:鹿児島県
URL:http://www.fujiipianoservice.jp/index.html
摩川内市西向田町15-11
世界中のピアノのオーバーホール、修理、調律から、販売までを手掛ける。なかでも、
グランドピアノ感覚で演奏が
できるアップライト型ピアノ「グランフィールピアノ」の製造・販売は、ピアノ市場を広げる画期的な新製品として
世界中から注目を集めている。
事業名:グランドピアノの機能を持つアップライト型ピアノ
「グランフィールピアノ」の製造販売
アップライト型ピアノにグランドピアノ感覚の連打機能とタッチ感を再現する、画期的
な装置「グランフィール」を同社代表の藤井幸光氏が開発した。国内で広く普及して
いるアップライト型ピアノは、
グランドピアノに比べ弦を打つハンマーの動きが鈍い
ため、ピアニッシモでの連打や伴盤の押え方のコントロールが難しく、演奏者の上達
の妨げとなっていた。
グランフィールピアノの普及を図ることで、演奏技術のレベル
アップとピアノ市場の充実・拡大が期待できる。第6回「ものづくり日本大賞」内閣
総理大臣賞を受賞。
33
取り組みのきっかけ
支援活用
住宅の狭スペース性やグラ
ンドピアノの高価格性など
から、国内ではアップライト
型ピアノが市場の約9割を
占めている。同社代表の藤
井 氏は、ピアニストを夢 見
てアップライト型ピアノで練
習に励む子供たちがより上達できる助けになりたいという
想いから、アップライト型ピアノの改良に着手。アップライ
ト型ピアノにグランドピアノ並みのタッチと音色をもたらす
装置を開発し、平成22年春「グランフィール」
という名で発
売した。さらに、平成24年には、
グランフィールを組み込ん
だオリジナルブランドピアノ、
「グランフィールピアノ」の発
売に至った。
今 回の取り組みは、アップ
ライト型ピアノにグランドピ
アノの機能を持たせること
をテーマにはじまった。そこ
で、グランドピアノにあって
アップライト型ピアノにはな
い3つの部品に着目。それ
らと同様な働きをもつ部品の開発に注力したのだが、弾き
手に違和感がない機能性を実現するまでにかなりの時間
を要した。
この「グランフィール」の技術を中核に経営革新
計画を申請し承認された結果、この素晴らしい技術が売
れないわけがない という意識が拡大。ものづくり補助金
や新連携の認定にもつながり、世界への扉を開くところま
でに至った。
取り組みの成果
今後の展望
300年のピアノの歴史の中
でも革命的といえるグラン
フィール技術は、2010年の
国内特許取得を皮切りに、
アメリカ、ヨーロッパ、中国
でも特 許を取 得。また、平
成26年には「発明大賞 日
本発明振興協会会長賞」を、さらに平成27年には、
「もの
づくり日本大賞 内閣総理大臣賞」を受賞するなど、極め
て高い評価を獲得することとなった。一方、販路拡大にあ
たっては 、多くの 人 々がグランフィー ル 技 術とグラン
フィールピアノを体験できるよう全国のショップと連携。
実際に弾いてもらうことで、グランドピアノ感覚を実感し
てもらっている。
アップライト型ピアノにグラ
ンフィー ル 機 構 を 組 み 込
み、調整することができる調
律 師 や技 術 者を全 国レ ベ
ルで育成していくことに力
を注いでいる。また、
「グラ
ンフィールピアノ」を世界の
楽器見本市などに出展することで、
グランフィール技術の
価値をグローバルに伝えていく。さらに、アップライト型ピ
アノの左のソフトペダルにグランドピアノのものと同じ機
能性を持たせたほか、アップライト型ピアノの表現力をよ
りグランドピアノに近づけるべく、次の新たな技術開発に
も取り組んでいく。
業態/ソフトウェア研究開発・システム研究開発・動画コンテンツ制作
株式会社教育情報サービス
代表者:代表取締役社長 荻野次信 本社所在地:宮崎県宮崎市橘通西3丁目10-36ニシムラビル6F
URL:http://www.e-kjs.jp/
教育系のソフトウェア、
システムを開発するとともに、先生方をはじめとする現場の方々などにスムーズに使っていた
だけるためのサポートを展開。具体的には、世界中のどこでもどんな方でも簡単にeラーニングができるシステムの
開発に注力している。
事業名:PDFファイルに声と手書きを付加できるソフトウェアの開発
文書や画像向けファイルとして社会で広く使用されているPDFファイルに、誰でも
簡単に声と手書きによる説明を加えることができるソフトウェアを開発。教育機関を
はじめ、出版社、企業、団体、個人など、幅広い分野の多くの人々に提供している。
具体的には、説明を加えたいPDFファイルをパソコン画面に表示させ、
「音声」と
「手書き描画」を加えて収録。一人でのスピーディな制作が可能なため、学校の授業
や企業でのプレゼンテーション、セミナー研修など、活用の場が大きく広がっている。
取り組みのきっかけ
支援活用
現在、官公庁をはじめ様々
な場面で使われているPDF
ファイルだが、基本的には
文字ベース、写真ベースと
なっており、情報伝達手段
としては若 干わかりにくい
部分があった。
もしこのPDF
ファイルが動いたり、
しゃべったりしたら、さらに伝わりやす
いものになるのではないかと考えた。また、同じ宮崎で、
PDFを生成する
「SkyPDF」
というソフトウェアを開発してい
る会社とのご縁があり、それにより作られたPDFに私たち
の動画コンテンツ制作システムを連携させることを着想。
純粋に宮崎県産といっていいソフトウェアの完成につな
がった。
PDFファイルに声と手書き
を付加できるシステムはこ
れまでにないことから、事
業 開 始 時にお いては独占
的に業務展開を図ることが
できる点などが評価され 、
ものづくり補助金の認定を
取得。教育分野から自治体や様々な団体などへと販路が
拡大し、競争力強化につながった。同時に、PDFファイル
をベースにした手軽な動画コンテンツを幅広く活用する
ために、インターネットなどを通して学習を行う
「eラーニ
ング」に注力。LMS(学習管理システム)の開発も進めて
いる。
取り組みの成果
今後の展望
大 掛 かりな 設 備 機 器 や 撮
影・制作チームなどが必要
なく、驚くほどの低コストで
PDFファイルを使った動画
コンテンツが作れることか
ら、需 要 が 拡 大。その革 新
的な取り組みが注目を集め
た株式会社教育情報サービスは、平成27年に「第2回九
州未来アワード」国際事業・インバウンド観光部門大賞の
栄誉に輝いた。また、平成27年2月には、国際協力機構
(JICA)が実施する「中小企業海外展開支援事業∼普及・
実証事業∼」に採択。バングラデシュにおけるeラーニング
システムの普及貢献とともに、新しい市場の創出も期待さ
れている。
現 在 、モンゴ ル 、バ ングラ
ディシュ、
ミャンマー、ベトナ
ム、インドネシア、アフリカ
のケニアなどに海外展開の
礎を築いている。また、日本
国内においても、学校のほ
か一般企業や自治体とも協
同。私たちのシステムがどうしたらより役立つものになる
か、庶民に届くeラーニングとしてより価値のあるものにし
ていくにはどうすればいいかなどを追究している。今後は、
日本の中で徐々に洗練されてきたシステムを、宮崎発の
ジャパンクォリティとして途上国に展開し、その想いをつな
げていきたい。
34
業態/通信機器製造
株式会社マリンコムズ琉球
代表者:代表取締役 新川直正 本社所在地:沖縄県宜野湾市嘉数1-15-5
URL:http://www.mcrvlc.jp/
人の目に見える光(可視光)を用いた可視光通信技術を水中に応用した水中可視光通信技術において、商品化
第一号であり、世界的にも唯一の商品を開発した企業である。平成23年設立の若い会社であるが、最先端技術を
活かし、世界をリードできるような研究開発、製造、販売を行っている。
事業名:水中可視光通信機器の製造・販売事業
水中での人と人とのコミュニケーションを飛躍的に向上させる画期的な製品が登場
した。それが、同社が開発・販売を実現した「水中可視光音声通信装置」だ。海難
救助、海事土木作業、ダイビングスクール教習、
レジャーダイビング、また水族館
での水中解説などあらゆる水中のシーンにおいて利用でき、盲目のダイバーや夜間
のレジャーダイビングでも会話環境が劇的に改善されることから恐怖心も軽減
されるという。
これまでダイビングを敬遠していた高齢者層への市場拡大も期待
されている。
35
取り組みのきっかけ
連携体制
水中通信という分野は世界
でもあまり取り組み例がな
いことから、水の中で使える
技術を模索していた。その
ような折に「水中可視光通
信」
という言葉に巡りあい、
沖縄での開発を目指して研
究をスタートさせた。経産省が推進している地域イノベー
ション事業の指定も受け、沖縄の観光ダイビングの活性化
というテーマに取り組みながら、沖縄のきれいな海の中で
30メートル程度の距離での通信を可能とさせることに成
功。この技術をさらに発展させ販売市場を拡大させるべ
く、同社を設立するに至った。
株式会社ベテル(
城県石岡市)
精密プラスティック製品・熱物性特定のエキスパート企業と
して、電設資材、インテリア資材の組立、医療関係、機械機
構部品などの製造を行う。今回は、熱放出の技術を活かし
た金型製造などで大きく貢献。マリンコムズ琉球とは経産
省BP講座ものづくり検討会のメンバー同士だったことも
あり、
より深い信頼関係の中で開発を進めることができた。
摩総研株式会社(鹿児島県指宿市)
様々な開発のニーズに合わせて最適な放熱効果のある接
着剤、樹脂等を開発製造する専門企業。今回は、接着面か
らの放熱性についての研究を担うことで開発に貢献。マリ
ンコムズ琉球との役割分担の中で、互いの専門技術を融
合させながら効果的に開発を進めることができた。
取り組みの成果
今後の展望
これまで「音 波」
「超 音 波」
「ケーブル(有線)」を利用し
ていた水 中での 会 話 環 境
が、
「水中可視光音声通信
装置」によって各段に向上。
L E D の 光 が 水 中での 通 信
に活用できることに着目し、
独自技術の開発でこれまでにないクリアな音声を実現し
た画期的な製品となった。すでに大阪や大分の水族館で
は、
この通信機器を用いてダイバーの 付けショーなどに
活用されているほか、地元「沖縄美ら海水族館」でも水中
解説に導入されるなど使用シーンが拡がっている。今後も
海外を視野に入れながらさらなる販路拡大に向けて取り
組みを続ける。
沖縄県全体では食品加工
の分野が主流で電子機器
といった分野での製造業が
少なく、工業系の学生たち
は他 県に行 かなければ学
んだ 知 識 や技 術を活 かせ
ないという現 状 があった。
ものづくりを志すそういった若い人たちの新たな選択肢と
なり、夢を与えられるような仕事環境づくりに貢献していく
こともひとつのテーマと考えている。また、海は世界へとつ
ながっているもの。
これからも海の安心、安全、快適をもた
らす 健康な海 を創造できる企業を目指し、世界共通の夢
や技術の実現に向かって新たなチャレンジを続けていく。
業態/二輪自動車小売業
有限会社ウイリー
代表者:代表 赤嶺 毅 本社所在地:沖縄県豊見城市真玉橋131-3
URL:http://www.welea.jp/
平成8年に創業。二輪車の新車・中古車の販売及び整備等を主力業務として、国内及びハーレーダビッドソンなど
の海外メーカーを含め10社余を取り扱うことで、多くの方々の趣味・志向に応える品 えを実現。顧客数、販売数
ともに県内トップクラスの実績を挙げている。
事業名:エンジョイバイクライフ応援プロジェクトによる顧客拡大
沖縄県では、二輪免許保持者の78%がオートバイを保有せず、免許は取っても
バイクライフをエンジョイしていないという現状があった。そこで同社では(1)二輪
ライダーを増やすこと
(2)バイクに乗る機会を増やすこと
(3)バイクに乗れる環境を
提供することの3点を目標に新事業を展開。具体的には店頭試乗会や教習所コース
を利用した「バイク試乗体験会」やレンタルバイク・レンタルガレージによる新たな
魅力のアピール及びサポートを推進。新規顧客拡大へとつなげている。
取り組みのきっかけ
県内トップクラスの販売実
績を挙げていた同社では、
数年前からバイクのレンタ
ル 事 業 を 開 始 。そ の 際 、
ユーザーを対象に「なぜレ
ンタルバイクを利用するの
か」等のアンケートを実施
したところ、
「ハーレーなどの高級車に乗りたいが高額」
「維持費がかかる」
「盗難が心配」などの理由でバイクを所
有しないという声が多く聞かれた。そこで一人でも多くの
顧客を掘り起こすため、ただ来店を待つだけでなく積極的
な提案型のアプローチによって
「憧れのバイクに乗りたい、
買いたい」
という声に応える新たな需要喚起プロジェクト
に取り組むこととなった。
支援活用
金融面の支援や事業サ
ポートを受けながら、高額
二 輪 車に特 化した新 店 舗
を展開。店頭試乗会をはじ
めとした定例的なイベント
を実施し、参加者を見込み
客としてリスト化。メールマ
ガジンやDMで継続的なアプローチを図る。さらに次回イ
ベント等の案内を行って継続的に利用してもらう流れを作
り、ホームページ、ブログを活用して幅広く告知宣伝活動
を推進。
これらの受け皿としては、年間契約でより安くレン
タルサービスを利用できる定額制の導入や、保管場所が
確保できない高級二輪車ユーザー向けのレンタルガレー
ジの提供なども展開していった。
取り組みの成果
今後の展望
新 店 舗については高 額 二
輪 車に特 化した高 級 車 輛
専 門 店とし、拠 点 増による
保 管 場 所 や売り場 面 積 の
拡大に伴いレンタル総台数
も増加した。一定期間レン
タル車として運用した車輛
は中古車に切り替えての販売も促進した。提案型の積極
的なアプローチをはじめ、バイクの魅力を発信する試乗会
等のイベントの開催、さらに見込み客の囲い込みや継続
的なユーザーへの情報発信によってレンタル部門は順調
に実績を伸ばしている。
二輪免許保持者とバイク保
有者の差がまだまだ大きい
のが現状。またバイクの国
内販売台数も減少している
中で、今 後も多くのバイク
ファン、ユーザーのニーズ
に応えるためにより趣味性
を高め、利便性を追求しながらその人に合った乗り方を提
案していく。近年ではアジアをはじめ海外からの来訪者も
多く、言葉の問題をはじめとした国際的な対応の必要性を
意識し、観光面での貢献も視野に入れていきたいという。
今回のプロジェクトを車輛販売のいっそうの強化につなげ
る総合的なビジネスモデルとして、社員一丸となって取り
組んでいく。
36
業態/建築企画、建築工事全般・土木工事、
リフォーム工事
株式会社ライト工務店
代表者:代表取締役 島袋徳秀 本社所在地:沖縄県宜野湾市新城2丁目9番19号
URL:http://www.lightkomuten.co.jp/
創業は平成11年。県内の建築・リフォーム工事の施工に数多く携わり、近年では土地オーナーから受託する賃貸
アパートの企画施工が中心業務。部屋をカスタマイズできるプラモデル賃貸アパート事業をステップとして、沖縄の
新たな住文化発展に寄与する取り組みを続けている。
事業名:新しい賃貸住宅のあり方を提案する/
部屋をカスタマイズできるプラモデル賃貸アパート事業
入居後、部屋を自由にカスタマイズすることが当たり前になっている欧米の賃貸
住宅。そんな自由なスタイルを日本でも提供することを目的に、新事業ではまず
「丈夫で長寿命の躯体」をつくり、安心・安全の中で入居者の好みに合わせて「イン
テリアを自由にカスタマイズ」できる新しい賃貸住宅のあり方を提案。さらに県内
企業との連携により 住宅をもっと楽しく、自分らしい住まいをつくるためのアイテム・
サービス を開発、提供。入居者、注文依頼も増加し、着々と実績を伸ばしている。
37
取り組みのきっかけ
支援活用
お客様の思いに応え、喜び
や感動を届けることを理念
に、県 内 の 様々な建 築、リ
フォーム工事の施工・企画
に携わってきた同社。近年、
土地オーナーの要請による
賃貸アパートの企画施工が
主となる中、東京を中心としたリノベーションの広がりで、
中古住宅を購入して大きく改装する人が増加。さらにある
調査では「賃貸住宅でも部屋を自分の好みにカスタマイ
ズしたい」
という声が約9割もあった。そんなニーズを新築
物件で実現し、入居者が愛着をもってより長く住んでいた
だくことが入居者、貸主双方のメリットにつながると捉え、
新事業を立ち上げた。
新事業では、建築のハード
面として、同 社 がこれまで
培ってきた建築技術を活か
し、より丈夫で長寿命の躯
体を実現。部屋がカスタマ
イズできる「プラモデル 賃
貸アパート」の提 案を行っ
てきた。また県内企業とのコラボレーションにより、
「 沖縄
の住まいをもっと楽しく、自分らしい住まいをつくるための
アイテム・サービス」を開発、提供している。具体的には、苗
木を扱う業者との連携でバルコニーで気軽にできる家庭
菜園セット、県内工芸作家が提案する照明器具やインテリ
アグッズ、県内大工が教える廃材を利用した壁のDIY教
室などがある。
取り組みの成果
今後の展望
新事業の核である「入居者
にも、貸主にも満足してい
ただける次 世 代 の 賃 貸 住
宅 」を事 業 化し、提 案して
いった。
これにより1棟目の
「プラモデル賃 貸アパート
(DIY AP)」は早い段階で全
て入居となり、県内外から多くの注文依頼、問い合わせ
が寄せられている。また本経営革新に取り組むことによっ
て、社員全体での新たな意気込みが醸成され、同社が目
指す 丈夫な躯体、徹底した配管 を提案していくという
方向性が明確になったことも大きな成果のひとつになっ
たという。
まずは新築物件によるプラ
モデル 賃 貸アパ ート(D I Y
A P )を 県 内 に いっそう広
め、資産価値を高めること
を目標に事業を推進してい
く。そのために、資産価値を
高めることはもちろん、内装
やフレキシブルな空間の使い方など新たな可能性に向け
て積極的にチャレンジしていきたいという。
「信じて絆を結
ぶ」
という同社の企業理念を体現すべく、多くのお客様の
声に耳を傾けながら、建築のハード、ソフト両面を充実さ
せることで賃貸住宅の既成概念を変え、
より豊かな沖縄の
住文化を育むために独自の歩みを続けていく。
業態/木材・木製品製造業
有限会社高江木工
代表者:代表取締役 高江 尊 本社所在地:沖縄県沖縄市美里6丁目27-1
特殊家具の製造を主力業務とする木工を中心とした製作メーカー。長年培ってきた職人の精緻な技と3D−NC
旋盤のハイテク技術の融合を実現し、新たな事業体制づくりを実現。
「向上心と執念」をモットーにしながら、常に
チャレンジングな取り組みを続けている。
事業名:豊かな表現性と量産化を同時実現する3D ‒ NC旋盤の
特殊アームの設計開発・導入
高精度で表現性豊かな木工品の量産化を可能とする、3D−NC旋盤の木工用特殊
アームを開発、導入した。木材加工の目的に合わせて、アーム部分である「ドルミル
チャック基準値の高さ」を変更。
これによりストロークを大きく取ることが可能になり、
通常のカットマシンでは不可能だった製品加工を可能とした。職人の力と機械の力を
融合した一貫体制によって取引先からの高度な要望に応え、海外競争力も高めて
いく。業務の効率化によって生まれた時間を利用し、直販事業への参入も図る。
取り組みのきっかけ
木工品を製作する際、これ
までも型を作って活用する
ことはあったが、
「 職人の手
作業での型作り→職人によ
る型の活 用 → 職 人 が 部 品
を接合」
と職人技術に依存
する形で進められ 、負担も
時間も多く必要だった。そこで3D−NCの導入によって、
最初の型作りを機械で行う体制を作ることがテーマとなっ
た。そこには、機械的な正確性が求められる型作りには機
械生産がより適しているとの考えがあった。さらには型に
繊細な加工を施すことが可能な点にも着目し、機能性や
デザイン性を高めることのできる新たな3D−NC開発へ
の取り組みが始まった。
支援活用
高精度かつ表現性豊かな
木工品の量産化に向けて、
まずはS H I N X 株 式 会
社と共同で新たな3D−N
Cの開発に取り組んだ。同
社では特に木工に適した特
殊 アー ム の 設 計 、開 発 を
担っ た 。ま たライコシステムズ 株 式 会 社 の 提 供 する
『alphacam Art』を採用することで複雑な加工処理を行う
ことが可能となり、新事業においては、細かい模様を施し
たデザイン性豊かな型作りや一品ものの高級インテリア
を作り出すことにもつながった。
取り組みの成果
今後の展望
3D−NC旋盤の導入は、
木工業では沖縄県内初の
例であり、本 県での 3 D −
NC旋盤活用技術の確立
に貢献することとなった。新
事 業では成 型 合 板 技 術を
使ったインテリア作りを目
指しているが、その型作りに3D−NCを活用することで、
より速く、正確に素材を準備する
「機械の力」
と正確に美し
いインテリアを生み出す「職人の力」を融合させ、確かな
価値を持った商品をスピード感を持って提供してく体制を
実現した。販売面においては、業務の効率化によって生ま
れた時間を活用し、全国へ向けて直販事業を展開する道
筋をつけることができた。
今回の3D−NC旋盤の導
入によって、いっそうの生産
性向上と工期短縮による競
争力強化を目指す。現在ま
で県内での導入例はなく、
本事業によって作業に係る
諸課題を解決し、工期の短
縮と商品バリエーションの充実を図っていく。同社では特
殊家具の製造が主業務であるが、今回の3D−NC旋盤
の導入により立体加工の幅が広がるため、
より多くの製造
加工業務が可能となる。今後は県内外の取引先開拓に努
め、念願である海外進出も視野に入れながら、時代ととも
に高まる要望やニーズに応えるべく邁進していく。
38
北海道
中国
株式会社ADM
北海道伊達市
新連携
サポイン
株式会社ニッコー
北海道釧路町
経営革新
フィールド・クラブ株式会社
もの補助
旭中芯株式会社
新連携
株式会社ビック・ツール
鳥取県西伯郡
サポイン
株式会社山本金属製作所
岡山県岡山市
北海道北広島市
経営革新
久米桜麦酒株式会社
鳥取県西伯郡
北海道旭川市
もの補助
株式会社ヤナギヤ
山口県宇部市
東北
新連携
四国
株式会社ベスト
山形県鶴岡市
もの補助
竹中金網株式会社
愛媛県今治市
サポイン
ヤマセ電気株式会社
宮城県加美郡
経営革新
株式会社ちよだ製作所
香川県高松市
経営革新
有限会社高倉工芸
岩手県九戸郡
経営革新
株式会社mimoto
高知県高知市
もの補助
株式会社高橋工業
宮城県気仙沼市
もの補助
株式会社フラスコ
愛媛県西条市
計測検査株式会社
福岡県北九州市
佐賀県鹿島市
関東甲信越
九州
株式会社きものブレイン
新潟県十日町市
サポイン
株式会社向洋技研
神奈川県相模原市
サポイン
森鉄工株式会社
経営革新
株式会社サンクゼール
長野県上水内郡
経営革新
有限会社藤井ピアノサービス 鹿児島県薩摩川内市
もの補助
栄商金属株式会社
東京都大田区
もの補助
株式会社教育情報サービス
宮崎県宮崎市
株式会社マリンコムズ琉球
沖縄県宜野湾市
新連携
中部
新連携
新連携
沖縄
株式会社ベルグリーンワイズ 愛知県名古屋市
新連携
サポイン
有限会社アートスクリュー
愛知県名古屋市
経営革新
有限会社ウイリー
沖縄県豊見城市
経営革新
中日本氷糖株式会社
愛知県名古屋市
経営革新
株式会社ライト工務店
沖縄県宜野湾市
もの補助
NIT株式会社
三重県四日市市
もの補助
有限会社高江木工
沖縄県沖縄市
株式会社日本コムダック
大阪府大阪市
サポイン
株式会社平安製作所
滋賀県高島市
経営革新
三恵ハイプレシジョン株式会社 大阪府大阪市
もの補助
阪和電子工業株式会社
近畿
新連携
中小企業・小規模事業者の
未来(ビジネス)を
サポートするサイト!!
中小企業
支援施策を
活 用した
成果事例集
和歌山県和歌山市
ミラ サ ポ の「 補 助 金・助 成 金 ヘッドライン 」で は 、中 小 企 業・
小 規 模 事 業 者 向 け の 補 助 金・助 成 金 が チェック で き ま す 。
また、
「ものづくり☆プライド・ミラサポ版」では、注目支援施策
を活用した成果事例を動画で紹介しています。
※ミラサポは、中小企業庁の委託により運営しています。
https://www.mirasapo.jp/