ニュースレター第3号 - 地球生命圏研究機構

名古屋大学 21世紀 COEプ ログラム
「太陽・地球・生命圏相互作用系の変動学」
http://www.coe.env.nagoya-u.ac.jp/
SELIS ニュースレター
January 2005
第3号
新しい「地球学」への胎動 ―これまでの活動総括と今後への展望―
拠点リーダー 安成哲三(地球水循環研究センター)
本 COE プログラム「太陽・地球・生命圏相互作用
系の変動学」も、開始以来 1 年半が過ぎ、これまで
の活動を総括し、今後の方針を考えるべき時期にき
ました。このプログラムが採択された時、21 世紀
COE の審査委員会から出された宿題あるいは懸念
が、
「このような広いテーマでの研究・教育における
連携と協働をどのように行っていくのか、いけるの
か」という内容でした。もちろん、まだ完全な解答
を準備できている段階ではありませんが、研究、教
育サイドとも、確実に進んでいることをまずお伝え
したいと思います。
この COE プログラムは、拠点メンバー教員、研究
協 力 教 員 、 ポ ス ド ク 研 究 員 お よ び DC 研 究 員
(Research Assistant)がその活動を担っていますが、
この COE を契機として、それぞれのレベルでの、細
分化された地球科学の枠を乗り越えて新たな研究を
進めようという問題意識と意欲を、私個人はひしひ
しと感じています。若手の教員とポスドク研究員は
この雰囲気の牽引者であり、すでに 30 回以上にもお
よぶ「横断研究セミナー」や横断的テーマの研究会
を開いて、部局や組織を超えた共同(あるいは協働)
研究グループをいくつか作りつつあります。科研費
などの外部研究資金に共同で申請しようという動き
にも、一部は発展しています。
また「横断研究プログラム」なども含む(大学院
博士課程の院生中心の)DC 研究員によるポスター
セッションは、お互いの狭い分野を越えて、それぞ
れの発表に対してコメントするという、既存の学会
のそれとは一風異なる雰囲気で、研究の視野を広め
る機会を提供しています。博士号取得をめざす院生
には、あまり寄り道をさせずに狭い分野で効率よく
研究をさせないとダメだという雰囲気が一方では強
くあります。確かに博士課程 3 年(以内)で確実に
学位を取らせるという指導教官の立場になると、つ
いつい、そのような気持ちにもなります。しかし、
もう一歩引いて、より広い視野で「地球の研究とは
何か」ということを考えた時、大学院生がより広く、
より長期的な視野と興味を深めて研究を進めるため
の「寄り道」は非常に大事なことと、私は考えてい
ます。「可愛い子には旅をさせよ。」という諺は、研
究者養成にもそのまま当てはまると思います。ポス
ドク研究員だけでなく、DC 研究員も対象とした「横
断研究プログラム」は、こうした若者の「旅」をほん
の少し助ける重要な機会づくりでもあり、ひょっと
すると、
「大発見」の場を提供しているかもしれませ
ん。
教育面では、連続講義「COE 地球学」を、環境学
研究科の特別授業として開始し、関係教官による話
題提供と院生による対話形式の講義を試行していま
す。今のところ、まだ普通のオムニバス形式の講義
になりがちであることは否めませんが、しかし、院
生による積極的な発言やコメントも徐々に増えてき
たようにも感じます。来年度は、研究科の正規の講
義として立ち上げ、各教員による「地球学とは何か」
の討論を院生諸君とともに行う講義としたいと考え
ています。
一般向け公開セミナーを、樋口敬二館長(本学名誉
教授)のご好意により名古屋市科学館で開催しまし
た。中学・高校生にいかに、地球温暖化を含む「変
動する地球環境」の理解をさまざまな角度から解説
するという趣旨で数名の COE 関係教員による講演
と一般からの質疑応答というかたちで進めましたが、
一般の人たちからのたくさんの質問、コメントに、
私たち研究者も大いに学ぶことができ、大収穫でし
た。来年度は、さらに大々的に、
「愛・地球博」と共
催するかたちの公開セミナーを開く予定です。
1
最後に、COE の永続的発展を機能させるための新
たな「太陽・地球・生命圏システム研究所(仮称)」
への動きですが、これもこれまでにのべた研究と教
育への連携と協力、共同作業を通じて、おのずとか
たちが見えてきたと、私は強く感じています。最も
関係する二つの研究所、研究センターとも来年度か
ら新所長、センター長の体制となりますが、新しい
研究組織がどうあるべきか、すでに議論が始まりつ
つあります。
20 世紀における「細分化」による地球理解の壁は、
地球を「丸ごと」見る新たな視点で乗り越えるしか
ありませんが、この方向を目指す本 COE の役割は重
大であり、当初の目標に向けて、さらに努力をする
ことこそが、当面の課題と考えています。
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北欧における超高層大気の観測研究
野澤悟徳、小川泰信、足立和寛、藤井良一(太陽地球環境研究所)
1. はじめに
極域の超高層大気(高度約 90 km 以高)には、頻
繁に太陽風エネルギーが流入する。そこでは、オー
ロラのような様々な興味深い現象が生起している。
地球大気は、高度が上昇するとともに希薄になるが、
高度 600 km 以高まで続いている。高度 70 km 以上
の大気の一部は電離(すなわち分子・原子から電子
が逃げ出し、イオン(主にプラス)と電子に分離)
して存在している。そのためこの領域の大気は、電
離圏とも呼ばれている。超高層大気(電離圏)は、
磁力線を介して磁気圏と繋がっている。我々のグル
ープは主に北欧において、EISCAT レーダー、MF レ
ーダー、光学観測機器を用いて、極域超高層大気を
研究している。ここでは、われわれのグループが行
っている、北欧トロムソおよびロングイアビンにお
ける研究活動について紹介する。
の北部に位置し、北
緯約 70 度。ロング
イアビンはトロム
ソから約 1000 km
北に位置し、
北緯 78
度。トロムソは北極
圏最大の町といわ
れ、人口約 5 万人。
ノルウェー首都オ
スロと定期便が1
日 5 便程度あり、所
要時間は約 2 時間。 図1トロムソとロングイアビン
ヨーロッパの普通の町であり、北極圏の町というに
は少し違和感がある。トロムソから1日約1便(週
6 便)
、ロングイアビンに定期便が飛んでいる。所用
時間は約 2 時間。ロングイアビンは人口約 2000 人で
あるが、ホテルは 3 つ、またバーやレストランもあ
り、普通の生活が営める。北極点までわずか約 1000
km という感じを、町にいるときにはあまり受けない。
2. トロムソとロングイアビン
我々の観測拠点であるトロムソおよびロングイア
ビンの位置を図1に示した。トロムソはノルウェー
図2
トロムソで撮影した、オーロラ。
2
い)に自動観測を行っている。2004 年 10 月 15 日に
行った観測例を図 3 に示した。上段では EISCAT レ
ーダーにより観測された電子密度を縦軸高度
(100-200 km)、横軸時間で示した。中段では、フォト
メータ(波長 427.8 nm)で観測されたオーロラの発
光強度を、下段では、フォトメータ観測から求めた
オーロラ電子の平均エネルギーを示した。オーロラ
の発光強度が上がると、同時に電離圏の電子密度が
上昇していることが見てとれる。さらに降下電子の
エネルギーが刻々と変わっている様子も見て取れる。
しかし町から出て、氷河を目の当たりにすると、こ
こは地の果てかという感銘を受ける。さらにこの島
には白熊が生息している。著名なノルウェー人の教
授曰く、
「町にいても白熊と出会う確率はゼロではな
い。」
3. オーロラ
オーロラは何度観ても不思議な現象である。磁力
線に沿って荷電粒子(主に電子)が超高層大気に降
り込み、大気(分子・原子)と衝突し、エネルギー
を与える。大気の受け取ったエネルギーが解放され
る時に、その一部が光となって現れたものがオーロ
ラである。オーロラは、いろいろな形、複雑な動き、
短時間での明暗等、複雑怪奇な現象である。高度約
100 km から 500 km で発光している。特に、緑光は
だいたい高度 110 km、赤光は高度 250 km 付近で最
も発光が強い。図 2 にトロムソにて撮影したオーロ
ラを 3 例示した。我々はオーロラを起こす降下電子
のエネルギーをオーロラ発光強度観測から求めるこ
とを目指し、4 波長フォトメータによる観測をトロ
ムソにて行っている。冬季(10 月から 2 月)暗い時
間(トロムソでは冬至になると昼の数時間以外は暗
4. 超高層大気で起こっていること
通常オーロラが輝いている時、地磁気は変動して
いる。アンペールの法則から考えると、磁場変動を
作るものは、電流である。と言うことは、オーロラ
が光っている領域でほぼ水平に電流が流れているこ
とになる。オーロラは磁力線に沿って光っているか
ら、運動は主に上下方向であり、ちょっと不思議に
思う。どうして電流が流れるのか?答えは、太陽風
に起因する電場が極域超高層大気にかかり、電離圏
のプラズマ(イオン、電子)を運動させるからであ
る。電場は磁力線に垂直方向に働き、極域ではほぼ
水平方向となる。レーダーを使うとプラズマの動き
を知ることができる。我々は EISCAT レーダーを用
いて電離圏プラズマの観測研究をしている。図 4 に
ロングイアビンにある EISCAT スバルバールレーダ
ー(ESR)の写真を示した。ESR システムは、口径が
32 m と 42 m の 2 つのアンテナにより構成され、こ
の 2 つのアンテナを最短で 3.2 秒で切り替えて観測
することができる。最高送信出力は 1 MW。通常の
家庭の約 1000 件分の電力に相当する。この強力な電
波を電離圏に放射する。しかし、電離圏は UHF 帯
(500 MHz)の電波にはほとんど不感症であるため、電
離圏自身はなにも影響は受けない。ほんのごく一部
の電波が散乱されて地上に戻ってくる。それを大口
径のアンテナにて受信することにより、電離圏にお
けるプラズマの運動や温度を観測している。
図 3 上:EISCAT で観測した電子密度、中:フォト
メータで観測された発光強度、下:降下電子エネル
ギー。
図4 EISCAT スバールバルレーダー
左:口径 32m 可動式、右:口径 42m 固定式アンテナ
3
測定できる MF レーダーを併用することにより、高
度 70 km から 120 km の風速高度プロファイルを取
得し、研究を進めている。
電離源である太陽紫外線が当たらない夜間、高度
100-130 km では、イオンと電子の再結合により、電
子は消滅する。ただし、オーロラ粒子の降り込みが
あると、電子密度は増加する。EISCAT レーダーで
は、その様子が、高度分解能 3 km、時間分解 10 秒
程度で連続して観測できる(図 3 参照)
。図 5 には、
トロムソおよびロングイアビンの EISCAT レーダー
同時観測により得られた電場の時間変動をポーラー
プロットで示した。円はそれぞれ、北緯 80 度、70
度、60 度に描かれており、内円がロングイアビン、
中円がトロムソの位置に対応している。線は電場ベ
クトルを意味し、長さは大きさを、方向が向きを示
している。時間を世界時(UT)で示してあり、上が 12
時、一番下 0 時である。図からトロムソとロングイ
アビンで大きさ数十 mV/m の電場が掛かり、また両
所で様相が異なることが分かる。さらに電場が時間
とともに変動している様子が見て取れる。このよう
な電場により、電離圏にオーロラジェットと呼ばれ
る電流が流れている。
6. 地球から大気が逃げていく?
1970年代に極域電離圏から水素イオン(H+)やヘリ
ウム(He+)などの軽いイオンが、磁力線に沿って磁気
圏へ継続的に流出していることが、人工衛星によっ
て発見された。この極域電離圏からのプラズマ流出
は、磁気圏プラズマの源として重要と考えられてい
る。質量分析器を搭載した人工衛星により、酸素イ
オン(O+)や一酸化窒素イオン(NO+)などの重たいイ
オンも磁気圏へ流出していることが観測されている。
図5に概念図を示した。この現象は惑星大気の生成と
消滅、進化に関わる問題で、大変興味深い。しかし、
これらのイオンは最初に電離圏内のオーロラ帯や極
冠域などで加熱され、磁気圏へ流出していると考え
られているが、その物理メカニズムは未だ謎に包ま
れている。我々はEISCATレーダーを用いて、高度400
図 6 電離圏イオン流出のモデル図。電離圏を構成
するほぼすべてのイオンが極域電離圏から磁気圏
に流出する。青い破線は磁力線を表す。
図 5 電場の観測例をポーラープロットで示した。内
円はロングイアビン、中円はトロムソに対応する。
5. 超高層大気の風
超高層大気の電離度(イオンの割合)は最大でも
1 %程度。ほとんどが中性の分子・原子である。電
流が流れている高度 100 km から 130 km 付近では、
正イオンは中性ガスと頻繁に衝突して、その束縛を
強く受け、エネルギー交換等の相互作用を行ってい
る。このためこの領域の大気運動(風)の理解は、
この領域に生起している諸処の現象を理解する1つ
のキーである。われわれは EISCAT レーダーを用い
て、高度 95 km から 120 km の風速を導出し、研究
を進めている。この領域の風は、24 時間および 12
時間周期で変動する大気潮汐波の影響を多大に受け
ている。この大気潮汐波は、下層大気から上方伝搬
してくる。中低緯度と異なり、極域ではさらに、中
層大気で励起された別種の大気潮汐波の寄与が大き
いことが最近明らかになってきた。それらの物理過
程を解明するため、高度 70 km から 90 km の風速が
km付近で起きているイオン上昇流の高度・時間変動
を観測し、同時に得られたプラズマ温度、密度など
のデータを使って、プラズマの流出と加熱の機構が
何であるのかを探っている。
7. まとめ
ここで紹介した研究はごく一部であるが、これら
の研究を通して、太陽から地球極域超高層大気に注
入される太陽風エネルギーがどのように極域超高層
大気にて散逸するか、どのような影響を極域大気に
与えるか、さらには、極域大気に注入されたエネル
ギーがどのように中低緯度まで伝搬するかなど、を
明らかにしようとしている。これらの過程を個別に
理解しつつ、1つのシステムとして考え、太陽エネ
ルギー変動の地球システムへのインパクト機構の解
明を目指しています。
4
国際シンポジウム 報告
■Prokopenko 氏の講演を聴いて地球温暖化問題に
て展開されました。さらに、氷床のアイスコアや海
寄せる雑感
COE 研究員(DC)柴田信之介
洋の堆積物から読み取れる情報も合わせて推測され
2004 年 12 月 2 日と 3 日に国際シンポジウムとし
た北大西洋の海水循環に関する古環境の復元の話も
て開催された Prokopenko 氏の研究者向け講演会と
あり、ちょっとした CG アニメーションが海洋循環
学生向け講義を拝聴しました。誤解を覚悟で(私が
と氷河の進退と気候の関係を理解する手助けとなり
講演内容を誤解している可能性を覚悟してという意
ました。
味ですが)講演および講義を聴いて感じたことなど
さて話は少しずれますが、グローバルな環境変動
を中心にレポートさせていただきます。参加者は講
を現在の地球での話で考えてみると、まず思い浮か
演が 20 名程度、講義が 10 数名程度でした。いずれ
ぶのは地球温暖化の問題だと思います。温暖化によ
も興味津々に聴き入る人が多かったように思います。
ってすぐ影響が出ると考えられる問題は、海水準の
具体的な研究内容の詳細についてはここで記述する
上昇で海抜の低い島国や海岸線の何割かが水没して
よりも、論文等をご覧になった方が間違いないと思
しまう恐れがあるということでしょう。そのため、
われるので省略します。もし記述内容に間違いがあ
温暖化ガスの気温上昇へ寄与する度合いが見積もら
ったとすれば、それはひとえに私の認識不足のせい
れ様々なシミュレーションが行われてはいますが、
なので、どうかご容赦ください。
いずれにせよ温暖化ガスの排出量削減は至上命題の
世界中の湖や海洋などのドリリングプロジェクト
ようです。ただ実際問題として海水準の上昇といっ
に精通されていると紹介された Prokopenko 氏です
ても津波のように短時間のうちに何 m も上昇すると
が、一見した感じでは世界中を飛び回っておられる
は考えにくく、想定されている温暖化の影響という
とは思えないほど細身の体型で、柔和なおじさんと
のは、我々が現状のまま何年も何の対策も施さなか
いった印象でした。シンポジウムでのお話は、そう
った場合の地球の将来像であることを忘れてはいけ
いった数あるプロジェクトに関する進行状況や研究
ないでしょう。平均気温が上昇し海水準が上昇する
結果の概要的な説明が半分を占めていたように思い
間も、当然地上から海洋へは砕屑物等の流入があり
ます。例えば、周辺地域からのエアロゾル等の影響
海進の速度を緩めるでしょうし、我々人類もただ手
が比較的少ないと考えられる高地の湖や中心部に向
をこまねいて見ている道理はないわけで何かしらの
かって深くなっているすり鉢状の湖などの、堆積物
抵抗を試みようとするでしょう。しかし、たとえ今
のドリルコア試料からおおよそ解っている古環境の
すぐ温暖化ガスの排出量を規定の割合まで削減でき
変化についてのお話などです。アフリカ大陸や南米
たとしても、その効果が大気へフィードバックされ
大陸の湖についての研究例もその中で紹介されてい
るのにある程度の時間がかかるのは明らかですから、
たように思います。それからもう半分が、本 21 世紀
そのことを踏まえてより前向きに考える必要はある
COE プログラムでも研究対象となっているロシア
でしょう。例えば、海抜の低い島国や海岸線などは
のバイカル湖の堆積物の研究に関する詳しい紹介で
土地を盛り上げるなり堤防を築くなりして水没を防
した。そういった話から、それぞれの堆積物が保持
ぐことができるように方策を立てておくべきですし、
している環境変動の記録とミランコビッチサイクル
科学技術はこういうときのためにあるのだと思いま
との対比などを通して、ローカルな湖の堆積物が過
す。もちろん環境変動の主な原因が人間活動による
去のグローバルな環境変動を探る材料になり得ると
ことが判っていて、それを改善できる手段があると
いった話も力の入ったスライドと熱心な弁舌によっ
すればそこに科学技術の力を注がない理由はないで
すが、その結果得られる効果がクリティカルなもの
でないと予想されるとき(某 A 国が温暖化ガス排出
量削減に非協力的な場合など)は、最悪のケースに
ついての対症療法も同時に検討されておくべきで
しょう。環境変動を受け入れ、故郷の土地を捨てて
より住み良い新天地を目指した我々の祖先の謙虚
▲Prokopenko 客員助教授の講演 ▲講演を終えて木平事務局長と
さと潔さを見習うのも悪くはないですが、幸いにし
5
て我々は先人たちよりも遥かに多くの環境変動に関
で講義を行っていただきました。また、最後 30 分程
する情報を得る手段を持っています。Prokopenko 氏
の質問時間では、自分を含めた学生等から多くの質
のように堆積物から過去の環境変動の記録を読み取
問があり、Nemani 博士も大変喜ばれたとのことです。
二 日 目 は、研 究 者 向け講 演 会 「 Monitoring and
ることもその手段のひとつでしょう。
地球温暖化は一説には寒冷化の原因になるとも言
modeling terrestrial ecosystem processes using Earth
われていますし、最適な対処法を見つけるためにも、
Observing System data」が行われました。こちらの講
過去の環境変動の記録と将来訪れるかもしれない同
演は、前日の講義とは異なり、現在 Nemani 博士が
様の環境変化の対比は、重要な手がかりとなるかも
進められている研究を中心に講演が進められました。
しれません。そんなことを考えさせられ、地球科学
Web サイトから様々な情報を得ることができること
にできることはまだまだあると実感したシンポジウ
などがわかりました。
ムでした。
両日共に、名古屋大学以外の他大学、研究機関か
らも多数の方に参加していただき、活発な議論が交
わされ、大変有意
義な講演会にな
ったと思います。
また、自分の研究
内容と大きく関
連した内容なの
で大いに勉強に
なり、今後の研究
▲研究者向け講演会の様子
の励みになりま
した。
■Nemani 博士の講演
COE 研究員(DC)村上和隆
2004 年 12 月 20、21 日の両日に、
アメリカの NASA
■Falkowski 氏の講演
COE 研究員(DC)清水慎吾
Ames Research Center より Ramakrishna R. Nemani 博
2005 年 1 月 11 日から 1 月 12 日に、名古屋大学環
士をお招きし、
「衛星データによる陸域植生の変動解
境総合館1階レクチャーホールにて、ラトガース大
析」というタイトルで講演を行っていただきました。
学の Paul G. Falkowski 教授による国際シンポジウム
Nemani 博士は、衛星リモートセンシングデータや陸
講演が行われた。Falkowski 教授は、海洋の植物プラ
域生態系モデルを使用して、グローバルスケールで
ンクトンの光合成に
の植生モニタリングや陸域炭素フラックスの推定か
関する基礎的な研究
ら、現在の地球温暖化による陸域植生の応答把握の
や海色人工衛星によ
研究を進めておられます。
る海洋の基礎生産の
初日の講演は、学生向け講義として「Interannual
研究をすすめる一方
variability and trends in global net primary production」
で、大学の地質学科
というタイトルで行なわれました。陸域植生の基本
と沿岸海洋科学研究
的なことから始
所で教育と研究に尽
まり、1980 年代か
力されておられます。
▲Falkowski 教授
ら現在までの衛
講演項目として、"The History of Earth: From the
星データをもと
Origin of Elements to the Evolution of Intelligence (地球
に推定された植
の歴史: 元素の起源から知性の進化まで)" と題され
生変動と気候変
た大学院生向けの講義と、"A Walk in the Oceans with
動の相互関係に
ついて等の内容
our Ancestors (我々の祖先と一緒に海を散歩する)"と
▲学生向け講義で話す Nemani 博士
いう表題の研究者向けの講演会が行われた。
6
Roberts 教授を招聘した。やや旧聞に属するが,上記
学生向けの講義は、次のテーマについてそれぞれ
3 件の国際シンポジウムと同じ目的での招聘であっ
2時間ずつ行われた。
たため,ここで報告させていただく。同氏は 43 歳の
1: Our building blocks「我々を作っている物質」
若手研究者で,リモートセンシングによる陸域植生
2: The magic of life - the grandest challenge in science
のモニタリングを専門としている。
1 月 19 日は PD・大学院生向けの講義を行った。
「生命の魔法−科学におけるもっとも壮大な挑
戦」
植生リモートセンシングの基礎的な原理から始まり,
3: Evolution - making things work to accommodate
同氏が精力的に取り組んでいるハイパースペクト
changes「進化−変化を受容させるためのしかけ」
4: What is the future?
ル・リモートセンシング技術まで幅広い内容であっ
Astrology or Astrobiology?
た。ハイパースペクトル・リモートセンシングとは,
「将来?占星術それとも宇宙生物学」
航空機や衛星に搭載したセンサにより,地表面等の
連続的なスペクトルを(2 次元画像として)得る技
術で,植物の状態や鉱物の種類など様々な情報を得
ることができる。講義の後半には,出席者と対話し
ながらノートパソコンで画像処理を行い,それをプ
ロジェクタで映しながら懇切丁寧な説明をしていた
だいた。同氏は,UCSB で優れた学生向け講義によ
って表彰されており,分かり易い講義であった。
1 月 21 日午後には東京大学生産技術研究所の会議
室で「ハイパースペクトル・リモートセンシング・
ワークショップ」を開催した。Roberts 氏による発
表の他,産業技術総合研究所の土田聡氏,東京大学
▲学生向け講義の様子
生産技術研究所の遠藤貴宏氏にも発表していただき,
話題は、1)ビックバン、2)太陽放射と地球の平均
気温の関係、3)地球上の水の起源、4)大陸移動メカ
日米の若手研究者の間での意見交換を行うことがで
ニズムと海水の中性化の関係、5)アミノ酸の形成と
きた。さらに 1 月 23 日には第6回 SELIS セミナー
生命の形成の関係、6)脊椎動物の誕生と絶滅、7)知
として「Advanced Vegetation Analysis using Imaging
性の獲得と脳の巨大化の関係、と非常に多岐にわた
Spectrometry」との標題で講演を行っていただいた。
っていて、かつ、それらが有機的に結合されること
当 COE のみではなく,岐阜大学などからの参加者も
で、生命誕生までの地球史を横断的に紹介する1つ
あって盛況であった。この他,筆者の講座の大学院
のストーリーを形成していた。講演会では、学外か
生(ほぼ全員)が英語で発表し,Roberts 氏にコメン
らも多くの参加者があり、専門的な議論が活発に行
トしていただく機会も設けたが,大学院生にとって
われた。
非常に良いトレーニングとなった。Robertts 氏にと
っては,非常に忙しい 1 週間であった。
講義後の質疑応答で、
「どうしたらそんなに横断的
に研究ができるのか?」という私の率直な質問にも、
教授は「keep learning」と答え、
「他分野も含めて1
年間で手のひらサイズの厚さに相当する枚数の論文
を熟読する」と仰っていた事が非常に印象的でした。
横断的研究とは「keep learning」の精神によって培わ
れるものであると実感できる講義内容だったと思わ
れました。
■Dar Roberts 氏の招聘
環境学研究科 山口 靖
2004 年 1 月 19 日から 24 日まで,カリフォルニア
▲居酒屋「飛騨」の前で。左から二人目が Roberts 氏
大学サンタバーバラ校(UCSB)地理学科の Dar
7
サイエンスワークショップ 紹介
年 1 月 17 日の SELIS 横断セミナーSpecial で講演して
いただいた。梶川自身の解析では、太陽黒点数の変動
と客観解析データの様々な高度の気温との相関を求め
ている。それによると、地表面気温では太陽黒点との
相関はほとんど現れず、上空 400 から 200 hPa 付近の
夏気温と最も高い正の相関
(0.5)
が現れている。
200 hPa
夏気温との相関の水平分布を見てみると、アラビア半
島∼インド半島∼インドシナ半島にかけて高い正相関
が現れている。この解析のきっかけとなった「氷河」
との関連で見ると、夏気温と太陽活動が高い正相関を
示す場所で氷河が存在するのはヒマラヤだけであり、
極めて希な現象を捉えていたことが伺える。
以上の話は図などで紹介する方がよいのだろうが、
未発表のものばかりということもあり、今回は割愛さ
せていただく。これらの解析結果は、論文としてなる
べく早く発信していきたいと考えている。
今回の例に限らず、氷河変動、ひいては気候変動と
太陽活動が関係していることに異議を唱える人は少な
いだろう(たとえば、小氷期と太陽黒点のマウンダー
極小期など)
。しかし、この間に介在するプロセスはま
だまだ未解明である。この領域は SELIS として取り組
むべき最も重要かつ挑戦的なテーマではないかと思う
のだが、いかが?
■地球学の課題1「氷河変動と太陽活動」
環境学研究科 藤田耕史
ヒマラヤの氷河から得られたアイスコア
(氷柱試料)
の解析によって、氷河の年々の収支(氷河にとってプ
ラスとなる涵養とマイナスとなる消耗の残差)と消耗
(融解と蒸発によって氷河から失われた氷の量)が太
陽黒点数と良い関係にあることが明らかになった。一
方、30 年程度の連続した質量収支(こちらは氷河全体
の涵養と消耗の収支)が明らかになっている世界の氷
河についても解析したところ、太陽黒点数との明瞭な
関係は見いだすことができなかった。世界の氷河につ
いてはデータの質が異なるのでさらなる解析が必要で
あるが、ヒマラヤの氷河変動と太陽活動との間に、他
の地域には見られない何らかの関係があることが示唆
された。太陽活動と氷河との関係がこのように年々の
スケールで示された例はこれまでにない。この解析結
果をきっかけにサイエンスワークショップ「氷河変動
と太陽活動」を開催し、気候変動解析・上層大気エア
ロゾル・太陽活動を研究テーマとしている PD・教官
の参加を得、多くのコメントをいただいた。
第 2 回目のサイエンスワークショップとして、
「太陽
活動と地球の気候に関する研究レビューおよびヒマラ
ヤ周辺の雲量データ解析」
(COE-PD・酒井)
、
「小寺論
文のレビューおよびNCAR/NCEP再解析データによる
気温と太陽黒点数の相関解析」
(安成研研究員・梶川)
といった内容で発表をしていただいた。
酒井の発表では、
「太陽活動→銀河宇宙線の増減→
雲量の増減→気温変動」という、1990 年代に提唱され
た仮説をめぐって現在も続く賛否様々な議論について
の紹介があった。上記の仮説、プロセスとしては十分
にあり得ると認識されているものの、実際の雲量の変
動に現れているかどうかの検証については、衛星によ
る雲量データが期間的に十分でないこと、雲量自体の
変化幅が小さいことなどから、現在も論争の的となっ
ているとのことである。また酒井自身もヒマラヤ領域
を対象として雲量データを解析したものの、太陽活動
との明瞭な関係、端的に言えば「太陽活動活発期の雲
量減少」のような関係は見いだせなかったとのこと。
梶川には「Solar influence on the Indian Ocean Monsoon
through dynamical processes」
(Kodera, 2004, Geophys. Res.
Lett.)のレビューと客観解析データの解析結果を紹介
していただいた。小寺論文は、オマーンの鍾乳石から
得られる降水量変動が地表面の南北風の強弱と関係が
あり、さらに太陽活動とのよい関係が見られることを
きっかけとして、客観解析データの各種成分と太陽活
動との相関について、水平、鉛直それぞれの空間分布
を解析し、太陽活動の影響がどのように地表大気に伝
搬してくるかについて議論している。
小寺氏には、
2005
▲ヒマラヤの氷河
■地球学の課題2「40 万年前の気候変動の謎に迫る」
COE 研究員(PD)勝田長貴
本サイエンスワークショップは、
約 40 万年前の酸素
同位体ステージ 11(MIS 11)の気候変動を理解する目
的で行なわれた(MIS 11 の詳細については、SELIS ニ
ュースレター第 2 号に記載されている)
。しかし、MIS
11 を理解するためには、SELIS の対象年代とする過去
1,000 万年の気候変動から、
この時代を様々な時間スケ
ールで見る必要がある。そのため、本セミナーでは、
8
タイトルに書かれている「40 万年前」に限定せず、現
在から過去 1,000 万年程度までの地球環境変動に関わ
る時代を取り扱っている。また、SELIS で掲げる横断
的研究の取り組みのためには、互いの研究内容を知る
必要があり、本セミナーは、グループ内およびグルー
プ間の問題意識を共有する場と位置づけられている。
9 月 17 日(金)の第二回目のセミナーでは、グルー
プ1の田中万也さん(ポスドク)に話題提供をしてい
ただいた。発表内容は、これまでに化学分析されたロ
シア・バイカル湖底堆積物の化学組成データの概要及
びデータ解析の進捗状況である。バイカル湖が位置す
るユーラシア大陸内陸部は、氷期と間氷期との平均気
温の差が世界で最も大きく(約 14℃)
、環境変動に対
する生物の応答特性を知るには、世界で最も相応しい
地域である。加えてバイカル湖には、こうした生物情
報および気候変動情報が、過去 3,000 万年間に渡って
連続的に保持されている。グループ1では現在、生物
情報から独立した新たな環境指標の確立が様々なプロ
クシーによって進められており、その一つである化学
組成データの解析が、田中さんによって行なわれた。
以下では、結果の概要のみを示す(詳細については、
SELIS のホームページを参照)
。
解析に用いたコア試料 BDP96 は、1996 年にバイカ
ル湖で採取されたもので、全長 200 m、底部年代 500
万年前である。外来性起源で砕屑性物質の指標である
Na, Al, Ca, Mg は、100 m 付近で変動を示した。この変
動は、約 250 万年前に相当し、北半球が寒冷化した第
四紀開始時期と一致する。このことは、外来性物質の
後背地で何らかの環境変動があった可能性を示唆する
ものである。さらに Mn の変動は、50 m 付近から表層
にかけて、その振幅が大きくなる。ちょうどこの位置
は、約 120 万年前に相当し、氷期・間氷期サイクルが、
4 万年周期から10 万年周期へ移行し始めた時期と一致
する。
また一般的に、
バイカル湖の堆積物中の Mn は、
湖水内の Mn イオンが溶存酸素と結合し、Mn 酸化物
として湖水内で自生し、堆積したものであると、考え
られている。よって、堆積物中の Mn が増加すること
は、何らかの環境変動により、バイカル湖内の水循環
が変動し、湖水の酸化還元状態が変化したことを示唆
するものである。以上のように、バイカル湖底堆積物
の化学組成には、過去の環境変動の多様な記録が保存
されており、今後の詳細な解析が期待される。
あっても内容の理解が難しくなる。また、共同研究を
行う場合は、研究内容の発展や、よりよい人間関係を
形成するためにも、お互いが相手の研究内容を理解し
ようとする、両者の歩み寄りが必要であると考えてい
ます。
このサイエンスワークショップでは、まず、「第四
紀学」(朝倉書店)の輪読を行うことで、知識の幅を
ひろげ、専門用語の壁をとりのぞくこと、さらに、各
個人の研究内容などの情報交換を行うことが大きな目
的として行っています。専門を異にする複数の者達が
集まって行う長所は、個人のみでは理解・解釈が難し
い内容について、
その場で聞くことができること、
様々
な視点からの考えを得ることができます。また、知識
不足という壁をなくすためにも、
できるだけ総合的で、
興味の対象以外のことについて知る機会を増やすこと
も大切であり、今後の研究の発展につながるものであ
ると考えています。もともと勉強会からスタートした
こともあり、他のワークショップより、ゆっくりとし
たペースで行っています。輪読が終了した後、より具
体的な研究テーマについての情報交換や話し合いを行
い、参加者の多くが、興味のある事象に対して、いろ
いろな視点をもったアプローチを行いたいと考えてい
ます。これは、専門に特化した研究をすることを否定
するわけではなく、研究内容の幅を広げるため、さら
に、自分の研究の位置づけ、意義をより幅広い範囲で
考えるために行っています。
■地球学の課題4「太陽フレアが地球大気に及ぼす影
響について」 COE 研究員(PD)松本洋介・元場哲郎
本 COE プログラムの主要なテーマの一つとして、
太陽エネルギー変動が及ぼす地球システムへのインパ
クト機構の解明がある。そこで、太陽エネルギーがど
のようにして地球大気に影響を及ぼすかを理解するた
め、
「太陽フレアが地球大気に及ぼす影響について」と
いう議題でサイエンスワークショップを立ち上げた。
2004 年 9 月 6 日(月)に第一回目を行い、当日は太陽、
惑星間空間、磁気圏、超高層・中層・下層大気といっ
た幅広い分野の専門家の方々に集まって頂いた(出席
者約 30 名)。第一回目は 2003 年 10 月末に起きた巨大
太陽フレアのイベントに注目し、非常に特殊なイベン
ト時にどのようにして太陽エネルギーが地球周辺環境
に影響を与えたかについて注目した。初回は全員が同
じ知識を共有することを第一の目的としていたので、
各専門領域の代表者にレビューをして頂いた。
太陽フレアについては佐藤(COE PD)が発表を行い、
太陽フレアの規模、それによって生じる EUV 放射の
地球大気に与える影響について報告した。惑星間空間
については、山下(COE DC)が太陽風観測について発表
し、同イベント時の太陽風構造の特異性と地球磁気圏
に与える影響について報告した。磁気圏内部について
■地球学の課題3「第四紀の何が面白い?」
COE 研究員(PD)阿部 学
第四紀に関係する、又は、興味のある研究者が集ま
って共同研究について考える場合や、自分の研究に関
連する専門分野外の研究について聞いたりする場合、
専門用語、研究のベースとなる知識がないという壁に
悩まされ、さらに、第四紀(古環境)の研究者同士で
9
は松本(同 PD)が発表を行い、衛星観測データから外部
及び内部磁気圏の特異性を報告した。その中でサブス
トームを介した電離圏へのエネルギー輸送、内部磁気
圏内の高エネルギー粒子の降り込みによる中間圏オゾ
ンの減少の可能性について議論した。大気については
元場(同 PD)によりレビューが行われ、地上レーダー観
測からみた太陽 EUV 放射による電離圏電子密度の変
動、衛星観測から見た太陽高エネルギー粒子による中
間圏・成層圏におけるオゾン量の減少について報告し
た。引続き電離圏に関連して、津川(太陽地球環境研究
所 機関研究員)が同イベント時における電離圏大規
模擾乱に関する報告を行い、磁気圏・電離圏結合の問
題について話題提供がなされた。
最後の総合討論では、
今後の横断的研究の方向性・可能性について議論した。
以上のように、第一回目では一つの非常に特殊なイ
ベントに注目し、太陽から放出されるエネルギーの輸
送ルートについて理解し、幅広い分野の研究者が興味
を持つことによって各領域をリンクする新たな研究領
域の開拓への可能性について探った。
現在、本サイエンスワークショップに関連していく
つかの横断的研究が進行している。主なテーマとして
は、太陽フレア時に放出される EUV が与える電離圏
擾乱について、磁気圏サブストームと電離圏大規模擾
乱の関係、放射線帯高エネルギー粒子の降り込みによ
る中間圏オゾンの変動、などがある。今後は、これら
テーマの研究報告を中心とし、もう少し具体的な内容
で第二回目のサイエンスワークショップを企画してい
く予定である。(文中、敬称略)
▲2004 年 9 月 6 日(月)第一回の様子
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
研究メンバー名簿
〔訂正〕前第 2 号に掲載した 協力教員名簿 に漏れがありました。松本英二 環境 G1 を追加いたします。
■拠点メンバー
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.
13.
14.
15.
16.
17.
18.
19.
河合崇欣(教授)
小澤智生(教授)
田中 剛(教授)
中村俊夫(教授)
増田公明(助教授)
田上英一郎(教授)
柴田 隆(助教授)
藤田耕史(助教授)
小川忠彦(教授)
藤井良一(教授)
松見 豊(教授)
徳丸宗利(助教授)
才野敏郎(教授)
中村健治(教授)
檜山哲哉(助教授)
安成哲三(教授)
山口 靖(教授)
渡邊誠一郎(助教授)
上出洋介(教授)
■協力教員
環境
環境
環境
年測
太陽
環境
環境
環境
太陽
太陽
太陽
太陽
水循
水循
水循
水循
環境
環境
太陽
G1
G1
G1
G1
G1
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G3
G3
G3
G3
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.
13.
14.
15.
16.
17.
18.
19.
20.
21.
22.
23.
24.
25.
■拠点メンバーに準ずる教員
1.
2.
小島正宣(教授)
上田 豊(教授)
太陽
環境
G2
G2
Simon Wallis(助教授) 環境
松本英二(教授)
環境
甲斐憲次(教授)
環境
増澤敏行(教授)
環境
平原靖大(助教授)
環境
阿部 理(助手)
環境
木平英一(研究員(COE)) 環境
水野 亮(教授)
太陽
塩川和夫(助教授)
太陽
野澤悟徳(助教授)
太陽
大塚雄一(助手)
太陽
小川泰信(助手)
太陽
西谷 望(助手)
太陽
藤木謙一(助手)
太陽
上田 博(教授)
水循
石坂 隆(助教授)
水循
森本昭彦(助教授)
水循
森本 宏(教授)
環境
神沢 博(教授)
環境
吉田茂生(助教授)
環境
荻野龍樹(教授)
太陽
品川裕之(助教授)
太陽
関華奈子(助教授)
太陽
増田 智(助教授)
太陽
三好由純(助手)
太陽
G1
G1
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G2
G3
G3
G3
G3
G3
G3
G3
G3
* 環境:環境学研究科、年測:年代測定総合研究センター、太陽:太陽地球環境研究所、水循:地球水循環研究センター
* G1:高精度環境変動解析グループ、G2:変動機構解析グループ、G3:統合モデリンググループ
10
【共催】ロシア科学アカデミー・シベリア支部・陸
水学研究所(M.A.Grachev 所長)
【期間】2004.8.21∼8.28
【地域】イルクーツク、バイカル湖中南部
【参加者】
名古屋大学:学生6名、教員1名(計7名)
金沢大学:学生4名、院生2名、PD1名、教員2名
(計9名)
ロシア・陸水学研究所:若手研究者5名、リーダー
2名(計7名)
【日程】
8/21(土)出発、イルクーツク着
8/22(日)イルクーツク市街、木造建築博物館、歴
史博物館等見学
8/23(月)陸水学研究所訪問、所内見学、Grachev
所長レクチャー
地球化学研究所訪問、バイカル湖岸露頭位置
確認、Kuzmin 所長と懇談、フブスグル湖湖底
試料(3月採取)取分作業見学・一部体験
8/24(火)クルージング プレカンブリアン露頭見
学・岩石採取、湖底表層試料(∼60cm)・湖
水採取、試料分取
8/25(水)クルージング オリホン島上陸、アンツ
ォ湾上陸、岩石・土壌試料採取。バクテリア
培養実験・付着藻&ヨコエビ採取(ロシア)
8/26(木)クルージング 湖底表層試料採取(2地
点)、採水。試料分取。ペシャナ湾上陸。
8/27(金)イルクーツク工科大学鉱物博物館見学、
ショッピング。合同フェアウェルパーティ
8/28(土)帰国。新潟空港で解散
■第2回バイカル巡検・サマースクール
バイカル巡検・サマースクールは、これまで 14
年間に渡ってロシアのバイカル湖および周辺で続け
ている国際共同研究の成果と、この間に培われた協
力関係を土台に、名古屋大学と金沢大学の 21 世紀
COE 合同プログラムとして 2003 年度から開始した
もので、今年は第 2 回目である。内容は概ね以下の
通りで、既に 21 世紀 COE(SELIS)ホームページ:
http://www.coe.env.nagoya-u.ac.jp/project/education/bikal/bk0
1.html に写真と共に掲載してあるので、興味のある
方はそちらもご覧頂きたい。
▲バイカル最大の島、オリホン島の南端に上陸し、岩石・土
壌等の試料を採取。丘の頂で参加者の記念撮影。左後ろはマ
ロエモリエ(小さな海)
。
バイカル湖はユーラシア大陸北東域内陸部のタイ
ガ(亜寒帯針葉樹林)に横たわる長さ 640 km に及
ぶ清澄な淡水湖である。ユーラシアプレートとアム
ールプレートの間にできた地溝湖で、西岸には先カ
ンブリア紀の露頭が広がっている。湖面積は琵琶湖
の 50 倍、最大水深は 1637 m で世界一、3千万年の
歴史を有する世界最古の湖である。湖底には最大 8
km を超す堆積層があり、また、生物の3分の2が
固有種であるといわれる。
イルクーツクは旧ロシア帝国のシベリア・極東地
方行政府の中心で市政 300 年余、人口 65 万人の都市
で、この地域の政治・経済・文化・教育の中心とな
っており、多くの博物館や美術館、史跡などを擁す
る。ロシア科学アカデミー・シベリア支部のイルク
ーツク支所があり、13 の研究所があるほか、州立大
学、外国語大学、工科大学などもある。
巡検・サマースクールでは、これらの条件を生か
して、フィールドと歴史・文化に直接触れる。また、
ロシアその他の国々の若手研究者との交流を図る。
内容は昨年度第一回とほぼ同じであった。昨年と
同様、出発に先立ち、7月下旬にバイカル湖に関す
る集中講義(4.5 時間)及び準備説明会(1 時間)を
行った。また、本巡検・サマースクールのための教
科書を準備して参加者に配布し、巡検・サマースク
ール期間中に引率教員及びロシア側講師によるレク
チャーを行った。
ポイントは、なんと言ってもバイカル湖に行って
自分の目と体でフィールドに触れることである。具
体的には、①国際共同研究者の研究所を訪問して所
長からレクチャーを含めた話を聞き、ありのままの
研究所を見学すること、②イルクーツク市街を訪れ、
市民の生活の一端に触れながら歴史博物館や鉱物博
物館でこの地域の生活と資源について知り、③研究
所の調査船でバイカル湖のクルージングを行い、世
界一の湖を体感しながら、④ユーラシアプレートの
【主催】名古屋大学 21 世紀 COE(SELIS)、金沢大
学 21 世紀 COE 合同
11
東端にあたるバイカル湖西岸の先カンブリア紀岩石
の露頭を訪れ、⑤3千万年の歴史記録を保持する貴
重な古環境試料である湖底堆積層に触れ、⑥今も湖
岸の住民の飲み水となっている清澄な湖水にふれな
がら、⑦船上での観察やレクチャー、湖岸での試料
採取、水泳、バーベキュー&サウナ(今年は中止)
などを楽しみ、⑧ロシアその他の国の学生と国際交
流をして、帰国前夜には参加者・関係者でフェアウ
ェルパーティーを行って終わりとするというもので
ある。
今年度から、クルージングにロシア側若手研究者
の参加を得て、国際交流の場としての形が整ってき
た。また、同時期に行ったフブスグル湖湖底堆積層
試料(2004.3 採取。SELIS 第1グループの基本課題
の一つ)
の分取作業を見学し、一部作業を体験した、
等が新しい内容であった。時期的に少し遅かったこ
ともあって天候がやや悪かったので、来年は少し日
程を早めることを検討する。
ロシア国内ではスーパーマーケットが多くの場所
で見られるようになり、物流は飛躍的に改善された
が、一方で給与の上昇を上回る物価上昇が進んでい
るとのことであった。本巡検・サマースクールの諸
経費も昨年より大分高くなった。
今後は、参加者の募集を徐々にアジア地域全域に
拡げ、国際交流の場としての内容を充実して、参加
者が将来の調査・研究活動に備えてアジア地域を中
心に人的なネットワークを作っていく場にもしてい
きたいと考えている。(河合崇欣)
▲地溝湖特有の切り立った湖岸
(オリホン水道付近)
▲(写真左)ロシアの若手研究者による付着藻と昆虫類の採取
(写真右)イルクーツク工科大学鉱物博物館見学▲
▲イルクーツクの市場に並ぶ食料品 ▲フェアウェルパーティー
■GIS-IDEAS in Hanoi
2004 年 9 月 16 日から 18 日までベトナム社会主義
共和国ハノイ市のハノイ科学大学において、第 2 回
地球関連科学における空間インフラ開発のための空
間情報科学国際会議が開催された。この会議は、モ
デリングやシミュレーションのための空間データの
解析方法やデータベース化、気象災害や地質災害等
の軽減を目指したリモートセンシングや GIS 技術の
応用例などについての議論を行うことを目的として
いる。主催は日本−ベトナム空間情報科学コンソー
シアム(JVGC)で、当 COE プログラム等が後援し
た。今回の会議への参加者は合計約 150 名、ベトナ
ムと日本の他、タイ、米国、ドイツ、オーストラリ
ア、イタリア、韓国からの参加があった。
開会式では JVGC 会長であるベトナム国会議員
Ngheim Vu Khai 氏、大阪工業大学 藤田 崇名誉教
授の司会のもと、ベトナム教育訓練省 Tran Van
Nhung 副大臣、在ベトナム日本国大使館服部則夫大
使が挨拶された。引き続いての基調講演では、東京
大学池内克史教授が文化遺産の 3 次元データベース
化について、慶応大学村井俊二教授が高分解能衛星
データの GIS 利用について、ハノイ国立大学 Mai
Trong Nhuan 教授がベトナムにおける空間情報科学
の現状について講演を行った。なお開会式の様子は
夜のテレビニュースで放映された。
▲調査船ベリシャーギン号
▲先カンブリア紀露頭の見学と試料採取 ▲湖底堆積層柱状試料採取作業
▲会場入口(ハノイ科学大学)
▲ベトナム教育訓練省副大臣の挨拶
一般発表では、環境監視、防災、気象、水資源管
▲湖底堆積物コア取り分け作業 ▲オリホン島での岩石試料採取
12
Dondovyn)、ロシア 8 名(BEZRUKOVA, Elena V.、
KALMYCHKOV, Gennady V.、KERVER, Eugene V.、
KHOMUTOVA, Marina 、 KRIBONOGOV, Sergey 、
KUZMIN, Mikhail I.、PROKOPENKO, Alexander (名
古屋大学客員研究員)、TKACHENKO, Liliyua L.)参
加した。ドイツから Hedi (OBERHAENSLI)さん
や Frank(RIEDEL)など懐かしい顔も見えた。発表
者(共著者を含む)は 83 名で、中国 8 名、日本 52
名、イスラエル 1 名、韓国 6 名、モンゴル 2 名、ロ
シア 11 名、アメリカ 3 名であった。参加者数は当然
中国が多かったが不詳。バイカル、フブスグル、黄
土堆積層ほか中国各地における研究成果が発表され、
技術面での進展もあって、東アジアにおける環境変
動解析のデータの蓄積が進み、東アジア全域をカバ
ーする総合的な解析に入る段階に来ていることを感
じさせた。
ポストコンファレンスエクスカーションは、黄土
堆積層(18 日)と兵馬傭(19 日)。いずれもこの地
が誇る自然史試料と歴史資料である。
このシンポジウムの準備を進めてきた間に、金沢
大学と名古屋大学の 21 世紀 COE 合同で日・蒙・ロ・
韓の国際共同プロジェクトを主導してフブスグル湖
ドリリングを実施した。一方、中国側では 2004 年に
青海湖のドリリングプロジェクトが立ち上がり、日
本から柏谷、箕浦、河合が協力の形を検討するため
に参画している。青海湖の掘削は 2005 年 5 月から始
める予定で、600 m コア等 5 本を採取して約 5 百万
年の歴史を解析する予定である。現在掘削の準備を
進めている。
青海湖で採取された試料は、日本チームのメンバ
ーで共同研究に参加する希望者には分配することを
考えているようなので、希望者は研究の概要と必要
量(単位試料量、サンプリング間隔)をメモにして、
河合(”三輪麻子” <[email protected]>)まで
ご連絡下さい。第一段階の締め切りを 2 月末日とし
ます。3 月後半に青海湖ドリリングプロジェクトの
PI 会議があり、そこで日本側の希望を伝えます。
日本チームとしては、バイカル・フブスグルを主
フィールドとして研究を展開しますが、中国の研究
者等との連携を強め、東アジア全域を議論の対象と
して総合的な把握をしていけるのではないかと思い
ます。
(河合崇欣)
理、社会基盤整備、文化遺産管理など様々な応用分
野におけるリモートセンシングや GIS の利用例、GIS
のシステムやアルゴリズム開発などに関する報告が
行われた。ベトナム人研究者の発表では、洪水や地
すべりなどの防災に対する関心が特に高く、GIS を
実用的に利用しようという発表が多かった。またベ
トナム国内における森林や土地利用などのローカル
な変化を衛星リモートセンシングと GIS を用いて継
続的に監視している例の報告も多かったが、グロー
バルな環境変動に関する発表はほとんどなかった。
筆者は、衛星データによる熱収支解析の研究成果の
発表を行ったが、東京大学生産技術研究所に留学し
ていたベトナム人研究者が、比較的近い研究を行っ
ており、発表の後で熱心な意見交換をすることがで
きた。また当研究室の研究生が、森林減少と降水量
変化との関係についてポスター発表を行い、多くの
質問を受けていた。
ベトナムは、現時点ではタイやインドネシアなど
周囲のアセアン諸国よりもリモートセンシングや
GIS の利用は進んでいない。しかし、これらの技術
を国の発展のために生かしたいという意欲に溢れて
おり、2 年前の第 1 回目の会議に比べてベトナム人
参加者の発表のレベルは、目に見えて上がっていた。
次回の会議は、2006 年 9 月にホーチミン市で開催さ
れる予定である。(山口 靖)
▲講演する筆者
▲ポスターセッションの様子
■古環境解析に関する西安国際シンポジウム
2001 年の国際ワークショップ(ウランバートル)
の後、柏谷さんと河合とで西安の中国科学院・地球
環境研究所を訪れ、これまでのバイカル研究の紹介
をした。そこでバイカル・黄土堆積層古環境変動解
析 の情報 交換 を中心 とし た国際 シン ポジウ ムを
2005 年に西安で開催することに合意した。その後、
2002 年イルクーツクで発会、2003 年金沢でプレワー
クショップをおこない、今回(2004 年)西安で国際
シンポジウムが開催された。
日本からは 21 世紀 COE 関係者を含め、バイカル・
フブスグルドリリングプロジェクト関係者が 12 名
(井上源喜、柏谷健二、河合崇欣、佐藤努、相馬光
之、塚本拓也、中村俊夫、長谷部徳子、牧武志、松
本英二、村上拓馬、安成哲三/敬称略。以下同)、韓
国 1 名 ( KIM, Ju-Yong )、 モ ン ゴ ル 2 名
( TOMURTOGOO, Onongyn 、 TOMURHUU,
13
▲古環境解析に関する西安国際シンポジウムにて
て現段階では不明であるが、降水予測精度向上を目
標にして観測を展開していることを紹介し、最後に
抜かりなく学生誘致を行って講演を締めくくりまし
た。参加者の常識を覆した講演を行ったのは藤田氏
でしょう。メディアで良く目にするのは温暖化によ
る南極氷床の融解。しかし実際はヨーロッパの山岳
氷河、さらにその速度を上回る勢いでアジアの山岳
氷河の融解が温暖化により進行している現状を研究
成果と写真で示しました。
休憩を挟み、後半は才野氏による温暖化が海洋の
物理プロセスや生物プロセスに与える現段階で考え
られる影響を観測事実とともに紹介し、最後に山口
氏が、NDVI データで見ると過去 20 年では植物は増
加しているが,温暖化に対して植物への過度の期待
は禁物と述べました。
講演の後、予め参加者に配布した質問用紙を回収
し、その質問に答える時間を設けました。大勢の人
の前で発言することができない人でも気軽に質問で
きるとあり、参加者には好評で、数多くの質問を頂
きました。中には講演者の説明不足故の質問があり、
今後の課題として揚げられます。しかし、多くは参
加者の旺盛なる好奇心からのナゼにあふれ、残念な
ことに閉会時間の都合からすべてには答えることが
できませんでした。集められた質問にはひとつひと
つ回答し、ウェブで公開することとなりました。
こうして無事終了したセミナーでありますが、最
後にその裏に隠された努力を紹介することにしまし
ょう。それはセミナー開催 5 日前、COE 有志メンバ
ーを前にして開かれた予聴会での話。中学・高校生
向けと銘打っているだけに分かりやすくなければな
らない。4 時間の長丁場だけに観衆を引き付け続け
る内容でなければならない。そうした要請に応えら
れているか、講演者に厳しい精査の目が向けられま
した。普段何気なく私たちが使用している言葉の中
にも、聴衆にとってみれば未知の言葉が多く、例え
ば「プロット」や「偏差」も NG ワードとして登録
して違う表現を用いるようにしました。その甲斐あ
ってアンケートでは、分かりやすかったとの評価を
頂くことができました。ただし中には、盛りだくさ
んの内容に困惑した参加者もいて、伝える内容をま
だまだ絞る必要性を再度確認しました。(池田健一)
■公開セミナー開催
2004 年 11 月 27 日、
名古屋市科学館におい
て、本 COE 企画の名古
屋大学公開セミナー
「変動する地球環境−
温暖化によって何が起
こる?−」を開催しま
した。当日は、市内の
中学高校に配布したポ
スターのほか、新聞や
インターネットを通し
て発信された案内を目にした 87 名の一般の方々が
会場に足を運んで下さいました。中学・高校生向け
に企画したセミナーでしたが、参加者は中学・高校・
専門学校生から年輩の方まで幅広い世代にわたり、
様々な人が地球温暖化に対して興味を持っているこ
と、知識を深めよう・広げようとしていることを反
映しているといえるでしょう。こうした参加者に今
回話題を提供したのが、安成哲三(拠点リーダー)、
増田公明(拠点メンバー)、上田博(協力メンバー)、藤
田耕史(拠点メンバー)、才野敏郎(拠点メンバー)、山
口靖(拠点メンバー)の 6 名、司会進行は木平英一(事
務局長)が務めました。
講演に先立ち、会場である名古屋市科学館の館長
を務める樋口敬二名古屋大学名誉教授から参加者に
対して、このセミナーに参加する心構えについての
提案がありました。その提案というのも、このセミ
ナーでは知識を蓄えるだけではなく、
「システム」と
いう考え方、
「システム」の見方を身につけてほしい
というものでした。例えば車。エンジンだけ、タイ
ヤだけでは役に立たないが、それらが組み合わされ
ひとつとなって役に立つ。それと同様に「太陽・地
球・生命圏相互作用系」の理解には、専門に特化し
た研究成果だけでは役に立たないが、横断的にそれ
ぞれの研究成果がひとつにまとまって役に立つ。こ
の言葉には、地球学の創生を目指し、しかし未だ明
確な形を成しえてない私たちに対する樋口氏の期待
と叱咤が込められていたのかもしれません。
講演は、安成リーダーによる「温暖化」の説明で
始まりました。二酸化炭素の放出量の増加と地球の
平均気温の上昇が必ずしも一致しないのは、地球が
複雑なシステムである故と述べ、そのシステムを形
成する太陽・降水・氷河・海洋・植物の話へつなげ
ました。増田氏は、過去の太陽活動の強度と気温に
ついてプロキシデータから得られた関係を示し、全
放射量の変動が気候変動を説明するには小さく、地
球システムには太陽活動の変動を増幅するようなメ
カニズムが存在する可能性があることと、近年の温
暖化は太陽活動では説明できないことを解説。つづ
いて上田氏が温暖化に対する降水活動の応答に関し
▲挨拶する樋口科学館長
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▲総合討論の様子(壇上は講演者)
■第 6 回 GAME 国際会議報告
第 6 回 GAME 国 際 会 議 ( International Study
Conference on GEWEX in Asia and GAME)が、文部
科学省、名古屋大学地球水循環研究センター、本
COE(太陽・地球・生命圏相互作用系の変動学)、
京都大学 21 世紀 COE(KAGI)、などの共催により、
京都市国際交流会館で、12 月 3−5 日開催された。
この会議は GAME 国際会議としては最終の会議で
あり、国内外から 180 人の参加者があり、大変盛況
であった。
GAME(アジアモンスーン エネルギー・水循環
研究観測計画)は、GEWEX( 全球エネルギー・水
循環研究計画。WCRP の副計画のひとつ)傘下のア
ジア地域の国際プロジェクトとして 1996 年より開
始され、アジア各国の研究者と連携・協力して、今
年度、大変成功裏に終了することになった。
会議では、招待講演や GAME の各活動に関連した
研究報告のほか、ポスト GAME をどうするかという
提案も行われた。今後の計画については、特に、地
域ごとのモンスーンと水循環の予報・予測に関連し
たモデリング研究を、各国の現業機関との連携・協
力で進めるべきであることが強調された。研究面で
は、GAME が特に対象とした大気・陸面相互作用だ
けでなく、モンスーン研究としては、大気・海洋相
互作用も含める必要があり、来るべき計画では、
GEWEX だけでなく、WCRP のもうひとつの副計画
である CLIVAR (気候の変動・予測性研究計画)との
連携も視野に入れてアジアモンスーン研究を進める
必要が強調された。また、夏季モンスーンだけでは
なく、冬季モンスーンも含めて進めるべきとの提案
もなされた。これらの提案を含めて、ポスト GAME
計画を国際的に議論するワークショップを 2005 年
春(5 月頃)に日本で開催することが、会議のまとめの
一つとして合意された。(安成哲三)
▲安成拠点リーダー
▲会場の様子
■横断セミナー、拡大サイエンスワ−クショップ開催
2004 年 12 月 7 日に、PD グル−プ主催の横断セミ
ナ−と事務局主催の拡大サイエンスワ−クショップ
を同時に行いました。横断セミナーは、これまで若
手中心に行ってきた横断セミナーの総まとめとして、
PD、DC 全員が各自の研究内容をポスタ−にして発
表しました。また、4 名の教員の参加もあって、全
部で 37 件の発表があり、非常ににぎやかなポスタ−
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セッションでし
た。ポスタ−の
前でにぎやかな
議論が行われて
いるのを見ると、
これまで一年半
で COE メンバ
−同士が顔なじ
みになって、交
流が進んできて
いることを実感
▲ポスターセションの様子
しました。また、
通常の横断セミナ−は講義方式ですが、ポスタ−形
式の方が、自分なりにわからない点を納得するまで
発表者から説明してもらえますので、異分野交流の
手段としてポスタ−発表は効果的だと感じました。
用意した二時間があっという間に過ぎて、すこし時
間が足りないくらい充実した横断セミナ−でしたの
で、今後もこのようなポスタ−発表で交流する機会
があると良いと思いました。
横断セミナ−に引き続いて、事務局主催で拡大サ
イエンスワ−クショップを行いました。これは、横
断セミナ−で若手は異分野交流を進めているのに、
COE 教員は横断的な研究に真剣に取り組んでいる
のか?教員は横断的な研究のビジョンを示して、若
手にもっと夢を語って欲しいという要請を受けて行
われたものです。
“夢を語る”という要求に困惑した教員も多かった
ようですが、各研究グル−プから 7 名の代表教員が、
様々な視点から横断研究のビジョンを示しました。
統合モデリンググル−プの渡邊助教授からは、研究
領域をある特定の部分でも良いから横に繋いでいく
盆栽理論?そしてそれを小さな地球に見立てて検証
していく箱庭理論?など、面白いお話を聞くことが
できました。サイエンスワ−クショップは、これま
で特定の研究テ−マに焦点を当てて、その関連する
研究者間の議論を進めてきましたが、COE 全体で横
断研究をもう一度考え直す機会になりました。
安成リ−ダ−から、今後もこのような COE 全体で
のワ−クショップを継続して開催していきましょう
という提案があり、今後も引き続き開催していく予
定です。横断セミナ−、サイエンスワ−クショップ
の 5 時間の議論は、さらに忘年会に引き継がれまし
た。安成リ−ダ−など事業推進担当者と、PD、DC
など若手が交流し、ビ−ルを片手に楽しい雰囲気で
話に花が咲きまし
た。異分野、世代
間の交流には、や
はりお酒が欠かせ
ませんね。忘年会
を準備していただ
いた、PD の皆さ
ん有難うございま
した。(木平英一)
▲拡大サイエンスワークショップ
4WPGM2004 in Hawaiiへの参加4
三好由純(太陽地球環境研究所)
2004 年 8 月 15 日から 22 日に、21COE プログラムか
ら旅費のサポートをいただいて、アメリカ合衆国ハワイ・
ワ イ キ キ で 開 か れ た 米 国 地 球 物 理 学 連 合 (AGU) の
Western Pacific Geophysical Meeting (WPGM)に出席し
てきました。WPGM は 2 年に一度開催される学会で、今
回、私はセッションコンビナーの一人として参加し、c第
23 太陽活動期における特徴的なイベント並びに太陽活
動周期での変動 c という趣旨で、セッションを企画いたし
ました。私の専門は、磁気圏物理学ですが、一言で磁
気圏物理学と言っても、その対象とする領域や現象に
大きな違いがあります。通常の学会では、それらの領域、
現象で細かくセッションが分かれることが多いのですが、
今回はむしろ共通のキーワードのもとに、異なる領域を
専門とする方達が一つのセッションに集まるように企画
いたしました。今回の WPGM では、参加者のキャンセル
が相次いだため、スケジュールを短縮するセッションも
あったようですが、幸いにして私たちのセッションでは多
くの方にご参加いただき、あるイベントや太陽活動周期
の変動に対して、異なるデータを持ち寄った方々が参
加し議論する、とても有意義なものとなりました。参加者
からよいセッションだったとお褒めの言葉をいただくとと
もに、後日談ですが、今回のセッションでの発表を機会
として、新しく共同研究を始める動きもあったようで、コン
ビナーとしてはずいぶんとうれしく感じました。
ところで、アメリカはかつて住んでいたこともあり、また
何度か出張で訪れたこともある国ですが、ハワイははじ
めての場所で、行く前から楽しみにしておりました。出発
前に、「ハワイの特にワイキキ周辺は、日本語が通じま
すよ」と言われていたのですが、まさにそのとおりで、ホ
テルや多くのレストランでは、日本語でスムースにやりと
りすることができました。また、街の至る所にコンビニエ
ンスストアがあり、おにぎり!や、緑茶のペットボトルが売
られている様子は、まさに日本のコンビニといった感じ
で、同じアメリカとはいえ、これまで訪れた所とはずいぶ
んと異なる雰囲気に、びっくりいたしました。
会議の前日には、某メーカーの CM で有名な、ワイキ
キの近くにある「この木なんの木」のある公園を見に行き
ました。ちょうど、結婚式(の練習だったかもしれません)
が行われており、伸びやかに在る樹の場所で、たくさん
の人たちの笑顔を見られたことは、今回の出張で心に
残る想いでとなりました。
最後に重ねて、21COE プログラムには、今回の学会
参加に際して旅費をサポートいただき、心よりお礼申し
上げます。異なる領域の研究を広く見通すことが大切で
あることをあらためて感じた今回の学会ですが、今後の
自身の研究においても、常々意識していきたいと思いま
す。
▲WPGM 会場のハワイコンベンションセンター
▲「この木なんの木」のある公園
◇編集後記◇
第3号をお届けします。COE が始まって 1 年数ヶ月が過
ぎ、COE 活動は、それなりに軌道にのってきたのではな
いかと思います。今号では外国人研究者を招聘して開催
した国際シンポジウムや COE PD, DC が中心になって行
っているサイエンスワークショップの話題などを掲載
しました。横断セミナーやサイエンスワークショップ
(+懇親会?)を通じて、確実に部局を”横断”する交流
が進んでおり、新しい研究の芽が徐々に出てきたように
思われます。今後さらにこの交流が進み、新たな地球学
の創設へ向かうことを期待しております。(S.N.)
編集:21世紀COEプログラム「太陽・地球・生命圏相互作用系の変動学」編集委員会
〒464-8601 名古屋市千種区不老町 名古屋大学大学院環境学研究科 環境総合館401号室
TEL 052-788-6042,6043 FAX 052-788-6044
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