JOL(日本型オペレーティング・リース)市場の 動向調査

2016 年 4 月 5 日
JOL(日本型オペレーティング・リース)市場の
動向調査結果 2016
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱にて JOL(日本型オペレーティング・リース)市場の調査を実施した。
1.調査期間:2016 年 3 月
2.調査対象:リース企業等のうち JOL を扱う主要 10 社を対象とする
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談調査
<JOL(日本型オペレーティング・リース)とは>
日本型オペレーティング・リースとは、一般的に航空機、船舶、コンテナ等を対象としたリース契約で、賃借事業者で
ある航空会社、海運会社に対して行われるもので、オペレーティング・リースで貸し付ける際に、匿名組合契約を通じ
た投資家(事業会社)からの出資金と金融機関からの借り入れによりリース物件を購入し、リース期間満了時にリース物
件を再販市場で売却し、キャピタルゲインの獲得を追求する金融商品である。
【調査結果サマリー】
‹ JOL の市場規模は 2015 年度 3,116 億円、2016 年度は 3,651 億円と拡大の見込み
航空機分野を中心に商品の組成が進み、船舶、コンテナ分野でも一部で回復の兆しが見え始めている。依
然として投資家需要は旺盛で、2015 年度の市場規模は投資家の出資金総額ベースで前年度比 28.9%増と
大幅に拡大した。船舶とコンテナ分野での底上げに加え、航空機分野での商品性の多様化によって、2016
年度の市場規模は 3,651 億円と更なる拡大を見込む。
‹ JOL 組成件数は 2015 年度 205 件、旺盛な投資家需要を背景に 2016 年度は 243 件の見込み
投資家の再投資需要に加え、不動産投資の代替投資商品として新たな投資家需要もあり、2015 年度は
205 件となった。2016 年度は、航空機分野での組成が更に増加し 243 件を見込む。
‹ 2015 年度の JOL 商品分野別構成比は、航空機 72%、船舶 20%、コンテナ 7%
商品分野別構成比では、これまで船舶分野の構成比が減少傾向にあったが、2015 年度は一部の企業で
取扱いが急増し、一時的に船舶分野の構成比が 20%となった。今後、船舶及びコンテナ分野の構成比は
各々10%前後で推移し、航空機分野を中心とした構成比に大きな変化はないと予測する。
‹ 今後も航空機分野を中心に JOL 市場の拡大基調を予測
旺盛な投資家需要に支えられるなか、一部ではあるが、航空機分野では投資期間の短縮化、他の分野で
も投資単価の低減化など商品性が多様化してきている。2017 年度の市場規模は投資家の出資金総額ベー
スで 3,952 億円、同組成件数 274 件と拡大基調を予測する。
‹ 株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
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2016 年 4 月 5 日
【 調査結果の概要 】
1. JOL(日本型オペレーティング・リース)の市場概況と予測
当該金融商品は、国内外の航空機、船舶、コンテナといった大型運輸設備を利用する賃借事業者にとっ
ては、資金調達メリットを活かせるリースという実需面と、投資家にとっては課税効果及びキャピタルゲインによ
る投資効果といった二面性を持つ。そのため、当業界は景気動向によって、当該金融商品の需給状況と投
資家の投資意欲の兼ね合いから商品の組成件数が増減し、投資家からの出資金総額も変動する。
また、JOL(日本型オペレーティング・リース)市場は、商品の特性から運用ノウハウが必要となるため参入企
業は少ない。本調査時点の参入企業数は、国内リース会社約 180 社のうち 10 数社しかおらず、なかでも日本
型オペレーティング・リースを専業とする企業は 2 社しか存在していない。このうち 1 社は 2012 年 10 月に東
京証券取引所市場第一部に上場、もう 1 社は 2014 年 9 月に東京証券取引所マザーズに上場している。
JOL の市場規模(投資家の出資金総額ベース)は、2008 年秋のリーマン・ショックの影響を受け、航空機メ
ーカー、造船会社等の供給減、また投資家となる事業会社の経営環境の悪化による投資意欲の減退などに
よって 2009 年度(2009 年 4 月~2010 年 3 月)まで減少していた。2010 年度(2010 年 4 月~2011 年 3 月)
以降は、投資家需要が戻り、市場規模は増加に転じた。特に、2011 年度(2011 年 4 月~2012 年 3 月)は、
新たに欧州の航空会社でリースが組めるようになったこと、2012 年度(2012 年 4 月~2013 年 3 月)は、JOL 専
業会社が東京証券取引所市場第一部に上場したことも契機となった。2013 年度(2013 年 4 月~2014 年 3 月)
は、欧州の他、中東などでも航空会社の案件組成が進み、コンテナ分野も伸長したが、船舶分野においては
リーマン・ショック時の船舶発注数減少の影響を受け、全体として市場規模は横ばいであった。
その後、これまで JOL を扱う企業が行なってきた海外航空機リース企業の買収に加え、邦銀の航空機ファ
イナンス活発化等の好材料を背景に、2014 年度(2014 年 4 月~2015 年 3 月)も引き続き航空機分野が伸長、
船舶、コンテナ分野も増加し市場規模は 2,400 億円超に達した。2015 年度(2015 年 4 月~2016 年 3 月)も、
依然として続く航空機分野での組成件数増加に加えて、船舶分野で出資金総額が大きく増加した JOL を扱う
企業があったことから、市場規模は 3,116 億円、同組成件数 205 件と拡大した。なお、現状では事業承継を控
えた新たな投資家も目立ち、2016 年度(2016 年 4 月~2017 年 3 月)の市場規模は 3,651 億円、同組成件数
243 件、2017 年度(2017 年 4 月~2018 年 3 月)の市場規模は 3,952 億円、同組成件数 274 件と拡大基調を
予測する。しかしながら、2018 年度以降は、投資家が減少したリーマン・ショック時(2008 年度)に組成した案
件の満期を迎えるため、再投資需要先が低減する可能性があり、市場規模は一時的に減少することが予測さ
れる。
図 1. JOL の市場規模(出資金総額)推移
(億円)
3,952
4,000
図 2.JOL 組成件数の推移
(件)
300
274
3,651
3,500
3,116
243
250
3,000
205
2,417
2,500
1,942
2,000
1,656
1,943
1,665
200
181
152
150
121
129
128
1,500
100
1,000
50
500
0
0
10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度
(見)
(予)
矢野経済研究所推計
注 1.図 1 は出資金総額ベース、図 2 は組成件数ベース
注 2.(見)は見込値、(予)は予測値
10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度
(見)
(予)
矢野経済研究所推計
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2016 年 4 月 5 日
2. 商品分野別の市場概況と予測
JOL の商品分野別の市場規模について、2013 年度は船舶が 195 億円と減少したものの、航空機が 1,596
億円、コンテナが 151 億円と伸長したことから前年度比で横ばいとなった。2014 年度は航空機が 1,984 億円、
船舶が 232 億円、コンテナは上場企業での出資金総額の押上げが貢献した結果、200 億円と、全体で 2,417
億円であった。2015 年度は一部の企業で船舶が大幅に増加し、同分野で 631 億円となり、航空機は 2,253
億円、コンテナも 231 億円と引き続き拡大、全体として 3,116 億円となった。2016 年度以降も、航空機は 2,800
億円~3,000 億円規模、船舶は 520 億円~550 億円弱、コンテナは 280 億円~320 億円と拡大が見込まれる。
特に投資家の旺盛な需要を背景に、航空機分野では新たな賃借事業者の開拓を進めていること、投資期間
の多様化など商品性の向上に取組んでいることなどから、航空機分野の伸長が顕著である。
商品分野別構成比では、これまで航空機とコンテナの構成比が拡大、船舶の構成比が 10%程度に減少し
てきた。2015 年度においては、船舶の構成比が急拡大し 20%を占め、航空機が 72%、コンテナが 7%となっ
た。2016 年度以降は、航空機の拡大を要因に、船舶の構成比は 10%強に低下、航空機は 70%台後半、コ
ンテナは 10%弱の構成比で推移するものと予測する。
図 3. JOL 商品分野別の市場規模推移
(億円)
4,000
3,952
3,651
3,500
3,000
3,116
航空機
船舶
コンテナ
2,417
2,500
1,942
2,000
1,656
1,665
1,120
1,200
505
374
2,846
1,943
2,253
1,500
1,000
1,984
1,522
1,596
631
500
0
10年度
30
11年度
3,085
89
547
195
151
232
200
231
283
320
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度(見)
17年度(予)
注 3. 出資金総額ベース
注 4. (見)は見込値、(予)は予測値
注 5. 切り捨てのため、合計値は一部異なる
図 4.
522
316
103
矢野経済研究所推計
2015 年度 JOL 商品分野別構成比
コンテナ
7%
船舶
20%
2015年度
市場規模
3,116億円
(100%)
航空機
72%
注 6. 出資金総額ベース
矢野経済研究所推計
Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd.