No.184 民泊の課題

いちょうレポート
№184 2016 年 5 月
(有)アクティ
公認不動産コンサルティングマスター 室 和允
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―民泊の課題―
民泊について、政府は関係省庁での有識者会議での内容をつめ、今年中に結論を出して、民泊新法の法案提
出を目指しています。国家戦略特区として、民泊事業では、大阪府と東京都大田区が指定され、1 月に大田区
で条例が施行されました。5 月 17 日までに 14 物件の認定にとどまっています。事業者側は、7 日以上の宿泊
数を求める規定や、施設の要件など、コスト面から現時点では様子見となっているようです。しかし、これ以
外の都心部や観光都市にある民泊は全て違法です。現在民泊の制度は無く、対応できるのは旅館業法です。民
泊仲介サイト Airbnb(エアビーアンドビー)に登録された貸し手の多くは、収益優先で無許可のまま違法を承
知で部屋貸しをしています。マンション管理規約と賃貸契約上の転貸禁止事項にも違反しています。Airbnb
では物件が適法かどうかは確認しません。無届民泊マンションを巡って、貸主と居住者、管理組合や管理会社
との間でトラブルが続出してきました。管理会社は無届の民泊使用がないか、巡廻監視に追われています。
京都市が発表した民泊の実態調査(2015 年 12 月から 16 年 3 月まで)では、Airbnb や住百家(本社中国)
など計 8 つの民泊仲介サイトの掲載物件を対象に調査しました。
半数以上で所在地の特定ができなかったほか、
旅館業法の許可を取得している物件は 7%にとどまっています。
民泊を国としてどのように観光業のなかで宿泊施設として位置づけ整備するのか、
重要な局面を迎えました。
1.フランスの現状
自民党の観光基盤協会に関する小委員会では、パリにおける民泊の現状について、東洋大学国際観光学科の
徳江順一郎準教授が意見を述べました。
「対策を打つのが遅れ、身動きが取れない状況」にあるといいます。パ
リではホテルが 1,505 件・ベッド数約 11 万床であるのに対し、Airbnb に登録されている物件は 6 万件・ベッ
ド数 20 万床と数で圧倒的優勢があり、ホスト(貸主)不在の投資型民泊が 97%に上ります。パリの短期賃貸
に関する規制を守らず、価格的優位性から拡大してきました。問題と指摘するのは、インターネットの匿名性
により「偽名」が横行し、現地では民泊物件での事故や盗難、火災、性的暴行などの犯罪が連日報道されてお
り、また収益性の高いことから、民泊に切り替えようとする賃貸物件の家主が更新期に家賃を上げ、賃貸全体
の 1/4 の借主が更新できずに借家を出ているとのことです。
フランス宿泊業界関係者が来日して、
「民泊の不都合な真実~世界最大の観光大国フランスで起こっているこ
と」と題した緊急フォーラムが 3 月 17 日に開催されました。
「フランスは Airbnb にやられてしまった、日本
は同じ轍を踏まないでほしい」というものです。フランスで民泊と言えば、Airbnb のことであり、1 日に 1 軒
のホテルが廃業か倒産に追い込まれていると訴えます。アパート所有者が利益の上がる民泊へ物件をまわした
ため、住民は郊外へ移転し、観光客が多い地域では住民が減って学級閉鎖へおちいる学校も出ています。ホテ
ルに課される安全性などの義務は、民泊にはなく、貸し手はその匿名性で物件を登録できるシステムそのもの
が脱税や様々な犯罪の温床になっていると力説します。テロリストの潜伏先にも使われました。
2.民泊新法
オリンピックを控えて、経済優先で民泊を取り込もうという気配がみえます。ワンルームマンションでマン
ションの管理規約を改定せずに、民泊として使用できるとも伝えられます。Airbnb などの民泊仲介サイトの運
営業者は、民泊の管理を手掛けていないため、新法の対象にしていないようです。対象の線引きによっては、
マンションの賃貸市場が様変わりします。犯罪防止策もセットにしなければなりません。
貸主借主の匿名性は排除できるのか、仲介サイトには何ら規制がないのか、本来の地方や農業地の活性化へ
どのようにつなげるのか、新法に対し、自治体による条例規制は可能なのか。理念なき経済優先策ではフラン
スの状況にも似た新たな問題を提起することにもなります。地元の人々に歓迎され、評価される「日本型民泊」
ができるのか、問われています。
資料 住宅新報(2016 年 5 月)