創刊!JFA公認指導者 対象の専門誌 創刊!JFA

Technical
news
Vol.1
創刊!JFA公認指導者
対象の専門誌
2003ナショナルトレセンU-14報告
U-23日本代表、アジア予選に向けた準備
再現、JFA「リフレッシュ研修会」
財団法人 日本サッカー協会
Technical news
Vol.1
特集①
変化を感じよう!
変化に対応しよう!
!
2003ナショナルトレセン
U-14
2
特集②
© Jリーグフォト
(株)
U-23日本代表
アテネオリンピック出場
アジア最終予選に向けた
準備
45
日本代表チーム
ジーコ監督、カンタレリGKコーチインタビュー
10
U-19日本代表チーム
2005年FIFAワールドユース選手権に向けて
14
U-14世代の活性化を目指して
トレセン改革
18
U-16日本代表チーム
2004年、高校1年生早生まれセレクション報告
20
2003年度公認指導者
(リフレッシュ)
研修会より
24
GKコーチング
○表紙:写真提供、Jリーグフォト㈱
セットプレーの守備「PKへの対応」
28
珠玉のひとこと その2
JFA高校サッカー・テクニカルスタディ
GKプロジェクト活動報告
報告:日本女子サッカー、強化・普及への取り組み
フィジカル、測定のすすめ
公認キッズリーダー、インストラクター養成
年代別指導指針①
審判員と指導者、ともに手を取り合って・・・ 第2回
技術委員会刊行物・販売案内
17
22
32
35
38
40
42
44
56
○発行人:田嶋幸三
○監 修:財団法人日本サッカー協会技術委員会
○発行所:財団法人日本サッカー協会
○制 作:財団法人日本サッカー協会技術委員会テクニカルハウス
○制作協力:エルグランツ(株)
○印刷・製本:サンメッセ(株)
※本誌掲載の記事・図版・写真の無断転用を禁止します。
1
2003ナショ ナルトレセンU-14
240人の選手たちがJヴィレッジに集
まる
© AGC/JFA news
14歳以下の選手たちを対象にした「2003ナショナルトレセンU-14」が2004年3月にJヴィレッジ
で開催された。
2003年度から選手参加資格を 学年 ではなく「1月1日」という誕生日区切りに変更、1989年1月
1日以降とし、さらに参加者数を164人から240人に拡大、2回に分けての開催となった。
足達勇輔(JFAナショナルトレセンコーチ/JAPANサッカーカレッジ)
テーマ選定について
今回の2003ナショナルトレセンU-14のテーマ選定
は、ナショナルトレセンと同じようにサッカーの本質か
ら逆算されたものであり、日本全体の大きな課題となっ
ている「ゴール前」を意識したものである。
「ゴール」というサッカーの目的地を常に意識させる
ことにより、選手にサッカーをシンプルに考えさせたい
という狙いもあった。ゴールがそこにあるから課題が明
確になり、ゴールがあるからこそ、そこに駆け引きが生
まれてくる。
指導者が「教え込む」という危険な行為から、選手自
身が観て、判断して、感じて、プレーするように仕向け
るようにオーガナイズを考えた。また、選手の感性を最
大限に引き出し、どのような状況にも臨機応変に対応で
きる選手の育成にもトライした。
選手が、プレーの中でゴールへの近道を感じて攻める、
危険を感じて守る、と言う本質=「感性」を引き出して
行くことを目標に『変化を感じよう!変化に対応しよ
う!
!』とした。
© AGC/JFA news
© AGC/JFA news
『変化を感じよう!変化に対応しよう!
!』
観て判断することの大切さをベースに、味方・相手・
スペース等の変化に合わせたプレーを選択できるように
なるために、今年度のテーマは「変化を感じよう! 変化
に対応しよう!
!」とした。「感じる」ということは、特に
意識をしなくても判断できるということである。
トレーニングの中では必ず「ゴール」を設定し、そこ
には攻守ともに「ゴールを奪う」「ゴールを守る」という
「サッカーの本質」を忘れてはならないというメッセージ
を込めている。ゴールがあるからこそ課題が明確になり、
ゴールがあるからこそ、そこに駆け引きが生まれてくる。
いろいろと教え込むよりも、選手がプレーの中でゴール
への近道を感じて攻める、危険を感じて守る、という本
質=「感性」を引き出していきたい。
フィールドプレーヤー
コンタクト
スキル
守備
しかけ
ポゼッション
開催概要(抜粋)
スケジュール
期間
NATIONAL
TRAINING
CENTER
1
コース
2004年3月20日(土)13:30 〜 3月24日(水)12:00 4泊5日
2
コース
2004年3月25日(木)13:30 〜 3月29日(月)12:00 4泊5日
1日目
2日目
場所
3日目
Jヴィレッジ(福島県)
13:30
集合
14:30 〜 16:00
トレーニング(地域別)
8:45 〜 10:45
トレーニング(グループ別)
14:00 〜 15:45
トレーニング(グループ別)
19:00 〜 19:20
レクチャー
9:00 〜 10:45
19:00 〜 19:20
選手参加資格
4日目
①JFA加盟登録選手(外国籍選手でもその選手の参加が他の
選手にプラスと考えられる場合、参加を承認する)
②1989(昭和64・平成元)年1月1日以降出生の者
③日常的にトレセンで活動している者
5日目
トレーニング(グループ別)
レクチャー
9:00 〜 11:00
ゲーム(グループ別)
14:00 〜 16:00
ゲーム(グループ別)
8:50 〜 10:50
10:50 〜 11:00
ゲーム(地域別)
閉会式
2
コース
選手数
北海道
16
東
U-14
U-13
8(1)
8(1)
コース
選手数
U-14
U-13
関東②
32
16(2)
16(2)
北
16
8(1)
8(1)
北信越
16
8(1)
8(1)
関東①
32
16(2)
16(2)
東
海
32
16(2)
16(2)
関
32
16(2)
16(2)
中
国
16
8(1)
8(1)
32
16(2)
16(2)
四
128
64(8)
64(8)
西
九
州
計
国
計
16
8(1)
8(1)
112
56(7)
56(7)
※( )内数字はGKの参加数
2
どのテーマにおいても、ファーストタッチ、サポート、パス
の質、タイミングなどはベースとなるキーファクターとして徹
底させたい。
選手の自立といった観点から、自分で判断して行動すること
を促すために、ナショナルトレセンU-16で取り組んだ「与え
過ぎない」ということにもトライする。トレーニングだけでな
く、トレセン期間中のすべての活動において、選手自身が工夫
し、自主的に行動でき、自己責任が発生するような時間、雰囲
気をつくっていく。また、身体面、精神面の成長の違いを考慮
し、より適切な環境を与えていくために、あえて13歳、14歳
を分けてグループをつくった。
オン・ザ・ピッチ(On The Pitch)およびオフ・ザ・ピッチ
(Off The Pitch)ともに、「個の育成」に重点を置き、取り組ん
でいく。
ゴールキーパー
●各地域からの参加選手数と年齢別内訳
1
コンタクトスキルは、どの年代でも課題とされているもので
あるが、単なる身体と身体のぶつかり合いではなく、いつコン
タクトが必要なのか、どのように相手選手とコンタクトしてい
くのか、コンタクトをどのように利用していくのか、コンタク
トしながら何を観るのか、などを選手に考えさせたい。
守備では、1対1 → 前を向いた相手に対しての対応 → オフ
(Off)のポジショニングからの1対1へと段階を経て理解させ、
3対3のグループでの守備ではその個人戦術をいかす場面をつ
くりだす。
しかけでは、2対1 → 3対2の数的優位の状況を設定し、DF
の変化を観て、プレーを選択する判断に働きかけたい。
ポゼッションも各年代で常に課題になるものである。DFの
対応によりポジションを替えていく判断について、「ギャップ
の共有」(出し手と受け手が同じギャップを互いに意識するこ
と)をキーワードに、ポゼッションを支えるポジショニングを
理解させていく。
● Aggressive Goalkeeping
積極的かつ攻撃的なゴールキーピング
リーダーシップ
● Good Position
GKの姿勢(いつでもどこへでも動き出せる体勢とそのタイミング)
状況に応じた良いポジション
● DF Communication & Combination
どうしたらいいのか、どうしてほしいのかを伝える
決断と声(自分がプレー or 味方がプレー)
「観る」
状況把握・予測
プレーを決定するためのベースになる
ものであり、一瞬一瞬で変わる状況を
どのように観て、判断を下すかである。
観ることができていれば、次のプレー
の予測ができやすく、判断を決定する
うえで非常に有利である。
3
フィールドプレーヤー
トレーニングに関して
これらのテーマは、U-16日本代表、JFA
1.パス&コントロール
2.コンタクトスキル
3.守備
4.しかけ
5.ポゼッション
し、バランスを崩す理由を意識させると、
エリートプログラム、U-14日本選抜、世
身構えてコンタクトを受けてからボールに
界との差の中から選定されたものである。
タッチするといった工夫が見られるように
パス&コントロールはテーマとして扱わ
なってきた(図2参照)
。
ゴールキーパー
1.シュートストップ
2.ブレイクアウェイ
3.クロス
図3
ニングで意識させた(図4参照)
。
ポゼッションのセッションでは、4対2
トタッチ、コミュニケーション、パスの質
ベースになる止める、蹴る(観ること=ボ
守備のセッションでは、シュートコース
についてトレーニングし、オーバーナンバ
ールから目を離し、視線を切り替えるトレ
を意識させながらポジショニングの原則を
ー(6対6+2フリーマン)の形でポゼッシ
ーニング)を毎日のトレーニングの中で求
オーガナイズから感じさせた。原則を説明
ョンを行い、ボール保持者とサポートのポ
めていった。「良い習慣」の身についてい
するのではなく、選手の工夫を引き出す際
ジションを整理していった。
る選手が少なく、観るものを増やしていく
に有効な「発問」をとり入れながら、最善
どの世代でも課題となるポゼッションで
と(味方、ボール、相手、スペース…)と
の方法を引き出すことにトライした(図3
あるが、ボールが来る前までにすべきこと
たんに肝心の止める、蹴る技術がおろそか
参照)
。
がなかなか整理できていないことが多く見
になってしまった。
受けられた。そのために戦術的な判断がで
毎日のトレーニングに織り込んだ三角パ
しかけのセッションでは、ゴール前の
ス・W三角パスも、日ごとに課題を克服し
状況でいかに相手ディフェンスの変化を
ていく選手を観て、改めて日ごろからベー
観ながらプレーを選択できるかをトレー
しかし、毎回のトレーニングで取り組ん
シックな「観る」トレーニングを行ってい
ニングした。2対1〜3対2という数的優位
できた、三角パス、W三角パスの成果が、
く必要性を感じた(図1参照)
。
の状況下で、的確なプレーの選択を、ボ
ボールの移動中に観るということについて
ール保持者とサポートする選手の両面か
少しずつ出て来たように感じた。
きずに、行き当たりばったりのプレーをす
コンタクトスキルのセッションでは、ボ
ら考えさせた。また、ゴールキーパーを
意図的にゴールマウスからはずようなし
というベースに対して各地域、チームに戻
ランスを崩さないように上手に相手とコン
かけも、ボール保持者のゴールへの意識
ってからもますます取り組み、プレッシャ
タクトしながらプレーしていくことを求め
付けのために行った。
ー下でも素速く、正しく、かつ柔軟に変化
三角パス(図1参照)でトレーニングし
に対応できる判断ができるよう、毎日のト
扱っていてバランスを崩す(片方の足で立
たタイミング、パスの精度、コミュニケー
レーニングでこだわって取り組んでいって
っているため)選手を多く見かけた。しか
ションなどのキーファクターもこのトレー
もらいたい。
図2
〜2対1+GK
2003NTC U-14トレーニング紹介
〜2対2ラインゲ−ム
図5
4
2003NTC U-14トレーニング紹介
すべてのセッションの根底にある「観る」
たが、コンタクトされる瞬間にもボールを
2003NTC U-14トレーニング紹介
図4
る選手が目立った(図5参照)
。
ール、相手、スペース、味方を観ながらバ
〜三角パス
〜3対3(+GK)
のシンプルなトレーニングの中でファース
れていないが、指導する側からはすべての
図1
2003NTC U-14トレーニング紹介
2003NTC U-14トレーニング紹介
〜6対6+2フリーマン
5
レクチャー・ミーティングについて
変更点について
期間中いくつかのレクチャーと毎日のミ
白鳥中学校)より「2003JFAエリートプロ
1989年生まれと1990年生まれの選手を
同じであったように大きな発見、急激に伸
フ・ザ・ピッチでも、選手の自立を促す、
ーティングを行った。須藤茂光ナショナル
グラム報告」について、筆者より「AFC
集めてのトレセンであったが、今回はグ
びる選手、特徴のある選手が今後、多く出
自己責任を持たせるといった観点から、時
トレセンチーフコーチより「フェアプレー」
U-14Festival報告」についてレクチャーが
ルーピングを各年齢別にした。この年代
てくることを確信している。
間、トレーニングピッチ、食事時間、食事
について、アディダス社より「正しい用具
行われた(本誌24ページ参照)
。
は身体面、精神面において1歳の差が大き
ピッチサイズもこの年代に合わせてサイ
場所など各自で確認すればすむことに関し
の選び方」について、大塚製薬社から「ス
また、毎日のトレーニングについてグル
いため、年齢別でグルーピングした方が
ズを縦85m×横60mに縮小して行った。こ
ては、あえてスタッフからインフォメーシ
ポーツ選手の栄養」について、島田信幸
ープごとにミーティングとストレッチング
今回のトレーニングの狙いであるレベル
の試みは初めてであったが、先に行われた
ョンせずに自ら確認するようにした。
JFAエリートプログラムコーチ(鈴鹿市立
を行った。
に合わせての指導がしやすいであろうと
AFC U-14Festivalでもサイズこそ違うが試
の判断で行った。この点については、各
みられていたことである。狙いとしては、
は心配をよそに思ったより、自分たちで
グループとも上手くレベリングされてい
スペースを狭くすることにより、早い判断
時間を工夫したり確認したりして行動で
て指導しやすかった。
に働きかけることである。狙いどおり判断
きていた。
© AGC/JFA news
指導スタッフについて
1つのグループがJFAナショナルトレセ
ンコーチ、地域指導者3名(コーチ、GKコ
初の試みで混乱が予想されたが、実際
今まで1コースで開催されていたナショ
の遅い選手(オフの準備が悪い選手)は、
スケジュールの面でも、今までのトレ
ナルトレセンU-14を2コースに分けて行っ
ミスが多くなり課題が浮き彫りになった。
センとの大きな変更点はないが、ナショ
るために各グループで充実したトレーニン
てから今回のナショナルトレセンの内容を
た。この狙いは、参加選手を増やして従
このピッチサイズ変更の取り組みは、各地
ナルトレセンU-16同様に3日目午後のトレ
グを展開していた。
伝達する時のためにも非常に有意義な研修
来の選手に加えてより特徴のある選手、
域でもすぐに取り組めるものの一つとし
ーニングを完全休養に充てた。これは、
になったことと思う。
ーチ、生活担当)、で構成されるチームと
トレーニングのイニシアティブは、JFA
漏れていた可能性のある選手を発掘する
て、是非、参考にしていってもらいたい。
選手の疲労、けがの予防、4日目のゲーム
いう認識で臨んだ。各グループとも指導ス
ナショナルトレセンコーチがとったが、地
今後も地域指導者、JFAナショナルトレ
ためである(参加人数は、レベルの高い
オフ・ザ・ピッチでは、「選手に与えす
に良いコンディションで臨ませることを
タッフのトレーニング前の入念な打ち合わ
域から参加した指導者には前日のシミュレ
センコーチ、JFAそして選手とともに内容
地域から多くの選手を選出し約2倍の人数
ぎない」ことにトライした。従来、すべて
目的としたものである。選手は、リフレ
せから役割分担までを行い、選手の指導に
ーションに参加してもらい、トレーニング
の充実したナショナルトレセンを持てるよ
を参加させた)
。
の段取りを大人が行っていたが、これもあ
ッシュした時間を過ごしたようである。
あたった。また、各グループともプロセス
の細部にわたる内容に理解を深めてもらっ
うに努力していきたい。
この点については、枠が広がるとレベル
る部分、選手の判断する機会を奪っている
また、この時間を利用して地域の指導者
はそれぞれの色があったが、目的を達成す
た。地域指導者は、それぞれの地域に帰っ
が下がることが懸念されたが、逆に少しず
のではないかという反省点から試みた。オ
とJFAスタッフとの懇親をより一層深める
つ特徴のある選手が発掘されてきているよ
ン・ザ・ピッチでもトライし、自ら考え、
目的で親善ゲームを行い、楽しい時間を
うである。ナショナルトレセンU-16でも
問題を解決していける選手の育成を、オ
過ごすことができた。
選手選考について
まとめ
参加した選手の選考に関しては、JFAか
のようにナショナルトレセンに来てからけ
ンスが高ければ選考する、ヘディングの競
ら各地域に対して選考試合形式での選手選
がのために活動できない選手を選考しない
り合いに力を発揮するが、足元のプレーに
考ではなく、日頃のトレセン活動の中から
ですむであろうからこの点については、是
課題が残るなどの選手も可能性があれば是
選手の可能性を含めて選考するように要望
非、今後各地域で改善していってもらいた
非、選考の対象に考えていってもらいたい。
た点については、特に大きな問題、混乱
している。
い。
将来の可能性を見据えて特徴のある選手の
は起きなかった。逆にピッチサイズ、シ
発掘にも今後とも力を注いでいきたいと考
ンプルなオーガナイズ、選手枠の拡大、
えている。
オフ・ザ・ピッチでの取り組み、年齢別
しかし、実際は選考された選手の中にけ
また、この年代で完璧な選手、人間はい
がを抱えていた選手も含まれていた。継続
ないであろうから、多少やんちゃで手を焼
したトレセン活動からの選考であれば、こ
く選手でもオン・ザ・ピッチのパフォーマ
今回のトレセンにおいて新たに変更し
グルーピングなど、どれをとっても今後
も継続して取り組んでいかなければなら
ないことと確信できた。
今後も「Players First」でナショナルト
トレセンまでの準備
レセンをより充実させていくために、さ
まざまなアイディアへの取り組みや改革
今回のナショナルトレセンテーマ、スケ
このような流れから各グループでのトレ
ジュール、トレーニングメニューを創りあ
ーニングは、トレーニングメニューこそ同
げていく過程でワーキンググループでディ
じものを行うが、指導に関しては、各グル
スカッションを重ねていく中で確認したこ
ープ内で担当のコーチが、選手のレベルに
とは、 教え込む
のではなく、選手にで
合わせてコントロールしていくことにトラ
きるだけ考えさせて、感じさせて、対応さ
イした。つまり、求めているスキルがまだ
せていくことであった。結局は、選手が創
身についていない場合は、次のステップに
造的にプレーするためには「選手の感性」
進まないことを確認した。
をディスカッションを重ねながらより良
い方向へ進めていきたいと考えている。
が一番大切だからである。
© AGC/JFA news
© AGC/JFA news
2003ナショナルトレセンU-14・トレーニングシミュレーションより
6
7
GK TRAINING
ゴールキーパー・トレーニング
佐々木理(GKプロジェクト/柏レイソル)
全般的な評価
GKのテーマ
© AGC/JFA news
Aggressive Goalkeeping
01
積極的かつ攻撃的なゴールキーピング、リーダーシップ
まず、選手全体のレベルが間違いなく向
選手が見られた。また、落下地点の予測の
いては、まずポゼッションやビルドアップ
上しており、特にU-14に関しては個々の
問題で、落下地点に対して最短のコースで
へ参加する意識をもっと持つことが必要で
レベル差はあるとして、各選手がある程度
アプローチできない選手が見られた。この
あり、それに伴って、どこにサポートし
のレベルを身につけていた。このことは、
ことは、多少は年代の問題もあり、トレー
(ポジショニング)
、どこにもらうのか(コ
所属チームや地域トレセンにおける日頃の
ニングで改善していけると考えている。実
ミュニケーション)をGKが観て判断し、
指導の成果であるだろう。
際のゲームの中では、状況に応じたポジシ
意図をもってプレーできるようにしていく
と
ョニングという面で、今後、微修正できる
必要性を強く感じた。ポゼッションの場合、
いうことも感じられ、GKのトレーニング
ようにトレーニングを積んでいく必要があ
DFと重なる場合も度々見られ、GK、DF
ではできるが、フィールドプレーヤーとの
るだろう。
ともにGKを含めてポゼッションするとい
しかし、多少、 トレーニング慣れ
Good Position
02
GKの姿勢(いつでもどこへでも動ける体勢とそのタイミング)
状況に応じたポジショニング
トレーニングでは発揮できないということ
も見られた。
DF Communication & Combination
03
以下に各トレーニングでの主な現象を挙
味方選手にどうして欲しいのかを伝える
特に決断と声(自分がプレー or 味方がプレー)
げていく。
シュートストップでは、GKの姿勢の問
題が多く、構える意識はあるが、動きやす
これらのテーマを行うために、
「観る(状況把握・予測)
」ということがベースとなる
GKのトレーニングについて
トレセンを通じて、テーマを掲げ、目指
・GKの基本要素(GKの構え、GKの基
すべきGK像を選手に意識させた上でトレ
本技術、ポジショニング、etc.)を徹底
ーニングに取り組んだ。トレーニングの目
する
標(目的)は、U-14という年代であると
いうことから、以下のように設定した。
加えて、手でボールを保持した場合も含
きれない場合が見られた。まず、出る、出
め、どこにフィードしていくのかの判断が
ないの決断を徹底させることが重要であ
悪く、ゲームの流れを切るケースが多く見
り、ヘディングシュートに対してのポジシ
られた。フィードの際の優先順位を理解す
ョニングを理解し、実践できるようにして
ること、そして、状況をよく観ることを日
いく必要がある。
頃から習慣化させていくことが重要である。
い構えではないという選手が多く見られ
状況把握ということについては、各選手
ゲームでは、ブレイクアウェイやクロス
た。具体的には、構えに関してスタンスが
がある程度の意識はもっていたが、タッチ
の状況下で積極的にやろうとする選手が多
広かったり、どちらかの足に体重が乗って
ライン際でドリブルされたときにゴール前
く見られた。このことは、各選手がGKのテ
しまう選手、手の甲をボールに向けていた
を観ることのできる選手が少なかった。
ーマを意識して取り組んでいた成果である
り、脚の付け根に手を置く選手が見られた。
U-13については、空間認知(落下地点
と思われる。その中で、より正確に状況を
いつでもどこへでも動ける姿勢(開始姿勢)
の予測)についての問題があったが、年代
把握することができれば、予測、そしてポ
ということを選手たちに理解させ、身につ
の問題であると言えるので、今後、トレー
ジショニングなどの準備が良くなり、プレ
けさせていくことが重要であろう。
ニングを継続して改善を図っていくことが
ーの判断も向上してくるものと思われる。
ブレイクアウェイでは、まず技術面につ
重要であろう。
その他の課題としては、指示の内容がア
いて、シューター(ボール)が近距離のと
フィールドプレーについて、まず、パス
ローリングダウン、etc.)、ポジショニン
き、いつでもどこへでも動ける姿勢(開始
やボールコントロールといった技術面はそ
して、簡潔、かつ明確な指示を出せるよう、
グといったGKの基本要素を、ブレイクア
姿勢)をとれない選手、アプローチの後の
れほど質が高くないと言え、また、ボール
ゲームの中で徐々に修正していく必要があ
ウェイでは、GKの基本要素に加え、フロ
構えるタイミングが遅れる選手が見られ
の移動中に観るということを習慣にしてい
るだろう。
これらの目標に関し
ントダイビングの技術、1対1の対応、ブ
た。ブレイクアウェイのトレーニングを行
く必要がある。ゲームの中での関わりにつ
ては、一貫指導計画に
レイクアウェイの状況下でのポジショニン
ったことにより、その状況下での積極的な
リスク・マネージメント(危機管理)の
おけるこの年代の目標
グなどを、クロスではジャンピングの技術、
プレーは多く見られるようになったが、実
指示を出せる選手は少なかった。また、
であり、かつ普遍的な
クロスの状況下での対応(ポジショニング、
際のゲームでは、我慢できずに先に倒れて
ボールが自分のゴールに近づいてくる
ものであるため、今回
etc.)などをポイントにしてトレーニング
しまう選手、足で飛び込んでしまう選手、
と、指示が少なくなる選手が見られた。
のトレーニング内容も
を行っていった。また、「フィールドプレ
スタートポジションがゴールに近い選手な
このことは、その状況下で観れていない
ここ数年のナショナル
ー」のトレーニングは、2日目午後のトレ
どが見られた。
ということに通じると言える。テーマに
トレセンU-14で行って
ーニングのウォーミングアップ(各ピッチ)
きたGKトレーニングの
で行った。
できるようにしていく
内容と大きく変わった
ものはない。
8
シュートストップでは、GKの構え、GK
う意識を向上させていく必要がある。
については、ヘディングシュートに対応し
の基本技術(キャッチング、ステッピング、
・それらの基本要素を試合の状況下で発揮
© AGC/JFA news
った試合の状況を設定したものである。
また、クロスに対して出ない場合の対応
また、指示に関しては、まだまだ内容
バウトな選手が多かった。その状況に対応
具体的な状況としては、特に攻撃時の
も挙げたが、観ること(状況把握)が判
(質、量)が不十分であると言え、特に、
断のベースとなるのでゲームの中で「い
トレーニングテーマはU-14、U-13とも
ファーストディフェンダーに対しての指示
つ、どこを、何を観るのか」を選手に理
に同じであったが、段階的指導ということ
(1対1+GKの状況下、etc.)について課題
解させ、習慣化させていく必要性を強く
3回のトレーニングセ
を目的にトレーニング内容に若干の変化を
ッションのトレーニン
つけた。U-14では、基本要素を試合の状
クロスについては、U-14では全体的な
また、ゲームのさまざまな状況におい
グテーマは、
「シュート
況下で発揮できることを最大の目標とした
レベルアップが見られた。全般的な課題と
て、GK自身に対してどのような役割があ
ストップ」
「ブレイクア
が、U-13ではその基本要素(基本技術、
して、技術面の課題としては、ボールをと
ウェイ」
「クロス」とい
etc.)の習得を最大の目標とした。
らえる位置(頭の斜め上方)が安定しない
が見られた。
感じた。
るのかを理解させていくことも不可欠で
© AGC/JFA news
あろう。
9
インタビュー
日本代表チーム、
ジーコ監督
○聞き手 布啓一郎(U-16日本代表監督)
○取材日 2004年3月9日
Interview with
ZICO
© Jリーグフォト
(株)
2006FIFAワールドカップ・ドイツ/アジア地区第一次予選 vsシンガポール代表より
−−−いよいよ、FIFAワールドカップ・
ヨーロッパで活動している選手がキャンプ
ドイツ大会予選の年になりました。アジ
に参加できなかったことが、連携面の確認
ア予選に向けての準備を中心にうかがい
では難しい面がありました。ただし、ディ
−−−トレーニングでもシュートトレー
ます。まず、1月26日からの始動キャンプ
フェンスラインに関しては同じメンバーで
ニングを多く行っていますが、得点を確
についての目的は、どのようなものでし
行えたので、守備ラインの連携はしっかり
実に奪うためにはどうするべきか、ジー
たか?
行うことができました。
コ監督はどのようにお考えですか?
とに関しての課題がありました。
」
難しいことは分かっていますが、2週間
「今回の始動については、国内のリーグに
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(株)
2006FIFAワールドカップ・ドイツ/アジア地区第一次予選 vsシンガポール代表より
日本代表チーム、
1年半にわたる
ドイツに向けた
戦いがはじまる
2004年 日本代表チーム活動スケジュール
2月 (3日〜12日)
7日
12日
(13日〜18日)
10
は予選を闘うメンバーでキャンプを行いた
かったです。
」
18日
3月 (23日〜28日)
トレーニング・キャンプ 【鹿嶋市ほか】
vs マレーシア代表
vsイラク代表
4:0(3:0)
2:0(0:0)
トレーニング・キャンプ 【さいたま市ほか】
vs オマーン代表
1:0(0:0)
トレーニング・キャンプ 【成田市】
28日
移動(シンガポールへ)
31日
vs シンガポール代表
2:1(1:0)
※下線部が、2006FIFAワールドカップ・ドイツ/アジア地区第一次予選
「シュートに関しては、ボールをゴールに
置きにいくことが大切です。ゴールキーパ
ーの守れないところに正確にキックしてい
ニングとなったため、普通なら各クラブで
行うことである身体づくりから始めること
−−−トレーニングゲームを2ゲーム組み
くためには、フォームをしっかりすること
になったのが、通常と異なる始動となりま
ましたが、これらの2ゲームについての狙
が必要になります。そのためには、ヘディ
した。
いを聞かせてください。
ングも含めて繰り返してトレーニングして
いくことが大切です。代表チームでトレー
しかし、選手たちはオフの期間も各自が
1月 (26日〜2月1日) トレーニング・キャンプ 【宮崎市】
2月18日からスタートした、2006FIFAワールドカップ・ドイ
ツ大会/アジア地区第一次予選。1月、日本代表は第1戦目オマー
ン戦に向けて、国内で活動する選手たちを招集して始動した。
この始動から第1戦目を迎えるまでの準備期間の活動について、
JFAナショナルコーチングスタッフである布啓一郎氏と加藤好男
氏が、ジーコ監督とカンタレリGKコーチにインタビューを試みた。
所属する選手全員がオフ明けからのトレー
自覚を持って過ごしており、キャンプでの
「まず、1ゲーム目のマレーシア戦は、ゲ
ニングをしても、それは一時期でしかあり
トレーニング内容も含め、大変満足できる
ーム感覚を取り戻すことに重点を置いて行
ません。自分が必要だと思ったら、継続し
結果になりました。実際、トレーニングマ
いました。その面で、力量的にはそれほど
て行っていくべきです。自分自身が現役だ
ッチとFIFAワールドカップ予選第1戦のオ
力があるチームではなく、少し格下となる
ったときも、良いと思ったことは自信を持
マーン戦(2月18日)においても、けがも
チームを選んでゲームを行いました。第2
って行ってきました。
なく、またフィジカル的に劣ることは全く
戦は、オマーン戦のシミュレーションを考
そして、それはゲームのためのトレー
ありませんでした。オフの過ごし方に対し
えて、オマーンと同等の力と考えられるイ
ニングでなくてはなりません。1日に必要
ての選手の自覚と、キャンプにおけるフィ
ラクとの試合を行いました。
以上の時間を使って行う必要はなく、繰
ジカル的な達成度には大変満足しています
(詳細は26ページ参照)
。
」
マレーシア戦は、ゲーム感覚を取り戻す
目的はしっかりと達成することができまし
り返して行っていくことが重要だと考え
ています。
た。イラク戦はオマーン戦を想定して行っ
FIFAワールドカップ予選のオマーン戦
−−−この間、ボールトレーニングが多
たわけですが、イラクは個の力があり、チ
でのロスタイムで久保(横浜FM)が決め
くはできませんでしたが、そのことに対
ームとしても非常にしっかりしたチームで
たように、あの状況の中で冷静にやるべき
してチームの連携面から見てどうでした
した。日本代表は前半コンビネーションが
プレーを判断して確実に得点するために、
か?
かみ合わないところが出ましたが、後半は
毎日の繰り返しが必要になります。
」
徐々に修正ができてきて、闘い方が安定し
「身体づくりから行ったこともありますが、
てきました。しかし、確実に得点を奪うこ
−−−いよいよ予選が始まりました。第1
11
一の収穫と考えます。どのような大会でも、
に合わせて計画を立てることができます。
そのため、GKトレーニングにゴムチュ
ちます。私はもっと両手を使ってプレー
初戦は難しい闘いになります。そして、本
日本はそのあたりも難しさがあり、トレー
ーブを使用して、ボールをつかみに行くト
をすることを推奨しています。片手での
大会よりも予選のほうが、お互いを知って
ニングのために時間をとることができない
レーニングを行いました。今回は1本のゴ
プレーは不安定であるし、パワーあるシ
いるので難しいものです。アジアの他グル
ことが連携面での難しさになっています。
ムチューブを使用したトレーニングでした
ュートへの対応では負けてしまうことに
ープの予選でも、明らかに力量差がある対
しかし、初戦を終えて確実に勝ち点をと
が、本来であれば2本のゴムチューブを使
もなります。
戦以外は、点差は多くはついていません。
ることができたことで、選手たちは緊張感
って、両方向へ負荷がかかるトレーニング
まして、前回のFIFAワールドカップは自
もほぐれ、これからチームとしてもどんど
を行いたかったのです。
」
国開催のため、選手たちは予選の経験がな
ん良くなってくると思われます。日本の選
かったことを考えると、勝ち点3がとれた
手は能力が高く、協力していくことができ
ことは、多くのプラスをもたらしました。
るので、これからのゲームはもっと良いゲ
例えば、このゲームで勝ったことで、相
ゴムチューブを使ったトレーニングやメ
ディシンボールを使ったトレーニングで
も、私はこのことを強調しました。
」
−−−実際の方法を教えてください。
−−−今後、予選はアウェーへと続いて
「ゴールポストの下方向でゴムチューブを
ームができると思っています。
」
結び、GKの腰付近とつないで、ポスト逆
手は次のゲームでは勝ちに来なくてはなら
いきますが、今後のGKトレーニングにつ
いてお聞かせください。
なくなり、前に出て来なくてはならなくな
−−−ありがとうございました。日本中
方向へのボールをダイビングキャッチする
ったことも一つと考えられます。課題とし
のサポーターが、ジーコ監督が日本を
と、横方向と上方向に対して負荷がかかり
「まずは、日本代表のGKのプレーパフォー
ては、日本は個の力は確実に伸びているも
FIFAワールドカップ本大会に出場させて
ます。同様に、バー付近へつなげれば、左
マンスを視察して調査すること。その中で
のの、ヨーロッパ組をキャンプに招集する
くれることを信じています。これからの
右および下方向に対して負荷がかかること
長所、短所を再確認しながらトレーニング
戦は厳しいゲームになりましたが、オマ
ことが困難なので、連携面での難しさがあ
予選も厳しいゲームが続くと思われます
になります。こうしたトレーニングをボー
を考えていきます。この予選に向けて、私
ーン戦についての収穫と課題をお願いし
る、という点です。ブラジルでも同じよう
が、是非、アジアを突破して本大会へと
ルを使って実際の動きの中で行い、そのチ
と日本代表のGKたちはともにトレーニン
ます。
な課題はありますが、ブラジルの場合はほ
駒を進めてください。
ューブを取り外すと力強さと速さが得られ
グを積んできました。その中で、私のトレ
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2006FIFAワールドカップ・ドイツ/アジア地区第一次予選 vs
オマーン代表より
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2004年3月、日本代表トレーニングキャンプより
る。本来であれば、足首に1〜2kg程度の
ーニングに慣れてきたことで、今後さらに
ョンはまちまちで、里内フィジカルコーチ
重りをつけて行うと、さらに効果がありま
スムーズに流れていき、パフォーマンス向
の下、フィールドプレーヤーと同様のトレ
す。
」
上へと結びつくでしょう。厳しい試合が続
とんどの代表選手たちがヨーロッパをベー
「勝ち点3をとることができたことが、第
スに活動しているので、ヨーロッパの状況
くと思いますが、今後ともチームと同様、
ーニングを行って、シーズン期の体力回復
2006FIFAワールドカップ・ドイツ/アジア地区第一次予選 vsシンガポール代表より
また、GKトレーニングにおいても、3人
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インタビュー
日本代表チーム、
カンタレリ・GKコーチ
が三者三様、体格、フィジカル的要素、プ
ルのコンディション、パフォーマンスへ整
えていくことを最大の課題としました。
その中でもっとも苦労したのは、限られ
Interview with
CANTARELE
12
どうもありがとうございました。
い。サイズ(体格)も向上してきているし、
今後ますます良くなるでしょう。
しかし、あくまでも私見ですが、下半身
個別の欠点克服をテーマとするトレーニン
の力強さ、ジャンプ力やパワーなどはまだ
グを組み込めるかどうかです。これが非常
まだ改善の余地があります。ブラジルでは
に難しかったです。2週間といった合宿は
砂地のトレーニングが大変多く、若年層か
長いようで短い。体力回復、強化から試合
ら行われています。
ので、単純に追い込むだけではダメです。
」
−−−予選突破に向けて、私たち日本人
指導者ともども頑張りましょう。今日は
「ここ最近の日本のGKの成長は大変著し
今回のキャンプでは、メディシンボール
を持たせて8分間走り、フリーランニング
で8分間走るなどの種目を行いました。ま
−−−合宿の中でゴムチューブを使った
た、メディシンボールを使ったキャッチン
トレーニングを行っていました。目的、
グトレーニングも行いました。
」
方法、効果についてお聞きしたいのです
が。
−−−フィジカル面以外に関してはどう
でしょうか?
「私は以前より、日本のGKがパワー不足で
「宮崎合宿に際して、昨年より選手の試合
あると感じています。これはもちろんGK
視察を繰り返し、選考選手の長所、短所を
に限ったものではなく、フィールドプレー
ングやディフレクティングが不安定です。
−−−早速ですが、アジア予選の準備に
私なりに分析してきました。ゴールキーパ
ヤーも同様であると思います。主に、下半
自分の両サイドへ飛んでくるボールに対
ついておうかがいします。
ー(GK)選手たちの集合時のコンディシ
身の強化が必須であると感じていました。
して、すぐ片手でプレーをするGKが目立
厳しくも難しい試合でした。
」
予選開幕戦勝利おめでとうございます。
「どうもありがとうございます。たいへん
か?
たGKトレーニングの中で、個々に対する
へ向けた調整までも考えなければならない
良くなっていきたいと思っています。
」
GKと比べてフィジカル面で劣っています
レーの特徴が異なる中で、3人を同じレベ
○聞き手 加藤好男(JFAナショナルコーチングスタッフ)
○取材日 2004年3月9日
−−−2006FIFAワールドカップ・アジア
および強化を図りました。
−−−日本のGKは、南米、ブラジルの
「ダイビングの時の両手を使ったキャッチ
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2004年3月、日本代表トレーニングキャンプより
13
U-19日本代表
AFC U-20サッカー選手権
から2005年FIFAワールド
ユース選手権に向けて
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1985年1月1日以降生まれの選手たちで編成されるU-19日本代表。
このチームは6大会連続のFIFAワールドユース選手権出場(オランダ)を目指し、昨年4月より活動を
開始、10月にはそのアジア地区予選となる「AFC U-20サッカー選手権」の1次予選を圧倒的な力で勝
ち抜き、本大会(9月24日〜10月8日/マレーシア)に向けた強化に取り組んでいる。
大熊清(U-19日本代表監督)
このチームの当面の目標は、マレーシア
際試合で闘うものを築き上げていかなけれ
っていく(サイドチェンジなどの判断も大
で開催されるAFC U-20サッカー選手権に
ばならない。国際試合では、ピッチ内外で
切)プレーを要求していきたい。
おいて、2005年FIFAワールドユース選手
のいろいろな状況を克服できる心・技・体
そして、第四に選手のストロングポイン
権オランダ大会への出場権を獲得すること
が必要であり、今のままでは国際試合に常
ト(長所または特徴)を見極めて伸ばし、
である(上位4チームに出場権)
。さらに、
勝する力を備えている状況ではない。
ウィークポイント(短所など)は少しでも
この年代は2008年北京オリンピックの中
心になる可能性の高い選手たちであり、今
後、多くの厳しい国際試合での経験を積ん
チーム強化、選手育成の5つの
ポイント
14
思っている。例えば「ヘディングに特徴あ
るが、フィジカルが弱い選手」に対しては、
ヘディングのさらなる強化、そしてフィジ
これからさらに向上させたいことは、
カルに対しても測定すること、個別のメニ
第一に国際試合でのサッカーは『ボール
ューを与えることで、本人の意識も含めて
は奪いに行くものだ』ということ、そし
向上させなければならないと考えている。
てそれをピッチで表現させることである。
各選手の素質・特徴そしてメンタルなども
国際試合では相手のミスを待っていたら、
違うが、その個性を大切しながら、さらに
攻撃につながるようなボールの奪い方は
個を強化するためには、我々指導者が個別
できない。これが、個人そしてチームに
性の指導というものをもっと大切にするこ
浸透しなければ、今日、世界の攻撃で重
とが必要だと感じている。
要視されている「ダイレクトプレー」に
第五には『指示の声』を大切なスキルと
つながるようなボール奪取はできないと
して選手に習得させていきたい。現段階で
いっても過言ではない(日本の育成年代
は満足に到っていないが、辛抱強く言い続
【目 的】
○2005年FIFAワールドユース選手権オランダ大会・アジア予選
(AFC U-20サッカー選手権マレーシア)に向けてのチーム強化
○新たな選手発掘・強化
○チームコンセプトの徹底
○戦える選手の育成
○積極的にボールを奪う・攻守の切り替えの速いサッカーの確立
○選手のポジションの適性把握
○声(指示の声)の徹底
【総 括】
今回、日程上の問題などで参加できなかったメンバーはいたが、
選手層を厚くするという側面、アウェーの厳しい環境で試合をで
きたことでは非常に価値ある遠征であった。
しかし、今までとFWのメンバーが変わったことで、チームと
してボールはキープできるが、前線の起点やゴール前の迫力が極
端に少なくなったことは今後の課題であると感じた。今後、さら
に多くの選手に厳しい経験を積ませることの大切さを痛感させら
れた遠征であった。
また、この遠征は相手チームを知るという意味でも良い機会に
なった。中国・韓国もアテネオリンピック予選などで数人欠けて
いるようであったが、選手自身が肌で各国のサッカーを感じ取っ
たことは今後に非常に大きいと感じた。中国はこの年代は北京オ
リンピックの中心になる可能性が高い選手たちで、80人近くリス
トアップをしてあるということであり、チームとしても、選手
個々もかなり力があり、怖い存在になると感じた。さらに、この
チームを北京オリンピックまでに長い期間、ヨーロッパに遠征さ
せることも考えているとのことであった。
戦術については、全体の守備の意識は浸透してきたが、インタ
ーセプトも少ないし、攻撃への切り替えがまだ遅い。また、足元
でボールを受ける選手がまだまだ多く、もっともっとポジション
に関係なく、ボールも選手もゴールに向うプレーの徹底を図って
いきたい。そして、指示の声も含め選手同士での要求も高める必
要があると感じた。
【成 果】
○新たな選手のポテンシャルを把握でき、強化を図ることができ
た(海外遠征が初めての選手が数人いた)
○厳しさが出てきて、個々が闘える選手になってきた
○アウェーの厳しい環境で集中した試合ができた(中国戦は1万
人以上の観客が入った)
○全員の守備の意識は高まってきた
○クロスの対応は良かった
では、まだまだお互いのミスでマイボー
けていかなければならない。
【課 題】
○存在感あるFWの不足
○ゲーム体力(ボール際の粘り・後半に運動量が低下)
○ボールを奪う力がない
○守備から攻撃への切り替え(サポートの速さ・角度など)
○ボール保持者を越える動きや、裏に出る動きが少ない
○ボールは回るが攻撃が遅いし、ゴールへの意識が薄い(中盤の
選手がゴール前に行く場面が少ない)
2008 Stars International Youth Tournament
2004年2月19日〜23日/中国・武漢市など
R
中国
韓国
U-19中国代表
4
U-19韓国代表
1
-
3
これらのベースを大切に、プレッシャ
2
U-19日本代表
0
-
0
0
- 1
第二に『良いボールの奪い方』をするた
ーの中で通用する基本技術(キック・コ
3
U-19湖北省選抜
1
-
2
1
-
めにも、全選手に攻守の意識・切り替えを
ントロール・ヘディング・スライディン
浸透させ、そして『登録のポジションでは
グ・判断・ポジションなど)をチャレン
なく3ゾーンでやるべきプレー』を強く要
ジさせながら向上を図り、勝利と育成と
求していきたいと考えている。
いう目標に立ち向かっていきたい。そし
第三に個々のボールキープ力を向上させ
て、国際試合で必要な『厳しさ』もチー
ることが、チームとして攻守に安定した試
ムに浸透させ、『戦えるチーム』を育てて
合をするためには必要である。そして、良
いきたいと考えている。
い判断をもとにボール・人がゴールに向か
3
-
日本
1
ルになることが多い)
。
© Jリーグフォト
(株)
2004年2月15日〜24日
向上させるよう選手とともに努力したいと
でいくことが非常に重要になってくる。
これらを踏まえ、個人・チームとして国
報告①:中国遠征
2008年北京オリンピックに参加する年代を対象にした大会
1
0
湖北
勝点
得点
失点
差
0
-
0
2
-
1
7
5
2
3
1
-
0
0
-
1
3
2
4
-2
1
-
0
4
1
1
0
0
-
1
3
2
3
-1
1
Report
15
珠玉のひとこと
その
2
ロビン・ラッセル(イングランドサッカー協会・テクニカルコーディネーター)
報告②:U-19韓国代表戦
2004年3月23日/国立競技場
この年代での韓国との対戦は3試合目であったが(過去、1分1
敗)、韓国は第1戦目以降監督が交代し、戦術・選手もかなり変わ
ってきた印象を受けた。
韓国の戦術に関しては、アウェーということもあったのか、守
備は考えていたより前線からボールを奪いに来なかった。しかし、
中盤での守備・ディフェンスラインの高さ・厳しさはあったし、
奪った後のFWの⑩朴主永を中心としたカウンターの威力があっ
た。また、韓国伝統のロングボールを多用し前線の⑩朴主永のキ
ープ力を生かした攻撃が特徴であった。中盤の構成力は際立って
良いという感じは受けなかったが、守備についてはがんばる選手
が多いように感じた。さらに、平均身長で4cmも日本を上回る
高さを生かした攻撃も多く、センターバックも高さがあり、日本
がそれらの高さに対して、攻守の局面で後手を踏む場面が目に付
いた。
この試合で選手に求めたことは、まずは国際試合に大切な闘う
気持ちであり、それを具体的にピッチで表現するよう求めた。そ
して、ゴール前の入り方での工夫、サイドチェンジの判断、単純
なミスをしないことなど、「判断の早さと冷静さ」も必要だという
ことを伝えた。
具体的な指示では、試合の入り方については5分〜10分はやや
長いボールを多用し、前線からプレスをかけて行くこと、単純な
ミスに気をつけることなどを指示したが、失点は後半10分であり、
チームとして再度、徹底が必要だと感じた。
守備については、積極的にボールを奪い、そしてダイレクトプ
レーにつなげることを指示した。チームとしてボールを積極的に
奪いにいく意識は高くなったが、まだまだ厳しさが足りず、チー
ムとして良いボールの奪い方も少なく、攻撃になったときのスピ
ード・迫力に欠け、人を越えていくような動きが少なかった。ま
た、攻撃にかかったときにバックパス・横パスが多く、自分でボ
ールを運ぶ・パスする・崩す・ゴールに向かうという意識が少な
かった。
例えば、ボールを奪った後の攻撃参加の判断・意識・速さなど
も欠けていたし、自分で出すべきパスを味方に預ける場面も目に
付いた。これらのことについては、緊張やミスを恐れていたこと
が原因のように感じたが、今後、チーム向上のためにさらにアグ
レッシブに、そしてチャレンジさせていくことが大切だと痛切に
感じた。
攻撃については、ダイレクトプレーと同時にボールを早く効果
的に動かすことを求めたが、引いた相手に対して横パスが多く、
相手に守備を整える時間を与えていた。また、パスを出した後の
走る距離・角度・質にもまだまだ課題があると感じた。
リスタートでも後半、相手が疲労してきたときに、ショートコ
ーナーなど相手の隙をつけるような場面があったにもかかわらず、
いつも同じリズムで工夫がなかったことは、今後も追及しなけれ
ばならない大切なことだと考えている。
今後、チームとして追求すべきこととしては、中盤でサイドチ
ェンジはできていたが、そこからの攻撃のスピードアップとゴー
ル前の迫力・工夫を向上させることが必要であり、またポジショ
ンにかかわらず、リスクを負って攻撃することの必要性を感じた。
また、個人・チームとしてボールを奪う意識は向上してきたが、
さらに厳しさや連続性も鍛えていきたい。さらに、攻守にわたる
高さという側面も再考する必要性を感じた。
試合の中で自己主張が足りないため、ボールが回ってこなかっ
たり、攻撃が遅れたり、マークがずれたりという場面が多く、選
手個人の高いレベルでの経験・自立も必要不可欠であり、今後さ
らにレベルの高い厳しい環境・要求を与え、今まで以上にチーム
に逞しさと厳しさを加えていきたい。
「間違いを起こさない人間は、
それほど一生懸命に
取り組んでいないということだ」
Robin
Russell
「第2回フットボールカンファレンス」
(2001年1月)の講師とし
てサッカーの母国イングランドより招いた、イングランドサッカ
大変な苦労を強いられたことが想像されるが、現在のイングラ
セル氏がその講演の中で、上記のマーク・H・マコーマック氏
ンド代表チームのタレントたち、各クラブのユース育成制度の充
(世界的スポーツコンサルティング会社・IMGの創業者)の言葉
実、プレミアリーグの隆盛、それを取り巻くビジネスの大きさな
を引用した。
イングランドサッカーが低迷していた1970年代〜80年代を振り
返りながら、
「自分たちの中だけで答えを見つけようとせずに、他
イしていきたい」と、他者から学び、チャレンジすることの重要
えてしまう。
2002年FIFAワールドカップ終了後、川淵三郎が日本サッカー協
会会長(キャプテン)に就任した。就任以来「まず、やってみよ
う。失敗してもかまわない。はじめることで問題点も明確になる」
と、 チャレンジする ことを強く言いつづけている。2003年度の
人口が減りつづけ、1985年には最低数を記録した。
さまざまなユース育成改革に続き、2004年4月のJFA公認指導者登
選手数だけではなく、代表チームも1974年と1978年のFIFAワー
ない。2回つづけての予選敗退は、12年間世界大会から遠ざかるこ
16
かったら、今のイングランドサッカーはどうなっていたのかと考
ドカップ優勝後の1968年以降、イングランドにおける選手の登録
ルドカップはともに予選で敗退し、本大会への出場を果たしてい
2
どを考えたとき、逆にもしあのタイミングでチャレンジしていな
の人がどのようにしているかのをとり入れながら、一生懸命トラ
低迷の象徴は、サッカー選手の数に表れた。1966年FIFAワール
Report
サッカーの母国というプライドを脱ぎ捨てること、チャレンジ
する際のリスク、エネルギーの大きさ・・・。
ー協会(The FA)のテクニカルコーディネーター、ロビン・ラッ
性を語った。
U-19日本代表 0:1(0:0) U-19韓国代表
© JFA技術部
とを意味する。
「その反省を踏まえ、
『ゲームを取り締まる』という態度から、
『カ
スタマー(サッカーをする人々)サービスを重視した姿勢』に、
録制度スタートも、日本サッカー協会にとって大きなチャレンジ
である。
数年後、
「あのときにさまざまな改革に着手しなかったら、今の
日本サッカーはここまで発展してなかった・・・」と皆様に評価
していただけるよう、そして、日本全体のサッカーの向上につな
がるよう全力で取り組みたい。
つまり『トップダウン』から『ボトムからのサポート』に切り替
えたのです。1980年代半ば以降、ユース育成においてはフランス
サッカー連盟やノルウェーサッカー協会からも学び、グラスルー
ツにおいては、アメリカのNBA(全米バスケットボール協会)
指導者の皆様、間違いや失敗を恐れず何かにチャレンジしてい
ますか?
© Jリーグフォト
(株)
やNFL(全米フットボール連盟)なども参考に幅広い視点から
大きなチャレンジを試みました」と。
関口潔(JFA技術部)
17
10
世界のトップ
を
目指して!
1.J1・J2クラブ・ジュニアユースチームを都道府県トレセンと同等のものとみなす。
2.J1・J2クラブ・ジュニアユースチームからは、都道府県トレセンには地域トレセンに選考する活動だけに参加する。
ただし選手のモティベーションなどを考え、都道府県の実情にあわせ、定期的な交流を図る中で選手選考を行うのも良い。
3.交流の仕方については、都道府県で検討する。
世界のトップ10入り
4.日頃、良い環境に恵まれない選手を多く参加させ、刺激を与える。
© AGC/JFA news
5.早期の絞込みが「早期の排除」とならないように新たな発掘を行い、選手を見逃さないような活動とする。
6.1.についてはそのレベルにないチームは、都道府県スタッフ、クラブ、ナショナルトレセンコーチの話し合いで決定する。
トレセン改革、U-14世代の
活性化を目指して
須藤茂光(JFA技術委員会委員)
7.ナショナルトレセンには、地域のベストメンバーを選出すること。
これはJクラブを排除するといった考
そして選手発掘、育成、強化を図り、より
要であると考えています。今後とも皆様の
えでは決してありません。Jクラブには
充実したトレセン活動にしていくことが重
ご理解とご協力をお願いいたします。
の選手はいないというのも事実です。
個人のレベルを引き上げていったと報告さ
今まで通りのトレセンに対する協力をお
願いし、指導者間の交流を図るとともに、
革の枠組でトレセンに関わる改革も何点か
可能性を持った能力の高い選手がそれぞれ
トレセンを通して、その地域における選
U-14年代のトレセン
行い、年代分けをU-17(17歳以下)から
の部活だけで活動を行い、 お山の大将
手発掘につなげていってもらいたいと思
〜1人でも多くの選手に
チャンスを
U-16(16歳以下)に変更しました。公式
で自分だけの世界の中でプレーしていて、
っています。
戦がほとんどないU-16年代の選手に目標
それが進歩のための弊害になってしまうケ
『世界のトップ10』を目指して、
『トレ
となるものを提供し、多くの選手が7月で
ースもありました。その天井効果を排除す
センから世界へ』を合言葉にユース育成の
練習場所がなくなるU-15年代の選手に活
る目的でトレセン制度ができました。能力
中枢をこれからも担っていきたいと思いま
代表強化、ユース育成、指導者養成とい
動の場を提供することを狙いとしたもので
のあるレベルの高い同質の選手を定期的に
す。トレセンによる底辺の拡大、底上げ、
う3部門が情報を共有し密接な関係を保ち
す。これはユース年代の活動の過密化の緩
集め、良い環境を提供することで天井効果
ながら、日本のレベルアップを図るという
和にもつながっています。
の排除を狙いとしたものです。
三位一体の強化策の中で、ユース育成の中
また、Jヴィレッジで開催されていたナ
しかし、1993年以降、Jリーグ下部組
心的な役割を担っているトレセン制度がで
ショナルトレセンU-12を9地域開催にした
織の充実が図られるとともに、点在してい
きて25年が経ちました。
のも昨年度からです。ジュニア年代で極端
た可能性のある選手が、Jリーグ下部組織
に絞り込まれることのデメリットを解消
に集まり、まさしくそこでの活動はトレセ
都道府県はもとより、近年では市町村トレ
し、より多くの子供たちに良い環境を提供
センといった選手にとってより身近なトレ
することで広範囲からの選手発掘につなが
セン活動の充実が図られています。こうし
っていくことでしょう。そして、学年では
レセン活動が多くのJクラブの選手を中心
た地道な活動がようやく『日本代表世代』
なく1月1日生まれでカテゴリーを分ける
に反映されるようになって来ました。
ことで、種別を越えた指導者間の交流が行
われるようにもなってきました。
多くの指導者の情熱に支えられ、9地域、
25年の間にいろいろな改革も行ってき
エリートプログラム
しかし、理解していただきたいのは、エ
れています。所属チームにおける普段のト
リートプログラムで取り組んでいる、もっ
レーニングが大きな部分を占めることはも
とも重要なものは、オン・ザ・ピッチのサ
ちろんですが、明らかに彼らが世界を意識
ンと同じものであるといえるくらいにま
ッカーのプレーであるということです。是
し始めているとも聞いています。
で、近年充実してきました。その結果、ト
非、誤解のないようにお願いします。 良
そこで今年からエリートプログラムの内
トレセンが充実し育成システムの確立と
い子だけ を集めて取り組んでいるプログ
容を各都道府県トレセン活動の中で、とり
とした活動となり、中学校やミドルクラブ
ともに、「トップトップ選手」の育成が求
ラムでは決してありません。また、セカン
入れていっていただきたいと考えていま
の選手がほとんど参加できないといった姿
められています。 世界で通用する選手
ドキャリアを第一の目的としたプログラム
す。不安定なこの年代の子供たちと真摯に
になっています。また、逆にJクラブの中
を育成していくことが重要であるとして、
でもありません。あくまでも、サッカーを
向き合う姿勢が指導者にも求められていま
〜都道府県トレセンの充実
ました。対抗戦形式だったものを現在の研
各都道府県でトレセンの指導に当たって
からも、せっかくたくさんいるタレントが
昨年よりU-13、U-14年代を対象にした
中心と考えた内容であるということです。
す。エリートプログラムを通じた取り組み
修会形式に変えたのが1996年。翌年から
いる指導者の方に本当に感謝しています。
制限された人数のみしか参加できないとい
「JFAエリートプログラム」を立ち上げま
サッカーにおける可能性をオフ・ザ・ピッ
から、子供たちをもっと理解することがで
はJヴィレッジで毎年行われるようにな
しかし、 世界
うケースもありました。
した(詳細は、本誌「創刊準備号」参照)
。
チという切り口からもアプローチし、プレ
き、変化を促すことが可能となるかもしれ
り、 トレセンのメッカ
JFAは昨年『世界のトップ10を目指して!』
オン・ザ・ピッチはもちろんのこと、
ーにつなげていくことが一番の目的である
ません。人としての資質を磨くことがサッ
ことを理解してください。
カーにとって大切な要素であることを、是
と言われるよう
になりました。そして、昨年よりユース改
18
確かに、Jクラブに可能性のある選手が
という大目標を掲げました。そうした中で
多くいます。しかし、三位一体の強化策プ
オフ・ザ・ピッチでも世界基準を目指し
より充実したトレセン活動にする
ラス普及の充実により底辺の拡大が図ら
たものです。世界で闘うためには、サッ
ための問題点を話し合ったとき
れ、全国に多くのタレントが育っているこ
カーのレベルアップはもちろんのこと、
備号」参照)として、はつらつとしたサッ
に、Jクラブの選手が多く参加し
とも事実です。U-14年代は、まだまだ無
判断力、論理的思考能力、それに伴った
カーに対する姿勢が見られ、最後まであき
ているのが、U-14のカテゴリー
限の可能性を秘めた年代でもあります。一
コミュニケーションスキル、自己責任、
らめないで勝利を追及していくプレーが、
であることに気付きました。そし
人でも多くの選手にチャンスを与え、可能
日本代表としての誇りといった、人とし
て、Jチームのある都道府県トレ
性ある選手を見逃さないためにも、U-14
てのレベルアップも必要です。資質を磨
センの活動実態を見たときにJク
年代の都道府県トレセン活動の見直しを図
くことが大切です。オフ・ザ・ピッチの
ラブの選手が7〜8割を占めてい
りたいと考えました。Jクラブ、都道府県
充実が人として成長させ、それが自分自
るところがほとんどでした。
トレセンスタッフに目的を理解してもら
身のサッカーのレベルアップにつながり、
トレセンの最大の目的は個人の
い、2004年度の活動より、Jクラブのトレ
より充実したものとしていくことを狙い
レベルアップです。Jリーグがス
センの関わり方を右上のように見直し実施
とした取り組みです。サッカーがうまい
タートした1993年以前は、学校
したいと思います。
だけで世界には通用しません。世界で闘
© AGC/JFA news
2003ナショナルトレセンU-14より
は待ってくれません。
で行うクラブ活動が中心でした。
昨年度の取り組みの成果(本誌「創刊準
非、サッカーを通じて理解させていってほ
しいと思います。
っている選手にはサッカーがうまいだけ
19
U-16日本代表
埼玉スタジアム第2グラウンド
(2004年2月8日)
より
2004年、高校1年生
早生まれセレクション報告
JFA初の試みに全国各地から136名が参加、
4名をトレーニングキャンプに招集
© Jリーグフォト
(株)
布啓一郎(U-16日本代表監督)
のような課題がどの地域でもあることは、
パスをした後に、なんとなくその後の成
残念ながら国内において、まだ長期一貫
り行きを見ている選手が多く、パスに自分
指導が確立されていないことの表れでは
の意志があってパスをした後にプレーの連
ないかと思われる。
続性が出せる選手が少なかった。
オン・ザ・ボール(On the ball)を高め
ていくU-12年代、オフ・ザ・ボール(Off
⑥守備の意識が薄い
the ball)の要素が入ってきてグループ戦
守備が習慣になり、奪われた後に当たり
術が始まるU-14年代、大人のサッカーの
前のように奪い返しに行くことができる選
入口としてチーム戦術の理解が必要になる
手が少なかった。
U-16年代。しかし、16歳になったからと
守備はやらされるというイメージで行う
いって、U-12、U-14年代で必要なことが
と、ネガティブな印象になってしまうが、
© Jリーグフォト
(株)
測がつかなかったが、それほど強豪では
手もおり、地域内に限定しないで行ったこ
できていなかったら、チーム戦術を導入し
ないチームにも、数は少ないが可能性の
とは良かったと思われる。また、1、2月
ても狙ったとおりの形にはならない。今回
全国8か所(9か所の予定が、福岡が雪
ある選手がいた。ただ、その選手のチー
の開催は、北海道など降雪が多い地域での
のセレクションでの全体的な選手の課題を
③オン・ザ・ボールではある程度できる選
になる。U-12年代から組織として守備を
のため中止)で実施した結果、全国で124
ム環境を考えると地域や都道府県のトレ
開催ができないために、その地域の選手の
見ると、もっとU-12、U-14年代で必要な
手は多いが、オフ・ザ・ボールで効果的な
する必要はない。しかし、個人としての守
名の選手がセレクションに参加した。もっ
センなどで刺激を与えていかなければ、
参加は少なくなってしまった。
ことをしっかり身に付けることが必要であ
プレーができない
備の習慣はつけていき、攻守の切り替えや
とも多かったのは東京会場の35名、もっ
成長していかないように思われる。また、
とも少なかったのは静岡会場の10名であ
現在はU-16日本代表レベルには達してい
生まれの選手のいるチームには案内を郵送
った。人数にばらつきが多かった理由は、
ない、まだクラムジー(*1)でありまだ筋力
した)が、まだこのセレクションを分かっ
各都道府県の(高校生)新人戦と重なった
が追いついていないが、あと2年後(17、
ていない監督(指導者)もおり、現実問題
4対4のダブルボックスのスモールゲー
手が少ない。多くの選手がボールを足元で
ために参加できなかったことなどがあると
18歳年代)あたりには面白くなりそうな
として各チームの指導者の意識に温度差が
ムを多くの会場で行ったが、シュートゲ
受けて、それからボールを何回かタッチし
考えられる。
実施方法および結果
開催の連絡をあらゆる方法で行った(早
ると感じた。
①ゴールを意識したファーストタッチ
埼玉スタジアム第2グラウンド(2004年2月8日)より
守るのではなく、 相手のボールを奪いに
行く攻撃 ととらえれば積極的なとらえ方
ボールが自分のところにあるときは下手
セカンドボールの競り合いなど、プレーの
ではないが、ボールがない時にスペースに
連続性は攻守両面で行えるようにしたい。
出て行き、ボールを受けることのできる選
その他
選手や、環境次第では急成長が期待でき
あることが感じられた。したがって、今回
ームとしてはあまりにもシュートが少な
てから次のプレーを行う選手が多い。ボー
参加選手に対しての評価は、各所属チー
各会場での実施方法は、午前中はセレク
るような選手は、都道府県トレセンレベ
で完全に選手たちを見切ることができたと
かった。
ルを受ける前にボール以外の場所を視野に
ムの監督に個別に送付した。また、全体の
ション参加選手でスモールゲーム(4対4、
ルと評価した選手の中にも数名いると思
は言い切れないが、早生まれの選手に対し
理由は、どこからでもシュートを狙うと
入れる姿勢や、自分のもらいたいスペース
報告書を各地域担当のJFAナショナルトレ
8対8)を行い、午後は地元の高校チーム
われる。
ての意識づけは、チームのスタッフと選手
いう意識が薄く、ボールを受ける前にゴー
を空けて受けること(ウェーブの動き、プ
センコーチから各都道府県の技術委員会に
自身の双方が意識することが重要であり、
ルを観る選手が少ない。ゴール裏で見てい
ル・アウェーの動きなど)ができない。
連絡して、今後の追跡を行ってもらいたい
との11対11によるゲームを行った。
やはり、この年代の選手は成長する時が
結果として、セレクションに参加した
まちまちであり、高校1年生の前期では筋
今後も早生まれに対しての意識づけは行っ
ると、誰もボールを受ける前にゴールを観
選手の中で約15名程度の選手は地域トレ
力不足などで力不足であった選手でも、こ
ていくことが必要だと思われる。
ていないことが多い。また、相手がいる、
時やドリブル時にヘッドダウンしているた
この年代は、まだ多くの可能性のある選
センレベルにあると思われた。そして、
の時期になって身体が安定してきて力を発
いないにかかわらず、ファーストタッチを
めに、パスorドリブルの判断ができない選
手がいるのが事実である、また急に頭角を
その中から4名が、3月に行われるU-16日
揮し出した選手と、まだクラムジーのため
全体的な選手の傾向
足元に入れてからのプレーになっている。
手も多かった。
現してくる選手もいる。そのような選手に
本代表候補キャンプに参加することとな
今後の追跡が必要な選手、それに環境面を
〜日本のこの年代の課題はどこに
そして、ゴールに向けるようなボールのも
った。
整えれば成長が期待できる選手がいると思
われた。
成果と課題
〜日本サッカーの現状を垣間見ることに
今回は初めての試みであり、結果の予
らい方ができる選手が少ない。
今回の「早生まれセレクション」を通
各都道府県の新人戦が日程がまちまちで
じて、多くの選手が同じような課題を持
②左右のキックに差異が多く、片方の足に
行われているため、この日程ならば全部の
っていたことが認識された。このことか
偏りプレーに幅が狭くなる
選手が参加できるという日程を組むことは
ら、この年代の選手の多くが同じ課題を
難しい。しかし、地域を越えて参加した選
持っていることを示すと考えられる。こ
実施概要〜U-16早生まれセレクション2004
1月17日
1月24日
2月1日
2月7日
2月8日
2月11日
2月15日
2月22日
2月29日
大阪/長居第二陸上競技場
福岡/グローバルアリーナ
(*1)
熊本/大津運動公園
福島/Jヴィレッジ
埼玉/埼玉スタジアム第2グラウンド
愛知/瑞穂公園北陸上競技場
静岡/Jステップ
岡山/桃太郎スタジアム
東京/三菱養和会巣鴨グラウンド
14名参加
12名参加
14名参加
15名参加
15名参加
10名参加
21名参加
35名参加
(*1)降雪のため、中止。
20
[実施目的]
2004年AFC U-17サッカー選手権大会(9月5日〜19日/日本)に出場可能な
資格(1988年1月1日以降生まれ)を持つ 早生まれの選手 の中から、U16日本代表候補または将来の日本代表になりうる有望選手を発掘すると同時
に選手、指導者に対し年齢資格基準の意識を喚起すること。
[参加資格]
1988年1月1日〜1988年4月1日の間に生まれ、日本国籍を有する者。
また、技術不足からボールコントロール
と考えている。
対して縦横斜めと多方向から見ていくこと
④ボールに対して周りを考えずに寄ってき
により、この年代までに将来の可能性があ
てしまう
る選手の発掘をしっかり行っていくことが
この年代は、ボールと自分だけの関係
大切であると思われる。今後はJFAナショ
ではなく、ボールと自分と仲間の関係が
ナルトレセンコーチの専任化が進む中で、
誰でも利き足があり、その足でプレーを
わかり、同じポジションに重ならないよ
各地域内でトレセンコーチと各都道府県・
する方がやりやすい。しかし、利き足しか
うにすることが必要になる。しかし、多
技術委員会が連絡を密にして、このような
蹴れなかったらどうしてもプレーの幅が狭
くの選手が自分のリズムだけでボールに
活動を行っていくことも必要ではないかと
くなる。また、左右両足の前にボールを置
対して寄ってきてしまい、複数の選手が
思われる。
くことができなければ、常にボールを身体
ボールのそばに集中してしまうことが多
最後に、今回セレクションを開催した各
の中央に置いてプレーすることができなく
い。味方がボールに寄ったら自分は、ボ
都道府県サッカー協会の方々には多大なる
なり、相手に寄せられてくるとボールを保
ールから離れて違うポジションを狙う、
ご協力をいただき、各会場でスムーズにセ
持できなくなる。左右均等に蹴れることが
ピッチ全体のゾーンを考えることができ
レクションが行われたことに対して、この
理想である。それはなかなか難しいことで
るという選手が少なかった。
場を借りて感謝申し上げたい。
あるが、最低限の基本の「止める、蹴る」
のプレーは両足で行いたい。
⑤パス&ムーブの習慣がない
パスをして次のポジションをとりに行く
パス&ムーブが少ない。
(*1)クラムジー:骨格の急激な成長により、新たな技術を習
得するには不利な時期を指す。また、この時期には今まで習
得した技術が一時的にできなくなることもある。
21
JFA高校サッカー・
テクニカルスタディ
© Jリーグフォト
(株)
高校サッカーTSGの
立ち上げと目的
第4章 トピックス
1.国見高校
2.基本を重視して闘った四日市中央工業高校の健闘
第5章 結論
1.個の部分でのレベルアップが必要
2.サッカーの原点、闘える選手
3.ゲームの流れを考えたプレー、一試合を通したゲームプラン
4.コーチのレベルアップとゲームのレベルアップ
界基準からもうワンランク上げてプレッシ
極力少なくしていきたい。しかし、今年か
ャーのある中での精度のある実践能力を備
選手権に至るまでの一年間のサイクルを考
えていきたい。また、運動量のあるボラン
© Jリーグフォト
(株)
第82回全国高校サッカー選手権大会より
で判断することをトライして行ってもらい
が現状であった。サッカーにおいて「ボー
守備では全体にボールプレスが甘くなり
たい。
ルを止める、蹴る」は一番初めの基本であ
がちで、相手のボールの入りどころに常に
をスタンダードとした現代サッカ
って、このベースがなければ厳しいゲーム
プレスをかけることができているチームは
でのクリエイティブなプレーは発揮できな
国見高校を筆頭に数チームであったと思わ
方の選手だけではなかなか突破して行けな
い。是非、現在のレベルに満足することな
れる。チャレンジ&カバーの徹底、ボラン
くなっている。その中でDFの攻撃参加や
くレベルアップを目指すことが必要と思わ
チも含め自分の背後を含めて360度の守備
ボランチのスペース・ランニングなど、ポ
れる。
意識をこの年代は持ってもらいたい。クロ
世界
ジションのモビリティーを出しつつ、しか
スの対応もボールウォッチャーになる選手
し、ポジションのバランスを失わないこと
個性的なタレントの不足
が多いなど、改善する部分が全体に多いと
が重要である。高校サッカーのボランチの
〜 世界 との比較の中で、選手たちを分析
思われた。この年代は大人のサッカー(1
多くは足元にボールを受けてからパスを配
回のミスが許されない)に入っている年代
球しているだけになっている。また、DF
攻撃の観点から見ると、優勝した国見高
であり、DFに限らず全員がボールを奪わ
は攻撃参加をほとんど行わないなど、負け
校の⑭平山は、高さだけでなく足元のテク
れたら奪い返すアクションを起こすことを
習慣化していきたい。
ニックに加え、シュートのうまさ、また直
成年代に必要かを提示するために、この
ングポイントを持ったチームである。
積極的に攻めながら守備のバランスも失わ
前まで判断を変えることができる情報収集
ないチームになることを目指してほしいと
能力など、今大会NO.1の素材と言える。
思われる。
同じく⑩兵藤も持ち前の運動量に、動きの
世界
であり、
チームは少なく、全体にプレッシャーの甘
げようとしている中、全国4,288校を抱え、
ユース世代の世界トップ10とはどのレベ
い、間延びしたゲームが多かった。マンツ
中でもボールスキルを発揮できることや、
ユース年代の大多数が所属する全国高等学
ルであり、日本との差はどうなのかを提示
ーマンであれゾーンであれ、ボールに対し
基本技術の不足
常にヘッドアップした状態でプレーができ
校体育連盟(高体連)としても、その責任
し、高校サッカーのコーチの方々と方向性
てのプレスはなくてはならないものである。
〜プレッシャー、動きの中のボールスキル
るなど、素晴らしい能力を持っていた。そ
の一端を意識すべき現実があることは間違
を共有するために行われるものである。
その点、ボールプレスが甘い中で、逆にワ
いがない。
日本が世界のトップ10に入るためには
ンタッチでゴールに向きしかけていくよう
が少なかった。
ーでは、前方の選手はマークがきつく、前
ないためにリスクを冒さないのではなく、
なるのは、日本ではなく
構成だけでなく得点にも絡めるような選手
ロールがぶれてしまう場面が少なくないの
群を抜いており、それにふさわしいストロ
しかし、大会全体としてはレベルの高い
チが少なく、パス&ムーブができてゲーム
えて選手の技術と戦術を高め、ピッチの中
トップ10に入る」
、それには何が日本の育
TSGはあるものだと考える。その基準に
日本サッカーが世界を見据えて発展を遂
ば、ゲームを構成できる選手はいるが、世
り」の闘いは、確かにリスクを負うことは
の闘いがユース年代でも増えてきている。
第82回全国高校サッカー選手権大会テクニカルレポート
第1章 イントロダクション
第2章 大会全般
第3章 技術・戦術分析
1.ファーストタッチ
2.仕掛ける
3.キックの質
4.1対1の対応 〜オン・ザ・ボールの守備〜
5.クロスの攻防
6.GKのプレー
プレッシャーがなく時間を与えてもらえれ
かった。トーナメント戦の「負ければ終わ
らJFAプリンスリーグの開始などリーグ戦
第82回全国高校サッカー選手権大会を分析、
ユース年代の これから を知る
高校サッカーテクニカルスタディグループ
発刊
ーリスクで蹴ってしまうチームや選手が多
日本サッカー全体のアベレージは上がっ
た。これはまぎれもない事実である。
コーチのレベルアップとゲームの
レベルアップ
〜勝てない原因を環境に押しつけたらコー
チの負け
の他の選手はボールを受ける前の準備が悪
高校サッカーの指導者がレベルアップし
く、ボールをコントロールするときに周り
ていくことで細かいことが見えてくる。小
の情報収集が足りず、次のプランを持って
さいことができている、できていないにこ
いない選手が多かった。そして、ドリブル
だわることのできるコーチは、レベルの高
今回、第82回全国高校サッカー選手権
「日本の国内のゲームのレベルを上げるこ
な選手も少なく、プレッシャーは甘いが相
後に高校サッカーTSG(Technical Study
と」と「日本の育成に関わるコーチのレベ
手FWがゴールに向いてこないから大丈夫
しかし、世界のサッカーも日々進歩をし
Group)を行う話が持ち上がった。日本サ
ルを上げること」、この2つのことが近い
だ、というようなゲームが多かったように
ている。今の現状で満足していたら、再び
突破に入ったときのヘッドアップが無く、
いチームをつくることができるのではない
ッカーが世界のトップ10に入るために、
将来になし得なかったら日本のトップ10
思えた。その点、優勝した国見高校は、ボ
日本は世界から取り残されてしまうであろ
パスorドリブルの判断ができていない選手
だろうか。そして、レベルの高いチームが
高校サッカー全体のレベルを 世界 の同
はありえない。是非、高校サッカーのコー
ールに対しての守備、また攻守の切り替え
う。昔の選手と比べて、最近の選手はボー
が多かった。
対戦してレベルの高いゲームができあが
じ年代と比較し、検証することの必要性を
チの皆さんが 世界 との差を認識し、そ
において、一番厳しいサッカーをしており、
ルコントロールが良くなったとよく言われ
2003年FIFA U-17世界選手権、FIFAワー
感じたからである。本年はまず第一歩とし
の差を埋めるべくトレーニングを日々行
相手にはサッカーをさせないで自分たちは
るが、それは昔の日本の選手との比較であ
ルドユース選手権では、一つのことしかで
て、大会全体の印象をディスカッションし
い、その上で国内の大会の全国制覇を目指
ゴールに積極的にしかけていくというサッ
り、世界との比較ではない。昨年行われた
きない選手は少なく、複数のことができる
日本サッカーを支えている高校サッカー
た上で、準決勝2試合・決勝1試合と、優
していくことを行ってほしい。そのための
カーの原点を実行するチームであったこと
FIFA U-17世界選手権(日本の現高校2年
選手が、両大会優勝したブラジルをはじめ
のレベルアップは、日本サッカーの底上げ
勝した国見高校に対し、もっとも健闘した
一つの基準を示すための高校サッカー
で、準決勝および決勝で10得点0失点とい
と3年生早生まれ以下)では、プレッシャ
トップレベルの国では当たり前になってい
に直結していく。「これで良い」と思った
らそこで進歩が止まる。常に進歩していく
四日市中央工業高校のゲームの4試合を中
高校サッカーTSGは高校の日本一を目
指すものではない。また、
「高校対クラブ」
ーの中でも正確なコントロールが当然であ
また、守備においてリスクを冒さないチ
り、オン・ザ・ボールにおいてミスをする
ので、ゲームに流れができてくる。しかし、
ことを目指して、高校サッカーのゲームの
大会全般
ームが多かったことも言える。攻撃の優先
選手は世界では闘えないと言っているよう
高校サッカーでは断片的に素晴らしいプレ
レベルを上げていくことに取り組んでいき
〜優勝した国見高校と他チームとの力に
開きがあった大会
順位は大切であり、相手の裏をついて行く
であった。
ーはあるのだが、良いプレーが連続してお
たい。
TSGであると考えている。
の比較をすることでもない。日本のサッカ
ーの大目標である「FIFAワールドカップ
優勝」
、そのために「2013年までに世界の
22
選手は成長することができるであろう。
た。プレーでも質の高いプレーが連続する
心に分析し、今大会の高校サッカーのテク
ニカルスタディを行うこととした。
る。レベルが高いゲームが多く存在して、
今大会は、国見高校の優勝で幕を閉じた。
ここ数年の国見高校の全国大会での成績は
う近年にない結果になったと思われる。
らずイージーなミスからボールを失う場面
ことは一番の優先であるが、相手が組織を
しかし、今年の全国高校サッカー選手権
作っている時にも不確実なロングボールを
大会でも、ファーストタッチのミス(技術
蹴り込んでしまうチームが多く、ディフェ
的なミスと判断のミス)の場面がまだあり、
MFでも状況判断と展開力が足りない選
ンス・サードでのミスを恐れるあまり、ノ
動きやプレッシャーの中ではパスやコント
手が多い。ある程度のテクニックはあり、
も多くあった。
高体連加盟校全校に配布しています。ご覧になりたい方は、
JFAホームページ(http://www.jfa.or.jp)上にてご覧にな
れます。
23
2003年度公認指導 者(リフレッシュ)研修会より
JFA Refresh Coaching Courses
for the JFA certificated coaches
JFAから発信される最新の情報や知
識をJFA公認ライセンス取得者がキャ
ッチ、指導力アップなど 再教育 の場
である「リフレッシュ研修会」
。
今号では、2003年度も全国各地で盛
んに開催された同研修会の中から、
「2003ナショナルトレセンU-14・指
導者講習会/レクチャー」と、公認S級
コーチを対象にした「公認S級コーチリ
フレッシュ研修会」(2004年2月29日
開催)の一部を紹介します。
ことなのだから、その意識を常に持ち続け
ッシャーがかけられるのですが、ボール
るということを強調しました。安易に下げ
のないとき、オフの1対1のところでは、
るのではなくて、もし自分がゴールに向か
一つ局面をはずされると、どんどんフリ
ピッチを離れてAFCでは参加全選手と
えるのであれば行こうということで、ゴー
ーの選手が出てしまう、というのが第一
スタッフをまじえて、レセプションを開
ルに向かう姿勢も強調しました。
の課題です。オフの1対1の連動性が課題
催しました。これも選手たちに良い経験
だと思います。
でした。いろいろな国々の選手たち、ス
日本の課題と成果について
ピッチ外の経験
攻撃ではレベルが少し下がる相手だと
タッフたち、もしくはこのレセプション
しかけていくプレーもできましたが、少
の方々、とにかくこのコミュニケーショ
ンの機会にトライさせました。
そういったことをテーマにして臨んだ
しプレッシャーがかかってくるとできな
大会ですが、やはり多くの課題が出まし
くなってきます。ポゼッションも課題で
た。特に、ボールがないところの課題が
した。一見ボールをつないでいるように
フリーな時間にお金を使ってショッピン
非常に多かったように思います。
会場となった島のメインストリートを、
見えますが、全員が非常に狭い範囲の中
グをしてみよう、言葉は通じないけどト
確かに、韓国のプレッシャーは早かっ
に入っていました。幅と厚み持つという
ライしてみようじゃないか、ということ
たのですが、このプレッシャーの中でも、
ことで、次の試合に向けて少しトレーニ
で、半日観光に出ました。彼らの経験と
もっと正確なパスが出せるのではないか。
ングをしたら、広がりというところを少
いうことで、すべて失敗覚悟でやりまし
U-14日本選抜、「AFC U-14 Festival」報告
要するにボールを受ける前の準備が良け
し理解してくれました。また、この大き
た。日本で何千円するようなものが数十
れば、もっともっと良いパスが出せるの
い円の中で、後方からのサポート、オー
円で買える。そういうことも彼らの経験
講師:足達勇輔(JFAナショナルトレセンコーチ/JAPANサッカーカレッジ)
ではないかということで、パスの質のと
バーラップをするというシーンまで出ま
となったと思います。
ころが非常に課題として残りました。韓
した。
© AGC/JFA news
2003ナショナルトレセンU-14指導者講習会
AFC U-14 Festival
アジアサッカー連盟(AFC)が主催する国際大会。アジア各地域を単位に開催される大会で、14歳以下の選手たちが参加する。
今年の大会は2004年1月25日〜31日、中国・上海で、日本の他、東アジア地区の6チームが参加して開催された。日本は韓国
に2-0で勝利したが、中国に0-1で5勝1敗、最終成績は3位。
また、オフ・ザ・ピッチのもう1個のプ
国、中国以外のチームと試合をしたとき
プレッシャーをかける、プレッシャラ
ログラムとして、ずっとJFAエリートプロ
には非常にパフォーマンスが高かったの
イズということに関しては、いつそれが
グラムの方で取り組んできましたコミュ
ですが、プレッシャーがかかるとできな
始まるのか、誰が始めるのか、というと
ニケーションスキルを少し応用した形で、
かったというのが課題でした。
ころで非常に切り替えが遅かったです。
出発前に宿題を出したものに対して、グ
それも大会期間中に、奪われたFWの選手
ループワークをして発表をしてもらいま
相手が来るのに身構えてそれに対処する
がプレッシャーをかけ、相手の攻撃を高
した。もう一つは、自分のことを皆に知
というスキルの部分でも、なかなか良い
い位置で阻止するというプレーも改善さ
ってもらおうということで3分間アセンブ
場面が見られませんでした。ピッチのサ
れてきました。
リーという形で自己紹介をさせました。
また、コンタクトスキルについては、
中国・上海で開催された「AFC U-14
ッジング(寄宿制をとり、サッカー中心
ようということ。もう一つは、プレッシ
イズも狭いので難しいと思いますが、プ
守備の準備、オフの1対1のところに関
最初はあまり堂々と話せなかったのです
Festival」に参加しました。試合はAFCの
の共同生活をしながら強化)をさせて育
ャーをかけて、自分を越されたボールに
レッシャーがかかった中で、やはり準備
しても、試合を重ね、練習を重ねるうち
が、私たちスタッフが話し方のアドバイ
指定により、80m×50mというサイズのピ
成しています。非常に判断が早いプレー、
対しても戻ってディフェンスをしよう、
が悪い選手はことごとくミスをしていま
に、大会の中でこの部分も少しずつ改善
スを加えるとともに、非常に堂々と話せ
ッチで行われました。7チームで行われた
判断を伴ったプレーが印象的でした。ロ
とにかくボールにプレッシャーをかけ続
した。
されていきました。最初のうちはオフの
るようになる選手が増えてきました。こ
大会ですが、以下、韓国・中国・日本と
ッジングしてチームづくりをしていると
けよう、バックパスされたらもう1回プレ
メンタル面にも課題が残りました。モ
準備が悪く、長いボールをどんどん入れ
れも、取り組んできたコミュニケーショ
いう3チームだけに絞って分析していきた
いうことで、非常にグループがうまくつ
ッシャーをかけよう、ボールを中心にと
ンゴルとの試合は13点とれば1位になった
られるとあたふたしました。最後の方に
ンスキルの成果だったのではないかと思
いと思います。
くられていて、スペースをつくる・使う、
にかく激しくプレーをしていこうという
試合でしたが、中央に中央にということ
なって、最終ラインのところで1対1がだ
います。
韓国は、どう見ても13歳から14歳にな
ボールが動いている間に準備をするとい
ことも話していきました。
で正確な判断を失っていました。もしく
いぶ整理されてきまし
ったところとは思えないような体格で、
ったチームとしての動きが、この年代で
非常にフィジカルが強いチームでした。
よく理解されていました。
は、中国戦で0-0で終われば優勝が決まる
た。これは大会をやり
保すること、お互いに相手の間に入って
試合をロスタイムで失点をしてしまい、
ながら、選手たちが学
このサイズのピッチでは、いつでもどこ
ギャップを共有していこう、また、そこ
結局、優勝を逃してしまいました。
んだことの一つです。
でもプレッシャーがかかっていたという
に入るタイミングを図っていこう、ずっ
守備では、1対1でしかけられると簡単
中国との試合は、スタ
と取り組んできたポゼッションというも
に足を出してしまう。なんとかグループ
ンド一面が中国のサポ
のを、そういう形で選手に理解させてい
で守ってはいるのですが、ベースになる1
ーターでした。ものす
こうとしました。
対1のところを、やはりもう少し質を上げ
ごい歓声で、その中で
この遠征のテーマ
印象です。ベンチも非常にアグレッシブ
でした。
中国は非常に動きが洗練されていて、
日本はこの遠征のテーマとして、「JFA
エリートプログラム」
(本誌「創刊準備号」
ポゼッションのところでは、視野を確
個人のベースが高いという印象でした。
参照)でやってきたことをそのまま取り
また、アタッキングサードに入ったと
ていく必要があります。また、今回、ヘ
もこれだけのことがで
韓国と違って、大きい選手だけを揃える
組みました。1対1の守備をとにかく粘り
きには、躊躇なくとにかく自分を信じて
ディングでストロングポイントをもった
きるようになってきた
というよりも、個人のベースを非常に高
強く対応しようとしました。自分のリズ
しかけよう、相手にまとわりつかれてで
日本の選手は一人もいませんでした。競
というのも成果でした。
く保っていました。12歳でも能力が高く
ムになるまで安易に飛び込まない、粘り
もなんでもとにかく振り払ってでもしか
ろうという気も出ないくらい、ヘディン
通用するということであれば、どんどん
強く、自分のリズムになったらボールを
けてみようということを話しました。
グに対するネガティブな部分が出てしま
上のカテゴリーに引き上げて、そしてロ
奪おう、取りどころを逃さないようにし
24
また、サッカーの目的はゴールに向かう
いました。ボールの局面に対してはプレ
© AGC/JFA news
2003ナショナルトレセンU-14より
25
オマーン戦に照準を合わせた
トレーニング
公認S級コーチリフレッシュ研修会
日本代表チーム、
フィジカルフィットネスの取り組み
リア)が10日から、中村(レッジーナ)
も試合当日の12日に合流した。
〜2006FIFAワールドカップ・ドイツ大会/
アジア地区第1次予選:vsオマーン戦に向けて
© Jリーグフォト
(株)
講師:里内猛(日本代表チーム・フィジカルコーチ)
海外クラブ所属の選手では柳沢(サンプド
日本代表トレーニングキャンプ(宮崎)より
チームは一旦解散して、2月3日の午後
イラク戦に向けた狙いは、オマーン戦を
に再度集合し、第2段階は舞台を茨城県鹿
想定(中東国、激しさ、カウンターアタッ
嶋市へ移してキャンプを行った。ここでは
ク)したものであり、チームとしては、プ
戦術面の確認など、チーム作りに主眼が置
レスをかけるときの組織とコミュニケーシ
かれた。
ョン、イラクは3バックでありその両サイ
トレーニングは14回行われ、トレーニ
ドを突くこと、積み上げてきたセットプレ
ングに関わった総時間は1,225分。1回当た
ーを柔軟に状況に応じて使い分けることな
りのトレーニングは、約85〜90分である。
どであった。
テクニカルトレーニングの割合が全体の
そして、メンタル面(勝つという激しい
© Jリーグフォト
(株)
今回の2006FIFAワールドカップ・ドイ
プレーやオマーンの情報をとり入れなが
このキャンプではトレーニングの原則に
ツ大会/アジア地区第1次予選、初戦とな
ら、細部の確認事項を中心として仕上げて
従い、もっぱら動くということで質・量と
る2月18日のオマーン戦に向けての準備で
いった。この段階から海外組の選手たちも
も求めている。フィジカル・トレーニング
全体として第1段階よりも回数は多くな
半に2点を決めてイラクを突き放した。反
幸いにも招集された選手たちは、良い状態
あるが、招集された選手たちは、昨シーズ
合流している。
80%である(下図左)
。
日本代表トレーニングキャンプ(宮崎)より
闘志)の準備も重要であった。ゲームは後
の割合は全体の80%を費やしている(下
っているが1回のトレーニングに要する時
面、さまざまな修正点もあった。イラクの
が保てていた。また、この時期では1日2
ンをハードに戦っており十分な休息が必要
図中央)。ただし、注意しなければならな
間が減少している。ジーコ監督のトレーニ
激しいコンタクトに対して、十分な対応の
回トレーニングを行う日については、でき
という判断と、チームを作る上で少なくと
いのは、24日間でチームを作り上げなけ
ングは、基本的にゲーム形式によるチーム
準備ができていなかった。そのためにワン
る限り疲労回復の意味から時間(5〜6時
ればならないということである。よって、
戦術の徹底、サイドからの崩しによるクロ
プレー、ワンプレーにズレが生じていた。
間)を空けるよう配慮した。トレーニング
宮崎キャンプでは、Jクラブの始動に先
フィジカル・トレーニングの内容もサッカ
スからのシュート、8対7でのフォーメー
コンパクトさが保てず、ラインが間延びし
時間も、18日のキックオフに近づけるよ
う日常の生活リズムも調整していった。
フィジカル面の強化からスタート
も準備期間に4週間は必要ということか
ら、1月26日に宮崎での強化キャンプをス
駆けてキャンプインすることから各選手の
ーの特性を踏まえた複合的な要素を多くと
ション(攻守)、そして密集地域でのボー
て相手にスペースを奪われていた。しかし、
準備の期間として、3段階に分けてトレ
体力測定も実施した。2日目(27日)の午
り入れた。
ルポッゼッションなどが今回の準備期間で
後半は狙いのサイドからの攻撃も、何回か
ーニングの設定を行った。まず第1段階は
前中にキャンプ中の負荷設定のベースとも
主なものである。
作れて修正できた。
1月26日から2月1日までの1週間、第2段階
なる VMA(有酸素性最大スピード)テス
午前中のトレーニングの最後に体幹の補
フィジカル・トレーニングでは、スピー
は2月3日から12日、そして最終の第3段階
トを行った。このテストは有酸素でまかな
強(スタビライゼーション)を行い、筋
ドの持久性を高める内容とした。また、ウ
は2月14日から18日までとした(10ページ
える最大速度と最大心拍数を測定するもの
力の改善と傷害の予防に努めた。午後の
ォーミングアップについては、テクニカル
参照)
。
タートした。
また、メディカルスタッフと連携して、
そして、18日にオマーン戦を迎えた。相
手の粘り強い守備と、カウンターアタック
に手を焼きながらも最後の最後で久保(横
海外組 のコンディション・
チェック
浜FM)のゴールで勝ち点3を獲得するこ
とができた。本大会への出場権を得るため
に、予選を勝ち上がっていくことの大変さ
で、キャンプ中の各選手の負荷を設定する
トレーニングの後には、温浴やプール・
の内容につながりを持たせるようにした。
第1段階は、招集された選手たちはオフ
上で、とくに貴重な資料となる。最終日に
エクササイズなどをとり入れて、筋の疲
2月7日には、今年初の国際試合となる
明けということで、フィジカル面の強化に
は、20mスピード、ジャンプ、YO-YO
労回復に努めた。午前中に気温が上昇す
マレーシア戦を県立カシマスタジアムで
さいたま市に集合した。宮崎キャンプから
アジアのすべての国々が、「日本にだけ
主眼をおき、トレーニングの負荷と内容を
Intermittent Recovery(6分間)も行い、選
ることから、午前中は主にボールを使っ
行った。このゲームでの狙いは、我々が
スタートした今回の代表チームの活動も総
は・・・」という思いで向かってくる。試
設定。また、キャンプ地の選定については
手のフィジカル面のチェックを行った。こ
ての内容を中心とし、午後はボールを伴
常に主導権を持って優位にゲームメイク
仕上げとなる第3段階に入った。この段階で
合後、ジーコ監督も厳しい戦いが予想さ
事前調査を行い、気候条件やトレーニング
れらの測定資料やこの期間のトレーニング
わない内容を中心として行った。筋のコ
ができることがポイントとなる。今後の
はオマーン戦対策に主眼が置かれた。また、
れたこと、海外で活躍する選手が多くな
環境など、受け入れ体制の整っている宮崎
記録は、選手の所属クラブへフィードバッ
ーディネーションを整える上でもトレー
予選を戦っていく中で、相手が守備的に
海外から招集された選手たちも合流した。
った分、戦術面の徹底を図る上での時間
県総合運動公園で行うことにした。
クした。
ニングに多様性をつけた。
来ることが予想されることから、サイド
イラク戦の後、チームは翌日の13日夜、
を改めて痛感させられる試合でもあった。
一番の心配は、海外クラブでプレーする
不足などを挙げていたが、これからもさ
の攻撃、ミドルレンジからのシュート、
選手のゲーム・コンディションである。ヨ
まざまな障壁が待っていることが予想さ
第2段階は、チーム戦術の確立に主眼を
このキャンプでは、トレーニングを12
本来なら宮崎でも気温は10度を下回る
置き、終盤に2試合のテストマッチ(2月7
回(1月26日午後から2月1日午前まで)行
のが普通という時期ではあるが、幸いにも
セットプレーなど確認して臨んだ。トレ
ーロッパはシーズン中であり、フィジカル
れる。今後も厳しい戦いの中から学びつ
日vsマレーシア戦、2月12日vsイラク戦)
った。トレーニング総時間は1,330分で、
天候に恵まれて、無事、第1段階を終えて
ーニングをスタートしてほぼ2週目という
面では問題ないが、出場機会の少ない選手
つ周到かつ入念な準備を行うことが重要
で作り上げた。第3段階では、主にセット
トレーニング1回当たりは約110分となる。
身体作りは順調に進んだ。
ことではあったが、狙い通りのゲームが
はゲーム感覚が戻っていない場合がある。
である。
でき4-0で勝つことができた。
2月10日には、午後のトレーニング後に
キャンプ地を東京へ移して、12日のイラ
ク戦に備えた。この段階ではフィジカル面
のトレーニングは、主にスピード系の内容
へと移行している。持久性の部分について
は、35分ハーフのゲーム形式のトレーニ
ングで十分補えていた。
そして、2月12日のイラク戦。第2段階
の最終日であり、1週間後のオマーン戦に
向けた最終調整の試合となる。招集された
※黒部分がフィジカルトレーニング
26
※黒部分がフィジカルトレーニング
27
COA
GOAL
C O A C H I N G
F O R
G O A L K E E P E R S
GKコーチング
セットプレーの守備
「PKへの対応」
今回、昨年末にFIFAワールドユース選手権(UAE)に出場した
U-20日本代表チームで行われたGKトレーニングを紹介する。
GKプロジェクト
加藤好男(ナショナルコーチングスタッフ)
①心理戦ととらえる
PKは「決めて当然」というものであり、 キッカーが有利
ャーとなる。キッカーの行動を注視し、観察することで、心
とされている。GK側としては、それを逆手にとり、最大限
理戦に優位に臨むことができる。GKの側からキッカーに目
利用することが重要である。
を合わせれば、相手は心理を見透かされたと考える。
すなわち、キッカーは外せば「失敗」、GKは止めれば「ヒ
ーロー」なのである。PKはまさに心理戦であると言える。
また、心理戦であれば、GKは一喜一憂せずに、自分のプ
レーに集中することが重要である。
GKが自信を持って臨めば、キッカーに対してはプレッシ
ペナルティーキック(PK)は、試合中にしろ、延長戦終了後などのPK合戦にしろ、サッカーの試合の勝敗に大きな影響を与えるプレ
ーであると言える。このプレーに対し、GKにしっかりと準備をさせることが重要と考え、U-20日本代表チームでは、選手たちへ「PK
対策」として、以下の7つの項目をあげてレクチャーを行った。
②プレッシャーをかけ続ける
①心理戦ととらえる
②プレッシャーをかけ続ける
まず、キッカーの行動、態度に注目し、相手と目線を合わ
③キッカーのタイプを見極める
そして、蹴られる前に早く動きすぎてはいけない。ギリギリ
せる。
④シュートコースを読む…助走角度・角度・スピード・蹴り足
そして、GKは、自分のタイミングでセットする(構える)
。
キッカーの行動について、以下の点を見る。
⑤テクニカルポイント…踏み切りタイミング・ダイビングフォーム・フェイント
(1)センターサークルからどのように来るか?
⑥幾何学的考察
(2)キッカーのボールの置き方
⑦その他
(3)目線はどうか?
まで相手にプレッシャーをかけ続けるようにする。
構える際に存在感を示す。大きく構える、自分自身のリズ
ムを崩さないなどが、これに当たる。
③キッカーのタイプを見極める
キッカーのタイプを見極めるには、以下の点について見る。
まず、キッカーのポジションはどこかを見る(ストライカ
ー、センターバック、GK、MF、ゲームメーカーなど)。
© Jリーグフォト
(株)
ファイタータイプ(既に蹴り方を決めている)であること
が多い。それに対して、慎重にゆっくりと置くのは、テク
タイプ」と「テクニシャンタイプ」である。ファイタータイ
ニシャンタイプが多く、まだこの時点で蹴り方を決めかね
プとは、自分の得意なキックで思い切り蹴るタイプである。
ていることが多い。
シャンタイプは、GKを見て蹴るタイプである。フェイント
28
ボールの置き方に注目すると、無造作にポンと置くのは、
タイプは大きく2つに分けることができる。「ファイター
先に蹴る方向を決めていることが多い。それに対してテクニ
© Jリーグフォト
(株)
を使う技巧派が多い。
キッカーの側から目線を合わせ、挑発的態度をとるタイプ
もある。
© Jリーグフォト
(株)
29
COA
GOAL
④シュートコースを読む
⑥幾何学的考察
まず、蹴り足を選定する。
げるもの、遅いもの、途中でスピードを下げるものの4種類
PK戦を、4〜5本とそれ以降とに分けて考える。
その上で助走角度(ボールに対する進入角度)を、A、B、
に分けてみる。
PK戦は、その過程を相手チームキッカーが皆センターサ
ピッチコンディションとの関係も注意すべき要素の一つで
Cの3種類から見る(図1参照)。
また、助走距離に関しては、2〜3歩の短いものと、5歩
ある。雨天時や立ち足付近が不安定な場合、また、硬いピッ
チ、アイスバーンなどの場合がある。
以上の長いものとに大別して考える。
助走スピードに関しては、速いもの、途中でスピードを上
ークルにて注目している。
相手の4本目が勝負を決する場面では、それまでの3本で、
は有効である。
また、ある時はGK(自分)はゴール側を敢えて見ず、構
える位置を半歩ずらした位置に構える。4本目以降、自分の
得意な方向を半歩空けて(ズレて…)構える。
自分の対応はどうだったかを思い出す。全て同じ方向に倒れ
スタートより決めた方向へ反応する方法もある。自分の得
ている、先に動きすぎているとしたら、4人目は何を考える
意な方向(逆方向)へ全て反応し、5本目以降で勝負(逆方
だろうか。こうしたことを冷静に思い返し、逆利用すること
向)する。
図1
⑦その他
図2
A B
C
○過去のデータ
A
事前にスカウティングが行われている場合、それに対応する。
B
○コースの選定ができない時
・自分の得意な方向へ
・最初のインスピレーションで決定する
B A
・敢えて動かない
・ボールを見て反応する
・立ち足の方向で決定する
・相手チームの法則を探る
⑤テクニカルポイント
まず第一に、相手の踏み切りのタイミングに集中する。先
に動きすぎない。予備動作は小さくし、ボールが蹴られる瞬
フェイント動作を活用する。これはテクニシャンタイプに
間に踏み切る。そうすることで、力と距離が有効に出るよう
対して有効である。相手の進入角度によって視野のストロン
になる。
グサイドとウイークサイドを知る(図2参照)
。
アプローチのアングルは、「45度」の角度へ行う。すなわ
手や上体をうまく使い、反動を利用することが望ましい。
・蹴る方向を予測して相手に示す
・相手の反応を見て限定する
無反応…逆方向
過敏な反応…同方向
○ボールをセットした後の最初の目線
人は自然と進みたい方向の安全性を確かめる。GKが見てい
ち、斜め前に出るということである。高さについても同様で
足を無闇に動かすとかえって反応が遅れてしまうので、注意
ることを知って2度目に見る方向はフェイク
ある。力と距離を有効に出すため、また、相手に対してのア
を要する。
○GK自身が負傷を装う(姑息な手段?)
ングルを有利にするためである。
ダイビングフォームは、両手両足を活用して、面を大きく
する。両足を使うことで、万が一、逆方向をつかれたら、足
30
でブロックできるようにする。
○他のGKの経験則より
フェイント動作を入れるタイミングは、キッカーが立ち足
を踏み込む瞬間、すなわちキッカーの目線がボールに行く直
前のタイミングである。
・PK戦突入の直前(PK戦1、2本目)で腕、肩、腰などの
負傷を装う。
・3〜4本それをアピールして逆方向へプレー
・勝負どころで負傷側へプレー
トレーニング
これまで紹介したレクチャーを踏まえて、U20日本代表チームでは、次のようなトレーニン
グを実際に行った。
【ステップ1】 バーチャルトレーニング
過去のFIFAワールドカップよりPKのシーンを
58パターンVTRで集め、編集を行った。PKのキ
ッカーがPKマークへ来てボールをセットする前
から、ボールを置き、蹴る直前(立ち足を踏み
込んだ)状態までを収録し、これをGKに見せ、
マークシートによるコースの選定を行うもので
ある。
キッカーのボールの置き方、蹴り足、助走距
離、助走の進入角度、助走スピードなどから、
コースの選定(左右、中央など)を行う。
これをデータによって根拠を示し、コース選
定の確定率を60〜70%へ上げていくことを目標
に、トレーニングを実施した。
【ステップ2】 ピッチでのトレーニング
次に、実施にピッチで「⑤テクニカルポイン
ト」を中心にトレーニングを行った。
最初は蹴る方向を指定したトレーニング。次
に蹴り足、助走距離、助走の進入角度、助走ス
ピードを変えて、データに基づく方向へ蹴り、
それに対応するトレーニング。
そして最後にフェイント動作を導入して対応
するトレーニングを行った。
31
COACHING
FOR
GOALKEEPERS
GKプロジェクト活動報 告
GK
PROJECT
JFA技術委員会「GKプロジェクト」は各年代の日本代表チーム、トレセン活動、指導者養成事業など
を通して、日本のゴールキーパー育成に力を注いでいます。
今号では2004年度から創設された「公認ゴールキーパーコーチ養成講習会」と、地域におけるトレセ
ン活動に関する報告を紹介します。
GOALKEEPER PROJECT
受講
申込
(1)受講を希望する指導者は、受講申込書(JFAより入手)に必要事項を記入の上、下記まで送付。
(2)申し込み締切は2004年8月31日必着として、締切後は一切申し込みを受け付けない。
【送付先・問い合わせ先】
〒113-0033 東京都文京区本郷3-10-15 JFAハウス
公認ゴールキーパーコーチ養成講習会
(財)日本サッカー協会・技術部:関口・竹内
tel 03-3830-1810 fax 03-3830-1814
加藤好男(GKプロジェクトリーダー)
2004年度よりJFA主催の「公認ゴール
キーパーコーチ養成講習会」が開催され
る(下表参照)
。
ことを目指している。
げ、良いGKの発掘、育成をさらに推進し
JFA技術委員会内にGKプロジェクトを
ていきたいと考えている。
設置して早6年が過ぎた。この活動の中で
こうした活動を通じて一人でも多くの
この講習では、ユース年代のゴールキ
日本のGKを取り巻く環境や、その問題点
指導者にGK指導を実践していただき、ま
ーパー(以下GK)指導ができる人材を養
を考察し、ユース年代GKの育成、強化に
た一人でも多くのユース世代のGKに指導
成するとともに、各都道府県におけるGK
努めてきた。こうした内容を中心により
の機会が増えることを切に願って開催す
指導者のリーダーとなる人材を育成する
多くの指導者とともにネットワークを広
るものである。
トレセン活動へのサポート
北海道GKプロジェクトより
加藤好男(GKプロジェクトリーダー)
開催概要
スタイルで行われた。その光景は、Jヴ
同様のスタイルでトレーニングを受けた。
北海道GKプロジェクトによる「第4回GK
ィレッジで開催されているナショナルト
また昼食後の講義は、2003年FIFAワール
トレーニング研修会」が札幌市のツ・ドー
レセンさながらの様子であった。
ドユース選手権のGKプレー分析について
2004年1月13日と14日の両日にかけて、
公認ゴールキーパーB級コーチ養成講習会
【目的】
【主催・主管】
【受講資格】
【定員】
【内容】
【開催期間】
【開催場所】
【受講料】
ユース年代(18歳以下)のゴールキーパーの指導ができる人
材を養成すると同時に、都道府県のGK指導者のリーダーと
なる人材を育成することを目的に公認ゴールキーパーB級コ
ーチ養成講習会を開設する。
(財)日本サッカー協会
公認B級コーチ(旧公認C級コーチ)資格を有しており、ゴ
ールキーパーの指導をしている者
30名
1日目 13:00〜14:00
ガイダンス
14:30〜17:30
実技
(コーチングデモンストレーション)
19:00〜21:00
講義(GK理論)
21:00〜
指導計画案作成
2日目
9:00〜11:30
指導実践①
14:00〜17:30
指導実践①
19:00〜21:00
講義(コーチング法)
21:00〜
指導計画案作成
3日目
9:00〜11:30
指導実践①・②
14:00〜17:30
指導実践②
19:00〜21:00
口答試験
4日目
9:00〜11:30
指導実践②
14:00〜17:30
指導実践②
19:00〜21:00
口答試験
5日目
9:00〜11:30
指導実践②
11:30〜12:30
筆記試験
12:30〜13:00
閉校式
2005年1月19日〜23日
熊本県大津市
40,000円
公認ゴールキーパーC級コーチ養成講習会
【目的】
【主催・主管】
【受講資格】
【定員】
【内容】
【開催期間】
【開催場所】
【受講料】
ジュニア・ジュニアユース年代(15歳以下)のゴールキーパ
ーの指導ができる人材を養成すると同時に、都道府県のGK
指導者のリーダーとなる人材を育成することを目的に公認ゴ
ールキーパーC級コーチ養成講習会を開設する。
(財)日本サッカー協会
公認C級コーチ(旧地域スポーツ指導員C級・旧公認準指導
員)の資格を有しており、ゴールキーパーの指導を行ってい
る者
60名(各コース30名/2コース)
1日目 13:00〜14:00
ガイダンス
14:30〜17:30
実技
(コーチングデモンストレーション)
19:00〜21:00
講義(GK理論)
21:00〜
指導計画案作成
2日目
9:00〜11:30
指導実践①
14:00〜17:30
指導実践①・②
19:00〜21:00
講義(コーチング法)
3日目
9:00〜11:30
指導実践②
11:30〜12:30
筆記試験
12:30〜13:00
閉校式
①コース:2004年10月9日〜11日
②コース:2005年1月14日〜16日
①コース:Jヴィレッジ/②コース:鹿児島県鴨池
20,000円
ムで開催された。
テーマは、午前中はシュートストップ、
午後はクロスを中心に基本要素の徹底を
そして、今回はこの中・高校生GKを対
の北海道プロジェクトスタッフが指導に
行った。昼食後は、2003年FIFA U-17世界
象としたトレーニング研修会と並行して、
当たった。ツ・ドームは直径80mの円形型
選手権におけるGKプレー分析の講義を約
指導者対象のリフレッシュ研修会も同日
ドームで、これを4つに区切り1グループ
1時間受けた。
開催された。テーマは、GKコーチングで
20〜25名の選手を2名のコーチが指導する
14日は吹雪の中、高校生GK60名が前日
13日にインストラクターによるコーチン
グ・デモンストレーションを受け、14日
に指導実践を行った。昼からの講義は、
2003年各年代の世界選手権の報告を選手
たちとともに受講した。
こうした形で、各地域においてナショ
ナルトレセン同様のGKトレーニングを
計画的に開催することができれば、選手
のみならず指導者間の共通認識や理解が
得られ、地域全体のレベルアップへとつ
ながるであろう。
北海道GKプロジェクトのスタッフも
事前にシミュレーションを行って準備し
ただけあり、指導の方向性も統一されて
いた。近い将来、雪などによる地域のハ
※会場までの交通費・宿泊費(1泊1万円前後)は別途参加者負担
ンディを克服して、この地域からナショ
ナルレベルのGKが育成、輩出されるこ
とを予感させた。
今後とも是非、継続していただきたい
※会場までの交通費・宿泊費(1泊1万円前後)は別途参加者負担。
とお願いすると同時に、他地域も北海道
2003年GKトレーニングキャンプより
32
約1時間受講した。
13日は朝から、90名の中学生GKを8名
© AGC/JFA news
に追随してほしいと強く思う。
33
報告
COACHING
FOR
GOALKEEPERS
GOALKEEPER PROJECT
日本女子サッカー、
強化・普及への
取り組み
GK
PROJECT
第1回関東GKキャンプより
藤原寿徳(GKプロジェクト/鹿島アントラーズ)
2004年1月31日〜2月1日の2日間にわた
①関東のユース年代のGKのレベルアップ
ップについてはJFAナショナルトレセンコ
り、東松山リコー研修センター(埼玉県)
および発掘
ーチが行い、2日目のブレイクアウェイに
にて、関東サッカー協会の主催による、
②各都県のGK指導者の研修および情報の
ついてはシミュレーションを行った上で、
第1回関東GKキャンプを行った。既に他
共有
地域の指導者が中心となって実践してい
のところ(北海道、四国など)では行っ
③関東GKプロジェクトの発足
ただく形式をとった。夜のミーティング
ている地域もあるが、関東のすべての地
域を対象としてGKトレセンを行うのは初
めての試みである。
関東エリアの各都県のGKトレセンの活
動状況としては、千葉県、群馬県、栃木
県などはGKプロジェクトを立ち上げてい
る。その活動は年間のスケジュールに組
現在、約28,000人の女子選手たちがJFAに加盟し、全国各地で活動している。
今回は指導者のレベルアップを図るための「女子チーム指導者研修会」と、全日本大学女子サッカー連
盟が主催する「大学女子サッカー地域対抗戦2003」の模様を報告する。
は、選手との対話を重視しながら各状況
各都県から指導者各2名、U-18およびU-
の映像を使って行った。指導者も2003年
15の選手各2名づつ、各都県トレセンの推
FIFAワールドユース選手権の映像を使い、
薦という形で参加してもらった。総勢選
ディスカッションを行った。
手31名、指導者15名の参加となった。
内容は以下のような形で行った。まず、
キャンプを通じて3つのテーマを掲げた。
み込まれ、年代別に指導され、数年前か
報告
女子チーム指導者研修会
2004年2月13日〜25日/兵庫県・淡路島
今回のGKキャンプを開催して以下のよ
うなことが感じられた。まず、各トレセン
小林美由紀(JFA女子委員会委員)
全国各地51名の
指導者が
女子サッカー
活性化のために
集まる
活動の成果として、各年代ともトレーニン
グにおいてはGKの専門的な技術、戦術は
2004年2月13日〜2月15日、女子チーム
ールあり」
「1対1の攻撃〜ボールあり」
「1
テゴリーに分かれて、ディスカッション
ら成果を上げている。他都県においても
1.Aggressive Goalkeeping:積極的かつ攻
確実にレベルアップしていると感じた(キ
指導者研修会が兵庫県淡路島の「アスパ五
対1の守備〜オフ・ザ・ボール」に取り組
を行いました。現状を把握し、問題点を
GK担当の指導者の配置など、ほとんどの
撃的なゴールキーピング、試合勝利への
ャッチング、基本姿勢、ポジショニングな
色」で開催されました。47都道府県の女子
みました。最終日には、それまでの2日間
挙げ、改善・解決法を、チームレベル、
都県において前向きな取り組みがなされ
積極的貢献、リーダーシップ。
ど)。しかし、それがどの年代においても
サッカーのリーダーを作るこの研修会も今
で行った実技テーマを参加者に割り当て
都道府県レベル、地域レベル、JFAレベル
てきた。2004年度には関東のすべての都
2.Good Position:各状況下でグッドポジ
ゲームの中で発揮できていないという点も
年で4回目となりました。受講者は、各都
て、指導の実践を行いました。
に分けて提示。翌日朝、地域ごとのディ
県においてGKプロジェクトが立ち上がる
ションをとり続ける。
挙げられる。これについては、状況を設定
道府県推薦者(秋田県、岐阜県、高知県、
講義では、今泉守正氏がビデオとパワー
スカッションでは、前日に出された内容
予定である。
3.Communication&Combination :短く、
したトレーニングをとり入れ、選手により
徳島県は欠席)と自費参加者を含めて51名。
ポイントで、2003年FIFA女子ワールドカ
を、実行できることからやっていこうと
ハッキリ、タイミング良く、DFとの連携
積極的な判断を促していくこと、また指導
男性21名、女性30名と、初めて女性指導
ップ、2002年FIFA U-19女子世界選手権に
いうことを確認しました。2003年度から
を的確に行う。
者がゲームの中でGKを指導していくこと
者が男性の数を上回りました。ライセンス
おける世界の流れから、日本の長所と課題
行ったU-12の8人制化、U-15の女子チー
の質を上げていく必要が感じられた。この
保持者の内訳は、公認B級コーチ(旧公認
を引き出し、課題克服のプロセスを紹介。
ム創設制度などについても話され、制度
点については今後の課題であろう。各年代
C級コーチ)6名、公認C級コーチ(旧地域
受講者たちはあまり見ることのない、女子
としては歓迎という意見が多くを占めま
した。
今回のキャンプをきっかけに今までの
取り組みをより充実したものにするとと
もに、指導者間のネットワークを作り、
情報を共有し、ハード面・ソフト面とも
この3テーマはナショナルトレセン、
に質を上げていけたら、という思いを胸
JFAのGKトレーニングキャンプと共通す
を通じて、コミュニケーションの部分も問
C級20名、準指導員8名)28名、公認D級
サッカーの世界レベルの映像を食い入るよ
にフレームを考えていった。
るものである。トレーニングは3セッショ
題と言える。伝えるべきことが具体的に伝
コーチ(旧少年少女サッカー指導員)6名、
うに見ていました。また、昨年末に制作さ
ただ、U-12については全国大会は開催
ン行い、シュートストップ、ブレイクア
えられないことが挙げられる。これについ
ライセンスなし6名。平均年齢も30.4歳と、
れた「JFAテクニカルレポート〜FIFA女子
してほしいという要望、U-15女子チーム
ウェイ、クロスの3つの状況についてトレ
ても課題といえる。
毎年若くなってきており、各地域で女性の
ワールドカップ2003」とビデオは、各都
創設奨励金の条件面の改善など、今後、
若い指導者を養成しようという機運が高ま
道府県で有効活用されるように、参加者全
検討の余地がある部分の指摘もあり、こ
ってきていることがうかがわれます。
員に配布されました。
こでの議論をまとめて、JFAに挙げていく
今回のキャンプを行うに当たり、次の
ことを主旨として掲げた。
ーニングを行った。初日のシュートスト
さまざまな成果と課題が明確になった
ことが今回のキャンプの一つの成果でも
あった。そして何より、選手一人一人の
この研修会は、女子サッカーの強化育成
取り組む意欲が素晴らしく、その中で多
のためにベクトルを合わせ、各地域での活
ーターズ)女子担
くのものを得た選手も少なくなかったは
動をより充実したものにしていくことを目
当・清水美香氏、
ずである。各地域の指導者の方も、とて
指して始められたものですが、実技、講義、
ウィメンズカレッ
も熱心に指導にあたられ、またその質を
ディスカッションの三本柱から構成されて
ジ事務局の小林美
向上させていくことに対して前向きな姿
います。今泉守正・U-19日本女子代表監
由紀が、JFA女子
勢を持たれていることが素晴らしい点と
督、本田美登里氏(岡山湯郷Belle)
、八木
サッカーの今後の
して感じられた。今後も関東GKプロジ
邦靖氏(水戸葵陵高校)、堀野博幸氏(早
施策を、堀野博幸
ェクトとしてのGKキャンプ、あるいは
稲田大学)、JFA女子インストラクター16
氏(早稲田大学)
その他の活動を継続して行くことが大切
名が、インストラクターとして、各セッシ
が、3月に発刊す
である。
ョンの中心となり進行していきました。
る「日本女子サッ
ご尽力いただいた埼玉県サッカー協会技
日本サッカーの課題を指導実践
などを通じて学ぶ
2003年GKトレーニングキャンプより
34
© AGC/JFA news
ク」について説明
しました。
2日目の夜には、
術委員長・小林武氏、また各都県協会の
方々、ご協力ありがとうございました。
必要性がうたわれました。
カーハンドブッ
今回開催にあたり関東サッカー協会理
事・大野真氏をはじめ、施設や運営面で
2日目は、CHQ(キャプテンヘッドクオ
実技では、受講者たちは4つのグループ
U-12、U-15、U-
に分かれて、U-15年代で重要なテーマ4つ、
18 、大学(一般)
、
「パス&コントロール」「1対1の守備〜ボ
レディースの各カ
女子チーム指導者研修会より
35
新しい制度や事業への要望も多数
各地域における女子サッカー活性
化のリーダーを養成
中でも要望が多かったのは、女子ナショ
今回で女子チーム指導者研修会は終了と
なり、今後は各都道府県のリーダーたちが
幅広いレベルの選手がともにプレーするこ
かけさせられ、有効な攻撃が妨げられてい
レンジ&カバーなど、守備のグループ戦術
とによる効果は大きい。
た。ボールを受けてからの突破だけではな
の向上が課題となろう。
ウィメンズカレッジやフェスティバルなど
全体としては、大学選手の技術レベルは
く、オフ・ザ・ボールの動きで相手を突破
ナルトレセンの実施でした。現在、ほとん
2泊3日という短い期間の中、盛りだく
を通じて、それぞれにあったやり方で、地
確実に向上しており、大学サッカーの成長
どの都道府県では、トレセン活動が行われ
さんの内容で、慌ただしくなりがちでした
域の女子サッカーを活性化していくという
を感じさせる大会であった。選手および指
ていますが、U-15やU-18の選抜大会が終
が、「参加して良かった」という声が、参
形を取ることになります。JFAとしては、
導者の情熱と意識も高く、今後の大学サッ
わってしまうと終わりというところも多く
加者の間から多く聞かれました。女子サッ
この研修会で得られた声を、これまでの施
カーの発展を大いに期待したい。
あります。また、年間を通じて活動をして
カーは指導者不足と言われていますが、各
策の改善やさまざまな案を出しながら、生
いても、その上の地域トレセン、ナショナ
都道府県には熱心に取り組んでいる指導者
かしていかなくてはいけません。
ルトレセンがないために、集まりがよくな
が必ずいます。ここに参加した若い指導者
い、指導者がいなくて満足に行えないとい
が、地域に戻ってそれぞれの熱い思いを伝
う地域もあります。女子インストラクター
え、この研修会で
多くの選手に、ファーストタッチで前を
たり、身体をぶつけることで相手の勢いを
普段のトレーニングからコミュニケーショ
をうまく利用して、地域トレセンにつなげ
できたネットワー
向く意識が強く感じられた。これは、普段
弱めるなど、コンタクトスキルの向上が重
ンの重要性を認識してもらいたい。
ていく方法を探っていこうという提案がさ
クを使って、地域
のトレーニングからの意識づけが、定着し
要課題である。
れました。
3.「個のレベル」の課題
(1)ボールを止めて、蹴ること
の活性化に努めて
つつあることを示していた。今後は、ボー
また、スポーツ少年団や全国中学校体育
いけば、女子サッ
ルコントロール直前まで周囲の状況を良く
連盟(中体連)に登録している女子選手の
カーにまた新しい
観て、適切な判断からのファーストタッチ
扱いについても、さまざまな意見が出され
波が出てくること
を意識することが重要であろう。
ました。現在、女子の大会には、3種また
でしょう。女子サ
は4種登録の選手でも出場することができ
ます。しかし、チームの試合となると、な
する意識を高める必要があろう。
(5)コミュニケーション
サッカーでは、選手間でのコーチングが
(3)ボールをめぐる闘い
非常に重要となる。
ルーズボールを足だけで奪い合ったり、
適切なコーチングには、自分の考えてい
相手に正対してボールを奪いに行くなど、
ることを、迅速かつ明確に相手に伝えるこ
ボール際の競り合いの未熟さが目に付い
とが必要不可欠である。しかし、ゲームで
た。
はコーチングの量と質の両者が、非常に不
瞬間的に相手とボールの間に身体を入れ
足していると感じられた。大学生選手には、
4.大会総括
(4)ボールを奪う
正しいポジショニングとチャレンジの優
各地域では、大会に向けてトレセンが実
先順位について、整理できていない選手が
施され、選手および指導者のネットワーク
全体的に、キックの距離、スピード、バ
みられた。加えて、ボールや相手の動きに
構築の契機となった。ピッチレベルでは、
ッカー間のネット
リエーションが不足していた。また、ノ
対応したステップワークができていなかっ
選手のレベルアップが実感され、大学女子
ワーク、種別間の
ー・プレッシャーでは正確なキックのでき
た。特に、スピードに乗ったシンプルな突
サッカーの活性化へつながる大会となっ
かなか選手を出すということが難しくなっ
ネットワーク、縦
る選手も、プレッシャーの中ではミスが目
破やボールと相手を同一視しなければなら
た。今後は、関係者が本大会での課題を共
ているのが現状です。その解決法として、
と横のコミュニケ
立った。そのため、質の高いキックを実現
ない状況では、容易に相手の突破を許す場
有し、改善への努力を継続していくことが
女子に限って二重登録を認めるなどという
ーションを進めて
する反復練習と、プレッシャーの中での正
面が見られた。
必要であろう。
案も出ましたが、継続して最善の方法を検
いけば、より多く
確なキックが課題となろう。
討していってほしいとのことでした。
のことができると
確信しました。
改善のためには、第一に守備の対人能力
を向上させる必要があろう。加えて、チャ
女子チーム指導者研修会より
(2)相手を突破する
(a) オン・ザ・ボール
大学女子サッカー活性化へ
「大学女子サッカー地域対抗戦2003」を開催
1対1の状況で、安易にパスを選択する
場面が多くみられた。相手ゴール前など
では、突破をしかけてゴールへ向かう意
識を強く持つ必要があろう。
また、優れたフェイント技術を持つ選
堀野博幸(早稲田大学/2002女子ユニバーシアード日本女子代表コーチ)
手も存在した。しかし、1対1の状況でフ
日本女子ユニバーシアード代表が、昨年8月の第22回大会(韓国・テグ)で、銀メダルを獲得したことは記憶に新しい。
同チームに多数の選手を送り出した、大学女子サッカーの地域対抗戦についてレポートする。
ェイントに時間をかけてしまい、相手に
囲まれてボールを奪われる選手も多かっ
た。状況に応じてシンプルに突破するな
1.開催概要
この大会は「地域の活性化と交流」
、
「普
セミナー、12日順位決定戦)
ーを始めた選手など、幅広いレベルの選手
○場 所:時之栖スポーツセンター(静岡
が参加した。
県御殿場市)
ゲームでは、卓越したスキルを発揮する
ど、的確な判断力の養成が重要である。
「観て判断すること」は、プレーの質を
高めるために不可欠であり、常に意識す
ることが課題となろう。
及・育成・強化に関する機会の増大」との
○参加者:全国6地域(北日本・北関東・
選手と、ひた向きにボールを追いかける経
目的から、前身の「学生選抜東西対抗戦」
南関東・東海・関西・西日本)からの選抜
験の浅い選手が、共存してプレーしていた。
を発展させ、全国6地域の選抜選手による
選手113名(大学1〜3年生)
そのため、優れたスキルを感じさせるプレ
代表歴を持つ選手でも、チェックやウ
ーが見られる一方、技術・経験不足に起因
ェーブなどオフ・ザ・ボールの動きが小
するプレーミスも見られた。このことは、
さく、その回数も少なかった。そのため、
幅広いレベルの選手がともにプレーする中
ボールを受ける時点で相手のプレッシャ
で、選手を強化していく難しさを表してい
ーを受けてしまっていた。
地域対抗戦となった。
2.概観
○期 日:2004年3月10日〜12日(10日ク
リニック&レクチャー;今泉U-19女子代
大会には、各年代の日本代表経験を持つ
表監督、11日予選リーグ&スポーツ科学
大学のトップ選手に加え、大学からサッカ
36
た。しかし、普及・育成という観点では、
(b)オフ・ザ・ボールの動き
ボールが保持できた場合でも、時間を
3月10日、今泉守正U-19日本女子代表監督によるクリニック&レクチャー
37
© Jリーグフォト
(株)
J F A
P H Y S I C A L
F I T N E S S
P R O J E C T
J F A
P H Y S I C A L
F I T N E S S
P R O J E C T
フィジカル、測定のすすめ
「フィジカルが弱い」とは、日本サッカーの課題などを論じる際に、よく耳にする言葉です。
この課題を克服していくには、まずは統一した測定方法や基準を定めて、客観的な測定値を算出していくことが第一歩
となります。そのために、JFA技術委員会は「フィジカル測定ガイドライン」を発行、その第一歩を踏み出しました。
JFAフィジカルフィットネスプロジェクト
フィジカル測定ガイドライン
JFA技術委員会では2月に、①日本全体のフィジ
カルベースを上げるため、そのための指標として
のフィジカル測定の実施と活用を確立する、②日
本のパフォーマンスを相対的に評価するために、
世界の指標と比較する、③日本全体の普及レベル
も含めその指標を活用するため、代表レベルの指
標と比較可能な普及レベルの指標を確立し、ガイ
ドラインを提示して、全国レベルで実施できるよ
うにする、この3つを目的に、「フィジカル測定
ガイドライン」を制作・発刊しました。
フィジカルの課題もまた日本全国で共有
し、全体としての取り組みをすべきです。
【内 容】
緒 言:フィジカルフィットネスプロジェクト活動の
目的、内容、計画
第1章:フィジカル測定ガイドライン発刊の目的・主旨
第2章:世界の指標
第3章:代表の測定について、実施報告および結果
第4章:全国で同じ指標をもつ
第5章:測定のガイドライン
第6章:結果の活用
第7章:まとめ
※購入方法などは本誌56ページを参照ください。
種目としては、以下の11種目を選びま
した。
以上の観点から、日本全体で共有できるよ
チームの指導者、そして個々の選手にフ
③横断的見方:1つのグループの1回の測
④縦断的見方:継続的に長期にわたって同
ネスレベルの向上を確認していきます。日
ィードバックし、それを基に今までのトレ
定の結果全体を見て、その中における個々
様の測定を行い、個々の選手の結果を追っ
本全体が同じ測定方法と基準を共有するよ
ーニングを評価し、今後の計画や目標設定
の選手の位置や特徴を見ます。その上で、
て、その選手のフィットネスレベルの変遷
うになれば、年齢が上がってチームが変わ
う、JFA技術委員会では『JFAフィジカル
①50m走(ダッシュ、最高スピード)
に生かしていくことが必要です。フィード
弱点の克服や長所のさらなる向上を処方す
を見ます。例えば入学時の値と、2年次、
っても、チームをまたがって個人の成長を
測定ガイドライン』(上記参照)を作成し
②バウンディング/ホッピング(下肢筋力、
バックは測定における必須の要素であると
るための手がかりとします。また、同年代
3年次の値を比較し、どのように変化して
追っていくことが可能になります。
ました。考え方は、「世界の中の日本、日
ジャンプ力、体幹バランス、瞬発力、片
言って過言ではありません。
の代表あるいは同年代の選手たちとの値と
いるのかを見ます。年代に応じて選手とし
比較し、フィットネスレベルを確認します。
て成長していくのに伴う各要素のフィット
本の中の自分」です。すなわち代表チーム
足支持能力)
「測定しっぱなし」にならないようにしま
レベルでは、世界と比較できるよう、世界
③スローイング(全身パワー)
しょう。チームのトレーニング、本人の成
のトップレベルで広く実施されている方法
④ロングキック(キック力)
長・向上の確認およびその後の処方のため
をとること。しかし、それを全国で同じよ
⑤10m×5シャトルラン(ダッシュ、スト
のフィードバックを必ず伴うようにしまし
うに実施することは困難であることから、
ップ、方向転換)
ょう。
まとめ
有用な情報が得られるような、全国で実施
⑥垂直跳び(パワー、筋力)
可能な、簡易なフィールドテストを行える
⑦マルチステージ(持久力)
ファイリングして保管、蓄積していくこ
ようにすることです。
⑧VMA「45-15法」
(持久力)
とで、そのチームとしても選手個人とし
1.フィジカル測定
⑨アジリティテスト1(動きの巧さ、スム
ても、貴重な資料が得られることになり
2.→世界の基準と比較
ます。
3.日本のトップの測定に基づき、全国でも測定
設定したフィールド種目の条件として
は、以下に留意しました。
ースさ、ステップワーク)
⑩アジリティテスト2(動きの巧さ、スム
ースさ、ステップワーク)
・簡易にフィールドで実施できること
・普及レベルで一般に実施しても大きな誤
的持久力)
との相関がある程度明確となること
38
→
日本のトップの現状把握
活用の可能性
5.1・2と比較
6.フィードバック。結果をそれぞれの次元でその後の取り組みに活用する。
得られた測定値は次のようなケースに活
7.トレーニングを重ね、また測定する…
用されることが想定されます。
結果の活用・管理
定したい項目が適切に測定できるもの)
・世界や代表レベルと比較可能なラボ種目
以上、述べてきたことを整理すると、このガイドラインで提案しているのは、以下のサイクルとなります。
4.全国で現状を把握
⑪YOYO Intermittent Recovery Test(間欠
差が出ないようにすること
・測定の目的の面から見て妥当なもの(測
1年に1〜数回程度の測定となりますが、
比較した上で見えてくる日本人のフィジカル面の課題を日本全国で認識し、共有しましょう。
①シーズン開始前のフィットネスレベルチ
測定結果は活用してこそ意味があるもの
ェック
です。測定そのものが目的なのではありま
②コンディションチェック、トレーニング
せん。
成果のチェック
それを出発点として、これから具体的な取り組みに向け、アクションを起こしていきたいと思います。
今回のこの測定をはじめ、今後これから提案する種々の指針をもとに、是非、共同で取り組んでいただき、全員の力で「壁」
を乗り越えていきましょう!
39
公認キッズリーダー養成講習会
内容概要
公認キッズリーダー、
公認キッズリーダー
インストラクター養成はじまる
© Jリーグフォト
(株)
山出久男(技術委員会委員)
公認キッズリーダー、養成の目的
技術委員会では2003年度にキッズ(U-6、
U-8、U-10)指導ガイドラインを作成しま
したが、まだ内容・コンセプトがしっかり
す。キッズプログラムは、U-8、U-10まで
公認キッズリーダーは子供たちに日常的
の年代も含んだものであり、今後は、U-8、
に関わる大人。サッカーの指導者の皆さん
U-10についても取り組みを考えていく必
はもちろんのこと、幼稚園の先生、保育士、
要があります。
小学校の先生、保護者の皆さんなどを想定
そこで、キッズが日常的にスポーツやサ
しています。日常的に子供たちがからだを
浸透しているとは言えない状況です。また、
ッカーを楽しむための望ましい環境を保障
動かすことを思う存分に楽しむことができ
キッズへの取り組みも、既存の活動や各都
できるように、指導・オーガナイズに当た
るよう、サポートする大人となることが目
道府県サッカー協会にて先立って開始して
る「公認キッズリーダー」の養成を開始し
標です。年にわずか数回の特別な巡回指導
いただいている活動もあり、さまざまです。
ます。その養成を通して、ガイドラインの
の機会ばかりでなく、それ以外でもより日
ところで、今までU-12(第4種)のカテ
考え方を浸透させ、キッズ年代のための望
常的に子供たちが楽しめるような環境をつ
ましい環境を整えたいと考えています。
くることが目標です。
ゴリーでは、より下の年代キッズ(U-6、
U-8、U-10)の指導についての指針があり
また、公認キッズリーダーを各都道府県
公認キッズリーダーインストラクター
ませんでした。そこで技術委員会では、特
のニーズに応じて、できるだけ多く適切に
は、各都道府県において、ニーズに応じて
に成長の著しいキッズをU-10としてひと括
養成したいという思いから、各都道府県2
公認キッズリーダーを養成すると同時に、
りで扱うことには無理があるという認識に
名ずつの「公認キッズリーダーインストラ
公認キッズリーダーに対するアドバイザー
立ち、U-6、U-8、U-10について、それぞ
クター」を養成することとしました。本来
となり、各都道府県でのキッズのための環
れのガイドラインを提示したものです。
であれば2名では当然足りないとは思いま
境作りに指導的な立場をとり、アドバイザ
しかし、各都道府県ではキッズプログラ
すが、まずは2名で立ち上げさせていただ
ーとして活動することを目標とします。
ムの一環でキッズがU-6に特化した形で始
き、今後さらに充実させていきたいと考え
まってしまっているケースが多く見られま
ています。
コンセプト
子供像(全体像の中で、対象となる年代像)
求められる指導者像
社会的環境
指導のポイント
実技
●各カテゴリーの考え方
U-6
おにごっこなどで判断する能力を養う
多様な動きでバランス感覚を養う
身体全体を使っていろいろな形でボールに関わる
子供たちが楽しく身体を動かせるようにする
子供たちがスポーツに楽しく関わることのできる環境づくりを目指します。
キッズの指導者は子供たちが一番はじめに出会う指導者です。子供たちがスポーツ・サッカーとの
良い出会いができるようサポートしていきましょう。
2004年度開催概要
おにごっこなどで判断する能力を養う
多様な動きでバランス感覚を養う
身体全体を使っていろいろな形でボールに関わる
スキル獲得のための基礎的な動きをとり入れる
ボールに慣れ親しむことに重点を
子供たちが楽しく身体を動かせるようにする
子供の目線でわかりやすい言葉で声かけを
U-10
おにごっこなどで判断する能力を養う
ボールマスタリーの反復トレーニングを中心にスキル獲得
「蹴る」ことの意識づけ
ボール集めゲームなどで判断の習慣づけを
ゲームではゴールを意識したプレーやボールを奪う意識づけ
全ての子供に声かけできるように
子供の目線でわかりやすい言葉でアドバイスを
【目的】
サッカー競技の普及・発展を図るため、特にキッズ(U-10・8・6)を対象にした
サッカーを含む身体を動かすことの指導にあたる指導者の養成を目的に実施する。
【主催】
(財)日本サッカー協会
【主管】
47都道府県サッカー協会
【受講資格】
受講を開始する年の4月1日現在、満18歳以上である者。
【内容】
実技 1.5時間、講義 1.5時間
【開催期間】
2004年5月〜2005年3月
【開催場所】
47都道府県単位で開催
【講師】
公認キッズリーダーインストラクター
【受講料】
47都道府県サッカー協会にて設定。
【受講申込方法】 各都道府県サッカー協会に開催の日程、会場、費用などを問い合わせ後、所定の
手続きにて申し込みを行ってください。
公認キッズリーダーインストラクター養成研修会
公認キッズリーダーインストラクター
●U-6、U-8、U-10、Allのリーダー
養成を実施
●リーダー養成を通して各都道府県
でのキッズの普及。各リーダーの活
動のヘルプ。キッズに関する全般の
アドバイザー的な役割を果たす
要件
40
公認キッズインストラクターは各都道府県2名ずつ全部の年代に関して研修してもらいますが、そ
の2名がどのような分担で養成講習会などを行うかは、各都道府県に任せます。ただし、公認キッズ
インストラクターにはキッズ年代全体について研修していただきます。全体像の中で各年代をとらえ
ることが重要であると考えています。
公認キッズリーダーは、子供たちの成長による変化が年代により著しく、U-6、U-8、U-10はそれ
ぞれで大きく異なることと、指導自体は特定の年代を担当するケースも多いことから、U-6、U-8、
U-10、ALL(全ての研修を希望する場合)を分けられるように準備しています。それでも、リーダ
ーに対しても、必ず全体像を伝えつつ、それぞれの年代について講習を開催するようにしてください。
全体像の中で各年代をとらえてもらうようにすることが重要です。
U-8
機能
© Jリーグフォト
(株)
各都道府県のニーズ状況に応じて、U-6、U-8、U-10各別々あるいは、あわせて行
うことを可とします。
© Jリーグフォト
(株)
●子供が好きな方
2004年度開催概要
【目的】
【主催・主管】
【受講資格】
【内容】
【開催期間】
【開催場所】
公認キッズリーダー養成講習会の公認インストラクターを養成することを目的に
実施する。
(財)日本サッカー協会
(1)公認C級コーチ(旧公認準指導員)以上で、2005年度に公認キッズリーダー
養成講習会の公認インストラクターを務める予定の者
(2)都道府県サッカー協会技術委員会の推薦を受けた者(都道府県2名まで)
キッズリーダー養成1コース受講、理論、実技、指導実践(実技)
、講義(論理的
思考を育む)
、リーダー養成開催に関するインフォメーション
2004年5月14日〜16日
日本エアロビクスセンター
●JFAキッズプロジェクト、ガイド
ラインに精通している方、またはし
ようとしている方、共感できる方
●メールなどの操作ができたり、IT
に興味のある方
●オープンマインドで新たな教育を
受けようとする意思のある方
●サッカーを愛している方
※公認キッズリーダーインストラクター養成研修会の詳細は本誌第2号にて報告します。
41
「今」をとらえる指針
『再検討し、必要な修正や追加を加えつつ、進めていくものである』
世界の
トップ
を
目指して!
そして、これらの指針は、教科書的なもの
ーの世界大会から、 世界 との比較で日本の
ードバックして再検討し、指針を定期的に作
年代別指導指針①
10
JFA技術委員会
2歳刻みの指針の意義
『それぞれの年代で目指すこと、やっておくべきことは異なる』
ユース年代は成長、発達、発展の過程にあ
り、年々大きく変わっていきます。U-12の子
供たちとU-16の少年たちをひと括りに考える
ことはできません。発育・発達の過程では、
その時々でさまざまな要素が異なる速度で発
達していき、人は一直線に比例して成長して
いくわけではありません。そのため、それぞ
れの年代で異なる特徴を示します。
それに伴い、サッカーの育成においても長
期的な育成の過程の中で、それぞれの年代で
目指すこと、やっておくべきことは異なりま
す。大人でやることをそのまま縮小すればい
いというものではありません。したがって、
トレセンも2歳刻みで活動しています。それぞ
れで追求すべきテーマは異なります。
そういった観点から、今回、2歳刻みで指針
を提示することとしました。
キッズU-6から開始し、U-8、U-10のキッズ
年代の指導ガイドラインを初めて提示しまし
た。続けてU-12からもナショナルトレセンの
年代にあわせ、U-14、U-16と2歳刻みで提示
していきます。
育成において、U-12からU-16が、同じ取り
組みをするわけではありません。同じ課題を
克服しようとする場合でも、それぞれの年代
ですべきアプローチが異なるからです。今ま
ではユース全体で指針を提示していましたが、
各年代でのアプローチを詳細に示してこなか
各年代の課題とは
『短期的な取り組みで解決するもの、
あるいは中・長期的取り組みを要す
るものとがある』
一つのポイントとして、例えばU-12の課題、
指針は決して「世界のU-12」との比較のみから
導き出されるものではありません。A代表が世
界の中で闘っていくために、克服しなければな
らない課題がありますが、それには、短期的な
取り組みで解決するもの、あるいは中・長期的
取り組みを要するものとがあります。
現在の日本サッカー全体の課題のうち、
中・長期的な課題に関しては、ユース、キッ
ズの年代から取り組んでいかなくてはなりま
せん。その効果が現れてくるのは、何年も先
になるかもしれませんが、取り組みはしてい
かなければ変わりません。中・長期的な課題
の多くは根本的な課題です。それらに早期か
ら取り組むことで、ベースを上げて、代表チ
ームのレベルアップにつなげていきます。代
表チームは 代表の強化のみ で強化される
ものではありません。ユース、キッズ、そし
てそれらを日常的に指導する指導者全体がレ
ベルアップし、さらに環境が改善されること
で、総合力で向上していくものです。
各カテゴリー世界大会
長期一貫指導
課題の克服
分析/評価
課題の抽出
克服のシナリオ作成
ったので、そのため多少なりとも誤解を受け
ることもあったように思います。今回は現在
の日本の課題を抽出し、その解決に向けて、
それぞれの年代でやるべき指針を提示します。
長期的課題
42
育成の全体像
『多くの指導者のリレーによって、選手たちは育成され、次の段階へと送り出されていく』
全体像の中で長期的視野に立った育成のコ
ンセプトを持って指導に臨むことが重要です。
各年代は、それぞれ育成で特有の期間に相当
します。それぞれが特有の特徴をもっていま
す。それに合った過ごし方をすることが重要
です。
何よりも1人の選手の育成は、子供時代か
ら大人に至るまでの長い過程の中で、多くの
チームや指導者の手を経て、実践されていく
という特徴があります。多くの指導者のリレ
●止める・蹴るの技術が不十分
ーによって、選手たちは育成され、次の段階
へと送り出されていきます。どうか、その選
手の最終的な像を思い描きつつ、リレーをし
ていっていただきたいと思います。その年代
で果たすべき役割を果たした上で、次の年代
の指導者へとバトンと渡してください。その
時々の小さな勝利や成功を唯一の価値と考え
るのではなく、子供たちが大人になった完成
形のときに最高のパフォーマンスにいたるよ
う、下から順に積み重ねて行ってください。
長期的なプロセス、全体像の中のどの一部
であるかを意識しつつ、育成に当たることは
非常に重要です。ユースの育成に関わる、す
べての指導者が、常にこの全体像を思い描き
ながら、その役割を果たしていただければと
思っています。
次回より各年代指導指針について、抜粋を
紹介していきます。
サッカーの本質(ゴールを奪う、ゴールを守る)の意識
サッカーの本来の目的に立ち返る!
●点が入らない(狙っていない、も含め)
●自己判断能力が低い
●ゲームを読む能力、かけひきの能力が低い
U-16
やりたいことから
やるべきことへ
U-14
考えながら
U-12
感覚的に
全般
コミュニケーション 試合の流れ
かけひき
技術/戦術
大人のサッカーの入口
心構え
Be Alert
チーム戦術
徐々にミスは許されなく
なる
コンペティション、試合
に向けての生活、コント
ロール
リーダーシップ
アイコンタクト
スポーツ選手として
食事の質と量
生活を考えていく
「なぜ」を考える
自分自身で「なぜ必要
か」を考えつつ行う
なげかけ−やりとり
感覚から言葉へ
セルフコントロール
Be Alert
コーチングの声
リーダーシップ
アイコンタクト
自己判断、表現
仲間意識
集団に参加
トライ&エラー
失敗から学んで工夫する
良いゲームを観る
考える
自分に戻す
喜怒哀楽を出せる
自己表現できる
大きな声!
元気良く!
励ます声
負けず嫌い
ミスを恐れない
コミュニケーション
様々なゲームの体験
→対応していく
自分たちでミーティング
をし、ゲームができる
サイドコーチでゲームを
つくるのではない
ボールコントロール獲得
ミスを恐れない
結果ではなく過程
自分たちでやる機会
ゲームをつくる経験
好き嫌い無く何でも
食べる
早寝早起き、規則正しい
生活
ゲームを読む
Read the Game
トライ
コーチングの声
1対1
守備
U-10
1対1
攻撃
ファーストタッチ
得点力
プレッシャーの中での
キックの質(スキルの発揮)
ゲーム状況に応じた最適
なファーストタッチ(ゴー
ルに向かう/ボールを失
わない)
落ち着き
自信
自分のパターンを持つ
プレッシャーが増す中で
強さ
精度
タイミング
常にゴールを意識する
狙いを持ったシュート
正確にボールをコントロー
ルしシュートコースを持つ
ボールの置き場所
GKとのかけひき
ボールなしの準備
状況の中で判断を伴う1
対1(ゲーム状況、エリ
アなど)→行くか行かな
いかの判断を的確に
取りどころの整理
状況に応じた有効なプレー
の選択
グループ戦術の導入
グループの中での個
オフ・ザ・ボールの導入
ポジションの専門性への
導入[ポジションの役割
の理解を深める。決めつ
けない(成長が終わるま
では特に)]
ポジションの意識
エリアの意識(3ゾーン)
空間認知
奪うチャンスを逃さない
相手に自由にさせない
チャレンジ&カバー
正しいポジショニング
積極的なしかけ
オフ・ザ・ボールの良い
準備
パスorドリブル
選択肢を持とう
積極的に前を向く
相手がいても隙があれば
正確に前を向く
相手がいる中や動きなが
らでもゴールを意識した
コントロール
オン・ザ・ボール
個人技術、個人戦術
様々なポジションの経験
取られたら取り返す
最後まであきらめない
スライディング
守備の技術
ボール保持の姿勢
顔をあげる
両足を使える
様々なフェイント
左右どちらにも抜ける
次のプレーを意識したコ 常にゴールを狙い、シュー スキル
ントロール
トを打つ
両足でのキック
常にゴールを意識したボー
正確性の追求
ルコントロール
多種多様なキック
失うことを恐れない
(ボレー、オーバーヘッド
ボールコントロールの技
など)
術(浮き球、右・左等)
ヘディング
やりたいことが自由自在、
思い通りにできる
ゲーム戦術
エラーを繰り返さない
自己判断、表現
自己責任
得点力を磨く
様々な球質の使い分け
相手がいる中で
強さ、精度
タイミング
フィジカル
(食事、休養)
筋力・パワー、強さ
コンタクト
持久性
スピード、速さ
コーディネーション
(ウォームアップでドリル)
クラムジーへの対応
コンタクトスキル
・相手の力を使う
・タイミング
・腕も身体の一部
コーディネーション
コンタクト導入
(嫌わない)
スクリーン、バランス
コンタクトを嫌わない
コンタクトスキル
ユース育成
指導者養成
成し直していきます。世界も変わっていくし、
我々も取り組みを続け、その時々の課題を克
服していくからです。
今回のこの指針は、ポスト2002の今をとら
えたものです。そのためあらゆる要素を網羅
することではなく、各年代で今集中的に取り
組むべき課題を特にとり出しています。
●1対1の攻守が弱い
代表チーム
中期的課題
課題を分析、抽出するというものです。4年
ごとのFIFAワールドカップ、4年ごとのオリ
ンピック、2年ごとのFIFAワールドユース選
手権およびFIFA U-17世界選手権などがそれに
相当します。今後もそれらの大会でテクニカ
ルスタディグループを編成してテクニカルレ
ポートを作成するとともに、その結果をフィ
日本サッカー全体の課題
課題の克服
短期的課題
世界をスタンダードとした強化策の推進
ではなく、その時々の「今」をとらえ、その
「今」の課題に具体的に集中的にアプローチす
ることを考えます。したがって、節目ごとに
再検討し、必要な修正や追加を加えつつ、進
めていくものであると考えています。
JFAでは、世界をスタンダードとした強化
策の推進を掲げています。つまり各カテゴリ
ゴールデンエイジ パーフェクトスキルを目指せ
顔が上がる→アイディアが出る
U-8
目覚めのとき プレ・ゴールデンエイジ 跳躍の準備
U-6
サッカー、スポーツとの出会い
身体を動かすのが大好きな元気なこどもに
普及
チーム対チーム、チームの中の自分
自分と味方、みんなでプレー
自分と相手とボール
自分とボール
ボールをゴールに入れる
↑
ボールがほしい
ゲームで生きる技術(スキル)
をU-12のうちに身につける
※「JFA 2004 U-12指導指針」は好評発売中です。購入方法等は本誌56ページをご参照ください。
様々な形でボールと関わる
様々な動きの経験、動きづくり
身体を動かすのが好きな子供に
43
審判員と指導者、
ともに手を取り合って…
C O O R D I N A T I O N
B E T W E E N
T H E
F I E L D S
O F
R E F E R E E I N G
第2回
2004年に向けての準備
A N D
T E C H N I C A L
レスリー・モットラム(JFA審判チーフインストラクター)
© Jリーグフォト
(株)
2004年シーズンのスタートに先立った
施されるレフェリングの正しいスタンダ
ミュニケーションがとられ、生産的なも
レフェリーのコーチングと指導は、主に
ードについて、説明をした。これらの訪
のとなり、結果としてレフェリーとコー
サッカーの2つのエリアから得られた情報
問は、Jリーグ担当レフェリーが行った。
チが、サッカーのさまざまな面に関して
に基づいて行われている。2003シーズン
ビデオを見せ、これらの事例に対し、ど
相互の尊重を改善させる結果となった。
のJ1の全試合、およびJ2から選ばれた数
のように判断がなされるのかを説明した。
試合を見た後、各レフェリー個人ごとの
レフェリー、プレーヤー、コーチング
他にも2つ用意した。一つはペン記者を中
パフォーマンス、そしてレフェリーの全
スタッフ間のディスカッションも活発に
心としたメディア、もう一つは実況、解
般のパフォーマンスを評価できるように
なされた。これは、事例に対する正しい
説者を中心としたメディアを対象とした
なった。試合のビデオを見ることで、反
判定を強化するばかりでなく、それぞれ
ものである。ここでもスタンダードビデ
スポーツ的でコントロールが必要なプレ
の立場の間の建設的なコミュニケーショ
オを見せて説明した。願わくは、この知
ーの特定のパターンを認識することもで
ンのベースをつくるためのものである。
識が、彼らがサポーターたちに正しいイ
きた。
このコミュニケーションが、サッカーで
ンフォメーションをレポートするための
必要なコミュニケーションを促進するこ
一助となることを期待している。
これらの情報から、最近の試合から事
例を集めたビデオを作成した。事例の選
とを期待している。
その他、教育用のセッションとして、
私は前回の創刊準備号の記事で、サッ
う観点で行い、また、反スポーツ的な特
カーのレフェリングと技術分野の協調を
すべてに関わる重要な領域であることは
確かである。
からの反応はさまざまであった。しかし、
定のパターンも選択した。このビデオは
改善する方法の一つは、プレーヤーとコ
「スタンダードビデオ」とも呼ぶべきもの
ーチが、レフェリーがプレーヤーのコン
そして、我々がここ日本で達成しよう
であり、我々レフェリーに期待される正
タクトやチャレンジをどのように判定す
としているレフェリーのパフォーマンス
しいスタンダードを示している。
るのかについて、実践的な知識を高める
のスタンダードと、最近の他国からのレ
ことであると述べた。Jクラブ訪問で行っ
フェリーに見られるスタンダードの間に
たこれらのセッションは、それを達成す
は、明らかな差がある。特にアジアの
るために一助となるものである。
国々からのレフェリーのスタンダードは
項目は以下のとおりである。
○フィジカルコンタクト
すべてのプレーヤーとコーチたちを対
象としたセッションと並んで、レフェリ
ここ日本でプレーヤーのディレイの戦術
○ディレイ
ーとコーチングスタッフの「セカンドミ
がどのようにコントロールされるかであ
○ホールディング
ーティング」も用意していた。コーチた
る。しかし、他の国のレフェリーの場合
ちのリクエストに応じて、さらにディス
○異議
カッションと説明を行った。
U-23日本代表がアテネオリンピックの出場権を獲得しました。
大熊清U-19日本代表監督による山本昌邦監督へのインタビューを中心に、川俣則幸GKコーチからの報告、菅野淳フィ
ジカルコーチからの報告を通じて、
「アジアサッカー 最終予選2004」を振り返ります。
アジア サッカー最終予選2004・成績表
グループB
1
U-23日本代表
2
U-23バーレーン代表
は、ほとんどが無視される。
日本では2年前に、この種類の反スポー
○オフサイド
このセカンドミーティングは、コーチ
ツ的行為はコントロールされるべきだと
○挑発的行為
とレフェリーが互いの間に存在する問題
決定された。そうしないと、素速く自由
点を話し合い、互いの領域に対する相互
な流れるような我々のサッカーのスタイ
本ビデオは、1級審判員、審判インスト
の理解に至るのに、大変有用な機会であ
ルを守ることができない。そして、この
ラクター、審判インスペクター全員に見
る。したがって、この機会を活用したの
コントロールの成功例は、Jリーグの試合
せた。また、すべてのJクラブ、J1の16ク
がJ1のわずか4クラブ、J2の10クラブのみ
では容易に見られるようになっており、J
ラブとJ2の12クラブを訪問し、プレーヤ
だったのは驚きであった。実際に行われ
リーグの試合では、ディレイはほとんど
ーとコーチに対し、2004年シーズンで実
たミーティングについては、有意義なコ
見られなくなっている。
44
3大会連続、オリンピックへの出場権を獲得
定まっておらず、この差の一つの例は、
○シミュレーション
○反スポーツ的行為
© Jリーグフォト
(株)
プレーヤー、コーチ、メディア担当者
択は、レフェリーのパフォーマンスとい
このビデオで扱ったレフェリーの判定
U-23日本代表、
アジア サッカー
最終予選2004
3
4
U-23アラブ首長国連邦(UAE)代表
U-23レバノン代表
日本
バーレーン
UAE
レバノン
UAE
△
0
-
0
○
2
-
0
○
4
-
0
JPN
●
0
-
1
○
3
-
0
○
2
-
1
UAE
△
0
-
0
●
0
-
3
○
5
-
3
JPN
○
1
-
0
○
2
-
0
△
1
-
1
UAE
●
0
-
2
○
3
-
0
○
4
-
2
JPN
●
0
-
3
●
0
-
2
△
2
-
2
UAE
●
0
-
4
●
3
-
5
●
2
-
4
JPN
●
1
-
2
△
1
-
1
△
2
-
2
勝点
得点
失点
差
13
11
2
9
11
9
7
2
7
9
11
-2
2
9
18
-9
アテネオリンピックの出場権をかけた「アジア サッカー最終予選2004」、日本・UAE・バーレーン・レバノンのグループBは、ダ
ブルセントラル方式(2か国開催)にて実施。
日本はUAEラウンド(3月1日〜5日)で初戦バーレーンに引き分けるが首位にて折り返し。日本ラウンド(3月14日〜18日)では初
戦バーレーンに敗れたが、レバノン、UAEに連勝して、アテネオリンピック出場権を獲得した。
日本は1996年アトランタ大会、2000年シドニー大会と3大会連続、通算7回目の出場。
45
U-23日本代表チーム・活動記録
アジア サッカー最終予選2004を振り返る①
1月
〜インタビュー、山本昌邦監督に聞く
前半はもう『0-0か、0-1で良
い日本にいて、暑さに慣れるための準備
い』と言っていました。1点負け
をして、時差にも慣れるためにUAEに早
ていても後半1点返して入れれば
めに入り、時差と暑さと両方調整して初
いいから、最後は相手が落ちて
戦に備えましたが、日本に帰ってきたと
きたところで、我々は新しい選
きにまた時差調整が当然あるわけです。
手を入れていこうと思っていま
ションを3月1日に向けてつくっていくと
寒さについては他の国よりも慣れている
した。体調さえなんとか保てれ
© Jリーグフォト
(株)
コンディションつくり、5秒の質・競争意識の徹底・・・
ことを徹底しました。
なった要素は、 往復
厳しい状況でした。
になったこと。寒
フ明けの準備からアジアでの戦い
−−−山本さんは常々この年代では連続して
出るかもしれないという非常に
日程については、我々にとってきつく
○聞き手:大熊清(U-19日本代表監督)
○取材日:2004年3月26日
オ
行うこととなりました。
出ることが意義があるとおっしゃっていまし
逆に奪ったときの5秒の質としては、ど
いう作業を重視しました。第二にアラブ首
ことであるのであまり問題はありません
ば、相手よりもスタミナ的に最
た。3大会連続ということで、本当におめでと
れだけ早く出ていけるかということ。もし
長国連邦(UAE)での戦いに備え、暑熱
でしたが、 時差の往復
後に動けるのは我々だという計
うございます。
くは、 取れるな
対策が必要となりました。
身体的にはダメージがありました。他の
算はありました。本当に最後に
国の選手たちは元々向こうにいるので、
点がとれて、結果が出せて、こ
と思ったら出始めるく
ということで、
まずは5週間、試合を入れると7週間の準備
らいの、そのような質の向上を図ろうとい
宮崎の合宿(1月19日〜23日)を、フィ
について、そしてチームコンセプトについて、
うことを、攻守の間の時間については徹底
ジカルのコンディションづくりとベースを
最初のラウンドは何の問題もなく入って
の試合で勝ち点3がとれたという
ここだけはチームとして大切にしたというと
しました。
上げていくというテーマでやり、その後、
くる。日本に来るときに調整が必要にな
のが、全体で眺めたら非常に大
今までは口頭では伝えていても時間がな
暑熱対策のためにオーストラリアでキャン
りますが、片道の調整で済みます。往復
きかったです。コンディション
くてなかなか徹底できなかったことを、今
プを行いました(1月25日〜2月2日)。そ
の調整が必要となるということで、多少、
的に当然疲労もある中で、それ
「チームとしては、守備についてはボール
回はキャンプの期間が十分あったので、個
こでは戦術的な練習も量を増やし、帰って
我々がきつくなった面はあります。
」
に輪をかけてあのような問題が
中心の守備、コンパクトなエリアをつくっ
人のところから、グループ、そしてチーム
きてトレーニングマッチをU-23イラン代
て、その中でグループでボールをどう奪う
ということで積み上げていきました。
」
表(2月8日)
、ロシア代表(2月11日)
、U-
ころについて、お聞かせください。
のか、それもできれば高い位置でボールを
奪う、ということをテーマとしました。
23韓国代表(2月21日)と3試合こなして
−−−コンセプト以外に、このチームでメン
攻撃については、ダイレクトプレーが
タルなどで、アジアを闘う上でここだけはし
まずあって、その後がボールポゼッショ
っかりしようということはどのようなことだ
ン。あくまでもダイレクトプレーをイメ
ったのでしょうか?
ージしながらポゼッションするかという
UAE戦での勝利、出場権獲得へ
大きく前進
いきました。
」
「いつも必ずしも環境が整って良い状況だ
からは、スペースをクリエイティブにど
けではないわけで、厳しい状況の中で、ど
う活用するかということで、ボールと人
うやって戦うのかということを徹底してき
をどんどん追い越していくイメージの動
ました。
よく逞しく闘ったと思います。
マイナス要因はありましたが、
それは選手に一切伝えずに闘い
−−−最終予選全体を振り返ってみてどうで
ました。試合も体調が悪い選手
−−−アジアサッカー 最終予選2004の戦い
したか。流れの6試合の中で、ターニングポイ
たちはわかっていましたが、弱
を終えてみて、大会日程についてはどうでし
ントがあればお聞かせください。
気なことを言うと選手たちがど
んどん精神的にも落ちていって
たか。
ことをテーマとしました。今年に入って
きを徹底しました。
発生して、その中で選手たちは
「全体で言うと、やはり初戦のバーレーン
「厳しいことは間違いありません。それは
相手も我々も同じ条件です。
全体の20人をどう使うか。もっと言え
しまうこともわかっていたので、
にしっかり勝ちきれなかったということが
『やるしかないんだ!』『そのた
誤算となりました。さらに、3月4日に大
めに俺らはやってきたんだか
量に体調不良が出てしまったことで、本当
ら!』というようにメンタル面
に厳しい戦いを強いられました。
をつなぎながらゲームに入りま
あとは選手に伝えることだけではなく
ば、1月のキャンプに招集した37人がチー
また、攻守の切り替えのところでは 5
て、常に競争させることをやってきまし
ムです。UAEラウンドに臨む選手と日本
ゲームの中の流れでは、初戦のバーレー
秒の質 を上げようということを徹底して
た。それは我々が環境的につくっていく
ラウンドに臨む選手は入れ替えることがで
ン戦で、立ち上がりに我々が主導権を握っ
本当に全力を出し切って精も
やってきました。要するに、人を追い越し
ところです。例えば、フィジカルトレー
きるわけで、それはプラスアルファで加え
て点を取りにいきましたが、そこで点を取
根も尽き果てたような試合でし
ていくわけだから、当然リスクもあります。
ニングにしても、同じようなポジション
られるイメージをもって準備はしておきま
りきれませんでした。結局、最後0-0で終
た。選手たちは本当によくがん
ボールを取られたときには不利な状況も起
の選手を同じグループにするなど、グル
した。
わってしまい、勝ち点が1しか取れません
ばったと思います。
」
きてしまいます。こういうときに 攻守の
ープ分けをうまくしながら常に競争の意
日程は①ホーム&アウェイ、②ダブルセ
5秒の質 を上げるということです。
識を持たせていくということを徹底させ
ントラル(2か国での開催)
、③1国開催の
流れを引き寄せたという意味でいうと、
−−−このチームを作る上での基
ました。
」
シングルセントラルの3通りに関して、ア
第2戦のレバノン戦で田中(達也/浦和)
本的なシステムや選手の役割につ
ジアサッカー連盟(AFC)によって、あら
が先制点をとったことで皆気持ちが楽に
いての考え方をお聞かせください。
かじめ日程は決定されていました。その3
なり、そこから畳み掛ける戦いができま
つの選択肢の中のどれかでやるということ
した。
つまり、相手にボールを取られたら、取
られた選手、もしくはその周りの2〜3人
のグループが、その瞬間に相手の攻撃を5
暑熱、時差への対応も
秒遅らせるだけの切り替えの速さを持ち、
追いかけて相手の攻撃を遅らせるというこ
−−− 準備の5週間 の考え方について、簡
で、我々は、①では期間が長過ぎ、Jリー
とを徹底しました。その代わり、それさえ
単にお聞かせください。
できれば積極的にチャレンジするように言
した。
でした。そこがポイントでした。
「ベースは1-3ー5-2で、それをベ
そして、UAE戦では体調面で本当に厳
ースに相手との力関係で、選手
グの日程との調整も難しくなることから、
しい、半数が下痢をしながら闘わなくては
の役割で修正することはありま
②のダブルセントラルを選択、③の1国開
ならなかったあの試合で、勝ち点3がとれ
す。例えば、相手が3トップにし
いました。そこさえがんばって5秒遅らせ
「準備はまず第一に、ゼロからのオフ明け
催は当然、同グループの他国から抵抗があ
たということが一番のポイントとなりまし
てくると、1-3ー5-2なのですが、
れば組織ができるから、その代わり、取ら
のスタートなので、まずフィジカルコーチ
るので、2か国でやることで同グループの
た。脱水で倒れるかもしれない、最後まで
役割を少し修正し、片方のサイ
れたときはとにかく5秒がんばれ、という
にしっかりお願いして、けがなくコンディ
国の了承を受けて、この日程でこの形式で
ピッチに立っていることができない選手が
ドを少しディフェンシブにして
46
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
〜
アテネ五輪派遣手続き・メディカルチェック(JISS)
トレーニングキャンプ(宮崎)
トレーニングキャンプ(アデレード/オーストラリア)
2月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
〜
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
トレーニングキャンプ(静岡)
キリンチャレンジカップ2004 vs U-23イラン代表 1:1(1:0)
国際親善試合 vs ロシア代表 1:1(1:1)
トレーニングキャンプ(大阪)
キリンチャレンジカップ2004 vs U-23韓国代表 2:0(0:0)
《アジアサッカー 最終予選2004/UAEラウンド》
3月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
★ vs U-23バーレーン代表 0:0
★ vs U-23レバノン代表 4:0(2:0)
★ vs U-23UAE代表 2:0(0:0)
《アジアサッカー 最終予選2004/日本ラウンド》
★ vs U-23バーレーン代表 0:1(0:0)
★ vs U-23レバノン代表 2:1(1:0)
★ vs U-23UAE代表 3:0(2:0)
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(株)
この守備力をゾーンとして強固なディフェ
います。そういうときに心がけていること
る必要はまったくないし2点返せる、とい
怒らず冷静に。基本的にはそのように考え
ンスにするために徳永と茂庭という組み合
は、逆に自分が冷静になって、『何故か』
うような落ち着きが大事だと思います。
ています。
」
わせにしました。
ということだけははっきりさせます。慌て
良いときには強く言うし、悪いときには
選手にはシステムというよりは、ある
タイプの選手を置いたり、役割を説明し
たりすることで伝え、『今回は1-4-4-2だ』
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(株)
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(株)
とかそういう使い方はしません。『こうき
たときには、おまえが守備的になって逆
日
本のレベルアップを選手育成
判断の柔軟性、指導者や選手の意識など・・・
反対のサイドを上げたり中に入れるなど。
大)がそこにいればそのまま4バックにで
サイドをあげろ』『守備のときは4バック
攻撃のときは、1-3ー5-2のイメージをその
きる。ということで、相手がどう出てくる
のイメージになるけど、攻撃のときはも
−−−選手育成についてうかがいます。育成
ていくようなテクニックというのも非常に
に書くときに、 コミュニケーション、声
ままです。
かわからないときは、徳永の起用というの
っと高い位置に出ろ』、そして『数的同数
年代を私も見ていますが、山本さんもユース
重要だと思います。
」
というのは必ず書いています。非常に重要
例えば、ウィングバックの位置をそのま
が非常にポイントになってきます。選手に
でも守れるから安心して出ろ、それをボ
年代を見てきて、選手の自立したプレーとい
ま下げて、4バックにするなどを柔軟にで
よって相手の出方によって変えられるよう
ランチがカバーするから』などというよ
う面に関し、もっと育成年代からその辺りを
−−−川淵三郎キャプテンもおっしゃってい
う声を出せるかということも含めて、指示
きるようにしています。あとは使う駒。右
なスタメンでいく、ということはありまし
うに伝えました。
育てるために、何か心がけたり工夫したほう
たのですが、自分自身もユースを見ていて感
できる、コーチングできる選手というのは
サイドで4バックにするときに、アウトサ
た。特に、UAEは相手の左サイド、うち
そのように、自分たちのスタイルを完
がいいのではないかということがあれば、お
じることは、声の部分、指示の声が出る選手
非常に重要。そこは本当にうるさく言って
イドに石川(FC東京)が出ていたら、そ
の右サイド、徳永と茂庭(FC東京)がラ
全に消すのではなくて、バランスで考え
聞かせください。
が少ない。「がんばろう!」とかではなくて、
います。
こは4バックにできないから、逆のスライ
インを組んでいたところが、相手が一番使
ました。
」
ドにしなくてはなりません。徳永(早稲田
いたい、良い仕事をするエリアなので、そ
U
-23日本代表、アテネへ向けての強化
選手たちの成長機会の創出、ハーフタイムでの指示など・・・
な要素だと思います。大事なときにどうい
人を使えるという指示の声が出せる選手が、
例えば、一つのミスが起きたときに、コ
「一人一人がピッチの中も外も、自分が良
下の年代で見ていて少ないと感じています。
ミュニケーション不足で起きたミスは、声
くなるために、いろいろなことを考える習
こういうことをできれば、上の年代になって
の出し方で全部クリアできる問題で、技術
慣を持つということだと思います。そのよ
プラスアルファになる部分が大きいのではな
的な問題ではないのです。コミュニケーシ
うな知識を吸収しようとしている意欲が必
いかと感じています。
ョンを高めてそこから指示ができれば済む
要だろうし、何よりも負けず嫌いなところ
は必要です。
山本さんはその点についてはどのようにお
そして、自分自身で判断してプレーを出
−−−今後の準備についてお聞かせください。
「今回、アジア最終予選を突破して何が一
番良かったかというと、アテネの切符を取
流れを変えるに、ハーフタイムの指示や選手
辺になると、選手は基本的にもちろんよく
せるようにしていくことが大事ですが、こ
交代ということになると思うのですが、ハー
やっている。だけど、もっとがんばらなく
れがなかなか難しい。いちいち我々が答え
フタイムに心がけていること、自分の中のや
てはいけないということです。99%がんば
を言いたくなってしまって、最初から答え
り方などがあれば教えてください。
ったのだがもう1%何かが足りない、そこ
を先に出してしまいがちですが、むしろ
でさらに『もっとがんばれ!よくがんばっ
『何故そうしたんだ?』ということを常に問
ったことで、これからの5か月を選手たち
が必死になってそこにチャレンジするチャ
「ハーフタイムには選手たちも興奮状態で
ているけど、もっとがんばらなくてはだめ
いかけることが重要です。選手が何故そう
ンスができる、さらに成長する機会ができ
頭もそれほどフレッシュな状態ではないの
だ!』ということを伝えるというのが難し
したかということを我々もわからなくては
たということです。アテネの本大会の数試
で、本当にポイントを整理してシンプルに
いところです。それがうまくいったときは、
いけないし、選手が答えを自分で探し出す
合ということではなくて、そこへ向かう過
絞って伝えるということ。それもわかりや
後半、必ず良い試合になります。
ようなアプローチができれば、選手自身が
程で、少しまた膨らんだメンバー、ある程
すく伝えるということだと思います。
本当に、とことんがんばっているときで
度可能性のある選手たちがこの5か月間を
目標をもって前進できるよう、競争をさら
カールームに入ってきて、最初は何も言わ
足して『このままでいいぞ』などというと、
うなことが起こったときに、その答えだ
に強化して、そのことを有効に生かしてい
ないということ。黙って、選手たちを観察
選手はそれで落ちていってしまいます。そ
けを表現しようとしてしまいます。それ
きます。
している。最初は他のスタッフにとにかく
んなことを言って、後半良くなったためし
に対して、途中の過程を学んでいる選手
フレンドリーマッチに関しては、いろ
選手たちを冷静にさせ、リフレッシュ、身
はありません。前半どれだけ良くても、も
は多少違う問題が出たときにも、自分で
体の手当てなどをするということを徹底さ
っとがんばらなくては後半きついぞ、とい
解決する方法を考えることができます。
イプに対する準備をしていきたいと思い
せ、その間に準備できることは白板に書い
うメンタル面のケアがポイントのように思
そのようなことの繰り返しが、だんだん
ます。オーバーエイジ(出生が1980年12
ておく。ハーフタイムの後半になって、選
います。
といろいろな意味で選手を大きくしてい
月31日以前)は有効活用し、それによっ
手たちがリフレッシュを終え、話が聞ける
逆に悪いときには『いいぞ』という。明
てさらに強いチームをつくりたいと考え
状態になったときに、パッと必要なことを
らかに、前半悪すぎるというときには『こ
また、若い選手たちはなかなか言いたい
ています。
」
必要なタイミングでポイントを絞って伝え
んなに悪いのに、1点しかとられていない
ことも言えないようなところがあるので、
るということを心がけています。
から大丈夫だ』といったように、落ち着か
距離感をうまく保って、普段からコミュニ
せるようにしています。そのようなときは、
ケーションをとり、この選手は何を考えて
選手自身がもうやられているのがわかって
いるのかということを、冗談の中から探っ
てメンタル面をコントロールしたり、試合の
48
個人が力を出し切れていないときは、
ネジ
をまかなくてはいけません。この
「試合前のミーティングでポイントを白板
しています。
」
結局、答えを教えてしまうと、同じよ
いろな大陸の国とやって、いろいろなタ
−−−先ほどもお話が出ましたが、監督とし
ミスが起きたのかということは厳しく追求
変わっていくのではないかと思っています。
私が注意しているのは、選手たちがロッ
も、絶対に良いとは言いません。前半で満
ことで、それも指示を出すタイミングとか
そういう問題だから、それは何故そういう
考えですか?
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(株)
くように思います。
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(株)
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(株)
このチームでは、動き出している味方の
育成のときから多少ぎこちないけれど、
1年分くらいの変化をしてしまうときであ
るような動機づけが大事です。新しい目標
動きは絶対に止めない。必ず動いている前
フィジカル的なポテンシャル、体格的な
り、本当に 生もの で急激に変化してし
を持たせてやる、一つ達成したら次を与え
に出す。視野の良い方に出してやる、相手
ポテンシャルも含めて、それをワールド
まうから、その変化を見逃さずにどんどん
てやるといったことで、やる気をつないで
がいれば、相手との関係でどちらのサイド
クラスで見極めて、可能性のある選手に
良い刺激を与え、うまくつないでいくとい
いくことが選手の成長に大きな影響を与え
がつけるのかということも含め、普段のト
チャンスを与えていくことが重要です。
うのは、長い目で考えてやっていかなくて
ます。
」
レーニングのパス練習の中で、一番大事な
そうすることで、スタートラインは低く
はいけないことだと思います。
テーマとして取り組んでいます。例えば、
なるかもしれませんが、将来、体格的な
伸びていく選手を観ていると、ベースは
味方が走っているのに、味方が止まって受
ことも含めて可能性のある選手を大切に
意欲、意識だと感じます。目標をどこに持
てくると変わってくるのではないでしょう
けるようなボールを出し、味方をスピード
すべきです。必ずしも、テクニックがあ
っているか、どの高さに持っているかが良
か。日本の選手たちは真っ正直な面があり
ダウンさせているのだからそれはパスミス
ってドリブルがうまい選手が最終ライン
い選手とそれ以外の差となっています。目
ます。そこに出しますよ、といって相手が
だと、そういう部分を厳しく指摘をして、
で必要なわけではありません。
標を高く設定している選手は、壁があって
−−−山本さんはユース年代をずっと見ている
慌てた瞬間に逆をつくなど、そういった駆
質を追求しています。
」
のでうかがいますが、最近、上がってくる選手
け引きは非常に大事だと思います。
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(株)
答えを教えるのではなく、引き
出すことの重要性
についてはどのような印象をお持ちですか?
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(株)
これは昔から日本の選手たちが苦手とす
るところ。以前の方がそういう
ずるさ
選手たちにチャンスを、選手た
ちに高い意識を
ポジションごとに必要な技術というもの
も当然のこととして努力し、自然に乗り越
を良く見極めて、それで可能性のある選手
えていく。低く設定している選手は、壁に
を育てていくということだと思います。ポ
ぶつかったときに、何でこれを苦労しなく
ジションごとでスペシャリティも変わって
てはならないのか、という気持ちになって
くるので、それをうまく見極めながら、ポ
しまい、伸びてはいきません。
「言われたことはすごくうまくやります。
を持った選手がいたような気もしますが、
言われたことは、セオリーも全部わかって
それがチームとして試合の中で生かせてい
−−−フリーキックなどでも、入ってなけれ
ジションでトライさせ、見守り、我慢する
いて、こういう練習だと言えば、『ハイ』
たかというと、昔から我々は試合の中で生
ばマークがはずれていてもOKといったような
ことも重要です。
と言ってできます。
かせていません。日本人の勤勉さがそこに
感じになりがちです。そうではなくて、マー
ストライカーも、ドリブルが得意な田中
出てしまっているような気がします。
クがはずれていたからダメだ、という見方を
(達)とか大久保(C大阪)らのようなタ
『では、相手が読んできたらどうするん
そういう部分は教えるというよりも、む
もっともっとしていかないといけない。そう
イプも必要でしょうし、中型で何でもこな
だ?』といったところの判断力は、まだま
しろ練習の中で環境をつくって、その中か
いうことが育成のシーンでは結構多いように
せる高原(ハンブルガーSV)のような選
だ育てなければいけないところです。良い
ら自然発生的に育ってくるのを見守るとい
感じます。
手も良いでしょうし、平山(筑波大)のよ
ものは形として作れるのですが、それは相
うことも大事なのではないかと思います。
しかし、その判断に柔軟性がありません。
最後に、育成に望むこと、フィジカル面、
レフェリーの判定の問題もあるかもしれ
あるいはトータル的に育成にもう少しこうい
とか、いろいろなタイプの選手を育てるこ
いったときに今度は自分がその裏をかける
ません。早くやればチャンスになるときが
う見方を選手にしたほうがいいのではないか、
とが必要です。
」
ような駆け引きの部分をどんどん育ててい
あり、早くやるという意識が出てくること
これだけは教えておいたほうがいいのではな
かないと、さらにここから上のレベルを目
が大事。日本の場合は、ピッと鳴ったらひ
いか、というようなことがあれば、お聞かせ
−−−他に何か育成年代の指導に望むことが
指すことは厳しくなると思います。
と休みの時間のようになってしまい、頭を
ください。
あればお願いします。
ブラジルなど見ていたら、駆け引きは小
完全にオフにしてしまう面があります。ア
さいときからできます。そういうものを感
ウト・オブ・プレーの時間を、ずるく何か
「例えば、『ボールをもう少し運んでから、
「中学生年代の1年は、大人の世代の5年に
覚として持っています。育成世代から育て
隙をついてやろうと意識することが足りま
出したらもっとひきつけられるのに』など、
も相当します。その1年間の伸びているタ
ていくことが必要で、大人になってからで
せん。
ちょっとしたプレーの質によって相手との
イミングを無駄にしないような育成にしな
例えば、トレーニングの際に『笛から3
駆け引きの中で優位性を保てるのに、正直
いといけないと思います。
秒以内にやりなさい、3秒以内にやらなか
過ぎるようなところがあります。同じ出す
ちょっとレベルが高く自分の環境の中で
−−−それは私がユース年代を見ていても感
ったら逆ボール』という設定でやると早
のでも、ちょっとフェイントをかけてから
何でもやれて満足してしまっているような
じます。黙っていたらフリーキックを早くや
くやる習慣がつく。そういういろいろな
出すとか、ちょっと身体の向きを変えるだ
選手は、さっと上のレベルに混ぜてやらせ
るなどは、U−20の選手たちでもほとんどい
アイディアがあって良いのではないでし
けで相手が寄ってくれてこっちに出せば通
る。そうしたら、また大きく伸びる可能性
なかったですね。そういう意味では山本さん
ょうか。
」
るのにとか、キックの質だけではなくて、
があります。しかし、自分より下のレベル
そういったアイディアをこれからもっとつ
でやっていると、伸びしろが無駄になって
が言うように、ある意味、ずるさなり、相手
の逆をついたりということもやはり、もう少
−−−技術だけではない部分で、そのような
けていかなくてはなりません。 判断の柔
しまいます。これは非常にもったいないこ
し教えていかなくてはいけないのでしょうか。
「勝ちにもっていく」ということが難しいので、
軟性 という部分だと思います。ここはや
とです。『いいや、あいつ来年から進学す
っていかなくてはなりません。
るから』『すぐ、また次のチームに上がる
今のお話は非常に貴重です。
「駆け引きというか、相手の裏をかく、騙
ポジションで言えば、やはりセンター
から』といったように、この1年を待って
いるような余裕はあってはいけない年代だ
し合う、そういうようなトレーニングを入
「技術練習も、単に正面のパスをするだけ
バックの高さ、強さは必要です。田中
れていくと、相手の裏をかいたりとか、点
ではなく、それはそれでアップなど段階と
(闘莉王/浦和)クラスをどんどん増やし
をとるために、守るために、ルールの範囲
しては大事なのですが、常に判断を要する
ていかないと、ワールドクラスというこ
内でずるいことをする、そういうことが出
ものがあって良いと思います。
とになると厳しくなります。それには、
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うな高さがあって圧倒的に制空権を握れる
手が1回慣れると読んでくるわけで、そう
は遅いと思います。
」
指導者としては、モティーションが上が
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と思います。
このような刺激をすぐに与えられるよう
な環境を整えることも大事です。3か月が
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図2
早いタイミングでDFラインとGKの間に入れられたクロスへの守備
・遠い位置からのDFラインとGKの間へのクロスを守備
・GKは高めのポジションからスタート。キッカーがボールを動かしたら、
適切なポジションまで後退し、下がりながらゴール前の状況確認。
できるだけ広い範囲を守備する。
アジア サッカー最終予選2004を振り返る②
〜ゴールキーパー編
UAEラウンド
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(株)
川俣則幸(U-23日本代表GKコーチ)
UAEには、時差対策も考え初戦の7日前
に入った。コンディションの調整とともに、
準備のキャンプ
アテネオリンピック・アジア最終予選
「アジアサッカー 最終予選2004」に向けた
準備は、2004年1月中旬に本格的に始まっ
た。
前後の体重減を2kgまでに抑えることを選
(静岡県)で行われたキャンプでは、ジュ
対戦国の情報を選手に徐々に与え、守備で
手に意識させた。このキャンプでは、チー
ビロ磐田のユースチームとの練習試合を組
は相手のカウンター、ロングボールからの
ムとして戦術的なトレーニングも始まり、
み戦術的な確認を行った。ここで、DFラ
攻撃、早めのタイミングからのクロスへの
キャンプ終盤には地元のユース選抜チーム
イン裏に出されたボールに対する判断、プ
対応(図2)を、攻撃面では前線のターゲ
との練習試合を行った。
レーが確実にできていないという問題点が
ットに正確にプレスキックを蹴ることなど
をトレーニングした。
GKも体力面ではより専門的な動きのス
見られた。GK自身のポジショニング、判
メディカルチェック、宮崎キャンプ、オ
ピード、パワーや連続した動きの中でのボ
断の基準、判断のタイミングと、指示の声
ーストラリアキャンプには、藤ヶ谷陽介
ディバランスを高めることをテーマとし
の出し方を再確認するとともに、それぞれ
予選が始まると、中一日で3試合を行う
(札幌)
、黒河貴矢(清水)
、林卓人(広島)
、
た。また、ゲーム形式のトレーニングでは
問題点のあったGKとDFとの間で話し合い
スケジュールで、予想されていたとおり厳
多田大介(C大阪)、川島永嗣(名古屋)
アジア最終予選を通じて常に意識させ続け
を持たせ、コミュニケーションとコンビネ
しい戦いが続いた。試合に出場したGKは、
の5名を招集した。
たことでもあるが、以下のようなテーマを
ーションの確認を行った。また、チーム全
中一日の休息日に、ホテルの施設を利用し
常に意識するようにした。
体としてU-23イラン戦ではコンディショ
て自転車こぎ、軽いステッピング、体幹部
宮崎キャンプでは、アジア最終予選はも
ンを80%程度、ロシア戦で100%に近い状
の補強などを行った後、スターティングメ
ための準備を行った。このチームで、シー
①適切な準備:観る(情報収集)。適切な
態で臨むことを計画していたが、予想より
ンバーと合流してプールを使用したリカバ
ズンの始まりから活動することがなかった
判断=ポジショニングと指示の声。
早くコンディションが仕上がっていた。
リー・トレーニングを行った。また、その
ので、チームの立ち上げとともに、選手の
②ピッチ上でリーダーシップを発揮する。
GKもセットプレー以外のプレーは、攻
日の昼食時には、試合におけるGKのプレ
コンディション作りという部分では非常に
コミュニケーション&コンビネーション
守にわたり試合出場に問題のないレベルま
ー記録を渡し、さらに就寝前に試合から編
気を遣った。まず、選手個々のコンディシ
(ゴール前でのプレーでは、常にGKが主導
で準備ができた。そして、それは試合の内
集したビデオで良くできたプレー、改善す
容と結果にも表れた。
べきプレーを見ながらディスカッションし
ちろんのこと、本大会を含めた1年を戦う
FW役
図3
サイドのFKに対して、GKの役割、判断と守備範囲の確認
・キッカーがボールをセットしたら、GKの壁は枚数を指示し、FKを守備する。
・GKが出るか、DFに任せるか、判断と指示の声の徹底
ョンのばらつきを把握すること、そしてそ
権をとる)
れらに応じて、けがをしない範囲の適切な
③堅実なプレー:プレーをやりきる(ボー
この後、チームは一旦解散し、最後の
負荷をかけながら、できるだけ高いコンデ
ルをつかむ、弾き出す、蹴る)=セカンド
U-23韓国戦の前に、アジア最終予選に臨
ィションまで引き上げていくという課題に
ボールを作らない。
む20名が選出され、GKは黒河、林の2名
出場機会の無かったGKには試合翌日の
となった。試合までの2日間では、U-23イ
トレーニングで、前日の試合から注意すべ
ラン戦の反省を踏まえ、直接FKの守備を
きプレーをテーマにしたトレーニングを行
途中、多くの選手が下痢をするという事
確認した(図1)
。最後のU-23韓国戦では、
い、常に試合に出られる準備を行った(図
態が生じたが、最後のUAE戦を前にGKも
3)
。
程度の差こそあれ、同様の症状に悩まされ
取り組んだ。
具体的には、ベースとなる部分はフィー
3つの親善試合
ルドプレーヤーと一緒にランニング、ウエ
イトトレーニングを行い、GKとして専門
アデレードキャンプから日本へ戻り、こ
林がプレーしゴール前でDFとのコンビネ
的に要求される部分をGKトレーニングと
の時点でチーム全体での選手の絞り込みに
ーションに課題は残したものの2-0で快勝
いう形で補った。基本的なステッピングや
合わせて、GKも黒河、林、川島の3名に絞
し、最終予選に向け準備は順調に進んだ。
キャッチングの種目では、ただ単純にドリ
られた。初戦のイラン戦を前に、つま恋
えるコンディションを一つの目安とし、実
際にそのレベルまで上げることができた。
場所を移して、オーストラリア・アデレ
ードで行われたキャンプでは、UAEでの
図1
視野を遮られた条件での直接FKの守備
1.ミドルレンジ
・中央に人形で壁を作り、ボールをGKから見えない位置にセット。
2.「1.」より近い位置からのFK
た。そうした状況下でも3試合を無失点で
乗り切ったことが大きかった。
日本ラウンド
GKに変更はなかった。帰国しても体調の
求めること、5人のGKが効率よくトレーニ
また、合宿の最終日にはゲーム形式を行
備えた。
日本に戻り、選手の入れ替えがあったが、
ルで行うだけでなく、常に判断や集中力を
ングできるという点に配慮した。
確認するという作業を行い、翌日の試合に
図4
戻らない選手が多い中、GKも本来のコン
DFラインとGKの間のスペースを
狙ったロングボールに対する守備
ディションを取り戻すまで時間がかかっ
〜バーレーンのロングキックをイメージして
た。試合までの短い準備期間では、下痢で
崩したコンディションを回復することと、
対戦国の特徴を考慮したトレーニングを行
った(図4)
。
FW役
試合に備え、チームとして暑熱対策が一つ
のテーマとなった。日中の気温が一桁台の
コンディションの回復には、回復力が落
日本と30度を越すアデレードでは環境の
ちていることから、反復回数を減らし、種
変化が大きい。GKは、長袖・ロングパン
目間の休息時間を多めにとるなどの配慮を
ツでトレーニングを行うことが多いので、
した。
発汗量が多くなる傾向にある。この点を配
初戦のバーレーン戦では、セットプレー
慮し、頻繁な給水を心がけてトレーニング
からの失点で敗戦し、チーム全体が追いつ
52
53
められてしまった。2戦目以降は、GKとし
に備えてプロフェッショナルな態度を見せ
ョンの質を向上させ、より確実に、よりチ
てすべきことに集中することと、けがで守
てくれたことを評価したい。
ームにとって有効なプレーを選択できるよ
そのため、まずはじっくりと身体づくり
うにし、隙を作らないこと。
せてトレーニングを行うことは最重要課題
を行うことを監督に説明し、了承を得た上
②セットプレーの守備をさらに磨くこと
であるが、一方で仮にアジア予選を突破で
でトレーニングを計画した。宮崎キャンプ
組織的な守備の質の向上→選手の配置、役
きたにせよアテネオリンピック本大会やJ
でのフィジカルトレーニングの主な目的
アジア最終予選からアテネオリンピック
割の確認、その場でのコミュニケーション
リーグなどシーズンを乗り切るためのフィ
は、以下のとおりである。
(8月11日〜)まで5か月の準備期間がとれ
の向上。直接FKに対しての、GKの守備力
今後に向けての課題
補うことを意識させた。試合の間の日には
UAEラウンドと同様に過ごしたが、試合
に出場したGKのリカバリーに関しては、
疲労の蓄積を考慮し、途中からプールでの
る。この期間、他のポジションの選手同様、
リカバリーのみとした。
所属クラブでの試合経験を積み、さらに成
6戦を戦って、4勝1敗1引き分けという
ジカルも同時に考慮しなければならない。
アジア最終予選にコンディションを合わ
備のリーダー田中(浦和)を欠いてしまっ
たので、彼が出していたコーチングの声を
ことがあるからである。
長しレベルアップすることが必要である。
の向上。
○90分間、闘えるベースとなる有酸素性持久力
結果で、チームとして目標であった予選突
その中で、とくに以下の点を改善していく
された全てのGKと、彼らの成長過程にお
破を果たした。6戦すべて林がプレーし、
ことが今後の課題としてあげられる。
いて関わってこられた全ての方々に、重ね
2失点という結果は守備陣とともに評価に
○筋肉系のトラブルを防止するための筋力・柔軟性
最後に、このアジア最終予選までに招集
○ケガを防止するためのコーディネーション
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(株)
て感謝の意を表します。また、アテネの本
値する。また、出場機会のなかった黒河も
①DFと連係して守備をする
大会で良い結果を残せるように、さらに良
常にチームをサポートし、試合出場の機会
互いのコミュニケーション&コンビネーシ
い準備ができればと思います。
アジア サッカー最終予選2004を振り返る③
〜フィジカルトレーニング編
有酸素性持久力は、サッカーのようにダ
カルチェックの方法は、VMA(有酸素性
体重などを目安に負荷を設定し、低負荷高
ッシュやジャンプなどの動作を繰り返すと
最大スピードテスト)と呼ばれるものを採
回数によるトレーニングを実施した。マシ
きに、その回復能力を高めるために非常に
用した(詳細はJFAフィジカル測定ガイド
ンを中心に上半身・下半身、屈筋・伸筋の拮
重要になると考えられる。筋力や柔軟性は、
ラインを参照)
。
抗筋などバランスを考慮して種目を選択し
筋肉系のトラブルの防止に必要であると同
フィジカルチェックの結果、多少のコン
た。特に、ゆっくりと正しい動作で、しっ
時に、スピードやパワーを発揮するために
ディションのばらつきはみられたものの、
かり伸ばし、しっかり曲げるよう関節可動
基礎的に必要になる。
オフ前に「オフの過ごし方」について、あ
域を大きく使うことを指示した。
また、調整力とも呼ばれるバランスな
菅野淳(U-23日本代表フィジカルコーチ)
らかじめ実施したレクチャーが幸いして、
選手が33名と大人数だったので、同じ
どを司るコーディネーションは、いろい
自主トレをやり過ぎてしまった、あるいは
体格の選手3名を1グループとして、11種
ろな状況判断のもとステップを踏んだり、
まったくやらなかったという極端な選手は
目を10〜15回、1〜2セットを1日おきに実
相手の危険なプレーを察知してかわした
ほとんど見られなかった。これらフィジカ
施した。1名が実施している間、残りの2
山本昌邦・U-23日本代表監督が目指す
求する高いレベルに到達し、しかもそれぞ
のフィジカルコンセプトとしては以下が挙
りすることによりけがの防止にもつなが
ルチェックのデータを基に各選手のトレー
名は筋力トレーニングを行った部位のエク
サッカーをするためには、技術・戦術・フ
れがバランスよく融合されなければならな
げられる。
るだけでなく、最終的に試合でスピード
ニング強度を設定して、おおよそ3グルー
ササイズ(もも上げ・腕振りなど)、また
ィジカル・メンタルのそれぞれが監督の要
い。山本監督が目指すサッカーをするため
やアジリティなどを発揮するために必要
プにグルーピングし、翌日から早速フィジ
はストレッチを実践した。
なものである。
カルトレーニングを開始した。
U-23日本代表の
フィジカル
コンセプト
午後のトレーニングは、フィジカルとボ
まず、キャンプ初日は、それまでU-23
午前中は、主に有酸素性持久力と筋力の
ールを使ったテクニカルなトレーニングを
・筋肉系のトラブルなど、けがのない身体をつくること
日本代表候補選手たちのフィジカルに関す
トレーニングをメインに行った。有酸素性
ミックスして行った。フィジカルな部分と
・90分間、集中し走り続けることができること
る特徴と、オフ明けの身体の状態を知るた
持久力のトレーニングは、1,000〜1,600m
しては、ウォームアップの後、コーディネ
・中1日の3連戦でも戦えるタフさを身につけること
め、フィジカルチェックを行った。フィジ
の距離を合計8,000mになるようにランニ
ーションのドリルを20種目程度行った。
ングを行った。具体的な方
コーディネーションのドリルは、前後左
法は、走速度をおよそ心拍
右のステップ動作がスムーズに行くように
・いつでも個人の能力(スピード・パワーなど)を発揮できること
数180拍/分以下に設定して
一定方向だけでなく、いろいろな方向変換
・体格のよい中東勢に当たり負けないこと
ランニングし、90〜120秒の
走などをとり入れた。気をつけるべき点は、
ウォーキングによって休息
初めから速い動作ではなく、まずは50〜
をとり心拍数120拍/分まで
60%くらいの、ゆっくりとではあるが正確
回復した後、またランニン
なステップ動作をすることであった。
・前線から激しいプレッシャーをかけ続けることができること
© Jリーグフォト
(株)
私は2004年1月より、山本監督の命を受
下テクニカルスタッフとミーティングを重
けてU-23日本代表のフィジカルコーチに
ね、U-23日本代表のフィジカルコンセプ
宮崎キャンプの目的は、オフ明けの身体
就任した。アテネオリンピックのアジア最
トを理解した上で、アジア最終予選を勝ち
終予選を突破するために、山本ジャパンの
抜くためのフィジカルトレーニング・プラ
目指すサッカーを選手たちが遂行すること
ンを計画し、そして実行した。
ら宮崎キャンプが始まった。
グするという方法を行った。
その後、ボールを使ったテクニカルなト
づくりであった。特に、オフ明けの身体づ
これに続いて、マシンを
レーニングへと移行した。このように5日
くりは慎重に行わなければならない。各ク
用いてサーキット形式での
間中8回のトレーニングセッションのうち
ラブの天皇杯の終了時期や、自主トレの度
筋力トレーニングを行った。
最終日を除いた7回のトレーニングを、フ
ができるよう選手たちのフィジカル面をサ
合いによって各選手のコンディションにば
キャンプ中に筋力測定を行
ィジカルメインとして行った。
ポートすることが最大の任務であった。
らつきが見られるため、トレーニング強度
う時間的余裕はなく、オフ
の設定を選手個人に合わせないと、なかな
明けでもあったため、筋肉
に刺激を与えることを目的
宮崎キャンプより
中でもシーズンの立ち上げ期にある選手
たちのフィジカルコンディションづくりは
国立スポーツ科学センター(JISS)で
かコンディションが上がらなかったり、筋
重要かつ最大のテーマである。山本監督以
のメディカルチェックを経て、1月19日か
肉系のトラブルを起こしてしまったりする
54
© Jリーグフォト
(株)
アデレード・キャンプ以降の取り組みに
ついては、次号で紹介する。
として、選手たちの身長・
55
JFA技術委員会監修および
関連発行物のご案内
JFA公認指導者資格保有者・
JFA加盟登録チームのみ購入可能
どなたでも購入できます
NEW
NEW
JFA 2004
U-12指導指針
¥1,050(税込み、送料別)
¥3,960(税、送料込み)
(※複数冊購入できます)
NEW
FIFAワールドユース選手権
UAE2003
JFAテクニカルレポート/ビデオ
サッカーの長期的な育成の過程において、
とくにU-12年代で取り組むべき課題や指
導についてアプローチしたガイドライン
です。この年代の子どもたちの発達概観
や子どもたちへの接し方、また、日本の
課題と指導のコンセプトなどが詳細に掲
載してあります。
FIFAワールドユース選手権 UAE2003を
JFAナショナルトレセンコーチを中心とし
たJFAテクニカルスタディグループが分析
したレポートとビデオです。
(※1)
2003ナショナルトレセン
U-14プログラム/ビデオ
FIFA U-17世界選手権
フィンランド2003
JFAテクニカルレポート/ビデオ
¥2,520(税込み、送料別)
申込方法
1 記入
専用申込書(下記)
に記入
JFA 2004 U-12指導指針、JFAキッズ(U-6・8・
10)指導ガイドライン、ナショナルトレセンU-12・
14・16、フィジカル測定ガイドラインは 、送料のみ着
払いとなります。
FIFA U-17世界選手権 フィンランド2003を
JFAナショナルトレセンコーチを中心とし
たJFAテクニカルスタディグループが分析
したレポートとビデオです。
(※1)
JFAフィジカル測定
ガイドライン
FIFAコンフェデレーションズカップ
フランス2003
JFAテクニカルレポート/ビデオ
¥1,050(税込み、送料別)
郵便局にある【払込取扱票】に
口座番号・金額・申し込み内容
を記入
[口座番号]欄:00100-4-25480
[加入者名]欄:財団法人 日本
サッカー協会技術口
[金額]欄:合計金額を記入し
てください
[ご依頼人]欄:必ず申込用紙
の「申込者」と同じ住所・名前
をご記入ください
[通信]欄:商品名・数量・金
額を明記してください
※記入漏れがありますと商品を発送できない場合がありますので
必ずすべてご記入ください
※希望される商品へのマーク(
商品
および
代金
¥3,960(税、送料込み)
日本全体で同じ基準をもってフィジカル
フィットネスの課題に取り組むため、日
本代表が実施しているフィジカル測定種
目を紹介し、フィールドで測定できる推
奨種目を提示したガイドラインです。
サッカー指導教本・ビデオ
2002年度版(FP編+GK編)
第3回フットボールカンファレンス
報告書/CD-ROM+DVD
2002FIFA World Cup Korea/Japan™
JFAテクニカルレポート/ビデオ
購入対象者
JFA公認指導者
資格保有者のみ
JFA公認指導者
資格保有者・
JFA加盟登録
チームのみ
2003ナショナルトレセンU-16
プログラム/ビデオ
2003ナショナルトレセンU-12
プログラム/ビデオ
JFAキッズ(U-10)指導ガイドライン
FIFAコンフェデレーションズカップ フラ
ンス2003をJFAナショナルトレセンコーチ
を中心としたJFAテクニカルスタディグル
ープが分析したレポートとビデオです。
(※1)
JFAキッズ(U-8)指導ガイドライン
価格
内容
7,950(税、送料込み)
本書・ビデオは、2002年4月より地域C級・公認準指導員・公認少年少女サッカー指導員
の各養成講習会の教材として使用されています。2002年度以前に同講習会を受講された
指導者の方および他の指導者資格を保有される指導者の皆さまを対象に販売しています。
8,400(税、送料込み)
2003年1月に開催された「第3回フットボールカンファレンス/Post2002〜我々がすべき
こと〜」の内容をまとめた、報告書とCD-ROM/DVDです。
(※1)
5,850
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2002FIFAワールドカップをJFA技術委員会およびJFAナショナルコーチングスタッフを
中心としたJFAテクニカルスタディグループが分析したレポートとビデオです。
(※1)
2,520
(税込み、送料別)
2003NTC U-12東海・中国およびNTC U-16で行われたトレーニングを、テーマ・キーフ
ァクターに基づき編集したビデオです。ゲームでの実践場面やキーファクターから抽出
した日本代表選手のプレーなども盛り込まれています。実際のNTCで使用したプログラ
ムとのセットです。
どなたでも購入できます
(複数購入できます)
1,050
(税込み、送料別)
1〜3の手続き終了後、10日前後
でお申込ご本人様に、宅配便に
てお届けします。
※配達日時の指定は
できません。
申込月日:20
6歳以下、8歳以下および10歳以下の子どもたちの発育発達の沿ったスポーツ・サッカー
をテーマとした子どもたちへの接し方、指導などについてのガイドラインです。
年
月
日
)を入れてください。
□サッカー指導教本・ビデオ2002年度版(FP/GK)
□2002FIFA World Cup JFAテクニカルレポート/ビデオ
□FIFAコンフェデレーションズカップ2003 JFAテクニカルレポート/ビデオ
□FIFAワールドユース選手権2003 JFAテクニカルレポート/ビデオ
□FIFAU-17世界選手権2003 JFAテクニカルレポート/ビデオ
□第3回フットボールカンファレンス報告書/CD-ROM+DVD
□JFAフィジカル測定ガイドライン
□2003ナショナルトレセンU-16プログラム/ビデオ
□2003ナショナルトレセンU-14プログラム/ビデオ
□2003ナショナルトレセンU-12プログラム/ビデオ
□JFAキッズ(U-6)指導ガイドライン
□JFAキッズ(U-8)指導ガイドライン
□JFAキッズ(U-10)指導ガイドライン
□JFA 2004 U-12指導指針
★「JFA 2004 U-12指導指針」
、
『JFAキッズ(U-6・8・10)
指導ガイドライン」および「ナショナルトレセンU-12/14/16』
、
『フィジカル測定ガイドライン』は送料着払いとなりますので、
各自商品到着時に送料の支払いをお願いします。
7,950円
5,850円
3,960円
3,960円
3,960円
8,400円
1,050円×(
2,520円×(
2,520円×(
2,520円×(
1,050円×(
1,050円×(
1,050円×(
1,050円×(
冊)=
セット)=
セット)=
セット)=
冊)=
冊)=
冊)=
冊)=
円
円
円
円
円
円
円
円
合計金額
円
フリガナ
申込者氏名
印
住所 〒
品名
発送
10日前後の
お届け
郵便振替にて
〒160-0011
東京都新宿区若葉1-10-11
若葉110ビル2A
エルグランツ(株)商品購入係
FAX:03-5919-3045
FAXの場合、文字が読みとりに
くくなります。大きくはっきり
とご記入ください。
4
払込み
JFA技術委員会監修および関連発行物専用申込書
2003NTC U-14で行われたトレーニング
を、テーマ・キーファクターに基づき編
集したビデオです。ゲームでの実践場面
やキーファクターから抽出した日本代表
選手のプレーなども盛り込まれています。
実際のNTCで使用したプログラムとのセ
ットです。
(※複数冊購入できます)
3
送付
FAXまたは
郵便にて送付
記入した専用申込書は商品が到
着するまで保管願います。
¥3,960(税、送料込み)
(※複数セット購入できます)
2
★申込者以外の方への発送はできません
申込者住所
電話番号
(
)
★日中の連絡先または携帯電話番号
(
)
※領収証の発行はいたしません。払込取扱票の払込受領証が領収証となりますので、大切に保管してください。
※払込取扱票の「通信欄」には、商品名・数量・金額を明記してください。
「サッカー指導教本・ビデオ2002年度版(FP編、GK編)
」をお求めの方は下記①を必ずご記入ください。
「各種JFAテクニカルレポート/ビデオ」
「第3回フットボールカンファレンス報告書」をお求めの方は、必ず下記①または②をご記入ください。
①JFA公認指導者資格保有者の方
保有資格
(旧資格)
□公認S級コーチ
□公認A級コーチ
□公認B級コーチ
□地域スポーツ指導員C級
□公認準指導員
□公認少年少女サッカー指導員
□公認C級コーチ
②加盟登録チーム代表者の方
JFAキッズ(U-6)指導ガイドライン
※1:FIFA(フィファ/国際サッカー連盟)の映像使用規定(ビデオ化権)により、JFA加盟登録チームおよびJFA公認指導者資格保有者のみ販売が許可されており、一般の方へ
の販売は許可されていません。
チーム名および
チーム登録番号
チーム名:
チーム登録番号:
制作物の内容、購入方法などでの問い合わせ先は右記まで!(財)日本サッカー協会技術部 TEL:03-3830-1810
※コピーしてご使用ください。
56
57
A MEETING PLACE FOR READERS AND JFA
JFA事務局からの事務連絡
創刊準備号アンケートより
今回、3,000通を越えるアンケートの回答を頂戴しました。皆さま、アンケートへのご協力、ありがとうございました。
今後のテクニカル・ニュースの内容、JFA指導者登録制度のサービス提供の充実に参考にさせていただきます。
①本誌タイトルについて
多くの皆さまから、さまざまな本誌タイトルの候補をいただきました。その中で「テクニカル・ニュース」という名称のままで良いという意
見が多数を占めました。
よって、本誌のタイトルを下記のように決めさせていただきました。
【参加費】
250,000円〜300,000円(予定)
金額は参加人数により変動いたしますので、参加が決定された方には、
振込期日・振込先とあわせて最終決定額をお知らせします。
以下の費用は参加費に含まれませんので、ご注意ください。
○日本国内移動費、出発前泊・到着後泊等、日本国内宿泊費、海外旅行傷害保険
料、超過手荷物運搬料金(航空会社の規程を超える分について)
、クリーニング
代・電話代・飲食時における飲み物代等個人的性格の費用、旅券印刷代、証紙
代、査証代及び予防接種等の費用
※上記費用に含まれるもの
①航空運賃(成田〜パリ/パリ〜ツーロン・往復エコノミークラス)
②宿泊費(現地6泊分/2名1部屋利用)
③食事(朝食6回・昼食5・夕食5回程度)
④現地交通費(団体行動中における専用バス代、空港〜宿泊地、ホテル〜試合会
場、ホテル〜研修場所、パリ市内観光時)
⑤研修に関わる経費(ホテル会議室利用料、外国人コーチ経費、試合観戦入場券、
グラウンド利用料など)
。
【参加申込方法】 参加申込書を入手、必要事項をご記入のうえ、
5月17日までに下記までFAXか郵便でお送りください。
<お問合せ先/参加申込書送付先>
〒113-0033 東京都文京区本郷3-10-15 JFAハウス
(財)日本サッカー協会 技術部(島田・岡田)
TEL 03-3830-1810/FAX 03-3830-1814
●英文表記:Technical news/●日本語表記:テクニカル・ニュース
②アンケート回答より
今回のアンケートには本誌タイトル募集のほか、いくつかの設問を設定しました。この設問に寄せられた回答の一部を紹介します。
Q
Q:テクニカル・ニュースの感想
「今後の協会の取り組みがよく理解でき、私たち指導者が現場にて、どのよ
うに指導すれば良いかを考える機会を得られてよかった」
「現在、ジュニアユースの指導にあたっているが、R.ルメール氏の言葉が身
にしみた」
「今回のJFA指導者登録制度はよいと思う。本の内容は、現在のサッカー界
の現状もわかり指導例も含まれているので参考になった」
「各年代の共通するテクニカルなキーワード(例えばドリブルとか)でまと
めた特集があっても良いと思う」
「あるレベル以上のことについては、よく説明されているが、少年団レベル
の子供たちのことについても掲載してほしい」
時間
午前
夕刻
2
都市
千葉県成田
パリ
ツーロン
ツーロン
3
ツーロン
午前
専用バス
4
ツーロン
午後
午前
午後
専用バス
1
Q
午前
午後
交通機関
未定
専用バス
専用バス
Q:取り上げて欲しい記事について
「U-12、キッズについてももう少し取り上げてほしいです」
「今のコンセプトで進めてほしい」
「フェアプレーの推進について」
「地方の現場で活躍している指導者を取り上げてほしい」
「栄養、その他身体づくりの記事を取り上げてほしい」
「審判およびルールに関する注意事項、留意点なども取り上げてほしい」
「指導者が工夫している練習方法など」
「基本的に何が必要であるのかを中心にした幅広い指導法など」
「サッカー選手に多いけがからのリハビリなどの情報」
5
ツーロン
クレールフォンテーヌ
6
クレールフォンテーヌ
午前
午後
夜
午前
7
パリ
午後
午前
航空機
専用バス
専用バス
航空機
③創刊準備号プレゼント当選者
8
各商品は5月中にお届けいたします。
【サッカーボール】
興野 庄一・大熊 輝明・神田 直文・辻 泰一郎・早川 昇・神田 宜典・梶川 洋一・片山 万・庄司 薫・秋山 茂(10名)
【ベンチコート】
小松 尚武・藤井 俊弘・竹内 剛一・山内 真次・川本 聡郎・富澤 尚彦・村田 信行・ 谷 章・眞名子 稔・横山 武志(10名)
【ウィンドブレーカー】
森 正彦・ 田 啓司・広瀬 裕一・道家 昌宏・松本 斉・芝田 啓二・ 原 薫・橋本 有棋・木村 哲・狩戸 敦・大川 日出男・川辺 学・前田 政和・渡辺 祥二・
丹尾 敬吾・中野 大輔・長谷 義博・生田 武美・野々山 啓三・宮本 真嘉・千葉 靖史・江越 三洋・渡部 成人・山崎 和彦・末谷 由加理・前島 尚道・長岡 俊哉・
井上 文雄・鈴木 猪久夫・永井 勇(30名)
【作戦版付バインダー】
長谷川 正典・宮園 篤・粟飯原 広基・黒川 大吾・後藤 太郎・久 武・山越 康義・宇野 耕二・日向 利恵・佐々木 秀一・武田 直子・西村 叡・井上 修・平松 秀章・
熊木 龍也・和田 正人・横須賀 崇史・林 可人・杉本 哲也・溝端 晃・岡部 正高・舘野 宏之・鈴木 正則・小山 典晃・薮崎 徹・池ヶ谷 修司・清水 昭彦・
宇都木 哲男・広瀬 健一・飯塚 隆行・星野 正和・佐々田 信一・仲澤 匡・米田 徹・清本 英嗣・遠藤 達巳・岡田 直紀・岸本 学・後藤 慶治・大久保 親一・
大関 秀之・原田 裕治・大蔵 裕・紋谷 尚宏・山田 一弘・安藤 道人・中村 洋一・小平
義・元井 淳・中嶋 正男(50名)
午後
スケジュール
新東京国際空港発
シャルル・ド・ゴール空港着乗り継ぎ
ツーロン空港へ着後バスにてツーロンへ 【ツーロン泊予定】
レクチャー① (U19日本代表チームスタッフ)
試合視察①・ゲーム分析(日本対スウェーデン/ブラジル対ポルトガル)
【ツーロン泊泊予定】
レクチャー②・ゲーム分析 (外国人講師)
指導の実践① (外国人講師)ゲーム分析より抽出した課題の修正
試合視察②ゲーム分析(フランス対中国/コロンビア対トルコ)【ツーロン泊予定】
フリー
試合視察③・ゲーム分析(日本対ブラジル)
ディスカッション① 日本の課題【ツーロン泊予定】
ツーロンよりクレールフォンテーヌへ移動
INFセレクション視察、ディスカッション② 若年層の育成
【クレールフォンテーヌ泊予定】
INFセレクション視察
レクチャー④(外国人講師)
指導実践②【クレールフォンテーヌ泊予定】
パリへ移動とフリータイム
パリ観光
成田へ【機中泊】
成田着 解散
利用予定ホテル : スタンダードクラス
時間・内容はあくまで予定であり、事情により変更することがありますが、ご了承ください。
U-15女子チーム創出制度
JFAでは2003(平成15)年度より、女子サッカー活性化の目
的とした「U-15女子チーム創出制度」を創設しています。2003
年度は同制度に13チーム(2003年8月時点)が認定されており、
奨励金が支給され、中学生年代の女子選手たちの活動環境が新たに
整備されることになりました。
今年度も同様に当制度への申請手続き(6月15日締切)が始まり
ます。申請手続きの方法などについては、各都道府県サッカー協会
までお問い合わせください。
(財)日本サッカー協会主催
JFA公認指導者 海外研修 2004〜ツーロン国際トーナメント(フランス)
【U-15女子チーム創出制度について】
【目的】
日本サッカー協会公認指導者資格取得者を対象として、以下の目的
において海外研修を行う。
・諸外国におけるユース年代の指導や制度について理解を深める。
・ツーロン国際トーナメント(U−19)を観戦し、世界と日本の差
を分析する。
・ナショナルコーチングスタッフ、ナショナルトレセンコーチ、ゲ
スト講師のレクチャーやディスカッションを通じて、トレーニン
グやコーチングなど、指導者としてのレベルアップを図る。
【参加資格】
以下のいずれかの資格を取得していること。
日本サッカー協会公認S級・A級・B級・C級・D級コーチ
●主 旨
U-15の女子チームは全国でも数えるほどしか存在せず、小学校を卒業
した女子選手がサッカーを続ける受け皿として機能していないのが現状で
す。ゴールデンエイジ後の選手に継続的にプレーできる環境を提供するこ
とは、強化、普及両面から不可欠といえます。よって、U-15の女子チー
ムを新たに創出し、選手の活動環境の整備に尽力した指導者・団体などに
対し、奨励金を支給します。
●チーム創出とは
『チーム創出』とは、下記の内容をすべて充たすことをいいます。
①U-15年代の選手(小学校5年生〜中学校3年生)を15人以上集めること。
②この内、平成15年度に他のチームで女子登録をしていなかった選手が
10人以上いること(男子の3種・4種の登録だった選手を加入させる際
は、この制度上において未登録選手としてカウントする。また、小学生
であった選手が中学生となる場合も同様とする)
58
【日程】
2004年6月上旬ころ 8日間
※詳細は右記までお問い合わせください。
【場所】
フランス/クレールフォンテーヌ・ ツーロン
【指導】
フランスサッカー連盟・指導スタッフ/JFAナショナルコーチン
グスタッフ(U-19日本代表 チームスタッフ)
、JFAナショナルト
レセンコーチ(日本より同行)
【参加人数】
定員25名(最小催行人員16名)
※定員を越えた場合はJFAにて選定いたします(地域・都道府県トレセンにおい
て中心に活動されている方を優先とさせていただきます)
③中学生が8人以上加入していること。
④平均週2回以上の練習場所が確保され、活動を行うこと。
⑤活動は年間を通じて行い、また将来にわたってチーム存続の意思がある
こと。
⑥(財)日本サッカー協会に登録すること。
●予想しうるチーム創出の形態
『チーム創出』は下記の形態から行われることが予想されるので、各都道
府県協会においてはそれぞれの実態に合わせて協力に指導、推進してくだ
さい。
①意欲のある個人または団体が、まったく新たなチームを作る形態
②既存の他世代型クラブ内にU-15年代の選手を増やし、一つのチームとし
て新たに作る場合
③既存のU-12年代のチームが選手を持ち上がりチームを作る形態
④既存のU-18年代のチーム(高校を含む)が下部組織としてチームを作る
形態
⑤既存の3種ないし4種の男子チームが女子チームを作る形態
⑥都道府県協会が主導し、他の活動母体のない選手を取りまとめ、チーム
を作る形態
詳しくは、JFAホームページ(http://www.jfa.or.jp)をご覧く
ださい。
59
A MEETING PLACE FOR READERS AND JFA
読者参加型企画、制作準備中
皆さまの声を誌面に反映させていきます!
本誌「テクニカル・ニュース」は、公認指導者ライセンス取得される皆様とJFA、双方向のコミュニケーションを活性化させていく媒体でも
あります。現在、JFAでは読者参加型の編集企画立案など、皆様からのご意見や感想などを受け入れる体制を準備しております。
詳細は次号にてご案内いたします。ご期待ください。
ご意見募集&プレゼント
今回、2003ナショナルトレセンU-14に関して、皆様からのご意見をお待ちしております(本誌2ページ、18ページなど参照)
。
なお、お意見をお寄せいただいた方から、抽選で下記の商品を謹呈させていただきます。
【今回のプレゼント】
①「2003ナショナルトレセン」ロゴ入りエナメルバッグ 2名様
②「2003ナショナルトレセン」ロゴ入りピステ Lサイズ/Mサイズ・各2名様
①
【応募方法】
官製はがきに「2003ナショナルトレセンU-14」に関するご意見、お名前・
ご住所・電話番号・希望商品名を記入の上、右記までお願いします。5月10日
必着。
抽選の発表は商品の発送をもって発表にかえさせていただきます。
<宛先>
〒113-0033 東京都文京区本郷3-10-15 JFAハウス
(財)日本サッカー協会「TN Vol.1/NTC U-14係」まで
②
Best Regards, from JFA
3月の創刊準備号から、いよいよ第1号の発行となりました。こ
の「テクニカル・ニュース」は、日本がFIFAワールドカップに優
勝することを大目標とし、その目標の達成に向け、10年以内に
「世界のトップ10」に入ることを目指します。そこから逆算して、
今何が必要か、を提示できるテクニカル機関誌であるべきだと考
えております。そして、日本のサッカーに関わるコーチの全員が
同じベクトルを共有し、各コーチの方々のレベルアップに役立つ
ことが第一の目的です。
すべてのカテゴリーのコーチに対しての発信として、A代表か
らキッズまで全カテゴリーの情報を掲載していくことになります。
しかし、毎回広く浅くさまざまなものに少しずつ触れるよりは、
JFA内部からの直接の発信ということで、テクニカルな情報に関
して深く掘り下げたものとすること、こちらから皆様に是非、お
伝えしたいことを詳細に積極的にお伝えし、共有していくことを
目標としています。
ただし、読者であるコーチの皆様の要望に沿ったものを作り上
げて行くことも重要であり、この機関誌をより良いものとしてい
くために、JFAからの一方向の流れだけでは良いと思いません。
読者であるコーチの皆様とのキャッチボールをしていきながら、
必要なもの、また要望の多い情報を掲載することを考えていきた
いと考えています。是非、読者であるコーチの皆様から多くの意
見をいただき、それを基に情報の提示やディスカッションが発展
していくように考えていきたいと思います。
そういった意味で、読者の皆様に参加していただく部分を積極
的に設けていきたいと思います。次回よりの開始となりますが、
たとえば、テーマを決めてディスカッションをする、現場の意見
をいただきたいと思います。また、ゲーム分析や各クラブで試み
ている効果的なトレーニング紹介など、読者の皆様が参加して、
日本全体で日本サッカーに取り組んでいく、そして日本サッカー
のやるべきことが少しずつはっきりとしていくようにしたいと考
えます。
この「テクニカル・ニュース」はコーチにスポットをあて、コ
ーチとは何か、年代に応じた指導とは、選手にアプローチするこ
とは何かなど、情報提供を行いながら、日本のサッカーに携わる
コーチ全員が一つの大きなファミリーであるという一体感が出て
くるような機関誌になっていくことができればと思います。是非、
多くの意見をお寄せいただき、皆様と良いものを作り上げていけ
ればと考えております。よろしくお願いします。
布啓一郎(U-16日本代表監督)
テクニカル・ニュース編集グループ
お願い:JFA指導者登録係(TEL 03-3830-1860・FAX 03-3830-1816)にお問い合わせの際には、くれぐれも電話番号などを間違えないようご注意ください。
60
61
テクニカル・ニュース Vol.1
○発行人:田嶋幸三
○編集人:財団法人日本サッカー協会テクニカルハウス
○監修:財団法人日本サッカー協会技術委員会
○発行所:財団法人日本サッカー協会 〒113-0033 東京都文京区本郷 3丁目10番15号 日本サッカー協会ビル 電話 03-3830-1810
○発行日:2004年4月25日