作成者:三菱重工 稲田 エラーマネジメント研究会 第 6 回定例研究幹事

作成者:三菱重工 稲田
エラーマネジメント研究会
第 6 回定例研究幹事会
1. 日時 平成 20 年 1 月 23 日(水)
議事録
13:00~17:30
2. 場所 日本原子力産業協会 第 2 会議室
3. 出席者(敬称略)
幹事:
三角(リーダー)
、清川(副リーダー)、小松原(早大)、奈良(東電)、
渡邊(東電)
、氏田(エネ総研)、弘津(電中研)、
伊藤(日立)
、笹島(東芝)
オブザーバー: 手島(東芝)
、南(早稲田)、稲田(三菱)
事務局:
岡澤(原産協会)
4. 会議の概要
本幹事会における報告及び討議は下記の通り。
4.1 集積 RCA の考え方の討議
4.2 職場の安全文化醸成のためのセルフアセスメントツールの提案
4.3 組織事故発生要因を考慮した組織安全性診断ツールに関する研究
4.4 社内インシデントの分析
報告及び討議の概略は以下の通り。
4.1 集積 RCA の考え方の討議
(1)エラーマネジメントシステム枠組みの検討(案)
清川幹事より、エラーマネジメントシステム枠組みの検討(案)について報告された。
・ 不適合発生後、詳細 RCA 又は、簡易分析(集積 RCA)を行うものにスクリーニング
を実施する。
・ 集積 RCA 対象事例の種類として、3 種類考えられる。
a) 性格の似た複数の詳細 RCA 事例から共通要因を抽出
b) 性格の似た簡易分析事例を選択してヒアリング等により共通要因を抽出
c) 性格の似た簡易分析事例から統計的手法により共通要因を抽出
(2)集積 RCA の取り組み手法案の検討
三角幹事より、集積 RCA の取り組み手法案の検討について報告された。
・ 人間行動メカニズム分析より、4 段階(情報の入力、認知、判断、行動)のどの段階
で不適合が発生したかを 7 種類(スリップ、ラプス、ミステイク、バイオレーション、
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ネグリジェンス、サボタージュ、無知)に分類する。
・ 技術コンプライアンス違反を検討した時に考えたものである。
主なコメントは下記の通り。
・ 不適合データの収集時にこのような分類を実施しているのか?
→
まだ考えた段階であり、社内的には実施していない。
・ コンプライアンスをどのように考えているのか?
→
社内ルール違反もコンプライアンス違反と考えている。技術コンプライアンスを
検討した時に、法令だけでなく社内ルールもコンプライアンス違反と考えた。しか
し、それらを同等にすると、根本の法令違反の扱いが軽視される可能性があり重要
度分類を行った。
社内ルール違反であっても不適合処理が適切に行われた場合には、不適合の原
因・対策を文書として明らかにしており、社会的説明責任は果せると考え、コンプ
ライアンス違反にはしていない。
・ コンプライアンス程度は、受けて側(社会等)からの視点で見た方が良い。
(3)共通要因分析の事例について
渡邉幹事より、柏崎原子力発電所における地震対応で実施した「K6 の放射線物質の海水へ
の漏洩」
、
「K7 におけるヨウ素の微量放出」の根本原因分析結果を元に、共通要因分析を行
った事例について報告された。
・ 根本原因分析結果、その背後要因の共通要因として、非常災害対策本部が立ち上がっ
た際の「連絡体制」と「当直長の業務における権限」について「非常災害対策基本マ
ニュアル」の記載内容の周知が不十分であるということが、共通要因として抽出され
た。
主なコメントは下記の通り。
・ 柏崎には当直 30 チームがある。そのうち訓練に参加できるのは 1~2 チームであり、
残りに対してどのように周知するのかが東電の大きな課題である。
・ 災害マニュアルは、神戸、中越地震からブラッシュアップされていた。ルールはあっ
たがその使い易さ等は見直していかなければならない。
・ この共通要因は詳細 RCA を実施しないと抽出できないか?
→
深く考えて、背後要因を抽出したことで解かったこと。少なくとも SAFER で分
析する必要はあると考える。
東電では現在、SAFER 分析した他の案件で共通要因が抽出されるかを検証しよ
うとしている。
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(4)集積 RCA の考え方について
伊藤幹事より、集積 RCA の考え方について報告された。
・ 不適合を第 1 種~第 3 種に区分している。第 1 種(約 20~30 件/年)
、第 2 種(50~
60 件/年)については 5­why による RCA 分析を実施している。
・ 第 3 種(約 1000 件/年)に対して集積 RCA を行うため、集積 RCA では根本原因を
体系化、コード化する必要がある。コード表の例としては「軽微事象用簡易分析様式」
が参考となる。
主なコメントは下記の通り。
・ 第 1 種、第 2 種と第 3 種では情報量が異なるのではないか。もともとの情報量が少な
いと共通要因がコミュニケーション不足等のレベルとなり、対策が困難となる。
(5)集積 RCA の考え方について
笹島幹事より、集積 RCA の考え方について報告された。
・ 年間百数十件の不適合を取上げ、約半数に「なぜなぜ分析」による RCA 分析を実施
している。
・ 要因の共通化を図り、その共通要因項目に対して要因分析を実施し、要因を順次掘り
下げることを集積 RCA として考えている。例えば、
「標準が悪い」という要因が複数
発生すると、それに対して要因分析を深堀りする。
主なコメントは下記の通り。
・ 共通化した要因のため、多くの要因が考えられ、どの対策が効果があるのか見極める
のが難しいのではないか。
要因分析や対策を考える時に個々の問題を深く考える必要があるのではないか。
ある 1 件の事例の分析結果を他へ展開するのも一つの方法ではないか。
・ サンプルにて検証してみてはどうか。また清川幹事が考える集積 RCA 対象事象 3 種
類についてもどのような共通要因が得られるか検証してみるのが良い。
・ JEAG4121 における集積 RCA について、その考え方をまとめた方が良いのではない
か。
集積 RCA に対する各自の考え方について討議したが結論を得るに至らず、次回研究幹事会
に持ち越して討議することとなった。次回までに、各自の集積 RCA の目的、その達成のた
めに必要なデータ、どのようなやり方で実施するのかをまとめる。
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4.2 職場の安全文化醸成のためのセルフアセスメントツールの提案
小松原幹事より、SCMM に基づく職場の安全文化醸成のためのセルフアセスメントツール
の提案について報告された。
SCMM
(Safety Culture Maturity Model)
は、
CMM(Capability
Maturity Model)を用いて、職場の安全風土を診断するツールである。6 段階(0~5)で
の評価を実施し、各職場がどのレベルにあるのかを事実に基づき診断する。
4.3 組織事故発生要因を考慮した組織安全性診断ツールに関する研究
早稲田大学 南氏より、FRAM を用いた組織安全性診断ツールに関する研究結果について
報告がなされた。20 事例について FRAM 分析を実施し、5 つのクラスターに分類した。各
組織がどのパターンに当てはまるかを診断するためのツール(診断項目)を検討し、組織
安全性診断ツールとして有益性が期待されるものである。
4.4 社内インシデントの分析
伊藤幹事、清川幹事より、
「再処理施設における耐震解析の入力ミス」事例について、事例
概要、事例分析及び分析より得られる教訓について報告された。
・ 拡張 CREAM による分析結果より、3 種類のエラーを抽出。(当時状況、原因の推定
を含む。
)
・ 事例分析から得られる教訓として、品質保証責任分担の明確化とコンプライアンスを
支援する仕組みの充実が上げられる。
主なコメントは下記の通り。
・ 代表例(拡張 CREAM)のみ本誌に記載し、他の分析(J­HPES モデル、人間エラー
発生 FT 図手法)は参考資料とする。
・ 状況、原因については公開資料を基にしているので、推定している部分がある。
・ 他の手法例についても公表されている内容のみで考えず、推定をして対策を考えれば
よいのではないか。
5. その他
・ 次回研究幹事会は 平成 20 年 3 月 12 日(水)13:00~17:30、原産協会にて開催予
定。
・ 各自の集積 RCA の目的、その達成のための必要なデータ、どのようなやり方で実施
するのかをまとめ、2 月 29 日までに三角幹事に連絡する。
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・ 各自担当分の進捗も次回研究幹事会にて報告する。
・ 制御棒引き抜け事象については、次回報告書には記載しない。
6. 平成 19 年度の報告書纏めの候補案は下記の通り。
・ HE 分析手法を用いた事例分析報告
「再処理施設における耐震解析の入力ミス」事例紹介、要因分析、考察をまとめ
る。3手法の結果は参考資料とする。
・・・伊藤幹事、弘津幹事、三角幹事
・ 「総合点検」結果
制御棒引抜け事象の説明・・・奈良幹事(削除)
・ 組織事故モデル
中村モデルの説明、事例紹介・・・中村幹事、氏田幹事(削除)
、増田幹事、
清川幹事
FRAM の考え方、事例紹介・・・小松原先生、南氏
・ 集積 RCA
次回研究幹事会にて引き続き議論
・ 関連分野
海難事故 CREAM 分析・・・講演資料を用いる。