Vol.6 No.1

environment Update
−海外環境関連情報誌−
第 31 号
Vol.6 No.1 (2004.5)
CONTENTS
WEEE & RoHS 指令の最新動向
WEEE & RoHS 指令の実施を巡る最近の動き
2
<関連資料>
RoHS 追加除外項目についてのコンサルテーション(原文)
6
ブリュッセル短信
RoHS 閾値の議論/除外項目コンサルテーション/生産者の定義
NEC Europe Ltd. Brussel Office 杉山 隆
12
環境セミナー
「 WEEE & RoHS 指令最新動向 」
White & Case 法律事務所
Mr. Kris Pollet
20
モニタリング
欧州 ・連載
米国 ・連載
欧州環境規制動向
〜 在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
29
米国における環境関連動向
〜 在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [27]
51
中国〖13〗『電子情報製品汚染防治管理弁法』制定動向
59
組合員のページ
富士通の環境経営の取り組み
富士通株式会社 環境技術推進センター 3R 推進部
部長 高橋 誠
環境・安全グループニュース
環境・安全グループ担当委員会活動の状況
事務局便り
72
74
68
WEEE & RoHS、EuP 指令を巡る最近の動き
環境・安全グループ
WEEE & RoHS 指令については、12 月 10 日に TAC(技術適用委員会)が開催され、RoHS 指令の
適用除外について決定が行われるなど進展がみられたほか、その後更なる除外コンサルテーショ
ンなどの新たな動きもあった。また EuP 指令案関連では理事会「共通の立場」の採択が行われ、
欧州議会第二読会の段階に入るなど比較的早い展開で審議が進んでいる。これらの状況について
当組合ブラッセル事務所からの情報、英国貿易産業省(DTI)の情報等をベースに取りまとめたので
以下に紹介する。
I.WEEE&RoHS 指令関連動向
1.12 月 10 日 TAC の結果
(1) RoHS 適用除外の追加、修正
・2004 年 12 月 10 日に TAC が開催され、欧州委員会の言う第一グループについて RoHS 適用
除外用途の追加が決定された。すなわち欧州委員会は 11 項目の除外候補用途についての技
術的調査を外部コンサルタント、ERA テクノロジー社に委託していたが、今回は基本的には
ERA の調査対象となったものを検討対象として除外の可否が決定されたものである。具体的
には ERA の調査結果をベースとして、RoHS 指令付属書(除外リスト)修正の提案が欧州委
員会から出され、採決の結果、加盟国の圧倒的多数で同修正案が採択された。採択された決
定案は EU の公用語に翻訳され官報に告示されるが、英国 DTI ではこのプロセスについて
10〜12 週間ほどかかるとみている。
・公式には後日の発表を待つこととなるが、TAC で採択された修正は以下の通り。
1)付属書第 7 項の第 1 項目:
「(すなわち鉛含有率が重量で 85%以上の鉛ベースの合金)」に
修正
(現行「高融点ハンダに含まれる鉛」のカッコ内規定「(すなわち鉛含有率が 85%を超える
錫/鉛ハンダ合金)」を修正)
2)付属書第 7 項の第 2、第 3 項目:2 つの項目を 1 つに合体
(合体後は「サーバー、ストレージ、ストレージアレイシステム、スイッチ/シグナル/電
送用ネットワーク・インフラストラクチャー装置および通信管理ネットワークのハンダに
含まれる鉛」となる。)
3)付属書第 8 項:「電気接点中のカドミウムとその化合物およびカドミウム表面処理」に修
正
(現行「危険物質および調剤の上市と使用の制限に関する指令 76/769/EEC の改正指令
91/338/EEC に基づき禁止された用途を除くカドミウム表面処理」の「カドミウム表面処理」
の部分を修正)
4)新たな除外用途として以下を追加
①コンプライアント・ピン・コネクター・システムに使用される鉛
②熱伝導モジュール C-リングのコーティング材として使用される鉛
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Vol.6 No.5 (2005.1)
WEEE & RoHS、EuP 指令を巡る最近の動き
③光学・フィルターガラスの中に含まれる鉛とカドミウム
④マイクロプロセッサのピンとパッケージの結合用で 2 種類超の成分を含有するハンダ
の中に含まれる鉛で鉛含有率が重量で 80%超、85%未満のもの
⑤IC フリップチップ・パッケージ内の半導体金型とキャリアーの電気結合用に使用される
はんだの中に含まれる鉛
5)Deca-BDE の用途および電球については、評価されるべき項目として残された。(評価は、
修正すべきかどうか出来るだけ早く確定するため優先的に行われなければならない、とされ
ている。)
(現行付属書第 10 項で評価されるべきものとされている 4 項目のうち上記 2 項目が残
り、「特別な目的用の直管蛍光灯に含まれる水銀」および「サーバー、ストレージお
よびストレージアレイシステム、スイッチ/シグナル/電送用ネットワーク・インフ
ラストラクチャー装置および通信管理ネットワークのハンダに含まれる鉛(当該除外
は特定期限の設定を考慮)」は削除された。)
(注)上記の4)および5)は付属書第 10 項を置き換える形となっている。具体的には、
上記の①が付属書第 10 項、②が付属書第 11 項・・・と続き、5)については付属書
第 15 項という形に変更されている。
(2) WEEE の遵守監視規則およびデータフォーマットの採択
・WEEE 指令で規定された再生・リサイクル目標の加盟国の遵守を監視する規則および情報提
供時に加盟国で使用されるデータフォーマットに関する決定案が欧州委員会から提案され、
圧倒的多数で採択された。採択された決定案は EU の公用語に翻訳され官報に告示されるが、
英国 DTI ではこのプロセスについて 10〜12 週間ほどかかるとみている。その後、ガイダン
スも作成される予定。
(3) RoHS 除外追加要望への対応、除外の解釈
・欧州委員会は、10 月 22 日の TAC で議論されたように ERA 調査開始以降に受け取った RoHS
適用除外の要望について、2 つのグループに分けて検討を進める意向を示したが(本誌前号
4 ページの「第 2、第 3 グループ」のこと)、2004 年 7 月のコンサルテーションでカバーさ
れなかった要望について同様なコンサルテーションを 12 月に行うこととした旨発表し、ま
たコンサルテーション終了後、2 月または 3 月のあり得る採決に向けて 2 つのグループを合
体すべきと提案した。(12 月のコンサルテーションについては後述の通り。)
・WEEE&RoHS 指令の対象でない機器の一部をなす EEE の問題について、欧州委員会は、法務
部局からの助言を受け取ったことを発表した。すなわち、WEEE 指令では第 2 条 1 項で明示
的に適用除外となっているところ、英国は RoHS 指令でも同様に適用除外とすべきとの見解
であった(EEE は両指令において同一の用語で定義されることに基づく)が、欧州委員会法
務部局は英国の意見に同意せず、現行 RoHS 指令文書はかかる除外をカバーしないと決定し
た。この問題を解決するために、欧州委員会は最近のコンサルテーションにおいて新たな除
外提案を含めた(第 22 項参照)が、英国は欧州委員会のイニシアチブを歓迎しながらも、
この除外は航空・宇宙分野に限定すべきでないとの懸念を表明した。
・将来の除外追加要望をどのように扱うかについての加盟諸国からの質問に対して、欧州委員
会は、かかる要望を支持する科学的・技術的証拠を提供する義務が課されるべきであり、そ
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WEEE & RoHS、EuP 指令を巡る最近の動き
れにより欧州委員会と TAC が最終的考慮を行えるようにすべきとの考えを示した。
(4) WEEE 指令第 8 条の実施に関する議論
・一般家庭からの WEEE に関する費用負担について加盟国がどのように提案しているかについ
て一般的な議論が行われ、いくつかの加盟国は指令の要求事項を国内法にコピーするという
案を出しているとし、他の加盟国はさらに進めて特定のメカニズムを挙げるようにしている
との報告が行われた。
(5) その他
a. WEEE 処理に関するワークショップ(10 月 21 日開催)の報告
・WEEE 指令の処理要求事項について検討するため開催された標記ワークショップについてあ
る加盟国から以下の報告があった。すなわち、溶解(smelting)を行う可能性も含めて LCD、
PCB の除去と CRT の処理を行う受け入れ可能な方法に焦点が当てられた。また新しい処理
技術についても議論された。処理の要求事項を実施するため加盟国がいかなる提案を行った
かについて同加盟国が実施した調査に基づき、いくつかの国は特定の技術を明示するか指令
の要求事項より踏み込んで提案しているとの報告も行われた。
b. WEEE 指令付属書 II の改訂提案
・ある加盟国から欧州委員会に WEEE 指令付属書 II の将来の改訂を進める方法について提案
が出されたことについて、欧州委員会は、TAC の付託事項の範囲内と考えるが、法務部局に
チェックを依頼したことを報告した。ひとつの可能性としては、小規模のディスカッション
グループで検討し、TAC に報告するということもあるとされた。
c. WEEE マーキング
・分別回収のシンボルマーク(車輪つきゴミ箱に×印)を付けるには小さすぎる製品の場合、
梱包材にマーキングを要求する必要があるのかという質問がある加盟国から出された。同加
盟国は、梱包材へのマーキングは通常行われず環境への負荷が大きいと考え、取り外し可能
なステッカーの使用を示唆した。これについて欧州委員会は、CENELEC(欧州電気標準化委
員会)ではラベルが製品に合うならそれを使用すべきであり、最低サイズは 5 ミリであると
示唆している旨説明した。
・このシンボルマークは B2B(事業間取引)の EEE に適用されるのかとの質問が他の加盟国
から出されたことに対し、欧州委員会は、製品の最終仕向け先を特定することが困難なので
シンボルマークは B2C(一般家庭用取引)と B2B の双方に適用されることをすでに CENELEC
に伝えてあると回答した。
d. RoHS 指令の遵守方法
・生産者が RoHS 指令に遵守していることを示す方法について、予備的な議論が行われた。あ
る加盟国から欧州規格の開発可能性について質問があり、主要 IT 企業がこのために予備作
業を喜んで行う意向があることに言及した。欧州委員会と多くの TAC メンバーもすでに欧
州の IT・民生電子業界団体からアプローチを受けてきており、欧州委員会は産業の直接参
加を歓迎するとした。本件については、重要な問題なので 2005 年早々に議論を行うべきこ
とが合意された。
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e. 不良・故障機器の交換に使用される在庫 IT 製品
・在庫 IT 製品を修理用に使用することに関する取り扱い基準をどうするかという問題につい
てある主要 IT メーカーからアプローチがあったことに関して、欧州委員会から、彼らと議
論中でありさらなる情報を待っている状況であることが報告された。
f. 「灰色」製品に関する委員会ガイダンス
・「灰色」製品のための欧州委員会の判断基準に関する検討の進捗状況について加盟国から質
問があり、環境総局は他の総局と依然作業中であるが、間もなくウェブサイトに更新文書を
掲載したいとの回答がなされた。
g. RoHS 最大許容値
・RoHS 指令禁止物質の最大許容値設定に関する欧州委員会の決定案は 9 月に理事会に提出さ
れたが、理事会は同決定案について正式な応答がなく、従って、12 月に採択されたものと
されるであろう。
(6) 次回 TAC
・欧州委員会は、次回 TAC を 2 月上旬および 3 月中旬開催予定である旨発表した。
(その後のブラッセル事務所からの情報によると、次回 TAC は 3 月 16 日開催予定となった。)
2.RoHS 除外追加についてのコンサルテーション
(1) 2004 年 12 月 17 日、欧州委員会は 7 月期限のコンサルテーションに対してコメントを提出し
た者にさらなる RoHS 指令の適用除外についてステークホルダー・コンサルテーションを
行う旨通知し、併せてホームページにも発表した。これは、12 月 10 日の TAC で採決の対
象とならなかった項目でこれまでに要望のあったものを対象として、代替物質の存在等の
証拠提出を含めたコメントを求めるものである。コメント締め切りは 2005 年 2 月 11 日。
(2) 同ステークホルダー・コンサルテーションの対象は後掲の 22 項目である。
(3) コメントするそれぞれの項目ごとに以下についての情報を提供し、可能な限り技術的・科学
的な証拠とともに提出するよう要請されている(最初の 3 点は前回のコンサルテーション
と同じであるが、4 点目は今回新しく追加されたもの)。
・産業・商業規模で実現可能な代替品が現状において存在するか。
・そのような代替品には何らかの制約が適用されるか。
・そのような代替品の費用・便益および長所・短所は何か。
・それぞれの除外について正確な用語で表現すること
(4) 追加除外の決定が何時行われるかについては、12 月 10 日の TAC において 2 月、3 月採決の
可能性もほのめかされたが、当分、行われないとみられる。ただし、最近、環境総局は、3
月 16 日予定の TAC で 22 項目に関するコンサルテーションの結果に基づき除外の提案をし
たいとの意向を示している。また今回コンサルテーション締め切りの後、猶予期間の審査
を行い、猶予期間が与えられたものについては自動的に調査(前回コンサルテーションで
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WEEE & RoHS、EuP 指令を巡る最近の動き
ERA が行ったようなもの)に回ることになる、ということである。同時に RoHS 指令付属
書修正の提案を欧州委員会内に提示するとされている。
従って、除外の可否採決は当分行われないと見込まれる。企業総局担当官も、前回のコン
サルテーションと同様の手続きがとられるであろうとし、最終決定の採択は、2006 年初頭
頃になることも予想されるとしている。
II.EuP 指令案関連動向
1.審議経過と見通し
・EuP(エネルギー使用製品)指令案については、2004 年 4 月に欧州議会第一読会において欧
州委員会の提案を大幅に修正した案が可決され、その後、理事会での審議に移っていたが、理
事会では議会修正案を大きく修正した「政治的合意」が行われ、これをベースに 2004 年 11
月に「共通の立場」が採択された。これまでの経緯と在ブラッセル法律事務所のコンサルタン
トによる今後の見通しを示すと以下の通り。
2003. 4
欧州委員会、指令案発表
2004. 4
欧州議会、第一読会終了
(2004. 6.10-13 欧州議会議員選挙)
2004. 6.10
理事会、政治的合意
2004.11.23
理事会、「共通の立場」採択
→
議会第二読会へ
2005. 2.17 以前
欧州議会環境委員会、審議見込み
2005.3.14-15
欧州議会環境委員会、採決見込み
2005. 4 頃
欧州議会、第二読会採決見込み
2005 夏以降
指令の最終採択見込み
2.理事会「共通の立場」の主な修正点
・「共通の立場」により修正された主な点は以下の通りである。(なお、事務局にて「共通の立
場」テキストを仮訳し別掲した。8 ページ参照)
① 議会修正提案の多くを否定
② 加盟国代表及び産業界、NGO 等幅広い関係者をメンバーとするコンサルテーションフォ
ーラムを設置
③ EuP 指令採択から2年以内に作業計画を策定し公表(作業計画には向こう3年間における
優先製品郡のリストを掲載)
ただし、コスト効率の良い温室効果ガス排出削減の可能性が高い製品は2年を待たずに実
施措置の採択が可能
④ 実施対策指令における対象製品は、EU 内で年間 200,000 台超の販売量であること
⑤ 実施対策措置において製造者に過重な管理負担を課さないこと
本指令案については、WEEE&RoHS 指令で見られたほどの大きな議論はあまり出ていないよう
であり、審議は比較的早い展開で進んでいるが、本指令後に制定される実施対策指令の条件も
規定されることなどから、今後ともその動向に注目する必要がある。
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WEEE & RoHS、EuP 指令を巡る最近の動き
<参考>
RoHS 指令適用除外追加の第 2 次コンサルテーション対象項目
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.
13.
14.
15.
16.
17.
18.
19.
20.
21.
22.
Lead in tin whisker resistant coatings for fine pitch applications,
Lead bound in glass, crystal glass, lead crystal or full lead crystal in general,
Chromium (also in oxidation state (VI)) and Cadmium as colouring batch addition each form
up to a content of 2 % in glass, crystal glass, lead crystal or full lead crystal used as decorative
and / or functional part of electric or electronic equipment,
Solders containing lead and/or cadmium for specific applications,
Hexavalent chromium (CRVI) passivation coatings,
Lead in lead oxide glass plasma display panels,
Lead in connectors, flexible printed circuits, flexible flat cables,
Lead oxide in lead glass, bonding materials of magnetic heads and magnetic heads,
Cadmium as doping material in avalanche photodiodes (APDs) for the optical fiber
communication systems,
Lead in optical isolators,
Lead in sheath heater of Microwaves,
Cadmium pigments except for applications banned under Directive 91/338/EEC amending
Directive 76/769/EEC relating to the restriction on the marketing and use of certain
substances,
High Intensity Discharge (HID) lamps for professional U.V. applications, containing lead halide
as radiant agent,
Discharge lamps for special purposes containing lead as activator in the fluorescent powder
(1% lead by weight or less),
Discharge lamps containing lead in the form of an amalgam,
Mercury free flat panel lamp,
Special purposes Black Light Blue (BLB) lamps, containing lead in the glass envelope,
Low melting point alloys containing lead,
Galvanised steel containing up to 0.35% lead by weight and aluminium with an unintended
lead content up to 0.4% lead by weight in electrical and electronic equipment,
Lead in solder and hexavalent chromium in surface treatment, in parts recovered from
production printers and copying equipment, sold, rented or leased or otherwise returned from
professional users other than private households, originally put on the market before 1 July
2006, and reused for the same purpose within the original manufacturer's closed loop system
until 1 July 2011. In this context a closed loop system means a system whereby the
equipment remains the property of the manufacturer or is subject to other contractual
arrangements and is returned to the manufacturer either when the contract expires or at end
of life,
Cadmium sulphide photocells,
Applications of lead, mercury, cadmium, hexavalent chromium, PBBs and PBDEs in electrical
and electronic equipment in the aeronautic and aerospace sectors that requires high safety
standards.
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関連資料: RoHS 追加除外項目についてのコンサルテーション(原文)
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関連資料: RoHS 追加除外項目についてのコンサルテーション(原文)
STAKEHOLDER CONSULTATION ON
ADAPTATION TO SCIENTIFIC AND TECHNICAL PROGRESS
UNDER DIRECTIVE 2002/95/EC
OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL ON THE
RESTRICTION OF THE USE OF CERTAIN HAZARDOUS
SUBSTANCES IN ELECTRICAL AND ELECTRONIC EQUIPMENT
FOR THE PURPOSE OF A POSSIBLE AMENDMENT OF THE ANNEX
1.
INTRODUCTION
Article 4(1) of Directive 2002/95/EC on the restriction of the use of certain hazardous
substances in electrical and electronic equipment1 provides ‘that from 1 July 2006,
new electrical and electronic equipment put on the market does not contain lead,
mercury, cadmium, hexavalent chromium, PBB or PBDE.’
The annex to the Directive lists a limited number of applications of lead, mercury,
cadmium and hexavalent chromium, which are exempted from the requirements of
Article 4(1).
According to Article 5 (2) of Directive 2002/95/EC the Commission is required to
consult the relevant stakeholders before amending the annex. The results of this
consultation will be forwarded to the Technical Adaptation Committee of the
Directive 2002/95/EC and the Commission services will provide an account of the
information received.
Although the Commission will analyse the results of this stakeholder consultation
carefully, please note that as with all stakeholder consultations, this action is only one
part of the decision making process. Neither the fact that a stakeholder consultation is
being launched, nor the results of this stakeholder consultation should be interpreted
as a political or legal signal that the Commission intends to take a given action.
2.
APPLICATIONS TO BE EVALUATED - ANNEX
Item 10 of the annex, as published, states that the Commission shall evaluate ‘as a
matter of priority in order to establish as soon as possible whether these items are to
be amended accordingly’ the following applications:
• Deca BDE2,
• Mercury in straight fluorescent lamps for special purposes3,
• Lead in solders for servers, storage and storage array systems, network
infrastructure equipment for switching, signalling, transmission as well as network
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関連資料: RoHS 追加除外項目についてのコンサルテーション(原文)
management for telecommunications (with a view to setting a specific time limit
for this exemption)4, and
• Light bulbs5.
3.
PROPOSAL FOR ADDITIONAL EXEMPTIONS
Article 5(1)(b) of Directive 2002/95/EC provides that materials and components can
be exempted from the substance restrictions contained in Article 4(1) if their
elimination or substitution via design changes or materials and components which do
not require any of the materials or substances referred to therein is technically or
scientifically impracticable, or where the negative environmental, health and/or
consumer safety impacts caused by substitution outweigh the environmental, health
and/or consumer safety benefits thereof.
On the basis of this provision the Commission has received from Member States and
Industry additional requests for applications to be exempted from the requirements of
the directive.
The additional requests are:
1. Lead used in compliant-pin VHDM (Very High Density Medium) connector
system
2. Lead as a coating material for a thermal conduction module c-ring
3. Lead and cadmium in optical and filter glass
4. Lead in optical transceivers for industrial applications
5. Lead in solders consisting of more than two elements for the connection
between the pins and the package of microprocessors with a lead content of
more than 85% in proportion to the tin-lead content (exemption until 2010)
6. Lead in high melting temperature type solders (i.e. tin-lead solder alloys
containing more than 85% lead) and any lower melting temperature solder
required to be used with high melting temperature solder to complete a viable
electrical connection
7. Lead in solders to complete a viable electrical connection internal to certain
Integrated Circuit Packages (Flip Chips) (exemption until 2010)
8. Article 4(1) substances in safety equipment for fire and rescue services.
9. Lead in lead-bronze bearing-shells and bushes
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関連資料: RoHS 追加除外項目についてのコンサルテーション(原文)
4.
CONSULTATION OF INTERESTED PARTIES
In preparation of the decision for the consideration of item 10 of the annex as
published, and the items listed above based on Article 5(1) (b), the Commission
services would like to consult interested parties.
In particular, stakeholders are requested to provide, for each entry, information on the
existence of feasible substitutes currently existing in an industrial and/or commercial
scale, and the costs and benefits and advantages and disadvantages of such a
substitute. For each item, any feasible substitutes should be identified and any
restrictions that apply to this substitute. Stakeholders are requested to support, as far
as possible, their contribution with technical and scientific evidence.
1.
-
2.
-
3.
-
4.
-
Deca-BDE
Do feasible substitutes currently exist in an industrial and/or commercial
scale?
Do any restrictions apply to such substitutes?
What are the costs and benefits and advantages and disadvantages of such
substitutes?
Mercury in straight fluorescent lamps for special purposes
Do feasible substitutes currently exist in an industrial and/or commercial
scale?
Do any restrictions apply to such substitutes?
What are the costs and benefits and advantages and disadvantages of such
substitutes?
Lead in solders for servers, storage and storage array systems, network
infrastructure equipment for switching, signalling, transmission as well as
network management for telecommunications (with a view to setting a
specific time limit for this exemption)
Do feasible substitutes currently exist in an industrial and/or commercial
scale?
Do any restrictions apply to such substitutes?
What are the costs and benefits and advantages and disadvantages of such
substitutes?
Lead in glass for light bulbs
Do feasible substitutes currently exist in an industrial and/or commercial
scale?
Do any restrictions apply to such substitutes?
What are the costs and benefits and advantages and disadvantages of such
substitutes?
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関連資料: RoHS 追加除外項目についてのコンサルテーション(原文)
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-
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9.
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Lead used in compliant-pin VHDM (Very High Density Medium)
connector system
Do feasible substitutes currently exist in an industrial and/or commercial
scale?
Do any restrictions apply to such substitutes?
What are the costs and benefits and advantages and disadvantages of such
substitutes?
Lead as a coating material for a thermal conduction module c-ring
Do feasible substitutes currently exist in an industrial and/or commercial
scale?
Do any restrictions apply to such substitutes?
What are the costs and benefits and advantages and disadvantages of such
substitutes?
Lead and cadmium in optical and filter glass
Do feasible substitutes currently exist in an industrial and/or commercial
scale?
Do any restrictions apply to such substitutes?
What are the costs and benefits and advantages and disadvantages of such
substitutes?
Lead in optical transceivers for industrial applications
Do feasible substitutes currently exist in an industrial and/or commercial
scale?
Do any restrictions apply to such substitutes?
What are the costs and benefits and advantages and disadvantages of such
substitutes?
Lead in solders consisting of more than two elements for the connection
between the pins and the package of microprocessors with a lead content
of more than 85% in proportion to the tin-lead content (exemption until
2010)
Do feasible substitutes currently exist in an industrial and/or commercial
scale?
Do any restrictions apply to such substitutes?
What are the costs and benefits and advantages and disadvantages of such
substitutes?
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関連資料: RoHS 追加除外項目についてのコンサルテーション(原文)
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Lead in high melting temperature type solders (i.e. tin-lead solder alloys
containing more than 85% lead) and any lower melting temperature
solder required to be used with high melting temperature solder to
complete a viable electrical connection
Do feasible substitutes currently exist in an industrial and/or commercial
scale?
Do any restrictions apply to such substitutes?
What are the costs and benefits and advantages and disadvantages of such
substitutes?
Lead in solders to complete a viable electrical connection internal to
certain Integrated Circuit Packages (Flip Chips) (exemption until 2010)
Do feasible substitutes currently exist in an industrial and/or commercial
scale?
Do any restrictions apply to such substitutes?
What are the costs and benefits and advantages and disadvantages of such
substitutes?
Article 4(1) substances in safety equipment for fire and rescue services
Do feasible substitutes currently exist in an industrial and/or commercial
scale?
Do any restrictions apply to such substitutes?
What are the costs and benefits and advantages and disadvantages of such
substitutes?
Lead in lead-bronze bearing shells and bushes
Do feasible substitutes currently exist in an industrial and/or commercial
scale?
Do any restrictions apply to such substitutes?
What are the costs and benefits and advantages and disadvantages of such
substitutes?
Interested parties are invited to send their comments by 5 July 2004 at the latest by email to [email protected]
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ブリュッセル短信
ブリュッセル短信
RoHS 閾 値 の議 論 /
除 外 項 目 コンサルテーション/生産者の定義
JBCE 環境委員会委員長
NEC Europe Ltd. Brussels Office
杉山 隆
1. 業界は抜け穴つくりに勤しんでいる? RoHS の閾値決定に衝撃
3 月 1 日付の Electronic Business Japan という日本のオンラインニュース紙面に、
『Electronics Weekly から:鉛フリー規制、「抜け穴」で欧州 RoHS 指令を回避可能へ』
という、RoHS が全面的に抜け穴だらけになって、もう対応が必要なくなるような印象のタイト
ルの記事が流れた。実際にこの記事を読んでみると、
『電子部品メーカーは、プリント回路基板の鉛含有量が完成時に 0.1%以下という条件は残る
ものの、すず鉛メッキを採用した電子部品の供給を続けることが可能になった。』
とあり、単に電子部品のリード線に鉛半田メッキをしたものを供給できるようになったというだ
けの話しで、大それたタイトルとはかけ離れた内容になっている。実際の Electronics Weekly で
もタイトルは「欧州の無鉛化指令に最後に加えられた変更は、電子部品製造者がこの環境法制の
意図するところを回避する抜け穴になるかもしれない」という程度のものである。
しかし、この記事は日本の RoHS 対応に勤しんでいる人たちに大きな衝撃を与えたようだ。その
関心は二つの方向に向いている。
1. 欧州委員会の原案に、何らかの変更が加えられ、それまで JBCE が推していた均一物質当たり
の重量比を閾値とするのではなく、ユニット当たりの含有量を閾値とするように変更が加
わっていくのではないかという懸念。このような変更が加わると、ユニットに含まれる有害
物質の重量をいちいち測らなければならなくなり、業界としては大変な工数をかけなければ
ならなくなる。
2. 欧州委員会の原案の解釈に手心が加わって、たとえばメッキに有害物質が含まれていても、
金属全体の重量比で判断されるのなら、ひょっとしてクロメート処理の金属板でも使用可能
になるのではないか。
(クロメート処理は、鉄板に亜鉛メッキをし、更に六価クロムの液に浸
す。自動車の鋼鈑などに多用される。しかし、六価クロムは RoHS 規制対象となっている。)
業界としては、閾値を変な形でユニット全体の含有量と定義されてしまうと、実際の対応が非常
に大変になる反面、メッキや小さな電子部品では少々の有害物質を含んでいても全体の重量比か
らすると閾値以下になる場合は見逃してくれるのかもしれないという期待感がみえる。この記事
の記者は、何を一体発見したというのか。
自動車廃棄処理指令(ELV)では、法律施行直前まで決まらなかった有害物質の最大含有許容量
(閾値)に関し、RoHS では、何とか早い段階で欧州委員会決定という形で正式に通知がほしい
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RoHS 閾値の議論/除外項目コンサルテーション/生産者の定義
と、JBCE を先頭にして、電気電子産業界は、ELV の閾値を基に欧州委員会などに要請を繰り返し
てきた。欧州委員会もそれに応え欧州委員会決定のドラフトを作り上げ、業界にも意見聴取をし
てきた。そのドラフトの中に、次のような文言がある。
" Homogeneous material means a unit that cannot be mechanically disjointed in single
materials.(同一物質とは、単一の材料に機械的に分解できない単位を示す)”
確かにこの文章は、余りすっきりとした定義ではない。Unit という表現自体が唐突な印象を与え
るし、機械的に分離できないという表現も拡大解釈ができる。しかし業界としては、もうこの段
階でドラフトを変更することを要請するよりも、この表現を受け入れ、一刻も早く欧州決定が出
されることを要求した。そのための統一見解作りに私も奔走した。特に AeA、EICTA では、この
表現では生ぬるく、 without destroying the function of the unit (機能を損なわない範囲で(機
械的に分解できない))という文言を入れることを主張するメーカーがいて、統一見解作成に苦労
した。こんな文言を入れたら、益々業界は『抜け穴』つくりに勤しんでいると見られるに違いな
い。実際、欧州白物電機業界や Orgalime といった業界団体は、この文言が入らないと言って、最
後に統一見解から外れた。
Electronics Weekly によれば、この一文は、欧州の電子部品メーカーの圧力で加わったものである
という。また、欧州委員会の担当からの説明で、大きな製品全体は unit ではないが、プリント基
板はユニットと解釈できると言うようなものがあったらしい。そのニュースに敏感に反応したの
は TAC メンバーであったようだ。EICTA が TAC のメンバーにプレゼンテーションをした時、この
話題に関する質問が出たようだ。特に UK やデンマークあたりから、
「プリントサーキットボード
を業界はユニットとして認めてもらおうと思っているのか」と鋭い質問があったようだ。また、
JBCE のメンバーが UK の担当に会ったとき、『抜け穴』にあたかも TAC のメンバーが賛成してい
るかのように書かれた記事を不快としていたという。
さて、ここまでであれば、そのうち人の噂も 75 日で消えてしまったかもしれない。ところが、3
月 24 日付の Electronics Weekly で,
『Fog Thickens Over Europe's Lead-Free Rules(欧州無鉛規則に暗雲)』
という記事が出て、テレビセット全体があたかも一つのユニットであると解釈できるようなこと
を業界が望んでいるかのごとく書かれてしまった。記事によると、
『前回の TAC の会合で、欧州電子機器産業界の EICTA がプレゼンテーションした中で、今回
RoHS で禁止された有害物質の閾値 0.1〜0.01%は、家電製品の製品全体に適用されるかも
しれない可能性はある。例えば、重量の大きなテレビは(全体の重量比で)多くの鉛を含む
こともありえる、とした。
』
と書かれてしまった。注意深く読めば、それを主張したとは書いていないものの、業界がユニッ
トの範囲をできるだけ広く取って、可能であれば製品全体の含有量で定義をしてほしいと願って
いると読める。
実際、現在ガイドラインを EICTA、AeA、JBCE で統一見解で作成しようと動いているが、どうも
欧州勢から出てくるユニットの解釈拡大が気になる。機械的に分解できるという定義を、ドライ
バーなどで分解できる範囲とするとか、機能を壊さない範囲で分解できるといった表現をどんど
んと突っ込んでくる。半田などはドライバーでは分解できないから、当然実装済みのプリント基
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板全体がユニットになる。機能を壊さない範囲となると、例えば巨大なモーター一つがユニット
になり、更に拡大解釈すれば、テレビセット全体がユニットになってしまう。実際にそういう拡
大解釈を望んでいる企業があるのだから、新聞に書かれてもしょうがない。
この Electronics Weekly の Steve Bush という記者は、更に 4 月 8 日の記事で、
『Definition of Material Creates RoHS Loophole(材料の定義が RoHS の抜け穴を作る)
』
というタイトルの下、エコポルというドイツの環境団体の見解を紹介している。もともと ELV の
欧州決定が土台になっていて、車の場合は『機械的な分解』= 巨大なシュレッダー装置でバラバ
ラにすることとなっているようである。それをそのまま RoHS に持ってきたので、このような、
何でもありのような解釈が出来る表現になってしまったのではないかという。
いずれにせよ、TAC のメンバーにはこれらの記事でかなり不快感が広まっているようで、抜け穴
作りに勤しむ業界の後押しなどしてやるものかという空気が広がってしまった。
2. TAC 会合:閾値の欧州委員会決定、再度先延ばし
4 月の TAC で、ドラフトで配布されていた RoHS の鉛、カドミウムなどの閾値(最大許容含有量)
に関する欧州委員会決定(デシジョン)が採択される…と多くの関係者は期待していた。しかし、
4 月 30 日に予定されていた TAC 会合はなくなってしまった。つまり、閾値のデシジョンの投票
は、またまた延期されてしまったのである。
Electronics Weekly が「業界は抜け穴つくりに勤しんでいる」と報道したことがきっかけとなって、
TAC のメンバーが欧州委員会の作成したデシジョンのドラフトに懐疑的になってしまったようだ。
欧州委員会としては、Homogeneous Material の定義をドラフト中に入れた時、まさかこんな大騒
ぎになるとは想像もつかなかったであろう。これらの事情は、TAC の議事録を時間を追って読ん
でいくと分かる。
先ず 1 月 27 日の TAC の議事録であるが、ここでは欧州委員会は関係者との協議(インターネッ
トによる stakeholders consultation)の結果を報告したあと、ELV の閾値のデシジョンと比較して、
Homogeneous Material の定義を更に特定したと言っている。この定義は、化学的な分離を排
除することを目的としているとし、もしこの文言を変えるとすると、再度欧州委員会の中で内部
コンサルテーションを受けなおさなければならないと発言している。その裏には、既に内部コン
サルテーションで承諾されているこのデシジョンのドラフトをそのまま承認してもらいたいと暗
に言い含めているようである。
このときの話題は、むしろ閾値の数値を可能な限り低くするべきだと主張する加盟国が居て、欧
州委員会側が、ELV と同じ値を採用しているが、そこで定められている値と異なるものを設定す
るのは無理があると説明している。特に水銀が槍玉に上がり、たとえばプラスチックなどにもし
水銀がほんの少量でも含まれていたらそれは意図的に混ぜたものでしかありえないから、水銀の
閾値はゼロであるべきというような議論がなされている。ELV の時に決めた閾値は、非常に健全
な調査結果を用いていることなどから、ELV の閾値に対する欧州委員会のドラフトを支持する意
見がでている。ともかく、議論百出で何か決まるような状態ではない。欧州委員会としては 4 月
にはデシジョンを採決したいとしている。
さて、3 月 17 日に開かれた TAC では、EICTA が情報通信家電業界の代表として、プレゼンテー
ションをした。1 月の玩具工業会の発表に続いて、TAC での発表は二回目である。EICTA は RoHS
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の除外項目の追加と、テストメソッド、閾値について触れた様子である。閾値に関しては JBCE
が先鞭をつけ、業界をリードし、欧州委員会の見解も JBCE が作り上げたようなものなので、EICTA
が大きな顔をして TAC でプレゼンテーションをするというのは、何か許せないところもあったの
だが、丁度 Electronics Weekly の記事が出た直後でもあり、TAC では集中砲火を浴びたようであ
る。もちろん議事録などにそのあたりの話しは出ていないが、このプレゼンテーションに出席し
た人間が、
「ともかく、閾値のことばかりしつこく聞かれてうんざりした」
とぶつぶつ言っていたので、相当突っ込まれたようである。
3 月 17 日の TAC 会合の UK による非公式議事録では、次のようになっている。
「欧州委員会は、彼らが提出したドラフトは既に欧州委員会の中で承認されていて、次回の
TAC 会合の前にどのくらいの加盟国がそれをサポートしてくれるか知りたいと発言。もし加
盟国から、ドラフトの文面をマイナーチェンジ以上に変更をしたいと要請があれば、欧州委
員会としては、(変更した文章を)関係者との協議および欧州委員会の内部回覧にかけ直さ
なければならず、その場合は今年末までにデシジョンとしての合意が得られることは考えに
くいと発言。最大のポイントは Homogeneous Material の定義で、UK はデシジョンの発
行が遅れることのほうが問題なので、もしガイダンスの形でこの表現について明確に説明を
するというなら、このプロポーザルに賛成できると発言。欧州委員会は、ガイダンスでの明
確化は可能とした。現在の欧州委員会の提出したドラフトは完璧なものではないとしても、
早期に合意ができるほうが現状打開には非常に重要なので、TAC としてはこれ以上決定を延
ばすことはできないと強調した。欧州委員会も、必要とする確信を産業界に与えるため、早
急な決定が必要であることを合意した。」
この議事録では TAC のその後の予定は見えないが、3 月 19 日付で、dti(英国通商産業省)が発
行した WEEE & RoHS アップデートでは、「4 月 30 日の TAC 会合で閾値に関する欧州委員会決定
が採決にかけられると希望している」とあり、この時点では、まだ 4 月 30 日の TAC で採決にか
けられるとみていたようである。少なくとも、閾値の数値に関しては、多くの加盟国が ELV の数
値と一致させることに賛同を示したと思われる。そうでなければ、採決に持ち込まれるというこ
とはないだろう。
しかし、その後いろいろなところから流れてきた情報では、欧州委員会が"Homogeneous material
means a unit that cannot be mechanically disjointed in single materials"という表現をドラフトか
ら完全に外して、数値だけが明記されている『閾値』の欧州委員会決定を用意しているという。
そしてガイダンス書類の中で、 Homogeneous Material の定義を、他の unit 、 mechanically
disjointed などの定義と一緒に明確化することを考えているという。もしそうなった場合は、ガ
イダンス自体は法的な拘束力を持つものではなくなるので、これらの表現が法的な意味合いを持
つことにはならなくなる。
(少なくとも、
各国はこの表現を国内法に使う義務はまったくなくなる)。
結局、どのような力学が働いたのか、4 月 30 日の TAC の会合はなくなってしまった。UK の非公
式書類に、TAC のメンバーも欧州委員会も、産業界のために RoHS の閾値に関しての欧州委員会
決定を早期に決める必要性を理解しているとなっていたが、今後どのような形でプロセスが進む
のであろうか。TAC の会合を待たずに、修正書類を文書で関係者に回す形で、欧州委員会および
各国の TAC メンバーの了承を取っていくのではないかという憶測もあるが、またまた『閾値』の
デシジョンは雲の中にすっぽり覆われてしまったような状態にある。Electronics Weekly という業
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RoHS 閾値の議論/除外項目コンサルテーション/生産者の定義
界専門情報誌に載せられたひとつの記事が、とんでもなく大きな波紋を引き起こし、砂上の楼閣
であったようなあいまいな表現を押し流してしまったといったところであろうか。
3. TAC 会合−欧州委員会が新たな除外項目についてコンサルテーション開始。
新規項目に JBCE の裏工作。臭素系難燃剤 DECA-BDE は使用禁止
電気電子製品における有害物質の使用を規制している RoHS 指令では、付属書でいくつかの除外
項目を設けていることは周知の通りである。この除外項目に関しては、RoHS 指令第 6 条で、2005
年 2 月 13 日より前に新たな科学的な証拠に基づいて見直すことが明記されている。更に付属書
に列記されている物質に関しては、新たな科学的な事実と予防的原則に基づいて必要性を検討す
るようにとされている。
一方付属書のほうを見ると、最後の 10 項目目に、次のような箇条書きがある。
欧州委員会は、次の応用について優先度を持って可能な限り早く評価するように。
• デッカ BDE
• 特殊用途のための直管蛍光管の中の水銀
• サーバー、ストレージ、ストレージアレイシステム、交換機、シグナル、伝送、通信管理
などのネットワーク基地局用機器に含まれる鉛
• 電球
業界のほうでは、特に米国企業を中心として、アイルランドの様に米系企業の意見を反映させて
くれる国を利用して、新しい除外項目を認めさせるべくかなり強力なロビー活動が行われた。そ
の結果、TAC ではこれらの必要性について、欧州委員会が調査をすることを依頼。欧州委員会は、
『Adaptation to scientific and technical progress under Directive 2002/95/EC』
というタイトルの下、上記の 4 つに加えて、新規の RoHS 対象除外リストを作り、外部の技術コ
ンサルタントに調査を依頼することを決定。4 月に調査会社を決定、調印ということになった。
この話しが出た 1 月の TAC で、これらの除外項目を、『ファーストトラック』として最終結論が
出るまでは使用禁止措置を取らないようにしようという動きが出てきた。TAC の決定の緩慢さを
見ると、もしこれらの項目を除外するかどうか 2006 年 7 月までに結論が出ないと、今のままで
は使用禁止になってしまう。いったん使用禁止になってしまえば、あとでいくら使用禁止が解か
れても市場は戻ってこない。そこでこのファーストトラック方式が考え出された様である。これ
らの項目について、ファーストトラック方式を取るかどうかは TAC でまだ最終決定はされていな
い様であるが、欧州委員会としては各国政府の意思が TAC に反映されるのであれば、このファー
ストトラック方式を採用したいという意向のようである。
(もっとも、加盟国の反対が強い様であ
るが。)
ところで、この項目の中で、デッカ BDE と電球に使われる鉛に関しては、欧州議会からクレーム
がついたようである。欧州議会と欧州理事会で最後の調整が行われたとき、付属書の 9 までは除
外が明白に認められているが、10 番目は除外にならないという合意があったというのである。そ
れによると、10 番目に挙げられている 4 項目のうち、直管の水銀およびサーバーなどの鉛は 9
番目までに上げられているのでファーストトラック方式で除外になっているが、デッカ BDE と電
球の鉛は 9 番目までに上げられていないから、基本的に除外されていないというわけである。こ
の方針は、欧州委員会が出した方針と異なるということで、TAC で議論になった様である。JBCE
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RoHS 閾値の議論/除外項目コンサルテーション/生産者の定義
の事務局長が欧州委員会に確認したところでは、議会側の意見が正しく、最後の妥協案でフット
ノートのような形で但し書きによる合意事項があったのに、正式書類にしたときにそれが誤って
落ちてしまったらしい。結局は、デッカ BDE と電球の中の鉛は 2006 年 7 月 1 日から使用禁止と
いうのが、正式な見解になった。
これに驚いたのは、臭素系難燃剤協会(BSEF)や電球業界(ELC、CELMA)で、BSEF はある程度
予想はしていた様であるが、ELC、CELMA といったところは、慌てて電球の鉛ガラスの必要性を
訴えるポジションペーパーを出してきた。臭素系難燃剤のデッカ BDE に関しては、既に調査書で
有害性が非常に低いという報告も出ており、BSEF は当然除外されるものと思っていたようである。
BSEF は「デッカ BDE は大丈夫と」ずっと言いつづけてきた。デッカ BDE は電気電子機器にはあ
まり多く使われてはいないというものの、この難燃剤に頼っている業者は急いで代替品を探さな
ければならない。どうも欧州議会の中に、徹底的に臭素系難燃剤を排除しようという信念を持っ
た議員がいる様である。それにとばっちりを受けた形で、鉛ガラスを使った電球を作れなくなっ
てしまった電球業界は深刻である。電球の安全性の面で、電球に使われるガラスには 2〜3%の鉛
が必要のようである。もっともドイツから出てきた WEEE & RoHS の国内法の案の中で、
「電球は
WEEE の対象外であるが、RoHS の対象である」という記述があり、おやっ?と 思ったことがあ
る。WEEE と RoHS が欧州議会と欧州理事会で揉めていたとき、電球業界などはあまりロビー活
動をしていなかった。付属書の 10 に電球が明記されたときに、当然除外項目になっていると思っ
ていたのであろう。
さて、そうこうしている内、5 月 3 日になって突然欧州委員会の Ms. Klingbeil から e-mail が舞い
込んできた。付属書 10 にある 4 項目と、新たな RoHS 対象例外品目について、業界などから広
く意見を聞きたいというもので、提出期限は 7 月 5 日になっている。この新たな RoHS 対象例外
品目をざっと眺めているうち、新しい除外品目が最後に一つだけ付け加えられていることに気が
ついて、我と我が目を疑った。そこには次のような記載があったのである。
『Lead in lead-bronze bearing-shells and bushes』
これは、まさに、2 月末に JBCE の藤井事務局長と一緒に欧州委員会のパセラ担当にあってお願い
した項目である。これは具体的に言うと、エアコンなどのモーターの軸受けベアリングに使われ
ている鉛-青銅のボール・ベアリング受けである。エアコンを製造販売している会社から出てきた
もので、鉛を代替することが非常に難しいとのこと。しかも自動車廃棄処理指令(ELV)では除
外項目になっているものである。このあたりをパセラ女史に説明して、新たな除外項目として検
討してもらえないかと、頼んでいた経緯があった。裏工作というわけではないが、このような地
道なロビー活動がちゃんと結果に結びつくところがすごい。
Ms. Klingbeil からきたレターに添付されていたコンサルテーションの詳細の中では、これらの除
外対象品について、
「工業、商業ベースで使用可能な代替品の存在とそれらのコスト、利点、長所、
欠点などの情報を、技術的、科学的な証明と一緒に提出して欲しい」とある。もちろん JBCE と
しては、喜んでこれらのデータを提出する予定であるが、それ以外の新規の RoHS 除外品目も提
出するチャンスである。もちろん、新規の除外品目を提出するには、工業会の中での調節が重要
である。
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RoHS 閾値の議論/除外項目コンサルテーション/生産者の定義
4. TAC 会合:生産者の定義―欧州委員会と EU 加盟国で見解の対立
TAC の中心議題の一つに生産者の定義がある。要点だけをまとめておくと次のようになる。
1. WEEE の EU 加盟国での実施は 2005 年 8 月となっているが、それ以前に販売された製品をヒ
ストリカルウェイストとして、それ以降販売されたものと区別をしている。WEEE & RoHS 指
令ではこの区別のためにラベルを機器に張りつけることが義務付けられている。ラベルはご
み箱に × の付いたものである。
2. この区別をする最大の根拠は、ヒストリカルウェイストに対しては、現在のメーカーに処理
費用の全責任を負わせられないので、ビジブルフィーという形で、電気・電子製品の新規購
入者から処理費用の実費を回収することが可能になっている。期限は基本的に最大 8 年間と
なっている。一方の新規販売製品は、各製造者が自分の製品の処理費用を負担することになっ
ている。ビジブルフィーなどは認められない。なんとしてもラベル貼付などで区別をしなけ
ればならない。
3. ところで、このラベルには生産者の名前を入れることになっている。処理場に運ばれたとき
に、どの生産者のものか分別するためである。この生産者をどう定義するかについて、現在
欧州委員会と EU 加盟国で揉めに揉めている。
4. EU 加盟国にとっては、この生産者とは最終的に製品が売られた EU 加盟各国における責任者
でなければならない。その根拠は、この生産者は、その国で発生するであろう処理費用を何
らかの形で保証しなければならないからである。最終販売国に持ち込むのは、メーカーかも
しれないし、輸入業者かもしれないし、他の EU 加盟国のディストリビューターかもしれない
し、インターネット販売で持ち込まれたものかもしれない。それらを、いちいちチェックし
て、どのような形で機器にラベルを張れと言うのか。誰がラベルを張る責任者なのか。
5. 欧州委員会としては、各国でそれぞれラベルが異なるような状況が発生すると、製品の自由
流津を妨げるとして、欧州連合に製品が導入された時の製造者もしくは輸入業者を生産者と
解釈している。
**この保証の修正案は、欧州議会と欧州環境理事会の妥協案作成のあたりでするっと出てき
て、あっという間に決まってしまったものだ。よく検討すれば、これはなかなか難しい問
題をはらんでいることがわかっただろうが、ほとんど討議がなかったために、今ごろになっ
て、それをどう実行するか慌てふためいている。**
さて、3 月 3 日の TAC ではこの問題について話し合ったようである。もっとも、討議の歯車がか
み合っておらず、欧州委員会と、EU 加盟国の代表が意見を言い合っただけで終了という感じであ
る。
「欧州委員会は、『生産者』と put on the market の定義につき、法務サービス部門からの
意見を聞いた。法務サービス(CLS)は『生産者』と『輸入業者』という定義は、欧州連合
の市場に最初に製品が導入された時点の行為とのみ関係する。もし、EU 各国が、
(指令 11.2
条に基づき)、最初に製品が生産されたり、EU 連合に持ちこまれた国ではなく、持ちこまれ
た製品が最終的に販売された国における『生産者』を特定付けるためのマーキングを『生産
者』に要求するとしたら、それは単一市場における商品の自由流通に関する EC 条約に違反
することになるだろう。」
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RoHS 閾値の議論/除外項目コンサルテーション/生産者の定義
これに対して、EU 加盟各国は、「この解釈では各国法の中で生産者の責任義務を確定するための
『生産者』の特定ができなくなるので WEEE を国内法に落とし込むことが不可能になる」と反発。
この問題に対して、どう対処していったら良いかはまだオープンであると欧州委員会が答えてい
る。
UK から、生産者の責任義務を各メンバー国の管轄権の中で製品を市場に入れる『パーティ(ここ
では生産グループという意味か?)』に負わせれば良いと示唆。
(これはどういうことなのか不明)
WEEE を『遠隔販売業者』にどのように適用するべきか討議があった。UK からは、
『遠隔販売業
者』がベースにしているそれぞれの国に登録させ、その国内と、EU 連合のほかの国に販売した数
量を報告させ、その総量に見合う WEEE 処理費用を登録している国に支払うという方法はどうか
と示唆。他のメンバー国が同じ事をすれば、少なくともフリーライダーを減らす手段とはなり得
る。他のメンバー国からは同様のシステムで、情報交換を密にすることで、もし『遠隔販売業者』
が何か問題を起こしたら、登録している国の政府が訴訟を起こすなどの処置ができれば、それで
も良いという意見もあった。いずれにせよ、将来はどうあれ、現状ではそれほど大きな問題では
ないだろうというのが大半のメンバー国の認識であった。
さて、フランスの国内法 DEEE では、フランス国内に最初に持ちこんだものを『生産者』として
定めている。フランスの工場で生産されたもの、フランス国内にメーカーが持ちこんだときはま
さしくメーカーが『生産者』であり、OEM 購入してブランド名を貼って販売した再販業者は『生
産者』であり、フランス国外から(他の EU 加盟国も含め)輸入した輸入業者も『生産者』であ
る。ここでいう『生産者』というのは、フランス国内で販売された商品の廃棄物処理費用の責任
を負うものという定義である。当然、この『生産者』はフランス国内で登録が義務付けられ、廃
棄費用の保証を求められる。
『生産者』は、廃棄される段階で特定できるように名前をラベルに書
いて機器に張らなければならない。そのラベルの規格は欧州の標準化団体である Celenec が作る
ことになっている。しかし、欧州委員会の法務サービス部門が、 このようなラベルを貼ることを
生産者に要請したら EC 条約違反である という見解を持っている場合、これはどのような形に
なるのであろうか。WEEE & RoHS の各国法への反映の期日が 2004 年 8 月と、あと 3 ヶ月ちょっ
とに迫っている中で、未だに解決の糸口の見つからない法的な問題を抱え、各国ではどう対処し
たらいいか分からないといったところが現状なのかもしれない。
このラベルをいつ誰がどの時点で貼るかが決まらないというのは、生産者にとって死活問題であ
る。欧州委員会の法務サービス部門が主張するように、欧州連合域内に最初に持ち込んだ者(欧
州域内で生産したか、輸入したメーカーもしくは輸入代理店)であれば、工場出荷の時点で機器
に張りつければ良いが、最終販売国の責任者を明確にしたものを張りつけるとなると、工場で張
ることはできない。いちいち梱包された箱から機器を取り出して張るか、小売店に張ってもらう
か…、しかし、誰がそんな細分化したラベルを作り、誰の責任の下で、いつ張るか、解決の糸口
が見えない問題である。
以上
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Vol.6 No.1 (2004. 5)
環境セミナー
「WEEE & RoHS 指令最新動向」
当組合は、去る 2004 年 4 月 19 日(於:東京) および 21 日(於:大阪) に「WEEE & RoHS 指令
最新動向」をテーマとしたセミナーを開催しました。
以下に、在ブラッセルの White & Case 法律事務所 Kris Pollet 氏の講演要旨を掲載します。
2. TAC(技術適用委員会)
はじめに
本日は、欧州における WEEE(廃電気電子
まず、指令の実施或いは指令の解釈などに
機器リサイクル)指令と RoHS(特定物質の使
関して、現在議論が進められている委員会組
用制限)指令に関して 2 つのことに焦点を当
織について説明します。その組織は「TAC
てて話を進めたいと思います。
(Technical Adaptation Committee:技術適用
委員会)
」と呼ばれています。TAC の任務は、
1 点目は、指令の実施(implementation)に
第 1 番目に「2 つの指令を科学的・技術的な
係る幾つか重要な点の現状。そして 2 点目は、
進歩に合わせて適用していくこと」
、第 2 番目
EU 加盟各国における国内法制化状況につい
に「2 つの指令の実施に関して具体的な問題
てです。最後に中国を取り上げます。現在、
があった場合にはそれを取り上げること」で
中国でも法制化の動きがありますが、その内
す。
容を見ると、WEEE 指令と RoHS 指令をほぼ
100%踏襲したようなものになっているから
TAC のメンバーは、通常、加盟各国からの
1 人ないしは 2 人の政府関係者(廃棄物或い
です。
は廃棄物処理に関する専門家)によって構成
1. 2 つの重要な日
されています。議長は「欧州委員会」が行な
WEEE & RoHS 指令における重要な期日と
う点も重要です。何故ならば、欧州委員会だ
して指摘したい日が 2 つあります。
けが TAC に対して提案なり、提起をすること
ができる立場にあるからです。
1 つは 2005 年 8 月 13 日で、これは生産者
に対する主要な責任の条項が発効する日です。
TAC の会合は最近のものを含めると 10 回
例えば、それは財務上(financial)の責任です。
ほど開催されています。しかし、今までのと
もう 1 つは 2006 年 7 月 1 日で、
これは RoHS
ころ残念ながら、多くの問題に関する共通の
合意を見出すという意味では殆ど実質的成果
指令の対象 6 物質(鉛、水銀、六価クロム、
を挙げていません。またこれも重要な点です
カドミウム、ポリ臭化ビフェニール(PBB)
、
が、TAC には業界団体が出席していない、つ
ポリ臭化ジフェニールエーテル(PBDE))の
まり産業界が代表されていないという問題も
使用が禁止される日です。この日以降は、対
あります。
象 6 物質は使用できないことになります。
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Vol.6 No.1 (2004. 5)
環境セミナー「WEEE & RoHS 指令最新動向
3. TAC 以外の問題処理
さらに厳しくすることが可能であるというこ
とで、言い換えると個別の加盟国が WEEE 指
指令の実施に関する諸問題を処理する方法
令の対象範囲を超えて対象製品を追加できる
として、TAC 以外に 3 つ考えられます。
ということです。
まず、最初に、ヨーロッパの立法府である
欧州議会或いは欧州理事会において、現在の
2 番目は、WEEE 指令に出てくる定義が明快
WEEE & RoHS 指令の内容を変更する方法で
かつ完全ではないということです。その結果
す。ただし、この方法は可能ではあるけれど
と し て 、 境 界 線 に あ る 製 品 ( borderline
も非常に時間がかかるし、果たしてこの指令
products)、グレー・ゾーン製品(grey zone
の実施に関する問題にうまく対応できるかど
products)が数多く出てきてしまっており、
うかは保証の限りでありません。そういう意
WEEE 指令ないしは RoHS 指令の対象範囲に
味ではこれは第 1 に取る選択肢とはならない
入るのかどうかが即座に判断しかねるという
ようです。
状況になっております。
2 番目は、欧州委員会自身が TAC の承認を
このスコープの問題に対する解決策は何か
得ずに、欧州委員会独自のイニシアティブで
というと、それには 2 つ選択肢があると思い
ガイドラインのようなものを出すこともでき
ます。
ます。しかしながら、ガイドラインというも
1 つは、いわゆるブラック・リストです。
のは法的に拘束力を持たないものです。
ブラック・リストに関して当初考えられてい
3 番目は、欧州裁判所です。しかし、裁判
たのは、対象ではないものを明示的にリスト
所に持ち込むというのはいわば最後の拠り所
アップして示すネガティブ・リストです。た
ということです。法律の内容を変えたくはな
だし、最初のネガティブ・リスト作りという
いけれど実質的に拘束力を持つような指令の
オプションに関して TAC が採っているのはそ
実効上の問題に対する解決策を求めるのであ
の方向ではありません。
れば、裁判所に訴えるのが唯一の実効性を持
現在、TAC がやろうとしているのは 2 番目
つ選択肢ということになるでしょう。
の選択肢、即ち、より一般的な形の包括的基
準を作ろうという方法です。この基準の重要
4. スコープ(対象範囲)
次に、この指令を実施する上で一番大きな
性は、以下の 7 つの基準の全部に適合すると
問題である「スコープ」について取り上げた
いうことでなければその製品は対象範囲には
いと思います。つまり、皆様の会社の製品が
入らないと見なされることです。
WEEE & RoHS 指令の対象になるかどうかと
今までのところ「7 つの基準案」が話し合
いうことです。この点に関しては 2 つの角度
いの対象になっています。そしてこの話し合
から見なければなりません。
い自体は 6 ヵ月以上も行われてきたにも拘わ
らず、これといった合意は未だ得られており
1 番目は、それぞれの指令の法的な基盤に
ません。
なっているベースが何であるかです。WEEE
指令は、EU 条約第 175 条(環境保護)がベー
検討中の「7 つの基準」とは以下の通りで
スとなっており加盟国に裁量権が広く認めら
す。
れております。一方、RoHS 指令は同条約第
95 条(域内市場の統一)がベースで加盟国の
(1) 電気に依存する製品、即ち、ある製品
裁量権は限定されております。即ち、WEEE
が適切な機能を発揮するには電気が
指令については、加盟各国が指令の内容より
第一義的な最も重要なエネルギー源
JMC environment Update
21
Vol.6 No.1 (2004. 5)
環境セミナー「WEEE & RoHS 指令最新動向」
であって、それがなければその製品が
ん。
持つ主要な機能が発揮できない種類
(6) (5)の基準にも関係しますが、別の廃棄
のものです。例えば、ガソリンで動く
物管理の法規によってカバーされて
芝刈り機等は、芝刈り機にとっての主
いなければその機器は対象になると
なエネルギー源はガソリンであれデ
いうことです。例えば、乾電池・蓄電
ィーゼル(軽油)であれ内燃機関とい
池は WEEE 指令の対象外になります。
うことであり電気ではありません。芝
乾電池等に関しては電池指令という
刈り機の中に電子部品が入っていた
独自の法規があるためです。
としても、芝刈り機自体の最も主要な
(7) 具体的に軍事目的だけに使われると
エネルギー源はガソリンであるため、
この芝刈り機は WEEE 指令の対象には
いうものでない限り、その製品は対象
なりません。
範囲に入ります。この基準は排他的に
軍事目的だけの場合ということです
(2) 製品が、交流 1,000 ボルト、直流 1,500
から、軍民両用の用途で使用できる機
ボルトを超えない定格電圧を使用す
器は WEEE 指令の対象となります。
る場合には、その製品は対象になりま
現在、TAC では電気電子機器が RoHS 指令
す。こういう基準に照らし合わせると、
例えば圧電性の電子的な点火装置
の対象になるかどうかに関する「5 つの基準」
(piezo-electric の ignition)は対象外
についても議論しています。この基準では、
になります。1,500 ボルト以上の点火
WEEE 指令で挙げられている 7 つの基準の内
電圧を使うからです。
の、
(1)
、
(2)
、
(3)及び(6)の 4 つの基準に
加えて、5 番目の基準として 2006 年 7 月 1 日
(3) 製品が、WEEE 指令附属書ⅠA に列挙
以前に「上市」された電気電子機器の補修用ス
されている 10 カテゴリーの電気電子
ペア・パーツまたは再使用に関しては適用さ
機器のどれかに当てはまる場合は対
れないとなっています。
象になります。この中で据付型の大型
産業用工具は対象外です。それは附属
幾つか具体的な例を以下に挙げます。
書に列挙されている 10 カテゴリーの
① 「アコースティック・ピアノ」
中で明示的に指摘されているからで
小さな電子デバイスとしてサイレンサー
す。
などが付いている場合です。アコースティ
(4) WEEE 指令附属書ⅠB のリストに含ま
ック・ピアノにとっての主要エネルギー源
れている場合は対象になります。
はピアノを弾く人によって引き起こされ
(5) 製品が、明らかに WEEE 指令対象外の
る手の動きから出るものであって電気で
製品の一部をなすものであれば対象
はありません。従って、アコースティッ
外になりますが、そうでない限りはそ
ク・ピアノに小さな電子デバイスが付けら
の機器は対象になります。少し混乱を
れていたとしても、基準に照らし合わせる
招くような言い方ですが、例えば、電
と「アコースティック・ピアノ」は対象外
気電子機器が車両や乗用車に搭載さ
ということになります。
れている場合です。乗用車に関しては
② 「郵便物仕分け機」
廃自動車(ELV: End-of-Life Vehicle)指
これはかなり大型の装置ですから、この
令の対象となり WEEE 指令の対象では
場合にも前述の(3)の基準に照らし合わ
ないので、自動車に搭載された電気電
せて、据付型の大型産業用機械であると
子機器は WEEE 指令の対象となりませ
JMC environment Update
いう理由で対象外です。
22
Vol.6 No.1 (2004. 5)
環境セミナー「WEEE & RoHS 指令最新動向
③ 「グリーティング・カード」
また、たとえ合意が見られたとしても、こ
の基準はあくまでガイドラインであって拘束
(メロディー付き)
力は持っておりません。
グリーティング・カードの場合、最も主
要な機能は何かというと、贈り手が受け
2004 年 4 月現在、EU 加盟国は 15 ヵ国です
取り手に対して自分の気持ちを表すとい
が、5 月 1 日から 10 ヵ国が新規に加盟し 25
う「カード」であって、主要な機能を発
ヵ国になります。スコープに関して最悪の場
揮するのに電気は必要ではありません。
合を考えると、加盟国間で共通の合意が見ら
グリーティング・カードの場合には、小
れない限りにおいて、25 ヵ国がそれぞれ別々
さなチップが入っていてカードを開けた
の対象製品を考える事態も起こりかねません。
時に音楽が奏でられるようになっている
付随的な特徴としては素敵なものである
5. RoHS 指令の適用除外
かも判りませんが、本来の主要な機能で
次に RoHS 指令の適用除外について申し上
はありません。そういう観点から「7 つの
げます。RoHS 指令では、適用除外に関する 2
基準」の(1)に照らし合わせて、
「グリー
つの条項があります。1 つは第 5 条(b)です。
ティング・カード」が主要な機能を発揮
第 5 条(b)では、ある機器において、第 1 に危
するのに電気に依存していないので対象
険物質を代替することが余りにも大きな経済
外になります。
的マイナスをもたらす場合、第 2 にその対象
の物質を代替することが技術的に実行不可能
④ 「縫いぐるみのおもちゃ」
実際にオランダ国内法案に明示的に含ま
な場合、第 3 に代替することによって起こっ
れている例で、触ると音楽が奏でられる
てくる環境上のマイナスの影響の方が代替に
という種類のものです。オランダの担当
よってもたらされ得る便益より大きくなって
官は前述の場合と同じような理由を踏襲
しまう場合には、適用除外になります。
していて「縫いぐるみのおもちゃ」の主
もう一つは RoHS 指令の付属書です。付属
要な機能はふわふわと抱き心地がよく子
書の第 1〜9 項に関しては適用除外となり、付
供たちに「触りたい、遊びたい」と思わ
属書第 10 項で取り上げている物質について
せることであって、触ると音楽が奏でら
は適用除外になるかどうかを可及的速やかに
れるというのは主要な機能ではないとい
リスク評価することとなっています。
うものです。そういう基準に照らし合わ
2003 年 2 月に RoHS 指令が発効して以来、
せると、これは本来の主要な機能を発揮
するのに電気を必要としていないので対
多くの生産者や業界団体が、ある具体的な製
象外となります。
品に関して適用除外にすべきだとの要請を出
してきましたが、欧州委員会側は今までどれ
繰り返しになりますが、上記のような点に
関して TAC の全てのメンバーが合意している
に対しても正式の回答を出しておりません。
かどうかは定かでありません。むしろ、こう
しかし、最近になって欧州委員会も対応に
いった基準に関して現在も非常に深刻なそし
乗り出し、今までに出された適用除外の要請
て大幅な見解の相違が見受けられます。例え
に対して、独立した中立的な調査を外部コン
ば、デンマークではそもそもこういった基準
サルタントに委託しました。問題は、調査の
を使うことに対して強硬な反対を唱えていま
完了が 2004 年末までかかりそうな点です。そ
す。
れまでの間、適用除外の要請を出した生産者
や業界団体にとっては、法律上除外かどうか
JMC environment Update
23
Vol.6 No.1 (2004. 5)
環境セミナー「WEEE & RoHS 指令最新動向」
はっきりしない不確定の状態が続いてしまう
て然るべき明確な根拠があれば、追加的な「適
ことになります。
用除外」を要請できるということです。
最後に、RoHS 指令付属書第 10 項の臭素系
法律上の不確定性の問題に対応するために、
最近まで欧州委員会側としては、いわゆる迅
難燃剤「Deca-BDE」の適用除外につきまして、
速手続(fast track procedure)という形で対
欧州委員会が判断を誤解していたという出来
応しようと考えていました。この迅速手続の
事が最近ありました。この経緯を言うと、2004
意味するところは、今まで出された適用除外
年 2 月、欧州委員会側は、Deca-BDE は現在の
の申請に関して「暫定的にそれを認めたもの」
ところ RoHS 指令の対象ではなく「適用除外」
として扱うということです。しかしながら、
であるというステートメントを出しました。
最近になり欧州委員会は迅速手続ではなく、
付属書にいろいろな解釈があり得ることから、
次のようなやり方をしようと進めています。
別の解釈をして「適用除外」だと正式に明言
それは、利害関係者(stakeholder)を集めて
しました。それに対して欧州議会議員が、欧
公聴会のような公開コンサルテーションをす
州委員会に「その解釈は違う」と抗議したの
ることです。恐らくこれは数週間の内に始ま
です。即ち、
「RoHS 指令付属書第 10 項のとこ
ることになると思います。公開コンサルテー
ろで考えると Deca-BDE は禁止の対象である」
ションを行った上で、欧州委員会側としては
という考え方を指摘しました。欧州議会議員
そこで出たコメントをベースにして、適用除
の抗議を受けて、欧州委員会は考えを変え「前
外の申請が出ているものに対して具体的な提
に自分たちが言ったことは間違っていた」と
案を出そうという考え方です。公開コンサル
ステートメントを出し直しています。また、
テーションが始まるのはこれからですが、終
RoHS 指令の付属書に対する解釈が間違って
わる時期は恐らく 6 月下旬から 7 月初旬にな
いた、
(指令)編集上の間違いがあって、そう
ると見込まれています。欧州委員会はその結
なってしまったという言い方をしています。
果を提案として TAC に提出すことになると思
結果として欧州委員会は、RoHS 指令の第 10
います。
項に関して明確に Deca-BDE は 2006 年 7 月 1
日以降、使用が禁止される(
「適用除外」では
独立したコンサルタントによる研究調査の
ない)という正式の訂正を出すことになりま
結果、特定のものを適用除外にすべきではな
す。ただし、現在行われているリスクアセス
いという結論を出したとします。この場合、
メントの結果、
「白」という結論が 2006 年 7
欧州委員会がそれ以前に同じものに対して適
月 1 日以前に出されれば使用可能となります。
用除外を認めていたとしても、この調査結果
6. 禁止物質の閾値について
を踏まえて、欧州委員会が認めていた「適用
除外」を撤回することもあり得ます。
RoHS 指令実施上の問題として物質の閾値
濃度があります。RoHS 指令で使用禁止となる
今までのところ、これまでに既に提出され
6 物質が自然発生的に存在しているという可
た「適用除外」要請リストを対象に作業が進
能性は大いにあり得るので、原材料あるいは
められているわけですが、当然のこととして
収穫したものに混入してしまっていることも
他にも RoHS 指令の「適用除外」になって然
あり得ますし、生産プロセスで最終製品の中
るべきものがあり得るわけです。また欧州委
に含まれてしまうこともあり得ます。こうい
員会側としては、追加的な「適用除外」の要
った問題に対応するために、RoHS 指令第 5
請も考慮する用意があることを指摘していま
条(1)(a)で背景的な自然に存在するレベルあ
す。この点は、皆様にとって重要な点である
るいは不純物のようなものであれば許容しよ
と思います。つまり、使用の継続が認められ
JMC environment Update
24
Vol.6 No.1 (2004. 5)
環境セミナー「WEEE & RoHS 指令最新動向
これについては、
本日同席の JBCE 藤井敏彦
うという「最大許容濃度」が指摘されていま
す。
事務局長の欧州議会等への積極的な働きかけ
もあり、消耗品は指令の対象外ということで
欧州委員会が 2003 年 12 月に TAC に提案し
一度は関係者の了解は得られていたはずなの
た数値は、「鉛」、「水銀」、「六価クロム」、
「PBB」
、
ですが、現時点では「消耗品」が対象範囲か
「PBDE」に関しては「均質材料(homogeneous
ら除外されているのかどうかはっきりしてい
materials)
」の重量ベースで 0.1%、
「カドミウ
ない状況になっております。そもそも WEEE
ム」に関しては同じ重量ベースで 0.01%とい
指令の中に「消耗品」に関して「機器が廃棄
う数値です。
される時点において、消耗品がその機器の一
部である場合には消耗品も対象として含まれ
そうなると次に出てくる問題は「均質材料
る」という定義があるためです。
とは何か」ということです。欧州委員会の提
案では「均質材料」とは「機械的に単一の材
この問題に関して、欧州委員会は明確に「消
料に分離できない 1 つの単位(unit)
」と定義
耗品は対象ではない」と言っているにも拘ら
付けられています。
ず、最近の TAC においてある 2 つの加盟国が
この点に関しては既に利害関係者の意見を
「消耗品」は対象に含めるべきであると要求
募る公聴会が開かれており、一連の協議は終
したり、英国議会の下院委員会で消耗品は
WEEE 指令に含まれるべきだという報告書の
わっています。結果は、圧倒的多数が「欧州
委員会の考え方に同意する」というものでし
採択が 2 月になされてしまっているという状
たが、ある加盟国がこの案を批判したため、
況です。
未だに正式の承認は行われていません。
更に 3
8. EU 新規加盟 10 ヵ国について
月 17 日の TAC において、他の問題(例えば
2004 年 5 月 1 日をもって中・東欧諸国等
「均質材料」の定義の中に出てくる「unit」の
10 ヵ国が新たに EU に加盟します。つまり、
定義など)も提起され、ますます不確定な状
WEEE & RoHS 指令を新規加盟国は実施しな
態になっています。
ければならないことになります。しかし、新
規加盟国は、両指令の交渉が行われていたプ
7. 消耗品の取扱いについて
ロセスには全く関与していなかったわけです
次に、
「消耗品」
(例えばプリンタやトナー
のカートリッジ等)は WEEE 指令の対象とな
から、WEEE & RoHS 指令の実施については猶
るか否かという問題です。
予期間が与えられることになっています。
猶予される内容は、
「住民 1 人当たりの年
「消耗品」の問題が出てきた背景には、欧
州で空のカートリッジの refill を行う専門の会
間の回収目標として 4 ㎏の回収をすること」
社が、空のプリンタ・カートリッジを容易に
と「再生・リサイクル率に関する目標値に関
確保し、トナーなどを詰め替えて割安で売り、
すること」の 2 つです。これらについて、チ
自分のビジネスを拡大しようという思惑があ
ェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、
りました。自分たちのビジネスを最大限に拡
リトアニア、スロヴァキア、ポーランド、キ
プロス、マルタの 9 ヵ国が 2 年、スロベニア
大しようと思って「消耗品」の回収、供給が
ほぼ保証されることになる WEEE 指令の対象
が 1 年先送りして良いことになっています。
範囲に入れるよう求めたわけです。そうする
9. 上市の定義について
ことによってトナー・カートリッジなどが継
上市(putting on the market)の定義は、指
続的に回収され、自分たちのところに供給が
令の実施に当たり非常に難しい問題の 1 つで
回ってくることを期待したものと思われます。
JMC environment Update
あります。RoHS 指令において、
「2006 年 7 月
25
Vol.6 No.1 (2004. 5)
環境セミナー「WEEE & RoHS 指令最新動向」
1 日以降に上市される新しい電気電子製品に
り 2 重、3 重で保証金を支払わなければなら
関しては当該物質の使用が禁止される」と上
ないということです。
市に対する言及があります。これが実際に意
10. 「生産者」の定義
味するところは何かと考えると、2006 年 7 月
「生産者」の定義は「上市」の定義とも緊密
1 日から生産プロセスの中での有害物質の使
用を止めるということではなく、実際にはも
に関わってきます。WEEE 指令第 3 条(i)のと
っと早い時期に使用中止にしなければならな
ころで「生産者」の定義が明確に示されてい
いということです。
ます。しかし、幾つか問題があり、例えば、
いわゆる systems integrator を生産者とみな
上市の定義として、最終使用者に売られる
すかという問題です。いろいろなものを統合
時点を上市とする考え方がありますが、最終
してより大型の装置を構成するという会社の
製品が作られてから最終消費者の手に渡るま
場合です。
「郵便物仕分け機」などは非常に多
でかなり時間がかかることが想定されるため、
くの機器が統合されて構成されています。他
生産プロセスの変更(禁止物質の使用停止)
のメーカーが生産したパソコンなども含まれ
そのものは 2006 年 7 月 1 日よりかなり前に行
て い る わ け で す が 、 そ の 場 合 に systems
っておかなければならないことになります。
integrator は自分が統合して作る装置を構成
するすべてのものをも作った生産者とみなさ
また、別の「上市」の定義として域内生産さ
れるのかという問題があります。
れた製品は工場から出荷された時点を「上市」
とみなすという考え方もあります。2003 年 6
これについては、3 月の TAC で欧州委員会
月に欧州委員会は、「上市というのは、その製
の法務部局が法的な見解を出しています。即
品が初めて市場に出て利用可能になった時」
ち「生産者というのは、EU 市場に初めて製品
という言い方をしています。RoHS 指令の脈絡
なり機器を上市する個人あるいは会社であ
における「上市」の問題は、こういったところ
る」ということです。この点は、1 月の TAC
にあるわけです。
メンバー間で合意を得たとなっている内容と
矛盾してしまうことになります。更なる問題
一方、WEEE 指令でも「上市」という用語が
としては、WEEE 指令の第 11 条(2)で、製品に
出てきますが、ここでも問題が出てきていま
関しては「生産者がはっきり判るように明確
す。WEEE 指令によると、製品が上市された
なマークを付けて、生産者が識別(identify)
時点で生産者は保証金を積まなければなりま
できるようにしなければならない」と書いて
せん。問題となるのは、域外からEUに入っ
あります。1 月の TAC メンバー間で合意した
た時点でまず「上市」したと見なされ、生産者
と思われる解釈と照らし合わせると、当該製
には保証金を支払う必要が出てきますが、そ
品が 1 つの加盟国から他の加盟国に移される
の後、2 番目、3 番目の加盟国へと出荷された
ごとに新しい生産者のマーキングを付けなけ
場合に、保証金の支払いはどうなるのかとい
ればならないことになります。欧州委員会法
うことです。
務部局の見解では、これは「貿易に対する技
1 月の TAC の場で、この点に関してはどう
術的な障害」であり、国際的な合意に違反す
も幅広い合意があったようで、明らかな形で
るものになるという考え方です。従って、し
明言されている点があります。即ち「上市」の
ばらくはこの問題がどのように解決されるか
解釈として、まず、最初の加盟国に輸入され
不明瞭な状況となりそうです。
るとそこで 1 回、最初の加盟国から 2 番目の
加盟国に輸送されたとしてその時点でも「上
市」されたと見なされるということです。つま
JMC environment Update
26
Vol.6 No.1 (2004. 5)
環境セミナー「WEEE & RoHS 指令最新動向
11. RoHS 指令の遵守(compliance)
(2) 既存 EU15 ヵ国
RoHS 指令の遵守については、製造業の方々
¾ ギリシャ
•
にとっては RoHS 指令をどのように確実に遵
守したらよいのかという問題があり、EU 加盟
既に WEEE & RoHS 指令の法制化は終
了。
各国にとっては高いコストをかけずにどのよ
• 「visible fee」は認められていないが、
うな形で法を執行できるのかという問題があ
回収・リサイクルコストは示すことが
ります。
できるとなっている。
¾ フィンランド
この点に関しては、英国が自費でコンサル
•
タントを雇い調査させるというイニシアティ
国内法制化は 2004 年 4 月末に終わる
予定。
ブを発揮しています。この調査結果によって
RoHS 指令の遵守にどう対応したらいいかと
¾ スペイン
いう詳細な解決策の選択肢が英国から提示さ
•
一般家庭からの WEEE 回収費用は、生
れることになっています。
産者負担ではなく自治体が負担する方
12. 加盟各国における法制化について
向。
¾ オーストリア
各国での法制化に向けての動向(予測)に
ついての概略は以下の通りです。
(1) 新規加盟国
•
現在、第 1 ドラフトが出ている。
•
WEEE 指令の対象範囲を広げることは
しない方向のようである。
¾ ポーランド
¾ スウェーデン
• 現在、国内法案は策定されていない。
•
• RoHS 指令に関しては既に法案が起草
い。
されており、ポーランド経済省の担当
•
官によると 2004 年 8 月 13 日までに
¾ アイルランド、デンマーク
ている。
¾ チェコ
WEEE 指令の対象範囲を広げることは
•
両国とも国内法案は未整備。
•
両国ともに 2004 年 8 月 13 日までには
間に合わないとみられる。
考えていない。
¾ オランダ
¾ ハンガリー
•
現在、国内法案はできていない。
•
一般家庭からの WEEE 回収費用は生産
• WEEE & RoHS 指令に盛り込まれてい
ることの多くが既存の法律に含まれて
いるため 2004 年 8 月 13 日までには間
者負担となりそう。
に合いそう。
¾ スロバキア
•
•
2004 年 8 月 13 日までには法案が出て
一般家庭からの WEEE 回収費用は恐ら
く自治体負担になると思われる。
くるであろう。
•
WEEE 指令の対象範囲拡大が可能性と
してあり得る。
RoHS 指令に対する態勢は整うとされ
•
国内法案の起草はまだ完了していな
¾ フランス
一般家庭からの WEEE 回収費用は生産
• 2004 年 8 月 13 日までには策定される
者負担となりそう。
であろう。
• 「消耗品に関しては廃棄時にその製品
と一体をなしている消耗品だけが対象
JMC environment Update
27
Vol.6 No.1 (2004. 5)
環境セミナー「WEEE & RoHS 指令最新動向」
になる」と非常に明示的な形で言及し
中国では非常に興味深い動向が見受けられ
ている。即ち、消耗品一般が WEEE 指
ます。中国政府は 2003 年、WEEE 指令と RoHS
令の対象になることはなさそうである。
指令をそのままコピーしたのかと思われるよ
うな法案を出しました。ただし、WEEE 指令
• 国内法採択後、対象外製品の明示的リ
と異なる点は「生産者が、製品の中のどの特
ストを出す予定である。
定部品がリサイクル可能かを指摘しなければ
¾ ドイツ
ならない」と求められているところです。そ
• 一般家庭からの WEEE 回収費用は、生
して中国の WEEE に関する法律の施行の第一
産者ではなく自治体の負担になりそう。
義的な責任は、地方政府にあります。法律の
¾ 英国
実施の責任は情報産業省に置かれています。
• コンサルテーション・ペーパーが 2003
まだ、基礎段階の法案の中では「電気・電子
年 11 月に出され、関係者からこのペー
製品に有害物質の名前と含有量を明示し、指
パーへの意見が出された。この意見を
摘しなければならない。そしてそれを示すラ
ベースにして 2004 年 3 月協議が行われ
ベルを付けなければならない」ことが要件付
たが、正式提案の形では未だ何も出さ
けられています。この場合の有害物質という
れていない。
のは、おそらく一般的な有害なものに対する
要件でしょうから、RoHS の対象になっている
• このペーパーには新たな興味深い考え
6 物質を超えて幅広いものになりそうです。
方が盛り込まれている。それは国内の
情報整理機関「クリアリング・ハウス」
更に「当該機器が全面的にリサイクル可能
を設定しようとするもの。クリアリン
なのか、一部リサイクル可能なのか、全くリ
グ・ハウスというのは WEEE 指令の実
サイクルできないのか」を示すシンボルを付
際の物理的な回収の調整を図るところ。
けなければならないことにもなっています。
• このペーパーにはもう 1 つ興味深い点
最後に、典型的な中国の手法かも知れませ
が含まれている。それはシュレッディ
んが、
「情報産業省が、その裁量でこの規制の
ングに送る前の時点での WEEE の分別
構成要因をレヴューし、また変更することが
処理は必要とされないという点である。
あり得る」と法案の中で指摘されていること
13. WEEE & RoHS 指令に関する結論
も申し上げます。
両指令の EU における現状の結論として申
□
し上げたいのは、対象範囲についてです。こ
の問題は、近い将来に解決されるとは思えま
せん。同時に、実施に関わる諸問題について
も、いままでに解決されたものは殆どないと
いっても良いくらい少ないのです。両指令の
実施に関する具体的な側面に関連しては、明
らかに、加盟国間で違いが出てくるであろう
ということも言わなければなりません。
14. 中国における WEEE & RoHS 動向
最後に中国に関して手短に話し、終了した
いと思います。
JMC environment Update
28
Vol.6 No.1 (2004. 5)
連載
欧州環境規制動向
〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
I.
EU
1.
電子機器メーカーおよび販売業者、環境
しかしながら、両団体は、現状のような案で
設計法成立に向けた性急な動きに警告
は「依然として解釈の余地が大きすぎるため、
冷蔵庫、レンジおよびトースターのメーカー
国家当局が施行できない環境設計措置となり、
は販売業者とともに、エネルギー使用製品
結果的に環境パフォーマンスの優れた製品に
(EuP: Energy-using Products)に関する提案
不利な不当競争を生むことになるであろう」
(編者注:本誌 Vol.5 No.3 に和訳を掲載)の
と警告している。
採択を一回の読会で早急に決めようとする閣
欧州議会環境委員会は、3 月 15 日の会合で、
僚理事会および欧州議会の動きを厳しく批判
同案に関する同委員会の意見と、フィンラン
した。
ド自由党 A. Thors 議員による報告を採択する
に留まった。
欧州家電工業会(CECED)および欧州の小売
業者のロビー団体である EuroCommerce は、
同委員会は、エネルギー使用製品に関する消
2004 年 3 月 21 日付の声明文で、
「やみくもに
費者情報の改善を目的とする一連の修正を支
環境設計規則を採択しようとする動きには愕
持した。メーカーおよび販売業者は、製品が
然とする」と述べている。
そのライフサイクルを通じて環境に及ぼす影
欧州議会は 6 月初旬の選挙に備えて、5 月に
響ならびにそのエコロジカル・プロファイル
は休会に入ることから、理事会と議会は 4 月
に関する情報を消費者に確実に提供するよう
末までに決着を見なければならない。さもな
にしなければならないというものである。
ければ決定は秋まで滞ることになる。
また、環境設計がもたらす恩恵および消費者
CECED および EuroCommerce は、「新しい法
自身が製品の持続可能な使用によってエネル
律の実際の内容を適切に検討することもなく、
ギー消費量の削減のために果たせる役割につ
加盟国がこの将来の規則を施行する可能性も
いて、消費者に情報を提供するようにしなけ
なく、また欧州産業界の競争力に及ぼす影響
ればならないというものである。
を検討することもなく新しい法律がブラッセ
もう一つの修正は、環境設計評議会
ルで合意されようとしている」という懸念を
(Eco-Design Board)の設置により、業界お
述べている。
よび環境団体に対して環境設計に関する発言
の場を与えるというものである。
EuP 指令案とはエネルギー使用製品−−電気
電子機器や液体・ガス燃料使用製品などを含
欧州議会議員(MEPs)はさらに、同案の文言
む製品−−にこの指令で直接要求事項を課す
が曖昧すぎるという点でも Thors 議員に賛同
のではなく、後に欧州委員会が特定のエネル
した。特に、環境委員会は、同指令案が実施
ギー使用製品に対する実施措置を策定する上
措置の対象となる製品を特定するのではなく、
で指針とする基準を定めるものである。
JMC environment Update
29
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
むしろ家電製品や民生電子機器などエネルギ
2.
ー効率化対策により二酸化炭素(CO2)排出削
委員会は、2004 年 3 月 15 日付けで、水銀が
減量が最大になると推定されるセクターを列
もたらす環境上の脅威に対処する政策選択の
挙していることに不満を抱いていた。
概要を示す協議文書を公表した1。これは包括
欧州委員会、水銀に関する協議を開始
的 EU 戦略提案に向けた予備的措置である。
委員会の修正は、最初に実施措置を施行すべ
き製品を定めるというものである。MEPs によ
同文書では、水銀のリサイクルを単に継続す
ると、欧州委員会は、枠組み指令承認から 1
べきか、それとも段階的に使用禁止として同
年後に、コスト効果の高い方法により、温室
物質の永久的保管施設を建設すべきかなど、
効果ガス(GHG)排出削減の可能性が高い製
様々な問題が提起されている。
品を対象として実施措置を採択すべきである
としている。例えば、暖房・給湯機器、電気
また、
「一般的な問題として、水銀含有廃棄物
モーター、家庭用および第三次産業であるサ
のリサイクルを奨励した方が良いのか、禁止
ービス業用の照明、家電製品、事務機器、民
する方が良いのかという問題があり、現行の
生電子機器および商業用暖房・換気・空調
EU 政策では、電池、電気電子機器、使用済み
(HVAC: heating ventilating air conditioning)
自動車(ELV: End-of-Life Vehicles)に関して
システムなどである。
具体的な規定を設け、リサイクルを奨励して
いるのが一般的である」と述べている。
また、全製品の待機時電力の損失を早急に規
制すべきであるという点においても、同委員
「対照的に、スウェーデンの政策では、水銀
会は同意している。
はリサイクルするのではなく、最終的に安全
かつ環境に優しい方法で処分しなければなら
採決に先立ち、Thors 議員は、他の政治グルー
ないとしている。製品への水銀使用を依然と
プを代表する影のラポーター(起草者)達だ
して合法と見做すならば、リサイクルを奨励
けではなく、同案に関する産業委員会の意見
する方が新たに水銀を生産するより環境上望
を書いた C. Turmes 議員との間でも幅広く合
ましい方法と思われる。スウェーデンの場合
意が形成されていると、同委員会に伝えた。
は、反対に、製品や工程における水銀使用を
Turmes 議員は、同案は実施措置の対象となる
できる限り禁止していくべきという政策であ
製品の決定方法についてさらに明確化させる
る」と同文書では述べている。
必要があるとの認識を全員が持っていると述
スウェーデンの水銀政策は、同国が EU に加盟
べている。
した 1995 年より前に採択されている。
Thors 議員は、主な争点の中に自主規制が含ま
れると述べている。欧州委員会が、大半の製
しかしながら、委員会によると、現在も使用
品に関して、メーカーに実施措置遵守を自己
中の製品に含有される水銀の「蓄積量」は膨
認証させる計画を持っているからである。
大で、その中には西欧で 2,000〜2,500 トン、
さらに中東欧で 4,000〜8,000 トンの水銀が含
しかしながら、すべての MEPs が同案を歓迎
まれている。
している訳ではない。独キリスト教民主党の
P. Liese 議員は、欧州の生産者に域外の生産者
にはない余計な負担を課すことに不満の意を
表明している。
1
[編者注:同 EuP 指令案は、4 月 20 日、議会
本会議で可決された]
JMC environment Update
30
欧州委員会の水銀に関する協議文書は以下のサイトを
参照のこと。
http://europa.eu.int/comm/environment/chemicals/
mercury/index.htm
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
「当該製品が代替あるいは使用されなくなっ
べき法律の一つである。この欧州委員会の提
た場合に、責任を持って回収、リサイクルお
案(編者注: 本誌 Vol.5 No.5 に和訳を掲載)
よび管理が行われれば、将来的に社会が水銀
は、1997 年以来待ち望まれ、2003 年 11 月 24
を真に必要とした場合に、この蓄積された水
日にようやく提出されたものである。消費者
銀が供給源として重要性を増す可能性があ
にはその成分や毒性から種類を判断するのが
る」と、同文書では述べている。
困難であるということが経験から明らかにな
ったので、同案にはあらゆる種類の電池に適
委員会は、
「水銀電池」技術が水銀を使用しな
用されるという利点がある。また、より一層
い製法に取って代わり、塩素アルカリ製品か
広く、リサイクルという観点からの使用済み
ら水銀が使用されなくなってきていることか
電池・蓄電池の分別回収および強制的処理を
ら、特に新しい戦略策定の必要性があるとい
義務づけている。一方で、発ガン性、生物毒
う。
性および生体内蓄積性物質であるカドミウム
かつて委員会は、2002 年の文書の中で、「欧
が多くの電池に使用されているという問題を
州の塩素アルカリ廃工場から排出される水銀
根本から解決してはいない。
は、重要な水銀供給源となる。また、安全か
当初、この点に関してより厳しい内容の指令
つ持続可能な方法で処理されなければ、この
案であったが、内部手続きや業界との協議の
水銀の最終的運命は、EU、将来の加盟国およ
過程で、その内容はすでに弱められている。
び第三国において、大きな環境被害と結びつ
当初カドミウムの全面禁止が提案されていた
く可能性がある」と述べている。
3.
が、ニッケル・カドミウム(NiCa)電池につ
電池に含有されるカドミウムの完全禁止
いては、毎年発生する使用済み携帯型 NiCa 電
に向けた動き
池および蓄電池全体、即ち都市固形廃棄物と
ともに回収・投棄されている NiCa 電池および
カドミウムの完全禁止(特定例外を除く)、選
蓄電池全体の 80%を回収するという目標が追
択的回収の一般目標強化、使用済み電池の輸
加され、これに取って代わった。
出に関する規則の強化および回収・リサイク
ルに対する生産者責任の強化。これらは、電
回収電池に関して、10%のリサイクル義務免
池および蓄電池に関する法規定を改訂する指
除が提案されているが、委員会の「閉回路
令案のラポーターに任命されている欧州議会
(closed circuit)
」導入計画を損なうことは明
環境委員会の J. Blokland 議員(オランダ出身、
らかである。Blokland 議員は、取締りが不可
EDD: Europe of Democracies and Diversities
所属)が提案すると思われる主な修正内容で
能なため、これを容認できない提案と見做し
ある。欧州議会の一部、特に欧州人民党(EPP:
ては全面禁止に戻し、保安灯のように代替手
European People's Party)が次期議会への先送
段がない場合にはいくつかの特定例外規定を
りを望んでいる微妙な問題である。修正の上
設けるよう、文言の修正を目指している。
ている。そこで同議員は、カドミウムに関し
程期限は 2004 年 3 月 4 日まで引き延ばされた。
これは、事実上、討議および議会委員会での
同議員はまた、全種類の電池に対する一般回
採決の延期、即ち本会議への報告書提出の延
収率目標を年間一人当たり 160gから 200g
期を意味している。6 月の選挙に向けて議会
までに引き上げることを提案し、全種類の工
が解散されるまでの僅かな期間では、この日
業用電池の回収義務化を提案する可能性が高
程はかなり厳しいものとなるであろう。
い。さらに、生産者責任への具体的言及の実
現を望んでいる。欧州委員会は、メーカーに
電池および蓄電池指令の見直しは、万事予定
よる「使用済み電池および蓄電池の管理のた
通り進めば、依然として議会が現議会で扱う
めの費用負担」の保証を提案しているが、同
JMC environment Update
31
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
議員は製品を上市するメーカーはすべて登録
調査に関する新たな取組みはないと述べてい
制とし、
「電池および蓄電池の回収、処理およ
る。全体として、委員会が REACH 提案に至る
びリサイクルのためのを保証しなければなら
までの何ヵ月かの間に REACH に修正を加え
ない」と明記するよう提案している。
た結果、同法案が化学品会社に与える負担は
11 年間で 120 億ユーロ強から 23 億ユーロま
[編者注:同指令案は、4 月 20 日、議会本会
で下がると主張している。委員会はまた、欧
議で可決された]
州化学業界が同法案によって 100 万人もの雇
欧州委員会、詳細な REACH 経済影響
用が喪失されると過去に主張しているにも拘
調査の実施を約束した覚えはないと主張
らず、同案が雇用に及ぼす影響は取るに足ら
委員会は、2004 年 2 月 26 日、REACH 法案と
ない程度であると述べている。委員会による
4.
と、環境および公衆衛生に関する恩恵が 30 年
して知られる新化学物質規制が法制化された
間で約 500 億ユーロ程度になると思われると
場合の経済的影響について、調査の拡大を新
いう。
たに約束したとの報道を否定した。
REACH 法案は理事会および議会で審議中であ
これは、委員会が REACH による経済的影響に
る。いずれの承認も 2005 年までには望めない。
関する調査を拡大するという「覚書」に署名
し た と 主 張 す る 、 米 国 化 学 工 業 会 ( ACC:
5.
American Chemistry Council)に対する回答で
産業委員会、REACH は重量ではなく
リスクを重視すべきと主張
ある。委員会企業問題担当のスポークスマン
議会の産業委員会は、REACH 法案は、化学物
P. Sandler 氏は、
「覚書は存在しない。我々に
質の流通量ではなく人の健康および環境に与
関する限り、今後もそのような覚書を交わす
えるリスクに準じて、対象とすべき化学物質
ことはない」と述べている。
を決めなければならないという意見を表明し
ACC は、2004 年 2 月 24 日付声明の中で次の
ている。
ように述べている。「先週 EU は、化学物質登
議会は環境委員会に同法案に関する主たる権
録・評価・認可制度即ち REACH として知られ
限を与え、同案の正式討議を秋まで延期する
ている化学物質法案の経済影響評価を拡大す
と決定しているにも拘らず、REACH 法案の内
ることに合意した。同法案が欧州で事業を展
容を最初に討議したのは産業委員会である。
開する企業に与える潜在的負担を評価するた
しかしながら、産業委員会には引き続き意見
めには、この経済影響評価が何としても必要
を提出する権利があり、意見を反映させるた
で あ る 。」 こ の 声 明 に よ る と 、 ACC の G.
めに必死に闘う模様である。同委員会は、2004
Lebedev 会長が次のように述べている。
「優れ
年 2 月 18 日、長年にわたる産業界の要求に沿
た情報だけが優れた意志決定に繋がる。
って、REACH を規制するとともに「実行可能」
REACH に関する経済影響評価の拡大は、正し
なものにするための提案を含む E. Plooij-Van
い方向への一歩といえるが、我々は REACH 法
Gorsel 議員(オランダ自由党所属)による「作
案が与えると思われる破壊的な影響を防ぐ手
業文書」について討議する会合を開いた。
だてがさらにあることを主張し続けていく。
我々は、委員会に対し、REACH が化学業界に
多彩な政治色をもつ同委員会の MEPs は、重
加えて他の業界に及ぼす影響も考慮するよう
量に基づく情報要件を定めた同案を廃案とし
求める。」
て、利用可能なデータに基づく「リスク評価
および管理」を支持する E. Plooij-Van Gorsel
Sandler 氏は、REACH 法案が化学物質のサプ
議員の基本的訴えに大いに賛成している。一
ライヤーあるいはメーカーに与える経済影響
JMC environment Update
部の「特に懸念の強い」化学物質を、REACH
32
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
により直ちに認可が必要とされる欧州委員会
としても意外なことではない。消息筋による
化学物質リストから削除することを求める同
と、同議員は、EU 産業界の利益のために同規
議員の提案は相当の議論を呼んでいるが、そ
制案の縮小を徹底的に進めようとしていると
れ自体について話し合われることはなかった。
いう。同議員は、委員会で、消費者が自ら摂
しかしながら、MEPs は、その適用範囲を縮小
取する食品あるいは使用する製品に危険な化
して対象となる化学物質の数を減らすべきだ
学物質が含まれることを懸念しているとは考
という意見で概ね合意した。
えていない、と繰り返し主張し、
「この点に問
題があるのか。消費者は食品の購入や摂取を
同議員の提案は、難分解性生体内蓄積性有害
恐れているのか。私にはそのような認識はな
化学物質(PBTs)および難分解性・生体蓄積
い」と述べている。
性の高い化学物質(vPvBs)について、承認さ
れなかった場合でも危険度の低い物質との代
MEPs は、
「すべての化学物質を同じように扱
替あるいは禁止をする必要はないというもの
うことはできない」という点でおおむね合意
である。同議員の作業文書では、
「当該物質の
していると、ドイツのキリスト教社会同盟 A.
定義に用いる基準が未だ定められていないた
Niebler 議員は発言している。
めに、認可プロセスの基準および禁止措置の
ドイツの社会民主党 R. Linkhor 議員は、登録
対象となる特定物質を定めることに困難が生
義務の基準は化学物質の流通量ではなく、
「知
じると述べ、「法的不確実性が残る。PBTs と
覚リスク」および曝露にすべきである、と述
vPvBs を対象とするのは時期尚早である」と
べている。
主張している。
Adam 議員は、「実際の危険、即ちリスクに基
その後委員会では、G. Adam 議員(英国労働
づき効果的な優先順位の設定が必要である」
党所属)が、1981 年より前に EU 市場に上市
と述べている。
された化学物質――「既存の化学物質」と言
及――はすべて全面的適用除外すべきである
さらに一部の MEPs は、一般的曝露に関する
という大いに議論を呼ぶ提案をした。
シナリオを策定すべきだと述べている。
かかる提案が環境保護派を憤慨させることは
W. Langen 議員(ドイツ、キリスト教民主同
必至である。
盟所属)だけが、部分的に市販量に基づく登
一方、Plooij-Van Gorsel 議員は、2004 年 2 月
録条件にした方が生産量の少ない中小企業に
とっては良い場合があると控えめに示唆して
18 日、各政治グループの中で REACH 担当者
いる。
「まったく異論がないとは言えないだろ
に選任されている MEPs をストラスブールに
うが、中小企業に対してある種の保護という
招き、統一方針の確立に向けて「2 週間にわ
意味はある。」
たり」同案件について討議した。
同議員は、
「単にトン数だけではなく、曝露カ
その後産業委員会は、4 月 5 日、6 日の会合で
テゴリーに基づく初期段階のリスク分析を含
再び同案件について討議する予定であると、
む『複合モデル』中庸だと考えられる」と主
議長を務める L. Berenguer Fuster 議員(スペ
張している。
イン社会党所属)は述べている。
Plooij-Van Gorsel 議員によると、計画されてい
Plooij-Van Gorsel 議員は、2003 年 10 月付の
る欧州化学物質庁は、評価段階も含めて
REACH 提案は業界にとって過剰負担であると
「REACH 制度に基づく全過程に対する責任」
以前から批判していたので、同議員が「同案
を担い、おそらく企業からの申請について決
の焦点欠如および一般的実効性を批判する」
JMC environment Update
33
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
定も下せるよう、その権限を拡大すべきであ
制度によってリサイクルされた廃棄物の活用、
るという。一部の MEPs は審議中の同議員の
天然素材の活用、リサイクルされた調剤また
主張を繰り返し、加盟国は同庁の仕事に極力
は有害物質を取り除いた調剤の活用の妨げと
関与すべきではないとし、さもないと「競争
ならないようにする必要がある」と述べてい
の歪み」を招くリスクがあると述べている。
る。
しかし、ヘルシンキに設置される同庁に同制
一部の MEPs からは、中小企業に対する保障
度全体に対する責任が与えられた場合、その
措置の強化や、第三国との公正な競争の保証
負担は余りにも大きいとの懸念から、同庁の
など、より一般的な要求が出ている。元英国
仕事をどのようにチェックできるのか質問す
環境大臣の R. Atkins 議員は、同制度を「達成
る声が一部の MEPs から上がった。イタリア
可能な」制度にする必要があるとして、
「欧州
の F. Fiori 議員(イタリア、フォルツァ・イタ
全域の議員がこの点を深く憂慮している」と
リア所属)は、
「加盟国で起きていることを毎
述べている。
日本当に把握できるのか。我々は責任を転嫁
6.
している。同庁では『膨大な仕事量』が予想
加盟国も産業界と同じく REACH を憂慮
と報告
される」と発言している。E. Mann 議員(ド
イツ社会民主党所属)も同じような質問をし
2004 年 3 月 2 日付環境相理事会の報告による
たところ、Niebler 議員が「確かに、我々はか
と、加盟国の REACH 法案に関する懸念は、
かる機関に過大な仕事を課すべきではない」
これまでのところ業界の懸念とほぼ同じであ
と同意した。
るという。
Plooij-Van Gorsel 議員は、予定されているリス
議長国アイルランドが公表した待望の REACH
ク評価および社会経済的分析に関する各専門
法案に関する進捗報告書2によると、加盟国の
委員会のメンバーは、国籍ではなく専門性だ
交渉担当者は、生産トン数の少ない化学物質、
けを条件に選んでほしいと補足した。同議員
基準生産量、化学物質含有品目および計画中
はさらに、EU で製造された製品と輸入品との
の欧州化学物質庁に関する規定を再検討する
公正な競争を保証できるよう同案の規定を変
という。
更すべきであると主張した。そのためには、
各国代表はいずれも依然、
「同案全体について
企業の機密保持をさらに強化すべきであると
総合的精査を行うことを留保」していると、
いう。
2004 年 2 月 25 日付報告書で述べている。
また、
「企業名と化学物質使用」を一緒に公表
一方、アイルランドは、今後何ヵ月間かにわ
することは、欧州の中小企業に大きな打撃を
たり、2003 年 10 月付同法案に「積極的に取
与えかねない」と述べている。
組む」こと、特に間もなく同案の「詳細な検
証」を開始することを約束している。
同議員はその報告の中で、
「致命的なコピー製
品の出現」を警告している。これは製造工程
また、ブラッセルでの閣僚理事会記者会見に
に関する「最も一般的な説明を除く何らかの
おいて、議長国は「この同時進行案件に最大
情報」が明らかになった場合に出現すると思
限の一貫性」を持たせる努力をするとの発表
われるという。
があった。閣僚理事会のスポークスマンによ
また同議員は、
「登録要件が非常に幅広い」た
め、企業が「環境に優しい製造工程」の使用
2
を先送りする可能性があると懸念し、
「REACH
JMC environment Update
34
進捗報告書は以下のサイトを参照のこと。
http://register.consilium.eu.int/pdf/en/04/st06/
st06200.en04.pdf
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
ると、貿易産業閣僚達は 2004 年 3 月 11 日に
かは特定されていない。これは業界が得意と
同進捗報告書を受け取ったが、会議で討議す
する主張の一つである。業界は、同制度によ
ることはなかったと述べた。しかしながら、5
る化学物質の規制は曝露との関係で生じるリ
月の会合では閣僚達による討議が行われるは
スクを基準として規制すべきだと主張してい
ずであると続けた。
る。
環境閣僚達については 6 月末まで同案件を討
また、
「不必要な動物実験の回避および REACH
議するために再招集される予定はない。この
制度の内部システムの効率性と実効性を保証
タイミングは、環境問題より競争力問題に有
するため、各化学物質の登録が一回で済むよ
利に働く可能性があるのではという懸念を生
うに登録要件の変更も提案されている。同報
じさせる。環境閣僚達は傍観するのか、と記
告書にはそうとは書かれていないが、これは
者の一人が質問した。
昨年、同法案の公表に先立ち実施されたステ
ークホルダー対象のオンライン協議における
同スポークスマンは、「「ご指摘のようなこと
回答の中で、英国政府が強く要求した事項で
が生じないよう期待している」と回答しなが
ある。
らも、「然るべきバランスを保つのが難しい」
と認めた。
また同報告書では、商品に含まれる化学物質
に関して、環境および健康の適切な保護とい
進捗報告書には、加盟国を代表して REACH 問
う側面と、WTO が決定する国際通商ルールと
題を専門的に扱うために特別編成された「特
矛盾しないアプローチという側面との均衡を
別(ad hoc)」グループが同提案全体をまだ精
とらなければならないことを認識している。
査していないことをわざわざ指摘しているに
閣僚理事会の作業グループは、用語および、
も拘らず、
「さらなる精査」の必要な項目がい
競争力・通商ならびに環境・健康に及ぼすと
くつか指摘されている。かかる矛盾点は、化
思われる影響のそれぞれについて「明確性を
学業界とその川下ユーザーのみならず第三国
保証するための詳細調査」を希望している。
が主張する同制度案をめぐる懸念に大いに符
合するところである。即ち、情報要件、
「特に」
業界は、EU 域外への生産拠点移転を決定する
販売量が 1〜10 トンの化学物質の情報要件が
可能性のある欧州企業を含めて、第三国のメ
「さらに討議を要する問題として確認され
ーカーよりも EU 企業に厳しい要求事項を課
た」と述べている。
すべきではないとの懸念を表明している。輸
入業者は、競争の激しい市場の変化に対して、
化学業界および川下ユーザーは、技術革新や
例えば他の製品に目を向けるなど、迅速に対
多くの川下ユーザーにとって重要な生産量の
応できなければならないと主張している。そ
少ない化学物質が、REACH 制度導入による煩
れ故、最近ある代表が、特に REACH 制度に基
雑な手続きの結果、コスト高になると思われ
づき調剤に含まれるすべての化学物質を登録
るため、市場から撤退しなければならないか
しなければならないようであれば、登録要件
もしれないと警告している。一方、環境保護
の遵守は「不可能」であろうと主張している。
派は、かかる化学物質の情報要件は、安全判
また、第三国は、EU 域外で検査を受けた製品
断が可能なレベル以上に軽減されていると主
でも、同制度に基づき安全情報要件への適合
張している。
を証明する書類の提出が必要になることに懸
念を表している。
「一部の」代表から化学物質登録に関して「生
産量以外」の基準を定めるよう提案があった
議長国アイルランドは、データ共有に関して、
と同報告書にはあるが、どの国の代表である
JMC environment Update
「コンソーシアム運営の詳細および、商業上
35
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
の機密保持、各種コスト配分、計画されてい
解を提出する機会が与えられると述べている。
る化学物質庁による情報提供などの諸問題に
さらに、最近策定された欧州委員会の戦略に
は、さらに分析が必要である」と述べている。
も言及し、「現行法の実施と REACH に向けた
準備とのバランスをとるための枠組みを提供
欧州委員会は以前の案に比べて REACH 案の
する」ものであり、特に同法案を「機能する」
企業の機密保持規定を大幅に増やしてはいる
制度にすることを目的としている。
が、業界は依然として同制度の下で企業秘密
が適切に保護されるであろうという納得はし
企業は明確化を求めるとともに、一部の化学
ていない。環境保護団体は、EU が調印した国
物質については、例えば EU の廃棄物法、鉱物
際条約いわゆるオルフス条約の規定により、
法あるいは食品包装容器法など他の規制を受
環境に影響する規則については広範囲な情報
けている化学物質の全面的適用除外を求めて
公開が義務づけられている点を指摘している。
いる。
また、議長国は、計画されている欧州化学物
議長国によると、
「一部の」代表から、企業が
質庁について、この中心的機関が評価手続き
生産する化学物質あるいは製品が人および環
において果たす役割、特に「事務手続き、調
境に対して安全であることを確実にする「注
和および資源要件」の点についてさらに検討
意義務」が業界にあるとする大原則にまで「よ
しなければならないと主張している。また、
り一般的な要件」を拡大するよう求める意見
業界関係者は、同庁に「強力な権限」と「独
が表明されたという。
立性」を持たせ、加盟国の介入を受けること
報告書の中では珍しく、環境保護派のステー
なく、あるいは最小限の介入に止めて評価手
クホルダーに口実を与えるような焦点の一つ
続きが処理されるのが望ましいと繰り返し要
といえる。
求している。
進捗報告書では、認可手続きについて、
「認可
7.
と制限規定との相互関係など、様々な重要課
構想中の欧州化学物質庁の本拠地となるフィ
題について議論されている」と述べている。
ンランドの政府計画が進行している。但し、
新欧州化学物質庁計画が前進
同庁の業務は早くても 2006 年まで開始する
この点について、業界は、最も危険な化学物
見込みはない。
質に焦点を絞るよう要望している。PBTs およ
同庁は、
REACH 政策の行政管理を担う。
但し、
び vPvBs については認可手続きにおいて優先
的に扱わないものとし、当初は対象範囲を発
同政策は EU 意志決定機関の最終承認をまだ
癌性、変異原生または生殖毒性物質、即ち
受けていない。
CMRs のカテゴリー1 と 2 だけに制限すべきで
スポークスマンの Sandler 氏は、REACH 制度
あるとの意見もある。環境保護団体は、有害
の承認は早くても 2005 年と述べている。その
化学物質をより安全な物質に代替することが
場合、ヘルシンキに設置される欧州化学物質
「より環境に優しい」化学物質を生み出す技
庁が活動を開始できるのは 2006 年となる。新
術革新の活性化に繋がること、またすべての
設される EU 諸機関の設置場所について何年
認可に有効期限を設けるべきだと発言してい
も加盟国間で討議した結果、2003 年 12 月 13
る。
日、加盟国は同庁をヘルシンキに設置すると
決定した。
進捗報告書では、加盟国には、どのようにし
て REACH 規定を他の EU 規則とともに円滑に
同庁の設置が数年先になるという事実にも拘
導入できるようにするかについての詳細な見
JMC environment Update
らず、フィンランドのヴァンハネン首相は、
36
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
2004 年 2 月 27 日、同庁に優秀な職員を採用
た 2005 年初めまで同法案の最終採択が延期
するための活動の第一歩として、ヘルシンキ
される危険性があると考える。」議会が共通の
を暮らしやすく働きやすい魅力的な街として
立場を無修正で承認すれば、同法は理事会に
アピールするための委員会を設置した。
差し戻す必要なく採択される。
同庁をヘルシンキに設置するという決定は、
この指令は、外観用塗料およびニスに対して
イタリアのイスプラにある欧州委員会合同研
VOC 制限値を二段階に分けて導入するもので
究センター(JRC: Joint Research Center)に
ある。第一期が 2007 年 1 月 1 日に始まり、第
とって特に重要な意味をもつ。JRC には、現
二期はその 3 年後である。車の補修塗料の制
在、欧州化学物質局(ECB: European Chemical
限値は、2007 年 1 月一回で導入されるが、外
Bureau)が置かれている。この機関は 45 名の
観用塗料の第一期と時期が一致する。同指令
職員を擁し、EU 域内で販売されている既存化
は、2007 年制限値の実施について加盟国が委
学物質について、科学的研究に基づく評価を
員会に報告する期限を 2008 年 8 月 1 日と定め
実施している。
ている。
ヘルシンキの化学物質庁が開始すれば、ECB
同報告書では、指令の現実面の見直しと、第
で行われている多くの作業が「消滅」する。
二期の潜在的社会経済的影響に関する新たな
縮小された ECB は、新設予定の化学物質庁と
要因が発生した場合にはその評価が必要であ
協力して科学的研究を実施する。現在 ECB で
るとしている。
働いている職員は、ヘルシンキでの職務執行
加盟国は、第二期開始から 18 ヵ月後の 2011
者として適任かもしれないが、他の就職希望
年 8 月 1 日までに、同指令の実施に関する二
者と同じ条件で一般募集に応募しなければな
度目の報告書を提出、その後は 5 年毎の報告
らない。
8.
をしなければならない。
欧州議会、塗料・ニス含有 VOC 法を無
委員会は、2003 年 1 月に初めて同指令案を提
修正で成立させる見込み
案したときに、
同法は VOC 排出量を半減させ、
塗料およびニスから方出されるスモッグ発生
ほとんどの人にとってはスモッグである地表
原因物質である揮発性有機化合物(VOCs)の
レベルのオゾンの「広範囲かつ慢性的問題」
量を制限する指令がまもなく採択される。議
の削減に大きく貢献すると述べている。
会は、理事会の共通の立場を無修正で成立さ
せようとしている。
同指令は、加盟 25 ヵ国に存在する約 50,000
の工場に影響を及ぼすと思われ、メーカーに
G. Lisi 議員(イタリア、キリスト教民主党所
はその要求事項を満たすための新設備導入や
属)は、ラポーターとしてこの共通の立場に
既存設備改良など追加コストがかかることに
関する議会の意見を起草した人物であるが、
なる。委員会はまた、メーカーは一部の化学
理事会は第一読会後の議会の修正を十分に考
物質、特に車の補修塗料用の代替物質を見つ
慮した上で、無修正で承認するよう勧告した
けるために研究開発費の負担が必要になると
と述べている。
いう。
同議員は、共通の立場に関する報告書の中で
業界団体は依然として第ニ期 2010 年の要求
次のように書いている。
「当ラポーターは、理
事項が商業的に達成可能かどうか疑問視して
事会が拒否した少数の修正を再度議題にして
おり、委員会は規制遵守のためのコンプライ
も、VOCs 削減戦略に著しい進展があるとは考
アンス・コストを過小評価していると主張し
えない。むしろ、調停手続きが開始され、ま
JMC environment Update
ている。
37
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
9.
プラスチック廃棄物管理に関する適正
ならびに両都市で該当種類のプラスチック廃
実施の指針
棄物の試験的回収システムを組織することで
ある。
欧州の廃棄物管理地方都市ネットワークであ
るリサイクル推進都市・地域連合(ACRR:
10. 欧州汚染物質排出登録が正式に発足
Association of Cities and Regions for
Recycling)およびプラスチックの業界団体3の
欧州委員会と欧州環境庁(EEA)は、2004 年
2 月 23 日コペンハーゲンで欧州汚染物質排出
いくつかが、プラスチック廃棄物管理に関す
るガイドラインの共同出版物を発表した4。
登録制度(EPER: European Pollutant Emission
この種の廃棄物は一般的に技術的および経済
ターネットのサイトからその内容に直接アク
的な理由からリサイクルが困難と考えられて
セスできるようになる5。
Register)を発足する。特に、一般市民はイン
いるのにも拘らず、ACRR は回収、処理および
EPER は、統合的汚染防止管理(IPPC)指令
経済に関する固有の問題に適切に対応できれ
96/61/EC を実施するために採択された 2000
ば、回収、再生およびリサイクル量を増やす
年 7 月 17 日付委員会決定によって創設された。
ことは可能であり、増やすべきだと考えてい
同決定に従い、加盟国は委員会に 2001 年から
る。それはまた、地方・地域の公共事業体を
収集した汚染物質の排出量データ、即ち閾値
支援することにもなる。そこで ACRR は、業
を超過して大気中および水中に放出された全
界団体とともに、プラスチック管理に関する
汚染物質の排出量データを提出しなければな
適正実施(グッドプラクティス)の指針−−
らない。閾値は、同決定の付属書 A1 に掲載
「プラスチック廃棄物リサイクルに関する適
されている。
正実施の指針、地方・地域の自治体による自
治体のための指針」−−の出版を決定した。
この報告の影響を受けるのは、加盟 15 ヵ国お
この指針は、「質問」から「方法」まで、「か
よびノルウェーにある約 10,000 箇所の産業
かる費用」および「再生プラスチックの需要
施設からの排出物質である。ハンガリーは
と供給を拡大する方法」など、この種の廃棄
2004 年 3 月から同制度に参加予定である。加
物処理によって生じる主な問題に回答してい
盟国は、2003 年 6 月までに 2001 年度の、も
る。
し 2001 年度のデータが入手できない場合に
は 2000 年度あるいは 2002 年度のいずれかの
ACRR と業界団体が協力する目的は、プラスチ
排出量を含むデータを初回報告書として提出
ック廃棄物リサイクルに対する意識および情
しなければならなかった。委員会と EEA はこ
報伝達を向上させ、欧州における健全なプラ
の初回報告を利用し、初のデータ一覧表を作
スチック・リサイクル事業を推進するための
成し、2004 年 2 月 23 日に正式に一般公開し
基本的概念および情報伝達ツールを開発する
た。
こと、そして対象とするプラスチック廃棄物
の地域回収・リサイクル目標を拡大するため
の広報キャンペーンを 2 都市で展開すること、
11. EU、京都議定書の全規定が遂に法的拘束
力をもって発効
2004 年 3 月 10 日、欧州議会および理事会の
3
4
決定が発効し、全加盟国において 1997 年合
参加団体:欧州プラスチック工業会(APME)、欧州塩ビ
製造業者協会(ECVM)、欧州プラスチック・リサイクル
業者協会(EuPR)、欧州プラスチック製造業者協会
(EuPC)、ビニール 2010。
意の京都議定書の残る要求事項がすべて法的
拘束力を有することになった。EU および加盟
指針は以下のサイトで入手可能。
http://www.acrr.org/news および http://www.ecvm.org
(→“PVC”→“Science”
→“Important recent research studies on PVC”)
JMC environment Update
5
38
EPER は以下のサイトからアクセス可能である。
http://www.eper.cec.eu.int
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
各国の GHG 排出関連目標は 2002 年に拘束力
出量を制限あるいは削減するための個別目標
を持った。新決定は、特に議定書に基づく排
を受け入れている。
出量のモニタリングおよび報告方法に関する
今回の新規則により、加盟国および EU 諸国は
ものである。同決定により、京都議定書の全
各自削減目標の達成に向けた進捗状況をモニ
規定が EU 法となり、EU は気候変動対策およ
タリングし、これに基づき必要に応じて追加
び議定書実施における国際敵指導力を再確認
措置を講じることが可能になる。同決定はま
した。国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)
た、京都議定書が想定している国連の適合お
の京都議定書は、唯一地球温暖化に取組む国
よび見直し手続きにおいて、EU と加盟国との
際的枠組みである。
間に必要な調整についても規定している。EU
ヴァルストレム委員は、
「京都議定書に定めた
域内において、委員会は毎年進捗状況を評価
公約の実施に必要な EU 法はすべて採択した。
し、必要に応じて適切な措置を提案する必要
即ち、私達はこの重要な議定書を国際レベル
がある。
での発効前とはいえ完全実施することになる。
加盟国が 25 ヵ国となった強力な EU は、国際
12. 環境相理事会、京都議定書公約を確認
敵指導力を発揮するとともに他国が追従でき
加盟 15 ヵ国の環境閣僚および 2004 年 5 月 1
るような道を開くという特別な責任を担って
日に新加盟した 10 ヵ国の環境閣僚は、京都議
いる」と述べている。
定書を全員一致で支持し、議定書に定めた排
出削減目標達成への公約を確認した。
京都議定書およびその後に何回か開催された
締約国会議(COP)」で成立した合意などでは、
2004 年 3 月 2 日に開催された環境相理事会は、
透明性ならびにデータの高品質と比較可能性
続く 3 月 25 日、26 日に開催された欧州指導
を確実にするために、排出量の厳格な会計処
者の春季サミットに向けた理事会結論の中で、
理、報告および見直し手続きが想定されてい
閣僚理事会は「共同体が気候変動に関する国
る。これは、同議定書が世界で最も先進的、
際的な公約、特に GHG 排出削減に関する国際
革新的かつ包括的な環境条約の一つに数えら
的公約の尊重および実施に関与することの重
れる一要素でもある。
要性を強調する」と述べている。
同決定は、排出量の会計、報告および見直し
しかし、全会一致の決議は容易ではなかった。
に関する具体的な手続きを規定し、以前の
当初は、イタリアによってこの意見の一致の
GHG モニタリング・メカニズムに関する決定
成立が危ぶまれる可能性があったようだが、
に取って代わるとともに、その範囲を拡大し
現在理事会議長を務めるアイルランドのカレ
ている。以前の決定は、
1992 年採択の UNFCCC
ン(M. Cullen)環境相は、イタリアを賛成さ
が必要とする要求事項しか対象としていなか
せるために巧みな戦略を若干講じる必要があ
った6。さらに、EU の「共同負担協定」に関
った。イタリアは、京都議定書の発効に関し
する報告およびモニタリングの問題も取り上
て条件付き公約を望んでいた。議定書の発効
げている。同協定に基づき、2002 年に EU が
には、最低 55 の条約締約国の批准を必要とす
京都議定書を批准した際、加盟各国は GHG 排
るが、かかる批准国の排出量が先進国、即ち
(議定書)付属書Ⅰに属する国の排出量の
55%に相当していなければならない。
6
これまでのところ 120 ヵ国以上が批准してい
欧州共同体 GHG 排出量のモニタリングおよび京都議定
書実施のためのメカニズムに関する欧州議会および理
事会決定 280/2004/EC。
http://europa.eu.int/eur-lex/pri/en/oj/dat/2004/l_049/
l_04920040219en00010008.pdf
JMC environment Update
るが、この 55%目標がなかなか達成できない
ようである。米国(GHG 排出量 25%に相当)
39
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
が脱退したことから、議定書を発効させられ
同議定書に関して窮地に陥るような考えを否
るのはロシア(同 17%)だけであるが、その
定した。スウェーデン出身の同委員は、理事
ロシアは最後のハードルを前に足踏み状態で
会後の記者会見において明確な言葉で「孤立
ある。
無援ということはない」と断言した。
しかしながら、多くの国々もヴァルストレム
スペインも、その日の冒頭から、特にロシア
委員も、ロシアは、選挙が終わり新政権が発
が批准しないというリスクがあるので、未だ
足すれば議定書を批准すると確信している。
批准されていない議定書に対する EU の公約
に疑問を呈した。しかし、前出のスポークス
同委員はまた、同じく委員会のデパラシオ運
ウーマンは、理事会は京都議定書に変わる代
輸・エネルギー担当委員が理事会に提案した
替案についていろいろ議論することはなかっ
ロシアに批准期限を言い渡す案について、
「デ
たと伝えた。但し、一部の加盟国ではこのこ
パラシオ委員に UNFCCC について適切に説明
とが問題になっていることを認めた。また、
する時間がなかったのかもしれない」と記者
「我々の立場は、気候変動は依然として存在
に伝え、同案を退けた。これより前に、委員
するということであり、気候変動に代わるも
会のスポークスウーマンが、国際条約はある
のがあるのか」と述べた。その日の議論が終
国に批准期限を設けることを認めていないと
わり、カレン議長は、理事会終了後の記者会
強調していた。さらに、条約の批准には 10 年
見で次のように語った。
「環境相理事会に関す
を要することが多いと補足していた。
る限り、京都議定書に対して断固たる公約が
イタリアの姿勢により、議長国アイルランド
ある。もちろん、我々は全面的な批准を希望
が議定書に定めた第一公約期間 2008〜2012
している。」しかし、たとえ議定書が発効しな
年を上回る排出削減目標を定める必要がある
くても、EU ができることは多いとも述べた。
かもしれない、との期待はもてなくなった。
ヴァルストレム委員も、春季サミットへのメ
別のスポークスウーマンは記者会見で「イタ
ッセージに関して、議定書への理事会の公約
リアは、京都議定書が発効するまで、すでに
が「明確な言葉で表現されている」とし、ま
採択されている数値より厳しい数値を設定す
た「この問題にとって誠に大きな成功といえ
るのは非現実的だと感じているようだ」と語
る」と誇らしげに語った。
った。
同委員は、結論の文言をめぐる議論があった
さらに、ヴァルストレム委員が理事会で京都
こと、また「もちろん加盟国が独自の出発点
議定書がどうなろうとも気候変動は依然とし
と問題を抱えていること」を認めながらも、
て存在すると発言したことを明らかにした。
現在進行中の国家配分計画に関する議論につ
その後同委員は、記者会見で「たとえ京都議
いても予想されることであると述べた。
定書が批准されなくても、気候変動が消えて
なくなるわけではない」と、この発言を繰り
結論
返した。ロシアが議定書を批准しない場合に
経済目標が社会と環境という他の柱に優先さ
ついて記者がさらに追求すると、同委員は、
れるとの懸念が一部にある中で、リスボンで
「気候変動に対してこれらかも対策を講じて
決定した持続可能な開発戦略における環境の
いく」と断言した。
重要性を強調する目的の結論となった。理事
同委員はまた、中国やインドなど GHG 大量排
会は、同戦略の貢献意図には「経済、雇用お
出国を含む 121 ヵ国(2004 年 3 月末時点)が
よび社会的要素と同等に、環境的側面が果た
京都議定書を批准している点を指摘し、EU が
す本質的役割が反映されている」と述べた。
JMC environment Update
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Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
ヴァルストレム委員は、理事会会議後の記者
・ エネルギー効率向上による経済的および
会見で、この結論は環境閣僚が春の欧州理事
環境的恩恵を確保する必要性を強調する
会に主要なメッセージを送る「素晴らしい機
・ 生物多様性保全活動の強化を要求する
会」であると述べた。また、
「成長や競争力を
出典:閣僚相理事会
話題にし、結果的に環境と社会という柱をな
おざりにする傾向」について不満を表明した。
13. 国家排出量取引制度の強化なければ拒否
の可能性
この結論は以下の 10 項目から構成され、今後
欧州委員会は、EU 排出量取引制度に基づく
数年間の EU 環境目標と、その目標を達成する
GHG 削減を目的とする厳格な制度が策定され
ために欧州レベルあるいは地球規模レベルで
ない場合には、直ちに厳しく取り締まる方向
必要な対策を明らかにしている。
に進むと、2004 年 4 月初めの記者会見で発表
閣僚理事会は、
があった。
・ 環境許容力を尊重する環境効率の高い経
しかし、委員会環境総局の J. Delbeke 氏は、
済を実現するという EU 目標に対する関心
同制度を機能させるために一部の加盟国がプ
を喚起する
レッシャーに屈して CO2 排出枠を過剰に発行
する可能性を否定しなかった。同氏は、
「市場
・ 環境の一部、特に気候変動、エネルギー、
輸送および生物多様性などの分野におい
の意味するところは、市場に不足が生じてい
て見られる消極的傾向が未だに転換され
ることである。このことは各国に対してはっ
ずにいることを遺憾に思い、欧州委員会に
きりと伝えている」と、ブラッセルでの記者
対してこのような傾向を一転させられな
会見で語った。
い場合の結果について評価するよう求め
加盟国は、2004 年 3 月 31 日までに、新加盟
る
10 ヵ国は 2004 年 5 月 1 日までに、同制度の
・ 環境に関する懸念を分野別政策に統合す
第一期 2005〜2007 年参加企業に CO2 クレジ
るための新たな弾みをつける必要性を認
ットを配分するための国家配分計画を提出し
識する
なければならない。環境総局はすでに加盟数
・ リスボン戦略に定めた目標達成における
ヵ国の最終案および草案をネット上で公開し
ている7。
環境技術の役割を強調するとともに、この
分野への投資を向上させる措置を奨励す
同氏は、期限が「厳しい」ことは認めながら
る
も、委員会には加盟国が予定通りこの期限を
・ 欧州委員会に対して、2004 年末までに EU
守れるものと「強い確信」があることを明ら
持続可能な開発戦略の見直し完了を求め
かにした。しかしながら、最近の報道にはそ
る
うでもない兆候が見られる。
・ 持続可能な可動性を確保し、輸送の安全性
計画案には、国家総排出量の全体像と分野別
を向上させるための取組みを歓迎する。
内訳が含まれ、また予定あるいは実施されて
・ モーターからの汚染物質排出制限を奨励
いる対策について説明がなければならない。
する
各国政府は、どのようにして京都議定書に定
・ 気候変動に関する国際的公約、特に GHG
排出削減に関する国際的公約の尊重およ
7
び実施に向けた共同体の関与の重要性を
強調する
JMC environment Update
41
欧州委員会の排出権取引および国家計画に関するペー
ジは以下のサイトを参照のこと。
http://www.europa.eu.int/comm/environment/climat/
emission_plans.htm
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
めた目標を達成する計画なのか明らかにしな
メカニズムをリンクさせる他の法案の在り方
ければならない。これには、排出量取引に分
に左右されるとの認識を示した。各種メカニ
配される排出クレジットの量や相手などが含
ズムが同制度に統合されることで、加盟国は
まれる。また、委員会はその後、各国が守る
EU 域外の排出量削減プロジェクトに投資す
べき 10 項目の主要基準に、これらの計画が適
ることが可能となる。報道関係者に配布され
合しているか確認する。
た委員会のメモによると、EU の京都議定書の
目標達成にかかる総コストは、排出量取引を
適合していれば、各国はその計画の採択を進
行った場合で年間 29〜37 億ユーロとしてい
めることができると、同氏はブラッセルの記
る。一方、排出量取引を行わない場合は年間
者会見で述べている。適合していない場合、
68 億ユーロと推定されている。
当該国は「新」計画を提出するか、排出量取
引制度に参加できなくなるかのいずれかであ
同氏としては、加盟国が排出量取引指令の対
る。しかしながら、参加できない国でも、気
象となる電力会社およびエネルギー集約型企
候変動に関する京都議定書に定めた EU およ
業にクレジットを過剰配分すると決定した場
び世界の削減目標を達成するために、課税な
合、制裁措置という「問題を抱える」可能性
どの対策を講じなければならない。その方が
が高くなると、主張している。また、不遵守
「コストがかかる」と、同氏は主張する。ま
は高くつくとして、2005〜2007 年は CO2 超過
た、
「企業が可能な限り多くの排出枠を得よう
分 1 トン当たり 50 ユーロ、次期は 100 ユーロ
と必至になることが予想される」と述べてい
のコストがかかると記者会見で注意を促した。
る。
「京都議定書の目標が果たす役割はここに
同制度は、2005 年までに約 12,000 社の電力
ある」、「超過割当量を分配することは加盟国
会社およびエネルギー集約型企業が参加して
の利益にならない」、さらには、家庭および交
CO2 枠を取引することになっているが、最近
通から発生する排出量を削減する方が「普通
はやや心許ない様子がうかがえる。
は一段とコスト高になる」からであるという。
デパラシオ委員は、フィナンシャル・タイム
「この手段の費用対効果は、課税など他の利
ズ紙に、自分には京都議定書に対する公約が
用可能な方法とはほとんど比較にならない」
あるが、その発効はロシアの批准次第である
と同氏は続ける。また、実際に、負担すべき
のなら、同国に批准期限を設けるべきだとの
「経済的コストとともに明らかな経済的便
考えを示した。同国が批准しない場合、EU は、
益」があり、EU が早期に対策を講じれば報わ
その京都議定書実施を支援するための排出両
れるであろうと予想する。
「早期に対策を取れ
取引制度を固守すべきか検討しなければなら
ば取るほど、我々は世界全体が気候変動対策
ない。同委員の発言は、委員会およびプロデ
に必要とする技術を多く開発できることにな
ィ委員長に強く非難されたが、産業界には強
る。インド、中国は、一部の新聞報道とは違
く訴えたようである。最近、欧州産業経営者
い、現在すでに対策を講じている。」同氏は、
連盟(UNICE)は、委員会に対して競争力の
「すでに最新の技術的成果を求めている」
ために同制度の再考を求めた。
国々の中に中国、ブラジルおよび南アフリカ
が入っていることを明らかにした。
一方、Delbeke 氏は、EU は京都議定書とグロ
ーバルな排出量取引を支持し続ける必要があ
同氏は、
「炭素クレジット予定価格」について
ると述べている。
「我々がリーダーシップを発
概算値を明らかにすることはなかったが、委
揮すれば、私は米国での実施が実現する可能
員会が CO2 1 トン当たり 5〜35 ユーロと推定
性もあると思う。」
している調査に言及した。また、同制度の価
格は、EU 排出量取引制度と京都議定書の各種
JMC environment Update
42
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
14. 環境責任:欧州委員会、新指令に関する
でしかない。合意では、委員会は発効から 6
年後の報告の中で同案件を見直することにな
合意を歓迎
委員会は、議会および理事会が調停委員会に
り、次の側面を検討することになった:可能
おいて画期的な環境責任指令について合意に
な強制的金融保証の構築における段階的アプ
8
達したことを歓迎した 。これで同指令案の迅
ローチ、賠償責任の上限設定および低リスク
速な採択が可能となる。1980 年代後半より環
の活動の強制保険免除などである。この報告
境責任に関する EU 法について合意が求めら
や拡大影響評価を考慮して、欧州委員会は整
れてきた。今回の新指令は、明確に「汚染者
合性のある強制金融的安全保証制度に関する
負担」原則に基づく初の EU 法である。これに
提案を提出すべきか判断する。
より EU における将来の環境被害が防止ある
残る三つの修正案件に関する合意は基本的に
いは救済され、かつ環境被害を引き起こした
分類に関する内容であり、同指令の適用範囲
者の責任が確実に問われることになる。環境
および効力には影響しない。
被害には、人の健康に著しい害を引き起こす
土壌汚染や、動植物、自然生息地および水資
同指令により、環境被害の防止あるいは回復
源への被害が含まれる。
を確実なものとするための環境責任に基づく
枠組みが確立される。環境被害には、1992 年
ヴァルストレム委員は次のようにコメントし
の生息地指令 92/43/EEC および 1979 年の鳥
ている。「私は、15 年間の努力の後に、つい
類指令 79/409/EEC に基づき EU レベルで保護
にここに来て、EU 環境責任指令に関する合意
されている種と自然生息地、2000 年の水枠組
が成立したことを嬉しく思う。これは私が環
み指令 2000/60/EC が対象とする水資源への
境担当委員に就任した時の重大公約の一つで
被害ならびに人の健康に著しい害を引き起こ
あったので、この重要案件をようやく成立さ
す危険性のある土壌汚染が含まれる。但し、
せることができ誇りに思う。汚染者負担原則
遡及的効果はない。
は、EU 環境政策の基幹をなす一要素であり、
この新指令により、私達は初めて包括的な方
このような環境被害の防止あるいは回復 or 救
法で『汚染者負担原則』を実践することにな
済コストを負担する責任のある潜在的関係者
る。新指令は、環境被害の発生を完全防止す
は、同指令の付属書の一つに挙げられている
る強力なインセンティブになるはずである。
危険な行為または潜在的に危険な活動の事業
私は、非常に多くの脅威が世界の生態系に悪
者である。具体的には、水中あるいは大気中
影響を与えている時に、保護生息地や保護種
に重金属を放出する活動、危険な化学物質を
に新指令を適用することは重要かつ意味のあ
生産する施設、ゴミ埋立て地および焼却施設
ることと思う。
」
などである。他の営利事業者にも、保護種お
よび自然生息種への被害の防止あるいは救済
2004 年 1 月 27 日に始まった調停委員会では
に費用負担責任が生じる場合があるが、過失
4 案件が対象となった。今回議会および理事
や怠慢と認められた場合に限られる。
会が合意した内容は、新環境責任指令を著し
く修正するものではない。
この賠償責任制度では公的機関が重要な役割
を担うことになる。責任ある事業者に、必要
最も重要な修正は金融的保証案件に関するも
な防止あるいは救済措置を取らせ、またはそ
のである。指令ではその使用が自主的なもの
の資金を確実に負担させるのは公的機関の役
割となる。NGO など公共の利益のために活動
8
する団体も、同制度の下では、必要ならば公
この件に関する詳細情報は次のサイトを参照のこと。
http://europa.eu.int/comm/environment/liability/
index.htm
JMC environment Update
的機関に行動を要求すること、あるいは公的
43
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
機関の決定が違法ならば裁判所に訴えること
会指令提案 COM (2003) 731 の付属書Ⅲの Part
も認められる。
A に掲載。
同指令は、潜在的責任に対して保険など適切
な金融保証商品による担保を事業者に義務づ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
けていないので、加盟国はかかる保証手段の
整備と、事業者によるその利用を奨励する義
務がある。調停委員会による合意では、委員
Ⅱ. ドイツ
会は 6 年後に報告書を提出し、その中でこの
1.
問題を取り上げなければならない。
ドイツ環境省、メーカーおよび輸入業者
に EEE 処分責任を求める計画を発表
環境省は、2004 年 3 月 5 日、消費者ではなく
15. 欧州議会、欧州委員会の廃棄物規則一本
メーカーおよび輸入業者に電気電子機器
化計画を承認
議会は、2004 年 3 月 9 日、EU 廃棄物法を、
(EEE)の処分・リサイクル責任を求める法案
利用者に配慮した新指令に一本化する案を承
の作業文書を発表した。
認した。
同案は、EEE のメーカーおよび輸入業者に、
この委員会案は、最初の廃棄物法である 1975
定期的に地域清掃局から使用済みの自社製品
年 7 月 15 日付理事会指令 75/442/EEC を始め、
回収を義務づけるものである。
その後の 4 つの修正措置に影響を及ぼす。廃
同作業文書に説明されている制度は、調整本
棄物の共通定義、加盟国の廃棄物データ報告
部と製品のタイプ別登録制度により構成され、
義務および技術的な実施規則の決定における
これらが地方自治体の廃棄物回収部と協力す
委員会の執行権限の行使を定めた修正法など
ることになる。地域サービスの方は、不用製
である9。
品の公設回収地点を提供する、あるいは消費
実質的な変更は何も含まれていない。また、
者への負担なしでこれらを回収し、使用済み
特定の種類の廃棄物を対象とする他の EU 法
製品をカテゴリー別に分別する。ある種類の
には影響がない。
製品が一定量に達すると、地域廃棄物回収局
が調整本部に連絡する。そこからメーカーに
委員会は、廃棄物に関する「バラバラの」規
連絡が入ると、メーカーは製品を回収し、同
定を成文化することで、現行規則を確認する
案に規定されている程度に従ってリサイクル
のに必要な「多大な調査業務」が回避される
しなければならない。
という。加盟国を代表する閣僚が成文化され
た文書に署名すると、11 の EU 公用語でその
同案では、メーカーに対して、同制度の調整
文書が公表され、その 20 日後には新指令とし
を担う本部の設置と、メーカーおよび製品種
て発効する。
類の登録制度の設置を求めている。EEE のメ
ーカー団体ドイツ電気・電子工業連盟(ZVEI:
指令 75/442/EEC は、その修正法の一部ととも
に廃止される。詳細は廃棄物指令に関する
Zentralverband der Elektrotechnik und
Elektronikindustrie)は、2003 年中頃に 100
2003 年 11 月 27 日付欧州議会および欧州理事
社以上の企業がすでにかかる法人を共同で設
立していると述べている。これは、廃電気電
子 機 器 登 録 制 度 ( EAR: Elektro-Altgeräte
9
Register)という官民共同事業である。2004
廃棄物規則の簡素化に関する欧州委員会案は以下のサ
イトを参照すること。
http://europa.eu.int/eur-lex/en/com/pdf/2003/
com2003_0731en01.pdf
JMC environment Update
年 3 月 18 日、メーカーとしては、EAR が果た
44
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
す機能をもって、単一の調整本部かつ各国の
の白物家電については、製品一個当たり 10 ユ
単一の登録制度としたいと、ZVEI 広報官は述
ーロあるいは 20 ユーロを支払い、さらに 25
べている。しかしながら、決定権限は 16 の州
ユーロの回収費用を負担しなければならなか
にあり、これを実現させるには、各州間協定
った。
を締結する必要があると述べている。
さらに、同案では、RoHS 指令に従い、新製品
同法案は、廃電気電子機器(WEEE)に関する
における特定有害物質の使用を禁止している。
欧州議会および理事会指令 2002/96/EC と、電
禁止物質は鉛、水銀、カドミウム、六価クロ
気電子機器における特定有害物質の使用制限
ムおよび難燃剤の PBB ならびに PBDE である。
(RoHS)に関する欧州議会および理事会指令
また、同案の概要をみると、欧州委員会技術
2002/95/EC を国内法に置換える法律でもあ
委員会が化学物質の最大濃度を定めると、直
る。両指令は、2003 年 2 月 13 日に発効し、
ちにそれが同規制に追加されるという。
加盟国は 2004 年 8 月 13 日までに同指令を実
施しなければならない。
同法および同法に組み込まれている実施規定
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
によれば、メーカーは、2005 年 5 月 1 日まで
に調整本部を設置することが義務づけられ、
2005 年 8 月 13 日には回収義務が発効するこ
Ⅲ. 英国
とになる。
1.
国会議員、WEEE および ELV に関する英
国の方針は余りにも曖昧かつ効果に疑問
同案に基づき、メーカーには、発効日 2005
と非難
年 8 月 13 日より前あるいは後に販売されたか
政府による使用済み自動車(ELV)指令および
どうかに拘らず、自社家電製品の引取および
廃電気電子機器(WEEE)指令の取扱いは指針
リサイクルが義務づけられ、また同日より後
と明確性に欠けると、国会議員の一部が主張
に販売された家庭用以外の製品についても責
している。
任が生じることになる。
この 2 つの指令に関する交渉および国内法へ
また、メーカーが突き止められない場合には、
の転換にあたり、リサイクル業界その他の主
販売業者あるいは類似製品を製造するメーカ
ー全体が当該製品を処分しなければならない。
要ステークホルダーに対して、十分に早い段
階での、あるいは適切な形での相談がなかっ
ZVEI は、メーカーが 10 年あるいは 20 年以上
たことや、政府から何を期待されているか十
も前の製品に対する責任を負わせる法的根拠
分に明確な説明がなされなかったことが、下
はないと主張している。また、法律の発効日
院環境・食糧・農村地域問題特別委員会小委
より前あるいは後に販売された製品かどうか
員会の最新報告に述べられている10。同委員会
を判断するのは不可能に近いと指摘している。
は、そのため、同業界は同法が及ぼす影響に
対処するのに必要な新しい機器・設備に投資
ZVEI によると、計画されている制度に対する
できないでいると述べている。
業界負担は、年間 3 億 5,000 万〜5 億ユーロ
になるという。
現在は、市町村および消費者が古い電化製品
の処分費用を大部分負担している。2004 年ま
10
で、消費者は、冷蔵庫、洗濯機や乾燥機など
JMC environment Update
45
同報告書は以下のサイトを参照のこと。
http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200304/
cmselect/cmenvfru/103/103.pdf
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
2.
同委員会は、昨年の政府規制改善対策委員会
による批判を繰り返し、環境・食糧・農村地
英国電気製品メーカー、廃棄物指令遵守
のためのコンソーシアムを設立
域省省(DEFRA)がこの種の指令の交渉およ
英国のメーカー12 社は、2004 年 1 月 26 日、
び国内法への転換に対処するのに必要な専門
EU の WEEE 指令に基づくリサイクル義務を管
的技術と知識を十分に持っているのか、特に、
理するための新設コンソーシア参加要件に関
法的能力のみならずリサイクル業界のニーズ
する了解事項の最終覚書に署名した。
や現実に対する理解を含め、疑問視している。
同国の非営利企業である電気製品業界リサイ
同様に、同報告書では、環境局が同措置を適
ク ル ・ コ ン ソ ー シ ア ム ( REPIC: Recycling
切に執行しようとするならもっと資金が与え
Electrical Producers Industry Consortium)は、
られるべきであると警告している。
コンソーシアム加盟に関する覚書と定款の最
終稿が承認されたと発表した。スポークスマ
さらに、国会議員らは、特に ELV 指令に関し
ンによると、REPIC はリサイクル業者と協力
て、地方自治体は同法が発効した場合に発生
して、同国の過密気味のゴミ埋立地に廃棄物
する自動車の不法投棄の増加に対処する追加
として最終処分されている各種電気製品の回
資金を与えられていないので、苦しむのは必
収業務を 2004 年春から開始する、と述べた。
至と警告している。
同スポークスマンは、このコンソーシアムの
小委員会の委員長 P. Tipping 議員は、同報告
設立は、電気製品のリサイクルに企業のより
書の発表にあたり、結果として「短期的には、
積極的な役割を義務づける EU 指令への対応
自動車や電気製品の不法投棄により英国の都
であると述べた。コンソーシアムには、2005
市や地方が汚くなることは疑いないと思う」
年 8 月に発効する新指令に向けて国内産業界
と述べた。
の体制を整える目的がある。また、年間 120
同委員会はまた、ELV を実施するための財源
万メトリックトンの電気製品のリサイクルを
確保の仕組みを見直すよう勧告し、コンピュ
目指している。
ータのプリンタ用カートリッジを WEEE 指令
さらに、
「これで優れたリサイクルを負担可能
の対象とするよう求めている。
なコストで提供できる企業が誕生すると思
う」と述べた。
同国の廃棄物および二次資源管理に関する業
界 団 体 で あ る 環 境 サ ー ビ ス 協 会 ( ESA:
ELV 指令とともに、WEEE 指令には、電気製品
Environmental Services Association)は、同報
や自動車部品の処理および処分に関する環境
告書の結論を歓迎し、国会議員らが「英国の
基準を強化することにより、ゴミ埋立地に廃
リサイクルを成功させられない政府の失態が
棄される廃棄物を減量する意図がある。しか
続いていること」を指摘したのは正しいと発
し、業界団体の試算によると、WEEE 指令に
言している。
よる企業の負担は年間 6 億ポンドになるとい
う。
ESA の D. Hazell 専務理事は、このような国会
議員の結論に対する意見として、同委員会は
REPIC の財源はその会員によって拠出されて
廃棄物およびリサイクル業界のニーズに対す
いる。会員は少なくともコストの一部を小売
る政府の洞察が恒常的に欠けていることに不
業者や消費者に転嫁すると思われる。各企業
満を表明したが、同協会の会員はこれで「満
はコンソーシアムをスタートさせるために 3
足することはできない」ことを示唆した。
万ポンド(4 万 5 千ユーロ)の拠出を公約し
たと、同スポークスマンは述べている。2004
JMC environment Update
46
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
年 3 月 31 日までは入会費が 1 万ポンド(1 万
公共部門の契約に関する改訂法的基準(Code
5 千ユーロ)となる。但し、中小企業向けに
des Marchés Publics)−−2004 年 1 月 7 日付
は、額は未定だが特別入会費が設けられる。
公共市場に関する法令 2004-15−−は、2004
期限を過ぎると、入会費は中小企業が 6 千ポ
年 1 月 8 日に経済・財政・産業省によって明
ンド(9 千ユーロ)、大企業が 3 万ポンド(4
らかにされた。これにより、政府職員は、以
万 5 千ユーロ)となる。
前はコストだけを基準にしていた購買決定に
各種環境基準を導入することができる。
REPIC は春に事業を開始し、家電製品、民生
用電子製品および小型電気製品業界の生産者
Tokia Saifi 環境副大臣は、GPEM には、職員が
に門戸を開放する。これには輸入業者、小売
環境調達コンセプトを実践するよう納得させ
業者およびメーカーが含まれる。
る目的があると、2004 年 3 月 4 日付声明で述
べている。
REPIC はメーカーにより設立された第二のコ
ンソーシアムである。2003 年 11 月、ソニー、
GPEM は政府の全部門に関与することになる
ブラウン、エレクトロラックスおよびヒュー
が、伝統的に購買全般を監督してきた経済省
レット・パッカードが、ヨーロピアン・リサ
ではなく環境省に設置される。
イクリング・プラットフォーム計画を明らか
21 名の委員を擁する GPEM は、議員、政府購
にしたが、REPIC は、
「コストダウンになるの
買担当者、民間業者より構成され、3 つの小
で競合を歓迎する」と述べている。
委員会に分けられる。各小委員会は以下の特
このコンソーシアムの設立会社は、アルバ
定分野を担当する。
( Alba )、 B&W ラ ウ ド ス ピ ー カ ー 、 BSH
• 購入品が高い環境基準を満たすことを確
Appliance Care、Glen Dimplex、Hoover Candy
実にする
社 、 In-Sink-Erator 、 Kohler 、 Mira 、 Merloni
Elletrodomestici UK、Numatic、フィリップス
• 購入品に使用されている製造プロセスが
社、SMEG および Whirlpool である。
高い環境基準を満たすことを確実にする
• 一次材料となる購買商品については、最善
の選択と使用を確実にする
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
同環境副大臣は、持続可能な開発基準を満た
さない購入の制限を視野に入れ、一次材料委
Ⅳ. フランス
1.
員会は主として熱帯林を調達源とする製品に
仏、「グリーン調達」政策推進委員会を
関連する調達方針に取組むと述べた。
設立
フランスは、2004 年 3 月 4 日、エコロジー・
GPEM はまた、倫理的製品即ち「公正取引に
持続的開発省の中に、政府の全部門において
よる」製品の購入指針を策定しようとしてい
「グリーン調達」政策を推進する委員会を新
る。これには途上国における小規模生産者の
設することを明らかにした。
製品価格を引上げる意図がある。
新 設 の 調 達 委 員 会 ( GPEM: Groupement
2.
Permanent d’Etude des Marchés)は、1 月に
環境庁、
「環境設計」研究開発プロジェク
トを助成
発効した改訂公開入札基準に含まれている新
政府の主要環境シンクタンクは、2004 年 3 月
環境規定に関する情報を政府の購買担当者に
12 日、企業が環境配慮を製品設計に組み込む
提供する。
JMC environment Update
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Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
ための一連の研究開発プロジェクトに助成金
同規則の簡素化案により、同部門の企業は、
を支給する計画であることを明らかにした。
当局が課す環境要件に関する予測可能性が高
まり、同部門の企業間競争の公平性が増す。
フランス環境エネルギー管理庁(ADEME)は、
公的資金を提供する価値のある「環境構想
新規制に基づき、EPA は、主要ステークホル
(eco-conception)」プロジェクト−−件数は
ダーと協力し、簡素化された新承認制度が対
未定−−に対する公開入札を開始した。助成
象とするいくつかの分類について、一連の部
率は研究開発費の 24〜100%となる。
門別付属文書を策定する。同付属文書は最大
4,000 社の企業を対象にすると思われ、その環
ADEME は、環境構想運動の導入を推進するプ
境承認に組み込まれる条件の大半を規定する。
ロジェクトに対する助成金援助であることを
明らかにした。この運動では、企業に、設計
また、簡素化により、企業は環境承認を容易
段階から製品の製造さらにはライフサイクル
かつ迅速に取得することができるようになる。
を通じて自社製品が環境に及ぼす負の影響を
これは、申請内容に関する要求事項が分類別
緩和するよう呼びかけている。
になることと、当局が部門別付属文書から標
準的条件を採用しなければならないという二
バシュロ=ナルカン(R. Bachelot-Narquin)
つの理由によるものである。
エコロジー・持続可能開発相を筆頭に、同国
の環境構想の推進者は、製品の設計改善が企
新制度により環境保護法が弱められることは
業にとって、エネルギー・原材料の消費量削
ない。また、企業は依然として最新の環境要
減および廃棄物制限など、国家環境目標を達
件の適用を受けることになる。新環境要件は、
成する重要な機会になると主張する。
部門別付属文書に規定されるが、利用可能な
最善の技術に基づくものである。同要求事項
ADEME が助成する研究プロジェクトは、2004
は、技術的および経済的可能性の範囲内で、
年 6 月までに決定される予定であるが、設計
その発展を考慮して調整される。
改善により廃棄物減量および環境への影響緩
和を推進しようとする政府の大きな取組みの
同時に、企業に対する監督の差別化が強化さ
中での資金援助となる。これは、2003 年中頃
れ、環境問題の管理ができている企業は、要
に、国家持続可能な開発戦略の一部として導
求事項適合に問題を抱える企業と同水準の監
入された項目である。
督を環境当局より受ける必要はない。
2.
産業施設:環境情報のオンライン登録
環境省が構築した新目録制度により、大規模
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
工業施設および農業施設の近隣住民は、どの
ような化学物質が大気中や水域環境に放出さ
Ⅴ. デンマーク
れているのか、自分で確認することができる。
1.
市民が容易に環境情報にアクセスできるよう
政府、環境承認の促進を提案
にする取組みの一環として、目録は EPA のサ
政府は環境承認規制の修正案を提出した。こ
イト上で閲覧できる11。
れにより、現在環境保護法に基づき承認を必
要とされる約 6,500 のデンマーク企業のうち、
検索機能を使うと特定環境情報の検索が可能
約 5,000 社の承認手続きが簡素化される。新
になる。例えば、ある特定の市町村や業界な
規制は統合的汚染防止管理(IPPC)指令およ
び環境影響評価(EIA)指令の対象企業には適
11
用されない。
JMC environment Update
48
目録は以下のサイトを参照のこと。
http://secure.mim.dk/mst/simi/default.asp?lanid=2
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
どの大規模産業施設に関する情報あるいは大
同国は、1995 年にモントリオール議定書の要
量の CO2 を大気中に放出または窒素を水域環
求以上の削減量を義務づける国内法
境に放出する企業に関する情報などである。
(974/1995)を採択した。その後の 2002 年
に公表された特定オゾン枯渇物質に関する規
目録制度は工業会社にも恩恵を与える。工業
制(243/2002)では、さらに大幅な削減量が
会社に特に関連性のある情報が含まれるから
義務づけられていると、同氏は付言した。
である。即ち、特別法、指針いわゆる BAT 通
達(利用可能な最善の技術を用いた生産に関
報告書において対象となったオゾン枯渇物質
する EU 指針)など環境に優しい生産に役立つ
は、クロロフルオロカーボン(CFC)、四塩化
情報である。
炭素、1,1,1-トリクロルエタンおよび 4 種類の
ハイドロクロロカーボン(HCFC)である。
目録制度は、同国の各種国際公約遵守にも役
立ち、かつ同国の環境汚染物質排出移動登録
また報告書では、工場から排出される 3 種類
(PRTR)制度として機能している。将来、こ
の GHG を対象としている。ハイドロフルオロ
の目録は拡大され、さらに多くの情報を含む
カーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)
ようになり、その検索機能は一段と使い易い
および六フッ化イオウ(SF6)である。現在、
ものとなる。
当該ガスは同国の GHG 排出量全体の 2%未満
3.
であるが、この割合は今後の 10 年間で倍増す
デンマーク、オゾン枯渇物質の大幅減少
る可能性がある。
を報告
環境庁の 2004 年 3 月 4 日付報告書によると同
同国は、UNFCCC である京都議定書を遵守す
国のオゾン枯渇物質の消費量は 2001 年〜
るために、EU の共同負担協定に基づき、2008
2002 年に 49.5%減少したが、同時期に工場か
〜2012 年までに GHG 排出量を 1990 年比で
ら排出された炭素以外の特定 GHG 排出量は
21%削減すると公約している。
12
2.3%増加したという 。
オゾン枯渇物質消費量の減少は劇的に思える
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
が、その一因は加工注文の遅れなどの一時的
要因にあり、長期傾向を十分に反映したもの
ではない可能性がある。しかしながら、同国
Ⅵ. オランダ
のオゾン枯渇物質の消費量は 10 年以上もの
1.
間、毎年減少している。
Gaz de France、オランダ沿岸炭素固定
化パイロットプロジェクトを公表
オゾン枯渇物質はオゾン層枯渇物質に関する
フランスの国営ガス会社 Gaz de France(GdF)
モントリオール議定書により規制されている。
は、2004 年 2 月 12 日、沖合の天然ガス田で
同議定書は 1989 年 1 月 1 日に発効した。同国
排出される CO2 を捕獲し、そのガスを海底に
における使用はその後着実に減少していった
戻すことにより、オランダにおける気候変動
と、EPA 職員 Sorensen 氏は述べている。
によるリスク軽減を目指す試験的計画の詳細
を明らかにした。
GdF の発表によると、この炭素固定化計画は、
オランダ政府の助成を受けており、2004 年 4
12
オランダの報告書「オゾン枯渇物質と温室効果ガス
HFCs、PFCs および SF6」は、以下のサイトの「publications
(出版物)」の見出しから英語版「環境プロジェクト
No.890 2004」が参照できる。
http://www.mst.dk/homepage
JMC environment Update
月には同国の北海沿岸沖約 100 キロメートル
(62.5 マイル)地点にあるガス田において試
験運転を開始する予定である。
49
Vol.6 No.1 (2004. 5)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [32]
GdF は 1987 年より K12-B ガス田を操業して
GDF の発表によると、拡大普及には初期イン
いるが、当初のガス埋蔵量 140 億立方メート
フラ整備に約 2 千万ユーロかかるが、オラン
ルはほぼ「枯渇」している。
ダは毎年最大 48 万トンの CO2 を、年間僅か 4
百万ユーロのコストで、捕捉、貯蔵できるで
この炭素再注入プロジェクトには二つの目標
あろうという。
がある。炭素固定化が気候変動の潜在的解決
策となるかどうか確実な証拠を提供するとと
このレベルの炭素隔離事業であれば、EU の共
もに、GdF の継続的経営を可能にすることで
同負担協定に基づくオランダの GHG 削減公約
あると、同社は説明した。
量全体の約 10%をカバーすることになる。共
同負担協定には、京都議定書に基づき EU 全体
半年間におよぶこのパイロット・プロジェク
が 2012 年までに 1990 年比で 8%という CO2
トでは、産出量の中から 1 万トンの CO2 を分
排出削減目標を達成できるよう支援する意図
離、そのガスをガス田に再注入、地下 3,500
がある。同協定により、オランダは 2008〜
〜4,000 メートルのところで長期保存する。
2012 年までに基準となる 1990 年比で CO2 排
出量を 6%削減しなければならない。
オランダは、さらに大きな、1,360 万ユーロの
予算規模をもつ、CRUST(CO2 Reuse Through
Underground Storage)研究計画の一環として、
同プロジェクトの試験段階における全コスト
GDF のプロジェクトは、EU の CASTOR(CO2
From Capture to Storage=CO2 捕捉から貯蔵)
プロジェクトに基づきモニタリングされる。
の 90%を負担する。CRUST 計画は、炭素固定
CASTOR プロジェクトは、CO2 捕捉、輸送およ
化の潜在的効果を判断するために 2001 年に
び貯蔵のための官民パートナーシップによる
開始された。
革新技術の開発を目的としている。
炭素固定化パイロット・プロジェクトから良
EU 目標は、欧州 CO2 排出量の 10%の捕捉お
い結果が得られた場合には、2005 年から同国
よび地中貯蔵を可能にすることである。これ
にオフショアガス田における普及を進めさせ
は欧州の発電所および工場から排出される
ることができるであろうと、GDF は発表した。
CO2 量全体の約 30%に相当する。
<本モニタリング情報は、競輪の補助金を受けて実施したものです>
JMC environment Update
50
Vol.6 No.1 (2004. 5)
連載 米国における環境関連動向
〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [27]
【今月号のまとめ】
米国では依然としてエレクトロニクス廃棄物[e-Waste]の埋め立てが行われている。埋め立
てられた廃棄物から土壌に流出する有害物質の問題に関してこれまでにも環境保護団体など
が警告を発しており、e-Waste のリサイクルを求める動きが徐々に高まっている。
しかし米国においては、欧州およびアジアで実現しているような政府による強力な指示に基づ
いたリサイクル法が制定される見込みはほとんどない。米国においては、産業界および州政府
による「独自の選択肢」に基づいた方針・政策が取られることが極めて重要であり、よって連
邦政府、州政府・地方自治体、産業、がそれぞれに独自のリサイクル政策を掲げている。NEPSI
のような全米統一政策の導入を目的に活動を行う機関においても、各セクターおよび各社、各
機関がそれぞれの要望を明らかにした後、歩み寄りの可能性の有無についてさらに議論を進め
るという 民主的な 過程を経ることなしでは如何なる政策も採択されない。そのため何ら具
体的な統一見解が今のところ得られず、NEPSI(National Electronics Product Stewardship
Initiative)の有効性を疑う声が各所で聞かれるのも事実である。
今回は、EPA より財政支援をストップされた NEPSI、独自にテイクバック州法を採択したワシ
ントン州、産業界からは Dell 社、EPA それぞれの最近の動きをまとめた。
Ⅰ. NEPSI 動向
これまでの経緯
る費用を一体誰が負担するのかというもので、
連邦政府、州政府、メーカー、小売業者およ
び消費者の間で白熱した論議がこれまでにも
頻繁に交わされている。環境団体は概ね、メ
ーカーがリサイクル・コストを全面的に負う
ことを主張しており、
「リサイクル責任をメー
カー側に負わせることによりメーカーはより
環境に優しい製品設計を行うようになる」と
論じている。地方自治体は、現在、リサイク
ル・コストを負担している立場にあり、財政
難から同コストを産業側にシフトさせたい意
向である。
米国におけるエレクトロニクス廃棄物
[e-Waste]の埋め立ては依然として続いてい
る。これら廃棄物から鉛や水銀、カドミウム
などの有害物質が土壌に流出すると見られて
おり、これまでにも多くの環境市民団体が懸
念の声を上げてきた。連邦 EPA によると、現
在 で も 米 国 全 体 で 年 間 200 万 ト ン も の
e-Waste が埋め立てされており、例えば 2005
年には 1 億 3,000 万台の携帯電話がリサイク
ルされずに廃棄され、最終的には埋め立てさ
れると予測されており、問題は未解決のまま
となっている1。
一方、数々の調査で多くの一般市民が
「e-Waste のリサイクルが適切に行われるの
であれば、ある程度の料金を支払っても構わ
ない」との回答を行っている旨が報告されて
おり、消費者による ARF(Advanced Recovery
問題の争点は、e-Waste のリサイクルにかか
1
Kim A. O’Connell, “Putting the Petal to the Metal,”
Waste Age, April 1, 2004.
JMC environment Update
51
Vol.6 No.1 (2004. 5)
米国における環境関連動向 〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [27]
Fee=リサイクル料金事前徴収)の土壌が固ま
りつつあるとも言える。メーカー側は、すべ
ての負担を負うことに危機感を募らせており、
より公平なシステム構築に向け、消費者によ
る ARF を基盤としたリサイクルを支持してい
る。
メーカーが、e-Waste を消費者に対して無料
で自主回収しリサイクルを行う形式のテイク
バック・プログラムは、欧州およびアジア諸
国においてはすでに導入されており、IBM 社
や Apple Computer 社などの米国企業も欧州・
アジアにおいてはこのようなプログラムを実
施している。しかし本国においては、IBM 社
は自社製品のリサイクル費用として消費者に
約 30 ドルを徴収するプログラムを実施、また
HP(Hewlet Packard)社も消費者に有料で
e-Waste の回収を行っている。メーカーは、
米国においては消費者によるリサイクル費用
の支払がなければテイクバック・プログラム
は財政的に実施不可能である、との見解を明
らかにしている。
なお現時点では、同プログラム発足までの具
体的な日程および期日も決定されていないた
め、プログラムの有効性を疑問視する向きも
ある。しかし、カリフォルニア州を始め、各
州が独自にテイクバック州法をそれぞれ制定
する傾向が全米で強まる中、州別の対応を迫
られる最悪の状況を避けるためにも、産業界
は全米統一プログラムの導入を強く望んでい
る。今回の NEPSI 統一プログラムの決議に関
し、全米エレクトロニクス産業団体である EIA
(Electronics Industries Alliance)は、
「持続可
能で、公正かつ柔軟なプログラム内容」と評
価し、業界の支持を表明している。
EPA は財政援助カット、そして NEPSI は統
一決議を発表
しかし同時に、EIA が「企業間に存在する意
見の食い違いを是正し、統一コンセンサスを
得ることが今後の最大の課題」と指摘してい
るように、業界における見解の相違が目立つ
ことも確かである。例えば EIA のメンバーで
ある HP 社は、すべてのエレクトロニクス製品
が一律の料金で消費者からテイクバックされ
る今回のプログラムの方針に反対を表明して
いる。というのも HP 社は、これまでにもリサ
イクルしやすい部品や素材を使った環境に優
しい製品の開発に力を入れており、これによ
り他社との差別化を行う企業戦略を取ってい
る。消費者による一律の ARF が導入されれば
HP 社のような企業努力が無駄となってしま
うため、同社は、自助努力を促進するなど各
企業によるリサイクル費用の負担をむしろ支
持している。
このような背景から、2001 年 4 月に NEPSI
( National Electronics Product Stewardship
Initiative)が創設され、政府機関、環境団体、
産業界、リサイクル業者、消費者などリサイ
クルに関わるすべてのセクターが一堂に集ま
り、全米統一規制の実現に向け、対立するセ
クター間の情報交換が行われていた。しかし
発足から 2 年の歳月が過ぎても何らまとまっ
た成果を出せない NEPSI に対し、EPA は 2003
年に財政支援を停止している。
しかし NEPSI は、財政難を乗り越える形で創
設以来 3 年が過ぎてようやく、全米統一エレ
クトロニクス・リサイクル・プログラムを発
足させるための決議を 2004 年 2 月 11 日に行
っている。同プログラムは、製品の販売時点
で消費者からリサイクル費用を徴収する形式
を取っており、7 年〜10 年継続された後、段
階的に停止し、以降は消費者からの徴収なし
に産業界が自力でリサイクル業務を運営する
ことが目標とされている。まずメーカーは、
JMC environment Update
同プログラムの財務に関する協議を行い合意
に達する必要がある。同決議を基に NEPSI は
プログラムの枠組みを策定し、議会に提出す
る 。 各 メ ー カ ー に は 、 代 替 案 ( Alternative
Stewardship Plan)を導入する選択肢も与えら
れており、代替案を導入することを決定した
メーカーは、製品購入時の消費者費用負担で
はない別の方法でリサイクル費用の徴収を行
うことが許可される。
一方、Panasonic 社は、消費者に対する ARF
は支持しているものの、米国におけるリサイ
クル機構が、欧州の WEEE 指令および RoHS
指令を踏襲する傾向にあることに対して警告
52
Vol.6 No.1 (2004. 5)
米国における環境関連動向 〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [27]
を発している。欧州の WEEE 指令、RoHS 指令
に関しては、米国産業界全体から「独占的」、
「コストがかかり過ぎる」などの批判が相次
いでおり、またこれらの指令が実際に有効で
あるかどうかの証明もなされていないことか
ら、米国議会に対し両指令に従わないようロ
ビー活動を展開する企業もある。
3. ハイブリッド:
リサイクル費用を消費者・メーカー・政府
間で分担する
4. CRT 埋め立て禁止:
テレビのブラウン管の埋め立て廃棄を違
法とする
2004 年 3 月現在、メリーランド州が CRT 埋め
立て禁止法案を、またコネチカット州とイリ
ノイ州が CRT の ARF 方式のリサイクル・プロ
ジェクト法案を提出するなど、各地で異なる
内容の州法案が続々と審議に入っている。
EPA による財源カットの圧力からか、NEPSI
は 2004 年 2 月にようやく統一決議に至った。
しかし前述したように企業間での意見の相違
は広範囲に及んでおり、今後、産業界の足並
みを整えるべく、企業間の歩み寄りに向けた
活動が行われるものと見られている。
Ⅱ. テイクバック州法動向
統一決議が採択されたとはいえ、NEPSI によ
る全米統一リサイクル・プログラム案が議会
を通過し法制化されるまでの道のりは遠い。
その間、NEPSI に見切りをつける形で全米各
州がテイクバック州法案を次々と提出、2003
年 9 月にはカリフォルニア州が全米に先駆け、
e-Waste のリサイクル料金を消費者から徴収
する全米で最初の法律を制定している。環境
団体の GRRN(GrassRoots Recycling Network)
によると、2003 年中に 24 の州が合計 49 もの
エレクトロニクス・リサイクル関連の法案を
提出しているといい、今後もこの州法 拡散
傾向は強まると見ている2。
2003 年 9 月に制定されたカリフォルニア州法
は ARF 方式で、財政難に苦しむ州政府はこの
ARF 方式を選択する傾向にある。しかし、カ
リフォルニア州法に関しては、消費者から徴
収されたリサイクル費用はまとめて政府の財
源として貯蓄される点で「政府の他の財源と
混同される恐れがある」として懸念を表明す
る州や、
「メーカーに対する責任が十分に問わ
れていない」と批判する州もあり、州の間で
も意見の相違が見られる。以下に、カリフォ
ルニア州に次いでエレクトロニクス・リサイ
クル法を成立させたワシントン州の動向をま
とめた。
ワシントン州による試み
ワシントン州
NEPSI に お い て 州 政 府 を 代 表 す る PSI
(Product Stewardship Institute)によると、
現在各州で提案されているエレクトロニクス
製品のリサイクル法案は以下の 4 種類に分け
ることができるという3。
1. プロダクト・スチュワードシップ:
リサイクル費用をメーカーに負担させる
2. ARF:
リサイクル費用を消費者に負担させる
2
3
ワシントン州においては、年間約 170 万台も
の TV、コンピュータ、モニターなどのエレク
トロニクス製品が不要となっており、一般住
宅の倉庫やガレージに積み上げられている
e-Waste は約 190 万台に上ると言われている4。
“Proliferation of E-Waste Legislation Predicted in
States,” Washington Internet Daily, Vol. 4., No.
222.
“Proliferation of E-Waste Legislation Predicted in
States,” Washington Internet Daily, Vol. 4., No.
222.
JMC environment Update
4
53
John Dodge, “E-Waste Stirs Debate,” The
Olympian, April 12, 2004. Section: Environment, p.
8A.
Vol.6 No.1 (2004. 5)
米国における環境関連動向 〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [27]
CPU が販売される際、有害物質を含むこと
が明記されたラベルが貼付されなければ
ならない。
このような中、ワシントン州で環境保護の運
動 を 展 開 す る 市 民 団 体 の 「 Washington
Citizens for Resource Conservation」が州民に
対してアンケート調査を行ったところ、回答
者の 92%が「e-Waste のリサイクル・プログ
ラムをメーカーが提供すべき」、また 71%が
「リサイクル・コストは、製品の価格に盛り
込むべき」、61%が「小売店へ廃品を持ち込む
ことができるシステムを望む」と回答してい
る5。
しかし産業界は同法案に反対し、
「リサイクル
業者が廃棄物を海外に輸出する場合は政府に
登録しなければならない」とした項目を削除
させるなど、積極的な法案反対のロビー活動
を展開した。しかし大幅な内容変更が加えら
れることなく、AB 2488 は 2004 年 2 月に下院
を通過した。
このような背景から、州民による意向もあり、
ワシントン州下院はエレクトロニクス・リサ
イクル法案である下院法案(AB: Assembly
Bill)2488 を提出、2004 年 3 月 29 日に法制
化、2004 年 6 月 19 日より施行される計画と
なっている。しかし同法案は、当初は「カリ
フォルニア州法の内容を踏襲する抜本的なリ
サイクル法案」として脚光を浴びたものの、
蓋を開けてみれば「廃品回収・リサイクル・
再使用プログラムを実施するために必要な調
査を行う」という下院法案とは極めてかけ離
れた中身となっており、産業界と市民団体、
州政府間の見解の相違による激しい争いがあ
ったことを物語っている。現時点では産業界
のロビー活動に対し、市民団体・政府が屈し
た形となっており、これまでの経緯を以下に
まとめた。
同法案に反対する産業界は、同州を代表する
産業団体である「Washington Association of
Business」と、全米規模で活動を展開するエ
レクトロニクス・メーカー団体の「Electronics
Industry Manufactures」を中心とし、上院に
対し積極的なロビー活動を行った。
「テイクバ
ックの有効性が証明されていない現在、この
ような法案を法制化するのは危険である」と
の主張を行う産業側のロビー活動は功を奏し、
上院は、産業側の言い分をほとんど受け入れ
る形で同法案の大幅修正を行った。
上院は 2004 年 3 月 10 日に修正法案を通過さ
せ、同法案は法制化されたものの、当初の内
容は事実上抹消され、
「エレクトロニクス・リ
サイクルにかかる産業調査、研究を行う」と
したまったく内容の異なる法案となった。地
元新聞の「The Olympian」は同過程を「利益
団体が法案を事実上破壊した」。また環境保護
団体誌「Waste Age」は、
「上院法案(SB: Senate
Bill)は下院法案を水で薄めたようなもの」と
酷評している。
当初の試み
AB 2488 が下院に提出された当時は、以下の
ような内容を含み、ARF 方式のカリフォルニ
ア州法を踏襲する形が取られていた。
• エレクトロニクス・メーカーは、年間に排
出される自社廃棄物のうち 20%をリサイ
クルする計画を構築、実行する。州におけ
るリサイクル率を年間 10%の割合で上昇
させる。
新法内容
こうして法制化された新法の内容は、
「州のエ
コロジー課(Department of Ecology)に対し、
州の固形廃棄物委員会(Solid Waste Advisory
Committee)の指示の下、e-Waste の回収・リ
サイクル・再使用を目的としたプログラムの
構築および財源確保を行うための研究・調査
を実施し、最終的に計画案をまとめる」とい
うものである。
• 消費者は、TV およびコンピュータ・モニ
ター、CPU を購入する際、5 ドルのリサイ
クル費用を支払う。
• 個人使用の TV、コンピュータ・モニター、
5
同州法の最初のステップとして、州エコロジ
ー課は以下の業界団体と協議を持ち、リサイ
同上
JMC environment Update
54
Vol.6 No.1 (2004. 5)
米国における環境関連動向 〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [27]
クルにかかる提案を引き出す必要がある6。こ
れら各関連セクターにおける提案を統合し、
リサイクル・パイロットプログラムを作成す
る。
•
•
•
•
•
Ⅲ. 産業界によるイニシアチブ:Dell 社
しばしば政府の施策と相反する産業界だが、
独自にリサイクルを進めている企業は多い。
例えばコンピュータ・メーカーの Dell 社は、
「エレクトロニクス産業界における持続可能
なビジネス・リーダーとなる」ことを標榜し、
全米 5 都市において 100 トンの e-Waste を回
収する、としたプロジェクトを 2003 年に実施
している。実際には対象都市は 5 都市から 15
都市に拡大され、最終的には 250 トン以上の
e-Waste を回収してプロジェクトは成功裡に
終わっている。
エレクトロニクス・メーカー、小売業者
廃品回収業者
リサイクル業者
市、郡などの地方自治体
環境保護団体、市民団体
次の段階として、州エコロジー課は、リサイ
クル・パイロットプログラムの評価を行い、
2004 年 12 月 15 日と翌 2005 年 12 月 15 日の
2 回、州政府に対し報告書を提出する。同エ
コロジー課は、これらパイロットプロジェク
トの評価および報告書の提出には約 300,000
ドルの費用がかかると見ている7。
このような動きは、Dell 社が過去、リサイク
ル処理に刑務所の受刑者を働かせていたこと
で同社に対する社会の風当たりが厳しくなっ
ていた背景に端を発している。Dell 社は、受
刑者を利用するリサイクル業者である Unicor
社との契約を完全に破棄し、今後はリサイク
ルに本腰を入れて取り組むクリーンな企業イ
メージを社会に対して積極的にアピールして
いる。
同州下院の漁業・エコロジー公園予算委員会
の政策顧問である Jeff Olsen 氏に聞取り調査
を行ったところ、同法案の審議を行った下院
は民主党が、また上院は共和党が多数派とな
っており、かなり対照的な審議結果がでたと
いう。民主党が多数を占める下院においては、
カリフォルニア州法を踏襲するような内容の
リサイクル法案が通過したものの、共和党が
多数を占める上院は、産業界の意向をほぼ全
面的に受け入れる形で、下院法案を事実上、
廃案にしている。
しかし Olsen 氏によると、下院法案を支持し
ていた地元の環境保護団体は、
「環境調査が行
われるだけでも何らかの意義はある」という
姿勢で、同リサイクル問題に対する市民の関
心を強めるための機会として捉える方向で活
動を展開しているという。今回の環境調査結
果が終了した後、環境保護団体は当初より具
体的な法案を再度支持していく構えであると
いう。
6
7
(画像出典: http://www1.us.dell.com/content/
topics/global.aspx/corp/environment/
en/index?c=us&l=en&s=corp)
このような Dell 社による努力が政府にも認め
られ、EPA は同社に対し、EPA で使用された
コンピュータ廃棄物のリサイクル処理を委託
する契約を 2004 年 3 月に行っている8。この
EPA と Dell 社のパートナーシップは、全米最
大の政府市場向け IT エキスポである FOSE
(Federal Office Systems Exposition)におい
て発表され、両者は政府市場向け IT 調達を行
うベンダーに対しアピールを行った。同パー
Engrossed Substitute House Bill 2488, 58th
Legislature, 2004 Regular Session.
http://www.leg.wa.gov/pub/billinfo/2003-04/
House/2475-2499/2488-s_pl.pdf
Erika Pizzillo, “Bill Would Require Recycling of
High-Tech Waste,” The Bellingham Herald
(Bellingham, WA), February 21, 2004, Section:
Local, p. 1A.
JMC environment Update
8
55
“Environmental Protection Agency Teams with Dell
to Recycle Current, Future Computer Systems,”
Business Wire, March 24, 2004.
Vol.6 No.1 (2004. 5)
米国における環境関連動向 〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [27]
トナーシップにおいて、EPA は Dell 社から 3
年間で最高 1 万台のデスクトップおよびノー
ト型パソコン、サーバーを購入することがで
きる。古くなったシステムと新製品とを交換
する際、Dell 社は古いシステムを引取り、リ
サイクルまたは再使用、再販、寄付を行い、
廃棄システムの機密データ管理サービスを提
供すると同時に、ハードウェアを廃棄する場
合は環境保護を目的にデザインされた方式で
廃棄を行う。
は、2004 年の 800 億ドルから 2005 年には
1,000 億ドルにまで拡大し、そのうち 650 億
ドルを北米が占めるようになる、としている9。
Dell 社は、競合の IBM 社などと同様、このよ
うな潮流に乗ってアセット・リカバリー事業
に注力し、企業戦略の方向調整を行っている
と言える。Dell 社は、社会のエレクトロニク
ス・リサイクルに対する意識が高まる中、法
人顧客による ARS の需要は今後、ますます増
加すると見ているという。
Dell 社のこのようなリサイクルに力を入れた
新しい方向性は、ただ単に過去の悪いイメー
ジを払拭することだけが目的ではない。同社
は、他社製品を含め、中古になったコンピュ
ータ・ハードウェアを引取るアセット・リカ
バ リ ー ・ サ ー ビ ス ( ARS: Asset Recovery
Service)に力を入れることで、同社の新製品
の売上を伸ばす戦略を取っている。Dell 社は
すでに 1992 年から ARS を始めており歴史は
古いが、同サービスを本格的にビジネスの根
幹として位置づけたのはここ数年であるとい
う。同社は現時点では ARS による売上などの
情報は公開していない。
但し同社によると、ARS は大きな収益を出し
ているものの、同サービスの目的は、あくま
で法人顧客に対し Dell 社の新製品を販売する
ことであるという。同社はこのサービスを、
新製品を導入する際に古いシステムの処分に
手を焼く顧客に対する付加価値サービスに過
ぎないと位置づけており、今後サービスを独
立させて注力することは考えていないようで
ある。
Ⅳ. EPA による動き
NEPSI によるセクター間統一決議の採択を待
つのと同時進行で、EPA は、2003 年 9 月に
「Plug-In To eCycling」プログラムを立ち上げ
ている。同プログラムは、コストをセクター
間で共同負担するエレクトロニクス・リサイ
クルのパイロットプログラムで、EPA は、
「NEPSI における協議が続けられる中、エレ
クトロニクス廃棄物の回収およびリサイクル
を自主ベースですぐにも始めたい、とする強
い要望が全米のコミュニティーで聞かれてい
るため、これらの要望に応える形で同プログ
ラムを発足させた」という。NEPSI の統一決
議がなかなか発表されないことに業を煮やし
た EPA が地方自治体および市民団体と共同で
発足させ、独自に産業界とのパートナーシッ
プを模索する形を取っており、最終的には
NEPSI と合流することが前提とされている。
Dell 社の ARS では、同社は顧客企業に対し中
古コンピュータ関連機器 1 台につき 25 ドルで
引取りを行い、同機器の回収、分解、再使用、
部品の再販、リサイクルおよび寄付などの処
理を請け負う。中古機器および部品の再販に
関しては、Dell 社は、再販により得た売上の
10%を手数料として受取る。Dell 社によると
1992 年に同サービスを開始して以来、約 200
万台のコンピュータ関連機器を回収した、と
いう。
ARS における Dell 社のビジネス・パートナー
は、カリフォルニア州ロサンゼルスに本社を
構える Image Microsystems 社であり、同社は
Dell 社の他にも HP 社など大型顧客を抱えてい
る。Image Microsystems 社によると、同社の
収益のうち約 35%はコンピュータ部品の再販
から、その他の 35%は中古機器の販売から得
ているいう。
同プログラムでは、①メーカー、②小売業者、
③州および地方自治体、④リサイクル業者の
各セクターから自主的参加者を募り、いくつ
調査会社の Blumberg Associates 社によると、
このような法人顧客に対する ARS の世界市場
JMC environment Update
9
56
“Dell Seeks More Money from Computer Castoffs,”
Austin Business Journal, April 9, 2004. p. 4.
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米国における環境関連動向 〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [27]
かのパイロット・プロジェクトが期間限定で
試験導入される。各プロジェクトでは、メー
カー・小売業者・地方自治体が廃品運送コス
トの公平な分配について協議・決定し、州お
よび地方自治体が廃品の回収インフラを提供、
小売業者が消費者に対する啓蒙活動を展開、
メーカーが自社製品のリサイクルにかかる費
用を負担する、という形式が取られる。
以下の 4 つのパイロットプログラムが各地域
で実施されることになっている。
プログラム(1)
主
導
機
関 事務用品の Staples 社と、全米州政府を代表する PSI(Product Stewardship
Institute)
ターゲット地域 • コネチカット州デイヴィル市における Staples 小売店の廃品回収窓口(26 箇
所)、
• コネチカット州パトナム市における法人ユーザ向け廃品回収窓口(24 箇所)、
• マサチューセッツ州ノースレディング市におけるインターネット販売向け配
達中継所(24 箇所)
目
的 小売業者主導のエレクトロニクス・リサイクルの分析
概
要 Staples 社の各廃品回収窓口において回収された e-Waste のリサイクル業者への
流通にかかるコスト分析、同プログラムの全米規模への拡大の可能性分析を行
う。
プログラム(2)
主
導
機
関 中部大西洋地域の州・地方自治体
ターゲット地域 中部大西洋地域
目
的 メーカーおよび小売業者の協力を得た際の政府主導による回収プログラムの有
効性の分析
概
要 地方自治体主導による大規模廃棄物の回収を試み、回収・リサイクルにかかるコ
スト削減が可能か否か、同モデルが全米規模での導入に適しているか等の分析を
行う。
プログラム(3)
主
導
機
関 ミネソタ州 環境援助課(Minnesota Office of Environmental Assistance)
ターゲット地域 ミネソタ州
目
的 消費者による製品購入時点でのリサイクル費支払を皆無か最小限に抑えたコス
ト・モデルにおける、小売業者によるリサイクル処理が実行可能かどうか分析
概
要 小売業者約 5 社の参加を募り、持続可能なリサイクル・システムの構築を試みる。
コストはリサイクル業者、運搬業者、小売業者、メーカーによって共同負担され
る。
JMC environment Update
57
Vol.6 No.1 (2004. 5)
米国における環境関連動向 〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [27]
プログラム(4)
主
導
機
関 ワシントン州・オレゴン州における地方自治体
ターゲット地域 ワシントン州シアトル市、タコマ市、エベレット市、オレゴン州ポートランド市
目
的 既に導入されている地方自治体レベルにおける回収ネットワークである「Take It
Back Network」パイロットプログラムの有効性分析
概
要 消費者は小売店にリサイクル窓口が設置されることを望んでいることから、既存
の地方自治体管理の回収ネットワークに、小売業者の協力を得て小売店における
回収施設を加えるなどの試みを行い、現状改善の可能性を分析する。コストは
メーカー、小売業者、消費者および政府間で分担される。
出典: “Plug-In to eCycling with US EPA:
Voluntary Shared Responsibility Pilots for Electronic Recycling” EPA, September 22, 2003.
以下に、同 EPA プロジェクトの全体的なスケジュールを示す。
2003 年 6 月
EPA、メーカー、小売業者、リサイクル業者、政府関係者および NGO らと
協議開始。
2003 年 6 月〜9 月
各パイロットプログラムへの参加を考慮している企業からの質問受付。
2003 年 11 月〜
2004 年 1 月
プログラム参加企業は同意書に署名を行う。
2003 年 11 月〜
2004 年 7 月
政府、メーカー、小売業者、リサイクル業者などすべてのチーム・メンバ
ーを含め、プロジェクトを実施する。
2004 年 8 月
プログラム参加チーム・メンバーは、プログラムの評価を行い、EPA に報
告する。
2004 年 9 月
「未来の自主的エレクトロニクス・リサイクル共同責任に関するサミット
(Summit on the Future of Voluntary Shared Responsibility for Electronics
Recycling)」を開催、参加チームは報告を行う。
2004 年 10 月〜11 月 次の段階へと進展できる可能性のあるプロジェクトの拡大を行う。対象外
のプロジェクトは終了する。
出典: “Plug-In to eCycling with US EPA: Voluntary Shared Responsibility Pilots for Electronic Recycling” EPA,
September 22, 2003.
このように米国では、セクター間協議を目指
す NEPSI、各州政府、産業界および EPA と、
それぞれがエレクトロニクス・リサイクルの
実施という同じ目標に向かいつつも異なるア
プローチで独自の活動を展開している。この
「独自の選択肢」が与えられていることが米
国においては極めて重要な要素であり、欧州
およびアジアで採択されている政府主導の法
律は米国において制定される可能性はほとん
どないと言える。
しかしこのような各セクターにおける独自性
が尊重されるあまり、依然として全米統一エ
レクトロニクス・リサイクルの糸口が見えな
いのが現実である。度重なるセクター間での
審議や州政府内に見られるような議会におけ
る歩み寄りなどの過程が重要視されており、
同過程を飛び越してリサイクル政策のような
大型法が米国議会を通過することはまずない。
今後もセクター間における議論、試行錯誤、
歩み寄りが継続して行われていくものと見ら
れている。
調査委託先:
Website:
ワシントンコア
http://www.wcore.com
<本モニタリング情報は、競輪の補助金を受けて実施したものです>
JMC environment Update
58
Vol.6 No.1 (2004. 5)
中国【13】『電子情報製品汚染防治管理弁法』制定動向
はじめに
2004 年 4 月末、信息(情報)産業部による『電子情報製品汚染防治管理弁法』(以下『弁法』と
称す)立法化へのプロセスがほぼ完成し、年内に公布されると報道された。『弁法』の実施開始時
期については、正式な発表はまだみられないものの、2005 年 1 月 1 日より発効との報道もみら
れる。
信息産業部は、中国電子情報産業を管理する部(省)である。同部による当『弁法』は、同部部
長令の形で公布される行政法規となる。『弁法』は中国電子情報産業において、環境汚染防止、消
費者権益保護の立場に立った、電子情報製品による環境汚染防止に対処する専門行政法規第 1 号
である。
信息産業部が『弁法』の制定作業を始めてから、すでに 2 年経過した。その草案は所轄当局、業
界団体、企業などの意見を求め、十数回の修正を経て、現在ようやく完成した。以下は、中国の
マスコミ報道にみる『弁法』制定までの経緯である。
2002 年
信息産業部は『弁法』制定作業をスタート。草案について一定範囲内で意見聴取
を実施。
2003 年 3 月
『弁法』を 2003 年 6 月に公布、2003 年下半期に実施との報道。
2003 年 8 月
信息産業部は『弁法』の内容について整合性がとれるようにし、実施可能性を高
めるため、『弁法』の「意見徴求稿」(一般大衆意見を求める法規の草案)を「中
国電子業界トップ 100 社」に送付し、草案に対するコメント、意見を提出するよ
う要求。
以後、当該草案は各種業界誌、ホームページなどにも掲載。『弁法』の正式公布は
2003 年末に延期と報道。
2004 年 2 月
『弁法』は信息産業部の常務会で原則採択、『弁法』実施に直接関わる所轄官庁の
認可取得のための稟議進行中と報道。
2004 年 4 月
信息産業部は、2 年かけて十数回修正され、2 度も公布時期が延期された『弁法』
の立法プロセスがほぼ完了、年内に公布を明言。
1. 『弁法』制定の背景
1) 中国で廃棄した電子情報製品による汚染が深刻化
信息産業部によれば、現在中国ではテレビ保有台数 3.7 億、電気冷蔵庫、洗濯機の保有台数はそ
れぞれ 1.5 億および 1.9 億に達している。1980 年代から急速に普及している各種家庭用電化製品
は、2003〜2005 年の間に廃棄のピーク時期を迎える。2003 年以来、中国では年間少なくともテ
レビ 500 万台、冷蔵庫 400 万台、洗濯機 600 万台が使用期限を迎えると予測される。また 2003
年 9 月末現在、中国における携帯電話利用者は 2.5 億人に達した。これら電気電子機器の更新が
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中国【13】『電子情報製品汚染防治管理弁法』制定動向
加速化するに伴い、廃棄する「電子ゴミ」もますます増加の一途をたどることになる。これら膨
大な廃棄家電の処理について、今のところ政府は依然処理制度を確立していない。
中国の現状をみると、家電製品の多くは廃棄後中古品市場で再び流通するか、または小規模な業
者により、手作業などの簡単な手段で解体される。前者の場合、電器製品は保証期間を超えて使
用されるため、安全性の問題が発生する。また中古品を回収して手直しし、新品として販売され
る違法行為もみられる。後者の場合、家電製品を粗雑に扱って分解したり、ゴミを勝手に捨てた
りするため、環境に甚大な被害をもたらすことになる。
これらに対処するため、
『弁法』では「拡大生産者責任」の原則に基づいて、電子情報製品の生産
者(輸入者を含む)に対し、製品廃棄後の回収、処理、再使用などの責任があることを要求して
いる。
また使用期限を超えた電気電子機器の使用を制限するため、『弁法』では製品の安全使用期限を明
記することを要求している。安全使用期限を経過した製品は、再使用目的で市場に流入すること
を禁止している。
さらに電子情報製品による公害を防止するため、『弁法』では、電子情報製品の設計、製造および
包装過程において、環境保全を阻害することなく、分解し易い材料の使用などを要求している。
2) EU 指令への対応
中国政府が『弁法』を制定するもう一つの重要な背景として、EU の WEEE(廃電気電子機器のリ
サイクル)指令および RoHS(電気電子機器への有害物質使用制限)指令が 2003 年 2 月 13 日に
公布されたことが指摘される。EU は 2002 年、中国に対しこの二つの指令実施計画を通知した。
『弁法』は中国版 RoHS 指令と言われる(中国は WEEE 指令内容に類似した行政法規を別途制定
中)。『弁法』草案では、電子情報製品への有害物質使用制限品目(鉛、水銀、カドミウム、六価
クロム、ポリ臭化ビフェニール(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE))は、EU の RoHS
指令の規定と同一である。またこれら有害物質使用制限の開始時期も、EU の RoHS 指令で定めた
2006 年 7 月 1 日と全く同じ日である。
2003 年上半期、『弁法』で定めた期限を EU 指令より半年前倒しした 2006 年 1 月 1 日にするとい
った報道があった。しかしそれ以降の報道から判断する限り、この前倒し案は却下されたことが
判明した。
EU は中国にとって電化製品の重要な市場である。中国家庭用電器協会の関係者は、次のようにコ
メントしている。「現在 EU 市場は中国家電輸出の約 25%を占めている。2002 年、中国が EU に
輸出した家電製品は 20.5 億米ドル、うちエアコン、電子レンジ、掃除機および電気ポットの輸出
額は各々2 億米ドルを超えた。」
また中国政府は、『弁法』の制定を通じて、中国製製品の EU 基準達成促進および輸出市場確保を
狙うと同時に、環境基準未達成の外国製品に対し、中国市場への流出を阻止することも働きかけ
ている。
3) 『弁法』の制定は、電子情報製品に関する消費者権益の保護(製品に関する環境情報の取得、
有害物質などによる健康への悪影響や環境破壊の防止など)、中国企業や一般大衆の環境保護意識
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中国【13】『電子情報製品汚染防治管理弁法』制定動向
の強化、環境技術革新などを通じて、企業のレベルアップを促進する効果もある。
2.『弁法』の概要
『弁法』は以下の 4 章で構成されている。
第1章
総則。『弁法』制定の主旨、目的と制定の法的根拠
第2章
電子情報製品による汚染の防止と対処
第3章
電子情報製品の製造における防止、対処への監督管理
第4章
附則
『弁法』の主なポイントは以下の通りである。
① 電子情報製品の定義は、電子レーダー製品、電子通信製品、ラジオ・テレビ、計算機製品、
家庭用電子製品、電子計量機器製品、電子専用製品、電子ユニット・部品、電子応用製品お
よび電子材料を含む。
② 電子情報製品の設計および生産は、環境保護とリサイクルに有効な方法を採用すべきである。
③ 3)6 種類の有害物質の使用禁止および使用制限の期限を設ける。
④ 電子情報製品メーカーは、製品の原材料成分、安全使用期限、リサイクルの可否を公表、明
記する必要がある。
⑤ 電子情報製品の生産者(輸入者を含む)は、製品廃棄時の回収処理、あるいは再利用に責任
を負う。
『弁法』の制定に伴い、所轄官庁では、電子情報製品について重点的に管理監督品目目録や、関
連電子情報製品の汚染測定基準の制定が進行中である1。
廃電子情報製品の回収処理について、『弁法』では生産者責任を基本原則としている。2003 年 3
月頃、『弁法』の内容に関する報道のなかで、電子情報製品の回収・処理について以下の記述があ
った。
① 「電子情報製品の生産者は、国家指定の廃電子情報製品回収機関と電子情報製品回収契約を
締結し、廃電子情報製品回収機関に対し、自社が生産した安全保証期限を過ぎた製品の回収を
委託する。」
② 「電子情報製品生産者は、自社が生産した製品の廃棄物の回収・処理費用を負担する。具体
的な負担方式、金額は、国家関連部門が別途規定する。」
同様な内容について、2003 年 8 月、信息産業部が電子業界トップ 100 社に通知した『弁法』の
草案では、この件について「生産者は、その製品廃棄後の回収、処理、再利用の関連責任を負う」
という簡素化された表現に変更された。
1
2003 年 8 月より、中国全国家用電器標準化技術委員会は、
『家庭用および類似用途電器製品における有害物質の使用制限要
求』、
『家庭用電器製品安全使用年限および再利用通則』の国家基準制定の準備を始めた。同委員会によれば、制定中の『家
庭用および類似用途電器製品における有害物質の使用制限要求』においても、上記 6 種の有害物質の使用を制限している。
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中国【13】『電子情報製品汚染防治管理弁法』制定動向
電子情報製品安全使用期限の明記については、期限を越えた製品は適切に廃棄すべきであり、再
び流通市場に入れてはならないことが『弁法』の主旨と思われる。しかし期限超過の製品につい
ては、メーカーの品質保証や修理責任が消失するという見方もあった。現在、中国の場合、メー
カーの修理責任期間に関する規定はない。
3. 中国地場企業の対応
EU 指令および『弁法』の実施に対し、中国地場企業はそれに対処すべきであり、努力すれば解決
の道が開けるとの楽観的見方と、その一方で、不確定要因が多いため、結果的にどうなるかわか
らないという悲観的見方の両方が存在している。
『弁法』は本来 2003 年 6 月までに公布される予定であった。元の草案には、「電子情報製品生産
者は、2003 年 7 月 1 日より、有害物質の減産を実行する。2006 年 7 月 1 日以降市場に投入する
国家重点管理監督目録に属する電子情報製品のなかに、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポ
リ臭化ビフェニール(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)などが含まれていないことを
保証すべきである」と記載されていた。
その後、政策決定者は関連政策の実施可能性を懸念し、『弁法』の内容について意見聴取の範囲を
拡大した。これに伴い、電子業界トップ 100 社への意見聴取が実施された。
中国地場企業が抱く不安として、主に以下のことがあげられる。
1)有害物質の使用制限について
代替物質の開発に時間と費用がかかる。2006 年 7 月 1 日までに、代替物質を完全に開発できる
かどうか自信がない。仮に代替物質を開発できるとしても、その安定性やそれによるコスト増加
の問題が想定される。
完成品メーカーの立場からみれば、川上産業における合格部品の開発は必要不可欠である。完成
品メーカーのみの自助努力にとどまらない。一方部品メーカーは、場合によっては 1,000 社以上
にも関わることがあり、数多い部品メーカーに代替物質を調達・開発させることは膨大な作業で
ある。
中国電子業界の関係者は、次のようにコメントしている。「近年中国では、電子業界製品の無鉛化
に関するセミナーがよく行われている。このため各企業のこの問題に対する理解・認識度は、外
国企業水準に接近している。しかし、無鉛化生産分野において優れているのは、少数の日系・ヨ
ーロッパ系企業である。全体でみれば、中国電子製造業はまだ無鉛化生産の準備が整っていない。
中国には、日系大手電子メーカーのように電子材料加工、部品製造、PCB 組立、完成品製造まで
の工程を、全て自社でカバーできる企業はない。システム化された日系大手メーカーなら生産の
無鉛化は進めやすい。中国地場企業も、生産の無鉛化を一刻も早く進めなければ、今後外国から
の受注を大量に失うことになる。」
ある地場のプリント基板業界の関係者は、「この業界のメーカーの大多数は無鉛化生産に向けて、
期限である 2006 年までに、生産技術の調整および改善を実現できる。しかし彼らの着眼点は、
むしろ販売市場に置かれている」とコメントしている。
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中国【13】『電子情報製品汚染防治管理弁法』制定動向
2) 廃棄物回収処理に伴う費用負担について
廃棄子情報製品の回収処理に要する費用について、EU の WEEE 指令では生産者が負担すること
になっている。この問題について、中国では以下のような見解がある。
① 「受益者負担」原則の下で、国家、生産者、販売者および消費者はいずれも受益者であるため、
上記の関係者は全て回収費用を分担すべきである。
② 外国でみられる「廃棄者が費用を負担する」原則は、中国では通用しない。「この原則を実施
すれば、今後家電を廃棄する人はいなくなる」ことが懸念される。
③ 生産者のみが負担することになった場合、結局生産者はそれに要する費用を消費者に転嫁する
可能性が大きい。
『弁法』の「意見徴求原稿」では、廃棄製品の回収・処理責任について、
「生産者は、その製品廃
棄後の回収、処理および再使用に関する責任を持たなくてはならない」と規定している。これを
みると、『弁法』は EU 指令に従って、生産者に引責することを基本原則とする色彩が強い。
回収費用の金額の規定については、当局は廃棄製品を分類、解体および処理など一連作業に要し
た費用を計算し、費用を確定後、費用分担案を作成すると説明している。
4. 『弁法』制定過程における外部意見聴取
『弁法』の制定は、最初の起草から、審査に提出される最終草案まで、約 1 年半が経過した。そ
の間、草案の制定担当者は、国務院関連部(省)、中国地場企業、外資系企業および各種仲介機関
からの意見、コメント、アドバイスを受けた。
外国の団体との意見交換のなかで、信息産業部はアメリカ情報産業機構(USITO: U.S. Information
Technology Office,)および米国電子協会(AeA: American Electronics Association,)と交流を試み
た。信息産業部は、アメリカ関連機関との交流は、国際統一法律法規の形成に積極的な役割を果
たした。中国製電子情報製品の発展に有益であり、この業界の製品設計、製造、測定および輸送
国際基準策定に有効であったとコメントしている。
また AeA 側も、中国信息産業部は『弁法』に記載する制限対象品目の選定、法規遵守・実施の適
切なメカニズムの形成などについて、USITO、AeA および同セミナーに出席した各企業にアドバ
イスを求める積極的態度を見せたとコメントしている。
5. 報道にみる、最近中国で開催された廃電気電子機器処理に関するセミナー事例
① 2003 年 9 月 24 日、国家発展改革委員会中小企業対外合作協調センターは、北京で「廃棄電子
電器機器回収利用国際セミナー」を開催した。中国政府関連当局、EU、米国からの専門家お
よび外国企業の代表者などが、電子電器機器による汚染防止、廃棄家電の回収、処理ならびに
制定中の『弁法』の内容について説明を行った。ノキア(中国)投資有限公司は、同社が 1999
年以降中国で展開してきた各種環境保護活動を紹介した。
② 2003 年 11 月、USITO と AeA は共同で、「電子情報製品無鉛化技術および回収利用技術セミナ
ー」を北京で開催した。同セミナーのスポンサーに Agilent Technologies、Alcatel、AMD、Cisco
Systems 、 Dell 、 Hewlett Packard 、 IBM 、 Intel 、 Lucent Technologies 、 Motorola 、 National
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中国【13】『電子情報製品汚染防治管理弁法』制定動向
Semiconductor、Nokia、Sun Microsystems、Texas Instruments などの企業が名前を連ねてい
る。中国信息産業部からも多数同セミナーに参加した。
③ 2004 年 1 月 12−13 日、中日友好環境保護センターは国家環境保護総局、日本国際協力機構
(JICA)の協力の下で、
「廃電気電子機器資源化やリサイクル技術に関するセミナー」を北京
で開催した。中国各地方環境保護総局、固体廃棄物処理企業、電子機器メーカー、マスコミ関
係者および日本の環境省、産業総合技術研究所および北九州市環境保護局などから代表者約
80 人が出席した。
席上、国家環境保護総局の責任者は、中国における廃電気電子機器汚染の現状および廃電気電
子機器による環境汚染防止強化対策などについて説明を行った。一方、日本の環境省の代表者
は、日本国内における廃電気電子機器の資源化・リサイクルに関わる法制度について、また産
業総合技術研究所の代表者は日本廃電気電子機器のリサイクル技術について、さらに北九州市
は日本地方政府が行っている廃電気電子機器処理センターを利用した廃棄物集中処理の実施
状況について説明した。
国家環境保護総局の責任者は、中国側にとって、日本の廃電気電子機器管理、回収利用および
処理に関わる経験を参考にしつつ、外国から先進技術を導入して廃電気電子機器処理センター
を設立すること、また電気電子機器メーカーによる汚染規制、自社責任による製品回収の促進
などについて、今回のセミナーはきわめて有意義であったと強調した。
④ 2004 年 5 月 11 日、天津市政府関連当局の主催による「第 1 回中国(天津)国際グリーン電子
製造技術および産業発展セミナー」が、天津技術開発区で行われた。アメリカ、日本、韓国、
ドイツ、台湾、香港、中国大陸からの企業、大学、科学研究所の関係者など約 100 人が参加し
た。
席上、信息産業部、国家環境保護総局の関係者は、『弁法』の制定、実施に関する説明を行っ
た。内外の専門家は、中国がまもなく公布する『弁法』、『廃棄家庭用電器回収利用管理弁法』、
『国際電子情報製品生産汚染防治管理弁法』などについて意見交換を行い、法規の実施、無公
害電子製品の生産技術、電子情報製品企業の新しい挑戦、国際分業、原材料供給、測定技術、
認定、情報伝達、新技術の発展などについて討議を重ねた。
6. 『弁法』実施に対する米国企業の消極的態度
在中国米国商工会議所、在上海米国商工会議所は、2003 年 8 月、報告書『2003 White Paper –
American Business in China』を発表した。そのなかに廃電気電子機器処理に関し、
『弁法』に対
する米国企業の消極的見方が記載されている。以下はその要点である。
米国企業は強い関心を抱いており、廃棄製品の処理・回収費用が生産者にとって負担となること
を懸念している2。
『弁法』では、2006 年 7 月 1 日より、市場に投入する電子情報製品には、6 種類の有害物質を含
有してはいけないと規定している。かかる規定は、最近 EU が公布した同じ主旨の法規の真似を
2
『弁法』の「意見徴求原稿」では、廃棄製品の回収・処理責任について、
「生産者は製品廃棄後の回収、処理、再利用につい
て責任を持つべきである」とある。
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中国【13】『電子情報製品汚染防治管理弁法』制定動向
しているものである。米国の業界関係者からみれば、この種の法規の制定は科学的要因というよ
りは、むしろ政治的要因に左右されたものである。従ってこの種の規定に基づいた技術的可能性
および環境保護の価値判断について、懐疑的な態度を抱いている。
米国企業は、制限対象となる金属のうち鉛とカドミウムに最も高い関心を持っている。現在、こ
の 2 種類の金属を代替するための開発費用は極めて高くつく。またその実施により、エネルギー
消費が増大し、かつその他の環境破壊をもたらす可能性が存在する。
最終的に策定された『弁法』は、EU 指令より厳格になるべきではない。医療機器などの製品への
実施緩和が必要である。また業界の懸念事項や科学研究の成果も考慮すべきである。
7. 『電子情報製品生産による汚染防治管理弁法』の仮訳
以下は、2003 年 8 月末、中国信息産業部が、電子情報製品業界の意見を集める目的で、『電子情
報製品生産による汚染防治管理弁法』の『意見徴集原稿』(各界の意見を求めるための草案)を公
布した『意見徴集原稿』の日本語仮訳である。
2004 年中に『弁法』は正式に発表される。個別の具体的規定に関して正式なものは、元の草案と
相異するとみられる。
第1章
総則
第1条
電子情報製品による汚染防止、対処を初期の段階から管理を強化し、電子情報製品
廃棄後の環境に対する汚染およびその他公害を削減し、製品の清潔生産および業界
の持続可能な発展を実現し、人類生命の健康と財産安全を保障し、資源利用効率を
高めるために、『中華人民共和国清潔生産促進法』(以下『清潔生産促進法』と称す)、
『中華人民共和国固体廃棄物汚染環境防治法』
(以下『固体廃棄物防治法』と称す)
およびその他法律ならびに法規の関連規定に基づき、本弁法を制定する。
第2条
本弁法に記載する電子情報製品とは、電子レーダー製品、電子通信製品、ラジオ・
テレビ、計算機製品、家庭用電子製品、電子計量機器製品、電子専用製品、電子ユ
ニット・部品、電子応用製品、電子材料製品を含む。
信息産業部は、需要に応じて商務部、国家質量検験検疫総局、国家環境保護総局、
国家工商行政管理総局と共同で、本弁法が適用する電子情報製品の重点管理監督目
録を適宜調整、公布する。
本弁法で記載する『電子情報製品生産者』とは、中華人民共和国国境内であらゆる
電子情報製品の生産、販売および輸入に従事する団体または個人を指す。
第3条
本弁法は、中華人民共和国国境内で行われた電子情報製品の生産、販売および輸入
の行為に適用する。ただし、直接輸出するための電子情報製品の生産行為ならびに
原産者を明記した電子情報製品の販売は含まない。
第4条
信息産業部は、『清潔生産促進法』、
『固体廃棄物防治法』など法律、法規の規定に基
づき、電子情報製品による汚染の防止に有効な政策措置を制定し、電子情報製品に
よる汚染の防止に関わる科学研究、技術開発および国際協力を奨励ならびに支援す
る。また電子情報製品による汚染の防止に関する情報の啓蒙や宣伝普及を行い、業
界全体の環境保護意識を高め、電子情報製品による汚染の防止技術を拡大し、使用
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中国【13】『電子情報製品汚染防治管理弁法』制定動向
可能資源を総合的に活用し、かつ環境を改善および保護する。
第5条
各レベルの信息産業管轄機関は、電子情報製品による汚染防止の管理を職務範囲の
対象としなければならない。各レベルの商務、環境保護、工商行政管理、質量監督
検験検疫および税関などの主管機関は、自らの責務の範囲において、電子情報製品
の生産、輸入、販売に対し管理監督の責務を果たす。
第6条
各レベルの信息産業主管部門は、電子情報製品汚染防止および関連活動において顕
著な実績をあげた団体と個人に対し、表彰と奨励を行うことができる。
第7条
信息産業部は、環境保護に有効な新型電子情報製品の開発に積極的に従事する団体
に対し、一定の生産開発基金を援助することができる。
第2章
電子情報製品の汚染防止
第8条
電子情報製品の設計は、その環境および人の健康への影響を考慮し、要求される技
術水準を維持することを前提に、無毒無害または低毒低害、分解容易、回収・再利
用容易の製造方法を採用しなければならい。
第9条
電子情報製品の生産者(以下生産者と称す)は、生産過程において資源利用率が高
く、回収処理がしやすく、また環境保護に有効な原材料、技術および生産工程を採
用しなければならない。
第10条 電子情報製品の包装材には無害、分解、回収および再利用しやすい物質を使用し、
かつ包装物の上にその成分を明記しなければならない。
第11条 生産者は関連措置を講じ、電子情報製品に含まれる鉛、水銀、カドミウム、六価ク
ロム、ポリ臭化ビフェニール(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)およ
びその他有害物質の含有量を段階的に減らすべく努力しなければならない。該当有
害物質を完全に排除できない場合、その量は関連規定の国家基準を超えてはならな
い。
信息産業部は商務部、国家質量監督検験検疫総局、国家工商行政管理総局と共同で、
電子情報製品の廃棄期限を一律に制定、整合、公布する。
第12条 国家質量検験部門は、信息産業部と共同で、重点監督管理目録に記載の電子情報製
品の測定基準を制定、公布、実施する。
第13条 市場に投入する電子情報製品に関しては、有害物質の名称、数量および製品回収可
否について詳細を明記しなければならない。製品の容積や機能の制限について製品
本体に記載できないものは、製品の包装または説明書に表記することができる。
回収可否の標識は、完全に回収可能、部分的回収可能および回収完全不可能の 3 つ
のカテゴリーに分類する。標識の様式および方式は、信息産業部あるいは他の国家
機関が共同で一律に規定する。
第14条 生産者は、生産する電子情報製品に安全使用期限を明記し、同時に添付する説明書
に詳細な説明をしなければならない。安全使用期限標識の様式と方式は、信息産業
部あるいは他の国家機関が共同で一律に規定する。
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中国【13】『電子情報製品汚染防治管理弁法』制定動向
第15条 生産者は、開発新製品が商品化された時点で、生産する電子情報製品の安全使用期
限目録を直ちに信息産業部に届出をしなければならない。
信息産業部は、届出のあった目録を一律に公表する。
第16条 生産者は、その製品廃棄後の回収、処理および再利用に関する責任を負わなければ
ならない。
第17条 生産のために電子情報製品を輸入する生産者は、商品供給者に対し、輸入する電子
情報製品に原産地を表記すべく要求しなければならない。
第18条 電子情報製品販売に従事する生産者は、商品の仕入れを厳格に管理し、かつ国家が
定めた基準に合わない有害物質量を含有する電子情報製品を販売してはならない。
第3章
監督管理
第19条 各レベルの信息産業主管機関は、環境保護、工商行政管理および質量監督検験検疫
などの機関と共同で、電子情報製品およびその生産者に対し、本弁法の実施状況つ
いて検査することができる。
第20条 あらゆる団体および個人は、電子情報製品による汚染をもたらした団体あるいは個
人を検挙し、提訴することができる。
第21条 各レベルの質量監督検験検疫、工商行政管理および信息産業の主管部門は、自らの
責務の範囲内で、各々本弁法第 11 条、第 13 条、第 14 条ならびに第 18 条規定に違
反した生産者に対し処罰を課す。
第22条 商務部は、本弁法第 11 条、第 13 条、第 14 条および第 17 条規定に違反した電子情
報製品の輸入申請を許可しない。また税関はその通関を許可しない。
第23条 本弁法第 2 章関連規定に違反したものに対し、3 年間、違反者からの発展基金の申
請を受理しない。
第24条 国家機関担当者による職権濫用、重大な損失の発生、公私混同、違法行為の黙認、
違法行為者の擁護あるいは本弁法規定に違反した当事者の検査処理回避への協力な
どに対し、法に従い警告、厳重注意あるいは公職罷免の行政処分を課す。犯罪関係
者に対しては、法に従ってその刑事責任を追究する。
第4章
附則
第 25 条 本弁法の解釈は信息産業部に基づく。
以上
調査委託先:
Thrace Investments Limited(華南投資顧問有限公司)
HP: http://chinasouth.info/(日本語・English)
<本モニタリング情報は、競輪の補助金を受けて実施したものです>
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寄
稿
富士通の環境経営の取り組み
〜 グリーンライフ 21「すべてをグリーンに」 〜
富士通株式会社
環境技術推進センター
3R 推進部 部長 高橋 誠
はじめに
富士通グループは、通信システム、情報処理システムおよび電子デバイスの製造・販売ならび
にこれらに関するサービスの提供を行っております。具体的には、①プラットフォームとして
は、各種サーバ、情報システムを構成する周辺装置、パーソナルコンピュータ、記憶装置、専用
端末装置、携帯電話、交換システムなどがあり、②ソフトウェア・サービスとしては、システム
構築、システムの導入・運用支援、コンサルティングなどがあります。また、③電子デバイスと
しては、ロジック IC、メモリ、プラズマディスプレイパネルなどがあります。当社グループは創
業以来、地球環境問題を経営上の重要課題の一つとして位置付け、21 世紀の活動を推進するコン
セプトである「グリーンライフ 21」を定め、「すべてをグリーンに」をスローガンに環境活動を
推進しています。
本稿では、富士通グループの環境経営の取り組みと、その重要な要素である環境ビジョン
「グリーンライフ 21」、製品関連での特徴的な活動および今後の展開を中心に紹介いたします。
1. 富士通グループの環境経営の原点
富士通グループの環境活動には、1935
年の創業以来の DNA ともいうべき企業
カルチャが息づいており、
「自然と共生する
ものづくり」を環境経営の原点としていま
す。その一例として、昭和 10 年、現在の
川崎工場を設立する時に、
「外観が工場工場
せざること」との初代社長の建設方針にも
示されています(図-1)。
それは前庭と池を有する庭園工場(イン
ダストリアルパーク)という考え方で、こ
の考えは現在も脈々と受け継がれ、沼津
工場などもこの理念に沿って広大な緑に囲
JMC environment Update
「外観が工場工場せざること」
(a) 川崎工場(設立時)
(c) 沼津工場
(b) 川崎工場(現在)
図-1 富士通の環境経営の原点 庭園式工場 (インダストリアルパーク)
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富士通の環境経営の取り組み 〜グリーンライフ 21「すべてをグリーンに」〜
まれた工場として建設されました(1976 年 8 月 開設)。この理念は歴代の経営者や、働く従業員
のカルチャとして現在も受け継がれており、当社グループの事業活動(研究、開発・設計、調達、
製造、物流・販売、回収・リサイクル)の中に生かされ、大変貴重な財産になっています。
2. 富士通グループの環境経営
1992 年に、環境活動の理念として
「富士通環境憲章」を策定、2002 年に
は「富士通グループ環境方針」と改版
しました(図-2)
。
【理
念】
富士通グループは,環境保全への取り組みが重要な経営課題である
と認識し,IT企業としてその持てるテクノロジーと創造力を活かし,
社会の持続可能な発展に貢献します。また,事業活動にかかわる環境
法や環境上の規範を遵守するにとどまらず,自主的な環境保全活動に
努めます。さらに,豊かな自然を次の世代に残すことができるよう,
すべての組織と一人ひとりの行動により先行した取り組みを継続して
追求していきます。
この理念を実現するため、具体的目
標として「富士通環境行動計画」を掲
げ、活動を推進しています。
【行動指針(要約)】
・ライフサイクルにおける環境負荷を低減
・省エネルギー,省資源,3Rを強化したトップランナー製品の創出
・化学物質や廃棄物などによる環境リスクの予防
・IT製品とソリューションを通じた環境負荷低減と環境効率の向上
・情報の開示とフィードバックによる環境活動の改善
・従業員一人ひとりの環境改善
これらの環境活動は、組織的には経
営会議の下に全社委員会として、環境
活動の基本方針の審議・決定を行う「環
境委員会」、また行動目標達成の課題解
決のために責務を遂行する環境委員会
図-2 富士通グループの環境方針
The FUJITSU Way
富士通企業行動指針
(1987年制定)
行動の目標
行動の指針
(2002年制定)
1.お客さま
2.人材
3.クオリティー
4.環境
5.成長と利益
顧客
技術・品質
効率
国際化
人間
目標
指針
行動の規範
行動の規範
図-3 The
FUJITSU Wayにおける環境の位置付け
配下の「課題別委員会」で成り立ってい
ます。これら組織的な活動を実施する一
方で、従業員一人ひとりの環境活動のよ
りどころとなっているのが、2002 年に制
定された The FUJITSU Way です。こ
れは、企業・社員としていかに行動すべ
きかの共通認識を示すもので、
「指針」の
中の一要素に「環境」が位置付けられ、
従業員が業務遂行する際の行動基準とな
る価値観のひとつに環境を捉えています
(図-3)。
3. 環境ビジョン「グリーンライフ 21」
富士通グループは、21 世紀の環境
ビジョンを「グリーンライフ 21」と
定め、
「すべてをグリーンに」をスロ
ーガンとして掲げ、5G の活動を行っ
ています。
「Green Earth」を中核に、
それを実現するための具体的な活動
として「Green Products」、「Green
Factories」、
「Green Solutions」
、そし
て、これらの活動を支える「Green
Management 」 を 推 進 し て い ま す
(図-4)。
ゼロエミッション工場の実現
環境に貢献する
製品開発
地球規模の環境活動
環境ソリューションの提供
環境経営の基盤づく
りと情報の発信・開示
図-4 環境ビジョン グリーンライフ21 「すべてをグリーンに」
• Green Products: 環境に貢献する製品開発/グリーン製品開発、グリーン調達、リサイクルなど
• Green Factories: ゼロエミッション工場の実現/工場廃棄物対策、化学物質排出削減など
• Green Solutions: 環境ソリューションの提供/設計支援ツール、@EcoVision など
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富士通の環境経営の取り組み 〜グリーンライフ 21「すべてをグリーンに」〜
• Green Earth:
地球規模の環境活動/緑化活動,海外植林活動,社会貢献活動など
• Green Management: 環境経営の基盤づくりと情報の発信・開示/EMS、環境会計、環境教育など
4. 環境に貢献する製品の開発とグローバルリサイクル活動
ここでは、当社グループ製品開発の仕組みとその特徴的な取り組みとして、
「植物系素材のパソ
コン筐体」
「VPS/Eco Design」および「欧州リサイクルシステム」について、その概要を紹介いた
します(図-5)。
グリーン製品の開発
1st Step:『製品環境アセスメント規定』での評価 (43項目)
総合評価点:90点以上
⇒ 環境負荷の低減
環境汚染の未然防止
環境関連法規の遵守
⇒ 省資源化,リサイクル設計
化学物質含有規制,省エネ
環境情報提供,包装材
2nd Step: 『グリーン製品評価規定』での評価
該当項目にすべて適合
グリーン製品
環境シンボルマーク
特徴的な取り組み
①研究・技術開発
植物系素材の研究(植物性樹脂)
②製品開発ツールおよび支援体制
VPS/Eco Design(LCAによる環境負荷低減シミュレーション)
グリーン調達(有害化学物質の使用制限)
③使用済み製品の回収・リサイクル
グローバルリサイクルシステムの構築推進
図-5 グリーン製品開発と特徴的な取り組み
‹ 植物系素材のパソコン筐体への適用推進
当社では、2002 年 6 月に、トウモロコシなどの植物を原料とするポリ乳酸系組成の調整を行い、
最適化した植物系素材をノートパソコンの筐体小部品に採用する技術を世界で初めて開発し、ノ
ートパソコン「FMV-BIBLO NB」
(部位:IR 窓)に採用しました。しかし、植物系素材を製品筐体
に適用し、用途を拡大していくためには、
「難燃性」
「強度」
「耐熱性」が課題となっておりました。
そして、2003 年 12 月に、トウモロコシなどの植物を原料とするポリ乳酸を主成分とし、ノー
トパソコンの筐体に必須となる「難燃性」と、ABS 樹脂並みの「強度」や「耐熱性」を合わせも
つ技術を開発しました。これにより、これまでは小部品にしか使用できませんでしたが、難燃性
の実現により、製品筐体などの大型部品にも適用の目処がつきました。今後さらに研究を重ね、
2004 年度から大型部品への適用拡大を図ってまいります。
VPS/Eco Design とその活用事例
製造業において、開発期間の短縮・コスト削減、そして環境負荷低減は共通課題です。この課
題解決のために、3 次元データの徹底活用による全体最適へのシフトが求められています。当社
が提供する VPS(Virtual Product Simulator)の中でも、
「VPS/Eco Design」は、設計段階から製品
の LCA(ライフサイクルアセスメント)評価や解体性評価を行うことができ、環境配慮設計を強
力にサポートするものです。
‹
具体的には、設計から製品製造プロセスまでをシミュレーションすることで、最も環境負荷の
少ない製品開発を可能にする環境配慮型設計シミュレータです。3 次元 CAD システムで作成され
た製品(部品)データをもとに、部材情報データベースや環境負荷データベースから、部品の質
量の測定と材質を把握し、設計段階から LCA による環境評価を行うことで、省資源化・環境負荷
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富士通の環境経営の取り組み 〜グリーンライフ 21「すべてをグリーンに」〜
削減とリサイクル性の向上を実現します。
例えば、企業の膨大なデータ資産管理を支えるストレージ・システム「ETERNUS(エターナス)」
の開発に「VPS/Eco Design」を導入し、使用するネジの本数を従来機種の 2 分の 1 に削減してい
ます。その量は年間で約 168 万本。解体時間の大幅短縮とリサイクル容易性のアップ、およびこ
の機種だけで約 1.5 トンの金属類の資源保護につながりました。
また、2003 年 5 月、エコリーフ環境ラベルを取得したノートパソコン「FMV-718NU4/B」では、
素材・部品項目数 86 種のうち、約 70%の 58 項目の質量を「VPS/Eco Design」により算出しまし
た。そして、関連システムと連携することによりエコリーフ評価を容易にしました。
今後も、
「VPS/Eco Design」を活用した環境配慮設計、LCA 評価に積極的に取り組み、製品のラ
イフサイクル全体を通じて環境に貢献できるグリーン製品の開発をすすめていきます。
‹
欧州リサイクルシステムの構築推進とグローバルリサイクルネットワーク
当社グループでは、EU 加盟国での製造事業者のリサイクル義務が発生する 2005 年 8 月に先行
した取り組みを推進しています。欧州グループ会社間の情報交換ネットワークを構築して、業界
団体や各国の法制化動向の把握と共有化を図っています。
今後、富士通グループでは、グローバルな視野で環境負荷の低減と資源循環・適正処理を推進
するために、日本国内のリサイクルシステムと、海外の富士通グループ会社のリサイクルシステ
ムを連携したグローバルリサイクルネットワークの構築を進めていきます。日本を出発点に、使
用済み電気電子機器のリサイクル(WEEE)指令が 2003 年 2 月に発効した欧州、リサイクルの要
請が高まってきている北米・アジアへと、ネットワークを拡大していきます。
おわりに
近年、企業の環境活動を取り巻く外部環境も多様化しており、ビジネスに影響を与える国内外
の環境規則が法制化されてきています。京都議定書の目標(日本は地球温暖化ガスの排出量を
2008 年〜2012 年までに 1990 年度実績レベルまでの 6%削減)、また EU においては、
WEEE & RoHS
指令の発効および加盟国での各国法制化と施行などが予定されております。
富士通グループとしても中長期的な視野に立ち、これらの課題に取り組む必要があり、当社環
境部門が中心になり、2004 年度〜
第4期 (2004〜2006)
対象期間
2006 年度を対象とした第四期環境
活動のスローガン
行動計画を策定しました。
対象範囲/領域
第四期環境行動計画は、
「富士通グ
ループ環境方針」
を実現するために、
「環境経営からサステナブル経営
へ」をスローガンに、取り組みの対
象を富士通グループの全領域(従来
の研究/設計開発/製造部門に加え、
本社機構、営業、ソフト・サービス
部門)に拡大する計画です(図-6)。
第3期 (2001〜2003)
循環型社会に
向けたトップランナー
第1期〜第2期
工場
(1993〜2000) グループ/
工場、設計・開発
環境経営
部門
の基盤構築
環境経営から
サステナブル経営へ
全グループ/
工場、設計・開発部門、本社
機構、営業、
ソフト・サービス部門
本体/工場
図-6 富士通環境行動計画の変遷
以上
[当組合 貿易関連環境問題対策委員会 委員]
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環境・安全グループ担当委員会の活動状況
1.貿易関連環境問題対策委員会
<平成 16 年度 第 1 回 通算第 79 回委員会(5/20:組合会議室)>
Œ 委員長および副委員長の選任について
―― 委員長に 松下電器産業㈱ 環境本部本部長 園田 信雄氏、副委員長に キヤノン㈱
環境統括・技術センター主席 松藤 洋治氏を選任した。
Œ 今年度の委員会運営について事務局より説明があり、また各専門委員会委員長より平成
15 年度活動報告及び平成 16 年度活動方針について報告があった。
Œ 「EU の新化学物質規制案(REACH)をめぐる最近の動き」
―― 経済産業省 製造産業局化学課 課長補佐 西尾明美氏より、REACH に関する最近の
動きと今後の見通しについて講演を伺った後、意見交換を実施した。
Œ 「海外環境規制に関する産業界の対応状況」
―― ㈳電子情報技術産業協会 環境・安全部 部長代理 湛 久徳氏より、海外の環境規制に
対する我が国電子・電機機器業界の対応状況について報告があり、引き続き意見交換
を実施した。
2.貿易と環境専門委員会
<平成 16 年度 第 1 回委員会(4/14:組合会議室)>
Œ 委員長および副委員長の選任について
―― 委員長に キヤノン㈱ 環境統括・技術センタ主席 松藤 洋治氏、副委員長に ㈶日本
規格協会 審査登録事業部調査役 岡田 浩一氏 および ㈱リコー 社会環境本部次長
佐藤 孝夫氏を選任した。
Œ 今年度の委員会運営について意見交換を行った後、最近の環境関連情報(WEEE & RoHS、
IPP 等)について情報交換を行った。
<平成 16 年度 第 2 回委員会(5/14:組合会議室)>
Œ 欧州環境関連動向(WEEE & RoHS 指令、REACH 規則案、EuP 指令案、電池指令等)につい
て情報・意見交換を行った。
3.環境法規専門委員会
<平成 16 年度 第 1 回委員会(4/26:組合会議室)>
Œ 委員長および副委員長の選任について
―― 委員長に ㈱東芝 環境推進部参事 三崎 均氏、副委員長に 松下電器産業㈱ 環境企画
グループ渉外・管理チーム参事 定清 哲氏を選任した。
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環境・安全グループ担当委員会の活動状況
Œ 今年度の委員会運営の検討、海外環境法規制(欧州:WEEE & RoHS、電池指令関連、米国:
加州 SB20 関連、中国:WEEP 関連、台湾:リサイクル表示関連)の情報交換などを行った。
4.環境問題関西委員会
<平成 16 年度 第 1 回委員会(5/25:大阪支部会議室)>
Œ 委員長の選任について
―― 委員長に 三洋電機㈱ 品質・CS・環境ユニット環境推進チーム 主任企画員 藤原
秀昭氏を選任した。
Œ ㈱インターリスク総研 社会・法務リスク部 主任研究員 田渕 公朗氏より、「欧州における
CSR の最近の動向と企業の取組み」について講演を伺い、意見交換を行った。また、海外
の環境関連動向について情報交換を行った。
5.基準認証委員会
<平成 16 年度 第 1 回委員会(4/27:組合会議室)>
Œ 委員長および副委員長の選任について
―― 委員長に ㈱コマツ 開発本部業務部規制・標準グループ主査 田中 健三氏、副委員長
に三菱電機㈱ 情報技術総合研究所 EMC 技術センター長 岡本 和比古氏を選任した。
Œ 基準認証関連事業の平成 15 年度完了報告および平成 16 年度事業計画について全会一致で
了承された。
Œ ㈶日本品質保証機構(JQA)都留電磁環境試験所所長の羽田 隆晴氏より、「JQA の動向」に
ついて講演を伺い、意見交換を行った。また、海外の環境関連動向について情報交換を行
った。
6.「WEEE & RoHS 指令最新動向〜加盟国法制化状況等と産業界の対応」セミナー
<4/19:アジュール竹芝(東京)、4/21:大阪大林ビル(大阪)>
―― White & Case 法律事務所 Kris Pollet 氏より、WEEE & RoHS 指令各国法制化状況と
TAC の最新動向について、当組合ブラッセル事務所 藤井敏彦次長より、WEEE & RoHS
指令への産業界の対応について講演があり、引き続き質疑応答を行った。
7.「欧州における CSR(企業の社会的責任)および最近の環境関連動向」セミナー
<4/23:名古屋銀行協会(名古屋)>
―― 日機輸ブラッセル事務所 藤井敏彦次長より、欧州における CSR の検討状況と日本企
業の対応、最近の環境関連動向(EU 環境政策、WEEE & RoHS 指令、REACH 規則等)
について講演があり、引き続き質疑応答を行った。
□
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事務局便り
◇
WEEE & RoHS 指令関連動向については、RoHS 指令における閾値の決定が先送りとなりましたが、
追加適用除外項目について利害関係者へのコンサルテーションが行われるという重要な動きもあり
ました。除外の検討対象となっている項目で加盟国等から要望が出されたものについては、当該加
盟国、遡れば当該加盟国に要望を出したであろう企業ないし産業界は代替不可能であることの証
拠や説明を出していないのかという疑問がありますが、いずれにせよ、日本の企業、産業界としても
今回のコンサルテーションは追加の除外を獲得する良い機会と言えるでしょう。
◇
前回休稿となった杉山氏の「ブリュッセル短信」が復活しました。また争って読まれるでしょう。今回の
「短信」では、RoHS 適用除外を巡る現地の議論と上記の RoHS 除外コンサルテーションの動きのほ
か、 鉛フリー規制抜け穴 報道の影響で TAC メンバーの姿勢が厳しくなったという現地の状況、さら
に TAC での閾値や生産者の定義に関する議論が紹介されております。
◇
WEEE & RoHS 指令の最新動向に関するセミナーを去る 4 月 19 日(東京)と 21 日(大阪)に当組合
主催により開催しましたので、その講演録を掲載しました。会場の都合で参加できなかった多くの方
にはお詫びしますが、これを読まれればある程度現状が分かるのではないかと思います。また参加
頂いた方にも確認と言う意味でお役にたてば幸いです。
◇
モニタリング情報としては、欧州については EuP 指令案に対する現地業界の批判、REACH に関す
る欧州委員会・議会・加盟国における議論などの動向、京都議定書実施に向けての EU の体制整備
動向等を報告しました。米国については EPA から財政支援を停止された NEPSI の動向、カリフォル
ニア州に続き電子機器リサイクル法を成立させたワシントン州の動向、Dell 社のリサイクル動向およ
び EPA のリサイクル・パイロットプログラムを紹介しております。また中国については 電子情報製品
の環境汚染防止に対処する「弁法」の制定の背景、同「弁法」の概要、地場企業の対応等について
報告しております。
◇
組合員のページとしては、「富士通」をご紹介します。同社の環境経営の取り組みについて 「貿易
関連環境問題対策委員会」の委員としてご活躍されている高橋様からご寄稿いただきました。初代
社長の工場建設方針であった「外観が工場工場せざること」という考えが脈々と受け継がれ、現在の
環境経営の原点となっているという興味深い紹介が行われているほか、富士通グループとして「す
べてをグリーンに」をスローガンとして 5 つのグリーン活動を推進し、さらに植物系素材のパソコン筐
体への使用等製品開発の実績、グローバルリサイクルネットワーク構築への活動等極めて多角的な
活動を行っているのが印象的です。
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