映画の区分と審査方針 - 映画倫理委員会(映倫)

映画の区分と審査方針
映 画 倫 理 委 員 会
2009年4月23日制定
映画倫理委員会(以下映倫という)の使命と社会的な役割は、市民一般に向けた映画の観覧に際
し必要な情報を事前に提供して、年少者の成長段階に対応した映画の観覧を図ることにある。
映倫は独立した第三者機関として、ここに定める「映画の区分と審査方針」に基づき映画を個別
に審査し、個々の作品に最も相応しい年齢層別の区分に分類する。
1.映画の区分
区分の記号と説明は次の通りとし、区分を象徴するロゴマークとその取扱いは別途定める。
「G」
:年齢にかかわらず誰でも観覧できる
「PG12」 :12 歳未満の年少者の観覧には、親又は保護者の助言・指導が必要
「R15+」 :15 歳以上(15 歳未満は観覧禁止)
「R18+」 :18 歳以上(18 歳未満は観覧禁止)
映画の区分には、入場制限のない「G」
、保護者の助言・指導が必要な「PG12」及び未成
年者の観覧を制限する「R15+」と「R18+]の4区分がある。
区分は未成年者の心身の成長に応じた学校教育の年齢に対応する階層的な構造を持つ。これに
より観客が被る恐れがある衝撃、不快感、差別感、嫌悪感の軽減を図る。
区分の異なる映画の同時上映や映像収録作品のパッケージでは、その中の最も高年齢層向け区
分をもって全体の区分とする。GとR15+作品2本立ての場合は、R15+としての興行となる。
2.審査の基本的な姿勢
審査にあたっては以下の原則に従い、透明性、一貫性、公平性を保ち、説明責任を果たす。
(1)
表現の自由を尊重し、削除・修整は極力避け、区分に分類する。
(2) 規範、良識として受け入れられている社会通念を尊重する。
(3) 作品の文化的、芸術的、教育的な側面に配慮する。
(4) 映画の表現に係る法令、判例などに配慮する。
3.審査の対象
映倫は個人、法人、団体を問わず一般に向けて公開を企図する映画及びその他映像収録作品を
審査する。公開には通常の映画館における上映のほか、マスコミ及び一般試写、商業的映画祭で
の上映も含む。審査の対象は次の通りとする。
(1)日本及び外国の劇映画、ドキュメンタリー映画、その他映像収録作品。
(字幕版、吹き替
え版)
再編集版、再公開版。
(本方針及び分類基準の実施以前に映倫の審査を受けた作品を含む)
(2)上記作品の題名。
(3)ポスター、チラシなどの基本宣材。
-1-
(4)予告篇、特報、宣伝用特殊映像。
上記のほか、映倫の審査方針、分類基準に基づく審査を求めるビデオ、DVD、ネット配信な
どの二次市場向け映画及び映像収録作品。
4.申請にあたっての注意事項
申請作品には以下の事項が含まれないよう注意する。
(1) 基本的人権の尊重に著しく反する、また人間の尊厳を著しく傷つける描写、表現。
(2) 特定の個人、団体の名誉、プライバシー及び信用を毀損する描写、表現。
(3) 重大な犯罪の模倣を招き教唆する表現。
(4) 現実の人間、動物に対する残忍な虐待の描写。
(5) 著作権、商標権の侵害となる描写、表現。
(6) 撮影時に満18歳未満の者による性行為及び性的な裸体描写。
(7) 著しく反倫理的、反社会的な主題又は題材で、大人(満 18 歳以上)の許容の限度を超
える描写、表現。
(8) 「R18+」区分の基準を超える性器・ヘアなどの描写。
5.区分適用外
次のような作品は、映画館での上映は不適切とし、映倫の区分適用外とする。
(1)児童ポルノ、わいせつな図画など非合法な素材、描写を含む作品。
(2)ドラマ性、ストーリー展開などが希薄で、専ら著しく刺激的な性行為や残虐な暴力など
の描写に終始する映像。
(いわゆる18禁アニメ、残虐ビデオ、アダルトビデオなど)
6.審査の方針
映倫は次の方針で作品を個別に審査し、年齢層別に設定した「区分」のいずれかに分類するに
際しては、以下の要領で行なう。
① いかなる主題がどのように表現されているか。
② 各場面でどのような題材が用いられ、それが映像の流れの中でどの程度まで刺激的、又
は抑制的に描かれているか。
③ 作品の全体像が観客にもたらし得るメッセージ及び心理的な効果などを総合的に判断す
る。
(1)表現の度合い
場面の描写に関しては、次の要素を総合的に考慮する。
① 描写の仕方 直接描写による明示、又は間接描写による暗示、もしくは言語による言及。
② リアリズムの度合い
迫真感・臨場感の程度。リアルな描写、又はコメディ、ミュージ
カル、ファンタジー、アニメ-ションなどの様式的・人工的な描き方。
③ 印象度
描写の詳細さ、長短、場面における頻度と全体の回数。大写し、長廻し、又は
フラッシュ・カット、ロング・ショット、ソフト・フォーカスなどの使い方。
④ 効果 歌詞、音楽、音響、ナレーション、CG効果など。
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(2)文脈
審査にあたっては各場面における映像、言語、音声の視聴覚的な流れの中で、ストーリー展
開上の必要性、必然性などを考慮する。文脈の判断には以下を含む。
① 時、場所、登場人物の設定。
② 作品に特有の時代性・歴史性、作品のジャンル。
③
年少者、高齢者、障害者、少数者などに係る描写。
④
問題描写の連続や同時進行などの編集・構成。
同じ描写であっても、別の場面や他の作品の中で使うと分類区分が異なることもある。
(3)作品の全体像
最終的に区分を決定するに際しては以下を考慮する。
① 作品のもつ全体像。
② 突出した表現による支配的な効果。
③ 加重表現や累積効果の有無。
7.審査の実施
(1)映倫委員長は、審査の申請を受け付けたときその審査を原則として複数の審査員に委ね
る。
(2)担当審査員は「映画倫理綱領」
(綱領)、
「映画の区分と審査方針」
(方針)、別途定める「映
画分類基準」
(基準)に基づき、一般公開用のプリントなどにより審査の上、作品を区分
に分類する。それを申請者が受入れたときに区分は内定する。
(3)担当審査員は審査報告書を作成し、映画倫理委員会に報告し、その承認を得る。
8.審査の対象外
下記の映像は審査の対象としない。
(1)劇場CF、マナー広告、映画業界としてのキャンペーン広告。
(2)スポーツ、イベントやコンサートなどの同時実況中継。
その他審査を必要とするか否か、不明確な映像はそのつど判断する。
9.不服の申し立てと再審査
審査員が判定した区分と指定理由について、申請者に異議ある場合は、修整・削除等も含め協
議解決を図る。なお、解決に至らないときは次の手順による。
(1)審査員会議による審査
幹事審査員は「審査員会議」を招集し、審査員全員による審査を行い、その結果を申請者
に伝えるとともに委員長に報告する。
(2)再審査
① 申請者が上記の結果になお異議がある場合は、委員長に対し、異議の理由を付した文書
により「再審査」を請求することができる。
② 委員長は再審査請求をうけたときは、委員による再審査委員会を構成して再審査を行う。
③ 再審査に際し、再審査請求者はその意見を述べることができる。
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④ 再審査にあたり、再審査委員会は「審査員会議」の見解を聞くとともに、必要があると
きは関連分野の専門家の意見を聞くことができる。
⑤ 再審査委員会の再審査を以って最終決定とする。
10.本編の区分表示
1 審査を終了した証として、所定の「映倫マーク」(映倫審査番号付)を題名の右下又は巻末の
右下に付す。
2
所定の「区分マーク」を本編プリントの題名の左下又は巻頭左下に付すことを推奨する。この
マークの適用範囲は日本国内に限られる。
11.区分指定書の発行と審査の終了
(1)区分と指定理由を記した「区分指定書」を発行する。
(2)審査料の納入確認をもって手続きは終了し、
「審査終了証」を発行する。
(3)審査料は別途定める。
12.見解・勧告
委員長は申請者又はその関係者に本方針・基準に反する行為がみられた場合は、見解の声明、
勧告・厳重注意とその公表、区分の取り消し、また指導や是正をうながすなどの措置をとること
ができる。特に下記行為は認められない。
(1)映倫マーク類の無断使用又は不適切な使用。
(2)審査済みプリント(デジタル・プリントも含む)の無断改変による上映。
(3)審査料等の支払い遅滞、未納。
13.改訂
審査方針及び分類基準は以下を考慮し、見直すことができる。
(1)社会通念及び観客の受容態度の変化。
(2)映画表現に係る法令、判例等の動向。
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