世界に広がる LPG車 - 日本LPガス団体協議会

第4章
L i q u e f i e d
世界に広がる
LPG車
LPガスは、
タクシー等の自動車用燃料として広く使
われています。先の東日本大震災では、ガソリンや
軽油などの液体燃料が不足する中、相対的に供給
P e t r o l e u m
が安定していたことにより、被災地での緊急対応に
大きな役割を果たしました。
この章では、LPG車の特徴や普及状況等について
ご紹介いたします。
G a s
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第4 章
世界に広 がるL P G 車
LPG車の歴史と現在
●LPG車の登場
日本で最初にLPG車が登場したのは1940年(昭和15年)ごろで、戦争に
よって不足していたガソリンに代わる自動車用燃料として、プロパンおよび
メタンに注目が集まったことがきっかけでした。戦 後の1962年(昭 和37
年)、ガソリンに対して割安な燃料費や高オクタン価に目を付けたタクシー事
業者が本格的に導入を開始したところ、極めて良好な結果を得たことにより、
LPG車は瞬く間にタクシー業界に広まりました。この傾向は現在でも続いて
おり、タクシーのおよそ8割はLPG車となっています。
初期のLPGタクシー
●業務用車両の普及
またLPG車の高い環境性や経済性は物流事業者にも評価を受け、1992年には東京都・生協・ヤマト運輸・LPガス業
界とトヨタ自動車が共同でLPG仕様のトラックを開発し、一斉導入を行いました。さらには1999年に東京都が大気汚染
対策として推進した「ディーゼル車NO作戦」によって、排ガスがクリーンなLPGトラックに大きな注目が集まりました。
また、物流向けトラック以外でも、清掃車や高所作業車などの特装車、自動車教習所向けの教習車、市営バスや幼稚園
の送迎用バスなどの乗合車等、幅広い領域において利用されています。
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配送車(ヤマト運輸)
配送車(生協)
清掃車(東京都)
高所作業車(NTT)
NV200 UD
幼稚園送迎車
第1章
●LPガススタンド
第2章
LPG車への燃料補給はLPガススタンドで行いま
す。現在LPガススタンドは全国都道府県の各主要都
市を中心に約1,500ヶ所設置されているほか、教習
所や法人の営業 所などユーザーの敷地内に比較的
低コストで設置できる「簡易型LPガススタンド」の
第3章
普及も進んでいます。
なお、リッター当たりの販売価格はガソリンより
安価になっており、燃料費の削減には大きなメリッ
LPガススタンド
簡易型LPガススタンド
トがあります。
第4章
●LPG車の航続距離
LPG車にはLPガスだけを燃料とする専焼タイプと、LPガスとガソリンを併用するバイフューエルタイプがありま
す。バイフューエルはLPGとガソリンの両方の燃料タンクを搭載しているため、同タイプのガソリン車よりも航続距
離が長くなります。例えば容量40リットルのガソリンタンクとLPGタンクを搭載している場合、その航続距離は概ね
■アクセラセダン
■三菱ミニキャブ
トリプルハイブリッド
(㈲マイカープラザ)
(マツダE&T)
(三菱自動車ロジテクノ)
LPG、ガソリン、電気の併用により、航続距
離1,500km以上(同社測定値)を達成。
大容量94リットルタンク(充填可能量は80
リットル)を搭載。デモ走行において長崎県
(佐世保)から東 京まで約1,207㎞を無補
給で走破。
L P G 、ガ ソリン の 併 用 に より、航 続 距 離
900km以上(同社測定値)の走行が可能。
第6章
■トヨタ プリウスαLPG
第5章
1,000km以上となります。また最近では、専焼タイプにも大容量の燃料タンクを搭載している車種も登場しています。
第7章
第8章
●LPG車台数の推移
LPG車の普及台数は戦後順調に増加を続け、1990年ごろに30万台を突破しましたが、その後は低下傾向となり、
2014年時点では約24万台にまで減少しています。特にタクシー用や貨物用での減少が目立っており、業界としての
対応が求められています。
資料編
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第4 章
世界に広 がるL P G 車
LPG車の車種
●LPG車の生産体制
現在LPG車の生産方法には、自動車メーカーによるライン生産と、改造事業者による後改造があります。後改造の場
合は、一度ガソリン車を購入し、それに改造用キットを取り付けることによってLPG車化します。改造キットは元の車体に
応じて国産および外国製の様々なタイプが開発されていますが、対応可能な車種は改造事業者によってそれぞれ異なり
ます。また、自動車メーカーが直接改造に関与し販売を行う「準メーカー車」もあります。
これまではタクシー向けセダンや業務用トラック等の車種が主でしたが、最近では一般乗用向けの車種も増えており、
ユーザーの多様なニーズに対応しています。
●LPG車の車種(一例)
■メーカー車・準メーカー車
メーカー
車名
燃料
燃費(km/l)
クラウンセダン
コンフォート
LPG
9.8
ダイナ
(カーゴ)
LPG
9.2/8.3
(5MT/4AT)
NV200
LPG/ガソリン
10.0
シビリアン
(マイクロバス)
LPG/ガソリン
6.3
◦幼稚園バス
◦送迎用バス
マツダ
(マツダE&T)※1
アクセラセダン
LPG
約 840km/1 充填
◦法人営業用
◦教習車
三菱
(三菱自動車ロジテクノ)※1
ミニキャブトラック・バン
LPG/ガソリン
13.2km/L
◦小型配送用
トヨタ自動車
日産自動車
用途
◦タクシー
◦生協等
◦タクシー
◦ユニバーサルデザイン(UD)仕様
■改造車※2
改造事業者
インテグラル
(埼玉県所沢市)
◦エフ・ケイメカニック
(大分県大分市)
◦マイカープラザ
(岩手県花巻市)
LPG内燃機関工業会
(千葉県佐倉市)
車名
燃料
車名
LPG/ガソリン
スバル インプレッサ
トヨタ アルファード
トヨタ エスティマ
三菱 ランサー
トヨタ ランドクルーザー
ホンダ ステップワゴン
トヨタ プリウス
トヨタ プレミオ
トヨタ カムリ
LPG/ガソリン/電気
トヨタ アクア
トヨタ カローラフィールダー
トヨタ プロボックス
トヨタ ハイエース
(バン/ワゴン)
日産 バネットバン
マツダ ボンゴバン4WD
LPG/ガソリン
トヨタ
ハイエースコミューター
※ 1 ()内は改造事業者名
※ 2 ここに掲載している改造事業者および車種は一例です。他の車種については各メーカーの WEB サイトをご覧ください。
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LPG/ガソリン
日産 ADバン
LPG/ガソリン
トヨタ マークX
田中モータース
(東京都足立区)
LPG/ガソリン
ダイハツ ハイゼットカーゴ
トヨタ カローラアクシオ
トヨタ タウンエース
燃料
LPG/ガソリン
第1章
自動車用燃料の多様化に向けて
第2章
●震災時に活躍したLPG車
東日本大震災の発生直後、東北・関東の被災地域において、製油所の被災による生産量の減少と需要家のパニックに
起因する買い溜め等により主要な自動車用燃料であるガソリンと軽油の一時的な供給不安が発生し、特に支援物資等を
第3章
運搬する物流部門に対し大きな影響を与えました。
一方、LPガスを燃料とするLPG車については、燃料の供給が相対的に安定しており、タクシーや配送車等にも特に支
障なく供給を継続することができたため、大きな混乱は起こりませんでした。表に示すように、震災直後の東北4県にお
けるタクシーの走行距離数は前年比でおよそ1割以上増加し、特に宮城県では130万km(地球約33週分)以上増加する
など、人員・物資輸送の両面でLPG車のタクシーが大いに活躍したことが分かります。
第4章
輸送用燃料を特定の燃料だけに依存することは、災害時のセキュリティにとって大きな不安定要因となります。いざと
いう時に備え、自動車用燃料の分散化を促進するためには、普段からLPG車を一定割合で保有するなど事前の対策が必
要です。
走行距離数
(km/1 日・1 台)
都道府県名
H 23 年 3 月
128.8
160.5
115.5
113
240.2
200.9
165.2
138.8
171.5
128.4
130.7
233.4
191.6
152.3
対前年比
107.70%
106.90%
111.20%
115.70%
97.20%
95.40%
92.20%
H23 年3月11日
~ 3 月 31 日
143.6
176.8
134.5
139.1
230.2
187.2
146.2
対前年比
H 23 年 4 月
111.50%
110.20%
116.50%
123.10%
95.80%
93.20%
88.50%
127.8
153.8
115.3
107.4
240.1
200.2
163.5
増加延べ走行
距離数
(千 km)
H23 年3月11日
~ 3 月 31 日
562
1,346
999
598
―
―
―
第6章
岩手
宮城
福島
山形
東京
神奈川
千葉
H 22 年 3 月
走行距離数
(km/1 日・1 台)
第5章
■地震発生直後のタクシー輸送実績
(出典:全国乗用自動車連合会、3月11日~31日の実績については日本LPガス協会試算)
第7章
■配送に活躍するLPGトラック
■活躍する盛岡のタクシー
第8章
資料編
LPG車の配送車や業務車を保有する事業者では、震災
直後から業務を遂行することができた。
岩手県では、タクシー事業者・LPガス事業者が自ら支
援物資を集め、タクシーで宮古市まで往復200kmの
道のりを無休油で運搬した。
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第4 章
世界に広 がるL P G 車
世界で普及するLPG車
●世界に広がるLPG車
現在世界におけるLPG車の普及台数はおよそ2,500万台(2013年)で、2000年の750万台から約3倍以上に伸び
ており、特にロシア、ポーランドでは300万台を超えるなど、世界各地で急速に普及が進んでいます。この背景には、LPG
車の排気ガスがクリーンでCO 2も低く、地球温暖化対策や大気汚染対策として直ちに導入が可能なこと、また税制優遇
等の政策的な誘導により価格が他の燃料に比べて相対的に安く維持されていることなどがあります。特に欧州では、今後
CO 2 排出等の環境規制がさらに強化されることが見込まれており、それに対してLPG車は即戦力として最も現実的な解
決策であると期待されています。
■世界主要国におけるLPG車の普及台数(2013年)
ヨーロッパ
国名
フランス
ドイツ
イタリア
ポーランド
ロシア
トルコ
ウクライナ
イギリス
その他
ヨーロッパ計
アジア・オセアニア
LPG車台数
262,000
501,000
1,930,000
2,750,000
3,000,000
3,934,753
1,500,000
150,000
2,699,808
国名
アメリカ・中南米
LPG車台数
オーストラリア
中国
インド
日本
韓国
タイ
その他
490,773
141,000
2,100,000
234,473 ※
2,410,495
1,020,000
259,392
アジア・オセアニア計
6,656,133
国名
アメリカ合衆国
ドミニカ共和国
メキシコ
ペルー
その他
アメリカ・中南米計
LPG車台数
543,444
173,000
182,000
145,008
130,649
1,174,101
16,727,561
世界合計台数
24,911,465台
(2013年実績)
アフリカ
国名
アフリカ計
中東
LPG車台数
国名
LPG車台数
210,370
中東計
143,300
(出所:World LP Gas Association,“Statistical Review of Global LP Gas 2014”)
※ この数値にはバイフューエル車の台数は含まれていません。
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