No.10

中国ビジネスレポート
上海翔龍信息技術有限公司
2010/7/10
中国ビジネス・パートナーズ・クラブ
http://xianglong.asia
2010-0010
今回のレポートは、富裕層の成功と産業の変化についての考察です。
◆富裕層とは◆
富裕層とは◆
1000 万元(約 1 億 3000 万円)以上の資産を持つ人が 09 年中に 6%増え、32 万人を超えたとみられる。
個人資産額は年々増加を続けており、資産 1000 万元を超える個人は 08 年には 30 万人、09 年は 32 万人と
なった。1000 万元以上の資産を持つ人が 2 万人を超える地域は広東省、上海市、北京市、江蘇省、浙江省
の 5 省・市。
富裕層は主に企業家、高所得者、不動産投資家、個人投資家の 4 タイプに分けられる。職業としては、主
にサービス業、不動産業、製造業を営む人が多く、また不動産や株式投資だけでなく、最近は時計や宝石
のコレクション、絵画などの美術品へ投資する人が増加している。子供の国際教育にも熱心で、幼少の頃か
ら英語環境で育てるために、米国や英国へ留学させる家庭が多いことがわかった。
また、富裕層の平均年齢が 39 歳で、海外の富裕層の平均年齢より 15 歳も若く、1 億元(約 13 億円)以上
の資産を持つ富豪の平均年齢は 43 歳だった。彼ら若い中国富豪たちの資産は急速なスピードで増えており、
また中国の今後の景気見通しについても楽観的で、大きな自信を持っている。
◆中国の富豪はなぜ若くして成功でき
中国の富豪はなぜ若くして成功できる◆
若い富豪が増えた理由として、不動産価格の急上昇により、利益を得
た不動産投資家が多かった。09 年 2 月の中国政府の統計によると、住宅
価格は昨年 1 年間で 10.7%上昇し、不動産投資家に莫大な利益をもた
らした。資産家の親から受け継いだ資産を不動産投資や株式投資に注
ぎ込み、それで成功した若者が多い。
特に「富二代」「富三代」と呼ばれる、80 年代生まれ以降の富裕層は、
親から元手となる資産を苦労なく得て、それを不動産投資などで膨らま
せたことが大きいとされる。ただ、中国の投資家にはインサイダー取引などによって不正に利益を得ている若
い富裕層も多いとされ、そのために海外より平均年齢が低いという見解もある。
◆IT 業界で成功した若手起業家が激増◆
業界で成功した若手起業家が激増◆
また中国の若い富裕層の多くは、IT 業界でベンチャー企業を立ち上げて成功している。大学在学中に起
業して成功した経営者も多く、08 年中国校友会ネットが
発表したデータによると、若い中国人富豪の約 8 割が IT
関連事業で成功していたそうだ。しかし IT 業界で成功し
た若者も、親から開業資金を援助してもらったという例が
多く、やはり「富二代」が多いのが実態である。
元々恵まれた家庭に育った子供が、IT 業界で新しい
事業を興し、たった 1 年や 2 年で莫大な資産を手に入れ
る。これまでの中高年富裕層とは全く異なる成功ルート
で莫大な資産を得る人が続出し、中国の富豪の顔ぶれ
は大きく様変わりしている。
◆富裕層が好むブランド◆
富裕層が好むブランド◆
中国富裕層の多くは車と腕時計をコレクションしており、車は平均 3 台、腕時計は平均 4.4 個を所有して
いる。車はビジネス用にはロールスロイス・ファントム、プライベート用にはベントレー・コンチネンタル・フライン
グ・スパーが最も好まれた。ジュエリーではカルティエ、時計はパテック・フィリップ、ファッションはジョルジオ・
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アルマーニ。ルイ・ヴィトンはバッグと時計が人気で、富裕層のみならず、最近は一般のビジネスマンや OL に
も浸透している。
マッキンゼー・アンド・カンパニーによる調査結果として、中国で年収 200 万元(約 2900 万円)以上の富裕
層が 2015 年までに 400 万世帯を超えると伝えた。 調査によると、中国は年収 200 万元の富裕層が年 16%
増の勢いで伸び続けており、2015 年までには 400 万世帯を突破、富裕層の数で米国・日本・英国に次ぐ世
界 4 位に浮上するという。
◆日本に
日本に留学◆
留学◆
「富裕」という定義が変わり始めていることを思わせることは「日本留学はもう夢ではない」。海外留学はか
つて富裕家庭の特権だったが、いまや「普通の家庭」でも実現可能となっている。日本への留学は「たった
15 万~20 万元(約 200 万~260 万円)」の残高証明があれば申請できる。この「たった」という表現が、いかに
中国人の経済感覚が変化してきたかを如実に表している。
さらに、日本と中国が互いに最大の貿易相手国であることから、日本留学で学んだことを帰国後のキャリア
に生かすことは「賢い選択」となっている。一般庶民でも手の届くようになった留学。このステップを経れば、
富裕層への夢をつかむチャンスはさらに手近なものになることを示唆している。
◆留学生
留学生のチャンス◆
チャンス◆
日本での留学の利点は、アルバイトを探しやすい環境がある。飲食業や製造業、語学教師、販売員、通
訳業、新聞配達などが主なアルバイト先だが、平均的な時給は 800~1000 円ほど。交通費や食事が提供さ
れる場合が多く、留学生にとって他の国家より容易に学費や生活費を稼ぐことができる。
さらに世界に誇る日本の高度な科学技術を学ぶことができ、日本語習得は、中国最大の貿易相手国であ
る日本との経済・文化交流を深める上で必要不可欠となる。このほかに、教育水準の高い日本の大学の卒
業資格は国際的に認められており、国公立大学 99 校と私立大学 458 校すべてが中国で承認されている。
日本で学ぶ「80 后(80 年代生まれ)」の中国人留学生は、20 年前
の留学生が経験したような留学生のイメージからは程遠い。出発時
点からすでに日本の若者と互角以上に渡り合っている。
しかし新世代の留学生たちが特別優れているのではなく、時代が
彼らにチャンスを与えた。「80 后」の彼らに共通するのは、文化の壁、
苦学、プライドを捨てて日本社会に溶け込もうとする努力などとは無
縁なことだ。彼らは経済のグローバル化によって経済的にも恵まれ、
情報化社会の恩恵を受けて世界中の流行をキャッチし、海外でも通
用する才能やライフスタイルを初めから備えている。
◆新時代の
新時代の指導者やエリート
新時代の指導者やエリートの精神面の変化
指導者やエリートの精神面の変化◆
の精神面の変化◆
中国の指導者やエリートの精神面の変化を知ることが重要である。
かつての中国は、多くのアジアの国々と同様、日本に比べて貧しく遅れていると認識していた。だ
が数十年に渡る努力の結果、今日の中国人は自分たちの国の状況に自信と愛着を持っている。1980
年代以前の中国は、国家主導の経済であり、ソ連の人員制を踏襲していた。しかし、1980 年代以降
の改革開放政策の結果、民間の規制が解放されて海外の華人と民間企業の知恵の活用が進み、米国に
近い経済体制となった。いわゆる「海外帰国組」の多くは中国指導者のサポータとなり、中国を改革
開放の道へと導いていった。
ここをよく理解し、若い(40 代~30 代後半)指導者と日本の経営者自身が直接交流する機会を増や
すべきである。このことは経営者の代理人(エージェント)が交流するよりずっと良い成果を産むこ
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とになる。中国の経済人に、“ビジネスを拡大”でなく“ビジネスに深入り”したいとはっきりとさ
せるべきである。
21 世紀の世界では、
“安全・安心”が普遍的な価値を持つようになった。日本が“アジアのリーダ
ー”の地位にいることを自覚し、安全を築くための知恵や経験を惜しみなく分け与え、日中双方の民
間産業の経済協力を推し進めれば、中国の業界指導者の友情と信頼を得ることができる。
◆産業は
産業は「雁行型」から「ネットワーク型」◆
「雁行型」から「ネットワーク型」◆
「雁行型」から「ネットワーク型」へ変化した。かつてのモデルは、日本から提供された精巧な部
品やモジュールを中国等新興国に経営管理と生産技術、アジアの安い労働力と土地資源を利用して、
全世界の需要を満たせるサプライ・チェーンを形成し、各地域は雁の列のように連なって、秩序を重
んじ、互いに協力し、競争し、成長していった。
しかし今や、中国内需の成長を支えて“世界の工場”である中国のサプライ・チェーンをサポート
することは、各国企業の重要な戦略になっており、中国は、すでに世界のサプライ・チェーンに入り
込んでいる。
オープン・アーキテクチャ戦略の下で、中国企業の発展速度と到達レベルは、日本企業の予想をは
るかに超えている。例えば日本の電器・電子製品がアジアのトップの地位から失墜したのは、その企
業構造と体制と関係があると思っている。製品の特殊スペックや品質の高さが自慢だった日本企業は、
その独特な国内ニーズによって、世界の主流市場と融和する機会を失ってニッチ市場に追い込まれ、
守りに入った製品戦略で何とか国内ニーズだけを満たそうとしているように見える。
◆日本の高級製品とアジアの廉価製品◆
日本の高級製品とアジアの廉価製品◆
日本製の製品は、多くのアジアの消費者にとって崇拝の的である。しかし、日本製品は富裕層をタ
ーゲットにしてシェアを拡大してきた。日本以外のアジアでは、多くの消費者が廉価製品を中心とし
た購買志向を持っている。それゆえ、日本の製品は“市場を占有”したのではなく“心を占有”した
だけといえる。
日本以外のアジアの製造業者は、日本製品の雰囲
気を真似し、ブランドを模倣し、パッケージを似せ
て作り込む。そして、自国民の消費嗜好やチャネル
(販路)の習性を熟知し、製品以外の利益関係を築
き上げつつある。その結果、消費者の購買力が向上
するころには、アジアのサプライヤは日本の製品を研究し尽くし、日本企業より消費者に歓迎される
製品を作ることになるだろう。中国企業は、低コストで消費者ニーズを満たしたデザインとサービス
を提供できるようになり、このことが消費者に選択肢を与えている。
日本企業がこのような趨勢に立つ時、どの道を行くかの選択を迫られる。低コストで大衆顧客を狙
う製品マーケティングを中心とした経営モデルを構築するか、あるいは高い技術力を以ってカスタマ
イズ・サービスを中心とした経営モデルを構築するか、のどちらかを選ぶことになる。
◆中国の電子産業規模、今年 1 兆ドルに達する予測
兆ドルに達する予測◆
中国最大規模の半導体・電子部品展示会「IIC China」の主催機関関係者は 2010 年 3 月 14 日、「中国の
電子産業の規模は今年、1 兆ドルに達するだろう」と述べた。環球資源・電子業務部の馬思礼総裁は、「中国
市場の半導体に対するニーズは、電子産業規模の拡大とともに上昇している。中国市場の電子部品に対す
るニーズも 1000 億ドルに達すると見られている。 このように最先端事業でももはや中国は、世界の重要な市
場となっている。
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