最終年度報告書 - 千葉商科大学

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+ロリヌ 執腎
小 学生 か ら社会人 まで のキ ャリア発達 をめざして
低学年か ら
学ぴがい
生きがい
働きがい をつなげる税百
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文部科学省が千葉商大の優れた教育(CP:グッドプラクテイス)を3年連続採択
平成18年度『
現代的教育ニーズ取組受援プログラム(現代CP)」採択
橘i鰍
蕊千葉商科大学
―
―
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―
千葉商科大学
現代 GP 最終年度報告会
『CUC 生涯キャリア教育システム
―小学生から社会人までキャリア発達をめざして―』
プログラム
開会の辞・趣旨説明
挨
拶
千葉商科大学大学キャリア教育センター長
鮎川二郎
千葉商科大学理事長・日本私立大学協会副会長
原田嘉中
基調講演(14 時 10 分~16 時 20 分)
1)低単位学生の学習意欲をキャリア教育の視点からどう高めるか
京都産業大学文化学部
教授
鬼塚哲郎氏
2)高校から大学に期待する教育(1)
都立千早高等学校
副校長
丸山正二郎氏
3)高校から大学に期待する教育(2)
前千葉県柏井高等学校
校長
福田
事業報告(16 時 30 分~17 時 30 分)
1)取組の概要およびキャリア教育プログラム事業報告
研究基礎におけるキャリア教育、インターンシップ、学習支援委員会報告等
2)実践教育プログラム報告
キッズビジネスタウン、キッズ大学、中小企業マネジメントスクール
公民科教員経済セミナー、商店街活性化等
靖氏
目
次
1.CUC 生涯キャリア教育システムの概要
~小学生から社会人までのキャリア発達をめざして~
1
千葉商科大学キャリア教育センター長
鮎川二郎
4
2.キャリア教育プログラム
キャリア教育センター委員会委員(インターンシップ担当)山本恭裕
3.実践教育プログラム
3-1.「第6回キッズビジネスタウンいちかわ」について
7
エクステンション委員会委員(キッズビジネスタウン担当)中澤興起
3-2.「キッズ大学」(小学生対象)
11
エクステンション委員会委員(キッズ大学担当)吉田優治
3-3.中学校・高校社会科公民科教員のための経済サマーセミナー
エクステンション委員会委員長
3-4.中小企業マネジメントスクールと起業スクール
鈴木孝男
15
エクステンション委員会委員長
3-5.江戸川区商店街活性化事業
鈴木孝男
19
エクステンション委員会委員長
鈴木孝男
商経学部教授
毒島龍一
<視察報告>
4.起業教育、商店街活性化に関する英国調査
<資料>
1・2・3 年次サポートファイル
キャリア研究活動ファイル
13
2008 年版
2008 年版
21
エクステンション委員会委員長
鈴木孝男
商経学部教授
毒島龍一
1.CUC 生涯キャリア教育システムの概要
~小学生から社会人までのキャリア発達をめざして~
千葉商科大学キャリア教育センター長
鮎川二郎
1.千葉商科大学の教育プログラム
本学は創立以来 80 年にわたって、
「実学尊重」の教育理念に基づき、社会に開かれた大学として、
学生たちが生きること、学ぶこと、働くことを関係付けながら積極的に考え、社会で力を発揮でき
る専門的職業人の育成をめざして独自の教育プログラムを構築してきた。特に平成 7 年から加藤寛
前学長の下で、教育改革を推進し、会計言語・人工言語(情報)・自然言語(語学)の 3 言語教育を導
入し、社会人として必須の知識を全学生に学ばせる教育に取り組んでいる。また、学生たちの将来
進路にあわせて科目が履修できるように、各学部学科に専門コース制を導入している。本学のこの
ような教育システムは、それ自体が学生に将来進路を切り開かせるツールを与えるものであり、特
色ある実践的なキャリア教育になっている。
最近は大学生に限らず、若者の基礎学力や、職業に対する意識・能力の低下、ニートの増加等が
社会問題となっており、子供から社会人まで各段階に応じたキャリア教育の積極的な取り組みに対
するニーズが高まってきている。ここに本学が産・官・地域との連携・協働で新たな独自の総合的キ
ャリア教育プログラムの開発に取り組む理由がある。
2.CUC 生涯キャリア教育システムの内容
CUC 生涯キャリア教育システムは、産・学・官・地域連帯意識のもと、研究基礎、三言語、専門
コース制、セミナー科目群と相互にリンクしたキャリア教育プログラムとキャリア実践教育プログ
ラムの 2 つのプログラムによる学内外双方向の実践的総合キャリア教育プログラムであり、全学生
一人ひとりのきめ細かな評価システムを導入した独自性の高い教育内容と方法である。
キャリア教育プログ
ラムは、学生の教育を対
象にしたプログラムで、
学生一人ひとりが自ら
のキャリアデザインを
描いて、大学での学習機
会を活用できるように、
4 つの取組から成って
いる。まず(a)全学 1 学
年必修の「研究基礎」に
おいて、CUC のキャリ
ア教育を理解させると
同時に、学部専任教員と
キャリアカウンセラー
とのチームティーチングによって、学生が将来の生き方や大学での学習についてデザインするため
1
の支援から始まる。学生は、それに基づきキャリアアップ講座や専門コース、ゼミナールを将来の
キャリア形成との関連で適切に選択し、自己の専門性を高める方向に進むことができるようになる。
さらに、(b)1 年次から 4 年次までの全学部学生(約6,200人)について、一人ひとりの単位
修得状況、資格取得やキャリア形成の達成状況、就職活動状況等の情報を集約した学生サポートフ
ァイル(カルテ)を作成し、学年と状況に応じた学生一人ひとりのきめ細かなキャリア教育・就職
サポート強化を進めている。平成 19 年度からはキャリアカウンセラーを 2 年・3 年・4 年次のすべ
てのゼミナールにも配置して、よりきめの細かなキャリアサポートを実現している。(c)インターン
シップの充実と(d)基礎学力の強化とを含めたこれらのキャリア教育プログラムによって、学生の
キャリア発達を強力に推し進めていくことができる。
実践教育プログラムは、地域社会の一員としての大学の教育力を、本学卒業生及び地域全体(子
供、住民等)のキャリア発達に役立てる教育プログラムである。キャリア教育の成果を地域の企業・
自治体・NPO などとの連携・協働で、小学生、大学生、社会人まで総合的に展開する4つの事業か
ら成り立っている。これらの事業活動によって学生は、大学で学んだことを「教えることによって
さらに深く学ぶ」という経験を通して、勤労観・職業観や職業倫理を実践的に会得することができ
る。
例えば、(a)キッズビジネスタウンは、「子どもたちが作る子どもたちの街」という理念のもと、
小学生以下の児童・幼児が市民となり、「みなで働き、学び、遊ぶことで、共に協力しながら街を
運営し、社会の仕組みを学ぶ」教育プログラムで、事業の企画から運営までのすべてを学生が中心
になって行い、学生自身のキャリア発達を促すものとなっている。このプログラムは、今後地域小
学校での展開を行っていく。
本学はこれまで、中小企業経営者や高等学校教員を多数輩出している。(b)中小企業マネジメント
スクールや(c)経済セミナーは、これら社会人の生涯キャリア発達を支援する研修プログラムである。
卒業生や現役学生だけでなく、一般に広く受講希望者を募集して地域社会におけるキャリア教育を
行っている。これら研修成果から、学生教育プログラム開発を行っている。
また、(d)商店街活性化事業においても、参加学生たちは、大学での学習内容と社会の課題解決
策との関係を実践活動から理解することができる。
3.評価体制について
この取り組み全体のパフォーマンスについては、学内・学外構成員で組織した「CUC キャリア教
育評価委員会」を設置して評価する。
キャリア教育プログラムについては、キャリア教育センターが、実践教育プログラムは、エクス
テンションオフィスがそれぞれ評価組織の中心となり、
「CUC 教育支援機構」、
「キャリアカウンセ
ラー」、「アカデミックアドバイザー」、「学生」と学外組織代表と連携して評価をまとめている。
評価結果は「学長主宰学部長会」、「教授会」「カリキュラム委員会・教育向上委員会」に報告し、
取り組みの質の向上、プログラムの改善に反映させていく。また、評価結果は学内をはじめ、産・
学・官・地域連携関係機関にも公開していく。
4.CUC 生涯キャリア教育の特徴と独自性
CUC 生涯キャリア教育の特徴は、正課授業における「キャリア教育プログラム」と、正課外授
業の「実践教育プログラム」とが有機的に融合し、大学と地域社会との間での双方向での教育力
2
の授受によって成果を上げている教育システムにある。すなわち、大学でのキャリア教育の成果
が学生のキッズビジネスタウンの企画・運営・小学生に対する指導として実践されている。また、
「中小企業マネジメントスクール」や「経済セミナー」では、受講者への一方的な教育ではなく、
受講者が大学のキャリア教育科目や専門科目の講義で指導することにより、学生教育に直接的かつ
効果的にフィードバックされている。
このように、CUC 生涯キャリア教育は、両プログラムを通して、学生が自己の職業意識と学ぶ
専門分野との関係を理解しながらキャリアデザインし、学業に励み、学んだことと、社会との関係
を理解することができるよう強力に支援すること、さらに、地域社会の一員として、大学の学生だ
けでなく、地域における小学生から社会人までの生涯キャリア教育(発達)の一翼を担って、大学
の果たすべき役割を発揮することをめざしている。このような取り組みは、大学と地域における双
方向の新しい独自性・新規性の高いキャリア教育プログラムである。
本取り組みは、学生の主体的学習意欲の向上、学生教育の質の改善への有効性も高く、地域に対
してもキャリア意識高揚に大きく貢献するもので、教育改革の推進に有効でかつ他大学にも参考に
なるものであると確信している。
3
2.キャリア教育プログラム
キャリア教育センター委員会委員
山本恭裕
(インターンシップ担当)
CUC 生涯キャリア教育システムは、(1)キャリア教育内容の充実および支援体制の強化と(2)
その成果を社会へ還元する実践教育の推進とを連関させ、総合的かつ段階的に行っていくものであ
る。
2006 年度にはキャリア教育プログラムと実践教育プログラムの基盤強化を行った。キャリア教
育プログラムでは、学部・学科のカリキュラムの中に、学生一人ひとりがキャリアデザインを描け
るように支援するプログラムを組み込んでいくために、以下の事柄を実現した。まず入学時から将
来を見据えて目標を持って学ぶために、1 年生の導入教育科目(研究基礎)において、キャリア教
育センターの見学・説明とキャリアカウンセラーによるキャリアデザイン形成のための動機付けの
時間を設けた。1年生は研究基礎の50クラスに分かれ、きめの細かい指導を受けることができた。
2007 年度には 1 年次の導入教育(研究基礎)を通じてのキャリアデザイン教育を徹底した。1
年次の研究基礎を必修通年化することで、少人数の研究基礎の授業において年間 4 回のキャリア教
育を実施することができた。
また、学生のキャリア発達の状況を確認し指導するために、1 年次から 4 年次までのすべての学
生(約 6000 人)にキャリアサポートファイルを作成させている。キャリアサポートファイルは、
学生のキャリアデザインを確認するとともに基礎教育・専門教育・キャリアアップ等の科目履修状
況等を把握するためのものでもある。このファイルを基に、ゼミ指導教員とキャリア教育センター
職員・キャリアカウンセラーが情報の共有を行い、協力して一人ひとりの学生に対して効果的な指
導を推進することが可能となっている。
さらに、2年以上のセミナー科目にキャリアカウンセラーを派遣することで、積極的に低学年か
ら高学年まで一人ひとりにきめ細かく指導・サポートする体制を強化・整備してきた。
実践教育プログラムに繋げるキャリア教育として位置づけられる CUC インターンシップでは、
本学が主体的に開発したマナー講習、PC スキル講習、企業研究等の事前教育において、研修先企
業の方からの講義や企業紹介のウェートを高めるなど内容の充実を図ることができた。インターン
シップの企業研修は夏休みの 2 週間程度であるが。研修期間中に必ず教員による中間面接を行い、
学生の就業状況を確認するとともに企業の要望等を蒐集して改善をしてきている。企業研修終了後
に事後教育として、受入企業の担当者を招いての報告会と全員の研修報告をまとめた報告集を作成
している。このように事前教育、研修、事後教育が有機的につながったプログラムであり、2006
年度は、30 社で延べ 62 名、2007 年度には 27 社で延べ 60 名の学生が、インターンシップ研修を
行った(表 2-1)。
2006 年度、2007 年度には、さらに規模・期間を拡大させ内容を充実させるために、派遣先企業
との研修会や関西地域の先進的なインターンシップ実施大学等のヒアリング調査を行ってきた。こ
れらを踏まえて、2008 年度以降は、さらに企業との綿密な連携を図り、受講学生の拡大とともに、
社会人基礎力を高める課題解決型のインターンシップや長期間のインターンシッププログラムの
開発を企画していく。
4
学生の基礎学力支援では、学習意欲を高めるための GPA 制度の導入を行うとともに既存の SA・
TA 制度、教員のオフィスアワー制度、学生相談室の相談員制度等の活用を図ってきている。2007
年度には、学生の個別学習・履修指導を強化するために、学生の履修実態の調査・分析と指導方法
の開発を行う学生支援委員会を設けた。この委員会においてアカデミックアドバイザーを配置し、
研究基礎教員、教務課職員との連携によって、1 年次学生の学習実態の調査と指導を行うことがで
きた。今後、学生の基礎学力支援のための恒常的組織の強化と支援内容の充実を図っていく。
これらのキャリア教育プログラムの成果を実践教育プログラムと緊密且つ有機的につなげて、さ
らに地域社会への貢献を推し進めていきたいと考えている。
CUC インターンシップのフローチャート
マナー講習
業界
エントリー
PC 講習等
企業
シート作成
研究
研修先面接
研修先マッチング
ガイダンス
事前教育
夏休み(8 月~9 月)
インターンシップ
研修
(2 週間程)
春学期(4 月~7 月)
インターンシップ報告会
社会からの
10 月頃
フィードバック
研修報告書提出
研修学生たちの声
毎年 60 名程度の学生たちが、大学においては学ぶことのできない社会における貴重な体験と「気
づき」を得ている。
z
社員の方々と接することで仕事(製造、製品研究、生産管理、経理)だけでなく、社会人として
のあり方について勉強することができました。自分の強み弱みを再確認することで、自分に足り
ない部分を自覚することもできました。
(缶パーツ製造企業)
z
スーパーマーケットの面白さを知ることができ、また販売において十分な商品知識が必要である
ことがわかりました。(スーパーマーケット)
z
パソコンスキルは社会に出たら絶対必要だといまさらながら気づきました。(不動産業)
z
どんなことでも自分の頭で考えること、考えたことは失敗を恐れず自分に自信を持つことが必要
だと気づきました。
(運送会社)
z
確定申告書の作成等税務業務だけでなく、社労士事務所での実習、行政書士の仕事も体験でき、
将来に向けて視野を広げることができました。
(税理士事務所)
z
社会人になってからの方が「勉強する」ということが必要なこと、社会で働く責任の重さを感じ
ました。(市役所)
5
表 2-1
2006 年度・2007 年度インターンシップ研修企業一覧
2006 年度研修先企業・団体名
研修
人数
2007 年度研修先企業・団体名
研修
人数
㈱ネットクエスト
6
ホテルグリーンタワー千葉
5
㈱千葉興業銀行
6
㈱千葉興業銀行
5
ホテルグリーンタワー千葉
5
㈱ゲイン
5
生活協同組合千葉コープ
3
生活協同組合千葉コープ
4
㈱トレーン
2
市川市役所
4
㈱ヒロハマ
2
アイ・エス・ガステム㈱
3
タカラ食品工業㈱
2
㈱ネットクエスト
2
タイムクリエイト
2
㈱アーバンヒューネスコーポレーション
2
ヨシダ印刷㈱
2
イワツキ㈱
2
㈱就職課
2
㈱スエヒロ
2
太陽ハウス㈱
2
都機工㈱
2
㈱ゲイン
2
タカラ食品工業㈱
2
㈱東京事務光機
2
新光証券㈱
2
東京納品代行㈱
2
㈱トモネットサービス
2
伊澤㈱
2
常住豊税理士・行政書士事務所
2
市川市役所
2
浜野及一郎税理士事務所
2
常住豊税理士・行政書士事務所
2
千葉市役所
1
浜野及一郎税理士事務所
2
富士ゼロックス千葉㈱
1
富士ゼロックス千葉㈱
1
㈱市川ビル
1
リコー販売㈱
1
㈱トレーン
1
㈱スエヒロ
1
東京納品代行㈱
1
都機工㈱
1
ヨシダ印刷㈱
1
㈱市川ビル
1
小泉成器㈱
1
新光証券㈱
1
いちかわケーブルネットワーク㈱
1
㈱トモネットサービス
1
かぶちゃん農園㈱
1
小泉成器㈱
1
コントロールプラス㈱
1
いちかわケーブルネットワーク㈱、
1
学校法人千葉学園
3
㈱文化堂
1
吉川運輸㈱
1
学校法人千葉学園
3
6
3.実践教育プログラム
3-1.「第6回キッズビジネスタウンいちかわ」について
エクステンション委員会委員
中澤
興起
「第6回キッズビジネスタウンいちかわ:以下キッズタウンと称す」は2008年3月8日(土)、
9日(日)に実施される。(原稿を提出した本日は3月6日のため、実施結果の報告でなく、実施
予定として報告する。)
1.キッズタウンの由来
2003年2月から3月にかけて、小学生に商業を教えるために、地域通貨とまちづくり、税金
とまちづくり、ものを売るために考えること、簿記ってなに、子供が作るまちミニさくらの紹介、
をテーマとする「キッズビジネススクール」が実施された。「キッズビジネススクール」を企画す
る中で、「児童が学んだビジネスについて、学習結果を基にして街づくりの実践をさせる」ことが
考えられた。この実践が「第1回キッズタウン」となった。すなわち、「第1回キッズタウン」は
「キッズビジネススクール」の実践を目的とするものであった。
「第1回キッズタウン」は、受付、ハローワークなど公共部門9ブース、うどん、ジュースなど
食品製造販売部門10ブース、はた織り、お手玉作りなど手作業部門7ブース、合計26ブースで
実施した。食品製造販売部門は地元商店街の、手作業部門は市川市登録ボランティア団体の協力を
得たが、第2回目以降はボランティア団体の協力は得るものの、地元商店街の協力はお断りしてい
る。
2.キッズタウンのしくみ
「キッズタウン」は小学生以下の児童・幼児を市民とする街である。参加する児童・幼児は、①
受付で所属学校、学年、氏名を登録し、市民証
をもらう。次ぎに、②ハローワークに行き街の
中にある仕事(後述)を探す。③仕事カードを
受け取り、自分がしたい仕事を好きな時間行っ
た後、④退職する。⑤働いた時間に応じて給料
を得ることができるので、銀行で地域通貨であ
る「リバー」を入手する。⑥更に他の仕事をし
て「リバー」を入手することもできるし、入手
した「リバー」で買い物をすることもできるし、
遊ぶこともできる。
学生はスタッフとして子供達が働く街作り
を行う。
7
3.キッズタウンの目的
本年度の実施で5回目となる「キッズタウン」は、「子どもたちが作る子どもたちの街」という
理念のもとで、「みなで働き、学び、遊ぶことで、共に協力しながら街を運営し、社会の仕組みを
学ぶ」教育プログラムである。
この企画は、参加する子どもたちが①働くことの楽しさや喜び、そして働くことの大切さ、②他
の子供たちと協調すること、相手を思いやる気持ちを育てる、③食べ物や製品などの作り方、その
大切さ、④流通などのビジネスのしくみ、⑤予測不可能な問題への対応などについて、経験を通し
て学ぶことを目的としている。
一方、この企画から運営までのすべてをスタッフとして担当する学生は、このイベントに参加し
事業の運営をする中で、①自らが担当する役割について深く学び、②その役割を担当することによ
り発生する問題解決能力を養う。また、③小学生にビジネスの仕組みや働くことの楽しさなどを教
えることになり、「教えることにより、自らの知識や考え方を育てる」体験をする。
4.第6回キッズタウン
第6回キッズタウンは、①市役所、ハローワークなどの公共部門20ブース、②うどん、問屋な
ど食品製造販売部門24ブース、③木工、紙トンボなどキッズ工房(手作業)部門10ブース、④
商業、パソコンなど学習部門8ブース、⑤ダーツ、射的など遊び場部門12ブース、合計74ブー
スで構成されている。
5.バーコードと無線 LAN
第6回キッズタウンでは市民証と仕事カードにバーコードを、また、無線 LAN を取り入れた。
児童・幼児が就労時と離職時にバーコードを読ませることにより、そのデータを無線 LAN でサー
バーに送るしくみである。これにより給料計算や仕事の管理・統計が自動的に行えるようになった。
また、POSレジスターに代わる仕組みも取り入れ、製造した商品を「問屋」に卸し、「問屋」か
ら「デパート」が仕入れ、販売をする「商品の流通と管理」も目に見えるように考えた。
6.キッズタウンを全国の高校で
昨年度の第5回キッズタウンでは、「高校生企画商品」ブースで千葉県立千葉商業高校と愛知県
立岡崎商業高校の生徒が企画した商品を販売したが、今年度は都立江東商業高校の生徒が、全国の
商業高校で企画製造した商品を販売する予定である。なお、昨年度参加した愛知県立岡崎商業高校
は、本学のキッズタウンの企画・運営方法を全面的に取り入れ、平成19年10月4日に岡崎市内
の小学生を対象に「キッズビジネスタウンおかざき」を実施したが、1日で700人余の児童が参
加するという盛況振りであった。この成功例もあって、今年度は9日の13:00から15:00
に高校でキッズタウンを行うための研修会を企画したが、現在までに北海道から岡山県までの約6
0名の教諭や生徒が参加を希望している。
6.第56キッズタウンの実際
3月15日の報告会には8日、9日に実施した「第6回キッズビジネスタウンいちかわ」の実施
概要を報告する予定である。
8
9
10
3-2.「キッズ大学」(小学生対象)
エクステンション委員会委員
吉
田
優
治
(1)小学生と大学生にとっての「学びの場」として
2002 年秋季からスタートした「キッズ大学」は、2007 年度プログラムで 6 年目をむかえ、地域
における小学生のための新たな「学びの場」として定着しています。この「キッズ大学」の目的は、
第一に「大学の多様な知」を地域の子供たちに提供することを通じて地域社会に貢献すること、第
二に学生が教職員と協力し合い、主体的に各種プログラムを企画したり、講師役を担うことにより
彼らに実践的な「学びの場」を提供することにあります。当初、教職員を中心に企画・実施されて
きた「キッズ大学」は、学生たちの参加により、小学生の受講者ばかりでなく本学学生にとっての
実践的な「学びの場」になり始めたといえましょう。
(2)「キッズ大学」から大学生が学ぶ:学生企画実行委員会、体育会各部
現在、
「キッズ大学」学生企画実行委員会、
「キッズビジネスタウンいちかわ」学生企画実行委員
会、さらには体育会のテニス部や卓球部、少林寺拳法部の学生たちが、各種プログラムの企画・実
施、指導を行い「キッズ大学」を支えています。彼らは、「キッズ大学」の活動を通じて、学生相
互のコミュニケーション、学生代表のリーダーシップ、組織づくり、大学担当事務部門との折衝、
ポスター作成、学内外の講師との交渉、プログラムづくり、プログラム内容の検討、受講者への指
導、予算管理などを学習します。彼らは、ときに挫折したり失敗しますが、そうした経験から何を
学び取るかが重要です。そうした意味で、学生は教室で学ぶことのできないさまざまな経験を「キ
ッズ大学」を通じて学習するのです。
(3)2007 年度「キッズ大学」プログラム
★ 2007 年度「キッズ大学」サマースクール
大学キャンパスツアー(1 年生以上対象):全 1 回
英会話スクール(1~3年生初心者対象):全5回
英会話スクール(4~6 年生初心者対象):全 5 回
人前でスピーチできちゃうぞスクール:全 5 回
お店体験スクール(3~6 年生対象):全 5 回
★ 2007 年度「キッズ大学」ウィンタースクール
大学生と一緒に New Year Concert を運営しよう:全 3 回
英会話スクール(1~3年生初心者対象):全 5 回
英会話スクール(4~6 年生初心者対象):全 5 回
親子で楽しむテニススクール:全 4 回
親子で楽しむ卓球スクール:全 4 回
親子で楽しむ少林寺拳法スクール:全 4 回
キッズビジネスタウンいちかわ事前教室:全 4 回
11
第1回:ビジネスってなに?
第2回
e-ビジネス
第3回
お金は大切です
第4回
バーコードってなに?
ホームページを作ってみよう
おこづかいゲームを楽しもう
キッズタウンとバーコード
(4)「お店体験スクール」
文科省「現代 GP」認定プログラム“キッズ大学”サマースクールの一環として8月下旬「お店
体験」が実施されました。事前準備としてレクチャー及び小岩フラワーロード商店街視察、企画、
準備の後、9月1日(土)店開きをしました。子供たちが考えたお店は「肩たたき屋5分 200 円」
と「恋話(こいわ)レモネード屋一杯 100 円」の2つで、参加者 20 名が2組に分かれて2時間に
わたって呼び込みと接客に取り組みました。利益は「肩たたき屋」一人あたり 600 円、「恋話レモ
ネード屋」一人あたり 160 円でした。反省会では「なぜ売り上げに差がでたか」「もっと集客に工
夫ができなかったか」等が話し合われました。キッズの頑張りを支えたサポート役の本学学生 20
名にとっても大いに勉強になりました。当日はFM江戸川の実況ライブ中継もありました。
(5)「大学生と一緒に New Year Concert を運営しよう」
2008 年 1 月 12 日、学外のミュージシャン 2 組が出演する「New Year Concert2008」を「キッ
ズ大学」学生企画運営委員会の学生たちと「キッズ大学」受講生が一緒に企画運営しました。会場
は 550 名定員の大教室。680 名の応募申込みがあり、当日は超満員の盛況でした。ポスター作成、
コンサート当日の役割分担、コンサート当日の仕事などを体験した学生や小学生は、コンサートづ
くりの難しさ体験するとともに教室では得られない貴重な体験をしました。
(6)これからの「キッズ大学」
2008 年度、スタート 6 年目をむかえる「キッズ大学」が、既存プログラムの見直し、新しい魅
力的なプログラムづくり、教職員・学生委員会・体育会各クラブの役割の見直し、保護者や小学生
からのニーズ把握などを行い、社会にとって意味ある「学びの場」であり続けたいと願っています。
これからも千葉商科大学の「キッズ大学」にご期待ください。
12
3-3.中学校・高校社会科公民科教員のための経済サマーセミナー
エクステンション委員会委員長
鈴木孝男
当セミナーはタイトルの通り、中学・高校の社会科、公民科教員を対象として、経済学分野のた
めの再教育プログラムとして実施するものである。教員免許の関係で、中学・高校の教員の多くは
学生時代に経済学関係の学習が十分でない人が多い。法学部や社会学部関係の出身者は特にその傾
向がある。こうした現場の実態を踏まえて、本学では 2003 年から当セミナーを実施するようにな
った。2007 年度で 5 回目となる。
エクステンション委員会では、本セミナーの講義をもとにした講義録を 2005 年から作成してい
る。この講義録は本セミナーのテキストとして利用しているほか、『経済学のススメ』として商経
学部経済学科の 1 年生の必修科目である「経済と社会」でテキストとしても利用している。
今年度に行われた講義は下記の通りである。
月日
講義テーマ
8/20
ミクロ経済学
山田
マクロ経済学
岡崎哲郎(商経学部)
市場の失敗と政府の役割
内海幸久(商経学部)
財政
栗林
隆(商経学部)
金融
鯉渕
賢(商経学部)
「失われた 10 年」の日本経済
鯉渕
賢(商経学部)
環境経済学
平原隆史(政策情報学部)
資源・エネルギー
内田茂男(政策情報学部)
産業と企業
鈴木孝男(商経学部)
アジア経済
金
欧米経済
朝比奈剛(商経学部)
経済学史
鈴木春二(商経学部)
社会保障
山田
労働問題
周
経済をみるめ、社会をみるめ
島田晴雄(千葉商科大学学長)
SQS 講習会
久保裕也(政策情報学部)
8/21
8/22
8/23
8/24
8/25
講師
13
武(商経学部)
元重(商経学部)
武(商経学部)
燕飛(労働政策研究。研修機構)
今年度の特徴は、島田晴雄新学長に講義を持ってもらったことと、SQS(Shared Questionnaire
System)の講習会を実施したことである。SQS はアンケート集計用のソフトであり、特に学校評
価支援システムでの利用が進んでいるものであり、すでにいくつかの自治体で、導入されている。
本学では公民科教員の免許を取得できるので、このコースの受講学生に対しても、本セミナーの
受講を呼びかけている。今回、本学学生の参加はごく限定的で十分ではなかった。今後の反省材料
にしたい。
今回の受講者数は 89 人で、昨年とほぼ同数であった。これを都県別に見ると、東京都 34 人、千
葉県 23 人、神奈川県・埼玉県がそれぞれ 9 人、茨城県 4 人などとなっており、東京都と千葉県で
64%を占めている。一方香川県、岡山県、山口県など遠隔地からの参加者も見られた。
受講者からのアンケートによると、本セミナーに対する評価はたいへん高いものがある。そのい
くつかを以下に紹介してみる。
*大学側のほとんどボランティアといっても好いこの講座には心より感謝しております。おそら
く、首都圏の大学で1週間にもわたる教員向けの夏期講座をしかも無料で開催しているのは貴
学のみだとおもいます。どうか、今後も継続して開催して頂くようお願い申しあげます。本当
にありがとうございました。
*最先端の経済理論にも触れることができたこと、入門者向けの分かりやすい参考文献をご紹介
頂けたことがとても有り難かったです。また、神に見えざる手など、高校教科書の問題点をご
指摘頂けたこともありがたかったです。暑い中、先生方、スタッフの皆様、本当にありがとう
ございました。
*短時間に分かりやすい講義をありがとうございました。当方の諸事情で、全日程参加できなか
ったのが残念です。来年も伺いたいと思います。いろいろと厳しい事情があるかとは思います
が継続して頂きたくよろしくおねがいします。また、サテライトの活用や、ビデオ等で参加で
きなかった場合でも視聴できるなどがあるとかなりありがたいとおもいます。
8 月 24 日
学長の講義風景
このほか、講義内容やセミナー全体に対する建設的な要望が多く寄せられており、いわゆるクレ
ームはほとんどなかった。このセミナーは現場の教員から強い支持があるものであることを痛感し
ている。
最近文部科学省では、教員の研修に関して積極的に取り組む姿勢を見せており、こうした流れを
踏まえて、このサマーセミナーも今後は新たな分野も含めて一層の充実を図る必要があると思われ
る。
14
3-4.中小企業マネジメントスクールと起業スクール
エクステンション委員会委員長
1
鈴木孝男
はじめに
中小企業マネジメントスクールは 1997 年に開始して以来、これまで 11 年間中小企業経営に関
する実践的な学習の場を提供してきた。そこでは、大学の研究者、企業経営者、金融機関や行政機
関の職員、企業幹部などが参加して、中小企業における経営のあり方に関して積極的な議論を行い、
双方にとって有益な知見を生み出し、それを共有することが追求され、かなりの程度においてその
狙いが実現されてきた。
こうした成果を土台として、平成 19 年度においては現代GPの補助金を利用して、起業スクー
ルを実施した。その際、両者を有機的に関連づけて相乗効果が発揮できるように配慮した。ここで
は中小企業マネジメントスクールと起業スクールの両方について、その概要を報告する。
2
中小企業マネジメントスクール
平成 19 年度の中小企業マネジメントスクールは、
「起業と経営革新」をテーマとして8回の講義
を実施した。その概要は下記の通りである。
月日
タイトル
講義概要
講師
5/12
アイディアを事業に
私自身の起業体験や「たまごっち」というそれまでどこ 株式会社ウィズ
結びつけるコツ~
にもなかった新商品を開発するにあたって苦労したこ 社長 横井昭裕
たまごっちが教えて
と、現在社内で新製品開発をする際に工夫しているこ
くれたこと~
と、経営者として上場を果たしたことへの思い等を中心
に報告する
6/9
株式会社アシス 青年時代に起業して、電気通信工事業を主たる業務とし 株式会社アシス
トの創業と新規 て軌道に乗せ、近年経営革新の一環として開発型の新規 ト
事業創造の経験 事業を立ち上げた
社長
安田健三
から
7/14
考え続けて 50 余 電気工事業として 75 年の歴史を持つ当社は、サンシャ 能田電気工業株
年~電気工事企 インビルの指定業者としてそれなりに安定した事業を 式会社
業が生み出した 行ってきたが、事業のさらなる発展をめざして新製品を 社長
新製品
能田舜二
開発した。其れが省エネ型の内照式広告看板のプリズム
ボードである。新製品開発によって経営改革をはかる当
社の経営について報告する。
9/8
バルーンで起業
~ふくらむ夢と事
昔の風船と言えば、スーパーの売り出しで配ったり、学 株式会社エアロ
校の運動会で飛ばす程度の存在だった。この風船を使っ テック
て人を驚かせたり感動させたりして、もっと面白い事が 社長大曽根康弘
業~
出来ないか、それが私の原点である。風船は丸いと言う
固定観念を取り払い、膨らむものは全てバルーンと考え
るようになってから、様々なイメージが沸いて来た。今
ではコンサートやイベントには無くてはならないアイ
15
テムにまでなって来ている。
* ある物に付加価値を付ける事で競争の無いビジネス
が出来る。
* 固定観念を取り払えば様々なアイデアの実現が可能
になる。
* 大手企業が参入出来ないベンチャー企業の強みを利
用する。
10/13
学生時代に起業 学生時代に 24 歳で起業し、8 年間企業経営を続けてき 株式会社アドマ
して 8 年~成長 た軌跡から、当社の飛躍や変革、ビジネスモデルや組 ス
をめざすアドマ 織などについて述べたい。アドマスの経営を通じて得 社長 小川裕立
スの経営
た経験から、ビジネスや会社経営の考え方、今後の展
開等、思うところをあますことなくお伝えしたい。
11/10
「三方よし」の 当社の経営理念である「喜久屋でよかった!」(いわゆ 株式会社喜久屋
発想から生まれ る「三方よし」)の発想から生まれた、日本で初めての 社長
中畠信一
た「衣類無料保 「クリーニング&衣類の無料保管サービス」である
管 サ ー ビ ス e-closet を紹介し、
「時流」と「経営理念」との融合が、
(e-closet)」
真に価値ある企業活動の原動力になりうることを共に
考察して参りたいと思います。
12/8
クリエイティブ (株)ベイビ-ジェイは、2000 年に音楽関係の仲間 3 人が 有限会社ベイビ
なソリューショ 中心となり起業。墨田区のインキュベーター施設に入 ージェイ
ンビジネス
居し、自治体支援ベンチャーとして 3 年間活動後、独 社長
柳瀬瑞代
立、現在 7 年目に入る会社です。クリエイティブな 6
つのフィールドに専門分野に人材を配置し、オリジナ
ル性の高いコンテンツや、音楽、goods 等を使って企業、
団体のイメージアップのサポートやブランディングの
サポートを行っている。
1/26
IT 分野における
講義では、30 年近くコンピュータメーカにいてなぜ起
有限会社テレド
起業 & 技術志
業を決意したか、どのような変遷をたどってきたか(主
リーム
向による個人起
にデータに関するビジネス、BtoB ビジネスに関与して
社長
業について
経験してきたこと)、起業で成功するということはどう
長谷川徹
いうことか、成功させるポイントは何かなどを中心に、
以下のような話をさせていただく予定です。
講師のうち6人は創業者であり、うち2人は創業後 10 年たっていない若い企業である。また、残
りの 2 人は 2 代目であるが、先代の事業とは違った新しい分野に進出して、いわゆる第 2 創業に踏
み切った経営者である。こうした講師選択をしたのは、企業スクールの受講者にもこの講座を聴い
てもらい、創業者や第二創業を実践した経営者の言葉を直接聞いてもらいたかったからである。
特に第1回のウィズの横井氏は、1996 年に発売以来メガヒットといわれて社会的にも大きな話
題となった「たまごっち」を開発した中心人物であり、彼の商品開発の考え方や事業の進め方は大
16
いに注目されていた。講義においてもユニークな発想法をどうやって育てて商品化に結びつけるか
を中心に話がなされ、興味深い内容となった。
また、10 月に講義を行ったアドマスの小川氏は、本学在学中に起業した人物であり、起業を目
指す学生たちに大きな刺激を与えて欲しいと言うことで講師をお願いした。彼の話は特に現役の学
生たちにとって、たいへん大きな刺激になった。その他に講師についても、それまで例のない分野
での起業であったり、それまで自社が行ってきた事業と大きく異なる新しい分野への挑戦であった
りして、たいへん意欲的な経営者の方々であった。
今回の受講者は 40 人で例年並みであるが、起業スクールの学生たちが参加したときはそれまで
と雰囲気が大きく変わり、講師の話に対して学生たちが積極的に質問している様子が印象的であっ
た。その意味で、今回の狙いはある程度実現できたものと思われる。
3
起業スクール
現代GPの事業として新たに取り組んだのが「起業スクール」である。本学には経営学科の中に
「起業コース」があり、起業に関する知識は専門的に得られることになっている。ただ、このコー
スの選択者で実際に起業を目指して準備している学生は、残念ながらあまりいないようである。担
当者の話を聞いても、学生の態度が積極的とは言えない様子が見受けられるということであった。
そこで、起業を考えている学生に対して、正課とは別に特別コースを設定して、起業に関する知
識を学ばせ、事業計画を書いてもらって実際に起業する所まで指導しようということでこのスクー
ルを設定したのである。講義スケジュールと講義概要は以下の通りである。
月日
テーマ
講義概要
講師
4/28
マーケティング
開業までのマーケティング
畑井佐織
会社名の付け方、商品作りのポイント、価格付け
専任講師
市場調査法など
5/26
開業までの実務
起業形態の選択、開業必需品チェックリスト、人材
千葉商科大学
確保、資金見積もり、法律・規制
会計専門職大
学院客員教授
菊原栄三
6/23
効果的な収支計画
収支計画、財務諸表の仕組み、計画作成
同上
7/28
創業資金の調達先
資金提供についての知識、融資例、資金審査のポイ
国民生活金融
ント
公庫総合支援
部長茂木博夫
9/22
事業計画発表会
優秀計画発表、選定理由と表彰、全体評価
千葉商科大学
教授鈴木孝男
今回は実務的な講義をこの起業スクールで行い、創業経営者の話を「中小企業マネジメントスク
ール」に参加して聞くという「2 本立て」で実施したが、実務編の「起業スクール」では回数が少
ないせいか、かなり密度の濃い内容になっていた。
今回の受講者は全部で 50 人であったが、このうちの 37 人が本学学生であり、特に 1 年生が 19
17
人ということで、こちらの当初の予想と大きく異なっていた。この講座は社会人にも開かれており、
しかも受講料が無料だったので、社会人(特にいわゆる団塊の世代)の参加者が多く集まると予想し
ていた。しかし実際には学生(特に 1 年生)が中心であったことは予想外であり、講義内容が十分理
解できるかどうかが心配された。
この点は受講者の出席状況に現れている。出席者は回を追うごとに減少し、最終回には 12 人程
度になっていた。1 年生に限って出席状況を見ると、1 回目 19 人、2 回目 13 人、3 回目 6 人、4
回目 4 人、最終回 2 人ということで、回を追うごとに出席者が減っていることがわかる。1 年生の
場合、それまで大学の講義を聞いておらず、しかもいきなり専門的な話に入っているので、多少面
食らった可能性がある。この点は今後配慮する必要があることを感じた。
また、事業計画を提出したのは 3 人であった。受講者のレベルが異なっていることについては、
やむを得ないところがある。こうした講座の場合、実際に起業することを考えている人たちに焦点
を当てて講義を進めることにならざるを得ない。それより、受講者の中で事業プランを提出した人
数が最終的に3人であった点は、反省点として検討する必要があるだろう。
事業計画を提出した3人(内 1 人は本学学生)については、9 月はじめに審査委員により審査を
行い、それぞれ奨励賞を授与することにした。彼らの事業計画の発表会を 9 月 22 日に行い、それ
で起業スクールは一応終了した。
その後 10 月に入ってからはアドバイザー(松瀬邦夫氏)の指導により事業立ち上げのための準
備活動に入った。月に 2 回のペースでアドバイザーを中心に会合を重ね、その都度自分たちの準備
状況を報告し合いながらお互いの事業に関して意見や情報を交換した。また、中小企業マネジメン
トスクールの例会にも出席して参加者からコメントや激励のことばをもらうこともあった。
3 人の中の1人が 08 年 1 月に事業を立ち上げて活動を開始した。残りの 2 人のうちの 1 人も具
体的な事業活動に入っている。事業規模や内容はまだ小さく、形になっているとは言い難いが、私
たちとしてはこれらの事業が企業としてしっかりと自立することを期待している。
中小企業マネジメントスクール開講式
起業スクール
18
講義風景
3-5.江戸川区商店街活性化事業
エクステンション委員会委員長
鈴木孝男
商経学部教授
毒島龍一
本学は平成 16 年から江戸川区役所、小岩フラワーロード商店街と連携して、同商店街活性化の
取り組みを続けてきた。特に平成 17 年度から 19 年度までの 3 年間にわたり、いくつかの事業に
おいて学生の力を活性化につなげるという主旨で協力をしてきた。
1
イベントの実施
具体的には、イベントの実施、タウン誌の記事作成や配布、年末売り出しにおける協力等である。
このうちのイベントは、毎年 9 月第 1 土曜日に「恋話物語」というタイトルで行うもので、恋に関
する詩や短歌等を全国から募集し、優秀作品の発表と同時にジャズコンサートを行う、というもの
である。その際学生は、恋に関するちょっとしたゲームを企画し、その場に集まった人たちに参加
してもらう、ということで参加した。会場は商店街のそばにある「カルガモ広場」である。
ちなみに学生たちが企画した内容であるが、1 年目は同数の男女が壇上に上がり、それぞれひも
のはしを持っていて、「恋の天使」に当たる人がそのひもを 1 本だけ残して切ってしまう、という
ものである。こうすると、1 組だけのカップルができあがる、というゲームであった。2 年目は「ラ
ブラブキックターゲット」とよばれるゲームで、2 人一組で 2 人 3 脚の状態になり、結び併せた足
でボールをけってできるだけ点数の高い所を狙うゲームである。3 年目の今年は、「インスピレー
ションゲーム」というもので、ついたてを挟んで 2 つのホワイトボードを用意し、カップルが別れ
てホワイトボードの前に立ち、司会者がいう言葉で連想するものを書いて一致するかどうかで楽し
むものである。
このイベントは年々参加者が増えているようで、カルガモ広場がいっぱいになる状況であった。
事前の準備から当日の進行まで、江戸川区役所の産業振興課を中心とした区役所の方々が全体をコ
ントロールしてくれているので、学生側としては安心して参加できるのが助かるところである。ま
た、商店街側もかなりの人が出て、サポートしてくれる。こうした協力ぶりは、日頃の両者の信頼
関係を表すもので、こうした連携事業を続けるうえでは心強いものがある。
このほかに商店街が行うイベントとして「花壇コンクール」がある。今年は本学が創立 80 周年
であったことから、このイベントにも参加した。このときは本学のブラスバンドにも参加してもら
い、商店街を演奏しながら歩いてもらった。さらに学生がカルガモ広場でリサイクル品の販
売を行った。
19
2
タウン誌の発行
商店街が発行するタウン誌に学生が編集するページを作ってくれたので、そこに学生が企画した
誌面を提供した。具体的には、学生が商店街を歩いていて興味を持った商品や店を選び出し、その
紹介記事を出すというものである。学生の感性でおもしろそうな商品や気になるグッズ等を選定す
るということで、一定の宣伝効果を狙ったものである。また、昨年 5 月に発行した第 2 号では、1500
部を学生たちが商店街の近隣の住宅に個別配達を行って、その反応を確かめる、といおう取り組み
も行った。
第 3 号においては、学生が何軒かの店に入って店主と話をして、店舗経営での苦労話を聞かせて
もらったり、顧客にアピールしたい点などを聞き出す場面もあった。
3
フラワーバザール
今回の当イベントは、昨年任意参加で実施された1回目の反省にもとづき、時期は商店街全体の
イベントが希薄になる 12 月を選び、タイミングもクリスマス直前の週に定めました。当イベント
で扱った商品には、学生から見て人気がありそうな品目に加え、各店舗でこれまで売り出しの際に
よく売れる商品が中心となるように調整しました。また、前回のように個店の想い入れだけで選ん
だ商品を店頭のワゴンでバラバラに安売りせず、商店街内の一角のみに集め提供しました。値段は、
当日、近所のスーパーや安売り広告の様子を見て設定しました。
この結果、午後1時 30 分開始予定前にイベントに気付いた来街者が行列をなし、開始と同時に
ほとんどの商品が売り切れ状態の盛況となりました。これには、商店街と区の皆さんも改めて驚き、
学生は2日間驚嘆の連続となりました。特に、学生には顧客に直接販売する経験をすることができ
たと同時に、商店街のみなさんと連携することの大切さも体験するという大きな収穫がありました。
以下は「フラワーバザール」に参加後学生の声です。みな昨年4月からゼミに参加した2年生です。
○フラワーバザールは、前年度の様子を聞き行えばよかったです。自分たちの案の野菜はよく売れたが、お菓子は
知らぬ間にあり当日はものすごく困りました。そういったことでいろいろな工夫も必要だと思いました。
○(フラワーバザールを)無事に終わらせることができてとりあえずは良かったと感じています。貴重な体験をしました。自分は
今回駄菓子の販売?と、くじの手伝いをさせて頂きました。駄菓子を売っていて最初はほとんど売れませんでした。やはり値
段が高いのと、商品の置き方に問題があるのかと思いました。売り手の人数も逆に多すぎてただ立っているだけ!?みたい
な感じのひともいました。仕方がないとは思いますが。役割を把握していなかった。準備不足が今回のミスにつながったのだ
と思います。前日の集まりにしても集まりが悪すぎでした。
20
4.起業教育、商店街活性化に関する英国調査
1
エクステンション委員会委員長
鈴木孝男
商経学部教授
毒島龍一
はじめに
今回の現代 GP の取り組みにおいては、「キッズビジネスタウン」と「起業教育」、「商店街活性
化」に関して海外調査を計画していた。しかし、キッズビジネスタウンの先進事例であるドイツ・
ミュンヘン市でのイベントがたまたま行われない年であったため、目的を起業教育と商店街活性化
に絞り、調査を行うことにした。
起業教育に関してはアメリカに蓄積があり、商店街活性化に関してはイギリスに一定の実績があ
るので、両方を調査すればよいのであるが、予算上の制約、移動のロスや調査の効率を考慮して、
イギリスで両方の調査を行うことにした。
イギリスの起業教育は、中小企業の振興による経済活性化を目指す同国の政策によって盛んに行
われているが、近年問題になっている移民対策や、障害者の社会参加への支援としての側面もふま
えてかなりの規模で行われているのが実情である。
また、商店街活性化に関しては、TCM(Town Centre Management)の活動が 1990 年代以降
に始められ、実績をあげている。さらに最近ではBID(Business Improvement District)の取
り組みが行われ、全国的な広がりを持っている。
こうした点を考慮して、以下のような調査スケジュールにより調査を行った。
英国における起業教育と商店街活性化に関する調査
月日
2/6
場所
日程表
行動内容
成田発12時 バージンアトランティ 日本出国
ック航空 VS901便
2/7
ロンドン着 15時30分
英国入国
ロンドン市内
午前:ATCMにおいてヒアリング
午後:Wandsworth Boroughで現地調査とヒアリング
2/8
プリマス市
市内中心部の現地視察のあとプリマスシティーセン
ターにてヒアリング
2/9
ロンドン市ノッティングヒル地区
ノッティングヒルのポートベロロードにおける骨董
品の市の視察
2/10
ロンドン市内
ロンドン中心部の商業施設等の視察
2/11
サリー州キングストン
キングストン大学にてヒアリング
2/12
ミルトンキーンズ市内
オープン大学にてヒアリング
2/13
ロンドン発13時
バージンアトランティック航空
VS900便
2/14
成田着 10時
帰国
21
今回の調査により、以下に示すように起業教育と商店街活性化に関して有益な情報や資料を入手
することができた。特に起業教育において、イギリスで取り組まれている起業家育成教育の担当者
から直接話を聞くことができたこと、商店街活性化に関して Plymouth 市において現地を視察しな
がら担当者から話を聞くことができた点は、大きな収穫であった。
今回の調査においては、商経学部教授鈴木孝男、毒島龍一のほかに、エクステンションオフィス
室長金子章一と、江戸川区産業振興課から柴崎和重氏が加わった。本学と江戸川区とは商店街活性
化に関連して 4 年前から連携を行っており、その関係で柴崎氏が参加したのである。
2
起業教育
本調査の主目的は英国における起業教育に関して実情を調べることにある。英国においては、
1980 年代後半に失業問題解決の手段として、起業促進政策がとられたことがあった。さらに 90 年
代に入ると創業後成長力の可能性が高い企業をのばすことで雇用が創出される、という考え方のも
とに、選択的な創業促進政策がとられるようになった。(三井逸友、1999)
研究の領域においては、1990 年代後半以降に起業関係の論文が増加しているという報告がある。
今回の調査で入手した論文:R.Blackburn, D.Smallbone(2007)においては、1996 年の ISBA
(Institute for Small Business Affairs)と 2006 年の ISBE(Institute for Small Business and
Entrepreneurship)で行われた報告をテーマ別に分類し、この間の研究の変化を実証している。そ
れによると、女性起業家に関する報告は、1996 年にはゼロであったものが 2006 年には全報告(200
件)の 10%を占めるようになった。またベンチャーの創業(New Venture Creation)に関する報
告は2%から9%に増加している。
一方、起業教育という観点で見ると、英国は早くから取り組みが行われてきた。具体的には、
Young Enterprise(以下YE)の活動がある。この組織は 1963 年に設立された慈善団体で、小学
校から大学院にいたるまでの起業教育に関するプログラムの提供を中心に活動してきた。2005~
2006 年における実績を見ると、プログラムへの参加者は全部で 324,924 人(前年比 11.6%増)
、生
徒・学生が立ち上げた企業数は 3783 社、Graduate Programme への参加大学は 45 校となってい
る(YEのホームページ http://www.young-enterprise.org.uk/による)
。
大学における起業教育に関しては、十分な資料が手元にないので断定的なことは言えないが、当
初ビジネススクールで行われていた起業教育が、学部学生にも行われるようになってきて、最近で
は盛んに行われるようになっている。
(1)Kingston University における起業教育
起業教育関係で最初に訪問したのは Kingston University である。2 月 11 日午前 10 時から 12
時まで、Kingston University Kingston Hill Campus において、ヒアリングを行った。先方から
は、Small Business Research Centre(SBRC)所長の Robert Blackburn 教授、David Smallbone
教授、Nick Wilson 講師の 3 人が出席した。
Kingston University は 1899 年に創立された大学で、芸術・建築、経営・法、情報、工学、健
康・福祉の5学部からなり、学生数が 22.250 人を擁する大規模な総合大学である。今回の調査は、
同大学の SBRC の協力を得て実現したものである。
最初に SBRC の所長である Blackburn 教授から、Kingston University における起業教育全般
についての説明があった。それによると、同大学では最近、起業教育に加えて起業家教育も盛んに
22
なっているようで、当初はビジネス系学部だけで教えられていたものが、一昨年あたりから全学に
広がりを見せるようになったという。Entrepreneurship Education という場合、3つの意味があ
るという。第 1 は起業に関する一般的な知識を教えるもので、第2が起業家を育てることである。
最近、後者の意味での起業家教育が盛んになってきたということであった。しかし、最近第3の意
味が付け加わった。それは起業家を育てる教員に対する教育である。この点については後で述べる。
さて次に、この起業家教育を実際に行っている Nick Wilson 講師から、具体的な内容に関する説
明があった。まず Kingston University では、実際に学生にビジネスを立ち上げさせる教育を始め
たのはこの3年ほど前からであるという。起業家教育を行うために、 Entrepreneurship &
Management というコースを設定している。このコースで学生は、上述の Young Enterprise とい
う外部組織を利用して実際に起業することができるようになっている。
このコースを選択した学生は、1 年次に起業に関する基礎的知識を学んだ後で、2年次に少人数
のグループを作って起業する場合の事業計画を練り上げ、それを実行に移すことができる。その場
合に、YEのスキームを利用している。この場合、学生たちが作る「企業」はYEの支店(Branch)
という性格を持つ。学生たちは 1 グループあたり 100 ポンドをYEに支払い、それにより事業によ
って生じるであろうリスクを回避したり、ボランティアからのアドバイスを受けたり、Trade fare
(交流見本市のようなもの)に参加して商品の販売をすることができる。
学生たちは起業に必要な資金を自ら調達しなければならない。その場合、集める資金の上限が
1000 ポンドと定められている。この範囲でできるビジネスをしなければならない。また、ここで
結成された「企業」は、1 年立つと強制的に解散させられる。これは、この取り組みがあくまでも
学生の教育を目的としたもので、事業そのものを育てることが目的でないことを明確にするためで
ある。したがって、設立に関する登記は行わない。
事業を更に継続したい学生は、いったん解散した企業を再度立ち上げて、今度は一般の企業とし
て活動することになる。
この活動は大学の講義の一環として行われるので、単位が付与され、成績もつけられる。ただし
成績は事業の業績(売上高や利益)で評価されるのではなく、事業化に至るプロセスやその後の努
力の経過を勘案することになっているようで、事業に失敗してもそのことだけで不合格になるとい
うことはない。
この取り組みは現在全学部の学生が参加できるようになっており、約 500 人の学生が受講してい
るということであった。事業内容は、リスクの大きいもの(例えば飲食物や花火など)や非合法な
ものを除けば特に制約はない。学生たちが実際に行っているビジネスの多くは、いわゆる社会的事
業(Social Enterprise)に属するものー例えば環境、福祉などーが多いということであった。
Kingston University ではロンドン南西部のテムズ川流域にある 8 大学によるコンソーシアムに
参加している。それが West Focus と呼ばれるもので、大学を起点とするビジネスネットワークや
学生の採用、学生の教育などで連携をしている。起業家コースの学生に対しては、事業企画に関す
るコンテストを実施して、賞を出している。
次に、起業家教育の新しい分野である、起業家教育の担当者のための教育システムに関して、
SBRC の David Smallbone 教授より説明があった。起業家教育はそれまでのビジネス系学部やビ
ジネススクールでの教育と違って実践的な内容を含むものであり、実際に事業経験を持たない大学
の教員では適切に指導できないところがある。一方、社会人として実際に起業して成功している人
23
や経験豊富な社会人が教えれば良いかというと、これらの人たちは学生を指導する方法や技術の点
で問題がある場合がある。つまり、起業家を育てる指導者を育成するための講座が必要になるので
ある。Smallbone 教授はこの分野で既に実績があり、その点についての報告であった。
Smallbone 教授は現在、デンマークの学会(IDEA;Danish Entrepreneurship Academy)が始
めた IMEET(International Master in Entrepreneurship Education and Training)に参加して
いる。これは大学院修士課程における起業家教育指導者育成コースである。このコースは 2008 年
3 月からデンマークで行うことになっているもので、起業家を育成する指導者の養成講座として将
来は IMEET を国際資格として確立することを目指している。
この取り組みはイギリスではまだ行われていないが、指導者を教育するシステムを確立すること
が重要であるとの認識が指摘されている。
このほか Kinston University における起業家のためのインキュベーション施設の有無について
尋ねたが、この点についてはかつては存在したが現在は置いていないということであった。ただ、
地域において Enterprise Exchange という組織があり、そこを利用して起業活動を効果的に行う
ことができる、ということであった。
Kingston University でのヒアリング風景
(2)Open University における起業教育
Open University は英国の通信制大学で、本部はロンドン北東約 80Km にある Milton Keynes に
位置し、現在約 20 万人の学生が在籍している。同大学の創立は 1969 年で、芸術・教育・社会福祉、
法律など 8 学部の他にビジネススクールを持っている。このビジネススクールは、英国で最も規模
の大きなビジネススクールということであった。
Open University でのヒアリングは 2 月 12 日に行われ、同大学側からは Colin Gray 教授、
Innovation, Knowledge & Enterprise Centre の Dr. Stephan E. Little、Dean の James Fleck 教
授らが参加した。他に当日たまたま同大学のインキュベーション施設を訪れていた、ALPS
Electric(UK)のMDである Peter Woodland 氏と同じくMDの笹川新一氏らも参加した。
最初に Gray 教授より Open University における起業家教育に関して説明があった。それによる
と 、 同 大 学 で は 学 生 の 目 的 に 応 じ て 580 の コ ー ス を 設 定 し て い る が 、 学 部 生 に 対 す る
Entrepreneurship に関するコースとしては Investigating entrepreneurial opportunities がある。
このコースは3年生で選択することになっており、事業の立ち上げに必要な知識を中心に学ぶこと
になっている。また、MBAにおいて Creativity, innovation and change というコースがあり、企
業内で Innovation を活性化させたり組織内に知識が伝わる仕組みなどをより専門的に学ぶことに
なっている。
24
このうち、学部生のコースには昨年 9 月に 190 人が登録して学んでいる。学生の多くは社会人で
あり、彼らは働きながらそれぞれの目的に応じて学んでいるということであった。このうち、実際
に起業をしているか準備中の学生が 4 分の1強いるそうである。
次にこのキャンパスに隣接している Enterprise Hub についての説明があった。Enterprise Hub
は地域経済の振興を図るために Regional Development Agency が設立したもので、それ自体がイ
ンキュベーション機能を持っている。ただ、Open University との直接的な関係はない。Hub に入
居している企業に対しては様々な支援が行われているほか、既存の企業からのアプローチもある。
我々が訪れたときには、日系企業の ALPS Electric(UK)から 2 人の役員(MD)が来ており、入居
している企業との関係について説明があった。
次に Milton Keynes Enterprise Hub の Director である Chris Dunkley 氏が来て同ハブに関す
るプレゼンテーションを行った。この Hub は起業して間もない早期段階(Early Stage)の企業を
支援する目的で設置されており、ここでは現在 15 社が事業を行っている。サポートの方法として
は、専門家のアドバイス(知的所有権や財務、株式公開などに関して)、メンターによる精神的・
心理的な支援、データベースの利用などである。これらの活動により、対象企業が成長して、早く
この施設を出ていけるように配慮している。この施設にいられる期間は2年間で、それ以上とどま
る場合は通常の料金より高い家賃を払わなければならないことになっている。
Milton Keynes の Hub では高い技術力を持ち、成長が見込まれる企業を支援することを目標と
しており、現在は流通業、デジタルメディア、教育などの分野の企業が入居している。ただ、現在
のところ同施設への学生の入居はないようである。
Open University の学生の多くは何らかの仕事に就いており、普通の大学とは異なるタイプの学
生が中心である。したがって、起業教育においても特別な教育をしているわけではなく、制度や起
業に関する一般的な知識を学ぶだけで良いそうである。この点は Kingston University や他の大学
と異なる点である。
同大学では起業とイノベーションに関する研究や中高年者の起業に関する研究が行われている
が、学生の起業教育や起業支援に関する取り組みはそれほど積極的ではないように思われた。
Open University においては、先方から事前に、日本の大学における起業や社会的企業、千葉商科
大学の起業家教育について説明をして欲しいという要請があったので、鈴木が簡単なプレゼンテー
ションを行った。
Open University でのヒアリング風景
3
商店街活性化
本調査の第 2 の目的は、英国の商店街活性化制度について実情を調べることにある。英国では、
25
衰退する商業地を中心市街地の再生という手法で活性化させるために 1990 年代からタウンセンタ
ーマネジメント(Town Centre Management,以下 TCM と略記)制度が始まり、これを必要とする
各地域でリーダーシップの発揮とさまざまなパートナーシップ(連携)づくりが行われ成功してい
る。また、この制度を英国全体として推進する母体として、ATCM(タウンセンターマネジメント
協会)の存在が見逃せない(たとえば、http://www.atcm.org/、2008 年 2 月 27 日)。さらに、ここ
10 年間で TCM 制度を強化する必要から、米国からビジネス・インプルーブメントディストリクト
(Business Improvement District, 以下 BID)制度も導入されるようになった(たとえば、ATCM
。
内のサイトでは www.ukbids.org2008 年1月 31 日に概略あり)
これらを扱った書籍や研究については、ATCM が創設された後、1990 年代後半になると急速に
増加している。たとえば、中心市街地活性化研究会編(1998 年)では、英国をはじめ中心市街地活性
化の先進国の事例とともに、商店街をはじめとする商業地の活性化と街づくりが不可分な関係にあ
ることが取り上げられている。また原田英生(1999 年)によれば、英国をはじめ欧州の中心市街地活
性化諸制度のルーツが、1980 年代に実施されたアメリカのダウンタウンの商店街をめぐる諸制度
に辿れることも見逃すことができないだろう。
このように、アメリカよりもやや遅れて誕生・発達した英国の TCM と BID という両制度によ
り、商業地をめぐり衰退が顕著な中心市街地の再生に必要な都市機能とメカニズムを詰め込むこと
が可能になった。また、ロンドンのように近隣の地域に同様な中心市街地が入り組んで立地しても、
それぞれの間で棲み分けが働く階層性(hierarchy)という考え方がとられて、ツーリズムの視点か
ら交流人口への配慮が働いている。こうして、英国の各地の中心市街地で商業地の活性化を進める
TCM の数は増大傾向にあり、目下 750 存在する。また、2004 年から本格化した BID を導入した
地域は、すでに 50 を超えている。
最近では、TCM や BID の普及・定着を担うタウンマネージャー(Town Manager,以下 TM)の
年代が若返りを見せており、従来の経験知識を活用した仕組みから若者のキャリア創造の機会とも
なり、欧州を中心に海外での TCM 人材の育成の動きが広がりを見せている。
(1)ATCM の役割について
英国全体の商店街活性化を中心市街地の再生により遂行する機関として、今回最初に訪問したの
が ATCM である。道中、地下鉄「メトロ」の信号機故障で満員の車中に閉じこめられ立ち往生す
る場面もあったが、2月 7 日午前 10 時半から 12 時まで、同機関が置かれたロンドン中心部の建
物の4階会議室でヒアリングを実施した。同機関の会長(Chief Executive)を務める Simon W. Quin
氏が接遇に来られ、TCM 制度の導入により商業地・中心市街地の活性化を図る仕組みについて、
これまでの推移を中心に説明があった。それによると、ATCM は 1993 年に創設された TCM の連
合組織で、上述の ATCM のサイトにもあるように、商店街を中心に行政地区単位で活動を行う TCM
の導入を必要な地域で働きかける。TCM は、ATCM から必要な手法や調整の支援を受けつつ「民
間部門と公共部門がパートナーシップにより、持続的に発展する商業地・中心市街地を創出しうる
協議・調整機関」となる。この 10 年間に ATCM の活動を中心に商店街活性化の動きに注目すると、
基本である政府が TCM の政策を決定し、TCM に民間の参加を義務づける点には変わりがなかっ
た。むしろその大きな変化の一つは、1993 年の創設以来 TCM 制度が厳格化されたことである。
これにより、TCM の導入を可能にする道が広がり、各地域で導入された TCM が商業地・中心市
街地で効力を発揮する仕組みづくりの経験が、他の TCM に生かせるようになった。
26
厳格化したことのもう一つは資金調達の面である。通常、TCM の資金は民間と行政の両方から
調達されるが、10 年前は民間資金があまりなく、参加企業も少なかった。たとえば、当初の民間
参加企業は、マークス&スペンサーズ、ブーツ(日本のマツキヨに相当)、そしてセインズベリ-
くらいであった。現在は、1万社の企業が TCM に資金提供している。翌日に訪問したプリマス市
で、後述する BID 制度がその効果を発揮したのは、そうした参加企業の資金提供のおかげである。
この BID 制度が 1990 年代後半に TCM のために導入されるにあたり、ATCM による政府への積
極的な働きかけがあった。当制度が TCM に加わった理由は、TCM に参加している大型店の参加
インセンティブの後退と安定的な活性化資金の確保難にある。これらの大型店のなかには、TCM
の事業に参加せずにその成果のみを当てにする企業が現れて、活性化資金の負担に不公平性が問わ
れるようになったといういきさつもある。
そこで、ATCM が議会に働きかけ、1999 年にその導入が決定されたのが、BID 制度(規制政策)
であった。但し、この新しい制度には前提条件がある。それは、導入しようとする地域における投
票で、後述するように 50%以上の賛同が必要なことである。したがって、導入決定後もその賛否
や実施に先立つ調整が必要となり、実際に効力を持ったのは、2004 年になってからという経緯が
あった。また、BID 制度の実施前の3年間に、英国内の 22 の市町村で当制度の試作を行い、どの
ような効力があるかの試行が行われた。プリマス市も試行が行われた地域の一つで、現在プリマス
市の TCM 対象地域の企業は、すべて BID 制度に参加している。以上の制度テストの結果にもと
づき、当制度に必要な規制を定めることにした。これにより、BID 制度を導入する自治体は、当該
地域の企業すべての参加を強制させることができるようになった。また、従来主要な資金源であっ
た政府に加えて、大規模な地主も当該地区で3年間にわたり、当事業に加わることになった。現在
までに BID 制度を導入する市町村は、英国内のイングランド地方及びウェールズ地方で併せて 50
存在する。残されたスコットランド地方でも、当制度の導入がごく最近になり決まり、目下6地域
で実施に向けての動きが進行している。さらにまた、こうした BID 制度導入の効果が認められて、
当初は対象外であった工業地区にも導入が検討・実施されるようになっている。
ところで、BID の主な参加者は非公式のパートナーシップ(informal partnership)により加わる。
その中にはボランティアの方の参加企業があり、その数は 100 位になる。ここ 10 年間に新たに誕
生した TCM を合わせると、前述のように全部で 750 の市町村で TCM がイニシアティブをとって
活躍している。企業が参加する活性化事業の規模も拡大している。
ここで、商業地・中心市街地の活性化に関連して、ATCM で伺った TCM と BID のスキルの向
上の働きかけについても触れたい。
ATCM は、ヨーロッパや英国の各都市の TCM を参考にして商業地の活性化に必要な戦略(3つ
のスキル)の開発(TCM では運営面よりも戦略重視)を中心に進めてきた。この3つのスキルとは、
TCM に必要な次のような内容とのことである。
①マネジメント・スキル:ビジネスプランづくり、会計、プレゼンの仕方、会議の進め方などマ
ネジメントができる能力のこと。
②マーケティングスキル:英国にある Chartered Institute of Marketing(CIM)という団体のス
キルを借用してマーケティングができる能力のこと。
③Place Marketing(Development) Skill:モノを販売・提供するプロダクト・マーケティングと
異なり大学では扱えない内容で、立地(Place)を販売・提供するマーケティング能力のこと。
27
このスキルの開発は、さまざまな大学と共同で開発した。当スキルには、プロダクト・マーケテ
ィングに比べ、都市の再生や都市再生の誘発をはじめ地域の開発・活性化などさまざまなコンセプ
トが関係しそれぞれナレッジが必要となる。たとえば、立地に関する整備計画づくり、アクセスの
容易さなど、消費者や来街者だけでなく、企業も対象としたマーケティングが必要になる。また、
当マーケティングの実施の上で最も大事なスキルは、TCM や BID の導入に際し stakeholder の利
害を考慮しつつリーダーシップをとる人材の能力である。
以上のようにして、ATCM が新たに可能にしたことは、TCM や BID に必要な人材のトレーニ
ングである。そして、学術的には Place Marketing の資格を導入したことである。トレーニングは、
ATCM 内の場合もあるし、後援者が提供する場合もある。またトレーニングの内容は、実務(産
業)ベースで行われる。また、トレーニングのコースは、TCM や BID に直接に関連する内容だけ
でなく、メディアなどの専門家がトレーニングするコースも開講している。たとえば、毎年、夏に
2日半のスクールがあり、TCM に係わる人のリフレッシュも行っている。ここでは、各地の TCM
の中のグッドプラックティスを紹介したり、ATCM のアオード(ATCM の資料では3つあり)をとっ
たりした人を招いてその経験を語るということが中心である。また、専門家を招き、TCM のため
にどのような規制をかけたら成功したか、又はどのような効果があったかなどの説明をすることも
ある。
注)タウンマネージャーの数は、ATCM 訪問時、全英に 430 人、ヨーロッパ全体で1千人、北米にダウンタウ
ン・マネージャー1200 人、オーストラリアとニージーランドには 500~600 人のタウンセンター・マネジャ
ーがいるとのことであった。
ATCM にて
Wandsworth 市庁舎にて
(2)プリマス市の TCM と BID について
英国で最も成功した TCM・BID の事例に出会うために、ロンドン中心部から特急電車で3時
間あまりかけ、当市の駅に到着した。待ち合わせのあと、当市で TM を務め商工会議所側の BID
責任者でもある David Draffan 氏の案内で徒歩により、商業地・中心市街地を見学したあと、2月
8日午後 1 時から 4 時まで、当市の TCM に相当するシティ・センター・マネジメント(以下 CCM)
が置かれた市庁舎の7階でヒアリングを実施した。TM の同氏のほかに、CCM の中核である
Plymouth City Centre Company( 以 下 CCC) の 取 締 役 会 議 長 Duncan Currall(Chairman
Plymouth City Centre Company & MD of South West Media Group)、当機関の戦略立案責任者
James Carter( Property manager, Plymouth & South West Co-op)、プリマス市役所側の BID の
28
責任者 Nigel Pitt (Director of Development Plymouth City Council)、そして BID の資産管財人
Patrick Knight (Business Improvement)の5人が出席した。
商業地を徒歩で案内してくれた TM の Draffan 氏の説明によれば、あらましは次のようであった。
人口約 25 万で、中心市街地の東側に大規模な「ドレーク・サーカスショッピングセンター」
(以下
ドレーク SC)が立地する。その広さは核となる2つの大型店(マークス&スペンサーとセインズ
ベリー)を含めて 60,800 ㎡あり、駐車場 1,270 台、そして事業総額 2 億ポンド(およそ 430 億円)
を擁する。中心市街地は、南端を湾に面し、その全体の形は日本の北海道を縮めたようである。市
庁舎はほぼその南端に位置し、中小店が集積する西端からやや登り坂となる同大型ショッピングセ
ンターまでは約 800m離れているとのことであった。また、メインストリートを挟む街区の店舗の
屋根は、坂の段差に合わせるために階段状に並んで造作されていた。当市では、2003 年に BID が
導入され、前日に ATCM で伺っているとおり、国内 22 の BID パイロットプラン都市の一つであ
る。今後 20 年間に中心部への投資は 10 億ポンド(216 億円)以上を見込んでいる。
次に市庁舎の一室で一同席を交えて伺った内容のうち、当市が TCM を導入した理由や背景につ
いては、James Carter 氏が説明してくれた。当市は、英国南西部のなかでは第2の都市であり、
また商業都市・小売業の街で、商業地は 1959-1960 年代に最初に再開発された。ところが 1990 年
代に中心市街地が衰退し、再生が必要になった。市役所が市内の土地のほとんどを所有する状況の
中で、商業地の再生に必要な資金を新たに獲得する必要が発生し、その再生により人口を拡大する
ことが重要な課題になった。そしてこのためには、まず民間企業と共同で、衰退した商業地内にあ
る公共の場の質を改善し、これにより商業地の集客力を向上させて、さらにここへの投資を呼び込
もうと考えたとのことであった。このように、市役所にとり TCM が重要な理由は、民間企業との
連携を図るためであった。それまでは、市役所は民間企業と良好な連携関係を築いてこなかったか
らだ。
そこで、最初に非公式のパートナーシップづくりに着手した。この時に、市役所が商工会議所に
働きかけて一緒にパートナーシップづくりを進めたことが良かった。TM の Draffan 氏(前掲)に
よれば、この時に商工会議所に雇われる形にこのパートナーシップに参加した。この際に、同氏の
身分は公務員で、所属する部署の業務は交通や経済開発、公共サービスを中心とする計画
(planning)である。また、当該部署は、目下、BID に関する事業に当たっている。また、BID も並
行して導入することにより、民間企業との関係が強まった結果、商業地の活性化のために何をやっ
ているかコントロールがとれるようになってきた。また、BID の併用で市役所として良かったこと
は、民間企業の商業経験者が参加してきたことである。たとえば、Draffan 氏(前掲)は小売業の
経験があり、後述する Duncan Currall 氏は民間企業の経験が役に立っている。さらにまた、地元
に取り BID を併用して良かったことは、市役所とは独立した人材(民間企業の商業経験者)が参
加してきたことで、BID による商業地活性化の意義がはっきりしたことにあるとのことであった。
さらに次に、Duncan Currall 氏によれば、BID の再開発手法では、コンパルソリー・パーチェ
シング・オーダー(Compulsory Purchasing Order,強制買上げ方式)が採用された。これは、BID
制度で初めて取り入れられた方式で、投票により BID 制度の導入が決定した地域では、商業地の活
性化に必要な建物や土地の所有権などをそのデベロッパーが強制収用可能となる。すなわち BID 導
入には、関係するすべての stakeholder が投票し(半数以上が)賛成することが前提となる。そして、
BID 導入が決まったら、当該地区ではすべての企業が BID の事業に参加・貢献しなければならない
29
のである。
こうして CCC は、BID 法の規定にしたがい非営利団体として設立された。BID の5年間(期限
付き)にわたるビジネスプランの作成に当たっては、すべての stakeholder の優先事項を洗い出し
たとのことである。当市の BID の stakeholder には、個人(Independent)の小売業者が多い。大型
店のチェーン店を含めると全部で 550 社に及ぶ。この内訳は個人業者が約 300、全国チェーンの大
型店の支店が 200 店ほどである。負担金の配分は、大型店の方が多めになっている。
これらの小売業者が BID に必要な資金を提供する仕組みは、自治体独自の課税方式が採用され
Business Rate と呼ばれ、当該小売業者は、その規模によりいわば「非居住者用課税」ないし「事
業税」(一種の地方税)の形で1%徴収される。また、英国の税制度では、課税対象は、土地の所
有者ではなく利用者であるが、当市の BID の資金源として、商業地の土地所有者が参加している。
この BID の中核となる CCC の取締役会(Board)は 14 名以下と規定で決められ、その構成員には、
市役所の Chief executive 及び議員のトップ、商業者の代表などからなる。また、当取締役会の重
要な2つのポイントは、議長が民間出身者(非役人)であること、そして市役所のトップ2名が参
画していることである。これにより、BID のすべての決定事項が市議会に反映される。
取締役会の下には、TM の Draffan 氏(前掲)がおり BID のすべてを取り仕切っている。さらにそ
の下部では、BID の事業を行うチームが活動しており、必要な資金は市役所が提供している。なお、
取締役会の役割は、ビジネスプランの実施、財政の健全性の監査、そして将来の方向性を戦略的に
決定することにあるとのことであった。さらにまた、取締役会の構成については、議長 Duncan 氏
(前掲)、市側(商工会議所)側の BID 執行責任任者 Draffan 氏(前掲)、市側の BID 開発責任者 Nigel Pit
氏、地主参加・2名、プリマス国立大学・数名(商業地の活性化により学生を引きつける力にもな
るため)、小売業者(ほとんどが全国チェーンの支店長<ブーツ、マークス&スペンサー、ハウスオ
ブ・フレーザー)、金融業者(大手銀行)、港湾所有者(商業地の活性化により港湾地区も活性化する
ため)であった。なお、プリマス大学は、商業地に大学が所有する土地税の納付のほか、年間 5,000
ポンドの資金を BID に提供(投資)している。また、同大学は当市へ大きな雇用創出を行ってい
る。その他には、学生チームが CCC のチームと連携しある特定地域の活動に参加したり、CCC が
大学のマーケティング学科と連携したりしている。
ところで、CCC の役割には、BID に必要な資金調達、そしてイベントや商業地や公共地の管理
あるいは情報発信など CCM を構成する9部門の統括があり、この統括マネージャー職の Draffan
氏(前掲)は CCM の一元的管理という難しい任を負ってきた。同氏によれば、マネジャー職には特
に各部門の専門家を動かすコミュニケーション能力が求められるとのことであった。その統括にあ
たっては、ショッピングセンターの管理手法をモデルとした方式が活用されている。ここで注目さ
れることは TCM を導入した地域の商業地が、ドレーク SC のような巨大なショッピングセンター
と同一レベルないし基準で競争を展開しその結果を評価される点である。たとえば、ショッピング
センターとしては英国で最も評価が高い「ブルーウォーター・ショッピングセンター」であっても、
TCM・BID 制度を導入した商業地を含め評価し直すと 10 位に止まり、他の地域の商業地(タウン
センター)が上位を占めるとのことである。因みに、
「ブルーウォーター・ショッピングセンター」
(開業 1999 年)は、Grevesend 市の郊外に立地し、敷地面積 15,4000 ㎡、駐車場の収容台数 13,300
台、総賃貸面積約 150,000 ㎡、そして営業するテナント数 370 店舗とされる。
さらに、当市では、英国の都市計画について中央政府が地方自治体に示す基本指針として 1996
30
年に制定された PPG(Planning Policy Guidance)の諸規定にしたがい、「シーケンシャルアプロー
チ」を導入した。通常、地方自治体は、最初に PPG の諸規定で謳われた商業地の活性化方針を踏
まえつつ、土地利用のマスタープランの役割を果たすデベロップメントプラン(その種類は自治体
によって異なり、ストラクチャープラン、ローカルプラン、ユニタリーディベロップメントプラン
などの策定あり)と呼ばれる個別計画を策定する。この際に英国では、原則として全ての開発行為
に個別審査による計画許可が必要で、それだけ地方自治体に与えられた裁量が大きいといえる。そ
して、当市で導入された「シーケンシャルアプローチ」の主旨も、都市計画で大規模な商業施設の
立地を選考する際の優先順位は、中心市街地を第一とするという点に置かれている。したがって、
都市の郊外への大型店出店は、原則的に禁止という強い措置がとられた。
BID の事業を具体的に見ると、Draffan(前掲)氏によれば、米国におけるダウンタウンの活性化
と同様に、建物が密集する商業地では、清潔さ(Clean)と安全さ(Safety)が最も重要とのことである。
たとえば、清掃員と清掃車の増強、警察官の増員を行ったり、集客の場として中心市街地にある広
場を活用し、さまざまなイベントを実施したりしている。最も成功したイベントが“Food Festival”
(地元の食材を活用したイベント)で、地元企業 150 社を招き開催された。3日間のイベント期間中
に 10 万人の集客が見られたとのことであった。さらに、商業地の都市環境の整備にも BID として
事業を展開しており、ベンチ、街路灯、道路標識(sign)などが設置された。BID を推進する組織上
で重要なことは、CCC と市役所の事業の関係である。というのは、BID 地区で従来市役所が進め
てきた公共サービスを改善する必要があったからだ。たとえば、BID 導入以前に市が実施してきた
清掃作業を担当したチームに対し、目立つ清掃服の着用を促したり新しい清掃車を投入したりして、
商業地の各商店主がそれとすぐ分かるように配慮した。また、作業チームに清掃トレーニングを課
して、清掃の質の改善も試みられた。この結果、この清掃状態の善し悪しを政府の団体である
ENCAM がモニター(外部評価)すると、BID 地区内の 13 チェックポイントですべて清掃の評価が
改善したとのことであった。現在では、英国で最も清掃が行き届いた街と評されるようになってい
る。
今後の戦略課題について James(前掲)によれば、ドレーク SC が設置されたことにより、来街者
が商業地の東側に集中するようになった点があげられた。これは、個人業者が集まる同市の商業地
の西端に集客力を再生させるために何をしたら良いかという問題でもある。これに対しては、目下
アーバンデザイン会社に依頼をして、集客につながるアイデアを練っている最中で、CCC の BID
の事業として当該西側地区の街路の整備を行うために、2009 年の初めに 200-300 万ポンドの資金
を集め事業の実施が予定されているようだ。
以上について、英国全体に商業地・中心市街地で地元の小売店が目立たず、大型店が中心にある
が、当市ではどうかという質問について、西端の地区には 200 の個人小売店舗が営業中で、その中
にはリーダーになりそうな店(宝石店、食料品店、レストラン、台所用品店、ドールハウス店、イ
ンドアマーケット<小売市場>150 店など)が何軒かあるとのことである。当市は、やはり商業地の
空間が広がり過ぎていることが問題だと強く感じられた。
こうして導入された BID を管理する CCC の規模の変化を見ると、予算規模で導入当初の 1999
年が5万ポンドから 2007 年 320 万ポンドへと約 60 倍に拡大し、従業者規模でも同期間で1人か
ら 80 人へ約 80 倍に増大している(市資料より)。
31
プリマス市内の視察
4
プリマス市庁舎でのヒアリング風景
ロンドン市内の骨董市の見学
今回の調査で見学の対象としたものに、Portobello Road の骨董市がある。ロンドン西部の
Notting hill Gate にある Portobello Road は、毎週土曜日に骨董品の市が立つことで知られてい
る。通常でもある程度の骨董品店が営業しているが、土曜日になるとアーケードを持つ店舗が開か
れ、そこに多数の参加者が店を広げる。一部はテント張りのところや、道路の一部で屋台のように
して店が出ているところもあり、実に多くの店が営業している。
常設でなく仮出店している小さな店で聞いた話によると、出店は関係者の紹介で簡単にできるよ
うになっている。土曜日だけということについては不満を持っている店もあった。また、1 軒あた
りの売り場面積が小さく、1~2 坪程度のものが多かった。この骨董品市では、買い物に来る人も
いるが、自分が持っている品物を売り込みに来る人もいる。まさに市なのである。顧客は一般の消
費者だけでなく、専門の業者も含まれているそうである。
我々が歩いた日(2 月 9 日)には実に多くの人の流れが、地下鉄の Notting hill Gate 駅から
Portobello Road まで続いていたし、道沿いには観光客相手の土産物売りや飲食物を売るものまで
出ていて、たいへんな賑わいであった。これがクリスマス前になると、更に多くの人出になるよう
だ。
今回の調査目的の一つは商店街活性化であるが、この骨董市の例は、日本の商店街でも今後形を
変えれば十分導入が可能なものであるように思われる。イギリスの骨董品(アンティーク)文化に
は長い歴史があり、その積み上げによってこの骨董市が成り立っているのであるが、この文化の内
容を検討してみると、大英帝国の歴史を反映した成熟した生活文化が土台にあると見ることができ
る。したがって、日本でそれを単純にまねしてみても、成果が上がるわけではない。
しかし、最近の日本の状況をみると、生活に必要な物資の普及が進み、人々が商品を購入する場
合に何か特別な価値を持つものを求める傾向が強まっている。したがってこうした骨董品に対する
需要が次第に高まってきていると見ることができる。それは単に西洋アンティークに対する関心だ
けではなく、戦前・戦後に日本で作られた様々な商品(例えば書画や陶磁器、漆器からブリキのお
もちゃ、時計、カメラなどまで)への興味の高まりであり、裾野の広がりが期待できる。
今回の調査や日本の事情を踏まえて、骨董品を扱う市を商店街活性化策のメニューの中に加える
ことが可能であるという認識を持つことができた。
32
ポートベロロードの風景
参照文献
R.Blackburn, D.Smallbone(2007)‘From the Margins to the Mainstream: The Development of
Research on Small Business and Entrepreneurship in the UK’SBRC, Kingston University
三井逸友(1999)「英国の中小企業政策」『駒沢大学経済学論集』第 30 巻第2、3号合併号
中心市街地活性化研究会編(1998 年)「中心市街地活性化戦略」ケイブン出版。
原田英生(1999 年)「ポスト大店法時代のまちづくり-アメリカに学ぶタウン・マネージメント」日
本経済新聞社。
33
1・2・3年 次生サポートファイル
学科
学 籍番号
学年
科 目名
2
3
日共
担 当教 員名
研究基礎
研究 I
研究 I
テーマ研究会
履修なし
1
各項
2008銅 再1振
学生氏名
どさし
限 り言ビ人 してくた
メールアドレス)
Э連絡先(携帯電話番号、
(変更等は報告すること。)
Э進路希望
1.就職を希望する
2.進
大学編入学 ・
学 (大学院 ・
専門学校) 3.就
職を希望しない(理由 :
)
71ヽ
売業、金融、家業など:
Э希望する業種 :(例)卸・
④希望する職種 :(例)事務,営業1販売など
待通口
社風など:
③就職に際して希望する条件:(例)勤務地口
リア教 育 センター (本館 2F)と の コミュニ ケー ション
D―WARE の
登録
無
有
無 ¨
キヤリア教育センターツアーヘ の参加
有
キヤリア教育関連のガイダンスや講義
ラーニングでSPI講座に取り組んだ回数
②学内e―
言語分野
自習問題 言 語分野
非言語分野
自習問題 非 言語分野
最高点 (
最高点 (
最高点 (
最高点 (
ださい。
★ 基礎学力のチェックのために積極的に取り組んでく
回
1 年次
) 点( 4 0 点病点)
) 点( 4 0 点満点)
) 点( 3 0 点満点)
) 点( 3 0 点満点)
最高点(
最高点(
最高点(
最高点(
2年 次
)点
)点
)点
)点
最高点(
最高点 (
最高点(
最高点(
3年 次
)点
)点
)点
)点
アルバイト、サークル、
趣味等を自己PRに1
③学生生活や趣味:勉強、
③所有取得資格名:
①取得合計単位数
1年次春学期
【
単位 】
2年 次春学期
【
単位(累計)】
3年 次春学期
【
単位(累計)】
【1年次秋学期
単位(累計)】
2年 次秋学期
【
単位(累計)】
3年 次秋学期
【
単位(累計)】
テーマを決めよう1
研究 IBIロテニマ研究会での研究テーマ:興味のあること、将来のことなどを考えながら、
①研究基礎口
⑫今後のチャレンジ
※上記の情報 は、ゼミ教 員とキャリア教育センターがキャリア教育 ・
就職支援のために収集じ活用するもので、個人情報保護法に基 づき
当該 目的以外には公表 いたしません。
キヤリア教 育 センター
キャリア研究活動 ファイル 200軒版
学
学 科
籍
番
号
学
生
氏
名
科 目 名
担 当教員氏名
研究 】
研究 m
テー マ研究会
最 隊な し
3
4
自巳分析受検 (1)4月
1
O
求人会社説 明会 ( 3 年 次生対象) ( 3 )
12月 ・1月 ・2月
3
キ ャ リア教育支援及 び就職支援 に関す
る説 明会 ( 1 2 3 ) 5 月
2
O
O
4
陵学年 キャ リア開発進 路形成 講座
(12)5月
2
O
O
5
SPI対 策講座 (1234)5月
4
O
O
◎
6
英語 をキ ャ リア に活 かす には 一職業 に
マ ッチ した資格 ・検 定 ― (1234)5月
3
〇
O
7
8
9
内定決 定者 に よる体験 報告会 ( 3 4 )
5月
エ ン トリー シ ー ト書 き方セ ミナ ー ( 3 )
5月
内
容
2
◎
◎
◎
国家公務員説 明会 (23)12月
1
O
◎
教員説明会 (23)12月
1
〇
◎
◎
東京都特別 区説 明会 (23)12月
1
○
◎
◎
◎
千葉 県警 察本部説 明会 (3)11月
1
◎
2
◎
◎
東京消防庁説明会 (3)11月
1
◎
2
◎
警視庁説 明会 (3)12月
1
◎
国税 専門官説 明会 (3)11月
1
◎
就活応援 セ ミナ ー (3)12月
1
◎
◎
メイ クア ップ講座 (3)12月
2
◎
◎
刑C インター ンシ ップガイ ダ ンス ( 1 2 )
4月
2
O
O
機種研 究講座 (12)12月
2
O
O
学生 ・保護者合 同就 職懇 談会 (商経学
部 3年 次生対象)(3)1月
1
◎
4
③
③
学習進 路計画 づ くり ' 就 職成功 法ガイ ダ
ンス ( 1 2 3 4 ) 6 月
2
O
O
3 年 次 か らの就職 活動成 功 のための 1 ・
2 年 次 か らの過 ご し方講座 ( 1 2 ) 5 月
2
O
O
OB在
2
籍業界研 究会 (34)7月
事
4年
2
行
3 年
進学へ の新たな道 一大学院 ・会計専門踊
Na
2 年
○
容
1年
1
内
施数
実回
4年
3年
1年
キャツア教育センター ツアー (1)4月
事
2 年
施数
実回
1
行
NQ
求人会社説 明会 ( 4 年 次 生 対象) ( 4 )
6月 。7月 ・10月
3
「自己分析 J結 果 の解説会 (受検者対
象)(1)6月
2
女子学生 のた めのキ ャ リア開発 とキ ャ
リアプ ロセ ス ( 1 2 ) 7 月
◎
◎
◎
◎
○
O
O
「
営業基本 ス キル資格認 定講座 」説 明
会 (234)7月
O
◎
◎
セ ンター 内個別企業説明会 (34)2月
CUCキ ャ リアアシ ス ト説 明会 (234)7月
O
◎
◎
就職希望登録 カ ー ドの提 出 (3)
/
O
◎
◎
就職先決 定届 の提出 (4)
/
⑥
⑥
キャ リア教育 セ ンター サポー トノー ト
の交付
/
O
O
◎
◎
◎
◎
VARE)ヘ
テム (D―
学生教育 ・就職支援シス
の登録 随 時
/
O
O
③
◎
◎
キャ リアカ ウ ンセ リングを受 けた回数
/
教員 に よる進 路指導 を受 けた回数
/
O
O
◎
◎
O
O
◎
◎
キ ャ リアデザイ ンフー クシ ョップ
(1234)7月
1
O
営業基本 スキル 資格認 定講座 (234)
8月 。12月
O
エ ン トリー シー ト個別指導 ・模擬面接
指導 ( 3 4 ) 9 月
践業選 択 と戯職 ミスマ ッチ対策講座
(1234)10月
1
O
O
◎
一 般 常識 ・職業適性検査 (123)10月
2
O
O
◎
業界研究会 (34)10月
5
内定未決定学生 ・保護 者合 同就職懇 談
会 (4)10月
適職診 断テ ス ト (23)10月
。2月
◎
1
2
O
◎
日経 ・ビジネ ス講座 (234)11月
2
O
◎
履歴書 の書 き方 (3)10月
1
◎
会社訪 間 の仕 方 (3)11月
】
◎
面接試 験対策 (3)11月
〕
◎
留学生向 け ビジネ スス キル講座 ( 2 3 4 )
11月
3
SPI模 擬試験 (1234)11月
4
O
◎
1∼ 4年 次生サ ポー トファイル の提 出
/
③
学内 e ―ラー ニ ングシステムのS P I 講座 に
取 り組 んだ 回数
/
就職試 験対策 300で る問題集 中講座
/
◎
◎
◎
学生 一 人ひと りのキ ャリアデザイ ン ・学習進路計画づ く
り、就職 成功 まで に役立て る行事 内容ですので、積極的
に参加 して下さい。
< 記 入 上 の 注意 >
※ 「行事 内容 」補 の ( ) 内 の数字 は、対象学年 を表す。
O
◎
◎
O
◎
◎
※ 参加必須 の最重要 な行事には◎印が、また、参加す ることが好 ま
しい行事 には○印がそれぞれ付いています。参加 した行事 につい
ては該 当す る◎又 は①を●に して 自己管理 して下 さい。 も し当該
学年 で参加 出来 なかった場合 は、他の学年で参加 して下 さい。
キヤリア教育センター
橘縣 千葉商科大学
お問い台わせ先
千鷲面科大学 TEL047二
372E4111(代
理)
キヤ リア敦百セ ンター内 キ ヤ リア執南環 内 縄301
mail】
careerecuc.acJp
【
ダイヤJレ
fン 】047口373‐9705 【 FAX1 047口375‐1103 【E‐
川市目分台1丁目3脅1号
千寮R市