JOC 日韓競技力向上 スポーツ交流事業

JFA
エリートプログラム U-14 韓国遠征報告
〜JOC
日韓競技力向上
スポーツ交流事業〜
【報告者】吉武博文
(JFA エリートプログラム U-14 監督/ナショナルトレセンコーチ)
1. はじめに
3. 目標
「JOC 日韓競技力向上スポーツ交流」は U-13 で韓国チームが
来日し、U-14 では日本チームが訪韓する方法で、ここ数年交流
が繰り返されている。その活動の中でゲーム交流のみならず、
合同夕食会や合同社会見学など、いろいろな取り組みが行われ
てきた。
今回は合同練習や合同紅白戦を行った。日韓の歴史や感情、
プレースタイルや育成理念等を考えると 10 年前では考えられな
い活動であろう。ただ言えることは、共に世界へ羽ばたく選手
を育てるために、共に切磋琢磨を繰り返し、共にアジア全体の
レベルアップへ寄与することを念頭に置いた活動に進化してき
ているということであろう。
『楽しさの追求』〜個のレベルアップ〜
2008 年度 JFA エリートプログラムの年間を通してのわれわれス
タッフの夢は「世界に通用する人間」を育てることである。そして、
目標は「
『楽しさの追求』〜個のレベルアップ〜」
。
この目標達成に向け、
(1)知覚を高める、
(2)判断を磨く、
(3)
実行を習慣化するという 3 つを心がけさせながら、具体的に①技
術の追求、②選択肢の追求、③勝負へのこだわりを活動の中で常
に意識させている。
2. 日程・場所
①【技術の追求】
動きながらの技術を発揮することをベースに、ミドルパス&シュー
ト。
②【選択肢の追求】
オン・ザ・ピッチ、オフ・ザ・ピッチともに自らの判断を基に質の
高い行動をすることをベースに、オン・ザ・ピッチでは、サイドの
攻守。
③【勝負へのこだわり】
ゲームのみならずトレーニングにおいても勝つことへの執着心を
ベースに、
「いつでもどこでも」
「切り替え」を楽しむことを、事
あるごとに声かけした。
8 月 21 日〜 27 日/韓国・パジュナショナルトレーニングセンター
プログラム
8 月 21日 韓国・仁川国際空港集合
ミーティング
22日 午前・午後:トレーニング
夜:ミーティング
(グループ発表含む)
23日 午前:トレーニング
午後:vs U -14 韓国代表(0 -1) 35分 2本
夜:ミーティング(ディスカッション含む)
24日 午前:合同トレーニング
午後:合同紅白戦
U -16 韓国代表 vs U -16 ウズベキスタン代表戦観戦
夜:合同夕食会、
ミーティング
25日 午前:トレーニング
午後:vs U -14 韓国代表(0 -1) 35分 2本
夜:ミーティング
26日 午前:vs U -14 韓国代表(1- 2) 25分 3本
午後:合同社会見学(北緯 38度線付近)
夜:ミーティング(個人発表含む)
27日 朝:クロージング
4. 韓国遠征のテーマ
5. 活動内容
(1)トレーニングについて
今回の遠征では、特に「ミドルパス&シュート」にフォーカスし、
トレーニングを行った。キックの技術と同時に「観る・観ておくこと」
が体に染み込んでなく、パスやシュートの意図や狙いがない選手や、
意図や狙いはあり、今「あそこに」フィードすればというタイミング
を分かっていても、確実にパスやシュートできない選手、と段階はい
ろいろであった。
プレッシャーのある中での正確なミドルレンジのフィードははっき
りとした課題として残った。今後も継続的に取り組みたい。
午前:仁川国際空港にて解散後、
帰国
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(2)ミーティングについて
グループ発 表やチーム全 体でのディスカッ
ション、個人の感想発表等、自分の考えや意見
を発言する場面を多く設けたが、選手たちは継
続的に取り組んでいることもあり、具体的かつ
論理的に意思を伝えることができる場面が増え
てきた。
今回行った中でも特に「ゲーム中困ること⇒
その解決策」というテーマでのディカッション
は、教科書やインターネットに掲載されている
言葉ではなく、飾らない自分自身の言葉で意見
が交わされ、90 分間にも及んだが時間の長さ
を感じさせない大変有意義なものであった。
(3)ゲームについて
第 1 戦は「積極的にボールを奪いに行くこと」
については、韓国選手を相手に「気後れしてい
たこと」、
「予測をしていないこと」で、及第点を与えることはでき
なかったが、第 2、3 戦では U-16 ウズベキスタン代表 vsU-16 韓
国代表のゲームを観戦し、ウズベキスタン選手のアプローチや切り
替えの速さ、最後まであきらめない粘り強い守備を見て、これまで
にないほどのプレスとコレクティブな守備を演出できた。しかし、
結果的に 3 連敗で勝利することはできなかったのも事実である。
ペナルティーエリア付近での技術の精度と本当の意味での決定機
(GK と 1 対 1)をつくることできなかったことが理由として挙げら
れる。また、第 2 戦では終了間際に PK を与えるというアウェイで
の洗礼を受けた。海外でのゲーム体験としては有意義であった。す
べてを今後のサッカー生活に生かしてほしい。
(4)合同トレーニング&合同紅白戦
一週間の中日を使って合同練習会を行った。午前中に日本人ス
タッフによるパス&コントロールのボールワーク、8 対 8 + 2 フリー
マン+ 2GK のポゼッション、韓国人スタッフによる 1 対 1 + GK、
2 対 2 + GK を行った。
午後には選手を混合して吉武チームとキム監督チームに分かれて
合同紅白戦を行った。韓国人選手のゴールへ向かう力強さ、日本
人選手の中盤での組み立てを融合し、質の高いゲームとなった。
結果は 2-2 の引き分けで終わったが、日本と韓国の選手たちは足し
て 2 で割るとちょうど良いチームができあがることも再確認できた。
将来、ヨーロッパのリーグ等で同じチームでプレーする日が来るこ
とを秘かに考えながらの楽しいひと時でもあった。
(5)その他
トレーニングやゲームのみならず、14 歳の選手同士の国際交流
は毎回微笑ましく感じている。今回は、韓国料理の代表的なバー
ベキューでの合同夕食会や北緯 38 度線付近の合同社会見学会を
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行った。
特に韓国の人でもなかなか行ったことがないという軍事境界線の
見学は興味深いものであった。過去のものとして 38 度線をまたが
るように朝鮮民主主義人民共和国から掘られたトンネル、現在の姿
として展望台から見える町々、未来につなぐ鉄道駅という意味での
都羅山駅の 3 カ所を合同で見学した。将来サッカーというスポーツ
を通じて世界が平和になる夢が選手の心に少しでも残ればうれしい
限りである。
6. おわりに
韓国遠征直前に日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会
と全国中学校サッカー大会を TSG として視察した。直後の韓国代
表とのトレーニングやゲームであったので、その差が一層私自身の
思いの中に強く残った。ボール保持者への激しいプレッシャー、
ゴー
ルへ向かう正確な技術、ミドルレンジのキックの精度等…。
今回招集した選手たちは昨年度よりアジアへの海外遠征、韓国
との定期戦にて韓国チームとのゲームを数試合経験している。その
中で一度も勝利していないし、点差はさまざまではあるが、大半の
時間をボール保持され、走るスピードで圧倒され、相手の高さに泣
き、ゴール前では何度もボディコンタクトを受けて跳ね飛ばされて
きた。そんな選手たちが、合同練習で韓国選手のボールをスピード
で奪い、フィジカルで跳ね飛ばす場面を体験した。その夜のミーティ
ングで選手自身の口から「スピードや強さでも、昨年より結構やれ
るようになった」、
「俺たちもかなりやるよな!」、
「フィジカル的にか
なり追いついたかも…」、
「相手の速さや強さにも慣れた」
、
「僕たち
は動きながらのショートパスが相手よりうまい」
、
「正確な技術と運
動量で勝負できるかも」などの感想が次々に飛び出した。晩熟な彼
JFA
エリートプログラム U-14 韓国遠征報告
らが身体の成長とともに対等以上にプレーできる日もそう遠くない
と自信を持った証であろう。現実にゲームでは正確なスキルと意図
の共有、そして「意気込み」と「予測」で対等以上に闘えた。選手
たちのこの 1 年間の成長ぶりは「すばらしい」の一言である。しかし、
「結果的に勝てない」、
「2 点以上得点できない」のも事実である。
意気込みと予測だけではどうしても埋まらないパーフェクトな基本
技術にまでは到達していない。また体へ染み込み無意識に実行で
きる域には到達していない。これからはトレーニングの反復のみな
らず、ゲームで何度も何度も良いプレーを繰り返す環境づくりが必
要不可欠であることを強く実感した。
最後に、夏季の締めくくりとしてチームでもいろいろな活動があ
る中、選手を派遣していただき、各チーム関係者には心より感謝し
ています。
GK 報告
【報告者】望月数馬(ナショナルトレセンコーチ)
1. 参加選手
●中村航輔(柏レイソル U-15)
1995 年 2 月 27 日生 166cm /49kg
●岩脇力哉(FC 四日市)
1994 年 3 月 19 日生 181cm / 69kg
2.GK テーマ
4. 成果と課題
トレーニング、練習試合において、高い意識を持って取り組むこ
とができていた。またオフ・ザ・ピッチにおいてもチームの中心と
なり、進んで行動できていた。
4 月の AFC フェスティバルから継続して行ってきているテーマ
「良
い準備」においては、習慣化されつつある。いつ・どこをどのタイ
ミングで観るのか、次のプレーを予測すること、常に良いポジショ
ンをとり続けることができていた。しかし、観て把握した状況を具
体的に味方に伝えること(リスクマネージメント)や予測はあるもの
の的確な判断ができない
(DF 背後へのボール)など、
課題も残った。
今回の遠征の大きなテーマは、
「効果的な攻撃への参加」、
「つか
むか弾くかの判断」
であった。
「効果的な攻撃への参加」
については、
観えている範囲も広く、選択肢も 2 つ 3 つ持っているが、ディスト
リビューション(配球)の場所が適切ではなかったり、パスの質が
低いこともあった。しかし、練習試合の中でもミスを恐れずに積極
的にチャレンジすることにより、日を重ねるごとに改善されてきた。
「つかむか弾くかの判断」については、シュートストップのトレー
ニングから意識させることにより、試合の中でも安全確実に 1 回で
つかめたり、弾くときにはセカンドチャンスを与えない場所にディフ
レクティングすることができていた。
5. 今後の展開
今後としては、効果的な攻撃への参加の質を向上させることと、
「DF とのコミュニケーション&コンビネーション」の強化が必要で
ある。次回の JFA エリートプログラム U-14 キャンプは来年 3 月と、
少し時間が空いてしまうが、選手の動向を追ってみていきたい。
(1)積極的なゴールキーピング
(2)良い準備(観る、予測、ポジショニング)
(3)DF とのコミュニケーション&コンビネーション
(4)効果的な攻撃への参加
(5)つかむか弾くかの判断
3. 試合結果(vsU-14 韓国代表)
【第1戦】0-1(0-1、0-0) 35 分 2 本
GK:
(前半)岩脇力哉 (後半)中村航輔
【第2戦】0-1(0-0、0-1) 35 分× 2
GK:中村航輔
【第3戦】1-2(1-0、0-2、0-0) 25 分× 3
GK:
(1 本目)中村航輔 (2・3 本目)岩脇力哉
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モデル地区
トレセン
訪問記 ①
さいたま市南部地区トレセン
(Jクラブ所属:淀川知治コーチ)
【報告者】眞藤 邦彦(指導者養成ダイレクター)
中央が淀川氏、右端は金子 NTC
秋を感じさせるすがすがしい風の吹く夕暮れ時、吉田靖ユースダ
イレクター、金子隆之ナショナルトレセンコーチ関東担当(NTC)
とともに、与野八王子グラウンドでトレーニングを見学しました。
見学の目的は次の 3 つです。
1. モデルとなる地区トレセンとして JFA コンセプトがうまく発信、
浸透されているか
2. 子どもたちの活動状況およびトレーニング環境はどのようであるか
3. 今後さらに発展させていくための JFA に対する意見や要望等の
ヒアリング
ここで、あらためてモデル地区トレセンの開設目的について考え
てみましょう。これまで、地域指導者のさまざまな活動が、日本の
サッカーの発展に多大な影響を及ぼしてきました。そして、全国の
指導者の力が結集して、世界と闘える状況にまで日本を発展させて
きたのです。FIFA ワールドカップ出場は、育成年代の指導の成果
であると言えるでしょう。しかし、世界と肩を並べ、世界を追い越
すには、これまでと同じやり方では課題が大きすぎます。
モデル地区トレセンは、これまでの地域の活動を否定するもので
なく、さらに高い目標に向かって飛躍するための新たな取り組みの
ひとつなのです。
JFA は育成に関して、個の強化が重要と考え、
「基本」のとらえ
方や考え方を強く発信しようとしています。そのために、公認 A 級
コーチ U-12 の中から JFA のコンセプトを直接的に子どもたちや地
域の指導者に対して働きかけられるコーチを選出し、モデルとなる
地区トレセンを開設しようと考えました。このたび開設できたのは
全国で 6 地区です。もちろん既存の地区トレセンに、モデルとなる
コーチが加わったトレセンを含めています。
今後はさらに拡大していき、将来的には 300 カ所の開設を考え
ています。しかし、その達成を待っていては時間がかかりすぎます。
そこでモデル地区トレセンに集まってきた子どもたちに良い指導を
していき、地域の指導者の方々にはモデル地区トレセンコーチと交
流を持ち、直接見聞を深めていく中で、地域へ JFA の考え方を波及
させていただければと考えています。これまで以上に理解者を確実
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に迅速に増やしていきたいのです。
今回のさいたま市南部地区トレセンで行われている活動が、地域
へ自然に、しかも着実に広がっていくことを期待しています。この
日もトレーニング見学されている方々や、実際にサポートコーチと
して指導に加わっていただいた方々がいたことを非常にうれしく思
います。そういった方々の、ボランティアとしての活動にはただた
だ感謝するばかりです。日本サッカーの発展は、このような地域ボ
ランティアコーチに支えられていることを痛感した 1 日でした。
以下、この日の実際のトレーニングを通じて、さいたま市南部地
区トレセンの普段の活動状況を紹介していきたいと思います。50
名の子どもたちを 25 名ずつの 2 グループに分け、交互に活動を行
い、1 グループが月 2 回トレセンを実施しています。指導者 1 人に
25 名はやや多く感じますが、この日は関東トレセン翌日のために
不参加の選手もおり、19 名の活動でした。1 回の指導は 90 分を目
安にされているそうで、この日もトレーニング終了後、体幹トレー
ニングとストレッチを行い、90 分強で終了しました。子どもたち
の満足そうな表情から、集中力の高い、充実したトレーニングとなっ
ていることがうかがえました。淀川コーチとの信頼関係がなせる業
であると感じました。トレーニングには、浦和レッズの育成年代が
普段使用している公共の人工芝グラウンドを活用しています。月曜
日はレッズの活動が休みのため、全面使用が可能です。用具はビブ
ス、マーカー、コーン、さらにはミニゴールもたくさんあり、内容
のある充実したトレーニングができる状況でした。この日は淀川
コーチを中心に、金子 NTC と県や地区トレセンで活動されている
方々、近くの少年団のコーチがサポートとして加わっており、トレー
ニングがスムーズに流れて、質の高いものとなっていました。淀川
コーチから「サポートコーチがいるお陰で大変助かっている」との
コメントがありました。また見学している方の中には、レッズジュ
ニアユースのスタッフや、近くの少年団、クラブチームの監督さん
もいました。怪我があったとき、レッズのトレーナーによるサポー
トもあったようです。感謝したいと思います。
子どもたちが自らサッカーをやっていると感じつつ、パフォーマ
ンスがみるみる向上していくさまは、淀川コーチとサポートコーチ
の皆さんのお陰だと思います。この地区の少年団やクラブは、ほと
んどが土日の活動のみと聞いています。できれば地域の理解を得て、
トレーニング回数が増やせれば良いと感じました。
さいたま市南部地区トレセン 9月8日
(月)18:30 〜20:00
ウォームアップ(パス10分)
トレーニング 1(パス&コントロール10分)
ワンタッチプレー
コントロール&パス(観るものを増やす)
・ボールに寄る ・良い音をさせろ
・ボールに寄る ・良い音をさせろ ・左右の足 ・左右の足 ・パスした足が一歩
・パスした足が一歩 ・シンクロさせる ・コントロールからパスまでを正確に早く
トレーニング 2(パス&コントロール20分)
ゲーム(5 対5 前後半合わせて 30分強)
コントロール&パス(観るものを増やす)
オフサイドライン
コーチがDF役になったり
コーンゲートの位置を
変える工夫
・ボールに寄る ・良い音をさせろ ・左右の足 ・パスした足が一歩 ・シンクロさせる ・コントロールからパスまでを正確に早く
・守備への意識(前から奪う)
・スペースでシンクロさせる
・選択肢のあるコントロールと関わり
淀川コーチやサポートコーチがプレーヤーとして参加
⇒良いプレーを見せる
⇒ 選手が見よう見まねで判断し良いプレーにつなげる
27
2008 ナショナルトレセン U-12 北海道より
2008 ナショナル
トレセン U-12
ナショナルトレセン
〔10月開催報告〕
【報告者】中山雅雄
(ナショナルトレセンコーチ/ナショナルトレセン U -12 ワーキンググループチーフ)
「サッカーをしよう」
も同様に、オフ・ザ・ボールでのカバーリングやポジショニングを
常に意識することが必要です。このように攻守にわたって常にプレー
に関わり続けることができることを選手に求めていくことが大切で
今年度のナショナルトレセン U-12 のテーマは「サッカーをしよ
す。
う」
です。このテーマはここ 3 年間変わらず掲げています。サッカー
そのような関わりがあるからこそ、ボールを持った選手は多くの
が上手な選手を育てていかなければなりません。サッカーとはゲー
選択肢を持ってプレーすることが可能になります。
「ボールを持っ
ムです。つまりゲームの中できらりと光ることができる選手の育成
たらまず自分で突破!」
、
「必ずボールをコントロールしてからプ
を目指しているのです。トレーニングではうまくできる、キックが
レーしなさい!」
、
「常にワンタッチでプレーしよう!」
、これらの
うまい、フェイント動作がスムーズといったところでその選手の評
指示すべてが選手から選択肢を奪っています。ボールを受ける前に
価が終わるのではなく、ゲームの中で何ができるのか、ゲームで何
状況を把握するために周りを観て、ゴールを奪うための最良の選択
をしているのかをしっかりと指導者は評価しなければなりません。 肢を判断しプレーすることが選手には求められます。もちろんサッ
ゲームでのプレーが良くなるためには、当たり前ですがサッカーを
カーには唯一の正解があるわけではありません。その状況で選手が
たくさんやる必要があるのです。
どのような判断をするかはその選手に委ねられているのです。これ
ナショナルトレセンの 4 日間だけで、劇的に上達することはあり
がサッカーの面白さでもあります。さらに、選択肢を複数持った選
ません。ここでの経験を、日常の練習でどう生かしていくかが大切
手への守備は難しくなります。
「パスするのかドリブルするのか?」
、
です。イベントとしてのトレセンではなく、日々のトレーニングの
「ワンタッチプレーをするのかコントロールするのか?」
、これだけ
流れの一つなのです。したがって、今回のトレセンで取り上げた各
のことを守備者に意識させるだけで随分と相手との駆け引きで有利
トレーニングセッションのテーマがこの年代のすべてではありませ
に立つことができるのです。
ん。これ以外にも多くの課題を克服していかなければなりません。
しかし、各トレーニングで取り上げたテーマはこれまでの世界大会
を中心とした JFA テクニカルスタディグループの報告から導き出さ
れたこの年代の代表的な課題です。この課題の克服に向けて今回の
ナショナルトレセン U-12 では以下のように取り組んでいます。
サッカーの基本には
「テクニック」
「
、判断」
「
、コミュニケーション」
、
「フィットネス」の 4 つの要素があります。これらのすべてを高め
ていく必要があります。この年代はテクニックの獲得に重点を置き
「 プ レ ー に 関 わり、
ながら基本を徹底していくことが大切です。
多 く の 選 択 肢 を持とう」
今回のナショナルトレセンでは、すべてのトレーニングセッショ
ボールに関わるテクニックを向上させることは当然です。それと
ンにおいて、テクニックを基礎的なドリル練習の反復とゲームに
同時に自分自身がボールを持たない状況でプレーに関わることも非
よって獲得させていきます。テクニックの発揮には常に判断の要素
常に大切なことです。U-12 年代からこのような、いわゆるオフ・ザ・
が含まれます。状況に応じて、自らさまざまな判断をしてプレーす
ボールで関わりながらプレーできるようになることが求められま
ることが大切です。また、練習やゲームにおいて常にプレーに関わ
す。ボールを受けるタイミング、サポートの角度、距離、タイミング、 り続けることも大切です。
ゲームでの幅や厚みといったポジショニングを常に意識し、状況に
また、
動きながらの技術の発揮を引き続き求めていきます。そして、
応じて適切にプレーに関わることが大切です。また、守備において
トレーニングのオーガナイズはできるだけシンプルにし、形だけの
基本の徹底
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反復ではなく、トレセンの中でしっかりと数多く反復していきます。
基本はしっかりと教えなければなりません。特に
「ボールに寄る」
、
「パスしたら動く」
、
「周りを観る」といったことやゲームでのポジ
ションのとり方などのプレーの原則や個人戦術についてはナショナ
ルトレセンレベルの選手であれば獲得されていなければならないも
のです。
ゴール前の攻防
4 つのトレーニングセッションがありますが、そのうちの 2 つの
セッションがゴール前での課題です。特にフィニッシュについては
日本が克服すべき大きな課題であり、この年代から特化して取り組
んでいく必要があります。サッカーの目的は得点を奪うことです。
そのことの大切さを十分に理解させゴール前での攻防の質を高める
ことを目指します。
素の部分を満たす
(認めてあげる、違うことも教える)
子どもの感性を大切にして指導することが大切です。1 人で突破
しようとしたり、守備で相手のボールを奪うために飛び込んだりと、
周りの状況に関わらず発揮されるプレーはたくさんあります。そこ
での失敗はまず認めてあげることが必要です。そして、それが正し
くないプレーであることを教えることも大切です。失敗しなければ
うまくなれません。最初から失敗しないように安全な、あるいはス
ケールの小さいプレーだけを志向していたら将来はありません。指
導者のイメージだけで収めるのではなく、選手たちが持っている可
能性を十分に引き出すような指導をしていくことが大切です。
10月開催地域からの報告
10 月に北海道、東北、北信越、東海の 4 地域でナショナルトレ
セン U-12 が開催されました。それぞれの地域からの報告です。 北海道
4 日間を通して選手は少しずつではありましたが変化を見せてく
れました。それは、最終日のウォーミングアップのボールワークが
象徴的な場面であり、タイミングやパスの質など、明らかに向上し
ていました。今回のキャンプでは、選手のみならず地域スタッフの
ナショナルトレセンに対する強い意欲と向上心を感じました。
東北
選手の自立を促すことを今年も地域コーチと確認して進めまし
た。選手は本当に自立してきています。これも日ごろのチームでの
活動、トレセンでの活動によるものであると確信しています。また、
今回は選手がある意味で「子どもらしさ」を表現できるように大人
が接しようと工夫した結果、オープンな雰囲気ができて、レクチャー
の際に積極的に手を挙げて質問する者が多数いました。感心させら
れる雰囲気でした。
域での独自の課題を設定しました。フェイント動作などの基本的な
動きを徹底しました。選手たちは意欲を持って取り組んでくれまし
た。
••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••
各地域が、全体の課題を意識しながらも、同時にそれぞれの地域
での課題を見極め、独自性を出して取り組んでいました。トレーニ
ングの方法は一つではありません。さまざまな方法があり、目の前
の選手たちがより良くなるために何をすべきかを考えて指導してい
くことが大切であると考えています。
12 月には関東、関西、中国、四国、九州の 5 地域で開催されます。
今回実施した地域の反省を生かし、さらに充実したトレセンになる
よう、それぞれのチーフコーチを中心に準備を進めていきます。指
導者講習会も並行して開催されます。ぜひ多くの指導者の皆さんに
参加し観ていただきたいと考えています。
北信越
ハードな 4 日間でしたが、参加選手全員が怪我や病気で休むこと
なく最後まで全力で取り組み、楽しみながら多くのことを学んだと
思います。最終日のゲームは、トレーニング成果が現れた質の高い
ものとなりました。特に幅と厚みを持ったサポート、
ファーストタッ
チの意図、シュートの意識、ボールへの寄り、ボールへのプレッ
シャーと奪いに行く姿勢などの点で質の改善が見られました。
東海
全体的なテーマへの取り組みはもちろん徹底しましたが、東海地
2008 ナショナルトレセン U-12 東北より
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JFA
アカデミー
福島
ⓒ J リーグフォト㈱
男子 【報告者】須藤茂光(JFA アカデミー福島男子 U-15 監督)
アカデミー福島 1 期生相撲実習
JFA アカデミー福島が開校して 3 年目を迎えました。
「JFA プロ
グラム」として語学や論理的コミュニケーションスキルの習得、労
作教育、健康教育、マナー研修とさまざまなプログラムを実施して
います。今回は日本の国技である相撲実習を 2 泊 3 日(10 月 11
日〜 13 日)
の日程で行いました。2 〜 3 人 1 組となり、
武蔵川部屋、
九重部屋、高砂部屋、玉ノ井部屋、貴乃花部屋、千賀ノ浦部屋にお
世話になりました。
夢へ向かう姿
相撲は古事記や日本書紀にも登場するほど歴史が古く、深い伝統
を持っています。それは日本の文化に根付いているものであり、身
近に存在しているものだと思います。そうした格式や伝統に触れる
ことであらためてサッカーはもちろん、自分自身を見直す機会にな
ればという狙いがありました。しかし何よりも相撲(プロ)の世界
に入門し、夢に向かって厳しくも精進する同年代力士の姿を目の当
たりにしたことの方が衝撃だったようです。
「相撲のどこが好きで
すか」
、
「相撲は痛いしきつい。でも親に今までの恩返しをするには
相撲が自分に一番あっている」
。意外な返事が返ってきました。新
弟子としての下働き、親方はもちろん兄弟子からのアドバイスに対
し「はい」という大きな返事、目を見てしっかり聞く姿、そこから
伝わってくる「相撲にすべてをかけている」気迫と覚悟。目指す目
標は違えども、将来プロ選手として活躍する夢を持つアカデミー生
にとっては貴重な体験ができたと思います。 けじめ
実習にあたり相撲協会からいくつかの注意事項がありました。
1. 部屋では師匠の言うことに従うこと。
2. 稽古中は私語を慎むこと
3. あいさつ、返事は元気よく大きな声で、等々
相撲部屋は上下関係が厳しく、何事にも積極的に取り組むことを
確認し送り出しました。緊張しつつ部屋に到着し、声を振り絞って
あいさつ。
「こんにちは。アカデミー福島から来ました。よろしくお願いし
ます」
。
対応してくれたのは、大きな体にパンツ一丁の力士さんでした。
部屋に通されると休憩時間だったせいもあり、おせんべいを食べな
30
がらゴロゴロしてリラックスした雰囲気でした。食事の準備の時間
となり、裸にメイドのエプロンをつけた衣装で笑わせようとしたり、
聞いていた話しと違い少し拍子抜けしたようです。それでも緊張が
抜けず笑顔になれない選手たち。それに戸惑う力士さんたち。なん
ともおかしく映りました。時間が経過し、緊張感もとけるとともに
コミュニケーションがとれるようになりました。一日目が終わり、
二日目の朝稽古。普段の生活ではあんなに仲がよくふざけあってい
る力士さんたちが稽古になると、白い歯を一切見せず、闘志をみな
ぎらせ本気で頭からぶつかりあう姿がありました。
「ごん」鈍い音
が続きます。気後れして立ち上がると一気に壁まで押し出されます。
土俵際にいたアカデミー生たちに緊張が走ります。あの柔和な顔は
消え、空気が一変した二日目。自分たちのトレーニングに取り組む
姿に置き換えてみることができたようです。
強さと優しさ
掃除の仕方、まわしの手入れ、ちゃんこの作り方を嫌な顔を見せ
ずに親切にそして丁寧にいろいろなことを教えてくれました。これ
はアカデミー生だからというよりも、先輩力士、経験のある者は経
験のない者の面倒をよくみるということです。それは稽古において
も同じです。ぶつかり稽古では強い力士は格下の力士に胸をかしま
す。しかしそこには一切の妥協がありません。中途半端に当たれば
容赦なく投げ飛ばされます。また立ち上がりそして胸をかします。
当たる方に目がいきがちですが、胸をかす方も相当きつく感じまし
た。それを延々と繰り返します。自分の体で厳しさを教える姿を見
ていると、本当の強さは優しさにつながることを実感したようです。
どこに行っても基本
サッカーにおける世界基準のトレーニングは、止める、蹴る、運
ぶことを正確に行い、そして走ることです。すなわち基本の徹底で
す。相撲実習で教えていただいたトレーニングは、四股、股割り、
すり足、てっぽうの 4 つです。相撲では伝統的なトレーニングと呼
ばれているものですが、相撲の基本です。これは何百年もの間伝え
られてきた非常に奥深いもので、突き詰めれば正解や方法がないの
ではないかと言われているものです。四股を踏む稽古を全員で行っ
ている光景を見ていました。100 回、200 回、300 回。新弟子(初
心者)はきつそうに踏んでいます。当然息が上がりバランスを崩し
そうになります。しかし兄弟子(熟練者)の四股には無駄な力がな
相撲道という言葉があります。礼に始まり礼に終わるとも言われ
くスーッと足が上がり素人目にも美しく感じられます。数え切れな
いくらい毎日四股を踏んできた賜物だと思います。単純な動作は飽
きてしまいがちですが、単純な動作だからこそ、何か大きな意味を
持っているように感じました。ボールに寄ってコントロールし、素
早くパスする。そしてまたボールを受けるために走る。この単純な
プレーを正確に繰り返す。ストレスを感じずにボールをコントロー
ルできることで余分な力が抜ける。だから次の動作に素早く移れる。
基本の大切さをあらためて知った瞬間でした。
ています。進むべき「道」を親方をはじめ先輩力士から学んでいき
ます。しかし最終的に極めていくことは、教えられた「道」を歩ん
でいくことと同時にその進むべき「道」を自分で見つけ、
信念を持っ
て進んでいくことだと思います。自分の未来がどうなるのか誰にも
分からないし、誰が決めるものでもありません。ただ分かっている
ことは、成功するには自分を信じて日々積み重ねていくしかないと
いうことだけだと思います。そして、自分自身を振り返ったときに
気づかないうちに「道」ができているのだと思います。
最後に(財)日本相撲協会の関係者の皆さま、今回アカデミー生
を快く受け入れてくれた武蔵川部屋、九重部屋、高砂部屋、玉ノ井
部屋、貴乃花部屋、千賀ノ浦部屋の 6 部屋の親方はじめ力士の皆さ
ま、本当にありがとうございました。
「今日、
いい稽古をしたからって明日強くなるわけじゃない。でも、
その稽古は 2 年先、3 年先に必ず報われる。自分を信じてやるしか
ない。大切なのは信念だよ。
」
(九重親方/元横綱千代の富士)
。
女子 【報告者】小林 忍(JFA アカデミー福島女子 GK コーチ)
世界基準の個の育成
先日行われた北京オリンピックでのなでしこジャパン(日本女子
代表)の活躍はすばらしいものでした。残念ながらメダル獲得には
至らなかったものの、日本らしいサッカーを存分に発揮し、世界の
ベスト 4 という快挙を成し遂げたことは大きな成果だったのではな
いでしょうか。しかし、当然これから頂点を目指して乗り越えてい
かなければならない世界とのギャップというものもあります。
2015 年には世界のトップ 5 として『世界のなでしこ』となるため
には、今後もさらに育成年代の強化を進めていかなければなりませ
ん。アカデミーでは現在中 1、高 1、高 3 の 3 名の GK が所属して
いますが、寄宿制による 6 年間の一貫指導を通じて日々『世界基準
の個』の育成に取り組んでいます。
U-14 しつけ 〜 Build Up 〜
入寮してからの 2 年間でまず行うことは基本的生活習慣の徹底で
す。なぜならば、まずこの土台なくしてサッカー選手としての成功
は期待できないと考えているからです。ルールを守る、自分を知る、
和を尊ぶ、マナーを身につける、感謝、尊重、責任等々を集団生活
において理解させます。会津藩校日新館の『什の掟』にあるように、
理屈はどうであれ『ならぬことはならぬ』という精神をこの時期に
徹底的に教育する必要があると感じています。トレーニングにおい
てはサッカー選手としてのスキルアップに時間をかけます。GK で
ある前にサッカー選手です。動きながらのテクニック、動きの習慣
化、状況把握をした上での判断など、フィールドプレーのトレーニ
ングに時間を費やします。GK トレーニングにおいては基本技術・
戦術を中心に正確性を重視しながら動きの繰り返しで習慣化させて
いきます。幅広く多様な動きができるためのコーディネーション能
力の向上、両手左右差なく扱うことのできるボール感覚、ボールの
落下点を素早く把握する空間認知力を遊びの中で養うことも必要不
可欠となります。この年代はゲームを行うと多くの課題が抽出され
ますが、焦って前へ急いでも仕方ありません。後の歪みにつながら
ないようじっくりと我慢して将来の基礎を組み立てていくことが大
切です。
U-16 実践 〜 Vital Area 〜
積極的なトライ&エラーで学ぶ年代です。この時期までには基本的
な知識や動作は一通り習得しているので、それらを M-T-M を通じ
ていかに実戦状況で発揮できるかどうかを求めていきます。そこで
大切なのは “なぜ” そのプレーを選択したのかということです。意
図を持った判断からのプレーであれば必ず次につながりますし、判
断する上での判断材料をより多く持つことが必要となります。情報
収集力を高めてより多くの選択肢を持つことをこの年代で追求して
いきます。また、この年代は時としてゴールを守るための手段ばか
りが先行してしまい、本質である「ゴールを守る」ことが薄れてし
まうことがあります。技術・戦術論が頭の中で多少整理されている
分、理屈ばかり述べて簡単にゴールさせてしまうケースが見られて
きます。ピンチをつくらないためのコーチングも非常に重要ですが、
自身の予測と良い準備をし続けることが最も重要です。GK の最大
の役割は「ゴールを守る」という責任があることを GK 自身が忘れ
てはいけません。
U-18 勝負 〜 Finish 〜
育成年代最終章です。ミスの許されない大人のサッカーへの入り
口です。自己への挑戦、世界への挑戦という意味でも強いリーダー
シップを発揮していかなければなりません。自分を理解し他人をも
理解できる存在感です。また、あらゆる面においての自立が求めら
れます。自律なくして自立はありません。常に客観的な観点から自
分を戒め、エリート意識を持ち続ける気持ちが大切です。
トレーニングでは状況の変化に応じた課題解決能力を向上させて
いきます。ゲーム中で起きている課題を 90 分の中で解決していか
なければなりません。ただ、やみくもに同じことの繰り返しをして
も相手の状況は変化しません。相手の状況の変化を感じ取り、こち
ら側が積極的に変化を起こしていく柔軟な対応力と分析力が求めら
れます。
この年代では勝負にこだわったより複雑で、よりスピーディーな
ゲームとなってきます。そのようなプレッシャーのかかる状況下で
自分の個性を十分に発揮しなければなりません。そのためには日々
のトレーニング一つ一つを注意深く行うこととたゆまぬ努力の他あ
りません。失敗を恐れない勇気と楽しむ笑顔から成功が生まれてく
るものだと考えています。
U-14 までに身につけた技術・戦術の反復を継続的に行いながら
31
各地のユース育成の取り組み
北海道、中国地域
の活動から
▼
日本サッカーの強化・発展を目的とし、
個を高めていくことを目標とする「トレ
セン活動」とリーグ戦の創出。
ナショナルトレセンをはじめ、全国各地
でさまざまな形のトレセン活動やリーグ
戦の取り組みが行われています。
今号では、北海道と中国地域の取り組み
をご紹介します。
北海道
トレセンリーグの取り組み
【報告者】吉田 誠(道東ブロックユースダイレクター)
道東 U-16トレセンリーグ
北海道ではこれまで各地区単位でトレセン活動を行い、7 月に一
堂に会して対抗戦を行ってきた。2006 年より U-16 国体が地区選
抜チームからブロック選抜チームに移行し、道東は帯広、釧路、根室、
網走の 4 地区を統合し、道東ブロックとしてチームを編成すること
になった。それによって 2006 年 4 月よりブロック単位で選手選考
を兼ねたリーグ戦を始めることにした。
基本的には各地区でトレセンを行い、地区選抜を編成して対抗戦
形式で 6 月、10 月にそれぞれ 1 泊 2 日の日程で行っている。3 年
目を迎え、内容については選手の強化とスタッフの交流を目的に、
毎年話し合いを繰り返しながら実施している。将来的には他地区、
他府県との合同開催や北海道外、国外遠征なども視野に入れながら
強化を図りたいと考えている。
例)2008年10月4、5日 U-15 足寄
1日目
対抗戦 リーグ
(帯広、釧路、網走、根室)
選手向けレクチャー
山崎茂雄(JFAナショナルトレセンコーチ)
横田秀樹(道東技術担当)
スタッフ向けレクチャー&ミーティング
・選手評価を行い、地区の枠を超えたチームを編成する。
(仮称A、B、C、D)
・再編成チームの担当者割り振り
(監督、
コーチ等)
・翌日のゲームコンセプトの確認
2日目
チームコンセプトトレーニング
対抗戦(仮称A、B、C、D)
スタッフミーティング
・選手選考(次年度北海道国体を視野に入れた選考)
32
11 月から 4 月までグラウンドを使えない、寒さ、常時 100km 以
上の移動距離、地区のレベル差、所属チームとの連携などを考える
と課題も山積みである。
当面は目的である選手強化の観点から柔軟な姿勢で定期戦を設
け、同年代の有力チームの単独参加を認めたり、選手の参加に難色
を示していたチームの指導者にチームともども参加してもらったり
と、積極的に交流しながらこの活動を活発化させていきたいと考え
ている。また、冬場も 5 人制のトレセンマッチを釧路、網走の両ドー
ムで実施し、空白期間をつくらない工夫や移動距離を最小限にする
試合日程の調整などを行い、継続的な活動にしたいと考えている。
道東ブロックトレセン
(3 種)
北海道の広域性を考慮して、3 種では早くから 5 ブロック化を推
進し、2004 年より網走、帯広、釧路の 3 地区(2007 年より根室
協会が加わり 4 地区)の道東ブロックトレセンを開催している。
帯広、網走地区は数多くの天然芝を保有し、恵まれた施設を活用
して各地区より選考された U-13・14 トレセン選手の強化と北海道
トレセンへの選考を兼ねて行っている。ここには北海道と各地区ト
レセンスタッフが集まり、道東の「選手強化の方向性」
、
「リーグ戦
の整備」など、情報共有や情報発信の場となっている。春秋のトレ
セン交流会を含め、2007 年より U-13・14 道東トレセンリーグに
発展している。
現在、道東育成会議など 3 種委員会と連携してスケジュール調整
を行い、2009 年からクラブユース予選と各地区中体連の同日開催
や道東カブスリーグと各地区 3 種リーグの土曜開催、5 〜 10 月に
月 1 回のトレセンリーグの日曜開催を計画している(4 地区を合わ
せると関東より広い面積を持つ道東の広域性と− 30℃になる地域
を持つ冬季間の活動が大きな課題であるが、鍛えられたフットワー
クで乗り越えていきたい)
。
道東育成会議とリーグ戦実行委員会
道東では 2007 年より 4 種から 2 種までの各地区の各種別委員長、
技術委員長、道東トレセンスタッフで育成会議を実施している。北
海道 U-16 国体、8 人制北海道 U-15 の報告より道東としての課題
を抽出し、意見交換を行い縦の関係を理解し合った。また、4 種か
ら 2 種のリーグ戦の工夫や 4 種における各種大会 8 人制化導入など、
各地区の横のつながりを意識して話し合うことができた。前向きで
情熱的な指導者が多く、早速今年度より各地区で既に行っている活
動の見直しや新たな道東ブロックとしての活動が見られた。10 月
には次年度に向け、12 月に行われる育成会議の原案作り会議とも
いうべく
「道東リーグ戦実行委員会」
を開催した。そこでは北海道 2・
3 種リーグの道東としての意見集約と道東リーグ構築について各地
区 2・3 種・技術・審判委員長の参加の下、活発な意見交換が行わ
れた。その内容を受けて育成会議では次年度のカレンダー作りや道
東の課題について話し合う予定である。
「やれそうな良いことをやっ
てみる」という発想で今後も課題と向き合いながらより良い方法を
模索し、道東らしい進化を目指していきたいと思う。そして 5 年後、
10 年後、30 年後の絵を皆で描きながら発展的な会議を続けていき
たいと考えている。
中国
2009 中国地域 U-15
〜 JFA プログレスリーグ(U-15)2009
【報告者】 香川清司(広島県 FA ユースダイレクター)
「JFA プログレスリーグ(U-15)2009」展開のための準備会議は
辻野氏(山口県 FA ユースダイレクター)
、上野氏(島根県 FA 技術
委員長)を中心に重ねられ、交通網のハンディキャップや学校行事・
大会行事に伴う日程確保の困難さ等、数々の課題を解消できるよう
に取り組みながら、来年 1 月から実施の運びに至っている。同時に
高円宮杯全日本ユース(U-15)選手権への予選方法や各県リーグか
らの入れ替え等の検討も具体的になされている。
このリーグが動き出すことによって各県 FA の U-15 リーグの活
性化も必然となり、さらに充実していくことだろう。立ち上げに関
しては、プリンスリーグ U-18 中国の前例がいろいろな面で参考と
されている。山成・眞藤元 2 種委員長を中心に関東、関西に続いて
プレリーグを立ち上げ、沖本現委員長が充実・発展を念頭に継続さ
せてきているからこそ、スムーズな展開が可能になっている。その
結果、サンフレッチェ広島ユースを核として、毎年中国地域のいず
れかの県が全国ベスト 8 以上を確保しており、サンフレッチェおよ
び NTC 中国地域担当と中国地域各県の円滑な取り組みの共有が好
効果をもたらしていると感じている。
しかし、ユース育成に関して国内の先進地域と比較すると、遅れ
つつある状況の影響が次第に現れてきている。このプログレスリー
グの発展と各 FA で登録したできるだけ多くの選手が参加できる
U-15 リーグの発展がカンフル剤となりうるよう、取り組みを充実
させなければならない。前記の通り、現在 2 種年代で、ある程度の
成果が出てきているのは「30 年前からの諸先輩方のユース育成・
強化の取り組みが結果となって現れてきているのだ」と認識し、
「取
り組めど取り組めど成果の見えない」と言われるような中国地域に
立ち戻ることなく、地域の特色を生かした取り組みが国内各地で推
進されている中、中国地域が「地域サッカーの発信拠点」となりう
るよう模索していく必要性を共有できればと思う。強化・レベルアッ
プのためには普及・育成が大切であるという大前提に立ち、地域に
根ざした取り組みを着実に進めていくことを毎夏定例開催の技術委
員長・ユースダイレクター(YD)会議では確認している。
GK プロジェクトでは、加藤・阿江両氏(NTC)を中心に各県の 2、
3、4 種の GK 主担当コーチが自費負担もいとわず、研修を深める
ための機会が定例化しつつある。中国トレセンリーグ(以下 TCL)
開催日に赴いての GK クリニックが組み込まれているなど組織化が
進められ、さらなる充実・深化が期待できる。また、U-17 キャン
プは出合氏(広島県 FA 技術委員)を中心に JFA U-17 地域対抗戦
へつなぐべく、2008 年度は中国地域で 2 回の事前キャンプを実施
したり、中国 TCL U-16 も実情に合わせて改善しながら実施し続け
ている。特に実施形態は、現場の実情に合わせてその都度、毎年変
更してきている。その結果、連絡調整も遅れがちになり、各県の運
営主担当者〔塚越氏・妹尾氏(岡山)竹田氏(山口)内藤氏・広田
氏(島根)小椋氏・邨上氏(鳥取)出合氏(前出)ら〕には迷惑の
かけっぱなしとなっている。しかし、実施してみると毎回どの会場
も選手・指導者の情熱から充実したものとなっているため、継続す
る意義を毎回再認識しており、中国地域のレベルの維持向上のため
には必要な企画であると感じている。1 年次はサンフレッチェ練習
本拠地の広島県吉田での集中開催。2 年次、交通の便を配慮して東
西開催(試合数を確保し U-15 の選手が多く集まれるようにし、サ
ンフレッチェと広島県を東西に隔年配置する)
、それでも開催がま
まならず、3 年次 2 県開催(当該県で対戦日程、会場とも調整・1
県休み)で実施している。今後、国体予選と絡めることの模索や、
TC マッチデーの中国地域での決定を推進していくことなどに取り
組みながら、各県の理解を得、参加意識の高揚を推進したいと考え
ている。その他には、岡山ユースリーグでは青山氏(岡山 FA 技術
委員長)の構想からスムーズな発進を見せ、本年度より由良氏を
YD に据えてさらなる発展を目指している。中国 TCL の岡山県開催
日には 2、3、4 種の TC 担当指導者が 40 人以上集合し、盛況な研
修になっている。島根県ユースリーグは上野氏を核に 3 種リーグは
独自の展開を進めており、リーグのレベルを高円宮杯県予選のトー
ナメントシード(天皇杯方式)に導入されるそうである。2 種も内
藤氏(2 種技術委員長)が推進しているが、交通網の困難さに加え
て横長の県の地形および冬季の降雪等をいかに解決していくか課題
が山積みの様子である。鳥取県も同様の課題があるが、
小椋氏(YD)
の調整で邨上氏(2 種技術委員長)
、岡本氏(3 種技術委員長)らが
TCL の継続およびリーグ戦の展開に尽力されている。山口県は審判
活動の充実やトレセン活動などの組織化は、早くから推進しており、
小野剛 JFA 技術委員長のもと辻野氏を含め、2、3 種の指導者が一
体となって、取り組みを充実させている。
33
ボールを中心とした守備
【報告者】川村元雄
(ナショナルトレセンコーチ)
ゴール前の守備
第14回
ⓒ J リーグフォト㈱
はじめに
私が大塚製薬の U-14 年代を指導していたときのトレーニングを
ご紹介します。当時は選手数も少なく、公式戦のない年代だったた
め、練習試合やフェスティバルでの課題から、いかに選手自身が判
断し、狙いをもったプレーを意識しながら、選手自身に自信を持た
せることができるかを考えていました。
守備での良い準備、コンパクトな守備、守備のバランス、チャレ
ンジ&カバーなどを、ボールを中心とした守備の中で意識してきま
した。
ルール
・コーチからサーバーへ配球して開始
・DF は奪って攻撃のフィードをするまで行う
トレーニング 1 2 対 2+1サーバー+1GK
30m
狙い
● FW のアクションで生じるギャップやスペースを消し、
スルーパスをチャレンジ&カバーで守る。
1 対 1 が 2カ所という単体ではなく、GK を含む 3人で
意図して守備をする。
●ゲーム時に自信を持ってコミュニケーションがとれるよ
うに、トレーニングの中で理解を深める。
GK
16.5m
C
16.5m
サーバー
34
トレーニング 2 2 対 3+1GK
ルール
※トレーニング 1 の発展型
※サーバーが攻撃に加わることができる。
30m
狙い
●数的不利の状況の下、いかに狙いを持って相手の攻撃
を阻止するのか。シュートコースを、またはラストパスを
どう消していくのかを意図する。
●ボール状況を判断する中で、ファーストディフェンダーを
決定し、チャレンジ&カバーを意識する。
GK
16.5m
C
16.5m
サーバー
トレーニング 3 3 対 4+2GK
ルール
・コーチから配球して開始
・数的優位な方が枠を外したら、反対側が数的優位な人
数で出てきて行う、などのオプションを選手の状況によ
り、入れていく(グループとして連続したトレーニングが
行えるようにする)。
40m
GK
C
52.5m
狙い
●数的、またはボールの状況からグループで判断し、奪っ
て攻撃につなげられる守備を意図する。とはいっても、
数的不利な状況の中、どうやって相手の攻撃を遅らせ
ることができるのか?
●正しいポジショニング、粘り強い守備、意図してギャップ、
スペースを消す。
●ゲーム形式の中での攻守の切り替え。
●グループとして、連続した、集中した意識の中でのトレー
ニングを意図させたい。
GK
最後に
自分自身の現役時代は、スライディングやクリアで終わっていた
守備でしたが、指導する選手には、守備から攻撃、攻撃から守備の
切り替えの中で、技術を発揮できるようになってほしいと思ってい
ます。
U-14 年代の守備では、当然のように正しいポジショニング、オ
フでの準備も求められるため、ゲームの要素が含まれるトレーニン
グの中で、選手の判断、選手のオフの部分をも観察できる指導者で
ありたいと思います。
35
JFAの
海外戦略
アジア全体のレベルアップが日本の成功につながる
【報告者】眞藤邦彦(指導者養成ダイレクター)
世界のトップ10入りを目指す上での海外戦略
「JFA2005 年宣言」にある「JFA の約束 2050」に、
「2050 年ま
でに、FIFA ワールドカップを日本で開催し、日本代表チームはそ
の大会で優勝チームとなる」ことが挙げられている。この約束を果
たすためには、常に世界のトップと闘えるだけの力が必要になって
くる。これまでの FIFA ワールドカップ優勝国を見ても理解できる
ように、優勝するためには、常に世界のトップ 10 に入る実力が必
要なのである。たまたま運よく優勝するなどということはない。
では日本がそのような実力をつけるためには、どのような方策が
必要かというと、さまざまなアクションを起こし、これまでにない、
これまで以上の取り組みをしていく必要がある。そのことについて
はロードマップに詳しく記載されており、その中に海外戦略の項が
ある。日本が常に世界のトップ 10 に入るためには、日本を取り巻
くアジア全体のレベルを上げていく必要がある。アジア全体がヨー
ロッパや南米と肩を並べるくらいレベルアップした中で、日本が闘
えるようにしていく必要があるのである。そのためにもアジアと共
存共栄しながら実現していく取り組みがなされるべきである。その
取り組みをまず日本から提案していこうとしているのだ。
まずは JFA の具体的な
目標として「15 カ国への
日本の指導者派遣」を掲
げている。各国の代表監
督、コーチ、指導者養成
等の関わりをもってアジ
アのレベルを上げていこ
うと考えている。そのた
めに JFA の取り組み紹介
を通してアジア各国の理
解を得ながら、アジアが
必要とする人材の派遣が
できるようにしていきた
U-16 シンガポール代表監督を務める影山雅永氏
ⓒ AGC/JFAnews
い。そして現実にアジア
36
のレベルを上げていく具体的なアクションに結びつけていくことを
考えている。これまでの取り組みとして、チャイニーズ・タイペイ
やマカオ等の派遣例はある。特に現在は、
グアム代表、
ブータン代表、
U-16 シンガポール代表の監督も輩出している(下記写真)
。今年に
なって JFA の積極的な取り組みとして、ベトナムで子どもたちに
キッズプログラムを実施した。メンバーは北沢豪 JFA 特任理事
(JFA
国際委員)
、中山雅雄キッズ責任者(ナショナルトレセンコーチ)
、
木村康彦ナショナルトレセンコーチであるが、大変好評だったと聞
いている。
また、FIFA が主催するアジアでのコーチングインストラクター
コースに、JFA から優秀な人材を送り込んでいる。このような取り
組みや人材を紹介しながら、海外で求められる指導者を派遣できる
ようにしていきたい。さらには海外に拠点を構えて活動できる指導
者の養成を行い、アジアの連携を深め、アジア全体のレベルアップ
につなげていきたいと考えている。JFA がアジアのリーダーとなっ
ていくこと、アジアが世界の先進地域になっていくことを考えなが
ら JFA としてアジアから信頼される戦略を練っていきたいのであ
る。これからもできることは早急に取り組んでいくのだが、それに
は、アジアの国々へ普及・強化の協力を行いながら、アジア各国の
国内支持を得て、次のようなことを実施していきたい。
●アジアの国々へのコーチ派遣による講習会・アジアの国々への監
督、コーチ派遣
●アジアの国々のチームの国内キャンプ・アジアの国々のユース大
会、国内大会への協力
●フットボールカンファレンスへの招待・アジアのコーチを招いて
の指導者養成講習会
● AFC プロリーグプロジェクト・アジア内でのレベルの高い、拮
抗した戦いの中で切磋琢磨できるアジアすべての国内でのレベル
アップ
●「UNESCO くるりんぱ」の活動からサッカーボールの贈呈、ユー
ス大会開催補助、指導者派遣等の質と量の向上。
アジア全体のレベルアップなくしては、日本の、そしてアジアの
国の FIFA ワールドカップでの成功はない。
JFAの海外戦略
ベトナム・ホーチミン市でキッズリーダー講習会を開催
【報告者】中山雅雄(ナショナルトレセンコーチ)
JFA では 9 月 13 日、14 日、ベトナム・ホーチミン市で「JFA キッ
ズリーダー講習会 in ベトナム」および、
「JFA エンジョイ!キッズ
サッカー in ベトナム」
(サッカー教室)を実施しました。キッズリー
ダー講習会は日本で行われている内容と同じです。キッズに関する
講義と実技からなるこのコースに、ベトナム人コーチ 4 人を含み、
ベトナムに在住している幼稚園の先生や子どもにサッカーを教えて
いる、あるいは自分で休日にサッカーを楽しんでいるといった方々
が参加してくれました。また、これと同時に行った「エンジョイ!
キッズサッカー」では、
U-6 ぐらいから U-12 までの子どもを対象に、
サッカー教室というよりもサッカーを楽しむ時間を持ちました。
今回のこの企画は、JFA 国際部が中心となって行われたものです。
アジアへの貢献を通して、アジア全体のサッカーのレベルを向上さ
せることが強い日本をつくることになると考えています。そのため、
キッズリーダー講習会などが他の国においてもどんどん展開してい
くための方策を探る意図もありました。受講した方々には、概ね好
評だったと思います。特にベトナム人参加者に、日本の取り組みに
共感を持っていただけたことは大きな自信になります。しかし、ま
だまだこれらの日本の取り組みに対するアジア各国の認識はそれほ
ど高くないのではないかと感じます。もちろんこれらの展開にはス
ポンサーなどの協力が不可欠であり、今後の課題であります。
今回は、ベトナム人としてホーチミン市の一つのクラブチームの
選手がエンジョイ!キッズサッカーに参加してくれました。予定で
は彼らとホーチミン市在住日本人の子どもたちと一緒にサッカーを
楽しむことになっていたのですが、都合が合わなくなり、急きょベ
トナム人選手だけとサッカーを楽しむ時間を持つことになりまし
た。市内では比較的強豪チームらしく、良くしつけが行き届き、コー
チの指示をしっかりと聞き、一生懸命サッカーに取り組んでくれま
した。技術レベルは低くなく、
数名の選手は高いレベルの技能を持っ
ていると感じました。彼らの勤勉さは日本人と変わらないと感じる
と同時に、何かを吸収しようという意欲は現在の日本人以上のもの
を持っているのではないかと思います。国全体から活力を感じられ
るベトナムは、今後ますます力をつけていく可能性は十分にあると
思います。
また、日本人学校に通う子どもたちが中心であった今回の参加者
は、いわゆるごく普通の子どもたちであり、週に数回のサッカーク
ラブの活動をしている選手たちでした。キッズサッカーでは、
「子
どもらしさを大切にしましょう」とのコンセプトで展開しています。
今回の子どもたちも自分の好きなことは一所懸命やりますが、
ちょっと気持ちが乗らないとすぐに違うことを始め出していまし
た。そのような状況の中から一人一人の子どもに目を向け、彼らは
何に夢中になるのか、どうすればサッカーに向いてくれるのか、な
かなかサッカー勘の鋭い選手だなとか、いろいろな思いを巡らせな
がらのサッカー教室になりました。これは、日本のキッズサッカー
の現場でも同じです。体を使って活動する楽しさ、難しさを十分に
味わってもらえたと思います。
キッズリーダー講習会に参加していただいた方々にも子どもたち
のサッカーの様子を見ていただきました。われわれの統制のとれて
いない指導を見て、大いに自信を持ってもらえたのではないかと想
像しています。しかし、講義や実技で得た知識や経験を自分のチー
ムや子どもたちにも積極的に取り入れていきたいとのコメントをい
ただき少し安心しているところです。
日本が現在持っているサッカーの指導に関するソフトは十分にア
ジア各国でも受け入れてもらえるものであると思います。そして、
それらのソフトを使いこなせる日本人がより積極的に海外に出向
き、指導することが日本のサッカーをさらに発展させるためには絶
対に必要であると思います。トップレベルのコーチの海外進出もも
ちろん大切ですが、育成やグラスルーツの指導者の海外進出も重要
なのです。
37
指導者
研修会報告
審判と技術の協調
「高円宮杯第19回
全日本ユース
(U-18)
サッカー選手権大会」
リフレッシュ研修会
【報告者】布啓一郎
ⓒ J リーグフォト㈱
(JFA ユースダイレクター/ JFA 技術委員会副委員長)
1. 技術と審判の両方の視点の共有
午前は例年の通り、講義とその後試合を観戦し総括する形のリフ
レッシュ研修を行った。午後からはリフレッシュ研修の初の試みと
して、
「審判と技術の協調」をテーマに行った。50 名の受講者と審
判サイドからは JFA 審判インストラクターの黛俊行氏、決勝戦の主
審を務めた牧野明久氏、副審の木島栄氏、中野卓氏、第 4 の審判員
の佐藤秀宣氏の 5 名に同席してもらった。
決勝戦をスタンドで観戦した指導者の視点と審判員側の視点がど
の点で一致しており、またどの点で隔たりがあるのかをディスカッ
ションすることが重要であり、そこからお互いの考え方を合わせて
いき、審判員側も技術側も日本サッカーの強化・普及のために方向
性を共有することが今回のテーマと言える。
2. フットボールからの逆算
のあることと言えた。
また、グループごとに細かいことが気になっている部分もあった。
例えば「お互いシャツを引っ張っているようだが」
、また「オフサ
イドの再開位置が違うのではないか」などが挙げられる。その場面
をもう一度見直してみたが、私には違和感はなかった。なぜならば
フットボールのゲームとして成立しているからである。フットボー
ルのゲームとは選手にプレーする意思があるかどうかが重要と考え
る。お互いがボールを奪い合う中で多様なコンタクトが生じるが、
「意図的なずるいプレー」ではなく、ボールを奪い合うプレーは確
保していくべきだと考える。もちろんそこには程度問題はあると思
われる。また FK の開始位置に関しても、自陣を含めてミドルゾー
ンまではファウルをされたチームが不利益になるより、許容範囲の
中で早くプレーを再開していけることが重要だと思われる。もちろ
んそこにも「ボールが止まっていないのに再開する」ようなプレー
は良いはずがない。フットボールは激しいスポーツである。その激
しさの中にルールがあり、お互いがリスペクトして成り立っている。
激しくても正当なプレーと、たとえコンタクトは些細でもずるいプ
レーはファウルである中で、その見極めは容易ではないが、審判側
には選手の意図を観て判定をお願いしたい。また、コーチサイドは
自分に不利なときに、ずるいプレーで逃げるのではなく、粘り強く
対応できる選手や、たとえ反則されたとしても笛が鳴るまでプレー
を続ける選手、倒れても審判を見るのではなく、すぐに起きてプレー
をする選手を育てていかなくてはならない。
今回の研修会では 5 人で 1 グループとなり、レフェリングに対し
ての「良かった点」と「疑問に感じる点」をグループごとに抽出し
ていった。各グループで最も多く抽出されたシーンは、得点機にお
ける GK のファウルの場面であった。この場面はコントロールの方
向など意見が分かれたシーンとなったが、黛インストラクターから
は「たとえゴール方向にコントロールしていなくても、ボールがコ
ントロールされており、次に確実にゴールを奪えるのであればファ
ウルをした選手は退場になる」趣旨の解説があり、
今回の場面がボー
ルコントロールを確実にしていたかどうかが焦点になった。しかし、
流れの中のプレーであり、瞬間的に判断する審判として難しい場面
(1)アドバンテージの採用
であると考えられる。今回のプレーが退場か警告かを論じるよりも
激しくても正当なプレーを保障していくと、倒れて審判を見る選
同じ場面を審判と技術で共有してディスカッションすることが意義
手が少なくなる。選手がたとえ倒れてもすぐに起き上がりプレーす
3. タフでたくましい選手の育成
38
指導者研修会報告
る。つまり選手に意思があるときはファウルがあってもアドバン
テージを採用している場面が多くなってきた。
今回の高円宮杯でもアドバンテージは多く採用されていた。特筆
する場面としては、前半の立ち上がりに、浦和の選手は反則をされ
たがプレーを続け、2 回アドバンテージが採用されて先制点につな
がった場面はすばらしかった。
(2)タフでたくましい選手
後半 31 分の浦和の 8 点目がディスカッションの対象となった。
ラストパスの 1 プレー前に、お互いの間に出たルーズボールに対し
て名古屋の選手が先にボールに触ったが、その後に浦和の選手と接
触して、浦和の選手が味方にパスできたシーンであった。場面を見
直してみると、確かに浦和選手の進路妨害にも見えた。主審の見解
は「お互いに可視化にある中でのコンタクトであり、問題ではない」
という判断であった。黛インストラクターからも
「このプレーをファ
ウルとしたらゲーム中に笛を吹く場面が増えてしまい、ゲームの流
れを失うことにもなるのではないでしょうか?」との問いかけが
あった。私の見解ではゴール前の重要な場面であのような甘いプ
レーをすることがフットボールではなく、実際にボールとの間に身
体を入れられた名古屋の選手も、まずいと感じてプレーを止めずに
相手を追いかけていたことからも、あのシーンをファウルとするこ
とは考えたくないと感じた。
(3)アーリーフリーキックの保障
相手との駆け引き、相手の隙を突くプレーは日本選手の苦手なと
ころかもしれない。最近はフリーキック(FK)の再開を笛で止めず
に、アーリー FK を保障する傾向になってきていると感じている。
しかしゴール前の FK を笛で止める場面はこのゲームでもあった。
前半 30 分の浦和の FK では反則後、間もなく主審が選手に聞いて
ⓒ J リーグフォト㈱
ⓒ J リーグフォト㈱
笛で止めて壁を下げたが、この場面は両方に問題があると感じた。
まずは選手側にアーリー FK の意思がないことである。ゴール前の
FK は大きな得点機である。だからこそ、いつも同じように時間を
かけて行うだけでなく、常に相手に隙を突く姿勢を持っていきたい。
この場面では FK のポイントよりも外側(主審の背後)にフリーな
選手がいて、その選手を早く使う選択肢もあったと思われた。また、
審判がその選択肢を分かっているのであれば関与しないでいただき
たいと考える。そのためにも審判の立ち位置は重要であり、次のプ
レーを予測できる立ち位置をお願いしたいシーンと思われた。
4. 総括
ヨーロッパではゲーム後に判定をめぐってディスカッションする
テレビを多く見る機会があった。そこには審判も同席してお互いの
意見を交換していた。日本では考えられないことだと思っていたが、
今まさにそのような機会が多くなってきている。お互いが激しくコ
ンタクトするフットボールは 100%ミスのない判定は不可能であろ
う。その中で判定は覆ることはないが、お互いが今後に向けて意見
交換することは非常に重要なことだと感じている。今回も大変良い
機会となった。
現在は審判員側から「スピーディー、フェア、タフなゲーム」を
発信している。そのスピーディー、フェア、タフなゲームこそがフッ
トボールであろう。われわれは真のフットボーラーを育成していか
なくてはならない。そのために審判と技術は両輪としてバランス良
く機能し、タフでたくましい選手の育成を行えるようにするために、
このような合同の研修会が広がっていくことが必要であると感じら
れた。
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海外で活躍する指導者⑧
、
連載 「海外で活躍する指導者」
8人目の今回はザンビアで活躍していた
企画 道下亨氏からの報告です。
●プロフィール
道下 亨(みちした・とおる)
大分県耶馬溪町(現:中津市)出身。
1980 年 8 月 11 日生まれ。
中津南高校を卒業後、福岡大学へ進学。在学中に指導者として活
動を始める。卒業後、青年海外協力隊としてザンビアへ派遣され、
NASDEC FC のコーチとなる。
現在はアビスパ福岡ホームタウン推進部コーチとしてサッカーの
普及に努める。
●派遣国・地域の紹介
ザンビア共和国。アフリカ南部の中央に位置し、コンゴ民主共和国、アン
ゴラ、ナミビア、ジンバブエ、モザンビーク、マラウイ、タンザニアと隣
接している。
面積は日本の約 2 倍にあたる 752,610 平方キロメートルで、人口は 1,190
万人。民族は 73 の部族があり、言語は英語のほか、ベンバ語、ニャンジァ
語、トンガ語がある。
(以上、外務省ホームページより)
。FIFA ランキング
は 70 位(2008 年 10 月現在)
。
ザンビアサッカー
私は 2004 年 7 月から 2007 年 1 月までの 2 年 6 カ月間、アフ
リカのザンビアへ青年海外協力隊(JICA)の隊員として派遣され
ていました。
アフリカ諸国ではサッカーはもっとも人気のあるスポーツです。
ザンビアも例外ではなく、子どもからお年寄りまでみんなサッカー
が大好きです。街のグラウンドにはサッカーゴールが必ずあり、
地方の田舎のグラウンドでも木製のゴールがあります。
国内リーグもあり、1 部リーグ 16 チーム、2 部・3 部リーグも
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あります。1 部リーグはプロ契約している選手が多く、2 部・3 部
では、選手によってはプロ契約もあるようですが、ほとんどがア
マチュアです。プロ契約といってもトップレベルの選手以外の報
酬はわずかのようです。
遅刻は当たり前
ザンビアでサッカーを指導するにあたって驚いたことがいくつ
かあります。
まずは、練習する時間になっても選手が集まらないことです。
遅刻は当たり前なのです。試合開始時間に相手チームが 15 分遅
刻してきたかと思えば、レフェリーが 30 分遅れてくることもあ
りました。ごく稀に予定通りに試合が始まればそれは感動しまし
た。時間にルーズな文化に慣れるのはかなり苦労しました。
さらに驚いたことが、試合前に「コーチ、お腹が空いて動けない」
と選手から言われたことです。日本であれば 1 日 3 食食べること
は当たり前ですが、ザンビアでは 3 食食べられる人もいれば、2 食、
1 食ということも少なくないのが現状です。アフリカの中でもっ
とも貧しい国の一つと言われるザンビアの現実を目の当たりにし
た瞬間でした。
マナー、礼儀等の指導に注力
赴任したとき、配属先のチーム・NASDEC FC(16 〜 20 歳)
は私の前任者が 2 年間かけて何もなかったところから選手を集め、
育て、ようやくチームとして初の公式リーグ(アマチュアリーグ)
に参加した直後でした。赴任当初の私の仕事はこのチームへのコー
チングとマネジメントでした。
週末の日曜日にリーグ戦が行われていたので火曜日から土曜日
まで練習を行い、日曜日に試合を行うというサイクルでした。私
がこのチームに対して指導を行う際に技術指導もさることながら
マナー、礼儀等の指導に力を入れようという目標を設定しました。
日本人と違いザンビア人は規律を守ることが苦手です。時間を
守れない、あいさつができない、道具を大切にしない等です。日
本では考えられませんが、試合が始まって特に理由もなく 30 分
後に遅れてくる選手もしばしばいました。可能性は少ないかもし
れませんが、もし私と関わった選手が将来海外のクラブに所属す
ることになったときに規律を守れずに苦労するのはその選手自身
なので、私と関わったことで何か変わってくれたら、という思い
で始めました。
最初は抵抗のある選手も多く見受けられましたが、長年在籍し
ている選手は当初と比べてかなりの割合でマナーが良くなり、そ
の結果、あいさつ、時間を守るといったことができるようになり
ました。成人、もしくはそれに近い年代の選手の習慣を変えるこ
とはかなりの時間、労力を要しましたが、目に見える成果が出て
良かったと思います。
そして、任期終了間近にザンビアの 1 部リーグに所属するチー
ムから練習試合のオファーを受けるまでにチームは成長しました
(試合はボロ負けでしたが…)
。
私が指導した 3 シーズンで多数の選手が現在のチームよりレベ
ルが高いチームに移籍しました。中にはプロ選手になった者もい
ます。また、就職する選手や就学する選手も多数います。彼らが
このチームでサッカーを通じ、身につけたマナーや礼儀作法は必
ずや社会に出たときに役に立つと確信しています。
育成チームの立ち上げ
赴任当初は前述のチームを指導していましたが、その年代より
もっと低い年齢の子どもたちの指導者が不足していることを知り、
U-10・12・15 のカテゴリーもスタートしました。ザンビアのプ
ロチームは育成チームを持っていません。理由を聞いたら予算が
ないのが大きな理由だそうです。しかし、プロチームの指導者も
育成チームの必要性は感じているようでした。
若年層の子どもたちに指導する際に苦労したことが言葉です。
ザンビアには 73 の部族が存在し、それぞれの部族で言葉も違う
ため、公用語として英語を使用し、それを学校で学びます。高校
生くらいの年代であれば英語でのコミュニケーションは問題ない
のですが、小学生だと英語が話せる子はわずかです。ですから簡
単な現地語は必死で覚えて使えるようになり、難しい言葉は英語
が分かる子に通訳させてトレーニングを行っていました。
私がザンビアを離任するときには全体で 100 人を越える選手を
抱えることになりました。チーム内のベテラン選手がコーチング
に興味を持ち始めたので、彼を選手兼コーチにして役割を分担し
ました。
ポテンシャルをどう発揮させるかが課題
ザンビアのサッカーのレベルは FIFA ランキングで 70 位、アフ
リカの中では 16 位(2008 年 10 月現在)です。アフリカの中で
は中堅国、
世界的に言えばまだ無名の国の一つと言えます。しかし、
プロリーグを持ち、アフリカの中でもサッカーの盛んな国の一つ
とも言えると思います。
そんなザンビアのサッカー事情は国内のプロチームは企業から
スポンサーシップを受けており、トップチームの運営のみに力を
入れています。ザンビアサッカー協会も代表チームの運営に同様
の対応をしています。これでは確かにトップチームや代表チーム
は強化できるかもしれませんが、それ以上のことを求めると、つ
まり将来的にサッカーの強豪国になれるかというと、それは現状
では難しいと思います。
ここで私が思うのは、若年層の選手を幅広く、良い環境で指導
できれば、将来的にザンビアサッカー界に大きく貢献できる良い
選手が育つのではないかということでした。良い環境という意味
で若年層を指導する指導者の育成も欠かせません。これらが強化
できればザンビアサッカーのレベルは確実に上がると思います。
例えばプロチームが育成年代のチームを持ち、その強化に努める、
あるいは代表レベルでも同様のことが言えると思います。
サッカー文化という意味ではザンビアは日本よりも深く生活に
根付いていると思います。人々は代表チームの試合があると仕事
はそっちのけで、テレビ、ラジオの前でその勝敗に一喜一憂し、
子どもたちは小さいころからビニール袋を丸めたボールを追いか
け、将来プロ選手になって海外で活躍することを夢見ています。
このようなサッカー文化を持ったザンビアはこれからさらに国際
的に活躍できるポテンシャルを持っていると私は思います。その
ポテンシャルをどうやって発揮させるかが今後のザンビアサッ
カー界の課題ではないでしょうか。
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今月の人
育成の現場をたずねて…
このコーナーでは、小野剛技術委員長
が全国各地で育成に携わっている指導
者をたずねて、紹介していきます。
松原英輝
(ディジョン/フランス、育成コーチ)
matsubara hideki
フランスサッカー連盟でジェラール・ウ
リエ(テクニカルダイレクター)氏とのミー
ティング後、久しぶりにクレールフォンテー
ヌにある INF(国立サッカー学院)を訪ねた。
校長のメレル氏の部屋で話をしているとそ
こに飾られている扇を指して、
「ヒデキが置
いていってくれたものさ。彼は元気かな?」
と話してくれた。ヒデキとは、メレル氏の
もとで 2 年間学び、現在はフランスのディ
ジョンで育成コーチとして生活を立てなが
ら、BEES3(育成コーチとしての最高ライ
センス)取得に向けて勉強している若者、
松原英輝氏のことである。パリから TGV で
2 時間弱、ディジョンに降り立つとその若
者は笑顔で迎えてくれた。
小野:フランスに渡ってはや 6 年ですね。
松原:早いもので、あっという間に 6 年経っ
たような気がします。でも、また次のライ
センスにチャレンジすることにしたので、
また 4 年はかかることになります。
ディジョンにて。左から松原英輝氏、小野、ファルク・ハジベギッチ
(ディジョン:トップチームの監督)
小野:指導者になろうと思ったのは?
松原:今思うと、すでに中学のころから漠
然と指導者になりたいと思っていたような
気がします。そしてプレーを続けていくに
したがって、所属チームや選抜チームでさ
まざまなコーチと出会い、さらにその思い
は強くなっていきました。
小野:それで、サッカーでメシを食ってい
こうと?
松原:大学院の最後の半年には、決めてい
たんです。大学院で種目を超えたいろいろ
な仲間に出会ったのも大きかったと思いま
す。それまで、どことなく流されてきた自
分に「これまでの自分では駄目だ」
、これか
らは「自分で決め、責任を持って進んでい
こう」という気持ちを持たせてくれたと思っ
ています。そして、そのためにはまずは海
外に行って勉強しようと。半年アルバイト
に明け暮れて資金を貯め、フランスに渡る
ことにしました。
小野:ところで、サッカーを始めたころの
思い出を聞かせていただけますか。
小野:フランスに行こうと思ったのは?
松原:小学校2年生のときだったと思います。
親に
「サッカーどうだ?」
と勧められて。根っ
からの阪神ファンだったので、本当は野球
をやりたかったんですけど。もちろん、そ
れなりに楽しかったけど、小学校 5 年生の
ときにやっぱり野球をやりたくて、いった
んやめたんです。それでいて、中学に入る
ときは迷わずサッカー部に入りました。両
方やってみて、あらためてサッカーの方が
ずっとおもしろいと感じていたのだと思い
ます。2 年間のブランクで自分のサッカー
に対する思いを確認できたというか、それ
からは、遅れた 2 年分を取り戻したい一心
から、かえってサッカーにはまっていった
ような気がします。それからは、高校、大
学とサッカー漬けでした。
松原:そのころ(1990年代後半)のフラン
スサッカーにものすごく惹かれていたんで
す。そして、少し勉強していくと、その強
さの裏側にはしっかりした育成システムが
存在していることに気がつきました。初め
のころは、とにかくいろいろな育成センター
を回って自分の目で確かめました。そして、
INF でメレルさんに出会うことになったん
です。拾ってもらったと言った方がいいか
もしれません。それまでも INF のことやメ
レルさんのことは本を読んで知識としては
持っていたのですが、実際にメレルさんの
生き様に接して、今まで自分の中でモヤモ
ヤしていたものがはっきりと見えてきた気
がしました。そのときメレルさんは 60 歳、
しかし、ピッチでバリバリに元気に指導し
42
ているんですよ。
「育成コーチ」として「育
成に生きる」
。自分の中にうすうす持ってい
たものが、メレルさんの生き様に接し、非
常にクリアになったと思っています。
小野:育成のエキスパートとしての資格
BEES3 に挑戦するそうですね。
松原:
「その国の 1 番のものを取りたい」と
いう単純な思いは強いです。現在の BEES2
を取得後、2 年経験を積んでからでしか受
けられず、
さらに取得まで2年はかかるので、
今から最低 4 年は費やすことになります。
でも、自分の生き様というか、これまでの
自分に一つの節目をつけたいというような
思いですね。
小野:将来の夢は?
松原:やはり、日本に帰って日本サッカー
のために貢献したいという気持ちが一番強
いです。サッカーが文化として日本に根付
く、そのためには心、技、体と指導の質を
高めなくてはいけない。そのためにも、もっ
と勉強して「育成の職人」としてのメンタ
リティを身体に染みこませていきたいと
思っています。サッカーは表現のスポーツ
だと思っています。ジダンのように自分の
考えていることをプレーとして表現できる
ような選手が日本からもどんどん育って
いってほしいし、自分がその一助になれれ
ばこんな嬉しいことはないと思っています。
松原 英輝(まつばら ひでき)
1977 年 1 月 24 日 大阪府生まれ
大阪府立北野高校→大阪教育大学→
大阪教育大学大学院
BEES2(フランスコーチ国家ライセンス 2 級)
、
公認 C 級コーチ。