特集 静脈血栓塞栓症予防のエビデンス 静脈血栓塞栓症の予防法 間歇的空気圧迫法 掛田崇寛 KAKEDA Takahiro 山勢博彰 YAMASE Hiroaki 山口大学大学院医学系研究科 Q 間歇的空気圧迫法は有効な予防法か? *間歇的空気圧迫法は簡便かつ非侵襲的に用いることができる. *間歇的空気圧迫法による圧迫は静脈還流を促進する. *血管内皮細胞は圧迫を受けることによって抗血栓作用を高め,血栓形成を抑制する. *以上から間歇的空気圧迫法は静脈血栓塞栓症の予防に有効であるといえる. Q 効果的な間歇的空気圧迫法とは何か? *間歇的空気圧迫法の効果的な実施に関するエビデンスは確立していない. *最近の研究成果および肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症) 予防ガイドラインから,予防 手段を併用することで相乗効果が期待できるといわれている. 間歇的空気圧迫法は有効な予防法か? 長期間の臥床や安静は,血管内の血流速度を低下 させ,下肢の深部静脈弁洞部で還流血液のうっ滞 (よどみ)を生じさせる.さらに組織に炎症が加わる と,血液はその凝固能(線維素能)を亢進させて, 1) 血栓が形成しやすい状態になる . ● 栓塞栓症(VTE)を予防する物理的方法の 1 つで, 臨床では周術期の患者に対して実施されるケースが 増えている. そもそも IPC の最大の目的は,下肢を圧迫するこ とによってDVT およびPE の原因となる血栓の形成 深部静脈血栓症(DVT)の原因となる血栓は,臨 を阻害することにある 2).また,IPC は簡便かつ非侵 床においては主に周術期の術中に下腿部に形成され 襲的に用いることが可能であり,ほかのVTE 予防手 やすいといえる.形成された血栓は,致死性の高い肺 段に比べて臨床上,管理しやすい.肺血栓塞栓症/深 血栓塞栓症(PE)の原因にもなる.したがって,臨 部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン 床においてはそれらに対する一次予防が重要である. では,IPC はVTE の予防手段として明確に位置づけ 間歇的空気圧迫法(IPC)は,2004 年に弾性スト られ,中リスクから最高リスクに分類される患者に ッキングとともに診療報酬として認可された静脈血 対して幅広く適用が可能とされている 3).通常,下肢 56 (320) EBNURSING Vol.7 No.3 2007 の筋肉および静脈には血液やリンパ液の還流を補助 の装置を採用すればよいのか判断を難しくする一因 するポンプ機能が備わっているが,IPC はこれらの になっている. 機能に準じた効果が期待できる. 現時点では,いずれのIPC 装置もVTE の予防に有 効といわれており,機種は個々の患者の状況に応じ 間歇的空気圧迫法による静脈血栓塞栓症 て選択すればよいことになる.また,スリーブの最 予防のエビデンス 適な装着部位や圧迫圧などの設定の基準に関しては, IPC の開始および終了時期 今後の検討課題である. 静脈血の還流促進効果 IPC が適応となる際の開始および終了時期に関し ては,明確なエビデンスはない.しかし,周術期に IPC による予防の有効性の1 つは,圧迫を加えるこ おける血栓の多くは術中に形成されるという特徴が とによって短時間のうちに静脈血の還流を促進でき あるため,術中からの使用開始が望ましい.ただし, ることである 5-8).IPC を実施することによって,大 術中の砕石位とIPC が関連して区画症候群注 1)を発症 腿静脈や膝窩静脈,脛腓骨静脈などの血流増加や血 4) したという報告 もあるため, ケースによっては慎 流速度の上昇が認められる(笆)5).このうち Delis 重に判断する場合もある.また,IPC の終了時期に ら 8)は,健康成人の20 肢と末梢血管疾患(細動脈障 関しては,予防ガイドラインでも推奨されているよ 害)による跛行のある患者の25 肢で基礎研究を行い, うに,十分な歩行が可能となるまで継続する. IPC の下肢静脈還流への影響と圧迫部位ごとの効果 IPC の使用基準 に つ い て 検 証 し た ( 笳 ). そ の 結 果 , 足 底 型 IPC 装置に関しては,これまで各メーカーから複 (120mmHg および180mmHg) ,下腿型,足底・下 数の装置が販売されている(笊) .しかし,その使用 腿複合型の各 IPC 装置は,いずれも安静時に比べて 基準は確立しておらず,スリーブの装着部位や圧迫 有意に大腿および膝窩静脈における最大血流速度を 圧,圧迫間隔,圧迫回数の設定は,いずれも装置ご 上昇させた.また,足底・下腿の複合型は,ほかの とに異なっているのが現状で,VTE の予防に最適な 装置に比べて最も血流速度を上昇させた.さらに, I P C 装置というものは今のところ明らかではない. 末梢血管疾患のある者と健康成人の各群間では,い こうした相違は,IPC 装置を臨床に導入する際,ど ずれも有意差はなく,IPC の効果はこうした障害を 装置名 スリーブ装着部位 圧迫圧 圧迫設定 ウイズエアー DVT 大腿型・下腿型・足底型 大腿・下腿 50mmHg 足底 130mmHg 大腿 15秒,下腿 10秒,足底 1〜6秒 (圧迫間隔:大腿・下腿 60秒,足底 30秒) ベノストリーム 足底型・下腿型 足底−下腿 50〜60mmHg つま先−足首 80〜120mmHg 足底 10秒,圧迫間隔 20秒 下腿 10秒,圧迫間隔 50秒 SCD 大腿型・下腿型 30〜45mmHg 大腿・下腿 11秒,圧迫間隔 30〜60秒 フロートロンDVT 大腿型・下腿型 20〜60mmHg 大腿・下腿 10秒,圧迫間隔 60秒 A-Vインパルス 足底型 130mmHg 足底 1〜3秒,圧迫間隔 20秒 笊 主な間歇的空気圧迫装置 注1)区画症候群とは,手術体位やIPC などにより組織に加わる圧迫によって筋区画内部の圧が亢進するために発症するものである.臨床所見としては,患部の持 続的疼痛,患部より末梢側での脈拍触知不能,知覚異常,運動麻痺などを生じさせる. EBNURSING Vol.7 No.3 2007 (321) 57 ● 30 血流速度 (恣意単位) 20 10 0 A B 12秒 圧迫前 45秒 12秒 圧迫 笆 間歇的空気圧迫法による大腿静脈での血流変化の例 (Nicolaides AN, Fernandes e Fernandes J, Pollock AV : Intermittent sequential pneumatic compression of the legs in the prevention of venous stasis and postoperative deep venous thrombosis. Surgery 1980 ; 87(1) : 69-76. 5) より一部改変) 最大血流速度(cm/sec) 200 健康成人群(表在の大腿静脈) 末梢血管疾患による跛行患者群(表在の大腿静脈) 健康成人群(膝窩静脈) 末梢血管疾患による跛行患者群(膝窩静脈) 150 100 50 0 安静 IPC足底型 (120mmHg) IPC足底型 (180mmHg) IPC下腿型 IPC足底型+下腿型 笳 間歇的空気圧迫法による大腿静脈および膝窩静脈の最大血流速度の変化 (Delis KT, Slimani G, Hafez HM, et al.: Enhancing venous outflow in the lower limb with intermittent pneumatic compression : a comparative haemodynamic analysis on the effect of foot vs. calf vs. foot and calf compression. Eur J Vasc Endovasc Surg 2000 ; 19 : 250260. 8)より) もつ患者においても期待できるといえる. 抗凝固能の活性化 は血管拡張作用を発揮するとともに,血小板の非凝 IPC による効果は血流促進だけでなく,IPC 装置 集化にも関与する.プロスタサイクリンは強い血小 によって組織に与えられた圧力が血管内の内皮細胞 板凝集能を有するトロンボキサンA 2 の拮抗物質であ を刺激することによって内因性の抗凝固能を活性化 り,血小板凝集を阻害する. する 9, 10) ことについてもいえる.すなわち,IPC によ さらに,IPC は線溶系の代表でもある組織プラス る圧迫は,抗血栓作用のある組織因子経路インヒビ ミ ノ ー ゲ ン ア ク チ ベ ー タ ( tissue plasminogen ター(tissue factor pathway inhibitor : TFPI) activator :t-PA)も増加させる 11, 13).t-PA はプラ レベルを上昇させる 11, 12). スミノーゲンをプラスミンに変換させることによっ 同様に,I P C によって圧迫された血管内皮では, 血管内皮細胞によって一酸化窒素(nitric oxide : ● NO)およびプロスタサイクリンが産生され,これら 58 (322) EBNURSING Vol.7 No.3 2007 て,血栓(フィブリン)を溶解する. Giddings らは,健康な成人男性 21 名を対象にし 静脈血栓塞栓症予防のエビデンス 特集 圧迫前 圧迫後 有意性 中央値(平均値) 四分位範囲 中央値(平均値) 四分位範囲 ( 値) 120(123) 83〜160 84(93) 65〜115 <0.001 TFPI(ng/m ) 99(96) 88〜110 99(105) 99〜110 0.02 t-PA(IU/m ) 1.6(1.6) 0.7〜2.7 2.0(1.9) 1.25〜2.8 0.005 PAI-l(AU/m ) 9.0(10.9) 5.5〜15.5 8.0(10.1) 6.0〜15.0 有意差なし u-PA活性(ng/m ) 078(0.74) 0.61〜0.91 0.87(0.84) 0.71〜0.96 0.05 u-PA阻害(ng/m ) 0.28(0.28) 0.25〜0.35 0.28(0.27) 0.25〜0.34 有意差なし 97(484) 25〜448 412(924) 76〜1,299 <0.001 血液凝固因子(mU/m ) 第VIIaの因子 ΔD-ダイマー(ng/m ) 笘 間歇的空気圧迫法を 120 分間実施した後の血栓関連因子の変化 (Giddings JC, Morris RJ, Ralis HM, et al.: Systemic haemostasis after intermittent pneumatic compression. Clues for the investigation of DVT prophylaxis and travellers thrombosis. Clin Lab Haematol 2004 ; 26 : 269-273. 11)より) た基礎研究で,足底型の IPC を 120 分間実施し,血 圧力 11) 液中の血栓関連因子への影響について検証した .そ の結果,IPC 実施後では血栓阻害作用を有するTFPI やt-PA,ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベー ター(urokinase plasminogen activator :u-PA) 活性の値はいずれも有意に上昇した(笘) .逆に,凝 固能を活性化する血液凝固因子(第VIIa 因子)は有 t-PA プロスタサイクリン 血流 負荷 一酸化窒素(NO) 組織因子経路インヒビター(TFPI) 剪断 意に低下した.このように,IPC による圧迫は単に 血流への変化を生じさせるだけでなく,内因性の抗 凝固能および線溶系を活性化させ,VTE の予防に貢 9) 献するのである(笙) . IPC と低分子量ヘパリンとの 圧力 笙 間歇的空気圧迫法による血管への機械的効果 (Chen AH, Frangos SG, Kilaru S, et al.: Intermittent pneumatic compression devices-physiological mechanisms of action. Eur J Vasc Endovasc Surg 2001 ; 21 : 383-392. 9)より) DVT 予防効果の比較 Ginzburg らは,外傷患者442 名を対象に,ランダ らは,再発膀胱膣瘻の手術に伴う IPC の使用によっ ム化比較試験(randomized control trial : RCT) て,区画症候群が生じたことを報告している 4).この を行い,IPC と低分子量ヘパリンのDVT の予防効果 報告の中では,手術体位である砕石位と IPC の使用 14) を比較した .その結果,DVT を発症したのはIPC が区画症候群の発症に関連しており,IPC の使用が 群で2.7%(6 名) ,低分子量ヘパリンで0.5%(1 名) そのリスクを高めると述べている. であり,有意な差を認めなかった.これは,IPC は 区画症候群の治療は,患肢の挙上や冷罨法などに DVT の予防手段として低分子量ヘパリンに匹敵する よって筋区画の減圧を図ることである.しかし,そ 効果があることを示唆している. うした保存的療法が奏功しない場合は,外科的に減 IPC による弊害 IPC による弊害もいくつか見受けられる.Cohen 圧させる.この報告例でも,患者が術後に右下肢の 痛みを訴えて区画症候群と診断され,緊急手術によ EBNURSING Vol.7 No.3 2007 (323) 59 ● り筋膜切除術を行っていた.このように,区画症候 1,350 名の患者を対象にした前向き調査研究で,5 種 群の発症は,新たな医療処置を要したり,筋肉や神 類の IPC 装置を用いて DVT の発生率やコンプライ 経に不可逆的な後遺症を生じさせる場合もあること アンスなどを調べたところ,下腿部にスリーブを装 から,注意が必要である. 着し,連続的な圧迫によって速い血流変化が期待で Oakley らは,足底部を圧迫する IPC の使用を契 15) きる装置で最もDVT の発生率が高かったと述べてい 機に潰瘍を生じた例を報告している .深部静脈血栓 る.全装置の平均 DVT 発症率は 3.5%であったが, を予防するためにIPC を装着した患者200 名のうち5 その装置では9.8%と有意に高かったことを示してい 名に潰瘍が生じた.潰瘍は主に踵に生じており,そ る.このことは,加圧設定によっては IPC であって れらが治癒するまでに 3 〜 10 か月を要したという. もDVT を誘発させる可能性があり,必ずしも静脈の したがって,末梢神経障害や皮膚組織などに障害を 血流速度を上げることのみがVTE の予防に直結しな もつ患者に対しても注意する必要があるといえる. いことを示唆している. P r o c t o r らは,速い静脈還流が得られる装置が D V T の発症に関与することを報告している 16) . そのほかの問題としては,下腿を圧迫することに よる総腓骨神経麻痺もあげられる. 効果的な間歇的空気圧迫法とは何か? 群で,DVT の発症率を 125 I-フィブリノーゲンテスト 現時点のエビデンス を判断指標にして検証した 19).その結果,IPC と弾性 現時点では効果的な IPC の実施に関する確固たる ストッキングの併用群で有意にDVT の発症率が抑え エビデンスはない.しかし,エビデンスの構築に貢 られていたことから,IPC に弾性ストッキングを併 献しうる研究成果は,徐々に報告されてきている. 用すべきであると結論づけた.同様にTurpie らも, L a c u t らは,急性の脳出血患者 1 3 3 名を対象に, 静脈血栓の予防に対する弾性ストッキングを単独で IPC と段階的圧迫ストッキングを併用することによ って DVT の発症を抑えることができるという RCT 使用した場合と,弾性ストッキングと IPC を併用し た場合の効果をRCT によって検証した 17).その結果, 弾性ストッキングと IPC を併用したほうが弾性スッ キングを単独で用いるときに比べて,無症候性の DVT のリスクを有意に減少させることが明らかにな った(笞) .この結果は,予防手段を併用することに よって相乗効果が期待でき,より効果的なVTE 予防 となることを示唆している.Lacut らの研究は,最 近行われたシステマティックレビューにより, この分 野における研究として高い評価を受けている 18). また S c u r r らは,一般外科患者 7 8 名を対象に, IPC 単独群と,IPC と弾性ストッキングの併用群の2 ● 60 (324) EBNURSING Vol.7 No.3 2007 =0.03 12 無 症 10 候 性 8 D V 6 T の 発 4 症 数 2 0 3 8 3 弾性ストッキング 弾性ストッキング+IPC 遠位 D V T をピンク色で,近位 D V T を灰色でそれぞれ表し ている. 笞 弾性ストッキングと間歇的空気圧迫法による併用効果 (Lacut K, Bressollette L, Le Gal G, et al.: Prevention of venous thrombosis in patients with acute intracerebral hemorrhage. Neurology 2005 ; 65 : 865-869.17)より) 静脈血栓塞栓症予防のエビデンス 特集 による結果を報告している 20). リーブを装着するタイプのものは下腿や大腿に装着 米国の Merli らを中心とした脊髄外傷深部静脈血 するタイプのものに比べて圧迫圧が高い.したがっ 栓調査委員会は,脊髄外傷患者 107 名を対象にした て,糖尿病や末梢循環障害,末梢神経障害などのあ RCT で,低分子量ヘパリンの一種であるエノキサパ る患者に対して装置を使用する際は,十分に注意す リン投与群と,IPC と未分画ヘパリン併用群で検証 る必要がある 15).また,スリーブ周囲の痒 感や不快 を行った 2 1 ).その結果,エノキサパリン投与群と, 感を患者が訴えた場合は,十分に観察して,必要で IPC と未分画ヘパリン併用群の両群間に有意差を認 あればスキンケアや部分清拭などを実施する. めなかったことから,これらはほぼ同等の血栓予防 IPC 実施中にDVT やPE の発症が疑われる,また は確認された場合には,形成された血栓の遊離を助 効果があると結論づけた. 以上から,より効果的にVTE の発症を抑えるため 長するおそれがあるため,ただちにIPC を除去する. にも,リスク分類にしたがって IPC を併用した予防 今後の課題 手段を講じることが重要であるといえる. 推奨されるケア 推奨 ケア 2004 年に発表された予防ガイドライン(肺血栓塞 栓症/深部静脈血栓症〔静脈血栓塞栓症〕予防ガイド IPC を適切に実施するためには,スリーブの装着 ライン)は,わが国におけるVTE 対策を推進するき や装置の作動の確認はもちろん,患者からの協力が っかけになった.ただし,このガイドラインは,十 不可欠である.IPC はその性質上,昼夜を問わず作 分な根拠をもとに作成されたものではない.IPC を 動させる.したがって,患者は IPC の圧迫や振動, より効果的に実施していくためにも,いまだに確立 アラーム音などによって安楽が保てなかったり,夜 されていない最適な方法や明確な基準の設定は急務 間睡眠が障害されたりする.また,常時スリーブを といえる. 装着しているために不快感や拘束感を抱くこともあ また,弾性ストッキングやマッサージなどの理学 る.患者のコンプライアンスの低下は,IPC の適切 的療法に加えて,ヘパリンやワルファリンなどによ な実施に影響を及ぼすだけでなく,治療全体に影響 る薬物療法との併用や相乗効果についての検討も十 することさえある.そのため,患者に対して IPC の 分とはいえない. 意義を十分説明し,理解を得る必要がある.また看 さらに,IPC の予防効果に関して,ランダム化し 護師は,患者ができるだけ苦痛を感じないような配 た前向きな検証を行い,臨床的根拠を見出す必要も 慮をする必要がある. ある.根拠に基づいたIPC の実践的活用のためにも, IPC 装置にはいくつかの種類があるが,足底にス さらなる研究の推進とデータの蓄積が望まれる. EBNURSING Vol.7 No.3 2007 (325) 61 ● 本稿で取り上げた文献の検索方法 1.検索方法 蘆 MEDLINE(1966 〜 2007 年) キーワード:Intermittent pneumatic compression, Venous thromboembolism 蘆医学中央雑誌(1983 〜 2007 年) キーワード:間歇的空気圧迫法,静脈血栓塞栓症 文献 1) Allenby F, Boardman L, Pflug JJ, et al.: Effects of external pneumatic intermittent compression on fibrinolysis in man. Lancet 1973 ; 22 : 1412-1414. 2) Kumar S, Walker MA : The effects of intermittent pneumatic compression on the arterial and venous system of the lower limb : a review. J Tissue Viability 2002 ; 12 : 58-65. 3) 肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン作成委員編:肺血栓塞栓症/深部静脈血栓 症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン. Medical Front International Limited ; 2004. 4) Cohen SA, Hurt WG : Compartment syndrome associated with lithotomy position and intermittent compression stockings. Obstet Gynecol 2001 ; 97 : 832-833. 5) Nicolaides AN, Fernandes E Fernandes J, Pollock AV : Intermittent sequential pneumatic compression of the legs in the prevention of venous stasis and postoperative deep venous thrombosis. Surgery 1980 ; 87 : 69-76. 6) Flam E, Berry S, Coyle A, et al.: Blood-flow augmentation of intermittent pneumatic compression systems used for prevention of deep vein thrombosis prior to surgery. Am J Surg 1996 ; 171 : 312-315. 7) Ricci MA, Fisk P, Knight S, et al.: Hemodynamic evaluation of foot venous compression devices. J Vasc Surg 1997 ; 26 : 803-808. 8) Delis KT, Slimani G, Hafez HM, et al.: Enhancing venous outflow in the lower limb with intermittent pneumatic compression : a comparative haemodynamic analysis on the effect of foot vs. calf vs. foot and calf compression. Eur J Vasc Endovasc Surg 2000 ; 19 : 250260. 9) Chen AH, Frangos SG, Kilaru S, et al.: Intermittent pneumatic compression devices-physiological mechanisms of action. Eur J Vasc Endovasc Surg 2001 ; 21 : 383-392. 10)Tarnay TJ, Rohr PR, Davidson AG, et al.: Pneumatic calf compression, fibrinolysis, and the prevention of deep venous thrombosis. Surgery 1980 ; 88 : 489-496. 11)Giddings JC, Morris RJ, Ralis HM, et al.: Systemic haemostasis after intermittent pneumatic compression. Clues for the investigation of DVT prophylaxis and travellers thrombosis. Clin Lab Haematol 2004 ; 26 : 269-273. 12)Chouhan VD, Comerota AJ, Sun L, et al.: Inhibition of tissue factor pathway during intermittent pneumatic compression : A possible mechanism for antithrombotic effect. Arterioscler Thromb Vasc Biol 1999 ; 19 : 2812-2817. 13)Comerota AJ, Chouhan V, Harada RN, et al.: The fibrinolytic effects of intermittent pneumatic compression : mechanism of enhanced fibrinolysis. Ann Surg 1997 ; 226 : 306314. 14)Ginzburg E, Cohn SM, Lopez J, et al.: Randomized clinical trial of intermittent pneumatic compression and low molecular weight heparin in trauma. Br J Surg 2003 ; 90 : 13381344. 15)Oakley MJ, Wheelwright EF, James PJ : Pneumatic compression boots for prophylaxis against deep vein thrombosis : beware occult arterial disease. BMJ 1998 ; 316 : 454455. 16)Proctor MC, Greenfield LJ, Wakefield TW, et al.: A clinical comparison of pneumatic compression devices : the basis for selection. J Vasc Surg 2001 ; 34 : 459-464. ● 62 (326) EBNURSING Vol.7 No.3 2007 静脈血栓塞栓症予防のエビデンス 特集 17)Lacut K, Bressollette L, Le Gal G, et al.: Prevention of venous thrombosis in patients with acute intracerebral hemorrhage. Neurology 2005 ; 65 : 865-869. 18)Andre C, de Freitas GR, Fukujima MM : Prevention of deep venous thrombosis and pulmonary embolism following stroke : a systematic review of published articles. Eur J Neurol 2007 ; 14 : 21-32. 19)Scurr JH, Coleridge-Smith PD, Hasty JH : Regimen for improved effectiveness of intermittent pneumatic compression in deep venous thrombosis prophylaxis. Surgery 1980 ; 102 : 816-820. 20)Turpie AG, Hirsh J, Gent M, et al.: Prevention of deep vein thrombosis in potential neurosurgical patients? A randomized trial comparing graduated compression stockings alone or graduated compression stockings plus intermittent pneumatic compression with control. Arch Intern Med 1989 ; 149 : 679-681. 21)Spinal cord injury thromboprophylaxis investigator : Prevention of venous thromboembolism in the acute treatment phase after spinal cord injury : A randomized, multicenter trial comparing low-dose heparin plus intermittent pneumatic compression with enoxaparin. J Trauma 2003 ; 54 : 1116-1126. EBNURSING Vol.7 No.3 2007 (327) 63 ● 特集 静脈血栓塞栓症予防のエビデンス 静脈血栓塞栓症の予防法 薬物的予防法 後藤信哉 GOTO Shinya 東海大学医学部内科学系 Q 抗凝固療法は有効か? *現時点で,わが国で認可承認されている主な抗凝固薬は,ヘパリン(未分画ヘパリン) ,fondaparinux (ペンタサッカライド)とワルファリンである. *未分画ヘパリンは,分子量の違う物質が混ざってできているため,吸収や代謝は状況により異なり,均 一ではない.そのため,ACT,APTT に基づいた投与量の補正が必要である. *分子量の低い分画のみを集めて開発されたのが低分子量ヘパリンである.分子量が一定のため,吸収・ 代謝が未分画ヘパリンより安定している. *低分子量ヘパリンより分子量を厳密に一定にしたのが,ヘパリンの構造のなかから抗凝固効果にかかわ る部分を合成して作ったfondaparinux である. *ワルファリンの深部静脈血栓症予防効果は明確だが,ヘパリンと同様に,同量を投与したときに同じ効 果が現れるとは限らないという欠点がある. Q 予防すべき抗凝固療法の合併症は何か? *抗凝固療法により血栓ができなくなるため,出血性合併症は増加する. *未分画・低分子量ヘパリン使用時には,まれにヘパリン起因性血小板血栓/血小板減少症(HIT)という 合併症が起こりうる. *HIT はヘパリンにより血小板が活性化されて血栓が生じてしまうものである. Q 抗凝固療法中の患者管理で必要なことは何か? *検査ばかりに頼らず,患者の話を繰り返し聞くこと,足の浮腫や呼吸困難などの症状を注意深く観察す ることが大切である. 抗凝固療法は有効か? 知識 欧米諸国に比較すると極めて少数である.主に「ヘ 日本で認可承認されている抗凝固薬 現時点でわが国で認可承認されている抗凝固薬は, ● 64 (328) EBNURSING Vol.7 No.3 2007 パリン」と経口薬としてのワルファリンの2 つが広く 使用されている. 子量が一定になったため,吸収・代謝が安定した. 日本で使用されているヘパリンの特徴 低分子量ヘパリンであれば,一定量を皮下注射する ヘパリンに「」をつけたことには理由がある.い だけで症例によらず,また症例の条件によらず,一 わゆる「ヘパリン」は単一の物質ではない.分子量 定の抗血栓効果が現れることが期待された.実際, の異なる様々な物質が混ざった未分画ヘパリンが, 複数の臨床研究により,低分子量ヘパリンの一定量 日本で広く使用されている「ヘパリン」である.分 を皮下注射することにより,未分画ヘパリンを静脈 子量の違う物質が混ざってできているので,吸収・ 注射してAPTT やACT をしばしば計測して量を調 代謝は状況により異なり,均一ではない.したがっ 節した場合とほぼ同様の出血合併症のリスクのもと て同じ量を投与しても,同じ抗血栓効果を発揮する に,比較的安全に抗血栓効果を達成できることが示 とは限らない.人によっては,5,000 単位の静注でも された 2). 不十分かもしれない.また,同じ量でも別の人,あ APTT やACT を頻繁に計測したり,未分画ヘパ るいは同じ人であっても状況が異なれば,過剰投与 リンの投与量をたびたび調節するのは大変な負担で となり出血を惹起させる可能性がある.そのため, ある.そのため,この負担を減らすことができるの ACT(activated clotting time :活性化凝固時間) が,低分子量ヘパリンの最大のメリットといえる. やAPTT(activated partial thromboplstin time : 活性化部分トロンポプラスチン時間)を計測し,投 与量を調節する必要があることが未分画ヘパリンの Fondaparinux の効果 同様のコンセプトで,未分画ヘパリンから低分子 1) 成分を抽出するのではなく,ヘパリンの構造のなか 欧米にて未分画ヘパリンが広く使用されていたと から抗凝固効果にかかわる部分を合成して作った薬 抱える最大の問題といえる . きには,深部静脈血栓症(D V T )や肺血栓塞栓症 が,fondaparinux(ペンタサッカライド)である. (PE)の予防・治療に未分画ヘパリンが有効であるこ 分子量が一定の均一物質であるという利点が低分子 とを示す臨床的なエビデンスが数多く発表された. 量ヘパリンよりはっきりした薬物である. しかし,本稿では,個別の研究を取り上げるにはス メカニズムの観点からいえば,fondaparinux に ペースも不足しているので,それらには触れず,主 結合したアンチトロンビンⅢのほうが,未分画ヘパ 1) に米国のガイドラインを示していくことにする . 欧米を後追いするわが国では,今後,未分画ヘパ リンはほかの薬物に置き換わっていく可能性が高い. リンに結合したアンチトロンビンⅢよりも活性化第X 因子(Xa)阻害効果が相対的に強いともされる. Fondaparinux の認可承認を受けるためには,そ 物質として均一でなく,吸収・代謝が人により,ま のとき米国で標準治療であった低分子量ヘパリンよ たその人の置かれた環境により変動すること,ACT, りも優れていることを示す必要があった.実際,膝 APTT に基づいた投与量の補正が必要なことは未分 関節置換後の DVT の発症予防効果において fonda- 画ヘパリン使用時には理解しておく必要がある. parinux が低分子量ヘパリンよりも勝ることが示さ れた 3).この研究では,有効性はfondaparinux が勝 低分子量ヘパリンの効果 るものの,出血性合併症もfondaparinux で多くみ 未分画ヘパリンは,分子量の異なる物質の混合物 られた.薬物の性質としてfondaparinux が低分子 であることが問題である.そこで,分子量の低い分 量ヘパリンに勝るか否かは今後の検証が必要である. 画のみを集めた低分子量ヘパリンが開発された.分 実際には,DVT からPE を発症した場合には,筆 EBNURSING Vol.7 No.3 2007 (329) 65 ● 者の長年の経験からは未分画ヘパリンが使用される る.日本人が本当に未分画ヘパリンで困っているの ことが多い.しかし,これらの症例に対しても,fon- か,困っているところはどこなのか,新しい薬物は daparinux を使用することが必ずしも悪いとはいえ 過去の問題を解決してくれるのか,その問題解決の 4) ないとの臨床研究成果が示されている . ために新たな問題を生じることはないのか,などを 十分に考えていくことが求められる. バイアスを見極める視点が求められる 低分子量ヘパリンもfondaparinux も,DVT 予防 経口抗凝固薬ワルファリンの効果と特徴 から急性冠症候群の治療へと適応拡大を狙った臨床 経口の抗凝固薬では,世界的にワルファリンしか 試験が多数報告されるようになっている.企業のス 現時点で使用可能な薬物はない( 「クマリン」という ポンサーシップによることの多い大規模臨床研究の 薬もあるが,作用機序,利点,欠点はワルファリン 性質として,どうしても開発企業の製品が優れてい と同じである) .ワルファリンも,DVT の予防効果 る,との研究成果のほうが優先的に公表される傾向 は明確に示されている 5).しかし,未分画ヘパリンと がある.米国では,特許の消失とともに利益も消え 同様に,同じ量を投与したときに,同じ効果が現れ るため,認可承認後,時間が経過すると,その薬物 るとは限らないところが欠点である.PT-INR(プロ もそれほど優れていなかったという研究成果が出て トロンビン時間の国際標準比)をしばしば計測しな くる傾向にある.そのため,いわゆる「エビデンス」 がら容量調節することが必須である.この問題を解 をみるときには,時間軸も考慮して,新しい薬物に 決する薬物の開発のために多くの努力がなされてい はポジティブな,時間が経過するとネガティブな結 る. 果も出てくることを念頭に入れて評価する必要があ 押さえておくべき抗凝固療法の合併症は何か? 知識 ほうが少ない.これらを用いることで,一度適切な 治療と合併症の関係の理解 抗凝固療法は,血栓をできなくする治療法である. 投与量を決めれば,個人の特質による効果のばらつ きからの出血性合併症は少ないことが期待できる. 血栓ができることは,けがをしたときに血液を失わ ないために人類が獲得した重要な性質である.しか し,抗凝固療法を行って,血栓ができなくなる分, ● 致命的な合併症 未分画ヘパリン使用時には,まれではあるが致命 出血性合併症は増加することになる.これは抗凝固 的な合併症「ヘパリン起因性血小板血栓/血小板減少 療法に内在する問題点であり,どの薬物を使用して 症(heparin-induced thrombosis and thrombo- も逃れることはできない.前述のように,未分画ヘ cytepenia :HIT) 」が起こりうる.この合併症は, パリン使用時には薬効がばらつくため,どんなに密 従来,日本人には少ないといわれていた. にACT やAPTT でモニタリングしても,一過性に HIT は,ヘパリンと血小板の第 4 因子の結合体に 出血性に強く傾く可能性を避けられなかった.薬効 対する抗体により発症する.血栓を予防しようとし のばらつきは低分子量ヘパリンやfondaparinux の てヘパリンを使用したのに,ヘパリンにより血小板 66 (330) EBNURSING Vol.7 No.3 2007 静脈血栓塞栓症予防のエビデンス 特集 が活性化されて血栓ができてしまう,という皮肉な 択的抗トロンビン薬を使うのがよいと筆者は考える 病気である.この病気の発症メカニズムを知らない が,現時点では適応外使用のため,関係者と十分に と,ヘパリンにより血栓ができているのに,さらに 相談して,使用の可否を決めることが必要である. ヘパリンを追加して病気を悪くさせてしまうことに この合併症は低分子量ヘパリンでも起こりうるがfon- なる.この合併症を疑ったら,すぐにヘパリンを止 daparinux では起こらないとされている.HIT の症 める必要がある. 例に,fondaparinux を使用して改善した,との報 血栓を予防するには, 「アルガトロバン」という選 告もある 6, 7). 抗凝固療法中の患者管理で必要なことは何か? 現在の未分画ヘパリン治療では,APTT や ACT によるヘパリンの効果の確認と,その結果に基づい た投与量の調節が必須である. APTT やACT は,いずれも血液がガラス板に接 知識 ることである.決して検査ばかりを行うのではない ことを常に考える必要がある. DVT では症状がない場合が大半である.静脈にで きた血栓が剥がれて血流に運ばれ,肺に詰まるとPE 触することにより固まる現象を標準化した方法であ を発症する.わが国では比較的まれとされていたが 8), る.両者ともに抗凝固薬使用前に比べて値が2 倍程度 最近は増えているという意見もあり,実態を十分に に伸びる量が適切とされる. つかめていない 9).米国では,死因の第3 位を占める 未分画ヘパリンの場合には,出血リスク,抗血栓 重要な疾病である.この病気は突然の呼吸困難によ 効果がACT やAPTT と相関したのは偶然で,体内 り発症することが多い.また,心電図や胸部 X 線な ではACT やAPTT に相当する凝固の延長が抗血栓 どでは特徴的な症状が出にくいため,診断の難しい 効果や出血性合併症と関連しているわけではないこ 病気でもある. とを理解することも必要である. 看護師には,術後安静にてDVT 予防のための抗凝 ほかの抗凝固薬を使用したときには,ほかの指標 固療法を受けていた患者が突然の呼吸困難により苦 を用いたほうがよいかもしれない.真の意味で,出 しみ出したら,この病気を疑い,すぐ医師に報告す 血や血栓の予測因子を明らかにすることは,現時点 る,その医師がPE を疑わなかった場合には根拠を聞 ではできていないといえる. くとともに,CT 検査など緊急時の鑑別に役立つ検査 抗凝固療法中の診療の基本は,患者の話を繰り返 の準備をするという対応が求められる. しよく聞き,足の浮腫などの症状を注意深く観察す 文献 1) Hirsh J, Anand SS, Halperin JL, et al.: Guide to anticoagulant therapy : Heparin : a statement for healthcare professionals from the American Heart Association. 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