オンラインショッピングにおける大学生の ファッション購買

オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
オンラインショッピングにおける大学生の
ファッション購買
指導教員
水越康介教授
都市教養学部都市教養学科経営学系
学習番号 07159006
氏名
竹井祐介
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オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
目次
1、
はじめに
2、
先行研究
2-1、オンラインショップとは
2-2、オンラインショップの利点
2-3、オンラインショップの課題
3、
リサーチクエスチョン
4、
事例・アンケート分析
4-1、分析方法
4-2、アンケート調査
4-3、事例分析
5、
結論・展望
・参考文献
2
オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
1、はじめに
Windows95 発売以来のパソコンブーム、その発展によって、現在オンラインショッピン
グ市場は拡大を続けている。
その中で近年、アパレル産業はオンラインショッピングの売上を飛躍的に伸ばしている。
今後、アパレル産業の成功においてオンラインショッピングでの成功は不可欠であろう。
しかしながら、実店舗での客数減という現状もまたある。
そこで本研究の目的は、①オンラインショッピングの普及で大学生のファッション購買
はどう変化したのかを明らかにすること。②消費者がオンラインショッピングを好む理由
を明らかにすること。③アパレル産業におけるオンラインショッピングでの成功要因を明
らかにすることで、実店舗に足りない要素を明らかにすることである。
また、目的①、②は本研究で筆者が行ったアンケートをもとに、③はスタートトゥデイ
「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」の事例分析をもとに行う。
なお、本文ではネット店舗をヴァーチャル、実店舗をリアルと表記する。
2、先行研究
(2-1)オンラインショップとは(安本哲之(2005)「オンラインショッピングの発
展と課題についての考察」、『鳥取環境大学情報システム学科プロジェクト研究報告書』)
安本(2005)によれば、オンラインショッピングとは、企業がネットワーク上に開設し
たオンラインショッピングにアクセスし、商品の閲覧、注文をアクセス端末で行うシステ
ムであるとし、オンラインショッピングはその他にもオンライン通販、ネットショッピン
グ、ネット通販など、様々な呼称があるが、ここではオンラインショッピングと呼称する
と説明している。
つまりは簡単に言えば、パソコンや、最近では携帯を使い、ネット上で買い物をできる
システムということである。インターネット利用人口も年々増加し、2003 年末のデータで
はインターネット人口普及率は 60%を超え、世帯普及率は 88%を超えている。そのため、
オンラインショッピング市場の可能性はとても注目され、現在オンラインショッピングで
利用できるサービスは多種多様なものとなっている。衣類や書籍、家電機器などの物質的
な物だけではなく、画像や動画といった無形のデジタルコンテンツ、さらには旅行チケッ
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オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
トや株式投資、ホテルや航空券の予約など、様々な取引にオンラインショッピングが活用
されている。
なぜそこまでオンラインショッピングが注目され、人々に利用されるのか。その利点は
後にも述べるが、その一つに直接店に足を運ぶことなく、また時間を気にせず、買い物が
できるという点にある。顧客はアクセス端末でオンラインショッピングにアクセスし、購
入希望商品を注文する、ただそれだけで欲しい物が欲しい時に手に入るのである。通常は
店に足を運び、商品を確認、レジで精算というリアルで行う一連の流れを全てヴァーチャ
ルで行うことを可能にしたシステム、それがオンラインショッピングなのである。
最近ではその決済方法も多種多様であり、特に電子マネーは注目を浴びている決済方法
である。電子マネーはネットワークを使いリアルタイムで決済を行うため、コンビニや郵
便局に出向く必要がなく、オンラインショッピングにとって理想的な支払方法である。
しかしまだ、対応している店舗も限られていて、また電子マネーがどういったものか、は
っきり知らない顧客も多いため、電子マネーの本格的な利用はまだ少し先になるであろう。
筆者も電子マネーについてはあまり詳しくなく、また全てをヴァーチャルで済ましてしま
うことに対する不安があるため、支払いに関しては、代金引換をよく利用する。これは商
品が到着した時に代金を支払うため、一番安全で確実な方法であるといえるかもしれない。
(2-2)オンラインショップの利点(木村達也(2005)『インターネット・マーケテ
ィング入門』pp133‐6 日経文庫)
インターネットで買い物をした人がどんな商品をインターネットショッピングしたかと
いうと、上位 3 位は、書籍・雑誌の 45.3%、旅行・宿泊、航空・鉄道チケットの 37.2%、
CD、ビデオ、DVD の 35.3%になっている。いずれも買い手が品目さえ決定していれば、
どこで購入しても製品自体に変わりがないという特徴がある。
人はなぜインターネットでショッピングするのであろうか。次のようないくつかの理由を
あげることができるという(木村 2005、p.133)。
① 安い価格を探せる
インターネットで気になる商品を検索、または見つけ、その商品を検索することで、数
あるオンラインショッピングの中から最も安い価格のお店を容易に見つけることが可能で
ある。またリアルでの販売価格よりも安いこともこの利点の一つである。
② 情報をもとに自分で選択できる
たとえば旅行商品を購入するときなど、旅行代理店の窓口で特定の企業の商品を押しつ
けられるようなことがなく、安心して選択できる。お店に行き、買うつもりもなかった商
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品を店員さんとの会話でいつに間に買ってしまった。そういったことが多くある人にとっ
ても、誰に言われるでもなく、じっくりと考えられることは利点と言えるだろう。
③ 24 時間アクセスできる
日中や週末の時間をつぶさなくても、夜中でもいつでも好きな時間にショッピングがで
きる。実際、調査によればオンラインショッピングは深夜の時間帯にピークを迎えている。
また株の売買などで 24 時間アクセスできることはこれまでにないサービスと言えるであろ
う。さらに買い物の際、お店で店員さんとやりとりをするのには時間的に限りがあるが、
インターネットでは好きなだけ時間をかけて商品を選ぶことができる。
④ 豊富な情報収集が簡単にできる
検索エンジンとショッピング・エージェントの利用によって、すばやく簡単に「これだ」
と思える商品を探すことが可能になっている。実際の店舗では在庫商品に物理的な限りが
あるが、インターネット上の店では取扱品目もそれらの情報もはるかに豊富である。さら
に、アマゾン・ドットコムのように、利用経験を積むことでサイトが好みや読書傾向に沿
った本を自動的に推薦してくれるサービスもある。
このようにオンラインショップには様々な利点があり、通常の買い物、リアルでは得ら
れない利点を消費者に与えてくれる。
特に 24 時間アクセスでき、時間を気にせず買い物ができること、安い価格を探すことが
容易である点などは、消費者にとってオンラインショップとしての利点が感じやすく、大
事な利点であると言えるだろう。
(2-3)オンラインショップの課題(木村達也(2005)『インターネット・マーケテ
ィング入門』pp171‐6 日経文庫)
オンラインショップの成功を妨げる要因として大きく 2 つの問題を挙げることができる。
1 つ目がオンライン取引に対する消費者の不安である。これは商品と代金の受け渡しにおい
て売り手と買い手の間に時間的・空間的距離があるために発生する。
2 つ目がインターネットそのもの、またその特性に対する問題や不安である。プライバシ
ー情報の流出やセキュリティー被害が代表的な例である。
以下がオンラインショップにおける欠点であり、成功していくために解決すべき課題であ
る。
① 商品を直接確かめることができない
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オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
オンラインショッピングだと商品を直接確かめることができないため、商品の情報を画
像や説明文に頼ることしかできない。日常的に利用している商品であるなら良いものの、
衣服などの買回り品などは、色や形、手触りやサイズ感など、不安要素があまりにも多す
ぎるため、オンラインショップでは敬遠されがちである。
② 限られた購入者
インターネットの利用者が拡大している中、いまだ製品やサービスの購入をインターネ
ット上で定期的に行っている消費者は限られている。2004 年度の調査によれば、わが国で
のインターネット上での買い物経験者は 8 割を超えているものの、その頻度は年に 2~4 回
が主流である。購入経験のあるネットユーザーの中の約半数は、インターネットで定期的
に購入する製品やサービスはないと回答している。インターネットを自由に検索やショッ
ピングに使いこなし、その利便性を日常的に享受しているヘビーユーザーや企業による利
用が増す一方で、まだ多くの一般的な消費者にはインターネットは買い物をするにはなじ
みの持てない場のようである。
③ 無秩序なまでの拡大
今ではインターネット上には無数のウェブサイトが存在し、無尽蔵とも思えるほどの情
報を入手できる環境にあるといえる。しかし、思ったサイトや情報に必ずしもたどり着く
ことができるとは限らず、ユーザーはフラストレーションを感じている。また新たにサイ
トを立ち上げたからといって、それで人々に知られ、アクセスしてもらえるわけではない。
調査によれば、たまたま自社サイトを訪ねてもらっても、8 秒以内に相手の関心にマッチし
なければすぐに他のサイトへ移られてしまうと言われている。こうして気づかれないまま
埋もれてしまうサイトがインターネット上には無数に存在している。
④ 安全性
わが国のインターネット・ユーザーの約 8 割が、インターネット上でのセキュリティー
への不安を感じている。その中では、ウェブ上での情報の取り扱いへの不安が 6 割で最も
多く、次いでウェブサイトの情報内容の信頼性に対するものが約 4 割、ウェブ上で取り扱
われている製品やサービスの信頼性に関するものが 3 割となっている。実際にコンピュー
タ・ウイルスやプライバシー情報の流出など、セキュリティ被害にあった経験者も半数近
くにのぼっている。
⑤ プライバシーと倫理
米国 FTC(連邦取引委員会)が 1997 年に 674 の商用サイトを対象に調査した際、その
92%が顧客の個人情報を収集しながら、その使途を公表していたのはわずか 14%であった。
その後、米国ではプライバシー問題に関しての政府の介入を避けるため、多くのサイトは
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自らで個人情報の収集や利用方針を確立していった。
わが国では、2005 年 4 月 1 日から個人情報保護法が全面施行になった。
しかしながら実際、わが国でインターネット上での個人情報の漏洩被害を受けたことを実
感している人の割合は 25%を占めていて、またユーザーの約 6 割がインターネット上での
情報の取り扱われ方において不安を感じていることが調査で示されている。
このように利点同様、オンラインショップには様々な課題があり、それは消費者の不安
から起因する。
企業がオンラインショップとして成功していくために必要なことは、まず第一に、イン
ターネットそのものの不安を消費者から取り除くこと。第二に消費者からオンラインショ
ップの認識をしてもらうこと。そして最後にオンラインショップの不安を取り除き顧客に
なってもらうことである。この一連の流れの先に上記のような課題を超えた成功が待って
いるのだろう。
3、リサーチクエスチョン
リサーチクエスチョン①
先に(2-2)オンラインショップの利点で購入品目上位 3 位を示したが、実は 4 位に衣
服・ファッションの 32.9%が入っている。
買うべき品目が決まっていれば、製品自体には変わりがないという点においては、本や
DVD、旅行チケットと変わりがないと思われるが、素材感やサイズなどはリアルがあって
初めて買い手は感じることのできる要素である。それにも関わらず、人々はなぜリアルで
はなく、ヴァーチャルを選ぶのであろうか?
→ファッション商品購入に際しては、前の(2-2)オンラインショップの利点に加え、さ
らなる利点があるのではないか。
リサーチクエスチョン②
先の(2-2)オンラインショップの利点であった、オンラインショップにおける購入品
目上位のように、ファッション商品購入に際しても、買いやすい商品、買いにくい商品は
存在するのではないか?
→オンラインショップを利用するユーザーは、ファッション商品購入に際して、リアルで
買う品目、ヴァーチャルで買う品目を区別しているのではないか。
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リサーチクエスチョン③
オンラインショップの発展によって、リアルにおける客数減という実態があるが、本当
に店舗に足を運ぶ顧客の数は減ってしまっているのか?
→来店客数減ではなく購入客数の減少ではないか。リアルでの下見からヴァーチャルでの
購入という形があるのではないか。
リサーチクエスチョン④
前の(2-3)オンラインショップの課題において、顧客は様々な不安を抱えているにも
関わらず、なぜ購入をするのか?
→ZOZOTOWN の成功要因は、消費者の不安を取り除いたことだが、それができたのは、
ZOZOTOWN 内のテナント、有名ブランドの存在、リアルの存在ではないだろうか。
4、事例・アンケート分析
(4-1)分析方法
4 章では 3 章で挙げたリサーチクエスチョンを検証していく形で分析し、1 章で挙げた研
究目的につなげていきたい。
研究目的①(オンラインショッピングの普及で大学生のファッション購買はどう変化した
のかを明らかにすること。)はリサーチクエスチョン②(→オンラインショップを利用する
ユーザーは、ファッション商品購入に際して、リアルで買う品目、ヴァーチャルで買う品
目を区別しているのではないか。)リサーチクエスチョン③(→来店客数減ではなく購入客
数の減少ではないか。リアルでの下見からヴァーチャルでの購入という形があるのではな
いか。)を検証することで明らかにする。
研究目的②(消費者がオンラインショッピングを好む理由を明らかにすること。
)はリサー
チクエスチョン①(→ファッション商品購入に際しては、前の(2-2)オンラインショッ
プの利点に加え、さらなる利点があるのではないか。)を検証することで明らかにする。
研究目的③(アパレル産業におけるオンラインショッピングでの成功要因を明らかにする
ことで、実店舗に足りない要素を明らかにすること。)はリサーチクエスチョン④(→
ZOZOTOWN の成功要因は、消費者の不安を取り除いたことだが、それができたのは、
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オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
ZOZOTOWN 内のテナント・有名ブランド・リアルの存在ではないだろうか。)を検証する
ことで明らかにする。
(4-2)アンケート調査
ここでは大学生、大学院生 146 人にアンケート調査を行うことでリサーチクエスチョン
①、②、③を検証する。
以下がそのアンケート結果である。
問 1、あなたの性別をお聞かせ下さい。
・男性:82 票(56.2%)
・女性:64 票(43.8%)
問 2、あなたの年齢をお聞かせ下さい。
・19 歳:6 票(4.1%)
・20 歳:16 票(11.0%)
・21 歳:34 票(23.3%)
・22 歳:82 票(56.2%)
・23 歳:6 票(4.1%)
・24 歳:2 票(1.4%)
問 3、この一年間、何回ぐらいオンラインショッピングで服を購入しましたか?
・使っていない:97 票(66.4%)
・1~4 回:43 票(29.5%)
・5~9 回:4 票(2.7%)
・10~14 回:0 票(0%)
・15~19 回:0 票(0%)
・20 回以上:2 票(1.4%)
問 4、問 3 でオンラインショッピングを利用したことがあると回答した方にお聞きします
オンラインショッピングで服を購入する場合、一回あたり平均いくらぐらい使いますか?
・0~2500 円:16 票(11.0%)
・2500~5000 円:17 票(11.6%)
・5000~10000 円:15 票(10.3%)
・10000~20000 円:11 票(7.5%)
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・20000~30000 円:2 票(1.4%)
・30000 円以上:2 票(1.4%)
・無回答:83 票(56.8%)
問 5、あなたは服を買うとき、一回平均いくらぐらい使いますか?(実店舗での購入に限る)
・0~2500 円:5 票(3.4%)
・2500~5000 円:22 票(15.1%)
・5000~10000 円:58 票(39.7%)
・10000~20000 円:45 票(30.8%)
・20000~30000 円:11 票(7.5%)
・30000 円以上:5 票(3.4%)
問 6、この一年間であなたは実店舗で何回服を購入しましたか?
・買っていない:1 票(0.7%)
・1~4 回:39 票(26.7%)
・5~9 回:43 票(29.5%)
・10~14 回:26 票(17.8%)
・15~19 回:8 票(5.5%)
・20 回以上:29 票(19.9%)
問 7、問 3 でオンラインショッピングを利用したことがあると回答した方にお聞きします。
なぜオンラインショッピングで服を購入するのですか?(複数回答可)
・24 時間アクセスできる:35 票(24.0%)
・価格:27 票(18.5%)
・時間の節約:26 票(17.8%)
・オンラインでしか買えない商品があるため:18 票(12.3%)
・商品の豊富さ、魅力:16 票(11.0%)
・交通費の節約:11 票(7.5%)
・店舗でのコミュニケーションのわずらわしさから:5 票(3.4%)
・サービス特典(ポイント、クーポン)が魅力的だから:4 票(2.7%)
・その他:1 票(0.7%)
・無回答:95 票(65.1%)
問 8、問 7 で【その他】と回答した方はその理由をお聞かせ下さい。
・オリジナル商品や衣装など、サークルの多人数で揃えたかったから。実店舗では単価が
高かったり、種類が少なかったり、在庫がない場合が多い。
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オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
問 9、問 3 でオンラインショッピングを利用したことがあると回答した方にお聞きします。
この一年間は以前よりもオンラインショッピングでの服の購入回数は増えていますか?
・同じ:28 票(19.2%)
・少し増えた:15 票(10.3%)
・とても増えた:5 票(3.4%)
・とても減った:3 票(2.1%)
・少し減った:2 票(1.4%)
・無回答:93 票(63.7%)
問 10、以前と比べて、この一年間の実店舗での服の購入は増えていますか?
・同じ:63 票(43.2%)
・少し減った:40 票(27.4%)
・少し増えた:28 票(19.2%)
・とても減った:12 票(8.2%)
・とても増えた:3 票(2.1%)
問 11、問 3 でオンラインショッピングを使わない、使ったことがないと回答した方にお聞
きします。なぜオンラインショッピングで服を購入しないのですか?(複数回答可)
・試着したいため(直接確かめたい):84 票(57.5%)
・商品情報の不足:48 票(32.9%)
・支払いの安全性への不安:22 票(15.1%)
・店で店員のアドバイスを受けたい:10 票(6.8%)
・その他:8 票(5.5%)
・無回答:49 票(33.6%)
問 12、問 11 で【その他】と回答した方はその理由をお聞かせ下さい。
・品切れが多すぎるから
・クレジットを持っていない為、支払いができないことが多い
・パソコンをあまり開かないから
・クレジット払いをあまりしたくないから
・オンラインショッピングに興味が湧くきっかけがないから
・お金がないから
・大学生になって服以外にお金を使いたくなったから
問 13、問 3 でオンラインショッピングを利用したことがあると回答した方にお聞きします。
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オンラインショッピングで買ったことのある品目をお聞かせ下さい。
(複数回答可)
・インナー類(T シャツ、シャツ、ニット):26 票(17.8%)
・シューズ:24 票(16.4%)
・グッズ類(かばん、財布、マフラー、ベルト):22 票(15.1%)
・アウター類:19 票(13.0%)
・アクセサリー類:16 票(11.0%)
・ズボン:14 票(9.6%)
・羽織りもの(パーカー、カーディガン):13 票(8.9%)
・無回答:96 票(65.8%)
問 14、オンラインショッピングで買いづらい品目をお聞かせ下さい。
(オンラインショッピ
ングを利用したことがない方も購入を仮定して回答お願いします)(複数回答可)
・ズボン:124 票(84.9%)
・シューズ:84 票(57.5%)
・アウター類:67 票(45.9%)
・インナー類(T シャツ、シャツ、ニット):32 票(21.9%)
・羽織りもの(パーカー、カーディガン):28 票(19.2%)
・グッズ類(かばん、財布、マフラー、ベルト):24 票(16.4%)
・アクセサリー類:18 票(12.3%)
問 15、オンラインショッピングでの服の購入の決め手をお聞かせ下さい。
(オンラインショ
ッピングを利用したことがない方も購入を仮定して回答お願いします)(複数回答可)
・価格:105 票(71.9%)
・商品自体:89 票(61.0%)
・サイトの安全性:62 票(42.5%)
・ブランド:49 票(33.6%)
・その他:4 票(2.7%)
問 16、問 15 で【その他】と回答した方はその理由をお聞かせください。
・特典(オンラインで買うからこその利点)
・家から出なくていい
・在庫があった
問 17、あなたのファッション購買の手順をお聞かせ下さい。
・実店舗でのみ購入:106 票(72.6%)
・オンラインショッピングで下見をし、実店舗で購入:27 票(18.5%)
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オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
・実店舗で下見をし、オンラインショッピングで購入:10 票(6.8%)
・オンラインショッピングでのみ購入:3 票(2.1%)
問 18、ファッションを取り扱う店に求める要素をお聞かせ下さい。(複数回答可)
・商品自体:132 票(90.4%)
・店舗の雰囲気の良さ:95 票(65.1%)
・店舗のアクセスの良さ(立地条件):70 票(47.9%)
・店員の接客(サービス):69 票(47.3%)
・その他:3 票(2.1%)
問 19、問 18 で【その他】と回答した方はその理由をお聞かせ下さい。
・例えばユニクロのヒートテックは試着ができないのでセール時に買った方が安い。しか
し、新商品であればどのような質感かはわからないためネットで買うのは怖い。ネットで
買うのはあくまでもある程度慣れ親しんだ商品であり、手軽に調達するために使うもので
あると思う。あとデザイン T シャツなどはサイズはわかるためネット上でデザインだけ選
べばよいので買いやすい。
・安さ
・低価格なこと
以上から、リサーチクエスチョン①、②、③を検証していく。
前でも述べた通り、オンラインショッピングでは商品を直接確かめることができない。
しかし、商品自体を良く知っているもの、日常的に使用しているものならば、価格の安い
オンラインショップで買う方がコストパフォーマンスに優れている。また、知っている商
品であれば、パソコンや携帯の画像が見づらくても、消費者が不安を抱くことはなく、購
買されやすい。しかしながらその逆もある。
オンラインショピングにおける商品適性が低いのは色やサイズ、細部にまで重点を置
く商品であり、車や住宅、衣料品等が挙げられる。衣料品を例にとってみると、特に
サイズは表現が難しく、着丈や身幅等が何センチか記してある場合、顧客は手持ちの
服と比べながら商品のサイズをイメージしなければならない。この様に衣料品の購入
は一種の賭けであり、商品が届いて実際着てみるまで自分のイメージ通りの商品であ
るか分からないと言える。(安本 2005、p.20)
このようにデザイン性の高い商品、消費者に完全な情報を伝えづらい商品はオンライン
ショッピングには向いておらず、そのことが以下の記述からもわかるだろう。
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オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
オンラインで商品を売るには、買い物をさせる必然性が必要となる。どこで買っても
同じものならオンラインで買う必然性が無いのである。つまり、オンラインショップ
で取り扱う商品には購入を促す魅力が必要である。例えば、通常の店より価格が安い
商品や、近くの店では購入出来ない商品。顧客にとって送料を払ってでも欲しくなる
商品でなければならない。(安本 2005、p.20)
リサーチクエスチョン①(ファッション商品購入に際しては、前の(2-2)オンラインシ
ョップの利点に加え、さらなる利点があるのではないか。
)の検証
これに対する答えは問 7 を検証することで明らかにしたい。
問 7、問 3 でオンラインショッピングを利用したことがあると回答した方にお聞きします。
なぜオンラインショッピングで服を購入するのですか?(複数回答可)
・24 時間アクセスできる:35 票(24.0%)
・価格:27 票(18.5%)
・時間の節約:26 票(17.8%)
・オンラインでしか買えない商品があるため:18 票(12.3%)
・商品の豊富さ、魅力:16 票(11.0%)
・交通費の節約:11 票(7.5%)
・店舗でのコミュニケーションのわずらわしさから:5 票(3.4%)
・サービス特典(ポイント、クーポン)が魅力的だから:4 票(2.7%)
・その他:1 票(0.7%)
・無回答:95 票(65.1%)
まず回答の上位 3 つ(24 時間アクセスできる、価格、時間の節約)であるが、これらは
筆者が(2-2)オンラインショップの利点でも示した通りの結果であり、時間やお金を節
約したいという消費者はやはり多いようだ。
しかしこれらはオンラインショップを利用することで必然的に得られる利点と言える。
注目してもらいたいのは 4 つ目の「オンラインでしか買えない商品があるため」である。
上の記述にもあったように、「オンラインで商品を売るには、買い物をさせる必然性が必要
となる。どこで買っても同じものならオンラインで買う必然性が無いのである。(安本 2005、
p.20)」時間やお金の節約以上にオンラインショッピングで服を買う付加価値がここにある
のではないだろうか。無地のインナーやデザイン性のない商品であるならば話は別である。
しかし高いお金を払い、衣服を買う場合において、オンラインショップという不確実なも
のを選ぶにはそれなりの理由が必要となってくる。
それが今回の「オンラインでしか買えない商品があるため」という結果であろう。
そして、これらの回答をした回答者には問 4、5 において比較的、高価格帯の回答を得ら
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オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
れている。
問 4、問 3 でオンラインショッピングを利用したことがあると回答した方にお聞きします
オンラインショッピングで服を購入する場合、一回あたり平均いくらぐらい使いますか?
・0~2500 円:16 票(11.0%)
・2500~5000 円:17 票(11.6%)
・5000~10000 円:15 票(10.3%)
・10000~20000 円:11 票(7.5%)
・20000~30000 円:2 票(1.4%)
・30000 円以上:2 票(1.4%)
・無回答:83 票(56.8%)
問 5、あなたは服を買うとき、一回平均いくらぐらい使いますか?(実店舗での購入に限る)
・0~2500 円:5 票(3.4%)
・2500~5000 円:22 票(15.1%)
・5000~10000 円:58 票(39.7%)
・10000~20000 円:45 票(30.8%)
・20000~30000 円:11 票(7.5%)
・30000 円以上:5 票(3.4%)
問 4 において全体の平均値が 9762 円に対して、
「オンラインでしか買えない商品がある
ため」と回答した回答者の平均値は 12083 円であり、問 5 において全体の平均値が 14264
円にたいして、「オンラインでしか買えない商品があるため」と回答した回答者の平均値は
15278 円であった。つまり「オンラインでしか買えない商品があるため」と回答した回答
者はファッションに対する興味が高い人という結果を得られた。
よってファッションに対する興味が高い人にとって、ファッション商品購入に際しては、
前の(2-2)オンラインショップの利点に加え、さらなる利点があることがわかった。
リサーチクエスチョン②(オンラインショップを利用するユーザーは、ファッション商品
購入に際して、リアルで買う品目、ヴァーチャルで買う品目を区別しているのではないか。)
の検証
これに対する答えは問 13、14 を検証することで明らかにしたい。
問 13、問 3 でオンラインショッピングを利用したことがあると回答した方にお聞きします。
オンラインショッピングで買ったことのある品目をお聞かせ下さい。
(複数回答可)
・インナー類(T シャツ、シャツ、ニット):26 票(17.8%)
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オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
・シューズ:24 票(16.4%)
・グッズ類(かばん、財布、マフラー、ベルト):22 票(15.1%)
・アウター類:19 票(13.0%)
・アクセサリー類:16 票(11.0%)
・ズボン:14 票(9.6%)
・羽織りもの(パーカー、カーディガン):13 票(8.9%)
・無回答:96 票(65.8%)
問 14、オンラインショッピングで買いづらい品目をお聞かせ下さい。
(オンラインショッピ
ングを利用したことがない方も購入を仮定して回答お願いします)(複数回答可)
・ズボン:124 票(84.9%)
・シューズ:84 票(57.5%)
・アウター類:67 票(45.9%)
・インナー類(T シャツ、シャツ、ニット):32 票(21.9%)
・羽織りもの(パーカー、カーディガン):28 票(19.2%)
・グッズ類(かばん、財布、マフラー、ベルト):24 票(16.4%)
・アクセサリー類:18 票(12.3%)
「オンラインショピングにおける商品適性が低いのは色やサイズ、細部にまで重点を置
く商品であり、衣料品を例にとってみると、特にサイズは表現が難しく、着丈や身幅等が
何センチか記してある場合、顧客は手持ちの服と比べながら商品のサイズをイメージしな
ければならない。この様に衣料品の購入は一種の賭けであり、商品が届いて実際着てみる
まで自分のイメージ通りの商品であるか分からないと言える。(安本 2005、p.20)」と書
かれているように、デザイン性の高い商品(ズボン)、直接履いてみたい商品(シューズ)、
高単価商品(アウター)が買いづらく、逆に、インナーなどの低単価な商品、グッズなど
サイズがわかりやすい商品が買いやすいという回答を得られた。シューズが 2 位であるの
は意外であるが、有名ブランドなどで履き親しんだ商品であれば買いやすいという結果で
はないかと思う。
男女別に見てみると、アウターを買ったことがあると回答した 70%が男性であり、価格
に対する反応は女性よりも小さいという結果を得られた。また羽織りものなどデザイン性
の高い商品に関しては、買いづらいと回答した 80%が男性であり、デザインに関する反応
は男性は高いという結果を得た。逆にアクセサリーやグッズ、羽織りものなどのデザイン
性の高い商品に関して女性は購入に抵抗感が少ないという結果で、買いづらいと回答した
女性の割合は全体の 20~30%でしかなかった。これは筆者の考えではあるが、女性はデザイ
ンに対するこだわりがないということではなく、ファッションに対する知識が豊富である
ということの裏返しではないかと思う。
16
オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
よってオンラインショップを利用するユーザーは、ファッション商品購入に際して、リ
アルで買う品目、ヴァーチャルで買う品目を価格、デザイン、サイズ、価格などから区別
しているという結果を得られた。
リサーチクエスチョン③(来店客数減ではなく購入客数の減少ではないか。リアルでの下
見からヴァーチャルでの購入という形があるのではないか。)の検証
これに対する答えは問 9、10、17 を検証することで明らかにしたい。
問 9、問 3 でオンラインショッピングを利用したことがあると回答した方にお聞きします。
この一年間は以前よりもオンラインショッピングでの服の購入回数は増えていますか?
・同じ:28 票(19.2%)
・少し増えた:15 票(10.3%)
・とても増えた:5 票(3.4%)
・とても減った:3 票(2.1%)
・少し減った:2 票(1.4%)
・無回答:93 票(63.7%)
問 10、以前と比べて、この一年間の実店舗での服の購入は増えていますか?
・同じ:63 票(43.2%)
・少し減った:40 票(27.4%)
・少し増えた:28 票(19.2%)
・とても減った:12 票(8.2%)
・とても増えた:3 票(2.1%)
問 17、あなたのファッション購買の手順をお聞かせ下さい。
・実店舗でのみ購入:106 票(72.6%)
・オンラインショッピングで下見をし、実店舗で購入:27 票(18.5%)
・実店舗で下見をし、オンラインショッピングで購入:10 票(6.8%)
・オンラインショッピングでのみ購入:3 票(2.1%)
問 9 からオンラインショッピングの利用が少し増えた、とても増えたと回答した回答者
の割合は全体の 38%、少し減った、とても減ったと回答した回答者の割合は全体の 9%、一
方、問 10 で実店舗での購入が少し増えた、とても増えたと回答した回答者の割合は全体の
21%、少し減った、とても減ったと回答した回答者の割合は全体の 42%であった。
この結果から、また問 17 の実店舗で下見をし、オンラインショッピングで購入という回
答がわずかながらあるという結果を合わせると、実店舗で下見をし、オンラインショッピ
17
オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
ングで購入という流れはあるのではないだろうか。
またこういう結果が生まれる理由として、問 7 における、店舗でのコミュニケーション
のわずらわしさや、オンラインショップならではの在庫の豊富さなどを挙げられるだろう。
つまりは単に、回答者の個人的な理由(衣服にお金をかけられなくなったなど)であるの
か、本当に実店舗の顧客がオンラインショッピングに流れつつあるのか、現段階でははっ
きりとはわからないが(わずかには見てとれるが)、今後オンラインショップの発展に伴い、
見えてくる結果ではなかろうか。
(4-3)事例分析
(土井弘美(2007)
「スタートトゥデイ「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」-e コマースのその
先を行く-」
、『繊維トレンド』、2007.9・10 月号、pp.43-8)
ここではスタートトゥデイ「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」の事例分析を行うことでリサ
ーチクエスチョン④を検証し、研究目的③を明らかにする。
① ZOZOTOWN(ゾゾタウン)とは
20代を中心とする若い世代に絶大な人気を誇るオンラインショッピングタウン
「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」は、2004年12月に誕生した。「ZOZO」というのは、
創造(クリエーション)・想像(イマジネーション)の2つの「ZO」を取った造語である。
運営しているのは、「スタートトゥデイ」という千葉県千葉市幕張に本社を持つ企業であ
る。スタートトゥデイは、1995年に輸入CDやレコードのカタログ通信販売からスタート、
2000年には通信販売からオンラインショップに切り替えた(土井2007、p.43)。
そこで、「音楽とファッションはリンクしているもの。CDやレコードだけでなく、自分
たちの好きな様々なファッションを紹介していきたい」ということになった。そこでスト
リート系のブランドに声をかけ、オンラインショップの2号店を作った。これが「EPROZE
(イープローズ)」で、同社の最初のファッションショップである。
それから、次々にショップが立ち上げられた。テイストやシルエットが大きく異なる商品
を、同じショップに並べるわけにもいかなかったからである。04年には17店舗が、同じ会
社でありながらすべて別々のドメインを取得して運営するという形式になっていた。この
17店舗が母体となって「ZOZOTOWN」がスタートした。顧客からの「同じ会社で運営し
ているのなら、一括して商品を送ってほしい」という声があったことも、誕生の一因であ
る。
② ZOZOTOWNの強み
07年6月現在、ファッションタウン「ZOZOTOWN」はショップ数64、ブランド数565。
18
オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
06年9月に成立した仮想商業施設「ZOZOTOWER」はショップ数24、ブランド数88で、計
87 ショップ、648ブランドとなっている(土井2007、p.44)。20代、30代を中心とするカ
ジュアルウエアのショップが多いが、いわゆる「109系」のファッションはほとんどない。
「ディーゼル」などのインポートブランドや、デザイナーズ系人気ブランドもある。
出店形式は2通りで、先に述べた自社運営のタイプ(買い取り方式)と委託方式がある。
「ZOZOTOWN」の成立後、ユナイテッドアローズが展開する「時しらず」「グリーン
レーベル」が出店した。同社はその後「ユナイテッドアローズ」「アナザーエディション」
「オデットエオディール」など数々の店舗を出し、いずれも人気を呼んでいる。この出店
方法は委託で、スタートトゥデイが販売手数料を取る形。物流をスタートトゥデイで、店
舗の管理(商品MD、商品コメントの入力、商品の店舗間移動など)はユナイテッドアロー
ズ内で行う。ユナイテッドアローズ社内には「ZOZOTOWN」の専門セクションが設置さ
れているという(土井2007、p.44)。この形態を取った理由は、「大手セレクトショップ
が出店することになった際、二重卸の形にならないようにするために、ディベロッパーの
ような形をとって入店した方がよいと判断」したからだという。現在では、ビームス、シ
ップス、アメリカンラグシー、ナノユニバースなどの大手セレクトショップが、同様の形
式で出店している。
売上は自社ショップが6割、委託販売が4割を占めている。こういった有名セレクトショ
ップの存在が「ZOZOTOWN」の知名度を上げ、売上も伸ばしていった要因になっている。
スタートトゥデイは、本社近くに約1200坪という大きな物流倉庫を持っている。ここで、
入荷した商品の検品・採寸・写真撮影・画像処理や、受注に伴うピッキングと商品の梱包・
発送などのバックヤードの仕事を行っている。この業務システムの部分が非常に効率的に
構成されているのが、同社の特質でもある。到着した商品は、実際にスタッフが採寸する。
ブランド側の情報をそのまま転記するのではなく、ポイントになる箇所を実際に計測。1商
品につきほぼ7枚の写真を撮影、服好きのスタッフが「お客様が商品を手にする際に気にな
る部分」を考えつつ撮影していく。撮影した写真は、実際の商品のカラーと差異はないか
を確認しつつ画像処理を行う。素材感や特徴などは商品コメント欄に記入。新着商品が1日
500点以上あるというから、撮影する写真の点数も膨大なもので、8カ所以上あるスタジオ
がフル稼働している状態だ。
今日注文された分は翌日午前中に発送、地域にもよるが、翌々日には顧客の手元に到着
する。優れているのはリアルタイムに在庫が把握できている点で、サイト上で顧客の注文
があれば、自動的に在庫が消しこまれるようになっている。そのために、注文を受け付け
た後メールで「申し訳ございません、お申し込みをいただきましたが在庫切れでした」と
いうことはない。
一般のモールと違い、システムから物流までアウトソーシングせずに、すべて自社で持
っていること、在庫管理まできちんとできていることが同社の強みだ(土井2007、p.45)。
19
オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
③ ZOZOTOWNの戦略
「ZOZOTOWN」には「セントラルゾーン」「コンセプトゾーン」「セレクトゾーン」
などのいくつかのカテゴリーがあるが、とくに厳密に分けているわけではない。
「リアルな街を見ても、原宿と青山は街の雰囲気やショップのテイストがそれぞれ違う。
その微妙な違いをゾーンとして分けているだけ(土井2007、p.45)」という。
統計的な数字を見てみると、04年12月にオープンしてから06年11月時点までの購入者は
20万人以上。07年3月の月間PV(ページビュー)数は2億8000万PVである。06年4月から07
年3月までの統計によれば、リピート率は53%、購買層の平均年齢は26歳程度で、男性55%・
女性45%となっている。また、ショップを見るのは夜が多いというのは定番だが、これには
秘密があるという。以前、人気商品がサイト上に出た瞬間にぱっと売切れてしまうことが
よくあった。そこで、顧客への公平性を保つために、ショップごとに販売開始時間を設定
して告知することにした。「○○の販売開始まであと××秒!」と秒単位で表示した。販
売開始時間は午後7時から11時までの間なので、これに合わせてアクセスする人が多くなっ
たという(土井2007、p.45)。「あと××秒!」という表示にはエンターテイメント性が
ある。発売開始とともにすぐに売り切れるアイテムもあり、発売前には「姿は見えなくと
も、その商品の前に並んでいる」人々の姿が見えるようだ。顧客サービスとしては、まず
ポイント還元。購入金額の1%がポイント(ZOZOPOINT)とされ、1ポイント1円で利用で
きる。送料は全国一律に399円で、1万円以上は無料となっている。決済はクレジットか代
引き決済で、ほとんどのクレジットカードが使用できる。「ZOZOCARD(ゾゾカード)」
というクレジットカードも発行していて、これを使って決済するとポイントが2倍になる。
カスタマーサポートは、基本的にメールでやりとり。社内共通のサイトに、「こういうブ
ランドを入れてほしい」などの希望が上がってくれば、随時改善していく。
希望する顧客にはメールマガジンも送っている。顧客が選んだショップのその日の新着
商品の情報で、
「Aブランドが○点」のような形。オリジナルセレクトショップのものだと、
さらに「カットソー○点」のようにアイテムごとの点数が出る。「残り僅少!」「ぜひお買
い求めください!」といったありがちなセールストークは一切入っておらず、極めてシン
プル。複数のショップからの新着情報を受信している顧客も多いが、すべて1通でまとめら
れている。URLも掲載されているため、直接ショップごとの新着アイテム一覧ページに飛
べるようになっていて使い勝手がいい。新商品の入荷がなければ、当然その日はメールも
ない。
また、年に数回オフィシャルガイドブック「ZOZOBOOK(ゾゾブック)」を発行、不定
期だが買い上げ商品とともに梱包、顧客に送付している。単なるカタログではなく、商品
紹介ページにデザイナーのメッセージをつけるなど、読み物的な部分も増やし、グラフィ
ックデザインにも注意を払って仕上げられたものだ。
④ 要点
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オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
【1】ゾゾタウンは輸入CDやレコードのカタログ販売からスタートし、これをオンライン
化しファッションのショッピングサイトとすることで急速に伸び、年商112億円を売り上げ
るまでになった。
【2】これには、有名セレクトショップチェーンの登場も大きく関わっている。これらのセ
レクトショップは自社内に専用部門を持ち、ゾゾタウン内にテナントのような形で出店。
この方法は双方にとってメリットをもたらすこととなった。
【3】ゾゾタウンを運営するスタートトゥデイの最大の強みは、バックヤード機能のすべて
を自社で持ち、システマチックに運営していること。
【4】 同社はサイトショップのみならず、コミュニケーションサイトを立ち上げて他社と
の差別化と顧客サービスの充実を目指す。
以上を踏まえた上で、
リサーチクエスチョン④(ZOZOTOWN の成功要因は消費者の不安を取り除いたこととあ
るが、ではどのようにして不安を取り除いたのだろうか。
)を確認していこう。
以下のような記述がある。
オンライン・ショップの阻害要因である消費者の知覚リスクに焦点をあて、ショップ
の情報の提供のあり方を論じる。知覚リスクを削減するために提供すべき情報を分類
し、ショップのパフォーマンスとの関係を考察している。日本のオンライン・ショッ
プ 133 社の調査の結果、リアル世界の評価情報(実店舗の有名性等)と取引に関する
情報(在庫・配送納期・苦情処理)を主に提供するタイプ(リアル情報型)と、ネッ
ト上の評判を利用して消費者や専門家の評価情報を主に提供するタイプ(ネット情報
型)の 2 つのビジネス・モデルが発見され、どちらのモデルでも顧客獲得が可能であ
ることが示されている。
(野島 2003、p.41)
ここでいう知覚リスクとは、オンライン取引に対する消費者の不安のことであり、その
不安を取り除く方法として上記の 2 つのモデル(リアル情報型、ネット情報型)が発見さ
れた。
つまり以上から ZOZOTOWN は「リアル情報型」として知覚リスク(消費者の不安)を
削減し、顧客を獲得していったと考えられる。
このように ZOZOTOWN の成功要因として、消費者の不安を取り除いた要因の 1 つとし
て、有名ブランドの存在を挙げることに間違いはないだろう。
しかしそれだけではない。以下のような記述もある。
21
オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
実際に様々なオンラインショップにアクセスすると、店舗によって提示している商品
情報の量に違いがあることが判明した。例えば、衣料品を扱うオンラインショップを
見てみると、商品の画像が一枚だけの店舗もあれば、拡大画像や細部画像等の細かい
画像やモデルが着用している画像を載せている店舗もあった。また、説明文に注目す
ると、全く何も商品を説明していない店舗もあれば、細部の説明や着心地、サイズの
アドバイス等、細かく説明している店舗もあり、オンラインショップから提供される
商品情報の量には各々のオンラインショップで格差があることが判明した。
これらの差は顧客の購入意欲に大きく影響するはずである。商品情報を多量に必要と
する衣料品等を購入する場合、画像が一枚しかなく商品説明も乏しい商品を購入する
のは大変不安であり、購入をひかえる要因の一つと言える。逆に、商品画像や説明文
が詳細であると購入もスムーズに行なうことが出来る。(安本 2005、p.13)
ZOZOTOWN は前述したように商品情報をわかりやすく伝えている点においても、また
それが有名ブランドのものであるからこそ、消費者の不安を取り除き、購買につなげてい
るのであろう。
さらに売れ筋をランキングで示し、消費者の評価を示すことで「ネット情報型」として
の顧客獲得もなされている。
しかし、このように書いてしまうと、有名ブランドの裏付けとしてのリアルの存在の必
要性はあるものの、実際にリアルに足を運ぶ必要がなくなってしまうのではと思うだろう。
そうではない。消費者にとって、ヴァーチャルやリアルの利点が大事どうこうではない。
消費者にとっては、ヴァーチャルもリアルも両方とも必要なのである。以下のような記述
がある。
顧客が求めているのは選択肢リアルとオンラインのハイブリッド
これまで見てきたように、インターネットをビジネスに用いることで、企業は事業を
以前に増して効率的に実施できることがわかります。しかし現実はというと、インタ
ーネットだけですべての事業を完結している企業などごくわずかです。一方、顧客に
してもすべての取引をインターネットで行える状態にあるわけではありません。イン
ターネットでの買い物に比べれば時間やコストがかかっても、実際に店で商品を見比
べたり、店員からのアドバイスを得るため、またデート目的のショッピングのために
実際の店舗を選択するというのはごく一般的です。
そうした意味では、よくヴァーチャルかリアルか、などといわれますが、顧客にとっ
てはどちらも大切であり、そのときの状況や商品カテゴリーに合わせて選択できるこ
とが理想的なのではないでしょうか。商品の情報収集や絞り込みはネットで、あるい
は店の選択をネットで行い、そして最終的な購買は店で行うこともあります。
顧客にとっては、どうやって買うかは目的ではなく手段なのですから、インターネッ
22
オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
トと既存の店を組み合わせたハイブリッドな取引方法を選択肢として顧客に提供する
ことが大切です。(木村 2005、pp.158‐9)
ようするに顧客にとって大事なのは選択肢であり、考える余地なのであろう。リアルと
ヴァーチャルの両方があることで顧客は選択肢を挙げることができ、また挙げやすくなり、
購買を快適に行うことができるということである。
またアパレル産業の視点から言えば、リアルを活かすためにヴァーチャルが、ヴァーチ
ャルを活かすためにリアルが必要であるといえる。
5、結論・展望
それでは最後に本研究の分析結果を順番に明らかにしていきたい。
研究目的①(オンラインショッピングの普及で大学生のファッション購買はどう変化した
のかを明らかにすること。)の検証
リサーチクエスチョン②、③でも示したように、オンラインショッピングの普及は大学
生にファッション購買する時の選択肢を与えたと言えるだろう。(代表的な例でいえば、オ
ンラインショップで商品を下見し、買う品目を決めてから、実店舗を訪れること。実店舗
を訪れる必要のない商品をオンラインショップで購入し、実店舗に訪れなくなったこと。
などが挙げられる。)しかしながら、その選択肢を全ての大学生が受け取ったかというとそ
うではない。
ファッションに興味のある人はオンラインショッピングの利用を進め、ファッションに
興味のない人はオンラインショップを利用すらしないという二極化が進んだのである。
問 6 で、実店舗で一年間に何回服を購入したかという質問に対して、最も少ない 1~4 回と
回答した回答者のうち 85%がオンラインショップを利用していない回答者であった。つま
りはオンラインショップを使っていない人が実店舗で多く購入しているわけではなく、フ
ァッションにあまり興味のない、実店舗にあまり行かない人は、そもそもオンラインショ
ップを利用しないという結果が得られた。
また問 3 でオンラインショップの利用率が高い回答者は、問 6 の実店舗での購入回数も
多く、また問 5 の実店舗での一回あたりの購入金額も高いことがわかった。つまりは服に
興味のある回答者はオンラインショップの利用率が高いことがわかった。
また男女別に見ると、特に男性の方が、二極化の進む程度が強く、問 3 のオンラインシ
23
オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
ョップの利用率の高い層のうち約 70%が男性で、またオンラインショップを利用していな
いと回答した回答者のうち約 60%が男性であった。
このようにオンラインショッピングの普及は大学生にファッション購買における、選択
肢を与えたと共に、ファッションに興味がある人、ない人、その境界を改めて明確にした
といえる。
研究目的②(消費者がオンラインショッピングを好む理由を明らかにすること。
)の検証
リサーチクエスチョン①からファッションに対する興味が高い人にとって、ファッショ
ン商品購入に際しては、前の(2-2)オンラインショップの利点に加え、今回ならば、オ
ンラインでしか買えない商品があるためという利点があることがわかったことなどから、
消費者がオンラインショッピングを好む理由は、その人のファッションに対する興味の度
合いによって変わってくるものであることがわかった。
ファッションに対して、それほどまでに興味がない人は、時間やお金の節約という面にオ
ンラインショッピングの利点を見出だしている。
逆にファッションに興味を持っている人は、もちろん時間やお金の節約という面にも利点
を見出だしているが、さらにオンラインショッピングならではの利点という部分に、今回
であるならば、オンラインでしか買えない商品があるため、商品の豊富さ、サービス特典
の魅力などがその利点に挙げられるだろう。
このようにオンラインショッピングは、買う品目その分野に対しての興味が強ければ強
い人程、またオンラインショッピングの利用度合いが強ければ強い人ほど、オンラインシ
ョッピングの必然的な利点である、時間的、金銭的な利点以上に、オンラインショップを
使用する理由、その利点にこだわる傾向にあるのではないか。
研究目的③(アパレル産業におけるオンラインショッピングでの成功要因を明らかにする
ことで、実店舗に足りない要素を明らかにすること。)の検証
リサーチクエスチョン④からオンラインショッピングの一番の成功要因は消費者の不安
を取り除くことであることがわかった。
同様にアパレル産業がオンラインショッピングで成功するためには、消費者の不安を取
り除くことが必要で、その方法はアンケートの問 15 にもあるように、商品自体、ブランド
にあると言える。つまりは実店舗の有名性がアパレル産業におけるオンラインショッピン
グでの成功要因であるだろう。
もちろん価格やサイトの安全性、サービスというものもオンラインショッピングの成功
には不可欠であるが、価格で勝負するのであるならば、本当に安くなければ消費者は引き
つけられないだろうし(安すぎても怪しまれるだろう)、サイトの安全性といっても何を持
って安全とするかは人それぞれであろう。つまりはこれらの要素は顧客を獲得してから顧
客が意識する部分の付加価値であり、まずは顧客の不安を取り除き、オンラインショップ
24
オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
の顧客として獲得することが第一である。そのために必要なのが信用であり、それはイコ
ール、実店舗の信用ということになる。それについて以下のような記述がある。
昨年11月に当社で実施したアンケートによると、ZOZOのサイトで商品を見てから、実
際のショップで購入したと回答したお客様が約50%いらっしゃいました。当社としては、
ネットで買うかリアルショップへ行くかは、お客様に自由に決めていただければいい
と思っています。(土井2007、p.46)
逆もしかりで、実店舗で購入した顧客がその後、そのオンラインショップで購入するケ
ースもあるだろう。そうなるかどうかは実店舗で顧客がその店に好印象を抱くかにかかっ
ている。それを得るためには良い雰囲気の店づくり、店員の良いサービスが不可欠である。
店員は新規顧客を常にリピーターにすべく努力をすべきで、そうすれば決して実店舗のリ
ピーターにならなかった顧客もオンラインショップの顧客になっているかもしれない。こ
のように常にオンラインショップを意識した店作り、サービスをすることで実店舗での利
益プラスアルファ、オンラインショップの大きな利益が店の利益となる。オンラインショ
ップの成功が今後、アパレル産業において会社の成功に繋がることは間違いない。
25
オンラインショッピングにおける大学生のファッション購買
参考文献
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