住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 11 月 15 日に実施される第 29 回試験につきましては、従来テキストで学習された皆様は 学んでいない下記のテーマが出題されることがありますので、受験前にあらかじめ学習を お願いいたします。 また、さらに学習内容を深めるために、『住宅ローンアドバイザー認定試験問題集』との 併せての学習をお勧め申し上げます。 【教科1 住宅ローンの基礎知識】 1.住宅ローンとは 住宅ローンは、生涯多くとも数回しか取得しえない住宅という財を取得するために、借 り手にとっては、20~30 年の間かけて返済する金融商品である。一方の貸し手にとっては、 長期で安定した金利を受け取ることができる手段であり、住宅ローン融資により家族のメ イン口座を開設することにより顧客を抱え込むことができる一方で、長期に返済期間が渡 ることから顧客の返済能力や金利水準の変動といったリスクを抱えることになる。商品を 大別すると固定金利型と変動金利型に分かれ、それぞれのリスクは以下の通りである。 住宅ローン利用客 ローンの種類 固定金利型ローン 住宅ローン貸し手の金融機関 将来金利が下がった時の恩恵は 金利上昇が続いた時の資金調達コ 享受できないが、生活設計は立 スト増が貸出金利に転嫁できない て易い。 変動金利型ローン ので収益が悪化する。 金利の安い時にはメリットはあ 金利リスクは借り手に転嫁出来る るが、将来、金利が上昇した時 が、金利上昇時にローンの焦げ付き リスクが心配される。 の金利負担が大きい。 2.住宅環境の変化 (1)長期耐用住宅(200 年住宅)普及に向けた取組み ① 取り組みの背景・経緯 「住宅の寿命を延ばす(200 年住宅)への取組」として ア、超長期住宅先導的モデル事業の創設 イ、住宅履歴情報の整備 1 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 ウ、超長期住宅ローンの開発 等が盛り込まれ、現在、具体的な内容について検討が進められている。 ② 超長期住宅に対応した住宅ローンの開発 超長期住宅に対応した民間住宅ローンの開発を促進する観点から、現行フラット 35 の 35 年期間を 50 年に延長したフラット 50 の取扱いが 09 年6月より開始されている。 ③ 住宅の長寿命化促進税制 この法律では、長寿命化促進税制として次の 3 つの優遇を盛り込んでいる。 ア、登録免許税:税率を一般住宅特例より引き下げる。 イ、不動産取得税:課税標準からの控除額を一般住宅特例より拡大する。 ウ、固定資産税:新築住宅に係る減額特例の適用期間を一般住宅より長期間設定する。 (2)住宅瑕疵担保履行法 ① 法律の概要 構造計算書偽装問題を契機に施行。住宅の買主等を保護するため、売主等(宅建業者や 建設業者)に、保証金の供託又は保険への加入を義務付けるものである。 ② 住宅ローンアドバイザーとして知っておきたいポイント 保証金の供託を選択する売主等、つまり宅地建物取引業者や住宅供給業者などには、09 年 10 月1日以降でないと供託の義務は生じないが、保険に加入することを選択している売 主等の場合は、08 年 5 月から責任保険法人が指定されているため、引き渡し時期をみて適 切に付保手続きをとる必要がある。 3.住宅ローン市場 (1)住宅ローン金利 ① 最高 8.5%から4%台で長く推移 住宅ローンの金利は、市場の金利の変動に伴って見直しが行われる、つまり景気に大き く左右される特長がある。 過去約 20 年の推移をみると、昭和後期の円高不況から平成景気に移行する時点から景気 に合わせる形で金利は徐々に上昇し、バブル時期には都市銀行の住宅ローン変動金利は最 高 8.5%という高水準を記録している。 その後バブルがはじけて景気後退にともない、徐々にと下降をつづけ、平成 10 年に 2% 台に低下した。その後、平成 11 年から開始された景気対策のひとつ、ゼロ金利時代を経て 変動金利では引き続き 2%台で推移している。現在に至るまで、実に 10 年以上もの間低金 利時代が続いていることに注目する必要がある。 ② 96 年から低水準で推移 96 年から低金利が定着した今の時代では、その恩恵を実感することはなかなか難しいか もしれないが、過去約 20 年間にわたる住宅ローン変動金利は平均約 4% ということからみ ると、現在の住宅ローン金利は比較的低水準で安定していると考えることができる。 2 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 しかし、06 年から 09 年にかけて変動金利型ローン金利が 2%台にあって比較的低水準に 民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等) (%) 10.00 8.50 8.00 6.00 H21年 3月 変動金利 (3年固定金利) 4.90 3.20% 4.00 2.375% 2.00 2.25% H21年 3月 (変動金利) 2.475% 固定金利期間選択型(3年)の金利 0.00 S59 S60 S61 S62 S63 H1 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 ( ※ ) 主 要 都 市 銀 行 に お け る 金 利 を 掲 載 。 な お 、 変 動 金 利 は 昭 和 59年 以 降 、 固 定 金 利 期 間 選 択 型 ( 3年 ) の 金利は平成7年以降のデータを掲載。 あるにも拘らず、固定金利型ローンの金利が 3%台と平均 1%の開きが出ている点に注目す る必要がある(図表 1‐11 参照) 。具体的には、住宅ローン利用客はローン選択に際して当 面金利の安い変動金利型ローンを選好する傾向があるので、住宅ローンアドバイザーはこ の点(リスク)についての説明義務が求められる。 (2)金利変動メカニズム ① 長・短プライムレート 次に住宅ローン金利に直接影響する 2 つの市場金利について説明する。1 つは、長期プラ イムレート(以下「長プラ」という)で金融機関が優良企業に貸出す 1 年超の長期貸付に 適用される金利で、10 年長期国債の利回りにほぼ連動するような形でその都度決定される。 2 つは、短期プライムレート(以下「短プら」という)で優良企業に貸出す 1 年以内の短 期貸付に適用される金利で、銀行ごとに決定されている。ちなみに、この金利は、日銀の 政策金利の誘導目標である『無担保コール翌日もの』にほぼ連動した動きを示すという性 質がある。 住宅ローン金利は、以前は前述の長プらを基準に決められ、各金融機関間でほとんど差 がなかったが、94 年夏、金融の自由化に伴って各金融機関では独自に金利を設定できるよ うになった。そして現在は、長期固定型(フラット 35 を含む)や 10 年超の固定金利期間 選択型については、10 年物国債の利回りに代表される長期金利に、変動型や固定期間の短 い固定金利選択型では、短プらのような『短期金利』に連動するのが一般的となっている。 なお、プライムとは優良企業に貸し出す「優遇」という意味で使用されており米国サブ 3 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 プライムは優遇ではない「低信用者」となる。同時に長プラ、短プラが共に 90 年前後には 8%台にあり、このような高金利時代が到来したときは変動金利のリスクを諸に被ることと なる。 短期プライムレート・長期プライムレートの推移 10 8.9 8.0 8 4.9 6 5.7 短期プライムレート 2.65 長期プライムレート 4 4.25 3.0 2 1.625 1.375 1.25 0 % * H1. H2 H5 H6 H7 H11 H18 H21 短期プライムレートは、都市銀行 6 行(みずほ、三菱東京 UFJ、三井住友、りそな、みずほコーポレート、埼玉り そな)が自主的に決定した金利のうち、最も多くの銀行が採用した金利 日銀の公表データより作成 * ② 金利変動の仕組み では、どのような要因・要素が金利に影響を与えるのだろうか? 金利はお金の「需給のバランス」によって決定される。主な変動要因としては、景気、物 価、株価、海外金利、為替、または政府の金融政策などが挙げられるが、実際にはこれら の要素が複雑にからみあって金利変動に影響を与えている。 もちろん実体経済は単純ではないので、先に挙げた要素以外からも影響を受けているが、 ここでは主な6要素について簡単に見ていく。 一般的に、景気が回復、あるいは回復局面になると経済活動が活発化し、企業の資金需 要が高まる。例えば、企業としてはさらに売上アップを期待して設備投資を増やす、ある いは事業拡大するために、企業は金融機関からの借入れを増やそうとする。資金需要が増 加すると、金利が多少高くても企業は借入れを行うので、金融機関は金利を高く設定し(金 利は上昇) 、逆に景気が後退すると、経済活動が停滞するため、企業の資金需要は減少して、 金利が下がる。 ここで注意したいのが、我々個人が実質的な景気回復の実感はなくても、世の中の資金 需要が増えれば金利が上昇する可能性があるという点で、この点においては、きちんと政 府から発表される景気指標を確認しておく必要がある。 ③ 物価動向と金利 4 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 物価とは、個々のモノやサービス価格を総計した考え方で、原則的には物価が上昇する と、市場金利は上昇し、物価が下落すると金利は下落する。ちなみに継続的な物価上昇を 「インフレ」 、継続的な物価下落を「デフレ」と呼ぶが、今現在日本が目指している「脱デ フレ」が鮮明になると、金利が上昇する可能性は高くなると考えられる。 この物価動向を見るためには、総務省が毎月、調査・公表する「消費者物価指数」が有 効的である。 ④ 債券相場動向と市場金利 債券相場と金利(利回り)は反対の動きをする。債券が買われると(人気上昇) 、債券そ のものの価値が上がるため、金利が低くても買われる。逆に債券が売られると(人気下落)、 債券そのものの価値が下がるので、金利が高くないと買われない。つまり、債券が買われ ると債券価格は上昇し、金利は下がる。反対に、債券が売られると債券価格は下落し、金 利は上昇する。 これは、米国リーマンブラザーズ破綻を発端とする金融危機のときに、株式や為替など リスク商品から安全資産である国債への資金シフトが急増し、国債の利回りが急上昇した ことからみると理解しやすい。 ⑤ 株価動向と金利 株式相場と金利は反対の動きをするというのが一般的な見方で、理由は、株が下がると、 元本割れを回避するために投資家が保有株を売却し、その資金で安定性の高い債券に投資 する、すなわち株式市場から債券市場への資金シフトが起こるからである。債券が買われ ると、債券相場は上がるので、結果、 「債券価格上昇」=「金利低下」つまり、反対の動き となる。 ただし、実際に必ず株価と金利が反対の動きをするとは限らず、現に過去のデータでは 株価と金利は連動して動いている。これは、株式投資が将来の値上がり(景気拡大)を期 待して行われることにも関係する。 従って、金利動向には、株価の推移だけでみるのではなく、債券の需給(債券が売られ ているのか、買われているのか)を見る方が実質的には役に立つといえる。 ⑥ 為替相場と金利 円相場と金利は密接な関係にある。円相場が大きく円高、ドル安に動くときには金利が 低下する。逆に円安・ドル高に動くときには金利が上昇する。このメカニズムを簡単に説 明すると、円安のときは輸出メーカーにとって価格が優位に働き輸出ドライブがかかり売 上が増加する。しかし、反対に輸入物価が上昇し資材のコスト高となり、景気がよくなる が金利が上昇する。反対に、円高・ドル安のときは輸出価格面での不利となり輸出が減少 して景気の悪化要因となり、一方、輸入物価の下落で資材関係のコスト安となるがわが国 経済全体からみると景気のマイナス要因となり金利が下がる。 ⑦ 海外金利とわが国の金利 国内金利は、海外金利の動向にも密接に関わってくる。一般的に金利の高い国の通貨は 買われやすく、金利が低い国の通貨は売られやすいので、海外の金利が上昇すると、円か ら外貨へ資金シフトさせる動きが増加するため円安が進み金利は上昇する。逆に海外の金 5 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 利が下がると、外貨を売って円で運用する動きが増加するので、円高が進み金利が低下す る。 ただし、為替相場または海外金利との関係はあくまで理論であり、実際には理論通りに は動かないことが多いことを頭に入れておく必要がある。実際過去に、日本の金利が上が ることで相対的に米国との金利差が縮まり、結果、米国から日本へ資金がシフトしたこと で、円高を招いたこともあった。 ⑧ 金融政策と金利 日銀の金融政策と金利は密接に関わっている。景気停滞時期には、日銀は経済活動を活 発にさせるために、世の中に資金を供給して(金融政策を緩和) 、金利を引き下げる。これ が過去行われた「ゼロ金利政策」や「量的緩和政策」である。反対に、景気拡大時期には、 物価上昇によって引き起こされるインフレ懸念を抑制するため、世の中の資金を回収し(金 融政策を引締め)、金利を引き上げる。これがバブル経済に対処した「総量規制」であり、 また、日銀は市中の資金を吸い上げて金利の調整をしているのである。 (3)金利見通しの捉え方 ① 長・短プライムレート 住宅ローンは長期にわたる返済期間を要するだけに、わずかな金利差でも総返済額に大 きく影響を与える。従って、ローン利用者が後悔しない資金計画を立てるには、アドバイ ザーが住宅ローン金利の見通しをある程度予想し、その情報を提供することが大事である。 しかし、これは簡単ではないが先に挙げた「金利変動メカニズム」の構成要因が実体経 済でどうなっているのかを分析することで、ある程度「将来の金利予想」は可能となるの で以下説明する。 フラット 35 を含めた固定金利型や固定期間が 10 年以上の住宅ローンは、10 年国債の利 回りや長期プライムレートに連動、変動金利型や短期間金利を固定する固定金利期間選択 型の住宅ローンでは、短期プライムレートに連動するので、金利のトレンドを大まかに捉 える方法としては、長期固定のローンに関しては、まず『10 年物利付国債の流通利回り』 を、短期固定型、または変動金利型のローンについては『無担保コール翌日もの』や『公 定歩合』の動きを常にウオッチしておくことが大変役に立つ。 これは例えば、10 年利付国債の利回りの変動に合わせて、長期固定型やフラット 35 の金 利が見直しされること(1‐13 参照) 、あるいは、平成 20 年に公定歩合が引き下げられた際 には、変動金利型や短期固定金利型のローンについて各金融機関が金利を引き下げたとい うことからも理解できる。 6 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 フラット 35 と長期国債利回りの推移 .1 H2 1 .1 H2 0 .1 H1 9 H1 8 .1 H1 7 .1 H1 0 6.1 H1 5 .1 フラット35最高 フラット35最低 10年もの長期国債流通利回り 5 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 *H15.10~H21.1 までの間データをグラフ化したもの。 *フラット 35 の金利については、各金融機関の最低と最高の金利を表示。 *10 年もの長期国債流通利回りのデータについては財務省のデータを使用。 住宅ローン金利と基準レート 住宅ローンの種類 ・短期固定金利型のローン 基準となるレート 短期プライムレート 参考になる指標 無担保コール翌日物 公定歩合 ・長期固定型ローン (フラット 35 を含む) ・固定期間が 10 年以上の 長期プライムレート 10 年もの利付国債の 10 年長期国債 流通利回り 固定金利選択型ローン ちなみに、短期金利については、公定歩合は日銀の政策会議でその上げ下げが決定され、 無担保コール翌日物金利は、政府日銀の誘導目標金利にもなっているので、その時点での 金融政策の影響下にあるといえる。そのため、政府が現時点の景気をどのようにみている か、あるいは今後をどう考えているか、政府の景気判断をチェックしておくことは金利見 通しを考えるうえで大切となる。 ② 日銀短観 景気判断をするための指標は多くあるが、ここでは特に役に立つ指標をいくつかおさえ ておく。まず、日銀短観であるが、これは日銀が四半期ごとに発表する企業経営者対象の アンケートで、この中の業況判断DI(景気が良いとする回答者から悪いとする回答者を 差し引いた数字がプラスかマイナスかの値)を見ることにより、現状の業況および 3 カ月 後の業況予測がわかる。当然のことながら、このDIが連続して上昇しているときには景 気が回復期にあると判断されるので、金利が引き上げられる可能性がある。 7 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 ③ 消費者物価指数 消費者物価指数は、総務省が毎月調査発表するもので、モノやサービスの値段がどうな っているのかを把握することで、インフレ、デフレ動向を探る目的がある。基本的には物 価が安定的に上昇傾向にあれば、景気は回復期にあると判断されるので、公定歩合の引上 げにつながる。実際、ゼロ金利政策や量的緩和解除の際にも、「物価が安定的に上昇(プラ スになっている)している」ことを受けて実施、その後金利が引き上げられている。 ④ 景気動向指数 有効求人倍率や失業率は今後の企業活動が拡大傾向にあるのか、縮小傾向にあるかを判 断するうえで役に立ち、鉱工業生産出荷指数を見ることで、日本の製造業の現時点での業 績状況をうかがうことができる。これらの景気指標は、現時点での景況感を客観的に表す 景気動向指数に採用されている。景気動向指数とは、景気動向を敏感に反映する複数の指 標の前月からの変化率を平均し、累積したうえで1つの指数に合成したもので、先行指数、 一致指数、遅行指数に分類される。 通常、現状の景気の判断には、一致指数が用いられ、一致指数が 3 カ月連続して 50%を 上回った場合には「景気の拡大局面」、下回った際には「景気の後退局面」と判断される。 ちなみに 09 年 4 月時点では、内閣府は、景気の基調判断を 9 カ月連続で「悪化」として いる。 【教科2 コンプライアンス】 1.金融庁検査マニュアルと全銀協申合せ (1)全国銀行協会の変動金利申合せ 全国銀行協会(以下「全銀協」という)では 05 年 12 月 21 日に「住宅ローン利用者に対 する金利変動リスク等に関する説明について」と題し、変動金利型ローン、一定期間固定 金利型ローンに分けて 25 項目の申し合わせを行っている。 特に、 「変動金利型住宅ローンの場合」についての情報提供のあり方においては、下記7 点に絞られる。 ① 金利変更の基準となる金利(基準金利)と基準金利の変更に伴う適用金利の変更 幅に関する事項 (基準金利に利益分を上乗せした設定金利の明示。基準金利の変動要因と、変更に伴う 適用金利の変動幅の説明。 ) ② 基準金利の見直し時期と基準金利の見直しに伴う新適用金利の適用時期に関する 事項 (適用金利の見直し時期、及び適用時期の説明義務) ③ 返済額の変更ルールに関する事項(一定期間毎に返済額の見直しを行う場合、金 利見直しとの関係,元利金の内訳,金利上昇局面では最終返済額にしわ寄せされる 可能性等) 8 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 (返済額の変更時期、未払利息に関する措置) ④ 上記②③の金利、返済額の変更に伴う顧客宛通知方法に関する事項 ⑤ 顧客が選択したローン商品の現在の適用金利が最後まで絶対水準であるとの誤認を 防止する措置に関する事項(過去の適用金利の推移を提示する態勢を整備し、金利が上 昇する可能性があることを説明する等) (過去の金利推移を示し、金利の変動に対する理解を徹底させる) ⑥ 顧客が選択したローン商品の適用金利が将来上昇した場合の返済額の目安を提示 することを目的とした、貸出時における適用金利とは異なる金利での返済額の試算結 果に関する事項 (適用金利が上昇した場合の返済額の変動を提示し、顧客の理解を深める) ⑦ 手数料等に関する事項(ローン契約時にかかる手数料、繰上返済手数料、条件変更手 数料、約定返済遅延に伴う損害金等がある場合) (借換えをする場合の手続き、返済が滞った場合の対応など) (2)金融機関の情報提供義務 金融庁の『中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針(平成 17 年4月1日最終改正)』 (以下「監督ハンドブック」という)Ⅱ-3-4-1-2-(2)において、契約の意思確認 として、 「契約の内容を証明し、借入意思・担保提供意思・保証意思があることを確認した 上で、行員の面前で、契約者本人から契約書に自署・押印を受けることを原則としている か」というチェック項目があり、これに基づき、「金融機関が積極的に顧客の借入申込み意 思およびその内容を確認するのが実務の基本とされている。 2.金融商品取引法 ① 金商法は投資家保護に重点 金融商品取引法の具体的な内容は、大きく分けて、次の4つの柱からなる。 ● 投資性の強い金融商品に対する横断的な投資者保護法制 (いわゆる投資サービス法制)の構築:適合性の原則など ● 開示制度の拡充:書面交付義務、金利表示、比較広告に対する注意など ● 取引所の自主規制機能の強化:虚偽表示・誤解を生む表示の禁止など ● ② 不公正取引等への厳正な対応:断定的判断提供の禁止など 適合性の原則 金商法では住宅ローン商品を対象としているわけではないが、住宅ローンという多額投 資、投資に必要な資金調達の観点からは、「返しきれない借金を背負うことになっていない か」 、 「自分のライフプランにあった借入になっているか」といった、ローン利用者の適合 性に関する検討が欠かせない。 住宅ローンアドバイザーは、住宅ローンの借入額や返済計画が適正であるかどうかにつ いて、顧客の収入、保有資産等のほか、金利等の貸付条件及び顧客の返済能力、あるいは 9 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 家族構成などを総合的に考慮し、顧客に対しては、必要額を超える借り入れや借入意欲を そそるような鋤誘等を行ってはならない。顧客の自己責任を側面からサポートすると同時 に、安易な自己決定をしないよう注意喚起することも重要な責務となる。 住宅ローンアドバイザーは、住宅ローンの借入額や返済計画が適正であるかどうかに ついて、顧客の収入、保有資産等のほか、金利等の貸付条件及び顧客の返済能力を総合 的に考慮し、顧客に対しては、必要額を超える借り入や借入意欲をそそるような鋤誘等 を行ってはならない。 3.独占禁止法と住宅ローン販売 (1)独占禁止法とその重要ポイント 住宅ローンアドバイザーにとって、独占禁止法(以下「独禁法という」 )が問題となるの はその 2 条 9 項および 19 条で定める「不公正な取引方法」である。住宅ローン販売と関係 の深い事項について、具体的に説明すると下記のとおりである。 ① 不当な利益による顧客誘引 (低金利のローン金利をちらつかせて借換えさせるなど、通常では提供できないような 特別な利益を顧客に提供することで顧客を誘引した場合) ② 欺瞞的顧客誘引 (広告の虚偽表示や、不公正な商品比較) ③ 抱き合わせ販売 (一つの商品を買う際に、他の商品やサービスも一緒に購入しなければならないような 条件をつけた場合) ④ 優越的地位の濫用 (返済のリスケジュールの相談に来た顧客の弱みにつけこんで他のサービスを売り込む など、自社の顧客に対する優越的地位を利用した不当な販売行為) (2)独禁法違反時の罰則等 独禁法違反事件の審査は、①事件の端緒の収集、②事件の審査の順に進み、③事件の審 査により違反事実が認められると、行政処分の場合であれば、事前手続を経て排除措置命 令・課徴金納付命令が行われ、刑事処分相当であれば、検事総長への告発が行われる。 4.税理士法・弁護士法と住宅ローンの相談 (1) ① 税理士法と住宅ローンアドバイザー 税理士法抵触の範囲 顧客の抱えている具体的な問題に対して答弁・指示・意見の表明等を行うことは、税理 士業務としての「相談業務」に該当することになるので注意が必要である。 10 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 ② 誤ったアドバイスとその責任 税務アドバイスについては、個別具体的な税務相談に対応することが税理士法違反とな るうえ、誤ったアドバイスや説明等に不備があれば、その責任をも負うこととなるので、 「顧 客サービスのため」等という安易な発想での対応をしないよう、十分な注意が必要である。 (2)弁護士法と住宅ローンアドバイザー ① 弁護士業務の範囲 住宅ローンアドバイザーが顧客から不動産等について法的アドバイスを求められた際に、 当該顧客に対し、弁護士に相談するように進言することは問題ないが、特定の弁護士を紹 介することは「周旋」に該当する可能性があるので注意が肝要である。 ② 弁護士でない者が報酬をとれば法律違反 住宅ローンアドバイザーが相談業務に際し、顧客に法的アドバイスを行うケースがあった としても、その対価として報酬をとることは弁護士法違反となる。(弁護士法第 72 条違反) ③「業」としてのアドバイスは無報酬でも弁護士法違反 住宅ローンアドバイザーは、金融機関行職員、住宅事業者職員、独立 FP 開業者等多様で あるが、法的アドバイスを「業」としてなしたと解釈された場合は、前項の税理士法同様 「反復的にまたは反復継続する意思をもって行われること」とされ、弁護士法違反となる。 5.住宅ローン商品の説明義務 (1)変動金利型住宅ローンの説明 ① 新規で借り入れるときの変動ルール 新規借入時の金利は、年2回、3月1日と9月1日の短期プライムレート連動長期貸出 金利の水準を基準とし、それぞれ4月1日、10 月1日から新金利を適用する。ただし、正 確には、借入日から 10 月 1 日を 5 回経過するまでは返済額は変わらず、その間は金利の変 更に伴って元金の返済部分と利息の支払分の割合で調整することになっている。 ② 返済額の見直しと上限の歯止め 返済額を見直す際に金利が大幅に上昇していた場合、新しい返済額が増えても以前の返 済額の 1.25 倍(25%増し)を上限として、それを超えることはないと説明する必要がある。 ③ 金利上昇時のリスク説明 金利変動によって返済額の 1.25 倍以内では足りないほどに金利が上昇した場合、毎回の 返済のすべてが金利の支払に充当され、元金の返済が進まない状態となることがある。ま た返済のすべてが金利の支払に充当されても、支払い切れない場合は未払利息が発生する。 (2)固定金利選択型住宅ローンの説明 ① 固定金利選択型ローンの特徴 固定金利適用期間の取り扱いは金融機関によって違いはあるが、一般的には 1 年、2 年、 3 年、5 年、7 年、10 年、15 年、20 年のうち、各金融機関が取り扱う中から選ぶことがで きる。適用金利は、主に各期間に対応する市場の長期金利に応じて金融機関が独自に毎月 11 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 決定し、通常、月初に金融機関ごとに発表しているが、金利動向によっては月中でも変更 されることがある。 固定金利適用期間終了時に特に選択をしなければ、原則として自動的に変動金利へと切 り替わることになる。また変動金利適用期間中は、申し出によりいつでも各期間の固定金 利に切り替えることができる。ただし、固定金利適用期間終了時の選択も含めて、返済期 間中に再度固定金利を選択する場合は、再設定手数料として 5,000 円~10,000 円程度の手 数料がかかるので説明する必要がある。 ② 固定期間終了後の金利の注意事項 固定金利選択型は、金利が大幅に上昇するような場合には返済額も 25%を超えて大幅に 上昇する可能性がある。この点は固定金利選択型を選ぶ顧客に対しては、特に説明が必要 とされるポイントとなる。住宅ローンアドバイザーは、この点を十二分に説明しておく必 要がある。 【教科3 住宅ローンアドバイザーの社会的役割】 住宅ローン商品の多様化・複雑化 (1)業者と消費者との「情報の非対称性」の存在 住宅・不動産事業者や金融機関と消費者の間で情報の非対称性がある。消費者は初めて 住宅を買う場合が多いので、住宅ローン等に関する情報が非常に少なく、一方金融機関や 住宅・不動産事業者では多くの情報を持っている。 近年、変動金利型または期間 2 年固定型、3 年固定型、あるいは 10 年固定型商品が登場 し、そのような商品を選択した消費者でも、変動金利型ローンを利用した 34%、固定期間 選択型ローンを利用した 27%が変動金利型の金利上昇時のリスク(未払利息など)を理解 していないにも拘らず、約半数の利用者は住宅ローン商品の選択に際して、本来は複数の 商品の中から選択する権利が奪われている。 加えて、消費者保護のための住宅ローンに係わる情報提供委員会(以下「住宅ローン情 報委員会」 )の報告によると、金融機関の 52.6%、またローン取扱業者の 48.2%は、住宅 ローン商品の販売・説明にあたって「お勧め以外の住宅ローンの紹介」をしていないこと が明らかになった。 (2)住宅ローン情報検討会の提言 住宅ローン情報検討会は、消費者に対する情報提供の充実に関し、具体的には消費者の 立場からは、住宅ローン情報の提供について、次の 3 つの必要性を提言した。 ① 早期の情報提供の必要性 (顧客の事前知識の有無に関係なく、住宅選択のできるだけ早い段階で分かりやすい情報 提供を行う) 12 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 ② 金利変動リスク等情報及び複数選択肢の提供の必要性 (変動金利型ローンの金利上昇時におけるリスクの説明の徹底、また返済期間中のライフ スタイルの変更に応じた選択肢の提供) ③ 多様・複雑な住宅ローンの的確な選択の必要性 (顧客が容易に、かつ早期に情報を入手できるための環境整備) →以上の点から、利息だけでなく借入に際しかかる諸費用(事務手数料、保証量、団体生 命保険料等)を考慮して算出した実質的なコスト「総支払額表示」制度の導入を提言。 【教科4 住宅取得計画とローン相談事例】 1.各種減税制度の概要 平成 21 年度の住宅ローン減税は、以下の通り。今年は、最大 500 万円の減税が可能とな る。また、他制度との兼ね合いとして①居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通 算及び繰越控除制度との併用が可能、②住宅特定改修制度特別控除制度及び認定長期優良 住宅新築等特別控除と選択適用、が特徴にあげられる。 (1) 一般住宅減税 控除対象:償還期間 10 年以上の次の借入金の年末残高 ① 住宅の新築・取得のための借入金 ② 住宅取得とともに取得する敷地取得のための借入金 ③ 一定の増改築等のための借入金 適用居住年:平成 21 年 1 月 1 日~平成 25 年 12 月 31 日居住分 適用控除期間:10 年間 所得要件:合計所得金額 3,000 万円以下 適用期限:平成 25 年 12 月 31 日 居住開始年による控除額(年末残高×控除率)は、以下の通り。 居住年 年末残高限度額 控除率 各年最高控除 合計最高控除 平成 21 年 5,000 万円 1.0% 50 万円 500 万円 平成 22 年 5,000 万円 1.0% 50 万円 500 万円 平成 23 年 4,000 万円 1.0% 40 万円 400 万円 平成 24 年 3,000 万円 1.0% 30 万円 300 万円 平成 25 年 2,000 万円 1.0% 20 万円 200 万円 (2) 認定長期優良住宅の特例 控除対象:償還期間 10 年以上の次の借入金の年末残高 ① 住宅の新築のための借入金 ② 新築住宅の取得のための借入金 ③ 住宅取得とともに取得する敷地取得のための借入金 13 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 適用居住年:平成 21 年 1 月 1 日~平成 25 年 12 月 31 日居住分 適用控除期間:10 年間 所得要件:合計所得金額 3,000 万円以下 適用期限:平成 25 年 12 月 31 日 居住開始年による控除額(年末残高×控除率)は、以下の通り。 居住年 年末残高限度額 控除率 各年最高控除 合計最高控除 平成 21 年 5,000 万円 1.2% 60 万円 600 万円 平成 22 年 5,000 万円 1.2% 60 万円 600 万円 平成 23 年 5,000 万円 1.2% 60 万円 600 万円 平成 24 年 4,000 万円 1.0% 40 万円 400 万円 平成 25 年 3,000 万円 1.0% 30 万円 300 万円 (3) バリアフリー改修促進税制 控除対象:償還期間5年以上バリアフリー改修工事を含む増改築のための 借入金の年末残高 *死亡時一括償還も可能 適用居住年:平成 19 年 4 月 1 日~平成 25 年 12 月 31 日居住分 適用控除期間:5 年間 所得要件:合計所得金額 3,000 万円以下 適用期限:平成 25 年 12 月 31 日 居住開始移行、1 年目から5年目にかけて受けられる控除額(年末残高×控除率)は、以下 の通り。 年末残高限度額 控除率 各年最高控除 合計最高控除 1,000 万円(うちバリアフ 1.0% 12 万円(うちバリアフリー 60 万円 リー改修工事 200 万円) 改修工事分 4 万円) (4) 省エネ改修促進税制 控除対象:償還期間5年以上省エネ改修工事を含む増改築のための借入金の年末残高 適用居住年:平成 20 年 4 月 1 日~平成 25 年 12 月 31 日居住分 適用控除期間:5 年間 所得要件:合計所得金額 3,000 万円以下 適用期限:平成 25 年 12 月 31 日 居住開始移行、1 年目から5年目にかけて受けられる控除額(年末残高×控除率)は、以下 の通り。 年末残高限度額 控除率 各年最高控除 合計最高控除 1,000 万円(うち省エネ改 1.0% 12 万円(うち省エネ改修工 60 万円 修工事 200 万円) 事分 4 万円) 2.贈与税非課税措置 平成 21 年度追加経済政策の一環として「租税特別措置法の一部を改正する法律案」が成 14 住宅ローンアドバイザー資格認定試験 最新情報 立。内容は、①直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度、 ②試験研究を行った場合の特別税額控除の特例、③交際費等の損金不算入制度だが、この うち住宅ローンには①が関連する。 従来の制度との内容比較は以下の通り。 相続時精算課税制度 適用期限 恒久的 新制度 平成 21 年 1 月 1 日から 平成 22 年 12 月 31 日まで 非課税枠 特別控除 2,500 万円 500 万円 贈与する人 親(年齢満 65 歳以上) 親・祖父母等直系尊属(年齢制限なし) 贈与される人 子 子または孫 贈与される人の制限 贈与される年の 1 月 1 日現在で 同左 満 20 歳以上 条件 制限なし ・自己居住用家屋等の新築、取得目的 ・ 工事費用 100 万円以上 ・ 住宅取得資金を取得した年の翌年 3 月 15 日までに住宅を取得または 増改築等を行い、居住する 相続税の計算 贈与時の評価額で計算 加算しない 利用回数 ・ 控除は非課税枠を使い切るまで 2 年間で 500 万円まで ・ 精算課税は継続 申告 必要 必要 15
© Copyright 2024 Paperzz