OD-8-5 母指CM関節症に対する立体裁断によるネオプレン製装具の有効性 Effectiveness of a custom-made functional splint by Neoprane for osteoarthritis of the trapeziometacarpal joint ○柳原弘志 (OT) 1),上木麻衣子 (OT) 1),藤田浩二 (Dr.) 2),岡部 恵 (OT) 3),森田定雄 (Dr.) 1) 1) 東京医科歯科大学医学部附属病院リハビリテーション部,2)東京医科歯科大学医学附属病院整形外 科, 3)同愛記念病院リハビリテーション科 Key words: 装具療法,痛み,アンケート 【はじめに】 母指CM関節変形性関節症(以下,母指CM関節症)の治療では,装具療法の有効性が認められてい る.しかし既存の硬性装具・軟性装具は “関節の動きが著しく制限される”“水仕事で使用できな い”といった欠点がある.本研究では,適度な柔軟性と防水性を備えたネオプレンを立体裁断した (岡部ら,2015)母指CM関節装具を作製し,良好な結果を得たので報告する. 【目的】 立体裁断によるネオプレン製母指CM関節装具の有効性を『痛み』『筋力』『患者立脚型評価』 『オリジナルアンケート』により検討する. 【方法】 当院整形外科を受診し同意が得られた母指CM関節症患者5例(男2例,女3例,年齢:65.6歳)に対 して装具を作製.装具開始前(開始前),装具開始1ヶ月後(1ヶ月),3ヶ月後(3ヶ月)で『痛 み』(Visual Analog Scale:VAS),『筋力』(指腹つまみ),『患者立脚型評価』(DASH, PRWE),『オリジナルアンケート』(満足度,水仕事の使用頻度,24時間の使用頻度)を検討し た.統計は開始前,1ヶ月,3ヶ月の間でPaired-T testを用い,P<0.05を有意とした.本研究は当院 の倫理委員会の承認を得ている. 【結果】 VAS(開始前60.6mm,1ヶ月40.2mm,3ヶ月18.6mm),指腹つまみ(開始前1.92Kg,1カ月 2.12Kg,3ヶ月2.28Kg),DASH(開始前42.3,1カ月39.26,3ヶ月32.54)は経過とともに改 善を認めた.PRWE(開始前50.2,1か月58.0,3ヶ月45.2)は1ヶ月で開始前より悪化を認めたも のの3ヶ月で開始前より改善を認めた.装具の満足度(1カ月72.6%,3ヶ月79.6%),水仕事の使 用頻度(1カ月26.8%,3ヶ月43.6%),24時間の使用頻度(1カ月48.6%,3ヶ月64.4%)では経 過とともに改善を認めた.いずれも統計学的有意差は認めなかった.一方で,装具の着脱が大変であ る,汗をかいてしまうなどの意見もあった. 【考察】 母指CM関節症の装具には熱可塑性素材を用いた硬性装具や布素材を使用した軟性装具など様々な装 具が存在し,それぞれ母指CM関節を固定し除痛を図っている.しかし,生活状況(水仕事,手をよ く使用するなど)とミスマッチする場合,装具の使用を中止してしまう例もあり,十分な装具療法の 効果が得られない原因と考えられる.今回,我々が使用した装具はオーダーメイド立体裁断であるた め,自由度の高い母指CM関節を患者ごとに適切に固定することができた.さらに柔軟性と防水性の あるネオプレン素材で,生活の中での使いやすさとそれに伴う長時間装着を期待した.結果,除痛効 果,指腹つまみ力向上のみならず,統計学的有意差は無いもののDASH,PRWEでも改善傾向を認 め,本装具が有効である可能性が示唆された.水仕事,24時間での装着頻度も徐々に増加傾向を示し ており,適切な素材とフィッティングで使用時のストレスを軽減した効果があったものと考えられ た.これは,満足度が1ヵ月と3ヵ月であったことからも推測される.一方では装具の着脱,汗をかく などの問題も未だ残存しており,使用感向上のため更なる改良の必要がある. 【結語】 母指CM関節症に対する立体裁断でのネオプレン性母指CM関節症装具は,従来装具の問題点を解決 し,臨床的にも極めて有効である可能性を示した.今後症例数を増やして検討を続ける.
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