液晶プロジェクションシステム 液晶プロジェクションシステム Liquid Crystal Projection Display Systems 浜 田 浩 * Hiroshi Hamada 要 旨 1. 液晶プロジェクタの特長 液晶プロジェクタの特長を以下に説明する。 ホームシアターやプレゼンテーションに用いられる フロント投射型液晶プロジェクタの市場は年々成長し ている。本稿では,液晶プロジェクタの特長,液晶プ ロジェクション光学システムの構成, そのキーデバイ スである TFT-LCD の種類とそれに要求される条件に ついての技術解説および高輝度化に関する技術動向が 紹介されている。 a 操作が簡単(投射距離や画面サイズが簡単に調 節できる) 。 液晶プロジェクタでは一本の投射レンズでスク リーンに投射するので投射距離,画面サイズを 変えてもコンバージェンス調整(赤・緑・青の3 原色の画像の重ね合わせ調整)の必要はなく,単 にピントを合わせるだけで鮮明な画像が得られ る。 s地磁気の影響や偏向回路の経時変化(ドリフト) による色ずれが生じない。 d 小型・軽量で,上記 a,s の特長とあいまって 移動・持ち運びが容易。 f 色純度(色再現性)が良好。 g 偏光スクリーンを使用すれば明るい場所でも見 易い。 通常,明るい場所でプロジェクタを使用する と投影画像の黒レベルが浮き上がりコントラス ト比が低下する。周囲光は非偏光であり,偏光 スクリーンを使用すると半減する。これに対し 液晶プロジェクタの出射光は偏光であり,偏光 スクリーンを使用してもほとんど減衰しない。 従って偏光スクリーンの使用により周囲光によ るコントラスト比の低下が軽減される。 The market of front type LC(liquid crystal) projectors for home-theater use and for presentation use is growing year by year. In this paper, merits of LC projectors, optical systems, TFT-LCDs as key devices of LC projectors and technical trend to get higher optical throughput are reviewed. まえがき 小型の液晶表示素子(Liquid Crystal Display:LCD) に表示された画像を大画面に拡大表示する液晶プロ ジェクタの進展が著しい。 1980 年台に,TFT(Thin Film Transistor:薄膜トラン ジスタ) -LCD を用いたポケット型カラー液晶 TV が 初めて商品化された。 それに続いて登場した液晶プロ ジェクタは,直視型 CRT では得られない迫力・臨場 感溢れる大画面映像を手軽に楽しませてくれるホーム シアターの市場を開拓して来た 1)2)。その後,ノート PC (ノートブック型パーソナルコンピュータ)の普 及に伴い,液晶プロジェクタは,プレゼンテーション ツールとしての有用性が認められ, ますます市場を拡 大しつつある。 本稿では,まずはじめに液晶プロジェクタの特長, 構成を紹介し,つづいて最近の技術動向を解説する。 * 液晶天理開発本部 液晶研究所 第1開発部 2. 液晶プロジェクタの構成 液晶プロジェクタの投射形式は, プロジェクタ本体 とスクリーンが分離しているフロント・プロジェクタ と,両者が同一のキャビネットに収納されているリ ア・プロジェクタとに分けられる。 フロントプロジェクタは, ホームシアター用途ある いはプレゼンテーション用途に於いて, 前述の液晶プ ロジェクタの特長を生かし, 独自の市場を開拓し発展 を続けている。 一方,リアプロジェクタについては,従来は CRT 方式のリアプロジェクション TV が市場を独占してい ― 75 ― シャープ技報 第69号・1997年12月 たが,1995 年に初めて商品化された液晶パネルビ ジョン「ガイア」を皮切りとして液晶方式の参入が始 まっている。 液晶プロジェクタは使用する LCD の数によって3 板式と単板式とに分類される。3板式(図1)は,3 枚の白黒表示の LCD を用い,それぞれに赤・緑・青 の3原色に対応した画像を表示し, それに対応する三 原色の光で照明して3原色画像を得る。 それらをダイ クロイックミラーまたはダイクロイックプリズムによ り1枚の画像に合成してスクリーンに投射する。 3板 式は,表示性能(解像度,スクリーン照度,色純度) が優れている。 枚の LCD をスライドプロジェクタのような光学系で スクリーンに投射する。単板式は価格,携帯性にメ リットがあるが,画像をカラー化する手段としてカ ラーフィルターを用いているので光の利用効率が低い という短所がある。また,カラーフィルタ自体の耐光 性やカラーフィルタの光吸収による温度上昇が明るさ 向上のボトルネックとなっている。 図2 単板式液晶プロジェクタ Fig. 2 図1 3板式液晶プロジェクタ Fig. 1 3-LCD projector. 単板式(図2)は直視型の LCD と同様のモザイク 状またはストライプ状のカラーフィルタを内蔵した1 Single LCD projector. これを解決する手段として, カラーフィルタを用い ずに,ダイクロイックミラー,マイクロレンズアレイ および白黒の LCD を組合せることによりフルカラー 画像を表示するカラーフィルタレス単板方式(図3) が開発された 3)。この方式は前述の「ガイア」にも採 用されている 4)。 図3 カラーフィルターレス単板プロジェクション光学系 Fig. 3 Colorfilterless single-LCD projection system. ― 76 ― 液晶プロジェクションシステム 3. 液晶プロジェクタ用 LCD 液晶プロジェクタには, 必要な精細度と十分なコン トラスト比を得るために一般に TFT-LCD が用いられ ている。TFT-LCD には,アモルファスシリコン(a-Si: amorphous silicon)を用いたものと,多結晶シリコン (p-Si:poly silicon)を用いたものとがある。 3・1 a-Si TFT-LCD a-Si TFT-LCD を採用した液晶プロジェクタとして は, 約9万画素の3板式のホームシアター用フロント 液晶プロジェクタ 2) から商品化が始められた。さらに その後,TFT-LCD の画素数の増加,開口率向上,光 学系の効率改善, 光源となるメタルハライドランプの アーク長(放電電極間距離)の短縮等,種々の改良を 重ね高輝度化が進められてきた。 3板式液晶プロジェ クタ用 a-Si TFT-LCD の表示画面サイズは3型前後が 一般的である。 プレゼンテーション用途では,ノート PC 用に開発 された TFT-LCD を OHP (オーバーヘッドプロジェ クタ) で投影できるようにしたコンピュータプロジェ クションパネル(Computer Projection Panel:CPP)が 最初に市場に登場した。これはその後,TFT-LCD を 光源や投影レンズと共に一体化された単板式データプ ロジェクタに進化し,北米市場を中心に普及してき た。この単板式データプロジェクタ用 TFT-LCD のサ イズは,当初はノート PC 用 TFT-LCD と同じ 8.4 型 であったが,その後,プロジェクタ専用に 6.4 型 TFTLCD が商品化され,プロジェクタの小型化に寄与し た。 これと併行して, 前述のホームシアター用3板式フ ロントプロジェクタをベースに a-Si TFT-LCD の高開 口率化,高精細化により高輝度の3板式データプロ ジェクタも商品化されている。 3・2 p-Si TFT-LCD p-Si TFT-LCD の特長は a-Si TFT-LCD よりも高精 細化が可能であること, ドライバー回路を画像表示部 の周辺に作り込めることである。p-Si TFT は,シリコ ン薄膜を結晶化させるプロセスの温度によって高温 pSi TFT と低温 p-Si TFT とに分類される。 高温 p-Si TFT には,1000℃以上の高温で Si 膜を結晶化させるため 石英ガラス基板が用いられ,LSI と同様のプロセスに より製造される。低温 p-Si TFT では,高融点の硼硅 酸ガラスの基板が用いられ, エキシマーレーザー照射 やハロゲンランプ加熱により Si 膜が結晶化される。 現在プロジェクション用として商品化されている p-Si TFT-LCD は高温型だけであるが,低温型 p-Si TFT- LCD は直視用としてだけではなくプロジェクタ用と しての開発も活発化している。 基板サイズについては,a-Si TFT-LCD では一辺が 300mm 以上の大きなマザーガラスを用いてスケール メリットが追求されてきた。それに対し,高温型 p-Si TFT-LCD の基板サイズは LSI の製造装置のウェハー サイズによって制限されており, 高価な石英ガラス基 板を使用しなければならないこともあって, 単位面積 当たりの製造コストは a-Si TFT-LCD よりも高い。そ れゆえ高温 p-Si TFT-LCD は主として次のような商品 に採用されている。 a 携帯型単板式液晶プロジェクタ 画面サイズは0.7 型前後で表示ドット数(RGB 合 計)は 10 万以下のカラービューファインダ用 TFT-LCD を使用したハンディタイプの単板式液 晶プロジェクタが市販されている。AV 用途向け に表示ドット数が 10 万以上の製品も商品化され ている。 s データ対応三板式液晶プロジェクタ p-Si TFT の高精細, ドライバーモノリシックとい う特長を生かし,小型のプレゼンテーション用 三板式液晶プロジェクタが商品化されている。 画面サイズは1.3型がデファクトスタンダードと なっており,解像度については VGA から XGA まで商品化されている。 d リアプロジェクション TV 3板式のリアプロジェクション TV が商品化され ている。 CRT 方式のリアプロジェクション TV と 比べると,軽量・薄型,地磁気の影響を受けない という特長はあるものの,現状では価格面では 高水準にあり,本格的に普及するには至ってい ない。 液晶リアプロジェクション TV が市民権を 得るには LCD だけでなくプロジェクション光学 システム全体のコストダウンが最重要課題であ る。 4. プロジェクション用 TFT-LCD に要求される 条件 4・1 TFT-LCD のサイズと開口率 液晶プロジェクタの明るさは TFT-LCD の開口率に 比例するので,TFT-LCD の設計に際しては,次のよ うな相反する条件のバランスを取らなければならな い。 aTFT-LCD のサイズは小さい程,1枚のマザーガ ラス基板で作れる枚数が多くなるので生産コス トの点から有利である。また,液晶プロジェク ― 77 ― シャープ技報 第69号・1997年12月 ション光学系の小型化・軽量化および低コスト 化の点からも TFT-LCD のサイズは小さいほうが 有利である。 更に,三板式では,表示画面のサイズだけではな く,ドライバーなどが実装される画面外周部の 幅も狭い程よい。 s 一方,TFT-LCD の表示画面サイズが小さくなる 程,また画素数が多くなる程,画素ピッチは小さ くなり,それに伴って開口率は低下する。その 上,TFT-LCD に入射する照明光も減少し,スク リーンの明るさは低下する。 4・2 耐光性 液晶プロジェクタ用の TFT-LCD には直視型 LCD と 比べると桁違いに強い光が照射される。従って,設計 上次の項目に注意が払われている。 a 光による Roff の低下 a-Si 薄膜や p-Si 薄膜には光導電性があるので T FT のチャンネル部に光が入射しないようにブ ラックマトリックス(BM)が設けられるが,そ の遮光効果が不十分だと TFT のオフ抵抗(Roff) が低下し保持率が下がるので正常な表示ができ なくなる。 s 光による Vth のシフト 前項の現象が直接的には表示画像に悪影響を及ぼ さない場合でも,長時間にわたって光が照射さ れるとそれによって励起されたホールがゲート 絶縁膜に蓄積されて行き,TFT の閾値(Vth)が シフトし,オン抵抗(Ron)が高くなって充電不 足になったり,オフ抵抗(Roff)が低くなり保持 率不足となって正常な表示ができなくなるおそ れがある。 d 液晶の光化学反応 今日の TFT-LCD にはフッ素系の液晶材料が使用 されており,可視光に対しては光化学反応のお それはないが,液晶プロジェクタの光源として メタルハライドランプやキセノンランプが用い られている場合には,液晶分子や配向膜の光化 学反応により保持率が低下しないよう紫外線を カットする必要がある。 f 耐熱性 液晶プロジェクタでは強い照射光により TFTLCD の温度は周囲環境温度よりも高くなるので, TFT-LCD の耐熱性を高めると共に冷却方法にも 注意が必要である。 gBM の反射率 直視型 LCD では不要な周囲光の映り込みを低減 するため BM の反射率は低くされるが, 液晶プロ ジェクタでは TFT-LCD の温度上昇を低減するた め反射率の高い BM 材料が選ばれる。 h カラーフィルターの退色 単板式液晶プロジェクタではモザイク状のカラー フィルター付 TFT-LCD が用いられるが,カラー フィルターに含まれる色素は強い光を受けると 退色する可能性がある。カラーフィルターの退 色反応の生成物が液晶の諸特性に悪影響を与え ないかどうかについても注意を払う必要がある。 4・3 コントラスト比 LCD のコントラスト比は一般には視角依存性を示 す。 液晶プロジェクタのスクリーン上のコントラスト 比は,LCD の表示面に入射する光の入射角度範囲内で の視角特性の平均となる。 スクリーンに投影される光 束を多くする為には照明光が LCD に入射する角度の 幅(発散度)を大きくしなければならないのでコント ラスト比は低下する。つまり,コントラスト比とスク リーンの明るさはトレードオフの関係にある。 液晶プ ロジェクタではコントラスト比は少なくとも 200:1 以上が必要とされている。 4・4 液晶表示モード 液晶プロジェクタに採用されている液晶の動作モー ドは,直視型 LCD と同様に応答速度およびコントラ スト比が優れているツィステッドネマティック (Twisted Nematic:TN)モードが主流である。TN モー ドには, 2枚の偏光板を直交配置することにより液晶 に電圧をかけない時に白状態となるノーマリ・ホワイ ト(Normally White)モードと,2枚の偏光板を平行 配置することにより液晶に電圧をかけない時に黒状態 となるノーマリ・ブラック(Normally Black)モード とがあるが, 高コントラスト比が得られ黒状態の色づ きが少ないノーマリ・ホワイト・モードが採用されて いる。 5. 液晶プロジェクタの光源 液晶プロジェクタの光源としては, 一般には発光効 率および色再現性の優れているメタルハライドランプ が採用されている 5)。発光領域(アーク長)が小さく, 平行度のよい光束がえられる超高圧水銀ランプ (UH 6) P)も採用されている 。ハンディタイプの低コスト 機では特別な点灯回路が不要で安価なハロゲンランプ が使用されている。 高い光出力を要求される業務用に はキセノンランプが採用されている。 ― 78 ― 液晶プロジェクションシステム 6. 液晶プロジェクタに関する技術開発動向 表示画面を明るくするためには, 光源を明るくする 事が最も簡単であるが,民生用(家庭用)の液晶プロ ジェクタでは,光源用の電源の重量・体積・コストや 光源を冷却するためのファンの騒音等の点で, 消費電 力の大きな光源を用いることは好ましくない。従っ て, 液晶プロジェクタではいかに少ない消費電力の光 源で望ましい画像の明るさを確保するかが重要課題で ある。このような課題を解決するために,次のような 技術の開発・実用化が進められている。 6・1 TFT−LCD の高精細化と高開口率化 スクリーンの明るさは TFT-LCD の開口率に比例す る。開口率を高めるためにはデッドスペースとなる, TFT の面積,補助容量(Cs)の面積,配線の面積,TFT 基板と対向基板の貼合せマージンを小さくする必要が あり, TFT 構造や製造プロセスの改良が進められてい る。 6・2 反射型 LCD 透過型 TFT-LCD では,TFT やバスラインの占有面 積は表示に寄与しないデッドスペースとなるので高精 細化に伴って開口率は低下する。一方,TFT-LCD を 反射型にすれば, TFT やバスラインの上にも層間絶縁 膜を介して画素電極を形成することにより, 表示画面 をほぼ全面覆い尽くすことができ, 開口率を向上させ ることができる。従って,TFT のデザインルールが同 じレベルであっても反射型 TFT-LCD は透過型と比べ て高開口率化,高精細化に適している。また,Si-LSI を液晶駆動基板とした反射型 LCD の開発も行われて いる 7)。 反射型 LCD の動作モードとしては, 透過型 LCD で 一般に用いられる TN モードが適用できないので複屈 折モード(垂直配向の ECB モードや 45°ツイストの HFE モード)あるいは後述の高分子分散型液晶が採 用されている。 複屈折モードの反射型 LCD では,入射光と反射光 の光路を分岐する手段が必要である。その手段とし て,偏光ビームスプリッタ(PBS)が使用される。そ のため,光学系の光路長が透過型 LCD の光学系と比 べて長くなる等,反射型特有の課題はあるものの,メ リットとしては開口率が高いことの他に, 耐光性が高 い(光リークに強い)こと,LCD の背面からの冷却 が容易であることが挙げられる。 6・3 高分子分散型 LCD 現在商品化されている TFT-LCD では偏光板の必 要な TN モードが採用されている。この偏光板によ り照明光の1/2以上(現実には約 60%)が表示に 寄与せずに吸収されている。このような偏光板によ る光のロスが存在しない液晶表示モードとして高分 子分散型液晶が知られている。高分子分散型液晶は 透過モードで使用される場合と反射モードで使用さ れる場合 8) がある。反射モードでは Si-LSI によって 駆動されることもある。この液晶モードをプロジェ クションに適用する場合には明るさとコントラスト 比の両立が課題である。また,ヒステリシス現象の 低減も必要である。 以上の項目は LCD 自体に関するものであるが,こ れ以外に液晶プロジェクタとしての性能を向上させる ために次のような技術が開発あるいは実用化されてい る。 6・4 偏光変換技術 現在主流となっている TN モードの LCD では,偏 光板を使用しているため入射光の半分以下しか利用 されていない。そこで,光源からの自然光(非偏光) を二つの偏光成分に一旦分離した後,一方の偏光成 分をもう一方の偏光成分に変換して両者の偏波面を 揃え,光の利用率を向上させる技術が実用化されて いる 9)。 6・5 光源の高輝度化 照明光の平行度がよい(発散度が小さい)程,以 下に述べるように高輝度化技術の効果が高まる。照 明光の平行度は光源の発光領域の大きさ(アーク長 さ)に比例するので,発光領域が小さい光源および 平行度の高い照明光を効率良く集める光学技術の開 発が望まれる。 a マイクロレンズ方式では照明光の平行度が良い 程,マイクロレンズの集光スポットが小さくな り,画素開口部を通過する光量が増加する。 s 反射型液晶ライトバルブや偏光変換システムで は,偏光ビームスプリッターを使用するので照 明光の平行度が悪いとコントラスト比等の表示 性能が低下する。 また, 通常の透過型と比較して光路長が長くなる ので,照明光の平行度が悪いと光路から外れて 無駄になる光線が多くなる。 ― 79 ― シャープ技報 第69号・1997年12月 d 高分子分散型液晶をプロジェクタに適用するた めにはシュリーレン光学系が採用されるが,照 明光の平行度が良い程アパーチャーの口径を小 さくすることができ,コントラスト比が向上す る。 fTFT-LCD の小型化への対応 一般に液晶プロジェクタの光学系をコンパクトに するためには TFT-LCD も小さいほうが好まし い。TFT-LCD の小型化に合わせて光学系の構成 要素がすべて比例縮小できれば光束利用率(= スクリーン光束/光源の全光束)は変化しない が,光源の発光領域の大きさが比例縮小できな い場合には照明光の発散度が大きくなり TFTLCD に入射する光束の割合が減少する。 以上の理由から平行度の良い照明光を得る為, 光 源に対しては発光効率が高め発光領域が小さく する事が望まれている。 参考文献 1) S.Morozumi et al.“LCD Full-Color Video Projector", SID'86 DIGEST pp.375-378 (1986) 2) 香西, 稲葉, 森, 横尾, 鈴木, 浅田, “液晶カラープロジェクタ” , テ レビジョン学会技報,13, 53(1989) 3) H.Hamada et al.,“A new bright single panel LC-projection system without a mosaic color filter", IDRC'94 DIGEST pp.422-423 (1994) 4) 中西, 山谷, 増田, 柴谷, 田中, 大槻, 浜田, “カラーフィルタレス単 板液晶プロジェクション技術” , シャープ技報, 65, pp.37-40(1996) 5) E.Schnedler et al. "Ultrahigh-Intensity Short Arc Long-life Lamp System", SID'95 DIGEST pp.131-134(1995) 6) 蕪木,田川, “直視型及び投射型LCD用光源と色再現”,月刊 ディスプレイ, ’ pp.53-60(1997.2) 7) F.Sato et al.,“High Resolution and Briht LCD Projector with Re- 8) M.Kunigita et al.,“A 3in. diagonal reflective TFT light valve flective LCD Panels", SID'97 DIGEST, pp.997-1000(1997) むすび with Liquid Crystal/Polymer Composite", IDRC'97 DIGEST pp.L54-L57(1997) フロント・プロジェクタの分野では,液晶プロジェ クタは CRT を凌駕し既に独自の市場を獲得してい る。リア・プロジェクタ(リアプロジェクション TV) については市場参入が始まったばかりであるが,今 後,更に光源のショートアーク化・長寿命化,光学系 の高効率化・小型化技術の開発と共に,システム全体 の低価格化により液晶リアプロジェクション TV は本 格的に普及して行くであろう。 9) ― 80 ― Y.Itoh et al.,“Ultra-High-Efficiency LC Projector Using a Polarized Light Illuminating System", SID'97 DIGEST, pp.993-996 (1997) (1997年10月24日受理)
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