報告書 - 日本アカデメイア

若者,結婚
やめるってよ
希望出生率 1.8 のワナ
人口減少グループ
平成28年3月4日
「ジュニア・アカデメイア」第 1 期生政策提言発表会
主催 日本アカデメイア
目次
要旨 ............................................................................................................. 2
第 1 課題設定 ............................................................................................ 3
第 2 本論 ................................................................................................... 5
序章 価値観の選択と政策提言 ....................................................................................... 5
第一章 概論:理想像の導入 ........................................................................................... 7
第一節 人口減少社会とは:国の考え .................................................................................. 7
第二節 既存の規範からの脱却:希望出生率からのアプローチ............................................ 8
第三節 親が子どもを持つ権利と子どもの権利 .................................................................. 10
第二章 家族についての既存の規範と多様なパートナーシップ ................................... 12
第一節 自由な選択を制約する家族規範 ............................................................................. 12
第二節 規範の問題:現実とのギャップとマイノリティへの抑圧 ...................................... 15
第三節 多様なパートナーシップを選択できる社会 ........................................................... 16
第三章 事実婚カップルの権利保障制度 ....................................................................... 18
第一節 現行制度下の事実婚の実態 .................................................................................... 18
第二節 各国のパートナーシップ制度の比較 ...................................................................... 20
第三節 事実婚カップルの権利保障制度 ............................................................................. 25
第四節 事実婚カップルの権利保障制度導入による成果予測 ............................................. 29
第四章 制度化後:メリット増大の方策 ....................................................................... 34
第一節 経済的条件悪の人々への事実婚の導入 .................................................................. 34
第二節 パラサイトシングル現象 ....................................................................................... 38
第三節 パラサイトシングル解消の方策 ............................................................................. 40
第四節 まとめ.................................................................................................................... 49
終章 結論...................................................................................................................... 50
第 3 提言 ................................................................................................. 52
参考文献・参考資料...................................................................................................................... 53
人口減少グループ
参加者名簿 .................................................................................................... 57
1
要旨
・
政府は大規模な人口減少の影響を「経済成長第一主義」とも言える価値観から捉えて
いるが,バブル崩壊以降の乏しい経済成長と今後の見通しからしても,この価値観か
らの転換を図るべきである.我々は「経済成長」以上に,社会からの承認で得られる
個々人の「幸福」そのものを重視し,個々人が既存の価値観を押し付けられることな
く自分の生き方を自由に選択できることに大きな価値を見出す.
・
希望出生率という概念と数値や,結婚や出産に関する考え方についてのデータから窺
い知れる,「恋愛→結婚→出産→子育て」を経たものが家族であるという,伝統的な
家族観・既存の規範が,若者にとっての軛となっている.多様なパートナーシップの
あり方を受容するより自由な社会を目指す手段として,生活パートナーシップ登録制
度を基盤とした事実婚カップルの権利保障制度の導入を提案する.
・
我々の提示する事実婚カップルの権利保障制度は,①法律婚を前提とする規範から脱
却すること,②法律婚という形でしか権利・利益が享受できない不平等を是正するこ
と,③流動的な社会に適合したパートナーシップのあり方を選択できるようにするこ
と,という 3 つの目的を持つ.
具体的には,子が嫡出子とされること,子に対する父母の共同親権については,法律
婚と同等の権利を認める.他方,法律婚で発生する法的効果のうち親族関係の発生,
夫婦同氏については事実婚には認めない.また,配偶者相続権については,カップル
に選択権を付与する形にする.加えて,配偶者控除・夫婦間贈与の特例等の税制に関
しては,廃止を前提とした上で,新たに個人単位の税制を創設すべきだと考える.
・
事実婚カップルの権利保障制度の導入だけでは恩恵を得られない,パラサイトシング
ルをはじめとする経済的条件に恵まれない人々について,公営住宅の設営や共同生活
支援などの自立支援策を講じる.これをもって初めて,社会全体が経済的条件に左右
されずに多様なパートナーシップのあり方を自由に選択できるようになる.この施策
の担い手として重要になるのが,国と,その影響力が及びにくい領域でのコミュニテ
ィである.
2
第1
課題設定
本論に入る前に,我々「人口減少グループ」が抱いた疑問・問題意識をここに記しておく.
本稿で展開する我々の議論・主張は,すべてここに端を発している.
Q1.そもそも人口減少社会とは何か.
A1.出生数・合計特殊出生率が低下の一途を辿り少子化が進むこと.
Q1-1.人口減少に対する,現在の少子化対策はどのようなものか.
A1-1.段階的な目標として「国民希望出生率」を 2025 年に達成しようとしている.
Q1-2.現在の政府の政策は,どのような価値基準で人口減少を捉えているのか.
A1-2.経済へのマイナスの影響が強いと捉えており,経済的な成長を価値基準にして
いる.
Q2.経済的な成長という価値基準を引き続き採用すべきなのか.
A2.否.バブル崩壊後の経済情勢を見ても,それが依然として現実的に意味のある価値基
準であるかは疑わしい.
Q2-1.では何を重視するのか?
A2-1.幸福,そしてそれを実現するための自由.
Q3.希望出生率 1.8 とは何を表しているのか.どのような意味があるのか.
A3.親密な関係性への欲求の表れだが,伝統的な家族観によって歪められている.
Q3-1.なぜ希望出生率と合計特殊出生率には差があるのか.
A3-1.親密な関係性への欲求が,従来の形での家族では満たされなくなってきている
から.
3
Q4.家族とは何か.
A4.対等な関係を軸に,個人が抱える不安や困難に配慮し合い,喜びや楽しみを共有でき
る,親密な領域.
Q4-1.家族はどう作られてきたか.
A4-1.従来の伝統的な家族観の下で,
「恋愛→結婚→出産→子育て」という一連の流れ
によって家族が形成されてきたとされる.
Q4-2.家族はどう変わるべきか.
A4-2.伝統的な家族観に縛られることなく,個々人の幸せを実現できる,自由で多様
なあり方が認められるべき.
4
第2
序章
本論
価値観の選択と政策提言
本稿では,以下の価値観の選択を主張し,それに基づく新たな政策提言をしていく.
軸となる価値観
家族とコミュニティの協力関係の中で子どもがきちんと育つならば,家族のあり方は自由.
我々は今後の日本社会において,「経済成長」よりもむしろ「幸せ」を追求したいと考え
ている.そして幸せに至るためのルートの一つとして,パートナーとの関係を築き子ども
を持つ,というものを挙げる.これは,誰しもが持っている,親密な関係を築きたいとい
う欲求を満たすものである.
しかし,既存の規範である現行の婚姻制度は,「法律婚至上主義」とも言える伝統的な家
族観の表れであり,経済的に不安定で流動的な社会に対応しておらず,
「このような現代社
会に適応しつつもパートナーとの関係を築き子どもを持ちたい」という願望を持っていて
も実現できない若者を生じさせている.そこで,伝統的な家族観から生じている,法律婚
を前提とする規範から脱却し,より流動的で自由な仕組みをつくる必要がある.
ただし,パートナー間の関係が流動的になったとしても,子どもとの関係が流動的にな
り,子どもの成長を阻害してはならない.子どもの幸せに対しての必要なケアを講じると
いう最低限のボーダーラインをクリアするという条件付きで,パートナー同士の関係の自
由は認められるべきである.
提言
事実婚カップルの権利保障制度の導入
そこで,事実婚カップルの権利保障制度を導入し,より流動的な婚姻制度に変えること
で彼/彼女らの願望を実現しやすくする.幸福を追求するという目的の下では,必ずしも法
律婚という固定的な関係だけにこだわる必要はない.流動的な関係である事実婚という形
態を選ぶカップルの権利を保障することで,事実婚を人生の選択肢として提示することが
できれば,流動的な社会に対応するためのより自由な選択を促すことができると考える.
5
図 0-1
理想の社会像へのロードマップ
ここで提言した事実婚カップルの権利保障制度の詳しい内容は第三章以降に譲ることと
する.ここでは,この制度の導入によりどのような社会を目指していくのか,またどのよ
うな手順で導入し普及させていくかについてのロードマップを提示する.
我々が目指す理想の社会は,多様な家族のあり方が広まった社会であり,このような社
会が個々人の幸福につながるものと考える.そして上記制度が機能するような理想の社会
は,信頼社会が醸成されていること,
「他者と信頼関係を築ける強い個」が形成されている
ことの 2 点によって支えられる.さらにこの理想社会は,
「他者と信頼関係を築ける強い個」
が何らかの理由でコミュニティから孤立してしまっても,セーフティネットによって救済
がなされるようなシステムを兼ね備えている.
そして我々が提言する政策・理想社会は,図 0-1 のロードマップに沿って実現される.
第一段階として,生活パートナーシップ登録制度を導入し,法律婚カップルと事実婚カ
ップルの間にある不平等を是正,事実婚カップルの権利保障制度の社会的認知と定着を図
り,人々が制度を気兼ねなく利用できるような素地をつくる.この段階では,事実婚など
の多様なパートナー関係のあり方に移行することについての障壁が少ない人々(特に経済
的な条件に比較的恵まれている層)が中心的な対象者となる.また同時に,どんなパート
ナー関係でも子が「きちんと」育つようにするために,親子関係についての価値観の転換
を促す施策も必要である.
制度化の導入後,第二段階として,パラサイトシングルに代表される,経済的条件に恵
まれず多様なパートナー関係へ踏み切れなかった層を中心的な対象とした,新制度の浸
透・拡大を図る.そして同時並行的に信頼社会の醸成と強い個の形成を促すことで,家族
のあり方が多様化してもコミュニティがその子育てを支援できるようにする.加えて,そ
のようなコミュニティから溢れてしまうような人々を救済するセーフティネットの形成も
実行する.これらのような制度化後の政策は,我々が理想とする社会へより近付くための
大きな助けとなる.
6
第一章
概論:理想像の導入
第一節
人口減少社会とは:国の考え
現代日本社会は大規模な人口減少という未曽有の課題に直面している.我々はこの人口
減少という現象を最初の切り口として設定し,今後の日本社会の理想像を構築する.そこ
でまず人口減少の様相を改めて見てみる必要がある.
内閣府が公開している『平成 27 年度版 少子化社会対策白書』によれば,2013 年には
出生数は 102 万 9,816 人,合計特殊出生率は 1.43 となっており,合計特殊出生率は微増傾
向にあるものの,総人口は 2030 年に 1 億 1,662 万人,2048 年に 1 億人を割って 9,913 万
人,2060 年には 8,674 万人にまで減少する,と見込んでいる.
このような人口減少の実態について,政府はその影響をどのように捉えているのか.同
じく内閣府の『平成 18 年版 少子化社会白書』や三菱総合研究所『人口と経済の持続可能
性に関する調査研究報告書』(平成 26 年 3 月)を参照すると,人口減少の影響として,労
働力人口の高齢化と減少による経済のマイナス成長や税収減,高齢者人口の増大による社
会保障制度をはじめとする諸制度の機能不全,などといった点が言及されている.この認
識は現在でも継続しており,特に現政権下では,平成 27(西暦 2015)年 6 月 30 日に閣議
決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2015」において,人口減少と地域経済の縮小
の悪循環の連鎖を問題視している.また同年 12 月 24 日の閣議決定によって改訂された「ま
ち・ひと・しごと創生総合戦略」の中でも,人口減少とその経済へのマイナスの影響を主
軸とする問題意識を提示している.
現政権の政策では,
「アベノミクス」という経済成長戦略に関連付けて人口減少が言及さ
れており,人口減少社会においても依然として国は経済的な成長を求めていることが分か
る.そのために人口減少社会における少子化対策として,未婚女性の結婚希望率が 9 割,
およびそこから出される国民希望出生率 1.8 という値を実現目標として掲げ,急激な人口
減少を抑制し,将来的には人口規模を安定化させ一定規模で維持しようとしている.先の
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」でも,「『人口の安定化』と『生産性の向上』の両者
が実現するならば,2050 年代の実質 GDP 成長率は 1.5~2%程度を維持することが可能と
見込まれている」と言及しており,経済成長が大きな価値基準として設けられていること
が窺える.
しかし,本当にそれで良いのだろうか.日本は人の暮らしを豊かにするといわれる経済
成長に戦後一貫して邁進してきたが,1990 年のバブル崩壊以降の「失われた 25 年」にお
ける経済成長は乏しく,加えて日本の今後の人口減少によって GDP 指標の上での豊かさ
は落ちて行く見通しである.この流れの中で,日本社会の意識は「経済成長第一主義」か
ら切り替わらざるを得ない.国政レベルでは未だに新成長戦略と謡って,経済の成長を前
提とした政策議論がされているが,他方で日本アカデメイアの 2015 年報告1では,あたか
も成長が続くと仮定した上での政策や国家運営の無駄遣いを,古い世代の「余剰幻想」で
7
あると切り捨てている.そうであるならば,余剰幻想を実際に切り捨てて,現実的な社会
のあり方を構想するための新たな価値観が必要になる.
本稿で提示する価値観は,GDP といった経済の量的な指標によって判断される「成長」
ではない.代わりに,社会からの承認で得られる個々人の「幸福」そのものを重視する.
そして個々人が承認を得るためには,個々人が自分の生き方を自由に選択することが必要
であり,自由を制限している既存の規範を押し付けないことが必要であると考える.
そこで次節では,希望出生率とは何なのか,そして結婚・子育てについて人々は本当の
ところどう考えているのか,という疑問から,家族についての既存の規範からの脱却を試
みる.
第二節
既存の規範からの脱却:希望出生率からのアプローチ
平成 26 年 12 月 27 日に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で政府は,
国民希望出生率と実際の合計特殊出生率の差を埋めることを目標としている.しかしここ
で,そもそも国民希望出生率とは何なのか,そしてなぜ実際の合計特殊出生率との間に差
が生まれているのかを考察する必要がある.
まず国民希望出生率がどのような数値なのかを明らかにしておく.まち・ひと・しごと
創生会議の参考資料によれば,国民希望出生率は以下の式によって算出される.
有配偶女性割合 × 夫婦の予定子ども数
国民希望出生率= (
+
)
未婚女性割合 × 未婚女性のうちの結婚希望者割合 × 未婚女性の平均希望子ども数
×
離死別等の影響
有配偶女性割合と未婚女性割合は国勢調査の値で 33.8%と 66.2%,夫婦の予定子ども
数・未婚女性のうち結婚希望者の割合・未婚女性の平均希望子ども数は「出生動向基本調
査」からそれぞれ得られた値(2.07 人,89%,2.12 人)を利用している.離死別等の影響
は,国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成 24 年 1 月推計)」で用い
られた出生中位の仮定に用いられた離死別等効果 0.938 を利用しており,この式から出た
値 1.83≒約 1.8 を「国民希望出生率」と名付けている.
では,指標としてこのように定義されている希望出生率とは,何を表現しているものなの
だろうか.我々は,人とのつながりの中で何を一番重視するかという質問に対して「家族」
が一番高いという結果(平成 27 年度版厚生労働白書)から,誰もが持っている親密な関係
8
を作りたいという希望が若者の間にもあり,希望出生率はその表れであると考える.職場
などで得られる承認は,そこでの仕事内容や仕事ぶりについてのみの一面的な承認であり,
何らかの条件が付いた承認にすぎない.しかしここで述べる親密な関係によって相手から
得られる承認は,単に安心感や配慮といったものをもたらすだけでなく,
「無条件に何でも
受け入れてくれる」といった類の承認であると我々は考える.こういった親密な関係に対
する欲求が,家族についての既存の規範の下で「家族を作りたい」という発想にすり替わ
った結果が,希望出生率の構成要素の一つ,約 9 割という結婚希望率の数字に表れている.
では,希望出生率と実際の合計特殊出生率の差は,なぜ存在するのだろうか.一つの原因
としては,経済的要因による「実際の合計特殊出生率の低下」が一般的に挙げられる.し
かしここで我々は,より重要な原因として「希望出生率が高く出ている」のだと考える.
現代社会において親密な関係に対する欲求を満たすためには,結婚・出産よりもリスク,
もしくはコストの少ない他の手段(他の娯楽,SNS など)を選ぶことが多くなっている.
しかし,これらの代替手段では満たし切れない親密な関係を築きたいという欲求が,
「希望
出生率」の中で出てきている.というのも,もし代替手段によって満たされていたら希望
出生率はここまで高く出ないはずだからである.SNS などが若者を中心にして人口に膾炙
する現代社会において,結婚・出産に対する願望が,希望出生率という形で実際の合計特
殊出生率よりもかなり高い値となって表れているということは,誰もが抱いている「親密
な関係を築きたい」という欲求を満たして幸福を得るための手段としての結婚・出産は,
依然として若者の間でも有効な選択肢であり続けているということを示しているのである.
結婚や子育てをすると,幸福度が上がるという実証研究も出てきている2.
しかし現状を見てみると,未婚率は高まり,実際の合計特殊出生率は低いままである.前
述したように,本稿において我々は幸せを最重要の価値とみなし,その上で,幸せを達成
するための手段として,親密な関係に対する誰しもが持つ欲求を満たす必要があると考え
る.第二章で詳述する通り,既存の規範においては,これまで一般的になされてきた結婚・
出産はその唯一の手段とされていたが,このような現状を見る限り,現代においてこの手
段は必ずしも適合していない.幸せの手段としてのニーズに対応出来ていない,従来の形
での結婚・出産は,そのあり方が見直されるべき時代に達している.
「結婚して子どもをつ
くる」という行動は「親密な関係に対する欲求を満たし幸せを求める」という思考による
ものであり,前者が阻まれているならば後者は満たされることはない.
我々の重視する「幸せ」のための結婚・出産は,経済的要因によって阻まれていると同時
に,家族についての伝統的な価値観・規範の制約も大きく受けている.すなわち,現在の
結婚制度は,伝統的な家族観=「法律婚による家族」を前提としており,法律婚以外の選
択肢を与えていないのである.しかし,幸せであるのならば,法律婚という形にこだわる
必要はないはずである.希望出生率の値からは,既存の規範の押し付け・内面化の影響に
よって,親密な関係に対する欲求が「法律婚」という形に押し込まれていることが読み取
れる.これが現代の若者にとっての幸せなのだろうか.パートナーと共に生活したり,子
どもを持ったりすることは,法律婚にこだわらずとも,幸せにつながるのではないだろう
か.
「結婚して子どもをつくる」という行動が幸せを実現できなくなっており,実際の行動
として求められていない・選択肢になっていないなら,
「パートナーをつくって子どもを持
9
つ」といったより一般的な行動へと移っても幸せが実現できるような社会に変えていくべ
きなのではないか.
人々は皆幸せを求めるべきであり,
我々はそのための手段としての事実婚カップルの権利
保障制度を提案する.親密な関係を築きたいという誰しもが持つ欲求を満たし幸せを求め
る手段としての従来の形での結婚は,その目的を果たすことが以前に比べ難しくなってい
る.事実婚カップルの権利保障制度は,この現状を変えるものである.
第三節 親が子どもを持つ権利と子どもの権利
前節までで,既存の「法律婚」という形に囚われている規範や伝統的な家族観が,現代
の若者の幸せを阻害している要因であることを説明した.そして日本における新しい婚姻
制度の形としての事実婚カップルの権利保障制度の導入が,その軛を取り払うことも述べ
た.すなわち,たとえば同棲婚や事実婚であっても,パートナーとの関係を築くことも可
能であるし,経済的な自立が出来ていれば子どもを持つことも可能であり,これらは当然
幸福へとつながる.しかし現行の婚姻制度では,経済的な阻害要因と伝統的な家族観・既
存の規範によって,子どもを持つ権利(自由)が実質的に法律婚のカップルにのみ独占さ
れるという不平等な状況となっている.事実婚カップルの権利保障制度の導入という,婚
姻制度の自由化・規制緩和によってこの不平等を解消し,幸福になれる人々を増やしてい
かなければならない.
しかし,この制度の導入によってパートナーの間の関係が自由化されたからといって,
親と子どもの間の関係までが「自由に」(極端に言えば「無秩序に」)なってよいという訳
ではない.一度パートナーが子どもをもうけたならば,彼/彼女らはその子を「きちんと」
育てる義務があり,その子にも「きちんと」育つ権利がある.すなわちパートナーの間の
関係の自由化の条件には,子どもを「きちんと」育てる義務を果たすという最低限のボー
ダーラインを満たすことが必要とされるべきである.
ではここでいう「きちんと」とはどういう意味を持つのか.本章では「子どもの権利」
という視点からアプローチすることとする.
「子どもの権利」は,国際社会においては 1989 年に実際に法的な拘束力を持つ国際法と
して国連で採択され,翌年発効された「子どもの権利条約」によって保護されている権利
である.
この条約では子どもの「最善の利益」を主として考慮することが求められ(第 3 条 1 項)
,
大きく分けて「生きる権利」
「育つ権利」
「守られる権利」
「参加する権利」の 4 つの,柱と
なる権利を守ることを定める条文から成り立っている.
「生きる権利」とは防げる病気などで命を奪われないこと,病気やけがをしたら治療を
受けられることなど,
「育つ権利」とは教育を受け,休んだり遊んだりできること,考えや
信じることの自由が守られ,自分らしく育つことができることなど,
「守られる権利」はあ
らゆる種類の虐待や搾取などから守られること,障害のある子どもや少数民族の子どもな
10
どは特に守られることなど,
「参加する権利」は自由に意見をあらわしたり,集まってグル
ープをつくったり,自由な活動をおこなったりできることなど,とされている.
日本もこの条約の締結国ではあるが,こういった子どもの権利についての認識や条約の
思想は社会的に共有されていないのが現状である.この点は女性の活躍促進などについて
論じている池本(2014)でも指摘されており,子どもの権利について日本よりはるかに社
会的理解が進んでいる海外では,子どもの権利を守るための親への支援を政府から引き出
す圧力として有用となっている事例にも言及している.
日本弁護士連合会に設けられている「子どもの権利委員会」は,2010 年の国連「子ども
の権利委員会」による審査・勧告を受けてパンフレットを公開しており,その冒頭で日本
国内での子どもの権利条約の精神の実現度合いについて苦言を呈し,加えて日本の子ども
政策に欠けているものを分析し明確化している.紙幅の関係上ここでは詳細には立ち入ら
ないが,要約すれば日本の現状は,伝統的な「子ども」観によって,子どもの権利条約の
精神の理解が妨げられ,子どもの権利を扱う包括的な法整備や機関の設置もされず,子ど
もの権利条約は実質的に効力を発揮しておらず,子どもの権利や子どもが置かれている現
状についてのデータ収集や研究・分析さえ行われていない,と言える.
我々はここで,まずは子どもの権利条約が掲げる 4 つの柱となる権利が今後の日本社会
で尊重されること,すなわち子どもが 4 つの権利を享受できるように育つことが「きちん
と」を構成する一つの要素であると考える.加えて,我々の理想の社会を支える,
「他者と
信頼関係を築ける強い個」となるように育つことも重要な要素である.
「他者と信頼関係を
築ける強い個」として育った子どもが,多様な家族のあり方が存在する社会を自らの自由
な選択によって生きるようになり,その子どもも「強い個」として育つ,という再生産が
起こることが理想である.
11
第二章
家族についての既存の規範と多様なパートナーシップ
第一節
自由な選択を制約する家族規範
前章では家族に関する既存の規範が,高い結婚希望率と未婚化という現実とのギャップを
生み出し,ひいては希望出生率と実際の出生率のギャップにつながっていると述べた.こ
こでは,結婚や出産に関する規範の存在をデータとともに示し,そうした規範が若者の考
えや行動にどのような影響をもたらしているか考察する.
多くの若者が内面化している家族規範とは,
・「子どもを持つには結婚しなければならない」
・「同棲は結婚を前提に,もしくは結婚後にしなければならない」
・「結婚とは永続的な関係を誓うものである」
といったものである.
一つ目の規範は,図 2-1 によれば,女性と比べると男性の方が強いことがわかる.「独身
の時に子どもができたら結婚した方が良いか」という質問に対し,男性では,20〜24 歳を
除き,
「そう思う」の割合が 6 割を超えている.一方,女性では,概ね半分くらいのものが
「そう思う」と考えている.「そう思わない」の割合は,最も高いものでも,男性は 8.3%
(20〜24 歳),女性は 10.7%(20〜24 歳)となっており,結婚せずに子どもを育てること
は多くの若者にとって抵抗感のあるものであることがわかる.さらに,この規範は実際の
行動にも現れている.図 2−2 はいわゆる「できちゃった婚」の割合であるが,15〜19 歳で
は 8 割以上,20〜24 歳では 6 割以上が出産をした後に法律婚をすることを選んでいる.
図2-1 独身の時に子どもができたら結婚した方が良いか
・内閣府「国民生活選好度調査」(2005年)より作成
・「そう思う」は「全くそう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計,「そう思
わない」は「どちらかと言えばそう思わない」と「全くそう思わない」の合計
男性
15〜19歳
そう思う
どちらともいえない
66.3
20〜24歳
57.3
25〜29歳
そう思わない
34.4
63.6
30〜34歳
30.8
29.9
61.3
34.5
2.9
8.3
6.5
4.2
女性
15〜19歳
52.6
37.9
9.5
20〜24歳
52.5
36.9
10.7
25〜29歳
30〜34歳
57.8
35.6
44.8
49.4
12
6.7
5.7
図2-2 第一子出生数のうち結婚期間が妊娠期間より短い出
生割合
90
・厚生労働省「人口動態統計特殊報告」(2005年,2010年)より作成
・嫡出子第一子の出生について,「結婚週数<妊娠週数−3週」(=「妊娠週数≧
結婚週数+4週」)となる出生の割合
81.7
80
67.0
61.5
60
50
64.1
63.6
58.3
47.4
47.0
41.5
40
31.2
30
20.1
20
0
81.5
73.9
70
10
83.2
23.4
19.6
24.6
12.4
14.2
8.3
9.3
9.2
10.9
12.0
12.1
85
90
95
2000
05
09
7.8
9.8
7.1
1980
15〜19歳
20〜24歳
25〜29歳
30〜34歳
次に,「同棲は結婚を前提に,もしくは結婚後にしなければならない」という規範につい
てみる.図 2-3 によると,
「男女が一緒に暮らすなら結婚すべきである」という考え方に賛
成する者の割合は,男女ともに,1997 年以降やや増加傾向にある.直近の数値では男性が
73.5%,女性が 67.4%となっており,若者の間でかなり強く浸透している考え方であるこ
とがわかる.
図2-3 男女が一緒に暮らすなら結婚すべきである
・国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」(2010年)より作成
・対象は18〜34歳の未婚者
80
70
78.5
72.6
60
69
59.3
71.6
60.3
73.9
62.9
73.5
67.4
男性(賛成)
50
男性(反対)
40
35.9
30
20
23.5
24.9
16.5
女性(賛成)
33.6
32.7
21
20.5
29.4
22.8
10
1992
1997
2002
2005
13
2010
女性(反対)
最後に,
「結婚とは永続的な関係を誓うものである」という規範についてみる.図 2-4 に
よれば,
「いったん結婚したら,性格の不一致くらいで別れるべきではない」という考え方
に対して賛成する者の割合は,男女ともに,97 年以降大幅に増加していることがわかる.
特に女性の方が増加の幅が大きく,2010 年には 62.2%が賛成している.性格の不一致く
らいで別れるべきではないという考えは,結婚の永続性を前提とし,少しのことで結婚関
係を解消させるべきではないという考えに基づいていることから,
「結婚とは永続的な関係
を誓うものである」という規範が 10 年と少しの間に急速に強まっていると推測できる.
若者がこうした規範を内面化する経路としては,「親の反対」によるケースが少なくない
のではないだろうか.我々と同世代の学生には,同棲や結婚に関して親と対立するケース
がよくある.例えば,交際しているパートナーと同棲しようと考え,親に相談したところ,
「同棲するなら結婚しなさい」と諭されたケースや,同棲以前に,パートナーと旅行に行
くことさえも反対されてできなかったケースがあった.様々な経路が考えられるが,どう
いう経路であれ,規範が強まれば強まるほど,規範から逸脱する行動や考えには制約がか
かるようになる.
以上のデータと分析から,冒頭に示した結婚・出産についての規範は,性別や年代によっ
て違いはあれど,若者の結婚・出産に対する考えに強い影響を及ぼしていると考えられる.
こうした規範が近年強まっている背景には様々な事情が考えられるが,これは若者が規範
を内面化せざるを得ない状況に曝されていることが一つの要因となっているのではないだ
ろうか.そして,さらに問題なのは,そうした個々の規範が組み合わさり,
「結婚や出産に
は唯一の正しい順序があり,そうした順序を踏まない結婚・出産は好ましくない」という
より強い規範となり,若者自身の自由な選択を制約することである.
図2-4 いったん結婚したら,性格の不一致くらいで別れるべき
ではない
・国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」(2010年)より作成
・対象は18〜34歳の未婚者
80
70
60
67.7
30
58.3
57.4
72.3
62.2
男性(賛成)
52.8
50
40
66.4
62.0
69.0
男性(反対)
47.3
40.4
37.8
女性(賛成)
37.1
31.4
26.4
25.7
25.3
20
1992
1997
2002
2005
14
34.1
23.8
2010
女性(反対)
第二節
規範の問題:現実とのギャップとマイノリティへの抑圧
前節で述べた規範の問題は,第一に,現実の社会や経済と乖離している.現在政府が行っ
ている少子化対策は,既存の規範の上に成り立つ婚姻制度を所与のものとし,どうすれば
若者が結婚・出産をするようになるかという視点で進められている.しかし,そもそも,
そのような規範は経済的に不安定で流動的な社会の現実に対応していない.
規範と現実のギャップは,未婚化要因に関する先行研究からも見て取れる.例えば,筒井
(2015)は,未婚化の発端となった背景要因として,女性の高学歴化に伴う労働力参加の
増加(ライフスタイルの変化)と,ニクソンショックおよびオイルショックを契機とした
経済成長率の低下(経済の変化)という,1970 年代以降に見られた 2 つの社会変化を挙げ,
そこから男女別に未婚化へのルートを提示している.女性については,
「女性の高学歴化・
労働力参加により,
(中略)女性も働いて所得を得るようになったことで,満足のいく相手
が見つかるまで結婚を先延ばし(中略)あるいは自分よりも所得の高い男性を求めるよう
になったために,結婚難が生じた」とするルート(すなわち経済的希望水準の引き上げ)
を経て,共働きを望むが環境的に困難な状況により未婚化に至るルートが有力であるとし
ている.他方で,伊藤(1997)は,心理学的な要因分析を試み,未婚化の要因を,結婚の
魅力が低下して以前ほど望まれなくなった「需要の低下」と,結婚を望んでもそれが許さ
れない状況をもたらしている「供給の低下」に大別している.前者の要因には,結婚しな
い人に対する見方が変わったという「社会的規範の弱体化」,自由の重視や個人主義の台頭
といった「価値観の変化」,
「性役割観の変化」等が挙げられている.これら「需要の低下」
が女性の自律的要因に基づいているのに対して,
「供給の低下」は「需要の低下」に付随し
て起こる男性の結婚難という趣が強く,20 歳代の「男女の人口比のアンバランス」,
「見合
い結婚から恋愛結婚への移行」といった要因が紹介されている.
以上,未婚化要因の先行研究から,若者の結婚・出産を取り巻く現実と,結婚・出産に関
する諸規範には,大きなギャップが存在しているということがわかる.結婚に関する規範
は,
「いったん結婚したら,性格の不一致くらいで別れるべきではない」というように,結
婚・出産の「正しいあり方」を規定し,もしくはその「正しい順序」を規定するものであ
る.しかし,現実には,経済・社会の変化が,若者のライフスタイルの多様化,仕事や人
間関係の流動化,経済状況の不安定化を引き起こし,このことが若者の意識・行動にも影
響を与えている.こうした変化は,結婚・出産の「正しいあり方」や「正しい順序」を求
める規範とは根本的に相容れない.これらの規範は結婚・出産の意思決定に高い壁を設け
るものであるが,経済・社会の変化は,若者がこの壁を乗り越えられない,もしくは無理
して乗り越える必要のない状況を生み出しているからである.規範と現実にギャップが生
じているとすれば,規範に現実を合わせるのではなく,規範そのものを疑う必要があるの
ではないだろうか.
規範の問題は,第二に,規範から逸れたパートナーシップを築いている人々に対して,規
範の存在が抑圧的に働くことである.結婚・出産に関する規範が現実と大きくずれている
状態には問題があるが,そうした規範を深く内面化し,心地良いと感じている人々にとっ
15
ては,規範に沿う生活を送ることで社会的な承認を得ることができる.彼/彼女らにとって
は,経済その他の環境が整い,
「正しい」とされる結婚生活を送ることができる限りで,規
範の存在は問題とならない.しかし,いわゆる事実婚などのパートナーシップを選択して
いる人びとはそうではない.次章で詳述するが,事実婚を選択する人びとには,様々な理
由や背景がある.例えば,婚姻届を出すことに疑問を感じ,法律婚を前提とせずに同棲を
続け子を持つ場合や,法律婚のパートナーとの関係が破綻したが,子どものことを考えて
離婚届けは出さず,新たなパートナーと生活を共にしている場合などである.法律婚を前
提とした同棲や出産が「正しいあり方」であるとする規範は,その規範が強くなるほど,
事実婚を選択する人びとに対して抑圧的に働く.
「当たり前」であるとされる生き方は,そ
うした生き方を選択しない/できない人びとにとっては当たり前でも何でもない.むしろ,
彼/彼女らは,社会的に承認されず,自分たちの生き方に引け目を感じなければならない.
現行の婚姻制度は法律婚の家族を優遇しており,制度的にも,彼/彼女らは平等な処遇を受
けることができていない.こうした抑圧や不平等な処遇を無視して,子どもを増やすため
に結婚してくれと働きかけることに同意することは到底できない.他者と親密な関係を築
きたいという欲求は誰もが持つものであるが,その欲求のあり方は千差万別である.そう
であるとすれば,その欲求を満たすための唯一の「正しい方法」や唯一の「正しい順番」
などあるはずもなく,多様なパートナーシップや家族が存在している現実を直視し,誰も
が差別されることなく親密な関係を築ける社会を構想すべきである.
第三節 多様なパートナーシップを選択できる社会
我々は,ここまで述べてきたような問題意識に基づき,多様なパートナーシップを選択で
きる社会を創り上げるべきであると考える.我々は,既存の規範に乗っかり人口減少社会
における難題を解決する方法を考えるのではなく,結婚・出産に関する規範を疑うところ
から始めた.前節で述べた通り,結婚・出産に関する既存の規範は,現実の社会に対応し
ていないばかりか,そうした規範を受け容れることをしない/できない人びとを抑圧してい
る.また,我々若者世代は親密な関係性を築き承認を得ることを求めており,既存の規範
はそうした欲求を満たすことに制約をかけている.
それでは,多様なパートナーシップを選択できる社会とはどのようなものだろうか.ここ
までの議論では,恋愛関係にある男女のカップルを念頭に置いてきたが,我々の提言の射
程はそのようなカップルのみに限られるものではない.むしろ,
「結婚や子育ては男女のカ
ップルが恋愛を経てするものである」という規範にも再考を迫るものである.例えば,同
性カップルはいまだに好奇の目に晒されることが少なくなく,制度上も法律婚の男女カッ
プルと同等の権利を与えられていない.しかし,彼/彼女らがパートナーと親密な関係を築
きたいと欲し,子を持ちたいと考える時,既存の規範・制度によってそうした切なる願い
を制約することができるのだろうか.こうした問いを考えるにあたって重要なのは,自分
と彼/彼女らとの立場や視点を交換してもなお,そうした制約が正当なものであるか熟慮す
16
ることである.すなわち,この例でいえば,仮に自分が同性愛の指向を持ち,愛するパー
トナーと子を育てたいと考えている時に,そうした欲求を満たすことを阻む規範や制度が
正当化されるか考えるのである.井上(2014)は,自分の他者に対する要求や行動が,自
分がその他者だったとしても拒否できない理由によって支持できるかを判定する手段とし
て,こうした「反転可能性テスト」を自らに課すべきであるとしている.
結婚や出産に対する個人の考え方や価値観はそれ自体かけがえのないものであるが,同時
に,無数にある考え方・価値観の一つに過ぎないことを認めなければならない.そして,
自分とは異なる考え方・価値観を持つ人びととの共生が求められる現代社会においては,
自分の考え方・価値観を他者に押し付けるのではなく,他者と共生するための公正なルー
ルを設定しなければならない.
多様なパートナーシップを選択できる社会とは,そうした公正なルールに基づき,法律婚
の家族に特権的な地位を与えることをやめ,誰もが自分の選択したパートナーや子どもと
親密な関係性を築き,承認を得ることのできる社会である.個人化や孤立化が進む現代の
日本社会において,我々若者世代は,親密な関係性において自らの生に配慮してもらうこ
とを切実に欲している.
我々の提言は個人の自由な選択を尊重する価値観に基づいているが,同じ価値観を共有し
ていても,理想論だけを唱えている者や,保守的な価値観を持つ人びとに反抗して満足し
ているだけの者とは決別しなければならない.次世代を担う我々は,望ましい社会を描い
た上で,多くの人びとを巻き込み,その社会に至るまでの方策までもを提示する義務と責
任があると考えるからである.次章以降では,本章で示した多様なパートナーシップを選
択できる社会を実現するまでのロードマップを示し,そのために必要な具体的な方策を検
討する.
図 2-5 多様なパートナーシップを選択できる社会の概念図
・パートナーと共に生
自由な選択を保障する公正なルール
活したい
・不安や喜びを共有し
たい
・安心できる場がほし
い
事実婚
は結婚しなければな
自由な選択を制約し
らない」
いていた規範・制度
・「同棲は結婚を前提
に,もしくは結婚後に
法律婚
しなければならない」
・「結婚とは永続的な
・子供がほしい
同棲
関係を誓うものであ
同性婚
る」
・
「子どもを持つに
は結婚しなければな
親密な関係性への欲求
らない」
多様なパートナーシップが認められた社会
・「同棲は結婚を前提
17
に,もしくは結婚後に
しなければならない」
・「結婚とは永続的な
関係を誓うものであ
第三章
事実婚カップル権利保障制度
前章で,事実婚という制度がなぜ必要なのか,その理由について各種データに基づく分
析・考察を行った.これを受けて本章では,我々の想定する事実婚カップルの権利保障制
度がどのようなものになるのかについて,現時点でなされている法律婚および事実婚の形
態との比較の上で考察し,具体案とその実現工程となるロードマップを提示していく.
第一節
現行制度下の事実婚の実態
第一項
事実婚の定義
そもそも,我々がいう事実婚とは何か.杉浦ほか編(2007)によると,同棲や内縁は法
律婚ができないやむを得ない事情を想像させる言葉だが,事実婚は,自らの主義主張にし
たがって意図的に届を出さない人々の関係や生活を表す言葉であり,法律婚にかわる生き
方として選択されているという3.二宮(1991)もまた,次のように述べている.
大きな社会変動の中で,新しい家族像が模索されていく今日,家族法に求められて
いるのは,法律婚制度の強化ではなく,これまでの内縁理論とは違って,事実婚を「生
き方」のひとつの選択として認め,その生活を法的に補償する理論の構築であろう.
その理論として,家庭生活の自己決定権を考えることはできないだろうか4.(二宮
1991a:64)
つまり,1980 年代までの事実婚は制度的制約などによって,強制的に,あるいは否応な
く発生する現象(内縁)として認識されていた.しかし,1980 年代以降は当事者が自発的
に「選択」する場合もあることが初めて認識されるようになったのだ.従って,我々がい
う事実婚は,1980 年代以降に確立された内縁や同棲とは異なる概念である.
第二項
現行制度下の事実婚の長所
事実婚は現在の法制度及び判例においても,ある程度の法的保護が認められており5,自
らの意思により,積極的に事実婚を選択しているカップルも存在する.しかし,前章で述
べたように,規範が浸透している現状を考えると,事実婚カップルに対する風当たりは厳
しいだろう.果たして彼/彼女らは,そのような状況の中,なぜあえて事実婚を選択してい
るのだろうか.渡辺(2011)がヒアリングした事例6を参考に,実際に事実婚を選択してい
る人々が考える事実婚の長所は何か分析したところ,3 点の共通項がみえてきた.それは,
①パートナー間の平等と自由が保障されること,②法律婚よりも果たさなければならない
18
義務が少なく,精神的な観点から,法律婚よりもハードルが低いこと,③流動的な社会に
対応しやすい自由な関係性を結ぶことが出来るという 3 点だろう.これらが現在の法制度
及び判例上の事実婚に関するメリットだと考える.
これらのメリットは,現行制度下の事実婚のいくつかの特徴から生じている.そのひとつ
に,届出をしないために,姓を変える必要がない点があげられる.姓を変えないというこ
とは,仕事等における姓に対する社会的認知の維持が可能になる.仕事を始めてからずっ
と用いてきた姓に対する,社会的認知や信頼を築いてきただろう.しかし,法律婚をする
ならば,今まで築き上げてきた姓に対する社会的認知や信頼を捨てるリスクを伴うわけで
ある.従来は,男性一人の収入で生計を立てることも可能だった7ため,女性は仕事をしな
いことから,姓を変えてもリスクは仕事をしている人よりはなかったのかもしれない.し
かし,雇用環境が悪化し,男性一人の収入で生計を維持するのが困難な現状8を考慮すると,
結婚後も働き続けたい或いは働かざるを得ない女性が増加している9のも頷ける.そのよう
な中,結婚を希望するならば,法律婚にて夫婦同氏を迫られるのは,時代に適応していな
いのではないか.未だに女性が姓を変える例が多い10ことから,女性ばかりが仕事上の姓
に対する社会的認知や信頼を捨てるリスクを負うのは確かに不平等である.そこで,事実
婚を選択すれば,その不平等が是正され,パートナー間の平等性が保たれるというわけで
ある.
また,別姓であることは,パートナーの一方が他方の姓に組み込まれないというというこ
とである.この特徴に加えて,姻族関係の発生がないという点が相互作用し,「嫁」/「婿」
としての親戚付き合いを強要されにくくなる11ようだ.法律婚では,一般的に女性は夫の
姓に組み込まれるため,夫とその家に従属した印象が強くなる.勿論,姓は変わってもあ
くまで対等な関係の結婚である,と思っている人たちには,特に問題になることはないだ
ろう.ただ,従来の近代的家族の構図が示しているように,主として夫がはたらき,妻が
専業主婦であるようなケースでは,この種の従属関係が芽生えることは少なくなかったの
は事実だ.しかし事実婚であれば,この種の従属関係は解消され,両者対等という意識が
強くなると思われる.それに付随して,自らの墓の選択の自由を獲得できることが利点だ
という声もあった.
他方で,事実婚の解消しやすさもまた特徴のひとつである.現行制度下において事実婚の
解消方法は,法律婚のようにパートナー双方の合意を得る必要はなく,一方の意思により
住民票等の記載を変更するだけで済む12.勿論,関係を解消したとしても戸籍に除籍の記
録が残らない.この関係解消の容易性により,流動的な社会に対応するために,自らのパ
ートナー関係もまた流動的に作り直すことが可能になる.
以上のように,上述した現行制度下の事実婚の特徴から,事実婚には①パートナー間の平
等と自由が保障されること,②法律婚よりも果たさなければならない義務が少なく,精神
的な観点から,法律婚よりもハードルが低いこと,③流動的な社会に対応しやすい自由な
関係性を結ぶことが出来るという 3 点のメリットがあることが分かった.
19
第三項
現行制度下の事実婚の短所
前項では,事実婚の長所をみてきたが,本項では先述した事例13をもとに,その短所を分
析する.
現行制度における事実婚の短所は,大きく 2 点に絞られるのではないか.第一に,事実婚
カップルの関係性を他者から認められにくい点があげられるだろう.これには,2 つの原
因が考えられる.一つ目は,事実婚は届出をしないため,パートナー間の関係性を証明す
る手段が乏しく複雑であるという意味である.二宮(2011)は,法律婚のメリットは証明
であると述べている14.例えば,パートナーが交通事故で死亡した場合,婚姻であれば,
戸籍謄本で,自分が死亡した者の配偶者であることの証明し,損害賠償金や,保険金,遺
族年金等を受給できる.事実婚の場合は,住民票や職場への「配偶者」としての届出を利
用することが多いようだが,戸籍と全く同じ機能を果たすわけではないため,経済的・精
神的負担を強いられる.二つ目は,事実婚に関する社会的理解度及び受容度が低いことが
原因だろう.そもそも,事実婚と内縁の区別がつかない人も多いだろう.そのため,周囲
にパートナー間の関係性を認められず,社会的な承認欲求が満たされない状況に陥り,個々
人の幸福度に悪影響を与えるのではないかと懸念される.
第二の短所は,現在の法制度下及び判例では,法律婚には認められるが事実婚には認めら
れない権利義務や法的保護が存在する点だ.その詳細は本章第三節に譲るが,それらは事
実婚を選択する上でも経済的負担として重くのしかかってくることは間違いない.このよ
うに,現在の法制度及び判例下では,特定の家族,つまり法律婚にのみ権利義務が限定さ
れていることがわかる.
第二節
各国のパートナーシップ制度の比較
本節では,事実婚カップルの権利保障制度内容を検討する材料として,1980 年代以降の
欧州にて,相次いで制度化された各国の多様なパートナーシップの制度内容を中心に比較
検討していく.
欧米では,キリスト教の思想から,もともとは婚姻法の離婚要件が日本に比べて厳しく,
また同性愛者に対しても厳しい目が向けられていた.しかし,1980 年代頃から離婚要件が
厳しいほど,法律婚前に試婚的交際を行いたいというニーズが高まった.ただし,その際
に保護されるべき女性,子どもには一定程度の保護を与える必要があるといったことから
法律婚とは別立ての比較的ゆるやかなカップル保護制度が作られる国が増加していった.
そしてまた,登録した同性カップルにつき法律婚夫婦に準じた扱いをする法律を定める国,
或いは逆に同性カップルのためにつくられたゆるやかなカップル保護制度を異性カップル
が利用する国などが現れた.そこで,1980 年代以降に制度化された欧州の既存の法律婚と
は異なる新しいパートナーシップ制度内容をみていきたい.その中でも,特徴的な制度を
もつフランス,スウェーデン,ドイツを取り上げる.
20
第一項
フランス
―民事連帯契約と同性婚法―
フランスには,異性又は同性カップルのパートナーシップ制度として民事連帯契約がある.
フランスの民事連帯契約は,異性又は同性の,成年に達した二人の自然人による,共同生
活を送る旨の契約であり,その名称を Pacte Civil de Solidarite の略称として PACS と呼
ばれている.
PACS 制度は,民法の一部改正(5151-1 条)として 1999 年に制定,施行されている.そ
の成立は,全条項を各当事者が了承して公証人等に登録することによるものだ.一方で,
PACS を解消するにはどうすきか.PACS はもともと,婚姻ではなく,法律上の「契約」
行為であるため,
「離婚」のような複雑な手続きはない.大まかに分けると,PACS の破棄
と PACS の解消という方法がある.PACS の破棄に関しては,PACS の契約者の一方から
の一方的な破棄宣言で破棄が成立し,契約は解消される.PACS の解消については,①PACS
契約者どうしの婚姻,②PACS 契約者のうちどちらか一方の死別,③PACS 契約のうちの
どちらか一方と第三者による婚姻,④契約者どうしの協議のうちのいずれかを行えば解消
される.
相続について定めていれば,一方の意思によっても(法律婚の離婚の要件は,別居などの
要件をみて裁判所が判断)可能である.また,PACS 契約者の双方又は一方の婚姻によっ
ても成立する.なお,フランスではいずれのパートナーシップ制度においても父母の共同
親権については認められている.
PACS 契約者の性別については何ら定めがないため,制定当時はそれまで内縁関係の保護
されなかった(制定により内縁関係も保護されることが明記された)同性カップルに主に
利用されたが,その後異性カップルによる利用の方が増えているとのことだ.
また,フランスではいずれのパートナーシップ制度においても父母の共同親権については
認められている.
また,2004 年の民法改正にて,PACS 契約者間で生まれた子どもと婚姻夫婦間で生まれ
た子どもは平等に扱われるようになった.ただ,同性の PACS 当事者が共同養子縁組をす
ることはできない.こうしたことから,同性婚法の制定が求められ,2013 年に成立した.
同性婚法が PACS 法と異なる点は,共同養子縁組の他,配偶者間財産制の選択ができるこ
と,自動的に相続人となること,通称として地方の配偶者の氏をしようすることができる
ことなどだ.
第二項
スウェーデン
―サムボ法とパートナーシップ法―
スウェーデンでは,婚姻法典とは別に,同性パートナーに関する制度として,1987 年に
サムボ(sambors 内縁夫婦)の財産関係に関する法律が定められた.また,住宅につき共
有の登録ができると定められ,サムボ解消の際に平等に分ける方法,一方が引き取る方法,
相手の同意なく処分することの禁止や死亡の場合の財産分割請求権,引き取り請求権等も
定めている.なお,子供の権利保障は内縁カップルでも法律婚カップルでも区別はない.
21
サムボの解消方法は,①サンボ当事者の双方またはいずれか一方が婚姻した場合,②サン
ボ当事者が離別した場合,③サンボ当事者の一方が死亡した場合のいずれか一つに当ては
まれば良い.また,サンボ当事者の双方またはいずれか一方から財産分与の選任請求が行
われた場合,もしくはサンボ当事者のいずれか一方が第 28 条の規定によってサンボ当事者
の共同住居に残留請求の申し立てを行った場合,またはサンボ当事者のいずれか一方が第
22 条の規定によって共同住居の引き渡し請求の訴えを提起したときもまた,サンボ関係は
解消されたものとみなされる.
同性カップルについては,パートナーシップの登録を行うことができるという法律が
1994 年にでき,同性カップルは養子をもつことができないこと.人口受精や体外受精がで
きないことを除いて法律婚と同じ法律効果をもつとされてきた.更に,2009 年には性別に
中立な婚姻法が成立し,パートナーシップ登録法は廃止されている.
スウェーデンでは,サムボ法を制定した結果,法律婚よりもサムボを選択するカップルの
方が多いが,図 3-1 からわかるように,法律婚の 9 割がサムボ経験者である.つまり,サ
ムボが法律婚への移行過程として機能しているということができる.
図 3-1
法律婚カップル・サムボカップルの割合
出典;内閣府経済社会総合研究所編,2014,「スウェーデン家庭生活調査」
備考:調査対象者はストックホルム在住.34-35 歳.600 カップル
第三項
ドイツ
―生活パートナーシップ法―
ドイツでは 2001 年に生活パートナーシップ法が成立した.生活パートナーシップの成立
は,同性間の二人に限られ,パックスのように異性間ですることはできないことが特徴だ.
22
本制度の法的効果は,民法典の婚姻の締結や婚姻障害の規定に対応し,ほぼ同様のものに
なっている.具体的には,相互に扶養義務を負い,異性法律婚の配偶者と同様に,相続は
できるが相続税の優遇措置は適用されていない.
なお,パートナーシップ解消の際には,当事者の一方の死亡あるいは裁判による廃止によ
って行われる.
特徴的なのは共同親権である.ドイツでは,
「親権」を「親の配慮」という.それは,1979
年の「親の配慮に関する新規整のための法律」によって変更された.その後,1997 年に婚
外子についても,共同配慮制度が導入された.
第四項
小括
第一項から第三項にわたって,1980 年代以降のフランス,ドイツ,スウェーデンの新た
なパートナーシップ制度内容の特徴をみてきた.それらの特徴を比較検討するため,主な
ヨーロッパの新たなパートナーシップ制度を表 3-2 にまとめた.
新たなパートナーシップ制度は,制度の類型や適用対象は国によって異なることがわかっ
た,一方で,相続権,社会保障,税制上の優遇措置等は,おおかた同じ方針であった.た
だし,共同親権に関しては,各国で対応はほぼ同じであるが,
「親権」に対する考え方が異
なる国々も少なからずいた.ドイツは,前項で述べた通り,
「親権」の代わりに「親の配慮」
という用語を用いている. またオーストリアでは,1995 年の家族法により「親責任」概
念が導入され,父母が離婚後も責任を有することが明記されている.このように,共同親
権に関しては,各国の子どもに対する価値観が反映されているように思う.
一方で,パートナーの関係解消方法は各国で異なる.これもまた,各国の宗教観や価値観
を反映しているのかもしれない.ただし,本章第一項で述べたように,いずれの国も 1980
年代前から存在する既存の法律婚よりも関係を解消するための要件が緩和されている点は
同じである.以上の欧州各国の新たなパートナーシップ制度の特徴を踏まえて,次節にて
日本における新たなパートナーシップ制度の内容を考えていきたい.
23
制度の類
制定
適用
型
年
対象
相続
社会
保障
税法上
の優遇
共同親権
関係の解消方法
措置
○
オーストリア
登録制
2009
同性
のみ
※1995 年家
○
○
○
族法改正によ
裁判所のみで決定.
り「親責任」
概念の導入
次のいずれかの方法で解消さ
れる.
1.PACS の破棄(契約者の一
契
フランス
約
(PACS)
1999
同性
○
○
○
○
異性
方の意思のみで可)
2.PACS の解消(当事者の一
方の死亡,一方の第三者と
の婚姻,当事者同士の婚
姻,当事者間の協議)
法律婚
ドイツ
登録制
2013
2001
○
同性
のみ
○
○
○
○
○
○
裁判所のみで決定
○
法律婚と同じ.次のいずれか
※1979 年に
の方法で解消される.
「親権」から
1.
「親の配慮」
という用語へ
当事者の一方の死亡
又は
2.
裁判所にて決定
変更
法律婚と同じ
・裁判離婚のみ可
イギリス
登録制
2004
同性
のみ
○
○
○
○
但し,婚姻をした日から1年
が経過していない限り,離婚
の請求を裁判所に申し出るこ
とは不可能.
次のいずれかの方法で解消さ
れる.
1. サンボ当事者の双方また
スウェーデン
法律婚
2009
同性異性
○
○
○
○
は一方が婚姻した場合
2. サンボ当事者が離別した
場合
サンボ当事者が死別した場合
表 3-2 主なヨーロッパの新たなパートナーシップ制度
出典:小島妙子,伊藤聡子,水谷英夫,日本加除出版,2015,『現代家族の法と実務—多様化する家族像—』pp.111 を参考に作成
24
第三節
事実婚カップルの権利保障制度
第一項
ロードマップの提示
繰り返しになるが,我々が目指す理想は,特定の家族,つまり法律婚のみに法的保障が限
定されている社会から脱却し,多様な家族のあり方が広まった社会にすることである.こ
のような社会を実現するための第一歩の方策として,事実婚カップルの権利保障制度を提
案する.そこで,この制度の導入によりどのような社会を目指していくのか,またどのよ
うな手順で導入し普及させていくかについての図 0-1(序章 p5)のロードマップを提示す
る.
この工程を大きくわけると,事実婚カップルの権利保障制度の導入前の第一段階と導入後
の第二段階に分かれる.本章では,本制度導入前及び導入時,つまり第一段階の政策につ
いて言及する.本制度導入前には,本制度を導入した際に人々が利用できるような素地を
整える必要がある.具体的には,親子関係の価値観の転換と生活パートナーシップ登録制
度の創設が必要になる.これらの条件を整えたうえで本制度の導入し,法律婚と事実婚間
の不平等の是正を図り,本制度の社会的認知と定着を目指す.この段階では,事実婚など
の多様なパートナー関係の在り方に移行することについての障壁が少ない人,特に経済的
条件が恵まれている人が中心的な本制度利用対象者となる.
第四章では,本制度導入後の第二段階の政策について考察していく.第二段階では,パラ
サイトシングルに代表される,経済的条件に恵まれず多様なパートナー関係へ踏み切れな
かった層を中心的な対象とした,新制度の浸透・拡大を図る.そして同時並行的に信頼社
会の醸成と強い個の形成を促すことで,家族のあり方が多様化してもコミュニティがその
子育てを支援できるようにする.加えて,そのようなコミュニティから溢れてしまうよう
な人々を救済するセーフティネットの形成も実行する.これらのような制度化後の政策は,
我々が理想とする社会へより近付くための大きな助けとなる.
第二項
カップルの権利保障制度導入の目的
カップルの権利保障制度の目的は大きく分けて 3 つある.その中でも最大の目的は,法律
婚を前提とする規範から脱却することである.つまり,特定の家族である法律婚のみに法
的保障が与えられている状況から,事実婚をはじめとする多様な家族に対しても,法律婚
と同程度の保障を認めることを目的とする.二つ目は,法律婚という形でしか権利や利益
を享受できない不平等を是正することだ.三つ目に,事実婚のメリットを最大限活かした
流動的かつ自由度の高い制度にすることにより,結婚や出産に対するハードルを下げるこ
とを目的とする.ただし,カップル間の関係が流動的になったとしても,子供との関係が
流動的になり,子供の成長を阻害してはならないという制約を設ける.この目的をもとに,
次節では事実婚カップル保障制度に関する内容を検討していく.
25
第三項
生活パートナーシップ登録制度の創設
では,事実婚カップルに対して法律婚と同程度の保障を認めるためには,どのような仕組
みが必要だろうか.第一節第三項にて述べたように,事実婚は確かに法律婚よりも経済的
かつ精神的な負担を強いられている.二宮(2015)は,それらの法律婚と事実婚との格差
は,自分たちの関係性の証明によってもたらされていると指摘する15.ただし,第一節第
二項で述べたように,事実婚の長所は戸籍に夫婦として登録しないことにある.その長所
を活かしつつ,短所を補うために,生活パートナーシップ登録制度を創設し,事実婚カッ
プルの権利保障制度を導入するための素地をつくることを提案する.
具体的には,カップルが事実婚を選択した場合に,法律婚とは異なり(カップル各々の「家」
単位で記載されている戸籍謄本と婚姻届出をするのではない),生活パートナーシップ登録
制度を利用して,自治体に「個人」単位に記載する「生活パートナーシップ登録用紙」
(仮)
に必要事項を記載して自治体に提出する.当事者が希望すれば,事実婚証明書を発行する
ことも可能である.この婚姻証明書は,配偶者が不慮の事故で死亡し,損害賠償請求権や
相続権を行使する際等,事実婚のカップルが自らの関係性を証明したい場合に戸籍謄本等
と同程度の効力をもつことを保障する.
この本登録制度を創設することにより,法律婚と事実婚間の証明の格差は改善されるだろ
う.加えて,法律婚と事実婚間の権利保障格差を是正する際にも,有効だろう.更に,事
実婚カップルの婚姻関係性が可視化されるため,他者または社会からの承認も得られやす
くなるだろう.したがって,事実婚カップル権利保障の制度化にあたり,生活パートナー
シップ登録制度は土台作りとしての役目を担うと考えられる.
第四項
事実婚カップルの権利を保障するための制度の導入
本項では,前項の生活パートナーシップ登録制度を基盤とし,事実婚カップルの権利保障
制度の目的を達成するべく,カップルの権利保障制度化の具体的な保障内容について考え
ていく.
カップルの権利保障制度とは,事実婚を選択するカップルに対して法律婚と同程度の保障
を認めるものである.ただし,本節第二項で述べた目的を踏まえると,事実婚カップルに
対して法律婚と全く同等の法的効果を与えることは不適当だと思われる.そこで,現在の
法制度及び判例にて,法律婚にのみ与えられている権利義務の中から,本制度導入の目的
を考慮して権利義務を選択し,それを法制度の内容としていくという方針をとる.
法律婚のみに与えられている主要な権利義務とは,次のとおりである16.
① 夫婦同氏
② 子が「嫡出子」とされること
③ 子に対する母父の共同親権(子の看護教育及び子の財産管理の義務)
④ 配偶者の相続権
⑤ 配偶者控除,夫婦間贈与の特例等の税法の適用
⑥ 親族関係の発生
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まず,子が「嫡出子」とされること(②),子に対する母父の共同親権(③)は認めるべ
きである.なぜなら,第二章第三節で述べたように,パートナー間の関係は自由になった
としても,彼/彼女らには子を「きちんと」育てる義務があり,またその子にも「きちんと」
育つ権利があると考えるからだ.一方で,夫婦同氏(①)及び親族関係の発生(⑥)は,
認めるべきではない.それは,本章第二項にて先述した,事実婚の長所を制約してしまう
からだ.
問題となるのは,配偶者の相続権(④)および配偶者控除,夫婦間贈与の特例等の税法の
適用(⑤)である.④に関しては選択制にして認めるべきだろう.本章第二節にて海外で
は事実婚や同性婚をしているカップルに対して,当事者の選択により,制約を設けている
場合が多いものの,主要なヨーロッパの国々では相続権を認めている.こうした他国の状
況を踏まえつつ,カップルの幸福追求権,子供を持つ権利(自由権)や,法律婚を望むカ
ップルと法律婚以外を望むカップルの平等を最大限考慮するならば,相続に関しては,当
事者の選択によりその有無を決めるべきだ.
一方で,⑤に関しては,廃止を前提とした上で,新たに個人単位の税制を創設するべきで
ある.なぜなら,配偶者控除を認めることは,新たな不平等を是認することに繋がってし
まうからだ.本制度は,多様なパートナーシップを選択できる社会を目指すための第一歩
としての政策である.つまり,今後は同性婚などを認める制度を導入することも想定され
る.そうしたときに,事実婚のカップルに対して配偶者控除を認めることは,同性婚と事
実婚間に新たな不平等を容認することになってしまう.それは,本章第一項で述べた目的
から反するだけでなく,我々の目指す理想社会とも反するため,⑤は認めるべきではない.
それは,事実婚だけでなく,法律婚に対しても同様に認めるべきではないと考える.した
がって,今後すぐに配偶者控除・夫婦間贈与の特例等の税制に関して廃止するのは難しい
かもしれないが,長期的には廃止していき,個人単位の税制に変更していくべきだろう.
以上のように,事実婚カップル権利保障制度の内容をまとめると次のようになる(表 3-2)
.
事実婚カップル権利保障制度
法律婚
制度改正前
制度改正後
親族関係の発生
○
×
×
氏の統一
○
×
×
子の共同親権
○
×
○
相続権
○
×
△
相続税の控除・税率における優遇
○
×
△
所得税・住民税の配偶者控除
×
×
×
表 3-2
法律婚及び制度化前・制度化後の事実婚の権利義務及び法的効果の違い
出典:二宮周平,2015,
『家族と法―個人化と多様化の中で(第五版)―』
,岩波社,pp56-57 を参考に
作成.
27
流動するパートナー関係
結婚が人と人との結びつきである以上,不和は起こり得る.円満な共同生活に回復するこ
とが不可能なことも当然にあるだろう.特に,経済的に不安定で流動的な社会を生きる我々
は,そうした社会に対応できる流動的かつ自由なパートナー関係を希望していることから,
関係の解消方法も流動的であることを望む.そこで,事実婚の関係解消とは,破綻した,
形だけの家族から当事者を解放する前向きな制度だと考える.たとえ関係の解消に至る過
程や関係解消後の生活で大変なことが多々あったとしても,それは家族のメンバーチェン
ジとして肯定的にとらえていきたい.そのような思いをもつ人々に応えるための制度とし
て事実婚のカップル権利保障制度における関係の解消方法を検討していく.
現行制度上の事実婚の解消方法は,住民票の記載を変更するだけで済み,確かに穂率婚よ
りもより流動的な関係を可能にしている.しかし,事実婚のカップル権利保障制度導入後
の事実婚のカップルは,生活パートナーシップ登録制度にて,事実婚をしている旨を登録
しているため,新たな関係解消方法を考えなければならない.
一方で,現在の法律婚の離婚の方法として主に用いられているのは,協議離婚,調停離婚,
裁判上の和解による離婚,裁判離婚である.このうち,協議離婚が離婚全体の 87.9%であ
り,調停離婚が 9.7%,和解離婚が 1.3%,裁判離婚が 1.0%である.因みに,この協議離
婚とは,夫と妻の間で離婚の合意がまとまった場合,市町村の戸籍係に署名・捺印した離
婚届を出し,係が届出書を確認し受理することによって離婚が成立する.この制度は海外
で珍しく,制度化しているのは,韓国,台湾だけである.
そこで,事実婚を解消する方法として,法律婚とは異なり,より流動的な関係を可能にす
るため,協議離婚制度の要件を緩和させることを提案する.具体的には,当事者の一方の
意思で関係を解消することを認めるというものだ.これは,経済的に不安定で流動的な社
会に対応した,流動的で自由なパートナーシップの在り方の表れである.
ただし,たとえパートナー関係が流動的になったとしても,法律婚のカップルから生まれ
た子どもと事実婚のカップルから生まれた子ども間で格差があってはならないと考える.
そこで,上述した「子が嫡出子とされること」や「共同親権」を認めだけでなく,事実婚
の権利保障制度導入の一貫として,「子どもをきちんと育てる権利」,そして「子どもがき
ちんと育つ権利」をしっかり配慮した制度を別途設ける必要があるだろう.
第五項
親子関係の価値観の転換:「依存」と「自立」
前章第一節では,結婚・出産に関する規範が「親の反対」という形で,若者に内面化され
ている可能性について言及した.若者が自らの選択により本制度を利用し制度を機能させ
るためには,親子関係についての価値観の転換を図ることが重要な条件となる.本制度を
創設しても,親に反対されて本人が制度を利用することができなければ,制度の効果が非
常に限定的なものに留まってしまう.
親子関係の転換を図るにあたっては,「依存」と「自立」の関係性を考える必要がある.
これは,親と子の依存関係を断ち切り,子の親からの自立を促すべきだという単純な話で
はない.パラサイトシングルの増加などによって,現在では親と子の依存関係は批判の対
28
象となっているが,若者世代は親との精神的な結びつきによって助けられることが少なく
ない.例えば,我々学生は,将来の進路を考えるにあたって親の助言が重要な指針となり
うる.また,親にとっても,子どもとの結びつきが精神的な支えとなりうるだろう.必要
なことは,双方にとってメリットのある結びつきを保持したまま,子の自由な選択を一方
的な価値観の押し付けによって制約する依存関係を断ち,むしろその選択を尊重できるよ
うな親子関係を築くことではなかろうか.このためには,親と子の双方に価値観の転換求
められる.親に関しては,子を自分の意思のみによって操作できる対象と捉えることをや
め,子を精神的に支えつつも,子が熟慮の上で選択したことに関してはその選択を尊重す
ることが求められる.他方,子に関しては,親の意思に従うことが必ずしも自らの幸福に
つながるわけではないことを自覚し,親からの助言は受けつつも,重要な局面では自らの
判断で人生の選択を行っていくことが求められる.このような価値観の転換の根本には,
親と子は別の個体であり,別の人生を歩んでいることを正面から認めることがある.日本
における親子関係の現状を考慮すれば,こうした親子関係の転換は決して容易ではないが,
我々が提案する制度が機能し多様な家族のあり方が認められるためには,無くてはならな
い前提条件である.
第六項 事実婚カップルの権利保障制度の利用プロセス図
本章を通して,我々が目指す理想社会を実現するための第一歩の方策として,事実婚カ
ップルの権利保障制度の導入に関して言及してきた.そこで,本制度の導入により,事実
婚カップルは実際にどのように本制度を利用することができるのか,またライフイベント
に合わせてどのような制度の恩恵を享受できるのか,という本制度の利用プロセスを表 3
-3 にまとめた.
表 3-3
事実婚の権利保障制度制利用のプロセス図
出典なし
29
第四節
事実婚カップルの権利保障制度導入による成果予測
第一項
若者の類型化
事実婚カップルの権利保障制度導入の目的を達成するためには,事実婚カップルの権利保
障制度を導入しただけでは足りない.それは,事実婚カップルの権利保障制度導入による
恩恵を享受できる層は限られているからだ.そこで,事実婚を誰もが選択することが可能
になるような,利用者の範囲を広げるための政策を別途考える必要がある.ただし,この
政策に関する詳しい内容は第四章に譲ることとする.本節では,次章にてより効果的な政
策を策定するべく,事実婚カップルの権利保障制度導入によって恩恵を受けることができ
る人々の特徴を分析したい.
経済的条件
家族に対する規範
強(I )
事実婚導入前
事実婚導入後(予測)
結婚・出産の状況
選択の自由度
結婚・出産の状況
選択の自由度
法律婚→出産
高
変化なし
→
・法律婚→出産
良
・出産→法律婚
・法律婚→出産
弱(Ⅱ)
>
中
・事実婚→出産
・事実婚→法律婚→出産
・出産→事実婚→法律婚
↗
・事実婚→出産
・出産→事実婚
・法律婚・事実婚
強(Ⅲ)
ともに極少
・パラサイトシン
低
変化ほぼなし
→
低
変化ほぼなし
→
グル(多)
弱(Ⅳ)
同上
表 3-4 若者の類型化
30
図 3-5
就労形態
出典:厚生労働省,2015,
「厚生労働白書平成 27 年版」
そこで,第二章第二節で先述したように,若者の結婚や出産に大きな影響を及ぼしている
とされる経済的条件及び家族規範という観点から,結婚・出産を希望している若者を表 3-4
のように,四つのクラスターに類型化した.ここでいう経済的条件の両悪の判断基準は何
か.図 3-5 労形態別男性未婚者をみると,正規雇用者の年収は 300~500 万円未満が最も
割合が多く,48.4%である.一方,女性の正規雇用者も男性と同様の傾向にあり,300~
500 万円未満が最も多く,44.2%である.このことから,経済的条件の良悪に関する判断
基準は,年収 300 万円を上限とする.この詳細な説明は次章に譲る.そして,事実婚制度
化による恩恵の波及効果を図るべく,類型化した若者らに事実婚制度化前後で結婚及び出
産を巡る選択にどのような変化があるか推考した.それを踏まえて,その選択をした際の
自由度を検証し,事実婚の制度化のみの施策でどの層の若者は選択の自由度が上がるのか
考察する.なぜ選択の自由度を検証するのか.我々には,幸福を追求する権利が等しく与
えられており,その権利に基づき,自らが希望する選択の自由を外部的な要因によって阻
害されてはならないと考えるからだ.例えば,
「現代社会に適応しつつもパートナーとの関
係を築き子どもを持ちたい」という願望をもっているが,事実婚が制度として社会から認
められていないために,選択肢が法律婚のみに狭められているケースも少なくない.この
ように選択の自由度が低ければ低いほど,社会的な承認欲求は満たされず,幸福度も下が
ると考える.つまり,我々はこの事実婚の制度化により選択の自由度の向上を目指す.
第二項
事実婚カップルの権利保障制度の導入前
まず,事実婚カップの権利保障制度導入前における各セクターの若者の結婚及び出産を巡
る状況を考える.そこで「雇用形態別の配偶者の割合(男性)」(図 3-6,3-7)についてみ
31
ると,非正規雇用の男性は正規雇用の男性と比較して配偶者のいる割合が低いことがわか
る.これは,第二章の未婚化要因をめぐる先行研究にて筒井(2015)や加藤(2001)が未
婚化の要因として経済的条件を重視していることからも明らかである.そして,日本は婚
外子の割合は,2008 年時点で 0.8%であるため,婚姻率が低い時点で出産率は低いことは
自明だろう.つまり,クラスターⅢ及びⅣに属する若者は,年収 300 万円以下であり,非
正規雇用労働者の平均収入と同程度であるため,婚姻率及び出産率ともに低いといえる.
一方で,クラスターⅠ及びⅡに属する若者の婚姻率及び出生率は,クラスターⅢ・Ⅳと比
較して高いといえる.ただし,ここで家族規範の強弱によって,クラスターⅠ・Ⅱ間でど
のような選択の差異が生じているのか検討する.家族規範の強い若者(Ⅰ)は,パートナ
ーと共に生活し,子どもを生むためには,
「恋愛→法律婚→出産」という唯一の正しいルー
トを通るべきだと考えている.そのため,クラスターⅠに属する若者は,自らの意思で,
法律婚を選択し,その後出産をしようと思うはずだ.あるいは,家族規範が無意識のうち
に内面化し,自らの意思だと錯覚して法律婚を選択し,出産するかもしれない.いずれに
せよ,彼らは自らの選択を外部的な要因によって阻害されているわけではないため,選択
の自由度は高いといえる.
一方で,経済的条件が良く家族規範が弱いクラスターⅡに属する若者は,選択の自由度は
クラスターⅠと比較して,低いだろう.なぜなら,クラスターⅡに属する若者は,自らの
意思に基づく選択を外部的な要因によって抑圧される可能性が高いからだ.彼らは,
「恋愛
→法律婚→出産」以外のルート(例えば事実婚)を希望しているにも関わらず,希望通り
の選択をできていない.或いは選択したとしても,家族規範に従った選択をした人よりも
不利益を被っている危険がある.具体的には,事実婚を希望していたとしても,第二節で
明示したデメリットがあるために,事実婚を選択できないカップルが存在する.また,事
実婚を選択したとしても,経済的かつ精神的負担を被っていることが懸念される.以上の
理由から,クラスターⅡに属する若者の選択における自由度は低いと考える.
32
図 3-6
雇用労働者の収入の分布
出典:厚生労働白書 平成 27 年版
図 3-7 雇用形態別の配偶者がいる割合
出典:厚生労働白書 平成 27 年版
第三項
事実婚カップルの権利保障制度化後
では,いままで検討してきた結婚及び出産を巡る選択において,事実婚カップルの権利保
障制度導入後にどのような影響があらわれるのだろうか.
まず上記制度導入前後で最も変化が顕著に表れるのは,クラスターⅡに属する若者であろ
う.一方で,クラスターⅠ・Ⅲ・Ⅳに属する若者らには変化が見られないと推察する.た
だし,Ⅰ群の若者に関する変化の有無は,考慮する必要はない.なぜならば,我々は法律
33
婚を否定しているわけではく,法律婚を希望する人々に対して,事実婚への移行を希望し
ているわけでもない.我々の理想とする社会とは,多様な価値観に基づいた多様な選択が
容認される社会である.法律婚という選択もまた,多様な選択の一つに過ぎない.
なぜ,クラスターⅡに属する若者のみ変化がみられるのか.繰り返しになるが,彼らは家
族規範が弱く,法律婚にこだわっていない,或いは法律婚に抵抗を感じている層である.
つまり,事実婚に対する潜在的なニーズを保持している層だといえるだろう.加えて,経
済的条件は良いため,クラスターⅢ・Ⅳに属する若者よりも,事実婚を選択する上での障
壁は低い.そのような状況下で,事実婚カップル権利保障制度導入により,事実婚が法律
婚と同等な保障を受けることを個人そして社会に認知させることが可能になれば,事実婚
に関する潜在的ニーズが喚起され,尚且つ選択する障害が取り除かれるため,彼らは事実
婚を選択する自由を獲得できると考えられる.つまり,制度化したことによるメリットは
第一に,法律婚のみの法的保障が限定される状況を打開し,事実婚に対しても法的保障が
認められたことである.これにより,結婚や出産に関して「恋愛→法律婚→出産」という
唯一の「正しい方法」或いは唯一の「正しい順番」など有るはずもなく,多様な方法,多
様な順番を承認できる社会への第一歩を踏み出すことが出来るだろう.そのことこそが,
生活パートナーシップ法制定の最も意義がある点だと考える.
しかし,クラスターⅢ・Ⅳに属する若者は,生活パートナーシップ法制定のみでは,結婚
や出産を選択する際の障壁を取り除くことができない.なぜなら,生活パートナーシップ
法制定には,経済的条件の改善に関する支援策は含まれていないからだ.
従って,事実婚カップルの権利保障制度導入だけでは,経済的条件が良く家族規範が強い
若者は,事実婚のメリットを享受可能であるが,経済的条件の悪い若者らにとっては,家
族規範の強弱にかかわらず,実質的に事実婚という選択肢を選択できる状況にない.更に,
図 3-5 の通り,未婚者かつ非正規雇用者の年収 300 万円以下の層,つまり経済的条件の良
い層よりも悪い層の方が男女ともに多く,60%を超えている.そのため,問題とすべきは
Ⅲ・Ⅳ群の若者である.次章では,経済的条件が悪い若者が生活パートナーシップ法制定
による恩恵を享受でき,選択できる自由を獲得するにはどのような方策を策定すべきか考
えていく.
34
第四章
制度化後:メリット増大の方策
第一節
経済的条件悪の人々への事実婚の導入
前章では,事実婚の制度化による各クラスターのパートナーシップの変化を記述してきた.
しかし,制度化による恩恵を受けられるのは,経済的条件が良い人に限られることが分か
った.
経済的条件が低い人は事実婚の制度を利用してパートナーシップをつくる以前に,自立の
条件を確保できていない.事実婚の制度を利用してパートナーシップを利用するためには,
安定した雇用の確保,自立もしくはパートナーとの同居が出来る条件を持たなければなら
ない.この条件のいずれかが満たせていないために,パートナーと暮らして子供を育てる
ことはできずにいる.
そのため,経済的条件悪の人にとって事実婚制度化がメリットになるような支援を設ける
ことで,この制度の利用者の範囲を拡大させたい.効果的な支援を策定するためには,経
済的条件悪の人はどのような人々であり,彼らが抱えている問題を明らかにする必要があ
る.
以下,その実態を既婚者,未婚者,就労形態,性別,居住形態別のデータで参照する.
若年層の非正規雇用者の割合
平成 24 年の「就業構造調査」によると,雇用者のうち非正規の職員・従業員の占める割
合は,38.2%と高く推移している.平成 4 年に比べて 16%以上も上昇したことになる.18
~34 歳の世代でみた非正規雇用者の割合は 35.3%で,全体の 3 分の 1 を占めていることが
分かる.我々が対象としている潜在的な事実婚制度利用者はこの年代となるため,この比
率は無視できない.
性・未婚別にみた就労形態
ここで,松田(2008)が調査した「若年未婚者の雇用と結婚」のデータを使って性・未
婚別による就労条件を確認してみる.まずは,性・未婚別にみた就労形態を見てみる17.
既婚者に比べて未婚者の収入が低い人々が比較的多く,男性に比べて女性の方が非正規雇
用者の割合が多い.男性の場合は,既婚者の 88.1%が正規雇用者だが,未婚者では 62.7%
であり,非正規雇用者と自営等を合わせると 27%である.女性未婚者は,正規雇用者が
45.3%,非正規雇用者は 35.8%であり,男性に比べて非正雇用者が多い.
35
図 4-1
男性雇用者(役員除く)の割合における非正規 図 4-2
の職員・従業員の推移(平成 4 年~24 年)
出典: 総務省統計局「平成 24 年
就業構造基本調査」
表 4-1
男女年齢階級別の職員・従業員の
非正規割合の推移
出典:図 4-1 と同じ
本人年収,夫婦年収,暮らし向き
出典:松田(2010)
性・未既婚別の年収
性・未婚既婚別に年収をみると,男性未婚者は男性既婚者に比べて年収が低い傾向にある
(表 4-1).男性未婚者のうち,年収 300 万円未満の人は 44.2%を占める.女性未婚者では,
300 万円未満がおよそ 7 割を占めている.
36
就労形態別に男性未婚者をみると,正規雇用者の年収は 300~500 万円未満がボリューム
ゾーンになっており,48.4%ある.それに対して非正規雇用者は,100~300 万円の層が一
番多く,60.0%ある.女性も同じ傾向にある.正規雇用は 300~500 万円が一番多く 44.2%
あり,非正規雇用者は 100~300 万円が多く 62%となっている18.
また,山田(2010)の「明治安田生命生活福祉研究所調査」を使った研究によると,20~39
歳の未婚男性のうち 3 分の 1 は収入が 200 万円以下である19.以上のデータで,未婚者の
非正規雇用の割合が多く,年収が低いことが分かる.
結婚生活の開始に必要な夫婦年収
松田(2010)の未婚者が結婚生活に求める結婚生活の開始に必要な夫婦年収を尋ねた設
問によると,既婚者で必要な年収は 400~600 万円未満が多いが,未婚者では 300~500
万円が多い20(図 4-3).このことから,松田(2010)は未婚者の生活の期待水準の高さが
未婚化につながっているのではなく,結婚したとしても希望する夫婦年収を満たさない現
状があると考察している.
未婚者の居住形態
未婚者の居住形態を第 14 回出生動向調査でみてみる(表 4-2).親と同居する男性は 70%
前後,女性は 75%前後で推移している.正規雇用に比べて非正規雇用者の未婚者の方が,
親との同居率が高いことが分かる.これは,前述の就労形態別のデータと併せてみると,
低年収の人が親と同居することを選ぶ割合が多いことと合致する.
自立支援の対象者=パラサイトシングル
今まで就労形態別,未既婚別,性別,居住形態別で分析した結果,自立して結婚すること
のできない人の経済的な条件が見えてきた.未婚者は年収 300 万円未満で非正規雇用労働
をしており,収入が低いために親同居率が高くなっている.
ここで思い当たる彼らの人物像は,山田(1999)が提唱した「パラサイトシングル」で
ある21.我々は,今節で分析した経済的条件が低く自立できない若年者を「パラサイトシ
ングル」として捉えてみたい.
このパラサイトシングルを次節以降の支援の対象者と設定して,第二節で発生原因を説明
する.そして,第三節でパラサイトシングルの人々が,社会的承認を満たし合えるパート
ナーシップを実現するための自立支援策と価値観の転換を図る方法を検討する.
37
図 4-3
結婚生活開始に必要な夫婦年収
出典:松田(2010)
表 4-2
調査・就業別にみた親と同居する未婚者
出典:松田(2010)
38
第二節
パラサイトシングル現象
第一項
パラサイトシングルとは
パラサイトシングルとは,将来結婚したいと思いながら,当面は結婚したくない(できな
い)親同居未婚者のことである22.
2012 年の親同居未婚者は,20~34 歳人口のうち 48.9%であり,非常に大きな割合を示し
ている23.1980 年に 29.5%であった親同居未婚者は,1990 年のバブル崩壊を経て 41.7%
になり,2005 年段階で 45.3%を占める様になり以降は高止まりしている.第二項でその発
生の過程を山田(1999,2007)の議論を参考に説明する.
第二項
パラサイトシングルの発生要因
親同居による生活の期待水準の上昇
戦後の高度成長以降,1980 年代から親同居未婚者の数は増加している.その増加の内容
は,バブル期前後で分かれる.山田(1999,2007)は初期の親同居未婚者を「学卒後も親
に基本的生活条件を依存してリッチな生活をしている独身者」であったが,1990 年以後の
経済停滞により,
「親と同居している未婚者全てが,リッチに生活できているわけではない」
と定義の範囲を変えている.
山田(2007)は,バブル期以前の要因は,結婚生活に対する期待水準の増加と子育てに
対する期待水準の上昇が挙げられるとしている24.戦後の経済成長により,親の生活水準
の上昇,居住空間や子育ての水準が上がったことで,その子どもの期待水準も上がったの
である.また,1980 年以降経済成長が低くなったことで,若年者の収入見通しが親世代よ
りも低くなった.その結果,若年者は親と同居する方が生活水準の期待が満たせることに
なり,未婚者の親同居未婚者の数が増加したのである.
またこの当時は,男女役割意識が根強く存在し,結婚の成否は男性の収入にかかっていた.
そのため,男性は収入が上がることを期待して待ち,女性は収入の多い男性と巡り会える
ことを期待して待つ間,親との同居を選んだのである.この結果,未婚化が大幅に進んだ
と考えられる.
39
図 4-4
親と同居の若年未婚者(20~34 歳)数の推移
出典:西(2013)
男性収入の低下
1990 年のバブル崩壊以降,非正規雇用化と正規雇用の条件が低下したことで,男性の収
入見通しが悪化した.男性は低収入のため女性に収入を求める一方,女性側は雇用状態が
男性側に比べて悪く男性に収入を求めるため,ミスマッチが生まれる.その結果,結婚す
るまで親と同居をしていた人が結婚の希望条件を満たす相手を見つけることは困難になり,
未婚化が進んだと考えられる.
性別役割分業意識の減少とその反転
このミスマッチが生まれる背景として性別役割分業意識の変化が挙げられる.内閣府の調
査によると,分業意識に賛成する人は,1992 年の 60.1%を境に男女共に減少し 2007 年の
44.8%まで減少した25.しかし,2012 年には賛成の割合が 51.2%になり,性別分業に賛成
する層が過半数に回復した.的場(2013)によると,20,30 歳代の若年者の賛成割合が,
2002 年に比べて増加しており,全体の増加を押し上げたのではないかと推測している26.
この背景として,山田(2007)は分業意識の変化に対して,女性に対する労働市場の調
節や公共支援が対応せずに,厳しい雇用情勢に対して保守化したのではないかと考察して
いる.
40
図 4-5
性別役割分業の推移
第三節 パラサイトシングル解消の方策
前節までで,経済条件が低い人の現状を把握し,その実態がパラサイトシングルの層と被
るということを説明してきた.本節では,このパラサイトシングルが抱えている問題点を
整理し,その支援策を提案する.
第一項
パラサイトシングルと既存の自立支援の問題点
親密な関係を作る権利の実現
一番の問題点は,若年者が継続的なパートナーシップを形成して,子育てできないことで
ある.第一章で前述の様に家族を持ちたい人の割合は多い.現状,彼らのできればパート
ナーを得たい,子どもを持ちたいという希望は叶わない.この親密な関係を築ける権利は
あるべきで,それを実現できない環境があるなら,それを変えて行かなければならない27.
この権利を保障するためには,どのような自立支援をしていかなければならないのか.
41
図 4-6
社会保障給付費における高齢者関係給付費と児童・家族関係給付費の推移
出典: 内閣府,2012,「自治体における乳幼児医療費助成事業一覧」
eeting/promote/se_6/siryop41_p50.html
既存の自立支援の問題点
現在,政府が用意している若年者の自立支援の中心メニューは雇用支援,結婚支援,出産
支援,子育て支援である28.しかし,若年者に掛ける予算は少なく老齢者に対する社会保
障給付費に対して約 5%で,抜本的な解決策になっていない(図 4-6).また,それらの支
援は低年収の非正規雇用向けの支援ではなく,育児休業をしても職場復帰できる環境が保
障されている正規雇用のキャリア女性ではないだろうか29.非正規雇用の女性は,育休が
取れる環境にないにも関わらず,政府は,支援の枠組みでなく支援の中身だけ用意してい
るかの様にみえる.
人生前半の社会保障
充分な支援を受けられない経済条件の悪い若年者の社会保障を負担しているのは親であ
る.親が子どもを養えなくなった場合,自立できない子どものセーフティネットはなくな
る.この若年者を支援するためには,人生前半の生活リスクが過去よりも高まっているこ
とから人生後半の社会保障だけでなく,人生前半の社会保障を拡充することが必要になる.
現状の社会保障の財政は,高年齢者に偏っているだけでなく財政的に赤字であるため,高
齢者向けの給付費を減らし,若者向けに財源を振り向けることは困難である30.その場合,
42
「公」の支援だけでなく,「共」の領域である「コミュニティ」による支援も必要になる.
社会にある資源を最大限に利用していく方法を皆で考えていくべきである.
社会保障の単位を家族から個人へ
また,環境の変化が高まっている中,生活リスクはあらゆる所に生まれる.失業が離婚に
つながり,シングルマザーが生まれ,貧困リスクが高まる可能性もある.そのリスクを保
障することは世帯単位で行ってきた今までの制度ではできなくなっている.そこで,パー
トナーシップの変化に対応するために,世帯単位ではなく個人単位での社会保障が必要に
なる.
価値観の転換
また分業意識の低下が反転しているとしても,的場の考察の通り環境が悪いために態度を
保守化している可能性もある.環境と意識は互いにフィードバックする関係にあるといえ
る.若年者自体の意識が変わったとしても,社会制度に影響力を持っている上の世代の意
識が変わらなければ,期待を満たす環境整備はできない.
一方で,若年者側の意識の変化も促す必要があるだろう.現在の若者は環境の悪化の影響
もあり,態度が保守化しているともいえるが,環境を変えることを望むなら,能動的に働
きかける意識が必要になるだろう.特に世代間格差がいわれているが,それを是正するた
めには世代内の意識の共有や,上の世代との連携が必要になる.内に閉じるのではなく他
者に開かれた心構えを持つことが鍵になる.
以上の心構えのもと,パラサイトシングルの問題を解消するための自立支援のありかたは
どのような形が求められるのか,第二項で考えてみたい.
第二項
自立支援から事実婚までの方策
前項で指摘した自立支援の問題点と解決策の方向性を踏まえて,若年者に向けた新たな社
会保障のあり方を考えてみる.
新しい社会保障の目標は,パラサイトシングルを解消して「夫婦二人+コミュニティ+公
でパートナーシップつくりと子どもを育てられる」様にすることである.それは,親から
自立しパートナーを作り,同棲,事実婚をするまでの道のりを支援することを意味する.
図 4-7 で示した,独立したいが独立できない人を,事実婚を利用できる状態に変化させる
ことが目標となる.
支援の整備方針は,人生前半の社会保障の強化と社会保障の単位を家族から個人へ変える
こと,自立支援の対象者とその担い手を拡大させることである.この社会保障をどのよう
な方法で対象者に行き渡らせていけばいいのだろうか.今まで「私」の家族が担ってきた
若年者の社会保障を「公」と「共」に分散する方法を考える.
43
図 4-8
図 4-7
パラサイトシングルの自立支援前後の変化
図 4-9
税の割合
出典: 財務省,2015,「国税・地方税の税目・内訳」
住宅ストックの割合
出典: 国土交通省, 2015,「我が国の住生活をめぐる状況」
44
表 4-3
コミュニティの分類
広井(2009)から抜粋
図 4-10
新しい社会保障のイメージ図
出典:広井(2008)
45
図 4-11
孤立度の国際比較
(注)友人,職場の同僚,その他社会団体の人々(教会,スポートクラブ,カルチャースクールなど)と,「全くつきあわない」「めったにつきあわ
ない」と回答した人の割合(合計).
(資料)OECD, Society at Glance: 2005 edition, 2005, p.83 により,みずほ情報総研作成.
公による支援
今までの公共の社会保障は,フロー(所得)に焦点を当ててきたといえる31.年金給付や
生活保護等はその典型である.しかし,ストック(資源)という点でみると自由市場に委
ねる傾向が強く,公共住宅等の整備はされていない(図 4-9).また,相続税や土地課税に
よる財の社会的な還流は活発ではない.
若年者の自立と同棲を促すならば,住居の確保が必要になる.そのために,公共住宅の増
設を積極的にしていくべきである.
また相続税と土地課税の強化をして,世代間の格差と共に,財産の家族内移転による世代
内格差を是正することも必要である.
加えて,フローの社会保障給付費として若齢年金制度が挙げられる.広井(2009)は,
高齢者向けの厚生年金の制度を解体して,老人向けの基礎年金制度と若齢年金を創設して
いく方法を提案している32.広井の試案によれば,若齢年金は月 4 万円ほどで財源は 10 兆
円で補えるため,合意が得られれば実現可能ではないだろうか.
これらの社会保障のあり方は,生活保護や年金,医療保険のように事後的な補償あるいは
人生後半の保障が主であったが,事前の保障に切り替えることで流動的な人生のリスク変
化に対応できる.我々が目指す社会保障のあり方は広井がまとめた図が参考になる(図 4-10)
33.
共の支援
コミュニティにおける支援は,国の財政的な面で公による支援が見込めない場合に必要に
なる.しかし,地縁や会社,家族の解体が進んでいる日本では個人が孤立する一方である
46
(図 4-11).友人,職場の同僚,その他社会団体の人々とつき合わない割合が OECD 諸国
の中でも多くなっている.
日本人は集団主義と言われているが,山岸(1999)の調査によると,共同体の一歩外に
出ると他人を信頼できない傾向が強いとされている34.就労条件の悪化で孤立しやすい若
年者を社会に繋ぎ止めるためには,彼らを受け入れるコミュニティの役割が重要になるに
も関わらず,コミュニティは機能していないように思える.そこには,日本の社会で特有
のコミュニティと個人の関係がありそうだ.
広井(2009)が提示したコミュニティの分類論によると,コミュニティを農村型と都市
型がある(表 4-3).農村型は共同体的な一体意識をベースとしていて,情緒的なつながり
が重視される一方,都市型は個人をベースとする公共意識によって形成され,言語的な規
範に基づいている.前者は,日本の前近代期のムラがベースであり,それが戦後でも会社
や家族といった形に変わって存在していた.しかし,現在は経済状況の変化によって,家
族や会社といった戦後のコミュニティに入れない人々が続出している35.ムラ的なコミュ
ニティに今まで所属していた人は,コミュニティ内における意思のやり取りには長けてい
たが,一歩外に出ると何を信頼の基準にすればいいのか分からず,相手を信頼できなくな
る.その結果,他人を信頼できない個人は孤立したのである.一方,都市型コミュニティ
は,ギリシャ時代のポリスや中世の都市国家が起源であるとしており,城壁という明確な
領域でありかつ,外部に開かれた領域であったとしている.都市型コミュニティはまとま
りがある一方,規範やルールを共有すれば参加可能な開かれた領域である.そのコミュニ
ティに孤立した個人を社会につなげるために,今後は,都市型コミュニティの様な万人に
開かれ,かつ凝集性のあるコミュニティを作る必要があるとしている.
また,若年者は基本的に働くまでは地域での生活が中心であるため,地域に密着したコミ
ュニティも必要になる.つまり,独立した個人としてつながり,一定のテーマ性の下に集
まり,ある程度地域性があるコミュニティが,若年者の自立支援には効果的であると考え
る.以下,そのコミュニティの参考事例を紹介する.
事例 1 NPO 法人青少年就労支援ネットワーク静岡
NPO 法人青少年就労支援ネットワーク静岡は,静岡市で行われている市民による若者の
就労支援の活動である.就労支援は社会のインフラであるとみなし,全ての若者を利用の
対象者としている.この活動の特徴は,活動の場を設けずに,就労支援の市民サポーター
は自分の人的ネットワークを駆使して直接就労の場につなげることが特徴である.就労の
場を直接見つける方が,就労の場を探すための支援をするよりも,若者が仕事先を見つけ
易い利点があるという36.
事例 2 事例――学生専用マンション「ワテラス」
「ワテラス」は実家を離れて暮らす若者に対して,割安の料金でシェアハウスを提供する.
シェアハウスに住み続けるためには,何らかの共同活動を義務付ける.例えば,地域の高
齢者施設でのボランティアなど.活動は複数用意する.必ずしもシェアハウスである必要
はないが,入居者が気軽に集える場は必ず用意する.
47
入居条件は,契約日時点で 18~25 歳の学生.入居者の義務として地域活動(地元の祭り,
運動会,年末の夜警のうち,どれかひとつへの参加が義務づけられている.また,地域情
報誌の編集や周辺の美化活動,季節イベントの企画・運営への参加などをポイント制にし
て,年間 12 ポイント以上に達しないと契約延長ができない仕組みを導入している.交流ス
ペースはイベントスペース,多目的ホール,広場などがあり,家賃は 65,000 円(管理費 1
万円)程である.
第三項
環境から見た信頼社会
以上で紹介した活動は上手く機能した事例であり,このモデルを普及させることができれ
ばコミュニティは活性化するだろう.しかし,持続可能な活動の条件はどこでも満たせる
訳ではない.信頼社会の中で活動する開かれた個人とコミュニティを相互的に増やして行
かなければならない.コミュニティが個人を承認するようになって,個人が承認すること
を体験できれば,コミュニティに個人が参加する様になる.
その普及策として2つのアプローチがある.一つ目は環境から見直す方法である.ここで
いう環境とは,都市の生活環境,制度,コミュニティの性質といった社会インフラのこと
を指す.例えば,都市部での孤立度が高い状況になっている原因として,街区構造が,ク
ルマ中心の車道によって仕切られたものになっているため,人の集まりに適しておらずコ
ミュニティが形成され辛いという議論がある37.
制度は,コミュニティ活動を補助する公共支援の仕組みである.例えば,近年社会的企業
という,組織のある程度自律した財務基盤の基で行う福祉といった社会的ビジネスを行う
組織が複数ある.そのような企業が行っているビジネスに社会的な福祉を高める価値があ
るならば,国から補助として資金を投入したり,そのビジネスがおこなっていることが社
会的な広がりを持つならば,社会保障としての制度化するという方法である.
第四項
個人とその限界
二つ目は,個人の変容である.今までは,ムラ的な社会や個人主義化が進んだ人々が社会
を構成しており,その意識の内向き志向が社会における個人の孤立度を高めていた.流動
化した社会で,その流動性に耐えうる関係つくりができる人をどう養っていくのかが課題
になっている.また,我々の提言する事実婚カップルの権利保障制度を利用する人々が増
えれば,パートナーシップは流動化するだろう.その意味でも,流動性に耐えうる個人を
構想することは重要である.他者と関係作りができる個人とはどのような人物像なのだろ
うか.
例えば,その人物像を宇野・谷口・牛尾(2014)は「中核層」と表現している38.具体的
には,
「一定の経済的基盤の上に,さまざまな社会活動に参加して,日本社会の中核を担い,
さらに政治において責任ある判断を下す人びと」のことである.この人物像を想定した背
景としては,社会が流動的になっている中,依然として家族を重視する人々が多いからで
ある.
48
社会の組織と個人は,家族を守る個人としての生活があるからこそ,組織にも積極的に対
等に参加できるという関係である.中核層での個人とは,自分と組織に対して責任を明確
に負.
「強い個人」である.彼らは,流動的になる社会やその中の組織との関わり合いに対
応するために,その対照の存在として安定したパートナーシップを重視しているように思
える.
しかし,そのパートナーシップでさえ現在の社会では,我々が本論で述べてきた様に流動
的になりうる.このような状況の中で, 強い個人は「家族」に依ることができるのだろう
か.もし個人が「家族」という「安心」に頼ることが出来なければ,
「強い個人」として生
きることは困難である.なぜなら,個人とは同一性が求められる存在だからである.個人
はなんらかの一貫性が保たれた自我である.それは,近代の産業化時代は, 自分をコント
ロールできる自我であった.また,1980 年代に主張された山崎(1984)がいう「柔らか
い個人」は,産業社会が生産社会から消費社会へと変容する中での新しい個人のあり方を
論じたが,個人という単位は維持したままであった39.この個人は他者との関係性を築く
上で,他者の共感を得るための演技する自分がいて,その裏では一貫性のある自我が存在
している状態のことをいう.山崎(1984)は,それらの個人が成り立つためには,ある程
度継続的で安定した関係性を築く必要があると考えていた.ますます流動的な社会になっ
ている現在も同じ課題を抱えているといえる.
宇野他(2014)がいう「中核層」は,他者を信頼できる開かれた個人として描かれてい
る.個人の内実に変化があったが,個人という単位を重視する点では依然として変わらな
い.そして,この「個人」は自らの一貫性を保つために,安定した関係が必須であるよう
に思える.
一貫性のある個人が流動的な社会に対応するためのアンカーとして家族があるのなら,パ
ートナーシップの解消などで個人を否定されたら,次の関係性構築に向かう前に,一時的
にではあるが個人は不安定になるし,承認の関係が得られなくなることで傷付くことにな
る.社会的な関係であれば,それが崩れても個人の個性を強く否定することにはならない
が,パートナーとの関係でそれが起きれば大きな否定につながる.その否定から人々は簡
単に立ち直ることはできない.よって,次の関係性に向かえるように個人を立て直すこと
が必要になり,その方法を考えてみる必要がある.
第五項
個人と分人
我々が可能性を見いだすのは,「分人」という自分のあり方である40.具体的には,複数
のコミュニティに所属することで,それぞれのコミュニティ向けの親密な関係に対する欲
求を満たせる個人のことである.承認の関係を分ける方が,流動的な社会においては一つ
の関係だけに依存するよりリスクが減る.一つのコミュニティで関係作りが出来なくなっ
た場合に,その他のコミュニティでの居場所を持てることは大きな自分にとって支えとな
るからである.この定義が,山崎(1984)のいう「柔らかい個人」と何が違うのかという
疑問がでてくるが,個人という自分の捉え方を変えている点で異なる.
49
「分人」とは,作家の平野啓一郎が主張する自分のあり方である(平野 2012).個人が
individual,つまり分けられない存在に対して,分人は dividual であり,分けられる存在
である.むろん,身体を分けることはできないが,他者との関係性の中の自分は分けるこ
とができるのである. 親との関係,友人との関係はそれぞれ異なる自分の側面を見せてい
る.その側面が分人である.他者にみせる各々異なる複数の分人を足し合わせたものが,
自分であると言える.自分の構成比率は,つき合う人々が変わることや関係の濃淡によっ
て変わる.
個人という中心がある自分は,その中心を否定されたら弱いが,分人という中心性のない
自分のあり方は,失うものがないといえる.逆に失い続けるともいえるが,個人を否定さ
れたことによる自分を回復するためには,自分の捉え方を見直す方法も有効となりうる.
そして,様々なコミュニティとの関係性を築いていく場合は,それぞれの関係性の整合性
をいちいち考えることは負担になる.それぞれの他者に見せる自分が,本当の自分なので
ある.このことから,
「分人」という考えは,関係性の流動化,多様化に適した処世術とい
える.
責任を引き受ける「強い個人」と責任を曖昧にして全てを肯定する「分人」は,目指す方
向性が違うように思える.前者は,仕事や活動をする上で構築する信頼関係では必要にな
るが,後者は信頼社会と親密な関係を自分がどう捉えるのかという「視点」としてあり,
自分を守るために必要なのである.
第四節
まとめ
本章では,経済条件が低く自立できない人々でも,多様なパートナーシップを持てるよう
にするためにどのように支援し,その制度化のメリットを受け取ってもらうのかを考えて
きた.彼らの実態を分析してみると,自立したくないのではなく,自立できないパラサイ
トシングルの問題があることが分かった.これを解消するためには,この問題が個人の責
任ではなくて,社会全体の責任なのだということを認識し,彼らを社会とつなげるために
様々な形で継ぎ目なく支援することが大事である.そのことで,我々が目指す事実婚の制
度化を通したパートナーシップのあり方の自由化とその目的である,個々人の幸せを勝ち
とれるのである.
50
終章
結論
本稿では,今後人口減少がますます進む日本社会において,いかなる価値観を選択すべき
か,どのような社会を目指していくべきかを問題意識として設定し,特に婚姻制度の変革,
すなわち事実婚カップルの権利保障制度の導入という具体案を提示してきた.
第一章では,一般的に用いられている人口減少社会についてのデータを,現政権やその政
策とは異なる視点から分析した.その中で,戦後から貫かれてきた「経済成長第一主義」
の社会から,個々人が自らの選択で幸せを実現できる社会への転換を図るべきであると述
べた.そして幸せを実現する手段として,
「結婚・出産」を前提として疑ってこなかった家
族についての既存の規範から脱却し,より自由で多様なパートナーとの関係性を認めるべ
きであるとして,事実婚カップルの権利保障制度というパッケージを提示した.
第二章ではまず,家族についての伝統的な家族観が若者の自由な選択を制約する様が,現
代の日本においてどのような形で表れているのかをデータで示した.その上で,現在の少
子化対策が前提としている既存の規範と現在の婚姻制度が,現実の社会には対応できてい
ないということを未婚化の要因という視点から述べ,さらに,既存の規範による抑圧から
生じている不平等を解消する手段としての,多様なパートナーシップを選択できることの
重要性を主張した.
第三章では,第二章までで必要性を強調してきた事実婚カップルの権利保障という制度の
具体的な内容について,諸外国の事実婚関連法制との比較も用いながら提示した.そして,
多様なパートナーシップのあり方を許容する理想の社会像に近付くにあたって,このよう
な制度を導入することによってどのような層にどのようなメリットが生じるのかを分析し,
制度が導入された後の社会への定着を促進する方策が必要であることを述べた.また,理
想の社会に至るまでのロードマップを示して,この章で記述した生活パートナーシップ登
録制度がその前半段階にあたることを示した.
第四章は,第三章を受けて,制度の社会への浸透・定着を図る(ロードマップの後半部分
にあたる)手段として,経済的な条件に恵まれない層,特にその特性が顕著なパラサイト
シングルを施策の対象の中心に据え,彼/彼女らのような人々であっても社会的承認を満た
し合えるパートナーシップを実現するための支援策(新しい社会保障)を,その担い手と
して期待される公(国)
・共(各種コミュニティ)といったアクターにも着目しながら提示
した.
本稿では事実婚カップル保障制度を導入するという提案を通して,我々が同世代,次の世
代, 上の世代に共有したい社会のあり方を論じてきたが,言い残したこともある.
同性婚の制度化,新しい社会保障の財源確保とその制度改革の方法,流動的な社会に耐え
うる「強い個」をどう育てるのかといった,事実婚カップル権利保障制度導入後を見据え
た環境整備の具体像と, その方法論である.具体的な内容にまで踏み込めなかったのは歯
がゆいが,今後社会に出る我々が解決していく課題として,その仲間である同世代,今社
会を担っている上の世代,そして次世代の仲間と共有していきたい.
51
最後に,我々の主張の起点となった希望出生率の疑義に関連した提言をしたい.それは,
若年者がパートナーを作ること,子供を産むこと,育てることについて実際にどう思って
いるのか.その本音を尋ねる調査実施の提案である.現在の結婚,希望子供数の調査は,
従来の家族のあり方を前提にしたものだったが,法律婚以外の選択肢が可能になったとき
に,現実の希望出生率はどのような値が出てくるのかを知りたい.人々はどのような回答
をするのだろうか.それは明るい現実として現れるのか,厳しい現実として現れるのか,
どちらにせよ,希望という絵空事ではなく,現実を知る覚悟が必要になる,その現実を知
って,初めて新たな社会を組み立てていく第一歩となる.
52
第3
提言
事実婚カップルの権利保障制度(第三章第三節より)
提言
事実婚カップルの権利保障制度の導入
事実婚カップルの権利保障制度内容とは…
① 子が嫡出子とされること,子に対する父母の共同親権を法律婚と同等の権利として認
める.
② 夫婦同氏,親族関係の発生については事実婚には認めない.
③ 配偶者相続権については,カップルに選択権を付与する形にする.
④ 配偶者控除・夫婦間贈与の特例等の税制に関しては,廃止を前提とした上で,新たに
個人単位の税制を創設する.
生活パートナーシップ登録制度の創設(第三章第三節より)
事実婚カップルが登録することによって上記の各種権利保障が受けられる.
パラサイトシングルへの自立支援(第四章第三節より)
公による支援…公営住宅の増設,相続税・土地課税の強化,若齢年金制度.
共による支援…コミュニティによる支援の強化.
53
参考文献
第一章
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『Journalism』2014.12,no.295:107-114.
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年
我々が次の世代に残すべき日本の姿
~2030 年を見据えて~』.
第二章
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第三章
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――――,2013,『家族法(第四版)』新世社.
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渡辺淳一,2011,『事実婚新しい愛の形』集英社新書.
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54
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参考資料
第一章
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――――,2014,「まち・ひと・しごと創生長期ビジョンについて(平成 26 年 12 月 27
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「平成 27 年度版 少子化対策白書 第 1 章 2.総人口の減少と人口構造
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(2016 年 2 月 14 日取得,
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2015/27pdfhonpen/p
df/s1-2.pdf).
――――,2015,「平成 18 年版 少子化社会白書 第 1 章 第 4 節 人口減少社会の到
来」,(2016 年 2 月 14 日取得,
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2006/18pdfhonpen/p
df/i1010400.pdf).
日本弁護士連合会子どもの権利委員会,2011,
「パンフレット 国連から見た日本の子ど
もの権利状況」,(2016 年 2 月 14 日取得,
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/publication/data/kodomo_pam03.pdf).
日本ユニセフ協会,
「
『子どもの権利条約』25 周年特設ページ」,
(2016 年 2 月 14 日取得,
http://www.unicef.or.jp/crc/).
まち・ひと・しごと創生本部,2014,
「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン ―国民の
「基本認識の共有」と「未来への選択」を目指して― <参考資料集>」,(2016 年 2 月
14 日取得,http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/pdf/20141227siryou7.pdf).
三菱総合研究所,2014,
「人口と経済の持続可能性に関する調査研究報告書」,
(2016 年 2
月 14 日取得,http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2014fy/E004420.pdf).
55
第二章
厚生労働省,2010,「人口動態統計特殊報告」,(2016 年 2 月 21 日取得,
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo06/index.html).
――――,2005,「人口動態統計特殊報告」,(2016 年 2 月 21 日取得,
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo05/index.html).
国立社会保障・人口問題研究所,2010,「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調
査)」,(2016 年 2 月 21 日取得,
http://www.ipss.go.jp/site-ad/index_Japanese/shussho-index.html).
内閣府,2005,「国民生活選好度調査」,(2016 年 2 月 21 日取得,
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/senkoudo/h16/16senkou_1.pdf).
第三章
厚生労働省,2015,「厚生労働白書平成 27 年版―人口減少社会を考える―」(2016/2/19
取得,http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/15/).
内閣府,「国民生活白書平成 17 年版―子育て世代の意識と生活」(2016/2/18 取得,
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h17/01_honpen/).
内閣府経済社会総合研究所編,2014,「スウェーデン家庭生活調査」.
第四章
河合雅司,2016,
「結婚も自立も難しく…社会問題化する親同居未婚者」
(2016/2/21 取得,
http://www.sankei.com/politics/news/130114/plt1301140002-n2.html).
厚生労働省,2016,「若者雇用対策」(2016/2/21 取得,
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jakunen/).
国土交通省,2015,「我が国の住生活をめぐる状況」(2016/2/21 取得,
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/house02_sg_000095.html)
.
財務省,2015,「国税・地方税の税目・内訳」(2016/2/21 取得,
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/001.htm).
首相官邸,2016,「女性が輝く社会へ」(2016/2/19 取得,
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/women2013.html).
総務省統計局,2012,
「平成 24 年 就業構造基本調査」(2016/2/21 取得,
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/)
.
内閣府,2012,「自治体における乳幼児医療費助成事業一覧」(2016/2/22 取得,
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/promote/se_6/siryop41_p50.html).
56
――――,2013,「我が国財政の現状と課題」(2016/2/12 取得,
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2013/0422/sankou_04.pdf).
――――,2015,「平成 27 年版少子化対策白書」(2016/2/14 取得,
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2015/27pdfgaiyoh/27
gaiyoh.html).
――――,各年版,「男女共同参画社会に関する世論調査」(2016/2/21 取得,
http://www.gender.go.jp/research/yoron/).
西文彦,2013,『親と同居の未婚者の割合』(2016/2/20 取得,
http://www.stat.go.jp/training/2kenkyu/pdf/zuhyou/parasi10.pdf).
広井良典,2008,「これからの社会保障」(2016/2/15 取得,
http://www.cuc.ac.jp/keiken/view/25/tokusyu/index2.html).
的場康子,2013,「若者の性役割分業意識を考える」(2016/2/21 取得,
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/watching/wt1305.pdf).
山田昌弘, 2012,
「これから急増 ワーキングプアの老後どう支える」
(2016/2/20 取得,
http://style.nikkei.com/article/DGXNASFK2500E_V21C12A2000000).
ワテラス,2016,「ワテラス」 (2016/2/20 取得,http://www.waterras.com/).
57
人口減少グループ
参加者名簿(五十音順)
東京大学公共政策大学院2年 石川 翔大
お茶の水女子大学文教育学部2年 市原 慈実
慶應義塾大学環境情報学部4年 日下部 眞太郎
学習院大学法学部政治学科3年 高橋 彩
早稲田大学政治経済学部3年 谷川 史起
東京大学公共政策大学院1年 練生川 真司
東京大学医学部4年 山崎 晃
1
2
3
4
5
日本アカデメイア編(2015)
.
大竹他(2010)
杉浦・野宮・大江(2007)
.
二宮(1991)
.
二宮(2015)
.
6
渡辺(2011)
.
松田茂樹(2010)
.
8 同上.
9 同上.
10 二宮(2015)
.
11 渡辺(2010)
.
12 二宮(2015)
.
13 同上.
7
14
二宮(2015)
.
15
同上.
同上.
松田茂樹(2013)
.
同上.
河合(2016)の「第 14 回出生動向調査」を使った研究によると,20~34 歳の男性未婚者のうち,3
分の 1 は収入が 200 万円以下であることが分かった.
同上.
山田(2007)
.
同上.
西文彦(2013)
.
山田(2007)
.
内閣府,各年版,
「男女共同参画社会に関する世論調査」.
的場(2013)
.
同上.
厚生労働省,2016,
「若者雇用対策」.内閣府, 2015,「平成 27 年版少子化対策白書」
.
首相官邸の「女性が輝く日本へ」政策集から抜粋.待機児童の解消,女性役員・管理職の増加,職場
復帰・再就職の支援,子育て後の起業支援のメニューがある.
内閣府, 2013,「我が国財政の現状と課題」.
広井(2009)
.
広井(2010)
.
同上.
山岸(1999)
.
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39
40
第一章,第二章,第三章参照.
宮本(2012)
.
ジェイン・ジェイコブス(2010)
.
宇野・谷口・牛尾(2014)
.
山崎(1984).
平野(2012)
.
59