Ⅰ.取組「グローバル化時代の経済学教育―英語で学ぶ経済学が未 来を

Ⅰ.取組「グローバル化時代の経済学教育―英語で学ぶ経済学が未
来を開く」の概要と枠組み
Ⅰ-1.取組の概要
低迷する学部教育の活性化を促し、グローバル化時代に相応しい魅力ある経済学教育を
実現するために、3つの取組からなる包括的な教育改革を実行した。第1に、英語による
経済学教育プログラムを展開し、学術英語の徹底的な習得と英語による講義、そして日本
語による専門科目の講義が融合した効果的なカリキュラムを構築した。第2に、体系的カ
リキュラムの導入、適切なコースワーク、公正で厳格な成績評価、FDを推進し、学部全
体が協同して教育に当たる教育体制を確立した。第3に、各科目の課題を充実させて授業
外学習時間を確保する一方、初年次
図表Ⅰ-1 取組の概要
教育の導入、SAによる教育支援の
学部教育の低迷と教育改革への志向と努力
拡充、成績優秀者の顕彰、成績不振
学生のニーズに応える包括的な学部教育改革の実行
目標設定
者の個別面談を行うことによって、
Ⅰ.英語による経済学教育プログラム(IP)の展開
学生の学習姿勢の変革に取り組んだ。
Ⅱ .体系的カリキュラムの導入とFD活動の推進
3つの相互融合・補完的
な取組の実施
Ⅲ. 積極的に学問に取り組む学習姿勢の涵養
こうした取組は大きな成果をあげ、
学習姿勢・意識の変革、学力の向上、
グローバル化時代に相応しい魅力ある経済学教育の実現
就職戦線での健闘、派遣留学試験の
合格、優秀な受験生の獲得等を実現
コミュニケーション能力と専門知識を備えた世界市民の育成
している (図表Ⅰ-1参照) 。
Ⅰ-2.取組の背景と目的
(1)取組の背景
経済学部は、他の学部に比べて教育内容が抽象的で難しいというイメージから、また新
たな社会の変化にもかかわらず、伝統的なカリキュラム体系を固守し続けたため、魅力を
失い、
開学以来 50 台後半だった入試の偏差値も 90 年代後半には 50 を割り込むにいたった。
学部教育の活性化は学部スタッフによって死活問題として認識され、この十年来、新たな
教育目標の設定と経済学教育の再興に力を注いできた。本学が標榜する建学の三指針なら
びに、人々の繁栄と幸福を創出する「創造的人間」という人材像に鑑みて、学部の教育目
標を以下のように設定した。①コミュニケーション能力の育成、②経済学の学習を通した
透徹した知性の鍛錬、③グローバル社会において創造的共生を導く世界市民の養成、であ
る。具体的には「人類の幸福と繁栄のために、経済学の専門知識に裏打ちされた英語によ
るコミュニケーション能力を有する世界市民の育成」を目指して、学部教育活性化の新機
軸として「インターナショナル・プログラム」(以下IPと略記)を立ち上げるとともに、
1
新カリキュラムの構築と学生の学習支援に取り組んだ。
(2)取組までのプロセス
低迷する経済学教育を活性化するために、4半世紀前より必修の「経済学」の授業を少
人数できめ細かな指導に転換するとともに、あわせて生活指導を行うよう工夫してきた。
また一般教養の英語を、経済学教育に役立つような内容に変えることをも企図した。しか
し、これらの改善は対症療法の域を出ず、より体系的かつ包括的な改革が必要とされた。
2001 年から本格的に準備が進められ、英語を母国語とする教員を採用してIPが試行的に
開始され、2003 年度のカリキュラムとその後の包括的な教育システムの改革に結びついた。
英語と経済学をカリキュラムの上で融合させるとともに、
「ミクロ経済学」
「マクロ経済学」
などの基幹科目の内容の均一化、
「基礎演習」「経済数学入門」の新設による初年次教育へ
の対応、コース制による専門科目の体系的教育の導入がなされてきた。制度面でも、完全
なセメスター制、GPA の採用、成績評価に対するガイドライン、各教員の成績評価の教授会
での公表、授業アンケートの実施と結果の公開、成績優秀者の顕彰制度が整備されること
になり、カリキュラムが効果を上げるための基盤となっている。
(3)取組の目的
本取組の目的は、グローバル化時代に求められる世界市民の育成を目指した経済学教育
の実現である(図表Ⅰ-1参照)。経済活動は今日、一層グローバル化しており、経済の理
解において、実質的に世界共通言語としての英語による情報収集と発信が一般的であり、
学術とコミュニケーションの両面において英語力が必須である。経済学教育と英語教育を
融合させることによって、経済学の面白さと有用性が認識され、経済学をはじめとした専
門知識の徹底した習得、コミュニケーション・ツールとしての英語の習得、および学問を
通して国内外との友情のネットワークを広げることが可能となる。このような経済学教育
を実現し有効に実施することを目的として、次のような包括的な学部教育改革に取り組ん
だ。
Ⅰ.
英語による経済学教育プログラム(IP)の展開
Ⅱ.
体系的カリキュラムの導入とFD活動の推進
Ⅲ.
積極的に学問に取り組む学習姿勢の涵養
Ⅰ-3.英語による経済学教育
プログラム(IP)の展開(図
表Ⅰ-2)
図表Ⅰ‐2 英語による経済学教育プログラム(IP)の展開
IPでは、英語による講義を受け
るための学術英語の徹底した訓練、
日本語による専門科目の学習との連
携、および国際交流の機会の提供が
効果的に組み合わされたカリキュラ
ムが組まれている。このIPによる
融合・相乗
効果
IP
(インターナショナル・プログラム)
EAP学術英語
TOEFL
Global Economy
融合・相乗
効果
経済学教育と
インターナショナルプログラムの融合
学部教育・学習
活動の活性化
専門科目学習
基礎演習・経済と歴史
ミクロ・マクロ経済学
各コース科目群
融合・相乗
効果
2
海外研修プログラム
事前研修・事後報告
海外研修
派遣留学
海外インターンシップ
教育は、学生の学習姿勢に大きな変革をもたらし、学部全体の教育・学習活動の活性化をも
たらしている。また、近年は受験生に向けて「創価大学で英語を勉強するなら経済学部」
という明確なメッセージを発信しており、本学部のイメージ刷新に貢献している。
(1)英語習熟度別のクラス編成(図表Ⅰ-3)
IP科目履修に際して、英語習熟度に応じてクラス分けをしている。英語習熟度の到達
目標が各レベルに設定され(レベル1は TOEFL・ITP420-500 点、レベル2は同 480-530 点、
レベル3は同 530 点以上)
、
学生は各レベルの目標をクリアーしながら英語の習熟度を高め、
より高次のレベルへと進むことができる。
【図表Ⅰ‐3
IPの英語習熟度別達成目標とシークエンス】
レベル1(IP1 年目の学生が履修)
対象者:TOEFL・ITP420-500(CBT 110-173)
クラス:Intermediate (CBT 110-133)、 Advanced (CBT 133-173)
達成目標: a. 基礎英語力の向上(各自 40-50 点向上;最低 TOEFL・ITP 480 点の達成)
b. EAP(学術英語):専門科目履修に必要な初級アカデミック・スキルの修得
c. 専門科目:初級経済用語・基礎概念修得
レベル2(主にIP2年目の学生が履修)
対象者:TOEFL・ITP480-530(CBT 157-197)
クラス:Advanced A (CBT 157-173); Advanced B (CBT 173+)
達成目標: a. 基礎英語力の向上(各自 30-50 点向上;最低 TOEFL・ITP530 点の達成)
b. EAP:中級アカデミック・スキルの修得
c. 専門科目:ミクロ経済学とマクロ経済学の概要をより深く学習。新聞等
の時事経済問題をとりあげ、基礎的経済概念を用いて意見交換をする
レベル3(主にIP3年目の学生が履修)
対象者:TOEFL・ITP530+(CBT 197+)
達成目標: a. CBT 213+/TOEIC 800+
b. EAP:上級アカデミック・スキルの修得
c. 専門科目:英語による海外客員教授の授業や学部教員の授業を履修
(2)経済学教育とインターナショナル・プログラム(IP)の融合
経済学の概念の多くは英語圏で発達しており、英語による学習は経済学の理解を深める。
また日本語による専門科目の学習は、英語による経済学の講義の理解をいっそう容易にす
る。こうした効果を高めるために、IPでは、日本語での専門科目と英語での講義が補完
しあうようにカリキュラムが組まれている。例えば、1年次開講の「ミクロ経済学」は、
平行して開講される「Global Economy」、および次年度開講の「Economics A」の理解を助
ける背景知識を提供する。結果として、特に英語習得に意欲を持つ学生にも、専門学習と
3
英語学習の深い関連性と相乗効果を体験的に理解することによって、経済学学習への強い
意欲を与えることができる。
【図表Ⅰ-4
IPを組み込んだ経済学教育カリキュラムの概念図】
経済学教育とインターナショナル・プログラムの融合
3・
4年次 2年次 1年次
【専門=経済学教育】
演習・コース別専門科目群
マクロ経済学
ミクロ経済学
基礎演習・経済と歴史
【International Program】
International Economy etc.
Inter-Cultural Communication
Applied Micro-Economics
EconomicsB(Macroeconomics)
EconomicsA(Microeconomics)
Global Economy
EAP(学術英語)・TOEFL
【海外研修
インターンシップ】
派遣留学
マンチェスター研修
シンガポール研修
大学主催の語学
研修
(3)国際交流の体験
①実力を付けるための留学・海外研修
創価大学では海外の 101 大学と交流協定を結んでおり、その中でも英語圏の大学に対
してIPから毎年 10 名以上の学生が派遣留学生として選出されている。
②海外交流校から招聘された客員教授による講義
IPにおいて英語習熟度レベル3の学生は、海外からの客員教授による講義を履修す
る。この講義のテキストやシラバスについてはIP担当教員と協議して決めている。客
員教授は、各セメスターに1名ずつ招聘されているので、学生は複数の客員教授による
授業を聞くことが出来る。
③徹底した事前・事後学習を伴う海外研修
学習のモティベーションを高めるために各種海外研修を行っている。その際、研修を
単なる「観光旅行」にしないために、現地の歴史、経済、文化、訪問企業・機関に関する
研究・報告を内容とする計 25 時間を超える事前・事後研修を英語で行っている。
(ア)シンガポールへの研修
交流大学の南洋理工大学(NTU)、APEC(アジア太平洋経済協力)事務局、日系企業等を
訪問している。研修参加者には、事前・事後研修に参加し、自身のリサーチを英語
で発表することが求められている。
(イ)マンチェスターでのインターンシップ
マンチェスター大学での1ヶ月間の語学研修の後、1ヶ月間、英国企業でインター
ンシップを実施しており、IPでの学習成果を確認するとともに、海外において働
くという経験がさらに学習への動機付けを高めている。
Ⅰ-4.体系的カリキュラムの導入とFD活動の推進
新しいカリキュラムを導入し、学部全体が組織的に教育に取り組む体制を作り上げた。
4
また個々の教員の講義の質を向上させるために FD を推進している。
(1)体系的なカリキュラム(図表Ⅰ-5を参照)
①
各科目の到達目標、科目間の関連の明確化
IPとのカリキュラム上の融合を図るため、各科目で何をどこまで教えるか、教員間
で協議し、合意した上でシラバスを統一して、かつ学生にはどのようなシークエンスで
科目を履修すればよいかを履修要項に明示し、シラバスにも明記した。
②
基幹科目のシラバスの共通化
経済学の基幹科目である「ミクロ経済学」「マクロ経済学」は、それぞれ3人の教員が
共通のシラバスに基づき、世界的に使われている標準的なテキストを用いて講義を行っ
ている。ホームワークならびに試験問題も統一して成績評価が行われる。効果的な指導
法については、常に情報を交換し合い、講義の向上を図っている。配付する資料、ホー
ムワークそして試験問題などは授業ポートフォリオとして共有財産となっている。
③
コース制の導入
科目間の関係性を明確にするために、専門科目を経済理論、金融、グローバル経済、
公共経済と環境等の7コースに分類した。学生は、自身の関心と適性を考え、コースを
選択し、卒業までにコースの中の科目群から 20 単位以上を履修することが求められる。
④
IPカリキュラムと専門科目カリキュラムの間の相互補完性と両立性
IP履修の学生も、日本語による必修科目はもちろん、上述のコース選択と 20 単位以
上の修得が条件付けられている。そのためIPのレベル別科目群と必修科目、コースの
科目群の講義時間帯ならびに内容の水準が整合的に組まれるよう、スタッフ間ならびに
教務課と緊密に連携し調整している。
(2)初年次教育の導入
新カリキュラムでは一年次に「基礎演習」
「経済数学入門」を新設し、初年次教育に力
を入れた。基礎演習は学部スタッフ全員が担当し、高校から大学への学習環境・意識のス
ムースな移行を促すとともに、学習指導、教員との親交、学部一体感の涵養に努めた。
(3)公正で厳格な成績評価
教員間の成績評価のばらつきをなくすために、○A(90 点以上)は 10%以下、○A、A(80
点以上)を合わせて 25%程度というガイドラインを設定した。そのうえで、各教員が行っ
た成績評価はすべて教授会で公開される。ガイドラインから大きく離れた成績評価を行
った教員は、その場で理由を明確に説明しなければならない。
(4)ファカルティー・デベロップメント(FD)の推進
①FDの推進
創価大学内外で行われる FD の研修に各教員の積極的な参加を促している。さらに、学
部独自での FD 研修会が、学部の全教員が参加して開催されている。第1回目は「基礎演
習」での、日本語アカデミックライティング、プレゼンテーションの教授法について、
学部スタッフからの事例紹介がなされた。今後セメスター毎に開催する予定である。
5
②学生による授業の評価の公開と活用
学生の授業アンケートは現在、すべて学内で公開されている。アンケート結果につい
て、教授会で検討が加えられ、特に授業外学習時間が増えるよう、相互に工夫や経験を
交換し合い改善の努力を促している。
【図表Ⅰ-5
グローバル化時代の経済学教育カリキュラム】
6
Ⅰ-5.積極的に学問に取り組む学習姿勢の涵養
学生の勉強意欲は、教員の意欲と工夫によって必ず高めることができる。我々は、公正
な成績評価、多くのホームワークを伴った講義、成績優秀者による他の学生の学習支援と
顕彰、成績不振者へのきめ細かな指導の推進によって、この課題に取り組んだ。
(1)公正な成績評価と効果的なホームワークを伴った講義
公正な成績評価[Ⅰ-4-(3)] を前提として、成績評価基準の透明化と課題、小テス
トを頻繁に課すことによって、学習意欲の喚起と学習の習慣化を促した。
「ミクロ経済学」
「マクロ経済学」以外の科目でも、少なくともセメスターに3回以上課題が出されてい
る。学部の授業外学習の時間は他の文系4学部の中ではトップであり、特にIP履修生
の1科目当たりの授業外学習時間は週平均5時間にのぼる。
(2)成績優秀者による他の学生の学習支援と成績優秀者の顕彰
①
成績優秀者のSA(スチューデントアシスタント)としての活用と学習支援
担当教員によるオフィス・アワーのほかに、「ミクロ経済学」「マクロ経済学」をはじ
めとした科目では、優秀な成績を修めた上級学年生3名から6名が SA として週3回、学
部長室において学習相談を行い、疑問点を早期に解決するようにしている。SA にとって、
後輩の学習を積極的に支援し教える機会をもつことは、自身の学習の意欲をさらに向上
させることにもなる。後輩にとっても SA の学習姿勢が一つの模範となる。
②
GPAを用いた様々な顕彰制度
毎年、GPA3.2 以上の「成績優秀者」を教員出資によるパーティーに招待する。また、
卒業時には上位1%(2~3名)の優秀者に学部長賞が授与される。さらに全学では、
各学年 GPA 上位6名は特待生として、20 万円の奨学金が授与される。
③ GPAを用いたIP履修の制限と成績向上へのインセンティブ
IPの継続的な履修のためには、英語習熟度の到達目標の達成とともに、各セメスタ
ーで GPA2.7 以上の成績を修めることが求められている。2セメスター連続でこの基準を
満たさなければIPを履修し続けることはできない。これにより学習へのモティベーシ
ョンを高めるとともに、IPを履修する際に真剣な学習姿勢を要求することになる。
(3)成績不振者へのきめ細かな指導
セメスターごとに成績不振者(GPA1.0 未満、または修得単位の少ない者)を把握し「基
礎演習」または「専門演習」の担当者が面接指導を行っている。特に1年生については、
「基礎演習」に1人ずつ配置されている SA も教員と協力して新入生への学業・生活指導
を行い、学習上・生活上の問題の早期発見や履修相談などに務めている。
Ⅰ-6.取組の組織性
学部長のリーダーシップの下、教務委員会、各種ワーキング・グループ、IP委員会が
組織され、課題が検討され改革案が作成される。そこで作られた原案をたたき台として学
部教授会に諮り、広く意見を集め討議され、学部の意思統一が図られる。学部の各教員は、
7
教授会での成績評価の公開[Ⅰ-4-(3)]、FD への積極的な参加[Ⅰ-4-(4)]等に見られ
るように、学部教育の活性化のために積極
【図表Ⅰ-6 取組の組織・支援】
的に取り組んでいる。また、海外交流校か
委員会と学部事務室と緊密な連携の下、実
施されている。また、学部外組織の協力(I
Pの英語教育についてはワールドランゲー
ジセンター、FD については教育・学習活動
学部教授会
学部長
インターナショナル・
プログラム委員会
IPカリキュラム
客員教授招聘
学部教務
委員会
カリキュラム・教務
・FD
各種ワーキング・
グループ
企画・素案作成
支援センター、将来設計についてはキャリ
WLC
ワールドランゲージ
センター
英語・学術英語支援
ア・センター)を得ているが、学部教員が
連携の責任を持ちリーダーシップを発揮し
SA
スチューデント
アシスタント
専門科目学習支援
CETL
教育学習活動支援
センター
教育・学習支援
キャリア・センター
将来設計支援
ている(図表Ⅰ-6)
。
Ⅰ-7.取組の有効性
以下に掲げる3つのカテゴリーに大別される6つの指標によって、本取組の有効性が確
認できる。GPA に見る成績優秀者の増大((1).①)と卒業率の上昇((1).②)は包括的な教育改
革、すなわち「体系的なカリキュラムとFD活動の推進」と「 積極的に学問に取り組む学
習姿勢の涵養」に取り組んだ成果である。またIP学生の英語力の向上((2).①)は取組の
「 英語による経済学教育プログラム(IP)の展開」の成果であり、学内派遣留学選考試験
の合格者の増大((2).②)にも表れている。また企業が求める人材像もグローバル化に対応
した語学力・知識・コミュニケーション能力であり、このことは学生の上場企業就職率((2).
③)として表れている。これらの取組の成果は学部教育の活性化とグローバル化に対応した
教育制度の構築の証であり、学内においても優秀な学生((2).④)と認められている。
(1)学生の学習意欲の向上
① 高いGPAをマークする学生の増大
「卒業単位を揃える」だけなく、より高い GPA を目指す学生が増加した。とくにIP
の学生が高 GPA 修得に意欲的だが、彼らの姿勢は他の学生にも波及し、学部全体の学習
意欲を向上させている。こうした意識の変化は、卒業時に 3.0 以上の GPA を取得した学
生の割合が、2004 年度から 2006 年度にかけて 6.1%, 10%, 11.2%と、ほぼ倍増したこと
からも確認できる。成績評価の厳格化が進む中で、成績優秀者の割合が増加したことは、
学生の学習への意識と取組が向上したことを示している。
② 卒業者比率の増大
一方で、在籍数に占める卒業者数の割合は、2005 年度までは 80%程度であったが、2006
年度は 86%と大幅に改善された。これは、きめ細かな学生指導の成果である。
(2)学生の学力の向上
8
学部事務室
学生自治会(
定期協議会)
らの客員教授や海外研修については、IP
①
IP学生の英語力の向上(図表Ⅰ-7)
IPでの徹底した英語学習は、学生の英語力を
大きく向上させた。例えば、2006 年度入学のIP
受講者 102 名の TOEFL・ITP スコアの平均は、入学
図表Ⅰ-7 IP1年生の ITP(TOEFL模擬試験)スコアの分布の
推移
(2006年度生、入学時と1年終了時の比較)
人数
30
434.6
477.4
入学時
25
1年終了時
時の 434.6 点(標準偏差 34.2)から一年以内に
477.4 点(標準偏差 40.4)へと上昇した。
20
15
10
②
交流校への留学生の増加
5
英語圏の創価大学交流校へ派遣される経済学
0
360 380 400 420 440 460 480 500 520 540 560 580 600 620
部生の数は、顕著な増加を示し、2006 年度は全体
の約4割を占めるに至っている。派遣先で優秀な
成績を修め、帰国後、学部専門科目の単位として
76
80
認定されている。
③
図表Ⅰ-8 経済学部一部上場企業就職者数
人数
100
一部上場企業への就職者数の増加(図表Ⅰ
56
60
41
40
-8)
英語力だけでなく、問題発見能力・論理的思考
20
0
力など、総合的な学力が問われる就職活動でも顕
2004
2005
2006
著な成果をあげている。東証一部上場企業への就
職者数は、ここ3年でほぼ倍増した。
④ 学内における抜群な評価
学業、人物ともに優れた最優秀の学生(男女1
図表Ⅰ-9 本学経済学部の偏差値の推移
名ずつ)に、卒業時に贈られる創立者賞を、女子
54
は 4 年連続して、男子はここ4年のうち2年、経
52
済学部生が受賞している。
(河合塾調べ)
52.5
新カリキュラム導入
50.0
IP開始
50
47.5
(3)受験生の評価の向上(図表Ⅰ-9)
47.5
47.5
2003
2004
48
学部教育の明確なメッセージは、受験生にも高
く評価された。受験生の偏差値はここ数年、著し
46
45.0
44
く上昇している。
2001
2002
2005
Ⅰ-8.今後の実施計画
今後は、2010 年度までに以下の数値目標を達成する。

IP学生数:2006 年度の 185 名から 370 名(学部定員の 40%弱)に増加

成績優秀者の増加:GPA3.0 超の学生を 15%まで増加

就職成果:一部上場企業に就職する学生数を 100 名まで増加

大学院進学:海外の大学院に進学する卒業生を 10 名に増加

英語成績:卒業時に TOEIC800 点以上の英語力をもつ学生を 20%に増加

留年生の減少:在籍数に占める卒業者数の割合を 90%に増加
9
2006
本取組の目的である「グローバル化時代に対応した経済学教育」を達成するために、一
層の教育力と学習力の向上が求められる。海外研修の拡充、学部スタッフの海外派遣・研
修、留学生を迎え入れる英語による「日本経済研究プログラム」の展開を目指す。また、
外部の有識者を交えた評価システムを確立させる。
(1)学生のさらなる英語力、学力向上のためのプログラムの拡充
①
海外研修の拡充
早期の海外研修体験は、学習意欲を高めるために有効である。最終的には、学部の1、
2年生全員が1回は海外研修を体験できる体制を整えたい。2010 年度までには、IP所
属の全1年生が研修に参加できるように、新たに3コースの海外研修を実現させる。そ
の際、徹底した事前・事後の研修を、従来どおりすべてのコースにおいて実施する。
② 学部教育ラウンジ(仮称)の開設による学習支援
学生がいつでも使える施設、
学習環境として約 70 ㎡の広さの教育ラウンジを開設する。
ラーニング・ポートフォリオを蓄積し教員が参照しながら個別学習指導を行なうととも
に、SA による学習指導や、学生による自発的な研究会なども出来るようにする。
③
教員スタッフの増員とFD活動、学生参加による教育力の向上
IPの拡大に伴って、英語教育を担当する教員(非常勤)を増やさなければならない。
一方、学部内外の参加者を交えた FD 研修会を強化し、学部の教育力向上を図る。また従
来科目ごとに選考していた SA を強化する。GPA2.7 以上で人間性に優れた学生を SA に選
抜し、事前研修を経て、科目担当教員の補助、学生の相談等に組織的にあたらせる。
(2)留学生を迎え入れる英語による「日本経済研究プログラム」の整備と学部スタッフ
の海外派遣・研修
グローバル化時代の日本の大学には自国の事情を海外に広く伝える発信能力が求められ
る。IPにおいて、日本人教員が日本経済・社会について英語で講義をする専門科目を増
やし、また国際研修や海外の交流校において講義を行う機会を増やしていきたい。さらに
英語による「日本経済研究プログラム」をIPのカリキュラムに編成し、積極的に海外の
交流大学から学生・教員を受け入れる体制を整備する。これによって海外からの留学生と日
本人学生がともに学ぶ機会と制度を提供する文字通り「インターナショナル・プログラム」
となろう。そのために、現在、既に英語による講義プログラムを持つアジア諸大学の経済
学部との交流関係の強化と教育交流協定の締結に動いている。
(3)外部評価システムの確立
現在の教育検討委員会での自己点検に加えて、より社会の要請に応えた教育を行うため
に、学外の有識者(他大学の教員、会社役員等)による外部評価委員会を設置する。
10