ベトナム 農村観光開発 実践的 ガイ ドブック 2013.DEC ベトナム農村観光開発 実践的ガイドブック 文化スポーツ観光省観光総局 観光開発研究所 Ha Van Sieu 所長 農村観光開発の実践に向けて 02 JICA 観光開発専門家 安藤勝洋 ベトナムの農村観光の今後に向けて ベトナムの農村には、美しい風景、自然や文化遺産、豊かな地場産業、人々の生き生きとし た暮らしなど、魅力的な観光資源が沢山あり ます。 私たちJICAでは、ベトナムの地方部を開発する取り組みの一環として、観光を通じた農村 開発に取り組んできました。観光は大きな投資がなくても、観光資源をうまく活用すること で、地域の経済を活性化する産業となり得ます。 本ガイドブックは、観光総局、観光開発研究所とJICAとの協力で実施した農村観光開発 のパイロットプログラムをもとにして、実践的に活用できる農村観光開発の手法をまとめて います。また各地方省文化スポーツ観光局の協力により、観光開発に潜在性がある121 か所の農村の情報を集めることができました。121か所もの農村を観光地として開発する ことは容易ではありませんが、本ガイドブックを活用して、観光行政、住民、旅行業界関係 者、専門家等が協力すれば、決して成し遂げられないものではありません。 ベトナムは急速な経済成長の中で、著しい成長を遂げています。都市部の発展だけでな く、農村地域においてもその価値を見つめ直せば、観光は新たなビジネスのチャンスとな り得ます。雇用創出や地域振興、そして文化継承や地域経済基盤の整備等、観光は様々 な恩恵を農村にもたらすと考えられます。そして、ベトナムの農村観光の魅力を国内外に伝 えることができれば、より多くの観光客を呼び込む力にもなり得ます。 そのために多くの地域で、農村観光開発が実践されることを期待します。本ガイドブックが ベトナムの観光関係者の皆様にとって、有効な指針となれば幸いです。 2013年11月 Ando Katsuhiro 03 目次 第 1 章 ガイドブックの概要 1.1. 1.2. 1.3. 1.4. 1.5. 1.6. 1.7. 1.8. 本ガイドブックの目的、構成 農村観光とは何か? なぜ農村観光開発が必要か。 農村観光開発の可能性がある地域 だれが農村観光に取り組むのか。 どのように農村観光開発を行うのか。 ガイドブックによる期待される効果 本ガイドブック使用上の留意事項 第 2 章 農村観光の開発プロセスと手法 2.1. 農村の観光開発のサイクル 2.2. 農村における観光開発のプロセスと手法 2.3. STEP1:計画づくり 2-3-1. 対象農村の選定 2-3-2. 農村での計画づくり 2.4. STEP 2: 組織体制の構築 2-4-1. 組織体制のタイプ 2-4-2. 組織体制づくりにおける住民・コミュニティの巻き込み方 2.5. STEP 3:観光サービスのデザイン 2-5-1.観光資源マップ作りを通した観光資源の把握、活用方法検討のための手法 2-5-2. 観光資源を観光サービスとして活用するための手法 2.6. STEP4:受入体制の整備 2-6-1. ソフト面の受入体制整備 2-6-2. ハード面での受入体制整備 2.7. STEP5:マーケティングとプロモーション 2-7-1. マーケティングの計画づくり 2-7-2. プロモーションの方法 2.8. STEP6.モニタリング・マネージメント 2-8-1. モニタリングの手順 2-8-2. モニタリングの計画 2-8-3. モニタリングのデータ収集 2-8-4. モニタリング結果の分析と今後へのフィードバック 2-8-5. 観光地のライフサイクル分析のためのモニタリングの活用 第 3 章 農村観光開発の実践例 3-1. 農村観光開発の実践 3-1-1. 対象地 3-1-2. 対象地の配置図 3-2. 実践例1:ハノイ市ドンラム村 3-2-1.ドンラム村の概要 3-2-2.実践例1のポイント 3-2-3.ドンラム村観光開発のプロセスと手法 3-2-4.ドンラム村ケーススタディからの教訓、今後に向けた課題 3-2-5. ドンラム村の観光開発を振り返って 3-3. 実践例2:ハイズオン省ホンフォン村 3-3-1.ホンフォン村の概要 3-3-2.実践例2のポイント 3-3-3. ホンフォン村観光開発のプロセスと手法 3-3-4. ホンフォン村の観光開発を振り返って 3-4. 実践例3:トゥアティエンフエ省フクティック村 3-4-1.フクティック村の概要 3-4-2.実践例3のポイント 3-4-3.フクティック村観光開発のプロセスと手法 3-4-4.フクティック村の観光開発の成果と今後に向けた課題 3-4-5.フクティック村観光開発を振り返って 3-5. 実践例4:トゥアティエンフエ省タイントアン 3-5-1.タイントアンの概要 3-5-2.実践例4のポイント 3-5-3. タイントアン観光開発のプロセスと手法 3-5-4. パイロットプロジェクトの成果とタイントアンの農村観光の今後 3-5-5. タイントアンの観光開発を振り返って 3-6. 実践例5:ティエンザン省ドンホアヒエップ村 3-6-1.ドンホアヒエップ村の概要 3-6-2.実践例5のポイント 3-6-3. ドンホアヒエップ村の観光開発のプロセスと手法 3-6-4. プロジェクトの成果とドンホアヒエップの農村観光の今後 3-6-5. ドンホアヒエップ村の観光開発を振り返って 3-7. 実践例6:少数民族(カトゥー族)地域活性化のための観光開発事業 3-7-1. はじめに 3-7-2. 事業背景と経緯(地域総合開発→伝統織物を活用した地域振興→観光開発) 3-7-3. 事業立案期 3-7-4. 地域へのインパクト(文化、経済、社会面) 3-7-5. 課題 3-7-6. 少数民族地域での観光開発 3-8. 実践例7:バックニン省の地場産業村 3-8-1.バックニン省の3つの地場産業村の概要 3-8-2.実践例7のポイント 3-8-3. 観光開発のプロセスと手法 3-8-4. 農村各地における観光開発からの教訓(レッソン) 第 4 章 農村観光開発の対象地 4-1. 農村観光開発の対象地の調査 4-1-1. 調査方法 4-1-2. 農村観光開発の対象地の位置 4-2. 農村観光開発対象地のリスト 第 5 章 関係機関の役割と連携 5-1. 関連機関に期待される役割と連携 5-2. 中央政府に期待される役割 5-2-1. 文化スポーツ観光省 5-2-2. 観光総局 5-2-3. 観光開発研究所(ITDR) 5-3. 地方省・市政府に期待される役割 5-3-1. 省・市文化スポーツ観光局 5-3-2. 郡(District)人民委員会、文化情報室 5-3-3. コミューン人民委員会 5-4. 行政機関と旅行業協会との協力 5-4-1. ベトナム旅行業協会(VISTA)との協力 5-4-2. 各旅行会社との協力 5-5. 行政機関とその他関連機関との連携 5-5-1. 観光系大学機関、専門学校 5-5-2. 観光関連コンサルタント 5-5-3. マスメディア 5-5-4. 海外援助機関、NGOとの協力 第 6 章 ガイドブック活用に向けて 6-1. ガイドブックの活用に向けて 6-2. その他の農村観光開発の手法 Chapter 1 第1章 ガイドブックの概要 1.1. 本ガイドブックの目的、構成 (1)ガイドブック作成の背景と目的 本ガイドブックは、ベトナム国における観光を通じた農村開発を促進するために、文化 スポーツ観光省観光総局(VNAT)、観光開発研究所(ITDR)、ベトナム国の観光研究 者、実務者、及び国際協力機構(JICA)の協力により作成されました。 観光開発が社会経済開発を支援し、人々に経済的な裨益をもたらすという考え方が 世界的に浸透してきました。ベトナムにおいても、2030年を目指した2020 年までの国 家観光開発戦略(No:2473/QD-TTg)及び観光開発マスタープラン(No:201/QDTTg)において、社会経済開発のための観光の重要性が強く認識され、観光開発の対 象範囲は、地方部や農村部にも広がりを見せています。これらの開発を実施するのは、 中央省庁の観光総局、観光開発研究所だけではなく、各地方省の文化スポーツ観光 局が中心となり、観光人材育成機関、旅行会社等の観光関連組織、また地域のコミュ ニティ等と連携していく必要があります。 しかしながら、実際にどのように、または何から始めればよいか方法が分らない方も多 いのではないでしょうか。そこで本ガイドブックは、ベトナムにおいて実践的に行われた 農村観光開発の事例をもとにして、ベトナムにおける農村観光開発の手法をできるだ け図や写真を用いて解説しています。さらに、農村地域の観光開発を進める上で必要 な開発手法や管理体制など、様々な事例を基に説明しています。 新たに農村観光開発に取り組む場合は、本書を参考に開発を進めることをお勧めしま す。また既に農村地域の観光開発に取り組まれている関係者は、本書を読んで自分た ち農村の観光開発の状況を評価し、更なる開発に向けた参考資料として下さい。本書 がベトナムの皆様にとって、有益な指針となることを願います。 (2)対象とする利用者 本ガイドブックは、主に以下の観光開発業務に関連する方々が利用することを想定し て、作成しています。 1 中央行政にて、観光関連分野の政策立案や実施を担う行政職員 2 地方行政にて、観光関連分野の政策立案や実施を担う行政職員 3 農村にて観光開発事業に従事する関係者 4 観光地づくりの人材育成を担う大学の研究者、専門家、事業実施のコンサル タント等の実務者 農村観光開発にはコミュニティや観光関連会社等の様々なステークホルダーが関わ りますが、特に観光行政がしっかりとした方針を持ち、コミュニティの支援や観光関連 会社等と上手く連携していくことが農村観光開発の鍵となります。 08 Chapter 1 ガイドブックの概要 (3)ガイドブックの構成 本ガイドブックは、以下の6章から構成されています。第1章では、農村観光開発の基本 的な考え方や本書の扱いについてまとめています。第2章では、農村観光開発のステッ プを、計画づくり、組織体制構築、観光商品のデザイン、受入体制整備、マーケティング とプロモーション、モニタリングとマネージメントの6つのステップに分けて、開発手法を 解説しています。第3章では、文化遺産観光、文化観光、地場産業観光、コミュニティ観 光等の事例をもとに、農村観光開発の手法や管理体制等を解説しています。第4章で はベトナム国内で農村観光に潜在性がある地域を示しました。第2章開発手法や第3 章実践例と比べながら、各地域で適応可能な開発の方法について検討できるようにな っています。第5章、第6章では、各関連機関の役割、ガイドブックの活用に向けた提言 を行っています。 第1章 ガイドブックの概要 ガイド ブ ック の作 成 目 的 、 農 村 観 光 とは ど うい っ た も の な の か 、 ベ トナ ム の 観 光 開 発 に おける農村観光の必要性や可能性について述べています。 第2章 農村観光の開発プロセスと手法 農村観光開発の手法を6つのステップに分け、それぞれのステップの手法を解説して います。 第3章 農村観光開発の実践例 ベトナムにおいて、農村観光開発を実践している7つの例を用いて、開発前の状況、取 組み、開発プロセスや手法等を解説しています。 第4章 農村観光開発の対象地 全国6 3 省 を 対 象 に 実 施 し た ア ン ケ ー ト 調 査結 果 を 踏 ま え て 、 6 3 省 に お け る 農 村 観 光 開発の対象地を示しています。 第5章 関係機関の役割と連携 農村観光開発に関連する観光行政機関の役割を中心に、民間セクター、コミュニティと の関わりやサポートの考え方について説明しています。 第6章 ガイドブックの活用に向けて ガイドブックを活用し、ベトナムの観光開発に繋げていくための提言について述べてい ます。 09 1.2. 農村観光とは何か? (1)農村観光の定義 本ガイドブックでは、農村観光に焦点をあて、開発手法についてまとめました。まず本 書で対象とする農村観光開発とはどういったものを意味するのかを説明します。観光 辞典(Encyclopedia of tourism, 2000, Routledge, pp514-515)によると、農村観 光(Rural tourism)は、以下のように説明されています。 Rural tourism: uses the countryside as a resource. It is associated with the search by urban dwellers for tranquillity and space for outdoor recreation rather than being specifically linked to nature. Rural tourism includes visits to national and state park, heritage tourism in rural areas, scenic drives and enjoyment of rural landscape, and farm tourism. In general, the most attractive rural areas for tourists are those which are marginal for agriculture, often located in thinly populated, isolated and less-favoured upland regions. It is often found in mountainous areas. Tourism offers an additional source of income, especially for women, and is important in reducing the rate of rural depopulation. Tourism investment may preserve historic buildings, and traditional activities such as village festivals may be brought back to life by tourist interest. Abandoned buildings in declining villages or on forms may become second homes for urban dwellers. Such development bring renewed prosperity to poor rural areas, but can also destroy the very attributes of the landscape which first attracted tourist. The growing presence of urban people changes the social character of villages, Peak inflows of cars and caravans cause traffic jams on narrow country roads and hinder movement of animals. Traffic pollution, uncontrolled pets and walkers who leave gates open can hurt livestock and standing crops. Congruence of seasonality for agriculture and tourism also causes friction because of competition for workers. Thus the balance of the costs and benefits of rural tourism is not always positive, but in many areas tourism is seen an inevitable. また、農村観光のもう一つの定義として、Bernard Lane (What is rural tourism, Journal of Sustainable Tourism, 1994, Volume 2, 1-2, page 14)によると農村 観光は、以下の条件にあてはまるべきであると書かれています。 10 Chapter 1 ガイドブックの概要 Rural tourism should be: (1) Located in rural areas. (2) Functionally rural - built upon the rural world’s special features of small scale enterprise, open space, contact with nature and the natural world, heritage, ‘traditional’ societies and ‘traditional’ practices. (3) Rural in scale - both in terms of buildings and settlements - and, therefore, usually small-scale. (4) Traditional in character, growing slowly and organically, and connected with local families. It will often be very largely controlled locally and developed for the long-term good of the area. (5) Of many different kinds, representing the complex pattern of rural environment, economy, history and location. つまり農村観光とは、これまで観光資源として認識されていなかった農業、暮らし、地場産 業、景観等を観光資源として活用し、農村のライフスタイルに触れたり、体験したりする観 光のスタイルです。これは開発手法にもよりますが、全ての農村が観光地になれる可能性 を示唆しています。実際の観光においては、例えば、普段農村での生活に触れたことがな い都会の人々が農村での農業体験をしたり、採れたての新鮮な野菜でご飯を食べたり、ま た農村での暮らしのことを教えてもらうといったシーンも思い浮かべてみてください。農村の 人たちにとっては日常な生活や暮らしが、観光という付加価値を加えることで、観光客や都 心部の人たちにとっては楽しいアトラクションに変化する可能性があるのです。またそのこと で、地域内の農業等のニーズが増えたり、伝統文化の継承につながったり、さらには観光に よる収入増加等の効果も得られるかもしれません(図1-1)。農村観光は、農村地域のビジネ スを、観光を通じて拡大させるチャンスとも言い換えられます。一方で、農村にて観光化が 進むことによる環境や社会面の地域社会の変容等の課題も起こり得るため、観光の開発 については社会、環境面等からの配慮も必要となります。 農村観光をまとめると、以下のキーワードが挙げられます。 ■農村の全ての素材(暮らし、産業、景観等)が観光の資源となり得る。 ■農村の新しいビジネスを起こすアプローチとなる。 ■女性や若者等の新たな雇用を生み出す可能性がある。 ■農村の地域資源(農業や地場産業、文化遺産等)と観光と組み合わせた開発が可能となる。 ■それにより生業や文化遺産の継承が可能となる。 ■観光受入および管理は農村のコミュニティにより行われる。 11 サービス提供 交流 HOST コミュニティ 自然資源 人的リソース 1-1:農村観光の概念図 新しい農村ビジネスの創出 雇用創出 コミュニティの活性化 農村観光プログラム 暮らしの体験、地場産業体験 農業体験、土産等の販売 食事サービス、宿泊等 体験 交流 GUEST 観光客 地域資源(文化、自然)の保存 伝統産業の継承 農業等の活性化 (2)農村観光の種類 農村観光にはどのようなタイプがあるのでしょうか。農村の地域の資源が幅広いた め、観光の種類も多様となります。例えば、農村地域での、文化遺産観光、文化観光、 地場産業観光、コミュニティツーリズム、エコツーリズム、アグロツーリズム等の様々な 農村の特徴を生かした観光のスタイルが包含されたものと考えられます。農村観光開 発に おいて重要なのは、それぞれの農村の持つ特色を生かすことです。 表1-1に農村観光のタイプや観光サービスの例を示しました。なお、以下で紹介する 観光サービスの一部については、第 3 章の実践例にて、開発手法を紹介しています。 (3)農村における観光サービスの種類 農村観光には、農村にある観光資源を活かしたサービスを作り出すことが求められま す。ベトナムで実施されている農村観光のサービスには以下のようなものがあります。 ①農家レストラン・・・農村で採れた野菜や食材を使った農家での食事サービス ②ホームステイサービス・・・農村の家屋に滞在し、生活そのものを体験するサービス ③地場産業の体験、購入・・・農村に残る伝統工芸、窯業、芸術などを、観光客に対して公 開し、体験を促すサービス。またお土産品としての販売等 ④農業体験・・・農業の体験サービス ⑤川や自然の景観を活かしたボートツアーやサイクリングツアー・・・農村に残る景観を活 用し観光客に楽しんでもらうサービス ⑥伝統祭礼のパフォーマンス見学・体験・・・お祭りでの歌や踊り、伝統的なパフォーマンス の披露 ⑦地元の人々との交流・ローカルガイド・・・地元の人々による村の紹介、観光客との交流 ⑧歴史や文化の再発見・・・古くから残る建物や文化的資源の説明や訪問によるサービス ⑨その他サービス・・・その他、農村に残る観光資源や人的資源を活用したサービス 12 Chapter 1 ガイドブックの概要 表1-1 農村観光の種類 タイ プ 特 徴 観光サービス(例) ヘリテージ観光 (事例) ハノイ市ドンラム村 農村の文化遺産(伝統的 な民家、集会所(Dinh)、 祠、祠堂、石碑、)を保存活 用し、歴史や先人の営みを 後世に伝え、外部者が学 習・交流する観光 歴史的遺産の訪問や学 習、伝統民家の訪問、ホー ムステイ、民家レストラン、 ローカルガイドによる村歩 き等 文化観光 (事例) ハイズオン省 フンフォン村 農村固有の伝統的な文 化、祭礼、芸術、無形文化 財等を活かした観光 伝統的な芸術等のパフォ ーマンスの見学、伝統文化 のルーツを巡るツアー、祭 礼等の見学や体験 地場産業観光 (事例) ・バックニン省地場産 業村 ・トゥアティエンフエ省 フクティック村 地域が生み出した伝統工 芸、手工芸、芸術作品、陶 芸等を体験したり、交流し たりする観光 地場産業の体験や職人と の交流、地場産品の購買、 地場産品のルーツを巡る ツアー等への参加 コミュニティ観光 (事例) トゥアティエンフエ省 タイントアン 農村に住む人々が協力し、 人々との交流を楽しむ 観光 農村に住む人々が営む地 場産業や職業の体験や交 流、暮らしに触れるツアー、 農村の自然環境を活かし たツアー等 自然と触れ合う観光 (事例) ティエンザン省カイベイ 景観、河川、緑、公園、果樹 園、庭園等の自然の空間 を活かした観光 河川や景観などの自然環 境を探索するツアー、果樹 等の工房の訪問や試食等 少数民族観光 (事例) クアンナム省ナムザン 郡カトゥー族の村 少数民族の暮らしや文化 を活かした観光 少数民族の暮らしの理解、 少数民族の民族文化や音 楽パフォーマンスなどの体 験等 アグロツーリズム 農山漁村の産業や暮らし を活かした観光 農業の体験や学習、農産 品の試食、農業従事者との 交流プログラム等 13 1.3. なぜ農村観光開発が必要か。 では、なぜ今ベトナムにおいて、農村観光開発が必要なのでしょうか?ベトナム国では、 人口の多くが農村地域に暮らしているといわれていますが、都市部と比較すると依然と して収入が低く、貧困率 1 が高いなどの課題が見られます。例えば、全国の貧困人口と貧 困ラインの人口の合計は2,200万人を超えており、多くが地方部や農村地域に分布して います。貧困世帯の割合は年々減少し9,6%と解消されてきていますが、地域別にみると 北西部の28,55%をはじめ、北東山岳部、中北部、中南部、中部高原等にて、いまだに高 い貧困率であることが分かります。 表1-2 貧困データ エリア 1 1 北東山岳部 2 北西部 3 貧困者数 貧困世帯数 世帯数 貧困ライン世帯 割合(%) 世帯数 割合(%) 2,470,555 429,579 17,39 220,307 8,92 635,962 181,591 28,55 72,985 11,48 紅河デルタ 5,266,527 257,634 4,89 241,086 4,58 4 中北部 2,659,540 399,291 15,01 346,803 13,04 5 中南部 2,012,488 245,605 12,20 187,514 9,32 6 中部高原 1,229,803 184,429 15,00 76,144 6,19 7 南東部 3,732,312 47,519 1,27 40,432 1,08 8 メコンデルタ 4,368,676 403,462 9,24 284,456 6,51 22,357,863 2,149,110 9,60 1,469,727 6,57 合計 出典:2012年の貧困統計資料、No 749/QD-LDTBXH, 13/05/2013, Ministry of Labor 他方、観光は、外貨により地域の経済活性や雇用促進に貢献できる産業と言われていま す。ベトナム国での国内外の観光客数、観光によるGDPの推移を見てみると(図1-3,1-4)、 2000年以降、観光客数の順調な伸びと経済に占める観光の重要性が益々高まってい ます。また近年ではベトナム人の国内観光客の増加し、2010年には2,800万人に到達 し、観光による消費も増加しています。ベトナム人観光客にとっては、都市部の人々が農 村で余暇を過ごす、農村生活を交流するなどのプログラムも大きな可能性をもっていま す。訪問先も、大都市や世界遺産等のメジャーな観光地のみだけでなく、周辺の農村地 域、山岳地域等への訪問へと多様に広がっており、スタイルも個人やグループ、家族な ど、多彩に広がってきています。 1 <貧困率の定義:貧困世帯とは、農村地域においては一か月の世帯収入が400,000VND以下、都市部で 500,000VND以下の世帯のことを指す(No09/2011/QD-TTg, 2011年1月30日、Quyet Dinh ve viec ban hanh chuan ho ngheo, ho can ngheo ap dung cho giai doan 2011 - 2015> 749/QD-LDTBXH, 13/05/2013, Ministry of Laborによる。 2 エリアの分類は、No 14 Chapter 1 ガイドブックの概要 図1-3:国際観光客と国内観光客の推移 (出典:D-12、2030年を目指した2020年までの国家観光開発戦略(No:2473/QD-TTg) 図1-4:観光 GDPの推移 (出典:D-12、2030年を目指した2020年までの国家観光開発戦略(No:2473/QD-TTg)) 15 1.2. 農村観光とは何か? 農村観光は農村地域に新しい経済収入源を作ることにつながります。例えば、2003 年よりJICA及び日本関係機関が開発に協力しているハノイ市ドンラム村では、観光を 本格的に開始した2008年以降に観光客が増加し、2012年には7万人を超え、2013 年は上半期(1月~6月)だけで約6万2774人と約2倍に増える見込みです。この間に農 家レストランやホームステイ等の観光サービスに従事を始めた世帯では、観光業開始 前の 農業収入のみの時期と比較し、世帯収入が平均して2倍以上、多い世帯では 10 倍以上に増加しているという効果も見られてきています 3 。このように観光は、地域に経 済効果をもたらす役割をもっていますので、観光を単なる観光客数の増減のみで捉え るのではなく、地域経済活性化や貧困削減に役立つ地域振興の手法として捉えること が有効でしょう。 また、農村観光は、農村のコミュニティに以下のような様々な利益をもたらすと考えら れます。 1 基礎社会サービスの改善(インフラ、医療、教育) 観光チケット等の収入やその他の観光消費は、農村地域に外貨収入をもたらします。 この収入は、農村地域のインフラ整備、医療機関の充実、教育等にも還元することも可 能となります。またインフラ整備については、農村道路、公衆トイレ、教育機関等の農村 地域の人々に役立つ施設の資金にもなり得ます。 2 文化交流の促進 農村の文化や伝統は、観光客から最も注目されるものです。これらの文化や伝統が、観 光プログラムとして提供されると、観光客が体験する機会となります。しかしながら、時代 の変化や近代化により、多くの無形・有形文化財は、変容や消失の危機にさらされること もあります。農村観光は、これらの文化や歴史、地場産業等の保存や復興にも寄与すると 考えらえます。また観光客からの好評を得ることで、コミュニティが地域の文化を見つめ直 し、誇りを取り戻す機会になることもあります。他方で、農村観光地では、地域のコミュニテ ィは、外部者との接点を好まないケースもあります。一般的に、農村地域で観光の受入が 成功しているケースは、コミュニティの積極的な活動が見られています。 3 環境保全への意識啓発 通常、地域のコミュニティは、地域の環境保全や景観美化にそれほど意識が高くないこと が多いです。しかし、外部者(観光客)が農村地域の環境を評価すると、コミュニティの環 境への意識や地域への誇りが高まるという効果が期待できます。コミュニティは、住まい や周辺環境の清掃や景観の美化など、環境保全に関する活動を開始することもあります。 3 観光客数データはドンラム村管理事務所の統計、世帯収入は、2013年6月にJICAが実施した聞き取り調査に基づく。 16 Chapter 1 ガイドブックの概要 1.4. 農村観光開発の対象となる地域 ではどのような地域で観光開発が求められているのでしょうか。農村観光は、開発方法を 工夫すれば、どの地域でも成立することが考えられますが、特に歴史的な資源が豊富な農 村、景観が美しい農村、地場産業が残す農村、民族文化などが面白い農村等、農村の特 徴が強ければ強い程、観光開発の可能性は高まります。 2030年を目指した2020年までの観光開発戦略とマスタープランにおいては、ベトナム国 を7地域に分けて観光開発を実施していく予定で、北西部や中部高原等の経済状況が困 難な地域の観光開発にもこれまで以上に注力され、農村観光開発への期待はますます高 まってきています。 2013年9月にJICAと観光開発研究所が全63省に対して実施した調査によると、全国で 121の農村において観光開発が行われている、もしくは開発の可能性があるとの結果が示 されました。121 村のリストについては、第4章に示しています。 農村観光を成立させるためには、観光資源の質、立地条件、アクセス、旅行のマーケット性、 住民の関心度合い等、いくつかの基本的な条件も必要となります。以下に農村観光の潜在 性を評価する際の留意事項を説明します。 (1)地域の資源の特質性 農村の地域資源は多岐にわたり、様々な種類の農村があり、表1-3に示す項目があります。 農村内に、他の地域に自慢したい資源がたくさんあれば、観光地としての形成の可能性が 高まります。また観光資源は単発では弱くとも、他の観光資源を組み合わせることで農村 観光の魅力が向上させる方法もあります。例えば、第3章実践例として紹介しているハノイ 市ドンラム村であれば、一番特徴的な観光資源は古い家屋ですが、食事サービス、ホーム ステイ、地場産業体験、地域の祭礼など、様々な要素を組み合わせて、魅力的な農村観光 を作り出す手法を導入しています。 (2)立地条件・アクセスの利便性 農村観光は単に観光プログラムやサービスを準備しただけでは成立せず、いかに旅行客を 引き込むことが必要です。その際に重要となるのが立地条件とアクセスです。主要な都市 からの距離、有名な観光地からの距離、交通の利便性、公共交通の有無なども判断基準と なってきます。 立地条件は、農村観光の開発計画を作る際に、最初に検討すべき項目の一つになります。 例えばアクセスが十分に発展しておらず、観光客を誘致するのに困難な場合は、周辺の観 光地と連結をさせた観光商品の販売の仕方を初期段階から考えていくなどの手法も必要 になります。逆に、上記の観光資源が特有なものであれば、仮にアクセスが十分に整ってい なくても、観光が成立するケースもあります。 アクセスの目安としては、主要都市や主要観光サイトからの日帰り観光ができる距離(片道 1時間程度)であれば日帰り観光が成り立つケースが多いですが、日帰りが難しい場合(2 時間以上)になれば、宿泊施設を伴う、もしくは主要都市やメジャーな観光地の宿泊施設を 利用するなどのパッケージ化が求められてきますので、周辺地域の開発の状況にも目を向 けて、アクセスの面から農村の位置づけを明確にすることが必要となります。 17 (3)旅行業界へのマーケット性 上述の観光資源の質、立地条件・アクセスが条件として整うと、旅行業界への観光商品 化に期待がもたれます。逆に両方の条件が弱い場合には、観光プログラムやサービスの 開発やホスピタリティ向上など、様々な手法により観光商品の質、価値を高めていく こと が必要になります。観光プログラムやサービスについては、例えばアクセスが悪い農村で あっても、その村でしか見られないもの、体験できないことがあれば、売り物になります。 旅行業界では、「観光商品がその地域しかないもの」、「他の地域でまだ実施していてい ない新しいもの」等があると、観光商品化を促進しやすいです。また観光商品化を考える 際には、村の特徴を表現するキャッチフレーズ等も有効で、そのためには、上述の観光資 源を開発段階から内部、外部から評価することが求められます。 表1-3:観光資源の例 項 目 1 文 化 暮らし、民俗、衣服、習慣等 2 歴 史 歴史的な遺産、お寺、建物等 3 産 業 農業、地場産業、食品産業、お菓子作り等 4 人的資源 5 景 観 6 食べ物、郷土料理 7 特産品 8 祭、地域の催し お祭り、伝統行事等 9 遊び、スポーツ 地域の遊び、こどもの遊び場、昔からある遊び等 10 芸 術 11 体験すると面白い 18 内 容 地域の歴史に詳しい人、伝統的な暮らしを知っている人、昔 からある産業を継承している人、ユニークな村民、歌が上手 い人、昔話が得意な人等 山、川、田園風景、野菜畑、伝統的な景観、街路、 写真スポット(ウエディング写真の名所)等 郷土料理、地酒、お茶等 他の地域に自慢したい地域の名物、お土産品等 アート、手工芸等 村の暮らし、農業、釣り体験、山登り体験 (都会の人や外国人にとって魅力と思われるもの)等 12 資源の変化 時間によって変化する景観(朝日がきれい、夕日がきれい) 13 健康や癒し 森林、温泉、ハーブ、薬草等 14 その他 歩いて楽しい道、休むと心地よい場所等 Chapter 1 ガイドブックの概要 1.5. だれが農村観光に取り組むのか。 農村観光開発には様々なステークホルダーが関与します。公共セクター、民間セクタ ー、また農村の住民等、それぞれが重要な役割を担っています。一番重要なのは、農村 の住民、コミュニティー、そしてそれを支援する地域ごとの行政機関ですが、民間セクタ ー等の役割も近年高まってきています。第5章に、観光行政と各ステークホルダーと の連 携において期待される内容を書いていますので参考にしてください。 (1)行政セクター 行政では、中央レベルでは、文化スポーツ観光省観光総局、観光開発研究所等の機関、 地方省では各省の文化スポーツ観光局、また特に郡(District)レベルの文化・観光担 当機関、コミュニーン(Commune)レベルの人民委員会の役割が重要となり、直接的に は、文化関係部署、観光や文化遺産等を扱う管理事務所がある地域ではこれらの機関 の 役割が重要となります。 また観光行政以外にも、農業農村開発省(Ministry of Agriculture and Rural Development)が実施する農村開発事業、商工省(Ministry of Trade and Industry) が実施 する地場産品等の商標化支援等も、農村観光開発に関与してくると考えられます。 (2)民間セクター 近年、民間セクターの観光開発への役割が高まっています。民間セクターによる投資に よって観光地形成がされている例もあり、農村観光の開発支援にも期待がもたれます。 例えば、旅行会社がマーケット開拓の視点から、コミュニティや地元行政に対するアドバ イスを行い、送客を検討している世帯等への小規模な設備投資(トイレ等)を行う事もあ ります。さらには、観光サービスの開発、ローカルガイドの育成などに協力するケースもあ り、地域に密着した協力は旅行会社にとっても商品化やマーケット化促進等のメリットが 出てくると考えられます。また旅行会社は、ガイドを通じて観光客を農村に案内し、農村 の文化や人々に触れたりしますので、ガイドの役割も非常に重要です。 またこれらの民間セクターの動きを活発化していくためには、ベトナム観光業協会 (VITA)、ベトナム旅行業協会(VISTA)の協力も求められてきます。この他、ホテル業、食 事サービス業、お土産業、旅行業 運輸業、広告業、マスメディア等が農村観光地への観 光客の送客に関係してくるでしょう。 (3)農村コミュニティ 農村地域においては、個別の住民、女性連盟、農業組合、青年団、職業ごとのグループな どのコミュニティ内の結束力のある組織が観光を支えます。個別の住民世帯については、 世帯にて食事を提供する、ホームステイを提供するなど、家庭単位での観光サービスの提 供が想定されます。農村コミュニティでは、地場産業等の職業グループによるサービス提 供、大衆組織、女性連盟、農業連盟等の農村社会での既存の組織が観光サービスに従事 する可能性もあります。しかしながら、農村地域での観光開発においては、これまで観光に 従事したことがない人々がサービスを提供することになるため、専門的な技術を習得する ためのトレーニングプログラムによる協力が必要な場合があります。 19 (4)人材育成機関 大学の観光学科や、文化スポーツ観光省傘下の観光専門学校・短期大学等は、農村観 光に従事するコミュニティへの技術研修、ホスピタリティトレーニング等の実施で、農村観 光を支援することが期待されます。 (5)マスメディア TV、新聞、インターネット等の農村地域の紹介は、一般視聴者への農村地域の理解を 深めることになり、観光客誘致にも効果があると考えられます。従いまして、マスメディア とも連携した農村観光の紹介、観光誘致は有効となります。 (6)観光客 観光客自身が一番農村観光の発展の適否を決めるといっても過言ではありません。観 光客が農村の文化やライフスタイルを理解し、異文化を体験する姿勢で農村観光地を 訪問すること自体が、地域にモチベーションを与える要因になります。最近では、訪問し た観光客が投稿するインターネットやSNSによる口コミで観光の評価がされることがあ ります。この意味では観光客も農村観光を作り出す一員となります。 (7)観光分野の専門家 農村観光開発には、観光分野に専門性を持つベトナム人の専門家、コンサルタント、国 際援助機関、国際NGO等も協力しています。専門家は、農村観光開発にアドバイスをし たり、プロジェクトを実施したりします。これらの専門家は様々な地域での経験を有してい るので、他地域の事例を紹介ししてもらうことや、開発事業にアドバイス をもらうことが薦 められます。 1.6. どのように農村観光開発を行うのか。 それでは、どのように農村地域で観光開発を実施していけばよいのでしょうか。農村観光 開発には様々なアプローチや手段が必要と考えられます。先に述べたように農村観光の種 類は多様ですが、計画の作り方、観光資源の把握や観光商品へのデザインの方法、受入 体制強化、マーケティング等、農村の開発の手法については、ある程度の共通点があると 考えられます。かかる観点から、第2章に農村観光開発手法を解説します。もちろん、その 地域毎や、従事する人々によって、開発の目標、ゴール、方法等は異なってくるものですの で、必ずしも共通の開発手法が全ての地域で活用されるとも限りません。地域ごとに開発 手法を工夫していくことが望まれます。 開発に際して観光行政職員や関連機関職員が持つべき最も重要な姿勢は、あくまで農村 観光開発の主役は農民や住民であるため、住民が観光ビジネスを起業し、展開しやすくす るための「支援」をしていくことにあります。また他ステークホルダーとの連携やコーディネー トも、最初から住民自らが行うには難しいため、観光行政職員が中心となりサポートするこ とが望ましでしょう。 20 Chapter 1 ガイドブックの概要 1.7. ガイドブックによる期待される効果 本ガイドブックでは、様々な特徴を持つ農村に適用できるよう、第2章で農村観光開 発の手法をステップごとに解説し、また第3章で事例を紹介しています。第4章には、 地方省文化スポーツ観光局から回答を得た、農村観光開発の可能性がある地域を示 しています。本書を参考に、各地方省において、観光行政職員が中心となり、農村観光 開発が進むことが期待されています。また農村観光が進むことにより、地域の経済が 豊かになるたけではなく、ベトナム全土の農村社会や人々が置かれている立場や水準 が向上し、ベトナム社会の根源である農村コミュニティが末永く保持されていくことが 期待されます。 なお本ガイドブックは、農村観光開発を推奨していくための指針ですが、これまでにベ トナム政府では農村観光開発にかかわるプログラム等をいくつか発表しているため、 本ガイドブックは既存のプログラムの実施を後押しするものと位置付けています。観光 関連では、ベトナム文化スポーツ観光省が策定した「2030年を目指した2020年まで の国家観光戦略(No:2473/QD-TTg、2011年12月30日)」、また「観光開発マスター プラン(No:201/QD-TTg、2013年1月22日)」と関連して、農村地域での観光開発を 推進するのに役立てられることが期待されます。また他省、特に農業農村開発省では、 新農村開発プログラム、地場産業と観光開発を関連させるプログラム等があるため、 連携が求め られます。 1.8. 本ガイドブック使用上の留意事項 本ガイドブックは、できるだけ多くの観光地の開発に役立つことを目的に作成しています が、自らの地域に必要な取り組みを判断するのは、対象の農村をどのような地域にしたい かという目的やイメージが先に来る必要があります。観光開発の開発目標やイメージのヒン トは本ガイドブックにも記載していますが、それぞれに地域において関係者間で検討してく ださい。 本ガイドブックは、農村観光開発に必要なプロセスやステップを解説していますが、地域の 事情によっては、本書で示したモデルや手法がそのまま当てはまらないケースも考えられ ます。ですので、本書を参考に、それぞれの地域で、必要な開発手法やプロセスを検討して ください。 本ガイドブックは、2013年12月時点の情報で作成しており、またベトナム全土の農村の情 報を網羅するには至っていません。そのため、今後のより良い開発のために、皆様の地域の 状況や開発にかかる経験を、観光開発研究所にフィードバックし ていただき、今後のベトナ ムの観光開発をさらにより良いものにして欲しいと願います。 21 Mr. Phung Quang Thang ハノイツーリスト ビジネス投資部 ●農村観光開発にかかる旅行業会の役割 農村観光地の価値を探索し、観光商品に活用すること 地域の人々、特に観光サービスを提供する世帯と観光客との橋渡しとなること ● 農村観光開発の支援からの経験 まず、旅行業界は、様々な農村観光商品において、農民が主役であることを認識すべきです。 農村観光商品の質、多様性、パフォーマンス、文化、特産品等、これらはすべて農民と繋がって いるからです。 農村地域の農民にとって、観光活動は新しいものです。従って農民には観光サービスが何なの か情報が全くないことが多いです。そのため農民に対して、観光のためのガイド、観光客との 交流、観光客への産品の販売、環境保全、文化財保存、衛生的な環境整備等の知識を普及 する必要があります。 旅行会社は、特定の住民(世帯)に偏った協力をするのではなく、住民全体を公平に見るべき です。 地域住民への裨益、観光の収益が全ての関係者に分配されるように配慮すべきです。 地域の資源や工芸品等の活用に留意すべきです。 女性の雇用促進に取り組むことが求められます。 ● 住民を支援する方策 新たな観光商品の開発支援、特に他地域と差別化されるような商品やサービスを開発する。 農村の観光商品のイメージを旅行市場に宣伝する。 各旅行会社は、住民による観光サービス提供を差別なく利用する。経済力があり、旅行客の取 り扱いが多い旅行会社は、少なくとも一つの農村観光地において、1つの世帯、もしくは1つの観 光プログラムの支援者となるべきです。 旅行会社は、観光サービスを提供する住民へのトレーニングや人材育成に協力すべきです。 ● 観光行政と旅行会社の連携方法 地元観光行政を通じて、住民のサポーターとなる。 地元観光行政と協力して、定期的、もしくは特別な観光活動の実施に協力する。 タイムリーな情報を観光客に提供する。 地元行政もしくは観光の管理委員会等に対して、観光活動の実施や資機材購入等にかかる 資金協力を行う。 地元行政もしくは観光の管理委員会等と協力して、観光商品やサービスの質を向上させる。 地元行政もしくは観光の管理委員会等に対して、観光地の管理等にかかる政策や規則等の 制定にかかる助言を行う。 農村観光開発に伴う困難への解決に協力する。 ● ベトナムの農村観光の潜在性や期待について ベトナムは縦長の国土で、自然環境に応じた農業の歴史を持ちます。 全ての省に、伝統的な農業村があります。 国内外の観光客は、農村観光にもっと目を向けるべきです。なぜなら全ての省で、文化、文化 財、農村景観、食文化等が異なるからです。 農村での観光商品を、景観、文化財、地場産業、農家、フェスティバル等と併せて開発される ことが期待されます。 農村観光は、もっと質の高い観光となるべきです。観光を通じた経済開発が、農村地域の文化 遺産の保存、環境保全、貧困削減等に貢献すべきです。 22 Chapter 2 第2章 農村観光の開発 プロセスと手法 2.1. 農村の観光開発のサイクル ベトナムでは、おおよそ1990年代以降に農村地域を観光地として開発する動きが出 てきました。代表的なのは、例えば北部サパ周辺、マイチャウ、ハノイ周辺バチャン村等 は、現在も観光マーケットにもの含まれており、農村観光地としての継続した存在感を 保っています。 他方、ベトナムには地方部、農村部にまだ多くの開発潜在性が残る地域が多数存在し ています。第4章で、今後の農村観光開発の対象地の情報を紹介しています。全国で少 なくとも121箇所の農村が観光地としての潜在性がある、もしくは既に観光地化されて いるとの情報が各地方省文化スポーツ観光局からのアンケート結果から示されました。 今後これらの地域をどのように開発してくかが、ベトナム全国の観光の魅力を多様化 し、また観光による地方部の経済活性を促進するという観点からも重要となってきます。 農村地域を新しく観光地として開発し、観光による地域経済活性化、コミュニティの強 化等を図るためには、様々な仕掛けや工夫が必要です。第2章では農村観光の開発手 法を解説していきますが、その前に観光地のサイクルについて、観光学者が分かりや すくまとめていますので紹介します。R.W.Butler教授によると、観光開発の段階は、表 2-1-1、図2-1-1に示すよう6段階に分類されます。探索段階、参加段階、発展段階、完成 段階、停滞期、衰退期、再生期です。 皆様が関連する農村はどの開発段階に位置づけられるか考えてみてください。開発が 始まったばかりの殆どの地域は、「1.探索段階(Exploration)」、「2.参加段階(Involvement)」の段階に分類されると考えられます。今後のベトナムの地方・農村部の観光に よる地域開発を推奨していくために、この観光開発の初期段階(探索、参加段階)から、 発展、完成段階へとどのように開発・展開していくかが求められているのです。 図2-1-1 観光開発の段階とサイクル *出典:「R.W. Butler, The concept of a tourist area cycle of evolution: Implication of management of resources, 1980、R.W. Butler, Tourism Area Life Cycle, 2011」をベースに編集 農村地域において初期段階か らどのように観光発展させるか、 開発手法の確立 ベトナムの農村地域の観光開 発は、多くが開 発初期段階に 位置していると考えられる 24 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 表2-1-1:観光開発の段階の定義 観光開発段階 概 念 1 探索段階 Exploration 観光客は殆どいなく、地域のハード、ソフト構造は観光による変 化が生じていない。来訪者の往来は居住民の経済、社会生活に 殆ど影響を及ぼさない。 2 参加段階 Involvement 観光客の数が増え、常時一定の数が見込めるようになると、住民の 一部が観光に参加し始める。来訪者優先の施設が整備されるよう になる。観光客向けのPRが行われるようになる。住民の生活に変化 が見られるようになる。 3 発展段階 Development 既に主要なマーケットが出来上がり、観光のイメージができてい る。開発やコントロールに関する地域住民の参加は急速に減少す る。観光地の整備や拡充に国レベルの介入が増えてくる。 4 完成段階 Consolidation 観光客の増加率は低下するが、全体量はまだ増加を続ける。観光 客が住民より多くなる。地域経済の主要部分が観光と結びついてい る。大量の観光客受入れのための施設整備等が外部者によって行 われることも増える。 5 停滞期 Stagnation 観光客数はピークを迎え、様々な許容量の限界、または超過し、 環境・社会・経済問題が生じるようになる。観光地としてのイメー ジは確立しているが、流行地としての地位は失う。 6 衰退期、再生期 Decline, rejuvenation 新しい観光地と競争する力が無くなり、観光客数も減退していく。再生 のためには新しい観光の価値を見出す必要があり、①人工的なアトラ クションを加える、②新たな観光資源を利活用する等の方法がある。 25 農村における観光開発のプロセスと手法 農村を観光地として開発するためには、様々なステップ、手法が必要と考えられます。 観光総局(VNAT)、観光開発研究所(ITDR)とJICAが協力して実施した実証パイロッ トプロジェクトや他地域での農村観光開発の事例をもとに、農村観光開発のステップ を6つの段階に分類しました。 STEP1は、計画づくり段階で、広域からの対象地の選定、また農村内の計画づくりの 手法です。農村観光の開発において最初のステップとして着手することが必要と考え られま す。 STEP2は、組織体制を構築する段階です。観光開発のプロジェクトを行う際の管理委 員会の設立方法、住民グループとの関わり方、住民の参加促進など、持続的な組織づ くりが必要と考えられます。 STEP3は、農村にある観光資源を観光商品にデザインする段階です。デザインには、 住民の意識啓発、サービス提供のために必要な人材育成(トレーニング)、観光サービ スの付加価値付け等の内容が含まれています。 STEP4は、受入体制の整備で、アクセスや衛生環境などのハード面、体制や制度、ホ ス ピタリティなどのソフト面から必要事項を記載しています。 STEP5は、マーケティングとプロモーションです。整備した農村観光商品をどのように 旅行市場に売り出すのか、アイデアと方法を説明しています。 最後のSTEP6は、モニタリングとマネージメントです。観光のトレンドは日々変化しま すし、観光客のニーズも変わります。また地域住民の意識も変化していくものですの で、それぞれの農村の観光の状況の適切なモニタリングの実施が、更なる観光地の 磨き上げに つながってきます。 これらの工程は、観光客のニーズや住民の観光事業への参加状況等により調整や軌 道修正が必要な場合や、計画段階に立ち戻り見直しを行う必要があることもあります。 また開発のプロセスは一度で終了するのではなく、必要に応じて改善が必要な部分 を繰り返して取り組む事で、観光地が更にブラッシュアップされていきます。第3章の実 践例で紹 介 す る 農 村 は 、 新 規 で 観 光 を始 め た 事 例 も あ れ ば 、 既 に 観 光 地 化 さ れ て い た農村の軌道修正に取り組んだところもあります。例えば、第3章の実践例4のトゥアテ ィエンフエ省のタイントアンでは、数年前から旅行客の送客が行われていましたが、村 に観光客を受け入れる組織はなく、観光サービスも限られていました。そのため、計画 づくりや体制づくりに立ち戻り、体制をしっかりと整えた後で、もう一度観光プログラム のデザインや受入体制の改善に取り組んでいます。このように本章で示す農村観光開 発の手順は、それぞれの地域の状況に応じて、順番を組み立て直すことも可能です。 他方、全く農村観光開発が初めての場所であれば、順番通りに実施するのが最も効 率的であると考えられます。 26 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 表2-2-1:農村観光開発のプロセス STEP 1: 計画づくり 事業対象地の選定、農村での計画づくりの2 点から計画づくり STEP 2:組織体制の構築 農村での観光開発を進めるにあたっての組 織体制、コミュニティの参加促進方法等 STEP 3:観光商品のデザイン 観光資源を観光商品に転換するためのアイ デア、必要なトレーニングや支援方法等 観光のニーズや STEP 4: 受入体制の整備 観光客受入のために必要なハード面、ソフト 面の整備、ホスピ タリティ向上等 住民の状況によ り、必要に応じて、 計画やプロセスを 調整する。 STEP 5:マーケティングとプロモーション 観光促進のためのマーケティング方法、ツー ルの種類と特徴等 STEP 6.:モニタリングとマネージメント 観光客受入時の対応や、定量的、定性的な 指標からの観光の評価、モニタリング手法 魅力的・持続的な農村観光地の形成 27 2.3. STEP1:計画づくり ~農村観光のビジョンを創造する~ ■計画づくりとは? 計画づくりとは、農村観光開発の手順で最初に考えるべき作業です。対象とす る農村の置かれた状況の把握や関係する住民やステークホルダーとの協議を 通じて、どのように農村観光開発を進めるのか、どのような目標、ゴールを目指 すのかという大きな枠組みを関 係者間で共有することです。またその目標やゴ ールを達成するために必要な手法、投入、スケジュールなどを検討することで す。 STEP2~6にて今後のプロセスについて説明しますが、その根本となるのが計画 づくりで、しっかりとした計画や開発の方向性のイメージを持つことが重要です。 そのことで関係者間において同じ意識を持ちながら、今後の観光地づくりの作 業を進めることができます。計画づくりでは、観光関連行政職員のみでなく、今 後観光をともに実施していく農村の住民や住民グループ、また旅行会社等の関 連するステークホルダーを巻き込みながら進めることが望ましいです。 ■計画づくりのポイント 計画づくりには大きく分けて2つのポイントがあります。 (1) 対象農村の選定 農村観光を成立させるためには、①観光資源の特質性、②アクセスの利便 性、③旅行業界へのマーケット性等の観点から、総合的に対象地域を選定する ことが望まれます。観光商品開発には、観光サービスの質だけではなく、旅行者 側の視点から訪問のしやすさも大事になりますので、アクセス面やマーケットの 可能性も初期段階で検討しておく必要があります。 (2) 農村での計画づくり 農村での計画づくりでは、農村の現状を様々なデータから分析し、開発のため の問題点を抽出する作業から始めます。併せて、農村観光の主役となるコミュ ニティからの意見や、関連する旅行会社等のステークホルダーのアイデアを引 き出します。その上で、開発対象の農村をどのように開発をするのかというビジ ョンやイメージを関係者間で検討します。大きなゴールの達成のためには、具体 的な目標を設定し、様々な取り組みをしていかなければなりません。計画づくり では、農村を理想の観光地に開発していくために必要な活動、必要な時間、人 的資源、予算措置などについて検討していきます。 28 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 表2-3-1:計画づくりのフローチャート (1)対象農村の選定 ①観光資源の特質 ②アクセスの利便性 ③マーケット性 農村観光開発のフィージィビリティ評価 (2)農村での計画づくりプロセス ①現状分析・問題分析 ②コミュニティ・ステークホルダーの 参加意欲やアイデアの把握 ③農村観光の開発イメージ・ビジョンの設定 農村の基礎データ 人材リソース インフラ状況 観光開発段階把握等 マーケットデータ 社会・環境面 どのようなタイプの農 村観光を目指すのか ④目標・ターゲットの設定 ⑤目標達成のための活動の検討 ⑥アクションプラン・予算計画の検討 数値目標、期間、開発 の対象等 目標達成のための解決 事項、解決方法等 アクションプラン(例) ・組織体制、実施体制(STEP2) ・観光サービスのデザイン(STEP3) ・受入体制づくり(STEP4) ・マーケティング・プロモーション(STEP5) ・モニタリング・マネージメント(STEP6) 29 2-3-1. 対象農村の選定 対象農村の選定とは、農村そのものの開発を考える前に、農村の観光開発の潜在性を チェックするものです。少なくとも(1)観光資源の特質性、(2)アクセスの利便性、(3)旅 行業界へのマーケット性等の観点から農村観光開発の可能性や妥当性を先に検討す ることが望ましいです。 (1)観光資源の特質性 農村観光地を選定するのに最も重要となるのがこの観光資源の特質性です。対象と する農村にどのような特徴があり、観光客にとって訪問する価値があるかを評価するこ とです。第1章「1-2.農村観光とは何か」において、様々なタイプの農村観光を紹介し ました。例えば、歴史や文化が特徴的な村、伝統工芸や地場産業が特徴的な村、芸術 が特徴の村、民族文化や無形文化が特徴の村、景観が美しい村、自然環境に囲まれ た村、農業が盛んな村、漁業が盛んな村、人々が生き生きと暮らしている村等、どのよ うな「特徴」があるのかを見つけ出し、評価できるか否かが、農村観光開発の対象地を 選定する上で重要となります。 (2)アクセスの利便性 アクセスとは、観光客が農村に辿り着くまでの道路や交通手段等のインフラの整備状 況や、また主要な都市や観光地からの距離のことを指します。アクセスの利便性は、観 光客が快適な旅行を楽しむ上でも大切になりますし、何よりも訪問地を決定する際の 大きな判断基準となります。①の農村の観光資源の特徴が、特別に価値が高いもので あっても、実際に訪問することが難しければ、観光客の集客においてはマイナスになり ます。逆にアクセスが整備されていれば観光開発や観光客集客の可能性は高まりま す。開発の対象となる農村を選定する際に、立地条件やアクセスも予め鑑みておくの が得策と言えるでしょう。 (3)旅行業界へのマーケット性 農村の観光商品を、農村地域の行政やコミ ュニティ のみで販売する こ とは容易なこ と ではありません。集客と送客を行う旅行会社との協力が不可欠となります。そのため農 村観光開発の最初の段階から旅行会社のコメントを聞き、旅行のマーケット性がある か否か感触をつかんでおくことが望ましいでしょう。つまり、これから開発に着手する農 村が将来的に観光商品として販売される可能性があるのか、旅行会社による送客が 見込めるのかという点を早期の段階で把握しておけば、コミュニティ側のモチベーショ ンにもなりますし、開発は開発したが実際に観光客が来なかったというような事態を防 ぐことにも繋がります。 これらの3つの項目について、表2-3-2のチェックリストをもとに、対象とする農村の観光 開発の可能性が高いのか否かをチェックすることをお勧めします。 30 Chapter 2 評価 (1)観光資源の特質性 a 村の観光資源の特徴は、広域から見ても際立つものか。 b 村の観光資源は、対象地域の特徴を象徴しているものか。 c 観光資源には、他の地域より優れた文化的、自然環境、伝統 的な特徴があるか。 d その村にしかない地場産業や、体験できないものがあるか。 e 観光資源が、観光客を引付けるアトラクションとなり得るか。 (2)立地条件・アクセスの利便性 a 主要な都市からの道路舗装や橋などのインフラは整備されて いるか。 b 主要な都市、都市からの距離は日帰りが可能な距離か。 c 主要な都市及び観光地からの日帰りが不可能な場合、近隣 もしくは農村内に宿泊施設があるか。 d 主要な都市もしくは観光都市から公共交通(バス、列車等)が あるか。 e 域内にタクシー等の観光客が利用できる交通手段はあるか。 f 農村まで到達するための道路標識、案内標識は十分にあるか。 g 周辺地域とのリンクによる観光ツアーの開発は可能か。 (3)旅行業界へのマーケット性 a 旅行商品のキャッチフレーズになるような農村の特徴があるか。 b 旅行会社からマーケットの開発の可能性が述べられているか。 c 対象農村付近の他の場所へのツアー送客がされているか。 d 他の観光地、農村観光地にはないツアープログラム、アトラク ションが開発できるか。 0点 1点 0点 1点 0点 1点 31 農村観光の開発プロセスと手法 表2-3-2:対象農村の選定にかかるチェックリスト 2-3-2. 農村での計画づくり 次に農村での計画づくりの手法を紹介します。計画づくりのステップには、(1)現状分 析・問題 分 析 、 (2 )コミ ュ ニティやステー クホル ダ ー の 参 加 意 欲 の 確 認 、 ア イ デ ア の把 握、(3)農村観光開発のイメージやビジョンの設定、(4)目標・ターゲットの設定、(5)目 標達成のための取り組み事項の検討、(6)アクションプラン・予算計画の検討、の流れ が考えられます。それぞれのステップのポイントや留意事項について説明します。 (1)現状分析・問題分析 計画づくりに先立ち、農村の状況と観光開発のための問題を分析することから始めま す。農村の状況をチェックするためには表2-3-3のような項目があります。これらのデー タは、統計データ等を活用して、既存の定量データを用いるとともに、足りない情報に ついては簡易な調査を行うなどしていくことを必要に応じて実施してください。 経済データや労働人口等のデータの把握は、今後の農村観光開発を行うためのベー スラインの設定にもなります。例えば、STEP6モニタリングとマネージメントにおいて、 観光のインパクトについても触れますが、例えば観光開始前と開始後の観光収益や世 帯収入、労働人口の変化などが把握できると、観光が農村にもたらす経済効果を把 握することもでき ます。 観光資源の評価や受入環境の把握は、農村の観光地づくりのイメージやどのような開 発手法を用いていくべきかという議論につながります。例えば、農村内に観光客受入 のために食事スペースやトイレなどのインフラが整備されていない、といった現状は、 今後の計画を作るにあたり、サービス提供のためのインフラの整備が必要であるといっ た具体的な活動や予算措置にも繋がるでしょう。 環境・社会面については、例えば少数民族の村等で外部者が入るのにセンシティブな 状況にないか、または外部者が入ることにより希少な文化やライフサイクルに変化が 生じないかといった懸念事項を事前に確認しておくことも大事でしょう。 制度や予算面については、観光開発事業を行う上での裏付けとなる政策があるか否 かで、地方行政の動きが異なるため、制度面の分析は大事です。また事業には予算も 必要とな り ま す ので 、 予 算 や 関 連 す る 政 策 の 有 無 を 把 握 し て お く こ と で、 観 光 開 発 事 業の規模感も関 係者と共有することが可能となるでしょう。 32 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 表2-3-3:現状分析チェックリスト ① 農村の産業、経済 a 平均世帯収入 b 産業構造、産業別収入、売上 ② 人的資源、労働人口、組織等の把握 a 総人口数 b 労働人口、非労働人口 c 産業別人口数 d 産業別組合、職業グループの活動 e 大衆組織(女性連盟、青年団等) の活動 ③ 観光資源 a どのような特徴的な観光資源があるか。 b 観光資源の種類はどのくらいあるか。 ④ 観光開発段階 a 開発段階はどのレベルか。(探索段階、 参加段階、発展段階、完成段階等) b 地方省の観光開発計画において対象 農村の開発が位置づけられているか。 c 観光客は既に来ているか、来ていない か。観光客が来はじめている場合、観 光客数が把握されているか。 現 状 改善方法等 現 状 改善方法等 現 状 改善方法等 現 状 改善方法等 33 ⑤ a 外部からの観光受入のための 拠点となる施設はあるか。 b 駐車スペースはあるか。 c 衛生な水、衛生なトイレはあるか。 d 食事スペースはあるか。 e 宿泊施設はあるか。 f 電力は十分に供給されているか。 ⑥ マーケットの状況 a 旅行業界からの興味は示されているか。 b 近郊に観光地があるか。 ⑦ 環境や社会面への影響 a 外部者が農村に入ることでの弊害が 起こらないか。 b 農村の文化や暮らしは、持続的に守ら れるか。 c 観光保全への対応、下水処理やごみ 処理等はされているか。 ⑧ 34 インフラの状況 開発政策や予算との関連 a 開発を支援する関連政策があるか。 b 開発予算はどの程度確保できるか。 現 状 改善方法等 現 状 改善方法等 現 状 改善方法等 現 状 改善方法等 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 (2)コミュニティ・ステークホルダーの参加意欲やアイデアの把握 次に、計画づくりを始めるにあたり、実際に農村で観光に従事することが想定される住 民や 住 民 グ ルー プ とイ メ ー ジ共 有 し て い く こ と が 求 め られ ま す。 観 光 開 発 は 観 光 行 政 のみで成し遂げられるものではなく、住民の参加と主体性があって初めて成立するも のです。したがって計画づくりの段階から住民や住民グループの参加意欲を把握して おくことが望ましいと考えられます。 例えば、住民に対して、農村に観光客を受入れることに対する意識や、観光サービスに 参加意向にかかる質問を投げかけると、住民の観光への意識が少しずつ理解されま す。また、計画づくりから実際の観光商品の開発までは時間を要することから、目的や ビジョ ンの共 有 だ け で な く 、 実 際 にど のよ う な 活 動 を 行 う か と い う 点 に つ い て も 住 民 の 意見や合意を得ながら進めることがよいでしょう。 住民以外にも、例えば旅行関係業者や観光分野の専門家に初期段階から情報共有し ておくことで、農村観光開発の味方やアドバイザーを作ることができるかもしれません。 農村観光は、地域の住民と、訪れる観光客を結ぶ産業です。その架け橋となる旅行会 社との協 力は計画づくり段階でも非常に重要です。 (3)農村観光の開発イメージ 次は、対象の農村を、どのような農村観光地に開発をしていくのかというイメージづく りです。イメージづくりには二つの意味があり、一つ目は、住民や行政の間で、農村観光 地が目指すべき共通のビジョンを描くことです。もう一つは、今後の旅行マーケットへの PR をする際に、農村のイメージを伝えるためのコンセプトを具象化することです。 第1章「1-2.農村観光とは何か」にて、農村観光のタイプをいくつか紹介しました。単に 「農村」というだけでは観光開発への推進力を上げることは不十分で、「このような特 徴のある農村」というイメージを作り出しておく必要があります。例えば、ハノイ市のド ンラム村の例ですが、ドンラム村の一番の特徴はヘリテージ(伝統家屋群や文化遺産) で、加えてそれを補完する資源である農業や地場産業、人との交流等があります。その ためドンラム村の場合は、ヘリテージを中心にして、その他産業を関連づけていくという 観光資源の活用の方向性が見えてきます。このように農村を一番象徴する資源を早い 段階で具象化しておくことで、一番PRしたいものを見失うことなく、以降のプロセスに 着手することができます。 また観光地の雰囲気として、沢山観光客が訪れる賑やかな農村にしたいのか、少ない 人数の観光客を大事にするゆっくりとスローな農村にしたいのか、ターゲットの顧客は 外国人なのか、ベトナム人なのか等、観光客の客層や量についても、この段階で検討し ておくのがよいでしょう。 35 村の一番の特徴を見つける ヘリテージ 農 業 地場産業 人との交流 図2-3-1:農村開発のイメージ(ヘリテージが特徴のドンラム村の場合) (4)目標・ターゲットの設定 ①目標の設定 次に農村観光をイメージに近い状態に開発していくために、具体的な目標や開発ター ゲットを設定することが求められます。目標では、より具体的に農村観光の将来的な 姿を設定します。例えば、これまで全く観光が行われていなかった農村では以下のよ うな目標が考えられます。目標は、農村の置かれた状態を鑑みて、無理をせずに到達 できる具体的な内容が設定されることが望ましいです。 目標例1 地域行政と地域住民が中心となり、観光客を受け入れる体制が作られる。 目標例2 地域資源を活用した観光サービスが○○個開発される。 目標例3 ○年後までに○○名の観光客を受け入れる。 ②目標達成後の状態(上位の目標) 目標が達成された後の農村の状態を想像することも、目標達成に向けたモチベーショ ンとなります。例えば上記のような目標が達成されることにより、農村や住民の生活等 がどのような状態になっているかを示すものです。例えば、上記のような目標がクリア されると、「住民の収入が向上する」、「農村特有の観光資源が持続的に守られるよう になる」といった効果が表れる状態のことを指します。 ③目標達成のための期間の設定 計画づくりを行う際には、時間軸を設けることも必要です。例えば、短期(~1年未満) でどのくらいの目標を掲げるのか、中期(2年~5年程度)ではどういう状態を目指すの か、長期(5年~10年程度)で目標とすべき観光の状態や農村の経済状況などを、期間 ごとに目標を設定し、目的に向かって取り組んでいくことで、より具体的な成果が見え てくるはずです。 期間の設定については、ベトナム国政府や各地方省が設定している観光開発計画の 多くは、2020年をターゲットとしているため、長期的な期間は2020年を目指すことが 一案です。他方、農村に住むコミュニティは、日々の生活や収入向上が得られるか得ら れないかで観光への参加のモチベーションが変わっています。ですので、長期的な視 野を持ちつつも短期的に成果や実績が得られるような取組みを検討していくことが求 められます。 36 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 (5)目標達成のための活動の検討 目標達成のための活動の検討とは、目標を達成するために具体的にどのような活動を 行うかを検討するものです。下記が目標と活動の関係の例ですが、それぞれの目標ご とに活動の規模やレベルが異なることが分かります。一方で、具体的な活動が実施さ れなければ目標が達成は難しくなります。 目標例1 地域行政と地域住民が中心となり、観光客を受け入れる体制が 作られる。 <活動の例> ・地域行政と住民とで、地域の観光づくりのための会議を開催する。 ・地域住民で観光事業に関連する代表を選出する。 ・地域行政と住民とで、観光実施・管理のための組織を設立する。 ・観光サービス実施・管理のための組織の活動規定が策定され、活動内容が検討される、 等 目標例2 地域資源を活用した観光サービスが○○個開発される。 <活動の例> ・農村内の観光資源を把握する。 ・観光資源の活用計画を検討する。 ・観光資源を観光サービスとして転換するための投入や人材育成(研修等)を行う。 ・観光客受入の練習や評価を行う。 目標例3 ○年後までに○○名の観光客を受け入れる。 <活動の例> ・農村内の観光受入のための体制を整える。 ・旅行市場におけるマーケットの対象を設定する。 ・プロモーションのためのツールを作成する。 ・旅行会社と協力してプロモーション活動を行う、等 37 (6)アクションプラン・予算計画の検討 アクションプラン及び予算計画とは、(5)で検討した活動内容を、「誰が、いつ、どのように」 実施していくかということをスケジュールも含めて計画していくことです。例えば表2-3-4の ようなフォーマットで検討していくと分かりやすいです。予算計画については、関連する制度 や関連する予算措置があれば活用を検討し、無ければ新規で予算申請も必要になるかも しれませんので、予算の有無も活動の実施には不可欠な条件となります。 また実施者については、観光行政職員のプロジェクト担当、コミュニティでの住民や住民グ ループ、観光学校や専門コンサルタントなどの外部リソース、旅行会社等の参加が考えら れます。またソフトな活動だけでなく、観光受入のための施設(トイレ等)のインフラの整備も 活動の一環として求められるケースもありますので、その際には予算投入だけでなく建設 関連事業も想定しておく必要があります。 表2-3-4:「目標例2:地域資源を活用したサービスが○○個開発される。」にかかるアク ションプラン例 スケジュール 実施のための 予算 活動名 実施者 農村内の観光資源を 把握する。 行政、住民 行政予算 000VND 観光資源の活用計画を 検討する。 行政、住民、 旅行会社 行政予算 000VND 観光資源を観光商品として 転換するための投入や人 材育成(研修等)を行う、等 行政、住民、 観光人材 育成学校 行政予算 000VND 観光客受入の練習や評 価を行う。 行政、住民、 旅行会社 行政予算 000VND 2013 2014 上記は、大まかなプランですので、それぞれの活動を実施する際には、細かい実施計 画が必要となります (7)その他 その他、計画づくりを行う際に、既に観光地化されている類似の農村が近くにあれば、 視察等を行い、開発のプロセスの調査や観光に参与している住民や行政職員から情 報を得て、計画づくりに反映することができれば、より実現性のある計画づくりに向けて 有益な情報となります。地方行政職員同士の経験共有、住民同士の意見交換や交流 なども含めると、より理解が深まると考えられます。 38 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 2.4. STEP 2: 組織体制の構築 ~観光の基盤となる人・組織を形成する~ ■組織体制の構築とは? 組織体制の構築とは、観光プロジェクトの実施、また今後の観光受入、観光の 実施を担う人材を含めた「組織」の構築のことを意味します。組織体制には地 域の特性や関与するステークホルダーにより様々な体制の種類があります。例 えば地域によっては行政が主体で管理事務所を設立する場合もあれば、住民 が主体で観光管理グループを形成する場合もあります。重要なことは、観光の 開発や管理に責任を持つ組織が農村の中にあることで、行政や住民、その他ス テークホルダーと協力していくための中核的な役割が期待されます。また以降 STEP3~6のプロセスを実施していくのも、地域の観光づくりの中核を担う組織 が中心となることが求められます。 ■組織体制構築のポイント 組織体制の構築には様々なパターンがありますが、メンバーとして地域内の意 思決定者や住民間のコーディネートができる人材等が参加し、組織を作ること が求められます。以下に組織体制構築の際のポイントを示します。 ●設立する組織に、行政内や地域住民間等の意思決定者が含まれること。 ●多くの関係する機関と円滑に協議ができる人材が含まれていること。 ●組織メンバーの認定、役割所掌、組織規程を作り、責任と役割を明確化する こと。 ●組織のビジョンやゴールを、メンバー内で共有しておくこと。 ●住民や住民グループの関与が容易になるようにフォーマルな形式ばかりにと らわれないこと。 ●既存の住民組織(女性連盟や農業組合等)のネットワークや人材リソースを活 用すること。 ●できるだけ自由で発意のある参加を促すこと。 39 2-4-1. 組織体制のタイプ 組織体制は、それぞれの農村と取り巻く行政組織やコミュニティ内の構図によって異な ってきます。また例えば、ドンラム村やフクティック村のように国家文化財等に登録され ている場合においては、遺跡・観光管理事務所が設立されるなど、特異なケースもあり ます。また組織の設立に際しては、行政内での組織設立決定やコミュニティ内でのメン バー選定等のプロセスも経る必要があります。以下にいくつかの組織のタイプを示しま す。 (1)行政が主体的に観光管理を行う体制(例:ハノイ市ドンラム村) この体制では行政が主導となり農村の管理委員会を形成し、その中に観光開発・促進 を行う部署を設定しています。ドンラム村のケースでは、コミュニティとの関係について は、文化遺産保存と観光開発に直接的に関係する世帯を中心にした協力を行っていま す。 (2)行政が観光管理の組織を設立し、コミュニティのグループと連携する体制(例:トゥ アティエンフエ省フクティック村) この体制は、(1)と似ていますが、コミュニティとの連携が強いケースです。コミュニティ 内に観光サービスのグループを形成し、行政と連携しながら、観光の受入とサービス の提供を行っています。この際には、管理委員会とコミュニティグループでの観光収益 の配分等の取り決めが定められています。 (3)行政と住民代表が管理委員会を設立し、コミュニティのグループと連携する体制 (例:トゥアティエンフエ省タイントアン) 行政代表と住民代表により、観光管理委員会を設立するケースです。トゥアティエンフ エ省タイントアンのケースでは、行政代表4名、住民代表2名、合計6名による観光管理 委員会が、コミュニティの観光グループと連携して、観光サービスを提供しています。 (4)コミュニティが中心となり、観光管理グループやサービスグループを形成し、行政 が サポートする体制(例:バックニン省フーラン村) この体制では、コミュニティが中心となり、観光グループを形成し、観光サービスを提 供し、行政がサポートしています。バックニン省フーラン村のケースでは、コミュニティ からの観光グループとして、女性連盟による食事サービスグループ、職業グループ(窯 業、ボートサービス等)、地元ガイドグループ等があります。 (5)その他 この他にも、コミュニティが主体となり観光受入を行うケース、旅行会社との提携等、 様々な形態が全国の農村観光地にあると考えられます。 40 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 ドンラム村の組織体制 行政の機関 ドンラム村 管理事務所 総務部 コミュニティ 財務・経理部 遺跡保存部 所長 副所長(3) 遺跡所有世帯 建設管理部 観光情報センター チケット売り場・ツアーガイド 観光サービス 従事世帯 調査・検査部 ソンタイ城警備 フクティック村の組織体制 行政の機関 フクティック村 管理委員会 管理事務所 所長 コミュニティ 自転車貸出サービス 総務(2名) 古い家屋グループ (5世帯) 会計(1名) 食事グループ (16世帯) 観光開発部(2名) 文化財保存、窯業 振興(2名) ガイドグループ (4世帯) 陶器体験サービス グループ 伝統家屋修復事業 図 2-4-1:組織体制の例 41 タイントアンの組織体制 観光管理委員会 (行政+住民) 行政の職員 コミュニティ 委員長 副委員長 ボートサービスグループ(9名) 委員・ボート担当 ノン傘サービスグループ(5名) 委員・観光サービス担当 バインテトサービスグループ (2世帯) コミュニティ 委員・食事サービス担当 委員・ローカルガイド担当 食事グループ (女性グループ12名) ローカルガイドグループ(25名) フーラン村の組織体制 観光管理委員会 行政関係 行政内の観光管理担当 コミュニティ コミュニティ観光管理グループ 総務・ガイド グループ 食事グループ 工芸(窯業) グループ お土産グループ 図 2-4-2 :組織体制の例 42 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 2-4-2. 組織体制づくりにおける 住民・コミュニティの巻き込み方 「2-4-1.組織体制のタイプ」で示したように農村観光の組織にはいくつかのパターンが あり、またそれぞれに住民やコミュニティが関与していることが分かります。観光開発を 進める上で、住民やコミュニティの参与は不可欠となりますが、コミュニティからの発意 や参加意欲を引き出す方法も求められます。観光の組織づくりにおいて、住民を巻き 込む方法について、以下にいくつかの方法を説明します。 (1)世帯を訪問しての聞き取りや話し合い 最も基本的な方法は、農村内の世帯を訪問し、情報収集や話し合いの場を設けること です。観光への参加意欲やコメントなどを確認するのがよいでしょう。この方法の良い ところは、各世帯の正確な意見が聞きやすいですが、逆に多数の世帯を訪問すると時 間を要するという側面もあります。 (2)アンケート調査での観光への参加意向の確認 統計的に数 値 が表 れる ので 、 例 えば 参 加 を 希 望 する 世 帯 の数 、 参 加 し た い観 光 サ ー ビス等の統計を数字で得たい場合には最適な方法と言えます。他方、アンケート調査 は回答率がどこまで得られるかなどの課題はあり、また的確な答えが得られるように アンケートの質問内容はしっかりと吟味する必要があります。 (3)グループディスカッション(地域単位や職業グループ等)による話し合い グループディスカッションとは、複数の参加者で集まり、特定のテーマに沿って話し合 いを行うことです。参加メンバーは、様々な人が参加するようにして公平に意見が言え るような環境づくりが大事です。グループディスカッションの良いところは、個人ではな く、参加者全員で意見の共有ができることです。例えば、職業や産業グループ、地域 単位の話し合いを行う時などは有効な手法です。 (4)観光資源調査やマップづくりなどの作業を通じた参加 観光づくりに直接的に関係する作業を通じて、住民を巻き込んでいく方法もあります。 例えば、地域の観光資源を把握する調査、地図づくりなどは、農村に住む住民から情 報を得ることが最も的確なプロセスとなりますので、この作業を住民と一緒に行うこと ができれば、調査だけでなく、住民の意識啓発という観点からも優れた手法です。 (5)農村内他事業の会議や研修からの参加促進 農村では、農業・農村づくりや関連する研修等を実施されていますが、このような機会 に、農村の観光地づくりについても議題を出し、住民の方々の意向やコメントを聞くの も効率的な方法です。 43 世帯を訪問しての聞き取り調査では、 住民の本音が聞こえてくる アンケート調査での観光への参加意向 の確認 観光資源マップづくりでは、作業をしな がら、住民の意見を聞くことができる 住民参加の留意点として、それぞれ の手法に共通しますが、それぞれの 住民がそれぞれの家庭や職業を持 っていますので、観光への参加を強 制的なものとしない方がよいでしょ う。あくまで発意がある住民を探し出 して、無理なく様々な観光事業に巻 き込んでいく方法、住民の発意をど のように導き出すかという姿勢が必 要となります。 44 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 2.5. STEP 3:観光商品のデザイン ~観光資源から観光商品を作り出す~ ■観光商品のデザインとは? 観光商品のデザインとは、地域にある観光資源や人的なリソースを、どのように観 光客が楽しめる観光商品として開発するかというプロセスを意味します。 観光資源は、そのまま放置すれば資源のままですが、アイデアや手を加えること により、観光商品として開発することが可能になります。そのプロセスには、住民、 旅行業界、また専門性のある機関や人材(例えば食事や宿泊等)からのアドバイ スやトレーニング等も不可欠となります。また観光商品には観光客を魅了するた めの工夫や楽しみ方も必要となりますので、発想力の高い企画力も求められま す。 ■観光商品のデザインのポイント 観光商品づくりには、大きく分けて3つのステップがあります。 1 観光資源を把握し、活用の方法を検討する。 最初に、農村内にどのような観光資源があるかを把握することが必要です。方 法は、観光資源のリストを作る、観光資源マップを作るなどの方法があります。 またそれらの観光 資源をどのように活用するかというアイデアを話し合います。 2 観光資源を観光プログラムとして活用するために必要な投入や人材育成トレー ニングを行う。次に観光資源を用いた観光プログラムの形成、また観光プログ ラムを運営する人材の育成、トレーニングが求められます。 3 観光プログラムを PR するための付加価値(磨き上げ)を行う。 観光プログラムが完成されたら、その商品をどのように売る(PR)のかという点も 重要となります。観光プログラムに付加価値をつけることも大切です。 ①資源の把握活用のアイデア 観光資源(素材) 地場産業、文化、 景観、農業、 暮らし等 ②研修によるレベルアップ ③磨き上げ、売り方の 工夫(キャッチコ ピー等) 観光商品 民家レストラン、 土産販売、 農業体験、 ホームステイ等 図 2-5-1:観光商品づくりの概念図 45 2-5-1.観光資源マップ作りを通した観光資源の把握、 活用方法検討のための手法 観光資源の把握の手法として、JICAのパイロットプロジェクトで多く用いた、観光資源 マップ作りを通じた方法を紹介します。この手法の特徴は、多くの住民参加で作業をし て、農民の中で観光資源を共有することができること、成果物として視覚的な観光資 源マップを作成できること等です。なお、成果物の観光資源マップは、農村の観光マッ プを作成する際のベースの情報になります。将来的に農村の観光マップの作成を考え る場合には、こ の手法を用いるのが効率的です。 (1)グループ分けとテーマ設定観光資源 調査は、行政関係者や農村の住民ができるだけ一緒に参加できることが望ましいで す。例えば合計の参加者が20名であれば、5名×4グループくらいを作るのが妥当でし ょう。グループについては、5~6名程度が作業効率や話し合いを行う上でよいと考えら れます。あまり少ないと一人一人の作業負担が大きくなるのと、逆に人数が多すぎると 作業に入らない人が出てしまうためです。また農村の方々は通常ワークショップをやっ たことがないケースが多いですので、話しやすいように議論のポイントを伝える必要が あります。例えば、ドンラム村やタイントアンで実施したワークショップでは以下のような テーマごとのグループ分けを行いました。 グループ分け グループ分け グループ分け グループ分け ・ ・ ・ ・ テーマ例1:歴史と文化 テーマ例2:地場産業、手工芸、名産品等 テーマ例3:農業、畜産業 テーマ例4:人的な資源(村の歴史や文化に詳しい人等) (2)村歩き調査 村歩き調査では、上述のテーマ設定に沿って、グループごとに村を歩き、テーマに沿っ て観光資源を見つけ、写真撮影をし、記録を残します。写真撮影を行った場所の説明 文を作成したり、インタビュー等も行います。地域に詳しい住民が参加していると、地図 上からではわからない場所に案内してもらったり、知人を紹介してもらったりできるの で、たくさんの情報を取ることができます。また住民は自分の村を自慢したい方も多く、 興味深 い話を沢山聞くこともできます。 村歩き調査の際には、第1章「1-4.農村観光開発が求められる地域」で紹介した「表 1-3: 観光資源のリスト」も、参考にしてください。 46 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 (3)観光資源マップづくり 観光資源マップでは、「2.村歩き調査」の作業での作業で撮影した写真を用いて、大き な農村の地図に配置していきます。写真の配置の際には、それぞれの写真への説明文 も加え、他者が見ても写真の内容が分かるようにします。この作業で、農村の中の観光 資源が視覚的に浮かび上がってきます。なお、観光資源がたくさんある場合には、観光 資源の性質に応じて分類を行い、地図作りを整理することも有効です。またグループ作 業で余裕があれば、それぞれのテーマに応じた観光ツアープログラムの設計をやって みるのも面白いでしょう。 (4)発表と意見交換、話し合い それぞれのグループにて観光資源マップが出来上がったら、全グループにて発表会と 討論をします。討論では、それぞれのグループの観光資源の良さを評価したり、詳しく 質問したりします。また観光資源をどのように観光サービスにするのかというアイデアを 話合うのもよいでしょう。なお、全体討論では、外部コンサルタントや旅行会社などを招 き、マーケットの視点等からコメントしてもらうのも有効です。また観光資源マップづくり を通じて、対象の農村にて何が一番特徴的なのか、売りなのかといった農村のイメージ やキャッチフレーズを検討することも可能となります。 活用のアイデア 観光資源の観光サービスへの活用のアイデアとしては例えば以下があります。 (1) 歴史、風土、伝統等を観光サービスに生かす 古民家を活用したレストラン、伝統文化やパフォーマンスの見学等 風土、環境、伝統、食、生活、特産品等、自然資源、文化的資源を活用する (2)人々の暮らしや生業を観光サービスに生かす 農業や地場産業の体験や見学、試食などでの楽しみ (3) 自然景観を観光サービスに活かすトレッキング、サイクリングツアー等 47 村歩き調査では、 外部者ではわか らない色々な村 の情報を住民か ら教えてもらうこと ができます 観光マップづくり では、テーマに応 じた様々な観光資 源が視覚的に表 現されていきます 発表・意見交換 では、これまで認 識されていなかっ た観光資源が共 有され、活用のア イデアも話し合わ れます 観光資源マップ 作りを終えると、 住民の中に共通 の意識が芽生え てきます 48 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 2-5-2. 観光資源を観光商品として活用するための手法 1)農村地域での観光プログラムの種類と、必要な環境整備や技術向上 農村地域の観光プログラムには、表2-5-1に示すように、食事サービス、ホームステイ、 地場産業体験・お土産購入、農業体験、自然や景観を活かしたアトラクション、伝統祭 礼やパフォーマンスの見学・体験、歴史や文化の訪問、ローカルガイドによる村の案内、 等があります。表2-5-1では観光プログラムの種類と概要、またプログラム実施のため に必要な環境整備や技術向上のポイントについて示しています。それぞれの農村にお いて観光客を魅了するサービスを開発するためには、農村が持つ観光資源の特色と組 み合わせて、ユニークな観光サービスを開発することが求められます。 表 2-5-1. 農村での観光プログラムの例 種類 概要 主に必要な環境や技術 食事サービス 農村観光での食事サービスとは、主 に民家にて観光客に食事を提供す るサービスのことを指します。時に は、女性グループ等が集まり料理を し、村の公共施設等で食事を提供す ることもあります。料理のメニューは、 地域の食材を使った地元の料理の 提供が基本となります。なお、料理 体験を併用してサービス提供するこ とも考えられます。 ・地域の食材を使った美味しい料 理を作る調理の技術 ・親切な接客マナー ・衛生な調理環境 ・農村の空間が感じられる食事 スペース ・経営・収支管理、等 ホームステイ ホームステイとは、一般の民家に観 光客が宿泊するサービスのことを指 します。民家には家族が暮らしてい ますので、観光客は家族の一員とな り、滞在時間を楽 しみます。ホームス テイでは、宿泊だけでなく、食事サー ビスの提供も必要となります。ホーム ステイでは、通常のホテルと異なり、 家族の方々の親切で温かいサービ ス提供が、観光客を満足させます。 ・家族による観光客受入のホスピタ リティ、接客マナー ・ハウスキーピングや清掃による清 潔な宿泊環境提供 ・宿泊施設としての機能(十分な広さ の客室、シャワー室、衛生トイレ等) ・シャンプーや石鹸、歯磨きセット、 タオルなどのアメニティ ・施錠等のセキュリティ ・経営・収支管理、等 49 種類 50 概要 主に必要な環境や技術 地場産業体験・ お土産品購入 地場産業とは、地域で産する材料を 加工して、工芸品や食品を作る産業 です。地場産業の体験は、これらの 過程を観光客が見学や体験するも のです。またお土産として販売するこ とも観光客に喜ばれます。 地場産業 には、工芸品として、織物、木工品、 陶磁器、刺繍、彫刻、紙細工、版画、 金属加工品、竹細工、漆器、等の種 類があります。 食品では、お菓子、お 酒、調味料、野菜 加工品、果物加工 品等があります。 ・地場産業を作る技術の継承、職人 によるパフォーマンス ・地場産業見学・体験のための観光 客受入の環境整備 ・地元組織や職人による地場産業の 説明、体験プログラムのコーディネート ・観光客が好むお土産品のデザイ ン、ネーミング ・食品加工品の場合は、味の向上、 保存性の確保、食品安全認証、ブラ ンド認証(商標登録) ・料金設定、経営計画等 農業体験 農業体験とは、農業の工程(田植え、 種まき、水遣りや手入れ、収穫等)を 観光客が体験するもので、農村の新 鮮な空気のもとで農業を学び、農作 業を楽しむものです。農業体験で採 れた新鮮な野菜や果物を用いた料理 教室と併せるプログラムもあります。 ・年間の農業の時期を鑑みた農業 体験スケジュールの作成(野菜等の 種類、収穫時期等) ・農民による農業の説明と観光客と の作業内容 ・農作業に必要な農具や服装等の 準備 自然や景観を 活かした アトラクション ・景観が美しいルートのトレッキング ・川を活かしたボート体験 ・農道のサイクリング ・自然散策、等 ・観光客が自然や景観等を楽しむた めのルートの設計 ・ガイドによる説明、安全管理 等 伝統祭礼やパ フォーマンスの 見学・体験 ・民族音楽や踊り等のパフォーマン スの体験 ・地元の伝統祭礼への参加 ・民族音楽や踊り等を実施するグル ープによる観光受入準備 ・観光客の受入可能な時期の検討 (伝統祭礼の実施時期等) ・パフォーマンスのための場所 (公共施設や広場等) 歴史や文化の 訪問 農村に残る集会所、祠堂、廟、伝統 家屋、 等の歴史的な遺産の見学 ・各遺産での詳細な説明が求められ る。各場所に詳しい住民や管理人等 が説明することが望ましい。 ・建物は清掃を行き届かせ、綺麗な 状態にしてくことが重要。 ローカルガイド による村の案内 ローカルガイドは、農村に長く住む住 民による地域の説明です。旅行会社 のガイドとは違い、農村での暮らしや 生活のことなど、詳しい情報提供が 可能です。 ・観光ルート設定 ・各スポットや移動中の説明内容 ・観光客へのホスピタリティ その他 地域毎にその他の観光資源を活用 した プログラム Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 (2)研修による技術向上や環境整備 表2-5-1.農村での観光プログラムの例で示したように、観光客を受入れのためには、 環境の整備やサービス提供のための研修等が求められます。特に、農村での観光サ ービスの提供は家族や住民グループが従事することが想定されるため、サービスの技 術やホスピタリティ等の人材育成のための研修が求められます。また、併せて最小限 の設備の整備も求められます。以下に、1食事サービス提供のための研修プログラムの 例、2ホームステイ サービス提供のための環境のチェックリストを紹介します。 1 食事研修プログラムの例 食事サ ー ビスで の研 修 を 例 に進 め方 の一 例 を 紹 介 し ま す。 カ リキ ュラム は 、 J I C A が 農 村観光開発で実施した4~5日間程の食事プログラムを例に取ります。研修のポイント としては、農村で日常的に食されているメニューや材料を大切にし、そのうえで観光客 向けのアレンジや盛り付けの工夫等を加えるという方法です。この方法は、外部から新 しいアイデアを農村の方々に押し付けるのではなく、農村にある食文化や女性等によ る調理方法を尊重しながら行うため、農村の方々にとっても継続性が高いものになる ことです。 表 2-5-2. 食事サービスのための研修プログラムの例 ドンラム村食事研修の例: ステップ1:世帯の料理の現状とニーズの把握 ●食事サービスの提供を希望する住民との話し合い ●どのような料理の提供ができるか ●またどのようなことを研修で勉強したいのか(どのようや技術を得たいのか) ステップ2:世帯による料理の技術レベルの把握 ●現在家庭にて作れる料理の試作 ●試食と意見交換(味付けや盛り付け等への評価) ステップ3:観光客向けの料理の味付けや盛り付けの検討 ●講師による料理の味付けや盛り付けの実演 ステップ4:設えや装飾の工夫 ●テーブルクロス、食器セット、食事空間等の工夫 ステップ5:サービスの提供 ●サービスの心得、メニュー、接客マナー等の練習 51 世帯の料理の現 状とニーズの把 握。村の人々 の自 慢の料理が説明 されます 装飾や設えの研修の様子 住民による調理 方法等を聞き取 りながら、観 光客 向けの料理を共 に検討する様子 試食会とサービ ス提供の練習の 様子 2 ホームステイのサービス提供のためのチェックリスト ベトナム観光総局では、ホームステイサービスを実施するにあたり、環境やサービス面 で満たすべき条件を網羅した表 2-5-3 のチェックリストを作成しています。(No.217/ QD-TCDL, 2009年6月15日、ホームステイサービスの基準(TCVN 7800:2009) このチェックリストでは、基本条件としての安全性やアクセスのしやすさ、宿泊する部 屋の広さの条件、シャワー室とトイレの広さ、ベッドや照明等の設備の条件、内鍵による 安全性の確保、蚊帳等備品、タオル、歯磨き、シャンプー、石鹸等の用品、サービス価 格の提示、経営証明の取得等の項目に分かれて項目が作成されています。農村地域 でホームステイサービスの開始を検討する際には、経営を希望する世帯へこのリストを 提示し、全ての項目がクリアされるようにすることが求められます。 またホームステイサービスを提供する世帯に対しては、ホームステイサービスへの心構 え、宿泊施設としての衛生な環境提供、サービスの基本、ビジネスの考え方(利益の生 み出し方)、ハウスキーピングや食事サービスの提供などにかかる研修を併せて行うこ とが推奨されます。 52 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 表 2-5-3. ホームステイサービス提供のためのチェックリスト 基 準 評 価 0点 1点 1. 一般事項 アクセスがしやすい 治安がよい、安全である 建物が頑丈 空間がよい、日が十分に差し込む 案内看板がある 2. 宿泊室の面積 シングルルームは面積が8㎡以上 ツインルームは面積が10㎡以上 追加ベッド1つに対して4㎡が確保されている トイレとシャワー室の面積が3㎡以上 3. 設備、備品(アメニティ) 3.1 宿泊室 設備や器具の状態がよく、適切に作動する 部屋のレイアウトが合理的で使いやすい 日が十分に差し込む 電気、コンセントがある 扇風機がある 内鍵がある ベッドの大きさ:0.9mx2m(シングル)、1.5mx2.0m (ダブル) マットレスは10cm以上の高さでシーツがある 布団と枕にカバーがある 蚊帳がある 飲料水とコップがある 棚とハンガーがある 蓋付きのゴミ箱がある 洗顔タオル、バスタオル、歯磨きセット、シャンプー、石鹸 53 基 準 評 価 0点 1点 3.2 トイレとバスルーム 5組の客に対して、トイレとバスルームが1つある 設備や器具の状態がよく、適切に作動する バスルームの水回りに2m以上のタイル壁が貼られている 滑りにくい床材を使用している 照明がある ファン(換気扇)がある コンセントがある 洗面台がある 鏡がある 水道がある お湯が出る 石鹸がある シャワーがある 衣類・タオル掛けがある 便座がある トイレットペーパーが常備されている 蓋付きゴミ箱がある 4. サービスとサービスの質 4.1 サービス 部屋の情報、値段、サービスの価格が提示されている 宿泊の規制がある タンスがあり、引出しに鍵がかかる お客様への必要な情報提供がされている 4.2 サービスの質 シーツや布団カバーを連泊の客には3日に一回交換、 新しい客 には新しいものを提供する 24 時間の給水がある 5. 管理者、スタッフ 管理者は訓練機関における研修を受講することが必 要で、宿泊施設の管理にかかる認定書が必要 スタッフはサービス提供にかかる研修の受講が必要 で、研修終了の証明書が必要 6. その他の基準等 所轄官庁による基準(各評価基準がある)の認証が推 奨される ○治安 ○防災 ○社会問題の予防 ○食品安全証明 ○建物内の環境衛生 ○周辺の環境衛生 ○設備の衛生 ○スタッフの衛生管理 出典:No. 217/QD-TCDL、ホームステイサービスの基準(TCVN 7800:2009)、2009年6月15日 54 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 2-5-3. 観光商品を PR するための付加価値付け 観光商品づくりの仕上げとして、磨き上げ・売り方の工夫があります。これはマーケティ ングとも関連してきますが、開発したそれぞれの観光プログラムをどのように価値づけ して販売するかという工夫です。例えば農家での食事サービスについては、料理をその まま提供するのではなく「村の特産物を使った美味しい料理」、「農家の女性が丹精込 めて作った料理」、ホームステイでは「農村の暮らしをステイしながら体験する」等の売 り方で、説明の仕方により観光サービスのイメージが一変します。またコミュニティ代表 や世帯主が、観光客に対して自ら言葉を発して説明することで、観光客が受ける印象 は格段に変わってくるので、研修等ではこういったサービスや付加価値の視点を住民に 伝えることも求められます。 2-5-4. 観光商品の改善 観光商品は、一旦完成したら終わりではなく、日々改善していくことが求められま す。 理由は、観光客のニーズは変化しているのと、他の観光地との競争も生じてくるからで す。これはスーパーマーケットやレストランでの商品やサービスがいつも同じではお客さ んが飽きてしまうので、販売促進のためのキャンペーンをしたり、商品の質や販売方法 を改善するのと似ています。観光でも、常に観光客を魅了するサービスが提供される必 要があります。サービスの改善では、STEP6のモニタリングでの観光客の評価や満足 度等を参考にして改善方法を検討することも一案です。 なお、農村地域での観光サービスの提供には、文化財や自然環境等の観光資源の利 用も伴います。これらの観光資源は有限で、使い方を間違えてしまうと二度ともとに戻 らなくなります。従いまして、観光サービスの改善の際にも、観光資源の保全や持続的 な活用に留意する必要があります。 55 観光客向けには、 料理の盛り付けや 彩りも大事になり ます 食事サービスにか かる女性グループ への研修の様子 食事サービスで は、住民によるホ スピタリティあるサ ービスが求められ ます 自然環境を活か したボートトリップ においても住民か らサービス提供が 必要となります ホームステイサー ビスでは清潔な 部屋の環境整備 が必要です 地場産業体験で は、住民によるサ ービス提供が求 められます 56 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 2.6. STEP4:受入体制の整備 ~観光客が安全で快適に滞在できる環境を整える~ ■受入体制とは? 受入体制とは、観光客が農村に訪れた際に、安全で快適な滞在を実現するた めの環境の整備のことを指します。例えば、食事や休憩の場所、衛生なトイレ、 農村の観光の情報、農村住民のホスピタリティ、安全なインフラ等、ソフト面とハ ード面の両方です。またこれらの受入体制を作り出すためには地元行政や住民 によるルール等も必要となると考えら れます。 ■受入体制整備のポイント 受入体制には、主に(1)ソフト面、(2)ハード面での受入体制があります。 (1)ソフト面の受入体制 A. 農村の入村・交通管理にかかる規定 B. 観光管理委員会等の運営管理計画 C. 観光サービス経営の認証 D. 観光管理委員会等と住民との取り決め E. 観光管理委員会等と旅行会社との取り決め F. 住民によるサービス提供の準備 G. 観光客への情報提供 H. ローカルガイドの育成 I. 安心して訪問できる環境 J. 外国語での受入対応 (2)ハード面の受入体制 A. 観光情報提供のための施設・設備 B. 安全で衛生な滞在環境 C. レストランや休憩所の整備 D. 宿泊施設の整備 E. アクセスの向上 F. 駐車スペース 57 2-6-1. ソフト面の受入体制整備 (1)制度面での受入体制 農村観光開発では、新たに観光客を農村に迎え入れることになるため、制度面におい て、様々な側面から観光の管理を行うことが必要となります。以下にいくつかの項目を 説明します。各農村の状況によって、必要な制度や取決めの導入を適宜検討すること がよいでしょう。 A.農村の入村・交通管理にかかる規定・・・入村チケット制の導入、交通のコントロー ルの仕組み(車の進入可能・禁止エリア、駐車スペース)等 B.観光管理委員会等の運営管理計画(オペレーションプラン)・・・観光管理委員会や コミュニティ観光グループ等が中心となり実施する観光客受入、サービス提供、情報 サービス、安全管理(救急治療等含む)、財務管理等にかかる取り決めや規定 C.観光サービス経営の認証・・・観光サービスを行う施設や世帯の認証や規定等 D.観光管理委員会等と住民との取り決め・・・観光管理委員会やコミュニティ観光グル ープ等と、観光サービスに従事する住民や住民グループと、サービス提供にかかるル ール、料金設定や利益配分等の管理マニュアル E.観光管理委員会等と旅行会社との取り決め・・・観光管理委員会やコミュニティ観光 グループ等と、民間旅行会社による農村への送客方法、ツアー客の予約受入方法、 外部者ガイドにかかる取り決め 具体例:管理組織の体制と資金管理 トゥアティエンフエ省フクティック村の管理委員会では、合計7名の管理委員が おり 、 観 光 サー ビスにかかる 住 民 との規 制 を 発 行 し て いま す。 規 制 は、 ① ローカ ルガイド、民家公開グループ 、②窯業グループ、③食事グループのサービ ス提 供にかかるもので、料金配分の規定も書かれています。料金配分については、 住民等のサービス提供者の取り分が70%、管理費が10%、環境整備等経費が 10%、税金10%という割合です。 (2)観光サービスとしての受入体制 観光サービス面の受入体制とは、サービス内容を観光客に知らせる共に、実際に訪問 する際に住民による質の高いサービスを提供することです。 F.住民によるサービス提供の準備・・・住民や住民グループが観光客に対して提供す るサービスの内容確認、質の向上、住民側の受入準備、小規模な設備の準備等 G.観光客への情報提供・・・観光サービスの価格設定、観光サービス内容の説明、観 光ルート・プログラムの準備、観光マップの準備等 58 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 具体例 : 観光プログラム料金設定 トゥアティエンフエ省タイントアンのケースでは、旅行会社と何度も協議をし、住 民が提供するサービスの価格を確定し、サービス開始をしています。サービス価 格は、受け入れる旅行客の人数によっても変わり、団体の旅行客側にもメリット があるような料金設定 がされています。また旅行客が観光サービス内容を理解 できるような写真パネル等のツールの作成も有効であると考えられます。 具体例 : 観光ルートと観光マップ 観光ルートについては、村のみどころを整理し、時間設定等も考えながら、実際 に観光客が歩くことを想定して検討することが必要となります。観光マップにつ いては、様々なツアーの要望に応えられるように沢山の情報を体系的に掲載し、 それをもとに旅行会社がツアー設計を行えるような情報提供が望ましでしょう。 (3)ホスピタリティとしての受入体制 ホスピタリティとは、観光客が農村から歓迎されていると感じてもらえるように、温かく 迎え入れを行うことです。 H.ローカルガイドの育成・・・地元のことは地元の方が一番知っているため、地元の観 光情報を外部に発信できるローカルガイドの育成 I.安心 し て 訪 問 で き る 環 境 づく り ・ ・ ・ 観 光 サ ー ビ ス を 提 供 する 住 民 や その 他 住 民 が 、 観光客を温かく迎えるための対応、マナー等 J.外国語・・・外国語での受入対応、案内対応 具体例 : ローカルガイドの育成 ローカルガイドの育成は、ホスピタリティの向上だけでなく、農村の豊富な情報を観光 客に伝えるために有効です。地元のことは地元の方々が一番知っているからです。ロ ーカルガイドが豊富な情報を提供できるようになると、旅行会社のガイドにも情報が 伝達され、農村の情報が外部にも発信され、更なる集客につながるとも考えられます。 59 2-6-2. ハード面での受入体制整備 ハード面での受入体制整備には以下のような項目があります。インフラの投入につい ては、地元行政を中心にした予算措置や維持管理が必要となります。 A.観光情報提供のための施設・設備・・・観光情報を来訪者に対して提供するための 観光情報センター(案内所)整備と人材の配置、農村内の観光スポットを紹介するサ イン、案内板整備、観光スポットでの看板等 B.安全で衛生な滞在環境・・・観光客の衛生的な滞在のための衛生トイレの設置(観 光総局決定No 225/QD-TCDL,08/05/2012に基づく)、衛生な水の提供 C.レストランや休憩所の整備・・・食事や飲料のニーズを満たすためのレストランや休 憩所(軽食や飲料販売)の整備 D.宿泊施設の整備・・・農村での生活を希望する観光客向けの滞在先の整備、ホーム ステイサービスや設備の整備 E.交通アクセスの向上・・・農村への観光客を迎え入れるための道路、橋等の整備、ア クセス面の向上、遠方からも目的地が分かるような案内板の設置 F.駐車スペース・・・大型バスや自動車、バイクが停車できる駐車スペースの確保 具体例 : 展示館と衛生トイレ 第3章実践例2で紹介するハイズオン省フンフォン村では、水上人形劇文化が農 村に残り希少でしたが、観光客受入をするための施設はなく、トイレも外国人を受 け入れるには不十分でした。ここに衛生トイレと展示館を合わせた小規模な施設 が整備され、これによりフンフォン村を訪問する観光客は増加傾向にあり、観光客 の安心度が増しています。また施設内では、水上人形劇の歴史や文化の紹介や、 お土産の販売も行っています。 60 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 具体例 : 観光情報センター 第3章実践例3で紹介するフクティック村では、2009年の国家文化財登録後に徐 々に観光客が増えてきましたが、観光の受入はすべて個別の世帯で行っており、観 光客がいつでも使えるトイレもありませんでした。そこで村中央にある空き家となっ ていた伝統的な家屋を、観光情報センターと衛生トイレとして活用する事業を行い ました。今では観光客が村を訪問する際に必ずこのセンターを利用しており、観光 客にとって安心してトイレを使うことができ、快適な滞在が提供されています。 具体例 : 観光情報センター 第3章実践例5で紹介するティエンザン省カイベイは、観光資源が広域に広っていま す。観光客が目的地までの距離がわかるように写真のサインを設置しています。こ れによる農村内に点在する観光スポットの位置が分かりやすくなっています。 61 具体例 : アクセス向上のためのインフラ ティエンザン省カイベイは、水上交通が観光の魅力であるためそれを高めるよう に、船着き場、橋などの整備を行っており、集客増加と域内のアクセスの向上に繋 がっています。 62 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 2.7. STEP5:マーケティングとプロモーション ~農村観光の魅力を発信する~ ■マーケティングとは? マーケティングとは、観光客や旅行業会等の対象者に対して観光商品をどのように 売るかという戦略づくりのことです。農村観光においては、農村観光の魅力やPRし たいポイント(商品の売り所)を整理し、ターゲットとなる観光客及び旅行会社等(顧 客)に対して 発信していくための戦略のことを意味します。 ■プロモーションとは? プロモーションとは、マーケティングの戦略に基づいて、農村観光の魅力を様々な ツール(Web、雑誌、広告、パンフレット、イベント等)を通じて、発信していくことで す。プロモーションは継続的に実施していくことが、持続性のある集客につながりま すので、コスト感覚も持ちながらプロモーションのツール作成や広報をしていくこと が望まれます。 ■マーケティングとプロモーションのポイント マーケティングの計画づくりにおいては、まずは農村の置かれたマーケットの状況 を分析することから始めます。本ガイドブックでは、マーケット分析によく使われる SWOT分析 1 の手法を農村観光のマーケティングにも置き換えて、計画の作り方や 留意点を説明しています。地域の強みを伸ばし、弱みを克服することと、外部の機 会を取り入れることで、マーケットのチャンスは拡大すると考えられます。またターゲ ットとする観光客についても検討しておく必要があります。外国人を主に対象とする のか、ベトナム人を対象とするのか等です。なお、それによりSTEP4で説明した受 入体制の整備についても異なってきます。 プロモーションは、SWOT 分析で得られた戦略を、外部向けに発信すること、また農 村の関係者でも継続できるプロモーション手法を考えることが必要となります。プ ロモーションにおいては、地域行政や住民だけでなく、外部のリソース(旅行会社、メ ディア等)とうまく連携することが望ましいでしょう。 1 SWOT分析とは、目標を達成するために意思決定を必要としている組織や個人の、強み(Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を評価するのに用いられる戦略ツールの一つ。 63 2-7-1. マーケティングの計画づくり STEP1~STEP4までで、観光サービスの開発や観光受入体制について説明してきまし たが、観光客を呼び込むためには、観光客側の需要を考えたマーケティングの計画が 必要となります。観光地で行うマーケティングとは、観光地としての魅力を、誰にどのよ うに伝え、どのくらいの観光客数を目指すのか、そしてどのような方法で販売を促進す るのか、という観点が必要となります。以下に概要を説明します。 (1)農村観光地としての強みと弱みの整理 農村観光地には、それぞれ、魅力的なところ(強み)もあれば改善が必要なところ(弱 み)があります。マーケティングの基本としては、この強みを伸ばし、弱みを改善しなが ら、計画を作っていくことが求められます。 (2)ターゲットの設定 ターゲットの設定とは、実際に呼び込みたい観光客の層を設定することです。基本的に は全ての観光地において、新規の観光客の誘致、もしくは既存の観光客層のリピータ ーの確保を目指したいと思いますが、より具体的にするには、国籍、性別、年齢等の条 件から、 誘致したいターゲットを絞り込んでいきます。 例えば、都市部に近い農村では、ベトナム人の青少年をターゲットにした農村体験ツア ーを形成する、であるとか、伝統農村であれば、外国からのシニア層をターゲットとし、 異文化体験をしてもらう、などの設定です。ターゲットを設定すると、ターゲットの獲得 に向けてどのようなプロモーションを行っていくのかという計画も検討できます。 (3)数値目標の設定 数値目標とは、どのくらいの観光客数を目指していくかという目標です。数値目標が設 定できると、プロモーションの方針もより具体的になります。 数値目標とは、それぞれの農村状況にて異なり、ただ単に観光客が多く訪れれば成功 というわけではありません。農村の物理的、経済的、社会文化的、そして人々の意識な どの環境を壊すことがないように、適切な観光客数を目指していくことが望まれます。 (4)マーケティングを実現する方法 マーケティングを目標達成に向けて実現するためには、プロモーション活動が必要とな ります。プロモーションの方法やツールについては、「2-7-2.プロモーションの方法」にて 説明します。 64 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 (5)SWOT分析による農村観光のマーケティング計画づくりの例の紹介 農村観光地の強みや弱みを分析する方法としてSWOT分析を紹介します。 SWOT分析とは、マーケットの分析のよく使われる手法で、マーケティングの目標を達 成するために必要な手法や取組みを、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威(Threats)から評価する計画づくりの方法の一つです。例とし て、第3章実践例5で紹介するティエンザン省カイベイ郡ドンホアヒエップ村のマーケテ ィングをSWOT分析で考えてみます。強み、弱み、機械、脅威について、表2-7-1のよう な項目が浮かんできます。 表 2-7-1:ティエンザン省カイベイにおける SWOT 分析の例 内的 要因 外的 要因 強み(Strength) 弱み(Weakness) ポイント:地域の観光資源等の特徴 がる強みとなる。 メコンデルタ地域の水辺の環境と 農村 風景の魅力 歴史的な洋館が点在 果樹園や地場産品づくりも魅力的 ポイント:マーケットを展開するにあ たり弱い部分、改善が必要な部分。 地元住民が観光への意識が不十 分 ローカルガイドの不足 安全・清潔環境の不十分 外部への情報発信の機会が少ない 機会(Opportunity) 脅威(Threat) ポイント:農村からみた外部的な要 因でのチャンスとなること。 ホーチミンからミトー、ビンロンへの 観光客の送客が多い 旅行会社と連携したプロモーション が可能。 民間のホテル設立による受入の拡大 ポイント:天候や政治等のコントロー ルができない外部的な要因。 河川に囲まれ雨天等天候による影 響を受けやすい。 次に強みを伸ばし、弱みを克服する計画づくりについて考えます。カイベイの場合で は、近隣ミトーまでパッケージツアーが来ている、既にホテルが建設されているという機 会と、村の魅力の強みを合わせた計画が考えられます(表2-7-2)。またこの地域は河川 に囲まれ車の交通は不便なのですが、逆に船やボートの交通は便利です。安全性を向 上すれば、他の地域と差別化され、川・船の交通自体を観光の「ウリ」にしてしまう計画 も考えられます。 65 表 2-7-2:SWOT 分析とマーケット計画づくりの例 強み(S) SWOT 分析 ホーチミンからミトー、 ビンロンへの観光客の 機会 送客が多い (O) 旅行会社と連携したプ ロモーションが可能。 民間のホテル設立に よる受入の拡大。 脅威 (T) 河川に囲まれ雨天等 天候による影響を受 けやすい。 ・メコンデルタ地域の水辺 の環境と農村風景の魅力 ・歴史的な洋館が点在 果樹園や地場産品づくりも 魅力的 強みを生かす計画 ・メコンの川と農村景観を売 りに、ホーチミンからのパッ ケージツアーへの売り込み、 ホテルとの連携 差別化する計画 ・安全性を向上し、船、ボー トでのアクセスをツアーの売 りにする。 弱み(W) 地元住民が観光への意識 が不十分 ローカルガイドの不足安全・ 清潔環境の不十分 外部への情報発信の機会 が少ない 弱点を克服する計画 ・Webサイト等で外部への 観光の魅力の発信 ・地元とともに観光の受入 体制向上 リスクから守る計画 ・地元で雨季時の安全対策 ・水上移動の危機管理、安 全対策 2-7-2. プロモーションの方法 (1)農村観光のブランド化、キャッチフレーズづくり 農村観光のプロモーションの手順として、プロモーション活動のための農村観光地をイメー ジさせるキャッチフレーズの作成をお勧めします。キャッチフレーズは、「表2-7-1.」及び「表 2-7-2.」のSWOT分析を起点に考えると検討しやすいでしょう。例えばカイベイであれば、 地域の強みを生かすと「メコン川と伝統洋館を楽しむ旅」というとカイベイの観 光の魅力が 表に出てきます。またこの他、第3章実践例1のハノイのドンラム村では、「ハノイ市ドンラム 村」というのと、「ベトナムで一番古い村:ドンラム村」「昔ながらの農村景観や伝統家屋が残 るドンラム村」というと行ってみたいみたい気持ちが異なるのではないでしょうか。第3章の 実践例4のタイントアンでは、「暮らすように旅する農村= Traveling with Living」というテ ーマを表に出しています。 このように農村の強みや魅力を表すフレーズを考案することで、農村観光のイメージアッ プが図れると考えられます。これらを観光マップの表紙に記載したり、Webサイトや観光 フェア等でアピールすると集客の引き金になると考えられます。またキャッチフレーズを表 現するのにふさわしい、「写真」と併せることで広報効果はより倍増すると考えられます。 66 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 (2) プロモーションツールの整備 プロモーションの方向性、キャッチフレーズが出来上がったら、これまでデザインしてき た観光サービスと併せて、プロモーションツールを作成することが望まれます。プロモー ションツールには、表2-7-3に示す種類があります。またプロモーションツールには、農村 での観光サービスの情報や旅行会社からのコンタクト、予約の受入ができるような情 報を記していくことが望ましいでしょう。 表 2-7-3:プロモーションのツールの種類と特徴 媒体名 具体例 長 所 留意点等 テレビ 農村観光の特別番組、 ニュース報道 ・多くのベトナム国民へ の伝達が可能 ・映像と解説により、観光 地の理解が得られやすい 新 聞 農村観光の紹介記事、 農村での社会問題等の 記事 ・新聞の種類や発行部数 が多く、多くのベトナム人 が購読 ・発行頻度が高いので、 タイムリーな情報が提供 ・記事の寿命が短い ・正確な情報が伝わるよ うに取材時に注意する。 観光雑誌 (Tap Chi Du Lich)や旅 行会社が作成する雑誌 等 ・観光に興味がある層向 けに特集記事を発信で きる。 ・月刊雑誌等は読者によ り保存されることが多い ため、記事の寿命が長い ・発行部数に限りがある。 ・発行頻度は低いので、タ イムリーな情報ではなく、 固定的な情報を記載する ことが望ましい。 ・観光行政機関による観 光地紹介のWebサイ ト ・旅行会社等による観光 地紹介の Web サイト ・多くの国民に伝達が 可能 ・写真や記事などの情報、 ツアー情報などの旅行に 直結するタイムリーな情 報の発信が可能。 ・作成や維持にコストがか かる。 ・情報の頻繁な更新が求 められる。 ・パソコンやスマートフォン を持っていないとアクセス ができない。 雑 誌 Web サイト ・制作コストが高い ・報道期間が短い ・制作時に正確な情報が 伝わるように注意する。 67 媒体名 SNS ツール 具体例 Facebook等での観光 地のサイトの立ち上げ 長 所 ・ コ ス トも かからず 、 観 光 の生きた情報が広く早く 伝わる ・口コミでの情報が広がる 留意点等 ・誰でも書き込みができ るので、情報の信憑性が 下がる場合もある。 ・パソコンやスマートフォ ンを持っていないとアクセ スができない。 案内看板 観光地を紹介する看板 の設置 パンフレッ ト、 観光ツアー紹介等 観光マップ ・目立つ場所に看板が設 置できれば、低コストで広 報効果もある ・設置場所の選定や、限 られた看板の中でPRをす る工夫が必要。 ・観光ツアー情報やアク セス、価格等の情報が的 確に伝えられる。 ・発行する主体(旅行会 社等)の協力が必要。 ・出展コストがかかる ・展示や配布用のPRツ ール(パンフレット、映像 等)を大量に準備する必 要がある。 伝統文化への悪影響を 及ぼさないように留意が 必要。 旅行関係 等の展覧会 ベトナム観光フェア、 OVOPフェア等への参加。 ・観光に興味がある層への 直接的なPR効果が高 い。 ・ツアー形成等のビジネ スマッチングなどの可能 性もある。 地域でのイ ベ ント開催 伝統フェスティバル 等 ・観光客集客効果と、地 域活性の両方のメリット がある。 なお、表2-7-3は主に国内向けのプロモーションのツールですが、海外向けには、Webサ イトやパンフレットなどを外国語に翻訳し、海外旅行市場向けに発信していくことや、海 外で開催される観光フェア等への出展において、農村観光をPRすることも有効です。 68 Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 (3)旅行会社との連携によるプロモーション、FAMツアーの実施 農村での観光促進については、観光客が独自で訪れることがアクセスや言語等の面で 困難なケースが多いため、旅行会社と連携した送客を行うことが最も効率的な方法で す。もちろん、ベトナム国内観光客で独自の交通手段で来られる方も多い場所もあるか もしれま せんが、観光の開始時には、旅行会社からの協力があった方が、ベトナム人観 光客の場合でも、より観光促進が円滑に進むと考えられます。 旅行会社への観光PRのためには、FAMツアー(Familiarity Tour:業界関係者と対象 として新しい観光地のことなどを熟知してもらうための訪問ツアー)を実施することが 最も効率的にPRできる方法です。なぜなら実際に見て体験してもらうことが、一番農 村の情報を伝えることができるからです。 他方、観光の受入体制が十分でない状態でFAMツアーを実施するとかえって旅行会社 からの印象が悪くなってしまう場合もあります。これを改善するために、通常のFAMツアー ではなく、開発した観光地を視察してもらい、改善のためのコメントをもらうための研修ツ アーというような扱いにすることも一案です。旅行会社にとっても、今後の新しいデスティネ ーションの開発に関わるわけですから、真剣なコメントが出されることが期待されます。 またFAMツアーの際には、本番のツアーを想定して、モデル的な観光ルート、観光ガイ ドによる説明、各観光サービスの料金等を準備し、旅行会社にしっかりと紹介できるよう に準備することをお勧めします。FAMツアーの後で、旅行会社からのフィードバックや改 善のためのコメントをもらえるような機会を設けるのも一案です。方法としては、アンケー ト配布、また短い振り返りの会議を実施することもよいでしょう。 FAMツアーで旅行 会社を受け入れる 観光管理委員会 のスタッフ 69 (4)フェスティバル等のイベント実施によるプロモーション ベトナムの多くの農村が地域毎の伝統的なお祭りを実施 しています。地域の英雄を祀る行事、収穫を祝う祭り、季節 の変わり目を祝う祭りなどです。これは観光促進の上でも チャンスとして扱えます。フェスティバルと農村観光プログ ラムを合わせて実施し、観光客を集客し、プロモーションも 同時に行うという手法です。 フェスティバルの良さは、①観光行政や住民等と一体で 開催することにより地域に観光促進に向けた一体感が生 まれること、②メディアによる広報を通じて、農村の知名 度が上がり、伝統行事等を外に発信するチャンスとなる こと、などの利点があります。また上述の旅行業界向けの FAMツアーとイベント開催を併せることも、農村の魅力を 伝える機会となり得ます。観光向けのフェスティバルは定 期的に開催することにより、観光客及び旅行会社の定着 に繋がると考えられます。 他方で、農村でのフェスティバルは通常は農村内部の人 々のために行われてきたため、フェスティバルで観光客を 誘致することで、文化や伝統への変化、ネガティブな影響 なども起こりかねません。伝統や文化の保存にも十分に留 意して、フェスティバルを活用することが求められます。 伝統フェスティバ ルは観光客にとっ ても興味深いもの です 伝統フェスティバ ルと併せた地場産 業フェアは、住民 に産品販売の機 会ともなります 70 農村での観光祭 のポスター Chapter 2 農村観光の開発プロセスと手法 2.8. STEP6.モニタリング・マネージメント ~農村観光の状況をチェックし、評価する~ ■モニタリングとは? モニタリングとは、設定した計画や目標について、その進捗状況を、指標やマイル ストーンをもとにチェックすることを言います。例えば、観光客数の変遷、観光客が 満足しているか否か等を把握することで、新たな改善が必要なのか等の対策を検 討することができます。指標とは、計画や目標の達成度をはかるための目印で、観 光の場合は、訪問する観光客数、滞在日数、観光消費などが用いられることが一 般的です。モニタリングでは指標を目安に、状態を評価していきますので、指標の 設定も重要となります。 ■モニタリングのポイント プロモーションをマーケティングがうまくいくと、徐々に観光客が訪問する現象が起 こってきますが、観光客数や状況を常に把握していくことが求められます。そのため に定期的に観光地の状況をモニタリングする必要があります。モニタリングの手順 としては、何を目的にモニタリングをするのかという計画、どのようなデータを入手 するのかというデータ収集の方法、分析して今後の取り組みを再検討する3つのス テップがあります。 1. モニタリングの計画 ・ モニタリング項目の決定 ・ 指標の決定 2. モニタリングのデータ収集 ・ アンケート調査、インタビュー調査等によるデータ収集 ・ 観光客数などのデータ収集 3. モニタリング結果の分析と今後へのフィードバック ・ データを分析し、今後の計画や対策にフィードバックする 参考:「A Toolkit for Monitoring and Managing Community-Based Tourism (www.snvworld.org) , edited by SNV Vietnam, December 2007)」 71 2-8-1. モニタリングの手順 モニタリングには、簡潔にまとめると、①モニタリングの計画、②モニタリングのデータ収 集、③モニタリング結果の分析と今後へのフィードバックの3つのステップがあります。 モニタリングの計画 モニタリングのためのデータ収集 モニタリング結果分析と 今後へのフィードバック 図 2-8-1 モニタリンの手順 2-8-2. モニタリングの計画 まずモニタリングにおいても計画を立てることが推奨されます。モニタリングは外部者 がやることもありますが、最終的には観光行政やコミュニティ等の従事者が農村の観 光の状況を把握することが望ましいので、できるだけ分かりやすいモニタリングの計画 を立てることが必要です。 モニタリング の計 画 で は、 ど のよ う な 項 目 を 対 象 に する のか、 指 標 はどう する のか、 モ ニタリングの実施者は誰か、期間はいつ実施するのか等の枠組みを決めていきます。 (1)モニタリング項目の決定 まず、モニタリングの対象項目の検討が必要です。モニタリングの項目には、観光客数 などの数値のデータ(定量データ)、数値では図りにくい満足度などのデータ(定性デー タ)があります。これらのモニタリング項目は、農村観光の状況や、何を評価したいのか という考えのもとに決定されています。観光客数を把握し、状況やトレンドを把握すると いう目的のモニタリングもありますし、観光客の満足度やニーズを把握するモニタリン グもあります。また観光からの収益の計算やコミュニティへの配分等の経済的なデータ から観光の状況、特に利益配分について検討するというモニタリングもあります。それ ぞれの知りたい内容に応じてモニタリングの項目を決定していくのがよいでしょう。 またモニタリングには外部者のデータ分析だけではなく、観光サービスを提供するコミ ュ ニティ側 の項 目 も 対 象 にな り ます 。 例 えば 、 コ ミ ュニ テ ィ の 観 光 サ ー ビ ス へ の 参 加 満 足度、参加意欲、経済的な収益等です。これらの項目により観光地サイドの状況も見 えてくると考えられます。 72 表 2-8-1 モニタリングの項目例 対 象 内部者 (コミュニティのモニタリング) 内的要因の観光地評価 定量データ 数値データ(観光客数、国別数、 月別数の 把握、観光消) 定性データ 満足度データ (観光客の満足度等) 定性データ オペレーションプランの実施状況 管理コスト(収入)の収益 定量データ コミュニティの収益データ(観光 客数、売上の把握、雇用状況、 収入調査) 定性データ コミュニティの観光客への満足 度、観光のプランニング等への 参加の満足度 (2)モニタリングの指標の決定 指標は、農村観光がどのレベルを達成したいのかという目標に応じて設定されていくも のです。例えば以下のように具体的な数値目標を掲げると、目的が達成されているか 否かが一目でわかるようになります。 表 2-8-1 モニタリングの項目例 指標項目 指 標 数値データ(観光客数、国別 数、月別数の把握、観光消費) 例) 一か月の観光客数が○○○人を超えている。 満足度データ (観光客の満足度 等) 例) ○○%の観光客が、観光サービスの質に満足している。 ○○%の観光客がもう一度村に来たいと回答している。 コミュニティの収益データ(観 光客数、売上の把握、雇用状 況、収入調査) 例) 世帯当たりの観光収益が、○○○VNDを超えている。 ○○名が観光関連の産業に雇用されている。 コミュニティの観光客への満 足度、計画づくりや実施等へ の参加の満足度 例) ○○世帯が、観光事業に参加したことを満足している。 ○○世帯が、今後観光への参加を希望している。 (3)実施者や実施期間の決定 モニタリングの計画時に、誰がモニタリングを実施するのかという実施者を決定する必 要があります。大抵の場合は、STEP2で説明した観光管理委員会や観光管理のコミュ ニティグループが中心となり実施していくのが良いでしょう。 またモニタリングのタイミングの設定も必要となります。チケット販売や予約数の確認 など観光客数等は常にデータが取得できるような仕組みを検討しておく必要がありま すが、定性的なデータはアンケート等が必要になりますので、期間を決めて実施するこ とがよいでしょう。また四半期毎、もしくは半年に一度モニタリングするなどの、モニタリ ングの頻度も検討しておくのがよいでしょう。 73 農村観光の開発プロセスと手法 実施主体者(管理委員会等) モニタリング項目 Chapter 2 観光客へのモニタリング (外部要因からの観光地評価) 分 類 2-8-3. モニタリングのデータ収集 データの収集は、実際にモニタリングに必要なデータを集めることです。方法としては、 アンケート調査やインタビュー等の直接的な調査、また観光用のチケット販売数、観光 プログラムへの予約受付数等のデータから把握していきます。 またベトナムでは多くの地域でビジターブック(観光客がコメントを記載するノート)を置 くケースがありますので、ビジターブックへのコメントと併せて、簡単なアンケートを実施 するというのも一案です。例えば以下のようなアンケートを実施して、把握したいモニタ リング項目を全て含めてしまうと効率的に分析を行うことができます。 表 2-8-3 観光客へのアンケート参考例 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 名前、年齢、(マーケット分析のため) 滞在日数、滞在目的 どこで村の情報を知ったのか。(Web、ガイドブック、旅行会社等) 交通手段 村の観光への評価 訪問した場所、体験したプログラム、サービス 良かった場所、プログラム、サービス 改善が必要な場所、プログラム、サービス またこの農村に観光に来たいかどうか。 またコミュニティ側の観光への参加意識や満足度、今後の取り組みへの意向を調査す るためにアンケートを用いたり、世帯を訪問してインタビュー調査を行うという方法も考 えられます。 表 2-8-4 コミュニティ側へのアンケート参考例 1.名前、年齢、性別 2.提供している観光プログラムの種類 3.観光客の受入数(一か月ごとのシート) 4.観光の売上の推移 5.観光客もしくは旅行会社からの予約受入方法 6.満足点 7.改善が必要な事項 74 Chapter 2 2-8-4. モニタリング結果の分析と 今後へのフィードバック 農村観光の開発プロセスと手法 モニタリングのデータ収集が完了したら、それを分析し、どのように今後に活かすかを話 し合います。モニタリング計画の過程で指標を設定しますが、設定した指標がクリアされ ているか否かが、今後改善や追加の取り組みが必要かどうかを決める判断基準となりま す。分析やフィードバックの方法としては以下のような手順があります。 (1)モニタリング調査結果のレビュー・分析 まずデータ収集で得られた結果を関係者間に共有します。その上で、どの指標が達成さ れ、どの指標は達成度が低いかなどを確認します。また単に指標が達成されているか否 かだけではなく、どのくらい達成されているといった評価、また観光客数の推移にかかる 傾向などもつかめると良いでしょう。 (2)調査結果にかかる話し合い調査結果については、行政関係者、観光管理の組織、コミュニ ティの代表などで話し合いの場を持つと良いでしょう。特に、指標の結果を生み出している背 景、要因について話し合い、指標の達成を妨げている要因について話し合うことで、次の解決 策が議論されるものと思います。調査結果検討の話し合いにコミュニティが参加するメリット は、状況の改善を自分たちで行っていくという意識の芽生えにもつながると考えられます。 (3)話し合いを踏まえた今後の取り組みの検討 モニタリングの結果を踏まえた話し合いを了した後は、具体的な解決方法やアクションプ ランを検討します。解決方法やアクションプランの対象としては、観光管理計画やプロモ ーションの方法、観光サービスの質、受入体制など、STEP1~5で説明したもののどこかの 過程が弱かった、改善が必要であったりする可能性が高いですので、もう一度STEP1~5 を見直し、改善が必要なところに戻り、具体的な改善策を検討することが推奨されます。 他方で単に以前のSTEPに戻るだけではなく、新しい観光サービスの開発が必要、新しい 制度が必要など、前向きな取り組みが出てくるのも望ましいと考えられます。 またもしモニタリングがうまくいかず、予定通りにデータが取れなかった場合には、モニタ リングの計画に戻り、データが入手しやすい項目でのモニタリングを実施することをお勧 めします。 2-8-5. 観光地のライフサイクル分析 のためのモニタリングの活用 「2.1.農村の観光開発のサイクル」の「表2-1-1:観光開発のサイクルの定義」において、 観光地の開発サイクルを示しました。農村地域でも観光地化が進んでくると、観光客の 増加だけでなく、観光ビジネスの専業化が進むことや、外資産業が入ってくる場合もあ ります。しかし、対応を間違えると観光が衰退する時期を迎えることもあり得ます。その場 合には、観光地のライフサイクルに立ち戻り、持続的な観光地の開発の観点から、適宜 自分たちの観光地の状況を振り返ることが求められます。 モニタリングでのデータ収集、結果分析を行う際のもう一つのポイントとして、指標の分 析を通じて、観光地がどのような状態にあるのかの理解が求められます。なお、観光客 数の減少の場合には、観光商品自体の魅力が薄れたといったケースや、他に面白い観 光地ができた等といった理由も考えられます。観光地の発展や衰退の原因の分析を農 村の関係者と行うとともに、旅行マーケットに常に触れている旅行業会からのアドバイス を得ることも有効です。 75 76 Chapter 3 第3章 農村観光開発の 実践例 3-1. 農村観光開発実践例の概要 3-1-1. 実践例の対象地 第3章では、ベトナムで実践されてきた農村観光開発の取り組みを紹介します。特に第 2章で示した農村観光開発の手法が、それぞれの地域でどのように適用されているか を、「STEP1」から「STEP6」のマークを併記して、第2章との関係が分かるようにしてい ます。なお、それぞれの事例は、異なる観光資源の特徴と持つのと、観光開発の段階や プロジェクトの期間も異なります。従いまして、様々な状況下に対応できる農村観光開 発のアイデアや手法が確認でできます。 表3-1-1:実践例の対象地 農村名 1 ハノイ市 ドンラム村 ドンラム村は、文化遺産資源を特徴にもつ農村です。伝統集 落を保存する観光計画づくり、伝統家屋を活かした観光サー ビス、お土産産品の作り方等について紹介します。 2 ハイズオン省 ホンフォン村 ホンフォン村は、水上人形劇の無形文化が残る村です。ホン フォン村では、観光客向けの衛生トイレを含む展示館を整備 しています。施設の作り方や効果について検証します。 3 トゥアティエンフエ省 フクティック村 フクティック村は、伝統窯業と伝統家屋が美しい村です。観 光を通じて伝統窯業を復興するための研修や観光プログラ ム作り方について紹介します。 4 トゥアティエンフエ省 タイントアン タイントアンは、タイントアン橋を見学する観光がされていま したが、観光の利益は十分に地域に配分されていませんでし た。タイントアンでは、地域行政や住民と一体となり、観光の 仕組みを改善する方法について紹介します。 5 ティエンザン省 ドンホアヒエップ村 ドンホアヒエップ村は、メコン地域の自然環境と洋館含む伝統 家屋群が特徴です。観光インフラを導入し、どのように河川等 の特性を生かした観光地づくりを進めているか紹介します。 6 クアンナム省 ナムザン郡 カトゥー族の村 ベトナム中部でカトゥー族が暮らす村です。観光による、カトゥ ー族の文化保存と生計向上に、どのように取り組んでいるの かを紹介します。 バックニン省 地場産業村 バックニン省フーラン、ディントー、ホアロンの3つの地場産業 村で行われた観光開発の事例と教訓等の紹介をします。 7 78 実践例のポイント 3-1-2. 実践例の配置図 Chapter 3 バクニン省地場産業村 ハイズオン省ホンフォン村 トゥアティエンフエ省 フクティック村 クアンナム省 ナムザン郡カトゥー族の村 ティエンザン省 ドンホアヒエップ村 トゥアティエンフエ省 タイントアン 農村観光開発の実践例 ハノイ市ドンラム村 実践例1 ハノイ市ドンラム村 伝統と暮らしが息 づく農村での観光 のつくり方 Ha Noi Duong Lam Hoang Sa Phu Quoc 3-2. 実践例1:ハノイ市ドンラム村 3-2-1.ドンラム村の概要 ドンラム村は、ハノイ市中心部から西方50キロに位置し、集落を池や水田が取り囲み、 古くから水稲耕作が発展した紅河流域にあり、ベトナム北部の代表的な農村集落の伝 統を今日に伝える農村です。ドンラム村は、2005年11月に集落全体が国家文化財に登 録され、「ベトナムの古い村」として知られ、また go Quyen王やPhung Hung王の英雄 を輩出した村です。 ドンラム村集落保存や開発が開始したのは2002年以降。10年以上の取り組みを経て、 観光管理の体制が少しずつ発展してきています。現在では、村の観光ガイド、民家レス トランでの食事サービス、ホームステイ、地場産業の見学や地場産品(お土産)の購入、 ノスタルジックな風景を背景にした写真撮影等、様々な観光プログラムが生まれてき ています。 3-2-2.実践のポイント 本実践例では、ドンラム村の伝統的な価値を保存しながら、どのように観光開発が進め られてきたかを紹介します。特に、文化遺産保存と観光開発の関係、住民の関わり方に 着目し、農村観光づくりの進め方を示します。 ドンラム村の観光が開始されたキッカケは、2005年の国家文化財登録に起因していま す。村が国家文化財として登録されて以降、村を訪問する観光客は次第に増え始めま した。訪問する観光客に対して、観光サービスを提供したいという住民も少しずつ現れる ようになりました。自発的な観光への参加の始まりです。一方で、ドンラム村の一番の観 光資源は、国家文化財に登録された文化遺産やそこに暮らす人々の営みです。そのた め観光開発を始めるにあたり、しっかりとした文化遺産の保存管理体制の確立や住民 の理解が求められました。ドンラム村では、専門的な集落調査、行政内での管理事務所 の設立、管理計画や条例の制定等が、観光開発に先立ち実施されました。その後、価値 ある文化財を訪問する観光プログラムが開始され、それに付随するコミュニティによる 観光サービスが発展してきています。本実践例では、これらのプロセスを、順を追って説 明します。 Truong Sa 農村観光開発の実践例 Ho Chi Minh Chapter 3 Da Nang STEP1 3-2-3. ドンラム村観光開発のプロセスと手法 3-2-3-1. ドンラム村集調査の実施と保存計画 観光まちづくり計画 (2002 年~2004 年) ドンラム村での最初の取り組みとして、集 落調査が行われました。まず、2002年に旧 ハタイ省(現:ハノイ市)の民家調査が行わ れ、広域地域からみたドンラム村の価値付 けがされました。その後、2003年~2004年 にかけてドンラム村の集落保存調査が実施 されました。集落保存調査は、基本地図作 成、建物台帳づくり、集落構造調査、周辺 集落調査、個別建物調査、住み方調査、生 活意識調査、社会調査、祭礼調査、食文化 調査、服飾調査、民俗調査、発掘調査等が 行われ、調査結果を踏まえて、保存計画や 観光まちづくりの計画が検討されました。調 査の実施体制は、ベトナム文化スポーツ観 光省と旧ハタイ省及びソンタイ郡人民委員 会、ドンラム村関係者と、日本文化庁及び 昭和女子大学、奈良文化財研究所等の協 力による実施です。 保存計画では、ベトナム国文化財保護法に 則り、ドンラム村での保存地区(保存地区I、保存地区II、及び個別建物の保存指定)を定め、 保存条例案が立案されました。また歴史的価値がある建物の等級分けを行い、等級ごとに 保存の方法が示されています。保存条例は、調査終了後の2006年5月に決定されました。 観光まちづくりについては、まちづくり基本計画を旧ハタイ省、ソンタイ郡、ドンラム村の行 政関係者及びドンラム村の住民代表との間で、ワークショップ形式で議論しました。観光 については、調査結果に基づいた観光ルートの検討が行われるとともに、伝統的民家や 公共施設の修復と観光目的の活用計画や、チケットシステムの導入や村内の車両規制 等の計画が検討されました。 これらの保存計画や観光まちづくりの計画づくりについては、行政と住民との協働で行わ れており、今後のドンラム村の観光開発の方向性を示唆するものとなっています。 ドンラム村観光計画づくりのポイント ●ドンラム村の一番の観光資源が文化遺産であることから観光計画作成の前 に、集落調査や文化財調査が専門的に行われている。 ●調査結果に基づいた保存計画や観光まちづくり計画がされている。 ●観光まちづくり計画に際しては、行政や住民の協議・合意形成が複数行われ ている。 Chapter 3 STEP2 (2005 年~2006 年) 集落保存調査の結果を踏まえて、ドンラム村は2005年11月に国家文化財に登録され ました。2001年に改定されたベトナム国文化財保護法における農村地域での面的な文 化財保存指定の第一号です。その後、2006年7月にドンラム村遺跡管理事務所が正式 に設立され、村の文化遺産管理と観光開発を行う組織体制が構築されました。ドンラム 村の現在の組織体制は図3-2で示すように8部署で構成されており、特に遺産保存部、 観光情報センター、チケット売り場・ツアーガイドが集落管理や観光管理の面で重要な 役割を担っています。 またドンラム村は国家文化財に登録されており、住民が居住する農村であることから様 々な機関との連携が取られています。例えば、文化スポーツ観光省文化遺産局、ハノイ 市文化スポーツ観光局、ソンタイ郡人民委員会傘下の文化情報局、財政局、計画投資 局等の関連部署、ドンラム村人民委員会、そしてドンラム村集落代表や住民が、ドンラム 村の事業に関連しています。 なおドンラム村遺跡管理事務所の組織管理能力の向上や人材育成については、修復 技術、観光開発にかかるベトナム国内や日本での研修の実施、ベトナムでの先駆的な 成功を収めている世界遺産ホイアンとの人材交流や経験共有などを通じて、体制の強 化や人材育成が進められています。 ドンラム村の組織体制 行政の機関 ドンラム村 管理事務所 総務部 コミュニティ 財務・経理部 遺跡保存部 所長 副所長(3) 遺跡所有世帯 建設管理部 観光情報センター チケット売り場・ツアーガイド 観光サービス 従事世帯 調査・検査部 ソンタイ城警備 図 3-2:ドンラム村管理事務所の体制 農村観光開発の実践例 3-2-3-2. ドンラム村遺跡管理事務所の設立と実施体制 STEP3 3-2-3-3.文化遺産の価値を活かした観光商品のデザイン (1) 文化遺産の修復と活用計画 (2007 年~) ドンラム村の特別な観光資源は伝統建築や景観です。そして、そこに人々が今もなお住 み続けているリビングヘリテージという性質を持っています。そのため、まずは文化遺産の 保存と居住者が住み続けられるまちづくりを考えていかないと、持続的な農村観光開発 は成立しなくなります。 ドンラム村では、計画づくりの段階で集落内での建物調査や住み方調査を行ってきまし た。国家文化財指定後には、文化財修復事業に国家予算が配分されるようになり、伝統 的建物の修復事業が進められています。伝統的建物の修復事業にあたっては、これまで ドンラム村では文化財修復の経験がなかったことから、日本の技術者チーム及びJICA のボランティアが技術支援を行っています。また世界遺産ホイアンの文化財修復技術者 がドンラムの技術者に対して技術を移転するという場面も見られてきています。 これまでの修復事業の成果が実り、ドンラム村の集落保存プロジェクトは、2013年ユネス コアジア太平洋州文化財保存賞を受賞しました。モンフー門、オン寺、Giang Van Minh 祠堂、Nguyen Van Hung 邸、Ha Van Vinh 邸の5つの修復工事が受賞対象となりま した。 現在、ドンラム村では、伝統家屋を活用したレストラン、ホームステイサービス、また 観光 ルートにおいて伝統的な建物や暮らしの様子を訪問するツアーが始まっています。観光 振興のためには、文化遺産である伝統家屋が適切に保存されていることが条件となりま す。今後も、伝統家屋に住む居住者が、家を大切に守りながら活用し、観光客への受入れ を行っていくことが求められています モンフー門の修 復の様子 修復工事では古 い部材を大切に 使うことが 求めら れています Chapter 3 活発な意見交換 がされた観光資 源マップづくり 5つの集落での観 光資源マップが 作成されました 農村観光開発の実践例 (2)観光資源調査と観光マップづくり (2011 年~2012 年) 2005年の国家文化財登録以降、ドンラム村を訪問する観光客は次第に増加してきました。 家の前を通りかかる観光客を見て、レストラン等の観光サービスを提供し始める住民も数 世帯みられるようになりました。 しかし当時観光客情報は、個々の世帯の観光サービスに留まり、村全体の観光情報を得る 手段はありませんでした。またドンラム村には、伝統的な建物だけでなく、地場産業等様々 な観光資源がありますが、それらが十分に認識されておらず、観光には活用されていない 状態でした。 そこでドンラム村では、村に潜在する観光資源を把握するために、第2章で紹介した観光資 源マップづくりの作業を行いました。ドンラム村を構成する5集落(モンフー、ドンサン、ドアイ ザップ、カムティン、カムラム)において、各集落約20名、合計100名の住民とドンラム村遺 跡管理事務所の協力のもと、観光資源マップ作りを行いました。マップ作りでは、歴史や文 化、地場産業や名産品、農業、人的なリソース等、グループごとにテーマを設定し、テーマご との観光資源マップを作成しました。作業中、住民からのドンラム村への誇りや自慢話、更 には「自分の家にも観光客が来てほしい」、「この資源を是非観光客に見てもらったり、体験 してもらったりしてみたい」、「観光を受け入れたいので受入のための技術やノウハウを知り たい、教えてほしい」といった声が沢山上がってきました。これらは次の観光サービスの技術 習得のための研修や、観光ルートづくりのステップに繋がっていきます。 また観光資源マップづくりには、旅行会社からの参加もあり、旅行会社の資源からみた ドン ラム村の観光の潜在性や優位性となるものについて意見が述べられ、住民のモチベーショ ンも上がりました。 Chapter 3 農村観光開発の実践例 料理コンテストで 準備された住民に よる食事サービス 外部審査員によ る審査の様子 三ツ星から一つ星 (★★★~★)の表 彰状が各世帯に 授与されました 表彰の様子 (3)食サービスの向上(2011年~) 観光客の増加に対して、伝統民家を 活用した食事サービスの提供が幾つ かの世帯で始まりました。また観光資 源調査を通じて、観光客向け食事サ ービスに参加したいという住民も多数 いました。その一方で、観光客向けに 食事サービスを提供するためには、味 付け、盛り付け、メニュー、衛生環境、 サービス、空間デザイン等、様々な観 点から観光客のニーズに対応してい かなければなりません。そのためドン ラム村遺跡管理事務所とJICA、昭和 女子大学が実施しているプロジェクト において、①料理コンテスト、②料理 ワークショップ、③レストランの衛生改 善等を実施し、観光向けの食事サー ビスの質やサービスの向上に協力し てきました。 ①料理コンテスト (2011年8月) 料理コンテストでは、食事サービス を提供している6世帯を対象として、 観光客向けの料理セットを準備して もらい、外部審査員が審査するコン テスト形式で開催しました。外部講 師は、ベトナムと日本の観光系研究 者、料理研究家等です。審査の基準 は、味付け、盛り付け、サービス、分 量、地域性、空間の使い方等で、採 点結果をもとに、三ツ星から一つ星 (★★★~★)に農家レストランをラン ク付けしました。 料理コンテストを通じて、住民の食事 サービスを向上するための競争意識 が芽生え、また外部講師による評価 から今後改善点なども把握すること ができました。料理コンテストは継続 的に開催することが望まれます。 住民とともに進め られる食事研修 の様子 ③衛生改善 観光客に対する食事サービスの提供には、衛生的な環境が求められます。衛生的な環 境には、食事のための空間や食材だけでなく、キッチン、食器、洗い場など、また料理 をする人の服装、衛生管理などにも関係してきます。ドンラム村では、食品産業を専門 とする日本人ボランティアが、食事サービスを提供する世帯に対して、衛生環境のチェ ックや改善のための助言を行っています。 農村観光開発の実践例 ドンラム村食事研修のステップ: ステップ1: 世帯の料理の現状とニーズの把握。 ○食事サービスの提供を希望する住民との話し合い ○どのような料理の提供ができ、またどのようなことを研修で勉強したいのか ステップ2: 世帯の料理の技術レベルの把握 ○現在家庭にて作れる料理を作ってもらう。 ○試食と意見交換。(味付けや盛り付けへの評価) ステップ3: 料理のアレンジの検討と試作 ○講師により、料理のアレンジや味付けを実際に行う。 ステップ4: 盛り付けや設えの工夫 ○盛り付けや、テーブルクロス・食器セット等のセット ステップ5: サービスの提供(客を迎え入れての実習) ○サービスの心得、メニュー、接客マナー等のレッスン Chapter 3 ②料理ワークショップ 料理の質の改善には、サービスを提供する世帯や地元の料理人に対する研修が求めら れます。ドンラム村で実施した食事サービスの研修は、日本人料理家を講師として招き、 以下のステップで実施しました。研修のポイントは、農村で普段食されているメニューや 材料を大切にし、その上で観光客向けの味や盛り付けのアレンジや設えの工夫等を加 えるという方法を学ぶことです。 (4)地場産品を活かしたお土産づくり (2012年~) ドンラム村には、伝統的なお菓子(チェーラム、チェーコー、バインガイ、ケオラック、ケオ ゾイ等)があります。魅力的な観光資源であり、またお土産品として販売することにより、 収入源になることも期待されていました。他方で、農村内で物流していた商品を、観光 客向けに販売するためには、商品のデザインや衛生・安全性等を向上させる必要があ りました。そのため、①お土産コンテストによる住民の意識啓発、②商品のパッケージデ ザイン支援、③食品安全基準の取得等を通じて、住民の支援を行っています。 ①お土産コンテスト (2012年1月) ドンラム村で地場産業や土産づくりを経営している世帯の協力を得て、お土産コンテス トを開催しました。お土産コンテストでは、各世帯が食品、お菓子等の地場産品や土産 品を持ち寄り、外部審査員により評価をする形式で進められました。外部審査員は、地 場産品デザイナー等です。評価基準は、味、見た目、パッケージデザイン、お土産として の保存性、販売力、ドンラム村の特徴が表現されているか等です。審査では「ドンラム村 お土産賞(第一位)」や、「地域の風土賞」、「外国人賞」など様々な賞を設け、多くの住 民が表彰されました。お土産コンテストの実施により、住民のパッケージデザインや品質 等に対する意識が向上しました。また第一位を獲得した世帯の商品には、商品のロゴマ ークのデ ザインが提供され、商品のブランド化が進みました。 お土産コンテスト の表彰式の様子 お土産コンテスト での審査の様子 ②商品のパッケージデザイン支援 お土産コンテストを踏まえて、商品のパッケージデザインの必要性が高まりました。また観 光マップに掲載されている特産品の販売を促進するためにも、パッケージデザインや衛生 で安全な包装が求められています。 ドンラム村に派遣中のJICAボランティアや、ベトナム人デザイナーによる協力を得て、パッ ケージのデザインへの協力を行っています。パッケージデザインでは、食品を美味しく見せ るための色やデザインの工夫、ドンラム村を象徴するデザイン、商品の名前(ネーミング)、 また生産者の名前や連絡先等を記載しながら進められました。パッケージデザインが新し くなったことにより、商品の売り上げが2倍以上増加したという世帯もあります。 ③食品安全基準取得 農村の地場産品を観光客向けに販売する際の重要な項目に、食品の安全があります。 食品の安全基準をクリアするためには、ベトナム保健省傘下にある検査機関(Micro. Lab)のチェックを受ける必要があります。チェックの項目は、食品の材料や食品加工を 行う労働者の健康チェックも必要です。以下が検査の手順で、基準をクリアできると食 品の安全認証にかかる証明書が発行されます。 なお、検査は保健省傘下の検査機関によって行われ、食品の安全認証にかかる証明書 はソンタイ郡人民委員会から発行されました。 1.経営証明のコピーの提出 2.検査への登録(Circular no. 55/2011/TT-BNNPTNT date 3th August 2011 by Ministry of Agriculture and Rural Development に基づく) 3.食材と食品加工環境の検査 4.労働者全員の健康診断 5.研修受講と、証明書発行 6.品質管理の規則の説明 7.上記検査に必要な経費の支払い 食品安全にかか る証明書 食品安全にかか る検査書 農村観光開発の実践例 新しくなったチェ ーラムのパッケー ジデザイン Chapter 3 ケオラックのパッ ケージには、お土 産コンテスト優勝 のロゴマークが加 えられました STEP4 3-2-3-4. 受入体制の強化 (1)ローカルガイドの育成と観光ルート設計 (2007年~) 農村観光では、ローカルガイドは、観光客と地域とをつなぐ重要な役割を担っています。 ドンラム村ではマーケットのニーズに従い、ガイドの研修を行っています。例えば、短期滞在 が多い日本人観光客のでも村の良いところを効率よく見せるための観光ルートの設計や、 各ポイントでのガイドの方法について研修にて学んでいます。またお土産好きの日本人観 光客でも農村観光を楽しめるように、既存のルートに、伝統的なお菓子作りの体験やお土 産の購入等のプログラムも加えました。観光客へのホスピタリティとしてのガイドの振る舞 いや、高齢者の観光客への対応、またガイドの服装等についても研修にて学んでいます。 表 ドンラム村観光コースの例(日本人向けツアー) 時 間 8時30分 10時 10時10分 10時30分 10時50分 11時10分 11時30分 12時 13時30分 14時 14時15分 14時35分 15時 15時15分 15時35分 16時 プログラム ハノイ発 モンフー門到着 モンフー門から説明開始しスタート、歩いてモンフー集会所へ (途中、農作業の年間スケジュール等簡単な説明) モンフー集会 説明と見学(15分) ザン氏祠堂 説明と見学(15分) ハーバンビン邸 伝統家屋の説明と見学(10分) グエンバンフン邸 伝統家屋の説明と見学(15分) 伝統民家レストランで昼食 歩いてモンフー駐車場へ、途中教会を見学 モンフー駐車場出発→(自動車)→フンフン廟へ フンフン廟 説明と見学(10分) ゴクエン廟 説明と見学(20分) ゴクエン駐車場出発→(自動車)→ミア寺へ ミア寺 説明と見学(15分) ヒエンバオ菓子工房でのお菓子作り体験とお土産購入 ミア寺前駐車場出発→(自動車)→ハノイへ 観光ルートを話し 合い、発表する様子 観光ルートの設計 では、所要時間や 説明内容など詳細 に検討されました ワークショップでは 観光客の受入を想 定して、時間を計 測しながら、模擬 試験を行いました 各観光スポットで も、時間を意識し、 要点をまとめた説明 がおこなわれました 2008年に導入さ れた入村チケット 制度 村入り口に整備さ れている大型車も 停車できる駐車場 ドンラム村は文化 財なので、村内へ の駐車は禁止され ています STEP5 3-2-3-5. マーケティングとプロモーション ドンラム村の魅力を外部に発信するために、フェスティバル開催による村のPR、Webサイト や観光マップ等によるPR活動を行っています。ドンラム村には、フンフン王やゴクエン王の 英雄を祀る祭や、農業の豊作を祝うオン寺祭りなどが様々な催しが毎年開催されていま す。これらの行事を村内のみで完結させるのではなく、外部からも観光客を呼び込む行事 となるように、伝統行事に様々な観光のアトラクションを加えたプログラムを開催していま す。例えば、ドンラム村の特産品や農産物を販売する地場産業フェアや、相撲 大会などのスポーツイベントです。このような地域からの情報発信を通じて、ド ンラム村の観光地としての知名度は上がってきています。 またハノイ中心の旅行会社向けのFAMツアーも数度実施しており、集客の向 上に努めています。 ドンラム村の Webサイト Ngo Quyen 王 祭りと併せて開 催されたドンラ ム村フェスティ バルのポスター 農村観光開発の実践例 村入り口に設けられ たチケット販売所 Chapter 3 (2)観光受入の仕組みやハード面の整備 観光客受入のためには、ソフト面やハード面で様々な整備が必要となります。ドンラム村で は、2008年より入村チケット制を導入し、観光客の入村管理を行っています。チケット制に ついては、全3か所で入村管理を行っており、ドンラム村遺跡管理事務所のスタッフが配置 されています。また駐車場の整備や車両進入禁止区域を設け、村内への車両の進入を制 限して、村内の環境を維持しています。 STEP6 3-2-3-6. 観光データによるモニタリング (1)観光客数の推移 ドンラム村では、2008年に入村チケット制を導入して以来、観光客数の統計を行ってい ます。2008年以降年々観光客は増加し、2012年には7万人を超え、2013年は10万人以 上となる見込みです。国籍では、ベトナム人訪問客が6割以上を占め、次いでフランス、 日本人観光客が多いというデータが取れています。 図 3-4:ドンラム村観光客数の推移 (2) 観光客アンケート調査による観光情報の把握 2013年5月~7月に、ドンラム村遺跡管理事務所が実施した観光客アンケートによると、 観光客のニーズは、遺跡、伝統的家屋の見学といったニーズが多く、伝統家屋での写真 撮影も人気であることが分かりました。多くの訪問客は、ドンラム村の中心のモンフー門、 モンフーディン、伝統家屋を訪問しており、一方で、それ以外には観光客が訪問していな いという状況も把握することができました。 観光客の今後のニーズとしては、もっと村の住民と交流したい、村の昔話を聞きたい等と いった地元のことをもっと知りたい要望が多く聞かれました。これらは今後の観光発展に 向けて、対応していくことが望まれます。 (3)住民への観光ビジネス調査 観光サービスを提供している住民向けに敵機的なモニタリングも実施しています。モニタ リングの項目は、観光客を受け入れたサービスの種類(食事、ホームステイ、土産販売等)、 観光客の数、予約する旅行会社の名前、売上等、です。これにより、月単位や年単位での 観光客数や売上の増減が把握できるようになります。例えば観光サービスを実施してい る約20世帯の売上(収入)は、2006年以前の農業従事時と比べて、平均して2倍以上、多 い世帯では10倍以上との情報が世帯への聞き取り結果から得られています。 Chapter 3 (1) ドンラム村観光開発の教訓 ドンラム村では、2002年からの文化財調査、2005年の国家文化財登録、2006年の ドンラム村遺跡管理事務所の設立を経て、文化財保存や観光開発が発展してきまし た。2013年現在、ドンラム村を訪問する観光客は年間10万人近くとなり、村の中に観光 化の変化がみられるようになってきました。多くの住民が観光に関係する産業に着手し 始めています。 ドンラム村では、観光開発の前に、集落調査や文化財調査を行い、集落の管理体制の構 築に努めてきました。従って、観光化が進んでも文化財の保存に大きな影響がでないよ う体制や人材育成が育っています。また住民にも、文化遺産を大切にしながら観光開発 を行うという意識が根付いてきたため、村全体の意識が高まってきています。 (2)今後に向けた課題 ドンラム村は人が住む文化遺産であるため、観光化や近代化に対して、住む人々の意識 の啓発は継続して必要です。そのためには、文化財の保存に対して、観光による経済収益 がよい循環を生み出す仕組みが求められます。図3-5は、文化財保存、観光開発、住環境 等のバランスを考えたダイアグラムです。この図のように、観光による収益が文化財保存 や住環境の保存を支援し、そのことでドンラム村のライフスタイルがブランド化され、観光 客にとっても更なる魅力的な地域になることが望まれます。 今後は、多くの農民が観光に参加できる農業体験プログラムの開発や、文化財を利活 用した古民家カフェ、古民家ステイ等のプログラムも面白いでしょう。 コミュニティ 観光による 経済の活性化 観光客 ライフスタイ ルのブランデ ィング 文化財の保存 住環境の改善 3-5:ドンラム村の保存と観光開発のためのダイアグラム 農村観光開発の実践例 3-2-4. ドンラム村観光開発の教訓、今後に向けた課題 3-2-5. ドンラム村の観光開発を振り返って 5 年間の観光開発の取り組みと今後の課題 ドンラム村の有形・無形文化財の価値は高く、2005年に国 家文化財に登録されました。ドンラム村は、ベトナムを代表 する農業のライフスタイルが残り、生きた博物館(Living museum)とも呼ばれています。 (1)5年間のドンラム村の開発 2008年8月、中央政府よりドンラム村の入村チケット 制度が承認されました。ドンラム村を訪問する国内外の観 光客は増加し、様々なタイプの観光が楽しまれるようになり ました。文化遺産観光、宗教的な観光、農業体験 等です。 地方行政とドンラム村管理事務所では、3つの重要な業務 の柱の一つとして、観光を位置づけて取り組んでいます。ド ンラム村管理事務所では、多くの関連機関と協力し、観光 ガイドの育成やスタッフの教育、また観光総局と協力したプ ロモーション活動を行っています。 (2)ドンラム村の持続的観光開発に向けた今後の取り組み 以下の項目に今後取り組んでいきたいと考えています。 ●ドンラム村観光情報センターの設立 ●インフラの改善、特に公衆トイレ、歩道、照明、上水道と下 水道の整備、土産販売所、 体験プログラム(農業体験、地場産業体験)の設備整備、 コ環境の改善 ●住民の参加促進、伝統的な農業や生活様式の保全 ●観光情報や案内板の整備、外部からの投資促進、交通 からの騒音や大気汚染の軽減 ●英語による観光ガイドの育成、フェスティバルや地場産 業フェア等の観光促進イベントの開催 Mr. Nguyen Trong An ドンラム村管理事務所副所 ドンラム村の伝統菓子は昔から地域で愛されてきま した、外部にはあまり知られていませんでした。2005 年にドラム村が国家文化財に登録されて以降、地域 行政やJICAの協力により、観光客が私たちの家族が 作った伝統菓子をお土産として買うようになりました。 そして、時間が経過するごとに、沢山の人々にドンラ ム村の伝統菓子を知ってもらうようになりました。 私たちの家族では、素材選び、品質管理、パッケージ デザインにもこだわり、伝統菓子の商品は食品の安 全承認を得ています。現在、伝統菓子の販売市場は ベトナム全土に広がってきています。以前と比べると 大幅に収入も増えました。 観光のおかげで、私たちが作る伝統菓子の商品は多 くの人々に愛されるようになり、また生活も改善して います。  Ms. Duong Thi Lan 農家レストランを営む 伝統家屋のオーナー Mr. Nguyen Van Hung 農家レストランやその他観光サービス を提供する伝統家屋オーナー Mr. Cao Van Hien 家族で伝統菓子作りを営むドンラム 村の住民 農村観光開発の実践例 ドンラム村が国家文化財に登録されて以降、ドンラム 村管理事務所やJICA、旅行会社からのサポートを得 て、私たちは、ドンラム村になぜ観光客が訪問するか に気付かされました。それは、ドンラム村の伝統家屋 や遺跡、人々の暮らしなどがとてもユニークであるか らです。ですので、私たちは伝統家屋を護り、伝統的 な村が変容することを防ぎ、村の魅力を観光客に伝 えられるように 努めていきたいと思います。 私たちは、旅行会社のガイドの声も聞き、観光客のニ ーズにあった料理の提供にも取り組んでいます。また ドンラム村の特産品 である「チェーラム(生姜入り餅)」 もお土産品として販売し、 製造するプロセスも観光客 に楽しんでもらっています。これからも沢山の観光客 に私たちの家を訪問してもらいたいと願っています。 Chapter 3 私たちの家族は、もともと農業を営んでいまし た。2005年、ドンラム村が国家文化財に登録され たことを契機に、旅行会社からの協力も得られ、観 光客への食事サービスの提供を始めました。 2~3日の観光サービスの売上で、1か月の農業収 入と同じくらいの収入が得られるようになりました。 生活水準は改善され、子供の教育や家への家具 なども購入できるようになりました。 また、私たちの家族では、食事サービスの他にも伝 統音楽のパフォーマンスも披露できます。国内外 の観光客との交流も楽しんでいます。これからも沢 山の観光客にドンラム村を訪問して欲しいと願い ます。 実践例2 ハイズオン省 ホンフォン村 水上人形劇文化を 高める観光開発 Ha Noi Da Nang Hoang Sa Phu Quoc 3-3. 実践例2:ハイズオン省ホンフォン村 3-3-1. ホンフォン村の概要 ハイズオン省ニンザン郡ホンフォン村(Hong Phong)は、ハノイ市南東約100キロに位 置し、人口7,359人(1960世帯)が暮らす村です。ホンフォン村は、紅河デルタの農村の 伝統文化である水上人形劇が発祥した地域の一つとして知られ、現在も村の中心部の 池の中に水上人形劇場が残り、人形の操作や木工細工を行うホンフォン水上人形劇グ ループが活動しています。ホンフォン村では、毎年旧暦3月13日にディンの前にある水 上人形劇場にて水上人形劇祭りを行う慣習がありました。最近では、ホンフォン水上人 形劇グループにより、ハノイ民族博物館やその他イベントに水上人形劇を巡業し、また 2012年には全国 水上人形劇大会で銀賞(2位)を受賞した実績を持ちます。 水上人形劇は、外国人及びベトナム人観光客を引き付けるベトナムの伝統文化です。 ホンフォン村は、農村にて昔ながらの水上人形劇が楽しめることから、近年観光客の訪 問が始まっています。 3-3-2.実践のポイント ホンフォン村の水上人形劇は、これまでは村人達が楽しむための地域の伝統行事でし た。この地域資源を観光客に対して披露し、受入れをしていくためには、施設や環境面 での受入体制の整備が必要でした。そのため、ホンフォン村では、観光客が快適に村に 滞在するための、水上人形劇展示センターをJICAが協力して建設しています。展示セ ンターには衛 生トイレも付属されています。 本実践例では、水上人形劇文化を活かしながら観光客を受け入れるための拠点となる 施設の計画方法について説明します。 Truong Sa 農村観光開発の実践例 Ho Chi Minh Chapter 3 Hong Phong STEP1 3-3-3. ホンフォン村観光開発のプロセスと手法 3-3-3-1. 対象地域の選定と計画づくり (1)ベトナム北部の水上人形劇の分布 水上人形劇は、1000年以上前に北部紅側デルタ中心に発祥したと言われており、農作 物の豊作を願い、耕作の合間に農民たちが楽しむ娯楽であったと伝えられています。現 在、ベトナム北部に26か所の村にて、水上人形劇の文化が残っています。 表 3-2-1:農村に残る水上人形劇のリスト 市/省名 地区/郡名 水上人形劇グループ名 Dao Thuc 村水上人形劇グループ Dong Anh 地区 Ha Huong 村水上人形劇グループ Nhan Tai 村水上人形劇グループ ハノイ市 Thi Lan 村水上人形劇グループ Phu Da 村水上人形劇グループ Thach Tuat 地区 Yen Thon 村水上人形劇グループ Chang Son 村水上人形劇グループ My Duc 地区 Thuan Thanh 郡 バックニン省 Dong Binh 村水上人形劇グループ Bui Xa 村水上人形劇グループ Dong Ngu 村水上人形劇グループ Quy Vo郡 Thanh Long 村水上人形劇グループ Thinh Loc 村水上人形劇グループ Van Yen 郡 ハイズオン省 Ninh Giang 郡 Thanh Ha 郡 Gia Loc 郡 Lai Oc 村水上人形劇グループ Hong Phong 村水上人形劇グループ Thanh Ha 村水上人形劇グループ Bui Thuong 村水上人形劇グループ ハイフォン市 Vinh Bao 地区 Nhan Hoa 村水上人形劇グループ ナムディン省 Nam Dinh 市 Nam Chan 村水上人形劇グループ ニンビン省 Yen Mo郡 Non Khe 村水上人形劇グループ Gia Vien 郡 Tra Dinh 村水上人形劇グループ Nam Giang 村水上人形劇グループ Nguyen Xa 村水上人形劇グループ Dong Cac 村水上人形劇グループ タイビン省 Dong Hung 郡 Duyen Tuc 村水上人形劇グループ Nu Phong 村水上人形劇グループ Ky hoi 村水上人形劇グループ 出典:Vietnamese Traditional Water Puppetry, Nguyen Huy Hong, 06/2010, Nha Xuat ban The Gioi) Chapter 3 図 3-2-1:広域からみたハイズオン省の位置 JICAと観光開発研究所は、ハイズオン省文化スポーツ観光局及び村の人民委員会関係 者と協力して、ハイズオン省の一地域を協力の対象として選定することを視野に入れ、表 3-2-2の4つの地域の調査を行いました。調査においては、第2章のSTEP1「計画づくり」で 述べた観光資源の特質性、立地条件等の視点から踏査し、比較検討やツアーパッケージ での販売の仕方なども検討しながら、4つの地域の比較検討を行い、最終的にホンフォン 村を事業の対象として選択しました。 農村観光開発の実践例 (2)ハイズオン省の観光サイトの分布と位置付け ハイズオン省は、北部の主要な観光地であるハノイ市、ハイフォン市、クアンニン省ハロン 湾の中間地点に位置し、主要な旅行マーケットの中継地点という好立地条件です。 表 3-2-2 ハイズオン省の農村観光地の比較調査 地域名 特徴と評価 Chu Dao 村 陶器の歴史が深い村である。現在は、陶器の製造と 販売を行うHaporo社が設立され陶器づくりが行わ れ、従業員約500名(主に地元住民)が働いており、主 に陶器の生産や販売を行っている。既に陶器販売の ビジネスのモデルが確立されている。観光において は、ツアープログラムにおけるお土産購入の場所とし て活用ができる。 Thanh Ha 村 17世紀に発祥した水上人形劇が今も残り、劇場も 2001年に復元されている。水上人形劇は外部に巡業 するなどで経営を保っている。劇場のみがあるが、水 上人形劇を作る職人等はいなく、水上人形劇が単発 に残存している感がある。 Hong Phong 村 17世紀に発祥した水上人形劇が継承されている。水 上人形劇を作る職人も残る。数は少ないが既に観光 客の受入れも開始しており、マーケット性もある。農村 の雰囲気も感じられる。他方で、観光受入れのインフ ラや体制も整っていない。協力することで、優良な観 光地に発展する可能性が高い。 Dau Co村 湖の畔に数千匹の鳥が生息し、エコツーリズムを目指 している。しかしながら、観光協力の前に、鳥の生息や 公園管理が優先され、それ無しに観光協力は難しい と判断される。他方、既にベトナム人観光客の訪問が あることから、周辺に住む住民への観光サービスへの 技術提供などニーズが高いと考えられる。 Chapter 3 1 ホンフォン村の水上人形劇の評価(観光資源の評価) ●ハノイ市内で見る水上人形劇よりも、ホンフォンの農村で見る水上人形劇の方が、雰 囲気があり良い。自然の池の中の水上人形劇場、農民によるパフォーマンス等は魅力。 ●農村の雰囲気や空気を体験できて、リフレッシュした気分になれる。 2 ツアー送客のためのルートについて ●ハノイ-ハロン湾のツアーにて、途中ホンフォン村への訪問が可能。 ●ハノイ-ニンビン省のツアーにて、オプションでホンフォン村に寄っている。 ● ハノイ-ハイフォン、ホンフォン村というツアーを実施している。 3 集客のターゲット ●集客ターゲットは、外国人観光客が主になるだろう。外国人は、ベトナムの農村地域と 水上人形劇の組み合わせに感動が得られるから。 4 更なる送客のために必要なもの ●村に衛生的なトイレが欲しい。今のままでは観光客は安心した滞在ができない。 ●水上人形劇のルーツを探る、人形作りを体験する等の企画も面白い。 ●水上人形劇だけでなく、農村の暮らしが体験できるようなプログラムも欲しい。 ●村の人々の観光客に対するマナーを改善した方がよい。 ●村の自転車ツアーや散策ツアーなどもやってみたい。 以上の結果を踏まえると、ホンフォン村の旅行業界へのマーケット性は高く、農村での水 上人形劇の演目はユニークで価値があることが分かりました。また観光客の送客のため には、水上人形劇のルーツや歴史等をもっと紹介すること、観光客受入のための衛生ト イレ等の受入環境が必要であることが分かりました。また水上人形劇だけでなく、農村 の暮らしや景観を楽しめるプログラムへのニーズも高いことが分かりました。 農村観光開発の実践例 (3)旅行業界へのマーケット調査 観光開発を始める前に、ホンフォン村に対する旅行業界からのマーケット評価を行うた めに、既にホンフォン村への観光客の送客を行っている、もしくは検討している10社に対 するヒアリング調査を実施しました。以下は、主なヒアリング項目と回答です。 STEP2 3-3-3-2. 既存の組織を活用した観光組織づくり (1) ホンフォン水上人形劇団の活動を観光への動き ベトナム戦争の影響でホンフォン村の水上人形劇は一時衰退しましたが、1989年から文 化復興活動としてホンフォン村の水上人形劇場が再建され、活動が再開されました。そ して翌1990年にホンフォン村水上人形劇団が設立されました。 ホンフォン水上人形劇団は、ホンフォン人民委員会の下部組織で、ハイズオン省の観光 協会に所属しています。また全国水上人形劇協会のメンバーでもあります。 ホンフォン水上人形劇団のメンバーは職人やパフォーマンス担当などで合計約40名で す。1994年の全国水上人形劇コンテストにて高位の成績を修め、2012年には銀賞を受 賞しました。以下は、水上人形劇団への聞き取りから得られた、年間の公演回数です。公 演は村内だけでなく、ハノイ市市内の博物館等の施設や、全国各地のフェスティバルで の公演をしています。2012年以降は、ホンフォン村を訪問する観光客が少しずつ増えて きており、村内で観光客向けにパフォーマンスが披露されています。 表 3-2-3 ホンフォン村水上人形劇団の公演回数 年度 1990年~2001年 2002年~2005年 2006年~2012年 公演回数 年間 17~20回 年間 30~50回 年間 200回 (2) ホンフォン水上人形劇団の組織体制 ホンフォン村水上人形劇団では40名の人員構成で、これまでは人形制作や、フェスティ バル公演等が中心でしたが、2012年以降に観光ツアーの受入が始まったことに伴い、旅 行会社との業務提携や財務管理の業務が新しく開始されています。 団長 管理・会計 グループ 職人グループ パフォーマンスの管理 パフォーマンス グループ レストラン 水上人形の制作・ お土産作成 財務管理 旅行会社との業務管理 展示センターの管理 花火作成 図 3-2-2:ホンフォン水上人形劇団組織体制図 Chapter 3 水上人形劇団の旅行会社との業務管理担当が旅行会社から予約を受け、観光サービス を提供するパフォーマンスグループとレストランに連絡を入れる体制となっています。収 益は財務管理部が受け取り、関係グループに分配する仕組みとなっています。 旅行会社 【水上人形劇団】 旅行会社との業務管理 パフォーマンス管理 レストラン 図 3-2-3:旅行会社からの予約受入の流れ STEP3 3-3-3-3. ホンフォン村の観光資源と活用方法 JICAでは、ホンフォン水上人形劇団と協力して、2012年5月にホンフォン村の観光資源 調査を実施しました。ホンフォン村には、国家文化財に登録されているディン、水上人形劇 場、水上人形劇の人形を作る世帯、花火を作る世帯、村の景観等の観光資源があること が分かりました。その中でも、水上人形劇が最もユニークな観光資源であり、ホンフォン村 の観光開発については、まずは、水上人形劇を活かすことが重要で、特に水上人形劇のパ フォーマンスの見学、水上人形劇を作る職人の技術の見学、また村の水上人形劇の歴史 や文化を外部に発信する必要性を、村の住民や水上人形劇団と検討しました。 人形を作り続け ている職人 村中央に残る 水上人形劇場 国家文化財に 登録されている 集会所 集会所内の彫刻に は、水上人形の形 もも刻まれている 農村観光開発の実践例 (3) 観光ツアーの予約受入の仕組み STEP4 3-3-3-4. 観光受入のための展示館の計画と整備 (1)既存の施設の状況 観光客を受け入れためには、衛生な環境が必要ですが、ホンフォン村の水上人形劇場 近くには、図3-2-4の古いトイレがあったのみで、観光客向けには衛生的ではありません でした。そこでホンフォン村には、衛生トイレを併設し、且つ水上人形劇の歴史や文化を 外部に発信できる機能を含めた展示センターを建設することになりました。計画づくり、設 計及び工事費は、JICAが支援しました。 観光客を受入れるには衛生的でない既存のトイレ (2)施設計画 施設の計画地は、ホンフォンコミューン人民委員会と何度も協議をした結果、村の集会所 と国家文化財に挟まれた敷地に決定されました。水上人形劇場は、村の集会所を隔てた 隣で、距離は近くです。観光客にとって使いやすく、また国家文化財の歴史を損ねないよ うに、展示センターの設計と建設に際しては以下の点に留意しました。 ●水上人形劇場、村の集会所との繋がりを意識し、観光客や住民が各施設を行 き来ができる配置計画、動線計画とすること。 ●隣に国家文化財のディンがあるので、ディンの祭壇より前に建物、特にトイレを 立てないこと。 ●ディンの景観に合う屋根の形、色彩とすること。 ●周囲の環境に溶け込むよう、ガラスを用いた明るい設計とすること。 ●衛生トイレについては、VNAT の観光地の衛生トイレの設置基準(No:225/QDTCDL, 2012年5月8日)に従うこと。 展示スペースを設け、水上人形劇の人形や説明パネルを設置し、観光客が楽し めるようにすること。 Chapter 3 農村観光開発の実践例 建設前のサイトの状況 pond tree tree 水上人形劇場 tree tree pond kindergarten 公民館 a2 b2 a1 b1 b3 b6 t se ck ba n li b4 a3 b5 a4 pond 村の集会所 pond 3-2-5:水上人形劇展示センターの配置図と周囲の環境 水上人形劇展示館 展示館内部 展示の様子 展示館に併設された衛生トイレ Chapter 3 農村観光開発の実践例 水上人形劇展示館の設計図 3-3-3-5. プロモーションのための FAMツアー企画 2012年にハイズオン省文化スポーツ観光省主催、2013年に観光開発研究所とJICA の 協力で、旅行会社を招待したFAMツアーを実施しています。FAMツアーでは、主にハノイ に拠点を置く旅行会社を招待し、水上人形劇プログラムの視察、ランチサービス等を行 い、また周辺の観光商品と併せたパッケージツアーも紹介しました。 2013年のFAMツアーでは、ホンフォン水上人形劇、ランチ、タインハ(Thanh Ha)でのラ イチ狩り、チューダオ(Chu Dao)での陶器の買い物を一日で訪問するツアープログラム を実施しています。 ホンフォン村へのアクセスは決してよくないですが、旅行会社の協力もあり、FAMツアー 後に水上人形劇のユニークな観光商品を見るために村を訪れる観光ツアーは次第に増 加しています。 水上人形劇展 示館を訪れる 様子 フンフォンから北 へ車で60分ほど で、陶 器づくりが 盛んなチューダ オにつきます 水上人形劇を 見学する観光客 の様子 毎年 6 月はライ チが旬。ライチ はハイズオ ンの 特産品です。 Chapter 3 2012 年の FAM ツアーを経て、ホンフォン村を訪問する観光ツアーが増えてきました。 観光客は主に外国人で、フランス人が最も多く、アメリカ、ドイツ、韓国等が次いでいま す。観光客数は、表3-2-4に示すように、ハノイ近辺の北部が猛暑の6月と7月を除いて は、毎日のように観光客が村を訪問するようになってきています。主なサービスは、水上 人形劇のパフォーマンス、展示館訪問とトイレ休憩、ランチサービス、また旅行会社によ っては、村の中を散策したり、水上人形劇の人形を作る工房を訪問したりしています。 このように観光客数やツアー数を把握しておくことで、観光の傾向が把握でき、今後の プロモーションの必要性なども検討できます。 表 3-2-4 フンフォン村観光客数と収益の推移 年 2012 2013 合計 月 ツアー数 観光客数 主な観光サービス 収益(VND) 10 16 348 水上人形劇+昼食 57,210,000 11 14 139 水上人形劇+昼食 27,750,000 12 24 284 水上人形劇+昼食 52,490,000 1 14 235 水上人形劇+昼食 12,400,000 2 19  337 水上人形劇+昼食 16,250,000 3 24 636 水上人形劇+昼食 86,950,000 4 23 562 水上人形劇+昼食 26,030,000 5 18 403 水上人形劇+昼食 15,260,000 6 4 17 水上人形劇+昼食 3,680,000 7 12 60 水上人形劇+昼食 1,570,000 8 7 103 水上人形劇+昼食 18,270,000 9 17 172 水上人形劇+昼食 34,390,000 192 3296 水上人形劇を 見学する観光 客の様子 展示館を訪問 する観光客の 様子 352,250,000 農村観光開発の実践例 3-3-3-6. 観光客数のモニタリング 3-3-4. 水上人形劇と観光振興のこれから ベトナム特有の農村文化である水上人形劇を活用した観光開発を進めてきました。一時 は衰退しかけたホンフォン村の水上人形劇でしたが、2012年以降の観光客訪問や収益増 により、水上人形劇の保存や継承が実現してきています。 観光客にとっては、水上人形劇発祥の地で、パフォーマンスを楽しめることは良い思い出に なり、訪問する動機付けになります。そして、村の住民にとっても村内での雇用が増え、収入 向上に繋がり相乗効果があります。今後は、パフォーマンスの披露だけではなく、より多くの 住民や職人を巻き込んだ、お土産品開発、その他地場産業体験、農村の暮らしの体験等を 織り交ぜた観光プログラムの発展が期待されます。 なお、北部には、表3-2-1で示したように水上人形劇の文化が現存する農村が多数あります。 ホンフォン村だけでなく、多くの村に残る水上人形劇が観光客に楽しまれることが期待されま す。そのためには、受入体制の整備やプロモーション活動等の強化が必要となってきます。 3-3-5. ホンフォン村の観光開発を振り返って ホンフォン水上人形劇の価値を高めるためのニンザン 郡人民委員 会の活動や今後の計画について ホンフォンの水上人形劇の価値を保存、促進するため ニンザン郡人民委員会では、水上人号劇団をサポート しています。昔からのエピソードを表現する演技の再興、 現代のエピソードも加えたストーリーの開発に協力して います。村に観光客を受け入れてパフォーマンスを披露 するだけでなく、ベトナム全土に劇団員を派遣し、他の 水上人形劇団との交流、学びあう機会を提供していま す。国内外にホンフォン村の水上人形劇のことが知られ るようになってきました。 2013年、JICAと観光研究所の協力で、ホンフォン村に 水上人形の展示館が設立されました。この好機を生か し、ホンフョン水上人形文化を多くの観光客に宣伝して Mr. Nguyen Thanh Van いきたいと考えています。 ニンザン郡文化情報室長 現在ではホンフォン村に住む若者に水上人形劇の技術 を教え、水上人形劇文化の継承にも取り組んでいます。 ベトナムの水上人形劇の中で、ホンフォン村水上人形劇団が特別で、ユニークな存在と なっていくよう、これからも努力していきたいと思います。 Chapter 3 農村観光開発の実践例 ホンフォンの水上人形劇は、17世紀に誕生しました。水上人形劇のストーリーは先代から 次の世代へと語り継がれてきました。この水上人形劇の文化を継承するために、多くの村 人が情熱的に新しいストーリーを考えて、より面白い芸術を作ることに取り組んでいます。 ホンフォン村の全ての住民は、この地で発祥した水上人形劇に誇りを持っています。 現在、私たちは、このユニークな文化を保存継承し、さらに多くの国内外の観光客を受 入れ始めました。もし水上人形劇がなかったら、そして旅行会社からのサポートが無か ったら、だれもホンフォン村の名前を知らなかったかもしれません。特に、JICAの支援に より設立された水上人形劇展示館は、観光客に水上人形劇の成り立ちや特徴を伝え、 私たちが受賞した名誉ある賞も展示してあります。また観光客への食事サービスも提供 しています。 今後、ホンフォン水上人形劇団では、観光客の誘致に更に力を入れ、また客席の改善や、 周囲の環境保全、その他の観光サービスの開発にも取り組んでいく予定です。多くの観光 客がホンフォンの水上人形劇を楽しみ、ホンフォン村を訪問したことを満足するような思 い出を作って欲しいと願っています。 (ホンフォン村水上人形劇団) 実践例3 トゥアティエン フエ省フクティ 観光による伝統 窯業と暮らしの再生 Ha Noi Da Nang Hoang Sa Phu Quoc Truong Sa 3-4. 実践例3: トゥアティエンフエ省フクティック村 3-4-1. フクティック村の概要 フクティック村は、中部のトゥアティエンフエ省北部のフォンディエン郡に位置し、人口 400人弱が暮らす静かな農村です。フクティック村には、伝統的家屋、祠、廟、自然景観 等が多数残り、2009年に国家文化財に登録されています。(ドンラム村に次いで第2号) またフクティック村には、500年の歴史を持つ伝統産業の陶器づくりがあり、窯業の村 として知られています。陶器の一部は海外にも輸出されていました。しかしながら、窯 業はベトナム戦争の影響を受け、また村の高齢化に伴い、次第に衰退してきました。 3-4-2. 実践のポイント フクティック村の観光開発事業開始前の課題として、1窯業の衰退による収入低下、 雇用減少による労働人口の都市部への流出、2高齢化と過疎化に伴う農村コミュニテ ィの衰退、3人口流出や過疎化に伴う空き家増加や建物の老朽化、がありました。 フクティック村では、観光開発を通じてこれらの問題への対処に取り組んできました。 観光は地域資源や人的リソースにより新たな産業を創造し、雇用を拡大し、経済効果 や文化財の保存にも良い効果をもたらすものだからです。本実践例では、フクティック 村の窯業を活かしつつ、また国家文化財の伝統建築や暮らしを活かした観光の作り方 を解説し、またその効果についても検証します。 農村観光開発の実践例 Ho Chi Minh Chapter 3 Phuoc Tich STEP1 3-4-3. フクティック村観光開発のプロセスと手法 3-4-3-1. 計画づくり (1)集落調査と国家文化財登録 1998年7月~8月にかけて、ベトナム建築研究所、昭和女子大学、フエ王宮保存センタ ー、フエ科学大学建築学科により、トゥアティエンフエ省の690の民家の初期調査が行わ れ、同省内の民家建築の分布や価値について整理されました。これを受け、1998年8月~ 1994月に、第2次調査として690のうちの70の家屋の詳細調査が行われ、フクティック村 含む民家の図面採取等の建築的な調査が行われています。 その後、2003年にベトナム人建築家ホアン・ダオ・キン氏のフクティック村の文化遺産の 価値にかかるコメントがあり、ベトナム政府によるフクティック村の調査や学術的なセミナ ー等が実施されました。調査結果をもとに、2006年8月にトゥアティエンフエ省文化スポー ツ観光局は、フクティック村を国家文化財に申請し、結果、フクティック村は、2009年3月 にドンラム村に次いで第2号となる国家文化財に指定されました。その後、2009年6月に 集落の保存条例を公布し、保存体制の基盤が整えられ、農村の保存と観光振興の基盤 が作られました。 (2)観光計画 2009年8月~2011年3月に昭和女子大学、奈良文化財研究所が実施したフクティック村 集落調査では、調査結果に基づいて保存計画、観光計画を立案しています。観光計画は 以下の項目で構成されています。 ①フクティック村の観光の魅力 ・フクティック村を囲むオロウ(O Lau)川からの景観、村中央にある蓮池、伝統的民 家群、陶器工房、村内に点在するミエウ(祠)等の観光資源。 ②観光コースの提案 ・上記の観光の魅力をつなぎ合わせるツアーの提案。 ・バスや自動車での村への到着から、徒歩やボートトリップ等を合わせたツアー設 計。また一日コース、半日コースの時間を設けたツアー計画。 ③観光コース実現のための提案 ・観光コースを実現するために必要な、レストラン等の施設、陶器づくりを展示・公 開するための施設等の提案。 ④観光関連の材育成 ・観光関連の人材として、1990年代まで窯業に従事していた職人、伝統民家の住 民(民家レストランやホームステイ等の経営)、女性グループによる観光サービス提 供等の人材の育 成の必要性について。 Chapter 3 (4)フクティック村での観光開発プロジェクト 2011 年4月から3年間の計画で、トゥアティエンフエ省文化スポーツ観光局、JICA、昭和女 子大学にて、「ヘリテージツーリズムによる持続的な地域振興プロジェクト」を実施し、フクテ ィック村では、表 3-3-1 のプロジェクトが計画されました。 トゥアティエンフエ省文化スポーツ観光局では、同プロジェクトの実施を通じて、1伝 統産業 である窯業の復興により若手人材を村に呼び戻すこと、2観光を通じた産業の多様化によ る収入向上(農業従事者→民芸品や窯業への選択の拡大)を目的として、観光客を受け入 れる体制の構築や魅力ある観光地の形成に取り組みました。 表3-3-1:「ヘリテージツーリズムによる持続的な地域振興プロジェクト」 におけるフクティック村の計画 目指すべき成果 フクティック村において、地場産業(窯業)の復興・育成が行われ、地場産業体験型 ツーリズムを行う体制が構築される。 活動 1)フクティック村の村づくりのために、プロジェクト管理委員会と住民からなる観光 参加グループ(以下、村組織)を形成する。 2)村組織が中心となり、地域観光資源としての窯業の評価と復興・観光活用のた めの計画 作りを行う。 3) プロジェクト(日側)より、窯業施設再建、窯業復興にかかる技術支援を行う 4)プロジェクト(日側)及び越国内他地域の専門家(バチャン等)が、陶器の産品開 発、販売にかかる助言・運営支援を行う。 5)プロジェクト(日側)が、観光サービス(民家レストラン、土産物販売、窯業体験等) 向上にかかる助言を行う。 6)プロジェクト(日側)が、観光ツール(観光マップ、パンフレット)の開発を支援する 7)村組織とプロジェクト(日側)が中心となり、観光拠点となる観光インフォメーション センターを整備する。 8)関係者全員で、フクティック村の観光プログラムや窯業体験プログラムを、フエフ ェスティバルにて広報する。 9)村組織が中心となり、窯業・観光マーケティング拡大のために、フエ省内の観光 業者、 商工会等との連携を促進する。 農村観光開発の実践例 (3)トゥアティエンフエ省観光開発マスタープランでのフクティックの位置づけ トゥアティエンフエ省が策定している2020年までの観光開発マスタープランにおいては、フ クティック村は新しい観光商品開発の対象地として選定されています。フエでは世界遺産 の王宮を中心に観光が進められていますが、周辺の文化的、自然的な資源を活用した観 光商品開発が求められており、フクティック村はその開発対象の一つになっています。 STEP2 3-4-3-2. 観光開発・村づくりのための体制構築を 活かした観光商品のデザイン (1)管理委員会の設立 2009年3月の国家文化財の登録と当時に、フクティック村管理委員会が設立されまし た。 設立当時の管理委員会は、フォンディエン郡及びフォンホアコミューンの人民委員会(行 政職と兼務)、そして村の代表がメンバーとして加わり、7 名の委員で運営されました。 しかしながら、多くの委員が郡やコミューンの行政職と兼務であったことや予算が十分に 配分されない等の状況であったため、2013年1月に常任8名のスタッフで新たなフクティ ック村管理委員会が設立されました。フクティック管理委員会の主な役割は、集落や文 化財の保存、観光開発、産業振興等で、関連する計画管理や財務管理が行われていま す。 (2)住民による観光サービスグループの形成 「ヘリテージツーリズムによる持続的な地域振興プロジェクト」では、プロジェクト開始直後 に、窯業職人による窯業復興・窯業体験等のグループ、伝統家屋グループ、女性連盟に よる食事サービスグループ、ローカルガイドグループ等の住民グループを形成し、プロジ ェクト活動を進めました。活動は今も継続されています。図3-3-1は、2013年11月時点の フクティック村の管理委員会と住民による観光グループの体制です。 フクティック村の組織体制 行政の機関 コミュニティ フクティック村 管理委員会 自転車貸出サービス 総務(2名) 古い家屋グループ (5世帯) 管理事務所 所長 会計(1名) 食事グループ (16世帯) 観光開発部(2名)  ガイドグループ (4世帯) 文化財保存、窯業 振興(2名) 陶器体験サービス グループ 伝統家屋修復事業 図 3-3-1:フクティック村の体制図 Chapter 3 STEP3 フクティック村の観光商品づくりは、伝統産業である窯業を観光に活かすことや伝統家 屋等の資源を活かした観光商品づくりを基本として進めてきました。実施においては、フ クティック村管理委員会及び住民のグループとともに取り組んできました。以下は、その 概要と取り組みの流れです。 (1)窯業の復興と観光への活用(2011年~2012年) フクティック村の行業グループとともに、 1)窯業の現状把握、 2)窯業復興と観光活用 に向けた計画づくり、 3)技術習得や人材育成のための研修、のステップを実施してきま した。 1)窯業の現状把握 まずプロジェクト開始にあたり、フクティック村の陶器の特徴や用途について調査を実 施しました。フクティックの陶器は、日常的な食器、例えば、お米、豆などを保存する器 や 、料理 用 の鍋 類 等 が主 で 、 釉 薬 を用 いな い方 法 で作 られ て いま し た 。 し かし な がら 近年、食器の生産技術が向上し、安価な製品が市場に出回ったため、フクティック村 の陶器は次第に流通しなくなり、職人の数も減少してきました。 陶器の職人は、伝統技術を継承する職人と、新しい技術を導入する職人の2つのグル ープが存在していました。伝統技術を継承する職人グループは、5名で、窯焼き職人2 名、陶器制作2名、装飾1名の構成です。年齢は平均70歳で、窯業以外の収入で生計 を立てていました。新しい技術を導入する職人グループは、30代の4名で構成され、ハ ノイ市バチャン等で陶器づくりの研修を受け、花瓶や土産物等の陶器を型から生産す る技術を導入し始めています。これらは、フエのお土産販売店などに展示販売されて いました。 2)窯業復興と観光活用に向けた計画づくり 窯業職人グループと話し合いを行い、以下の内容に取り組んでいくこととなりました。 ●窯業の復興:窯業の復興については、伝統窯業の方法に加えて、市場に販売が可能 となるような現代的なデザインを融合し、マーケット性のある商品づくりを目指す。 ●展示や販売に取り組み、マーケットの拡大を目指す。 ●窯業を中心とした多様な観光プログラムづくり。 ●Web サイト等による村の窯業の Rを行う。 3)技術習得や人材育成のための研修 新たな商品を開発するためには、伝統技術を保持するだけでなく、新たな技術の習得 も必要です。フクティック村では、日本人陶器専門家による技術研修、ベトナムのハノ イ市バチャンやクアンナム省タンハー村等への視察研修を行っています。 農村観光開発の実践例 3-4-3-3. 観光商品づくり ①第1回窯業研修 ◆研修概要 実施時期:2011年8月17日~8月28日 場所:トゥアティエンフエ省フクティック村 講師:日本人陶芸専門家(ヘリテージツーリズムによる持続的な地域振興プロジェク ト)参加者:合計20名(伝統技術を継承する職人グループ、新しい技術を導入する職 人グルー プ、窯業未経験者の住民) ◆研修目的と内容 ●フクティック村周辺にある粘土などの材料調査を行い、フクティックの陶器に適し た材料を検討する。 ●デザインの改善、釉薬の試用等に取り組む。 ●ロクロを使わない成形の方法を試行する。 ●手動と併せて、電動ロクロを導入も試みる。 ●釉薬を用いた新デザインの陶器、窯焼きにて試行する。 ◆研修成果 ●フクティック村の職人は、フクティック村周辺の材料調査を行い、数種類の釉薬の 調合を行った。日本人陶芸専門家の指導もあり、適切な調合の方法を見つけ、フク ティック村窯業グループが釉薬の調合を継続することとなった。 ●電動ロクロが導入され、これまで手動で二人組でないとロクロが回せなかったが、 一人でも作業ができるようになり、作業効率性が向上した。 ●商品多様化を達成するために、食器を作成。食器はフクティック村を訪問する観 光客向けの食事サービスにて使われることとなった。またお土産品としても販売を行 うこととなった。 研修の様子 釉薬の調合試験 Chapter 3 ◆研修概要 実施時期:2011年11月26日~12月8日(タンハー研修は、11月28日~29日) 場所:トゥアティエンフエ省フクティック村、クアンナム省ホイアン市タンハー窯業村 参加者:12名(フクティック村窯業職人、管理委員会職員、フォンディエン郡商工室職員) ◆研修目的と内容 第一回の研修成果により、窯業の新規商品の制作が進められているが、観光客に 観光サービス を提供する経験が浅かったため、近隣にて既に観光客の受入が進む クアンナム省タンハー窯業村への視察調査を行った。目的は、タンハー村にて地元 行政や職人グループが行う、観光客受入の方法を把握するため。 ◆研修成果 タンハー村を視察して、特に観光サービスに関連して以下の内容について学んだ。 ●材料の保管方法、粘土の管理方法 ●高齢者でもできる商品づくりの方法 ●窯の維持管理、燃料の管理・保管方法 ●観光客の受け入れ方、商品の販売、商品の包装方法、在庫の管理 ●マーケット調査、資金の管理方法等 ③第3回窯業研修 ◆研修概要 実施時期:2012年3月16日~27日 場所:トゥアティエンフエ省フクティック村 講師:日本人陶芸専門家(ヘリテージツーリズムによる持続的な地域振興プロジェクト) 参加者:フクティック村窯業グループ ◆研修目的と内容 ● フエ市で 2 年に一度開催されているフエフェスティバルにおいて、フクティック村 における伝統農村祭りが開催されることになり、その準備のために研修を実施した。 ●研修目的は、釉薬使用、新しいデザインの他に、窯焼きの練習も行い、窯詰めの 方法、効率的な焼き方等について学ぶこと。またフクティック村管理委員会と窯業 グループによる窯業見学や体験等を含む観光ツアーを形成すること。 ◆研修成果 ●観光客向けの陶器の包装について、これまで新聞紙で包んでいたが、近隣のPho Trach村の竹細工の袋で包装し、観光客に販売するようになった。 ●フクティック村の陶器のパンフレットを作成し、フクティック窯業の歴史や窯業グ ループの連絡先等を記載し、宣伝が開始された。 ●フクティック村の観光ツアーにて、の窯業体験や土産購入を中心にした観光ツアー を形成。日帰りツアーと、伝統家屋でのホームステイの一泊二日のツアーが実施され るようになっ た。 農村観光開発の実践例 ②第2回研修(クアンナム省ホイアン市タンハー窯業村への視察研修含む) 新商品の開発 伝統的な陶器 ④第4回窯業研修 ◆研修概要 実施時期:2011年8月17日~8月28日 場所:トゥアティエンフエ省フクティック村 講師:日本人陶芸専門家(ヘリテージツーリ ズムによる持続的な地域振興プロジェクト)参加者:合計20名(伝統技術を継承する 職人グループ、新しい技術を導入する職人グルー プ、窯業未経験者の住民) ◆研修目的と内容 ●フクティック村周辺にある粘土などの材料調査を行い、フクティックの陶器に適し た材料を検討する。 ●デザインの改善、釉薬の試用等に取り組む。 ●ロクロを使わない成形の方法を試行する。 ●手動と併せて、電動ロクロを導入も試みる。 ●釉薬を用いた新デザインの陶器、窯焼きにて試行する。 ◆研修成果 ●フクティック村の職人は、フクティック村周辺の材料調査を行い、数種類の釉薬の 調合を行った。日本人陶芸専門家の指導もあり、適切な調合の方法を見つけ、フク ティック村窯業グループが釉薬の調合を継続することとなった。 ●電動ロクロが導入され、これまで手動で二人組でないとロクロが回せなかったが、 一人でも作業ができるようになり、作業効率性が向上した。 ●商品多様化を達成するために、食器を作成。食器はフクティック村を訪問する観 光客向けの食事サービスにて使われることとなった。またお土産品としても販売を行 うこととなった。 ⑤窯業研修の成果 4回に亘る窯業研修を経て、フクティック村窯業グループにて、観光客向けの商品作成や、 包装、販売などが行えるような体制が構築されました。また観光ツアーにて、窯業体験も 開始されるようになり、住民の自らの産業に対する意識や誇りも向上してきています。 4)伝統家屋を活用した窯業の展示 フクティック村窯業グループより、陶器の展示や販売を行う場所を作りたいとの要望が高く なり、フクティック村窯業グループや他村人と相談し、一軒の伝統家屋をフクティック村陶 器博物館として整備することが決まりました。対象となった伝統家屋の家主は、窯焼きの職 人で、家屋内には展示棚が置かれ、観光客に対して展示する空間が整備されました。展示 棚等の経費はJICAプロジェクトが支援しています。また家主は窯焼きの職人のため、訪問 する観光客にフクティックの陶器の特徴や、歴史文化などの説明を行うようにな りました。 Chapter 3 (2)その他の観光商品づくり フクティック村には、伝統家屋が多数現存し、また自然環境も豊かであることから、以下 の観光サービスも開発されました。 ①ホームステイ・・・伝統家屋にて宿泊するサービスの提供。フクティック村の伝統家屋 では、水回りなどの設備が十分に整備されていなかったため、旅行会社がトイレやシャ ワールームの建設に投資をし、サービスが提供できる状況に整備。 ②民家レストラン・・・伝統家屋を活用したレストランで、運営は16名の女性グループに よる。料理の研修については、日本人講師が行い、フクティック村の食材や料理方法を もとに、観光客向けの味のアレンジ、盛り付け、設え等のアドバイスを行った。 ③伝統家屋公開・・・点在する伝統家屋の中で公開可能な家を中心に、観光客を迎え 入れるサービスを提供。建物の歴史や暮らしの様子等を解説するサービス。 ④ボートトリップ・・・フクティック村周囲を流れるオロウ(O Lau)川からを周遊し、川から 村の様子を眺めるツアーを形成。 伝統家屋を活用した民家レストラン 民家レストランでの食事サービスの提供 農村観光開発の実践例 伝統家屋を活用した陶器展示館 STEP4 3-4-3-4. 受入体制 (1)村の観光受入の拠点となる観光情報センターづくり フクティック村では、徐々に観光プログラムが形成されてきましたが、観光客を受け入 れる拠点となる施設はありませんでした。特に村に公共トイレが無かったため、観光客 の快適な滞在のための環境整備に課題がありました。 そのためJICAが協力し、空き家となっていた伝統家屋を活用した観光情報センターの 設立に取り組みました。事業内容としては、衛生トイレとバスルーム等の水回り施設の 増築と伝統家屋内への家具やパソコン等の整備です。対象となった伝統家屋は、国家 文化財に登録されている重要建築物であったため、増改築に際しては、文化スポーツ 観光省への許可申請が必要となりました。またフクティック村の保存条例を守るよう増 築部分の設計や 高さ等に細心の注意を払いました。 観光情報センターは、フクティック村管理事務所の執務室としても使われ、スタッフが 常駐し、観光客に対する情報提供を行うとともに、施設の維持管理を行っています。セ ンター内には村の観光情報をまとめたパネルや地図なども作成され、村の観光情報が 発信され始めています。また主に住民の観光グループが会合を開く場所としても使わ れており、地域に開かれた施設となって います。 空き家となっていた伝統家屋 Chapter 3 農村観光開発の実践例 観光情報センターの設計図 観光情報センターの全景 伝統家屋にトイレを増築 トイレは開放的で、 光が差し込む設計 伝統家屋は観光客に開放され、休 憩スペースとなる フクティックの観光情報のパネル も展示されている Chapter 3 表 3-3-2:フクティック村観光コースの例 時間 8 時 30 分 9 時 30 分 9 時 50 分 10 時 10 時 15 分 10 時 45 分 11 時 15 分 11 時 45 分 12 時 30 分 13 時 30 分 14 時 プログラム フエ発 フクティック村・観光情報センター前到着 観光情報センターにて全体説明、トイレ休憩 見学開始、ミエウ見学 伝統家屋見学 ボートトリップ 蓮池の見学 観光情報センターに戻りトイレ休憩 陶芸工房見学、体験等 昼食 民俗舞踊見学 終了、フエへ戻る 観光ルート設計の様子 設計された観光ルート 農村観光開発の実践例 (2)小規模な観光インフラの整備 フクティック村の観光サービスは、伝統家屋、陶器工房、ホームステイ、レストラン、ボート トリップ等村内の至るところに点在しているため、様々な場所でのアクセス向上や衛生 環境の整備が求められました。そのため、フクティック村管理事務所とJICAの協力により ①陶器工房のトイレ、②手洗い場、③工房までのアクセス歩道、④駐車スペース等を整 備し、村全体に観光客が 訪問できるよう利便性の向上に努めています。 (3)観光ルート設計とローカルガイドの育成 観光客を受け入れるためには、各観光プログラムを繋ぐ観光ルートの設計が必要になり ます。観光ルートの設計には、観光スポットをつなぎ合わせるだけでなく、トイレ休憩、歩 行距離等、観光客を配慮した無理のないルートが求められます。また歩行や車やボート 等の移動中も景観を楽しんだり、村の解説をするなどして、全体的にルートを楽しめる工 夫が求められます。農村観光では、旅行会社のガイドだけではなく、地元に詳しいガイド がいることで、より観光の魅力がアップします。旅行会社に対して、設計した観光ルート を体験してもらい、観光客への案内をより深い内容に作り上げてもらうのがよいでしょう。 ローカルガイドによる案内 (4)観光客受入のための利益分配の仕組み フクティック管理委員会では、観光プログラムの利益が住民に分配されるように、観光収 益の分配の規則を施行しています。対象は、伝統窯業体験、食事サービス、ローカルガイ ド、家屋公開等のプログラムで、住民や住民グループに70%、環境資金や積立金10%、 管理費10%、税金10%という割合です。この分配により、管理委員会側にも管理・調整コ ストが入ることになり、予約受入やツアーのアレンジなどが可能になっています。また住民 側も分配率に満足しており、管理委員会と住民グループの双方がお互いの役割を尊重し 合い、観光受入が開始されています。 (5)観光マップ、サイン フクティック村では、村の入り口及び村内の各所に村の全体マップを設置しています。 また歩道の分岐点では、伝統家屋等の観光のポイントへの案内板を設置しています。こ れにより観光客が村を分かりやすく歩けるようになっています。 また観光情報センターにて、観光マップを配布しており、村の全体の観光情報を提供し ています。 村入り口の看板とマップ 観光マップ Chapter 3 3-4-3-5. マーケティングとプロモーション (1) FAM ツアーによるプロモーション プロジェクトにて観光プログラムを開発した後、トゥアティエンフエ省の旅行会社を招待 し、FAMツアーを実施しています。FAMツアーでは、実際の観光受入を想定して、観光商 品を紹介しました。FAM ツアー後、多くの旅行会社が送客を開始しています。 (2)フェスティバルと通したプロモーション フエ市で2年に一度開催されるフエ国際 フェスティバルでは、王宮での式典の他 に、トゥアティエンフエ省内の各地でイベ ントを開催しています。フクティック村で も、古い村のフェスティバル、窯業体験、 スポーツ競技等のイベントを開催し、観 光客への宣伝活動を行っています。 フクティック村での フェスティバルの様子 (3) 旅行博でのプロモーション トゥアティエンフエ省文化スポーツ観光局では、外国で開催される観光フェアに出展し、 フエ王宮と併せて、フクティック村の宣伝も行っています。例えば、2011年、2013年には 日本で開催されたJATA(日本旅行業協会)旅博にブースを出展し、日本の旅行業界に 向けたフクティック村の宣伝をしています。 フエ省文化スポーツ観光局では、JATA旅博に て、日本旅行市場向けにもフエ観光やフクティッ ク村のプロモーションを行っています 農村観光開発の実践例 STEP5 STEP6 3-4-3-6. モニタリングとマネジメント (1)会合によるモニタリング フクティック村では、フクティック管理委員会が中心となり、住民の観光グループと打ち合 わせを行い、観光の状況や観光受入上の問題点や解決方法を議論しています。会合を 持つことで、数値からでは分からない、住民が抱える問題なども把握することができ、ま た管理委員会が出席することがその解決に向けた議論をすることができます。 住民による観光グループとのモニタリング会合の様子 (2)観光データからのモニタリング フクティック村管理委員会では、観光客数の統計、また各観光プログラムの受入数、収益 等を記録しています。数値データを定期的に取得することで、観光客の入込数や傾向を つかむこともできます。また収益データを記録しておくことで収益管理も行うことができ ます。この他、窯焼きについては、窯入の回数や採算性についてもデータを採取し、窯業 の生産性や経済性についても分析しています。 表 3-3-3:2012 年の観光データ No. 観光サービス内容 受入数 収益(VND)(税金まない) 1 食事サービス 540 名 70,400,000 2 ホームステイ 50 名 7,388,000 3 窯業体験 16 回 3,900,000 4 ボートトリップ 52 回 10,400,000 5 自転車レンタル 169 回 3,380,000 6 窯業展示場見学 50 回 2,600,000 7 ミースエン木材彫刻職人村観光 30 回 合 計 2,900,000 100,968,000 観光客数合計 540 名(ベトナム人:111 名/外国人:429 名) 出典:フクティック村管理委員会統計データ Chapter 3 (1)フクティック村の観光開発の成果 フクティック村では、約3年間の観光開発事業を通じて、①産業としての窯業の復興が 進み、②窯業体験や土産販売などの観光プログラムが形成され、③古い民家や景観を 活かした観光プログラムの形成が進みました。村を訪問する観光客もしずつ増えてきて います。また窯業グループの活動が再開され、さらに食事サービスを行う女性グループ 等の活動も活発になってきています。特に観光プログラムの実施を通じて、収入も得られ るようになってきており、住民の観光への参加意欲も向上しています。更にフクティック管 理委員会の組織体制や予算措置も整ってきており、文化財の保存と住民の生活の向上 の両立への支援体制も進みつつあります。 フクティックの観光開発は、開始当初より住民の発意や考えを尊重して進めてきました。 そのため自慢や誇りをもって観光に取り組む住民が増え、生き生きと観光客に村を紹介 する住民の様子が印象的になってきています。また若手層の観光サービスへの従事も増 え、村に活気が戻りつつあります。 (2)今後に向けた課題 フクティック村の観光受入は始まったばかりで、これから更なるプロモーションや新規の 観光商品開発が求められてきます。しかしながら、最も大事なのは、継続的に村づくりや 観光推進を、フクティック村管理委員会や住民が中心となって継続していくことです。そ のためには、日ごろから住民が一体となって観光事業に取り組み、様々な問題を力を併 せて改善していくことが大事です。 フクティック村は、静かな環境で人々が穏やかに暮らす村です。この村の良さが失われ ないように、今後も観光が村づくりを助けていくことが望まれます。 農村観光開発の実践例 3-4-4. フクティック村の観光開発の成果と 今後に向けた課題 3-4-5. フクティック村観光開発を振り返って 1. トゥアティエンフエ省がフクティック村を農村観光の対象地に選んだ 理由を教えてください。 フクティック村は国家文化財に登録され、フエ省の文化が感じられる村 です。フクティック村、豊かな緑に囲まれた伝統家屋と穏やかな村の雰 囲気と 500 年の歴史を持つ伝統産業の窯業です。 フクティック村の5km圏内には彫刻のミースエン村、竹細工のバラ村、草 細工のフォーチャック村等の有名な地場産業村が点在しています。フク ティック村を観光開発することで、周辺の村も含めた農村観光のブラン ドが創れると考えたためです。 Mr. Phan Tien Dung トゥアティエンフエ省文化スポーツ 観光局局長 フクティック村の地場産業を復興 するための観光開発に取り組む 2. フクティック村はどのように変わりましたか。 トゥアティエンフエ省文化スポーツ観光局は、文化財保存と、観光への活 用を重視しています。JICAによるプロジェクト活動により、フクティック村に 大きな変化があり、トゥアティエンフエ省の観光の発展に重要な役割を果 たしています。 まず、文化財保存と、観光活用にかかる行政や住民の意識が大きく改 善され、観光開発だけでなく、地域振興に関する意識も芽生えています。 また窯業は技術面が改善され、市場のニーズに応えられるようになりました。 若い職人に関心も高まり、後継者不足の課題が徐々に解消されてきています。 行政はフクティック村のインフラ整備に注力し、村の景観は徐々に美化 されてきています。また、様々な支援により、観光サービスのための設備 や受入体制が整備されてきました。 3. 今後、どのような課題に取り組みますか。 著しい成果がありながら、課題もあります。まず、文化財の保存と開発の両 立です。両者のバランスのために、研究や実証が求められますがまだ十分 に行われていないため、文化財の価値を失う危険性もあります。またフクテ ィックの若手層がどのように村づくりに貢献するかも課題が残ります。 Mr. Trung 昔ながらの窯焼き職人、 陶器作りの傍らで観光案内を楽しむ ローカルガイドとして観光客を村に案内することができて、とても名誉 です。フクティック村は、長い歴史を持つ村です。村の代表になり、フク ティック村の景色、伝統的な文化、伝統家屋の建築や生活の習慣など 観光客に紹介することは誇らしいことです。 観光案内するためには、自分の人生の経験を話したり、歴史に関する 知識を磨いています。ガイドグループの研修への参加や、専門家の講 演会へも積極的に参加しています。 食事サービスグループに参加して、どのような変化がありましたか。 フクティック村の食事グループは、16名の婦人会メンバーで構成され ています。管理委員会と協力し、観光客に食事サービスを提供してい ます。観光からの収入はまだ少ないですが、婦人会の仲間と力を合わ せ、食事サービスを提供することは誇らしいことです。サービスへの参 加により、経済面や気持ちの面で、充実 した日々を送っています。 Ms. Thanh、 食事グループ長観光客に料理を 提供することに生きがいを感じる 3.管理委員会として一番大変なことは何ですか。また解決のためにどう いった取り組みをしていますか。 現在一番大きな課題は、1人材不足と、2窯業の衰退への対応です。 人材確保を確保するために、地元の人材を最大限雇用し、特に住民に観 光サービスグループに参加するように促します。また観光客の誘致に力 を入れ、観光による住民の収入向上に寄与するよう取り組んでいます。 窯業の衰退に対しては、現在の窯業サービスを最大限活用し、ツアーに 組み込むようにしています。また窯業サービスの提供のための設備を整 備し、観光客の満足度の向上に取り組みます。さらに、窯業からの収入 を向上させ、若者の窯業への雇用を促進します。 Mr. Hien フクティック村陶器作り職人、 窯業復興のための中心人物 普段、どのような窯業の活動を行っていますか。 普段は、食器、花瓶、ランプ等などお土産品を作っています。焼いた 後の陶器はフエ市のお土産品販売店に卸します。フクティック村の 陶器博物館にも展示し、販売しています。 この数年は、観光開発が進み、陶器作りも観光サービスとして観光 客に提供できるようになってきました。収入源にもなり、また村の伝 統産業を様々な人に紹介することができるので、とてもやりがいが あります。 農村観光開発の実践例 2.管理委員会は住民とどのように協力していますか。 管理委員会は、住民と頻繁に会合を持ち、住民の要望をよく聞き、観光 活動に参加できるように可能な限りのサポートをしています。また、住民 と一緒に観光プログラムを作る協力をしています。各レベルの行政機 関と住民と協力し、フクティック村の文化、建築の価値を保存、修復事 業を実施しています。 Chapter 3 Mr. Nguyen Hong Thang フクティック村管理員会委員長 熱心で、村人に信頼・応援される 行政職員 1. フクティック村管理委員会の業務について教えてください。 (1)遺跡保存・管理について ・伝統家屋、祠堂やその他の遺跡の状態を調査、評価し、修復の必要 性について郡人民委員 会に報告し、対応を検討する。 ・伝統家屋・遺跡の所有者の観光への参加意欲を調査する。 ・伝統窯を保存し、観光に活用する計画を立てる。 ・管理委員会のスタッフに、遺跡管理や観光活用にかかる研修や勉強 会を手配する。 (2)観光開発について ・情報収集、分析を行い、観光に関連する国内外の機関に情報提供する。 ・村の景観を整備にかかる月毎の計画を立てる。 ・旅行会社の注文に応じて、観光客の受入プランを作る。 ・観光サービスグループ(ローカルガイドグループ、ホームステイの受入 れグループ、食事グループ等)で意見交換や経験共有するための研 修、勉強会を開催する。 ・ホームステイサービスにかかる宿泊や予約手続きのサポート。 ・フクティック村の Web サイトを更新する。 実践例4 トゥアティエン フエ省タイントアン コ ミ ュ ニ テ ィ と 共 に 作 る 農 村 観光のプロセス Ha Noi Da Nang Hoang Sa Phu Quoc Truong Sa 3-5. 実践例4:トゥアティエンフエ省タイントアン 3-5-1.タイントアンの概要 タイントアン(Thanh Toan)とは、フエ中心部から東へ約8キロ、トゥアティエンフエ省フオ ントゥイ郡トゥイタイン(Thuy Thanh)村に残る屋根付きのユニークな橋の名前で、人々 はこの地域のことを総称してタイントアンと呼んでいます。タイントアン橋は、1776年に 建設され、1990年に国家文化財に指定されました。タイントアンには、屋根付きの橋だ けでなく、のどかな田園風景や歴史的な建造物も沢山残ります。 3-5-2.実践のポイント タイントアンでは、数年前より、フエ市に拠点を置く旅行会社を中心にした RTG(Responsible Travel Group)による観光客の送客が開始されました。しかしな がら、旅行会社が中心となり観光客を送客してきたため、村の関係者は、観光客が何 人くらい村を訪問し、どのような事をしているのか殆ど状況が把握されていませんでし た。そこで、観光開発研究所とJICAでは、トゥアティエンフエ省文化スポーツ観光局と 連携して、2012年~2013年の約1年間でパイロットプロジェクトを実施しました。パイ ロットプロジェクトでは、農村の関係者が観光に主体的に参加し、観光からの利益を得 られる仕組みづくりを目指して、村での観光管理を行う組織の設立や地域住民ととも に観光商品開発等を行いました。 本実践例 で は、 パイロットプ ロジェクト実 施 前 と実 施 後 の状 況 を示 し 、 そのた めに 取 り 組んだ事項や、農村で起こった体制面等の変化について示します。なお、タイントアン のケースでは、観光開発が始まったばかりで観光客の送客はまだ少ないため、農村観 光開発の初期段階としての事例になります。 農村観光開発の実践例 Ho Chi Minh Chapter 3 Thanh Toan STEP1 3-5-3. タイントアン観光開発のプロセスと手法 3-5-3-1. 対象地の選定と計画づくり (1)フエ省文化スポーツ観光局との協議による対象地域の選定 トゥアティエンフエ省文化スポーツ観光局では、世界遺産フエ王宮の観光に加えて、周 辺地域の観光開発を推進し、観光ツアーの種類を増やし、フエ省での滞在日数や観光消 費を増やしたいとの目標を持っていました。そのため、トゥアティエンフエ省文化スポーツ 観光局とJICAで協議を行い、フエ市郊外の農村地域に焦点を当て、パイロット事業とし て農村観光開発を進めていくこととなりました。 対象地の選定では、第2章のSTEP1で示した、観光資源の特徴、アクセス性、マーケット の潜在性等を基準に選定しました。いくつかの地域を比較検討した結果、フエ市中心部 から8キロに位置するタイントアンが開発対象地として選ばれました。理由は、表3-4-1に 示す通り、様々な条件が整っているからです。 表 3-4-1:タイントアンの農村の特徴 項目 内容 1 観光資源の特徴 農村の中心に国家文化財となっている屋根付きのタ イントアン橋がある。ベトナムでも珍しいタイプの橋で 観光客にとっても魅力がある。周囲も農村の景色や雰 囲気を感じられる。 2 立地条件、アクセス フエ中心部から8キロの立地で、車やバイクで15分程 度、自転車でも30分程度であり、アクセスが良い。 3 マーケットの潜在性 数年前より RTG(Responsible Travel Group)により、 既に送客が行われている。タイントアン橋が国内外の 旅行雑誌で紹 介されており、マーケット性が高い。 (2)タイントアンの状況分析と計画立案 タイントアンでのパイロットプロジェクトを行うにあたり、観光の状況分析や改善策の検討 を行い、計画づくりを行いました。 ①状況分析(2012年3月) タイントアンには既に観光客が訪れており、RTG(Responsible Travel Group)によるツ アー客が主でした。ツアープログラムでは、フエ中心部を出発点とし、タイントアンにサイ クリングやバイクで訪れ、農家でのランチラービス等が含まれていました。観光の仕組み としては、RTGと特定の世帯とが直接契約を交わす形式となっていました(図 3-4-1)。 Chapter 3 Responsible Travel Group側 直接の契約 民家レストラン 数件 旅行会社 旅行会社 ホームステイ サービス 旅行会社 図 3-4-1:パイロットプロジェクト開始前の観光の仕組み しかしながら、この仕組みには良い点、課題点の両方がありました。 良い点 ●旅行会社はツアーの依頼が入ったときに契約世帯に連絡。世帯側も予約が入ったとき のみ準備をすればよいので、双方に無駄がない。 ●レストランやホームステイを提供できる世帯にとっては、継続性、収益性のある仕組みで ある。 悪い点 ●契約世帯以外は、観光客の訪問が望めず、観光収入を得ることは難しい。一部の世帯 のみが儲かる仕組みとなっている。 ●タイントアン橋周辺には多くの観光資源があるが、それらは観光プログラムに活かされ ていない。(観光資源が未開発) ●旅行ガイドブックにより村を訪問する個人観光客(バックパッカー等)は、旅行会社を経由 しないため観光サービスの情報を得ることが難しい。 ②体制の改善案 フエ省文化スポーツ観光局、トゥイタインコミューンの人民委員会と体制面の課題解決 に向けて話し合いをしたところ、観光客の受入れや情報提供、農村と旅行会社とを繋ぐ中 核的な組織がないことが根本的な問題点として挙げられました。そのため、観光開発や観 光促進を行う観光管理事務所の設立、コミュニティを中心にした観光グループの組織の設 立の必要性が認識されました。また、観光からの利益が多くの人々に分配される利益分配 の仕組みについても議論されました。図3-4-2は、パイロットプロジェクト開始前に検討した タイントアンで目標とする体制です。 農村観光開発の実践例 タイントアン側 Responsible Travel Group側 タイントアン側 民家レストラン ホームステイ 住民ガイド 地場産業体験 歌や民芸披露 農業体験 観光管理委員会 コミュニティ観光グループ ・旅行会社への観光情報 提供 ・旅行会社と住民の観光 プログラムをつなぐ観光 客受入 ・旅行代金の受入れ、住 民への配分 ・新しい観光プログラム の開発 旅行会社 旅行会社 旅行会社 個人観光客 個人観光客 図 3-4-2:パイロットプロジェクト開始前の観光の仕組み しかしながら、この仕組みには良い点、課題点の両方がありました。 良い点 ●観光管理委員会の設立により、住民が行う観光サービスと観光客とを繋ぐことができ る。 ●新規で観光サービスを開始したい住民を支援できる。 ●観光収益を住民に分配し、また管理費として使えるようになる。 ●村の観光情報が外部に発信されるようになる。 ●RTGの旅行会社にとっては、より多くの観光ツアーを観光客に提供できることになる。 悪い点 ●コミュニティ観光グループの形成には住民のイニチアチブが必須。住民の観光への参 加意欲が重要となる。 ●管理事務所やコミュニティ観光グループが設立できた後でも、特に資金の受入れや住 民への配分については、十分な配慮と管理が必要。 ③パイロットプロジェクトの計画立案 状況と課題を踏まえて、パイロットプロジェクトでは、表3-4-2の観光のイメージと目標を設 定、必要となる活動を検討しました。 表 3-4-2:タイントアンでのパイロットプロジェクトの枠組み 観光のイメージ 目標とする状況 活 動 1-1. 1-2. 2-1. 2-2. 2-3. 3-1. 3-2. 観光管理委員会の設立、運営体制づくり 住民による観光グループの形成 観光資源調査による観光資源の把握 住民への観光サービスにかかる技術支援(研修等) 観光地図の作成 観光管理委員会、住民、RTG との協力による観光推進 FAM ツアーやスタディツアーの受入 実施期間 2012年6月~2013年6月 実施機関 トゥアティエンフエ省文化スポーツ観光局、Thuy Thanh村人民委員会、RTG、フエ 省旅行会社グループ、フエ観光学校、JICA STEP2 3-5-3-2.タイントアン観光管理委員会の設立と 住民グループの形成 (1)タイントアン観光管理委員会の設立 2012年6月、パイロットプロジェクトの開始直後に、タイントアン橋がある行政区のトゥイタ イン人民委員会の職員4名と住民代表2名の合計6名の「タイントアン観光管理委員会」 のメンバーが決定されました。2012年10月には正式にトゥイタイン人民委員会から、組 織設立とメンバー決定にかかる文書(So: 100/QD-UBND xa Thuy Thanh、2012年10 月22日)が公布されました。 タイントアン観光管理委員会は、パイロットプロジェクトを実施するコアメンバーにもなり、 以降の活動は、タイントアン観光管理委員会が中心となって進められました。 (2)住民による観光グループの形成 住民に対しては、2012年6月~7月にかけて、1150世帯の住民との意見交換会、259 世帯への観光サービスの参加意向を把握するアンケート調査を実施しました。 ①150世帯の住民との意見交換会 農村の人々は、昼間は農作業で忙しいため、住民との会合は、夕方から夜の時間帯で 行われました。住民が村づくりで考える問題、観光への期待などを話し合い、多くの住 民が観光開発を期待している様子が分かりました。 ②59世帯への観光サービスの参加意向を把握するアンケート調査アンケート調査では、食 事サービス、ホームステイ、地場産業実演、農業体験等の観光サービスへの参加意向を把 握することを目的に行いました。結果として多くの世帯が観光への参加を希望し、食事サー ビス、地場産業実演等への積極的な参加を希望する回答が得られました(表 3-4-3)。 農村観光開発の実践例 1.タイントアンの観光開発と促進を行う観光管理委員会と住民グループによる観 光受入の体制が構築される。 2.タイントアンの観光資源を活用した観光商品化が、住民との協力により作成される。 3.観光管理委員会と旅行会社との連携により観光プログラムが実施される。 Chapter 3 「農村を暮らすように旅するタイントアン」 ~農村の人々との交流、農村の空気や雰囲気を五感で感じる観光のスタイル~ 表 3-4-3:アンケート調査結果 *有効回答数59世帯。回答は複数回答 質問項目 参加意向世帯 割合(%) 1.観光への参加意向 58 世帯 98.3% 2.食事サービスへの参加意向 24 世帯 40.6% 3.ガイドサービスへの参加意向 18 世帯 30.5% 4.ホームステイサービスへの参加意向 25 世帯 42.3% 5.地場産業の実演への参加意向 18 世帯 30.5% 6.農業体験への参加意向 24 世帯 40.6% 3世帯 5.1% 7.その他サービスへの参加意向 備 考 ノン笠づくり等 お土産販売等 (3)タイントアン観光管理委員会と住民グループの組織体制 タイントアン観光管理委員会と、観光への参加意向がある住民や住民グループとで、繰 り返し話し合いが行われ、観光商品づくりや観光の受入れにかかる準備が行われてきま した。パイロットプロジェクト開始から1年が経過した2013年6月には、観光管理委員会を 中心に、多くの世帯や住民グループが参加する体制が構築されました。 タイントアンの組織体制 観光管理委員会 (行政+住民) 行政の職員 コミュニティ 委員長 副委員長 委員・ボート担当 ボートサービスグループ(9名) ノン傘サービスグループ(5名) 委員・観光サービス担当 バインテトサービスグループ (2世帯) コミュニティ 委員・食事サービス担当 委員・ローカルガイド担当 食事グループ (女性グループ12名) ローカルガイドグループ(25名) 図 3-4-3:タイントアンの観光管理の組織体制 3-5-3-3. 観光資源を活かした観光商品づくり 住民、観光管理委員会、旅行会社と共に実施した観光資源調査 (2)観光資源を活かした観光商品の企画研修実施 観光資源調査で把握された資源を観光商品として開発するには、研修や少額の機材投 資等により、観光客が楽しめるプログラムに創造する必要があります。以下はタイントア ンで行った研修内容です。 ①ノン笠作り体験サービスのための研修 タイントアンでは複数の世帯がノン笠づくりを営んでおり、観光への参加を希望する世 帯もありました。ノン笠づくりは通常数時間を要しますが、観光サービスとして提供するた めには、短時間でも観光客が楽しめるようなプログラムを考えなければなりません。例え ば、ノン笠の素材であるノン(葉)に熱を加えて伸ばす工程、伸ばしたノンを三角の型枠を 使い、糸で縫い上げていく行程、またはノン笠の中に刺繍等で模様を入れてオリジナル なノン笠を作れるようにする、等の工夫がされています。 またノン笠作りの世帯では、これまでに観光客を迎え入れた経験が無かったため、観光 客への工程の説明、受入のホスピタリティなども、旅行会社のガイドを講師として、研修を 実施しました。また世帯での観光受入に必要なノン笠の材料を入れる籠、観光客が座る ための御座や椅子などの設備を、パイロットプロジェクトにて整備しました。 農村観光開発の実践例 (1)観光資源調査 観光商品作りの第一歩として、観光資源調査を実施しました。観光資源調査では、観光 管理委員会と住民が中心となり、タイントアンの観光資源を、歴史文化、地場産業、観光 サービス等の観点から3グループに分かれて作業しました。作業は、村を散策し、観光資 源の写真を撮影し、観光資源の情報を聞き取り等により把握します。その後、村の地図、 観光資源の写真を用いて、観光資源マップを作成しました。観光資源マップは、3つのテ ーマごとに作成し、最後にグループ同士で質疑応答を行いました。 観光資源調査の結果として、ノン笠づくりなどの地場産業の世帯が多数あること、村を 流れるニューイー川は、農作物の運搬にボートが使われていましたが、観光客向けにも魅 力的である、等の意見が沢山出されました。 なお、タイントアンの観光資源調査には、旅行会社のスタッフも参加し、観光資源が観光 商品として売れる可能性があるかなどのコメントがされました。 Chapter 3 STEP3 旅行会社や観光学校と協力した観光プログラム作りのための研修 ②ボートトリップ体験 タイントアンの農村のほとりにニューイー川が流れ、農作物をボートで運搬する姿もよく見 られました。観光資源調査において、旅行会社から観光客も楽しむことができるとのアイ デアがあり、観光商品として開発するための研修を行いました。講師は、旅行会社のスタ ッフです。ルートの設計、ボート漕ぎのマナー、また安全管理等にかかる講習が行われま した。安全管理については、観光管理委員会により、ライフジャケットが購入され、安全対 策が行われるようになりました。 旅行会社と協力したボートトリップの研修 ③食事サービスのための研修 住民へアンケート調査により、多くの世帯が観光客向けの食事サービスへの参加を希 望して いる ことが分 か り まし た 。 そ し て そ の 多 く が 女 性 連 盟 に 加 盟 する 女 性 でし た 。 そ のため食事サービスのための女性グループを形成し、食事サービスの研修を実施しま した。研修ではベトナム人料理人を講師として、1週間の研修を実施しました。研修内 容は、 一 人 当 た り 1 0 万 ドンの価 格 で 販 売する た めのメ ニュー作 り 、 素 材 選 び、 味 付 け 、 調理方法、盛り 付け等の研修を行いました。また同時にテーブルクロスや食器セットの 設えの仕方等のマナーも学びました。レストランの営業に必要な、テーブルや椅子、食 器は、パイロットプロジェクトが整備しましたが、キッチンは村人民委員会により整備さ れました。 Chapter 3 ④バインテト作り体験のための研修 バインテト(もち米と具材をバナナの葉に包んで茹でた、ちまきのような食べ物)は、タイ ントアンの数世帯で作られ、主に市場で売られていました。観光資源調査を通じて、観 光客がバインテトを作る工程を楽しめると面白いというアイデアが出され、観光客への サービス提供のための研修を実施しました。 研修では、バインテトの伝統的な作り方を基本とし、もち米をバナナの葉に包む工程等 を体験できるようなプログラムを考えました。また手作業で食品を作るため、手洗い場 やタオル等の備品を整備し、清潔な環境で体験サービスが提供できるように準備しま した。 バインテト作り体験のための研修の様子 農村観光開発の実践例 女性グループを対象とした食事サービスにかかる研修 STEP4 3-5-3-4. 観光客受入のための準備 (1)タイントアン観光マップづくり 観光商品づくりで幾つかの観光商品を開発してきましたが、分かりやすく旅行会社や観 光客に伝えるためのツールが必要です。タイントアンでは、農村の歴史の紹介、観光商品 の紹介、農村内の地図、観光管理委員会の連絡先等を記載した観光マップを作成しまし た。観光マップは、観光管理委員会が管理し、旅行会社へのプロモーションや、訪問する 観光客に配布されます。 タイントアン観光マップ Chapter 3 (2)FAMツアーやスタディツアーによる観光受入の練習 タイントアンの管理委員会や住民グループでは、これまで観光客を受け入れたことが ありませんでした。そのため観光客を受け入れる前に、大学のスタディツアーや旅行会 社の視察受入れを行い、実際の観光客の受け入れを想定した実演を行いました。村 全体を案内するガイドや各観光プログラムを担当する世帯や住民グループは、最初は 初めての受入に緊張気味でしたが、徐々に受入れに慣れてきました。また参加者から は、ガイドとしてのホスピタリティや観光プログラム実施上の改善点などが述べられま した。 (3)住民、旅行会社との観光開発の現状と今後の改善に向けた検討会 2013年6月、パイロットプロジェクトの終了にあたり、タイントアン管理委員会、住民グル ープ、そして約15社の旅行会社が集まり、タイントアンの観光開発の現状と今後の改善 に向けたワークショップを実施しました。 住民グループからは、今後の観光受入れについて、パイロットプロジェクトで準備した観 光プログラムだけでなく、新しいプログラムの開発にも取り組みたいといった積極的な 意見がでてきました。 旅行会社グループからは、タイントアンの観光の魅力が述べられましたが、観光客を受 入れていくためには、観光プログラムを沢山増やすことや、それぞれのプログラムの質 や面白さを向上する事、また村から観光情報発信、観光情報センターの必要性等が述 べられました。 検討会では、住民や旅行会社から活発な意見が発言されました 農村観光開発の実践例 ツアーやスタディツアーを受け入れる観光管理委員会のスタッフ (4)観光サービス価格設定、資金受入、観光ツアー予約対応\ タイントアン観光管理委員会では、観光客の受入のために観光サービスの価格を、住民や旅 行会社と相談して設定しました。 対象となるサービスは、遺跡等の見学、ボートトリップ、竹細 工の実演・体験、ノン笠作りの実演・体験、バインテト作りの実演・体験、食事サービスです。 またタイントアン観光管理委員会では、観光客からの収益を、住民に分配する割合 (90%)、管理費として観光管理委員会が徴収する割合(10%)を定め、資金受入の体制を 整えました。 タイントアン観光管理委員会は旅行会社から予約を受け、各住民グループ に連絡をし、観 光サービスを提供する仕組みとなっています。 (5)ツアー設計 タイントアンのパイロットプロジェクトでは、観光資源調査や観光商品開発、観光客受入 準備のプロセスを旅行会社とも相談しながら進めてきました。 タイントアン観光管理委 員会側で観光の受入体制を整えてきましたので、次は、実際に観光ツアーとしての販売 を促進していく段階に入ります。 以下は、旅行会社により設計されたツアープログラムの 例です。 旅行会社はこのツアーの販売促進を行い、集客された場合には、タイントアン観 光管理委員会に観光サービス提供の申し込みを行います。 タントアン橋観光日帰りツアー タントアン橋は、フエ市中心部から東へ約8km、フエ省フオントゥイ郡トゥイタイン (Thuy Thanh)村にある、希少で芸術的な価値がある古い橋です。タントアン橋は、歴史、 文化の価値を持つ文化遺産で、周辺の農村景観も美しいです。橋の周辺に点在する 祠、廟、寺院や田園風景等と合わせて、ベトナムの農村をお楽しみください。 “Ai về cầu ngói Thanh Toàn, Cho em về với một đoàn cho vui” (ひとりより、みんなでいこう、タントアン) ■ツアー行程(7:00-13:30) 時間 プログラム 7:00 フエ市内ご宿泊ホテルかレロイ(Le Loi)通り120番でガイドと 待ち合わせ。タントアンに出発。移動中は広がる田園風景や果 樹園等をお楽しみ下さい。綺麗な空気、爽やかな風、果実や 稲の香りが感じられます。また橋に向かう途中では、村の集会 所や地元の農業、漁業等の撮影も楽しめます。 8:30 タントアン橋に到着し、見学。橋の見学後は、近くの農業博物 館に移動します。農村の暮らしや農具の説明をお聞きくださ い。民謡や詩も楽しめます。 9:00 トンタットトゥエット(Ton That Thuyet)の祠堂見学 トンタットトゥエトはトゥドゥック帝時代の役人で、ニューイー川沿 いに建てられた祠堂は、フエ市の代表的な伝統の建築物です。 10:00 業体験もしくはバインテト作りなど地場産業の体験。地元の住 民の方々とともに農村体験をお楽しみください。 ※バインテト(Banh Tet):バナナの葉でもち米や具材を包んだ ものを茹でた、ちまきのような食べ物。 12:00 タントアン橋近くで昼食。村の女性たちの手作りです。 13:30 朝の待ち合わせ場所に到着。解散。 Chapter 3 (1)パイロットプロジェクトの成果 約1年かけてパイロットプロジェクトを実施してきて様々な成果が生まれてきました。 タイントアン観光管理委員会と住民が中心となり観光の受入体制が徐々に整い、旅行 会社による販売促進が開始されました。 ●観光管理委員会が設立され、住民による観光サービスグループができたこと。 ●行政職員や住民が、生き生きと主体性を持って観光に取り組みようになったこと。 ●遺跡等の見学、ボートトリップ、竹細工の実演・体験、ノン笠作りの実演・体験、バイ ンテト作りの実演・体験、食事サービス、ローカルガイドなどの観光プログラムが開発さ れ、観光客を受入れる状態になったこと。 ●旅行会社からの協力で、ツアーが設計され、集客が開始されたこと。 (2)今後に向けた課題 1年のパイロットプロジェクトを経てタイントアンの農村観光は、旅行会社のみで送客を 行う体制から、観光管理委員会や住民が中心に観光客受入や、新規の観光商品開発 を行う体制に改善されてきました。 しかしながら、まだ観光管理委員会や住民による観光客受入の経験が浅いため、今後 は旅行会社やフエ省文化スポーツ観光局からの継続的な協力が望まれます。その際 には、第2章で示した「STEP6モニタリングとマネージメント」をしっかりと行い、様々な 状況に対処し、必要な改善策を実施していく必要があります。 農村観光開発の実践例 3-5-4. パイロットプロジェクトの成果と タイントアンの農村観光の今後 3-5-5. タイントアンの観光開発を振り返って Mr. Tran Viet Luc トゥアティエンフエ省文化スポー ツ観光局職員 パイロットプロジェクトのリーダで、観光商品開発が専門 タントアンを農村観光開発の対象に選んだのは、次の2つの理由から です。まず、タントアンはベトナムの典型的な農村の要素が揃ってい ます。田園風景、歴史・文化遺跡等、特にベトナムに3つしかない屋根 付きの橋の一つであるタイントアン橋があります。また、タントアンは 地場産業や手工芸の産業があり、農村生活が豊富な地域です。二つ 目の理由は、観光開発しなくても、既に毎日観光客が何百人もタント アンを訪問していました。これは、フエ中心部から8km程と恵まれた 立地にあり、様々な交通手段でアクセスできるからです。 約一年かけて観光開発プロジェクトを行い、持続的な観光のための 体制や基盤を作ることができました。例えば、行政と住民の意識が前 向きに変化し、観光開発にかかる関係者間の意識が一丸となってき ました。更に、一番の大きな成果は、観光の形態が変化したことです。 以前は、旅行会社と限られた住民のみで観光活動が行われてきまし たが、現在はフエ観光局の専門的なサポートのもと、タントアンの観 光資源が再発見され、観光サービスが開発され、観光管理委員会も 設立されました。特に観光管理委員会は、旅行会社と村との橋渡しと なり、観光受入れ等にかかる業務を担当することになりました。 タイントアン観光管理委員会と地域住民が努力しているにも関わら ず、タントアン観光にはまだ改善の余地が沢山あります。そのため、今 後もフエ観光局は継続にタイントアンの観光をフォローし、人材育成 や技術支援等でサポートしていきます。またフエ観光局は、タントアン と全国の旅行会社を繋げる橋渡しとなり、他機関も巻き込んだ支援 を続けていきます。 タントアンでの観光開発は、住民の生計向上にも繋がるアプローチ で、近い将来、タントアンの農村観光は、フエ省の参考モデルになっ ていくと考えてい ます。 1.観光管理委員会の設立経緯を教えてください。 観光資源調査を実施し、観光客に提供できるサービスとして開発した 後、旅 行会社との懸け橋となる役割を持つ観光管理委員会の設立 が必要になりまし た。タントアン村の観光活動をリードし、責任をとる 委員会となるために、メ ンバーには、村の行政や婦人会の代表、村長 等が入りました。 Mr. Nguyen Man Hoa タイントアン観光管理委員会委 員長 住民と協力した観光開発に取り 組む 2.観光管理委員会は、どのように観光開発をサポートしてきましたか。 観光資源調査を実施した後、アンケート等で住民の観光への参加意 欲を調査しました。それから、観光に参加したい住民に対して、観光専 門家と協力し、観光サービスの提供の方法や受入れのマナー等の研 修を行いました。 また観光サービスを提供する世帯における環境を確認し、十分に受 入体制が整っていない世帯に対してはできる限りの整備を行い、住 民をサポートしました。現在、まだ改善点はありますが、タントアンは十 分に観光客を受け入れられる体制になってきました。観光管理委員 会は、住民の意識向上を促し、住民が主体になり、自立して、タントア ン村の農村観光の開発が進むようにこれか らも努力していきます。 1. どうして観光に参加しましたか。 私たちの家族が作るバインテトを多くの人、特に観光客に知って欲し いと思いました。バインテト作りを実演し、観光客に体験してもらうと、 ベトナムの伝統的な 食文化、ベトナムの農民がつくった農産物を紹介 することができると考えたからで す。 2. 観光からどんな利益が得られますか。 まずは観光客を受入れることは私たちの家族の誇りです。また収入面 でも利益があります。まだ少ないですが、観光サービスを観光客に提 供することで、家族の収入が増えてきています。 Ms. Tran Thi Trang バインテト作り体験を提供する 家族 農村観光開発の実践例 2.農村観光開発について、旅行会社が果たす役割はどのようなものだ と思いますか。 お互いに利益があるようにすべきだと考えます。旅行会社はコミュニテ ィへのアドバイザーとしての役割を果たします。さらに、旅行会社はタン トアンツアーを組む前に、ターゲットの客層を分析し、誰がタントアンを 観光に組み込む意思決定者であるかなどを把握します。そのことで、 よりマーケット性のある観光商品開発が可能となると考え ます。 Chapter 3 Mr. Tran Quang Hao フエツーリスト代表 農村部の観光にも力を入れる 1.フエツーリストはタントアン観光開発にどのような取り組みをしまし たか。 フエツーリストは、管理委員会とタントアン住民と一緒に、村の観光資 源調査を実施し、マーケット性のある観光資源を探し出し、観光商品 作りに取り組みました。タントアン観光に関連するセミナーでは、現在 の観光客のニーズを共有し、住民による受入れ強化のためのサポート を行いました。 タントアン観光のプロモーションとして、フエツーリストはタントアンツ アーを企画し、タントアン観光管理委員会に受入を担ってもらい、送客 を開始しました。またタン トアン観光の魅力について、弊社の重要な パートナーであるアナマンダラリゾートやラグナリゾート等に紹介しまし た。現在はタントアンのツアーを弊社の通常プログラム として扱うため にパートナーと協議しているところです。なおフエツーリストの全ての印 刷物に、タントアン観光管理委員会の情報を掲載しています。 1. どうして観光ボートのグループに入りましたか。 村を愛しているからです。そしてニューイー川の美しさを観光客に見て もらいたいと考えました。タントアンを訪問してくれる観光客にもっと満 足感を味わってほしいと思います。観光客のニーズを応えるためにもっ と勉強しようと思ってい ます。 2.タントアン村の観光開発に何を期待しますか。 観光管理委員会にもっと頑張ってもらい、村の観光を管理して欲しい と思います。そうなるとより多くの観光客がタントアンを訪れ、村に活気 を与えてくれます。また私たちの収入も増加すると思います。  Mr. Tran Duy Chien ボートリップグループの代表 実践例5 ティエンザン省 ドンホアヒエップ村 メコンのほとりの 自然・文化環境 を 活 か し た 農村観光地づくり Ha Noi Da Nang Hoang Sa Ho Chi Minh Dong Hoa Hiep Phu Quoc Truong Sa 3-6. 実践例5:ティエンザン省ドンホアヒエップ村 3-6-1. ドンホアヒエップ村の概要 ティエンザン省カイベイ市ドンホアヒエップ(Dong Hoa Hiep)村は、ホーチミンより約100 キロ、省都ミトー市より西方約30キロに位置する人口約14,500人(世帯数3,621)が暮ら す村です。ドンホアヒエップ村はミトー川沿いに横に伸びる地形で、フランス統治時代の コロニアル建築が残り、周囲は大規模な果樹園に囲まれた自然景観が美しい集落です。 家屋の広大な敷地は果樹園として利用されており、リュウガンやマンゴー等の南国フルー ツの栽培が盛んです。 3-6-2.実践例のポイント ドンホアヒエップ村は、観光開発が順序よく計画的に進められたのではなく、様々な要 因から段階的に開発が進んできました。本ケースでは、開発の段階を3つの時期に分類 し、観光開発の状況を整理します。特に、2011年から実施した「ヘリテージツーリズムに よる持続的な地域振興プロジェクト」に基づき、ドンホアヒエップ村の文化遺産や自然 環境の価値を高める観光開発の方法について紹介します。 Chapter 3 カイベイ郡ドンホアヒエップ村の観光は1990年以降、約20年間かけて発展してきまし た。発展の過程は、以下の3つの時期に分類されます。 (1)カイベイ郡への観光訪問の開始(1990年代~2000年代前半) 1990年代にティエンザン省ミトーを訪問するメコンクルーズの販売が開始され、ホーチ ミンを訪れる観光客の多くがミトーのメコンクルーズに参加するようになりました。2000 年代前半になると、ミトーを訪問するメコンクルーズ観光の一部が、カイベイ郡の水上 マーケットや洋館を訪れるツアーが組み込まれるようになりました。メコンの自然環境と 洋館の文化財を訪問する観光の萌芽期です。この時期は、主に旅行会社が主導で観 光ツアーを形成しました。 (2)ドンホアヒエップ村の伝統家屋を活用した観光の開始(2000年代後半) 2000年に昭和女子大学がティエンザン省全体の民家調査を実施し、調査結果を踏ま えて、JICAと昭和女子大学の開発パートナー事業「木造民家文化財保存修復技術移 転プロジェクト」の一環として、カイベイ郡ドンホアヒエップ村の伝統民家キエット(Kiet) 邸を選定し、2003年~2004年に修復工事が行われました。キエット邸の文化財保存事 業は、ユネスコより高く評価され、2004年にユネスコアジア太平洋州文化財保存賞を 受賞しました。 その後、キエット邸では、2006年より伝統民家を活用した観光客への昼食サービスを 開始し、2008年以降になると旅行会社による販売も促進され、キエット邸の昼食サー ビスを利用する観光ツアーが急増しました。昼食サービスでは、伝統的家屋の雰囲気 の中で、エレファントフィッシュ等のメコン地域の伝統的な食事サービスが受けられるた め、主に外国人観光客に人気になりました。 同じ時期、2005年に洋館のバードック(Ba Duc)邸でのホームステイサービスが開始さ れました。伝統家屋の観光活用とともに住民が観光に参加するようになり、観光客はこ の地域の暮らしや食文化に触れることができるようになりました。 農村観光開発の実践例 3-6-3. ドンホアヒエップ村の観光開発のプロセスと手法 3-6-3-1. ドンホアヒエップの観光発展の過程 キエット邸修復前 キエット邸修復後 外国人に人気のキ エット邸での食事 サービス ユネスコアジア太平洋州文化財保存賞 バードック邸 バードゥック邸のホームステイ (3)点から面的な観光の拡大へ(2010 年~) 水上マーケットや果樹園、そしてキエット邸やバードック邸などの伝統家屋の見学や観光 サービスにより、ドンホアヒエップ村を訪問する観光客は徐々に増加し、2012年には年間 6万人程に達しました。しかしながら、観光客の訪問先は限定されており、一部の住民の みが観光から利益を得ている構造となっていました。 そのため、ドンホアヒエップ村を訪問している観光客数を更に増加させることともに、ドン ホアヒエップ村内で観光に参加する世帯を増加させ、観光の裨益が村全体に広がるた めの仕掛けが必要となってきました。 Chapter 3 3-6-3-2. 観光開発プロジェクトの計画 この状況を踏まえて、2011年4月から3年間の計画で、ティエンザン省文化スポーツ観光 局、JICA、昭和女子大学にて「ヘリテージツーリズムによる持続的な地域振興プロジェクト」 の一環としてティエンザン省カイベイ郡ドンホアヒエップ村を対象として、表 3-3-1のプロジ ェクトを実施しました。 表3-3-1:「ヘリテージツーリズムによる持続的な地域振興プロジェクト」における ドンホアヒエップ村の観光開発計画 目指すべき成果 ドンホアヒエプ村において、伝統果樹プランテーション環境を保存再生整備 し、水上観光プログラムが策定・実施される。 活動 1)ドンホアヒエプ村の村づくりのためにプロジェクト管理委員会と住民代表か らなる観 光参加グループ(以下、村組織)を形成する 2)村組織が中心となり、地域観光資源(自然、文化、歴史等)の評価と保存・ 観光活用のために、測量、地図作成、計画作りを行う 3)村組織が中心となり、民家レストラン、ホームステイ、果樹加工等を含む観 光プログラムを形成する 4)村組織とプロジェクト(日側)により、観光インフラ(桟橋等)の整備を行う 5)プロジェクト(日側)が、観光サービス(民家レストラン、ホームステイ、土産物 販売等)向上にかかる助言を行う 6)村組織とプロジェクト(日側)が協力し、観光ツール(観光マップ、パンフレッ ト等)を開発する 7)関係者全員で、地元フェスティバルにて、ドンホアヒエップの観光プログラ ムを広報す る 8)村組織が中心となり民間セクターとの観光マーケティング、プロモーション を促進する なお、上記プロジェクトは主にソフト支援と小規模なインフラ整備が中心であるため、加 えて、JICAと観光開発研究所にて、観光インフラ整備の効果を実証するパイロット事業と して、観光客受入環境と村内のアクセスを向上するための整備を併せて計画しました(表 3-3-2)。これにより、農村全体への観光動線の拡大を図るものです。 農村観光開発の実践例 STEP1 表 3-3-2:アクセス向上のためのインフラ整備計画 項 目 内 容 観光客向け遊歩道の拡幅 ドンホアヒエップ村を東西に流れるバーホップ運河の 両岸の遊歩道の拡幅(1.5mから3.0mへの拡幅) 観光用の橋の整備 観光客がバーホップ運河を渡るための橋の建設 船着場の整備 観光船のアクセスを向上するためのドンホアヒエップ村 の船着場の整備 船着き場上の休憩所整備 観光客の受け入れのための休憩スペースの整備 STEP2 3-6-3-3. 観光開発の組織体制 ドンホアヒエップ村の観光開発は、カイベイ郡文化情報室が責任機関となり、ドンホアヒ エップ村人民委員会と協力して進められています。また「ヘリテージツーリズムによる持続 的な地域振興プロジェクト」では、ティエンザン省文化スポーツ観光局、カイベイ郡文化 情報室、ドンホアヒエップ村人民委員会がPUM(Project Management Unit)のメンバー となり、各活動を担当しました。 住民は、世帯ごとに観光開発に関与し始めています。これはドンホアヒエップ村の各世帯 は広大な敷地をもち、初期段階からグループ化するよりも世帯ごとに観光サービスを開 始する方が、観光に参加しやすいという状況を持っていたためです。 なお、ドンホアヒエップ村では、2013年現在、国家文化財への登録が検討されており、も し国家文化財に登録されると、ハノイ市ドンラム村やトゥアティエンフエ省フクティック村と 同様に遺跡管理事務所が設立されることになります。 STEP3 3-6-3-4. 観光商品の開発 (1)観光資源調査 2012年4月、カイベイ郡ドンホアヒエップ村での観光開発を本格化するに当たり、プロジ ェクトスタッフが観光資源調査を行いました。観光資源調査では、バーホップ運河沿い に点在する伝統民家に加えて、ミルクペーパーやバナナペーパー、バインテーやブン作り といった地場産業の工房が点在していることが分かりました。 (2)住民の観光サービス起業支援 プロジェクトスタッフにて、観光への参加を希望する住民との協議や、旅行会社の意向な ども調整し、住民による観光業の開始を支援してきました。表3-3-3は、観光への参加を 希望した世帯への協力の概要です。 Chapter 3 対象世帯 リエム(Liem)邸 協力の概要 ・リエム邸は洋館として建設された建物で、内部空 間も洋風にデザインされ、ドンホアヒエップ村の伝統 的民家で一番大きな空間を有する。各種イベント会 場に使えるような助言を行った。 ・特に、食事サービス提供のための研修実施し、レス トラン、パーティ、土産者屋等の場となるような助言 や協力を行った。 トン(Tong)邸 ・トン邸は、バーホップ運河の北側に位置し、北側で の観光拠点としての期待がもたれた。 ・トン邸には、伝統家屋の公開、果物とお茶を提供す るサービス等への助言を行い、庭園を観光スペース として活用するためのパラソルの整備を行った。 トン(Tong)邸 ・ムオイ邸は、キエット邸とリエム邸の間に位置する 好立地条件であるため、伝統家屋の公開や、果物 やお茶を提供するカフェサービスとしての起業にむ けた助言をおこなった。 ・カフェ空間づくりのためのパラソルを整備した。 ムオイ(Muoi)邸 ・ボー邸は、2011年よりホームステイのサービスを 開始。サービス向上のための助言を行った。 ・果物やお茶を提供する空間づくりのためのパラソ ルを整備した。 ボー(Vo)邸 ・ソット邸はバーホップ運河より2キロほど離れてい るが、文化財価値はティエンザン省内でも最上位に ランクされる建物。 ・ソット邸では、伝統家屋公開やカフェサービスへの 助言を行った。 ソット(Xoat)邸 農村観光開発の実践例 表 3-3-3:観光業起業のための協力 食事サービスの向上にかかる研修の様子 (3)食事研修 食事サービスは、農村観光において最も重要なサービスの一つです。ドンホアヒエップ村 では、2世帯を対象として食事サービスの質を向上するための研修を実施してきました。 研修では、地域の料理方法やメニューを、観光客向けにアレンジする方法で行い、日本人 料理人による助言や調理方法、盛り付けなどにかかる指導が行われました。南国フルー ツを素揚げたチップス等、工夫を凝らしたメニューも誕生しました。 STEP4 3-6-3-4. インフラ整備による観光ネットワークの拡大 (1) 橋、船着き場、道路の拡幅 プロジェクトを通じてしずつ観光商品が多様化されてきましたが、観光客の利便性を高 めるためには、アクセスの改善も求められます。カイベイとドンホアヒエップ村では、水上 交通が観光の目玉の一つです。大型船が発着するカイベイ船着き場から、ドンホアヒエッ プ村への水上の動線を広げるために、JICAではドンホアヒエップ船着き場、遊歩道、橋、 桟橋の整備を行いました。 a)船着き場と休憩所 インフラ整備前のアクセスは、カイベイ船着き場からドンホアヒエップ村まで大型船で移 動、ドンホアヒエップ村のバーホップ運河の入り口にて、大型船から中・小型船に乗り換え るというオペレーションが行われていました。水上での船の乗り換えが必要なため、事故 の危険性もあります。 この状況を改善するために、ドンホアヒエップ村における公共の船着き場と休憩所を整 備しました。船着き場の整備により、船着き場にて大型船から中・小型船への乗り換えが 可能になり、ドンホアヒエップ村のバーホップ運河への水上観光のゲートができたことに なります。 Chapter 3 農村観光開発の実践例 整備前(観光客は水上で船の乗り換え) 整備前の敷地 整備後 b)遊歩道拡幅 バーホップ運河沿いの歩道は、幅が1.0~1.5mほどで、地元住民と観光客が行き交うには 狭く、バイクと歩行者(観光客)の接触事故の危険性もありました。 そこで、バーホップ運河沿いの歩道を観光客が安心してゆっくりと歩けるよう道幅を3.0m に拡幅する事業を実施しました。これにより、観光拠点となっているキエット邸と船着き場と を移動する観光客の動線が改善されました。また遊歩道周辺に住む住民の観光への参加 意欲が上がり、お土産屋を開始するなどの波及効果も出てきています。拡幅した遊歩道を 楽しむサイクリングツアー等も増えてきています。 道路整備前 道路拡幅後 橋整備前 橋整備後 c)観光用の橋の整備 観光客がバーホップ運河を渡るためには、数キロ毎に設置された橋を利用するしかなく、 不便な状況でした。バーホップ運河の南側にあるキエット邸を訪問する観光客は多数い るものの、北側に移動することは殆どありませんでした。他方で、運河の北側には、伝統家 屋や観光に参加を希望する世帯が多数ありました。 そこで、観光拠点となっているキエット邸近くに、バーホップ運河を渡るための観光客向 けの橋を整備しました。橋の整備により、観光客の動線がバーホップ運河の南北に広が り、ドンホアヒエップ村の散策を楽しめるようになり、土産売りなどの観光に新規参加を希 望する世帯も増加してきています。 世帯への観光アクセスを向上させる桟橋の整備 d)小舟用桟橋の整備 バーホップ運河沿いの観光拠点は、キエット邸のみでしたが、多くの世帯が観光への参 加意欲を持っていました。これらの世帯の観光への参加を促進するために、家屋の前で 小舟の乗り降を可能にするための桟橋をプロジェクトにて整備しました。具体的には、表 3-3-3で観光業起業のための協力を実施した、リエム邸、トン邸の2世帯への桟橋の整備 です。これにより、a)のドンホアヒエップ村船着き場から、バーホップ運河沿いの世帯を訪 問するための水上の観光ネットワークが構築されました。更に、水上観光と、b)の遊歩道、 c)の橋と組み合わせて、周辺地域への観光客のアクセスが拡大されました。 Chapter 3 図 3-3-1:カイベイ・ドンホアヒエップ村の水上ネットワークと観光動線 農村観光開発の実践例 e)旅行会社との提携による水上交通の経営 実用性のある水上交通を実現するには、船の運行を行う旅行会社との連携が求められ ました。カイベイとドンホアヒエップ村の水上観光では、観光客向けの中型船を運航する メコンクイーン旅行会社と協議が成立し、同社が中型船と小舟運行の経営を行うことに なしました。旅行会社の協力により、キエット邸、リエム邸、トン邸などを訪問するバーホッ プ運河の水上交通を使った観光システムが確立されました。 メコンクイーンの観光サービス 景観コンテストにむけて整備された植栽やフェンス (2)景観づくりのためのフェンスコンテスト 遊歩道や橋などの交通網が整備されることでアクセスや利便性は向上しましたが、遊歩道 沿いには草花もなく、錆びた金属フェンス等が目立ち、観光客が歩く景観への配慮が十分 にされているとは言えない状況でした。 かかる状況を改善するために、プロジェクトではバーホップ運河の約500m両岸の31件の 家屋を対象とした「フェンスコンテスト」を実施し、住民への景観への意識啓発を行いまし た。 フェンスコンテストは2回に分けて行われ、第1回フェンスコンテストでは、景観の美しさを競 うコンテスト、第2回では、維持管理方法を競う方式で行われました。 第1回の景観コンテストは、竹材や木材で柵を作り草花を這わせる工夫、既存の門や塀を 活かして草花で装飾する工夫、また金属フェンスがある場合には草花で隠すなどの工夫 が見られました。コンテストの最後に、ランドスケープデザイン等を専門にする建築士や大 学教授等の外部審査員により審査が行われ、上位者が表彰されました。 第2回の維持管理コンテストは、第1回のフェンスの状態を維持管理・発展させた世帯を評 価する審査基準を設けて実施しました。なお表彰については、全ての世帯に良い点や改善 点をフィードバックする必要性があることから、参加した全ての世帯に対して、「維持管理 賞」、「地域貢献賞」、「竹材木フェンス賞」、「草木フェンス賞」などの賞を授与しました。これ により参加した全ての住民が、コンテストに満足し、今後の景観づくりや維持管理に向けた モチベーションが向上されました。 食事サービスの向上にかかる研修の様子景観コンテスト審査と表彰の様子 Chapter 3 (4)案内板 ドンホアヒエップ村では、観光サービスを行う世帯が広域に点在しています。そのため、 遊歩道上の数か所に、行先の名称と距離を示した案内板を設置しています。案内板は、 周囲の景観にあうように木目調の色でデザインされました。 STEP5 3-6-3-5. プロモーション (1) 観光マップ、カタログ作成 「ヘリテージツリズムによる持続的な地域振興プロジェクト」の取り組みを通じて、住民に よる観光サービスの起業支援、インフラ整備による水上運行ネットワークの改善、景観コ ンテストによる緑豊かな景観づくり、案内版設置による利便性の向上などの成果がでて きました。 併せて、ドンホアヒエップ村の観光の魅力を外部に発信していくためには、宣伝ツールも 必要です。「ヘリテージツリズムによる持続的な地域振興プロジェクト」では、ドンホアヒエ ップ村のカラー紹介冊子、観光マップを作成し、関連行政機関や旅行会社等へ情報発 信しました。 農村観光開発の実践例 村内に設置された観光案内版 (2) 旅行会社向け FAM ツアー実施 プロジェクトの中間期を迎えた2013年4月にカイベイ郡人民委員会が主催するFAMツア ーが実施されました。主な参加者として、旅行会社8社、メディア2社が参加しました。 「伝統民家ツアー」と題して、既に観光商品化されていたキエット邸、バードゥック邸以外 の家屋を活用した新規ツアープログラムが紹介されました。プログラムは、バーホップ運 河を小舟で出発し、新規商品としてのムオイ邸、リエム邸でのお茶と果物のサービス、トン 邸での伝統お菓子とお茶のサービス、ソット邸の見学と昼食サービスのプログラムを視察 してもらい、旅行会社からのツアー化に向けた課題などを話してもらいました。 結果、観光客を受入れるためには、それぞれの場所において観光サービスの質を向上す ること、文化財住宅の掃除や手入れ(シロアリ対策等)をしっかりすること、男女用のトイレ が必要であること、水上アクセスのための各世帯への船着き場(桟橋)の整備が求められ ること、などの課題点があがり、今後解決に向けて対応していくこととなりました。 FAMツアーの様子 (3)カイベイ・ドンホアヒエップ村観光祭開催 2013年8月20日~21日にかけて、カイベイ郡主催、JICAと昭和女子大学の共催による「 カイベイ・ドンホアヒエップ村観光祭」が開催されました。ドンホアヒエップ村において観 光をテーマにした祭を実施するのはこれが初めてでした。観光祭では、食事ワークショッ プ、土産コンテスト、果物装飾コンテスト等の観光開発関連イベント他、運河での小舟レ ースや水上ステージ、灯篭流し等が行われました。 バーホップ運河沿いには多くの住民が集まり、村の観光祭を祝いました。また多くのメデ ィアも参加し、テレビや新聞等で、カイベイ・ドンホアヒエップの観光が広報されました。 Chapter 3 農村観光開発の実践例 カイベイ・ドンホアヒエップ村観 光祭のポスター (4)日系旅行会社への視察ツアーの実施 カイベイ・ドンホアヒエップ村観光祭に併せて、日系旅行会社を招待し、観光商品開発 のための視察ツアーを実施しました。視察ツアー実施の目的は、日本の旅行市場にはカ イベイは全く知られていなかったため、認知度をアップするためです。 日系旅行会社からは、カイベイ・ドンホアヒエップ村は、メコン河ほとりの生活や文化が 魅力的で、また伝統家屋が点在することから、観光素材として高い評価を受けました。 他方で、トイレ等の受入体制の整備、村を案内するローカルガイド育成等の課題につい て指摘もありました。今後日系旅行会社では、これまでの日本人向けホーチミン-ミトー のツアーに加えて、カイベイ・ドンホアヒエップ村を含めた商品企画に取り組むことにな りました。 カイベイ・ドンホア ヒエップ村観光祭 で行われた果物 装飾コンテスト 3-6-4. プロジェクトの成果とドンホアヒエップの 農村観光の今後 (1)プロジェクトの成果 カイベイ・ドンホアヒエップ村でのプロジェクトの実施を通じて、観光行政の能力向上、観光 に従事する世帯のサービス提供にかかる技術向上、旅行会社との提携促進などが行われ ました。プロジェクト開始前に目指した「ドンホアヒエプ村において、伝統果樹プランテーショ ン環境を保存再生整備し、水上観光プログラムが策定・実施される」については、景観コン テスト等を通じて自然環境が改善され、またインフラ整備を通じて水上観光の交通が整備 されるとともに、伝統家屋を活かした観光サービスも多数開発され、水上観光プログラムと してまとまり、一定の成果が発現されました。 (2)今後に向けた課題 水上観光プログラムに更に磨きをかけるためには、メコン河と伝統家屋を売りにしたプロモ ーションの強化、ローカルガイド育成や衛生トイレの設置などによる受入体制の向上等が 求められます。加えて、村を訪れる観光客数の把握、観光客の満足度の調査等の定期的 なモニタリングも求められてきます。 なお、カイベイとドンホアヒエップ村を取り巻く周辺地域の開発は激化しています。2012年 にカイベイに 2 つのリゾートホテルが開業し、大型の庭園をもつレストランもオープン しま した。またホーチミンとカントーを結ぶ高級船ホテルなどの観光ツアーも販売され始めてい ます。今後、カイベイとドンホアヒエップ村では、リゾートホテルとのパッケージ化によるツア ーの販売、他のメコン地域の観光ツアーとの差別化による競争力強化等が求められてきま す。その際には、メコン河のほとりの自然環境と洋館を含む伝統家屋というカイベイ・ドンホ アヒエップ村にしかない特徴をどのように売り出していくかが鍵になる と考えられます。 メコンロッジリゾート メコンリバーサイドリゾート Mr. Nguyen Tan Phong ティエンザン省文化スポーツ観光 局副局長 ティエンザン省の観光開発の責 任者 2.ティエンザン省文化スポーツ観光局は、ドンホアヒエップ村の観光 開発について、地元行政や住民をどのようにサポートして きましたか。 ティエンザン省文化スポーツ観光局では、ここ数年間のカイベイ地域 の観光発展に合わせて、①観光活動に参加する世帯を対象にした観 光サービスの提供にかかる技術向上のための研修、②観光村として 景観整備事業、③観光への意識向上のためのセミナーの開催、④住 民の観光への参加の促進、等に取り組んできました。更にJICAや他の 行政機関と協力し、観光振興のためのインフラを整備しました。結果 として、ドンホアヒエップ村船着場、遊歩道、観光客用の橋の整備など が進み、他援助機関によるカイベイ郡の船着場や観光情報センター と連携した、ドンホアヒエップ村への観光アクセスが向上しました。 ドンホアヒエップ村人民委員会は、観光開発をするためにどのような 取り組みをしていますか。 ドンホアヒエップ村の観光が成長することで、村人の意識改善や生 計向上が進むと認識しています。関連する行政機関とともに以下の 事項に取り組んでいます。 1.観光開発への住民の参加を促進し、サポートする。 2.伝統民家の所有者に対しては、建物を保存し、価値を向上するよ うに意識啓発する。 3.観光開発に協力する国内外の機関の機関と協力し、目標達成の ために力を合わせる。 Mr. Duong Van Phuong ドンホアヒエップ村人民委員会副 委員長 ドンホアヒエップ村観光開発に積 極的に取り組む 農村観光開発の実践例 1.ドンホアヒエップ村の観光開発の経緯を教えてください。 ティエンザン省では、1996年から伝統文化や古民家、果樹園、水 上マーケット等の文化や生活に焦点をあてた観光開発を始めまし た。2003年に、南部の伝統的な建築様式を持つ築150年以上のキエ ット邸がJICAの協力により修復され、ドンホアヒエップ村にユニークな 観光拠点ができました。現在では、キエット家の伝統建築の見学を中 心に、ドンホアヒエップ村を訪問する観光客は6万人程まで増えてき ています。 Chapter 3 3-6-5. ドンホアヒエップ村の観光開発を振り返って 1.観光からどのような恩恵を受けていますか。 私の家族では伝統家屋でレストランを経営しており、様々な恩恵を受 けています。まず観光による収入は家族を豊かにしています。そして、 レストランでは、村の住民の雇用を創出しています。また自分の家を 様々な人に見てもらうことができ、誇りに感じて います。 Ms. Le Thi Chinh キエット邸の家主。 ドンホアヒエップ村で観光客が一 番集まるレストラン 2.地元行政からどのような協力を得ていますか。 地元の行政は私が観光のレストランを開業した時からずっとサポート してくれています。開業当初は、経営の手続きにかかる案内をしてもら いました。現在は地域の治安を守ってもらっています。また、村全体の 観光開発にかかる私たちの家族からの提案にも応援してもらっていま す。伝統家屋は私たちの最も貴重な財産ですので、伝統家屋の保存 の面も今後ともサポートして欲しいと思っています。また私たちの家だ けでなく、他の伝統家屋や村全体の景観整備に力を入れて取り組ん で欲しく、ドンホアヒエップ村が観光村として発展し、多くの観光客に 訪問して欲しいと願っています。 1. 観光業を開始した理由を教えてください。 観光の経営は、収入だけでなく家族に喜びを与えてくれます。 例えば、観光客に伝統家建築を説明する時、ベトナムの歴史的な背 景や、文化、習慣、食べ物のこと等も説明できます。観光には沢山の 楽しみがあるため、観光客を受け入れるホームステイサービスを開始 しました。 Mr. Phan Van Duc Ba Duc ホームステイのオーナー ドンホアヒエップ村の最も綺麗な 伝統家屋の一つ 2. 観光業を開始して家族の生活は変化しましたか。 以前は他の家族と同じでしたが、観光業を開始してからスキル向上 のための研修に参加し、観光サービスを提供する者として自覚が芽 生え、生活習慣も少しずつ変わってきました。また、観光収益により、 私たちの生活向上だけでなく、周辺住民にも利益がるように、道路の 拡幅整備や景観の整備に取り組んでいます。 観光開発に何を期待していますか。 観光によるドンホアヒエップ村の変化は、私達にとって非常に喜ばし いことです。観光客向けのレストランの開業のために資金や労力を沢 山投入したため、多くの観光客に来て欲しいと願っています。村の行 政や関係機関にドンホアヒエップ村の観光を宣伝し、観光の魅力を高 めて欲しいと思います。 Ms. Huynh Thi Thanh Truc 観光レストランを開業したばかり のオーナー 実践例6 クァンナム省 ナムザン郡 少 数 民 族 (カトゥー族)地域 活性化のための 観 光 開 発 事 業 地図1:クァンナム省ナムザン郡 ナムザン郡 首都ハノイ ダナン クァンナム省 クァンナム省= 3-7-1. はじめに ベトナム国= ホーチミン ベトナム中部クァンナム省の西部山岳地に位置するナムザン郡。2012年より、ナムザン郡 人民委員会と国際NGO(公益財団法人国際開発救援財団(FIDR:ファイダー)は協働の下、 「少数民族地域活性化のための観光開発事業」を開始しました。 本事業は、ナムザン郡の人口約8割を占める「少数民族カトゥー族」の人々が主導・自律的 に、伝統の価値、文化、伝統、経済利益といった地域の利益を守り、促進するために、村や社 など地域住民の手によって運営される「地域主導型観光開発(コミュニティー・ベースド・ツ ーリズム)」の確立を目指しています。当該地域の多様な資源を最大限に活用するために、 主に「宝さがし」と呼ばれる手法を取り入れた観光開発を進めています。 この事業が推進する「少数民族カトゥー族訪問ツアー」の大きな特徴として、個人々が運 営・受入を行うツアーではなく、できるだけ多くの地域住民を巻き込み、地域が一体となっ て、お客様をお迎えする「地域一体型ツアー」を促進していることです。例えば、1回のツア ーでは直接・間接的に平均約180~200世帯の人々が関わります。そのため、人々の通常生 活を維持しつつ、効率性と地域保全の観点から、6人以上のグループのみお受けできるツ アーとなっています。ベトナム国内においては、このようなツアーの先駆的事例は数少なく、 小さな試行を繰り返しながら改善を繰り返し、事業関係者との入念な検討、協議および合 意形成といったプロセスが欠かせません。 現在、試行的に実施しているモニターツアーでは、2013年10月末現在、23組のツアーが実 施され、約300人以上の主に外国人(日本人、フランス人、オーストラリア人等)がツアーに 参加し、「少数民族 カトゥー族」の人々との交流や伝統文化を楽しんでくださいました。 本事業は開始してから約1年半という事業初動期であることから、今回は主に事業背景・ 経緯や初動期としての活動などを中心にご紹介させていただきます。 写真2:FIDRと共に歩んできたナムザン郡 タビン社ザラ村の織物女性たち 写真3:ザラ村の伝統織物を活用した手工芸品 Chapter 3 ナムザン郡と国際開発救援財団(FIDR)との関わりは、2001年まで遡ります。観光開発事 業を行うまでに、FIDRはナムザン郡において過去に2つの事業を実施しており、観光開発 事業は、3つ目の事業 になります。 まず一つ目の事業は、2000年~2007年まで実施した「ナムザン郡地域総合開発事業で す。ここでは負の連鎖的な現象として、表面化し、住民が認識している貧困、栄養失調、 教育の課題などの各問題に取り組み、稲作や野菜などの農業技術研修、子どもや母親 を対象にした栄養改善活動、家畜の飼育を通じた収入向上、識字教室の開催など、様 々な活動を行ってきました。この地域総合開発事業の活動のうち、収入向上の一環と して行っていた、カトゥー族の伝統織物を活用した商品製作やその販売促進、組織運営 等の取り組みを、さらに発展させたのが2008年度から2011年度まで実施した「少数民 族手工芸支援事業」です。織物グループ結成から約10年の試行錯誤の取り組みを経 て、2011年、カトゥーの織物グループはクァンナム省で初めて、ベトナム全国でも数少な い「少数民族による協同組合」となり、またこの村は、クァンナム省が認定する「伝統手工 芸村」として登録されました。 こうした評判が広まり、「製作現場を見学したい」、「織場を訪問して直接購入したい」という 人々がベトナム国内のみならず海外からも訪れるようになりました。少数民族としての特別 な文化を持つことが、世間の中で差別化となり、自分達の誇りや自身、アイデンティティーと して見についていく、という経験を、グループのメンバーである織り手の女性達だけではな く、地域全体が目の当たりにしていきました。カトゥー織に関心を持った外部の人々が、はる ばる山奥のこの女性グループを見学しに来るようになったことは、長年山深い村で暮らして いたカトゥー族にとっては驚きであり、喜びでもありました。そして地域住民やナムザン郡は、 「織物だけでなく、他にもカトゥー族にはもっといろいろな自慢できる品物がある」「自分達に も何かできることはないだろうか」と次第に考えはじめるようになりました。 一方で、前述した「少数民族手工芸支援事業」の成果を通じて、事業対象地であった、ナ ムザン郡タビン社のザラ村は名前を知られるようになったことで、前連絡がないままに直 接村に訪問する人々も徐々に増え、また少数の訪問者全てに対応することが困難であ ること等、村人が困惑する状況も生じつつありました。 2010年度末にはナムザン郡人民委員会からFIDRに、観光を軸とした地域おこしへの協力要 請があり、これを受けて日本から観光分野の専門家を招き、観光開発のポテンシャルを模 索するべく、調査を開始しました。地域の持つ資源や強み・弱み、取り巻く環境等を踏まえて 検討した結果、総合開発期や伝統織物振興期といった、今までの経験を最大限に発揮でき る地域主導型観光開発の可能性を見出し、2012年5月から2016年3月の約4年間の予定 で、「少数民族カトゥー族地域活性化のための観光開発支援事業」を実施するに至りました。 これらのことを振り返ると、本事業においては、観光開発事業を始める時点で、すでに過去 10年の経験から「地域の資源」「地域を取り巻く環境や、各ステークホルダーの強みと弱み」 「この地域で機能しやすい・しにくい仕組み」「地域を動かす動脈線」「主体となる地域の人( カトゥー族)が持つ価値やス トーリー性」などが、地域の人々、政府、そしてそれを支援する関 係団体(FIDR など)の間である程度、 把握できていた、ということが言えます。この点は、観光 開発専門家の方々に最もよく指摘される、他の観光開発事業との違いでもあります。 農村観光開発の実践例 3-7-2. 事業背景と経緯 (地域総合開発→伝統織物を活用した地域振興→観光開発) 3-7-3. 事業立案期 本事業を開始する前(立案期)には、観光開発を通じた地域のあり方やツアー・プログラ ムの定義、原則、そして、基本アプローチ等、多くの事柄に関し、事業関係者らと十分に検 討しました。 ●事業立案 1)この地域の開発計画および産業振興(特に観光開発計画)政策(政策における妥当性) 2)観光地としてのポテンシャル(観光資源の有無、アクセス状況、近隣の観光地の集 客傾向等) 3)住民の期待する地域づくりのビジョン(観光開発を通じた地域づくり) 4)各ステークホルダーが担うべき役割(地域行政、地域住民、旅行会社、支援団体 (NGOなど) 5)事業戦略立案および、活動優先順位の設定(当事業の場合は、ガイドライン 作成、 モデルツアーという実践の場を通じた改善促進等を優先) ●本事業で目指す、地域主導型観光開発(コミュニティー・ベースド・ツーリズム)の原則 上記検討の結果、「コミュニティー・ベースド・ツーリズム」には様々な定義がありますが、 本事業で目指す観光開発の原則として、事業関係らとの協議を通じて以下の3点を合 意しました。 1)地域住民が主導し、かつ最大の裨益者となること 2)地域資源(伝統文化、自然環境など)の保護・活用につながること 3)様々な人々が多様な関わりをもち、協力し、地域の内外における関係性を強化するこ とに繋がること ●基本アプローチ 加えて、カトゥー族の強みや特徴を活かし、観光開発を通じて描きたい地域の将来像(ビ ジョン)に近づくため、そして考えうるリスクを減少し、そのリスクにも対応できる「観光運 営のあり方」を共有することにも力を入れました。観光開発が、ポジティブではなくネガテ ィブな影響を地域にもたらしてしまったケースは世界の国々に数多あり、ベトナムも例に 漏れません。せっかく観光開発を行って、地域を壊してしまっては本末転倒です。特にベ トナムにおいては、少数民族が居住する地域は、環境、文化、社会的にもまだぜい弱かつ 繊細な地域が多く、地域住民、地方自治体、そして外部協力者間の方向性の共有や合 意が欠かせません。さらには、少数民族の人々の生活を脅かさないためには、急激な変 化を極力避け、十分な時間とキャパシティ・ビルディングが不可欠な要因となります。そ のため、事業立案期には、地域によりよい影響をもたらす、地域活性化につながる観光開 発に繋げるためのしくみや工夫として、以下の基本アプローチを事業関係者間で共有・ 仮合意しました。 Chapter 3 写真5:カトゥー族との交流を楽しまれる訪問者 1)個人客ではなく、6名以上のグループツアーの受け入れ この地域のカトゥー族地域住民との協議を繰り返す中で、彼らの強みは、「共同体が強 い」「コミュニティ(特に村単位)で助け合う」「コミュニティの間で争わない」「平等意識が 高い」等の主に伝統的社会習慣に起因する特徴が明らかになりました。また、カトゥー族 のおもてなしや文化行事は常に「共同体(コミュニティ)」で行われるものが多く、例えば 伝統舞踊の「トゥン・トゥン・ヤヤダンス」は30人ほどの男女ペアで行われ、さらには、カト ゥー族のおもてなし料理は、森の奥深くに自生する特別な野菜をハーブとして使い、それ を竹の筒に入れ、炭火を使い長時間かけて調理するため、準備のために数日かかること も珍しくなく、また少量を作ることが難しい等の特徴もありました。そのため、例えば個人 で商売をして、個人が儲かる、という仕組みを極力避け、多くの地域住民が参加できる 観光開発を目指したい、という地域住民の声が多く、必然的に「地域一体型ツアー」の原 型が作り上げられてきました。実際、事業開始前後には、目指すツアー原型を事業関係 者間で共有するために、2~4名程度の少人数を対象にしたモデルツアーを実施しました が、その結果、現時点ではカトゥー族が誇る伝統文化行事やおもてなしの数々を十分に 紹介するのは難しいということが明確になっていき、お客様にも個人ではなくグループで 来て頂きたい、という方向性が事業関係者の中で共有されはじめました。同時に、カトゥ ー族は今でも山で農業を行い、森で採取を行う半自給自足的な生活を行っていますが、 お客様をおもてなしするときには山から戻ってきて、地域ぐるみでお迎えをする ため、で きるだけ早めに日にちの連絡をしてもらえるとありがたい、という声にも対応する必要が でてきました。 上記の経験や基本経営分析を経て、「少なくとも6名以上のグループツアー」そして「一 週間前までのお申し込み」をお願いしよう、というツアーが共有されるに至りました。また、 この方法であると、「観光客が生活の場に入ってきて、静かな日常が脅かされるのでは ないか」という村人の心配する声にも対応しやすいことがわかりました。毎日数人ずつふ らりといらっしゃるお客様に対応することは、上記に述べた通り難しいのですが、グループ で予約をして来てくれるお客様には、地域が何日も前から準備をし、地域が一体となり、 対応することが可能となりました。 1 キャリイング・キャパシティ:観光地が持つ物理的、経済的、社会文化的な環境を破壊することなく、また旅行者の満足度を 軽減させることなく、その地域が受け入れることができる最大の旅行者数のことを意味します。本事業では、カトゥー族の社 会・文化面、特に生 活様式が観光によって急激に変化しないよう留意しながらキャリイング・キャパシティを検討しています。 農村観光開発の実践例 写真4:カトゥー族の伝統料理を楽しむ訪問者 図 1:少数民族カトゥー族訪問ツアーの基本パッケージ 一方で、6名以上のグループツアーのみ を受け入れる、ということは、個人のお客 様を受け入れにくいということになりま す。特にベトナム中部では、旅行者全体 の割合はグループツアーより個人旅行 客のほうが多く、実際ホイアンを訪れる 観光客の80%以上は個人旅行客と言 われています。観光データによると、ベト ナム中部の場合、個人旅行客は長くて も3泊程度が最も多く、せっかくベトナム中部まで来て関心を持っていただいても、私た ちのツアーに参加していただくのが難しい状況です。これは戦略上、大きなマーケットを 逃している、ということが言えるのかもしれません。しかし、ナムザン郡カトゥーコミュニティ ー・ベースド・ツーリズム地域のキャリイング・キャパシティ1は、地域エリアやカトゥー族の 暮らし等を分析すると、現段階ではおそらく年間1,000人に達しないものと見込まれてい ます。このような背景から、まずはグループツアーから優先的に受け入れを始めるという ことになりましたが、何年か経ち、経験を積んだのちには個人のお客様の受け入れも積 極的に検討できる日が来るかもしれません。現時点では、海外の特に学校や自治体によ る修学旅行やスタディーツアー、少数民族に興味のあるグループツアー等のターゲットに 絞り、マーケティングを進めています。 2)観光サービスの「ばら売り」ではなく、パッケージとして「全体価値」を提供する さらに、グループツアーにすることによるメリットがもう一つありました。個人ツアーは各々 が自由に観光アトラクションを選択できるスタイルが中心ですが、グループツアーでは 全てのサービスが組みこまれた「パッケージツアー」にすることが可能となります。お客様 がナムザン郡タビン社に到着すると、後述するカトゥー族観光協会(TOU)と、現地ツアー ガイドがお客様をお出迎えし、少数民族カトゥー族の伝統舞踊の鑑賞や村の散策、暮ら し体験、伝統のおもてなし料理による昼食、織物の村訪問、村人との交流プログラムとい った全行程の観光アトラクションからお見送りまで、つまりお客様がサイトに入られてから 出られるまでは、すべてカトゥー族観光協会によってプログラムがアレンジされます。カトゥ ー族が誇るおもてなしとともに、少数民族の人々と地域の価値が、全体のストーリー性を もった形で、一日の間に体験していただけるアレンジを心掛けています。これが、この事 業が目指すツアーの一つの特徴にもなっており、入場料制の少数民族観光地とは異なっ ている点です。 3)カトゥー族観光協会(TOU: Tour Operation Unit)の設置とキャパシティ・デベロップメント この事業では、カトゥーCBTを代表する観光推進組織として、カトゥー族観光協会(TOU)を 設置し、その担当者や地域住民に対し、観光地運営に関する研修を順次実施しています。 当観光協会はお客様や旅行会社とカトゥー族コミュニティを繋ぐ接点、かつ窓口となり、全 てのツアーは当協会を通じてツアー・アレンジを行います。観光協会は、現地ツアーガイド 等と協力して旅行会社やお客様へのガイドラインの順守などをお願いする一方、地域内の 観光アトラクショングループや安全の質の担保、マーケティング等と非常に広範な業務を 担当しています。さらに、観光協会は地域における観光への多様な関わりを作り出すアレン ジメントを行う等、観光開発のポジティブインパクトを最大化し、ネガティブインパクトを最 小化するための観光運営の要となります。 しかし、それらも当協会のみで実施するのではなく、地域の人々との協力・協働が不可欠と なっています。ツアー全体の方向性を意識しつつ、全てのお客様に、安全かつ安心して、カト ゥー族訪問ツアーにご参加いただくことを心掛けています。 写真6:クーポン用お土産と交換できる Chapter 3 写真7:外部提携旅行社との現地ガ イド研修の様子。参加者は円滑なツ アーを実施できるように役割・分担 等を明確にした 写真8:外部提携旅行社との現地ガイド 研修の様子。外部提携旅行社から派遣 される添乗員兼通訳様はカトゥー族の 生活や伝統、社会文化を学ぶ 農村観光開発の実践例 4)様々な人による、多様なかかわり-地域の多様な人々の参画促進 現在、本事業で観光開発パイトット地区として選定しているタビン社には、全部で7つの村が あります。その7村全ての村が観光開発において裨益できるように、各ツアーはその7村を毎 回組み合わせて訪問できるようにアレンジしています。1ツアーでは平均3~4村を訪問し、直 接・間接的に、約180~200世帯がツアー実施および運営にかかわります。それら7村には、伝 統舞踊グループ、伝統料理グループ、前述した伝統織物を製作・販売している織物グループ 等の各村レベルでの観光住民自主グループや、全村を横断した、現地ガイドグループ、かご 編みグループ、小学校グループ等の観光住民自主グループ等が設置されています。その観 光に携わる自主グループは、現在までに計21設置され、地域リーダーによる質の精査を経た 後、お客様をお迎えできる正式グループとなります。 ツアー料金は、観光協会が一括して提携旅行社から受領し、その後、参加したグループに事 業で合意した規定に沿って配分されます。その他にも、グループに入っていないが、各村で様 々な商品を自ら製作して、お土産ポイントで販売することもできるようにしています。こちらの 参加者は、主にご年配の方々が多く、植物を使った手織りのお財布や小物入れやその時期に 収穫で きる作物や野菜等も、少しずつながらお土産として販売してい ます。しかし、ご年配の 方々はベトナム語や計算を苦手とする方々も多かったことから、参画を容易にするために、「ク ーポン制」を取り入れ、お客様に前もってクーポンをお配りしておき、数村に設置しているお土 産ポイントで、お好きな商品と1枚クーポン等で交換できるような仕組みを取り入れました。こ の仕組みによって、カトゥー語でも対応が可能となり、また計算も必要でないことから、少しず つクーポン土産を通じて観光開発事業に参加する人々も増えてきました。 その他にも、FIDRが前事業で実施したナムザン郡タビン社ザラ村の織物の村にも全てのツア ーは立ち寄り、伝統織物の見学および体験をしていただいた後、伝統織物協同組合のお土産 屋でその商品を購入 していただく仕組みを導入しています。 写真9:日本・ホイアン祭りで伝統舞 踊を披露する、ナムザン郡カトゥー族 地域外部(旅行会社等)との協働 カトゥー族がツアー運営をすべて自分達でやろうとするのは現実的ではありません。まずはプ ロジェクト終了後のツアー運営のあり方を想定し、どこまでを自分達でやるのか、そしてどの部 分を旅行会社等の外部機関にお願いするのか等を十分な時間をかけて検討しています。ま た本事業においても、この観光体制や少数民族カトゥー族の伝統や文化、社会、自然といった 環境条件を理解し、共に観光地を持続的運 営・開発に寄与する提携旅行会社による外部支 援委員会を設置することを推進しており、現在その準備を進めています。この外部支援委員 会は、本事業が終了した後においても、当観光地が改善とリノベーションを繰り返していける ように、観光地としてのアドバイスやスーパーバイズをしていただ けることを目指しています。 すでに進められている協力は、カトゥー族現地ガイドと旅行会社の添乗員兼通訳様とのコラボ レーションです。円滑なツアーを実施できるように、お互いの強みを活かし、役割と分担を明確 にしながら、相互に学び合うガイド研修を実施し、外部協力者との連携を進めています。 3-7-4. 地域へのインパクト(文化、経済、社会面) 事業の立ち上げ期(2012年7月)から開始したモデルツアーでは、2013年10月末までに約 300人のグループツアーでのお客様が参加してくださり、地域において、すでに経済面(収入 源が増えた)、文化面(カトゥー族であることに誇りを感じるようになった、自分達の伝統文化に 触れる機会が増えた)、社会面(地域での共同作業の機会が増えた、世代を超えたコミュニケ ーションの場が拡がった、等)での変化(インパクト)をみてとることができます。 ①経済面での変化 最も大きな収入は、モニターツアーを通じた地域内における収入の増加です。現在までに、 地域住民の約60%の人々がこの観光開発事業に直接・間接的に関わっており、様々な形で 地域に利益がもたらされ始めています。またツアー料金のみならず、織物村の商品販売によ る収入も増加しています。この効果は、ザラ村織物協同組合の最も大きな収入源となり、今 では織物商品を外部で販売するよりも、経費が削減される等、利益が増加しています。 ②文化面での変化 観光客が来るようになってから、例えば以前は伝統のおもてなし料理を村でつくるのは年 に数回だったのが、今では月に2、3回行われるようになった、など、文化の慣習や行事を見 たり、行ったりする機会が増えた、という声が村人から聞かれるようになりました。そして、お 客様に「カトゥー族とは何か」を説明する機会を通じ、自分達の伝統文化や生活について学 び、考え、記録をとり、伝えるようになりました。若者を中心に、以前は少数民族であることを 時として恥ずかしがることもあったのですが、今では「カトゥー族であることに、自信を持つよ うになった」「素晴らしい文化をもっと他の人に知ってもらいたい」と、カトゥー族として生きる ことの誇りを取り戻しつつあるようです。これまでに立候補によるカトゥー族のローカルガイ ドが12名育成されています。また、自分達の文化を見直すことを通じて、他の少数民族にも 関心を持つようになってきています。 Chapter 3 ③社会面での変化 現在、外部からのお客様や様々な旅行会社、メディアでのツアー紹介等も増えてきており、 外部事業関係者等とのやりとりが増え、より社会に参画する機会が増えてきました。また、 チャレンジする機会、考え学ぶ機会、そして女性たちが活躍する機会が多くなってきまし た。実際に、当観光開発の参加者の6~7割は、世代を超えた女性たちによって占められて います。 最近では、ナムザン郡カトゥー族訪問ツアーが知られるようになり、2013年8月にクァンナム 省の世界遺産「ホイアン市」で開催された、日本・ホイアン祭りにも招待され、カトゥー族の 伝統舞踊を披露する機会に恵まれる等、そのインパクトはナムザン郡以外にも拡がってき ています。 上記のような機会が増えることによって、世代を超えたコミュニケーションや地域の結束 力、連帯感が強くなる等、地域内の資源や人材が繋がる機会が増える等のインパクトが おこりはじめています。 3-7-5. 課題 事業を進める中で、以下のような課題も明確になってきました。今後は、より内外部の事 業関係者と の検討・協議を深め、一つ一つに対応できる努力をしています。 ●各事業関係者間の意志疎通、コミュニケーションを円滑に進めること ●次第に観光地として知られるようになり、各事業関係者間の理解および方向性の共有 ●安定したマーケティング戦略(外部提携旅行社との協力、理解推進、安定した集客法 の確立等) ●各村間の連絡や関係者間の調整等の目に見えない機能「つなぎ」の強化と円滑に 「つなぐ」という意識の向上 ●旅行業界のスタンダードや外国人観光客の期待度への理解と改善 農村観光開発の実践例 写真1:カトゥー族の若者による伝統舞踊(トゥン・トゥン・ヤヤ・ダンス) 3-7-6. 少数民族地域での観光開発 本事業は、まだ開始してから2年に満たず初動期ともいえます。そのため、私たち事業関 係者ら自身も試行錯誤をしながら、地域にとってよりよい方法や仕組みを模索中です。そ の中で、特に少数民族の地域で観光開発を開始、促進するにあたり、重要と思われた事 柄は以下のものです。 ●地域内外の観光要因に関し、観光開発のポテンシャル、フィージビリティー調査を十分 に行うこと ●観光開発を目的ではなく、地域の活性化や地域のビジョンに繋がる手段とすること ●強みは、少数民族の持つ価値(独自性や稀少性、他地域との差別化等)を最大限に発 揮できる環境と行政・外部支援を組み合わせること ●地域住民や地方自治体、旅行会社等、関係者間とのビジョン、方向性およびアプロー チ等を共有すること ●地域の持つ資源および環境に合わせた、キャリング・キャパシティーを分析・共有すること ●役割分担を明確にすること ●活動の柱と優先順位の明確化(規範、ルール、ガイドライン等) ●マーケット・ターゲッティングの明確化 3-7-7.今後に向けて このナムザン郡での約10年に渡る取り組みは、「人や技術を含めた、地域にある資源や資 本を優先的に利用するもの」、「外部に依頼、委託するもの」、「FIDRが支援するもの」を常に 注意深く選択しながら、地域の資源や可能性を繰り返し見つめ直し、引き出し、活用、展開 することの繰り返しでした。解決しなければならない課題も多いですが、事業関係者や応 援、ご支援してくださる人々のお力もお借りしながら、一つずつ経験を蓄積してく必要があ ります。 今後は、本事業を通じた試行とインパクトを、ナムザン郡全体に如何に拡げていけるかが 大きな課題となります。また近い将来には、郡のみならず、クァンナム省やカトゥー族全体、 ひいては少数民族地域が活性化するためのヒントを提示できるような挑戦を続けていきた いと思っています。 実践例7 バックニン省の 地場産業村 3つの地場産業 村 で の コ ミ ュ ニ テ ィ 観 光 開 発 Ha Noi Bac Ninh Da Nang Hoang Sa Ho Chi Minh Phu Quoc Truong Sa 3-8. 実践例7:バックニン省の地場産業村 3-8-1.バックニン省3つの地場産業村の概要 本実践例では、バックニン省の地場産業が特徴的な3農村、フーラン(Phu Lang)、ディ ントー(Dinh To)、ホアロン(Hoa Long)で実施された”地場産業を活かしたコミュニティ観 光開発”の形成過程を紹介します。この3つの村が持つ従来の特徴は、次のように説明で きます。 ・フーラン村:900年前頃に発祥したと言われる赤土を使った陶器づくりが盛んな村 ・ディントー村:味噌作りなどの郷土料理が有名であった村 ・ホアロン村:歴史的な建物が多く残り、また伝統民謡のクアンホー(Quan Ho)が残る村 3-8-2.実践例のポイント 本実践例では、3つの村において、それぞれの村の地場産業の特徴を生かした観光開発 の過程と、開発のために何を“投入”したかについても説明します。 なお、本実践例にかかるバックニン省でのプロジェクトは、2010年~2012年にかけて、 The Asia Foundation(アジア基金)と Vietnam Rural Industries Research and Development Institute (VIRI)により実施されたものです。 3-8-3. 観光開発のプロセスと手法 バックニン省の地場産業村におけるコミュニティ観光開発は、以下の6段階で進められ ました。 ・ 保存状態の良い集会所(Dinh)、寺、伝統家屋等の確認、農村風景や現在も継続してい る手工芸等の地場産業の調査 ・ 文化財指定されたが、時代の変化や不朽により保存状態が悪い歴史遺跡、昔は栄え ていたが現在では衰退した地場産業、販売先が無くなり衰退した手工芸等の地場 産業の調査 ・ 地元の祭礼、民謡、習慣などの伝統文化の調査 ・ 村の医療システム、学校、郵便局、電気、インターネット、レストラン・小売店、村内の交 通インフラ、周辺の村々を繋ぐ道路交通網等の調査 ・ 地元行政や住民へのインタビューを通じたコミュニティ観光への理解や参加意向の確認 ・ 過去年間の村の社会・文化・経済の状況、コミュニティ観光事業に取り組む前の住民 の平均収入(主要な収入源/副収入源)の調査 (2)対象農村の選定 調査の結果を踏まえて、地元行政と話し合い、コミュニティ観光開発を実施する対象農 村として、以下の3村を選定しました。 ●フーラン村: トゥコン(Thu Cong)集落とフーラン集落 ●ディントー村: ブットタップ(Bat Thap)寺とディントー集落 ●ホアロン村: ヴィエムサー(Viem Xa)集落 また各村にて、観光開発の対象とする観光資源を選定しました。地元の方々との話し合 いを重ね、村の代表的な遺跡や産業(衰退しているが振興すべき産業も含めた産業)等 価値がある資源を選定しました。選定した観光資源やプログラムは以下の通りです。 ●フーラン村トゥコン集落、フーラン集落:ホーチミン記念館、フォックロン(Phuc Long) 寺、 伝統陶器を生産する2世帯、祭壇用の陶器を生産する2世帯、芸術的陶器を生産する2 世帯を選定。陶器づくり体験は観光客により任意に選択されるが、陶器の購入にかかる 訪問先は芸術的な陶器を生産する世帯に限定していくことを議論。 ●ディントー村ブットタップ寺、ディントー集落:ディントー村では、ブットタップ寺を見学 した後、タイ族のおかゆ、味噌とバインドゥック(Banh duc)、鶏おこわ、バインゾー(Banh gio)、ティウバナナ等の郷土料理を提供。ランチの後、観光客はバックニン省の伝統音楽 であるクアンホーを楽しむ。その後、チャム邸で伝統的な味噌作りを見学し、工程的に体 験をする。 ●ホアロン村ヴィエムサー集落:クン(Cung)寺、ゴック(Ngoc)井戸、村の集会所を見学し、ク アンホーを創生したバー(Ba)王の帝廟を訪問する。古いメロディのクアンホーが楽しめる。 農村観光開発の実践例 (1)初期調査 初期調査では、フーラン村、ディントー村、ホアロン村の3農村の観光資源を確認する こと を目的としました。まず観光資源調査を行い、以下の項目を確認しました。初期段階の調 査は、農村観光開発のフィージービリティを確認する上で、また開発前後の変化を確認す るためにも重要です。 Chapter 3 3-8-3-1. 計画づくり フーラン村の陶器 フーラン村の陶芸職人 ディントー集落の味噌 ブットタップ寺 伝統民謡クアンホー バインゾ ー (5)開発対象のプログラムの検討 観光客に提供する観光プログラムの対象を検討し、課題や将来の要望などを議論しました。 ●フーラン窯業村のツアーは、伝統的な陶器(壺の形の器)、祭壇用の陶器、美術的な陶器 (瓶、動物、風水、その他のお土産)等の生産を行う現場の見学、また観光客向けの陶器教 室や展示スペースを準備しました。 ●ディントー村のブットタップ寺のツアーは、ブットタップ寺を訪問し、お寺の建築、彫刻、屋 内や屋外の飾りを見学できるようにしました。 ●ディントー村では、100年以上続いていた味噌作り産業が衰退していましたが、プロジェ クトの取り組みにより味噌作りが復活しました。現在の味噌は食品安全認証を取得し、更に 「チャムおばさんの味噌」というブランド名も付けられました。チャムおばさんの味噌は観光 客だけでなく、国内の市場で数多く販売されています。ディントー村の特産品として、タイ族 のおかゆ、味噌につけるバインドゥック、鶏おこわ、バインゾーやティウバナナがあります。パ ッケージツアーに参加する観光客は、これらの名産物を全部味わうことができるよう工夫し ました。 ●ホアロン村では、クアンホーの創生者の集会所やお祭りに使用されているバインクック 作りの産業があったため、ヴィエムサー村のツアーを組む際、プロジェクトメンバーは、クア ンホーは観光客に愛されるに違いない、と復興を決意しました。村の伝統的なクアンホー は、2011年の全国伝統パフォーマンス大会で一位を受賞し、2011年にはフランス・ベトナ ム文化協会によってフランス公演へ招待されました。バインクックも食品安全認証を得て、 省や町のお祭りに参加する人々に購入されるようになりました。 農村観光開発の実践例 (4)村の地図の作成 観光客が村を観光するための観光ルートを設定し、地図を作成しました。観光ルートは、 駐車場で受付を行うことから始まり、歴史遺跡、文化財、地場産業、食事やパフォーマン ス 見学等をバランスよく含めました。前述の(1)初期調査の結果をもとにして、約3ヶ月かけて 検討しました。このステップの主な作業として、VIRIはコミューン・村の行政や住民と会合や インタビューを通じて、経済、社会状況、お祭り、手工芸業などの実態を把握しました。調査 を通じて、フーランでは陶器作りが衰退しているものの、製品の販売市場を探すことにより 産業を復興させる可能性を秘めていることが分かりました。同様に、ディントー村では、百年 以上続いていた味噌作りが現在は衰退しており、復興・継続支援する必要があること、ヴィ エムサー集落では、クアンホーが発祥した地域にもかかわらず、クアンホーを歌う仕事が重 視されておらず、また観光資源として開発もされていなかった ため、復興する必要がありま した。また、バインクック(Banh khuc)作りが有名であったものの、現在ではあまり知られて いないため、広報・宣伝を強化する必要がありました。 次のステップとして、バックニン省コミュニティ観光ツアーを作るため、住民に広報活動を 実施しました。 また、それぞれの村に観光の管理委員会を設立しました。管理委員会は人 民委員会副主席を会長、文化室の行政官が副会長、村長や班長が委員として構成されま した。更に、管理委員会の傘下にガイドグループ、食事・ホームステイグループ、お土 産グ ループ、パフォーマンスグループの4つのグループが形成されました。 Chapter 3 (3)事業実施期間、予算の検討 3農村におけるコミュニティ観光の開発期間を24ヶ月に設定し、予算分配、活動内容を設 定しました。 チャムおばさんの味噌づく り (6)プロジェクトからの投入 プロジェクトは、住民を対象にコミュニティ観光や観光客とのコミュニケーション方法に関 する研修を行いました。またローカルガイドグループを対象に観光案内の内容や、観光受 入れ業務について研修を行いました。 その他、各村に対し、庭の景観の整備、トイレの整備、大型サイズの案内板、看板の整 備、駐車場の整備、公共空間へのゴミ箱の設置、ごみ収集専用車の整備など、様々な受 入環境の整備を行いました。また、ホアロン村に石のベンチ、フーラン村にテーブル・椅 子・ロクロ、ホアロン村やフーラン村に観光サービス提供のための茶碗、ディントー村に食 器等を購入しました。 (7)プロジェクト以外の投入 プロジェクトの予算以外に、地元からもコミュニティ観光を開発するための予算が措置さ れました。バックニン市は、ラー坂からヴィエムサー村までの約3kmのアクセス道路を拡 幅し、舗装しました。ヴィエムサー村では、駐車場整備、景観整備(緑化)、池の周辺に観光 客が休憩するためのベンチを60個配置する等の投入を行いました。また、ごみ収集専用 車を追加で6台購入しました。さらに工業助成プログラムを活用し、労働者に職業技術を 教え、フーラン村の伝統窯業の復興などを行いました。フーラン村でも500㎡の駐車場を 整備しました。ディントー村文化室は伝統的な遊び、童謡などを復興し、観光客にパフォ ーマンスとして披露できるようにしました。 (8)協力機関 フーラン窯業村はバックニン省文化スポーツ観光局、クエボー(Que Vo)郡人民委員会 が、ディントー村はトゥンタン(Thuan Thanh)郡人民委員会、ホアロン村はバックニン市 人民委員会がそれぞれ協力機関となります。更に、バックニン省商工局や農業農村開発 局も協力しました。 バックニン省のコミュニティ観光プログラムでは、フーラン村、ディントー村、ホアロン村の 3つの村が関係していることから、3つの村の連携ネットワークを作り、お互いの経験を共 有、受入のノウハウをお互いに補完しながら、観光客が「滞在中は楽しく、旅行を終えても 満足する」を目的に事業に取り組みました。 Chapter 3 それぞれの地域におけるコミュニティ観光の管理委員会の設立のためには、人民委員会 の決定が必要となります。管理委員会の会長は、各村の人民委員会の副主席で、副会 長は文化室の行政か村長等が任命されています。コミュニティ観光の管理委員会は、活 動規制や規則がそれぞれ存在します。規制はコミュニティと協働で策定され、村の人民 委員会の決定が必要となります。管理委員会は毎月会議を行い、担当者から活動の状 況が報告されます。実施できなかった計画については原因を調べ、対策を会議の中で検 討します。また、翌月の活動も会議で話し合います。管理委員会の傘下には4グループが あります。 ●観光客の受入・案内グループ(2~3 名) ●地場産業の生産・開発グループ(3~4名) ●食事・ホームステイのサービスグループ(3~5名) ●パフォーマンスや伝統遊びを紹介するグループ(8~10名) グループ毎に活動規制があり、その内容は住民の意見を聞いた上で決定されたもので す。また活動は、コミュニティ観光管理委員会による管理、案内を受けながら実施されて いきます。グループは、一週間毎に実施した内容から、経験や課題などを振り返る小会 議を開催します。住民は自分達で、景観保護や環境保全など地域的なルールを作りまし た。月一回住民会議があり、規制をよく守る世帯は表彰し、守らない世帯には注意を促し ます。これらの成果として、以前は村の排水路に蓋が付いていなかったものが、農村道路 を拡大する際に全ての排水路に蓋を整備したという事例もあります。 各世帯が経費を出し、家畜飼育所やトイレ、台所などの生活空間も整備、清掃するよう になりました。 また村の人々の環境への意識、コミュニティ観光への参加意識が向上され、農村の雰囲 気も著しく改善しました。住民にとって、環境を守ることは観光客のためだけでなく、自 分達自身の生活と直接関係あり、利益にも繋がることが理解できるようになったのです。 観光サービスグループはそれぞれの活動を開始しました。まず観光サービス提供のため の準備、次にグループごとの専門分野にかかる研修に参加しました。メンバー内で業務・ 責任分担を具体的に行いました。またサービスをいつでも提供できるように体制を整え ました。こうして質の高い観光サービスを提供する体制が徐々に築かれていきました。研 修実施後も、観光管理委員会は各グループにリハーサルを行う機会を設けて、サービス の質 の向上に取り組んでいます。 観光開発対象の村やコミューン行政官と住民を対象に、7日間の研修を実施しました。 同研修では、観光専門学校の講師が担当しました。村の政治組織、例えば婦人会、青年 団、老人会、祖国戦線との連携が必要で、組織ごとの長所・特質を生かし、観光開発に 寄与することが期待されます。 農村観光開発の実践例 3-8-3-2. 観光開発のための組織体制づくり 3-7-3-3. 観光の質を高めるためのデザイン デザインの向上として、観光ルート上の景観整備を行いました。設計担当者がプロジェ クトの予算に合わせて、道路沿いのランドスケープを設計しました。住民の協力も得ら れ、緑が多くて美しい景観を整備することができました。ランドスケープ整備は、VIRIの デザイナーと庭園作りの専門家によって実施された後、村に引き渡されました。同時に、 村は 景観管理とメンテナンスに責任を持つことになりました。 陶器作りの世帯に対しては、新しい陶器デザインを提案し、バインクック作りの世帯には パッケージデザインを、味噌作りの世帯にはパッケージデザインやボトルを供与し、クアン ホーの歌手には服装や道具を購入しました。VIRIのデザイナーは、案内板、観光プログラ ム紹介のための看板のデザインを担当しました。また観光プログラム、地場産業等を紹介 するためのパンフレットや冊子もVIRIのデザイナーによって作成されました。これらの全て のデザインの作成を行う際には、各世帯の意見を聞きながら細心の注意を払いました。 その他、VIRIは観光プログラム等の説明内容も準備しました。専門学校の講師を招い て、3つの村のローカルガイドに対して、ガイドの知識やガイド技術、マナーについての研 修を実施しました。更に、バックニン省によるガイド研修が開催され、3村のローカルガイ ドも参加しました。 トレーニングを受けた ローカルガイド 味噌のパ ッケージ デザイン フーラン 村の案 内看板 Chapter 3 観光客を受け入れるにあたり、パンフレットを印刷し、担当者の電話番号等の連絡先も 明記しました。 また、観光客から徴収する金額も明確に規定しました。例えば、駐車場では、7席以下の 車、18席以下の車、26席以上という3つの車種に応じた駐車料金を徴収するようにしま した。フーラン村の場合は、陶器作り体験やブットタップ寺観光、昼食代をパッケージに して料金設定をし、クアンホーのパフォーマンスは演技時間に応じて料金を徴収するよ うにしています。宿泊は泊数毎に徴収するようにします。陶器は均一ではなく商品によっ て価格を変えました。味噌は、500mlか700mlのボトルで販売するか、それ以上の場合 には、1リットル単位で販売するようにしました。 バックニン省のコミュニィ観光をテーマとしたセミナーを開催し、国内外の旅行客を取り 扱う旅行会社を30社以上招待し、観光プログラムの広報・PR 活動を行いました。 FAM ツアーを 3回実施し、参加者は以下の通りです。 ●1回目:アジア基金職員、VIRI、観光専門学校職員 ●2回目:アジア基金職員、VIRI、バックニン省文化スポーツ観光局、バックニン省の7 つの郡の観光担当、旅行会社34社 ●3回目:アジア基金職員、在ベトナム各国大使館の代表、観光専門学校 FAMツアーの参加者には、アンケートを依頼し、プログラムのフィードバックをもらい、改 善に努めました。 FAM ツアーの様子 農村観光開発の実践例 3-8-3-4. 観光客の受入れ準備 3-7-3-5. プロモーション活動 国内の旅行会社と連携し、国内外のマーケット開拓のために、以下の観光プログラムを 宣伝しました。 ●プログラム1: フーラン村、ディントー村、ホアロン村の 3 つの村を観光 ●プログラム2: フーラン村/ホアロン村、ディントー村/ホアロン村、ディントー村/フーラン 村の組み合わせから選択し、2 つの村を観光 ●プログラム3: フーラン村、ディントー村、ホアロン村のいずれか1つの村選択し、観光 地場産業の商品のブランド、例えばフーラン村の陶器、ディントー村のチャムおばさんの 味噌、ヴィエムサー集落のバインクックは市場に認知されてきました。特に、味噌とバイン クックは食品安全認証を取得しており、マーケットでも広く販売されるようになりま した。 フーラン村の窯業、クアンホー歌の発祥地であるジエム村、ディントーの郷土料理を紹介 する冊子が編集され、出版されました。バックニン省コミュニティ観光を紹介するWebサ イトもできました。地場産業村でのコミュニティ観光はバックニン省のテレビ局によって紹 介され、また、観光専門学校では、学生にバックニン省のコミュニティ観光体験、観光ガイ ド実習などで、村の観光プログラムを活用しています。 3-7-3-6. モニタリングとマネージメント 受入れ開始段階:観光客の受入れを開始した当初から、様々な旅行会社からディント ー村のブットタップ寺、クアンホー歌を聴くためにヴィエムサー集落への送客が開始さ れました。ハロン湾へのツアー観光客も、ハノイへの帰路の途中にフーラン村に立ち寄 り、陶器づくりを観光するようになりました。また、中学校、高校、大学の学生にフーラン 村の陶器作りを体験してもらう3泊~5泊のプログラムも準備しました。 Chapter 3 ●受入れ段階 : 観光プログラムを実施する上で不十分であった点を改善し、観光客の 体験・観光そのものに費やす時間を延ばしました。2013年12月現在、人気のプログラ ムは2村もしくは1村を訪問する観光プログラムです。観光客のニーズに応じて、観光サ ービスの改善も繰り返し行っています。例えば、現在では観光客も一緒にクアンホーを 歌うプログラムを導入し、タイ族のおかゆを観光客自身が作り楽しめるようにプログラ ムを改善しています。設備や受入体制の質も向上しており、観光客のリクエストに対応 できるようになってきています。 ●モニタリングの段階 : 観光商品の評価の項目として、観光客数を集計しています。そ してそれぞれ観光プログラムでアンケートを実施し、観光客の意見の把握に努めてい ます。また住民間で不透明な問題が起こらないように、観光プログラムごとに財政管理 を徹底し、収支を明確に記録しています。コミュニティ観光は、農村に新しい風を運んで きています。観光客がゼロ、もしくは数人程度であった農村にベトナム人や外国人観光 客が数多く訪問するようになりました。観光客は村を訪問すると同時に異文化も運ん できます。観光客の訪問により、地域の魅力が外部に発信されることになり、これはコミ ュニティ観光に従事する農村の人々にとって一番のメリットかもしれません。 3-8-4. 本実践を通じて得られた教訓 ●農村においてコミュニティ観光開発を成功に導くためには、地元住民の積極的な参加 が必要条件となる。 ●対象とする農村のコミュニティ観光に関わる人材の能力を向上させる取り組みが不可 欠となる。 ●旅行会社と戦略的なパートナー関係をつくり、コミュニティ観光開発を進める。 ●地元の伝統文化が織り込まれたプログラムやサービスを開発する一方で、観光客の ニーズを常に考慮しなければならない。 ●利益がコミュニティに公平かつ明確に分配されるような仕組みを確立する。 ●プロモーション活動は、継続的に行う必要がある。 ●地元のコミュニティ観光の開発計画を省全体の開発計画に関連付ける。 農村観光開発の実践例 クアンホーを楽しむ観光客 Chapter 4 第4章 農村観光 開発の対象地 4-1. 農村観光開発の対象地の調査 4-1-1. 調査方法 観光開発研究所とJ ICAでは、全国の農村観光開発の対象地を把握するために、全63 省に対するアンケート調査を実施しました。 (1)実施方法 アンケート調査票を作成し、2013年9月6日に観光開発研究所から63省の文化スポー ツ観光局宛てに調査票を送付。9月27を締切りとし、回答結果をまとめました。 (2)調査票内容 以下の調査票を送付しました。 ①基本情報の質問 組織名、回答者、農村の数(観光地になっている農村、観光になっていないが可能 性がある農村の合計数) ②農村観光にかかる質問 質問1 農村地域の概要(①名前、②人口、③面積) 質問2 農村地域の特徴(農業、文化財、無形文化財、伝統工芸、景観、少数民族等) 質問3 農村へのアクセス(近くの観光地や主要都市からの距離、交通手段、他 の観光 地とのリンク等) 質問4 農村観光の状況(1観光の可能性があるがまだ開発されていない、2既 に観光 地化されている) 質問5 質問4で1を回答した場合 (1)農村観光の開発計画の有無 (2)農村観光開発を行う上での困難等 質問6 質問4で2を回答した場合 (1)観光開発にかかる外部機関からの協力や支援プログラムの有無 (2)観光客が農村を訪問し始めた時期 (3)一年間の訪問観光客数 (4)観光サービス、プログラムの種類(ホームステイ、食事サービス、農業 体験、魚釣り、工芸体験、等) (5)観光客受入や管理おける困難、課題等 (6)観光開発におけるグットプラクティス 質問7 上記質問以外の情報やコメント (3)アンケート結果 63省に送付した調査票について、46省からの回答があり、121か所の農村の情報が収 集されました。回答結果を、①農村の名前、②基礎情報(人口、面積、立地条件、交通手 段)、③農村の観光資源の特徴、④観光開発の状況(観光受入の有無、観光客数、これ までの取り組み等)、5開発上の課題、について、「4-2.農村観光開発対象地のリスト」に まとめました。 Chapter 4 26 22 21 28 23 20 17 25 24 18 19 31 27 8 15 16 32 14 36 34 35 33 37 53 12 40 9 38 52 54 4151 11 10 56 58 57 39 43 5 55 42 50 6 49 7 45 44 59 48 47 46 3 1 29 30 13 2 4 61 60 62 65 63 64 66 71 68 67 70 73 77 72 75 69 80 74 78 76 79 82 81 83 96 95 84 97 87 86 85 98 100 99 103 102 111 120 118 106 110 109 114 117 119 121 116 115 112 108 91 105 104 94 93 101 107 113 92 88 89 90 農村観光開発の対象地 4-1-2. 農村観光開発の対象地の位置 4-2. 農村観光開発対象地のリスト No. 名 称 基本情報 特 徴 観光状況の概要 観光開発上の 課題 ディエンビエン(Điện Biên)省:4 村(基準地:Điện Biên 市) ・タイ族の織物 ・温泉 観光客受入有り ・1998 年受入開始 ・年間観光客数:100人 ・観光サービス・アトラクション:食事サービス、 田園風景、ペールオン池の釣り ・実施されたプロジェクト/政策:共同文化プロ グラム ・音楽・伝統舞 踊の講師がい ない 人口:230人 面積:112.4 ha 基準地からの距 離:4km 交通手段:車 ・田園風景 ・農業 観光客受入を実施していない ・実施されたプロジェクト/政策:フィエンロイ村 を開発するプログラ ムがない。 ・インフラ整 備、住民の意 識向上のため の支 援がない メン (Mển) 村 人口:523 人 面積:4 k㎡ 基準地からの距 離:5km 交通手段:車 ・伝統手工芸 の村 ・タイ族の風 俗・習慣 ・農業 ・高床式住居 ・食文化 観光客受入有り ・2000年受入開始 ・年間観光客数:6,000人 ・観光サービス・アトラクション:食事サービス、 タイ族の文化 ・風俗を理解するサービス、伝統手工芸村の 観光、パフォーマンス ・実施されたプロジェクト/政策:2004年に省、 郡によりコンクリート道路の整備、文化センター 建設。受付業務の研修実施。 ・充分な訓練 がされていな いため、管理・ 調整業務がう まく進められ ない ウバー (U va) 村 人口:250 人 面積:3k㎡ 基準地からの距 離:15km 交通手段:車、バ イク ・高床式住居 ・田園風景 ・温泉 観光客受入有り ・2004年受入開始 ・年間観光客数:250人 ・観光サービス・アトラクション:高床式住居 ・田園風景の観光、食事 サービス ・業務の専門 性や予算に限 りがある 1 ペール オン (Pe Luông) 村 人口:427人 面積:33.80k㎡ 基準地からの距 離:3km 交通手段:車、バ イク 2 フィエ ンロイ (Phiêng lơi )村 3 4 ホアビン(Hòa Bình)省:3 村 (基準地:Hòa Bình 市) 5 6 7 ・ ムオン族 の有 形 ・無形文化財 ・景観 ・伝統手工芸 観光客受入有り ・2000年受入開始 ・年間観光客数:15,000 人 ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、 食事サービス、地元住民との交流、ホアビン湖 や周辺の観光スポット ・実施されたプロジェクト/政策:省の観光開発 プログラムの対象地域として様々なプロジェ クトが実施さ れている。(VSAT、134プロジェ クト、ダー河養殖プロジェクトなど) ・一部の住民 のコミュニティ 観光開発への 意識が未だに 低い アイ(Ải ) 村 人口:395 人 面積:1.5k㎡ 基準地からの距 離:34km 交通手段:車、バ イク ・観光省指定村 (ムオン族の代 表的な村) ・伝統的な有 形・無形文化財 ・景観 観光客受入有り ・2009年受入開始 ・年間観光客数:(2010 年から)約2,500人 ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、 食事サービス、地元の暮らしの活動体験サー ビス、スポーツ・交流活動 ・実施されたプロジェクト/政策:伝統的なムオ ン村復元プロジェク ト、EU による観光開発技 術(環境・ 社会整備)の支援 ・住民の意識 が未だに低い。 ・コミュニティ 観光の 研修を 受講る機会が ない。 タウ (Thâu) 村 人口:500人 面積:1.5k㎡ 基準地からの距 離:100km 交通手段:車、 バス ・ムオン族コミュ ニテ ィやムオン 族の文化的ア イデンティティ ・農業 観光客受入有り ・2007 年受入開始 ・年間観光客数:約 1,000 人 ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、 食事サービス、 伝統 織物作り体験 ・実施されたプロジェクト/政策 : 観光インフラ整備 ソムモー2 (Xóm Mỗ 2)村 人口:476 人 面積:1 k㎡ 基準地からの距 離: 12km 交通手段:車、バ イク No. 名 称 基本情報 ホン (Hon) 村 人口:2,500 人 面積:5k㎡ 基準地からの距 離:10km 交通手段:バイ ク、車 特 徴 観光状況の概要 観光開発上の 課題 ライチャウ(Lai Châu)省:1 村(基準地:Lai Châu 市) 観光客受入有り ・2012 年受入開始 ・年間観光客数:500人 ・観光サービス・アトラクション: ホームステイ ・関係機関同 士の統一的 ・横断的な取 り組みがない フートー(Phú Thọ)省:5 村 (基準地:Việt Trì 市) 10 ラーフー (La Phù) 村 人口:8,000人 以上 (2010) 面積:812ha 基準地からの距 離:20km 交通手段:車 ・国家歴史財 ・ソアン(Hát Xoan)の歌 ・ フ ン ヴ オ ン (Hùng Vương) を祭る信仰 ・築100-200年の 伝統家屋(50軒) ・温泉 観光客受入有り ・2008年受入開始 ・年間観光客数:2,000人 ・観光サービス・アトラクション:食事サービス、 ホームステイ、市場や地場作業 ・実施されたプロジェクト/政策:省やヴィエト チー市文化財であるフンローの集会所を活用 し、観光開発を目指している。 観光客受入有り ・2006 年受入開始 ・年間観光客数:10,000人 ・観光サービス・アトラクション: 温泉、食事サービス ・実施されたプロジェクト/政 策 :省人民委員会 によって重要観光地として認定。フートー省観光 局やタントゥイ(Thanh Thủy)郡にて、省認定の 観光地として開発する計画がある。 ・インフラが整っ ていない。 ・自発的に温泉 を開拓する世帯 がある。 ・資金(予算)の 問題 ・人材不足、観 光業務に対す る知識が乏し い。 スアンソン (Xuân 11 Sơn) 村 人口:1,095人 面積:65.48k㎡ 基準地からの距 離:80km 交通手段:車、バ イク ・ザオ族 ・ムオン族の文化 的なアイデンテ ィ ティ ・スアンソン国立 公園 ・洞窟 観光客受入有り ・2007年受入開始 ・年間観光客数:7,500人 ・観光サービス・アトラクション:食事サービス、 ホームステイ、トレッキング、洞窟・滝見学、ザ オ族・ムオン族の文化的なアイデンティティを 楽しむ。 ・実施されたプロジェクト/政策:EUプロジェクト によりコミュニティ観光開発プログラムが準備 されている。省によるザオ族・ムオン族の住居 を復元しホームステイサービスに活用する計 画がある。その他のインフラ整備計画もある。 12 ヒークオン (Hy Cương) 村 人口:5,319人 面積:702,98 ha 基準地からの距 離:12km 交通手段:車、バ イク ・デンフン(Đền Hùng)国家歴史 財 ・フン(Hùng)王信 仰に係る文化財 ・無形文化財 観光客受入有り ・2006 年受入開始 ・年間観光客数:10,000人. ・観光サービス・アトラクション: デンフン祭り ・実施されたプロジェクト/ 政策:市によって同村を伝統産業村として活 用した観光開発、地域経済 ・社会発展を目標にした計画が立案されている。 ・資金(予算)の 問題 ・人材不足、観 光業務に対す る知識が乏し い。 13 ヒエン ルオン (Hiền Lương) 村 人口:4000人 面積:7.7k㎡ 基準地からの距 離:68km 交通手段:車、バ イク ・アウコー(Âu Cơ) 皇女殿 ・ヴァンホイ(Vân hoi) の蓮池 観光客受入を実施していない ・予算不足 農村観光開発の対象地 9 フンロー (Hùng Lô) 村 人口:6,195人 (2010 年) 面積:1.2k㎡ 基準地からの距 離:10km 交通手段:車 ・インフラ整備や 受入体制が充分 に整っていない。 ・人材不足、ロー カルガイドのグル ープがまだない。 ・住民の意識が 未だに低く、文 化財を活用した 観光開発のメリ ットへの理解が 進まない。 Chapter 4 8 ・少数民族のコ ミュニ ティ ・伝統手工芸 の村 No. 名 称 基本情報 特 徴 観光状況の概要 観光開発上の 課題 ラオカイ(Lào Cai)省:4 村(基準地:Sapa) 14 15 16 17 人口:784 人 面積:9.2 k㎡ 基準地からの距 離:60km 交通手段:車、バ イク ・自然景観 観光客受入有り ・国家文化財(チ ・2004年受入開始 ュンドー殿) ・年間観光客数:10,000人 ・古い町並み ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ ・少数民族文化 やその他の宿泊、農業体験、地元住民との交 (タイ族の高床式 流、パフォー マンス、遺跡観光 住居建築、タイ族 ・実施されたプロジェクト/政策:中央農民協会 の風俗・習慣、畑 の支援により観光用のトイレ、観光情報センタ 祭り、踊り、歌、楽 ーの整備を実施 器等) ターヴァン (Tả Van) 村 人口:3,715人 面積:6,804.07 ha 基準地からの距 離:8km 交通手段:車、バ イク、 自転車 ・少数民族(モン 族、ヤイ族、ザオ 族)が暮らしてい る。(モン族69.5%、 ヤイ族24.4%、ザオ 族4.9%、その他の 民族1.2%) ・伝統手工芸:銀の 彫刻、織物業。織 物の模様が豊富 で細やかなことが 特徴。 ・棚田 ・その他の観光資 源:マイ(Mây)橋、ム オンホア(Mường Hoa) 泉等 観光客受入有り ・1993年受入開始 ・年間観光客数:27,000 人 ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、 食事サービス ・実施されたプロジェクト/政策:CAPILANO(カ ナダの組織)やSNV(オランダ政府開発機構) から支援を受けている。ハノイの大学による ホームステイ受入世帯を対象とした宿泊サー ビス提供方法等に関する研修が実施された。 ホー (Hồ) 村 人口:2,544人 面積:11,531.09ha 基準地からの距 離:25km 交通手段:自転 車、バイク、車 ・少数民族(モン 族、ヌン族、タイ 族、ザオ族)が暮 らしている。 ・ラーベー(La Ve) 滝 ・村に住んでいる 少数民族の暮ら し・文化 観光客受入有り ・1993年受入開始 ・年間観光客数:35,000 人 ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、 食事サービス・実施されたプロジェクト/政策: SNV、IPADE、WorldBread等、様々 組織からコミュニティ観光開発に関する支援 を受けている。ホー村観光管理委員会に対し ても研修が実施された。 人口:2,997人 面積:2,178 ha 基準地からの距 離:12km 交通手段:バイ ク、車 ・少数民族(モン 族、ヤイ族、ザオ 族) ・伝統手工芸: 織物 ・赤ザオ族 の薬草湯 ・ターフィン修道 院 ・ターフィンの 洞窟 ・赤ザオ族 の伝統文化 観光客受入有り ・1993年受入開始 ・年間観光客数:100,000人 ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、 食事サービス、モン族・ザオ族の絹織物クラ ブ、赤ザオ族の薬草湯 ・実施されたプロジェクト/政策:CAPILANO( カナダの組織)とハノイの大学で行ったホー ムステイ受入世帯向けの研修(テーマ:宿泊サ ービスの提供方法等)。なお、AFDやAPOLO が絹織物開発に協力している。 チュンドー (Trung Đô) 文化村 ターフィン (Tả Phìn) 村 ・管理面に困難 がある ・インフラ、技術 不足で観光基 準を満たしてい ない ・衛生、環境、景 観保護が弱い ・観光の管理 ・開拓が弱い ・観光商品が重 視されていない ・宣伝不足 ハザン(Hà Giang)省:11 村(基準地:Hà Giang 市) 18 ミーバック (My Bắc) 村 人口:717人 面積:1,578 k㎡ 基準地からの距 離:69km 交通手段:バイ ク、 車 ・火踊り祭り、 杵祭り ・絹織物業 観光客受入有り ・2007 年受入開始 ・年間観光客数:10,000人 ・観光サービス・アトラクション:地元祭りへの参 加、タクバク(Thác Bạc)水力発電所貯水池 での釣り、地元住民と労働・生産体験 ・実施されたプロジェクト/政策:SNV、HITT(観光 業向け研修プログラム)、ラオカイ観光情報セン ターの協力でホームステイ受入世帯を対象に 宿泊サービス向上のための研修が実施された。 ・村や管理委 員会の管理方 法や関心が不 十分 ・管理側と住 民との利益分 配がはっきりし ていない 観光状況の概要 観光開発上の 課題 キエム (Khiềm) 村 人口:559 人 面積:270 ha 基準地からの距 離:50km 交通手段:車、バ イク ・タイ族の文化村: タイ族の文化的 アイデンティティ、 服装、暮らし、伝 統的な工芸品や 高床式建築 ・自然景観 ・パームカーテン ・鍛錬業 ・ ク ア ン ミ ン (Quang Minh)湖 ・ タ ム ロ ム ( Thẳm Lom)洞窟 観光客受入有り ・2009 年受入開始 ・年間観光客数:2,000人 ・観光サービス・アトラクション: タイ族の伝統的 な歌・踊りを楽しむ。パームカーテン作り、鍛錬 業等地場 作業の観光、食事サービス、村散策 観光、タイ族の暮らしを体験する。 ・実施されたプロジェクト/政策:観光起業家 へ資金を貸す政策がある(ハザン省決定令 No47/2012/NQ-HĐND、14/7/2012)。観光 従事者を省・県で実施した研修 に参加させた。 芸能人・奏者を招待し、村のパフォーマンスグ ループに 伝統舞踊や歌などを教えた。 ・キエム村のタ イ族が持つ本来 の文化を失い つつある ・コミュニティ観 光への住民の 認識・理解が未 だに低い ・予算が少ない 20 ラン (Lạn) 村 人口:60 世帯 面積:128 ha 基準地からの距 離:65km 交通手段:車、バ イク ・ロントン ( Lồng Tồng) 祭り ・ ナ ン ハ イ (Nàng Hai) 祭り 観光客受入を実施していない ・実施されたプロジェクト/政策: 観光起業家へ資金を貸す政策がある。 (ハザン省決定令No47/2012/NQHĐND、14/7/2012) ・観光開発に対 する住民の認識 が未だに低い ・貧しい地域の ため観光予算 が少ない 21 ブック バン (Bục Bản) 村 人口:70世帯 面積:240 ha 基準地からの距 離:80km 交通手段:車、バ イク ・ヌン族、ザイ族の 高床式建築。 ・伝統的な民謡 (フオン歌)や伝 統祭 (ロントン祭 り、喜寿 祝い) 観光客受入有り ・2011年受入開始 ・年間観光客数:1,000人以上 ・観光サービス・アトラクション: ホームステイ、食事サービス ・実施されたプロジェクト/政策:観光起業家 へ資金を貸す政策がある。(ハザン省決定令 No47/2012/NQ-HĐND、14/7/2012) ・観光客用トイ レが整備されて いない ・観光商品開発 がない 22 ルンカム チェン (Lũng Cẩm Trên) 村 人口:63 世帯 面積:104 ha 基準地からの距 離: 100km 交通手段:車、 バ イク ・麻織物業 ・花業(バラ、玉蜀 黍 等) 観光客受入有り ・2007年受入開始 ・年間観光客数:1,500 人 ・観光サービス・アトラクション: ホームステイ ・実施されたプロジェクト/政策:観光起業家 へ資金を貸す政策がある(ハザン省決定令 No47/2012/NQ-HĐND、14/7/2012)。Bill Gate 基金によりパソコン、イン ターネット環境が 整備された。 ・観光客用トイ レが整備されて いない ・観光商品開発 がない 23 ハータン ( Hạ Thành) 村 人口:360 人 面積:128 ha 基準地からの距 離:6km 交通手段:車、バ イク ・滝の景観 ・地場産業(竹 細工、酒作り、魚 養殖) 24 フィンホー (Phìn Hồ) 村 人口:44世帯 面積:200 ha 基準地からの距 離:90km 交通手段:車、バ イク ・地場産業(銀 彫刻鍛錬、竹細 工、織物) 観光客受入を実施していない ・実施されたプロジェクト/政策:郡によって新農 村づくり兼観光村開発を行う計画が作成され た。2020年達成を目標とした2013~2015年計 画がある。 ・住民の意識・ 理解が限定的 ・観光用予算が 効果的に使われ ていない 25 ナムザン (Nấm Dẩn) 村 人口:600 人 面積:866k㎡ 基準地からの距 離:150km 交通手段:車、 バ イク ・国家文化財(ナ ムザン石路) ・棚田 ・農産物(米、蜂 蜜、 茶) 観光客受入有り ・2007 年受入開始 ・年間観光客数:1000人 ・観光サービス・アトラクション: ホームステイ、食事サービス ・観光による経 済開発効果 ・利益が見られ ない ナムダム (Nậm Đăm) 村 人口:50世帯 面積:108 ha 基準地からの距 離: 150km 交通手段:車、バ イク ・地場産業(銀 彫刻、刺繍、鍛 冶)・村集会所 の伝統的な高 床式建築。ここ で伝統工芸品 が販売されて いる。 観光客受入有り ・2011年受入開始 ・年間観光客数:1,630人 ・観光サービス・アトラクション: ホームステイ、食事、民族料理教室 ・実施されたプロジェクト/政策:観光起業家 へ資金を貸す政策がある(ハザン省決定令 No47/2012/ NQ-HĐND、14/7/2012) ・住民の意識、 理解が限定的 ・観光予算が効 果的に使われて いない 19 26 ・省の予算が限 られている ・観光による経 済開発への住 民の理解や意 識が低い 農村観光開発の対象地 特 徴 名 称 Chapter 4 基本情報 No. No. 名 称 基本情報 特 徴 27 トンチー (Thôn Chì) 村 人口:200世帯 面積:560 ha 基準地からの距 離: 100km 交通手段:車,バ イク ・祭事(タイ族のロ ン トン祭り) ・伝 統的文化行事(コ イ(cọi)の歌、イエ ウ(yếu)の歌、バッ ト(bát)踊り、カム ハイ(khảm hải) 踊り) ・地場産業(織物、 とうもろこし酒作 り等) 28 タンソン (Thanh Sơn) 村 人口:360世帯 面積:128 ha 基準地からの距 離:10km 交通手段:車,バ イク ・ナー・タム(Nà Thẳm) 洞窟 観光状況の概要 観光開発上の 課題 観光客受入を実施していない ・観光従事者の 宿泊受入・サービ ス経験が浅 い ・ホテルが観光 基準を満たして いない ・観光開発への 住民の 意識・認 識が低い ・住民の家族環 境、衛生への意 識が低い 観光客受入を実施していない ・省予算が限ら れている ・観光による経 済開発への住民 の意識が低い バックカン(Bắc Kạn)省:4 村(基準地:Bắc Kạn 市) 人口:370 人 面積:15k㎡ 基準地からの距 離:80km 交通手段:車、バ イク ・高床式住居 ・タイ族の風俗 ・習慣、 伝統文化 ・農業 ・バーべー湖(Ba Bể)での魚採り 観光客受入有り ・1994年受入開始 ・年間観光客数:8,000人 (2012年) ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、地 ・地理的に遠い 元伝統文化見学・ 体験 ・インフラが整っ ・実施されたプロジェクト/政策:保存・観光開発 ていない プロジェクトを複数 実施(38 AD, ADB, 30A, GI2 プロジ ェクト) 30 コックト ック (Cốc Tộc) 村 人口:150 人 面積:8k㎡ 基準地からの距 離:80km 交通手段:車、バ イク ・高床式住居や 一階建(階段がな い)家 ・タイ族の風俗 ・習慣、農業、信 仰祭等 観光客受入有り ・2002年受入開始 ・年間観光客数:1,200人 (2012年) ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、バ ・地理的に遠い ーべー湖観光、魚釣り、地元住民との活動体験 ・インフラが整っ ・実施されたプロジェクト/政策:保存・観光開 ていない 発プロジェクトを複数実施(38 AD, ADB, 30A, GI2 プロジェクト) 31 ナムザイ (Nặm Dài) 村 人口:120 人 面積:15k㎡ 基準地からの距 離:82km 交通手段:車、バ イク ・チントゥオン(粘 土や白岩で建て れらた山岳地帯 の伝統的な家) ・モン族の文化 観光客受入有り ・2007年受入開始 ・年間観光客数:700人(2012年) ・観光サービス・アトラクション:トレッキング、地 中心部から遠く 元文化見学、体験 アクセスが悪い ・実施されたプロジェクト/政策:保存・観光開発 プロジェクトを複数 実施(38 AD, ADB, 30A, GI2 プロジェクト) ボールー (Bó Lù) 村 人口:130 人 面積:8k㎡ 基準地からの距 離:85km 交通手段:車 ・湖の近くの高床 の家 ・タイ族の風俗 ・習慣、農作業、 信仰祭り 観光客受入有り ・1999年受入開始 ・年間観光客数:2,000人 (2012年) ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、地 ・地理的に遠い 元文化・風俗・習 慣見学、体験 ・インフラが整っ ・実施されたプロジェクト/政策:保存・観光開発 ていない プロジェクトを複数 実施(38 AD, ADB, 30A, GI2 プロジ ェクト) パックゴイ (Pắc 29 Ngòi) 村 32 タイグエン(Thái Nguyên)省:3 村(基準地:Thái Nguyên 市) タンクオン (Tân 33 Cương) 茶村 口:5,000人」面 積:15k㎡ 基準地からの距 離:13km 交通手段:バス、 車、バ イク ・タンクオン茶畑 観光客受入有り ・2007年受入開始 ・年間観光客数:10,000人 ・観光サービス・アトラクション:茶畑見学、茶の 収穫見学、伝統茶畑の見学、お茶と伝統音楽の サービス、食事サービス ・実施されたプロジェクト/政策 : タイグエン茶フ ェスティバル(2 年 毎)、CIDA コミュニティ観光 開発モ デル事業が実施されている。 ・サービスが開 発されていない ・観光ツアーが ない ・旅行会社との 連携の効果が 現れていない ・資金不足 ・インフラ不足 No. 特 徴 クエン (Quyên ) タイ族文 化村 人口:160 人 面積:10 ha 基準地からの距 離:40km 交通手段:バス、 車、バイク ・タイ族の伝統的 高床式住居 ・クエン村の伝統 的な生活道具 ・伝統的な歌、踊 り(ルオン(Lượn) の歌、コイ(Cọi)の 歌、チャウ(Chầu) 踊 り ) ・ テ ィ ン (Tính)楽器・伝統 遊び ラーバン ( La Bằng) 茶村 人口:3,000人 以上 面積:17.95k㎡ 基準地からの距 離:35km 交通手段:車、バ イク、 バス ・ティエンサー (Tiên Sa)泉 ・ケムラーバン (Kẹm La Bằng) 泉 ・チョン(Trơn)泉 観光状況の概要 観光開発上の 課題 観光客受入を実施していない ・文化村の価値の 維持・保存と開発 に関わる問題 ・インフラ状況が 観光客受入基準 を満たしていない ・農村観光開発の ための予算不足 ・観光客、マーケ ットがない ・旅行会社との連 携がない 観光客受入を実施していない ・観光サービスが 開発されていない ・観光ツアーが ない ・旅行会社との連 携に効果が現れ ない ・資金やインフラ 不足 ・省の主要観光 地から遠い ランソン(Lạng Sơn)省:1 村(基準地:Lạng Sơn 町) 36 クインソン (Quỳnh Sơn) コミュニテ ィ観光村 人口:1,844人 面積:14.7k㎡ 基準地からの距 離:70km 交通手段:車、バ イク ・自然景観(石灰 岩の山、田園、山、 洞窟) ・伝統的高床式 住居 ・タイ族の伝統的 文化・歴史 ・文化遺跡(クイン ソン(QuỳnhSơn) の集会所、ザジ エン(Rá Riềng) 橋、大樹、ティエン (Tiên)井戸及び伝 説) ・瓦産業 観光客受入有り ・2010年受入開始 ・年間観光客数:300人 ・観光サービス・アトラクション: ホームステイ、食事、瓦つくりの村見学、各民族 の農業見学や体験、原 生林見学など ・実施されたプロジェクト/政策:省観光局の支 援を受けている。 ・農業の時期に 左右される ・農村開発計画 の枠組みがない ・農村観光活動 のモデルを調整 する必要がある バクザン(Bắc Giang)省:1 村(基準地:Bắc Giang 市) 37 トーハ (Thổ Hà ) 村 人口:3,500人 以上 面積:20ha 基準地からの距 離:25km 交通手段:車、船 ・村集会所、寺、 伝統 的家屋 ・伝統焼き菓子 ・ クアンホー歌芸能 ・陶器 観光客受入有り ・1998 年受入開始 ・年間観光客数:1,000人 ・観光サービス・アトラクション: 焼き菓子工房見 学、菓子作り体験、セラミックものづくり体験 ・実施されたプロジェクト/政策:具体的なプログ ラムはないが、観光 地でのプロモーション活動 を複数回行っている。 ・農村観光がま だ普及していな いため、観光客 を多く誘致でき ていない ヴィンフック(Vĩnh Phúc)省:1 村(基準地:Vĩnh Phúc 市) 38 ダオトゥト ゥオン (Đạo Trù Thượng) 村 人口:2,000人 面積:0.8k㎡ 基準地からの距 離:30km 交通手段:車 ・人口の90%がサ ンジウ族 ・複雑な河川景 観があり、ホーム ステイやトレッキ ングコースを開発 できる可能性が ある 観光客受入を実施していない ・実施されたプロジェクト/ 政策:文化観光開発の一環として、遺産保存セ ンターおよび建築博物館建設のコンサルタント 委託を行っている。 ・サンジウ族の伝 統文化の保存の 問題 ・計画・プロジェ クト立案の方法 について バックニン(Bắc Ninh)省:3 村(基準地:Bắc Ninh 市) スアンライ (Xuân 39 Lai) 竹村 人口:3,200人 面積:285k㎡ 基準地からの距 離:30km 交通手段:車 ・有形・無形文化 財(集会所、寺、 祭り) ・竹製品(絵、テー ブ ル、椅子等) ・実施されたプロジェクト/ 政策:2030年までの観光開発計画 ・一定規模の観 光地に開発する ための資金(投 資)を集められ ない ・予算 農村観光開発の対象地 35 基本情報 Chapter 4 34 名 称 No. 観光状況の概要 観光開発上の 課題 名 称 基本情報 特 徴 40 ジエム (Diềm ) 村 人口:3,161人 面積:170 ha 基準地からの距 離:6 km 交通手段:車 ・有形・無形文化 財(集会所、寺、 祭り) ・郷土料理(バイ ンカック(bánh khúc)、バインテ ー(bánh tẻ) ・一定規模の観 光地に開発する ・実施されたプロジェクト/政策:2030年までの た め の 資 金 ( 投 資)を集められ 観光開発計画 ない ・予算 41 フーラン (Phù Lãng) 陶器村 人口:2,960人 面積:300 ha 交通手段:車 ・ヴィンフォック寺 (Vĩnh Phúc) ・集会所、寺 ・陶器作り ・実施されたプロジェクト/政策 : 2030年までの 観光開発計画 ハイズオン(Hải Dương)省:2 村(基準地: Hải Dương 市) アンズオン (An 42 Dương) 市 ホンフォン (Hồng 43 Phong) 村 人口:2,000人 面積:1.5k㎡ 基準地からの距 離:30km 交通手段:車、バ イク 人口:7280人 面積:6,74k㎡ 基準地からの距 離:30km 交通手 段:車、バイク ・自然景観 ・文化遺産: 水上人形劇 観光客受入有り ・1994年受入開始 ・年間観光客数:15,000人 ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、ア ンズオン湖およびチウドン湖での魚釣り、食事 サービス、24時間サービス、散歩や自転車での 景観めぐり、市場、ホイエン菓子工房見学、菓 子作り体験 ・実施されたプロジェクト/政策:ハイズオン省人 民委員会によってダオコーエコツーリズムエリ ア(タンミエン区チランナム村開発プランが 採 択。省観光局によって“2020年に向けたダオコ ーコミュニティ観光”モデル開発が進められる 予定。 ・ハイズオン省に農 村観光開発のため の政策やプログラ ムがない・技術や投 資、インフラ整備、 観光商品の品質向 上を進めることが困 難・観光サービス管 理のための行政シス テム、規程・政策を まとめられていない・ 村ごとに観光開発の 規程や計画を立案 することが難しい・農 村観光開発を進め るための住民への啓 発、普及、広報活動 が不十分・観光分野 の人材不足 観光客受入有り ・2006年5 月受入開始 ・年間観光客数:4,000人 ・観光サービス・アトラクション:遊歩道からの景 観観光、バンヤンツリー、集会場、ニンザン郡観 光、黒もち米農業見学、体験、伝統食事サービ ス ・実施されたプロジェクト/政策: 観光局による“ 水上人形劇再現”プロジェクトが実施。JICA、 観光総局、観光開発研究所によって、2012年 にホンフォン水上人形劇展示館が建設された。 また、観光局による人形づくり職人、水上人形 劇関係者への研修が定期的に実施されてい る。 ・観光開発のための 政策やプログラムが ない・技術や投資、 インフラ整備、観光 商品の品質向上を 進めることが困難 ・ 観光サービス管理の ための行政システ ム、規程・政策をま とめられていない ・ 村ごとに観光開発の 規程や計画を立案 する ことが難しい ・ 農村観光開発を進 めるための住民への 啓 発、普及、広報活 動が 不十分 ・観光 業従事者の人材 不 足、基礎的な訓練を 受けていない ・職人 や芸能人の高齢化 と経験値のみで劇を 継続していること ・水上人形劇継承者 がいない タイビン(Thái Bình)省:2 村(基準地:Thái Bình 市) 44 ドンサム (Đồng Xâm) 銀彫刻村 人口:6,050人 面積:639.7 ha 基準地からの距 離:15km 交通手段:車 ・農特産品 ・銀彫刻品、装飾 品 ・ドンサム祭り や行事(カチュー (Ca trù)歌、チェ オ(chèo)歌、チャ イ (trải)泳 ぎ 、 人 間チェス) ・ドンサム寺およ びチャンホ王朝 建築 観光客受入を実施していない ・実施されたプロジェクト/政策:タイビン省は地 域振興プログラムに重点を置いており、同プロ グラムの第1-2フェーズにてタイビン省内電力 供給システムの改善、農村支援および従事者 への研修を支援する予定。また他省の工芸職 人を招いて技術研修等を実施したい企業への 支援 等を行っている。 ・インフラ不足、 質の 低さ ・交通手段の質 の低さ、宿泊施 設がないこと ・村工芸に対す る研修が実施さ れない ・工芸村 開発への包括 的な計画がな く、突発的に実 施されている 名 称 基本情報 45 グエ ンサー (Nguyên xá) 村 人口:7,990人 面積:426.7ha 基準地からの距 離:10km 交通手段:車 特 徴 観光状況の概要 観光開発上の 課題 ・水上人形劇 ・特産品(バイン カイ (Bánh Cáy) 観光客受入を実施していない ・実施されたプロジェクト/政策:地方行政に対 し、地方における観光開発への理解、農村観光 の規程の作 り方などの研修を実施している。 ・インフラ整備の ための投資 ・文化観光開発 を進めるために は、伝統的な民 俗文化を復元し なくてはいけない ニンビン(Ninh Bình)省:2 村(基準地:Ninh Bình 市) 人口:3,915人 面積:756ha 基準地からの距 離:7km 交通手段:車 フーロン (Phù Long) 集落 人口:1,300人 面積:110ha 基準地からの距 離:15km 交通手段:車、バ ス、バ イク 48 ヴィエット (Việt Hải) 村 人口:282人 面積:6,839.4k㎡ 基準地からの距 離:70km 交通手段:船、自 転車、バイク 49 バオハー (Bảo Hà) 村 50 ニャン ムック (Nhân Mục)村 47 ・観光地タムコ ック ・伝統的なレー ス刺繍 観光客受入有り ・1990年受入開始 ・年間観光客数:データなし ・観光サービス・アトラクション:タムコック観光、 ビックドン(Bích Động)観光、伝統レース刺繍 村見学・体験 ・実施されたプロジェクト/政策: タムコック・ビックドン観光エリア関連の計画 ・省指定文化財 (集会 所および フーロン寺) 観光客受入有り ・1990年受入開始 ・年間観光客数:43,100人(2012年) ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、農 業体験、地元住民 の生活見学 ・実施されたプ ロジェクト/政策 : 省人民委員会は同省建設局 に対し、ホームステイのモデルハウスを建設し て観光客を誘致した。文化スポーツ観光局は ヴァンロンエコツーリズムエリアのホームステイ 事業開発計画を立案、同計画にフーロン村も 含まれている。 ・ホームステイ サービスの質が 低い ・住民の外国語 能力が低い ・ホームステイ サービスが具体 的にどのような ものか学ぶ機会 がなく、質にばら つきがある ハイフォン(Hải Phòng)市:3 村(基準地:ハイフォン市) ・エコツーリズム とコミュニティ 観光 観光客受入有り ・1994 年受入開始 ・年間観光客数:9,000人(2009年) ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、農 業体験、食事サービス ・実施されたプロジェクト/政策 ・立地が悪く投 資 ・開拓が難しい ・インフラや設備 不足 人口: 246 人 面積:6.1407k㎡ 基準地からの距 離:35km 交通手段:車 ・彫刻村及び 人形劇 観光客受入有り ・1990 年受入開始 ・年間観光客数:データなし ・観光サービス・アトラクション:彫刻体験 ・管理面につい て、彫刻村は計 画性をもってで きたものではな いため、訪問先 が散在している 人口:5,350人 面積:4.114k㎡ 基準地からの距 離: 交通手段:バイ ク、車 ・水上人形劇 及び人形作り 観光客受入有り ・1995年受入開始 ・年間観光客数:240人 ・観光サービス・アトラクション:人形作り体験お よび水上人形劇鑑賞 クアンニン(Quảng Ninh)省:6 村(基準地:ハロン市) 51 イェン ドゥック (Yên Đức)村 人口:5,000人 面積:10k㎡以上 基準地からの距 離:70km 交通手段:車 ・カイン山革命 遺跡 ・カインフオン (Cảnh Huống) 寺(チャン王 朝時 代の寺) ・クアンホー歌 ・水上人形劇 ・遺跡:教会 52 ディエン コン (Điền Công)村 人口:1,980人 面積:1,246k㎡以上 基準地からの距 離:40km 交通手段:バイク、 車 ・歴史文化財: デンコン(Đền Công)集会所 ・ロンカン(Long Khánh)寺 観光客受入有り ・2011 年7月受入開始 ・年間観光客数:900人(2012年) ・観光サービス・アトラクション:村見学、カインフ ォン寺観光、地元住民との交流、73の遺跡め ぐり、クアンホー歌鑑賞、食事サービス、農業体 験、野菜収穫、ガーデニング、魚釣り、ほうき作 り、菓子作り体験 等 ・実施されたプロジェクト/政策:Webサイト(Indochina Junk)への掲載、英語 ・ホスピタリティ・コミュニティ観光に関する研 修の実施 ・電力供給が弱 く、エアコン、湯 沸かし器等の観 光客のニーズに 応えられない ・道路が悪い 観光客受入有り ・2000 年受入開始 ・年間観光客数:6,000人 ・観光サービス・アトラクション:デンコン(Đền Công)集会所観光 ・電力供給が弱 く、エアコン、湯 沸かし器等の観 光客のニーズに 応えられない ・道路が悪い 農村観光開発の対象地 46 ヴァンラム (Văn Lâm) 集落 Chapter 4 No. No. 観光開発上の 課題 名 称 基本情報 特 徴 観光状況の概要 53 ケ1・2 (khe1・2) 村 人口:958 人 面積: 1,784.27ha 基準地からの距 離:50km 交通手段:バイ ク、車、自転車 ・詩歌 ・伝統音楽 ・赤ザオ族の生活 ・風俗観光 ・ザオ族の薬草 風呂 観光客受入有り ・2002 年受入開始 ・年間観光客数:1,000人 ・観光サービス・アトラクション: 薬草風呂 ・実施されたプロジェクト/政策:赤ザオ族薬草 風呂ブランドの設立、ザオ族の伝統祭りの復興 54 フンホック (Hưng Học) 村 人口:5400人 面積:9k㎡ 基準地からの距 離:40km 交通手段:車、バ ス、船 ・15世紀に建てら れた古い街並み ・独特な生活様 式、文化、祭事 ・伝統的な魚捕 獲網工芸 観光客受入有り ・2013年受入開始 ・実施されたプロジェクト/政策:クアンイェン人 民委員会がフンホック工芸村観光開発プラン を立案。 ・観光および工 芸村への投資 企業がない ・観光業者との 連携が ない ・ハロン湾に続 く石山や水上生 活の風景 ・中国の輸出入 拠点港として 栄えたため、陶 器等の文化財 が多く残されて いる ・チェオ歌やハ ロン地 域に伝わ る結婚式で新 婦のために歌わ れた 伝統音楽 観光客受入有り ・2008 年4月受入開始 ・年間観光客数:6,700人(2008年)、24,000人 (2009年)、36,300人(2010年)、84,000人(2011 年)、85,000人 (2012年) ・観光サービス・アトラクション:コミュニティ観光“ 漁業の体験”プログラム、“コミュニティの利益の ための責任観光”プログラムなど。漁師1日体験 として、伝統的なボートに乗って村を訪問、食事 サービス、漁業体験、養殖モデル地区観光、伝統 家屋訪問、葉を使った絵画・絵葉書作成クラス、 漁村の歴史展示館見学など。 ・実施されたプロジェクト/政策:Van Chaiハロン サービス観光村プログラム“コミュニティの利益 のための観光”と協力、Indochina Junk社による“ 緑のハロン湾”プログラムの実施、ハノイHandin-hand旅行会社によるプログラムによってプラ スチックを使わない浮き輪が村住民に提供され た。EXOTISSIMOベトナム旅行社により”持続的 なハロン湾”プログラムが実施、Indochina Junk 社からは幼稚園設立が支援された。Bhayaク ルーズ社から小学校の建設支援、KAMBAILA Australiaによって各学校の修復支援が実施さ れた。その他、EXOTISSIMOベトナム旅行社より LENOVOパソコンの供与、“漁村の子どもたちへ のパソコン教室”プログラムが実施された。 ・地域観光開発 としての基本的・ 一般的な戦略/ 計画、漁村の文 化観光開発、ハロ ン湾観光開発と しての戦略的 な 計画という視点 が欠如しており、 また各専門機関 の任務が明確で ない ・漁村の建築計 画や区画整備計 画の欠如 ・伝統的な漁村と して の文化価値 の維持・向上のた めの支援がない ・観光客受入に 係るホスピタリテ ィ、コミュ ニケーシ ョンスキル、受入 姿勢等に関する 住民への研修の 機会がない ・ハロン湾につづ く石山や水上生 活の風景 ・バーメン(Bà Men)寺、カウバ ン(Cậu Vàng) 寺、バーハム(Ba Hầm)湖、ティ エ ン オ ン (Tien Ong)洞窟 ・チェオ歌やハロ ン地域に伝わる 結婚式で新婦の ために歌われた 伝統音楽 ・ハンチャイ半 島、ゴック山に伝 わる伝説 観光客受入有り ・2008年4月受入開始 ・年間観光客数:2,500人(2008年)、2,650人 (2009年)、3,900人(2010年)、4,100人(2011年) 、4,000人(2012 年) ・観光サービス・アトラクション:参加型“コミュニテ ィの利益のための 観光”プログラム。伝統的なボ ートに乗って村を訪問、養殖モデル地区観 光、伝 統家屋訪問、葉を使った絵画・絵葉書作成クラス 参加などがある。クアバン文化館、ティエンオン 洞窟、チェオ歌鑑賞。 ・実施されたプロジェクト/政策 : Van Chai ハロン サービス観光村プログラム“コミュニティの利益の ための観光”と協力、Indochina Junk社に よる“ ハロン湾緑化”プログラムの実施、EXOTISSIMO ベトナム旅行社により”持続的なハロン“プログラ ムが 実施、Indochina Junk社からは幼稚園設立 が支援された。Bhayaクルーズ社から小学校の 建設支援、KAMBAILA Australiaによって各学校 の修復支援が実施された。ハロン市文化スポー ツ観光局による芸術研修 も実施された。 ・地域観光開発と しての基本的・一 般的な戦略/計 画、漁村の文化 観光開発、ハロン 湾観光開発とし ての戦略的な計 画という視点が 欠如しており、ま た各専門機関の 任務が明確で な い・漁村の建築計 画や区画整備計 画の欠如 ・伝統的な漁村と して の文化価値 の維持・向上のた めの支援がない ・観光客受入に 係るホ スピタリテ ィ、コミュニケーシ ョンスキル、受入 姿勢等に関する 住民への研修の 機会がない ブンビエン (Vung 55 Viêng) 漁業村 56 クアバン (Cửa Vạn) 漁村 人口:324人 面積:16ha 基準地からの距 離:16km 交通手段:クルー ズ、カ ヌー、船 人口:686人 面積:23ha 基準地からの距 離:20km 交通手段:クルー ズ、カ ヌー、船 No. 名 称 基本情報 特 徴 観光状況の概要 観光開発上の 課題 ハノイ( Hà Nội)市:2 村(基準地:ハノイ市中心部) 人口: 8,329人 面積: 7.87 ha 基準地からの距 離:50km アクセス手段: 車、バイ ク、バス ・昔ながらの伝統 価値が残る希少 な北部の古い村。 ・歴史・文化・建 築の遺跡が50 以 上、伝統祭が多 数ある。 ・伝統家屋117軒 の内、100~400 年の家屋が37軒 ある。 ・地場産業や特 産品(chè lam, chè kho等)が多 くある。 観光客受入有り ・2004年受入開始 ・年間観光客数:60,000人 ・観光サービス・アトラクション: 陶器の市場の見学、陶器作り体験、 陶器の購入 観光客受入有り ・2005年受入開始 ・年間観光客数:13,800人(2008年)、27,370 人(2009年)、37,930人(2010年)、57,453人 (2011年)、70,112人(2012年) ・観光サービス・アトラクション: ディン、伝統家屋、お寺、帝廟などの見学 ・実施されたプロジェクト/政策: ドンラム村の伝 統家屋の修復や観光開発にJICAが協力して いる。 ・文化財保存と 住民の生活環境 の維持のバラン スに課題がある タインホア(Thanh Hóa):1 村(基準地:Thanh Hóa市) 59 ハン (Hang) 村 人口: 274人 面積:1,300 ha 基準地からの距 離:160km アクセス手段: 車、バイ ク、自 転車 ・フーロン(Pù Luông)自然保 存地域の中にあ る。 ・タイ族が居 住する地 域で、 カップ(Khặp)舞 踊がある。 ・竹細工、織物 の地場 産業 ・ 自然景観が綺 麗:村に沿って いる岩山(Pù Luông山)、涼し くて、フレッシュ な空気、夏 に涼 しくて、冬に温か い泉、棚田、洞 窟、植 物系が多 様で、豊富な 原 生森等。 観光客受入有り ・2004年受入開始 ・年間観光客数:150~300人 ・観光サービス・アトラクション: ホームステイ、釣り、山登り、農業体験等 ・実施されたプロジェクト/政策:タインホア省 観光局とクアンホア(Quan Hóa)郡の協力に より、地元の行政、住民を対象に観光開発・管 理の業研修を実施している。WorldVisionによ りインフラ整備や技術支援が実施された。 ・観光向けの人材 が不足 ・環境衛生への意 識が弱い ・観光サービスの数 が少なく、質が低い ・観光商品が乏 しい ・竹細工や織物等 の地場産業復興 に課題がある ・観光開発に取り組 む世帯数が少ない ・観光の宣伝が効 果的でない ・観光用のインフ ラ整備に分配され る予算が少ない ・観光開発・管理 にかかる、各機関 の協力が十分で ない タインホア(Thanh Hóa):1 村(基準地:Thanh Hóa市) 59 シエン (Xiềng) 村 人口: 750 人 面積: 614 ha 基準地からの距 離: 120km アク セス手段:車 ・少数民族タイ (Thái)族を見学 するコミュニティ 観光 ・古いタイ族の 村、タイ族文化 観光村、織物 産業 観光客受入有り ・2005年受入開始、2008年増加 ・年間観光客数:200人 ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、 ・予算不足 地 元 の 特 産 ( Giăng川 の Mát魚 ) で 食 事 、 古 いタイ族村見学、地場産業の見学。フーマット (Pù Mát)国実公園の訪問やKhe Kèm滝の見 学も可能。 農村観光開発の対象地 58 ドンラム (Đường Lâm) 人口: 8,500人 面積:164 ha 基準地からの距 離:12km アクセス手段: 車、バイ ク、バス Chapter 4 57 バット チャン (Bát Tràng ) ・バットチャン窯 業村 ・歴史・文化財( ディン、ヴァンチ ー(Văn Chỉ)寺、 バットチャン寺、 ティウザオ(Tiêu Dao)寺、バット チャン聖母殿、 ヤンカオ(Giang Cao)廟) ・工業化、手工業、 サービス・観光業 へ移しているが持 続的ではない ・成形された観光 サービスは自発的 で水準が低い ・インフラ整備に 予算が投入され ているが、事業に 統一性がない ・地元の行政、旅 行会社、産業村の 職人の協力が円 滑でないため、伝 統産業村の長所 や潜在性が活か せていない No. 名 称 基本情報 特 徴 観光状況の概要 61 ホア ティエン (Hoa Tiến) 村 人口: 700 人 面積: 220 ha 基準地からの距 離: 165km アクセス手段:車 ・地場産業(織物) ・タイ族の伝統、 生活文化 ・Bua洞窟の見 学、クイチャウ (Quỳ Châu)民族 博物館の見学 観光客受入有り ・1996 年受入開始 ・年間観光客数:100人 ・観光サービス・アトラクション: 産業村の観光、 祭り、タイ族の特産 料理の名詞等 人口: 13,000 人 面積: 15,002 ha 基準地からの距 離: 15km アクセ ス手段: 車 ・歴史・文化観光 ・国家歴史財、特 にホーチミン主席 を記念する遺跡 (ホーチミン主席 の関係者や親族 等のお墓や遺跡 など) ・伝統の味噌作り 村(ナムダン(Nam Đàn)の味噌) 観光客受入有り ・1980年受入開始 ・年間観光客数:150 万人 ・観光サービス・アトラクション: 歴史、文化、精 神的な観光、地場産業の訪問、地域の料理を 楽しむ ・実施されたプロジェクト/政策:ゲアン省はキ ムリエン観光開発プロジェクトのPMUを設立 し、ランセン(Làng Sen)遺跡地域のマスター プランを作成させたり、周辺部の工事を完了さ せたりする。 62 キムリエン (Kim Liên) 村 観光開発上の 課題 ・文化・政治に 鋭敏な地域で 制限が多い。そ のため観光業 に関連する企業 はビジネスの拡 大・多様化をし にくい。 ハティン(Hà Tĩnh)省:3 村(基準地:ハーティン市) ・18世紀、タンロン 城に次ぐ文化拠 点であった。 ・登録されている 歴史財10箇所の 内、国家歴史財3 箇所、省歴史財7 箇所ある。 ・長い歴史を持 つ、8つの有名な 景観 ・ハットビ(Hát ví) (民謡の一種) 観光客受入を実施していない ・実施されたプロジェクト/政策:30/7/2009に ハティン省の観光局による「チュオンルウ村の 文化財調査」提案書が決裁。グエン・フィ・ミー 学者が主任する提案書で、6テーマがある。 ・チュオンルウ村の形成・発展過程 ・文化財の現状 ・無形文化財の現状 ・著名人 ・保存や文化観光開発の方針 チュオン ルウ (Trường Lưu) 村 人口: 3,000人 面積: 412 ha 基準地からの距 離:30km アクセス手段: 車、バイ ク 64 カム・ ヌオン (Cẩm Nhượng) 村 人口: 6,000 人 面積:138ha 基準地からの距 離:34km アクセス手段: 車、バイ ク ・昔からのヌッ クマム(nước mắm) 作り 観光客受入有り ・2000 年受入開始 ・年間観光客数:データなし ・観光サービス・アトラクション:ヌックマム作り を見学、購入 ・実施されたプロジェクト/政策:19/8/2013 に 省人民委員会はカム・ヌオンのヌックマムを地 場産業として認定。(No 2570/QĐ-UBND ) 65 タイ・ イエン (Thái Yên) 木工村 人口:5,500 人 面積:52.95ha 基準地からの距 離: 38km アクセス手段: 車、バイ ク ・木工村 観光客受入を実施していない 63 ・村や周辺のイ ンフラ、サービス システムが制限 されている。 ・住民の観光へ の参加に慣れて いない。観光サ ービスの開発が 難しい。 ・観光資源があ る地域の行政や 住民が観光に 参加するための 準備がされてい ない。 クアンチ(Quảng Trị)省:1 村(基準地:Đông Hà 市) 66 クル (Klu) 村 人口:674 人 面積:1,231ha 基準地からの距 離:50km 交通手段:車 ・有形・無形文化 財:工芸品、伝統 音楽、伝統楽器、 ヴァンキエウ族の 伝統儀式 ・景観(クル温泉、 ダクロン自然保 護地区) ・少数民族(ブル 族、ヴァンキエウ 族) 観光客受入を実施していない ・実施されたプロジェクト/ 政策:“クルの伝統的な少数民族 ・ダクロン区ダクロン集落のヴァンキエウ族支 援を通じたメコン川流域観光開発プロジェク ト”が実施。 ・潜在的な資源 を有効に活用で きていない ・観光商品が乏 しく魅力がない ・省都とのアクセ スが悪い ・住民の文化水 準が低い ・観光に適したイ ンフラが整備さ れていない No. 名 称 基本情報 特 徴 観光状況の概要 観光開発上の 課題 トゥアティエンフエ(Thừa Thiên Huế)省:5 村(基準地: Huế 市) 69 70 71 ドイ (Dỗi) 集落 タイント アン (Thanh Toàn ) 村 フクテ ィック (Phước Tích) 村 人口:260 人 面積:1.8k㎡ 基準地からの距 離:62km 交通手段:車 ・人的資源(伝 統祭事が多い 独特な地域文 化、郷土料理、 伝統工 芸村) ・自然資源(原 始林、Poong 滝、温泉、山岳 地帯とタオイ (Ta Oi)族の伝 統的家屋の景 観) 観光客受入有り ・2011 年受入開始 ・年間観光客数:100人以上 ・観光サービス・アトラクション:フアでのホーム ステイ(施設・インフラに鑑み上限20名程度)、 食事サービス(食事担当グループは安全面、調 理実習等の研修を受けた者)、山岳村体験、自 転車レンタル、Abia岳でのトレッキング、Dzeng 織物工芸、編み物村、地元住民との交流・キャ ンプファイヤー ・実施されたプロジェクト/政策 : ADB による“ メコン川流域観光開発プロジェクト”が実施。 ・地元住民が 観光業に積極 的ではないこ とが観光業者 や観光受入に 影響している 人口:510人 面積:5,030k㎡ 基準地からの距 離:62km 交通手段:車 ・果樹園見学 ・滝 ・湧泉探索 ・サンゴ礁 ・食事 ・音楽 ・グオル族 の伝統家屋での ホームステイ ・ハーブガーデン ・工芸品 観光客受入有り ・2004年受入開始 ・年間観光客数:100人以上 ・観光サービス・アトラクション:果樹園見学、 滝、湧泉探索、サンゴ礁、食べ物、音楽パフォ ーマンス、グオル族の伝統家屋でのホームス テイ、ハーブガーデン、工芸品 ・実施されたプロジェクト/政策:フエ人文社会 科学センター主催 EDF 支援による“バックマ ー自然公園内3集落を対象としたエコツーリズ ムコミュニティ活動を通した生計向上支援お よび生態系保存プロジェクト” 人口:3,340人 面積:270.6ha 基準地からの距 離:7 km 交通手段:車、自 転車、バイク ・人的資源:伝統 祭事(地域祭、ボ ートレース、バイチ ョイゲーム等)が 多 い独 特 な 地 域 文化、稲作(米舞 の歌)特徴のある 郷土料理、伝統 工芸(ノン笠、バ インテト)、教会お よび 歴史的建造 物(Phu Ton That Thuyet集会所等) ・壮大な村の景観 観光客受入有り ・2004 年受入開始 ・訪問客数:50-100人/日 ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、 食事サービス、農業体験、バインテトづくり体 験、ノン笠づくり体験、ボート漕ぎ ・実施された プロジェクト/政策:2012年からJICAの支援を 受けている。 ・地元住民の観 光に対する意識 はさほど高くな く、多くの観光客 や観光業者を 受け入れるまで にキャパシティ を広げられてい ない 人口:320 人 面積:12.5ha 基準地からの距 離:40km 交通手段:車、バ イク ・2009年に文化 財として認定、24 棟の古家(アンテ ィーク家財を含む) に住民が今でも 暮らしている。 ・伝統的な陶器は 16世紀、500年以 上前のもの。 ・伝統祭事、チャ ンパ 遺跡(カイチ 廟、クアンテ廟) ・自然景観(船、オ ロ 川) 観光客受入有り ・2011 年受入開始 ・年間観光客数:500人 ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、 伝統家屋訪問、陶器見学、陶器づくり体験、 伝統菓子作り体験、食事サービス、オロ川での ボート漕ぎ、ミースエン(My Xuyen) 文化村へ のサイクリング、 ・実施されたプロジェクト/政策:2012年から JICAの支援を受けてい る。 ・観光サービス からの収入は、 若者が村で働 く動機になるほ どは得ることが できない ・フクティック陶 器は昔の陶器 村を再現でき るほど消費され ていな い 農村観光開発の対象地 68 ア・フア (A Hưa) 村 人口:279 人 面積:2.1 k㎡ 基準地からの距 離:82km 交通手段:車 Chapter 4 67 アカ‐アチ (A Ka – A Chi) 村 観光客受入有り ・2011年受入開始 ・年間観光客数:100人以上 ・観光サービス・アトラクション:アカ‐アチでのホ ームステイ(施設・インフラに鑑み上限20名)、 食事サービス(食事担当グループは安全面、調 理実習等の研修を受けた者)、山岳村体験、自 転車レンタル、原生林と温泉、Dzeng織物工 芸、編み物村、地元住民との交流・キャンプファ イヤー ・実施されたプロジェクト/政策 : ADBによる“メ コン川流域観光開発プロジェクト”が協力。 No. 名 称 基本情報 特 徴 観光状況の概要 観光開発上の 課題 ダナン(Đà Nẵng)市: 5 村(基準地:ダナン市) 72 73 74 75 76 カム・ネー (Cẩm Nê) 村 ホア バック (Hòa Bắc) 村 K20 村 フォンナム (Phong Nam) 村 トゥイ・ ロアン (Túy Loan) 村 ・茣蓙織りの伝 統産業が有名。 丈夫で、工夫さ れた商品。 観光客受入有り ・1994年受入開始 ・年間観光客数:500人 ・観光サービス・アトラクション:サイクリングツ アー、茣蓙織り工程 の見学、職人との交流。 ・実施されたプロジェクト/政策: ダナン市全体 の地場産業維持・拡大のためのプロジェクトに より支援されている。 ・資金、材料 源、市場範囲 において、産 業村の維持 ・拡大に障害 が多い ・風景が綺麗な 場所で雰囲気が 都会と異なる。ク デ(Cu Đê)河沿 いに農村や林、 自然の泉が多く ある(モ(Mơ)泉、 ダウ(Dâu) 泉) ・クデ河上流の 滝でのエコツーリ ズム・少数民族 カトゥ族の暮らし 観光客受入有り ・1994年受入開始 ・年間観光客数:500人 ・観光サービス・アトラクション:ボートトリップ。 サトウキビ畑、田んぼ、カトゥ少数民族村への 見学、伝統舞踊の見学、カトゥ族の生活体験。 ・認知度が低い ・交通が不便 人口:3,000人 以上 面積:4k㎡ 基準地からの距 離:5 km 交通手段:車、 列車 ・革命歴史遺跡 の村、国家歴史 財に指定され ている。 観光客受入有り ・2000年受入開始 ・年間訪問団対数:1,500人 ・観光サービス・アトラクション:歴史記念館を 訪問し、K20革命の英雄を知る。トンネルの 見学、グエン族祠堂の見学等。 ・実施されたプロジェクト/政策: K20の革命拠 点地区の管理・活用についてダナン市の人民 委員会による規定が決められた。地場産業を 活用したサービスなどコミュニティ観光向けの 農村観光サービスの成形もされている。 ・インフラは観 光客の要求を 満たしていない ・観光客に対応 する人材が少 ない 人口: 12,670人 面積:0.42 k㎡ 基準地からの距 離:10km 交通手段:車 ・ベトナム伝統 農村の特徴が 残る希少な農 村 の一つ。 ・集会所、お寺、 廟、祠堂、田舎 の学校、フォ ンナム(Phong Nam)市場など 伝統建築の建 造物がある 観光客受入有り ・1994年受入開始 ・年間訪問団対数:500人 ・観光サービス・アトラクション:水牛飼いの祭、 豊作祈願、農業豊作祭りへの参加、貝の養殖 が盛んな集落の見学、タイアン(TâyAn)川の 船着場にある大樹の下の神聖な祠の見学。 ・実施されたプロジェクト/政策: コミュニティ 観光に基づいた観光サービス、地場産業サー ビスが成形されている。 ・伝統家屋が 老朽化 ・羊飼いの祭り が衰退 した 人口:14.520人 面積:18,54k㎡ 基準地からの距 離:15km 交通手段:車、 列車 ・500年以上前 にレタントン(Lê Thánh Tông)王 朝時代の5名の 役人により開墾 さ れた村 ・ダナン市で一 番長くライスペー パー作る伝 統を 持つ ・国家文化財に 指定 観光客受入有り ・1990年受入開始 ・年間訪問団対数:1,000人 ・観光サービス・アトラクション: 陰暦1月9日に 開催されるトゥイロアン(Túy Loan)祭りに参加 (ボートレースや子供の遊び等)、ミークアン(ク アンナム省の麺)等の郷土料 理を楽しむ。 ・伝統家屋が5 軒程度残って いるが、修復を 間違い近代的 な家屋になった ・いくつかの祠 堂は予算の問 題で修復でき ない 人口:15,410人 面積:14.49k㎡ 基準地からの距 離:14km 交通手段:車 人口:3,770人 面積:343.33 k㎡ 基準地からの距 離:40km 交通手段:車、 列車 No. 名 称 基本情報 特 徴 観光状況の概要 観光開発上の 課題 クアンナム(Quảng Nam)省 :2 村 79 80 ドローン (Đhrôồng) 村 人口:310 人 面積:15 ha ホイアンからの 距離:100 km 交通手段:車、 バイク ・農業、水田 ・有形文化財(生 活、 産業) ・無形文化財(祭 り、収穫祭、民俗 舞踊、ドラムダン ス、宝石等) ・伝統工芸、織 物、鍛造、ワイン 作り ・景観、家 屋、滝、渓流、丘、 森林 ・カトゥ民族 観光客受入有り ・2013年6月受入開始。 ・年間観光客数:データなし ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、 伝統文化(竹細工、織物、釣り、トレッキング、伝 統音 楽、ゴングダンス、料理等 ・実施されたプロジェクト/政策ILOによる「クア ンナム省内陸部の観光開発プロジェクト」、アド ベンチャーツアーを扱う旅行会社の協力 タビン (Tà Vàng) 村 人口:258人 面積:2,000㎡ 郡中心部からの 距離: 5km 交通手段:車、 バイク ・カトゥ民族の有 形・無形文化財 の価値、カトゥ民 族の伝統的な暮 らし ・景観、塔、 チア(chia)の石碑 ・1000mの高地 の自然 ポリング (Pơr’ ning) 村 人口:465 人 面積:2,300㎡ 郡中心部からの 距離: 4km 交通手段:車、 バイク ・カトゥ民族の有 形、無形文化財 の価値、カトゥ民 族の伝統的な暮 らし ・トリー(Trlee)滝、 アソ(Axoo)トンネル ボーフン1 (Bhơ Hôồng I) 村 観光客受入を実施していない ・実施されたプロジェクト/ 政策:タビン村とポリング村の観光開発にか かる事業を形成済み 農村観光開発の対象地 78 観光客受入有り ・2011年受入開始 ・年間観光客数:150人 ・観光サービス・アトラクション: モン族住居でのホームステイ、トレッキング、 伝統楽器の演奏、ゴングダンス、食べ物、織物 ・実施されたプロジェクト/政策:ILOによる「ク アンナム省内陸部の観 光開発プロジェクト」、 アドベンチャ ーツアーを扱う旅行会社の協力 Chapter 4 77 人口:315 人 面積:10 ha ホイアンからの 距離: 85km 交通手段:車、 バイク ・農業、水田 ・有形文化財(生 活、 産業) ・無形文化財(祭 り、収穫祭、民俗 舞踊、ドラムダン ス、宝石等) ・伝統工芸、織物、 鍛造、ワイン作り ・景観、家屋、滝、 渓流、丘、森林 ・カトゥ民族 ・村の組織設立、 運営の段階 ・観光商品が多 様でない ・投資者がなく、 観光 客もいない クアンガイ(Quảng Ngãi)省:3 村 (基準地:Quảng Ngãi 市) 81 トゥサー (Thu Xà) 村 人口:12,568人 面積:9.81k㎡ 基準地からの距 離:10km 交通手段:車 ・トゥサーの茣蓙は 厚くて、色が多様 で、クアンガイ省 やベトナム南部の 市場でよく販売 されている。 ・クアンガイ省の有 名な遺跡や景色( オン(Ông)寺、コー ルイ(Cổ Lũy)等) 82 トゥアン フォック (Thuận Phước) 村 人口:775 人 面積:240 ha 基準地からの距 離:35km 交通手段:車、 バス ・地場作業(漁業 用の網や籠等) 観光客受入が実施されていない ・実施されたプロジェクト/政策:2030年に目指 した2020年までのクアンガイ省の観光開発マ スタープラン 投資がない 83 テン (Teng) 村 人口:628人 面積:11.75k㎡ 基準地からの距 離:60km 交通手段:車、 バス ・ハレー(Hre)族の 絹 織物は模様が 豊富で、スカート やシャツ、布団の 商品がある。 観光客受入が実施されていない ・実施されたプロジェクト/政策:2030年に目指 した2020年までのクアンガイ省の観光開発マ スタープラン 投資がない 観光客受入が実施されていない ・実施されたプロジェクト/政策:2030年に目指 した2020年までのクアンガイ省の観光開発マ スタープラン 投資がない No. 名 称 基本情報 特 徴 観光状況の概要 観光開発上の 課題 フーイエン(Phú Yên)省:4 村 (基準地:Tuy Hòa 市) 84 85 86 87 ハーライ (Hà Rai) 村 人口:902人 面積:9.07k㎡ 基準地からの距 離:57km 交通手段:車 ・チャム(Chăm)族 のハロイ(H’roi)人 が暮らしている。 ・ コ ン チ エ ン (Cồng chiêng:少 数民族の楽器の 一種)の文化 ・地場産業(絹織 物作り) 観光客受入が実施されていない 予算不足 レー・ジエ (Lê Diêm) 村 人口:735人 面積:9.58k㎡ 基準地からの距 離:60km 交通手段:車 ・少数民族のエ デ族が暮らして いる。 ・ コ ン チ エ ン (Cồng chiêng: 少数民族の楽器 の一種)の文化 ・伝統祭り 観光客受入が実施されていない 予算不足 ホアガイ (Hòa Ngãi) 村 人口:351 人 面積:5.5k㎡ 基準地からの距 離:60km 交通手段:車 ・少数民族のエデ (Ê đê)族が暮らし ている。 ・ジウカン (rượu cần:壺か らストローでお酒 を飲む少数民族 文化) ・伝統絹織 物の産業 観光客受入が実施されていない 予算不足 人口:625人 面積:8.5k㎡ 基準地からの距 離:57km 交通手 段:車 ・チャム(Chăm)族 のハロイ(H’roi)、 バナ(Bana)族が 暮らす。 ・少数民族のアイ デン ティティ ・ コ ン チ エ ン (Cồng chiêng、 少数民族の楽 器 の一種)の文化 ・水牛生贄祭り 観光客受入が実施されていない 予算不足 シトアイ (Xí Thoại) 村 ニントゥアン(Ninh Thuận)省:4 村(基準地:Phan Rang 市) 88 89 ミー ギエップ (Mỹ Nghiệp) 村 バウ チュック (Bàu Trúc) 窯業村 人口:4,000人 面積:560 ha 基準地からの距 離:10km 交通手段:車、 バ イク 人口:2,700人 面積:500 ha 基準地からの 距離:10km交通 手段:車、バイク ・絹織物の産業村 ・東南アジア古 代の陶器の村 ・職人によって 手作業で焼か れた陶器 観光客受入有り ・1990年受入開始 ・年間観光客数:300,000人 ・観光サービス・アトラクション:地元の文化を 理解し、楽しむ ・実施されたプロジェクト/政策:ニントゥアン省 の観光地開発計画(窯業村、織物産業村、塔、 葡萄園、ヴィン・ヒー(Vĩnh Hy)湾等)。2012年 ~2015 年に村のアクセス路、展示 所整備、マス コミにて宣伝、観光促進、陶器や織物のブランド 作りに取り組む。生産する住民に資金を貸し、生 産を維持・拡大させる。地場産業の職人を支援 する政策の策定。住民への視察研修。地場産業 を活かした観光開発プログラム開発。 観光客受入有り ・1990年受入開始 ・年間観光客数:300,000 人 ・観光サービス・アトラクション:地元の文化を理 解し、楽しむ ・実施されたプロジェクト/政策:ニントゥアン省 の観光地開発計画(窯業村、織物産業村、塔、 葡萄園、ヴィン・ヒー(Vĩnh Hy)湾等)。2012年 ~2015 年に村のアクセス路、展示所整備、マス コミにて宣伝、観光促進、陶器や織物のブランド 作りに取り組む。生産する住民に資金を貸し、生 産を維持・拡大させる。地場産業の職人を支援 する政策の策定。住民への視察研修。地場産 業を活かした 観光開発プログラム開発。 ・商品のデザ インが乏しい ・観光客向け の観光サービ スがまだ少 ない ・宣伝用経費 の不足 ・インフラ整備 が十分でない No. 観光状況の概要 アンタイン (An 90 Thạnh) 村 人口:2,700人 面積:500 ha ダ オ ロ ン (Đạo Long)橋から4 km 交通手段:車,バ イク ・ニントゥアン 省での唯一の 伝統茣蓙作り の村 観光客受入が実施されていない タン・ソン (Tân Sơn) 村 人口:12,000人 面積:1,800ha 基準地からの距 離:40km 交通手段:車,バ イク ・箸作りの伝統 産業村 観光客受入有り ・2002年受入開始。 ・年間観光客数:200,000人 ・観光サービス・アトラクション:地元文化の見学 観光開発上の 課題 ・商品のデザ インが乏しい ・観光客向け の観光サービ スがまだ少 ない ・宣伝用経費 の不足 ・インフラ整備 が十分でない ビントゥアン省(Bình Thuận): 3 村(基準地:Phan Thiế 市) 92 ハン・ミー (Hàm Mỹ) 村 人口:15,507人 面積:3379.8 ha 基準地からの距 離:7km 交通手段:車 ・ドラゴンフルーツ の栽培と果樹園 付住宅 観光客受入を実施していない 93 ダーミ (Đa Mi) 村 (9つの滝 の村) 人口:2,774人 面積:145.38ha 基準地からの距 離: 67km 交通手段: 車 ・美しい景観、エコ ツーリズムの開発 に最適。 観光客受入を実施していない ・実施されたプロジェクト/政策:決定 53/2004/QD-UBBT(2004/7/5)ダーミ村、 ハムトゥアン(Ham Thuan)村の観光開発マ スタープラン ・インフラの未 整備 94 ファンホア (Phan Hòa) 村 人口:10,415人 面積:17.045ha 基準地からの距 離:68km 交通手段: 車 ・チャム族の暮 らし ・工芸村、織物、 陶芸 観光客受入を実施していない ・工芸村が衰 退している ビントゥアン省(Bình Thuận): 3 村(基準地:Phan Thiế 市) 95 96 コンコツ (KonKơ Tu) 村 人口:300人 面積:6ha 基準地からの距 離:8 km 交通手段:車 ・バナ少数民族の 暮らし、伝統農村 ・中部高原のゴン グ伝統音楽とダ ンス ・伝統祭り ・コンツム省で最 も美 しいされるコ ンコツとコンジョリ (KoJoRi)の高床 式建物 ダックラン (Đăk Răng) 村 人口:200人 面積:100 ha 基準地からの距 離:80km 交通手段:車 ・伝統祭りが多数 ある(ジェ・チェン 族の牛祭、新年 祭等) ・伝統工芸、伝統 楽器、 織物等 ・3つの少数民族 の暮らし 観光客受入あり ・2005年月受入開始 ・年間観光客数:25,000人(2011年)、35,000 人(2012 年) ・観光サービス・アトラクション: 宿 泊サービス、 食事サービス、民俗音楽パフォーマンス ・実施されたプロジェクト/政策:1996年以降、 省や村の行政機関、旅行会社、国際関係機関 からの協力がある。省観光局は文化観光村、 コミュニティ観光への支援施策を制定してい る。 観光客受入あり ・2008 年受入開始 ・年間観光客数:1,000人 ・観光サービス・アトラクション: 観光サービスは 少ない。観光客は、少数民族のロン(Rong)ハ ウスを訪 問し、ゴング音楽や織物を見学する。 ・文化施設のイ ンフラが脆弱 ・中部高原のゴ ング音楽パフォ ーマンスへのトレ ーニングが不足。 ・環境保護、景 観保全への取り 組みの欠如 ・住民の意識 啓発 ザーライ(Gia Lai)省: 1 村(基準地:Gia Lai 市) 97 フン (Phung) 村 人口:370人 面積:1057㎡ 基準地からの距 離:35 km 交通手段:車 ・タライ(T-rai)少 数民族、 ・伝統習慣、 ・ゴング音楽 観光客受入を実施していない。 ・実施されたプロジェクト/ 政策:省の支援プログラムによるホームステイ モデル形成 ・伝統祭りの復 興、少数民族 のロン(Rong) ハウスの復元 に課題 農村観光開発の対象地 特 徴 Chapter 4 基本情報 91 名 称 No. 特 徴 観光状況の概要 観光開発上の 課題 名 称 基本情報 98 チア (Trí A) 高 原村 人口:556 人 面積:6.2 k㎡ 基準地からの距 離:40km 交通手段:車、バ ス、バイク ・伝統工芸 ・景観 ・少数民族 ・ゴング音楽 観光客受入あり ・1998年受入開始 ・年間観光客数:15,000人 ・観光サービス・アトラクション:高床式住居の 訪問、食事サービス、工芸村訪問 ・実施されたプロジェクト/政策:インフラ整備 (道路、照明)、観光技 術研修 ・政治的にセン シティブな地 域であるため 観光受入上、 様々な障害が 起こる。 99 ジュン (Jun) 高 原村 人口:470 人 面積:0.7k㎡ 基準地からの距 離:50km 交通手段:車、バ ス、バイク ・伝統工芸 ・少数民族 ・農業 ・景観 光客受入あり ・2000 年月受入開始 ・年間観光客数:10,000人 ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、 農業体験 ・政治的にセ ンシティブな 地域であるた め観光上様々 な障害が起こ る。 100 アコドン (Ako Dhong) 高原村 人口:556 人 面積:7.5k㎡ 基準地からの距 離:0km(市内部) 交通手段:車、バ ス、バイク ・景観 ・伝統工芸 ・高床式住居 ・少数民族 観光客受入あり ・2000年受入開始 ・年間観光客数:10,000人 ・観光サービス・アトラクション:高床式住居、 食事サービス、中部高原のゴング音楽 ・実施されたプロジェクト/政策:インフラ整備 (道路、電気) ダックラック(Đắk lắk )省:3 村(基準地:Buong Ma Thuot 市) ドンナイ(Đồng Nai)省:1 村(基準地: Biên Hòa 市) 101 タン ティエウ (Tân Triều) 村 人口:4,221人 面積:420k㎡ 基準地からの距 離:15km 交通手段:車、 船、バイ ク ・ザボンの生産。春 巻き、ジュース等へ の加 工品 ・タンティエウ大聖 堂、ビンフン(Vĩnh Hưng)寺、カムビン (Cẩm Vinh)集会 所、ロンホア(Long Hòa)集会所等 観光客受入あり ・2003年月受入開始 ・年間観光客数:データなし ・観光サービス・アトラクション:タンティエウ大 聖堂訪問、ビンフン寺、カムビン集会所、ロン ホア集会 所等の訪問、ザボン商品の購入 ・実施されたプロジェクト/政策:省観光局によ る観光促進支援プログラム。省旅行業協会 がタンティエウ 村を選定、旅行会社に紹介 ビンズオン(Bình Dương)省:1 村(基準地:Thủ Dầu Một 市) チュンビン ヒエップ (Tương 102 Bình Hiệp) 村 人口:13,155人 (2012年) 面積:520.464 k㎡ 基準地からの距 離:7km 交通手段:車、 船、バイ ク ・漆塗り工芸の村 観光客受入あり ・受入開始:データなし ・年間観光客数:データなし ・観光サービス・アトラクション:漆塗りを行う世 帯への訪問、販売 ・実施されたプロジェクト/政策:2020年 を目指した2015年までのビンズオン省 の観光商品開発計画(決定令1878/QDUBND、2013/08/01) ・漆塗りの制 作を行う世帯 が年々減って いる ・漆塗りの商品 の質も 低下し ている ビンフック(Bình Phước)省 :3 村(基準地:Dong Xoai 市) 103 104 ロック タイン (Lộc Thạnh) 村 人口:約400人 面積:約 1 k㎡. 基準地からの距 離:60km(国道 1A 号沿い) 交通手段:車、バ イク ・ハノイ市ハズオ ンからの移住者 の生活 ・国家文化財 ・少数民族の暮ら し(人口の18%が 少数民族) ・省指定の歴史遺 産(軍事空港、軍 事基地(B2)、外国 人ゲストハウス、ホ ーチレイル、石碑) ロンハ (Long Hà) 村 人口:約100人 面積: 0,5 k㎡ 基準地からの距 離:100km,ロック ニン(Loc Ninh)郡 からの距離12km、 国道13号から 13.3km. 交通手段:車、バイク ・少数民族の文化 遺産 ・数世紀前から続 く伝 統工芸村 ・ビンフック省の 少数民族文化を 象徴する特別な 観光商品 観光客受入を実施していない ・観光商品を販 売する情報チャ ンネルがない ・開発計画がな いので関係機関 の連携がない ・工芸村開発に かかる基本計画 がない 観光客受入を実施していない ・ 観光開発の支 援プログラムが 無い。 ・観光関係の動 きが突発的で管 理されていない No. ミンフン (Minh Hưng) 村 基本情報 特 徴 ・少数民族の文 化遺産 ・数世紀前か ら続く伝統工 芸村 ・ビンフック省の 少数民族文化 を象徴する特 別な観光商品 観光開発上の 課題 観光客受入あり ・2001 年月受入開始 ・年間観光客数:データなし ・観光サービス・アトラクション:農村体験、魚釣 り、植樹、伝統文化の体験 ・実施されたプロジェクト/政策:現在政策等は ない。しかし2年以内にビンフック省商工局、農 業農村開発局が、伝統文化の保持にかかる 研 修を実施予定。 ・観光客から住民 に行き渡る収益が 少ない。住民はあ きらめ、焼畑農業 へ戻ってしまう ・経済開発の速度 が速く、少数民族 の暮らしや文化へ の負のインパクト が懸念される ・地元行政が、予 算や人材措置な ど十分に開 発に 関与していない ロンアン(Long An)省: 2 村(基準地:Tan An 市) ビンアン (Bình An)村 人口:426人 面積:195ha 基準地からの距 離:10km 交通手段:車、バ イク ・伝統的なドラ ム(銅鼓)製造の 村、20世紀初に 様々なドラムが 製造される。 観光客受入が実施されていない ・実施されたプロジェクト/政策:ロンアン省産業 振興センターが、ビンアン村のドラム工芸製造 にかかるセミナーを実施し、保存と継承に取り 組む。タウチュー(Tau Tru)郡がビンアン村のド ラムのブランド化に取り組む。文化スポーツ観 光局がビンアン村を観光データブックに掲載。 ムイドー 107 (mũi đỏ) 工芸村 人口:426 世帯 面積:TanChanh: 1 7 4 4 , 7 4 h a Phuoc Dong: 2127,31 ha Long Huu Dong: 2073,70 ha Long Huu Tay: 1577,37 ha 基準 地からの距離:43km 交 通手段:バイク、車 ・300年前に村 が創設 ・伝統工芸 観光客受入が実施されていない ・実施されたプロジェクト/政策:省では、ムイド ー工芸村の無形価値を調査し、省文化局から 文化スポーツ観光省に文化財申請中。申請 が採 択されると国家無形文化財の村となる。 106 ドンタップ( Đồng Tháp)省:2 村(基準地:Cao Lãnh 市) 人口:1,984世帯 面積:343ha サデック 基準地からの距 108 ( Sa Đéc) 離:20km 村 交通手段:車、自 転車、 バイク ・築100年の古 い村 ・1,500種(50種 のバラや高価 値の花種を含 む)の花栽培 観光客受入が実施されていない ・実施されたプロジェクト/ 政策:2013-2015サデック花村開発計 画、2009-2020サデック村拡張計画、メコンデ ルタ地域における花展示センターとしてサデ ック村を開発する方針が打ち出された。 ・インフラが未 整備 ・観光サービスシ ステムが立ち上 げられていない ・観光客受け入 れのための観光 業者との協力が ない 人口:4,321世帯 (2009) 面積:1,822ha 基準地からの距 離:30km 交通手段:車、自 転車、バイク、船 ・伝統的なマッ ト織り業(文化ス ポーツ観光省に よって文化財と し て指定) ・マット市場が 夜の2時間のみ 開催される 観光客受入が実施されていない ・実施されたプロジェクト/ 政策:ラップボ郡文化情報局によって、マット織 物復興プロジェクトが作成された。 ・マット織物工 芸村としての復 興、発展に関す る課題 ・マット織物市 場が縮小傾向 にある 109 ディン イェン (Định Yên) 工 芸村 ドンタップ( Đồng Tháp)省:2 村(基準地:Cao Lãnh 市) ミーホア フン 110 ( Mỹ Hòa Hưng) 集落 人口:22,946人 面積:2,121 k㎡ 基準地からの距 離:ボー トで30分 交通手段:船 ・自然遺産(トン ドゥックタン首 相記念地区) ・エコツーリズム 地区 ・コミュニティ観 光地 区 観光客受入有り ・2009年受入開始 ・年間観光客数:トンドゥックタン 記念地区/88,485人(2012) ・観光サービス・アトラクション:宿泊、地元の生 活体験、釣り、地元住民との農業体験、エコツ ーリズム(ミーホアフン歴史ツアー、トンドゥック タン記念地区) ・実施されたプロジェクト/政策:2025年に向 けたアンザン省ロンスエン市ミーホアフン観 光拠点、エコツーリズム、地域観光ネットワー ク計 画。その他Agritterra (オランダ農業機 関)による“ベトナム農協による効果的なベト ナム農業観光促進”プロジェクトが2008年か ら 2010 年まで実 施された。 ・マット織物工 芸村としての復 興、発展に関す る課題 ・マット織物市 場が縮小傾向 にある 農村観光開発の対象地 人口:800 人 面積:10k㎡ 基準地からの距 離:60km、ブダン (Bu Dang)郡から 10km、国道から の14.5km 交通手段:車、バ イク 観光状況の概要 Chapter 4 105 名 称 No. 名 称 チャムチャ ウフォン (Chăm 111 Châu Phong) 村 基本情報 特 徴 観光状況の概要 人口:24,672人 面積:2,143ha 基準地からの距 離:54km 交通手段:船、 車、バイク ・チャムイスラム 歴史文化財 ・チャム伝統の織 物村 ・チャムムスリム 族の生活文化・ 様式 観光客受入有り ・2009年受入開始 ・年間観光客数:約18,000人 ・観光サービス・アトラクション: 宿泊、地元の生 活体験、釣り、チャム族との農業体験、チャム 族の遺跡 探索、伝統チャム族の織物体験 ・実施されたプロジェクト/政策:Agritterra(オ ランダ農業機関)による“アンザン省農業ツー リズムセンター設立”プロジェクトが2011年7 月~2014年6月までに実施 観光開発上の 課題 ティエンザン(Tiền Giang)省 :3 村(基準地:Mỹ Tho 市) 人口:6,119人 面積:1,200ha 基準地からの距 離:5km 交通手段:船、 車、 バイク ・クウロン(Cuu Long)河デルタの 特徴的な果樹園 ・地場作業見学、 特産品購入(コム 作り、ケオ(お菓 子)作り、ライスペ ーパー作り、蜂 蜜 作り等) ・景色(川、水路、 ボ ートトリップ等) 観光客受入有り ・1986 年受入開始 ・年間観光客数:600.000人 ・実施されたプロジェクト/政策:ADB支援によ るコミュニティ観光開発プロジェクト ・観光サービス・アトラクション:果樹園見学、 ボートトリップ、無形文化財、魚釣り体験、蛍鑑 賞、ホー ムステイ、トンタム(Đồng Tâm)蛇養 殖所、ヴィンチャン(Vĩnh Tràng)寺見学、タッ チガム(Rạch Gầm)、ソアイムト(Xoài Mút)ロン フン(Long Hưng)ディンの観光 113  ダンフン フォッ ク (Đặng Hưng Phước) 村 人口:11,151人 面積:1,425.4ha 基準地からの距 離:14km 交通手段:車、バ イク ・集約農業(米、もち 米)、果樹、ドラゴン フルーツが有名 ・文化財(伝統家屋 の 建築) ・地場作業:ダンフ ン フ ォ ッ ク (Đặng Hưng Phước)の 茣蓙織り ・景色:Óc Eo 考古 学の遺跡、ゴータ イン (Gò Thành) 、水資源、田園風 景、果樹園、農村 の市場の雰囲気 観光客受入が実施されていない 114   ドンホアヒ エップ村 (Đông Hòa Hiệp) 人口:15,211人 面積:1,728.23 ha 基準地からの距 離:46km 交通手段:車、バ イク、列車 ・メコンデルタの 特徴的な果樹園 ・文化財(伝統家 屋、無形文化財) ・地場作業(コム、 ケオ、ライスペー パー、蜂蜜等の特 産品) ・景色(河川、果 樹園、水上マーケ ット) 観光客受入有り ・1993年受入開始。 ・年間観光客数:100.000人以上 ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、 南部の伝統家屋の見学、水上マーケット、地場 産業の観光、果樹園訪問、メコン川クルーズ、 手漕ぎのボート等 ・実施されたプロジェクト/政策:JICAと昭和女 子大学による「ヘリテージツーリズムによる持 続的な地域振興」プロジェクト、ADBのコミュ ニティ観光開発プロジェクト 112 トイソン (Thới Sơn) 村 ・資源を観光に 活用する経験が 不足 ・観光の管理 ・運営の業務に 課題が多い 観光開発を実 施する経費が ない ・資源を観光に 活用する経験が 不足 ・観光の管理 ・運営の業務に 課題が多い ・伝統家屋を保 存しながら観光 に活用するため に経費を要する ・住民の参加が まだ少ない ハウザン(Hậu Giang)省:1 村(基準地:Hậu Giang 市) カウドック (cầu Đúc) 115 パイナッ プル栽培 地域 人口:6,873人( 村全体) 面積:20,220ha 基準地からの距 離:15km 交通手段:バイ ク、車、 列車 ・パイナップルの 栽培 ・革命歴史遺跡 ・ルクビン(lục bình:水草の一 種)利用し、編み 物作りの村 ・川が特徴的な 風景 観光客受入が実施されていない ・実施されたプロジェクト/政策:カウドック(cầu Đúc)パイナップル栽培地域を対象にコミュニ ティ観光開発プランが立案されている。 ・観光開発の予 算の問題 カントー(Cần Thơ)市:1 村(基準地:Cần Thơ 市) トゥア ンフン 116 (Thuận Hưng) 村 人口:約120世帯 面積:約5ha 基準地からの距 離:40km 交通手段:バイク ・ライスペーパー 作り 観光客受入が実施されていない ・実施されたプロジェクト/政策 : まだない ・各世帯に観 光客にサービ スを提供する ため の投入が 必要 No. 名 称 基本情報 特 徴 観光状況の概要 観光開発上の 課題 キエンザン(Kiên Giang)省:5 村(基準地:Rạch Giá 市) 119 キエン ハイ (Kiên Hải) 郡 人口:81,710人 面積:472,847 k㎡ 基準地からの 距離:60km 交 通手段:バイク、 車、 船 人口:21,36人 面積:25,586 k㎡ 基準地からの距 離:30km 交通手段:船 ・ハン(Hang)寺 ・モソ(Moso)山 ・カーサウ(Ca Sau) 洞窟 ・43の小島で なるバルア(Ba Lua)列島 ・キエンザン生 態保存 地区 ・100km海上ル ートがあり、23 の島と広大な 景観が楽しめる 観光客受入が実施されていない ・実施されたプロジェクト/ 政策:2030年を目標にした2020年までのキエ ンザン観光開発マスタープラン。 観光開発の詳細計画が2009年6月18日付決 議1439/QĐ-UBNDにて採択された。 観光客受入有り ・1998 年受入開始 ・年間観光客数:336,008人 ・観光サービス・アトラクション:フートゥ観光地 見学、食事サービス、 お土産、写真撮影、小島クルーズ、 文化財 観光(モソ革命歴史財/モソ山)、カーサウ洞 窟、ティエン洞窟、バタイ山(石灰山)、Ba Hon Dam 船 クルーズ、住民との交流 ・実施された プロジェクト/政策 : 2030 年を目指した 2020 年までのキ エンザン観光開発マスタープラン ・インフラ計画、 投資計画が十 分でない ・モソ歴史財お よび戦争跡地で は、観光や環境 保護に関する研 修を受けたこと がない住民によ って、独自のツ アービジネスが 非効率的に運 営されている ・地方自治体は 観光、エコツー リズム、地域観 光、観光からの 利益について理 解・意識が低い ・観光業に従事 するス タッフの 不足によって観 光サービスに限 界がある 観光客受入有り ・1998 年受入開始 ・年間観光客数:336,008人 ・観光サービス・アトラクション:フートゥ観光地 見学、食事サービス、 お土産、写真撮影、小島クルーズ、文化財観 光(モソ革命歴史財/モソ山)、カーサウ洞窟、 ティエン洞窟、バタイ山(石灰山)、Ba Hon Dam 船 クルーズ、住民との交流 ・実施された プロジェクト/政策 : 2030 年を目指した 2020 年までのキエンザン観光開発マスタープラン ・インフラ不足( 電気、水、交通、 宿泊...) ・観光に 対する住民の意 識の低さ ・娯楽エリアへの 投資事業が遅い ・観光サービス の質が世帯によ ってばらつきが ある ・住民が観光に ついての知識が ないままサーた め、突然サービ ス価格が上昇す るなどの事態や 観光客の不満 がある 農村観光開発の対象地 118 キエン ルオン (Kiên Lương) 郡 人口:171,904人 面積:1,039.568 k㎡ 基準地からの距 離:30km 交通手段:バイ ク、車 ・観光インフラへ の投資 ・支出(観光地 への道路、衛生 な水供給システ ム、ゴミ処理) ・ツアーの種類、 サービスが単 一、質にばらつき がある ・歴史遺跡や文 化村が 未開拓 ・人材不足 Chapter 4 117 ホン ダット (Hòn Đất) 郡 ・伝統壺づくり村 ・ホンメテレビ塔 ・ルオン(Lươn)滝 ・ ホ ン ケ オ (Hòn Quéo) 寺 ・バホン(Ba Hòn) 遺跡 ・ヨンソアイ遺跡 ・ネンチュア(Nền Chùa)遺跡 ・地域の遺跡、遺構 No. 名 称  フーコック 120 (Phú Quốc) 郡 ウミン トゥオン ( U Minh 121 Thượng U)郡 基本情報 人口:96,940人 面積:589,193 k㎡ 基準地からの距 離:120km 交通手段:船、ボ ート、 飛行機 人口:69,636人 面積:432,701 k㎡ 基準地からの距 離:60km 交通手段:船、 車、バイ ク 特 徴 ・フーコックは“ 海の真珠”とい う意味であり、 諸島が点在す る ・希少な動植物 が多く生息し、 豊かな森が広 がる ・チャムイスラム 歴史文化財 ・チャム伝統の 織物村 ・チャムムスリム 族の生活文化・ 様式 観光状況の概要 観光開発上の 課題 観光客受入有り ・1999年受入開始 ・年間観光客数:517,354 人 ・観光サービス・アトラクション: ホームステイ、 食事サービス、登山、フーコック国立公園、真 珠養殖見学、ヌックマム工場見学、魚釣り、サ ンゴ礁鑑賞、イカ釣り、島クルーズ ・実施されたプロジェクト/政策:2030年を目 指した2020年までのキエンザン観光開発マ スタープラン ・長期を見据え たフーコック開発 の省の政策や国 の方針がない ・経済発展はした ものの継続性が なく、フーコックの 現状に見合っ た ものではない ・経済社会インフ ラ等の重要な建 設工事が遅れて いる ・中央からの予 算には限りがあ る上、現在必要 な投資を行える 投資家もいない ・郡のスタッフ不 足と過剰な任務 の為、必要業務 やリクエストに対 応しきれない ・エコツーリズム や継続的な観光 開発の必要性へ の意識が低く、世 帯や観光業者の サービスの質に ばらつきがある。 ・価格の一定化 や安全性を確保 できない ・プロジェクトは 土地問題のた め“宙吊り”状態 になっている 観光客受入有り ・1998年受入開始 ・年間観光客数:42,184人 ・観光サービス・アトラクション:ホームステイ、 宿泊サービス、食事サービス ・実施されたプロジェクト/政策 : 2030 年を見 据えた2020年までのキエンザン観光開発マ スタープランを実施 ・観光客受入の ためのインフラ や設備不足(道 路、レクリエーシ ョンサービス、観 覧タワー、クル ーズ) ・住民の観光へ の意識が未だに 低い ・森林資源保 存、エコシステ ムや環境保存の 課題 ・観光商品が単 調、自然資源に 依存している ・ホームステイ サービス、地元 住民との交流、 農業体験等の プログラムが ない ・森林探索等の ツアーがない Chapter 5 第5章 関係機関の 役割と連携 5-1. 関連機関に期待される役割と連携 農村観光開発には、様々な機関が関与します。第1章「1-5.誰が農村観光開発に取り組 むのか」において概要を述べましたが、本章では、より詳しく各関係機関に期待される 役割や各関係機関間の連携について示します。なお、第4章で各地方省からのアンケー トによりベトナムの農村観光開発の候補地域を示していますので、各農村の観光開発に どのように関連する機関が関わるのか考えていきましょう。 5-2. 中央政府に期待される役割 5-2-1. 文化スポーツ観光省 文化スポーツ観光省は観光事業を総括する機関であり、「2030年を目指した2020年 までの国家観光開発戦略(No:2473/QD-TTg)」及び「2030 年を目指した2020年ま での観光開発マスタープラン(No: 201/QD-TTg)」の実施に責任を総括します。文化ス ポーツ観光省に期待されるのは、これらの政策の実施管理はもちろんですが、農村開発 の推進に関連する他省庁との調整が求められます。例えば、農村開発を所掌し新農村 開発プログラムや貧困削減プログラム等を管理する農業農村開発省(Ministry of Agriculture and rural development)、計画策定や予算を判断する計画投資省(Ministry of Planning and Investment)、予算管理を行う財務省(Ministry of Finance)等 で、この他にも農村地域の自然環境や環境管理面での天然環境資源省(Ministry of Natural Resources and Environment)、地場産業振興に関連する商工省(Ministry of Industry and Trade)、トレ ーニング等の教育に関連する教育訓練省(Ministry of Education and Training)や労働省(Ministry of Labor)等です。 各省庁が実施する農村地域の開発プログラム、人材育成、インフラ整備等のプログラム 等と、農村観光開発とが適切に結びつき、効率的に計画実施や予算執行ができるよう な調整が求められます。 Chapter 5 (1)観光開発戦略、マスタープランの実施のための農村観光開発ガイドブックの活用 観光総局は、「2030年を目指した2020年までの国家観光開発戦略(No:2473/QDTTg)」及び「2030年を目指した2020年までの観光開発マスタープラン(No:201/QDTTg)」の実務を担う責任機関です。社会経済開発のための観光の役割が強調された 同戦略とマスタープランにおいて、地方部や農村地域の観光による経済振興は、同戦 略とマスタープランの目的達成のために不可欠な事業となります。7つに分かれた広域 での観光開発、また各地方省が実施する地方省ごとの計画実施を、農村観光にも焦点 を置き、実施管理していくこと が望まれます。 (2)観光サービスの基準(スタンダード)の制定と認証 第2章で示したように、農村地域で観光の受入を行うためにはサービスの質の向上や安 全性等の向上が求められます。既に観光総局では、観光地での衛生トイレの設置を推 奨する決定文書(No.225/QL-TCDL,2012年5月8日)を施行しており、観光地における 衛生トイレの基準が全国に周知されています。またホームステイサービスのチェックリス ト(No.217/QD-TCDL,2009年6月15日、TIÊU CHUẨN NHÀ Ở CÓ PHÒNG CHO KHÁCH DU LỊCH THUÊ、TCVN 7800:2009)も策定されています。農村観光におい て、これらの基準をクリアすることは、サービス向上や受入体制の質を高める上でも重要 となりますので、各地方省の文化スポーツ観光局や関連機関への基準の遂行にかかる 助言が求められます。また今後、食事サービスの衛生基準、農村でのローカルガイドの 認証や登録等の制度制定も求められてきます。 (3)農村観光地の認証とブランド化 観光客誘致のための農村観光地をブランド化する方法の一つは、農村地域を「国家観 光地」として国が認証することです。2005年に制定された観光法 (Law on tourism, No.44 /2005/QH 11 dated 14/6/2005)では、国家観光地の認証が明記されてい ます。第3章ケーススタディで紹介したハノイ市ドンラム村とトゥアティエンフエ省フクテ ィック村は、文化財保護法下(Law on Cultural Heritage)の国家文化財に登録されて 以降、観光客数が伸びています。これは国家文化財により、地域がブランド化されたこと が一つの要因となっています。同じように農村地域を「国家観光地」として認証されるこ とにより地域がブランド化され、集客の増加にもつながると考えます。しかし、そのために は、国家観光地の評価項目や認証基準が必要となりますので、認証自体の制度整備が 早急に求められます。 (4)農村観光開発のプロモーション 観光総局では、国内外に向けて観光地のプロモーションを行う役割があります。Webサ イトや観光雑誌、また観光フェアなどへの出展の際に、主要な観光地の紹介だけでな く、農村観光地も含めてプロモーションを行うことが望まれます。 関係機関の役割と連携 5-2-2. 観光総局 5-2-3. 観光開発研究所(ITDR) (1)農村開発調査実施、開発プログラムの立案 観光開発研究所は、本ガイドブックの発行責任機関であり、各農村においてガイドブッ クの適用を推進していく役割を担います。より実務的なガイドブックの実施には、第4章 で示した農村観光開発の候補となる農村の計画策定のための調査実施や、複数の農 村を対象とした農村観光開発プログラムの策定等が求められます。プログラムの実施 には予算も求められますので、予算申請含む具体的な全国レベルのプログラムづくり が望まれます。 (2)農村観光開発の計画策定、実施支援にかかる地方省への技術支援 第2章で述べたように、農村観光開発には、広域からの開発対象の選定、選定された農 村での計画づくりが必要となります。各農村での計画策定や開発事業の実施は、地方 省文化スポーツ観光局、郡やコミューンの人民委員会が中心となりますが、観光開発研 究所の研究者は、各地域の計画づくりに対するアドバイスする役目を担います。そのた め、農村観光地づくりの実務的な指導ができるスタッフの人材育成も求められます。 (3)グッドプラクティス、教訓の収集 本ガイドブックでは、第3章で7つ農村観光開発の事例を紹介していますが、この他に も、山岳地帯など様々な農村観光の種類があることが第4章で示されました。今後は、 農村観光開発が成功している地域、失敗している地域の教訓を集めて分析することが 期待され、そのことで既に観光客が訪れている農村観光開発のブラッシュアップや新規 の農村観光地づくりに必要なノウハウや教訓の蓄積が期待されます。 Chapter 5 (1) 農村観光開発の計画立案と実施 地方省及び市文化スポーツ観光局では、本ガイドブックを参考に、第4章に記載されて いる農村を中心に農村観光開発の事業を実施していくことが望まれます。また更なる 調査を実施すれば、第4章に記載されている114か所の農村以外にも観光の潜在性が 高い地域が見つけられると考えられます。本ガイドブックの第2章の計画づくりの項目 を参考にし、事業対象選定のための調査、計画立案、事業実施に取り組んで下さい。な お、観光客が既に訪問している地域については、他地域の事例を参考にしながら、さら なる観光地のブラッシュアップに力を入れて下さい。 (2)必要な予算措置 農村開発事業の実施には、予算も不可欠です。第 2 章で紹介した、観光商品開発のた めの研修、受入体制強化のためのインフラ等の整備費、マーケット強化のためのツール 作成費などです。実行性のある計画づくりと予算措置が同時に行われていくことが望 まれます。特に農村の住民によるサービス向上のためには技術的な研修も不可欠なた め、行政予算や民間からの資金協力の呼びかけも含めて、実現していくことが望まれま す。 (3)観光サービスにかかる経営承認支援 農村地域での観光サービスにかかる資格や経営証明等は、地方省の関係機関から発 行されています。一方で農村の住民は承認の仕組みを知らないケースが多いため、文 化スポーツ観光局は、農村の住民が観光ビジネスを起業するための手続きにかかる情 報提供やサポートが望まれます。認証の対象となるのは、食事サービスの経営証明、土 産品等の食品安全認証、ホームステイの基準の確認、ローカルガイドの認証等です。 (4) 旅行業界との連携促進 第2章で述べたように、農村観光の開発プロセスでは、計画づくり、観光商品開発、マー ケティング等の過程で、旅行会社からの協力が得られることで、よりマーケット性の高 い観光地づくりが可能となります。文化スポーツ観光局は、コミューン人民委員会や農 村の住民と、旅行会社との間をコーディネートする役割が期待されます。 (5)農村観光地のプロモーション 地方省が行う観光プロモーション活動において、積極的な農村観光のPRを行うことが 望まれます。農村観光は一つの農村のみでは集客力が弱い場合もありますが、主要な 観光地とのパッケージ化やオプショナルツアーとして使うことで、より需要が増えると考 えられます。 関係機関の役割と連携 5-3. 地方省・市政府に期待される役割 5-3-1. 省・市文化スポーツ観光局 5-3-2. 郡(District)人民委員会、文化情報室 (1)該当地域の農村開発事業との関連した農村観光開発の推進 郡レベルでは、実際の対象地に直接的に関連する予算を伴う開発事業が多数実施されて います。例えば、新農村開発プログラム(Decision No. 800/QD-TTg, 4/6/2010)やプロ グ ラム134(Decision No. 134/QD-TTg 20/7/2004)、プログラム135(Decision No. 07/ QD-TTg,10/1/2006)等に関連する農村インフラ事業、貧困支援事業があります。これら の事業が、農村観光にも役立つように予算を有効活用した事業の推進が求められます。 (2)文化情報室の役割 文化情報室は、郡レベルの文化事業や観光を所掌しています。文化情報室は、農村観光 の情報把握や、外部、特に旅行会社への情報発信をしていくことが望まれます。 5-3-3. コミューン人民委員会 (1) 観光への住民の参加促進、意識啓発 コミューンの人民委員会は、農村観光開発が行われる地域を直接的に所掌する行政機関で あるため、住民や住民グループと触れる機会が最も多くなります。第2章で述べたよう に、住 民の観光への参加を促すためには、世帯訪問、アンケート調査や会合開催等を通じた住民 との対話が初期段階で求められます。観光開発を行う農村を所掌するコミューンの人民委 員会の職員は、住民との対話を行い、観光への意識啓発を行うことが求められます。 (2)大衆組織との連携促進 各コミューンには、女性連盟、青年団、農業組合などの大衆組織があり、第2章で示したよう に観光サービスの提供等で農村観光に関与してきます。例えば、女性グループによる食事 サービス提供があります。コミューンの人民委員会は、大衆組織に対して、観光サービスへ の参加を促していくことが求められます。 (3)管理委員会などの組織体制の設立支援 第2章及び第3章で示したように、農村観光開発では、各農村において、観光を管理する組 織の設立が求められます。行政組織として設立する場合や、行政と住民グループとの協力 により組織を設立する場合等があります。コミュニーン人民委員会には、観光管理を行う組 織の設立を直接的に行う、もしくは住民が中心の設立を支援する取り組みが求められます。 (4) 事業実施にかかる直接的な予算措置 観光客受入のために必要なインフラ整備、住民の会合や観光サービスのトレーニング開催 に必要な経費は、コミューンの人民委員会から措置されることが望ましいです。従って、農 村観光開発計画を練り、その実施に必要な予算をコミューンにおいても措置すべきです。 Chapter 5 VISTAは旅行業者の協会で、ベトナムで旅行業を行う全ての会社が登録されていま す。農村への観光ツアーづくり、旅行会社のガイドへの農村観光への理解促進など、旅 行業を司るVISTAからの農村観光への協力は不可欠です。また、第2章で述べたよう に、農村観光地選定におけるマーケット性の評価、観光開発プロセスにおける旅行業 界からの助言や具体的な投入も求められます。さらに、農村観光地への送客を増加す るために、旅行会社からのインフラ整備等にかかる投資なども期待されます。 5-4-2. 各旅行会社との協力 各旅行会社には、それぞれ顧客マーケットがあります。農村観光開発のプロセスにおい て、多くの旅行会社からの意見を得ることが、観光開発のマーケット性を高める上で大 事になります。開発対象となる農村の近隣まで観光客を送客している旅行会社があれ ば、開発対象の農村への送客の意向を確認し、観光開発への協力を呼びかけるのも よいでしょう。 また旅行会社のガイドは、観光客を送客し、農村を案内する重要な役割を持ちます。ガ イドへの農村の観光情報の提供や、旅行会社として責任をもった観光案内を実施でき るような教育も求められます。 またVISTAと同様に、各旅行会社においても観光客送客のために必要な設備の整備 にかかる投資も求められます。 5-5. 行政機関とその他関連機関との連携 5-5-1. 観光系大学機関、専門学校 観光系の大学では、観光開発に従事する人材育成の他、農村観光地を対象とした調査 の実施が期待されます。本書では、第3章にて7つの事例を示しましたが、第4章で示し たように多くの農村観光の候補地があります。観光系の大学の研究室は、これらの観光 地の開発プロセスや社会経済等へのインパクト等を調査し、学術的な観点から開発手 法、効果、インパクト等を整理し、国や省が行う農村観光の計画づくり等への還元をして いくことが望まれます。 また農村で観光サービス向上のための住民や住民グループのトレーニングでは、行政 機関は、大学機関や専門学校に講師業務を委託し、サービス提供の知識やノウハウを 教授してもらうことが望まれます。 関係機関の役割と連携 5-4. 行政機関と旅行業協会との協力 5-4-1. ベトナム旅行業協会(VISTA)との協力 5-5-2. 観光関連コンサルタント 観光を専門にするコンサルタント会社も複数存在します。コンサルタント会社は、観光 開発の技術面、計画づくり等で強みを持っています。またトレーニング等の技術的なサ ービスを提供できるコンサルタント会社もあります。行政機関は、必要に応じて、観光関 連のコンサルタントに調査業務や計画立案を委託することを検討ください。 5-5-3. マスメディア テレビ、新聞等のメディアは、農村観光を広報する役割を持っています。テレビや新聞 や農村観光の魅力を一般層に伝えるのに、一番広報効果があるツールです。行政機関 は、メディアの力を活用し、TV番組作成や、農村観光の特集記事等を企画実施するこ とが望まれます。 5-5-4. 海外援助機関、NGO との協力 海外の援助機関やNGOは、農村地域での多くの開発事業を実施しています。農村観 光開発に特化したプロジェクトを実施している団体も多数あります。これらの機関から の協力が効果的に地域に届くように、行政機関には、プロジェクト地域の選定、開発プ ロセスへの協力、モニタリング、ベトナム側として必要な予算措置等の対応が求められ ます。 また観光開発研究所(ITDR)や観光系大学機関においては、海外援助機関やNGOによ り実施される農村観光プロジェクトの開発手法や効果、教訓等をまとめ、ベトナムで有 用な開発手法として情報を蓄積していくことが望まれます。 Chapter 6 第6章 ガイドブック 活用に向けて 6-1. ガイドブックの活用に向けて 本ガイドブックでは、農村観光の説明、農村観光の開発手法やプロセス、ベトナムでの 7つ の事例報告、ベトナム全土での農村観光地のリスト、また農村観光開発にかかる関係機関 の役割について説明してきました。本ガイドブックの目的は、第1章でも述べたように、農村 観光開発を行う行政機関などの実務者が、業務実施上の参考資料とすることを意図して 発行されたものです。従いまして、本ガイドブックは、農村観光開発の計画策定、実施時の 参考資料として活用されることが期待されます。特に、第2章では、農村観光開発の開発 プロセスを6つのステップに分けて解説しています。それぞれのステップごとに必要な取り 組みや留意点などを参考にし、各農村での観光開発事業に役立ててください。また第3章 では、7つの農村での具体的に実施してきた取り組み、また行政の体制等について解説し ていますので、ベトナムの他地域で実施された事業や手法を参考にしつつ、各農村での農 村観光開発に必要な活動を取り入れて下さい。特に第4章で各地方省や市にて、合計114 か所の農村観光地があることが示されましたが、開発上の困難を伴うもの、または未だ開 発が開始されていない農村も多数あります。これらの農村の観光開発の方法や具体的な 投入等について、各地方省文化スポーツ観光局、また観光開発研究所が中心となり検討 して、具体的な取り組みを実行することが期待されます。 6-2. その他の農村観光開発の手法 本ガイドブックでは、一つ一つの農村観光地の開発の手法を紹介してきましたが、開発 の視点を更に広げるために、いくつかの関連する農村観光の開発手法を紹介します。 (1)複数の農村をリンクさせたクラスター農村観光開発 農村観光は、アクセスが悪い場合には、一つの農村のみでは集客力が弱い場合もありま す。その際には、複数の農村観光地、その他の観光地を複数組み合わせたパッケージを作 る方法が考えられます。いくつかの農村地域がブドウの房のように集まるイメージで、クラス ター農村観光と呼びます。しかしながら、この方法には、農村と農村とを繋ぎ合わせる道路 などのアクセスの向上、全てが同じような農村ではなく各農村の観光資源の特徴がPRさ れ、差別化される必要がある、などの条件も加わってきます。 例えば、第4章に示したハザン省では11か所の農村の観光開発に取り組んでいます。11か 所の農村をグループ化し、結び付けることで、大きな魅力をもつ農村観光地が形成される可 能性があります。また複数の地方省にまたがる農村観光地を一つのグループとして開発する 手法も考えられます。この際には、2030年を目指した2020年までの観光開発マスタープラン (No.201/QD-TTg)での広域計画の中での位置づけにも留意しながら、クラスター化を進め ることが推奨されます。 Chapter 6 (3)都会と農村の交流による教育プログラムとしての農村観光 近年ハノイ周辺では、週末の余暇を利用して、農村地域を訪れ、農村の生活や昔からの農作 業の方法等を学ぶ家族連れの観光客を目にするようになりました。またハノイの学校の教育 プログラムの一環として、農村地域を訪問するプログラムも始まっています。農村を知って楽 しむ「教育」の場としての農村観光地にも期待がもたれます。農村地域には、都会では味わえ ない新鮮な空気、食べ物、風景、人との交流等が期待できるため、農村はこれからも全ての ベトナム人にとって大切な場所となっていくでしょう。 ガイドブック活用に向けて (2)農林業-食サービス-観光による農村産業クラスター形成 この手法は、「農林業」、「食のサービス」、「観光」の産業と産業とをクラスター化していく手法 です。農村地域では、観光産業の他に、農業、林業、地場産業等の伝統的に続く産業がありま す。観光は、農村に観光客を誘致することができるため、様々な農産品等の販売のマーケット が農村内にできることになります。そのため質の高い農産物の商品が開発できれば、農産物 の価格が上がるだけでなく、商品の販売促進や収益向上にとって好機となります。 例えば、果樹の栽培が盛んな農村であれば、果樹を加工したお菓子、ケーキ、果樹酒などの 加工品を地域にて製造することができれば、地域内での食サービスとしての提供や、更に保 存性のある商品が開発できれば観光客へのお土産としての販売の機会が創出されることに なります。また野菜やお茶等の生産が盛んな農村であれば、野菜の加工品、お茶の販売、更 には農村のレストランで食事サービスとして提供できるようになるとサービスが多様化され、 関連する雇用促進や収入向上につながります。また農産品の展示販売所を作ることができ れば、観光客の訪問先やアトラクションも増加することになります。これらの産業間の連鎖によ る相乗効果が期待される手法です。 ■発行機関 ベトナム文化スポーツ観光省 観光総局 観光開発研究所 独立行政法人 国際協力機構(JICA)ベトナム事務所 ■編者 Ha Van Sieu ベトナム観光開発研究所 安藤勝洋 JICA観光開発専門家 ■執筆者 第1章~第6章(第3章実践例6、実践例7以外) 安藤勝洋 JICA観光開発専門家 第3章実践例6 大槻修子 公益財団法人 国際開発救援財団 (FIDR) 沖山尚美 公益財団法人 国際開発救援財団 (FIDR) カトゥー族地域活性化のための観光開発事業 プロジェクトチーム 第3章実践例7 Nguyen Bao Thoa ベトナム地場産業開発研究所 Le Ba Ngoc VIETCRAFT ■監修 山本聡 JICAベトナム事務所 Pham Hong Long ベトナム国家大学観光学科 Pham Truong Hoang ベトナム国立経済大学国際学科 Vu Nam ベトナム観光総局マーケティング部 ■編集スタッフ Nguyen Hoang Mai ベトナム観光開発研究所 Huynh Thi Thuy Tien JICA観光開発チーム Nguyen Hang Nga JICA観光開発チーム Do Thanh Huyen JICA観光開発チーム ■編集協力 Nguyen Thi Thu Le JICAベトナム事務所 金子雄一 JICA青年海外協力隊 宗陽香 JICA青年海外協力隊 吉本康之 JICA青年海外協力隊 友田博通 昭和女子大学 マークチャン 昭和女子大学 鈴木弘三 昭和女子大学 友田吉紀 昭和女子大学 鳴海祥博 昭和女子大学 江島明義 昭和女子大学 小林章子 昭和女子大学 向後千里 くらしき作陽大学 溝上良博 今岳窯 福川裕一 千葉大学 加藤英一 東海大学 大國晴雄 太田市教育委員会 Nguyen Van An ドンラム村管理事務所 Nguyen Thanh Van ハイズオン省ニンザン郡文化情報室 Phan Tien Dung トゥアティエンフエ省文化スポーツ観光局 Tran Viet Luc トゥアティエンフエ省文化スポーツ観光局 Nguyen Hong Thang フクティック村管理委員会 Nguyen Mau Hoa タイントアン観光管理委員会 Nguyen Tan Phong ティエンザン省文化スポーツ観光局 Duong Van Phuong ティエンザン省ドンホアヒエップ村人民委員会 Phung Quang Thang ハノイツーリスト Tran Quang Hao フエツーリスト Duong Thi Lan ドンラム村住民(レストラン) Nguyen Van Hung ドンラム村住民(レストラン) Cao Van Hien ドンラム村住民(伝統菓子作り) Nguyen Van Chuong ホンフォン水上人形劇団 Nguyen Ba Trung フクティック村住民(ガイドグループ) Phan Thi Hong Thanh フクティック村住民(食事グループ) Luong Thanh Hien フクティック村住民(伝統窯業グループ) Tran Thi Trang タイントアン住民(バインテト体験) Tran Duy Chien タイントアン住民(ボートグループ) Le Thi Chinh ドンホアヒエップ村住民(レストラン) Phan Ba Duc ドンホアヒエップ村住民(ホームステイ) Huynh Thi Thanh Truc ドンホアヒエップ村住民(レストラン) Pham Thi Nhu クァンナム省ナムザン郡人民委員会 Tran Thi Thu Oanh 公益財団法人国際開発救援財団(FIDR) Nguyen Le Hong Phuc 公益財団法人国際開発救援財団(FIDR) Van Thi My Yen 公益財団法人国際開発救援財団(FIDR) ■編集協力機関 ディエンビエン省文化スポーツ観光局 トゥアティエンフエ省文化スポーツ観光局 ホアビン省文化スポーツ観光局 ダナン市文化スポーツ観光局 ライチャウ省文化スポーツ観光局 クァンナム省文化スポーツ観光局 フートー省文化スポーツ観光局 クアンガイ省文化スポーツ観光局 ラオカイ省文化スポーツ観光局 フーイエン省文化スポーツ観光局 ハザン省文化スポーツ観光局 ニントゥアン省文化スポーツ観光局 バッカン省文化スポーツ観光局 ビントゥアン省文化スポーツ観光局 タイグエン省文化スポーツ観光局 コンツム省文化スポーツ観光局 ランソン省文化スポーツ観光局 ザーライ省文化スポーツ観光局 バクザン省文化スポーツ観光局 ダックラック省文化スポーツ観光局 ヴィンフック省文化スポーツ観光局 ドンナイ省文化スポーツ観光局 バックニン省文化スポーツ観光局 ビンズオン省文化スポーツ観光局 ハイズオン省文化スポーツ観光局 ビンフォック省文化スポーツ観光局 タイビン省文化スポーツ観光局 ロンアン省文化スポーツ観光局 ニンビン省文化スポーツ観光局 ドンタップ省文化スポーツ観光局 ハイフォン市文化スポーツ観光局 アンザン省文化スポーツ観光局 クアンニン省文化スポーツ観光局 ティエンザン省文化スポーツ観光局 ハノイ市文化スポーツ観光局 ハウザン省文化スポーツ観光局 タインホア省文化スポーツ観光局 カントー市文化スポーツ観光局 ゲアン省文化スポーツ観光局 キエンザン省文化スポーツ観光局 ハティン省文化スポーツ観光局 クァンナム省ナムザン郡人民委員会 クアンチ省文化スポーツ観光局 ■デザイン協力 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