PDFファイル - TRY 北海道から海外教育旅行

海外教育旅行促進事業
海外教育旅行促進事業
旅行先現地調査レポート マレーシア(4泊5日)
マレーシア(4泊5日)
旅行先現地調査レポート
北海道札幌啓成高等学校 教諭 堀内 信哉
1頁
北海道滝川西高等学校
教諭 佐々木 晃
6頁
北海道尚志学園高等学校 教諭 青木 信也
9頁
とわの森三愛高等学校
教諭
柿﨑 明子 12 頁
2015.01.
道内空港を利用した海外教育旅行促進事業
②旅行先現地調査 マレーシア(4泊5日)
日
次
1
2
月
日
7/30
(水)
地
間
交通機関
ス ケ ジ ュ ー ル
0 9 : 0 0
1 2 : 0 0
K E - 7 9 6 仁川国際空港にて乗継、クアラルンプール空港へ
※集合は新千歳空港 07:00
仁 川 国 際 空 港 発
1 7 : 3 5
K E - 6 7 1 (機材トラブルで 1 時間出発が遅延)
クアラルンプール空港着
2 2 : 5 5
マ
レ
ー
シ
ア
マ
レ
ー
シ
ア
7/31
(木)
レ
ー
シ
ア
8/1
(金)
専 用 ハ ゙ ス クアラルンプール空港到着後、
バスにてホテルへ移動
0 9 : 1 5
レ
ー
シ
ア
専 用 ハ ゙ ス
ノボテル・クアラルンプール・シティー・センター【泊】
*バス内でミーティング
アジア太平洋大学(APU)
1 4 : 0 0
1 5 : 1 0
INTI(大学)
ヤクルト・マレーシア工場
1 9 : 0 0
マレーシア政府観光局・千葉県・北海道合同意見交換会
0 9 : 3 0
1 0 : 0 0
1 0 : 3 0
3
5
6
7
:
:
:
:
3
0
2
2
専 用 ハ ゙ ス
0 8 : 3 0
0 9 : 3 0
1 1 : 0 0
クアラルンプール空港発
1 8 : 2 0
2 3 : 15
仁 川 国 際 空 港 着
0 6 : 40
仁 川 国 際 空 港 発
新 千 歳 空 港 着
1 0 : 10
1 2 : 55
ノボテル・クアラルンプール・シティー・センター【泊】
ホテル出発
ICT 電脳都市 サイバージャヤ視察
政府機能集積都市 プトラジャヤ視察
【クアラルンプール市内研修メニュー調査】
ろうけつ染め工房、チェコレート工房見学
王宮、バトゥ洞窟
スズ工場見学(体験工房)
国家記念碑、独立広場、セントラルマーケット等
0
0
0
0
専 用 ハ ゙ ス
ノボテル・クアラルンプール・シティー・センター【泊】
ホテル出発
マレーシア森林研究所(FRIM)
マラッカへ出発(高速道路経由)
【世界遺産 古都マラッカ研修メニュー調査】
ジョンカーストリート自由見学
オランダ広場、ムルカ・キリスト教会
セントポール教会、サンチャゴ砦等
1 3 : 3 0
1 4 : 3 0
8/2
(土)
ホテル出発
0 9 : 4 0
1
1
1
1
マ
4
時
新 千 歳 空 港 発
仁 川 国 際 空 港 着
マ
3
名
K E - 6 7 2
マラッカを出発し空港へ
搭乗手続き後、仁川国際空港へ
【機内泊】
5
8/3
(日)
仁川国際空港にて乗継、新千歳空港へ
K E - 7 6 5
新千歳空港到着
※到着ロビーにて解散
旅行先現地調査レポート
マレーシア(4泊5日)
北海道札幌啓成高等学校 教諭 堀内信哉
〈事前に挙げた目的に関する報告〉
本校は、平成22年度より文部科学省からSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受け
ており、平成26年度は指定の最終年度である。来年度以降も継続して指定を受けるため、新しい企画
を申請書の中に盛り込むことを目的に、マレーシアの教育旅行に参加させていただいた。具体的には、
北海道の高校生30名程度とクアラルンプール(以下、KLと略す)の高校生と共に、科学研究発表会
を開催したいと考えている。現地調査にて、情報収集を行ってきたことを目的別に報告を行う。
(1)合同発表会に参加してもらえるKLの高等学校を見つける。特に理科教育に力をいれており、
また探究活動を行っている高校を見つけたい。
→
具体的な学校名の調査には至らなかった。ただ現地の高校と接触するための方法を知ることがで
きた。マレーシアの現地のことに詳しく、また私たちの要望を理解した上で交渉していただけるキー
パーソンにお会いすることができた。現地の高校と単独で話を進めることはできないということで、
手順としては、今回マレーシアに同行した北海道総合政策部航空局国際航空グループ大槻悟主査を通
した上で、写真にも載せた株式会社KNAINの石川様、マレーシア政府観光局の徳永様にお話しし
ていただくことで交渉ができそうである。
株式会社
KNAIN
石川
徳仁
様
マレーシア政府観光局
徳永
誠
様
(2)KLで理科実験などの実習を受け入れて指導してくれる大学や研究機関を探す。
→
具体的に交渉するところまでは至っていない。KL近郊にて、次に挙げる私立の総合大学を見
学させていただいた。APUは、マレーシア内ではとても有名・名門大学であり、日本でいう早慶と
いった大学に相当する。千葉県立長生高校は、APUにて課題研究発表会を行ったことがあるとのこ
とだが、1回きりで、継続して実施はできていないとのことである。大学の広報の方からの説明会に
て、実験・実習の受け入れについて質問してみたが、学部の教授に聞いてみないとわからないとの返
答であった。
International University &College
アジア太平洋大学(APU)
1
(3)キャリアトークを行ってくれる日本人研究者を探す。
→
KL近郊のヤクルト工場を見学し、その中で日本人の方からの説明が開かれる予定であったが、
ラマダン明けの時期は、イスラム教と関係のない日本人でさえ都合がつかないとのことで、現地の方
から製造工程に関する説明を聞いた。ヤクルトを飲む習慣はマレーシアでも根付いているようで、現
地語で Yakult とは発音せず、
「ヤクー」と呼んでいた。日本人の理系研究者を今後も探していきたい。
(4)KL近辺で、熱帯雨林研修ができる場所を探す。
→
KLから20km離れたところに(車で1時間程度)マレーシア森林研究所(FRIM)がある。
この地は、原生林ではない。鉱山の跡地を森林に戻すことになり、他地域からの植物も植林されてい
る。ただ、やはり熱帯雨林の研修は十分に実施できる。現地の方の英語によるガイドに従い、約一時
間半程度の研修プログラムに参加した。熱帯の樹木の日光を吸収する工夫(写真a、b)、伐採した
後、ガラス質成分を吸収し、シリカでコーティングされた切り株(写真c)、高級なお香となる樹皮
(写真d)
、ボンドの材料になるラテックスの採取(写真e)、奇妙な形の葉をもつ植物(写真f)な
ど初めてお聞きする話もあった。生徒の受け入れ人数は、10人~20人程度が妥当である。
写真(a)
(e)
(b)
(c)
(f)
森林研修風景
2
(d)
〈現地調査を通しての新たな発見〉
(1)KL は、発展途上で経済成長している街である。また多様性を感じる街である。
→
写真にも載せたように KL では、高層ビルの建設工事、宅地の開発等、まさに高度経済成長を成
し遂げていることを肌で感じる街である。労働人口も不足しているようで、近年はインドネシアから
多く入ってきているとのことである。マレー、インド、華僑などが暮らし、ガイドからの説明にも
diversity「多様性」を感じる街である。
(2)KL は、計画的に造られている街である。
→
KL 中心部は大都会であり、首都の機能を KL 近郊に移している。プトラジャヤと呼ばれる政府
機関を集中させた地域がある。また、KL 近郊には、サイバージャヤと呼ばれるマレーシア版シリコ
ンバレー地域もある。
プトラジャヤの看板
プトラジャヤにある首相府
首相府の隣にあるモスク
(3)KL近辺で、工業に関連した研修を実施する。
→
地理の教科書でマレーシアではスズがとれると習ったが、実際に工場見学で学ぶことができた。
化学教員である私にとっても非常に興味をもって見学ができて、SSH研修にも是非適している。合
金(スズの合金を pewter という)
、金属の熱伝導率、製造工程について、現地のマレー系の従業員から
説明があり、見せ方を工夫している。また、金属を叩いて模様をつける体験(20人程度収容)もでき
る。
3
(4)マレーシア観光について
→
KL周辺とマラッカ周辺にて歴史的名所を見学した。見学に同行してくれた現地ガイドのトニー
さんの説明は、とても日本語も綺麗でわかりやすくユーモラスであった。現地ガイドの人柄によって、
旅の楽しさは変わるものだと実感した。トニーさんは、北海道のことも事前に勉強しているらしく、
北海道弁を交えてのトークだった。
「水曜どうでしょう」という番組で、大泉洋さんへのガイド経験
もあり、とても経験豊かなガイドであった。
<KL周辺>
バトゥー洞窟
パームtree
独立広場
パームの実
国家記念碑
バナナの木
<マラッカ周辺>
マラッカ海峡
セントポール教会
現地ガイドのトニーさん
4
ザビエル像
(5)英語教育について
→
今回の教育旅行では、トニーさんの日本語によるガイドで説明を受けたが、それぞれの見学場所
では、現地のマレー人の英語によるガイドを受ける機会も多数あった。元々英語はあまり得意ではな
いが、とても聞き取りづらかった。独特な発音であり、一例を挙げると、Yakult(ヤクルト)を「ヤ
クー」
、soft wood を「ソー、ウー」
、hard wood を「ハー、ウー」というように単語の最後の子音を
省略する傾向にあり、初めて聞く人にとっては厳しい。トニーさんに通常の英語の発音に直してもら
う場面もあった。英語教育のリスニングとして妥当かどうかは疑問が残る。アジア太平洋大学の広報
の方の英語は、聞きやすかったので人によるかもしれない。
一方、英語を話す方は、この地は向いているのかもしれない。多少、ボキャブラリーがなくても、
構わずどんどん話す文化が根付いているので、日本人の高校生も積極的に話すことを促すことができ
る雰囲気を感じる。
森林研修の現地ガイド
スズ工場でのガイド
謝辞
今回のマレーシア教育旅行に対して、北海道総合政策部航空局国際航空グループ大槻悟主査、株式会
社イー・シー・プロ山口英男様に感謝申し上げます。私たちの要望を随所に盛り込みながらご協力いた
だき、大変ありがとうございました。私の人生観にとっても良い旅になりました。今後とも啓成高校が
マレーシア研修を実施するにあたり、ご助言をいただけたらと思います。
5
旅行先現地調査レポート
マレーシア(4泊5日)
北海道滝川西高等学校 教諭 佐々木 晃
7月30日(水)
7時15分に新千歳空港国際線出発ロビーにて集合、新千歳空港より、大韓航空に搭乗し、仁川国際空
港へ。仁川国際空港内で、ミネラルウォーターや蜂蜜が入ったお茶を買ってウォンを使う練習をし、食
事へ。韓国料理を食べた。料理の名前は忘れたが、辛い牛肉入りのスープを食べた。注文の仕方が始め
にカウンターで注文後、レシートをもらい、番号で呼び出されて、取りに行くシステムだった。少し戸
惑ったが、このようなシステムもありかなと感じた。食事後、しばし空港内を散策し雰囲気を味わった
後、17:30に再び大韓航空に乗りクアラルンプールへ。
かなりのロングフライトであったが、映画を見たり、持ち込んだパソコンで仕事をしていたので意外と
早く着いた。途中に機内から見た夕焼けがとてもきれいで印象的であった。11:30頃にクアラルン
プール国際空港に到着後、手荷物受け取り、その後クアラルンプールを案内していただいたトニーさん
と合流、小型バスでノボテルホテルへ。部屋に入った頃には12時を過ぎていた。
7月31日(木)
朝6時なのに周りは真っ暗であった。早速向かいのセブン・イレブンへ行き、金銭感覚を付けるため、
リンギットを使って少しばかり買い物をした。7時になり、やっと少し明るくなり始めたが、日本で言
うと3時半から4時くらいの明るさであった。
この日は、始めに APU、INTI を見学した。千葉県の先生方と合同で大学の説明を聞いた。要点は①
APU では英語のプログラムがとても充実しており、初心者でも基礎コースから始めることで実用的な
英語を身につけることができる。②若くて多感な年代に多様な国々から来た留学生と共に学校生活、私
生活を送ることで、共に切磋琢磨し、多文化共生のための生き方を体験することができる。③早めに学
位の終了もでき、他の海外の大学との学位の取得も可能である。④安価で質の高い教育、寮がありまた
親日国であることから、安心な学校生活を送ることができる。であった。グローバル人材の育成が今求
められている中で、海外への留学の促進は可及的速やかに解決すべき課題であるが、現在のままでは社
会全体で解決していかなければ日本はアジア諸国に全くかなわないと強く感じた。次に視察した INTI
は、入試は英語ができればよいということであったため、海外への派遣が促進されるよう、学校や地域、
保護者はその意義を広めたり、深めたりする取組の必要性を強く感じた。その後ヤクルトの工場を視察、
夕食は千葉県の先生方と同席し、交流した。名刺交換をして、他県の国際交流が盛んな学校の先生方と
も情報交換ができるようつながることができたのは収穫であった。
8月1日(金)
熱帯雨林気候の雰囲気そのままの暑さを体験したこの日は、クアラルンプール市内の視察に行った。行
程を詳細にするとサイバージャヤ(IT 都市)、プトラジャヤ(政府機関を集中させた都市)、王宮、バツ
ー洞窟、すず製品の工場、独立広場、国家記念碑、セントラルマーケット等を視察した。
この中では、サイバージャヤに代表されるが、IT 関連の優秀な企業が世界中から集まり、またその場に
IT 関係の大学を置き企業との連携をしやすい状態にしていることで、学生も非常に刺激を受け、将来の
6
仕事のイメージや生活のイメージがわくこと、ロールモデルも見つかることは間違いないと思った。政
治的にも、次世代を育てる教育の仕掛け作りが社会全体でよく作られていると感じ、日本も学校だけで
はなく社会全体で次世代を育てていく必要性を感じた。さらに2020年の先進国入りという目標に向
けて、国として急速力をつけようとする勢いが2つの新しい都市作りから感じられた。また、ヒンズー
教の聖地というバトゥー洞窟での巨大なシバ神やガネーシャの像、宮殿や、首相官邸等に見られたイス
ラム教のモスクやモスクをモチーフとした建築物を体験し、イスラム教やヒンドゥー教を以前よりも身
近に感じることができるようになったと思う。特に、報道や教育などの関係で、イスラム教やある特定
の宗教や国に対して良いイメージを持っていない日本人も多いと思うが、このような実物を見たり、中
に入ったりすること、また街に歩いている様々な宗教の人たちを見て、一緒に生活してみて、そのイメ
ージから来る抵抗感も徐々になくなり、多文化の中で共生することを実際にイメージできるようになる
と考える。そして、間接的なイメージで判断するのではなく、自分で見た、感じたことがその人の真実
であることを体験させたいとも考えた。また、独立広場ではマレーシアでは戦争、内戦、植民地支配か
らの独立という歴史的背景の上に、現在の多文化共生の素地があることを知った。日本は単一民族であ
ることのメリット(母国語で大学まで教育のほとんどを行える等)とデメリットを考え、今後の日本の
ために必要な力や仕掛けを考えていくきっかけになると感じた。
8月2日(土)
この日はマレーシア森林研究所(FRIM)
、世界遺産である古都マラッカ、セントポール教会、サンチア
ゴ砦、チャンフーテン寺院、ジョンカーストリート等を視察し、その後クアラルンプール国際空港から
仁川国際空港へのフライトになった。マレーシア森林研究所では、熱帯雨林をガイドの方に先導しても
らい、少し散策したのだが、日本で実物をみることが出来ない様々な植物や動物を説明していただいた。
ただ散策するだけでは気がつかないと思う点について説明していただいたので気づけてよかったと思
う。森林研究所設立の経緯は森林伐採の反省からと言うことであった。また、熱帯雨林のジャングルの
イメージが少し変わったように思う。植生が違うところもあるが、北海道の森林とも共通する点が沢山
あった。GOGREEN 等の環境についてのキャンペーンを行っているポスター、看板を見たが、ゴミの
散乱や不法投棄が道路脇から頻繁に見受けられるなどギャップを私は持っていたので、これからのマレ
ーシアの課題なのだと感じていた。また、日本のことを考えるとあり得ない状況であるため、ゴミ処理
については日本人のいいところだとも感じた。
その後、クアラルンプール国際空港へ移動。食事後搭乗して機内泊。
8月3日(日)
7時頃に仁川国際空港着。機内泊であるため、寝ている間にあっという間についた感じであった。そう
考えると眠っているときに移動するのは時間的にも上手に使えていいかもしれない。乗り継ぎが9時4
0分のチェックインであるため、約3時間の自由時間。自由時間があっていいとも思うが、旅行の行程
と考えると、列車のようにスムーズに連結しないためこのタイムラグがもったいない気がする。やはり
直行便はとても便利であると感じた。13時頃新千歳空港に到着。旅行の全日程を終了した。
<研修を振り返って>
今回のモニター研修では、海外見学旅行の意義を体験することができた。
7
「高校生に海外見学旅行をさせるべきか」と問われれば、結論としては「賛成」である。
次にいくつかのメリットを今回の体験から述べていきたい。
第1に、体験により、テレビ、報道、学校教育などで言われている東南アジアのイメージが変わる。
特に、イスラム教、ヒンドゥー教の人々の生活ぶりを見て感じて、親しみを持てるようになる。政治的
な部分の報道を全て信じるのではなく、自分が体験したことを信じることが重要であると感じる。とく
に、ハラル食など、マレーシアでは当たり前のことを日本の食品業界でも考慮することで、日本の食品
の質の高さをアピールすることができると思うし、イスラム圏の人々の生活を知り、礼拝等の設備を整
えることで、安心して北海道ないしは日本に来ることができるようになればよいのではないか。そのよ
うなことを考え商業科の生徒が商品開発や観光事業のプランを作成し、プレゼンテーションさせるのも
いいかもしれない。
第2に、多文化共生のメリットと海外への大学進学を促すことができるため、グローバル人材の育成
につながる。今回は APU、INTI という様々な国からの留学生と共同生活を行いながら、日本では受け
られないような英語やその他の言語教育を受けることができることを知った。また、INTI においては
英語の試験(検定の取得 TOEFL の一定以上の得点や、英検など)で入学可能な大学もあり、かなり大
学の施設・宿舎も充実しているのにも関わらず日本の大学よりも安価であり、生活費も日本よりも安価
である。しかも、4年間でできる体験は、①語学力、②多文化共生の意識・態度、③各国の留学生との
つながり、④文化の違いやそのニーズを知ることができる。など日本での大学生活ではできない経験が
できる。自分の進路を日本限定で考えることから脱却し、開国してあげる大きなきっかけになると考え
る。現実に一緒に同行した先生から、引率した国の学校と交流し、その国の大学に進学したいと申し出
る生徒が出てくるという話も聞いた。若くて多感な時期に体験したことは、自分のあり方や生き方に大
きな影響を与えることになる。特に、人が変わるのは①場所が変わる。②時間の使い方が変わる。③出
会う人が変わる。④立場が変わる。と言われるが、この4つが日本にいるときから大きく変わるきっか
けになる。若い頃に経験させることが重要だと感じた。
上記に挙げたメリットはあるが、現場では、特に公立の高等学校では反対意見も多いのが現状であろ
う。実際におおかたの教員は従来の見学旅行でいいと考えていると思うし、考えたこともないと思う。
また、引率の不安、保護者の理解、費用の面の問題もある。しかし、アジア各国が勢いを増し、グロー
バル人材の育成が急務である今、先に述べたメリットは日本のこれからの世代を導くために最も重要な
ことである。多くの教職員、保護者など社会全体で、グローバル人材の育成に取り組むことを本気にな
って考えなければならないと強く感じた。社会全体がそのような状況でない現在、今回の取組は是非今
後も継続し、なるべく多くの教員にも参加して欲しいと思う。また、冬にプレゼンテーションがあるた
め大いに発信したい。そうして、世論を作り上げることが、まず急務であると感じている。
最後に、この度このような貴重な経験をさせていただいた北海道総合政策部航空局国際航空グループの
大槻悟主査 E.C.PRO ディレクターの山口英男様をはじめマレーシア観光関係者の皆様方に感謝申し上
げます。ありがとうございました。
8
旅行先現地調査レポート
マレーシア(4泊5日)
北海道尚志学園高等学校 教諭 青木 信也
1
視察日程
7月30日(水)~8月3日(日)4泊5日
2 視察先
マレーシア
3 視察目的
「安全面・交通面などの環境調査」 「国際教育(多民族社会・英語)を学べる
プログラムや生徒への教育効果の可否の調査」
4
調査結果
(1)海外教育旅行における安全面、交通面などの環境について
①クアラルンプールについて
今回の視察の拠点はクアラルンプール(以後 KL と略す)でした。
KL の印象は近代的な建設物が多く建設されており、非常に都会的な
雰囲気が感じとれる一方、古い建物の取り壊しや新しい建物の建設が
多く見られ、発展途中のエネルギーも同時に感じられるものでした。
②安全面について
KL のホテル周辺限定になってしまいますが、夜はショッピング
モールまでエアコンの効いた歩廊を歩いて行きました。非常に多く
の人が歩いているとともに多くの警備員が配置されていたのが印象
的でした。帰りは敢えて路上を歩きホテルに戻りましたが、特に危
険な印象は受けませんでした。しかし、信号がほとんどなく、車は
歩行者を気にする様子もないため左右確認を何度もして道路を横断していました。
③交通面について
事前に交通渋滞が多いという情報がありましたが、ラマダン明けの為にさほど渋滞は感じ
ませんでした。そのため、ほぼスケジュール通りの行程を実施することができました。ただ、
北海道から行く場合は移動に時間がかかることに加え、渋滞による時間のロスを想定すると
余裕のある行程が必要になるのではないかと個人的には考えます。
④食事・衛生面
食事は中華料理が中心でした。昼は飲茶、夜は本格中華料理を食べましたが、非常に美味
しく高校生も楽しめると思います。最終日のマラッカでマレー料理と中華料理がミックスさ
れたものを食べましたがスパイシーなものやココナッツミルクを使ったカレーなどあまり食
べることのない料理だったので良い経験になりました。
(できれば疲れの溜まっている最終日
ではなく2日目が良かった!)
水道水は飲めませんがミネラルウォーターは手軽に購入できるので特に不便は感じません
でした。また、ホテルのトイレや観光地のトイレも清潔でした。
(観光地のトイレは有料制が
多く驚きました。
)
9
(2)国際教育(多民族社会・英語)を学べるプログラムや生徒への教育的効果の可否の調査
①国際教育について
<多民族社会>
「共生」
「共存」
「相互の価値観の尊重」が多民族国家であるマレーシアでの人々のキー
ワードとして挙げられる。事前に知識としては持っていたが、実際に現地ではわずか数日の
滞在でそれらのキーワードを体感できた。これは大変驚きであった。マレーシアで生活して
いる人にとっては違う人種が隣にいるということは当たり前であって自然なことなのであ
る。単独で行動した時すら安心を感じることが非常に多かった。この安心感は治安が安全と
いうことではなく、自分を個として認めてくれる、自然に接してくれているという安心感で
ある。これは、現地に行かないと決して体験できない感覚であろう。このような感覚は多感
な高校生にとってはこれからの人生において影響を与えられるような体験であると考える。
<英語・コミュニケーション>
マレーシアでは英語が日常会話として使われている。家庭では母国語を話していることを
考えると最低 2 か国語を話せることとなる。実際に複数の言葉を話しているシーンを多く見
かけた。私は英語をほとんど話すことができなく、旅行前は正しい発音、文法を使わなけれ
ばならないと半ば強迫観念に迫られていた。しかし、マレーシアでの滞在の中では一切気後
れすることなく話すことができた。
(もちろん挨拶や簡単な質問、単語の羅列ではあるが)
それは、マレーシアの人たちはコミュニケーションのツールとして英語を捉えていることが
理解できたからである。マレー語の影響からか英語の発音も非常に聞き取りづらかったのだ
が、それが逆に新鮮であった。
②プログラム(体験学習)について
今回の視察ではピューター(錫(すず))工場、ろうけつ染め工房という伝統産業学習、熱
帯のジャングルという自然学習を行った。自然学習はガイドの木や自然についての話を聞き
ながら歩き、日本(北海道)とは違う熱帯雨林の理解を深めることができた。散策コースも複
数あるので、多くの人数に対応できるのも魅力的である。
10
(3)マレーシア教育旅行視察を終えて
心地よい疲れを感じて新千歳空港に着いた。しかし、本音を言えばまだマレーシアに滞在
していたかった。それぐらい 4 泊 5 日の視察旅行は充実し、また好奇心をかき立てるもので
あった。
日本では学校内においても日常社会においても同一的なものの見方にあふれている。また、
テレビから流れている情報にも疑うことなく真に受けるような日常。そのような社会では高
校生に判断能力、適応能力の育成を求めることは難しいように思われる。それに比べマレー
シアでは民族が違う、宗教が違う、風習が違う、現地の方にとっては当たり前のことではあ
るが、その多様性とそこから溢れるものは生徒に新しい価値観を生み出す土壌を持っている。
また、クアラルンプールやサイバージャヤ、プトラジャヤなどを見学し、これから発展し
ていく国の様子を見学できたことはとても有意義であった。我々の世代はある程度出来上が
った国家を最初から見ているが、マレーシアはこれから発展していく国なのである。そのエ
ネルギーを肌で感じ取ることはこれからの社会を担う高校生には是非経験してほしい。
北海道から直行便がなく、移動だけで 1 日を費やされることは内容の充実面ではデメリッ
トではあるが、レジャー型の修学旅行ではなく教育面を重視したものであれば 4 泊 5 日で充
分効果はある。大げさかもしれないが 1 日滞在すれば目と耳と鼻と肌でマレーシアという国
を感じることができる。そんな国である。英語教育、国際教育に重点を置いている学校はも
ちろんのこと、本校のように一般的な学校においても生徒には何かしらのフィードバックを
与えることができる国である。
モスク
バトゥー洞窟(ヒンドゥー教)
モスク内のドーム
KL 市内の交通
11
モスク内
KL 郊外
旅行先現地調査レポート
マレーシア(4泊5日)
とわの森三愛高等学校 教諭 柿﨑 明子
1日目(2014年7月30日)
新千歳⇒仁川
仁川⇒クアラルンプール
仁川での待ち時間が4時間程度(この日は機材トラブルで5時間程度)。修学旅
行で利用する場合、この乗り継ぎの待ち時間を少しでも減らすことができれば、
と思う。が、韓国も経験できるという意味で、往路か復路のどちらかで少し長く
時間をとることができれば、それはそれで良い。建物自体はあまり複雑でなく、
全ての通りにナンバーがふられているので、迷うことも少なそうな印象。
2日目(2014年7月31日)
APU訪問/INTI訪問/ヤクルトマレーシア工場見学/マレーシア政府観光局合同夕食会
APU・INTI・・・二つの大学では、マレーシアで学
ぶということがどういうことかを知ることができて良か
った。現在本校でつながりを持っている『台湾留学センタ
ー』でも、
「関東のあまり良くない私立大学に行くよりは、
台湾に留学したほうが、①生活費が安い、②英語と中国語
の両方を身につけられる、③成績がよければ学費も免除になる、という点で利点が大きいと説明してお
り、今年度の 3 年生ですでに台湾への留学を決めた生徒が2名いる。マレーシアも、物価が安いので生
活費が安い、英語を身につけて更に専攻を持てる、入試がない(?)、学費がいらない(?)という点
では留学を勧めても良いのかもしれないと感じた。施設についても整っている印象。
ヤクルトマレーシア工場・・・修学旅行で訪れるのであれば、ヤクルトに限ら
ず日系の工場を見せるのは良い。今回については説明してくれた人の英語が聞
き取りにくく半分くらいしか理解できなかったのが残念。
合同夕食会・・・昼食と夕食で千葉県の教員団と懇談をできたことはとても良
い機会だった。千葉県の様々な学校の実情を聞くことができ、良い情報交換の
場となった。また、マレーシア政府観光局の徳永さん、マレーシア留学斡旋企業の石川さんと面識がで
きたことで今後につながる関わりを持つことができたことに感謝。
3日目(2014年8月1日)
サイバージャヤ/プトラジャヤ/バトゥー洞窟(ヒンドゥー教寺院)/ROYAL SELANGOR/バティ
ック工房見学/国家記念碑/独立記念広場/セントラルマーケット
サイバージャヤ・・・近代都市。マレーシアに対して持っていたイメージを
はるかに上回る開発。さらに方々で建設途中の建物を見ることができた。
12
プトラジャヤ・・・サイバージャヤのツインタウン。こちらも整備されている。
上記2つのツインタウンのどちらにもイスラム教の寺院があり、祈りの時間と場所を確保されている。
バトゥー洞窟・・・272段の急な階段の先にヒンドゥー教の神が祀られてい
る。階段の昇降は大変だが、修学旅行生にはぜひ経験させたい場所の一つ。サ
イバージャヤでイスラム教のモスクに入り、数時間後にヒンドゥー教の聖地を
訪れる、そして翌日にはキリスト教の教会を訪れ、最終日には仏教の寺院を訪
れる、という状況がとても新鮮。多くの宗教・文化がそれぞれを迫害すること
なく共存・共生していることを目の当たりにできる。この点がマレーシアの滞
在で最も強く感じたこと。
ROYAL SELANGOR・・・スズを原料とした製品の製造過程を見学。スズについての説明、またそこ
から製品を作る過程、会社の歴史、スズ製品の歴史などを説明してもらい、そ
の上で実際に製品を作っている過程を見て、体験をすることができる。大変「見
せ方」の上手な工場。工場を見学させるのであればこの工場は大変良い。実際
に作業している人に質問をしても答えてくれるなど、見学者にとって優しい工
場。一通り説明を聞き、製造過程を見た後で、体験(ピューター作り体験30
分 or アクセサリー作り1時間半)ができるのもこの工場の良いころ。修学旅行では体験学習を入れた
いので、その意味でこの工場は良い。500人から600人が働いているという工場で、女性が多いと
いうのも特徴的。実際にスズでできた器に触れて、熱伝導率を肌で感じることができるのも高校生にと
っては良い。ギネスに登録されている世界で一番大きなビアマグも見ることができる。
バティック工房見学・・・実際に職人さんが布にデザインをしているところを見学することができる。
また、デザインから染色までの過程がディスプレイされ
ているので一連の作業を見ることができる。実際に体験
もできるということで、体験学習の場としても相応しい。
(個人的にはスズの器製作の方がマレーシアらしくて
オススメ。)隣にはお土産を購入できるお店もあり、ろ
うけつ染めの作品や、スズの製品、なまこ石鹸などマレーシアらしいものを購入することができる。
国家記念碑・・・1948年から1960年に行われた独立戦争の勇敢兵士の
記念碑。事前学習でマレーシアの歴史を勉強してから訪問すべき場所。
独立記念広場・・・歴代の首相の写真が飾られている。現在では大型スクリー
ンが設置され、ワールドカップのパブリックビューイングにも使われ、首相も
国民と一緒に観戦したとのこと。ここについても事前学習が必要。
セントラルマーケット・・・マレーシアらしいものを売っている市場。色々な
国の文化が入ってきているマレーシアらしく、インド風の店なども多かった。
マレーシア特有のものを色々見て歩くことができる。高校生がお土産を買うためにいわゆるお土産屋さ
13
んに立ち寄らせるよりも、セントラルマーケットのように文化の勉強もでき、買い物もできるような場
所は一石二鳥で良い。
4日目(2014年8月2日)
マレーシア森林研究所/世界遺産古都マラッカ
マレーシア森林研究所・・・いくつかのトレッキングコー
スがある。一番長いコースで3時間ほど。1ヘクタールに
250種類の熱帯植物がある。香木やラテックスの樹木な
どガイドさんがついて説明してくれる。四季がないので年
輪がない、という説明を聞いたり、熱帯地方ならではの植
物を見ることができる。大変面白かった。理科に興味のある生徒を連れてくる(事
前学習をした上で)と、更に興味をもつのではないかと感じた。蚊が多く、虫除け
スプレーは必需品。また、森林の中はそんなに暑くないので、薄手の長袖の衣類を持っていくべき。何
箇所も蚊に刺され、大変痒い思いをした。生徒を連れて行くならその点のケアが必要。
ニョニャ料理・・・中国からの移民とマレーシア人によって作られた料理。他民族が共生しているマレ
ーシアならではの料理。インド風でもあり、中華風でもあり、美味しい。食文化を知ることも旅先での
学習なので生徒にも食べさせたい。
世界遺産古都マラッカ・・・青雲亭(仏教寺院)は見るからに中国文化の建造物。中国にいるかのよう
に感じる。色使いなどもまさに中国そのもの。
キリスト教会・・・古都マラッカの喧騒の中で唯一気持ちが安
らいだ場所。お祈りをしているクリスチャンの方も見られた。
また、毎週日曜日には時間帯をずらして英語・タミル語・マン
ダリン・マレー語で礼拝がささげられているということも、多
文化共生のマレーシアらしい。難しいかもしれないが、英語で
の礼拝に参加することができれば・・・と考えた。(場所の問
題や信仰上の問題で多分無理でしょう。
)
サンチャゴ砦・・・ザビエルの像を見ることができる。また、ザビエルの腕が取
れてしまっているが、これは、ザビエルの遺体が何ヶ月も腐らなかったことを証
明するためのものだとか。そのような歴史的な話を聞くのも非常に興味深かった。
ジョンカーストリート・・・とにかく人が多い!暑い!という印象だが、それも
マレーシアならでは。色々なものを見ることができて面白かった。時間をとるこ
とができれば生徒の自由行動にも適した場所、という印象。
(深夜)クアラルンプール⇒仁川
5日目(2014年8月3日)
仁川⇒千歳
14
全日程を通して
まず一番に感じたことは「多文化共生」を肌で感じることができる、という点で生徒に体験させたい
街であること。街中に、イスラム教のモスクがあり、仏教の寺院があり、ヒンドゥー教の寺があり、キ
リスト教の教会がある。それが共存している。イスラム教徒の女性はスカーフを被っており、また豚肉
を使わないレストランも普及している。日本にいて感じることができない多文化を随所に見ることがで
きる。
次に、治安の良さ。街中は夜になっても女性が一人で歩いたり、子ども連れで歩けるほどの治安の良
さ。海外を修学旅行先に選ぶ際にはやはり安全面が求められるが、その点でも心配ない。また、現地の
人々もとても優しい。多文化社会だからか、日本人が話す拙い英語を大変忍耐強く理解しようと努めて
くれる。
食事について。全体的に中華料理が多かった。最終日に食べたニョニャ料理も美味しく、日本人の口
に合う料理が多いのではないかと感じた。純粋なマレー料理(家庭料理)を経験する機会があってもよ
いのかもしれない。ガイドさんが話していたホームビジットは良い経験になるのではないか。高床式の
住居を見ることができ、なおかつ家庭料理を味わうことができれば、その国の文化に触れたという気持
ちになることができると感じる。
インフラ整備が進み、多くの大型建造物が建設中であったことも印象的。特に、プトラジャヤは街全
体も新しく、建物の規模も大きく、近代的な都市といった印象。その一方、マラッカに行く途中の町
(村?)には古い建造物も数多く残っており、発展している地域とそうでない地域の両方を見ることが
できる。
5日間という期間でしたが『マレーシアを修学旅行の行き先として考える』、という視点で数多くの
見学地を訪問し、文化に触れることができました。同行していただいた大槻さん、山口さん、また3人
の先生方も大変親切で、非常に有意義な5日間を過ごすことができました。感謝しております。ありが
とうございました。
15