2016/5/25 薬物治療学1 2016 ストレスと不安 不安による身体症状 恐怖感 動悸 息苦しさ 落ち着きのなさ 筋緊張増加 神経症性障害 薬物治療学 越前宏俊 1 ストレスの原因が消失しても不 安がなくならない ストレスの原因があるときに 不安があるのは正常 4 不安の神経科学 • 名称: 神経症性障害 前頭前野 海馬から 情動入力 – 英:neurosis(ニューローシス)、独:Neurose(ノイローゼ) • 定義 – 中枢に器質的異常を認めないが、心理的原因によって生 じる精神・身体の不調により患者の社会生活に支障を来 す疾患 扁桃体 amygdala 情動センター • 特徴 – 発症には性格要因と環境要因が関与している – 精神病と異なり、現実検討力のゆがみや人格解体はない – プライマリ・ケア受診者の20~80%(WHO調査) 青斑核 N Coeruleus 交感神経興奮 発汗、動悸、振戦 2 不安 anxiety 5 神経症性障害 A. 不安障害(発症年代の若い順に) • 正常な生存本能のひとつ – 分離不安:主に養育され慣れ親しんできた親から離れたときに激しい不安症 状を呈する. • fight or flight response(闘争か逃走反応)は危険 回避のための生物生得の本能的反応 – 過剰不安障害:小児期にみられる.現実味のないことを深く悩み,頭から離 れない.それに伴い,不眠,頭痛などの身体疾患を伴う. – 特定の恐怖症(SP):高所,暗所,ヘビ,嘔吐物,乗り物などを理由なく激しく恐 れる.生来的な対象と獲得的な対象とがある – 社会(社交)不安障害(SAD):他人からの自分の能力や容貌を批判されること を極度に恐れ,他人に曝露される場所を避ける – 全般性不安障害(GAD):過剰不安障害の成人型 – 広場恐怖(AGO):パニック発作が生じることを恐れ,すぐ逃げ出せない場所や 助けを求めることができない場所にいることを恐れ避ける.パニック障害に伴 うことが多い – パニック障害(PD):不意に心悸亢進,呼吸困難,死の恐怖などを主徴とする パニック発作がしばしば襲い,その発作の再発を心配する予期不安のため 生活上の障害が出る • 過度な不安と恐怖は睡眠障害、易疲労感、焦燥な どの精神症状を生じ、日常生活に支障を与えるよう になると 不安障害となる 3 今日の診療プレミアムVol.23 (C)2013 IGAKU-SHOINより引用 6 1 2016/5/25 – 心的外傷後ストレス障害(PTSD):死の体験に近い強烈な心的外傷後に,その出来事の 種々な形での再起,関係する出来事に対する感情鈍麻や回避,不眠,爆発などの覚 醒反応が持続する – 強迫性障害(OCD):自分の意思に反して思考,衝動,心像が繰り返し生じ,それに従っ たり,抵抗したりして苦悩する B.身体表現性障害(いずれも意図的または故意によるものではない) – 身体化障害:年余にわたり医学的所見のない複数の身体的愁訴(疼痛,消化器症状, 性的症状,神経学的症状)が続く.転換性障害:症状に先立つ心因があり,随意運動ま たは感覚の麻痺が生じる. – 疼痛性障害:1か所以上の医学的所見の乏しい持続的疼痛が慢性的に続く. – 心気症:自分が重篤な病気にかかっているという観念へのとらわれと恐れを慢性的に もつ.妄想ほど確固としてはいない – 身体醜形障害:自分の容貌に欠陥があると思い込み苦悩する C.解離性障害 全般性不安障害の治療 • 精神療法 – 疾病教育 – 支持的な精神療法 • 共感的な態度で患者の訴えを聞き、病気や症状につ いて繰り返し説明を行い患者の不安の軽減をはかる • 薬物療法 – 短期的には抗不安薬が有効 • 長期投与で依存形成が問題 – これには心因性健忘,心因性遁走,多重人格,および心と体が分離して傍観者である かのように感じるが現実認識は侵されない離人症障害が含まれる. – SSRI/SNRI(パロキセチン、フルボキサミン等) • 効果発現までに6ヶ月以上かかることもある 7 • 症状 全般性不安障害(GAD) • うつ病の合併率が高い(40%)ので注意 10 マイナートランキライザー • 1960年代から登場したベンゾジアゼピン系薬 物の総称(tranquil = 静かな) • 抗不安作用>催眠作用=抗不安薬 • 抗不安作用<催眠作用=催眠薬 – 特に対象のない慢性的な不安を主症状とする精 神身体障害が6ヶ月以上続く。 – (自覚されない不安のため)睡眠障害、過敏,緊 張,易疲労感、焦燥,イライラ,集中困難など。う つ病が40%以上に合併する – 50%以上の患者で肩こり,頭痛,震え,動悸,息 苦しさ,めまいなどが出現する。 Major tranquillizer =抗精神病薬 不定愁訴(不定愁訴) indefinite [unidentified] complaints 8 11 抗不安薬 anxiolytics, sedatives 全般性不安障害 作用時間 作用強度 一般名 商品名 ベンゾジアゼピン系 短時間作用型(<6hr) 高力価型 エチゾラム デパス 低力価型 クロチアゼパム リーゼ 高力価型 ロラゼパム アルプラゾラム ワイパックス ソラナックス 中力価型 ブロマゼパム レキソタン 高力価型 メキソゾラム メレックス 中力価型 ジアゼパム クロキサゾラム セルシン セパゾン 低力価型 クロルジアゼポキシド メタゼパム バランス、コントール レスミット 高力価型 フルトプラゼパム ロフラゼブ酸エチル レスタス メイラックス 低力価型 オキサゾラム セレナール 臨床症状 易疲 労性 集中 不能 中期作用型(12-24hr) 覚醒 睡眠 障害 全般性 不安/ 恐怖 全般性 心配 長時間作用型(>24hr) 中核症状 焦燥 超長時間作用型(>50hr) 筋肉過 緊張 9 セロトニン5HT1A作動薬 抗ヒスタミン薬 - 非BZD系 タンドスピロンクエン酸塩 ヒドロキシジン セディール アタラックス-P 12 2 2016/5/25 ベンゾジアゼピン系抗不安薬の歴史 • 1960年代 抗不安薬大ヒットの時代 • 1960年代は米国で売上1位 • 日本ではOTCでコントールが買えた • 広告コピー:「ノイローゼ 不眠に!」「バリバリ 仕事!」 • ローリングストーンズ “Mother’s little helper” – コントール – セルシン • 1970年代 アメリカでBZDバッシング(依存、離脱症状) 1975年から5年間で売り上げ半減 – セレナール – レキソタン – リーゼ • 1980年代 抗不安薬の使い分け – ソラナックス – デパス DSM-Ⅲにパニック障害(PD)が独立した疾患名として登場 • PD適応を取得したソラナックスがセルシンを抜いて売 り上げ1位に • SSRIがPDの第一選択となり、PD適応は減少したが本 来の抗不安薬として米国売り上げ第一位 • 原則はBZD薬(副作用が少ない) • 強い不安症状(パニック発作など)には高力価で短 時間または中間型作用薬 • 全般不安障害には長時間作用型薬 • 離脱作用を避けるためには長時間作用型 • 老人などで転倒が危惧される場合には筋弛緩作用 の弱い低用量(デパス0.25mg錠)、筋弛緩効果が低 い薬物(クロチアゼパムなど) • 肝障害のある患者ではCYP代謝ではなく、グルクロ ン酸抱合代謝で消失するロラゼパム、オキサゾラム 13 16 パニック障害(PD) Rolling Stones – Mother's Little Helper Lyrics What a drag it is getting old "Kids are different today," I hear ev'ry mother say Mother needs something today to calm her down And though she's not really ill There's a little yellow pill She goes running for the shelter of a mother's little helper And it helps her on her way, gets her through her busy day • 特に誘因なく突然強い不安を生じ、動悸、発 汗や呼吸困難などの症状が数分から数十分 持続する(パニック発作)を繰り返す。 • その後は、発作への予期不安(心気症)をも つ • 予期不安、広場恐怖、持続的なうつ病への進 展することもある。 14 エチゾラム(デパス® ) • チエノジアゼピン系クロチアゼパム(リーゼ®)を原型 として創薬された • 日本で最も処方されるBZD薬 • 抗不安作用はジアゼパムの3倍、鎮静作用も強い • 作用時間短く、持ち越し効果がない 17 • 症状 パニック発作 – 特に誘因のない突然の強い不安(死ぬのではな いか、気が狂うのではないか等)に伴う悪心、動 悸、発汗、ふらつき、呼吸困難などの身体症状。 数分から数十分持続。 • 診断 – 繰り返すパニック発作。発作の予期不安、発作の もつ意味への不安(心気症)、不安による行動の 制限 ジアゼパム クロチアゼパム(リーゼ) エチゾラム(デパス® )15 18 3 2016/5/25 パニック障害 予期不能の パニック発作 中核症状 全般性 不安/ 恐怖 強迫神経症 全般性 心配 中核症状 全般性 不安/ 恐怖 臨床症状 臨床症状 全般性 心配 恐怖性回 避・行動変 化 強迫行為 19 パニック障害の治療 • 精神療法 • 頻度 強迫神経症 – 人口の2-3% (医療機関を受診する人は一部) – 性差なし – 発症年齢:全年齢層 – 疾病教育(危険な病気ではない) – 認知行動療法 • 薬物治療 • 診断上の注意 – SSRI/SNRIが第1選択 – 統合失調症,うつ病,認知症,広汎性発達障害, 摂食障害,トゥーレット障害などの鑑別や併存 • 保険適応:パロキセチン、セルトラリン – 投与初期に悪心や不安を生じることがあるので少量から – 初期には制吐薬や抗不安薬の併用を行う • 22 • 治療 – 長時間作用型のベンゾジアゼピン薬(ロフラゼブ 酸エチルなど) 20 強迫性障害の症状 • 強迫観念 – 疾患教育 – 薬物治療:SSRI > SNRI 23 外傷後ストレス障害 • Posttraumatic stress disorder (PTSD) – 自分でも不合理と思うがやめられない反復する 強い不安や苦痛を引き起こす思考・イメージ – 強迫観念:不潔恐怖 • 強迫行為 – 不合理と知りながら強迫観念による不安を排除 するために行う行動 – 手洗い強迫、確認強迫 • 正常人でも見られるが、病的なものは人口の2-3%、 男女に差無く、10-20歳代が多い 21 • 生命の危険や身体に脅威を及ぼし,強い恐 怖、無力感、罪悪感(生き残り罪悪感)を感じ る心的外傷体験によって生じる病態 • 症状 – 再体験・侵入:想起(フラッシュバック)、悪夢 – 回避・麻痺:再体験を避ける行為。重要な場面を 思い出せない、感情の麻痺、絶望感 – 過覚醒:睡眠障害、焦燥感、過敏症 24 4 2016/5/25 不眠の原因疾患 治療 • 心理療法 – PTSDが異常な状況に対する正常な反応であるこ とを説明 • 精神療法(認知行動療法) • 社会的サポート • 薬物療法 • 一過性の不眠:人口の20%、試験の前など • 慢性不眠症 – 不眠への不安が覚醒を生む – 中高年では持続睡眠時間は短縮(6~7時間) • 原因 – – – – – 睡眠薬 – SSRI(保険適応なし) 25 不明 周期性四肢運動障害 むずむず脚症候群(restless legs syndrome) 概日リズム睡眠障害 • 夜更かしが続くと、入眠・覚醒時間が次第にずれる場合 – うつ病(などの精神疾患) – 薬物、嗜好品 むずむず脚症候群(RLS) 不安障害・睡眠障害 睡眠薬 ベンゾジアゼピン薬 短 ミダゾラム トリアゾラム t1/2 エチゾラム 長 ニトラゼパム エスタゾラム フルラゼパム 抗不安薬 ベンゾジアゼピン薬 弱 オキサゼパム オキサゾラム 中 ジアゼパム プラゼパム 強 エチゾラム ロラゼパム フルトプラゼパム - 抑制性 5-HT神経 BZP 受容体 ? γ + β - β • 治療 GABA 受容体 – プラミペキソール(ビ・シフロール®、非麦角系ドパミン作動 薬) – ベンゾジアゼピン薬 細胞膜 - SSRI パロキセチン – 就床時に足がむずむずする、下肢がほてる、足の奥がか ゆい感覚のために下肢を動かさずにいられなくなり入眠 障害や中途覚醒を生じる – RLS= restless legs syndrome – 日中の眠気を生じる + α • 頻度:成人の3% • 症状 フェノバルビタール 抑制性 Cl- BZP拮抗薬 フルマゼニル バルビツール酸系 ペントバルビタール GABA神経 細胞外 過分極 Cl- 28 青斑核細胞内 26 29 睡眠障害 • 適切な時間帯に寝床で過ごす時間が確保さ れているにも関わらず、夜間に入眠困難があ り日中の生活の質が低下する – 睡眠時間が確保できない:睡眠不足 • 日本人の25%が不眠を自覚している!? – 特に高齢者 – 成人4-6%が睡眠薬を使用している 27 30 5 2016/5/25 周期性四肢運動障害(PLMD) • 睡眠中に周期的に反復する常同的な上下肢のミオ クローヌス様の不随意運動が出現し,睡眠が妨げら れる疾患(夜間ミオクローヌスと同義)。患者自身は 四肢の異常運動やその結果生じる頻回の不完全な 覚醒反応・睡眠中断に気づかないことが多い。不安 や抑うつが発現するので,他の精神疾患と誤られや すい。診断の確定には,睡眠ポリグラフの記録が必 要である。加齢によって有病率は増加する。 – 今日の診療プレミアムVol.20 (C)2010 IGAKU-SHOIN • • • • • • • 薬物と不眠 テオフィリン(カフェイン様覚醒作用) ニューキノロン抗菌薬 脂溶性β遮断薬(悪夢、不眠) 利尿薬(夜間多尿) 抗パーキンソン薬(ドパ製剤) 禁煙用ニコチンパッチ その他 OTC薬、サプリメントにも注意 31 34 不眠症の患者インタビューポイント • • • • • • • • 不眠症と睡眠薬 • 不眠症を漫然と睡眠薬で治療すべきでない • 不眠の診断が重要 不眠の頻度は? 眠れない日の、日中の症状は? 自分に取って必要な睡眠時間は? 就床と起床時刻 カフェインやアルコール摂取の有無 就寝直前の過ごし方 身体疾患や精神疾患の合併 常用している薬物と量 – 睡眠薬はうつ病に効きません! • 使用する場合には短期間で – 効果・安全性からベンゾジアゼピン薬が主体 – 半減期を考慮:入眠障害なら短時間作用型 – 耐性を考慮 – 離脱症状・リバウンドに注意 32 35 • 1960年以前 アルコールと嗜好品 • たばこ(ニコチン) 睡眠薬の歴史 – バルビタール系薬、ブロバリン(ブロムバレイル尿素)など安全域が狭 い薬物が主体 – 覚醒作用は数時間持続する • 1960年代 • アルコール – 安全性の高いBZD系登場(ネルボン)、睡眠薬の第1選択に – 催眠効果はあるが2-5時間で、覚醒すると寝付け ない • 1970年代 – 覚醒作用、コーヒーだけでなくコーラ、健康ドリン ク、ココアなどの食品にも • 1990年代 • カフェイン – 高力価・短時間作用BZDハルシオンが登場し一躍トップに • 1980年代 – ハルシオンバッシング。低用量製剤化へ。 – 主力はハルシオンからレンドルミン、マイスリーに移行 – Zドラッグ登場(アモバン、マイスリー) • 2000年代 33 – メラトニン作動薬、オレキシン遮断薬登場 36 6 2016/5/25 睡眠薬の安全性 薬物 バルビタール ブロモバレリル尿素 ジアゼパム トリアゾラム ラットLD50 用量 (経口投与) (1回) 600 mg/kg 300mg 60kgヒト換算 致死量(錠) 120 >5000mg/kg 0.25mg 1,200,000 5360mg/kg 250mg/kg 500mg 2mg 643 1,440 ベンゾジアゼピンは他の睡眠薬より安全 ただし、高齢者、小児、合併症がある場合は別 アモバルビタール 37 40 • フルマゼニル(アネキセート®) ベンゾジアゼピン中毒の治療 超短時間・短時間作用型催眠薬の効果 – フルマゼニルはベンゾジアゼピン受容体に結合し 、ベンゾジアゼピン類の生物学的作用に拮抗す る。フルマゼニル自身は生物学的作用を欠くか 微弱である。 – 効果は投与直後に発現するが、0.5-3時間後に再 昏睡もあるので反復投与が必要 持ち越し効果なし 起床時には効果消失 中途覚醒の可能性 有効域 • • • 超短時間型 38 フルマゼニル ジアゼパム トリアゾラム ゾルピデム ゾピクロン • • • 短時間型 ブロチゾラム リルマザホン ロルメタザパム 41 催眠薬の作用時間 睡眠中の異常行動 分類 半減期 (hr) 超短時間作用型 2~3 短時間作用型 ~5 中期時間作用型 長時間作用型 ~10 30-40 一般名 • 短時間作用型の睡眠薬(トリアゾラム:ハルシ オン®など)の服用後に、もうろう状態、睡眠随 伴症状(夢遊症状、摂食行動等)があらわれ ることがある。また、入眠までの、あるいは中 途覚醒時の出来事を記憶していないことがあ る 商品名 トリアゾラム ゾルピデム ゾピクロン エスゾピクロン ハルシオン マイスリー アモバン ルネスタ ミダゾラム注 エチゾラム ブロチゾラム リルマザホン ロルメタザパム ドルミカム(手術前鎮静) デパス レンドルミン リスミー エバミール フルニトラゼパム ニメタゼパム エスタゾラム ニトラゼパム フルラゼパム ロヒプロール、サイレース エリミン ユーロジン ベンザリン、ネルボン ダルメート、ベノジール ハロキサゾラム クアゼパム ソメリン ドラール 赤字は非ベンゾジアゼピンGABAA受容体アゴニスト Zドラッグ、BZDに比べて耐性、依存、リバウンド現象が少ないとされる • 一過性前向性健忘(0.12%):中途覚醒時の出来事 をおぼえていない等 • もうろう状態(0.05%) 39 42 7 2016/5/25 ハルシオンバッシング • 1977年 – EUで1mg, 0.5mg錠で発売開始、高力価・短時間 (t1/2 3hr)作用で大ヒット商品に • 1978年 – 服用者の異常行動により1mg錠発売中止。1988 年0.5mg錠中止し、0.125mgと0.25mgのみ販売へ • 1990年代 – ハルシオン服用者の奇異反応に関係する殺人事 件をマスコミが取り上げ社会現象に • • • • BZDの筋弛緩作用 夜間のトイレ覚醒時の転倒事故 持越し効果と相まって誤嚥リスク増加 寝たきり患者では体動低下で褥瘡誘発 薬理作用 – BZD受容体遮断作用で、ω1(睡眠作用)/ω2(抗 不安・筋弛緩作用)作用比の高いもの(Zドラッグ) を選択 43 46 超短時間・短時間薬物の比較 中間作用型催眠薬の効果 • トリアゾラム(ハルシオン) – 高力価で睡眠作用強いが、健忘、筋弛緩作用、中途覚醒 などが問題となることあり • ゾルピデム(マイスリー) – トリアゾラムに迫る高力価、ω1受容体選択性たかく筋弛 緩作用弱い、半減期2時間と最短 – ジェネリック薬なんと38種(2016.4月現在) 持ち越し効果 有効域 • ゾピクロン(アモバン) – 入眠作用はトリアゾラムよりやや弱いが、筋弛緩作用が 弱く安全。半減期4時間。唾液に分泌され苦みを感じる( 治験では8%) 44 47 持越し効果(hangover) アルコールとの相互作用 • 中枢抑制の増強 • 高用量の睡眠薬と併用すると奇異反応 – 不安・焦燥反応、攻撃的となる • 不眠を切っ掛けとしてアルコール常用となり、 アルコール依存症となることも 45 • 朝、覚醒後も寝ぼけ状態が生じる • 特に老人 • 精神作業能力が低下するので、車の運転、 危険を伴う作用をしないように注意 48 8 2016/5/25 長時間作用型催眠薬 副作用? 有効域 離脱(リバウンド)現象 持ち越し効果 日中の眠気 ふらつき 転倒・骨折 • 睡眠薬(特に短時間作用型)を急に中止した あとに、不眠、痙攣発作、せん妄、振せん、不 眠、不安、幻覚、妄想等の症状を引き起こす ことがある • 中止法 – 漸減 – 隔日投与 – 短時間作用薬から長時間作用薬への置換療法 ハロキサゾラム クアゼパム 49 クアゼパム(ドラール®):長時間作用型 催眠・鎮静薬の注意 食後投与を回避(併用禁忌あつかい) Cmax 比 AUC 比 1 1 3.1 2.2 52 • 自覚症状のない精神運動機能低下(車の運 転、作業記憶)の低下 • 相互作用 – 全ての薬物がアルコールにより効果が増強する – ほとんどがCYP3A4で代謝されるため、CYP3A阻害 薬の併用注意 • 非CYP3A基質薬:オキサゼパム、テマゼパム(未発売) • 肝障害の影響 – 非CYP3A基質薬(ロラゼパム、ロルメタゼパム)は 影響が少ない 50 53 ラメルテオン(ロゼレム®) ベンゾジアゼピン耐性 • 長期使用すると効果が減じ、用量が増加する • 中止時のリバウンドが生じる • 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬には見られない – GABA-A受容体に正のアロステリック効果を持つ 薬物(PAM: positive allosteric modulator) – “Z”ドラッグ • Zolpidem(ゾルピデム:マイスリー®), zopiclone(ゾピク ロン:アモバン®), エスゾピクロン(ルネスタ®)、zalepron 51 • 適応:不眠症における入眠困難の改善 – BZDに比較して作用は弱く、睡眠リズムの改善(時差ぼけ 、シフト勤務者) • 用法・用量:就寝前8mg経口 • 薬理:メラトニンMT1/MT2受容体アゴニスト – 自然に近い入眠効果、依存、リバウンドなし、筋弛緩作用 なし • 消失:肝代謝(CYP1A2) • 禁忌:フルボキサミンの併用(AUCが82倍増) 54 9 2016/5/25 スポレキサント(ベルソムラ®) • 診断(ICD-10) アルコール依存症 • 薬理作用 – 覚醒を促進する神経ペプチドであるオレキシン A/Bの受容体への結合を可逆的に阻害し、睡眠 を誘発する – ナルコレプシー患者でオレキシンが欠乏している 1. 2. 3. 4. 5. • 体内動態 – 肝代謝型 – 半減期12時間で持ち越し効果あり 飲酒したいという強い欲望あるいは強迫感 飲酒行動を統制することが困難 離脱症状の出現 耐性の増大 飲酒中心の生活 6. 飲酒による有害な結果が起きていることを知り ながら飲酒を続ける – 6項目のうち,3項目以上が過去1年間のある期 間に存在する場合 – 今日の診療プレミアムVol.24 (C)2014 IGAKU-SHOIN 55 睡眠改善薬(OTC薬) • ドリエル(エスエス製薬) • 早期離脱 – ジフェンヒドラミン(抗ヒスタミン薬) – 1回2錠(1錠25mg) – 長期投与で耐性が出来やすい 58 離脱症候群 – 飲酒を止めて6-24時間で始まる発汗,頻脈,発 熱,手指振戦,不眠,悪心・嘔吐,一過性の幻覚 や錯覚,不安,けいれん発作 – 90%は24-36時間で消失 • 後期離脱 レオニャルド・フミンチ物語 http://www.ssp.co.jp/drewell/fuminci/ 56 付録 • – 飲酒中止後72-96時間にみられる粗大な振戦, 精神運動興奮,幻覚,見当識障害,自律神経興 奮を主徴とするせん妄であり,振戦せん妄とよば れる. 今日の診療プレミアムVol.24 (C)2014 IGAKU-SHOIN 59 振戦せん妄 57 60 10 2016/5/25 アルコール依存症の薬物治療 • 抗酒薬(嫌酒薬) アルコール依存症の治療 – アルコール代謝産物のアセトアルデヒド脱水素酵 素阻害薬 • 他力本願の薬物治療だけでは無理 • 自助グループへの参加 – 飲めない人(下戸)が過量に飲酒したように 1930年代に米国でAA(Alchoholics Anonimus)が結成され た。日本には1970年代に導入された。 • 薬理作用 – 悪心、頭痛、動悸、冷や汗、心不全を起こすこと も • 薬物 – ジスルフィラム(ノックビン®) – シアナミド(シアナマイド®) 61 64 嫌酒薬の発見 • ジスルフィラム – ゴムの硫化促進剤と使用される – 自動車タイヤ工場の工員が飲酒で強い二日酔い 症状がでるので発見された • シアナミド – カルシウムシアナミドとして肥料に使用される – この薬液を使用した農夫が飲酒で強い二日酔い を生じて発見された 62 断酒補助薬 • アカンプロサート(レグテクト®) • 薬理作用 – アルコール依存症で亢進したグルタミン酸作動性 神経活動を抑制する – 飲酒欲求を抑える 63 11
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