スマートフォンアプリ開発入門 - iOS vs. Android(1)

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チュートリアル
スマートフォンと呼ばれる携帯型端末の普及は目覚しいものがあり、アプリと呼ばれるス
マートフォン向けアプリケーションも、日々膨大な数が世界中でリリースされています。今
回は、代表的な2つのスマートフォン用 OS 上でのソフトウェア開発に関するチュートリアル
(全4回シリーズ)の第1回目として、東洋大学の塩谷隆二先生と中林靖先生に解説していた
だきます。なお、今号よりチュートリアル記事は1ページ目のみを本誌に掲載し、続きは日
本計算工学会 HP 上で公開していますので、そちらも併せてご参照ください。
スマートフォンアプリ開発入門
- iOS vs. Android(1)
1
はじめに
「ス マ ー ト フ ォ ン(Smartphone)」略 し て「ス マ フ ォ」
は、この言葉を聞かない日は無いくらいに今日の日
本、そして世界で急速に普及している。定義は直訳す
れば「賢い電話」となるが、日本では「ガラパゴス携帯」
と呼ばれるように、世界から孤立して特異的に進歩し
た、ブラウザ、カメラ、電子マネーなど最先端の機能
を搭載した、まさに「賢い携帯電話」がこれまで国内で
は広く普及してきたが、これらは海外に広まることは
無かった。
一方 PDA(Personal Digital Assistant)と呼ばれる携帯
情報端末は、スケジュール、住所録、メモなどの情報
を携帯して扱うための小型機器として普及してきた
が、PDA に電話としての音声通話機能を付加した物、
または携帯電話端末に PDA の機能を付加した物、つま
り「PDA+ 携帯電話」端末をスマートフォンと定義して
いるのが一般的である。
しかし、今日の爆発的な普及は、2007年に Apple か
らリリースされた iPhone OS(現 iOS)、そして翌2008年
筆者紹介
しおや りゅうじ
1996年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、
東京大学助手、九州大学准教授を経て、現在、東洋
大学総合情報学部教授。超並列計算機による数値解
析、大規模 CAE ソフト「ADVENTURE」システム開
発などの研究に従事。
なかばやし やすし
1999年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、
東京大学リサーチ・アソシエイト、東洋大学工学
部講師を経て、現在、東洋大学総合情報学部准教
授。数値流体力学、逆問題・最適化、モバイル・
ユビキタスコンピューティングなどの研究に従事。
Vol.16, No.4 2011
(25)
塩谷 隆二
中林 靖
に Google からリリースされた Android OS の登場に寄る
ところが大きく、これらの OS を搭載した携帯電話、タ
ブレットの登場によりスマートフォンの市場は急拡大
してきた。
そして、スマートフォン普及の要因の1つは、その高
機能性に加え、上記 OS を用いたアプリと呼ばれるス
マートフォン向けアプリケーション開発の簡易性と、
マーケットと呼ばれるアプリをリリースし、販売、配
布を極めて簡易的、効率的に行えるシステムの整備が
挙げられる。
アプリケーション開発には、SDK(Software Development
Kit)と呼ばれるソフトウェア開発キットの利用によ
り、ゼロからプログラムを作成するという作業から開
放され、複雑な SDK を使いこなす必要があるという障
壁は残るものの、多くの SDK が無料でリリースされて
いることもあり、アプリ開発が手軽にはじめられるよ
うになってきた。このようなアプリの開発と配布の簡
易性により、2011年8月時点で、iOS と Android OS では
それぞれ20万本以上のアプリがリリースされていると
の報告もされている。
そこで、本チュートリアルでは、iOS と Android OS
によるアプリ開発の導入として、その基礎から、実際
にスマートフォン上で自作アプリを動作させるまでの
手順について解説する。
なお、本チュートリアルは2011年度に東洋大学総合
情報学部3年生を対象に開講された実習科目「総合情報
プラクティス V」に利用した資料に基づいており、プロ
グラミング経験のほとんどない学生も数週間の実習を
通して、自作アプリを開発したことを付しておく。
続きは Web で
日本計算工学会誌「計算工学(Vol.16, No.4)」
HP:http://www.jsces.org/Issue/Journal/
チュートリアル
スマートフォンアプリ開発入門 - iOS vs. Android (1)
2
使用 OS とデバイス
スマートフォン用 OS はいくつかあるが、圧倒的シ
ェアを抑 えて いるの が、 Apple の iOS と Google の
Android である。それぞれソフトウェア開発キットと
して、iOS SDK(Software Development Kit)と Android
SDK が用意されており、それらの特徴を表 1 に示す。
大きな相違点は、iOS は Apple 専用であり、開発環境
も MacOS を必要とするのに対し、Android は Windows,
Linux, MacOS 上で動作する。また、開発環境は無償で
提供されているが、iOS はスマートフォンなどのデバ
イ ス に 開 発 ソ フト ウ ェ ア をイ ン ス トー ル す る には 、
iOS Developer Program への登録が必要であり、年会費
が発生する。この登録により App Store と呼ばれるマ
ーケットにも開発アプリを登録することができ全世界
に向けてリリース、販売が可能となる。なお、マーケ
ットへの登録はできないが、高等教育機関を対象に無
料のプログラム iOS Developer University Program が用
意されている。一方 Android ではデバイスへのインス
トールまで無料でできるが、Android Market と呼ばれ
るマーケット上に登録するのに、初回のみ費用が発生
する。
表1
iOS SDK と Android SDK
iOS SDK
Android SDK
開発元
Apple
Google
対応OS
MacOS
初リリース
Windows/
Linux/MacOS
2008年3月6日
2008年9月23日
2.1~4.3
1.0~3.2
使用言語
Objective-C
Java
開発環境
Xcode
バージョン
2011年9月
費用
年会費99ドル
Eclipse
マーケット登
録初回25ドル
今回使用したデバイスは、タブレット型端末、Apple
iPad(iOS)と Creative ZiiO(Android)を用いた(図 1)。スマ
ートフォンと呼ばれる携帯電話型ではないが、表示画
面が 10inch 程度と大きいため、開発用、特にグループ
での作業には適している。なお、SDK で使用デバイス
をスマートフォンに切り替えることは容易である。
図 1 ZiiO(左)と iPad(右)
計算工学
3
iOS SDK のインストール
iOS 用アプリを開発するには、iOS SDK(Xcode)の利
用が便利であるが、Xcode のダウンロードには、Apple
Developer への登録が必要となるため、以下の手順によ
り、登録とインストールを行う。
(1) Apple Developer への登録
以下の URL より Apple Developer の登録を行う。
http://developer.apple.com/programs/register/
なお Apple ID の登録も必要となるが、日本語を含む
ID はエラーの原因となるようなので、既に Apple ID
を取得済みの場合も、日本語を含んでいる場合は
alphabet のみの ID を作成することを推奨する。前述の
University Program については以下の URL より登録が
可能である。
http://developer.apple.com/jp/programs/ios/university/
登録が完了すると、以下の iOS Dev Center に Apple
ID により login 可能となる。
http://developer.apple.com/devcenter/ios/index.action
(2) Xcode のインストール
iOS Dev Center に login し、iOS SDK の開発環境で
ある Xcode をダウンロードし、インストールする。な
お Xcode を使用するには、Mac OS X(10.6 Snow Leopard
以降のバージョン)を搭載した Intel ベースの Mac が必
要となる。例えば、使わなくなった古い Mac で Xcode
を試してみようとしても、対応する Mac OS がインス
トールできずに、Xcode もインストールできないとい
うことになる。この点は、とりあえず試してみようと
いう人にとっては障壁となり、Android に対して不利
な点となっている。
ここまでの、および今後の手順について、バージョ
ンアップなどにより参照 URL や手順内容が変更され
る可能性もあるので、随時 web などで最新情報を参照
することを推奨する。
4
Xcode プロジェクト作成
Xcode のインストールが完了すると、いよいよアプ
リ開発が始められる。なお、ステップ1として、デバ
イスを用いずに、シミュレータによるアプリ起動を行
う 。 こ こ ま で は 年 会 費 が 発 生 す る iOS Developer
Program への登録が不要なため、無料で試すことがで
きる。
以下の手順によりサンプルプログラムを作成する。
1. Xcode を起動(通常は「Macintosh HD」「Developer」
「Applications」フォルダの中に「Xcode」あり)。
2. 「新規 Xcode プロジェクトを作成」をクリック。
3. 「 iOS」「 Application」「 OpenGL ES Application」 ,
Product:「iPad」または「iPhone」を選び「選択」を
クリック。
4. 名前:「NAME01(任意の名前)」場所:「書類」、「保
存」をクリック。
以上の操作により、OpenGL をベースにしたサンプル
(25-2)
Vol.16, No.4 2011
チュートリアル
スマートフォンアプリ開発入門 - iOS vs. Android (1)
プロジェクトが「書類」フォルダの中に「NAME01」
という名前で作成される。次に以下の手順により、シ
ミュレータでプログラムの起動を行う。
5. 「NAME01」の Xcode プロジェクト画面の「概要」
の上のタブをクリックし「Simulator」を選択(図 2
の矢印部分).
6. 同 window 上部の「ビルドと実行」をクリック。
7. シミュレータが起動し、四角形が上下に動くこと
を確認(図 3 参照)。
以上の操作により、シミュレータ上でのサンプルプ
ログラムの起動が確認できる。
図 3 シミュレータ画面
デバイスへのインストール
続いて、iPhoneやiPadなど実際のデバイス上でアプ
リを実行するために、デバイスの登録を行う。プロビ
ジョニングプロファイルと呼ばれるファイル
(.mobileprovision)をiOS Dev Centerで作成し、デバイス
にインストールすることにより、デバイスへアプリの
インストールが可能となる。このプロビジョニングプ
ロファイルには期限があり、期限が切れるごとに更新
作業が必要で、また新しいデバイスの追加にも作業が
必要となるため、やや複雑な作業ではあるが、手順を
計算工学
べる手間が省ける。
デバイスの登録には、前述したようにiOS Developer
Programへの登録が必要となるが、University Program
に登録の場合は以下の(1)の登録は不要である。
(1) iOS Developer Program 登録
iOS Dev Center に login し、「Join the iOS Developer
Program」をクリック、「Enroll Now」 $99/year をクリ
ックし登録を行う。その後の入力では、前述の Apple ID
のように日本語を入力すると、その後のアクティベー
ションに失敗することがあるようなので、日本語のペ
ージが表示されていても、住所などは日本語では入力
しないことを推奨する。
(2) iOS Provisioning Portal
プ ロ ビ ジ ョ ニ ン グ プ ロ フ ァ イ ル の 作 成 は iOS
Provisioning Portal で行う。iOS Dev Center(3 章(1))の右
側 に あ る 「 iOS Developer Program 」 の 中 の 「 iOS
Provisioning Portal」をクリックし Provisioning Portal の
Home を開く。初回は Home 左側に表示されるメニュ
ーの「Certificates」
「Devices」
「App IDs」
「Provisioning」
の順番で作業を行う。通常「Certificates」と「App IDs」
は初回の作業のみ、「Devices」はデバイスの変更や追
加時、「Provisioning」は期限切れや、デバイスなどの
変更が生じる度に作業が必要となる。
図 2 Xcode プロジェクト画面
5
自分でまとめておくと、後日あらためて作業手順を調
(3) 証明書(Certificates)の登録
以下の 4 つの手順、(1) Mac 本体で CSR(Certificate
Signing Request) フ ァ イ ル 作 成 、 (2) iOS Provisioning
Portal の「Certificates」へアップロード、(3) 証明書フ
ァイル(developer_identifier.cer)をダウンロード、(4) 証
明書ファイルのインストール、を順に行う。
1. Mac の「アプリケーション」
「ユーティリティ」
「キ
ーチェーンアクセス」を起動し、メニューから「キ
ーチェーンアクセス」
「証明書アシスタント」
「認証
局に証明書を要求...」をクリック。「ユーザーのメ
ールアドレス」に Apple ID に登録したメールアド
レス、
「通称」に自分の名前(英字)を入力、
「ディス
クに保存」
「鍵ペア情報を指定」を選択し「続ける」
を ク リ ッ ク 。 名 前 (CertificateSigningRequest.cert
SigningRequest)はそのまま、適当な場所(デスクト
ップなど)を選択し、
「保存」をクリック。鍵ペア情
報の項目では、鍵のサイズが「2048 ビット」、アル
ゴリズムが「RSA」になっていることを確認し「続
ける」をクリック。設定結果が表示されたら、CSR
ファイルが保存先に作成されているので「完了」。
をクリック
2. iOS Provisioning Portal の 「 Certificates」「 Request
Certificate」「参照」をクリックし、前項の CSR フ
ァイルを選択し、「Submit」をクリックし、アップ
ロードを行う。
(25-3)
Vol.16, No.4 2011
チュートリアル
スマートフォンアプリ開発入門 - iOS vs. Android (1)
3. ブラウザのページのリロードにより「Download」
ボタンが有効になるのでクリックし、証明書ファイ
ル(developer_identifier.cer)を適当な場所(デスクト
ップなど)に保存(ダウンロード)する。その下に表
示されている「WWDR intermediate certificate」につ
いても、その横の「click here to download now」を
クリックし保存する。
4. 保存した 2 つファイルをそれぞれダブルクリック
すると、キーチェーンアクセスが起動し、証明書が
インストールされる。
2. 「Profile Name」に任意の名前(ここでは「p01」と
する)を入力、「Certificates」「App ID」「Devices」
には上述ステップで登録した名前が表示されるの
でそれらを選択。
3. 「Submit」をクリック。
4. ページのリロードにより「Download」ボタンが表
示されるのでクリックし、プロビジョニングプロフ
ァイル(p01.mobileprovision)を適当な場所(デスクト
ップなど)に保存(ダウンロード)する。
以上でiOS Provisioning Portalでの作業は終了となる。
(4) デバイス(Devices)の登録
1. Xcode を 起 動 し 、 iPhone や iPad デ バ イ ス を Mac に
(7) プロビジョニングプロファイルのインストール
Dockコネクタを経由して接続する。Xcodeのメニュ
Xcodeを起動し、メニューから「ウィンドウ」「オ
ーから「ウィンドウ」
「オーガナイザ」をクリック、
ー ガ ナ イ ザ 」 を ク リ ッ ク 、 左 タ ブ 内 の
左タブ内の「DEVICES」に接続したデバイスが表
「DEVELOPMENT」
「Developer Profiles」をクリック、
示されるのを確認。デバイスをクリックし詳細を表
右側「Provisioning Profiles」下のウィンドウ内に、(6)
示。「Use for Development」が表示されたらボタン
で保存したプロビジョニングプロファイルのファイル
をクリック。上部に表示されているデバイス情報の
(p01.mobileprovision)をドラッグ&ドロップする。
う ち 「 Identifier」に 表 示さ れて いる 40桁の 英数 が
「Device ID」となるのでこれをコピーする。
(8) プロジェクトの設定
2. iOS Provisioning Portalの「Devices」「Add Device」
インストールしたプロビジョニングプロファイルを
をクリック。「Device Name」には任意のデバイス
アプリに設定する。Xcodeで作成したプロジェクトを
名を入力、「Device ID」は上記Xcodeのオーガナイ
開き、メニューから「プロジェクト」「プロジェクト
ザでコピーした値をペーストする。
設定を編集」をクリック、「ビルド」タブをクリック。
3. 「Submit」をクリックし登録を完了。
「Code Signing」内の「コード署名ID」の下「Any iOS」
の右側をクリックし、前項でインストールしたプロビ
(5) アプリ(App ID)の登録
ジ ョ ニン グプ ロフ ァイ ル名 (p01)が選 択さ れて いる か
1つのアプリに1つのApp IDを登録することも可能で
あるが、後述のワイルドカードを使用することにより、
を確認。選択されていない場合は選択し、プロジェク
トの情報ウィンドウを閉じる。
1つのApp IDを登録するだけで複数のアプリを管理す
ることが可能となる。また、一度登録したApp IDは削
(9) デバイスへのインストール
除できないので、以下の入力項目は慎重に行うことを
Xcodeプロジェクト画面の「概要」の上のタブをク
推奨する。
リックし「Device」を選択(図2参照)。デバイスが接続
1. iOS Provisioning Portalの「App IDs」をクリック、
されていることを確認し、「ビルドと実行」をクリッ
右上の「New App ID」ボタンをクリック。
ク。アプリがデバイスに転送され、デバイス上で、シ
2. 「Description」欄に説明文を入力。ここで入力した
ミュレータと同様に四角形が上下に動くことを確認。
名前を今後使用することになるので、自分やチーム
デバイスのホームボタンを押すとアプリが終了する。
の名前などをalphabetで入力。
デバイスの画面には、「NAME01」という名前のアプ
3. 「Bundle Seed ID (App ID Prefix)」は「Use Team ID」
を選択。
リがインストールされており、これをタッチすること
により、再びデバイス上で実行される。
4. 「Bundle Identifier (App ID Suffix)」に「*」を入力。
ここでアプリ固有の名前を指定すると、アプリごと
の登録が可能となる。
以上で、デバイスへのサンプルアプリのインストー
ルは完了であるが、Mac本体やデバイスが複数台ある
5. 「Submit」をクリックし登録を完了。
ような状況では、以下に示す作業が必要となる。
(6) プロビジョニングプロファイル作成
6
1. iOS Provisioning Portalの「Provisioning」をクリック、
右上の「New Profile」をクリック。
計算工学
証明書の複製
複数台のデバイスを使用する場合は、(4)で使用する
全てのデバイスを登録し、(6)のプロビジョニングプロ
(25-4)
Vol.16, No.4 2011
チュートリアル
スマートフォンアプリ開発入門 - iOS vs. Android (1)
ファイル作成時に、登録済みのデバイスを複数同時に
選択できるので、全てのデバイスを選択し作成したプ
ロビジョニングプロファイルを使用する。
本稿執 筆時 点で の最 新バ ージョ ンで あるJDK6のダ
ウンロードは以下のURLから行える。
http://java.sun.com/javase/ja/6/download.html
複数台のMacを使用する場合は、(7)でインストールし
ダ ウン ロー ド時 に OSの 選択 があ るの で適 当な も の
た1台目のMac上で以下の1-4の手順を行い、2台目以降
を選び、ダウンロードしたファイルをダブルクリック
のMacで5-6の手順により、プロビジョニングプロファ
して実行する。インストールするコンポーネントとイ
イ ル (p01.mobileprovision) と 証 明 書 フ ァ イ ル (p01.p12)
ンストール先を聞かれるが、通常はデフォルトのまま
をコピーする必要がある。
で問題ない。もし、インストール先をデフォルトから
1. 1台目のMacの「アプリケーション」「ユーティリ
変更した場合は、Windowsのパスの設定が必要になる
ティ」「キーチェーンアクセス」を起動し、左タブ
ので注意が必要である。
「キーチェーン」の「ログイン」、「分類」の「証
明書」をクリック。
2. 右 タ ブ に 表 示 さ れ る iPhone Developer の 証 明 書 を
(2) Eclipse
Eclipseは様々な言語のアプリケーションを開発する
Control+クリックし「…を書き出す…」をクリック。
3. 名前:「p01(任意の名前)」、場所:「書類」、フォー
マット:
「個人情報交換(.p12)」、
「 保存」をクリック。
ための統合開発環境であり、オープンソースとして提
4. 書き出しに必要なパスワード入力タブが表示され
レータの起動など全てこのツール上で実行することが
るので、パスワードを入力し「OK」をクリック。
供されている。エディタや文法チェッカーの機能を始
めとして、コンパイル(ビルド)やデバッグ、エミュ
出来る。
5. 保存された個 人情報交 換ファイ ル(p01.p12) を2台
目以降の他のMacにコピーし、ダブルクリック。
Androidアプリの開発には Eclipseのバージョン3.4以
降が必要であり、本稿執筆時点での最新バージョンは
6. パスワードを聞かれるので入力。
ジ ョ ニ ン グ プ ロ フ ァ イ ル (p01.mobileprovision) を コ ピ
3.7である。ダウンロードは以下のURLから行える。
http://www.eclipse.org/downloads/
通常は、 Eclipse IDE for Java Developersの最新バー
ーしインストールすることにより、全てのMacでの開
ジョンをこのサイトからダウンロードすれば良いが、
発が可能となる。
日本語化されて使用言語別にパッケージングしたもの
この作業(5-6)を使用したいMacごとに行い、プロビ
が以下のURLより提供されているので、本稿ではこち
7
Androidアプリ開発環境の構築
3章 か ら 6章 で iOS用 ア プリ の 開 発環 境 の構 築 方法 に
らを用いて説明する。
http://mergedoc.sourceforge.jp/
ダウンロードして使用したバージョンは、Eclipse 3.6
ついて説明してきたが、ここからはAndroidアプリの開
Helios Pleiades All in Oneである。以後の説明はこのバ
発環境の構築方法について説明する。
Androidアプリを開発するためにはGoogleから提供さ
ージョンのEclipseに基づいて日本語表記で行う。
Eclipseのインストールは圧縮ファイルを解凍して、
れているAndroid SDKを使う事が必須であり、また、
ほとんどの開発者はAndroid SDKをEclipse上で使うこ
適当な場所に置くだけである。
とにより Androidア プリ開 発を行っ ている 。ここでも
EclipseとAndroid SDKを組み合わせた開発環境につい
て紹介する。
Androidア プ リ の 開 発 に 必 須 な ツ ー ル は 以 下 の (1)~
(4)の4つである。なお、Androidアプリ開発のために使
用するOSは以下の4つのツールが動作すれば問題ない
た め 、 Windows XP/Vista/7 や 、 ほ と ん ど の Linux
Distributionで可能であるが、本稿ではWindows XPでの
(3) Android Development Tool (ADT)
Android Development Tool (ADT)はEclipse上でAndroid
アプリを開発するためのプラグインであり、Google社
によって提供されている。プラグインという性格上、
ダウンロードやインストールはEclipse上から以下の手
順で行う。
1. Eclipseを起動してメニューの「ヘルプ」「新規ソフ
トウェアのインストール」で「追加」ボタンをクリ
例を示す。
ック。
(1) Java Development Kit (JDK)
Java Development Kit (JDK)は Oracle社(も と も と は
2. サイトの追加ダイアログが表示されるので、ロケー
ションに「http://dl-ssl.google.com/android/eclipse/」
を入力。
SUN Microsystems社)が無償で配布する、JAVAアプリ
作成用のツールであり、AndroidはJAVAベースとなっ
3. 名前の欄にある「開発ツール」にチェックを付け、
「次へ」「次へ」「使用条件に同意」「完了」の順
ているため必ず必要になる。
計算工学
(25-5)
Vol.16, No.4 2011
チュートリアル
スマートフォンアプリ開発入門 - iOS vs. Android (1)
にボタンをクリック。
あり、通常、Androidアプリの開発者は自分のターゲッ
4. 画面の指示に従って、一度Eclipseを再起動する。
トとしてい る Androidタブ レットま たはス マートフォ
以上の手順でADTのインストールは完了である。
ンのOSのバージ ョンに合わせて AVDを作成してテス
トを行う。今回は、AndroidタブレットであるCreative
(4) Android SDK
Android SDKはその名の通り、Androidアプリケーショ
ZiiO上でAndroidアプリを動かす事を目標とするので、
この機種に合わせてAndroid OS 2.2を選択する。
ンを開発するために必要な開発キットであり、Android
実際の作成手順は以下の通りである。まず、Eclipse
のベースとなるライブラリからAndroid OSのバージョ
が 起 動 し て い る状 態 か ら メニ ュ ー の「 ウ ィ ン ドウ 」
ン毎のAPIなど、様々なコンポーネントがパッケージ
「Android SDKおよびAVDマネージャー」を選択する。
化されたものである。こちらもGoogle社から無償で提
次に「Virtual Devices」「新規」を選択し、名前に任意
供されており、以下のURLよりダウンロードできる。
http://developer.android.com/sdk/
本稿執筆時点での Android SDK の最新バージョンは 13
であり、このサイトから「installer_r13-windows.exe」
をダウンロードして以下の手順でインストールする。
1. ダウンロードしたファイルをダブルクリックして
実行。
上の操作で画面サイズがHVGAで Android OS 2.2が動
作するエミュレータ(AVD)が作成される。
(3) エミュレータ(AVD)上での動作確認
次に、実際にAndroidプロジェクトを作成し、動作確
2. 「Next」ボタンを2回クリックし表示されるインス
トール先を必要であれば変更。通常はデフォルトの
「C:¥Program Files¥Android¥android-sdk」を使用。
認を行う。手順は以下の通りであるが、Eclipseの詳細
な使い方については、適宜、書籍やWeb上の情報を基
に補完して欲しい。
3. 「Next」
「Install」をクリックしインストール完了。
4. コ マ ン ドラ イン か ら Android SDKの ツ ー ル を使 う
1. Eclipseのメニューから「ファイル」「新規」「その
他」を選択し、新規ウィザードで「Android」を展
場 合 が あ る の で 、 Windows の Path に 「 C:¥Program
開し、「Android プロジェクト」を選択し「次へ」
Files¥Android¥android-sdk¥tools」を追加する。
をクリック。
以上の手順でAndroid SDKのインストールは完了で
ある。
8
の名前「test」、ターゲット「Android 2.2」、Skin「HVGA」
を選択し、最後に「Create AVD」をクリックする。以
2. プロジェクト設定ウィザードでサンプルとして各
項目を以下のように指定して、最後に「完了」をク
リック。
プロジェクト名:
HelloAndroid
ビルド・ターゲット:
Android 2.2
アプリケーション名:
HelloAndroid
パッケージ名:
sample.android
アクティビティーの作成:HelloAndroid
エミュレータ上でのテスト
7章で示した手順でAndroidアプリの開発に必要なツ
ールのインストールが完了したが、実際にこれらを用
いて Androidアプリ を開発 するには もう少 し細かい設
定が必要となる。この章では、エミュレータを用いて
実際に Androidアプ リのサ ンプルプ ログラ ムを動かし
3. Eclipseのパッケージ・エクスプ ローラの中から、
動作テストを行う過程を通じて、これらの設定方法に
「 HelloAndroid 」 「 src 」 「 sample.android 」
ついてまとめる。
「HelloAndroid.java」の順にリストを展開して選択
し、最後の「HelloAndroid.java」をダブルクリック
して出てくるエディタ画面上のサンプルコードを
(1) Android SDK ロケーションの指定
ベースに、図4のテストプログラムを記述する。
Eclipseを起動してメニューから「ウィンドウ」「設
定」「Android」を順に選択し、現れた「SDKロケーシ
4. Eclipseのメニューから「実行」「実行構成」を選択
ョン」の欄にAndroid SDKをインストールした場所を
し「Android アプリケーション」上で右クリックし
指定する。上で述べたようにAndroid SDKはデフォル
「新規」を選択。名前欄に任意の名前、例えば
トでは「C:¥Program Files¥Android¥android-sdk」にイン
「HelloAndroid」を指定する。「プロジェクト」を
ストールされるため、通常はそのフォルダを指定。
入力する項目の右側のボタン「参照」をクリックし、
「HelloAndroid」を選択し「実行」をクリック。
5. エミュレータが起動し、エミュレータの画面上に
(2) Android Virtual Device (AVD)の作成
「Hello!!Android!!!!!」が表示されれば成功である。
Android Virtual Device (AVD)とはAndroid SDKで提
供されているエミュレータのことである。このエミュ
なお、AVDはAndroid OSの全ての機能をエミュレー
レータはAndroid OSのバージョン毎に作成する必要が
トする高機能なツールであるため、開発環境にも依る
計算工学
(25-6)
Vol.16, No.4 2011
チュートリアル
スマートフォンアプリ開発入門 - iOS vs. Android (1)
なお、紙面の都合上改行してあるが、実際には2行目と
が起動するまでに非常に時間を要する事が多い。
3行目の「=」の後ろは改行しないで記述する。
3. Windowsのコマンドプロンプトを開き、以下のコマ
package sample.android;
ンドを実行する。
echo 0x2350 >> "%USERPROFILE%¥.android¥adb_usb.ini”
import android.app.Activity;
import android.os.Bundle;
4. ここでWindowsを再起動する。
import android.widget.TextView;
5. ZiiOを起動し、「設定」「アプリケーション」「開
発」「USBデバッグ」を選択しUSBデバッグモード
public class HelloAndroid extends Activity {
をonにしてから、USBケーブルでWindows PCと接
/** Called when the activity is first created. */
続する。
@Override
6. ドライバが見つからないと表示されるので、「ドラ
public void onCreate(Bundle savedInstanceState){
イバの場所を指定してインストール」を選択し、次
super.onCreate(savedInstanceState);
の 場 所 を 指 定 す る 。 「 C:¥ProgramFiles¥Android
¥android-sdk¥extras¥google¥usb_driver¥android_winu
TextView tv = new TextView(this);
sb.inf」
tv.setText("Hello!! Android!!!!!");
7. コ マ ンド プロ ンプ トか ら “adb devices” コ マン ド
setContentView(tv);
}
を実行し、デバイス名が出てくれば成功。
}
(2) ZiiO での動作確認
図 4 テストプログラム
9
上で述べたZiiOドライバの設定が完了していれば、
ZiiOでの動作確認手順は比較的簡単であり、以下の手
実機上でのテスト
本章では、エミュレータ(AVD)ではなくてAndroidタ
ブ レ ッ ト や ス マー ト フ ォ ンな ど の 実機 上 で 開 発し た
順に従えば良い。
1. エミュレータ動作確認と同様に進めて、4の「実行」
Androidアプリを動作させる方法についてまとめる。特
「実行構成」まで進んだ際に、「ターゲット」タブ
に、今回はCreative ZiiOを例として取り上げ、ZiiO上で
を選択し、「Deployment Target Selection Mode」を
「手操作」に変更してから「実行」をクリック。
図4のテストプログラムを動作させる手順を示す。
2. 「Android Device Chooser」ウィンドウが現れるの
で、「Choose a running Android device」を選択し、
(1) ZiiO のドライバの設定
ZiiOをWindows OS上で認識させるために、まずZiiO
メニューからZiioを選択する。(ドライバのインス
のドライバをインストールする必要がある。ZiiOのド
トールが完了していないと、ここでデバイスが表示
されない)
ライバはCreative社からは提供されていないが、Google
から提供されている汎用ドライバを流用することが可
3. コンパイルされたAndroidアプリケーションがZiiO
に転送され、デバイス上で実行される。
能である。具体的な手順は以下の通りである。
1. eclipseのメニューから「ウィンドウ」
「Android SDK
4. ZiiOに転送された アプリケ ーションは そのままイ
およびSDKマネ ージ ャー 」を 選択し 。「 Available
ンストールされたものとしてデバイス上に残るた
packages」「Third party Add-ons」「Google inc.」
め、テストが終了し削除する場合は、ZiiOの「設定」
「Google USB driver package」の順に選択してイン
「アプリケーション」「アプリケーションの管理」
ストールする。
2. ファイル「C:¥ProgramFiles¥Android¥android-sdk
¥extras¥google¥usb_driver¥android_winusb.inf」 を メ
モ帳で開き、[Google.NTx86]と[Google.NTamd64]の
セクションの最後のところに以下の3行を追加する。
; Creative ZiiO
%SingleAdbInterface% =
USB_Install,USB¥VID_2350&PID_0102
%CompositeAdbInterface% =
USB_Install,USB¥VID_2350&PID_0102&MI_01
計算工学
からアプリケーション名を選択し削除する。
以上の手順で実行した結果が、8 章で示したエミュ
レータによる実行結果と同じになる事が確かめられた
ら Android の開発環境構築は無事終了となる。
9
おわりに
今回は開発環境設定についての解説を行った。次回以
降はサンプルアプリを利用し、オリジナルアプリの作
成手順について解説を行う。
(25-7)
Vol.16, No.4 2011