科目名: 民法B(債権総論・担保物権) 英文名: Civil Law B シモムラ 担当者: 下村 単 位: 4単位 ト シ エ 信江 開講年次: 1年次 開講期: 前期 必修選択の別: 必修科目 ■授業概要・方法等 各回ごとにテーマを設定し、テーマに関する基本的なことがらについては、受講者があらかじめ予習してくることを 前提として、参照判例やそれに関連する事例等を素材として、概括的な説明を講義形式で行うが、教員・受講者間で討 論形式によって授業を進める。 ■学習・教育目標および到達目標 本講義では、債権総論および担保物権法で論じられてきた諸制度を一体的に理解することを目的とする。まず、債権 の効力について概観したのち、物的担保および人的担保による債権回収について、検討し、次に債権回収の特殊な手段 として用いられている代物弁済、債権譲渡、相殺を取り上げる。そして、これらの知識を前提として、弁済による代位 と求償の問題について検討する。規定及び制度の趣旨、 判例理論とその問題点および学説の対立点などに十分留意しつつ、 体系的に基礎知識を習得することを目的とする。 ■教科書 [ISBN]9784641136977『講義 物権・担保物権法 第2版』(安永 正昭, 有斐閣 : 2014) [ISBN]9784883841226『基本講義 債権総論 (ライブラリ法学基本講義)』(角 紀代恵, 新世社 : 2008) [ISBN]9784641115231『民法判例百選Ⅰ 総則・物権 第7版 (別冊ジュリストNo.223)』(有斐閣 : 2015) [ISBN]9784641115248『民法判例百選Ⅱ 債権 第7版 (別冊ジュリストNo.224)』(有斐閣 : 2015) ■参考文献 [ISBN]9784641159341『民法 II 物権 第3版補訂 (有斐閣Sシリーズ)』(淡路 剛久, 有斐閣 : 2010) *参考書については、各自、自分で、必要な基本書を参照していただいてかまいません。 *講義においては、上記の教科書を使用します。 *講義で、重要判例を取り上げる際には、百選を使用します。 ■成績評価方法および基準 期末試験 70% 小テスト(1回)20% 授業での質問に対する応答・自発的発言 10% ■オフィスアワー 前期 月曜日4時限・5時限、金曜日4時限(隔週) 後期 木曜日3時限、金曜日4時限 ■授業計画の項目・内容及び到達目標 第1回 債権の目的 債権発生原因のうち、契約から発生する債権を念頭に置き、債権の意義、種類、目的を概観し、債権に対比される物権と の関係を検討する。また、債権一般の効力に関する民法の規定を考える。 《参照判例》 最判昭和30年10月18日民集9巻11号1642頁(制限種類債権の特定) (百選Ⅱ【1】 ) 最大判昭和32年6月5日民集11巻6号915頁(口頭の提供の要否) 最判昭和46年12月16日民集25巻9号1472頁(買主の引取義務) 第2回 弁済による債権の回収/その他の債権消滅原因 債権消滅原因を概観し、そのうち弁済を中心として、債務内容の実現について考える。債務の本旨にしたがった弁済を重 点的に検討する。 《参照判例》 最判昭和63年7月1日判タ680-118(第三者弁済) (百選Ⅱ【36】 ) 最判昭和46年12月16日民集25巻9号1472頁(買主の引取義務) (百選Ⅱ【9】 ) 第3回 弁済による債権の回収/その他の債権消滅原因 債権消滅原因を概観し、そのうち弁済を中心として、債務内容の実現について考える。債務の本旨にしたがった弁済を重 点的に検討する。 《参照判例》 - 29 - 最判昭和63年7月1日判タ680-118(第三者弁済) (百選Ⅱ【36】 ) 最判昭和46年12月16日民集25巻9号1472頁(買主の引取義務) (百選Ⅱ【9】 ) 第4回 弁済の当事者 弁済者及び弁済受領者に関する問題を検討する。 《参照判例》 最判平成9年4月24日民集51巻4号1991頁(契約者貸付と478条の類推適用) (百選Ⅱ【38】 ) 最判昭和61年4月11日民集40巻3号558頁(債権の二重譲渡と478条) (百選Ⅱ【37】 ) 最判平成5年7月19日判時1489号111頁(キャッシュカードの不正使用と銀行の免責(百選Ⅱ【39】 ) 第5回 債権の内容の強制的実現 債務者による任意の弁済がなされない場合の法的問題につき検討する。債務不履行の場合における債権の効力を考察する。 債務不履行の形態を概観したのち、強制履行との相互関係を確認し、強制履行の要件・効果につき検討を加える。 《参照判例》 大判昭和10年4月25日新聞3835号5頁(カフェー丸玉事件) 大決昭和10年12月16日民集14巻2044頁(代替執行) 大決昭和5年9月30日民集9巻926頁(同居判決の執行) 第6回 債務不履行1(要件論) 債務不履行による損害賠償の問題について、要件を中心に検討する。伝統的な三分説にしたがい、履行遅滞、履行不能、 不完全履行につき、それぞれの要件を考察する。危険負担などの関連する制度も概観し、債務者の帰責事由や契約上の義務 の拡大現象等を検証し、債務不履行論を考える。 《参照判例》 大判昭和4年3月30日民集8巻363頁(履行補助者の過失) (百選Ⅱ【5】 ) 最判昭和50年2月25日民集29巻2号143頁(安全配慮義務) (百選Ⅱ【2】 ) 最判昭和58年5月27日民集37巻4号477頁(安全配慮義務と履行補助者) (百選Ⅱ【3】 ) 最判昭和59年9月18日判時1137号51頁(契約準備段階の過失) (百選Ⅱ【4】 ) 第7回 債務不履行1(要件論) 債務不履行による損害賠償の問題について、要件を中心に検討する。伝統的な三分説にしたがい、履行遅滞、履行不能、 不完全履行につき、それぞれの要件を考察する。危険負担などの関連する制度も概観し、債務者の帰責事由や契約上の義務 の拡大現象等を検証し、債務不履行論を考える。 《参照判例》 大判昭和4年3月30日民集8巻363頁(履行補助者の過失) (百選Ⅱ【5】 ) 最判昭和50年2月25日民集29巻2号143頁(安全配慮義務) (百選Ⅱ【2】 ) 最判昭和58年5月27日民集37巻4号477頁(安全配慮義務と履行補助者) (百選Ⅱ【3】 ) 最判昭和59年9月18日判時1137号51頁(契約準備段階の過失) (百選Ⅱ【4】 ) 第8回 債務不履行2(効果論) 債務不履行による損害賠償の効果を対象とする。損害賠償の方法および範囲の確定につき考察する。 《参照判例》 大判大正7年8月27日民録24輯1658頁(特別事情の予見時期) (百選Ⅱ【6】 ) 大判大正15年5月22日民集5巻386頁(富喜丸事件) 最判昭和47年4月20日民録25輯558頁(履行不能の場合の損害算定時期) (百選Ⅱ【8】 ) 最判昭和28年12月18日民集7巻12号1446頁(契約解除と損害額算定時期) (百選Ⅱ【7】 ) 第9回 金銭債権の履行確保/債権譲渡(1) 金銭債権の回収手段として、民法が定める諸制度を概観し、金銭債権の履行確保のための方法について、考える。また、 債権譲渡について検討し、債権譲渡が禁止される場合、特に譲渡禁止特約のある場合や債権譲渡の対抗要件についての理解 を深める。また、 「異議を留めない承諾」の趣旨につき検討する。 《参照判例》 最判平成9年11月11日民集51巻10号4077頁(百選II 【30】) 最判昭和48年7月19日民集27巻7号823頁(百選Ⅱ【27】 ) 最判平成9年6月5日民集51巻5号2053頁(百選Ⅱ【29】 ) 最判平成9年11月11日民集51巻10号4077頁(百選Ⅱ【30】 ) 最判平成4年11月6日判タ815号128頁(百選Ⅱ【31】 ) 第10回 債権譲渡(2) - 30 - 債権譲渡の対抗要件をめぐる問題、債務引受、契約上の地位の移転について概観する。 《参照判例》 最判平成5年3月30日民集47巻4号3334頁(百選II 【33】) 最判昭和41年12月20日民集20巻10号2139頁(百選Ⅱ【34】 ) 最判昭和46年4月23日民集25巻3号388頁(百選Ⅱ【35】 ) 第11回 相殺 債権消滅事由として民法典中に規定されているが、債権担保としての機能を果たすことに注目し相殺の機能と効果を概観 する。特に、相殺の担保的効力をめぐる判例の変遷と、判例法理の問題点を考察する。 《参照判例》 最大判昭和45年6月24日民集24巻6号587頁(百選II 【43】) 第12回 責任財産の保全/債権者代位権 債務者の責任を保全する制度の必要性と制度の概要を検討したのち、債権者代位権について、成立要件、転用事例等を検 討し、債権者代位権制度の理論的位置づけにつき考える。 《参照判例》 最判昭和50年3月6日民集29巻3号203頁(百選II 【10】) 大判明治43年7月6日民録16輯537頁(百選II 【11】 ) 大判昭和4年12月16日民集8巻944頁(百選Ⅱ【12】 ) 第13回 債権者取消権 債権者取消権の成立要件、客体、取消の範囲、取消の効果等を概観し、各々の問題につき、検討を加える。 《参照判例》 大判明治44年3月24日民録17輯117頁(百選II 【13】 ) 最判昭和36年7月19日民集15巻7号1875頁(百選Ⅱ【14】 ) 最判平成10年6月12日民集52巻4号1121頁(百選Ⅱ【15】 ) 最判平成11年6月11日民集53巻5号898頁(百選Ⅱ【16】 ) 最判昭和53年10月5日民集32巻7号1332頁(百選Ⅱ【17】 ) 最判平成4年2月27日民集46巻2号112頁(百選Ⅱ【18】 ) 最判昭和50年12月1日民集29巻11号1847頁(百選Ⅱ【19】 ) 最判昭和46年11月19日民集25巻8号1321頁(百選II 【20】) 第14回 債権者取消権 債権者取消権の成立要件、客体、取消の範囲、取消の効果等を概観し、各々の問題につき、検討を加える。 《参照判例》 大判明治44年3月24日民録17輯117頁(百選II 【13】 ) 最判昭和36年7月19日民集15巻7号1875頁(百選Ⅱ【14】 ) 最判平成10年6月12日民集52巻4号1121頁(百選Ⅱ【15】 ) 最判平成11年6月11日民集53巻5号898頁(百選Ⅱ【16】 ) 最判昭和53年10月5日民集32巻7号1332頁(百選Ⅱ【17】 ) 最判平成4年2月27日民集46巻2号112頁(百選Ⅱ【18】 ) 最判昭和50年12月1日民集29巻11号1847頁(百選Ⅱ【19】 ) 最判昭和46年11月19日民集25巻8号1321頁(百選II 【20】) 第15回 人的担保(保証・連帯保証) 保証制度の特徴と機能につき、概観したのち、債権者と保証人との問題、保証債務と主債務の関係、保証人の求償権につ き検討する。 《参照判例》 最大判昭和40年6月30日民集19巻4号1143頁(百選II 【24】) 第16回 保証の特殊形態・多数当事者の債権債務関係 保証の特殊形態につき概観する(保証法の改正についても確認する) 。多数当事者の債権債務関係のうち、担保の機能を 果たす不可分債務・連帯債務について検討する。 《参照判例》 最判昭和39年12月18日民集18巻10号2179頁(百選II 【25】) 最判平成10年9月10日民集52巻6号1494頁(百選II 【26】) 第17回 抵当権(1) - 31 - 物的担保の効用を概観するしたうえ、 、民法典の定める担保物権4種のうち、最も利用される抵当制度について、抵当権 の効力の及ぶ範囲について検討を加える。 《参照判例》 大判昭和5年12月18日民集9巻1147頁(百選Ⅰ【85】 ) 最判昭和44年7月4日民集23巻8号1347頁(百選Ⅰ【6】 、百選Ⅰ〔第4版〕 【83】) 第18回 抵当権(2) 抵当権に基づく物上代位、法定地上権を中心として、抵当権の効力につき検討する。 《参照判例》 最判平成10年3月26日民集52巻2号483頁(百選I 【88】 ) 最判平成2年1月22日民集44巻1号314頁(百選Ⅰ【89】 ) 最判平成9年2月14日民集51巻2号375頁(百選I 【90】 ) 第19回 抵当権(3) 抵当権侵害があった場合の問題(抵当権に基づく物権的請求権・抵当権者の損害賠償請求権)につき考える。 《参照判例》 最大判平成11年11月24日民集53巻8号1899頁(百選I 【84】) 第20回 抵当権(4) 抵当権実行による優先弁済権の実現を確認し、共同抵当の場合に生ずる配当の問題を扱う。 《参照判例》 最判昭和60年5月23日民集39巻4号940頁(百選I 【91】) 最判平成4年11月6日民集46巻8号2625頁(百選I 【92】) 第21回 抵当権(5) 根抵当権について概観する。また、抵当権に関する問題について確認する。 第22回 質権 民法が定める約定担保物権のひとつである質権につき検討する。質権が抵当権と異なり、占有移転を必要とすることから 生じる特色を、質権設定の場面において検討する。また、目的物や被担保債権の範囲につき抵当権と比較し検討を加える。 第23回 留置権 民法が定める法定担保物権2種について概観し、特に留置権について検討する。 《参照判例》 最判昭和51年6月17日民集30巻6号616頁(百選I 【81】) 最判昭和43年11月21日民集22巻12号2765頁(百選Ⅰ【80】 ) 第24回 先取特権/売買代金債権の確保 先取特権及び所有権留保の機能を中心に検討し、これらの担保の意義を確認しつつ、売主の代金債権回収手段について検 討する。 《参照判例》 最判昭和60年7月19日民集39巻5号1326頁(百選I 【82】) 第25回 非典型担保(1) 非典型担保(譲渡担保、仮登記担保、所有権留保)が存在する理由を考え、非典型担保とされるものを概観する。そして、 特に譲渡担保につき、性質や実行方法についての問題点を考察する(なお、この回では、譲渡担保の目的物が集合物である 場合を除く)。 《参照判例》 最判平成6年2月22日民集48巻2号414頁(百選I 【97】 ) 最判昭和46年3月25日民集25巻2号208頁(百選Ⅰ【95】 ) 最判平成11年5月17日民集53巻5号863頁(百選Ⅰ【96】 ) 第26回 非典型担保(1) 非典型担保(譲渡担保、仮登記担保、所有権留保)が存在する理由を考え、非典型担保とされるものを概観する。そして、 特に譲渡担保につき、性質や実行方法についての問題点を考察する(なお、この回では、譲渡担保の目的物が集合物である 場合を除く)。 《参照判例》 - 32 - 最判平成6年2月22日民集48巻2号414頁(百選I 【97】 ) 最判昭和46年3月25日民集25巻2号208頁(百選Ⅰ【95】 ) 最判平成11年5月17日民集53巻5号863頁(百選Ⅰ【96】 ) 第27回 非典型担保(2) 仮登記担保、所有権留保、その他非典型担保を概観する。 《参照判例》 昭和50年2月28日民集29巻2号193頁(百選I 【99】 ) 第28回 非典型担保(3) 個々の財産権を対象とする譲渡担保とは異なる、集合動産譲渡担保および集合債権譲渡担保について、裁判例上、現れて きている問題点(特定性や対抗要件など)につき検討する。平成16年に改正された動産・債権譲渡特例法を利用した譲渡担 保についても簡単に概観する。 《参照判例》 最判昭和62年11月10日民集41巻8号1559頁(百選Ⅰ〔第4版〕 【98】事件) 最判平成12年4月21日民集54巻4号1562頁(百選I 【98】) 第29回 弁済による代位 弁済による代位について、求償特約の存する場合の代位の効力、一部代位の問題、法定代位権者相互間の関係、債権者の 担保保存義務特約につき、検討する。 《参照判例》 大判昭和6年4月7日民集10巻535頁(百選II 【40】 ) 最判昭和59年5月29日民集38巻7号885頁(百選II 【41】) 第30回 第三者による債権侵害 第三者からの侵害に対する債権の保護を検討する。 《参照判例》 大判大正4年3月10日刑録21輯279頁(百選Ⅱ【21】 ) 最判昭和28年12月18日民集7巻12号1515頁(百選Ⅱ【22】 ) - 33 -
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