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海外実習報告第 4 日目 9 月 16 日(水)
岩瀬いづみ,岩田準基,山黒彩菜
海外実習 4 日目の午前中は私達がこの海外実習で楽しみにしていた Philippine Carabao Center(PCC)
を訪れ、まず,Arnel N. del Barrio 所長を表敬訪問しました。午前 9 時から PCC の方に案内されて,
PCC の活動内容や詳しい研究内容についての説明を受けました。
PCC とは,乳の多くを輸入しているフィリピンの
現状をカラバオの乳で代替することや、カラバオ
の乳生産量の増加の為の研究をしている機関で
す。カラバオとは,タガログ語で水牛を指します。
フィリピンの乳国内自給率が 1%未満であり,
乳不足が問題になっていることは知っていまし
たが,それを改善しようとする活動が活発に行わ
れていることがわかりました。その中でも,特に
酪農の発展のために,PCC ではカラバオの発展プ
ログラムや,家畜のバイオテクノロジープログラ
ムなどが組まれており,カラバオの発展,遺伝的
な改善,遺伝子工学などさまざまな方面から乳生
PCC の活動内容の紹介
産についての研究が行われていました。まだ発展
はしていないと思っていたフィリピンでも,遺伝的な面から酪農について考えられていることがわかり
ました。質疑応答では,乳房炎に関する質問や,乳生産以外でのカラバオの利用法などについてなど学
生から多くの質問があったにも関わらず,一つ一つの質問に対して親切丁寧に答えて頂きました。それ
と同時に飛び交う英語の専門用語を理解するのに苦労し,自分の知識の少なさを痛感しました。
次に実際に National Gene Pool を訪問しました。National Gene Pool は乳生産,優良品種及び,カ
ラバオについての研究を行っている施設で,
畜大の FSC の広さまではいかないものの,
十分広い牛舎で,
かつきれいに管理されていました。初めて見るカラバオに皆興奮し,たくさん写真を撮ることができま
した。一部の学生はカラバオの糞が白いワイシャツに飛び散っていましたが,これもまた貴重な体験に
なったと思います。
午前中の最後は,カラバオ乳加工製品を販売し
ている「Milka Krema」を訪れました。ショーケ
ース一面に並べられた乳製品のうち,牛乳,アイ
スクリーム,ゴーダチーズ,モッツアレラ,プテ
ィチーズを試食しました。
思っていたよりも癖は
なく,日本の牛乳よりも濃厚で今までに味わった
ことのない味でした。
牛乳を飲む習慣があまりな
いフィリピン人も,この牛乳は好きなようですが,
値段が高いのでなかなか買わないそうです。
Milka Krema にて牛乳など乳製品の試食
個人的には,PCC を案内してくださったキリサ
リンさんとお話できたことがとても印象に残っ
ています。日本語に興味を持ってもらえ,私たちが日本語を教えたり,反対に私たちがタガログ語を教
えてもらったりと,普段できない体験でとても新鮮でした。さまざまな施設の移動が多かったですが,
とても充実した研修となりました。
PCC で昼食をとった後,車でセントラルルソン州立大学(CLSU)に移動しました。セントラルルソン州
立大学は 1907 年 4 月に設立された主に農業や水産などを取り扱った大学で,学生数は約 13,000 人のと
ても大きな大学です。
初めに表敬訪問をし,その後 Science and Technology Center に行き大学紹介のビデオを鑑賞しまし
た。この施設には様々な研究の紹介が展示されてあり,皆それぞれ自分の興味のある分野を熱心に見て
いました。研究内容は土壌科学や家畜生産など私たちの大学と似たような内容も多くとても親近感を持
ちました。その中でも食品の分野でティラピアを利用したアイスクリームなど,私には興味深かったで
すが,フィリピンの人がそれに対してお金を出
してまで食べたいと思うのか疑問でした。また,
タッチ式のパワーポイントやタブレットで表
示されている展示など,日本でも無いような設
備を見てフィリピンへのイメージが変わりま
した。ここに来るまでの研修先で,「フィリピ
ンの人は安いものを買う,品質は二の次」と聞
き,品質を重視する日本とは大きな違いである
と思いました。また,外からの援助ですごく発
達した施設が少なくないがフィリピンの現実
で,格差が埋まるのはまだまだ先のように感じ
ました。
次に Biodiversity という施設を見学しまし
セントラルルソン州立大学にて表敬訪問の様子
た。そこでは海洋生物の展示や動物の剥製,地
域ごとのジオラマ,災害時に対応するハザードマップを作成する施設を見学しました。施設では,日本
とフィリピンとで比べると,机の配置が全く異なりました。日本では教員と学生が向かい合って教える
側と教えられる側に壁があるように感じますが,今日見たフィリピンの教室では学生同士が向かい合っ
ており,コミュニケーションを取りやすくなっていました。
その後に行った Climate Change という施設では地球の環境変化に対応するための研究紹介がされて
おり,大きな流れに対しても考えているのだと思いました。その中に Food Security という環境の変化
に負けずに,食べ物の収量を確保するための研究論文があり,フィリピン国内の自給率の増加に繋がる
のではないかと思いました。
フィリピンに来てから野菜をあまり食べていなかったですが,その中でもキノコは見る機会がなかっ
たのでキノコの研究をフィリピンでしていることを知って,日本と同じようにキノコ栽培をしているこ
とに驚きました。話して下さった内容に日本の研究結果の情報などが使われていたので,日本はキノコ
に対する研究が進んでいるのだと思いました。特にキノコを使った薬の制作方法は日本で確立されたも
のだとおっしゃっていました。キノコを使った加工品の数は多く,なぜ今まで見ることが出来なかった
のか不思議に思いましたが,今まで行った店は規模が大きいものばかりだったので,露店などに行けば
見られるかもしれません。
最後に訪れたのはフィリピンの農業機械を担当している Phil Mech を訪問しました。加工食品の話が
主な話なのかと思ったのですが,その前の段階で貯蔵までの機械技術がメインでした。トラクタから精
米などに使う機械の部品の設計や試作をしているらしいのですが,どうしても中国製などの他の国の安
価な農業機械に勝てずに輸入をしているのが現実でした。フィリピンではコメは手でナイフを使って稲
を刈り取り,束を作って積み重ね,藁ともみ殻を機械で選別し,精米機で精米を行うのですが,この方
法だと収穫の損失が収穫量の 3~5%となるそうです。しかし,コンバインを導入することによって,こ
の損失を 2%程度減らすことが出来るそうです。
今日一日,朝から夕方まで様々な施設を見学し,貴重なお話しを聞くことが出来てとても有意義な時
間を過ごすことが出来ました。明日は,一日かけてバナウエへと移動します。移動中のバスの中で疲れ
を取り,明後日からの活動に備えたいと思います。
海外実習報告第 5 日目 9 月 17 日(木)
山田朝日霞,湯浅綸語,川西瑠奈グレイス
PCC Hotel で食べる最後の朝食は,ガーリックライス・トマト・キュウリ・ソーセージ・スクランブ
ルエッグで,どれも簡易なものでしたがフィリピンの朝食が口にあってきたようです。ガーリックライ
スは初めて食べましたが,フィリピン米の独特なパサパサ感がいい具合に緩和されていました。
午前中は,ムニョスから目的地であるバナウエまで車で移動しました。8 時 40 分に PCC を出発してか
らすぐに,
あちこちで白いセブ系の牛が見られました。
アパートの横で繋ぎ飼いされているのもいれば,
自由に放牧されているのもいました。背中の上に白い鳥が乗っている牛もいて,フィリピンの田園風景
に溶け込んでいました。
バナウエまで行くには,峠を 15 個越えていく必要があるそうです。急カーブや急な坂,運転手さんに
よる急な追い越しなど,とてもハラハラドキドキするドライブでした。また,山を登る道路沿いの斜面
に村があるかのように家が並んでいました。日本では見なれない風景ですし,町から遠く離れ買い物も
ままならぬこのようなところにでも人が住めるのだなと少し驚きました。運転手さんの話によると,山
を切り開いて畑にし,作物を育てることで生計をたてているとのことです。実際の畑を見ることは出来
ず,とても残念でした。
昼食は,バナウエまであと約 1/3 のところ
にあるレストランでとりました。焼き豚,コ
コナッツジュース,白身魚の甘酢和え,焼き
ヌードルを食べました。ココナッツジュース
は,丸ごとのココナッツのシェルに穴をあけ
そこにストローが刺さった状態ででてきたの
でとても驚きました。中のジュースを飲むだ
けではなく,シェルの内側についている白い
ゼリー状のものをスプーンやストローで取っ
てから一緒に食べるのが,本当のやり方だそ
うです。また,焼き豚はタガログ語で「パテ」
といい,太腿の部分が丸ごと骨付きで出てき
フィリピン料理での昼食
ました。お肉自体に脂身があり,皮もパリパ
リしていてとても美味しく頂きました。
午後は,残り 9 個の峠を越えバナウエに向かいました。これまでは田圃は平地に多く見られていたの
ですが,徐々に斜面の家も少なくなっていき,山の斜面には多くの棚田が見られるようになってきまし
た。また,警察が交通整備をしていたので何が起こったのだろうと思っていたら,日本でよく見る日本
製の中古の大型運送トラックが崖から半分落ちていてとても驚きました。私たちの運転手さんも,もう
少し安全な運転をしてほしいと思ったと同時に,安全運転していたら時間がかかりすぎてしまうのだろ
うとも思い,複雑な気持ちになりました。
最終的に 8 時 40 分にムニョスの PCC Hotel を出発し,16 時 30 分にバナウエの Green View Lodge に
到着しました。8 時間のドライブはさすがに体力的にも精神的にも参りました。その後,夕食まで少し
時間があったのでホテルの周りを見学しました。
木彫りの置物や小物入れなどがたくさん売られており,
バナウエの伝統工芸品だそうで,ひとつひとつ職人の手彫とのことでした。その他にも,パン屋や野菜
市場,ドラッグストアなど,小さい店が並ん
でおり日常生活用品はすべて揃うようになっ
ていました。
今日は,時間が押していたため午後に訪問
予定だった Rice Wine 工場見学もなくなり,
移動するだけの日となってしまいとても残念
でした。しかし,移動していくうちに風景や
景色が変わっていく様子は,地形や気候など
により農村や農業形態が変化していくのを見
ていて,農業の多様性などとても考えさせら
れるものがありました。明日は棚田で稲作を
行っている農家でのお話を直接聞くことが出
来るので,多岐にわたって学んでいこうと思
います。
バナウエのパン屋